- 股関節
- 変形性股関節症
股関節に負担をかけない椅子の選び方|医師が教える正しい姿勢と椅子の条件とは?

「椅子に座っている時間が長くなると股関節が痛くなる」「椅子に座ったり立ったりする動作がつらい」
このようなお悩みはありませんか。
椅子に座っている時間が長くなると股関節に負担がかかり、股関節痛や腰痛、坐骨神経痛などの発症リスクが増加します。
股関節への負担を減らすためには、自分の体に合った椅子を選び、正しい姿勢で座るのが大切なポイントです。
本記事では股関節に負担をかけない椅子の必要性や自分に合った商品の選び方、NGな座り方、および対処法について解説します。
なお、股関節の疾患に対しては再生医療も治療選択肢の一つです。当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。
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目次
なぜ股関節に負担をかけない椅子が必要なのか
股関節は人体のなかでもっとも大きく、可動域が広い関節の一つです。
股関節は体の中央に位置しており、上半身の体重を支え、地面からの衝撃を緩和する大切な役割を持ちます。
体に合わない椅子に座っている時間が長いと、股関節周りの筋肉が緊張して可動域が低下し、腰痛や坐骨神経痛などさまざまな不調を引き起こすリスクが増加します。
股関節は健康寿命にも大きな影響を与えるため、股関節に負担をかけない椅子に正しく座ることが重要です。(文献1)
とくに股関節痛や変形性股関節症をお持ちの方は、症状を悪化させないためにも股関節に負担をかけない椅子を選ぶ必要があります。
股関節に負担をかけない椅子の選び方
股関節に負担をかけない椅子の選び方は次のとおりです。
それぞれについて解説します。
座面の高さが調整できて自分好みの高さと合っている
股関節に負担をかけない椅子選びのポイントの一つが、座面の高さが調節できて自分の好みの高さと合っている点です。
自分の体に合った椅子を選ぶと、立ったり座ったりする際に股関節や膝関節を無理に曲げ伸ばしする必要がないため、関節や筋肉にかかる負担が減少します。
椅子に座った際に両足の裏がしっかりと床に着き、膝関節および股関節が90度になる高さに調節できる椅子を選びましょう。
硬めで安定したクッションがついている
股関節に負担をかけない椅子を選ぶポイントの一つが、硬めで安定したクッションがついているかどうかです。
柔らかいクッションの方が座り心地が良いと思われがちですが、お尻が沈み込みすぎると骨盤が傾き、かえって股関節や腰にかかる負担が増加します。
適度な硬さのクッションがついていると、坐骨(お尻の骨)を意識して骨盤を起こして座れるため、股関節だけでなく腰や上半身にかかる負担も軽減できます。
通販サイトで椅子を購入する際には、商品を販売している店で実際に座って確認しておくのがおすすめです。
体を支える背もたれと肘掛けがある
体を支える背もたれと肘掛けがあるのも、股関節に負担をかけない椅子の特徴の一つです。
背もたれがあると立ったり座ったりする際に腕の力で上半身を支えられるため、股関節や膝関節にかかる負担が減少します。
背もたれがあると椅子に座り疲れた際にもたれかかり、股関節周りの筋肉を緩めたり、上半身をリラックスさせたりできます。
ただし、椅子に浅く腰かけて背もたれによりかかると、骨盤が後ろに倒れて股関節への負担が増すため注意が必要です。
座面の奥行きが浅すぎず深すぎない
股関節に負担をかけない椅子を選ぶ際には、座面の奥行きが浅すぎず深すぎないかチェックしましょう。
座面の奥行きが深すぎると膝裏にある血管が圧迫されて下肢の血行不良を起こしたり、足のしびれが出たりしやすくなります。
座った際に座面から膝裏が指の幅1〜2本程度出る椅子を選びましょう。
反対に、座面の奥行きが浅すぎると長時間座った際に疲れやすい上、体が大きい方はリラックスできない可能性があります。
【年配の方向け】股関節にやさしい椅子の特徴とは?
年配の方は若い方に比べて比較的筋力が弱い傾向にあるため、以下のポイントを踏まえて股関節にやさしい椅子を選ぶのがおすすめです。
- 座面が高すぎず低すぎない
- 肘掛けがついている
- 座面が柔らかすぎず沈みにくい
- 作りが丈夫で安定している
座面が高すぎず低すぎない椅子で肘掛けが付いていると、立ったり座ったりする際に腕の力が使えるため、股関節にかかる負担が軽減します。
座面が柔らかくお尻が沈み込む椅子は立つ際に筋力が必要で、股関節にかかる負担も大きいため避けましょう。
作りが丈夫で安定した椅子であれば、肘掛けに手を置いて力を入れた際に、しっかりと体を支えてくれます。
キャスターがついた椅子や軽すぎる椅子は、座ったり立ったりする際に転倒するリスクがあります。
転倒により骨折すると、寝たきりになる恐れもあるため注意が必要です。(文献2)
症状別|股関節に負担をかけない椅子の選び方
次に、症状別に股関節に負担をかけない椅子の選び方を紹介します。
- 変形性股関節症の場合は座面が浅めで硬い椅子を選ぶ
- リハビリ中の人は高さ調整ができて安定感のある椅子を選ぶ
- 手術後の回復期は立ち座りのしやすさを重視する
- 慢性的な股関節痛にはクッションや骨盤サポーターも併用する
変形性股関節症の場合は座面が浅めで硬い椅子を選ぶ
変形性股関節症をお持ちの方は、座面の奥行きが浅く、クッションが硬い椅子を選ぶのがポイントです。
座面が深い椅子は上半身がリラックスする反面、背もたれによりかかると姿勢の悪化により下半身にかかる負担が増大し、股関節の痛みが生じやすくなります。
座面が浅くクッションが比較的硬い椅子の場合、坐骨を支点として骨盤を起こし、体に無駄な力を入れずに座れます。
変形性股関節症をお持ちの方が椅子を選ぶ際は「座面が浅め・クッションが硬め・肘掛けつき」を目安にしましょう。
リハビリ中の人は高さ調整ができて安定感のある椅子を選ぶ
股関節のリハビリに取り組んでいる方は、高さ調整ができて安定感のある椅子を選ぶのがポイントです。
股関節のリハビリに取り組む際、椅子に座ってお尻のストレッチをしたり、股関節を回したりして柔軟性を高める方法があります。
また、立った状態で椅子の背もたれに手を置き、股関節周りの筋トレをするのも効果的です。
高さ調節ができて安定感のある椅子であれば、ストレッチや筋トレに取り組む際のサポートになります。
手術後の回復期は立ち座りのしやすさを重視する
変形性股関節症や大腿骨頚部骨折など手術後の回復期には、立ち座りのしやすさを重視して椅子を選びましょう。
変形性股関節症や大腿骨頸部骨折の手術に伴う入院期間は、個人により異なりますが、手術前に比べて筋力の低下を避けられません。
そのため、立ったり座ったりしやすく、安定性がある椅子を選ぶのが重要なポイントです。
転倒のリスクを下げるため、軽くて安定感のない椅子や、キャスター付きの椅子は避けましょう。
慢性的な股関節痛にはクッションや骨盤サポーターも併用する
慢性的な股関節痛をお持ちの方は、自分に合った椅子を選んだ上でクッションや骨盤サポートも併用するのがおすすめです。
デスクワークが長くなると猫背になってしまう方は、姿勢サポートチェアなどを利用して骨盤を起こし、股関節への負担を軽減する方法があります。
姿勢サポートチェアの代わりに小さめのクッションをおしりの下にドアストッパーのように差し込み、骨盤を起こすのも効果的です。
立ったり座ったりする動作が多い方は、骨盤ベルトで股関節への負担を減らす方法があります。
股関節に負担をかけない椅子を使ってもNGな座り方
股関節に負担をかけない椅子を使っても、以下4つの座り方はNGです。
対処法と併せて解説します。
背中を丸めた姿勢で長時間座る
股関節に負担をかけない椅子を使っても、背中を丸めた姿勢で長時間座るのはNGです。
背中を丸めた姿勢を続けると頭が前に倒れ、バランスを取るために骨盤が後ろに傾きます。
骨盤が後ろに傾くとお尻の筋肉(殿筋)が弱くなり、股関節への負担が増加する傾向にあります。
椅子に座る際は坐骨に体重を乗せるよう意識し、上半身をまっすぐ伸ばすようにしましょう。
猫背になってしまう方は、椅子の上に姿勢サポートチェアを置いて対処する方法があります。
足を組む・片足だけを曲げる
椅子に座った際に足を組んだり、片足だけを曲げたりすると、股関節にかかる負担が増大するため注意が必要です。
足を組んで左右いずれかが上になった状態が長く続くと、股関節周りの筋肉が緊張して股関節痛を発症するリスクが増加します。
片足だけ曲げて座る時間が長くなると、骨盤が左右のどちらかに傾き、股関節にかかる負担が増大します。
椅子に座る際は両足の裏がしっかりと地面につき、膝関節と股関節を90度に保てるよう座面の高さを調節しましょう。
椅子の前方に浅く座る
股関節に負担をかけない椅子を使っても、椅子の前方に浅く座るのはNGです。
座面に十分な奥行きがあるのにもかかわらず浅く座ると、疲れた際に背もたれによりかかり、骨盤が大きく後ろへ傾きます。
骨盤が大きく後ろに傾くと、股関節への負担が増加しやすくなります。反対に、椅子の前方に浅く座ると、反り腰のリスクが増加するため注意が必要です。
反り腰の姿勢が続くと腰の深部の筋肉(大腰筋)や太ももの前面の筋肉(大腿四頭筋)が緊張し、股関節痛を発症するリスクが増加します。
とくに男性に比べて筋力が弱い女性は、反り腰に注意する必要があります。
座面が低すぎて股関節が深く曲がる
座面が低すぎて股関節が深く曲がる座り方を続けると、長く座り続けた際に股関節周辺の筋肉が緊張し、コリや痛みが生じやすくなります。
また、座面が低すぎると立ち上がる際に筋力が必要となる上、座る際にも股関節に負担がかかるため、年配の方はとくに注意が必要です。
座った際に両足の裏が地面にしっかりとつき、股関節と膝関節が90度を維持できる座面の高さが理想です。
椅子を購入する際には、座面の高さが調節できる商品を選びましょう。
今ある椅子を工夫して股関節への負担を減らす方法
椅子をすぐに買い替えられない方や、股関節周りの症状がそれほど深刻でない方は、今ある椅子を工夫して股関節への負担を減らす方法があります。
股関節への負担を減らす具体的な方法は以下の3つです。
- 座布団やクッションで高さを調整する
- 股関節用のサポートクッションを使う
- 骨盤サポーターを使って正しい姿勢に近づける
高さを調節する機能がない椅子を使っている方は、座布団やクッションを利用する方法があります。
長時間椅子に座っていると姿勢が悪くなってしまう方は、股関節用のサポートクッションを利用して、股関節にかかる負担を減らしましょう。
また、椅子に座っているとき以外も骨盤サポーターを装着し、正しい姿勢を身につけるのがおすすめです。
椅子を変えても股関節の痛みが改善しないなら「再生医療」をご検討ください
椅子を変えたりサポートグッズを使用したりしても股関節の痛みが改善しない方は、再生医療をご検討ください。
変形性股関節症が悪化すると日常生活に支障を来すようになるため、手術で人工関節に置き換える方法があります。
しかし、人工関節に置き換えてもメンテナンスのために通院する必要がある上、経年劣化にともない再手術を受ける例が少なくありません。
再生医療は自分自身の幹細胞や血小板を用いる治療法で、以下2つの方法があります。
治療法 | 特徴 |
---|---|
幹細胞治療 | さまざまな細胞に変化する幹細胞を利用する |
PRP療法 | 濃縮した自己の血小板を患部に注入して炎症を鎮める |
再生療法は手術療法に比べると体にかかる負担が小さく、体力が低下した年配の方でも受けられる点がメリットの一つです。
外科的な手術には抵抗がある方や、仕事が忙しくて手術に踏み切れない方は、当院リペアセルクリニックの再生医療をご検討ください。

股関節の痛みは⼿術しなくても治療できる時代です。
まとめ|股関節に負担をかけない椅子で正しい姿勢と快適な生活を送りましょう
椅子の高さが自分の体に合っていないと、長時間のデスクワークなどが原因で股関節周囲の筋肉が緊張し、股関節痛や腰痛の発症リスクが増加します。
とくに慢性的な股関節痛や変形性股関節症をお持ちの方は、症状の悪化を防ぐためにも自分の体に合った椅子選びが欠かせません。
椅子を選ぶ際には作りがしっかりしていて安定性があり、高さが調節できる背もたれや肘掛けがついた商品がおすすめです。
猫背や反り腰の姿勢を避けたい方は、クッションや骨盤サポーターを併用すると良いでしょう。
椅子を変えたりサポートグッズを使用したりしても股関節の痛みが改善しない方は、変形性股関節症や股関節インピンジメント症候群などの疾患の可能性があります。
股関節の疾患に対する主な治療法は、保存療法・手術療法・再生医療です。
再生医療は自分の幹細胞や血小板を用いた治療法で、手術療法に比べて身体にかかる負担が少ない上、入院が必要ありません。
再生医療について詳しくは、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEをご覧ください。
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股関節に負担をかけない椅子に関してよくある質問
クッションだけで調整しても大丈夫?
椅子の高さが体に合わない際に、自宅にあるクッションを利用して調整する方法があります。
クッションを上手に用いると座る際の高さを調整できる上、猫背を予防するメリットも得られます。ただし、クッションが有効なのは座面を少し高くする場合だけです。
座面を大幅に高くしたい場合や、座面を下げたい場合は、椅子を交換する必要があります。
股関節に良い座り方ってどんな姿勢?
股関節に良い座り方のポイントは以下のとおりです。
- 両足の裏がピッタリと床についている
- 膝関節と股関節が90度に保たれている
- デスクワークの際は肘関節が100度程度に保たれている
デスクワークの方はパソコンのモニターを視線のまっすぐ先、もしくはやや下に見る位置に置くと、上半身の正しい姿勢を保ちやすいです。
床に座るより椅子に座ったほうが良い?
床に座るより、椅子に座る方が股関節への負担は少なくなります。
床に座る場合、あぐらや横座りなどで股関節を深く曲げる姿勢が続き、股関節周りの筋肉が緊張しやすくなります。また、床から立ち上がる際も股関節や膝に大きな負担がかかるため、おすすめできません。
とくに年配の方や変形性股関節症をお持ちの方には、椅子の使用をおすすめします。
参考文献
(文献1)
股関節の手術と健康寿命|公益財団法人股関節研究振興財団