-
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
膝に現れる「関節ねずみ」とは何か?と気になる方もいるでしょう。正式には「関節内遊離体」と呼ばれるこの状態は、関節の中で小さな骨や軟骨の破片が遊離し、動くたびに痛みや引っかかりなどが出現するものです。 とくに膝の関節内で発生しやすく、スポーツをしている方や膝に負担のかかる動作を日常的に行う方に見られることが多いのが特徴です。 この記事では、関節ねずみの原因、症状、治療方法について詳しく解説します。膝の違和感に悩む方は、ぜひ参考にしてください。 膝に現れる関節ねずみ(関節内遊離体)とは? 関節ねずみ(関節内遊離体)とは、関節内部に発生する小さな骨や軟骨のかけらが関節内で遊離して動き回る状態です。膝関節に発生する場合が多く、スポーツでの負荷や関節の変性により、軟骨や骨の一部が剥がれ落ちることが原因です。 遊離体が関節内で動き、膝の曲げ伸ばしの際に引っかかることで痛みや違和感が生じることがあります。とくに、激しい運動や動作で症状が悪化するため、日常生活に支障が出る場合もあります。 関節ねずみは全身の関節に起こりえる 関節ねずみ(関節内遊離体)は、膝関節に限らず全身のさまざまな関節に発生する可能性があります。関節ねずみは。関節内で小さな骨片や軟骨の一部が剥がれて遊離体となり、関節内を自由に動き回ることから、関節ねずみと呼ばれています。 遊離体が関節内で動くと、引っかかるような痛みや違和感が生じ、関節の可動域が制限される場合があります。症状の悪化や関節の摩耗につながることもあり、とくに運動や日常動作の際に不便を感じることが多いです。 関節ねずみは関節の変性や外傷が原因となるため、痛みが続く場合や運動制限が大きい場合には、関節鏡手術によって遊離体を取り除くことが一般的です。 関節炎や関節症が原因となる 関節ねずみ(関節内遊離体)は、関節炎や関節症が原因で発生します。これらの疾患は、関節軟骨や骨の損傷や変性を引き起こしやすく、その過程で関節内の骨や軟骨の小片が剥がれ落ち、関節内に遊離体として残るためです。 遊離体が関節内で動き回ると、さらに炎症や痛みが起こり、関節の可動域が制限されることもあります。 関節ねずみによって引き起こされる症状 関節ねずみ(関節内遊離体)によって引き起こされる症状には、関節痛やロッキング現象があります。関節ねずみが関節内で移動すると、関節の曲げ伸ばしをした時に遊離体と軟骨が擦れ合い、強い痛みを生じやすいです。この痛みは動作に伴って悪化し、歩行や運動が困難になる場合もあります。 また、関節ねずみが関節内で引っかかり、関節の動きが突然止まるロッキング現象も発生します。ロッキングが起こると、膝を完全に伸ばせなくなったり、逆に曲げられなくなったりするため、日常生活やスポーツ活動に大きな支障が生じます。 関節ねずみの検査方法 関節ねずみの検査では、X線やMRI(磁気共鳴画像法)、CT(コンピュータ断層撮影)検査が用いられます。 X線検査は、骨片の形状を抽出するため、骨が剥がれて関節内で浮遊している場合、位置や大きさを確認するのに役立ちます。しかし、X線では軟骨片はほとんど映らないため、MRIやCT検査の併用が必要です。 MRI検査は関節軟骨や靭帯などの軟部組織も詳細に映し出せるため、軟骨片や関節内の炎症の程度を確認するのに効果的です。一方、CT検査は細かい骨片の抽出に適しており、遊離体が硬い骨片の場合にその形状や位置をより鮮明に捉えられます。 関節ねずみの治療法 関節ねずみに対しての治療は3種類あります。 保存療法 手術療法 再生医療 それぞれ解説していきます。 保存療法 関節ねずみの保存療法では、痛みや炎症のコントロールを目的に、薬物療法や理学療法が行われます。薬物療法では、消炎鎮痛剤の内服や関節内注射などで痛みや炎症を抑えることが中心です。一方、理学療法では、関節の負担を軽減するための装具の使用や、筋力強化のためのリハビリテーションを実施します。 保存療法は症状が軽度の場合や、遊離体が小さく動きが少ない場合に有効とされ、痛みの緩和や症状の進行を遅らせる効果が期待できます。 手術療法 関節ねずみの手術療法は、遊離体を取り除き関節の正常な動きを回復させることが目的です。一般的には、関節鏡手術が行われ、関節鏡を用いて関節内を観察しながら遊離体を除去します。関節鏡手術は、切開が少なく傷が小さいため、回復が早く、身体への負担が少ないです。 手術が適用されるのは、遊離体が関節内で移動して痛みや引っかかり感が強い場合や、保存療法で症状が改善しない場合になります。 再生医療 関節ねずみの治療において、再生医療は新たな選択肢です。関節軟骨の再生を目指して、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)療法が行われます。 幹細胞治療は、幹細胞を培養して関節に注入し、軟骨の再生を促進する治療です。PRP療法は、自身の血液から血小板が多く含まれた成分を抽出し、関節に注入することで、組織修復や痛みの軽減を図ります。 再生医療は、とくに関節軟骨が損傷している場合に効果が期待され、治癒が難しいとされる関節の回復を目指す治療法として注目されています。 関節ねずみの予防 関節ねずみの予防には、膝への負担を減らし、関節を保護することが大切です。まず、運動前には十分なウォーミングアップとストレッチを行い、関節や筋肉を柔らかくすることで関節への負担を軽減できます。 膝に過度な負荷がかかる激しい運動や、急な方向転換を伴うスポーツでは、膝を守るサポーターや適切なシューズを着用することがおすすめです。 また、日常生活では体重管理を心がけることも、膝関節への負担軽減につながります。さらに、筋力を高めて膝周囲をサポートすることで、関節への負荷を分散し、軟骨や骨の損傷を予防できます。 まとめ|関節ねずみについて知り、最適な治療法を選びましょう。 関節内遊離体(関節ねずみ)とは関節内に本来ないはずの軟骨や骨のかけらが存在する状態です。 肘や膝などの関節内で生じることが多く、高齢者のみならず野球やテニス、バスケットボールなどの競技者にも多く認められる傾向があります。膝部分に関節内遊離体がある人は、関節の痛みや膝の動かしにくさなどの症状が現れます。この疾患を疑われる人は、整形外科等にて画像検査(レントゲン検査やMRI検査)や、関節鏡検査を実践してもらうことをお勧めします。 一般的には、症状が軽い人では経過観察が行われて、症状が強い人やスポーツ選手は手術によって関節内遊離体の除去が施行されます。関節が痛んで関節内遊離体が心配な人はぜひ前向きに整形外科を受診してくださいね。 関節ねずみについてよくあるQ&A 関節ねずみの手術費用はいくらくらいですか? 関節ねずみの手術費用は、一般的に十数万円程度かかります。多くの場合、関節鏡手術が用いられ、健康保険が適用されるため3割負担で前述の金額です。 ただ、費用は病院や手術方法、また入院の有無によって変動します。また、再生医療や特殊な治療を行う場合には保険適用外の可能性があるため、詳細は医師や病院に相談し、見積もりを確認することが大切です。 関節ねずみの手術後の入院期間はどの程度ですか? 関節ねずみの関節鏡手術後の入院期間は、通常2〜3日程度と比較的短期間で済むことが多いです。関節鏡手術は、切開が小さく術後の回復も早いため、早期退院が可能です。 軽度なケースでは日帰り手術も行われる場合がありますが、炎症や腫れが引くまで経過観察のために数日間の入院が必要な場合もあります。入院期間は患者の年齢や症状の重さ、手術後のリハビリ計画によっても異なるため、医師と事前に相談しておくと安心です。
2021.11.30 -
- 幹細胞治療
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
- 再生治療
膝の痛みでステロイド注射を受けたら「しばらくは楽になったけれど、また辛くなってきた」と感じたことはありませんか。 再び注射をお願いしたところ、「前回から間隔が短いので、もう少し待ちましょう」と言われ、戸惑った方もいるでしょう。 ステロイド注射は、炎症を抑える力が強く、痛みが軽減される反面、頻繁に打つと軟骨や関節への負担が大きくなるおそれがあります。 本記事では、膝関節におけるステロイド注射の適切な間隔や回数の目安、副作用を防ぐための注意点を解説します。 また、変形性膝関節症の最新治療法として、再生医療をご紹介いたします。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 変形性膝関節症について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 膝関節に用いられるステロイド注射とは ステロイド注射(関節内コルチコステロイド注射)は、膝関節内の炎症や痛みが強い場合に用いられる治療法です。 変形性膝関節症では、軟骨のすり減りが進むにつれて関節内に炎症が生じやすくなり、この炎症を抑える目的でステロイドを関節内へ注射します。ステロイド注射はヒアルロン酸注射と比べ、強力な抗炎症作用により、痛みを抑えるのに非常に高い効果を発揮するとの報告が多くあります。 ただし、ステロイドの多用には注意が必要です。ステロイドは骨や軟骨の代謝に影響を及ぼし、「骨壊死」や「ステロイド関節症」という副作用が発現する可能性があります。 そのため、ガイドラインでも、必要性を見極めた上で慎重に用いることが推奨されています。(文献1) 変形性膝関節症にお困りの方は、以下サイトもご参照ください。 膝へのステロイド注射の間隔は3カ月が目安 変形性膝関節症へのステロイド注射は、強い炎症や痛みを短期間で抑える目的で使用されます。しかし、その作用は強力なため、使用頻度や間隔には注意が必要です。 変形性膝関節症診療ガイドライン2023では、「ステロイド関節内注射の効果は炎症の鎮静化や短期的な除痛に限定される」と記載されています。合併症リスク自体はプラセボ(偽薬)と比較して大きくはないものの、軟骨損傷や変形性膝関節症の進行の危険性があるため、次のような投与は推奨されていません。 頻回投与 間隔を空けずに反復する使用 長期間の継続 一方で、ガイドライン自体には「何週間空けるべきか」の明確な間隔についての記載は確認できません。(文献1) 米国での最近のガイドラインでは、「薬物動態・薬力学データに基づく最低間隔は2 〜 3週間、最大3カ月」とされており、この「最大3カ月」が実臨床での一つの判断基準として扱われています。(文献2) ステロイド注射の効果が現れるタイミングについて ステロイド注射による効果発現には、1週間程度かかります。 研究報告として、関節内コルチコステロイドが1週間程度で有意な痛みの軽減を示したとする報告があります。(文献3) さらに、別のレビュー文献では、効果のピークは注射後2週間頃に達するとされています。(文献4) これらの報告から、ステロイド注射後、数日~1週間程度で炎症が徐々に落ち着き始め、2週間前後で痛みがもっとも感じにくくなる時期と考えられます。 ステロイド注射の持続効果について ステロイド注射の効果がどの程度続くかは、投与される薬剤や個人の状態によって異なります。しかし、複数の研究からおおよそ3カ月~6カ月が目安です。 メタ解析(複数の研究結果を統合して分析する手法)の報告では、およそ3カ月程度まで中等度の痛みの軽減効果が持続したと報告されています。(文献5) また、ステロイド製剤の一種である非結晶性酢酸メチルプレドニゾロンでは、 効果のピーク:注射後2週間 持続期間:最大24週間(約6カ月) とされています。(文献4) さらに、別の報告では、 一般的な持続期間は1~4週間程度 2週間までは明確な有益性があり、16~24週間でも効果がみられた と幅のある結果となりました。(文献6) これらの情報より、ステロイド注射の「ピークは2週間程度」「持続期間は数週間~数カ月」と考えられます。 なお、痛みの改善度と持続期間には個人差があり、炎症の強さ・関節の状態・併用治療などによって大きく変わります。 膝へのステロイド注射でおこりうる副作用 ステロイド注射は、炎症を抑えて痛みを和らげる一方で、使い方によっては副作用のリスクが高まります。 とくに「骨壊死」や「ステロイド関節症」には注意が必要です。これらを避けるために、 最低でも6週間は間隔をあける さらに可能であれば3カ月程度の間隔を確保する また、短期間での連続投与や長期間に及ぶ継続使用は避けるべきです。 変形性膝関節症診療ガイドラインでは、合併症として注射部位の痛み、腫脹、紅斑、顔面紅潮、高血圧などが報告されています。重篤な合併症は多くないものの、ガイドラインは軟骨損傷や変形性膝関節症の進行リスクを指摘しており、ステロイド注射は「炎症が強い時期に短期的に用いる」ことを推奨しています。(文献1) なお、ステロイド注射による痛みの改善は一過性であり、変形性膝関節症の痛みの原因である、すり減った軟骨が元に戻るわけではありません。痛みがあるからと、安易に投与回数を増やすと副作用の危険性があります。 ステロイド注射による副作用を避けたい場合や効果を感じにくくなった場合、次の投与まで待てない場合に、最新の注射による治療方法を紹介します。 ステロイド注射に代わる再生医療という膝の痛みへのアプローチ ステロイド注射で痛みが十分に改善しない場合など、ステロイドの使用が難しい場合の選択肢に再生医療という選択肢があります。 再生医療による治療は主に、PRP治療(Platelet-Rich Plasma=多血小板血漿)と幹細胞治療の2種類です。 PRP治療は、自身の血液から血小板を多く含む血漿を抽出して、膝へ注射する方法です。多血小板血漿に含まれる成長因子により、組織修復を促します。高い治癒効果と自分の血液を使用するため、アレルギー反応が出にくいのが特徴です。 幹細胞治療は、皮下脂肪から採取した幹細胞を培養して膝の関節内へ注射して、傷んだ軟骨の再生を期待する治療法です。 いずれも自由診療で、厚生労働省によって認可された医療機関でしか行えません。 再生医療は手術や入院を必要としない点が大きな特徴で、従来の治療概念を大きく変えた新しい選択肢です。なかでも幹細胞治療は変形性膝関節症において、すり減った軟骨の再生が期待される先進的なアプローチとして注目されています。 再生医療については、以下ページもご参照ください。 ステロイド注射やヒアルロン酸注射を受けていたものの痛みが悪化して幹細胞治療を行った症例もあります。 https://youtu.be/2GCVH-Jw5Ps?si=0UYNMNDW7jaJuYwV 膝関節におけるステロイド注射の間隔を理解し再生医療も検討しよう 変形性膝関節症に対するステロイド注射の間隔と、近年注目されている再生医療について解説しました。ステロイド注射は炎症を抑えて痛みの軽減に有効ですが、その効果は一時的で、副作用を防ぐためにも頻繁な投与には注意が必要です。 一方、PRP治療や自己脂肪由来幹細胞治療といった再生医療は、治癒促進や軟骨再生により回復を目指す新しい治療法です。 変形性膝関節症に悩み、十分な効果が得られなかった方や、手術に抵抗がある方にとって、薬物療法と手術の中間に位置する再生医療は治療の選択肢となります。 現在の痛みや治療効果に不安がある場合は、これまでの選択肢に加えて再生医療という新たな治療も検討されてはいかがでしょうか。 膝へのステロイド注射の間隔に関するよくある質問 膝へのステロイド注射の金額はいくらですか? 使用する薬剤や投与量によって金額は異なります。 一般的にステロイド注射は、保険診療として実施されます。多くの方は3割負担ですが、診察料・検査料などが別途かかるため一概にお伝えできません。 なお、自由診療で受診する場合は、医療機関によって価格は異なります。詳細は受診予定の医療機関にご確認ください。 膝へのステロイド注射が効かない原因は何ですか? ステロイド注射は炎症を抑えます。そのため、炎症が強くないタイプの痛みには効果が実感しづらい可能性があります。 また、症状が進行して軟骨が大きくすり減っている場合や、半月板損傷・関節内の構造的トラブルが原因の場合は、期待した効果が得られ難くなります。 さらに、肥満や日常の負担、歩き方の癖など、膝へのストレスが継続している場合も効果が限定的です。 ステロイド注射が効きにくい場合は、ヒアルロン酸注射、装具療法、リハビリ、減量、再生医療など、別のアプローチとの組み合わせが推奨されます。 参考文献 文献1 変形性膝関節症診療ガイドライン2023|南江堂 文献2 Reg Anesth Pain Med. 2025|Regional Anesthesia & Pain Medicine 文献3 J Am Acad Orthop Surg. 2009|Journal of the American Academy of Orthopaedic Surgeons 文献4 Curr Pain Headache Rep. 2025|Current Pain and Headache Reports 文献5 Am J Phys Med Rehabil. 2020|American Journal of Physical Medicine & Rehabilitation 文献6 BMJ. 2004|British Medical Journal
2021.10.23 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
- 靭帯損傷
- 膝部、その他疾患
膝に水が溜まる(関節水腫)状態は、変形性膝関節症や半月板損傷、関節リウマチなどの疾患が原因で起こる場合があります。 これらの疾患は放置しても自然に治るとは限らないため、早めに原因を特定することが大切です。 本記事では、膝に水が溜まる仕組みや原因となりやすい代表的な疾患について解説します。 膝の腫れや痛みで不安を感じている方は、ぜひ本記事を参考にしながら、ご自身の状態を把握し、必要に応じて専門医への相談を検討してください。 また、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。変形性膝関節症や半月板損傷について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 膝に水が溜まる状態を正しく理解するための基礎知識 そもそも膝に水が溜まるとはどういう状態なのか、まずは以下の基礎知識を押さえておきましょう。 膝に水が溜まるとはどのような状態か 水を抜く治療と「クセになる」と言われる理由 膝に溜まった水が自然に引くケースと引かないケース 膝に水が溜まる仕組みを理解しておくと、症状への不安が軽くなり、必要な対処も判断しやすくなります。 膝に水が溜まるとはどのような状態か 膝に水が溜まる状態とは、膝関節の中にある関節液(滑液)が通常より多く分泌され、関節を包む袋(関節包)の中に過剰に溜まった状態を指します。 関節水腫と呼ばれ、見た目に膝が腫れぼったくなる、膝に張ったような違和感が出る、曲げ伸ばしがしにくいといった症状が一般的です。 膝には少量の関節液があり、潤滑油のような役割を果たしています。しかし、滑膜に炎症が起こると関節液が増えて膝に水が溜まる状態になります。 炎症を引き起こす原因は、変形性膝関節症・半月板損傷・関節リウマチなどです。 膝の水が溜まるのは滑膜の炎症が関わっているため、症状が続く場合は整形外科を受診しましょう。 水を抜く治療と「クセになる」と言われる理由 膝に水が溜まった際に行われる水を抜く治療(関節穿刺)は、関節内に溜まった余分な関節液を注射針で吸い取り、腫れや痛みを和らげる方法です。 「水を抜くとクセになる」とよく言われますが、これは誤解であり、水を抜く治療そのものが原因ではありません。水が繰り返し溜まるのは、背景にある病気(変形性膝関節症や半月板損傷など)による炎症が続いているためです。 水を抜くことは症状の一時的な改善には役立ちますが、根本治療にはなりません。 膝の腫れを繰り返す場合は専門医で原因を確認し、炎症を抑える治療を受けましょう。 膝に溜まった水が自然に引くケースと引かないケース 膝に水が溜まったとき「このまま様子を見ていれば治るのでは」と思うかもしれませんが、自然に水が引く場合とそうでない場合があります。 自然に引くケース:運動後の軽い炎症や一時的な負荷がかかった場合 自然に引かないケース:変形性膝関節症や半月板損傷など、慢性の炎症や組織の損傷を伴う場合 関節内の炎症が続くと水(関節液)は作られ続けるため、単に時間が経過しても治らないことが多い点を理解しておきましょう。 自然に改善しない腫れを放置すると、炎症がさらに悪化して症状を繰り返すおそれがあります。膝の腫れが続く、痛みが強い、何度も水が溜まる場合は医療機関を受診しましょう。 膝に水が溜まる主な原因 膝に水が溜まる主な原因は、以下のとおりです。 原因①変形性膝関節症 原因②半月板損傷や靭帯の損傷 原因③関節リウマチや感染症 原因によって症状の経過や治療法が異なるため、どのような背景があるのかをみていきましょう。 原因①変形性膝関節症 変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減って関節に炎症が起こることで、水(関節液)が溜まりやすくなる代表的な原因です。 50代以降の方や女性、肥満気味の方に多く見られます(文献1) 変形性膝関節症による炎症が強まると、滑膜が刺激されて膝に水が溜まって腫れや痛みが出ることがあります。次のような症状が続く場合は注意が必要です。 膝の痛みや腫れ 朝や歩き始めに痛みやこわばりを感じる 階段の昇り降りで痛む 変形性膝関節症は自然に元に戻ることが難しく、放置すると炎症が慢性化して水が繰り返し溜まる原因になります。症状が軽いうちに治療を始め、進行の抑制や日常生活の負担軽減につなげましょう。 当院で行った変形性膝関節症に対する再生医療の症例を、以下でご紹介しています。 【関連記事】 変形性膝関節症の初期症状とは?原因や治療方法もわかりやすく解説 | リペアセルクリニック東京院 原因②半月板損傷や靭帯の損傷 半月板や靭帯の損傷などは膝に水が溜まる原因の一つです。 スポーツ中のひねり動作、転倒、急なストップ動作などで関節内の組織が傷つくと、滑膜が炎症を起こし、関節液が過剰に作られて膝が腫れます。 損傷によって関節の安定性が低下すると膝への負担が増え、炎症が慢性化して水が繰り返し溜まるケースもあります。 以下のような症状がみられたら注意が必要です。 膝の腫れや熱感 膝がぐらつく感覚がある 曲げ伸ばしするときに引っかかる感じがする 放置すると膝が不安定になり炎症を繰り返すため、早めに整形外科を受診して詳しい検査を受けましょう。 当院で行った半月板損傷に対する再生医療の症例を、以下でご紹介しています。 【関連記事】 半月板損傷とは?原因・症状・治療法・やってはいけないこと | リペアセルクリニック東京院 原因③関節リウマチや感染症 関節リウマチや細菌による感染症も、膝に水が溜まる原因のひとつです。 関節内に強い炎症を起こすため、早期対応が遅れると関節の破壊につながるおそれがあります。 原因 関節リウマチ 感染症 概要 免疫が自分の関節を攻撃してしまう 関節液の中に細菌や炎症物質が入り込む 主な症状 朝のこわばりが続く 左右対称に症状が現れる 複数の関節が同時に痛む 発熱を伴う 膝が赤く熱をもつ 感染症・リウマチはいずれも自然に治ることはほとんどありません。原因を早期に特定し、適切な治療を進めて膝の機能を守りましょう。 当院で行った関節リウマチに対する再生医療の症例を、以下でご紹介しています。 【関連記事】 関節リウマチとは?初期症状・原因・診断・治療・生活上の注意 | リペアセルクリニック東京院 自分で確認できるセルフチェック方法 膝に水が溜まっているかどうか自分で確認できるセルフチェック方法は、以下のとおりです。 膝を伸ばして座る お皿(膝蓋骨)の上を軽くつまむ もう片方の手でお皿をやさしく押す 押した際にお皿が柔らかく動いて浮くような感じがあれば、膝に水が溜まっている可能性があります。 セルフチェックはあくまで目安です。腫れが続く、強い痛みがある、歩きづらいなどの症状がある場合は、早めに専門医の診察を受けましょう。 膝に水が溜まった初期症状 膝に水が溜まった初期症状は、以下のとおりです。 膝全体が腫れている 膝が重く違和感を感じる 曲げ伸ばしがしづらい 水が増えてくると関節包が内側から張ってきて膝の動きがさらに制限され、正座が難しくなる、歩行が辛いなど日常生活に支障が出ることもあります。 腫れがごく軽い段階では見た目や触診だけではわかりにくく、必要に応じてエコーやMRIなどでの検査が必要です。 膝に水が溜まったときに行われる主な検査 膝に水が溜まったときに行われる主な検査は、以下のとおりです。 診察・触診 画像検査 関節液(膝の水)の色や性状 順番にみていきましょう。 診察・触診 膝に水が溜まっている可能性がある場合、まず行われるのが医師による診察と触診です。触診では膝の状態を直接確認しながら、水腫(膝の水)の有無や炎症の程度を把握します。 異常が疑われる場合は画像検査を組み合わせて精密に原因を調べます。 画像検査 膝に水が溜まった原因をより正確に調べるために画像検査が行われ、水が溜まる背景となる疾患を特定します。 代表的な画像検査の種類は、以下のとおりです。 検査名 わかること X線(レントゲン) 骨の変形、骨折の有無 MRI 半月板、靭帯など軟部組織の損傷具合 超音波(エコー) 水(関節液)の量や位置 膝の水腫は見た目だけでは原因が判断できないため、検査を組み合わせることで、より正確な診断につながります。 関節液(膝の水)の色や性状 関節液の状態は、膝の中で何が起きているかを知る重要な手がかりになります。 診察では、注射針で関節液を採取する方法(穿刺)で関節液を少量採取し、色や粘度、濁りなどを確認します。水を抜くこと自体が痛みや張りの軽減につながるほか、原因の診断にも役立つ大切な検査です。 関節液の色や性状から、次のような原因が推測されます。 透明〜淡黄色:炎症が軽く、変形性膝関節症などでよくみられる状態 赤色:血液が混じっているサインで、靭帯損傷や半月板損傷が疑われることがある 濁っている:細菌感染や関節リウマチなど、強い炎症が起きている可能性 関節液の性状は膝のトラブルを見分けるヒントになります。 膝に水が溜まったときの治療法 膝に水が溜まったときの治療法は、以下のとおりです。 保存療法 手術療法 再生医療 それぞれの治療法について、次の見出しで詳しく解説します。 保存療法 保存療法は、手術を行わずに膝に水が溜まる原因となる炎症を抑え、痛みを軽減するための基本的な治療法です。 主な方法は次のとおりです。 薬物療法:抗炎症薬や鎮痛薬、湿布などを使用して、膝関節の炎症や痛みを抑える 理学療法(リハビリ):ストレッチや筋力トレーニング、バランス訓練などを行い、膝関節を支える筋力を強化する 注射療法:ヒアルロン酸やステロイドを膝の関節内や周囲に注射し、炎症を抑えて痛みを和らげる 保存療法を継続することで、膝への負担を軽減し、水が溜まる状態の改善と再発予防が期待できます。 手術療法 手術療法は、保存療法を続けても膝の腫れや水が溜まる状態が改善しない場合や、安静にしていても痛みが強い場合などに検討される治療法です。 代表的な手術は次のとおりです。 手術名 内容 主な対象となる病気 関節鏡視下術 小さな切開からカメラを挿入し、損傷した半月板や軟骨を部分切除・修復する 半月板損傷、靭帯損傷など 高位脛骨骨切り術 膝にかかる荷重のバランスを調整し、特定の部位への負担を軽減する 変形性膝関節症(初期〜中等度) 人工膝関節置換術 傷んだ関節面を人工関節に置き換え、痛みと変形を根本的に改善する 変形性膝関節症(重度) 膝に水が溜まる状態は、炎症や組織の損傷が背景にあることが多く、手術によって根本原因を取り除くことで、腫れや水が溜まりやすい状態の改善が期待できます。 ただし、手術には血栓・感染症・出血・再手術が必要となる可能性など、一定のリスクが伴います。どの手術が適しているかは、膝の状態や年齢、生活スタイルによって変わるため医師と十分に相談した上で治療方針を決めましょう。 再生医療 膝に水が溜まるときの治療法として、再生医療も選択肢の一つです。 再生医療には主に次の2種類があります。 幹細胞治療:自分の脂肪などから採取した幹細胞を膝に投与する PRP療法:血小板を多く含む血液成分を膝に投与する それぞれ、他の細胞に変化する能力を持つ幹細胞の働きと、血小板に含まれる成長因子が組織の回復に関与する働きを利用する治療法です。 再生医療は、次のようなお悩みを持つ方に向いています。 膝の水が繰り返し溜まり、炎症を抑えたい 手術は避けたい 膝裏の痛みが慢性化している 当院「リペアセルクリニック」で行った変形性膝関節症に対する再生医療の症例を、以下でご紹介しているので参考にしてください。 膝に水が溜まるときは専門医への相談が重要 膝に水が繰り返し溜まる場合は表面的な腫れだけでなく、関節内部に炎症や組織の損傷が進んでいる場合があります。症状を長引かせないためにも、早い段階で整形外科に相談しましょう。 再生医療は、変形性膝関節症や半月板損傷、関節リウマチに対する治療の選択肢のひとつです。手術を避けたい方や、慢性的な膝の腫れに悩む方にとって、負担の少ない治療として役立つ可能性があります。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する情報提供や簡単なオンライン診断を行っています。 膝に水が溜まる症状やその他の気になる疾患についてお悩みの方は、公式LINEにご登録ください。 膝に水が溜まることに関するよくある質問 膝に水が溜まったときの治療に関するよくある質問をまとめているので、ぜひ参考にしてください。 なぜ繰り返し膝に水が溜まるの? 繰り返し水が溜まるのは、関節液の中に炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)が含まれているからです。 繰り返し水が溜まるからといって放置すると、膝関節の炎症が長引く可能性が高まります。そのため、水を抜きながら、根本的な症状の改善を目指すことが適切なアプローチだといえます。 膝の水を放置するとどうなる? 水が溜まった状態で放置すると、膝の重苦しい感覚が続いて動きがさらに悪くなり、日常生活にも支障が出るでしょう。 また、細菌感染が原因で水が溜まっている場合は、放置するほど膝関節内部で細菌がますます繁殖し、関節の軟骨そのものに悪影響を及ぼすことも十分に考えられます。ほかにも、変形性膝関節症が原因の場合は、末期になると人工関節の手術を選択せざるを得なくなる可能性があるため注意してください。 膝の水を抜く間隔はどれくらい? 膝の水を抜いた後に再び腫れたときは、あらためて治療が必要です。膝の水を抜く間隔は、症状によってさまざまですが、すぐに繰り返し水が溜まるケースも珍しくありません。 なお、骨折や半月板損傷、靭帯損傷などが原因で膝に水が溜まっている場合は、外傷が治ってくると同時に水も自然に吸収されます。そのため、痛みがそれほど強くなければ、膝が多少腫れていても放置する場合があります。 膝に水が溜まったときに自分で治す方法は? 膝に水が溜まった場合、セルフケアで一時的に症状が楽になることはありますが、根本的には炎症の原因を治療で抑えない限り、完全に治ることはありません。 軽い腫れに対しては、以下のようなセルフケアが役立つことがあります。 やさしいマッサージ:筋肉をほぐして血流を改善し、重だるさを和らげる 冷やすケア:ケガの直後や膝に熱がある場合に有効 温めるケア:慢性的な炎症による痛みに有効 膝に水が溜まるのは炎症や損傷が背景にあるサインです。自己判断で対処し続けるのではなく、原因を特定して治療につなげることが根本改善の近道です。 膝に水が溜まったときのマッサージついて詳しくは、以下の動画をご覧ください。 【関連動画】 参考文献 (文献1) 変形性膝関節症診療ガイドライン2023の概説|日大医学会誌
2021.10.09







