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「ふくらはぎが張っている」 「脚が赤く腫れてきた気がする」 脚やふくらはぎの違和感を加齢や疲労だと考えていませんか。その症状、血栓性静脈炎と呼ばれる静脈の異常が関係しているかもしれません。 血栓性静脈炎は静脈に血のかたまり(血栓)ができ、炎症が起こる状態です。放置すると血栓が肺などに移動し、命に関わる合併症を引き起こす恐れがあります。本記事では以下について解説します。 血栓性静脈炎の症状 血栓性静脈炎の原因 血栓性静脈炎における受診すべき診療科 血栓性静脈炎の治療法 血栓性静脈炎の再発防止策 記事の最後には、血栓性静脈炎に関するよくある質問をまとめておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 血栓性静脈炎とは 血栓性静脈炎とは、静脈の中に血栓(血のかたまり)ができ、その部分に炎症が生じる病気です。とくにふくらはぎなどの下肢に多くみられ、腫れや熱感、赤みなどの症状を引き起こします。発症の原因としては、長時間同じ姿勢でいることや、血流が滞る生活習慣、基礎疾患などが挙げられます。 血栓が肺に流れ込むと、肺塞栓症と呼ばれる重大な合併症を招く恐れがあるため、早期の対応が必要です。血栓性静脈炎は軽い症状で始まることが多く、見逃されやすい特徴があります。脚の腫れや熱感などを感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。 血栓性静脈炎の症状 病気の概要 静脈の壁に炎症が起こり、血の塊(血栓)ができる 発症しやすい部位 とくに脚の静脈に多く見られますが、腕などにも起こることがある 主な種類 主な種類 血栓性静脈炎には、皮膚の浅い部分に起こる比較的軽症の表在性血栓性静脈炎と、筋肉内の深い静脈にできて重症化しやすい深部静脈血栓症(DVT)の2種類がある 代表的な症状 患部の違和感・腫れ・赤み・熱感・しこりなどが見られる 原因 血液が固まりやすい状態、血流の停滞、血管の損傷などが関係している 放置した場合のリスク 深部静脈血栓症や肺塞栓症に進行すると命に関わる可能性がある (文献1) 血栓性静脈炎の代表的な症状は、ふくらはぎや脚の腫れ、皮膚の赤み、熱感、押したときの硬さなどです。初期には違和感や張りを感じる程度のこともありますが、時間の経過とともに患部が熱をもち、歩行時に重さを感じるようになることもあります。 血栓性静脈炎には軽症が多い表在性と、重症化しやすい深部静脈血栓症(DVT)の2種類があります。DVTは気づかないうちに進行し、肺塞栓など命に関わる合併症を引き起こすこともあるため、早期に医療機関で診断と治療を受けることが大切です。 血栓性静脈炎の原因 原因 概要 血管の病気(ベーチェット病・バージャー病) 血管に炎症を起こす病気により、血管が傷つき血栓ができやすくなります。とくに喫煙者や持病がある方は注意が必要 血流の滞り(うっ滞) 長時間同じ姿勢や運動不足により血流が滞ると、血栓ができやすくなる 血管内皮細胞の損傷 血管の内側が傷つくと血液が固まりやすくなり、血栓ができやすくなる 加齢による影響 年齢とともに血管が硬くなり血流が悪化し、血栓ができやすくなる 血栓性静脈炎の発症には、複数の要因が関与しています。とくに静脈の血流が滞りやすい状況、血管が傷つき、血液が固まりやすくなると、血栓性静脈炎のリスクが高まります。 ベーチェット病やバージャー病などの血管に関する病気 要因 詳細 血管の炎症 ベーチェット病やバージャー病では血管の壁に炎症が起こり、血管が傷つくことで血栓ができやすくなる 免疫異常 自己免疫の異常により免疫が血管を攻撃し、血栓形成が助長される 血流の特徴 静脈は血流が遅いため、血栓ができやすく、炎症によってそのリスクがさらに高まる 喫煙との関連 バージャー病は喫煙者に多く、血管の閉塞や炎症を引き起こしやすくなる (文献2) ベーチェット病やバージャー病は血管に炎症を起こし、血管内が傷つくことで血栓ができやすくなります。とくに静脈は血流が遅いため、血栓が生じやすい状態です。 ベーチェット病は免疫異常により血管が攻撃され、バージャー病は喫煙と深く関係し、手足の血管に炎症や閉塞を起こします。これらの病気がある方は、足の腫れや赤みに早く気づくことが大切です。 静脈血流のうっ滞 原因 概要 血液成分の接触時間が長くなる 血流が遅くなると血液成分が静脈壁に長く接触し、凝固しやすくなる 凝固因子の蓄積 血液が滞ると凝固因子が流されずにたまり、血栓ができやすくなる 血管内皮細胞の機能低下 血流が悪いと血管内皮の働きが低下し、血栓を防ぐ力が弱まる 長時間の不動(旅行・手術後など) 足を動かさない時間が長いと血液が滞り、血栓ができやすくなる 下肢静脈瘤 静脈の弁が壊れやすくなり、血液が逆流・滞留して血栓ができやすくなる ギプス固定 筋肉が動かせないことで静脈の血流が悪化し、血栓のリスクが高まる 肥満・妊娠 腹部が圧迫され、足からの血流が悪くなり血栓の原因になる (文献3)(文献4) 血栓性静脈炎は、血流の滞り(うっ滞)によっても発症しやすくなります。とくに長時間のデスクワーク、飛行機や車での長距離移動、運動不足などで引き起こされます。 血流が滞ると血液が一カ所にとどまりやすくなり、血栓ができるリスクが高まります。エコノミークラス症候群のように、長時間足を動かさない状態も原因の一つです。とくに加齢や下肢静脈瘤がある方は、血液が心臓に戻りにくく、リスクがさらに増します。違和感があれば、早めの受診と生活習慣の見直しが大切です。 血管内皮細胞の障害 項目 概要 損傷による影響 内皮細胞が傷つくと血液が固まりやすくなり、血栓ができやすくなる 損傷の原因 喫煙や高血圧、糖尿病、感染症、外傷、カテーテルの留置などが原因になる 予防のポイント 生活習慣の改善と基礎疾患の管理が内皮細胞を守る鍵となる (文献5)(文献6) 血管内皮細胞は、血管の内側を覆い、血流を保ちつつ血栓の予防に重要な役割を果たしています。しかし、喫煙や高血圧、糖尿病、感染症、外傷、カテーテルの留置などにより内皮細胞が傷つくと、血液が固まりやすくなり、血栓ができやすい状態になります。 血栓が静脈内にできると血栓性静脈炎を引き起こす可能性があり、とくに深部静脈に生じた場合は命に関わる合併症につながることもあります。内皮細胞を守るには、生活習慣の見直しと持病の適切な管理が大切です。 加齢に伴うもの 加齢による変化 血栓性静脈炎との関係 血管内皮細胞の機能低下 内皮細胞の抗血栓作用が低下し、血液が固まりやすくなる 静脈弁の機能低下 血液の逆流や停滞が起こり、静脈うっ滞が血栓の原因になる 血液凝固系の変化 血液が固まりやすくなり、血栓形成のリスクが高まる 活動量の低下 ふくらはぎの筋肉のポンプ作用が弱まり、血液が滞りやすくなる 基礎疾患の増加 疾患による血管への影響や凝固異常が血栓形成を助長する (文献7) 加齢により血管内皮細胞の働きが低下し、血栓を防ぐ機能が弱まると同時に、血液が固まりやすくなる変化も起こります。加齢により静脈弁や筋肉の働きが弱まると血流が滞りやすくなり、血栓ができやすくなります。さらに、高血圧や糖尿病といった病気のリスクも高まることで、血栓のリスクが一層増加します。 とくに高齢者は、加齢による感覚の鈍化や持病との区別がつきにくいため、初期症状に気づきにくく、発見が遅れてしまうケースも少なくありません。ふくらはぎの腫れや赤みなどの違和感が出た場合はすぐに医療機関を受診しましょう。 血栓性静脈炎における受診すべき診療科 受診するべき診療科 受診の目安 特徴 皮膚科 皮膚が赤く腫れ、浅い血管がミミズ腫れのように見える場合 皮膚の見た目の異常が中心であり、軽症ならここで十分対応可能 血管外科・心臓血管外科 下肢が強く腫れている、再発を繰り返している、深部静脈が疑われる場合 エコー検査や抗凝固療法など、治療が必要なときに行われる 内科・総合内科 症状の原因がわからない、高齢者や持病が多く全身の管理が必要な場合 最初の相談窓口として適切 皮膚の赤みや軽い腫れといった症状がある場合は皮膚科で対応可能です。しかし、腫れが強い場合や血栓が深部に及ぶ可能性がある場合は、血管外科や心臓血管外科といった専門診療科の受診が推奨されます。 また、症状の判断が難しいときや持病が多い方は、まず内科や総合内科を受診し、医師に相談するのがおすすめです。受診先に迷った場合は、まずはかかりつけ医に相談し、必要に応じて適切な診療科へつなげてもらうのも方法です。 血栓性静脈炎の治療法 治療法 対象となる状態 治療の内容 特徴 保存療法 軽度の血栓性静脈炎、初期段階 安静・脚の挙上・弾性ストッキング・冷却など 身体への負担が少なく、自宅でも実施可能 薬物療法 炎症や血栓が進行している場合 抗炎症薬で炎症軽減、抗凝固薬で血栓形成予防 再発予防にも有効で、長期的な継続が重要 手術療法 重度または再発を繰り返す場合 血栓除去術やバイパス術で血流回復 侵襲が大きいため慎重な判断が必要 再生医療 既存治療で効果が乏しい、血管損傷が広範囲な場合 幹細胞などを用いた血管修復の研究的治療 保険外治療で実施施設が限られる 血栓性静脈炎の治療は、症状の程度や進行状態によって方針が異なります。治療の目標は、血流を回復させて血栓の拡大や移動を防ぐことです。 保存療法 対処法 目的 効果的な活用方法 注意点 安静 炎症の悪化を防ぎ、違和感を軽減する 無理のない範囲で日常生活を送りつつ、患肢を休ませる 活動の範囲は医師と相談が必要 挙上 静脈の血流を促進し、腫れを軽減する 寝るときや座るときにクッションで足を高く保つ 長時間の同じ姿勢は避け、適度な動きも必要 弾性ストッキング 血流改善・腫れ予防・血栓拡大の防止 医師の指示に従い、適切なサイズと方法で着用する 着用時間や圧迫度合いは個別に調整が必要 湿布(NSAIDs) 患部の炎症と違和感を軽減する 医師・薬剤師の指導に従って使用し、貼付時間を守る かぶれや副作用に注意し、皮膚に異常があれば中止する (文献8) 保存療法は軽度の血栓性静脈炎に用いられる治療で、安静や脚の挙上、弾性ストッキングの着用、湿布などで血流を改善し炎症を抑えます。自己判断で行わず、医師の指示に従い、違和感があればすぐに相談しましょう。 薬物療法 薬の種類 作用・目的 使用されるケース 注意点 抗凝固薬(ヘパリン・ワルファリン・DOAC) 血液が固まるのを防ぎ、血栓の拡大や新規形成を防ぐ 深部静脈血栓症(DVT)の治療、表在性でも進行リスクが高い場合に使用 出血リスクあり。医師の指示を守る。定期的な検査が必要な薬もある 血栓溶解薬(tPAなど) すでにできた血栓を溶かす 肺塞栓症など重症例で、発症初期に限定的に使用される 出血のリスクが高く、入院下で慎重に使用される NSAIDs(内服・湿布) 炎症や違和感を抑える。血栓を直接溶かす作用はない 表在性血栓性静脈炎での腫れや違和感の緩和に使用 胃腸障害や皮膚のかぶれに注意。長期使用は医師の指導が必要 (文献9) 血栓性静脈炎の薬物療法では、抗炎症薬や抗凝固薬が使用されます。抗炎症薬は炎症による腫れや赤みを軽減し、抗凝固薬は血液を固まりにくくする作用があり、新たな血栓の形成を防ぐために使用されます。 中には血栓を溶かす作用のある薬剤(血栓溶解薬)が用いられることもありますが、使用には出血のリスクを伴うため、慎重な判断が必要です。薬物治療は医師の指導に基づいて継続的に行われます。薬の量を自己判断で変えたり中止したりすると、効果が下がるだけでなく副作用のリスクが高まるため注意が必要です。 手術療法 手術法 有効な理由 手術の概要 注意点 血栓除去術(血栓摘出術) 巨大な血栓で血流が遮断されている場合、迅速な血流回復を目指す 静脈を切開し、血栓を直接取り除く手術。麻酔下で行われる 出血や感染のリスク、再発の可能性がある 下大静脈フィルター留置術 肺塞栓のリスクが高いが抗凝固薬が使えない場合に、血栓の肺移動を防止する カテーテルで下大静脈にフィルターを設置し、血栓を物理的に捕捉します フィルター自体が血栓の原因になる可能性があり、長期留置はリスクになる 静脈瘤手術 繰り返す表在性血栓性静脈炎の原因である静脈瘤を取り除くことで再発を予防する 静脈を切除、閉鎖、焼灼、注入など方法は多岐に渡る 急性炎症時は避け、落ち着いてから手術を行う、方法により侵襲度も異なる (文献10)(文献11)(文献12) 重度の血栓性静脈炎や再発を繰り返す場合には、手術療法が選択肢となることがあります。血栓除去術やバイパス手術などが代表的で、主な目的は血流を回復させて患部への負担を軽減できます。 手術療法を受けた後も、血栓の再発を防ぐためには、薬物療法や弾性ストッキングの使用を継続しましょう。ただし、手術は体への負担が大きいため、保存療法や薬による治療で十分な効果が得られない場合に限り検討されます。手術の実施にあたっては、出血や感染などのリスクもあるため、医師と十分に相談した上で判断する必要があります。 再生医療 再生医療は、幹細胞などを用いて損傷した血管細胞を修復・再生させることで、血管の機能を回復させ、症状の改善や再発の予防を目指します。通常の治療で効果が得られなかった場合や、血管のダメージが広範囲に及ぶ場合に、新たな選択肢として検討される治療法です。 再生医療は、新たな血管をつくる力を活用し、体内に血流の通り道(バイパス)を形成することで、血流の改善が期待できます。注意点としては、適用できる医療機関が限られているため、事前に実施しているかの有無を確認する必要があります。 以下の記事では、再生医療について詳しく解説しています。 血栓性静脈炎の再発を防止するには 予防法 内容 生活習慣の改善 禁煙を徹底し、脂肪の多い食事を見直す。青魚・海藻・野菜などを取り入れ、ストレスや過度な飲酒も控える 適度な運動の実施 ウォーキングやストレッチ、かかとの上げ下げなどを日常的に取り入れ、長時間同じ姿勢を避ける 弾性ストッキングの着用 医師の指導のもとで適切な圧のストッキングを選び、朝から夜まで装着する 水分補給を怠らない 水や麦茶などでこまめに水分をとり、脱水を防ぐ 血栓性静脈炎は、一度治療を終えても再発の可能性があるため、日常生活での予防が大切です。 生活習慣を改善する 項目 対策 血液の凝固能の正常化 水分をこまめにとり、栄養バランスの良い食事で血液を固まりにくくする 静脈血流の改善 軽い運動や姿勢の工夫、体重管理によって下肢の血流を促進する 血管内皮細胞の健康維持 禁煙と抗酸化成分の多い食事、適度な運動で血管を健康に保つ 基礎疾患の管理 高血圧や糖尿病などの生活習慣病を適切にコントロールして血栓のリスクを下げる 血栓性静脈炎の再発を防ぐには、禁煙や食生活の改善が欠かせません。タバコは血流を悪化させ、血栓のリスクを高めるため控えましょう。 動物性脂肪を減らし、青魚や野菜など血液をサラサラに保つ食品を取り入れることも効果的です。過度な飲酒やストレスも血管に悪影響を与えるため、日常生活の中で無理なく見直していくことが予防につながります。 以下の記事では生活習慣の改善について詳しく解説しています。 適度な運動を取り入れる 静脈の血流を促すには、無理のない範囲で定期的に体を動かすことが大切です。とくに、ウォーキングや軽いストレッチ、かかとの上げ下げ運動など、下半身の筋肉を使う運動が効果的です。また、血管の健康を保ち、血液がサラサラになることで再発リスクを減らします。 運動は医師の指導を受けた上で、自分の体調に合わせて無理のない範囲で行うことが大切です。 以下の記事では有酸素運動のほかに高血圧の予防や改善方法について詳しく解説しています。 弾性ストッキングを着用する 項目 要点 静脈の拡張抑制と血流 適切な圧迫で静脈の拡張を防ぎ、血流を促進して血栓のリスクを低下させる 静脈弁の機能サポート 弁の働きを補い、血液の逆流を防ぐことで血液の滞りを軽減する 腫れの軽減と血栓予防 余分な水分を戻し腫れを軽減、血管への負担を減らす 着用時の注意点 医師の指示に従い、適切なサイズと方法で毎日清潔に着用する 弾性ストッキングは、足に一定の圧をかけて血液の流れを補助する医療用の靴下です。ふくらはぎから足首にかけて圧力を加えることで、静脈内の血液が滞るのを防ぎます。使用する際は、医師の指導のもと適切な弾性ストッキングを選ぶ必要があります。 市販の弾性ストッキングを自己判断で使うと、かえって症状が悪化する恐れがあります。医師の指示に従い使用しましょう。 水分補給を怠らない 血栓性静脈炎の再発を防ぐには、日ごろからこまめな水分補給が大切です。体の水分が不足すると血液が濃くなり、流れが悪くなることで血栓ができやすくなります。 また、血管の内側を守る血管内皮細胞の働きも低下しやすくなり、血液の流れがさらに悪くなる原因になります。水分をしっかりとることで、血液がサラサラに保たれ、血栓ができにくい状態が維持されます。 なお、コーヒーやアルコールなど利尿作用のある飲み物は逆効果になるため、水や麦茶などを選びましょう。日常の小さな意識が、再発の予防につながります。 血栓性静脈炎の疑いがある方は早急に医療機関の受診を 脚に腫れや赤み、熱っぽさを感じたとき、それが血栓性静脈炎におけるサインの可能性があります。その症状を放置してしまうと血栓が移動して肺塞栓症などの重篤な合併症を引き起こすため、早急の医療機関への受診が必要です。 ふくらはぎにしこりのような感触がある、押すと硬さを感じるといった場合は要注意です。症状が軽いうちに受診すれば、保存的な治療で改善が見込めるケースもあります。 当院リペアセルクリニックでは、再生医療を用いた血栓性静脈炎の治療を行っております。症状にお悩みの方は、「メール相談」や「オンラインカウンセリング」を通じて、お気軽にご相談ください。 血栓性静脈炎に関するよくある質問 血栓性静脈炎は自然に治りますか? 表在性の軽い血栓性静脈炎は自然に治ることもありますが、すべてが自然治癒するわけではありません。深部に広がるリスクや強い症状がある場合は、命に関わる合併症を防ぐためにも、早めに医療機関を受診しましょう。 血栓性静脈炎は再発しやすいですか? 血栓性静脈炎は、原因となる静脈瘤や血液の凝固異常、血管の損傷が残ると再発しやすくなります。再発予防には、原因疾患の治療、薬や弾性ストッキングの継続使用、生活習慣の改善、定期的な経過観察が重要です。 血栓性静脈炎は重症化するとどうなりますか? 血栓性静脈炎が重症化すると、血栓が深部静脈に進展し、肺に移動して肺塞栓症を引き起こす恐れがあります。突然の息切れや胸の違和感、呼吸困難、場合によっては意識消失やショックなど命に関わる状態になることもあります。 慢性的な腫れや色素沈着などの後遺症が出るケースもあるので、早期に医療機関を受診しましょう。 参考資料 (文献1) Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA「表在静脈血栓症」MSD マニュアル 家庭版,2023年12月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/06-%E5%BF%83%E8%87%93%E3%81%A8%E8%A1%80%E7%AE%A1%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E9%9D%99%E8%84%88%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%A1%A8%E5%9C%A8%E9%9D%99%E8%84%88%E8%A1%80%E6%A0%93%E7%97%87(最終アクセス:2025年5月10日) (文献2) 重松宏ほか.「血管型ベーチェット病の診療ガイドライン案」『厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業)分担研究報告書』, pp.1-18 https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2019/192051/201911043B_upload/201911043B202005290902054150008.pdf?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月10日) (文献3) Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA「慢性静脈不全症および静脈炎後症候群」MSD マニュアル プロフェッショナル版,2022年9月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/04-%E5%BF%83%E8%A1%80%E7%AE%A1%E7%96%BE%E6%82%A3/%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E9%9D%99%E8%84%88%E7%96%BE%E6%82%A3/%E6%85%A2%E6%80%A7%E9%9D%99%E8%84%88%E4%B8%8D%E5%85%A8%E7%97%87%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E9%9D%99%E8%84%88%E7%82%8E%E5%BE%8C%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4(最終アクセス:2025年5月10日) (文献4) 伊藤 正明.「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に 関するガイドライン(2017年改訂版)」, pp.1-93, 2018年3月23日 https://js-phlebology.jp/wp/wp-content/uploads/2020/08/JCS2017.pdf(最終アクセス:2025年5月10日) (文献5) 川﨑富夫.「DVT の病態と臨床 ―DVT の診断,治療について―」『血栓止血の臨床─研修医のために II』, pp.1-4, 2008 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsth/19/1/19_1_18/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年5月10日) (文献6) 丸山征郎.「血管内皮細胞障害と血栓」『第42回 河口湖心臓討論会』, pp.1-7 https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo/41/2/41_204/_pdf(最終アクセス:2025年5月10日) (文献7) 金子 寛ほか.「四肢静脈血栓症の原因について」, pp.1-6,2001年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/phlebol/12/3/12_12-3-257/_pdf(最終アクセス:2025年5月10日) (文献8) 「弾性ストッキング関連資料」『日本製脈学会 弾性ストッキング・コンダクター養成委員会作成(第1版)』, pp.1-20 https://js-phlebology.jp/disaster/wp-content/uploads/2020/11/stockings_hokenshi.pdf(最終アクセス:2025年5月10日) (文献9) Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA「深部静脈血栓症」MSD マニュアル 家庭版,2023年12月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/06-%E5%BF%83%E8%87%93%E3%81%A8%E8%A1%80%E7%AE%A1%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E9%9D%99%E8%84%88%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E6%B7%B1%E9%83%A8%E9%9D%99%E8%84%88%E8%A1%80%E6%A0%93%E7%97%87(最終アクセス:2025年5月10日) (文献10) 大谷 真二ほか.「大伏在静脈の静脈瘤に合併した上行性血栓性静脈炎の 2 手術例」, pp.1-5, 2005年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/phlebol/16/2/16_16-2-129/_pdf(最終アクセス:2025年5月10日) (文献11) 山田 典一,中野 赳.「深部静脈血栓症:血栓溶解療法,下大静脈フィルター留置」, pp.1-8, 2009年 https://j-ca.org/wp/wp-content/uploads/2016/04/4903_10.pdf最終アクセス:2025年5月10日) (文献12) 荒名 克彦ほか.「上行性血栓性性脈炎3例の経験」, pp.1-4, 2014年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jca/54/3/54_13-00041/_pdf(最終アクセス:2025年5月10日)
2025.05.30 -
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「最近、足が妙に重だるい」 「ふくらはぎに違和感がある」 その症状は閉塞性動脈硬化症のサインかもしれません。このサインを放置すると症状が悪化し、最悪の場合は壊死や足の切断につながるかもしれません。 本記事では、閉塞性動脈硬化症のセルフチェック方法や足に現れる具体的なサインについて、わかりやすく解説します。あわせて、重症度の目安や症状に応じた治療法についてもわかりやすく解説します。 閉塞性動脈硬化症のセルフチェック|1つでも当てはまる場合は要注意 チェック項目 詳細説明 タバコを吸う 喫煙は血管を傷つけ、動脈硬化を進める 血糖値が高いと診断された 糖尿病は血管をもろくし、動脈硬化の大きな要因 コレステロール・中性脂肪が高いと診断された 脂質が血管内にたまり、血流を妨げる 高血圧と診断された 血圧が高いと血管に負担がかかり、動脈硬化が進行する 過去に心筋梗塞を起こした 血管障害の既往があり、他の動脈にも影響する恐れがある 過去に脳卒中を起こした 一度脳卒中を起こすと動脈硬化を発症しやすい傾向がある 家族に心筋梗塞や脳卒中の人がいる 遺伝的に動脈硬化を発症しやすい傾向がある 閉経している 女性ホルモンの低下により、血管の柔軟性が失われやすくなる 透析を受けている 透析によって血管に負担がかかり、動脈硬化が進行しやすくなる 65歳以上である 加齢に伴い血管は硬くなりやすくなる 肥満体型である 生活習慣病のリスクが高く、動脈硬化を招く 閉塞性動脈硬化症は、動脈が徐々に細くなり血流が悪化する病気です。とくに足の血管に障害が出ると、歩行時のだるさやしびれといった症状が現れます。 初期の段階では自覚症状が乏しく、気づかないうちに進行しているケースも少なくありません。そのため、早い段階で閉塞性動脈硬化症に気づくには自分でできるセルフチェックを行うことが不可欠です。 1つでもセルフチェック項目に当てはまる場合は要注意です。 以下の記事では、閉塞性動脈硬化症の初期症状について詳しく解説しています。 タバコを吸う タバコが及ぼす影響 リスクとメカニズム 血管の収縮を引き起こす ニコチンなどにより血管が狭くなり、血流が悪化 血管内皮細胞を傷つける 血管内面が損傷し、動脈硬化の原因となるプラークがたまりやすくなる LDLコレステロールの酸化 酸化されたLDLコレステロールが血管壁に沈着しやすくなる 血小板の凝集促進 血液が固まりやすくなり、血栓形成のリスクが高まる HDLコレステロールの減少 善玉コレステロールが減り、血管の修復力が低下 血管壁の慢性的炎症 炎症により動脈硬化が進行 (文献1)(文献2) タバコは血管に多面的な悪影響を与え、閉塞性動脈硬化症の大きなリスク因子となります。喫煙により血管が収縮し、内皮細胞が損傷を受けることで、動脈硬化が進行しやすくなります。 また、血液が固まりやすくなり血栓のリスクも高まるため、喫煙歴のある方は足の違和感や冷えといった小さなサインも見逃さず、早めの受診が大切です。 血糖値が高いと診断されたことがある 高血糖は血管を傷つけ、動脈硬化を進行させます。血流が悪化すると足先まで血液が届きにくくなり、冷えやしびれを感じることがあります。 糖尿病の方は神経障害を伴いやすく、足の異常に気づきにくいため要注意です。血糖値がやや高めと診断された方も、足の症状があれば早めに医療機関を受診しましょう。 コレステロールや中性脂肪が高いと診断されたことがある 項目 概要 プラークの形成 悪玉コレステロールや中性脂肪が血管にたまり、プラークと呼ばれる塊を作り、血管を狭くする 血管の壁が弱る コレステロールが血管の内側にダメージを与え、血管がもろくなる 酸化LDLの影響 悪玉コレステロールが酸化すると、血管に炎症を起こして、さらに詰まりやすくなる 善玉コレステロールの働き低下 善玉コレステロールが少ないと、血管の掃除がうまくできず、脂質がたまりやすくなる 血栓ができやすくなる 傷ついた血管には血のかたまり(血栓)ができやすくなり、詰まりの原因になる 血管が硬くなる 血管に脂質がたまると、血管の弾力が失われ、血流が悪化する (文献3) コレステロールや中性脂肪が高い状態が続くと、血管の内側に脂質がたまり、血管が狭くなって血流が悪くなります。とくにLDLコレステロール(悪玉)が多いと動脈硬化が進み、血栓ができやすくなります。 逆に、HDLコレステロール(善玉)が少ないと、余分な脂質を回収できずリスクがさらに高まります。足の冷えやしびれ、歩きにくさを感じる方は、閉塞性動脈硬化症の可能性があるため、早めに医療機関を受診しましょう。 高血圧と診断されたことがある 高血圧は血管に強い圧力がかかる状態が続き、血管の内側を傷つけます。そこに脂質などがたまり、プラークができて血管が狭くなり、動脈硬化を引き起こします。とくに足の血管は細くて傷つきやすいため、冷えやしびれを引き起こしやすくなります。 高血圧と診断されたことがあり、冷えやしびれの症状が続く場合、閉塞性動脈硬化症の疑いがあるため、早急に医療機関を受診しましょう。 過去に心筋梗塞を起こしたことがある 観点 解説 全身の動脈硬化の可能性 心筋梗塞は全身の動脈硬化が進んでいる恐れがある 共通する生活習慣や病気 両者には高血圧や糖尿病など共通のリスク因子がある 血管の機能が低下している可能性 血管内の機能が弱まっており、足の血管も詰まりやすくなっている 血栓ができやすい状態 血栓ができやすい体質になっており、足の血管にも詰まりのリスクがある 慢性的な炎症の影響 慢性的な炎症が全身に及び、足の動脈硬化を進める可能性がある (文献4) 心筋梗塞を経験した方は、すでに全身の血管に動脈硬化が広がっている可能性があります。心臓だけでなく、足の血管にも同じような詰まりや変化が起きていることが考えられます。動脈硬化は一部の血管だけでなく、全身に影響する病気です。 そのため、足のしびれや冷えなどの違和感がある場合、単なる疲れではなく血管の詰まりによる症状の可能性も考えられます。再発を防ぐためにも、足の血流チェックを早めに受けることが大切です。 過去に脳卒中を起こしたことがある 観点 解説 全身の動脈硬化の可能性 脳の血管に問題が起きた方は、足など他の血管でも動脈硬化が進んでいる可能性がある 共通の危険因子がある 脳卒中と閉塞性動脈硬化症は、生活習慣病や喫煙など共通のリスク要因で起こる 血管の働きが弱っている 脳卒中を経験した方は、血管の内側の機能が低下している可能性がある 血栓ができやすい状態 脳の血管にできた血栓と同じように、足の血管にも詰まりが起こるリスクがある 慢性的な炎症の影響 脳卒中後は、体の中で炎症が続いており、それが足の血管にも悪影響を及ぼすことがある (文献5) 脳卒中(とくに脳梗塞)は、脳の血管が動脈硬化によって詰まることで起こる病気です。脳卒中を経験された方は、すでに全身の血管に動脈硬化が進行している可能性があり、足の血管も例外ではありません。 そのため、閉塞性動脈硬化症のリスクも高くなる恐れがあります。また、脳卒中と閉塞性動脈硬化症には、高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙などの共通する危険因子があります。足の冷えやしびれは、動脈の詰まりのサインかもしれません。気になる症状があれば、早めに医師に相談しましょう。 家族に心筋梗塞や脳卒中を起こした人がいる 観点 解説 遺伝の影響 コレステロールや血圧が高くなりやすい体質が、家族で受け継がれていることがある 生活習慣の共通性 家族内で似た食事や運動習慣は、動脈硬化を起こす傾向が強くなる 若いうちからの発症リスク 家族に若くして発症した人がいると、自分も早く発症するリスクが高まる可能性がある 血管が弱い体質の可能性 血管の構造や性質に遺伝的な傾向があり、動脈硬化を起こしやすいことがある リスクの見落としに注意 家族に心筋梗塞や脳卒中の方がいる場合は、自分もリスクがあると考え、早めの対策が重要です (文献6) 家族に心筋梗塞や脳卒中を起こした方がいる場合、自分も動脈硬化を起こしやすい体質を持っている可能性があります。 高血圧や脂質異常、糖尿病などのリスク因子は遺伝しやすく、生活習慣も似ていることが多いため、同じような病気を発症するリスクがあります。とくに家族に若くして発症した人がいる場合は、注意が必要です。 閉経している 観点 解説 女性ホルモンの減少 閉経でエストロゲンが減り、血管を守る働きが弱くなる 脂質のバランスが変わる 悪玉コレステロールや中性脂肪が増え、動脈硬化が進みやすくなる 血圧が上がりやすくなる 血管が収縮し、血圧が上がりやすくなる 血管の働きが低下する 血管の内側の機能が落ち、詰まりやすくなる (文献7) エストロゲンには血管をしなやかに保つ働きがありますが、閉経後はその分泌が減り、血管が硬くなりやすくなります。 コレステロールもたまりやすくなり、動脈硬化が進行しやすくなります。閉経後に体調の変化を感じたら、足の冷えやしびれなどにも注意し、異変があれば早めに医療機関を受診しましょう。 透析を受けている 観点 解説 血管に負担がかかっている 高血圧や糖尿病などの合併症により、血管が常にダメージを受けやすい状態 血管が硬くなりやすい カルシウムなどの影響で血管に石のような物質がたまり、硬くなりやすくなる 体にサビがたまりやすい 老廃物がうまく排出されず、酸化ストレスが血管に悪影響を与える 炎症が起こりやすい 体の中で炎症が続きやすく、それが血管を傷つける原因になる 血管の働きが弱くなる 血管の内側の細胞がうまく働かなくなり、詰まりやすくなる 透析の影響そのもの 透析中の体内環境の変化も、血管に負担をかけやすい要因 (文献8)(文献9) 透析を受けている方は、老廃物が体にたまりやすく、カルシウムやリンの代謝異常により血管が硬く狭くなりやすくなります。さらに、糖尿病や高血圧の併発も多く、動脈硬化を進行させる原因です。 透析中に足の冷えやしびれを感じたら、血流障害の可能性があります。放置せず、早めに医療機関を受診しましょう。 65歳以上である 観点 解説 血管の老化 年齢とともに血管が硬くなり、動脈硬化が起こりやすくなる 生活習慣病が増加する 高血圧や糖尿病など、動脈硬化の原因になる病気にかかりやすくなる 血管の調整機能が低下 血管を広げたり縮めたりする働きが弱まり、詰まりやすくなる 酸化ストレスがたまりやすい 長年の代謝活動で体内に有害物質がたまり、血管に悪影響を与える 血管の修復力が低下 傷ついた血管を元に戻す力が弱くなり、動脈硬化が進みやすくなる (文献10) 加齢とともに動脈の壁は硬くなり、血管の内腔も狭くなります。とくに65歳を超えると、血管の老化が進みやすく、血流が滞ることで足に冷えやしびれなどの異常が現れやすくなります。 65歳以上の方は、足の冷えやしびれを感じるようであれば、手遅れになる前に早めに医療機関を受診しましょう。 肥満体型である 肥満体型の方は、動脈硬化を進めるさまざまなリスクを抱えています。肥満は、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病を引き起こしやすく、血管に大きな負担をかけます。 さらに、インスリンの働きが低下して血糖や脂質のバランスが乱れやすくなり、動脈硬化のリスクが高まります。加えて、脂肪細胞から分泌される炎症物質が血管を傷つけ、悪玉コレステロールの増加や善玉コレステロールの減少も進行を助長します。血圧も上がりやすくなるため、注意が必要です。 【セルフチェックとあわせて確認】閉塞性動脈硬化症の重症度と治療法 重症度 症状・状態 詳細 治療法の概要 Ⅰ度|冷感やしびれがある重症度 足先に冷えや軽いしびれがあるが、歩行には支障がない状態 血流の低下による軽度の末梢循環障害 生活習慣の改善(食事・運動・禁煙)と薬物療法(抗血小板薬、血圧・脂質のコントロール) Ⅱ度|長距離が歩けない 歩行中に足がだるくなり、休むと症状が軽くなる(間欠性跛行) 歩行による酸素不足に伴う下肢筋肉の循環障害 運動療法と薬物療法の併用、必要に応じてカテーテル治療や生活習慣の見直し Ⅲ度|安静時に違和感が現れる 夜間や横になっているときにも足先に違和感が生じる・ヒリヒリする 安静時にも続く深刻な血流不足による末梢虚血 血管再建(バルーン・ステント・バイパス)、創傷ケア、感染管理 Ⅳ度|潰瘍や壊疽がある 皮膚が黒ずむ、潰瘍ができる、足先が腐りはじめるなどの末期状態 血流途絶による組織壊死および感染リスクの高い状態 外科的血行再建や壊死部の切除、重症時は切断、全身管理を含む包括的治療 閉塞性動脈硬化症は、足の血管が徐々に狭くなり血流が悪くなる病気です。初期(Ⅰ度)は冷えやしびれなど軽い症状ですが、進行すると歩行が困難になり(Ⅱ度)、さらに進むと安静時にも違和感が現れます(Ⅲ度)。 末期(Ⅳ度)では潰瘍や壊死が起き、非常に重篤な状態です。生活習慣の改善や適切な治療を継続すれば、重症化や足の切断リスクを減らせます。 以下の記事では、閉塞性動脈硬化症におけるマッサージについて詳しく解説しております。 Ⅰ度|冷感やしびれがある 項目 内容 症状の特徴 自覚症状はほとんどなく、健康診断や検査で偶然見つかることが多い状態 よくある症状 足先の冷えや軽いしびれ、皮膚の蒼白、足の脈が弱くなることがある 日常生活への影響 日常生活に支障はなく、多くの場合は無症状で気づかれにくい段階 治療法 禁煙や減塩、運動などの生活習慣改善と、必要に応じた薬物治療が行われる 注意点 初期でも放置せず、早めの対策が進行を防ぐ重要なポイント (文献11) Ⅰ度は閉塞性動脈硬化症の初期段階で、足先に冷たさや軽いしびれを感じる状態です。しびれや冷えは血管の内腔が少し狭くなり、血液の流れが悪化しているサインです。 歩行障害はないものの、足の皮膚が乾燥したり、爪の伸びが遅くなったりするケースもあり、血流の低下が進んでいる状態です。この段階で異変に気づければ、進行を防げます。 少しでも違和感を覚えたら、まずは循環器内科などでチェックを受けることをおすすめします。 Ⅰ度の治療法 項目 内容 治療の目的 動脈硬化の進行抑制と将来的な重症化の予防 治療の基本方針 生活習慣の改善と予防的薬物療法の併用 生活習慣の見直し 禁煙の徹底、適度な有酸素運動、減塩・低脂質の食事 薬物療法(予防目的) 抗血小板薬による血栓予防、スタチンによる脂質管理、ARB/ACE阻害薬による血管保護 生活習慣病の管理 糖尿病、高血圧、脂質異常症の安定化と定期的な内科受診 Ⅰ度の特徴 歩行時の違和感や強い症状がなく、検査で血流低下を指摘されることが多い段階 発見のきっかけ 健康診断や動脈硬化検査中の偶発的な発見 Ⅰ度の段階では、生活習慣の見直しと薬物療法が中心です。禁煙や塩分・脂質の摂取制限、適度な運動を通じて血管への負担を減らします。 血液の流れを良くする抗血小板薬や、血圧・コレステロールを下げる薬も併用されることがあります。自覚症状が軽いからといって油断せず、医師の指導のもとで早めに予防策を始めることが大切です。 Ⅱ度|長距離が歩けない 項目 内容 症状の特徴 歩行中にふくらはぎや太ももに違和感・だるさが出る間欠性跛行 具体的な状態 一定の距離を歩いた後に違和感やしびれが出て、立ち止まって休むと軽減する状態 歩行距離の変化 歩ける距離が徐々に短くなり、途中で休憩が必要になる状態 その他の症状 足の冷感やしびれの頻度や強さが増し、足の脈が弱くなるか触れなくなる状態 診断の手がかり 違和感が出る歩行距離の短縮と間欠性跛行の出現 重症度の目安 歩行可能距離によって進行度を評価する段階 治療法 生活習慣の見直し、有酸素運動を取り入れた運動療法、血流改善を目的とした薬物療法、必要に応じたカテーテル治療 (文献11) Ⅱ度では、一定の距離を歩くとふくらはぎにだるさやしびれが出て、立ち止まると症状が和らぐ間欠跛行が現れます。この状態は、運動に伴う酸素不足が足の筋肉に起きているためで、足の動脈が狭くなっている証拠です。 Ⅱ度の症状では、日常生活に支障が出始め、買い物や散歩など、歩くことが負担に感じる場面が多くなります。血流障害はまだ一定の回復が見込める段階であり、適切な対処により改善が期待できる状態です。 以下の記事では、間欠跛行について詳しく解説しています。 Ⅱ度の治療法 項目 内容 治療の目的 違和感の軽減、歩行距離の延長、重症化の防止、生活の質の維持、心血管疾患のリスク低減 治療の基本方針 生活習慣の改善を土台とした多角的な治療アプローチ 生活習慣の改善 禁煙の徹底、減塩・低脂質・糖質管理の食事、継続可能な有酸素運動の実施 歩行療法の導入 違和感が出たら休み、治ったら再開する反復歩行による血流改善 薬物療法 抗血小板薬による血栓予防、血管拡張薬・血流改善薬による間欠性跛行の軽減 血管内治療(必要時) バルーンによる血管拡張、ステント留置による血流確保と再狭窄防止 重要なポイント 医師との連携による個別治療計画の作成と定期的な経過観察の実施 Ⅱ度では、運動療法と薬物療法を組み合わせて治療を行います。ウォーキングにより血流の新たな経路が作られ、足の血行が改善されます。 さらに、抗血小板薬や血管拡張薬を使用し、血液の流れをスムーズに保ちます。あわせて、食事内容の見直しや禁煙、血圧の管理を継続し、症状の悪化を防ぐことが期待されます。 Ⅲ度|安静時に違和感が現れる 項目 内容 症状の特徴 安静時でも足に違和感が出る(とくに夜間や就寝時に強くなる) 違和感が出る部位 足先・かかと・すねなどに、焼けるような・締めつけるような違和感がある 姿勢による変化 足を下げる(椅子に座る、ベッドから足を下ろす)と違和感が軽くなる 冷感・しびれ 足の冷たさやしびれが強くなり、常に感じるようになる 皮膚の変化 皮膚が白っぽく乾燥し光沢が出る、毛が抜ける、爪が厚くなる・変形する 傷の治りにくさ 小さな傷が治りにくく、悪化すると潰瘍や壊死の原因になる可能性がある 足の脈拍 足の動脈の脈が弱くなる、またはまったく触れなくなる 病気の段階 重症な状態(重症下肢虚血:CLI)であり、早急な治療が必要 治療の目的 違和感の軽減・血流の改善・足の切断を避けるための救肢治療 (文献11) Ⅲ度になると、歩いていなくても足先にしびれや冷感、ヒリヒリした違和感が続くようになります。Ⅲ度では血流が極度に悪化している状態であり、安静にしていても筋肉や皮膚に必要な酸素が届かなくなっているサインです。 Ⅲ度の状態は非常に重篤であり、安静にしていても足に強い違和感が現れる段階です。下肢の血流が著しく低下し、組織が酸素不足に陥っている状態といえます。 放置すれば皮膚潰瘍や壊死に進行し、足の切断に至る可能性もあります。そのため、医療機関の早急な受診が必要です。 Ⅲ度の治療法 項目 内容 治療の目標 足の違和感を和げて血流を改善し、足の切断を防ぎながら、生活の質を保ち、心筋梗塞や脳卒中も予防する 生活習慣の改善 血圧・血糖・コレステロールの管理。禁煙、バランスの取れた食事、体重管理の徹底 薬物療法 血液をさらさらにする薬や血管拡張薬の使用を行いつつ、必要に応じた鎮痛薬の併用 血行再建治療 カテーテル治療による血管の拡張や、バイパス手術による血流の確保 疼痛管理・QOL維持 足の位置調整、皮膚・爪のケア、鎮痛薬の活用による不快感の軽減と生活の質の向上 Ⅲ度では、薬や運動だけでの対応が難しくなることも多く、血管の再建が必要となる場合があります。カテーテルを用いた血管拡張術(バルーン療法やステント留置)や、バイパス手術が検討される状態です。同時に、皮膚の状態によっては創傷ケアや感染管理も併せて行います。 放置すれば症状が急激に悪化するため、速やかに必要な治療方針を決めることが重要な段階です。 Ⅳ度|皮膚に潰瘍ができたり足先が腐ったりする 分類 解説 皮膚潰瘍 足先やかかと、指先などに潰瘍ができる状態であり、血流障害により小さな傷も治りにくく、感染を起こしやすい 壊疽(腐敗) 足先や指先が黒色や紫色に変色し、組織が死滅していく状態であり、酸素と血液の供給が完全に途絶える 激しい安静時痛 安静にしていても激しい違和感が続き、鎮痛薬でも効果が乏しいことがある 感染症の合併 潰瘍や壊疽部位から細菌感染が広がり、蜂窩織炎や敗血症など全身性の重篤な感染症を引き起こす危険がある 冷感と感覚麻痺 足が極端に冷たくなり、感覚が鈍くなるか麻痺する状態。神経への血流も止まっている可能性が高い 脈拍の消失 足の動脈の脈拍が触れず、血流がほぼ完全に停止している状態 重要なポイント 足の切断を回避が困難な段階であり、命に関わる可能性もあるため、速やかな診断と緊急治療が必要 (文献11) 閉塞性動脈硬化症のⅣ度は末期の状態で、足に潰瘍や壊死が起こり、感染や足の切断の危険が非常に高まります。足の変色や治りにくい傷などが見られる場合は、すぐに医療機関を受診してください。 Ⅳ度の治療法 治療項目 内容 治療の目的 感染の制御、違和感の緩和、血流改善による救肢、QOLと生命予後の改善 血流の回復(カテーテル治療) 動脈を内側から広げて血流を回復する治療法 血流の回復(バイパス手術) 血流の新しい通り道を外科的に作る手術 感染の管理と創傷 抗生物質の投与、壊死組織の除去(デブリードマン)、創傷管理(陰圧療法など)、フットケア 切断(最終手段) 血流改善や感染制御が困難な場合に実施され、足趾や膝下など、可能な限り小範囲に留める 再生医療(一部施設) 幹細胞移植などで血管新生を促す治療 重要なポイント 救肢には早期対応と多職種による集学的治療が不可欠 Ⅳ度の治療では、壊死した組織を除去し、足をできる限り温存するために血行再建術(カテーテル治療やバイパス手術)が行われます。 血流の改善が困難な場合や感染が重度な場合には、足指や膝下の一部を切断する処置が必要になるケースもあります。切断は壊死や感染の拡大を防ぎ、命を守るための最終手段です。 近年では、再生医療を活用した新たな治療法も注目されています。自家幹細胞の移植によって血流の回復を図る方法で、重度のCLI(重症下肢虚血)患者に対し、標準治療が困難な場合に選択肢として検討されます。再生医療の実施には専門的な判断が必要なため、対応している医療機関で医師とよく相談した上で進めることが大切です。 以下の記事では、リペアセルクリニックの再生医療について詳しく解説しております。 閉塞性動脈硬化症のセルフチェックで早めの受診を心がけよう 閉塞性動脈硬化症は、足の冷感や違和感など軽い症状から始まり、放置すると歩行障害や壊死に進行する可能性があります。初期の段階で気づき、適切に対処すれば進行を防止できます。 セルフチェックで1つでも当てはまる項目がある方、または足の異変を感じている方は、早めに医療機関で血管の状態を確認しましょう。 当院リペアセルクリニックでは、再生医療を用いた閉塞性動脈硬化症の治療を行っております。症状にお悩みの方は、「メール相談」や「オンラインカウンセリング」を通じて、お気軽にご相談ください。 参考資料 (文献1) 一般社団法人日本動脈硬化学会「禁煙は動脈硬化予防の第一歩」一般社団法人日本動脈硬化学会 https://www.j-athero.org/jp/general/kinen/#:~:text=%E5%96%AB%E7%85%99%E3%81%A8%E5%8B%95%E8%84%88%E7%A1%AC%E5%8C%96%E6%80%A7,%E6%98%8E%E3%82%89%E3%81%8B%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82(最終アクセス:2025年5月11日) (文献2) 「喫煙と動脈硬化の関係」『一般財団法人 京浜保健衛生協会』, pp.1-4 https://www.keihin.or.jp/wpkeihin/wp-content/uploads/2023/08/2023%E5%B9%B48%E6%9C%88%E4%BF%9D%E5%81%A5%E5%B8%AB%E4%BE%BF%E3%82%8A.pdf(最終アクセス:2025年5月11日) (文献3) 岡村 智教.「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」, pp.1-214, 2022年 https://www.j-athero.org/jp/wp-content/uploads/publications/pdf/GL2022_s/jas_gl2022_3_230210.pdf(最終アクセス:2025年5月11日) (文献4) 磯部 光章ほか.「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」『日本循環器学会 / 日本心不全学会合同ガイドライン』, pp.1-22, 2018年 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000202651.pdf(最終アクセス:2025年5月11日) (文献5) 「閉塞性動脈硬化症(ASO:Arterio-Sclerosis Obliterans)」, pp.1-15, https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/kochi/20140325001/doumyakukoukashou.pdf(最終アクセス:2025年5月11日) (文献6) 尾崎 浩一.「閉塞性動脈硬化症感受性遺伝子の同定と機能解析 」, pp.1-3 https://www.astellas-foundation.or.jp/pdf/research/23/h23_10_ozaki.pdf(最終アクセス:2025年5月11日) (文献7) 高橋 一広.「エストロゲンと血管」『日本生殖内分泌学会雑誌』, pp.1-5, 2013年 https://jsre.umin.jp/13_18kan/7-review2.pdf(最終アクセス:2025年5月11日) (文献8) 赤松 眞ほか .「血液透析患者における閉塞性動脈硬化症の診断と治療」, pp.1-8, https://www.touseki-ikai.or.jp/htm/05_publish/dld_doc_public/18-3/18-3_9.pdf(最終アクセス:2025年5月11日) (文献9) 新城 孝道.「透析患者の下肢閉塞性動脈硬化症に対する薬物療法とフットケア」, pp.1-7, 2004年 https://www.touseki-ikai.or.jp/htm/05_publish/dld_doc_public/20-1/20-1_5.pdf(最終アクセス:2025年5月11日) (文献10) 植山さゆりほか.「下肢閉塞性動脈硬化症バイパス手術後の 二人暮らし高齢男性患者と配偶者の在宅での日常生活体験」『老年看護学』25(2), pp.1-9, 2021年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jagn/25/2/25_89/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年5月11日) (文献11) 東 信良.「2022 年改訂版 末梢動脈疾患ガイドライン」『日本循環器学会 / 日本血管外科学会合同ガイドライン』, pp.1-160, 2022年 https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/JCS2022_Azuma.pdf(最終アクセス:2025年5月11日)
2025.05.30 -
- 内科疾患、その他
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「ふくらはぎが重だるく感じることが増えた」 「歩いていると途中で立ち止まることが多い」 足のだるさは、年齢や疲れのせいと考えがちですが、実は閉塞性動脈硬化症と呼ばれる血管の病気が原因かもしれません。症状が進行すると、日常生活に支障をきたすだけでなく、最悪の場合、足が壊死してしまう恐れがあります。 本記事では、閉塞性動脈硬化症の症状とともに以下について解説します。 閉塞性動脈硬化症の初期症状 閉塞性動脈硬化症の原因 閉塞性動脈硬化症の診療科 閉塞性動脈硬化症の治療法 閉塞性動脈硬化症は、早期発見と適切な治療により改善が期待できます。本記事では詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。 閉塞性動脈硬化症とは 閉塞性動脈硬化症とは足の血管に動脈硬化が起こり、血液の流れが悪くなる病気です。足の動脈が徐々に細くなり、十分な血液が届かなくなることでさまざまな症状を引き起こします。 主な原因としては、高血圧や糖尿病、脂質異常症、喫煙などの生活習慣が引き金となり、血管が硬く、狭くなることで進行します。閉塞性動脈硬化症は進行すると血液の流れは悪化し、皮膚の色が変化したりただれたりするのが特徴です。重症化すると足の組織が壊死し、切断の可能性も危惧されます。 原因や症状 概要 足の血管の詰まり 足の動脈が狭くなったり詰まったりする 血流が悪くなる 足への血液の流れが悪くなる 動脈硬化が原因 血管に脂肪が溜まり、それが原因で血管が硬くなって発症 生活習慣が影響 高血圧、糖尿病、喫煙などが影響する 初期症状として歩くと違和感を感じる 運動時に足に違和感が走る(間欠性跛行) 症状が悪化する 違和感がひどくなり、安静時でも症状が出るようになる 傷が治りにくくなる 小さな傷も治りにくくなる 皮膚の色が変わる 足の皮膚が青紫色になる(チアノーゼ) 皮膚がただれる 潰瘍(かいよう)ができる 壊死が起こる 足の組織が腐ってしまう 切断のリスク 足を切断しなければならないこともある (文献1) 足の血流障害は全身の動脈硬化のサインでもあり、少しでも足に違和感が出た場合は、手遅れになる前に医療機関を受診しましょう。 閉塞性動脈硬化症の初期症状 症状の種類 概要 歩くと足に違和感を覚える(間欠性跛行) 歩行中にふくらはぎが張る・疲れる・力が入らないが、休むと楽になる 足の冷え・しびれが続く 血流が悪くなることで、足が冷たく感じたり、しびれが続いたりする 足の傷が治りにくい・色が悪い(蒼白やチアノーゼ) 皮膚の血流が悪く、小さな傷が治らず、色が青白く変化するケースがある 足の脈拍の低下・消失 足先の血流が極端に悪くなり、脈が触れなくなることがある 閉塞性動脈硬化症の初期症状の多くは、年齢や疲れのせいと見過ごされてしまいがちです。しかし、歩いていると違和感や足の冷えやしびれが続く場合は閉塞性動脈硬化症の疑いがあります。 閉塞性動脈硬化症の初期症状が現れた場合は、早めの受診が必要です。 以下の記事では、自分でできる閉塞性動脈硬化症のセルフチェック方法について詳しく解説しています。 歩くと足に違和感を覚える(間欠性跛行) 状態 症状の内容 原因のしくみ 歩き始め ふくらはぎや太ももに違和感・しびれ・張り感 運動時に筋肉が酸素不足になり、違和感が出る 少し休むと改善 数分の休憩で症状が和らぐ・消える 筋肉の酸素需要が減り、一時的に血流が追いつく 再び歩くと再発 同じ場所・感覚でまた症状が現れる 血流が根本的に不足しているため繰り返される 進行すると悪化 歩ける距離が短くなり、日常生活に支障 血管の狭窄が進み、血流不足がさらに深刻になる (文献2) 閉塞性動脈硬化症の初期には、歩くと足に違和感やしびれ、重だるさなどが現れます。ふくらはぎや太もも、お尻に症状が出やすく、休むと治まるため、放置されがちです。しかし、症状を放置すると徐々に進行し、足の血管が狭くなり、運動に必要な酸素や栄養が筋肉に届きにくくなります。 血流不足が深刻化する前に、医療機関の受診が大切です。 以下の記事では、間欠跛行の症状について詳しく解説しています。 足の冷え・しびれが続く 症状の特徴 概要 慢性的な冷え 温めても改善せず、常に足が冷たいと感じる しびれの頻度が増加 ピリピリ・ジンジンとしたしびれが続くようになる 安静時にも感じる 座っている時や寝ている時にも症状を感じる 夜間に悪化しやすい 夜になると冷えやしびれが強くなることがある 左右差があることも 片足だけ、または左右で症状の程度が異なる場合がある 他の症状を伴う可能性 足の皮膚の色が悪くなったり、むくみが出ることがある (文献3)(文献4) 気温とは関係なく、片方の足だけ冷たく感じたり、しびれが続く場合、血流障害を引き起こしている可能性があります。閉塞性動脈硬化症では、血流が悪くなって足先に酸素や栄養が届きにくくなり、その影響で神経に異常が起き、しびれや冷えが生じます。 足の冷え・しびれは年齢からくるものだと思われがちですが、足の左右で温度に差や頻度が多い場合は、閉塞性動脈硬化症を疑うべきサインです。重症化すると足が壊死する可能性があるため、早めの医療機関への受診が大切です。 足の傷が治りにくい・色が悪い(蒼白やチアノーゼ) 症状の特徴 説明 小さなキズの治癒遅延 切り傷や擦り傷が通常より治りにくい 感染しやすい 傷口から細菌が入りやすく感染しやすい 皮膚の色が悪い(蒼白) 足を高く上げた時などに皮膚が白っぽく見える 皮膚の色が悪い(チアノーゼ) 皮膚が紫色や暗赤色になることがある 皮膚が薄く、つやがある 皮膚が栄養不足で薄く光沢を帯びる 毛が抜けやすい 足の毛が抜けやすくなる 爪の変形・変色 爪が厚くなる、変形・変色する (文献3) 閉塞性動脈硬化症が進行すると、血流が著しく低下し、足の皮膚や組織への酸素供給が不足します。酸素供給が不足するとちょっとした傷でも治りにくくなり、皮膚の色も悪く見えるようになります。足先が白くなったり、紫がかって見える状態はチアノーゼと呼ばれ、重度の血流不足状態です。 また、皮膚の乾燥や光沢、爪の変形も血流低下のサインであり、進行すると皮膚潰瘍や壊死に至る危険性もあります。チアノーゼは皮膚の色の変化として現れるため、足のしびれや歩行時の違和感よりも気づきやすいのが特徴です。皮膚が紫色や暗赤色に変色している場合は、早急に医療機関を受診してください。 足の脈拍の低下・消失 症状の特徴 説明 脈拍の触れにくさ 足の甲や足首で脈が弱くなったり、触れなくなったりする 左右差がある 片足だけ脈が弱い、または触れない場合がある 冷えやしびれを伴う 脈の変化と一緒に冷えやしびれを感じることが多い 皮膚の色や温度の変化 皮膚が青白くなり、足が冷たく感じることがある 運動後の変化 運動後に脈がさらに触れにくくなる場合がある 自己チェックの限界 自分で確認できても正確な判断は難しく、医師の検査が重要 (文献3) 足の甲や足首の脈が触れにくくなる、あるいはまったく触れなくなるのも、閉塞性動脈硬化症のサインです。足の動脈の詰まりが進行すると、足首や足の甲で触れる脈拍が弱くなったり、ほとんど感じられなくなったりするケースがあります。 足の脈拍の変化は自分ではわかりにくいため、医師の診察や超音波検査が必要です。とくに左右の脈に差がある場合や片足だけ脈が感じにくい場合は、動脈の詰まりが疑われます。早めに対応すれば血流を改善でき、重篤な合併症を防止できる可能性があります。 閉塞性動脈硬化症の原因 原因 なぜ関係するのか 防止策 具体的な説明 加齢 年齢とともに血管が硬くなり、動脈硬化が進行しやすくなる 血管をいたわる生活を心がける 食事の塩分や脂質を控え、適度な運動や定期的な健康診断を習慣にする 糖尿病 高血糖が血管の内側を傷つけ、血管が詰まりやすくなる 血糖値のコントロールが重要 食事療法・運動療法・内服治療などで血糖を安定させ、合併症の予防につなげる 脂質異常症 LDLコレステロールが血管にたまり、プラークとなって血流を妨げる 脂質管理と生活習慣の改善 動物性脂肪を控えた食事と、必要に応じたコレステロール低下薬の服用 喫煙 タバコに含まれる成分が血管を傷つけ、血流を悪くする 禁煙が最大の予防 禁煙外来の活用や代替品(ニコチンパッチなど)を利用して、段階的に習慣を断ち切る 閉塞性動脈硬化症は、動脈の内側にコレステロールなどの脂質がたまり、血管が狭くなる動脈硬化が原因で起こります。動脈硬化が引き起こされる原因は以下の4つです。 加齢 糖尿病 脂質異常症(高コレステロール血症など) 喫煙 以下では、閉塞性動脈硬化症の原因を詳しく解説します。 加齢 加齢に伴う変化 対策・予防方法 血管内皮細胞の機能低下 抗酸化作用のある食品をとる(野菜・果物)、定期的な検査を受ける 血管壁の弾力性の低下 ウォーキングなどの有酸素運動で血管の柔軟性を維持 酸化ストレスの増加 禁煙やバランスの良い食事で活性酸素を抑える 炎症反応の亢進 規則正しい生活・ストレス管理やEPAやDHAを含む食品 生活習慣病のリスク増加 高血圧・糖尿病・脂質異常症をきちんと治療・管理する (文献3)(文献5) 年を重ねると血管の弾力性が失われ、動脈硬化が進みやすくなります。その結果、閉塞性動脈硬化症を発症し、軽い動作でも足に違和感が出ることがあります。 年齢とともに血管は弱くなりますが、運動や食生活を見直すことで健康を保てます。足の冷えやしびれが気になる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。 糖尿病 影響の種類 概要 血管を傷つけやすい 高血糖が続くと血管の内壁が傷つきやすくなる 動脈硬化を促進 脂肪が血管壁にたまりやすく、動脈硬化が進行しやすい 末梢血管が障害されやすい 足先など細い血管が多い部分で血流障害が起こりやすい 神経障害を合併しやすい 足の感覚が鈍くなり、違和感に気づきにくくなる 小さな傷に気づきにくく、治りにくい 小さな傷に気づかず、治りにくくなることで悪化しやすい 感染症のリスクが高い 免疫力が低下し、傷口からの感染症リスクが高まる 血管の石灰化が起こりやすい 血管にカルシウムがたまり、血管が硬くなりやすい 他の危険因子を合併しやすい 高血圧や脂質異常症を併発しやすく、動脈硬化が進みやすい (文献6)(文献7) 血糖値が高い状態が続くと、血管の内側が傷つき、脂質や血小板がたまりやすくなります。脂質や血小板がたまると血管が詰まりやすくなります。糖尿病では神経障害も起こりやすく、足のしびれや違和感に気づきにくいため、とくに注意が必要です。 血管と神経の障害が重なると、傷の治りが遅くなり、感染が悪化しやすくなります。その結果、閉塞性動脈硬化症のリスクが高まります。糖尿病の方は、足の違和感や傷に気を配り、異常があれば早急に医療機関を受診しましょう。 脂質異常症(高コレステロール血症など) 影響の種類 概要 血管壁への脂質沈着 悪玉コレステロールが血管の内壁にたまりやすくなる プラーク形成の促進 たまった脂質がプラークを作り、血管を狭める 初期症状の発現を早める可能性 動脈硬化が早く進み、若いうちから症状が出ることがある 症状の悪化を加速 血流がさらに悪化し、違和感や歩行障害が進行する 他の危険因子との相乗効果 高血圧や糖尿病などと合併しやすく、リスクがさらに高まる 血管内皮機能の障害 血管の柔軟性が低下し、血栓ができやすくなる (文献8)(文献9) 血液中のコレステロールや中性脂肪が多いと、動脈の内壁に脂質が沈着し、プラークと呼ばれる塊ができやすくなります。プラークは血管を狭め、血流を妨げる原因です。 とくにLDL(悪玉)コレステロールが高い状態が続くと、動脈硬化が進行しやすくなり、閉塞性動脈硬化症を引き起こしやすくなります。脂質異常症は自覚症状がほとんどないため、健康診断で指摘された場合は放置せず、食生活の見直しや適切な治療を行うことが大切です。 喫煙 喫煙が与える影響 概要 血管の内側が傷つく タバコの有害物質が血管内皮細胞を傷つけ、血管機能が低下 動脈硬化が進みやすくなる コレステロールなどが沈着しやすくなり、血管が狭くなる 血管が収縮して血流が悪くなる ニコチンの作用で血管が細くなり、足の血流が悪化する 血液がドロドロになる 喫煙により血液の粘り気が増し、流れにくくなる 血栓ができやすくなる 血のかたまり(血栓)ができやすくなり、血管を詰まらせる 症状が早く現れる可能性が高くなる 非喫煙者より若い年齢で冷えやしびれなどの症状が出やすい 症状が急速に悪化しやすくなる 歩ける距離が短くなる、安静時にも違和感が出てくるなど悪化が早い 治療の効果が出にくくなる 薬や治療の効果が弱まり、改善しにくくなる (文献10) タバコに含まれる有害物質は血管の内側を傷つけ、炎症や動脈硬化を進行させます。とくにニコチンは血管を収縮させ、足の血流を悪化させる原因です。 そのため、喫煙者は非喫煙者より閉塞性動脈硬化症の発症リスクが2〜4倍高く、若年で発症する傾向もあります。動脈硬化の予防や治療には禁煙が不可欠です。(文献11) 閉塞性動脈硬化症は何科を受診するべき? 診療科名 役割・特徴 受診の目安 循環器内科 血流や動脈硬化の評価・管理が可能。動脈の状態を総合的に診断 足の冷え・しびれ・歩行時の違和感などがある場合に最優先で受診 血管外科 動脈の狭窄・閉塞に対する検査・手術(カテーテル治療など)に対応 検査や手術が必要な場合、循環器内科から紹介されることも多い 内科(かかりつけ医) 必要に応じて専門科へ紹介してもらえる 専門科がない場合にまず相談。早期の受診・紹介が重要 整形外科(注意) 神経や筋肉の疾患が専門。血流の問題を見落とす可能性あり しびれや違和感で来院しても、血流障害が見逃されることがある 皮膚科(注意) 皮膚の異常は診られるが、血流の異常に気づかれにくいことがある 足の傷で受診しても、原因が血流障害と判断されにくい 閉塞性動脈硬化症が疑われる場合は、まず循環器内科または血管外科の受診が推奨されます。循環器内科または血管外科では、血管の状態を詳しく調べる検査や適切な治療方針の判断ができます。 とくに足が冷たい、足の色が悪いといった症状がある場合は、末梢動脈疾患の可能性があるため、早期受診が大切です。 どこを受診すべきか迷う場合は、内科やかかりつけ医に相談しましょう。初期診察で必要性があれば、専門科への紹介を受けられます。症状を放置すると潰瘍や壊死など重症化する恐れがあるため、異変を感じたら早めに医療機関を受診しましょう。 「どの診療科に行けば良いのかわからない」とお悩みの方は、お気軽にリペアセルクリニックへご相談ください。当院では、どんな小さなお悩みにも丁寧に耳を傾け、患者様一人ひとりに寄り添った治療のご提案をいたします。「メール相談」や「オンラインカウンセリング」もご利用いただけますので、ご不安なことがあればいつでもご相談ください。 閉塞性動脈硬化症の治療法 治療法 内容 適しているケース 注意点・ポイント 保存療法 ウォーキングや生活習慣の見直し 初期の症状がある方 運動を継続が大切。禁煙や減塩も効果的 薬物療法 抗血小板薬や高血圧・糖尿病の治療薬 軽度から中等度の症状がある方 医師の指示に従って服薬を継続が重要 手術療法 カテーテル治療やバイパス手術 血管の詰まりが進行し、日常生活に支障がある方 術式は症状によって異なるため、専門医とよく相談する 再生医療 幹細胞などを用いて血管の再生を促す治療 他の治療が難しく、重症の状態にある方 保険が適用されない場合があり、限られた施設で実施されている 閉塞性動脈硬化症の治療は、症状の進行度や原因となる病気の有無によって異なります。 保存療法 薬物療法 手術療法 再生医療 閉塞性動脈硬化症の治療法は医師の診断と指導のもと行われます。治療法について解説します。 保存療法 取り組み内容 概要 禁煙 最も重要な改善点。喫煙は血管を傷つけ動脈硬化を進行させるため、禁煙が必須 食事の見直し 塩分や脂質を控えた食事で動脈硬化の進行を抑える 適度な運動 ウォーキングなどの軽めの有酸素運動が血流改善に効果的 体重・血圧・血糖・脂質の管理 生活習慣病の管理を通じて、血管への負担を減らし、病気の進行を防ぐ (文献12) 保存療法とは、薬や手術を用いず、生活習慣の改善などで進行を抑える治療法です。代表的なのが運動療法であり、ウォーキングなどの有酸素運動を定期的に行い、血流の改善を促します。また、運動だけでなく、生活習慣の見直しも大切です。 禁煙や高カロリーな食事を控えるなど、動脈硬化の進行を抑える上で基本となります。保存療法は、医師の指導のもとで行うことが大切です。運動や食事制限は無理のない範囲で続け、少しでも違和感があれば、すぐに医師に相談しましょう。 以下の記事では、下肢閉塞性動脈硬化症でやってはいけないマッサージ方法について詳しく解説しています。 薬物療法 治癒カテゴリー 薬剤例 効果の概要 抗血小板薬 アスピリン、クロピドグレル、シロスタゾール 血小板の凝集を抑え血栓を防ぎ、心筋梗塞や脳梗塞の予防にも有効 血管拡張薬 シロスタゾール、プロスタグランジン製剤 血管を広げて血流を改善し、歩行距離の延長や冷え・しびれに有効 プロスタグランジン製剤 プロスタグランジンE1製剤(注射・点滴) 末梢血流を改善し、潰瘍や壊死などの重症症状を緩和・治癒促進 脂質異常症治療薬 スタチン(ロスバスタチン、アトルバスタチンなど) LDLコレステロールを下げて動脈硬化を予防。心血管リスクの低減にもつながる 高血圧治療薬 ACE阻害薬、ARB、カルシウム拮抗薬、β遮断薬 血圧を下げて血管の負担を軽減し、動脈硬化の進行を抑える 糖尿病治療薬 SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬 血糖管理に加え血管保護作用もあり、心血管リスクの抑制に貢献 (文献13)(文献14) 閉塞性動脈硬化症の薬物療法は、病気の進行を抑え、症状を和らげるために行います。抗血小板薬は血栓を防ぎ、血流を保つのに役立ちます。 高血圧や糖尿病、脂質異常症がある場合は、それぞれの治療薬も併用します。薬は根本的な治療ではなく、進行を止めることが目的です。薬剤は医師の指示のもと、継続しての服用が大切です。 手術療法 治療法 手術方法 効果・特徴 適応病変 バイパス手術(外科的血行再建術) 閉塞部位の上下をつなぎ、静脈や人工血管で血流のバイパスを作る 長い範囲の血管閉塞に効果があり、歩行距離の改善や潰瘍の治癒、さらには足の切断を回避できる可能性がある 長い範囲の閉塞や血管内治療が難しい場合に向いている 血管内治療(カテーテル治療) カテーテルで血管を内側から広げ、必要に応じてステントを入れる 早期に血流改善が期待でき、違和感や冷えの症状が軽減しやすい 比較的短い範囲の狭窄・閉塞に対して有効 閉塞性動脈硬化症が進行し、薬や運動では十分な改善が見込めない場合、手術療法が検討されます。とくに足の血管が高度に狭くなったり詰まったりしている場合、血液の流れを回復させるには物理的な処置が必要です。 代表的なのがカテーテル治療で、狭くなった血管内に細い管を入れ、バルーンで広げ、金属製のステントを留置する方法です。より重度の場合には、詰まった血管を迂回するバイパス手術を行います。 手術療法は誰にでも適応できるわけではなく、血管や全身の状態を見て慎重に判断する必要があります。また、カテーテル治療後の再狭窄やバイパス手術後の感染などのリスクもあるため、医師とよく相談し、メリットとリスクを理解した上で治療を選ぶことが大切です。 再生医療 再生医療は、薬や手術で改善が難しい場合に検討されます。再生医療は患者自身の細胞を使用し、新たな血管の形成を促す治療です。 再生医療は比較的新しい治療アプローチであり、一部では保険適用外となりますが、重症例における有効性が報告されており現在も研究が進められています。名古屋大学大学院の報告によると、血管内治療やバイパス手術が難しい末期の患者でも、再生医療によって血流が改善し、足の切断を回避できたケースが確認されています。(文献13) また、京都府立医科大学附属病院の資料によると、バージャー病に対する再生医療では、足の切断を1年後・3年後ともに95.5%の確率で回避できたことが示されています。(文献15) 再生医療は限られた医療機関での実施となるため、事前に取り扱いのある医療機関への受診が必要です。 以下の記事では、再生医療について詳しく解説しています。 閉塞性動脈硬化症の初期症状が現れたらすぐに医療機関を受診しよう 閉塞性動脈硬化症の初期症状は見過ごされやすいですが、放置すると壊死を起こし、最悪の場合は足の切断に至ることもあります。 違和感を覚えた場合は、速やかに医療機関を受診してください。また、動脈硬化は全身に起こるため、足の症状だけでなく心臓病や脳卒中といった重篤な病気につながる可能性もあります。 当院リペアセルクリニックでは、症状や受診科の悩みに丁寧に対応し、必要に応じて幹細胞を使った再生医療で治療をサポートしています。 閉塞性動脈硬化症が改善せずお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。 参考資料 (文献1) 玉木 正人ほか.「下肢閉塞性動脈硬化症に対する治療法の評価とQOL」, pp.1-8, 1995年 https://www.jsvs.org/jsvs/pdf/19950401/jsvs_1995_0401_0083.pdf(最終アクセス:2025年5月10日) (文献2) Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA「末梢閉塞性動脈疾患」MSD マニュアル 家庭版,2023年7月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/06-%E5%BF%83%E8%87%93%E3%81%A8%E8%A1%80%E7%AE%A1%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E5%8B%95%E8%84%88%E7%96%BE%E6%82%A3/%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E9%96%89%E5%A1%9E%E6%80%A7%E5%8B%95%E8%84%88%E7%96%BE%E6%82%A3(最終アクセス:2025年5月10日) (文献3) 宮田 哲郎,「末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン(2015 年改訂版)」『2014年度合同研究班報告』, pp.1-95, 2015年 https://plaza.umin.ac.jp/~jscvs/wordpress/wp-content/uploads/2020/06/JCS2015_miyata_h.pdf(最終アクセス:2025年5月10日) (文献4) 「臨床研究の概要をできる限り平易な用語を用いて記載した要旨」pp.1-3 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/07/dl/s0723-17c_0022.pdf(最終アクセス:2025年5月10日) (文献5) 「動脈硬化は怖い病気のはじまり」『一般社団法人 日本動脈硬化学会』, pp.1-4 https://www.j-athero.org/jp/wp-content/uploads/general/pdf/doumyaku_p2023.pdf(最終アクセス:2025年5月10日) (文献6) 一般社団法人日本糖尿病学会「糖尿病合併症について」一般社団法人日本糖尿病学会,2021年9月2日 https://www.jds.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=3(最終アクセス:2025年5月10日) (文献7) 厚生労働省「糖尿病」 https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b7.html(最終アクセス:2025年5月10日) (文献8) 寺本 民生.「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症治療のエッセンス」, pp.1-12, 2014年 https://www.med.or.jp/dl-med/jma/region/dyslipi/ess_dyslipi2014.pdf(最終アクセス:2025年5月10日) (文献9) 「脂質異常症」国立循環器病研究センター https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/dyslipidemia/(最終アクセス:2025年5月10日) (文献10) 一般社団法人日本動脈硬化学会「禁煙は動脈硬化予防の第一歩」一般社団法人日本動脈硬化学会 https://www.j-athero.org/jp/general/kinen/#:~:text=%E5%8B%95%E8%84%88%E7%A1%AC%E5%8C%96%E6%80%A7%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%A8%E5%96%AB%E7%85%99%E3%81%A8%E3%81%AE%E9%96%A2%E4%BF%82&text=%E5%96%AB%E7%85%99%E8%80%85%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%80%81%E9%9D%9E%E5%96%AB%E7%85%99,%E6%98%8E%E3%82%89%E3%81%8B%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82(最終アクセス:2025年5月10日) (文献11) ゲオルギオス・ケコス,リチャード・シュナイダー.「たばこのからだ」World Healthorganization, pp.1-1, 2019年 https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/324846/WHO-NMH-PND-19.1-jpn.pdf(最終アクセス:2025年5月10日) (文献12) 林 富貴雄,伊東 春樹.「下肢閉塞性動脈硬化症のリハビリテーション」『『血管病と運動』シリーズ ASO編』, pp.1-8, 2018年 https://www.npo-jhc.org/image/pdf/aso.pdf(最終アクセス:2025年5月10日) (文献13) 「皮下脂肪由来幹細胞で血管病を治療 -皮下脂肪由来幹細胞を利用した再生医療が下肢切断を救う!-」『皮下脂肪由来間葉系幹細胞を用いた重症虚血肢に対する血管新生療法〜他施設共同研究〜』, pp.1-5, https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_J/research/pdf/Ang_220714.pdf(最終アクセス:2025年5月10日) (文献14) 横井 宏佳.「閉塞性動脈硬化症(PAD)の薬物療法 〜循環器内科医の立場から〜」日本フットケア学会雑誌, pp.1-4, 2017年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/footcare/15/3/15_16/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年5月10日) (文献15) 真田ほか.「先進医療B 総括報告書に関する評価表(告示旧24)」『第154回先進医療技術審査部会』, pp.1-15, 2023年 https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001163753.pdf(最終アクセス:2025年5月10日)
2025.05.30 -
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2024年に東京iCDCリスクコミュニケーションチームが実施した都民1万人アンケート調査によれば、2か月以上コロナ後遺症に苦しんだ成人は23.4%にものぼっていました。(文献1) 新型コロナ感染症罹患後の後遺症については、かかった人の年齢、性別問わず多くの報告が寄せられています。 多くの症状が確認されており、いまだ解明されていないことも少なくありません。 意識が朦朧とする「ブレインフォグ」が一時期話題となりましたが、実は「筋肉痛」も後遺症として現れることをご存知でしょうか。 この記事では、コロナ後遺症として報告されている筋肉痛について、原因や治療法を解説します。 コロナにかかってから筋肉痛が治らない、運動していないのに筋肉痛がするという人はぜひ参考にしてみてください。 コロナ後遺症の筋肉痛は気のせいではない コロナ後遺症について、WHOは以下のように定義しています。 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に罹患した人にみられ、少なくとも2ヵ月以上持続し、また、他の疾患による症状として説明がつかないものである。 通常はCOVID-19の発症から3ヵ月経った時点にもみられる(文献7) 厚生労働省が北海道札幌市と大阪府八尾市を対象に行った調査では、新型コロナウイルス感染3か月後も何らかの症状が続いていると答えた人が八尾市で「14.3%」、札幌市では「20.9%」にものぼりました。(文献2) コロナ後、原因不明の体調不良に悩まされている人が15%前後いたのです。 コロナ後遺症に悩まされる人の多くが「倦怠感」「集中力の低下」「身体の痛み」を訴えています。 新型コロナウイルスが流行した当初は研究が進んでおらずコロナとの関連性が明確ではありませんでしたが、現在ではコロナ後遺症はひとつの病状として世界が認めているのです。 コロナ後遺症による筋肉痛の症状・特徴 実際にコロナ後遺症でどのような症状が起こるのか紹介します。通常の筋肉痛との違いや、筋肉痛以外のコロナ後遺症の症状についても項目ごとに解説します。 コロナ後遺症の筋肉痛の症状・特徴 コロナ後遺症による筋肉痛の症状の特徴として、身体全体に痛みが見られるという点が挙げられます。 通常起こる筋肉痛は、運動などによって筋肉組織が損傷を起こし、その修復過程で炎症が起こることで痛みが発生します。 そのため、通常の筋肉痛では運動でよく使った一部の筋肉が痛みます。 しかし、コロナ後遺症の筋肉痛の場合はウイルスが原因で起こっているため、全身が痛むのです。 また、通常の筋肉痛は、運動の負荷にもよりますがおよそ2~4日ほどで治ることがほとんどです。 一方コロナ後遺症の筋肉痛は長期化することも多く、長ければ数か月痛みが続くこともあります。 そのほかにも通常の筋肉痛とコロナ後遺症による筋肉痛には違いがあります。表で比較してみましょう。 特徴 コロナ後遺症の筋肉痛 通常の筋肉痛 原因 免疫異常・炎症反応・神経障害(自己免疫など) 運動などによる筋繊維の損傷 発症のきっかけ 運動していないのに痛くなる 激しい運動や普段しない運動をした後 痛みの性質 持続的、身体が重い 鋭い痛みや張り感 場所 広範囲(肩・背中・太ももなど) 痛む場所が移動することもある 使った部位に限定される 持続時間 数週間〜数か月続くことも 通常は2〜3日で軽快 他の症状 倦怠感・ブレインフォグ・息苦しさなどを伴う 通常は痛み以外の症状はない 検査で異常 炎症マーカー上昇や自己抗体が見つかる場合あり 基本的に異常なし 通常の筋肉痛と違う点を感じたら、まずは医師に相談してみましょう。 筋肉痛以外の後遺症 筋肉痛以外のコロナ後遺症については、以下の症状が報告されています。 ブレインフォグ 疲労感・倦怠感 関節痛 咳、喀痰、息切れ 胸痛 脱毛 記憶障害 集中力低下 頭痛 抑うつ 嗅覚・味覚障害 動悸 下痢、腹痛 睡眠障害 一見すると風邪症状に見えるものも多く、コロナ後遺症と結びついていなかったという人もいるかもしれません。 また、複数の症状が併発することが多い点もコロナ後遺症の特徴です。 なぜコロナ後遺症で筋肉痛が起きるのか コロナ後遺症で筋肉痛が発生するメカニズムについては研究が進んでいます。 通常の筋肉痛は運動を行うことにより筋繊維が破壊されることで発生しますが、コロナ後遺症による筋肉痛はその限りではありません。 近年の研究をもとに、コロナ後遺症で筋肉痛が起こる原因を紹介します。 コロナ罹患により体内のエネルギーをつくる力が低下する 2024年に海外で、コロナ後遺症の患者25名と新型コロナ感染症に罹患したものの後遺症の症状のない患者21名を集め、エアロバイクを10分~15分間こぐサイクリングテストが実施されました。(文献3) この実験の結果、コロナ後遺症の患者は健康な被験者と同量の運動でも、運動後筋力が低く酸素摂取量も少なかったことがわかりました。 また、コロナ後遺症患者の筋繊維中にあるミトコンドリアについて調べたところ、ミトコンドリアの機能が低下していることがわかりました。(文献6) ミトコンドリアの主な機能は細胞のエネルギーを生成することです。この機能が弱まっているため、筋肉痛が長引いているのではないかと考えられています。 コロナウイルスと自己免疫の関係 近年の研究では、コロナ罹患後に自己免疫疾患、炎症疾患のリスクが高まることが報告されています。(文献4) この研究では観察期間180日を超える新型コロナウイルス患者約314万例、そうではない人約376万例の計約690万例を検証しました。 その結果、新型コロナウイルスに罹患した人は関節リウマチや脱毛症といった自己炎症性疾患を患うリスクが高いことがわかりました。 自己炎症性疾患には筋肉痛を伴う病気もあります。長期化している場合は炎症疾患の可能性も考慮し、医師への相談も検討したほうがよいでしょう。 コロナ罹患後の運動が逆効果になることも 体力を回復しようと運動を行うと、さらに後遺症がひどくなってしまう可能性があるため注意が必要です。 コロナウイルスによって免疫機能が低下している場合、運動によって損傷を受けた筋肉繊維の回復に時間がかかってしまいます。 ダメージを受けたことによって、炎症を起こすリスクもあり、結果として筋肉痛の回復が遅れてしまう可能性もあります。まずは、かかりつけの医師に相談し、過度な運動は控えるようにしましょう。 コロナ後遺症による筋肉痛の治療法 コロナ後遺症による筋肉痛は時間経過によって治ることが多いとされています。厚生労働省の調査では、罹患18か月後に後遺症を訴える人は成人ではおよそ5%、小児では1%ほどでした。(文献5) 治療の基本としては痛みを抑える薬物療法が推奨されています。 しかし、コロナ後遺症の筋肉痛は様々な要因が絡んでいる可能性が高いといわれています。長期化している場合はリハビリテーションの実施も検討すべきでしょう。 また、精神的な要因が潜んでいる場合もあります。心理面でのケアも含め、多方面でのアプローチが必要になります。 コロナ後遺症の治療としての選択肢「再生医療」とは コロナ後遺症には、再生医療という治療の選択肢もあります。 再生医療とは患者様自身から幹細胞を採取・培養し、患部に投与する治療法です。幹細胞は「分化能」という、さまざまな組織の細胞に変化する能力があります。 コロナ後遺症でお悩みで再生医療をご検討の際は、当院「リペアセルクリニック」へお気軽にご相談ください。 まとめ|コロナ後遺症の筋肉痛は時間経過で治ることが多い!不安な場合はすぐかかりつけ医師に相談を コロナ後遺症のひとつとして、筋肉痛はよく見られる症状のひとつです。 近年の研究では免疫や細胞の再生力の低下により、炎症を引き起こし筋肉痛を伴っている可能性が高いとされています。 コロナ後遺症による筋肉痛は時間経過によって治ることが多いため、継続的な薬物療法やリハビリテーションが効果的です。 また、コロナ後遺症の治療としては、再生医療という選択肢もあります。 長期的なコロナ後遺症に悩まされている人は、まずは病院にかかることをおすすめします。 文献1 東京都「東京iCDCリスクコミュニケーションチームによる都民1万人アンケート調査結果(2024年2月実施)」(2024年) https://www.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/tosei/06_01_458(最終アクセス:2025年5月22日) 文献2 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COV ID-1 9)の罹患後症状について(研究報告、今後の厚生労働省の対応)」(2024年)pp.5-6 https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001285610.pdf'(最終アクセス:2025/5/22) 文献3 Brent Appelman,et al.(2024)Muscle abnormalities worsen after post-exertional malaise in long COVID https://www.nature.com/articles/s41467-023-44432-3(accessed:2025/5/23) 文献4 Yeon-Woo Heo,et al.(2024)JAMA dermatology. 2024 Dec 01;160(12);1278-1287. pii: e244233. https://pmc.carenet.com/?pmid=39504045# (accessed:2025/5/23) 文献5 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COV ID-1 9)の罹患後症状について(研究報告、今後の厚生労働省の対応)」(2024年)pp.7-8 https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001285610.pdf'(最終アクセス:2025年5月22日) 文献6 Appelman, B., et al. Muscle abnormalities worsen after post-exertional malaise in long COVID. Nature Communications. 2024;15:44432. https://doi.org/10.1038/s41467-023-44432-3(最終アクセス:2025年5月22日) 文献7 新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kouisyou_qa.html(最終アクセス:2025年5月22日)
2025.05.27 -
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健康診断で尿酸値が高めと書かれていてドキッとした経験はありませんか?そんなときに真っ先にイメージされる痛風ですが、実はその痛みの原因は腎臓にも関係しています。 尿酸は体内の老廃物の一種で、痛風の原因としてよく知られていますが、尿酸値が高い状態(高尿酸血症)が続くと、実は腎臓にも大きな負担がかかり、放置すると腎臓の機能低下を招いて将来的に透析が必要になることもあります。 尿酸値の高い状態が続くと痛風発作を起こすだけでなく、腎臓病や高血圧、心臓病、尿路結石などさまざまな病気を発症しやすくなることがわかっています。 本記事では、尿酸と腎臓の関係や腎臓に影響をあたえるメカニズムについて解説します。尿酸と腎臓のトラブルを予防・改善するポイントを一緒に見ていきましょう。 尿酸値と腎臓との関係|さまざまな疾患への影響 尿酸値が高くなると、体内の尿酸は結晶化してさまざまな場所にたまりやすくなります。足の親指の関節に結晶がたまれば激痛を伴う痛風発作を起こし、尿路にたまると尿路結石、腎臓にたまると腎結石(じんけっせき)になります。 腎臓に尿酸の結晶が沈着すると腎臓の組織に炎症を引き起こし、腎臓の働きが低下してしまいます。尿酸によるこうした腎臓障害を痛風腎(つうふうじん)と呼びます。 さらに尿酸値が高い方は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満といった生活習慣病を合併しやすいことも知られており、動脈硬化が進んで心筋梗塞や脳卒中など心血管疾患のリスクも上昇する傾向があります。 このように尿酸値は痛風だけでなく全身の健康、腎臓の健康と深く関わっています。 尿酸と腎臓が連動する仕組み 尿酸とはプリン体という物質が分解されてできる老廃物です。プリン体は食品や体内の細胞に含まれており、それらが分解されると尿酸が産生されます。 通常、この尿酸は血液を通して腎臓に運ばれ、腎臓でろ過されて尿中に排泄されます。健康な腎臓であれば体内の尿酸バランスは保たれますが、腎臓の働きが悪くなると尿酸を十分に排泄できずに血液中に溜まり、尿酸値が高くなってしまいます。 尿酸値が高い人ほど腎機能が低下している傾向は研究でも判明してますが、尿酸値が高いこと自体が腎臓を悪くする原因なのか、腎機能が低下した結果として尿酸が高くなっているのかは明確にはわかっておらず、両者が悪循環を起こす可能性も指摘されています。このように、尿酸と腎臓は密接な関係があるといえます。 検査値の見方を押さえて、尿酸値とクレアチニンの関係を知ろう 高尿酸血症と腎臓の関係を理解するには、血液検査の「尿酸値」と「クレアチニン値」に注目しましょう。 尿酸値が高すぎると痛風や腎障害につながります。一方、クレアチニン値は腎臓のろ過機能を示す重要な指標です。 ここでは尿酸値が高くなる原因と、クレアチニン値からわかる腎機能の状態について具体的に解説します。 尿酸値が高くなる原因 尿酸値が上がる要因は生活習慣と体質(遺伝)です。まず生活面では過食・飲酒・運動不足が代表格です。ビールや内臓類・干物など高プリン体食品の多量摂取、肥満、さらには高血圧・糖尿病・脂質異常症などの併発が尿酸産生増と排泄低下を招きます。 一方、遺伝的素因も大きく、痛風患者の一親等内に家族歴があると高尿酸血症リスクは約2倍に跳ね上がると報告されています。 加えて、腎機能障害や白血病など細胞代謝が過剰に活発になる病態でも尿酸が蓄積するケースがあり、まずは食事・運動など日常習慣を整えた上で、異常が続く場合は医師の検査を受けることが大切です。 \まずは当院にお問い合わせください/ クレアチニン値が示す腎臓機能の指標 腎機能を知るカギは血液中のクレアチニン(Cre)です。クレアチニンは筋肉が動く際に生じる老廃物で、腎臓が正常なら尿へ排泄され血中濃度は低く保たれます。 男性0.6~1.0mg/dL、女性0.5~0.8mg/dL前後が目安ですが、筋肉量や年齢により変動するため数値だけで一喜一憂せず体格を加味した評価が必須です(文献1)。 Cre値と年齢・性別を組み合わせて算出するeGFR(推定糸球体ろ過量)は腎臓が老廃物をどれだけ濾過できるかを%換算した指標で、60mL/分/1.73㎡未満が3か月以上続くと慢性腎臓病(CKD)とみなされます(文献1)。 尿酸値が高い人はCre値も上がりやすいため、両指標をセットでチェックし早期に腎機能低下を掴むことが、痛風腎やCKDの進行を防ぐ第一歩になります。 痛風が腎臓に影響をあたえるメカニズム 痛風は関節だけの病気ではありません。合併症である高尿酸血症は腎臓にも深刻な打撃を与えます。血中で余った尿酸が針のように結晶化し、腎臓の細い管に詰まると、目詰まりを起こして炎症になります。 すると腎臓のろ過フィルター役割をする糸球体が痛み、老廃物を捨てにくくなるため腎機能が低下します。 さらに腎機能が低下することで痛風患者に多い肥満・高血圧・糖尿病が加わると悪循環になってしまいます。 長年放置すれば慢性腎臓病(CKD)や透析に至る恐れもありますので、尿酸値管理と生活習慣改善を早期に徹底しましょう。 痛風腎とは?放置する危険性 痛風腎(つうふうじん)とは、その名のとおり痛風(高尿酸血症)が原因で起こる腎臓障害のことです。痛風や高尿酸血症がしっかり治療・コントロールされずに長期間経過すると、尿酸塩の結晶が腎臓の深部(髄質)に析出して沈着し、腎臓の組織に慢性的な炎症を引き起こします。(文献2) 簡単に言えば、尿酸の結晶が腎臓に石のようにたまって腎臓を傷つけてしまった状態ですが、その結果腎臓の濾過機能が低下し、放置すると慢性腎不全へ進行して透析療法が必要になる可能性もあります。 痛風腎の怖いところは、これといった特有の自覚症状がない点です。尿が泡立つ(蛋白尿)・むくみが出る・血圧が上がるなど、症状が出るとすれば他の腎臓病と共通するサインばかりで、痛風腎に特有な症状はありません。 検査所見でも、尿検査でタンパク尿や尿潜血反応が出る、血清クレアチニン値が上がる等、一般的な慢性腎臓病(CKD)と同様の所見を示します(文献2)。 また、痛風のある方は前述のように高血圧、脂質異常症、耐糖能異常(糖尿病予備軍)など複数の生活習慣病を併せ持つことが非常に多いです。 そのため、痛風そのものによる腎障害(尿酸結晶による腎炎)に加えて、そうした生活習慣病が原因となる腎障害(たとえば高血圧性腎硬化症や糖尿病性腎症)が合わさり、より腎機能を悪化させているケースもしばしばあります。 痛風腎を予防・進行抑制するためには高尿酸血症を適切な治療をすると同時に、合併している生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)の管理に努めることが重要です。 \まずは当院にお問い合わせください/ CKD(慢性腎臓病)とは CKD(慢性腎臓病)は腎機能の低下や腎障害が3か月以上続く状態で、日本では成人の7~8人に1人が該当するとされています(文献3)(文献4)。 代表的な原因は糖尿病や高血圧などで、自覚症状が乏しいため定期的な検査が重要です。CKD患者では腎機能低下により尿酸の排泄がうまくいかず、尿酸値が上昇する傾向があります。 一方で、高尿酸血症の人はCKDを合併しやすいこともわかっており、尿酸値を適正にコントロールすることが腎機能を守る上で重要です。 日本腎臓学会のガイドラインでは、高尿酸血症を伴うCKD患者に対して、血液中の尿酸値を下げるために行う尿酸降下療法の施術を考慮しても良いとされてます。尿酸と腎臓は密接に関係しているため、双方を総合的に管理することが求められます。(文献5) \まずは当院にお問い合わせください/ 痛風・腎臓病を予防する生活習慣の改善 高尿酸血症や腎臓病を予防・改善するためには、日常生活での取り組みが非常に大切です。 ここでは、尿酸値と腎臓の健康を守るために有効な生活改善のポイントをまとめます。どれも今日から実践できる内容ですので、無理のない範囲で取り入れてみましょう。 食事・水分摂取で予防する プリン体の摂取量を減らし、尿酸の産生を抑えることが基本です。 ビールなどのアルコール類やレバー・干物・魚卵といった高プリン体食品は頻度と量を控えめにし、主菜は鶏むね肉や白身魚を少量、野菜・海藻・大豆製品をたっぷり組み合わせ、タンパク質と食物繊維が豊富な食事を意識しましょう。 また、尿酸を体外へ流すには尿量の確保が不可欠です。水やお茶を1日1.5〜2リットルを目安にこまめに補給し、朝起きた直後・入浴前後・就寝前は必ずコップ1杯の水を飲むなど、ルールを決めてやってみましょう。 適度な運動・体重管理で予防する ウォーキングや早歩き、軽いジョギング、水泳などの有酸素運動を週3〜5回・1回30分程度続けると、エネルギー代謝が上がり肥満を防げる上、血糖値・血圧も整い尿酸値のコントロールに直結します。 筋トレはスクワットや腹筋など自重中心に無理なく行い筋肉量を維持しましょう。ただし、息を止めるような激しい無酸素運動は一時的に尿酸値を跳ね上げるため控えめに。 肥満は尿酸の産生過多と排泄低下の両方を招くので、BMI25以上の人は食事改善と運動を組み合わせ月1kgペースで減量を目標にします。 加えて高血圧・糖尿病・脂質異常症を放置すると腎臓への負担が倍増し痛風腎やCKD進行を招く恐れがあるため(文献2)、塩分を控えた食事・適正カロリー・血糖コントロールを徹底し、必要なら医師の治療を受けることが重要です。 ストレスの軽減・睡眠で予防する ストレスが強いと交感神経が優位になり、コルチゾール分泌が増えてプリン体代謝が活発化し尿酸値が上昇しやすくなります。 さらに睡眠不足が続くとホルモンバランスが乱れ、血圧上昇や食欲増進による体重増加が重なって腎臓への負担も増加します。 毎日30分の軽いストレッチや深呼吸、ぬるめの入浴でリラックスし、趣味や散歩など「自分が楽しい」と感じる時間を意識的に確保しましょう。就寝1時間前にはスマホを手放し、室内を暗めにしてメラトニン分泌を促進すると自然に眠りにつけます。 以上のポイントを実践することで、尿酸値のコントロールと腎臓の保護につながります。最初は難しく感じるかもしれませんが、できることから少しずつ取り組んでいきましょう。 まとめ|尿酸値を下げて腎臓を守るために生活習慣を改善しよう 尿酸は高すぎると痛風になるだけでなく、腎臓にも悪影響を及ぼす可能性があります。 腎臓は尿酸を排泄する臓器であり、腎機能が低下すると尿酸が溜まってしまうため、お互いに影響し合う「持ちつ持たれつ」の関係にあります。尿酸値が高めと言われた方は、ぜひ一度腎臓の検査も受けてみてください。 逆に腎臓が悪いと言われた方も尿酸値の管理に注意が必要です。幸い、高尿酸血症や慢性腎臓病は生活習慣の改善や適切な治療によって予防・進行抑制が可能ですので、食事の工夫や運動習慣、定期検査など、できることから始めてみましょう。 日々の積み重ねが将来の健康につながります。もし不安なことやわからないことがあれば、遠慮せず主治医に相談してください。あなたの大切な腎臓を守り、痛風や腎不全にならないよう、今日からぜひ予防に取り組んでいきましょう。 参考文献 (文献1)腎援隊「クレアチニンやeGFRとは、どのような検査値ですか?」家族と考える慢性腎臓病サイト 腎援隊.https://jinentai.com/doctor_qas/post_14.html(最終アクセス:2025年04月22日) (文献2)日本腎臓学会「痛風腎とは?」日本腎臓学会 ホームページ.https://jsn.or.jp/global/general/_3204.php.(最終アクセス:2025年04月22日) (文献3)阿部雅紀ほか.「CKD診療ガイドライン2023」『日大医誌』82(6), pp.319‑324, 2023年.https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/82/6/82_319/_pdf.(最終アクセス:2025年04月22日) (文献4)東京都保健医療局「CKDってどんな病気?」東京都保健医療局.https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shippei/ckd/p2.html.(最終アクセス:2025年04月22日) (文献5)日本腎臓学会「CKD診療ガイドライン2024」日本腎臓学会 ホームページ.https://jsn.or.jp/data/gl2024_ckd_ch05.pdf.(最終アクセス:2025年04月29日)
2025.04.30 -
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大腸がんは日本人にとって決して他人事ではない病気です。 部位別のがん発生率では、大腸がんは男女どちらも上位を占めており、死亡数においても女性では最も多いがんとなっています(文献1)。 多忙な日々を過ごし自分は大丈夫と思っていても、誰もが発症しうる身近なリスクがあります。 この記事では大腸がんの主な原因やリスク要因を整理して分かりやすく解説します。 また、万が一大腸がんが見つかった場合の治療法についても触れ、最後に再生医療の可能性についても簡単にご紹介します。 大腸がんの原因とリスク要因 大腸がんの発生には生活習慣が深く関わっており、日々の食事内容や運動習慣、嗜好品の摂取状況などさまざまな要因がリスクを高めることがわかっています。 年齢が上がるにつれてリスクも増加しますが、近年では若い世代での発症増加も指摘されており、その背景には現代のライフスタイルの変化があると考えられています。(文献2) ここでは主なリスク要因について、いくつかの項目に分けて詳しく見ていきましょう。 食事内容と若年化の背景 近年、日本を含む先進国では大腸がんの発症率が年々上昇傾向にあり、50歳未満の比較的若い世代での大腸がん増加が世界的に報告されています。 この背景には食生活の欧米化が一因と考えられており、肉類(とくに赤身肉や加工肉)中心で野菜や食物繊維が不足しがちな食事は大腸がんのリスクを高める可能性があります。 若年層での発症増加という深刻な傾向を食い止めるためにも、日頃の食習慣を見直しバランスの良い食事を心がけることが重要です。 運動不足と肥満 運動習慣の欠如や肥満傾向もまた大腸がんのリスクを高める要因です。身体をあまり動かさない生活が続くと腸の働きが鈍くなり、腸内に有害物質が停滞しやすくなります。 肥満そのものもホルモンバランスや慢性炎症を通じてがん発生の下地を作ると考えられており、実際に肥満の人は大腸がんの発生率が高いことが報告されています。(文献7) 喫煙と飲酒 タバコの喫煙習慣や過度の飲酒も大腸がんのリスクを上げることが明らかになっています。 喫煙といえば肺がんの原因として有名ですが、たばこに含まれる有害物質が血流を通じて全身に巡るため、大腸の細胞にも悪影響を及ぼします。 国立がん研究センターの研究によると、喫煙者は非喫煙者に比べ大腸がんの発生率が高い傾向が認められています。(文献6) また、アルコールそのものと体内で代謝されてできるアセトアルデヒドには発がん性があり、大量の飲酒習慣は大腸がんの危険性を高めます。 日常的にタバコやお酒を嗜む方は、大腸がんを含むさまざまながん予防のために禁煙・節酒を意識しましょう。 遺伝と家族歴 大腸がんには遺伝的な要因も一部存在し、とくに家族性大腸腺腫症やリンチ症候群といった遺伝性疾患のある家系では若いうちから大腸がんを発症する率が高いことが知られています。 また、遺伝的要因とは別に炎症性腸疾患と総称される難治性の腸の病気(潰瘍性大腸炎やクローン病など)を患っている人も、大腸に慢性的な炎症がある状態が続くため大腸がんの発生率が上がることがわかっています(文献4)。 家族歴がある方や腸の持病がある方は、より注意深く定期検診を受けるなど早期発見に努めましょう。 大腸がんの予防策 生活習慣の影響が大きい大腸がんは、日々の習慣を改善すると予防効果が期待できます。 過去の研究からも禁煙、飲酒をひかえること、バランスの良い食事、適度な運動、適正体重の維持が、がん全般の予防に有効であると確認されています。大腸がんにとくに有効とされるのは運動習慣で、活発に身体を動かしている人ほど発症リスクが低いことがわかっています。(文献7) 日常生活で取り組める大腸がん予防策を項目別にまとめるので、できることから少しずつ取り組んでみましょう。 食事 食習慣の見直しは大腸がん予防の柱となります。まず、食物繊維を十分に摂取するよう心がけましょう。野菜や果物、海藻、豆類、全粒穀物(玄米や全粒パンなど)には食物繊維が豊富に含まれており、食物繊維の摂取量が多い人ほど大腸がんの発症リスクが16〜24%低いとの研究結果も報告されています。(文献2) 日々の食事を見直し、大腸がんになりにくい食事を意識しましょう。 運動 定期的な運動は大腸がんの強力な予防策です。運動によって腸の働きが活発化し、消化管の内容物の通過時間が短くなるため、有害物質が腸粘膜に接触する時間を減らせます。運動習慣がある人では大腸がんの発症リスクの低下が確認されてます。(文献7) 激しい運動である必要はなく、毎日30分のウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなど自分に合った形で構いません。大切なのは継続ですので、ぜひ今日から意識的に体を動かす時間を作ってみてください。 体重 適正体重の維持もがん予防には欠かせません。肥満は大腸がんリスクを高める要因であると同時に、糖尿病など他の生活習慣病の原因ともなります。実際に糖尿病を持つ人は大腸がんになるリスクが1.4倍高いとの報告もあり、肥満傾向の方は早めの対策が必要です。(文献2) 予防のためにはまず自分のBMI(肥満度指数)や体脂肪率を把握し、緩やかな減量を目指しましょう。急激なダイエットは体に負担がかかりますので、バランスの取れた食事と適度な運動で無理なく減量しましょう。 禁煙 タバコを吸う人はぜひ禁煙に踏み切りましょう。喫煙は大腸がんを含むすべてのがんのリスクを高める最大要因の一つです。(文献6) タールやニコチンなどタバコに含まれる有害物質は、吸い込んだ肺だけでなく血液を介して大腸の粘膜にも届き、細胞を傷つけDNAにダメージを与えます。 禁煙によって肺がんはもちろん、大腸がんやその他のがんになる確率も時間とともに減少していくことがわかっています。(文献8) 禁煙開始直後はストレスを感じるかもしれませんが、禁煙外来の活用やニコチンパッチ・ガムなど補助剤の利用も検討し、健康な体づくりの一環として禁煙にチャレンジしてください。 飲酒 お酒を嗜む方は飲みすぎないことを肝に銘じましょう。過度の飲酒習慣は大腸がんのリスクを高めます。(文献6)一般的に節度ある適量の目安は、ビール中瓶1本または日本酒1合程度と言われますが、適量を超える量を連日飲酒する習慣は控え、飲む頻度も週に2日は休肝日を作ることが推奨されています。 お酒以外のリラックス法を見つけ、飲酒量を徐々に減らす努力が大切です。適切な飲酒量の管理は大腸がんのみならず肝臓や膵臓など他の臓器のがんにもつながりますので、飲酒量には注意しましょう。 大腸がんを早期発見するためのポイント 大腸がんは早期のうちに発見できれば、高い確率で治癒が望めるがんです。しかし初期段階では症状がほとんど出ないため、発見が遅れるケースもあります。 早期発見のためには自分の体のサインを見逃さないことと、症状がなくても定期的に検診を受けることの二つが大切です。 ここでは、大腸がんの初期に現れる可能性のある症状と、検診による早期発見の重要性について説明します。 初期症状に該当するかチェック 大腸がんは早期の段階では自覚症状がほとんどありません(文献3)。そのため少し進行してからようやく異変に気づくケースが多いです。 以下に大腸がんの代表的な症状を挙げますので、思い当たるものがないかチェックしてみましょう。 初期症状 チェックポイント 便に血が混じる、または便の表面に血が付着する 血便・下血と呼ばれる症状です。大腸がんが進行すると腸管内で出血が起こり、排泄物に鮮紅色もしくは暗赤色の血液が混ざることがあります。 痔など良性疾患でも起こる症状ですが注意が必要です 貧血の症状が出る 大腸がんからの出血が断続的に続くと慢性的な貧血状態になります。立ちくらみやめまい、動悸・息切れ、顔色の悪さなど貧血のサインが現れることがあります。 便通の変化(下痢や便秘を繰り返す)や便の形状変化 腸管が狭くなるために便秘と下痢を交互に繰り返したり、便が細くなったりすることがあります。また常に残便感(出し切れていない感じ)があるのも特徴です。 お腹の張りや痛み 腸にガスや便が溜まりやすくなることで腹部膨満感を感じたり、腫瘍が大きくなるとお腹が痛くなることもあります。 進行した場合、腸閉塞(腸詰まり)を起こして激しい腹痛や嘔吐を引き起こすこともあります。 頻度が高いのは血便や下血ですが、これらの症状は痔など良性の病気でも起こり得るため、「きっと痔だろう」と自己判断して放置してしまう例も少なくありません。 上記のような症状に心当たりがある場合は、お早めに消化器科・胃腸科・肛門科など専門医を受診しましょう。 初期症状がないからと言って油断せず、便や体調の変化には常に目を向けておくことが重要です。 健診を受けて初期段階で発見する 自覚症状だけに頼らず、大腸がん検診を定期的に受けることが早期発見には欠かせません。日本では40歳以上の男女に対し年に1回の大腸がん検診受診が推奨されています(文献3)。 市区町村によっては集団検診や職場健診で便潜血検査を実施しており、多くの場合費用の一部〜全額が公費負担となるため手軽に受けられます。 大腸がん検診の主な内容は問診と便潜血検査(後述)です。痛みもなく短時間で終わる検査ですので、「忙しくて時間がない」という方も年に一度はスケジュールを確保して受診しましょう。 大腸がんの検査方法 原因や症状を理解し、早期発見のポイントを抑えたら次は検査方法を押さえて、必要に応じて早めに検査を受けましょう。 大腸がんの検査方法は多くの医療機関で便潜血検査と大腸内視鏡検査が採用されています。どのような検査方法か具体的に見ていきましょう。 便潜血検査 便潜血検査(べんせんけつけんさ)は、便中に目に見えない微量の血液が混じっていないかを調べる検査です。大腸にがんやポリープがあると、ときに出血して便に血が混ざることがあります。 しかしその出血量はごく微量で肉眼では確認できないため、便潜血検査では専用の試薬と検査紙を用いて血液の痕跡を化学的に検出します。 検査のやり方は自宅で便を少量採取し、検査キットに塗布して提出するだけです。結果が陽性(反応あり)の場合でも、必ずしも大腸がんが見つかるとは限りません。 痔による出血や月経血の混入などで偽陽性となることもありますので、陽性と指摘された場合は落ち着いて精密検査(大腸内視鏡など)を受けることが大切です(文献3)。 逆に陰性だったからといって安心とは言えず、微小ながんがある場合など見逃しの可能性もゼロではありません。そのため便潜血検査は毎年定期的に受けることが重要です。まずは年1回の便潜血検査を習慣づけて早期発見に努めましょう。 大腸内視鏡検査 大腸内視鏡検査(だいちょうないしきょうけんさ)は、肛門から内視鏡(カメラ付きの細い管)を挿入し大腸の内側を直接観察する検査です。内視鏡を用いることで、大腸粘膜のわずかな病変も直接目で確認できるため、大腸がんの確定診断には欠かせない検査です。 便潜血検査が陽性だった場合や、大腸がんが疑われる症状がある場合には精密検査として大腸内視鏡が行われます(文献3)。検査前日から専用の下剤を服用し、腸内をきれいに空っぽにしてから検査を行います。 検査中は空気や水で腸を膨らませながら隅々まで観察するため、一時的にお腹が張る感じがありますが、最近では鎮静剤を使ってうとうと眠った状態で受けられる施設も多く、不快感に配慮した検査が可能です。 医師は内視鏡映像を確認しながら病変部位を探し、もしポリープ(腫瘍の芽)が見つかればその場で切除することもできます。採取した組織は病理検査に回し、良性か悪性か詳しく調べます。 大腸内視鏡検査は半日〜1日かかる検査ですが、早期がんなら内視鏡治療で切除して完治させられる場合もあり、検査と治療を兼ねられる点で非常に有用です。定期検診の便潜血で陽性が出たら放置せず必ず内視鏡検査を受けるようにしましょう。 また、症状が強い場合は便潜血を待たずに直接内視鏡検査を受けた方が良いこともあります。医師と相談の上、自分に必要な検査を受けてください。 大腸がんを発見後の治療内容 早い段階の大腸がん(0期〜I期)なら、お腹を切らずに内視鏡でポリープだけを切除できます。入院は2〜3日ほどで、体への負担がとても軽いのが特徴です。腸の壁やリンパ節に広がったステージI〜IIIでは、腹腔鏡手術で腫瘍と周囲のリンパ節をまとめて取り除きます。 進行状況によっては一時的に人工肛門(ストーマ)をつくりますが、術後に元の排便経路へ戻せるケースも少なくありません。手術後は再発を防ぐために、半年ほど抗がん剤や分子標的薬を使う補助化学療法を行います。 吐き気などの副作用は制吐薬や白血球を増やす薬で抑えられるため、仕事や家事を続けながら治療する人も増えています。特定の遺伝子型では、免疫のブレーキを外してがん細胞を攻撃する免疫チェックポイント阻害薬が高い効果を示すことが報告されています(文献1)。 さらに、当院「リペアセルクリニック」では患者様の免疫細胞を採取し、体外で活性化させて戻す再生医療の「免疫細胞療法」を提供しています。 免疫細胞療法について、詳細は下記のページをご覧ください。 まとめ|大腸がんの原因を理解して生活習慣を改善しよう 大腸がんは年々増加している病気ですが、多くの場合生活習慣を見直せば予防可能です。今回、大腸がんの原因となりうる要因を整理し、解説しました。 日々のストレスを減らし、バランスの良い食事と適度な運動を心がけることは、大腸がんのみならず他の病気の予防にもつながりますので、忙しいからと後回しにせず、ぜひできる範囲で生活習慣を整えてみてください。 それでもすべてのリスクをゼロにするのは難しいため、40歳を過ぎたら定期検診を受けて早期発見に努めることも忘れないようにしましょう。当院「リペアセルクリニック」では、幹細胞治療やPRP療法などの治療を提供しております。 大腸がんの治療後のケアや再発予防にお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 参考文献 (文献1)国立がん研究センター がん情報サービス「最新がん統計」国立がん研究センター がん情報サービス, 2024年12月16日. https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html(最終アクセス:2025年4月22日) (文献2)糖尿病ネットワーク「糖尿病の人は大腸がんリスクが高い 大腸がんは50歳未満の若い人でも増加 予防に役立つ3つの食品とは?」糖尿病ネットワーク, 2025年1月20日.https://dm-net.co.jp/calendar/2025/038744.php (最終アクセス:2025年4月22日) (文献3)国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん)予防・検診」国立がん研究センター がん情報サービス, 2012年https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/prevention_screening.html(最終アクセス:2025年4月22日) (文献4)国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん)について」国立がん研究センター がん情報サービス, 2025年3月24日 https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/about.html (最終アクセス:2025年4月22日) (文献5)国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん) 治療」国立がん研究センター がん情報サービス, 2025年3月24日https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/treatment.html (最終アクセス:2025年4月22日) (文献6)国立研究開発法人国立がん研究センター「がん対策研究所予防関連プロジェクト」国立がん研究センターお酒タバコと大腸がんの関連について, 2024年12月31日.https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/259.html(最終アクセス:2025年4月22日) (文献7)国立研究開発法人国立がん研究センター「がん対策研究所予防関連プロジェクト」国立がん研究センター身体活動量と大腸がん罹患との関連について, 2024年12月31日.https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/292.html(最終アクセス:2025年4月22日) (文献8)国立研究開発法人国立がん研究センター「プレスリリース」がんゲノムビッグデータから喫煙による遺伝子異常を同定, 2016年11月4日.https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2016/1104/index.html(最終アクセス:2025年4月22日)
2025.04.30 -
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「寝ても寝ても眠い状態が続く」 「眠いのは貧血も関係していると聞いた」 「貧血の検査を受けた方が良いのだろうか」 このように悩まれている方は多いでしょう。女性の場合、月経前後や月経中に眠気が強くなる方も少なくありません。 本記事では、貧血で眠くなる理由や対処法を解説します。セルフケアを続けても眠気が続く場合や、眠気が強くなる場合は、専門医に相談してみましょう。 いつも眠い理由は貧血のせいかもしれません! 眠気が続く原因として、貧血が考えられます。 貧血が眠気を引き起こす理由は、主に以下の3つです。 血液中の酸素不足 睡眠の質の低下 月経の影響 血液中の酸素不足 貧血とは、赤血球の中にあるヘモグロビンの量が不足した状態です。ヘモグロビンは、血液に酸素を行きわたらせる働きがあります。 貧血によりヘモグロビンが不足すると、血液中の酸素が不足し、その影響で脳の活動も低下します。眠気は、脳の活動低下によるものです。そのほかにも判断力の低下や頭がぼんやりするなどの症状があらわれます。 貧血の方は、体内への酸素運搬能力が低下しているため、筋肉や他の組織もエネルギー不足の状態です。そのため、通常の日常生活でも疲れやすくなっています。 貧血の症状については、以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 睡眠の質の低下 貧血が原因で、睡眠の質が低下するケースもあります。代表的なものが、むずむず脚症候群です。 むずむず脚症候群とは、脚の奥に不快な感覚が生じるものです。不快な感覚としては、主に以下のようなものがあげられます。 むずむずする ピリピリする 虫が這っているような感じがする かゆみがある むずむず脚症候群の特徴は、安静にしていると症状が出現もしくは増強し、足を動かすと症状が軽減される点です。 夜に症状が出現しやすいため、寝付けなかったり、何度も目が覚めたりします。そのため睡眠の質が低下して、眠い状況が続くのです。 月経の影響 女性の場合は、月経も眠気に関連しています。 女性は月経による出血が毎月あるため体内から鉄分が失われることが多く、鉄欠乏性貧血を引き起こしやすいです。そのため、体内で酸素不足が起きやすく、眠気を生じやすいといえます。 1回の月経による出血量は、20〜140mlが正常範囲であり、140ml以上の出血があると月経過多状態とされます。(文献1) また、月経前の2週間はとくに眠気を生じやすい時期です。ホルモンバランスの変化や自律神経の乱れ、体温変動の少なさなどが、理由としてあげられます。 貧血が原因で眠いときの対処法 貧血が原因で眠いときの対処法としてあげられるのは、主に以下の2つです。 生活リズムの見直し 食生活の見直し 生活リズムの見直し 眠いときの対処法の1つが、生活リズム、とくに睡眠リズムの見直しです。 起床後すぐに日光を浴びると体内時計がリセットされ、睡眠と覚醒のリズムが整います。 日中、光を多く浴びることにより入眠前に「メラトニン」が適切に分泌されます。メラトニンは、就寝の1~2時間前に眠気をもよおすホルモンです。(文献2) 眠気が出てきたタイミングで寝室に入り、静かな環境で就寝すると、質の良い睡眠が得られます。睡眠の質が高まると、眠気の改善に繋がります。 就寝前にスマートフォンやタブレット、パソコンなどの強い光を浴びると、メラトニンの分泌が抑制されて、睡眠が妨げられます。スマートフォンやタブレットを寝室に持ち込むことは、睡眠の質低下につながるため、おすすめできません。 食生活の見直し 貧血の多くは、体内の鉄分不足による鉄欠乏性貧血です。毎日の食事を通じて、鉄分やビタミンB12、ビタミンC、葉酸、タンパク質など赤血球やヘモグロビンの材料になるものを摂り続けましょう。 貧血が改善されると、眠気が軽減する可能性も高まります。 食生活の見直しについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。 医師に相談すべき眠気の症状 前章で紹介した対処法を試してもなお眠気が続く場合や、この章で紹介する症状がある場合は、放置せずに医療機関を受診し、医師に相談しましょう。 眠気のため気絶してしまう 貧血が重度の場合、強い眠気や疲労感が生じます。血液中の酸素不足により、脳の血流量が低下し、結果として脳が正常に機能するためのエネルギーが失われるためです。 脳の血流量が減少すると、一時的に意識を失ってしまうこともあります。いわゆる「気絶」「失神」と呼ばれる症状です。 眠気以外に動悸や息切れといった症状がある 平担な道を歩いているだけで動悸や息切れがする場合は、貧血が重症化している可能性があります。 貧血が進行すると、体内への酸素供給量も低下し、平地を歩くといった軽い動作でも体に負担がかかります。酸素供給量を増やすため、平常時よりも心臓の動きが速くなったために生じるのが動悸です。 酸素供給量低下によるもう1つの症状が、息切れ(呼吸困難)です。貧血の方は、血液中の酸素量を増やすため、速く深い呼吸になっています。 貧血で強い眠気を感じる場合は専門医に相談しよう 貧血は血液中のヘモグロビン値が低下して、身体が酸素不足になっている状態です。身体が酸素不足であるために、結果として脳の活動も低下して、眠気につながります。 貧血によりむずむず脚症候群が引き起こされると、睡眠の質が低下します。これも眠気につながる原因の1つです。 女性の場合、月経のために鉄欠乏性貧血を起こしやすく、月経周期の関係で眠くなることもあります。 本記事で紹介した対処法を実践しても眠気が続く場合や、気絶する、動悸・息切れが強いときなどは、貧血が重症化していることが考えられるため、医療機関を受診しましょう。 リペアセルクリニックでは、貧血治療に関するご相談にも対応いたします。メール相談やオンラインカウンセリングも実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。 貧血と眠気に関するよくある質問 貧血のため眠いと感じるときは何科を受診すると良いでしょうか 最初は内科を受診すると良いでしょう。血液検査で、ヘモグロビンや赤血球数といった貧血関連の数値を調べて、必要であれば総合病院や大学病院などの血液内科を受診する流れです。この場合、内科医師が紹介状を書くことが一般的です。 女性の方で、「生理中に貧血のような症状がある」「生理中に眠気が強くなる」などの状況であれば、婦人科受診も選択肢として考えられます。 貧血で眠いのは鉄剤の副作用でしょうか? 鉄剤の主な副作用は、吐き気や胸やけ、腹痛といった消化器症状です。他にも湿疹や皮膚のかゆみなどの副作用があります。 眠いのは、貧血による影響が強いと考えられます。 薬について不安や心配ごとがある場合は、主治医もしくは薬剤師に相談しましょう。 参考文献 (文献1) 札幌大谷大学・札幌大谷大学短期大学部 保健室「月経時、出血量が多く悩んでいませんか?」2024年 https://www.sapporo-otani.ac.jp/wp/wp-content/themes/sapporo-otani/images/campuslife/support/hokehshitu_letter_2411.pdf(最終アクセス:2025年4月18日) (文献2) 厚生労働省「眠りのメカニズム」健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~, 2023年01月23日 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-002.html(最終アクセス:2025年6月5日)
2025.04.30 -
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「貧血があるので食事に気をつけてくださいと言われた」 「貧血に良い食べ物を知りたい」 このような状況の方も多いことでしょう。 貧血に良い食べ物としては、鉄分やビタミンB12、葉酸などを多く含むものがあげられます。本記事では、貧血に良い食べ物や献立例などを中心に解説します。 貧血に悪い食べ物も紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。 貧血に良い食べ物 貧血に良い食べ物は、主に以下の5種類に分類できます。 鉄分を多く含むもの ビタミンB12を多く含むもの 葉酸を多く含むもの ビタミンCを多く含むもの タンパク質を多く含むもの これらをまんべんなく摂るためには、栄養バランスの良い食事が必要です。 鉄分を多く含むもの 1日に必要な鉄分推奨量を以下に示しました。(文献1) 18~74歳の女性:5.5mg 18~29歳の男性:7.0mg 30~49歳の男性:7.5mg 50~74歳の男性:7.0mg 鉄分には、ヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があります。両者の主な違いは、体内への吸収率です。 以下の記事でも、鉄分に関して詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 ヘム鉄 ヘム鉄は、鉄分の中でも吸収率が15~20%程度と高いもので、肉類や魚介類などの動物性食品に多く含まれます。(文献2) ヘム鉄を含む主な食品は、レバーや牛肉、あさりなどです。 非ヘム鉄 非ヘム鉄は、鉄分の中でも吸収率が2~5%程度と低いもので、野菜や海藻類、大豆製品などの植物性食品に多く含まれます。(文献2) 非ヘム鉄を多く含む食品は、納豆やほうれん草、のり、ひじきなどです。 ビタミンB12を多く含むもの ビタミンB12は、正常な赤血球を作るために必要な栄養素で、魚介類やチーズ、のりなどに多く含まれます。 日本人の食事摂取基準(2025年版)によると、1日のビタミンB12摂取推奨量は、18歳以上の男女ともに4.0㎍です。(文献3) 葉酸を多く含むもの 葉酸も、ビタミンB12同様、正常な赤血球を作るために必要な栄養素で、ブロッコリーや納豆、ほうれん草、卵黄などに多く含まれます。 1日の葉酸摂取推奨量は、18歳以上の男女ともに240㎍です。(文献4) 妊娠を計画している女性、あるいは妊娠中の女性は、サプリメントなどを通じて付加的に葉酸を1日あたり400µg程度の摂取が望まれています。胎児の神経管閉鎖障害のリスクを低減するためです。 ビタミンCを多く含むもの ビタミンCには、鉄の吸収率を高める働きがあり、レモンやオレンジ、柿などの果物、ブロッコリーやパプリカなどの野菜類に多く含まれます。 成人における1日のビタミンC摂取推奨量は100㎎程度であり、食品からの摂取が基本です。(文献5) タンパク質を多く含むもの タンパク質は、血液中の赤血球やヘモグロビンを作る材料で、肉、魚介類、大豆製品に多く含まれます。1日の摂取推奨量は、以下のとおりです。(文献6) 18~64歳の男性:65g 65歳以上の男性:60g 18歳以上の女性:50g タンパク質は体の中にためておけないため、毎食食べる必要があります。 貧血に良い食べ物を使用した献立 ここでは、貧血に良い食べ物を使ったメニューとして、主食・主菜・副菜を3種類ずつ紹介します。 主食 ここで紹介するのは、以下の3つです。 あさりと水菜のパスタ ほうれん草と卵のチャーハン 雑穀入りご飯 詳しくは、下記の表をご覧ください。 献立名 主な材料 作り方 あさりと水菜のパスタ パスタ あさりの水煮缶 水菜 オリーブオイル しょうゆ 塩、こしょう 1.たっぷりの沸騰したお湯の中にパスタを入れて、所定の時間でゆでる 2.刻んだ水菜とあさりの水煮をフライパンで炒めてから、ゆであがったパスタを加える 3.しょうゆと塩、こしょうなどで味をととのえる (味付けはお好みで) ほうれん草と卵のチャーハン ごはん ほうれん草 卵 サラダ油 しょうゆ 塩、こしょう 1.溶きほぐした卵をフライパンで炒める 2.粗く刻んだほうれん草とご飯を加えて、しょうゆと塩、こしょうで味をととのえる 3.ひき肉やソーセージ、ツナ缶などを入れても良い 雑穀入りご飯 米 雑穀 1.洗った米に雑穀を合わせて、水を加える 2.30分ほど吸水させてから、炊飯する あさりやほうれん草で鉄分、卵でタンパク質を摂取できます。雑穀には、鉄分やタンパク質などの栄養素が豊富に含まれています。 主菜 ここで紹介するのは、以下の3つです。 レバーのカレー粉炒め 厚揚げと小松菜の炒め物 鮭のホイル焼き 詳しくは、下記の表をご覧ください。 献立名 主な材料 作り方 レバーのカレー粉炒め レバー 小松菜 サラダ油 カレー粉 しょうゆ 酒 塩、こしょう 1.食べやすい大きさに切ったレバーを水か牛乳に5分程度つけて下処理する 2.下処理をしたレバーをしょうゆと酒につけて下味をつける 3.フライパンでレバーと小松菜を炒めて、カレー粉と塩、こしょうで味をととのえる 厚揚げと小松菜の炒め物 厚揚げ 小松菜 サラダ油 しょうゆ 塩、こしょう 1.食べやすい大きさに切った厚揚げと小松菜をフライパンで炒める 2.しょうゆや塩、こしょうで味をととのえる 鮭のホイル焼き 鮭 生しいたけ しめじ えのきだけ 玉ねぎ バター塩、こしょう 1.鮭は塩、こしょうで下味をつける 2.玉ねぎやきのこ類は食べやすい大きさに切る 3.鮭と玉ねぎ、きのこ類をアルミホイルに載せて包み、フライパンで焼く レバーには鉄分が豊富に含まれています。小松菜はビタミンCや葉酸、鉄分を多く含む野菜です。鮭や厚揚げには、良質なタンパク質が含まれています。 副菜 ここで紹介するのは、以下の3つです。 切り干し大根とわかめの味噌汁 ほうれん草のおひたし ひじきの煮つけ 詳しくは、下記の表をご覧ください。 献立名 主な材料 作り方 切り干し大根とわかめの味噌汁 切り干し大根 わかめ 油揚げ だし汁 味噌 1.切り干し大根は、水でもどしてから食べやすい大きさに切る 2.油揚げも食べやすい大きさに切る 3.だしが入った鍋に、切り干し大根、油揚げ、わかめを入れてから味噌を溶きながら加える ほうれん草のおひたし ほうれん草 だし汁 みりん しょうゆ 1.ほうれん草をサッと水洗いして汚れを落とす 2.沸騰したお湯の中にほうれん草を入れて30秒ほどゆでる 3.ゆであがったほうれん草を食べやすい大きさに切る 4.だしとしょうゆ、みりんを合わせたつけ汁の中にほうれん草を入れて、15分程度ひたしておく ひじきの煮つけ ひじき にんじん 油揚げ だし サラダ油 しょうゆ 砂糖 酒 みりん 1.水で戻したひじきと、食べやすい大きさに切った人参と油揚げを、フライパンで炒める 2.だし、しょうゆ、砂糖、酒、みりんを入れて、煮汁がほとんどなくなるまで煮る ひじきには、鉄分や葉酸が豊富に含まれています。切り干し大根も葉酸が豊富に含まれる食品です。副菜に野菜を多く入れると、ビタミンCを多く摂れるでしょう。 貧血に悪い食べ物や飲み物 ここでは、貧血に悪い食べ物や飲み物について詳しく解説します。 緑茶 緑茶やコーヒー、紅茶に含まれる成分であるタンニンは、鉄分の吸収を妨げます。食事中や食後に飲むのは控えましょう。 食事中や食後の飲み物は、水や麦茶など、タンニンが含まれていないものがおすすめです。 玄米 玄米に含まれている不溶性食物繊維は、鉄分を吸着して便として排泄させてしまうため、貧血には逆効果です。 不溶性食物繊維が含まれる食品としては、玄米のほかにおからや、根菜類、豆類などがあります。根菜類や豆類にはビタミンCやタンパク質も含まれているため、貧血に良い食品でもありますが、毎食食べると食べ過ぎにつながります。 根菜類や豆類を入れた献立は、1日1~2食までにとどめましょう。 加工食品 ハムやソーセージ、ベーコンなどの加工食品、インスタント食品、スナック菓子などに含まれるリン酸塩は鉄分の吸収を阻害する成分です。貧血予防のためには、控える方が良いでしょう。 加工食品やインスタント食品を購入する際には、なるべくリン酸塩が添加されていないものを選びましょう。リン酸塩の過剰摂取は、貧血だけではなく骨や関節にも良くない影響を与えます。 リン酸塩を多く含む食品については、以下の記事でも紹介していますので、あわせてご覧ください。 食生活を改善しても貧血が続く場合は当院にご相談ください 貧血の多くは血液中の鉄分が不足する鉄欠乏性貧血であり、貧血に良い食べ物を意識して摂ることにより改善する可能性が高いとされています。 食生活を改善しても貧血が続く場合は、鉄剤の内服や注射といった治療が必要です。貧血には、鉄欠乏性貧血以外にも、慢性疾患や造血機能低下によるものも考えられます。 食生活を改善しても貧血が続くときは放置せず、当院にご相談ください。メール相談やオンラインカウンセリングも実施しております。 貧血に良い食べ物に関するよくある質問 チョコレートは貧血に良い食べ物ですか? チョコレートの中でも、ダークチョコレートと呼ばれるカカオの含有率が高いものは、鉄分が多く含まれているため、貧血に良い食べ物とされます。 しかし、チョコレートは糖質や脂質も多いため、食べ過ぎは禁物です。1日量の目安は5~10g程度とされています。 貧血に良い食べ物に即効性はありますか? 貧血に良い食べ物は数多くありますが、あくまでも食品であり医薬品ではないので、即効性は期待できません。毎日の食事で適量を食べ続けましょう。食べ続けても貧血の症状が続く場合は、医療機関を受診して、必要な治療を受けてください。 参考文献 (文献1)公益財団法人長寿科学振興財団「ミネラル成分の鉄分の働きと1日の摂取量」健康長寿ネット, 2025年2月26日 https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/mineral-tetsu.html (最終アクセス:2025年4月17日) (文献2)国立がん研究センター東病院 栄養管理室「貧血がある方のお食事」2018年 https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/division/nutrition_management/info/seminar/recipe/recipe209.pdf (最終アクセス:2025年4月17日) (文献3)公益財団法人長寿科学振興財団「ビタミンB6/B12の働きと1日の摂取量」健康長寿ネット, 2025年2月21日 https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-b6.html (最終アクセス:2025年4月17日) (文献4)公益財団法人長寿科学振興財団「葉酸の働きと1日の摂取量」健康長寿ネット,2024年12月17日 https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-yousan-biotin.html (最終アクセス:2025年4月17日) (文献5)公益財団法人長寿科学振興財団「ビタミンCの働きと1日の摂取量」健康長寿ネット, 2025年2月21日 https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-c.html (最終アクセス:2025年4月17日) (文献6)公益財団法人長寿科学振興財団「三大栄養素のたんぱく質の働きと1日の摂取量」健康長寿ネット, 2025年3月3日 https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/tanpaku-amino.html (最終アクセス:2025年4月17日)
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「めまいや息切れが続いている」 「健康診断で貧血と言われたけれど、とくに症状はない」 「病院を受診するかどうか迷う」 このようなお悩みを抱えている方も多いことでしょう。 貧血の症状はさまざまであり、中には無症状の方もいます。しかし、貧血を放置しておくことは危険を伴います。重大な疾患が原因で引き起こされる貧血もあるためです。 本記事では、貧血の症状を中心に、原因や治療法についても詳しく解説します。貧血でお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。 貧血の症状一覧 貧血の症状には、主に以下のようなものがみられます。 息切れ 動悸 めまい 倦怠感 血色不良 爪の異常 中には、肌や口内が荒れる、髪の毛が抜けやすくなる、氷を食べたがるといった症状が出る方もいらっしゃいます。貧血症状の現れ方には個人差があり、人によってはまったく症状がない場合もあります。 貧血症状が現れる原因は、体内の酸素不足および、それを補うために心臓や肺が働きすぎることです。 そもそも貧血とは そもそも貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンといった成分が少ない状態を指します。立ちくらみやめまいなどが起きたときに「貧血を起こした」と訴える方もいますが、これは重力の影響で脳の血流が減ったことに伴うもので、貧血とは異なります。 WHO(世界保健機構)の定義によると、成人男性ではヘモグロビン値13.0g/dl以下、成人女性ではヘモグロビン値12.0g/dl以下の状態が貧血とされます。(文献1) 貧血を診断するためには、自覚症状の聴き取りだけではなく、血液検査も必要です。 貧血の原因 貧血の原因としては、主に以下の4つがあげられます。 鉄分不足 体内での出血 慢性疾患 造血機能低下 鉄分不足 体内の鉄分不足が原因の、いわゆる「鉄欠乏性貧血」は、貧血の中でも最も頻度が高いものです。(文献2) 鉄欠乏状態が続くと、体内に貯蔵されている鉄分が減ります。次に、血液中の鉄分である血清鉄が減少します。最終的にヘモグロビン内の鉄分が減少して、貧血を発症する流れです。(文献3) 体内で鉄分を必要とする理由や鉄分不足の症状については、以下の記事でも紹介しています。 あわせてご覧ください。 体内での出血 胃や大腸といった消化管からの出血や、婦人科疾患による出血による貧血も存在します。 消化管からの出血としては、胃潰瘍や胃がん、大腸がん、痔などがあげられます。出血の原因となる婦人科疾患は、子宮筋腫や子宮がんなどです。 女性の場合、月経による出血も貧血を引き起こす要素の1つです。なんらかの原因で月経時の出血量が多い場合は、自覚症状がないまま貧血が進行するケースもあります。 慢性疾患 慢性腎臓病や関節リウマチなどの慢性疾患により、貧血を起こす場合もあります。 腎臓の機能が低下すると、造血ホルモンであるエリスロポエチンが作られにくくなり、その結果貧血を引き起こします。いわゆる「腎性貧血」です。(文献4) 関節リウマチの場合、体内で炎症が起きており、その影響で体内での鉄代謝に異常が生じて貧血を引き起こしやすいとされています。関節リウマチについては、下記の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 造血機能低下 体内で血液を作り出す機能(造血機能)が病気によって低下した結果、貧血を発症する場合もあります。原因になる主な疾患を、表にまとめました。 疾患名 病態 再生不良性貧血 骨髄にある造血幹細胞(血液細胞の材料)が減少してしまい、赤血球や白血球、血小板などの血液細胞が減ってしまう病気 骨髄異形成症候群 造血幹細胞に異常が生じて、正常な血液細胞が作られなくなる病気 白血病 いわゆる「血液のがん」 造血幹細胞ががん化してしまい、白血病細胞が増えてしまう病気 骨髄異形成症候群から白血病に移行する場合もある このように、重大な病気が隠れている可能性もありますので、貧血症状がある場合は、早めの医療機関受診が大切です。 貧血とヘモグロビン値 ここでは、公益社団法人日本人間ドック・予防医療学会によるヘモグロビン値について紹介します。 貧血に関係する検査結果は、以下の3種類です。 異常なし 要再検査・生活改善 要精密検査・治療(ヘモグロビン低値) 詳細を表に示しました。 検査結果 男性 女性 異常なし 13.1~16.3g/dl 12.1~14.5g/dl 要再検査・生活改善 12.1~13.0g/dl 11.1~12.0g/dl 要精密検査・治療 12.0g/dl以下 11.0g/dl以下 表に示した以外の検査結果として、「軽度異常」があります。数値は以下のとおりです。 男性:16.4〜18.0g/dl 女性:14.6〜16.0g/dl ヘモグロビン値が基準より高いために、軽度異常とされています。加えて、ヘモグロビン値が軽度異常よりも多い場合も、要精密検査・治療に該当します。多血症や脱水が疑われる状況です。 貧血の治療法 貧血の治療法は、主に以下の3つです。 食事療法 薬物療法 原因疾患の治療 食事療法 食事療法で大切な点は、効率よく鉄分を摂ることです。鉄分の多い食材に加えて、鉄の吸収を助けるビタミンCや、造血作用があるビタミンB12も摂取しましょう。 鉄分やビタミンC、ビタミンB12を豊富に含む食品は、以下のとおりです。 鉄分:レバーや魚介類、大豆製品、野菜・海藻類など ビタミンC:果物や野菜・海藻類など ビタミンB12:肉や卵など 良質なタンパク質もあわせて摂りましょう。タンパク質は、赤血球やヘモグロビンの材料として大切な栄養素です。肉や魚介類、大豆製品、卵などに多く含まれています。 薬物療法 鉄欠乏性貧血の薬物療法は、鉄剤の内服や静脈注射が一般的です。 内服:フェロミア錠、リオナ錠、インクレミンシロップなど 静脈注射:フェジン、モノヴァーなど 鉄剤を内服すると、吐き気や食欲不振といった消化器系の副作用を生じることも少なくありません。その場合は、静脈注射に切り替える場合もあります。 腎臓の機能低下による貧血では、腎性貧血治療薬(ESA:赤血球造血刺激因子製剤)の投与も行われます。 原因疾患の治療 消化器系疾患や婦人科系疾患に伴う出血のため貧血が生じている場合は、原因疾患を治療する必要があります。リウマチや慢性腎臓病由来の貧血でも、同じく治療が必要です。 リペアセルクリニックでは、貧血症状や、原因疾患の治療に関するご相談にも対応いたします。メール相談やオンラインカウンセリングも実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。 貧血の症状がある場合は放置せずに医療機関を受診しよう 貧血の症状は個人差があり、中にはまったく症状がない方もいらっしゃいます。 貧血の原因の多くは鉄分の欠乏ですが、重大な疾患が隠れている場合もあります。そのため、貧血の症状があるときや、健康診断や人間ドックで貧血を指摘されたときは、放置せずに医療機関を受診しましょう。 貧血症状改善のためには、一人ひとりの原因に合った治療が重要です。 \まずは当院にお問い合わせください/ 貧血の症状に関するよくある質問 貧血が続くとどうなるのでしょうか 貧血は全身の酸素が不足している状態です。少ない酸素量で身体機能を維持するため、全身に血液を送る心臓の負担が増えます。また、脳に運ばれる酸素量も減少します。貧血が続くと、心筋梗塞や記憶力の低下を引き起こす可能性があると覚えておきましょう。 病気が原因の貧血では「貧血が続く=病気が進行している」可能性があります。貧血が続く場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。 貧血になりやすい人の特徴は何ですか 女性はとくに、鉄欠乏性貧血になりやすいといえます。月経や、妊娠・出産、授乳など、鉄分を失うことが多いためです。 過度なダイエットをしている方や、偏食の方も鉄欠乏性貧血を起こしやすいといえるでしょう。栄養バランスが乱れ、結果として貧血を起こす可能性が高いといえます。 慢性疾患や造血機能低下が原因の貧血の場合は、目立った特徴は見られません。 参考文献 (文献1) 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター「貧血の原因は?」国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターホームページ https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/11.html (最終アクセス:2025年4月16日) (文献2) 大分大学医学部 腫瘍・血液内科学講座「鉄欠乏性貧血のはなし」大分大学医学部 腫瘍・血液内科学講座ホームページ https://www.med.oita-u.ac.jp/syuyou/ida.html (最終アクセス:2025年4月16日) (文献3) 張替秀郎「鉄代謝と貧血」『日本内科学会雑誌』107(9), pp.1921-1926,2018年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/107/9/107_1921/_pdf (最終アクセス:2025年4月16日) (文献4) 鶴屋和彦,平方秀樹「慢性腎臓病と貧血」『日本内科学会雑誌』104(7), pp.1414-1424,2015年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/7/104_1414/_pdf (最終アクセス:2025年4月16日)
2025.04.30 -
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「最近、お腹のハリや便通の変化が気になるけど、忙しいし、年齢的にもまだ大丈夫だろう」。そう思ってスルーしていませんか? 大腸がんは現在、日本人の罹患率・死亡率ともに高い主要ながんの一つです。若い世代での発症も増加傾向にあり、2018年時点で男性の死亡原因第3位、女性では第1位となっています。(文献1) ただし、がんの進行速度は一律ではなく、年齢、がんのタイプ、生活習慣、遺伝的背景などによって進み方は人それぞれです。 本記事では、年代別にみた大腸がんの進行速度の特徴、速度を左右する主な要因、そして早期発見・治療のポイントを解説します。 不安を感じている方も、知れば怖くなくなるように大腸がん対策の第一歩として、ぜひ最後までお読みください。 年代別に見る大腸がんの進行速度や特徴について 大腸がんは全年代で発生し得ますが、年代によって発症しやすさや進行の速さに特徴的な傾向があります。基本的には年齢そのものよりもどんなタイプのがんか(悪性度)が進行速度を左右します。 しかし結果的に年代ごとに進行パターンに違いがみられるケースもあります。ここでは若年層・中年層・高齢者それぞれの年代について、大腸がんの進行速度や特徴を見ていきましょう。 若年層(30代)の進行速度と特徴 若い世代での大腸がん発症は多くはありませんが、近年増加傾向にあります。実際、数十年前と比べると若年者(50歳未満)の大腸がんリスクは約3倍に上昇し、現在の30代のリスクは数十年前の50代と同程度とも言われています。(文献2) この背景には食生活の欧米化や運動不足など生活習慣の変化が影響していると考えられます。若年層の大腸がんでは、進行が速く転移しやすいタイプの大腸がんが発生しやすい傾向があります。 たとえば他のがん種の例ですが、胃がんなら分化度の低いタイプが30代など若い人にできやすいことが知られており、大腸がんでも若年発症例では進行の早いものが見られることがあります。 また、日本では大腸がん検診は通常40歳以上を対象としており、30代以下では定期検診の機会が少なくなりがちです。その結果、自覚症状が出にくい早期の段階では発見されず、症状が出てから受診した時には進行がんに至っているケースもあります。 実際に30代の大腸がんは初期症状が乏しく、腹痛や便通異常、血便などの明らかな症状は進行してから現れることが多いです。 まだ若いから大丈夫と思わず、家族に大腸がんの人がいる場合などリスクが高い方は、30代でも違和感を感じたら早めに医療機関を受診しましょう。 中年層(40~60代)の進行速度と特徴 40~60代は大腸がんの罹患が増えてくる年代です。とくに50代以降になると発症リスクが高まり、生活習慣病の蓄積や体の老化も相まって大腸がんが増えてきます。大腸がんの多くはポリープ(大腸粘膜のできもの)が徐々に大きくなってがん化するため、一般的には数年から十数年かけて進行するとされています。 したがって、この年代では早期発見・早期治療を行えば十分にがんの進行を抑え込めます。40代以上を対象とした定期的な大腸がん検診により早期の段階で発見できれば、内視鏡によるポリープ切除や外科手術で根治が期待できます。 働き盛りの世代でも決して悲観せず適切な治療を受けましょう。一方で、60代になると次第に免疫力が低下し細胞の修復力も落ちてくるため、同じタイプの大腸がんでも若い頃より進行が早まる可能性が指摘されています。 なぜなら、免疫の監視機能が弱まることでがん細胞の増殖を許しやすくなるためです。幸いこの年代は健康診断や人間ドックを受ける方も多く、検査で早期に指摘されれば治療開始も早くできます。 まとめると、40~60代は発症しやすくなる年代である分、検診などを活用して早期に発見しやすい年代と言えるでしょう。定期検診を怠らず、指摘を受けたら速やかに精密検査・治療につなげることで、大腸がんの進行を食い止められる可能性が高まります。 高齢者(70代~90代)の進行速度と特徴 高齢になるほど大腸がんの発症率は高まり、70代以降での診断例が突出します。背景には長年の細胞老化によるDNA損傷の蓄積、加齢や生活習慣病による免疫力低下があり、がん細胞を排除しにくくなる点が大きいと考えられます。 ただし高齢者の大腸がんが必ずしも急激に悪化するわけではなく、比較的おとなしい高分化型が出やすいとの報告もあります(文献6)。 一方、発生部位は右側の上行結腸に偏りやすく、血便など自覚症状が乏しいため気付いたときには進行期になっているケースが目立ちます。加えて高血圧・心疾患・糖尿病などの併存症が多く、手術や抗がん剤の適応に制限が生じやすいことも進行を許す要因となっています。 したがって70代以降でも便潜血検査を年1回行い、陽性なら必ず内視鏡で精査が欠かせません。体調に違和感があれば年のせいと済ませず受診し、治療方針は体力に合わせて腹腔鏡手術や低用量抗がん剤、免疫療法など負担の少ない選択肢を医師と検討しましょう。 大腸がんの進行速度が変わる理由 大腸がんの進行速度には個人差があり、いくつもの要因が絡み合っています。では具体的にどのような理由で進行の速さに差が出るのでしょうか。 主な理由として、生活習慣(食事内容や運動習慣)の違い、遺伝的素因や免疫力、基礎疾患(合併症)の有無が挙げられます。ここではこれらのポイントについてもう少し詳しく見てみましょう。 生活習慣・食事・運動不足の影響 脂肪や赤身肉中心の“欧米型”食は大腸がんリスクを押し上げます。若年発症例の増加要因として飲酒・喫煙や加工肉の過剰摂取、運動不足と肥満。抗生物質乱用による腸内細菌バランスの崩れが報告されています。逆に定期的な運動、野菜・果物の食物繊維やカルシウムの十分な摂取は発症リスク低減に有効です。 つまり高脂肪食と過度の飲酒・喫煙を控え、野菜を増やし、毎日よく動くことが予防策です。とくに若年層は生活習慣の影響が大きいため、将来の進行がんを防ぐ第一歩として早めの改善が重要です。 遺伝・免疫力・合併症リスク 大腸がんは家族歴があると発症リスクが上昇します。代表例がリンチ症候群で、若年発症かつ生涯で約80%が大腸がんになると報告されています。多発・多臓器発がん、進行の速さが特徴で、半年ごとの内視鏡検査が推奨されます。 もう一つの遺伝性疾患家族性大腸腺腫症(FAP)では10代から多数のポリープが出現し、60歳までに90%ががん化するため予防的手術も選択肢となります。このように遺伝性大腸がんは発症年齢が若く進行も早いため、家族歴が多い場合は遺伝子検査や専門医に相談しましょう。 また、免疫機能も進行速度に影響します。体にはがん細胞を排除する免疫監視機構がありますが、加齢やストレス、糖尿病・ステロイド使用などで機能が低下するとがんの増殖を許しやすくなります。十分な睡眠と運動、バランスの良い食事は免疫維持に有効です。 さらに炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)は長期炎症が粘膜に傷を作り発がんリスクを高めます。 肝硬変やコントロール不良の糖尿病など基礎疾患がある場合も全身の状態が悪化することによって、治療効果が下がり進行を許してしまいます。 合併症が多いと手術や抗がん剤が制限される点も見逃せません。このように遺伝と免疫力と基礎疾患が掛け合わさると、進行の速さを左右します。家族歴や持病がある方は定期検診を怠らず、違和感があれば早期に専門医へ相談しましょう。 早期発見とさまざまな治療法 大腸がんは早期に発見さえできれば、適切な治療で根治(完治)も十分に期待できる病気です。進行した大腸がんであっても、治療によって進行を遅らせたり症状を和らげられます。 ここでは主な検査方法と早期発見のメリット、そして大腸がん治療のアプローチについて解説します。とくに近年注目されている免疫細胞療法(体の免疫の力を利用した治療)や再生医療(幹細胞を利用した新しい医療)も含めた治療法について説明します。 主な検査方法と早期発見のメリット 大腸がん早期発見の入口は便潜血検査です。便中の微量出血を調べるだけで痛みがなく低コスト、40歳以上は年1回実施が推奨されています。陽性時は大腸内視鏡検査へ進み、粘膜を直接観察しつつポリープや早期がんをその場で切除できます。 便潜血検査と内視鏡の組み合わせは死亡率を有意に下げることが複数の研究で確認され、日本老年医学会の大腸がん予防ガイドラインでも年1〜2回の受検が強く勧められています。(文献4) 大腸がんは早期発見、早期治療が現状一番の解決策です。 がんが粘膜内にとどまる早期がんなら、内視鏡切除や局所手術で5年生存率は約90%。一方、遠隔転移を伴うステージⅣでは約20%まで低下し、早期か進行期かで明暗がわかれます。(文献5) 小さな腫瘍なら開腹せずに治療でき、切除範囲も狭く体への負担が軽いのも利点です。さらに大腸がんの約8割は良性ポリープが出発点とされ、ポリープ段階で取り除けばがんそのものを起こさせない究極の予防になります。 ポリープががん化するまでには数年〜10年程度余裕があるため、定期的に内視鏡を受けて発見して切除できれば、大腸がんで命を落とす確率は大幅に減らせます。 大腸がんの治療アプローチ(免疫療法など) 大腸がん治療の柱は手術・抗がん剤・放射線の三大療法で、早期なら手術のみ、進行例では手術と抗がん剤、直腸がんでは放射線も加える組み合わせが標準です。腹腔鏡手術や副作用対策の進歩で、高齢者や通院治療の負担も軽減されています。(文献4) 免疫療法では、がん細胞のブレーキ信号を外して免疫を活性化させる免疫チェックポイント阻害薬が遺伝子変異の多いタイプの大腸がんで保険適用となり、進行・再発例でも長期生存例が報告されています。 さらに光免疫療法は薬剤投与後に特定の光を当て、がん細胞だけを選択的に破壊する日本発の新技術として開発されており、今後の発展に期待が持てます。 また、患者自身のリンパ球を培養して戻す免疫細胞療法も一部で行われ、新しい治療法として注目を集めています。 当院「リペアセルクリニック」ではがん予防を目的とした免疫細胞療法を提供しております。 免疫細胞療法に関する詳細は、以下のページをご覧ください。 まとめ|大腸がんの進行速度はさまざまな要因で決まる!違和感を感じたら早期受診を 大腸がんの進行速度は人によって異なり、年齢やがんのタイプ、生活習慣、遺伝的素因、免疫力など実にさまざまな要因で決まります。若い人でも油断はできませんし、高齢だからといって必ずしも急激に悪化するわけでもありません。 それでも共通して言えるのは、早期発見・早期治療が最も有効な対策です。大腸がんは早く見つかれば高い確率で治せる病気ですので、仮に進行していても適切な治療で進行を遅らせられます。 普段からバランスの良い食事や適度な運動を心がけ、大腸に限らず検診の指摘や体調の違和感を軽視せずに、おかしいと思ったら年齢に関係なく早めに医療機関を受診しましょう。 皆さんにお伝えしたいのは、大腸がんは怖がりすぎず正しく恐れ、早期発見ができれば決して怖い病気ではありません。不安な気持ちがある方は一人で抱え込まず専門医に相談し、適切な検査と対策で大腸がんから自分自身を守っていきましょう。 \まずは当院にお問い合わせください/ 参考文献 (文献1)国立がん研究センター「がんの統計’18 図表編」2018年.https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/statistics/pdf/cancer_statistics_2018_date_J.pdf.(最終アクセス:2025年4月29日) (文献2)Bailey CE, et al. (2015). Increasing disparities in the age-related incidences of colon and rectal cancers in the United States, 1975-2010. JAMA Surgery, 150(1), pp.17-22. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25372703/(最終アクセス:2025年04月29日) (文献3)Sung H, et al. (2024). Colorectal cancer incidence trends in younger versus older adults: an analysis of population-based cancer registry data. The Lancet Oncology, 26(1), pp.1-??. DOI: 10.1016/S1470-2045(24)00600-4(最終アクセス:2025年04月29日) (文献4)田中秀典, 田中信治. 「高齢者の大腸がんの特徴と治療」『日本老年医学会雑誌』57(4), pp.423-430, 2020年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/57/4/57_57.423/_pdf (最終アクセス:2025年04月22日) (文献5)国立がん研究センター「大腸がん患者数統計」国立がん研究センター がん情報サービス,https://hbcr-survival.ganjoho.jp/graph?year=2014-2015&elapsed=5&type=c02#h-title (最終アクセス:2025年04月22日) (文献6)Chou C-L, et al. (2011). Differences in clinicopathological characteristics of colorectal cancer between younger and elderly patients: an analysis of 322 patients from a single institution. American Journal of Surgery, 202(5), pp.574-582. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21872205/(最終アクセス:2025年04月29日)
2025.04.30 -
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乳がんの治療において、放射線治療は手術後の再発リスクを減らすために重要な役割を果たします。しかし、いざ治療を受けるとなると「副作用は大丈夫だろうか」「どんな影響が出るのか」と不安に感じる方も多いでしょう。 本記事では、乳がんに対する放射線治療で起こりうる副作用や、症状が出る時期、対処法について詳しく解説します。不安を少しでも和らげ、安心して治療に向き合えるよう、正しい知識を身につけていきましょう。 乳がん放射線治療とは?副作用が起こる仕組み 乳がんの放射線治療は、高エネルギーの放射線を乳房に照射し、がん細胞を狙って再発を防ぐ方法です。しかし、放射線は正常組織にも影響するため、副作用が生じることがあります。 ここからは、その治療の概要と副作用の仕組みを見ていきましょう。 放射線治療の基本概要 放射線治療とは、高エネルギーの放射線を利用して、がん細胞を破壊する治療法です。乳がんの場合、手術後の再発予防を目的として行われるケースが多く、とくに乳房温存手術後に実施されることが一般的です。 治療は週5回のペースで4~6週間ほど続けられ、その間、乳房全体に照射するとともに、必要に応じてリンパ節周辺なども対象となります。(文献1) 放射線が当たる領域を適切に設定すれば、再発リスクを抑える効果が期待できるでしょう。患者さんの状態によって照射範囲や回数が異なる場合もあり、副作用や負担をできるだけ軽減しながら進められるよう工夫されています。 なぜ副作用が起きるのか? 放射線治療では、がん細胞だけでなく、周囲の正常な細胞にも一定の影響が及びます。ダメージを受けた正常細胞は自己修復されますが、その回復過程で炎症や腫れなどの症状が出現し、副作用として現れる仕組みです。 体質や治療範囲、照射量などの違いによって、副作用の程度は人によって大きく異なります。副作用には、治療期間中や直後に起こる「急性」と、数カ月から数年後にあらわれる「晩期」があり、症状もそれぞれ異なる場合があります。医師や放射線技師の指導を守りながら適切にケアをすれば、リスクを最小限に抑えることが可能です。 乳がん放射線治療の主な副作用と発症時期 乳がんの放射線治療では、高エネルギーの照射でがん細胞を狙う一方、正常細胞にも影響が及ぶため、副作用が生じることがあります。症状がいつ、どのように現れるかを理解しておくことは大切です。ここからは主な副作用と発症時期について、短期と長期に分けて見ていきましょう。 短期的(急性)副作用 短期的(急性)副作用には、治療中や照射後数週間以内に起こるものが含まれます。たとえば、照射部位の皮膚炎で、赤みやかゆみ、ひりひり感、乾燥などが挙げられ、とくに2~4週間後から目立ち始めます。(文献2) 体力が大きく落ちるわけではありませんが、「なんとなくだるい」と疲労感を訴える方も少なくありません。 乳房の腫れや張り感が出現し、一時的に圧迫感を覚えることもあるため注意が必要です。これらの症状は治療が進むにつれて徐々に軽快する場合が多いですが、強い痛みや不快感が続く際は医師や看護師に相談しましょう。 正しいスキンケアや休養を心がけることで症状の悪化を防ぎ、より快適に治療を続けやすくなります。 長期的(晩期)副作用 長期的(晩期)副作用は、放射線治療後しばらく経ってから現れる症状です。たとえば、照射部位の皮膚が数カ月〜数年後に黒ずんだり硬化したりする色素沈着が起きることがあります。(文献2) 乳房に線維化が進んで硬さや凹みを生じ、しこりのように触れる場合もあります。 リンパ浮腫も晩期の合併症の一つで、腕がむくんだり重だるさを覚えたりすることもあります。これは手術によるリンパ節切除の影響も重なるためとくに注意が必要です。 リハビリや圧迫スリーブの着用など、適切なケアをすれば症状の進行を抑えられる場合もあり、定期的な経過観察が重要です。いずれの症状も日常生活に支障をきたす可能性があるため、気になる変化は早めに医師へ相談しましょう。 副作用を軽減・予防するためにできること 副作用を軽減・予防するには、日々のケアと早期の対処が大切です。症状の悪化を防ぐには、肌や体調をいたわる習慣を日々意識しながらの生活がポイントになります。小さな変化を見逃さないよう、定期的なセルフチェックはとくに大切です。 ここからは、具体的な対策や注意点を詳しく見ていきましょう。 日常生活で意識したいケア 日常生活では、まず照射部位をいたわるスキンケアが重要です。低刺激の保湿剤を使って毎日保湿するほか、肌を強くこすらないように注意しましょう。締め付ける服装も刺激の原因になりやすいため、ゆったりとした衣類を選ぶと安心です。 紫外線対策として帽子や長袖、日焼け止めを活用し、外出時の直射日光を避けることもポイントです。疲れを感じたらこまめに休息を取り、睡眠をしっかり確保すると体力の消耗を抑えられます。 無理のない範囲で軽い運動を取り入れると、血行や免疫力を維持しやすいでしょう。とくに肌の状態は日々変化するため、継続的なケアが効果を高めます。 こうした対策をこまめに行うことで、副作用のリスクを軽減しやすくなります。 医療機関に相談するタイミング 副作用への対処で迷ったときや症状が強まったときは、医療機関に相談しましょう。 皮膚に痛みや腫れ、水ぶくれが出てきた場合でも、治療が終了すれば2週間ほどで回復します。放射線が肺にあたっている場合、肺炎が起こる場合もあります。医療機関を受診する際には、放射線治療を受けたことを伝えましょう。(文献1) 多くの副作用は自然に消失しますが、症状が進行すると治療期間の延長や日常生活への影響が大きくなる可能性があります。遠慮せず相談して、専門的なケアや適切な処置を受けることが必要です。 副作用が出たときの具体的な対処法 乳がんの放射線治療中、なんらかの副作用を感じたら、まずは自己判断で対処せず専門家の助言を仰ぐことが大切です。症状を悪化させないためにも、皮膚トラブルや疲労感、リンパ浮腫など、それぞれに合ったケアや医療機関への相談を早めに行いましょう。 皮膚トラブルが起きたら 放射線治療すると、皮膚の赤みやひりひり感、水ぶくれなどの症状が出現することがあります。 処方された外用薬(ステロイド軟膏など)がある場合は、指示どおりに使用し、過度にこすらないよう注意します。肌にやさしい素材の衣類や下着を選ぶことも大切です。コットンやシルクなど、通気性や刺激の少ないものを身に着けると快適に過ごしやすくなります。 万が一、皮膚がただれてしまったり痛みが強いときは、無理をせず早めの受診を心がけ、適切なケアを受けましょう。 疲労感が強いとき 疲れが抜けずにだるさが続く、普段できていたことが億劫になるなどの疲労感が強いときは、休息時間を十分に確保し、家事や仕事のペース調整が大切です。 食事面でも、たんぱく質やビタミン、ミネラルなど栄養バランスに気を配り、適度な水分補給を心がけてください。睡眠リズムを整えるために、寝る前のスマホ使用を控えたり、リラックスできる時間を確保したりする工夫も効果的です。 リンパ浮腫の初期症状が出たら 腕にむくみや重だるさ、肌の張り感を覚えるなど、リンパ浮腫の初期症状が疑われるときは、すぐに専門スタッフ(リンパ浮腫外来など)へ相談しましょう。 症状の進行を抑えるには、圧迫療法(専用のスリーブや包帯)やリンパマッサージなど、専門的なケアを早めに始めることが重要です。無理に重いものを持ち上げる動作は腕への負担を大きくするため、日常生活でも注意が必要です。 普段から腕の状態を観察し、小さな変化でも異変を感じたら自己判断せず、医師や看護師に報告して適切なアドバイスを受けましょう。リンパ浮腫は適切に管理すれば進行を遅らせ、生活の質を守れます。 安心して治療に臨むために大切なこと 不安や疑問を抱えたまま治療を続けると、心身の負担が増します。だからこそ、医療スタッフや専門家に無理なく声をかけ、信頼できる情報を得ることが大切です。一人で悩まず、適切なサポートを受ければ、安心感を得られます。 ここからは、不安を解消しながら治療に臨むための具体的なポイントを見ていきましょう。 不安を感じたら医療チームに相談する 治療に対する不安や疑問を感じたら、まずは医療チームへ相談しましょう。看護師や医師、病院の支援センターなど、話を聞いてくれる窓口は意外に多いものです。 一人で抱え込むと、些細な悩みでも大きく感じやすくなり、心身のストレスが高まります。感情の変化や落ち込み、睡眠の質の低下など、精神面での不調も早めに伝えることが肝心です。 医療スタッフは、患者さんの気持ちを把握すると、治療方針の調整や適切なケアの提案をしやすくなります。小さな不安でも遠慮なく相談し、周囲のサポートを積極的に活用して、安心して治療を受ける体制を整えましょう。 正しい情報を得て自分を守る 情報過多の時代だからこそ、正確な知識を得ることが自分を守る近道です。 とくにインターネット上では、誤った情報や根拠のあいまいな噂が広まりやすく、混乱のもとになりがちです。信頼できる医療機関の資料や、国の公的機関が運営するサイトなど、公平性の高い情報源を積極的に活用しましょう。 国立がん研究センターが運営する「がん情報サービス」などは専門医が監修しており、正確なデータや最新の治療法をわかりやすく提供しています。必要な知識を身につけることで、治療の進め方や副作用の程度をある程度予測でき、心の準備がしやすくなるでしょう。情報を正しく整理すれば、不安を必要以上に大きくせずに済みます。 不安なことや心配事は主治医へ聞くのが一番の方法と言えます。 乳がん放射線治療の副作用を正しく知り、不安なく治療にのぞもう 乳がんの放射線治療には、副作用が現れることがあります。しかし、多くの副作用は軽度であり、適切なケアを行うことで十分にコントロールが可能です。副作用が起こる仕組みや、現れやすい症状について事前に理解しておくと、心の準備ができ、落ち着いて対処できるようになります。 副作用のサインに早く気づき、適切なタイミングでの対処が、症状の悪化を防ぐポイントです。ひとりで悩まず、少しでも気になる症状があれば、すぐに医療チームに相談しましょう。副作用への備えは、安心して治療を続けるためにとても大切です。 乳がんの手術後の痛みでお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」のメール相談やオンラインカウンセリングにてお気軽にお問い合わせください。 参考文献 文献1 国立研究開発法人国立がん研究センター「乳がん 治療」がん情報サービス https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/treatment.html#blockskip(最終アクセス:2025年4月13日) 文献2 日本乳癌協会「Q36.乳房手術後の放射線療法の際にみられる副作用はどのようなものですか。」日本乳癌協会 ホームページ https://jbcs.xsrv.jp/guidline/p2019/guidline/g4/q36/(最終アクセス:2025年4月13日)
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胸にしこりのようなものを感じていながら、病院に行くのをためらっていませんか。 しこりがあると「乳がんかもしれない」と不安になる方も多いでしょう。 しかし、乳がんの兆候はしこりだけではありません。実は全部で12種類のチェックポイントがあります。日頃から体の変化に目を向け、気になる症状があれば乳腺外科または婦人科などで検査を受けることが大切です。 本記事では、乳がんかもしれない12の症状についてわかりやすく解説しています。最後までご覧いただくことで病院へ行くべきかどうかの判断材料が得られ、乳がんのセルフチェックにお役立ていただけるでしょう。 乳がんかもしれない12の症状一覧 乳がんが疑われる症状は、以下の12個です。本章では、これらの症状について詳しく解説します。 乳房のしこり 乳房の形や大きさの変化 乳房のへこみやツッパリ 乳房全体のはりや痛み 乳房の皮膚のあざ 乳房全体の固さ 乳頭からの分泌物 乳頭のただれや湿疹 脇の下のしこりや腫れ オレンジの皮のような皮膚 乳頭のへこみ 乳房全体の重だるさや違和感 ご自身によるセルフチェックにぜひお役立てください。 乳房のしこり 乳房にしこりを感じた場合は、痛みの有無にかかわらず注意が必要です。入浴時や就寝前など、リラックスした状態で乳房全体をやさしく触り、異物感があれば早めに受診しましょう。 ただし、しこりだけでは乳がんと断定することはできません。しこりは乳腺炎や線維腺腫(せんいせんしゅ)など別の病気でもあらわれる場合があります。(文献1)そのため、セルフチェックだけで自己判断せず、必要に応じて受診するようにしましょう。 乳房の形や大きさの変化 左右の乳房に明らかな差が出てきた場合や、急に乳房の形が変わった場合は受診を検討しましょう。 とくに片側だけが急激に大きくなる、変形するなどの変化が見られたら、なんらかの内部変化が起きている疑いがあります。鏡の前で日常的にチェックするようにしましょう。 乳房のへこみやツッパリ 乳がんが皮膚近くにできた場合、乳房の皮膚が内側に引っ張られ、へこみやツッパリとしてあらわれることがあります。さらにいつもは違和感がなくても、皮膚を軽く引っ張ったときに症状が出る場合もあります。 表面が不自然にへこんだり、引っ張られる感じがしたりする場合は、異常のサインの可能性もあるため注意が必要です。 乳房全体のはりや痛み 乳房のはりや痛みは、女性ホルモンの変動や乳腺症など、乳がん以外が原因となる場合もあります。(文献2)とくに、生理周期による女性ホルモンの変動が原因の場合、乳房のはりや痛みが周期的にあらわれたり自然におさまったりすることもあります。 ただし、痛みが1カ月以上続く場合は、医療機関で検査を受けるようにしましょう。 乳房の皮膚のあざ 乳がんの初期症状のひとつに、乳房の皮膚に原因不明のあざができるケースがあります。これは乳がんの腫瘍が血管を圧迫し、血流が悪くなることで生じることがあります。(文献3) とくに、ぶつけた記憶がないあざがある場合は注意が必要です。色の変化が数日で消えない場合は早めの受診をおすすめします。 乳房全体の固さ 乳房が全体的に硬くなったと感じる場合は、ホルモンの影響や乳腺症などが原因であるケースも多く見られます。(文献4) ただし、乳房を触っても動かないほど硬い場合は、腫瘤が乳腺内で広がっている疑いがあります。異常な硬さの場合は、病院で一度詳しい検査を受けるようにしましょう。 乳頭からの分泌物 乳頭からの分泌物の多くは、がん以外の原因によるものです。(文献5)ただし、赤や褐色など血液が混ざったような液体である場合は、乳がんの初期症状の疑いもあるため医師の診察を受けましょう。 少量でも油断せず、ティッシュやコットンなどに分泌物をつけて色を確認してみてください。また、下着に分泌物が付着して気が付くケースもあるため、見逃さないよう注意が必要です。 乳頭のただれや湿疹 乳頭に異常なただれやかゆみ、湿疹のような皮膚症状があらわれる場合も、乳がん初期症状の可能性があります。 もともと乳頭は皮膚が敏感で、トラブルが起きやすい部位です。塗り薬の使用で改善するケースもありますが、症状が長引いたり悪化したりする場合は、専門医の診察を受けるようにしましょう。 脇の下のしこりや腫れ 脇の下はリンパ節が多く集まっているため、他の部位よりもしこりができやすい場所です。 風邪やワクチン接種後などで一時的に腫れる場合もありますが、乳がんが原因の場合はリンパ節への転移の疑いもあります。痛みの有無にかかわらず、脇の下もチェックしましょう。 オレンジの皮のような皮膚 乳房の皮膚が赤みを帯び、オレンジの皮のようにザラザラ・ブツブツとした質感になることがあります。これは炎症性乳がんに見られる症状の一つです。 いつもの肌と明らかに違う質感に気づいた場合は、その下に腫瘍があるケースも考えられるため、速やかに医療機関を受診しましょう。(文献6) 乳頭のへこみ これまでなかったのに乳頭が突然へこんで見える場合は、乳頭の奥に腫瘍ができ、皮膚が内側から引っ張られている可能性があります。 生まれつきの陥没乳頭とは異なり、急な変化が見られる場合は医師の診察を受けることをおすすめします。着替えの際や入浴前後など、定期的に乳頭の状態にも目を向けてチェックしましょう。 乳房全体の重だるさや違和感 はっきりとした痛みやしこりがなくても「なんとなく乳房が重い」「はりが続く」といった違和感がある場合は注意が必要です。 腫瘍が大きくなると周囲の組織を圧迫し、乳房全体に不快感としてあらわれることがあります。わずかな変化でも見逃さず、放置せずに対応することが大切です。 乳がんかもしれないと思ったら病院で検査をしよう 乳がんかもしれないと感じた場合は、早めに医療機関で検査を受けることが大切です。診断前の段階では、以下のような検査が必要に応じて行われます。 視診や触診 マンモグラフィー 超音波(エコー)検査 病理検査(細胞を採取して調べる検査) これらの検査により、乳がんの有無や治療の必要性が判断されます。そのため、乳がんかもしれないと感じたら、早めの受診を心がけしましょう。 また「いきなり病院に行くのは不安」「誰に相談すれば良いかわからない」と感じる方は「がん相談支援センター」の利用もおすすめです。専門の相談員が対応してくれるため、一人で悩まずにまずは相談してみましょう。 乳がんかもしれない12の症状で早期発見を心がけよう 乳がんは、早期発見により治療の選択肢が広がり、予後の改善が見込まれる病気です。そのためには、日頃から自分の乳房の変化に意識を向け、変化を見逃さないことが大切です。しこりだけではなく、皮膚や乳頭の状態など、さまざまなサインを見逃さないようにしましょう。 自分でチェックしてみて「乳がんかもしれない」と感じたときは、一人で抱え込まず、医療機関の受診や専門家への相談を検討してください。 乳がんのリスクを減らすためには、セルフチェックと定期検診に加えて、日頃から免疫力を整えることも大切です。 当院「リペアセルクリニック」では、免疫力を高めることでがんの予防・再発予防を目的とした免疫細胞療法を提供しています。メール相談またはオンラインカウンセリングにて、無料相談を実施していますので、気になる方はぜひ当院までお気軽にご連絡ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 乳がんかもしれない12の症状に関してよくある質問 どのような人が乳がんになりやすい? 乳がんにかかりやすい人の特徴の一例に、以下の項目があります。(文献7) 40歳以上である 未婚である 初産年齢が高い 初めての生理が早かった 閉経が遅い 親戚に乳がんの人がいる 閉経後で肥満である 良性の乳腺の病気にかかったことがある これらの要因に心当たりがある方は、定期的なセルフチェックと検診を心がけましょう。 乳がんの手遅れとはどういう状態ですか? 乳がんが「ステージ4」と診断されてがんが他の臓器に転移している状態では、完治を目指すことが難しく、治療は延命や症状の緩和が中心になることがあります。 代表的な症状には強い痛みや全身の倦怠感、原因不明の発熱などが挙げられます。がんの進行を防ぐためにも、早期に発見し、速やかに適切な治療を受けることが大切です。 参考文献 (文献1)MSDマニュアル プロフェッショナル版「乳房腫瘍(乳房のしこり)」,2022年 3月改訂https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-%E5%A9%A6%E4%BA%BA%E7%A7%91%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E7%94%A3%E7%A7%91/%E4%B9%B3%E6%88%BF%E7%96%BE%E6%82%A3/%E4%B9%B3%E6%88%BF%E8%85%AB%E7%98%A4-%E4%B9%B3%E6%88%BF%E3%81%AE%E3%81%97%E3%81%93%E3%82%8A (文献2)MSDマニュアル プロフェッショナル版「乳房痛」, 2022年3月改訂,https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-婦人科および産科/乳房疾患/乳房痛 (文献3)近藤優,石黒清介ほか.「乳房内出血をきたした80歳以上乳癌の2例」『日本臨床外科学会雑誌』77巻(2号), p296-p302,2016年,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsa/77/2/77_296/_pdf (文献4)MSDマニュアル プロフェッショナル版「乳房疾患の評価」,2022年 3月改訂,https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-婦人科および産科/乳房疾患/乳房疾患の評価 (文献5)MSDマニュアル プロフェッショナル版「乳頭分泌物」,2022年 3月改訂,https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-婦人科および産科/乳房疾患/乳頭分泌物 (文献6)稲本俊.「IX.乳房とリンパ節」『日本内科学会雑誌』89巻(12号), p2469-p.2476, 2000年https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/89/12/89_12_2469/_pdf (文献7)厚生労働省「乳がんの危険因子」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000113424.pdf
2025.04.30