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「コレステロールが高い」 「中性脂肪が多い」 健康診断で指摘されたものの、どの食品を避ければ良いかわからず、食生活の改善に悩む方も多いでしょう。脂質異常症は、放置すれば動脈硬化や心筋梗塞などの重大な病気につながるリスクがあります。 脂質異常症と診断されたら、まずは食生活の見直しが不可欠です。本記事では現役医師が、脂質異常症で食べてはいけないものを一覧で紹介します。 記事の最後には、脂質異常症の食事に関するよくある質問についてもまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 脂質異常症に関連する「しびれ」などの症状についてお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 脂質異常症で食べてはいけないもの一覧 食品の種類 具体的な食品例 控える理由・ポイント 肉類(脂身の多い肉・加工肉) 牛・豚のバラ肉、鶏皮、ベーコン、ソーセージ、ハム 飽和脂肪酸が多く、悪玉コレステロール(LDL)を増やし、動脈硬化のリスクを高める 乳製品(全脂ヨーグルト・生クリーム・バター) 全脂ヨーグルト、生クリーム、バター、チーズ 飽和脂肪酸やコレステロールが多く、血中脂質を悪化させやすい 油脂類(マーガリン・ショートニング・揚げ物) マーガリン、ショートニング、フライドポテト、唐揚げ トランス脂肪酸や飽和脂肪酸が多く、LDL増加・HDL減少の原因になる 菓子類(スナック菓子・洋菓子) スナック菓子、ケーキ、ドーナツ、クッキー、チョコレート 脂質・糖分・トランス脂肪酸が多く、中性脂肪やコレステロールを増やす 精製された炭水化物や糖分の多い食品 白米、白パン、砂糖菓子、清涼飲料水 血糖値や中性脂肪を上げやすく、脂質異常症の管理に不向き インスタント食品や外食メニュー ラーメン、ファストフード、カップ麺、ピザ 脂質・塩分・糖分が多く、トランス脂肪酸やカロリー過多になりやすい 脂質異常症と診断された場合、食事を見直すことが不可欠です。その中でもとくに、飽和脂肪酸・トランス脂肪酸・コレステロール・糖質を多く含む食品は、血中脂質を悪化させる原因になります。 具体的には、脂身の多い肉や加工肉、乳製品、トランス脂肪酸を含む油脂類、菓子類、精製された炭水化物、インスタント食品などの摂取を控える必要があります。 以下の記事でも、脂質異常症で食べてはいけないものについて解説しています。 【関連記事】 【一覧】脂肪肝を改善できる食事は?食べてはいけないものも【医師監修】 糖尿病予備軍が「食べてはいけないもの」7選|血糖値を安定させる「大根」がおすすめな理由 肉類(脂身の多い肉・加工肉) ポイント 内容 健康への影響・推奨 飽和脂肪酸が多い 脂身の多い牛肉・豚肉、ソーセージ、ベーコンなど LDLコレステロール上昇→動脈硬化・心臓病・脳卒中リスク増。摂取は1日の総カロリーの6%以下推奨 加工肉のリスク ベーコン、ハム、ソーセージなど トランス脂肪酸・塩分も多く、悪玉コレステロール増・善玉減、血圧上昇・心血管リスク増 脂質量が重要 脂身の多い部位(赤身・白身問わず)、鶏皮付き肉など 飽和脂肪酸が多いとLDL上昇。肉の種類より脂質量に注意 代替タンパク質 青魚、大豆製品、ナッツ類など 植物性・魚由来のタンパク質や不飽和脂肪酸でLDL低下が期待できる 飽和脂肪酸は豚バラ肉や牛バラ肉、ベーコン、ソーセージなどの脂肪分の多い肉類や加工肉に多く含まれ、肝臓のLDL受容体の働きを抑制し、血中LDLコレステロール値の上昇を引き起こします。その結果、動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中などのリスクが高まるとされています。 米国心臓協会は、飽和脂肪酸の摂取を総エネルギー比6%以下に制限するよう推奨しています。(文献1) また加工肉にはトランス脂肪酸と塩分が多く含まれており、トランス脂肪酸はLDLを増やしてHDLを減少させ、塩分は高血圧を招き心血管リスクを上昇させる要因です。肉については、赤身か白身かよりも脂身の量が重要であり、鶏皮も脂質が多いため注意が必要です。 そのため、魚(とくに青魚)や豆類、ナッツ類などの不飽和脂肪酸を含む食品に切り替えることで、LDL低下が期待できます。 乳製品(全脂ヨーグルト・生クリーム・バター) 理由・ポイント 具体例 詳細 飽和脂肪酸が多い 全脂ヨーグルト、生クリーム、バター LDLコレステロール上昇リスク。低脂肪・無脂肪タイプの選択推奨 製品による影響の違い バター、生クリーム、全脂ヨーグルト、チーズ バター・生クリームは控えめ。ヨーグルト・チーズは無糖・低脂肪タイプを選択 飽和脂肪酸の過剰摂取回避 乳製品全般 食事全体で飽和脂肪酸を抑え、心血管リスク低減 食べ方の工夫 バター・生クリーム・ヨーグルト・チーズ たまの使用や低脂肪・ノンファット製品への置き換え 全脂ヨーグルトやバターに多く含まれる飽和脂肪酸は、肝臓のLDL受容体の働きを抑制し、結果的にLDLコレステロール値を上昇させます。 米国心臓協会は、飽和脂肪酸摂取の総カロリーを6%以下に抑えることを推奨しており、生クリームやバターの過剰摂取による健康リスクを軽減すると報告されています。(文献1) ただし、全脂ヨーグルトやチーズは種類によっては悪影響が少ないとされており、必ずしも避ける必要はありません。まずは低脂肪または無脂肪の製品を選ぶのがおすすめです。(文献2) TLC(治療的生活習慣改善)プランでは、飽和脂肪酸と総コレステロールを制限することで動脈硬化や心血管疾患のリスク低下が示されており、とくに乳製品は飽和脂肪酸の主要な供給源であるため注意が必要です。 ヨーグルトや牛乳を取り入れる場合は、低脂肪または無脂肪タイプを選ぶことで脂質を抑えつつ、カルシウムやタンパク質をしっかり補えます。 油脂類(マーガリン・ショートニング・揚げ物) 理由・ポイント 具体例 健康への影響・注意点 トランス脂肪酸の含有 マーガリン、ショートニング LDL(悪玉)コレステロール上昇、HDL(善玉)コレステロール低下、動脈硬化・心血管疾患リスク増。摂取は総エネルギーの1%未満推奨 揚げ物の油の問題 フライ、ドーナツなど 油の繰り返し加熱でトランス脂肪酸が増加する。脂質摂取量も多くなりやすい 飽和脂肪酸の多さ 揚げ物、加工油脂 飽和脂肪酸がLDLコレステロールを上げ、心血管リスクを高める 日本人の摂取状況 パン、洋菓子、揚げ物 平均摂取量は少ないが、頻繁に食べる人は注意が必要 マーガリンやショートニングには、部分水素化された油に由来するトランス脂肪酸が含まれており、LDL(悪玉)コレステロールを上昇させるだけでなく、HDL(善玉)コレステロールを低下させるため、動脈硬化や心血管疾患リスクの要因となります。 一般社団法人日本動脈硬化学会も冠動脈疾患のリスク因子として、トランス脂肪酸の摂取を総エネルギーの1%未満に抑えることを推奨しています。(文献3) 揚げ物は、油を繰り返し加熱することでトランス脂肪酸が増え、衣が油を多く吸収するため、脂質の摂取量が過剰になりやすい食品です。また、加工油脂や揚げ油には飽和脂肪酸も含まれており、LDLの上昇を促します。 日本人の平均的なトランス脂肪酸摂取量は総エネルギーの約0.3%と、WHOの1%未満という基準を十分に下回っていますが、パン類・洋菓子・揚げ物を頻繁に摂取する方では、1%を超えるケースも報告されており、注意が必要とされています。(文献4) 脂質異常症管理においては、調理油の種類や使用頻度、調理方法に注意し、トランス脂肪酸と飽和脂肪酸の摂取を控えることが重要です。たとえば、蒸す・焼くなど油を控えた調理法への切り替えが推奨されます。 菓子類(スナック菓子・洋菓子) スナック菓子や洋菓子には、トランス脂肪酸や飽和脂肪酸、精製された糖分が多く含まれています。これらは悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪を増やし、善玉(HDL)コレステロールを減らすため、脂質異常症や動脈硬化、心疾患のリスクを高めます。 また、菓子類は高カロリーで肥満の原因にもなりやすく、生活習慣病が悪化する要因の1つです。間食には果物や無糖ヨーグルト、ナッツなどを選び、成分表示でトランス脂肪酸を確認する習慣が数値改善と病気予防に役立ちます。 精製された炭水化物や糖分の多い食品(白米、白パン、砂糖菓子) 項目 内容 健康への影響・注意点 控える理由 精製炭水化物は中性脂肪を上げやすく、HDL(善玉)コレステロールを下げやすい 肥満、動脈硬化、心血管疾患リスク増加 不足しやすい栄養素 食物繊維、ビタミンB群、ミネラル 栄養バランスの乱れ、コレステロール排泄促進効果の減少 控えたい食品 白米、白パン、砂糖菓子、精白麺、菓子パン 高GI・高糖質食品 おすすめ食品 玄米、全粒粉パン、雑穀ご飯 食物繊維・ビタミン・ミネラルが豊富、コレステロール排泄促進 注意点 糖質を極端に減らさず、バランス良く摂取 炭水化物エネルギー比率は50~55%が目安 白米や白パン、砂糖を多く含む菓子や飲料などの精製された炭水化物は、血糖値を急上昇させやすく、中性脂肪の増加やHDL(善玉)コレステロールの低下を引き起こします。その結果、脂質異常症が悪化し、動脈硬化や心血管疾患のリスクが高まります。また、これらの食品は食物繊維やビタミン・ミネラルが不足しやすく、栄養バランスも崩れがちです。 日本循環器協会も、精製されていない穀類への切り替えを推奨しており、玄米などはコレステロール排泄を促進する効果も報告されています。ただし、糖質の極端な制限は、近年の研究では死亡リスクの上昇とも関連していると報告されています。そのため、日本人では炭水化物の摂取比率は総エネルギーの50~55%が望ましいです。(文献4) 主食を選ぶ際は、玄米や全粒粉パンなどの未精製穀類を取り入れ、食物繊維とともにバランスよく摂ることが大切です。 インスタント食品や外食メニュー(ラーメン・ファストフード) インスタント食品やファストフードは、飽和脂肪酸・トランス脂肪酸・塩分・カロリーが多く含まれており、脂質異常症の悪化に直結します。インスタントラーメンや揚げ物は、LDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪を増やし、HDL(善玉)を減らす原因になります。 また、日本国内の研究では、牛丼のようなファストフードを12週間継続摂取した結果、血圧の上昇や血中脂質の変動が確認されており、健康リスクの高さが指摘されています。(文献5) どうしても外食が必要なときは、揚げ物や濃い味付けを避け、野菜の多い定食などを選び、脂質・塩分・カロリーを抑える意識を持つことが大切です。 脂質異常症で食べたほうがいい食材一覧 食材グループ 具体例 期待できる効果・ポイント 青魚や魚介類 さば、いわし、さんま、さけ、まぐろ EPA・DHAの摂取で中性脂肪低下、悪玉コレステロール抑制、動脈硬化予防 野菜・海藻・きのこ類 ほうれん草、ブロッコリー、わかめ、ひじき、しいたけ、えのき 食物繊維が豊富でコレステロール吸収抑制、血糖値安定、ビタミン・ミネラル補給 大豆製品 豆腐、納豆、豆乳、みそ、おから 植物性タンパク質とイソフラボンで血中脂質改善、動脈硬化予防 良質な油脂 オリーブオイル、えごま油、アマニ油 不飽和脂肪酸が多く、悪玉コレステロール低下、心血管リスク低減 玄米・全粒粉パンなど低GI食品 玄米、雑穀米、全粒粉パン、そば 食物繊維・ビタミン・ミネラルが豊富、血糖値の急上昇を防ぎ中性脂肪抑制 脂質異常症の改善には、避ける食品だけでなく、積極的に摂りたい食材を意識するのも重要です。血中脂質のバランスを整える栄養素を含む食品を選ぶことで、無理なく健康的な食生活を続けやすくなります。 以下の記事では、食事以外にも脂質異常症を改善する方法を解説しています。 青魚や魚介類(EPA・DHAを含む) 項目 内容 期待できる効果・ポイント EPA・DHAの作用 青魚に多いオメガ-3系脂肪酸 中性脂肪(TG)を減らし、脂質バランスを改善 抗炎症作用 血管の炎症抑制 動脈硬化予防、心筋梗塞や脳卒中リスク低減 血液サラサラ効果 EPAが血小板凝集を抑制 血栓予防、心血管トラブル予防 摂取目安 サバ、イワシ、アジ、サンマなどを週2〜3回 焼き魚・煮魚など揚げない調理法がおすすめ (文献5) 青魚に多く含まれるEPAやDHA(オメガ-3系脂肪酸)は、血液中の中性脂肪を減らし、脂質バランスを整える働きがあります。EPAには血管の炎症を抑える作用があり、動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中の予防にも効果が期待されています。 また、血小板の凝集を抑えることで血液をサラサラに保ち、血栓の予防にもつながります。青魚(サバ、イワシ、アジ、サンマなど)は、週2〜3回を目安に取り入れると効果的です。DHAは生活習慣病だけでなく、目の健康にも良いとされています。(文献6) 調理法は煮魚や焼き魚など、揚げない方法がおすすめです。揚げない調理法で仕上げることで、余分な脂を避けつつEPA・DHAを効率よく摂取できます。 野菜・海藻・きのこ類(食物繊維が豊富) 項目 内容 期待できる効果・ポイント コレステロール吸収抑制 水溶性食物繊維(海藻、果物、麦類) LDLコレステロール低下、胆汁酸の排出促進 不要な脂質排出 食物繊維全般 余分な脂質の便排出、脂質異常症の改善 腸内環境改善 不溶性食物繊維(ごぼう、きのこ、豆類、根菜) 便通促進、腸内環境の正常化 摂取バランス 水溶性:不溶性=1:2が理想 野菜・きのこ・海藻の組み合わせ推奨 摂取目安 男性18~64歳22g以上、女性18~74歳18g以上/日 日本人の食事摂取基準2025年版準拠 食物繊維は、コレステロールや中性脂肪の吸収を抑え、余分な脂質の排出や便通の改善に役立つため、脂質異常症の改善に重要です。とくに水溶性食物繊維はLDL(悪玉)コレステロールの低下に効果的で、不溶性食物繊維は腸の動きを活発にし便通を促進します。 野菜・海藻・きのこ類を組み合わせることで、水溶性と不溶性を1:2のバランスで摂ることができ、どちらも効率よく補えます。日本人の食事摂取基準(2025年版)では、男性18~29歳・75歳以上は1日20g以上、30~64歳は22g以上、65~74歳は21g以上、女性18~74歳は18g以上、75歳以上は17g以上が目標量です。(文献6) 調理時は油の使いすぎに注意し、蒸し物や煮物を中心に取り入れることが、無理なく脂質コントロールにつながります。 大豆製品(豆腐・納豆・豆乳など) 大豆製品は植物性タンパク質を豊富に含み、飽和脂肪酸が少ないため、脂質異常症に適した食品とされています。豆腐・納豆・豆乳は調理が簡便で、日常の食事に取り入れやすい点も特徴です。大豆イソフラボンや大豆タンパク質には、LDL(悪玉)コレステロールを低下させる効果が臨床試験で確認されています。(文献7) さらに、植物ステロールや食物繊維の作用により、腸管からのコレステロール吸収も抑制されます。納豆は発酵によって栄養価が高まり、健康効果がさらに期待できます。肉類の代替として大豆製品を取り入れることで、飽和脂肪酸の摂取を減らしつつ、良質なタンパク質とバランスの取れた栄養補給が可能となり、脂質異常症の改善や予防に有用です。 良質な油脂(オリーブオイル・えごま油) オリーブオイルやえごま油などの良質な油脂は、脂質異常症の方にとって非常に有効な食材です。これらの油に多く含まれる不飽和脂肪酸は、血液中の脂質バランスを整える働きがあります。 オリーブオイルの主成分であるオレイン酸は、悪玉(LDL)コレステロールを下げ、善玉(HDL)コレステロールにはほとんど影響を与えません。えごま油に豊富なα-リノレン酸は、中性脂肪を減らし、血液をサラサラに保つ効果や血栓予防作用が期待できます。 動物性脂肪やトランス脂肪酸を多く含む油の代わりに、これらの良質な油に置き換えることで、動脈硬化や心疾患のリスクを下げられます。ただし、どんな油でも摂りすぎはカロリー過多の原因となるため、適量を守ることが大切です。炒め物やサラダに上手に取り入れ、脂質の「質」を意識した食生活を心がけましょう。 玄米・全粒粉パンなどの低GI食品 ポイント 内容 期待できる効果 血糖値の急上昇抑制 低GI食品(玄米・全粒粉パン) 中性脂肪の増加防止、脂質異常症の改善 食物繊維が豊富 白米・白パンより多い食物繊維 LDLコレステロール低下、腸内環境の改善 満腹感の持続 噛む回数が増え消化がゆっくり 過食・間食の予防、体重管理 糖尿病・肥満予防 低GI・高食物繊維の特性 生活習慣病全体のリスク低減 低GI食品は血糖値の急上昇を抑え、インスリンの過剰分泌を防ぐことで肝臓での中性脂肪の合成を抑制し、脂質異常症の改善に役立ちます。玄米や全粒粉パンに多く含まれる食物繊維は、胆汁酸と結合してLDLコレステロールを下げる効果があり、全粒穀物の摂取によるLDLコレステロール低下も期待できます。 粒子が粗いため噛む回数が増え、満腹感が持続しやすく、過食や間食の抑制にもつながり、低GIかつ高食物繊維の食事は肥満や糖尿病のリスクを下げ、脂質異常症だけでなく生活習慣病全体の予防にも有効です。主食に玄米や全粒粉パン、雑穀ごはんを取り入れることで、血液の脂質バランスと健康維持が期待できます。 今日から始められる食事の見直しポイント 見直しポイント 詳細 食事の量やバランスを考慮する 適正なエネルギー量の把握、主食・主菜・副菜の組み合わせ、さまざまな食材の選択、食物繊維の積極的摂取 調理法を見直す 油の使用量の制限、揚げ物や脂質の多い料理の頻度を減らす、蒸し物・煮物・焼き物の活用、調理油の種類の工夫 外食での食事選びを工夫する 主食・主菜・副菜が揃うメニューの選択、野菜や魚料理の優先、油や塩分の多い料理の回避、量の調整 脂質異常症の改善には、特定の食品を取り入れるだけでなく、日々の食事全体を見直すことが重要です。どのくらい食べるか、どのように調理するか、外食では何を選ぶかといった基本的なポイントを意識し、食事の量やバランス、調理法の工夫が実践的な改善につながります。 無理のない範囲で生活を見直すことが、脂質コントロールと健康維持の第一歩です。ただし、自己判断で行うのではなく、医師の指導のもとで進めることが大切です。 食事の量やバランスを考慮する ポイント 内容 適切なエネルギー摂取で肥満と脂質異常を防ぐ 摂取エネルギーの適正管理、体重増加防止、BMIの安定化、脂質異常症悪化の予防 バランスの良い食事が血中脂質を改善する 和食パターン(ご飯・魚・野菜・大豆)による血中脂質改善と動脈硬化予防 バランス配分(主食・主菜・副菜)が習慣化を後押し 野菜・果物と全粒穀物を皿の半分に、残りをタンパク質源にする食事習慣による血中脂質・体重管理支援 過食やムラ食を防ぎ、脂質バランスを保てる 一定量の食事と均等なバランスによる間食・過食防止、血糖・中性脂肪の安定化 (文献8) 脂質異常症の予防・改善には、摂取エネルギーを抑えつつ、栄養バランスの良い食事を心がけることが重要です。主食・主菜・副菜をそろえた一汁三菜のような食事スタイルは、自然と食べすぎを防ぎ、満足感を得やすくなります。 米国農務省によると、野菜や果物、全粒穀物を皿の半分に、残りをタンパク質源とする食事習慣が、血中脂質の改善や体重管理に効果的とされています。たとえば、白米を玄米に替える、肉の代わりに魚や大豆製品を取り入れるといった工夫が、過剰な脂質やカロリーの摂取を防ぎ、栄養バランスを整える助けになります。 日々の食事で、量の調整と食材の組み合わせを意識することが、脂質異常症の改善への一歩となります。 調理法を見直す 見直しポイント 内容 脂質の摂取量を抑えられる 油を多く使う揚げ物や炒め物を控える 余分な脂を減らせる 焼く・茹でることで脂が自然に落ちる トランス脂肪酸や酸化を防げる 高温加熱を避け、健康リスクを軽減 カロリー摂取の抑制・肥満予防につながる 油を使わない分、全体のカロリーが減る 取り入れやすい工夫 揚げ物を蒸す・茹でる・焼くに切替える 脂質異常症の改善には、毎日の調理法を見直すのが効果的です。揚げ物や炒め物は脂質やカロリーの摂取量が増える原因となりますが、蒸す・茹でる・焼く調理法なら、油の使用を抑えることで、脂質やカロリーの摂取量も自然に減らせます。 また、余分な脂が落ちるためコレステロールの管理にも役立ちます。家庭でもすぐに取り入れられる実践的な方法です。 外食での食事選びを工夫する 外食は脂質や塩分が多くなりやすく、脂質異常症を悪化させる原因となります。揚げ物や脂っこい料理は避け、焼き魚や蒸し料理、野菜が多く含まれる定食を選ぶことで、栄養バランスが整いやすくなります。 主食・主菜・副菜・汁物がそろった定食は、食物繊維が豊富で、LDLコレステロールの抑制にも効果的です。野菜や汁物を先に食べる、栄養成分表示を参考にするなどの工夫も有効です。 ラーメンのスープを残す、丼物より定食を選ぶ、腹八分目を意識するなど、外食でも脂質を抑える工夫を重ねることで、脂質異常症の予防・改善につながります。 脂質異常症における食べていけないものを控えてバランスの良い食事を心がけよう 脂質異常症と診断された方は、まず「避けるべき食品」を知り、日々の食事を見直すことが大切です。飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を含む食品を減らし、青魚や野菜、食物繊維が豊富な食品を積極的に取り入れることで、脂質バランスの正常化に貢献します。 また、調理法や食事の量にも気を配ることで、日常生活の中で無理なくコントロールできます。一人で改善が難しいと感じる場合は、医師や管理栄養士への相談も選択肢のひとつです。 脂質異常症と密接に関係する糖尿病にお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。糖尿病はインスリンをつくる細胞の働きが弱くなることで起こります。再生医療はその細胞を補い、機能を回復させることで、根本的な治療につながると期待されています。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 脂質異常症の食事に関するよくある質問 脂質異常症で食べても良いお菓子はありますか? 脂質異常症の方でもお菓子を楽しむことはできますが、脂質やカロリーが少ないものを選び、量に注意しましょう。羊羹や寒天、高カカオチョコ、あたりめなどがおすすめです。 成分表示を確認し、個包装を活用すると食べすぎ防止にもなります。洋菓子やスナック類は控えめにしましょう。 食事制限はいつまで続ければいいですか? 脂質異常症では、まず3〜6カ月間、食事や運動など生活習慣の改善を行い、血液検査で効果を確認します。数値が改善しても再発しやすいため、食事管理は継続が必要です。薬を始めた場合も、医師の指示に従って続けましょう。 脂質異常症は食事以外に気を付けることはありますか? 脂質異常症の改善には、食事に加えて生活習慣全体の見直しが重要です。有酸素運動(ウォーキングやジョギングなど)を1日30分以上、週3回以上行うことで、HDL(善玉)コレステロールを増やし、中性脂肪を減らす効果があります。 さらに、禁煙や節酒、適正体重の維持、定期的な検査も大切です。必要に応じて医師の指導で薬を併用するケースもあります。 以下の記事では、脂質異常症の薬物療法について詳しく解説しています。 参考文献 (文献1) Saturated Fat|American Heart Association (文献2) Is It Okay to Eat Butter If You Have High Cholesterol? A Cardiologist Settles the Debate|EatingWell (文献3) 脂質異常症診療のQ&A|一般社団法人日本動脈硬化学会 (文献4) 食事に気を付けよう|日本循環器協会 (文献5) 脂質異常症の食事|厚生労働省 (文献6) 食物繊維の働きと1日の摂取量|公益財団法人長寿科学復興財団 (文献7) Cumulative Meta‐Analysis of the Soy Effect Over Time|AHA|ASA Journals (文献8) 厚労省が「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を公表 脂質異常症と高齢者のフレイルに対策 よりきめ細かな食事指導が必要に|保健指導リソースガイド
2025.07.31 -
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「足先が冷える」「しびれが続く」といった症状が気になっていませんか。 その不調は、ただの疲労や年齢のせいではなく、「バージャー病」という血管の病気が関係している可能性があります。 バージャー病とは、主に手足の血管が詰まり、進行すると壊死や切断のリスクもある深刻な疾患です。 本記事では、「バージャー病」について、気になる初期症状や原因、治療法を医師がわかりやすく解説します。 ぜひ本記事を参考にご自身の症状と照らし合わせ、バージャー病の可能性がないかどうかを確認してみてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 バージャー病について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 バージャー病とは手足の血管が詰まりやすくなる難病 バージャー病とは、正式名称は「閉塞性血栓性血管炎」で、手足の血管が詰まりやすくなる指定難病の一つです。発症には喫煙が深く関係しており、特に「若年層で喫煙歴のある男性」に多いと報告されています。(文献1) (文献2) 主に手足の動脈や静脈に炎症が起こることで血管が詰まり、手足の冷えやしびれ・痛みなどの症状があらわれます。死亡率はきわめて低いものの、進行すると皮膚潰瘍や組織の壊死を引き起こし、手足の切断に至るケースもあるため注意が必要です。 また、国内の患者数は2012年時点で約7,000人と推定されており、生活の質(QOL)を守るためにも、早期発見と禁煙を含めた適切な治療が大切です。(文献1) 【進行度別】バージャー病にみられる症状 バージャー病の症状は、病気の進行とともに変化し、初期段階から末期にかけて段階的に悪化することがあります。本章では、進行度に応じてみられる主な症状を順を追って解説します。 重症化を防ぐためにも、早期に異変に気づき、適切な対処を心がけましょう。 なお、バージャー病にみられる「血栓性静脈炎」については、以下の記事にて詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 初期症状|手足のしびれが多い バージャー病の初期症状として多く見られるのが、手足のしびれや冷えです。 これらの症状は、末梢血管の炎症により血流が悪化し、組織への酸素・栄養供給が不足することで起こります。 また、皮膚が青白く変色するチアノーゼが見られることもあります。冷たいものに触れたときや寒い場所にいるときに血行が一時的に悪化し、皮膚の色が青白く変化する現象です。その後じんじんとした痛みを感じることもあります。 これらの症状はいずれも血行不良のサインであり、放置すると進行する可能性があるため早めの対処が重要です。 進行した症状|運動時の足の違和感・潰瘍があらわれることも バージャー病が進行すると、初期症状に加えて、見た目にもわかるような症状があらわれることがあります。代表的な症状は以下のとおりです。 症状 説明 間欠性跛行(かんけつせいはこう) 一定距離を歩くと足が痛くなり、休むと痛みが和らぐ 手足の潰瘍 皮膚が赤黒く変色し、表面がただれて見えることが多く、悪臭を伴う場合もある ただし、バージャー病の症状があらわれる順番は個人差があり、人によっては最初から指先をはじめとする部位に潰瘍ができるケースもあります。手足の違和感や見た目の変化が気になる場合は、早めに受診するようにしましょう。 バージャー病と同様、間欠性跛行がみられることが多い病気に「閉塞性動脈硬化症」があります。詳細はこちらの記事でも解説していますので、気になる方はあわせてご覧ください。 末期状態|壊死による切断リスクがある バージャー病が末期状態にまで進行すると、潰瘍が広がり、最終的には壊死(組織死)が起こるようになります。 壊死とは、血流が完全に途絶えることで酸素や栄養が届かなくなり、組織が死んでしまう状態です。壊死した部位は黒く変色して冷たくなり、感覚がなくなることも多く見られます。 さらに壊死が進行すると感染症を併発しやすくなり、生命に危険が及ぶ可能性が高まります。そのため、壊死の部位を取り除くために患部の手足を切断せざるを得ないケースもあるのです。 手足の切断は、生活の質を著しく低下させるため、末期に至る前の早期発見と治療が大切です。 バージャー病の原因の多くは「喫煙習慣」 バージャー病の最大の危険因子は、喫煙習慣です。 タバコに含まれるニコチンをはじめとする有害物質が、血管の細胞に直接ダメージを与え、炎症を引き起こしやすくなります。さらに血小板が集まりやすくなるため、血の塊ができやすくなります。 特に、手足の末梢にある細い血管でこの作用が強く働き、血流が阻害されるため、初期段階では手足に症状があらわれやすくなるのです。 そのため、バージャー病と診断された場合、禁煙が最も重要な治療法の一つとなります。 バージャー病の治療法 医療機関で行われるバージャー病の治療法は、主に以下の4つです。 禁煙 薬物療法 運動療法 手術(重症の場合) 治療法をあらかじめ知っておくことで、医師との相談がスムーズになり、自分に合った治療を選ぶ際の参考になります。本章を参考に、それぞれの治療内容について理解を深めてみてください。 禁煙 喫煙は、バージャー病の大きな要因とされており、多くの場合で喫煙者に対しては禁煙を勧められます。禁煙によりバージャー病の進行抑制や再発リスクの低減などが期待されています。 ただし、自力での禁煙が難しい方も少なくありません。そのような場合は、医療機関による禁煙支援を活用するのも有効です。主な支援内容には、以下のようなものがあります。(文献3) ニコチン依存度のチェック 呼気の測定 ニコチンパッチやニコチンガムなどを使った薬物療法 専門スタッフによる禁煙指導 これらの支援を受けることで、禁煙の成功率を高めることができます。禁煙に不安を感じる方は、ひとりで抱え込まず、このような支援を積極的に活用してみましょう。 薬物療法 手足しびれや冷えが認められる場合は血行不良が疑われるため、抗血小板薬(血液をサラサラにする薬)が処方されることがあります。(文献4) これにより、血のかたまりの形成を抑えて血管の詰まりを予防し、手足の冷えやしびれといった症状の緩和につながるのです。 状態によっては、血管拡張薬や血流改善薬などが用いられることもありますが、これらの薬は病状や体質に応じて医師が判断します。自己判断せず、早めに医療機関を受診しましょう。 運動療法 間欠性跛行の症状がある場合、薬物療法に加え、医師や理学療法士の指示の下で運動療法が行われることがあります。なかでも代表的なのが「トレッドミル療法」です。(文献4) トレッドミル(電動式の歩行マシン)を使用し、一定の速度で歩行を行い、痛みが出た時点で休憩をはさむというサイクルを繰り返し行います。これにより血流改善や歩行能力の向上が期待できるのです。 ただし、潰瘍や壊死がある場合は、運動により症状を悪化させるおそれもあります。必ず専門医の指導のもとで行うようにしましょう。 重症例は手術を行う 薬物療法や禁煙だけでは改善が見られない場合や症状が進行する場合には「血行再建術」と呼ばれる手術が行われることがあります。「血行再建術」は詰まった血管の代わりに人工血管や自身の血管を用いて迂回路(バイパス)を作り、血流を回復させる治療法です。 また、血行再建術が困難な場合や手指に限局した潰瘍がある場合は「交感神経節切除」が行われることもあります。 一方で、これらの従来治療では十分な効果が得られない症例も少なくありません。そのような中で注目されているのが、細胞や組織の再生能力を活かした「再生医療」です。 再生医療では、自身の細胞を活用して血管や組織の再生を図る治療を行います。 当院「リペアセルクリニック」では、この再生医療を取り入れた治療を行っております。メール相談やオンラインカウンセリングを通じて無料のご相談も可能です。 バージャー病の治療方針に悩まれている方は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。 バージャー病の進行を防ぐ生活習慣・日常の注意点 バージャー病の進行を防ぐためには、治療と並行して日常生活でのセルフケアも大切です。日常生活の主な注意点は以下の3つです。 受動喫煙を避ける 手足を冷やさない 生活習慣の治療を適切に管理する この章を参考に、今日からできる予防習慣を少しずつ取り入れていきましょう。 たばこの煙を避ける 喫煙は、バージャー病の発症リスクを高めます。自分自身が禁煙するのはもちろんのこと、喫煙していない方も周囲の環境に注意を払うことが大切です。タバコの煙には、喫煙者が直接吸い込む「主流煙」だけでなく、周囲に拡散される「副流煙」にも多くの有害物質が含まれています。 家庭や職場などに喫煙者がいる場合は、分煙環境を整える、喫煙スペースに近づかないなど、受動喫煙を避ける対策を講じましょう。 手足を冷やさない バージャー病では末梢の血流が悪くなるため、特に冷えに注意が必要です。 特に寒い季節や冷房の効いた室内では、知らないうちに血流が悪化しやすくなります。以下のような工夫で、手足を温かく保ちましょう。 靴下や手袋を重ねて着用する 就寝前に湯船でしっかり温まる 外出時は手足の露出を避ける服装を選ぶ 手足の冷えは、バージャー病の症状悪化に直結するため、日頃から意識的に温める習慣を持つことが大切です。 なお「冷えていないのに手足が冷たく感じる」場合の対処法は、こちらの記事でも詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。 生活習慣病の治療を適切に受ける 糖尿病・高血圧・高脂血症といった生活習慣病は、いずれも末梢血流の悪化を進める要因となります。 糖尿病は血管にダメージを与え、高血圧や高脂血症は動脈硬化を進行させます。これらの病気を治療せずに放置すると、バージャー病の進行を早めたり、合併症を引き起こしたりするリスクが高まります。 そのため、生活習慣病の治療中の方は、医師の指導のもとで食事や運動などの生活習慣を見直し、必要に応じて薬を正しく服用することが大切です。 また、生活習慣病は初期には自覚症状がないことも多いため、症状がなくても年に1回程度の定期的な健康診断を受けるようにしましょう。 バージャー病は早期発見と禁煙が進行抑制のカギ バージャー病は、手足の血管が詰まる進行性の難病であり、主な原因は喫煙とされています。初期には足のしびれや冷えといった症状から始まり、最悪の場合には手足の切断に至ることもあるため、早期対応が重要です。 バージャー病の予防や進行抑制には、禁煙と早期発見が不可欠です。本記事を参考にし、気になる症状がある場合は、速やかに専門医の診察・治療を受けましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、もともと人体にある幹細胞を用いた再生医療による治療を行っております。メール相談やオンラインカウンセリングを通じて無料相談も受付中です。 バージャー病の治療方針に悩まれている方は、お気軽に当院までご相談ください。 バージャー病に関してよくある質問 閉塞性動脈硬化症(ASO)との違いは? バージャー病と閉塞性動脈硬化症(ASO)には、以下のような違いがあります。(文献4)(文献5) バージャー病 閉塞性動脈硬化症(ASO) 主な発症年齢 若年層(特に喫煙者) 高齢者が中心 最大のリスク要因 喫煙 (生活習慣病も影響することあり) 動脈硬化(糖尿病・高血圧・高脂血症などの生活習慣病) 影響が出やすい血管の場所 手足の細い血管に断続的に発生 比較的太い血管に広範囲に発生 血管の状態 血管壁が炎症を起こして閉塞 血管壁が硬化し閉塞 鑑別には、年齢、喫煙歴、他の生活習慣病の有無などが用いられます。 バージャー病は何科で見てもらえるの? バージャー病の症状が疑われる場合は、血管外科、循環器内科、または膠原病内科での診療が可能です。 お住まいの地域に血管外科や循環器内科がない場合や、どの科を受診すべきか迷うときは、まずはかかりつけ医や総合診療科を受診することをおすすめします。 いずれの場合も、不安な症状がある場合は早めに医療機関を受診し、必要に応じて専門医の診察を受けることが大切です。 参考文献 文献1 047 バージャー病|厚生労働省 文献2 CLINICAL STUDY ON BUERGER'S DISEASE AT A TERTIARY CARE TEACHING HOSPITAL, SILCHAR|INTERNATIONAL JOURNAL OF SCIENTIFIC RESEARCH 文献3 禁煙治療ってどんなもの?|厚生労働省 文献4 血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改訂版)|合同研究班(日本循環器学会・日本血管外科学会など) 文献5 コラテジェン筋注用 |PMDA
2025.07.31 -
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腎臓癌と診断され「これからどうなるのか」と不安を抱えている方もいらっしゃるでしょう。 腎臓癌にはさまざまなタイプがあり、進行スピードや症状のあらわれ方には個人差があります。 ただし、治る確率は、どのくらい進行しているのか判断する「ステージ」によって異なるのです。 本記事では、腎臓癌の進行スピードやステージごとの治る確率、進行度による症状の変化を解説します。 今後をしっかり見据えて治療に臨みたい方は、ぜひ参考にしてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 腎臓がんに対する再生医療について知りたい方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 腎臓癌の進行スピードには個人差がある【早いとは限らない】 腎臓癌と聞いて「すぐに悪化してしまうのでは?」と不安になる方もいるかもしれませんが、腎臓癌の多くを占める腎細胞癌(じんさいぼうがん)は、進行スピードが必ずしも早いとは限りません。 腎臓癌はどこの細胞が癌化したかによって、「腎細胞癌」と「腎盂癌(じんうがん)」の2種類に分けられます。(文献1) 癌化した細胞 特徴 腎細胞癌 腎実質の細胞 一般的に「腎臓癌」と呼ばれるのはこのタイプ 腎臓癌の多くを占める 腎盂癌(じんうがん) 尿管につながる「腎盂」にある細胞 尿管癌とまとめて治療されるケースが多い 腎細胞癌は、さらに14タイプに分かれ、なかでも「淡明細胞癌(たんめいさいぼうがん)」が約70%~85%を占めるとされています。 タイプによって進行スピードに差があるという報告もありますが、実際の進行スピードは癌のステージや本人の体調によってさまざまです。 一方、腎盂癌を含む尿路上皮にできる癌は、尿路全体にできたり再発をくり返したりしやすく、腎細胞癌とは治療方針も異なります。 自分の癌のタイプがわからない方は、今後の治療の見通しを正しく理解するためにも、次回の診察時に医師へ確認してみましょう。 なお、本記事では腎臓癌の多くを占める「腎細胞癌」を中心に解説します。 【進行度別】腎臓癌の症状 腎臓癌は、進行の度合いによって症状のあらわれ方が変わります。 進行度合い あらわれやすい症状 初期 ・多くが無症状 進行時 ・血尿 ・食欲不振 ・おなかのしこり 転移時・末期 ・痛み ・呼吸困難 詳しく解説します。 初期症状|多くが無症状 腎臓癌の初期段階では、ほとんどの場合で自覚症状がありません。(文献1) そのため、健康診断での画像検査や、ほかの病気の検査中に偶然発見されることが多い傾向です。 進行時の症状|血尿・食欲不振・おなかのしこり 腎臓癌が進行すると、腎臓や周りの組織が癌で圧迫されたり、癌が周囲の組織に侵入すること(浸潤:しんじゅん)で、さまざまな症状があらわれます。 代表的な症状は以下のとおりです。(文献1) 食欲不振 吐き気や便秘 おなかの痛み・しこり 背中や腰の痛み 血尿 足のむくみ 症状の出方には個人差があり「なんとなく体調が悪い」程度の変化しか感じない方もいます。 転移したとき・末期の症状|痛み・呼吸困難 腎臓癌がさらに進行してほかの臓器に転移すると、その転移先に応じた症状があらわれます。 腎臓癌はとくに「肺」への転移が多く、ほかにも骨、肝臓、副腎、脳などにも広がる恐れがあります。(文献1) 転移部位ごとの症状は、以下のとおりです。(文献2) 転移部位 あらわれやすい症状 肺 ・咳 ・血痰 ・呼吸困難 骨 ・骨の痛み ・骨折しやすさ 肝臓 ・おなかの張り ・だるさ ・黄疸 副腎 ・腹痛 ・血圧・血糖値の上昇 ・筋力低下 脳 ・頭痛 ・めまい ・けいれん このように、末期になると痛みや息苦しさ、だるさなど、自覚する症状が強くなる傾向です。 腎臓癌の治る確率を左右する「ステージ分類」と「5年生存率」 腎臓癌は進行の段階(ステージ)が1〜4に分類され、ステージが進むほど、治る確率(生存率)は低くなる傾向にあります。 よく使われるのが「5年生存率」という指標で、これは「癌と診断されてから5年後に生きている人の割合」のことです。 本記事では「ネット・サバイバル」と呼ばれる、純粋に癌そのものが原因で亡くなったかどうかに焦点をあてたデータをもとにしています。(文献3) 以下に、2014年〜2015年におけるステージごとの特徴と、5年生存率をまとめました。(文献3)(文献4)(文献5) 腎癌のステージ 特徴 5年生存率(ネット・サバイバル) ステージ1 癌が腎臓のなかにとどまり、大きさは7cm以下 94.9% ステージ2 癌はまだ腎臓のなかだが、7cmより大きい 87.9% ステージ3 癌が腎臓の外に広がっている(ただし腎臓を包む脂肪の膜は超えていない) 血管のなかに入り込んでいる 76.5% ステージ4 癌がほかの臓器に転移しているか、周りの臓器に直接広がっている 18.7% このように、早期に見つかれば見つかるほど、治療によって長く生きられる可能性が高くなります。 【進行ステージ別】腎臓癌の治療法 腎臓癌の治療法は、以下のように癌のステージによって異なります。 ステージ1・2|手術が基本 ステージ3|手術+リンパ節郭清/凍結療法 ステージ4|分子標的薬治療+手術+薬物療法、放射線治療 迷いや不安があるときは、医師としっかり話し合いながら納得のいく方針を立てて、治療を受けましょう。 ステージ1・2|手術が基本 進行が浅いステージ1・2では、手術による癌の切除が基本的な治療法です。 標準的には、腎臓をまるごと取り除く「腎摘出術」がおこなわれます。 癌が小さい場合や、腎機能を温存したい場合には、癌の影響が及んでいる部分だけ切除する「腎部分切除術」が適応される傾向です。 なお、癌の状態が落ち着いていて、積極的な治療が今すぐは必要ないと判断された場合、定期的な画像検査(CT・MRI・超音波など)で癌の変化を慎重に観察していく「監視療法」が選択されるケースもあります。(文献1) ステージ3|手術+リンパ節郭清/凍結療法 腎臓周囲の組織や血管に広がっているステージ3では、腎臓の摘出に加えてリンパ節郭清(りんぱせつかくせい)をおこないます。 リンパ節郭清とは、癌が広がる可能性のあるリンパ節を切除する治療です。 また、手術が難しい高齢者や持病のある方向けの選択肢として「凍結療法(がん組織を凍らせて壊す治療)」がおこなわれるケースもあります。(文献1) 細い針を癌に刺して冷却し、癌細胞を凍らせて壊す治療法で、身体への負担が比較的少ないのが特徴です。 ステージ4|分子標的薬治療+手術+薬物療法、放射線治療 腎臓以外への転移があるステージ4では、薬による治療(薬物療法)が中心です。 代表的な薬として「分子標的薬」や「免疫チェックポイント阻害薬」などがあり、癌の増殖を抑えたり、身体の免疫力を高めて癌と闘いやすくしたりする効果が期待されます。 分子標的薬:癌細胞の成長や血管をつくる仕組みなどをピンポイントで狙って抑える 免疫チェックポイント阻害薬:免疫の働きを邪魔しているブレーキを外して、本来の力で癌細胞を攻撃しやすくする また、腫瘍の大きさや出血・痛みなどの症状によって、病状の進行を遅らせる目的で手術や放射線治療、免疫療法が選択されることもあります。(文献5) 当院リペアセルクリニックでは「第4の癌治療」として注目される免疫療法を提供しています。 手術や薬物療法などの標準的な治療だけでは不安、自分に免疫療法が合うのか知っておきたいなどの方は、お気軽にオンラインカウンセリングやメール相談をご利用ください。 全ステージ|緩和ケア 「緩和ケア」と聞くと最期のときを過ごすためのケアだと思われがちですが、実際には癌と診断された段階から利用できる医療サポートです。(文献1) 身体的な痛みを和らげるのはもちろん、治療への不安、仕事やご家族のこと、将来への悩みなど、こころの面でも寄り添ってくれます。 医療チームや専門のスタッフと連携しながら、できる限り不安の少ない治療を続けるために重要なケアといえます。 腎臓癌の悪化・再発を防ぐ対策3選 腎臓癌は、治療後に再発する可能性がゼロではなく、治療中にも病状が進行してしまう場合もあります。 だからこそ、日々の生活習慣や身体の変化に注意を向け、再発や悪化の予防につなげていきましょう。 定期的に通院し検査を受ける 腎臓癌は、再発しても初期には自覚症状が出にくいことが多く、症状が出たときには進行しているケースも珍しくありません。 そのため、定期的なCT検査や超音波(エコー)検査、血液検査などでの早期発見が重要です。 国立がんセンターによると、腎臓癌は、治療後10年以上経過してからも再発を起こす可能性があるとされています。(文献1) 医師の指示にしたがって、決められたスケジュールで通院し、再発や転移を早い段階で見つけられる体制を整えておきましょう。 免疫力を高める生活を送る 癌の再発予防には、免疫力の維持・向上が重要と考えられています。 癌細胞は、私たちの身体のなかで日々発生していると考えられ、通常は免疫の働きによって癌細胞のような異常な細胞が排除されます。 しかし、免疫力が低下するとこの仕組みがうまくいかず、癌を発症するリスクが高まるとした意見があります。 そのため、以下のような免疫力を高める行動が、癌の再発予防につながると期待されているのです。 栄養バランスを意識した食事 1日7〜8時間程度の質の良い睡眠 ウォーキングやヨガなどの継続しやすい軽い運動 趣味の時間をもつ、ストレスをためない工夫 無理のない範囲で、医師と相談しながら取り組むのがポイントです。 なお、当院リペアセルクリニックでは、第4の治療法として注目されている免疫療法をおこなっています。 以下のページで詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。 「自分の状態で受けられるのかな」「まずは話を聞いてみたい」と感じた方は、メール相談またはオンラインカウンセリングのご利用をおすすめします。 高血圧や糖尿病などの生活習慣病を防ぐ 高血圧や糖尿病などの生活習慣病は、腎臓に負担をかけたり、癌の再発や予後に影響を及ぼしたりする可能性が指摘されています。(文献6)(文献7) 再治療が必要になった場合に、手術や薬物療法の選択肢に制限がでる可能性もあるため、以下のような日頃からの予防と管理が大切です。 塩分・脂肪を控えめにした食生活 よく噛む、食べる順番を意識するなど血糖値が急上昇しにくい食べ方 適度な運動で体重をコントロール 定期的な健康診断と血圧・血糖のチェック 無理のない範囲で、できることからで構いません。 体調や気分に合わせて、少しずつ生活習慣を見直しましょう。 腎臓癌の進行スピードは早いとは限らない!正しい知識をもって治療に臨もう 腎臓癌の進行スピードは個人差があり、一概に「早い」とは言い切れません。 ステージや身体の状態に合わせて適切な治療を受けることで、再発や悪化のリスクを抑えられます。 だからこそ大切なのは、正しい知識を持ち、信頼できる医療機関で自分に合った治療を選ぶことです。 リペアセルクリニックでは、癌治療に関するご相談や、免疫療法を含めた治療のご提案もおこなっています。 「まずは話を聞いてみたい」「今の治療に不安がある」などの方は、メール相談やオンラインカウンセリングでお気軽にご相談ください。 不安な気持ちを一人で抱え込まず、一緒に向き合っていきましょう。 腎臓癌の進行スピードにまつわるよくある質問 腎臓癌を女性が発症した場合、原因はストレスが多いですか? ストレスが腎臓癌の直接の原因とした科学的な根拠はありません。 ただし、ストレスが長く続くと生活習慣の乱れや免疫力の低下を引き起こし、肥満や高血圧などの腎臓癌のリスク因子を高める要因になる恐れがあります。 腎臓癌のリスクを高める主な要因は、以下のとおりです。(文献6)(文献8) 喫煙 肥満 慢性的な腎疾患 高血圧 そのため、ストレスケアや生活習慣の見直しは、腎臓癌の予防・再発リスクの軽減にもつながる大切なポイントといえるでしょう。 腎臓癌ステージ1の治療中です。再発率はどのくらいですか? ステージ1の腎臓癌のうち腫瘍の大きさが5〜6cmの場合、再発のリスクは約20〜30%とする報告があります。(文献9) なお、以下の要因は再発リスクに影響する可能性があるとされています。(文献10) 腫瘍の大きさ 症状の種類や程度 生活習慣病(とくに糖尿病) 治療が終わっても再発の可能性はあるため、定期的な検査が必要です。 CTやエコーなどの画像検査をとおして、すぐに対処できるような体制を整えておきましょう。 腎臓癌ステージ4で手術ができないと言われてしまいました。余命はどのくらいですか? 手術できない場合の余命は数カ月〜数年と個人差があるため、どのくらいとは断言できません。 ただし、最近は分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など、効果のある治療薬が増えており、進行していても長期的に病状をコントロールできるケースもあります。 医師と相談しながら、体力や生活の質を保ちつつ、納得のいく治療を続けることが大切です。 参考文献 (文献1) 腎臓がん(腎細胞がん)|国立がん研究センターがん情報サービス (文献2) 腎臓がんの種類と症状|東京女子医科大学病院 泌尿器科 (文献3) 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム|国立がん研究センターがん対策研究所がん登録センター (文献4) 腎臓がん(腎細胞がん)治療|国立がん研究センターがん情報サービス (文献5) 腎癌 - 患者さんへ|岐阜大学大学院医学系研究科 泌尿器科 (文献6) Geographic variation of mutagenic exposures in kidney cancer genomes | Nature (文献7) Association of Dyslipidemia with Renal Cell Carcinoma:A1∶2Matched Case-Control Study|PMC (文献8) 腎臓がん(腎細胞がん)予防・検診|国立がん研究センターがん情報サービス (文献9) 各種がんの解説:腎細胞がん|日本赤十字社伊勢赤十字病院 (文献10) Validation of risk factors for recurrence of renal cell carcinoma: Results from a large single-institution series|PLOS One
2025.07.31 -
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「食べ物が原因でギランバレー症候群になるって本当?」 「どの食べ物がギランバレー症候群の原因になるのか知りたい」 身近な食べ物がギランバレー症候群の原因になっているかもと不安に感じる方もいるでしょう。 ギランバレー症候群は感染症をきっかけに発症する場合が多く、特定の食品に含まれる細菌が引き金となるケースもあります。なかでも、カンピロバクター感染症を引き起こす生の鶏肉やレバーなどには注意が必要です。 本記事では、医師の視点から原因となりうる食べ物について解説します。また、予防方法や治療法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 ギランバレー症候群について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 【前提知識】ギランバレー症候群とは ギランバレー症候群とは、主に感染症をきっかけに自身の免疫システムが誤って自分の末梢神経を攻撃してしまう、自己免疫疾患の1つです。本来、体を守るはずの免疫が風邪のウイルスや食中毒の細菌などを攻撃したあと、病原体とよく似た構造を持つ自分の神経細胞まで「敵」と誤認してしまいます。 免疫が神経細胞を勘違いすると神経の働きが障害され、以下のような症状が現れます。 重症度 主な症状 軽度 ・両手足の指先のしびれ ・軽度の筋力低下 中等度 ・歩行困難 ・明らかな筋力低下 ・軽度の顔面麻痺 重度 ・全身の筋力低下 ・呼吸困難 ・嚥下障害 主な症状はしびれや筋力低下で、数日〜数週間のうちに手足の指先から体の中心部へと急速に進行するのが特徴です。しびれや筋力低下は整形外科で扱う多くの疾患と似ていますが、症状の進行速度がギランバレー症候群を疑うポイントになります。 重症化すると、日常生活に支障をきたすだけでなく、呼吸困難や嚥下障害を引き起こすケースも珍しくありません。 ギランバレー症候群は、早期の診断と治療がその後の回復を左右するため、軽度の症状から急速に悪化する場合は早めに医療機関を受診しましょう。 ギランバレー症候群に関して詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。 ギランバレー症候群の原因となる食べ物 ギランバレー症候群の原因として多くみられるのが、カンピロバクターという細菌に汚染された食品の摂取です。 なかでも、生の鶏肉料理や加熱不十分な鶏肉料理などが感染源になる場合が多く、感染症を引き起こしたあとに、ギランバレー症候群を発症するケースが報告されています。ここでは、感染リスクの高い代表的な食品を3つ紹介します。 生鶏肉料理 生の鶏肉を使った料理は、カンピロバクター菌が潜んでいる可能性が非常に高いといわれており、代表的な料理は以下のとおりです。 鶏刺し 鶏たたき 鶏肉ユッケ 日本には鶏刺しやたたきといった生食文化が根付いていますが、生鶏肉にはカンピロバクター菌が潜んでいる場合があります。カンピロバクター菌は少量でも食中毒を引き起こす力をもっており、感染後に人体の免疫が神経に障害を加えると、ギランバレー症候群へ発展する可能性が指摘されています。 細菌に汚染された食品は味やにおいで見分けるのは難しく、新鮮に見える食材でも、十分加熱されていなければ細菌は死滅しません。 生の鶏肉を使った料理は、カンピロバクター感染症を起こすリスクがあるため、口にしないように注意しましょう。 鶏レバー・牛レバー 鶏レバーや牛レバーは、鉄分や栄養素を豊富に含み健康食材としても人気ですが、生や加熱不足での摂取にはリスクが潜みます。レバー類は中心部まで加熱が難しい部位でありながら、表面だけをあぶって提供されるケースが多く、衛生面での注意が必要です。 とくに、鶏レバーにはカンピロバクターが高頻度で検出されるといわれており、火が通っていない状態での摂取は感染リスクを高めます。また、牛レバーはカンピロバクター菌や腸管出血性大腸菌(O157)などによる食中毒の観点から、平成24年7月より生食は法律で禁止されています。 食事を通じて感染するリスクを避けるには、内部までしっかり加熱する調理が欠かせません。 参照:厚生労働省「牛レバーを生食するのは、やめましょう(「レバ刺し」等)」 加熱不足の鶏肉料理 加熱が不十分な鶏肉料理でも、ギランバレー症候群の発症リスクは高まります。以下の状態では、加熱が不十分であるため、注意してください。 鶏肉の中心部がまだ赤みを帯びている 鶏肉からピンク色の肉汁が出る また、調理中の「2次汚染」にも細心の注意が必要です。生肉を扱ったまな板や包丁・菜箸で、加熱後の料理やサラダなどに触れてしまうと、菌が移り感染の原因となります。 「大体火が通っているだろう」と安易に判断すると、深刻な結果を招く場合があります。鶏肉を調理する際は、十分に加熱できているか目と温度で確認し、調理器具の衛生管理を徹底する習慣をつけましょう。 ギランバレー症候群の食事に関する予防方法 ギランバレー症候群は、食事を通じた細菌感染が発症の引き金となるケースが多いため、以下の食習慣を見直すのが予防には重要です。 生鶏肉料理は控える 食材は十分に加熱する 生肉を扱った調理器具や食器はすぐに洗浄・消毒する ギランバレー症候群の予防で大切なのは、生鶏肉料理を控えることです。また、自分で調理する際は、食材を十分に加熱しましょう。 とくに、鶏肉は中心部の温度が75℃に達してから1分間以上加熱するよう心がけ、見た目の赤みが完全に消えるまでしっかりと火を通してください。 また「2次汚染を起こさない」意識も欠かせません。生肉を扱ったまな板や包丁などの調理器具は、使用後すぐに洗浄し熱湯をかけるか、野菜など他の食材を切るものと完全に区別しましょう。 生肉を触ったあとの丁寧な手洗いや、焼肉の際に生肉用トングと食べるための箸を分ける習慣も、感染防止に効果的です。基本的な対策を心がけることが、ご自身とご家族を深刻な病気から守る確実な1歩になります。 参照:農林水産省「鶏料理を楽しむために〜カンピロバクターによる食中毒にご注意を!!~」 食べ物とあわせて確認|ギランバレー症候群の治療法 ギランバレー症候群は発症後、迅速な診断と適切な治療を行えると、多くの場合は回復します。感染がきっかけで発症するため、普段の食事管理や感染予防も大切ですが、万が一発症した場合は速やかな受診が必要です。 ここでは、医療機関で行われる代表的な治療法3つについて解説します。 ギランバレー症候群は、発症すると急速に進行するケースもあるため、気になる症状がある方は当院へお気軽にご相談ください。 免疫グロブリン療法 免疫グロブリン療法は、健康な人の血液から精製された「免疫グロブリン製剤」という薬を、点滴で投与する治療法です。数日間の点滴投与が必要となるため、入院が必要になるケースが多くみられます。 免疫グロブリン製剤に含まれる正常な抗体が、自身の末梢神経を誤って攻撃している異常な抗体の働きを抑制し、無力化させます。たとえば、体内の免疫バランスを正常な状態へ強制的にリセットするようなイメージです。 とくに、発症初期に実施すると効果が高く、重症化するリスクを下げる可能性が期待されます。 血漿交換 血漿交換は、血液中の有害な抗体や免疫物質を除去する治療法で、免疫グロブリン療法と並んで有効性が確立されている治療法です。 具体的な治療内容は、以下のとおりです。 体内の血液を一時的に専用の機械へ通す フィルターを使って血液成分を分離させる 異常な抗体が含まれる血漿だけを、健康な血漿製剤やアルブミン製剤と入れ替える 浄化した血液を体内に戻す 血漿交換は、原因物質を物理的に除去するため、直接的な効果が期待できます。免疫グロブリン療法と同様に、専用の機械が必要なため、血漿交換も入院が必要です。 とくに、重症例や免疫グロブリン療法で効果が見られないケースで有効とされています。ただし、実施には設備や専門的な管理が必要であり、体力的負担も考慮しながら選択されます。 リハビリテーション 筋力低下や麻痺を伴うギランバレー症候群では、後遺症の最小化と日常生活復帰を目指すリハビリテーションがかかせません。 リハビリテーションの内容は、患者さまの症状や体調に応じて個別に設定されており、具体例は以下のとおりです。 リハビリテーションの段階 リハビリテーションの内容 初期 ・関節可動域訓練 ・体位交換 回復期 ・筋力トレーニング ・歩行訓練 ・日常生活動作訓練 症状が重い時期には、初期段階として関節の拘縮を防ぐ関節可動域訓練や、寝たきり状態を防ぐための体位交換が中心に行われます。症状が回復してくると、筋力トレーニングや歩行訓練など、日常生活をおくる上で必要なリハビリテーションに取り組みます。 ギランバレー症候群では筋力低下や運動機能の回復に時間を要する場合が多く、理学療法や作業療法を継続的に行うと、日常生活への早期復帰に効果的です。個々の回復状況に合わせたプログラムを組み、段階的な運動と心のケアの両面からアプローチできると、より良い回復が見込めるでしょう。 ギランバレー症候群の原因となる食べ物を理解し健全な食生活を送ろう ギランバレー症候群は、鶏肉やレバーなどに付着するカンピロバクター菌による食中毒をきっかけに、免疫の誤作動により発症します。予防するには、鶏肉の生食を避け、中心部まで十分に加熱するなどの食中毒対策が重要です。 ギランバレー症候群は早期治療が重要で、進行が早く重症化する恐れもあります。 筋力低下やしびれなどが続くようでしたら、当院へご相談ください。 ギランバレー症候群の食べ物と原因に関するよくある質問 ギランバレー症候群は卵が原因になることはありますか 卵がギランバレー症候群の原因となる可能性は極めて低いと考えられています。卵の殻に菌が付着していたとしても、殻の表面は乾燥しており、乾燥に弱いカンピロバクター菌は死滅しているからです。 ただし、卵で問題となりやすい食中毒菌に「サルモネラ菌」があり、食中毒を引き起こす可能性があります。サルモネラ食中毒を防ぐ観点からは、ひび割れた卵の使用を避け、生で食べる際は賞味期限内の新鮮な卵を選び、調理後は早めに食べるといった基本的な注意は引き続き重要です。 ギランバレー症候群の原因となる食べ物にパンは該当しますか パン自体は、ギランバレー症候群の原因になりません。パンの原料である小麦粉や酵母に原因菌が潜んでいる症例はなく、万が一細菌が付着しても高温で焼き上げる製造過程で死滅するため、パン自体は非常に安全な食べ物といえます。 ただし、パンを使った料理のなかでも、サンドイッチや惣菜パンなどの「具材」には注意してください。パンがギランバレー症候群を引き起こす具体例は以下のとおりです。 具材として使用されたチキンが加熱不十分だった 生肉を扱った手や調理器具でパンに触れてしまった 実際、加熱不足の鶏肉や、調理中の2次汚染によりカンピロバクターに感染するリスクはあります。問題の本質はパンではなく、あくまで原因菌に汚染された食材との接触です。パンは安全ですが、何を挟むか、どのように調理するかが重要だと理解しましょう。
2025.07.31 -
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「喫煙と高血圧は関係しているのか」「喫煙者が血圧を下げる方法を知りたい」 上記のように、喫煙と高血圧は関係しているのか気になっている方もいるでしょう。喫煙は高血圧をはじめ、脳卒中や高血圧網膜症などに大きく関わっています。 本記事では、喫煙と高血圧の関係について詳しく解説します。喫煙者が血圧を下げる方法や、禁煙によって得られる効果も紹介しているので、高血圧に悩んでいる喫煙者はぜひご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 高血圧に関わる脳卒中の予防などについて興味がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 喫煙によって引き起こされやすい高血圧とは? 高血圧とは、血圧が平均値よりも高すぎる状態が続く病気です。喫煙や肥満など原因が判明しているにも関わらず、高血圧を放置していると、心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気を引き起こすリスクが高まります。 ここでは、喫煙によって引き起こされやすい高血圧症の種類について紹介します。 本態性高血圧症 本態性高血圧症は、高血圧全体の約9割を占めるといわれる、原因を特定できないタイプの高血圧です。遺伝的要因をはじめとし、以下のような要因が複雑に絡み合い、高血圧症を発症すると考えられています。 喫煙 過度の飲酒 塩分の摂りすぎ 肥満 運動不足 ストレス 喫煙習慣がある方は、タバコに含まれるニコチンや有害物質が血管にダメージを与え、自律神経に作用するため、血圧が上昇しやすい状態になります。本態性高血圧症は明確な原因がなく、喫煙をはじめとした生活習慣の改善が予防につながります。 二次性高血圧症 二次性高血圧症は、特定の病気や薬剤が原因で引き起こされる高血圧です。高血圧の1〜2割が二次性高血圧症に当てはまると考えられています。主に腎臓病や内分泌系の病気、睡眠時無呼吸症候群などが代表的な原因としてあげられます。一部の薬の副作用によって血圧が上昇するケースもあるでしょう。 二次性高血圧症に関しては、喫煙は直接的な原因よりも、基礎疾患が悪化するリスクを高めたり、血管への負担を増やしたりする要因となり得ます。喫煙は腎臓病のリスクを上げるため、結果的に二次性高血圧症の発症や悪化につながる可能性も否定できません。 高血圧症の原因となっている病気を治療したり、服用している薬を見直したりすると、血圧が改善する可能性があります。 喫煙をはじめとした本態性高血圧症の原因 高血圧のほとんどを占める本態性高血圧症は、特定の病気が原因となる二次性高血圧症とは異なり、複数の要因が複雑に絡み合って発症します。とくに、日常生活における習慣が大きく影響しており、生活習慣病とも呼ばれているため、不摂生な生活をしている人は注意が必要です。 ここでは、喫煙をはじめとした本態性高血圧症の原因を詳しく見ていきましょう。 喫煙や飲酒 喫煙は、血圧を上げる生活習慣の1つです。タバコに含まれるニコチンは、血管を一時的に収縮させ、心拍数を増加させることで血圧を急上昇させます。一酸化炭素は血管の内壁を傷つけ、動脈硬化を促進します。長期的な喫煙は、血管の柔軟性を奪い、高血圧を慢性化させる原因になるため、注意が必要です。 また、適度な飲酒は血圧に良い影響を与える説もありますが、過度な飲酒は血圧を上昇させることが明らかになっています。 アルコールを分解する際に生成される物質が血管を収縮させたり、利尿作用によって脱水を起こしたりすると、血圧上昇につながると考えられています。 食生活や運動不足 食生活や運動不足も血圧に影響を与えます。とくに塩分の過剰摂取は、体内の水分量を増やし、血管にかかる圧力を高めるため、血圧上昇の大きな原因となります。 加工食品や外食が多い方は、塩分過多になりやすいため注意が必要です。カリウムや食物繊維が豊富な野菜や果物を摂り、バランスの取れた食事を意識しましょう。 また、運動不足も血圧上昇のリスクを高めます。体を動かさないと、血液の循環が悪くなり、心肺機能も低下します。定期的な運動は、血管を柔軟に保ち、血流の改善を期待できるため血圧管理には欠かせません。適度な有酸素運動を習慣にすると、血圧の安定につながります。 肥満 肥満も高血圧を引き起こす原因です。なかでも内臓脂肪の蓄積は、血圧を上げるホルモンの分泌を促したり、インスリンの働きを悪くして血糖値を上昇させたりするなど、さまざまな形で血圧に悪影響を及ぼします。 体重が増えるほど、全身に血液を送る心臓の負担が大きくなり、必然的に血圧も高くなりがちです。肥満を解消するために、バランスの取れた食事と適度な運動を組み合わせることで、体重を減らしながら血圧を下げる効果が期待できます。 ストレス 現代社会において避けられないストレスも、高血圧の一因となり得るでしょう。強いストレスを感じると、体は交感神経を優位にし、アドレナリンなどのホルモンを分泌します。アドレナリンなどのホルモンは、一時的に血管を収縮させ、心拍数を上げる作用があるため、血圧が上昇します。 慢性的なストレスは、血管に負担をかけ続け、高血圧を招く可能性があるため注意が必要です。十分な睡眠を取ったり趣味の時間を持ったりなど、リラックスできる方法を見つけ、ストレスを適切に管理するのが血圧を安定させる上で大切です。 遺伝的要素 本態性高血圧症は、遺伝的な要素も関わっているといわれています。両親や祖父母に高血圧の方がいる場合、自身も高血圧になるリスクが高い傾向にあります。 しかし、遺伝的要素があるからといって、必ずしも高血圧になるわけではありません。遺伝的リスクを持っている方は、喫煙や食生活、肥満、ストレスなど生活習慣因子に注意を払い、健康的な生活を心がけることが大切です。定期的な健康診断で血圧をチェックし、早期発見・早期対応に努めましょう。 喫煙者がタバコをやめることで起こる血圧の変化 高血圧に悩んでいる喫煙者は、まず禁煙を検討しましょう。高血圧はさまざまな要因が絡み合うことで発症するため、思い当たる原因から取り除くことが大切です。 喫煙者がタバコをやめることで起こる血圧の変化を見ていきましょう。 短期的な変化 禁煙がもたらす血圧の変化として、禁煙後20分でニコチンの刺激作用が減少すると心拍数と血圧が低下します。12時間後には血中の一酸化炭素レベルが通常値に戻り、24時間後には心臓発作のリスクがわずかではありますが、低下します。 ただし、一時的に禁煙直後の数日間は、血圧が上がる可能性があります。禁煙によるストレスや禁断症状による一時的な症状のため、通常は数日から数週間で安定するため過度に心配する必要はありません。 長期的な変化 禁煙を続けることで、血圧は安定し、健康リスクを大幅に減らせます。禁煙後、約2週間で血管内皮細胞の機能が改善し始め、血管拡張能が向上します。交感神経や副交感神経のバランスも変化し、心拍変動性が増加するのも特徴です。 【注意】高血圧の方が喫煙すると心血管疾患のリスクも高まる 高血圧の方が喫煙を続けることは、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患の発症リスクを高めるため注意が必要です。喫煙は、血圧を上げる直接的な要因であるだけでなく血管そのものに深刻なダメージを与えます。 タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、血圧を一時的に上昇させてしまうのです。一酸化炭素は血液中の酸素運搬能力を低下させ、心臓に余計な負担をかけます。慢性的な高血圧と結びつくことで血管の壁が傷つきやすくなり、動脈硬化の進行を加速させてしまうのです。 動脈硬化が進行すると血管は硬く狭くなり、血液の流れが悪くなります。その結果、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす可能性が高まってしまうでしょう。 喫煙者におすすめな血圧を下げるための対策 高血圧と診断された喫煙者は、禁煙をはじめとした対策を取りましょう。高血圧を放置すると重篤な病気を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。禁煙のほか食生活や運動不足の改善など実践できることは多くあります。 ここでは、喫煙者におすすめな血圧を下げるための対策を見ていきましょう。 禁煙する 喫煙者が血圧を下げるために重要かつ効果的な対策は禁煙です。タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、血圧を一時的に上昇させるうえ、一酸化炭素は血管にダメージを与え動脈硬化を促進します。 禁煙により心拍数と血圧が低下し始め、数カ月後には血管の機能が改善し、長期的には非喫煙者と同レベルまで血圧が安定する可能性があります。 禁煙は決して簡単なことではありませんが、禁煙外来の利用やニコチン代替療法など、さまざまなサポートがあります。1人で禁煙するのが難しい方は、専門家のサポートを受け、禁煙をはじめましょう。 飲酒や減塩など食生活に気を配る 血圧を下げるには、食生活の見直しも必要です。飲酒をする方は、まず飲酒量を控えることから始めましょう。過度なアルコール摂取は血圧を上昇させる原因となります。 もし飲酒をしたい場合は、適量を守るか休肝日を設けるなどして、アルコールの摂取量を減らしましょう。 また食事を作る際は、減塩を意識するのも大切です。加工食品や外食が多い方は塩分過多になりやすいため、塩分量を減らすよう意識しましょう。出汁を効かせたり、香辛料やハーブを使ったりして、薄味でも美味しく食べられる工夫をするのがおすすめです。 適度な運動をする 血圧を下げるには、適度な運動を習慣にするのも大切です。ウォーキングやジョギング、サイクリングなどの有酸素運動を無理のない範囲で30分程度、週に数回行いましょう。 運動はストレス解消にもつながり、体重管理にも役立つため、さまざまな方面から血圧の安定に貢献します。急に激しい運動を始めるのではなく、少し体を動かす習慣を取り入れることから始めてみましょう。一駅分歩いたり階段を使ったりなどの小さな運動でも、血圧に良い影響をもたらします。 ストレスを溜めないようリフレッシュする 高血圧に悩んでいる方は、ストレスを適切に管理し、溜め込まないようにリフレッシュしましょう。趣味に没頭したり、友人や家族と会話を楽しんだりなど自分に合ったリフレッシュ方法を見つけるのがおすすめです。 また質の良い十分な睡眠をとることも、ストレス軽減と血圧の安定には欠かせません。ストレスを溜め込まず、心穏やかに過ごせる時間を作ることで、血圧のコントロールにも良い影響を与えられます。 【喫煙者向け】高血圧に関する疾患でお悩みの方は再生医療をご検討ください 高血圧に関する疾患で悩んでいる喫煙者は、従来の治療方法だけでなく再生医療といった選択肢もあります。再生医療とは、自身の細胞や血液を利用した治療方法です。 自己細胞を使用するため、アレルギーや拒絶反応を起こしづらい傾向にあります。 リペアセルクリニックでは、疾患・免疫・美容などすべての分野で再生医療を提供しています。脳卒中や糖尿病、高血圧網膜症など高血圧が原因で引き起こされる疾患に悩んでいる方は、ぜひリペアセルクリニックの再生医療をご検討ください。 喫煙は血圧を上昇させる!禁煙を心がけよう 高血圧は喫煙をはじめ、食生活や肥満、ストレスなどさまざまな原因が絡み合うことで発症します。なかでも喫煙は、血圧を上昇させるだけでなく、脳卒中や糖尿病、高血圧網膜症などのリスクも高めるため注意が必要です。高血圧に悩んでいる喫煙者は、禁煙を検討しましょう。 また禁煙以外にも、減塩を意識した食事や適度な運動も高血圧の改善に期待できます。生活習慣を改善し、高血圧の改善を意識しましょう。
2025.07.31 -
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目や口が開けづらい、または字が書きづらいといった症状が見られ、ジストニアを疑う方もいるでしょう。ジストニア症状の判別は、医師の診断が必要です。 また、ジストニアといっても局所性や全身性、心因性などさまざまな種類があります。症状回復には、原因を踏まえた上で、適切な治療を行うことが大切です。 本記事では、ジストニア症状を種類別に解説します。主な治療法も紹介するので、眼瞼けいれんや書痙などに悩む方はぜひ参考にしてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 ジストニアについて気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ジストニア症状とは ジストニア症状とは、自分の意志とは関係なく筋肉がこわばってしまい、姿勢や運動に異常をきたす不随運動疾患です。発症の原因は解明されていませんが、主に脳からの指令に障害が起こっている可能性が考えられています。 ジストニアが発症する部位は、手や足、首などさまざまです。また、種類によって引き起こされる症状や現れるタイミングは異なります。 ジストニア症状の診断は症状や身体診察の結果に基づいて判断されるため、疑いがある場合は早めに専門機関を受診しましょう。 イップス・てんかんとの違い ジストニア症状と類似するイップスやてんかんには、以下の違いがあります。 イップス ゴルフや野球などのスポーツにおいて、無意識に筋肉がこわばって思うようなプレーが急にできなくなる運動疾患 てんかん 大脳の電気的な興奮が発生する場所によって繰り返し引き起こされる慢性疾患 イップスを発症する主な要因は、プレッシャーなどによる心因的ストレスです。医学的な病名ではないため、局所性ジストニアの一種と考えられる場合もあります。 対して、てんかんは脳疾患に分類されています。似た症状が見られるものの、運動疾患に分類されるジストニアとは定義や発症のメカニズムなどが異なるため、正確な診断が必要です。 ジストニアの主な初期症状 ジストニアは発症する筋肉の部位によって、異なる症状を引き起こすものの、くねらせた動きやねじれが特徴です。 主な初期症状は、以下の通りです。 目や口が開けづらい 字が書きづらい 首や肩が勝手に傾く 話す際に舌が出る 歩行中に足や身体が曲がる 発症パターンのなかには、字を書くときなど特定の動作をするときだけに現れるケースもあります。ジストニア症状は局所的に発症するほか、病状の進行によって全身に出る場合もあります。 ただし、筋肉のこわばりやつっぱりなどの症状では、ジストニアとは判断するのが難しい点に注意が必要です。不随意運動や姿勢異常が見られた場合は、専門機関を受診しましょう。 【種類別】ジストニアの症状と原因 ジストニアは、種類によって症状や発症の原因が異なります。主な種類は、以下の6つです。 局所性ジストニア 分節性ジストニア 全身性ジストニア 心因性ジストニア 薬剤性ジストニア 遺伝性ジストニア それぞれの症状や原因を解説するので、参考にしてください。 局所性ジストニア 局所性ジストニアでは、手や足など身体における1つの部位に症状が見られます。成人で発症したジストニアの多くは、局所性ジストニアといわれています。(文献1) 局所性ジストニアの主な症状は、以下の通りです。 眼瞼けいれん れん縮性斜頸 けいれん性発声障害 書痙 局所性ジストニア症状は、同じ動作を長期間繰り返し行う場合に発症する可能性があります。そのため、音楽家や漫画家、美容師など特定の職業の方が発症するケースも見られます。 分節性ジストニア 分節性ジストニアでは、頸部と体幹や頭頚部2か所など、隣接する2つ以上の部位に症状が見られます。主な症状は、以下のように局所性ジストニアと同じです。 眼瞼けいれん れん縮性斜頸 けいれん性発声障害 書痙 分節性ジストニアの場合、眼瞼けいれんのほか、隣接する下顎や頸部などに症状が見られる場合があります。 全身性ジストニア 全身性ジストニアは、体幹とその他2部位以上に症状が見られます。好発年齢は小児から青年期といわれており、成人で発症した場合の原因は明らかになっていません。全身性ジストニアの原因は、遺伝やほかの疾患による続発、薬剤の使用などです。 全身性ジストニアでは、主に次の症状が見られます。 身体がねじれたような姿勢になる 上を向くように首を反らせるなど身体が反り返った姿勢になる 足関節が内側に曲がる 眼瞼けいれんを引き起こす ジストニア症状が長期間続くと、骨や関節が変形する可能性もあります。また症状が悪化した場合、呼吸障害や嚥下性肺炎などを発症するケースも珍しくありません。 心因性ジストニア 心因性ジストニアは、ストレスが原因で脳神経細胞に異常をきたして、不随意運動を引き起こします。原因は明確になっていませんが、精神的ストレスのかかる環境にいる人に発症しやすい傾向にあります。 主な症状は、以下の通りです。 眼瞼けいれん れん縮性斜頸 身体の歪み けいれん性発声障害 書痙 ジストニア症状は、ストレスや疲労によって悪化する可能性があります。悪化を防ぐためにも、原因を理解した上で適切な治療を受けることが大切です。 薬剤性ジストニア 薬剤性ジストニアは、次の3つに分類され、発症原因もそれぞれ異なります。 種類 特徴 急性ジストニア 薬物服用開始によって急性発症する 若年層では体幹が中心・高齢層では頭頚部疾患が多い傾向にある 遅発性ジストニア 長期間の薬物使用や減量・中止によって発症する 若年層では下肢発症・発症年齢が上がるほど上肢に症状が現れる傾向にある 薬物性離脱症候群 薬物の急激な減量・中止によって発症する 主に小児に多い傾向にある 症状は、次のようにほかのジストニアと同様です。 眼瞼けいれん れん縮性斜頸 身体のねじれ・反り返り けいれん性発声障害 書痙 中枢神経に作用する薬物を服用している、もしくは服用歴がある場合は薬物性ジストニアの可能性が考えられます。 遺伝性ジストニア 遺伝性ジストニアは、遺伝によって引き起こされます。ただし、遺伝子ジストニアは遺伝子を持っていても発症しない可能性があります。 遺伝性ジストニアの主な原因は、以下のように局所性から全身性までさまざまです。 眼瞼けいれん れん縮性斜頸 身体のねじれ・反り返り けいれん性発声障害 書痙 小児発症が多い傾向にあるため、家族でジストニアの発症歴がある場合は診断を検討するのがおすすめです。 ジストニアの症状は治る?主な治療法 ジストニアは不随運動疾患ですが、脳の病気でもあるため、完治は難しいといわれています。しかし、適切な治療により、症状の回復が期待できます。 ジストニア症状の主な治療法は、以下の3つです。 薬物治療 ボツリヌス治療 手術治療 治療内容について、以下で解説するので参考にしてください。 薬物治療 一般的に、全身性ジストニア症状では薬物治療が行われます。薬物治療では、局所注射もしくは経口で投与するケースが一般的です。 全身性ジストニア症状の場合、主に抗コリン薬が使用されます。抗コリン薬では、神経から送られる特定の信号を遮断し、けいれんを減らす作用が期待できます。 抗コリン作用を持つ薬は、以下の通りです。 トリヘキシフェニジル カルバマゼピン バクロフェン ベンツトロピン 薬物治療で効果が見られない場合、脳深部刺激療法を行うケースもあります。 ボツリヌス治療 局所性ジストニアでは、ボツリヌス治療を行うのが一般的です。ボツリヌス治療とは、筋肉の緊張を和らげるボツリヌス製剤を局所注射する治療法です。筋肉内への投与により、筋肉の緊張を和らげ、神経の働きを抑えます。 ボツリヌス治療によって、日常生活動作を行いやすくするほか、関節の変形防止や筋肉のつっぱりによる痛み緩和などの効果が期待できます。 眼瞼けいれんやけいれん性発声障害、書痙などではボツリヌス治療が用いられるケースがほとんどです。ボツリヌス治療は、効果が徐々に弱くなるため、3〜4カ月毎に治療する必要があります。 手術治療 薬物療法やボツリヌス治療で症状回復が見られない場合は、手術治療を行います。ジストニア症状の代表的な手術と特徴は、以下の3つです。 術式 特徴 脳深部刺激術 脳の深部に電気刺激を行い、脳神経回路を調整して症状を改善する 高周波凝固手術 治療部位に電極を挿入し電気刺激を行い、症状を改善する バクロフェン髄腔内投与療法 バクロフェンが入ったポンプを腹部に埋め込み、カテーテルを通じて薬を投与して症状を改善する 手術を行う場合、いずれも1〜2週間ほどの入院や通院が必要になります。症状回復が見られない場合は、手術を検討するのも手段の1つです。 ジストニアの症状における再生医療の可能性 再生医療とは、患者自身の脂肪組織から幹細胞を分離・培養し、静脈内投与により組織修復や機能回復を目指す治療法です。幹細胞を採取する際は、おへその横からごくわずかな脂肪を取るため、身体の負担を最小限に抑えられます。 また、入院が不要な点も再生医療の特徴です。ジストニアの治療で効果が現れずお悩みの場合は、再生医療を検討するのも手段の1つです。当院では、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けておりますので、治療法について知りたい方はお気軽にお問い合わせください。 ジストニアの症状判別は医師の診断が必要 ジストニアの症状は、原因や発症する部位によって異なります。症状や身体診察の結果に基づいて判断されるため、思い当たる症状が見られた場合は専門機関への受診を検討しましょう。 ジストニア症状は、原因や種類によって治療法が異なります。適切な治療を行うためにも、原因の把握が大切です。 万が一症状の回復が見込めない場合は、改善策として再生医療を検討するのもおすすめです。ジストニアの症状を理解し、早期対策を図りましょう。 ジストニアと症状に関するよくある質問 ジストニアはどんな人がなりやすいですか? ジストニアは、同じ動作を繰り返している人がなりやすい疾患です。具体的には、ピアノなどの楽器を演奏している、ハサミの操作を繰り返すなどの職業の人が発症する場合もあります。そのため、音楽家や美容師、スポーツ選手などはジストニアになる可能性が考えられます。 ジストニアは死亡の要因になりますか? ジストニアは、症状が進行すると稀に呼吸不全などを引き起こす可能性があります。実際に、全身性ジストニアを発症し、嚥下性肺炎で死亡した事例もあります。(文献2) そのため、ジストニア症状が見られた際は放置せず、専門機関を受診しましょう。 心因性ジストニアは何科を受診すればよいですか? 心因性ジストニアの場合、心療内科を受診しましょう。不安定な精神状態の場合、治療効果が得られにくい可能性もあるためです。(文献3)心身ストレスが原因の場合、心理療法により症状が緩和するケースも考えられるため、心療内科の受診を検討してみてください。 参考文献 (文献1) ジストニア診療ガイドライン2018|南江堂 (文献2) J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター|進行性の全身性ジストニアを呈し嚥下性肺炎で死亡した80歳女性剖検例 (文献3) 目崎 高広|ジストニアの病態と治療
2025.07.31 -
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「オーバートレーニング症候群のような症状が現れた」「以前と比べて疲れやすくなった」などと感じている方もいるでしょう。 オーバートレーニング症候群とは、過剰なトレーニングによって心身に不調が生じ、パフォーマンスが低下してしまう状態を意味します。症状は軽度の疲労感から精神的な不調まで多岐にわたり、対処が遅れると回復に長い期間を要するケースもあるため注意が必要です。 今回は、オーバートレーニング症候群の重症度別の症状やチェックリスト、治し方を医師の見解に基づいて解説します。オーバートレーニング症候群が疑われる方は、ぜひ参考にしてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 オーバートレーニング症候群について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 オーバートレーニング症候群とは オーバートレーニング症候群とは、適切な休息を取らずに過剰なトレーニングを継続することで、身体や精神に不調をきたす状態です。通常の疲労と異なり、十分な休養をとっても回復が見られず、慢性的なパフォーマンスの低下や精神的な不調が続く点が特徴です。 主な原因として、高負荷のトレーニングや栄養・睡眠不足、精神的ストレスなどが複雑に絡み合って発症すると考えられています。 なお、オーバートレーニング症候群は、競技者やハードなトレーニングをおこなう方に多く見られますが、一般のスポーツ愛好者でも発症する可能性があります。 オーバートレーニング症候群の症状【重症度別】 オーバートレーニング症候群の症状は、進行度に応じてさまざまです。以下で、軽症・中等症・重症の3段階に分けて詳しく見ていきましょう。 軽症|パフォーマンスの低下 軽症の場合、オーバートレーニング症候群によって運動時のパフォーマンスは下がるものの、日常生活に大きな支障はでません。軽症の段階では、身体の回復力が落ちたことにより、以前と同じトレーニング内容でも疲労が残りやすくなっている状態です。 たとえば、以前は問題がなかったランニングの距離で息が上がったり、運動時の集中力が続かなかったりするなどの変化が見られます。 軽症の場合、オーバートレーニング症候群には気づきにくいものです。しかし、「最近パフォーマンスが下がっている」と感じたら、トレーニング内容を見直すサインだといえます。 中等症|疲労症状 中等症のオーバートレーニング症候群になると、軽い運動でも強い疲労感が現れ、体が慢性的に疲れている状態になります。回復力がさらに落ちて自律神経のバランスが乱れやすくなり、慢性的な疲労や体調不良を引き起こすためです。 たとえば、軽いジョギングでも息切れしたり、立ちくらみや動悸が起こる回数が増えたりするといった状態が続きます。中等レベルの症状が現れている場合は、迷わず休養を確保しましょう。 重症|精神・心理症状 オーバートレーニング症候群が重症化すると、心理症状が強まり、日常生活全体に影響を及ぼすようになります。肉体的な疲労の蓄積によってストレス耐性が下がり、自律神経やホルモンバランスが崩れるためです。 具体的には、気分の落ち込みや不眠、食欲不振といったうつ症状に似た状態が見られるようになります。また、仕事や学業などに対する意欲や集中力がなくなり、人間関係に影響を及ぼすケースもあります。 オーバートレーニング症候群が重症化した場合、これらの症状を放置せず、医師や専門家による適切なアプローチによって回復に努めることが大切です。 オーバートレーニング症候群のチェックリスト オーバートレーニング症候群が疑われるときは、以下の項目に該当するかセルフチェックしてみましょう。 最近トレーニングの強度を上げた 練習しているのに成績が上がらない 軽いジョギングでも疲れるようになった トレーニング後の筋肉痛が長く続くようになった 睡眠時間は足りているはずなのに眠気が取れない 起床直後の心拍数が普段より増加している トレーニングのやる気が出ない 食欲が低下した 気分が落ち込みやすくなった 毎日運動しないと不安を感じる 運動していないときでも疲労感がある 頭痛や立ちくらみが頻繁に起こる 貧血や感染症などが原因ではないにもかかわらず、複数の症状が該当する場合は、オーバートレーニング症候群が疑われます。 また、身体の不調を感じたときは、心拍数や血圧をチェックしてみるのもおすすめです。疲労症状が強くなると、起床時の心拍数は増えるとされています。 そのため、起床直後の心拍数をチェックすると疲労症状を把握しやすくなります。起床直後の心拍数が1分あたり10回以上増えている場合は、オーバートレーニング症候群を疑いましょう。 日頃からのセルフチェックによって、オーバートレーニング症候群を早期に発見し、重症化を防げます。 オーバートレーニング症候群の治し方 オーバートレーニング症候群を治すためには、症状の原因を取り除き、回復を促すケアに努めることが大切です。以下の対処法を組み合わせて実践すると、オーバートレーニング症候群からの効果的な回復が見込めます。 休養の確保 オーバートレーニング症候群の初期対応は、しっかりと休養を取ることです。実際に、数カ月単位で一定期間競技活動から離れて休養を確保するだけで、回復が得られる場合もあります。(文献1) ただし、症状の進行によっては、まったく身体を動かさないことが逆効果になるケースも考えられます。そのため、「どの程度の休養が必要か」「軽度のトレーニングであれば続けても問題がないか」など、医師やトレーナーと相談しながら治療にあたりましょう。 具体的な症状や体調に合わせてトレーニングと休養のバランスを調整しましょう。 ストレス管理 オーバートレーニング症候群を治すために、ストレス管理が必要になるケースもあります。背景に心理的要因や環境適応などの問題がある場合は、休養だけでは回復に至りにくいためです。(文献1) 精神的ストレスはオーバートレーニング症候群の原因の一つであり、症状を悪化させる要因にもなります。気分の落ち込みが続いたり、やる気がでない状態が長引いたりする場合は、精神科医やスポーツ心理士に相談してみてください。カウンセリングのほか、必要に応じて薬物療法を受けるのもおすすめです。 早期回復のためにも、心の状態を軽視せず、症状に合わせた専門的なサポートを受けましょう。 バランスの良い食事 オーバートレーニング症候群を治すためには、バランスの良い食事を心がけることも大切です。食事を通して必要な栄養素を補うと、疲労の回復や免疫力向上の助けになります。具体的には、以下の栄養素を意識的に摂取しましょう。 栄養素 効果 ビタミンB群 エネルギー代謝を助ける 疲労回復をサポートする ビタミンC 疲労を引き起こす活性酸素を抑える 摂取量により、抗酸化作用が見られる バランスの良い食事は回復のスピードを左右する要素の一つです。疲労や不調を感じるときこそ、バランスの良い食生活を心がけて回復に努めましょう。 オーバートレーニング症候群の症状を見逃さず重症化を防ごう オーバートレーニング症候群は、放置すると重症化する可能性があるので注意が必要です。「疲れの感じ方がいつもと違う」「運動していないときでも疲労感が続いている」と感じたときは、休養したりトレーニングを軽くしたりして対応しましょう。 オーバートレーニング症候群は、軽症であれば比較的早く回復できますが、重症化すると復帰に時間がかかります。早期発見のためには、セルフチェックリストを活用しながら、身体と心のサインを見逃さないことが大切です。 オーバートレーニング症候群は、競技者に限らず一般の方でも症状が現れる場合があります。症状に応じて、早めに医療機関を受診して重症化を防ぎましょう。 オーバートレーニング症候群に関するよくある質問 オーバートレーニング症候群はどのように診断される? オーバートレーニング症候群は、一般的には以下の指標を総合的に判断して診断されます。 安静時心拍数の増加 安静時血圧の上昇 運動後血圧の回復の遅れ 競技成績の低下 オーバートレーニング症候群は明確な検査法がありません。医師による問診や身体所見、血液検査などを用いて総合的に診断されます。 一般人でもオーバートレーニング症候群になる? 趣味として運動を楽しんでいる一般の方でも、オーバートレーニング症候群を発症する可能性があります。 オーバートレーニング症候群になるのは、スポーツ選手や部活動をしている学生だけではありません。過剰なトレーニングや精神的ストレスが重なると、誰でも発症するリスクが高まります。運動は健康の維持に欠かせない習慣ですが、過剰なトレーニングは逆効果になる可能性があるため気をつけましょう。 オーバートレーニング症候群はどのくらいで治る? オーバートレーニング症候群は、軽症・中等症であれば1〜3カ月程度で回復が期待できます。しかし、重症化すると半年〜1年かかるケースもあり、長期にわたる休養と治療が必要になります。 重症化を防ぐためにも、自己判断で無理を重ねず、医師や専門家のアドバイスを受けることが大切です。 オーバートレーニング症候群は何科を受診すれば良い? オーバートレーニング症候群が疑われる場合は、スポーツ内科の受診がおすすめです。ただし、地域によってはスポーツ内科の専門外来がないケースも考えられます。この場合、症状によって整形外科や一般内科、婦人科などを受診しましょう。 目安として2週間程度運動を控えても症状が改善されない場合は、早めに医療機関を受診してください。 参考文献 (文献1) Vol. 31 No. 3, 2023.「オーバートレーニング症候群:理解と対応」|日本臨床スポーツ医学会誌
2025.07.31 -
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インフルエンザが治ったはずなのに咳や倦怠感が続いているという方は、ウイルスが体内からいなくなっても後遺症が出ている可能性があります。 この記事では、インフルエンザにおける後遺症の原因や症状、合併症について詳しく解説します。 また、セルフケアの方法や治療法についても紹介しているので、ぜひインフルエンザ後遺症を治すための参考にしてください。 長期間続く倦怠感など、インフルエンザの後遺症でお悩みの方は再生医療による治療も選択肢の一つです。 \インフルエンザの後遺症に有効な再生医療とは/ 再生医療は、患者さま自身の細胞や血液を用いて人間の持つ自然治癒力を向上させることで、インフルエンザの長引く後遺症の改善が期待できます。 【こんな方は再生医療をご検討ください】 インフルエンザの後遺症で身体がだるい 長引く後遺症に悩まされている インフルエンザが治った後も後遺症に悩まされている方は、新たな治療選択肢として再生医療が有効です。 具体的な治療法については、当院(リペアセルクリニック)で無料カウンセリングを行っておりますので、ぜひご相談ください。 ▼インフルエンザの後遺症治療に注目の再生医療について無料相談! >>(こちらをクリックして)今すぐ電話してみる インフルエンザに後遺症はある?どんな症状が出るのか インフルエンザ後遺症とは、インフルエンザの急性期症状が治まった後も、4週間以上にわたって倦怠感、咳、関節痛といった症状が続く状態の総称です。 ウイルスが体から排除された後に症状が現れたり、長引いたりする点が特徴です。中には慢性疲労症候群の診断基準に該当する方も報告されています。(文献1) インフルエンザの合併症との違い インフルエンザ後遺症と合併症は、以下の点が異なります。 タイミング 症状 治療法 合併症 発熱がある急性期 肺炎症状 インフルエンザ脳症 抗ウイルス薬 集中治療 後遺症 解熱した回復期 倦怠感 呼吸器症状 対症療法 生活指導 合併症の代表例であるインフルエンザ脳症は、国内で年間100例以上報告されており、後遺症が出る割合も決して低くありません。致死率が約15%、後遺症率が約25%との報告もあります。(文献2) また、合併症が重度だった症例ほど後遺症を長引かせるリスクが高いとする研究報告もあります。(文献3) コロナウイルス後遺症との違い インフルエンザ後遺症とコロナウイルス後遺症は、リスクの程度や症状の傾向に違いがあります。 名古屋工業大学の平田晃正教授らの研究グループによると、インフルエンザ感染後に咳や頭痛で医療機関を受診するリスクは、感染していない人と比べて1.8倍程度との結果です。 一方、新型コロナウイルス感染後に咳で受診するリスクは、感染していない人と比べて8.20倍とインフルエンザよりも高い結果が見られました。(文献4) 症状としては、コロナウイルス後遺症では多臓器にわたる全身性の症状が目立つ傾向にあります。一方で、インフルエンザ後遺症は主に呼吸器や疲労が中心です。 コロナウイルス後遺症については、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。 【関連記事】 コロナ後遺症はいつまで続く?倦怠感や症状について現役医師が解説 コロナの後遺症を劇的に改善させる方法を再生医療医が解説 また、コロナウイルス後遺症に対する治療法として、再生医療があります。 具体的な治療法については、当院(リペアセルクリニック)で無料カウンセリングを行っておりますので、ぜひご相談ください。 ▼インフルエンザの後遺症治療に注目の再生医療について無料相談! >>(こちらをクリックして)今すぐ電話してみる インフルエンザ後遺症の主な原因 インフルエンザ後遺症を引き起こす原因は1つではなく、主に以下の要因が複雑に絡み合っていると考えられています。 免疫機能の過剰な反応の残存 ウイルスによる気道粘膜の損傷 二次的な細菌感染の併発 高熱などによる自律神経の乱れ 隔離生活に伴う精神的なストレス インフルエンザウイルスに対抗するために活性化した免疫がウイルス排除後も活動を続け、炎症を引き起こす物質を放出し続けることで倦怠感や疲労感につながります。 また、ウイルスで傷ついた気道の粘膜は再生に時間を要するため、咳が出やすい状態が長引く可能性があります。 近年の再生医療は、患者さま自身の細胞や血液を用いて人間の持つ自然治癒力を向上させることで、インフルエンザの後遺症による炎症抑制や症状改善が期待できます。 長引くインフルエンザの症状にお悩みの方は、当院リペアセルクリニックにご相談ください。 ▼インフルエンザの後遺症治療に注目の再生医療について無料相談! >>(こちらをクリックして)今すぐ電話してみる インフルエンザの主な後遺症一覧 インフルエンザ後遺症では、主に以下のようなさまざまな症状が現れます。 系統 主な症状 呼吸器系 乾いた咳、息切れ、声枯れ 全身症状 倦怠感、微熱、関節痛、寝汗 神経・感覚 頭痛、めまい、集中力の低下、嗅覚・味覚の低下 耳鼻科系 副鼻腔炎に伴う鼻水・顔面痛、耳の閉塞感 精神面 不眠、気分の落ち込み(発熱による睡眠リズムの乱れが誘因) これらの症状は、いずれか1つだけが現れるよりも、複数の症状が重なって現れることが少なくありません。 例えば、長引く咳に加えて強い倦怠感が続いたり、頭痛と集中力の低下が同時に見られたりするケースです。 症状が改善しない、あるいは悪化するような場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。 長期間続く倦怠感など、インフルエンザの後遺症でお悩みの方は先端医療の一つである再生医療による治療をご検討ください。 \こんな方は再生医療をご検討ください/ インフルエンザの後遺症を早く治したい 長引く後遺症に悩まされている 現在受けている治療で期待した効果が得られていない 再生医療は、患者さま自身の細胞や血液を用いて人間の持つ自然治癒力を向上させることで、インフルエンザの後遺症改善が期待できます。 具体的な治療法については、当院(リペアセルクリニック)で無料カウンセリングを行っておりますので、ぜひご相談ください。 ▼インフルエンザの後遺症治療に注目の再生医療について無料相談! >>(こちらをクリックして)今すぐ電話してみる インフルエンザ後遺症の治療法 インフルエンザ後遺症の症状は、多くの場合、時間の経過とともに自然と落ち着いていきます。しかし、症状が長引いたり、悪化したりするケースは少なくありません。 インフルエンザ後遺症に対する治療は以下のような方法が挙げられます。 対症療法 薬物療法 生活習慣の見直し 1つずつ解説していきます。 対症療法 インフルエンザ後遺症の治療は、現れているつらい症状を和らげる対症療法が基本です。体の疲労感や関節の痛みに対しては、電気療法や理学療法士による手技療法などがおこなわれます。 倦怠感や微熱が続く場合は、無理をせず十分な休息を取り、水分と栄養をしっかりと補給するのが最優先です。必要に応じて、解熱鎮痛薬が処方されることもあります。 鼻水や顔の痛みなど、副鼻腔炎や中耳炎が疑われる際は、耳鼻咽喉科で鼻の洗浄やネブライザー治療といった処置を追加します。 症状によって治療方法が異なるため、病院受診時に医師に困っている症状を正しく伝えましょう。 薬物療法 症状を和らげるための薬物療法も選択肢の1つです。急性期を過ぎてもウイルスの増殖が続いていると医師が判断した場合には、抗インフルエンザ薬の投与期間を延長する場合があります。 長引く鼻水や咳に対しては、症状を抑えるために抗ヒスタミン薬や鎮咳薬などが処方されます。咳が止まらず咳喘息のような状態に移行したケースでは、気管支を広げる吸入β2刺激薬や炎症を抑える吸入ステロイド薬を数週間にわたって使用する場合も少なくありません。 これらの治療で十分な改善が見られない場合には、別系統の薬を追加で検討されるケースもあります。 また、コロナウイルス後遺症の症例に対してですが、漢方薬が慢性疲労・食欲不振を緩和したとの報告もあります。(文献5) 生活習慣の見直し インフルエンザ後遺症から回復するには、薬による治療だけでなく、日々の生活習慣の見直しも必要です。まずは、十分な休養を取り、体に負担をかけないようにしましょう。 タンパク質やビタミンなどを含むバランスの良い食事を心がけ、睡眠は7時間以上確保すると、自律神経の働きを整える効果が期待されます。 体力が少し戻ってきたら、軽いストレッチや腹式呼吸といった呼吸リハビリを取り入れるのも、呼吸筋の疲労感を和らげるのに役立ちます。アルコールや喫煙は炎症を長引かせるリスクがあるため、症状が落ち着くまでは控えましょう。 インフルエンザ後遺症に関するよくある質問 インフルエンザ後遺症に関するよくある質問と回答を紹介します。 インフルエンザ後遺症の症状はいつまで続きますか? インフルエンザ後遺症は大人と子どもどちらも発症しますか? インフルエンザが治った後も後遺症に悩まされている方は、ぜひ参考にしてください インフルエンザ後遺症の症状はいつまで続きますか? インフルエンザ自体の発熱やのどの痛みといった症状は、通常1週間程度で落ち着きます。しかし、その後に出てくる後遺症がいつまで続くかについては、以下の要素によって異なるため一概にはいえません。 症状の種類 本人の回復力 治療方法 とくに倦怠感や睡眠障害といった症状は、免疫力の低下や日々のストレスなどが影響して長引く傾向があります。 咳に関しては、もし8週間以上続くようであれば「慢性咳嗽」と診断されます。(文献6)症状が長引く場合は、一度医療機関を受診してみましょう。 インフルエンザ後遺症は大人と子どもどちらも発症しますか? インフルエンザ後遺症は、年齢に関わらず大人も子どもも発症する可能性があります。とくに、まだ免疫機能が十分に発達していない子どもは、大人に比べてウイルス感染の影響を受けやすく、後遺症につながりやすいと考えられています。 また、高齢の方は、肺炎や心筋炎といった重い合併症を発症しやすく、その治療が終わった後も息切れなどの呼吸器症状が長く残ってしまうケースが少なくありません。 予防接種は、インフルエンザの重症化を防ぐだけでなく、後遺症の発生リスクを減らす効果が期待されます。 まとめ|インフルエンザ後遺症の理解を深めて適切な治療を進めよう インフルエンザが治った後にも、倦怠感、咳、関節痛といった症状が後遺症として現れている可能性があります。 免疫の過剰反応や自律神経の乱れなど、さまざまな要因が絡み合って生じます。 呼吸器症状から精神的な不調まで多岐にわたるため、つらい症状が長引いている場合は、かかりつけ医や専門の医療機関に相談しましょう。 また、インフルエンザの後遺症を早く治したい方は、再生医療による治療も選択肢の一つです。 再生医療は、患者さま自身の細胞や血液を用いて人間の持つ自然治癒力を向上させることで、炎症抑制や症状の改善が期待できます。 \こんな方は再生医療をご検討ください/ インフルエンザの後遺症を早く治したい 長引く後遺症に悩まされている 現在受けている治療で期待した効果が得られていない インフルエンザが治った後も後遺症に悩まされている方は、新たな治療選択肢としてご検討ください。 「具体的な治療法を知りたい」「後遺症を早く治したい」という方は、ぜひ当院リペアセルクリニックにご相談ください。 ▼インフルエンザの後遺症を治したい方はご連絡ください! >>(こちらをクリックして)今すぐ電話してみる 参考文献 (文献1) インフルエンザ感染後に発症した慢性疲労症候群に漢方治療が有効であった1例|日本東洋医学雑誌 (文献2) インフルエンザの臨床経過中に発生する脳炎・脳症の疫学及び病態に関する研究(総括研究報告書)|厚生労働科学研究成果データベース (文献3) The post‐infection outcomes of influenza and acute respiratory infection in patients above 50 years of age in Japan: an observational study|National Library of Medicine (文献4) 新型コロナ インフルより“後遺症”リスク高い 名古屋工業大|NHK (文献5) Course of General Fatigue in Patients with Post-COVID-19 Conditions Who Were Prescribed Hochuekkito: A Single-Center Exploratory Pilot Study|Multidisciplinary Digital Publishing Institute (文献6) 咳嗽に関するガイドライン(第2版)|日本呼吸器学会
2025.07.31 -
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「健康診断で脂質異常症を指摘されたけれど、とくに症状もないし……」 「最近、手足がしびれることがある。もしかして何かの病気と関係があるのかな?」 このように、健康診断の結果や気になっている手足のしびれに関して、不安に思われている方もいらっしゃることでしょう。 実は、脂質異常症そのものが直接「しびれ」を引き起こすことは、あまりありません。 しかし、だからといって安心はできません。 脂質異常症を放置していると、動脈硬化や糖尿病といった深刻な病気につながり、それが原因でしびれが現れることがあるのです。 本記事では、脂質異常症がどのようにして手足のしびれに関わるのか、そのメカニズムを専門医が詳しく解説します。 あわせて、ご自身でできる生活習慣の改善方法についてもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。 脂質異常症が関連する「しびれ」のお悩みを今すぐ解消したい・再生医療に興味がある方は、当院「リペアセルクリニック」の電話相談までお問い合わせください。 脂質異常症でしびれる?基礎知識から症状まで専門医が解説 脂質異常症と診断されても、多くの場合、自覚症状がないため軽く考えてしまうかもしれません。 しかし、この病気は静かに進行し、重大な合併症を引き起こす可能性があります。 まずは脂質異常症とはどのような病気なのか、そしてなぜ「しびれ」と結びつけて考えられがちなのか、基本的な知識から確認していきましょう。 脂質異常症の定義と種類 脂質異常症とは、血液の中に含まれる脂質、具体的には「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)が基準値より多い状態や、「善玉」と呼ばれるHDLコレステロールが基準値より少ない状態を指します。 血液中の脂質は、細胞膜やホルモンの材料になるなど、体にとって不可欠なものですが、そのバランスが崩れることが問題なのです。 主な種類は以下の3つのタイプに分けられます。(文献1) 脂質異常症のタイプ 説明 高LDLコレステロール血症 「悪玉」コレステロールが多い状態。増えすぎると血管の壁にたまり、動脈硬化の原因になります。 低HDLコレステロール血症 「善玉」コレステロールが少ない状態。善玉コレステロールは余分なコレステロールを回収する働きがあるため、少ないと動脈硬化が進みやすくなります。 高トリグリセライド血症 中性脂肪が多い状態。これも動脈硬化の要因となるほか、急性膵炎のリスクを高めることがあります。 これらの診断基準となる具体的な数値は、健康診断の結果などで確認できます。 ご自身の数値を把握し、どのタイプに当てはまるかを知ることが大切です。 なぜ「しびれ」が直接的な症状ではないのか? 「脂質異常症が原因で手足がしびれる」と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、結論からいうと、脂質異常症そのものが神経に直接作用して「しびれ」を引き起こすことは、ほとんどありません。 では、なぜ「しびれ」と脂質異常症が結びつけて考えられるのでしょうか。 その背景には、脂質異常症が引き起こす動脈硬化が大きく関係しています。 動脈硬化によって血管が硬く、狭くなると、手足の末端まで十分な血液が届きにくくなります。 この血流の悪化が、結果として神経に栄養や酸素を十分に供給できなくなり、しびれが感じられることがあるのです。 つまり、「脂質異常症→動脈硬化→血流障害→しびれ」という流れで症状が現れることはありますが、「脂質異常症 → しびれ」という直接的な関係ではないことを理解することが重要です。 そのため、「しびれ」を感じる場合、その裏には単なる血行不良だけでなく、脂質異常症がもたらす血管の深刻な変化が隠れている可能性を考える必要があります。 脂質異常症の一般的な自覚症状 脂質異常症が「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」と呼ばれる最大の理由は、病気がかなり進行するまで、ほとんど自覚できる症状が現れない点にあります。 痛みやかゆみ、倦怠感のようなわかりやすいサインがないため、健康診断で数値を指摘されても、つい放置してしまいがちです。 しかし、症状がないからといって、体の中で問題が起きていないわけではありません。 水面下で動脈硬化が静かに進行し、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気を引き起こすリスクをはらんでいます。 まれに、脂質異常症が重症化した場合や、遺伝的な要因が強い家族性高コレステロール血症などでは、特徴的な身体的サインが現れることがあります。 黄色腫(おうしょくしゅ): コレステロールが皮膚の下にたまってできる、黄色いできものや膨らみです。目のまぶたや、肘、膝、お尻などに見られることがあります。 アキレス腱黄色腫(けんおうしょくしゅ): アキレス腱が太く、硬くなります。これもコレステロールが沈着することによって起こります。 これらの症状は、脂質異常症がかなり進行しているサインかもしれません。 しかし、このような症状が現れる前に、定期的な健康診断で血液の数値をチェックし、異常があれば早期に対策を始めることがなによりも重要です。 脂質異常症がしびれの症状を引き起こすメカニズム 脂質異常症自体がしびれの原因になることは稀ですが、放置すると引き起こされるさまざまな合併症が、間接的に「しびれ」の症状をもたらすことがあります。 ここでは、その代表的なメカニズムを3つの観点から詳しく解説します。 動脈硬化による血流障害としびれの関係 糖尿病性神経障害としびれの関係 その他の合併症としびれの関係 ご自身の「しびれ」が、どのような体の変化によって起きているのかを理解する手がかりにしてください。 動脈硬化による血流障害としびれの関係 脂質異常症の最も深刻な影響の一つが、動脈硬化を促進してしまうことです。 動脈硬化とは、血管が弾力性を失い、硬く、もろくなってしまう状態を指します。 血液中に増えすぎた悪玉コレステロール(LDL)は、血管の内壁に入り込んで酸化され、プラークと呼ばれるお粥のような塊を形成します。 このプラークが血管の内側を狭くし、血液の流れを妨げるのです。 とくに、手や足の先にあるような細い血管(末梢血管)では、この影響が顕著に現れます。 動脈硬化によって血流が悪くなると、末梢の神経細胞に必要な酸素や栄養が十分に行き渡らなくなります。 その結果、神経が正常に機能できなくなり、「ジンジンする」「ピリピリする」といった「しびれ」や、足先が冷たく感じるといった症状が現れます。 さらに動脈硬化が進行すると、閉塞性動脈硬化症(ASO)という病気に至ることもあります。 この病気では、歩くと足が痛くなり、休むと楽になる特徴的な症状(間歇性跛行)が現れ、重症化すると足の組織が壊死してしまう危険性もあります。 糖尿病性神経障害としびれの関係 脂質異常症と糖尿病は、生活習慣の乱れという共通の土台を持つため、非常に密接な関係にあり、併発しやすいことが知られています。(文献2) 脂質異常症を放置していると、インスリンの働きが悪くなるインスリン抵抗性という状態を引き起こし、糖尿病の発症リスクを高める可能性があります。 そして、糖尿病の三大合併症の一つとして知られるのが糖尿病性神経障害です。 これは、糖尿病による高血糖の状態が長く続くことで、全身の神経、とくに手足の末梢神経がダメージを受ける病気です。 高血糖は、以下の2つのメカニズムで神経障害を引き起こし、しびれの原因となります。 神経細胞への直接的なダメージ:血液中の過剰な糖が、神経細胞内で代謝される過程でソルビトールという物質に変わり、これが神経細胞内に蓄積して神経の働きを妨げます。 神経への血流障害:高血糖は、神経に栄養を送る細い血管の動脈硬化も促進します。これにより血流が悪化し、神経細胞が酸欠・栄養不足に陥り、機能が低下します。 この糖尿病性神経障害によるしびれは、多くの場合、足の裏や指先から始まり、徐々に体の中心に向かって広がっていく特徴があります。 その他の合併症としびれの関係 動脈硬化や糖尿病のほかにも、脂質異常症が関与すると、しびれを引き起こす可能性のある病気が存在します。 例えば、甲状腺機能低下症もその一つです。 甲状腺ホルモンは全身の代謝をコントロールする重要なホルモンですが、このホルモンの分泌が低下すると、脂質代謝にも異常が生じ、脂質異常症を悪化させることがあります。 同時に、甲状腺機能低下症では、体のむくみ(粘液水腫)が神経を圧迫したり、神経そのものの働きが鈍くなることで、しびれや感覚の低下といった症状が現れることがあります。 また、肝臓は脂質代謝の中心的な役割を担う臓器です。 そのため、脂肪肝や肝硬変など、肝機能に障害が生じると脂質異常症を招きやすくなります。 肝機能の低下が進行すると、体内の毒素が十分に処理されなくなり、神経に悪影響を及ぼしてしびれを感じることもあります。 このように、脂質異常症は単独の問題ではなく、体のさまざまな機能と関連しあっています。 そのためしびれの症状がある場合は、こうした他の病気が隠れていないか多角的に原因を探ることが大切です。 脂質異常症改善のための生活習慣の見直しと実践方法 脂質異常症の治療の基本は生活習慣の改善です。 日々の少しの心がけが、血液中の脂質のバランスを整え、将来の大きな病気を防ぐことにつながります。 ここでは、すぐに始められる実践的な方法を3つの柱に分けてご紹介します。 食生活の改善ポイント 効果的な運動習慣の取り入れ方 禁煙・節酒の重要性 忙しい毎日の中でも無理なく続けられるヒントを見つけて、健康な体を取り戻しましょう。 食生活の改善ポイント 脂質異常症を改善するための第一歩は、毎日の食事を見直すことです。 とくに意識したいのは、摂取する「油の種類」と「食物繊維」です。 まず、「控えるべき油」と「積極的に摂りたい油」を知りましょう。(文献3) 油の種類 解説 控えるべき油 飽和脂肪酸:肉の脂身、バター、ラード、生クリームなどに多く含まれます。悪玉コレステロール(LDL)を増やす原因。 トランス脂肪酸:マーガリン、ショートニングなどを使用するお菓子やパン、揚げ物などに含まれます。悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロール(HDL)を減らす原因。 積極的に摂りたい油 不飽和脂肪酸:青魚(サバ、イワシ、アジなど)に含まれるEPAやDHA、オリーブオイルやナッツ類に含まれるオレイン酸などが代表的です。これらは中性脂肪を減らしたり、悪玉コレステロールを減らしたりする働きが期待できます。 次に、コレステロールの吸収を穏やかにする「食物繊維」を十分に摂ることが大切です。 食物繊維 解説 水溶性食物繊維 海藻、きのこ、こんにゃく、大麦などに豊富です。腸内でコレステロールの吸収を妨げる働きがあります。 不溶性食物繊維 野菜、豆類、きのこ類に多く含まれます。便通を促し、腸内環境を整えます。 まずは、食事の最初に野菜や海藻のサラダ、きのこのスープなどを一品加えることから始めてみてはいかがでしょうか。 効果的な運動習慣の取り入れ方 食事改善と並行した定期的な運動は、脂質異常症の改善に効果的です。中性脂肪を減らし、善玉コレステロール(HDL)を増やす直接的な効果が期待できます。 特に推奨されるのは、ウォーキングや水泳、サイクリングなどの有酸素運動です。 体脂肪をエネルギーとして燃焼し、脂質代謝を改善します。少し汗ばむ強度で1回30分以上が目標です。 まずは階段の利用や一駅分のウォーキングなど、日常で体を動かす機会を増やしましょう。 有酸素運動に筋力トレーニングを組み合わせると、さらに効果が高まります。筋肉量増加により基礎代謝が上がり、エネルギー消費しやすい体質になります。 無理のない範囲で週3回以上が理想です。(文献4) 禁煙・節酒の重要性 食事や運動と同じくらい、あるいはそれ以上に脂質異常症の改善と合併症予防に重要なのが、禁煙と節酒です。(文献5) 禁煙について タバコの有害物質は血管内壁を傷つけ、動脈硬化を促進します。また善玉コレステロール(HDL)を減らし、悪玉コレステロール(LDL)を酸化させて血管壁への蓄積を促します。 脂質異常症患者の喫煙は動脈硬化リスクを著しく高めるため、自力での禁煙が困難な場合は禁煙外来の利用を検討しましょう。 節酒について 過度の飲酒は肝臓での中性脂肪合成を促進し、高トリグリセライド血症の直接の原因となります。 高カロリーなおつまみも脂質異常症を悪化させるため、食べすぎには注意が必要です。 厚生労働省が示す適度な飲酒量は1日あたり純アルコール約20gです。これはビール中瓶1本、日本酒1合、ワイングラス1杯弱に相当します。 飲まない日を設けて、肝臓を休ませるのも大切です。 脂質異常症の症状|しびれへの再生医療のアプローチ 脂質異常症が進行し、動脈硬化によって手足の血流が悪化して「しびれ」などの症状が現れた場合、生活習慣の改善や薬物療法と並行して、新たな治療の選択肢が検討されることがあります。 その一つが「再生医療」という治療法です。 再生医療は、患者様自身の幹細胞や血液を使う治療法で、入院や手術を伴わないのが特徴です。 当院「リペアセルクリニック」では、幹細胞を用いた再生医療を提供しております。 公式LINEでは、再生医療に関する情報発信や簡易オンライン診断を実施しているので、ぜひご登録ください。 脂質異常症の症状でしびれを感じたら医療機関へ 今回は、手足のしびれと脂質異常症の関係について解説しました。 脂質異常症そのものが直接「しびれ」を引き起こすことはまれである一方、放置すると動脈硬化や糖尿病といった合併症につながり、結果として「しびれ」が現れる可能性があります。 このように自覚症状がないまま進行することが多いため、健康診断での数値チェックと、症状が出る前からの生活習慣の改善が非常に重要です。 もし、あなたが健康診断で脂質異常症を指摘されており、かつ手足のしびれにお悩みであれば、それは体からの危険信号かもしれません。 自己判断で放置せず、なるべく早く専門の医療機関を受診して原因を調べてもらいましょう。しびれの症状は、時として重篤な病気のサインである可能性もあります。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する情報発信や簡易オンライン診断を実施しています。お悩みの症状がある方は、ぜひ一度ご登録ください。 参考文献 (文献1) 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版|日本動脈硬化学会 (文献2) 糖尿病診療ガイドライン2024|日本糖尿病学会 (文献3) 日本人の食事摂取基準2020年版|厚生労働省 (文献4) 健康づくりのための身体活動基準2023|厚生労働省 (文献5) 喫煙・飲酒とHDLコレステロールの関連解析|J-MICC研究
2025.07.30 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
「健康診断で脂質の数値を指摘されたけれど、脂質異常症と高脂血症って何が違うの?」「放っておくとどうなるのか不安」 健康診断の結果を見て、不安を感じた方もいらっしゃることでしょう。 脂質異常症と高脂血症は、よく混同されがちな言葉ですが、近年、医療の現場では「脂質異常症」が正式な病名として使われています。 以前の「高脂血症」よりも対象となる病態が広がったため、名称が変更されました。 脂質異常症は自覚症状がないまま動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳卒中など命に関わる病気を引き起こす可能性があります。 だからこそ、症状がなくても早めに正しい知識を得て対策を始めることが大切です。 本記事では、脂質異常症と高脂血症の違い、原因や基準値、ご自身でできる予防・治療法、そして再生医療までを解説します。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 脂質異常症に関連する「しびれ」などの症状についてお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 脂質異常症と高脂血症の違いとは? 「脂質異常症」と「高脂血症」、どちらも血液中の脂質に関する言葉ですが、この二つの違いをご存知でしょうか。 結論、現在では「脂質異常症」が正式な診断名で、「高脂血症」は古い呼び方です。 以前は、血液中のコレステロールや中性脂肪といった脂質が、基準値よりも「高い」状態をまとめて「高脂血症」と呼んでいました。 しかし、研究が進むにつれて、脂質の中でも「HDLコレステロール(善玉コレステロール)」のように、基準値より「低い」ことが体に悪影響を及ぼす脂質があることがわかってきました。(文献1) そこで2007年に日本動脈硬化学会が診断名を変更し、脂質の量が基準値から外れた状態をすべて含める形で「脂質異常症」という名称が使われるようになったのです。 以下の表で、脂質異常症と高脂血症の違いを整理してみましょう。 脂質の種類 脂質異常症 (現在の診断名) 高脂血症(以前の考え方) HDLコレステロール (善玉) 低いことが問題 (基準に含まず) LDLコレステロール (悪玉) 高いことが問題 高いことが問題 トリグリセライド (中性脂肪) 高いことが問題 高いことが問題 このように、高脂血症の悪玉コレステロールや中性脂肪が高い状態に善玉コレステロールが低い状態も含むものを脂質異常症と呼びます。 より広い範囲の異常を捉えるための、より的確な診断名なのです。 脂質異常症(高脂血症)の種類とそれぞれの基準値 脂質異常症は、血液検査によって「どの脂質の数値が基準から外れているか」が確認され、主に3つのタイプに分けられます。 ご自身の健康診断の結果と見比べながら、どのタイプに当てはまる可能性があるのかを確認してみましょう。 ここでは、以下の3つのタイプについて、それぞれの特徴と日本動脈硬化学会が定めている診断基準値を解説していきます。(文献2) 高LDLコレステロール血症 低HDLコレステロール血症 高トリグリセライド(中性脂肪)血症 これらの基準値は、あくまで診断のための目安です。 他の病気(糖尿病や高血圧など)の有無やご家族の病歴などによって、治療を開始すべき目標値は一人ひとり異なりますので、正確な診断については必ず専門医にご相談ください。 高LDLコレステロール血症 高LDLコレステロール血症は、血液中の悪玉コレステロールが基準値よりも多い状態です。 増えすぎたLDLコレステロールは血管の壁に入り込み、動脈硬化を進行させる「プラーク」というコブを形成します。これが心筋梗塞や脳梗塞の直接的な引き金となるため、注意が必要です。 診断基準は、空腹時の採血でLDLコレステロール値が140mg/dL以上とされています。 主な原因としては、肉の脂身やバターといった動物性の脂肪(飽和脂肪酸)の多い食事、運動不足、遺伝的な体質などが挙げられます。 低HDLコレステロール血症 低HDLコレステロール血症は、血管の余分なコレステロールを回収して肝臓に運び戻す善玉コレステロールが基準値よりも少ない状態です。 これが少ないと血管の掃除が行き届かなくなり、動脈硬化が進行しやすくなります。 診断基準となる数値は、空腹時の採血でHDLコレステロール値が40mg/dL未満の場合です。 主な原因には喫煙、運動不足、内臓脂肪型の肥満などが挙げられ、生活習慣の見直しが重要となります。 高トリグリセライド血症(中性脂肪) 高トリグリセライド血症とは、血液中の中性脂肪(トリグリセライド)が基準値よりも多い状態を指します。 中性脂肪はエネルギー源ですが、過剰になると内臓脂肪として蓄積され、動脈硬化を強力に促進します。 診断基準は、空腹時の採血でトリグリセライド値が150mg/dL以上です。 主な原因は、ご飯やパンなどの糖質の多い食事、アルコールの飲み過ぎ、食べ過ぎ、運動不足といった生活習慣にあります。 脂質異常症を放置するリスクとは?動脈硬化と関連疾患 「とくに症状もないし、数値が少し高いだけ」と、脂質異常症を軽視するのは非常に危険です。 この病気は「サイレントキラー」とも呼ばれ、自覚症状がないまま、血管の老化である動脈硬化を静かに進行させます。 動脈硬化とは、血管の壁にコレステロールなどが溜まってプラークを作り、血管を硬く、狭くしてしまう状態です。 このプラークが破れると、そこに血の塊(血栓)ができて血管を完全に塞いでしまい、命に関わる深刻な病気を引き起こすのです。 動脈硬化が原因で起こる代表的な病気には、以下のようなものがあります。 影響を受ける場所 主な病名 心臓 狭心症、心筋梗塞 脳 脳梗塞、脳出血 足の血管 閉塞性動脈硬化症(痛み、しびれ) 腎臓の血管 腎機能の低下 これらの病気は、発症すると生活の質を著しく低下させてしまいます。 健康診断で脂質異常症を指摘されたら、それは体からの重要なサインだと受け止め、早期に対策を始めることが何よりも大切です。 脂質異常症(高脂血症)の治療法 脂質異常症の治療の最終目標は、単に数値を下げることではなく、動脈硬化の進行を食い止め、将来の心筋梗塞や脳卒中といった深刻な病気を予防することにあります。 治療の基本となるのは、病気の根本原因である生活習慣の見直しです。具体的には、以下の3つが治療の柱となります。(文献3) 食事療法 運動療法 薬物療法 まずは食事や運動の改善から始め、それでも数値が十分に改善しない場合や、リスクが非常に高い場合には薬物療法を並行して行います。 どの治療法を選択するかは、患者様一人ひとりの状態に合わせて医師が総合的に判断します。 食事療法|コレステロールを下げる食生活のポイント 脂質異常症の改善において、毎日の食事を見直すことは治療の基本であり、健康な血管を取り戻すための第一歩です。以下のポイントを意識して、できることから始めてみましょう。 【控えるべき食品】 肉の脂身やバターに多い飽和脂肪酸 マーガリンや加工食品に含まれるトランス脂肪酸 ご飯やパン、お菓子などの糖質 アルコール 飽和脂肪酸やトランス脂肪酸は悪玉コレステロールを増やし、糖質やアルコールのとりすぎは中性脂肪の増加につながります。 【積極的に摂りたい食品】 野菜、海藻、きのこ類に含まれる食物繊維 青魚、オリーブオイルなどに含まれる不飽和脂肪酸 食物繊維はコレステロールの吸収を抑え、不飽和脂肪酸は血中の脂質バランスを整えてくれます。 これらのポイントを参考に、まずは1日1食からでも、食生活を見直してみましょう。 運動療法|脂質異常症改善に効果的な運動の種類と方法 食事療法とあわせて行いたいのが、脂質異常症の改善に大きな効果をもたらす運動療法です。運動には、善玉(HDL)コレステロールを増やし、中性脂肪を減らす直接的なメリットがあります。 効果的なのは、ウォーキングや軽いジョギング、水泳といった有酸素運動です。これらの運動を、ややきついと感じるくらいの強度で、1回30分以上、週に3日以上続けることが目標です。 一度に30分が難しければ、10分を3回に分けても構いません。大切なのは無理なく続けることです。一駅手前で歩くなど、生活の中に少しずつ運動を取り入れることから始めてみましょう。(文献5) ただし、心臓や膝に持病のある方は、運動を始める前に必ず医師に相談してください。 薬物療法|脂質を下げる薬の種類と作用 食事療法や運動療法を続けても脂質の数値が目標まで改善しない場合や、心筋梗塞などのリスクが元々高いと判断された場合には、生活習慣の改善とあわせて薬物療法を検討します。(文献4) 薬はあくまで治療の補助であり、自己判断での中断はせず、必ず医師の指示に従いましょう。 脂質異常症の治療に主に使われる薬には、以下の種類があります。 薬の種類 作用の概要 スタチン系薬剤 肝臓でのコレステロール合成を抑える、最も基本的な薬です。 フィブラート系薬剤 肝臓での中性脂肪の合成を抑え、分解を促します。 EPA・DHA製剤 青魚の油の成分で、中性脂肪の合成を穏やかに抑えます。 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(エゼチミブ) 小腸でのコレステロールの吸収を妨げます。 どの薬にも副作用の可能性があります。筋肉の痛みや脱力感、肝機能障害などがみられることもありますので、服用中に気になる症状があれば、速やかに主治医に相談してください。 また、脂質異常症の薬については、以下の記事で詳しく解説しておりますので、気になる方はご確認ください。 脂質異常症(高脂血症)の予防法|今日からできる生活習慣の改善 脂質異常症は、生活習慣の見直しで予防・改善が可能です。将来の深刻な病気を防ぐため、以下の点を心がけましょう。 予防のポイント 具体的な方法 食生活の改善 食物繊維(野菜・海藻)や青魚を積極的に摂り、肉の脂身や糖分、アルコールは控えることが大切です。 運動習慣と禁煙 ウォーキングなどの有酸素運動を週3日以上続けましょう。また、動脈硬化の大きな原因となる喫煙はやめることが重要です。 定期的な健康診断 自覚症状がない病気のため、年に一度は健康診断で血液の状態を確認し、早期発見に努めましょう。 一つひとつの小さな積み重ねが、10年後、20年後のあなたの健康を守る大きな力となります。今日からできることから、ぜひ始めてみてください。 脂質異常症(高脂血症)は早期発見と継続的な対策が重要 本記事では、脂質異常症と高脂血症の違いから、リスク、治療法、予防法について解説しました。 脂質異常症は、悪玉コレステロールが高い状態だけでなく、善玉コレステロールが低い状態も含む広範囲な異常を指します。 この状態を放置すると、自覚症状がないまま動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中の引き金となりかねません。 脂質異常症は「サイレントキラー」と呼ばれ、症状が出た時には病状が進行している場合が多いため、食事や運動などの生活習慣改善が重要です。 症状がないからと油断せず、年1回は健康診断を受けて数値を把握しましょう。 脂質の異常を指摘されたら、それは体からの重要なサインです。異常を放置せず、早めに専門医を受診し、継続的な対策を始めることが大切です。 参考文献 (文献1) 脂質異常症(高脂血症)|日本医師会 健康の森 (文献2) 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版|日本動脈硬化学会 (文献3) 脂質異常症|厚生労働省 e-ヘルスネット (文献4) 脂質異常症治療のエッセンス|日本医師会編 (文献5) 健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023|厚生労働省
2025.07.30 -
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脂質異常症は、自覚症状がないため、知らず知らずのうちに進行してしまう疾患です。 しかし、そのまま放っておくと動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞などといった重篤な病気につながる可能性があります。 その一方で「どの薬を選べば良いのか」「副作用が心配」といった声も多く聞かれるのが現状です。 本記事では、脂質異常症の薬物治療について詳しく解説いたします。 薬の種類や効果、副作用のリスク、服用期間、そして薬に頼らない選択肢まで、専門医の視点からお伝えします。 ぜひ記事を最後まで読んで、脂質異常症薬への理解を深めましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 脂質異常症に関連する「しびれ」などの症状についてお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 脂質異常症とは?その診断基準と薬の必要性 まず脂質異常症がどのような状態を指すのか、その診断基準について解説します。 そして、なぜ早期の診断と適切な治療が重要なのか、放置した場合のリスクについても詳しくお伝えします。 ご自身の健康状態を正しく理解し、適切な治療につなげるための参考にしてください。 脂質異常症の診断基準について 脂質異常症とは、一定の基準値よりもLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が高い、または、HDL(善玉)コレステロールが低い状態です。 脂質異常症の診断では、まず採血による血液検査でLDLコレステロール値とHDLコレステロール値、中性脂肪値の測定から行います。 採血前日は、高脂肪食や高カロリー食を控え、禁酒し、12時間以上の絶食を行った状態の採血が必要です。 これらの値が下記いずれかに該当すると「脂質異常症」と診断されます。(文献1) LDL(悪玉)コレステロール値が140 mg/dL以上の場合 なお、LDLコレステロールが120〜139mg/dLは境界域といわれ、糖尿病や高血圧の合併がある場合は治療が必要となることがあります。 HDL(善玉)コレステロール値が 40 mg/dL未満の場合 中性脂肪が150 mg/dL以上の場合 ただし、単に数値が基準を超えればすぐに投薬するわけではありません。 診断の際には、年齢・性別・既往歴(心筋梗塞や脳卒中の経験)、家族歴(家族性高コレステロール血症の疑い)、喫煙歴、高血圧や糖尿病などの合併症も総合的に評価します。 この基準値に応じて、薬物治療のタイミングや方法が決まるので、ご自身の目標値については、医師にご相談ください。 脂質異常症治療薬の必要性と放置するリスク 脂質異常症は、自覚症状がないため、健康診断などで発見されることが多いです。 治療せずに放置すると、HDLコレステロールの減少やLDLコレステロールの増加により、動脈の壁に脂肪の塊(プラーク)を作ってこびりつき、その結果、動脈硬化になります。 動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や狭心症、脳卒中や脳梗塞などの重篤な病気になるリスクが高まります。 脂質異常症の薬について|主要な薬剤の種類 脂質異常症の治療には、主に以下の薬が使われます。 薬剤の種類 主な効果・特徴 スタチン系製剤 血液中のLDLコレステロール値を低下させる 1日1回の経口投与 PCSK9阻害薬 (エボロクマブ) 血液中のLDLコレステロール値を低下させる スタチン系製剤でLDLコレステロール値が十分に低下しない場合や、家族性高コレステロール血症、スタチン不耐の患者に使われる 皮下注射で、通常2週間に1回または1カ月に1回投与 自宅での自己注射が可能 siRNA薬 (インクリシラン) 血液中のLDLコレステロール値を低下させる スタチン系製剤でLDLコレステロール値が十分に低下しない場合や、家族性高コレステロール血症、スタチン不耐の患者に使われる 皮下注射で、通常6カ月に1回投与 医療機関でのみ投与 ベムペド酸 血液中のLDLコレステロール値を低下させる スタチン系製剤で副作用が出たり、LDLコレステロール値の低下が不十分な場合に使われる 1日1回の経口薬 その他の脂質改善薬 エゼチミブ(小腸でのコレステロール吸収を阻害する薬) フィブラート系製剤 EPA製剤 陰イオン交換樹脂 スタチン系製剤 スタチン系製剤は、肝臓でコレステロールが作られる際に働く「HMG-CoA還元酵素」という酵素の働きを阻害し、体内のコレステロール合成を抑えます。 その結果、血液中のLDL(悪玉)コレステロールが減少し、動脈硬化の進行を抑える効果が期待できます。 スタチン系製剤の特徴は、その種類や服用量によってコレステロールを下げる効果の強さが異なることです。 大きく分けて「スタンダードスタチン」と、スタンダードスタチンより作用が強い「ストロングスタチン」の2種類があります。 どの種類や量を使うかは、患者様の検査結果や病気のリスク、副作用の出方などによって、医師が総合的に判断します。 これらのスタチン系製剤の多くは、1日1回の服用が可能な経口薬です。 主な副作用には、以下の症状が挙げられます。 筋肉痛や筋力低下 消化器症状(胃の不快感、吐き気、便秘) 発疹 肝機能障害 少しでも体の異変を感じたら、自己判断で薬の服用を中止せず、速やかに医師に相談してください。 PCSK9阻害薬 PCSK9阻害薬は、スタチン系製剤の服用が難しい場合、スタチン系製剤と併用で検討される薬剤です。 肝臓で作られるPCSK9タンパク質の働きを阻害することで、血管からLDLを肝臓に取り込む受け皿であるLDL受容体を増加させます。この作用によって、血中のLDL(悪玉)コレステロールを下げられます。(文献2) PCSK9阻害薬は、スタチン系製剤では⼗分に LDLコレステロール値が低下しない方や家族性⾼コレステロール⾎症の方、冠動脈疾患、心筋梗塞、脳梗塞などの心血管疾患を経験し、再発予防が必要な方に有効な治療薬です。 日本で現在使用されているPCSK9阻害薬には、エボロクマブ(レパーサ)やアリロクマブ(プラルエント)などがあります。 投与は皮下注射で投与され、通常は2週間に1回、または月に1回の頻度で投与されます。 自宅での自己注射が可能なため、通院の負担を軽減できます。 副作用には、疼痛、紅斑、発疹などの反応を引き起こす可能性があります。副作用が出たら速やかに医師に相談してください。 siRNA薬(インクリシラン) siRNA薬は、肝臓で産生される特定のタンパク質、PCSK9の生成を抑えることでコレステロールを低下させる薬剤です。 siRNA薬はこのPCSK9の数を減らすことで、血液中のLDLコレステロール値を下げる効果を発揮します。 以下のような患者様にsiRNA薬は有効な治療薬とされています。 スタチン系製剤だけではLDLコレステロール値が十分に低下しない方 家族性高コレステロール血症の方 すでに心臓や脳の動脈硬化疾患をお持ちでコレステロール管理が不十分な方 siRNA薬は、皮下注射で投与され、成人には初回に300mgを投与し、その後3カ月に2回目の投与を行います。 それ以降は6カ月ごとに定期的に投与されます。この薬はPCSK9阻害薬と違い、医療機関でのみ投与可能なため、自己管理による投与忘れの心配はありません。 siRNA薬の副作用には、注射した部位に疼痛、紅斑、発疹などの反応を引き起こす可能性があります。 副作用が出た場合は、速やかに医師に相談してください。 ベムペド酸 ベムペド酸は、スタチン系製剤で副作用が出たり、LDLコレステロール値の低下が不十分な場合に処方されることがある薬剤です。 作用としては、肝臓に存在するATPクエン酸リアーゼという酵素を阻害し、コレステロールの合成を抑制します。 この酵素は肝臓に多く存在する酵素で、肝臓のコレステロール合成が減ることで、血中のLDLコレステロールが下がる効果が期待できます。 1日1回の経口薬で、日本では2024年11月26日に大塚製薬が製造販売承認申請を行っており、承認されれば処方される可能性があります。(文献3) ベムペド酸の副作用には、痛風・胆石症の発症率の上昇、血清クレアチニン・尿酸・肝酵素レベルが上昇する可能性があります。 その他の脂質改善薬(エゼチミブ、フィブラート製剤、EPA製剤、陰イオン交換樹脂) 脂質異常症の治療には、これまでにご紹介したスタチン系製剤やPCSK9阻害薬、siRNA薬以外にも、患者様の状態や脂質のタイプに合わせて、様々な薬剤が用いられます。 ここでは、その他の脂質改善薬について、その作用と特徴を解説します。 エゼチミブ(小腸コレステロールトランスポーター阻害剤) エゼチミブは、小腸におけるコレステロールの吸収を阻害します。 その結果、血液中のLDLコレステロールや総コレステロールの濃度が低下する薬で、1日1回の経口服用薬です。 スタチン系製剤を服用できない人の治療にも使用されますが、スタチン併用でLDLコレステロール値を下げることが報告されています。 エゼチミブの主な副作用には、発疹や消化器症状(便秘、下痢、腹痛、腹部膨満、吐き気、嘔吐)などがあります。 このような症状が現れた場合は、医師に相談してください。 フィブラート系製剤 フィブラート系製剤は、中性脂肪を下げる働きがあり、LDLコレステロールを減少させるとともに、HDL(善玉)コレステロールを増やす効果も期待できる薬で、1日1回の経口服用薬です。 スタチン系製剤と併用すると副作用として、筋肉の細胞が破壊される横紋筋融解症などの症状が起こるリスクが高まります。そのため、治療上併用する場合は医師の指導のもとでの服用が重要です。 EPA製剤(イコサペント酸エチル) EPA製剤は、血液中の中性脂肪を低下させ、血行を改善する効果があります。 EPA製剤には、サプリメントとして市販されているものと、高脂血症治療薬として処方される医療用医薬品の2種類ありますが、高脂血症治療薬として処方されるものは医師の診断と処方箋が必要です。 EPA製剤の主な副作用には、発疹や消化器症状(下痢、腹部の不快感、吐き気、嘔吐)などが報告されています。 陰イオン交換樹脂 陰イオン交換樹脂は、腸内で胆汁酸と結合して体外に排出させることで、血中コレステロール値を低下させる効果を持つ薬剤です。 スタチン系製剤が使用できない症例や併用薬として処方されてます。 陰イオン交換樹脂の主な副作用には、発疹や消化器症状(便秘、下痢、食欲不振、吐き気)があります。 飲み合わせや服用時の注意点 脂質異常症薬と他の薬や食品との飲み合わせや、日常生活で気を付けるべき点について解説します。 スタチン系製剤(アトルバスタチンとリピトール)+グレープフルーツジュース グレープフルーツに含まれる成分が薬の分解を妨げ、血中濃度が高くなり、薬の効果が強くなりすぎてしまう可能性があります。(文献4) グレープフルーツジュースの影響は、数日間におよぶこともあるといわれているため、薬を服用している間はグレープフルーツジュースを飲まないように注意しましょう。 同じ柑橘系の果物でも、みかんやオレンジは一緒に食べても影響を与えないと言われています。 スタチン系製剤+フィブラート系製剤 中性脂肪を下げる目的で併用されることがありますが、筋肉障害のリスクがやや高まります。(文献6) クレアチンキナーゼ(CK:筋肉の損傷を示す検査値)測定を定期的に行い、異常があれば片方を減量・中止することもあります。 EPA製剤+抗凝固薬 EPA製剤には血液をサラサラにする作用があり、抗凝固薬(ワルファリンなど)を服用中の方は出血傾向があるので注意が必要です。出血を伴う医療行為(抜歯、外科手術など)を行う場合には医師に相談しましょう。 胆汁酸吸着樹脂と他の経口薬 胆汁酸吸着樹脂は、他の薬剤の吸収を遅延・阻害する可能性があるため、服用時間を2時間以上空ける必要があります。 服用する薬剤の種類や量によっては、さらに時間を長く空ける場合もあるため、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。 脂質異常症の薬は一生飲み続ける?服用期間と中断の可能性 脂質異常症の薬は、多くの場合、長期的に服用を続けることが推奨されます。 しかし、必ずしも一生飲み続けなければならないわけではありません。 服用期間の目安は、患者様お一人おひとりの病状やリスク、生活習慣の改善状況によって異なります。 また、脂質異常症の原因は、家族性高コレステロール血症など遺伝的な要因を除き、食生活の偏りや運動不足、喫煙、アルコールの過剰摂取、他の疾患(糖尿病や肥満など)だといわれています。 治療の基本は生活習慣の見直しであり、薬を服用している間も食事・運動・減量・禁煙といった取り組みが欠かせません。こうした改善が進めば、薬の減量や将来的な服薬中止につながる可能性もあります。 重要なポイントとして、血液検査の結果、コレステロール値が改善しても自己判断で服用を中止しないでください。 事例をあげると、フランスの研究では、75歳以上の高齢者が予防のために服用していたスタチンを中止した場合と、継続した場合で比べると、中止した時の方が心血管イベントによる入院リスクが増加したことがわかっています。(文献5) 脂質異常症の薬に関するお悩み事はためらわずに医師へご相談ください ここまで脂質異常症と薬の治療について紹介しました。 コレステロールの数値や薬について、疑問や不安が生まれるのは当然のことです。 脂質異常症は、放置すると心筋梗塞や脳卒中といった重大な病気につながる可能性があるため、生活習慣の改善が非常に重要です。 一方で、薬による治療も大切です。LDL(悪玉)コレステロールを下げる薬、中性脂肪を下げる薬など、薬によって効果や特徴は異なりますが、医師は患者様を診断し処方する薬を選定します。 飲み合わせによってはさらに悪化する可能性もあるため、事前に医師にどのような薬を服用しているか伝え、副作用が起きるような場合も医師に早く相談しましょう。 脂質異常症の治療は、一人で抱え込むものではありません。 不安を抱えたまま治療を続けるのは精神的な負担にもなりますので、小さなことでもためらわず、医師に相談しましょう。 参考文献 (文献1) 動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022年版|一般社団法人日本動脈硬化学会 (文献2) レパーサ皮下注140 mgペン 添付文書|PMDA (文献3) 高コレステロール血症治療薬「ベムペド酸」製造販売承認申請について|大塚製薬 (文献4) 薬物間相互作用―グレープフルーツジュースとスタチン|日本臨床薬理学会誌 (文献5) Statin discontinuation and cardiovascular events in 75-year-olds|European Heart Journal (文献6) Incidence of hospitalized rhabdomyolysis with statin-fibrate therapy|PubMed
2025.07.30 -
- 内科疾患
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「最近目がかすむようになった」 「視界がぼやける感じがする」 糖尿病と診断されている中で、このような症状が出てきて「糖尿病で失明する」と聞き、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。 実際に、糖尿病の合併症として視力障害が存在します。 しかし、血糖値のコントロールや定期的な眼科受診による経過観察で視力を回復させることや悪化を防止させることは可能です。 本記事では糖尿病と失明の関係や、視力低下への対処法などを紹介します。 視力に対する不安を感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。 糖尿病で失明する原因 糖尿病は全身の血管に影響を及ぼす慢性疾患であり、目の組織にも深刻な障害を引き起こします。 失明に至るのも決してまれではなく、進行するまで自覚症状が乏しいため、発見が遅れるケースも少なくありません。 失明を防ぐには、糖尿病が視覚にどのような影響を及ぼすのかを正しく理解することが重要です。 ここでは、糖尿病によって引き起こされる主な失明の原因と、その他の関連疾患について解説します。 糖尿病網膜症 糖尿病網膜症は、高血糖による網膜の血管障害(糖尿病性細小血管症)によって発症する、糖尿病で失明に至る主な原因の一つです。 進行の程度に応じて、以下の3段階に分類されています。 単純糖尿病網膜症:網膜の毛細血管がこぶ状になり、血液や脂質が漏れ出して網膜に付着する 増殖前糖尿病網膜症:毛細血管が閉塞し、網膜や神経への血流が不足する 増殖糖尿病網膜症:もろい新生血管が破れて出血を起こしたり、網膜剥離が生じたりして、視力が大きく低下する 糖尿病網膜症は失明に至る危険性がある怖い病気であり、少しでも異常を感じたら眼科を受診しましょう。 糖尿病網膜症については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。 視覚障害につながるその他の疾患 糖尿病が原因で視覚障害につながる、その他の疾患については以下の表にまとめました。 疾患名 特徴・症状 予後 糖尿病視神経症 網膜症の有無に関係なく発症する視神経の循環障害。突然の高度な視力障害が現れる。片眼性が多い。 不良 糖尿病眼球運動障害 眼球を動かす筋肉が障害され、物が二重に見える(複視)。 良好 糖尿病ぶどう膜炎 ぶどう膜の前部に炎症が起こる。点眼治療で軽快するが、長期化することもある。 経過により異なる 糖尿病角膜症 角膜表面が障害され、知覚低下により傷や感染に気づきにくい。涙の分泌も減少傾向。 感染などの管理が重要 糖尿病黄斑浮腫 網膜の中心「黄斑」にむくみが発生し、視力が低下する。 治療により改善可能 その他の合併症 屈折異常や白内障など、糖尿病により発症または悪化する眼疾患。 種類により異なる 糖尿病による失明の前兆 糖尿病網膜症の特徴として、失明の危険がある重大な疾患にもかかわらず、症状が現れにくい点が挙げられます。 高血糖が持続している場合、眼底検査で異常が見られなくても、網膜の毛細血管はすでに損傷を受け始めている場合があるのです。 とくに単純糖尿病網膜症や増殖前糖尿病網膜症では、出血や毛細血管の閉塞が進んでいても、自覚症状が出ないケースがあります。 自覚症状がないまま病状が進行して増殖糖尿病網膜症になると、新生血管や硝子体出血が起こって以下のような症状が現れます。 物が見えづらい ぼんやりと見える 視野に黒い影が見える(飛蚊症) 明暗の見え方が鈍くなる 視界に光がチカチカする 硝子体出血や網膜剥離が「黄斑」に及ぶと、視力を回復できなくなって失明に至る恐れがあります。 これらの症状が見られた場合は、速やかに眼科を受診しましょう。 また、前兆が現れる前に進行している場合もあるため、自覚症状がなくても年1回の眼科検診が推奨されます。 糖尿病による視力低下への対処法 糖尿病による視力低下を防ぐには、症状が現れる前の段階からの的確な対処が重要です。 視力障害は糖尿病の進行とともに現れる可能性があり、対処が遅れて適切な治療が行われないと、視力が大きく低下するケースがあります。 しかしながら、早期発見と治療を実施すれば重症化を防ぎ、視力の維持または改善を目指すことは可能です。 糖尿病網膜症に対する治療法は進歩しており、状態に応じた適切な対応が視力を守る鍵となります。 ここでは、視力低下への具体的な対処法を2つの側面から詳しく解説します。 早期発見と早期治療 糖尿病網膜症による視力障害を防ぐには、早期発見と早期治療が欠かせません。 米国眼科学会の報告によれば、糖尿病網膜症の患者の約90%が早期に治療を受けることで、重度の視力低下を防げるとしています。(文献1) ただし、治療の効果を期待できるのは、定期的に眼科検診を受けている場合に限られる点に留意しておきましょう。 アメリカ国立眼科研究所も、血糖コントロールと眼科での適切な治療が失明予防の鍵であると示しています。(文献2) 網膜は一度損傷を受けると元に戻すのが難しいため、治療は回復ではなく進行を抑えるのが目的になります。 したがって、異常が出る前からの検査と治療が極めて重要です。 視力回復につながる主な治療法 糖尿病網膜症による視力障害の進行を抑え、視力の維持・回復を目指す治療法には、以下のような選択肢があります。 レーザー治療 抗VEGF薬注射 硝子体手術 レーザー治療は新生血管の発生を防いだり、すでにできた血管を退縮させたりするのが目的です。 「汎網膜光凝固(はんもうまくひかりぎょうこ)」という方法では、酸素が足りない部分の細胞をレーザーで処理し、悪い血管の増えすぎを防ぎます。 視力低下前の予防的治療としても有効で、失明率を低下させる効果が期待できると考えられています。 抗VEGF薬注射は、ものを見るうえで大事な「黄斑」部分が腫れてしまう「黄斑浮腫」という症状に対する治療法です。 目の中に直接注射してむくみを沈める治療法で、見え方の改善が期待されます。 硝子体手術は、目の奥の「硝子体」からの出血やにごりを取り除き、網膜の機能改善を目的とする手術です。 糖尿病による失明を防ぐために必要なこと 糖尿病による失明を防ぐには、眼科での定期的な検査と全身の健康管理が不可欠です。 とくに、眼の自覚症状がない段階から最低でも年1回の眼底検査を受け、主治医の指示に従って治療を進めていきましょう。 定期検査によって網膜の状態を客観的に把握でき、早期の適切な治療で失明のリスクを大きく減らすことが可能です。 さらに、日頃から生活習慣病に注意し、血糖値・血圧・脂質の適切なコントロールも欠かせません。 血糖値・血圧・脂質の数値は糖尿病網膜症の発症・進行に深く関与しており、バランスのとれた健康管理が視力を守る基本となります。 糖尿病の合併症を防ぐ生活習慣病については、以下の記事も参考にしてください。 糖尿病による失明を防ぐためにも自己管理を徹底しよう 糖尿病による失明は、適切な対策により予防可能です。 糖尿病の影響から視力を守るためには、まず血糖・血圧・脂質のコントロールを徹底することが基本となります。 また、眼の自覚症状がなくても、定期的な眼科での検査も大切です。 異常を感じた際には放置せず、すぐに受診することが早期発見・早期治療につながります。 今回の記事を参考に、日常的な自己管理と定期的な検査で大切な視力を守りましょう。 リペアセルクリニックでは、糖尿病に対する再生医療にも対応しています。 公式LINEでは、無料オンライン診断を実施しているので、糖尿病治療中で視力低下や失明に関する不安を抱えている方はご相談ください。 糖尿病と失明に関するよくある質問 糖尿病網膜症の検査にはどのようなものがありますか? 糖尿病網膜症では、以下のような検査が行われます。 屈折検査 眼底検査 眼圧測定 細隙灯顕微鏡検査 糖尿病患者は網膜症と診断されていなくても、年1回の眼科受診が推奨されています。 視力低下や失明を未然に防ぐためにも、定期的に検査を受けましょう。(文献3) 糖尿病による失明は突然起こりますか? 糖尿病による視力低下や失明は通常ゆっくりと進行し、初期には自覚症状がないケースも少なくありません。 進行した網膜症が原因で硝子体出血や網膜剥離が起きると、急激な視力低下に至る場合もあるため注意が必要です。(文献4) 視力が低下すると、日常生活や仕事に大きな影響を及ぼす上、患者本人のみならず家族への負担も大きくなります。 症状の有無に関わらず、定期的な眼科での検診が大切です。 参考文献 (文献1) Rodríguez A, et al. (2024). The Role of Early Detection in Preventing Vision Loss from Diabetic Retinopathy. Journal of Diabetic Complications & Medicine, 9(5), pp.1―2. (文献2) National Eye Institute「Diabetic Retinopathy」 (文献3) 国立国際医療研究センター「網膜症」 (文献4) 公益社団法人 日本眼科医会「糖尿病網膜症による視力低下―予防と治療― ~運転免許証や仕事を失わないために~」
2025.06.30