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「痛風の発作が起きて激しい痛みに襲われた」「高尿酸血症と診断されたけど、どう対処すればいいの?」 こうした経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。 痛風は単なる関節の痛みではなく、放置すると重大な合併症を引き起こす可能性があります。しかし、適切な治療と生活習慣の改善により、痛風をコントロールし、健康的な生活を送ることができるのです。 本記事では、痛風の基礎知識から治療法、そして長期的な尿酸値管理のための生活習慣改善策まで、具体的なステップを詳しく解説します。痛風と上手に付き合い、より良い人生を送るためのヒントが見つかれば幸いです。 痛風とは何か?症状と原因の理解 痛風は、体内で作られる老廃物の一種である「尿酸」が過剰に蓄積することで発症する病気です。血中の尿酸値が高くなると、関節内に尿酸の結晶が沈着し、激しい炎症と痛みを引き起こします。痛風を正しく理解するために、その症状と原因について見ていきましょう。 痛風の典型的な症状 痛風の最も典型的な症状は、突発的な関節の激痛です。特に、足の親指の付け根(第一中足趾節関節)が影響を受けやすいですが、足首、膝、手首などの関節も侵される可能性があります。痛風発作時には、関節の発赤、腫れ、熱感を伴い、わずかな接触でも耐えがたい激痛となることがあります。 痛風発作は、主に夜間から早朝にかけて起こることが多く、安静時でも痛みが持続します。発作中は歩行が困難になり、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。 一般的に、痛風発作は数日から長くて2週間ほど続きますが、その間は徐々に症状が改善していきます。しかし、適切な治療を行わないと、発作を繰り返したり、関節の変形や腎臓などの合併症を引き起こしたりする可能性があります。 痛風発症のリスク要因 痛風の発症には、遺伝的な体質と生活習慣の両方が関与しています。主なリスク要因としては、以下のようなものがあげられます。 男性(特に40代以降) 肥満や過体重 高血圧や脂質異常症などの生活習慣病 腎機能低下 アルコール多飲(特にビールなどのプリン体を多く含むアルコール) プリン体の多い食事(レバー、イカ、青魚など) 利尿剤などの特定の薬剤の使用 これらのリスク要因が複数重なると、痛風を発症する可能性がさらに高まります。 中でも、ビールなどのアルコールの過剰摂取は、尿酸の生成を促進し、排泄を妨げるため、尿酸値を大きく上昇させる要因となります。また、プリン体を多く含む食品を過剰に摂取することも、尿酸値の上昇につながります。 生活習慣の改善によって、痛風のリスクを下げることができます。遺伝的な体質がある場合は、より一層の注意が必要です。肥満の解消、アルコールの制限、プリン体の摂取制限など、食事や飲酒量、運動習慣などを見直し、尿酸値のコントロールに努めることが大切です。 また、定期的な健康診断で尿酸値をチェックし、高尿酸血症の早期発見と予防に努めることも重要です。痛風の初期症状を見逃さず、適切な治療を早期に開始することで、痛風発作の頻度や重症度を抑えることができるでしょう。 痛風は、生活習慣の改善と適切な治療によって、十分にコントロール可能な病気です。症状や原因を正しく理解し、医師と相談しながら、自分に合った予防法や治療法を見つけていくことが大切です。 痛風治療の基本 痛風の治療は、大きく分けて、 痛風発作時の急性期の痛みの管理 長期的な尿酸値のコントロール の2つの側面から行われます。これらの治療法の特徴と効果を理解し、医師と相談しながら自分に合った方法を選択することが大切です。 痛風は適切な治療を続けることで、症状をコントロールできる可能性のある病気です。発作時の対処と並行して、長期的な尿酸値の管理にも取り組むことが大切です。生活習慣の改善なども含めた総合的なアプローチが、痛風治療の鍵となります。 薬物療法の選択と効果 痛風の薬物療法には、発作時の痛みと炎症を抑える治療と、長期的な尿酸値をコントロールする治療があります。 発作時の治療では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、ステロイド剤、コルヒチンなどが使用されます。これらの薬剤は、症状の重症度や状態に応じて選択されます。 治療法 効果 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の処方 痛みと炎症を抑える ステロイド剤の投与 強力な抗炎症作用により、速やかに症状を改善させる可能性がある コルヒチンの処方 炎症を引き起こす白血球の活動を抑制し、発作を鎮める 長期的な尿酸値のコントロールには、尿酸生成抑制薬と尿酸排泄促進薬が用いられます。 薬剤の種類 効果 尿酸生成抑制薬(アロプリノールなど) 体内での尿酸の生成を抑える 尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロンなど) 腎臓からの尿酸の排泄を促進する 医師と相談しながら、最適な治療方針を決めていくことが重要です。定期的な血液検査で尿酸値をモニタリングしながら、薬の種類や用量を調整していきます。 発作時の応急処置 痛風発作が起きた際は、まずは安静を保ち、患部を冷やすことが重要です。冷却には氷嚢(氷を入れた袋)やアイスパックを使うと良いでしょう。15〜20分程度を目安に、患部の様子を見ながら冷却を行いましょう。 また、水分を十分に摂取し、尿酸の排泄を促進することも大切です。発作時は、体内の尿酸値が高くなっているため、尿量を増やすことで尿酸の排泄を助けることができます。 痛風発作時の応急処置としては、以下の3点がポイントです。 応急処置 内容 患部の安静 関節に負担をかけないように、安静にする 冷却による痛み・腫れの軽減 氷嚢やアイスパックで患部を冷やし、炎症を和らげる 水分の十分な摂取による尿酸排泄の促進 水やお茶などの水分を十分に取り、尿量を増やす 応急処置で症状が落ち着かない場合や、激しい痛みが続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。 医師と相談しながら、自分に合った治療法を見つけ、継続していくことが重要です。定期的な通院と検査を通して、尿酸値や症状の変化を確認し、必要に応じて治療方針を調整していきましょう。 長期的な尿酸値管理の重要性 痛風の根本的な管理には、長期的な尿酸値のコントロールが必要です。一般的に、目標とされる尿酸値は6.0mg/dL未満とされています。尿酸値をこの範囲に保つことで、痛風発作の再発を防ぎ、合併症のリスクを下げることができる可能性があります。ただし、個人差があるため、具体的な目標値については医師と相談しながら設定することが大切です。 適切な食事の取り組み 尿酸値の管理には、食事の改善が欠かせません。プリン体を多く含む以下のような食品の摂取を控えめにし、野菜や低脂肪乳製品を中心とした食事を心がけることが推奨されています。 以下の表は、代表的なプリン体を多く含む食品と、100gあたりに含まれるプリン体の量を示しています。 プリン体を多く含む食品 含まれるプリン体の量(mg/100g) 具体例 レバー 300-1000 牛レバー、鶏レバー、豚レバーなど カツオ 200-400 カツオの刺身、たたき、缶詰など イカ 100-200 イカの刺身、塩辛、ゲソ揚げなど ビール 10-30 アルコール度数の高いビール、発泡酒など 食品100gあたりに含まれるプリン体が200mg以上になると高プリン食です。 ビールは、アルコール飲料の中でもプリン体を多く含むとされています。特に、アルコール度数の高いビールや発泡酒は、プリン体の量が多い傾向にあり、過剰摂取は避けましょう。 また、十分な水分摂取は尿酸の排泄を促進する可能性があるため、1日2リットル程度の水分を意識的に摂取することが良いとされています。ただし、摂取する水分の量は個人の体格や活動量によって異なるので、医師や栄養士に相談しながら調整していくことが大切です。 効果的な体重管理と運動 肥満は痛風のリスクを高める大きな要因の一つです。適正体重の維持を目指し、以下のようなバランスの取れた生活習慣を心がけることが推奨されています。 バランスの良い食事 適度な運動 運動は尿酸値を下げる効果が期待できます。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を定期的に行うことが良いでしょう。ただし、運動の種類や頻度は個人の体力や健康状態によって異なるため、医師や運動指導士に相談しながら、自分に合ったプログラムを作ることが大切です。 このように、食事や運動、水分補給など、生活習慣全般での取り組みが、長期的な尿酸値の適正化につながる可能性があります。薬物療法と併せて、自分に合った生活リズムを見直すことが、痛風とうまく付き合う秘訣となるでしょう。ただし、生活習慣の改善は個人差が大きいため、医師や栄養士などの専門家に相談しながら、無理のない範囲で続けていくことが重要です。 生活習慣の改善で予防する 痛風の予防には、日常生活の習慣を見直し、改善することが重要です。ここでは、避けるべき食品と推奨される食品、そして具体的な生活改善策について解説します。 避けるべき食品と推奨される食品 痛風を予防するためには、プリン体を多く含む食品を控えめにし、尿酸値を下げる効果が期待できる食品を積極的に取り入れることが大切です。 控えめにする食品 尿酸値を下げる効果が期待できる食品 肉類(特にレバーや内臓肉) 低脂肪乳製品(ヨーグルト、チーズなど) 魚介類(イカ、カツオ、サバなど) 緑黄色野菜(ほうれん草、ブロッコリーなど) ビール ビタミンC豊富な果物(レモン、オレンジ、キウイなど) 全粒穀物(玄米、全粒粉パンなど) 大豆製品(豆腐、納豆など) 食事では、これらの食品を上手に組み合わせ、バランスの取れた献立を心がけましょう。また、調理法にも気をつけ、脂肪の多い料理や刺激の強い味付けは控えめにすることが大切です。 日常生活での具体的な改善策 痛風の予防には、日々の生活習慣を見直し、改善していくことが大切です。無理のない範囲で、以下のようなポイントに気をつけながら、着実に改善を進めていきましょう。 改善のポイント 内容 アルコール摂取量の調整 特にビールは控えめにする 十分な水分補給 個人差はあるが、1日1.5〜2リットル程度を目安に補給する ストレス管理 自分なりのリラックス方法を見つける 規則正しい睡眠習慣の確立 十分な睡眠時間の確保をする 適度な運動の習慣化 週2-5回、30分程度の有酸素運動を目安に行う これらの改善ポイントを一度に全て取り入れるのは難しいかもしれません。しかし、一つひとつの取り組みを継続的に行うことで、徐々に痛風のリスクを下げることができる可能性があります。 例えば、アルコール摂取量を減らすことで、プリン体の過剰摂取を避けられるだけでなく、肝臓の負担を軽減できます。また、十分な水分補給は、尿酸の排泄を促進し、結石のリスクを下げる効果が期待できます。 ストレス管理や規則正しい睡眠習慣は、体調を整えるために重要です。自分なりのリラックス方法を見つけ、十分な睡眠時間を確保することで、ストレスの軽減や生活リズムの改善につながるでしょう。 さらに、適度な運動習慣は、尿酸値を下げるだけでなく、体重管理や全身の健康維持にも役立ちます。ウォーキングやジョギング、水泳など、自分に合った運動を選んで、無理のない範囲で続けていくことが大切です。 このように、日常生活の中で痛風予防を意識し、小さな改善を積み重ねていきましょう。健康的な生活習慣を身につけることが、痛風の症状改善や予防に役立つ可能性があります。ただし、生活習慣の改善は個人差が大きいため、自分のペースで無理なく取り組むことが重要です。 合併症を防ぐために 痛風を放置すると、様々な合併症を引き起こす可能性があります。合併症の予防には、痛風の適切な管理が必要です。 痛風と関連する合併症 高尿酸血症が長期間続くと、以下のような合併症を引き起こすリスクが高まります。 合併症 説明 痛風結節 関節周囲や軟部組織に尿酸塩の結晶が蓄積し、こぶ状の腫れができる 尿酸結石 腎臓に尿酸の結晶が蓄積し、結石を形成する 腎機能障害 尿酸結晶が腎臓に蓄積することで、腎機能が低下する また、痛風は心血管疾患(高血圧、心筋梗塞、脳卒中など)のリスク因子の一つとしても知られています。痛風患者は、心血管疾患の予防にも注意が必要です。 合併症の予防と対策 痛風の合併症を予防するには、適切な治療と尿酸値の管理が何より大切です。具体的には、以下のようなポイントに気をつけましょう。 ポイント 内容 定期的な医療機関の受診 症状の変化や尿酸値の推移を定期的にチェックするために、医療機関を受診することが重要です。これにより、病状の進行や合併症の兆候を早期に発見し、適切な治療方針を立てやすいです 医師の指示に従った治療の継続 医師が処方した薬物療法を適切に継続することが大切です。痛風の治療薬には、尿酸値を下げる薬や痛風発作を抑える薬などがあります。これらの薬を医師の指示通りに服用し、治療を継続することで、尿酸値をコントロールし、合併症のリスクを下げやすくなります 定期的な医療機関の受診と、医師の指示に従った治療の継続は、痛風の合併症を予防するために欠かせません。症状や尿酸値の変化を定期的にチェックし、適切な治療方針を立てることが重要です。また、処方された薬物療法を適切に継続することで、尿酸値をコントロールし、合併症のリスクを下げることができます。 さらに、痛風と関連の深い生活習慣病(肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病など)の予防と管理も重要です。 予防と管理 内容 バランスの取れた食事 適切な食事療法により、体重管理や生活習慣病の予防につながる 適度な運動 運動療法は、肥満の解消や心血管系の健康維持に役立つ 定期的な健康診断の受診 生活習慣病の早期発見と予防に繋がる 痛風の合併症を防ぐには、生活習慣の改善と医師との連携が欠かせません。定期的な受診と治療の継続、そして健康的な生活習慣を身につけることで、合併症のリスクを減らすことができるでしょう。 まとめ:痛風治療への積極的なアプローチ 痛風は、適切な治療と生活習慣の改善により、コントロールできる可能性のある病気です。痛みを和らげるだけでなく、長期的な尿酸値の管理と合併症の予防を目指すことが重要です。 まずは、医師と相談しながら、自分に合った治療法を選択しましょう。代表的な治療法には以下のようなものがあります。 治療法 内容 発作時の対症療法 冷却、鎮痛剤、ステロイド剤などを用いて、痛みや炎症を和らげる 尿酸値を下げる薬の服用 アロプリノールやフェブキソスタットなどの薬を使用し、尿酸値をコントロールする 食事療法 プリン体の摂取を控えめにし、十分な水分補給を行うなど、食生活を見直す 運動療法 ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を定期的に行い、体重管理や代謝の改善を図る 特に、食事と運動については、継続して取り組むことが大切です。生活習慣の改善には、積極的な姿勢が求められます。 一方で、痛風は決して簡単な病気ではありません。正しい知識を持ち、医療従事者と連携を取りながら、適切な対処を行うことが重要です。長期的な尿酸値コントロールと合併症予防に取り組むことで、痛風とうまく付き合えるようになるかもしれません。 健康で充実した人生を送ることが、痛風患者の皆さんの最大の目標です。この記事が、痛風との上手な付き合い方を見出すためのヒントになれば幸いです。自分の健康は自分で守るという前向きな姿勢を持ち続けることが、何よりも大切だといえるでしょう。 ただし、痛風の治療法や生活習慣の改善方法は、個人差が大きいため、必ず医師や医療従事者と相談しながら、自分に合ったアプローチを見つけていくことが重要です。 監修:医師 渡久地 政尚 参考文献一覧 愛知県薬剤師会,17.痛風(高尿酸血症) 痛風・尿酸財団,処方される主な痛風の薬 MSD マニュアルプロフェッショナル版,痛風 千葉県栄養士会,健康を考える皆さまへ,痛風の予防と食事 東京都立病院機構,高尿酸血症・痛風の食事,高尿酸血症・痛風とは 順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部,高尿酸血症・痛風の食事療法 e-ヘルスネット,アルコールと高尿酸血症・痛風 e-ヘルスネット,高尿酸血症 e-ヘルスネット,高尿酸血症の食事 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病,高尿酸血症/痛風 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病の調査・統計,高尿酸血症/痛風 e-ヘルスネット,プリン体
2024.11.04 -
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「痛風の初期症状を知りたい」 「足の親指が突然激痛に襲われたけど、痛風の初期症状?」 足の指における激痛などの症状は、痛風の初期症状かもしれません。 痛風は放置すると関節の変形や機能障害を引き起こす可能性があり、早期発見と適切な対処が大切です。 今回は痛風の初期症状の見分け方と、症状が出たときの対処法を詳しく解説します。本記事を読むと痛風の初期症状を見逃さず、重症化を防げるはずです。 先に「痛風の初期症状」における詳細を知りたい方は、リンクをクリックいただくと該当ページに飛べます。 痛風の初期症状と基本知識 痛風と聞くと、中高年男性の病気をイメージされませんか。しかし、最近では30代以下の発症も増えており、女性も決して無縁ではありません。 以下で、痛風の基本的な知識を解説します。 痛風とは何か? 痛風が起こる生物学的メカニズム 痛風とは何か? 痛風は、体内で作られた尿酸が関節内に蓄積し、激しい炎症と痛みを引き起こす病気です。 尿酸とは「プリン体」と呼ばれる物質が分解されてできる老廃物の一種で、通常は血液中から腎臓を介して尿に溶けて排出されます。 しかし、尿酸値が高くなりすぎると、血液中で尿酸が結晶化し、関節内に蓄積します。 主に足の親指の付け根(第一中足趾節関節)に発症しますが、足首や膝などの関節にも生じます。関節の変形や機能障害につながる恐れがあるため、初期症状を見逃さないようにしましょう。 痛風の有病率は男性で1.1%、女性で0.1% 男性の発症年齢のピークは30~50代、女性は閉経後に多い 痛風が起こる生物学的メカニズム 体内の尿酸濃度は、尿酸の「産生」と「排泄」のバランスで決まります。痛風は、以下のような原因で尿酸の産生過剰や排泄低下が起こりやすく、血中尿酸濃度が上昇すると発症します。 原因 説明 プリン体の過剰摂取 肉類、魚類、ビールなどに多く含まれるプリン体を過剰に摂取すると、尿酸の産生が増加する 尿酸の排泄低下 体内で尿酸が過剰に生成される または腎臓からの尿酸排泄が低下する 遺伝的要因 尿酸の産生や排泄に関連する酵素の遺伝的な異常により、尿酸が上昇しやすくなる 高濃度の尿酸は針状結晶となって関節内に蓄積し、激しい炎症反応を引き起こすのです。炎症は発赤、腫脹、熱感、痛みなどの症状を引き起こします。 血中尿酸値が7.0mg/dL以上の状態を高尿酸血症と呼び、痛風発症のリスクが高くなる 高尿酸血症の人は約2割が痛風を発症すると言われている 上記のように、痛風は尿酸値の上昇を引き起こす病気であり、生活習慣や遺伝的要因が関与しているといわれています。初期症状を見逃さず、適切な治療を行うのが大切です。 痛風の初期症状【激しい関節痛・違和感がある】 痛風の初期症状は、主に突然の激しい関節痛です。しかし、痛風発作が起こる前に、軽い痛みや違和感などの前兆が現れるときもあります。 初期症状を見逃さず、適切な対処を行うためにも、以下で痛風の初期症状と前兆を見ていきましょう。 痛風が起きたときの症状 痛風の前兆に起こる症状 痛風が起きたときの症状 痛風の代表的な初期症状は、以下のとおりです。 症状 説明 足の親指の付け根の激痛 痛風発作の約半数は、足の親指の付け根(第一中足趾節関節)に起こる 夜間から早朝にかけて突然発症する場合が多い 激しい痛みで布団の重みでも痛がるほど 関節の腫れと発赤 痛みを伴う関節は腫れて赤く変色する 皮膚が光沢を帯び、赤紫色に変色する場合もある 関節の熱感 炎症を起こした関節は熱をもち、触ると熱く感じる 歩行困難 激しい痛みで歩くのが困難になる 靴が履けなくなる場合もある 痛風発作は非常に強い痛みを特徴とし、安静時でも痛みが持続します。さらに、関節を動かすと痛みが増強します。発作が起こると日常生活に大きな支障をきたすでしょう。 発作は数日から長くて2週間ほど続きますが、炎症が治まると痛みや腫れは徐々に引いていきます。 しかし、適切な治療を行わないと発作を繰り返すようになり、関節の変形や機能障害につながる場合があります。 初期症状を見逃さず、早期に治療を開始するのが大切です。症状が軽度でも痛風が疑われる場合は、放置せずに医療機関を受診しましょう。 痛風の前兆に起こる症状 痛風の発作が起こる前兆の症状は、以下のようなものがあります。 前兆 説明 関節の違和感やこわばり 発作が起こる数日から数週間前に関節の違和感やこわばりを感じる場合がある 違和感は痛みとは異なる不快感で、関節を動かしにくい感じがする 軽い痛みや熱感 発作前に軽度の痛みや熱感が出る場合もある 痛みは発作時ほど強くないが、不快感を伴う 倦怠感や微熱 全身的な倦怠感や微熱が出る場合がある 倦怠感は疲労感や脱力感として感じられる 前兆を感じたら、安静にし、患部を冷やし、十分な水分を摂取するなどの対処を行いましょう。 痛風は発作を繰り返すと関節の変形や機能障害につながる恐れがある疾患です。初期症状を見逃さず、適切な治療を行うのが重要です。 痛風の症状が強いときや発作が起こった場合を始め、症状が気になるときは、早めに医療機関を受診して専門医の診断を受けましょう。 痛風になるリスクが高い人の傾向は? 痛風は特定の人に起こりやすい病気です。以下で痛風のリスクが高いかどうか、セルフチェックしましょう。 5つのセルフチェックリスト 痛風になる確率を高めるリスク要因 5つのセルフチェックリスト 以下の項目に当てはまる人は、痛風のリスクが高い傾向にあります。 リスク因子 説明 肥満または過体重 BMIが25以上の肥満、または過体重の人は痛風のリスクが高い 体重が10%増加すると、尿酸値は1mg/dL上昇しやすい 生活習慣病 糖尿病、高血圧、脂質異常症など、生活習慣病がある人は痛風のリスクが高い 上記の疾患ではインスリン抵抗性が尿酸値を上昇させる 多量のアルコール摂取 1日あたりアルコールを純アルコール換算で60g以上(日本酒なら1合以上)摂取する人は痛風のリスクが高い アルコールは尿酸の産生を促進し、排泄を阻害する 高プリン食の嗜好 肉類、魚介類など、高プリン食を好む人は痛風のリスクが高い プリン体の摂取過剰は尿酸の産生を増やす 家族歴 家族に痛風の人がいる場合、痛風のリスクが高い 痛風には遺伝的素因があり、家族歴がある人の発症リスクは約2倍とされている 参照:日本痛風・核酸代謝学会高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 当てはまる項目が多いほど、痛風のリスクは高くなります。しかし、これらの項目に当てはまらない方でも痛風を発症する可能性はあります。 リスクが高いと感じた方は、生活習慣の改善に取り組むのが大切です。食事、飲酒、運動などの生活習慣を見直して、尿酸値の上昇を防ぐのが重要です。 ただし、すでに痛風の症状がある場合や、生活習慣の改善だけでは尿酸値が下がらない場合は、医療機関で専門医に相談しましょう。 痛風になる確率を高めるリスク要因 痛風の発症には、遺伝的要因と生活習慣の両方が関与しているといわれています。主な痛風のリスク要因とメカニズムは以下のとおりです。 リスク要因 メカニズム 肥満 体重増加により尿酸値が上昇 多量飲酒 アルコールによる尿酸の産生促進と排泄阻害 高プリン食の過剰摂取 プリン体の摂取過剰による尿酸産生増加 遺伝的要因 尿酸代謝関連酵素の遺伝子変異 家族歴 遺伝的素因による発症リスクの上昇 加齢 加齢に伴う腎機能低下と尿酸排泄機能の減少 性別 男性に多く、女性は閉経後にリスク上昇 痛風の発症は複数の要因が絡み合って起こるため、リスク要因を理解して、ご自身に当てはまるリスクを把握しておくのが重要です。 痛風が疑われるときの対応法【家庭でできる対策】 痛風の発作が疑われる場合、以下のような対応を取りましょう。 対応方法 説明 安静 痛みのある関節を動かさないようにし、安静にすると炎症の拡大を防ぐ 冷却 痛みと腫れのある関節を冷やし、炎症を抑える。氷のうやアイスパックを20分程度当てる 水分補給 体内の尿酸を排出するために、十分な水分補給を行う。1日2リットル以上の水分摂取を心がける ただし、上記は応急処置で根本的な治療にはなりません。 痛風の治療は早ければ早いほど効果的です。症状が改善しない場合や、発作が頻繁に起こる場合は、速やかに医療機関を受診してみてください。 医師の診断を受けるタイミング【早期発見が大切】 痛風の症状が疑われる場合、早めに医師の診断を受けるのが大切です。以下で、医療機関を受診すべきタイミングをまとめています。 受診すべきタイミング 詳細 突然の激しい関節痛がある とくに足の親指の付け根、足首、膝などに強い痛みを感じる場合 痛みで歩行が困難になるような場合 関節が腫れて赤く変色している 痛みを伴う関節の腫れや発赤、熱感がある場合 関節の腫れが持続している、複数の関節に症状が現れる場合 痛みが引かず、日常生活に支障をきたす 痛みや腫れが数日経っても改善せず、日常活動が制限される場合 発作を繰り返し、頻度が増えてきた場合 発熱や倦怠感などの全身症状を伴う 関節症状に加えて、発熱や体のだるさ、食欲不振などの症状がある場合 痛風が重症化し、全身に影響を及ぼしている可能性がある 上記の症状がある場合、痛風の可能性が高いと考えられます。早めに医療機関を受診し、適切な診断を受けるのが重要です。 医師は患者の症状や病歴、身体診察から痛風を疑い、以下のような検査を行って診断します。 医師が行う主な検査 目的 血液検査 血中尿酸値の測定。痛風発作時は正常値でも、症状が治っている期間には高値を示す 関節液検査 関節から液体を採取し、尿酸結晶の有無を顕微鏡で確認。痛風に特異的な所見 画像検査 X線やCTスキャン、超音波検査で、関節の損傷や尿酸結晶の沈着を評価 上記の検査結果を総合的に判断し、痛風の確定診断が行われます。 軽い痛みでも繰り返し出る場合は、長期化のサインかもしれません。早めに専門医(リウマチ科、整形外科、内科など)に相談し、適切な診断と治療方針を検討するのが賢明です。 痛風は早期発見・早期治療が重要な疾患です。症状が軽度であっても、痛風が疑われる場合は、自己判断せずに医療機関を受診してみてください。 適切な治療と生活指導を受けると、痛風の症状をコントロールしながら、病状の進行や合併症を防げるでしょう。 また、痛風以外にも、体の症状でなにかお悩みを抱えておられる方は、当院のメールや電話からお気軽にご相談ください。 生活習慣における痛風の予防法 痛風を予防するには、日頃の生活習慣を改善するのが大切です。とくに食生活の見直しと運動の習慣を作るのがポイントになるので、以下で詳細を解説します。 食生活の改善 運動と健康管理 食生活の改善 痛風を予防する食事療法のポイントは以下のとおりです。 食生活の改善ポイント 内容 プリン体の摂取制限 肉類、魚介類、ビールなどの高プリン食品は控えめに 1日あたりのプリン体摂取量は400mg以下が目安 例:ビール1缶(350mL)あたり12~25mg 低脂肪・低エネルギー食 脂肪とエネルギーを控えめにする 標準体重(BMI 22)の維持を目指す 「BMI = 体重(kg)÷(身長(m)の2乗)」 野菜・果物の積極的摂取 ビタミンやミネラルが豊富な野菜 果物を十分に取り入れる ビタミンCは尿酸排泄を促進する効果が期待できる 水分摂取の励行 十分な水分摂取は尿酸排泄に欠かせない 1日2リットル以上の水分摂取を心がける アルコールの制限 アルコールは尿酸の排泄を妨げる原因となる 飲酒は1日純アルコール20g以下(ビール中瓶1本程度)に抑える 運動と健康管理 運動は痛風の予防に欠かせません。有酸素運動を中心に、無理のない範囲で定期的に体を動かすのが大切です。 運動の種類 具体例 強度(目安) 時間(目安) 頻度(目安) 有酸素運動 ウォーキング、ジョギング、 水泳、サイクリング など 会話ができる 程度の強度 30分以上 週5日以上 筋力トレーニング 自重トレーニング、 ダンベル体操など ややきつい 程度の強度 20分以上 週2日以上 ストレッチ 静的ストレッチ、 動的ストレッチなど 伸びる程度の強度 10分以上 毎日 運動するときは、関節に負担をかけすぎないよう注意しましょう。痛みを感じる運動は避けて、徐々に強度と時間を増やすのが大切です。 また、定期的な健康診断で尿酸値のチェックを忘れずに行います。尿酸値が高めの場合は、あわせて生活習慣の改善に取り組みましょう。 痛風の予防には、バランスの取れた食事と適度な運動が欠かせません。一度に大きな変化を求めるのではなく、自分のペースで少しずつ生活習慣を改善するのが重要です。 医師や管理栄養士など専門家のアドバイスを参考に、ご自身に合った予防法を見つけましょう。痛風と上手に付き合い、健康的な生活を送るためのサポートを積極的に活用するのをおすすめします。 まとめ|痛風の初期症状があるときは早めに医療機関を受診しよう 痛風の初期症状を見逃さず、適切に対処するのが肝心です。また、尿酸値に注意して痛風を予防する生活習慣を日頃から意識するのも大切になります。 もう一度、痛風の初期症状を以下でおさらいしましょう。 【以下に当てはまるときは医療機関へ受診を】 足の親指の付け根の激痛 関節の腫れと発赤 関節の熱感 歩行困難 定期的な健康チェックを怠らず、痛風知らずの健康な生活を送りましょう。症状が気になる場合は早めに医療機関を受診し、医師のアドバイスをもとに治療を行ってみてください。 また、痛風以外の症状でも、なにかしらの不調が出てしまう場合もあります。体のお悩みを抱えておられるときは、ぜひ当院「リペアセルクリニック」にご相談ください。 【リペアセルクリニックへのご相談方法】 メール相談 来院予約 電話相談:0120-706-313(オンラインカウンセリングの予約) 痛風の初期症状についてよくあるQ&A 痛風の初期症状でよくある質問と答えをまとめています。 Q.女性でも痛風になりますか? A.痛風患者の約95%は男性ですが、約5%は女性です。 女性の痛風発症年齢は60歳以降が多く、閉経後に増加します。これは、閉経後にエストロゲンの低下により尿酸値が上昇しやすくなるためです。 Q.サプリメントで痛風は予防できますか? A.痛風の予防はサプリメントに頼るよりも、バランスの取れた食事と運動が基本です。 サプリメントの使用を検討するときは、必ず医師に相談し、適切な助言を受けるのが大切です。 Q.痛風の合併症にはどのようなものがありますか? A.痛風は、放置すると関節の変形や腎臓の機能低下など、重大な合併症を引き起こします。 たとえば、痛風結節は関節や軟骨に尿酸の結晶が蓄積し、こぶのようにできものができる状態で、関節の変形や機能障害の原因となります。 また、尿路結石は尿酸が尿路で結晶化し、腎臓や尿管に結石ができる合併症です。激しい腹痛や血尿を引き起こします。 ほかにも、長年の高尿酸血症により、腎臓の尿酸排泄機能が低下して腎不全に至るケースもあります。 痛風と腎機能の関係は、以下の記事で詳細を解説しているので参考にしてみてください。 Q.痛風の発作を予防するための生活習慣は? A.痛風の発作を予防するには、日常生活での工夫が欠かせません。1日2リットル以上の水分摂取を心がけて、体内の尿酸を排出しやすくしましょう。 また、肥満は痛風のリスクを高めるため、標準体重(BMI 22)の維持を目指すべきです。アルコールについては、尿酸の排泄を妨げるので飲酒は1日純アルコール20g以下に抑えましょう。 食事では高プリン食品を控えて、バランスの良い食事を心がけるのが大切です。 さらに、有酸素運動を中心に無理のない範囲で定期的に体を動かすと、尿酸値の低下と全身の健康維持につながります。 痛風と生活習慣における内容については、以下の記事も参考になります。 Q.痛風の発作は一日で治りますか? A.痛風の発作は一日では治りません。適切な治療を行わないと、数日から長くて2週間ほど続く場合もあります。 関連する内容は、以下の記事で詳細を解説しているので参考にしてみてください。 参考文献一覧 千葉県栄養士会,痛風の予防と食事 東京都立病院機構,高尿酸血症・痛風の食事,高尿酸血症・痛風とは 順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部,高尿酸血症・痛風の食事療法 e-ヘルスネット,アルコールと高尿酸血症・痛風 e-ヘルスネット,高尿酸血症 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病,高尿酸血症/痛風 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病の調査・統計,高尿酸血症/痛風 一般社団法人日本痛風・核酸代謝学会.高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン.第3版,診断と治療社,2018,p.74-76
2024.11.01 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
「コーヒーは痛風に悪いって聞いたけど、本当?」「痛風になったらコーヒーを飲んではダメ?」 このような疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。 コーヒーは日常的に親しまれている飲み物ですが、痛風患者にとってはその影響が気になるところでしょう。 しかし、薬学研究において、コーヒーが痛風の管理に一定の効果をもたらす可能性もあると示されています。 本記事では、コーヒーの栄養成分と健康への影響から始まり、痛風に対する具体的な効果、そして安全な飲み方までを詳しく解説します。コーヒーを上手に取り入れた痛風管理法を見つけるための参考になれば幸いです。 痛風の症状についてのご相談や、食事管理のご相談はメール相談 やオンラインカウンセリングも可能です。お気軽にご相談ください。 【結論】痛風にコーヒーはダメじゃない!1日4杯までならOK 嗜好品として親しまれているコーヒーも尿酸値を上げるのではないかと心配に思う方もいるかもしれません。しかし、コーヒーが尿酸値に影響を及ぼすという明確な根拠はないため、痛風患者でも一般的な摂取基準であれば、コーヒーを楽しめます。(文献1) 痛風患者に限らず、一般的に推奨されるコーヒーの摂取量は「1日3~4杯」です。カフェイン摂取量が400mg未満になるよう調整しましょう。しかし、痛風の重症度やカフェインへの耐性によって、適量は異なります。 自己判断で摂取量を決めずに、必ず主治医や栄養士に相談し、自分に合った適量を摂るようにしましょう。 本章では、コーヒーと尿酸値の関連について詳しく解説します。 コーヒーが尿酸値に与える影響は解明されていない 以前の研究では、コーヒーを飲んで尿酸値が下がったグループもあれば、上がったグループもあり、尿酸値に与える影響は明らかでないとされています。(文献1) 以下の表は、コーヒー摂取と血中尿酸値の関係性について、研究で報告されている内容をまとめたものです。 研究結果 説明 尿酸値の低下 コーヒーに含まれるクロロゲン酸などの成分が、尿酸の排泄を促進する可能性がある 個人差がある コーヒーの尿酸値低下効果は、すべての人に同様に見られるわけではない コーヒーを多く摂取する人ほど痛風のリスクが低いという傾向が見られますが、これは因果関係を直接証明したものではありません。 つまり、コーヒーを飲むこと自体が直接的に痛風リスクを下げているとは限らないのです。 適度なコーヒー摂取は痛風の予防につながるとの研究もある 大規模な疫学研究で、コーヒー摂取量と痛風発症リスクの関連性が報告されています。(文献2) 詳しい研究結果は以下の表の通りです。 研究結果 説明 痛風リスクの低下 1日4杯以上のコーヒーを飲む人は、まったく全く飲まない人に比べて痛風リスクが約40%低いという報告がある 観察研究であることに注意 これらの研究は観察研究であり、因果関係を直接証明するものではない コーヒーを多く摂取する人ほど痛風のリスクが低いという傾向が見られますが、これらの結果はあくまで観察研究に基づくものです。 そのため、個人差があることや、研究の限界を考慮する必要があります。 コーヒーは痛風対策の特効薬ではありませんが、適度に楽しむことで、痛風の予防に寄与するかもしれません。 ただし、コーヒーの効果を過信せず、バランスの取れた食事や生活習慣の改善など、総合的な痛風管理を心がけることが大切です。 具体的には以下のようなことを意識してみましょう。(文献3) プリン体の多い食品を控えめにする 適度な運動を心がける 水分をこまめに取る ストレス管理に努める 定期的な健康診断を受ける コーヒーは楽しみながら、これらの対策と組み合わせることで、痛風の予防に役立てられるでしょう。ただし、カフェインの過剰摂取には注意が必要です。 カフェインの摂りすぎは、不眠や胃への負担などの他の身体への影響を引き起こす可能性があります。多くても1日3〜4杯程度(400mg)未満のコーヒーを、ライフスタイルに合わせて上手に取り入れて、適度に楽しみましょう。 コーヒー摂取は健康上の利点もある コーヒーの適度な摂取は、仕事のパフォーマンスを上げたり、血液中の血糖やコレステロールの調整を行ってくれたりといったメリットも期待できます。 ここでは、コーヒーの主要成分や、一般的な健康への影響についてご紹介します。 コーヒーに含まれる主要成分 コーヒーには、以下のような作用を及ぼすとされる物質が含まれています。 成分 説明 カフェイン 中枢神経系を刺激し、眠気覚ましや集中力向上の効果がある クロロゲン酸 抗酸化作用や血糖値の調整に関与する ジテルペン類 コレステロール上昇に関連する物質だが、フィルター濾過で除去可能 また、コーヒーは豊富なポリフェノールを含んでいます。ポリフェノールは強い抗酸化作用を持ち、体内の酸化ストレスから細胞を守る働きがあると考えられています。 コーヒー摂取の一般的な健康への影響 適度なコーヒー摂取は、以下のような健康上の利点と関連付けられています。 健康への影響 説明 認知機能の向上 カフェインが脳の働きを活発にし、記憶力や反応時間の改善に役立つ可能性がある 特定の病気のリスク低下 パーキンソン病や2型糖尿病など、一部の疾患の発症リスクを下げる可能性がある 肝機能の改善 コーヒーに含まれる物質が肝臓を保護し、肝機能の改善に寄与する可能性がある 運動パフォーマンスの向上 カフェインが運動能力を高め、疲労感を軽減する効果が期待できる ただし、カフェインの過剰摂取は不眠やイライラ、胃への負担などの問題を引き起こすことがあります。個人差はありますが、一般的に1日400mg(コーヒー4杯程度)までのカフェイン摂取は問題ないとされています。 コーヒーは嗜好品ですが、適度に楽しむことで、健康的なライフスタイルに影響する可能性があります。ただし、飲み過ぎには注意が必要です。自分に合った量を見つけ、上手に取り入れていきましょう。 痛風でコーヒーを飲むときの注意点 痛風患者がコーヒーの利点を安全に活かすためには、適切な飲み方を心がけることが大切です。ここでは、推奨される摂取量と、飲む際の注意点について解説します。 飲むときに入れるものや、飲むタイミングに気をつけてコーヒーを楽しみましょう。 痛風患者のコーヒーの飲み方 痛風の方がコーヒーを飲むときは、以下の点に注意しましょう。(文献4、5、6) 注意点 説明 カフェインの過剰摂取 カフェインの摂り過ぎは、不眠や胃への負担につながる可能性がある。また、カフェインは尿の生成を促進するため、脱水にも注意が必要 砂糖やクリームの追加 砂糖やクリームを加えすぎると、カロリーや脂肪の摂取量が増加し、痛風の症状を悪化させる可能性がある 飲み過ぎ 就寝前のコーヒーは避けた方が良い。カフェインの作用で眠りが妨げられ、十分な休養が取れなくなるかもしれない 脱水 コーヒーには利尿作用があるため、こまめな水分補給を忘れずに。脱水は痛風発作のリスクを高める可能性がある 体調によっては控える 痛風の症状が悪化している時や、体調が優れない時は、コーヒーを控えめにするか、避けた方が良い 痛風患者の方がコーヒーを飲む際は、飲む量や飲み方など細心の注意を払う必要があります。 コーヒーは嗜好品のため、楽しみながらも適量を守り、体調と相談しながら付き合っていくことが大切です。 また、コーヒーの摂取だけに頼るのではなく、食事療法や運動療法など、日常の生活習慣で痛風対策を並行して行いましょう。バランスの取れた食事、適度な運動、ストレス管理など、生活習慣全般を見直すことが、痛風の予防と改善が期待できます。 【一覧】コーヒーと同時に摂取すべき/避けるべき食品 以下の表は、コーヒーと一緒に摂取しても比較的良いとされる食品です。(文献4) 食品 説明 水 コーヒーには利尿作用があるため、水分が体から失われやすくなります。脱水は痛風発作のリスクを高めるため、こまめな水分補給が大切です。 低脂肪乳製品 牛乳やヨーグルトなどの低脂肪乳製品に含まれるカルシウムには、尿酸の排泄を促進する効果が期待されています。ただし、高脂肪の乳製品は避けましょう。 野菜 ビタミンやミネラルが豊富な野菜は、痛風の予防と改善に役立ちます。とくに特に、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツなどがおすすめです。 基本的にはバランスの取れた食事を心がけ、コーヒーはその一部として適度に取り入れるのが望ましいでしょう。 また、コーヒーと同時に摂取を控えるべき食品は以下のとおりです。(文献4) 食品 説明 果物 果物にはビタミンやミネラルが豊富ですが、同時に果糖も多く含まれています。果糖は尿酸値を上げる可能性があるため、摂取量に注意が必要です。とくに特に糖度の高い果物や果物ジュースは控えめにしましょう。 肉類や魚介類 肉類や魚介類には、プリン体が多く含まれています。プリン体は体内で尿酸に変化するため、過剰摂取は痛風のリスクを高めます。コーヒーと一緒に摂り過ぎないよう注意しましょう。 アルコール アルコールは尿酸の生成を促進し、排泄を妨げる働きがあります。コーヒーと一緒に飲むと、痛風のリスクがさらに高まる可能性があるため、控えめにしましょう。 コーヒーと相性の良い食品を選び、悪影響を及ぼす可能性のあるプリン体の高い食品は控えめにすることが大切です。 痛風改善に役立つコーヒー以外の飲料 痛風の改善に役立つ飲料は、コーヒー以外にもいくつかあります。痛風の方におすすめできるコーヒー以外の飲料は以下のとおりです。(文献7) 飲料 効果 緑茶 緑茶に含まれるカテキンには、尿酸の排泄を促進する作用が期待されています。また、抗酸化物質が豊富なため、痛風の炎症を抑える効果も期待できる レモン水 レモンに含まれるクエン酸には、尿のpHを上げる働きがあります。尿のpHが上がると、尿酸が溶けやすくなり、排泄が促進される 低脂肪乳 低脂肪乳に含まれるカルシウムには、尿酸の排泄を助ける効果が期待されています。また、乳製品はプリン体が少ないため、痛風の方に適した飲料といえる 人によって痛風の症状や進行度合いは異なるため、自分の体の反応を注意深く観察しながら、主医師や栄養士と相談して、最適な飲料・食事プランを立てましょう。 専門家のアドバイスを参考に、コーヒーと上手に付き合っていくことが大切です。 まとめ|痛風にコーヒーはダメではない!適量ならば摂取してOK 痛風でも、適量であればコーヒーを摂取することは問題ありません。 痛風の人がコーヒーと上手に付き合うには、以下の点に気をつけると良いでしょう。 1日3〜4杯までを目安にする 体の変化を観察して、具合が悪くなったら医師に相談する コーヒー以外の飲み物や食事のバランスも考える 主治医と相談して、自分に合った痛風の管理方法を見つける 医師とよく相談しながら、一人ひとりが自分に合ったコーヒーの飲み方を見つけることが大切です。 痛風とコーヒーの関係は複雑であり、完全に制限するものではありませんが、適切に付き合えば、痛風の管理に役立つ可能性があります。 尿酸値を上げない食生活や飲み物などを相談したい、また痛風の症状や治療方法について相談したい方は、当院リペアセルクリニックのメール相談やオンラインカウンセリングもご活用ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ さらに痛風に適切な食事方法が知りたい方は、以下の記事もご覧ください。 監修:医師 渡久地 政尚 参考文献一覧 文献1 PMC,Is coffee consumption associated with a lower risk of hyperuricaemia or gout? A systematic review and meta-analysis 文献2 藤森新,痛風・高尿酸血症の病態と治療,日本内科学会雑誌,第107巻第3号 文献3 千葉県栄養士会,かしこく食べる,痛風の予防と食事 文献4 東京都立病院機構,高尿酸血症・痛風の食事,高尿酸血症・痛風とは 文献5 順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部,高尿酸血症・痛風の食事療法 文献6 e-ヘルスネット,高尿酸血症の食事 文献7 Hyperuricemia and associated factors: a cross-sectional study of Japanese-Brazilians - PubMed
2024.10.30 -
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「痛風が腎臓に影響を与えると聞いたけど、どういうことなの?」「腎機能が低下してきたけど、痛風と関係あるのかな?」 このような疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。 痛風は単に関節の痛みを引き起こすだけでなく、腎臓にもダメージを与える可能性があります。しかし、適切な管理と予防措置を講じることで、そのリスクを大幅に減らすことができるでしょう。 本記事では、痛風と腎臓の関係や具体的な予防策や治療法、そして長期的な健康管理のポイントまでを詳しく解説します。痛風と腎臓病を上手に管理するためのヒントになれば幸いです。 痛風と腎臓の関係 痛風は単に関節の問題だと思われがちですが、実は腎臓とも密接な関わりがあります。ここでは、痛風が腎臓に与える影響と、その背景にあるメカニズムについて説明します。 痛風が腎臓に与える影響 痛風は高尿酸血症を引き起こし、尿酸塩の結晶が腎臓に蓄積することで腎機能障害を招く可能性があります。具体的には、以下のような問題が生じる場合があります。 問題 説明 尿酸結石の形成 尿酸塩結晶が腎臓で固まり、結石を作る 腎炎の発症 尿酸塩結晶が腎臓の炎症を引き起こす 慢性腎臓病の進行 長期的な尿酸塩の蓄積が腎機能を低下させる 痛風は、体内で尿酸が過剰に蓄積することで発症する病気です。 この尿酸の結晶が関節や腎臓に溜まることで、炎症や組織の損傷を引き起こします。腎臓は尿酸を排出する重要な役割を担っていますが、尿酸が過剰になると、腎臓の細い管(尿細管)に尿酸の結晶が詰まってしまうことがあります。これが尿路結石の原因の一つです。 また、尿酸結晶が腎臓に蓄積すると、腎臓の炎症を引き起こす腎炎や、腎臓の組織が硬くなる腎硬化症などの問題が生じる可能性があります。 痛風を適切に管理しないと、これらの問題が徐々に進行し、腎不全に至るケースもあります。 痛風と腎機能障害のメカニズム 痛風患者では、以下のようなプロセスを経て、腎機能が低下していきます。 血中尿酸値の上昇 尿酸塩結晶の形成 腎臓への尿酸塩結晶の蓄積 腎臓の炎症・組織の硬化 腎機能低下 痛風患者の体内では、尿酸が過剰に産生されるか、十分に排出されないことで血液中の尿酸値が上昇します。尿酸値が高くなると、尿酸は血液中で溶けきれなくなり、尿酸塩という結晶の形で沈殿します。 この尿酸塩の結晶が腎臓の細い管(尿細管)に詰まると、尿の流れを妨げたり、腎臓の組織に炎症を引き起こしたりします。炎症が起こると、腎臓の組織が傷ついて硬くなっていきます。これらの変化が長期間続くと、徐々に腎臓の機能が低下していきます。 さらに、血中尿酸値が高い状態(高尿酸血症)が続くと、それ自体が腎臓の血管を傷つける可能性も指摘されています。 このように、痛風は腎臓に深刻なダメージを与える可能性があるため、早期発見と適切な管理が重要です。痛風によって引き起こされる高尿酸血症と尿酸塩結晶の蓄積は、さまざまなメカニズムを通じて腎機能の低下を招く可能性があるのです。 痛風による腎臓病のリスクファクター 痛風があるからといって必ず腎臓病になるわけではありませんが、特定の条件下ではそのリスクが高まりやすくなります。ここでは、高尿酸血症と腎臓病の関係性や、他のリスク要因について解説します。 高尿酸血症と腎臓病 血中尿酸値が高いほど、腎臓病のリスクは上昇します。尿酸値が7.0mg/dL以上の場合、腎機能低下のリスクが明らかに高くなります。これは、尿酸の結晶が腎臓に蓄積し、腎臓の組織にダメージを与えるためです。 痛風の方は定期的に尿酸値を測定し、高尿酸血症をしっかりとコントロールすることが腎臓を守ることにつながります。医師と相談しながら、食事療法や薬物療法などの適切な治療を行うことが重要です。 リスクを高める他の要因 痛風に加えて、以下のような要因も腎臓病のリスクを高めます。 高血圧 糖尿病 肥満 喫煙 加齢 これらの要因を合わせ持つ痛風の方は、とくに腎臓病の発症に注意が必要です。 たとえば、痛風と高血圧を併発している人は、腎臓に負担がかかりやすくなります。高血圧によって腎臓の血管が傷つき、尿酸の結晶がたまりやすくなるためです。血圧のコントロールが悪いと、腎臓の障害がさらに進行してしまう可能性があります。 また、糖尿病も腎臓病のリスクを高める重要な因子です。血糖値が高い状態が続くと、腎臓の細い血管が損傷を受け、機能が低下していきます。糖尿病と痛風を合併している方は、腎機能の定期的なチェックが欠かせません。 肥満は、高血圧や糖尿病のリスクを高めるだけでなく、腎臓にも直接的な負担をかけます。健康的な体重を維持することが、痛風による腎臓へのダメージを防ぐために重要です。 さらに、喫煙は、腎臓の血管を収縮させ、腎機能を低下させる可能性があります。痛風の方は、禁煙することで腎臓の健康を守ることができます。 加齢にともなう腎機能の低下は避けられませんが、痛風がある場合はその速度が速まることがあります。高齢の痛風患者は、若い頃からの尿酸値管理と生活習慣の改善がとくに大切です。 したがって、痛風の方は高尿酸血症だけでなく、前述した要因についても注意を払い、総合的に管理することが大切です。定期的な健康診断や医師との相談を通じて、腎臓病のリスクを早期に発見し、適切な対策を講じることが重要です。 腎機能を保護する食事と生活習慣 痛風患者が腎臓を守るためには、適切な食事管理と生活習慣の改善が欠かせません。ここでは、腎臓にやさしい食事計画と、生活習慣の見直しポイントを紹介します。 腎臓に優しい食事計画 腎臓を保護するための食事では、以下の点に気を付けましょう。 食事の工夫 説明 プリン体の多い食品を控える 肉類、魚介類、ビールなどのプリン体を多く含む食品は、尿酸値を上昇させるため、摂取を控えめにする。プリン体の少ない食品を選ぶようにしましょう 塩分や蛋白質の摂取を控えめにする 塩分や蛋白質の過剰摂取は、腎臓に負担をかけるため、適量を心がける。塩分は1日6g未満、蛋白質は体重1kgあたり0.8gを目安に摂取しましょう 十分な水分を摂取する 水分補給は尿酸の排泄を促進し、腎臓の負担を軽減するために重要。1日1.5~2リットルの水分摂取を心がけましょう 野菜や果物を積極的に取り入れる 野菜や果物に含まれるビタミンやミネラル、食物繊維は、腎機能の維持に役立つ。1日に350g以上の野菜や果物を摂取するようにしましょう アルコールは控えめにする アルコールは尿酸値を上昇させ、腎臓に負担をかけるため、摂取は控えめにする。1日の飲酒量は、ビールなら500ml、日本酒なら1合未満を目安にしましょう 管理栄養士と相談しながら、自分に合った食事の計画を立てることが大切です。バランスの取れた食事を心がけ、腎臓にやさしい食生活を送りましょう。 生活習慣の改善とその影響 食事だけでなく、生活習慣の改善も腎臓保護に重要な役割を果たします。 生活習慣の改善 影響 適度な運動で体重管理と血圧コントロール 適度な運動は体重管理に役立ち、血圧を安定させる効果があります。これにより腎臓への負担が軽減され、腎機能の保護につながります。 ストレス管理とリラクゼーション ストレスは尿酸値を上昇させる要因の一つであり、ストレス管理は腎臓保護につながる。ストレス解消法を見つけ、リラックスする時間を作りましょう 禁煙または喫煙量の削減 喫煙は腎機能の低下を促進するため、禁煙または喫煙量の削減が推奨される。禁煙が難しい場合は、徐々に本数を減らしていきましょう 適正な体重の維持 肥満は高尿酸血症や腎臓病のリスクを高めるため、適正な体重の維持が重要。標準体重を目指し、必要に応じて医師や栄養士に相談しましょう これらの生活習慣を見直すことで、痛風と腎臓病のリスクを同時に減らすことができます。 痛風の人が腎機能を守るためには、食事と生活習慣の両面からアプローチすることが大切です。バランスの取れた食事と規則正しいな生活習慣を心がけることで、尿酸値をコントロールし、腎臓への負担を軽減することができるでしょう。 ただし、個人差があるため、単一な方法ではなく、自分の体質や状況に合わせて、医師や栄養士と相談しながら、最適な方法を見つけていくことが重要です。定期的な健診で腎機能をチェックし、異常があれば早めに対処することも忘れないようにしましょう。 また、腎臓は、体内の老廃物や余分な水分を濾過して尿として排出する重要な臓器です。痛風による尿酸値の上昇は、腎臓に大きな負担をかけます。しかし、適切な食事療法と生活習慣の改善により、腎機能の低下を防ぎ、健康の維持が期待できるでしょう。 痛風患者の皆さんは、自分の腎臓を大切にするために、今日から実践できる食事の工夫や生活習慣の見直しに取り組んでみましょう。小さな変化の積み重ねが、腎臓の健康を守る大きな力になるはずです。 痛風と腎臓病の管理と治療 腎機能の低下がみられる痛風の患者さんには、適切な管理と治療が必要です。ここでは、現在利用が可能な治療の選択肢と、継続的なケアの重要性について説明します。 現在利用可能な治療オプション 痛風と腎臓病の治療には、以下のような選択肢があります。 治療法 説明 尿酸値を下げる薬物療法 アロプリノール、フェブキソスタットなどの薬を使用し、尿酸値をコントロールする。尿酸の産生を抑えたり、排泄を促進したりすることで、尿酸値を下げる 腎機能を保護する薬剤 腎臓の血管を保護し、タンパク尿を減らす働きのある薬を使用し、腎臓の機能低下を防ぐ。代表的な薬には、血圧を下げる作用もあるACE阻害薬やARBなどがある 食事療法と生活習慣の指導 適切な食事管理と生活習慣の改善により、尿酸値と腎機能の管理を行う。プリン体の摂取を控え、十分な水分補給を行い、適度な運動を取り入れることが大切 透析療法 腎機能が著しく低下し、老廃物が体内に蓄積した場合、腎臓の代わりに人工透析により尿として排出されるはずの余分な水分や老廃物を取り除く。血液透析や腹膜透析などの方法がある。ただし透析療法が開始されると水分制限や食事制限なども開始される 患者さんの状態に合わせて、医師が最適な治療法を選択します。場合によっては、複数の治療法を組み合わせるケースもあります。たとえば、薬物療法と食事療法を併用したり、腎機能の低下が進んだ場合に透析療法を導入したりする場合があります。 継続的なケアと定期的な医療チェック 痛風と腎臓病の管理には、継続的なケアと定期的な医療チェックが欠かせません。 ケアの内容 説明 定期的な尿酸値と腎機能のモニタリング 血液検査や尿検査により、尿酸値と腎機能の状態を定期的に確認する。検査結果に基づいて、治療方針の調整や生活指導を行う 処方された薬を正しく服薬する 処方された薬を正しく服用し続けることが、治療の効果を維持するために重要。薬の飲み忘れや自己中断を防ぎ、服薬を習慣化することが大切 食事と生活習慣の管理状況の確認 食事療法や生活習慣の改善が適切に行われているか、定期的に確認する。必要に応じて、栄養士による食事指導や生活習慣の見直しを行う 合併症の早期発見と対処 腎臓病や心血管疾患などの合併症の兆候を早期に発見し、適切に対処する。定期的な検査により、合併症の発症を早期に発見し、必要な治療を開始する 医師、看護師、栄養士などの医療チームと協力しながら、長期的な健康管理計画を立てることが大切です。定期的な通院と検査、服薬の継続、食事と生活習慣の改善など、患者さん自身の積極的な取り組みが求められます。 痛風と腎臓病の管理には、患者さん自身の理解と協力が不可欠です。病気についての知識を深め、治療の重要性を理解することが大切です。また、体調の変化や新たな症状があれば、すぐに医療チームに報告し、適切な対処を受けることが重要です。 痛風と腎臓病は、適切な管理と治療により、進行を遅らせ、合併症を予防することが可能です。医療チームと協力し、自分に合った長期的な管理計画を立て、実践していくことが、健康的な生活を送るための鍵となるでしょう。医療チームからのアドバイスを踏まえつつ、自分に合ったペースで、無理なく続けていくことが大切です。 まとめ:痛風と腎臓病の総合的な管理 痛風は腎機能の低下と密接に関連しており、その予防と管理は非常に重要です。高尿酸血症のコントロール、腎臓にやさしい食事療法、生活習慣の改善など、さまざまな角度からのアプローチが求められます。 また、定期的な医療チェックと継続的なケアを通じて、合併症の早期発見と適切な対処を心がける必要があります。痛風と腎臓病を抱える患者さんには、医療従事者とのパートナーシップを大切にしながら、積極的に健康管理に取り組んでいきましょう。 痛風と腎臓病は、それぞれが独立した問題ではなく、互いに影響し合う複雑な関係にあります。しかし、正しい知識と適切な管理によって、両者のリスクを大幅に減らすことが期待できます。 以下の表は、痛風と腎臓病の総合的な管理における重要なポイントの一例です。 管理のポイント 説明 具体例 食事療法 プリン体の制限、塩分や蛋白質の摂取制限、十分な水分摂取など、腎臓に優しい食事を心がける。 プリン体の多い食品(レバー、イカ、マイワシなど)を避ける 1日の塩分摂取量を6g未満に抑える 毎日1.5~2リットルの水分を摂取する 生活習慣の改善 適度な運動、ストレス管理、禁煙、適正体重の維持など、健康的な生活習慣を実践する。 1日30分程度のウォーキングやストレッチを習慣化する 深呼吸や瞑想でストレス解消を図る 禁煙に取り組み、体重管理を行う 薬物療法 医師の指示に従い、尿酸値を下げる薬や腎機能を保護する薬を適切に服用する。 医師の指示通りに、アロプリノールやフェブキソスタットを服用する 飲み忘れを防ぐため、薬を決まった場所に保管し、服用をルーティン化する 定期的な医療チェック 尿酸値や腎機能の定期的なモニタリング、合併症の早期発見と対処のため、医療機関を定期的に受診する。 3ヶ月ごとに尿酸値と腎機能の検査を受ける 体調の変化や新たな症状があれば、すぐに医師に相談する 自己管理意識 自分の健康状態に関心を持ち、医療チームと協力しながら積極的に管理に取り組む姿勢が重要。 食事や運動のログをつけ、自己管理に役立てる 医療チームとコミュニケーションを取り、疑問や不安を解消する 適切な管理と治療により、痛風と腎臓病の進行を遅らせ、合併症を予防することが可能です。医療チームとの連携を大切にし、自分に合った総合的な管理計画を立て、実践していくことが、健康的な生活を送るための鍵となるでしょう。一人ひとりが自分の健康を守るために、積極的に行動を起こすことが何より大切です。 たとえば、今日から以下のような小さな変化を取り入れてみましょう。 朝食にプリン体の少ない食品を選ぶ 仕事の合間に5分間のストレッチを行う 就寝前に服用予定の薬を準備する 次回の医療機関の予約日をカレンダーに記入する このような小さな一歩の積み重ねが、やがて大きな前進につながるでしょう。 痛風と腎臓病を抱える方々が、この記事を通じて希望を持ち、より健康的な人生を歩んでいけることを心から願っています。 監修:医師 渡久地 政尚 参考文献一覧 MSD マニュアルプロフェッショナル版,痛風 千葉県栄養士会,健康を考える皆さまへ,痛風の予防と食事 東京都立病院機構,高尿酸血症・痛風の食事,高尿酸血症・痛風とは 順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部,高尿酸血症・痛風の食事療法 e-ヘルスネット,アルコールと高尿酸血症・痛風 e-ヘルスネット,高尿酸血症 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病,高尿酸血症/痛風 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病の調査・統計,高尿酸血症/痛風 沢井製薬株式会社,高尿酸血症・痛風ハンドブック 中外製薬,腎らいぶらり,腎臓にまつわる病気,痛風と腎臓 日本腎臓学会,腎臓の病気について調べる,6.全身性疾患に伴う腎障害,7.痛風腎 愛知県薬剤師会,痛風(高尿酸血症) 日本腎臓学会,腎臓の病気について調べる,7.治療 日本腎臓学会,腎臓の病気について調べる,11.腎代替療法
2024.10.28 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
「足の親指が突然ズキズキ痛み出した…歩くと余計に悪化するの?」 このような疑問をお持ちではありませんか? 痛風は、尿酸が関節に蓄積することで炎症を引き起こし、激しい痛みを伴う病気です。特に足の親指に発作が起こると、歩行が困難になる場合もあります。 歩行自体が痛風を悪化させるわけではありませんが、運動の強度が高すぎると症状が悪化する可能性があります。そのため、運動に関する正しい知識を身につけておく意識が大切です。 本記事では、痛風と歩行の関係性や、痛風の症状改善に効果のある対処法を解説しています。正しい知識を覚えて、痛みの軽減や再発予防につなげましょう。 痛風は歩くと悪化する可能性がある? 痛風は「風が当たるだけで痛みが走る」という意味から名付けられた、激しい痛みを特徴とする疾患です。血液中の尿酸値(体内でできる老廃物の一種)の上昇が痛風を発症する主な原因です。 「痛風は歩くと悪化するのか」という疑問を持つ人は多いですが、歩くこと自体は痛風を悪化させる行為ではありません。 ただし、過度な運動や関節に負担がかかりすぎる動きは、尿酸値を上昇させて痛風を誘発する可能性があります。そのため、山登りや急な坂道の往復といった関節に負担がかかる歩行は、事前に医師に相談しましょう。 以下は、歩行以外で尿酸値上昇のリスクを高める運動例です。 短距離走 ベンチプレス ダッシュを繰り返す運動 症状を悪化させないためにも、運動強度は医師と相談しながら調整しましょう。 痛風とは? 痛風とは、足の親指のつけ根が急に赤く腫れ、強い痛みを感じる病気です。 痛風の症状は、足の親指だけでなく手足や膝の関節にも現れることがあります。また、耳に小さなしこりができたり、尿路結石が生じたりする場合もあります。 痛風の原因は、血液中の尿酸値(体内でできる老廃物の一種)の上昇です。尿酸が過剰に生成されると結晶化し、免疫細胞が結晶を処理する際に炎症が起こります。この炎症が痛風の症状となって出てくるのです。 尿酸が増える理由には、腎臓の働きが弱くなることや生活習慣の乱れが関係しています。特に、食べすぎや飲酒、肥満、激しい運動は尿酸を増やす主な原因です。 痛風は、適切な治療と生活習慣の改善で、症状をコントロールできるので、正しい知識と対処法を覚えましょう。 痛風の初期症状や症状が出る部位について知りたい方は以下の記事もあわせてご覧ください。 【関連記事】 痛風の初期症状は?早期発見につなげて重症化を防ごう【医師監修】 痛風が影響を与える主な部位とその対策 痛風は適度に歩くと治る確率が高まる 適度な運動は、痛風の改善に効果があります。特に、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などの軽めの有酸素運動がおすすめです。(文献1) 適度な運動は、痛風の原因となる肥満を改善するだけでなく、健康状態の維持にもつながります。 ただし、激しい運動はかえって尿酸値を上げてしまう可能性があるため、運動強度を高めすぎない意識が大切です。 痛風で適度に歩く以外に症状を緩和する6つの方法 ここでは、痛風の症状を緩和する6つの方法を紹介します。 患部を冷やす 食生活を見直す 水分を多く摂取する 禁煙または喫煙量を減らす ストレスをためないようにする 医師の指導のもと薬物治療を行う 順番に見ていきましょう。 患部を冷やす 患部を冷やせば、炎症や痛みが和らぎます。氷嚢(ひょうのう)やアイスパックを使うと、血管が収縮し、腫れが抑えられるためです。 ただし、冷やしすぎると血流が悪くなり、逆効果になる場合があります。 冷却は1回につき15分以内にとどめ、数時間おきに繰り返すのが適切です。 アイシングやジェルパックなどの冷却グッズを常備しておくと、急な痛みが出たときにも対応しやすくなります。冷却を行う際は、直接肌に当てず、タオルを挟んで使用してください。 食生活を見直す 痛風の予防と管理において、食事の改善は重要な役割を果たします。痛風に関連する食生活の注意点は以下のとおりです。 注意点 説明 プリン体の多い食品を控える プリン体の多いレバーやイカ、青魚などは控えめにすることで、痛風発作のリスクを抑えられます アルコール、特にビールの摂取を控える アルコール(特にビール)は尿酸の排泄を妨げ、体内の尿酸値を上昇させる働きがあるため、摂取量を控えれば痛風の予防にもつながります。 低脂肪乳製品、野菜、果物を積極的に取り入れる 低脂肪乳製品、野菜、果物は、尿酸値を下げる効果が期待できます。 コーヒーは1日3〜4杯程度に抑える コーヒーには尿酸値を下げる効果があります。飲みすぎは逆効果のリスクがあるため、1日3〜4杯程度に抑えるのが理想的です。 痛風を予防するには、これらの食事の注意点を日常的に意識することが大切です。個人の体質や健康状態に合わせて、管理栄養士など専門家のアドバイスを参考にしながら、適切な食事プランを立てることをおすすめします。 水分を多く摂取する 水分をしっかり摂ると、体の老廃物が尿と一緒に排出されやすくなります。 特に、尿酸を体の外へ出すためには、水を十分に飲むのが大切です。発作が起きているときは、意識してこまめに水分を補給してください。 目安として、1日に1.5〜2リットルの水を飲むと良いでしょう。水分が不足すると尿の量が減り、尿酸が体内にたまりやすくなります。 飲み物は水やお茶を中心にし、お酒や砂糖の多いジュースは控えましょう。 禁煙または喫煙量を減らす 喫煙は尿酸値を上昇させる要因の1つです。 禁煙または喫煙量の削減に努めれば、痛風発作のリスクを下げられます。禁煙が難しい場合は、内科やクリニックで相談してみるのも良いでしょう。 ストレスをためないようにする ストレスは尿酸値を上昇させる原因の1つです。 ストレス管理とリラクゼーションを心がければ、痛風発作のリスクを下げられます。自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。 医師の指導のもと薬物治療を行う 痛風の治療では、医師の指導のもとで薬を使用します。医師が処方する治療薬には以下のようなものがあります。 治療薬 説明 NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬) ロキソプロフェンやジクロフェナクなどの薬剤で、炎症を抑え、痛みを和らげます。 コルヒチン 痛風発作の初期治療に用いられる薬剤で、炎症を引き起こす細胞の活動を抑制します。 ステロイド薬 プレドニゾロンなどの薬剤で、強力な抗炎症作用を持ちます。内服や関節内注射で用いられます。 症状の程度に応じて、これらの薬剤が単独または併用で使用されます。医師と相談しながら、最適な治療法を選択していきましょう。 まとめ|痛風は無理して歩くと悪化するので適度な運動を心がけよう 痛風は、適切な治療と生活習慣の改善で症状をコントロールできる病気です。 運動に関しては、ウォーキングや水泳などの軽い有酸素運動が効果的ですが、尿酸値の上昇につながる短距離走やベンチプレスなどの高強度の運動は避けましょう。 また、日常生活では、プリン体の多い食品やアルコールを控え、十分な水分摂取を心がけることが大切です。喫煙やストレスも尿酸値を上昇させる原因となるため、生活習慣全体の見直しが重要です。 症状の緩和には、適切な冷却処置や医師による薬物治療も効果的です。 医師と相談しながら、治療や生活習慣を改善することで、痛風の症状改善や再発予防につなげることができます。 当院「リペアセルクリニック」では、膝の痛みに対する治療として再生医療を行っております。 無料のメール相談、オンラインカウンセリング も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。 痛風に関するよくある質問 痛風って1日で治るんですか? 痛風の発作は1日で治りません。 強い痛みや腫れは短期間で軽減する場合もありますが、完全に回復するまでには数日から数週間ほどかかります。 痛風でやってはいけないことはなんですか? 痛風は、尿酸値が高い状態が続くことで発症します。そのため、尿酸値を上げる行為は避けるようにしましょう。 具体的には、喫煙、暴飲暴食、激しい運動、ストレスなどが尿酸値を上げる要因となります。 参考文献 (文献1) 診断と治療者「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」 https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00476_supplementary.pdf (最終アクセス:2025年2月22日) MSDマニュアル「痛風」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/06-%E7%AD%8B%E9%AA%A8%E6%A0%BC%E7%B3%BB%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%A8%E7%B5%90%E5%90%88%E7%B5%84%E7%B9%94%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%B5%90%E6%99%B6%E8%AA%98%E7%99%BA%E6%80%A7%E9%96%A2%E7%AF%80%E7%82%8E/%E7%97%9B%E9%A2%A8 (最終アクセス:2025年2月22日) 公益社団法人千葉県栄養士会「痛風の予防と食事」 https://www.eiyou-chiba.or.jp/commons/shokuji-kou/preventive/tuuhuu/(最終アクセス:2025年2月22日) 地方独立行政法人東京都立病院機構「高尿酸血症・痛風の食事」 https://www.tmhp.jp/kikou/index/section/comedical/eiyou/meal/tsufu.html(最終アクセス:2025年2月22日) 順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部「高尿酸血症・痛風の食事療法」 https://hosp.juntendo.ac.jp/clinic/support/eiyo/method/syokuji05.html(最終アクセス:2025年2月22日) e-ヘルスネット「アルコールと高尿酸血症・痛風」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-01-012.html(最終アクセス:2025年2月22日) e-ヘルスネット「高尿酸血症」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-007.html(最終アクセス:2025年2月22日) 日本生活習慣病予防協会「生活習慣病.高尿酸血症/痛風」 https://seikatsusyukanbyo.com/guide/hyperuricemia.php(最終アクセス:2025年2月22日) 日本生活習慣病予防協会「生活習慣病の調査・統計.高尿酸血症/痛風」 https://seikatsusyukanbyo.com/statistics/disease/hyperuricemia/(最終アクセス:2025年2月22日) 沢井製薬株式会社「高尿酸血症・痛風ハンドブック」 https://med.sawai.co.jp/request/mate_attachement.php?attachment_file=02dfef5e-9b0d-452b-9fd9-be66eb21619c000000000678005F.pdf(最終アクセス:2025年2月22日)
2024.10.25 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
「痛風って足の親指だけに起こるんじゃないの?」 「痛風が他の部位にも影響するなんて知らなかった!」 このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。 痛風はたしかに足の親指の付け根に最も頻繁に発症しますが、実は他の関節や部位にも影響を及ぼす可能性があるのです。 それぞれの部位で痛風が起こった場合の対処法を理解しておくことが、効果的な痛風管理につながります。 本記事では、痛風が影響を与える主な部位と症状、部位別の対策について詳しく解説します。痛風とうまく付き合うための参考にしてください。 痛風の症状は足の甲にも現れる 痛風の症状は、足の指に最も多く現れるとされていますが、足の甲にも現れます。 足の甲に痛風が発症すると、歩行や立つことが困難になり、日常生活に大きな影響を与えます。 主な症状は激しい痛みや腫れ、発赤、熱感などで、足の指と同様に、急性の発作として突然起こることが特徴です。 痛風の発症は、過剰なアルコール摂取やプリン体を多く含む食品の摂取が引き金となるケースが多く、関節に激しい痛みを引き起こします。 痛風とは何か? 痛風は、体内で作られた尿酸が過剰に蓄積して発症する病気です。 尿酸は、プリン体と呼ばれる物質が分解されてできる老廃物の一種で、通常は尿として体外に排出されます。 この尿酸が、なんらかの理由で体内に蓄積すると、針のような形の結晶となって関節内に沈着し、激しい炎症と痛みを引き起こすのです。 痛風は、主に40代以降の男性に多くみられる病気ですが、女性も閉経後に発症リスクが高まります。 そして、痛風発作は突然起こるため、日常生活に大きな支障をきたし、適切な治療を行わないと、関節の変形や腎臓の障害など、深刻な合併症につながる可能性もあります。 痛風の原因 痛風の主な原因は、次の3つが挙げられます。 尿酸の過剰産生または排泄低下 プリン体の多い食事の摂取 肥満や過度のアルコール摂取 それぞれ、具体例を交えて1つずつ説明します。 尿酸の過剰産生または排泄低下 体内で尿酸の生成が増加、または尿酸の排泄が減少すると、血中の尿酸値が上昇します。 尿酸が血中に過剰に存在すると、関節や周辺の組織に結晶として蓄積され、痛風発作が起こります。 具体例 遺伝的要因(尿酸を作りやすい、または尿酸を排出しにくい体質) 利尿剤や低用量アスピリンなど、特定の薬剤の使用 プリン体の多い食事の摂取 プリン体とよばれる肉類、魚介類、ビールなどの過剰摂取は、尿酸値を上昇させます。 具体例 肉類(レバー、ささみなど)や魚介類(イカ、タラコなど)の多量摂取 ビールの大量飲酒 肥満や過度のアルコール摂取 肥満から起こるインスリン抵抗性は尿酸の排泄減少の可能性を高め、アルコール摂取は尿酸の生成促進と排泄を阻害する作用があります。 具体例 BMI(肥満指数)数値が25以上 500ml以上(瓶ビール1本以上)のアルコールを毎日飲酒する 痛風の症状 痛風発作の症状には、以下3つの特徴があります。 突然の激しい関節痛 発赤、腫れ、熱感をともなう 発症から24~36時間後が最も痛みのピーク それぞれの特徴について、具体例を交えて1つずつ解説します。 突然の激しい関節痛 痛風の最も特徴的な症状で、発作的に現れます。 足の親指の付け根(第1中足趾節関節)に最初の発作が起こる場合が多いですが、他の関節(足首、膝、手首など)も侵される可能性があります。 具体例 夜中や早朝に突然起こる激痛 歩行や靴の着用が困難なほどの痛み 発赤、腫れ、熱感をともなう 尿酸の結晶が関節にたまると、免疫系が反応して炎症が起こり、関節周囲の皮膚が赤く腫れ上がって熱を持ちます。 この症状は、足の親指の付け根や足首、膝関節など、体重がかかる部位でよく見られ、軽い触れ合いでも痛みを感じる状態になる場合もあります。 具体例 患部が赤く腫れ上がり、皮膚が光沢を帯びる シーツの重みでも痛みを感じるほどの圧痛 発症から24~36時間後が最も痛みのピーク 発作が始まってから1〜2日で、痛みが最も強くなります。 炎症反応が最も活発になり、動かすことができないほど痛みが強くなるケースが多いです。 その後、数日から2週間ほどかけて徐々に症状が改善していきます。 具体例 発症から1日半ほどで、痛みが最高潮に達する 痛みのピークを過ぎると、徐々に腫れや痛みが引いていく 痛風が影響を及ぼす具体的な部位 足の親指の付け根だけでなく、痛風はさまざまな部位に影響を及ぼす可能性があります。 ここでは、その具体的な部位とそこに起こる症状について説明します。 足の親指の付け根:最も一般的な痛風発作の場所 足の親指の付け根(第一中足趾節関節)は、痛風発作が最も頻繁に起こる場所です。 この部位は、体重を支える重要な関節の一つであり、歩行時に大きな負担がかかります。 そのため、この関節に尿酸結晶が沈着すると、以下のような症状が現れます。 症状 説明 靴を履くことも困難なほどの激しい痛み 痛風発作が起こると、激しい痛みが生じ、痛みのために、靴を履くことさえ困難になります。 安静時でも持続する痛み 痛風発作による痛みは、安静にしていても持続します。痛みのために、夜も眠れなくなるほどの不快感をともなう場合もあります。 歩行困難 痛みと腫れにより、歩行が困難になり、痛みを避けるために、足を引きずるような歩き方になる場合もあります。 発作治まった後も関節の腫れや違和感が残る 痛風発作が治まった後も、関節の腫れや違和感が しばらく残る場合があります。完全に症状が消失するまでには、数日から数週間かかることもあります。 痛風が足の親指の付け根に好発する3つの理由 痛風で最も起こりやすい部位は足の親指の付け根です。 足の親指が好発部位となる理由は、主に次の3点が考えられています。 体重負荷を受けやすい 血流が滞りやすい 体温が低めで尿酸結晶が沈着しやすい 1つずつ、詳しく見ていきましょう。 体重負荷を受けやすい 歩行時や立位時に、足の親指の付け根には体重が集中しやすいため、関節に負担がかかります。 また、圧力や摩擦も加わるので、尿酸結晶が集まりやすくなります。 血流が滞りやすい 足の末端は心臓から遠く、重力の影響もあるため、血流が滞りやすく、尿酸が結晶化して沈着しやすい場所です。 足の親指の付け根以外の関節(足首、膝、手首など)に発症することもあります。 体温が低めで尿酸結晶が沈着しやすい 足の末端は体の中心部と比べて体温が低めのため、尿酸結晶が沈着しやすい環境です。 冬場や長時間の座位、運動不足などの状況は、足の先端部分が冷えやすく、足の親指の付け根に尿酸結晶が沈着しやすくなります。 痛風は尿酸値の上昇が主な原因ですが、体の特定の部位に症状が現れやすいという特徴もあります。 尿酸値のコントロールとともに、この好発部位についても理解を深めることが大切です。 その他の関節:手、足首、膝、足の甲など 足の親指以外にも、痛風発作は以下のような部位に起こる可能性があります。 部位 説明 手の関節(指の関節、手首) 手の関節の痛風発作は、物を握ったり、ボタンを留めたりする動作を困難にします。 足首 足首の痛風発作は、歩行時の痛みや腫れが生じます。足首の可動域が制限され、階段の昇り降りなどの動作が困難になるケースもあります。 膝 膝関節の痛風発作は、激しい痛みと腫れを伴います。膝を曲げ伸ばしする動作が困難になり、歩行や立ち座りに支障をきたすことがあります。 肘 肘関節の痛風発作は、肘の痛みと腫れにより、腕を曲げ伸ばしする動作が制限されます。 アキレス腱の周辺 アキレス腱周辺の痛風発作は、歩行時の痛みや違和感が生じます。アキレス腱の炎症により、歩行パターンが変化することもあります。 足の甲 足の甲の痛風発作は、靴の着脱が困難になります。足の甲の腫れと痛みにより、歩行時の不快感が増すことがあります。 これらの部位での発作は、足の親指ほど頻繁ではありませんが、激しい痛みと腫れをともない、場合によっては、複数の関節に同時に発作が起こることもあります。 たとえば、足の親指と足の甲に同時に発作が起こった場合、歩行が極めて困難になります。 また、手の関節と膝関節に同時に発作が起こった場合、日常生活動作の多くが制限されることになります。 このように、痛風は特定の関節に発症しやすい傾向があります。 関節部位ごとの症状の違いを理解し、発作の初期段階から適切な対処を心がけることが大切です。 痛風発作の好発部位と一般的な症状について知識を深め、痛風が疑われる症状がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。 痛風発作時の場所別対策法 痛風が発症した部位によって、対処法に少し違いがあります。 ここでは、足の親指と他の部位における痛風発作の治療と対策方法について説明します。 足の親指に発生した痛風の治療と対策 足の親指に痛風発作が起こった場合、以下の対処が有効です。 対処法 説明 安静と冷却 発作時は、患部の安静と冷却が重要です。安静にすることで、関節への負担を軽減し、患部の冷却で、炎症を抑え、痛みを和らげる効果が期待できます。 水分補給 十分な水分を摂取し、尿酸の排泄を促すことも効果的です。尿量を増やすことで、体内の尿酸の効率的な排出が可能です。1日1.5~2リットルの水分摂取を心がけましょう。 薬物療法 炎症を抑え、痛みを和らげる効果のある消炎鎮痛薬の服用が一般的ですが、必要に応じてコルヒチンやステロイド薬を医師が処方することもあります。ただし、副作用の可能性もあるため、医師の指示に従った服用が大切です。 食事療法 プリン体の摂取制限などの食事療法が大切です。肉類、魚介類、ビールなどのプリン体を多く含む食品の摂取を控えることで、尿酸値の上昇を防ぎます。 靴の選択 足の親指への負担軽減のために、適切な靴の選択も重要です。ゆったりとしたつま先、クッション性のある靴底、足首を支えるデザインの靴を選ぶことで、関節への負担を和らげます。 足の手入れ 足を清潔に保つことで、感染症のリスクを減らせます。また、足の爪を適切な長さに切り、肌の乾燥防止も大切です。 他の部位の痛風発作に対する対策 足の親指以外の関節(手、足首、膝、肘など)に痛風が発症した場合も、基本的な対処法は同様です。 対処法 説明 安静と冷却 発作時は、患部を安静にし、冷却することが大切です。安静と冷却は、関節の負担軽減と痛みや腫れの緩和、患部の炎症を抑えます。 水分補給 十分な水分補給(1日の摂取目安量:1.5~2リットル)を行い、尿酸の排泄を促し、尿量を増やすことで体内の尿酸の効率的な排出が可能です。 薬物療法 消炎鎮痛薬、コルヒチン、ステロイド薬などを服用し、炎症と痛みを抑えます。ただし、副作用の可能性もあるため、医師の指示に従って適切な服用が大切です。 対策の追加 部位によっては関節の固定や運動療法、リハビリなど、対策の追加が必要となる場合があります。例えば、手関節に発作が起こった場合は、手首を固定する装具の使用、膝関節の発作には、適切な運動療法やリハビリで、関節の可動域を維持し、機能低下を防ぎます。 痛風発作の対処は発症部位によってある程度異なります。 足の親指であれば靴の選択が、手関節であれば運動療法がポイントになるなど、発症部位の特性を踏まえ、医師や理学療法士と相談しながら、適切な治療計画を立てることが大切です。 痛風が疑われる症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることをおすすめします。 早期発見と適切な治療により、痛風発作による痛みや日常生活の制限を最小限に抑えることができます。 また、生活習慣の改善や薬物療法により、発作の頻度を減らし、関節の変形や機能障害の予防が期待できます。 痛風と上手に付き合いながら、健康的で充実した生活を送れるよう、医療従事者と協力して取り組んでいきましょう。 \まずは当院にお問い合わせください/ 痛風発作の予防 痛風発作を予防するためには、日常生活の改善が欠かせません。 とくに食生活の管理と適切な運動・体重管理が重要になります。 ここでは、それぞれの詳細について説明します。 食生活の管理 痛風予防のための食事療法では、主に4つの注意が必要です。 注意点 説明 プリン体の多い食品を控える プリン体の多い食品(レバー、イカ、鶏皮、内臓肉)は控えめにすると尿酸値上昇を防げます。完全に避ける必要はありませんが、バランスを考えた適量摂取を心がけましょう。 アルコール、特にビールの摂取を控える アルコールは尿酸の生成を促進し、排泄を妨げる作用があります。とくにビールは、プリン体も多く含まれているため、痛風発作のリスクを高めます。アルコールは適量を心がけ、できればビールは控えめにしましょう。 十分な水分を意識的に摂取する 十分な水分摂取は、尿酸の排泄を促すために重要です。1日1.5~2リットルの水分摂取を目指しましょう。ただし、一度に大量の水を飲むのではなく、こまめに水分を補給することが大切です。 バランスの取れた食事を心がける 偏った食事は痛風発作のリスクを高めます。さまざまな食品群を偏りなく摂取し、バランスの取れた食事を心がけましょう。とくに、野菜や果物、低脂肪乳製品、全粒穀物などを積極的に取り入れることが大切です。 これらのポイントを意識しながら、管理栄養士と相談して自分に合った食事計画を立てることが大切です。 一度に大幅な食事内容の変更を行うのではなく、少しずつ改善していくのがよいでしょう。 また、外食や食事会などの際は、プリン体の多い食品を控えめにするなど、工夫をしながら対応しましょう。 自分の体の反応を観察しながら、無理のない範囲で食生活の改善を進めていくことが重要です。 適切な運動と体重管理 運動は尿酸値を下げる効果が期待でき、痛風発作のリスクを減らすのに役立ちます。 運動の目安は以下の通りです。 項目 内容 頻度 週2~3回 時間 1回30分以上 種類 有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳など自分に合った続けやすいもの) 運動をはじめる際は、自分の体力や健康状態に合わせて、無理のない範囲ではじめることが大切です。 ウォーキングであれば、1回10分からはじめ、徐々に時間を延ばしていくのがよいでしょう。 また、痛みや違和感がある場合は、無理せず、医師や理学療法士に相談しましょう。 加えて、肥満は痛風のリスクを高めるため、適正体重の維持を心がける必要があります。 適正体重は、身長(m)の2乗×22が目安となります。 たとえば、身長170cmの方であれば、適正体重は約64kgです。 無理のない範囲で、徐々に体重を適正範囲に近づけていくことが大切です。 身長 適正体重の目安 適正体重の計算式:身長(m)の2乗 × 22 150cm 49.5~54.0kg 49.5kg 160cm 56.3~61.4kg 56.3kg 170cm 63.6~69.4kg 63.6kg 180cm 71.3~77.8kg 71.3kg 適正体重には個人差があります。 筋肉量が多い人や骨格が大きい方は、この目安よりも重めでも適正体重の範囲内である可能性があります。 運動療法は個人差が大きいため、自分の体力や健康状態に合わせて、無理のない範囲ではじめることが大切です。 また、痛風発作時や回復期には無理な運動は控え、医師や理学療法士の指示に従うことが重要です。 食生活と運動、体重管理を総合的に見直すことが、痛風発作の予防につながります。 生活習慣の改善に取り組み、痛風とうまく付き合っていくことが大切です。 生活習慣の改善は簡単ではありません。長期的な視点を持って、自分のペースで無理のない継続が重要です。 痛風は再発や合併症のリスクあり|早期診断と治療が大切 痛風発作は、適切な治療を行わないと再発する可能性が高まります。 また、長期化すると関節の変形や腎臓などの合併症を引き起こすこともあるため、早期の診断と治療が重要です。 以下のような場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。 突然の激しい関節痛があり、関節が赤く腫れている 発熱や風邪の症状をともなう関節痛がある 痛風発作を繰り返し起こしている 痛風発作が長引き、日常生活に支障をきたしている 痛風は、適切な治療と生活習慣の改善により、十分にコントロールできる病気です。 早期に診断を受け、医師の指導のもと、薬物療法や食事療法に取り組むことが大切です。 また、日頃から体重管理やアルコール摂取量の調整など、生活習慣の見直しを心がけることも重要です。 痛風と上手に付き合いながら、健康的で充実した人生を送れるよう、医療チームと協力して取り組んでいきましょう。 まとめ:痛風発作への効果的なアプローチ 痛風は足の親指だけでなく、手の関節、足首、膝、肘などさまざまな関節に発症することがあります。 部位によって対処法は異なりますが、共通する発作時の対応としては安静・冷却・消炎鎮痛薬があります。 部位別の予防策 手の関節:適切な道具の使用、運動療法、リハビリ 足首・膝:固定装具、適切な靴の選択、運動療法、リハビリ 肘:固定装具、適切な姿勢、運動療法、リハビリ 一般的な予防策 プリン体の多い食品の摂取を控える 1日1.5~2リットルの水分をこまめに摂取 週2~3回、30分以上の有酸素運動 適正体重の維持(BMI 22程度) 痛風とうまく付き合うには、体の変化に早めに気づき適切に対処することが重要です。 症状が気になる場合は早めに医療機関を受診し、自分に合った管理法を見つけましょう。 \まずは当院にお問い合わせください/
2024.10.18 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
「痛風と診断されたけど、納豆が好きで食べるのをやめられない」「納豆は体に良いと聞くけど、痛風の人には危険なのかな?」 痛風と診断され、納豆が好きでも食べるのを控えている方が多いのではないでしょうか。納豆にはプリン体が含まれているため、尿酸値を上げてしまうのではと不安に思う気持ちもありますよね。しかし、納豆の適切な食べ方を理解すれば、痛風の方も納豆の健康効果を活かせます。 本記事では、納豆の栄養価や痛風への影響、適切な食べ方などについて、医療の観点からわかりやすく解説していきます。痛風患者様が納豆を安心して取り入れられるよう、食事療法の手助けとなれば幸いです。 痛風の症状や食事管理でお悩みの場合には、当院のメール相談やオンラインカウンセリングをご活用ください。 また、痛風対策に効果的な食事をさらに知りたい方は、以下の記事をご覧いただければ幸いです。 納豆は痛風でも「食べすぎなければ問題ない」 納豆は適量であれば、プリン体の摂取量としては問題ありません。なぜなら、納豆に含まれるプリン体の量は、他の肉類や魚介類と比べると比較的少ないことがわかっているからです。 納豆1パック(40g)あたりのプリン体含有量は約45mgで、高プリン食品の基準である200mg(例:レバー類、ビールなど)を大きく下回ります。 つまり、適量の納豆であれば、プリン体の摂取量としては問題ない範囲といえるでしょう。 ほかにプリン体を多く含む食品としては、レバーや肝臓、魚卵、干しシイタケ、ビールなどが知られています。一方、比較的プリン体が少ない食品は卵、乳製品、果物、野菜などです。 プリン体は、体内で代謝されて尿酸になります。尿酸は、通常であれば腎臓でろ過されて尿中に排泄されますが、尿酸の生成量が多すぎたり、排泄が滞ったりすると、血中の尿酸値が上昇してしまいます。 血中尿酸値が高い状態が長く続くと、尿酸の結晶が関節などに沈着し、痛風発作を引き起こすリスクが高まるのです。(文献2、3) だからといって、プリン体を含む食品を完全に避ける必要はありません。大切なのは、適量を心がけることです。 日本痛風・核酸代謝学会のガイドラインでは、痛風患者様のプリン体摂取量の目安を1日あたり400mg以下としています。 納豆なら、1パック(40〜50g)に含まれるプリン体量は約25〜32mg程度で、この目安の範囲内に十分収まるでしょう。(文献4) ただし、納豆にもプリン体が含まれている以上、摂取量には注意が必要<です。 とくに痛風発作を頻発する方や重症の高尿酸血症の方は、医師や管理栄養士の指導のもと、納豆の摂取量を調整することが大切です。 痛風患者の納豆の適正摂取量は1日1パック 痛風で納豆を食べるときは1日1パックを目安にしましょう。納豆は比較的プリン体が少ない食品ですが、適切な摂取量を守ることが大切です。 痛風で納豆を摂取するときのポイントは以下のとおりです。 注意点 説明 1日の摂取量は1パック(40~50g)程度に抑える 前述の通り、納豆のプリン体含有量は比較的少ないとはいえ、摂り過ぎは禁物です。1日1パック程度を目安に、適量を心がけましょう。 他の高プリン食品との組み合わせに注意する レバーや魚卵など、プリン体を多く含む食品と納豆を同時に食べると、プリン体の摂取量が増えてしまいます。バランスを考えて、組み合わせを工夫しましょう。 アルコールと一緒に摂取するのは避ける アルコールは、尿酸の排泄を妨げる作用があります。とくにビールは、プリン体も多く含むため、納豆と一緒に摂取するのは避けましょう。(文献5) 体調や尿酸値の変化に気を配り、適宜摂取量を調整する 定期的に尿酸値を測定し、自分の体の変化を観察することが大切です。もし尿酸値が上昇傾向にあるようなら、納豆の摂取量を一時的に減らすなどの対応が必要かもしれません。 また、納豆の粘り気を活かした料理を工夫することで、野菜などの食物繊維も一緒に摂取できます。さらに野菜はビタミンやミネラルを含むアルカリ性の食品で、尿酸の排泄も助けてくれます。(文献6) たとえば、納豆サラダ、納豆巻き、冷奴などがおすすめです。 痛風の食事療法では、プリン体の摂取制限とともに、バランスの取れた栄養摂取が重要です。主食、主菜、副菜をバランスよく組み合わせ、食物繊維や低脂肪のたんぱく質を積極的に取り入れましょう。また、十分な水分補給も忘れずに。(文献5) 納豆は、適量を守れば、痛風患者様にも有益な食品の一つといえるでしょう。ただし、症状や体質には個人差がありますので、かかりつけ医や管理栄養士に相談しながら、自分に合った食べ方を見つけていくことが大切です。 豆類は血清尿酸値を下げる効果がある 「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版」によると、納豆のような豆類を含む食事を続けたところ、血清尿酸値が低下したという報告があります。(文献4) ただし、豆の種類や加工方法によってプリン体の量には差があります。 「公益財団法人 痛風・尿酸財団」が公開している、豆類ごとプリン体含有量(100gあたり)は以下のとおりです。(文献1) 食品名 プリン体含有量(100gあたり) 納豆 113.9 乾燥大豆 172.5 乾燥小豆 77.6 ピーナッツ 49.1 そら豆 35.5 豆腐(冷や奴) 31.1 豆腐(湯豆腐) 29.1 豆乳 22.0 味噌(赤味噌) 63.5 味噌(白味噌) 48.8 醤油 45.2 枝豆 47.9 おから 48.6 上記のプリン体含有量も参考にし、1日あたりの適正摂取量(400㎎)を超えないよう他の食品と組み合わせながら摂りましょう。 痛風患者向けの納豆の食べ方 痛風患者に推奨される食事法の基本は、プリン体の摂取制限と、バランスの取れた食生活です。適量の納豆は、以下のような重要な役割を果たします。 役割 説明 タンパク質源 良質な植物性タンパク質を提供する 食物繊維の供給源 腸内環境を整え、尿酸の排泄を促す 大豆イソフラボンの供給 抗酸化作用と炎症抑制効果が期待できる このように、納豆は健康的なタンパク源となるだけでなく、食物繊維やイソフラボンの供給源としても優れています。さらに、上手に他の食品と組み合わせることで、痛風患者でも満足度の高い食生活を実現できるでしょう。(文献7) 納豆に限らず、さまざまな食品を上手に組み合わせてバランスを取ることが、痛風対策の食事で大切なポイントです。本章では積極的に組み合わせたい食品や実際のレシピ、メニューをご紹介します。 納豆と他の食品との組み合わせ 納豆と組み合わせると良い食品には、以下のようなものがあります。 食品 効果 野菜 尿酸排泄を促進するビタミンCが豊富 低脂肪乳製品 カルシウムが尿酸の排泄を助ける 果物 クエン酸が尿のpHを上げ、尿酸の溶解度を高める 全粒穀物 食物繊維が豊富で腸内環境を整える これらの食品を積極的に取り入れることで、痛風対策として効果的な食事法を実践できる可能性があります。 痛風の人におすすめの納豆レシピ 納豆は、そのままでも十分においしく食べられますが、他の食材と組み合わせることで、さらに多彩な味わいを楽しめます。 痛風の人でも安心して食べられる、納豆を使ったレシピの一例を表にまとめました。ぜひ普段の食事の参考にしてください。 レシピ 特徴 プリン体含有量の目安 納豆とアボカドのサラダ アボカドに含まれる不飽和脂肪酸は、心血管系の健康に良いとされています。納豆と組み合わせることで、タンパク質と食物繊維、良質な脂肪がバランスよく摂れます 納豆1パック分 (約45mg) 納豆と野菜のスープ 納豆を溶き卵でとじて、野菜スープに加えるレシピ。体を温める効果があり、タンパク質と食物繊維を手軽に摂取できます 納豆1/2パック分(約20~25mg) 納豆とトマトのパスタ トマトに含まれるリコピンは、強力な抗酸化作用を持つカロテノイドの一種です。納豆に含まれるイソフラボンも抗酸化作用を持つため、両者を組み合わせることで、相乗的に活性酸素を除去し、細胞の酸化ストレスを軽減することが期待できます。また、トマトはビタミンCやカリウムも豊富に含むため、免疫機能の向上や血圧の調整にも役立つでしょう 納豆1パック分 (約45mg) 納豆と野菜のチャーハン 納豆に含まれるビタミンB群は、炭水化物や脂質のエネルギー代謝を助ける働きがあります。ビタミンEは抗酸化作用を持ち、細胞の老化を防ぐ効果が期待できます 納豆1パック分 (約45mg) 納豆とキムチのビビンバ風 納豆とキムチはともに発酵食品であり、善玉菌が豊富に含まれています。これらの菌は、腸内環境を整え、免疫機能を高める効果が期待できます。また、キムチに含まれるカプサイシンには、代謝を上げる効果があるとされ、ダイエットにも役立つ可能性があります 納豆1パック分 (約45mg) 納豆とオクラの和え物 オクラのねばねば成分は、納豆の粘り気と相性抜群。食物繊維やビタミンも豊富に含まれています 納豆1パック分 (約45mg) 納豆とトマトのブルスケッタ トマトに含まれるリコピンと納豆のイソフラボンの組み合わせは、強力な抗酸化作用が期待できます。また、トマトに含まれるビタミンCは、コラーゲンの生成を助け、肌の健康維持に役立ちます 納豆1パック分 (約45mg) 納豆と豆腐のハンバーグ 大豆製品同士の組み合わせで、良質なタンパク質が摂れるヘルシーなハンバーグ。野菜を添えれば、バランスの取れた一皿になります 納豆1パック分 (約45mg) これらはあくまで一例ですが、納豆の持つ栄養価を活かしつつ、プリン体に気を付けた組み合わせを工夫することで、痛風患者様でも納豆を楽しめるはずです。 まとめ|納豆は痛風でも1日1パックならOK!他の食品も組み合わせて食べよう 痛風患者にとって、納豆は適量を守れば食べられる健康的な食品の一つです。 ただし、納豆にもプリン体が含まれていることを意識し、適切な量を心がけて低プリン体の食事を習慣化する必要があります。痛風と診断されたからといって、好きな食べ物をすべて諦める必要はありません。納豆の栄養価を理解し、適切な食べ方を実践することで、痛風の症状改善と予防につなげていきましょう。 日々の食事は、尿酸値コントロールの鍵を握っています。納豆を味方につけながら、バランスの取れた食生活を目指していきましょう。ご不明な点がありましたら、かかりつけ医や管理栄養士にご相談ください。 また、当院でも痛風患者様に対してのメール相談やオンラインカウンセリングを行っています。ぜひお気軽にお問い合わせください。 痛風の食事管理を行うなかで、コーヒーを飲んで良いか気になったことはありませんか?痛風患者のコーヒーの摂取目安について、以下の記事で解説しています。 \まずは当院にお問い合わせください/ 参考文献一覧 文献1 帝京大学薬学部物理化学講座 臨床分析学研究室 金子希代子名誉教授提供,食品中プリン体含量(mg/100g) 文献2 千葉県栄養士会,痛風の予防と食事 文献3 MSD マニュアルプロフェッショナル版,痛風 文献4 一般社団法人日本痛風・尿酸核酸学会,高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版 文献5 e-ヘルスネット,アルコールと高尿酸血症・痛風 文献6 順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部,高尿酸血症・痛風の食事療法
2024.10.16 -
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肺がんは日本でも多くの人々が診断される病気の一つで、部位別のがんの罹患数では大腸がんに次ぐ2位、部位別がん死亡数では男女合わせて1位となっています。 この記事では、肺がんの概要から治療法について解説していきます。また、後半では肺がんの手術方法、手術後の合併症・後遺症について挙げ、その治療法や対処法にも触れています。後遺症に対する再生医療の可能性についても紹介していますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。 この記事を読んで分かること 肺がんの概要 肺がんの治療法 肺がんの手術方法 手術後の合併症、後遺症とその治療法や対処法 後遺症に対する再生医療の可能性 肺がんとは 肺がんは、肺に発生する悪性腫瘍です。何らかの原因で遺伝子に傷がつき、細胞が異常に増殖してあちこちに移動してしまうものを「がん細胞」といいます。そのがん細胞が肺から始まり、増殖したものを指します。 出典:Lung Cancer: Types, Stages, Symptoms, Diagnosis & Treatment 肺がんの原因 肺がんの原因の約7割は喫煙とされています。タバコを吸ったことがない人に比べ、吸っている人の肺がんリスクは4倍以上になると言われています。また、直接吸っていなくても、副流煙を吸うことにより肺がんのリスクが高まることも知られています。 それ以外の原因として、遺伝、大気汚染、アスベストなどの有害化学物質などが知られています。 肺がんの症状 肺がんの初期では多くの場合無症状であり、早期に発見することはなかなか難しい がん です。進行に応じて咳や痰、息切れなどがみられることがあります。 肺がんに特徴的とまではいえない症状がほとんどですが、痰に血が混じる(血痰)場合には肺がんが疑わしい可能性が高まりますので、早めに医療機関を受診していただくことをおすすめします。 それ以外にも極端な体重低下や肩の痛み、しゃっくりなど、がんの進行によって様々な症状を引き起こします。また、肺がんが転移した場所の症状が出ることがあり、脳転移による頭痛、手足の麻痺、めまい、吐き気、骨転移による痛みなどがあります。 肺がんの検査 肺がんの検査といっても、肺がんを見つけるための検査、肺がんであることを確定させたり、肺がんの種類を調べる検査、治療方針を決めるために必要な検査など様々なものがあります。 肺がんを見つけるための検査 肺がんを見つけるための検査としては、画像検査が一般的です。胸部レントゲン検査や胸部CT検査が挙げられます。 レントゲン検査は、健診や人間ドックなどでも幅広く使用されている基本的な検査です。 CTではレントゲンよりも画像で得られる情報量が豊富で、より小さな病変も見つけることが可能となります。一方レントゲンよりも放射線被ばく量が多くなることがデメリットとなります。 その他、肺がんの転移を調べるのに有用なMRI検査、シンチグラフィー、PET検査などがあります。 また、血液検査の中で腫瘍マーカーと呼ばれるものがあり、この腫瘍マーカーを調べて数値が異常値を示す場合には肺がんを疑います。ただし、このマーカーは他のがんや病気でも上昇することがあるため、この検査のみで肺がんを診断することはできず、あくまで他の検査と合わせて総合的に判断するための材料となります。 肺がんの確定診断、治療法の検討に有用な検査 肺がんであることを確定させるには、がん細胞がいることを確認する必要があります。そのためには、痰に混じったがん細胞を見つける方法(喀痰細胞診検査)や、病変を内視鏡やCTなどで確認して組織に直接針を指して細胞を採取して確認する方法(組織診検査)があります。この組織を詳しく調べることで、がん細胞の存在の有無だけでなく、どういった種類の肺がんかを見分けることが可能です。 また、そのがんの種類によっては遺伝子検査を追加で行い、さらにそのがんの遺伝子変異について詳しく調べることがあります。これは、ある特定の遺伝子変異が見つかった場合、その変異に特異的に効く分子標的薬と呼ばれる治療薬を使うことで、治療効果が期待できるためです。 肺がんの治療法 肺がんの治療方法の主なものとして、手術、いわゆる抗がん剤を用いた化学療法、放射線療法があり、これらを組み合わせて行います。 手術 抗がん剤を用いた化学療法 放射線療法 この治療を決める上で重要なのが、肺がんの組織型と病期です。 まず肺がんの組織型ですが、小細胞肺がん(SCLC)と非小細胞肺がん(NSCLC)の二つに大別されます。 小細胞肺がん(SCLC) 小細胞肺がんは進行が非常に早く、発見された際にはすでに転移してしまっているケースが多く、化学療法や放射線療法を組み合わせて治療を行います。 非小細胞肺がん(NSCLC) 非小細胞肺がんでは、小細胞肺がんに比べると進行速度は遅いため、早期で発見されるケースもあります。 肺がんの病期と治療法について 病期(ステージ)は 、 Ⅰ期(ⅠA、ⅠB):肺内に腫瘍が限局していて、リンパ節転移がないもの Ⅱ期(ⅡA、ⅡB):肺内に限局しているが大きいもの。もしくは同じ側の肺門部リンパ節に転移がみられるもの Ⅲ期(ⅢA、ⅢB、ⅢC):病変と同じ側の縦隔リンパ節にも転移がみられるもの。または肺外のリンパ節にも転移が生じているもの Ⅳ期(ⅣA、ⅣB):肺から離れた臓器に転移がみられるもの に分類されます。非小細胞肺がんの場合、病期によって治療法が異なります。 ⅠA期では、手術のみを行います。 ⅠBからⅢB期までは手術を行い術後に化学療法を行うのが一般的です。 ⅢA、ⅢB期で手術が不可能な場合には、放射線治療と化学療法を併用した治療法を検討します。 Ⅳ期の場合では、まず遺伝子検査によって特定の遺伝子変異の有無を確認し、有効な分子標的薬があればそれによる薬物療法を検討します。有効な遺伝子変異がない場合には、抗がん剤を用いた化学療法を選択します。ただし、これはあくまでも基本的な方針のため、一律にこのように決まるとは限りません。実際には患者さんごとの状態や事情なども考慮して治療を決定していきます。 肺がんの3つの手術方法 ここでは、肺がんの手術方法について具体的に解説していきます。肺がんの手術方法は、切除範囲とがんの進行度や位置、患者さん自身の状態などによって異なってきます。 1)肺葉切除術 肺がんの手術で最も標準とされる手術方法で、肺の一葉を切除する手術です。肺は右側に三つ、左側に二つの葉に分かれており、がんが存在する肺葉を切除します。多くの場合には近くにあるリンパ節も一緒に切除します。肋骨の間から胸部に切開を入れ、がんを含む肺の葉を取り除きます。 2)区域切除術・楔状切除術 区域切除術は、小型の肺がんに対して、肺葉よりも一部の区域だけを切除する方法です。近年検診などで肺がんが早期で見つかるケースが増えており、それに伴い適応が増えてきている手術方法となります。胸腔鏡を使用して小さな皮膚切開で手術が行えるようになり、患者さん自身の身体の負担軽減を図ることができます。また、区域切除よりもさらに小さな部分を切除する楔状切除術という方法もあります。 3)肺全摘術 片肺を摘出する方法で、病変が一側の肺に広がっており、かつ中心まで及んでいる場合に選択されます。片肺を摘出すると肺や心臓の機能低下につながる可能性があるため、体力が低下している方、もともと呼吸機能が低下している方には選択が難しい方法です。 肺がんの手術後の合併症とその対処法 肺がん手術後の合併症は、手術の方法や、患者さん自身の体質などによっても異なりますが、一般的に想定される主な術後合併症とその対処法について挙げていきます。 肺胞瘻(はいほうろう) 肺を切除した箇所から空気が漏れる合併症です。肺がんの手術の中では約5%程度と比較的頻度が高い合併症です。通常であれば手術により肺の一部が取り除かれるため、呼吸機能が低下することがあります。 <対処法> 多くの場合自然に改善しますが、まれに治らないケースがあります。その場合には薬剤を用いて空気の漏れを止める胸膜癒着術や、再手術が必要になることがあります。 気管支断端瘻(きかんしだんたんろう) 一般的な肺がんの手術では、肺と気管支の一部も切除します。その切断した気管支を切ったところから空気が漏れてしまう合併症です。 <対処法> 起こりうる可能性は極めてまれですが、起こってしまった場合には重篤になるため、緊急手術によって閉鎖したりする必要があります。 術後肺炎 手術後に肺炎が生じ、咳、発熱、呼吸困難などがみられることがあります。 <対処法> 抗生剤を投与して治療を行います。 膿胸(のうきょう) 手術した側の肺の胸腔内に膿がたまる合併症です。膿による発熱や、感染が全身にまわると敗血症をきたすおそれもあります。 <対処法> 膿が少量であれば、胸に小さな穴を開けてそこから洗浄して膿を排除します。小さな穴からの洗浄で不十分な場合には、手術によって洗浄が必要となることもあります。いずれの場合でも抗生剤を併用して治療する必要があります。 乳び胸(にゅうびきょう) 手術の際に、胸管とよばれる太いリンパ管が傷つき、胸腔内にリンパ液が漏れてしまう合併症です。 <対処法> 症状が軽度であれば食事を制限してリンパ液の成分である脂肪分の吸収を抑制することで改善する可能性がありますが、場合によっては再手術で漏れを塞ぐこともあります。 肺動脈血栓塞栓症 手術中や手術後など、ベッドに長期間横になって下肢を動かさない状態になると、足の静脈がうっ滞して血栓が作られます。その血栓が、立ったり歩き始めた際に肺の血管に移動して詰まることで起こる合併症で、いわゆるエコノミークラス症候群として知られています。発生頻度は高くないものの、生じた場合には重篤で死亡する危険性もある合併症です。 <対処法> 血栓が作られるのを予防することが大切で、手術中や術後歩けるようになるまでストッキングを装着したり、下肢のマッサージを行うフットポンプを着用します。また血栓が生じてしまい、肺に詰まってしまうリスクが高い場合には、血液をサラサラにする抗凝固薬を投与して治療します。 反回神経麻痺 反回神経と呼ばれる神経が肺の近くを走行しているため、手術中に反回神経を傷めてしまったりすると、反回神経麻痺を起こす可能性があります。この神経の障害によって、声のかすれ(嗄声)や飲み込みにくさが出る場合があります。 <対処法> 反回神経麻痺は一時的な症状であることが多く、通常数ヶ月程度で改善しますが、まれに回復しないケースもあります。 術後の後遺症に対する治療法や対処法 ここでは、肺がんの手術後に後遺症として残ってしまう可能性のある症状や状態について、その対処法も含めて挙げていきます。 呼吸のしにくさ、息苦しさ 肺がん手術後は、肺を切除したことにより肺活量が低下し、うまく呼吸できなくなったり、労作時の息切れ、息苦しさが残る可能性があります。 <対処法> 呼吸リハビリテーションを行って改善を促すなどの方法があります。理学療法士の指導のもと、呼吸筋を鍛えるリハビリを行います。 声のかすれ、飲み込みにくさ 合併症の項目でも解説した、反回神経麻痺によって生じる可能性のある症状です。反回神経麻痺の影響で、声帯が動かしにくくなってしまうことで生じます。数ヶ月以上経っても、症状が改善しない場合がまれにあります。 <対処法> 声のかすれが重度の場合や飲み込みにくさが強い場合には、麻痺した声帯を移動させる等、手術による治療法があります。 治療後で後遺症が残ってしまったら:再生医療について 肺がんの手術後に後遺症に対する治療法として、再生医療の可能性についてお話します。 再生医療とは、「幹細胞」と呼ばれる様々な細胞に分化することができる細胞を活用して行う治療です。幹細胞を培養して増やし、それを点滴や患部に直接注射することで損傷した組織の修復や再生を促すことを狙いとする治療法で、現在その効果が期待されています。中でも、術後の神経損傷に対する再生医療が注目されており、肺がんの手術後の合併症・後遺症である反回神経麻痺への改善効果が期待されています。 当院は国内では数少ない再生医療を提供できる施設の1つです。患者さん自身の脂肪から幹細胞を採取、培養し、点滴する「自己脂肪由来幹細胞治療」を行っています。自分自身の細胞を用いるため、拒絶反応やアレルギーを生じにくく、安全性が高い方法です。 術後の後遺症でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 肺がんについてよくあるQ&A Q:新型タバコ(電子・加熱式)は肺がんの原因になりますか? A:新型タバコは紙巻タバコに比べて害が少ないと思われがちです。しかし実際には、含まれるニコチンの量は紙巻タバコと同等もしくはそれ以上であることもあり、タールも7割程度と言われています。従って、それ以外にも約70種類の発がん物質が含まれていると言われており、新型タバコも同様に肺がんのリスクとなります。 Q:肺がんを予防する方法はありますか? A:肺がんを完全に予防できる方法は現時点でありませんが、肺がんになるリスクを減らすことはできます。まず、肺がんの最も多い原因である喫煙をしている場合には禁煙をしてください。また、受動喫煙によっても肺がんのリスクがあがりますので、タバコの煙を避けるなども大切です。最も重要なのは肺がんの早期発見です。予防でできることは限られますが、定期的に健康診断などで胸部のレントゲン検査など、画像検査を受けるようにしてください。肺がんが見つかったとしても大きくなる前に早期に発見できれば、その分根治の可能性が見込めます。。 まとめ:肺がんの治療法やその合併症・後遺症に再生医療の可能性 今回は肺がんについて、その原因から治療まで幅広く取り上げ、治療の柱である手術についてや、その合併症も含めて詳しく解説していきました。 また、術後の後遺症やその後遺症に対する再生医療の可能性も含めて取り扱っています。実際に肺がんになってしまいこれから治療を受けられる方、肺がんの治療後の後遺症に悩まれている方、肺がんについての詳しい情報を知りたい方々にとって、有益な情報源となれば幸いです。 参考文献 Lung Cancer: Types, Stages, Symptoms, Diagnosis & Treatment 呼吸器外科 | 国立がん研究センター 中央病院 肺がん:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] Lung Cancer: Types, Stages, Symptoms, Diagnosis & Treatment
2024.09.23 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
「痛風と診断されたけど、どのような食事をすればいいの?」「家族の食事にも配慮しないと…」 このように悩んでいる方も多いのではないでしょうか。 痛風の予防やコントロールには、適切な食事を摂ることが重要です。しかし、具体的にどのような食材を選び、どうバランスを取れば良いのかわからない方も少なくありません。 今回は、痛風対策に効果的な食事法について詳しく解説します。尿酸値を下げる食材の選び方、避けるべき食品、一日の食事プランなどについても紹介しています。 痛風の悪化を防ぎつつ、ご家族の健康も考えた食生活を送る参考になれば幸いです。 痛風における食事改善のポイントは「プリン体の摂取量」 痛風は、体内で作られた尿酸という物質が、腎臓から十分に排出されないために血液中に蓄積し、発症します。 尿酸は、プリン体という物質が体内で分解されることで生成されます。食事から多く摂取すると尿酸の生成量がさらに増加してしまいます。 つまり、プリン体を多く含む食品を取りすぎると、尿酸の生成が増え、痛風発作のリスクが高くなるのです。 健康な成人男性の尿酸の1日生成量は約1,000mgといわれています。 プリン体の摂取量が多いと、この尿酸の生成量がさらに増加してしまいます。そして、血液中の尿酸値が1dLあたり7.0mg以上になると、痛風発作のリスクが上昇しやすいのです。 つまり、普段の食生活が痛風の発症と深く関係しているといえます。 痛風が影響を与える部位やその対策については以下の記事でも解説しています。ぜひ参考にしてください。 痛風の食事で避けたい食品一覧 痛風のリスクを高める代表的な食品は、以下の通りです。 肉類(とくにレバー、内臓肉など) 魚介類(とくにイワシ、サンマ、カツオなど) ビールなどのアルコール飲料 果糖の多い清涼飲料水 痛風の予防には、バランスの取れた食事を心がけ、プリン体の過剰摂取を避けることが大切です。 プリン体を多く含む食品を控えめにし、十分な水分を摂取して尿酸を排出しやすくすることが有効です。 また、適度な運動を行うと、体重管理や代謝の改善につながり、痛風のリスクを下げることができるでしょう。 肉類 とくに、レバーや内臓肉などの食品に多く含まれるプリン体が体内で分解されると、尿酸が生成されます。 たとえば、レバー100gあたりのプリン体含有量は約400mgで、他の食品と比較すると高い値です。 肉類は、大豆製品(豆腐、納豆など)に置き換えることでプリン体をおさえられます。 魚介類 イワシやサンマ、カツオ、マグロなどにもプリン体が多く含まれます。 プリン体の含有量は180-400mgほどです。 もし魚を選ぶ際には、白身魚(タラ、カレイなど)、背青魚(サバ、アジなど)を積極的に選ぶと良いでしょう。 また、イカやタコも200ー300mgほどのプリン体値なので注意する必要があります。 ビールなどのアルコール飲料 アルコールは尿酸の排泄を妨げる作用があるため、体内の尿酸を増加させ痛風のリスクを高めます。 とくにビールは、アルコールに加えてプリン体も含むため、尿酸値を上昇させる作用が強いです。 ビール1缶(350ml)を飲むと、血中尿酸値が約0.5mg/dL上昇すると言われています。 大瓶1本(633ml)には約100-200mgのプリン体が含まれており、これは高プリン体食品とされる量です。 痛風患者は可能な限りアルコールを控え、どうしても飲む場合は、ビールではなく、ワインや焼酎などのプリン体を含まない酒を選び、適量(1日平均純アルコール20g程度)を心がけましょう。 果糖の多い清涼飲料水 果糖は他の糖類と比べて尿酸値を上昇させる作用が強いとされています。 したがって、痛風の方は、清涼飲料水摂取は控えることが重要です。 水やお茶など果糖を含まない食品に切り替えましょう。 痛風の食事には「プリン体の少ない食品」を取り入れる 痛風の食事療法では、プリン体の摂取を控えることが大切ですが、すべての食品を制限する必要はありません。 痛風患者さんでも比較的食べても良いとされる食材があります。 具体的には以下のようなものが挙げられます。 野菜類 果物類 低脂肪乳製品 全粒穀物 これらの食材を中心とした食事は、尿酸値を下げ、痛風発作のリスクを減らすのに役立ちます。 以下の表は、痛風の方に推奨される食品とその理由です。 食品 理由 含有量の例 キウイフルーツ オレンジ さくらんぼ ビタミンCが豊富で、尿酸の排泄を促進 100g当たりのビタミンC含有量 キウイフルーツ約90mg オレンジ約50mg さくらんぼ約10mg 低脂肪乳製品 プリン体が少なく、カルシウムが豊富 カルシウムは尿酸の排泄を促進 100g当たりのカルシウム含有量 低脂肪牛乳約120mg ヨーグルト約110mg 全粒穀物 ビタミンB群が豊富で、プリン体代謝を助ける 食物繊維が豊富で、便通を改善 玄米100g当たりのビタミンB1含有量:約0.4mg 大豆製品 プリン体含有量が低く、尿酸値を上げにくい 良質なタンパク源で、動物性タンパク質の代替に適している イソフラボンが豊富で、抗酸化作用がある 木綿豆腐100g当たりのプリン体含有量:約6mg 納豆50g当たりのプリン体含有量:約18〜22.5mg 注意:納豆は栄養価が高いですが、プリン体含有量も無視できません。適量を守りましょう これらの食品を上手に取り入れることで、痛風患者さんでも栄養バランスの取れた食生活を送ることができます。ただし、どのような食品でも食べ過ぎは避けるべきです。個人差があるため、医師や管理栄養士との相談の上、自分に合った食事療法の実践が大切です。 実践!痛風対策のための一日の食事 ここでは、痛風患者におすすめの一日の食事プランを紹介します。家族の健康も考慮しながら、バランスの取れた食事を心がけましょう。 朝食:痛風に優しいメニューの提案 忙しい朝でも、簡単に作れて栄養バランスの取れたメニューを選ぶと続けやすいでしょう。 メニュー 材料 全粒粉トースト+野菜スープ 全粒粉パン、野菜(お好みで)、コンソメなど オートミール+低脂肪ヨーグルト+フルーツ オートミール、低脂肪ヨーグルト、お好みのフルーツ 豆乳スムージー+ビタミンCの多い果物 豆乳、バナナ、ビタミンCの多い果物(キウイ、オレンジ、イチゴなど) 朝の忙しい時間帯でも、これらのメニューなら短時間で準備できるでしょう。全粒粉トーストと野菜スープ、オートミールとヨーグルト、豆乳スムージーなど、痛風の方に適したメニューといえます。 昼食と夕食:家族も喜ぶ健康的な選択 家族みんなで楽しめるような、バランスの良い食事の例を紹介します。 メニュー 材料 茶わん蒸し+野菜サラダ+玄米ご飯 卵、だし汁(干ししいたけや玉ねぎなど)、野菜(レタス、きゅうり、トマト、にんじん、ブロッコリーなど)、玄米など 豆腐ハンバーグ+蒸し野菜+キノコスープ 豆腐、ひき肉、野菜、キノコ、だし汁など さわらの塩焼き+野菜炒め+もずく酢 さわら、野菜、もずく、酢など 低プリン体の食材を使った、栄養バランスの取れたメニューを揃えました。 茶わん蒸しや豆腐ハンバーグなど、家族みんなが喜ぶ献立でしょう。 痛風の方も、おいしく食事を楽しみながら、健康管理がしやすいです。 家族の好みに合わせつつ、プリン体の少ない食材を使ったメニューを心がけましょう。 表に挙げたメニューは、プリン体が比較的少なく、痛風患者に適していると考えられます。 しかし、個人差があるため、自分の尿酸値や体調に合わせて、医師や管理栄養士に相談しながら、食事プランを調整することが大切です。 痛風の食事療法は、バランスの取れた食生活が基本です。 毎日の食事で、プリン体の少ない食材を選び、野菜や果物、低脂肪乳製品などを積極的に取り入れることで、尿酸値をコントロールしつつ、家族みんなで健康的な食卓を囲むことができるでしょう。 痛風の改善・予防のために心がけるべき6つの習慣 痛風の予防と管理には、食事中のプリン体に気をつけるだけでなく、生活習慣全般の見直しを行う必要があります。生活の中で気をつけたい6つの習慣は以下の通りです。 適切な食習慣を身に付ける 体重管理で肥満を防ぐ 禁煙をする 適度な運動を心がける 水分を十分に摂る アルコールは控える 本章内にて詳しく解説します。 適切な食習慣を身に付ける 適切な食事療法を継続することで、以下のような長期的な健康効果が期待できます。 健康効果 詳細 尿酸値の低下 プリン体の摂取量を1日400mg以下に抑えると、尿酸値が低下する可能性があり、痛風発作のリスクを減少させる可能性がある 尿酸排泄の促進 十分な水分摂取により、尿酸の排泄を促すことができる。また、ビタミンCには尿酸排泄を促進する可能性がある 腎機能の保護 高尿酸血症が長期間続くと、腎臓に負担がかかり、腎機能が低下する可能性がある。適切な食事療法により尿酸値をコントロールすることで、腎機能の保護につながる可能性がある 尿路結石の予防 高尿酸血症は尿路結石の危険因子の一つである。十分な水分摂取と適切な食事療法により、尿路結石のリスクを下げやすい 腎臓病と尿路結石は、痛風患者にとって重要な合併症であり、食事療法はこれらの予防にも役立ちます。 ただし、腎臓病や尿路結石がある場合の具体的な食事指導は、病状に応じて個別に行う必要があります。 医師や管理栄養士と相談しながら、適切な食事療法を実践することが大切です。 体重管理で肥満を防ぐ 肥満は尿酸値を上昇させます。なぜなら、内臓脂肪が増えると尿酸の産生が促進されたり、尿酸の排泄能力が低下するためです。 BMIを25未満に維持することを目標に、食事と運動で適正体重の維持に努めましょう。 禁煙をする 喫煙は尿酸値を上昇させる要因の一つです。禁煙により尿酸値が0.5~1.0mg/dL程度の低下が期待できます。 たばこを吸っている方は、禁煙に努めましょう。近年では禁煙外来を活用する方も多くいます。 もし興味はあるけれど、自分だけでは禁煙が難しいと感じる場合には、禁煙外来も活用しましょう。 適度な運動を心がける 適度な運動は尿酸値を下げ、血行を促進させます。 1回30分以上の中等度の運動(早歩きなど)を週5回、または1回20分以上の高強度の運動を週3回行うことを目標としましょう。 過度な運動にならないよう、体の調子に合わせて行うのがベストです。 水分を十分に摂る 水分を多く摂ることで尿量が増加し、尿酸の排泄量も増加します。 尿酸の排泄量が増加すれば体内の尿酸値は少なくなるため、カロリーのない水やお茶を1日2リットルを目標に飲みましょう。 清涼飲料水や甘いジュースなどは糖分が多く、肥満にもつながるため控えるべきです。 アルコールは控える アルコールを可能な限り控えることでも尿酸値を低下させられます。 アルコール飲料を飲まないことが理想ですが、もし飲みたいときにはノンアルコールビールやプリン体の少ないワインやウイスキー、焼酎にすることをおすすめします。 まとめ|痛風の予防・改善にはプリン体の少ない食事を心がけましょう 痛風の予防や改善には、プリン体の少ない食事を心がけ、健康的な習慣を身につけることが大切です。 痛風の予防と管理に食事が果たす役割は非常に大きいといえます。プリン体の多い食品を控え、少ない食品を積極的に取り入れましょう。 また、痛風の患者様、ご家族様のお悩みを当院でも承っております。メール相談やオンラインカウンセリングからも気軽に相談できます。 痛風の予防や改善方法に悩んでいる方はぜひ当院「リペアセルクリニック」にお問い合わせいただければ幸いです。 \まずは当院にお問い合わせください/ また、痛風発作の症状緩和や再発の予防について、以下の記事でも解説しているのでご覧ください。 参考文献一覧 千葉県栄養士会,健康を考える皆さまへ,痛風の予防と食事 東京都立病院機構,高尿酸血症・痛風の食事,高尿酸血症・痛風とは 順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部,高尿酸血症・痛風の食事療法 e-ヘルスネット,アルコールと高尿酸血症・痛風 e-ヘルスネット,高尿酸血症 e-ヘルスネット,高尿酸血症の食事 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病,高尿酸血症/痛風 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病の調査・統計,高尿酸血症/痛風 e-ヘルスネット,プリン体
2024.09.09 -
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甲状腺を半分摘出手術の予定があり「手術したら後遺症は出るのだろうか」と不安に感じている人もいるかもしれません。 実際、甲状腺を半分摘出する手術のあと、声かれやホルモンバランスの乱れ、体調不良といった症状が現れるケースがあります。 この記事では、甲状腺半分摘出で起こりうる後遺症や合併症、具体的な対処法をわかりやすく解説していきます。 本記事で適切な知識と対処法を知ることで、甲状腺の手術の不安が少しでも和らげられれば幸いです。 また、当院「リペアセルクリニック」では、後遺症治療として、再生医療を行っております。 後遺症リスクが不安な方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 甲状腺の半分摘出したときに現れる主な後遺症 甲状腺を半分摘出する手術を受けた後、声や体調に変化を感じる方がいます。 これは手術が声帯やホルモン分泌、カルシウム吸収に影響を与えるためです。 術後の起こりうる主な後遺症は以下のとおりです。 声がかすれるなどの声帯への影響 ホルモンバランスの乱れ カルシウム不足が引き起こす体調不良 手術による傷跡の痛みや違和感 ここでは、手術後に起こりやすい後遺症について、わかりやすく説明します。 声がかすれるなどの声帯への影響 甲状腺の近くには、声帯を動かすための神経(反回神経)が通っています。 手術でこの神経が傷つくと、声がかすれたり、出にくくなったりする場合があります。 これは「反回神経麻痺」と呼ばれる後遺症です。(文献1) 程度には個人差があり、一時的なものから長引くものまでさまざまです。 また、声が低くなる、話し続けると疲れるなどの症状も後遺症として挙げられます。 ホルモンバランスの乱れ 甲状腺は、体の代謝を調整するホルモンを分泌する臓器です。 半分摘出すると、ホルモンの分泌量が減少しホルモンバランスが乱れるケースがあります。 女性の場合は、月経不順や更年期障害のような症状が現れることもあるでしょう。 また、甲状腺ホルモンが不足すると、全身の倦怠感やむくみ、体重増加などが起こる可能性もあります。 カルシウム不足が引き起こす体調不良 甲状腺の裏側には、カルシウムのバランスを調整する副甲状腺があります。 手術で副甲状腺が傷つくと、カルシウム不足に陥り、手足のしびれや筋肉のけいれんが起こる場合があります。 また、長期的には骨がもろくなるなどのリスクも考えられますので、日常的にカルシウムを含む食品を意識して摂取するのも大切です。 手術による傷跡の痛みや違和感 甲状腺の手術では、首元に切開を行うため傷跡が残ります。 傷跡は時間の経過とともに薄くなっていきますが、体質によっては、赤く盛り上がったり、痛みやかゆみを感じたりするケースもあるでしょう。 また、傷跡が気になって首元を隠す服装ばかりになってしまうなど、精神的なストレスを感じる可能性もあります。 甲状腺摘出で起こりやすい合併症・後遺症 甲状腺の摘出手術は、以下のような術後に特有の合併症や後遺症が発生する可能性があります。 反回神経麻痺 甲状腺機能低下症 副甲状腺機能低下症 乳糜漏(にゅうびろう) ここでは、4つの合併症や後遺症について、手術後に起こりやすい主な症状と特徴を詳しく説明します。 反回神経麻痺 反回神経は甲状腺の裏側を通り、声帯を動かす筋肉を支配する重要な神経です。 左右に1本ずつ存在し、片側が損傷すると声帯が動きにくくなり、声がかすれる反回神経麻痺が生じます。 手術中のわずかな刺激でも麻痺を引き起こす可能性があり、多くは半年以内に改善しますが、まれに永続的に残る場合もあります。 また、左右両方の反回神経が損傷した場合、声を出せないだけでなく呼吸困難に陥り、命に関わる危険性があるため、迅速な対応が必要です。 反回神経麻痺の治療法 反回神経麻痺によるかすれ声が改善しない場合は、声帯に対する手術で症状を和らげる方法があります。 また、両側の反回神経麻痺で呼吸が困難な場合には、喉仏の下に空気の通り道を作る気管切開が必要になる場合もあります。 甲状腺機能低下症 甲状腺がんの手術では、甲状腺を摘出する必要があります。 とくに半分以上を摘出すると、甲状腺ホルモンの分泌が低下する可能性があります。 また、ホルモンが不足すると代謝バランスが乱れ、体調を崩しやすくなるのが特徴です。 この状態を甲状腺機能低下症と呼びます。 甲状腺機能低下症の治療法 治療には甲状腺ホルモン剤の内服が必要です。 この薬で不足したホルモンを補充しますが、基本的に生涯にわたって服用を続ける必要があります。 副甲状腺機能低下症 副甲状腺は甲状腺の裏にくっついており、左右2個ずつ存在する臓器です。 非常に小さな臓器ですが、副甲状腺ホルモンという物質を分泌して血液中のカルシウムやリン濃度を調節する働きがあります。 甲状腺がんの手術で甲状腺を摘出する際に副甲状腺も一緒に摘出されたり、副甲状腺を栄養する血流の低下などにより、術後に副甲状腺機能低下症を起こす可能性があります。 副甲状腺機能低下によって副甲状腺ホルモンが不足すると、血液中のカルシウム濃度が低下し、手や口のしびれやけいれんを引き起こすテタニーと呼ばれる症状が生じる可能性があります。 副甲状腺機能低下症の治療法 治療には、カルシウム製剤の内服と、カルシウム吸収を助けるビタミンDの補充が行われます。 副甲状腺をすべて摘出した場合は、生涯にわたり服用が必要です。 一方、副甲状腺が一部でも残されている場合、機能が回復し補充が不要になるケースも少なくありません。 乳糜漏(にゅうびろう) 乳糜漏(にゅうびろう)は、リンパ液が漏れ出す稀な合併症です。 手術後に首元の腫れや液体が滲み出るような症状が見られる場合に疑われます。 発症すると治療が必要となるため、早期の診断が重要です。 乳糜漏の治療法 多くの場合は安静や圧迫によりリンパ液の漏出を止められますが、まれに再手術が必要となり、漏れている箇所を閉じる処置を行うケースもあります。 \まずは当院にお問い合わせください/ 甲状腺半分摘出後の後遺症を和らげるには? 甲状腺の半分を摘出した後、後遺症の発生や生活の変化に不安を感じる方は少なくありません。 しかし、適切なケアを行えば症状を和らげ、生活の質を保つことができます。 本章では、後遺症を軽減するための具体的な方法を4つ紹介します。 医師の指示に従い薬物療法やリハビリを行う 規則正しい生活を送りバランスの取れた食事を心がける ストレスを溜めないように適度な運動や休息を取る 術後後遺症に対する再生医療を検討 術後の不安解消のためにも、チェックしておきましょう。 医師の指示に従い薬物療法やリハビリを行う 手術後、甲状腺ホルモンの不足や声の変化が現れる場合があります。 これらの症状に対処するためには、医師が処方する薬を服用したり、音声リハビリなどが効果的です。 とくにホルモン補充療法は、甲状腺ホルモンのバランスを維持するために重要です。 医師の指導に従い治療を継続していけば症状が改善する可能性が高まります。 規則正しい生活を送りバランスの取れた食事を心がける ホルモンバランスを整えるためには、生活習慣の見直しが必要です。 栄養バランスの良い食事を意識し、カルシウムやビタミンDを多く含む食品を取り入れるのがおすすめです。 また、十分な睡眠を確保し、生活リズムを整えると体調の安定が期待できます。 健康的な生活習慣が後遺症の軽減に役立つでしょう。 ストレスを溜めないように適度な運動や休息を取る 術後のストレスは体調を悪化させる要因となるため、適度な運動やリラクゼーションが重要です。 たとえば、軽いウォーキングやヨガなど、無理のない範囲で体を動かしていると、ストレスの軽減が期待できます。 さらに、心の健康を保つためには、休息やリフレッシュの時間を積極的に取り入れていくのも効果的です。 術後後遺症に対する再生医療を検討 近年、術後の後遺症治療の選択肢として注目されているのが「再生医療」です。 たとえば、損傷した声帯や甲状腺組織の再生を促す治療法が研究されています。 再生医療はまだ一般的ではありませんが、興味のある方は医療機関や専門医に相談して治療法を検討してみるのも良いでしょう。 まとめ|甲状腺摘出後の後遺症と対策は理解しておこう! 甲状腺の半分を摘出すると、声の変化や体調の変化といった後遺症が起こる可能性があります。 ただし、適切な治療や生活習慣の見直しによって症状を和らげられます。 本記事で紹介した対策を活用し、不安を減らしながら術後の生活を前向きに過ごしていきましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では術後の後遺症に対して再生医療を行っております。 新しい治療法に興味がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 甲状腺を半分摘出した際の後遺症に関する質問 甲状腺摘出後に疲れやすいのはなぜですか? 甲状腺摘出後に疲れやすくなる理由は、甲状腺ホルモンの不足が関係しています。 分泌量が減るとエネルギーの生産が低下し、倦怠感や疲労感を感じやすくなるのです。 しかし、適切なホルモン補充療法を行えば、これらの症状を改善できる可能性がありますので、気になる方は早めに医師に相談してみましょう。 甲状腺手術のデメリットはありますか? 甲状腺手術には、後遺症や合併症が発生するリスクがあります。 具体的には、声がかすれる反回神経麻痺や、ホルモンバランスの乱れ、副甲状腺の機能低下などが挙げられます。 ただし、事前にリスクを把握し、術後のケアをしっかり行えば多くの症状を予防・軽減することが可能です。 また、当院「リペアセルクリニック」では術後の後遺症が気になる方へ、手術や入院の必要がない「再生医療」を提供しています。 まずはお気軽に「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 参考文献 (文献1) 小川真.甲状腺術後嗄声の頻度およびリスク因子と音声改善手術の問題点.日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌2016(33,4) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjsts/33/4/33_224/_html/-char/ja
2024.09.03 -
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「乳がん治療後の痛みがひどい…」 「手術後、腕や脇辺りが腫れていて痛む」 乳がんの手術後は上記のような痛みを感じることがあります。 手術後長期間にわたって慢性的に続く痛みは「乳房切除後疼痛症候群(PMPS)」と呼ばれています。 また、薬物療法による副作用で痛みが残ることもあり、適切な対応を行わないと日常生活に支障をきたすことがあります。 こうした状況を避けるためには、乳がんの治療とその後遺症、特に痛みについて理解を深めることが重要です。 もし後遺症の痛み治療に行き詰まりを感じたら、再生医療も検討しましょう。 この記事を読むとわかること 乳がん手術後の後遺症の種類 乳がんのステージ分類と治療方法 術後後遺症についてよくあるQ&A 後遺症に対する再生医療の可能性 それでは、乳がん治療後の痛みの種類とその対処法について詳しく見ていきましょう。 乳がんの手術後の慢性的な痛みと後遺症 基本的に、どんな手術や治療にも合併症が起こり得ます。 もちろん、乳がんの治療も例外ではありません。 治療後、長期間にわたって後遺症に悩まされることもあるでしょう。 本章では、乳がん治療の合併症とその対処方法について詳しく見ていきます。 手術後に痛む「乳房切除後疼痛症候群(PMPS)」 乳房切除後疼痛症候群(PMPS)は、乳がんの手術後に乳房、胸部、腋窩、上腕にかけて起こる慢性的な痛みです。 PMPS は、手術で肋間上腕神経などの神経が損傷されることで起こる神経障害性疼痛に分類されます。 乳房切除後疼痛症候群(PMPS)の主な症状は、火傷をした後のようなひりつく痛みやびりびりした痛みです。 痛みとともに、何かが挟まっているような違和感を覚える方も多くいます。 下着がすこし擦れただけでも強い痛みを感じるという方もいるのです。 これらの症状は仕事や日常生活に支障をきたしたり、うつ病・適応障害などの精神障害と関与したりする可能性があります。 治療の中心は薬物療法です。一般的な痛み止めはあまり効果がありません。 神経の痛みを抑える薬・抗うつ薬・抗けいれん薬などが処方されます。 また、痛みで関節や筋肉が動かせなくなり、日常生活に影響が出ている方はリハビリも必要です。 心理的な因子や症状の精神面での影響を評価してサポートすることも考慮されます。 \まずは当院にお問い合わせください/ 乳がんの転移による「骨の痛み」 乳がん治療後の痛みは、ほかにもあります。 乳がんの転移が多い場所の一つは骨です。 転移が起こった骨は、骨折をしやすくなります。 治療後も、骨折の痛みが残ってしまう可能性があります。 また、抗がん剤治療による副作用も少なくありません。 一部の抗がん剤では末梢神経障害を起こします。 手や足のびりびりした痛み・しびれが起こると、長期間持続することもあります。 手術後の合併症「リンパ浮腫」 術後の合併症で多いリンパ浮腫は通常痛みを伴いません。 しかし、急激に腫れたり感染を合併したりすると痛みが起こることがあります。 このように、がんの治療後の痛みは様々です。 まずは、痛みの原因を探り、それぞれに適した対応をしていく必要があります。 \まずは当院にお問い合わせください/ 乳がんのステージ分類について 乳がんはその進行の度合いにより、0期からⅣ期までのステージに分類されます。 ステージを決定するのは、がんの大きさや広がり・リンパ節転移の有無・遠隔転移の有無といった要素です。 なお、遠隔転移とは他の臓器への転移のことで、乳がんが転移しやすいのは骨・肝臓・肺・脳などです。 以下に各ステージについて解説します。 <乳がんのステージ分類> 遠隔転移(他の臓器への転移)がない場合 → 0〜Ⅲ期のいずれか 0期 非浸潤がん(乳がんが、発生した場所にとどまっており、広がったり転移を起こしていたりしない状態) Ⅰ期 がんの大きさが2cm以下+リンパ節転移をしていない ⅡA期 がんの大きさが2cm以下+腋窩リンパ節に転移がある(リンパ節は固定されておらず動く) がんの大きさが2cm以上5cm以下+リンパ節転移がない ⅡB期 がんの大きさが2cm以上5cm以下+腋窩リンパ節に転移がある(リンパ節は固定されておらず動く) がんの大きさが5cm以上+リンパ節転移がない ⅢA期 がんの大きさが5cm以下+腋窩リンパ節に転移がある(リンパ節は固定されているか、リンパ節同士が癒着している) がんの大きさが5cm以下+腋窩リンパ節に転移がない+内胸リンパ節に転移がある がんの大きさが5cm以上+腋窩リンパ節あるいは内胸リンパ節のどちらか一方に転移がある ⅢB期 がんが胸壁に固定されている がんが皮膚に食い込んでいたり、皮膚から出ていたりする 炎症性乳がん(乳房が腫れたり赤くなったりといった炎症を伴う乳がん) ⅢC期 腋窩リンパ節と内胸リンパ節のどちらにも転移がある 鎖骨の上あるいは下のリンパ節に転移している 遠隔転移(他の臓器への転移)がある場合 →Ⅳ期 乳がんの手術・治療法について 乳がんの治療は外科的手術・放射線治療・化学療法(薬物治療)の3つを組み合わせて行います。 これから紹介するのはあくまでも標準療法です。 実際には患者様の状態や希望にあわせて臨機応変に治療が行われます。 治療を受ける際には、担当の医師としっかり話をした上で選びましょう。 本章では、先ほど紹介した乳がんのそれぞれのステージごとに、選択されることが多い治療内容を紹介していきます。 <0期からⅢA期の治療について> 0期からⅢA期の乳がんでは、治療の中心は手術です。 がんのサイズや広がり方で、乳房の切除範囲が異なります。 がんが小さければ乳房部分切除術が可能です。 最近では、早期のがんはラジオ波で焼いたり、内視鏡の手術で切除したりという方法も徐々に広まってきています。 一方、大きい場合や広がりが大きい場合は、乳房全切除術を行わなければなりません。 リンパ節への転移が疑われれば、その部位のリンパ節も切除します。 また、状況に応じて放射線療法を行なったり、手術の前や後に薬物療法を行ったりすることもあります。 患者様のご希望に応じて、乳房再建術を検討します。 <ⅢB期からⅣ期の治療について> ⅢB期からⅣ期の場合の中心は薬物療法です。 患者様の体の状態や希望・がんの性質など様々な要因を加味して治療薬を選びます。 乳がんの薬物療法で使う薬には一般的な抗がん剤のほか、ホルモン療法薬や分子標的薬と呼ばれる薬もあります。 分子標的薬とは、がん細胞に特有の遺伝子・タンパクなどをターゲットにした治療薬のことです。 治療の効果・症状の経過次第で手術や放射線療法が追加されることもあります。 <再発した場合の治療について> 再発した乳がんの場合には、その再発部位により治療法が異なります。 手術を受けた側の乳房やその周囲の皮膚、リンパ節に発生する局所領域の再発では、治癒を目指して手術でがんを切除します。 必要に応じて放射線療法や薬物療法を併用します。 手術で切除するのが難しいような局所再発や、他の臓器への遠隔再発では、薬物療法を中心に行います。 <緩和ケアについて> がんの患者様は緩和ケアを受けることができます。 緩和ケアは、がんで苦しんでいる人たちが、できるだけ穏やかに生活できるように助けるためのケアです。 緩和ケアは終末期のケアというイメージがあるかもしれません。 しかし、実はがんと診断されてからいつでも緩和ケアを受けることができます。 がんに伴うつらい症状を和らげるだけでなく、気持ちの落ち込みや不安を軽くしたり、生活での困りごとに対処したり、人生の意味についての悩みにも対応します。 患者様とその家族が抱えるいろいろな苦しみに対して、身体的、精神的、社会的な面から全体的に支援するのが緩和ケアなのです。 まとめ|乳がんの手術後の痛みは乳房切除後疼痛症候群などの可能性あり 乳がんはその進行の度合いにより、治療は手術や薬物療法など多岐にわたります。 乳房切除後疼痛症候群(PMPS)や乳がんの転移による骨の痛み、手術後の合併症リンパ浮腫など様々な原因が考えられます。 これから治療を受ける方は、ご自身の治療内容についての説明をよく聞いてどのようなことに気をつけるべきかしっかり理解しましょう。 後遺症に悩まされている方は、一人で抱え込まずに主治医に相談してください。 後遺症の痛みの治療に行き詰まったら、再生医療も一つの選択肢です。一般的に神経の障害は治らないとされています。 しかし、幹細胞治療とよばれる再生医療では、神経の修復ができるかもしれません。 当院「リペアセルクリニック」では、幹細胞治療を提供しています。実際に乳がん治療の後遺症の痛みにお困りの方の治療実績もあります。 【関連記事】 乳がん術後後遺症のしびれや胃腸障害、倦怠感が改善!50代女性 再生医療について詳しく知りたい方は、ぜひお問合せください。 乳がんの手術後の後遺症に関してよくある質問【Q&A】 Q:乳がん手術後ずっと痛みが続きます。いつ良くなりますか? A:乳房切除後疼痛症候群において、症状が改善するまでは長い時間がかかる可能性があります。 例えば、国内の報告では、術後9年経過後も21%、およそ5人に1人が痛みを抱えていると言われています。 自然に良くなると思わず、早めに受診をすることをご検討ください。 Q:乳がん手術後の痛みは何科に相談したら良いの? A:麻酔科やペインクリニックなどで相談すると良いでしょう。 お近くにそういった医療機関がない、どこに行ったら良いかわからない場合は、主治医やかかりつけ医に相談することをおすすめします。 必要に応じて専門の病院・クリニックなどを紹介してもらうことができます。 Q:乳がん手術後の腕や脇の腫れが治まりません A:乳がん手術後の腕や脇の腫れ(リンパ浮腫)は、手術や放射線治療によるリンパ管の詰まりが原因で起こることがあります。 対応としてまずは、腕の傷のケアを徹底しましょう。 小さな傷でも感染のリスクがあるため、アルコール消毒と軟膏の使用がおすすめです。 リンパの流れを改善するために、リンパマッサージやアームスリーブの着用も有効です。 適度な腕の位置調整(長時間座る際は心臓より高くする)や、重い物を持たないようにすることも大切です。 少しでも腫れを引き起こしている原因を少なくする対応が重要です。 もし腫れが続いたり、腕が赤く熱を持ち、強い痛みや発熱を伴う場合は、速やかに医師に相談しましょう。 参考文献 小島圭子. Practice of Pain Management 5(3): 164-168, 2014. 国立がん研究センター プレスリリース. 早期乳がんに対するラジオ波焼灼療法による切らない治療が薬事承認・保険適用を取得先進医療制度下で実施した医師主導特定臨床研究の成果を活用. 国立がん研究センター. がん情報サービス. 乳がん 治療. 日本乳癌学会. 乳癌診療ガイドライン 2022年版. 日本乳癌学会. 患者さんのための乳癌診療ガイドライン2023年版.
2024.08.28 -
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我が国で3番目に多いがんに当たる「胃がん」ですが、術後はダンピング症候群や下痢、栄養障害、胆石症、骨粗鬆症など様々な後遺症がついてきます。 症状に応じて食事療法や栄養補助食品の使用、手術などで対応しますが、長く続く痛みや長期的ながん予防には再生医療が有効です。 この記事では、胃がんの症状や原因、診断や治療法の他、術後の後遺症の種類や後遺症に対する対処法、また、再生医療の可能性について詳しく解説していきます。 胃がんの症状、原因、診断、治療法 術後の後遺症の種類 術後の後遺症に対する対処法 長く続く術後の痛みに「再生医療」の可能性 胃がんの手術をこれから受ける予定で術後について不安がある方、また術後後遺症でお悩みの方はぜひご参考にされてください。 胃がんについて 胃の内壁に当たる粘膜の細胞ががん化することによって胃がんが発生します。 胃がんの症状 初期は無症状であることが多く、進行すると吐き気や嘔吐、貧血によるふらつき、吐血、腹痛などの症状が現れます。 初期 無症状 進行すると 吐き気や嘔吐 貧血によるふらつき 吐血 腹痛 など このような症状を自覚する場合は、すぐに病院にかかりましょう。 胃がんの原因 胃がんの発生原因として、以下のものが挙げられます。 ヘリコバクター・ピロリ菌感染 高塩分食 喫煙 ストレス アルコール 刺激物 【胃がんの原因に関するQ&A】 Q . 胃がんの罹患者数や死亡率は他のがんと比べてどれくらい多いの? A . 2019年の部位別がん罹患数をみてみると、男性における胃がんは前立腺がん、大腸がんに次いで3番目に多く、女性の胃がんは乳がん、大腸がん、肺がんに次いで4番目に多くなっています。 2022年の部位別がん死亡数をみると、胃がんは肺がん、大腸がんに次いで3番目に多く、男女別に見てみると男性では3番目、女性では5番目に多いという結果でした。 Q . 若年者に多くて進行も早い胃がんの種類があるって本当? A . 胃がんは内視鏡やX線の所見によって、以下のような肉眼的分類に分けられます。 表在型(0型) 腫瘤型(1型) 潰瘍限局型(2型) 潰瘍浸潤型(3型) びまん浸潤型(4型) このうち、びまん浸潤型(4型)にあたるスキルス性胃がんは、胃の壁が硬く、厚くなるタイプの進行胃がんであり、若年者や女性に多い上に腹膜への転移が多くみられます。 胃がんの診断 胃がんの診断には、胃内視鏡検査(胃カメラ)やその際に採取した組織の病理診断、血液検査、CT検査、胃X線検査などを用いて、総合的に判断します。 胃がんの治療法 胃がんの治療法には、内視鏡治療や外科的手術、化学療法、放射線療法があり、がんの進行度(ステージ)に応じて適切なものが選択されます。 これらの治療法のうち、外科的手術によって胃を一部、ないし全て切除することによって「胃切除後症候群」と呼ばれる後遺症が発生します。 後遺症については次の事項で詳しく解説していきます。 胃がんの術後後遺症の種類とその対処法 胃切除後症候群には様々なものがあるため、主なものをそれぞれ説明していきます。また、後遺症ごとに治療法や対処法を紹介していきます。 ①ダンピング症候群 胃を切除すると、当然食べ物を貯留できる容積が減り、それとともに胃酸の分泌が減ります。結果的に通常よりも濃度の濃い食べ物が急速に腸内へ流れ込み、これがダンピング症候群を発生させます。 食後すぐに現れる動悸や立ちくらみ、めまい、悪心、発汗を早期ダンピング症候群と呼び、食後2~3時間後に現れる疲労感や発汗、動悸、立ちくらみ、めまい、失神、手指の震えなどを後期ダンピング症候群と呼びます。 ダンビング症候群に有効な対処法は? 多くの食べ物が一気に腸管へ流れるのを阻止するために、食事の摂り方を以下のように工夫することが必要です。 1時間以上かけて少しずつゆっくり食事を取る 1回の食事量を少なくする代わりに食事回数を1日5~6回に増やす よく噛んでから飲み込む 食事中の水分摂取を減らす ②貧血 胃酸の分泌が減ることで胃からの鉄の吸収が阻害され、胃の切除から数ヶ月で鉄欠乏性貧血に陥ります。さらに数年経つと、ビタミンB12の吸収に必要な胃壁細胞からの内因子が減り、ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血が起こります。 貧血に有効な対処法は? 鉄剤の経口投与やビタミンB12の注射などによって不足している栄養分を補います。 ③消化・吸収不良(体重減少) 胃酸の減少やそれによる消化酵素活性の低下、そして手術の際の迷走神経切除による消化管運動の低下は、消化・吸収不良を引き起こし、体重減少にもつながります。 消化・吸収不良(体重減少)に有効な対処法は? 栄養分を補おうとたくさん食べようとするとダンピング症候群を悪化させてしまうため、栄養士や医師へ相談しながら時間をかけて徐々に食事量を安定させていきましょう。少ない量で栄養を多く摂り入れたい場合、栄養補助食品を利用するのもよいでしょう。 ④骨粗鬆症(骨粗しょう症) 胃の切除によって胃酸の減少や腸内細菌叢の変化が起こり、結果としてカルシウムの吸収が悪くなり、骨が脆弱化します。 骨粗鬆症に有効な対処法は? 骨密度を上げる薬剤やカルシウム剤、ビタミンD製剤の薬物療法が有効です。 ⑤胆石症・胆嚢炎 胃切除後は胆嚢の動きが悪くなるため、胆石を生じやすくなります。胃切除後の患者さんのうち、2~3割程度と結構な頻度でみられます。 胆石症・胆嚢炎に有効な対処法は? 胆石があっても無症状であれば経過観察でよいですが、胆嚢炎や胆石発作を起こした場合には治療が必要です。根本的治療は外科的な胆嚢摘出術となり、医療施設によっては胃切除術の際に予防的に胆嚢摘出術も一緒に行うこともあります。 長く続く術後の痛みに再生医療が効果的?! 胃がんのみならず、体に切開を入れる外科的手術において、術後時間が経っても傷跡が痛む、またその周囲のしびれを自覚することがあります。3ヶ月以上継続する場合、遷延性術後痛である可能性があり、注意が必要です。 原因は複雑で、手術による神経障害に精神的・心理的因子や遺伝的素因、環境・社会的因子も絡み合い、検査をしてもわからないので原因不明とされてしまうこともあります。従来の治療では末梢神経の回復は難しいとされていましたが、再生医療ならば回復の可能性があります。 再生医療は、失われた身体の組織を再生する能力、つまり自然治癒力を利用した最先端医療です。当院で行う再生医療は“自己脂肪由来幹細胞治療”というもので、患者さんから採取した幹細胞を培養して増殖し、その後身体に戻します。 ちなみに幹細胞とは、さまざまな姿に変化できる細胞で、失われた細胞を再度生み出して補充する機能を持つ細胞のことをいいます。自分自身の細胞から作り出したものを用いるため、アレルギーや免疫拒絶反応がなく、安全な治療法といえます。 長期の痛みは身体的にも精神的にも患者さんを蝕み、鬱(うつ)に近い状態になる方もいます。痛みやしびれが改善するとできることが増え、活発になることで精神的・社会的にも患者さんの満足度が上がります。 ▼実際に当院では、乳がん術後の化学療法で末梢神経が障害され、長い間足のしびれと原因不明の胃腸症状・倦怠感に悩まされていた患者さんが、幹細胞治療によって改善した症例を経験しています。 手術や化学療法による末梢神経障害に悩まれている方は、ぜひ当院の再生医療に関するホームページをご覧ください。 追記:がんを予防できる免疫細胞療法ってなに? 再生医療には様々な種類がありますが、その中のNK(ナチュラルキラー)細胞免疫療法はがんの予防に有効とされています。自己の血液中にある免疫細胞の一種、NK細胞と呼ばれるものを血液から採取し、培養後に点滴でまた体内に戻す治療です。手術や化学療法、放射線療法と併用することでがんの予防をより強固にできるでしょう。 気になる方は当院の免疫療法に関するホームページをご覧ください。 まとめ・胃がんの術後後遺症の種類と対処法を徹底解説 胃がんの初期は無症状のため、腹痛や嘔吐などの症状が出た時には手術が必要な状態になっていることも少なくありません。しかし、胃を切除すると、胃切除後症候群と呼ばれる後遺症を生じます。 ダンピング症候群や消化・吸収不良、貧血など様々な症状を呈し、不足する栄養素の投与や食事の摂り方を工夫することで改善を目指します。 これらの後遺症とは別に傷口が長く痛む遷延性術後痛を生じることもあり、手術による末梢神経障害や精神的因子などが複雑に絡み合う病態です。 再生医療は、末梢神経障害を根本的に治療できる手立てとして注目されており、今後ますます普及していくことが予想されます。 気になる方はぜひ一度当院へご相談ください。 参考文献一覧 公益財団法人 日本対がん協会 ホームページ 伊東久勝, ほか. 「遷延性術後痛の対策」日本ペインクリニック学会誌Vol.25, No.4, 2018.
2024.08.22