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「親ゆびの付け根に激痛が走って、歩くのも辛い!」「痛風発作のせいで、スポーツができなくなるなんて嫌だ」 このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。 足の親ゆびの痛風発作は、日常生活に大きな支障をきたす厄介な問題です。しかし、適切な初期対応と生活習慣の管理を行うことで、症状の緩和と再発防止が期待できるでしょう。 本記事では、親ゆびの痛風発作の基本情報から始まり、発作時の対処法、そして長期的な予防策までを詳しく解説します。痛風とうまく付き合いながら、アクティブにスポーツを楽しむなどライフスタイルを維持するための参考にしてください。 親ゆびの痛風発作:基本情報 痛風発作が親ゆびに起こる理由を理解することは、効果的な対処法を見つける上で重要です。ここでは、親ゆびの痛風発作の特徴と発生メカニズムについて説明します。 親ゆびの痛風発作とは何か? 痛風発作は、関節内にたまった尿酸の結晶が引き起こす急性の炎症反応です。親ゆびの場合、とくに第一中足趾節関節(親ゆびの付け根)が侵されることが多いのです。高尿酸血症の状態が続くと、このような発作が起こりやすくなります。 発作時には以下のような症状が現れます。 症状 説明 激しい痛み 突然始まり、焼けるような、ズキズキとした痛みを感じます。 腫れ 関節が腫れ上がり、皮膚が引き伸ばされたようになります。 発赤 患部が赤く変色し、周囲の皮膚と明らかに区別できます。 熱感 触れるとわかるほど患部が熱を持ち、ヒリヒリとした感覚があります。 痛みのピークは発症から24〜36時間後で、その後数日から2週間ほどで徐々に治まっていく場合が多いです。この間、激しい痛みに悩まされ、日常生活に支障をきたすケースがあります。。 痛風が親ゆびに現れる理由 痛風が親ゆびに好発する理由はいくつかあります。以下の表で詳しく説明します。 理由 説明 体重負荷 親ゆびの付け根は歩行時や立位時に体重がかかりやすく、関節に大きな負担がかかります。これにより、軟骨や関節が損傷を受けやすくなり、尿酸結晶が沈着しやすい環境になります。肥満の人は特にリスクが高くなります。 血流の滞り 親ゆびは体の末端に位置するため、心臓から送られる血液が滞りがちです。血流が滞ると、老廃物である尿酸が関節内にたまりやすくなります。 低い関節周囲温度 親ゆびの関節周囲は体温が低めで、尿酸結晶が沈着しやすい環境になっています。温度が低いと、尿酸の溶解度が下がり、結晶化しやすくなるのです。 これらの要因が重なることで、親ゆびは痛風発作の標的になりやすいのです。 痛風の診断には、内科やクリニックでの血液検査が重要です。尿酸値が高い場合、痛風の可能性が高くなります。治療には、痛みを和らげる薬や尿酸値を下げる薬(尿酸排泄促進薬など)が使用されます。また、適度な運動、バランスの取れた食事、過度な飲酒を控えるなどの生活習慣の改善も効果的です。早めの受診と適切な診療により、痛風発作の頻度を減らし、生活の質を向上させることができます。 親ゆびの痛風発作への初期対応 親ゆびに痛風発作が起こったら、速やかな対応が症状の緩和につながります。ここでは、発作時の痛みの緩和方法と、医療介入のタイミングについて解説します。 発作時の痛みの緩和方法 親ゆびに痛風発作が起こったら、速やかな対応が症状の緩和につながります。ここでは、発作時の痛みを和らげる方法と、医療機関を受診するタイミングについて詳しく解説します。 以下の表は、親ゆびの痛風発作時に自宅でできる痛みを和らげる方法の一例です。 対処法 説明 安静にして患部を冷やす 氷嚢やアイスパックを患部に当てて冷やすことで、炎症と痛みを和らげることができます。ただし、冷やしすぎには注意しましょう。一度に15分以上冷やすのは避け、数時間おきに繰り返すのがおすすめです。 患部を心臓より高い位置に保つ 患部を心臓よりも高い位置に保つことで、腫れを軽減することができます。 痛みのある親ゆびを枕などで支えて、楽な姿勢を保ちましょう。 水分を十分に摂取する 十分な水分摂取は、尿酸の排泄を促進するのに役立ちます。発作時は特に意識して水分を補給するようにしましょう。目安として、1日あたり1.5〜2リットルを目指すとよいでしょう。 医師の指示に従って鎮痛消炎薬を服用する 医師に相談の上、鎮痛消炎薬を服用することで、痛みと炎症を和らげることができます。ただし、自己判断での服用は避け、必ず医師の指示に従ってください。痛風発作時は特に胃への負担が大きくなるため、注意が必要です。 これらの方法を試しても症状が軽減しない場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。 医療介入の選択肢とタイミング 親ゆびの痛風発作が重症な場合や、自宅での対処で改善が見られない場合は、医療機関での治療が必要です。以下のような症状が見られる場合は、速やかに受診しましょう。 激しい痛みが48時間以上続く 関節の腫れや発赤が強く、自宅での対処で改善しない 発熱をともなう 歩行が困難になるほど痛みが強い 医師が処方する治療薬には以下のようなものがあります。 治療薬 説明 NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬) ロキソプロフェンやジクロフェナクなどの薬剤で、炎症を抑え、痛みを和らげます。 コルヒチン 痛風発作の初期治療に用いられる薬剤で、炎症を引き起こす細胞の活動を抑制します。 ステロイド薬 プレドニゾロンなどの薬剤で、強力な抗炎症作用を持ちます。内服や関節内注射で用いられます。 症状の程度に応じて、これらの薬剤が単独または併用で使用されます。医師と相談しながら、最適な治療法を選択していきましょう。 親ゆびの痛風発作は非常につらい症状ですが、適切な初期対応と医療機関の受診により、症状を和らげ、回復までの期間の短縮が期待できます。 自宅での対処法を試みつつ、症状が改善しない場合は速やかに医療機関を受診するようにしましょう。また、再発を防ぐためには、日頃から尿酸値を管理し、バランスの取れた食事や適度な運動を心がけることが大切です。定期的な健康診断で血液検査を受けることも重要です。 親ゆびの痛風は厄介な問題ですが、正しい知識と対処により、上手に付き合っていくことが可能です。痛みに悩む方は、ためらわずに医療従事者に相談し、適切なサポートを受け流ことが大切です。生活習慣病の一つとして、痛風とうまく向き合っていきましょう。 長期的な管理と予防策 痛風発作を防ぐには、日頃からの生活習慣の管理が重要です。ここでは、食事の調整と生活習慣の改善について、具体的な方法を紹介します。 食生活の調整と親ゆび痛風の関連性 痛風の予防と管理において、食事の改善は重要な役割を果たします。とくに親ゆびの痛風に関連する食生活の注意点は以下の通りです。 注意点 説明 プリン体の多い食品を控える レバー、イカ、青魚などのプリン体を多く含む食品は、尿酸値を上昇させる可能性があります。これらの食品を控えめにすることで、痛風発作のリスクを下げることができます。 アルコール、特にビールの摂取を控える アルコールは尿酸の排泄を妨げ、体内の尿酸値を上昇させる働きがあります。特にビールは痛風発作のリスクを高めるため、できるだけ控えるようにしましょう。 十分な水分摂取を心がける 水分を十分に摂取することで、尿酸の排泄を促進できます。1日あたり2〜3リットルの水分摂取を目指すことが望ましいでしょう。 低脂肪乳製品、野菜、果物を積極的に取り入れる これらの食品には、尿酸値を下げる効果が期待できます。特に乳製品に含まれるカルシウムは、尿酸の排泄を助ける働きがあると考えられています。 コーヒーは1日3〜4杯程度に抑える コーヒーには尿酸値を下げる効果がありますが、飲みすぎは逆効果となる可能性があります。1日3〜4杯程度に抑えるのが良いでしょう。 親ゆびの痛風を予防するには、これらの食事の注意点を日常的に意識することが大切です。個人の体質や健康状態に合わせて、管理栄養士など専門家のアドバイスを参考にしながら、適切な食事プランを立てることをおすすめします。 生活習慣の改善と発作予防 食事以外にも、生活習慣の見直しが痛風予防に有効です。高尿酸血症の状態を改善し、痛風発作を起こしにくくするために、以下のポイントに注目しましょう。 生活習慣 説明 適度な運動で体重管理と血行促進 ウォーキングや水泳など、体に負担の少ない運動を定期的に行うことで、体重管理と血行促進に役立ちます。これにより、尿酸の排出も促進されます。ただし、発作時や回復期は無理な運動は控えめにし、体調と相談しながら徐々に活動量を増やしていくことが大切です。肥満の人は特に運動習慣をつけることが重要です。 ストレス管理とリラクゼーション ストレスは尿酸値を上昇させる原因の一つです。ストレス管理とリラクゼーションを心がけることで、痛風発作のリスクを下げることができます。自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。 規則正しい生活リズムを保つ 生活リズムが乱れると、体調を崩しやすくなります。規則正しい生活リズムを保つことで、痛風発作のリスクを低下させることができます。特に十分な睡眠時間の確保が大切です。 禁煙または喫煙量の削減 喫煙は尿酸値を上昇させる要因の一つです。禁煙または喫煙量の削減に努めることで、痛風発作のリスクを下げることができます。禁煙が難しい場合は、内科やクリニックで相談してみるのも良いでしょう。 適度な水分摂取 水分を十分に摂取することで、尿酸の排出を促します。ただし、お酒や糖分の多い飲み物は控え、水やお茶を中心に飲むようにしましょう。 これらの生活習慣を見直し、改善していくことで、親ゆびの痛風発作を予防し、より健康的な生活を送ることができます。ただし、生活習慣の改善は一朝一夕にはできません。無理のない範囲で、少しずつ取り組んでいくことが大切です。 また、定期的な健康診断や血液検査を受けることも重要です。高尿酸血症は他の生活習慣病(糖尿病や脂質異常症など)と合併することも多いため、総合的な健康管理が必要です。 親ゆびの痛風は、適切な食事管理と生活習慣の改善により、予防と管理が可能な疾患です。専門家のアドバイスを参考にしながら、自分に合った方法を見つけ、実践していきましょう。痛風と上手に付き合い、快適な日常生活を送れるよう、日々の努力を続けていくことが重要です。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、適切な診療を受けることをおすすめします。 親ゆびの痛風発作と日常生活 親ゆびの痛風は、スポーツや趣味の活動など、日常生活に大きな影響を与えます。高尿酸血症の状態が続くと、痛い発作を起こしやすくなります。しかし、適切な対策を講じることで、それらの活動を無理なく続けることが可能です。ここでは、スポーツや活動への影響と対策、そして日常生活での適応策について詳しく説明します。 スポーツや活動への影響と対策 痛風発作時は、関節に負担のかかるスポーツや活動は控えめにしましょう。とくに、ランニングやサッカーなど、足に衝撃がともなうものは注意が必要です。足首や親ゆびに痛みが強い場合は、完全に休息を取ることが大切です。 症状が落ち着いてきたら、徐々に活動を再開していきます。ただし、痛みを感じる動作は避けつつ、ゆっくりと運動強度を上げていくことが重要です。急に元の活動レベルに戻ろうとすると、再発のリスクが高まります。 以下の表は、スポーツや活動を再開する際の具体的な対策をまとめたものです。 対策 説明 適切なシューズの選択 クッション性が高く、特に第一中足趾節関節(親指の付け根)への負担を軽減するシューズを選びましょう。十分な幅広さがあり、つま先部分に余裕のあるものが適しています。この部分への圧力や摩擦を減らすことが、痛風発作の再発防止に役立ちます。特に痛みが持続する場合は、医師や足専門家に相談し、慎重に選ぶことが大切です。 ストレッチや柔軟体操の実施 痛風発作後は、痛みや腫れが完全に収まるまで関節を休ませることが重要です。症状が落ち着いてから、医師の指導のもと、痛みのない範囲でゆっくりと関節の動きを回復させていきましょう。日常生活への復帰は段階的に行い、過度の負担は避けます。ストレッチや運動については、必要性と適切な方法を医師に相談しましょう。 低強度からの段階的な運動 痛みを感じない範囲で、低強度の運動から始めます。医師の指導のもと徐々に運動量や強度を上げていき、体を慣らしていくことが重要です。ウォーキングや水泳など、関節への負担が少ない運動から始めるのがおすすめです。 これらの対策を講じることで、スポーツや活動を無理なく続けることができます。ただし、個人差があるため、自分の体調と相談しながら、柔軟に対応していくことが大切です。また、定期的に健康診断や血液検査を受けることで、尿酸値の状態を把握し、生活習慣病の予防にもつながります。 日常生活での適応策 痛風とつきあいながら快適に過ごすには、以下のような工夫が役立ちます。 適応策 説明 痛みを感じたら関節を安静にする 痛みは、関節に負担がかかっているサインです。痛みを感じたら、無理せず安静にすることが大切です。痛みが強い場合は、内科やクリニックを受診しましょう。 必要に応じて杖や松葉杖を使用する 歩行時に痛みがある場合は、杖や松葉杖を使用することで、関節への負担を減らすことができます。使用方法を正しく学ぶことが大切です。 冷却グッズを常備して症状を緩和する アイシングやジェルパックなどの冷却グッズを常備し、痛みや腫れを感じたらすぐに冷やすようにしましょう。ただし、冷やしすぎには注意が必要です。 これらの適応策をうまく活用しながら、無理なく日常生活を送れるよう心がけましょう。また、家族や周囲の人に痛風について理解してもらい、協力を得ることも大切です。 痛風は完治が難しい病気ですが、適切な管理により、症状をコントロールし、快適な生活を送ることが可能です。定期的な通院と生活習慣の改善を続けながら、自分なりの方法を見つけていきましょう。 親ゆびの痛風に悩む方は、一人で抱え込まずに、医療従事者や周囲の人に相談するのがおすすめです。 まとめ:効果的な親ゆび痛風の管理法 痛風は、適切な対処と予防を行うことで、うまくコントロールできる病気です。以下の表は、痛風管理の3つの重要なポイントです。 管理の局面 具体的な対策 根拠 発作時の対応 ・早期の対症療法で重症化を防ぐ< ・安静、冷却、十分な水分補給を心がける ・痛みがある場合は医療機関を受診する 発作初期の適切な対処は、症状の悪化を防ぎ、回復を早めるために重要です。これらの対策は、炎症を抑え、尿酸の排泄を促進する効果があります。 日常の予防策 ・食事の改善(プリン体、アルコールの制限、水分補給など) ・生活習慣の見直し(適度な運動、ストレス管理、禁煙など) ・定期的な検査と医師とのコミュニケーション 食事や生活習慣の改善は、尿酸値を下げ、痛風発作のリスクを減らすために有効です。定期的な検査と医師との連携は、病状の変化に早期に気づき、適切な治療方針を立てるために重要です。 痛みとの付き合い方 ・痛みを感じたら無理せず休息を取る ・医師と相談のうえ徐々に日常生活や趣味の活動に復帰していく ・適切な靴選びで関節への負担を軽減する 痛みは関節への負担を知らせるサインです。痛みに耳を傾け、休息を取ることで、関節の損傷を防ぐことができます。また、関節の保護と段階的な活動再開は、再発リスクを下げ、快適な生活を取り戻すために大切です。 痛風と上手に付き合いながら、充実した日々を送るためには、これらの管理策を継続的に実践することが大切です。ただし、一定の方向からのアプローチではなく、個人の症状や生活スタイルに合わせた方法を見つけることが重要です。 医療従事者と相談しながら、自分に合った管理方法を確立していきましょう。正しい知識と前向きな姿勢を持って、自分のペースで着実に対策を進めていくことが、痛風とうまく付き合うコツとなるでしょう。 痛風は完治が難しい病気ですが、諦める必要はありません。適切な管理を続けることで、症状をコントロールし、充実した人生を送りやすくなります。痛風の治療は長期間にわたる場合もありますが、一歩一歩前進していきましょう。 監修:医師 渡久地 政尚 参考文献一覧 MSD マニュアルプロフェッショナル版,痛風 千葉県栄養士会,かしこく食べる,痛風の予防と食事 東京都立病院機構,高尿酸血症・痛風の食事,高尿酸血症・痛風とは 順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部,高尿酸血症・痛風の食事療法 e-ヘルスネット,アルコールと高尿酸血症・痛風 e-ヘルスネット,高尿酸血症 e-ヘルスネット,高尿酸血症の食事 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病.高尿酸血症/痛風 日本生活習慣病予防協会.生活習慣病の調査・統計.高尿酸血症/痛風 e-ヘルスネット,プリン体 沢井製薬株式会社,高尿酸血症・痛風ハンドブック
2024.10.25 -
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「痛風って足の親指だけに起こるんじゃないの?」「痛風が他の部位にも影響するなんて知らなかった!」 このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。 痛風はたしかに足の親ゆびの付け根に最も頻繁に発症しますが、実は他の関節や部位にも影響を及ぼす可能性があるのです。それぞれの部位で痛風が起こった場合の対処法を理解しておくことが、効果的な痛風管理につながります。 本記事では、痛風が影響を与える主な部位とその症状、そして部位別の対策について詳しく解説します。痛風とうまく付き合うための参考にしてください。 痛風とは何か?基本的な理解 痛風は、体内で作られた尿酸が過剰に蓄積して発症する病気です。尿酸は、プリン体と呼ばれる物質が分解されてできる老廃物の一種で、通常は尿として体外に排出されます。しかし、なんらかの理由で尿酸が体内に溜まりすぎると、針のような形の結晶となって関節内に沈着し、激しい炎症と痛みを引き起こします。 痛風は、主に40代以降の男性に多くみられる病気ですが、女性も閉経後に発症リスクが高まります。痛風発作は突然起こるため、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。また、適切な治療を行わないと、関節の変形や腎臓の障害など、深刻な合併症につながる可能性もあります。 痛風の原因と一般的な症状 痛風の主な原因は、次の3つが挙げられます。 原因 説明 具体例 尿酸の過剰産生または排泄低下 体内での尿酸の生成が増加する、または尿酸の排泄が減少することで、血中の尿酸の値が上昇します。遺伝的要因や特定の薬剤の使用が関与する可能性があります。 ・遺伝的に尿酸を作りやすい、または尿酸を排出しにくい体質 ・ 利尿剤や低用量アスピリンの長期使用 プリン体の多い食事の摂取 プリン体は体内で尿酸に分解されます。肉類、魚介類、ビールなどの高プリン体とよばれる食品の過剰摂取は、尿酸値を上昇させる要因となります。 ・肉類(レバー、ささみなど)や魚介類(イカ、タラコなど)の多量摂取 ・ビールの大量飲酒 肥満や過度のアルコール摂取 肥満はインスリン抵抗性を引き起こし、尿酸の排泄を減少させる可能性があります。アルコールは尿酸の生成を促進し、排泄を阻害する作用があります。 ・BMI(肥満指数)が25以上の肥満状態 ・日本酒3合以上または瓶ビール1本以上の毎日の飲酒 また、痛風発作の症状は、以下のような特徴があります。 症状 説明 具体例 突然の激しい関節痛 多くの場合、足の親指の付け根(第1中足趾節関節)に最初の発作が起こります。他の関節(足首、膝、手首など)も侵される可能性があります。 ・夜中や早朝に突然起こる激痛 ・歩行や靴の着用が困難なほどの痛み 発赤、腫れ、熱感をともなう 炎症反応により、関節周囲の皮膚が赤く腫れ上がり、熱を持ちます。軽い触れ合いでも痛みを感じるほど敏感になることがあります。 ・患部が赤く腫れ上がり、皮膚が光沢を帯びる ・シーツの重みでも痛みを感じるほどの圧痛 発症から24~36時間後が最も痛みのピーク 発作が始まってから1~2日で、痛みが最も強くなります。その後、数日から2週間ほどかけて徐々に症状が改善していきます。 ・発症から1日半ほどで、痛みが最高潮に達する ・痛みのピークを過ぎると、徐々に腫れや痛みが引いていく 痛風発作は、適切な治療を行わないと繰り返し起こる可能性があります。また、長期化すると関節の変形や腎臓などの合併症を引き起こすこともあるため、早期の診断と治療が重要です。 具体的には、以下のような場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。 突然の激しい関節痛があり、関節が赤く腫れている 発熱や風邪の症状をともなう関節痛がある 痛風発作を繰り返し起こしている 痛風発作が長引き、日常生活に支障をきたしている 痛風は、適切な治療と生活習慣の改善により、十分にコントロールできる病気です。早期に診断を受け、医師の指導のもと、薬物療法や食事療法に取り組むことが大切です。また、日頃から体重管理やアルコール摂取量の調整など、生活習慣の見直しを心がけることも重要です。 痛風と上手に付き合いながら、健康的で充実した人生を送れるよう、医療チームと協力して取り組んでいきましょう。 痛風が好発する部位の解説 痛風で最も起こりやすい部位は足の親指の付け根(第1中足趾節関節)です。 足の親指が好発部位となる理由は、主に次の3点が考えられています。 理由 説明 体重負荷を受けやすい 歩行時や立位時に、足の親指の付け根には体重が集中しやすいため、関節に負担がかかります。 血流が滞りやすい 足の末端は心臓から遠く、重力の影響もあるため、血流が滞りやすい傾向があります。 体温が低めで尿酸結晶が沈着しやすい 足の末端は体の中心部と比べて体温が低めであるため、尿酸結晶が沈着しやすい環境になっています。 このように、痛風は一般に足の親指の付け根周辺に発症しやすいとされています。体重負荷がかかりやすく、血流が滞りやすい上に、低体温であるために尿酸結晶が沈着しやすい環境であることが、その理由として推測されています。 ただし、痛風の好発部位は個人差があり、足の親指の付け根以外の関節(足首、膝、手首など)に発症することもあります。 痛風は尿酸値の上昇が主な原因ですが、体の特定の部位に症状が現れやすいという特徴もあります。尿酸値のコントロールとともに、この好発部位についても理解を深めることが大切です。 痛風が疑われる症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることをおすすめします。医師や医療従事者と相談しながら、個人に合った痛風の管理方法を見つけていきましょう。 痛風が影響を及ぼす具体的な部位 足の親指の付け根だけでなく、痛風はさまざまな部位に影響を及ぼす可能性があります。ここでは、その具体的な部位とそこに起こる症状について説明します。 足の大指の基部:最も一般的な痛風発作の場所 足の親指の付け根(第一中足趾節関節)は、痛風発作が最も頻繁に起こる場所です。この部位は、体重を支える重要な関節の一つであり、歩行時に大きな負担がかかります。そのため、この関節に尿酸結晶が沈着すると、以下のような症状が現れます。 症状 説明 靴を履くことも困難なほどの激しい痛み 痛風発作が起こると、足の親指の付け根に激しい痛みが生じます。痛みのために、靴を履くことさえ困難になることがあります。 安静時でも持続する痛み 痛風発作による痛みは、安静にしていても持続することがあります。痛みのために、夜も眠れなくなるほどの不快感をともなうこともあります。 歩行困難 足の親指の付け根部分の痛みと腫れにより、歩行が困難になることがあります。痛みを避けるために、足を引きずるような歩き方になる場合もあります。 発作治まった後も関節の腫れや違和感が残る 痛風発作が治まった後も、関節の腫れや違和感が しばらく残ることがあります。完全に症状が消失するまでには、数日から数週間かかることもあります。 その他の関節:手、足首、膝、肘など 足の親指以外にも、痛風発作は以下のような部位に起こる可能性があります。 部位 説明 手の関節(指の関節、手首) 手の指の関節や手首に痛風発作が起こる場合があります。手の関節の発作は、物を握ったり、ボタンを留めたりする動作を困難にします。 足首 足首に痛風発作が起こると、歩行時の痛みや腫れが生じます。足首の可動域が制限され、階段の昇り降りなどの動作が困難になるケースもあります。 膝 膝関節に痛風発作が起こると、激しい痛みと腫れを伴います。膝を曲げ伸ばしする動作が困難になり、歩行や立ち座りに支障をきたすことがあります。 肘 肘関節に痛風発作が起こることもあります。肘の痛みと腫れにより、腕を曲げ伸ばしする動作が制限されます。 アキレス腱の周辺 アキレス腱の周辺に痛風発作が起こると、歩行時の痛みや違和感が生じます。アキレス腱の炎症により、歩行パターンが変化することもあります。 足の甲 足の甲に痛風発作が起こると、靴の着脱が困難になります。足の甲の腫れと痛みにより、歩行時の不快感が増すことがあります。 これらの部位での発作は、足の親指ほど頻繁ではありませんが、激しい痛みと腫れをともなうことがあります。場合によっては、複数の関節に同時に発作が起こることもあります。 たとえば、足の親指と足首に同時に発作が起こった場合、歩行が極めて困難になります。また、手の関節と膝関節に同時に発作が起こった場合、日常生活動作の多くが制限されることになります。 このように、痛風は特定の関節に発症しやすい傾向がある一方で、実際にはさまざまな関節に影響を及ぼす可能性があります。発作時の激しい痛みと腫れに加え、歩行困難になるなど日常生活に支障をきたすケースもあります。 関節部位ごとの症状の違いを理解し、発作の初期段階から適切な対処を心がけることが大切です。痛風発作の好発部位と一般的な症状について知識を深め、痛風が疑われる症状がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。 早期発見と適切な治療により、痛風発作による痛みや日常生活の制限を最小限に抑えることができます。また、生活習慣の改善や薬物療法により、発作の頻度を減らし、関節の変形や機能障害を予防することが可能になるでしょう。 部位別の痛風対処法 痛風が発症した部位によって、対処法に少し違いがあります。ここでは、足の親指と他の部位における痛風発作の治療と予防について説明します。 足の親指に発生した痛風の治療と予防 足の親指(第1中足趾節関節)に痛風発作が起こった場合、以下の対処が有効です。 対処法 説明 安静と冷却 発作時は、患部を安静にし、冷却することが重要です。安静にすることで、関節への負担を軽減し、痛みや腫れを和らげることができます。患部を冷やすことで、炎症を抑え、痛みを和らげる効果が期待できます。 水分補給 十分な水分を摂取し、尿酸の排泄を促すことも効果的です。尿量を増やすことで、体内の尿酸を効率的に排出することができます。1日1.5~2リットルの水分摂取を心がけましょう。 薬物療法 医師の指示に従って消炎鎮痛薬を服用し、必要に応じてコルヒチンやステロイド薬を使用することもあります。これらの薬は、炎症を抑え、痛みを和らげる効果があります。ただし、副作用の可能性もあるため、医師の指示に従って適切に使用することが大切です。 食事療法 予防策としては、プリン体の摂取制限などの食事療法が大切です。肉類、魚介類、ビールなどのプリン体を多く含む食品の摂取を控えることで、尿酸値の上昇を防ぐことができます。 靴の選択 足の親指への負担を軽減するために、適切な靴の選択も重要です。ゆったりとしたつま先、クッション性のある靴底、足首を支えるデザインの靴を選ぶことで、関節への負担を和らげることができます。 足の手入れ さらに、足の清潔を保ち、こまめな手入れを行うことも予防に役立ちます。足を清潔に保つことで、感染症のリスクを減らすことができます。また、足の爪を適切な長さに切り、肌の乾燥を防ぐことも大切です。 他の部位の痛風発作に対する対策 足の親指以外の関節(手、足首、膝、肘など)に痛風が発症した場合も、基本的な対処法は同様です。 対処法 説明 安静と冷却 発作時は、患部を安静にし、冷却することが大切です。安静にすることで、関節への負担を軽減し、痛みや腫れを和らげることができます。患部を冷やすことで、炎症を抑え、痛みを和らげる効果が期待できます。 水分補給 十分な水分補給を行い、尿酸の排泄を促すことも重要です。尿量を増やすことで、体内の尿酸を効率的に排出することができます。1日1.5~2リットルの水分摂取を心がけましょう。 薬物療法 医師の指示に従った薬物療法を受けることも重要です。消炎鎮痛薬、コルヒチン、ステロイド薬などを使用し、炎症と痛みを抑えることができます。ただし、副作用の可能性もあるため、医師の指示に従って適切に使用することが大切です。 対策の追加 ただし、部位によっては対策の追加が必要となる場合があります。例えば、関節の固定や運動療法、リハビリなどです。手関節に発作が起こった場合、手首を固定するための装具を使用することがあります。膝関節に発作が起こった場合、適切な運動療法やリハビリを行うことで、関節の可動域を維持し、機能低下を防ぐことができます。 発症部位の特性を踏まえ、医師や理学療法士と相談しながら、適切な治療計画を立てることが大切です。たとえば、足関節に発作が起こった場合、足首を固定するための装具の使用や、足関節の可動域を維持するための運動療法が必要になることがあります。 このように、痛風発作の対処は発症部位によってある程度異なります。足の親指であれば靴の選択が、手関節であれば運動療法がポイントになるなど、部位別の対策を理解しておくことが重要です。 痛風が疑われる症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることをおすすめします。早期発見と適切な治療により、痛風発作による痛みや日常生活の制限を最小限に抑えることができます。 また、生活習慣の改善や薬物療法により、発作の頻度を減らし、関節の変形や機能障害の予防が期待できます。痛風と上手に付き合いながら、健康的で充実した生活を送れるよう、医療従事者と協力して取り組んでいきましょう。 痛風発作の予防 痛風発作を予防するためには、日常生活の改善が欠かせません。とくに食生活の管理と適切な運動・体重管理が重要になります。ここでは、それぞれの詳細について説明します。 食生活の管理 痛風予防のための食事療法では、主に以下の点に注意が必要です。 注意点 説明 プリン体の多い食品を控える レバー、イカ、鶏肉の皮、その他の内臓肉などは、プリン体を多く含んでいます。これらの食品の摂取を控えめにすることで、尿酸値の上昇を防ぐことができます。ただし、プリン体を完全に避ける必要はありません。バランスを考えて、適量を心がけましょう。 アルコール、特にビールの摂取を控える アルコールは尿酸の生成を促進し、排泄を妨げる作用があります。特にビールは、プリン体も多く含まれているため、痛風発作のリスクを高めます。アルコールは適量を心がけ、できればビールは控えめにしましょう。 十分な水分を意識的に摂取する 十分な水分摂取は、尿酸の排泄を促すために重要です。1日1.5~2リットルの水分摂取を目指しましょう。ただし、一度に大量の水を飲むのではなく、こまめに水分を補給することが大切です。 バランスの取れた食事を心がける 偏った食事は痛風発作のリスクを高めます。さまざまな食品群を偏りなく摂取し、バランスの取れた食事を心がけましょう。特に、野菜や果物、低脂肪乳製品、全粒穀物などを積極的に取り入れることが大切です。 これらのポイントを意識しながら、管理栄養士と相談して自分に合った食事計画を立てることが大切です。個人差があるため、自分の体の反応を観察しながら、無理のない範囲で食生活の改善を進めていくことが重要です。 たとえば、一度に大幅な食事内容の変更を行うのではなく、少しずつ改善していくのがよいでしょう。また、外食や食事会などの際は、プリン体の多い食品を控えめにするなど、工夫をしながら対応しましょう。 適切な運動と体重管理 運動は尿酸値を下げる効果が期待でき、痛風発作のリスクを減らすのに役立つ可能性があります。運動の目安は以下の通りです。 項目 内容 頻度 週2~3回 時間 1回30分以上 種類 有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳など自分に合った続けやすいもの) 運動をはじめる際は、自分の体力や健康状態に合わせて、無理のない範囲ではじめることが大切です。たとえば、ウォーキングであれば、1回10分からはじめて、徐々に時間を延ばしていくのがよいでしょう。また、痛みや違和感がある場合は、無理せず、医師や理学療法士に相談することが重要です。 加えて、肥満は痛風のリスクを高めるため、適正体重の維持を心がける必要があります。適正体重は、身長(m)の2乗×22が目安となります。たとえば、身長170cmの方であれば、適正体重は約64kgです。無理のない範囲で、徐々に体重を適正範囲に近づけていくことが大切です。 身長 適正体重の目安 適正体重の計算式:身長(m)の2乗 × 22 150cm 49.5~54.0kg 49.5kg 160cm 56.3~61.4kg 56.3kg 170cm 63.6~69.4kg 63.6kg 180cm 71.3~77.8kg 71.3kg 適正体重には個人差がありますが、この表は一般的な目安となります。ただし、筋肉量が多い人や骨格が大きい方は、この目安よりも重めでも適正体重の範囲内である可能性があります。 ただし、運動療法は個人差が大きいため、自分の体力や健康状態に合わせて、無理のない範囲ではじめることが大切です。また、痛風発作時や回復期には無理な運動は控え、医師や理学療法士の指示に従うことが重要です。 このように、食生活と運動、体重管理を総合的に見直すことが、痛風発作の予防につながります。生活習慣の改善に取り組み、痛風とうまく付き合っていくことが大切です。 また、生活習慣の改善は簡単ではありません。長期的な視点を持って、自分のペースで無理なく続けていくことが重要です。また、家族や友人、医療従事者のサポートを受けながら、モチベーションを維持することも大切です。 まとめ:痛風発作への効果的なアプローチ 痛風は足の親指だけでなく、さまざまな関節に影響を及ぼす可能性があります。具体的には以下のような部位に発症することがあります。 手の関節(指、手首) 足首 膝 肘 また、発症部位によって、適切な対処法が少しずつ異なってきます。 部位 発作時の対応 予防策 手の関節 ・安静、冷却 ・ 消炎鎮痛薬 ・適切な道具の使用 ・運動療法 ・リハビリ 足首 ・安静、冷却 ・固定装具 ・適切な靴の選択 ・運動療法 ・リハビリ 膝 ・安静、冷却 ・ 固定装具 ・適切な靴の選択 ・運動療法 ・リハビリ 肘 ・安静、冷却 ・固定装具 ・適切な姿勢 ・運動療法 ・リハビリ また、全般的な生活習慣の見直しが痛風予防や治療の基本となります。 予防策 説明 プリン体の制限 プリン体の多い食品の摂取を控えめにする 十分な水分補給 1日1.5~2リットルの水分をこまめに摂取する 適度な運動 週2~3回、1回30分以上の有酸素運動を行う 適正体重の維持 身長(m)の2乗×22を目安に維持する 痛風とうまく付き合うには、自分の体の変化に気づき、初期段階から適切に対処することが重要です。医療従事者と相談しながら、自分に合った痛風管理法を見つけ、実践していくことが鍵となるでしょう。 痛風の症状が気になる場合は、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けてください。医師や医療従事者と連携しながら、積極的に痛風と向き合っていきましょう。 監修:医師 渡久地 政尚 参考文献一覧 MSD マニュアルプロフェッショナル版,痛風 千葉県栄養士会,痛風の予防と食事 東京都立病院機構,高尿酸血症・痛風の食事,高尿酸血症・痛風とは 順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部,高尿酸血症・痛風の食事療法 e-ヘルスネット,アルコールと高尿酸血症・痛風 e-ヘルスネット,高尿酸血症 e-ヘルスネット,高尿酸血症の食事 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病,高尿酸血症/痛風 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病の調査・統計,高尿酸血症/痛風 e-ヘルスネット,プリン体 沢井製薬株式会社,高尿酸血症・痛風ハンドブック
2024.10.18 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
「痛風と診断されたけど、納豆が好きで食べるのをやめられない」「納豆は体に良いと聞くけど、痛風の人には危険なのかな?」 痛風と診断され、納豆が好きでも食べるのを控えている方が多いのではないでしょうか。納豆にはプリン体が含まれているため、尿酸値を上げてしまうのではと不安に思う気持ちもありますよね。しかし、納豆の適切な食べ方を理解すれば、痛風の方も納豆の健康効果を活かせます。 本記事では、納豆の栄養価や痛風への影響、適切な食べ方などについて、医療の観点からわかりやすく解説していきます。痛風患者様が納豆を安心して取り入れられるよう、食事療法の手助けとなれば幸いです。 痛風の症状や食事管理でお悩みの場合には、当院のメール相談やオンラインカウンセリングをご活用ください。 また、痛風対策に効果的な食事をさらに知りたい方は、以下の記事をご覧いただければ幸いです。 納豆は痛風でも「食べすぎなければ問題ない」 納豆は適量であれば、プリン体の摂取量としては問題ありません。なぜなら、納豆に含まれるプリン体の量は、他の肉類や魚介類と比べると比較的少ないことがわかっているからです。 納豆1パック(40g)あたりのプリン体含有量は約45mgで、高プリン食品の基準である200mg(例:レバー類、ビールなど)を大きく下回ります。 つまり、適量の納豆であれば、プリン体の摂取量としては問題ない範囲といえるでしょう。 ほかにプリン体を多く含む食品としては、レバーや肝臓、魚卵、干しシイタケ、ビールなどが知られています。一方、比較的プリン体が少ない食品は卵、乳製品、果物、野菜などです。 プリン体は、体内で代謝されて尿酸になります。尿酸は、通常であれば腎臓でろ過されて尿中に排泄されますが、尿酸の生成量が多すぎたり、排泄が滞ったりすると、血中の尿酸値が上昇してしまいます。 血中尿酸値が高い状態が長く続くと、尿酸の結晶が関節などに沈着し、痛風発作を引き起こすリスクが高まるのです。(文献2、3) だからといって、プリン体を含む食品を完全に避ける必要はありません。大切なのは、適量を心がけることです。 日本痛風・核酸代謝学会のガイドラインでは、痛風患者様のプリン体摂取量の目安を1日あたり400mg以下としています。 納豆なら、1パック(40〜50g)に含まれるプリン体量は約25〜32mg程度で、この目安の範囲内に十分収まるでしょう。(文献4) ただし、納豆にもプリン体が含まれている以上、摂取量には注意が必要<です。 とくに痛風発作を頻発する方や重症の高尿酸血症の方は、医師や管理栄養士の指導のもと、納豆の摂取量を調整することが大切です。 痛風患者の納豆の適正摂取量は1日1パック 痛風で納豆を食べるときは1日1パックを目安にしましょう。納豆は比較的プリン体が少ない食品ですが、適切な摂取量を守ることが大切です。 痛風で納豆を摂取するときのポイントは以下のとおりです。 注意点 説明 1日の摂取量は1パック(40~50g)程度に抑える 前述の通り、納豆のプリン体含有量は比較的少ないとはいえ、摂り過ぎは禁物です。1日1パック程度を目安に、適量を心がけましょう。 他の高プリン食品との組み合わせに注意する レバーや魚卵など、プリン体を多く含む食品と納豆を同時に食べると、プリン体の摂取量が増えてしまいます。バランスを考えて、組み合わせを工夫しましょう。 アルコールと一緒に摂取するのは避ける アルコールは、尿酸の排泄を妨げる作用があります。とくにビールは、プリン体も多く含むため、納豆と一緒に摂取するのは避けましょう。(文献5) 体調や尿酸値の変化に気を配り、適宜摂取量を調整する 定期的に尿酸値を測定し、自分の体の変化を観察することが大切です。もし尿酸値が上昇傾向にあるようなら、納豆の摂取量を一時的に減らすなどの対応が必要かもしれません。 また、納豆の粘り気を活かした料理を工夫することで、野菜などの食物繊維も一緒に摂取できます。さらに野菜はビタミンやミネラルを含むアルカリ性の食品で、尿酸の排泄も助けてくれます。(文献6) たとえば、納豆サラダ、納豆巻き、冷奴などがおすすめです。 痛風の食事療法では、プリン体の摂取制限とともに、バランスの取れた栄養摂取が重要です。主食、主菜、副菜をバランスよく組み合わせ、食物繊維や低脂肪のたんぱく質を積極的に取り入れましょう。また、十分な水分補給も忘れずに。(文献5) 納豆は、適量を守れば、痛風患者様にも有益な食品の一つといえるでしょう。ただし、症状や体質には個人差がありますので、かかりつけ医や管理栄養士に相談しながら、自分に合った食べ方を見つけていくことが大切です。 豆類は血清尿酸値を下げる効果がある 「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版」によると、納豆のような豆類を含む食事を続けたところ、血清尿酸値が低下したという報告があります。(文献4) ただし、豆の種類や加工方法によってプリン体の量には差があります。 「公益財団法人 痛風・尿酸財団」が公開している、豆類ごとプリン体含有量(100gあたり)は以下のとおりです。(文献1) 食品名 プリン体含有量(100gあたり) 納豆 113.9 乾燥大豆 172.5 乾燥小豆 77.6 ピーナッツ 49.1 そら豆 35.5 豆腐(冷や奴) 31.1 豆腐(湯豆腐) 29.1 豆乳 22.0 味噌(赤味噌) 63.5 味噌(白味噌) 48.8 醤油 45.2 枝豆 47.9 おから 48.6 上記のプリン体含有量も参考にし、1日あたりの適正摂取量(400㎎)を超えないよう他の食品と組み合わせながら摂りましょう。 痛風患者向けの納豆の食べ方 痛風患者に推奨される食事法の基本は、プリン体の摂取制限と、バランスの取れた食生活です。適量の納豆は、以下のような重要な役割を果たします。 役割 説明 タンパク質源 良質な植物性タンパク質を提供する 食物繊維の供給源 腸内環境を整え、尿酸の排泄を促す 大豆イソフラボンの供給 抗酸化作用と炎症抑制効果が期待できる このように、納豆は健康的なタンパク源となるだけでなく、食物繊維やイソフラボンの供給源としても優れています。さらに、上手に他の食品と組み合わせることで、痛風患者でも満足度の高い食生活を実現できるでしょう。(文献7) 納豆に限らず、さまざまな食品を上手に組み合わせてバランスを取ることが、痛風対策の食事で大切なポイントです。本章では積極的に組み合わせたい食品や実際のレシピ、メニューをご紹介します。 納豆と他の食品との組み合わせ 納豆と組み合わせると良い食品には、以下のようなものがあります。 食品 効果 野菜 尿酸排泄を促進するビタミンCが豊富 低脂肪乳製品 カルシウムが尿酸の排泄を助ける 果物 クエン酸が尿のpHを上げ、尿酸の溶解度を高める 全粒穀物 食物繊維が豊富で腸内環境を整える これらの食品を積極的に取り入れることで、痛風対策として効果的な食事法を実践できる可能性があります。 痛風の人におすすめの納豆レシピ 納豆は、そのままでも十分においしく食べられますが、他の食材と組み合わせることで、さらに多彩な味わいを楽しめます。 痛風の人でも安心して食べられる、納豆を使ったレシピの一例を表にまとめました。ぜひ普段の食事の参考にしてください。 レシピ 特徴 プリン体含有量の目安 納豆とアボカドのサラダ アボカドに含まれる不飽和脂肪酸は、心血管系の健康に良いとされています。納豆と組み合わせることで、タンパク質と食物繊維、良質な脂肪がバランスよく摂れます 納豆1パック分 (約45mg) 納豆と野菜のスープ 納豆を溶き卵でとじて、野菜スープに加えるレシピ。体を温める効果があり、タンパク質と食物繊維を手軽に摂取できます 納豆1/2パック分(約20~25mg) 納豆とトマトのパスタ トマトに含まれるリコピンは、強力な抗酸化作用を持つカロテノイドの一種です。納豆に含まれるイソフラボンも抗酸化作用を持つため、両者を組み合わせることで、相乗的に活性酸素を除去し、細胞の酸化ストレスを軽減することが期待できます。また、トマトはビタミンCやカリウムも豊富に含むため、免疫機能の向上や血圧の調整にも役立つでしょう 納豆1パック分 (約45mg) 納豆と野菜のチャーハン 納豆に含まれるビタミンB群は、炭水化物や脂質のエネルギー代謝を助ける働きがあります。ビタミンEは抗酸化作用を持ち、細胞の老化を防ぐ効果が期待できます 納豆1パック分 (約45mg) 納豆とキムチのビビンバ風 納豆とキムチはともに発酵食品であり、善玉菌が豊富に含まれています。これらの菌は、腸内環境を整え、免疫機能を高める効果が期待できます。また、キムチに含まれるカプサイシンには、代謝を上げる効果があるとされ、ダイエットにも役立つ可能性があります 納豆1パック分 (約45mg) 納豆とオクラの和え物 オクラのねばねば成分は、納豆の粘り気と相性抜群。食物繊維やビタミンも豊富に含まれています 納豆1パック分 (約45mg) 納豆とトマトのブルスケッタ トマトに含まれるリコピンと納豆のイソフラボンの組み合わせは、強力な抗酸化作用が期待できます。また、トマトに含まれるビタミンCは、コラーゲンの生成を助け、肌の健康維持に役立ちます 納豆1パック分 (約45mg) 納豆と豆腐のハンバーグ 大豆製品同士の組み合わせで、良質なタンパク質が摂れるヘルシーなハンバーグ。野菜を添えれば、バランスの取れた一皿になります 納豆1パック分 (約45mg) これらはあくまで一例ですが、納豆の持つ栄養価を活かしつつ、プリン体に気を付けた組み合わせを工夫することで、痛風患者様でも納豆を楽しめるはずです。 まとめ|納豆は痛風でも1日1パックならOK!他の食品も組み合わせて食べよう 痛風患者にとって、納豆は適量を守れば食べられる健康的な食品の一つです。 ただし、納豆にもプリン体が含まれていることを意識し、適切な量を心がけて低プリン体の食事を習慣化する必要があります。痛風と診断されたからといって、好きな食べ物をすべて諦める必要はありません。納豆の栄養価を理解し、適切な食べ方を実践することで、痛風の症状改善と予防につなげていきましょう。 日々の食事は、尿酸値コントロールの鍵を握っています。納豆を味方につけながら、バランスの取れた食生活を目指していきましょう。ご不明な点がありましたら、かかりつけ医や管理栄養士にご相談ください。 また、当院でも痛風患者様に対してのメール相談やオンラインカウンセリングを行っています。ぜひお気軽にお問い合わせください。 痛風の食事管理を行うなかで、コーヒーを飲んで良いか気になったことはありませんか?痛風患者のコーヒーの摂取目安について、以下の記事で解説しています。 \まずは当院にお問い合わせください/ 参考文献一覧 文献1 帝京大学薬学部物理化学講座 臨床分析学研究室 金子希代子名誉教授提供,食品中プリン体含量(mg/100g) 文献2 千葉県栄養士会,痛風の予防と食事 文献3 MSD マニュアルプロフェッショナル版,痛風 文献4 一般社団法人日本痛風・尿酸核酸学会,高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版 文献5 e-ヘルスネット,アルコールと高尿酸血症・痛風 文献6 順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部,高尿酸血症・痛風の食事療法
2024.10.16 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
肺がんは日本でも多くの人々が診断される病気の一つで、部位別のがんの罹患数では大腸がんに次ぐ2位、部位別がん死亡数では男女合わせて1位となっています。 この記事では、肺がんの概要から治療法について解説していきます。また、後半では肺がんの手術方法、手術後の合併症・後遺症について挙げ、その治療法や対処法にも触れています。後遺症に対する再生医療の可能性についても紹介していますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。 この記事を読んで分かること 肺がんの概要 肺がんの治療法 肺がんの手術方法 手術後の合併症、後遺症とその治療法や対処法 後遺症に対する再生医療の可能性 肺がんとは 肺がんは、肺に発生する悪性腫瘍です。何らかの原因で遺伝子に傷がつき、細胞が異常に増殖してあちこちに移動してしまうものを「がん細胞」といいます。そのがん細胞が肺から始まり、増殖したものを指します。 出典:Lung Cancer: Types, Stages, Symptoms, Diagnosis & Treatment 肺がんの原因 肺がんの原因の約7割は喫煙とされています。タバコを吸ったことがない人に比べ、吸っている人の肺がんリスクは4倍以上になると言われています。また、直接吸っていなくても、副流煙を吸うことにより肺がんのリスクが高まることも知られています。 それ以外の原因として、遺伝、大気汚染、アスベストなどの有害化学物質などが知られています。 肺がんの症状 肺がんの初期では多くの場合無症状であり、早期に発見することはなかなか難しい がん です。進行に応じて咳や痰、息切れなどがみられることがあります。 肺がんに特徴的とまではいえない症状がほとんどですが、痰に血が混じる(血痰)場合には肺がんが疑わしい可能性が高まりますので、早めに医療機関を受診していただくことをおすすめします。 それ以外にも極端な体重低下や肩の痛み、しゃっくりなど、がんの進行によって様々な症状を引き起こします。また、肺がんが転移した場所の症状が出ることがあり、脳転移による頭痛、手足の麻痺、めまい、吐き気、骨転移による痛みなどがあります。 肺がんの検査 肺がんの検査といっても、肺がんを見つけるための検査、肺がんであることを確定させたり、肺がんの種類を調べる検査、治療方針を決めるために必要な検査など様々なものがあります。 肺がんを見つけるための検査 肺がんを見つけるための検査としては、画像検査が一般的です。胸部レントゲン検査や胸部CT検査が挙げられます。 レントゲン検査は、健診や人間ドックなどでも幅広く使用されている基本的な検査です。 CTではレントゲンよりも画像で得られる情報量が豊富で、より小さな病変も見つけることが可能となります。一方レントゲンよりも放射線被ばく量が多くなることがデメリットとなります。 その他、肺がんの転移を調べるのに有用なMRI検査、シンチグラフィー、PET検査などがあります。 また、血液検査の中で腫瘍マーカーと呼ばれるものがあり、この腫瘍マーカーを調べて数値が異常値を示す場合には肺がんを疑います。ただし、このマーカーは他のがんや病気でも上昇することがあるため、この検査のみで肺がんを診断することはできず、あくまで他の検査と合わせて総合的に判断するための材料となります。 肺がんの確定診断、治療法の検討に有用な検査 肺がんであることを確定させるには、がん細胞がいることを確認する必要があります。そのためには、痰に混じったがん細胞を見つける方法(喀痰細胞診検査)や、病変を内視鏡やCTなどで確認して組織に直接針を指して細胞を採取して確認する方法(組織診検査)があります。この組織を詳しく調べることで、がん細胞の存在の有無だけでなく、どういった種類の肺がんかを見分けることが可能です。 また、そのがんの種類によっては遺伝子検査を追加で行い、さらにそのがんの遺伝子変異について詳しく調べることがあります。これは、ある特定の遺伝子変異が見つかった場合、その変異に特異的に効く分子標的薬と呼ばれる治療薬を使うことで、治療効果が期待できるためです。 肺がんの治療法 肺がんの治療方法の主なものとして、手術、いわゆる抗がん剤を用いた化学療法、放射線療法があり、これらを組み合わせて行います。 手術 抗がん剤を用いた化学療法 放射線療法 この治療を決める上で重要なのが、肺がんの組織型と病期です。 まず肺がんの組織型ですが、小細胞肺がん(SCLC)と非小細胞肺がん(NSCLC)の二つに大別されます。 小細胞肺がん(SCLC) 小細胞肺がんは進行が非常に早く、発見された際にはすでに転移してしまっているケースが多く、化学療法や放射線療法を組み合わせて治療を行います。 非小細胞肺がん(NSCLC) 非小細胞肺がんでは、小細胞肺がんに比べると進行速度は遅いため、早期で発見されるケースもあります。 肺がんの病期と治療法について 病期(ステージ)は 、 Ⅰ期(ⅠA、ⅠB):肺内に腫瘍が限局していて、リンパ節転移がないもの Ⅱ期(ⅡA、ⅡB):肺内に限局しているが大きいもの。もしくは同じ側の肺門部リンパ節に転移がみられるもの Ⅲ期(ⅢA、ⅢB、ⅢC):病変と同じ側の縦隔リンパ節にも転移がみられるもの。または肺外のリンパ節にも転移が生じているもの Ⅳ期(ⅣA、ⅣB):肺から離れた臓器に転移がみられるもの に分類されます。非小細胞肺がんの場合、病期によって治療法が異なります。 ⅠA期では、手術のみを行います。 ⅠBからⅢB期までは手術を行い術後に化学療法を行うのが一般的です。 ⅢA、ⅢB期で手術が不可能な場合には、放射線治療と化学療法を併用した治療法を検討します。 Ⅳ期の場合では、まず遺伝子検査によって特定の遺伝子変異の有無を確認し、有効な分子標的薬があればそれによる薬物療法を検討します。有効な遺伝子変異がない場合には、抗がん剤を用いた化学療法を選択します。ただし、これはあくまでも基本的な方針のため、一律にこのように決まるとは限りません。実際には患者さんごとの状態や事情なども考慮して治療を決定していきます。 肺がんの3つの手術方法 ここでは、肺がんの手術方法について具体的に解説していきます。肺がんの手術方法は、切除範囲とがんの進行度や位置、患者さん自身の状態などによって異なってきます。 1)肺葉切除術 肺がんの手術で最も標準とされる手術方法で、肺の一葉を切除する手術です。肺は右側に三つ、左側に二つの葉に分かれており、がんが存在する肺葉を切除します。多くの場合には近くにあるリンパ節も一緒に切除します。肋骨の間から胸部に切開を入れ、がんを含む肺の葉を取り除きます。 2)区域切除術・楔状切除術 区域切除術は、小型の肺がんに対して、肺葉よりも一部の区域だけを切除する方法です。近年検診などで肺がんが早期で見つかるケースが増えており、それに伴い適応が増えてきている手術方法となります。胸腔鏡を使用して小さな皮膚切開で手術が行えるようになり、患者さん自身の身体の負担軽減を図ることができます。また、区域切除よりもさらに小さな部分を切除する楔状切除術という方法もあります。 3)肺全摘術 片肺を摘出する方法で、病変が一側の肺に広がっており、かつ中心まで及んでいる場合に選択されます。片肺を摘出すると肺や心臓の機能低下につながる可能性があるため、体力が低下している方、もともと呼吸機能が低下している方には選択が難しい方法です。 肺がんの手術後の合併症とその対処法 肺がん手術後の合併症は、手術の方法や、患者さん自身の体質などによっても異なりますが、一般的に想定される主な術後合併症とその対処法について挙げていきます。 肺胞瘻(はいほうろう) 肺を切除した箇所から空気が漏れる合併症です。肺がんの手術の中では約5%程度と比較的頻度が高い合併症です。通常であれば手術により肺の一部が取り除かれるため、呼吸機能が低下することがあります。 <対処法> 多くの場合自然に改善しますが、まれに治らないケースがあります。その場合には薬剤を用いて空気の漏れを止める胸膜癒着術や、再手術が必要になることがあります。 気管支断端瘻(きかんしだんたんろう) 一般的な肺がんの手術では、肺と気管支の一部も切除します。その切断した気管支を切ったところから空気が漏れてしまう合併症です。 <対処法> 起こりうる可能性は極めてまれですが、起こってしまった場合には重篤になるため、緊急手術によって閉鎖したりする必要があります。 術後肺炎 手術後に肺炎が生じ、咳、発熱、呼吸困難などがみられることがあります。 <対処法> 抗生剤を投与して治療を行います。 膿胸(のうきょう) 手術した側の肺の胸腔内に膿がたまる合併症です。膿による発熱や、感染が全身にまわると敗血症をきたすおそれもあります。 <対処法> 膿が少量であれば、胸に小さな穴を開けてそこから洗浄して膿を排除します。小さな穴からの洗浄で不十分な場合には、手術によって洗浄が必要となることもあります。いずれの場合でも抗生剤を併用して治療する必要があります。 乳び胸(にゅうびきょう) 手術の際に、胸管とよばれる太いリンパ管が傷つき、胸腔内にリンパ液が漏れてしまう合併症です。 <対処法> 症状が軽度であれば食事を制限してリンパ液の成分である脂肪分の吸収を抑制することで改善する可能性がありますが、場合によっては再手術で漏れを塞ぐこともあります。 肺動脈血栓塞栓症 手術中や手術後など、ベッドに長期間横になって下肢を動かさない状態になると、足の静脈がうっ滞して血栓が作られます。その血栓が、立ったり歩き始めた際に肺の血管に移動して詰まることで起こる合併症で、いわゆるエコノミークラス症候群として知られています。発生頻度は高くないものの、生じた場合には重篤で死亡する危険性もある合併症です。 <対処法> 血栓が作られるのを予防することが大切で、手術中や術後歩けるようになるまでストッキングを装着したり、下肢のマッサージを行うフットポンプを着用します。また血栓が生じてしまい、肺に詰まってしまうリスクが高い場合には、血液をサラサラにする抗凝固薬を投与して治療します。 反回神経麻痺 反回神経と呼ばれる神経が肺の近くを走行しているため、手術中に反回神経を傷めてしまったりすると、反回神経麻痺を起こす可能性があります。この神経の障害によって、声のかすれ(嗄声)や飲み込みにくさが出る場合があります。 <対処法> 反回神経麻痺は一時的な症状であることが多く、通常数ヶ月程度で改善しますが、まれに回復しないケースもあります。 術後の後遺症に対する治療法や対処法 ここでは、肺がんの手術後に後遺症として残ってしまう可能性のある症状や状態について、その対処法も含めて挙げていきます。 呼吸のしにくさ、息苦しさ 肺がん手術後は、肺を切除したことにより肺活量が低下し、うまく呼吸できなくなったり、労作時の息切れ、息苦しさが残る可能性があります。 <対処法> 呼吸リハビリテーションを行って改善を促すなどの方法があります。理学療法士の指導のもと、呼吸筋を鍛えるリハビリを行います。 声のかすれ、飲み込みにくさ 合併症の項目でも解説した、反回神経麻痺によって生じる可能性のある症状です。反回神経麻痺の影響で、声帯が動かしにくくなってしまうことで生じます。数ヶ月以上経っても、症状が改善しない場合がまれにあります。 <対処法> 声のかすれが重度の場合や飲み込みにくさが強い場合には、麻痺した声帯を移動させる等、手術による治療法があります。 治療後で後遺症が残ってしまったら:再生医療について 肺がんの手術後に後遺症に対する治療法として、再生医療の可能性についてお話します。 再生医療とは、「幹細胞」と呼ばれる様々な細胞に分化することができる細胞を活用して行う治療です。幹細胞を培養して増やし、それを点滴や患部に直接注射することで損傷した組織の修復や再生を促すことを狙いとする治療法で、現在その効果が期待されています。中でも、術後の神経損傷に対する再生医療が注目されており、肺がんの手術後の合併症・後遺症である反回神経麻痺への改善効果が期待されています。 当院は国内では数少ない再生医療を提供できる施設の1つです。患者さん自身の脂肪から幹細胞を採取、培養し、点滴する「自己脂肪由来幹細胞治療」を行っています。自分自身の細胞を用いるため、拒絶反応やアレルギーを生じにくく、安全性が高い方法です。 術後の後遺症でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 肺がんについてよくあるQ&A Q:新型タバコ(電子・加熱式)は肺がんの原因になりますか? A:新型タバコは紙巻タバコに比べて害が少ないと思われがちです。しかし実際には、含まれるニコチンの量は紙巻タバコと同等もしくはそれ以上であることもあり、タールも7割程度と言われています。従って、それ以外にも約70種類の発がん物質が含まれていると言われており、新型タバコも同様に肺がんのリスクとなります。 Q:肺がんを予防する方法はありますか? A:肺がんを完全に予防できる方法は現時点でありませんが、肺がんになるリスクを減らすことはできます。まず、肺がんの最も多い原因である喫煙をしている場合には禁煙をしてください。また、受動喫煙によっても肺がんのリスクがあがりますので、タバコの煙を避けるなども大切です。最も重要なのは肺がんの早期発見です。予防でできることは限られますが、定期的に健康診断などで胸部のレントゲン検査など、画像検査を受けるようにしてください。肺がんが見つかったとしても大きくなる前に早期に発見できれば、その分根治の可能性が見込めます。。 まとめ:肺がんの治療法やその合併症・後遺症に再生医療の可能性 今回は肺がんについて、その原因から治療まで幅広く取り上げ、治療の柱である手術についてや、その合併症も含めて詳しく解説していきました。 また、術後の後遺症やその後遺症に対する再生医療の可能性も含めて取り扱っています。実際に肺がんになってしまいこれから治療を受けられる方、肺がんの治療後の後遺症に悩まれている方、肺がんについての詳しい情報を知りたい方々にとって、有益な情報源となれば幸いです。 参考文献 Lung Cancer: Types, Stages, Symptoms, Diagnosis & Treatment 呼吸器外科 | 国立がん研究センター 中央病院 肺がん:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] Lung Cancer: Types, Stages, Symptoms, Diagnosis & Treatment
2024.09.23 -
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「痛風と診断されたけど、どのような食事をすればいいの?」「家族の食事にも配慮しないと…」 このように悩んでいる方も多いのではないでしょうか。 痛風の予防やコントロールには、適切な食事を摂ることが重要です。しかし、具体的にどのような食材を選び、どうバランスを取れば良いのかわからない方も少なくありません。 今回は、痛風対策に効果的な食事法について詳しく解説します。尿酸値を下げる食材の選び方、避けるべき食品、一日の食事プランなどについても紹介しています。 痛風の悪化を防ぎつつ、ご家族の健康も考えた食生活を送る参考になれば幸いです。 痛風における食事改善のポイントは「プリン体の摂取量」 痛風は、体内で作られた尿酸という物質が、腎臓から十分に排出されないために血液中に蓄積し、発症します。 尿酸は、プリン体という物質が体内で分解されることで生成されます。食事から多く摂取すると尿酸の生成量がさらに増加してしまいます。 つまり、プリン体を多く含む食品を取りすぎると、尿酸の生成が増え、痛風発作のリスクが高くなるのです。 健康な成人男性の尿酸の1日生成量は約1,000mgといわれています。 プリン体の摂取量が多いと、この尿酸の生成量がさらに増加してしまいます。そして、血液中の尿酸値が1dLあたり7.0mg以上になると、痛風発作のリスクが上昇しやすいのです。 つまり、普段の食生活が痛風の発症と深く関係しているといえます。 痛風が影響を与える部位やその対策については以下の記事でも解説しています。ぜひ参考にしてください。 痛風の食事で避けたい食品一覧 痛風のリスクを高める代表的な食品は、以下の通りです。 肉類(とくにレバー、内臓肉など) 魚介類(とくにイワシ、サンマ、カツオなど) ビールなどのアルコール飲料 果糖の多い清涼飲料水 痛風の予防には、バランスの取れた食事を心がけ、プリン体の過剰摂取を避けることが大切です。 プリン体を多く含む食品を控えめにし、十分な水分を摂取して尿酸を排出しやすくすることが有効です。 また、適度な運動を行うと、体重管理や代謝の改善につながり、痛風のリスクを下げることができるでしょう。 肉類 とくに、レバーや内臓肉などの食品に多く含まれるプリン体が体内で分解されると、尿酸が生成されます。 たとえば、レバー100gあたりのプリン体含有量は約400mgで、他の食品と比較すると高い値です。 肉類は、大豆製品(豆腐、納豆など)に置き換えることでプリン体をおさえられます。 魚介類 イワシやサンマ、カツオ、マグロなどにもプリン体が多く含まれます。 プリン体の含有量は180-400mgほどです。 もし魚を選ぶ際には、白身魚(タラ、カレイなど)、背青魚(サバ、アジなど)を積極的に選ぶと良いでしょう。 また、イカやタコも200ー300mgほどのプリン体値なので注意する必要があります。 ビールなどのアルコール飲料 アルコールは尿酸の排泄を妨げる作用があるため、体内の尿酸を増加させ痛風のリスクを高めます。 とくにビールは、アルコールに加えてプリン体も含むため、尿酸値を上昇させる作用が強いです。 ビール1缶(350ml)を飲むと、血中尿酸値が約0.5mg/dL上昇すると言われています。 大瓶1本(633ml)には約100-200mgのプリン体が含まれており、これは高プリン体食品とされる量です。 痛風患者は可能な限りアルコールを控え、どうしても飲む場合は、ビールではなく、ワインや焼酎などのプリン体を含まない酒を選び、適量(1日平均純アルコール20g程度)を心がけましょう。 果糖の多い清涼飲料水 果糖は他の糖類と比べて尿酸値を上昇させる作用が強いとされています。 したがって、痛風の方は、清涼飲料水摂取は控えることが重要です。 水やお茶など果糖を含まない食品に切り替えましょう。 痛風の食事には「プリン体の少ない食品」を取り入れる 痛風の食事療法では、プリン体の摂取を控えることが大切ですが、すべての食品を制限する必要はありません。 痛風患者さんでも比較的食べても良いとされる食材があります。 具体的には以下のようなものが挙げられます。 野菜類 果物類 低脂肪乳製品 全粒穀物 これらの食材を中心とした食事は、尿酸値を下げ、痛風発作のリスクを減らすのに役立ちます。 以下の表は、痛風の方に推奨される食品とその理由です。 食品 理由 含有量の例 キウイフルーツ オレンジ さくらんぼ ビタミンCが豊富で、尿酸の排泄を促進 100g当たりのビタミンC含有量 キウイフルーツ約90mg オレンジ約50mg さくらんぼ約10mg 低脂肪乳製品 プリン体が少なく、カルシウムが豊富 カルシウムは尿酸の排泄を促進 100g当たりのカルシウム含有量 低脂肪牛乳約120mg ヨーグルト約110mg 全粒穀物 ビタミンB群が豊富で、プリン体代謝を助ける 食物繊維が豊富で、便通を改善 玄米100g当たりのビタミンB1含有量:約0.4mg 大豆製品 プリン体含有量が低く、尿酸値を上げにくい 良質なタンパク源で、動物性タンパク質の代替に適している イソフラボンが豊富で、抗酸化作用がある 木綿豆腐100g当たりのプリン体含有量:約6mg 納豆50g当たりのプリン体含有量:約18〜22.5mg 注意:納豆は栄養価が高いですが、プリン体含有量も無視できません。適量を守りましょう これらの食品を上手に取り入れることで、痛風患者さんでも栄養バランスの取れた食生活を送ることができます。ただし、どのような食品でも食べ過ぎは避けるべきです。個人差があるため、医師や管理栄養士との相談の上、自分に合った食事療法の実践が大切です。 実践!痛風対策のための一日の食事 ここでは、痛風患者におすすめの一日の食事プランを紹介します。家族の健康も考慮しながら、バランスの取れた食事を心がけましょう。 朝食:痛風に優しいメニューの提案 忙しい朝でも、簡単に作れて栄養バランスの取れたメニューを選ぶと続けやすいでしょう。 メニュー 材料 全粒粉トースト+野菜スープ 全粒粉パン、野菜(お好みで)、コンソメなど オートミール+低脂肪ヨーグルト+フルーツ オートミール、低脂肪ヨーグルト、お好みのフルーツ 豆乳スムージー+ビタミンCの多い果物 豆乳、バナナ、ビタミンCの多い果物(キウイ、オレンジ、イチゴなど) 朝の忙しい時間帯でも、これらのメニューなら短時間で準備できるでしょう。全粒粉トーストと野菜スープ、オートミールとヨーグルト、豆乳スムージーなど、痛風の方に適したメニューといえます。 昼食と夕食:家族も喜ぶ健康的な選択 家族みんなで楽しめるような、バランスの良い食事の例を紹介します。 メニュー 材料 茶わん蒸し+野菜サラダ+玄米ご飯 卵、だし汁(干ししいたけや玉ねぎなど)、野菜(レタス、きゅうり、トマト、にんじん、ブロッコリーなど)、玄米など 豆腐ハンバーグ+蒸し野菜+キノコスープ 豆腐、ひき肉、野菜、キノコ、だし汁など さわらの塩焼き+野菜炒め+もずく酢 さわら、野菜、もずく、酢など 低プリン体の食材を使った、栄養バランスの取れたメニューを揃えました。 茶わん蒸しや豆腐ハンバーグなど、家族みんなが喜ぶ献立でしょう。 痛風の方も、おいしく食事を楽しみながら、健康管理がしやすいです。 家族の好みに合わせつつ、プリン体の少ない食材を使ったメニューを心がけましょう。 表に挙げたメニューは、プリン体が比較的少なく、痛風患者に適していると考えられます。 しかし、個人差があるため、自分の尿酸値や体調に合わせて、医師や管理栄養士に相談しながら、食事プランを調整することが大切です。 痛風の食事療法は、バランスの取れた食生活が基本です。 毎日の食事で、プリン体の少ない食材を選び、野菜や果物、低脂肪乳製品などを積極的に取り入れることで、尿酸値をコントロールしつつ、家族みんなで健康的な食卓を囲むことができるでしょう。 痛風の改善・予防のために心がけるべき6つの習慣 痛風の予防と管理には、食事中のプリン体に気をつけるだけでなく、生活習慣全般の見直しを行う必要があります。生活の中で気をつけたい6つの習慣は以下の通りです。 適切な食習慣を身に付ける 体重管理で肥満を防ぐ 禁煙をする 適度な運動を心がける 水分を十分に摂る アルコールは控える 本章内にて詳しく解説します。 適切な食習慣を身に付ける 適切な食事療法を継続することで、以下のような長期的な健康効果が期待できます。 健康効果 詳細 尿酸値の低下 プリン体の摂取量を1日400mg以下に抑えると、尿酸値が低下する可能性があり、痛風発作のリスクを減少させる可能性がある 尿酸排泄の促進 十分な水分摂取により、尿酸の排泄を促すことができる。また、ビタミンCには尿酸排泄を促進する可能性がある 腎機能の保護 高尿酸血症が長期間続くと、腎臓に負担がかかり、腎機能が低下する可能性がある。適切な食事療法により尿酸値をコントロールすることで、腎機能の保護につながる可能性がある 尿路結石の予防 高尿酸血症は尿路結石の危険因子の一つである。十分な水分摂取と適切な食事療法により、尿路結石のリスクを下げやすい 腎臓病と尿路結石は、痛風患者にとって重要な合併症であり、食事療法はこれらの予防にも役立ちます。 ただし、腎臓病や尿路結石がある場合の具体的な食事指導は、病状に応じて個別に行う必要があります。 医師や管理栄養士と相談しながら、適切な食事療法を実践することが大切です。 体重管理で肥満を防ぐ 肥満は尿酸値を上昇させます。なぜなら、内臓脂肪が増えると尿酸の産生が促進されたり、尿酸の排泄能力が低下するためです。 BMIを25未満に維持することを目標に、食事と運動で適正体重の維持に努めましょう。 禁煙をする 喫煙は尿酸値を上昇させる要因の一つです。禁煙により尿酸値が0.5~1.0mg/dL程度の低下が期待できます。 たばこを吸っている方は、禁煙に努めましょう。近年では禁煙外来を活用する方も多くいます。 もし興味はあるけれど、自分だけでは禁煙が難しいと感じる場合には、禁煙外来も活用しましょう。 適度な運動を心がける 適度な運動は尿酸値を下げ、血行を促進させます。 1回30分以上の中等度の運動(早歩きなど)を週5回、または1回20分以上の高強度の運動を週3回行うことを目標としましょう。 過度な運動にならないよう、体の調子に合わせて行うのがベストです。 水分を十分に摂る 水分を多く摂ることで尿量が増加し、尿酸の排泄量も増加します。 尿酸の排泄量が増加すれば体内の尿酸値は少なくなるため、カロリーのない水やお茶を1日2リットルを目標に飲みましょう。 清涼飲料水や甘いジュースなどは糖分が多く、肥満にもつながるため控えるべきです。 アルコールは控える アルコールを可能な限り控えることでも尿酸値を低下させられます。 アルコール飲料を飲まないことが理想ですが、もし飲みたいときにはノンアルコールビールやプリン体の少ないワインやウイスキー、焼酎にすることをおすすめします。 まとめ|痛風の予防・改善にはプリン体の少ない食事を心がけましょう 痛風の予防や改善には、プリン体の少ない食事を心がけ、健康的な習慣を身につけることが大切です。 痛風の予防と管理に食事が果たす役割は非常に大きいといえます。プリン体の多い食品を控え、少ない食品を積極的に取り入れましょう。 また、痛風の患者様、ご家族様のお悩みを当院でも承っております。メール相談やオンラインカウンセリングからも気軽に相談できます。 痛風の予防や改善方法に悩んでいる方はぜひ当院「リペアセルクリニック」にお問い合わせいただければ幸いです。 \まずは当院にお問い合わせください/ また、痛風発作の症状緩和や再発の予防について、以下の記事でも解説しているのでご覧ください。 参考文献一覧 千葉県栄養士会,健康を考える皆さまへ,痛風の予防と食事 東京都立病院機構,高尿酸血症・痛風の食事,高尿酸血症・痛風とは 順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部,高尿酸血症・痛風の食事療法 e-ヘルスネット,アルコールと高尿酸血症・痛風 e-ヘルスネット,高尿酸血症 e-ヘルスネット,高尿酸血症の食事 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病,高尿酸血症/痛風 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病の調査・統計,高尿酸血症/痛風 e-ヘルスネット,プリン体
2024.09.09 -
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甲状腺を半分摘出手術の予定があり「手術したら後遺症は出るのだろうか」と不安に感じている人もいるかもしれません。 実際、甲状腺を半分摘出する手術のあと、声かれやホルモンバランスの乱れ、体調不良といった症状が現れるケースがあります。 この記事では、甲状腺半分摘出で起こりうる後遺症や合併症、具体的な対処法をわかりやすく解説していきます。 本記事で適切な知識と対処法を知ることで、甲状腺の手術の不安が少しでも和らげられれば幸いです。 また、当院「リペアセルクリニック」では、後遺症治療として、再生医療を行っております。 後遺症リスクが不安な方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 甲状腺の半分摘出したときに現れる主な後遺症 甲状腺を半分摘出する手術を受けた後、声や体調に変化を感じる方がいます。 これは手術が声帯やホルモン分泌、カルシウム吸収に影響を与えるためです。 術後の起こりうる主な後遺症は以下のとおりです。 声がかすれるなどの声帯への影響 ホルモンバランスの乱れ カルシウム不足が引き起こす体調不良 手術による傷跡の痛みや違和感 ここでは、手術後に起こりやすい後遺症について、わかりやすく説明します。 声がかすれるなどの声帯への影響 甲状腺の近くには、声帯を動かすための神経(反回神経)が通っています。 手術でこの神経が傷つくと、声がかすれたり、出にくくなったりする場合があります。 これは「反回神経麻痺」と呼ばれる後遺症です。(文献1) 程度には個人差があり、一時的なものから長引くものまでさまざまです。 また、声が低くなる、話し続けると疲れるなどの症状も後遺症として挙げられます。 ホルモンバランスの乱れ 甲状腺は、体の代謝を調整するホルモンを分泌する臓器です。 半分摘出すると、ホルモンの分泌量が減少しホルモンバランスが乱れるケースがあります。 女性の場合は、月経不順や更年期障害のような症状が現れることもあるでしょう。 また、甲状腺ホルモンが不足すると、全身の倦怠感やむくみ、体重増加などが起こる可能性もあります。 カルシウム不足が引き起こす体調不良 甲状腺の裏側には、カルシウムのバランスを調整する副甲状腺があります。 手術で副甲状腺が傷つくと、カルシウム不足に陥り、手足のしびれや筋肉のけいれんが起こる場合があります。 また、長期的には骨がもろくなるなどのリスクも考えられますので、日常的にカルシウムを含む食品を意識して摂取するのも大切です。 手術による傷跡の痛みや違和感 甲状腺の手術では、首元に切開を行うため傷跡が残ります。 傷跡は時間の経過とともに薄くなっていきますが、体質によっては、赤く盛り上がったり、痛みやかゆみを感じたりするケースもあるでしょう。 また、傷跡が気になって首元を隠す服装ばかりになってしまうなど、精神的なストレスを感じる可能性もあります。 甲状腺摘出で起こりやすい合併症・後遺症 甲状腺の摘出手術は、以下のような術後に特有の合併症や後遺症が発生する可能性があります。 反回神経麻痺 甲状腺機能低下症 副甲状腺機能低下症 乳糜漏(にゅうびろう) ここでは、4つの合併症や後遺症について、手術後に起こりやすい主な症状と特徴を詳しく説明します。 反回神経麻痺 反回神経は甲状腺の裏側を通り、声帯を動かす筋肉を支配する重要な神経です。 左右に1本ずつ存在し、片側が損傷すると声帯が動きにくくなり、声がかすれる反回神経麻痺が生じます。 手術中のわずかな刺激でも麻痺を引き起こす可能性があり、多くは半年以内に改善しますが、まれに永続的に残る場合もあります。 また、左右両方の反回神経が損傷した場合、声を出せないだけでなく呼吸困難に陥り、命に関わる危険性があるため、迅速な対応が必要です。 反回神経麻痺の治療法 反回神経麻痺によるかすれ声が改善しない場合は、声帯に対する手術で症状を和らげる方法があります。 また、両側の反回神経麻痺で呼吸が困難な場合には、喉仏の下に空気の通り道を作る気管切開が必要になる場合もあります。 甲状腺機能低下症 甲状腺がんの手術では、甲状腺を摘出する必要があります。 とくに半分以上を摘出すると、甲状腺ホルモンの分泌が低下する可能性があります。 また、ホルモンが不足すると代謝バランスが乱れ、体調を崩しやすくなるのが特徴です。 この状態を甲状腺機能低下症と呼びます。 甲状腺機能低下症の治療法 治療には甲状腺ホルモン剤の内服が必要です。 この薬で不足したホルモンを補充しますが、基本的に生涯にわたって服用を続ける必要があります。 副甲状腺機能低下症 副甲状腺は甲状腺の裏にくっついており、左右2個ずつ存在する臓器です。 非常に小さな臓器ですが、副甲状腺ホルモンという物質を分泌して血液中のカルシウムやリン濃度を調節する働きがあります。 甲状腺がんの手術で甲状腺を摘出する際に副甲状腺も一緒に摘出されたり、副甲状腺を栄養する血流の低下などにより、術後に副甲状腺機能低下症を起こす可能性があります。 副甲状腺機能低下によって副甲状腺ホルモンが不足すると、血液中のカルシウム濃度が低下し、手や口のしびれやけいれんを引き起こすテタニーと呼ばれる症状が生じる可能性があります。 副甲状腺機能低下症の治療法 治療には、カルシウム製剤の内服と、カルシウム吸収を助けるビタミンDの補充が行われます。 副甲状腺をすべて摘出した場合は、生涯にわたり服用が必要です。 一方、副甲状腺が一部でも残されている場合、機能が回復し補充が不要になるケースも少なくありません。 乳糜漏(にゅうびろう) 乳糜漏(にゅうびろう)は、リンパ液が漏れ出す稀な合併症です。 手術後に首元の腫れや液体が滲み出るような症状が見られる場合に疑われます。 発症すると治療が必要となるため、早期の診断が重要です。 乳糜漏の治療法 多くの場合は安静や圧迫によりリンパ液の漏出を止められますが、まれに再手術が必要となり、漏れている箇所を閉じる処置を行うケースもあります。 \まずは当院にお問い合わせください/ 甲状腺半分摘出後の後遺症を和らげるには? 甲状腺の半分を摘出した後、後遺症の発生や生活の変化に不安を感じる方は少なくありません。 しかし、適切なケアを行えば症状を和らげ、生活の質を保つことができます。 本章では、後遺症を軽減するための具体的な方法を4つ紹介します。 医師の指示に従い薬物療法やリハビリを行う 規則正しい生活を送りバランスの取れた食事を心がける ストレスを溜めないように適度な運動や休息を取る 術後後遺症に対する再生医療を検討 術後の不安解消のためにも、チェックしておきましょう。 医師の指示に従い薬物療法やリハビリを行う 手術後、甲状腺ホルモンの不足や声の変化が現れる場合があります。 これらの症状に対処するためには、医師が処方する薬を服用したり、音声リハビリなどが効果的です。 とくにホルモン補充療法は、甲状腺ホルモンのバランスを維持するために重要です。 医師の指導に従い治療を継続していけば症状が改善する可能性が高まります。 規則正しい生活を送りバランスの取れた食事を心がける ホルモンバランスを整えるためには、生活習慣の見直しが必要です。 栄養バランスの良い食事を意識し、カルシウムやビタミンDを多く含む食品を取り入れるのがおすすめです。 また、十分な睡眠を確保し、生活リズムを整えると体調の安定が期待できます。 健康的な生活習慣が後遺症の軽減に役立つでしょう。 ストレスを溜めないように適度な運動や休息を取る 術後のストレスは体調を悪化させる要因となるため、適度な運動やリラクゼーションが重要です。 たとえば、軽いウォーキングやヨガなど、無理のない範囲で体を動かしていると、ストレスの軽減が期待できます。 さらに、心の健康を保つためには、休息やリフレッシュの時間を積極的に取り入れていくのも効果的です。 術後後遺症に対する再生医療を検討 近年、術後の後遺症治療の選択肢として注目されているのが「再生医療」です。 たとえば、損傷した声帯や甲状腺組織の再生を促す治療法が研究されています。 再生医療はまだ一般的ではありませんが、興味のある方は医療機関や専門医に相談して治療法を検討してみるのも良いでしょう。 まとめ|甲状腺摘出後の後遺症と対策は理解しておこう! 甲状腺の半分を摘出すると、声の変化や体調の変化といった後遺症が起こる可能性があります。 ただし、適切な治療や生活習慣の見直しによって症状を和らげられます。 本記事で紹介した対策を活用し、不安を減らしながら術後の生活を前向きに過ごしていきましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では術後の後遺症に対して再生医療を行っております。 新しい治療法に興味がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 甲状腺を半分摘出した際の後遺症に関する質問 甲状腺摘出後に疲れやすいのはなぜですか? 甲状腺摘出後に疲れやすくなる理由は、甲状腺ホルモンの不足が関係しています。 分泌量が減るとエネルギーの生産が低下し、倦怠感や疲労感を感じやすくなるのです。 しかし、適切なホルモン補充療法を行えば、これらの症状を改善できる可能性がありますので、気になる方は早めに医師に相談してみましょう。 甲状腺手術のデメリットはありますか? 甲状腺手術には、後遺症や合併症が発生するリスクがあります。 具体的には、声がかすれる反回神経麻痺や、ホルモンバランスの乱れ、副甲状腺の機能低下などが挙げられます。 ただし、事前にリスクを把握し、術後のケアをしっかり行えば多くの症状を予防・軽減することが可能です。 また、当院「リペアセルクリニック」では術後の後遺症が気になる方へ、手術や入院の必要がない「再生医療」を提供しています。 まずはお気軽に「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 参考文献 (文献1) 小川真.甲状腺術後嗄声の頻度およびリスク因子と音声改善手術の問題点.日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌2016(33,4) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjsts/33/4/33_224/_html/-char/ja
2024.09.03 -
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乳がんと言われたけど、手術の傷って痛いの?」 「乳がん治療後に痛みがあって困っている」 こんなお悩みはありませんか? 乳がんの治療には手術・薬物療法・放射線療法などがあります。主にその広がりや転移により治療法が選択されます。 治療の後遺症で痛みに悩む患者さんは少なくありません。たとえば、術後長期間にわたって慢性的に続く痛みは「乳房切除後疼痛症候群」と呼ばれます。薬物療法による副作用でも痛みが残ることがあります。適切な対応を行わないと日常生活に支障をきたしてしまいます。 「せっかくがんの治療をしたのに、痛くて毎日の生活を楽しめない。」 そんな事態を避けるために、乳がんの治療とその後遺症、特に痛みについて詳しく理解することが大切です。今まさに悩んでいる方、これから治療を受ける上で心配な方は、本記事をご参考にされてください。 後遺症の痛みの治療に行き詰まったら、再生医療も一つの選択肢です。以下で詳しく解説していきます。 この記事を読んで分かること 乳がんのステージ分類と治療方法 乳がん手術後の後遺症の種類 術後後遺症についてよくあるQ&A 後遺症に対する再生医療の可能性 乳がんのステージと治療法 まずはじめに、乳がんのステージ分類と、ステージに合わせた外科手術や化学療法などの治療法について解説していきます。 乳がんのステージ分類について 乳がんはその進行の度合いにより、0期からⅣ期までのステージに分類されます。 ステージを決定するのは、がんの大きさや広がり・リンパ節転移の有無・遠隔転移の有無といった要素です。なお、遠隔転移とは他の臓器への転移のことで、乳がんが転移しやすいのは骨・肝臓・肺・脳などです。 以下に各ステージについて解説します。 <乳がんのステージ分類> 遠隔転移(他の臓器への転移)がない場合 → 0〜Ⅲ期のいずれか 0期 非浸潤がん(乳がんが、発生した場所にとどまっており、広がったり転移を起こしていたりしない状態) Ⅰ期 がんの大きさが2cm以下+リンパ節転移をしていない ⅡA期 がんの大きさが2cm以下+腋窩リンパ節に転移がある(リンパ節は固定されておらず動く) がんの大きさが2cm以上5cm以下+リンパ節転移がない ⅡB がんの大きさが2cm以上5cm以下+腋窩リンパ節に転移がある(リンパ節は固定されておらず動く) がんの大きさが5cm以上+リンパ節転移がない ⅢA期 がんの大きさが5cm以下+腋窩リンパ節に転移がある(リンパ節は固定されているか、リンパ節同士が癒着している) がんの大きさが5cm以下+腋窩リンパ節に転移がない+内胸リンパ節に転移がある がんの大きさが5cm以上+腋窩リンパ節あるいは内胸リンパ節のどちらか一方に転移がある ⅢB期 がんが胸壁に固定されている がんが皮膚に食い込んでいたり、皮膚から出ていたりする 炎症性乳がん(乳房が腫れたり赤くなったりといった炎症を伴う乳がん) ⅢC期 腋窩リンパ節と内胸リンパ節のどちらにも転移がある 鎖骨の上あるいは下のリンパ節に転移している 遠隔転移(他の臓器への転移)がある場合 →Ⅳ期 乳がんの治療について 乳がんの治療は外科的手術・放射線治療・化学療法(薬物治療)の3つを組み合わせて行います。 これから紹介するのはあくまでも標準療法です。実際には患者さんの状態や希望にあわせて臨機応変に治療が行われます。治療を受ける際には、担当の医師としっかり話をした上で治療を選びましょう。 <0期からⅢA期の治療について> 0期からⅢA期の乳がんでは、治療の中心は手術です。 がんのサイズや広がり方で、乳房の切除範囲が異なります。 がんが小さければ乳房部分切除術が可能です。最近では、早期のがんはラジオ波で焼いたり、内視鏡の手術で切除したりという方法も徐々に広まってきています。 一方、大きい場合や広がりが大きい場合は、乳房全切除術を行わなければなりません。リンパ節への転移が疑われれば、その部位のリンパ節も切除します。また、状況に応じて放射線療法を行なったり、手術の前や後に薬物療法を行ったりすることもあります。患者さんのご希望に応じて、乳房再建術を検討します。 <ⅢB期からⅣ期の治療について> ⅢB期からⅣ期の場合の中心は薬物療法です。患者さんの体の状態や希望・がんの性質など様々な要因を加味して治療薬を選びます。 乳がんの薬物療法で使う薬には一般的な抗がん剤のほか、ホルモン療法薬や分子標的薬と呼ばれる薬もあります。分子標的薬とは、がん細胞に特有の遺伝子・タンパクなどをターゲットにした治療薬のことです。 治療の効果・症状の経過次第で手術や放射線療法が追加されることもあります。 <再発した場合の治療について> 再発した乳がんの場合には、その再発部位により治療法が異なります。 手術を受けた側の乳房やその周囲の皮膚、リンパ節に発生する局所領域の再発では、治癒を目指して手術でがんを切除します。必要に応じて放射線療法や薬物療法を併用します。 手術で切除するのが難しいような局所再発や、他の臓器への遠隔再発では、薬物療法を中心に行います。 <緩和ケアについて> がんの患者さんは緩和ケアを受けることができます。緩和ケアは、がんで苦しんでいる人たちが、できるだけ穏やかに生活できるように助けるためのケアです。 緩和ケア=終末期というイメージがあるかもしれません。しかし、実はがんと診断されてからいつでも緩和ケアを受けることができます。 がんに伴うつらい症状を和らげるだけでなく、気持ちの落ち込みや不安を軽くしたり、生活での困りごとに対処したり、人生の意味についての悩みにも対応します。 患者さんとその家族が抱えるいろいろな苦しみに対して、身体的、精神的、社会的な面から全体的に支援するのが緩和ケアなのです。 乳がん治療後の慢性的な痛み...これって後遺症? どんな治療にも合併症が起こり得ます。ときに、治療後長期間に渡って後遺症に煩わされることもあります。ここからは乳がん治療の合併症とその対処方法について詳しく見ていきましょう。 術後に痛む「乳房切除後疼痛症候群(PMPS)」 乳房切除後疼痛症候群(PMPS)は、乳がんの手術後に乳房、胸部、腋窩、上腕にかけて起こる慢性的な痛みです。 PMPS は、手術で肋間上腕神経などの神経が損傷されることで起こる神経障害性疼痛に分類されます。 PMPS の主な症状は、火傷をした後のようなひりつく痛みやびりびりした痛みです。 痛みとともに、何かが挟まっているような違和感を覚える方も多くいます。下着がすこし擦れただけでも強い痛みを感じるという方もいるのです。 これらの症状は仕事や日常生活に支障をきたしたり、うつ病・適応障害などの精神障害と関与したりする可能性があります。 治療の中心は薬物療法です。一般的な痛み止めはあまり効果がありません。神経の痛みを抑える薬・抗うつ薬・抗けいれん薬などが処方されます。また、痛みで関節や筋肉が動かせなくなり、日常生活に影響が出ている方はリハビリも必要です。心理的な因子や症状の精神面での影響を評価してサポートすることも考慮されます。 乳がんの転移による「骨の痛み」 乳がん治療後の痛みは、ほかにもあります。 乳がんの転移が多い場所の一つは骨です。転移が起こった骨は、骨折をしやすくなります。治療後も、骨折の痛みが残ってしまう可能性があります。 また、抗がん剤治療による副作用も少なくありません。一部の抗がん剤では末梢神経障害を起こします。手や足のびりびりした痛み・しびれが起こると、長期間持続することもあります。 術後の合併症「リンパ浮腫」 術後の合併症で多いリンパ浮腫は通常痛みを伴いません。しかし、急激に腫れたり感染を合併したりすると痛みが起こります。 このように、がんの治療後の痛みは様々です。痛みの原因を探り、対応していく必要があります。 乳がん治療の後遺症についてのQ &A Q:乳がん手術後、ずっと痛みが続きます。いつよくなるのでしょうか? A:乳房切除後疼痛症候群において、症状が改善するまでは長い時間がかかる可能性があります。例えば、国内の報告では、術後9年経過後も21%、およそ5人に1人が痛みを抱えていると言われています。自然に良くなると思わず、早めに受診をすることをご検討ください。 Q:乳がん手術後の痛みを何科に相談したら良いかわかりません。どこに行ったらいいのでしょうか? A:麻酔科やペインクリニックなどで相談すると良いでしょう。お近くにそういった医療機関がない、どこに行ったら良いかわからない場合は、主治医やかかりつけ医に相談することをお勧めします。必要に応じて専門の病院・クリニックなどを紹介してもらうことができます。 まとめ・乳がんの治療と手術後の痛みや後遺症について 乳がんはその進行の度合いにより、治療は手術や薬物療法など多岐にわたります。そのため、後遺症の痛みの原因も様々です。 これから治療を受ける方は、ご自身の治療内容についての説明をよく聞いてどのようなことに気をつけるべきかしっかり理解しましょう。後遺症に悩まされている方は、一人で抱え込まずに主治医に相談してみてください。 後遺症の症状は、適切な治療で痛みが和らぐこともあります。ただし、神経障害性の痛みなど、治りにくいものも少なくありません。 後遺症の痛みの治療に行き詰まったら、再生医療も一つの選択肢です。一般的に神経の障害は治らないとされています。しかし、幹細胞治療とよばれる再生医療では、神経の修復ができるかもしれません。 当院では、幹細胞治療を提供しています。実際に乳がん治療の後遺症の痛みにお困りの方の治療実績もあります。「治療を考えたい」「話を聞きたい」という方は、ぜひお問合せください。 参考文献 小島圭子. Practice of Pain Management 5(3): 164-168, 2014. 国立がん研究センター プレスリリース. 早期乳がんに対するラジオ波焼灼療法による切らない治療が薬事承認・保険適用を取得先進医療制度下で実施した医師主導特定臨床研究の成果を活用. 国立がん研究センター. がん情報サービス. 乳がん 治療. 日本乳癌学会. 乳癌診療ガイドライン 2022年版. 日本乳癌学会. 患者さんのための乳癌診療ガイドライン2023年版.
2024.08.28 -
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我が国で3番目に多いがんに当たる「胃がん」ですが、術後はダンピング症候群や下痢、栄養障害、胆石症、骨粗鬆症など様々な後遺症がついてきます。 症状に応じて食事療法や栄養補助食品の使用、手術などで対応しますが、長く続く痛みや長期的ながん予防には再生医療が有効です。 この記事では、胃がんの症状や原因、診断や治療法の他、術後の後遺症の種類や後遺症に対する対処法、また、再生医療の可能性について詳しく解説していきます。 胃がんの症状、原因、診断、治療法 術後の後遺症の種類 術後の後遺症に対する対処法 長く続く術後の痛みに「再生医療」の可能性 胃がんの手術をこれから受ける予定で術後について不安がある方、また術後後遺症でお悩みの方はぜひご参考にされてください。 胃がんについて 胃の内壁に当たる粘膜の細胞ががん化することによって胃がんが発生します。 胃がんの症状 初期は無症状であることが多く、進行すると吐き気や嘔吐、貧血によるふらつき、吐血、腹痛などの症状が現れます。 初期 無症状 進行すると 吐き気や嘔吐 貧血によるふらつき 吐血 腹痛 など このような症状を自覚する場合は、すぐに病院にかかりましょう。 胃がんの原因 胃がんの発生原因として、以下のものが挙げられます。 ヘリコバクター・ピロリ菌感染 高塩分食 喫煙 ストレス アルコール 刺激物 【胃がんの原因に関するQ&A】 Q . 胃がんの罹患者数や死亡率は他のがんと比べてどれくらい多いの? A . 2019年の部位別がん罹患数をみてみると、男性における胃がんは前立腺がん、大腸がんに次いで3番目に多く、女性の胃がんは乳がん、大腸がん、肺がんに次いで4番目に多くなっています。 2022年の部位別がん死亡数をみると、胃がんは肺がん、大腸がんに次いで3番目に多く、男女別に見てみると男性では3番目、女性では5番目に多いという結果でした。 Q . 若年者に多くて進行も早い胃がんの種類があるって本当? A . 胃がんは内視鏡やX線の所見によって、以下のような肉眼的分類に分けられます。 表在型(0型) 腫瘤型(1型) 潰瘍限局型(2型) 潰瘍浸潤型(3型) びまん浸潤型(4型) このうち、びまん浸潤型(4型)にあたるスキルス性胃がんは、胃の壁が硬く、厚くなるタイプの進行胃がんであり、若年者や女性に多い上に腹膜への転移が多くみられます。 胃がんの診断 胃がんの診断には、胃内視鏡検査(胃カメラ)やその際に採取した組織の病理診断、血液検査、CT検査、胃X線検査などを用いて、総合的に判断します。 胃がんの治療法 胃がんの治療法には、内視鏡治療や外科的手術、化学療法、放射線療法があり、がんの進行度(ステージ)に応じて適切なものが選択されます。 これらの治療法のうち、外科的手術によって胃を一部、ないし全て切除することによって「胃切除後症候群」と呼ばれる後遺症が発生します。 後遺症については次の事項で詳しく解説していきます。 胃がんの術後後遺症の種類とその対処法 胃切除後症候群には様々なものがあるため、主なものをそれぞれ説明していきます。また、後遺症ごとに治療法や対処法を紹介していきます。 ①ダンピング症候群 胃を切除すると、当然食べ物を貯留できる容積が減り、それとともに胃酸の分泌が減ります。結果的に通常よりも濃度の濃い食べ物が急速に腸内へ流れ込み、これがダンピング症候群を発生させます。 食後すぐに現れる動悸や立ちくらみ、めまい、悪心、発汗を早期ダンピング症候群と呼び、食後2~3時間後に現れる疲労感や発汗、動悸、立ちくらみ、めまい、失神、手指の震えなどを後期ダンピング症候群と呼びます。 ダンビング症候群に有効な対処法は? 多くの食べ物が一気に腸管へ流れるのを阻止するために、食事の摂り方を以下のように工夫することが必要です。 1時間以上かけて少しずつゆっくり食事を取る 1回の食事量を少なくする代わりに食事回数を1日5~6回に増やす よく噛んでから飲み込む 食事中の水分摂取を減らす ②貧血 胃酸の分泌が減ることで胃からの鉄の吸収が阻害され、胃の切除から数ヶ月で鉄欠乏性貧血に陥ります。さらに数年経つと、ビタミンB12の吸収に必要な胃壁細胞からの内因子が減り、ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血が起こります。 貧血に有効な対処法は? 鉄剤の経口投与やビタミンB12の注射などによって不足している栄養分を補います。 ③消化・吸収不良(体重減少) 胃酸の減少やそれによる消化酵素活性の低下、そして手術の際の迷走神経切除による消化管運動の低下は、消化・吸収不良を引き起こし、体重減少にもつながります。 消化・吸収不良(体重減少)に有効な対処法は? 栄養分を補おうとたくさん食べようとするとダンピング症候群を悪化させてしまうため、栄養士や医師へ相談しながら時間をかけて徐々に食事量を安定させていきましょう。少ない量で栄養を多く摂り入れたい場合、栄養補助食品を利用するのもよいでしょう。 ④骨粗鬆症(骨粗しょう症) 胃の切除によって胃酸の減少や腸内細菌叢の変化が起こり、結果としてカルシウムの吸収が悪くなり、骨が脆弱化します。 骨粗鬆症に有効な対処法は? 骨密度を上げる薬剤やカルシウム剤、ビタミンD製剤の薬物療法が有効です。 ⑤胆石症・胆嚢炎 胃切除後は胆嚢の動きが悪くなるため、胆石を生じやすくなります。胃切除後の患者さんのうち、2~3割程度と結構な頻度でみられます。 胆石症・胆嚢炎に有効な対処法は? 胆石があっても無症状であれば経過観察でよいですが、胆嚢炎や胆石発作を起こした場合には治療が必要です。根本的治療は外科的な胆嚢摘出術となり、医療施設によっては胃切除術の際に予防的に胆嚢摘出術も一緒に行うこともあります。 長く続く術後の痛みに再生医療が効果的?! 胃がんのみならず、体に切開を入れる外科的手術において、術後時間が経っても傷跡が痛む、またその周囲のしびれを自覚することがあります。3ヶ月以上継続する場合、遷延性術後痛である可能性があり、注意が必要です。 原因は複雑で、手術による神経障害に精神的・心理的因子や遺伝的素因、環境・社会的因子も絡み合い、検査をしてもわからないので原因不明とされてしまうこともあります。従来の治療では末梢神経の回復は難しいとされていましたが、再生医療ならば回復の可能性があります。 再生医療は、失われた身体の組織を再生する能力、つまり自然治癒力を利用した最先端医療です。当院で行う再生医療は“自己脂肪由来幹細胞治療”というもので、患者さんから採取した幹細胞を培養して増殖し、その後身体に戻します。 ちなみに幹細胞とは、さまざまな姿に変化できる細胞で、失われた細胞を再度生み出して補充する機能を持つ細胞のことをいいます。自分自身の細胞から作り出したものを用いるため、アレルギーや免疫拒絶反応がなく、安全な治療法といえます。 長期の痛みは身体的にも精神的にも患者さんを蝕み、鬱(うつ)に近い状態になる方もいます。痛みやしびれが改善するとできることが増え、活発になることで精神的・社会的にも患者さんの満足度が上がります。 ▼実際に当院では、乳がん術後の化学療法で末梢神経が障害され、長い間足のしびれと原因不明の胃腸症状・倦怠感に悩まされていた患者さんが、幹細胞治療によって改善した症例を経験しています。 手術や化学療法による末梢神経障害に悩まれている方は、ぜひ当院の再生医療に関するホームページをご覧ください。 追記:がんを予防できる免疫細胞療法ってなに? 再生医療には様々な種類がありますが、その中のNK(ナチュラルキラー)細胞免疫療法はがんの予防に有効とされています。自己の血液中にある免疫細胞の一種、NK細胞と呼ばれるものを血液から採取し、培養後に点滴でまた体内に戻す治療です。手術や化学療法、放射線療法と併用することでがんの予防をより強固にできるでしょう。 気になる方は当院の免疫療法に関するホームページをご覧ください。 まとめ・胃がんの術後後遺症の種類と対処法を徹底解説 胃がんの初期は無症状のため、腹痛や嘔吐などの症状が出た時には手術が必要な状態になっていることも少なくありません。しかし、胃を切除すると、胃切除後症候群と呼ばれる後遺症を生じます。 ダンピング症候群や消化・吸収不良、貧血など様々な症状を呈し、不足する栄養素の投与や食事の摂り方を工夫することで改善を目指します。 これらの後遺症とは別に傷口が長く痛む遷延性術後痛を生じることもあり、手術による末梢神経障害や精神的因子などが複雑に絡み合う病態です。 再生医療は、末梢神経障害を根本的に治療できる手立てとして注目されており、今後ますます普及していくことが予想されます。 気になる方はぜひ一度当院へご相談ください。 参考文献一覧 公益財団法人 日本対がん協会 ホームページ 伊東久勝, ほか. 「遷延性術後痛の対策」日本ペインクリニック学会誌Vol.25, No.4, 2018.
2024.08.22 -
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大腸がんは日本で頻度の多いがんの1つです。部位別のがんの罹患数では、男性で肺がんに次ぐ2位、女性で乳がんに次ぐ2位となっています。 また死亡者数も男性で3番目、女性で最も多いがんとなっています。 この記事では、大腸がんの概要や治療法について解説していきます。また、大腸がんの術後の合併症・後遺症についても特に詳しく解説しながら、その治療法や対処法にも触れています。後遺症に対する再生医療の可能性についても紹介しています。 大腸がんの概要や治療法 大腸がんの術後の合併症と後遺症 大腸がんの治療法や対処法 後遺症に対する再生医療の可能性 ぜひ最後までお読みいただければと思います。 大腸がんとは 大腸がんは、大腸(結腸および直腸)に発生する悪性腫瘍です。大腸がんは生活習慣との関わりが深く、特に食生活の欧米化が関与していると言われており、日本でもその発症率が増加しています。 大腸がんの発症は多くの場合、腺腫と呼ばれる良性のポリープから始まり、これが数年かけて悪性化することでがんが発生します。早期発見・早期治療が極めて重要であり、定期的な検査が推奨されます。 大腸がんの病期(ステージ) 大腸がんの病期(ステージ)は、がんの進行度を示すもので、治療方針を決定する上で非常に大切です。大腸がんの病期は、大きく分けて以下のように分類されます。 0期:がんが大腸の粘膜層に留まっている状態で、最も早期の段階 Ⅰ期:がんが大腸の固有筋層に留まっているもの Ⅱ期:がんが固有層を超えて浸潤しているもの Ⅲ期:がんのリンパ節転移を認めるもの Ⅳ期:がんの他 臓器への転移を認めるもの 実際にはがんの深達度をさらに細かく分類し、それによりⅡ期以降はⅡa、Ⅱb、Ⅱc、Ⅲa、Ⅲb、Ⅲc、Ⅳa、Ⅳb、Ⅳcに分けられています。 大腸がんの病期に応じた治療法の選択 大腸がんには様々な治療法がありますが、主には病期によってその選択が異なります。 0期からⅠ期 0期からⅠ期の浸潤が軽度のものであれば、内視鏡治療が選択されます。これは内視鏡を用いて、大腸がんを腸管の内側から切除する方法であり、早期の大腸がんにのみ適応可能な治療法です。 Ⅰ期〜Ⅲ期 Ⅰ期〜Ⅲ期、すなわちがんの深達度が深くて内視鏡では取り切れないようなもの、リンパ節転移のあるものについては、開腹手術もしくは腹腔鏡手術による切除が検討されます。また、Ⅲ期や再発リスクの高いⅡ期の場合には、術後に抗がん剤による補助化学療法を考慮します。 Ⅳ期 Ⅳ期の場合には、原発巣のがんが切除可能な場合には手術を検討します。一方切除ができない場合には、抗がん剤治療や放射線治療などを組み合わせた治療を検討することになります。 これらはあくまでも標準的な考え方であり、実際には患者さんごとの状態に合わせて具体的な治療法が検討、選択されていきます。 大腸がんの手術治療について ここでは大腸がんの実際の手術治療について、詳しく解説をしていきます。 内視鏡治療 大腸内視鏡を用いて大腸の内側からがんを切除する方法になります。基本的にがんの深達度が浅いものかつリンパ節転移が認めないものに対して選択される方法です。具体的な切除の方法には以下のようなものがあります。 内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー) 大腸がんの中でも、腸管から盛り上がっており、キノコのように茎があるような病変に対して行われる方法です。内視鏡の先端から細い輪っかを形成したワイヤー(スネア)を出し、病変に引っ掛けるようにして茎を切り取ります。 内視鏡的粘膜切除術(EMR) 病変があまり盛り上がっていないかつ、2cm未満の病変に対して行われる方法です。病変の下の粘膜下にまず生理食塩水を注入して、病変自体を盛り上がらせた状態にします。そこにスネアをかけて、周囲の正常な粘膜を含めた状態で切り取ります。 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) EMRで切除が難しい大きな病変に対して行われる方法です。病変の粘膜下に生理食塩水を注入し、浮き上がらせた病変の周りを高周波ナイフで切り取っていきます。 開腹手術 内視鏡での切除が困難な深達度の深いがんや、リンパ節転移を認める場合などに選択されます。大腸がんといっても、肛門に近い直腸のがんなのか、それより遠い結腸のがんなのかで手術方法が異なってきます。 結腸がんの場合 がんの周囲の腸管やリンパ節も含めて切除する必要があります。結腸の場所によってS状結腸切除、横行結腸切除、回盲部切除など様々な術式があります。がんを含む腸管を切除したあとは、きりとった断端の腸管同士をつなぎ合わせたり、つなぎ合わせるのが困難な場合には人工肛門(ストーマ)を作る手術を行う必要があります。 直腸がんの場合 直腸は肛門につながる部分であり、周囲には膀胱、男性の場合には前立腺、女性の場合には子宮・卵巣などの臓器が近くにあり、それらの調節を担う自律神経も存在します。したがってがんの切除に加え、自律神経機能の温存も考えながら手術を行います。 比較的早期の直腸がんであれば、がんとその周囲の組織を切り取る局所切除術を選択します。腸管として切除する必要がある場合には、腸管の切り口を直腸と縫い合わせて再建する必要があり、前方切除術という術式になります。肛門に近い直腸がんの場合には、肛門を一緒に切除する必要があるため、人工肛門(ストーマ)を作ることになります。肛門括約筋を温存できる場合には、括約筋間直腸切除術(ISR)という方法で、人工肛門を避けることができる場合がありますが、再発率が高くなったり、排便しにくくなるといったことも報告されています。 腹腔鏡手術・ロボット支援手術 腹腔鏡手術は、数カ所の小さな傷からお腹の中に腹腔鏡というカメラを挿入し、モニターを見ながら手術する方法です。開腹手術に比べて傷が少なく、患者さん自身への体への負担が少ないことがメリットです。また、同じような形で、ロボットアームを用いて手術するロボット支援手術という方法もあります。いずれの場合でも技術的に熟練を要するため行える施設は限られていますが、近年増えてきている手術法です。 大腸がんの手術の合併症とその対処法 大腸がんの手術には、いくつかの合併症が発生する可能性があります。以下に主な合併症とその対処法を紹介します。 感染症 手術部位の感染症は、どの手術でも起こり得るリスクです。大腸がんの手術の場合には腹部の傷からの感染や、腹腔内の感染などが考えられます。対処法として、感染を防ぐために必ず手術前後に抗生物質の投与を行います。しかしそれでも感染が起こってしまうことがあり、その場合には抗生物質の投与を継続したり、感染に対して外科的治療(洗浄、ドレナージなど)が考慮されることもあります。 排便障害 手術の影響で腸の動きが不規則になり、下痢や便秘になったりすることがあります。また、肛門括約筋が影響する部分に関わるような直腸がんの手術ですと、便意を感じにくくなったり、便を出しにくくなったりすることがあります。整腸剤や便を柔らかくする下剤などを組み合わせて、排便のコントロールを促していきます。 腸閉塞(イレウス) 術後の影響で腸管がくっついてねじれて しまったり、腸の動きがわるくなってしまうことで排泄物の通りが悪くなってしまった状態です。これを防ぐためには、術後早期に歩行を始めることや、腸の動きを促す薬の使用が有効です。手術から年単位で時間が経過してからも起こる可能性があります。ねじれによる腸閉塞が発生して腸管の血流が悪くなってしまった場合には絞扼性イレウスという重篤な病態となり、緊急手術が必要となることもあります。 縫合不全 腸を縫合した部分がうまくつながらず、腹腔内に腸液や排泄物が漏れてしまうことがあります。これが縫合不全という状態です。放置すると腹膜炎をきたして重篤になってしまう可能性もあるため、再手術が必要となります。 排尿障害 大腸がんの手術の中でも、特に直腸がんの手術では、排尿を調節する自律神経に影響を及ぼしてしまうことがあり、術後に尿意が感じにくくなったり、残尿感が残ったりなどの症状が残る場合があります。多くの場合、内服薬で改善が得られますが、場合によっては尿が自力では全く出せなくなってしまう状態(尿閉)になってしまい、尿道に細い管を通して排尿させる処置(導尿)が必要となる場合もあります。 性機能障害 特に直腸がんの手術では、直腸周囲の自律神経へ影響を及ぼす可能性があります。この自律神経は性機能に関係するものもあり、男性では術後に勃起不全(ED)や射精障害をきたしたり、女性では性交渉の際に痛みを感じたりなどの影響をきたすことがあります。服薬による治療の選択肢がありますが、自律神経自体にダメージある場合には効果が限定的ともいわれています。 大腸がんの治療後の後遺症について 術後の合併症の中でも、特に自律神経にかかわる合併症である排尿障害や性機能障害は、なかなか改善が得られず後遺症として残ってしまうこともあります。特に性機能障害は、デリケートな問題であるためなかなか相談ができず、お一人で悩まれたままにしてしまっているケースも多いと考えられます。非常に重要な問題ですので、現在そういった後遺症に悩まれている方は、まずは担当医や泌尿器科などにぜひ相談をしてみてください。 大腸がん治療後の後遺症に対する再生医療の可能性について 大腸がんの手術後の後遺症に対する治療法として、再生医療の可能性についてお話します。 再生医療とは、「幹細胞」と呼ばれる様々な細胞に分化することができる細胞を活用して行う治療です。幹細胞を培養して増やし、それを点滴や患部に直接注射することで損傷した組織の修復や再生を促すことを狙いとする治療法で、現在その効果が期待されています。中でも、術後の神経損傷に対する再生医療が注目されており、大腸がんの手術後の合併症・後遺症である自律神経障害による排尿障害、性機能障害への改善効果が期待されています。 当院は国内では数少ない再生医療を提供できる施設の1つです。患者さん自身の脂肪から幹細胞を採取、培養し、点滴する「自己脂肪由来幹細胞治療」を行っています。自分自身の細胞を用いるため、拒絶反応やアレルギーを生じにくく、安全性が高い方法です。 大腸がんについてよくある質問と回答 Q:人工肛門(ストーマ)を造設することになりました。管理していくのが不安です。臭わないかなども気になります。詳しく教えて下さい。 A:人工肛門(ストーマ)は腸管をお腹から出して、そこから排泄させるようにつくるものです。手術によって、一時的にストーマを作って後ほど閉鎖することもあれば、生涯ストーマとなることもあります。ストーマは肛門のように括約筋がないため、排泄物をためたりすることができず、ストーマの周囲をパウチで覆ってそこに便を溜め、溜まったら処理して新しいパウチに交換します。最初は大変と感じるかもしれませんが、徐々に管理に慣れていくと思います。臭いについてもパウチでしっかりと覆われていれば大丈夫です。ストーマにあったサイズのパウチを選択することが重要です。 出典:Colon cancer - Diagnosis and treatment - Mayo Clinic Q:大腸がんの手術後に気をつけることはありますか? A:まずは排便習慣の変化に注意が必要です。便秘や下痢などが起こりやすくなっている可能性がありますので、まずは自身の排便習慣をチェックして、主治医に相談してみるのが良いかと思います。 排便に関わることとして、食事は術後はなるべく消化の良いものを摂ることが重要です。食物繊維が多い食べ物などは腸の動きを滞らせる原因になりうるため、避けたほうがよいです。また、ガスが出やすい炭酸飲料や、刺激の強い辛い食べ物なども控えたほうが良いでしょう。手術1−2ヶ月程度で腸管の動きが戻ってきますので、経過をみて食事内容についても医師と相談されてみるとよいかと思います。 まとめ・大腸がんの治療法やその合併症、後遺症について 今回は大腸がんについて、その概要と治療の柱である手術について、またその合併症や後遺症についても詳しく解説していきました。 また、直腸がんの術後に起こり得る後遺症である排尿障害や性機能障害について、それらに対する再生医療の可能性も含めて紹介をさせていただいています。これから大腸がんの治療を受けられる方や、実際に治療を受けて後遺症に悩まれている方も多くいらっしゃるかと思います。そういった方々にとって、今回の記事が有益な情報源となれれば幸いです。 参考文献 大腸:[国立がん研究センター がん統計] 大腸がん(結腸がん・直腸がん):[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] Colon Cancer Treatment – NCI Colon cancer - Diagnosis and treatment - Mayo Clinic
2024.08.19 -
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血友病は、一生付き合っていかなければいけない疾患です。 しかし、出血のリスクがあっても、しっかりコントロールできていれば、血友病ではない方と同じような生活を送ることも可能です。適切な治療と予防策で、関節の機能を維持し、生活の質を向上させることができます。 ところが、血友病性関節症を発症してしまうと、痛みや腫れをともない、日常生活にも影響を及ぼします。 今回の記事では、血友病性関節症の基礎知識や症状、治療などについて詳しく解説します。生活の中でできる対策も紹介しますので、血友病性関節症に対し不安を抱いている方は、ぜひ、最後までお読みください。血友病性関節症の知識を深めて、不安や心配事が少ない生活を送りましょう。 血友病性関節症とは? 血友病性関節症とは、血友病患者が関節内で出血を繰り返し起こした場合に発症します。血友病の特徴的な合併症です。ここでは、血友病性関節症の症状や診断、疾患が関節に与える影響について解説します。 症状と診断 関節内出血を起こすと、以下のような症状があらわれます。 関節の痛み 腫れ 熱感 こわばり 違和感 動きの悪さ 重い感じ 関節内は狭いため、少しの出血でも症状があらわれる場合が多いです。血友病性関節症の診断は、関節の状態を検査し評価して診断します。血友病性関節症を疑う場合、以下のような4つの検査をおこないます。 触診 レントゲン検査 MRI検査 超音波(エコー)検査 触診では、関節の可動域や変形を確認します。レントゲン検査では、骨の状況は評価できますが、出血の状況までは把握できません。レントゲン検査で、明らかな所見があらわれる頃には、骨破壊が進んでいる状況と考えられます。MRI検査は、骨だけでなく軟骨やじん帯、滑膜の肥厚など、関節内部を詳しく評価できます。 ただし、MRI検査は撮影に30分ほど時間がかかります。その間、静止していなければならないため、小さな子どもには難しい検査といえるでしょう。エコー検査では、パワードップラー法を用いると、血液の観察をおこない滑膜炎の評価も可能です。これら4つの検査を組み合わせて、関節の状態を評価し診断します。 疾患が関節に与える影響 血友病は、出血を起こしやすい病気です。出血を起こしやすい部位として最も多い関節が、足関節だとされています。 次いで、肘関節、膝関節が出血頻度が高い傾向です。関節内に出血を起こすと、滑膜が働いて、関節内に溜まった血液を取り除こうとします。 しかし、出血が繰り返されると滑膜の働きが追いつかなくなり、滑膜の増殖と炎症を引き起こします。増殖した滑膜は、脆弱で細い血管が多いために出血しやすい状態です。出血を繰り返すと、滑膜の増殖や炎症も繰り返し生じます。 その結果、関節の軟骨を攻撃し、軟骨の破壊や骨の変形を引き起こすのです。 血友病性関節症の治療 血友病の長期的な治療目標として、血友病性関節症を発症しない、進行させないを目標として治療方針を決めていきます。 現在の治療オプション 現在、血友病性関節症の治療の選択肢は、以下の通りです。 定期補充療法 予備的補充療法 出血時補充療法(オンデマンド療法) 基本的にこの3つの治療方法を組み合わせ、状況によって使い分けます。 <定期補充療法> 定期的に血液凝固因子製剤を投与する方法です。出血予防のため、「週に2回」や「5日に1回」など、決められたタイミングで注射をおこないます。使用する製剤の種類や血友病の重症度で注射のタイミングは医師が判断します。 医師の指示通り、忘れず注射しましょう。 <予備的補充療法> 足に負担がかかる予定の前に事前に血液凝固因子製剤を投与しておく方法です。スポーツや出張、遠足、旅行などが予定されている場合、事前に注射をおこないます。血液凝固因子製剤は、効果が持続する時間が短くて12時間程度です。 そのため、予定があるその日の朝に注射しておくとよいでしょう。 <出血時補充療法(オンデマンド療法)> 出血したときに血液凝固因子製剤を投与する方法です。出血時には、できるだけ早く血液凝固因子製剤を投与します。 また、出血の応急処置時に必要な4つの処置(RICE)をおこないましょう。RICEとは、処置方法の頭文字を取ったものです。ここでは、関節内出血をした場合の処置のポイントについて紹介します。 頭文字 処置方法 処置のポイント R (Rest) 安静 • 横になり、出血した部位を動かさないようにし安静にする。 I(Ice) 冷却 • 氷のうで20~30分持続的に出血部位を冷やす。 • 消炎作用がある湿布や冷却シートでもよい。 • 冷やし過ぎに注意する。 C (Compressi on) 圧迫 • 関節内の出血の場合、包帯やサポーターを使用し固定する。 E(Elevation) 挙上 • 出血部位を心臓より高い位置まで上げる。 関節内出血の治療以外に、直接関節内にヒアルロン酸やステロイドを注入する方法もあります。 しかし、感染や出血のリスクをともなうため、メリットが上回る場合のみおこなわれる方法です。 新しい治療法と臨床試験 血友病性関節症の新しい治療法として、「自己骨髄間葉系幹細胞輸注術」と呼ばれる治療法の研究や臨床試験が進められています。この治療で使用される「間葉系幹細胞」とは、骨や血管、心臓の筋肉などに分化することができる幹細胞です。 移植までは以下のような流れでおこなわれます。 事前に採血をおこない血清を準備 骨盤から間葉系幹細胞が含まれる骨髄液を採取 間葉系幹細胞を培養 移植前日に、関節内の滑膜組織を切除し移植環境を整える 間葉系幹細胞が多く含まれている血清を関節内に注入 関節内へ移植をした間葉系幹細胞が、関節軟骨への再生が期待されています。現在は膝関節での臨床試験がおこなわれていますが、今後はその他の関節や適応できる年齢を広げて研究が進められています。 関節保護のための戦略 血友病性関節症は、関節内の出血を繰り返し、関節の骨や軟骨を破壊します。 そのため、破壊され続けると、血友病患者は将来的に人工関節を入れる可能性が高くなります。人工関節は10年~15年で入れ替えが必要です。 早い段階で人工関節を入れると、その後に何度か入れ替えの手術が必要になります。人工関節を入れるまでの期間を延ばせれば、手術回数も少なくなります。そのため、日常の中でできる関節の保護や関節の健康を保つ運動、予防策など、関節のケアが重要です。 日常活動での関節保護テクニック 日常活動の中で、出血を起こさないために関節保護はとても大切です。関節保護には以下のようなポイントがあります。 血液凝固因子製剤の投与 定期健診 出血後の対応 適度な運動 患者の状態や生活スタイルを考慮して、血液凝固因子製剤の投与量や間隔を決めていきます。 そのためには、定期的に検査をおこない、関節の評価も必要なため、定期検診は欠かさず行きましょう。また、関節の保護には出血後の対応や管理も重要です。出血があった場合や出血した可能性がある場合には、血液凝固因子製剤を投与し、RICE処置をおこないます。 しかし、出血が治まり痛みや腫れなどの症状が消失すれば、適度な運動をして筋力をつけていくことも大切です。 関節の健康を保つ運動と予防策 関節の健康を保つためには、適度な運動が必要です。血友病患者は、「出血したらどうしよう」と不安な気持ちを抱えています。 しかし、出血を起こさないようにと安静にばかりしていると、筋力が衰え、筋肉の委縮を引き起こします。また、そのように筋肉が健康な発達をしていない関節は出血しやすい傾向です。 出血や症状が治まっているときには、出血の予防策を十分にしてから適度な負荷をかけ、運動をおこないましょう。出血予防は、血液凝固因子製剤の予備的補充投与をしてから運動をします。 運動は内容によっては、出血リスクが高いものがあります。水泳やアクアビクス、サイクリング、筋トレなどは、比較的負荷が少なく出血リスクが少ない傾向です。 しかし、ラグビーやレスリング、ボクシングなどは負荷が高く、出血リスクも高くなります。サッカーや野球、バスケットボールなどのスポーツは、運動強度に幅があるため、自己判断は難しいでしょう。 また、負荷が少なく出血リスクが少ない運動でも、血友病の重症度や関節の可動域、出血コントロールの状況など、人によりさまざまです。そのため、運動を始める際には、必ず整形外科医や理学療法士と、どの程度の運動から取り組むか相談してからおこないましょう。 生活の質を向上させるための日常生活での調整 血友病性関節症では、出血の予防だけでなく、食事やストレスなどさまざまな面でも調整が必要です。どのようなことに注意や意識をして生活をするか、生活の質を向上させるポイントを紹介します。 食生活と栄養 食事は、規則正しく栄養バランスを考えた食事をするよう心がけましょう。肥満は、関節や骨に大きな負担をかけます。 適切な体重を維持するよう、食べ過ぎに注意し、適度な運動を取り入れましょう。急なダイエットも関節には負担がかかるため、体重のコントロールについて、主治医と相談すると安心です。また、血友病患者は骨粗しょう症になる傾向があります。カルシウムやビタミンDの摂取、日光浴をおこない、骨粗しょう症の予防をしましょう。 ストレス管理と精神的健康のサポート 血友病性関節症の患者は、日常生活の中でも気を付けることや制限があり、ストレスを感じる場面が多いでしょう。一般的に、ストレスが溜まっているサインは以下のような症状があらわれます。 イライラしやすく怒りっぽくなる 食欲がなくなる 気分が落ち込みやる気が起きない 寝つきが悪くなり夜間に目が覚める ストレスをうまく発散し、ため込まないことがポイントです。ストレスによる症状がある場合、まずは、主治医に相談してみましょう。必要であれば、心療内科やカウンセリングを受け、精神的に安定して過ごすことが大切です。血友病患者には、血友病患者にしかわからない悩みや不安もあります。ほかの血友病患者との繋がりをもってみると、悩みが共有でき不安が解消できるかもしれません。 患者と家族への支援 血友病患者には血友病患者にしかわからない、悩みや不安があるでしょう。家族もまた同じです。そのような方々の集まりに参加してみてはどうでしょうか。さまざまな年齢の血友病患者とのコミュニケーションは、悩みや不安が共有でき、有意義な情報交換の場となるでしょう。 コミュニティリソースとサポートグループ 血友病患者が利用できる、コミュニティリソースやサポートグループは、以下のようなものがあります。 血友病友の会(ヘモフィリア友の会) 世界血友病連盟(WFH) 血友病患者のためのオープンチャット さまざまなコミュニティリソースやサポートグループがあります。血友病友の会(ヘモフィリア友の会)は、加盟する患者会が全国にあります。また、世界血友病連盟は、世界の血友病患者のコミュニティです。 海外在住の方には、心強い情報源となるでしょう。血友病患者のためのオープンチャットもあります。匿名で参加できるため、身近な人にできない相談事も気軽にできるところが利点です。 ただし、オープンチャットは誰でも参加できるものなので、情報の信憑性には注意が必要です。 長期的な健康管理の重要性 血友病は、長く付き合っていく病気であり、血友病性関節症はその後の生活の質(QOL)を大きく左右します。そのため、長期的な健康管理が非常に重要です。 無理をしたり、出血の管理をおろそかにすれば、関節内の出血が繰り返され、人工関節をいれなければならなくなります。人工関節の入れ替えをする回数を減らすためにも、人工関節にするのはできるだけ遅い方がいいでしょう。 また、出血を恐れ、安静にばかりしていても、骨や筋肉が衰えていきます。肥満になれば、関節への負担も大きくなります。出血しないよう血液凝固因子製剤の投与を忘れずにおこない、負荷が高くなる予定があれば、予備投与しておくなど対策が大切です。 長期的に健康管理をおこなうことで、血友病性関節症の発症を遅らせたり、発症しても進行させないようにしたりできるでしょう。 結論 血友病性関節症は、血友病患者にとっては身近であり心配な合併症です。しかし、血液凝固因子製剤の投与や出血時の適切な対応をおこなえば、骨破壊を抑え、血友病性関節症の発症や進行を遅らせることができるでしょう。 血友病性関節症は、適切な治療と予防策をおこなえば関節の機能を維持して、生活の質を向上させることが可能です。普段との違いや関節の違和感などがある場合は、早めに受診しておくと安心です。なにかあれば、まずは主治医に相談しましょう。 参考文献一覧 血友病性関節症診療のポイント-病態から治療・ケアまで 血友病ハンドブック 血友病性関節症を防ぐ5つのポイント 血友病性関節症への挑戦 関節の検査と評価の最新情報 血友病性関節症に対する自己間葉系細胞移植治療の開発 血友病患者における運動とスポーツ 患者中心医療の可能性:患者会の現在と将来
2024.07.10 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
帯状疱疹後神経痛(PHN)は、帯状疱疹の合併症の中で最も頻度が高いと言われています。「触れただけで痛みを感じる」「ピリピリと電気が走るような痛みが続く」などの症状が現れるため、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。 この記事では、帯状疱疹後神経痛や治療法などについて説明しています。 病院で行う治療はもちろん、自分でできるケア方法についても説明していますので、自分に合った痛みの緩和方法を見つけ、生活の質を下げないようにしていきましょう。 帯状疱疹後神経痛とはどんな病気か 帯状疱疹について 帯状疱疹とは、水痘帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる病気です。はじめて水痘帯状疱疹ウイルスに感染した場合、水ぼうそうという病気で発症します。 このウイルス、実はとても厄介であり、水ぼうそうが治ったあともウイルスが体の中から消えることはありません。神経節と呼ばれる神経細胞が集まっている部分に身を潜め、再び活発になる機会をうかがっています。このとき、症状が現れることはありません。 そして、加齢や疲労、ストレスなどで免疫力が下がると、潜んでいたウイルスが表に出てきてしまい、帯状疱疹を発症します。そのため、水ぼうそうに一度でもかかった人は、帯状疱疹を発症する可能性があります。 年齢を重ねると発症しやすいと言われている病気ですが、若い人でも免疫力が下がれば発症することがあります。 帯状疱疹の症状は、ピリピリとした痛みや小さな水ぶくれ(水疱)、皮膚の赤みなどです。皮膚の症状が出てからすぐに治療を開始することが望ましく、早めに病院を受診する必要があります。治療は抗ウイルス薬の投与です。また、痛みがあれば鎮痛剤を服用することもあります。 帯状疱疹後神経痛について 帯状疱疹後神経痛とは、帯状疱疹を発症した後、皮膚の症状が治まったにもかかわらず痛みが残ってしまう病気です。 帯状疱疹の合併症の中で1番多いと言われています。合併しやすい人は、高齢者や女性、帯状疱疹を発症している時に痛みが強かった人などです。 帯状疱疹後神経痛の原因は、水痘帯状疱疹ウイルスが活性化した時に神経が傷つけられることで発症すると考えられています。そのため、痛みを感じやすくなったり、神経の過剰な興奮によって痛みが現れたりすることがあります。 帯状疱疹後神経痛の症状は、下記の通りです。 持続的な痛みがある ヒリヒリと焼けるような痛みがある ピリピリと電気が走るような痛みがある 触れるだけで痛みを感じることがある(アロディニア) 痛みがある部分の皮膚の感覚が鈍くなる 痛みの程度は人によって違います。そのため、痛みによって眠りが浅くなったり、動くと衣服が擦れて痛かったりと、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。 痛みは1ヶ月~2ヶ月程度で治まってくることが多いですが、長い場合は1年以上続くこともあります。また、高齢であればあるほど痛みが続きやすいと言われています。 治療の概要について 帯状疱疹後神経痛の治療はさまざまです。以下、治療の概要について説明します。 薬物療法について 主な治療は薬物療法です。 帯状疱疹後神経痛を合併した方は、帯状疱疹を発症した段階から痛みが強い方が多いです。よって、引き続き痛みを抑える薬を服用します。また、抗うつ薬や抗てんかん薬の服用も開始します。 薬の効果は人によって異なります。比較的早い段階で痛みが取れたという人もいれば、なかなか痛みが緩和されないという人もいます。そのため、痛みの程度を聞きつつ、どの程度まで痛みを緩和させるかを医師と相談しながら決める必要があります。 その他の治療法について 薬物療法を行っても痛みが持続している場合は、ほかの治療法を検討する必要があります。 例えば、神経ブロック注射や脊髄刺激療法などがあります。 その他にも、さまざまな治療がありますが、人によって治療の効果の現れ方や持続期間が異なります。そのため、自分に合った最適な治療法を選択することが大切です。 自宅でできる痛みのケアを行う必要性 帯状疱疹後神経痛は神経へのダメージが大きいと、改善に時間がかかることがあります。また、痛みは個々によって程度や感じ方が違うので、治療によって完全に痛みを取り除くことは難しい方も多いです。 そのため、自宅でできる痛みのケアを行いつつ、できるだけ生活の質を下げないようにすることが大切です。 帯状疱疹後神経痛のよりよい治療を選択するために 帯状疱疹後神経痛の治療法について 治療の基本は薬物療法です。しかし、薬だけでは痛みが緩和されないことも多く、さまざまな治療法を組み合わせる必要があります。 主な治療法をご紹介します。 薬物療法 神経ブロック注射 脊髄刺激療法(SCS) イオントフォレーシス 低出力レーザー照射療法 運動療法 〈薬物療法〉 痛みや神経の興奮を薬でコントロールする治療です。 帯状疱疹後神経痛は神経の痛みであり、適切な薬を医師に処方してもらう必要があります。 主に使われる薬は、以下の通りです。 抗うつ薬 抗てんかん薬 神経障害疼痛に用いる鎮痛薬 オピオイド鎮痛薬 帯状疱疹後神経痛の痛みに対し、使われる薬は効果や副作用などのバランスによって第一選択薬、第二選択薬、第三選択薬と分かれています。 まずは、抗うつ薬や抗てんかん薬、神経障害に用いる鎮痛薬の服用で様子をみます。痛みの緩和がはかれない場合は徐々に選択範囲を広げ、より強い鎮痛効果を示す薬を使用します。とくに、オピオイド鎮痛薬は効果が強い薬です。オピオイド鎮痛薬以外の薬では痛みの緩和ができない場合に使用され、適応条件もあります。注意点として、腎機能が悪い人には使用できません。 〈神経ブロック注射〉 痛みを感じる神経やその周囲に局所麻酔薬を注射する治療です。 痛い部位がはっきりと分かっている場合は、注射後すぐに効果を実感できます。また、飲む薬とは違って直接的に痛みに効くため、より痛みの緩和につながります。 神経ブロック注射の持続効果は、人によって異なります。1日しか効かないという人もいれば、数日効果が持続する人もいます。しかし、早めに神経ブロックを行うと、治療の効果が高まると言われています。 入院の必要はなく、外来で行えます。 注意点として、血をサラサラにする薬(ワーファリン、バイアスピリンなど)を使用している場合は、針を刺したときに出血が止まらないことがあるため、行えないことがあります。 〈脊髄刺激療法(SCS)〉 脊髄に微弱な電流を与え、脳に伝わる痛みを妨げる治療法です。 通常、体に痛みを感じると神経を通じて痛みの信号が脊髄から脳に伝わります。この神経路に微弱な電流を流すと脳に痛みが伝わりにくく、痛みの緩和につながります。 体の中に脊髄刺激リードと刺激発生装置を埋め込む手術が必要になるため、入院が必要です。手術は局所麻酔で行われ、1回の入院期間もそこまで長くありません。 〈イオントフォレーシス〉 薬をより深い部分に浸透させて痛みを和らげる治療です。 局所麻酔薬を浸透させたパットを痛みのある部分に貼り付け、微弱の電流を流します。電流によって薬がイオン化すると皮膚の深い部分へと浸透し、痛みを和らげます。 皮膚表面だけではなく、神経を伝達する深い部分にまで薬が浸透するため、脳に痛みを伝えにくくする効果もあります。 治療時間は15分程度であり、外来で行えます。また、痛みを伴わない治療であり、注射に抵抗のある人にも行えます。 一度の治療で痛みを和らげることは難しく、根気よく治療を続けることが必要です。 〈低出力レーザー照射療法〉 痛みがある部分にレーザーを当て、痛みを和らげる治療法です。 レーザーによって血行がよくなると痛みを感じにくくなります。また、痛みによって興奮している気持ちを落ちつける効果もあります。 痛みを伴わない治療であり、注射に抵抗のある人にも行えます。 痛みがより強い人に対し、通常の治療に追加して行うことが多いです。 〈運動療法〉 痛みによって過度に活動が制限された場合に行われます。 痛みに対するストレッチやエクササイズを理学療法士などと一緒に行います。痛みの軽減に加えて痛みへの恐怖も取り除き、活動の幅を広げます。 副作用と対処法について 治療方法 副作用 対処法 鎮痛剤 薬によって副作用が異なります。 オピオイド鎮痛薬の場合、吐き気や便秘、眠気などが現れます。 薬を処方された時に副作用を確認し、症状が出た場合はすぐに医師に相談しましょう。 薬が効きすぎている場合もあるため、医師と相談しながら薬のコントロールを行います。 神経ブロック注射 副作用は、飲み薬と比べて少ないですが、下記のようなものが現れることがあります。 注射部位の痛みや出血、感染 投与する薬に対するアレルギー 注射部位に異常があったり治療後の体調不良が現れたりした場合は、すぐに医師に相談しましょう。 イオントフォレーシス 副作用はほとんどありません。 ー 脊髄刺激療法 (SCS) 脊髄刺激リードと刺激発生装置は、HI調理器などの強い電磁波や金属探知機や盗難防止装置に反応することがあります。電源が切り替わったり、刺激を強く感じてしまうため、注意が必要です。 体に刺激装置を埋め込むため、使用方法によっては破損ややけどのリスクがあります。 HI調理器や金属探知機などを使用する場合は、できるだけ距離を取ったり一時的に電源を切るなどの対応が必要です。 また、刺激装置に強い衝撃を与えないようにしましょう。特に埋め込み手術直後は装置が動きやすく、注意が必要です。 低出力レーザー照射療法 副作用はほぼありませんが、照射部位の乾燥や軽度のかゆみが現れることがあります。 皮膚の症状が現れたら、医師に相談しましょう。 治療における経済的負担について さまざまな治療がありますが、保険で行えるものと保険適応外のものがあります。 薬物療法や神経ブロック、脊髄刺激療法は、保険適応されます。一方、レーザー治療、イオントフォレーシスは比較的新しい治療法であり、保険適応外になります。 保険適応外の治療法は、金銭的な負担が大きくなりやすいのが現状です。医師とも相談しながら金銭的な面も含めて、最適な治療法を選択する必要があります。 生活の質の向上と痛みの管理について 帯状疱疹後神経痛の痛みをより和らげるために、日常生活でも工夫が必要になります。 日常生活での工夫 自分でできる日常生活での工夫は以下の通りです。 体を温める、冷やさない 痛みのある部位を刺激しない 痛み以外のことを考える 生活リズムを整える 〈体を温める、冷やさない〉 体を温めると血行がよくなり、痛みが軽くなることがあります。温かい湯船にゆっくりつかり、全身を温めましょう。入浴はリラックス効果も期待できるため、おすすめです。 また、患部にホットタオルを当てることも有効です。ただし、感覚が鈍くなっていることもあるので、熱くなりすぎないよう注意しましょう。 〈患部を刺激しない〉 患部への刺激は、痛みの悪化につながります。チクチクとした素材や金属などが付いている服は着用しないようにしましょう。服は肌に優しい素材を選び、装飾が付いていないシンプルなものを選ぶと刺激が少なくなります。 それでも服がこすれて痛い場合は、さらしや包帯を巻く方法もあります。注意点として、さらしなどがずれてしまうと刺激の原因となります。きつめに巻き、緩んだら締めなおすようにしましょう。 〈痛み以外のことを考える〉 痛みは精神面との関連が深く、帯状疱疹後神経痛の患者さんは不安や抑うつ傾向の方が多いと言われています。 そのため、痛みのことを考え続けるのではなく、自分の好きな仕事や趣味などを積極的に取り入れ、痛み以外のことを考える時間を作りましょう。 また、痛みを回避しようと行動を制限してしまい、活動の幅が狭くなることが多いです。痛みに対する恐怖や不安を抱えている方がいるかもしれませんが、じっとしていることで筋肉が固まり、痛みを感じる原因となります。少しでも痛み以外のことを考えられるよう、外の空気を感じながら散歩することもおすすめです。 〈生活リズムを整える〉 帯状疱疹後神経痛の痛みは、疲労やストレス、睡眠不足などで悪化しやすいと言われています。日頃から規則正しい生活を送り、免疫力が低下しないよう体の調子を整えましょう。しんどいと感じたら、すぐに休息を取れるようにしておくことも大切です。 心理的サポートの重要性 帯状疱疹後神経痛の患者の中には不安などを抱えている方が多くいます。 痛みを感じ続けると何をするにも億劫になり、気持ちが塞ぎ込みやすくなります。また、痛みばかり考えていると精神的に辛くなり、精神疾患を発症する恐れもあります。 ペインクリニックでは、メンタルケアを含めた治療を行っています。もし精神的な辛さを感じているのであれば、一般的なクリニックではなくペインクリニックの受診もおすすめです。 痛みと向き合いながら最適な治療を選択しよう 帯状疱疹後神経痛は痛みは、感じ方や程度が個々によって違います。そのため、治療の効果や副作用などを踏まえ、自分にとって最適な治療法を選ぶことが大切です。 また、治療とともに自宅でできる痛みのケアも実施し、日常生活への支障を最小限にしましょう。 参考文献一覧 日本ペインクリニック学会.”ⅢーA帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛”|第3章 各疾患・痛みに対するペインクリニック治療指針p095ー100 日本ペインクリニック学会.”神経ブロック”|日本ペインクリニック学会 日本定位・機能神経外科学会.”脊髄刺激療法(SCS)”|日本定位・機能神経外科学会 日本臨床麻酔科学会vol.28.”帯状疱疹後神経痛に対する薬物療法”|J-STAGE.2008/6 日本臨床麻酔科学会vol.28.”帯状疱疹後神経痛の多面的治療はここまで進んでいる”|J-STAGE.2008/6 日本ペインクリニック学会.”オピオイド”|日本ペインクリニック学会 日本ペインクリニック学会誌.”帯状疱疹後神経痛患者の精神・心理的評価”|J-STAGE.2007 日本ペインクリニック学会誌.”帯状疱疹後神経痛で自殺を企図した1症例”|J-STAGE.2012
2024.06.24 -
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肝嚢胞とは、肝臓の組織に液体がたまって袋状になったものです。 健康診断や人間ドックで発見されるケースが多く、実際に約5人に1人の割合で健康診断の検査項目に含まれる腹部超音波検査で肝嚢胞が見つかるデータもあります。(文献1) そのため、突然の診断に不安をもつ方もいるのではないでしょうか。 肝嚢胞の多くは良性で無症状のケースが多い傾向にあります。しかし、肝嚢胞が大きくなったり、肝嚢胞が炎症を起こしたりすると腹痛や発熱などの症状を引き起こす可能性もあります。症状に応じた適切な治療を選択できるように、肝嚢胞の特徴をよく理解しておきましょう。 本記事では、肝嚢胞の原因や症状などを詳しく解説します。治療法も紹介しているので、肝嚢胞の診断を受けて不安を感じている方は参考にしてみてください。 肝嚢胞(肝のう胞)とは 肝嚢胞とは、肝臓にできる液体がたまった袋状のものを指します。 出典:Liver Cyst Symptoms & Treatment | Nexus Surgical 肝嚢胞の種類は、大きくわけて以下の2つです。 ・孤発性肝嚢胞 ・多発肝嚢胞 「孤発性肝嚢胞」は、肝嚢胞の数が1〜3個程度で単発的に発生する肝嚢胞です。肝嚢胞の大きさが5cm以下程度の小さいものであれば無症状のケースが多くなります。 まれにサイズが5〜10cmを超えるような大きい肝嚢胞もできます。このサイズになると、周りの臓器が圧迫されてお腹が苦しくなったり、腹痛を感じたりする場合があるので覚えておきましょう。ただし、肝臓自体への影響は少なく、血液検査で肝機能の異常が見つかるケースはほとんどありません。 「多発肝嚢胞症」は、肝嚢胞が肝臓に多発する病気です。こちらは孤発性とは異なり、嚢胞の数が増えたり大きくなったりするケースが多く、それによる周囲への圧迫症状が見られやすくなります。また、嚢胞内の感染や出血で炎症を引き起こし発熱や肝機能異常をおよぼす可能性もあります。 肝嚢胞以外の脂肪肝や肝硬変、肝炎といった肝臓の病気には「再生医療」の治療法が効果的です。再生医療とは、人間の自然治癒力を活用し、損傷した肝臓の組織を修復する最新の医療技術です。 詳しい治療方法や効果が気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 以下の記事では、肝臓の働きや肝臓の病気について解説しています。詳細が気になる方は、参考にしてみてください。 肝嚢胞の原因 肝嚢胞の発生原因は、現時点では明確にわかっていません。 肝嚢胞ができるのは40歳から60歳の女性に多いことから、女性ホルモンの1種であるエストロゲンが関連しているという説があります。 以下の記事では、女性に多い肝臓の病気を解説しています。検査方法や合併症に関する情報も紹介しているので、詳細が気になる方はあわせてご覧ください。 なお、肝嚢胞は、エキノコックスという寄生虫の感染によって肝嚢胞ができるケースがあります。エキノコックスは、キツネやイヌの糞に含まれており、口を介して感染します。(文献2) 肝嚢胞の症状 くりかえしですが、肝嚢胞はほとんどが良性なので、肝嚢胞そのものが体に悪い影響をおよぼす可能性は高くありません。 肝嚢胞が5cm以下ほど小さめのサイズであれば、無症状のケースが大半です。 5〜10cmを超えるような大きいサイズの肝嚢胞になると、周りの臓器を圧迫してお腹が苦しくなったり、腹痛を感じたりする場合があります。 また、嚢胞内の感染や出血で炎症が起これば、発熱や肝機能異常を引き起こす可能性があります。症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。 肝嚢胞の検査 冒頭で述べた通り、肝嚢胞は健康診断や人間ドックの腹部超音波検査検診で見つかるケースが多い傾向にあります。つまり、腹部超音波検査検診は肝嚢胞を発見する有効な検査といえるでしょう。 ほかには、腹部CTやMRIによっても確認できます。 CTやMRIでは、嚢胞の壁や嚢胞液の性状を詳しく調べられる検査です。超音波検査で嚢胞の性状が通常と異なっている場合や、嚢胞に対して治療を検討する場合にさらに詳しい情報を得るための検査としておこなわれます。 肝嚢胞の治療法 肝嚢胞は、圧迫症状がなければ治療はおこなわず、経過観察で良いものになります。 肝嚢胞のサイズが大きく圧迫による腹部症状をきたしている場合や、嚢胞内感染などを起こしている場合には治療をおこないます。 治療方法は、注射で嚢胞内の液を吸引して肝嚢胞を縮小させる方法です。超音波で嚢胞を確認しながらおこないます。その後、エタノールを注入して嚢胞内に再び液体がたまらないようにします。 根本的な治療としては、嚢胞を切開、切除する手術です。近年では腹腔鏡による手術もおこなわれ、より体に負担の少ない治療方法が広まっています。 傷付いた肝臓組織を修復する治療法の1つに「再生医療」があります。人間の自然治癒力を活用した治療なので、手術のように身体への大きな負担はありません。 詳しい治療方法や効果が気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 まとめ|肝嚢胞への理解を深めて適切な対応をとろう 肝嚢胞は多くの場合、無症状で偶然見つかるもので、症状がなければ経過観察で良いものになります。したがって、肝嚢胞と診断されても極端に心配する必要はありません。 しかし、大きい嚢胞では腹痛やお腹の圧迫感の症状が現れることがあるほか、まれにがん化する事例も報告されています。気になる症状があれば早めに専門の医療機関に相談しましょう。 損傷した肝臓組織を修復するなら「再生医療」がおすすめです。本来なら手術しなければいけない状態でも、再生医療で治療できる可能性があります。 詳しい治療方法や効果が気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 肝嚢胞に関するよくある質問 最後に肝嚢胞に関するよくある質問と回答をまとめます。 肝嚢胞が何センチになったら手術が必要ですか? 手術の必要性を判断する明確なサイズの基準はありません。 嚢胞のサイズよりも、症状の有無や生活への影響が重要な判断材料となります。たとえば、嚢胞が腹部を圧迫して腹痛が生じたり、胃を圧迫して食欲不振になったりするなどです。 注射で肝嚢胞の液体を吸引する治療法もあるので、専門医と相談して自分の状態に合った治療法を選択していくのが良いでしょう。 肝嚢胞になったらどうすればいいの? 肝嚢胞と診断を受けた時点で、担当医に今後の治療方針を相談しましょう。 無症状であれば、定期的な経過観察を推奨される可能性があります。肝嚢胞がほかの臓器を圧迫して圧迫感や痛みを感じる場合は、注射吸引による液体の除去や肝嚢胞を切開・切除する手術などが進められます。 肝嚢胞でがんを発症するリスクはありますか? 肝嚢胞が、がん化した事例も報告されています。(文献3) がんの場合、早期発見が重要になります。体調不良や身体の違和感が長期間続く場合は、迷わず医療機関で検査を受けましょう。 参考文献 文献1:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/65/1/65_15-10/_pdf 文献2:https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/338-echinococcus-intro.html 文献3:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsa/68/3/68_3_654/_article/-char/ja/
2024.05.09