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ヘルニア治療、PLDDの術後後遺症に対する最新治療とは!? PLDDは、頚椎および腰椎の椎間板ヘルニアの手術のなかでも最小と言っていいほど体への負担が少ない術式です。 しかし、どんなに画期的な手術であっても、術後に後遺症が残る可能性はゼロではありません。特に懸念すべきは神経障害による痺れ、痛み、麻痺などの症状です。 神経障害を改善するために行なった手術で神経障害が悪化してしまうのは不幸なことです。こうした術後後遺症に対して、最新治療である「再生医療」が吉報となるかもしれません。 本記事では、PLDDの概要と起こりうる術後後遺症、そして後遺症に対する最新治療についてご説明します。 椎間板ヘルニアの機序と治療、手術になるのはどんな時? 脊椎の中には、 太い神経の束である脊髄が走っています。脊髄からは運動や感覚を司る神経が出ています。重なる脊椎と脊椎の間には椎間板というクッション材が挟まっており、 椎間板の中央部には柔らかいゲル状の「髄核」があります。 椎間板ヘルニアとは 、この髄核が椎間板の外に飛び出す疾患です。飛び出したヘルニアが脊髄から伸びる神経の根本を圧迫してしまうと、「びりっ」とした痛みを感じるようになります。 症状が進行すると神経へのダメージが大きくなり、感覚障害や麻痺を起こしたり排尿障害が起こることもあります。しかし、重症化することはごく稀です。椎間板ヘルニアの多くは自然に縮小していく疾患 です。 たとえば、 腰椎椎間板ヘルニアは症状がある人の60%以上で吸収されると言われています。頚椎でも腰椎でもほとんどの椎間板ヘルニアと診断された方は、手術を受けることはありません。3ヶ月ほどの保存療法で自然と痛みが取れてくるのです。 では、不幸にも良くならなかったらどうなるのでしょう。保存療法でも改善しない痛みが続く場合や、麻痺・排尿障害をきたす場合は手術が行われます。 手術となると、「全身麻酔が大変」「術後は安静にしなければならない」「傷の痛みに耐えながら回復を待つ 」というイメージがあるかもしれません。 しかし、そのイメージと全く異なり、体への負担を最小限に抑えられる術式があります。それは、PLDD:Percutaneous Laser Disc Decompressionです。日本語では「経皮的レーザー椎間板減圧術」と呼ばれています。 PLDDってどんな手術? PLDDはレーザーを用いて椎間板の中央部にある髄核に照射して 、椎間板内の圧力を減少させる手術です。髄核が焼かれた後の空洞は縮もうとするため、時間経過とともにヘルニアは自然と小さくなっていきます。 椎間板内にレーザーを照射するのみであれば、メスや針・糸は不要です。細い針を刺せばレーザーファイバーを通すことができます。そのため、PLDDを行ってもほんの小さな刺し傷しか残りません。 安静も短くて済むため、日帰り手術をしている医療機関 も少なくありません。 PLDDの合併症について 体への負担の少なさについて強調されがちなPLDDですが、医療行為である以上は治療の合併症とは切っても切り離せない関係にあります。 特に深刻な術後後遺症を残すのが神経障害です。本来は神経の圧迫を改善するための手術なので、時間経過とともに痺れ・痛みなどは良くなるはずです。症状が術後に悪化している場合には神経障害の可能性が考えられます。 神経障害が起こる要因にはいくつかの可能性があります。ひとつはレーザーファイバーを入れる際に針で神経を傷つけてしまうことです。 次に、レーザーの誤照射により、神経がレーザーに当たってしまう可能性も否定できません。他に懸念されるのは、レーザーの熱などの間接的な要因でも神経障害が起こる可能性です。 実際にレーザー照射を直接受けていないはずの近くの骨が壊死を起こしてしまった例が報告されています。 術後後遺症の神経障害に対する再生医療の可能性とは 最新の再生医療である「幹細胞治療」がPLDD術後後遺症への新たな希望となるかもしれません。 従来、神経が傷ついてしまうと完全にもとに戻すことは難しいとされてきました。そのため椎間板ヘルニアの術後後遺症が残ってしまっても、薬やブロック注射などの対症療法を行うことしかできませんでした。 しかし、最新治療の幹細胞治療が神経を回復させてくれるのではないかと期待されています。幹細胞治療では、どんな細胞にも変化できる万能細胞の「幹細胞」 を使用します。幹細胞を投与することにより、傷ついた組織の再生が促されるのです。 まとめ・PLDD術後後遺症に対する最新治療とは! PLDDの概要と合併症のリスク、そして術後後遺症に対する最新治療についてご説明しました。 合併症が起こらないことが一番ですが、万が一起こってしまった時にどのような治療の選択肢があるか知っておくことは重要です。 当院では、PLDDをはじめとした椎間板ヘルニアの術後後遺症に対して、幹細胞治療を行っております。当院ではフレッシュで生き生きとした細胞を多く届けることができるように2つの工夫をしております。 ひとつは細胞の保存や輸送のプロセスにおけるものです。細胞を凍結せずに保存・輸送を行なっているのです。多くの病院の細胞加工室では細胞を保存、輸送する際に凍結してしまいます。 しかし、冷凍された幹細胞は弱くなり、 解凍時の生存率が大きく低下します。 当院では細胞の凍結を行わないため、新鮮で強い細胞が投与可能なのです。 もうひとつは細胞の投与方法です。当院では損傷した脊髄に対して直接幹細胞を投与できる「脊髄腔内ダイレクト注射療法」を行なっております。従来は脊髄の障害があるときの幹細胞投与は点滴でした。 当院では点滴の他に「脊髄腔内ダイレクト注射療法」を行うため、脊髄に届く幹細胞の数がより多くなります。 https://www.youtube.com/watch?v=5JqLxbYwLJ4&t=3s ▶PLDDをはじめ、椎間板ヘルニアの手術における術後後遺症でお悩みであれば、一度当院へご相談ください。 参考文献 日本整形外科学会 パンフレット 「整形外科シリーズ2 腰椎椎間板ヘルニア」 佐藤正人, 石原美弥, 荒井恒憲, 菊地眞, 持田譲治. 日本レーザー医学会誌 31(2): 146-151, 2010. 腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021 改訂第3版. 宮本雅史, 中嶋隆夫. 日内会誌 105:2210-2214, 2016. Tonami H, et al. AJR Am J Roentgenol 173 : 1383―1386, 1999. ▼以下もご欄になりませんか PLDDの有効性と術後の痛みや経過について
2024.03.08 -
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PLDD治療と費用、再生医療の可能性について解説します 椎間板ヘルニアは多くの人々が抱える健康問題であり、その治療法は常に進化を続けています。そこで近年、注目を集めているの先進医療をご紹介いたします。それが「PLDD(Percutaneous Laser Disc Decompression )」といわれるもので日本語に直すと「経皮的レーザー椎間板減圧術」といわれるものです。 この治療法は、レーザーを用いて椎間板の圧力を軽減し、痛みを和らげるもので、従来の手術に比べて身体への負担が少ないことが特徴というものです。 本記事では、PLDDについてと、その治療メカニズムと併せて気になる健康保険の適用や医療費控除の適用、費用に関する解説をします。 また後遺症の治療における再生医療の可能性について詳しく解説します。 PLDDとは PLDDは、1980年代初頭に開発されたレーザーを用いた最新の治療法です。主に頚椎や腰椎の椎間板ヘルニアに対して行われます。 治療は局所麻酔のもと、針を椎間板に挿入し、レーザーを照射して椎間板内の圧力を低下させ、ヘルニアを小さく縮ませることで神経の圧迫を押さえて痛みを軽減させるものです。 この方法の大きな利点は、局所麻酔下で行うことができるので入院の必要がなく、日帰りで行えるため、患者の負担が少ないことです。従来の外科手術に比べて侵襲が少なく、術後の回復も早いという利点もあります。また針を刺して行うため傷口が大きくならない点も利点です。 手術もレーザー用の注射痕程度になるため、感染による合併症の心配も少ないと言えます。 PLDDが最も適応するのは、「膨隆型(ぼうりゅうがた:椎間板が膨らんだような形になり、神経を少し圧迫しているタイプのヘルニア)」とされています。 ただし、椎間板の変性が進んでしまったケースでは、PLDDを行っても椎間板ヘルニアの症状が改善しないことがあるようです。 PLDDの利点 ・治療:レーザーによる手術 ・入院:不要(日帰りで可能) ・手術痕:レーザーを照射するための針穴のみ ・手術:局所麻酔 ・手術:合併症(細菌感染等)の可能性が低い レーザー治療の仕組み PLDD治療は、局所麻酔のもとで行われます。まず、針を椎間板に挿入し、その後レーザーをファイバーを通して照射します。レーザー光によって椎間板内の水分が蒸発し、ヘルニアが縮小するため、神経への圧力が減少します。これにより、神経根への圧迫が緩和され、痛みが軽減されるという仕組みです。 治療時間は約30分程度で、多くの場合は日帰りでの治療が可能です。 PLDDの費用と保険適用の現状 PLDDの費用は、クリニックによって異なりますが一般的には30万円から50万円程度が相場とされています。現在、PLDDは日本では健康保険の適用外となっています。そのため、治療費は全額自己負担となりますが、医療費控除の対象となる可能性があります。 医療費控除とは、一定期間内に支払った医療費が一定額を超えた場合、その超えた分について所得税から控除される制度です。PLDDの治療費も、他の医療費と合わせて年間10万円を超える場合は医療費控除の対象となる可能性があります。しかしながら、医療費控除を受けるためには確定申告が必要です。 ・健康保険:適用外 ・費用感:30万円~50万円 先進医療とPLDD 頚椎椎間板ヘルニアに対するPLDDは、厚生労働省による先進医療の指定を受けていましたが、数年前に取り消されています。 その理由としては、PLDDは日本での普及がまだ進んでいないからといったものです。 しかし、その後もPLDDの効果や安全性については多くの臨床研究によって実証されており、今後は保険適用の対象となることが 期待されています。 PLDDはどんな病院で受けられるのか PLDDを受けられるクリニックは全国にありますが、施設によって技術や設備に差があります。 治療を受ける際には、事前に情報を収集し信頼できる施設 を選ぶことが重要です。また、治療後のフォローアップ体制も確認しておくと安心です。 後遺症の治療と再生医療 PLDD治療は、傷口も少なく身体に与える負担はとても小さい治療です。そのため、PLDDそのものによる後遺症はほとんどないと考えられます。 その一方で、ヘルニアそのものによる症状が残ることもあり、後遺症となってしまう場合があります。このようなヘルニアの後遺症に対しては、脊髄神経の再生を目的とする再生医療 による治療が有効な場合があります。 再生医療では、患者自身の幹細胞を用いて損傷した脊髄神経の再生を目指します。具体的には、患者様ご自分の血液や脂肪を採取し、培養「自己間葉系幹細胞 」として損傷部位に投与するものです。 この自己間葉系幹細胞 には、脊髄神経の再生を促したり 、部分的に再生したりするといった能力があるとされますが、厚生労働省の許認可が無ければできない先端医療です。 https://www.youtube.com/watch?v=GcUDE6GCblE まとめ・PLDD治療と費用、再生医療の可能性について 今回は、PLDDはどのようなものなのか、費用、保険適用、医療費控除、どのような病院で受けられるのか、そして後遺症の治療における再生医療の可能性について解説しました。 PLDDは、レーザーを活用した医療技術として、椎間板ヘルニア の治療に新たな選択肢を提供しています。費用は自己負担となりますが、医療費控除の対象となる可能性があります。 治療を検討する際には、クリニック選びやフォローアップ体制にも注意が必要です。PLDDは今後、さらなる普及と発展が期待される治療法です。 一方で、PLDDを行っても頚椎あるいは腰椎の椎間板ヘルニアによる後遺症が残ってしまうこともあります。こうした場合には、再生医療による治療も選択肢として上がります。 当院では、脊髄損傷 に対し、自己脂肪由来幹細胞治療という再生医療を行っています。 これは、自分の脂肪組織や血液から幹細胞を抽出、培養し、点滴で静脈注射、 あるいは当院独自技術として脊髄腔内に直接幹細胞を投与することができる、脊髄腔内 ダイレクト注射療法もあります。 再生医療にご興味のある方や、治療を考えたいという方は、 ぜひ一度当院までご相談ください。 参考文献 レーザーによる経皮的椎間板減圧術 (PLDD法) の経験.中四整会誌.1997;10 (2): 229-233. Hellinger J. "Technical aspects of percutaneous laser disc decompression (PLDD)." Lasers in Surgery and Medicine, 1999.Dec;16(6):325-31. 【保険適用外の手術費用の補助】保険適用外の手術(ヘルニアのレーザー手術)を受けたのですが、その費用(約50万円)は高額医療費として一部支給されないのでしょうか?また、支給を受けるためにはどのような手続きが必要になるのでしょうか? | よくある質問 | 日本アイ・ビー・エム健康保険組合 既存の先進医療に関する保険導入等について 平成 22 年1月 20 日 先進医療の各技術の概要|厚生労働省 Mochida J, et al. "Regeneration of intervertebral disc by mesenchymal stem cells: Potentials, limitations, and future direction." European Spine Journal,2006 Aug;15(Suppl 3): 406–413. ▼以下もご参照いただけます ヘルニア治療、PLDDの術後後遺症に対する最新治療とは!?
2024.03.07 -
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PELD(経皮的内視鏡下 腰椎椎間板摘出術)の術後にやってはいけないこと 椎間板ヘルニアは、背骨のつなぎ目にある椎間板がつぶれて飛び出すことにより、脊髄を圧迫し症状が出現します。椎間板ヘルニアによる腰痛や下肢痛、下肢の痺れを改善するには、脊髄を圧迫しているヘルニアを削り取って圧迫を除去しなくてはなりません。以前は4,5cm皮膚を切開して背骨まで達し、背骨を露出してこのヘルニアを除去する切開法が行われていました。 近年、経皮的内視鏡下 腰椎椎間板摘出術(Percutaneous Endoscopic Lumbar Discectomy: PELDまたはPED)という内視鏡手術によって、このヘルニアを摘出する方法が多くの医療機関で行われるようになりました。 患者さんへの負担が少なく、非常に良い手術なのですが、手術に「リスクゼロ」はありません。手術中はもちろん、術後の生活の仕方によっても、脊髄損傷など後遺症が生じる可能性があります。 今回は、PELD(PED)の術後にやってはいけないことや注意点をお話しします。 PELD(PED)とは? PELD(PED)は、脊髄を圧迫している状態のヘルニアを、内視鏡で取り除く手術です。従来全身麻酔が主でしたが、局所麻酔で行う施設も多くあります。傷口も従来の方法とは異なり、内視鏡を挿入する穴を作るだけなので、患者さんの身体への負担が非常に小さい手術です。 しかし、神経の束である脊髄に最接近して行う手術ですので、非常に高度な技術が必要です。手術が成功しても術後の生活動作によって脊髄を損傷してしまうこともあり、術後も注意が必要です。 PELD術後にやってはいけないこと、注意点 PELD(PED)は、脊髄の近くを処置する手術です。内視鏡手術のため、傷口はとても小さく済み、術後の痛みも従来と比べると痛みは少ないです。そのため、術後は腰の痛みも軽減し、日常の生活は普通にできます。 しかし、PELDの術後は腰に負担をかけるような運動は、3か月程度は控える必要があります。 まず、術後1週間は、かがむ際には腰を曲げずに、膝など下肢を曲げて姿勢を低くしてください。腰を曲げて床に落ちたものを拾うことなどはやってはいけません。腰の痛みがずいぶん楽になるので動けてしまうと思いますが、気を付けましょう。 腰を曲げる動作だけではなく、腰をひねる動作もやってはいけません。ふいに振り向く時が非常に危険です。足踏みなど足を使って、身体全体で振り向くようにしましょう。 ヘルニアを手術で削るとき、腰の背骨を支えるじん帯にもある程度の障害が起こります。その傷が安定するまでは腰をひねることはPELD(PED)の術後にはやってはいけません。 2週間後から、通学・通勤可と言われるケースが多いのですが、引き続き腰を曲げる動作や腰をひねる動作もしてはいけません。大体3週間後からは通常の日常生活は問題なく行えるようになることが多くあります。 それでも腰を曲げたり、ひねったりする動作は医師と相談をして、気を付けてゆっくり行いましょう。 術後に注意して欲しいこと ・かがむ際には腰を曲げずに、膝など下肢を曲げて姿勢を低くする ・腰を曲げて床に落ちたものを拾うことはNG ・ふいに振り向くなど、腰をひねる動作 ・腰に負担のかかること 手術後3か月経つ頃には、ラグビーなど激しいスポーツも可能となります。 しかし、腰は大切な部分です。今後もヘルニアが起こる可能性や、ぎっくり腰にも注意しつつ、腰に負担をかけないような工夫をして生活しましょう。 PELD(PED)の術後に脊髄損傷が起こってしまったら? PELDの術後にやってはいけないことや注意点をお話ししてきましたが、術後早期に腰を曲げたり、腰をひねると、脊椎の中を通る神経の束である脊髄が傷ついてしまい、脊髄損傷を起こしてしまうことがあるのです。 脊髄損傷は一度起こってしまうと自然には治りません。現代の通常医学、保険診療などでも損傷を修復することはほぼ不可能です。PELD(PED)の手術後は、腰を大切に行動することが必要なのです。 大切に過ごしていても、脊髄損傷が起こってしまう可能性は十分あります。 PELD(PED)の術後の脊髄損傷の主な症状としては、下肢の知覚低下や、痺れ、麻痺などがあります。PELD(PED)の術後にそのような症状が現れたら、手術をした医療機関に連絡をしましょう。 脊髄損傷に効果的な先進技術!再生医療 一般的に、損傷した大きな神経は修復することができません。PELD(PED)での脊髄損傷は、下肢の麻痺による歩行困難となる可能性があります。この場合、車いすでの生活を余儀なくされる可能性もあります。 脊髄損傷に対して、現在では効果的な最新医療があります。それは、幹細胞を使用した再生医療です。幹細胞とは、体のさまざまな組織に変化をすることができる細胞で、損傷した組織に投与することで、組織の修復を促すのです。 脊髄損傷では、脊髄にその幹細胞が届くように投与し、損傷した脊髄の再生を促します。当院では、脊髄腔内に直接幹細胞を注射するダイレクト注射療法を行っており、脊髄損傷の部位に効果的に幹細胞を投与できる独自の技術を持っています。 脊椎という背骨の中に脊髄は入っているのですが、脊髄は膜に包まれて背骨の中に入っています。髄腔とは、その膜と脊髄の間の空間です。当院では、その髄腔に注射で幹細胞を投与するので、脊髄損傷部位に幹細胞が入っていきやすいのです。 まとめ・PELD(PED)の術後にやってはいけないことや注意点 今回は、PELD(PED)の術後にやってはいけないことや注意点を解説しました。 PELD(PED)は、椎間板ヘルニアによる腰痛や下肢痛を改善するための内視鏡を用いた手術です。しかし、手術後には注意が必要で手術の直後から3か月間は、腰に負担をかけるような動作を控えることが重要です。 かがむ際には腰を曲げたり、腰をひねるような動作は避けなければなりません。また術後には、脊髄損傷が起こる可能性もあるため注意が必要です。違和感を感じたら、早めに医療機関に相談してください。 尚、脊髄損傷に対しては再生医療という新しい治療法も注目されています。特に幹細胞は、体のさまざまな組織に変化をする細胞で損傷した組織に働きかけて修復を促します。 PELDの術後の後遺症で悩まれている方は現代医学の最先端である、幹細胞を使った再生医療も選択肢に加えられてはいかがでしょうか。当院は厚生労働省から認可を受けた再生医療専門クリニクですのでお気軽にご相談ください。 腰を守り、健康な生活を送るために、適切なケアを心がけましょう。 参考文献 Mesenchymal stem cell-derived extracellular vesicles for immunomodutation aregeneration:a next generation therapeutic tool? Kou M,Huang L, Yang J, et al Cell Death Dis.2022;13:580. ▼以下も参考にしていただけます 椎間板ヘルニアの内視鏡手術|PELD(PED)とMEDの違いとは
2024.03.01 -
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椎間板ヘルニアの内視鏡手術|PELD(PED)とMEDの違いについて 椎間板ヘルニアに対する手術治療法として、現在内視鏡を用いたPELD(PED)やMEDといった方法が普及しつつあります。いずれも内視鏡を使用した、従来よりも体への負担が小さい手術ですが、それぞれには違いもあります。 今回の記事では、そのようなPELD(PED)やMEDの違い、そして術後の後遺症に対する再生医療の可能性について解説していきます。 椎間板ヘルニアとは まずは、椎間板ヘルニアについて簡単にご説明します。 背骨である椎体と椎体の間には、椎間板というクッションのような構造があります。この椎間板は、髄核(ずいかく)というゲル状の部分と、それを包む線維輪(せんいりん)という構造からできています。 椎間板ヘルニアは、髄核を取り囲んでいる線維輪の後方部分、つまり背中側の部分が破れ、髄核が断裂した部分から背中側にはみ出してしまうことで、脊髄などが圧迫されてしまう病気のことです。 この中でも腰椎椎間板ヘルニアは、腰の骨である腰椎で起こるものです。 そして、男女比は約2〜3:1、20〜40歳代の方に多く、好発する部位は腰椎第4番と第5番の間、もしくは腰椎第5番と仙椎第1番の間が多いとされています。 後ろ側に飛び出した椎間板が脊髄や神経根などの神経を圧迫することで、下半身に痛みが生じてくるといった症状が現れてきます。また、腰椎椎間板ヘルニアの他の症状としては、急に起こる激しい腰痛や下半身の痛みがあります。 そして、ヘルニアが進行すると下半身に力が入りにくいという症状がでてきます。また馬尾という脊髄の一番下の方にある糸のような神経部分が圧迫されると、排尿や排便が障害されることがあります。 椎間板ヘルニア手術の種類とそれぞれの特徴 さて、椎間板ヘルニアについての治療法について解説していきます。 腰椎椎間板ヘルニアでは、ヘルニアによって神経が圧迫されるような場合に手術が行われます。最近では、より小さな傷で手術を行う、低侵襲手術(ていしんしゅうしゅじゅつ)が広がりつつあります。 例えば、経皮的内視鏡下腰椎椎間板切除術(Percutaneous Endoscopic Lumber Discectomy : PELD)や、内視鏡下ヘルニア摘出術(Micro Endoscopic Discectomy : MED)などの手術です。なお、PELDとPEDは、腰椎(つまりLumber)が入っているかどうかの違いなので、ほぼ同義と考えて問題ないでしょう。 では、従来の手術、そしてPELDとMEDについて詳しく解説しましょう。 従来の手術法 一般的な手術として、背中の側からアプローチし、椎弓(ついきゅう)という背骨の一部を切り取り、椎間板を取り除くという手術が最も行われています。 この方法は、皮膚や筋肉、骨を削り取るというもので、手術は全身麻酔が基本となり術後2〜3日後ほどで歩行を開始し、入院期間は2〜3週間程度が目安です。 PELD(経皮的内視鏡下 腰椎椎間板切除術) PELDは、7mmほどの細い筒をまず背中側から直接ヘルニア部分まで挿入し、生理食塩水を流しながら、その筒の中へ針のような専用内視鏡を刺入していき、直接ヘルニアを摘出するというものです。 細い内視鏡でヘルニアへアプローチすることが可能であるため、筋肉や骨などの組織への負担が少ないというメリットがあります。その他の利点は、局所麻酔や硬膜外麻酔で治療可能な点、また日帰り手術も可能という点です。 また、傷口が小さいため、術後の回復が早いことも期待できます。 欠点としては、大きなヘルニアや椎体の変形が強い場合、また脊柱管狭窄症などが併存する場合には適応とならない場合があることです。 MED(内視鏡下ヘルニア摘出術) MEDは、PELDと同じように内視鏡を使う技術です。 皮膚を切開して内視鏡や器具を挿入し、ヘルニアの部分まで進めていきます。PELDよりも内視鏡の筒の径が大きくなるため、筋肉が引っ張られたり視野を確保するために骨を削ったりといった操作が加わります。そのため、PELDと比較するとヘルニアの周囲の組織への負担が大きくなるという欠点があります。 一方で、複数の椎間に渡るようなヘルニアでも手術可能なことが多く、またPELDと比較すると全国的にこのMEDの手術を行っている病院が多いという利点があります。 特徴 PELD MED 従来の手術法 皮膚の切開の大きさ 7mm程度 16mm程度 3〜4cm 麻酔の方法 局所麻酔可能 全身麻酔 全身麻酔 手術の時間 1時間程度 2時間程度 1時間程度 術後の入院期間 日帰り可能 1週間程度 1週間程度 体に与える負担 軽い 軽いがPELDに比べると骨や筋肉などに侵襲が大きい 傷口が大きいため負担になる可能性あり PELDとMED、従来の手術の違い まとめ・椎間板ヘルニアの内視鏡手術|PELD(PED)とMEDの違いについて 今回の記事では、椎間板ヘルニアの症状や治療法としてのPELD(PED)、MEDについて解説しました。PELDとMEDの違いについても表にし詳しく述べました。 これらのPELD、MEDといった手術は、従来のような皮膚を大きく切り、直接ヘルニア病変を摘出するという方法に比べると傷口も小さく、体への負担が少ないというメリットがあります。 一方で、どのような手術であっても脊髄損傷や神経損傷の可能性は少ないですが、一定数あり得ることには注意が必要です。また、椎間板ヘルニアが進行していた場合などは、しびれや下半身麻痺などの症状が手術後にも残ってしまうこともあるでしょう。 そのような後遺症に対する治療法を探しているという方に対して、再生医療という方法があります。 当院では、脊髄損傷に対し、自己脂肪由来幹細胞治療という再生医療を行っています。これは、自分の脂肪組織や血液から幹細胞を培養し、点滴で静脈注射する方法や、あるいは当院独自の技術として脊髄腔内に直接幹細胞を投与することができる、脊髄腔内ダイレクト注射療法をご用意しています。 https://www.youtube.com/watch?v=GcUDE6GCblE ▶椎間板ヘルニアや、その術後の後遺症などにお悩みの方で再生医療に興味のある方は、ぜひ当院までご相談ください。 参考文献 腰椎椎間板ヘルニア 診療ガイドライン 改訂第2版.日内会誌.2016:105;2210-2214. 脊椎脊髄疾患について・主な疾患 腰椎椎間板ヘルニア 一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会 腰椎椎間板ヘルニアにおける内視鏡下 ヘルニア摘出術.整形外科と災害外科.2002.51(1);47-50. 腰椎椎間板ヘルニアに対する経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術(percutaneous endoscopic lumbar discectomy)の適応と限界.脳外誌.2017:26(5);346-352. p347 経皮内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術の現状と今後の展望.Spinal Surgery.2016:30(2);152-158. p152 腰椎椎間板ヘルニアに対する経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術(percutaneous endoscopic lumbar discectomy)の適応と限界.脳外誌.2017:26(5);346-352. p351 ▼椎間板ヘルニアの手術について参考記事 椎間板ヘルニアのPELD(PED)手術のメリット・デメリット
2024.02.28 -
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ヘルニア治療|PELD(PED)術後のつらい後遺症、痺れや痛みについて PELD(PED)は、内視鏡を用いて腰椎椎間板ヘルニアを取り除く手術のことで、傷口が小さく、筋肉や骨に対するダメージが少ないというメリットがある一方、手術による術後後遺症のリスクもあります。 今回の記事では、PELD(PED)の術後に生じたしびれや痛みの後遺症に対する再生医療の可能性についても解説していきます。 PELD(PED)とは 経皮的内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術(Percutaneous Endoscopic Lumber Discectomy:PELD)とは、椎間板ヘルニアを7mmまたは8mmという細い専用の内視鏡を用いて、生理食塩水を流しながら摘出することができる手術のことです。 細い針が直接椎間板ヘルニアに到達するため、筋肉や脊柱などのダメージを最小限に抑えることが可能です。 なお、PEDとはPELDから腰椎(英語でlumberといいます)を省いただけですので、これらの言葉はほぼ同義になります。 PELD(PED)の術後後遺症 PELDの術後の後遺症として、合併症など以下のようなものがあります。 神経根の損傷 椎間板ヘルニア病変を取り出すために針を進める時に、神経根という脊柱管から脊髄が出る部分に針が触ると、神経根に刺激を加えることで感覚障害をきたす可能性があります。これは、postoperative dysethesia(POD)といい、しびれ感などが生じてきます。 針が触ってしまっただけの場合は短期間で改善することが多いとされていますが、直接損傷してしまった場合には永続的なものになることもあります。 感染 針先で腸管損傷した際に併発する椎間板炎、腸腰筋膿瘍が報告されています。 硬膜の損傷 針の指す方法によっては、脊髄を包む硬膜を損傷してしまう恐れもあります。 髄液漏 皮膚の切開が小さいので、脳脊髄液が漏れてしまう髄液漏(ずいえきろう)を起こすことは少ないとされていますが、馬尾(ばび)という脊髄の先端部分が傷などにはまりこんでしまうことで痛みが生じることもあります。 血腫 針を刺す際に出血し、血腫が出来てしまうこともあります。 てんかん発作 手術を行う際に流す生理食塩水の圧力が高い場合や長時間の手術の場合には、頭蓋骨の中の圧力が高まり、脳への負担がかかってしまい、首や頭の痛みのあとにてんかん発作が起こることもあります。 PELD(PED)術後後遺症に対する再生医療とは それでは、PELD(PED)術後の痛みとしびれに対する再生医療について解説していきます。 再生医療の基本概念 再生医療は、体の損傷や機能の喪失を修復し、細胞や組織を再生するための革新的なアプローチです。これには、自分自身の細胞を活用する方法や、幹細胞を利用する手法などが含まれます。 再生医療と幹細胞治療のアプローチ では、実際には再生医療ならびに幹細胞治療がどのように利用されているのかを解説します。 患者自身の細胞の利用 再生医療において、患者自身の細胞を活用する方法があります。これには、自分から採取された組織や血液中の成分を使用して、治療に必要な細胞を増殖・活性化させる手法が含まれます。この一つとして、多血小板血漿(PRP)による治療もあります。 幹細胞治療 幹細胞は、さまざまな種類の細胞に分化、つまり成長する能力があります。患者の体内から採取された幹細胞が、損傷した組織や神経を修復するのに役立つ可能性があります。特に、ヘルニアや脊髄損傷の治療において、幹細胞治療が注目されています。 痛み管理 術後の痛みは、しばしば患者の生活の質を著しく低下させます。従来の痛み管理に加えて、再生医療では、成長因子や細胞治療を組み合わせたアプローチが検討されています。これにより、神経の再生や炎症抑制が期待されます。 神経保護と再生 幹細胞治療は、損傷した神経組織の再生を促進する可能性があります。これにより、術後のしびれや感覚の喪失を軽減し、機能回復が期待されます。 それぞれに適した治療が可能 自分自身それぞれの細胞などから培養された幹細胞を使った再生医療は、拒絶反応などの副作用が出にくいことが期待されます。これにより、治療の効果が最大限に発揮されることも期待できます。 まとめ・ヘルニア治療|PELD(PED)術後のつらい後遺症、痺れや痛みについて 今回の記事ではPELD(PED)手術とは何か、そしてその後遺症について述べました。そして、PELD(PED)手術後の痛みやしびれの後遺症に対する最新治療として、再生医療と幹細胞治療に期待が持たれていることも解説しました。 これらの治療法は患者の生活の質を向上させ、持続的な症状の緩和を目指すことが期待されます。当院では、再生医療の治療のひとつに、自己脂肪由来幹細胞治療をご用意しています。 これは、脊髄損傷などからの神経の回復に対する効果が期待できるもので、当院では静脈注射で点滴にて投与するものと、脊髄腔内に直接注射をしていくものがあります。 特に、後者の直接脊髄腔内投与法は当院独自とも言え、今までにも脊髄や神経の損傷によるしびれや痛みなどの術後後遺症の症状が改善したという治療成績があります。 https://www.youtube.com/watch?v=5JqLxbYwLJ4 PELD(PED)手術後の後遺症にお悩みの方も、ぜひ一度当院までご相談ください。 ▼ヘルニアの手術について以下も参考にされませんか ヘルニア治療:PELD手術のリスクと副作用とは 参考文献 経皮内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術の現状と今後の展望.Spinal Surgery.2016:30(2);152-158. p152 再生医療の現状と展望 第3回再生・細胞医療・遺伝子治療開発協議会 令和3年1月27日 脳梗塞と脊髄損傷の再生治療
2024.02.22 -
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ヘルニア治療:PELD手術のリスクと副作用とは 「腰椎椎間板ヘルニアの手術を受けるべきか迷っている」 そんな方にPELD(PED)手術は良い選択肢かもしれません。内視鏡を駆使したこの術式は、低侵襲※であり、腰椎椎間板ヘルニアの治療に一石を投じています。 しかし、手術には潜在的なリスクや副作用が伴います。 本記事では、PELD(PED)とはどのような手術なのか、そして予想されるリスクについて解説をしていきます。 ※低侵襲とは、「ていしんしゅう」と読み、手術などで従来と比べて身体の負担(痛み、出血など)を少なくする医療です。 腰椎椎間板ヘルニア治療のPELD(PED)とは 手術中の手技すべてを内視鏡下で行う術式は、腰椎椎間板ヘルニア以外にも多くの脊椎疾患で行われるようになってきました。 内視鏡のみの手術は、脊椎を意味する「スパイン」“Spine”という語を使ってFESS: Full Endoscopic Spine Surgery(あるいはFED: Full Endoscopic Discectomy)と呼ばれます。 その中でも腰椎の椎間板ヘルニアに対するのは、PELD(PED)です。経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術:Percutaneous Endoscopic Lumbar Discectomy (Percutaneous Endoscopic Discectomy)を略した言葉です。 「体への負担が非常に少ないヘルニアの手術」として名前を聞いたことがある方もいるでしょう。 PELD(PED)手術 ・PELD(PED)とは、直径7〜8mm程度の内視鏡を見ながら椎間板内に直接アプローチ ・脱出したヘルニアそのものを摘出する手術 ・通常の手術と比べて、手術の創が非常に小さく済む ・全身麻酔で行うこともあるが局所麻酔を使って日帰り手術で行うこともある PELD(PED)の費用 ・健康保険適用、手術費用の自己負担額は1〜3割 ・高額療養費制度も利用することが可能 ・年齢や所得、全身麻酔か局所か、また入院か、日帰り手術かで医療費が変動 ・数万〜20万円程度 PELD手術の主なリスクや副作用について このように良いことづくめのように思われるPELD(PED)ですが、100%安全というわけではありません。手術を受けることで起こりうる「不都合なこと」もあります。 当然、どの病院でも「不都合なこと」を起こさないようにさまざまな対策がなされています。しかし、それでも絶対に防ぎ切れるものではないことを知っておくべきでしょう。 この「不都合なこと」のなかには、手術の手技そのもので起こるものもあれば、用いる麻酔や手術でとる姿勢に伴うものもあります。 ここでは全てを網羅することはできませんが、代表的なものについてそれぞれ解説をしていきましょう。 手術の手技によるリスクや副作用 まずは、手術によって引き起こされるリスクについて解説していきます。 神経障害のリスク ・手術は脊髄から下肢などに伸びる神経のすぐ近くで行われる ・内視鏡を挿入するときに神経を傷つけるリスクがある ・内視鏡の操作中に神経に触ったりするリスクがある ・痺れや痛み、筋力低下が起こる ・このような神経障害は、数日で治る場合、長期に残凝る場合さまざま 脳出血のリスク ・脊髄は髄液という液体で満たされた空間内にある ・脊髄と髄液を包む硬膜という膜が、手術操作中に破れると硬膜損傷となる ・硬膜が破れると髄液が漏れ、起き上がると頭痛が起こることがある ・ひどい場合は脳が引っ張られ、脳出血をきたすこともある ・術中に気づけば術式を変更、硬膜を縫い合わせることもある 血の塊(血腫)形成のリスク ・手術中や手術後に出血による血の塊(血腫)を形成する可能性 ・ヘルニアの周囲には多くの新しい血管があり、どうしても出血が起こる ・予防上、手術の終了時にドレーンと呼ぶ血抜きの管を一定の期間留置する ・ドレーンがずれたり詰まったり出血量が多かったりすると血腫ができる ・血腫が大きくなると、神経を圧迫し、足の痺れや麻痺などが起こる 出血や感染のリスク ・内視鏡を挿入するときに、腎臓や腸管が損傷するリスクがある ・重要な臓器を傷つけてると出血や感染のリスクがある ・手術の傷が感染を起こしてしまうこともゼロではない ・表面だけでなく、針先で腸管を刺してしまうことで椎間板、腸腰筋に感染が起こることがある ヘルニア再発のリスク ・残念ながら手術をしてもヘルニアが再発してしまうことがある ・5〜10%ほどの割合で再発が起こり得る ・再発予防のため、手術を受けた後は前屈みの姿勢は極力避ける ・力んだり重いものを持ち上げたりすることは避ける ・スポーツや肉体労働などは主治医の許可が出てから再開する 全身麻酔によるリスク・副作用 全身麻酔を使用する場合、眠った状態で手術を受けます。麻酔により呼吸が止まるため、人工呼吸が必要です。麻酔導入後、喉に呼吸のための管を入れる「気管挿管」を行いますが、手術後に管を抜いても喉の痛みや違和感が残ることがあります。 また、気管挿管に際して歯が折れてしまうことが稀にあります。麻酔の薬で術後に吐き気がきたり、嘔吐してしまったりすることがあります。 一過性で、吐き気止めで落ち着くことがほとんどですが、食事が取れなくなったり術後の離床が遅れたりすると入院が長引きます。 非常に稀ですが恐ろしいのは悪性高熱症という疾患です。一部の麻酔薬に反応して、全身の筋肉の過剰な収縮が起こり、体温が急激に上がってしまうものです。10万人に1〜2人程度の発症と言われますが、死に至る可能性もあります。 悪性高熱症を起こしやすい体質は一部遺伝的なもの関与していることが知られているため、血のつながった方に病歴があるばあいは麻酔科医と相談が必要です。 局所麻酔によるリスクや副作用 局所麻酔を使用する方が体への負担は断然少ないです。といっても、局所麻酔薬へのアレルギー反応は懸念されます。歯の治療の麻酔などでアレルギーを起こしていないか確認が必要です。 ときにアナフィラキシーといって急激に血圧が下がってしまい危険な目に遭うこともあるため油断は禁物です。 また、局所麻酔のみだと当然意識がある状態で手術を受けることになります。 すると、ヘルニアを神経から剥がすなどの操作時に痛みを感じてしまう方が一定数います。痛みが強すぎると手術が継続できなくなることもあるのです。 その他のリスクと副作用 手術中の抗菌薬へのアレルギー、医療器具が当たることによる創の形成、器具などの固定用のテープを剥がす際の皮膚剥離、長時間姿勢を固定されることで神経が圧迫されるなどほかにもさまざまな合併症が起こりえます。 脊椎の手術はうつ伏せで行うため、眼球を圧迫して栄養血管が長時間通わなくなると失明することもあります。 また、うつ伏せ姿勢で足の太い静脈が圧迫され、血液の流れが滞ると血栓症も起こりやすくなります。 このようなさまざまなトラブルは、手術中に麻酔科医や看護師なども含めたスタッフが留意することで防げることも多いのですが、頭にいれておきましょう。 PELD(PED)術後の神経障害の治療に再生医療 PELD(PED)手術後の合併症で、特に日常生活に影響を及ぼす可能性が高いのは神経の損傷です。神経が直接傷ついたり、血腫ができて脊髄や神経根が圧迫されたりすることにより、しびれ・痛み・麻痺・排尿障害などの後遺症が残ることがあります。 そこで注目されているのが再生医療の一つ、「幹細胞治療」です。脊髄損傷や神経根損傷に効果が期待できます。万能細胞である幹細胞を脂肪から採取し、障害部位に送り込むことで組織の再生を促す治療法です。 当院は脊髄損傷など神経障害にお悩みの方に、幹細胞治療を提供しています。独自の技術によりフレッシュな幹細胞を多く投与することが可能です。 さらに独自の「脊髄腔内ダイレクト注射療法」により、幹細胞を直接的に損傷部位へ届けることができます。これらの技術を駆使することで、より高い治療効果が期待されます。 ▼当院で幹細胞治療を受けられた患者様の様子をご覧いただけます。 https://www.youtube.com/watch?v=GcUDE6GCblE&t=4s まとめ ・ヘルニア治療:PELD手術のリスクと副作用とは 腰椎椎間板ヘルニア治療の一環として注目されるPELD(PED)手術は、内視鏡を活用し、少ない侵襲で行われる手術です。手術は小さな切開で終わり、入院期間が短く、回復が早いというメリットがあります。 しかし、一方で手術である以上は一定のリスクが伴います。 手術を検討する際には、そのリスク・副作用への理解が欠かせません。十分な情報を得た上で、担当医とともに共に納得のいく治療計画を立てることが大切です。 手術後の神経障害には再生医療のひとつ、「幹細胞治療」が注目されています。もし術後の後遺症にお悩みの場合は、ぜひ当院へご相談ください。 参考文献 尾原 裕康, 水野 順一, 西村 泰彦. 脊髄外科, 30(2):152-158, 2016. 喜多健一郎, 寺井智也, 日比野直仁, 邉見達彦, 西良浩一. 中国・四国整形外科学会雑誌 29(1): 11-15, 2017 南出晃人. 整形外科看護 25(11): 1094-1099, 2020. 坂口彰. 整形外科看護 26(2): 176-177, 2021. 井東恵, 伊藤朝美. オペナーシング 36(3): 302-305, 2021. 飯島尚美. オペナーシング 36(3): 260-268, 2021. 米田弥里. オペナーシング 38(5): 469-479, 2023. 日本麻酔科学会Webサイト. よくある術前合併症, 悪性高熱症. ▼ヘルニアの内視鏡下手術についてご覧になりませんか ヘルニア治療のPLDD手術で適応もしくは不適応となる症例
2024.02.19 -
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椎間板ヘルニアのPELD(PED)手術のメリット・デメリット PELD(PED)をご存知でしょうか? これは、経皮的内視鏡的椎間板ヘルニア切除術(Percutaneous Endoscopic Lumbar Discectomy:PELD)は、通称「ぺルド」と呼ばれる手術の略称です。 または経皮的内視鏡的椎間板摘出術(Percutaneous Endoscopic Discectomy:PED)は、腰椎の椎間板ヘルニア治療のための侵襲を最小にすることを目的とした手術です。 この記事では、この手術法の主なメリットとデメリットについて解説していきます。 PELD手術とは 経皮的内視鏡的椎間板ヘルニア切除術(Percutaneous Endoscopic Lumbar Discectomy:PELD)では、7mmあるいは8mmの専用内視鏡を用いて、生理食塩水を流しながら腰椎椎間板ヘルニア摘出をすることを可能とする手術です。 PELDは、椎間板ヘルニアの病変そのものの摘出を目的とした方法です。 つまり、PELDでは健康な中心部分の椎間板組織をなるべく残し、将来の椎間板の高さの減少や不安定になることを予防し、術後に腰痛を併発するリスクを減らすことを目標としています。 PELDが適応となる疾患には、椎間板ヘルニアなどの変性疾患や、化膿性椎間板炎という炎症性疾患があります。 PELDのメリット それでは、PELDのメリットについて述べていきましょう。 体に与えるダメージが低い ・皮膚の切開部を小さくすることが可能 ・傷跡が小さく、術後の痛みが軽減される 脊柱周囲の構造のダメージを抑えることが可能 ・PELDでは、直接ヘルニア部分に到達することが可能です ・脊柱周囲の筋組織などのダメージを抑えられます。 ・入院期間が短縮され、回復も迅速となります。 局所麻酔下でも手術が可能 手術をする際には意識を完全に取り除く全身麻酔と、手術する部分に麻酔薬を注入する局所麻酔で行う場合があります。局所麻酔だけでは手術中の痛みが強く、手術を中止せざるをえない場合もあります。 しかしながら、局所麻酔では救急の場合、手術室と機材の都合がつけば麻酔科のスタッフに負担をかけずに緊急手術を行うことが可能です。 また、椎体などの骨の変形が著しくないなどの一定の条件を満たせば、高齢者や肥満の方など全身麻酔をかける際にリスクが高い方に関しても局所麻酔は有利であると考えられています。 日帰り手術可能 ・SPLDでは日帰りの手術も行われています ・忙しい現代人のニーズにも応えられる可能性を持った治療法 手術成績が良好 ・多くの研究でPELDは椎間板ヘルニアによる痛みの緩和に高い成功率を示す ・下肢の痛みの改善や合併症の発生率は、低侵襲を目指した顕微鏡手術同等とされる PELDのデメリット それでは、次にデメリットについても述べていきます。デメリットに関わらず、主治医や医療機関でご相談してみることをおすすめします。 合併症や後遺症が残る可能性がある 頻度としては低いものの、ヘルニアを摘出する際の神経損傷や脊髄損傷が起こり、後遺症として手足のしびれや麻痺などが残ってしまう場合があります。また、椎間板の再突出などの合併症が生じる可能性もあります。 高度な技術が求められる PELDは高度な技術を要する手術であり、経験豊富な専門医による施行が必要です。そのため、どの病院でも行うことができる手術という訳ではありません。 適応疾患が限定される すべての椎間板ヘルニアがPELDに適しているわけではなく、大きな突出や重度の変形がある場合は適応外となることがあります。 再発のリスクがある すべての椎間板手術と同様に、症状が再発するリスクがあります。 1回で2箇所以上の手術ができない 多椎間(2箇所以上)の手術を一回の治療でできないことがあります。もしも椎間板ヘルニアの病変が2箇所以上ある場合は、狭窄が強い部位から手術をします。 そして、症状の変化を見ながら改善が乏しいようであれば後日(数ヶ月後)に別部位を治療することになります。 椎間板ヘルニアに対してPELD手術を受けたい場合 ・PELD手術は低侵襲で術後の痛みの改善などの効果が期待できる ・通院中の病院でPELD手術を行っていない場合もある ・ご自身の病状などがPELDの適応となるかどうかも含め、PELDを行っている病院を最初から受診する まとめ・椎間板ヘルニアのPELD(PED)手術・メリット・デメリット 今回の記事では、PELDについて解説し、そのメリット・デメリットについて述べました。 PELD手術が失敗してしまう可能性は低いと考えられていますが、脊髄損傷や神経損傷の可能性は「0」ではありません。 また、椎間板ヘルニアの症状である、手足の痺れや麻痺といった症状が手術後にも残ったり、むしろ手術前よりも強い症状になったりしてしまうということも可能性としてはあります。 もしもそのような後遺症にお悩みの場合には、再生医療という方法もあります。当院では、脊髄損傷に対し、自己脂肪由来幹細胞治療という再生医療を行っています。 これは、自分の脂肪組織から培養した幹細胞の静脈注射や、あるいは当院独自の技術として脊髄腔内に直接幹細胞を投与することができる、脊髄腔内ダイレクト注射療法というものがあります。 椎間板ヘルニアの後遺症などにお悩みの方で再生医療にご興味のある方は、ぜひ一度当院までご相談ください。 参考文献 経皮内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術の現状と今後の展望.Spinal Surgery.2016:30(2);152-158. p152 腰椎椎間板ヘルニアに対する経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術(percutaneous endoscopic lumbar discectomy)の適応と限界.脳外誌.2017:26(5);346-352. p347 経皮内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術の現状と今後の展望.Spinal Surgery.2016:30(2);152-158. p157 経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術(percutaneous endoscopic lumbar discectomy:PELD)の現状と今後の展望.Spinal Surgery.2014:28(3);310-312. p312 ▼ヘルニアの最新手術療法の手術後について PLDD とは?その概要と費用、再生医療の可能性について
2024.02.08 -
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腰椎椎間板ヘルニアのPELD(PED)内視鏡下手術ついて つらい腰椎椎間板ヘルニアの症状にお困りではありませんか? 「薬もリハビリも効かず、根本的に良くしたい」「でも、できれば体に大きな負担がかかる手術はしたくない」 そう思っておられる方も多いでしょう。そんな方でも、近年技術の進歩が目覚ましい内視鏡を用いた負担の少ない手術なら、抵抗感が少ないかもしれません。 本記事では、内視鏡による椎間板ヘルニアの手術の一つである「PELD(PED)」の概要についてご説明します。PELD(PED)の費用や合併症、術後のしびれ、痛みなどの後遺症への治療についても解説をしていきます。 腰椎椎間板ヘルニアの内視鏡手術について 腰椎椎間板ヘルニアは、痛み止めやリハビリなど保存療法を行なっているうちに自然に改善する可能性のある疾患です。多くの場合、3ヶ月以内にはヘルニアは吸収されると言われています。ところが、一部の方は症状が残ってしまうことがあります。また、ヘルニアが神経を圧迫し、足の運動麻痺や排尿障害をきたすなど日常生活に影響を及ぼすケースもあるのです。 「早期の症状改善を希望する場合」「保存療法の効果が不充分である場合」「神経の症状が出た場合」は手術療法を行います。 手術療法の適応 ・早期の症状改善を希望する場合 ・保存療法の効果が不充分である場合 ・神経の症状が出た場合 その中でも、内視鏡による手術は手術の創(手術でできる傷)が小さく、体に負担がかかりにくいため注目を集めています。 内視鏡による椎間板ヘルニアの手術は、PELD(PED)とMED(※)と呼ばれる二つの術式に分かれます。とりわけ、手術侵襲が最小限に抑えられるのがPELD(PED)です。病院によっては日帰り手術が可能としているところもあるくらいです。 PELD(PED)とは PELD(PED)はPercutaneous Endoscopic Lumbar Discectomy (Percutaneous Endoscopic Discectomy)の略です。日本語では、経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術と呼びます。おおよそ7mm程度のとても細い筒状の手術器具を用います。内視鏡を見ながら椎間板内に直接アプローチして脱出したヘルニアそのものを摘出する手術です。 なお、PELDとPEDの2つの違いはなく、どちらも同じものを指します。 近年は、同様の手術手技の適応が広がっています。ヘルニア以外の疾患の治療や、腰椎ではなく頚椎の疾患にも用いられることもあるのです。そのため、腰椎という意味の”Lumbar”ではなく、脊椎という意味の「スパイン」“Spine”という単語を使ってFESS: Full Endoscopic Spine Surgery(あるいはFED: Full Endoscopic Discectomy)とも呼ばれます。 PELD(PED) の適応 PELD(PED)は従来の手術よりも小さい手術の傷のみで手術ができます。そのため、体への負担が軽いです。また、全身麻酔を用いることもありますが、局所麻酔のみでも行う病院もあります。術後の安静が必要な期間も短く、日帰り〜数日の入院のみで退院できます。 PELD(PED)中は内視鏡の映像のみで進めていきます。視野を見やすくするため内視鏡の使用時には生理食塩水を流し続けます。そのため、従来の内視鏡を用いた手術よりも術後の癒着が起こりにくいです。 これらの特徴から、PELD(PED)は学業や仕事を休みにくい若い人・早く復帰をしたいスポーツ選手・全身麻酔のリスクが高いお年寄りや肥満の患者さんには良い治療法です。 PELD(PED)が向いている人 ・学業や仕事を休みにくい若い人 ・早く復帰をしたいスポーツ選手 ・全身麻酔のリスクが高いお年寄りや肥満の患者さん また、全身麻酔が必ずしもいらないので、急速に神経症状が進んだり排尿障害が起こったりなど緊急を要する場合にも良い選択肢となります。 PELD(PED)の弱点 一方で、PELD(PED)の手術に用いる器具がとても細いがゆえの弱点もあります。 まず、狭い筒を介してアプローチすることになるため、大きくて固いヘルニアに対応するのは困難です。 また、内視鏡をヘルニアに入れられる方向にも制限が生じるため、ヘルニアの飛び出し方によっては不向きと判断されることもあります。 PELD(PED)が不向きな人 ・大きくて固いヘルニア ・ヘルニアの飛び出し方の状態 上記のように、病状によっては不向きなことがあります。 PELD(PED)の手術費用 PELD(PED)は、公的医療保険の対象となっています。手術を受ける方の状況により1〜3割負担で治療を受けることができます。さらに「高額療養費制度」を使うことができるため、医療費は最終的に上限額を超えることはありません。 保険適応の場合の最終的な費用負担は、数万〜20万円程度と考えられます。手術の内容や入院の有無・期間、患者さんの世帯の収入などによって負担額は異なりますので注意が必要です。 ただし、病院によっては自費診療でPELD(PED)を行なっているところもあります。自費診療のほうが柔軟な対応ができるのです。公的保険は検査の日程や手術器具などにおいて様々な制約が生じます。 一方で自費診療では高額な費用がかかります。その金額もそれぞれの病院が設定するため、一概にいくらとは言えません。さらに、自費診療の場合、高額療養費制度の対象外となります。 PELD(PED)の合併症 PELD(PED)は比較的体への負担が少ない手術ではありますが、どのような手術でも合併症の可能性はあります。 特に注意すべき合併症は次の4つです。 注意したい合併症 ・神経障害 ・硬膜損傷 ・術後血腫 ・感染 ひとつずつ解説していきます。 神経障害 まず、神経障害が挙げられます。手術中にヘルニアの近くの脊髄やそこから伸びる神経の根本(神経根)を触ってしまうことで、神経の損傷が起こることがあります。足がしびれたり痛んだり、足の筋力が落ちたり、排尿機能の障害が起こったりすることがあるのです。 硬膜損傷 硬膜損傷とは、脊髄を包んでいる硬膜が手術手技により破れてしまうことです。脊髄神経は硬膜に包まれて、脳脊髄液に浮いています。硬膜が破れると、そこから脳脊髄液が漏れ出します。とくに起き上がった時に脳脊髄液が漏れ出して脳や脊髄を引っ張ることが多く、頭痛の原因になります。 術後血腫 また、手術後に出血がコントロールできずに血の塊(血腫)を作ってしまうことがあります。血腫が脊髄から出てくる神経を圧迫してしまうとやはりしびれ・痛みや麻痺などの原因となるのです。 感染 さらには、手術の傷が感染を起こすことがあります。ただし、PELD(PED)は非常に傷が小さく、しかも手術中に生理食塩水を流し続ける術式です。創の感染は他の術式に比べて非常に少ないとされています。 合併症による後遺症に対する再生医療の可能性 PELD(PED)による合併症が起こった時に心配すべきは、後遺症が残ってしまうことです。特に神経の損傷が起こると、しびれや痛み・麻痺などが残ってしまう可能性があります。 従来、神経が傷つくと再生は困難と言われていました。しかし、最先端の再生医療である幹細胞治療は組織の再生力を高めることができます。 再生医療により、治らないとされていた脊髄損傷など神経の障害も、改善する可能性が出てきたのです。PELD(PED)の術後後遺症も幹細胞治療の適応です。 当院では脊髄損傷後の後遺症に対して、幹細胞治療を行っております。当院の細胞加工室は細胞を冷凍することなく輸送・保存しています。そのため、生き生きとした幹細胞を大量に投与することが可能です。 さらに、点滴投与に加えて、損傷した脊髄に対して直接幹細胞を投与できるように脊髄腔内ダイレクト注射療法を行なっております。点滴単独よりも脊髄に届く幹細胞の数が多くなります。 「フレッシュな細胞」を「より多く」損傷部位に届けることで、脊髄損傷の治療において良好な治療成績をおさめてきました。 さらに、患者さん本人の脂肪細胞・血液を培養に用いることで、アレルギーや感染などのリスクを極力減らして安全性の高い治療を提供しております。 まとめ・腰椎椎間板ヘルニアのPELD(PED)内視鏡下手術とは PELD(PED)手術は、ヘルニアのつらい症状に対して有効な治療法の一つです。内視鏡を使用して行う治療で、傷は小さく体への負担も最小限です。手術後の安静期間も短く、早い社会復帰も望めます。 ただし、病状によっては不向きなこともあります。また、どんなに体への負担が小さいといっても、手術による合併症のリスクが全くないわけではありません。術前に事前情報をしっかり把握し、納得した上で受けましょう。 ▼何も起こらないことが一番ですが、万が一後遺症が残ってしまった場合には最先端の再生医療である幹細胞治療が適応になります。もし術後の後遺症にお困りであれば、ぜひ一度、当院にご相談ください。 https://www.youtube.com/watch?v=GcUDE6GCblE 参考文献 八木 貴, 木内 博之. 日本医事新報 (4843): 54-54, 2017. 平野 仁崇, 伊藤 康信, 水野 順一, 沼澤 真一, 渡邉 貞義, 渡邉 一夫. 脊髄外科, 28(3):310-312, 2014. 平野 仁崇, 水野 順一, 沼澤 真一, 伊藤 康信, 渡邉 貞義, 渡邉 一夫. 脳神経外科ジャーナル, 26(5): 346-352, 2017. 南出晃人. 整形外科看護 25(11): 1094-1099, 2020. 出沢明. Loco CURE 5(2): 156-163, 2019. 日本整形外科学会, 日本脊椎脊髄病学会. 腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021 改訂第3版. ▼ヘルニアの治療法について 腰椎椎間板ヘルニアの症状レベルとは?医師が詳しく解説
2024.02.05 -
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減圧症による脳障害:その症状と後遺症に対する治療法を解説します ダイバーや潜水を仕事にしている方にとって気をつけなければいけない減圧症。重症になると脳障害を起こすことはご存知でしょうか。 減圧症による脳障害は適切な治療で回復することが多いです。しかし、一部の患者さんでは治療を行っても後遺症が残ってしまいます。後遺症はダイビングや潜水作業のみならず日常生活にも支障をきたす可能性がああります。 本記事では減圧症による脳障害で起こる症状、およびその「後遺症と治療法について解説」していきます。ぜひ最後までお読みください。 減圧症とは 血液や組織に出現した気泡が血液の流れを阻害したり、直接的に組織・臓器にダメージを与えたりするのが減圧症のメカニズムです。 高い圧のかかる場所では窒素などの気体が血液や組織中に溶解してしまいます。低い圧の場所に移動すると、これらの気体が溶けきれなくなります。これが減圧症の原因となる気泡です。 体にかかる圧が急激に減少する場合に起こることが「減圧症」という名前の理由です。代表的なケースは潜水から急浮上するときであるため、「潜水病」とも呼ばれます。 減圧症の重症症状 減圧症は重症度別に軽症のⅠ型と重症のⅡ型の2つに分けられます。 Ⅰ型では肘や肩などを中心とした関節痛、皮膚の発赤や痒み、疲労感などの軽い症状が多くみられます。 一方、重症度の高いⅡ型では次のような重篤な症状を認め、時に命にも関わります。 脳の損傷 ・頭痛 ・意識障害 ・痙攣 ・片麻痺 脊髄の障害 ・肢麻痺 ・排尿障害 内耳の障害 ・めまい ・吐き気 肺の障害 ・呼吸困難 ・咳 なお、同様に急激な減圧により起こる動脈ガス塞栓症という病気もあります。こちらは圧変化により肺の一部が破れ、その気泡が血液内に入り臓器血管を閉塞してしまうことで起こるものです。肺が破れる気胸などとともに心筋梗塞や脳梗塞をきたします。 動脈ガス塞栓症は減圧症との区別がつきにくく、同時に起こることもあるため注意が必要です。治療方針は一緒であるため、とくに重症例では動脈ガス塞栓症も合併している可能性を念頭に置きます。 減圧症による脳障害の症状 気泡が脳実質に障害を起こしたり、脳の小さな血管の血流障害を起こしたりすることで脳障害をきたします。 症状は障害を受けた脳の部位により多種多様です。 例えば、次のようなものが挙げられます。 脳障害の症状例 ・記憶障害 ・ふらつき(失調) ・まぶたや指の震え ・片麻痺症状 ・いつもと異なる異常な言動 ・意識障害 通常の脳梗塞と異なり、早期に適切な治療を行えば症状を残さずに回復する可能性があります。しかしながら広範囲のダメージを受けてしまうと、後遺症が残り、最悪の場合は死に至ることすらあります。 減圧症が起こった場合の治療 減圧症発症時は、100%の酸素投与とともに、全身状態を落ち着けることが必要です。全身状態により、輸液・昇圧薬投与・人工呼吸など必要な処置を行います。 同時に、発症の早いうちに再圧療法が必要です。治療ができる医療施設は限られているため、専門施設へ紹介をされて搬送されることになります。 再圧療法とは、高い濃度の酸素と高い圧をかけることができる特殊な装置を用いる治療です。気泡を再び血液や組織中に溶け込ませるとともに、酸素を投与して血流障害が起こっている組織の回復を目指すものです。 基本的には初回の治療で完治を目指すことが原則です。ただし、神経症状が残ってしまった場合は追加治療を行います。 後遺症の可能性と治療について 前述のように、一般的な脳梗塞と違って適切な治療で症状が改善することが多いです。しかし、脳の広範囲にダメージが起こった場合や適切な治療時期を逃してしまった場合などは、障害を残すことがあります。 麻痺や失調・高次脳機能障害などが固定化してしまった場合は、リハビリテーションを行う必要があります。時間をかけて徐々に機能回復できる場合もありますが、不便さが残る可能性も高いです。 減圧症について気になるQ & A 減圧症(潜水病)に関してよくお聞きする質問を以下に記しました。 Q:減圧症を起こさないために注意すべきことは? 潜水当日の体調不良は減圧症のリスクを高めるといわれています。体調を万全に整えておきましょう。 急激な浮上を行ったり、1日に何回も潜ったりすると窒素が気泡化しやすくなるため、手順を守って過剰に潜ることは避けるべきです。 また、潜水直後に飛行機に乗ることは危険です。上空は圧が低いので、より減圧症が発症するリスクが高くなるからです。 Q: 減圧症と減圧障害の違いはなんですか? 減圧症は圧の急激な変化により窒素などの気泡が生じて組織障害をきたす疾患です。減圧障害とは、減圧症と動脈ガス塞栓症の2つの状態を合わせたものです。 とくに脳障害をはじめとした重症例ではこの2つの病態の鑑別が難しいことも多くあります。また、基本的な初期対応も同じです。そのため、近年では2つを合わせた「減圧障害」の呼び方がより一般化してきています。 まとめ・減圧症による脳障害|症状と後遺症、治療法について 減圧症の脳障害は重篤で、後遺症が残ってしまう可能性もあります。ひとたび後遺症が残ると、根気強いリハビリが必要です。 ダイビングや潜水に関わるお仕事をされている場合はしっかりと減圧手順を守るとともに、「おかしいな」と思ったらすぐに受診をしましょう。 なお、当院では最新治療の一つとして注目されている幹細胞治療を用いて、脳卒中など脳の障害による後遺症の治療を行っています。減圧症による脳障害の後遺症でお困りであれば、再生医療専門の当院にぜひ一度ご相談ください。 ▼以下もご覧いただけます 減圧症による骨壊死の症状とその治療法を医師が解説! 参考文献 高谷陽一. 医学のあゆみ 276(4): 291-294, 2021. 梅村武寛, 堂籠博. 日本医事新報 (5120): 40-41, 2022. 工藤大介. 日本医事新報 (5062): 78-79, 2021. 日本高気圧環境・潜水医学会. 減圧症に対する高気圧酸素治療(再圧治療)と大気圧下酸素吸入. 2018年9月28日 土居浩, 朝本俊司, 荒井好範. 日本高気圧環境・潜水医学会雑誌 2020; 55: 26-33. 鈴木直子.柳下和慶, 外川誠一郎, 山見信夫, 岡崎史紘, 芝山正治, 椎塚詰仁, 山本和雄, 眞野喜洋. 日本高気圧環境・潜水医学会雑誌 2012; 50: 1-9. 合志 清隆, 森松 嘉孝, 玉木 英樹, 村田 幸雄, 合志 勝子, 石竹 達也, 井上 治. 医学のあゆみ 263(3): 261-262, 2017. 小濱正博 レジデントノート 8(5): 667-674, 2006.
2024.01.25 -
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減圧症の治し方と後遺症に対する最新の治療法を医師が解説 減圧症とは、高圧環境下で血中や組織中に溶解していた窒素などの空気が、急激な減圧により気泡化して起こる疾患です。潜水からの急浮上に伴うものが代表的であるため、「潜水病」と呼ばれることもあります。 軽い関節痛や痒み・発疹などの軽症から、脳障害や脊髄損傷をきたして死に至る重症まで症状は多様です。 本記事では発症直後の応急処置や再圧治療について解説します。後遺症に対する最新治療としての再生医療の可能性についてもご説明していきます。 減圧症の応急処置 減圧症をきたした際、専門的な治療ができる医療機関へ搬送を待つ間にできる応急処置をご紹介します。 もし患者さんに意識がなく、呼吸が止まっている状態であれば、速やかに胸骨圧迫(心臓マッサージ)や人工呼吸といった心肺蘇生を行う必要があります。AEDが準備できるのであれば速やかに装着しましょう。 脳の障害をきたすこともある減圧症では、脳圧をあげないために頭を下げる体勢は厳禁です。意識があれば仰向けで休ませましょう。 意識がなく、呼吸のみある状態であれば回復体位(上図)をとります。舌の付け根が喉を塞いだり嘔吐物で窒息をしたりしないために、下顎を突き出して横を向くような体勢にします。 呼吸の有無に関わらず必要なのが高濃度の酸素投与です。酸素には組織の窒素の洗い出し効果があるためです。設備があれば一刻も早く開始してください。 意識があれば水分補給を行いましょう。もし医療系の資格を持つ人がいて器材があれば点滴を行います。また、体を冷やしすぎないように保温に努めてください。 回復体位 recovery position 意識がなく、呼吸が止まっている状態 ・胸骨圧迫(心臓マッサージ)や人工呼吸で心肺蘇生する 意識がなく、呼吸のみある状態 ・回復体位をとる(上図参照) 意識がある場合 ・仰向けで休ませる ・水分補給を行う ・器材があれば点滴を行う(医療資格保持者がいる場合) 注意点 ・設備があれば呼吸の有無に関わらず高濃度の酸素を投与する ・頭を下げる体勢は厳禁 ・体を冷やさないように保温する なお、再度潜水をして症状軽減をはかる「ふかし」は絶対に行ってはいけません。 ふかしは、空気を使用するため、酸素投与と比較しても窒素の洗い出し効果の効率が悪いためです。再度浮上した時に症状が再燃したり、場合によっては増悪したりするリスクがあります。 減圧症の治療 治療の原則は「再圧治療」です。 再圧治療とは ・治療を受ける人は、専用の治療タンク内に入ります ・タンク内の気圧は水中でかかるくらい高い圧まで上がります ・その中で患者さんは純酸素を吸入します ・高い気圧により気泡は圧縮され、再度血液や組織中に溶け込みます ・その結果、血流の回復が期待できる治療法です さらに高濃度酸素を投与することで、組織へ効率よく酸素が運ばれてきます。 組織に酸素が届くと、窒素が洗い出されます。窒素は肺へ集まり、体外へ排出されるのです。 一定時間、高い気圧をかけたら、その後はゆっくり減圧行います。こうすることで、再度気泡ができることを防ぎます。 高い気圧をかける時間や減圧については、世界的に標準治療として使用されている「米海軍酸素再圧治療表6」に従って行うことが原則です。 初回で可能な限り症状をなくしてしまうことが重要であるため、経過を見ながら治療時間の調整が行われます。それでも症状が残ってしまった場合は、症状の回復の可能性があるのであれば複数回の再圧治療を行うこともあるのです。 減圧症の後遺症 減圧症により脳や脊髄の障害が起こっても、早期に適切な治療が行われれば症状の消失が期待できます。しかしながら、治療が遅れたり適切な治療がなされなかったりすると後遺症を残す可能性があります。 後遺症の症状は障害部位により多様です。以下に代表的な後遺症をお示しします。 内耳障害 ・聴覚と平衡感覚に関わる第Ⅷ脳神経の障害です ・基本的には適切な治療で改善します。 ・減圧症と気づかずに治療が遅れると耳鳴りやふらつきが残ります 対麻痺 ・主に下肢の両側に左右対称に起こる運動麻痺です ・脊髄の障害による後遺症です。 膀胱直腸障害 ・脊髄の障害により、排尿や排便のコントロールが困難になります ・尿がうまく出なくなったり、失禁を起こしたりします 感覚障害 ・脊髄および脳の障害いずれでも起こる後遺症です ・痺れたり、感覚がわからなくなったりします ・脳障害の後遺症として起こる場合は障害部位と反対側に認められます。 ・一方、脊髄の障害の場合は障害された部位より下に両側に起こることが一般的です。 片麻痺 ・脳の障害により起こります。 ・対麻痺と異なり、片側の手足の運動麻痺です。 これらの後遺症によりダイビングへの復帰が出来なくなるだけでなく、導尿が必要になったり車椅子生活を余儀なくされたりするケースもあるのです。 このような場合にはリハビリを行い、少しでも生活しやすくなるように工夫するより他にありません。 また、急性期の症状は回復して残らずとも、のちに骨壊死を起こすことがあります。減圧症により骨の循環障害が起こることで骨の一部が壊死してしまうのです。 もっとも多いのは大腿骨頭壊死です。発症直後は無症状ですが、徐々に骨頭が潰れていくため股関節痛が起こります。最終的には関節が破壊され、歩行が困難になってしまいます。 骨壊死が起こってしまうと症状の進行を止めることはできず、生活に支障が出れば手術が必要になるのです。 減圧症(潜水病)の後遺症は治せるのか?再生医療の可能性について 現在、最新の治療である幹細胞治療がさまざまな分野で注目を浴びています。減圧症の後遺症についても同様のことが言えるでしょう。 幹細胞治療は、「間葉系幹細胞」と呼ばれる色々な細胞に変化できる万能細胞の特性を活かした治療法です。幹細胞を採取して培養を行い、障害部位に投与することで組織の再生を促します。 一般的に回復しないとされていた脳卒中や脊髄損傷により傷ついた神経や、従来手術しかないと考えられてきた変形した関節の治療などが対象です。そのため減圧症の後遺症についても、幹細胞治療が役に立つ可能性があるでしょう。 ▼脊髄損傷に対する幹細胞治療についてはこちらの動画をご覧ください。 https://www.youtube.com/watch?v=5HxbCexwwbE まとめ・減圧症の治し方と後遺症に対する最新の治療法とは!医師が解説! 減圧症発症後の各段階での治療について解説をしました。 減圧症の後遺症は後の生活に大きな支障を及ぼします。まずは起こさないことが一番です。 不幸にして発症してしまった場合でも、速やかな治療により後遺症が残る可能性を抑えることができます。応急処置のための酸素の準備・心肺蘇生法の習得・搬送先の把握なども、潜水をする上で重要な準備と言えるでしょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 ▼以下も潜水病に関する情報を記載しています 減圧症による脳障害|症状と後遺症、治療法について 参考文献 鈴木 信哉:潜水による障害,再圧治療. 高圧酸素治療法入門第6版. 日本高気圧環境・潜水医学会. 2017; 147-174. 小濱正博. レジデントノート 8(5): 667-674, 2006. 小島泰史, 鈴木信哉, 新関祐美, 小島朗子, 川口宏好, 柳下和慶. 日本渡航医学会誌 13(1): 27-31, 2019. 梅村武寛, 堂籠博. 日本医事新報 (5120): 40-41, 2022. 工藤大介. 日本医事新報 (5062): 78-79, 2021.
2024.01.22 -
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減圧症による脊椎損傷の症状と治療法について解説 減圧症は、ダイビングなどで深いところから突然浅いところに浮上した際、高圧の環境で血液や組織に溶け込んでいた窒素が、減圧に伴って気泡を作り、様々な症状をもたらす病気です。気泡によって脊髄が損傷を受け、神経症状を起こしてしまうこともあります。 今回は、この減圧症についてわかりやすく解説していきます。 減圧症とは 減圧症とは、周りの圧力の低下に伴って、身体の中に溶解していた不活性ガス(主に窒素)が気化し気泡となることが原因となり、さまざまな症状が現れる病気です。 高気圧環境での労働や、高い場所での減圧によるものが知られているのですが、近年はダイビングによる発症が増加し、減圧症全体の20%以上を占めると言われています。 中高年のダイバーが増えている一方で、減圧症に対する知識の教育不足や治療環境が十分に整っているとは言えません。 さて、この減圧症は潜水後に発症することが多いために、潜水病と呼ばれることもあります。症状としては、関節痛や筋肉痛、めまい、意識障害といったものがあります。 減圧症の症状 減圧症では、身体の中にたまっていた窒素が気泡となり、膨張することで身体の組織を傷つけたり、血管を塞いだりすることでさまざまな症状が現れてきます。 脳の血管が気泡で詰まることで、脳卒中のような症状が現れてしまうこともあります。例えば、身体の片側の筋力低下、めまい、発語困難などです。また、窒素の気泡が生じると組織に炎症が起こり、筋肉や関節、腱の腫れや痛みも起こります。 さて、減圧症は大きく以下の2つのタイプに分けられます。 ・Ⅰ型(比較的軽症) 皮膚や筋肉の症状のみ。 腕や脚の関節、背中などに痛みが生じます。 初めは軽い痛みですが、徐々に増強し、鋭い痛みとなります。 軽度な症状であっても全てが自然治癒するわけではなく、徐々に症状が重くなることもあるので注意が必要です。 ・Ⅱ型(比較的重症) 呼吸器や循環器の症状、中枢神経症状を呈するもの。 軽いしびれから、重度の麻痺や死亡にまで至る場合もあります。 特に脊髄が障害を受けやすいとされています。脊髄が損傷を受けた場合は、腕や脚のしびれ、痛み、筋力の低下がみられます。 減圧症によって脊髄損傷を受けると、後遺症が残る場合もあります。つまり、治療が遅れてしまうか、十分に行われない場合に永続的な神経障害となる恐れもあり、減圧症による症状が治らないということになってしまうのです。 このⅡ型減圧症では、脊髄損傷が最も多いとされています。 脊髄は硬い硬膜で覆われているのですが、脊髄内に発生した気泡によって組織内の圧力が上昇し、血流障害などによって脊髄損傷が起こるとされています。 下位胸髄から腰髄、そして上部から中部胸髄が好発部位とされており、窒素と結びつきやすい脂質が多く含まれている部位が障害されやすいです。 症状は軽い痺れなどの異常感覚から、排尿・排便が難しくなる膀胱直腸障害を含む完全な四肢麻痺まで、さまざまです。 報告によっても異なりますが、日本では33-62%の脊髄損傷の方で後遺症が残ってしまうともされてます。 減圧症の長期的な影響として、減圧性骨壊死があります。骨壊死が進むと、日常の生活のレベルが著しく低下し、人工関節置換術などの手術も必要となることがあります。 さらに、減圧症では肺にも障害が現れることがあるのです。気泡が肺に及ぶと、咳や胸の痛み、呼吸困難が起こり、まれに死に至ることもあります。 減圧症の治療法 減圧症の治療法として最も大切なのは、高気圧酸素療法です。 重症であるⅡ型減圧症では、以下のような方法が用いられます。 高気圧酸素療法 ①水深18m相当の加圧下で、20分の酸素吸入 ②5分のインターバルを挟んで3回繰り返す ⇩ ③水深9m相当の加圧下で、60分の酸素吸入 ④15分のインターバルを挟んで2回繰り返す 水深18m相当の加圧下で、20分の酸素吸入を5分のインターバルを挟んで3回繰り返します。そしてその後、水深9m相当の加圧下で、60分の酸素吸入を15分のインターバルで2回行い、減圧します。 この治療法は以下のような作用があります。 ・血液や組織の中で気泡となった窒素を、血液や組織に再び溶解させる作用 ・窒素を身体から排泄させる作用 ・血液の流れが悪い部位に酸素を行き渡らせる作用 脊髄損傷において、高気圧酸素治療を繰り返すことで回復するケースもみられます。 高気圧酸素治療を行なっても、運動機能や知覚障害が残る場合、ステロイドの点滴治療や、歩行訓練・バランス訓練といった理学療法を行っていきます。 減圧症の予防法 ダイビングをするダイバーは、ガイドラインで決められているような減圧停止を行いながら浮上することで、減圧症を予防することができます。 また、注意点として、ダイビングをしてから12〜24時間以内に飛行機に乗ると減圧症のリスクが高まると言われています。そのため、ダイビングを行ったあとは飛行機に乗ったり高地に行ったりする前に、海抜0メートル地点に12-24時間ほど滞在することが勧められています。 まとめ・減圧症による脊椎損傷の症状と治療法について解説 今回の記事では、ダイビングを行う上では知っておくべき潜水病について解説しました。 脊髄損傷の後遺症が残ってしまった場合の最新の治療法として、再生医療があります。 当院では、幹細胞治療として、自分の脂肪から培養した脂肪由来間葉系幹細胞治療を行っています。この治療は、幹細胞を脊髄腔内に直接注入するというものです。 今までに、脊髄損傷の症状が改善されたという報告も寄せられています。 ▼減圧症などで脊髄損傷を起こしてしまった方で、再生医療にご興味のある方は、ぜひ一度当院までご相談ください。 https://www.youtube.com/watch?v=5HxbCexwwbE 参考文献 スポーツダイビングによる脊髄型減圧症の1例.リハビリテーション医学.2006;43:454-459. p454 減圧症 (げんあつしょう)とは | 済生会 減圧症 - 25. 外傷と中毒 - MSDマニュアル家庭版 スポーツダイビングによる脊髄型減圧症の1例.リハビリテーション医学.2006;43:454-459. p456-457
2024.01.18 -
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減圧症の原因と6つの予防ポイント!わかりやすく解説 減圧症は、急激な高気圧から低気圧への移動時に生じる症状の総称です。減圧症は、潜水や高地登山など、急激な気圧の変化が起こる状況で発症することがあります。 この記事では、減圧症対策として、その原因や予防するためのポイントを6つに分け、わかりやすく解説します。 減圧症の原因 減圧症のメカニズムとしては、身体の周囲の気圧が急激に低下することで、体内の血液や組織に溶け込んでいる窒素ガスが血液や皮膚・筋肉・臓器などの組織の中で気泡を作り、血流障害や組織の破壊を引き起こすというものになります。 潜水における減圧症 潜水中に吸い込んだ空気中の窒素は血液や組織に取り込まれますが、水圧が高いところではその量が増えていきます。すると、窒素は急速にそして過剰に血液や組織に溶け込みます。その状態で急速に水面に浮上すると、周囲の水圧が低下するために血管内や組織内で窒素の気泡が形成されます。 この気泡が、血管を詰まらせて血流を阻害したり、組織を破壊したり、炎症反応を引き起こすことで、さまざまな障害や症状を引き起こすのです。 減圧症は潜水後に起こることが多いので、潜水病とも呼ばれます。 減圧症の影響 減圧症では、水面に浮上した後に倦怠感や疲労感、食欲不振、頭痛などの初期症状が現れることがあります。そして、徐々に他のさまざまな症状も現れてきます。 減圧症には、以下の2つのタイプがあります。 症状(Ⅱ型は、Ⅰ 型よりも重症です) ・ Ⅰ型:皮膚や筋肉の症状(ベンズ)のみ ・Ⅱ型:呼吸・循環器症状(チョークス)や中枢神経症状を伴うもの 減圧症では、脊髄損傷も起こりやすいとされています。 その他には、脳障害、呼吸器系の障害(肺塞栓など)、循環器系(心不全や心原性ショックなど)もあります。 また、減圧症の長期的な影響として、減圧性骨壊死という骨の障害もあります。この骨障害は、肩関節や股関節によく起こります。特に、大腿骨頭壊死が起こると、歩行障害などの影響がでたり、重症な場合には手術が必要となることもあります。 減圧症の治療の応急処置としては、100%酸素吸入を行っていきます。そして、専門医療機関では、高気圧酸素療法が行われます。 減圧症の予防ポイント6つ! ダイビング時だけでなく、登山時にも引き起こされることがあります。減圧症を予防するためのポイントを6つに分けて解説します。 ①潜水前の注意 減圧症は、以下に述べるような要因があるとそのリスクが増大します。 以下のようなリスクがないかどうか、潜水前にチェックしておくことが大切です。 ここにあげたようなリスクがある方については、医師に事前に潜水をしてよいか、確認をしておく方がよいでしょう。また、潜水前には、適切な訓練と手順を確実にチェックし、それを守ることが必要です。 リスクを避けるためのチェック項目 ・卵円孔開存(らんえんこうかいぞん)や心房中隔欠損などの心臓の病気 ・疲労 ・肥満 ・高齢 ②潜水時の注意 急激な深さへの潜水や長時間の潜水は避け、適切な休憩を取りましょう。 また、浮上の速度は15〜30cm/秒を超えないようにします。さらに、水深3~4mの地点で3~5分間の安全停止をすることも、圧力の平衡を保つために推奨されています これに関しては、米国海軍潜水マニュアル(United States Navy Diving Manual)といった正式なガイドラインなどを参考にして、浮上したりすることで減圧症の予防につとめましょう。 ③潜水後の注意 ダイビング後12〜24時間以内は飛行機に乗らないようにしましょう。 潜水活動を行った後に飛行機に乗るような場合には、12〜24時間は海抜0の場所にとどまり、一定期間の休息後が望ましいとされています。 ダイビング後12〜24時間以内に飛行機に乗ると、減圧症のリスクが高まることが知られているのです。 ④高地登山の適切な計画 登山中に急激な標高の変化があると、大気中の酸素濃度が減少し、それによって減圧症が引き起こされることがあります。 登山前には、適切な標高への適応期間を確保し、急激な標高の変化を避けるよう計画しましょう。適切な装備の使用や体調管理も欠かせません。 ⑤十分な水分摂取 どの状況においても、十分な水分摂取が重要です。 水分不足は体調不良を引き起こしやすくなりますので、こまめな水分補給を心掛けましょう。 ⑥専門家のアドバイスを仰ぐ 潜水や高地登山など、特定の状況における活動前には、専門の医師や指導者に相談し、適切なアドバイスを得ることが賢明です。 以上のポイントを守ることで、減圧症のリスクを最小限に抑え、安全にダイビングをしたり登山をしたりすることが可能となるでしょう。 まとめ・減圧症の原因と6つの予防ポイント!わかりやすく解説 今回の記事では、減圧症の原因やメカニズム、予防法について詳細に解説しました。 しかしながら、適切な予防法をとっていても、減圧症による脊髄障害や脳障害によって麻痺などの症状が残ってしまう場合もあります。 こうした減圧症による脊髄損傷に対しては、リハビリテーションを行ったり、場合によってはステロイドなどの薬物治療が行われることが一般的です。しかしながら、こうした方法は根本的な治療法ではありませんでした。 そこで当院では、幹細胞治療として、自分の脂肪から培養した脂肪由来間葉系幹細胞治療を行っています。この治療は、幹細胞を脊髄腔内に直接注入するというものです。 今までに、脊髄損傷の症状が改善されたという報告も寄せられており、今後に期待が持てる治療の一つと言えます。 ▼減圧症などで脊髄損傷を起こしてしまった方で、再生医療にご興味のある方は、ぜひ一度当院までご相談ください。 https://www.youtube.com/watch?v=5HxbCexwwbE ▼減圧症のセルフチェックは以下です 減圧症(潜水病)は軽度なら自然治癒も!症状のセルフチェックリストをご紹介 参考文献 減圧症 - 25. 外傷と中毒 - MSDプロフェッショナル版 素潜り漁中に発症した脳型減圧症の1例.臨床神経学. 2012;1052(10):757-761 潜水時の予防措置および潜水障害の予防 - 22. 外傷と中毒 - MSDマニュアル プロフェッショナル版 減圧症 - 25. 外傷と中毒 - MSDマニュアル家庭版
2024.01.17