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喫煙が関節症に与える影響/電子タバコは安全か?

喫煙が関節症に与える影響/電子タバコは安全か?

喫煙することと関節症の間には、一見何も関係がないようにみえます。

しかし最近いくつかの研究の結果から、関節症の経過にタバコがよくない影響を与えていることが明らかになってきました。

そこで今回の記事では、喫煙と関節症の関係についてご説明します。さらに電子タバコによる影響についても、解説いたします。

喫煙は関節に悪い

喫煙が関節症に与える影響

喫煙そのものは、肺がんや肺疾患、また動脈硬化や脳血管障害など、わたしたちの体のあらゆるところによくない影響を与えることは、よく知られていることかと思います。

ここでは特に、関節症の方に対して喫煙が与える影響についてご紹介します。

死亡リスクの増加

関節リウマチと診断されている方が喫煙を続けていると、非喫煙者に比べて死亡率が増加することがわかっています。

121,700人の女性が参加する追跡調査で、追跡中に関節リウマチと診断された923名を分析しました。このうち36%は関節リウマチと診断される前に一度も喫煙したことがなく、43%が過去に喫煙しており、21%が現在も喫煙者でした。

この調査によると、関節リウマチと診断された後も年間5パック以上の喫煙を続けていた女性は、診断前から喫煙をしていなかった人や関節リウマチと診断された後に禁煙した人たちと比べても、死亡リスクが2~4倍も高くなっていました。

診断後に禁煙することで、喫煙を継続するよりも死亡リスクは低くなっていましたので、早めに禁煙することは有効だと言えるでしょう。
(参考文献:https://acrabstracts.org/abstract/smoking-behavior-changes-after-rheumatoid-arthritis-diagnosis-and-risk-of-mortality-during-36-years-of-prospective-follow-up/

また5,677人の関節リウマチの方を平均して約5年間追跡調査した研究では、喫煙者の心血管障害や呼吸器疾患による入院率は、非喫煙者の2倍になっていました。

入院するリスクは、禁煙1年後に著しく低下していましたので、こちらも早めに禁煙することが予後を改善することにつながります。
(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5623338/

手術の合併症の増加

喫煙者と非喫煙者における、膝関節置換術の経過を比較した研究があります。

合計で8,776人の膝関節再置換術を受けた方を対象に実施した研究です。このうち、11.6%が現在も喫煙者でした。再置換人工膝関節置換術を受けた喫煙者は、非喫煙者と比較して、あらゆる創傷合併症、肺炎、および再手術の割合が高くなっていました。
(参考文献:https://www.arthroplastyjournal.org/article/S0883-5403(18)30282-1/fulltext)

タバコを吸うと、一酸化炭素が赤血球内に取り込まれ、その結果、全身の組織に運ばれる酸素が少なくなります。手術部位が適切に治るためには、酸素を十分に含んだ血液が必要です。

タバコを吸うと、この治癒プロセスの重要な部分が滞り、治癒に時間がかかるようになると考えられています。

病状の悪化

159人の変形性膝関節症の男性を最長30ヶ月間追跡調査したところ、喫煙者は非喫煙者に比べて関節症による膝の痛みが強く、軟骨が著しく失われる可能性が2倍以上であることがわかりました。
(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1798417/

X線写真の撮影が可能であった311人の初期リウマチ性関節炎の方をフォローした調査では、1年後にX線写真の進行がみられる独立した予測因子は、喫煙でした。つまりX線写真上で悪化する危険因子に喫煙があることがわかりました。
(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4515990/

タバコに含まれる有害物質が軟骨の減少に寄与している可能性や、血中の一酸化炭素濃度が高いことが、軟骨の修復を妨げている可能性があると推測されています。

電子タバコの関節症に与える影響

電子タバコ(e-cigarettes)の使用率が急速に高まっていますが、電子タバコの使用が関節症状に対して与える影響について、まだ詳細はわかっていません。そこで行われたので、米国で924,882人の成人を対象に実施された、最大規模の全国電話調査です。

この調査では、電子タバコの使用歴と炎症性関節炎に関する情報を入手し、解析しています。

その結果、電子タバコ使用者と電子タバコ未使用者を比較したところ、電子タバコ使用者の方が炎症性関節炎により罹りやすいことが確認されました。この傾向は、電子タバコ使用者でも電子タバコと通常のタバコを併用する使用者でも同様であることがわかりました。(参考文献:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphar.2022.883550/full

まとめ・喫煙が関節症に与える影響/電子タバコは安全か?

喫煙と関節症の関係、また電子タバコと関節症の関係についてご説明しました。

いずれにしても喫煙は関節症に対し、良い作用は何もないと言えるでしょう。ただ禁煙することで、予後や合併症の改善がみられることも事実です。まだ電子タバコを含め喫煙しておられる方がおられるようであれば、できる限り早く禁煙に取り組むことをお勧めいたします。

 

No.082

監修:医師 坂本貞範

 

 

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