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妊娠糖尿病で運動してもいい?妊婦さんが安心して取り組める運動

妊娠中に「妊娠糖尿病」と診断され、不安や戸惑いを感じていませんか?
「食事に気をつけてください」と言われる中で、「運動も大切です」と医師からアドバイスを受けたものの、妊娠中に体を動かして本当に大丈夫なのか、逆にお腹の赤ちゃんに影響が出ないか、不安になる方も多いでしょう。
本記事では、妊娠糖尿病の管理においてなぜ運動が推奨されているのか、そしてどのような運動なら安心して行えるのかを、わかりやすく解説します。
運動が不安な方でも、今日から無理なく始められるポイントや注意点も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
妊娠糖尿病には運動が効果的
妊娠糖尿病と診断されると、まず「食事管理」が思い浮かびますが、運動も血糖値のコントロールに効果的な手段のひとつです。
妊娠中でも体に負担をかけすぎない運動であれば、医師の指導のもと安心して取り入れられます。
実際に、妊婦さんの中には運動を取り入れることで血糖値が安定し、体調管理がしやすくなったと感じる方も少なくありません。
本章では、妊娠糖尿病に対する運動の具体的な効果や、安全に取り入れやすい方法について解説します。
歩行のみでも改善効果が期待できる
運動と聞くと、ランニングのような激しい運動が必要と思われがちですが、ウォーキングのような軽い有酸素運動でも血糖値コントロールへの良い影響が報告されています。
たとえば、科学研究費助成事業による調査では、妊娠糖尿病の妊婦において歩行運動を取り入れた妊婦の方が、食事療法のみの妊婦に比べてインスリン治療へ移行した割合が少なかったことが報告されています。(文献1)
もちろん、すべての人に同じ効果が現れるわけではありませんが、「歩くだけでも意味がある」と思えるだけでも、日々の活動が変わります。
運動により血糖値コントロール・体重管理・便秘予防などの効果がある
先ほども解説した通り、妊娠糖尿病において、軽めの有酸素運動は血糖値のコントロールに非常に有効ですが、運動の効果は、血糖値の改善だけではありません。
適度な運動を続けることで、過度な体重増加を防ぎ、妊娠中に起こりやすい便秘の予防にも効果があるとされています。
さらに、軽い運動はリフレッシュにもつながり、ストレスの軽減や睡眠の質の向上など、心身のバランスを整える助けにもなります。
妊娠中はホルモンバランスの変化で気分が不安定になりやすいため、体を動かすことで気分転換ができるのも大きな利点です。
安定期(妊娠中期)〜後期では運動が始めやすい
妊娠初期は体調が不安定なことが多いため、無理に運動を始める必要はありません。
しかし、妊娠12~16週以降の安定期に入り、体調が落ち着いてきた頃であれば、医師の許可を得たうえで軽い運動を始めることができます。
ウォーキングやマタニティヨガ、ストレッチなど、お腹に負担をかけずにできる動きから少しずつ取り入れていくのがポイントです。
最初は短時間・軽い内容からスタートし、体調を見ながら続けていきましょう。
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妊娠糖尿病の方におすすめの3つの運動
妊娠糖尿病の方にとって、運動は血糖コントロールや体調管理に役立つ大切なセルフケアのひとつです。
ここで、妊婦さんでも無理なく取り入れやすい、妊娠糖尿病の管理にも効果が期待できる、以下3つの運動方法をご紹介します。
- ウォーキング(散歩)
- マタニティヨガ・ストレッチ
- 軽い筋トレ(スクワット・もも上げ)
ウォーキング(散歩)
ウォーキングは、妊娠中でも安全性が高く、体への負担が少ない有酸素運動です。
血流が良くなることで血糖値の安定にもつながり、リフレッシュ効果も期待できます。
無理に長時間歩く必要はなく、1日15〜30分程度、気分がよい時間帯にゆっくり歩くだけで大丈夫です。
歩く際は、気温や天候に配慮し、水分補給を忘れずに行いましょう。
マタニティヨガ・ストレッチ
マタニティヨガやストレッチは、呼吸を意識しながらゆっくり体を動かす運動です。
筋肉をやわらかく保ち、血行を促進することで、血糖値の安定にも良い影響が期待でき、心身のリラックスにもつながります。
また、腰痛や肩こり、むくみ、便秘といった妊娠中の不調の予防や緩和にも効果的です。
たとえば「猫と牛のポーズ」は、妊婦さんに人気のある基本的な動きのひとつです。
【猫と牛のポーズ】
- 四つん這いになる
- 肩の真下に手首、脚の付け根の真下に膝を置く
- 手のひらを大きく開き、中指を正面に向ける
- 膝の間は拳1つ分あける
- 頭からお尻まで一直線にキープ
- 息を吸いながら背中を反らせて目線を上に
- 息を吐きながら背中を丸めて目線をおへそに
四つん這いになることで、お腹が自然に下がり、赤ちゃんにとっても居心地の良いスペースが生まれます。
お母さんは呼吸がしやすくなり、赤ちゃんもリラックスできると言われており、息苦しさを感じたときにもおすすめです。
ただし、このポーズは妊娠16週以降で、主治医から運動の許可を得ている方のみ行うようにしましょう。
自宅で動画を見ながら取り組める手軽さも魅力ですが、お腹を圧迫しない姿勢を選び、無理なく行うことが大切です。
軽い筋トレ(スクワット・もも上げ)
妊婦さんでもできる範囲の軽い筋トレもおすすめです。
筋肉を使うことで、インスリンの働きが良くなり、血糖の取り込みがスムーズになるといわれています。
たとえば、椅子につかまりながらのスクワットや、その場でももを軽く上げ下げする運動などは、下半身の筋力を保ちつつ代謝をサポートします。
運動前後のストレッチや呼吸を意識し、お腹に力を入れすぎないよう注意しながら行うのがポイントです。
妊娠糖尿病の方が運動する際の注意点
妊娠糖尿病の管理に運動は効果的ですが、妊娠中という特別な時期であることを忘れてはいけません。
体調や妊娠の経過によっては、運動がかえって負担になる場合もあるため、「無理をしない・安全に行う」ことが最も大切です。
本章では、妊娠糖尿病の方が運動を始める際に、必ず押さえておきたい以下、4つの注意点をご紹介します。
- 医師に必ず相談してから開始する
- お腹が張ったらすぐ中止する
- 水分補給・室温管理など安全に配慮する
- 激しい運動は避ける
医師に必ず相談してから開始する
妊娠中に運動を始める前には、必ず主治医へ相談しましょう。
妊娠糖尿病の症状の程度や、妊娠の経過、合併症の有無などによっては、運動を控えるよう指示される場合もあります。
また、体調は日によって変化するため、「昨日は大丈夫だったから今日も大丈夫」とは限りません。
医師と相談しながら、そのときの自分の体に合った方法・タイミングで取り組むことが大切です。
お腹が張ったらすぐ中止する
妊娠中の運動で最も大事なのは、「頑張りすぎない」ことです。
少しでもお腹が張る、疲れすぎたと感じる、不調のサインがあれば、すぐに運動を中止しましょう。
妊娠糖尿病の管理には継続が大切ですが、それ以上に大切なのは母体と赤ちゃんの安全です。
「今日は無理しない」という判断も、立派な自己管理のひとつです。
水分補給・室温管理など安全に配慮する
妊娠中は汗をかきやすく、体温調整もしにくくなっているため、こまめな水分補給と室温管理が欠かせません。
とくに夏場や暖房のきいた室内では、熱中症や脱水症状を防ぐためにも常に水分を手元に置いておくようにしましょう。
また、食後30分〜1時間以内の軽い運動が血糖値の上昇を抑えるのに効果的とされており、このタイミングを意識するのもおすすめですが、体調がすぐれないときは無理せず、あくまで自分の体と相談しながら行いましょう。
激しい運動は避ける
妊娠中はお腹に衝撃や強い負荷がかかるような運動は避ける必要があります。
主に、以下の運動は原則NGとされています。
- ランニングやジャンプなど、全身に強い負荷がかかる動き
- サッカーやバスケットボールなど、転倒や接触リスクのあるスポーツ
- 腹筋運動や体幹トレーニングなど、お腹に直接負担がかかるもの
これらは流産や早産のリスクを高める恐れがあるため、妊娠中は控えるのが基本です。
安全第一で「ゆっくり・やさしく・短時間」を心がけましょう。
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まとめ|妊娠糖尿病と運動は正しく組み合わせれば心強い味方
妊娠糖尿病と診断されると、不安や戸惑いを感じる方も多いかもしれません。
しかし、適切な運動は血糖コントロールに役立つだけでなく、妊娠中の心身の健康をサポートしてくれる心強い味方にもなります。
大切なのは、「できることから無理なく続ける」ことです。
ウォーキングやストレッチなど、体調に合わせて取り入れやすい運動から始めてみましょう。
少しでも不安があるときは、かかりつけの医師や助産師に相談しながら進めることが安心・安全への近道です。無理のない範囲で体を動かしながら、穏やかな妊娠生活を送りましょう。
参考文献
(文献1)
菅沼信彦「妊娠糖尿病妊婦に運動療法は効果的か?2014年度 実績報告書」京都大学 医学系研究科、2015年(研究課題番号:25670970)
https://kaken.nii.ac.jp/ja/report/KAKENHI-PROJECT-25670970/256709702014jisseki/(最終アクセス:2025年5月25日])