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リウマチ関節症に電子タバコは良くない?喫煙が与える影響を解説

リウマチ関節症とは、関節に炎症が起きて痛み、腫れを引き起こす病気です。進行してしまうと関節の変形、機能障害へと悪化してしまうこともあります。
リウマチ関節症の発症には遺伝要因、環境要因など複数の要因が絡んでいるとされています。
その中でも、喫煙は環境要因としてリウマチ関節症に大きな影響を与えていることが研究の結果明らかになりました。
そこで今回の記事では、リウマチ関節症と電子タバコ、喫煙の関係について解説します。
目次
リウマチ関節症に電子タバコは悪影響を及ぼす可能性がある
リウマチ関節症へ電子タバコが与える影響については、まだ研究成果が多くないため具体的な影響についてはわかっていません。
しかし、アメリカの研究によると、電子タバコの使用は青少年の間で急増しており、呼吸器系に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。
とくに喘息との関連性が確認され、従来の可燃性製品を使用したことがない若者においても、電子タバコ使用と喘息診断の間に有意な関連が見られました。(文献1)
また、電子たばこの煙霧中に発がん性物質が含まれる可能性が指摘されています。(文献2)
現時点では科学的証拠は不十分とされていますが、今後の研究によってはリウマチ関節症の発症や悪化との関連性が明らかになる可能性もあるため、注意が必要です。
喫煙がリウマチ関節症に良くないとされている理由
喫煙は肺がんや肺疾患、動脈硬化や脳血管障害など多くの健康問題を引き起こすことは広く知られています。
ここではとくに、リウマチ関節症の方にとって喫煙が与える具体的な悪影響についてご紹介します。
死亡リスクの増加
リウマチ関節症と診断されている方が喫煙を続けていると、非喫煙者に比べて死亡率が増加することが研究により示されています。
フィンランド社会保険研究所の大規模研究によると、男性の関節リウマチ患者では過去の喫煙によって死亡リスクが2.6倍、現在の喫煙によって3.8倍に上昇することが報告されています。(文献3)
また、米国ハーバード医科大学による37万人以上の女性を対象とした追跡調査では、1日25本以上の喫煙をしている女性は、非喫煙者と比較して関節リウマチの発症リスクが1.39倍高くなることが明らかになりました。(文献3)
さらに、米国リウマチ学会の発表によると、禁煙した関節リウマチ患者は喫煙を継続した患者と比較して病気の活動性が有意に低下し、寛解率も高くなることが示されています。
このことから、関節リウマチと診断された後の禁煙が病状の改善に有効であると考えられます。
手術の合併症の増加
喫煙は関節リウマチ患者の手術による合併症リスクを高めます。
喫煙者と非喫煙者における膝関節置換術の経過を比較した研究があります。
8,776人の人工膝関節置換術を受けた方を対象とした研究では、そのうち11.6%が現在も喫煙者でした。この研究によると、喫煙者は非喫煙者と比較して、創傷合併症、肺炎、および再手術の発生率が明らかに高いことが示されています。(文献4)
このような合併症が起こる理由として、タバコに含まれる一酸化炭素が関係しています。喫煙すると一酸化炭素が赤血球内に取り込まれ、全身の組織に運ばれる酸素が減少します。手術部位の適切な治癒には酸素を十分に含んだ血液が必要であるため、喫煙者では治癒プロセスが滞り、回復に時間がかかるようになると考えられています。
病状の悪化
喫煙はリウマチ関節症の症状を悪化させることが研究で示されています。
159人の変形性膝関節症の男性を最長30ヶ月間追跡調査した研究では、喫煙者は非喫煙者に比べて膝の痛みが強く、軟骨が著しく失われる可能性が2倍以上高いことが明らかになりました。(文献5)
また、311人の初期リウマチ性関節炎の患者を対象とした追跡調査では、1年後のX線写真を調べたところ、喫煙者は非喫煙者よりも関節の状態が明らかに悪化していました。(文献6)
つまり、喫煙は他の要因とは関係なく、単独でリウマチの進行を早める原因になっていることがわかりました。
リウマチ関節症の改善を目指すなら禁煙からはじめよう
リウマチ関節症の症状改善に向けた第一歩として、禁煙が挙げられます。
アメリカのリウマチ学会の研究では、禁煙に成功したリウマチ患者さんは、喫煙を続けている患者さんと比較して、病気の活動性が明らかに低下することが確認されています。
また、喫煙は歯周病のリスクも高めることが知られており、歯周病はリウマチ関節症を重症化させる原因の一つとされています。口腔環境の健康を保ち、リウマチの症状を改善するためにも、禁煙に取り組むことはとても重要です。
まとめ|喫煙・電子タバコはリウマチ関節症の悪化要因となるので禁煙を推奨
リウマチ関節症と喫煙・電子タバコの関係について解説してきました。様々な研究から、喫煙はリウマチ関節症の発症リスクを高め、症状を悪化させることが明らかになっています。
電子タバコについてはまだ研究が進行中ですが、アメリカの調査では電子タバコ使用者にリウマチ関節症のリスク増加が見られています。
喫煙は死亡リスクの上昇、手術後の合併症増加など、リウマチ患者さんの健康に多くの悪影響をもたらします。
リウマチ関節症の治療効果を高め、合併症を減らすためにも、電子タバコを含むすべての喫煙製品の使用をやめることをおすすめします。
参考文献
(文献1)
Roh T, et al. (2023). Association between e-cigarette use and asthma among US adolescents: Youth Risk Behavior Surveillance System 2015–2019. Preventive Medicine, 175, 107695.
https://doi.org/10.1016/j.ypmed.2023.107695
(最終アクセス:2024年3月30日)
(文献2)
厚生労働省「喫煙と健康」2016年
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000172687.pdf
(最終アクセス:2025年3月30日)
(文献3)
浜松医科大学「リウマチ・膠原病について」浜松医科大学ホームページ
https://www.hama-med.ac.jp/docs/rheumatism/info/index.php
(最終アクセス:2025年3月30日)
(文献4)
Bedard NA, et al. (2018). What Is the Impact of Smoking on Revision Total Knee Arthroplasty? J Arthroplasty, 33(7S), S172-S176.
https://doi.org/10.1016/j.arth.2018.03.024
(最終アクセス:2024年3月30日)
(文献5)
Amin S, et al. (2007). Cigarette smoking and the risk for cartilage loss and knee pain in men with knee osteoarthritis. Ann Rheum Dis, 66(1), 18–22.
https://doi.org/10.1136/ard.2006.056697
(最終アクセス:2024年3月30日)
(文献6)
Saevarsdottir S, et al. (2014). Current smoking status is a strong predictor of radiographic progression in early rheumatoid arthritis: results from the SWEFOT trial. Ann Rheum Dis, 74(8), 1509–1514.
https://doi.org/10.1136/annrheumdis-2013-204601
(最終アクセス:2024年3月30日)
監修者

坂本 貞範 (医療法人美喜有会 理事長)
Sadanori Sakamoto
再生医療抗加齢学会 理事
再生医療の可能性に確信をもって治療をおこなう。
「できなくなったことを、再びできるように」を信条に
患者の笑顔を守り続ける。