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腸脛靭帯炎(ランナー膝)治療のストレッチ、テーピングと靴選びについて

公開日: 2022.11.04
更新日: 2024.11.10

腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)は、有酸素運動に取り組む場合によく見られる炎症です。

とくに習慣的にランニングを楽しむ方の間で頻発することから、ランナー膝とも呼ばれます。

しかし腸脛靭帯炎の症状や治療法、予防法などはあまり知られていません。しかし発症しやすい炎症であるため、事前に知識を知って対処するのが重要です。

本記事では腸脛靭帯炎の症状や治療法、効果的なストレッチやテーピングなどを解説します。

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腸脛靭帯炎(ランナー膝)の基礎知識

まず、腸脛靭帯炎がどのような炎症か解説します。

そのあと、発生の原因やメカニズム、診断方法などを解説します。

事前に腸脛靭帯炎に関して理解し、発症した際、冷静に対処できるようにしておきましょう。

「腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)」とは?

腸脛靭帯の概念図

この病気がどのようなものか説明するには腸脛靭帯に関して知る必要があり、簡単にお伝えします。

腸脛靭帯とは、骨盤の外側に出っ張っている腸骨(ちょうこつ)から、膝下にある脛骨(けいこつ)につながっていて太ももの外側部分に長く伸びるように位置しています。

また、腸脛靭帯は大臀筋と大腿筋膜腸筋(だいたいきんまくちょうきん)という、これまた長くて難しい名前の筋肉とつながることで身体をぐらつかせることなく、さらに身体を安定して保つ大切な役目を担っています。

膝上の太もも部分の外側を押すと、硬いスジ状のものに触れることができますが、これが腸脛靭帯です。

とくに大きな動きに対して大臀筋と呼ばれる大きな筋肉と大腿筋膜張筋とにつながることで、それらの力を脚に伝える役割があります。

腸脛靭帯の働きのおかげで骨盤や膝が安定し、歩くことは勿論、スムーズなランニングを助けてくれます。

そんな腸脛靭帯が炎症を起こした状態が「腸脛靭帯炎」です。

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「腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん:ランナー膝)」とは

腸脛靭帯炎は、別名「ランナー膝」と呼ばれるくらい、「ランニングの愛好家にとって多いケガ」の一つです。ここでは腸脛靭帯炎の症状、原因、診断に関して簡単に説明します。

自分に当てはまる点はないか、チェックしてみましょう。

腸脛靭帯炎の症状

腸脛靭帯炎の初期症状は、運動後に膝の外側に痛みが出ることです。痛みが出る場所は、外側上顆(がいそくじょうか)と言われる膝外側の出っ張り部分です。

痛みは安静にすれば徐々に収まります。

しかし、炎症がひどい場合や、痛みを我慢して無理を続けた場合、歩いたり、膝を曲げ伸ばしをしただけでも痛みが出ることがあります。

久しぶりにランニングやジョギング、ウォーキングを頑張った人によくみられる症状です。

「さぁ、健康のために頑張って走ろう!!」という矢先につまずいてしまうと、やる気も削がれかねません。

腸脛靭帯炎の発生メカニズム

外側上顆の摩擦

腸脛靭帯炎は、繰り返される『摩擦』によって生じます。

摩擦が起こる場所は、大腿骨の外側上顆という場所です。

そこは骨が隆起しており、膝を曲げ伸ばしすることで腸脛靭帯が外側上顆を乗り越えてしまいます。

とくに膝を軽く曲げた状態(屈曲30°くらい)でちょうど乗り越えるため、ランニングのように、0〜30°くらいの曲げ伸ばしを繰り返すことで摩擦がかかりやすくなってしまいます。

発症の主な原因

腸脛靭帯炎の原因の大半はランニングやサイクリングなどの反復的な運動、もしくは運動に対する筋力不足です。

ただし以下の原因で発症する可能性があります。

  • ・O足
  • ・扁平足
  • ・股関節周囲の筋肉の老化

O足や扁平足などは、股関節の機能低下や骨同士の位置関係を乱します。これが原因で腸脛靭帯炎を発症するケースもあります。

また股関節周囲の老化が原因になるかもしれません。

したがってランナー以外の方でも腸脛靭帯炎が発症しうると言えます。

腸脛靭帯炎の初期対応

原因がランニングなどの運動なら、症状が落ち着くまで休養します。

場合によっては、患部にアイシングや湿布を貼付すれば症状の緩和が得られます。

とくに急性期では患部の安静と炎症を抑えることを最優先させましょう。

また症状がごく軽微な場合をのぞき、医療機関で診察を受けることをおすすめします。

その理由として、腸脛靭帯炎でなく、半月板損傷などの重篤な障害が生じている可能性があるからです。

また医療機関で診察を受ければ、症状の緩和や、周辺にある滑液包での炎症の予防に効果的な、投薬や注射が受けられるでしょう。

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腸脛靭帯炎の診断

腸脛靭帯炎は、問診や触診である程度は鑑別できます。

ただ、炎症の状態や他の疾患と見分けるためにレントゲンやMRI、エコー検査が必要なことがあります。

また、腸脛靭帯炎には、特有のテストがあります。

それが「Grasping Test(グラスピングテスト)」です。

やり方は、難しくありませんので、もしかしたら腸脛靭帯炎かもしれない、と思われた方は、試してみましょう。

  • 【Grasping Testの方法】

  • ①患者さんの膝を90°ほど曲げる。
  • ②痛みが出ている場所の少し上を親指で強く押さえる。
  • ③その状態で膝をゆっくり伸ばしていく。
  • ④その時に痛みが出るのであれば、腸脛靭帯炎が疑われる。
    グランスピングテスト

腸脛靭帯炎にならないためのトレーニング

ここまで、股関節機能の低下や骨の位置関係の乱れにより、腸脛靭帯炎を発症しうると解説してきました。

股関節の筋力の低下や足元のぐらつきにより、ランニング時に膝が内外にぐらつくと腸脛靭帯への摩擦が増加してしまいます。

安静期間により症状が落ち着いても、同じような状態だとまた腸脛靭帯炎を繰り返してしまうでしょう。

そのため、ランニングなどのスポーツに復帰するにあたり、腸脛靭帯への負荷を減らすためのトレーニングを推奨しています。

ここでは以下の3つの方法を紹介します。

各トレーニングは、やみくもに動かすのではなく、いずれも体を安定させ、姿勢を意識して行うことがポイントです。

1,股関節の外側の筋肉:大臀筋、中臀筋

上になっているほうの足を持ち上げる→下ろす を繰り返す

股関節外側筋training

2,股関節の内側の筋肉:内転筋

下になっている方の足を持ち上げる→下ろす を繰り返す

股関節内側筋

3,ふくらはぎの筋肉:下腿三頭筋(ヒラメ筋、腓腹筋)

つま先立ち→かかとを降ろす を繰り返す

ふくらはぎの筋肉:下腿三頭筋(ヒラメ筋、腓腹筋)

腸脛靭帯炎(ランナー膝)の治療や予防に役立つストレッチ・セルフケア

腸脛靭帯は、足首や他の膝の靭帯と違い、断裂など重症化するケースはほとんどありません。

そのため、基本的には普段と同じような生活を送っていただいて結構です。

①腸脛靭帯炎に有効なストレッチ

腸脛靭帯炎による痛みが落ち着いたら、徐々にストレッチを開始します。

腸脛靭帯炎を発症する人の特徴として、身体のケア不足により筋肉の伸び縮みの動きが悪くなっていることがあります。

ここでは、腸脛靭帯と連結している大腿筋膜張筋と股関節および大腿部前面の筋肉の3つのストレッチ方法をお伝えします。

1.大腿筋膜張筋のストレッチ

各ストレッチは、無理をせず、痛くなりすぎない範囲で行いましょう。

大腿筋膜張筋のストレッチ

2.股関節前面の筋肉のストレッチ

股関節前面のストレッチ

3.大腿部前面の筋肉のストレッチ

大腿部前面のストレッチ

②腸脛靭帯炎(ランナー膝)に有効なマッサージとセルフケア

またマッサージによっても、腸脛靭帯炎の症状を緩和できます。

たとえば以下の半月板(膝のお皿)をマッサージする方法は簡単に取り組めるのでおすすめです。

  • ・左右の親指と人差し指で、半月板を軽くつかむ
  • ・内側の方向に半月板を軽く押し込む
  • ・内側から外側に軽く押し込む
  • ・2と3を繰り返す

また半月板を手のひらで包み、円を描くように回すのも効果的です。

セルフケアとして、運動後や風呂上がりにアイシングをおこなうのも良いでしょう。

熱を取り除くことで、腸脛靭帯炎を予防できます。

③重度の場合は外科手術も検討

腸脛靭帯炎の症状が顕著な場合は、外科手術が有効です。

腸脛靭帯炎の治療では以下の手術が用いられます。

  • ・腸脛靭帯炎の切開|腸脛靭帯炎の患部周辺を解放し摩擦を減らす
  • ・滑液包の除去|腸脛靭帯炎と大腿骨の隙間にある滑液包の一部または全部を取り除く
  • ・腸炎靭帯延長手術|腸脛靭帯を伸ばすなどして、症状の改善や再発防止を図る

手術と保存療法どちらが適切か、専門家でなければ判断できません。

自身で判断せず、医療機関で受診して医師の判断を仰ぎましょう。

近年では、自己脂肪由来幹細胞などを用いた、再生医療による腸脛靭帯炎の治療の研究も進められています。

再生医療を用いれば、従来よりも効果的な治療が受けられるかもしれません。

再生医療については、以下の記事を参考にしてください。

関連記事:再生医療とは|リペアセルクリニック

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腸脛靭帯炎(ランナー膝)とスポーツとの関係

腸脛靭帯炎のテーピングで大事なことは、腸脛靭帯の負担を減らしてあげることです。

そのため、腸脛靭帯自体をサポートするテーピングと、膝の動きをサポートするテーピングの2種類を用いて行います。

腸脛靭帯炎(ランナー膝)のテーピング

テーピング

あくまでテーピングは補助的な役割にしか過ぎません。また、その人によってテーピングの効果が十分に発揮できない場合もあります。

可能な限り、専門の医療機関にご相談の上、「テーピング」を施行するようにしましょう。

このようなテーピング以外にも「サポーター等の装具」を用いて腸脛靭帯を支え、安定を図る方法もあります。

腸脛靭帯炎と靴(シューズ)選び

腸脛靱帯炎の対策のなかでは靴選びも大切です。

足が左右にぐらつくと腸脛靱帯につながる大腿筋膜張筋が頑張ってぐらつきを止めようとします。

そうすると、筋肉が過剰に働き、ピンと張った状態になります。

その状態で走り続けると、腸脛靭帯への摩擦が助長されて腸脛靭帯炎を引き起こしかねません。シューズ選びの際は以下の3つのポイントを意識してみましょう。

靴は使用に伴い消耗します。

定期的、あるいは、いま一度自身の靴をチェックして自分に合った最適な靴を選びましょう。

1.シューズの後ろ、カップの部分がしっかりしているか

カップ部分

2.指の付け根で曲がるのか

シューズ

3.シューズが過度に捻じれやすくなっていないか

シューズ③

まとめ・腸脛靭帯炎(ランナー膝)の治療では医師の指示を受けるのが重要

今回は、腸脛靭帯炎に関して、病態や、ストレッチ、テーピング、靴選びなどの角度から、その対策をお話しました。

腸脛靭帯炎(ランナー膝)は、ランニングやスポーツをする人に多い症状ですが、正しい対処法を知っていれば予防や治療が可能です。

まずは症状や原因を理解し、痛みが出た場合には早めの対処が重要です。

また症状が軽微な場合をのぞき、医療機関を受診し、適切な指示を得るようにしましょう。

初期の対応としては、炎症を抑えるための安静やストレッチ、適切なテーピングが有効です。

また、腸脛靭帯炎を予防するためには、股関節やふくらはぎの筋力を鍛えるトレーニングや、適切な靴選びも重要です。

日常生活での意識や対策を行い、ランニングやスポーツを安全に楽しむために、ストレッチをはじめ、適切なケアを心がけましょう。

腸脛靭帯炎は誰にでも起こりうるケガです。

これから運動を始める人も、ランニング愛好家の皆さんも運動前の準備運動、そして運動後のカラダのケアをしっかり行いながら、自分に合ったペースで頑張りましょう。

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▼以下も参考にしていただけます
腸脛靱帯炎(ちょうけいじんたいえん)を早く治すポイント

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