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脳幹出血の回復の見込みと、回復プロセスについて解説

脳幹出血の回復の見込みと、回復プロセスについて解説

脳幹出血は、脳の中心部にある脳幹に出血を起こす脳卒中の1つです。脳幹は心臓や呼吸、意識などの重要な生命維持機能を担っているため、出血によって四肢麻痺だけではなく、意識不明の重体、寝たきりとなってしまう場合や、死亡にまで至ってしまう可能性もあります。

この記事では、脳幹出血によって症状が悪化するメカニズムと、回復の見込みや回復のプロセスについて詳しく解説していきます。

脳幹出血回復プロセス

脳幹の役割と脳幹出血による障害について

脳幹は脳の中心部に位置し、脳の部位のうち中脳、橋、延髄で構成されています。

脳全体でみると小さな部位ですが、生命活動にとって大切な循環、呼吸、消化液分泌のほか、眼球運動や体温調節、自律神経の中枢を担っています。

そのため、この部位に出血を起こしてしまうと手足の麻痺だけでなく、意識障害や呼吸停止などの重篤な症状を起こす可能性があります

昏睡状態となり、呼吸停止となった場合には自力で呼吸ができないため、人工呼吸器が必要になったり、処置が遅れた場合には死亡してしまう可能性もあります。そのため、脳幹出血は脳出血の中でも最も重症な部類とされています。

脳幹出血の原因

脳幹出血は、主に動脈硬化が原因で脳幹内の血管が裂けてしまうことで起こります。

動脈硬化の危険因子として、高血圧、喫煙、肥満、糖尿病、脂質異常症などがありますので、これらの病気を持っている方は適切に治療を受けることが必要です。

動脈硬化の危険因子

  • ・高血圧
  • ・喫煙
  • ・肥満
  • ・糖尿病
  • ・脂質異常症

またそのほかにも、動脈瘤や動静脈奇形、外傷など様々な原因が挙げられます。

脳幹出血の治療

脳幹出血の治療は急性期、慢性期に分けられます。

出血をして直後の急性期には、出血部位を拡大させないための「降圧療法」と「全身管理」がメインとなります。

出血の部位が広く、脳室という部位が拡大して水頭症という状態になっている場合には、圧力を下げるためにドレナージ手術をすることがありますが、他の脳出血のような血腫を除去する手術の適応は一般的にはありません。脳幹は脳の深い位置にあるため、手術の負担が大きく、手術によるメリットが少ないためです。

全身管理としては意識状態が悪く、呼吸がうまくできていない場合には助かるために人工呼吸器が必要になることがあります。人工呼吸を行い、出血による症状が落ち着き、自力で呼吸ができるようになった場合には、人工呼吸器を外すことができる場合もあります。

しかし、自力で呼吸ができない場合には人工呼吸器を外すことができない場合もあり、場合によっては気管切開をしてチューブを留置したままになることもあります。

脳卒中は手術しなくても治療できる時代です。

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脳幹出血の回復の見込み

生存、回復率、余命については、脳幹出血の重症度によって、見込みが大きく変わります。

重度の脳幹出血では、回復が難しい場合もありますが、一部の軽度や中等度の症例では、回復が期待できることもあります。

脳幹出血から奇跡の回復を遂げた方もいるので、諦めず治療を行うことが大切です。急性期の治療で全身の状態が安定した後には、リハビリテーションと再出血予防のための内服管理がメインとなります。

生存率と回復率について

脳幹出血から回復するためには、発症してから3ヶ月以内の急性期を乗り切るだけでなく、その間に積極的なリハビリテーションを行う必要があります。

まず、脳幹出血の急性期を乗り切るためには、発症時の意識状態がよいことが重要です。回復の見込みは患者さんの状態、重症度など複数の要因が関係しています。一般的に出血の範囲が広く、発症した時の意識状態が悪く、麻痺が重いほど、回復の見込みは低くなります。

また発症してから、病院にくるまでに時間がかかった場合や、リハビリテーションが進まない場合も後遺症が重くなってしまいます。

予後についてはさまざまなデータがありますが、2021年に発表された論文では、

意識障害と脳幹出血の出血量が少ない場合には30日以内の死亡率は2.7%と良好ですが、意識が悪く出血量が多い場合の30日以内の生存率は約70%と低く、死亡率も最大で40〜50%に及ぶ

と報告している研究があります。

そのため、発症時に呼びかけや痛み刺激でも反応しない程度の意識状態(グラスゴー・コーマ・スケール [GCS]にて7点以下が予後不良の目安です)の場合には、残念ながら回復の見込みは低いかもしれません。

本邦から2013年に報告された論文では、脳幹出血を発症した212名の患者のうち、

と報告されています。亡くなってしまう方が半分以上で植物状態の方も1割いることから、脳幹出血はとても重症な疾患といえます。

しかし、脳細胞や神経は障害された部位の再生は困難ですが、神経細胞群が新たなネットワークを築き、生まれ変わることで機能が改善する性質(可塑性)を持っていす。そのため、急性期を乗り切れる見込みがある場合には、諦めずにリハビリテーションを行うことが効果的です。

回復プロセスについて

急性期を過ぎた後の回復プロセスは、「3〜6ヶ月の回復期」と「6ヶ月以降の生活期」に分けられます。

脳幹出血の後遺症として麻痺がありますが、急性期は関節が固まらないようにリハビリで可動域訓練を行います。その後、徐々に麻痺が改善してきたら、自力での訓練を行なっています。

発症して2〜3ヶ月が最も身体機能が回復する時期といわれているため、急性期から回復期にかけて積極的なリハビリを行うことが効果的です。

同時に、回復期では「痙縮 -けいしゅく- 」という手足の筋肉が緊張して突っ張る症状が出現します。痙縮を和らげるためにストレッチや筋弛緩薬で対応していきます。

その後の生活期は、症状が安定した後の維持が目的ですので、装具や筋肉の痙縮を和らげる治療をしながら、日常生活を過ごす環境を調整します。

まとめ・脳幹出血の回復の見込みと、回復プロセスについて解説

脳卒中の中でも脳幹出血は重症であり、後遺症を残すだけではなく、生命に危険が及ぶ可能性があります。

回復の見込みについては一般的な予測は困難で、重症度や治療の効果、リハビリテーションの取り組み、個人の状況などを総合的に考慮する必要があります。重度の脳幹出血の場合、完全な回復は難しい場合がありますが、諦めずに治療を続けることで回復する可能性もあるので、継続した医療、リハビリなどのサポートを受けながら、最大限の回復を目指すことが重要です。

この記事がご参考になれば幸いです。

 

No.S138

監修:医師 加藤 秀一

 

▼以下もご参考にされませんか
脳幹出血のリハビリプログラムを詳しく解説|早期アプローチの大切さ!

脳卒中の治療

参考文献:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8460873/
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0303846712004477
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9995821/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6940125/

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