- 大腿骨骨頭壊死
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大腿骨頭壊死症の原因とは?生活習慣との関連性や予防法について紹介

「病院で大腿骨頭壊死症と診断されたが、思い当たる原因がない」
このような悩みを抱える人は、少なくありません。
大腿骨頭壊死症は指定難病にもなっている病気です。
大腿骨頭壊死症は普段よく聞く病名ではないため、病気の全貌が見えず不安になってしまうこともあるでしょう。
この記事では、大腿骨頭壊死症が起こる原因や、治療法について解説します。
大腿骨頭壊死症を予防する方法や悪化させないよう気を付けるべき点も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
大腿骨頭壊死症の原因を種類別に解説
大腿骨頭壊死症の原因は、「特発性大腿骨頭壊死症」と「症候性大腿骨頭壊死症」の場合で異なります。
大きく分けると、明確な原因がある場合が「症候性大腿骨頭壊死症」、明確な原因はないもののさまざまな危険因子が重なり起こったのが「特発性大腿骨頭壊死症」です。
それぞれの原因を詳しく解説します。
特発性大腿骨頭壊死の原因
特発性大腿骨頭壊死症の場合、科学的根拠に基づいたはっきりとした原因はわかっていません。
特発性大腿骨頭壊死症を引き起こす危険因子として、下記が関連していると考えられています。
- SLEなどの免疫異常の疾患(膠原病)や臓器移植などによるステロイド投与
- アルコールの過剰摂取
- 喫煙
中でも、ステロイドやアルコールについては、国際的に基準が定められています。
(1)ステロイド関連の基準
- 3か月以内に累積2gを超えるプレドニゾロン投与、または、同等力価の糖質コルチコイド投与歴
- 糖質コルチコイド投与から2年以内に特発性大腿骨頭壊死症と診断
(2)アルコール関連の基準
- あらゆる種類のアルコール飲料のアルコール量400 mL/週(もしくは320 g/週)を超えるアルコール摂取を6カ月以上継続している
- この用量のアルコール摂取から1年以内に特発性大腿骨頭壊死症と診断
このような基準を満たす場合には、ステロイドあるいはアルコールの関連が疑われます。
しかしながら、なぜ大腿骨の壊死が起こるのか、その機序についてはまだはっきりとはわかっていません。(文献1)
症候性大腿骨頭壊死症の原因
大腿骨頭壊死を引き起こした原因がはっきりしている場合、症候性大腿骨頭壊死症と診断されます。
症候性大腿骨頭壊死症と診断された場合のおもな原因は以下の通りです。
- 骨折などの外傷
- 放射線照射
- ダイビングなど、高圧から低圧に移行する状況で発生するガス泡による血管の閉塞
大腿骨頭壊死症とは
大腿骨頭壊死症とは、股関節にある大腿骨頭の一部が血流の低下によって壊死してしまい、圧潰(あっかい:つぶれて変形)し股関節の機能が損なわれてしまう病気のことです。特発性大腿骨頭壊死症は難病に指定されています。(指定難病71)
大腿骨頭壊死症の中でも、脱臼や骨折など、血流低下の明らかな原因がない場合に「特発性」大腿骨頭壊死症と呼びます。
日本では、毎年2,000〜3,000人の方が新たに特発性大腿骨頭壊死症になっており、好発年齢は30〜50歳代です。
働き盛りの方に起こりやすいと言えるでしょう。
大腿骨頭壊死症の症状
大腿骨頭壊死症のおもな症状は以下の通りです。
- 腰痛
- 膝の痛み
- お尻、股関節の痛み
- 歩行困難
歩行困難は壊死が進行し痛みが悪化した場合に起こることがあります。
特発性大腿骨頭壊死では、ただ大腿骨に壊死が起こっただけでは症状はありません。
しかし、壊死が進行し、骨頭の圧潰つまり変形が進んだときには症状が現れます。大腿骨頭壊死症が発生してから、症状が出るまでの間には、数カ月から数年の時間差があるということに注意が必要です。
大腿骨頭壊死症の治療法
大腿骨頭壊死症の治療法は、患者の年齢や合併症の有無、症状の進行度などを考慮して決められます。
大きく分けると症状が軽度〜中度の場合は保存療法、重度の場合は手術療法が検討されることが多いです。
また、近年は研究が進み、大腿骨頭壊死症の治療の1つとして再生医療も注目を集めています。
それぞれの治療の方法と注意点について解説します。
保存療法
病型分類で、骨頭の圧潰がそれほどひどくない場合、手術を行わず保存療法で経過を見ていきます。行う治療は以下の通りです。
鎮痛剤などを使用する
痛みに対しては鎮痛薬の内服などで対処していきます。主に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用し、痛みや腫れに対して湿布薬も併用します。
薬による治療はあくまで痛みの緩和が目的であるため、壊死が完治するわけではありません。股関節への負担を軽減する工夫が必要です。
日常生活を工夫する
股関節は上半身を支え、歩く・座るといった動作を担う大切な役割を担っています。
大腿骨頭壊死症を改善するには、股関節に負担をかけないことが重要です。
- 移動の際は杖を使用して股関節にかかる負荷を軽減する
- 重い荷物を持たないようにする
- 長距離歩行を避ける
- 急にしゃがみ込むなど、股関節に負担がかかる姿勢を取らない
上記の項目を心がけて、症状の改善を目指しましょう。
足のトレーニング
大腿骨頭壊死症の改善には運動も欠かせません。
足に筋肉がつくと股関節への負担も減り、症状の改善につながります。
【大腿四頭筋のトレーニング】
- 椅子に深く座る
- 片足ずつゆっくりと膝の曲げ伸ばしを行う
- 足首の力は抜き、太ももは座面につけたままにする
【中殿筋の筋肉トレーニング(横向き)】
- 横向きに寝転がる
- 天井側になった足を伸ばした状態でゆっくりと真上に上げる
- 上げきったらゆっくりと下ろす
【中殿筋の筋肉トレーニング(仰向け)】
- 仰向けに寝転がる
- 足を伸ばしたままゆっくりと足全体を横に開き、また閉じる
- 余裕のある方はゴムバンドやヒモを足首に通し、負荷を増やして行う
運動をする前はかかりつけの医師に相談し、無理のない範囲で行ってください。
いきなり高負荷の運動をすると悪化する恐れもあります。負荷は徐々に増やしていきましょう。
手術療法
痛みの症状が強く、今後も大腿骨頭の圧潰が進行すると予想される場合には、手術療法が検討されます。
若い方の場合は、自身の股関節を温存する「骨切り術」を用いるケースが多いです。
壊死範囲の大きい場合や骨頭圧潰が進んでいる場合、高齢者の場合は「人工関節置換術」が必要となることもあります。
人工関節置換術は壊死部分を取り除き、取り除いた箇所に人工関節を入れる手術です。
人工関節のメリットとして、以下の点が挙げられます。
- ほかの関節への負担が軽減される。
- 関節が安定することにより歩行も安定する。
一方で、人工関節のデメリットを理解しておくことも重要です。
- 細菌感染に弱い。
- 下肢に血栓ができるリスクが上がる。
手術療法については下記の記事でも詳しく解説しています。手術療法を検討する際の参考にしてみてください。
リハビリテーション
大腿骨頭壊死症の改善にはリハビリテーションも欠かせません。
リハビリは股関節の可動域を増やすことや、股関節周辺の筋肉を鍛えることを目的として行います。
股関節周辺のストレッチや無理のない範囲での筋力トレーニングをしましょう。
リハビリの期間は症状の進行度によって変わるため、医師と相談のもと進めましょう。
大腿骨頭壊死症のリハビリテーションについては、下記の記事で詳しく解説しています。ぜひあわせてお読みください。
再生医療
大腿骨頭壊死症に対しては、再生医療という治療法もあります。
再生医療の幹細胞治療は、他の細胞に変化する「分化能」を持つ幹細胞を用いた治療です。幹細胞は患者様の脂肪から採取し、1カ月ほどかけて培養したものを壊死した部位に投与します。
患者様自身の幹細胞を使用するため、拒否反応のリスクが低い点が特徴で、手術や入院は不要です。
当院では、再生医療を用いて大腿骨頭壊死症の治療をされた方の症例を紹介しています。具体的な治療法や術後の経過など、参考にしてみてください。
大腿骨頭壊死症を予防するには
大腿骨頭壊死症を防ぐには、股関節への負担を軽減することが重要です。
大腿骨は壊死していても潰れていなければ症状が出ることはあまりありません。そのため、症状が出た後に予防しても大きな効果を得られないことが多いです。
以下の内容を日常的に心がけ、大腿骨頭壊死症のリスクを減らしましょう。
- 正座やあぐらはなるべくしない。
- 肥満気味の人は体重管理を行う。
- 長時間歩行はなるべくしない。
- 過剰なアルコール摂取は避け、喫煙者は禁煙する。
- ステロイド剤の使用に注意する。
- 健康な生活を心がけ、骨を丈夫にするカルシウムやビタミンを積極的に摂取する。
症状が出た後でも、股関節の負担を軽減するよう保存療法を行うことで痛みが和らぐこともあります。
症状が出たからとあきらめず、日常生活での工夫は続けましょう。
また、早期に治療を始めることは大腿骨頭壊死症の進行を遅らせることにつながります。
違和感を感じたらすぐに医療機関を受診し、適切な治療を始めましょう。
まとめ|大腿骨頭壊死症はアルコールやステロイドが原因になることも!早期発見、予防が重要
大腿骨頭壊死症の原因は、骨折などの外傷による場合と、明確な原因がないまま発症する場合があります。
明確な原因がないまま発症した際は「特発性大腿骨頭壊死症」と診断されます。
特発性大腿骨頭壊死症が発症する危険因子としてステロイドやアルコールの過剰摂取などが指摘されていますが、科学的にはいまだ解明されていません。
大腿骨頭壊死症の治療は保存療法が基本です。症状が悪化して歩行困難などを引き起こしている場合、手術療法も検討されます。
股関節への負担を減らすことが大腿骨頭壊死症の早期回復、予防につながります。
急にしゃがみ込む、あぐらや正座で長時間座る、長時間歩行を続けるといった行為は股関節への負担を増やしてしまうためなるべく避けましょう。
当院では、大腿骨頭壊死症に対し、培養した幹細胞を投与する再生医療を行っています。
再生医療について詳しくは、以下のページもご覧ください。

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大腿骨頭壊死症についてよくある質問
Q1.大腿骨頭壊死症の原因は何ですか?
大腿骨頭壊死症は原因が明確にわかっている場合と、原因が不明な場合があります。
明確な場合とは、骨折などの外傷、放射線照射、ダイビングなどの高圧から低圧に移行する状況で発生するガス泡が血管を塞ぐなど、直接的に大腿骨頭へのダメージが起きている場合です。
一方で、直接的なダメージが見受けられなくても大腿骨頭壊死を引き起こすことがあります。科学的な根拠に基づいた原因は明確になっていませんが、ステロイドの投与、アルコールの過剰摂取、喫煙などが要因になっている可能性が指摘されています。
Q2.大腿骨頭壊死症はどんな痛みが起こりますか?
急に生じる股関節痛や、腰痛や膝の痛み、お尻の痛みなどが見られることがあります。
大腿骨頭の壊死が進行し、症状がひどくなると歩行困難を引き起こすことがあります。
Q3.大腿骨頭壊死症になったらやってはいけないことはありますか?
大腿骨、股関節への負担をかけないことが重要です。
- 重い荷物を持たないようにする
- 長距離歩行を避ける
- 正座やあぐらなど股関節に負荷がかかる姿勢を取らない
- アルコールの過剰摂取や喫煙を控える
などを意識しましょう。
参考文献
(文献1)
特発性大腿骨頭壊死症(指定難病71)│難病情報センター