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ヘルニア治療:PELD手術のリスクと副作用

公開日: 2024.02.19
更新日: 2024.10.07

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ヘルニア治療:PELD手術のリスクと副作用とは

「腰椎椎間板ヘルニアの手術を受けるべきか迷っている」

そんな方にPELD(PED)手術は良い選択肢かもしれません。内視鏡を駆使したこの術式は、低侵襲であり、腰椎椎間板ヘルニアの治療に一石を投じています。  しかし、手術には潜在的なリスクや副作用が伴います。

本記事では、PELD(PED)とはどのような手術なのか、そして予想されるリスクについて解説をしていきます。 

低侵襲とは、「ていしんしゅう」と読み、手術などで従来と比べて身体の負担(痛み、出血など)を少なくする医療です。

ヘルニアの手術PELDのリスク

腰椎椎間板ヘルニア治療のPELD(PED)とは 

手術中の手技すべてを内視鏡下で行う術式は、腰椎椎間板ヘルニア以外にも多くの脊椎疾患で行われるようになってきました。  

内視鏡のみの手術は、脊椎を意味する「スパイン」“Spine”という語を使ってFESS: Full Endoscopic Spine Surgery(あるいはFED: Full Endoscopic Discectomy)と呼ばれます。 

その中でも腰椎の椎間板ヘルニアに対するのは、PELD(PED)です。経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術:Percutaneous Endoscopic Lumbar Discectomy (Percutaneous Endoscopic Discectomy)を略した言葉です。

「体への負担が非常に少ないヘルニアの手術」として名前を聞いたことがある方もいるでしょう。 

  • PELD(PED)手術

  • ・PELD(PED)とは、直径78mm程度の内視鏡を見ながら椎間板内に直接アプローチ
  • ・脱出したヘルニアそのものを摘出する手術
  • ・通常の手術と比べて、手術の創が非常に小さく済む
  • ・全身麻酔で行うこともあるが局所麻酔を使って日帰り手術で行うこともある 
  • PELD(PED)の費用

  • ・健康保険適用、手術費用の自己負担額は13
  • ・高額療養費制度も利用することが可能
  • ・年齢や所得、全身麻酔か局所か、また入院か、日帰り手術かで医療費が変動
  • ・数万〜20万円程度 

PELD手術の主なリスクや副作用について

このように良いことづくめのように思われるPELD(PED)ですが、100%安全というわけではありません。手術を受けることで起こりうる「不都合なこと」もあります。 

当然、どの病院でも「不都合なこと」を起こさないようにさまざまな対策がなされています。しかし、それでも絶対に防ぎ切れるものではないことを知っておくべきでしょう。 

この「不都合なこと」のなかには、手術の手技そのもので起こるものもあれば、用いる麻酔や手術でとる姿勢に伴うものもあります。 

ここでは全てを網羅することはできませんが、代表的なものについてそれぞれ解説をしていきましょう。 

手術の手技によるリスクや副作用

まずは、手術によって引き起こされるリスクについて解説していきます。

  • 神経障害のリスク

  • ・手術は脊髄から下肢などに伸びる神経のすぐ近くで行われる
  • ・内視鏡を挿入するときに神経を傷つけるリスクがある
  • ・内視鏡の操作中に神経に触ったりするリスクがある
  • ・痺れや痛み、筋力低下が起こる
  • ・このような神経障害は、数日で治る場合、長期に残凝る場合さまざま 
  • 脳出血のリスク

  • ・脊髄は髄液という液体で満たされた空間内にある
  • ・脊髄と髄液を包む硬膜という膜が、手術操作中に破れると硬膜損傷となる
  • ・硬膜が破れると髄液が漏れ、起き上がると頭痛が起こることがある
  • ・ひどい場合は脳が引っ張られ、脳出血をきたすこともある
  • ・術中に気づけば術式を変更、硬膜を縫い合わせることもある 
  • 血の塊(血腫)形成のリスク

  • ・手術中や手術後に出血による血の塊(血腫)を形成する可能性
  • ・ヘルニアの周囲には多くの新しい血管があり、どうしても出血が起こる
  • ・予防上、手術の終了時にドレーンと呼ぶ血抜きの管を一定の期間留置する
  • ・ドレーンがずれたり詰まったり出血量が多かったりすると血腫ができる
  • ・血腫が大きくなると、神経を圧迫し、足の痺れや麻痺などが起こる 
  • 出血や感染のリスク

  • ・内視鏡を挿入するときに、腎臓や腸管が損傷するリスクがある
  • ・重要な臓器を傷つけてると出血や感染のリスクがある
  • ・手術の傷が感染を起こしてしまうこともゼロではない
  • ・表面だけでなく、針先で腸管を刺してしまうことで椎間板、腸腰筋に感染が起こることがある
  • ヘルニア再発のリスク

  • ・残念ながら手術をしてもヘルニアが再発してしまうことがある
  • 510%ほどの割合で再発が起こり得る
  • ・再発予防のため、手術を受けた後は前屈みの姿勢は極力避ける
  • ・力んだり重いものを持ち上げたりすることは避ける
  • ・スポーツや肉体労働などは主治医の許可が出てから再開する

全身麻酔によるリスク・副作用 

全身麻酔を使用する場合、眠った状態で手術を受けます。麻酔により呼吸が止まるため、人工呼吸が必要です。麻酔導入後、喉に呼吸のための管を入れる「気管挿管」を行いますが、手術後に管を抜いても喉の痛みや違和感が残ることがあります。

また、気管挿管に際して歯が折れてしまうことが稀にあります。麻酔の薬で術後に吐き気がきたり、嘔吐してしまったりすることがあります。

一過性で、吐き気止めで落ち着くことがほとんどですが、食事が取れなくなったり術後の離床が遅れたりすると入院が長引きます。 

非常に稀ですが恐ろしいのは悪性高熱症という疾患です。一部の麻酔薬に反応して、全身の筋肉の過剰な収縮が起こり、体温が急激に上がってしまうものです。10万人に12人程度の発症と言われますが、死に至る可能性もあります。

悪性高熱症を起こしやすい体質は一部遺伝的なもの関与していることが知られているため、血のつながった方に病歴があるばあいは麻酔科医と相談が必要です。 

局所麻酔によるリスクや副作用 

局所麻酔を使用する方が体への負担は断然少ないです。といっても、局所麻酔薬へのアレルギー反応は懸念されます。歯の治療の麻酔などでアレルギーを起こしていないか確認が必要です。

ときにアナフィラキシーといって急激に血圧が下がってしまい危険な目に遭うこともあるため油断は禁物です。 また、局所麻酔のみだと当然意識がある状態で手術を受けることになります。

すると、ヘルニアを神経から剥がすなどの操作時に痛みを感じてしまう方が一定数います。痛みが強すぎると手術が継続できなくなることもあるのです。 

その他のリスクと副作用 

手術中の抗菌薬へのアレルギー、医療器具が当たることによる創の形成、器具などの固定用のテープを剥がす際の皮膚剥離、長時間姿勢を固定されることで神経が圧迫されるなどほかにもさまざまな合併症が起こりえます。 

脊椎の手術はうつ伏せで行うため、眼球を圧迫して栄養血管が長時間通わなくなると失明することもあります。 また、うつ伏せ姿勢で足の太い静脈が圧迫され、血液の流れが滞ると血栓症も起こりやすくなります。 

このようなさまざまなトラブルは、手術中に麻酔科医や看護師なども含めたスタッフが留意することで防げることも多いのですが、頭にいれておきましょう。 

PELD(PED)術後の神経障害の治療に再生医療

PELD(PED)手術後の合併症で、特に日常生活に影響を及ぼす可能性が高いのは神経の損傷です。神経が直接傷ついたり、血腫ができて脊髄や神経根が圧迫されたりすることにより、しびれ・痛み・麻痺・排尿障害などの後遺症が残ることがあります。 

そこで注目されているのが再生医療の一つ、「幹細胞治療」です。脊髄損傷や神経根損傷に効果が期待できます。万能細胞である幹細胞を脂肪から採取し、障害部位に送り込むことで組織の再生を促す治療法です。 

当院は脊髄損傷など神経障害にお悩みの方に、幹細胞治療を提供しています。独自の技術によりフレッシュな幹細胞を多く投与することが可能です。

さらに独自の「脊髄腔内ダイレクト注射療法」により、幹細胞を直接的に損傷部位へ届けることができます。これらの技術を駆使することで、より高い治療効果が期待されます。 

▼当院で幹細胞治療を受けられた患者様の様子をご覧いただけます。

 

まとめ ・ヘルニア治療:PELD手術のリスクと副作用とは

腰椎椎間板ヘルニア治療の一環として注目されるPELD(PED)手術は、内視鏡を活用し、少ない侵襲で行われる手術です。手術は小さな切開で終わり、入院期間が短く、回復が早いというメリットがあります。

しかし、一方で手術である以上は一定のリスクが伴います。 手術を検討する際には、そのリスク・副作用への理解が欠かせません。十分な情報を得た上で、担当医とともに共に納得のいく治療計画を立てることが大切です。 

手術後の神経障害には再生医療のひとつ、「幹細胞治療」が注目されています。もし術後の後遺症にお悩みの場合は、ぜひ当院へご相談ください。 

脊髄の損傷は手術しなくても治療できる時代です。

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