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女性に多い肝臓の病気|症状・検査・治療法について

公開日: 2024.05.21
更新日: 2024.10.07

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女性に多い肝臓の病気|症状・検査・治療法を解説します

「飲酒はほとんどしないし、脂肪肝も肝炎ウイルスの感染も指摘されたことがない。それなのに血液検査で肝臓の数値が高くなっていると言われた。」

それは、もしかしたら自己免疫性肝炎かもしれません。

自己免疫性肝炎は人体のなかで最大の臓器である肝臓に起こる病気で、特に女性に多く認められます。初めは異常に気が付きにくいことも多いです。しかし、放置すると肝硬変・肝不全・肝がんという重大な病態に至ることもあります。

なぜ自己免疫性肝炎は起こるのでしょうか。注意するべき症状はあるのでしょうか。どのような検査が必要で、どんな治療法があるのでしょうか?

この記事では、自己免疫性肝炎の原因や疫学、また症状や検査・内科的治療について解説します。

女性に多い肝臓の病気|症状・検査・治療法について

女性に多い自己免疫性肝炎とは(肝障害の原因)

自己免疫性肝炎は、一般的に慢性に進行する肝障害をきたす病気です。

発症は60歳ごろがピークとされ、中年に多いとされています。男女比は1:4.3と、男性よりも女性に多いことがわかっています。日本には3万人強の患者さんがいると推定されています。

自己免疫性肝炎は国の定める指定難病です。一定の重症度を満たす場合は医療費が公費補助の対象となります。

自己免疫性肝炎の原因と合併症

自己免疫性肝炎の原因はまだ完全に明らかになっていません。しかしながら、さまざまな要素から、免疫が自身の身体を攻撃するために起こる「自己免疫疾患」と考えられています。実際に、自己免疫性肝炎では肝臓に免疫細胞が多く集まり炎症をきたしている所見が確認できます。

アルコールを全く摂取しない人でも、ウイルス性肝炎を起こすB型肝炎やC型肝炎の感染がなくても、この病気を発症することがあるのです。

特定の遺伝因子を持つ人が発症しやすいと言われています。しかし、一般的に行われている検診などで発症のしやすさを判定することはできません。また、家族内での発症も多くはないとされています。

自己免疫性肝炎は他の自己免疫疾患との合併が多く認められます。

たとえば下記のような疾患を患っている方は自己免疫性肝炎も発症するリスクが高まります。

  • 〈自己免疫性肝炎に多い合併症の例〉

  • ・慢性甲状腺炎(橋本病)
  • ・首が腫れる
  • ・無気力になる
  • ・体重が増える
  • ・甲状腺に炎症が起こり機能低下する
  • ・シェーグレン症候群
  • ・目が乾く
  • ・唾液が出にくく、口が乾燥する疾患
  • ・関節リウマチ
  • ・手、指などの小関節を中心とした腫れ
  • ・痛み、こわばりなどを起こす疾患

自己免疫性肝炎の症状|セルフチェックは難しい?

残念ながら、「この症状があれば自己免疫性肝炎が疑われる」という特徴的なものはありません。

早期に発見される契機 は、無症状のまま健康診断などで肝障害を指摘されることが多いです。肝臓は別名「沈黙の臓器」と呼ばれています。肝障害は、自分では早期に 気が付きにくいのです。

一方で、急激な経過をたどる場合は以下のような自覚症状を認めること があります。下記の症状は自己免疫性肝炎に特異的ではありませんが、複数のものが該当する時は急激に進む重度の肝障害が起こっている可能性があるため早期に受診しましょう。

  • 〈急性肝炎として発症する場合の症状の例〉

  • ・全身倦怠感
  • ・だるい感じがする
  • ・易疲労感
  • ・ちょっとしたことでつかれやすい
  • ・食欲不振
  • ・食欲低下のため食事が摂れない
  • ・黄疸
  • ・全身の皮膚や白眼が黄色くなる
  • ・尿の色が濃くなる

また、一部の方は気付かない うちに病状がかなり進行して、肝硬変をきたしていることがあります。

自己免疫性肝炎の診断に必要な検査

様々な検査を行い、総合的に診断をします。

まず、血液検査で肝臓の障害があるか、またその程度を判断します。

  • ①AST(GOT)/ALT(GPT)

  • ・健康診断でよく見る AST(GOT)/ALT(GPT)の上昇が参考になる所見です。
  • ・肝臓の機能に何らかの異常がある可能性を示しています。
  • ②IgG・自己抗体検査

  • ・免疫の関連の検査としてIgG(免疫の成分である抗体の量を見る検査)。
  • ・いくつかの自己抗体(自分の体を攻撃する抗体についての検査)も重要です。
  • ③B型・C型肝炎ウイルス検査

  • ・肝臓にダメージを与えるB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスなどの感染の有無
  • ④画像検査

  • ・エコー、CTなどの肝臓の画像検査も必須です
  • ・肝障害をきたす脂肪肝などの他疾患の有無、肝臓の硬さ、悪性腫瘍(とくに肝がん)の合併の有無を評価
  • ⑤肝生検

  • 肝生検とは?

  • ・診断において特に重要なのは肝臓の組織の検査、肝生検です
  • ・肝生検には「経皮的肝生検」と「腹腔鏡下肝生検」」という2つがあります
  • ・多くの場合は体に負担の少ない「経皮的肝生検」が行われます
  • ・経皮的肝生検では実際にエコー下に肝臓を確認しながら、細い針を刺して組織を採取します
  • ・出血などのリスクがある検査で終了後の安静が必要であるため、短期間の入院が必要です
  •  
  • 肝生検で採取した組織は特殊な染色を行い、顕微鏡で観察します。
  • これにより、
  • ・どこにどのような炎症があるか
  • ・肝細胞のダメージはどうか
  • ・肝臓の硬さ(線維化)
  • ・進行具合
  • などを確かめることができます。
  •  
  • 自己免疫性肝炎で特徴的なのは、インターフェイス肝炎(Interface hepatitis)と呼ばれるものです。
  • 肝臓へ血液を運ぶ肝動脈、門脈や胆汁を運ぶ胆管が集まった「門脈域」に、リンパ球や形質細胞(一部のリンパ球が成熟した細胞)などの炎症細胞が集まります。
  • 周囲の肝細胞を破壊しながら炎症がさらに広がっていく様子が認められます。
  • このような所見は全例で見られるわけではありませんが、認められれば診断への重要な手掛かりとなります。
  • 肝生検は他の原因を除外し、自己免疫性肝炎の診断を確実にするために重要視されている検査です。
  • ただし、患者さんの体の状態が悪く、肝生検が安全ではない ケースには行いません。

自己免疫性肝炎の治療法と副作用

治療の基本はステロイドです。

ステロイドは副腎皮質という臓器から分泌されるホルモンをもとにつくられた薬剤です。強力な抗炎症作用や免疫抑制作用をもつため、自己免疫性肝炎をはじめとする様々な自己免疫疾患の治療に用いられています。

プレドニゾロンというステロイドホルモン薬を体重1Kgあたり 0.6mg以上で開始します。例えば50Kgの人は1日あたり30mg以上が開始量です。重症度に応じてもっと多い量を使用することもあります。

開始後は、最低でも2週間程度は初期量の継続が必要です。以降は肝機能の数値(主にALT)を見ながら徐々に減量します。急いで減量・中止すると、再燃のリスクがあるからです。

他に、肝機能の改善を助けるウルソデオキシコール酸が処方されることがありますます 。また、治療困難例やステロイドを多く使えない場合にはという免疫抑制薬がステロイドと併用で用いられることもあります。

最も頻繁に使われるステロイドですが、長期に大量に使用すると様々な副作用をきたします。以下に副作用の例をご紹介します。

  • 〈ステロイドの副作用の例〉

  • ・感染状態
  • ・骨粗鬆症
  • ・食欲亢進
  • ・高血圧、脂質異常、糖尿病などの生活習慣病の出現や悪化
  • ・体重増加、肥満
  • ・躁状態、うつ状態、不眠などの精神神経症状
  • ・消化管潰瘍
  • ・緑内障、白内障

副作用がないか適宜検査を行い、予防可能なものには対策をしていきます。気になる症状があれば主治医と相談をしましょう。

日常生活を送る上で気をつけること

日常生活では、栄養バランスの取れた食事をとり間食を控えることが大切です。また、外出時には人混みを避け、手洗い・マスク着用・うがいなどの感染予防行動を徹底しましょう。

注意しておきたいのが、続発性副腎機能不全です。ステロイド薬の内服により引き起こされた副腎皮質ホルモンの不足のことを指します。

生理的な量を超えるホルモンを長期で内服すると、副腎は本来のホルモン分泌を怠るようになります。長期内服者が薬を自己中断してしまうとホルモン不足が起こるかもしれません。また、手術や重症感染症のときにもステロイドの必要量が増えるのに十分量 が分泌できないため、対策が必要です。

副腎皮質機能不全となるとだるさ・脱力感・血圧低下・吐き気・嘔吐・発熱などの症状が認められます。重症になると意識を失ったりショック状態になったりすることもあるのです。

ステロイドを自己判断で減量、 中止をしてしまうと、病状悪化だけでなく命に関わる副腎機能不全をきたすリスクもあります。そのため、必ず医師の指示通りに内服をしてください。

進行するとどうなる?悪化を防ぐために

自己免疫性肝炎の多くは治療が有効である一方、最初は軽症でも放置をすれば命に関わる事態になります。

自己免疫性肝炎を放置すると炎症が沈静化せず、肝臓の線維化が進みます。肝臓の線維化が進行し、 固くなった状態が「肝硬変」です。

肝臓では栄養素の代謝やエネルギー貯蔵、有害物質の分解や解毒などが行われていますが、肝硬変が進むとその機能障害が起こります。肝臓の働きが大きく損なわれてしまった状態を「肝不全」と呼びます。

さらに、肝硬変は肝がんの発生が起こりやすいこともわかっています。肝がんは治療しても再発しやすい厄介ながんです。

肝硬変・肝不全・肝がんへの進行を防ぐのに重要なのは、早期から適切な治療を受けることです。自己免疫性肝炎では、治療により AST,ALT を基準値内に保つことができれば生命予後は良好とされています。

自己免疫性肝炎についてよくある質問

ここまで自己免疫性肝炎について記してまいりましたが実際に患者様からよくお聞きする質問から以下を抜粋いたしました。

Q:自己免疫性肝炎では、最終的にステロイドを止めることはできますか?

A:経過によっては中止することが可能ですが、全員ではありません。中止できる場合も、多くの場合は年単位の時間がかかります。

また、中止した場合には再燃をするリスクもあります。減量や中止については個々のケースで大きく異なるので、主治医とよく相談するのが良いでしょう。

Q:原発性胆汁性胆管炎という病気も肝臓の自己免疫疾患と聞きましたが、違いはなんですか?

A:どちらも中年以降の女性に多い自己免疫性疾患ですが、障害が起こる部位が異なります。自己免疫性肝炎では、肝細胞の障害が中心です。

原発性胆汁性胆管炎で起こるのは肝臓内の胆汁が通る管(胆管)の破壊です。そのため、胆汁の流れが滞り、ALPやγ-GTPなど胆道系酵素や黄疸 をきたすビリルビン値の上昇が目立ちます。

進行すると黄疸や皮膚のかゆみを生じます。こちらの病気も放置すると肝硬変へ進展します。各種検査で自己免疫性肝炎との鑑別を行いますが、2つの病態が合併していることもあります。

自己免疫性肝炎の症状・診断・治療のまとめ 心配な時は内科受診を!

自己免疫性肝炎に特徴的な症状はありませんが、時にだるさや黄疸などをきたすことがあります。無症状で発見されることも多いです。

診断は血液検査・画像検査などを総合的に判断して行います。組織の検査は非常に重要とされています。

治療の第一選択薬はステロイドです。副作用も多いですが、対策をしながら長期に使用します。自己免疫性肝炎を放置すると命に関わる「肝硬変」に進展するため、診断を受けたら定期的に通院をして服薬 を続けてください。

健康診断で肝臓の数値が高いと言われた方や、肝臓が悪い時の症状に思い当たることがある方は、まずは医療機関で 精査を受けましょう。

 

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