脊髄梗塞の症状から原因まで徹底解説|佐藤弘道さんも発症
公開日: 2024.06.14更新日: 2024.11.06
NHKの教育番組「おかあさんといっしょ」にて「体操のお兄さん」として活躍した佐藤弘道さんが、2024年、脊髄梗塞による下半身麻痺のため、芸能活動を一時休止すると発表しました。
脊髄梗塞は誰にでも発症する可能性がある疾患です。
とくに背中の痛みや両手足の痺れを感じているなら、すでに初期症状が現れているかもしれません。
本記事では脊髄梗塞の概要や症状、診断方法などを解説します。
目次
脊髄梗塞とはどのような状態?
脊髄とは、脳から腰までの背骨の内部を走る、神経群を指します。
脊髄は、主に脳からの指令を体の各部に伝え、また体が受けた刺激を脳に伝える役割を果たします。
私たちが自由に手足を動かしたり、何かに接触したときに反応したりできるのは、脊髄のはたらきがあるからに他なりません。
脊髄は、いわば「情報伝達の高速道路」のような役割を担っています。そして、高速道路を機能させるためには、酸素と栄養を供給する血液が欠かせません。
しかしなんらかの原因で血管が詰まると、脊髄に対して血液が行き届かなくなり、酸素と栄養も十分に行き渡りません。この状態を脊髄梗塞と呼びます。
脊髄梗塞になると、脊髄は正常に機能しません。
また酸素と栄養の供給が絶たれたことにより、脊髄がダメージを被り、身体に以下のような症状が現れます。
- ・突然の背中の痛み
- ・両手足の痺れ、感覚の喪失
- ・筋力の低下
- ・排泄の障害
症状が重篤な場合は、「歩くのも難しい」状態に陥ります。
脳梗塞のようにただちに生命が危ぶまれるものでないものの、適切な治療と十分なリハビリが必要になるでしょう。
脊髄梗塞の発生頻度
脊髄梗塞はまれな疾患であり、発生率は年間10万人中3.1人と報告されています。
広い年齢層で症状が見られますが、50〜60代での発症例がとくに多く報告されています。
また性差はありません。男女ともに同程度の可能性での発症がありえます。
脊髄梗塞は治るのか?後遺症は?
脊髄梗塞を根本的に治療する方法は、現時点で確立されていません。
一方で早期発見や専門的治療、適切なリハビリにより、症状を緩和したり、機能を回復させることは可能です。
とくにリハビリの効果は高く評価されており、約7割のケースで歩行可能な状態に回復します。
参考:JCHO大阪病院
関連記事:脊髄梗塞は治るのか?治療法や後遺症のリハビリについて解説
脊髄梗塞の症状・前兆
脊髄梗塞の前兆として、以下があげられます。
- ・突然の背中の痛み
- ・両側の手足の筋肉の弛緩
- ・両側の感覚の喪失
それぞれ以下で詳しく解説します。
突然の背中の痛み
脊髄梗塞の一般的な症状としては、突然現れる背中の痛みから始まることが多いです。
とくに予兆もなく突然症状が現れるのは、血管の詰まりや破裂を引き起こす病気の特徴です。
脊髄梗塞もこのケースに当てはまり、脊髄を栄養する動脈が詰まったり破裂したりして、突然の痛みの発生へとつながります。
また、症状は背中だけにとどまらないこともあり、肩などにも広がりやすいです。
両側の手足の筋肉の弛緩
両手足の筋肉が弛緩し、力が入らなくなるのも前兆のひとつです。
具体的には以下の症状が現れます。
- ・両足がふらつく
- ・物を強く握れなくなる
症状の進行は急速であり、数時間で歩行が困難になるケースも存在します。
また左右一方ではなく、両手足同時に症状が現れるのも、脊髄梗塞の前兆の特徴です。
両側の感覚の喪失
身体の感覚は脊髄を通して脳へと伝わりますが、この経路にある脊髄が障害されてしまうため、両側の感覚までもが障害を受けてしまいます。
また、脊髄梗塞の感覚障害にはある特徴が見受けられます。
それは、痛覚や温覚を伝える神経経路が主に障害されるため、痛みや温度が感じにくくなります。
その一方で、触覚(触れている感覚)や振動覚(振動を感じる感覚)、また自分の手足がどの位置にあるのかなどの感覚を伝える神経経路は比較的障害を受けない場合もあります。
このように脊髄梗塞では突然の症状に襲われて、これまで経験をしたことがないような背中の痛みや手足の脱力感、感覚の異常を経験します。
後ほど治療法についても詳しく説明しますが、脊髄梗塞に対してはまだまだ確立された治療法がなく、苦しい日々を送っている方がたくさんおられます。
再生医療を専門とするリペアセルクリニックでは、この稀な疾患である脊髄梗塞に対しても治療実績があり、高い効果が得られており、300名以上の脊髄疾患の方が治療に来られています。
通常では点滴により投与される幹細胞治療ですが、当院では国内でも珍しく脊髄腔内へ直接幹細胞を投与しております。
詳しくはこちらの動画をご覧ください。
脊髄梗塞の原因とは?
脊髄梗塞の原因にはさまざまな要因が考えられますが、ここでは身体の構造にしたがって原因を分類します。
脊髄動脈の疾患
脊髄は前方と後方の2方向から血液が供給されています。
前方の血管を前脊髄動脈と言い、脊髄の前方3分の2を栄養しています。
そして、後方の血管を後脊髄動脈と言い、脊髄の後方3分の1を栄養しています。
栄養を送る血管の損傷
心臓からつながる動脈には栄養が豊富に含まれています。
そのなかでもとくに太い血管である大動脈の動脈硬化や大動脈解離などが発症すると、脊髄へ送られる栄養が行き届かなくなり、脊髄梗塞が起きてしまいます。
また病気が原因ではなく、手術中の手技により脊髄へ栄養を送る動脈が損傷されてしまい、脊髄梗塞となることも事例もあります。
脊髄梗塞の診断方法
脊髄梗塞の診断は、主に以下二つの検査でおこなわれます。
- ・MRI検査
- ・CT脊髄造影検査
最初にMRI検査を実施します。
脊髄梗塞が疑われる段階では、急性横断性脊髄炎、脱髄疾患、脊髄炎、転移性硬膜外腫瘍などを発症している可能性もあり、正確に疾患名を特定できません。
しかしMRI検査によって、何を発症しているか判断ができます。
MRI検査でも判断が難しい場合は、CT脊髄造影検査をおこない、疾患名を特定します。
脊髄梗塞の治療法やリハビリ、後遺症や予後については以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:脊髄梗塞は治るのか?治療法や後遺症のリハビリについて解説
脊髄梗塞の治療法
脊髄梗塞を発症した場合、脊髄や周辺がダメージを被っています。
そのダメージを取り除く根本的な治療法は確立されていません。
したがって根治ではなく、症状の緩和や機能の部分的な回復を目的とした、以下の治療法が用いられます。
- ・リハビリ|地道に筋力や感覚の回復を目指す
- ・血行再建術|手術による血行を回復させる
- ・血栓溶解療法|薬剤注入により血栓を解消する
それぞれ以下で解説します。
リハビリ|地道に身体機能を目指す
脊髄梗塞の治療では、身体機能を回復させるためのリハビリが用いられます。
リハビリはほとんどの症例で必要となるでしょう。
とくに運動療法による股関節や膝関節の訓練を重視し、歩行をはじめとした基本的な動作を取り戻すことを目指します。
また食事や入浴、更衣などの日常生活動作を取り戻すリハビリもおこなわれます。
また心理的なサポートを目的としたカウンセリングが用いられるケースもあるでしょう。
脊髄梗塞による症状改善を目指すリハビリは長期にわたるため、精神的な支援が必要だからです。
なお長期的なリハビリは、脊髄梗塞からの回復に対して効果的だとされており、たと例えばJCHO大阪病院は、約7割の人が歩行回復なまでに回復すると述べています。
参考:JCHO大阪病院
血行再建術|手術により血行を回復させる
血行再建術とは、血管が詰まった、閉じた状態を改善し、血流を活発化させるための手術です。
先ほど脊髄梗塞は血管がなんらかの原因で詰まることで発症すると解説しました。
したがって詰まりを放置していると症状が悪化すると考えられ、看過できません。
しかし血行再建術の実施により、詰まりが解消されれば、脊髄に酸素や栄養が十分に行き渡ります。
症状の程度によりますが、手術後の症状の悪化は避けられるでしょう。
また早期に実施できれば脊髄梗塞による症状を軽微な状態でとどめられます。
なお血行再建術だけでは、現在の症状の改善は期待できません。
すでに生じた神経の壊死などを回復する手術ではないからです。
症状の回復は、後述のリハビリにて目指します。
血栓溶解療法|薬剤の注入により血栓を解消する
血栓溶解療法とは、アルテプラーゼなどの特殊な薬剤を血管に注入し、つまりの原因である血栓を溶かす治療法です。
血栓が解消されれば、脊髄梗塞の症状の悪化は避けられるでしょう。
早期に血栓溶解療法を実施できた場合、脊髄梗塞の症状を軽微な状態でとどめられます。
ただし血栓溶解療法が有効なのは、発症から6〜8時間以内とされています。
それ以上経過した場合、症状の改善や治療はリハビリや血行再建術などで図られるでしょう。
まとめ・脊髄梗塞は早期診断・治療が大切
この記事では脊髄梗塞の症状の経過や診断方法、原因などについてまとめました。
記事の中でも触れたように、脊髄梗塞は稀な疾患で、明確な治療方法が確立している病気ではありません。
また、急激な背中の痛みは脊髄梗塞かどうかに関わらず、とても危険な状態であると示す身体からの信号です。
そのような痛みを感じたときには、すぐにお近くの医療機関に連絡するようにしましょう。
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