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肝硬変と言われたらどうする?知っておきたい治療法や合併症

公開日: 2024.06.11
更新日: 2024.10.07

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肝硬変と言われたらどうする?知っておきたい治療法や合併症

肝臓の慢性的な炎症により、肝臓が線維化して硬くなる疾患が「肝硬変」です。肝硬変により肝臓の機能が障害されると、代謝や血液の循環動態に大きな影響を及ぼします。そのため、様々な合併症を引き起こします。

肝硬変の根本的な治療は肝臓の移植を行う他ありません。しかし、肝硬変の方で移植が受けられるのはごく一部です。そのため、多くの方はつらい症状に対する対症療法を行なっていくのが現実的です。

では肝硬変と診断された際、以下のような疑問はありませんか?

  • ・肝硬変の合併症ってなにがあるの?
  • ・肝硬変を治すことはできるのか?

この記事では、肝硬変と診断された時に知っておきたい合併症や様々な治療法、また肝硬変に起こる がん についても解説しています。さらに最先端の治療である再生医療の可能性についても触れています。

肝硬変 治療と合併症

肝硬変による5つの合併症とその治療法

肝臓は解毒・代謝など体にとって重要な役割を果たしていますが、肝硬変になるとその働きが落ちます。肝硬変が進行すると肝臓に流れ込む「門脈」という血管の圧が上がるため、全身の血液の流れに大きな変化を及ぼします。その結果、肝臓自体による症状以外にも、全身に様々な合併症を引き起こします。

ここからは肝硬変に起こりやすい5つの合併症とその治療法について、一つ一つ解説していきます。

①肝性脳症

肝性脳症とは、肝硬変により代謝できなくなったアンモニアなどの毒素による脳の機能障害です。

肝性脳症による症状は異常行動や意識障害など様々です。なかでも特徴的なものに「羽ばたき振戦」があります。その検査の仕方は次の通りです。

  • 羽ばたき振戦の検査方法
  • ①手のひらを下にしたまま腕を前に伸ばす
  • ②そこから手首を90度立てて手のひらを正面に見せる様にする

羽ばたき振戦があると、手のひらを正面に見せておくことができず、羽ばたいているように手が細かく震えるのです。

肝性脳症には便秘・脱水・体内のアミノ酸バランスの異常・栄養素の不足などが影響していると考えられます。誘因を除去し、不足している栄養素を補うことが治療の上で重要です。患者さんの栄養状態を把握し、適切な栄養管理を行います。さらに以下のような薬物療法を行うこともあります。

  • 〈肝性脳症の薬物療法の例〉

  • 非吸収性合成二糖類
  • 代表的なのは「ラクツロース」です。

  • 便秘を改善したり、腸内のpHを調整したりする効果があります。

  • 分子鎖アミノ酸製剤(BCAA)
  • アミノ酸バランスを整えることで肝性脳症を改善します。
  • 腸管非吸収性抗菌薬
  • 腸内でアンモニアを産生する菌の増殖を抑制します。
  • 亜鉛製剤
  • 不足している亜鉛を補うことで症状を改善させます。
  • カルニチン製剤
  • 肝硬変の人が不足しがちなカルニチンを補充することで効果を発揮します。

患者さんの病気の状態に合わせて治療の選択をしていきます。

②食道胃静脈瘤

食道胃静脈瘤は血液を肝臓に流す「門脈」の血圧が肝硬変により高くなることにより起こる合併症です。門脈圧亢進により門脈を介した血流が滞ると、相対的に他のところの血流を増やさなければなりません。

その結果、食道や胃などの静脈に血流が増えます。血流が増えた血管は拡張し、瘤のようになるのです。基本的には無症状で胃カメラをしなければ発見できません。しかし、とても破れやすく、消化管出血をきたします。

治療は出血を防ぐ待機的治療と出血をした場合の緊急治療があります。代表的なものは下記です。

  • 〈食道胃静脈瘤の治療の例〉

  • EIS(内視鏡的硬化療法)
  • 内視鏡下に静脈瘤に硬化剤を注入します。
  • 食道静脈瘤の待機的治療として行われることが多いです。
  • EVL(内視鏡的食道静脈瘤結紮術)
  • 内視鏡に専用の輪ゴムを装着して静脈瘤を結紮します。
  • 食道静脈瘤の緊急治療や待機的治療として行われることが多いです。
  • CA法(内視鏡的シアノアクリレート系組織接着剤注入法)
  • X線透視装置と内視鏡を用いて、造影剤と組織接着剤を混ぜたものを静脈瘤に注入して硬化させます。
  • 胃静脈瘤の緊急治療・待機的治療として行われることが多いです。
  • SB-tube
  • 食道静脈瘤の出血量が多く、内視鏡での視野が確保できない場合に行われます。
  • 鼻からチューブを挿入し、2つのバルーンを膨らませることで圧迫止血を行います。
  • 止血できた後にEISやEVLなどによる追加治療が必要です。
  • BRTO(バルーン下逆行性経静脈的塞栓術)
  • 足の付け根の静脈からカテーテルを進め、硬化剤とバルーンで静脈瘤の血流を遮断して硬化させます。
  • 胃静脈瘤の待機的治療として行われることが多いです。

静脈瘤の形や場所・患者さんの状態・肝機能の程度・医療機関の状況などにより選択されます。

③肝腎症候群

肝硬変により体をめぐる血液のボリュームが低下し、腎臓への血流が悪くなり腎機能障害が起こった状態が「肝腎症候群」です。腹水を伴う、進行した肝硬変に起こります。

腎機能は血液検査の「クレアチニン」という項目で判断します。クレアチニンが1.5mg/dL以上を超えていることが診断の条件の一つです。そのほか、脱水やショック、薬剤による腎障害や腎臓そのものの異常がないことなどいくつかの項目をみたすと診断が確定します。急速に進む1型と緩徐に進行する2型に分類されます。1型はとくに予後不良です。

治療では、血液内に水分を引き寄せるアルブミンという血液製剤を投与したり、血圧を上げる薬を一時的に使用したりします。

  • 〈肝腎症候群の治療の例〉

  • ・アルブミン血液製剤を投与
  • ・血圧を上げる薬を一時的に使用
  • など

④肝肺症候群

肝肺症候群とは、肝硬変が原因で肺のガス交換に異常をきたし、血中の酸素濃度が低くなった状態です。肝硬変により血管拡張物質が代謝されないことで、肺の血管が拡張します。肺の血液量が増え、酸素の供給が間に合わなくなります。さらに、動脈と静脈にシャントと呼ばれる異常な交通ができます。シャントでは動脈血と静脈血が混じりあい、血中の酸素濃度が低くなります。

肝肺症候群の特徴的な症状は座ったり立ったりした時に息苦しさを感じることです。

診断は特殊な心エコーなどの画像検査で肺のシャントを証明することで行われます。肝肺症候群に有効な内科的治療はなく、後述する肝移植が唯一の治療方法です。

⑤肺高血圧症

肝硬変による門脈圧亢進症に伴う血流の変化は肺の動脈にも影響を及ぼします。心臓から肺へ伸びる肺動脈圧が上昇した状態が「肺高血圧」です。肺へ血液を送る心臓の右側の部屋(右心系)に負担がかかり、やがて心不全へと至ります。

息苦しさ・足のむくみ・動悸・失神などが主な症状です。

レントゲンや心電図、心エコーなどで右心系の負荷がかかっていないかを確認します。診断の確定には右心カテーテル検査で実際の肺動脈圧を調べることが必要です。

治療は肺動脈を拡張させる薬剤を使用します。

肝硬変が進行し、肝臓の機能が保てなくなる「肝不全」では、これらの合併症により他の臓器にも影響を及ぼします。連鎖的に他の臓器の機能不全が起こると、命にも関わりかねません。

肝硬変に合併する がん について

肝硬変がある肝臓には、がんもできやすいことがわかっています。

肝硬変では慢性的な肝臓の障害により肝臓の細胞が傷付いては再生を繰り返しています。このような肝細胞は遺伝子の変化などの異常が起こりやすいため、肝がん(肝細胞がん)のリスクが高まります。

肝がんの検査と治療

肝硬変と診断された方は、定期的な腹部エコーなどの画像検査を行い、がんがないか経過観察を行うことが重要です。また、がんがあるときに高値になりやすい血液検査の「腫瘍マーカー」も参考になります。最終的な診断は生検といって組織を針などで取って顕微鏡で観察する必要があります。

治療法としては、手術や一般的な抗がん剤治療のほか、体表から特殊な針をがんに刺して焼いたり、がんの近くまで直接的に抗がん剤を注入したり、がんの栄養血管を詰めたりするなどの方法があります。

  • 〈肝がんの治療の例〉

  • ・手術や一般的な抗がん剤治療
  • ・体表から特殊な針をがんに刺して焼く
  • ・がんの近くまで直接的に抗がん剤を注入
  • ・がんの栄養血管を詰める
  • など

がんの治療は、その大きさ・数・肝硬変の程度や患者さんの状態によりさまざまです。

肝硬変の治療法

肝硬変の合併症が命に関わるなら、肝硬変を治療すれば良いと考えるかたもいるかもしれません。しかし、一度肝硬変が起こってしまうと線維化は不可逆で、肝臓そのものの治療は臓器移植しかありません。現実的には肝移植ができる患者さんは限られています。

ここからは肝硬変と診断された後にどのような内科的な治療を行うのか、また移植はどんな時に考えるかもみてみましょう。さらに、肝臓の再生医療の可能性についても解説します。

肝硬変診断後の内科的治療

肝硬変と診断されたら、まずは食事摂取の調整などの栄養療法、B型・C型肝炎ウイルスやアルコール多飲などの原因別治療を行います。

診断直後はあまり症状がない患者さんも多くいます。しかし、肝硬変が進むと、前述の合併症の他にも様々な症状に悩まされるようになります。肝硬変の症状は生活の質を下げ、適切な医療を行う妨げになることもあるのです。それぞれに応じて必要性に応じて治療を行います。

このような対症療法とともに、前述の合併症の治療を行っていくことが多いです。

肝移植について

肝硬変が進行し、多くの合併症が起こり他の治療法が効果を示さない場合、肝移植が考慮されます。

ダメージを受けた肝臓を取り除き、健康な肝臓に置き換えることで機能を回復させるための治療法です。ただし、肝移植を受けられるかどうかは、患者さんの健康状態や肝硬変の原因など、さまざまな要因に依存します。また、移植手術は非常に専門性が高く、どこの病院でもできるわけではありません。

肝移植には「生体肝移植」と「脳死肝移植」の2つの方法があります。

生体肝移植

健康なドナー(主に配偶者や家族など)の肝臓の一部を患者さんに移植する方法が「生体肝移植」です。

ドナーに年齢や健康状態などの条件はありますが、移植までの待機時間が少ないのはメリットです。ただし、ドナーの体にもメスをいれることになります。

脳死肝移植

脳死状態となり臓器提供の意思を示した方から肝臓を提供してもらう方法が「脳死肝移植」です。

最大の利点は、肝臓全体を移植できることです。しかし、いつ肝臓を提供してもらえるかは予測が難しく、待機時間が長くなる可能性があります。待っている間にさらに病状が進行して命を失うこともあり得ます。

いずれの肝移植にも手術が必要であり、危険性が伴います。

肝移植のリスクと適応

例えば、全身麻酔による合併症の可能性や、肝臓を取り除く際に周囲の臓器を損傷するリスク、さらに手術後の感染リスクなどです。

  • ・全身麻酔による合併症
  • ・手術時の臓器損傷
  • ・手術後の感染

また、移植後は拒絶反応を防ぐために、免疫抑制剤を服用し続けなければなりません。

肝移植は、すべての肝硬変患者が受けられるわけではありません。肝硬変の原因や患者さんの全体的な健康状態などに基づいて、適応が判断されます。適応基準を満たさない場合は、症状を緩和する治療を続けます。

肝移植は最終的な治療手段として、肝硬変の患者さんの命を救う可能性がありますが、その適応には慎重な判断が必要です。

肝硬変に対する再生医療について

最後に、少しだけ最先端の治療「再生医療」についてお話しします。

これまでの治療では、一度線維化してしまった肝臓は元に戻らないとされていました。しかし、再生医療により、この常識が覆されるかもしれません。

肝硬変に対する再生医療では「幹細胞」を利用します。幹細胞は体内の多様な細胞に分化する能力がある万能細胞です。この幹細胞を培養し、点滴で投与することで肝細胞の修復や再生を促します。幹細胞は損傷した肝組織に働きかけ、肝細胞の再生と修復を促進します。

これにより、従来肝移植をする以外に改善する手立てがなかった肝臓の線維化が改善する可能性があるのです。

残念ながら肝臓の再生医療は医療保険の適用外の治療です。現状では厚生労働省に届出して受理されている医療機関は多くありません。

当院はその数少ない施設の一つです。患者さん本人の脂肪細胞から幹細胞を採取して培養し、点滴での幹細胞治療を行っています。 独自の細胞培養技術により、冷凍保存をせずに幹細胞を輸送・保存することができます。そのため、生き生きとしたフレッシュな幹細胞を治療に用いることが可能です。

▼こちらの動画で当院の幹細胞治療について詳しく解説しています。ぜひご参考にされてください。

 

まとめ・肝硬変に対する再生医療も選択肢のひとつに

この記事では、肝硬変の合併症や治療法について解説を行いました。

  • ・肝硬変の合併症
  • ・肝硬変の治療法
  • ・最新の治療法「再生医療」

全身に起こる多様な合併症や肝がんは、命に関わる合併症です。

肝硬変そのものの治療としては栄養療法・原因治療に加え、症状の緩和が必要になります。しかし、内科的治療では線維化の進行を止めることはできません。肝移植も検討されますが、可能な方は限られます。

肝硬変に対する再生医療は線維化が進んでしまった肝臓を回復させる可能性のある治療ですが、まだ行える病院やクリニックは多くないのが現状です。当院では幹細胞治療による再生医療を提供しています。治療について詳しく知りたい方は、ぜひ一度ご相談ください。

 

肝臓疾患は⼿術しなくても治療できる時代です。

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▼肝硬変の症状や原因については以下で詳しく解説している記事をご覧ください。

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