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アルコール性肝炎は治るのか?肝臓が回復するまでの期間や予防対策も徹底解説

「アルコール性肝炎になったら、もう肝臓は元に戻らないの?」
「アルコール性肝炎は治る病気?」
そんな疑問や不安を抱える方は少なくありません。
長年の飲酒習慣で傷ついた肝臓ですが、完全に回復不可能なわけではないのです。
本記事では、アルコール性肝炎からの回復可能性や有効な治療法、肝臓が健康を取り戻すまでの期間について詳しく解説します。
肝臓の健康を取り戻すための知識を身につけ、今からできる対策を始めましょう。
目次
【結論】アルコール性肝炎は治る病気
アルコール性肝炎は、適切な治療と生活習慣の見直しにより回復が期待できる病気です。
とくに早期発見と適切な対策により、肝臓へのダメージを最小限に抑えられます。
しかし、進行すると回復が難しくなるため、早めの対応が重要です。
- 早期発見と適切な治療で回復は見込める
- 重症度によっては回復が難しい場合も
本章では、アルコール性肝炎の回復の可能性や治療法について詳しく解説します。
早期発見と適切な治療で回復は見込める
アルコール性肝炎は、早期発見と適切な治療により回復が期待できる病気です。
肝臓には再生能力があり、飲酒を避けて健康的な生活を続けることで改善が見込めます。(文献1)
まず禁酒が最優先です。アルコールを摂取し続けると炎症が進み、回復が遅れるだけでなく、肝硬変へ進行するリスクが高まります。
さらに、栄養療法や薬物療法により、肝機能の回復を促します。
早期発見のためには、定期的な健康診断で肝臓の数値をチェックしておくのもポイントです。
今まで自覚症状がなくても異変を感じたら、すぐに医療機関を受診し適切な対応をとりましょう。
アルコール性肝炎の初期症状については、以下の記事でも詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
重症度によっては回復が難しい場合も
アルコール性肝炎は早期発見と適切な治療により回復が期待できますが、重症度によっては改善が難しい場合もあります。
とくに長年の飲酒で肝臓に深刻なダメージが蓄積すると、完全な回復は困難です。(文献2)
たとえば、アルコール性肝硬変に進行すると、肝臓の線維化が進み、元の健康な状態への回復はほぼ不可能になります。
そのため、症状が軽いうちに適切な治療を受けるのが重要です。
「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓は、ダメージを受けても自覚症状が出にくいため、日頃から健康管理を意識しましょう。
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アルコール性肝炎における4つの治療法
アルコール性肝炎の治療には、主に以下の4つの方法があります。
- 断酒する
- 栄養療法で肝臓の回復を促す
- 薬物療法で症状を緩和する
- 再生医療を受ける
それぞれの方法を組み合わせることで、より高い回復効果が期待できます。
断酒する
アルコール性肝炎の最も効果的な治療法は、断酒です。(文献1)
アルコールを摂取し続けると肝臓の炎症が進行し、回復が難しくなります。
そのため、完全に飲酒をやめることが肝臓を守る第一歩となります。
断酒による精神的ストレスや誘惑を乗り越えるためには、家族や友人の理解とサポートが重要です。
また、アルコール依存により断酒が難しい場合は、精神科や心療内科の専門医による治療も有効な選択肢となります。
適切なサポートを活用しながら、無理のない範囲で断酒を継続しましょう。
肝臓の数値に異常がある場合の原因や対策については、こちらの記事でも解説していますので、参考にしてください。
栄養療法で肝臓の回復を促す
肝臓の回復を助けるには、適切な栄養摂取が不可欠です。(文献1)
とくにタンパク質やビタミンを十分に摂取すると、肝細胞の再生が促進されます。
具体的には、高タンパク質の食品(肉、魚、大豆製品など)や、ビタミン類を多く含む食材を積極的に取り入れると良いでしょう。
一方で、脂肪分の多い食事や糖分の過剰摂取は肝臓に負担をかけるため、なるべく控えることをおすすめします。
薬物療法で症状を緩和する
アルコール性肝炎の症状が進行している場合、アルコール依存症と同様に薬物療法を行う場合があります。(文献3)
アルコール依存症は、本人の意思ではどうすることもできないため、抗酒薬や抗不安薬などの薬物療法が用いられますが、同様に断酒を目的として治療が挙げられます。
ただし、薬物療法はあくまで精神的な症状の緩和や断酒を補助するためのものであり、根本的な治療にはなりません。
そのため、断酒を継続しつつ生活習慣の改善と並行して行っていくのが重要です。
再生医療を受ける
肝臓疾患に対する治療法には再生医療という選択肢もあります。
再生医療は、患者様自身から採取・培養した幹細胞を用いて治療を行う、副作用のリスクが少ない治療法です。
当院「リペアセルクリニック」では肝臓疾患に対して、再生医療による治療を行っています。再生医療について詳しくは、以下のページをご覧ください。
アルコール性肝障害の分類における位置付け
アルコール性肝障害は以下の五つに分類され、そのうちの一つがアルコール性肝炎です。
- アルコール性脂肪肝
- アルコール性肝線維症
- アルコール性肝硬変
- アルコール性肝炎
- アルコール性肝がん
慢性的に過剰飲酒を続けると、脂肪肝→肝線維症→肝硬変と順番に進行していく可能性があるため、注意が必要です。
なお、アルコール性肝炎ではこの慢性経過とは別に、酒量の増加などをきっかけにして肝臓に強い炎症が起こります。
背景の肝臓の組織が軽度の脂肪肝であっても進行した肝硬変であっても、肝細胞が変性や壊死を起こしていればアルコール性肝炎と考えられます。
つまり、もともとアルコールによる肝臓の障害がある方が、さらに過剰飲酒することで肝臓に強い炎症とダメージが起こってしまっているのがアルコール性肝炎なのです。
本章では、アルコール性肝障害の五つの分類についてそれぞれ解説します。
アルコール性脂肪肝
アルコールの摂取により、肝臓に脂肪が蓄積する初期段階の状態です。
この段階で飲酒をやめれば、比較的早い回復が見込めます。
アルコール性肝線維症
アルコール性脂肪肝が進行すると、肝細胞がダメージを受け、線維化が始まります。
この段階ではまだ回復の可能性がありますが、飲酒を続けると悪化する恐れがあります。
アルコール性肝硬変
長期間の飲酒により、肝臓が硬化し、機能が低下します。
この段階になると回復は困難で、合併症のリスクも高まります。
アルコール性肝炎
アルコールの影響で肝臓に炎症が生じる状態です。
重症になると命に関わる場合もあり、早急な治療が必要です。
アルコール性肝がん
アルコールによるダメージを肝臓が受けている状況下に肝がんができており、他の原因が除外できている状態です。
肝臓の重要な働きと注意すべき病気については以下の記事でも解説しています。
気になる症状がある方は、ぜひご覧ください。
アルコール性肝炎の検査と診断
アルコール性肝炎を診断するには、複数の検査が行われます。
正確な診断を受けることで、適切な治療を選択し、回復へつながる可能性も高まります。
肝生検
肝生検は、肝臓の一部を採取し、組織を詳しく調べる検査です。
この方法により、炎症の進行度や線維化の程度を把握できます。
検査は局所麻酔を行い、細い針を肝臓に刺して組織を採取します。
検査後は数時間(検査自体は20分程度、安静時間も含めて約4~6時間)の安静が必要ですが、肝臓の状態を詳しく知るために有効な方法です。(文献4)
肝硬変などの進行具合を診断する際にも用いられます。
血液検査・画像検査
血液検査は、肝臓の状態を把握する基本的な検査です。
とくにAST(GOT)やALT(GPT)などの肝酵素の数値を調べることで、炎症の有無を確認できます。
また、超音波検査やCTスキャン、MRIなどの画像検査も活用されます。
これらの検査では、肝臓の形状や脂肪の蓄積、線維化の進行具合を視覚的に確認できます。
血液検査との組み合わせによって、より正確な診断が可能になります。
まとめ|アルコール性肝炎は節酒や断酒で回復を目指そう
本記事では、アルコール性肝炎の回復の可能性や治療法について解説しました。
アルコール性肝炎になっても、断酒や栄養管理、薬物療法によって、肝臓の機能は改善し、健康を取り戻せる可能性があります。
ただし、早期発見と対策が重要なため、生活習慣を見直し、必要に応じて医師の診察を受けましょう。
適切な対応を続けることで、肝臓への負担を軽減し、病状の悪化を防げます。
また、当院「リペアセルクリニック」では肝臓(脂肪肝・肝硬変・肝炎)の再生医療・幹細胞治療を提供しています。
肝機能の治療に不安がある方は、まずはお気軽にご相談ください。
アルコール性肝炎の治療についてよくある質問
アルコール性肝炎の治療についてよくある質問肝臓は禁酒すると回復しますか?
肝臓は回復力の高い臓器であり、禁酒することでダメージが改善する可能性があります。
とくに初期段階であれば、断酒によって肝細胞が再生し、健康な状態に戻ることが期待できます。
しかし、肝硬変など病状が進行すると、完全な回復は難しくなります。
そのため、肝臓のダメージが深刻化する前に、禁酒を徹底する意識が大切です。
アルコール性肝炎が回復するまでの期間は?
回復期間には個人差がありますが、軽度のアルコール性肝炎であれば、数週間から数カ月で改善が期待できます。
一方、重度の肝障害がある場合は、回復に数年かかるケースもあります。
断酒を継続し、適切な治療を受けることが回復の鍵となるため、医師と相談しながら自分に合った治療計画を立てましょう。
また、当院「リペアセルクリニック」では肝硬変・肝炎に対し手術を伴わない「再生医療」を提案しています。
治療に不安がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。
参考文献
(文献1)
竹井謙之,アルコール健康医学協会「アルコール性肝障害の最新トピックス」
https://www.arukenkyo.or.jp/information/pdf/kirokusyu/09/04.pdf(最終アクセス:2025年3月26日)
(文献2)
全国健康保険協会「アルコール性肝障害 (Alcoholic Liver Disease:ALD)」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/kochi/20140325001/2016120600012kannshougai.pdf(最終アクセス:2025年3月26日)
(文献3)
山田隆子,秋元典子.「アルコール性肝障害入院患者が断酒を決意し断酒を継続するプロセス」『日本看護研究学会雑誌』 Vol. 35 No. 5.pp.25-34,2012https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/35/5/35_20121030003/_pdf(最終アクセス:2025年3月26日)
(文献4)
慶應義塾大学病院 KOMPAS「肝生検 – 慶應義塾大学病院 KOMPAS」
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000439.html(最終アクセス:2025年3月26日)
監修者

渡久地 政尚 医師 (医療法人美喜有会)
Masanao Toguchi
日本再生医療学会 所属
日本内科学会 所属
再生医療の可能性を追求しながら、体への負担が少なく効果的な治療を提供し、患者様が早期に活動的な生活に戻れるよう、丁寧な診療を心がけてまいります。
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