アルコール性肝炎は治療で治るのか?最新の治療法についても解説
公開日: 2024.07.09更新日: 2024.10.07
アルコール性肝炎は、過剰な飲酒によって引き起こされる肝臓の病気です。アルコール性肝障害(アルコール性肝疾患)の中でも、特に肝臓の炎症が強い病態で、時に命に関わることもあります。また、症状が落ち着いた後もお酒を飲み続けてしまうと、長期的に肝硬変につながりかねません。
この記事では、
- ・アルコールと肝臓の病気について
- ・アルコール性肝炎とその治療
- ・肝硬変への進行を防ぐ最新の治療法
を中心に詳しく説明していきます。
飲酒による肝臓へのダメージが心配な方、アルコール性肝障害と診断を受けた方はぜひお読みください。
アルコール性肝炎の原因や症状に関しては以下の記事で解説しておりますので、そちらをご参照ください。
目次
飲酒と肝臓の関係
肝臓は多くの働きをしていますが、アルコールの代謝もそのうちの一つです。体内に取り込まれたアルコールの代謝の過程で、アセトアルデヒドという有害物質が生成されます。アセトアルデヒドは酵素の働きにより無害な物質になり、最終的には体外に排出されます。しかし、アルコールの過剰摂取を続けると、アセトアルデヒドが肝臓の細胞にダメージを与えます。
過剰なアルコール摂取は腸内の細菌バランスを崩すことでも肝臓に悪影響を与えます。腸内には多くの細菌が存在し、これらが食物の消化や免疫力の維持に重要な役割を果たしているのです。しかし、アルコールを大量に飲むと、このバランスが崩れ、腸の壁が弱くなります。その結果、本来吸収されないはずの有害な物質が腸から血液を介して肝臓に届き、炎症を引き起こすのです。
このように、アルコールは肝臓に多大な負担をかけ、さまざまな肝臓の病気を引き起こす原因となります。
アルコール性肝障害になりやすい人
一般的に、女性は男性よりも少ない量のアルコールで肝障害を起こしやすく、進行も早い傾向があります。
また、アセトアルデヒドを代謝するALDH2という酵素がうまく働かない人は、アルコールの分解が遅くなり、アセトアルデヒドが体内にたまりやすくなります。ALDH2がうまく働かない人は、お酒を飲むとすぐに顔が赤くなったり、気持ち悪くなったりするフラッシング反応が見られることが多いです。
アセトアルデヒドの代謝が遅れるため、肝臓に大きなダメージを与え、アルコールによる肝障害を引き起こすリスクが高まります。
アルコール性肝障害の分類における位置付けは?
アルコール性肝炎は「アルコール性肝障害(アルコール性肝疾患)」と呼ばれる病態のなかの一つの状態です。慢性的な経過の中で起こる、急激な肝臓の炎症という位置付けです。
アルコール性肝障害とは、過剰なアルコールの摂取により肝臓が障害を受けた状態全般を指す言葉です。
一般的には5年以上にわたって純アルコールあたり60g以上を常習的に飲むと「過剰」と考えられます。ただし、女性やALDH2がうまく働かない人はこの3分の2程度の飲酒量でも過剰となります。
お酒をやめると肝機能の検査値は改善すること、ウイルスや自己免疫疾患など他の肝障害をきたす要素が否定的であることもポイントです。
アルコール性肝障害には次のような疾患が含まれています。
アルコール性肝障害の分類
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慢性的に過剰飲酒を続けると、脂肪肝→肝線維症→肝硬変と順番に進行していく可能性があります。アルコール性肝炎ではこの慢性経過とは別に、酒量の増加などをきっかけにして肝臓に強い炎症が起こります。
背景の肝臓の組織が軽度の脂肪肝であっても進行した肝硬変であっても、肝細胞が変性や壊死を起こしていればアルコール性肝炎と考えます。
つまり、もともとアルコールによる肝臓の障害がある方が、さらに過剰飲酒することで肝臓に強い炎症とダメージが起こってしまっているのがアルコール性肝炎なのです。
アルコール性肝炎の検査と診断
確実に診断をつけるのであれば、肝生検を行う必要があります。
肝生検
肝細胞が著明にふくらみ変性していたり、壊死していたりする様子が認められます。また、マロリー小体という特徴的な構造物や多数の炎症細胞の浸潤が認められることも多いです。特徴的な病理組織が認められれば、確定診断に至ります。しかし、全身状態の悪い方の肝生検は時に高いリスクを伴うため、すべての患者さんにできる検査ではありません。
血液検査・画像検査
肝生検ができない場合は、病歴や血液検査・画像検査から診断を行います。飲酒の状況や、黄疸などの症状を確認し、血液検査でASTやALTなどの肝酵素値を測定します。また、超音波検査やCTなどの画像にて肝臓の腫れなどを確認することも重要です。これらの検査結果を総合してアルコール性肝炎として矛盾がなければ臨床的診断となります。
アルコール性肝炎の治療と予後
アルコール性肝炎と診断されたら、以下のような治療法が検討されます。
断酒する
アルコール性肝炎と診断されたら、まず断酒をする必要があります。しかし、アルコール性肝炎になるほどの飲酒をされている患者さんでは、お酒を断つことが非常に難しい場合も多いです。アルコールの離脱症状として、手が震えたり強い不安が出たり幻覚が見えたりすることもあります。そのため、内科と精神科で協力して治療を行うことも多くあります。
点滴や栄養療法
また、アルコール性肝炎の患者さんは、水分や様々な栄養素が不足した状態にあるため、点滴や栄養療法が必要です。
中等症から重症の場合は、「ステロイド」と呼ばれる炎症を抑える薬を併用します。さらに重症のアルコール性肝炎の場合、炎症を起こす白血球を取り除く治療、毒素を吸着する血液浄化療法など高度の治療を行います。
急性期の予後
アルコール性肝炎の急性期の予後は、飲酒をやめた後の肝臓の状態により異なります。飲酒をやめても肝臓の腫れが引かない場合は生命予後不良であることが多いです。肝性脳症・肺炎・急性腎不全・消化管出血など内臓の合併症がある患者さんも、命に関わることが多いです。
予後不良と考えられる方、重症度の高い方は積極的な治療が必要です。
治療後の肝硬変への進展予防
アルコール性肝炎から回復したあとに重要なのは、断酒を継続することです。お酒を断つことで、再発を防ぐだけでなく、肝硬変への進展も予防することができます。
たとえアルコール性肝炎から回復しても、また飲酒を再開してしまうと肝臓へのダメージは蓄積されます。アルコールによるダメージにより、肝臓に線維組織がたまっていきます。肝硬変への進行を予防するためには、禁酒を続けることが重要です。
しかし、アルコールには依存性があります。これまで過度の飲酒をしてきた方が断酒をするのは難しいケースが多いのです。
どうしても断酒できない場合は、精神科の受診も選択肢です。
アルコール依存の専門外来では、カウンセリングのほか、飲酒により不快な症状を起こす薬や飲酒欲求を軽減する薬が処方されることもあります。また、家族など身近な人のサポートも重要です。アルコール依存症の自助グループの活動に参加する方法もあります。
今、お酒がやめられないことに悩んでいるのであれば、主治医・医療スタッフ・家族などと相談しながら、ご自身に合った方法をみつけるのが良いでしょう。
アルコール性肝疾患治療の最前線
これまでの治療では、一度アルコールでダメージを受けてしまった肝臓は元に戻らないと考えられていました。しかし、「再生医療」の進歩によって、この考えが変わる可能性があります。
肝硬変の再生医療には万能細胞の「幹細胞」を使用します。幹細胞を点滴で投与すると、損傷した肝組織に働きかけて再生と修復を促します。
これにより、改善方法がなかった肝臓の線維化が改善される可能性が出てきました。
とはいえ、再生医療はまだ発展途上です。使用する幹細胞の採取方法も、培養技術の質も医療機関ごとに異なっています。再生医療を希望する方は、より良い治療を受けられる医療機関を自ら選ぶ必要があります。
まとめ・アルコール性肝炎の治療と再生医療という選択
アルコール性肝炎は、アルコールの過剰摂取によって肝臓に重大なダメージを与える病気です。飲酒歴や診察・各種検査を総合的に判断して診断されます。治療の大原則は飲酒をやめることです。
一度アルコール性肝炎をきたした後は、断酒を継続することが重要です。肝硬変になるのを防ぎ、健康的な生活を送りましょう。
ダメージを受けた肝臓の治療を考えたいのであれば、再生医療が選択肢になるでしょう。
もし、再生医療による肝臓の治療に興味があるのであれば、当院での治療をご検討ください。
当院では、ご自身の脂肪細胞から幹細胞を採取します。培養も患者さん本人の血清を利用します。そのため、アレルギーや感染症などの有害事象の心配を極力減らすことが可能です。
さらに当院の細胞培養室は国内トップレベルです。一般的に行われている凍結による保存・輸送を行わないため、途中で死んでしまう幹細胞を減らすことができます。結果、より多くの幹細胞をフレッシュな状態で投与できます。
当院の再生医療について、もっと詳しく知りたいという方は、一度カウンセリングを受けてみてはいかがでしょうか。
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