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脳挫傷の後遺症について現役医師が解説!主な症状や注意点なども紹介
脳挫傷は、脳に外部からの衝撃や圧力が直接的に加わることで起こる疾患です。スポーツ中の衝突や交通事故、転倒などが原因になるケースが多く、軽度から重度まで損傷の程度によって症状はさまざまです。
脳挫傷を負ってから体調が優れない日が続くと、「後遺症が出るのではないか」「症状が進行するのではないか」と不安に感じる方も多いでしょう。
実際に、脳挫傷は後遺症が残りやすく、日常生活に大きく影響する可能性があります。そのため、脳挫傷の後遺症が疑われる場合は、早期に医療機関で検査を受けることが大切です。
今回は、脳挫傷の後遺症について現役医師が解説します。主な症状や注意点をまとめているので、正しい理解を深めるための参考にしてください。
目次
脳挫傷による7つの後遺症
脳挫傷とは、脳の一部が損傷している状態のことです。脳は硬膜と呼ばれる膜に包まれており、頭蓋骨の中にあります。しかし、事故などで頭部に強い衝撃を受けると、脳が頭蓋骨にぶつかって損傷を受ける場合があります。
脳挫傷は外傷性脳損傷の一種で、主な症状は意識障害や記憶障害、頭痛などです。軽度の場合は数日で回復するものの、重度の場合は深刻な後遺症を引き起こす場合があります。
以下で、脳挫傷による主な後遺症を7つ解説するので、ぜひ参考にしてください。
1.高次脳機能障害
脳挫傷による後遺症として多いのが、高次脳機能障害です。高次脳機能とは、具体的に以下のような能力を意味します。
- 認知
- 思考
- 判断
- 記憶
- 計画
- 学習
脳挫傷によって高次脳機能を司る部分がダメージを受けると、記憶障害をはじめ、集中力や判断力の低下などの症状が現れます。
高次脳機能障害の主な症状 |
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記憶障害が現れると、新しい情報を覚えることが難しくなり、記憶力が低下します。とくに最近の出来事を覚えられなくなる「短期記憶障害」を発症するケースが多いとされています。
高次脳機能障害による症状は、学校生活や職場など、日常生活に支障をきたすため、リハビリテーションによる認知機能の回復に努めることが大切です。
2.身体性機能障害
脳挫傷によって、運動機能を司る部分が損傷すると、身体性機能障害を引き起こします。身体性機能障害とは、脳の損傷によって身体の一部が麻痺したり、身体に痛みやだるさを感じたりする症状が続く状態を意味します。
身体性機能障害の主な症状 |
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身体性機能障害の症状は、リハビリテーションによって徐々に回復が見込まれるものの、完全な回復には時間がかかるといえるでしょう。
3.遷延性意識障害
遷延性意識障害も、脳挫傷による後遺症の一つです。遷延性意識障害とは、脳挫傷によって意識が完全に回復しない場合や、覚醒状態と昏睡状態を繰り返している状態を意味します。遷延性意識障害はとくに重度の脳挫傷で多く見られる後遺症です。
遷延性意識障害の主な症状 |
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なお、遷延性意識障害の症状が長期間続く場合は、回復の見込みが低くなり、治療の難易度も高まります。
4.平衡機能障害
脳挫傷による後遺症には、平衡機能障害もあります。脳挫傷によって平衡感覚を司る部位が損傷すると、目が回って立っていられなかったり、歩行時にフラついたりするなどの症状が現れる場合があります。立ち上がり時や歩行時に強いフラつきを感じると、転倒のリスクが高まるため注意が必要です。
平衡機能障害の主な症状 |
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平衡機能障害の症状がある場合は、リハビリテーションやバランス訓練などに取り組むことで、回復を目指していきます。
5.感覚器等の機能障害
脳挫傷による後遺症として、視覚や聴覚、嗅覚などの感覚器が影響を受けるケースも珍しくありません。脳挫傷によって感覚器等の機能障害が起こると、視力の低下や聴力障害、嗅覚や味覚の異常などを引き起こします。
感覚器等の機能障害の主な症状 |
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感覚器等の機能障害は、脳の損傷部位や程度によって具体的な症状が異なります。たとえば、脳の後頭葉部分を損傷すると視覚障害が起こりやすいほか、内耳や中枢神経を損傷すると聴覚障害につながる可能性が高いでしょう。
なお、感覚器等の機能障害は生活の質の低下に直結しやすく、患者の精神的な負担も大きいといえます。
6.外傷性てんかん
脳挫傷を原因とする外傷性てんかんも、後遺症の一種です。外傷性てんかんとは、外傷による損傷をきっかけに、脳が異常な信号を発することで引き起こされます。てんかん発作は、意識の喪失や激しいけいれんを伴うほか、突然現れるため周囲の人にとっても対応が困難な状況が考えられます。
外傷性てんかんの主な症状 |
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てんかん発作は繰り返し発生するケースがほとんどで、時間の経過とともに頻度が増えることも珍しくありません。抗てんかん薬や適切な治療によって発作の頻度を減らせるものの、外傷性てんかんは完治が難しいとされています。
7.頭痛
脳挫傷後の頭痛は、回復過程において一般的な症状です。しかし、脳の損傷部位や炎症反応などによっては、後遺症として慢性的な頭痛や偏頭痛が長期間続く場合があります。
脳挫傷による頭痛の主な症状 |
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脳挫傷の後遺症として慢性頭痛が現れた場合は、適切な薬物治療や生活習慣の見直しなどによって症状が改善する場合もあります。
脳挫傷の後遺症に関する注意点
脳挫傷の後遺症は、必ずしも脳を損傷後すぐに現れるとは限りません。とくに、軽度の場合は、一見回復しているように見えて、数年後に後遺症が現れたり、当事者が症状を自覚できなかったりする場合もあります。
以下で、脳挫傷の後遺症について理解しておくべき注意点を解説するので、ぜひ参考にしてください。
軽度の脳挫傷でも数年後に後遺症が現れる可能性がある
脳挫傷は頭を強く打った後、脳内で少しずつ損傷部位が拡大する場合があります。実際に、脳を損傷してからしばらくの間は問題なく過ごしていても、数年後に後遺症が現れるケースも珍しくありません。そのため、脳挫傷は初期の治療後も注意深く経過観察を続けることが大切です。
脳を損傷してから数カ月〜数年が経った後でも、記憶力や集中力の低下を感じる場合は、脳挫傷による後遺症を疑ってみてください。
たとえ軽度の脳挫傷であっても、CTスキャンやMRIなどで定期的に脳の状態を確認すると、後遺症を早期に発見できるでしょう。
再生医療に特化したリペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。脳挫傷の後遺症に該当する症状でお悩みの方は、ぜひ気軽にご相談ください。
当事者が症状を自覚できない場合がある
脳挫傷による後遺症は、当事者が症状を自覚しにくい場合があります。とくに、高次脳機能障害や軽度の身体的機能障害がある場合は、違和感があっても脳挫傷の後遺症による症状であると気づかないケースも少なくありません。
また、記憶力や認知機能が低下してしまうと、日常生活の変化や違和感そのものに気づくことが難しくなります。たとえ脳挫傷による影響とは関係がなさそうに感じられても、気になる症状があれば、医師に相談しましょう。
なお、後遺症の症状に気づくためには、周囲の家族や友人のサポートも不可欠です。日常生活での異変を感じたら、適切にアドバイスしたり、医療機関の受診を促したりすると良いでしょう。
交通事故が原因で後遺症が残った場合は慰謝料を請求する
交通事故が原因で脳挫傷を負って後遺症が残った場合は、慰謝料や損害賠償金を請求できます。慰謝料請求の手続きをする際は、医師による診断書や検査結果などが必要になるため、専門家への相談がおすすめです。
交通事故を原因とする脳挫傷で後遺症が残ったら、まずは後遺症の認定手続きをする必要があります。
適切な診断に基づき、後遺症の程度に応じて後遺症等級が認定されると、賠償金を受け取れます。慰謝料や損害賠償金の請求手続きについては、交通事故を専門とする弁護士などに詳細を確認してください。
脳挫傷の疑いがあるときは早めの受診がおすすめ
スポーツや交通事故などで頭を強く打った場合には、脳挫傷が疑われます。そのため、頭を強く打ったり衝撃によって意識を失ったりした際は、症状の有無にかかわらず、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
脳挫傷は、CTスキャンやMRIなどの画像検査による診断が行われ、脳に損傷が認められれば早期に治療を開始できます。また、初期の治療段階で後遺症が予測される場合には、リハビリテーションを実施して機能低下を予防に努めることも可能です。
リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。脳挫傷による症状や治療法でお悩みの方は、ぜひ気軽にご相談ください。
▼ 頭やおでこを打ったときに疑われる病気については、以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ・脳挫傷の後遺症を見逃さないために医療機関を受診しよう
脳挫傷による後遺症は、発症直後に必ずしも症状が現れるわけではありません。見た目では症状が回復しているように感じられても、気づかないうちに損傷部位が広がっている可能性も考えられます。
また、脳挫傷の後遺症は、当事者が症状を自覚しづらいことも特徴です。後遺症を見逃さないためには、初期の治療後も定期的な受診が不可欠です。
なお、基本的に脳の損傷は完全に修復できません。そのため、脳挫傷の後遺症とは長く付き合っていく必要があります。後遺症のような症状が続く場合には、医療機関で適切な診断と治療を受け、症状の軽減や予防に努めることが大切です。