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視床出血による運動失調はなぜ起こるのか?その種類と特徴

視床出血による運動失調はなぜ起こるのか?その種類と特徴

視床出血は、脳の中でも脳内のネットワークの中心となる視床という部位で起こる出血のことです。片麻痺や感覚障害、また運動失調の原因ともなります。

この記事では、視床出血でなぜ運動失調が起こるのか、その特徴と治療やリハビリ、また再生医療の可能性についても解説します。

視床出血による運動失調

視床出血とは?

視床出血は、脳卒中と総称される脳出血・脳梗塞・クモ膜下出血の中でも、脳の中の視床という部分に起こる出血のことです。

主な原因は高血圧で、脳出血の中では、被殻(ひかく)出血の次に視床出血の頻度が高いとされています。視床と被殻は隣にありますが、視床出血では脳室という部位とも隣接しています。そのため、視床出血と被殻出血との違いの一つに、脳室にまで出血が広がるかどうかという点があります。

視床出血は、その重症度からI〜IIIに分類されています。

その中でも、脳室穿破(せんぱ;脳室という脳脊髄液がある部分まで出血が及んでいるかどうか)の有無で「無=a」「有=b」とさらに細かく分類されています。

視床に限局しているものをⅠ、内包に進展したものをⅡ、視床下部または中脳に進展したものをⅢとしています。

簡単に述べると、出血が大きくなるほど、数字も大きくなる、というイメージで良いかと思います。

視床出血による症状

視床は、脳内のネットワークの中心となる場所で、感覚神経をはじめとするさまざまな神経線維がここを経由しています。

そのため、視床出血によって、以下のような症状がでます。

  • ・片麻痺
  • ・瞳孔径の縮小
  • ・顔面神経麻痺(病変と反対側に起こる)
  • ・知覚障害
  • ・病変側への共同偏視
  • ・外転神経麻痺
  • ・半盲
  • ・嘔吐
  • ・運動失調

その他にも視床出血では、失語症や半側空間無視、注意障害などといった高次脳機能障害が起こることもあります。

また、他の脳卒中と同じように、症状が出たばかりの急性期には、嚥下障害も起こり得ます。嚥下運動(飲み込み運動)は大脳から脳幹に至るまでの複雑なネットワークによって成り立っているからです。そのため、視床出血が原因となり嚥下障害が起こる、というメカニズムが考えられています。

脳卒中は手術しなくても治療できる時代です。

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視床出血による運動失調、なぜ起こる?

運動失調とは、運動麻痺はないか、あっても軽症で、動作や姿勢保持などの協調運動に起こる障害のことです。

視床出血で失調症状がでるのは、小脳の運動機能調節に重要な経路に、小脳や視床、大脳皮質、橋があるためです。

これらのいずれかかが障害されても、小脳性運動失調を生じるのです。

また、視床出血によって、深部感覚が障害されることが原因とも考えられています。

失調と麻痺の違いとは?

失調と麻痺の違いは、筋力の低下があるかどうかということになります。

視床出血による運動失調の場合は、一般に意識障害や片麻痺も伴うことが多く、協調運動障害や不随意運動や、感覚障害が認められることは少ないとされています。つまり、運動失調症状があっても、それが四肢の麻痺によるものなのか判別がつきにくい、という特徴があると考えられます。

視床出血の種類とその特徴

運動失調の種類には以下のようなものがあります。

運動失調の特徴

参考) 神経メカニズムから捉える失調症状 

視床出血での失調症状では、四肢の失調症状や歩行の異常が認められるということになります。

視床出血の治療

視床出血が起こった際の治療は、血圧を下げることが中心となります。視床は脳の深部にあるため、手術適応とはなりにくいのです。

視床出血によって、水頭症と呼ばれる脳室に脳脊髄液がたまる症状になってしまうことがあります。水頭症を放置しておくと、脳ヘルニアという脳の一部が頭蓋骨の外側に飛び出してしまう状態になる危険性があります。こうなると、呼吸障害などが起こり生命に関わるため、シャント術という手術を行い、余分な髄液を脳室から腹腔にまで流すようにします。

視床出血の後遺症とリハビリ

視床出血では、発症後から感覚障害があった場合には、感覚障害の症状が残ったり、逆に半身の痛み(視床痛)が出現したりします。運動失調が残る場合もあります。また、出血が大きい場合には、片麻痺も後遺症として残ることがあります。

視床出血後のリハビリは、作業療法や理学療法が行われます。

作業療法

作業療法では、麻痺している上肢を積極的に使うことで、日常生活に復帰することを目標とします。

理学療法

理学療法では、重り負荷、弾性包帯による圧迫、フレンケル体操、立ち上がりや立位時の荷重負荷練習、視覚誘導によるバランス練習を行い、日常生活を送る上で必要な動作の練習をしていきます。

  • ・重り負荷
  • ・弾性包帯による圧迫
  • ・フレンケル体操
  • ・立ち上がりや立位時の荷重負荷練習
  • ・視覚誘導

また、視床出血後には、片麻痺、つまり運動障害と、運動失調症状が同時にある場合があります。

そのため、視床出血後のリハビリの一つに、免荷式(めんかしき)トレッドミルという機械を用い、歩行のリハビリを行っていくものがあります。

これは、体を上から吊るし、ハーネスで体を支えることで、足にかかる体重を調整でき、バランス感覚を鍛えられることを期待しています。

まとめ・視床出血による運動失調はなぜ起こる?その種類と特徴

本記事では、視床出血による運動失調の特徴について解説しました。

視床出血は後遺症が残ってしまう可能性が高い疾患ですが、当院ではリハビリに再生医療を組み合わせることで、脳神経細胞の修復や身体機能の改善を図っています。

脳卒中後の後遺症に対しての再生医療にご興味がある方は、ぜひ一度当院へご相談ください。

 

No.141

監修:医師 坂本貞範

脳卒中の治療

参考文献

加齢の面からみた脳出血の部位
脳血管障害による脳室内出血症例の臨床的検討一脳室内出血の重症度評価と転帰についてー
脳出血部位と症状 (CM Fisher)
原著視床出血の高次脳機能障害
急性期脳出血における摂食・嚥下障害の検討
運動失調を主徴とした左視床出血の1例
神経メカニズムから捉える失調症状
運動失調に対するアプローチ

 

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