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もやもや病の後遺症による性格変化とは?高次機能障害について解説

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もやもや病の後遺症による性格変化とは?高次機能障害について解説

もやもや病は、脳の重要な動脈が狭くなり、そのかわりにバイパスとなる細い血管が発達することにより起こる病気です。

細い血管は検査で見ると「もやもやと煙が立ち上るよう」に見え、この所見が診断基準にも必須の項目となっています。この「もやもや血管」が収縮してしまうと、脳に十分な血液が行き届かなくなります。その結果、意識障害や脱力、てんかん、頭痛などの症状を発作的に繰り返すのです。

また、細い血管は詰まったり破れたりしやすいため、脳卒中(脳梗塞や脳出血、くも膜下出血)を起こしてしまうこともあります。脳卒中の後遺症というと、麻痺や感覚障害が思い浮かぶかもしれません。しかし、一部の患者さんでは、麻痺などがなくても、生活や仕事に差し障る後遺症を残すことがあります。それが「高次脳機能障害」です。

本記事では、「もやもや病の後遺症」としての高次脳機能障害について、どのようなことが起こるのか具体例を交えて解説していきます。

高次脳機能障害とは?

「高次脳機能」とは、さまざまな情報をもとに、高度で複雑な処理をする脳の機能のことです。

大脳をその機能別に見てみると、運動や感覚などを司るはっきりとした機能がある「一次野」と、それ以外の「連合野」に区分されます。連合野は特に人間で大きく発達した部分で、高次脳機能に関わるところです。情報をもとに考えたり、感じたり、何かの行動に移したりということを可能にしています。

この連合野がなんらかの原因で傷つくとどうなるでしょう。複雑な処理の過程で支障が起こります。例えば、記憶や行動、物事を実行する能力の障害など、損傷部位に応じて多彩な症状をきたします。その結果、日常生活や社会生活を送る上で制約を受けている状態が「高次脳機能障害」です。

もやもや病の高次機能障害

もやもや病と高次脳機能障害

もやもや病は、もやもや血管が詰まったり破れたりすることで、脳卒中をきたします。それだけでなく、明らかな脳卒中のエピソードがなくても、血液の巡りが悪いため、脳にダメージが蓄積されていくリスクもあるのです。このようにして、脳の連合野にダメージを受けると、高次脳機能障害を認めます。

どのような症状が出るかは、障害部位によって変わってきますが、もやもや病では「前頭葉の障害」が起こることが多いです。

脳卒中は手術しなくても治療できる時代です。

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前頭葉の働きと高次脳機能障害

もやもや病で障害を受けやすい前頭葉は、大脳の前の部分に位置します。前頭葉にある、「前頭連合野」は、ヒトで特に発達している部分です。本能や激しい感情の動きをコントロールして、思考力・創造性・社会性を発揮するための機能を果たす役割があります。単に欲求に従うのではなく、状況を見極めて判断し、意味のある行動を起こすという「人間らしさ」に関わる場所なのです。

具体的に前頭連合野の障害による高次脳機能障害の症状を見ていきましょう。

  • 〈前頭連合野の障害による高次脳機能障害の例〉
  • 記憶障害

  • ・作業記憶(ワーキングメモリー)が障害されます。
  • ・作業記憶の障害は、何かを行うときに一時的においておく「記憶の引き出し」が使えません。
  • ・聞いたことをすぐ忘れて何度も聞き返す。
  • ・買い物を頼まれても何を買えばいいか忘れてしまう。
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  • 注意障害

  • ・注意障害があると、気が散りやすくなり、一つの物事に集中できません。
  • ・ちょっとした周りの変化が起こるとそちらに気をとられ、動作が止まってしまいます。
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  • 社会的行動障害

  • ・自分の感情をうまくコントロールできなくなります
  • ・突然かっとなり怒りだすなど感情の振れ幅が大きくなります。
  • ・ギャンブルにのめり込みやすくなるなど、欲求がうまく抑えられません。
  • ・逆に、人や物事に興味がなく、自発性がなくなることもあり社会生活上で問題になります。
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  • 遂行機能障害

  • ・物事を順序立てて行うことができなくなります。
  • ・段取りが悪くなり、優先順位をつけることができなくなります。
  • ・臨機応変に行動することができず、ちょっとしたトラブルにも対応することができません。

このように、前頭葉の障害による高次脳機能障害が起こると、無責任で怒りっぽくなったり、意欲や興味がなくなったりと、まるで性格変化をしたようになってしまいます。

もやもや病による高次機能障害についてよくあるQ & A

  • Q1.高次脳機能障害は完治しますか?

  • 脳に傷がある状態なので、完全に治すことは難しいです。しかし、得意なこと、苦手なことを考えた上で工夫をしていくことにより、より生活をしやすいようにしていくことはできます。根気強いリハビリが大切です。
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  • Q2.脳卒中による高次脳機能障害があるとき、入院期間はどのくらいになりますか?

  • 脳卒中では一般的に、発症直後の急性期を過ぎたあと、回復期リハビリテーション病棟というところに移ってリハビリを続ける方が多いです。回復期リハ病棟では、脳血管障害の入院期間は一般的に150日となっています。ただし、高次脳機能障害の合併があると、180日まで入院が可能です。
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  • この期間全部を使っての入院が必要というわけではありません。しかし、高次脳機能障害は麻痺などと違って一見して分かりづらく、周りの理解が得られにくいことが多いです。社会復帰のためのリハビリや環境整備のためにしっかり時間をかけていくことが必要です。

まとめ・もやもや病の後遺症、性格変化とは?高次機能障害について

もやもや病による後遺症のうち、高次脳機能障害は外見では分かりにくいものです。

しかし、社会生活を送る上で大きな支障をきたしてしまいます。苦手なことをカバーするための訓練を行うとともに、周囲が理解し、支援を続けていくことが必要です。当事者や家族のみで悩まず、。

もやもや病の方で上記のような症状があり、日常生活に困っているときは、まずは地域の高次脳機能障害支援のための拠点機関に相談してみる必要があります。

リハビリ科や精神科の病院、地域の保健福祉センターなどが該当します。地域の自治体のホームページなどでも情報提供されていることが多いため、一度専門機関で相談をされることをおすすめします。この記事がご参考になれば幸いです。脳卒中の治療

▼もやもや病の後遺症については以下でも解説しています
もやもや病による後遺症|社会復帰や運転への影響について

 

  • 〈参考文献〉
  • 中川原. BRAIN NURSING. 31(11), 32-34, 2015.
  • 冨永ら.脳卒中の外科. 46 (1), 1-24, 2018.
  • 中村. 日本臨牀 80(増刊号1), 386-390, 2022.
  • 平岡. 日本臨牀 80(増刊号1), 592-596, 2022
  • 難病情報センター.病気の解説(一般利用者向け) もやもや病(指定難病22).https://www.nanbyou.or.jp/entry/47.最終閲覧2023年7月3日.
  • 難病情報センター.診断・治療指針(医療従事者向け) もやもや病(指定難病22).https://www.nanbyou.or.jp/entry/209.最終閲覧2023年7月3日
  • 坂井. 標準解剖学第1版, 医学書院. 2017.

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