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乾癬性関節炎が治った実例|難病指定の有無と仕事を休むべきかの判断基準

乾癬性関節炎が治った実例を知りたい
乾癬性関節炎と診断されたが、休むべきかを知りたい
乾癬性関節炎と診断され、不安を感じていませんか?皮膚の腫れや関節の違和感に悩み、治る見込みがあるのか・仕事を続けるべきかなど、さまざまな疑問を持つ方も多いでしょう。
結論、乾癬性関節炎は適切な治療と対策で症状が改善する見込みがあります。
- 乾癬性関節炎の治った事例について
- 乾癬性関節炎が治らないと言われる理由
- 乾癬性関節炎の活動性を抑える治療法
- 乾癬性関節炎を治したい方からよくある質問
本記事では、乾癬性関節炎の完治について言及したのち、対策案やよくある質問について解説します。
目次
乾癬性関節炎が治った事例はないが緩和させることはできる
2025年現在、乾癬性関節炎が治った事例はありません。しかし、乾癬性関節炎の症状を緩和させることはできます。
キャスリーンさんが適切な診断を受けるまでには、時間がかかりました。「1990年代初頭はまだ、乾癬性関節炎と乾癬との関連があまり理解されていなかったのかもしれません。少なくとも、私には知らされていませんでした。医師からは『皮膚にも関節にも炎症があるので、これは単なる炎症です』と言われていました」 その後、乾癬性関節炎と診断され、症状をコントロールする方法を学びました。それでも、安心よりも恐怖が勝っていたとキャスリーンさんは言います。「『冗談でしょう? 今度は何をすればいいの?』という気持ちでした。体調が悪くて家から出られないこともありました。私の世界はどんどん小さくなっていきました」 キャスリーンさんは自身の症状について詳しく調べ、乾癬の国内・国際団体でボランティアを務めるようになりました。それにより、長らく感じなかった希望を感じられるようになりました。人生の展望も、より前向きになりました。 「これまで以上に、私と同じような患者さんを支援するようになったことで、ベッドから出て活動的でいたいと思うようになりました」 「乾癬と乾癬性関節炎の研究のために、優れた頭脳と時間を費やしてくれる人が世界中にたくさんいます。それは、私にとっても、他の多くの患者さんにとっても、希望になっているはずです」乾癬と乾癬性関節炎ともに生きるキャスリーンさん
乾癬性関節炎が改善したキャスリーンさんのインタビューでは、症状を治すのではなく、コントロールが大事であると答えています。乾癬性関節炎は治すのではなく、症状と向き合う姿勢が大切です。
乾癬性関節炎の治療は、症状の進行を抑え、日常生活や社会復帰を目指すことが目的です。適切な治療と生活習慣の改善により、多くの人が症状をコントロールしながら生活しています。(文献1)(文献2)
以下の記事では、乾癬性関節炎の症状を改善するために症状別で何科を受診するべきかを紹介しています。
乾癬性関節炎が治らないと言われる理由
乾癬性関節炎は現在の医学では治らない病気と言われています。治らない主な理由としては、乾癬性関節炎は自己免疫疾患であり、根本的に免疫異常を修正する治療法がありません。
- 乾癬性関節炎は自己免疫疾患のため
- 慢性疾患であり、寛解と再発を繰り返すため
- 関節のダメージは元に戻らないため
- 免疫抑制剤や生物学的製剤は完治させるわけではない
- 症状の程度が異なる
乾癬性関節炎が治らないと言われる理由について解説します。
乾癬性関節炎は自己免疫疾患のため
乾癬性関節炎は自己免疫疾患に分類されます。
免疫は本来、ウイルスや細菌などから身体を守る役割を担っていますが、何かしらの要因で誤って自分自身の組織を攻撃してしまうようになり、炎症や組織破壊を引き起こします。このような免疫異常を完全に元に戻す治療法は現時点では確立されていません。
乾癬性関節炎を治すことはできませんが、早期発見であれば適切な治療で症状の緩和や進行の抑制は可能です。
慢性疾患であり、寛解と再発を繰り返すため
乾癬性関節炎は、慢性疾患のため寛解と再発を繰り返します。免疫系の異常でおきた炎症は持続しやすく、傷ついた組織が腫れなどを引き起こすためです。
再発しないためには、ストレスや感染症、食生活の乱れなどに注意し、過度な負担は与えないことが大切です。
ある程度コントロール可能な病気ではあるものの、いつ再発してもおかしくないことを認識しておきましょう。(文献3)
関節のダメージは元に戻らないため
乾癬性関節炎の炎症が長期間続くと、関節や腱の損傷が進行し、変形が起こる可能性があります。関節へのダメージを元通りにする治療法はありません。
公益財団法人結核予防会 複十字病院 膠原病リウマチセンターの資料によると、早期の乾癬性関節炎の患者で2年後くらいの間に関節障害が増加し、発症から期間が長くなればなるほど、関節破壊が進行すると記載されてます。(文献4)
関節へのダメージを元通りに修復させるのは難しいですが、治療を行うことで日常生活への支障を減らすことはできます。
免疫抑制剤や生物学的製剤は完治させるわけではない
薬の種類 | 作用 | 特徴 |
---|---|---|
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬) | 炎症を抑える | 炎症をある程度抑えることはできるものの、症状の進行を止める効果はない |
DMARDs(抗リウマチ薬) | 関節の破壊を抑える | 関節の変形を防ぐが、免疫の異常を根本から止められない |
生物学的製剤・JAK阻害薬 | 免疫の異常な働きを抑える | 炎症を強力に抑えるが、病気を根本的に治すわけではない |
(文献2)
現在の治療薬では、ある程度症状のコントロールはできても、根本の解決はできません。治療薬は、免疫の異常な反応の抑制や、関節の炎症や腫れを軽減などを目的としています。
治療薬は症状の緩和、関節破壊の進行抑制、生活の向上のために服用するものです。また、治療薬を服用する際は自己判断で量を調整したり、中断したりしてはいけません。
医師の指示に従い、服用しましょう。
症状の程度が異なる
症状の程度 | 関節の症状 | その他の症状 | 日常生活への影響 |
---|---|---|---|
軽度 | 関節の腫れや違和感がわずか、こわばりが比較的軽い | 皮膚の炎症が部分的で、発疹の範囲が狭い | 日常生活にほとんど影響がない |
重度 | 複数の関節に激しい炎症や、変形が進行してる | 爪の変形や剥離などがある | 日常生活に支障をきたす、または困難になる |
(文献2)
乾癬性関節炎の症状には、個人差があります。そのため、適切な治療法も改善スピードも人それぞれです。
軽度であれば、適切な治療で日常生活に支障がない状態を維持できます。しかし重度の場合、関節破壊が進み、日常生活がままならない状態になる可能性があります。
また、乾癬性関節炎の発見が遅れるほど関節破壊が進行し、症状が重症化します。(文献2)
そのため、医師と相談しながら、自分に合った治療法を見つけることが大切です。
乾癬性関節炎の活動性を抑える治療法
治療法 | 作用 | 特徴 | 適用される症状 |
---|---|---|---|
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) | 炎症と違和感を軽減 | 症状の緩和を目的とし、症状の進行を抑える効果はない | 軽度 |
生物学的製剤(免疫抑制剤) | 免疫の過剰な働きを抑え、炎症をコントロールする | 関節破壊の進行を抑制する効果が期待できる | 中度〜重度 |
抗リウマチ薬(DMARDs) | 関節の炎症を抑え、進行を遅らせる | 関節破壊の進行を抑制し、長期的な効果が期待できる | 中度〜重度 |
ステロイド剤(短期間の使用) | 強い炎症を一時的に抑えるが、長期使用は副作用のリスクがある | 炎症が急激に悪化した際に短期間使用し、医師の指示に従うことが大前提 | 症状が急に悪化したとき |
生活習慣の改善(食事・運動) | 栄養バランスの取れた食事や適度な運動が、症状の悪化を防ぐのに役立つ | 肥満は関節への負担を増加させるため、体重管理も重要 | すべての症状 |
(文献2) 乾癬性関節炎は、皮膚症状と関節症状(違和感や腫れ、こわばり)の両方に対応し、症状を最小限に抑えることが目標です。
以下の治療法はすべて医師と相談した上で行うことが大前提です。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
乾癬性関節炎の初期治療では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が用いられます。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は関節の違和感や炎症を抑えますが、症状の進行を抑えるものではありません。
非ステロイド性抗炎症薬を3~6カ月間使用しても改善が見られない場合は、他の治療法を検討する必要があります。
生物学的製剤(免疫抑制剤)
生物学的製剤は、特定の炎症性物質(TNF-α、IL-17、IL-23など)の働きを阻害し、炎症を抑制します。生物学的製剤を使用するのは、既存の治療法での改善が難しい場合や、関節破壊のリスクが高いときです。(文献3)
関節症状の改善や関節破壊の進行抑制に効果があるとされているものの、使用は症状や患者の状態によって異なります。アレルギー反応などが見られた場合は、使用を中止し、医師へ相談しましょう。
抗リウマチ薬(DMARDs)
抗リウマチ薬(DMARDs)は、免疫システムの異常な働きを調整し、炎症を抑えることで、関節の腫れや違和感を軽減します。使用タイミングは中度〜重度のときに使用を検討します。
抗リウマチ薬(DMARDs)の中でも、とくにメトトレキサートは、乾癬性関節炎の治療で使用される代表的な治療薬です。
炎症や関節の違和感を抑えるのに役立つ反面、副作用として、吐き気、食欲不振、肝機能障害、骨髄抑制などが現れる可能性もあり、使用する際は定期的な血液検査や診察を受ける必要があります。
ステロイド剤(短期間の使用)
ステップ | 治療内容 | 薬剤例 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|
1.初期治療 | 違和感・炎症の緩和 | NSAIDs、ステロイド関節注射 | 症状に応じて | 必要に応じてステロイド注射を併用 |
2.DMARDs(非ステロイド性抗炎症薬)導入 | NSAIDsの効果不十分な場合 | メトトレキサート、サラゾスルファピリジンなど | 3~6カ月 | メトトレキサートが第一選択、副作用で使用不可の場合は代替薬 |
3.DMARDs(非ステロイド性抗炎症薬)強化/生物学的製剤・JAK阻害薬導入 | DMARDsの効果不十分な場合 | 追加のDMARDs、TNF阻害薬、JAK阻害薬など | 3~6カ月 | 重症度や関節外症状に応じて生物学的製剤・JAK阻害薬を検討 |
4.生物学的製剤・JAK阻害薬変更 | 効果不十分な場合 | 他の生物学的製剤 | 症状に応じて | 薬剤の切り替えを検討 |
(文献2)
ステロイド初期治療では症状に応じて使用されますが、改善が見込めない場合にステップを進めていきます。
ステロイド剤は即効性がある一方、長期使用で骨粗しょう症や糖尿病、感染症のリスクが高まるため、医師の指示に従い最小限の量での服用が大切です。
以下の記事では、ステロイド剤の効果について詳しく解説しています。
生活習慣の改善(食事・運動)
項目 | 内容 |
---|---|
積極的に摂るべき食品 | オメガ3脂肪酸(青魚、亜麻仁油、チアシード)抗酸化ビタミン(柑橘類、ピーマン、ナッツ、アボカド)食物繊維(野菜、海藻、全粒穀物) |
控えるべき食品 | 糖分・加工食品(清涼飲料水、お菓子、白米・白パン)トランス脂肪酸(ファストフード、スナック菓子)過剰なアルコール・カフェイン |
おすすめの運動 | ウォーキング(20~30分)水中運動(関節の負担軽減)ヨガ・ストレッチ(可動域維持) |
避けたほうが良い運動 | 高負荷筋トレーニング(スクワット・デッドリフト)過度なランニング |
乾癬性関節炎は、生活習慣の改善で完治するものではありませんが、見直すことで症状の悪化をある程度防げます。
食事に関しては、極端に偏らないようにし、体重管理を怠らないようにしましょう。また運動も適度に行うことで、ストレスの軽減や血行促進に役立ちます。
食事も運動も直接的な改善にはならないものの、肥満やメタボリックシンドロームの併発が多いため、日頃の暴飲暴食や運動不足には注意しましょう。(文献6)
以下では糖尿病やメタボリックシンドロームを予防する食事について詳しく紹介しています。
乾癬性関節炎は早めの受診で活動性を抑えよう
乾癬性関節炎は早めの受診で活動性を抑えることが大切です。根本的な治療法は現在の時点では見つかっていないものの、症状のコントロールやある程度の改善は望めます。
乾癬性関節炎の症状にお悩みの方は、無理をせずに当院「リペアセルクリニック」にご相談ください。再生医療を活用し、乾癬性関節炎の回復を促します。
治らない乾癬性関節炎に対しての不安や悩みは「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にお問い合わせください。
乾癬性関節炎を治したい方からよくある質問
乾癬性関節炎は難病指定されていますか?
2025年現在、乾癬性関節炎は難病指定されていません。乾癬性関節炎は難病指定の条件である患者数が少ないことに該当しないため、指定されていない可能性があります。(文献7)
しかし、今後も研究が進むにつれて、将来的に指定難病に認定される可能性はあるでしょう。
乾癬性関節炎における仕事を休むべき基準はありますか?
症状が軽度で、職場環境が整っていれば、働き続けることは可能です。リモートワークや負担軽減策を活用できる環境であれば、利用を検討しましょう。
症状が重度の場合は、休職を検討する必要があります。休職する際は以下の手当てが支給される可能性があります。
- 傷病手当金
- 障害者年金
- 高額療養費制度
- その他の支援制度
制度を利用するためには、それぞれ条件を満たす必要があります。申請方法や必要書類は、制度によって異なりますので、事前に以下の窓口で確認しましょう。
- 全国健康保険協会
- 日本年金機構
- お住まいの地域の自治体の窓口
- 医療機関の相談窓口
参考文献
一般社団法人 日本リウマチ学会「乾癬性関節炎(PsA)」一般社団法人 日本リウマチ学会 ホームページ, 2022年5月22日
https://www.ryumachi-jp.com/general/casebook/kansenseikansetsuen/(最終アクセス:2025年3月13日)
「乾癬性関節炎(psoriatic arthritis: PsA)」慶應義塾大学病院医療・健康情報サイトKOMPAS ,2024年7月9日
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000611.html(最終アクセス:2025年3月13日)
Kinanah Yaseen, &Cleveland Clinic(2024)Psoriatic Arthritis,MSD MANUAL professional Version
谷口 敦夫「乾癬性関節炎をよりよく理解いただくために」『アヴィ合同会社』 pp.1-12, 2023年
https://a-connect.abbvie.co.jp/health_care_workers_agreement.html?returnUrl=%2f-%2fmedia%2fassets%2fpdf%2fproducts%2fhumira%2fpatients_support%2fJP-HUMD-190144.pdf(最終アクセス:2025年3月13日)
朝比奈昭彦ほか.「日本皮膚科学会ガイドライン」『乾癬性関節炎診療ガイドライン 2019』 pp.1-59, 2019年
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/PsAgl2019.pdf(最終アクセス:2025年3月13日)
株式会社ケアネット「乾癬患者に推奨される食事への介入とは」CareNet,2018年7月11日
https://www.carenet.com/news/general/carenet/46344(最終アクセス:2025年3月13日)
厚生労働省「指定難病」2025年
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000084783.html(最終アクセス:2025年3月13日)
監修者

坂本 貞範 (医療法人美喜有会 理事長)
Sadanori Sakamoto
再生医療抗加齢学会 理事
再生医療の可能性に確信をもって治療をおこなう。
「できなくなったことを、再びできるように」を信条に
患者の笑顔を守り続ける。