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ロコモティブシンドロームの予防法を医師が解説|運動・体操・食事法を紹介

「最近になって足腰の衰えが気になる」「将来寝たきりになるのは避けたい」といった不安を抱えている方もいるでしょう。
ロコモティブシンドロームとは、運動器の障害によって移動機能が低下した状態のことです。ロコモティブシンドロームが進行すると、将来介護を必要とする可能性が高まるため、できるだけ早いうちから予防に努めることが大切です。
今回は、ロコモティブシンドロームの予防法を解説します。運動や体操、食事法など、日常生活で取り入れられる方法をまとめているので、ロコモティブシンドロームの予防に努めたい方は参考にしてください。
目次
ロコモ予防の基本は運動習慣とバランスの良い食事
ロコモティブシンドロームを予防するために重要なのは、運動習慣と栄養バランスの取れた食事です。とくに中高年以降は、加齢とともに筋力や骨密度が自然に低下していきます。この自然な衰えにブレーキをかけるためには、筋肉量や骨量の維持・増加が不可欠です。
運動であれば、筋力や柔軟性、バランス能力を保つトレーニングが効果的です。また、食生活においては、筋肉や骨を強くするための栄養素を摂取する必要があります。
年齢を理由にあきらめるのではなく、今からできることを少しずつ継続していくと、ロコモティブシンドロームの予防につながります。
ロコモティブシンドロームの原因と症状
ロコモティブシンドロームを引き起こす生活習慣や身体的な要因は、以下の通りです。
- 運動習慣のない生活
- 肥満や痩せすぎ
- 活動量の低下(エレベーターや自動車などの利用)
- 腰や膝などの痛みや痺れの放置
- 変形性膝関節症・変形性脊椎症・骨粗しょう症などの運動器疾患
- 過度なスポーツによる怪我や障害
「階段の昇り降りがしんどい」「家の中でもつまずくようになった」といった症状が見られる場合は、ロコモティブシンドロームが進行している可能性があります。
なお、ロコモティブシンドロームは、健康的な体づくりを心がければ、進行を止めたり症状を改善させたりすることも可能です。
ロコモティブシンドロームの予防|運動習慣
ロコモティブシンドロームの予防には、運動習慣が不可欠です。ロコモティブシンドロームの予防に効果的な運動として、主に以下の3つが挙げられます。
- ロコモーショントレーニング
- 腰痛に効く体操
- 膝痛に効く体操
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ロコモーショントレーニング
日本整形外科学会は、元気な足腰を維持するための方法として、「ロコモーショントレーニング(ロコトレ)」を提唱しています。ロコトレの内容は「片脚立ち」と「スクワット」の2つの運動です。
片脚立ち
片脚立ちは、バランス能力を鍛えるためのシンプルなトレーニング方法です。
- 姿勢をまっすぐにする
- 床につかない程度に片脚を上げる
左右の脚で1分間ずつを1セットとし、1日に3セットほど取り組みましょう。なお、片脚立ちをする際は、転倒防止のために必ずつかまるものがある場所でおこなってください。支えを必要とする方は、無理をせず、机に手や指を置いて取り組んでも構いません。
スクワット
スクワットは、下肢筋力を鍛えるためのトレーニングです。
- 脚を肩幅に広げて立つ
- お尻を後ろに引くように、2〜3秒かけてゆっくりと膝を曲げる
- ゆっくり元に戻る
5〜6回を1セットとして、1日3セットを目安におこないます。また、膝を曲げるときは、膝がつま先より前に出ないように意識してください。
なお、支えが必要な方は、椅子に腰かけ、机に手をついて立ち座りの動作を繰り返すだけでも効果的です。楽にスクワットできる方は、回数やセット数を増やして取り組みましょう。
腰痛に効く体操
ロコモティブシンドロームの予防には、腰痛に効く体操がおすすめです。ここでは、腰痛に効く体操として、「背筋体操」と「腹筋体操」の2つを紹介します。
背筋体操
背筋体操は、うつ伏せの体勢になり、以下のステップでおこないます。
- お腹の下に枕を置き、うつ伏せに寝る
- 背中の筋肉を使って上半身をゆっくりと10cmほど持ち上げる
- 5〜10秒間キープする
- 上半身をゆっくりと元の位置に戻す
10回を1セットとして、1日3セットを目安に取り組みましょう。上半身を持ち上げるときは、反動を使わず、背筋を意識しながらゆっくりと動かすことがポイントです。
背筋体操によって腰回りの筋肉が安定すると、上半身の動きがスムーズになります。なお、腰や背中に痛みや違和感を感じる場合は、無理をせず体操を中止してください。
腹筋体操
腹筋体操はお腹周りの筋肉を鍛えるための体操です。
- 膝を曲げて仰向けに寝る
- お腹の力を使い、背中を丸めるように頭と両肩をゆっくりと上げる
- 5〜10秒間キープする
- 頭と両肩をゆっくりと下ろす
10回を1セットとして、1日3セットを目安におこないます。腹筋が鍛えられると、体幹が安定しやすくなり、バランス感覚を維持できるようになります。
腹筋体操に限らず、トレーニングや体操時には自然な呼吸を意識するのがポイントです。毎日取り組むことでさらなる効果が期待できるものの、体に負担を感じるときは休みながら体操を続けるようにしてください。
膝痛に効く体操
膝痛に効く体操として、大腿四頭筋訓練があります。大腿四頭筋が鍛えられると、脚力の維持・向上が期待でき、膝痛の改善やロコモティブシンドロームの予防につながります。
大腿四頭筋訓練の方法は、以下の通りです。
- 仰向けに寝る
- 片脚を軽く曲げ、もう一方の脚は太ももに力を入れて伸ばす
- 力を入れたまま、10cmの高さまでかかとをゆっくり上げる
- 5〜10秒キープする
- かかとをゆっくりと下ろす
左右各10回を1セットとして、1日3セットを目安におこないましょう。脚を持ち上げるときは、反動を使わず、筋肉を使ってゆっくりと動かすことがポイントです。背中や腰への負担を減らせるよう、柔らかいマットや布団の上でおこなうようにしてください。
ロコモティブシンドロームの予防|バランスの良い食事
ロコモティブシンドロームの予防には、運動だけではなく、毎日の食事管理も重要です。丈夫な骨や十分な筋肉量を保つためにも、必要な栄養素を意識的に摂取しましょう。
骨を丈夫にする食事
骨を強くするためには、以下の栄養素をバランス良く摂取する必要があります。
栄養素 |
主な働き |
食材の例 |
---|---|---|
カルシウム |
骨をつくる |
牛乳、チーズ、小魚 |
たんぱく質 |
骨のコラーゲン基質を構成する |
肉、魚、卵、大豆製品 |
ビタミンD |
カルシウムの吸収を助ける |
魚類、きのこ |
ビタミンK |
カルシウムの骨への定着を助ける |
緑黄色野菜、納豆 |
食事を通してこれらの栄養素をバランス良く取り入れられると、骨密度の低下を防ぎ、骨折リスクを減らせます。
筋肉をつくる食事
筋肉量や質の維持は、ロコモティブシンドロームの予防に不可欠です。筋肉をつくるためにも、以下の栄養素を意識して摂取しましょう。
栄養素 |
主な働き |
食材の例 |
---|---|---|
たんぱく質 |
筋肉の材料をつくる |
肉、魚、卵、大豆製品 |
ビタミンD |
筋力の低下を防ぐ |
魚類、きのこ |
ビタミンB6 |
タンパク質の代謝をサポートする |
鶏肉、レバー、カツオ、マグロ |
炭水化物 |
筋肉を動かすエネルギー源になる |
米、パン、根菜類 |
脂質 |
筋肉を動かすエネルギー源になる |
油脂類、乳製品、肉、魚 |
筋肉は鍛えるだけでなく、栄養補給と回復のセットで維持・増強されます。ロコモティブシンドロームを予防するためにも、バランスの良い食事を意識しましょう。
ロコモティブシンドロームの予防|定期検診
定期検診もロコモティブシンドロームの予防に役立ちます。
ロコモティブシンドロームの進行を防ぐためには、早期発見と適切な対応がポイントです。以下のような定期検診を受けることで、移動機能が低下している前兆に気づきやすくなります。
- 骨密度測定(骨粗しょう症のリスクを早期に把握できる)
- 筋力測定(握力や下肢筋力といった筋力の低下を客観的に評価できる)
- 歩行機能テスト(歩行速度やバランス能力などを確認できる)
ロコモティブシンドロームの予防として、無理のない範囲で年に1〜2回の定期検診を受けておくことをおすすめします
ロコモティブシンドロームのチェック方法
自分の状態を知ることは、ロコモティブシンドロームを予防する第一歩です。セルフチェックをしたり、ロコモ度テストをおこなったりすると、ロコモティブシンドロームかどうかを確認できます。
なお、ロコモティブシンドロームは自覚症状がないまま進行してしまうケースも珍しくありません。以下で、それぞれのチェック方法を解説するので、ぜひ参考にしてください。
7つのセルフチェック項目
ロコモティブシンドロームのセルフチェック項目は、以下の7つです。
- 片脚立ちで靴下がはけない
- 家の中でつまずいたりすべったりする
- 階段を上がるのに手すりが必要である
- 家のやや重い仕事が困難である(掃除機の使用・布団の上げ下ろしなど)
- 2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である
- 15分くらい続けて歩けない
- 横断歩道を青信号で渡りきれない
日常動作における困難さを確認し、1つでも該当する項目があれば、ロコモティブシンドロームが疑われます。
ロコモ度テスト
ロコモティブシンドロームが疑われる場合は、ロコモ度テストの実施がおすすめです。ロコモ度テストは以下の3つで構成されており、移動機能の低下がどの程度進行しているかを確認できます。
- 立ち上がりテスト
- 2ステップテスト
- ロコモ25
ロコモ度テストは、医療機関や自治体の健康診断などでも実施されています。ロコモティブシンドロームに該当するかどうか気になる方は、専門家の指導のもとでテストを受けてみると良いでしょう。
ロコモティブシンドロームの改善方法
運動器の痛みや衰えなど、ロコモティブシンドロームの要因はさまざまです。複数の要因がつながったり重なったりするとロコモティブシンドロームになり、症状が進行すると普段の生活に支障をきたします。
ロコモティブシンドロームの予防・改善方法は、運動や食事以外にも、投薬や手術などがあります。諸要因に対する主な改善方法は、以下の通りです。
痛み・痺れ |
運動・投薬・手術 |
---|---|
関節可動域制限 |
運動・手術 |
柔軟性低下 |
運動 |
姿勢変化 |
運動・手術 |
筋力低下・麻痺 |
運動・栄養・手術 |
バランス能力低下 |
運動 |
なお、リペアセルクリニックでは、ロコモティブシンドロームの原因となる運動器疾患に対する再生医療をおこなっています。メール相談やオンラインカウンセリングも実施しているので、ぜひ気軽にご相談ください。
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運動習慣とバランスの良い食事でロコモの予防に努めよう
ロコモティブシンドロームは予防できます。ロコモティブシンドロームは運動器の疾患や衰えだけではなく、運動不足や栄養の偏りといった生活習慣による影響が大きく、健康な体づくりが予防につながります。
無理のない範囲で日頃からロコモーショントレーニングや簡単な体操を取り入れると、筋力や柔軟性が高まり、移動機能の低下を防げます。また、筋肉量や骨量を維持するためには、バランスの良い食事も不可欠です。
ロコモティブシンドロームの予防で大切なのは、無理せずできることから取り組むことです。将来介護が必要になるリスクを少しでも減らせるよう、適度な運動習慣とバランスの良い食事を心がけましょう。

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