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低カリウム血症は治るの?治療法や早く治すコツを現役医師が解説

「低カリウム血症って本当に治るの?」
「入院が必要なほど重い病気なのか知りたい」
血液検査の結果をきっかけにカリウム不足と言われ、不安になる方も多くいます。
結論から言えば、低カリウム血症の多くは、原因を見極めて適切な治療を受ければ回復が見込める病気です。
とはいえ、放置すると重症化し、入院や深刻な合併症につながるリスクもあります。本記事では、低カリウム血症はどのような病気で、どのように治療すれば治るのかについて解説します。
初期症状や原因、入院の基準や入院期間の目安を紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
【結論】低カリウム血症の完治は可能
低カリウム血症は早期発見と早期治療により治る疾患です。
また、カリウムは嘔吐・下痢によっても体外に流れ出てしまいます。そのため、体調不良で嘔吐・下痢が続き一時的なカリウム不足の状態であれば、早期治療で回復が見込めます。
なお、低カリウム血症と似ている症状でギランバレー症候群があります。ギランバレー症候群の詳しい症状や原因については以下の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。
低カリウム血症を早く治すためのポイント
低カリウム血症の早期回復には、以下2つの要素を取り入れることで効果的な治療が可能です。
- 初期症状の段階から治療を始める
- 原因を特定する
低カリウム血症を早く治すためのポイントを見ていきましょう。
初期症状の段階から治療を始める
初期症状での治療開始が、低カリウム血症の早期回復につながります。
初期症状にも含まれる低カリウム血症の主な症状は以下のとおりです。
- 筋肉痛
- 手足のだるさ
- 筋肉のこわばり
- 手足の力が抜ける感じ
- 心臓のリズムが乱れる(不整脈)
参考:重篤副作用疾患別対応マニュアル低カリウム血症|厚生労働省
初期症状を見逃してしまうと、呼吸不全や筋肉の麻痺などの重篤な合併症につながるリスクもありますので、早めに医療機関を受診しましょう。
原因を特定する
症状の原因を特定すると、早い段階で適切な処置をおこなえるため低カリウム血症を早く治せます。
原因を特定せずに自己判断で間違ったケアを進めてしまうと、症状をさらに悪化させてしまうケースもあります。
低カリウム血症を発症する主な原因は以下のとおりです。
- 下痢や嘔吐
- 薬の副作用
- 食事の偏りや絶食ダイエット
- 加齢
- 副腎疾患
自身の症状にあてはまる原因がないか特定していきましょう。
下痢や嘔吐
下痢や嘔吐で消化管から急激なカリウムが喪失します。
胃腸炎による下痢では、体内水分や電解質(カリウム)が失われるためです。
下痢や嘔吐による低カリウム血症は、水分とカリウムの同時補給で改善できます。また、経口補水液の使用により、入院せずに外来治療で回復も可能です。
とはいえ、症状が続く場合は早めに受診して、適切な補液治療を受けましょう。
薬の副作用
利尿薬やステロイド薬が腎臓からのカリウム排泄を増加させます。
利尿薬では服用開始から数週間で血清カリウム値が低下する場合もあります。しかし、薬剤による低カリウム血症は、薬の調整により速やかに改善可能です。
自己判断で薬を中止せず、医師と相談して薬の変更や減量をおこなうことで、副作用を回避できます。
食事の偏りや絶食ダイエット
極端な食事制限によりカリウム摂取量が不足し、体内貯蔵量が枯渇します。
1日のカリウム摂取量は成人男性では2,500mg、成人女性で2,000mgが必要とされています。(文献1)
栄養を意識した正しい食生活により、低カリウム血症は改善可能です。野菜や果物を意識的に摂取しバランスの良い食事を心がけて、健康的なダイエットをおこないましょう。
加齢
加齢により腎機能が低下し、カリウムの調節能力が弱くなります。65歳以上では腎機能が低下するとされています。(文献2)
定期的な血液検査により、早期発見と予防的治療が可能です。年齢に応じた健康管理を続けて、元気な毎日を過ごしていきましょう。
【関連記事】
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高齢者が低カリウム血症を発症する原因は?症状や治療法を医師が解説
副腎疾患
副腎からのホルモン分泌異常がカリウムバランスを崩します。
クッシング症候群などの疾患では、アルドステロンが増えることで腎臓に働きかけ、カリウムを体の外に出してしまいます。
このような場合でも、薬によって血圧やカリウムの値を整えることが可能です。
専門の医師と連携しながら治療を進めれば、改善が期待できるでしょう。
低カリウム血症の代表的な治療法
低カリウム血症の治療法は、発症原因や症状の程度に応じて異なります。
代表的な治療法は以下のとおりです。
- カリウム量が多い食事を摂る
- サプリメントや内服薬を飲む
- 点滴を打つ
- 重症度や原因疾患の種類によっては入院治療する
自身の体の状態に適した治療法を医師と相談して決めていきましょう。
カリウム量が多い食事を摂る
カリウム豊富な食事により、軽度の低カリウム血症は自然に改善されます。
以下は、カリウムが豊富に含まれる食材の一例です。
食品名(100g当) |
カリウム量(単位:mg) |
---|---|
アボカド |
590 |
バナナ |
360 |
納豆 |
690 |
木綿豆腐 |
110 |
刻み昆布 |
8,200 |
参考:食品成分データベース|文部科学省
カリウムの多い食品としては野菜や果物、大豆や海藻類などがあります。意識してカリウム量が高い食事を摂取すれば、低カリウム血症の症状改善が期待できるでしょう。
サプリメントや内服薬を飲む
中等度の低カリウム血症に対しては、医師の指導のもとで薬物療法が効果的です。
たとえば、内服薬には塩化カリウムを含む飲み薬や、カリウムの排出を抑えるカリウム保持性利尿薬などが使われます。
また、ドラッグストアで購入できるサプリメントで補う方法もあります。服用を始める前に、必ず医師や薬剤師に相談し、使用量や飲み方を守りましょう。
注射を打つ
注射は、カリウム製剤を直接血管へ入れる方法です。注射は、体内への吸収が早い特長があり、不足している量に応じて細かく調整できるため、効率的にカリウムを補給できます。
特に、血中のカリウム濃度が2.5mEq/L未満の場合、命に関わる危険な状態です。この際、緊急処置として注射を打つ治療が進められます。
重症度や原因疾患の種類によっては入院治療する
カリウム値が大幅に低下したり、症状が悪化したりした場合は、入院する可能性があります。
以下は、国立がん研究センターの日本臨床腫瘍研究グループが公表している、低カリウムの重症度(グレード)を示した定義表の一部です。
Grade |
血清カリウム値 |
症状 |
治療 |
---|---|---|---|
1 |
3.0mEq/L以上 |
なし |
なし |
2 |
3.0mEq/L以上 |
ある |
必要 |
3 |
3.0~2.5mEq/L |
ある |
入院を要する |
4 |
2.5mEq/L以下 |
ある |
生命を脅かす |
出典:JCOG共用基準範囲」に基づくGrade 定義|日本臨床腫瘍研究グループ
カリウム値が3.0-2.5mEq/Lの場合を「入院を要する」と定義しています。入院により根本原因の精密検査と専門的治療も同時に実施できます。
低カリウム血症の初期症状を見逃さず早期受診を心がけよう
低カリウム血症は筋力の低下やだるさなど、一見よくある症状から始まるケースが多い病気です。しかし、初期サインを見逃さずに早めに対処すれば、外来治療のみでの改善も期待できます。
症状が続いたり、なんとなく体調がすぐれなかったりする場合は、自己判断せず医療機関に相談しましょう。
また、高齢の方や生活習慣の乱れがある方は、低カリウム血症以外に糖尿病や肝臓疾患といった他の病気のリスクも高まります。
これらの疾患の治療の選択肢として、再生医療があります。
再生医療を提供する当院では、メール相談、オンラインカウンセリングを承っておりますので、ぜひご活用ください。
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低カリウム血症は治るのか?に関するよくある質問
低カリウム血症を治すためにおすすめの食事を教えてください
カリウムは、野菜や果物、豆類に多く含まれます。
以下の表は、カリウムが多く含まれる食品の一部を紹介したものです。
食品名(100g当) |
カリウム量(単位:mg) |
---|---|
刻み昆布 |
8,200 |
ほうれん草 |
690 |
納豆 |
690 |
バナナ |
360 |
木綿豆腐 |
110 |
参考:食品成分データベース|文部科学省
カリウムを豊富に含む食品の中でも、特に含有量が多いのが刻み昆布です。「すき昆布」の煮物を食べると、効率良くカリウムを摂取できます。
また、ほうれん草の副菜を食事に取り入れたり、デザートとしてバナナを選んだりするのもカリウム補給におすすめです。
低カリウム血症の治療で入院になった場合の期間と費用の目安を教えてください
入院の期間は症状の重さによって異なりますが、軽い場合は数日から1週間ほどで退院できた例もあります。
低カリウム血症に特化した入院費用の目安は公表されていないため、詳しく知りたい方は直接医療機関に問い合わせてみてください。
なお、公益財団法人生命保険文化センターの調査によれば、入院1日あたりの平均費用は約20,700円とされています。(文献3)
参考文献
(文献1)厚生労働省「日本人の食事摂取基準」,2020年
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
(最終アクセス2025年6月16日)
(文献2)
日本老年医学会雑誌「高齢者の慢性腎臓病(CKD)」,2014年
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/review_51_5_385.pdf
(最終アクセス2025年6月16日)
(文献3)
公益財団法人生命保険文化センター「生活保障に関する調査/直近の入院時の1日あたりの自己負担費用」
https://www.jili.or.jp/research/chousa/8946.html
(最終アクセス2025年6月16日)