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【医師監修】動脈硬化と糖尿病の関係性は?進行メカニズムと予防・治療法を解説

動脈硬化糖尿病
公開日: 2026.06.30

糖尿病患者における心筋梗塞や脳梗塞などの発症頻度は、非糖尿病者の2〜3倍にも上ると報告されています。動脈硬化は自覚症状がないまま進行し、放置すると命に関わる重大な合併症につながる危険性があるため注意が必要です。

本記事では、動脈硬化と糖尿病の関係性について解説します。血管が傷つくメカニズムや今日から実践できる予防・治療法もまとめているので、ぜひ参考にしてください。

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動脈硬化と糖尿病の関係性

動脈硬化と糖尿病は非常に密接な関係にあります。糖尿病による高血糖状態の長期化や代謝の異常は、知らず知らずのうちに全身の血管へ大きなダメージを与え、動脈硬化の進行を加速させてしまうため注意が必要です。

動脈硬化とは|血管が硬くなる仕組み

動脈硬化とは、弾力性を持っていた動脈の壁が厚く硬くなり、本来のしなやかさを失った状態を指します。血管が硬く狭くなる理由は、血管の最も内側にある内皮細胞が傷つき、そこにコレステロールなどが入り込んで「プラーク」と呼ばれるドロドロとした塊を形成するためです。

プラークが蓄積すると血管の通り道(内腔)が狭くなり血流が悪化します。さらにプラークが破れて血栓ができると、血管が完全に塞がって心筋梗塞や脳梗塞を引き起こしかねません。動脈硬化は単に血管が硬くなるだけでなく、放置すれば命に関わる重大な疾患の引き金となる危険な状態だといえます。

糖尿病が動脈硬化を進行させるメカニズム

糖尿病の場合になぜ動脈硬化が進みやすいのか、その理由は、血管の内側にある内皮細胞が傷つくことで、慢性的な炎症や酸化ストレスを引き起こすためです。具体的には、以下のメカニズムが絡み合って血管に深刻なダメージを与えます。

高血糖による血管内皮細胞の損傷

高血糖状態が続くと、血管の最も内側にある内皮細胞への糖の取り込みが過剰になり、細胞の機能が障害される

インスリン抵抗性による影響

インスリンの効きが悪くなると、血管を広げる役割を持つ一酸化窒素の産生が低下し、血管を保護する機能が失われて傷つきやすくなる

終末糖化産物(AGEs)の蓄積と酸化ストレス

体内のタンパク質や脂質が過剰な糖と結合することで、終末糖化産物(AGEs)と呼ばれる老化物質が生成される

血糖変動(血糖スパイク)が血管を傷つける影響

1日における大きな血糖値の変動が酸化ストレスを増大させ、血管内皮の機能を低下させる

このように糖尿病は複数の要因を通じて動脈硬化を進行させます。単に空腹時の血糖値を下げるだけでなく、食後高血糖を含めた血糖スパイクを抑えたり、インスリン抵抗性を改善したりするなど、合併症を防ぐためには包括的なアプローチが不可欠です。

動脈硬化と糖尿病によって引き起こされる主な合併症

糖尿病患者は動脈硬化の発症リスクが高いため、太い血管が障害される「大血管症」に注意が必要です。ここでは、動脈硬化と糖尿病によって引き起こされる主な合併症について詳しく見ていきましょう。

虚血性心疾患

糖尿病で警戒すべき大血管症が、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患です。

虚血性心疾患は冠動脈の動脈硬化で発症しますが、糖尿病患者は発作の痛みに気づきにくい特徴があります。

神経障害の合併により、本来なら強烈な痛みを伴う心筋梗塞でも、痛みを感じない「無痛性心筋梗塞」を引き起こすリスクが高い傾向にあります。痛みのサインがないまま重症化し、突然命に関わる危険があるため、自覚症状がなくても定期的な検査が不可欠です。

脳血管障害

心疾患と並んで警戒すべき大血管症が、脳梗塞をはじめとする脳血管障害です。

高血糖やインスリン抵抗性により、首や脳の血管で動脈硬化が急速に進行する場合があります。具体的には、頸動脈に溜まったプラークが破れてできた血栓が脳の太い血管を塞ぐ「アテローム血栓性脳梗塞」のリスクが高まります。また、糖尿病患者は重症化や再発につながりやすい点も注意が必要です。

命に関わるだけでなく、深刻な後遺症が出る危険性もあるため、自覚症状がなくても定期的に血管の状態を確認する必要があります。

末梢動脈疾患

足の血管が狭窄・閉塞する末梢動脈疾患(PAD)も、糖尿病によって引き起こされる大血管症の一つです。動脈硬化の進行により、下肢への血流が著しく悪化するためです。

初期には歩行時にふくらはぎが痛み、休むと治まる間欠性跛行が現れます。さらに重症化すると、足の組織が壊死する「壊疽(えそ)」に至る危険性もあります。最悪の場合は下肢の切断が必要になるケースもあるため、足の冷えや歩行時の違和感を見逃さず、早めに受診する必要があります。

糖尿病による動脈硬化を予防・改善する治療法

動脈硬化の悪化を防ぐためには、血糖値だけではなく、血圧や脂質、体重などを包括的に管理するアクションプランが必要です。以下で、具体的な治療法を解説するので、ぜひ参考にしてください。

薬物療法

糖尿病治療における薬物療法は、単に血糖値を下げることだけが目的ではありません。心臓や腎臓などの重要な臓器を直接保護し、動脈硬化の悪化を防ぐ薬剤の使用が強く推奨されています。

動脈硬化の予防につながる代表的な治療薬は以下のとおりです。

薬剤の種類

期待される主な効果・特徴

SGLT2阻害薬/GLP-1受容体作動薬

血糖を改善するだけでなく、心筋梗塞や脳卒中の抑制や腎保護効果が証明されている

スタチン(脂質管理薬)

悪玉であるLDLコレステロールを強力に低下させ、動脈硬化の一次予防・二次予防に貢献する

降圧薬

血圧を適切にコントロールして血管への負担を減らし、脳卒中などの発症リスクを低下させる

糖尿病による動脈硬化を防ぐためには、血糖・血圧・脂質を総合的に管理し、将来の心血管疾患の発症リスクを抑える多角的な薬物療法が重要です。

食事療法

糖尿病による動脈硬化の進行を防ぐためには、日本動脈硬化学会が推奨する「The Japan Diet(ザ・ジャパン・ダイエット)」を取り入れた食事療法をおすすめします。動脈硬化の原因となる悪玉コレステロールや中性脂肪を増やす食品を制限し、血管を健康に保つ栄養素を豊富に含む食品を積極的に摂る方法です。

積極的に摂るべき食品と控えるべき食品は以下のとおりです(文献1)。

積極的に摂るべき食品の例

摂取を控えるべき食品の例

  • 魚(とくに青背魚)
  • 大豆・大豆製品(納豆や豆腐など)
  • 緑黄色野菜
  • 海藻
  • きのこ
  • こんにゃく
  • 未精製穀類(玄米や麦飯、そばなど)
  • 肉の脂身(霜降り肉やひき肉など)
  • 動物脂(バターやラードなど)
  • 砂糖や果糖を含む加工食品やお菓子
  • アルコール飲料

また、終末糖化産物(AGEs)の蓄積を防ぐためには、高温で焼く・揚げるのを極力避け、蒸す・煮る・茹でるといった調理法を選びましょう。栄養素が豊富な食品を選び、調理法を工夫することが血管への負担を減らし、動脈硬化の進行を防ぐためのポイントになります。

運動療法(適正な体重管理)

糖尿病による動脈硬化の進行を防ぐためには、運動療法の習慣化が欠かせません。運動によってコレステロールや中性脂肪のバランスが整うと、血管にダメージを与えるインスリン抵抗性の改善につながるからです。

動脈硬化予防に役立つ運動療法のポイントは、以下のとおりです。

運動の種類

有酸素運動(ウォーキング、速歩、水泳、サイクリングなど)

運動の強度

中強度以上(少し息が上がる、ややきついと感じる程度)

頻度と時間

1回につき20〜60分をできれば毎日(少なくとも週3日以上)、あるいは週に合計150分以上

日常の工夫

こまめに動き、できるだけ座ったままの生活を避ける

なお、過体重と指摘されている場合は、現在の体重から5〜10%の減量を目標にすると代謝リスクの改善につながります。動脈硬化の予防には、日々の生活に運動を取り入れ、適正体重を目指して減量していくことが重要です。

再生医療

近年、動脈硬化や糖尿病の進行を防ぐ新たな治療の選択肢として再生医療による「幹細胞治療」が注目されています。

再生医療は、ご自身の細胞や血液を用いて損傷した組織の再生・修復を促し、機能改善や免疫系の正常化を図る治療法です。幹細胞治療では、採取した幹細胞を培養して数を増やしたあとに、点滴や注射によって体内に戻す治療を行います。

当院でも幹細胞治療によって閉塞性動脈硬化症・糖尿病性神経障害の症状が改善した症例があるので、ぜひ参考にしてください。

糖尿病による動脈硬化の進行を評価するための検査法

糖尿病による動脈硬化の進行を防ぐためには、自覚症状が現れる前から定期的な検査を受け、血管の状態を早期に評価・把握することが大切です。

動脈硬化は初期には痛みを伴わず静かに進行するため注意が必要です。自覚症状がなくても以下の方法で客観的に血管の状態をチェックすると、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を未然に防げます。

検査法

特徴

頸動脈エコー検査

  • 頸動脈に超音波を当てる安全で痛みのない検査
  • 血管壁の厚さ(IMT)やプラーク(コレステロールなどの塊)の有無、血管の狭窄度を直接観察し、全身の動脈硬化の進行度を推測

ABI検査(血圧脈波検査)

  • 自覚症状のない糖尿病の患者様にも推奨される検査
  • 腕と足首の血圧を同時に測定・比較し、足の血管の詰まり具合(末梢動脈疾患)や血管の硬さを評価

血液検査

血糖の状態を確認するだけでなく、動脈硬化を促進するLDLコレステロールや中性脂肪、腎機能(eGFR)などを測定し、全身の包括的なリスクを評価

エコーや脈波による検査と、血液によるリスク要因の評価を定期的に組み合わせることが、合併症を防ぐための第一歩になります。

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糖尿病による動脈硬化の進行が不安な方は早めに医療機関へ相談しよう

糖尿病と動脈硬化は密接に関わっており、放置すれば心筋梗塞や脳梗塞などの重大な合併症につながる危険な状態です。動脈硬化は自覚症状がないまま進行するため、健診で血糖値や血圧、脂質などの異常を指摘された際は、早めに医療機関へ相談する必要があります。

専門医のもとで頸動脈エコーやABI検査を受ければ、現在の血管の状態を正しく評価できます。状態に合わせて薬物療法を行なったり生活習慣を改善したりして糖尿病による動脈硬化の進行リスクを減らしましょう。

動脈硬化と糖尿病に関するよくある質問

糖尿病予備軍でも動脈硬化のリスクはありますか?

糖尿病予備軍でも動脈硬化のリスクはあります。糖尿病と診断される前の「耐糖能異常(糖尿病予備軍)」の段階から、すでに動脈硬化の発症リスクは上昇し始めていることが分かっています。糖尿病予備軍の場合、早期からの生活習慣改善が重要です。

喫煙は動脈硬化や糖尿病にどのような影響を与えますか?

喫煙は動脈硬化の最大の危険因子の一つです。血管内皮細胞を傷つけ、プラークの発生を強力に促進するため、動脈硬化性疾患の一次予防・二次予防ともに禁煙が強く推奨されます。

動脈硬化の進行に気づく自覚症状はありますか?

動脈硬化は初期には自覚症状がほとんどありません。胸痛や足の激しい痛みなどの症状が現れたときには、すでに血管が著しく狭窄し、重症化しているケースがほとんどです。そのため、動脈硬化の進行リスクを減らすためには、自覚症状の有無にかかわらず定期的な健診と検査を受けることが重要です。

参考文献

(文献1)

動脈硬化を知る×動脈硬化を予防する食事|一般社団法人日本動脈硬化学会