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【医師監修】慢性腰痛とは?原因・放置のリスク・治療法などを分かりやすく解説

慢性腰痛
公開日: 2025.12.13

「3カ月以上腰痛が続いている」

「整形外科を受診したけれど異常なしと診断された」

「このまま治らないのではと不安である」

このようなお悩みを抱えている方も多いことでしょう。

慢性腰痛とは、発症から3カ月以上続く腰痛を指します。原因は整形外科疾患だけではなく、内科疾患や心因性のものも含まれます。そのため受診先医療機関も患者様ごとに異なるのです。

本記事では、慢性腰痛の概要を中心に、原因や放置のリスク、セルフケア、治療法などを解説します。慢性腰痛でお悩みの方のヒントになりますので、ぜひ最後までご覧ください。

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慢性腰痛とは

慢性腰痛とは、発症から3カ月以上経過した腰痛を指します。慢性腰痛の経過は、急性腰痛(発症からの期間が4週間未満)よりも良くない状況です。(文献1)

腰痛患者は非常に多く、2022年(令和4年)の国民生活基礎調査によると、腰痛の有病率は人口千人あたり、男性91.6で女性が111.9でした。男女とも腰痛の有訴者率が第1位です。(文献2)

腰痛の原因は、主に以下のとおりです。

  • 脊椎由来
  • 脊椎周辺の運動器由来
  • 神経由来
  • 内臓由来
  • 血管由来
  • 心因性

腰痛は、原因がはっきりしている「特異的腰痛」と原因不明の「非特異的腰痛」に分けられます。腰痛のうち85%は非特異的腰痛と言われています。(文献3)

慢性腰痛の主な原因

慢性腰痛の原因疾患としてあげられるものは、主に以下のとおりです。

これらの疾患に加えて、良くない姿勢や運動不足、肥満、ストレスなども慢性腰痛の原因に含まれます。

慢性腰痛が続く理由

腰痛が慢性化する理由は、筋肉や神経、脳などさまざまです。

痛みへの不安から長期間安静にしていると、筋肉が硬くなり、かえって痛みが増すことも少なくありません。また、末梢神経から痛みの信号を受ける中枢神経が常に興奮状態にあると、痛みの信号を脳に伝え続けてしまいます。

慢性腰痛が続く理由については、下記の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

慢性腰痛を放置するリスク

慢性腰痛を放置すると、複数のリスクが生じます。

主なリスクは以下のとおりです。

  • 回復に時間がかかる
  • 痛みを避けるため腰以外の部分に負担がかかり、新たな痛みが生じる
  • 重大な病気(とくに内臓疾患)の発見が遅れる可能性がある
  • 適切な治療の機会を失い、痛みが継続・悪化する可能性がある

慢性腰痛を放置するリスクは身体面だけではありません。慢性腰痛自体が、仕事に深刻な影響を与えるものであり、放置すれば労働能力の低下や失業につながるリスクがあります。(文献4)

腰痛を放置するリスクについては、下記の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

関連記事:腰痛の放置は危険?病院へ行くタイミングや症状チェックリストを紹介

【自宅でできる】慢性腰痛の対策

自宅で出来る慢性腰痛の対策としてあげられるものは、主に以下のとおりです。

  • 正しい姿勢を意識する
  • 適度な運動を行う
  • ストレスをためない生活習慣を心がける

正しい姿勢を意識する

椅子に座るときや物を持ち上げるとき、寝た姿勢から起き上がるときなど、身体を動かすときはそれぞれの正しい姿勢があります。正しい姿勢を常に意識して身体を動かすことが必要です。

椅子に座るときの正しい姿勢は、主に以下のとおりです。

  • いすに深く腰掛けて背筋を伸ばす
  • 足裏全体が床に届くように椅子の高さを調整する
  • 前傾姿勢を避ける

物を持ち上げる場合は、腰を下ろして前かがみの姿勢になり、重心を低くしましょう。前かがみになるときは、腹筋に力を入れてください。その上で、荷物をできるだけ体の近くに引き寄せてから持ち上げましょう。

寝た姿勢から起き上がるときは、一度体を横に向けた後、肘をついてからゆっくり起き上がります。

適度な運動を行う

適度な運動の例としては、ストレッチや体幹トレーニング、全身運動などがあげられます。

ストレッチおよび体幹トレーニングの例を、以下に示しました。

  • お尻の上げ下げ
  • 軽い腹筋運動
  • 両足の曲げ伸ばし
  • 四つ這いになり片足をお尻の高さまで上げる(両足とも実施)
  • 立った姿勢での前後屈
  • 立った姿勢で上半身を左右に倒す

全身運動としての代表的なものは、1日15〜20分程度のウォーキングです。

いずれの運動も、週3〜4日程度のペースで続けることが理想的です。ただし、痛みがあるときには休みましょう。

以下の記事でも慢性腰痛向けのストレッチを紹介していますので、あわせてご覧ください。

ストレスをためない生活習慣を心がける

ストレスは脳機能の不具合を引き起こすほか、身体症状を引き起こす場合があります。その中の1つが腰痛です。

また、ストレスにさらされ続けると、脳内で痛みを抑制する機能が働きにくくなります。そのため、わずかな痛みでも強く感じたり、痛みが長引いたりします。

ストレスと腰痛に関連する重要な概念が、恐怖回避思考です。(文献5)これは、「また腰痛になるのでは」といった不安や恐怖から過度に腰をかばってしまう思考および行動を指します。

不安や恐怖を含めたストレス解消のためには、十分な睡眠や適度な運動を心がけましょう。家族や親しい友人に悩みごとを打ち明けることも、ストレス解消の一環です。ただし、飲酒や喫煙でのストレス解消は好ましくないため控えましょう。

慢性腰痛で受診すべき診療科

慢性腰痛の原因は多岐に渡るため、受診すべき診療科もさまざまです。この章では、腰痛の状況に合わせた診療科を表形式で紹介します。

診療科 主な診察内容
整形外科

骨や神経、筋肉のトラブルの有無を診察できる。

動かすと腰が痛む、腰や足がしびれる、関節や筋肉に不安がある場合の受診先。

内科

内臓疾患に関する検査や診察ができる。

腰痛のほか、腹痛や発熱、倦怠感などの症状がある場合の受診先。

婦人科(女性限定)

子宮や卵巣、ホルモンバランスの検査および婦人科系疾患の有無を診察できる。

月経が不順である、月経が止まった、腰痛に加えて下腹部痛もあるといった場合の受診先。

心療内科・精神科

精神心理面の検査や診察、カウンセリングなどを行う。

原因が不明の慢性腰痛がある、強いストレスがあるといった場合の受診先。

ペインクリニック

痛みの診断と治療を行う診療科。

薬物療法やブロック注射、低侵襲手術療法などを行う。

既に受診中の医療機関がある場合は、そこからの紹介状を受け取って受診しよう。

下記の記事では、更年期と腰痛の関係について解説しています。あわせてご覧ください。

慢性腰痛の治療法

慢性腰痛の治療法としては、以下のようなものがあげられます。

  • 薬物療法
  • 運動療法
  • 心理療法
  • 手術療法
  • 再生医療

薬物療法

慢性腰痛治療に推奨される薬物のうち、主な3つを表に示しました。

薬剤名 効果
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬

脳内の神経伝達物質であるセロトニンとノルアドレナリンの濃度を高める働きがある。

痛みを抑制する経路「下行性疼痛抑制系」を活発にして痛みを抑える。

弱オピオイド

オピオイドとは麻薬性の鎮痛薬。

弱オピオイドは、軽度から中等度の痛みに用いられるもので、鎮痛作用に有効限界がある

(有効限界:一定量を超えると、それ以上量を増やしても痛みが軽減されないこと)

非ステロイド性抗炎症薬

体内で炎症を引き起こす物質(プロスタグランジン)の生成を抑え、炎症や痛みを抑える薬。

熱を下げる作用もある。

慢性腰痛に使われる薬については、下記の記事でも解説しています。あわせてご覧ください。

運動療法

慢性腰痛の場合、運動療法が強く推奨されています。(文献1)

運動療法の効果としては、以下のようなものがあげられます。

  • 腰痛軽減
  • 筋力向上
  • 持久力向上
  • 運動機能改善
  • 健康状態改善
  • 生活の質向上

ただし、運動内容や基礎疾患の有無によっては腰痛が悪化する可能性もあるため、運動を始める際には主治医に相談しましょう。

心理療法

慢性腰痛の心理療法として代表的なものが、認知行動療法です。認知行動療法は、他の慢性腰痛治療と同様に、運動機能改善や生活の質向上、恐怖回避思考の変容などに効果があります。(文献1)

認知行動療法の具体的な方法としては、行動活性化や認知再構成などがあります。

行動活性化とは、生活リズムの改善や、喜びおよび楽しみを感じられる行動の選択などです。認知再構成とは、つらい感情が沸いたときの思考パターン(自動思考)を見つけて、考え方を見直すことを指します。

認知行動療法は、精神科や心療内科といった医療機関や民間のカウンセリングルームなどで受けられます。

手術療法

神経の圧迫による慢性腰痛に関しては、手術療法は有効な治療法になります。

手術の対象疾患は、主に以下のとおりです。

  • 腰部脊柱管狭窄症
  • 椎間板ヘルニア
  • 変形性腰椎症

主な手術方法は、以下のとおりです。

  • リゾトミー(高周波熱凝固法)
  • 脊椎固定術
  • 全内視鏡下脊椎手術

慢性腰痛の手術療法については、下記の2記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

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関連記事

慢性腰痛には手術が有効?治療法ごとの費用・期間・リスクも紹介

リゾトミー(Rhizotomy)とは?慢性腰痛に効果的な手術方法を詳しく解説

再生医療

腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアなどによる慢性腰痛の場合、再生医療も選択肢となります。

再生医療の1つが、さまざまな細胞に変化する能力を持つ幹細胞を用いた治療です。

幹細胞治療は、患者様の腹部の脂肪から幹細胞を採取し体外で培養してから体内に戻すもので、拒絶反応やアレルギー反応が起こりにくい治療法です。

1年前から腰部脊柱管狭窄症に悩む60代の女性が、再生医療を実施して症状が改善した治療実績もございます。詳しくは以下の記事をご覧ください。

手術しなくても治療できる時代です。

腰の痛みは手術しなくても治療できる時代です。

慢性腰痛は放置せず医療機関を受診しよう

慢性腰痛は、脊椎や周辺の運動器疾患、神経疾患、婦人科疾患、内臓疾患由来によるものや、心因性のものなどさまざまです。

放置すると、痛みの継続・悪化に加えて、腰痛に隠された疾患を見逃すリスクがあります。

自宅でできるセルフケアを実施しつつ、自分の痛みに合った診療科を受診し、適切な治療を受けましょう。薬物療法や運動療法、心理療法、手術療法のほか、再生医療も慢性腰痛治療の選択肢です。

慢性腰痛でお悩みの方は、リペアセルクリニックまでお気軽にお問い合わせください。メール相談オンラインカウンセリングも行っております。

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慢性腰痛に関するよくある質問

慢性腰痛とヘルニアの違いは何ですか?

慢性腰痛は3カ月以上継続する腰痛の総称です。ヘルニアとは、臓器や組織がなんらかの原因で弱くなり本来の位置から脱出した状態を指します。

慢性腰痛と関係するのは、腰椎椎間板ヘルニアです。腰椎椎間板ヘルニアとは、腰椎(背骨)にある椎間板と呼ばれる組織が本来の位置から飛び出して神経を圧迫し、痛みを引き起こします。また腰椎椎間板ヘルニアは、臀部から下肢(膝から下)の痛みも引き起こします。

慢性腰痛は病院に行くべきですか?

慢性腰痛は放置せずに病院を受診すべきです。放置すると心身両面で大きなリスクが生じてしまいます。

原因に合った治療により慢性腰痛も改善可能であるため、必ず医療機関を受診しましょう。診療科としては、整形外科や内科、婦人科、心療内科、ペインクリニックなどがあります。

参考文献

(文献1)

腰痛診療ガイドライン2019改訂第2版|日本整形外科学会日本腰痛学会

(文献2)

2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況|厚生労働省

(文献3)

腰痛を予防していつまでも笑顔に|公益社団法人日本理学療法士協会

(文献4)

Chronic Low Back Pain: A Narrative Review of Recent International Guidelines for Diagnosis and Conservative Treatment|PubMed Central®

(文献5)

働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトこころの耳|厚生労働省