- その他、整形外科疾患
【一覧】骨粗鬆症の注射の種類とは?副作用やデメリット・相場についても医師が解説
「飲み薬を続けていたのに、骨密度がなかなか上がらない」「医師から注射治療をすすめられたけれど、不安がある」
このようなお悩みを抱えている方もいらっしゃるでしょう。
骨粗鬆症では、内服薬での効果が不十分な場合に注射薬への切り替えが検討されます。
ただし、注射薬にはいくつか種類があり、打つ頻度やあらわれやすい副作用はそれぞれ異なります。
この記事では、骨粗鬆症注射の種類や効果、副作用、値段、デメリットについて解説します。
注射治療を検討する際の判断材料として、ぜひ参考にしてください。
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目次
骨粗鬆症の治療において注射が有効なケース
骨粗鬆症の治療では、以下の場合に注射薬の使用が検討されます。
- 内服薬での治療効果が不十分である
- 内服薬の飲み忘れリスクがある
- 骨折経験がある・骨密度が非常に低い状態
注射薬を使用する理由を、詳しく見ていきましょう。
内服薬での治療効果が不十分である
内服薬で治療を続けても、骨密度の改善が見られない場合があります。
これは薬の吸収率の個人差や骨密度の程度、胃腸の状態、服用方法など、さまざまな要因が関係しているためです。
たとえば、体に吸収されにくい薬を注射タイプに切り替えると、消化管を経由せず血液中に直接届くため、より確実な効果が期待できます。(文献1)
内服薬の飲み忘れリスクがある
骨粗鬆症の飲み薬は「週1回」「月1回」など定期的に服用する必要があり、服用方法にも「起床後すぐに飲み、30分間は横にならない」といった細かいルールが指定されているものもあります。(文献2)
そのため飲み忘れや飲み間違いが起きやすく、正しく服用できない状態が続くと十分な効果が得られません。
その点、医療機関での注射治療は、医師や看護師の管理のもとで実施されます。受診の必要はあるものの自宅で薬を管理する必要がないため、治療の確実性が高い点がメリットです。
とくに複数の薬を服用している方や飲み忘れが心配な方、認知症で薬の管理が難しい方などに適しています。
骨折経験がある・骨密度が非常に低い状態
骨粗鬆症の注射薬の中には、内服薬にはない強力な骨形成促進作用(骨をつくる働きを促す作用)を持つものがあります。
これらは、骨を壊す働き(骨吸収)を抑えるだけでなく、新しい骨を作る働き(骨形成)を高め、骨密度を内服薬よりも効率的に改善する効果が期待できます。
そのため、すでに骨折を経験されている方や骨密度が極めて低い方など、骨折の危険性が高い方は、注射薬による治療が有効な選択肢となり得るのです。
骨粗鬆症が進行し、大腿骨近位部(太ももの付け根)や椎体(背骨)を骨折すると、寝たきりや生活の質(QOL)の低下につながります。
こうした重篤な事態を防ぐためにも、骨折リスクの高い方には早期かつ積極的な治療が重要です。
【一覧】骨粗鬆症注射の種類と主な副作用
現在よく使われている骨粗鬆症の注射薬には、作用機序の異なる4つのタイプがあります。
それぞれ効果や副作用が異なるため、患者の状態に応じて適切な薬剤が選択されます。
|
薬剤名(商品名) |
作用機序 |
主な副作用(発現頻度が高いもの) |
重大な副作用(とくに注意すべきもの) |
|---|---|---|---|
|
テリパラチド(フォルテオ、テリボン) |
骨形成促進 |
吐き気、嘔吐、頭痛、めまい、倦怠感 |
ショック、アナフィラキシー、意識消失 |
|
ビスホスホネート(ボンビバ、リクラストなど) |
骨吸収抑制 |
胃炎、頭痛、背中や関節の痛みなど |
顎骨壊死、大腿骨を中心とした非定型骨折 |
|
デノスマブ(プラリア) |
骨吸収抑制 |
貧血、湿疹、低リン酸血症、高血圧、胃炎、背中の痛みなど |
低カルシウム血症、顎骨壊死、顎骨骨髄炎、アナフィラキシー、大腿骨を中心とした非定型骨折、皮膚感染症 |
|
ロモソズマブ(イベニティ) |
骨形成促進・骨吸収抑制(デュアル作用) |
注射部位の痛み・赤み、鼻咽頭炎、関節痛など |
低カルシウム血症、顎骨壊死、顎骨骨髄炎、大腿骨を中心とした非定型骨折 |
骨吸収を抑える薬剤には、低カルシウム血症や顎骨壊死(がっこつえし:あごの骨が失われる状態)といった重大な副作用リスクがあるため、定期的な検査と歯科治療前の相談が重要です。
それぞれの薬の特徴を詳しく解説します。
テリパラチド:骨形成促進薬
骨形成促進薬は骨をつくる骨芽細胞(こつがさいぼう)を増やす薬で、代表薬としてテリパラチド(商品名:フォルテオ、テリボン)があげられます。
フォルテオは1日1本、ペン型注射器を使用して皮下注射をおこないます。(文献3)
テリボンは1回1本を週に2回自己注射、もしくは週1回通院で注射するタイプです。(文献4)
なお、どちらの薬も最長24カ月(約2年)の制限があります。(文献3)(文献4)
投与直後から数時間後にかけて、一過性の血圧低下に伴うめまいやふらつきが起こることがあります。おさまるまで座った状態または横になった状態で休み、帰宅後に強い症状が出た場合は医療機関に連絡するのが望ましいでしょう。(文献5)
ビスホスホネート系:骨吸収抑制薬
骨吸収抑制薬には、骨を壊す細胞(破骨細胞)の働きを抑えて骨を守る作用があります。
国内でよく用いられる骨吸収抑制薬の一つが「ビスホスホネート」です。
飲み薬で良く使われるタイプですが注射剤もあり、代表的なものにはアレンドロネートとゾレドロン酸の点滴製剤、イバンドロネートの静脈内注射剤があります。(文献1)
内服薬で効果が乏しかった方や経口摂取が難しい方に対して使用される傾向です。(文献1)
デノスマブ:骨吸収抑制薬
代表薬はデノスマブ(商品名:プラリア)です。(文献6)
デノスマブはビスホスホネート系と同じ「骨吸収抑制薬」ですが、ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤に分類され、異なるメカニズムで効果を発揮します。デノスマブは半年に1回の皮下注射で効果が持続するため、通院の手間が少なく続けやすい治療法です。(文献6)
投与を中止すると骨吸収が一時的に亢進するため、骨密度が急激に低下し、骨折リスクを高める可能性があります。(文献7)
このためデノスマブの投与を中止する際は、骨吸収抑制作用を持つ別の薬に切り替え、骨密度の急激な低下を防ぐ必要があります。(文献8)
ロモソズマブ:骨形成促進・骨吸収抑制併用薬
骨形成促進・骨吸収抑制併用薬とは、「骨をつくる働きを促進しながら、骨を壊す働きを抑える」という2つの作用を持つ骨粗鬆症治療薬です。
代表薬はロモソズマブ(商品名:イベニティ)という抗スクレロスチン抗体薬です。
ロモソズマブは、1カ月に1回、医療機関で2本(105mgを2本、計210mg)の皮下注射を12カ月間受けるのが一般的で、比較的短期間で骨密度を大きく増加させる効果が期待できます。(文献9)
臨床試験において、心筋梗塞や脳卒中などの心血管系イベントの発生率がビスホスホネート系薬剤より高かったとの報告があり、心血管系の既往歴がある患者への投与は慎重に検討されます。(文献9)
骨粗鬆症注射のデメリット
骨粗鬆症注射は効果的な治療法ですが、以下のようなデメリットもあります。
- 注射薬特有の副作用や合併症のリスク
- 自己負担費用が高め
- 使用期間の制限
注射治療は効果が高い反面、継続的な医療機関への通院や経済的負担を伴います。
また、一部の薬剤では中止時のリバウンド現象や投与期間の制限があるため、長期的な治療計画を医師と十分に相談することが重要です。
骨粗鬆症の注射の値段
骨粗鬆症の皮下注射薬は種類によって費用が大きく異なります。以下に、主な皮下注射薬の費用目安(3割負担)をまとめました。
|
薬剤名(商品名) |
注射の頻度 |
1カ月の薬剤費用の目安(3割負担) |
|---|---|---|
|
テリパラチド(フォルテオ) |
毎日(※1本で約28日分) |
約7,000円~8,000円 |
|
テリパラチド(テリボン) ※自己注射の場合 |
週2回 |
約1万4,000円~1万5,000円 |
|
ビスホスホネート |
月1回もしくは年1回(製剤により異なる) |
約830円~1100円 |
|
デノスマブ(プラリア) |
半年に1回 |
約1,200円~1,300円 |
|
ロモソズマブ(イベニティ) |
月1回(※2本投与) |
約1万4,000円~1万5,000円 |
(薬価は2025年11月地点での価格)
上記は先発医薬品の価格を記載しているため、ジェネリック医薬品を使用する場合は費用が少なく済むでしょう。また、薬の費用のみの目安であるため、診察料や検査費、処方料などは別途かかります。
医療機関や地域によって費用は異なるため、事前確認をおすすめします。
骨粗鬆症治療における注射以外の選択肢
骨粗鬆症の治療は注射だけではありません。
食事や運動、生活習慣の改善といった基本的な対策に加え、再生医療という新しい選択肢もあります。
詳しく解説します。
食事内容の見直し
骨粗鬆症の予防・治療には、骨の主成分であるカルシウムとタンパク質、カルシウムの吸収を助けるビタミンDの栄養素が不可欠です。
日常の食事で取り入れやすい食材は、以下のとおりです。
|
栄養素 |
主な食材 |
|---|---|
|
カルシウム |
牛乳、チーズ、小魚、大豆製品、小松菜など |
|
タンパク質 |
肉、魚、卵、大豆製品など |
|
ビタミンD |
鮭、さんま、きのこ類、卵黄など |
なかでもカルシウムは、骨粗鬆症の予防・治療に1日1000~1500mgが必要だともいわれています。(文献10)
牛乳なら約1L、プロセスチーズなら約10切分(150g)に相当します。
単一の食品だけで必要量を満たすのは難しいため、複数の食材を組み合わせて摂取しましょう。
適度な運動の習慣化
骨は、程良い力が加わることで強くなる性質があり、ウォーキングや筋力トレーニング、水中運動などが骨密度の上昇に有効と報告されています。(文献5)
運動習慣は骨を強くするだけでなく、筋力やバランス力も高めるため転倒予防にもつながります。
まずは無理のない範囲で、1日30分程度の運動を週2〜3回から始めてみましょう。
生活習慣の改善
骨を健康に保つためには、禁煙や節酒、十分な睡眠など、毎日の規則的な生活習慣が欠かせません。
喫煙は、腸からのカルシウム吸収が低下する上に尿中への排泄が増えるほか、女性ホルモンも減少しやすくなるため、骨密度を下げる要因として知られています。(文献1)
喫煙を続けている方は、大腿骨付近部骨折のリスクが女性で約1.3倍、男性で約1.6倍に高まることが報告されています。(文献1)
また、アルコールを摂りすぎると必要なカルシウムが尿に排出されてしまうため、飲酒量が多いほど骨折のリスクも上昇するとされているのです。(文献1)
こうしたことから、生活習慣の改善によって骨粗鬆症の進行を抑えられると期待できます。
自己の幹細胞を用いた再生医療
自分の脂肪由来の幹細胞を使った再生医療も選択肢の一つです。幹細胞が持つ組織修復能力を活性化させることで、骨の健康維持をサポートする治療法です。
当院リペアセルクリニックでは、膝や肩などの関節痛、腰部脊柱管狭窄症などに対して脂肪由来の幹細胞を使った再生医療を提供しています。
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骨粗鬆症の注射について正しく理解して前向きな治療を選択しましょう
骨粗鬆症の注射治療は、骨折のリスクを減らし、QOLを守るための大切な治療法です。副作用や費用といった懸念はありますが、正しい知識を持つことで不安は軽減できます。
大切なのは「治療を続けること」、そして「自分に合う方法を選ぶこと」です。
注射治療だけでなく、食事や運動といった生活改善や、再生医療を含めた複数の選択肢について、医師と一緒に自分に適した治療方針を考えましょう。
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骨粗鬆症注射に関するよくある質問
骨粗鬆症の注射は一生続けなければなりませんか?
薬の種類や骨密度の回復状況によって異なります。
たとえばテリパラチドは最長約2年間、ロモソズマブは最長約1年間と使用期間が決まっており、そのあとは別の治療法に切り替えるのが一般的です。(文献9)
デノスマブは使用期限の上限が設けられていません。骨密度が十分に改善し安定すれば他の種類の内服薬に切り替えることもあります。
定期的に骨密度を測定しながら、医師と相談して治療方針を決めていきましょう。
骨粗鬆症の注射をやめると元に戻ってしまいますか?
治療を中断すると、骨密度が再び低下するケースがあります。
とくにデノスマブは、中止後に急激に骨密度が低下しやすいことが知られています。
このため、プラリアを中止する際は、別の骨粗鬆症薬への切り替えが必要です。
医師の指示なく自己判断でやめることは避け、必ず相談しながら治療計画を立てましょう。
骨粗鬆症の注射は痛いですか?
注射部位の痛みは個人差がありますが、通常は軽いチクッとした刺激です。
自己注射タイプ(フォルテオ、テリボンなど)はペン型の注射器で簡単に打てるよう設計されており、細い針を使用しているため、痛みは最小限で済むことがほとんどです。
医療機関での処置であれば、痛みを抑える工夫をしてくれることもあります。
いずれの場合も不安があるときは、事前に医師や看護師に相談しましょう。
参考文献
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年度版|日本骨代謝学会
薬品インタビューフォームアレンドロン酸錠35mg|一般財団法人日本医薬情報センター(JAPIC)
フォルテオ®皮下注キット 600μg医薬品インタビューフォーム|日本病院薬剤師会
テリボン®皮下注 28.2µgオートインジェクター医薬品インタビューフォーム|日本病院薬剤師会
テリパラチド皮下注用56.5μg医薬品インタビューフォーム|日本病院薬剤師会
プラリア皮下注 60mg シリンジ医薬品インタビューフォーム|日本病院薬剤師会














