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ジャンパー膝の正しい湿布の貼り方がわからない ジャンパー膝は冷やすべきか温めるべきかわからない ジャンパー膝の湿布の貼り方に悩んでいませんか? 湿布は、ジャンパー膝の症状を改善させるのに効果的なものです。しかし湿布の貼り方や、温める方法を間違えると、適切な効果を得られません。 ジャンパー膝の湿布の貼り方 ジャンパー膝の温めるべきケース・冷やすべきケース ジャンパー膝に対する「冷湿布」の効果 ジャンパー膝に対する「温湿布」の効果 ジャンパー膝における湿布以外のセルフケア ジャンパー膝と湿布の貼り方に関するよくある質問 本記事では、症状を悪化させない適切な貼り方や、冷やす・温めるべきケースをわかりやすく解説します。 最後には、ジャンパー膝と湿布の貼り方に関するよくある質問をまとめておりますので、ぜひ最後まで読み進めていただければと思います。 ジャンパー膝の湿布の貼り方 ステップ 内容 目的 1.患部の洗浄と乾燥 膝周囲の皮膚を洗浄し、乾燥させる 汗や汚れを取り除き、湿布の密着を高める 2.湿布に切れ目を入れる 湿布の中央に縦の切れ目を入れる 膝の動きにフィットさせ、剥がれにくくする 3.湿布の貼り付け 違和感のある箇所(膝蓋骨の下部など)に貼る 患部に薬剤を浸透させる 4.固定 テーピングやサポーターで固定する 湿布の剥がれを防ぎ、効果を持続させる ジャンパー膝の湿布は、膝蓋腱の炎症を抑える目的で使用します。貼り方の手順は、患部の洗浄と乾燥→湿布の切れ目入れる→湿布の貼り付け→固定の流れで行います。 湿布を貼る前に、皮膚の汗を拭き取り、清潔にしておきましょう。また、膝は動きが多い部分なので、湿布が剥がれないように工夫する必要があります。 湿布で症状の改善がみられない場合は、医療機関の受診が必要です。 ジャンパー膝は冷やすべき?温めるべき? ジャンパー膝の症状に対して冷やすべきか、症状の種類とその時点での膝の状態によって異なります。 冷やす・温めるタイミングを間違えると、症状が悪化する可能性があるため注意しましょう。 冷湿布などで冷やすべきケース 温湿布などで温めるべきケース 症状や状況別で、解説します。 冷湿布などで冷やすべきケース ケース 理由 使用方法 急性期(発症0~6週) 炎症が進行しやすいため、冷却し、症状の悪化を防ぐ 20分間冷却し、30-40分間休憩を挟みながら繰り返す 運動直後 運動による筋肉の微細損傷を抑え、炎症を最小限に抑える 運動後すぐに冷湿布を適用し、腫れを予防する 腫れや炎症がある場合 血管を収縮させることで、腫れや違和感を抑える 腫れが引くまで定期的に冷やし、違和感が治まるか様子を見る 急激な違和感がある場合 神経の感受性を低下させ、膝への違和感の伝達を遅らせ、症状を和らげる 氷や冷湿布を布で包み、直接皮膚に触れないよう注意する (文献1) 冷湿布で冷やすべきケースは、違和感が顕著に現れて、炎症を起こした段階です。ジャンパー膝の直後は、冷湿布を使用し血管が収縮させることで、炎症の拡大を抑えます。 冷湿布の効果に関する研究では、急性期の違和感に対して冷却療法が推奨されています。(文献1) 違和感が現れた初期の段階では、冷湿布で冷やすようにしましょう。 温湿布などで温めるべきケース ケース 理由 使用方法 慢性期(発症から12週間以上) 血流を促進し、組織の回復を助けるため、慢性的なこわばりや不調に適している 15~20分程度、温湿布や温めたタオルを使用し、血流を促す 運動前のウォームアップ 筋肉の柔軟性を高め、ケガの予防や動きのスムーズさを向上させる 運動開始前に10~15分ほど温めて、筋肉の柔軟性を向上させる 筋肉のこわばりや違和感がある場合 筋肉が硬くなり、動きが制限されるとパフォーマンスが低下するため、温めることで緊張を緩和する 温めながら軽いストレッチを行い、筋肉をほぐすと効果的 冷やしても症状が改善しない場合 冷却しても症状が改善しない場合、血行を促進し、組織の修復を助ける 冷湿布で改善が見られない場合、温湿布を試して様子を見る 慢性期(発症から12週間)の場合は、血流を促進し、組織の回復力を助けるために、温湿布を使用します。 炎症が落ち着き、膝周囲の筋肉が硬くなっている段階では、冷やすよりも温めることで血流が促進され、柔軟性が向上し膝への負荷が軽減されます。 冷やしても症状が改善しない段階で、温湿布の使用を検討しましょう。 ジャンパー膝に対する「冷湿布」の効果 効果 解説 炎症による腫れや熱感を抑える 冷却効果により、血管が収縮し、炎症物質の放出を抑制 違和感を和らげる 冷たさにより神経の伝達速度が遅くなり、違和感を鈍らせる 炎症の拡大を防ぐ 血管収縮により、炎症が周囲に広がるのを防ぐ 筋肉のこわばりを緩める 冷却により筋肉の緊張が緩和され、柔軟性が向上する 冷湿布は、主に急性期の炎症症状に対して有効です。冷湿布の効果について解説します。 炎症による腫れや熱感を抑える 作用 メカニズム 効果 冷却作用 水分蒸発による患部の冷却、血管収縮、血流抑制 腫れ、熱感の軽減 鎮痛作用 メントールなどの成分による感覚神経刺激 違和感の緩和 冷湿布の冷却効果により、血管を収縮させることで、炎症を抑制させます。 冷湿布に含まれるメントールなどの成分は、皮膚の感覚神経を刺激し、鎮痛効果をもたらします。 違和感を和らげる 作用 メカニズム 効果 冷却作用による感覚麻痺 メントールなどが皮膚の温度感覚を鈍らせる 腫れなどの違和感を一時的に軽減 血管収縮による炎症抑制 患部の血管を収縮させ、炎症物質の放出を抑える 炎症が鎮まり、腫れなどの違和感を軽減 冷湿布は、ジャンパー膝で起こる膝への違和感に対して有効です。 とくに冷湿布に含まれるメントールが皮膚の温度感覚を一時的に鈍らせることで、腫れや違和感を軽減します。 炎症の拡大を防ぐ 炎症が起こると、患部の血管が拡張し、血液中の炎症物質が組織内に漏れ出します。冷湿布は炎症物質の拡大を防ぐための手段として有効です。 ただし、冷湿布は初期段階での炎症を防ぐために使われるため、炎症が落ち着いた慢性期には、冷湿布よりも温湿布が適しています。 筋肉のこわばりを緩める ジャンパー膝で起きた筋肉の強張りに対して、冷湿布の冷却は効果的です。患部を冷却すると、血管が収縮し、患部への血流が抑制されます。 また、冷却は神経の伝達速度を遅らせ、膝にかかる違和感を一時的に鈍らせるため、初期段階の対応として有効です。 冷却で筋肉の過剰な収縮を抑制できるものの、冷やしすぎると筋肉が逆にこわばる可能性があります。 冷湿布は、症状の変化を見ながら使用しましょう。 ジャンパー膝に対する「温湿布」の効果 効果 解説 血行を促進させる 温熱効果により血管を拡張させ、血流を促進させる 慢性的な違和感や筋肉のコリを和らげる 温熱効果に柔軟性の向上、筋肉の緊張緩和を促す リラックス効果 違和感の軽減や悪循環を抑える 温湿布は主に慢性期の違和感や筋肉のこわばりを和らげるために使用されます。 ジャンパー膝に対して、温湿布が有効である理由を解説します。 血行を促進させる メカニズム 効果 血管拡張 血流増加、酸素・栄養素の供給促進 血流速度増加 代謝活性化、疲労物質・発痛物質の排出促進 代謝活性化 違和感の軽減、筋肉の緊張緩和 温湿布を使用し、温まった部位が血管を広げ、血流が改善されます。 血流が改善されると、患部に栄養素や酸素が供給されやすくなり、症状の回復を促します。 ジャンパー膝の初期段階での血行促進は、炎症や違和感を悪化させる可能性があるため、温湿布は落ち着いた慢性期に使用しましょう。 慢性的な違和感や筋肉のコリを和らげる メカニズム 効果 血行促進 筋肉の柔軟性向上、疲労物質の排出促進 神経の鎮静化 違和感の緩和 心理的リラックス 筋肉の緊張緩和、違和感の軽減 温湿布は、慢性的な違和感や筋肉のコリを軽減します。注意点としては、低温やけどに注意し、長時間同じ場所に貼り付けないようにしましょう。特に寝る前に貼る場合は注意が必要です。 また、炎症がひどい状態では、症状を悪化させる可能性があるため、温湿布ではなく、冷湿布を使用しましょう。 リラックス効果 メカニズム 効果 筋肉の緊張緩和 違和感や悪循環を抑える ストレス軽減 違和感を和らげる 睡眠の質の向上 疲労回復を促進する (文献2) 温湿布には、ジャンパー膝に有効なリラックス効果があります。 温熱刺激は副交感神経に対してリラックス効果を与え、交感神経の活動を抑制します。 また、リラックス効果によるストレス軽減は、違和感に対してだけでなく、生活や睡眠の質を上げるためにも有効です。 ジャンパー膝における湿布を貼る際の注意点 項目 注意点 貼る前の準備 湿布を貼る前に、肌を清潔に、関節には目を切れさせて密着させる 貼り方 湿布はフィルムを剥がした後、軽く伸ばし、必要に応じてテープやネット包帯で固定する 剥がし方 湿布は体毛の流れに沿ってゆっくり剥がし、剥がした後は、肌を休めるために時間を空ける 使用上の注意 お風呂上りや汗で濡れている場合や、湿疹や発疹がある部位には使用しない その他 膝への違和感が続く場合は、医療機関を受診する 湿布を貼る際は、正しい使い方や、注意点を守ることが大切です。まず、炎症の状態に応じた湿布を選びます。 急性期には炎症を抑える冷湿布、慢性期には血行を促進する温湿布を選びましょう。 湿布を貼る際は、水や汗で皮膚が濡れていないことを確認し、必要に応じてテープやネットを使用します。湿布は、8~12時間を目安に交換しましょう。 湿布を貼り付けた場所にかゆみや発疹が出た際は、すぐに使用を中止します。かゆみや赤み、ジャンパー膝が続く場合は、医療機関を受診しましょう。 ジャンパー膝における湿布以外のセルフケア セルフケア 重要な理由 アイシング 炎症を抑制し、違和感を軽減する ストレッチ 筋肉の柔軟性を高め、膝への負担を軽減する サポーターの活用 膝を安定させ、負担を軽減する 安静にする 炎症の悪化を防ぎ、組織の修復を促す 湿布はジャンパー膝の症状を一時的に緩和するのに役立ちますが、根本的な改善には、ストレッチや安静などのセルフケアが必要です。 ジャンパー膝におけるセルフケアについて解説します。 アイシング 手順 内容 準備 氷や保冷剤を薄いタオルで包む 実施時間 患部に15 ~20分間程度(凍傷にならないよう注意する) 調整 当てる時間を短くする、タオルの厚さを調整する 冷やす頻度 1日に数回、とくに運動後や違和感がある時 (文献3) ジャンパー膝は、膝蓋腱の炎症によって違和感が生じる疾患です。そのため、発症時は、炎症を拡大させないためにアイシングを行います。 アイシングを行う場合の注意点としては、凍傷を防止するために氷や保冷剤を薄いタオルで包み、患部に15〜20分程度冷やします。 冷やす時間はあくまで目安なので、冷たいと感じた場合は、無理をせずに調節しましょう。 ストレッチ ストレッチ 方法 大腿四頭筋(前もも) 立った状態や横向きに寝た状態で、かかとをお尻に近づけるように膝を曲げ、太もも前側を伸ばす ハムストリングス(肉裏) 立った状態や座った状態で、足を伸ばしてつま先を上げ、太ももの裏側を伸ばす 腸腰筋(股関節付け根) 足を前後に開いて立ち、後ろ足の付け根を伸ばす ストレッチは筋肉の柔軟性向上と負担軽減する手段として有効です。ストレッチは、無理のない範囲で行うことが重要です。 運動前後のウォームアップやクールダウンに取り入れることで、筋肉の緊張をほぐし、ジャンパー膝の防止にできます。 ストレッチは自己判断ではなく、医師の指導のもと行いましょう。 以下の記事では、ジャンパー膝に有効な効果的なストレッチ方法を解説しております。 サポーターの活用 効果 詳細 膝蓋腱の負担軽減 サポーターが膝蓋腱周囲を圧迫し、負担を分散 膝の安定性向上 膝のぐらつきを抑え、関節の安定性を高める。衝撃を和らげ、悪化を防ぐ 動きやすさのサポート 膝のサポートにより、正しい動作を維持しやすくなる サポーターを活用し、膝蓋腱の周囲を適度に圧迫します。 また、サポーターには、関節の安定性を高める効果があり、膝への負担を軽減するために役立ちます。 サポーターを選ぶ際は、サイズ・種類・圧迫の強さを考慮し、自身の症状に合ったものを選ぶことが大切です。 サイズが合わない、圧迫が強すぎるまたは弱すぎるなど、自分に合わないサポーターを選んでしまうと、症状が悪化するリスクがあります。 違和感や不快感がある場合は、無理に使用せずに調整や交換を検討しましょう。 以下の記事では、サポーターの注意点を詳しく解説しております。 安静にする ジャンパー膝は、膝蓋腱に何度も負荷がかかることで炎症や腫れを起こします。そのため、発症初期の段階では、安静が大切です。 しかし、一定期間が経過し、安静にしすぎると、筋力低下を引き起こします。その結果、膝蓋腱への負担が再び増加し、再発する可能性があります。 再発しないためにも、安静だけでなく、適度なリハビリやトレーニングで徐々に膝を慣らしていきましょう。 湿布で改善しないジャンパー膝は早めの受診を ジャンパー膝に対する湿布は、膝にかかる違和感や炎症を一時的に抑える応急処置として有効ですが、根本を解決するものではありません。 ジャンパー膝の症状が湿布で改善しない場合は、早めに整形外科を受診しましょう。 ジャンパー膝の改善が湿布で見込めないと感じた方は当院「リペアセルクリニック」へお気軽にご相談ください。 再生医療を活用し、膝の違和感や炎症に対して、回復を促します。 湿布で改善しないジャンパー膝でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にお問い合わせください。 ジャンパー膝と湿布の貼り方に関するよくある質問 湿布は1日に何回張り替えれば良いですか? 湿布の貼り替え回数は、湿布の種類によって異なります。1日1回タイプであれば、8〜10時間程度効果が持続します。 1日2回タイプの湿布の場合の効果持続は、4〜6時間程度です。(文献3) 湿布を貼ったまま運動しても大丈夫ですか? 運動によって湿布がずれたり汚れたりする場合があるため、運動後は患部を確認して新しい湿布に貼り替えるようにしましょう。 湿布とサポーターは併用できますか? 湿布とサポーターは併用できます。併用する際は、皮膚に炎症や圧迫に気をつけ、違和感を感じたら使用を中止しましょう。 湿布は寝るときに貼っても良いですか? 注意するべき点はありますが、基本的に問題ありません。湿布を使用する前に、製品の取扱説明書をよく読み、皮膚のかぶれや湿疹に注意しましょう。 皮膚に異常が現れるようであれば、就寝時は湿布を剥がすなど、工夫する必要があります。 湿布を貼るのと飲み薬(鎮痛剤)ではどちらが効果的ですか? どちらが効果的かは症状や状況によって異なります。症状が軽度であれば、湿布で十分な効果が得られる場合があります。 湿布で症状の改善が見込めない場合は、飲み薬(鎮痛剤)の服用を検討しましょう。 湿布や飲み薬を使用する際は、説明書をよく読み、用法・用量を守り、自己判断はせず、医師や薬剤師の指示に従いましょう。 参考文献 (文献1) 綾田 練ほか,「ジャンパー膝に対する運動後のアイシングの効果」『体力科学(2007)』pp.1-6, (2007) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/56/1/56_1_125/_pdf(最終アクセス:2025年3月15日) (文献2) 2008年から2019年に発表された温罨法に関する国内文献の検討 武田七海ほか,「〈総説〉2008年から2019年に発表された温罨法に関する国内文献の検討」pp.1-9, 2008年 https://www.thcu.ac.jp/research/pdf/bulletin/bulletin17_09.pdf(最終アクセス:2025年3月15日) (文献3) 宮川,羽毛田「薬の伝言版 湿布薬の使い方」, pp.1-2, 2024年 (最終アクセス:2025年3月15日)
2025.03.31 -
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ジャンパー膝で毎日が辛い ジャンパー膝が治らなかったらどうしよう ジャンパー膝と診断されて、数カ月経過しても症状が良くならず、不安を感じていませんか。ジャンパー膝は適切な治療とケアで改善が見込めます。 ジャンパー膝が治らない理由 ジャンパー膝が治らない際の改善策 ジャンパー膝の予防法 なかなか治らないジャンパー膝に関してよくある質問 記事末にはジャンパー膝に関してよくある質問をまとめています。最後まで読み進めていただくことで、ジャンパー膝への理解が深まるでしょう。 ジャンパー膝が治らない理由 原因 詳細 症状の重さ 腱の損傷が大きく、回復に時間がかかる場合がある オーバーユース 膝への過度な負荷が継続し、回復を妨げる 誤った対処法 不適切なストレッチや運動、休息不足が症状を悪化させる 柔軟性・筋力不足 膝周りの筋肉の柔軟性や筋力不足が、膝への負担を増加させる 安静・休息不足 十分な休息を取らないことで、組織の修復が遅れる ジャンパー膝の症状が重度だと、治るまでに2〜3カ月以上かかります。これから紹介する内容が1つでも当てはまる場合、膝に負担をかけないようにする改善が必要です。 以下の記事では、ジャンパー膝の症状と効果的なストレッチ・テーピングについて詳しく解説しています。 症状が重い 進行度 症状 初期 運動後、運動中に軽度の違和感 中期 運動中、運動後に強い疼痛。日常生活に支障をきたす場合がある 後期 安静時にも疼痛。運動困難 症状の進行が中期〜後期の状態は、運動中にも膝に強い違和感があり、日常生活にも支障をきたします。 膝蓋腱への負担がかかり、炎症や微細な損傷が慢性化すると、治癒力が低下し、症状の改善が困難になります。 中期〜後期の段階は、セルフケアやリハビリだけでなく最悪の場合、手術が必要です。症状が悪化する前に、適切な治療と休息を取り入れるようにしましょう。 オーバーユース(膝の酷使) 項目 詳細 腱の修復遅延 膝蓋腱は負荷を受けると微細な損傷が生じ、適切な休息があれば修復される 炎症悪化と腱の変性 炎症悪化に加え、腱組織の変性を誘発する。変性腱は脆弱化し、再損傷リスクが増加する 疼痛の悪循環 疼痛による庇護動作が膝への負担を増大させ、疼痛を悪化させる 不適切な動作の継続 原因となる不適切な動作(誤った跳躍・着地など)の反復が、症状慢性化を招く スポーツや立ち仕事など、膝の酷使は症状回復を遅らせます。 とくに過度な走り込みやジャンプなど、負荷のかかりやすい行動です。その結果、腱に微細な損傷が蓄積し、炎症や違和感を引き起こします。 膝蓋腱への反復負荷は、修復を阻害し、症状長期化を招きます。膝への負担を減らすためにスポーツや立ち仕事を制限し、改善しない場合は、医療機関への受診を行いましょう。 誤った対処法を実践している 誤った対処法 治癒を妨げる理由 過度な安静 膝周りの筋力低下、腱への負担増大、柔軟性低下、血行不良による修復遅延 疼痛下での運動継続 炎症悪化、損傷拡大、腱の変性 不適切なストレッチ・マッサージ 症状悪化、炎症増強 誤ったアイシング 血行不良による治癒遅延 不適切なサポーター使用 血行不良、筋萎縮 自己判断での薬剤使用 根本的解決の阻害、副作用のリスク 誤った運動フォーム 膝への過剰な負担、症状悪化 誤った対処法を実施すると、回復が遅延する恐れがあります。 自己流で行うリハビリや、医師の許可なく薬の服用を中断してしまうと、回復の遅延だけでなく、症状が重症化するリスクがあります。 症状の改善には、医師の指導に基づく適切な処置が大切です。自己判断での対処法は避けましょう。 柔軟性不足、筋力不足 要因 治りにくい理由 膝蓋腱への過剰な負荷 柔軟性や力が不足すると、ジャンプや着地の際に膝蓋腱への負担が増加し、微細な損傷が生じる 衝撃吸収能力 筋力や柔軟性が不足すると衝撃を分散できず、膝蓋腱に直接負担がかかる 膝関節の不安定性 筋力不足により膝の安定性が低下し、膝蓋腱への負荷が増大する 動作の悪化 筋力が不足すると、正しいフォームでの動作が困難となり、膝蓋腱への負担が増加する 柔軟性が不足すると筋肉や腱の可動域が狭くなり、膝蓋腱への負荷が増加します。筋力が不足すると膝関節の安定性が低下します。 柔軟性と筋力は相互に影響し、一方が不足すると他方も低下し、改善の遅延につながります。柔軟性と筋力を維持するには、適度なストレッチと膝に負担のかからないリハビリが大切です。 安静や休息を怠っている 症状の程度 回復期間の目安 対処法 軽度 2~4週間 安静、アイシング、ストレッチ、セルフケア、筋力トレーニング、リハビリ 中程度 4~8週間 運動制限、物理療法、ストレッチ、筋力トレーニング、段階的な運動再開 重度 3カ月以上 保存療法、手術(必要時)、数カ月のリハビリ 症状の程度によりますが、軽度の場合でも2〜4週間は安静や通院が必要です。これらを怠ると、重症化するケースもあるので、膝に負荷のかかる運動や立ち仕事は控える必要があります。 また、睡眠不足や栄養不足でも、回復を妨げる要因になります。睡眠は組織修復を促し、栄養は、腱の構成要素であるコラーゲンの生成に必要不可欠です。 適切な安静と休息、栄養バランスを考慮した食事を日々取り入れましょう。 ジャンパー膝が治らない際の改善策 改善策 詳細 医療機関での治療 物理療法、薬物療法、手術(重度の場合)など、個々の症状に合わせた治療を行う 正しいリハビリテーション 専門家の指導のもと、適切なストレッチ、筋力トレーニング、運動療法を実施する 焦らずに休息を取る 症状の程度に応じた適切な安静期間を確保する ジャンパー膝を改善するには、膝への負担を減らしながら適切なケアの継続が大切です。また、改善しない場合は専門機関での治療が必要になります。 ジャンパー膝が治らない際の改善策を解説します。 医療機関での治療 ジャンパー膝は、適切なケアなしでは完治しにくい傾向があります。そのため、症状の程度に関わらず、医療機関の受診が必要です。 軽度の症状であれば、保存療法や薬物療法と並行し、医師の指導に基づく運動療法で改善を目指します。重度では、保存療法などに加え、場合によっては手術療法も視野に入れる必要があります。 早期の医療機関受診と適切な治療により、早期回復と再発防止を目指しましょう。 以下の記事では、ジャンパー膝の治療期間について詳しく解説しています。 正しいリハビリテーション リハビリ内容 詳細 目的 ストレッチ 大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋などの柔軟性向上 膝周辺の可動域拡大、柔軟性向上 筋力トレーニング 大腿四頭筋、ハムストリングスなどの筋力強化 膝への負担軽減、膝関節の安定性向上 動作指導 跳躍、着地、膝への負担軽減を目的とした動作の習得 適切な動作パターンの習得、再発予防 段階的運動復帰 膝に抱える違和感に合わせた運動強度の段階的増加 運動復帰、再発リスクの最小化 リハビリでは、大腿四頭筋の筋力改善や柔軟性向上を目指します。ジャンパー膝の症状は安静や休息だけでは、再発予防にはつながりません。 そのため、適切なリハビリを適度に取り入れる必要があります。無理な負荷をかけず、少しずつ症状の改善を目指しましょう。 焦らずに休息を取る 症状の程度 回復期間の目安 主な治療法 軽度 2〜4週間 安静、アイシング、ストレッチ、セルフケア 中程度 4〜8週間 運動制限、物理療法、ストレッチ、筋力トレーニング、段階的な運動再開 重度 3カ月以上 保存療法(効果が見られない場合は手術)、手術後のリハビリ 症状の程度に合わせて、休息を取ることで、ジャンパー膝の重症化を防げます。重度かつ、保存療法で改善が見られない場合が手術を検討する必要があります。 休息期間の終了は自己判断ではなく、医師の指示を仰ぐようにしましょう。 ジャンパー膝の予防法 ジャンパー膝を発症させないためには、適切な予防を行うことが大切です。 運動前後のストレッチ・ウォーミングアップ・クールダウン 適切なトレーニング 炎症を悪化させる食品は避ける 同じ姿勢や無理な姿勢を続けない 正しい予防法を身につけ、発症や再発を防ぎましょう。 運動前後のストレッチ・ウォーミングアップ・クールダウン ケアの種類 効果 具体例 運動前ストレッチ 筋肉・腱の柔軟性向上、可動域拡大、負荷軽減 大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋の静的ストレッチ(各20~30秒保持) ウォーミングアップ 体温上昇、血流増加、筋肉の柔軟性・反応性向上、傷害リスク低減 軽いジョギング、サイクリング、動的ストレッチ(各10~15回) 運動後クールダウン 筋肉の緊張緩和、疲労物質蓄積の抑制、筋肉痛の軽減、疲労回復を促進 軽いジョギング、サイクリング、静的ストレッチ(各20~30秒保持) ジャンパー膝の予防には、運動前後の適切なストレッチ、ウォーミングアップ、クールダウンが不可欠です。 運動の前後でウォーミングアップやストレッチを行うことで、筋肉や腱が温まり、柔軟性が向上し、怪我のリスクを軽減します。 また、運動後のクールダウンは運動によって緊張した筋肉をリラックスさせることで、血液の促進を促し、疲労物質の排出を助けます。 運動前後のケアは、ジャンパー膝の予防につながるため、継続的に行いましょう。 適切なトレーニング トレーニング内容 具体例 目的 フォームの改善 ジャンプ、着地、スクワットなどの動作フォーム確認 膝蓋腱への局所的負荷集中回避、広範囲への負荷分散 筋力トレーニング 大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋の強化 膝関節の安定性、衝撃吸収能力向上、膝蓋腱への負担軽減 柔軟性トレーニング 大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋のストレッチ 膝関節の安定性、衝撃吸収能力向上、膝蓋腱への負担軽減 バランストレーニング 片足立ち、バランスボール、アジリティトレーニング 膝関節の安定性、動作の正確性向上、再発予防 膝周りの筋肉、とくに大腿四頭筋やハムストリングスを正しく鍛えることで、膝蓋腱にかかるストレスを軽減できます。 急激な負荷増加は、膝蓋腱の組織を傷つけ、症状を誘発させるため、医師の指導のもと適切なトレーニングで改善を図ります。 トレーニング中に膝に違和感や炎症が現れた場合は、すぐに中断しましょう。 炎症を悪化させる食品は避ける 成分 食品例 説明 糖分 菓子類、清涼飲料水、白砂糖、果糖ブドウ糖液糖など 高糖分食品は炎症を促進し、症状を悪化させる可能性がある 飽和脂肪酸、トランス脂肪酸 揚げ物、加工肉、スナック菓子、マーガリン、ショートニングなど 炎症を引き起こす可能性がある オメガ6脂肪酸 コーン油、ひまわり油、マヨネーズなど 過剰摂取は炎症を促進させる可能性がある 加工食品 インスタント食品、レトルト食品、ハム、ソーセージ 精製炭水化物は体内での炎症を引き起こすことがある アルコール 各種アルコール飲料 過剰摂取は炎症の悪化や、組織の修復を阻害する可能性がある 一部の乳製品 牛乳、チーズ、ヨーグルト 人によっては、炎症を誘発する可能性がある (文献1)(文献2) 特定の成分や食品の摂取が、ジャンパー膝を誘発させるわけではないものの、過剰摂取は回復の妨げになる恐れがあります。 糖分や加工食品など、一切食べてはいけないのではなく、偏った食事をしないことが大切です。 炎症を抑えるタンパク質(肉、魚、豆類など)やビタミンC(柑橘類、イチゴ、ブロッコリーなど)を中心とした食事が、ジャンパー膝の改善につながります。 同じ姿勢や無理な姿勢を続けない 同じ姿勢や無理な姿勢は、膝蓋腱に持続的な負荷がかかり、症状を誘発させる可能性があります。猫背や身体の歪みは、膝への負担を増大させ、症状の慢性化を招くため、注意が必要です。 デスクワークや長時間の立ち仕事であれば、姿勢をこまめに変え、ストレッチを取り入れることで、膝への負荷を軽減できます。 ジャンパー膝が治らないときは医療機関を受診しよう! ジャンパー膝は、症状の程度に関わらず、医療機関を受診しましょう。ジャンパー膝は軽度の段階であれば、2~4週間ほどで症状を改善できます。 しかし、自己流などの間違った方法を継続してしまい、重症化してしまうと、手術が必要になるケースもあります。 長引くジャンパー膝でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へお気軽にご相談ください。 再生医療を活用し、治らずに困っているジャンパー膝への回復を促します。症状改善にお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にお問い合わせください。 なかなか治らないジャンパー膝に関してよくある質問 ジャンパー膝は治らないですか? 適切な治療とリハビリテーションを行えば、多くの場合は改善が見込めます。しかし改善に時間がかかることや、適切な対策を行わないと再発する可能性もあります。 ジャンパー膝は、自然治癒や自己判断で治る症状ではありません。医師の診断を受け、適切な対応を行いましょう。 ジャンパー膝は後遺症が残りますか? 重症化すると後遺症が出る可能性があります。具体例として、膝機能の低下や膝への違和感が慢性化するなどが挙げられます。 軽度でも自己判断せず、医師の診断を受けることが大切です。 ジャンパー膝になったら運動は完全に中止すべきですか? 症状の程度によります。しかし多くの場合は運動を控える必要があります。ジャンパー膝は膝の使いすぎによって生じるため、膝に違和感を覚えたら、医療機関を受診しましょう。 無理な運動の継続や、放置は重症化につながる可能性があるので、注意が必要です。 参考文献 (文献1) Bhavin Mistry,(2023). 5 Types of Food to Avoid With Tendonitis,CARESPACE https://carespace.health/post/5-types-of-food-to-avoid-with-tendonitis/(Accessed: 2025-03-15) (文献2) Kim Grundy, Andra Picincu. Foods to Avoid for Bursitis & Tendinitis,LIVESTRONG.com https://www.livestrong.com/article/402808-foods-to-avoid-for-bursitis-tendonitis/(Accessed: 2025-03-15)
2025.03.31 -
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ジャンパー膝がどれくらいで治るのか ジャンパー膝でやってはいけないことを知りたい ジャンパー膝と診断されたものの、いつ治るのか、どう治療するべきかを悩んでいませんか。ジャンパー膝が治る期間には、個人差があります。 医療機関での正しい治療とケアを行えば、ジャンパー膝の症状は改善できます。 しかし、症状の放置や誤った方法でのリハビリは、回復を遅らせるだけでなく、再発するリスクがあるため、正しい知識と治療を行うことが大切です。 ジャンパー膝が治る期間 ジャンパー膝でやってはいけないこと ジャンパー膝の改善法 ジャンパー膝を治したい方からよくある質問 ジャンパー膝の治療でお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。 【結論】ジャンパー膝が治る期間にはバラつきがある! 症状の程度 回復期間の目安 軽度 1~2カ月程度 重度 2~3カ月以上 ジャンパー膝の回復期間は症状の重さによって異なります。軽度の場合はおおよそ1~2カ月程度、重度の場合は2~3カ月以上、症状が改善するまでに時間がかかります。 症状の程度にかかわらず、自己判断はせず、医療機関への受診を受けることが大切です。 軽度の場合|1~2カ月程度 改善方法 目的 具体的な内容 注意点 安静 膝への負担を軽減 スポーツ活動の一時中止、日常生活での膝への負担軽減 過度な安静は筋力低下を招くため、医師と相談しながら期間を決める アイシング 炎症抑制 1回15~20分、1日数回、患部を冷却 タオルで包む、感覚がなくなったら中止する ストレッチ 膝周りの柔軟性向上 大腿四頭筋、ハムストリングス、大腿筋膜張筋などのストレッチ 違和感のない範囲でゆっくりと行う、反動をつけない 筋肉トレーニング 膝周りの筋力強化 大腿四頭筋、ハムストリングスなどの筋力トレーニング 負担をかけずに軽い負荷から始める、正しいフォームで行う 症状が軽度の場合、改善に1~2カ月程度かかります。主な治療法として、適切な安静とリハビリを行います。 リハビリやストレッチは自己判断せず、医師の指導のもと、段階的に負荷のかからない程度に行いましょう。 重度の場合|2~3カ月以上 対処法 目的 内容 注意点 医師の診察と診断 正確な状態把握と適切な治療計画 整形外科を受診し、MRIや超音波検査などで膝の状態を確認する 自己判断せず、専門家の指示に従う 保存療法 炎症と違和感の軽減、組織の修復促進 安静、アイシング、物理療法(電気治療、超音波治療など)、薬物療法(鎮痛薬、湿布など)、リハビリテーション 自己判断せず、症状に合わせて、医師の指導のもと行う リハビリテーション 膝周りの筋力強化、柔軟性向上、動作改善 ストレッチ、筋力トレーニング、バランス訓練、動作指導 段階的に負荷を上げていく 運動制限 膝への負担軽減、悪化防止 ジャンプ、ランニング、急な方向転換など、膝に負担のかかる運動を避ける 運動再開時期や運動の種類は、医師と相談して決める 手術療法 保存療法で改善しない場合 関節鏡手術などで、炎症を起こしている組織を切除または修復 手術後のリハビリも重要 症状が重度の場合、改善に2~3カ月以上かかります。また保存療法やリハビリを継続しても改善が見込めない場合は、手術を検討するケースもあります。 手術後の回復期間は、手術方法や個人の状態によって異なるため、自己判断はせず、医師の指示に従いましょう。 早く治すためのジャンパー膝でやってはいけないこと やってはいけないこと 理由 具体例 違和感を抱えたまま運動を続ける 炎症が悪化し、回復が遅れる 違和感のある状態で、ジャンプやランニングを続けるなど 自己流でストレッチやマッサージをしてしまう 症状を悪化させる可能性がある 違和感を我慢して無理なストレッチ、炎症部位を強く揉むなど 長時間の立ち仕事や歩行 膝への負担が大きくなり、回復を妨げる 立ちっぱなしの作業、長距離の歩行 治癒を自己判断で中断する 再発のリスクを高める 違和感が引いたからといって、医師の指示なしに運動を再開する 安静期間を守らない 炎症が治まらず、回復が遅れる 医師から指示された安静期間を守らず、運動を行う ジャンパー膝を早く治すために、やってはいけないことを把握しておくことが大切です。 やってはいけないことについて、詳しく紹介します。 違和感を抱えたまま運動を続ける 症状悪化の要因 具体的なリスク 詳細 炎症の悪化 慢性化、治癒遅延 運動による継続的な負荷が膝蓋腱の炎症を悪化させ、違和感が長期間続く状態になる 腱の損傷進行 部分断裂、完全断裂、手術の必要性 炎症の進行により腱の微細な損傷が拡大し、重度の損傷に至るリスクが高まる 違和感の慢性化 日常生活への支障 我慢して運動を続けることで違和感が慢性化し、日常生活にも影響を及ぼす可能性がある 回復の遅延 組織修復の妨げ 安静期間が不足すると、組織の修復が妨げられ、回復が遅れる 膝に違和感を抱えたまま運動を継続すると、炎症が悪化する恐れがあります。 医師の診断後、治療で改善が見られたとしても、自己判断で運動を再開すると、症状が再発する可能性があります。 膝に違和感がある場合は運動を中止し、医療機関を受診しましょう。 自己流でストレッチやマッサージをしてしまう 悪化の要因 具体例 リスク 炎症の悪化 炎症部位への過度な刺激(強いマッサージ、無理なストレッチ) 違和感や炎症の拡大 腱の損傷進行 腱の付着部への強い牽引力や圧迫、無理なストレッチ 腱の断裂、回復遅延 誤った運動方向 正しい運動方向や負荷を無視した自己流ストレッチやマッサージ 症状の悪化、回復遅延 ジャンパー膝の早期回復を目指す際にストレッチやマッサージを自己流で行なってはいけません。 誤った方法でマッサージを行なってしまうと膝に抱える違和感の増大や、炎症の拡大を引き起こす恐れがあります。(文献1) ジャンパー膝のストレッチやマッサージは自己判断ではなく、医師の指導のもと行いましょう。 長時間の立ち仕事や歩行 要因 詳細 リスク 持続的な負荷 立ち仕事、歩行による膝蓋腱への反復負荷 違和感や炎症の拡大 血行不良 長時間同一姿勢による膝周りの血行阻害 組織修復遅延、違和感の慢性化 筋肉疲労 膝周り筋肉の疲労蓄積 腱への負担増大、損傷リスク増加 長時間の立ち仕事や歩行は、症状回復の妨げになります。とくに同じ姿勢で長時間過ごすと、膝への負担が増大し、膝への違和感や炎症が拡大する恐れがあります。 立ち仕事が多い場合は、座れる業務への変更を職場に相談してみましょう。 治癒を自己判断で中断する リスク 詳細 結果 炎症の悪化と慢性化 炎症が治まる前に運動を再開 慢性的な違和感、運動能力低下 腱の損傷の進行 安静期間を守らない 腱の断裂、手術のリスク増加 回復期間の長期化 安静期間を守らずに運動を再開 症状の再発、回復遅延 ジャンパー膝の治療を自己判断で中断すると、症状の再発や回復を遅らせる恐れがあります。 とくに膝蓋腱は、血流が少なく回復に時間がかかる部位であり、医師の指示に従い、継続的な治療とリハビリが行われなければなりません。 違和感や炎症が治ったとしても、一時的なものである可能性が高いため、症状が緩和しても、一度医師に指導を仰ぐようにしましょう。 安静期間を守らない 安静期間を守らないと、症状の悪化や慢性化を引き起こす可能性があります。 膝蓋腱は血流が少なく、回復に時間がかかる部位なので、安静期間を守らず、自己判断で復帰してしまうと、症状が再発する可能性が高いです。 とくに症状が重度の場合、6週間以上の安静が求められることがあります。 また、安静期間を守らずに症状が悪化してしまうと、最終的には手術が必要になる可能性があるので、自己判断での復帰はやめましょう。 ジャンパー膝の改善法 改善法 詳細 目的 注意点 RICE処置 安静(Rest)冷却(Ice)圧迫(Compression)挙上(Elevation) 炎症の抑制、違和感の軽減 冷却は15~20分を目安に行う、冷やしすぎに注意する リハビリテーション ストレッチ、筋力トレーニング、物理療法 膝周りの柔軟性向上、筋力強化、組織修復促進 負荷のかからない範囲で、専門家の指導のもと行う 医療機関での受診 医師の診察、診断、治療 正確な状態把握、適切な治療計画 自己判断せず、専門家の指示に従う ジャンパー膝は正しい改善法を行うのが大切です。これから紹介する内容は、自己判断ではなく、医師の指導のもと実践するようにしましょう。 RICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上) 処置 詳細 目的 注意点 安静(Rest) 運動や活動を中止し、膝への負担を軽減 炎症の悪化を防ぎ、組織の修復を促進 過度な安静は筋力低下を招くため、医師と相談しながら期間を決める 冷却(Ice) 1回15~20分、1日数回、患部を冷却 炎症と違和感を抑制 冷たすぎる場合はタオルで包む、感覚がなくなったら中止 圧迫(Compression) 弾性包帯などで患部を圧迫 腫れや内出血を抑制 締めすぎに注意し、血行を阻害しない 挙上(Elevation) 膝を心臓より高い位置に挙上 腫れや内出血を抑制 クッションなどを利用し、楽な姿勢で行う (文献2) ジャンパー膝の応急処置として、RICE処置は有効な手段です。RICE処置は、炎症の拡大を防ぎ、膝に対する違和感の軽減に役立ちます。 RICE処置は症状を改善するものではなく、最悪を防ぐための緊急対応です。適切に行うことで進行を抑えられますが、根本的な治療ではないため、必要に応じて医療機関を受診しましょう。(文献2) リハビリテーション リハビリの目的 内容 具体的な方法 筋力バランスの改善 大腿四頭筋とハムストリングの筋力を整え、膝蓋腱への負担を軽減 スクワット・ランジなどの筋力強化エクササイズ 柔軟性の向上 ストレッチで筋肉や腱の柔軟性を高め、膝蓋腱のストレスを軽減 大腿四頭筋やハムストリングのストレッチ 正しい動作の習得 ジャンプやランニングの正しいフォームを習得し、再発を防ぐ フォーム指導で膝への負担を最小限にする (文献3) ジャンパー膝は、膝蓋腱への過剰な負荷によって引き起こされるため、リハビリを通して、膝周りの状態を改善させることが大切です。 リハビリでは、膝周りの筋力を強化し、柔軟性を高めることで、膝蓋腱の負担を軽減し、大腿四頭筋とハムストリングのバランスを整えます。 また、リハビリでは一時的な改善ではなく、再発を起こさないように長期的な部分を視野に入れて行います。 リハビリは、自己流ではなく、医師の指導のもと行いましょう。 医療機関での受診 治療法 内容 保存療法 運動制限やストレッチ、消炎鎮痛剤の使用で症状の改善を目指す 物理療法 超音波や低周波などの物理的な刺激で、炎症を軽減し組織の修復を促す 再生医療 自身の血液から成長因子を抽出後、患部に注入し修復を促進する ジャンパー膝の症状は医療機関での受診をしましょう。ジャンパー膝の症状の程度は、状況や症状によって個人差があります。 医療機関で正しい診断を受けることで、適切な治療やリハビリを受けられます。症状の程度に関わらず、医療機関の受診が大切です。 以下の記事では、ジャンパー膝の症状改善に役立つ再生医療について詳しく解説しています。 ジャンパー膝の再発防止策 対策 詳細 目的 アイシング 運動後や入浴後に膝周りを冷却 炎症の抑制、疲労回復促進 運動メニューの見直し 運動環境やメニューを調整 膝への負担軽減、適切な運動負荷 膝への負担軽減 膝に負担のかかる動作を避ける 膝蓋腱への負荷軽減、再発防止 体重管理 適正体重を維持 膝や、関節への負荷軽減 ジャンパー膝の治療は短期的ではなく、再発などを引き起こさない長期的な対策が大切です。 ジャンパー膝の再発を防ぐためには、1つだけでなくすべての対策を継続的に実践しましょう。 運動後や入浴後に膝周りをアイシングする 項目 内容 炎症の抑制 血流を抑制し、炎症の拡大を防ぐ 違和感の緩和 神経の働きを鈍らせ、違和感を軽減する 筋肉のクールダウン 筋肉の緊張を和らげ、疲労回復を促進する 冷却時間 1回15~20分を目安に行う、冷やしすぎに注意 冷却方法 氷嚢や保冷剤をタオルで包み、直接肌に当てない 冷却頻度 運動後や入浴後、違和感を感じたときに実施 (文献4)(文献5) 運動や入浴後は、膝周りの血流が増加し、炎症が起こりやすくなります。アイシングは、温度を下げる役割があり、炎症の抑制や疲労回復を促します。 アイシングを行う際は、保冷剤を直接当てるのではなく、タオルなどで包み、凍傷を防ぐように行いましょう。 また予防のためにアイシングだけでなく、合わせて運動前のストレッチや、適切なリハビリも行うのが大前提です。(文献6) 運動環境やメニューを見直す 対策 内容 運動環境の改善 柔らかい地面で運動、温度・湿度管理を行い、筋肉の柔軟性を保つ 運動メニューの改善 運動時間や強度を調整し、膝への負担をコントロールする ジャンパー膝を再発させないためには、運動環境やメニューを見直すことが大切です。 固い地面でのトレーニングや、過度な負担のかかるメニューは、筋肉に負担をかけ、炎症を引き起こすリスクがあります。 運動量は医師と相談し、徐々に増やしていきましょう。 膝に負担のかかる動作を避ける ジャンパー膝の再発を防ぐためには、膝に負担のかかる動作を避けることが大切です。膝蓋腱に過剰なストレスを与えると、炎症を引き起こし、再発する恐れがあります。 ジャンパー膝は炎症が治っていない状態で、無理をすると再発しやすい症状です。 そのため、症状が治っても、自己判断で立ち仕事やスポーツに復帰はせず、医師の指示に従うようにしましょう。 適正体重を維持する 要素 内容 適切な運動 膝に負担をかけすぎない有酸素運動(ウォーキングや水中運動)を取り入れ、筋力を維持しながら体重を管理する 食事管理 オメガ3脂肪酸(サバ、イワシ、サーモンなど)や、抗酸化作用のある野菜(トマト、ブロッコリー、ほうれん草など)を積極的に取り入れる (文献7) ジャンパー膝の再発を防止するには、適正体重の維持が大切です。歩く際に膝にかかる負荷は体重の約3倍と言われています。そのため、1kg体重が増えるだけで、膝への負担が約3kg増加します。 極端な体重増加を起こさないように、運動不足や不摂生は控え、適切な体重管理を心がけましょう。 バランスの良い食事と膝に負担の少ない運動を取り入れることが、ジャンパー膝を再発させない上で大切です。 ジャンパー膝の回復期間を知り悪化を防ぐことが大切 ジャンパー膝は回復期間を知り、悪化を防ぐことが大切です。ジャンパー膝は軽度であれば、おおよそ1~2カ月程度で改善に向かいますが、重度の場合、手術が必要になるケースもあります。 ジャンパー膝の症状に対して、手術を行うことに抵抗がある方は、当院リペアセルクリニック」にご相談ください。 手術を必要としない、再生医療を活用し、膝への回復を促します。ジャンパー膝の症状にお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にお問い合わせください。 ジャンパー膝を治したい方からよくある質問 ジャンパー膝は自然に治りますか? ジャンパー膝の症状が自然に治ることはありません。適切な治療をしないと症状が慢性化し、悪化する可能性があります。 症状が軽度でも、医療機関を受診しましょう。 ジャンパー膝になったときにお風呂は入っても良いですか? 湯船に長時間浸かるのは控えましょう。湯船に長時間浸かることで、血行が促進され、炎症が悪化する恐れがあります。 湯船に浸かる場合は熱いお湯は避け、38~40℃のぬるめのお湯に15~20分程度浸かるようにします。 また、違和感がある場合は、無理に入浴せず、安静にしましょう。 ジャンパー膝にサポーターは有効ですか? サポーターの使用は、再発予防には有効です。しかし、根本的な治療にはなり得ない部分は認識しておく必要があります。 また、サポーターは自分の膝に合うサイズや、正しい装着方法で実践しないと効果が得られません。 自分に合うサポーターがわからない方は、医師に相談し、選ぶようにしましょう。 ジャンパー膝は何科を受診すれば良いですか? 整形外科(スポーツ整形外科やスポーツ医学科)の受診が適切です。 整形外科(スポーツ整形外科やスポーツ医学科)では、画像診断(MRIや超音波検査)を用いて腱の状態を詳細に評価し、患者に合わせた治療計画を提供します。 参考文献 (文献1) 「運動器疾患とスポーツ外傷・障害」『膝蓋腱炎(ジャンパー膝)』(1)pp.1-2 https://jsoa.or.jp/content/images/2023/05/vol.1_%E8%86%9D%E8%93%8B%E8%85%B1%E7%82%8E.pdf(最終アクセス:2025年3月14日) (文献2) 一般社団法人 日本臨床整形外科学会事務局「スポーツでケガをしたら、どうすれば良いの?」一般社団法人 日本臨床整形外科学会 https://jcoa.gr.jp/%E5%81%A5%E5%BA%B7%E7%9B%B8%E8%AB%87/%E6%A5%BD%E3%81%97%E3%81%8F%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%84%E3%82%92%E7%B6%9A%E3%81%91%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB/%E5%BF%9C%E6%80%A5%E5%87%A6%E7%BD%AE/%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%84%E3%81%A7%E3%82%B1%E3%82%AC%E3%82%92%E3%81%97%E3%81%9F%E3%82%89%EF%BC%9F/#:~:text=%E5%BF%9C%E6%80%A5%E5%87%A6%E7%BD%AE%E3%81%AE%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E3%81%AF,%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82(最終アクセス:2025年3月14日) (文献3) 原 賢二.「ジャンパー膝の機能的評価と鍼治療の効果に関する 研究」『TulipsR』, pp.1-193, 2013年 https://core.ac.uk/download/pdf/56658805.pdf(最終アクセス:2025年3月14日) (文献4) 綾田 練ほか.「ジャンパー膝に対する運動後のアイシングの効果」『体力科学』, pp.1-6, 2007年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/56/1/56_1_125/_pdf(最終アクセス:2025年3月14日) (文献5) 塩田 真史.「Osgood-Schlatter 病の病態と治療 発症から復帰までの現状と今後の課題」『日本アスレティックトレーニング学会誌』4(1), pp.1-6, 2018年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsatj/4/1/4_29/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年3月14日) (文献6) 一般社団法人 千葉市医師会「運動時の膝の痛み「ジャンパー膝」かも?」一般社団法人 千葉市医師会, 2023年7月11日 https://www.chiba-city-med.or.jp/column/155.html#top(最終アクセス:2025年3月14日) (文献7) 独立行政法人日本スポーツ振興センター,ハイパフォーマンススポーツセンター「ハイパフォーマンスを発揮して勝つ!アスリートのためのトータルコンディショニングハンドブック」2024年 https://www.jpnsport.go.jp/hpsc/Portals/0/resources/hpsc/TCRP/handbook.pdf(最終アクセス:2025年3月14日)
2025.03.31 -
- ひざ関節
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「ジャンパー膝とオスグッド病の違いは何?」「スポーツを続けるために必要な方法は?」 ジャンパー膝とオスグッド病は症状がよく似ていて、見分けがつかないケースも多いのではないでしょうか。 どちらもジャンプ競技で繰り返し膝を使うことで発症しますが、痛みが出る膝の部位が異なります。 この記事では、ジャンパー膝とオスグッド病の原因と症状の違いや、それぞれの治療法について解説していきます。 ジャンパー膝とオスグッド病の一般的な見分け方や対処法について気になる方は、ぜひ最後までお読みください。 ジャンパー膝とオスグッド病の基本 ジャンパー膝とオスグッド病は、どちらもジャンプスポーツが原因で膝まわりの痛みが出るため似たような疾患に見えがちです。 しかし、発症する原因や影響を受ける膝の部位が異なります。 ジャンパー膝 オスグッド病 定義 膝蓋腱炎の炎症 脛骨粗面の剥離(はくり) 原因 ジャンプ動作や走行が多いスポーツ ジャンプ動作や走行が多いスポーツ 症状 スポーツ時の膝蓋腱の痛み・腫れ 脛骨粗面の突出、スポーツ時の脛骨粗面の痛み・腫れ 影響を受ける部位 膝蓋腱(膝蓋骨の下の靭帯) 脛骨粗面(膝蓋骨の下にある突出している骨) はじめに、それぞれの定義と一般的な原因を説明していきます。 ジャンパー膝の定義と一般的な原因 ジャンパー膝(膝蓋腱炎)は膝蓋骨(膝のお皿の部分)のすぐ下にある膝蓋腱にストレスがかかり、炎症が起こる疾患です。 バレーボールやバスケットボール、サッカーなどのスポーツで多くみられ、繰り返し行うジャンプ動作が主な原因です。 ジャンプスポーツによる膝の使いすぎ(オーバーユース)が続くと、膝蓋腱に過度なストレスがかかり、組織に小さな損傷や炎症が起こって慢性的な痛みを発症させます。 オスグッド病の定義と一般的な原因 オスグッド病(オスグッド・シュラッター病)は小学校高学年から中学生の成長期に、脛骨粗面(膝蓋骨の下にあるわずかに突出している骨の部分)の軟骨が剥がれる疾患です。 原因はジャンパー膝と同じで、ジャンプや走行、ボールを蹴る動作などで膝を頻回に使うことで生じます。 この時期は軟骨から骨に成長する時期なので、膝を伸ばす動作の繰り返しで脛骨粗面の軟骨が剥がれることにより痛みが増します。 症状の比較 ジャンパー膝とオスグッド病に見られる主な症状は、どちらもスポーツ中の膝まわりの痛みです。それぞれ詳しく見ていきましょう。 ジャンパー膝に見られる典型的な症状 ジャンパー膝に見られる典型的な症状は、ジャンプや走る動作、階段の昇り降りのときに見られる膝蓋腱の痛みです。 膝蓋腱の痛みは程度により軽症と中等症、重症に分類されます。 軽症 スポーツの後や歩いた後に痛む 中等症 活動開始期と終わった後に痛む 重症 活動中や後の痛みで続行困難 重症化して膝蓋腱に断裂がある場合は、手術が必要になる可能性もあります。 軽症や中等度のうちは専門家と相談した上でスポーツの継続が可能ですが、症状を悪化させないためにも、毎日ケアを続けることが大切です。 オスグッド病に見られる典型的な症状 オスグッド病に見られる症状は、脛骨粗面の痛みや腫れ、突出です。痛みはスポーツ中に見られ、休んでいるときに軽快する点がジャンパー膝とよく似ています。 症状は脛骨粗面以外の部位には見られません。症状が悪化すると、剥がれた骨片を取り出す手術が必要になる可能性もあります。 発症部位と影響 ジャンパー膝とオスグッド病の発症部位はそれぞれ膝蓋腱と脛骨粗面です。どちらの疾患も、膝の曲げ伸ばしによる大腿四頭筋の作用が影響して発症します。 以下に詳しく解説していきます。 ジャンパー膝の影響を受ける膝の部位 ジャンパー膝で影響を受ける膝の部位は、大腿四頭筋(太もも前面の筋肉)につながる膝蓋腱です。膝蓋腱は大腿四頭筋の伸び縮みに伴って脛骨(すねの骨)や膝蓋骨の動きをコントロールし、膝の曲げ伸ばしを可能としています。 スポーツをしている時のジャンプやダッシュ、ストップ、ターンなどの動作は、急激な膝の曲げ伸ばしを繰り返し行っているため、膝蓋腱の負担も大きいのです。 この状態が続くと膝蓋腱に過度なストレスがかかり、組織に小さな損傷や炎症が起こって慢性的な痛みを発症させます。 オスグッド病の影響を受ける膝の部位 オスグット病で影響を受ける膝の部位は、大腿四頭筋の下端が付着する脛骨粗面です。膝の曲げ伸ばしを繰り返すと、大腿四頭筋の伸び縮みによって脛骨粗面に刺激が加わります。 小学生から中学生にかけて骨が成長している時期は、この刺激により脛骨粗面の軟骨が急激に剥がれやすくなるのです。 軟骨が剥がれると、脛骨粗面まわりに炎症が起き、痛みや腫れを発症させます。 診断と治療方法 ジャンパー膝やオスグッド病が疑われる場合は、整形外科で問診や触診、画像診断などの診断と鎮痛薬や外用薬の投与による治療を行います。それぞれ詳しく見ていきましょう。 ジャンパー膝の診断プロセスと治療オプション ジャンパー膝の診断では問診や触診、MRI、超音波検査などを行います。膝蓋腱をゆびで圧迫した時に痛みが強まることや、MRIや超音波による画像診断で筋肉や腱の変性が確認できることで確定診断となります。 ジャンパー膝の治療は、患部の安静や練習量を減らすこと、炎症を抑えるための鎮痛剤や外用薬を使用することです。膝蓋腱に負担のかかるジャンプやダッシュの練習を減らすだけでも、症状の改善に効果があります。 また、医薬品は市販ではなく医師に処方されたものを使用しましょう。症状によってはステロイド注射を行うこともあります。 オスグッド病の診断プロセスと治療オプション オスグッド病の診断は問診や触診、レントゲン検査で可能です。問診で実際の話を聞きながら、痛みが出るときの状況や、痛みが出る部位を確認します。 脛骨粗面の状態を触診やレントゲン検査で確認し、痛みや腫れ、突出、軟骨の剥離が認められると確定診断になります。 オスグッド病の症状を治すためには、スポーツを控えて安静にすることが大切です。軟骨から骨に成長する3〜6ヶ月間は痛みが出やすい時期なので、負担をかけないようにできるだけ休息をとりましょう。 痛みが強いようなら、医師から処方された飲み薬やぬり薬などを使用することもあります。 予防と管理 ジャンパー膝やオスグッド病の予防や、スポーツを継続するときの管理方法には、アイシングや大腿四頭筋のストレッチ、膝蓋腱バンドの装着などがあります。痛みの症状に悩んでいる方は、専門医と相談しながらこれらの方法を行うようにしましょう。詳しく解説していきます。 ジャンパー膝の予防策 ジャンパー膝の予防には、大腿四頭筋のストレッチや筋力トレーニングが大切です。症状を管理しながらスポーツを続けていく場合は、スポーツ直後のアイシングや、スポーツ中の膝蓋腱バンドの装着も必要になります。 過去の論文ではジャンパー膝の予防策に、傾斜台上での片脚立ちスクワットが効果的であると報告されています。 参考文献:P Jonsson, H Alfredson.Superior results with eccentric compared to concentric quadriceps training in patients with jumper's knee: a prospective randomised study.2005. 39(11). p847-850 ジャンパー膝の予防に重要な、片脚立ちスクワットや大腿四頭筋のストレッチの方法について見ていきましょう。 片脚立ちスクワット ①25度程度の傾斜台を準備し、降りの方向に顔を向けて立つ (※傾斜台がなければ、スロープやタオルを使用して、立った姿勢で踵の位置が上がるように工夫する) ②片脚立ちになり、股関節と膝関節を曲げながらお尻を床に近づける。膝の位置が足の位置より前方に出ないように注意する ③股関節と膝関節を伸ばして片脚立ちの姿勢に戻る。10回連続で行い、1日3セットほど行う。きつく感じるようであれば、必要に応じて手すりを持ちながら行う 大腿四頭筋のストレッチ(膝を曲げると痛む場合の方法) ①ストレッチをする側の膝を床につき、ストレッチをしない側の膝を立てて片膝立ちの姿勢になる ②上半身を起こしながら身体を前方に移動させ、太もも前面の筋肉を伸ばす ③20秒〜30秒ほど時間をかけて動きを行い、10秒ほど休んだ後にもう一度行う ※スポーツをした後は必ず行う 大腿四頭筋のストレッチ(膝を曲げても痛みがでない場合の方法) ①床に両膝を伸ばして座った後、ストレッチをする側の膝を曲げて踵をお尻に近づける ②両手を床について身体を支えながら、上半身を後ろに倒して太もも前面の筋肉を伸ばす ③20秒〜30秒ほど時間をかけて動きを行い、10秒ほど休んだ後にもう一度行う ※スポーツをした後は必ず行う オスグッド病の予防策 オスグッド病の予防策と管理方法は、アイシングや大腿四頭筋のストレッチ、ベルトの装着です。 オスグッド病は痛みが出なければスポーツが可能ですが、症状を悪化させないためにこれらを継続して行うことが大切です。 アイシング 練習直後にアイシングを15〜30分ほど行いましょう。激しい運動の後は脛骨粗面のまわりにより炎症が起こりやすく、熱感や腫れが強まります。 できるだけ早く患部を冷やし、炎症を抑えることで症状の悪化を防げるわけです。氷を入れた袋を患部に持続的に当てるか、弾性包帯で巻きつけて固定すると効果的です。 バンドを装着する ジャンパー膝やオスグッド病の治療として、膝蓋腱の走行に横断して取り付けるバンド(サポーター)の装着が効果的です。 バンドによる膝蓋腱の圧迫は、腱の走行を変化させて負担を減らせることが明らかになっています。 スポーツ中の膝蓋腱や脛骨粗面に対する過剰なストレスが減り、痛みの緩和が期待できます。 まとめ ジャンパー膝とオスグッド病の違いについてお話ししました。 ジャンパー膝とオスグッド病は、どちらもジャンプ競技で膝を伸ばす動作を繰り返すことで起こる症状です。 しかし症状の出る部位が異なり、ジャンパー膝が膝蓋腱に痛みが出るのに対して、オスグッド病は脛骨粗面に痛みが出ます。どちらの場合もスポーツを続けるときは、以下の内容をよく守って行いましょう。 どちらの疾患であっても効果的なアプローチ ジャンパー膝とオスグッド病の両方に効果があるアプローチは、アイシングと大腿四頭筋のストレッチ、バンドの装着です。これらはスポーツ直後に起きた膝の炎症を抑えたり、脛骨粗面や膝蓋腱、大腿四頭筋の負担を減らしたりする効果があります。 症状の悪化につながらないためにも、スポーツをするときは必ず継続して行いましょう。 スポーツ選手としての健康管理の重要 ジャンパー膝やオスグッド病の症状と付き合いながらスポーツを続ける場合は、専門家に相談しながら無理のない範囲で行いましょう。 どちらの症状も悪化させると手術が必要になる可能性もあるため、痛みが強い場合は休んだり、練習量を減らしたりすることが大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 参考文献一覧 日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会, 2023, 「運動器疾患とスポーツ外傷・障害」, vol.1, 膝蓋腱炎(ジャンパー膝) 日本整形外科スポーツ医学会広報委員会,2023「スポーツ損傷シリーズ」,1.オスグッド病 明解 スポーツ理学療法-図と動画で学ぶ基礎と実践 Visnes, H., Hoksrud, A., Cook, J., & Bahr, R. (2005). Superior results with eccentric compared to concentric quadriceps training in patients with jumper's knee: A prospective randomised study. British Journal of Sports Medicine, 39(11), 847-850. https://doi.org/10.1136/bjsm.2005.018630 体力科学,1999,48,227〜232,"ジャンパー膝"
2024.10.02 -
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
化膿性関節炎の術後は、関節を切除している場合、関節が不安定になってしまいます。 日常生活に戻るためには、適切なリハビリが重要です。 「早く復帰したい」と考え、無理なリハビリをおこなってしまうと、感染症や炎症の悪化につながる可能性があります。そこで本記事では、化膿性関節炎のリハビリやリスク、日常生活での注意点を解説します。 また、ハイキングやランニングでおすすめの筋トレも紹介しているため、ぜひご覧ください。 【基礎知識】化膿性関節炎の概要 化膿性関節炎は、関節内に細菌が侵入して化膿する疾患です。 まずは化膿性関節炎が発症する原因と具体的な症状について紹介していきます。 化膿性関節炎が発症する原因 化膿性関節炎は、主に細菌が関節内に侵入することによって発症します。 細菌は肺炎、尿路感染、手術後の感染、関節内注射などを通じて関節に到達することがあります。とくに、股関節・膝関節・足関節など、下肢に発症しやすい傾向にあります。 また、免疫力が低下している人や、肥満・糖尿病などがある人も化膿性関節炎を発症する可能性があります。 以下の記事では膝関節が腫れた人向けに、痛みの原因や対処法を解説しているので、ぜひご覧ください。 化膿性関節炎の症状 化膿性関節炎の主な症状は、関節の痛み・発赤・腫脹・熱感などがあり、進行すると関節や骨の破壊、発熱などの症状が現れます。 「関節炎」は、炎症を伴う関節の痛みや腫れを特徴とする病気の総称で、化膿性関節炎はその中でもとくに急性で重篤な症状を示します。 化膿性関節炎を放置すると、関節の破壊や機能障害を引き起こす可能性があるので注意してください。 他にも大腿部や膝、肩の関節に多く発生し、患部の運動が制限されるケースが大半です。 迅速な治療が求められるため、疑わしい症状が現れた場合は、速やかに医療機関での受診をおすすめします。 治療は主に、抗生物質の投与と、場合によっては関節内の膿を排出する外科的処置が行われます。また、治療後のリハビリテーションも重要で、関節の機能回復を目指した適切なケアが必要です。 化膿性関節炎を予防するためには、日常生活での感染予防や、免疫力の向上が大切です。 化膿性関節炎の治療法と術後のケア 化膿性関節炎の治療法は、感染の原因となる細菌を特定するために関節液の採取と培養がおこなわれた上で、適切な抗生物質が投与されます。 また、感染によって関節に溜まった膿を除去するために、関節の洗浄が必要となるケースもあります。 治療後は、関節の可動域を回復させるためのリハビリが重要です。 リハビリを通じて、痛みの管理や筋力の回復を図り、日常生活における関節の負荷を軽減できるかが求められます。 化膿性関節炎は、早期に適切な治療を受けると、予後が良好になる可能性が高く、症状が疑われる場合には早急な対応が必要です。 以下の記事では、より具体的に治療法を解説しているので、あわせてご覧ください。 化膿性関節炎のリハビリ内容 化膿性関節炎のリハビリは、痛みや炎症の管理・可動域訓練・筋力増強訓練の3つを軸におこないます。 とくに、痛みや炎症を悪化させないのが大切になるため、順番に解説していきます。 痛みや炎症の管理 化膿性関節炎のリハビリにおいて、炎症の管理が非常に重要です。 炎症が関節の痛みや腫れを引き起こして可動域を制限するため、リハビリ初期では炎症を抑えることに重点を置きます。 具体的なリハビリ内容は、冷却療法を用いた方法が一般的です。 氷や冷却パックを患部に当てる方法で、一時的に痛みを和らげる効果が期待できます。 可動域訓練 化膿性関節炎で手術による関節内洗浄と骨の一部を切除した場合などは、可動域訓練が重要です。 骨の切除により関節は少なからず不安定になっており、関節固定術を実施した人は関節可動域が制限されやすいためです。 リラクゼーションも併用し、組織の柔軟性を高める必要があります。 近年では、切開範囲の小さい手術が多いものの、術創部付近はとくに硬くなりやすいため、入念に可動域訓練やリラクゼーションをおこないましょう。 筋力増強訓練 化膿性関節炎の術後では、筋力増強訓練も大切です。 手術後で固定期間が長くなるほど筋力は低下します。 とくに、下肢の筋肉は日常生活で欠かせないため、筋力を回復させることが重要です。 術後すぐは、可能な範囲で等尺性筋力増強訓練を実施します。炎症が落ち着いて関節が動くようになれば、自動運動・抵抗運動などを進めていきます。 リハビリの期間と予後 化膿性関節炎でおこなうリハビリの期間は、どのような治療をしたかによって異なります。 数週間から数カ月と、リハビリ期間の幅が広いのは、抗生物質の投与のみで治療が完了する患者様もいるからです。 一方で、関節や骨の破壊まで進行しており、切除した場合は、より時間がかかります。 参考として以下に、リハビリの期間や流れ、予後をまとめました。 リハビリ期間 リハビリの内容 術後翌日~1週間 関節周囲組織のリラクゼーションにより組織の柔軟性を高める 他動的な関節可動域訓練により拘縮の予防 等尺性筋力訓練により関節に負担をかけずに筋力強化 術後1~2週間 自動運動で関節の動きに伴う筋収縮の練習 荷重訓練により感覚入力を促して動作につなげる 術後2週以降 日常生活動作を練習し、元の生活になれる 応用動作練習で、バランスも取り入れた難易度が高いリハビリを行う ※炎症状態や年齢などの要因がかかわるため、リハビリの内容や期間は異なる場合があります。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けているので、気軽にご連絡ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 日常生活での注意点 化膿性関節炎のリハビリをする際、日常生活での注意点は、関節に負荷をかけないことが重要です。 ここからは、化膿性関節炎のリハビリを順調に進められるよう、注意点について詳しく解説していきます。 関節への負荷を減らす 化膿性関節炎になった人は、日常生活上での動作を工夫すると、関節への負荷を減らせます。 たとえば、立ったまま家事し続けるのではなく、合間に座って足を休めるのがおすすめです。 また、重量物を持ち上げるときに身体の近くで持ち上げると、各関節への負担を減らせます。動作にプラスして、サポーターを着用すると関節への負荷が軽減します。 サポーターは、関節周囲を圧迫して感覚入力を促し、関節を安定させる機能があるため効果的です。 ストレッチや筋トレをする ストレッチや筋トレをすると、負荷を分散しやすくなるため、関節を保護や再発予防ができます。 ストレッチをすることで、筋肉や股関節の柔軟性が増し、負荷が分散しやすくなります。また、筋力が少ないと関節が不安定になりやすいため、負荷も増加しやすくなるでしょう。 筋トレをおこなう際は、正しいフォームと適切な重量設定が重要です。無理をせず、医師や理学療法士の指導のもとでおこないましょう。 初期段階では、軽めの重りや自重を使ったエクササイズから始め、徐々に負荷を増やしていくのが理想的です。 活動性が高い趣味を楽しむための工夫 化膿性関節炎の術後でもハイキングやランニング、スポーツなど、活動性が高い趣味を再びやりたい人は多いでしょう。 ハイキングとランニングを例に、実施しておきたい筋トレを紹介します。 ハイキングでおすすめの筋トレ ハイキングでは、不整地を歩くためのバランス訓練、長距離を歩くための持久力訓練が大切です。 とくに、不整地で歩くのは足首によるコントロールが必要なため、柔らかいマット上で片脚立位を保持する練習が効果的です。 通常の地面よりバランスの難易度が高く、足首の協調性に向いています。 また、持久力訓練としてはハイキングに行くまでに実際に歩きたい距離を無理なく歩けるようにしておきましょう。 歩道で同じ距離を歩けないと、不整地に行ったときに疲れやすくて怪我のリスクも高まります。 ランニングでおすすめの筋トレ ランニングでは、関節に負荷がかからない筋トレがおすすめです。 そもそもランニングは、下肢への強い負荷が繰り返しかかります。 活動性の高いランニングを楽しむためには、立ち座りの動作をゆっくりおこなう訓練を取り入れましょう。ゆっくりおこなうと、股関節・膝関節・足関節周囲の筋肉を協調的にコントロール可能です。 リハビリでも改善しない化膿性関節炎はお気軽にご相談ください 化膿性関節炎は細菌が原因になるため、抗生物質の投与・関節内洗浄などの治療が重要です。 一方で、再び日常生活に戻り趣味を楽しむためには、適切なリハビリが必要になります。 リハビリでは、術後すぐは関節が固まらないようにリラクゼーション・関節可動域訓練を実施したのちに、徐々に筋力訓練を開始します。 また、日常生活レベルに戻れたとしても、退院後の定期的な筋トレも重要です。 ハイキングやランニングのような、活動性の高い趣味がなかったとしても、日常生活で不便に感じないよう、効果的なリハビリを実施しましょう。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けているので、お気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 化膿性関節炎のリハビリに関連したよくある質問 そもそも化膿性関節炎は何科で受診してもらうべきなの? 化膿性関節炎の受診は、多くの場合で整形外科での受診が推奨されています。 整形外科は骨や関節に関する疾患を専門とするため、化膿性関節炎の症状や進行状況を的確に評価し、必要な治療を提供できます。 また、化膿性関節炎が疑われる場合、迅速な診断と治療が重要であるため、初期症状を感じたら早急に医療機関で受診してもらうのをおすすめします。 化膿性関節炎は放置すると、関節の機能に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、早期の医療介入が鍵となります。 どの診療科を選ぶかは、症状や状態に応じて柔軟に考えるのが重要ですが、整形外科を起点にするのが一般的です。 リハビリをする上での注意点は? 化膿性関節炎のリハビリをする上で注意しておきたいポイントは、再感染と炎症の悪化です。 術後すぐに術創部に菌が入ると、再感染や別の感染症を引き起こす可能性があるため、触れないように注意しましょう。 また、早期から関節を動かしすぎると炎症につながるケースもあり、過度なリハビリは避けましょう。 その他、関節破壊が進んでおり、関節の手術をおこなった場合、荷重開始時期を慎重に決める必要があります。 以下の記事では、治療を早めるべき理由について深掘りしているので、あわせてご覧ください。
2024.09.30 -
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
関節の痛みや腫れ、発熱などの症状があり、日常生活に支障をきたしていませんか? これらの症状は、細菌が関節に侵入して発症する「化膿性関節炎」が原因かもしれません。 放置すると、関節の機能障害や敗血症などの重篤な合併症を引き起こす可能性がありますが、早期治療によって改善に期待ができます。 この記事では、化膿性関節炎の原因や症状、治療法と予防法まで詳しく解説します。 化膿性関節炎は早期発見・早期治療が重要となるため、ぜひ参考にしてください。 また、当院「リペアセルクリニック」では、膝の痛みの新たな治療法として、関節の幹細胞治療を行っています。膝の痛みや腫れの症状でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 化膿性関節炎とは「細菌が侵入して起こる感染症」 化膿性関節炎は、細菌が関節に侵入して炎症を起こす病気です。 主な原因として、黄色ブドウ球菌をはじめとした細菌感染が挙げられます。また、免疫力が低い高齢者や持病がある方も、感染リスクが高い傾向があります。 早期に治療を始めないと、関節の機能障害や後遺症を招く場合もあるため、感染経路や予防策を知ることが大切です。 本章では、それぞれの要因について詳しく解説していきますので参考にしてください。 主な原因菌は黄色ブドウ球菌 化膿性関節炎の原因として多いのが「黄色ブドウ球菌」と呼ばれる細菌の感染です。 普段は皮膚や鼻の中に存在する細菌ですが、免疫力が低下すると体内に侵入して感染を引き起こします。 近年では抗生物質が効きにくい薬剤耐性菌による感染も増加傾向にあり、治療が困難になるケースも出てきました。 化膿性関節炎に感染すると、関節の痛み・腫れ・発熱などの症状が現れるため、早急な治療が必要となります。(文献1) 皮膚の傷や注射・手術部位から発症 化膿性関節炎は、皮膚の傷や医療処置による傷口から細菌が侵入して発症するケースもあります。 とくに手術後や注射部位は感染リスクが高まりやすい状態です。 また、体の別の部分で起きた感染症から血液を通じて関節に細菌が運ばれることもあります。 感染を防ぐためには、傷口を清潔に保つなど適切な消毒が欠かせません。些細な傷でも丁寧なケアを心がけましょう。 高齢者や持病がある方は感染リスクが高い 高齢者や糖尿病などの基礎疾患がある方は、免疫力が低下していることが多く、化膿性関節炎のリスクが高まります。 たとえば、関節リウマチなどで免疫抑制剤を使用している方や、人工関節を入れている方は注意が必要です。 高齢者や持病がある方は、日頃からの体調管理や手洗い・うがいの徹底、定期的な健康チェックを意識しましょう。 関節痛はもちろん、体調の変化を感じたら早めに医療機関を受診してください。 化膿性関節炎の主な3つの症状 化膿性関節炎の主な症状には以下の3つが挙げられます。 関節の激しい痛みと腫れ 38度以上の発熱と全身のだるさ 関節を動かすと痛みが強くなる 放置すると悪化して関節に後遺症が出る場合があるため、症状を早期に把握し適切な治療を受けることが重要です。 化膿性関節炎の代表的な症状についてそれぞれ詳しく解説します。 関節の激しい痛みと腫れ 化膿性関節炎の最も特徴的な症状は、関節の激しい痛みと腫れです。 通常、膝や足首などの大きな関節に現れやすく、腫れた部分を触ると熱を持っているケースが大半です。 また、片方の関節に集中して現れるのも特徴的で、痛みが夜間に悪化する場合もあります。 化膿性関節炎の早期発見のためにも、これらの症状に気づいたら医師に相談してください。 38度以上の発熱と全身のだるさ 化膿性関節炎は関節症状と同時に、38度以上の高熱がでるのも特徴です。 感染により体内で炎症が起きているため、発熱と共に全身のだるさも感じるようになります。食欲不振や吐き気を伴うこともあるでしょう。 高熱が続く場合は重症化のサインかもしれませんので、すぐに医療機関を受診しましょう。 関節を動かすと痛みが強くなる 関節を動かすと痛みが増すのも、化膿性関節炎の特徴的な症状です。 歩行や階段の上り下りなど、日常生活の動作で痛みが悪化します。 また、痛みによって関節の可動域が制限され、思うように動かせなくなることもあります。 我慢して動かし続けると症状が悪化する恐れがあるため、痛みが強い場合は安静にして医師の診察を受けましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では関節痛の新たな治療法として、再生医療を提供しています。 辛い症状にお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 化膿性関節炎における3つの診断方法 化膿性関節炎の診断には、以下のようにいくつかの検査が必要です。 検査方法 目的 関節液の検査 細菌感染の有無を確認する 血液検査 CRPと白血球を調べる レントゲン、MRI 関節の状態を確認する また、関節液の検査や血液検査、画像検査など、複数の検査を組み合わせることで正確な診断が可能になります。 ここからは、それぞれの診断方法について詳しく紹介いたします。 関節液の検査で細菌を確認 関節液の検査は、化膿性関節炎を診断する上で重要な検査方法です。 細い針を使って腫れている関節から液体を採取し、顕微鏡で細菌の有無を調べます。 検査では細菌の種類も特定できるため、適切な抗生物質の選択にも役立つのがメリットです。 ただし、痛みを伴うこともあるため、局所麻酔を使用するケースもあります。 しかし、正確な診断のために必要不可欠な検査なので、医師の指示があった場合は受けるようにしましょう。(文献2) 血液検査でCRPと白血球を調べる 血液検査では、炎症の程度を示す「CRP」や、体内で細菌やウイルスと戦う「白血球」の値を確認します。 化膿性関節炎では、これらの値が通常よりも大幅に上昇するのが特徴です。 正常時の値や数値の解釈については以下の表でまとめています。 正常値 単位 数値の解釈 白血球 3.3~8.6 10³/μL 白血球は細菌やウイルスから感染を防ぐ役割があり、感染症やストレスで増加します。 赤沈(赤血球沈降速度) 男性:2~10 女性:3~15 mm/1h 血液内で赤血球が沈む早さを調べます。 炎症によりフィブリノゲンやグロブリンが増加すると赤血球沈降速度が早くなります。 CRP(C反応性蛋白) 0.14以下 mg/dL 炎症や感染、組織損傷により血液中に増えるタンパク質量のことです。 また、血液培養検査では血液中に細菌が侵入しているかどうかの確認もできます。 そのため、血液検査は化膿性関節炎の診断だけでなく、重症度を判断するためにも役立つといえるでしょう。 レントゲンとMRIで関節の状態を確認 レントゲンやMRIなどの画像検査では、関節の状態を詳しく調べることは可能です。 レントゲンは骨の異常や関節の破壊状態を確認するため、MRIは軟部組織の炎症や膿の貯留状態を詳細に把握するために実施します。 診断だけでなく、治療経過の確認にも重要な役割を果たしており、定期的に撮影して状態の変化を観察していきます。 画像検査の詳細や必要性については以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしていただけると幸いです。 化膿性関節炎の3つの治療法 化膿性関節炎の代表的な治療法は以下の3つです。 抗生物質の投与 手術による関節内の膿の洗浄 リハビリテーション 症状や重症度に応じて、これらを組み合わせた治療を行い良好な回復が期待できます。 本章では、それぞれの治療法を詳しく解説しますので事前に理解しておきましょう。 抗生物質の投与 化膿性関節炎の治療では、抗生物質により原因菌を殺菌し、炎症を抑えます。 通常は2〜3週間ほど点滴で投与されますが、症状が改善すれば内服薬に切り替えることもあります。 ただし、効果が見られない場合や症状が重い場合は追加の治療が必要です。 手術で関節内の膿を洗浄 関節内に膿が溜まっている場合は、手術による洗浄が必要です。 化膿性関節炎の手術では、局所麻酔や全身麻酔で行われ、関節内の膿を除去して炎症を抑える効果に期待できます。 手術後には抗生物質の投与を継続し、安静にして関節の回復を促します。 リハビリテーション 治療の最終段階として、関節の可動域を広げ、筋力を回復させるためにリハビリテーションを行います。 理学療法士の指導のもと、初期は軽い運動からはじめ、徐々に負荷を増やすメニューに切り替えていきます。 焦らず段階的にリハビリを続けていけば、より確実な回復が期待できるでしょう。 また、化膿性関節炎のリハビリテーションについては、以下の記事でも紹介しています。詳しく知りたい方は併せてご覧ください。 化膿性関節炎が治るまでの期間や早期発見の重要性 症状の重さや治療の開始時期によって差はありますが、化膿性関節炎が治るまでの期間は基本的に6週間程度です。 早期発見と適切な治療で回復につながりますが、放置すると骨の破壊や敗血症などの深刻な合併症を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。 本章では、化膿性関節炎の治療期間や早期発見の重要性について解説します。 基本的な治療期間は6週間程度 化膿性関節炎の標準的な治療期間は約6週間です。 抗生物質による治療から始まり、症状の改善に合わせてリハビリテーションを進めていきます。 ただし、症状の程度や個人の体力によって治療期間は変動するのが一般的です。 完全な回復には個人差がありますが、医師の指示を守り焦らずに治療を続けていきましょう。(文献3) 骨が破壊され後遺症が出るケースがある 化膿性関節炎を放置すると、細菌の感染により関節の軟骨や骨が徐々に破壊されていきます。 1度破壊された骨や軟骨は完全な回復が難しく、関節の変形や動きの制限など後遺症として残る可能性があります。 痛みや腫れを感じたら、我慢せずに速やかに医療機関を受診しましょう。 敗血症を引き起こすリスクもあり 化膿性関節炎の危険な合併症の1つが敗血症です。 関節内の細菌が血液中に入り込み、全身に広がることで生命の危険も伴う深刻な状態に陥る可能性があります。 敗血症は、高齢者や免疫力が低下している方はとくにリスクが高く、発熱や関節の痛みが続く場合は要注意です。 早期発見・早期治療が予後を大きく左右するため、疑わしい症状があれば迷わず医師に相談してください。 また、当院「リペアセルクリニック」では関節痛の新たな治療法として、再生医療を提供しています。 関節の痛みや炎症といった症状にお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 化膿性関節炎を防ぐ4つの予防対策 化膿性関節炎を予防するためには、日頃からの適切なケアが重要です。 主に以下の4つを予防対策として意識してみましょう。 傷口は清潔に保つ 免疫力を高める生活を心がける 関節に負担をかけ過ぎない 日常的にストレッチを実施する 効果的な予防対策についてそれぞれ解説します。 傷口は清潔に保つ 傷口から細菌が侵入すると化膿性関節炎を発症するリスクが高まります。 そのため、傷を負った場合はすぐに流水で洗い流し、消毒液で適切な処置を行ってください。 とくに手術後や注射の跡は感染リスクが高いため、医師の指示に従って丁寧なケアが必要です。 また、包帯を使用する場合は定期的に取り替えて清潔に保ちましょう。 免疫力を高める生活を心がける 免疫力が低下すると、細菌感染のリスクが高まります。 そのため、バランスの良い食事と十分な睡眠を心がけ、適度な運動で体力の維持に努めてください。 ストレス解消も大切ですので、趣味や休養を適度に取り入れて生活リズムを整えていきましょう。 関節に負担をかけ過ぎない 過度な運動や無理な姿勢は、関節に余計な負担をかけてしまいます。 そのため、高齢者や関節に持病がある方は、無理のない範囲で活動する意識が大切です。 長時間同じ姿勢を続けることも避け、適度に休憩を取りながら活動してください。 また、過度な体重は関節への負担となりますので、適正体重の維持を心がけましょう。 日常的にストレッチを実施する 適度なストレッチは関節の柔軟性を保ち、血行を促進する効果があります。 朝晩の簡単なストレッチで、関節周辺の筋肉をほぐすことをお勧めします。 ただし、痛みを感じるような無理なストレッチは逆効果ですので、自分の体力に合わせて、ゆっくりと丁寧に行ってください。 ストレッチの継続によって、徐々に関節の可動域が広がり体調も整っていくでしょう。 まとめ|化膿性関節炎は早期発見が重要なので早めの受診を検討しよう 化膿性関節炎は、細菌感染によって引き起こされる病気で、関節の痛みや腫れ、発熱などの症状が現れます。 治療が遅れると、関節の機能に影響を及ぼす可能性があるため、早期発見・早期治療が重要です。 日頃から傷口を清潔に保ち、免疫力を高める生活を心がけ、関節に負担をかけすぎないように注意しましょう。 本記事を参考に、気になる症状があれば早めに医療機関を受診してください。 また、リペアセルクリニックでは、膝の痛みに対する新たな選択肢として関節の幹細胞治療を提供しています。 膝関節の違和感にお悩みの方は「メール相談」や「オンラインカウンセリング」にて当院へご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 化膿性関節炎に関するQ&A 化膿性関節炎は何科を受診すれば良いですか? 化膿性関節炎の治療は、整形外科の受診が適切です。 ただし、夜間や休日に急な症状が出た場合は、まず救急外来を受診しましょう。 また、原因となる感染症によっては内科医とも連携して治療を進めていきます。 かかりつけ医がいる場合は、担当医に相談して適切な医療機関を紹介してもらうのも良い方法です。 化膿性関節炎の入院期間はどのくらいですか? 化膿性関節炎の入院期間は通常2〜4週間程度ですが、症状の程度や治療経過によって変動します。 最初の1週間程度は抗生物質の点滴治療が中心で、症状が落ち着いてきたら徐々にリハビリを開始していきます。 退院後も通院での治療やリハビリが必要となりますが、仕事や日常生活への復帰時期は担当医と相談しながら決めていきましょう。 また、化膿性関節炎でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて当院へご相談ください。 参考文献一覧 文献1 外務省 海外安全ホームページ_薬剤耐性(AMR)について 文献2 日本医事新報社_化膿性関節炎[私の治療] 文献3 J-Stage_化膿性関節炎の治療経験(第1報― 膝関節)
2024.09.27 -
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ジャンパー膝(膝蓋腱炎)は、スポーツに取り組む方を中心に見られる疾患です。 とくにジャンプ動作が伴う競技では頻繁に見受けられます。 しかしジャンパー膝の症状や重症度、診断方法は、あまり知られていません。また初期症状などがほかの疾患と類似しており、判断するのが難しい部分もあります。 本記事ではジャンパー膝の症状や診断方法、セルフチェックリストや有効なストレッチなどを解説します。 ジャンパー膝(膝蓋腱炎)とは? 膝蓋腱炎(ジャンパー膝)は、バレーボールやバスケットボールなどのスポーツで生じやすい膝蓋腱に起こる炎症で、慢性的な膝の痛みが特徴的です。 以下に症状や診断方法、リスク要因を詳しく解説します。 膝蓋腱炎の症状・重症度・診断方法 ジャンパー膝は、膝蓋骨(膝のお皿の部分)のすぐ下にある膝蓋腱にストレスがかかり、炎症が起こる疾患です。 典型的な症状はジャンプや走る動作、階段の昇り降りのときに生じる膝蓋腱の痛みで、痛みの程度により軽症と中等症、重症に分類されます。 ジャンパー膝の重症度の分類 軽症 スポーツの後や歩いた後に痛む 中等症 活動開始時と終わった後に痛む 重症 活動中や後の痛みで続行困難 ジャンパー膝の診断は問診や触診、MRI、超音波検査などを行います。 膝蓋腱を指で圧迫したときに痛みが強まることや、MRIや超音波による画像診断で筋肉や腱の変性が確認できることで確定診断とされます。 メール相談 オンラインカウンセリング ジャンプスポーツにおけるリスク要因 ジャンパー膝はバレーボールやバスケットボール、サッカーなど、ジャンプやダッシュの動作が多いスポーツで起こりやすいです。 膝蓋腱は大腿四頭筋(太もも前面の筋肉)につながる腱で、膝蓋骨と脛骨(すねの骨)に付き、膝関節を動かしたり地面からの衝撃を吸収したりしています。 大腿四頭筋の伸び縮みにともなって膝蓋腱が脛骨や膝蓋骨の動きをコントロールし、膝の曲げ伸ばしが可能となっているわけです。 スポーツをしているときのジャンプやダッシュ、ストップ、ターンなどの動作は、急激な膝の曲げ伸ばしを繰り返し起こします。 この状態が慢性的に続くと膝蓋腱にストレスがかかり、組織に小さな損傷や炎症が起こってジャンパー膝につながります。 ジャンパー膝が軽症や中等症のうちは医師に相談しながらスポーツの継続が可能です。 しかし、ストレッチやウォーミングアップ、活動後のアイシングなどをおこない、常に膝のケアに努める必要があります。 また、重症例で腱に断裂がある場合は手術が必要になる可能性もあるため、疑わしい症状がでているときに放っておくのは危険です。 関連記事:ジャンパー膝といわれる大腿四頭筋腱付着部炎の原因と治療 ジャンパー膝(膝蓋腱炎)の症状のチェックリストと適切な対応 ジャンパー膝の症状が疑われるときは、自分で膝蓋腱に刺激を加えながらチェックできます。 家でもできる膝蓋腱の状態を確認する方法とその評価の意味を解説します。 家でできる症状チェックテスト スポーツや活動時に繰り返し膝が痛むときは、一度セルフチェックをおこない、ジャンパー膝の症状がでているか確かめてみましょう。 以下の状態が当てはまる場合は整形外科に受診してください。 膝蓋腱をゆびで押してみる 膝を曲げた状態と伸ばした状態で膝蓋腱をゆびで軽く押してみましょう。 どちらの状態でも痛む場合はジャンパー膝を疑います。(※曲げた状態のほうが痛みは走りやすいです) うつぶせで膝を曲げる うつぶせの状態で膝を曲げ、踵をお尻に近づけてみましょう。 股関節まわりが地面から浮いた場合は、ジャンパー膝が生じている可能性があります。 ジャンプする 何度かジャンプしてみましょう。 跳躍と着地の瞬間いずれか、または両方で違和感や痛みが感じられた場合、ジャンパー膝の発症が疑われます。 また痛みの懸念からジャンプを避けた、思い切り飛ばずに加減した際も、同様にジャンパー膝の発症が疑われます。 足に力が入りにくい いつものように足に力が入るか確かめてみましょう。 力が入りにくいと感じた場合には、ジャンパー膝の発症が疑われます。 ジャンパー膝(膝蓋腱炎)が疑われる際の対応 ジャンパー膝が疑われる際は、ただちに診断を受けることをおすすめします。 ジャンパー膝は早期に対応すれば重篤な症状を呈する炎症ではありません。 しかし初期症状があるまま放置していると、痛みや腫れが悪化し、治療に時間がかかるようになります。 最悪の場合、腱の断裂が起こり、手術が必要になるかもしれません。 ジャンパー膝が疑われる場合は、可能な限りすみやかに医療機関で受診しましょう。 メール相談 オンラインカウンセリング ジャンパー膝(膝蓋腱炎)の治し方 ジャンパー膝の治療は以下の方法でおこなわれます。 物理療法|冷気や電気、低周波などを当てて、直接的に炎症の修復などを図る 体外衝撃波|特殊な衝撃波を当てて、痛みや痒みの緩和、患部の修復を図る リハビリ|大腿四頭筋を中心としたリハビリで、再発を予防する PRP(再生医療)|自己脂肪由来幹細胞などを用いて、患部の修復を図る PRP(再生医療)では、従来よりも容易にジャンパー膝を完治に導く期待があります。 興味がある方は以下を参考にしてください。 メール相談 オンラインカウンセリング ジャンパー膝(膝蓋腱炎)の痛みを緩和するストレッチ トレーニング前後のストレッチは、膝まわりの負担や痛みを減らすために重要です。 膝蓋腱の痛みを和らげる効果のあるストレッチや習慣づける方法を紹介します。 膝蓋腱を和らげる効果的なストレッチ 膝まわりやお尻の筋肉をストレッチで柔らかくすれば、膝蓋腱の負担軽減につながります。 以下の方法で大腿四頭筋やハムストリングス(太もも後面の筋肉)、殿筋(お尻の筋肉)のストレッチをおこないましょう。 必ず膝まわりに痛みがでない程度におこなってください。 大腿四頭筋のストレッチ ①床に両膝を伸ばして座った後、ストレッチをする側の膝を曲げて踵をお尻に近づける ②両手を床について身体を支えながら、上半身を後ろに倒して太もも前面の筋肉を伸ばす 大腿四頭筋のストレッチ(膝を曲げると痛む場合の方法) ①ストレッチをする側の膝を床につき、ストレッチをしない側の膝を立てて片膝立ちの姿勢になる ②上半身を起こしながら身体を前方に移動させ、太もも前面の筋肉を伸ばす ハムストリングスのストレッチ ①仰向けの状態でストレッチをする側の脚を上げる ②膝を伸ばしながら脚を胸に近づけ、太もも後面の筋肉を伸ばす 殿筋のストレッチ ①床に座り、ストレッチをする側の脚は膝を曲げて外側に開き、ストレッチをしない側の脚は後方に伸ばす ②上半身を前に倒しながらお尻の筋肉を伸ばす トレーニング前後のストレッチルーティン トレーニング前後では一つのストレッチを20〜30秒間かけておこない、10秒くらい休んだ後にもう一度施行しましょう。 とくに大腿四頭筋のストレッチは膝蓋腱にかかる負担が減るため、欠かさずおこなうことが大切です。 トレーニング前後のストレッチを習慣づけることで、ジャンパー膝の発症や再発の予防につながります。 メール相談 オンラインカウンセリング ジャンパー膝(膝蓋腱炎)を発症している際のテーピングテクニック 正しい方法でテーピングを施行すればスポーツや活動時における膝のサポートが可能です。 競技中の痛みを抑えるためにおこなう場合は必ず整形外科で専門家に相談しましょう。 以下に方法と注意点を詳しくお話しします。 膝のサポートに役立つテーピング方法 太さ50mmほどの伸縮性のあるテーピング(すねの上側から太ももの中間までの長さ)を3枚準備して以下のようにおこないます。 ①1枚目:膝を軽く曲げた姿勢ですねの外側から膝の内側、太ももの外側にかけて引っ張りながら貼る ②2枚目:膝の下から膝の外側、太ももの外側にかけて引っ張りながら貼る ③3枚目:1枚目のテープより少し上に重ねて、すねの外側から膝の内側、太ももの内側にかけて引っ張りながら貼る テーピングの正しいやり方と注意点 膝のサポートを目的としたテーピングは、運動に支障のない範囲で関節や筋肉の動きを制限させることが大切です。 テーピングをおこなうときは以下の内容に注意します。 外傷がある部位の接触を避ける 適切な巻き方でおこなう 正しい姿勢で巻く 巻くときにシワをつくらない 血管や神経、筋肉、腱の過度な圧迫は避ける パフォーマンスが低下するほど強く巻かない 水ぶくれや肌荒れ、かぶれ、湿疹などがないか確認する 適切な方法や姿勢でおこなわないと十分な効果が得られなかったり、逆効果になったりする可能性があります。 痛みが軽快しない、パフォーマンスが低下するなどの場合は正しいやり方でないこともあるので、一度見直してみましょう。 また、テーピングは肌に直接触れるため、汗で蒸れたりすると皮膚トラブルを起こしやすいです。 皮膚に外傷があったり、肌荒れやかぶれなどができた場合はできる限り接触を避けましょう。 予防策としてのトレーニング調整 スポーツを続けていく選手にとって、症状の再発や悪化の進行に対する予防策はかかせません。 ジャンパー膝の予防に向けたトレーニングや日常生活におこなう取り組みを紹介していきます。 適切なトレーニング方法とその頻度 ジャンパー膝の予防には、大腿四頭筋の筋力をきたえることが大切です。 また、過去の論文にはジャンパー膝に対するトレーニングに傾斜台上での片脚立ちスクワットが効果的であると報告されています。 トレーニングは症状が発症したばかりの時期はひかえ、専門家の指示のもとで痛みがない程度におこないましょう。 以下に方法を説明します。 大腿四頭筋の筋力トレーニング ①椅子に座り、膝を伸ばしたときに抵抗がかかるように足首と椅子の足をゴムバンドでつなぐ ②ゴムバンドによる抵抗を感じながら膝を伸ばす ③5秒ほど時間をかけて1回おこない、連続10回、1日2セットおこなう スクワット ①25度程度の傾斜台を準備し、降りの方向に顔を向けて立つ(※傾斜台がなければスロープの上や、踵に折りたたんだタオルを置いた状態でおこなう) ②片脚立ちになり、股関節と膝関節を曲げながらお尻を床に近づける。膝の位置が足の位置より前方に出ないように注意する ③股関節と膝関節を伸ばして片脚立ちの姿勢に戻る。10回連続でおこない、1日3セットほどおこなう。きつく感じるようであれば必要に応じて手すりなどを持ちながらおこなう。 再発防止のためのエクササイズと日常生活の調整 日常生活で膝のケアをおこないながら症状の再発や悪化の進行を防ぎましょう。 バンドを装着する ジャンパー膝の治療として、膝蓋腱の走行に横断して取り付けるバンド(サポーター)の装着が効果的です。 バンドによる膝蓋腱の圧迫は、腱の走行を変化させて負担を減らせることが明らかになっています。 スポーツや活動時の膝蓋腱の過剰なストレスが減り、痛みの緩和が期待できます。 患部の安静や練習を減らす 痛みが強いときはできるだけ患部の安静を保ち、ジャンプやランニングの練習を減らしましょう。 ジャンパー膝はジャンプ競技による膝のオーバーユース(使いすぎ)で生じることが多いので、活動量を減らすことで症状が軽快しやすいです。 重症化すると腱の断裂につながる可能性もあるため、痛みが強いときは無理をしないようにします。 練習後ににアイシングをおこなう 練習直後にアイシングを15〜30分ほどおこないましょう。 激しい運動の後は膝蓋腱により炎症が起きやすく、熱感や腫れが強まります。 できるだけ早く患部を冷やし、炎症を抑えることで症状の悪化を防げるわけです。 ジャンパー膝は皮膚から深い位置で起きている炎症なので、氷を入れた袋を弾性包帯で患部に巻きつけて固定すると効果的です。 ジャンプと着地の仕方を修正する 内股の状態で踏み切ったジャンプやバランスの悪い着地は、膝蓋腱のストレスを高める原因です。 ジャンプのフォームを客観的に確認したり、なわとびで正しいジャンプの方法を修得すれば、改善につながります。 硬い床を避ける底の厚いシューズも膝蓋腱の負担を減らせます。 炎症を抑える飲み薬やぬり薬などを使用する 痛みが強い場合は医師から処方された飲み薬やぬり薬、湿布などを使用しましょう。 医師の判断によってはステロイドの局所注射をおこなうこともあります。 炎症を抑える効果のある医薬品の使用で、スポーツや活動時の膝の痛みが抑えられます。 まとめ この記事ではジャンパー膝の概要やセルフチェックの方法、スポーツを継続するためのケアをお話ししました。 ジャンパー膝の痛みに悩まされてる方は以下の内容を守り、より長くスポーツを楽しめるようにしてください。 メール相談 オンラインカウンセリング 膝蓋腱炎の総合的な管理法 ジャンパー膝の症状に付き合いながらスポーツを続けていくためには、ストレッチやアイシングなどで、トレーニング前後に膝をケアするのが大切です。 また、発症や再発、重症化をを防止するためにも、専門家の指示のもと傾斜台でのスクワットもおこないましょう。 痛みが強い場合は安静にしたり、ジャンプのフォームを修正したりするのも重要です。 専門家との連携と更なる情報ソース ジャンプ競技への復帰や継続は必ず専門家と相談しながら決めていきましょう。 テーピングやトレーニングなどは症状の軽減や予防に効果がありますが、間違った方法でおこなわないためにも、専門家の指示を受けることが大切です。
2024.07.04 -
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
「膝に血が溜まる理由は?」 「転んで膝に血が溜まるときの治療方法は?」 膝関節血腫とは、さまざまな原因によって関節内に血が溜まる症状のことです。 なかには出血を繰り返すケースもあり、関節の破壊につながる可能性もあります。 どの年代にも生じる可能性がある症状ですが、適切な治療法や対策を行うと改善や予防が可能です。 この記事では、膝に血が溜まる理由や治療方法を始め、自宅でできる運動の対策をお話しします。 症状があるときは必ず医療機関を受診しましょう。医師に相談しながら、予防法として日常生活での運動も取り入れてみてください。 膝に血が溜まる理由とは【膝関節血腫について】 膝関節血腫は膝関節まわりの組織が出血し、関節内に血が溜まる症状です。 膝関節血腫が起こる理由は、以下の2つに分けられます。 外傷性のもの:主にスポーツによるけがで起こる 反復性のもの:特定の要因で繰り返し起こる 外傷性膝関節血腫は、靭帯や半月板、滑膜の損傷や骨折により組織が出血すると発症します。前十字靭帯損傷や半月板損傷、内側側副靱帯損傷などで起こる場合が多いです。 一方、反復性膝関節血腫は、変形性膝関節症(※)による人工関節の手術や血友病(※)、血液凝固薬(血液をサラサラにする薬)などの使用により、関節内が出血しやすい状態となり再発を繰り返す症状です。 原因は人工関節の手術が一番多く、手術で0.17〜1.6%の確率で起こるのがわかっています。 外傷性の症状は、けがの回復とともに改善していきます。 しかし反復性の症状は、放置すると炎症により関節内の滑膜(※)がダメージを受け、関節の機能を破壊させる恐れがあるため、場合によっては手術の適応となります。(文献1)(文献4)(文献5) 【各用語の解説】 ※変形性膝関節症:膝関節内にある軟骨が加齢ですり減り、膝関節が変形する病気。 膝に痛みがみられるため、膝を動かしたり、歩いたりするのが困難になる ※血友病:血を止める仕組みが生まれつき上手く働かず、出血しやすくなる病気(文献3) ※滑膜:関節包をおおう膜状の組織。 滑膜から分泌される関節液が、関節の動きをなめらかにする油のような役割をもつ 関節内の出血を繰り返した際に起こる「友病性関節症」の詳細については、以下の記事が参考になります。 膝に血が溜まるときの症状と診断方法 膝関節血腫の症状は、膝の痛みや腫れ、熱感、関節可動域制限などです。 診断は整形外科でMRIや超音波検査を行い、画像で血腫の存在を確認します。 外傷性の症状は、受傷後すぐに出る場合がほとんどです。ただ、人工関節の手術による症状は、術後数カ月〜数年後に初めて出る場合が多い傾向にあります。 膝に血が溜まるときの治療方法【転んだときにも】 膝に血が溜まるときの治療方法として、自宅での初期対応のケアを始め、医療機関で適切な治療を行うと改善を図れます。 転んだときは必ず医療機関を訪れるようにしながら、今後の治療方法を知るためにも参考にしてみてください。 ・ 自宅でできる初期対応 医療機関での治療オプション 自宅でできる初期対応 症状が出現した直後に自宅でできる対応は、患部の安静や冷却、圧迫などです。 初期対応ができると、膝関節まわりで起きている炎症を抑え、症状の回復を早める効果が期待できます。 ただし、安静の時間が続くと患部の筋力低下が進みます。足首や足の指を積極的に動かして予防に努めるのも大切です。 医療機関での治療オプション 医療機関では、関節内に注射針を刺して血を吸引したり、血液凝固薬の内服を中止させたりします。 しかし、治療を行っても大きな改善がなく出血を繰り返す場合は、炎症が起きている滑膜を切除する手術や、選択的動脈塞栓術を選択するケースがあります。 選択的動脈塞栓術とは、血管を塞いで膝関節内の出血を抑える手術です。 足に局所麻酔を行ったあと、血管内にカテーテルを挿入して出血している血管を見つけ、血を止める物質を挿入します。(文献2) 選択的動脈塞栓術は、出血の原因となっている血管だけを塞ぐため、再発を繰り返していた血腫の改善にも期待できます。(文献6)(文献7) 膝に血が溜まるのを予防する運動方法 膝関節血腫を予防するには、日常生活で膝を守る運動を行いましょう。以下では、自宅でできるストレッチやトレーニングの運動方法を解説します。 無理をしないように注意しながら、必ずかかりつけの医師に相談して運動を行ってみてください。 ※現在、膝関節血腫の症状がある方は、けがの経過をみながら歩行を再開する必要があるため、自己判断で運動をせず医師の指示にしたがいましょう 膝蓋骨のモビライゼーション ハムストリングスのストレッチ 大腿四頭筋のストレッチ ハーフスクワット 膝関節伸筋の筋力トレーニング 膝関節屈筋の筋力トレーニング 膝蓋骨のモビライゼーション 膝関節血腫を予防するには、膝蓋骨の動きや膝まわりの筋肉を柔らかく保つのが大切です。 【膝蓋骨のモビライゼーションのやり方】 1.膝を伸ばしながら座り、両手の親指とひとさし指で膝蓋骨をつかむ 2.膝蓋骨を上下や左右に動かす ※動かし方によっては痛みが生じる場合がありますので、専門家の指示のもと行いましょう ハムストリングスのストレッチ ハムストリングスとは、太ももの後面についている筋肉です。大腿四頭筋(太ももの前面についている筋肉)を含めてストレッチを行いましょう。 【ハムストリングスのストレッチのやり方】 1.両膝を伸ばしながら床に座り、ストレッチする側の足の裏にタオルをかける 2.両手でタオルをひっぱりながら足首をお腹側にそらし、太もも後面の筋肉を伸ばす 3.太もも後面の筋肉が伸び、痛みのない状態で20秒キープする。 繰り返しながら3セット行う ※目的とする筋肉以外の部分に、痛みが出る場合は控えましょう 大腿四頭筋のストレッチ 【大腿四頭筋のストレッチのやり方】 1.うつ伏せの状態になり、ストレッチする側の膝をお尻側に曲げる 2.太もも前面の筋肉が伸びた位置で、20秒キープする。 繰り返しながら3セット行う ※目的とする筋肉以外の部分に、痛みが出る場合は控えましょう また、日常生活では以下の点に注意しましょう。 立ち姿勢やジャンプの着地で膝を内側に向けるのを避ける 膝まわりが熱くなったり、痛みが出たりするときは、激しい動きを避けて冷却する 日常生活で膝への負担を減らせると、けがや再発の予防にもつながります。 ハーフスクワット ハーフスクワットは、太もも前後面やお尻の筋肉を鍛えたいときにおすすめです。膝を守るためにも、膝を支えている筋肉のトレーニングを行いましょう。 【ハーフスクワットのやり方】 1.足を肩幅に広げて立つ(※膝関節はつま先と同じ方向に向ける) 2.股関節と膝関節を曲げながら、お尻を膝より少し上の高さまで下ろす。 お尻を下ろしたときに、膝の位置がつま先より前方に出ないように注意する 3.太もも前後面やお尻の筋肉のはたらきを感じながら10回、1日2セット行う ※実施の可否、回数については専門家と相談してみてください 膝関節伸筋の筋力トレーニング 膝を伸ばすトレーニングも効果的です。 【膝関節伸筋の筋力トレーニングのやり方】 1.椅子に座り、膝を伸ばしたときに抵抗がかかるように、 足首と椅子の足をゴムバンドでつなぐ 2.ゴムバンドによる抵抗を太もも前面で感じながら、ゆっくり膝を伸ばす 3.10回を1セットとし、1日2セット行う ※実施の可否、回数については専門家と相談してみてください 膝関節屈筋の筋力トレーニング 【膝関節屈筋の筋力トレーニングのやり方】 1.うつ伏せの状態になり、トレーニングする側の足首におもりを巻きつける 2.おもりによる抵抗を太もも後面で感じながら、ゆっくりと膝を曲げる 3.10回を1セットとし、1日2セット行う ただし、上記で紹介してきた運動は、膝に痛みや熱感があるときに行うと、炎症を悪化させる可能性があります。 症状が落ち着いている時期に、かかりつけの医師や専門家に相談しながら、無理のない範囲で行いましょう。 膝に血が溜まる症状に悩まれておられる方は、再生医療による治療方法もございます。 膝まわりに関して気になる症状があるときは、当院のメールや電話にてお気軽にご相談ください。 参考:堀部秀二.明解 スポーツ理学療法.1版.三輪書店.2021.248p.P122−125,152(文献8) まとめ|膝に血が溜まるのを予防するには運動が大切 膝関節血腫には、スポーツによるけがで起こる外傷性のものを始め、特定の要因で繰り返し起こる反復性のものがあげられます。 どちらも、膝の痛みや腫れ、熱感、関節可動域制限などの症状が起こります。 膝に血が溜まる症状が出たときは状況に応じて、関節から血腫を吸引する治療などを行う流れです。再発を繰り返す場合は、選択的動脈塞栓術を行う可能性もあります。 膝関節血腫を予防するには、かかりつけの医師に相談しながら、日常生活で膝関節を支える筋肉のストレッチやトレーニングを行いましょう。 膝まわりのお悩みを抱えている方は、当院にぜひ一度ご相談ください。 【リペアセルクリニックへのご相談方法】 メール相談 来院予約 電話相談:0120-706-313(オンラインカウンセリングの予約) 膝に血が溜まる理由に関わるQ&A 膝に血が溜まる理由に関わる内容について、よくある質問と答えをまとめています。 Q.膝関節血腫はいつ治りますか? A.外傷性の症状は、けがの発症から2〜3週間程度です。 反復性の症状は、再発を繰り返す点から長期にわたりやすく、数カ月〜数年かかる可能性もあります。 症状が長引くほど、関節の破壊につながりやすいため、専門外来を受診していただくのをおすすめしています。 Q.膝に血がたまったら歩くのは避けたほうが良いですか? A.外傷性の場合は、けがの経過をみながら歩行を再開する必要があるため、医師の指示にしたがいましょう。 けがをした直後は、松葉杖で歩いていただく場合もあります。 反復性の場合で症状があるときは、できるだけ安静に過ごして、歩くのは日常生活で必要な移動程度にとどめましょう。 参考文献 文献1 整形外科シリーズ14 膝靭帯損傷 文献2 人工膝関節全置換術後の反復性関節内血腫に対して経カテーテル的動脈塞栓術を行った3例 文献3 一般社団法人 日本血液製剤機構「血友病とは?」 文献4 日本整形外科学会 膝関節捻挫 文献5 スポーツ損傷シリーズ 6.膝前十字靭帯損傷 文献6 人工膝関節置換術後に反復する関節内血腫に対し,関節切開下滑膜切除を行った一例 文献7 Selective arterial embolization with gelatin particles for refractory knee hemarthrosis 文献8 明解 スポーツ理学療法 Takuji Yamagami, Rika Yoshimatsu, Hiroshi Miura, et al.Selective arterial embolization with gelatin particles for refractory knee hemarthrosis.Diagn Interv Radiol. 2013. 9(5). p423-426
2024.06.20 -
- 大腿骨骨頭壊死
- 肩関節、その他疾患
- ひざ関節
- 股関節
- 膝部、その他疾患
「大腿骨頭壊死とは?」「ステージごとにどのような症状が生じるの?」 上記のように、大腿骨頭壊死のステージ分類が気になっている方もいるでしょう。 大腿骨頭壊死とは、骨に栄養を届けている血管が障害されて血液が供給されなくなってしまった結果、骨の一部分が壊死してしまう病気です。 本記事では、大腿骨頭壊死のステージ分類や症状を紹介します。大腿骨頭壊死だけでなく、上腕骨頭壊死や膝関節骨壊死も解説しているので、骨壊死を詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。 大腿骨頭壊死は「骨頭壊死症」の一種 大腿骨頭壊死とは「骨頭壊死症」の一種です。 骨頭壊死症とは、骨に栄養を届けている血管が障害されて血液が供給されなくなり、骨の一部分が壊死する病気です。 ただし、原因は血液供給がなくなるだけでなく、以下のような原因も発症に関係していると考えられています。 怪我などの外傷による血管の障害 アルコール摂取 ステロイド使用者 また、骨壊死は全身のあらゆる骨に起こり得ます。 代表的な部位は、股関節の大腿骨頭に起きる「大腿骨頭壊死」、肩関節の上腕骨に起こる「上腕骨頭壊死」、「膝関節骨壊死」などがあります。 股関節と肩関節は、大腿骨頭・上腕骨頭と呼ばれる部位があるため、「骨頭壊死」と病名が付くのが特徴です。 一方で、膝関節は骨頭と呼ばれる部位がないため「骨壊死」が病名となります。 大腿骨頭壊死のステージ分類と原因 大腿骨頭壊死は、1〜4のステージに分類されます。ステージによって、進行度合いが異なり、ステージが上がる度に症状も顕著になっていくのが特徴です。 ここからは、大腿骨頭壊死のステージ分類と原因を詳しく解説していきます。 大腿骨頭壊死から進行・変形性股関節症へのステージの分類 大腿骨頭壊死のステージ分類は、以下の通りです。 ステージ1:レントゲンで異常がなく、MRI検査などで壊死がわかる状態 ステージ2:レントゲンで異常があるものの、骨頭が潰れていない状態 ステージ3:骨頭が潰れているものの、関節軟骨があり関節の隙間が残っている状態 ステージ4:軟骨がすり減り、変形性股関節症となっている状態 大腿骨頭壊死のステージ分類の特徴は、大腿骨頭の壊死部分が進行し、軟骨がすり減ると「変形性股関節症」を発症する点です。 ステージ3までは、関節軟骨があり、関節同士に隙間があるものの、さらに進行すると、関節同士の隙間がなくなってしまいます。 関節同士の隙間がなくなると、大腿骨頭壊死から変形性股関節症になる点を理解しましょう。 大腿骨頭壊死の重症度分類 原因不明である「特発性骨頭壊死」は、壊死の範囲によって重症度分類がありType A〜Cに分けられます。 重症になるほど、壊死範囲が大きくなり、大腿骨頭が潰れるリスクは高くなるのが特徴です。大腿骨頭壊死の重症度分類は以下のとおりです。 Type A:壊死範囲が体重のかかる領域の1/3未満 Type B:壊死範囲が体重のかかる領域の1/3〜2/3 Type C:壊死範囲が体重のかかる領域の2/3以上 Type C-1:壊死の範囲が骨盤の縁の「内側」にあるもの Type C-2:壊死の範囲が骨盤の縁の「外側」にあるもの Type Aが軽症でCになるとより重症となります。さらにTypeCは、より重症なC-1とC-2に分けられるのが特徴です。 大腿骨頭壊死の原因 大腿骨頭壊死の原因は、主に以下があげられます。 股関節を構成している大腿骨頭に流れている血管の障害 骨折や脱臼などの外傷 放射線治療 潜函病 股関節を形成している大腿骨頭に血液が供給されなくなると、大腿骨頭壊死を発症するケースが多い傾向にあります。 しかし、なかには、原因不明で突発的に大腿骨頭壊死を発症する可能性もあります。 \まずは当院にお問い合わせください/ 上腕骨頭壊死のステージ分類と原因 上腕骨頭壊死とは、上腕部分にある「上腕骨頭」と呼ばれる部位が壊死してしまう病気です。大腿骨頭壊死のように、他の病気に進行するケースはありません。 ここからは、上腕骨頭壊死のステージ分類と原因を詳しく見ていきましょう。 上腕骨頭壊死の進行・ステージ分類 上腕骨頭壊死のステージ分類は、以下のとおりです。 ステージ1:レントゲンで異常がなく、CTやMRI検査で壊死がわかる状態 ステージ2:骨透亮像や骨硬化像、限局性の骨溶解像がみられる状態 ステージ3:軟骨下骨に骨折線を認める状態 ステージ4:上腕骨頭に加えて、肩甲骨の関節窩にも骨の変化を生じている状態 ステージが上がり末期になると、薬物療法や保存療法では治せない可能性が高まります。 末期ステージになると、骨切り術や人工関節を挿入する手術療法が行われるケースもあります。 ただし、治療方法はステージ分類だけでなく、症状や年齢などさまざまな要因によって決まるため、一概に治療方法は断言できません。 上腕骨頭壊死の原因 上腕骨頭壊死の原因は、主に以下があげられます。 肩関節を構成している上腕骨頭に流れている血管の障害 骨折や脱臼などの外傷 ステロイドの使用 アルコール 鎌状赤血球症・関節リウマチ・全身性エリテマトーデスなどの全身性疾患 骨折や脱臼などの原因は外傷性と呼ばれています。一方でステロイド使用や全身性疾患などは、非外傷性に分類されるのが特徴です。 \まずは当院にお問い合わせください/ 膝関節骨壊死のステージ分類と原因 膝関節骨壊死は、名前の通り膝関節の骨が壊死してしまう病気です。 膝関節と呼ばれているものの、太ももの内側に壊死が起こる症例が多いため「大腿骨内顆骨壊死」と呼ばれるケースもあります。 また膝関節骨壊死は、60歳以上の女性に多く見られるのが特徴です。 ここからは、膝関節骨壊死のステージ分類と原因を紹介します。 膝関節骨壊死の進行|ステージ分類 膝関節骨壊死のステージ分類は、以下のとおりです。 ステージ1:レントゲンで異常がみられない状態 ステージ2:レントゲンで骨内に壊死領域がみられる状態 ステージ3:レントゲンで軟骨の下に骨折線があり、関節面が凹んでいる状態 ステージ4:関節の隙間が狭くなってしまっている状態 ステージが進むと、膝関節骨同士の隙間が狭くなるのが特徴です。膝関節同士が狭くなる病気として、膝関節骨壊死の他に、変形性膝関節症があげられます。 両病気とも、初期ステージの症状だけで判別するのは難しい傾向にあります。 レントゲン検査で、膝関節骨壊死か変形性膝関節症かを判別できるため、膝に痛みを抱いている方は、速やかに医療機関を受診するのがおすすめです。 膝関節骨壊死の原因 膝関節骨壊死の原因は、主に以下があげられます。 肩関節を構成している上腕骨頭に流れている血管の障害 軽微な骨折 肥満ステロイド薬の使用 大腿骨頭壊死や上腕骨頭壊死と同様に、明確な原因は判明していませんが、上記のような要因によって膝関節骨壊死が起こると考えられています。 肥満体型によって、膝関節に負担がかかるのも、膝関節骨壊死を発症させるリスクがあります。 肥満は、変形性膝関節症のリスクも高めるため、食事管理や運動習慣を身に着け、減量を目指しましょう。 大腿骨頭壊死のステージ分類の診断方法 大腿骨頭壊死のステージ分類の診断は、主にレントゲン検査やMRI検査で行われます。 基本的レントゲン検査だけで大腿骨頭壊死の患部は確認できますが、早期の骨壊死を確認するには、MRI検査が必要になります。 レントゲン検査やMRI検査では、骨が潰れていたり、壊死が進行していたりするかを確認可能です。変形性股関節症や変形性膝関節症の判断もできます。 また、血液凝固疾患をはじめとした基礎疾患を確認するために、血液検査を行うケースもあります。 大腿骨頭壊死の予防方法 大腿骨頭壊死の予防方法は、以下があげられます。 ステロイド薬の使用に注意する 過度な飲酒や喫煙は控える 股関節への負担を軽減する ステロイド薬を長期的に使用していると、大腿骨頭壊死のリスクが高まると考えられています。 ステロイド薬を使用する際は、自己判断で使用したり、量を調整したりするのは控えましょう。 他にも飲酒や喫煙も大腿骨頭壊死の発症にかかわっているとされているため、できるだけ避けてください。 また、肥満体型の方は、股関節への負担を軽減するため、体重減量を目指しましょう。 長時間の立ち仕事や、重い荷物を持つ仕事も、股関節の負担となるため、注意が必要です。 大腿骨頭壊死(骨壊死)治療法・保存療法 大腿骨頭壊死の治療は、保存療法や手術療法があげられます。 治療方法は、進行ステージやライフスタイル、年齢などを考慮して決められます。 ここからは、大腿骨頭壊死の治療法を4つ見ていきましょう。 保存療法 保存療法とは、リハビリテーションや薬物療法が代表的です。リハビリテーションでは、股関節にかかる負荷を抑えるため、体重管理が行われるケースもあります。 股関節の可動域を維持し、筋力を強化するために、ストレッチや筋力トレーニングも行われます。リハビリテーションの期間は一般的に、医療保険で対応できる150日が目安です。 なお、保存療法は、あくまでも症状を和らげる手段であり、骨壊死を治癒させるのは不可能である点に留意しておきましょう。 骨切り術 骨切り術は、大腿骨頭の壊死した部分へかかる負荷を抑えるため、骨の一部を切って角度を変える手術を指します。 病気の進行を遅らせ、股関節の機能を温存するのが目的であり、比較的若い方や病気の進行が初期から中期の方に適用されます。 ただし、骨切り術は難しい手術方法であり、医師の高いスキルや医療機関の充実した設備が必要です。 術後は、最長6カ月間松葉杖を使用したり、長期間リハビリテーションをしたりしなくてはならない点に留意しておきましょう。 人工関節 人工関節置換術は、壊死した大腿骨頭を人工関節に置き換える手術です。骨壊死により関節の多くが潰れてしまっているケースに適用されます。 人工関節置換術は、痛みを大幅に軽減し、股関節の機能の改善を期待できます。 リハビリテーションは必要ですが、入院期間は10日ほどと短いのが特徴です。ただし耐用年数の問題で、若い方に行うのは避けるべきとされている点に留意が必要です。 人工関節は脱臼リスクもあるため、メリットだけでなくリスクも理解して検討しましょう。 再生医療 大腿骨頭壊死の治療には、幹細胞治療やPRP治療などの再生医療もあげられます。 再生医療における「幹細胞治療」は、自身の幹細胞を使い、損傷した組織や細胞の修復を手助けする方法です。 「PRP療法」も再生医療の1つで、血液に含まれる血小板を用いて治療を行います。 どちらも患者様自身の幹細胞や血液を用いるため、副作用のリスクが少ないのが特徴です。また、再生医療では手術や入院を必要としません。 大腿骨頭壊死でお悩みの方は、再生医療を視野に入れてみてはいかがでしょうか。 まとめ|大腿骨頭壊死のステージ分類とは?治療方法やよくある質問も紹介 骨壊死は、骨に栄養を供給している血流が途絶えることが原因で発症します。 大腿骨頭壊死をはじめ、上腕骨頭壊死や膝関節骨壊死も進行具合に合わせ、ステージに分類されます。 なかでも、大腿骨頭壊死や膝関節骨壊死は、ステージが上がると、変形性股関節症や変形性膝関節症につながるのが特徴です。 また、大腿骨頭壊死は、ステロイドの使用やアルコール摂取などが発症にかかわっていると考えられていますが、明確な原因は判明していません。 悪化を防ぐためにも、痛みや違和感を抱いている方は、早めに医療機関を受診しましょう。 リペアセルクリニックでは、幹細胞治療やPRP治療をはじめとした再生医療を提供しています。再生医療にご興味のある方は、ぜひ一度、当院へご相談ください。 大腿骨頭壊死に関するよくある質問 骨壊死にならないか心配ですが、気を付けることはありますか。 現代医学でも骨壊死の正確な原因はわかっていません。危険因子としてわかっているのは外傷、ステロイドの使用、アルコール多飲です。 ステロイドは、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど全身性疾患の治療に必要なため、飲まないことはおすすめしませんが、外傷やアルコールはご自分で気を付けられます。無理な運動は行わず、規則正しい生活習慣を送るのが予防に必要と言えるでしょう。 レントゲンで問題ないと言われましたが、大丈夫でしょうか。 骨壊死は初期の段階ではレントゲンで異常がわからないケースがほとんどです。壊死した領域がレントゲンでわかるまでは時間がかかりますが、MRI検査では早期に病気を見つけられます。 痛みが強く心配な場合は、MRI検査や精密検査について担当の医師と相談するのがおすすめです。 大腿骨頭壊死と診断されたらスポーツはできませんか? 大腿骨頭壊死を発症後、スポーツができるかは、進行度合いによって異なります。 壊死の範囲が小さく、悪化リスクが低ければ、問題なくスポーツができるケースもあります。 しかし、壊死の範囲が広いと、股関節にかかる負担が大きくなるため、スポーツが制限される可能性がある点に注意が必要です。 体への負荷が少ないスポーツは許可されやすいですが、ジャンプをしたり、走ったりするスポーツは制限されやすい傾向にあります。 大腿骨頭壊死は医療費補助の対象になりますか? 明らかな原因がない「特発性大腿骨頭壊死」は、医療費補助の対象となります。特発性大腿骨頭壊死は、指定難病に分類されているためです。 特発性大腿骨頭壊死と診断された場合は、医療機関に医療費補助の手続き方法を相談しましょう。 \まずは当院にお問い合わせください/
2023.10.02 -
- 関節リウマチ
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
関節リウマチは全身の関節に炎症が起こり、痛みや腫れを起こす病気です。 進行すると関節の変形や機能の障害を残してしまいます。 関節リウマチでは膝の痛み、膝の腫れも多い症状です。 膝が痛いとき、変形性膝関節症と考え「年のせいでは?」と悩んでいる方もいるでしょう。 もし関節リウマチだった場合に放置していると、悪化してしまう可能性もあります。 この記事では関節リウマチによる膝関節炎の症状や治療法について解説していきます。 膝の痛みでお困りの方はぜひ参考にしてみてください。 膝の関節炎とリウマチの違い 関節炎とリウマチの違いは、大きく分けると以下の通りです。 関節炎 さまざまな原因で関節に起こる炎症の総称 リウマチ 関節炎を起こしている症状の1つ たとえば関節リウマチでは、自分の体を細菌やウイルスから守る免疫の異常によって関節の滑膜に炎症が起こります。 関節リウマチが起こると痛みや腫れを感じるでしょう。 関節リウマチは無治療のままで放置してしまうと、関節が変形など機能的な障害をきたすので注意しましょう。 以下の記事では関節炎の1つ「化膿性関節炎」について解説しています。 治療法や再発予防もまとめたので、具体的な症状なども把握しておきたい方は、ぜひご覧ください。 リウマチが発症する主な原因や症状 関節炎とリウマチの違いが理解できても「気づかないうちに痛みを感じるようになった」方もいるでしょう。 ここからは、リウマチになる主な原因と症状を順番に解説していきます。 関節リウマチの主な原因 関節リウマチの多くは40〜60歳代頃の中高年女性に発症します。 正確な原因はまだ明らかになっていませんが、自己免疫疾患とも言えるでしょう。 自分の組織に対して攻撃する抗体が作られてしまい、関節内の滑膜にリンパ系の細胞が集まって炎症性の物質が作られるのが原因とも考えられています。 【リウマチの発症が疑われるサイン】 起床時に関節部分がこわばっているように感じる 関節が腫れている 関節が熱っぽい 力が入りにくい 日常生活の作業が上手くいかない 家族にリウマチの患者がいる など 上記の症状が感じられる方はリウマチになっている可能性があるので、しっかり検査しておきましょう。 発症には遺伝的な要因や喫煙、歯周病などが関連しているとわかっています。 発症すると関節炎によって痛みや腫れを起こし、進行すると関節の変形を生じてしまうため、早期の発見と治療が大切です。 リウマチによる膝関節炎の症状 関節リウマチで多い症状は手や足の指の腫れ、痛み、朝のこわばりなどです。 膝関節で滑膜が増殖して炎症を起こすと膝関節炎をきたしてしまいます。 膝関節炎の主な症状は以下の通りです。 膝が腫れる 膝に水が溜まる 歩くときや階段での痛みを感じる 膝が曲がらない など 膝の痛みは膝裏に起こるケースが多く、曲げ伸ばしのときに音が生じた経験もあるでしょう。 炎症が強い場合には安静にしていても歩けないくらいの激痛が生じる場合もあるので注意してください。 なお、リウマチはあくまで関節炎の1つなので、以下の表で似ている症状をまとめました。 病名 主な症状 膠原病(こうげんびょう) 関節に痛みを感じたり血管症などの症状がある 線維筋痛症 手足の関節だけでなく筋肉に激痛を感じるケースがある 比較的女性が発症しやすい 関節炎とリウマチの違いについてだけでなく、細かい症状の違いや治療法などが気になる方は、以下の記事で詳しく解説していきます。 膝関節炎を放置するリスク 膝の関節炎を放置しておくと、関節の軟骨がなくなってしまうだけでなく、徐々に関節の変形が進んでいきます。 日常生活を送る上で「多少の痛みだから」と放置しすぎてしまうと、膝の曲げ伸ばしが難しくなるので注意してください。 骨同士のぶつかりだけで痛みを感じる可能性もあるので、症状が悪化してしまいます。 関節の変形を生じさせないためにも、早期の発見と治療が大切です。 リウマチによる膝関節炎の診断方法 リウマチの診断は問診、身体診察と血液検査、画像検査などを組み合わせて総合的に行います。関節が腫れて、痛む病気は複数あり、検査だけで関節リウマチと診断できない場合があるからです。 関節リウマチの診断基準を使用して診断を行うので、専門家である医師の診断が必須となります。 現在では2010年に米国、欧州リウマチ学会が合同で発表した分類基準を使用するケースが大半です。(文献1) 以下の4項目についてそれぞれ点数をつけ、合計して6点以上であれば関節リウマチと診断します。 診断基準 症状がある関節の数 症状が続いている期間 血液検査での炎症反応の数値 血液検査でのリウマトイド因子や抗CCP抗体の数値 血液検査では、リウマトイド因子や抗CCP抗体が重要で、多くの関節リウマチで陽性になります。 しかし、両方とも陰性でも関節リウマチと診断されたり、陽性でも関節リウマチではなかったりもします。 炎症反応は活動性を反映する指標ですが、リウマチ以外でも上昇する可能性もあるので診断結果は要チェックです。 画像検査は診断基準には含まれませんが、単純レントゲン写真では「骨びらん」と呼ばれる骨の透亮像がみられる場合があります。 関節エコーやMRI検査も滑膜炎の範囲、程度を評価するのに有用です。 リウマチによる膝関節の治療法 リウマチによる膝関節の治療法は、日常生活で応急処置をする方法はもちろん、専門医から薬を処方してもらう方法などがあります。 ここからは、自宅でできる応急処置から薬物治療などの治療法を解説していきます。 体や関節を保温する 膝の関節炎だけでなく、体の関節が動かしにくいと感じた場合、患部を保温すると効果が期待できます。 冬場はもちろん、夏場の冷房があたるのも避け、長袖や長ズボンを着用しておくのがおすすめです。 患部を保温しておくと関節部分の血液がよく流れ、こわばりなどを症状を軽減する効果が期待できるのです。 関節が腫れている場合は炎症が起きている可能性があるので、保温以外の治療法を選択する必要があります。 以下の記事では、関節リウマチの初期症状や治療を詳しくまとめているので、あわせてご覧ください。 食事や姿勢などの私生活を見直す 関節リウマチの患者様は、食生活だけでなく姿勢改善などを普段から実施してもらうのがおすすめです。 症状を悪化させないためにも、以下のポイントには要注意です。 砂糖や加工食品を摂取しすぎない 激しい運動を控える 首に負担をかけない 同じ姿勢を長時間とる 重いものを持つ 正座をする 喫煙をする ストレスを溜める など 詳しい改善項目は、以下の記事でまとめているので、ぜひ参考にしてください。 専門医から抗リウマチ薬を処方してもらう リウマチの治療法は基本的に薬物治療です。 リウマチと診断した早期から、抗リウマチ薬を開始し、痛みの程度に応じて炎症を抑えるステロイドや、鎮痛薬を併用します。 薬物治療を開始しても膝関節炎の症状が続く場合にはサポーターを使用したり、膝関節に注射をしたりする方法があります。 日本リウマチ学会による2020年のガイドラインから代表的なお薬を以下の一覧でまとめました。(文献2) 抗リウマチ薬 メトトレキサート(第一段階) 生物学的製剤やJAK阻害薬(第二段階) 関節リウマチはこれまで治療が難しく、関節の変形が進行してしまう患者様も多かったのですが、現在では薬剤の種類も多くなっています。 効果が高いお薬もあるため、適切に治療すれば症状を抑えられます。 しかし、膝の関節炎が治まらず、関節の変形や破壊が進行した場合、人工関節置換術などの手術治療が行われるので不安に感じている方もいるでしょう。 膝の痛みは現在、⼿術をしなくても治療できる時代になっているので、気になる方は気軽にお問い合わせください。 まとめ・関節炎とリウマチの違いを把握して適切な治療を行おう! 関節リウマチによる膝関節炎は、日常生活に大きな影響を与える深刻な疾患です。 膝の痛みや腫れを放置すると、関節の変形や機能障害が進行し、歩行困難や日常生活の質の低下を招く恐れがあります。 しかし、早期発見と適切な治療を行えば、症状の進行を抑え生活の質を維持できます。 関節リウマチの診断には、問診や身体診察、血液検査、画像検査が用いられるので、専門医による診断が必須です。 リウマトイド因子や抗CCP抗体の検査結果が重要な診断指標となり、診断基準に基づいて総合的に判断されます。 自己判断で治療を中断したり放置したりせず、定期的な診察と検査を受けるよう心がけましょう。 日常生活では関節に負担をかけないように注意し、適度な運動やストレッチを取り入れるのも大切です。 関節リウマチの早期発見と適切な治療を通じて、健康的で快適な生活を維持しましょう。
2023.09.10 -
- お皿付近に違和感
- ひざ関節
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押すと痛い頭にコブができて困っている 押すと痛い頭のできもの(こぶ)の原因を特定したい 押すと痛い頭のできもの(こぶ)を早く治したい 上記のようなお悩みを抱えている方の一助となるべく、本記事では「膝関節捻挫」について解説します。 捻挫は適切な治療を行えば、問題なく日常生活に復帰できる怪我です。裏に潜む重大な怪我を見逃さないように、記事の内容をご確認いただき適切な医療機関を受診しましょう。 膝関節捻挫とは?原因・症状・治療法を解説 膝の曲げ伸ばしを安定して行うために重要な働きをしているのが、関節を包む袋である「関節包」と関節を支える組織である「靭帯」です。 関節包と靭帯がしっかりと機能しているおかげで、私たちの膝は本来動かない方向へ曲がらないように制御されており、体重をかけても安定して歩けます。しかし、運動中や転倒などにより、関節が通常の範囲を越えて動いてしまうことがあります。 この「関節包」や「靭帯」を痛めてしまった状態を捻挫といいます。ただし、「捻挫」と診断されるのは軽症の場合に限ります。損傷が強く、関節が不安定になった場合は捻挫ではなく靭帯損傷という診断になります。 膝関節捻挫の原因 膝関節捻挫の発症原因の多くは走っているときに膝をひねったり、相手と接触して転倒してしまったりとスポーツ(運動)中に引き起こされます。また、普段の生活でも階段やちょっとした段差などで思いがけず膝をひねってしまい、受傷することがあります。 上記のように、相手との接触などで発症する「直接的な原因」と、つまずき・着地などにより発症する「間接的な原因」があることを覚えておきましょう。 膝関節捻挫の症状 受傷直後は痛みが強いですが、機能は比較的保たれている事が多く、その後も痛みを我慢して普通に生活できる方もいます。ですが、徐々に内出血とむくみが出てきて、膝全体が腫れてきます。 膝全体が腫れると、膝を動かす際に痛みが生じます。また、左右を比較すると動かせる範囲が狭くなる「可動域制限」がでてきます。ひどい場合は痛みで足が地面につかないケースも。 ただし、「捻挫」であれば一時的な症状なので、数日で改善するケースが多いです。いつまでたっても痛みが引かない、腫れがひどくなってきたという場合は「靭帯損傷」のレベルまで症状が悪化している可能性があります。注意しましょう。 「歩けるけど痛い」「膝がぐらぐらして不安定」は要注意! 「「ただひねっただけだと思って様子を見ていたら、実は靭帯損傷だった。」という事例は意外に多いです。 膝には主に4つの重要な靭帯があります。 前後方向の安定性を保つ前十字靭帯・後十字靭帯、左右方向の安定性を保つ内側側副靭帯・外側側副靭帯です。これらはバスケットボールやサッカーなどのスポーツはもちろん、転倒などでも痛めるケースがあります。 「歩けるけれども痛みが続く」や「膝がぐらぐらして不安定」と感じるときは、これらの靭帯を痛めている可能性があります。また、靭帯を痛めていると関節の中に血が溜まることが多いです。 「もしかしたら当てはまるかも」と思った場合は、自己判断せずに病院を受診しましょう。 歩けるけど痛い 膝がぐらぐらして不安定 「靭帯」や「半月板」を損傷している恐れがあります。自己判断はせず、病院を受診しましょう! また、膝のクッションや安定性を保つ役割をしている組織に半月板が存在します。半月板は左右に1つずつありますが、こちらも膝をひねって痛めた際に損傷してしまうことがあります。 年を取ると徐々にすり減って切れやすくなります。特に、高齢の方はバスの乗り降りなど少しの段差を下りただけでも半月板が切れてしまう恐れも。「ブチッ」という感覚を伴うのが特徴的です。半月板損傷は検査しないと判明せず、病院でMRIなどを撮影しなければなりません。 一口に「捻挫」と言っても、紹介したような損傷が隠れている可能性もあります。ちょっとでも違和感があるなら、病院に受診するようにしてみてください。 膝関節捻挫の治療 膝をひねってしまった受傷直後は、RICE処置を行いましょう。 Rest:安静 Ice:冷やす Compression:圧迫 Elevation:挙上 スポーツはすぐに中止し、歩行もできればしない方が望ましいです。氷や保冷材などを使って膝を冷やしながら、包帯などがあれば圧迫してください。 また、寝ているときは心臓より高い位置に足をあげておくと、膝が腫れてくるのを予防できます。その後は、なるべく早期に整形外科医の診察を受けてください。 膝関節捻挫の診断 問診と身体診察で、どのような怪我が疑わしいのか予想がつく場合もあります。 基本的には、まずレントゲンで骨折がないかどうか確認します。レントゲンだけではわからない場合は、骨をより詳しく見るためにCT検査を行うこともあります。その後、靭帯損傷や半月板損傷が疑われる場合にはMRI撮影を実施します。 レントゲン撮影 → CT検査 → MRI撮影 検査の結果、手術が必要な靭帯損傷などの疑いがなければ保存療法になります。 損傷した関節包や靱帯が修復する期間は、通常3週間前後です。この期間は激しい運動や重労働などはせず、安静にしていましょう。安静を保つ目的で、一定期間添木や松葉杖・サポーターなどの使用を指定するケースもあります。 痛みが強い場合は、飲み薬や湿布を処方する場合もあります。ただし、鎮痛薬は痛みを止めるだけで治ったわけではないので、一番大事なのは膝の安静です。 そのまま通常の生活に戻れる場合は、晴れて治療終了です。しかしながら、安静にしていた影響で筋力が低下したり、動きが悪くなることがあります。 その際はリハビリテーションを実施して膝関節の機能を戻すとともに、次の怪我の予防も同時に行うことが大切です。 膝関節捻挫についてのQ&A 膝関節を含む捻挫の予防法や対処法はありますか? 運動をされる場合は、適切なストレッチやウォーミングアップが大切です。筋肉の柔軟性を保ち、温めてしっかりと動かせる状態にしてから運動を始めることで、関節に負担がかかりにくくなります。 また、普段から下肢の筋力が衰えないように意識してトレーニングをしておくことも重要です。さらに、自分の足に合った靴を選ぶことも転倒の予防になります。 膝関節捻挫を引き起こしてからスポーツに復帰できる目安は? スポーツ復帰には、痛みがなくなっていることが大前提です。痛みがあるまま再開すると、膝をさらに痛めたり、かばって別の部位の怪我を引き起こしかねません。 一般的に、通常の捻挫であれば2〜3週間で痛みが落ち着くので、軽い運動から再開するように指導します。 膝に過度な負担をかけないよう、サポーターなどの補助具を使用することも勧められます。 膝関節捻挫は何科を受診すればよいですか? 膝関節捻挫は外傷により発症します。よって、整形外科を受診しましょう。 とはいえ、受傷した時間が深夜や早朝だと、最寄りの整形外科医が受診の時間外の場合もあるでしょう。このような場合は、整形外科のある最寄りの大きな病院に問い合わせるか、厚生労働省が推奨している「♯7119」に電話で相談してみてください。 あきらかに緊急性がない場合は当院へご相談ください。国内で10,000以上ある実績を元に、親身に対応いたします。 まとめ|膝関節捻挫の症状が長引く場合はご相談ください この記事では、膝関節捻挫について解説しました。 膝関節捻挫は直接的・間接的な原因から発症し、受傷直後に強い痛みを伴います。病院を受診せずに痛みを我慢しその後も様子をみてしまう方も多いのが現状です。しかし、裏側に潜む靭帯や半月板の損傷も考えられます。 自己判断で無理せず、最寄りの医療機関を受診するよう心がけましょう。
2023.08.28 -
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
膝に痛みを起こす原因の一つが離断性骨軟骨炎です。離断性骨軟骨炎は10代〜20代に起こるケースが多く、膝軟骨の損傷となるため、初期のレントゲン写真ではわからない場合もあります。 主な原因は明らかにされていませんが、サッカーや野球などのスポーツによる負荷や血流障害が離断性骨軟骨炎に影響していると考えられています。 本記事では離断性骨軟骨炎の症状や原因、治療法について解説します。治療法も紹介するので、関節の違和感に悩んでいる方は参考にしてください。 離断性骨軟骨炎とは 離断性骨軟骨炎(りだんせいなんこつえん)とは軟骨が関節内に剥がれ落ちて、膝にさまざまな症状を起こす病気です。 血流不良で軟骨の下に位置する「軟骨下骨(なんこつかこつ)」が壊死し、離断性骨軟骨炎は引き起こされます。 離断性骨軟骨炎を発症しやすい年齢は10代〜20代で、スポーツ選手に多く見られます。また、男女比は2:1で、男性に多い病気です。 離断性骨軟骨炎の好発部位 離断性骨軟骨炎が起こりやすい部位は大腿骨の内側が85%ともっとも多く、外側が15%です。また、膝蓋骨(しつがいこつ、膝の皿)でも、稀に発症します。 離断性骨軟骨炎が発症する主な関節は、以下の通りです。 膝関節 肘関節 足首(距骨) 肩関節 膝関節は離断性骨軟骨炎を特に引き起こしやすい部位で、なかでも大腿骨の膝に近い部分の大腿骨内側顆(だいたいこつないそくか)で見られます。 なお、大腿骨の外側で起こった場合、円板上半月板(えんばんじょうはんげつばん)を合併する可能性もあるため注意が必要です。 離断性骨軟骨炎の症状 離断性骨軟骨炎の症状は、進行するにつれて悪化していきます。早期発見が重要になるため、初期症状を理解しておくのが大切です。 ここでは、離断性骨軟骨炎の症状を段階別に紹介します。 初期症状 離断性骨軟骨炎の初期症状は、運動後の不快感や鈍い痛み以外に特に症状がありません。病気が発症して初めの段階では、傷んだ軟骨が遊離していない状態のためです。 軽い違和感のみとなるため運動できますが、初期症状を放置してしまうと、次第に骨軟骨片が遊離して関節軟骨の引っかかりやズレを感じやすくなります。また、大きな軟骨の欠片が関節内に剥がれ落ちると、膝の中でゴリッと音がする場合もあります。 進行時の症状 離断性骨軟骨炎が進行した場合、痛みの増大や関節に違和感を覚えるようになります。軟骨の表面に亀裂や変化が生じると痛みが強くなり、スポーツをする際、支障をきたします。 また、膝の曲げ伸ばしをする際、骨軟骨片が関節に挟まると膝がロックして動かなくなるロッキングを引き起こす場合もあるため注意しましょう。 ロッキングが起こった場合は、無理に動かさずすみやかに医師の診断を受けるのが大切です。なお、離断性骨軟骨炎の症状が長期的に続くと、変形性関節症へ移行するリスクが生じます。 当院「リペアセルクリニック」では、メール相談やオンラインカウンセリングを受け付けておりますので、治療に関する悩みがある方は、お気軽にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 離断性骨軟骨炎の主な原因 離断性骨軟骨炎の原因は、明確にされていません。しかし、いくつかの原因によって症状を引き起こすと考えられています。 ここでは、離断性骨軟骨炎の主な原因を紹介します。 サッカーなどのスポーツによる膝や足首へ負荷 骨の急速な成長による血流障害 離断性骨軟骨炎が発症する原因を知りたい方は、参考にしてください。 サッカーなどのスポーツによる膝や足首へ負荷 離断性骨軟骨炎の原因は、繰り返される関節への衝撃やストレスの可能性が考えられます。反復する衝撃やストレスによって軟骨下の骨に負荷がかかると血流障害を起こし、軟骨が遊離しやすくなるためです。 たとえば、サッカーや野球、バスケットボールなどの激しいスポーツではジャンプや急な方向転換をともないます。膝や足首、肘へ負荷がかかりやすい動作の影響により、血流障害や壊死を引き起こして離断性骨軟骨炎が発症する場合があります。 若年スポーツ選手に多いため、膝や足首、肘に負担が大きい激しい運動は、離断性骨軟骨炎の原因の1つです。 骨の急速な成長による血流障害 離断性骨軟骨炎の原因には、成長期や思春期による骨の急速な成長が考えられます。骨が急速に成長すると、血行障害や骨への負荷が強まるためです。 成長期の子どもの軟骨はもろく、骨や軟骨に血液が供給されなければ、関節の骨が弱くなり軟骨が剥離しやすくなります。離断性骨軟骨炎は成長期に見られる病気のため、身体の発育にも影響していると推測されています。 スポーツ選手だけでなく、血流障害によっても離断性骨軟骨炎は引き起こされる点をあわせて押さえておきましょう。 離断性骨軟骨炎の診断方法 離断性骨軟骨炎における初期症状の診断方法にはMRI検査を行います。軟骨の損傷が原因となり、初期では通常のレントゲン写真で診断するのが難しいためです。 症状が進行して、骨軟骨片が分離する時期ではレントゲン写真で診断可能です。 また、肘の離断性骨軟骨炎はエコーでスクリーニング検査と診断できます。膝の離断性骨軟骨炎についても、エコーでの診断が可能と報告されてきています。 骨の状態をより詳しく知り、手術の計画を立てる際はCTスキャンで診断するのが一般的です。 離断性骨軟骨炎の治療 離断性骨軟骨炎の主な治療法を紹介します。 保存療法 手術療法 リハビリ療法 再生医療 ご自身の状態を踏まえたうえで、最適な治療法を検討しましょう。 保存療法 保存療法は、症状の緩和を目指す治療法です。離断性骨軟骨炎では関節の離脱や遊離がない場合、保存療法から試みます。 保存療法で実施される主な治療は、以下の通りです。 主な治療 治療内容 運動の制限 痛みが緩和するまでスポーツなどの運動を中断する 装具の使用 膝関節を固定して安定に保つため、ギブスやサポーターなどの装具を使用する 身長が伸びている発育期で軟骨片が離れていない場合、自然に修復されるのを期待して、膝関節の安静やサポーターなどの装具を使用する保存治療が選択されます。 痛みに対しては鎮痛薬や関節内注射などを行い、レントゲンやMRIで修復されている傾向が見られれば徐々に負荷を上げていきます。保存療法を試みて症状回復が見込めないときは、手術療法に切り替えるケースがほとんどです。 手術療法 症状が進行している、もしくは回復が見られない場合は、手術療法が選択されます。離断性骨軟骨炎の主な手術療法は、以下の通りです。 手術療法 手術内容 適応される症例 マイクロフラクチャー法 膝関節鏡を関節内に入れ、患部に数か所小さい穴を開けて出血により治癒を促進 比較的小さな範囲の軟骨が損傷されている場合 整復内固定術 不安定な骨軟骨片を骨釘や生体吸収性ピンなどを使用して固定 軟骨片が剥離して、遊離している場合 骨軟骨移植術 腿骨の体重がかからない部分から円柱状の軟骨片を採取して、損傷した部分に移植 損傷範囲が比較的大きく、遊離した軟骨片の状態が悪くて骨癒合を期待できない場合 適応する術式は患者さんの状態や希望、術者によって異なります。治療法については状態を把握したうえで主治医と相談し、納得いく治療プランを検討するのが大切です。 リハビリ療法 離断性骨軟骨炎のリハビリ療法は、保存療法の一環として行うケースと手術後に実施するものがあります。 離断性骨軟骨炎では手術だけではなく、その後のしっかりとしたリハビリテーションも重要です。 リハビリでは、可動域訓練や筋力トレーニングを中心に行い、肘や膝に負荷のかからない動作を身につけていきます。 身体に負担のかからない動作がわかるため、離断性骨軟骨炎の症状が回復し、スポーツを再開したあとやストレッチにもリハビリは役立ちます。 再生医療 再生医療は手術を必要としない治療法です。治療法の一つとなる幹細胞治療では、患者様自身から採取した幹細胞を培養し、ひざ関節に注入します。 当院「リペアルセルクリニック」の幹細胞治療では、脂肪由来の幹細胞を治療に活用します。米粒2~3粒ほどの採取のため、体への負担が少なくて済みます。 まとめ・離断性骨軟骨炎は早期診断と治療が重要 膝離断性骨軟骨炎は、主に10代~20代に起こりやすい病気です。膝関節の軟骨が関節内に剥がれ落ちて、痛みや引っかかりなどのさまざまな症状を起こします。 初期にはレントゲン写真でわからない場合が多いので、MRIでの精密検査が必要です。 治療法には保存療法や手術療法があります。手術療法は骨髄刺激法や整復内固定術、骨軟骨移植術などの術式がありますが、遊離した軟骨片の大きさや状態を総合的に判断して決定されます。 また、再生医療も選択肢の一つです。離断性骨軟骨炎は、症状が進行するとスポーツ復帰に時間を要します。早期発見・早期治療が大切になるため、ご自身の状態を踏まえたうえで、治療法を選択しましょう。 離断性骨軟骨炎に関するよくある質問 離断性骨軟骨炎を放置していたらどうなる? 離断性骨軟骨炎を放置していると、次第に骨軟骨が剥がれてしまい、痛みが強くなります。骨軟骨が完全に剝がれてしまった場合、膝がロックされたように動かなくなるロッキングを起こしたり、関節が変形したりする可能性があります。 痛みが強く、日常生活にも支障をきたす際は、治療法ではなく手術療法となるケースも少なくありません。完治までに時間を要する可能性もあるため、異常を感じた場合は放置せずすみやかに受診しましょう。 離断性骨軟骨炎は治療するとどれくらいでスポーツ復帰できますか? 離断性骨軟骨炎は、一般的に完治するまでに半年以上かかる可能性があります。そのため、スポーツ復帰できるのは数ヶ月〜1年くらい時間を要します。 症状が軽い場合は、保存療法としてスポーツ活動を中断し、安静となるケースがほとんどです。痛みがなくなったあとは、レントゲンやMRIなどで経過を見て段階的にスポーツ復帰できるよう進めていきます。 なお、離断性骨軟骨炎は再発する可能性があるため、自己判断せず医師の指示のもと治療を受けるのが大切です。 離断性骨軟骨炎は大人でも発症しますか? 離断性骨軟骨炎は一般的に10代〜20代に多い病気ですが、大人でも発症する場合があります。骨や軟骨に血液が供給されなくなると、骨が弱くなり軟骨が剥離し離断性骨軟骨炎を引き起こす場合があるためです。 また、離断性骨軟骨炎は遺伝的要因によって発症する可能性もあります。放置すると変形性関節症へ移行するリスクが生じるため、違和感を覚えた場合は受診しましょう。 離断性骨軟骨炎は、若年層のみ発症する病気ではない点に注意が必要です。
2023.08.24