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「ジャンパー膝とオスグッド病の違いは何?」「スポーツを続けるために必要な方法は?」 ジャンパー膝とオスグッド病は症状がよく似ていて、見分けがつかないケースも多いのではないでしょうか。 どちらもジャンプ競技で繰り返し膝を使うことで発症しますが、痛みが出る膝の部位が異なります。 この記事では、ジャンパー膝とオスグッド病の原因と症状の違いや、それぞれの治療法について解説していきます。 ジャンパー膝とオスグッド病の一般的な見分け方や対処法について気になる方は、ぜひ最後までお読みください。 ジャンパー膝とオスグッド病の基本 ジャンパー膝とオスグッド病は、どちらもジャンプスポーツが原因で膝まわりの痛みが出るため似たような疾患に見えがちです。 しかし、発症する原因や影響を受ける膝の部位が異なります。 ジャンパー膝 オスグッド病 定義 膝蓋腱炎の炎症 脛骨粗面の剥離(はくり) 原因 ジャンプ動作や走行が多いスポーツ ジャンプ動作や走行が多いスポーツ 症状 スポーツ時の膝蓋腱の痛み・腫れ 脛骨粗面の突出、スポーツ時の脛骨粗面の痛み・腫れ 影響を受ける部位 膝蓋腱(膝蓋骨の下の靭帯) 脛骨粗面(膝蓋骨の下にある突出している骨) はじめに、それぞれの定義と一般的な原因を説明していきます。 ジャンパー膝の定義と一般的な原因 ジャンパー膝(膝蓋腱炎)は膝蓋骨(膝のお皿の部分)のすぐ下にある膝蓋腱にストレスがかかり、炎症が起こる疾患です。 バレーボールやバスケットボール、サッカーなどのスポーツで多くみられ、繰り返し行うジャンプ動作が主な原因です。 ジャンプスポーツによる膝の使いすぎ(オーバーユース)が続くと、膝蓋腱に過度なストレスがかかり、組織に小さな損傷や炎症が起こって慢性的な痛みを発症させます。 オスグッド病の定義と一般的な原因 オスグッド病(オスグッド・シュラッター病)は小学校高学年から中学生の成長期に、脛骨粗面(膝蓋骨の下にあるわずかに突出している骨の部分)の軟骨が剥がれる疾患です。 原因はジャンパー膝と同じで、ジャンプや走行、ボールを蹴る動作などで膝を頻回に使うことで生じます。 この時期は軟骨から骨に成長する時期なので、膝を伸ばす動作の繰り返しで脛骨粗面の軟骨が剥がれることにより痛みが増します。 症状の比較 ジャンパー膝とオスグッド病に見られる主な症状は、どちらもスポーツ中の膝まわりの痛みです。それぞれ詳しく見ていきましょう。 ジャンパー膝に見られる典型的な症状 ジャンパー膝に見られる典型的な症状は、ジャンプや走る動作、階段の昇り降りのときに見られる膝蓋腱の痛みです。 膝蓋腱の痛みは程度により軽症と中等症、重症に分類されます。 軽症 スポーツの後や歩いた後に痛む 中等症 活動開始期と終わった後に痛む 重症 活動中や後の痛みで続行困難 重症化して膝蓋腱に断裂がある場合は、手術が必要になる可能性もあります。 軽症や中等度のうちは専門家と相談した上でスポーツの継続が可能ですが、症状を悪化させないためにも、毎日ケアを続けることが大切です。 オスグッド病に見られる典型的な症状 オスグッド病に見られる症状は、脛骨粗面の痛みや腫れ、突出です。痛みはスポーツ中に見られ、休んでいるときに軽快する点がジャンパー膝とよく似ています。 症状は脛骨粗面以外の部位には見られません。症状が悪化すると、剥がれた骨片を取り出す手術が必要になる可能性もあります。 発症部位と影響 ジャンパー膝とオスグッド病の発症部位はそれぞれ膝蓋腱と脛骨粗面です。どちらの疾患も、膝の曲げ伸ばしによる大腿四頭筋の作用が影響して発症します。 以下に詳しく解説していきます。 ジャンパー膝の影響を受ける膝の部位 ジャンパー膝で影響を受ける膝の部位は、大腿四頭筋(太もも前面の筋肉)につながる膝蓋腱です。膝蓋腱は大腿四頭筋の伸び縮みに伴って脛骨(すねの骨)や膝蓋骨の動きをコントロールし、膝の曲げ伸ばしを可能としています。 スポーツをしている時のジャンプやダッシュ、ストップ、ターンなどの動作は、急激な膝の曲げ伸ばしを繰り返し行っているため、膝蓋腱の負担も大きいのです。 この状態が続くと膝蓋腱に過度なストレスがかかり、組織に小さな損傷や炎症が起こって慢性的な痛みを発症させます。 オスグッド病の影響を受ける膝の部位 オスグット病で影響を受ける膝の部位は、大腿四頭筋の下端が付着する脛骨粗面です。膝の曲げ伸ばしを繰り返すと、大腿四頭筋の伸び縮みによって脛骨粗面に刺激が加わります。 小学生から中学生にかけて骨が成長している時期は、この刺激により脛骨粗面の軟骨が急激に剥がれやすくなるのです。 軟骨が剥がれると、脛骨粗面まわりに炎症が起き、痛みや腫れを発症させます。 診断と治療方法 ジャンパー膝やオスグッド病が疑われる場合は、整形外科で問診や触診、画像診断などの診断と鎮痛薬や外用薬の投与による治療を行います。それぞれ詳しく見ていきましょう。 ジャンパー膝の診断プロセスと治療オプション ジャンパー膝の診断では問診や触診、MRI、超音波検査などを行います。膝蓋腱をゆびで圧迫した時に痛みが強まることや、MRIや超音波による画像診断で筋肉や腱の変性が確認できることで確定診断となります。 ジャンパー膝の治療は、患部の安静や練習量を減らすこと、炎症を抑えるための鎮痛剤や外用薬を使用することです。膝蓋腱に負担のかかるジャンプやダッシュの練習を減らすだけでも、症状の改善に効果があります。 また、医薬品は市販ではなく医師に処方されたものを使用しましょう。症状によってはステロイド注射を行うこともあります。 オスグッド病の診断プロセスと治療オプション オスグッド病の診断は問診や触診、レントゲン検査で可能です。問診で実際の話を聞きながら、痛みが出るときの状況や、痛みが出る部位を確認します。 脛骨粗面の状態を触診やレントゲン検査で確認し、痛みや腫れ、突出、軟骨の剥離が認められると確定診断になります。 オスグッド病の症状を治すためには、スポーツを控えて安静にすることが大切です。軟骨から骨に成長する3〜6ヶ月間は痛みが出やすい時期なので、負担をかけないようにできるだけ休息をとりましょう。 痛みが強いようなら、医師から処方された飲み薬やぬり薬などを使用することもあります。 予防と管理 ジャンパー膝やオスグッド病の予防や、スポーツを継続するときの管理方法には、アイシングや大腿四頭筋のストレッチ、膝蓋腱バンドの装着などがあります。痛みの症状に悩んでいる方は、専門医と相談しながらこれらの方法を行うようにしましょう。詳しく解説していきます。 ジャンパー膝の予防策 ジャンパー膝の予防には、大腿四頭筋のストレッチや筋力トレーニングが大切です。症状を管理しながらスポーツを続けていく場合は、スポーツ直後のアイシングや、スポーツ中の膝蓋腱バンドの装着も必要になります。 過去の論文ではジャンパー膝の予防策に、傾斜台上での片脚立ちスクワットが効果的であると報告されています。 参考文献:P Jonsson, H Alfredson.Superior results with eccentric compared to concentric quadriceps training in patients with jumper's knee: a prospective randomised study.2005. 39(11). p847-850 ジャンパー膝の予防に重要な、片脚立ちスクワットや大腿四頭筋のストレッチの方法について見ていきましょう。 ・片脚立ちスクワット ①25度程度の傾斜台を準備し、降りの方向に顔を向けて立つ (※傾斜台がなければ、スロープやタオルを使用して、立った姿勢で踵の位置が上がるように工夫する) ②片脚立ちになり、股関節と膝関節を曲げながらお尻を床に近づける。膝の位置が足の位置より前方に出ないように注意する ③股関節と膝関節を伸ばして片脚立ちの姿勢に戻る。10回連続で行い、1日3セットほど行う。きつく感じるようであれば、必要に応じて手すりを持ちながら行う ・大腿四頭筋のストレッチ(膝を曲げると痛む場合の方法) ①ストレッチをする側の膝を床につき、ストレッチをしない側の膝を立てて片膝立ちの姿勢になる ②上半身を起こしながら身体を前方に移動させ、太もも前面の筋肉を伸ばす ③20秒〜30秒ほど時間をかけて動きを行い、10秒ほど休んだ後にもう一度行う ※スポーツをした後は必ず行う ・大腿四頭筋のストレッチ(膝を曲げても痛みがでない場合の方法) ①床に両膝を伸ばして座った後、ストレッチをする側の膝を曲げて踵をお尻に近づける ②両手を床について身体を支えながら、上半身を後ろに倒して太もも前面の筋肉を伸ばす ③20秒〜30秒ほど時間をかけて動きを行い、10秒ほど休んだ後にもう一度行う ※スポーツをした後は必ず行う オスグッド病の予防策 オスグッド病の予防策と管理方法は、アイシングや大腿四頭筋のストレッチ、ベルトの装着です。 オスグッド病は痛みが出なければスポーツが可能ですが、症状を悪化させないためにこれらを継続して行うことが大切です。 ・アイシング 練習直後にアイシングを15〜30分ほど行いましょう。激しい運動の後は脛骨粗面のまわりにより炎症が起こりやすく、熱感や腫れが強まります。 できるだけ早く患部を冷やし、炎症を抑えることで症状の悪化を防げるわけです。氷を入れた袋を患部に持続的に当てるか、弾性包帯で巻きつけて固定すると効果的です。 ・バンドを装着する ジャンパー膝やオスグッド病の治療として、膝蓋腱の走行に横断して取り付けるバンド(サポーター)の装着が効果的です。 バンドによる膝蓋腱の圧迫は、腱の走行を変化させて負担を減らせることが明らかになっています。 スポーツ中の膝蓋腱や脛骨粗面に対する過剰なストレスが減り、痛みの緩和が期待できます。 まとめ ジャンパー膝とオスグッド病の違いについてお話ししました。 ジャンパー膝とオスグッド病は、どちらもジャンプ競技で膝を伸ばす動作を繰り返すことで起こる症状です。 しかし症状の出る部位が異なり、ジャンパー膝が膝蓋腱に痛みが出るのに対して、オスグッド病は脛骨粗面に痛みが出ます。どちらの場合もスポーツを続けるときは、以下の内容をよく守って行いましょう。 どちらの疾患であっても効果的なアプローチ ジャンパー膝とオスグッド病の両方に効果があるアプローチは、アイシングと大腿四頭筋のストレッチ、バンドの装着です。これらはスポーツ直後に起きた膝の炎症を抑えたり、脛骨粗面や膝蓋腱、大腿四頭筋の負担を減らしたりする効果があります。 症状の悪化につながらないためにも、スポーツをするときは必ず継続して行いましょう。 スポーツ選手としての健康管理の重要 ジャンパー膝やオスグッド病の症状と付き合いながらスポーツを続ける場合は、専門家に相談しながら無理のない範囲で行いましょう。 どちらの症状も悪化させると手術が必要になる可能性もあるため、痛みが強い場合は休んだり、練習量を減らしたりすることが大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 参考文献一覧 日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会, 2023, 「運動器疾患とスポーツ外傷・障害」, vol.1, 膝蓋腱炎(ジャンパー膝) 日本整形外科スポーツ医学会広報委員会,2023「スポーツ損傷シリーズ」,1.オスグッド病 明解 スポーツ理学療法-図と動画で学ぶ基礎と実践 Visnes, H., Hoksrud, A., Cook, J., & Bahr, R. (2005). Superior results with eccentric compared to concentric quadriceps training in patients with jumper's knee: A prospective randomised study. British Journal of Sports Medicine, 39(11), 847-850. https://doi.org/10.1136/bjsm.2005.018630 体力科学,1999,48,227〜232,"ジャンパー膝"
2024.10.02 -
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化膿性関節炎の術後は、関節を切除している場合関節が不安定になってしまいます。そのため、日常生活に戻るためには適切なリハビリテーションが重要です。特に、術後すぐに開始し、炎症管理をしっかりするのが大切になります。 この記事では、化膿性関節炎のリハビリテーションやそのリスクと日常生活での注意点を解説してます。また、活動性の高い趣味を行う際の筋力トレーニングも紹介してるため、ぜひご覧ください。 化膿性関節炎の概要 化膿性関節炎は、関節内に細菌が侵入して化膿する疾患です。肺炎や尿路感染などの細菌や、人工関節置換術などが原因で関節内に細菌が侵入します。特に、股関節・膝関節・足関節など下肢に発症しやすいです。 主な症状として、関節の痛み・発赤・腫脹・熱感などがあり、進行すると関節や骨の破壊、発熱などの症状が現れます。 診断には、血液検査・関節液検査・画像診断などを実施し、関節炎が生じる他の疾患と鑑別する必要があります。 化膿性関節炎の治療方法や予防方法についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。ぜひご参考にされてください。 手術後のケア 化膿性関節炎の手術後は、関節をギプスで固定し、しばらく安静にします。そのため、移動には松葉杖や車椅子が必要です。炎症が収まってきたのを確認できたらリハビリテーションを開始します。固定していた期間があるため、関節は通常より硬くなっています。そのため、まずは周辺組織のリラクゼーション、関節可動域訓練を実施し、可動域を戻していきます。 化膿性関節炎のリハビリテーション リハビリテーションでは、炎症管理・可動域改善・筋力向上・日常動作の再獲得などが重要です。特に、炎症を悪化させてしまわないように配慮が必要です。 リハビリテーションの期間と予後や、その内容、伴うリスクについてそれぞれ詳しく解説していきます。 リハビリテーションの期間と予後 リハビリテーションの期間は、どのような治療を行ったかによって異なります。例えば、抗生物質の投与のみで治療可能であれば1ヵ月ほどです。一方で、関節や骨の破壊まで進行しており、切除した場合にはもっと時間がかかるでしょう。参考例として以下に、リハビリテーションの流れを紹介します。 リハビリテーションの内容 術後翌日~1週間 ・関節周囲組織のリラクゼーションにより組織の柔軟性を高める ・他動的な関節可動域訓練により拘縮の予防 ・等尺性筋力訓練により関節に負担をかけずに筋力強化 術後1~2週間 ・自動運動で関節の動きに伴う筋収縮の練習 ・荷重訓練により感覚入力を促して動作につなげる 術後2週以降 ・日常生活動作を練習し、元の生活になれる ・応用動作練習で、バランスも取り入れた難易度が高いリハビリを行う ※炎症状態や年齢などさまざまな要因が関わるため、実施内容や期間は異なる場合があります。 リハビリテーション内容 リハビリテーションでは、痛みや炎症の管理・可動域訓練・筋力増強訓練の3つを軸に行います。 ①痛みや炎症の管理 ②可動域訓練 ③筋力増強訓練 特に、痛みや炎症を悪化させないことが大切です。以下で解説していきます。 ①痛みや炎症の管理 化膿性関節炎では、再発の可能性もあります。そのため、過度なリハビリテーションにより痛みや炎症を誘発しないように管理するのが大切です。術後すぐのリハビリテーションでは、激しい運動はせずリラクゼーションや可動域訓練、等尺性筋力訓練を中心に実施し、拘縮や廃用を予防します。患部に熱感がある場合は、冷やすのが良いでしょう。 ②可動域訓練 化膿性関節炎で手術による関節内洗浄と骨の一部を切除した場合などは可動域訓練が重要です。骨の切除により関節は少なからず不安定になっているのと、関節固定術を実施した場合に関節可動域は制限されやすいです。そのため、リラクゼーション・可動域訓練を併用し、組織の柔軟性を高める必要があります。近年では、切開範囲の小さい手術が多いですが、術創部付近は特に硬くなりやすいため、入念に可動域訓練やリラクゼーションを行いましょう。 ③筋力増強訓練 化膿性関節炎の術後では、筋力増強訓練も大切です。手術後で固定期間が長くなるほど筋力は低下します。特に、下肢の筋肉は日常生活で欠かせないため、筋力を元に戻すのは日常生活を送るうえで大切です。そのため、術後すぐから可能な範囲で等尺性筋力増強訓練を実施し、炎症が落ち着いて関節を動かせるようになれば、自動運動・抵抗運動などを進めていくと良いでしょう。 リハビリテーションのリスク リスクとしては、再感染と炎症の悪化が考えられます。術後すぐに術創部に菌が入ると再感染や別の感染症を引き起こす可能性があるため、触れないように注意します。また、早期から関節を動かしすぎると炎症を引き起こす可能性があるため、段階的に難易度を上げていきましょう。その他、関節破壊が進んでおり関節の手術を行った場合、荷重開始時期を慎重に決める必要があります。 健康を維持するための日常生活での注意点 日常生活での注意点は、関節に負荷をかけないことです。そのためには、関節への負担を減らす動作の獲得、ストレッチや筋力トレーニングの継続が必要です。具体的には以下で解説します。 関節への負荷を減らす動作 日常での動作を工夫することで関節への負荷を減らすことが可能です。例えば、いつもは立ったまま家事しているが、合間に座って足を休めるなどの方法があります。また、重量物を持ち上げる時に身体の近くで持ち上げることで、各関節への負担を減らせます。 動作にプラスして、サポーターを着用すると関節への負荷が軽減します。サポーターは、関節周囲を圧迫して感覚入力を促すことにより、関節を安定させる機能があるため効果的です。 ストレッチや筋力トレーニングの継続 ストレッチや筋力トレーニングを継続することで、負荷を分散しやすくなるため関節を保護できます。柔軟性がない場合は、隣接する関節が過剰に動いてしまうため負担の増加につながります。また、筋力がなければ関節は不安定になりやすく、負担も増加します。 活動性が高い趣味を楽しむための工夫 化膿性関節炎の術後でもハイキングやランニング、スポーツなど活動性が高い趣味を再びやりたい方は多いでしょう。このような趣味は通常の生活より、高い身体機能が要求されます。そのため、日頃からストレッチや筋力トレーニングを継続し、身体機能を高めるのが大切です。 ハイキングとランニングを例に、行うべき筋力トレーニングを紹介します。 ハイキングでおすすめな筋力トレーニング ハイキングでは、低い山や景色が綺麗な場所を楽しみながら歩きます。道中の地面がゴツゴツしていたり、歩く距離が長かったりすることもあるでしょう。そのため、不整地でも歩くためのバランス訓練、長距離を歩くための持久力訓練が大切です。 特に、不整地で歩くのは足首によるコントロールが必要なため、柔らかいマット上で片脚立位を保持の練習が効果的です。通常の地面よりバランスの難易度が高く、足首の協調性に最適です。また、持久力訓練としてはハイキングに行くまでに実際に歩きたい距離を無理なく歩けるようにしておきましょう。歩道で同じ距離が歩けないと、不整地に行ったときに疲れやすくて怪我のリスクも高まります。 ランニングでおすすめな筋力トレーニング ランニングでは、下肢への強い負荷が繰り返しかかります。この時、筋肉は伸ばされながら負荷を吸収する働きをします。そのため、同じような筋収縮様式の筋力トレーニングがおすすめです。 例えば、立ち座りの動作をゆっくり行うことで、座るときに筋肉を伸ばしながら力を発揮します。ゆっくり行うことで、股関節・膝関節・足関節周囲の筋肉を協調的にコントロール可能です。通常の立ち座りは、反動の力を利用していることが多いため、ゆっくり行うのは意外と難しいです。ぜひ、実践してみてください。 まとめ・適切なリハビリテーションにより再び趣味を楽しみましょう 化膿性関節炎は細菌が原因になるため、抗生物質の投与・関節内洗浄といった治療が重要です。一方で、再び日常生活に戻り趣味を楽しむためにはリハビリテーションが必要になります。リハビリテーションでは、術後すぐは関節が固まらないようにリラクゼーション・関節可動域訓練を実施します。その後、段階的に負荷を上げた筋力訓練が必要です。 また、日常生活レベルに戻れたとしても、活動性の高い趣味を行うにはさらに上の身体機能が必要になります。そのため、バランス能力や持久性訓練などを取り入れた筋力トレーニングを行うと良いです。退院後も筋力トレーニングを継続し、いつまでも趣味を楽しみましょう。 参考文献一覧 坂本憲史、平良誠、中島伸 一、井手淳二、寒野龍弘、本多一宏、師井位,関節固定術を余儀なくされた可能性関節炎の2例,栄整形外科と災害外科,40:(2)836~841,1991. 井上三四郎,急性炎症性関節炎の初期診断と治療方針,栄整形外科と災害外科,65:(3)616〜620,2016. 社会福祉法人恩賜財団済生会,化膿性関節炎 生田拓也,化膿性膝性関節炎に対する開放運動療法,栄整形外科と災害外科,69:(4)907~910,2020.
2024.09.30 -
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化膿性関節炎による痛みや腫れがつらくて、早く症状を改善したいと思っている方はいるでしょう。また、関節の痛みにより日常生活や仕事がまともにできなくて、将来的な影響を気にしている方もいると思います。 この記事では、化膿性関節炎の治療方法や治るまでの期間、予後について解説しています。また、再発予防のために日常でできる方法を紹介しているため、ぜひご覧ください。 化膿性関節炎とは? 化膿性関節炎とは、関節内に細菌が侵入して化膿する疾患です。原因菌は、黄色ブドウ球菌が多く、連鎖球菌・肺炎球菌・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌などがあります。細菌の侵入経路は以下の3つです。 ・肺炎や尿路感染で病原菌が血液により関節内へ到達 ・軟部組織損傷の感染が関節内にまで広がる ・手術や関節内注射などで関節内に細菌が直接侵入 侵入すると関節内に到達し、関節軟骨を破壊します。また、進行すると骨まで破壊されてしまうため早期発見・早期治療が重要です。全身の関節で発症する可能性がありますが、特に膝関節での発症が多いです。 膝に出る特徴的な症状 初期症状は、膝関節の違和感や急激な疼痛・腫脹・熱感などです。 疼痛が強く腫脹により可動域が制限されると歩行が不可能になる場合もあります。また、重症化すると悪寒や発熱の症状が現れ、敗血症性ショックを引き起こす危険な疾患です。敗血症性ショックは、極度の血圧低下により多臓器不全に陥り、死亡リスクが高く、他の感染性疾患でも起こり得ます。 化膿性関節炎の診断 化膿性関節炎の診断では、関節液検査・血液検査・画像診断の3つが実施されます。これらを総合的にみて診断を下します。具体的な検査内容は、以下で解説します。 ①関節液検査 関節液検査では、注射針を関節に刺し関節液を採取し、成分を調べることで原因菌を特定します。関節液は、血液が濾過された血漿成分で構成され、関節の滑膜から分泌される成分が加わった粘性が強い液体です。化膿性関節炎になると、白血球数の増加により関節液の混濁、白血球や細菌の活動による糖の消費が原因で糖値の低下が見られます。通常では、血液と関節液の糖値は類似しており、日内変動がある点も同様です。 ②血液検査 血液検査では、白血球の増加・赤血球沈降速度亢進・CRP上昇がみられます。これらは、感染症で見られる所見と似ており、炎症が起きていることを示しています。基準値は以下の表に記載しています。 正常値 単位 数値の解釈 白血球 3.3~8.6 10³/μL 白血球は細菌やウイルスから感染を防ぐ役割があり、感染症やストレスで増加します。 赤沈 (赤血球沈降速度) 男性:2~10 女性:3~15 mm/1h 血液内で赤血球が沈む早さを調べます。 炎症によりフィブリノゲンやグロブリンが増加すると赤血球沈降速度が早くなります。 CRP (C反応性蛋白) 0.14以下 mg/dL 炎症や感染、組織損傷により血液中に増えるタンパク質量のことです。 ③画像診断 画像診断では、単純X線やMRI検査を用いて実施します。どのような所見が見られるか表で解説します。 所見 単純X線検査 初期では変化ありません。進行すると、関節周囲の骨萎縮・関節面不整の所見が見られます。また、重症化により骨溶解像や欠損像が認められます。 MRI検査 膝関節液の貯留・滑膜増殖・軟骨面の不整や変性などの所見が見られます。 上記の所見が見られますが、化膿性関節炎のみに特徴的な所見ではないため、他の疾患との鑑別が必要です。例えば、関節リウマチ・膠原病・痛風・偽痛風など急性の関節炎が症状として現れる疾患があります。そのためにも関節液検査により原因菌を特定するのは大切です。 化膿性関節炎の治療 化膿性関節炎は、治療が遅れると重篤な機能障害を引き起こすため、早期の治療介入が必要です。 原因は細菌であるため、抗生物質の投与・手術による関節内洗浄が中心となります。その後、日常生活に戻れるようにリハビリテーションを実施します。 ・抗生物質の投与 ・手術による関節内洗浄 ・リハビリテーション 各治療方法については、それぞれ以下で詳しく解説します。 抗生物質の投与 関節液の培養検査から病原菌を推定し、病原菌にあった抗生物質を投与します。患部は安静に保ち、関節に膿が溜まっている場合は注射器で吸引します。また、関節や骨が破壊されていると痛みが強いため、消炎鎮痛剤の投与が必要です。抗生物質を投与しても効果が見られず、炎症が続く場合には手術を実施します。 手術による関節内洗浄 関節内洗浄は、関節を切開しなかにある膿を洗い流し、炎症で傷ついている部分は切除します。この手術は、関節鏡を使用して比較的小さな切開で実施可能です。手術後は、関節内に管を入れたままにしておき、膿が出るようにします。また、関節内を持続的に洗浄できる管を留置する場合もあります。関節破壊が進行していて関節が不安定になった場合は、関節固定術が適応です。 リハビリテーション 炎症症状が落ち着いたら、リハビリテーションを開始します。術後すぐのリハビリテーションは、関節への負担を減らすために、柔軟性向上のためのリラクゼーションや座位で膝を伸ばした状態を保持するような関節を動かさない筋力増強訓練がメインです。炎症があるときは温めず、アイスパックで関節を冷やすようにします。 もし、症状が進行して骨溶解がある場合には、感染が落ち着いたら関節固定術を行う場合もあります。関節固定術を行うことで関節が安定し、痛みの軽減が期待できるでしょう。 化膿性関節炎が治るまでの期間 化膿性関節炎が治るまでの期間は、発見時の症状により異なりますが約6週間程度とされています。炎症が広がり関節破壊にまで至ると、手術や関節内洗浄の必要があるため、期間は延びるでしょう。 さらに、炎症が収まってからリハビリテーションを実施し、元の生活に戻るのを考えると3カ月程度はかかると考えられます。 化膿性関節炎の予後 早期治療により細菌を殺菌できれば、早い回復が見込めます。ただ、細菌により軟骨や骨の破壊が見られると後遺症が残ることもあり、さらに死亡率は11%と高いです。 化膿性関節炎に限らず、感染症は敗血症を引き起こすことがあります。敗血症はさまざまな臓器に機能障害を引き起こし、さらに重度になると敗血症性ショックにより危険な血圧低下で多臓器不全となります。敗血性ショックになると、約30〜40%が死に至る重篤な症状です。 日常生活でできるの再発予防!4つの方法 日常生活の中でできる再発予防の方法を紹介します。重要なのは、関節への負担を減らすことです。以下に具体的な予防方法を4つ解説します。 ①免疫を高める 化膿性関節炎は感染症であり、免疫を高めることが大切です。特に、糖尿病の方・血液透析療法を受けている方・免疫抑制薬を長期間使用している方は感染に弱いため、再発しやすくなります。そのため、第一に基礎疾患の治療が大切です。また、関節内注射では皮膚を清潔に保ちましょう。 ②重量物を持ち上げる時の工夫 関節に負担をかけないために重い物を持ち上げる時はゆっくり持ち上げます。重量物をできるだけ身体の近くに寄せた状態で持ち上げると、腰や膝への負担を軽減可能です。 また、長時間同じ姿勢を保つのは関節に負担がかかるため避けましょう。 ③サポーターの着用 サポーターを着用することで、膝関節の安定化・痛みの軽減などの効果が得られ、結果的に関節への負担を減らすことが可能です。そのため、膝が痛い方は、膝のサポーターを着用するといつもより動きやすくなるかもしれません。ただ、サポーターはあくまで補助的なものであるため、日頃のストレッチや筋力トレーニングは大切です。 ④ストレッチを日常的に実施 痛みを感じると筋肉の緊張が高まりやすく、それが続くとさらに別の痛みを誘発する可能性があります。そのため、日常的に下肢のストレッチを行い、関節がスムーズに動く状態を保ちましょう。また、柔軟性は衝撃吸収の役割があるため、関節への負担軽減につながります。 まとめ・痛みを取り除いて再発予防対策をしましょう 化膿性関節炎では、主に膝を中心とした下肢の関節に痛みや腫脹を生じます。進行すると関節や骨を破壊する可能性があるため、早期発見・早期治療が大切です。原因が細菌であるため、治療は抗生物質の投与や関節内洗浄が行われます。治るまでの期間はさまざまですが、関節破壊まで進んでいると手術をするため、期間が延びるでしょう。化膿性関節炎の再発を予防するには、免疫を高める・サポーターを着用する・ストレッチを行うの3点が大切です。痛みを改善し、再発予防方法を実践していきましょう。 参考文献一覧 国立がん研究センター中央病院,臨床検査基準値一覧 MSDマニュアルプロフェッショナル版,敗血症および敗血症性ショック 社会福祉法人恩賜財団 済生会,化膿性関節炎 急性炎症性関節炎の初期診断と治療方針
2024.09.27 -
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- 膝部、その他疾患
ジャンパー膝(膝蓋腱炎)は、スポーツに取り組む方を中心に見られる疾患です。 とくにジャンプ動作が伴う競技では頻繁に見受けられます。 しかしジャンパー膝の症状や重症度、診断方法は、あまり知られていません。また初期症状などがほかの疾患と類似しており、判断するのが難しい部分もあります。 本記事ではジャンパー膝の症状や診断方法、セルフチェックリストや有効なストレッチなどを解説します。 ジャンパー膝(膝蓋腱炎)とは? 膝蓋腱炎(ジャンパー膝)は、バレーボールやバスケットボールなどのスポーツで生じやすい膝蓋腱に起こる炎症で、慢性的な膝の痛みが特徴的です。 以下に症状や診断方法、リスク要因を詳しく解説します。 膝蓋腱炎の症状・重症度・診断方法 ジャンパー膝は、膝蓋骨(膝のお皿の部分)のすぐ下にある膝蓋腱にストレスがかかり、炎症が起こる疾患です。 典型的な症状はジャンプや走る動作、階段の昇り降りのときに生じる膝蓋腱の痛みで、痛みの程度により軽症と中等症、重症に分類されます。 ジャンパー膝の重症度の分類 軽症 スポーツの後や歩いた後に痛む 中等症 活動開始時と終わった後に痛む 重症 活動中や後の痛みで続行困難 ジャンパー膝の診断は問診や触診、MRI、超音波検査などを行います。 膝蓋腱を指で圧迫したときに痛みが強まることや、MRIや超音波による画像診断で筋肉や腱の変性が確認できることで確定診断とされます。 メール相談 オンラインカウンセリング ジャンプスポーツにおけるリスク要因 ジャンパー膝はバレーボールやバスケットボール、サッカーなど、ジャンプやダッシュの動作が多いスポーツで起こりやすいです。 膝蓋腱は大腿四頭筋(太もも前面の筋肉)につながる腱で、膝蓋骨と脛骨(すねの骨)に付き、膝関節を動かしたり地面からの衝撃を吸収したりしています。 大腿四頭筋の伸び縮みにともなって膝蓋腱が脛骨や膝蓋骨の動きをコントロールし、膝の曲げ伸ばしが可能となっているわけです。 スポーツをしているときのジャンプやダッシュ、ストップ、ターンなどの動作は、急激な膝の曲げ伸ばしを繰り返し起こします。 この状態が慢性的に続くと膝蓋腱にストレスがかかり、組織に小さな損傷や炎症が起こってジャンパー膝につながります。 ジャンパー膝が軽症や中等症のうちは医師に相談しながらスポーツの継続が可能です。 しかし、ストレッチやウォーミングアップ、活動後のアイシングなどをおこない、常に膝のケアに努める必要があります。 また、重症例で腱に断裂がある場合は手術が必要になる可能性もあるため、疑わしい症状がでているときに放っておくのは危険です。 関連記事:ジャンパー膝といわれる大腿四頭筋腱付着部炎の原因と治療 ジャンパー膝(膝蓋腱炎)の症状のチェックリストと適切な対応 ジャンパー膝の症状が疑われるときは、自分で膝蓋腱に刺激を加えながらチェックできます。 家でもできる膝蓋腱の状態を確認する方法とその評価の意味を解説します。 家でできる症状チェックテスト スポーツや活動時に繰り返し膝が痛むときは、一度セルフチェックをおこない、ジャンパー膝の症状がでているか確かめてみましょう。 以下の状態が当てはまる場合は整形外科に受診してください。 膝蓋腱をゆびで押してみる 膝を曲げた状態と伸ばした状態で膝蓋腱をゆびで軽く押してみましょう。 どちらの状態でも痛む場合はジャンパー膝を疑います。(※曲げた状態のほうが痛みは走りやすいです) うつぶせで膝を曲げる うつぶせの状態で膝を曲げ、踵をお尻に近づけてみましょう。 股関節まわりが地面から浮いた場合は、ジャンパー膝が生じている可能性があります。 ジャンプする 何度かジャンプしてみましょう。 跳躍と着地の瞬間いずれか、または両方で違和感や痛みが感じられた場合、ジャンパー膝の発症が疑われます。 また痛みの懸念からジャンプを避けた、思い切り飛ばずに加減した際も、同様にジャンパー膝の発症が疑われます。 足に力が入りにくい いつものように足に力が入るか確かめてみましょう。 力が入りにくいと感じた場合には、ジャンパー膝の発症が疑われます。 ジャンパー膝(膝蓋腱炎)が疑われる際の対応 ジャンパー膝が疑われる際は、ただちに診断を受けることをおすすめします。 ジャンパー膝は早期に対応すれば重篤な症状を呈する炎症ではありません。 しかし初期症状があるまま放置していると、痛みや腫れが悪化し、治療に時間がかかるようになります。 最悪の場合、腱の断裂が起こり、手術が必要になるかもしれません。 ジャンパー膝が疑われる場合は、可能な限りすみやかに医療機関で受診しましょう。 メール相談 オンラインカウンセリング ジャンパー膝(膝蓋腱炎)の治し方 ジャンパー膝の治療は以下の方法でおこなわれます。 ・物理療法|冷気や電気、低周波などを当てて、直接的に炎症の修復などを図る ・体外衝撃波|特殊な衝撃波を当てて、痛みや痒みの緩和、患部の修復を図る ・リハビリ|大腿四頭筋を中心としたリハビリで、再発を予防する ・PRP(再生医療)|自己脂肪由来幹細胞などを用いて、患部の修復を図る PRP(再生医療)では、従来よりも容易にジャンパー膝を完治に導く期待があります。 興味がある方は以下を参考にしてください。 メール相談 オンラインカウンセリング ジャンパー膝(膝蓋腱炎)の痛みを緩和するストレッチ トレーニング前後のストレッチは、膝まわりの負担や痛みを減らすために重要です。 膝蓋腱の痛みを和らげる効果のあるストレッチや習慣づける方法を紹介します。 膝蓋腱を和らげる効果的なストレッチ 膝まわりやお尻の筋肉をストレッチで柔らかくすれば、膝蓋腱の負担軽減につながります。 以下の方法で大腿四頭筋やハムストリングス(太もも後面の筋肉)、殿筋(お尻の筋肉)のストレッチをおこないましょう。 必ず膝まわりに痛みがでない程度におこなってください。 大腿四頭筋のストレッチ ①床に両膝を伸ばして座った後、ストレッチをする側の膝を曲げて踵をお尻に近づける ②両手を床について身体を支えながら、上半身を後ろに倒して太もも前面の筋肉を伸ばす 大腿四頭筋のストレッチ(膝を曲げると痛む場合の方法) ①ストレッチをする側の膝を床につき、ストレッチをしない側の膝を立てて片膝立ちの姿勢になる ②上半身を起こしながら身体を前方に移動させ、太もも前面の筋肉を伸ばす ハムストリングスのストレッチ ①仰向けの状態でストレッチをする側の脚を上げる ②膝を伸ばしながら脚を胸に近づけ、太もも後面の筋肉を伸ばす 殿筋のストレッチ ①床に座り、ストレッチをする側の脚は膝を曲げて外側に開き、ストレッチをしない側の脚は後方に伸ばす ②上半身を前に倒しながらお尻の筋肉を伸ばす トレーニング前後のストレッチルーティン トレーニング前後では一つのストレッチを20〜30秒間かけておこない、10秒くらい休んだ後にもう一度施行しましょう。 とくに大腿四頭筋のストレッチは膝蓋腱にかかる負担が減るため、欠かさずおこなうことが大切です。 トレーニング前後のストレッチを習慣づけることで、ジャンパー膝の発症や再発の予防につながります。 メール相談 オンラインカウンセリング ジャンパー膝(膝蓋腱炎)を発症している際のテーピングテクニック 正しい方法でテーピングを施行すればスポーツや活動時における膝のサポートが可能です。 競技中の痛みを抑えるためにおこなう場合は必ず整形外科で専門家に相談しましょう。 以下に方法と注意点を詳しくお話しします。 膝のサポートに役立つテーピング方法 太さ50mmほどの伸縮性のあるテーピング(すねの上側から太ももの中間までの長さ)を3枚準備して以下のようにおこないます。 ①1枚目:膝を軽く曲げた姿勢ですねの外側から膝の内側、太ももの外側にかけて引っ張りながら貼る ②2枚目:膝の下から膝の外側、太ももの外側にかけて引っ張りながら貼る ③3枚目:1枚目のテープより少し上に重ねて、すねの外側から膝の内側、太ももの内側にかけて引っ張りながら貼る テーピングの正しいやり方と注意点 膝のサポートを目的としたテーピングは、運動に支障のない範囲で関節や筋肉の動きを制限させることが大切です。 テーピングをおこなうときは以下の内容に注意します。 ・外傷がある部位の接触を避ける ・適切な巻き方でおこなう ・正しい姿勢で巻く ・巻くときにシワをつくらない ・血管や神経、筋肉、腱の過度な圧迫は避ける ・パフォーマンスが低下するほど強く巻かない ・水ぶくれや肌荒れ、かぶれ、湿疹などがないか確認する 適切な方法や姿勢でおこなわないと十分な効果が得られなかったり、逆効果になったりする可能性があります。 痛みが軽快しない、パフォーマンスが低下するなどの場合は正しいやり方でないこともあるので、一度見直してみましょう。 また、テーピングは肌に直接触れるため、汗で蒸れたりすると皮膚トラブルを起こしやすいです。 皮膚に外傷があったり、肌荒れやかぶれなどができた場合はできる限り接触を避けましょう。 予防策としてのトレーニング調整 スポーツを続けていく選手にとって、症状の再発や悪化の進行に対する予防策はかかせません。 ジャンパー膝の予防に向けたトレーニングや日常生活におこなう取り組みを紹介していきます。 適切なトレーニング方法とその頻度 ジャンパー膝の予防には、大腿四頭筋の筋力をきたえることが大切です。 また、過去の論文にはジャンパー膝に対するトレーニングに傾斜台上での片脚立ちスクワットが効果的であると報告されています。 トレーニングは症状が発症したばかりの時期はひかえ、専門家の指示のもとで痛みがない程度におこないましょう。 以下に方法を説明します。 大腿四頭筋の筋力トレーニング ①椅子に座り、膝を伸ばしたときに抵抗がかかるように足首と椅子の足をゴムバンドでつなぐ ②ゴムバンドによる抵抗を感じながら膝を伸ばす ③5秒ほど時間をかけて1回おこない、連続10回、1日2セットおこなう スクワット ①25度程度の傾斜台を準備し、降りの方向に顔を向けて立つ(※傾斜台がなければスロープの上や、踵に折りたたんだタオルを置いた状態でおこなう) ②片脚立ちになり、股関節と膝関節を曲げながらお尻を床に近づける。膝の位置が足の位置より前方に出ないように注意する ③股関節と膝関節を伸ばして片脚立ちの姿勢に戻る。10回連続でおこない、1日3セットほどおこなう。きつく感じるようであれば必要に応じて手すりなどを持ちながらおこなう。 再発防止のためのエクササイズと日常生活の調整 日常生活で膝のケアをおこないながら症状の再発や悪化の進行を防ぎましょう。 バンドを装着する ジャンパー膝の治療として、膝蓋腱の走行に横断して取り付けるバンド(サポーター)の装着が効果的です。 バンドによる膝蓋腱の圧迫は、腱の走行を変化させて負担を減らせることが明らかになっています。 スポーツや活動時の膝蓋腱の過剰なストレスが減り、痛みの緩和が期待できます。 患部の安静や練習を減らす 痛みが強いときはできるだけ患部の安静を保ち、ジャンプやランニングの練習を減らしましょう。 ジャンパー膝はジャンプ競技による膝のオーバーユース(使いすぎ)で生じることが多いので、活動量を減らすことで症状が軽快しやすいです。 重症化すると腱の断裂につながる可能性もあるため、痛みが強いときは無理をしないようにします。 練習後ににアイシングをおこなう 練習直後にアイシングを15〜30分ほどおこないましょう。 激しい運動の後は膝蓋腱により炎症が起きやすく、熱感や腫れが強まります。 できるだけ早く患部を冷やし、炎症を抑えることで症状の悪化を防げるわけです。 ジャンパー膝は皮膚から深い位置で起きている炎症なので、氷を入れた袋を弾性包帯で患部に巻きつけて固定すると効果的です。 ジャンプと着地の仕方を修正する 内股の状態で踏み切ったジャンプやバランスの悪い着地は、膝蓋腱のストレスを高める原因です。 ジャンプのフォームを客観的に確認したり、なわとびで正しいジャンプの方法を修得すれば、改善につながります。 硬い床を避ける底の厚いシューズも膝蓋腱の負担を減らせます。 炎症を抑える飲み薬やぬり薬などを使用する 痛みが強い場合は医師から処方された飲み薬やぬり薬、湿布などを使用しましょう。 医師の判断によってはステロイドの局所注射をおこなうこともあります。 炎症を抑える効果のある医薬品の使用で、スポーツや活動時の膝の痛みが抑えられます。 まとめ この記事ではジャンパー膝の概要やセルフチェックの方法、スポーツを継続するためのケアをお話ししました。 ジャンパー膝の痛みに悩まされてる方は以下の内容を守り、より長くスポーツを楽しめるようにしてください。 メール相談 オンラインカウンセリング 膝蓋腱炎の総合的な管理法 ジャンパー膝の症状に付き合いながらスポーツを続けていくためには、ストレッチやアイシングなどで、トレーニング前後に膝をケアするのが大切です。 また、発症や再発、重症化をを防止するためにも、専門家の指示のもと傾斜台でのスクワットもおこないましょう。 痛みが強い場合は安静にしたり、ジャンプのフォームを修正したりするのも重要です。 専門家との連携と更なる情報ソース ジャンプ競技への復帰や継続は必ず専門家と相談しながら決めていきましょう。 テーピングやトレーニングなどは症状の軽減や予防に効果がありますが、間違った方法でおこなわないためにも、専門家の指示を受けることが大切です。 参考文献一覧 10.膝の慢性障害 膝蓋腱炎(ジャンパー膝) ジャンパー膝 How to taping 膝(ひざ) BASIC KNOWLEDGE テーピングの基礎知識 Superior results with eccentric compared to concentric quadriceps training in patients with jumper's knee: a prospective randomised study 明解 スポーツ理学療法学
2024.07.04 -
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
「膝に血が溜まる理由は?」 「転んで膝に血が溜まるときの治療方法は?」 膝関節血腫とは、さまざまな原因によって関節内に血が溜まる症状のことです。 なかには出血を繰り返すケースもあり、関節の破壊につながる可能性もあります。 どの年代にも生じる可能性がある症状ですが、適切な治療法や対策を行うと改善や予防が可能です。 この記事では、膝に血が溜まる理由や治療方法を始め、自宅でできる運動の対策をお話しします。 症状があるときは必ず医療機関を受診しましょう。医師に相談しながら、予防法として日常生活での運動も取り入れてみてください。 膝に血が溜まる理由とは【膝関節血腫について】 膝関節血腫は膝関節まわりの組織が出血し、関節内に血が溜まる症状です。 膝関節血腫が起こる理由は、以下の2つに分けられます。 ・外傷性のもの:主にスポーツによるけがで起こる ・反復性のもの:特定の要因で繰り返し起こる 外傷性膝関節血腫は、靭帯や半月板、滑膜の損傷や骨折により組織が出血すると発症します。前十字靭帯損傷や半月板損傷、内側側副靱帯損傷などで起こる場合が多いです。 一方、反復性膝関節血腫は、変形性膝関節症(※)による人工関節の手術や血友病(※)、血液凝固薬(血液をサラサラにする薬)などの使用により、関節内が出血しやすい状態となり再発を繰り返す症状です。 原因は人工関節の手術が一番多く、手術で0.17〜1.6%の確率で起こるのがわかっています。 外傷性の症状は、けがの回復とともに改善していきます。 しかし反復性の症状は、放置すると炎症により関節内の滑膜(※)がダメージを受け、関節の機能を破壊させる恐れがあるため、場合によっては手術の適応となります。(文献1)(文献4)(文献5) 【各用語の解説】 ※変形性膝関節症:膝関節内にある軟骨が加齢ですり減り、膝関節が変形する病気。 膝に痛みがみられるため、膝を動かしたり、歩いたりするのが困難になる ※血友病:血を止める仕組みが生まれつき上手く働かず、出血しやすくなる病気(文献3) ※滑膜:関節包をおおう膜状の組織。 滑膜から分泌される関節液が、関節の動きをなめらかにする油のような役割をもつ 関節内の出血を繰り返した際に起こる「友病性関節症」の詳細については、以下の記事が参考になります。 膝に血が溜まるときの症状と診断方法 膝関節血腫の症状は、膝の痛みや腫れ、熱感、関節可動域制限などです。 診断は整形外科でMRIや超音波検査を行い、画像で血腫の存在を確認します。 外傷性の症状は、受傷後すぐに出る場合がほとんどです。ただ、人工関節の手術による症状は、術後数カ月〜数年後に初めて出る場合が多い傾向にあります。 膝に血が溜まるときの治療方法【転んだときにも】 膝に血が溜まるときの治療方法として、自宅での初期対応のケアを始め、医療機関で適切な治療を行うと改善を図れます。 転んだときは必ず医療機関を訪れるようにしながら、今後の治療方法を知るためにも参考にしてみてください。 ・自宅でできる初期対応 ・医療機関での治療オプション 自宅でできる初期対応 症状が出現した直後に自宅でできる対応は、患部の安静や冷却、圧迫などです。 初期対応ができると、膝関節まわりで起きている炎症を抑え、症状の回復を早める効果が期待できます。 ただし、安静の時間が続くと患部の筋力低下が進みます。足首や足の指を積極的に動かして予防に努めるのも大切です。 医療機関での治療オプション 医療機関では、関節内に注射針を刺して血を吸引したり、血液凝固薬の内服を中止させたりします。 しかし、治療を行っても大きな改善がなく出血を繰り返す場合は、炎症が起きている滑膜を切除する手術や、選択的動脈塞栓術を選択するケースがあります。 選択的動脈塞栓術とは、血管を塞いで膝関節内の出血を抑える手術です。 足に局所麻酔を行ったあと、血管内にカテーテルを挿入して出血している血管を見つけ、血を止める物質を挿入します。(文献2) 選択的動脈塞栓術は、出血の原因となっている血管だけを塞ぐため、再発を繰り返していた血腫の改善にも期待できます。(文献6)(文献7) 膝に血が溜まるのを予防する運動方法 膝関節血腫を予防するには、日常生活で膝を守る運動を行いましょう。以下では、自宅でできるストレッチやトレーニングの運動方法を解説します。 無理をしないように注意しながら、必ずかかりつけの医師に相談して運動を行ってみてください。 ※現在、膝関節血腫の症状がある方は、けがの経過をみながら歩行を再開する必要があるため、自己判断で運動をせず医師の指示にしたがいましょう ・膝蓋骨のモビライゼーション ・ハムストリングスのストレッチ ・大腿四頭筋のストレッチ ・ハーフスクワット ・膝関節伸筋の筋力トレーニング ・膝関節屈筋の筋力トレーニング 膝蓋骨のモビライゼーション 膝関節血腫を予防するには、膝蓋骨の動きや膝まわりの筋肉を柔らかく保つのが大切です。 【膝蓋骨のモビライゼーションのやり方】 1.膝を伸ばしながら座り、両手の親指とひとさし指で膝蓋骨をつかむ 2.膝蓋骨を上下や左右に動かす ※動かし方によっては痛みが生じる場合がありますので、専門家の指示のもと行いましょう ハムストリングスのストレッチ ハムストリングスとは、太ももの後面についている筋肉です。大腿四頭筋(太ももの前面についている筋肉)を含めてストレッチを行いましょう。 【ハムストリングスのストレッチのやり方】 1.両膝を伸ばしながら床に座り、ストレッチする側の足の裏にタオルをかける 2.両手でタオルをひっぱりながら足首をお腹側にそらし、太もも後面の筋肉を伸ばす 3.太もも後面の筋肉が伸び、痛みのない状態で20秒キープする。 繰り返しながら3セット行う ※目的とする筋肉以外の部分に、痛みが出る場合は控えましょう 大腿四頭筋のストレッチ 【大腿四頭筋のストレッチのやり方】 1.うつ伏せの状態になり、ストレッチする側の膝をお尻側に曲げる 2.太もも前面の筋肉が伸びた位置で、20秒キープする。 繰り返しながら3セット行う ※目的とする筋肉以外の部分に、痛みが出る場合は控えましょう また、日常生活では以下の点に注意しましょう。 ・立ち姿勢やジャンプの着地で膝を内側に向けるのを避ける ・膝まわりが熱くなったり、痛みが出たりするときは、 激しい動きを避けて冷却する 日常生活で膝への負担を減らせると、けがや再発の予防にもつながります。 ハーフスクワット ハーフスクワットは、太もも前後面やお尻の筋肉を鍛えたいときにおすすめです。膝を守るためにも、膝を支えている筋肉のトレーニングを行いましょう。 【ハーフスクワットのやり方】 1.足を肩幅に広げて立つ(※膝関節はつま先と同じ方向に向ける) 2.股関節と膝関節を曲げながら、お尻を膝より少し上の高さまで下ろす。 お尻を下ろしたときに、膝の位置がつま先より前方に出ないように注意する 3.太もも前後面やお尻の筋肉のはたらきを感じながら10回、1日2セット行う ※実施の可否、回数については専門家と相談してみてください 膝関節伸筋の筋力トレーニング 膝を伸ばすトレーニングも効果的です。 【膝関節伸筋の筋力トレーニングのやり方】 1.椅子に座り、膝を伸ばしたときに抵抗がかかるように、 足首と椅子の足をゴムバンドでつなぐ 2.ゴムバンドによる抵抗を太もも前面で感じながら、ゆっくり膝を伸ばす 3.10回を1セットとし、1日2セット行う ※実施の可否、回数については専門家と相談してみてください 膝関節屈筋の筋力トレーニング 【膝関節屈筋の筋力トレーニングのやり方】 1.うつ伏せの状態になり、トレーニングする側の足首におもりを巻きつける 2.おもりによる抵抗を太もも後面で感じながら、ゆっくりと膝を曲げる 3.10回を1セットとし、1日2セット行う ただし、上記で紹介してきた運動は、膝に痛みや熱感があるときに行うと、炎症を悪化させる可能性があります。 症状が落ち着いている時期に、かかりつけの医師や専門家に相談しながら、無理のない範囲で行いましょう。 膝に血が溜まる症状に悩まれておられる方は、再生医療による治療方法もございます。 膝まわりに関して気になる症状があるときは、当院のメールや電話にてお気軽にご相談ください。 参考:堀部秀二.明解 スポーツ理学療法.1版.三輪書店.2021.248p.P122−125,152(文献8) まとめ|膝に血が溜まるのを予防するには運動が大切 膝関節血腫には、スポーツによるけがで起こる外傷性のものを始め、特定の要因で繰り返し起こる反復性のものがあげられます。 どちらも、膝の痛みや腫れ、熱感、関節可動域制限などの症状が起こります。 膝に血が溜まる症状が出たときは状況に応じて、関節から血腫を吸引する治療などを行う流れです。再発を繰り返す場合は、選択的動脈塞栓術を行う可能性もあります。 膝関節血腫を予防するには、かかりつけの医師に相談しながら、日常生活で膝関節を支える筋肉のストレッチやトレーニングを行いましょう。 膝まわりのお悩みを抱えている方は、当院にぜひ一度ご相談ください。 【リペアセルクリニックへのご相談方法】 ・メール相談 ・来院予約 ・電話相談:0120-706-313(オンラインカウンセリングの予約) 膝に血が溜まる理由に関わるQ&A 膝に血が溜まる理由に関わる内容について、よくある質問と答えをまとめています。 Q.膝関節血腫はいつ治りますか? A.外傷性の症状は、けがの発症から2〜3週間程度です。 反復性の症状は、再発を繰り返す点から長期にわたりやすく、数カ月〜数年かかる可能性もあります。 症状が長引くほど、関節の破壊につながりやすいため、専門外来を受診していただくのをおすすめしています。 Q.膝に血がたまったら歩くのは避けたほうが良いですか? A.外傷性の場合は、けがの経過をみながら歩行を再開する必要があるため、医師の指示にしたがいましょう。 けがをした直後は、松葉杖で歩いていただく場合もあります。 反復性の場合で症状があるときは、できるだけ安静に過ごして、歩くのは日常生活で必要な移動程度にとどめましょう。 参考文献 文献1 整形外科シリーズ14 膝靭帯損傷 文献2 人工膝関節全置換術後の反復性関節内血腫に対して経カテーテル的動脈塞栓術を行った3例 文献3 ヘモフィリア・ヴィレッジ 血友病についてのQ&A 文献4 日本整形外科学会 膝関節捻挫 文献5 スポーツ損傷シリーズ 6.膝前十字靭帯損傷 文献6 人工膝関節置換術後に反復する関節内血腫に対し,関節切開下滑膜切除を行った一例 文献7 Selective arterial embolization with gelatin particles for refractory knee hemarthrosis 文献8 明解 スポーツ理学療法 Takuji Yamagami, Rika Yoshimatsu, Hiroshi Miura, et al.Selective arterial embolization with gelatin particles for refractory knee hemarthrosis.Diagn Interv Radiol. 2013. 9(5). p423-426
2024.06.20 -
- 大腿骨骨頭壊死
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- 肩関節、その他疾患
- 膝部、その他疾患
骨壊死、骨頭壊死|重症度の基準とステージ分類、治療法を解説します 骨壊死とは、骨に栄養を届けている血管が障害されて血液が供給されなくなってしまった結果、骨の一部分が壊死してしまう病気です。ただ、怪我などの外傷による血管の障害や、アルコール、ステロイド使用者などに原因不明で生じることがあります。 この記事では、「骨頭壊死」と「骨壊死」のそれぞれについて解説し、重症度を決める分類方法やステージの内容について詳しく解説していきます。 骨壊死と骨頭壊死症 骨壊死は全身のあらゆる骨に起こり得ます。代表的な部位としては、股関節の大腿骨頭に起きる「大腿骨頭壊死」、肩関節の上腕骨に起こる「上腕骨頭壊死」、「膝関節骨壊死」などがあります。 股関節、肩関節についてはそれぞれ、大腿骨頭、上腕骨頭という部位があるので骨頭壊死という病名がつきますが、膝関節は骨頭という部位がないので骨壊死という病名となります。 大腿骨頭壊死の原因と重症度分類 大腿骨頭壊死の原因 股関節を構成している大腿骨頭を栄養している血管が障害されることによって生じます。 原因不明の特発性と股関節の骨折や脱臼などの外傷、放射線治療、潜函病などによって発症する場合があります。 大腿骨頭壊死の重症度分類 原因不明である特発性骨頭壊死では壊死の範囲によって重症度分類がありType A~Cに分けられます。 重症になるほど、壊死範囲が大きく、大腿骨頭が潰れてしまうリスクが高くなりType Aが軽症でCになるとより重症となります。Type CはさらにC-1とより重症なC-2に分けられます。 それぞれの内容(基準)について解説します。 特発性骨頭壊死、重症度分類(基準) ・Type A:壊死範囲が体重がかかる領域の1/3未満 ・Type B:壊死範囲が体重がかかる領域の1/3〜2/3 ・Type C:壊死範囲が体重がかかる領域の2/3以上 ・Type C-1:壊死の範囲が骨盤の縁の「内側」にあるもの ・Type C-2:壊死の範囲が骨盤の縁の「外側」にあるもの 大腿骨頭壊死から進行・変形性股関節症へのステージの分類 初期には壊死部分が潰れていき、進行すると軟骨がすり減ることによって「変形性関節症」になってしまいます。ステージは1〜4に分けられるので、それぞれについて簡単に解説します。 大腿骨頭壊死の進行度についての分類 ・ステージ1:レントゲンで異常がなく、MRI検査などで壊死がわかる場合 ・ステージ2:レントゲンで異常があるものの、骨頭が潰れていない時期 ・ステージ3:骨頭が潰れているものの、関節軟骨があり関節の隙間が残っている時期 ・ステージ4:軟骨がすり減り、変形性関節症となっている時期 これらの重症度、ステージ分類とご本人の年齢や社会生活の状況、希望などを考慮して治療方針が決定されます。 軽症なタイプであれば保存治療で治る方もいますが、重症なタイプや末期のステージでは手術を要する場合もあります。 上腕骨頭壊死について 次に上腕骨頭壊死について解説してまいります。 上腕骨頭壊死の原因 肩関節を構成している上腕骨頭という部分を栄養している血管が障害されることによって骨が壊死してしまう病気です。 原因は、「外傷性」と「非外傷性」に分けられます。外傷性には上腕骨の骨折、脱臼などがあり、非外傷性にはステロイドの使用やアルコール、鎌状赤血球症、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの全身性疾患などがあります。 上腕骨頭壊死の進行・ステージ分類 病型の分類にはCruess分類が最も使われています。 上腕骨頭壊死に対する治療法は、このステージ分類、壊死の範囲、患者の年齢、症状、全身の健康状態などの要因によって決まります。保存治療で治る方もいますが、進行してステージ末期になると人工関節が必要となる場合もあります。 上腕骨頭壊死のステージ分類 ・ステージ1:レントゲンで異常がなく、CTやMRI検査で壊死がわかる場合 ・ステージ2:骨透亮像や骨硬化像、限局性の骨溶解像 ・ステージ3:軟骨下骨に骨折線を認める段階 ・ステージ4:上腕骨頭に加えて、肩甲骨の関節窩にも骨の変化を生じている場合 膝関節骨壊死について ここからは、膝関節の骨壊死ついて記してまいります。 膝関節骨壊死の原因 膝関節の骨壊死も同じように、何らかの原因で骨が壊死してしまう病気で、膝関節では大腿骨側によく起こります。 高齢の方によく起こりますが、変形性膝関節症などの膝の痛みと比べて安静にしていても痛みが強いことが特徴です。 原因はまだはっきりとわかっていませんが、肥満やステロイド薬の使用の他、軽微な骨折が原因となる場合もあります。 膝関節骨壊死の進行|ステージ分類 いくつかのステージ分類が提唱されていますが、代表的なものを1つ紹介します。 膝関節骨壊死のステージ分類 ・ステージ1:レントゲンで異常がみられない時期 ・ステージ2:レントゲンで骨内に壊死領域がみられるもの ・ステージ3:レントゲンで軟骨の下に骨折線があり、関節面が凹んでいるもの ・ステージ4:関節の隙間が狭くなってしまっている時期 骨壊死に対する治療法・保存療法から人工関節置換術へ いずれの骨壊死でも、初期の段階では異常が見つからない場合があります。 しかし、症状が進行すると壊死した部分が潰れてしまい、結果として変形性関節症を起こしてしまいます。関節が変形してしまうと、保存治療の効果は限られているので、基本的には「人工関節置換術」が選択されます。 人工関節を避ける再生医療 しかし、最近では手術に至らないようにする治療として「再生医療」があります。再生医療は導入されたばかりの最新の治療法であり、ご自身の細胞から培養した幹細胞などを直接関節内に投与することで組織の修復を促します。 それによって骨や軟骨の再生が起こり、症状がよくなる可能性があります。 https://youtu.be/ic_6QaEU5NU?si=p8rKJMhU5cjRfNE6 ▶当院は再生医療の専門院です。治療について詳しく知りたい方は動画をご覧ください。 骨壊死についてQ&A 普段、 骨壊死について患者様からよくお聞きする質問から以下を抜粋しました。 Q . 骨壊死にならないか心配ですが、気を付けることはありますか。 A . 現代医学でも骨壊死の正確な原因はわかっていません。危険因子としてわかっているのは外傷、ステロイドの使用、アルコール多飲です。 ステロイドは、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど全身性疾患の治療に必要なので、飲まないことはおすすしませんが、外傷やアルコールはご自分で気を付けることができます。無理な運動は行わず、規則正しい生活習慣を送ることが予防に必要と言えるでしょう。 Q . レントゲンで問題ないと言われましたが、大丈夫でしょうか。 A . 骨壊死は初期の段階ではレントゲンで異常がわからないことがほとんどです。壊死した領域がレントゲンでわかるまでは時間がかかりますが、MRIでは早期に病気を見つけることができます。 痛みが強く心配な場合はMRIなどの精密検査について担当の医師と相談することをおすすめします。 まとめ・骨壊死、骨頭壊死|重症度の基準とステージ分類、治療法について 骨壊死は骨を栄養している血流が途絶えることによって発症する、現時点でも原因が不明の難病です。 大腿骨頭や上腕骨頭、膝関節によく起こり、初期のレントゲンでは異常がみつからない場合がほとんどです。放置して症状が進行すると骨切り術や、人工関節などの手術が必要になりますが、最近では骨や軟骨の再生を促す再生治療も行われ始めています。 手術に至らないようにするためにも早期に病院で診断してもらい、治療について医師と相談していくことが大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 ▼以下もご参考にして下さい 参考文献 https://www.cancertherapyadvisor.com/home/decision-support-in-medicine/shoulder-and-elbow/osteonecrosis-of-the-humeral-head/ https://radiopaedia.org/articles/cruess-classification-of-humeral-head-osteonecrosis https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK562286/
2023.10.02 -
- ひざ関節
- 関節リウマチ
- 膝部、その他疾患
関節リウマチは全身の関節に炎症が起こり、痛みや腫れを起こす病気です。 進行すると関節の変形や機能の障害を残してしまいます。 関節リウマチでは膝の痛み、膝の腫れも多い症状です。 膝が痛いとき、変形性膝関節症と考え「年のせいでは?」と悩んでいる方もいるでしょう。 もし関節リウマチだった場合に放置していると、悪化してしまう可能性もあります。 この記事では関節リウマチによる膝関節炎の症状や治療法について解説していきます。 膝の痛みでお困りの方はぜひ参考にしてみてください。 膝の関節炎とリウマチの違い 関節炎とリウマチの違いは、大きく分けると以下の通りです。 関節炎 さまざまな原因で関節に起こる炎症の総称 リウマチ 関節炎を起こしている症状の1つ たとえば関節リウマチでは、自分の体を細菌やウイルスから守る免疫の異常によって関節の滑膜に炎症が起こります。 関節リウマチが起こると痛みや腫れを感じるでしょう。 関節リウマチは無治療のままで放置してしまうと、関節が変形など機能的な障害をきたすので注意しましょう。 以下の記事では関節炎の1つ「化膿性関節炎」について解説しています。 治療法や再発予防もまとめたので、具体的な症状なども把握しておきたい方は、ぜひご覧ください。 リウマチが発症する主な原因や症状 関節炎とリウマチの違いが理解できても「気づかないうちに痛みを感じるようになった」方もいるでしょう。 ここからは、リウマチになる主な原因と症状を順番に解説していきます。 関節リウマチの主な原因 関節リウマチの多くは40〜60歳代頃の中高年女性に発症します。 正確な原因はまだ明らかになっていませんが、自己免疫疾患とも言えるでしょう。 自分の組織に対して攻撃する抗体が作られてしまい、関節内の滑膜にリンパ系の細胞が集まって炎症性の物質が作られるのが原因とも考えられています。 【リウマチの発症が疑われるサイン】 ・起床時に関節部分がこわばっているように感じる ・関節が腫れている ・関節が熱っぽい ・力が入りにくい ・日常生活の作業が上手くいかない ・家族にリウマチの患者がいる など 上記の症状が感じられる方はリウマチになっている可能性があるので、しっかり検査しておきましょう。 発症には遺伝的な要因や喫煙、歯周病などが関連しているとわかっています。 発症すると関節炎によって痛みや腫れを起こし、進行すると関節の変形を生じてしまうため、早期の発見と治療が大切です。 リウマチによる膝関節炎の症状 関節リウマチで多い症状は手や足の指の腫れ、痛み、朝のこわばりなどです。 膝関節で滑膜が増殖して炎症を起こすと膝関節炎をきたしてしまいます。 膝関節炎の主な症状は以下の通りです。 ・膝が腫れる ・膝に水が溜まる ・歩くときや階段での痛みを感じる ・膝が曲がらない など 膝の痛みは膝裏に起こるケースが多く、曲げ伸ばしのときに音が生じた経験もあるでしょう。 炎症が強い場合には安静にしていても歩けないくらいの激痛が生じる場合もあるので注意してください。 なお、リウマチはあくまで関節炎の1つなので、以下の表で似ている症状をまとめました。 病名 主な症状 膠原病(こうげんびょう) 関節に痛みを感じたり血管症などの症状がある 線維筋痛症 手足の関節だけでなく筋肉に激痛を感じるケースがある 比較的女性が発症しやすい 関節炎とリウマチの違いについてだけでなく、細かい症状の違いや治療法などが気になる方は、以下の記事で詳しく解説していきます。 膝関節炎を放置するリスク 膝の関節炎を放置しておくと、関節の軟骨がなくなってしまうだけでなく、徐々に関節の変形が進んでいきます。 日常生活を送る上で「多少の痛みだから」と放置しすぎてしまうと、膝の曲げ伸ばしが難しくなるので注意してください。 骨同士のぶつかりだけで痛みを感じる可能性もあるので、症状が悪化してしまいます。 関節の変形を生じさせないためにも、早期の発見と治療が大切です。 リウマチによる膝関節炎の診断方法 リウマチの診断は問診、身体診察と血液検査、画像検査などを組み合わせて総合的に行います。関節が腫れて、痛む病気は複数あり、検査だけで関節リウマチと診断できない場合があるからです。 関節リウマチの診断基準を使用して診断を行うので、専門家である医師の診断が必須となります。 現在では2010年に米国、欧州リウマチ学会が合同で発表した分類基準を使用するケースが大半です。(文献1) 以下の4項目についてそれぞれ点数をつけ、合計して6点以上であれば関節リウマチと診断します。 診断基準 ①症状がある関節の数 ②症状が続いている期間 ③血液検査での炎症反応の数値 ④血液検査でのリウマトイド因子や抗CCP抗体の数値 血液検査では、リウマトイド因子や抗CCP抗体が重要で、多くの関節リウマチで陽性になります。 しかし、両方とも陰性でも関節リウマチと診断されたり、陽性でも関節リウマチではなかったりもします。 炎症反応は活動性を反映する指標ですが、リウマチ以外でも上昇する可能性もあるので診断結果は要チェックです。 画像検査は診断基準には含まれませんが、単純レントゲン写真では「骨びらん」と呼ばれる骨の透亮像がみられる場合があります。 関節エコーやMRI検査も滑膜炎の範囲、程度を評価するのに有用です。 リウマチによる膝関節の治療法 リウマチによる膝関節の治療法は、日常生活で応急処置をする方法はもちろん、専門医から薬を処方してもらう方法などがあります。 ここからは、自宅でできる応急処置から薬物治療などの治療法を解説していきます。 体や関節を保温する 膝の関節炎だけでなく、体の関節が動かしにくいと感じた場合、患部を保温すると効果が期待できます。 冬場はもちろん、夏場の冷房があたるのも避け、長袖や長ズボンを着用しておくのがおすすめです。 患部を保温しておくと関節部分の血液がよく流れ、こわばりなどを症状を軽減する効果が期待できるのです。 関節が腫れている場合は炎症が起きている可能性があるので、保温以外の治療法を選択する必要があります。 以下の記事では、関節リウマチの初期症状や治療を詳しくまとめているので、あわせてご覧ください。 食事や姿勢などの私生活を見直す 関節リウマチの患者様は、食生活だけでなく姿勢改善などを普段から実施してもらうのがおすすめです。 症状を悪化させないためにも、以下のポイントには要注意です。 ・砂糖や加工食品を摂取しすぎない ・激しい運動を控える ・首に負担をかけない ・同じ姿勢を長時間とる ・重いものを持つ ・正座をする ・喫煙をする ・ストレスを溜める など 詳しい改善項目は、以下の記事でまとめているので、ぜひ参考にしてください。 専門医から抗リウマチ薬を処方してもらう リウマチの治療法は基本的に薬物治療です。 リウマチと診断した早期から、抗リウマチ薬を開始し、痛みの程度に応じて炎症を抑えるステロイドや、鎮痛薬を併用します。 薬物治療を開始しても膝関節炎の症状が続く場合にはサポーターを使用したり、膝関節に注射をしたりする方法があります。 日本リウマチ学会による2020年のガイドラインから代表的なお薬を以下の一覧でまとめました。(文献2) 抗リウマチ薬 メトトレキサート(第一段階) 生物学的製剤やJAK阻害薬(第二段階) 関節リウマチはこれまで治療が難しく、関節の変形が進行してしまう患者様も多かったのですが、現在では薬剤の種類も多くなっています。 効果が高いお薬もあるため、適切に治療すれば症状を抑えられます。 しかし、膝の関節炎が治まらず、関節の変形や破壊が進行した場合、人工関節置換術などの手術治療が行われるので不安に感じている方もいるでしょう。 膝の痛みは現在、⼿術をしなくても治療できる時代になっているので、気になる方は気軽にお問い合わせください。 まとめ・関節炎とリウマチの違いを把握して適切な治療を行おう! 関節リウマチによる膝関節炎は、日常生活に大きな影響を与える深刻な疾患です。 膝の痛みや腫れを放置すると、関節の変形や機能障害が進行し、歩行困難や日常生活の質の低下を招く恐れがあります。 しかし、早期発見と適切な治療を行えば、症状の進行を抑え生活の質を維持できます。 関節リウマチの診断には、問診や身体診察、血液検査、画像検査が用いられるので、専門医による診断が必須です。 リウマトイド因子や抗CCP抗体の検査結果が重要な診断指標となり、診断基準に基づいて総合的に判断されます。 自己判断で治療を中断したり放置したりせず、定期的な診察と検査を受けるよう心がけましょう。 日常生活では関節に負担をかけないように注意し、適度な運動やストレッチを取り入れるのも大切です。 関節リウマチの早期発見と適切な治療を通じて、健康的で快適な生活を維持しましょう。
2023.09.10 -
- お皿付近に違和感
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
・押すと痛い頭にコブができて困っている ・押すと痛い頭のできもの(こぶ)の原因を特定したい ・押すと痛い頭のできもの(こぶ)を早く治したい 上記のようなお悩みを抱えている方の一助となるべく、本記事では「膝関節捻挫」について解説します。 捻挫は適切な治療を行えば、問題なく日常生活に復帰できる怪我です。裏に潜む重大な怪我を見逃さないように、記事の内容をご確認いただき適切な医療機関を受診しましょう。 膝関節捻挫とは?原因・症状・治療法を解説 膝の曲げ伸ばしを安定して行うために重要な働きをしているのが、関節を包む袋である「関節包」と関節を支える組織である「靭帯」です。 関節包と靭帯がしっかりと機能しているおかげで、私たちの膝は本来動かない方向へ曲がらないように制御されており、体重をかけても安定して歩けます。しかし、運動中や転倒などにより、関節が通常の範囲を越えて動いてしまうことがあります。 この「関節包」や「靭帯」を痛めてしまった状態を捻挫といいます。ただし、「捻挫」と診断されるのは軽症の場合に限ります。損傷が強く、関節が不安定になった場合は捻挫ではなく靭帯損傷という診断になります。 膝関節捻挫の原因 膝関節捻挫の発症原因の多くは走っているときに膝をひねったり、相手と接触して転倒してしまったりとスポーツ(運動)中に引き起こされます。また、普段の生活でも階段やちょっとした段差などで思いがけず膝をひねってしまい、受傷することがあります。 上記のように、相手との接触などで発症する「直接的な原因」と、つまずき・着地などにより発症する「間接的な原因」があることを覚えておきましょう。 膝関節捻挫の症状 受傷直後は痛みが強いですが、機能は比較的保たれている事が多く、その後も痛みを我慢して普通に生活できる方もいます。ですが、徐々に内出血とむくみが出てきて、膝全体が腫れてきます。 膝全体が腫れると、膝を動かす際に痛みが生じます。また、左右を比較すると動かせる範囲が狭くなる「可動域制限」がでてきます。ひどい場合は痛みで足が地面につかないケースも。 ただし、「捻挫」であれば一時的な症状なので、数日で改善するケースが多いです。いつまでたっても痛みが引かない、腫れがひどくなってきたという場合は「靭帯損傷」のレベルまで症状が悪化している可能性があります。注意しましょう。 「歩けるけど痛い」「膝がぐらぐらして不安定」は要注意! 「「ただひねっただけだと思って様子を見ていたら、実は靭帯損傷だった。」という事例は意外に多いです。 膝には主に4つの重要な靭帯があります。 前後方向の安定性を保つ前十字靭帯・後十字靭帯、左右方向の安定性を保つ内側側副靭帯・外側側副靭帯です。これらはバスケットボールやサッカーなどのスポーツはもちろん、転倒などでも痛めるケースがあります。 「歩けるけれども痛みが続く」や「膝がぐらぐらして不安定」と感じるときは、これらの靭帯を痛めている可能性があります。また、靭帯を痛めていると関節の中に血が溜まることが多いです。 「もしかしたら当てはまるかも」と思った場合は、自己判断せずに病院を受診しましょう。 歩けるけど痛い 膝がぐらぐらして不安定 「靭帯」や「半月板」を損傷している恐れがあります。自己判断はせず、病院を受診しましょう! また、膝のクッションや安定性を保つ役割をしている組織に半月板が存在します。半月板は左右に1つずつありますが、こちらも膝をひねって痛めた際に損傷してしまうことがあります。 年を取ると徐々にすり減って切れやすくなります。特に、高齢の方はバスの乗り降りなど少しの段差を下りただけでも半月板が切れてしまう恐れも。「ブチッ」という感覚を伴うのが特徴的です。半月板損傷は検査しないと判明せず、病院でMRIなどを撮影しなければなりません。 一口に「捻挫」と言っても、紹介したような損傷が隠れている可能性もあります。ちょっとでも違和感があるなら、病院に受診するようにしてみてください。 膝関節捻挫の治療 膝をひねってしまった受傷直後は、RICE処置を行いましょう。 Rest:安静 Ice:冷やす Compression:圧迫 Elevation:挙上 スポーツはすぐに中止し、歩行もできればしない方が望ましいです。氷や保冷材などを使って膝を冷やしながら、包帯などがあれば圧迫してください。 また、寝ているときは心臓より高い位置に足をあげておくと、膝が腫れてくるのを予防できます。その後は、なるべく早期に整形外科医の診察を受けてください。 膝関節捻挫の診断 問診と身体診察で、どのような怪我が疑わしいのか予想がつく場合もあります。 基本的には、まずレントゲンで骨折がないかどうか確認します。レントゲンだけではわからない場合は、骨をより詳しく見るためにCT検査を行うこともあります。その後、靭帯損傷や半月板損傷が疑われる場合にはMRI撮影を実施します。 レントゲン撮影 → CT検査 → MRI撮影 検査の結果、手術が必要な靭帯損傷などの疑いがなければ保存療法になります。 損傷した関節包や靱帯が修復する期間は、通常3週間前後です。この期間は激しい運動や重労働などはせず、安静にしていましょう。安静を保つ目的で、一定期間添木や松葉杖などの使用を指定するケースもあります。 痛みが強い場合は、飲み薬や湿布を処方する場合もあります。ただし、鎮痛薬は痛みを止めるだけで治ったわけではないので、一番大事なのは膝の安静です。 そのまま通常の生活に戻れる場合は、晴れて治療終了です。しかしながら、安静にしていた影響で筋力が低下したり、動きが悪くなることがあります。 その際はリハビリテーションを実施して膝関節の機能を戻すとともに、次の怪我の予防も同時に行うことが大切です。 膝関節捻挫についてのQ&A 膝関節を含む捻挫の予防法や対処法はありますか? 運動をされる場合は、適切なストレッチやウォーミングアップが大切です。筋肉の柔軟性を保ち、温めてしっかりと動かせる状態にしてから運動を始めることで、関節に負担がかかりにくくなります。 また、普段から下肢の筋力が衰えないように意識してトレーニングをしておくことも重要です。さらに、自分の足に合った靴を選ぶことも転倒の予防になります。 膝関節捻挫を引き起こしてからスポーツに復帰できる目安は? スポーツ復帰には、痛みがなくなっていることが大前提です。痛みがあるまま再開すると、膝をさらに痛めたり、かばって別の部位の怪我を引き起こしかねません。 一般的に、通常の捻挫であれば2〜3週間で痛みが落ち着くので、軽い運動から再開するように指導します。 膝に過度な負担をかけないよう、サポーターなどの補助具を使用することも勧められます。 膝関節捻挫は何科を受診すればよいですか? 膝関節捻挫は外傷により発症します。よって、整形外科を受診しましょう。 とはいえ、受傷した時間が深夜や早朝だと、最寄りの整形外科医が受診の時間外の場合もあるでしょう。このような場合は、整形外科のある最寄りの大きな病院に問い合わせるか、厚生労働省が推奨している「♯7119」に電話で相談してみてください。 あきらかに緊急性がない場合は当院へご相談ください。国内で8,000以上ある実績を元に、親身に対応いたします。 まとめ|膝関節捻挫の症状が長引く場合はご相談ください この記事では、膝関節捻挫について解説しました。 膝関節捻挫は直接的・間接的な原因から発症し、受傷直後に強い痛みを伴います。病院を受診せずに痛みを我慢しその後も様子をみてしまう方も多いのが現状です。しかし、裏側に潜む靭帯や半月板の損傷も考えられます。 自己判断で無理せず、最寄りの医療機関を受診するよう心がけましょう。
2023.08.28 -
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
離断性骨軟骨炎の症状、その原因と治療法について 膝に痛みを起こす原因の1つに、「離断性骨軟骨炎」があります。若いスポーツ選手に起こることが多く、膝の軟骨の損傷なので、初期のレントゲン写真ではわからない場合もあります。 この記事では膝の離断性骨軟骨炎の症状、その原因、治療法について解説していきます。膝の痛みで悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。 離断性骨軟骨炎とは 膝の離断性骨軟骨炎、読み方は“りだんせいこつなんこつえん”であり、膝関節の軟骨が関節内に剥がれ落ちて膝に様々な症状を起こしてしまう病気です。 好発部位は大腿骨の内側が最も多く85%で、外側に15%、膝蓋骨にも稀に起こります。また、外側では円板上半月板がみられることもあります。 離断性骨軟骨の症状 離断性骨軟骨の症状は、病気が発症して初めの段階では傷んだ軟骨は遊離せずに、運動後の不快感や鈍い痛み以外には特に症状はありません。 軟骨の表面に亀裂や変化が生じると痛みも強くなり、スポーツなどに支障を来してしまいます。病気が進行していき、軟骨が剥離してしまうと引っかかる感じや膝のズレ感を自覚します。また、大きな軟骨の欠片が関節内に剥がれ落ちると、膝の中でゴリッと音がする場合があります。 離断性骨軟骨の主な原因 離断性骨軟骨炎は、約2:1の割合で男性に多く、成長期に野球やサッカー、バスケットボールなど運動を行う10代によくみられます。 正確な原因についてはまだ明らかにはされていませんが、成長期のスポーツ選手に起こりやすいことから、繰り返されるストレスや外傷によって軟骨下の骨に負荷がかかる事が原因と考えられています。血流障害によって、骨軟骨片が分離して剥がれ落ちてしまいます。 離断性骨軟骨の診断方法 軟骨の損傷なので初期には通常のレントゲン写真で診断することが難しいことが特徴です。そのため、初期に診断するためにはMRI検査を行い、確定診断をします。病気が進行して、骨軟骨片が分離してくる時期ではレントゲン写真で診断することが可能になってきます。 また、肘の離断性骨軟骨炎はエコーでスクリーニング検査と診断をすることが可能であり、膝の離断性骨軟骨炎についてもエコーでの診断が可能と報告されてきています。 離断性骨軟骨の治療 治療には保存療法、手術療法があります。 保存療法 身長が伸びている発育期で軟骨片が離れていなければ、自然に修復されることを期待して、免荷や膝関節の安静、サポーター(装具)を使用などの保存治療が選択されます。 痛みに対しては鎮痛薬や関節内注射などを行い、レントゲンやMRIで修復されている傾向が見られれば徐々に負荷を上げていきます。一部の骨折では超音波治療による骨癒合までの期間が短縮することから保険適応がありますが、現状では離断性骨軟骨炎に対しては超音波治療の適応はありません。 手術療法 手術治療に関しては、軟骨の修復が長引いている場合や、病気の範囲が大きい場合、発育期以降ではよい適応とされます。 手術治療はマイクロフラクチャー法、整復内固定術、骨軟骨移植術などの方法があります。 マイクロフラクチャー法 骨髄刺激法ともいわれます。膝関節鏡を関節内に入れて、患部の数カ所に小さい穴を開けて出血させて治癒を促進させます。骨髄に含まれる幹細胞が損傷部に誘導されることで修復させることを目的とさせる治療です。比較的小さな範囲の軟骨が損傷されている場合がよい適応です。 整復内固定術 軟骨片が剥離して、遊離している例では整復固定術の適応があります。不安定な骨軟骨片を骨釘や生体吸収性ピンなどを使用して固定します。 骨軟骨移植術 損傷範囲が比較的大きく、遊離した軟骨片の状態が悪く骨癒合を期待できない時に選択されます。大腿骨の体重がかからない部分から円柱状の軟骨片を採取して、損傷した部分に移植する自家骨軟骨柱移植術と採取した正常軟骨を培養して軟骨組織を作成して移植する自家培養軟骨移植術が主な方法です。 このように様々な手術治療法がありますが、いずれの方法も適応、術式については患者さんの状態や希望、術者によって異なってきます。ご自身の状態をしっかりと把握して治療法について、主治医とよく相談し、納得できる治療を受けることが大切です。 また手術だけではなく、その後のしっかりとしたリハビリテーションも治療の上で重要ですので、リハビリ体制が整っているかも病院選びの参考にすることがおすすめです。 まとめ・離断性骨軟骨炎の症状、原因、治療法について 膝離断性骨軟骨炎は10歳代の若いスポーツ選手に起こりやすい病気で、膝関節の軟骨が関節内に剥がれ落ちて、痛みや引っかかりなどの様々な症状を起こしてしまいます。 初期にはレントゲン写真でわからない場合が多いので、MRIでの精密検査が必要です。 治療法は保存治療、手術治療があります。特に手術治療は骨髄刺激法や整復内固定術、骨軟骨柱移植術などの様々な方法がありますが、遊離した軟骨片の大きさや状態などを総合的に判断して決定されます。 膝に違和感や痛みがあるものの、なかなかよくならない方は早めに専門医に診察をしてもらうようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。
2023.08.24 -
- 動作時の痛み
- ひざ関節
- 下肢(足の障害)
- スポーツ外傷
- 膝部、その他疾患
- 肘関節
離断性骨軟骨炎は再発する?再発リスクをリハビリで抑えるための治療と期間 離断性骨軟骨炎は、スポーツが原因で発症することが多い病変です。 もし発症した場合は、初期のうちに治療することで完治する確率が高くなりますし、症状が進行した場合でも、重症なものでなければ手術によって痛みや引っかかりを解消することができます。 一時的にスポーツをやめて安静にしていれば治る可能性が高いのですが、運動の再開時期を間違えると再発することもあり、軟骨の状態によっては選手生命を絶たれることもあります。 しかし、術後のリハビリを正しく行うことで再発リスクを下げることが可能になります。プロのスポーツ選手やプロを目指している人はもちろん、誰にとっても再発は避けたいものですよね。 今回は、この離断性骨軟骨炎の再発と再発予防、再発リスクを予防するリハビリについて解説していきます。 離断性骨軟骨炎の症状と治療 離断性骨軟骨炎は、初期の症状がほとんどありません。 違和感や痛みは、負荷がかかった肘や膝の関節軟骨表面に亀裂が入ったことで生じます。 離断性骨軟骨炎をそのまま放っておくと、軟骨がはがれ落ち、痛みが強くなります。はがれ落ちた軟骨の欠片は関節内を浮遊し、曲げ伸ばしに影響を及ぼし、動作の際に引っかかりを感じるようになります。 進行すると、引っかかりと痛みでスムーズな動きができなくなるため、スポーツを継続することが難しくなります。しかし、発症した原因となっている運動を休止することで病巣が修復し完治する場合もあります。 無理に運動を継続すると、手術が必要になったり選手生命を絶たれることになったりする可能性が高いため、肘や膝に違和感があったら運動は中止し、早く医療機関を受診し、医師の指示に従いましょう。 離断性骨軟骨炎は再発する 注意すべきは離断性骨軟骨炎は、一旦症状が治まっても再発することがあります。なぜなら、軟骨が普通の骨よりも再生しにくいからです。 実は、離断性骨軟骨炎の症状は安静にしていると落ち着いてくるため、もう治ったと勘違いする人が多くいます。しかし、その状態で運動を始めてしまうと、まだ安定していない軟骨に負荷をかけることになり、結果として再発してしまうのです。 しばらく運動を休んでいて痛みや、引っかかりがなくなったとしても、自己判断で運動を再開するのは非常に危険です。必ず、運動を再開する前には面倒でも医師の診察を受けて運動再開の可否を確認することが大切です。 大丈夫だろう・・・といった自己判断は、結果として治療期間を長引かせる可能性があるため、避けましょう。 離断性骨軟骨炎をリハビリで抑えるために 離断性骨軟骨炎のリハビリは、保存療法として行うものと、手術の後に行うものがあります。 子どもや軽症の患者さんは、ほとんどが保存療法での治療となるため、治療開始とともにリハビリを始めます。 離断性骨軟骨炎は、運動が原因の疾患ですので、痛みがある時は安静にしていることが一番です。しかし、症状が落ち着いて来たら、ある程度動かすことも必要になります。 離断性骨軟骨炎のリハビリ治療と期間 離断性骨軟骨炎は、軽症であればリハビリと安静中心の保存療法で治療が行われます。 また、離断性骨軟骨炎のリハビリ期間は、患者さんの年齢や症状の進行具合によって変わってきます。 約1~2カ月で痛みはやわらぎ、最低でも3か月の安静は必要です。3カ月以上保存療法を行っていても回復しない場合は手術療法が適応されることもあります。また、すでにに症状が進行しており、軟骨の状態が良くない場合は、リハビリより手術を先に行います。 手術は大体が関節鏡を使ったものになりますが、患者さんの状態によっては軟骨の移植など大がかりな方法になることもあります。 関節鏡下の手術の場合は、傷口が小さく回復が早いため、早期にリハビリを開始することができます。ただ、軟骨の修復は普通の骨と比べて時間がかかるため、無理に動かすことはできません。 離断性骨軟骨炎のリハビリは重要 離断性骨軟骨炎のリハビリは、可動域訓練や筋力トレーニングを中心に行います。 リハビリの際は、理学療法士から動かし方の指導やアドバイスがありますから、それに従って、肘や膝に負荷のかからない動作を身につけていきます。 リハビリを行うことは、自分の動きや姿勢の癖に気付くことにも繋がります。体に負担のかからない動作を知ることができるため、スポーツ再開後のトレーニングやストレッチにも役立ちます。 離断性骨軟骨炎の再発予防 離断性骨軟骨炎の再発を予防するには、運動の再開時期を勝手に決めないことがポイントです。 痛みがなくても軟骨はまだ不安定な状態ですから、きちんと医師の指示に従い、完全に治ってから運動を再開してください。 また、いきなり以前と同じレベルで体を動かすのは危険です。最初のうちは無理せず、少しずつ元に戻していくようにしましょう。 まとめ・離断性骨軟骨炎は再開時期を誤ると再発するため注意が必要 離断性骨軟骨炎は、安静にしていれば症状がなくなっていきます。しかし、それを完治したと思い込んでしまうと、再発しやすくなります。リハビリを正しく行うことで症状を和らげ、再発を防ぐことができます。 自分の姿勢や動作の癖を知ることは、その後の怪我を予防することにも繋がります。また、治療後はいきなり治療前と同じトレーニングをするのではなく、少しずつ運動を再開していくようにしましょう。 きちんと軟骨が修復されれば、離断性骨軟骨炎は治すことができます。痛みや引っかかりがなくなっても、運動の再開時期は必ず一度受診し、医師の指示に従うようにし、焦らず確実に治療しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。
2023.05.26 -
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
膝の内側を押すと痛みを感じることはありませんか? その原因のひとつに、リンパの詰まりが関係しているかもしれません。 リンパの流れが悪くなると、膝周辺に痛みやむくみ、重だるさが生じることがあります。 そこで今回は、膝の内側の痛みの原因として考えられるリンパの詰まりについて詳しく解説します。 さらに、自宅で簡単にできるマッサージやほぐし方もご紹介しますので、痛みを和らげ、健康な膝を取り戻すために、ぜひお役立てください。 膝の裏側(内側)を押すと痛む症状はリンパの詰まりが原因の一つ 膝の裏側に痛みや腫れがある場合や膝から下がむくむ症状は、「リンパの詰まり」が原因の一つであることが考えられます。 特に、長時間の立ち仕事や座りっぱなし、飛行機やバスで足を下げたままの姿勢では、リンパの流れが悪くなることが多いです。 リンパが詰まることにより、リンパ液の流れが滞り、体内の老廃物がたまりやすくなります。 その結果、膝の裏を押すと痛みがあるほか、腫れやだるさ、重さ、冷えなどの症状が生じることがあるのです。 これらの症状はリンパの流れを改善することで軽減されるため、日常的にリンパマッサージやストレッチを取り入れることが効果的です。 適切なケアや治療を実施すれば、症状が緩和される可能性が高まります。 膝裏でリンパが詰まる原因 膝の裏には「膝窩リンパ節(しっかリンパせつ)」というリンパ節が存在します。 リンパ管は体内で老廃物や細菌を運ぶ役割を担い、リンパ節はそのリンパ管を通る異物を取り除く場所です。 しかし、リンパの流れが悪くなると、リンパ液がリンパ節でスムーズに循環できず、詰まりが起こることがあります。 特に、筋肉の働きが低下したり、偏った食生活をしていると、膝の裏でリンパが詰まりやすくなるのです。 これらの原因がリンパの流れを悪くし、むくみや不快感を引き起こします。 ここでは、それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。 筋肉の働きが低下している リンパの流れは筋肉の動きによって支えられていますが、筋肉が十分に働かないと、リンパの流れが滞りやすくなります。 特に運動不足やデスクワークなどで長時間座ったままでいると、膝の裏側の筋肉が使われず、リンパ液が溜まりやすくなるのです。 また、加齢やケガにより筋肉の柔軟性や強度が低下すると、リンパ液の循環が阻害されることもあります。 筋肉の働きが弱まると、リンパ管が圧迫されて流れが悪くなることが原因です。 そのため、筋肉を適度に動かし、柔軟性を維持することが大切です。 例えば、軽いストレッチやウォーキングなどの運動を日常生活に取り入れることで、筋肉を活性化させ、リンパの流れをスムーズにすることができます。 偏った食生活になっている 偏った食生活は、体内の水分バランスや代謝機能に悪影響を与え、リンパの流れを悪くすることがあります。 特に塩分が多い食事や脂っこい食べ物を頻繁に摂ると、体内に余計な水分が溜まり、リンパ液の流れが滞りやすくなるので注意が必要です。 また、ビタミンやミネラル、マグネシウムが不足していると、リンパの循環がスムーズに進まなくなります。だからこそ、バランスの良い食事を心がけることが大切です。 野菜や果物を多く摂り、適切な水分補給を行い、加工食品や高塩分の食事を控えることで、リンパ液の流れを正常に保つことができます。 膝の裏側(内側)にリンパが詰まっている時の対処法 膝裏のリンパが詰まっている場合は、先ほど説明したリンパの流れが悪くなる原因を考慮した対応が必要です。 その際の具体的な解消方法を3つ紹介しましょう。 適度な運動をする 筋肉を動かして血液やリンパの流れを促すことを「筋ポンプ作用」と言います。 この筋ポンプ作用を働かせるには、適度な運動が必要です。 運動不足は筋肉量や代謝の低下を引き起こしますが、適度な運動を行うことで、筋肉量や代謝が向上し、血液やリンパ液の循環も良くなります。 特におすすめなのは、膝や足首の屈伸運動です。 たとえば、つま先を上げ下げする足首の運動は「第二の心臓」と呼ばれるふくらはぎの筋肉を刺激し、血液やリンパの流れを促進する効果があります。 運動は「テレビを見ながら」や「トイレで座りながら」など、日常の合間にこまめに行うのが良いでしょう。 ただし、筋肉痛になるほどの激しい運動は疲労を蓄積させるため、無理をしないように注意が必要です。 マッサージを行う リンパの流れを良くするためのマッサージを行いましょう。 膝裏やふくらはぎを軽くさする、推すなどの程度から始めて、徐々にほぐすようにしていきましょう。 足裏からふくらはぎに向かって優しくマッサージすることで、血管やリンパ管の収縮力を高め、血液やリンパ液の排出を助けます。 押すなどして圧迫した場合に、痛みや違和感を感じる場合はリンパの流れが悪いだけではなく、他の病気が潜んでいる可能性があるので無理に行わないで中止しましょう。 専門家によるマッサージではなく、自分で行う場合は、あくまで気持ちいい程度の加減で行うことが大切です。 生活習慣を見直す リンパの流れを妨げる肥満を防ぎ、改善するためには、バランスの取れた食事や運動を続けるなど、規則正しい生活習慣が大切です。 また、長時間椅子に座って膝を圧迫したり、足を下げたままにすると、膝の後ろにあるリンパ節に負担をかける原因になります。 時々立ち上がって歩いたり、しゃがんでみたり、足を伸ばしたりすることで体を動かしましょう。運動やマッサージも効果的です。 自宅にいるときは、足を心臓より高い位置にして休むのも良い方法です。 こうすることで、重力に逆らわずに血液やリンパ液を戻しやすくなります。 さらに、食事や水分摂取にも注意が必要です。塩分やカフェインを摂り過ぎると水分代謝が悪くなるため、控えるようにしましょう。 また、水分不足もむくみの原因になるので、適度に水分補給を心がけてください。 膝の内側を押すと痛む場合に自宅でできるリンパをほぐすマッサージのやり方 自宅で簡単にできるリンパマッサージの方法をご紹介します。 この方法を実践すれば、膝の内側の痛みやむくみの軽減が期待できます。 まず、快適な場所でリラックスして座り、膝の裏側をゆっくりと指で押しながら、やさしく円を描くようにマッサージしましょう。 痛みを感じない程度の力で行い、1回につき3〜5分程度を目安にマッサージを続けます。 このときは、圧をかけすぎず、肌をそっと撫でるような感覚で行うようにしましょう。 強い力を加えるとリンパ管を圧迫してしまう恐れがあるため、注意が必要です。 また、膝を軽く曲げたり伸ばしたりする動きを繰り返すことも効果的です。 これにより、リンパ液の流れが促進され、膝の痛みやむくみが和らぐことがあります。 リンパ以外の原因もある?膝裏を押すと痛い場合に注意すべき症状 膝の裏が腫れている場合に、リンパ節のむくみだけではなく、他の病気が潜んでいる可能性もあります。 以下のポイントを参考にして、気になる場合は自己判断で治療したり、放置したりせずに整形外科や循環器内科などを受診しましょう。 全身にむくみがある|内科系の疾患によるむくみの可能性 全身にむくみがある場合は、心臓や腎臓など内科系の疾患によるむくみの可能性があります。 膝裏のむくみに気づいた場合には、他の部位にもむくみがないかどうかをチェックしましょう。 膝周辺に痛みや熱がある|関節の炎症や怪我の可能性 膝裏のむくみだけでなく、痛みや熱がある場合は、膝関節の炎症や怪我などの可能性があります。 また、リンパ節に細菌が入って感染症を起こしてしまうこともあります。 このような症状の場合は、早めの医療機関で適切な治療を受けることが大切ですので注意しましょう。 だんだん浮腫がひどくなる|病気が潜んでいる可能性 時間とともにむくみが悪化する場合、何かしらの病気が原因になっている可能性があります。 その中でも特に考えられるのが「ベイカー嚢腫(のうしゅ)」です。 この病気は、膝の裏側にある袋状の部分が大きくなってしまうもので、特に50歳以上の女性に多く見られます。 また、膝の変形が進むと、膝関節に炎症が起こり、水が溜まってしまうこともあります。 このような症状が現れた場合は、放置せずに早めに医師の診断を受けることが大切です。 適切な治療を受けることで、症状の悪化を防げます。 まとめ・膝の裏側の腫れや痛み、膝下のむくみはリンパの詰まりが原因か?! 膝の裏側(内側)の痛みや腫れ、膝下のむくみはリンパの詰まりが原因の一つです。 しかし、リンパの問題だけでなく、他の健康問題が影響している場合もあります。 リンパの詰まりが疑われる場合は、まずは早めに対処法を試してみましょう。 もし症状が改善しなかったり、悪化したりするようであれば、医師の診断を受けることが大切です。 膝の痛みやむくみは日常生活に大きな支障をきたすことがあるため、軽視せず、早めの対策を心がける必要があります。 適切な運動やマッサージを行ったり、生活習慣を見直したりすることで、リンパの流れを改善し、健康な体を保てるでしょう。 ▼以下もご参考ください 膝が痛い|朝寝起きや、歩きはじめの膝に痛みや違和感を感じたときの治療法
2022.11.25 -
- ひざ関節
- 脊柱管狭窄症
- 膝部、その他疾患
なんの前触れもなく膝から下が痛くなり、以下のような症状に不安を感じていませんか。 「何もしていないのに足が痛い」 「膝から下が重い・だるい」 「ふくらはぎがジンジン・ズキズキする」 これまで感じたことのないような痛みや違和感だと重い症状ではないかと心配にもなりますよね。膝の痛みから考えられる疾患や原因はさまざまあり、症状が続くと日常生活に影響してしまうものです。 そこで本記事では「膝から下が痛い・重い・だるい」ときに考えられる4つの疾患と原因を医師が解説します。多くの症例実績がある「リペアセルクリニック」だからこそお伝えできる、膝から下が痛いときに取るべき行動もお伝えします。 最後まで読めば、今抱えている不安が少しは軽くなり、どこに相談すべきか迷わずに正しく判断できます。 膝から下が痛いときに考えられる4つの疾患と原因 膝から下が痛いときに考えられる疾患と原因は、以下の4つが挙げられます。 閉塞性動脈硬化症 深部静脈血栓症 脊柱管狭窄症 下肢静脈瘤 普段聞きなれない言葉が並んでおり、不安になる方もいるかもしれません。これらの各疾患について、症状や原因を記しながら、できるだけ簡単に説明してまいります。 なお、膝の内側・外側のように痛む場所から考えられる疾患もあるので、ある程度「痛みの場所が特定」できている方は、以下の記事もご覧ください。 ①閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう) 閉塞性動脈硬化症とは、以下のように足の血管の動脈硬化が進んでしまい、血液が流れづらくなったり、つまったりする病気です。 足の血流が悪くなるので、歩くときに足の痛みや痺れ、冷たさを感じることがあります。進行すると、安静にしていても同様の症状が出てきますので、注意が必要です。 「動脈硬化」は全身に起こりやすいものなので、足だけでなく手にも同様の症状が出てくる可能性もあります。安静時の足の痛みや足の潰瘍、壊死はだいぶ進行している状態です。下表に閉塞性動脈硬化症の症状や原因をまとめたので、ぜひ参考にしてみてください。 閉塞性動脈硬化症の症状 ・足の痺れや冷感(しびれ・冷える) ・歩行の時の足の痛み ・間欠性跛行(しばらく歩行していると、足の痛みが強くなり歩行困難となる症状) ・安静時の足の痛み ・足の潰瘍・壊死 閉塞性動脈硬化症の原因 ・肥満 ・高血圧 ・喫煙 ・糖尿病 このように、動脈硬化の主な原因として生活習慣の乱れによるものが大きいことがわかります。 治療には早めの対処が必要となりますので「足の痺れ」「痛み」「冷たい感覚」などの症状を感じたら医療機関を受診し、早めにご相談されることをお勧めします。 ②深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう) 深部静脈血栓症とは、以下のように足の奥深くに通る静脈血管のなかに、血の塊(血栓)ができてしまう病気です。 この血栓が心臓や肺に流され詰まってしまうと、心筋梗塞や肺塞栓症などの命に関わる重大な疾患を引き起こす危険性があります。 特に足の整形外科の手術後や長時間のフライトなどで多くみられ、別名「エコノミークラス症候群」と呼ばれることもあります。下表に深部静脈血栓症の症状や原因をまとめたので、ぜひ参考にしてみてください。 深部静脈血栓症の症状 ・片足が大きく腫れ上がる ・赤黒く変色する ・ジンジンとした痛みが伴う ・肺塞栓症へ移行した場合、呼吸が荒くなり、胸が痛くなる 深部静脈血栓症の原因 ・手術や怪我による静脈血管の損傷 ・長期の臥床(寝たきり)など、足を動かしていない期間が長い ・喫煙 ・脱水 ・その他血流の低下が起こりうる場合 手術やケガによって「血液が固まりやすい・静脈内血液の流れが悪い・静脈が傷ついている」という3つの状態が満たされる場合に深部静脈血栓症が起こりやすくなります。 このように、不動に伴う血液循環が滞りやすい期間が長くなってしまった場合によく起こります。 放置しておくと、重篤な肺塞栓症へと進行してしまう可能性もあるため、おかしいと思ったらただちに専門の医療機関へ行きましょう。 ③脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう) 脊柱管狭窄症とは、脊髄や抹消神経が通るトンネル(脊柱管)が何らかの影響を受けて狭くなってしまい、発症する疾患です。 中高年で腰痛を伴う代表的なもので、長時間歩くことができなくなる間欠性跛行(かんけつせいはこう)がみられます。 脊柱管狭窄症で悩む中高年の患者さんは数多くいます。それゆえ、見過ごされやすいのも事実です。脊柱管狭窄症を見過ごさないためにも、下表を参考に当てはまる症状がないかチェックしてみてください。 脊柱管狭窄症の症状 ・お尻から足にかけて痛みや痺れがある ・長く歩いたり、立ったままになるのが辛い ・足に力が入りにくい ・体を反らす動きがしづらい ・体を前屈みにすることで症状が楽になる ・尿漏れなどの排尿・排便障害がある 脊柱管狭窄症の原因 ・加齢による背骨の変形や、ヘルニア ・先天的なもの ・猫背などの偏った姿勢 ・反り腰 ・仕事などで腰に負担のかかる動作の繰り返し ひどいものでは「足に力が入らない」「オムツが必要となる排尿障害」が起こるなど、日常生活に大きく影響してくる場合もあります。 気になる症状が出たら、できるだけ早く専門医に受診しましょう。 ④下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう) 下肢静脈瘤とは、足の血管(静脈)に異常が起こる病気です。血管がコブ(瘤)のように膨れ上がり、以下のように体表からはボコボコしたように見えます。 静脈の中には、血液の逆流を防ぐための弁がついており、ふくらはぎの筋肉などの力で下から上に血液を戻してくれます。 しかし、その弁が壊れて正常に働かない場合は、血液が滞ってしまい、下の方に溜まってしまうのです。その血液が溜まった状態を下肢静脈瘤と言います。 下肢静脈瘤の症状や原因は、さまざまあります。見た目的にも分かりやすいため、自分で気づきやすい病気です。下表に下肢静脈瘤の症状や原因をまとめたので、ぜひ参考にしてみてください。 下肢静脈瘤の症状 ・ふくらはぎのだるさ、重さ ・湿疹や皮膚の変症、皮膚炎 ・足がむくむ ・足がつる(こむら返り) ・血管が目立つ(ボコボコなる) 下肢静脈瘤の原因 ・加齢による筋肉や血管機能の低下 ・立ち仕事 ・妊娠や出産 ・遺伝的な要素 ・激しいスポーツ このように下肢静脈瘤は加齢による血管のしなやかさがなくなったり、立ちっぱなしの仕事を続けたりなど、誰にでも起こりうる病気です。上記の症状に当てはまる場合は、医療機関に相談しましょう。 膝から下が痛いときは何科を受診すべきか【疾患別に解説】 「膝から下が痛い」と感じた時に、考えうる疾患について4例説明しました。一見、全く違う病気のようにみえますが、似ている症状も数多くあります。そのため、疾患の見分け方は専門医でなければ難しいことが多々あります。 そこで、以下に疾患ごとのおすすめ受診科目を挙げています。早めの対処が必要な疾患もありますので、気になる症状がみられましたら、下記を参考に専門医へご相談ください。 症状 受診科目 下肢静脈瘤 ・血管外科※ ・心臓血管外科 ・皮膚科 ・形成外科 ・循環器内科 閉塞性動脈硬化症 ・血管外科※ ・循環器内科 深部静脈血栓症 ・血管外科※ ・循環器内科 ・整形外科 脊柱管狭窄症 ・整形外科 ※血管外科は、日本にあまり多くないのが実情です。 お近くに「血管外科」が無い場合は、「循環器内科」や「皮膚科」、「整形外科」などの他の診療科も視野に入れて、早めにご相談されることをおすすめします。 まとめ|膝から下が痛いと重大な疾患も考えられるので早めに受診を! 今回は、膝の病気で「膝から下が痛い・重い・だるい」という症状で、考えられる疾患についてお話しました。 本記事で挙げた疾患の中には命に関わる重大な疾患も含まれている為、気になる症状がありましたらできるだけ早めに専門医へ相談してください。 難しい言葉が並び、読むのも嫌になるかもしれませんが、これらの疾患は誰にでも起こりうるものです。例えば「深部静脈血栓症」から「肺塞栓症」へ移行してしまうと、一刻も争う状態になります。 「あの時、もっと早く相談しておけば良かった……」そんな声が1人でも少なくなるよう、本記事を読んでいただけると幸いです。 当院「リペアセルクリニック」では、膝の痛みなどに関する再生医療や幹細胞治療をおこなっています。万が一、重い症状だとしても再生医療を実施すれば、身体に負担のかかる手術をしなくてもよくなる可能性があります。 膝の痛みで少しでも気になる症状がありましたら、当院へご相談ください。 膝から下が痛いのよくある質問 Q.膝がズキズキ痛む原因はなんですか? A.膝がズキズキ痛む原因として、以下が挙げられます。 靭帯損傷 変形性膝関節症 半月板損傷 鵞足炎 膝の使いすぎ(オーバーユース) このほかにも膝がズキズキ痛む原因は考えられます。「膝が痛むときは何科を受診すべきか」でもお伝えした通り、膝の痛み一つとっても似ている症状は数多くあるため、適切な診断をするためにも専門医に相談しましょう。 膝の痛みに関するお悩みがあれば、放置せず当院にお気軽にご相談ください。 Q.膝が痛くて夜寝れない原因と対処法はありますか? A.膝が痛くて寝れない場合の原因は様々ありますが、「変形性膝関節症」の可能性が考えられます。主な原因としては、加齢や膝への負担により軟骨が摩耗するためです。 進行すると痛みで膝を伸ばせず寝ていても痛みを感じるケースも珍しくありません。少しでも痛みを軽減する対処法としては、以下が挙げられます。 腓腹筋のストレッチ ハムストリングのストレッチ 寝るときの姿勢は仰向け これらの具体的な方法については、以下の記事をご覧ください。 なお、膝が痛くて夜に寝れない場合、他の疾患の可能性も考えられるので、早めに医療機関に相談しましょう。
2022.11.14