化膿性関節炎が膝に発生した場合の治療方法とは?再発予防対策も解説
公開日: 2024.09.27更新日: 2024.10.07
化膿性関節炎による痛みや腫れがつらくて、早く症状を改善したいと思っている方はいるでしょう。また、関節の痛みにより日常生活や仕事がまともにできなくて、将来的な影響を気にしている方もいると思います。
この記事では、化膿性関節炎の治療方法や治るまでの期間、予後について解説しています。また、再発予防のために日常でできる方法を紹介しているため、ぜひご覧ください。
目次
化膿性関節炎とは?
化膿性関節炎とは、関節内に細菌が侵入して化膿する疾患です。原因菌は、黄色ブドウ球菌が多く、連鎖球菌・肺炎球菌・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌などがあります。細菌の侵入経路は以下の3つです。
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侵入すると関節内に到達し、関節軟骨を破壊します。また、進行すると骨まで破壊されてしまうため早期発見・早期治療が重要です。全身の関節で発症する可能性がありますが、特に膝関節での発症が多いです。
膝に出る特徴的な症状
初期症状は、膝関節の違和感や急激な疼痛・腫脹・熱感などです。
疼痛が強く腫脹により可動域が制限されると歩行が不可能になる場合もあります。また、重症化すると悪寒や発熱の症状が現れ、敗血症性ショックを引き起こす危険な疾患です。敗血症性ショックは、極度の血圧低下により多臓器不全に陥り、死亡リスクが高く、他の感染性疾患でも起こり得ます。
化膿性関節炎の診断
化膿性関節炎の診断では、関節液検査・血液検査・画像診断の3つが実施されます。これらを総合的にみて診断を下します。具体的な検査内容は、以下で解説します。
①関節液検査
関節液検査では、注射針を関節に刺し関節液を採取し、成分を調べることで原因菌を特定します。関節液は、血液が濾過された血漿成分で構成され、関節の滑膜から分泌される成分が加わった粘性が強い液体です。化膿性関節炎になると、白血球数の増加により関節液の混濁、白血球や細菌の活動による糖の消費が原因で糖値の低下が見られます。通常では、血液と関節液の糖値は類似しており、日内変動がある点も同様です。
②血液検査
血液検査では、白血球の増加・赤血球沈降速度亢進・CRP上昇がみられます。これらは、感染症で見られる所見と似ており、炎症が起きていることを示しています。基準値は以下の表に記載しています。
正常値 | 単位 | 数値の解釈 | |
白血球 | 3.3~8.6 | 10³/μL | 白血球は細菌やウイルスから感染を防ぐ役割があり、感染症やストレスで増加します。 |
赤沈 (赤血球沈降速度) |
男性:2~10 女性:3~15 |
mm/1h | 血液内で赤血球が沈む早さを調べます。 炎症によりフィブリノゲンやグロブリンが増加すると赤血球沈降速度が早くなります。 |
CRP (C反応性蛋白) |
0.14以下 | mg/dL | 炎症や感染、組織損傷により血液中に増えるタンパク質量のことです。 |
③画像診断
画像診断では、単純X線やMRI検査を用いて実施します。どのような所見が見られるか表で解説します。
所見 | |
単純X線検査 | 初期では変化ありません。進行すると、関節周囲の骨萎縮・関節面不整の所見が見られます。また、重症化により骨溶解像や欠損像が認められます。 |
MRI検査 | 膝関節液の貯留・滑膜増殖・軟骨面の不整や変性などの所見が見られます。 |
上記の所見が見られますが、化膿性関節炎のみに特徴的な所見ではないため、他の疾患との鑑別が必要です。例えば、関節リウマチ・膠原病・痛風・偽痛風など急性の関節炎が症状として現れる疾患があります。そのためにも関節液検査により原因菌を特定するのは大切です。
化膿性関節炎の治療
化膿性関節炎は、治療が遅れると重篤な機能障害を引き起こすため、早期の治療介入が必要です。
原因は細菌であるため、抗生物質の投与・手術による関節内洗浄が中心となります。その後、日常生活に戻れるようにリハビリテーションを実施します。
- ・抗生物質の投与
- ・手術による関節内洗浄
- ・リハビリテーション
各治療方法については、それぞれ以下で詳しく解説します。
抗生物質の投与
関節液の培養検査から病原菌を推定し、病原菌にあった抗生物質を投与します。患部は安静に保ち、関節に膿が溜まっている場合は注射器で吸引します。また、関節や骨が破壊されていると痛みが強いため、消炎鎮痛剤の投与が必要です。抗生物質を投与しても効果が見られず、炎症が続く場合には手術を実施します。
手術による関節内洗浄
関節内洗浄は、関節を切開しなかにある膿を洗い流し、炎症で傷ついている部分は切除します。この手術は、関節鏡を使用して比較的小さな切開で実施可能です。手術後は、関節内に管を入れたままにしておき、膿が出るようにします。また、関節内を持続的に洗浄できる管を留置する場合もあります。関節破壊が進行していて関節が不安定になった場合は、関節固定術が適応です。
リハビリテーション
炎症症状が落ち着いたら、リハビリテーションを開始します。術後すぐのリハビリテーションは、関節への負担を減らすために、柔軟性向上のためのリラクゼーションや座位で膝を伸ばした状態を保持するような関節を動かさない筋力増強訓練がメインです。炎症があるときは温めず、アイスパックで関節を冷やすようにします。
もし、症状が進行して骨溶解がある場合には、感染が落ち着いたら関節固定術を行う場合もあります。関節固定術を行うことで関節が安定し、痛みの軽減が期待できるでしょう。
化膿性関節炎が治るまでの期間
化膿性関節炎が治るまでの期間は、発見時の症状により異なりますが約6週間程度とされています。炎症が広がり関節破壊にまで至ると、手術や関節内洗浄の必要があるため、期間は延びるでしょう。
さらに、炎症が収まってからリハビリテーションを実施し、元の生活に戻るのを考えると3カ月程度はかかると考えられます。
化膿性関節炎の予後
早期治療により細菌を殺菌できれば、早い回復が見込めます。ただ、細菌により軟骨や骨の破壊が見られると後遺症が残ることもあり、さらに死亡率は11%と高いです。
化膿性関節炎に限らず、感染症は敗血症を引き起こすことがあります。敗血症はさまざまな臓器に機能障害を引き起こし、さらに重度になると敗血症性ショックにより危険な血圧低下で多臓器不全となります。敗血性ショックになると、約30〜40%が死に至る重篤な症状です。
日常生活でできるの再発予防!4つの方法
日常生活の中でできる再発予防の方法を紹介します。重要なのは、関節への負担を減らすことです。以下に具体的な予防方法を4つ解説します。
①免疫を高める
化膿性関節炎は感染症であり、免疫を高めることが大切です。特に、糖尿病の方・血液透析療法を受けている方・免疫抑制薬を長期間使用している方は感染に弱いため、再発しやすくなります。そのため、第一に基礎疾患の治療が大切です。また、関節内注射では皮膚を清潔に保ちましょう。
②重量物を持ち上げる時の工夫
関節に負担をかけないために重い物を持ち上げる時はゆっくり持ち上げます。重量物をできるだけ身体の近くに寄せた状態で持ち上げると、腰や膝への負担を軽減可能です。
また、長時間同じ姿勢を保つのは関節に負担がかかるため避けましょう。
③サポーターの着用
サポーターを着用することで、膝関節の安定化・痛みの軽減などの効果が得られ、結果的に関節への負担を減らすことが可能です。そのため、膝が痛い方は、膝のサポーターを着用するといつもより動きやすくなるかもしれません。ただ、サポーターはあくまで補助的なものであるため、日頃のストレッチや筋力トレーニングは大切です。
④ストレッチを日常的に実施
痛みを感じると筋肉の緊張が高まりやすく、それが続くとさらに別の痛みを誘発する可能性があります。そのため、日常的に下肢のストレッチを行い、関節がスムーズに動く状態を保ちましょう。また、柔軟性は衝撃吸収の役割があるため、関節への負担軽減につながります。
まとめ・痛みを取り除いて再発予防対策をしましょう
化膿性関節炎では、主に膝を中心とした下肢の関節に痛みや腫脹を生じます。進行すると関節や骨を破壊する可能性があるため、早期発見・早期治療が大切です。原因が細菌であるため、治療は抗生物質の投与や関節内洗浄が行われます。治るまでの期間はさまざまですが、関節破壊まで進んでいると手術をするため、期間が延びるでしょう。化膿性関節炎の再発を予防するには、免疫を高める・サポーターを着用する・ストレッチを行うの3点が大切です。痛みを改善し、再発予防方法を実践していきましょう。
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