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「肝嚢胞は放置しても良いのかな」「自然に消えることはあるのかな」 このような悩みはありませんか。 肝嚢胞は、肝臓の組織に液体が溜まり袋状になったものです。40〜60代の女性に起こりやすく、健康診断の超音波検査で発見されるケースがよく見られます。 多くの場合経過観察で済みますが、重症化・悪性化するケースもあるため、適切な診断とフォローアップが必要です。 本記事では、肝嚢胞は自然に消えるのかや、治療法、注意すべき症状などを解説します。記事を最後まで読めば、指摘された肝嚢胞についての注意すべき点がわかり、適切な対応を取れるようになるでしょう。 【結論】肝嚢胞(のうほう)は自然に消えることは稀である 肝嚢胞は、感染や破裂、出血によってサイズが増大することはあるものの、自然に消えたり小さくなったりしたとされる報告は稀です。 大きくなると、腹部の右上部分に膨満感や痛みを感じるケースがあります。(文献1)(文献2) 本章では、肝嚢胞に治療が必要なのか症状別に解説します。 良性で症状がなければ治療の必要はない 肝嚢胞の多くは良性で、健康に支障をきたすものではありません。 とくに症状もあらわれず、おなかが張る、苦しいなどの不快感がなければ治療しなくても問題ないケースが一般的です。(文献1)(文献2) 気になる症状があるなら早めに受診・治療が必要 「お腹が張って苦しい」「痛みがある」などの症状がある場合は、以下のような問題が生じている可能性があります。(文献1)(文献2) 出血している 感染症が起きている 嚢胞が破裂している 大きくなった嚢胞がほかの臓器を圧迫している 基本的には医師と相談して経過を見ますが、肝嚢胞が大きくなると、嚢胞破裂につながるおそれも稀にあります。 少しでも異常を感じた場合は、早めに医師へ相談しましょう。 \まずは当院にお問い合わせください/ 肝嚢胞の治療法 肝嚢胞の治療は、感染やほかの臓器の圧迫が起きている場合におこないます。 種別 治療法 具体的な治療法 内科的治療 ドレナージ 超音波で観察しながら嚢胞内にチューブを入れ、液体を抜く 場合によっては、嚢胞内に液体が溜まらないようにエタノールを注入する 外科的治療 手術 肝嚢胞を切開・切除し、取り除く 肝嚢胞の大きさや種類により、治療方法は異なります。気になる点は、医師へ確認しましょう。 肝嚢胞の治療については、以下の記事で詳しく解説しています。 肝嚢胞の診断後に注意すべき3つのポイント 肝嚢胞と診断されたら、以下の3つのポイントに注意しましょう。 肝機能が悪化していないか確認する 息苦しさや圧迫される感じなどの違和感がないか確認する 年に1回は超音波検査を受ける 順番に説明します。 肝機能が悪化していないか確認する 肝嚢胞に感染や破裂が起こると、稀に肝機能に影響を及ぼすことがあります。 医師に指示された間隔で受診し、肝機能の悪化がないかを定期的に確認しましょう。 息苦しさや圧迫される感じなどの違和感がないか確認する 肝嚢胞が大きくなると、ほかの臓器を圧迫して腹痛や息苦しさなどが出る可能性があります。 体調に違和感があれば、早めに受診しましょう。 年に1回は超音波検査を受ける 肝嚢胞は、サイズが増大しても自覚症状があらわれないケースもあります。 無症状の場合でも、年に1回は超音波検査を受け、肝嚢胞の状態に問題がないかを確認しましょう。 まとめ|肝嚢胞の消失は稀!診断後は適切な治療を受けよう 肝嚢胞は良性で無症状のケースが多いものの、自然に消えるのは非常に稀です。 気づかないうちにサイズが増大したり、感染を起こしたりするリスクもあります。 そのため、診断後は医師の指示に従い適切な治療・経過観察をおこないましょう。 当院「リペアセルクリニック」は、脂肪肝や肝炎、肝硬変などにより炎症や線維化が起きた肝臓に対して、組織の修復や再生が期待できる再生医療を提供しています。 気になる症状がある方は「メール」または「オンラインカウンセリング」まで、気軽にご相談ください。 また、女性に多い肝臓の病気については、以下の記事も参考にしてください。 肝嚢胞についてよくある質問 肝嚢胞は石灰化しますか? 肝嚢胞が石灰化したという報告はありますが、非常に稀です。(文献3) ただし、がんを始めとするほかの病気の合併や炎症、出血などがあると、石灰化しやすいという報告もあります。必要に応じて医師の指示に従い、経過を観察しましょう。 肝嚢胞は食生活と関連がありますか? 肝嚢胞の発生には、女性ホルモンの一種「エストロゲン」が関連しているという説はありますが、現時点で明確な原因は特定されていません。(文献4) ただし、明確な関連は証明されていないものの、肝臓の健康を維持するためにはバランスの取れた食生活を心がけることが大切です。 肝嚢胞はストレスと関係がありますか? 肝嚢胞の原因は明らかになっていない部分が多く、ストレスとの関係も明らかではありません。(文献4) しかし、過剰なストレスは身体面・精神面のどちらにも悪影響を与えます。健康を保つために、ストレスを溜めすぎない生活を送るよう心がけてみてください。 参考文献 (文献1) 笹岡悠一ほか.「腹部超音波検査で観察された肝嚢胞縮小化の1例と10例の文献的考察」『医学検査』 Vol.70,No.1 (2021),pp. 155–159 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/70/1/70_20-50/_pdf/-char/en(最終アクセス:2025年3月18日) (文献2) アメリカ肝臓財団「肝嚢胞」https://liverfoundation.org/ja/%E8%82%9D%E7%96%BE%E6%82%A3/%E8%82%9D%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E5%90%88%E4%BD%B5%E7%97%87/%E8%82%9D%E5%9A%A2%E8%83%9E/(最終アクセス:2025年3月18日) (文献3) 三宅周ほか.「多発性肝のう胞とその石灰化について-石灰化を伴なった非包虫性の1例を含む自験例14例を中心に-」『肝臓』23巻2号(1982),pp.198-205https://www.jstage.jst.go.jp/article/kanzo1960/23/2/23_2_198/_pdf(最終アクセス:2025年3月18日) (文献4) 難病情報センター「肝臓疾患分野|多発肝のう胞症(平成22年度)」https://www.nanbyou.or.jp/entry/781(最終アクセス:2025年3月18日)
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突然「肝嚢胞ですね」と医師から告げられ、不安になっていませんか? なかには経過観察で特別な治療は不要と言われる方もいるでしょう。しかし、本当に大丈夫なのか不安になりますよね。 また「食事や普段の日常生活が悪かったかも」と悩み、見直す方もいるかもしれません。 肝嚢胞と食事は直接的な影響は少ないといわれていますが、不摂生な食事は肝臓に負担を与えます。食生活が原因となり肝嚢胞に悪影響を及ぼすことも考えられるため、注意が必要です。 本記事では、肝嚢胞と食事の関係性や、肝臓病のときの食事について詳しく解説します。本記事を参考に、肝臓をいたわる食事を心がけてください。 【結論】肝嚢胞(のうほう)に食事は直接影響しないが注意が必要 軽症の場合、肝嚢胞は経過観察で済むケースが多く見られます。肝嚢胞の原因は明確にはなっていませんが、日常の食事が肝嚢胞に直接影響を与えることは少ないと考えられています。 しかし、食生活の乱れは肝臓に負担を与えるため、肝嚢胞にも悪影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。 たとえば肥満症や糖尿病にかかっている場合は、不規則な食生活により肝臓までダメージを与えることもあります。(文献1)(文献2) 肝嚢胞自体は食事によって大きく変動するものではありませんが、肝臓の健康を維持するためには、適切な食生活の改善が欠かせません。日頃から肝臓に負担をかけない食事を意識しましょう。 肝嚢胞の原因や症状、治療法については以下の記事で詳しく解説しています。気になる方は合わせてご覧ください。 肝嚢胞で注意が必要な食事 肝嚢胞を悪化させるリスクを減らすためには、食生活に気を配ることが大切です。とくに以下の食事は肝臓に負担を与える可能性があります。 アルコール 単品の外食・コンビニ食 脂肪分の多い肉 肝臓に負担をかける食品はできるだけ控え、バランスの取れた食事を心がけましょう。 アルコール アルコールは肝臓で代謝されるため、過剰な飲酒は肝機能を低下させます。(文献3) 肝嚢胞がある場合は禁酒が理想的ですが、難しい場合は頻度や量を調整しましょう。 飲酒を抑えるための方法として、以下のような工夫がおすすめです。 休肝日を設ける 摂取量を1日あたり純アルコールで約20g程度に抑える(ビールなら中瓶1本500mlまで、ワインなら1杯半程度)(文献4) アルコール度数の低い飲料を選ぶ 普段から飲酒習慣のある方は、量や頻度の調整でアルコール摂取量を抑える工夫をしましょう。 単品の外食・コンビニ食 外食やコンビニ食は手軽ですが、単品で済ませると栄養バランスが偏りがちです。 とくに脂質や塩分が多い食品を摂りすぎると、肝臓に負担がかかる可能性があるため注意が必要です。 普段から外食やコンビニ食が多い方は、以下のような工夫を取り入れて栄養バランスを整えましょう。 定食メニューを選び、主食・主菜・副菜をそろえる カット野菜やスープをプラスする 揚げ物や高カロリーなメニューは控えめにする 生活するうえで外食やコンビニ食を避けられない場合は、上記を参考に工夫してみてください。 脂肪分の多い肉 脂肪分の多い肉の部位を過剰に摂取すると、肝臓に負担をかける可能性があります。 肝臓への負担を減らすために牛ヒレ肉や豚足など、脂身の少ない部位を選ぶようにしましょう。 また、低脂肪の肉類でも揚げ物や高脂肪食は脂肪肝を引き起こすリスクがあるため、注意が必要です。 これらのポイントを意識しながら、脂肪分の控えたお肉を普段の食事に取り入れましょう。 肝嚢胞とは別に、肝臓の代表的な疾患として「肝硬変」が知られています。肝硬変の食事のポイントについて詳しく知りたい方は、以下のコラムも参考にしてください。 肝嚢胞の人におすすめの食事 肝機能が低下している際におすすめの食事は、以下の3つです。 穀物 良質なたんぱく質 野菜やキノコ 肝嚢胞の人は、これらの栄養分や食品を普段の食事に取り入れて、バランス食を心がけてください。 穀物 肝臓病になると、肝機能低下により血糖値を下げる力が鈍ります。(文献5) 雑穀米や全粒粉のパンを取り入れると、血糖値の急激な上昇を防ぎ、肝臓への負担を軽減できるためおすすめです。 一方、白米のような精製穀物は血糖コントロールを悪化させる可能性があります。そのため、未精製の穀物を選ぶのがより望ましいでしょう。(文献6) 良質なたんぱく質 アミノ酸がバランスよく含まれているたんぱく質が、良質なたんぱく質に該当します。 体に吸収されやすいため、効率よく利用されるのが特徴です。(文献7)(文献8) 代表的な良質なタンパク質として以下のような食材があげられます。 豆類、大豆製品(豆腐、納豆、味噌など) 卵 魚や脂肪の少ない肉(鶏むね肉、豚ヒレ肉など) ただし、過剰に摂取すると肝臓に負担をかけて肝性脳症のリスクをあげる原因になります。良質だからといってむやみに多く摂り過ぎず、適量を意識しましょう。 野菜やキノコ 野菜やキノコには、ビタミンやミネラルが豊富に含まれています。 とくに、肝機能が低下するとビタミンやミネラルを蓄える能力が低下するため、日常の食事で積極的に摂取することが重要です。 以下のような野菜やキノコを普段の食事に取り入れるようにしましょう。 緑黄色野菜 ほうれん草 にんじん ピーマン など キノコ類 しいたけ えのき しめじ など これらの食材を日々の食事に取り入れることで、肝機能の維持に役立つでしょう。 \まずは当院にお問い合わせください/ 肝嚢胞の人が食事で意識すべきポイント 肝臓の健康を守るためには、食品や栄養素の他、日々の食事メニューの工夫が大切です。とくに、以下のポイントを意識すると良いでしょう。 栄養バランスの整ったメニューを考える カロリーオーバーに注意する 主食・主菜・副菜をそろえたメニューにする 食事のバランスを意識し、主食・主菜・副菜をそろえた食事を心がけることが大切です。これにより、必要な栄養素を効率よく摂取でき、肝臓への負担を軽減できるでしょう。 バランスの良い食事の例として、以下のようなメニューがおすすめです。 主食:玄米や雑穀米 主菜:魚や大豆製品(豆腐、納豆) 副菜:野菜や海藻類の和え物 このような組み合わせを意識しながら、栄養バランスの良い食事を続けましょう。 カロリーオーバーに注意する 肝臓の負担を減らすためには、適正なカロリー摂取が重要です。カロリーを抑えるためには、以下のポイントを意識しましょう。 低カロリーで高たんぱくな食材(鶏むね肉、白身魚、大豆製品)を選ぶ 調理法を工夫し、油を控えめにする(蒸す、茹でる、焼く) 食事量を適量に調整し、過剰摂取を避ける これらの工夫を取り入れることで、肝機能の悪化を防ぐことにつながります。ただし、良質なたんぱく質を多く含む食品は高カロリーになりがちなので注意が必要です。 まとめ|肝嚢胞と診断されたら食事内容を見直してみよう 今回は、肝嚢胞の方へ向けて、おすすめの食事のポイントを詳しく解説しました。 肝嚢胞自体は食事が原因で発症するとは言えないものの、不規則な食生活により肝機能が低下し、肝嚢胞の状態に影響を及ぼす可能性があります。 肝嚢胞が無症状でも食生活を見直して肝臓の健康に努めましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、肝障害の悪化を防ぐ「再生医療」を行っております。 メール相談またはオンラインカウンセリングにてお悩みを伺うことも可能です。気になる方はぜひ当院までご連絡ください。 肝嚢胞についてよくある質問 嚢胞ができる原因は何ですか? 嚢胞の特定の原因は明らかになっていませんが、以下のような原因が報告されています。 寄生虫感染(エキノコックス) 女性ホルモンの影響 先天性の要因 これらの原因が疑われる場合は、専門医による適切な診断と治療が必要です。異変を感じたら自己判断せず医療機関を受診しましょう。 肝嚢胞になったらどうすれば良いですか? 肝嚢胞が見つかった場合、特別な治療を必要とせず、経過観察を行うことが多いです。医師の判断によっては、半年〜年に1回くらいエコー検査するケースもあるでしょう。 しかし、嚢胞が大きくなり、腹痛や圧迫感などの症状が現れた場合は、手術が検討されることもあります。その際、嚢胞内の液体を抜き取る穿刺治療や、切開による手術が行われることがあります。 いずれにしても、肝嚢胞と診断された場合は、医師の指示に従って適切な検査や治療を受けましょう。 参考文献 (文献1) 厚生労働省「脂肪肝(しぼうかん)」e-ヘルスネット, 2024年5月27日https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-033.html(最終アクセス:2025年3月16日) (文献2) 奥田昌恵、横田友紀ほか.「2 型糖尿病における脂肪肝 ―その頻度および臨床的特徴―」『糖尿病』 50 巻 8 号 , p631-p634.(2007) https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/50/8/50_8_631/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年3月16日) (文献3) 厚生労働省「アルコールの吸収と分解」e-ヘルスネット, 2022年01月20日 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-002.html(最終アクセス:2025年3月16日) (文献4) 厚生労働省「アルコール」https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b5.html(最終アクセス:2025年3月16日) (文献5) 種市 春仁 藤原 史門ほか.「3. 肝硬変に伴う糖尿病(肝性糖尿病)」『糖尿病』 51巻 3号 , p203-p205.(2008〕) https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/51/3/51_3_203/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年3月16日) (文献6) 鎌田智英実.「6.栄養摂取状況と改善策」『日本老年医学会雑誌』50巻 1 号 , p68-p71.( 2013〕) https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/50/1/50_68/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年3月16日) (文献7) 厚生労働省「たんぱく質(たんぱくしつ)」e-ヘルスネット, 2024年5月27日 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-044.htm(最終アクセス:2025年3月16日) (文献8) 国立長寿医療研究センター「良質なたんぱく質とは? 【低栄養予防】」https://www.ncgg.go.jp/ri/advice/09.html(最終アクセス:2025年3月16日)
2025.03.31 -
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肝嚢胞は肝臓に形成された袋の中に水が溜まった状態です。自覚症状がないことも多いですが、大きくなると上腹部の痛みや背中の痛みをもたらす場合があります。 肝嚢胞で背中が痛むということは、肥大化がかなり進んでいると考えられます。 本記事では背中の痛みの原因になる肝嚢胞やその症状、治療方法を解説します。 肝嚢胞が背中の痛み(背部痛)を引き起こすことがある 肝嚢胞(かんのうほう)の診断を受けた後、背中に痛みを感じることがある方もいらっしゃるでしょう。 肝嚢胞は多くの場合、症状がなく偶然の検査で見つかることが一般的ですが、大きくなると徐々に不快感や痛みを引き起こすことがあります。 とくに肝嚢胞が大きく成長すると、肝臓の被膜を伸ばしたり、周囲の組織を圧迫したりすることで、右上腹部だけでなく背中や肩甲骨の下部にまで痛みが広がる場合があります。 このような背中の痛みは、肝嚢胞のサイズや位置によって現れることがあるため、医師による適切な診断と評価が重要です。ここでは、肝嚢胞がもたらす背中の痛みについて詳しく見ていきましょう。 肝嚢胞(かんのうほう)は多くの場合、症状がなく偶然の検査で見つかることが一般的ですが、大きくなると徐々に不快感や痛みを引き起こすことがあります。 実は肝嚢胞は発達の仕方によって、右上腹部だけでなく背中まで痛みが広がる場合があります。 肝臓にできた肝嚢胞の肥大が背中の痛みになる 肝嚢胞とは、肝臓にできた嚢胞(水ぶくれ)です。 袋の内部に水分などの液体が溜まっている状態で、基本的には害はありません。 ただ、肝嚢胞は肥大化するケースがあり、肥大化の仕方によっては周辺の臓器を圧迫します。 肥大化によって周辺の臓器が圧迫されると、お腹や腰、ひいては背中の痛みの一因になることもあります。 基本的に症状や害のない水ぶくれとはいえ、肥大化すると痛みを感じるケースがある点に注意が必要です。 肝嚢胞自体の原因は完全に解明されていない 肝嚢胞が発生する原因は、実は今でも完全に解明されていません。 ただ、肝嚢胞は生まれついた時点ですでにある先天的なものと、成長に伴ってできてくる後天的なものがあります。 なお、先天的なものと後天的なものとでは、先天的なものの症例が多い傾向です。 肝嚢胞は40代から60代の女性の患者が多いため、女性ホルモンの一種であるエストロゲンとの関連性を指摘する学説があります。 一方、後天的な肝嚢胞は切り傷のような外傷や、キタキツネやイヌの便に生息する寄生虫エキノコックスの感染が原因と考えられています。エキノコックスは国内では北海道で主に発生が確認されており、野生動物の糞便を介して人間に感染します。 エキノコックスの感染で発生したものは、肥大化した際には肝臓でさまざまな異常を引き起こし、死に至らせる事例がある点に注意が必要です。 ただ、エキノコックスなどの感染など後天的な原因によるものは、発生確率が極めて低いため、過度の心配は必要ありません。 肝嚢胞が引き起こす症状を解説 肝嚢胞はほとんどが良性です。 基本的にサイズが大きいケースほど、症状がもたらすリスクが大きくなります。 肝嚢胞によってもたらされる症状を、サイズ別にひとつずつ解説していきましょう。 小さい肝嚢胞は基本的に症状はない まず、サイズの小さな肝嚢胞は基本的に症状はありません。 自覚症状さえ見られないため、小さいものができていても、とくに支障なく日常生活を送れます。 以上のように、サイズが小さめの肝嚢胞は人体にさほど影響を及ぼしません。 超音波検査や血液検査などで発見されることはあるものの、無症状であれば医師からも当面様子を見る診断が下る可能性があります。 肥大化した肝嚢胞が引き起こす腰痛と消化器症状 肝嚢胞が肥大化すると、お腹の痛みや張りなどの悪影響が出てくる点に注意が必要です。 お腹の痛みをはじめとする症状は、肝嚢胞の肥大化で周りの臓器が圧迫されることによって起こります。 とくによく見られる症状が、右側のお腹の上側からみぞおちにかけての痛みです。 この症状は、肝嚢胞が大きくなるにつれて、肝臓の表面を引っ張るのが原因と考えられています。 さらに肝嚢胞の肥大化が進行すると、痛みを感じる部位も胃などの消化器だけでなく、腰や背中に広がることもあります。 腰や背中にまで痛みを感じるようになると、かなり肥大化していることが考えられるため、医療機関での精密検査が必要です。 また、肝嚢胞が肥大化した場合、食生活にも悪影響が及ぶケースがあります。 肝嚢胞が大きくなると胃が圧迫されることがあり、食欲がわかなかったり吐き気を催したりすることもあります。 吐き気については、実際に食べたものを戻してしまうことがある点も、注意が必要なポイントです。 ほかにも、肝嚢胞に細菌が入り込んでいる場合は発熱などの症状が引き起こされることがあります。 多発性肝嚢胞による重篤な合併症リスク 肝嚢胞でより注意しなければならない症状が、多発性肝嚢胞(たはつせいかんのうほう)と呼ばれる複数の肝嚢胞が発生する症状です。 多発性肝嚢胞になると、状況によって呼吸困難やヘルニアを引き起こす可能性があります。 加えて、腎臓に嚢胞ができる多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)を併発するケースがあるのも特徴です。 多発性嚢胞腎は高血圧や腎不全の原因になるリスクを持った病気です。 もし、多発性肝嚢胞と多発性嚢胞腎を併発しているのであれば、基本的に治療が必要になります。 肝嚢胞の診断方法 健康診断などで肝嚢胞らしきものが見つかった場合、より詳しい検査を受けるように指示されるのが一般的です。 具体的にどのような検査が行われるのか、肝嚢胞の診断方法について解説します。 一般的に腹部エコー検査がよく用いられる 肝嚢胞を詳しく診断する際は、腹部エコー検査(超音波検査)を活用するのが基本です。 腹部エコー検査とは、お腹の部分に超音波を送受信する器械を当て、跳ね返ってきた超音波をもとに画像診断します。 簡単に臓器の状態を確認できる上に、体にも大きな負担はかかりません。また、肝臓に溜まっている液体の有無のほか、肝嚢胞の個数・サイズや成長具合を判断できます。 CT検査やMRI検査による精密検査も行われる 腹部エコー検査で肝嚢胞による臓器の圧迫などの影響が出ていることが明らかな場合は、CT検査やMRI検査を使ってより精密な検査も行います。 CT検査はコンピュータを使いながら体内を断層撮影する方法です。X線をさまざまな方向から照射して、水分や脂肪、骨などの体内の成分に対する吸収の度合いで画像を作ります。 とくに見つかった肝嚢胞が腫瘍を疑われるときは、バリウムなどの造影剤も活用して検査を行う流れです。 一方MRI検査では、人体に多くの水素原子が含まれている特徴を活かして検査します。水素原子に磁力と電波を照射し、それに対する水素原子の反応に応じて画像を作る仕組みです。 補助的に血液検査も使われる 腹部エコー検査やCT検査・MRI検査以外にも、血液検査が使われることがあります。 血液検査はあくまでも補助的な手段であるため、他の手法と組み合わせての活用が欠かせません。 ただ、血液検査での検査項目のうち、アミノ酸の生成機能があるASTとALTは肝機能の状態を示す指標です。 血液検査でASTとALTになんらかの異常が見られる場合、他の検査の結果と併せて肝嚢胞による問題がないかで総合的な判断が下されます。 肝嚢胞の治療方法 もし、検査によって肝嚢胞が見つかったとき、手術のような方法で治療するのではないかと心配になるのではないでしょうか。 実は肝嚢胞の状態やサイズ、患者の健康状態などによっては、治療が不要なケースもあります。 肝嚢胞の状態などに応じた治療方法について、ひとつずつ見ていきましょう。 無症状の場合は経過を観察する まず、発見された肝嚢胞が無症状であれば、ひとまず経過を観察しつつ、半年から1年おきに腹部エコー検査を行います。 肝嚢胞は数が1個だけで症状が見られないものであれば、肥大化するケースは多くありません。 もし長期的に様子を見て、何の変化もなければ、治療は行われずに終わります。 ただし、肝嚢胞の中には年月とともに徐々に肥大化するケースもあるため、油断はできません。 肥大していれば嚢胞液の排出治療を行う 肝嚢胞が肥大し、痛みまで生じていたら、治療が必要です。 肝嚢胞の治療では、薬物療法や嚢胞液の排出を行います。 嚢胞液の排出は、まず嚢胞自体に針を刺して、内部の液体を抜きます。 続いて、再度嚢胞液が溜まるのを防ぐために、嚢胞の中にエタノールやミノサイクリン塩酸塩の薬液を注入する流れです。 根本的な解決手段として外科手術も用いられる 肝嚢胞の治療法には、根本的に解決するための手段として外科手術が行われることがあります。 外科手術が必要になるのは、肝嚢胞の肥大化で激しい痛みや胆汁の流れの妨げが見られるときなどです。 外科手術では主に以下の2つが行われます。 肝切除術:嚢胞を含む肝臓の一部を外科的に切除する手術 嚢胞壁切除術:嚢胞の壁の一部のみを切除して内容液を排出させる 肝切除術の場合は、嚢胞液を排出する方法と異なり、体への負担は大きいものの、嚢胞の除去が可能です。 なお、外科手術の際に寄生虫も見つかったときは、抗生物質も投与します。 肝臓の疾患に対する治療法「再生医療」について 肝嚢胞は肝臓疾患の一つですが、肝臓には様々な種類の疾患が存在します。 そんな肝嚢胞以外の肝臓の疾患に対しては、再生医療という治療の選択肢があります。 再生医療では、患者様自身の幹細胞や血液を用いて治療を行うため、副作用のリスクが少ないのが特徴です。 手術や入院を必要としたくないという方は、再生医療をご検討ください。 まとめ|肝嚢胞の背中の痛みは手術や薬物療法で治療できる 肝嚢胞は肥大化すると、胃などの消化器だけでなく腰や背中の痛みをも引き起こす場合があります。 しかし、肝嚢胞は多くの場合で症状が見られません。そのため、健康診断などで検査をした際に見つかることがあるために注意が必要です。 無症状の場合は経過観察することもありますが、肥大化して痛みがある場合は手術によって肝嚢胞の切除や液体の排出なども行います。 もし肝嚢胞によって上腹部や背中などに痛みを感じるときは、我慢せず医療機関を受診することが大切です。 肝嚢胞 背中の痛みに関してよくある質問 肝嚢胞はストレスやアルコールが原因ですか? 肝嚢胞の原因は現在も解明されていません。 後天的に発症する原因としては、寄生虫エキノコックスや、女性ホルモンのエストロゲンとの関連性からも研究されている段階です。 なお、ストレスやアルコールとの関連性については明らかにされていません。 ただし、過度のストレスやアルコールは、肝機能の低下や肝障害の原因になるため注意が必要です。 肝嚢胞が小さくなることや消えることはありますか? 肝嚢胞が小さくなることや消えることはたまにあるものの、事例はあまり多くはありません。(文献1) 大きさを維持するか、肥大化するケースが多く見られます。 肝嚢胞を発症すると寿命に関わるのですか? 肝嚢胞は発症しても、寿命に関わるケースはほとんどありません。 ただし、肥大化によって呼吸困難が引き起こされたり、肝がんの原因になったりするなど大きなリスクを引き起こすこともある点に注意が必要です。 肝嚢胞の手術費用はいくらくらいですか? 肝嚢胞の手術費用は、手術を受ける医療機関によって異なります。 ただ、手術でよく用いられる腹腔鏡手術自体は50〜65万円程度が相場です。 しかも、肝嚢胞の治療は保険が適用されるため、3割負担であれば15万円から20万円程度となります。 参考文献 (文献1) 笹岡 悠一ほか. 「腹部超音波検査で観察された肝嚢胞縮小化の1例と10例の文献的考察」 『医学検査』 70(1), pp.155-159, 2021年. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/70/1/70_20-50/_html/-char/ja (最終アクセス:2025年3月25日)
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「アルコール性肝炎になったら、もう肝臓は元に戻らないの?」 「アルコール性肝炎は治る病気?」 そんな疑問や不安を抱える方は少なくありません。 長年の飲酒習慣で傷ついた肝臓ですが、完全に回復不可能なわけではないのです。 本記事では、アルコール性肝炎からの回復可能性や有効な治療法、肝臓が健康を取り戻すまでの期間について詳しく解説します。 肝臓の健康を取り戻すための知識を身につけ、今からできる対策を始めましょう。 【結論】アルコール性肝炎は治る病気 アルコール性肝炎は、適切な治療と生活習慣の見直しにより回復が期待できる病気です。 とくに早期発見と適切な対策により、肝臓へのダメージを最小限に抑えられます。 しかし、進行すると回復が難しくなるため、早めの対応が重要です。 早期発見と適切な治療で回復は見込める 重症度によっては回復が難しい場合も 本章では、アルコール性肝炎の回復の可能性や治療法について詳しく解説します。 早期発見と適切な治療で回復は見込める アルコール性肝炎は、早期発見と適切な治療により回復が期待できる病気です。 肝臓には再生能力があり、飲酒を避けて健康的な生活を続けることで改善が見込めます。(文献1) まず禁酒が最優先です。アルコールを摂取し続けると炎症が進み、回復が遅れるだけでなく、肝硬変へ進行するリスクが高まります。 さらに、栄養療法や薬物療法により、肝機能の回復を促します。 早期発見のためには、定期的な健康診断で肝臓の数値をチェックしておくのもポイントです。 今まで自覚症状がなくても異変を感じたら、すぐに医療機関を受診し適切な対応をとりましょう。 アルコール性肝炎の初期症状については、以下の記事でも詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。 重症度によっては回復が難しい場合も アルコール性肝炎は早期発見と適切な治療により回復が期待できますが、重症度によっては改善が難しい場合もあります。 とくに長年の飲酒で肝臓に深刻なダメージが蓄積すると、完全な回復は困難です。(文献2) たとえば、アルコール性肝硬変に進行すると、肝臓の線維化が進み、元の健康な状態への回復はほぼ不可能になります。 そのため、症状が軽いうちに適切な治療を受けるのが重要です。 「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓は、ダメージを受けても自覚症状が出にくいため、日頃から健康管理を意識しましょう。 \まずは当院にお問い合わせください/ アルコール性肝炎における4つの治療法 アルコール性肝炎の治療には、主に以下の4つの方法があります。 断酒する 栄養療法で肝臓の回復を促す 薬物療法で症状を緩和する 再生医療を受ける それぞれの方法を組み合わせることで、より高い回復効果が期待できます。 断酒する アルコール性肝炎の最も効果的な治療法は、断酒です。(文献1) アルコールを摂取し続けると肝臓の炎症が進行し、回復が難しくなります。 そのため、完全に飲酒をやめることが肝臓を守る第一歩となります。 断酒による精神的ストレスや誘惑を乗り越えるためには、家族や友人の理解とサポートが重要です。 また、アルコール依存により断酒が難しい場合は、精神科や心療内科の専門医による治療も有効な選択肢となります。 適切なサポートを活用しながら、無理のない範囲で断酒を継続しましょう。 肝臓の数値に異常がある場合の原因や対策については、こちらの記事でも解説していますので、参考にしてください。 栄養療法で肝臓の回復を促す 肝臓の回復を助けるには、適切な栄養摂取が不可欠です。(文献1) とくにタンパク質やビタミンを十分に摂取すると、肝細胞の再生が促進されます。 具体的には、高タンパク質の食品(肉、魚、大豆製品など)や、ビタミン類を多く含む食材を積極的に取り入れると良いでしょう。 一方で、脂肪分の多い食事や糖分の過剰摂取は肝臓に負担をかけるため、なるべく控えることをおすすめします。 薬物療法で症状を緩和する アルコール性肝炎の症状が進行している場合、アルコール依存症と同様に薬物療法を行う場合があります。(文献3) アルコール依存症は、本人の意思ではどうすることもできないため、抗酒薬や抗不安薬などの薬物療法が用いられますが、同様に断酒を目的として治療が挙げられます。 ただし、薬物療法はあくまで精神的な症状の緩和や断酒を補助するためのものであり、根本的な治療にはなりません。 そのため、断酒を継続しつつ生活習慣の改善と並行して行っていくのが重要です。 再生医療を受ける 肝臓疾患に対する治療法には再生医療という選択肢もあります。 再生医療は、患者様自身から採取・培養した幹細胞を用いて治療を行う、副作用のリスクが少ない治療法です。 当院「リペアセルクリニック」では肝臓疾患に対して、再生医療による治療を行っています。再生医療について詳しくは、以下のページをご覧ください。 アルコール性肝障害の分類における位置付け アルコール性肝障害は以下の五つに分類され、そのうちの一つがアルコール性肝炎です。 アルコール性脂肪肝 アルコール性肝線維症 アルコール性肝硬変 アルコール性肝炎 アルコール性肝がん 慢性的に過剰飲酒を続けると、脂肪肝→肝線維症→肝硬変と順番に進行していく可能性があるため、注意が必要です。 なお、アルコール性肝炎ではこの慢性経過とは別に、酒量の増加などをきっかけにして肝臓に強い炎症が起こります。 背景の肝臓の組織が軽度の脂肪肝であっても進行した肝硬変であっても、肝細胞が変性や壊死を起こしていればアルコール性肝炎と考えられます。 つまり、もともとアルコールによる肝臓の障害がある方が、さらに過剰飲酒することで肝臓に強い炎症とダメージが起こってしまっているのがアルコール性肝炎なのです。 本章では、アルコール性肝障害の五つの分類についてそれぞれ解説します。 アルコール性脂肪肝 アルコールの摂取により、肝臓に脂肪が蓄積する初期段階の状態です。 この段階で飲酒をやめれば、比較的早い回復が見込めます。 アルコール性肝線維症 アルコール性脂肪肝が進行すると、肝細胞がダメージを受け、線維化が始まります。 この段階ではまだ回復の可能性がありますが、飲酒を続けると悪化する恐れがあります。 アルコール性肝硬変 長期間の飲酒により、肝臓が硬化し、機能が低下します。 この段階になると回復は困難で、合併症のリスクも高まります。 アルコール性肝炎 アルコールの影響で肝臓に炎症が生じる状態です。 重症になると命に関わる場合もあり、早急な治療が必要です。 アルコール性肝がん アルコールによるダメージを肝臓が受けている状況下に肝がんができており、他の原因が除外できている状態です。 肝臓の重要な働きと注意すべき病気については以下の記事でも解説しています。 気になる症状がある方は、ぜひご覧ください。 アルコール性肝炎の検査と診断 アルコール性肝炎を診断するには、複数の検査が行われます。 正確な診断を受けることで、適切な治療を選択し、回復へつながる可能性も高まります。 肝生検 肝生検は、肝臓の一部を採取し、組織を詳しく調べる検査です。 この方法により、炎症の進行度や線維化の程度を把握できます。 検査は局所麻酔を行い、細い針を肝臓に刺して組織を採取します。 検査後は数時間(検査自体は20分程度、安静時間も含めて約4~6時間)の安静が必要ですが、肝臓の状態を詳しく知るために有効な方法です。(文献4) 肝硬変などの進行具合を診断する際にも用いられます。 血液検査・画像検査 血液検査は、肝臓の状態を把握する基本的な検査です。 とくにAST(GOT)やALT(GPT)などの肝酵素の数値を調べることで、炎症の有無を確認できます。 また、超音波検査やCTスキャン、MRIなどの画像検査も活用されます。 これらの検査では、肝臓の形状や脂肪の蓄積、線維化の進行具合を視覚的に確認できます。 血液検査との組み合わせによって、より正確な診断が可能になります。 まとめ|アルコール性肝炎は節酒や断酒で回復を目指そう 本記事では、アルコール性肝炎の回復の可能性や治療法について解説しました。 アルコール性肝炎になっても、断酒や栄養管理、薬物療法によって、肝臓の機能は改善し、健康を取り戻せる可能性があります。 ただし、早期発見と対策が重要なため、生活習慣を見直し、必要に応じて医師の診察を受けましょう。 適切な対応を続けることで、肝臓への負担を軽減し、病状の悪化を防げます。 また、当院「リペアセルクリニック」では肝臓(脂肪肝・肝硬変・肝炎)の再生医療・幹細胞治療を提供しています。 肝機能の治療に不安がある方は、まずはお気軽にご相談ください。 アルコール性肝炎の治療についてよくある質問 アルコール性肝炎の治療についてよくある質問肝臓は禁酒すると回復しますか? 肝臓は回復力の高い臓器であり、禁酒することでダメージが改善する可能性があります。 とくに初期段階であれば、断酒によって肝細胞が再生し、健康な状態に戻ることが期待できます。 しかし、肝硬変など病状が進行すると、完全な回復は難しくなります。 そのため、肝臓のダメージが深刻化する前に、禁酒を徹底する意識が大切です。 アルコール性肝炎が回復するまでの期間は? 回復期間には個人差がありますが、軽度のアルコール性肝炎であれば、数週間から数カ月で改善が期待できます。 一方、重度の肝障害がある場合は、回復に数年かかるケースもあります。 断酒を継続し、適切な治療を受けることが回復の鍵となるため、医師と相談しながら自分に合った治療計画を立てましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では肝硬変・肝炎に対し手術を伴わない「再生医療」を提案しています。 治療に不安がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) 竹井謙之,アルコール健康医学協会「アルコール性肝障害の最新トピックス」 https://www.arukenkyo.or.jp/information/pdf/kirokusyu/09/04.pdf(最終アクセス:2025年3月26日) (文献2) 全国健康保険協会「アルコール性肝障害 (Alcoholic Liver Disease:ALD)」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/kochi/20140325001/2016120600012kannshougai.pdf(最終アクセス:2025年3月26日) (文献3) 山田隆子,秋元典子.「アルコール性肝障害入院患者が断酒を決意し断酒を継続するプロセス」『日本看護研究学会雑誌』 Vol. 35 No. 5.pp.25-34,2012https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/35/5/35_20121030003/_pdf(最終アクセス:2025年3月26日) (文献4) 慶應義塾大学病院 KOMPAS「肝生検 - 慶應義塾大学病院 KOMPAS」 https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000439.html(最終アクセス:2025年3月26日)
2024.07.09 -
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最近ニュースでも大きく取り上げられている“脊髄梗塞”ですが、稀な疾患で原因が不明なものも多く、現状では明確な治療方針が定められていません。 後遺症に対してはリハビリテーションを行いますが、最近では再生医療が新たな治療法として注目されています。 脊髄梗塞の症状や原因については以下の記事で詳しく解説しています。 【予備知識】脊髄梗塞の発生率・好発年齢・性差情報 ある研究においては、年齢や性差を調整した脊髄梗塞の発生率は年間10万人中3.1人と報告されています。 脳卒中などの脳血管疾患と比較し、脊髄梗塞の患者数はとても少ないです。 また、脊髄梗塞の患者さんのデータを集めた研究では、平均年齢は64歳で6割以上は男性だったと報告されています。 参考:A case of spinal cord infarction which was difficult to diagnose しかし、若年者の発症例もあり、若年者の非外傷性脊髄梗塞の発生には遺伝子変異が関係していると示唆されています。 脊髄梗塞は治るのか? 結論から言うと、脊髄梗塞を完全に治すことは困難です。現在のガイドラインでは、完治までの治療方法は確立されていません。 したがって、脊髄梗塞の後遺症に対するリハビリテーションを正しくおこなうことが症状改善に有効とされています。 脊髄梗塞の後遺症について 脊髄梗塞の発症直後には急激な背部痛を生じることが多く、その後の後遺症として四肢の運動障害(麻痺や筋力低下など)や感覚障害(主に温痛覚低下)、膀胱直腸障害(尿失禁・残尿・便秘・便失禁など)がみられます。 四肢の運動障害(麻痺や筋力低下など) 感覚障害(主に温痛覚低下) 膀胱直腸障害(尿失禁や残尿、便秘、便失禁など) これらの症状に関しては入院治療やリハビリテーションの施行で改善することもありますが、麻痺などは後遺症として残ることもあります。 歩行障害の予後に関して、115人の脊髄梗塞患者の長期予後を調査した研究報告では、全患者のうち80.9%は退院時に車椅子を必要としていましたが、半年以内の中間調査で51%、半年以降の長期調査では35.2%と車椅子利用者の減少がみられました。 出典:Recovery after spinal cord infarcts Long-term outcome in 115 patients|PubMed 同じ研究における排尿カテーテル留置(膀胱にチューブを挿入して排尿をさせる方法)の予後報告ですが、退院時には79.8%だったのが中間調査では58.6%、長期調査では45.1%へと減少がみられました。 症状が重度である場合の予後はあまり良くありません。 しかし、発症してから早い時期(1〜2日以内)に関しては症状が改善する傾向にあり、予後が比較的良好とされています。 【原因別】脊髄梗塞の治療方法 原因 治療方法 大動脈解離 手術 / 脳脊髄液ドレナージ(1) / ステロイド投与 / ナロキソン投与(2) 結節性多発大動脈炎 ステロイド投与 外傷 手術 動脈硬化・血栓 抗凝固薬 / 抗血小板薬(3) 医原性(手術の合併症) 脳脊髄液ドレナージ / ステロイド投与 / ナロキソン投与 (1)背中から脊髄腔へチューブを挿入し脊髄液を排出する方法 (2)脊髄の血流改善を認める麻酔拮抗薬 (3)血を固まりにくくする薬剤 比較的稀な病気である脊髄梗塞は、いまだに明確な治療法は確立されていません。 脊髄梗塞の発生した原因が明らかな場合にはその治療を行うことから始めます。 たとえ例えば、大動脈解離や結節性多発動脈炎など、脊髄へと血液を運ぶ大血管から中血管の病態に起因して脊髄の梗塞が生じた場合にはその、原因に対する治療がメインとなります。 一方で、原因となる病態がない場合には、リハビリテーションで症状の改善を目指します。 脊髄梗塞に対するリハビリテーション 脊髄梗塞で神経が大きなダメージを受けてしまうと、その神経を完全に元に戻す根本的治療を行うのは難しいため一般的には支持療法が中心となります。 支持療法は根本的な治療ではなく、症状や病状の緩和と日常生活の改善を目的としたものでリハビリテーションも含まれます。 リハビリテーションとは、一人ひとりの状態に合わせて運動療法や物理療法、補助装具などを用いながら身体機能を回復させ、日常生活における自立や介助の軽減、さらには自分らしい生活を目指すことです。 リハビリテーションは病院やリハビリテーション専門の施設で行うほか、専門家に訪問してもらい自宅で行えるものもあります。 リハビリテーションの流れ ①何ができて何ができないのかを評価 ②作業療法士による日常生活動作練習や、理学療法士による筋力トレーニング・歩行練習などを状態に合わせて行う 日常生活において必要な動作が行えるよう訓練メニューを考案・提供します。 脊髄梗塞発症後にベッド上あるいは車椅子移動だった患者さん7人に対して検討を行った結果、5人がリハビリテーションで自立歩行が可能(歩行器や杖使用も含まれます)となった報告もあります。 時間はかかりますし、病気以前の状態まで完全に戻すのは難しいかもしれません。しかし、リハビリテーションは機能改善に有効であり、脊髄梗塞の予後を決定する因子としても重要です。 再生医療が脊髄梗塞に有用! https://www.youtube.com/watch?v=D-THAJzcRPE このように、脊髄梗塞では確立された治療法がなく、場合によっては対症療法を中心に治療法自体を模索することも少なくありません。そのような中、近年では再生医療が脊髄梗塞を含めた神経障害に対して特異的な効果を発揮しています。 再生医療では、これまで回復が困難と言われてきた神経の障害に対しても常識を覆す効果を発揮し、これまでも脊髄梗塞におけるリハビリテーションの効果を向上させるとの報告や、脊髄損傷の重症度を改善したと報告がされており、これからの医療にとって新しい希望の光となっています。 再生医療とは、失われた身体の組織を修復する能力、つまり自然治癒力を利用した医療です。 当院で行なっている再生医療は“自己脂肪由来幹細胞治療”です。患者様から採取した幹細胞を培養して増殖し、その後身体に戻す治療法となっています。 幹細胞とは、いろいろな姿に変化できる細胞で、失われた細胞を再生・修復する機能をもちます。自分自身の細胞から作り出すので、アレルギーや免疫拒絶反応がなく、安全な治療法といえます。 日本における幹細胞治療では、一般的に点滴による幹細胞注入を行なっておりますが、それでは目的の神経に辿り着く幹細胞数が減ってしまうことが懸念されます。 そこで、当院では損傷した神経部位に直接幹細胞を注入する“脊髄腔内ダイレクト注入療法”と呼ばれる方法を採用しています。注射によって脊髄のすぐ外側にある脊髄くも膜下腔に幹細胞を投与する方法で点滴治療と組み合わせることにより、より大きな効果を期待できます。この治療は数分のみの簡単な処置で済み、入院も不要です。 実際に当院では術後や外傷、脊髄梗塞、頚椎症などの神経損傷に由来する麻痺や痺れ、疼痛などの後遺症に対して再生療法を施し、症状が大きく改善した例を経験しています。 脊髄梗塞に関するQ &A この項目では、脊髄梗塞に関するQ &Aを紹介します。 多くの方が抱えているお悩み(質問)に対して、医者の目線から簡潔に回答しているのでご確認ください。 脊髄梗塞の主な原因は? 脊髄梗塞の主な原因は以下のとおりです。 脊髄動脈の疾患 栄養を送る血管の損傷 詳細な原因については以下の関連記事で紹介しているのでぜひご確認いただき、症状改善の一助として活用ください。 脊髄梗塞の診断は時間を要する? そもそも脊髄梗塞は明確な診断基準がありません。 発症率が低い脊髄梗塞は最初から強く疑われず、急速な神経脱落症状(四肢のしびれや運動障害、感覚障害など)に加えてMRIでの病巣確認、さらに他の疾患を除外してからの診断が多いです。 また、MRIを施行しても初回の検査ではまだ変化がみられず、複数回の検査でようやく診断に至った症例が少なくありません。 ある病院の報告では、発症から診断に要した日数の中央値は10日となっており、最短で1日、最長で85日となっていました。 まとめ・脊髄梗塞は治るのか?治療法や後遺症のリハビリについて解説 脊髄梗塞は稀な疾患ゆえ、治療ガイドラインが確立されていません。 原因が明らかな場合にはその治療を行ない、原因が不明な場合には脱水予防の補液のみです。その後以降は後遺症を改善するべくリハビリテーションに努めるのがこれまでの一般的な治療でした。 しかし、2024年現在は再生医療に手が届く時代となり、今まで回復に難渋していた脊髄損傷も改善が見込めるようになりました。 脊髄損傷による後遺症に再生医療が適応となる可能性があります。気になる方はぜひ当院に一度ご相談ください。 ▼こちらも併せてお読みください。
2024.07.02 -
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- 内科疾患
アルコール性肝炎は初期症状が軽いため、気づかずに放置してしまう人が多い病気です。 しかし、進行すると肝硬変や肝がんに移行し、命に関わる場合もあります。 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、症状が現れたときにはすでに手遅れの可能性もあるため注意が必要です。 本記事では、初期症状や検査方法、重症化を防ぐためのポイントを解説します。 自分の体の異変にいち早く気づき、適切な対応を取りましょう。 アルコール性肝炎の初期症状 アルコール性肝炎は、初期段階では症状が出にくく、気づいたときには進行しているケースも少なくありません。 早期発見には、どのような兆候があるのかを知ることが大切です。 アルコール性肝炎でみられる初期症状と原因は以下のとおりです。(文献1) 症状 主な原因 倦怠感 肝臓の機能低下によるエネルギー不足 食欲不振 肝臓の炎症による消化機能の低下 腹痛 肝臓の腫れや炎症による右上腹部の痛み 発熱(微熱) 炎症反応による体温上昇 尿が濃い ビリルビン排出異常により尿の色が濃くなる 肝臓は、体内の解毒や栄養の代謝を行う重要な臓器です。 アルコールを大量に摂取すると、肝臓の細胞がダメージを受け、正常に働かなくなります。 その結果、エネルギー不足から倦怠感が生じ、消化機能の低下で食欲不振が起こります。 さらに、炎症が進行すると微熱が出たり、肝臓が腫れて腹痛がしたりするのも初期症状の特徴です。 アルコール性肝炎の初期症状は、風邪や疲労と勘違いしやすいため、長引く場合は注意が必要です。 【血液検査】アルコール性肝炎が疑われる検査値 アルコール性肝炎の診断は、黄疸の有無や血液検査における肝機能を示す酵素の異常値がポイントとなります。 ただし、これらの数値は他の肝疾患でも上昇するため、飲酒歴や追加の検査と併せて判断する必要があります。 血液検査で確認する主要な数値は次のとおりです。(文献2)(文献3) 検査項目 異常値の特徴 意味 γ-GTP 上昇(男性70IU/L超・女性40IU/L超) 肝臓がダメージを受けている AST(GOT)/ALT(GPT)比 AST>ALTが特徴的 アルコール性肝炎や脂肪肝で見られる傾向 白血球数 増加 肝臓の炎症による免疫反応 ビリルビン 上昇 黄疸が出る可能性が高い アルブミン 低下 肝臓の合成機能が低下している アルコール性肝炎では、γ-GTP、AST(GOT)、ALT(GPT)が上昇しやすく、とくにASTがALTより高くなる(AST>ALT)のが特徴です。 白血球数の増加が見られる場合は、炎症が進行している可能性が考えられます。 また、ビリルビン値の上昇によって皮膚や白目が黄色くなる黄疸が現れるケースもあります。 ただし、これらの数値は他の肝疾患でも異常を示す可能性があるため、医師の総合的な判断が必要です。 肝臓の数値に異常がある場合の原因や対策については、以下の記事でも詳しく解説していますので、参考にご覧ください。 アルコール性肝炎の進行サイン・症状 アルコール性肝炎が進行すると、黄疸や消化器症状が現れる場合があります。 黄疸は血液中のビリルビンが過剰に増え、皮膚や白目が黄色くなる症状で、肝機能の深刻な低下を示します。 この状態になった場合は、早急に受診しましょう。 また、嘔吐や下痢が続く場合も注意が必要です。 肝臓の働きが低下すると消化機能が乱れ、食べ物の消化や吸収がスムーズに行われなくなります。 とくに、アルコール摂取後に強い気持ち悪さや腹痛が続く場合は、肝炎が進行している可能性があります。 アルコール性肝炎が進行すると栄養吸収が悪化して体力の低下につながるため、早めの検査と適切な対応が重要と言えるでしょう。 \まずは当院にお問い合わせください/ アルコール性肝炎を放置するリスク アルコール性肝炎を放置すると、症状が進行し、命に関わる合併症を引き起こす可能性があります。 とくに以下のリスクが高まるため注意が必要です。 肺炎・腎不全・消化管出血のリスク 肝硬変や肝がんのリスク 初期症状が軽くても軽視せず、早めに医療機関を受診しましょう。 肺炎・腎不全・消化管出血のリスク アルコール性肝炎が進行すると、免疫低下や血流異常によって以下のような症状が発生するケースがあります。(文献3) 起こりうるリスク 症状 肺炎 細菌感染を起こし、高熱や呼吸困難をともなう 腎不全 老廃物が排出されにくくなる 尿量の減少やむくみが起こる 重症化すると意識障害が起こる可能性がある 消化管出血 血流が滞り食道や胃の血管が破裂すると、吐血・黒色便などがあらわれる可能性がある いずれも進行すると命に関わるため、早急な治療が必要です。 肝硬変や肝がんの発症リスク アルコール性肝炎を放置すると、肝硬変や肝がんへ進行する可能性が高まるため注意が必要です。(文献4) 肝硬変は肝臓の細胞が線維化し、腹水や黄疸、手のひらの赤み(手掌紅斑)などの症状が現れ、最終的には肝不全につながります。 さらに、肝硬変が続くと肝細胞ががん化しやすくなり、肝がんを発症するリスクが高まります。 初期の肝がんは症状が乏しく、発見が遅れることが多いため、定期的な検査が欠かせません。 そのため、普段から酒量が多いと感じている方は、少しでも異常を感じたら早めに医療機関を受診しましょう。 こちらの記事では、アルコール性肝炎の治療法について詳しく解説しています。 アルコール性肝炎の検査方法 アルコール性肝炎の診断には、血液検査や画像検査、肝生検、飲酒習慣のチェックが用いられます。 検査方法 検査内容 特徴 血液検査 肝機能の数値を測定 AST・ALT・γ-GTPの上昇、ビリルビン値の確認 画像検査(エコー・CT・MRI) 肝臓の状態を確認 肝臓の腫れ・脂肪の蓄積・血流異常の検出 肝生検 肝臓の組織を採取 病変の進行度を詳細に分析 飲酒習慣のスクリーニング 飲酒量や依存度を評価 AUDITなどのテストを活用 自覚症状が乏しい場合も多いため、これらの検査を組み合わせることで病状を正確に把握できます。 本章では、それぞれの検査方法について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。 血液検査で肝機能の異常を確認 血液検査では、肝臓の炎症や機能低下を示す数値の異常が確認できます。 主にγ-GTP、AST(GOT)、ALT(GPT)の上昇が見られ、ASTがALTより高くなるのが特徴です。 また、ビリルビン値が上昇すると黄疸の可能性が高まります。 ただし、これらの異常値は他の肝疾患でも見られるため、血液検査だけで確定診断はできません。 画像検査(エコー・CT)で肝臓の状態をチェック 肝臓の状態を詳しく調べるために、腹部エコー(超音波検査)やCT検査が行われます。 エコーは、肝臓の腫れや脂肪の蓄積、血流の異常などの確認に有効です。 また、CT検査では、より詳細な画像が得られ、肝硬変や肝がんの有無も判断しやすくなります。 血液検査と組み合わせることで、肝臓のダメージを総合的に評価できます。 肝生検で病変の進行度を詳しく調べる 肝生検は、肝臓の組織を直接採取して病状を詳しく分析する検査です。 肝炎の進行度や肝細胞の損傷の程度を確認するために実施されます。 とくに、肝硬変や肝がんの疑いがある場合に有効です。 ただし、ほかの検査より体に負担がかかりやすいため、他の検査で診断が難しい場合に行われるのが一般的です。 飲酒習慣のスクリーニングテストでリスクを見極める アルコール性肝炎は、長期間の過剰な飲酒が主な原因です。 一度肝炎が回復しても、飲酒による再発・悪化の可能性があるため、飲酒習慣を把握するスクリーニングテストを行うケースがあります。 具体的には、飲酒量や依存度を評価する「AUDIT(アルコール使用障害スクリーニング)」と呼ばれる質問形式のテストを活用します。 また、スクリーニングテストのほかに、血液・画像・生検・飲酒歴の確認を組み合わせると、より正確な診断が可能です。 そのため、飲酒量が多い人は、肝機能が大きく低下する前に治療を開始することが大切です。定期的な検査をうけるようにしましょう。 まとめ|アルコール性肝炎の初期症状を見逃さず早めに受診しよう この記事では、アルコール性肝炎の初期症状や進行リスク、検査方法について解説しました。 アルコール性肝炎は自覚症状が乏しく、気づかないうちに進行する病気です。 倦怠感・黄疸・食欲不振・尿の色の変化がある場合は、早めの受診が必要です。 また、血液検査や画像検査を活用すれば、肝機能の低下を早期に発見できる可能性があります。 とくに、長期間の飲酒習慣がある場合は、定期検査を受けるのがおすすめです。 放置すれば肝硬変や肝がんのリスクが高まるため、異変を感じたら早めに医療機関で検査を受けましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では肝硬変・肝炎に対し手術を伴わない「再生医療」を提案しています。 再生医療について詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください。 アルコール性肝炎の初期症状に関するよくある質問 アルコール性肝炎の自覚症状はありますか? 初期のアルコール性肝炎は自覚症状がほとんどありません。 しかし、倦怠感・食欲不振・黄疸・腹痛・微熱などが見られるケースがあります。 また、尿の色の変化や黄疸が出た場合は、肝機能の低下が進んでいる可能性があるため要注意です。 アルコール性肝炎は初期症状の段階で禁酒すれば治りますか? 初期の段階で禁酒すれば、肝機能が回復する可能性はあります。 肝臓は再生能力が高いため、飲酒をやめることで炎症が落ち着き、回復するケースも多いです。 ただし、肝硬変まで進行すると回復は難しくなります。 一度回復しても、飲酒を再開すると再発するリスクがあります。医師の指導のもと、禁酒と生活習慣の改善を継続し、異変を感じたら早めに受診しましょう。 参考文献 (文献1) 土島睦,金沢医科大学「お酒と肝臓」 https://www.kanazawa-med.ac.jp/~hospital/docs/%2854-2%29%E3%81%8A%E9%85%92%E3%81%A8%E8%82%9D%E8%87%93%EF%BC%88%E5%9C%9F%E5%B3%B6%E6%95%99%E6%8E%88%29.pdf (最終アクセス:2025年3月16日) (文献2) 福岡労働衛生研究所「肝臓病」 https://www.rek.or.jp/js/kcfinder/upload/files/%E2%91%A4%E8%82%9D%E8%87%93%E7%97%85%E3%80%902020.6.10%E6%94%B9%E8%A8%82%E3%80%91%281%29.pdf (最終アクセス:2025年3月16日) (文献3) 全国健康保険協会「アルコール性肝障害 (Alcoholic Liver Disease:ALD)」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/kochi/20140325001/2016120600012kannshougai.pdf (最終アクセス:2025年3月16日) (文献4) 岡山県肝炎相談センター「肝臓のおはなし」2016年 http://kanen.ccsv.okayama-u.ac.jp/upload/topics/58/file.pdf (最終アクセス:2025年3月16日)
2024.06.25 -
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肝硬変と診断を受けてから、どのような食事をとったら良いのかお悩みではないでしょうか。 医師から食事指導を受けたものの、具体的にどの食品をどの程度制限すれば良いのか、また、美味しい食事を楽しめるのか不安に感じている方もいるでしょう。 肝硬変の方は、健康な人に比べて食事の制限が多くなります。しかし、栄養バランスを意識してメニューを工夫すると、治療中でも美味しく食事を楽しみながら、必要な栄養を摂取できるでしょう。 本記事では、肝硬変の食事で気をつけるべきポイントとおすすめの献立を紹介します。 ぜひこの記事を参考に、無理なく続けられる食事の工夫を行い、健康を守るための食生活を取り入れていきましょう。 肝硬変の人が気をつけるべき食事|食べてはいけないもの3選 肝硬変の人が控えるべき食品は以下の3つです。 塩分が多い食事 刺激物や硬い食品 高タンパクな食事 これらの摂取を控えて、日々の食生活に気を配りましょう。肝硬変の方は、普段から肝臓への負担を減らす意識を持つことが大切です。 塩分が多い食事 腹水やむくみがある肝硬変の人は塩分摂取量の目安として、1日5〜7gに抑えることが推奨されます。(文献1) 腹水とは、お腹の中にタンパク質を含んだ液が大量に貯留した状態です。(文献2) 肝臓の機能が低下すると、血液中のアルブミンが減少し、水分が血管外へ漏れ出して腹水やむくみが生じます。塩分を摂りすぎると体内の水分がさらに増え、症状を悪化させる要因となります。そのため、肝硬変の人は塩分を控えることが重要です。 とくに以下のような食品は塩分が多いため、注意が必要です。(文献3) インスタント食品(カップめんやインスタントラーメンなど) 梅干し 漬物 塩分を適切にコントロールし、腹水やむくみの悪化予防に努めましょう。 肝硬変の腹水の予後や治療方法を知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。 刺激物・硬い食品 肝硬変の患者は、食道静脈瘤のリスクがあるため、刺激物や硬い食品の摂取を控えることが重要です。(文献4) 食道静脈瘤とは、門脈圧亢進症(肝臓に流れ込む門脈の血圧が高くなる状態)によって生じる食道の血管のこぶであり、破裂すると大量出血を引き起こす可能性があります。(文献5) 食道は食べ物の通り道になっているため、その表面上にある膨らんだ血管に尖ったものや硬いものが当たると、破裂する可能性があるため注意が必要です。 たとえば、せんべいや小魚のおやつ、ナッツ、骨のある魚、フランスパンなどは硬いので適しません。また、香辛料の多いカレーやコーヒーも刺激が強いため控えた方が良いでしょう。 逆に好ましい食品は、茶碗蒸しや麺類(うどんやそうめんなど)、お米、プリン、ヨーグルトなどの消化しやすい柔らかい食べ物です。調理する際には柔らかく仕上げるように工夫してみてください。 高タンパクな食事 肝硬変の方は、タンパク質の過剰摂取に注意が必要です。 基本的に、肝硬変の方は健康な方よりもタンパク質を多めに摂取することが推奨されています。推奨されるタンパク質の1日摂取量は以下のとおりです。(文献8)(文献9) 対象 推奨されるタンパク質の1日摂取量目安 健康な方 男性:約0.95~1.0g/kg 女性:約0.93~0.99g/kg 肝硬変の方(蛋白不耐症がない場合) 1.0〜1.5g/kg タンパク質が不足すると栄養状態の悪化につながるため、過不足がない摂取量を心がける必要があります。 ただし、肝硬変の方は摂取のしすぎにも注意が必要です。 タンパク質は体に必要な栄養素ですが、消化・分解される過程で毒素のひとつ「アンモニア」を発生させます。健康な肝臓であれば無毒化されますが、肝機能が低下すると処理が追いつかず、体内にアンモニアが蓄積してしまいます。 血液中のアンモニア濃度が上昇し、脳にまで達すると神経症状を引き起こす「肝性脳症」の原因になります。 そのため、タンパク質の過剰摂取には注意が必要です。(文献6)とくに動物性タンパク質の摂りすぎには注意しましょう。 以下のような食品はタンパク質を多く含むため、摂取量を調整することをおすすめします。(文献7) 卵類 豚肉類 乳製品 肝硬変と同様、肝臓に中性脂肪が溜まる「脂肪肝」も食事の見直しが大切です。脂肪肝の食事の注意点を知りたい方は、以下のコラムも参考にしてください。 肝硬変の食事でおすすめの献立例 肝硬変では栄養バランスを整えつつ、肝臓に負担をかけない食事を摂ることが重要です。塩分やタンパク質を控えながらも、必要な栄養素を効率よく摂取できる献立を紹介します。 【朝食】 パン 野菜スープ 果物・サラダ カフェオレ 野菜や果物を取り入れることでビタミンや食物繊維が摂取でき、腸内環境を整えられます。腸内環境を整えるとアンモニアの産生を抑制できるため肝硬変の方におすすめです。肝性脳症を合併している方は、カフェオレに入れる牛乳の量を少なめにしましょう。 【昼食】 うどん 果物 ヨーグルト 消化が良いうどんを主食にすることで消化管への刺激を抑え、食道静脈瘤のリスクを低減できます。そのため、うどんのような柔らかい食材がおすすめです。塩分を控えるため、うどんのつゆは薄味にして出汁を活用すると良いでしょう。 【夕食】 ごはん 豆腐ハンバーグ 根菜汁 生野菜 主菜に植物性タンパク質を含む豆腐ハンバーグを取り入れると、食物繊維を多く摂取でき、アンモニアの蓄積を抑えられます。(文献10)主菜はなるべく、動物性タンパク質の代わりに植物性タンパク質を用いると良いでしょう。 合併症がある場合は、医師と相談しながら食事内容を調整しましょう。 \まずは当院にお問い合わせください/ 肝硬変の食事療法の注意点 肝硬変の患者は、食事の摂り方にも注意が必要です。栄養素や食品に加え、以下の食事の取り方をするよう意識しましょう。 1日3回規則正しく食べる 高タンパク食や高カロリー食は避ける 満腹まで食べない(腹八分目を意識する) よく噛んで食べる 食べてからすぐにお風呂に入らない 深夜には高脂肪食品の摂取を避ける これらの食事のポイントも意識すると、肝硬変の悪化防止につながります。今まで注意していなかった方は、今日から気をつけましょう。 肝硬変では食事の見直しに合わせて、専門医の治療をしっかり受けることが大切です。肝硬変の治療について詳しく知りたい方は、以下のコラムも参考にしてください。 まとめ|肝硬変は食事を工夫して悪化を防ごう 肝硬変では肝機能が低下している分、食事内容や摂取方法に注意しなければなりません。普段の食事内容の工夫が合併症を予防することにつながります。 合併症を改善・予防する上で食事療法は非常に重要です。医師や栄養士とも相談しながら、ご自身のライフスタイルに合った食事の工夫を行ってみてください。この記事がご参考になれば幸いです。 当院「リペアセルクリニック」では、肝臓疾患に対する治療として再生医療を行っております。再生医療について詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください。 肝硬変の食事についてよくある質問 肝硬変の食事で生ものは食べられますか? 肝硬変の方は、生ものの摂取は控えましょう。 肝硬変は肝機能が低下している状態です。そのため、解毒能力が弱まり、食中毒のリスクが高まります。健康な人なら食品に含まれる細菌やウイルスは肝臓で解毒されますが、肝硬変の方はこの機能が低下し、感染症にかかりやすくなるのです。 とくに、生の魚介類には「ビブリオ・バルニフィカス」と呼ばれる細菌が含まれることがあり、重篤な感染症を引き起こす可能性があります。(文献11) お寿司や刺身などの生魚は避けて、加熱調理した食品を摂取するようにしましょう。 肝硬変で食事がとれないときの対処法はありますか? 肝硬変の患者が食事をとれない場合は、栄養不足を防ぐために以下のような対策を取りましょう。 消化の良い食品を摂取する(お粥、スープ、豆腐、ヨーグルトなど) 少量ずつ複数回に分けて食べる(1日5~6回程度に分ける) 食欲が低下した場合は栄養補助食品を活用する 医師の処方に基づきBCAA(分岐鎖アミノ酸)製剤を取り入れる 食事から十分な栄養を摂れない場合、医師の指導のもとで栄養補助食品を活用するのもひとつの手です。エネルギーが補給できるドリンクタイプの栄養補助食品を取り入れると、食欲がなくても無理なく栄養を摂取できるでしょう。 参考文献 (文献1) 日本消化器病学会・日本肝臓学会「肝硬変診療ガイドライン 2020(改訂第 3 版)」2020年発行 https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/kankouhen2020_re.pdf (最終アクセス:2025年3月26日) (文献2) MSDマニュアル「腹水」, MSDマニュアル家庭版,2023年1月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/04-%E8%82%9D%E8%87%93%E3%81%A8%E8%83%86%E5%9A%A2%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%82%9D%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6%E3%81%A8%E5%BE%B4%E5%80%99/%E8%85%B9%E6%B0%B4 (最終アクセス:2025年3月26日) (文献3) 消費者庁「栄養成分表示を使って、あなたも食塩摂取量を減らせる」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/food_labeling_cms206_20191126_09.pdf (最終アクセス:2025年3月26日) (文献4) MSDマニュアル「肝硬変」, MSDマニュアルプロフェッショナル版,2022年1月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/02-%E8%82%9D%E8%83%86%E9%81%93%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%B7%9A%E7%B6%AD%E5%8C%96%E3%81%A8%E8%82%9D%E7%A1%AC%E5%A4%89/%E8%82%9D%E7%A1%AC%E5%A4%89L (最終アクセス:2025年3月26日) (文献5) MSDマニュアル「静脈瘤」, MSDマニュアルプロフェッショナル版,2023年5月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/01-%E6%B6%88%E5%8C%96%E7%AE%A1%E7%96%BE%E6%82%A3/%E6%B6%88%E5%8C%96%E7%AE%A1%E5%87%BA%E8%A1%80/%E9%9D%99%E8%84%88%E7%98%A4 (最終アクセス:2025年3月26日) (文献6) MSDマニュアル「肝性脳症」, MSDマニュアル家庭版,2023年1月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/04-%E8%82%9D%E8%87%93%E3%81%A8%E8%83%86%E5%9A%A2%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%82%9D%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6%E3%81%A8%E5%BE%B4%E5%80%99/%E8%82%9D%E6%80%A7%E8%84%B3%E7%97%87 (最終アクセス:2025年3月26日) (文献7) 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」から出典,2023年発行 https://fooddb.mext.go.jp/index.pl (最終アクセス:2025年3月26日) (文献8) 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」2019年12月発行, https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf (最終アクセス:2025年3月26日) (文献9) 日本消化器病学会・日本肝臓学会「追補内容のお知らせ 『肝硬変診療ガイドライン』(2020 年 11 月)」2022 年 3 月 18 日更新,https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/kankouhen2020_AR_v2.pdf?utm_source=chatgpt.com (最終アクセス:2025年3月26日) (文献10) 渡辺 明治.「9.肝硬変合併症とその対策3)肝性脳症」『日本内科学会雑誌』80巻(10号), p1625-p1630 1991年発行 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/80/10/80_10_1625/_pdf (最終アクセス:2025年3月26日) (文献11) 厚生労働省「ビブリオ・バルニフィカスに関するQ&A」食品の安全に関するQ&A, 2016年11月9日 https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/qa/060531-1.html#top (最終アクセス:2025年3月26日)
2024.06.18 -
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「肝硬変の疑いがあって、今後の治療が気になる」 「改善させるには肝移植しかないの?」などと、悩んでいませんか。 肝臓の慢性的な炎症により、肝臓が線維化して硬くなる疾患である肝硬変は、代謝や血液の循環動態に大きな影響を及ぼします。 症状の進行だけでなく、合併症のリスクも見逃せないポイントです。そこで肝移植を検討している方もいるのではないでしょうか。しかし、肝硬変の方で移植が受けられるのはごく一部です。 本記事では、肝硬変と診断されたときに知っておきたい治療法や合併症について解説します。 「肝硬変が治る可能性がある」とも言われている再生医療についても紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。 【基礎知識】肝硬変の概要 肝硬変とは肝臓の慢性的な疾患であり、肝細胞が破壊され、線維組織が増えた結果、肝臓が硬くなった状態です。 肝硬変は、肝臓の組織が徐々に硬化するため、肝臓の機能を果たすのが難しくなるだけでなく、生命に重大な影響を及ぼす可能性があります。 ここからは肝硬変の症状と発症の原因について詳しく解説していきます。 肝硬変の症状 肝硬変の症状は、主に黄疸、腹水、倦怠感、むくみ、さらには精神的な混乱などの症状があります。 ただし肝硬変は、初期段階では無症状であるケースが多く、セルフチェックで異変に気付ける方は少ないのが実情です。 患者様によっては食欲不振や疲労感などがあらわれますが、多くの場合で症状を感じる中期・末期まで進行してからの発見になってしまいます。 そもそも肝硬変の症状は、肝臓の機能低下に伴う体内の代謝異常や血流の変化によって引き起こされます。 肝硬変が進行して肝性脳症を発症した場合、命に危険を及ぼす可能性があります。腹部の張りや頻尿など、少しでも違和感があれば早めに医師に相談しましょう。 肝硬変が発症する原因 肝硬変が発症する原因は、慢性肝炎ウイルス感染(とくにB型およびC型肝炎)、アルコールの過剰摂取、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、および自己免疫性肝疾患などです。 これらの要因が長期間にわたり肝臓に負担をかけた結果、肝臓の構造が変化し、肝硬変へと進行するのです。 肝硬変が発症するリスクは、上記の要因が組み合わさると、さらに発症する可能性を高めてしまいます。 たとえば、アルコールの摂取量が多い方が慢性肝炎ウイルス感染に発症した場合、肝硬変発症のリスクを高める結果になります。 免疫力も関係するため、50代以降の方は定期的な受診をしておくのがおすすめです。 なお、以下の記事でも肝硬変について触れております。 肝硬変の症状や原因を、より詳しく知りたい方は以下の記事もあわせてご覧ください。 肝硬変の治療法 肝硬変の治療法は主に、薬物療法や食事療法、肝移植があげられます。 ここからはそれぞれの治療法と肝移植の種類、リスクについて解説していきます。 薬物療法 肝硬変の薬物療法は肝硬変の症状や合併症を管理するために用いられます。 主に以下の症状に対して治療をおこないます。 症状 治療法(使用する薬の種類) 皮膚のかゆみ ナルフラフィン塩酸塩 こむら返り 芍薬甘草湯、カルニチン 血小板減少 ルストロンボパグ ただし薬物療法は、肝硬変の進行を遅らせて症状を緩和させるのが主な治療の目的です。 肝硬変で腹水が溜まっている方は、以下の記事も参考にしてください。 食事療法を含めた生活習慣の改善 肝硬変の方は、日頃の食事や生活習慣を改善するのも、おすすめの治療法です。 たとえば、以下のような食生活を心がけてみてください。 症状 食生活の改善ポイント 腹水・むくみ 塩分を控え、適度な水分制限が必要。水分不足や脱水に注意。 食道静脈瘤 刺激物、硬い食物を避け、よく咀嚼する。 糖尿病 一度に大量に食べない。砂糖や果物を控える。炭水化物の多い食事に注意。 肝性脳症 たんぱく質を控え、食物繊維を摂る。 上記の食生活へと改善しつつ、適度な運動習慣を取り入れて改善していきましょう。 肝硬変の食事療法については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。 肝移植 肝硬変が進行し、多くの合併症が起こり他の治療法が効果を示さない場合、肝移植を検討し始めます。 ダメージを受けた肝臓を取り除き、健康な肝臓に置き換え、機能を回復させるための治療法です。ただし、肝移植を受けられるかどうかは、患者様の健康状態や肝硬変の原因などの要因に依存します。 ここからは肝移植の種類やリスクについて深掘りしていきます。 移植の種類 肝硬変の治療で肝移植には「生体肝移植」と「脳死肝移植」の2種類あります。 それぞれ移植の特徴や注意点などは以下の通りです。 移植の種類 概要 メリット デメリット 生体肝移植 健康なドナー(主に配偶者や家族など)の肝臓の一部を患者様に移植する方法 移植までの待機時間が少ない ドナーの体にもメスをいれる必要がある 脳死肝移植 脳死状態となり臓器提供の意思を示した方から肝臓を提供してもらう方法 肝臓全体を移植できる 待機時間が長くなる可能性があり、病状が進行するリスクがある いずれの肝移植にも手術が必要であり、危険性が伴うのは忘れないようにしましょう。 肝移植のリスク 肝移植では、全身麻酔による合併症の可能性や肝臓を取り除く際に周囲の臓器を損傷するリスクがあります。 また、移植後は拒絶反応を防ぐために、免疫抑制剤を服用し続ける必要があります。 さらに肝移植は、すべての肝硬変の患者様が受けられるわけではありません。肝硬変の原因や患者様の全体的な健康状態などに基づいて、適応が判断されます。適応基準を満たさない場合は、症状を緩和する治療を続けます。 肝移植は最終的な治療手段として、肝硬変の患者様の命を救う可能性があるため、適応の有無は慎重な判断が必要です。 合併症別に見る肝硬変の治療法 肝臓は解毒・代謝など体にとって重要な役割を果たしていますが、肝硬変になるとその働きが落ちます。 肝硬変が進行すると肝臓に流れ込む「門脈」と呼ばれる血管の圧が上がるため、血流に大きな変化を及ぼします。 ここからは肝硬変に起こりやすい合併症とその治療法について、それぞれ解説していきます。 肝性脳症 肝性脳症とは、肝硬変により代謝できなくなったアンモニアなどの毒素による脳の機能障害です。 肝性脳症による症状は異常行動や意識障害などがあります。なかでも特徴的な症状のひとつに「羽ばたき振戦」があります。その検査方法は以下の通りです。 羽ばたき振戦の検査方法 ①手のひらを下にしたまま腕を前に伸ばす ②そこから手首を90度立てて手のひらを正面に見せる様にする 羽ばたき振戦があると、手のひらを正面にしたままキープできず、羽ばたいているように手が細かく震えるのです。 肝性脳症には便秘・脱水・体内のアミノ酸バランスの異常・栄養素の不足などが影響していると考えられます。これらの誘因を除去し、不足している栄養素を補うのが治療で重要なポイントです。 患者様の栄養状態を把握し、適切な栄養管理をしつつ、以下の薬物療法をおこないます。 種類 概要 非吸収性合成二糖類 便秘を改善したり、腸内のpHを調整したりする効果がある。 分子鎖アミノ酸製剤(BCAA) アミノ酸バランスを整え、肝性脳症を改善させる。 腸管非吸収性抗菌薬 腸内でアンモニアを産生する菌の増殖を抑制する。 亜鉛製剤 不足している亜鉛を補うことで症状を改善させる。 カルニチン製剤 肝硬変の方が不足しがちなカルニチンを補充して効果を発揮させる。 食道胃静脈瘤 食道胃静脈瘤(しょくどうじょうみゃくりゅう)は血液を肝臓に流す「門脈」の血圧が肝硬変により、上昇し、発生する合併症です。 門脈圧亢進(もんみゃくあつこうしんしょう)により門脈を介した血流が滞ると、相対的に他への血流を増やさなければなりません。 その結果、食道や胃などの静脈に血流が増えて血管は拡張し、瘤(こぶ)のようになります。 基本的には無症状でも胃カメラをしなければ発見できません。しかし、とても破れやすく、消化管出血をきたします。 以下で治療の種類と具体的な内容を解説するので、参考にしてください。 治療の種類 治療内容 EIS(内視鏡的硬化療法) 内視鏡下に静脈瘤に硬化剤を注入する。 EVL(内視鏡的食道静脈瘤結紮術) 内視鏡に専用の輪ゴムを装着して静脈瘤を結紮(血管をしばって血行をとめる方法)。 CA法(内視鏡的シアノアクリレート系組織接着剤注入法) X線透視装置と内視鏡を用いて、造影剤と組織接着剤を混ぜ、静脈瘤に注入し硬化させる。 SB-tube 鼻からチューブを挿入し、2つのバルーンを膨らませ、圧迫止血をおこなう。 BRTO(バルーン下逆行性経静脈的塞栓術) 足の付け根の静脈からカテーテルを進め、硬化剤とバルーンで静脈瘤の血流を遮断して硬化させる。 静脈瘤の形や場所・患者様の状態・肝機能の程度・医療機関の状況などにより選択されます。 肝腎症候群 肝硬変により体をめぐる血液のボリュームが低下し、腎臓への血流が悪くなり腎機能障害が起こった状態が「肝腎症候群」です。 腹水を伴う、進行した肝硬変に起こります。腎機能は血液検査の「クレアチニン」と呼ばれる項目で判断します。 クレアチニンが1.5mg/dL以上を超えるのが診断条件の1つです。 脱水やショック、薬剤による腎障害や腎臓そのものの異常がないなど、いくつかの項目をみたすと診断が確定します。 急速に進む1型と緩徐に進行する2型に分類され、1型はとくに病気のその後の状態が悪くなることが多いです。 治療では、血液内に水分を引き寄せるアルブミンと呼ばれる血液製剤を投与したり、血圧を上げる薬を一時的に使用したりします。 肝肺症候群 肝肺症候群とは、肝硬変が原因で肺のガス交換に異常をきたし、血中の酸素濃度が低くなった状態です。 肝硬変により血管拡張物質が代謝されなくなった結果、肺の血管が拡張します。 肺の血液量が増え、酸素の供給が間に合わなくなるだけでなく、動脈と静脈にシャントと呼ばれる異常な交通ができます。 シャントでは動脈血と静脈血が混じり合い、血中の酸素濃度が低くなるので注意が必要です。 肝肺症候群の特徴的な症状は、座ったり立ったりしたとき、息苦しさを感じる症状が出ます。診断は特殊な心エコーなどの画像検査で肺のシャントを証明します。 肺高血圧症 肝硬変による門脈圧亢進症に伴う血流の変化は肺の動脈にも影響を及ぼします。心臓から肺へ伸びる肺動脈圧が上昇した状態が「肺高血圧」です。 肺へ血液を送る心臓の右側の部屋(右心系)に負担がかかり、やがて心不全へと至ります。息苦しさ、足のむくみ、動悸、失神などが主な症状です。 レントゲンや心電図、心エコーなどで右心系の負荷がかかっていないかを確認します。治療は肺動脈を拡張させる薬剤を使用します。 肝硬変が進行し、肝臓の機能が保てなくなる「肝不全」では、これらの合併症により他の臓器にも影響を及ぼすだけではありません。 連鎖的に他の臓器への機能不全が起こると、命への影響もあるため注意が必要です。 肝がん 肝硬変と診断された方は、定期的な腹部エコーなどの画像検査をおこない、がんではないか、経過観察をおこなうのが重要です。 がんがあるときに高値になりやすい血液検査の「腫瘍マーカー」も参考になります。最終的な診断は生検と呼ばれる組織を針などで取り、顕微鏡で観察する必要があります。 肝がんの主な治療法は、以下の通りです。 手術や一般的な抗がん剤を使用する 体表から特殊な針をがんに刺して焼く がんの近くまで直接的に抗がん剤を注入する がんの栄養血管を詰める がんの治療は、その大きさ・数・肝硬変の程度や患者様の状態によりさまざまです。 肝硬変は治る時代!?再生医療の可能性について 肝硬変になると、従来の治療法では線維化した肝臓が元に戻ることは難しいとされてきました。しかし、再生医療の進展により、この常識が変わりつつあります。 肝硬変に対する再生医療では「幹細胞」を活用する方法が注目されています。幹細胞は、多様な細胞に分化する能力を持つ細胞であり、これを培養して点滴で投与することにより、肝細胞の修復および再生を促進することができます。 幹細胞は、損傷した肝組織に作用し、肝細胞の再生と修復をサポートします。肝硬変に対する再生医療により、従来は肝移植しか選択肢がなかった肝臓の線維化が改善する可能性が期待されています。 なお、現時点では肝臓に対する再生医療は医療保険の適用外ですが、その治療法は新しい選択肢として注目されています。 当院「リペアセルクリニック」では、患者様の脂肪細胞から幹細胞を採取し、培養後に点滴による治療を行っています。 また、当院独自の細胞培養技術により、冷凍保存を経ずに幹細胞の輸送・保存が可能であり、フレッシュな幹細胞を使用した治療を実現しています。 ▼こちらの動画で当院の幹細胞治療について詳しく解説しています。ぜひご参考にしてください。 肝硬変の治療でお悩みの方は当院へ気軽にご相談ください 本記事では、肝硬変の治療法について解説しました。 全身に起こる多様な合併症や肝がんは、命にかかわる合併症です。肝硬変そのものの治療としては薬物療法や食事治療に加え、症状の緩和が必要になります。 しかし、薬物療法では線維化の進行を止められません。 肝移植も検討されますが、可能な方は限られます。肝硬変に対する再生医療では線維化が進んでしまった肝臓を回復させる可能性のある治療です。 当院「リペアセルクリニック」では、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けています。 再生医療を含め、肝硬変の治療法が気になる方は気軽にご連絡ください。 \まずは当院にお問い合わせください/
2024.06.11 -
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「最近夜中によく足がつって目が覚める。何かの病気なのだろうか」 「こむら返りは肝臓が悪いサインって本当?」 この記事を読んでいる方は、こむら返りの原因が肝臓にあるという噂を耳にして不安になっているのではないでしょうか。 こむら返りは、肝臓の健康状態と深く関係している可能性があります。 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ肝硬変などの疾患でも初期段階では自覚症状が出にくいのが特徴です。ただし、こむら返りは肝臓の疾患のサインかもしれません。 この記事では、こむら返りと肝臓の関係性について詳しく解説するとともに、肝硬変の初期サインや予防法についても医師監修のもとご紹介します。 こむら返りに対する理解が深まり健康管理にも役立つはずですので、ぜひ最後までご覧ください。 また、当院「リペアセルクリニック」では肝臓治療の再生医療が受けられる数少ない医療機関の1つです。 気になる症状がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 こむら返りの原因が肝臓にある3つの理由 夜間に突然襲う「こむら返り」ですが、肝臓の不調が関与している可能性があります。 肝臓が筋肉の働きや栄養バランスに与える影響は大きく、無視できません。 本章では肝臓がこむら返りの原因となる3つの理由について詳しく解説します。 肝臓の機能低下が筋肉に影響する 肝硬変の進行によって筋肉のけいれんや痛みを引き起こす 肝臓の病気で電解質バランスが崩れる それぞれ詳しく紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。 肝臓の機能低下が筋肉に影響する 肝硬変などで肝臓の機能が低下すると、エネルギーを蓄える力が弱まります。 不足したエネルギーを補おうと、体は筋肉を分解し、分岐鎖アミノ酸(BCAA)などのタンパク質を消費するのです。 この影響で、加齢に伴い筋力が低下する疾患「サルコペニア」が起こる可能性もあります。 さらに、筋肉量が減ると筋肉の働きが低下し、こむら返りのリスクが高まります。 肝硬変の進行によって筋肉のけいれんや痛みを引き起こす 肝硬変が進行すると、こむら返りのような痛みを伴う筋肉のけいれんが生じる場合があります。 これは、肝臓の機能低下によって代謝が乱れることが原因の一つとされています。 肝臓が正常に働かなくなると、筋肉内の代謝バランスが崩れ、けいれんや痛みを引き起こす恐れがあるのです。(文献1) 肝臓の病気で電解質バランスが崩れる 肝硬変患者では、脱水や電解質異常がこむら返りを引き起こす要因と考えられています。 肝臓の機能が低下すると、体内の水分バランスや電解質の調整が難しくなるためです。 この影響で筋肉の正常な働きが妨げられ、こむら返りが起こりやすくなる可能性があります。 また、これらの要因が複雑に絡み合い、肝臓の不調がこむら返りの原因となるケースもあります。 こむら返りの主な原因とは? こむら返りは、さまざまな原因で引き起こされます。 ここでは、こむら返りの主な原因として以下の3つのポイントに分けて解説します。 脱水症状 ミネラル不足 過剰な運動や筋疲労 原因を理解し、こむら返りの予防や改善に役立ててください。 脱水症状 脱水症状は、こむら返りの大きな原因の一つです。 体内の水分が不足すると、筋肉の正常な収縮が妨げられ「けいれん」が起こりやすくなります。 また、汗を多くかく夏場や運動中はとくに注意が必要です。 水分だけでなく、電解質を含む飲み物を摂ることで予防が期待できるため、適切な水分補給を心がけて、こむら返りのリスクを減らしましょう。(文献2) ミネラル不足 ミネラルの不足も、こむら返りを引き起こす要因の1つです。 とくにカルシウム、マグネシウム、カリウムといったミネラルは、筋肉の弛緩や収縮を調整する役割を持っています。 そのため、これらが不足すると筋肉が過剰に収縮しやすくなります。 ミネラルは、バランスの取れた食事から摂取可能です。 たとえば、カルシウムは牛乳や乳製品、小魚などに多く含まれており、マグネシウムは、海藻類やナッツ類、豆類などに多く含まれています。 過剰な運動や筋疲労 運動のしすぎや筋肉の過度な疲労も、こむら返りの原因になります。 筋肉が疲れると、収縮と弛緩のバランスが崩れて「けいれん」が起きやすくなるためです。 また、運動後にストレッチをしないと、筋肉が硬直し「こむら返り」を招くケースもあります。 運動前後の準備運動やストレッチによって筋肉の負担を軽減できるため、意識して取り入れてみましょう。 肝硬変の主な原因とは? 肝硬変はさまざまな原因で引き起こされる病気です。 ウイルス性肝炎 脂肪性肝炎 自己免疫疾患 ここでは上記3つの要因について詳しく解説いたします。 肝臓の健康を守るための知識として参考にしてください。 ウイルス性肝炎 ウイルス性肝炎は、肝炎ウイルスへの感染が原因で引き起こされる肝臓の炎症です。 日本ではB型とC型肝炎ウイルスが主な原因で、血液や体液を介して感染します。 以前は輸血や医療器具の使い回しが多かったですが、現在は性交渉や母子感染が主な感染経路です。 また、ウイルス性肝炎は急性肝炎と慢性肝炎に分けられます。 急性肝炎は症状が軽く自然に治るケースもありますが、慢性化すると肝臓の炎症が続き、肝硬変へ進行するリスクが高まります。(文献3) 脂肪性肝炎 脂肪性肝炎は、肝臓に脂肪が溜まり炎症を引き起こす状態を指します。 原因にはアルコール性と非アルコール性の2種類があります。 アルコール性脂肪性肝炎は、長期間の過剰な飲酒が原因で発症します。 純アルコール量で1日60g以上の摂取がリスクとなりますが、体質や性別によっては少ない量でも肝障害を引き起こす可能性があります。とくに女性やアルコールに弱い人は注意が必要です。 たとえば、日本酒1合(180mL、アルコール度数15%)の純アルコール量は21.6gで、2〜3合を毎日飲むと肝障害のリスクが高まります。 一方、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は飲酒以外が原因で発症する脂肪性肝炎です。 肥満やメタボリックシンドロームが主な要因で、近年増加傾向にあります。 アルコールに関係なく脂肪が肝臓に蓄積し、さらに炎症を伴うと「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」と分類されます。 NASHは放置すると肝硬変や肝がんに進行する可能性もあるため注意が必要です。 自己免疫疾患 自己免疫疾患も肝硬変の原因として知られている要因の1つです。 自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、免疫が誤って自分の肝臓を攻撃することで発症します。 これらの病気は進行がゆっくりで初期症状がわかりにくいですが、治療を怠ると肝硬変に進行する可能性があります。 肝硬変の治療法や合併症については以下の記事でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。 肝硬変の初期サインは「血液検査による肝障害の指摘」 肝臓は、肝硬変が始まる段階や初期の頃にはほとんど症状が現れないため「沈黙の臓器」と呼ばれています。 したがって、肝臓の病気に関して自分で初期症状を感じ取るのは難しいと言えるでしょう。 しかし、ASTやALTなど肝臓の異常を示す数値が上昇している場合、肝硬変の初期サインとして血液検査で肝障害が指摘される場合があります。 よって、症状がなくても血液検査で肝臓に関する数値が高い場合は、肝硬変の原因を調べるために肝臓内科の受診をおすすめします。 \まずは当院にお問い合わせください/ 肝硬変とこむら返りの予防対策3選 こむら返りや肝硬変は、日々の生活習慣と大きく関わっています。 本章では、肝硬変とこむら返りの予防に効果的な対策を3つご紹介します。 肝臓に優しい食事と生活習慣の改善 こむら返りを和らげるストレッチ方法 水分補給と電解質バランスを整える 本章を参考に、健康的な毎日を送るための知識としてに役立てていきましょう。 肝臓に優しい食事と生活習慣の改善 肝臓は、食事や生活習慣の影響を受けやすい臓器です。 肝臓の健康を維持するためには、バランスの取れた食事を心がけて暴飲暴食を避けましょう。 とくに、脂肪分の多い食事や過度な飲酒は、肝臓に負担をかけるため控えめにするのがおすすめです。 また、睡眠不足や運動不足は、肝臓の機能低下を招く可能性があるため十分な睡眠と適度な運動も大切です。 規則正しい生活を心がけ、肝臓の健康を守りましょう。 肝硬変の食事療法についてはこちらの記事も参考にご覧ください。 こむら返りを和らげるストレッチ方法 こむら返りを予防するためには、日頃からふくらはぎのストレッチを行うのが効果的です。 ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、血行を促進する効果があります。 たとえば、壁に手をついてアキレス腱を伸ばすストレッチや、床に座ってつま先を身体の方に引き寄せるストレッチなどがあります。 これらのストレッチを、毎日数回行うことで、こむら返りを予防できるでしょう。 水分補給と電解質バランスを整える こむら返りの原因の一つに、脱水症状や電解質バランスの乱れがあります。 汗をかいた際や運動後などは、とくに水分補給を心がけましょう。 また、水分補給には、水やお茶だけでなく、スポーツドリンクなども有効です。 スポーツドリンクには、電解質が含まれているため、体内の電解質バランスを整えるのに役立ちます。 肝硬変の診断に必要な3つの検査 肝硬変を正確に診断するためには、以下の3つの検査が重要です。 それぞれの特徴を表にまとめました。 検査名 検査の目的 特徴 肝生検 肝臓組織を採取し、炎症や線維化の進行を確認 正確な診断が可能だが、身体への負担がある 血液検査 肝酵素値やアルブミン値などで肝機能を評価 初期診断に適し、定期的に実施しやすい 画像検査 超音波やCTで肝臓の形状や異常を視覚的に確認 腫瘍や進行度の把握に有効 それぞれの特徴と役割を理解し、必要に応じて専門医の相談を検討しましょう。 1.肝生検 肝生検は、肝臓の状態を直接確認できる検査です。 細い針を肝臓に刺して組織を採取し、顕微鏡で観察して肝硬変の確定診断を行います。 検査自体は短時間で終わりますが、入院が必要となる場合もあります。 また、まれに出血や合併症が起こる可能性もあるため、医師とよく相談してから検査を受けるようにしましょう。 2.血液検査 血液検査では、肝臓の炎症や機能の状態を調べられます。 肝機能検査では、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの数値を測定し、数値が高い場合は、肝臓に炎症が起こっている可能性があります。 また、アルブミンやビリルビンなどの数値も、肝臓の機能を評価する上で重要な指標です。 血液検査は、肝硬変の疑いがある場合に行われる一般的な検査です。 採血だけで済むため、身体への負担も少なく受けられます。 3.画像検査 画像検査とは、肝臓の大きさや形、腫瘍の有無などの確認ができる検査です。 超音波検査、CT検査、MRI検査など、さまざまな画像検査があります。 それぞれの検査方法によって、得られる情報が異なるため、医師が症状や状態に合わせて適切な検査を選択します。 また、肝臓がんの早期発見にもつながるため、心配な方は定期的に検査を受けるようにしましょう。 肝臓治療の再生医療については、以下からご確認いただけます。 新しい肝臓の治療法に興味がある方はぜひ参考にしてみてください。 まとめ|こむら返りが頻繁に起きたら肝硬変の初期サインを疑ってみよう こむら返りが頻発して発生するのは、単なる筋肉の問題ではないかもしれません。 肝臓の機能低下や肝硬変が隠れている可能性があります。 そのため、症状が続く場合は早めに医療機関で検査を受けましょう。 生活習慣の見直しや定期的な健康チェックが、肝臓の健康を守る重要なポイントとなります。 また、当院「リペアセルクリニック」では肝臓(脂肪肝・肝硬変・肝炎)の再生医療・幹細胞治療を提供しています。 肝機能の治療に不安がある方は、まずはお気軽に「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ こむら返りと肝臓に関するよくある質問 こむら返りはアルコールが原因の可能性もありますか? 過剰なアルコール摂取は、肝臓に大きな負担をかけます。 肝臓が正常に働かなくなると、筋肉の代謝バランスが崩れ、こむら返りが起こりやすくなる可能性があります。 そのため、毎日の飲酒量を見直し、肝臓の負担を軽減することが大切です。 肝臓が悪いと手や爪にどんな症状が出ますか? 肝臓の不調は、手や爪にも現れる場合があります。 手のひらが赤くなる「手掌紅斑」や、爪の色が白っぽくなる「白色爪」は、肝臓の病気で見られる典型的な症状です。 こうしたサインを見逃さず、早めに医師に相談しましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では肝硬変・肝炎に対し手術を伴わない「再生医療」を提案しています。 治療に不安がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 参考文献 (文献1) 日本消化器病学会,日本肝臓学会.「肝硬変診療ガイドライン2020|日本消化器病学会ガイドライン」 https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/kankouhen2020_re.pdf (文献2) 下呂市「脱水とこむら返り」 https://www.city.gero.lg.jp/uploaded/attachment/7541.pdf (文献3) MSDマニュアル家庭版「肝硬変」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/04-%E8%82%9D%E8%87%93%E3%81%A8%E8%83%86%E5%9A%A2%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%82%9D%E8%87%93%E3%81%AE%E7%B7%9A%E7%B6%AD%E5%8C%96%E3%81%A8%E8%82%9D%E7%A1%AC%E5%A4%89/%E8%82%9D%E7%A1%AC%E5%A4%89
2024.06.04 -
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腹水の症状がみられると中期から末期である「非代償性肝硬変」の可能性があり、10年後の生存率は「24%」と極めて低いです。 「肝硬変は治らない病気」といわれているため、患者さまは治療に消極的だったり、諦めてしまったりすることも少なくありません。 しかし、近年の治療では、肝硬変の改善が期待できる治療法として先端医療である「再生医療」が注目されています。 再生医療専門クリニックである当院(リペアセルクリニック)の公式LINEでは、再生医療による肝硬変の治療法や症例を配信中です。 ご家族に肝硬変の方がいるなら患者さまの将来のためにも、手遅れになる前に公式LINEの情報をぜひご参考ください! \公式LINEでは再生医療に関する情報や症例を公開中!/ ▼ご家族の肝硬変が悪化して手遅れになる前に! >>【公式LINE限定】再生医療の治療法や症例を今すぐ見てみる 肝硬変で腹水が溜まったときの余命は約2年といわれている 腹水とは、腹腔内にあるタンパク質の含まれた液体のことです。 通常、腹水は人間の腹腔内に一定量存在しますが、病気によって過剰生成・排出不良が起こり、溜まってしまうことがあります。 腹水は「非代償性」と呼ばれる中期から末期の肝硬変でみられる症状です。非代償性肝硬変の場合、余命年数は約2年(中央値)ともいわれており、予後が良いとはいえません。(文献1) まずは本章を参考に、肝硬変の重症度や予後についての基礎知識を身につけましょう。 肝硬変には「代償性」と「非代償性」がある 肝硬変は、程度によって「代償性」と「非代償性」に区分されます。 肝硬変の区分 段階 代償性 肝硬変の初期 肝機能に大きな問題はみられない状態 非代償性 肝硬変の中期~末期 肝機能に障害が出ている状態 代償性肝硬変は初期段階で、身体症状が現れないことが多く、症状があっても風邪などと見分けがつきにくいのが特徴です。 一方、非代償性肝硬変は中期から末期にあたる段階で、腹水や黄疸、浮腫などの身体症状があらわれるようになります。 肝硬変の症状や原因については、以下の記事もご覧ください。 肝硬変の程度によって生存率に差がある 肝硬変の予後について、以下のようなデータがあります。(文献2) 5年生存率 代償性 72.3% 非代償性 37.9% 10年生存率 代償性 53.3% 非代償性 24.0% 肝硬変の生存率(5年・10年)は、肝硬変の程度によって30%前後の差があります。 腹水などの症状がある非代償性肝硬変の場合、予後は良いとはいえません。 ただ、非代償性肝硬変であっても、適切な治療や肝移植をおこなうことで、改善する見込みもあります。 肝硬変による腹水は治療で改善する可能性がある 肝硬変による腹水は、内科的治療もしくは外科的治療で改善する見込みがあります。 肝硬変で腹水などの症状が発現している場合「非代償」期に突入している可能性が高いと考えられます。つまり、肝硬変の病状が進行し、肝機能を補えないほどの状態まで悪化しているという意味です。 とはいえ、非代償性肝硬変であっても、内科的な治療をおこなえば、腹水の改善がみられることが多くあります。 ただし、難治性腹水で内科的治療に反応しない場合は、外科的な治療をおこなうこともあります。 本章では、肝硬変における腹水の内科的治療・外科的治療について解説します。今自覚している腹水が肝硬変による可能性があると思われた方は、すぐに医療機関に相談しましょう。 また、肝硬変の治療法については以下の記事も参考にしてください。 肝硬変による腹水の内科的治療 非代償性肝硬変による腹水の症状がみられる場合は、内科的治療からおこないます。 具体的な治療法は以下のとおりです。 塩分の制限 利尿薬の処方 アルブミン療法 腎機能に影響する薬剤の制限 以下で詳しく解説します。 塩分の制限 はじめにおこなう内科的治療として、食事療法が挙げられます。とくに腹水の改善には塩分制限が有用で、1日の塩分摂取は5-7gとします。 肝硬変では、ナトリウムが溜まりやすくなるため、塩分の制限が必要です。 実際に塩分制限により、腹水の早期減少や入院期間の短縮、利尿薬の減量が得られたと報告されています。 肝硬変の食事療法については、以下の記事でも詳しく解説していますのでぜひご覧ください。 利尿薬の処方 食事療法のみでは効果が不十分と判断された場合、利尿薬を処方し、尿からのナトリウム排泄を促進する治療をおこないます。 少量からはじめ、効果と合わせて徐々に増量するケースが一般的です。 アルブミン療法 アルブミンとは、主に肝臓で作られている血液中のタンパク質です。 肝機能の低下によりアルブミンの値が低下すると、血管内の血液の浸透圧バランスが乱れ、浮腫や腹水が起こりやすくなります。 非代償性肝硬変によりアルブミンの低下がみられる場合、アルブミン製剤を使用することもあります。 腎機能に影響する薬剤の制限 腹水がある場合、専門医と相談の上で、腎機能に影響する成分が含まれた薬剤の服用を中止することもあります。 たとえば、腎機能を悪くするような痛み止めや血圧を下げる薬は、腹水治療の妨げとなる可能性があります。これらの薬剤を利用している人は、継続の可否について医師に確認しましょう。 肝硬変による腹水の外科的治療 肝硬変における腹水の症状は、内科的治療によって改善できるケースが大半です。しかし、内科的治療への反応が乏しい場合は「難治性腹水」として外科的治療に切り替えることもあります。 ある研究では、難治性腹水の特徴として、腎機能の悪化や交感神経系の亢進、そして腎臓に作用して血圧を上昇させようとする内分泌系の調節機構(レニン−アンギオテンシン−アルドステロン系)の亢進がみられ、さらに門脈圧亢進もその発生に関与しているだろうと報告されています。(文献3) 難治性腹水の治療法は以下のとおりです。 穿刺排液 腹水濾過濃縮再静注法(CART)によるタンパク質の補充 経頸静脈肝内門脈大循環シャント(以下TIPS) 腹腔−静脈シャント術 肝移植 以下で詳しく解説します。 穿刺排液 まず、腹水貯留による腹部膨満感や呼吸困難の改善のため、穿刺排液をおこないます。 基本的には超音波の機械を用いて穿刺できる場所を選択しますが、解剖学的に安全と思われる箇所を狙って刺すこともあります。 居所麻酔をおこなったのち、針を使って穿刺し、管を留置して自然に排液させます。 穿刺の頻度は主に1-2週間ごと、量は1回につき最大でも8Lまでとされています。 また、5L以上の腹水を引く場合には、血液中のタンパク質である「アルブミン」の補充も併せておこなわれます。 腹水濾過濃縮再静注法(CART)によるタンパク質の補充 腹水濾過濃縮再静注法(以下、CART)をおこない、血液中のタンパク質を補充することもあります。 腹水濾過濃縮再静注法(CART)とは、排液した腹水を濾過器や濃縮器にかけて取り出した自己のタンパク質を点滴で体内に戻す方法です。 自分のタンパク質を体内に戻す治療であるため、アルブミン製剤の投与時に生じうるアナフィラキシーショックなどの副作用を回避しやすいのがメリットです。 経頸静脈肝内門脈大循環シャント(以下TIPS) 難治性腹水に有用といわれている外科的治療として、「経頸静脈肝内門脈大循環シャント(以下TIPS)」と呼ばれる血管内治療があげられます。 全身麻酔下で血管内に細い管を挿入し、門脈と肝静脈の間にシャントと呼ばれる短絡路を作成し、門脈圧を下げます。 腹腔−静脈シャント術 また、「腹腔−静脈シャント術」と呼ばれる外科的治療をおこなうこともあります。 腹腔−静脈シャント術とは、皮下を経由して腹腔内と中心静脈をつなぎ、腹水を血管内に還流させる治療法です。 基本的には局所麻酔のみでおこなうことが可能ですが、長時間仰向けの体勢を保てないなどの際には全身麻酔を施すこともあります。 肝移植 難治性腹水が見られる場合、肝移植を実施することもあります。 脳死肝移植だけでなく、生きている人から肝臓の一部をもらう生体肝移植もあります。生体・死体合わせて、2021年と2022年はどちらも約420件の肝移植が施行されました。 肝移植は、非代償性肝硬変の根本的治療をおこなえるのがメリットです。ただし限られた医療機関でしか受けられない上に、待機時間も長いのは問題点といえます。 肝硬変の根本的な治療が期待できる再生医療について 繊維化した肝臓が元に戻らないとされていた肝硬変ですが、根本的な治療が期待できる治療方法として「再生医療」が注目されています。 再生医療とは、体が持つ再生能力を利用し、損なわれた臓器や生体組織の修復・再生させる医療技術のことです。 当院(リペアセルクリニック)では、患者さまの幹細胞を採取・培養し、投与することで損なわれた肝臓を再生させることが期待できます。 治療成績に個人差はありますが、従来の治療方法と異なり肝硬変の根本的な治療が期待できる治療方法です。 腹水の症状がみられる「非代償性肝硬変」まで進行してしまうと、10年後の生存率は「24%」と極めて低くなります。 肝硬変と診断された方や肝硬変が疑われる方は、手遅れになる前にまずは電話してご自身の症状や治療法について相談しましょう。 どんな些細なお悩みでも、まずはご相談ください。 ▼再生医療のガイドブックを無料でプレゼント! >>公式LINE限定の再生医療の情報をみてみる まとめ|肝硬変の腹水は余命にかかわるため適切な治療を受けよう 本記事では、肝硬変で腹水の症状がある場合の余命や治療法を解説しました。 肝硬変による腹水は、基本的に食事療法などの内科的治療で改善しますが、腹水穿刺や手術療法など外科的治療をおこなうこともあります。 当院「リペアセルクリニック」では、肝臓の再生医療として幹細胞治療をおこなっています。約1億個の幹細胞を投与することで、硬くなった肝臓の組織を溶解・修復させ、肝機能を改善させる効果が期待できるでしょう。 肝硬変における腹水の症状に悩んでいる方や、肝移植以外で肝硬変の根本治療を検討している方は、一度当院にご相談ください。 非代償性の肝硬変は予後が良好とはいえませんが、症状の改善に向けて前向きに治療を進めていきましょう。 肝硬変の余命についてよくある質問 肝硬変の終末期の症状は? 肝硬変の終末期では、以下の身体症状がみられます。 黄疸 腹水 胸水 食道胃静脈瘤 浮腫(むくみ) 感染症 など 終末期など重度の肝硬変を根本的に治療するには、ドナー登録の上で肝移植を受ける選択肢があります。 肝硬変で腹水が溜まるとどうなるのでしょうか? 肝硬変で腹水が溜まるのは、中期から末期である「非代償性肝硬変」に入ったサインの可能性があります。 大量の腹水が内臓を圧迫し、食欲不振や嘔吐、便秘などの消化器症状が出ることもあるでしょう。細菌性腹膜炎などの感染症を引き起こす場合もあるため、早めに医療機関での治療を受ける必要があります。 肝硬変による腹水は、利尿剤の投与など内科的治療、または腹水穿刺吸引など外科的治療をおこなうのが一般的です。 参考文献一覧 (文献1) D’Amico G, Garcia-Tsao G, et al. Natural history and prognostic indicators of survival in cirrhosis: A systematic review of 118 studies. J Hepatol. 2006;44:217-231. (文献2) 糸島達也、島田 宜浩ほか.肝硬変の予後-肝表面像による検討-.日本消化器病学会 雑誌.1973;70:42-49. (文献3) 楢原義之,金沢秀典ほか. 肝硬変における難治性腹水臨床像に関する検討. 日門充会誌.2002;8:251-257.
2024.05.28 -
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「肝臓の病気である自己免疫性肝炎の症状は?」 「自己免疫性肝炎は女性に多いの?」 自己免疫性肝炎は、体のなかで最大の臓器である肝臓に起こる病気で、とくに女性に多く認められます。 初期症状では、異常に気づきにくい場合も多いです。しかし、放置すると肝硬変や肝不全、肝がんなどの重大な病態にいたる可能性もあります。 自己免疫性肝炎の原因や症状、診断に必要な検査、治療方法を解説します。 肝臓の症状悪化を防ぐには早期治療が重要です。肝臓の病気などに不安を感じておられる方は、ぜひ医療機関に訪れて医師からの診断をあおいでみてください。 女性に多い自己免疫性肝炎とは【肝臓の病気】 自己免疫性肝炎(じこめんえきせいかんえん)は、一般的に慢性に進行する肝障害をきたす病気です。 発症は60歳ごろがピークとされ、中年に多いとされています。 男女比は1:4.3と、男性よりも女性に多い傾向があり、日本では約3万人強の患者さまがいると推定されています。 自己免疫性肝炎は、国が定める指定難病です。一定の重症度を満たす場合は、医療費が公費補助の対象となります。 肝臓の病気である自己免疫性肝炎の原因 自己免疫性肝炎の原因は、まだ完全に明らかになっていません。しかし、さまざまな要素から、免疫が自身の体を攻撃する場合に起こる「自己免疫疾患」と考えられています。 実際に自己免疫性肝炎では、肝臓に免疫細胞が多く集まり、炎症をきたしている所見が確認できます。 ただ、アルコールをまったく摂取しない人や、ウイルス性肝炎を起こすB型肝炎、C型肝炎の感染がなくても病気が発症する場合もあるのです。 たとえば、特定の遺伝因子を持つ人が発症しやすいといわれています。しかし、一般的に行われている検診などでは、発症のしやすさを判定できません。 肝臓の病気である自己免疫性肝炎の合併症 自己免疫性肝炎は、ほかの自己免疫疾患との合併が多く認められます。 たとえば、以下のような疾患を患っている方は、自己免疫性肝炎を発症するリスクが高まります。 【自己免疫性肝炎に多い合併症の例】 慢性甲状腺炎(橋本病) 首が腫れる 無気力になる 体重が増える 甲状腺に炎症が起こり機能低下する シェーグレン症候群 目が乾く 唾液が出にくく、口が乾燥する疾患 関節リウマチ 手、指などの小関節を中心とした腫れ 痛み、こわばりなどを起こす疾患 肝臓の病気である自己免疫性肝炎の症状 残念ながら「〇〇の症状があれば、自己免疫性肝炎が疑われる」など、特徴的なものはありません。 早期に発見されるきっかけは、無症状のまま健康診断などで肝障害を指摘される場合が多いです。 肝臓は別名「沈黙の臓器」と呼ばれています。そのため、肝障害は早期の段階で病気に気づきにくいのです。 一方で、急激な経過をたどる場合は、以下のような自覚症状を認める場合があります。 以下の症状は、自己免疫性肝炎に特異的ではありませんが、複数のものが該当するときは、急激に進む重度の肝障害が起こっている可能性があるため、早期に受診しましょう。 【急性肝炎として発症する場合の症状の例】 全身倦怠感 だるい感じがする ちょっとしたことで疲れやすい 食欲不振 食欲低下のため食事が摂れない 黄疸 全身の皮膚や白眼が黄色くなる 尿の色が濃くなる 一部の方は、気づかないうちに病状がかなり進行して、肝硬変をきたしている場合があります。 肝臓の病気や自己免疫性肝炎の診断に必要な検査 肝臓の病気や自己免疫性肝炎を調べるときは、さまざまな検査を行って総合的に診断します。 まずは血液検査で肝臓の障害があるか、障害の程度を含めて判断する流れが一般的です。 AST(GOT)・ALT(GPT)の数値検査 IgG・自己抗体検査 B型・C型肝炎ウイルス検査 画像検査 肝生検 AST(GOT)・ALT(GPT)の数値検査 健康診断でよく見る AST(GOT)、ALT(GPT)の上昇が参考になる所見です。 数値が高いときは、肝臓の機能になんらかの異常がある可能性を示しています。 ちなみに、AST(GOT)とは「アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ」と呼ばれる酵素です。ASTは細胞がダメージを受けると、血液中に酵素が放出されます。 また、ALT(GPT)は「アラニンアミノトランスフェラーゼ」と呼ばれる酵素です。主に肝臓に存在しており、肝細胞が破壊されると血液中に放出されます。 IgG・自己抗体検査 免疫関連の検査として、IgG(免疫の成分である抗体の量を見る検査)を行います。 いくつかの自己抗体(自分の体を攻撃する抗体についての検査)も重要です。 B型・C型肝炎ウイルス検査 肝臓にダメージを与えるB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスなど、感染の有無を調べます。 画像検査 エコー、CTなど、肝臓の画像検査も必須です。 肝障害をきたす脂肪肝など、他疾患の有無、肝臓の硬さ、悪性腫瘍(とくに肝がん)における合併の有無を評価します。 肝生検 診断においてとくに重要なのは、肝臓の組織の検査、肝生検です。 肝生検には「経皮的肝生検」と「腹腔鏡下肝生検」の2つがあります。 基本的には、体に負担の少ない「経皮的肝生検」が行われる場合が多いです。経皮的肝生検では、実際にエコー下で肝臓を確認しながら、細い針を刺して組織を採取します。 出血などのリスクがある検査で、終了後の安静が求められるので短期間の入院が必要です。 肝生検で採取した組織は特殊な染色を行い、顕微鏡で観察します。検査により、以下の内容を確かめられます。 どこにどのような炎症があるか 肝細胞のダメージはどうか 肝臓の硬さ(線維化) 進行具合 自己免疫性肝炎で特徴的なのは、インターフェイス肝炎(Interface hepatitis)と呼ばれるものです。 肝臓へ血液を運ぶ肝動脈、門脈や胆汁を運ぶ胆管が集まった「門脈域」に、リンパ球や形質細胞(一部のリンパ球が成熟した細胞)などの炎症細胞が集まります。 周囲の肝細胞を破壊しながら、炎症がさらに広がっていく様子が認められるのです。このような所見は全例で見られるわけではありませんが、認められれば診断への重要な手がかりとなります。 肝生検はほかの原因を除外し、自己免疫性肝炎の診断を確実にするために重要な検査です。ただ、患者さまの体の状態が悪く、肝生検をしないほうが良いケースには行いません。 自己免疫性肝炎の病気における治療法【副作用も解説】 自己免疫性肝炎の治療は、基本的にステロイドを使います。ステロイドは副腎皮質から分泌されるホルモンをもとにつくられた薬剤です。 強力な抗炎症作用や免疫抑制作用をもっており、自己免疫性肝炎を始め、さまざまな自己免疫疾患の治療に使われています。 治療における流れは以下のとおりです。 【自己免疫性肝炎の治療における流れ】 プレドニゾロンのステロイドホルモン薬を、体重1Kgあたり0.6mg以上で開始 (例)50Kgの人は1日あたり30mg以上が開始量 ※重症度に応じてもっと多い量を使用する場合もあります 開始後は、最低でも2週間程度は初期量の継続が必要です。 以降は肝機能の数値(主にALT)を見ながら少しずつ減量します。急いで減量や中止をすると、再燃のリスクがあるからです。 ほかには、肝機能の改善を助けるウルソデオキシコール酸が処方される場合があります。 また、治療困難例やステロイドを多く使えない場合には、免疫抑制薬をステロイドと併用で使うときもあります。 ただ、長期で大量に使用すると、以下のようにさまざまな副作用をきたすので注意が必要です。 【ステロイドの副作用の例】 感染状態 骨粗鬆症 食欲亢進 高血圧、脂質異常、糖尿病などの生活習慣病の出現や悪化 体重増加、肥満 躁状態、うつ状態、不眠などの精神神経症状 消化管潰瘍 緑内障、白内障 など 副作用がないか適宜検査を行い、予防可能なものには対策をしていきます。気になる症状があれば主治医と相談しましょう。 また、肝臓に関わる病気では、治療方法のひとつに再生医療がございます。 症状に悩まれておられる方は、ぜひ当院のメールや電話からご相談ください。 自己免疫性肝炎の病気で日常生活を送るときの注意点 日常生活では栄養バランスの取れた食事をとり、間食を控えるのが大切です。また、外出時は人混みを避けて手洗いやマスク着用、うがいなどの感染予防行動を徹底しましょう。 注意しておきたいのが、続発性副腎機能不全です。ステロイド薬の内服により、引き起こされた副腎皮質ホルモンの不足を指します。 生理的な量を超えるホルモンを長期で内服すると、副腎は本来のホルモン分泌を怠るようになります。 そのため、長期内服者が薬を自己判断で中断してしまうと、ホルモン不足が起こるかもしれません。副腎皮質機能不全となると、以下のような症状が出てきます。 【副腎皮質機能不全の症状例】 だるさ 脱力感 血圧低下 吐き気 嘔吐 発熱 など また、重症になると意識を失ったり、ショック状態になったりする場合もあります。 ステロイドを自己判断で減量や中止してしまうと、病状悪化だけでなく、命に関わる副腎機能不全をきたすリスクもあるので、必ず医師の指示通りに内服しましょう。 自己免疫性肝炎の病気は進行するの?【肝臓の症状悪化を防ぐには早期治療】 自己免疫性肝炎の多くは治療が有効である一方、最初は軽症でも放置をすれば命に関わる事態になります。 自己免疫性肝炎を放置すると炎症が沈静化せず、肝臓の線維化が進みます。肝臓の線維化が進行して固くなった状態が「肝硬変」です。 肝臓では栄養素の代謝やエネルギー貯蔵、有害物質の分解や解毒などが行われていますが、肝硬変が進むと機能障害が起こります。 肝臓の働きが大きく損なわれてしまった状態を「肝不全」と呼びます。さらに、肝硬変は肝がんの発生が起こりやすく、肝がんは治療しても再発しやすい厄介ながんです。 肝硬変・肝不全・肝がんへの進行を防ぐには、早期から適切な治療を受けるのが重要です。自己免疫性肝炎では、治療によりASTやALTの数値を基準値内に保てれば、生命予後は良好とされています。 肝硬変の症状や原因については、以下の記事もあわせてご確認ください。 肝臓の症状や自己免疫性肝炎の病気が心配な女性は内科を受診しよう 自己免疫性肝炎に特徴的な症状はありませんが、ときにだるさや黄疸などをきたす場合があります。また、無症状で発見される場合も多いです。 診断は血液検査や画像検査などを行い、総合的に判断して行います。とくに組織の検査は非常に重要とされています。 治療の第一選択薬はステロイドです。副作用も多いですが、対策をしながら長期的に使用します。 自己免疫性肝炎を放置すると命に関わる「肝硬変」に進展するため、診断を受けたら定期的に通院をして服薬を続けましょう。 健康診断で肝臓の数値が高いと言われた方や、肝臓が悪いときの症状に思い当たる節がある方は、まずは医療機関で検査を受けてみてください。 また、肝臓に関わる病気については、治療方法のひとつとして再生医療があります。肝臓の病気に関わる症状に悩まれておられる方は、ぜひ当院のメールや電話からご相談ください。 女性に多い肝臓の病気や自己免疫性肝炎の症状についてよくある質問 実際に患者さまからよくお聞きする質問や、肝臓の病気に関わるQ&Aをまとめています。 Q.自己免疫性肝炎の病気では、最終的にステロイドを止められますか? A.経過によっては中止が可能ですが、全員ではありません。中止できるときも、多くの場合は年単位の時間がかかります。 また、中止した場合には再燃するリスクもあります。減量や中止については個々のケースで大きく異なるので、主治医とよく相談するのが良いでしょう。 Q.原発性胆汁性胆管炎の病気も肝臓の自己免疫疾患と聞きましたが、違いはなんですか? A.どちらも中年以降の女性に多い自己免疫性疾患ですが、障害が起こる部位が異なります。 自己免疫性肝炎では、肝細胞の障害が中心です。原発性胆汁性胆管炎で起こるのは、肝臓内の胆汁が通る管(胆管)の破壊です。 そのため、胆汁の流れが滞り、ALPやγ-GTPなど、胆道系酵素や黄疸をきたすビリルビン値の上昇が目立ちます。進行すると黄疸や皮膚のかゆみを生じます。 また、病気を放置すると肝硬変へ進展するので、必ず医療機関での治療が必要です。 各種検査で自己免疫性肝炎との鑑別を行いますが、2つの病態が合併している場合もあります。 Q.アルコールを飲む機会が多いと肝臓の病気になりますか? A.アルコールを飲む量や本人の体調によっては、肝臓の病気になる可能性があります。 とくに長期間にわたり、アルコールの大量摂取を行うと、肝臓に大きなダメージを与えてしまうからです。 実際に、厚生労働省の情報でも、アルコールの飲みすぎは脂肪肝やアルコール性肝炎など、肝臓病につながりやすいと指摘しています。 日頃からお酒を飲まれる方で、肝臓への負担が気になる方は、アルコール性肝炎の初期症状などを解説している以下の記事もあわせて参考にしてみてください。 Q.肝臓の病気があるときに食べてはいけないものはありますか? A.糖質や脂質が多く含まれているような食べ物は避けましょう。 たとえば、以下の食べ物が例にあげられます。 ・糖質が多いもの:ジュース類、駄菓子、果物 など ・脂質が多いもの:揚げ物、肉の脂身、ドレッシング など 肝臓をいたわる食事の例を知りたい方は、以下の記事も参考になります。 Q.肝臓に血管腫があるときはどうすれば良いですか? A.肝血管腫とは、肝臓で異常増殖した細い血管が絡み合い、塊になった際にできる良性腫瘍です。 小さな病変かつ無症状であれば、基本的に経過観察のみと考えて良いでしょう。 大きくても増大傾向がなく、かつ無症状であれば経過観察可能と判断される可能性が高いと思われます。 また、肝臓に血管腫があるときは、医療機関での定期検査を行いましょう。気になるような症状や異変を感じた場合には、すぐ診療してもらうのが大切です。 以下の関連記事で詳細を解説しているので、あわせて参考にしてみてください。 Q.脂肪肝を改善するにはどうすれば良いですか? A.生活習慣や食事などの改善が必要です。 脂肪肝になった原因によって、以下のように改善方法は変わります。 アルコールが原因の場合:アルコール摂取量を減らす 肥満などが原因の場合:運動して減量、食事量を調整する また、脂肪肝を指摘されたときは、放置せずに早めに医療機関を受診して治療を行うのが重要です。 脂肪肝の改善に関わる詳細は、以下の記事で詳しく解説しています。 Q.肝疾患の相談などができる支援機関はありますか? A.以下の支援機関で、肝疾患に関わる情報提供や相談を行っています。 ・肝炎情報センター:情報の提供 ・肝疾患相談支援センター:相談など 参考文献 厚生労働省難治性疾患政策研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班 自己免疫性肝炎(AIH)診療ガイドライン2021年 厚生労働省難治性疾患政策研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班 患者さん・家族のための自己免疫性肝炎(AIH)ガイドブック第2版 難病情報センター 自己免疫性肝炎 難病情報センター|原発性胆汁性胆管炎 厚生労働省|e-ヘルスネット「アルコールと肝臓病」 厚生労働省|事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン 参考資料 肝疾患に関する留意事項
2024.05.21 -
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人間ドックなどの検査で「肝血管腫疑い」と言われたら、不安になりますよね。 肝血管腫とは、肝臓で異常増殖した細い血管が絡み合い、塊になったことでできる良性腫瘍で、無症状かつ小さな病変であれば治療は基本的に不要です。 ただし、定期的な検査が推奨されており、万が一腹痛や吐き気、呼吸困難などの症状になった場合には積極的な治療を検討する必要があります。 この記事では、肝血管腫の症状や原因、診断後の気をつけることについて、正しい知識を得られるよう解説していきます。 肝血管腫とは? 肝血管腫とは、肝臓で異常増殖した細い血管が絡み合い、塊になったことでできる良性の腫瘍です。肝臓は元々血管が多い臓器であるため、血管腫ができやすいとされています。 肝血管腫は「海綿状血管腫」と「血管内皮種」の2種類に大きく分けられますが、海綿状血管腫と診断されることがほとんどです。そして、臨床上問題を生じるのも海綿状血管腫が多い傾向です。 基本的には無症状のため、昔は剖検(ぼうけん:病死した患者の遺体を解剖して調べること)で見つかることが多かったのですが、近年の画像診断技術の発展に伴い、他の病気を探すための検査や人間ドックなどで偶然発見されることが多くなりました。基本的には消化器内科で診てもらう病態です。 成人の発生頻度は5%程度で、一般的には女性のほうが男性に比べてやや多いといわれています。 その他女性に多い肝臓の病気については、下記の記事も合わせてご覧ください。 肝血管腫の原因 肝血管腫が形成される原因は明らかになっていませんが、先天的な要素が大きいと考えられています。乳児期に肝血管腫が生じる場合もありますが、通常は自然に消失していきます。 成人になって肝血管腫が発見された女性患者の調査報告では、女性ホルモン補充療法を施行したことにより肝血管腫の増大が見られ、結果として女性ホルモンとの関連が示唆されました。 女性ホルモンが実際にどのように肝血管腫に影響を及ぼしているかまでは未だはっきりと解明されていませんが、妊娠や女性ホルモン療法は肝血管腫増大のリスクになり得ると考えられています。 なお、ピルの服用が肝血管腫を増大させるかに関する研究もなされましたが、そちらでは有意に増大させないとの結果でした。ただし、ピルの長期服用は肝機能障害や肝腫瘍のリスクを上昇させる上、ピルと肝血管腫増大の関連を考える報告があるのも事実です。 肝血管腫の症状 肝血管腫は、多くの場合は無症状で、特徴的な症状はありません。ただし、腫瘍が大きくなってくると徐々に周囲の臓器を圧迫し、結果として不快感や腹痛、右上腹部の膨満感、嘔気・嘔吐などが引き起こされます。 他の関連症状としては、頻度は少ないものの、発熱や黄疸(皮膚や白眼の黄染)、呼吸困難、心不全なども確認されています。 不快感や腹痛 右上腹部の膨満感 嘔き気、嘔吐 発熱 黄疸(皮膚や白眼の黄染) 呼吸困難 心不全 また、稀に巨大血管腫を生じる「カサバッハ・メリット症候群」という病態があり、出血や多臓器不全で命に関わることがあります。カサバッハ・メリット症候群は基本的に出生児あるいは幼少時期に生じるものですが、成人になって発症する例もあります。 上記のような症状を認めた際にはすぐに医師の診察を受けましょう。 \まずは当院にお問い合わせください/ 肝血管腫の検査・診断の方法 肝血管腫は、無症状のうちは血液検査での異常も見られません。そのため、肝血管腫が疑われる場合は画像的診断が行われます。主な検査方法として、以下が挙げられます。 超音波(エコー)検査 CT(造影コンピュータ断層撮影)検査 MRI(磁気共鳴画像)検査 超音波(エコー)検査 超音波検査とは、体に超音波の出る機械を当て、それぞれの臓器から跳ね返ってきた超音波を画像化する検査です。 腹部超音波検査ではお腹をグッと押される感覚はありますが、被曝の恐れや痛みはありません。 低侵襲な検査で肝血管腫を発見するという点では優れますが、肝細胞癌や肝臓への転移癌と鑑別しにくいといった欠点があります。 造影超音波検査を用いることも可能ですが、患者さんの体格や術者の技量によって左右されてしまうため、通常はCT検査やMRI検査の画像と合わせて総合的に判断されています。 CT(造影コンピュータ断層撮影)検査 CT検査とは、ベッドの上に仰向けに寝た状態でトンネル状の装置に入り、X線の吸収率の違いを利用して体の断面を画像化する検査法です。 造影剤を使用しない単純CTでは肝血管腫の検出率は低いですが、造影剤を使用した造影CTであれば格段に検出率が上がります。肝血管腫は他の肝臓癌と比べて血流の流れが遅いため、造影剤を使用すると全体がゆっくり染まるのです。 ただし、過去に造影剤によるアレルギーが出た人や糖尿病薬を服用している人、腎機能障害のある人、授乳中の人などは造影剤を使用する際に注意が必要となります。 該当される方は医師にご確認ください。 CT検査は断面像が見られるため腫瘍の詳細がわかる点では優れていますが、被曝の問題や造影剤を使用しなければならない点は欠点となります。 MRI(磁気共鳴画像)検査 MRI検査とは、強力な磁場が発生したトンネル状の機械に入り、ラジオ波を体に当てることでさまざまな角度から断面像を作り出す検査です。超音波検査やCT検査同様、必要時には造影剤も使用できます。 造影を含めたMRI検査が肝血管腫の確定診断において最も有用であると言われています。 MRI検査は被曝の心配なく腫瘍の詳細を知るには適していますが、狭いトンネルの中に入る必要があるので狭所恐怖症の人には不向きなである点や、超音波検査やCT検査と比べてコストが高くなる点が難点です。 また、病院によっては他の検査と比較して予約が取りにくい場合もあるでしょう。 肝血管腫の治療法 肝血管腫は、自覚症状や血管腫の増大傾向、血管腫が原因の合併症などに応じて、以下の治療法が選択されます。 経過観察のケース カテーテル治療が必要なケース 手術療法が必要なケース 経過観察のケース 小さな病変かつ無症状であれば、基本的に経過観察のみと考えて良いでしょう。大きくても増大傾向がなく、かつ無症状であれば経過観察可能と判断される可能性が高いと思われます。 ただし、自覚症状があり、かつ大きい肝血管腫を指摘されている場合は、それ以上大きくならないよう、女性ホルモン補充療法やピルの中断が推奨されています。 妊娠に関しては判断が難しいところで、大きな血管腫が発見された場合には妊娠を勧めるべきでないと主張する報告もある一方で、巨大血管腫がありながらも合併症を生じることなく妊娠継続ができたとの報告もあります。 巨大血管腫があるために産婦人科領域の治療について相談したい方や妊娠をご希望の場合には、産婦人科の医師に加え、消化器内科や消化器外科の医師ともよく話し合いましょう。治療の際には、消化器内科の医師より消化器外科や放射線科の医師へ紹介され、適切な治療を検討していきます。 カテーテル治療が必要なケース 次のような条件下では、カテーテル治療や手術療法といった積極的治療が必要とされます。 カサバッハ・メリット症候群 血管腫の急速な増大 血管腫の増大とともに症状の増悪 血管腫が原因となった合併症が中等度以上 血管腫の破裂 カテーテル治療とは、血管内より血管腫に栄養を送る動脈へアクセスし、挿入した細い管を使って動脈を塞ぐ“肝動脈塞栓術”のことです。 肝動脈塞栓術は手術療法と異なり、根本的治療には至らず、多くの場合腫瘍の縮小はみられませんが、症状改善には有効とされています。 また、前段階として一旦肝動脈塞栓術を施行し、全身状態が改善されてから手術に臨む症例もあります。 手術療法が必要なケース 肝臓から腫瘍を引き剥がせると判断された場合は“腫瘍摘出術”が選択され、腫瘍摘出術が難しい場合には腫瘍を肝臓の一部とともに取り除く“肝切除術”が選択されます。 報告されている肝血管腫の手術成績は、破裂による緊急手術を除いて良好です。 なんらかの理由で手術療法が行えないと判断された場合には、放射線治療やステロイド治療も考慮されます。どちらも副作用があるため、患者に合わせて放射線量やステロイド量の適切な調整が必要です。 2024年現在は血管腫を薬で治す研究も進められており、今後の新しい治療法が期待されています。 肝血管腫の診断が出たら気をつけるべきこと 肝血管腫と診断された場合は、お近くのクリニックや内科での定期検査を必ず受けてください。そしてもし気になるような症状や異変を感じた場合には、すぐ診療してもらいましょう。 定期検診では、血管腫のサイズの変化に注目することが大切です。 ある研究において平均12カ月の経過観察を行った結果、ほとんどの症例でサイズの変化がなかったものの、少数ながら増大する症例もありました。肝血管腫は10cmを超えると破裂のリスクが高まり、そして破裂した場合には命に関わります。 日常生活においては、無症状であれば、基本的に普段通りで構いません。しかし、スポーツの最中にボールが腹部に当たって肝血管腫が破裂した例や、歩行中に足を滑らせて転落した際に肝血管腫が破裂した例などの症例報告が稀にあります。 外傷性破裂を防ぐため、高いところからの転落や腹部に強い衝撃が当たるようなリスクは避けましょう。 まとめ|肝血管腫は定期的に検査をしましょう 肝血管腫は良性腫瘍であり、基本的には怖い病気ではありません。小さく、無症状なうちは治療も不要です。 しかし、大きくなってくるといろいろな症状を招くほか、破裂の危険が出てきます。自分の身を守るためにも、定期的な検査を心掛けましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 \まずは当院にお問い合わせください/ 肝血管腫に関するよくある質問 肝血管腫は癌の可能性はありますか? 肝血管腫は良性の腫瘍であるため、癌になる可能性はほとんどありません。ただし、見つかった肝血管腫が20mmを超える腫瘍である場合や、腫瘍が短期間で大きくなった場合は、肝血管腫ではなく肝臓癌であった可能性があります。 肝血管腫が見つかった場合は、半年に一度は定期検査を受けることがおすすめです。 参考文献 松井昭義, 小野寺博義ほか. がん・生活習慣病検診における肝血管腫の検出状況について. 人間ドック.2007;22:35-39. Glinkova V, Shevah O, et al. Hepatic haemangiomas: possible association with female sex hormones. Gut. 2004;53:1352-1355. Ozakyol A, Kebapci M. Enhanced growth of hepatic hemangiomatosis in two adults after postmenopausal estrogen replacement therapy. Tohoku J Exp Med. 2006;210:257-261. Gemer O, Moscovici O, et al. Oral contraceptives and liver hemangioma: a case-control study. Acta Obstet Gynecol Scand. 2004;83:1199-1201. Mathieu D, Zafrani ES, et al. Association of focal nodular hyperplasia and hepatic hemangioma. Gastroenterology. 1989; 97: 154–7. Mikami T, Hirata K, et al. Hemobilia caused by a giant benign hemangioma of the liver: report of a case. Surg Today. 1998;28:948–952. Huang SA, Tu HM, et al. Severe hypothyroidism caused by type 3 iodothyronine deiodinase in infantile hemangiomas. N Engl J Med. 2000;343:185-189. Liu X, Yang Z, et al. Fever of Unknown Origin Caused by Giant Hepatic Hemangioma. J Gastrointest Surg. 2018;22:366-367. Smith AA, Nelson M. 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2024.05.16