-
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
「乳がん治療後の痛みがひどい…」 「手術後、腕や脇辺りが腫れていて痛む」 乳がんの手術後は上記のような痛みを感じることがあります。 手術後長期間にわたって慢性的に続く痛みは「乳房切除後疼痛症候群(PMPS)」と呼ばれています。 また、薬物療法による副作用で痛みが残ることもあり、適切な対応を行わないと日常生活に支障をきたすことがあります。 こうした状況を避けるためには、乳がんの治療とその後遺症、特に痛みについて理解を深めることが重要です。 もし後遺症の痛み治療に行き詰まりを感じたら、再生医療も検討しましょう。 この記事を読むとわかること 乳がん手術後の後遺症の種類 乳がんのステージ分類と治療方法 術後後遺症についてよくあるQ&A 後遺症に対する再生医療の可能性 それでは、乳がん治療後の痛みの種類とその対処法について詳しく見ていきましょう。 乳がんの手術後の慢性的な痛みと後遺症 基本的に、どんな手術や治療にも合併症が起こり得ます。 もちろん、乳がんの治療も例外ではありません。 治療後、長期間にわたって後遺症に悩まされることもあるでしょう。 本章では、乳がん治療の合併症とその対処方法について詳しく見ていきます。 手術後に痛む「乳房切除後疼痛症候群(PMPS)」 乳房切除後疼痛症候群(PMPS)は、乳がんの手術後に乳房、胸部、腋窩、上腕にかけて起こる慢性的な痛みです。 PMPS は、手術で肋間上腕神経などの神経が損傷されることで起こる神経障害性疼痛に分類されます。 乳房切除後疼痛症候群(PMPS)の主な症状は、火傷をした後のようなひりつく痛みやびりびりした痛みです。 痛みとともに、何かが挟まっているような違和感を覚える方も多くいます。 下着がすこし擦れただけでも強い痛みを感じるという方もいるのです。 これらの症状は仕事や日常生活に支障をきたしたり、うつ病・適応障害などの精神障害と関与したりする可能性があります。 治療の中心は薬物療法です。一般的な痛み止めはあまり効果がありません。 神経の痛みを抑える薬・抗うつ薬・抗けいれん薬などが処方されます。 また、痛みで関節や筋肉が動かせなくなり、日常生活に影響が出ている方はリハビリも必要です。 心理的な因子や症状の精神面での影響を評価してサポートすることも考慮されます。 乳がんの転移による「骨の痛み」 乳がん治療後の痛みは、ほかにもあります。 乳がんの転移が多い場所の一つは骨です。 転移が起こった骨は、骨折をしやすくなります。 治療後も、骨折の痛みが残ってしまう可能性があります。 また、抗がん剤治療による副作用も少なくありません。 一部の抗がん剤では末梢神経障害を起こします。 手や足のびりびりした痛み・しびれが起こると、長期間持続することもあります。 手術後の合併症「リンパ浮腫」 術後の合併症で多いリンパ浮腫は通常痛みを伴いません。 しかし、急激に腫れたり感染を合併したりすると痛みが起こることがあります。 このように、がんの治療後の痛みは様々です。 まずは、痛みの原因を探り、それぞれに適した対応をしていく必要があります。 乳がんのステージ分類について 乳がんはその進行の度合いにより、0期からⅣ期までのステージに分類されます。 ステージを決定するのは、がんの大きさや広がり・リンパ節転移の有無・遠隔転移の有無といった要素です。 なお、遠隔転移とは他の臓器への転移のことで、乳がんが転移しやすいのは骨・肝臓・肺・脳などです。 以下に各ステージについて解説します。 <乳がんのステージ分類> 遠隔転移(他の臓器への転移)がない場合 → 0〜Ⅲ期のいずれか 0期 非浸潤がん(乳がんが、発生した場所にとどまっており、広がったり転移を起こしていたりしない状態) Ⅰ期 がんの大きさが2cm以下+リンパ節転移をしていない ⅡA期 がんの大きさが2cm以下+腋窩リンパ節に転移がある(リンパ節は固定されておらず動く) がんの大きさが2cm以上5cm以下+リンパ節転移がない ⅡB期 がんの大きさが2cm以上5cm以下+腋窩リンパ節に転移がある(リンパ節は固定されておらず動く) がんの大きさが5cm以上+リンパ節転移がない ⅢA期 がんの大きさが5cm以下+腋窩リンパ節に転移がある(リンパ節は固定されているか、リンパ節同士が癒着している) がんの大きさが5cm以下+腋窩リンパ節に転移がない+内胸リンパ節に転移がある がんの大きさが5cm以上+腋窩リンパ節あるいは内胸リンパ節のどちらか一方に転移がある ⅢB期 がんが胸壁に固定されている がんが皮膚に食い込んでいたり、皮膚から出ていたりする 炎症性乳がん(乳房が腫れたり赤くなったりといった炎症を伴う乳がん) ⅢC期 腋窩リンパ節と内胸リンパ節のどちらにも転移がある 鎖骨の上あるいは下のリンパ節に転移している 遠隔転移(他の臓器への転移)がある場合 →Ⅳ期 乳がんの手術・治療法について 乳がんの治療は外科的手術・放射線治療・化学療法(薬物治療)の3つを組み合わせて行います。 これから紹介するのはあくまでも標準療法です。 実際には患者様の状態や希望にあわせて臨機応変に治療が行われます。 治療を受ける際には、担当の医師としっかり話をした上で選びましょう。 本章では、先ほど紹介した乳がんのそれぞれのステージごとに、選択されることが多い治療内容を紹介していきます。 <0期からⅢA期の治療について> 0期からⅢA期の乳がんでは、治療の中心は手術です。 がんのサイズや広がり方で、乳房の切除範囲が異なります。 がんが小さければ乳房部分切除術が可能です。 最近では、早期のがんはラジオ波で焼いたり、内視鏡の手術で切除したりという方法も徐々に広まってきています。 一方、大きい場合や広がりが大きい場合は、乳房全切除術を行わなければなりません。 リンパ節への転移が疑われれば、その部位のリンパ節も切除します。 また、状況に応じて放射線療法を行なったり、手術の前や後に薬物療法を行ったりすることもあります。 患者様のご希望に応じて、乳房再建術を検討します。 <ⅢB期からⅣ期の治療について> ⅢB期からⅣ期の場合の中心は薬物療法です。 患者様の体の状態や希望・がんの性質など様々な要因を加味して治療薬を選びます。 乳がんの薬物療法で使う薬には一般的な抗がん剤のほか、ホルモン療法薬や分子標的薬と呼ばれる薬もあります。 分子標的薬とは、がん細胞に特有の遺伝子・タンパクなどをターゲットにした治療薬のことです。 治療の効果・症状の経過次第で手術や放射線療法が追加されることもあります。 <再発した場合の治療について> 再発した乳がんの場合には、その再発部位により治療法が異なります。 手術を受けた側の乳房やその周囲の皮膚、リンパ節に発生する局所領域の再発では、治癒を目指して手術でがんを切除します。 必要に応じて放射線療法や薬物療法を併用します。 手術で切除するのが難しいような局所再発や、他の臓器への遠隔再発では、薬物療法を中心に行います。 <緩和ケアについて> がんの患者様は緩和ケアを受けることができます。 緩和ケアは、がんで苦しんでいる人たちが、できるだけ穏やかに生活できるように助けるためのケアです。 緩和ケアは終末期のケアというイメージがあるかもしれません。 しかし、実はがんと診断されてからいつでも緩和ケアを受けることができます。 がんに伴うつらい症状を和らげるだけでなく、気持ちの落ち込みや不安を軽くしたり、生活での困りごとに対処したり、人生の意味についての悩みにも対応します。 患者様とその家族が抱えるいろいろな苦しみに対して、身体的、精神的、社会的な面から全体的に支援するのが緩和ケアなのです。 まとめ|乳がんの手術後の痛みは乳房切除後疼痛症候群などの可能性あり 乳がんはその進行の度合いにより、治療は手術や薬物療法など多岐にわたります。 乳房切除後疼痛症候群(PMPS)や乳がんの転移による骨の痛み、手術後の合併症リンパ浮腫など様々な原因が考えられます。 これから治療を受ける方は、ご自身の治療内容についての説明をよく聞いてどのようなことに気をつけるべきかしっかり理解しましょう。 後遺症に悩まされている方は、一人で抱え込まずに主治医に相談してください。 後遺症の痛みの治療に行き詰まったら、再生医療も一つの選択肢です。一般的に神経の障害は治らないとされています。 しかし、幹細胞治療とよばれる再生医療では、神経の修復ができるかもしれません。 当院「リペアセルクリニック」では、幹細胞治療を提供しています。実際に乳がん治療の後遺症の痛みにお困りの方の治療実績もあります。 【関連記事】 乳がん術後後遺症のしびれや胃腸障害、倦怠感が改善!50代女性 再生医療について詳しく知りたい方は、ぜひお問合せください。 乳がんの手術後の後遺症に関してよくある質問【Q&A】 Q:乳がん手術後ずっと痛みが続きます。いつ良くなりますか? A:乳房切除後疼痛症候群において、症状が改善するまでは長い時間がかかる可能性があります。 例えば、国内の報告では、術後9年経過後も21%、およそ5人に1人が痛みを抱えていると言われています。 自然に良くなると思わず、早めに受診をすることをご検討ください。 Q:乳がん手術後の痛みは何科に相談したら良いの? A:麻酔科やペインクリニックなどで相談すると良いでしょう。 お近くにそういった医療機関がない、どこに行ったら良いかわからない場合は、主治医やかかりつけ医に相談することをおすすめします。 必要に応じて専門の病院・クリニックなどを紹介してもらうことができます。 Q:乳がん手術後の腕や脇の腫れが治まりません A:乳がん手術後の腕や脇の腫れ(リンパ浮腫)は、手術や放射線治療によるリンパ管の詰まりが原因で起こることがあります。 対応としてまずは、腕の傷のケアを徹底しましょう。 小さな傷でも感染のリスクがあるため、アルコール消毒と軟膏の使用がおすすめです。 リンパの流れを改善するために、リンパマッサージやアームスリーブの着用も有効です。 適度な腕の位置調整(長時間座る際は心臓より高くする)や、重い物を持たないようにすることも大切です。 少しでも腫れを引き起こしている原因を少なくする対応が重要です。 もし腫れが続いたり、腕が赤く熱を持ち、強い痛みや発熱を伴う場合は、速やかに医師に相談しましょう。 参考文献 小島圭子. Practice of Pain Management 5(3): 164-168, 2014. 国立がん研究センター プレスリリース. 早期乳がんに対するラジオ波焼灼療法による切らない治療が薬事承認・保険適用を取得先進医療制度下で実施した医師主導特定臨床研究の成果を活用. 国立がん研究センター. がん情報サービス. 乳がん 治療. 日本乳癌学会. 乳癌診療ガイドライン 2022年版. 日本乳癌学会. 患者さんのための乳癌診療ガイドライン2023年版.
2024.08.28 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
胃がんは、日本で罹患数が多いがんのひとつです。 手術によって治療を行うケースも多いですが、術後はダンピング症候群や下痢、栄養障害、胆石症、骨粗鬆症などさまざまな後遺症が起こる可能性があります。 症状に応じて食事療法や栄養補助食品の使用、手術などが行われます。 また、近年では長く続く痛みや長期的ながん予防には再生医療といった新しい選択肢もあります。 この記事では、胃がんの症状や原因、診断や治療法の他、術後の後遺症の種類や後遺症に対する対処法、また、再生医療の可能性について詳しく解説していきます。 胃がんの手術をこれから受ける予定で術後について不安がある方、また術後後遺症でお悩みの方はぜひ参考にしてください。 胃がん手術後の後遺症に対しては、再生医療も治療選択肢の一つです。 胃がん手術後の後遺症のお悩みを今すぐ解消したい・再生医療に興味がある方は、当院「リペアセルクリニック」の電話相談までお問い合わせください。 胃がん手術後の後遺症と対処法 胃がんの手術後には「胃切除後症候群」と呼ばれるさまざまな後遺症があらわれることがあります。 代表的な後遺症として、以下が挙げられます。 ダンピング症候群 貧血 消化・吸収不良(体重減少) 骨粗鬆症 胆石症・胆嚢炎 これらの後遺症は症状の内容や程度によって対応方法が異なります。 たとえば、食事の摂り方を工夫したり、薬物療法や栄養補助食品を取り入れることで改善を目指すことが可能です。 なかには時間の経過とともに軽快するものもありますが、長引く症状は放置せずに医師へ相談することが大切です。 ①ダンピング症候群 胃を切除すると食べ物を一時的にためる容量が減り、胃酸の分泌も少なくなります。 その結果、通常よりも濃い内容物が一気に腸内へ流れ込み、ダンピング症候群が起こります。 食後すぐに動悸・立ちくらみ・めまい・吐き気・発汗などが出るのを「早期ダンピング症候群」、食後2~3時間後に疲労感・失神・手の震えなどが出るのを「後期ダンピング症候群」と呼びます。 対処法 1時間以上かけてゆっくり食べる 1回の食事量を減らして1日5~6回に分けて食事する よく噛んでから飲み込む 食事中の水分摂取を減らす ②貧血 胃酸の分泌が減ることで胃からの鉄の吸収が妨げられ、胃の切除から数カ月で鉄欠乏性貧血を起こしやすくなります。 さらに数年経つと、胃の壁から分泌される内因子というビタミンB12の吸収を助ける糖たんぱく質が減り、ビタミンB12欠乏による貧血が生じることもあります。 対処法 鉄剤の内服 ビタミンB12注射補充 ③消化・吸収不良(体重減少) 胃酸や消化酵素の働きが低下し、さらに手術で迷走神経を切除すると消化管の動きも弱くなります。 その結果、栄養をうまく吸収できず体重が減少してしまいます。 対処法 一度に多く食べず、少しずつ時間をかけて食べる 医師や栄養士に相談しながら食事の調整を行う 少量で効率よく栄養が取れる補助食品を活用する ④骨粗鬆症(こつそしょうしょう) 胃を切除すると胃酸分泌の減少や腸内細菌の変化が起き、カルシウムの吸収が低下します。 その結果、骨がもろくなり骨粗鬆症のリスクが高まります。 対処法 カルシウムやビタミンD製剤の服用 骨密度を上げる薬の使用 ⑤胆石症・胆嚢炎 胃切除後は胆嚢の動きが弱まり、胆石ができやすくなります。 胃切除後の患者様の、2〜3割にみられます。 対処法 無症状の場合は経過観察 発作や胆嚢炎を起こした場合は治療が必要 根治的には胆嚢摘出術(場合によっては胃切除と同時に行うこともある) 胃がん手術後の生活と注意点|食事・仕事復帰・痛みのケア 胃がんの手術後は、後遺症だけでなく日常生活の工夫や体調管理が大切です。 食事の取り方や復職のタイミング、さらに長引く痛みやしびれへの対処について理解しておくことで、術後の生活をより快適に過ごすことができます。 ここでは、生活上のポイントを3つの観点から解説します。 食事の工夫(食べ方・避けたい食品・おすすめ食品) 手術後は胃の容量が減り、消化や吸収がスムーズにいかなくなります。 そのため、少量をゆっくり、回数を分けて食べることが基本です。 1日3食ではなく、5〜6回に分けて摂取する よく噛んでゆっくり食べる 食事中や直後の水分は控えめにする 避けたい食品には、高脂肪・刺激物・アルコールなどがあります。 一方で、消化に良い白身魚や豆腐、柔らかい野菜スープなどはおすすめです。 栄養士のアドバイスを受けながら、自分に合った食生活を整えると安心です。 日常生活と仕事復帰の目安 退院後すぐに無理をすると体力の回復が遅れてしまうため、段階的に日常生活に戻ることが大切です。 軽い散歩などから始めて体力を徐々に回復させる 車の運転や重い荷物の持ち運びは医師に相談してから 仕事復帰はデスクワークであれば数週間〜1カ月程度、肉体労働ではさらに時間がかかるケースが多い 個人差はありますが、医師の診断を受けながら無理のない復帰スケジュールを立てましょう。 痛みやしびれが長引く場合の対処 手術後に感じる痛みやしびれは、通常は時間とともに改善します。 しかし、3カ月以上続く場合は「遷延性術後痛」の可能性があります。 これは手術による神経障害や心理的要因などが関係しており、自己判断で我慢するのは危険です。 医療機関での適切な検査・治療を受ける 鎮痛薬や神経障害に対応した薬の使用 必要に応じてリハビリや心理的サポート 症状を早期に医師へ相談することで、回復を早めることができます。 胃がんとは【基礎知識】 胃がんは、胃の内壁を覆う粘膜の細胞が異常に増殖し、がん化することで発生します。 日本では比較的多くみられるがんの一つで、早期発見が治療の鍵となります。 胃がんの症状 胃がんは初期段階では自覚症状がほとんどないのが特徴です。 そのため、検診で偶然見つかるケースも多くあります。 初期 無症状 進行すると 吐き気や嘔吐 貧血によるふらつき 吐血 腹痛 など 胃がんの原因 胃がんの発生にはいくつかの要因が関わっています。 代表的なものは次の通りです。 ヘリコバクター・ピロリ菌感染 高塩分食 喫煙 ストレス アルコール 刺激物 これらの要因が複合的に作用し、胃の粘膜にダメージを与えることで発症リスクが高まります。 胃がんの診断 診断には次のような検査を組み合わせて行います。 胃内視鏡検査(胃カメラ) 内視鏡で採取した組織の病理診断 血液検査 CT検査 胃X線検査 これらを総合的に判断して確定診断がなされます。 胃がんの治療法 胃がんの治療には以下の方法があります。 内視鏡治療(早期がんに有効) 外科的手術(胃を部分的またはすべて切除) 化学療法(抗がん剤治療) 放射線療法 進行度(ステージ)に応じて適切な治療法が選ばれます。 とくに外科的手術では胃を一部またはすべて切除することが多く、その結果として「胃切除後症候群」と呼ばれる後遺症が発生する場合があります。 長く続く胃がん手術後の痛みと再生医療の可能性 胃がんの手術後、時間が経っても傷跡の痛みや周囲のしびれが続くことがあります。 これが3カ月以上続く場合、「遷延性術後痛」の可能性があり注意が必要です。(文献1) 遷延性術後痛の原因は複雑で、手術による神経障害だけでなく、精神的・心理的因子や遺伝的素因、生活環境などが絡み合って生じることがあります。検査をしても原因が特定できないケースも少なくありません。 手術の後遺症に対しては、再生医療という治療法があります。 当院では、再生医療の「自己脂肪由来幹細胞治療」と「PRP(多血小板血漿)療法」を行っています。 治療法 方法 特徴 所要時間・治療時間 自己脂肪由来幹細胞治療 脂肪から幹細胞を採取・培養し、点滴で投与する 幹細胞が他の細胞に変化する「分化能」という能力を活用した治療法 入院・手術を必要とせず日帰りの施術が可能 脂肪の採取(約30分) 細胞培養(約1カ月) 特定細胞加工物の投与 静脈点滴投与(約80分)/ 局所投与(約5分~) PRP(多血小板血漿)療法 血液を遠心分離して血小板を濃縮し、患部に投与 血小板の成長因子が持つ「炎症を抑える働き」を活用した治療法 入院・手術を必要とせず日帰りの施術が可能 ・採血・加工・投与(約30分~) 長期にわたる痛みやしびれは、身体的なつらさだけでなく、気分の落ち込みやうつ状態を引き起こすこともあります。 症状が改善すると、活動範囲が広がり、精神的・社会的にも患者様の満足度が上がります。 ▼実際に当院では、乳がん術後の化学療法で末梢神経が障害され、長い間足のしびれと原因不明の胃腸症状・倦怠感に悩まされていた患者様が、幹細胞治療によって改善した症例を経験しています。 また、再生医療のひとつであるNK(ナチュラルキラー)細胞免疫療法は、がんの予防に有効とされています。 自己の血液中にある免疫細胞の一種、NK細胞と呼ばれるものを血液から採取し、培養後に点滴でまた体内に戻す治療です。 当院「リペアセルクリニック」の免疫細胞療法については、以下をご覧ください。 まとめ|胃がん手術後の後遺症は生活習慣の工夫で改善できる 胃がんは初期に症状が出にくく、腹痛や嘔吐などの症状が出たときには手術が必要な状態になっていることも少なくありません。 手術後は胃切除後症候群と呼ばれる後遺症が生じることがあり、代表的なものにはダンピング症候群、消化・吸収不良、貧血、骨粗鬆症、胆石症などがあります。 これらの症状は、食事の摂り方を工夫したり、不足する栄養素を補ったりすることで改善を目指すことが可能です。 また、手術後に長く痛みやしびれが続く「遷延性術後痛」に悩まされる場合もあり、身体的・精神的なサポートが必要となります。 再生医療は、末梢神経障害を根本的に治療できる手立てとして注目されており、今後ますます普及していくことが予想されます。 胃がん手術後の後遺症は一人ひとり症状の現れ方が異なるため、気になる症状がある場合は早めに医師に相談し、生活習慣の工夫と適切な治療を組み合わせて改善を目指すことが大切です。 再生医療に興味がある方は、当院「リペアセルクリニック」の電話相談までお問い合わせください。 胃がんに関してよくある質問 胃がんは日本人に多いがんの一つであり、手術後の生活や再発の可能性など、患者様やご家族にとって気になる点は少なくありません。 ここでは、よく寄せられる質問をピックアップし、わかりやすく解説します。 胃がんの罹患者数や死亡率は他のがんと比べてどれくらい多いの? 2021年の部位別がん罹患数では、男性の胃がんは前立腺がん、大腸がん、肺がんに次いで4番目に多く、女性の胃がんは乳がん、大腸がん、肺がんに次いで4番目に位置しています。 また、2023年の部位別がん死亡数では、胃がんは肺がん、大腸がんに次いで3番目に多く、男女別でみると男性は3番目、女性は5番目という結果でした。(文献2) 胃がんは依然として日本における主要ながんの一つといえます。 若年者に多くて進行も早い胃がんの種類があるって本当? 胃がんは内視鏡やX線の所見から、以下のように分類されます。 表在型(0型) 腫瘤型(1型) 潰瘍限局型(2型) 潰瘍浸潤型(3型) びまん浸潤型(4型) この中で、びまん浸潤型(4型)にあたるスキルス性胃がんは、若年者や女性に多くみられるタイプです。 胃の壁が硬く厚くなり、進行が速く、腹膜転移が起こりやすい特徴があります。 そのため早期発見・早期治療が非常に重要です。 参考文献 (文献1)遷延性術後痛の対策|日本ペインクリニック学会誌 (文献2)がんの部位別統計|公益財団法人 日本対がん協会
2024.08.22 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
大腸癌の手術を終えた後、多くの方が「これからの生活はどうなるのだろう」「再発のリスクは?」と不安を抱きます。 実際には、排便リズムの乱れや体力低下、合併症のリスクなど、手術後ならではの課題があります。 しかし、手術後に起こりやすい症状や生活上の工夫を理解しておけば、不安を軽減し安心して回復へと進むことが可能です。 本記事では、大腸癌手術後の後遺症や合併症による体の変化、そして日常生活で取り入れたい工夫についてわかりやすく解説します。 また、大腸癌手術後の合併症や後遺症に対しては、再生医療も治療選択肢の一つです。 手術後の体調変化や生活面でのお悩みを今すぐ解消したい・再生医療に関心のある方は、当院「リペアセルクリニック」の電話相談までお気軽にお問い合わせください。 大腸癌手術後の体の変化 大腸癌の手術後は、身体的負担で体力が落ちたり、腸の動きが一時的に乱れて排便リズムが変化するなど、体にさまざまな変化が起こります。 さらに、回復過程での不安や気持ちの揺れから、精神的な負担を感じる方も少なくありません。 ここでは、大腸癌手術後に起こる主な3つの体の変化について解説します。 体力の低下 大腸癌手術後は、体力が落ちて「少し歩くだけで疲れる」「家事が思ったよりもつらい」と感じることが多くあります。 体力の回復には個人差がありますが、退院後すぐに以前のように動ける人は少なく、日常生活に無理なく戻れるようになるまでには数週間から数カ月かかるといわれています。 無理をせず、短い散歩や軽い活動から少しずつ体を慣らしていくことが、焦らず回復を進めるコツです。 担当の医師やリハビリの専門家と相談しながら、ゆっくりと生活のリズムを取り戻していきましょう。 排便リズムや便の状態の変化 大腸癌の手術後、腸の一部を切除した影響から、排便リズムや便の状態が大きく変わる場合があります。 下痢や便秘、頻便、残便感、ガスがたまりやすい状態、お腹の張りなどが起こりやすく、手術後数週間から数カ月間は排便の不安定さを感じる方が多いです。 これは腸が新しい状態に慣れるまでの自然な経過で、徐々に落ち着いてくることがほとんどです。 また、症状を和らげるための工夫として、水分補給や消化に良い食事、腹部マッサージなども役立ちます。 ただし、排便やガスが全く出ない、強い腹痛や嘔気、血便などの症状がみられる場合は、腸閉塞や他の合併症の可能性があるため、速やかに医療機関への相談が必要です。 心理的な不安や落ち込み 大腸癌の手術後、体の回復と同時に「再発の不安」や「これからの生活がどうなるか」といった将来への不安を抱える方が多く、気持ちが沈んだり落ち込んだりする場合があります。 これは「手術後うつ」と呼ばれることもあり、誰にでも起こりうる自然な反応です。 沈んだ気持ちをそのままにしておくと、眠れなかったり、食欲が減るなど、普段の生活や対人関係にも影響を及ぼす可能性があるため、早めの対処が大切です。 一人で抱え込まずに家族や友人、医療スタッフなど、信頼できる相手に気持ちを話すだけでも心の負担が軽くなる場合もあるため、必要に応じて、精神的なサポートを受けることを検討しましょう。 大腸癌手術後に起こりやすい3つの後遺症 大腸癌手術後、長期的に続く後遺症が起こることがあります。 代表的な後遺症として、次の3つが挙げられます。 排尿・性機能への影響 排便障害 人工肛門(ストーマ)造設による生活の変化 それぞれの後遺症について、詳しくみていきましょう。 排尿・性機能への影響 大腸癌手術や治療の影響により、以下のような排尿や性機能に関する症状が現れる場合があります。 排尿がスムーズにできない 尿意を感じにくい・残尿感が続く 勃起機能の低下や射精の変化 性欲の減退 上記症状は、時間の経過とともに回復するケースが多いですが、場合によっては薬やカテーテルの使用が必要になることもあります。 また、症状の程度や回復の速さは個人差が大きいため、手術前から医師と十分に相談し、必要に応じて泌尿器科など専門医のサポートを受けることが大切です。 排便障害 大腸癌の手術によって、大腸の一部を切除したり、手術の影響で腸や臓器同士がくっつく「癒着」が生じたりすると、長期的な排便障害が残る場合があります。 代表的な症状は、次の3つです。 便失禁 頻便 残便感 排便障害は腸の切除範囲や神経への影響によって起こりやすく、時間がたっても改善しにくいケースがあります。 生活の質に大きく関わるため、上記のような症状が続く場合は我慢せず医師に相談し、薬の使用や骨盤底筋トレーニングなどのリハビリを取り入れることが大切です。 人工肛門(ストーマ)造設による生活の変化 人工肛門(ストーマ)とは、手術で腸の一部をお腹の表面に出し、そこから便を排泄できるようにした出口のことです。 腸の切除範囲が大きい場合や、縫合部を安静に保つ必要がある場合に、一時的または永久的に造設されます。 ストーマを造設すると、専用の袋で便を受け止める排便方法になるため、生活習慣が大きく変わります。 最初は管理や外出に不安を感じる方も多いですが、正しいケア方法を身につければ、入浴や旅行、仕事など日常生活をこれまで通り送ることも可能です。 また、皮膚のトラブル予防や、身体イメージの変化に伴う心理的な負担への対応も大切です。 専門の看護師やサポートを活用すると、安心してストーマと向き合う生活を続けることができます。 大腸癌手術後に注意すべき3つの合併症 大腸癌の手術後には、後遺症のほかにも合併症が起こることがあります。 ここでは、大腸癌手術後に起こりうる以下3つの合併症について解説します。 感染症や創部トラブル 縫合不全 腸閉塞・イレウス それぞれ、詳しくみていきましょう。 感染症や創部トラブル 大腸癌手術後は、縫合部分(創部)やお腹の内部で細菌が感染を引き起こし、次のような症状が現れることがあります。 発熱 傷口の赤みや強い痛み 膿(うみ)が出る 腹部の張りや痛みが続く 上記の症状がみられたら、創部感染や腹腔内感染を疑う必要があります。 こうした症状を放置すると、炎症が広がったり、全身状態が悪化したりする可能性があるため、速やかに医療機関に相談しましょう。 縫合不全 大腸癌の手術では、癌を含む腸の一部を切除したあとに、残った腸同士をつなぎ合わせる「吻合(ふんごう)」 という処置を行います。 この腸管を再びつなぎ合わせた部分(つなぎ目)がうまくくっつかず、接合部が開いてしまう状態を「縫合不全」と言います。 縫合不全になると腹腔内で炎症や感染が起こり、次のような症状が現れ、重症化すると腹膜炎や敗血症など命に関わる合併症を引き起こす可能性もあります。 発熱 吐き気や腹痛 腹水(お腹の中の水) 下痢や下血 縫合不全は早期発見と治療が重要なため、違和感や異変を感じた場合はすぐに医師の診察が必要です。 腸閉塞・イレウス 腸閉塞とは、腸の中で物理的なつまりが起こることで、食べ物やガスが通れなくなる状態を指します。 一方で、イレウスは腸の動きが麻痺したり痙攣(けいれん)し、内容物の通過がうまくいかない「機能的な通り道の障害」です。 どちらの場合も、次のような症状が現れます。 激しい腹痛 吐き気・嘔吐 お腹の張り 便やガスが全く出ない 上記症状は放置すると重篤になる可能性があるため、早めの医療機関への受診が必要です。 大腸癌手術後の生活で気をつけたいこと 大腸癌手術後は、体力や腸の働きが少しずつ回復していくため、生活の中でいくつかの工夫が必要になります。 ここでは、運動、食事、社会復帰の3つの視点から大腸癌手術後の生活について解説します。 運動とリハビリの進め方 大腸癌の手術後すぐは体力が落ちているため、無理に動くと体に負担がかかります。 まずはベッドの上で体を動かすところから始め、退院後は短時間の散歩など軽い運動を取り入れると良いでしょう。 目安としては、手術から1カ月ほど経ち、医師の許可が得られればウォーキングなどの有酸素運動を少しずつ再開できるケースが多いです。 無理のない範囲での継続が、体力回復や気分のリフレッシュにつながります。 食事の工夫と栄養管理 大腸の一部を切除すると、消化や排便のリズムが乱れやすくなります。 そのため、消化に良い食材を中心に選び、油っこい料理や香辛料の強い食品は控えることが大切です。 一度にたくさん食べるのではなく、少量を数回に分けて食べる「少量頻回食」を意識すると、腸への負担を軽減できます。 また、たんぱく質やビタミンなど体の回復に必要な栄養素をバランスよく摂ることも重要です。 仕事や日常生活への復帰目安 大腸癌手術後は、体力や体調が安定するまでに時間がかかるため、社会復帰にはある程度の時間が必要です。 一般的には手術後1〜3カ月ほどで職場や日常生活に少しずつ復帰できる人が多いですが、最初のうちは短時間勤務や在宅勤務を取り入れるなど、無理をしないことが大切です。 また、肉体労働や長時間の勤務は体に負担をかけやすいため、医師の判断を参考にしながら段階的に生活を整えていきましょう。 大腸癌手術後の予後・再発率について 大腸癌の手術後の予後や再発率は、癌の進行度(ステージ)によって大きく異なります。 大腸癌の再発は、手術後の経過の中でもとくに注意が必要で、ステージが早いほど再発のリスクは低く、進行している場合ほど再発や転移の可能性が高まります。 以下表は、5年生存率や手術後再発率をステージごとにまとめたものです。(文献1,2,3) ステージ 5年生存率の目安 手術後再発率の目安 0期 (上皮内がん・粘膜内がん) 非常に高く、ほぼ再発なし ごくわずか (再発は極めて稀) I期 約90〜95% 約3~6%程度 II期 約80~85% 約13~15% III期 約60~70%程度 約30%前後 IV期 (遠隔転移あり) 大幅に低下 (進行具合や治療内容によって大きな差がある) 再発率・転移の可能性が高い (統計値はさらにばらつきがある) ※数値は過去の臨床研究やがん情報サイトによる平均値であり、実際のリスクは年齢・癌の場所(結腸か直腸かなど)、手術後の治療内容、遺伝的要因、術中の状況などによって個人差があります。 統計的には、再発の8〜9割が手術後3年以内に起こり、およそ95%は手術後5年以内に確認されているため、手術後5年間の定期的な経過観察が非常に重要とされています。(文献4) 経過観察は再発や転移を早期に見つけるため、腫瘍マーカーを調べる血液検査やCT・MRIなどの画像検査、大腸内視鏡検査を組み合わせて行います。 再発が見つかった場合でも、その広がり方や部位によっては再手術や化学療法によって治癒や長期的なコントロールを目指せる可能性があります。 再発リスクを少しでも減らすためには、手術後の生活習慣改善や必要に応じた追加治療を取り入れることが大切です。 大腸癌手術後の再発予防と長期的なケア 大腸癌の手術後は、生活習慣の見直しや家族や支援サービスの利用、そして定期的な検査による経過観察が予後を左右します。 ここでは、再発予防と安心して生活を送るための具体的なポイントを紹介します。 生活習慣の改善 大腸癌手術後の再発リスクを下げるためには、日々の生活習慣を整えることが重要です。 野菜や魚を中心としたバランスの良い食事を心がけ、脂っこい食べ物や加工肉の摂取は控えめにしましょう。 また、禁煙も癌の再発予防に直結する大切な習慣であり、アルコールのとりすぎにも注意が必要です。 さらに、無理のない範囲でウォーキングなどの適度な運動を続けることは、体力回復だけでなく免疫力の維持にも役立ちます。 免疫細胞療法 免疫細胞療法は、自分の免疫細胞を活性化させてガン細胞を攻撃する力を高める治療法で、癌の再発予防や補助療法の一つとして注目されています。 手術や抗がん剤治療と併用されることもあり、副作用が比較的少ない点が特徴です。 まだ新しい治療法ではありますが、再発への不安を抱える方にとっては、今後の治療選択肢の一つとなり得ます。 詳細は専門の医療機関で相談し、適応があるかどうかの確認が大切です。 家族や福祉などサポート体制の活用 大腸癌の手術後は、体調や気持ちの面で不安が続くこともあり、家族や身近な人のサポートが非常に大切です。 全国に設置されている「がん相談支援センター」では、医療や生活に関する相談を無料で受けられるため、必要に応じて活用しましょう。 また、福祉サービスや地域のサポート団体を利用することで、経済面や生活面の負担の軽減も可能です。 定期的な検査・通院の重要性 大腸癌手術後は、再発を早期に見つけるために定期的な検査と通院が欠かせません。 検査の頻度は、癌のステージや受けた治療内容によって異なりますが、手術後5年間は特に丁寧な経過観察が行われます。 医師の診察を定期的に受ける習慣が、手術後を安心して過ごすことにつながります。 まとめ|大腸癌手術後も笑顔で毎日を送れる生活を 大腸癌の手術後は、体力の低下や排便の乱れ、合併症や後遺症など、さまざまな変化に直面します。 しかし、手術後に起こりやすい症状や注意点を知っておけば、不安を必要以上に抱えずに過ごすことができます。 食生活や運動など日常の工夫を取り入れることは、体の回復を促し、再発のリスク軽減にもつながります。 また、定期的な検査や通院を続け、少しでも気になる症状がみられた場合は医師へ早めに相談するのも、安心した生活を送るための大切なポイントです。 前向きに工夫を重ねながら、一日一日を大切に過ごしていきましょう。 参考文献 (文献1) 大腸がん(結腸がん・直腸がん)|国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ (文献2) 7.大腸癌手術後について|日本臨床外科学会 (文献3) 1.4 大腸がんの病期分類と予後|国立がん研究センター がん対策研究所 (文献4) 大腸がんの術後の経過観察と再発・転移 / 再発・転移|大腸がんを学ぶ
2024.08.19 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
血友病は、生まれつき血液を固める力が弱い「先天性の出血性疾患」です。 放置すると、関節障害や日常生活への支障をきたす恐れもあります。 しかし、近年は治療法が進歩し、早期発見と適切な管理によって健常な人とほとんど変わらない生活を送ることが可能です。 本記事では、血友病の基礎知識から検査・治療法、日常生活での注意点をわかりやすく解説します。 正しい知識を身につけ、安心して向き合うための第一歩として参考にしてみてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」では、公式LINEで情報提供と簡易オンライン診断を実施しています。 再生医療について知りたいことや不明な点があれば、ぜひご利用ください。 血友病とは|出血が止まりにくくなる病気 血友病とは、血液の凝固因子が生まれつき不足または欠損しているため、出血した際に血が止まりにくくなる遺伝性の疾患です。 通常の止血機能が働かないため、軽い打撲やけがでも出血が長引く場合があります。 血友病には主に2つのタイプがあり、治療方針も異なる場合があるため、正確な診断が重要です。 血友病の種類と特徴は以下のとおりです。 血友病A:第VIII因子(抗血友病因子A)が欠乏しているタイプ。全体の約80%を占める。(文献1) 血友病B:第IX因子(抗血友病因子B)が不足しているタイプ。 血友病は先天性が大半を占めますが、まれに後天的に発症する「後天性血友病A」というタイプもあります。 自己免疫の異常により体内で凝固因子に対する抗体が作られ、血が固まらなくなるのが特徴です。 いずれにおいても、日常生活で注意が必要な疾患であり、早期の診断と適切な治療が出血のリスクを減らす鍵となります。 血友病の症状 血友病では血液が固まりにくいため、皮膚表面だけでなく体の深部でも出血が起こりやすくなります。 とくに、筋肉や関節内での出血が特徴的で、日常生活に支障をきたす場合もあるため注意が必要です。 以下に、血友病でよく見られる代表的な症状をまとめました。 症状の種類 具体的な内容 筋肉内出血 腕や脚などの筋肉が腫れて痛む 関節内出血 膝や肘などの関節に腫れ・熱感・痛みが出る 皮下出血 ぶつけていないのに青あざができる 鼻出血・口腔内出血 鼻や口の中からの出血が止まりにくい 手術・抜歯後の出血 通常よりも長時間にわたって出血が続く 関節拘縮 出血により関節が固まり、動かしづらくなる また、以下のような症状が日常的に見られる場合も、血友病の可能性があるため、早めの医療機関を受診しましょう。 明らかな外傷がないのにあざができる 関節が腫れて痛み、動かしづらくなる 歯ぐきや鼻からの出血が長引く 以前より関節の可動域が狭くなってきた 症状が進行すると生活の質を大きく損なうため、早期発見と適切な管理が重要です。 血友病の検査・診断 血友病の診断では、まず血液がどれくらいの時間で固まるかを調べる「血液凝固検査」が行われます。 血が固まりにくい状態が確認された場合、さらに詳細な「凝固因子活性検査」に進み、第VIII因子または第IX因子の働きがどれほどあるかを評価し、病型と重症度を判定します。 凝固因子活性の値に応じた分類は以下の通りです。(文献2) 病型 凝固因子活性値 割合(目安) 特徴 重症型 1%以下 約50~60% 自発的出血が頻繁に起こる 中等症型 1~5% 約20% 軽い打撲でも出血することがある 軽症型 5%以上 約20% 手術やけがの際に出血しやすい 凝固因子の働きに基づいて重症度を把握することで、適切な治療方針を決定します。 とくに、重症型では無症候でも体内で出血している場合があるため、早期の診断が重要です。 血友病の治療法 血友病の治療では、不足している凝固因子を補充する「補充療法」が基本です。 重症度や出血頻度に応じて、以下の治療法を組み合わせて使い分けます。 定期補充療法 予備的補充療法 出血時補充療法(オンデマンド療法) それぞれ詳しく見ていきましょう。 定期補充療法 定期補充療法は、出血が起きる前から定期的に凝固因子製剤を静脈投与する治療法です。 重症型の血友病患者様に対しての標準治療ですが、軽中等症でも予防を目的に投与するケースがあります。 製剤によって週2〜3回、または2週間に1回の注射を継続的に行うことで、関節内出血や筋肉内出血などの出血リスクを未然に防げます。 定期補充療法の最大の利点は、日常生活の質(QOL)の向上です。 出血に対する不安を軽減し、学校や職場での活動を安心して行えるようになり、とくに小児期からの早期導入が関節障害の予防につながるとされています。 予備的補充療法 予備的補充療法とはスポーツや旅行、歯科治療など、出血リスクが予測される特定の場面に限定して、事前に凝固因子製剤を投与する方法です。 重症型以外の患者様や、日常的に出血の頻度が少ない方に適しています。 必要なときだけ補充を行うため、治療の負担を軽減できるのがメリットです。 ただし、タイミングを逃すと出血を防げない可能性があるため、患者様自身や家族が状況を正確に判断しながら適切な対処が求められます。 出血時補充療法(オンデマンド療法) 出血時補充療法は、実際に出血が起きたときに凝固因子製剤を投与する方法です。 軽症型や中等症型の患者様を対象とし、出血頻度が少ない場合に選択される場合があります。 出血が確認された段階で速やかに製剤を使用することが重要で、出血の進行を最小限に抑え、症状の悪化を防ぐのが目的です。 ただし、関節や筋肉の深部出血は初期症状がわかりにくいため、早期対応が難しいという課題もあります。 血友病の方が日常生活を送る上での注意点 血友病のある方が安全に日常生活を送るためには、出血を防ぐ工夫と周囲の理解が大切です。 とくに、外傷や薬の使用、医療機関との連携など、あらかじめ注意しておくべき点を理解しておくと、万が一の際にも迅速に対応できるでしょう。 ここでは、日常生活のうえで押さえておきたい具体的なポイントを紹介します。 外傷・ケガの予防意識を持つ 血友病の方は出血が止まりにくいだけでなく、関節や筋肉内での深部出血が起きやすいため、日常生活でも以下のような予防を意識しましょう。 段差の多い場所や滑りやすい床では慎重に歩行する ひじやひざなどの関節を保護するプロテクターを活用する スポーツは出血リスクを考慮し、事前に医師と相談する とくに、転倒しやすい場所では注意が必要です 予防する意識を持つように心がけて不要な出血のリスクを避け、安心して生活を送るための環境を整えましょう。 緊急時患者カードを携帯する 血友病の方は、外出時や災害・事故時に備えて「緊急時患者カード」の携帯が推奨されています。 緊急時患者カードは、血液凝固異常症の方がかかりつけ以外の医療機関を緊急で受診したり、救急車で搬送されたりした際に、医療関係者へ必要な情報を迅速かつ正確に伝えるためのカードです。 血友病の種類や使用している治療薬、投与量、かかりつけ医療機関などの情報が記載されています。 万が一の事故や意識障害などで本人が説明できない状況でも、周囲の医療関係者に正確な対応を促すことが可能です。 日常的に財布やスマートフォンケースに入れておくなど、常時携帯する習慣をつけましょう。 成人の場合は、各自治体から医療費助成の関連書類とともに、小児は患者会や製薬会社を通じて配布されています。 血友病の方でカードがまだ手元にない方は、「一般社団法人日本血液凝固異常症調査研究機構(JBDRO)」にお問い合わせください。 解熱剤・鎮痛剤の使用は避ける 血友病の方は、一般的な解熱剤や鎮痛剤の使用に注意が必要です。 とくに、アスピリンやインドメタシンなどの成分には血液を固まりにくくする作用があり、出血を助長する恐れがあります。 市販薬の中にも、これらの成分が含まれている可能性があるため、以下の点に注意しましょう。 解熱・鎮痛薬の購入時は、薬剤師に成分を確認する 医師の処方がない薬は使用しない 歯科や他科の受診時にも、血友病であることを必ず申告する 安全な薬物治療を行うためには自己判断を避け、医療従事者の指導のもとで薬を選びましょう。 口腔ケアを怠らない 口腔内は出血しやすい部位のひとつであり、血友病の方にとっては日々の口腔ケアがとても大切です。 虫歯や歯周病を予防すれば、歯ぐきからの出血を減らせます。 日常の歯磨きでは、以下の点に注意しましょう。 柔らかめの歯ブラシを使用し、歯ぐきを傷つけない 歯と歯ぐきの境目の汚れを丁寧に除去する 継続してケアを行う 定期的な歯科受診も欠かさずに、出血のリスクを最小限に抑えるよう心がけましょう。 なお、歯ぐきは適切にケアされていれば出血を抑えられますが、少量の出血が見られても問題ありません。 保育園や学校に出血が起きた際の対処法を共有する 小さい子どもの血友病患者様が安心して学校生活を送るには、保育園や学校側との情報共有が不可欠です。 以下のように、外傷や出血時の対応方法などを事前に伝えておくと、迅速かつ適切な対応が可能になります。 緊急時の連絡先と対応方法を文書で共有する 保管している凝固因子製剤の使い方を説明する 生活の中で注意すべき動作や活動を明確に伝える 子どもが血友病であっても、適切な治療と計画で多くの活動に参加できます。 以下のサイトのページでは、血友病の子どもを担当する先生向けに対応を説明しているので、情報共有時に参考にしてください。 学校・保育園などの先生方へ|ヘモフィリアTODAY 血友病の子どもさんを担当する学校の先生方へ|ヘモフィリアステーション まとめ|血友病は正しい知識と治療で管理できる病気 血友病は先天的に血液が固まりにくくなる疾患で、出血しやすい体質が特徴です。 完治は困難ですが、定期的な補充療法や生活上の注意によって、健常な人と変わらない生活を送れます。 早期診断と適切な治療の継続により、合併症の予防や生活の質の維持につなげていきましょう。 また、出血リスクへの理解に加え、周囲の協力や医療機関との連携も欠かせません。 なお、当院「リペアセルクリニック」では、公式LINEにて再生医療に関する情報提供と簡易オンライン診断を実施していますので、ぜひご登録ください。 血友病に関してよくある質問 血友病は治りますか? 現時点で、血友病を根本的に治す治療法は確立されていません。 しかし、定期的な補充療法によって不足している凝固因子を補うことで、出血を予防し、健常な人とほとんど変わらない生活を送れます。 とくに、早期の治療開始が関節障害の予防や生活の質の維持に大きく貢献する点に留意しておきましょう。 血友病Aと血友病Bの違いはなんですか? 血友病は主に2つのタイプに分類されており、それぞれの違いは次の通りです。 血友病A:第VIII因子(抗血友病因子A)が欠乏しているタイプ 血友病B:第IX因子(抗血友病因子B)が不足しているタイプ 両者の出血症状や経過は似ていますが、治療に用いる凝固因子製剤が異なるため、正確な診断が重要です。 血友病は予防できますか? 現在のところ、血友病そのものを予防する方法は存在しません。 しかし、出血による合併症を防ぐことはできるため、以下のような早期対応が重要です。 出血が起きた際は、速やかに凝固因子製剤を補充する あざや関節痛などの初期症状を見逃さない とくに乳児期後半にみられる皮下出血に注意する 症状を発見した場合には、医療機関での早めの相談が重症化を防ぐための第一歩となります。 参考文献 (文献1) Hemophilia ‒ Hematology and Oncology | Coagulation Disorders ‒ Merck Manual Professional Version|Merck Manual Professional Version (文献2) 血友病 (けつゆうびょう)とは | 恩賜財団 済生会
2024.07.10 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
帯状疱疹後神経痛(PHN)は、帯状疱疹の合併症の中で最も頻度が高いといわれています。「触れただけで痛みを感じる」「ピリピリと電気が走るような痛みが続く」などの症状が現れるため、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。 この記事では、帯状疱疹後神経痛や治療法などについて解説します。 病院で行う治療はもちろん、自分でできるケア方法についても説明していますので、自分に合った痛みの緩和方法を見つけ、生活の質を下げないようにしていきましょう。 帯状疱疹後神経痛とは帯状疱疹の後遺症の一種 帯状疱疹後神経痛とは、帯状疱疹を発症した後、皮膚の症状が治まったにもかかわらず痛みが残ってしまう病気です。(文献1) ここでは、以下の帯状疱疹後神経痛になりやすい人の特徴や、主な原因・症状について解説します。 帯状疱疹とは水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる病気 帯状疱疹後神経痛になりやすい人の特徴 帯状疱疹後神経痛の原因と主な症状 帯状疱疹とは水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる病気 帯状疱疹とは、水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる病気です。はじめて水痘・帯状疱疹ウイルスに感染した場合、「水ぼうそう」として発症します。 この水痘・帯状疱疹ウイルスは厄介であり、水ぼうそうが治ったあともウイルスが体の中から消えることはありません。神経節と呼ばれる神経細胞が集まっている部分に身を潜め、再び活発になる機会をうかがっています。このとき、症状が現れることはありません。 そして、加齢や疲労、ストレスなどで免疫力が下がると、潜んでいたウイルスが表に出てしまい、帯状疱疹を発症します。そのため、水ぼうそうに一度でもかかった人は、帯状疱疹になる可能性があります。 帯状疱疹の症状は、ピリピリとした痛みや小さな水ぶくれ(水疱)、皮膚の赤みなどです。皮膚の症状が出てからすぐに治療を開始するのが望ましく、早めに病院を受診する必要があります。治療は抗ウイルス薬の投与が主です。また、痛みがあれば鎮痛剤を服用する場合もあります。 帯状疱疹後神経痛になりやすい人の特徴 帯状疱疹後神経痛は、加齢や初期症状の重さなどにより発症リスクが高まるとされています。以下のような特徴を持つ方はとくに注意が必要です。 50歳以上の高齢者 女性 発疹の前から痛みや異常感覚がある方 発疹や痛みの程度が重度な方 これらに該当する場合は、帯状疱疹の初期段階から適切な治療を講じましょう。 帯状疱疹後神経痛の原因と主な症状 帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹の合併症の中で最も多いといわれています。合 併しやすい人は、高齢者や女性、帯状疱疹を発症しているときに痛みが強かった人などです。 帯状疱疹後神経痛の原因は、水痘・帯状疱疹ウイルスが活性化したときに神経が傷つけられることで発症すると考えられています。そのため、痛みを感じやすくなったり、神経の過剰な興奮によって痛みが現れたりする場合があります。 帯状疱疹後神経痛の症状は、下記の通りです。 持続的な痛みがある ヒリヒリと焼けるような痛みがある ピリピリと電気が走るような痛みがある 触れるだけで痛みを感じることがある(アロディニア) 痛みがある部分の皮膚の感覚が鈍くなる 痛みの程度は個人差があります。そのため、痛みによって眠りが浅くなったり、動くと衣服が擦れて痛かったりと、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。 痛みは1~2カ月程度で治まってくることが多いですが、長い場合は1年以上続くこともあります。また、高齢であればあるほど痛みが続きやすいといわれています。 帯状疱疹後神経痛の治療(解消法) 帯状疱疹後神経痛の治療では薬物療法が基本とされますが、痛みの強さや日常生活への影響によっては、より専門的な治療が検討されます。 以下で主な治療法を紹介します。 薬物療法 神経ブロック注射 脊髄刺激療法(SCS) イオントフォレーシス 低出力レーザー照射療法 運動療法 薬物療法 薬物療法は、痛みや神経の興奮を薬でコントロールする治療法です。 帯状疱疹後神経痛は神経の痛みであり、適切な薬を医師に処方してもらう必要があります。 薬物療法で主に使われる薬は、以下の通りです。(文献2) 抗うつ薬 抗てんかん薬 神経障害疼痛に用いる鎮痛薬 オピオイド鎮痛薬 帯状疱疹後神経痛の痛みに対し、使われる薬は効果や副作用などのバランスによって第一選択薬、第二選択薬、第三選択薬と分かれています。 まずは、抗うつ薬や抗てんかん薬、神経障害に用いる鎮痛薬の服用で様子をみます。痛みの緩和が見られない場合は徐々に選択範囲を広げ、より強い鎮痛効果を示す薬を使用します。 たとえば、第一選択薬と挙げられるのは、抗てんかん薬の「プレガバリン(リリカ®)」や「ミロガバリン(タリージェ®)」、抗うつ薬の「三環系抗うつ薬(アミトリプチリンなど)」や「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(サインバルタ®)」などです。 効果が不十分な場合には、第二選択薬として「ノイロトロピン®」、第三選択薬としてオピオイド鎮痛薬の「トラマール®」や「トラムセット®」を使用するケースもあります。(文献3) とくに、オピオイド鎮痛薬は効果が強い薬です。オピオイド鎮痛薬以外の薬では痛みの緩和ができない場合に使用され、適応条件もあります。注意点として、腎機能が悪い人には使用できません。 神経ブロック注射 神経ブロック注射とは、痛みを感じる神経やその周囲に局所麻酔薬を注射する治療です。(文献4) 痛い部位がはっきりとわかっている場合は、注射後すぐに効果を実感できます。また、内服薬とは違い直接的に痛みに効くため、より痛みの緩和につながります。 神経ブロック注射にはいくつかの種類があります。たとえば、顔や首、腕など上半身の帯状疱疹後神経痛には「星状神経節ブロック」が使われます。交感神経の働きを抑えて血流を改善すれば、痛みの軽減が期待できます。 また、首から足先まで、体のあらゆる部位に対応できる「硬膜外ブロック」もあります。これは脊髄の周囲にある硬膜外腔に局所麻酔薬を注入する方法で、神経を一時的にブロックし、強い痛みを緩和するのに有効です。 なお、神経ブロック注射の持続効果は、人によって異なります。1日しか効かない人もいれば、数日効果が持続する人もいます。しかし、早めに神経ブロックを行うと、治療の効果が高まるといわれています。 神経ブロック注射の治療は入院の必要がなく、外来で受けられます。注意点として、血をサラサラにする薬(ワーファリン、バイアスピリンなど)を使用している場合は、針を刺したときに出血が止まらないことがあるため、行えないことがあります。 脊髄刺激療法(SCS) 脊髄刺激療法(SCS)は、脊髄に微弱な電流を与え、脳に伝わる痛みを妨げる治療法です。(文献5) 通常、体に痛みを感じると神経を通じて痛みの信号が脊髄から脳に伝わります。この神経路に微弱な電流を流すと脳に痛みが伝わりにくく、痛みの緩和につながります。 体の中に脊髄刺激リードと刺激発生装置を埋め込む手術が必要になるため、入院が必要です。手術は局所麻酔で行われ、一度の入院期間もそこまで長くありません。 イオントフォレーシス イオントフォレーシスは薬をより深い部分に浸透させて痛みを和らげる治療です。 局所麻酔薬を浸透させたパットを痛みのある部分に貼り付け、微弱の電流を流します。電流によって薬がイオン化すると皮膚の深い部分へと浸透し、痛みを和らげます。 皮膚表面だけではなく、神経を伝達する深い部分にまで薬が浸透するため、脳に痛みを伝えにくくする効果もあります。治療時間は15分程度であり、外来で行えます。また、痛みを伴わない治療であり、注射に抵抗のある人にも行えます。 一度の治療で痛みを和らげることは難しく、根気よく治療を続けることが必要です。 低出力レーザー照射療法 低出力レーザー照射療法は痛みがある部分にレーザーを当て、痛みを和らげる治療法です。 レーザーによって血行がよくなると痛みを感じにくくなります。また、痛みによって興奮している気持ちを落ち着ける効果もあります。 痛みをほとんど伴わない治療であるため、注射に抵抗がある人にもおすすめです。痛みがより強い人向けに、通常の治療に追加して実施されやすいです。 運動療法(マッサージ・エクササイズ等) マッサージ・エクササイズ等の運動療法は、痛みによって過度に活動が制限された場合に行われます。 マッサージやストレッチ、エクササイズなどを理学療法士と一緒に行うことで、筋肉や関節のこわばりを和らげ、血流の改善や緊張の緩和が期待できます。 また痛みの軽減だけでなく、痛みに対する恐怖心を和らげ、日常生活の活動範囲を少しずつ広げていく効果も見込めます。 帯状疱疹後神経痛を治療する上での注意点 帯状疱疹後神経痛を治療する際は、以下のいくつか注意すべき点があります。 帯状疱疹後神経痛の治療で副作用が出る場合がある 保険適用外の治療法もあり費用の負担がかさみやすい 帯状疱疹後神経痛のほかにも後遺症が出る可能性がある 帯状疱疹後神経痛の治療で副作用が出る場合がある 帯状疱疹後神経痛の治療法別の副作用と対処法について、以下にまとめました。 治療方法 副作用 副作用への対処 鎮痛剤 オピオイド鎮痛薬の場合、吐き気や便秘、眠気など ・薬の処方時に副作用を確認 ・症状が出たらすぐ医師に相談 神経ブロック注射 副作用は、飲み薬と比べて少ない。まれに下記が現れる場合がある ・注射部位の痛みや出血、感染 ・投与する薬に対するアレルギー ・症状が出たらすぐ医師に相談 イオントフォレーシス 副作用はほとんどなし ー 脊髄刺激療法(SCS) 脊髄刺激装置は、IH調理器や金属探知機などの強い電磁波に反応し、刺激が変化する場合がある。体内に埋め込む装置のため、使用状況によっては破損ややけどのリスクもある ・IH調理器や金属探知機の使用時は、できるだけ距離を取り一時的に電源を切る ・刺激装置に強い衝撃を与えない。 ・埋め込み手術直後は装置が動きやすいため注意する 低出力レーザー照射療法 副作用はほぼないが、照射部位の乾燥や軽度のかゆみが現れることがある ・症状が出たらすぐ医師に相談 治療法にはそれぞれ副作用が伴う可能性があります。治療を選択する際は、効果だけでなくリスクも理解した上で、医師と相談しながら進めることが大切です。 保険適用外の治療法もあり費用の負担がかさみやすい 帯状疱疹後神経痛にはさまざまな治療法がありますが、保険で行えるものと保険適応外のものがあります。 薬物療法や神経ブロック、脊髄刺激療法は保険が適応されます。一方、レーザー治療、イオントフォレーシスは比較的新しい治療法であり、保険は適応外です。 保険適応外の治療法は、金銭的な負担が大きくなりやすいのが現状です。医師とも相談しながら金銭的な面も含めて、適切な治療法を選択してください。 帯状疱疹後神経痛のほかにも後遺症が出る可能性がある 帯状疱疹の後遺症は神経痛だけではありません。発症部位によっては、顔面神経麻痺や耳鳴り、めまい、難聴などを引き起こすラムゼイ・ハント症候群や、角膜炎・結膜炎などの目の疾患が残ることもあります。 これらは視力や聴力に影響を与えることもあるため、日常生活への支障が大きいのが特徴です。また、強いストレスによって頭痛が悪化するケースも見られます。 こうした症状が長引くと、心身ともに大きな負担となり、一般的な治療では改善しにくい場合もあります。 帯状疱疹後神経痛をはじめ後遺症の解消には再生医療をご検討ください 帯状疱疹の後に残る神経の痛みやしびれ、顔面麻痺、めまいなどは、症状の程度や回復の経過に個人差があります。そのため、一般的な治療だけでは十分な対応が難しいと感じるケースもあります。 しかし、近年では患者様自身の幹細胞や血液を用いた再生医療が選択肢の一つとして挙げられるようになってきました。 再生医療を検討する際は、医師による診察と適応の確認が必要となるため、まずは専門の医療機関で相談してみることをおすすめします。 帯状疱疹後神経痛の解消にはセルフケアも大切 帯状疱疹後神経痛は、治療とあわせて日々のセルフケアも重要です。症状の緩和をめざして、以下の生活習慣を見直してみましょう。 日常生活での工夫 自分でできる日常生活での工夫は以下の通りです。 体を温める、冷やさない 痛みのある部位を刺激しない 痛み以外のことを考える 生活リズムを整える 体を温める・冷やさない 体を温めると血行がよくなり、痛みが軽くなることがあります。温かい湯船にゆっくりつかり、全身を温めましょう。入浴はリラックス効果も期待できるため、おすすめです。 また、患部にホットタオルを当てるのも有効です。ただし、感覚が鈍くなっている場合もあるので、熱くなりすぎないよう注意しましょう。 患部を刺激しない 患部への刺激は、痛みの悪化につながります。チクチクとした素材や金属などが付いている服は着用を避けてください。服は肌に優しい素材を選び、装飾がないシンプルなものを選ぶと刺激が少ないです。 それでも服が擦れて痛い場合は、さらしや包帯を巻く方法もあります。注意点として、さらしなどがずれてしまうと刺激の原因となります。きつめに巻き、緩んだら締め直しましょう。 痛み以外のことを考える 痛みは精神面との関連が深く、帯状疱疹後神経痛の患者さんは不安や抑うつ傾向の方が多いといわれています。 そのため、痛みを考え続けるのではなく、自分の好きな仕事や趣味などを積極的に取り入れ、痛み以外に意識を向ける時間を作りましょう。 また、痛みを回避しようと行動を制限してしまい、活動の幅が狭くなることも多いです。痛みに対する恐怖や不安を抱えている方もいるでしょうが、じっとしていることで筋肉が固まり、痛みを感じる原因となります。 少しでも痛み以外のことを考えられるよう、外の空気を感じながら散歩するのもおすすめです。 生活リズムを整える 帯状疱疹後神経痛の痛みは、疲労やストレス、睡眠不足などで悪化しやすいといわれています。 日頃から規則正しい生活を送り、免疫力が低下しないよう体の調子を整えましょう。しんどいと感じたら、すぐに休息を取れるようにしておくことも大切です。 心理的サポートの重要性 帯状疱疹後神経痛の患者の中には不安などを抱えている方が多くいます。(文献6) 痛みを感じ続けると何をするにも億劫になり、気持ちが塞ぎ込みやすくなります。また、痛みばかり考えていると精神的につらくなり、精神疾患を発症しやすいです。 ペインクリニックでは、メンタルケアを含めた治療を行っています。もし精神的なつらさを感じているのであれば、一般的なクリニックではなくペインクリニックの受診をおすすめします。 帯状疱疹後神経痛は適切な治療を選択して痛みを解消しましょう 帯状疱疹後神経痛は、早期からの適切な治療が非常に重要です。 薬物療法や神経ブロック注射などの治療法から、症状に合わせて適切に選択するのが痛みの解消への近道です。諦めずに専門医と相談し、多角的なアプローチで痛みの緩和を目指しましょう。 当院リペアセルクリニックでは、帯状疱疹後神経痛による慢性的な痛みに対し、再生医療の選択肢を提供しております。 患者様一人ひとりの状態に合わせた丁寧なカウンセリングを実施し、症状の原因にアプローチする治療をご提案します。 長引く神経の痛みが気になる方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。 (文献1) 帯状疱疹予防.JP「帯状疱疹の合併症(後遺症)」 https://taijouhoushin-yobou.jp/sequela.html (最終アクセス:2025年6月12日) (文献2)日本ペインクリニック学会「神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版」 https://www.jspc.gr.jp/Contents/public/kaiin_guideline06.html(最終アクセス:2025年6月12日) (文献3) 日本ペインクリニック学会「オピオイド」 https://www.jspc.gr.jp/igakusei/igakusei_keyopioid.html(最終アクセス:2025年6月12日) (文献4) 日本ペインクリニック学会「発症 3 カ月以内の帯状疱疹関連痛に神経ブロックは有効である」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspc/26/4/26_18-0046/_pdf(最終アクセス:2025年6月12日) (文献5) 一般社団法人 日本定位・機能神経外科学会「脊髄刺激療法(SCS)」 https://jssfn.org/patient/treatment/scs.html(最終アクセス:2025年6月12日) (文献6) 日本ペインクリニック学会「帯状疱疹後神経痛患者の精神・心理的評価」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspc1994/14/4/14_4_401/_article/-char/ja/(最終アクセス:2025年6月12日)
2024.06.24 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
肝嚢胞とは、肝臓の組織に液体がたまって袋状になったものです。 健康診断や人間ドックで発見されるケースが多く、実際に約5人に1人の割合で健康診断の検査項目に含まれる腹部超音波検査で肝嚢胞が見つかるデータもあります。(文献1) そのため、診断後に放っておいて大丈夫か、家族として何かできることはないかと心配になって情報を探していらっしゃるのではないでしょうか。 突然聞かされると驚かれるかもしれませんが、肝嚢胞は比較的よく見られるもので、多くは良性で特に症状がないケースがほとんどです。 しかし、まれに大きくなって痛みが出たり、他の病気が隠れていたりする可能性もゼロではありません。 本記事では、肝嚢胞の原因や症状などを詳しく解説します。 治療法も紹介しているので、肝嚢胞の診断を受けて不安を感じている方は参考にしてみてください。 しかし、肝嚢胞の治療では、嚢胞が大きくなった場合に外科的な穿刺や切除手術が行われることがありますが、手術を避けたいという方は再生医療も選択肢の一つになります。 \再生医療という新しい選択肢/ 再生医療は、患者さまご自身の細胞を用いて肝臓の修復力を高めて、損傷や炎症を起こした肝組織の再生を促し、肝機能の改善を目指す治療法です。 「早く痛みから解放されたい」「機能を取り戻したい」という方は、まずは当院の無料カウンセリングをご利用ください。 肝嚢胞(肝のう胞)とは 肝嚢胞とは、肝臓にできる液体がたまった袋状のものを指します。 肝嚢胞の種類は、大きくわけて以下の2つです。 孤発性肝嚢胞 多発肝嚢胞 「孤発性肝嚢胞」は、肝嚢胞の数が1〜3個程度で単発的に発生する肝嚢胞です。肝嚢胞の大きさが5cm以下程度の小さいものであれば無症状のケースが多くなります。 まれにサイズが5〜10cmを超えるような大きい肝嚢胞もできます。このサイズになると、周りの臓器が圧迫されてお腹が苦しくなったり、腹痛を感じたりする場合があるので覚えておきましょう。ただし、肝臓自体への影響は少なく、血液検査で肝機能の異常が見つかるケースはほとんどありません。 「多発肝嚢胞症」は、肝嚢胞が肝臓に多発する病気です。こちらは孤発性とは異なり、嚢胞の数が増えたり大きくなったりするケースが多く、それによる周囲への圧迫症状が見られやすくなります。また、嚢胞内の感染や出血で炎症を引き起こし発熱や肝機能異常をおよぼす可能性もあります。 肝嚢胞以外の脂肪肝や肝硬変、肝炎といった肝臓の病気には「再生医療」の治療法が効果的です。再生医療とは、人間の自然治癒力を活用し、損傷した肝臓の組織を修復する最新の医療技術です。 詳しい治療方法や効果が気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 以下の記事では、肝臓の働きや肝臓の病気について解説しています。詳細が気になる方は、参考にしてみてください。 肝嚢胞の原因 肝嚢胞の発生原因は、現時点では明確にわかっていません。 肝嚢胞ができるのは40歳から60歳の女性に多いことから、女性ホルモンの1種であるエストロゲンが関連しているという説があります。 以下の記事では、女性に多い肝臓の病気を解説しています。検査方法や合併症に関する情報も紹介しているので、詳細が気になる方はあわせてご覧ください。 なお、肝嚢胞は、エキノコックスという寄生虫の感染によって肝嚢胞ができるケースがあります。エキノコックスは、キツネやイヌの糞に含まれており、口を介して感染します。 肝嚢胞の症状 くりかえしですが、肝嚢胞はほとんどが良性なので、肝嚢胞そのものが体に悪い影響をおよぼす可能性は高くありません。 肝嚢胞が5cm以下ほど小さめのサイズであれば、無症状のケースが大半です。 5〜10cmを超えるような大きいサイズの肝嚢胞になると、周りの臓器を圧迫してお腹が苦しくなったり、腹痛を感じたりする場合があります。 また、嚢胞内の感染や出血で炎症が起これば、発熱や肝機能異常を引き起こす可能性があります。症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。 もしもご家族の方で肝嚢胞の疑いがある場合や、まずは相談先を必要としている場合などは、当クリニックでも無料相談を受け付けております。 ▼LINEでもご相談や無料診断を実施中 >>公式LINEはこちら 肝嚢胞の検査 冒頭で述べた通り、肝嚢胞は健康診断や人間ドックの腹部超音波検査検診で見つかるケースが多い傾向にあります。つまり、腹部超音波検査検診は肝嚢胞を発見する有効な検査といえるでしょう。 ほかには、腹部CTやMRIによっても確認できます。 CTやMRIでは、嚢胞の壁や嚢胞液の性状を詳しく調べられる検査です。超音波検査で嚢胞の性状が通常と異なっている場合や、嚢胞に対して治療を検討する場合にさらに詳しい情報を得るための検査としておこなわれます。 肝嚢胞の治療法 肝嚢胞は、圧迫症状がなければ治療はおこなわず、経過観察で良いものになります。 肝嚢胞のサイズが大きく圧迫による腹部症状をきたしている場合や、嚢胞内感染などを起こしている場合には治療をおこないます。 治療方法は、注射で嚢胞内の液を吸引して肝嚢胞を縮小させる方法です。超音波で嚢胞を確認しながらおこないます。その後、エタノールを注入して嚢胞内に再び液体がたまらないようにします。 根本的な治療としては、嚢胞を切開、切除する手術です。近年では腹腔鏡による手術もおこなわれ、より体に負担の少ない治療方法が広まっています。 傷付いた肝臓組織を修復する治療法の1つに「再生医療」があります。 リペアセルクリニックでは、ご自身の脂肪由来幹細胞を用いた再生医療を提供しています。 この治療は幹細胞が持つ組織修復能力を利用し、手術のような大きな負担なく、弱った肝臓の働きを根本からサポートすることを目指します。 治療法については、以下の動画でも解説していますので、ぜひ参考にしてください。 https://youtu.be/NeS1bk2i5Gs?si=w-r5Q9YGiwpb_Yfv 根本的な改善を期待したい方は、当院(リペアセルクリニック)へご相談ください。 まとめ|肝嚢胞への理解を深めて適切な対応をとろう 肝嚢胞は多くの場合、無症状で偶然見つかるもので、症状がなければ経過観察で良いものになります。したがって、肝嚢胞と診断されても極端に心配する必要はありません。 しかし、大きい嚢胞では腹痛やお腹の圧迫感の症状が現れることがあるほか、まれにがん化する事例も報告されています。気になる症状があれば早めに専門の医療機関に相談しましょう。 損傷した肝臓組織を修復を模索するなら、手術を必要としない「再生医療」がおすすめです。本来なら手術しなければいけない状態でも、再生医療で治療できる可能性があります。 ご自身の細胞を用いる再生医療は薬や手術とは異なるアプローチで、慢性的な肝臓のダメージや機能低下に悩む方に新たな希望をもたらす可能性があります。 ご本人だけでなくご家族も一緒に最善の道を探るために、ぜひこの情報をご活用ください。 ▼肝臓の健康と再生医療の専門情報を受け取る >>公式LINEはこちら 肝嚢胞に関するよくある質問 最後に肝嚢胞に関するよくある質問と回答をまとめます。 肝嚢胞が何センチになったら手術が必要ですか? 手術の必要性を判断する明確なサイズの基準はありません。 嚢胞のサイズよりも、症状の有無や生活への影響が重要な判断材料となります。たとえば、嚢胞が腹部を圧迫して腹痛が生じたり、胃を圧迫して食欲不振になったりするなどです。 注射で肝嚢胞の液体を吸引する治療法もあるので、専門医と相談して自分の状態に合った治療法を選択していくのが良いでしょう。 肝嚢胞になったらどうすればいいの? 肝嚢胞と診断を受けた時点で、担当医に今後の治療方針を相談しましょう。 無症状であれば、定期的な経過観察を推奨される可能性があります。肝嚢胞がほかの臓器を圧迫して圧迫感や痛みを感じる場合は、注射吸引による液体の除去や肝嚢胞を切開・切除する手術などが進められます。 肝嚢胞でがんを発症するリスクはありますか? 肝嚢胞が、がん化した事例も報告されています。(文献2) がんの場合、早期発見が重要になります。体調不良や身体の違和感が長期間続く場合は、迷わず医療機関で検査を受けましょう。 参考文献 文献1:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/65/1/65_15-10/_pdf 文献2:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsa/68/3/68_3_654/_article/-char/ja/
2024.05.09 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
高血圧の薬(降圧薬)は血圧を下げる薬で、多くの種類があります。降圧薬にはどのような違いがあるのかわからず、副作用を心配する方もいるのではないでしょうか。 高血圧の治療では、まずは運動や食事管理などによる生活習慣の見直しによって血圧の改善を図ります。 しかし、それでも難しい場合は降圧薬が使用されます。降圧薬にはそれぞれ作用のメカニズムや副作用が異なるため、服用には注意が必要です。 この記事では、降圧薬の種類やその特徴について専門医が解説します。降圧薬についての正しい情報を身につけて健康な時間をすごせるよう、ぜひ最後までお読みください。 高血圧の薬(降圧薬)を飲む際の基準値 まず前提として、現在のガイドライン上では「最高血圧120mmHg/最低血圧80mmHg未満」を正常血圧としており、これが降圧薬を処方する目安の1つです。 詳細は後述しますが、よく使用される降圧薬には大きく分けて7種類あります。また、複数の種類を組み合わせた配合薬もあります。 近年ではより厳格な血圧管理が重要視されるようになり、130〜139/80〜89mmHgになると、「高値血圧」と呼ぶようになりました。さらに140/90mmHg以上になると「高血圧症」と診断されます。 高血圧の薬(降圧薬)の種類一覧と副作用 主な降圧薬の種類としては、以下の7つです。 カルシウム拮抗薬 アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB) アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬) 利尿薬 β(ベータ)遮断薬 α(アルファ)遮断薬 ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬) ここでは、それぞれの降圧薬の特徴について詳しく解説します。 ①カルシウム拮抗薬:最も多く使われている薬 カルシウム拮抗薬は、末梢の血管を拡張させることで血圧を下げる作用の薬です。副作用が少ないため、現在国内で最も多く処方されている降圧薬です。 高血圧の治療を開始する場合、このカルシウム拮抗薬が第一選択として選ばれることが多い傾向にあります。 副作用としては、以下のような血圧の下がりすぎによる症状があげられます。 めまい感 動悸 頭痛 ほてり感 顔面紅潮 むくみ 歯茎の肥厚 など ②アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB):2番目に多く使われている薬 アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)は、カルシウム拮抗薬に次いで多く使用されている降圧薬です。アンジオテンシンⅡ受容体は血管等に分布しており、アンジオテンシンという物質が結合して強力な血管収縮作用を持ちます。 ARBによってアンジオテンシンの結合を防ぎ、血管収縮作用を抑えて血圧の低下につながります。 この薬も副作用が少なく使用しやすい薬の一つです。治療の第一選択として使用することもあり、カルシウム拮抗薬でも十分に降圧が得られない場合に併用するケースも少なくありません。 注意すべき副作用として、内服中に血中のカリウムが上昇する可能性がある点です。 腎臓の機能が悪い方が服用する場合、定期的に腎機能やカリウム濃度等をチェックする必要があります。また、妊婦の方や授乳中の方の服用は、赤ちゃんへの悪影響があるため禁忌です。 高血圧と腎臓機能との関係性について、以下の記事でも詳しく解説していますので、興味がある方はこちらもご覧ください。 ③アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬) アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)とは、ARBと似た名前のとおり、アンジオテンシン系に作用する薬です。 ARBは、アンジオテンシンⅡが結合する受容体に作用する薬です。一方でACE阻害薬はアンジオテンシンⅡ自体の産生を阻害し、血管収縮作用を抑えて血圧を低下させます。 ACE阻害薬の副作用として有名なのが、「空咳(からぜき)」です。これはブラジキニンという物質の増強作用によるもので、とくに日本人を含むアジア人に多いとされています。 この副作用を利用して、咳を誘発させることで誤嚥性肺炎を予防する目的で使用する場合もあります。 ACE阻害薬もARBと同様に、妊婦の方や授乳中の方の服用は禁忌です。 ④利尿薬 利尿薬は、塩分(ナトリウム)を含めた水分を尿として体外に排泄し、血液量を減少させて血圧を下げる薬です。血圧の話でよく「塩分の摂りすぎに注意」と聞きますが、日本人の塩分摂取量は欧米人と比較しても多いことがわかっています。 具体的に欧米人の1日の塩分摂取量は8〜9g程度なのに対し、日本人は1日10g程度とされています。塩分を取りすぎると、浸透圧によって水分が血管の中に引き込まれ、血液量が増加して血圧上昇につながるのです。 利尿薬は、高血圧だけでなく心臓の機能が悪くむくみがある方や、これまで説明した薬の効果が不十分な場合などに併用することがあります。 利尿薬は体内の水分を排泄させる作用があるため、副作用として電解質の異常をきたすことがあります。具体的には低ナトリウム血症や低カリウム血症などがあり、症状としては以下のとおりです。 ぼんやり感 倦怠感 手足の力の入りにくさ など 高尿酸血症や高中性脂肪血症など、代謝系への影響にも注意が必要です。そのほかにも、トイレに行く回数や量が増える点も副作用の1つです。 ⑤β(ベータ)遮断薬 心臓の筋肉に分布する「β受容体」を遮断させて心拍数を減少させたり、心臓の収縮力を抑制したりする作用のある薬です。β(ベータ)遮断薬は、高血圧治療の第一選択になることはあまりありません。 しかし、心筋梗塞の発症後の高血圧症や、交感神経が亢進した状態の病気(状腺機能亢進症など)に合併する高血圧症に対して積極的に使用されます。交感神経の作用で脈が速くなっている場合にも有効で、これまで紹介した降圧薬と併用して使うケースも多い薬です。 気管支喘息などの呼吸器疾患を持っており、吸入を行っている方が使用する場合、作用が変化して症状の悪化を招く危険性があり注意が必要です。 また、薬を急に中断すると狭心症や高血圧発作が起こる危険性があります。β(ベータ)遮断薬を中止する場合は、徐々に減量する必要があります。 ⑥α(アルファ)遮断薬 末梢血管に分布するα1受容体を阻害して交感神経の働きを抑え、血管を拡張させて血圧を下げる作用がある薬です。 交感神経が活性化しやすい早朝に血圧が上昇するタイプの方の場合、寝る前にα遮断薬を飲むことで朝の血圧低下が期待できます。また、褐色細胞腫による高血圧症のコントロールにも使用される薬です。 α遮断薬は自律神経に働きかける薬のため、交感神経の作用を抑えることで以下のような副作用が起こる可能性があります。 起立性低血圧 めまい 失神 α遮断薬を服用する場合は少量から開始し、副作用に注意しながら徐々に増やしましょう。 ⑦ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬) ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬)は、体内で産生されるアルドステロンというホルモンの働きを阻害する作用の薬です。 本来アルドステロンは、腎臓に作用して水を体内に吸収させて血液量を増やす働きがあります。これが阻害されると体内に水分が再吸収されなくなり、血液量が減って血圧が低下しやすくなります。 また、心臓保護効果が期待できるため、心不全を合併している方の高血圧症に使用するケースも少なくありません。 MR拮抗薬は体液バランスを調節する薬のため、電解質異常をきたす可能性があり、高カリウム血症に注意が必要です。とくに糖尿病性腎症や、中等度異常の腎機能障害がある方への使用は禁忌です。 降圧薬の配合剤について 降圧薬の配合材は、これまで紹介した作用機序の異なる種類の薬を組み合わせた治療薬です。 配合薬によって飲む薬の数が減り、飲みやすくなることが最大のメリットといえます。薬が増えるのが嫌な方や、薬が多くて内服が大変な方におすすめです。 現在国内で処方可能な降圧薬の配合剤は、大きく分けて3種類です。 降圧薬の配合剤 詳細 カルシウム拮抗薬+ARB ザクラス アイミクス ミカムロ レザルタス エックスフォージ など ARB+利尿薬 イルトラ エカード プレミネント ミコンビ など カルシウム拮抗薬+ARB+利尿薬 ミカトリオ 配合薬を使用する際は、それぞれの降圧薬の副作用に注意してください。配合薬の場合、名前だけでどの薬が配合されているかがわかりにくいため、注意が必要です。 高血圧の薬(降圧薬)を服用する際の注意点 降圧薬を服用する際は、以下の点に注意しましょう。 グレープフルーツなどの柑橘類を避ける 自己判断で薬を飲むことをやめる 飲み忘れたときの対応を適切にする ここでは、それぞれの注意点を詳しく解説します。 グレープフルーツなどの柑橘類を避ける まず、降圧薬を服用した際は、グレープフルーツを含んだ柑橘類の摂取は避けてください。グレープフルーツには、フラノクマリン類という成分が含まれています。 この成分には、体内で薬物を分解する酵素の働きを阻害する作用があるとされています。酵素の働きが阻害されることで薬の効果がうまく働かず、かえって副作用のリスクを高める恐れがあるのです。 これは降圧薬だけでなく、コレステロール低下薬や抗不安薬など、さまざまな薬に対して影響があります。薬を服用する際は、柑橘類は意識的に避けましょう。 降圧薬と柑橘類の関係性についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。 自己判断で薬を飲むことをやめる 自己判断で薬を飲むことをやめないでください。一時的に血圧が落ち着くことで、「もう大丈夫だろう」と薬をやめる方もいるでしょう。 しかし、途中で薬の服用をやめると、再び高血圧の状態に戻る可能性が高くなります。薬の減量・中止は自己判断で行わず、必ず医師と相談することが重要です。 また、薬を一生飲み続けないといけないのか心配になる方もいるでしょう。血圧を下げるには薬の服用が重要ですが、中には生活習慣が改善したことで徐々に減量し、降圧薬をやめられた方もいます。そのため、治療が順調であれば、薬を中止できる可能性は十分にあります。 飲み忘れたときの対応を適切にする 降圧薬を飲み忘れたときの対応は、薬の種類によって異なります。そのため、自己判断で飲むことは避け、事前に医師や薬剤師に相談しましょう。 飲み忘れた場合、時間をずらして服用するケースが多いですが、1度に2回分を服用するのは必ず避けましょう。 1度にたくさんの薬を服用すると、効果が効きにくくなったり、副作用が出やすくなったりする恐れがあります。 高血圧の薬(降圧薬)以外に血圧を下げる方法 食事や運動など、生活習慣の見直しをすることで、高血圧の予防や改善が期待できます。降圧薬以外で血圧を下げる方法としては、以下のとおりです。 食事の改善 運動習慣の改善 ここでは、それぞれの方法について詳しく解説します。 高血圧を改善するための生活習慣(食事・運動)の工夫について、以下の記事でも詳しく解説していますので、興味がある方はご覧ください。 食事の改善 食事の際は、塩分や脂肪などが多く含まれている食べ物の食べすぎは控えましょう。 とくに日本人は、高血圧の原因となりやすい塩分の摂取量が多い傾向にあるとされています。高血圧の方の場合、食塩の摂取量は6g/日未満が推奨されています。 減塩をするための工夫としては、以下のとおりです。 香味野菜や香辛料を活用する 外食や加工品を控える 食べすぎを控える 麺類のスープは飲まない また、お酒の飲みすぎも血圧を高める原因の1つです。1日あたりのアルコール摂取量の目安は、男性で20〜30ml、女性で10〜20mlとされています。 アルコール20〜30mlは、お酒で換算すると日本酒1合、ビール中瓶1本に相当します。普段からお酒を飲む方は、この目安を守りましょう。 運動習慣の改善 食生活だけでなく、運動習慣の改善もおすすめです。高血圧を改善するための運動には、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動が推奨されています。 運動時は、ややきついと感じる程度の強度でかまいません。激しい運動をすると、かえって血圧が高まる恐れがあるので、軽めの強度を心がけましょう。 運動時間は毎日30分以上、週180分以上が目安です。ただし、いきなり長時間の運動をはじめると体への負担が強くなるので、最初は無理のない範囲で進めてください。 運動の時間をうまくとれない場合は、以下のような工夫をして、普段の生活内での活動量を増やしてみましょう。 エレベーターではなく階段を使う 近い場所は車ではなく歩き・自転車で移動する 定期的に立って座りっぱなしを防ぐ まとめ|高血圧の薬(降圧薬)は医師と相談しながら正しく服用しよう この記事では、たくさんある降圧薬の作用や特徴について解説しました。高血圧の治療をするためには、降圧薬を正しく継続的に服用することが大切です。 高血圧の治療が順調であれば、降圧薬を途中でやめることもできるでしょう。 また、決して自己判断で薬の服用をやめたり、飲み忘れの際に誤った対応をしたりしないように注意してください。薬の服用の際にわからない点がある場合は、必ず主治医に確認しましょう。 参考文献 American Heart Association News2022.5.23 高血圧治療ガイドライン2019
2024.05.02 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
「高血圧だと腎臓に影響するって聞いたけど、血圧の高さはどう改善すればいいの?」 「そもそも両者にはどんな関係性があるのか知りたい」 このような疑問をお持ちの方も多いでしょう。 結論、高血圧の場合、腎臓に悪影響を及ぼします。血圧が高いと腎臓に負担がかかり腎機能が低下するほか、腎炎や慢性腎臓病などの病気を発症するリスクも高まります。 腎機能を健康な状態に保つには、高血圧を改善するための取り組みを日頃から継続することが大切です。 本記事では、腎臓と高血圧の関係や血圧の高さを改善する方法を解説します。高血圧患者が発症しやすい慢性腎臓病についても紹介しているので、参考にしてみてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 「高血圧と関連のある腎臓病」について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 【基礎知識】腎臓と高血圧の関係 高血圧は、脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる怖い病気を引き起こすことをご存じの方は多いかもしれません。 高血圧はそれだけでなく、腎臓にも負担を与え、徐々に腎臓の機能を低下させていきます。 この章では、高血圧と腎臓の働きについて解説した上で、高血圧が腎臓に与える影響を詳しく説明します。 高血圧とは 高血圧とは、一般的に「最高血圧が140mmHg以上もしくは最低血圧が90mmHg以上、またはその両方」である状態を指します。 血圧は変動しやすいため一時的にこの値を上回ることはよくあり、その場合は問題とはなりません。 腎臓の働き 腎臓は、尿を作る働きがあり、老廃物や余分な塩分を尿として体外に排出してくれます。尿の量を調整する機能もあり、体内の水分量を適切な状態に保ちます。 また、ホルモンを分泌し、血圧の調整を図るのも腎臓の重要な役割です。そのほかにも血液を作るホルモンも分泌しており、貧血にならないように体をサポートしています。 高血圧が腎臓に与える影響 高血圧の状態が長期間続くと、腎臓に負担を与え、腎機能の低下を引き起こします。 腎臓の機能が低下すると、腎炎(腎臓の炎症)を発症しやすくなります。また、慢性的な機能障害を引き起こし、慢性腎臓病と診断される方も少なくありません。 腎臓から血圧への逆の影響もあります。腎臓は血圧を調整するホルモンを分泌する働きがあるため、腎臓の機能が低下すると高血圧になりやすいです。 このように、腎臓と高血圧は密接な関係にあり、互いに影響し合って悪循環を招くことがあります。 高血圧患者が発症しやすい慢性腎臓病について ここでは、高血圧患者が発症しやすい慢性腎臓病について、さらに詳しく解説します。 慢性腎臓病とは、腎機能の障害が慢性的に続いている状態です。 具体的には、機能異常による腎障害が3カ月以上持続または糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)の数値が60mL/min/1.73m²未満に低下した状態が3カ月持続している方を指します。(文献1) 健康な方の糸球体濾過量は100mL/min/1.73m²程度ですので、慢性腎臓病の方では正常値の60%ほどまで機能が低下している状態です。 国内に1330万人の慢性腎臓病患者が存在すると推定されています。これは成人の約8人に1人の割合であり、どなたでも発症しうる身近な疾患です。(文献2) 慢性腎臓病の原因 慢性腎臓病の原因にはさまざまなものがありますが、とくに高血圧や脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病と深く関係しています。 また、加齢による腎機能低下も大きな原因の1つです。 高血圧 脂質異常症 糖尿病 加齢 慢性腎臓病の症状 慢性腎臓病の初期には自覚症状がないことが多いですが、進行すると息切れや倦怠感、むくみといった症状が現れます。 息切れ 倦怠感 むくみ このような症状がみられた場合、腎臓が正常に機能していない可能性があるため治療が必要になります。 慢性腎臓病の治療 残念ながら慢性腎臓病で徐々に低下してしまった腎機能を完全に元に戻す治療法はありません。 慢性腎臓病と診断された場合に行う治療には大きく分けて、進行を抑える治療、そして悪化した腎機能を人工的に維持する治療の2つになります。 治療方法 治療内容 投薬治療 進行を抑える治療 慢性腎臓病の原因となった生活習慣病に対する投薬治療になります。 具体的には、高血圧をお持ちの方であれば降圧薬の内服が一般的です。 腎代替療法 腎機能を人工的に維持する治療 腎代替療法(血液透析や腹膜透析など)と呼ばれる治療になります。 先ほど紹介したような息切れや倦怠感、むくみといった症状を伴う場合にこのような治療が必要になる可能性があります。 高血圧患者が腎臓の機能を改善する方法 高血圧患者が腎臓の機能を改善させるには、日頃の生活習慣や、血圧の状態を適切に管理することが大切です。 具体的な改善策は主に以下の5つです。 食生活を見直す 禁煙する 糖尿病の治療を進める 血圧計測で目標値内にコントロールする 健康診断を受ける 順番に見ていきましょう。 食生活を見直す 高血圧を予防するために最も大切なことは、バランスの取れた食生活を送ることです。 日々の食事では炭水化物、たんぱく質、脂質といった三大栄養素が大部分を占めており、現代の日本人は特に、炭水化物や脂質を摂りすぎる傾向にあります。 このような食生活を続けてしまうと、血圧が上昇し、腎臓に負担がかかります。さらに、高血圧を防ぐためには、塩分を控えた食事も大切です。高血圧や慢性腎臓病を予防するための適切な塩分量は1日当たり6g未満とされています。 ところが、厚生労働省の調査報告書によると日本人が1日に摂取している塩分量の平均値は9.8gです。(文献3)平均すると1日当たり3.8gの減塩が必要となります。 禁煙する 喫煙は血圧を上げる要因となります。たばこに含まれる成分が血管の収縮や柔軟性の低下を引き起こすためです。 そのため、腎機能の改善を図るには、禁煙をして高血圧にならないようにする意識が大切です。 以下の方法が禁煙に役立ちます。 禁煙外来を受診する ニコチンパッチやガムを使う 無理のないペースで、たばこの本数を少しずつ減らしていきましょう。 糖尿病の治療を進める 高血圧と糖尿病は併発しやすく、国内にいる糖尿病合併高血圧患者は約90万人です。実際には、糖尿病患者の半数以上は高血圧を併発しています。(文献4) 糖尿病を発症している方は、糖尿病の治療に専念することで高血圧の改善につながり、ひいては腎臓機能の改善も期待できます。 糖尿病の主な治療は、糖質の量や血糖値の上昇をコントロールする食事療法と、インスリンを注射で投与する薬物療法です。 そのほかにも再生医療の選択肢があります。再生医療は患者様ご自身の細胞を活用した治療方法で、当院では脂肪由来の幹細胞を投与する治療を提供しています。 メール相談、オンラインカウンセリングを承っておりますので、詳しい治療方法を知りたい方はお気軽にお問い合わせください。 血圧計測で目標値内にコントロールする 血圧は家庭用の血圧計で簡単にチェックできるため、日ごろから計測する習慣を付けましょう。 日々血圧を意識しつつ、生活習慣の改善だけで下がりきらない場合には内科のある病院を受診してください。 降圧薬を服用しながら適切な値にコントロールする必要があります。 健康診断を受ける 慢性腎臓病を早期発見するには、定期的に健康診断を受けることが大切です。 慢性腎臓病の初期段階では、腎機能の低下を生じていても自覚症状がみられない場合がほとんどです。 そのため、早期発見のためには健康診断の血液検査で血清クレアチニン値や血中尿素窒素など、腎臓の機能に関わる項目をチェックしましょう。 これらの項目が異常と判定された場合には慢性腎臓病の可能性がありますので、早めに内科を受診し、早期の検査をおすすめします。 腎臓機能と高血圧の改善策を知って日々の過ごし方を見直そう 血圧と腎臓は密接な関係にあるため、それぞれの状態を良好に保つ意識が健康維持に繋がります。 高血圧は日頃の食生活の改善、喫煙習慣、運動習慣、定期的な血圧チェックにより、早期発見と適切な対策が可能です。 本記事で紹介した改善策を参考に、腎機能の向上を目指しましょう。 腎臓と高血圧の改善に関するよくある質問 腎不全と高血圧に関連のあるレニンとはなんですか? レニンは、血圧を上げる働きのあるホルモンを作るために必要な酵素です。つまり、レニンの分泌量が増えると、高血圧になりやすいです。 高血圧の状態が長期間続くと、腎機能が著しく低下し、正常に機能しなくなる腎不全に進行する可能性があります。 高血圧患者が腎臓を検査する方法は? 高血圧患者の腎臓状態をチェックする代表的な検査は以下のとおりです。 検査の種類 内容 尿検査 尿に含まれる成分を検査 たんぱく質や血液などが混入し、異常が認められると腎機能低下の可能性があります 血液検査 クレアチニン(老廃物の一種)の濃度を検査 クレアチニン値の濃度が高いと腎臓の機能低下が疑われます 画像検査 腎臓の形・大きさを画像で検査 腎臓の萎縮や腫瘍が確認できます 腎生検 腎臓の組織を採取する検査 尿検査・血液検査・画像検査では判断困難な場合に正確に診断します 検査は状態の進行具合や医師の判断によって選択されます。 低血圧の場合も腎臓に負担がかかりますか? 低血圧の状態が長く続くと、体内に酸素や栄養が行き届かなくなり腎臓にも負担を与えます。 参考文献 (文献1) エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023|東京医学者 日本腎臓学会編集 (文献2) エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018|東京医学者 日本腎臓学会編集 (文献3) 令和5年国民健康・栄養調査結果の概要|厚生労働省 (文献4) 糖尿病の病態と高血圧一なぜ糖尿病では高血圧合併例が多いのか一|内分泌·尿病科
2024.04.30 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
高血圧の薬とグレープフルーツなどの柑橘類は、相互作用によって薬の効き目が強まってしまうため注意が必要です。 本記事では、高血圧の薬との飲み合わせに注意したい『柑橘類』について紹介します。 ご家族の中に高血圧の方がいる場合、「脳梗塞」や「脳出血」などの発症すると命に関わる病気につながらないように注意しましょう。 「高血圧の治療で効果が見られない」「別の治療法があれば知りたい」という場合、傷付いた血管の改善が期待できる再生医療も選択肢の一つです。 再生医療は傷付いた血管や高血圧によって発症する脳梗塞の症状改善が期待できる治療法です。 ご家族に高血圧の方がいるなら患者さまの将来のためにも、手遅れになる前に公式LINEの情報をぜひご参考ください! \公式LINEでは再生医療に関する情報や症例を公開中!/ ▼ご家族族の肝硬変が悪化して手遅れになる前に! >>【公式LINE限定】再生医療の治療法や症例を今すぐ見てみる 高血圧薬とグレープフルーツをいっしょに食べてはいけない理由は「フラノクマリンが含まれるため」 グレープフルーツと一部の薬を一緒に摂取することは避けるべきとされています。 理由としては、グレープフルーツに含まれる特定の化学成分(主にフラノクマリン類)は、人体内で薬物を分解する酵素(とくにCYP3A4というシトクロムP450酵素)の働きを阻害するからです。 この酵素は、薬物をより無害な形に分解し、体外へ排出するために重要です。しかしこの酵素の阻害は、薬物の体内での濃度を予期せず増加させ、副作用が起こるリスクを高めてしまいます。 血圧を下げる作用を持つ薬剤(降圧薬)の一群に『カルシウムチャネル拮抗薬』がありますが、こちらを一例としてご紹介します。 カルシウムチャネル拮抗薬の薬効は、血管を拡張させることで血圧を下げることです。しかし、フラノクマリン類との相互作用により、これら薬剤の効果が強まり、低血圧やめまい、倦怠感などの副作用を引き起こすリスクが高まってしまいます。 高血圧の薬にはカルシウムチャネル拮抗薬だけでなく、さまざまな作用の仕方、成分がありますが、グレープフルーツを含む柑橘類は同じく避けましょう。 これが降圧薬とグレープフルーツを一緒に摂ってはいけない理由です。 さらに、高血圧の薬以外にもグレープフルーツが影響を及ぼす薬剤として、以下のようなものが挙げられます。 高血圧治療薬(例:カルシウムチャネル拮抗薬 フェロジピン) コレステロール低下薬(例:スタチン類) 抗不安薬 免疫抑制剤 抗アレルギー薬 これらの薬剤も、CYP3A4酵素によって代謝されるため、グレープフルーツやグレープフルーツジュースとの同時摂取はとくに注意が必要です。 健康を守るためにも、薬を服用している場合は、柑橘類の摂取に関して医師や薬剤師と相談しましょう。 また、高血圧については以下の記事でも紹介していますのであわせてご覧ください。 グレープフルーツ以外のフラノクマリン含有量の高い果物(柑橘類)一覧 グレープフルーツ以外にも、高血圧治療薬と相互作用を起こしやすい柑橘類の一覧は以下の通りです。 出典:酵素免疫測定法による食物・生薬中のフラノクマリン類含量のスクリーニング それぞれ「果汁」と「果皮」でフラノクマリン類含有量が異なることもあるため、上記の柑橘類には注意しましょう。 当院の公式LINEでは、先端医療である再生医療に関する詳細や症例を公開しております。 再生医療は高血圧で傷ついた血管に対しても改善が期待できる治療方法なので、将来的な不安がある方はこの機会にぜひ知っておきましょう。 ▼傷付いた血管の治療に再生医療が注目 >>【公式LINE限定】再生医療ガイドブックを見てみる 果汁の場合 果汁ではスウィーティー、メロゴールド、バンペイユがグレープフルーツと同程度の結果でした。 そして、フラノクマリンの量が増えるとCYP3A4の活性が阻害(働きが妨げられること)される強さの度合いはほぼ比例すると報告されています。 そのため、スウィーティー、メロゴールド、バンペイユおよびレッドポメロはグレープフルーツと同様に、フラノクマリン類による相互作用に注意が必要であると考えられます。 ダイダイ、ブンタン(ザボン)についてはやや少ないですが、これらも注意が必要です。 なお、スウィーティーとレッドポメロはすでに生物の体内でもグレープフルーツと同様にCYP3A4の働きを妨げることが報告されていますが、メロゴールドについてはまだ報告されていません。 果皮の場合 また、果皮についてはメロゴールドとスウィーティー、甘夏みかんおよびサワーポメロがグレープフルーツに近い結果でした。さらに、フラノクマリン類は、ほとんどの柑橘類で、果汁よりも果皮の方に数十倍から数千倍多く含まれていることがわかりました。 レモン・オレンジは相互作用の心配が少ない柑橘類 一方で、レモンや日向夏、ネーブルオレンジ、スウィートオレンジ、温州みかん、ポンカン、イヨカン、デコポン、ゆず、カボス、すだち、キンカン、バレンシアオレンジといった柑橘類については、少なくとも果汁にフラノクマリンはほぼ含まれていない(N.D.:未検出)ので、CYP3A4との相互作用の心配は少ないのではないかと考えられます。 しかし前述したように、フラノクマリン類は、ほとんどの柑橘類で果汁よりも果皮の方に数十倍から数千倍多く含まれていることがわかっています。果汁については心配の少ない柑橘類でも、果皮については、注意が必要です。 高血圧の薬と一緒に柑橘類を食べるときの4つの注意点 高血圧の薬と柑橘類を一緒に食べるときは、以下4つのポイントに注意する必要があります。 フラノクマリンの含有量が低い柑橘類を食べる 果物漬けやマーマレードなど加工食品にも注意を払う どうしても食べたいときは医師や薬剤師へ相談する フラノクマリンが多い果物を食べた場合は安静にし体調の変化がないか確認する フラノクマリンの含有量が低い柑橘類を食べる 柑橘類のなかには、フラノクマリンの含有量が少ないものもあります。 ミカンやオレンジなどの柑橘類で、食べたいと感じる気持ちを落ち着かせましょう。 また、先述したように皮は含有量が高い場合もあります。含有量をあらかじめ調べておくと良いでしょう。 果物漬けやマーマレードなど加工品にも注意を払う 先ほど述べたように、柑橘類の果汁よりも「果皮」にフラノクマリンが多く含まれていることがわ分かっています。そのため、果皮の果物漬けや、マーマレードなどの加工食品を食べる際にも、十分な注意が必要です。 ただし、グレープフルーツ由来のフラノクマリンなどの成分は小腸のCYP3A4に数日間影響を与えます。 そのため、降圧薬を飲む場合には、グレープフルーツジュースで薬を飲むことを避けるだけでは不十分と考えられます。 日常生活の中で、グレープフルーツジュースだけでなく、果汁やサワー、マーマレードなどの加工食品を摂取するのは避けた方が良いでしょう。 ミックスフルーツジュースを飲む際も、グレープフルーツが含まれているかどうかを確認する必要があります。 どうしても食べたいときは医師や薬剤師の意見を参考にしよう 薬剤師や医師は、高血圧薬との飲み合わせに関する専門的な知識を持っています。 薬を服用中の患者は、新しい食品やサプリメントを摂取する前に必ず医療の専門家に相談しましょう。 たとえば、主治医である血圧の診療に長けている医師や、治療薬に精通した薬剤師などは、自分の状況に合ったアドバイスをくれるでしょう。 高血圧の治療中に、自己判断で、新しいサプリメントなどを飲み始めることはあまり勧められません。 摂取すべきでない食品や飲み物、サプリメントを避けることで、高血圧の治療効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを最小化できるでしょう。 代替となる安全な飲み物や食品 グレープフルーツや特定の柑橘類が持つ特定の薬剤との相互作用は、高血圧治療薬を含むさまざまな薬の効果に影響を及ぼす可能性があります。 しかし、柑橘類にはビタミンCをはじめとする、健康的な食生活にとって大切な食品であるという側面もあります。 そこで、柑橘類のように高血圧の薬との相互作用を避けるため、他のビタミンCが豊富な食品への代替が推奨されます。 ビタミンCは抗酸化作用を持ち、免疫機能のサポートやコラーゲンの生成に必要な栄養素です。 おすすめの代替食品 キウイ:キウイはビタミンCが豊富であり、1個のキウイで1日のビタミンC推奨量のほぼ100%を提供します。また、抗酸化物質、食物繊維、ビタミンKも豊富に含まれています。 赤ピーマン: 野菜の中でもとくにビタミンCが豊富で、グレープフルーツや柑橘類を避ける必要がある人にとって優れた選択肢です。サラダや料理の彩りも良くしてくれ、栄養も豊富なためおすすめです。 フラノクマリンの多い果物を食べてしまった場合には安静にし体調の変化を確認する もしも知らずにフラノクマリンの多い果物を食べてしまった場合には、急激な体調の変化が起こる可能性があります。 軽度のめまいや頭痛から、血圧が下がるとショック症状や心臓にかかわる症状が出るおそれもあります。 そのため、運動や外出などは避け、座ったり休んだりしながら様子を見ましょう。 明らかな体調の変化が起こった場合には、受診し医師の指示を仰ぐ必要があります。 まとめ|フラノクマリンの多い果物(柑橘類)には要注意 薬との飲み合わせが気になるけど、それでも柑橘が食べたいという時があると思います。 グレープフルーツ以外にも相互作用を起こしやすい柑橘類もありますが、その心配の少ない柑橘類もあります。 しかし、フラノクマリン類は、ほとんどの柑橘類で果汁よりも果皮の方に数十倍から数千倍多く含まれていることがわかっています。 果汁については心配の少ない柑橘類でも、果皮については注意が必要しましょう。 柑橘類を選ぶ際には、この記事の内容をご参考にしていただければ幸いです。 また、当院(リペセルクリニック)の公式LINEでは、先端医療である再生医療に関する詳細や症例をご覧いただけます! できなかったことが再びできるようになる可能性がある再生医療について「どのような治療を行うか」ぜひ知っておきましょう。 ▼傷付いた血管の治療に再生医療が注目 >>【公式LINE限定】再生医療ガイドブックを見てみる また、高血圧の薬の種類や副作用については以下の記事でも解説しておりますのでチェックしてください。 参考文献 Bailey, D. G., Malcolm, J., Arnold, O., & Spence, J. D. (1998). Grapefruit juice-drug interactions. British Journal of Clinical Pharmacology, 46(2), 101-110. 酵素免疫測定法による食物・生薬中のフラノクマリン類含量のスクリーニング.医療薬学.2006;32(7):693-699. p696 3.高血圧 | 薬事情報センター | 一般社団法人 愛知県薬剤師会 グレープフルーツと薬物の相互作用 – 「 健康食品 」の安全性・有効性情報 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「Q2 グレープフルーツジュースを避けるべきくすりがあるそうですが、どんなくすりですか。」 Chambial S, Dwivedi S, Shukla KK, John PJ, Sharma P. Vitamin C in disease prevention and cure: an overview. Indian J Clin Biochem. 2013 Oct;28(4):314-28.
2024.04.25 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
40代、50代になってから急に血圧が高くなったのはなぜ? 血圧とホルモンバランスには関連はあるの? このような悩みを持つ女性も多いのではないでしょうか。 高血圧は生活習慣病の一つとして広く知られていますが、女性の場合は更年期障害が原因のケースもあります。 女性ホルモンであるエストロゲンの減少により、血圧が下がりにくくなるためです。 本記事では、女性に多い高血圧の原因や、自分でできる対処法について解説します。 記事を最後まで読めば、女性由来の高血圧について正しい知識が身につくでしょう。 また、高血圧の改善について、専門科に相談したいという方はぜひ当院「リペアセルクリニック」の「メール相談」「オンラインカウンセリング」をご活用ください。 40代・50代女性の高血圧は「更年期による女性ホルモン減少」が原因 更年期の変化によって生じる高血圧を「更年期高血圧」と呼びます。 高血圧を放置しておくと、心臓病や脳血管障害につながることもあります。 本章を参考に、なぜ更年期になると高血圧が起こるのかを理解し、きちんと対策をしましょう。 女性ホルモンの減少によって生じる更年期障害 女性ホルモンには、エストロゲンとプロゲステロンの2種類があります。更年期になると卵巣機能が低下し、それに伴い女性ホルモンも減少します。このうちエストロゲンの減少が、更年期障害の発症に大きく関わっていると考えられています。 更年期になると卵巣機能が低下し、それに伴い女性ホルモンも減少します。 ホルモンバランスを保てなくなったことに対して、脳がそれを補おうと必死に身体にさまざまな命令を送り、それが更年期症状として現れてしまうのです。 多岐にわたる更年期症状ですが、高血圧以外には以下のようなものが挙げられます。 血管運動に関わる症状(ほてり、のぼせ、発汗、動悸、息切れ、むくみなど) 精神症状(頭痛、不眠、不安感、イライラ、抑うつ、無気力など) 消化器症状(便秘、下痢、胃の不快感、胸焼け、吐き気など) 皮膚症状(かゆみ、湿疹など) 運動器に関わる症状(肩こり、腰痛、背中の痛み、関節痛など) そのほか(疲労感、排尿トラブル、不正出血など) 症状が軽度で済む人もいれば、日常生活に支障が出るくらい重い症状が出る人もいます。軽度の場合は更年期症状、症状が重くなると更年期障害となります。(文献1) 主にエストロゲンの減少が高血圧を招く 私たちの身体は、常に一定の血圧を保持できるよう機能しており、高くなりすぎず、低くなりすぎないように調整されています。 エストロゲンは、その調整因子の一つであり、血管を広げて血圧を下げる働きをしています。更年期による卵巣機能の低下によってエストロゲンが減少すると、血圧が下がりにくくなってしまうのです。 また、自律神経の乱れも更年期高血圧に大きく関わる因子です。 自律神経には、交感神経と副交感神経があります。活発な時や緊張状態の時には交感神経が優位となり、血管が収縮して血圧が上昇します。 逆に休んでいる時や就寝中は副交感神経が優位となり、血管は拡張して血圧が下がります。 このように血圧調整にとても大切な自律神経ですが、女性ホルモン低下に追いつけないことでパニックになった脳は、さまざまな命令を身体に送る中で、自律神経も乱してしまうのです。 自律神経の乱れは血圧変動のみならず、上記に述べたような精神症状や身体症状の原因にもなっています。 このようにエストロゲンの減少と自律神経の乱れは、本来私たちに備わっている血圧調整の歯車を狂わせ、結果的に更年期高血圧を引き起こすのです。 更年期の女性がやるべき高血圧の対策7選 今日からご自身で始められる、更年期高血圧の対策は以下の7つです。 血圧測定を習慣化する 塩分を控える 体重管理を行う 運動習慣を取り入れる 睡眠時間を十分に取る ストレスを溜めない イソフラボンを摂取する 本章では、各項目について解説します。 血圧測定を習慣化する 血圧は普段の状態と、高くなっているときの違いを探すことが大切です。 以下のポイントを意識して、血圧の測定を行いましょう。 血圧上昇が一時的なものなのか 血圧が高い状態がずっと続いているのか どのような時に高くなるのか 外出時は精神的・身体的・環境的因子が血圧に影響することも多いため、自宅での血圧測定を推奨します。 なお「高血圧治療ガイドライン2019」では、血圧測定は、手首型の機器よりも二の腕で測るタイプを勧めています。(文献2) 定期測定は起床時と就寝前の2回、そしてめまいや動悸など、上記の更年期症状が出た際にも血圧を測定し、血圧の推移とともにどのような状況で血圧が上がったのかを書き留めておくと良いでしょう。 自分の状況を把握するだけでなく、医師からの診察の際にも役立ちます。 塩分を控える 塩分過多は高血圧の原因として最も多いとされています。 塩分を多く摂ると、血液中の塩分濃度が上がるため、それを薄めようと血管内の水分が増えます。そのため、血管を押し拡げる力が強くなり、血圧が上がってしまうのです。 近年はとくに、インスタント・冷凍食品の改良化や食事のデリバリー事業などが進み、便利な時代となりました。しかし、既製品や外食は塩分量とカロリーが高くなる傾向にあります。減塩調味料の使用や野菜多めの食事を心がけるようにしましょう。 体重管理を行う 血圧の管理には、体重管理も大切です。 肥満の人は食べ過ぎによるインスリンの出過ぎから、交感神経が刺激されカテコールアミンという物質が分泌され、血圧を上げてしまいます。さらに、脂肪細胞が肥大してアンギオテンシノーゲンという物質が出ることでも血圧上昇を引き起こします。 食事や運動を組み合わせてカロリーを調整し、BMI25以下を目指すようにしましょう。 また、食べ過ぎで塩分を過剰摂取してしまい、血圧上昇につながっている可能性もあります。日頃から減塩を意識して食事を摂りましょう。 運動習慣を取り入れる 仕事や家事に追われて、なかなか運動の時間をとるのが難しい方もいらっしゃいます。 1日の中で、少し早起きしてウォーキングをしてみる、10分のエクササイズ動画を真似してみる、休日にスポーツセンターに行ってみる、一駅分歩いてみる、など小さなことで構いません。自分のできる範囲内で何か始めてみましょう。運動するとイライラした気持ちも収まり、身も心もスッキリします。 睡眠時間を十分に取る 睡眠不足は交感神経を刺激し、高血圧を引き起こします。 しかし更年期障害の一つに不眠もあり、夜なかなか寝付けない人もいるかと思います。 具体的な方法は以下の通りです。 就寝時間の2時間前までに食事を摂り終える 布団に入ったらスマートフォンはいじらない 夜にカフェインやお酒は控える リラックス効果のある香りや音楽をつける ここまでの対策は自身でできることですが、やはり重症化予防の鍵は早期受診となります。 高血圧を適切に治療しなかった場合、心臓や脳の血管に障害を生じ、心筋梗塞や脳卒中のリスクが上がります。こうならないためにも、適切な治療を受けることが必要です。 ストレスを溜めない 体や心にかかるストレスは交感神経を興奮させ、血圧を上昇させます。 ストレスが強い、長く続いているという方は要注意です。 自分に合ったストレス解消法を見つけ、ストレスを溜めないことも血圧管理には大切です。 ストレス解消法の一例は、以下の通りです。 体を動かす 趣味に没頭する 日光を浴びる 好きな音楽を聴く 動物と触れあう 自分なりのストレス解消法を見つけ、高血圧を予防・改善させましょう。 イソフラボンを摂取する イソフラボンは、更年期に減少する女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをします。そのため、イソフラボンを摂取すると、更年期障害による心や体の症状の改善が期待できます。 イソフラボンは大豆、豆腐、納豆などのマメ類に多く含まれます。 さらに、LDLコレステロールを下げる働きもあり、動脈効果を防ぎます。そのため、動脈硬化による血圧上昇の予防にもなるのです。(文献3) まとめ|更年期女性の高血圧はエストロゲン減少が原因!医療機関の受診も検討しよう 更年期高血圧は、更年期を迎える女性の身体の変化に伴って生じるものです。 更年期を過ぎると血圧が元に戻ることもありますが、多くの場合は加齢の変化と相まって高血圧のままとなります。命を脅かす病気に発展しないよう、血圧のコントロールを行うことが大切です。 毎日の生活習慣を改善し、早期に病院を受診しましょう。このコラムがご参考になれば幸いです。 血圧が高くなってきて悩んでいる方は、当院の「メール相談」「オンラインカウンセリング」もぜひご活用ください。 また、高血圧とストレスについて、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。 参考文献 (文献1) 公益社団法人 日本産科婦人科学会,更年期障害 (文献2) 日本高血圧学会. 高血圧治療ガイドライン2019. (文献3) 久保田芳郎 ほか. 大豆イソフラボンアグリコンの更年期障害に対する効果について. 公益社団法人 日本人間ドック学会. 2002:17(2), p172-177
2024.04.22 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
高血圧の予防と改善!高い血圧を下げるには食事・運動・薬でコントロール! 高血圧を放置すると、脳卒中・心疾患・腎臓病など命に関わる病気に発展するリスクがあります。 それにもかかわらず、国内で4300万人と推計されている高血圧罹患者のうち、適切に血圧がコントロールされているのはたった3分の1といわれています。残りの3分の2の方はコントロール不良あるいは未治療、その半数は自分が高血圧であることに気づいてすらいないのです。 高血圧は、気がつかない間に重大な病気を引き起こし得るため「サイレントキラー」とも呼ばれています。 血圧を予防・改善するには何をすれば良いのでしょうか。鍵となるのは、食事や運動の見直しと適切な薬の使用です。 本記事では、高血圧の原因や症状、基準値などの基本的な情報とともに、効果的な対策法を分かりやすく解説していきます。 高血圧の原因:何が血圧を上げるのか 高血圧には、原因別に「二次性高血圧」と「本態性高血圧」の2つがあります。 二次性高血圧 二次性高血圧は、特定の病気が原因で血圧が上昇するケースを指します。 その病気を治療することで、高血圧を改善することが期待できます。 本態性高血圧 本態性高血圧は、複合的な原因で起こる高血圧のことです。 原因として、体質や遺伝的な要素に加え、不適切な食事・肥満・運動不足・喫煙などの生活習慣が関係しています。特に日本人は塩分をとりすぎやすく、血圧上昇に大きな影響があります。血圧を下げるためには減塩をはじめとした生活習慣の改善に取り組むことが必要です。 二つの高血圧のうち、圧倒的に多いのは本態性高血圧です。この記事でも主に本態性高血圧について取り上げていきます。 高血圧診断の基本:血圧の基準値とは 高血圧の診断は、診察室と自宅それぞれの血圧測定で行います。 まず、診察室血圧が【収縮期血圧140/拡張期血圧90mmHg以上】であれば自宅で血圧を測定します。 自宅の血圧が135/85mmHgであれば高血圧の確定診断となります。自宅での血圧が測定できない場合は、診察室の血圧だけでも「高血圧」と考えます。 では、基準値より低ければ正常かというと、そうではありません。 「正常血圧」は、診察室で測った血圧が120/80mmHg未満、自宅で測った血圧が115/75mmHg未満の場合を指します。 高血圧でなくても、正常血圧より高いグレーゾーンがあるのです。 病院での測定値で120〜139/80〜89mmHg、家庭血圧で115〜134/75〜84mmHgの場合が、以下のグレーゾーンに該当します。 日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2019 高血圧の診断を満たさなくとも、血圧が高くなるにつれて脳卒中や心筋梗塞などの「脳心血管の疾患」が起こりやすいのです。また、グレーゾーンの方は生涯のうちに「高血圧」の基準を満たす可能性も高くなります。たとえ診断に至らなくても、血圧が高めの方は対策をとることをおすすめします。 また、自宅での血圧が高血圧に該当しなくても、診察室血圧のみが高血圧の基準を満たす場合は「白衣高血圧」といいます。白衣高血圧の方は高血圧でない方と比べて、将来的に脳心血管の病気を起こすリスクが高く、要注意です。 自宅血圧測定の方法:計測する時間帯や回数 自宅で血圧を測定することは高血圧の診断に重要ですが、それ以上に治療においても重要です。家庭血圧が降圧治療の一番の指標になるからです。 家庭血圧が正常範囲になることが、高血圧対策が有効と判断する重要な材料になるのです。高血圧と診断されたら、家庭血圧を毎日測って把握することが治療の第一歩になります。 では、家庭で血圧を測定するときのポイントをお伝えします。 家庭血圧測定のポイント 1日の中で血圧を測る時間帯は、朝と夜の両方が基本です。 朝は起きてから1時間以内に測ります。朝ごはんを食べる前、薬を飲む前、トイレに行った後が良いです。測定前に水分を取ることは構いません。夜は寝る前に測定しましょう。 血圧測定時は、1〜2分間じっと落ち着いてから行います。測る前に深呼吸をしてリラックスしましょう。急いで測定すると、正確な血圧が出ないことがあります。 血圧は原則的には、都度2回測定します。2回の結果はどちらとも記録しておきましょう。つまり、朝2回、夜2回、計4回測ります。 起床後 1時間以内に2回 就寝前 2回 2回測った血圧の値は、平均値で判断します。 高血圧の診断や治療の効果を判断するには、5〜7日間の血圧の平均値を用います。そのため、毎回の血圧測定毎に「高かった」「今日は下がっている」と一喜一憂することはあまり意味がありません。 家庭血圧測定で一番大事なことは、継続することです。ご自身の生活スタイルに合わせて測定時間を調整しましょう。 毎日決まった時間に測定することが望ましいですが、難しい場合は担当医師と相談しましょう。 高血圧の自覚症状:頭痛・肩こりとの関係と潜むリスク 高血圧のみでは自覚症状がないことが多いです。人によっては、血圧が高いと軽度の頭痛や肩こりなどの症状が現れることがあります。 一方で、血圧が急激に高くなることによって危険な状態に陥る場合もあります。それが、「高血圧緊急症」です。脳・心臓・腎臓・大きな血管などに障害をきたし、放置すると命に関わります。多くの場合は180/120mmHg以上の高度の血圧上昇により起こるものです。 高血圧緊急症の例として次のような疾患が含まれます。 〈高血圧緊急症の例〉 高血圧性脳症 脳卒中 急性大動脈解離 急性心不全 急性心筋梗塞 急性腎不全 とくに「高血圧性脳症」は耳慣れない言葉かもしれません。これは急激に血圧が上昇することで、脳の血流が必要以上に増加して脳が浮腫む病気です。 そのまま放置すると脳出血や昏睡状態を引き起こし、命を落とす危険性もあります。急激な血圧上昇に加えて悪化する頭痛・吐き気・嘔吐・視力の障害・意識障害・痙攣などの症状は、緊急で受診をする必要があります。 高血圧対策!生活習慣の見直しで予防・改善 高血圧は生活習慣病であり、生活習慣を見直すことは高血圧の予防・改善の第一歩です。 具体的に改善すべき点の例を以下に挙げます。 〈高血圧対策において見直すべき項目〉 塩分を控えめにしているか 食事の内容は野菜・果物・魚などが中心になっているか 運動習慣があるか 適正な体重(BMI 25kg/m2未満)を維持できているか お酒を飲み過ぎていないか(エタノールで男性20-30mL/日、女性で10-20mL/日以下) タバコを吸っていないか このような項目の1つだけを見直したとしても、一気に10mmHgも20mmHgも血圧が下がるものではありません。2つ、3つと可能な限り複数合わせて取り組むことで、大きな効果をもたらす可能性はあります。 降圧薬を飲んでいる状況でも、生活習慣を改善することで薬を減らすことができるかもしれません。それぞれの項目は互いに関連することも多いため、まずはできることから始めましょう。 食事療法で高い血圧を下げるには 食事で血圧を下げるのに重要な見直しポイントは「減塩」と「食事の内容と量」です。また、「飲酒量のコントロール」も大切です。一つずつ解説していきましょう。 減塩について 減塩については、1日に6g未満を目標にします。 厚生労働省の令和元年国民健康・栄養調査によると日本人の1日の塩分摂取量の推定は10.1gとされています。多くの日本人にとって6g未満の塩分量の食事は、非常に薄味に感じるでしょう。 医療機関では尿検査で1日の塩分量の推定をすることができます。あくまで推定値で誤差はありますが、自分がどのくらいの塩分を取っているかを知る一つの目安になるでしょう。気になる方はかかりつけの病院や最寄りの医療機関で相談してみてください。 減塩のポイントは、出汁やスパイス、お酢などを上手に使うことです。また、漬物やハム・ソーセージなどの加工食品には食塩が多く含まれるためなるべく避けましょう。味噌汁やラーメン・うどんなどの汁は飲み干さないようにしましょう。 食事の内容と量 食事の内容としては、野菜・果物・魚を積極的に摂り、肉類など動物性の脂肪は控えめにすることが重要です。 野菜や果物に多く含まれるカリウムは、塩分に含まれるナトリウムを排出させて血圧を下げることがわかっています。ただし、カリウム摂取については腎臓病の方は制限が必要な場合もあります。通院中の方は主治医の指示に従いましょう。 肉や高脂肪の乳製品などに多く含まれる飽和脂肪酸が過多になると、血中のコレステロールが増え動脈硬化が進み血圧が上がります。一方で魚や多くの植物性油脂・ナッツなどに多く含まれる不飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを減らし血圧を下げる効果があります。 そして、どんなに体に良い食事でも食べ過ぎは肥満のもとです。肥満は血圧上昇とも関連するため、腹八分目を心がけましょう。 飲酒量のコントロール 飲酒習慣は血圧を高くします。節酒も血圧を下げるのに有効です。高血圧がある方の飲酒量の目安は1日あたりエタノールで男性20-30mL、女性で10-20mL以下です。 〈1日あたりの飲酒量の目安:男性の場合〉 日本酒 1合 ビール 中瓶1本 焼酎 0.5合 ウイスキー ダブル(約60mL) ワイン 2杯 ※女性はこの半分を目安にしてください。 運動療法で血圧は下がる?有酸素運動のすすめ 運動は血圧を下げるだけでなく、肥満、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の予防や改善にも効果があります。 おすすめは有酸素運動です。ウォーキングやジョギング、エアロビクス、水泳など、ご自身が楽しいと感じるものが継続しやすいでしょう。 「少しきつい」と感じるくらいの運動強度で、1日30分以上行ってください。 毎日続けるのが難しい場合は、まずは週に1回でも運動習慣を作るところから始めてみてはいがかでしょうか。 薬物療法による高血圧のコントロールについて知ろう 高血圧の薬は様々な作用機序で血圧を下げます。代表的なものは以下の通りです。 〈代表的な降圧薬〉 ACE阻害薬、ARB:血圧を上昇させるホルモンの作用を阻害する カルシウム拮抗薬:血管を拡張させて血圧を下げる 利尿薬:余分な水分やナトリウムを体外に排出する β遮断薬:交感神経を抑制して心収縮を抑えて血圧を下げる 血圧を下げる薬を内服する上で大切なことがあります。それは、血圧が下がっても自己判断で中止しないことです。 どのような降圧薬であっても、効果はあくまで一時的なものです。飲み始めて血圧が下がったからと内服をやめてしまうと、元の高い血圧に戻ってしまいます。ただし、生活習慣を良くしていくことで徐々に減薬・中止をすることができる方もいます。薬の調整は、運動や食事に気をつけながら、家庭血圧の測定結果をもとに医師と相談して決めましょう。 まとめ・高血圧は食事・運動・薬でコントロール! 本記事では高血圧の原因をはじめとした基本情報と、効果的な対策について説明しました。 高血圧の多くを占める本態性高血圧では、塩分のとりすぎをはじめとした生活習慣が大きく関わっています。症状がないからといって高血圧を放置すると、命に関わる病気を起こしかねません。 血圧が気になるのであれば、まずは定期的な血圧測定を行い日々の血圧がどのくらいかを把握するように努めましょう。 高血圧対策の第一歩は生活習慣を改善することです。一気に運動も食事も改善しようとするのが難しければ、できるところから始めてみましょう。薬をすでに処方されている方は、しっかり続けることもお忘れなく。 本コラムが皆様の健康的な生活に少しでも役立ちますと幸いです。 参考文献 厚生労働省 令和元年国民健康・栄養調査報告 日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2019 ▼こちらもあわせてお読みください。
2024.04.15 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
「ストレスで血圧が上がるのは本当?」「ストレスによる高血圧はどうしたらいい?」と疑問を抱いている人も多いのではないでしょうか。 実際、ストレスは血圧に大きな影響を与える原因の1つです。 この記事では、医師監修のもとストレスが血圧を上げるメカニズムや、高血圧を予防する生活習慣について解説します。 本記事を読めば、ストレスと血圧のメカニズムを正しく理解し、健康管理に役立てることができるでしょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では高血圧によって引き起こされる疾患の治療も行っております。 気になる症状がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 ストレスで血圧が上がる3つのメカニズム 日常生活でストレスを感じると、体はさまざまな反応を示します。その中でも血圧の上昇は代表的な症状の1つです。 ストレスによって血圧が上がる原因として、以下の3つが挙げられます。 ストレスホルモンが血管を収縮させる 交感神経が活発になる 血管が収縮し血圧が上昇 本章では、ストレスが交感神経を刺激し、ホルモンの分泌や血管の収縮を引き起こすメカニズムを解説します。(文献1) ストレスホルモンが血管を収縮させる ストレスを感じると、体内でコルチゾールやアドレナリンといったホルモンが分泌され、血管を収縮させます。 体をストレスから守るために必要な一方で、血管を収縮させる作用も持ち合わせているため、血管が細くなり、血圧が上昇します。 たとえば、大きなプレッシャーを感じた時、心臓がドキドキしたり、顔が赤くなったりするのは、ストレスホルモンが分泌され血管が収縮しているサインです。 この作用が血圧上昇の要因となります。 交感神経が活発になる ストレスを感じると、自律神経の1つである交感神経が活発になります。 交感神経は、人が活動する際に働き、心臓の動きを速めたり血管を収縮させたりします。 ストレス時には交感神経が過剰に働き、心拍数の上昇や血管の収縮が起こり、結果的に血圧が上がる仕組みです。 こうした反応は自然な防御反応ですが、長期間続くと健康への悪影響が懸念されます。 そのため、ストレスをうまく管理する習慣が、健康維持には必要だといえるでしょう。 血管が収縮し血圧が上昇 ストレスを感じると、血管が収縮して血液が流れる抵抗が強くなり、血圧が上昇します。 この状態が長引くと、心臓や血管に負担がかかり生活習慣病のリスクが高まる可能性もあります。 血圧の急上昇を防ぐためには、深呼吸や軽い運動などで血管をリラックスさせる時間を設けることが大切です。 また、高血圧と生活習慣病の関係については以下の記事でも詳しく紹介していますので、参考にしていただけると幸いです。 【測定時】ストレスで血圧が変動する2つのケース 血圧を測定するときの環境や状況によっても、数値が変動することがあります。主なケースは以下の2つです。 職場高血圧 白衣高血圧 それぞれの原因を理解し、血圧変動を和らげる対策を見つけましょう。 仕事のストレスにより血圧が上昇する「職場高血圧」 職場高血圧とは、勤務中や仕事に関連したストレスによって血圧が高くなる状態を指します。 仕事のプレッシャーや締め切りへの焦りは交感神経を活性化させる原因です。心拍数が上がることで血管が収縮し、高血圧を引き起こします。 職場高血圧を防ぐためには、仕事の合間に適度な休憩をしたり、深呼吸をしたりすることを心がけましょう。 リラックスできる環境作りが、「職場高血圧」対策の第一歩となります。 病院での緊張により血圧が上昇する「白衣高血圧」 病院で測定するときだけ血圧が高くなる場合、白衣高血圧の可能性があります。 医師や看護師の前で緊張することで、交感神経が活発になり血圧が一時的に上がる現象です。測定後には自然に戻るケースが大半ですが、放置すると日常的な高血圧につながる恐れもあります。 対処法として、深呼吸をしてリラックスした状態で測定したり、普段から自宅で血圧を測る習慣を付けたりすることが挙げられます。 ストレスに左右されない状況下で、正確な血圧の数値を把握しておきましょう。 ストレスによる高血圧は「生活習慣の改善」で予防できる ストレスによる血圧上昇は、放置すると高血圧につながる恐れがあるものの、生活習慣の見直しによる予防が可能です。 本章では、ストレスによる高血圧を予防するための、具体的な生活習慣の改善策を5つご紹介します。 適度な運動をする バランスの取れた食事を摂る 睡眠をしっかりとる 禁煙やアルコールを控える リラックスする時間を作る できることから始めて健康な毎日を目指しましょう。 また、以下の記事では、高血圧の薬(降圧薬)の種類と副作用に関する情報をまとめています。高血圧の治療を検討している方は、ぜひ参考にしてください。 適度な運動をする 適度な運動は、ストレス解消につながります。また、運動によって血行が促進され、血管が柔らかくなることで血圧の安定も期待できます。 ウォーキングやジョギング、水泳など、無理なく続けられる運動を生活に取り入れるのがおすすめです。 毎日30分のウォーキングを習慣にすると、心身ともにリフレッシュでき、血圧コントロールにも役立つでしょう。 バランスの取れた食事を摂る バランスの取れた食事は、高血圧予防に欠かせません。 塩分を摂りすぎると、血液中の塩分濃度が高くなり、血管が収縮して血圧が上昇しやすくなります。高血圧を予防するには、塩分控えめを意識しましょう。 カリウムを多く含む野菜や果物を積極的に摂ると、体内の余分な塩分を排出する効果が期待できます。 また、食物繊維を多く含む食品も、血圧の安定に役立ちます。 毎日の食事内容を見直し、バランスの取れた食生活を心がけましょう。 睡眠をしっかりとる 質の良い睡眠は、ストレスを軽減し血圧を安定させるために重要です。 睡眠不足はストレスホルモンの分泌を促し、交感神経を活発にするため、血圧上昇の原因となります。 高血圧を予防するには、毎日同じ時間に寝起きし、7〜8時間の睡眠を確保するのが理想的です。 また、寝る前にカフェインを摂取するのを控えたり、リラックスできる環境を整えたりするのも効果的です。 質の高い睡眠を確保し、高血圧予防に努めましょう。 喫煙やアルコールを控える 喫煙や過度なアルコール摂取は、血圧を上昇させる要因となるため、控えるのが望ましいでしょう。 タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させて血圧を上昇させる働きがあります。また、アルコールの過剰摂取も、血圧の上昇や睡眠の質を低下させる原因になります。 禁煙に取り組む、あるいは飲酒量を減らすだけでも、血圧コントロールにつながるでしょう。 リラックスする時間を作る ストレスを溜め込まないためには、意識的にリラックスする時間を作るのも大切です。 音楽やアロマ、入浴など、自分に合った方法でリラックスしましょう。 また、瞑想や深呼吸などのリラックス法も効果的です。 自分に合ったリラックス方法を見つけ、日々の生活に取り入れてみてください。ストレスをうまく解消できれば、結果的に高血圧の予防にもつながります。 高血圧の予防方法については以下の記事でも解説していますので、興味がある方はぜひご覧ください。 高血圧の原因 高血圧は一次性と二次性の2タイプに分かれますが、主な違いは以下のとおりです。 一次性高血圧 ほとんどの高血圧はこのタイプに該当 明確な原因は特定されていないが、遺伝・食生活・生活習慣など複数の要因が関連していると考えられている 二次性高血圧 なんらかの病気や状況が原因で血圧が高くなるケース 腎臓病・内分泌異常・特定の薬剤の使用などが原因 また、高血圧の発症には以下の5つの要因が関係します。 高血圧の発症リスク 内容 加齢 加齢により血管が硬くなり、血流の調整が難しくなる。とくに中高年以降で発症率が上昇。 性別 男性は中年期に高血圧が多く、女性は閉経後にリスクが高まる傾向がある。 遺伝 遺伝的要素が影響しやすく、親族に高血圧の方がいる場合、発症リスクが高まる可能性がある。 生活習慣の乱れ 塩分の多い食事や運動不足が血圧上昇の原因。肥満や喫煙、アルコールもリスク要因となる。 ストレス 精神的な負荷が交感神経を刺激し、血圧を一時的または慢性的に上昇させる場合がある。 表のとおり、高血圧の原因にはさまざまな理由が挙げられます。 とくに、生活習慣の見直しやストレス軽減など、自己管理によって改善できる部分は意識してみましょう。 また、高血圧の原因についてはこちらの記事でもさらに詳しく解説しています。 血圧でお悩みの方は参考にしていただけると幸いです。 まとめ|高血圧を予防するためストレスを溜めない生活を心がけよう この記事では、ストレスが血圧を上げるメカニズムや、高血圧を予防するための生活習慣について解説しました。 ストレスは身体にさまざまな影響を与え、血圧を上昇させる要因の1つです。 しかし、事前知識や適切な対策によって血圧をコントロールし、高血圧を予防できます。適度な運動やバランスの取れた食事、十分な睡眠を心がけることが重要です。 本記事を参考に、リラックスする時間を持って健康な毎日を過ごしていきましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では、高血圧が原因となる脳出血や脳梗塞の治療も行っています。気になる症状がある方は、「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 ストレスと血圧に関するよくある質問 ストレスで血圧はどれくらい上がりますか? ストレスを感じた際、一時的に10〜20mmHg程度血圧が上がる場合があります。(文献2) 慢性的なストレスが続く場合、持続的な高血圧につながる可能性があるため注意が必要です。 メンタルと血圧は関係ありますか? メンタルの状態と血圧は密接に関係しているため、ストレスや不安が続くと交感神経が過剰に働き、血圧が上昇します。 一方、リラックス状態では副交感神経が優位となり血圧が安定します。 そのため、心の健康を保つことは血圧を安定させる上で重要です。 当院「リペアセルクリニック」では、高血圧が引き起こす疾患に効果が期待できる再生治療も行っています。「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 参考文献一覧 文献1 日本高血圧学会_高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)作成委員会 文献2 社会医療法人 春回会_高血圧とストレス
2024.04.10