-
- 頭部
- 脳卒中
- 脳出血
「頭皮マッサージは再出血のリスクにつながらないか」 「頭皮マッサージを受けるのはやめるべきなのか」 脳出血を経験したことのある方にとって、血流を刺激する施術には少なからず警戒心があるはずです。とくに美容院や整体で頭皮マッサージを普段から受けている人であれば、なおさら再発に対する不安や疑問があることでしょう。 本記事では、頭皮マッサージと脳出血の関係や以下の内容について医師が詳しく解説します。 脳出血後に頭皮マッサージを行う際の禁忌事項 脳出血の既往がある方が頭皮マッサージを行う際の注意点 再出血を防ぐために気を付けるべきこと 頭皮マッサージがすべての人にリスクがあるとは限りませんが、状態によっては避けるべきケースもあります。記事の最後には、頭皮マッサージと脳出血の関係に関するよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 頭皮マッサージと脳出血の関係 リスク要因 対策 高血圧の管理が不十分 血圧コントロールを優先し、安定後に医師の許可を得る 抗凝固薬(血液サラサラ薬)服用中 マッサージ前の出血傾向チェック 脳動脈瘤・血管異常の既往歴 マッサージが禁止となる場合もあるため、自己判断では行わないこと 脳出血発症後3カ月未満 原則マッサージ禁止 頭皮マッサージが脳出血を直接引き起こすことは、医学的にほとんどありません。頭皮マッサージは頭皮表面の血行促進を目的としており、脳内の血管に直接影響を与えるものではないため、通常の強さで行う分には心配いりません。ただし、脳出血を経験されている方は注意が必要です。 出血後間もない時期や血圧が不安定な場合、強い刺激は再出血につながるおそれがあるため、自己判断でマッサージを行うのは避けましょう。 マッサージを希望される場合は、医師の指導のもと、優しい力加減で行うことが大切です。気になることがあれば、遠慮なく医師に相談しましょう。 また、脳出血について詳しく知りたい方は「【医師監修】脳出血とは|症状・種類・原因を詳しく解説」で解説しています。ぜひ参考にしてください。 脳出血後に頭皮マッサージを行う際の禁忌事項 禁忌事項 詳細 強い刺激・圧迫 強い力でのマッサージや頭部への過度な圧力は、デリケートな血管に負担をかけ出血リスクを高める 頭部の腫れや血管異常が残っている場合 動脈瘤や血管などの異常や脳の腫れ(浮腫)が残っている場合、マッサージで状態悪化や再出血のリスクがある 発症後間もない時期(急性期) 脳出血発症直後は脳の状態が非常に不安定で、マッサージが血圧変動や脳への負担となるため、医師の許可が出るまで実施しない 脳出血後の頭皮マッサージは、誤った方法で行うとリスクを伴う場合があります。再出血などの合併症を防ぐため、強い刺激や頭部の腫れや、血管異常が残っている場合は頭皮マッサージを行ってはいけません。 強い刺激・圧迫 禁忌事項 詳細 脳内血管への影響 脳出血後の脆弱な血管への再出血リスク増加 頭皮毛細血管への影響 頭皮の毛細血管損傷による内出血や炎症発生 感覚障害によるリスク 感覚低下による過度な刺激の継続と皮膚・血管損傷リスク 一般的な頭皮マッサージが直接脳出血を引き起こす可能性は低いと考えられています。脳出血の主な原因は高血圧や脳動脈瘤の破裂などです。 脳出血は血管そのものの状態によるため、頭皮の血行を促す頭皮マッサージで、脳出血が再発する可能性は低いと考えられます。ただし、強い刺激や圧迫を加えると、脳内血管に負担がかかり、再出血のリスクが高まるおそれがあります。 脳出血に限らず、頭皮への強い刺激は血管損傷や炎症を発生させる可能性があるため、控えるようにしましょう。 頭部の腫れや血管異常が残っている場合 項目 説明 脳浮腫 出血周囲の炎症による水分貯留と脳組織の腫れ 頭蓋内圧亢進 脳浮腫による頭蓋骨内圧の上昇と脳血流障害の危険性 頭部のむくみ 外見上のむくみが脳内浮腫の残存を示唆し、マッサージによる圧力変化で悪化リスク 血管異常(動脈瘤・奇形) 脆弱で破裂しやすい血管異常の存在とマッサージによる血流変動での負担増加リスク 回復期の脳組織のデリケートさ 修復途中の脳組織への不必要な刺激による回復阻害や合併症リスクの増加 脳出血後は脳にむくみ(脳浮腫)が生じやすく、脳を圧迫して頭蓋内圧が上昇し、血流障害や脳損傷のリスクが高まります。外見上、頭や顔にむくみがある場合は脳内にも浮腫が残っている可能性があり、頭皮マッサージによる血流やリンパの変化で状態が悪化するケースもあります。 また、脳動脈瘤などの血管異常が残っている場合、わずかな刺激でも再出血の危険性があるため、注意が必要です。脳は回復期に非常にデリケートなため、頭部の腫れや血管異常がある間はマッサージを控え、医師の指示に従うようにしましょう。 発症後間もない時期(急性期) 禁忌事項 理由 再出血リスク 出血部位の血管が脆弱なため、刺激や血流変化で再出血の危険性増加 頭蓋内圧上昇 血流増加による頭蓋内圧の上昇で脳損傷悪化の可能性 血圧変動 マッサージによる血圧変動で再出血リスク増加 脳出血後の急性期(発症から1〜2週間)は、脳や血管が非常に不安定な状態のため、頭皮マッサージを行うと、血管が修復されておらず、再出血のリスクが高まります。 マッサージによって血流や血圧が変動し、結果的に頭蓋内圧が上昇する可能性もあります。急性期のマッサージは禁忌であり、安静と医師の管理のもとで治療を受けるようにしましょう。 脳出血の既往がある方が頭皮マッサージを行う際の注意点 注意点 詳細 体調不良時は頭皮マッサージを行わない 発熱やだるさ、血圧が高いときなど体調が悪い場合は、マッサージを控える 脳に強い圧迫や刺激を与えない 強い力や圧迫は脳や血管への負担になるため、優しい力加減で実施する 体調に異変を感じたらすぐに中止する 頭痛、めまい、吐き気などの異変を感じた場合は、すぐにマッサージを中止し医師に相談する 脳出血の既往がある方は、体調不良時の頭皮マッサージや脳への強い圧迫は危険です。頭皮マッサージを行う際は自己判断ではなく、医師に相談したうえで実施するようにしましょう。 体調不良時は頭皮マッサージを行わない 理由 解説 全身状態の不安定化 発熱や倦怠感などで体力・免疫力が低下し、血圧や血流の変動が起こりやすい状態 血圧・脳圧の変動リスク 自律神経の乱れやマッサージ刺激による血圧・脳圧の急激な変動 回復力低下による合併症リスク 体調不良時は回復力・抵抗力が落ち、軽微な刺激でも頭痛や吐き気などの合併症が生じやすい状態 症状悪化や見逃しのリスク 体調不良時は体調変化に気づきにくく、症状悪化や異常の見逃しにつながる危険性 熱、頭痛、めまい、吐き気など、体調が優れない時は頭皮マッサージを控えましょう。体調不良時は血圧が不安定になりやすく、再出血や脳圧上昇などのリスクを招く可能性があります。倦怠感や疲労を感じる際も無理はせず、まずは体調の回復を優先しましょう。 脳に強い圧迫や刺激を与えない 理由 説明 再出血リスク 急性期の脆弱な血管への負担増加による再出血の危険性 頭蓋内圧上昇 マッサージ刺激による頭蓋内圧の上昇と脳損傷悪化の可能性 血圧変動による影響 血圧の急激な変動による再出血や脳血管障害のリスク 脳出血の既往がある方が頭皮マッサージを行う際は、脳に強い圧迫や刺激を与えないことが重要です。とくに発症後24〜48時間の急性期は再出血のリスクが非常に高く、この時期に頭部へ刺激が加わると、脆弱な血管に負担がかかり再出血を引き起こす恐れがあります。 再出血は初回より広範囲な脳損傷や重篤な後遺症、生命の危険を伴うこともあります。頭皮マッサージの刺激は頭蓋内圧の上昇や血圧変動を招き、脳損傷や再出血リスクを高める要因です。 頭皮マッサージを行う場合は医師の許可を得て、軽い刺激で短時間にとどめ、体調変化に注意しましょう。また、頭皮マッサージ中に少しでも違和感があれば、すぐに中止し医師に相談してください。 体調に異変を感じたらすぐに中止する 理由 説明 再出血や脳圧上昇の早期察知 頭痛・めまい・吐き気など異変は再出血や脳圧上昇の兆候である可能性 血圧変動による再出血リスク防止 マッサージによる血圧変動が再出血や脳血管障害の引き金となる危険性 神経系への過度な刺激回避 マッサージ刺激による神経系の過剰反応や血流変化による症状悪化の危険性 脳出血の既往がある方は、頭皮マッサージ中や後に頭痛、めまい、吐き気など体調に異変を感じた場合、すぐに中止し、医師に相談する必要があります。これらの症状は再出血や脳圧上昇の兆候の可能性があります。 また、マッサージは血圧変動を引き起こしやすく、その中でも、高血圧や血圧管理が必要な方は再出血リスクが高く危険な状態です。さらに、神経系への過度な刺激も症状悪化の原因となります。異変を感じたら無理せず中止し、必要に応じて速やかに医療機関へ相談しましょう。 再出血を防ぐために気を付けるべきこと 気を付けるべきこと 詳細 血圧と服薬の管理を徹底する 血圧測定とコントロールの継続、降圧薬の指示通りの服用、自己判断での服薬中止や変更の厳禁 健康的な生活習慣を実践する バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠、塩分・脂肪控えめ、禁煙・節酒、ストレス管理の徹底 定期的な医師の診察を受ける 定期受診と検査の継続、医師によるリスク評価と指導、症状がなくてもスケジュール通りの受診 再出血を防ぐためには、毎日血圧を測定し、降圧薬を医師の指示通りに服用することが大切です。バランスの良い食事や適度な運動、十分な睡眠、禁煙・節酒、ストレス管理も心がけましょう。また、症状がなくても定期的に医師の診察や検査を受け、リスク管理や指導を受けることが重要です。 以下の記事では、脳出血の再発率や血圧管理を含む予防法を詳しく解説しています。 血圧と服薬の管理を徹底する 理由・有効性 解説 高血圧は再出血の最大リスク要因 血圧上昇による脳血管への負担増加と再出血リスクの直結 血圧管理で再出血のリスク大幅低減 毎日の血圧測定と目標値維持による再出血予防効果 服薬管理は血圧安定のカギ 降圧薬の継続服用による血圧コントロールと再出血リスク低減 服薬継続と血圧測定が予防に直結 定期的な血圧測定と指示通りの服薬の継続による再発予防の実証 具体的な管理方法 家庭での血圧測定・記録、降圧薬の毎日服用、自己判断せず医師相談、定期的な診察・検査の実施 (文献1) 脳出血の再出血を防ぐ上で、血圧管理と服薬継続は最も重要なことです。高血圧は再出血の最大リスク要因であり、血圧が高いと脳の血管に大きな負担がかかります。毎日血圧を測定し、医師が目標とする血圧値、130/80mmHg未満(75歳以上では140/90mmHg未満)を維持できるよう努めましょう。 降圧薬は血圧を安定させるために不可欠であり、中断や変更を自己判断で行わず、医師の指示通りに服用することで、再出血予防が期待できます。 健康的な生活習慣を実践する 生活習慣 内容 効果 食事 減塩・栄養バランスの取れた食事 高血圧予防・血管の健康維持 運動 ウォーキングやストレッチの習慣化 血圧低下・ストレス軽減 睡眠 規則正しい生活と十分な睡眠時間 血圧安定・自律神経の調整 禁煙 たばこを控え、禁煙外来の活用 血管収縮の防止・再発リスク低減 節酒 飲酒量を適正に保つよう意識する 血圧の上昇抑制・肝機能保護 ストレス管理 趣味やリラックス法の導入 血圧変動の抑制・心身の安定 (文献2) 脳出血の再発を防ぐためには、健康的な生活習慣の実践が欠かせません。とくに塩分を控えた食事や、軽めの運動習慣は、血圧の安定に大きく寄与します。また、睡眠の質を保つことで自律神経が整い、血圧の変動も抑えられます。喫煙や過度の飲酒は血管に強い負担をかけるため、禁煙や節酒を心がけましょう。 さらに、趣味やリラックス法を取り入れてストレスをコントロールすることで、再出血のリスクを軽減し、健康的な日常を維持しやすくなります。 以下の記事では脳出血の退院後の生活習慣について詳しく解説しています。 定期的な医師の診察を受ける 有効性 解説 血圧管理の徹底 定期的な血圧測定と降圧薬調整による血圧コントロールと再出血リスク低減 再発リスク因子の早期発見と対応 高血圧・糖尿病・高脂血症などリスク因子の早期発見と治療による再発予防 薬物療法の適正な管理 薬剤の効果・副作用の評価と必要に応じた薬剤調整による効果的な治療の実現 脳出血の再発予防には、定期的な医師の診察が不可欠です。診察では血圧や再発リスク因子を細かくチェックし、必要に応じて薬の調整や生活習慣の指導を受けられます。 薬の効果や副作用も定期的に確認することで、状態に合わせた処方が可能です。症状がなくても受診を続けることで、再出血リスクを大きく減らせます。 脳出血後の頭皮マッサージは医師と相談したうえで実施しよう 脳出血の既往がある方が頭皮マッサージを実施する場合は自己判断は避け、医師に相談した上で正しく行うようにしましょう。脳出血は再発すると最悪の場合、命に危険が及ぶ可能性がある病気です。頭皮マッサージだけでなく、生活習慣を見直すなどの再発防止にも努めましょう。 脳出血の後遺症に関するお悩みは、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では脳出血に対する頭皮マッサージに加えて、後遺症や生活習慣の改善についても丁寧にアドバイスいたします。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 頭皮マッサージと脳出血の関係に関するよくある質問 頭皮マッサージで死亡した事例はありますか? 2025年6月現在、ヘッドマッサージやヘッドスパによる死亡事例は報告されていません。しかし、いくつかの状況下では重篤な健康被害が発生する可能性があるため注意が必要です。 たとえば、美容院で首を後ろに反らせたまま長時間過ごすと、椎骨動脈が圧迫され美容院脳卒中症候群を起こすことがあります。飲酒後は血管が拡張しやすく、マッサージによる刺激で血圧が急変し、脳出血や心筋梗塞のリスクが高まります。 ヘッドスパは脳出血の直接的な原因になりますか? ヘッドスパが脳出血の直接的な原因になることは、まずありません。通常のヘッドスパや頭皮マッサージで脳出血が起こることは極めて稀であり、多少力を入れても脳出血につながるケースは考えにくいとされています。 ただし、美容院で首を後ろに反らせた姿勢が長時間続くなどで、椎骨動脈が圧迫されて脳への血流が低下し、美容院脳卒中症候群と呼ばれる脳卒中を引き起こす可能性があります。 既往症がある方や首への負担が大きい姿勢を長時間続ける場合は体調の変化に気を付けましょう。 頭皮マッサージで血管が切れることはありますか? 通常の頭皮マッサージによって血管が切れることはほとんどありません。ただし、強い力でマッサージを行うと、頭皮の毛細血管が損傷し、炎症や出血を引き起こす可能性があります。また、飲酒後は血管が拡張しているため、マッサージの刺激で血管が破れやすくなるリスクがあるため、注意が必要です。 過去に頭部の外傷や脳出血などの既往がある方は、頭皮マッサージによる再出血が懸念されるため、事前に医師に相談するようにしましょう。 参考資料 (文献1) 佐藤祥一郎.「脳出血の血圧管理」『脳卒中 J-STAGE 早期公開 2018年 2月 27日』, pp.1-5, 2017年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/advpub/0/advpub_10605/_pdf(最終アクセス:2025年06月10 日) (文献2) 「Ⅲ.脳出血」 pp.1-51 https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/nou2009_03.pdf(最終アクセス:2025年06月10日)
2025.06.29 -
- 脊椎
- 脊柱管狭窄症
- 脊椎、その他疾患
「肩から腕、指先にかけて、しびれやだるさを感じる」 「肩や腕に違和感があり、つらい」 その症状は頸椎椎間孔狭窄症と呼ばれる疾患の可能性があります。頸椎椎間孔狭窄症は、首の神経の通り道が狭くなることで腕や手に異常を引き起こす疾患です。症状が進行すると日常生活に影響が及ぶため、早期の対処が重要です。 本記事では、現役医師が、頸椎椎間孔狭窄症の原因や症状、治療法の全体像をわかりやすく解説します。また、記事の最後には、頸椎椎間孔狭窄症に関するよくある質問をまとめておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 頸椎椎間孔狭窄症とは 症状の分類 主な症状例 特徴や注意点 首・肩・肩甲骨の違和感 首の付け根や肩、肩甲骨周辺の鈍痛や重だるさ 姿勢や動作で悪化しやすい違和感。首の可動域制限や放散痛を伴うことも多い 腕や手のしびれ 指先まで広がる「ジンジン」「ピリピリ」「チクチク」などの感覚異常 神経根ごとに症状の出る場所が異なる。片側性が多く、麻痺感や焼けるような違和感もあり得る 筋力低下・脱力 握力低下、物を落とす、細かい作業の困難 神経の圧迫が続くことで起こる。日常動作に支障が出ることもある 感覚異常 触られても感覚が鈍い、熱さ冷たさがわかりにくい、アロディニア しびれとは異なる、感覚の異常。異痛症を訴えるケースもある 足の症状(稀) 歩行障害、排尿・排便障害、体幹のしびれ 脊髄圧迫を伴う重度例であり、早急な受診が必要 頸椎椎間孔狭窄症は、首の骨(頸椎)の間にある神経の通り道(椎間孔)が狭くなることで、神経が圧迫され、さまざまな症状が生じる疾患です。椎間孔は脊髄から分かれた神経が手や腕へ向かう重要な経路であり、そこが狭くなると、神経の流れが妨げられます。 頸椎椎間孔狭窄症は、加齢による骨や椎間板の変化が主な原因であり、長時間同じ姿勢を続ける習慣も悪化の要因です。足のしびれや排尿障害などがある場合は、できるだけ早く医療機関を受診してください。 頸椎椎間孔狭窄症の症状 症状 詳細 首や肩の違和感 神経根の圧迫による神経刺激、周囲組織の炎症や緊張による不快感やこわばり、長時間同じ姿勢や首の動作で悪化 腕や手のしびれ・脱力感 神経根の圧迫によるしびれや感覚異常、筋力低下や脱力感、首の動作や同じ姿勢で悪化 足の症状(稀に発症) 椎間孔や脊柱管の高度な狭窄による脊髄圧迫。足のしびれ、脱力、歩行障害、排尿・排便障害。重症例で発症 頸椎椎間孔狭窄症は、神経根の圧迫により首や肩の違和感や腕のしびれ、筋力低下が生じる疾患です。 まれに脊髄まで圧迫されると、足のしびれやふらつき、排尿・排便障害といった重い症状が出ることがあります。症状が悪化する前に、気になる症状があれば早めに医療機関を受診しましょう。 首や肩の違和感 原因 詳細 神経根の圧迫による神経刺激 狭くなった椎間孔で神経根が圧迫され、局所的な違和感や不快感が生じる状態 周囲組織の炎症や緊張 筋肉や靭帯の炎症・緊張によるこわばりや違和感。長時間同じ姿勢や動作によって悪化する傾向 頸椎椎間孔狭窄症では、最初に首や肩に軽いこわばりや違和感を覚えることがあります。この症状は、神経が圧迫されはじめているサインであり、無理な姿勢や長時間の同一姿勢によって悪化しやすい傾向があります。 とくに、振り返る動作や上を向く姿勢で違和感が強まる場合は、神経への負担が強くなっている可能性があるため注意が必要です。気になる症状がある場合は、できるだけ早く医師に相談しましょう。 以下の記事では、右肩(左肩)がズキズキする症状について詳しく解説しています。 腕や手のしびれ・脱力感 症状 詳細 しびれや感覚異常 神経根の圧迫による腕や手のしびれ、チクチク感。感覚の鈍さや違和感の出現 筋力低下や脱力感 圧迫が進行すると腕や手の筋力低下、物を持つ力の低下。細かい作業や動作の困難 違和感の悪化 首を後ろに反らせる、長時間同じ姿勢で症状が悪化 神経の圧迫が進行すると、腕や手にしびれや力の入りにくさが現れます。しびれは片側に出ることが多く、親指から中指、または薬指にかけて広がることもあるのが特徴です。 物を落としやすくなるなど日常動作に支障をきたす場合は、神経の損傷が進行している可能性があるため、症状が続くようであれば、医療機関への受診が必要です。 以下の記事では、手足のしびれについて詳しく解説しています。 足の症状(稀に発症) 特別なケース 詳細 椎間孔・脊柱管の高度狭窄 神経根だけでなく脊髄自体も圧迫。頸椎脊髄症の合併。足のしびれ、脱力、歩行障害、排尿・排便障害の出現 骨変形や椎間板膨隆の合併 骨棘や椎間板の膨隆で脊髄の通り道(脊柱管)が狭くなり、脊髄自体が圧迫。足の運動・感覚異常、巧緻運動 頸椎椎間孔狭窄症では、神経根の圧迫によって主に腕や手に症状が現れます。しかし、狭窄が高度になり、脊髄を通る脊柱管全体が狭くなると、脊髄そのものが圧迫される、頸椎脊髄症を合併するケースがあります。 このような場合、足のしびれやふらつき、小走りしにくいといった歩行障害に加え、尿が出にくい、頻尿、尿失禁、便秘などの排尿・排便障害が生じることがあります。これらは重症のサインであり、早急な医療機関での受診と精密検査が必要です。 頸椎椎間孔狭窄症の原因 原因 内容 加齢と身体の変性 年齢とともに椎間板の変性や骨の変形、靭帯の肥厚が進行し椎間孔が狭くなる。自然な老化現象で個人差あり 椎間板ヘルニア 椎間板の髄核が外へ飛び出し神経を圧迫。急な首の違和感やしびれ。若年層にも発症しやすい 生活習慣や外的要因 長時間の前傾姿勢、運動不足、重い荷物、交通事故や転倒などによる頸椎への慢性的な負担や外傷 先天的な要因 生まれつき椎間孔が狭い体質。若年でのしびれや脱力の原因。家族歴も考慮し総合的な評価が必要 頸椎椎間孔狭窄症は、加齢による椎間板や骨、靭帯の変性が主な原因です。椎間板ヘルニアや長時間の前傾姿勢、重い荷物の持ち運び、事故などの外傷も発症の一因となります。 また、生まれつき椎間孔が狭い体質の方もおり、若い方でも症状が現れることがあります。どの原因でも、早期発見と適切な治療が重要です。 加齢と身体の変性によるもの 主な要因 内容 椎間板の変性 加齢により椎間板の水分が減少し弾力性が低下。椎間板が潰れて椎間孔が狭くなり、神経根の圧迫を招く 骨棘(こつきょく)の形成 椎間板や関節の摩耗で椎体の縁に骨棘ができ、椎間孔を狭くし神経根を圧迫。違和感やしびれの原因となる 黄色靭帯の肥厚 加齢やストレスで黄色靭帯が厚くなり、椎間孔内に突出。神経根を圧迫し症状を引き起こす 頸椎椎間孔狭窄症は、加齢により椎間板の変性や骨棘の形成、靭帯の肥厚が進むことで神経の通り道が狭くなり、首や腕に違和感やしびれが生じる疾患です。 これらは中高年に多くみられる自然な変化ですが、姿勢不良や喫煙、首への過度な負担が進行を早めるため、早期の予防と対策が重要です。 椎間板ヘルニア メカニズム・原因 内容 椎間板ヘルニアの発生機序 椎間板の髄核が線維輪を破って飛び出し、神経根を直接圧迫。椎間孔内のスペースが狭くなり症状を誘発 炎症反応の関与 飛び出した髄核による炎症で神経周囲が腫れ、違和感やしびれを助長 よく見られる症状 腕や手のしびれ・違和感、指先の感覚異常や筋力低下、巧緻障害。首を後ろに反らすと症状悪化しやすい 加齢変性との違い 加齢変性は中高年に多く進行は緩徐。骨棘や靭帯肥厚が特徴。椎間板ヘルニアは若年~中年にも発症、急激な症状 椎間板ヘルニアは、椎間板の中心部(髄核)が外に飛び出し、神経根や脊髄を直接圧迫することで、頸椎椎間孔狭窄症と同じような腕や手のしびれ・違和感、筋力低下などの症状を引き起こします。 加齢による変性は進行がゆっくりで中高年に多いのに対し、椎間板ヘルニアは若い方にも起こりやすく、急に強い症状が出るのが特徴です。症状が続く場合は、早急に医療機関を受診する必要があります。 以下の記事では、椎間板ヘルニアの症状を詳しく解説しています。 生活習慣や外的要因 頸椎椎間孔狭窄症は、加齢による椎間板や骨、靭帯の変性だけでなく、日常生活や仕事、スポーツによる首への負担や外傷、喫煙習慣なども発症の大きな要因です。 交通事故や転倒などの強い衝撃、長時間の悪い姿勢、重い荷物の持ち運び、同じ動作の繰り返しなどは、頸椎にストレスを与え椎間孔の狭窄を進めます。喫煙も椎間板や骨、靭帯の栄養を低下させ、変性を促進します。 これらの生活習慣や外的要因を見直し、適切な姿勢や禁煙を心がけることが予防や進行抑制につながります。症状が続く場合は早めに医療機関を受診しましょう。 先天的な要因 頸椎椎間孔狭窄症は、先天的な要因によっても発症するケースもあります。生まれつき椎間孔が狭い体質の方は、神経の通り道がもともと限られているため、わずかな骨の変形や椎間板の膨らみでも神経が圧迫されやすくなります。 椎骨の形態異常や脊柱の発育異常も、椎間孔の形や大きさに影響を与える要因です。このような先天的な特徴に加え、加齢や外傷、生活習慣の影響が重なることで症状が出やすくなります。とくに若い年代で原因不明のしびれや脱力がある場合は、先天的な狭小化が疑われるため、家族歴も含めた専門的な評価が必要です。 頸椎椎間孔狭窄症の治療法 治療法 詳細 薬物療法 神経の炎症を抑え、違和感やしびれを軽減。消炎鎮痛薬、神経痛治療薬、筋弛緩薬、ビタミン剤などを使用 理学療法(リハビリ) 筋力強化や柔軟性向上、姿勢改善、血流促進を目的にストレッチや運動、温熱療法を実施。症状の緩和と再発防止に有効 神経ブロック注射 神経の違和感や炎症を局所麻酔とステロイドで直接抑制ができ、即効性も見込める 手術療法 保存療法で改善しない場合に検討。神経の圧迫を取り除くため、椎間孔拡大術や椎弓形成術などが行われる 再生医療 幹細胞を用いて神経の修復を促す新しい治療法。手術に比べて身体への負担が少なく、保存療法が無効な場合の選択肢となりうる 頸椎椎間孔狭窄症の治療は段階を追って進められます。まずは薬で炎症や違和感を抑え、リハビリによって筋力や姿勢を整えます。 症状が強い場合には、神経ブロック注射によって一時的に違和感やしびれを緩和できます。これらの保存療法で効果が不十分な場合は、神経の圧迫を取り除く手術の検討が必要です。また、近年では再生医療も、手術以外の新たな選択肢として注目されています。 薬物療法 薬の種類 内容 消炎鎮痛薬(NSAIDs) 違和感や炎症の緩和。ロキソプロフェンやセレコキシブなどの飲み薬や湿布を使用 神経障害性疼痛治療薬 神経痛やしびれの軽減。プレガバリン、デュロキセチンなどを少量から段階的に服用 筋弛緩薬 筋肉の緊張緩和と血流促進。エペリゾンやチザニジンなどを使用 ビタミンB群製剤 神経機能の維持や修復。メコバラミンなどを使用。神経回復をサポート ステロイド薬(内服・注射) 強力な抗炎症作用。急性期の違和感や炎症に短期間使用されることが多い 薬物療法は、頸椎椎間孔狭窄症による違和感やしびれ、筋肉の緊張を和らげるのに有効です。違和感やしびれを緩和するために、消炎鎮痛薬や筋弛緩薬が処方されます。症状の程度によっては神経の炎症を鎮める治療が行われることもあります。 薬物療法はあくまで一時的な対処であり、根本的な改善にはほかの治療と併用するのが一般的です。副作用や効果の持続性を考慮しながら、医師の指導のもと行われます。 理学療法(リハビリテーション) 目的 内容 筋力の強化・柔軟性向上 首や肩、背中の筋肉を鍛え、柔軟性を高めることで頸椎への負担を軽減。再発予防にも有効 姿勢の改善 正しい姿勢を維持することで椎間孔への圧迫を減らし、神経への負担を軽減 血流の促進 適切な運動や温熱療法で血流を改善し、組織の修復や炎症の軽減を促進 具体的な施策 ストレッチや筋力トレーニング、姿勢指導、温熱療法などを理学療法士が個別にプログラムし指導 (文献1) 首や肩の筋肉を柔軟に保ち、神経への圧迫を軽減するために行われます。ストレッチや軽い運動療法、温熱療法などが組み合わされることが多く、継続することで徐々に症状の緩和が期待できます。 また、正しいリハビリの継続は頸椎椎間孔狭窄症の再発防止にも有効です。個々の症状に応じてプログラムが組まれるため、医師の指導のもとで実施されます。 神経ブロック注射 種類 内容 神経根ブロック 圧迫された神経根の周囲に麻酔薬とステロイドを注射。腕や手の強い違和感やしびれに有効 硬膜外ブロック 脊髄周囲の空間に薬剤を注入。広範囲に作用し、首・肩・腕の広い範囲の症状に対応可能 トリガーポイント注射 筋肉の硬結部に麻酔薬を注射。筋緊張や血行不良による首・肩の違和感を改善するのに有効 神経ブロック注射は、頸椎椎間孔狭窄症による強い違和感やしびれを一時的に緩和する有効な方法です。比較的即効性があり、症状が強い場合に短期的な緩和を目的として実施されます。 ただし、神経ブロック注射は根本的な治療ではないため、繰り返しの使用には限度があり、通常は他の治療と併用して行われます。また、血圧の低下やめまいなどの副作用が起こる可能性もあるため、実施にあたっては医師と十分に相談した上での判断が大切です。 手術療法 手術法 詳細 内視鏡下頚椎椎間孔拡大術(MECF) 小さな切開から内視鏡を用いて椎間孔を拡大し、神経の圧迫を解除。筋肉や骨への負担が少なく、回復が早い 頚椎前方除圧固定術(ACDF) 首の前方から椎間板や骨棘を除去し、神経の圧迫を解除して椎体を固定。神経圧迫の解除と症状改善が期待できる場合に適応 頚椎椎弓形成術 首の後方から椎弓を形成し、脊柱管を拡大して神経の圧迫を解除。脊髄症状がある場合に適応 頸椎椎間孔狭窄症の手術療法は、保存的治療で効果が得られない場合や、症状が重く日常生活に支障がある場合に検討されます。手術は神経の圧迫を直接解除し、症状の改善や進行防止が期待できます。 代表的な方法には、内視鏡下椎間孔拡大術、前方除圧固定術、後方椎弓形成術があり、症状や状態に応じて選択されるのが特徴です。ただし、手術には感染や出血、神経損傷などのリスクもあるため、十分な説明を受けた上で慎重な判断が求められます。 再生医療 有効性の理由 内容 神経の再生と修復を促進 幹細胞を用いて損傷した神経組織の再生・修復を目指す。脊髄腔内ダイレクト注射療法で損傷部位へ直接作用 身体への負担が少ない 注射や点滴が中心で手術に比べて身体への負担が少ない。自分の細胞を使うため拒絶反応のリスクも低減 新たな治療選択肢の提供 手術や保存療法で効果が得られない場合にも適応可能。慢性的な違和感やしびれの改善を目指す新しい選択肢 再生医療は、手術や保存療法で効果が不十分だった場合の選択肢のひとつです。注射や点滴で幹細胞を直接損傷部位に届け、神経の再生・修復を促すことで、症状の改善が期待できます。 低侵襲であり、自家細胞使用により拒絶反応のリスクも小さいのも利点です。ただし、効果には個人差があり、すべての方に同じ効果が得られるわけではありません。 再生医療は限られた医療機関でのみ実施されているため、検討する際は事前に対応可能な施設を確認し、治療を希望する場合は医師と十分に相談した上で進めることが大切です。 以下の記事では、再生医療について詳しく解説しています。 頸椎椎間孔狭窄症の再発防止策 再発防止 詳細 日常姿勢の見直し 首への負担を避ける姿勢の工夫と寝具の見直し 過度な負荷を避ける 重い荷物の回避と衝撃予防、柔軟性維持のための運動習慣化 体重管理・生活習慣の改善 適正体重の維持と生活習慣の改善による首への負担軽減 頸椎椎間孔狭窄症の再発を防ぐには、正しい姿勢の維持や無理のない動作、適度な運動、体重管理を含む生活習慣の改善が欠かせません。 これらの対策は、自己判断で行うのではなく、医師の指導のもとで実践することが再発防止において大切です。 日常姿勢の見直し 項目 詳細 正しい立ち姿勢の維持 頭をまっすぐ引き上げ、あごを軽く引く。肩の力を抜き、腹部に力を入れて背筋を伸ばす姿勢の意識 正しい座り姿勢の実践 浅く座って背もたれに寄りかかる。膝は股関節よりやや高く、足組みは長時間継続しないこと 長時間の同一姿勢を回避 1時間に1回の休憩とストレッチ。首を前に突き出す姿勢の回避と、適度な姿勢変化の実践 頸椎椎間孔狭窄症の再発を防ぐには、日常の姿勢を見直すことが重要です。前かがみや猫背などの悪い姿勢は、頸椎の自然なカーブを崩し、椎間孔を狭めて神経を圧迫しやすくなります。 正しい立ち方や座り方を意識し、長時間同じ姿勢を避けてストレッチを取り入れることで、首への負担を軽減できます。症状の再発を防ぐためにも、姿勢改善を継続し、異変を感じた際は早めに医師へ相談しましょう。 過度な負荷を避ける 頸椎椎間孔狭窄症の改善や再発予防には、首に過度な負荷をかけないことが重要です。椎間孔が狭くなると神経が圧迫され、首や肩、腕に違和感やしびれが生じやすくなります。長時間同じ姿勢を続けると頸椎に負担がかかり、症状の悪化や再発を招く原因となります。 重い物を持つ際は、腰を落として膝を曲げ、首に負担がかからない姿勢を意識しましょう。また、ストレッチや軽い運動を習慣づけることで筋肉や靭帯の柔軟性が保たれ、頸椎への負担軽減につながります。再発防止には、姿勢の見直しを継続し、症状が現れたときは医師に相談しましょう。 体重管理・生活習慣の改善 取り組み 詳細 頸椎への負担軽減 適正体重の維持により、首や肩への物理的な負担を軽減 血流の改善 運動とバランスの取れた食事で血流を促進し、神経や椎間板への栄養供給を改善 筋力の維持・強化 首・肩周辺の筋肉を鍛え、頸椎の安定性を向上させ、姿勢保持力の強化に寄与 姿勢の改善 正しい座り方と長時間同じ姿勢を避ける工夫で、頸椎への継続的な負荷を予防 適度な運動の習慣化 ウォーキングや水中運動など、無理なく継続できる軽めの運動による全身の血流と筋力維持 ストレッチの導入 首や肩甲骨周辺のストレッチで柔軟性を高め、筋肉のこわばりを防止 頸椎椎間孔狭窄症の再発を防ぐには、体重管理と生活習慣の見直しが不可欠です。体重が増えると首への負担が増し、狭窄の進行を助長します。適正体重の維持と正しい姿勢の意識、定期的なストレッチや軽い運動は、頸椎への負担を減らし、血流や神経機能の改善にもつながります。 とくにウォーキングや水中運動は関節に優しく、継続しやすい方法です。無理のない範囲で取り組み、身体の違和感が強い場合は運動を中止し、医療機関を受診しましょう。 頸椎椎間孔狭窄症が疑われる場合は迷わず医療機関へ 腕や手のしびれが続く場合や、首を動かしたときに違和感がある場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。 頸椎椎間孔狭窄症は、早期に発見すれば適切な治療を開始でき、症状の悪化を防止できます。放置すると悪化し、日常生活に支障をきたす恐れがあるため、注意が必要です。 当院「リペアセルクリニック」では、頸椎椎間孔狭窄症に対して幹細胞を用いた再生医療を提供しています。手術を行わずに症状の改善が期待でき、拒絶反応のリスクが低く、身体への負担が少ない点が特徴です。 頸椎椎間孔狭窄症が疑われる方は、どうぞお気軽にご相談ください。ちょっとしたお悩みや不安にも丁寧に耳を傾け、改善に向けた適切なアドバイスをさせていただきます。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。 頸椎椎間孔狭窄症に関するよくある質問 頸椎椎間孔狭窄症は放置するとどうなりますか? 頸椎椎間孔狭窄症は放置すると、しびれが悪化し、腕の動かしにくさや筋力低下が進行する可能性があります。さらに進行すると、歩行困難や排尿障害などを引き起こすこともあり、日常生活に大きな支障が出ることがあります。重症化を防ぐには早期の対処が不可欠です。 頸椎椎間孔狭窄症は自然に治ることはありますか? 頸椎椎間孔狭窄症は、症状の原因や進行度によって適切な対応が異なります。しびれや違和感が長引く、または悪化している場合は、放置せず早めの受診が重要です。 頸椎椎間孔狭窄症の改善に手術は必須ですか? 頸椎椎間孔狭窄症は、多くの場合、薬やリハビリなどの保存療法で改善が見込まれます。手術が必要になるのは、これらの治療で効果が不十分な場合です。ただし、保存療法で十分な効果が得られず、違和感やしびれが続く場合や、筋力低下・歩行障害などの神経症状が進行している場合は、手術が検討されます。 参考資料 (文献1) 森山 知美.「腰部脊柱管狭窄症の椎間孔狭窄が起こる機械的要因を分析し 理学療法を行った1例」『理学療法の科学と研究 Vol. 3 No. 1 2012』, pp.1-4, 2012年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/srpt/3/1/3_3_27/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年06月11日)
2025.06.29 -
- 脳梗塞
- 脳卒中
- 頭部
「手足に違和感がある」 「アッヘンバッハ症候群は脳梗塞の前兆なのか」 アッヘンバッハ症候群は、指や手のひらなどに突然の違和感やしびれ、紫色の腫れや内出血が現れる病気です。アッヘンバッハ症候群の症状は脳梗塞の前兆と似ており、心配される方も少なくありません。 本記事では、以下について医師が解説します。 アッヘンバッハ症候群とは? アッヘンバッハ症候群と脳梗塞の関係性 アッヘンバッハ症候群の危険性 アッヘンバッハ症候群と似た病気 アッヘンバッハ症候群の治療法 症状の特徴を知ることで、自己判断のリスクを知り、受診の必要性を理解することで、適切な対応につなげましょう。 アッヘンバッハ症候群とは? 項目 内容 主な症状 突然の違和感・しびれ・つっぱり感、紫色の腫れやあざ、血の塊、自然消失、再発可能 発症しやすい人・部位 50代以降の女性、人差し指や中指の中節部・基節部、稀に足の指や足の裏 原因 血管の脆さ、加齢、軽い刺激による毛細血管の出血、血液検査で異常は見られない 治療と経過 治療は不要、自然回復、長引く場合は検査、重い合併症は稀 (文献1) アッヘンバッハ症候群は、外傷や血液の異常がないにもかかわらず、突然、指先や手のひらに違和感やしびれ、つっぱり感が現れ、その部分が紫色に腫れて内出血を起こす病気です。とくに50代以降の女性に多く、指の中節部に発症がよく見られます。 原因ははっきりしていませんが、加齢による血管のもろさや、日常生活での軽い刺激が関係していると考えられています。 多くの場合、数日〜1週間程度で自然に回復し、特別な治療は必要ありません。ただし、症状が繰り返す場合や長引く場合には、他の血管や血液の病気との鑑別が必要になるため、医療機関の受診をおすすめします。 アッヘンバッハ症候群と脳梗塞の関係性 観点 アッヘンバッハ症候群 脳梗塞 主な症状 指先の急激な違和感・しびれ、青紫色の内出血(紫斑) 顔面や手足の片側しびれ・麻痺、言語障害、歩行障害、意識障害 発症速度 数分〜数時間で急に出現 突然発症(数分〜数時間) 発症部位 主に指(示指・中指) 脳内の血管領域により変化(例:片麻痺、構音障害など) 皮膚変色 青紫色の局所的な内出血(皮下出血)を伴う 皮膚変色は伴う場合もある 自然経過 自然治癒、自己限定的 迅速な医療対応が不可欠 鑑別に必要な検査 血液検査・超音波で他疾患除外、通常は不要 CT/MRIなどの画像検査で迅速診断、治療開始が必要 重篤度 良性疾患、生命に関わらない 重篤(後遺症や死亡のリスクあり)、緊急治療対象 全体の影響度 指に限定され、数日〜1週間で自然回復し後遺症ほぼなし 脳の血流途絶により神経障害が残りやすく、生命や機能に重大な影響あり (文献1)(文献2) アッヘンバッハ症候群と脳梗塞はいずれも血管に関係しますが、発症の仕組みや重症度は大きく異なります。アッヘンバッハ症候群は、指先の細い血管が一時的に破れて内出血を起こす病気で、突然、指や手のひらが紫色に腫れたり、しびれやつっぱり感が出たりします。通常は数日〜1週間ほどで自然に回復し、後遺症も残らず、命に関わることはほとんどありません。 一方で、脳梗塞は脳の血管が詰まり、手足のしびれや麻痺など重大な神経障害を引き起こします。両者は症状が似ている場合もあるため、自己判断は禁物です。気になる症状があるときは、早めに医療機関を受診し、正確な診断を受けましょう。 以下の記事では、脳梗塞の症状について詳しく解説しています。 【関連記事】 脳梗塞とは|症状・原因・治療法を現役医師が解説 BAD(脳梗塞)とは?症状や予後・他のタイプとの違いも解説 脳梗塞は症状が軽いうちの治療が大切!原因と対策を解説【医師監修】 アッヘンバッハ症候群の危険性 危険性の種類 内容 対応のポイント 誤認による精神的ストレス 指先の違和感やしびれ、青紫色の変色から脳梗塞や心筋梗塞などと誤解し、過度な不安に陥るケース 症状の正しい理解と医療機関での確認 他の病気との見分けの難しさ レイノー現象、デジタル動脈閉塞、血管炎、血液凝固異常症、バージャー病など、重大な疾患の可能性 専門医による鑑別診断の重要性 再発への不安と生活の質の低下 発作の再発を恐れることで日常生活や趣味、仕事に支障が出るリスク 再発予防と不安軽減に向けた正しい対処法の実践 (文献1)(文献2) アッヘンバッハ症候群は、指先に突然の違和感や紫斑が現れる良性の病気で、見た目のインパクトはあるものの、多くは数日で自然に回復し、命に関わることも後遺症もほとんどありません。ただし、脳梗塞や心筋梗塞など重大な病気と誤解されやすく、強い不安を感じる方もいます。 また、レイノー現象や血管閉塞、血管炎など重篤な病気と症状が似ているため、医師による鑑別診断が重要です。とくに高血圧や動脈硬化といった持病がある方は注意が必要です。再発や症状の拡大、全身症状がある場合は、単なるアッヘンバッハ症候群でない可能性もあるため、早めの受診を心がけましょう。 アッヘンバッハ症候群と似た病気 病名 主な症状・特徴 主なきっかけ・原因 レイノー現象 寒さやストレスで指先が白→紫→赤と変化。しびれ・違和感・冷感。発作的に繰り返す 寒冷刺激、精神的ストレス 血管炎 発熱、倦怠感、体重減少、皮膚の紫斑、結節、潰瘍、関節痛、むくみ、しびれなど多様な全身症状 自己免疫異常、感染症、薬剤など 単純性紫斑 下肢や腕などに赤紫色~暗褐色のあざ。違和感や腫れはほとんどない 毛細血管の弱さ、体質、加齢、薬剤など 老人性紫斑 前腕や手の甲に違和感を伴わない赤紫色のあざ。数週間で消失し、色素沈着が残ることも 加齢、紫外線曝露、血管の脆弱化、薬剤など 後天性血友病A 皮下・筋肉内・消化管の広範囲な出血。止まりにくく、重篤な貧血や生命の危険も 自己免疫反応(凝固因子への抗体) バージャー病 手足の冷感、しびれ、違和感、潰瘍、壊死。進行すると切断が必要なことも 喫煙(主なリスク因子) アクロシアノーシス 手足の指先が左右対称に持続的に青紫〜赤紫色に変色し、冷たさや軽い腫れ、しびれを伴うことがある 寒冷刺激、精神的ストレス、末梢血流低下 アッヘンバッハ症候群の症状は、他の病気と見間違えやすい特徴があります。過去に脳梗塞や心臓病を経験された方、あるいは生活習慣病をお持ちの方は、自己判断を避け、他の病気の可能性も考慮することで、重大な疾患の早期発見につながります。 レイノー現象 比較表 アッヘンバッハ症候群 レイノー現象 主な症状 指先の紫色のあざ、腫れ、違和感 指先の白→紫→赤の色変化、冷感、しびれ 誘因 とくになし(軽い刺激など) 寒さ、ストレスなど 出血の有無 あり(皮下出血) なし 血流障害 なし 血管収縮あり 原因疾患 基本的に良性 膠原病などが背景にあることも 注意点 見た目が似ており誤解されやすい 繰り返す場合は基礎疾患の検査が必要 (文献1)(文献3) レイノー現象は、寒さやストレスなどの刺激で末梢の血管が一時的に収縮し、指先が白くなった後に紫色や赤色に変色する現象です。 とくに女性に多く、左右対称に手足の指先に起こるのが特徴です。発作は数分から数十分で自然に回復し、温めると軽快します。アッヘンバッハ症候群と同様に色の変化がありますが、レイノー現象では皮下出血や腫れは伴いません。 多くは生理的反応として経過しますが、症状が頻繁に続く場合や関節のこわばり、全身の疲労感を伴う場合は、膠原病の可能性もあるため、医療機関での受診が必要です。 血管炎 比較項目 アッヘンバッハ症候群 血管炎 主な症状 指の紫色のあざ、腫れ、違和感、しびれ、つっぱり感 紫斑、皮下結節、潰瘍、関節痛、しびれ、むくみ、全身症状、多臓器障害 皮膚の変化 指に限局した紫色のあざや腫れ(皮下出血) 赤紫色のあざ、点状出血、結節、潰瘍、網目状の赤み 発症のきっかけ 軽い刺激や日常動作 感染症、薬、膠原病、自己免疫異常など 全身症状の有無 なし あり(発熱、倦怠感、体重減少など) 臓器への影響 基本的になし 腎臓、肺、消化管、神経、脳など多臓器に障害が及ぶ可能性あり 合併症・重症度 良性疾患で合併症は少ない 腎不全、神経障害、失明など重篤な合併症の恐れ 原因疾患の有無 基本的に単独で発症 自己免疫疾患や全身性疾患を背景に持つことが多い (文献1)(文献4) 血管炎は、体内の血管に炎症が起こる病気です。原因は自己免疫反応や感染症などさまざまで、炎症によって血管が傷つくと血流が悪くなり、皮膚に紫斑や赤み、しこり、潰瘍などが現れます。 指先だけでなく、手足全体や体幹にも症状が広がることがあり、発熱や倦怠感、関節の腫れなど全身症状を伴うのが特徴です。アッヘンバッハ症候群は指先に限局し自然に治ることが多いのに対し、血管炎は進行性で放置すると内臓にも影響が及ぶ可能性があります。皮膚の変化に加え、慢性的な体調不良が続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。 単純性紫斑 比較項目 アッヘンバッハ症候群 単純性紫斑 主な症状 突然、指などに紫色のあざや腫れ(皮下出血)が現れ、違和感・しびれ・つっぱり感を伴うことが多い 下肢などに打撲の覚えがないまま赤紫〜暗褐色のあざが現れ、違和感や腫れを伴わないのが特徴 好発部位 主に手指(とくに中年以降の女性) 主に下肢(膝から下)、臀部、上腕。若い女性に多い 誘因 軽い刺激や日常動作がきっかけになるが、明らかな外傷はない 明確なきっかけがなく発症しやすく、毛細血管の脆弱性や体質、過労、月経、栄養状態、薬剤の影響などが関与することがある 持続時間 数日〜1週間程度で自然に回復 あざは自然に消える。特別な治療は不要 合併症・危険性 良性で重篤な合併症は少ないが、他の疾患との鑑別が必要 基本的に良性で、全身症状や他の出血はなく、治療は不要で経過観察のみで対応可能 (文献1)(文献5) 単純性紫斑は、皮膚の毛細血管がもろくなり、軽い刺激や加齢によって出血しやすくなる状態です。とくに女性に多く、腕や脚などに突然紫斑が現れますが、違和感やかゆみはほとんどありません。 多くの場合、数日〜1週間ほどで自然に消えるのが特徴です。アッヘンバッハ症候群と同様に見た目の変色が目立ちますが、単純性紫斑は繰り返し出現しやすく、症状の範囲も広がることがあります。 血液検査では異常が見られないことが多く、治療は不要なケースがほとんどですが、高齢者で多発する場合は血管の健康や内出血の原因を確認するため、内科での診察が勧められます。どちらの病気も自然に軽快するケースが多いですが、症状が急に強くなったり広がったりした場合は、早めに医師の診察を受けることが大切です。 老人性紫斑 比較項目 アッヘンバッハ症候群 老人性紫斑 主な症状 突然の手指の違和感・腫れ・紫斑(皮下出血) 前腕や手の甲の赤紫色のあざ 原因 血管の脆弱性・軽微な外力(加齢の影響) 加齢・紫外線曝露・血管の脆弱化 好発部位 手指(とくに示指・中指)、手のひら 前腕、手の甲、顔面 治療法 自然軽快、特別な治療は不要 自然消失、特別な治療は不要 注意点 他疾患との鑑別が必要、再発の可能性もある 他の出血性疾患との鑑別が必要 (文献1)(文献6) 老人性性紫斑は、加齢により皮膚の毛細血管がもろくなることで起こり、前腕や手の甲に違和感のないあざが繰り返し現れます。2〜3週間ほどで自然に消えるのが一般的です。 アッヘンバッハ症候群と同様に皮膚の変色が見られますが、単純性紫斑は広範囲かつ繰り返し起こるのが特徴です。血液検査で異常が見られないことが多く、多くは治療不要ですが、高齢者で頻発する場合は、内出血の背景に病気が隠れていないか確認のために医療機関への受診が推奨されます。 後天性血友病A 比較項目 アッヘンバッハ症候群 後天性血友病A 主な症状 手指の違和感、腫れ、紫斑(皮下出血) 皮下出血、筋肉内出血、消化管出血などが突然発生し、広範囲に及ぶ 原因 血管の脆弱性や軽微な外力によると考えられている 自己免疫反応により第VIII因子への自己抗体が産生され、血液が固まりにくくなる 出血の範囲 限局的(主に手指) 広範囲、深部組織や消化管にも及ぶ 治療の必要性 通常は不要で、数日〜1週間程度で自然に軽快 早急な治療が必要。放置すると重篤な貧血や生命の危険を伴う 予後 良好(自然軽快) 重篤な後遺症や生命の危険があり、早期診断と治療が不可欠 (文献1)(文献7) 紫色のあざが突然現れる症状には、いくつかの原因が考えられます。アッヘンバッハ症候群は、手指に限定して腫れや違和感を伴う皮下出血が起こる一過性の病変で、自然に治まることがほとんどです。 老人性紫斑も加齢により前腕や手の甲に違和感のないあざが繰り返し現れる良性疾患です。しかし、後天性血友病Aは、全身に出血が広がる危険な病気で、血液が固まりにくくなる自己免疫反応が原因です。 皮下や筋肉、内臓にも出血が及び、命に関わることもあるため早期の治療が必要です。見た目が似ていても、原因や重症度は異なるため、出血症状が気になる場合は早めに医療機関を受診しましょう。 バージャー病 比較項目 アッヘンバッハ症候群 バージャー病 主な症状 突然の手指の違和感、腫れ、紫色のあざ(皮下出血) 手足の冷感、しびれ、違和感、潰瘍、壊死。進行すると指や足の切断が必要になることも 原因 明確な原因は不明。加齢に伴う血管の脆弱性や軽微な外力が関与と考えられる 喫煙が主なリスク因子。血管の炎症や血栓形成による血流障害が原因。特定の遺伝的素因も関与 発症年齢・性別 50代以降の女性に多い 20〜40代の男性、とくに喫煙者に多い 治療法 特別な治療は必要なく、数日で自然に軽快することが多い 禁煙が最重要。薬物療法や血行再建手術、重症例では手足の切断が必要な場合も 予後 良好。再発もあるが重篤な合併症は少ない 進行すると手足の切断が必要になることもあり、生活の質(QOL)に大きな影響 注意点 数日で自然軽快。症状が繰り返されることがあり、他疾患との鑑別が必要 症状が似ているため誤診リスクあり。喫煙歴の確認が重要。進行性疾患のため早期診断・治療が必要 (文献1)(文献8)(文献9) バージャー病(閉塞性血栓性血管炎)は、手足の末梢血管に炎症が起き、血流障害により違和感・しびれ・潰瘍などを引き起こす病気です。とくに喫煙者の若年〜中年男性に多く、皮膚が白や紫に変色することがあり、アッヘンバッハ症候群と見分けがつきにくいこともあります。 ただし、バージャー病は進行性で、放置すると指先が壊死し、切断に至るケースもあります。禁煙が最も重要な対策であり、変色や冷感、しびれが持続する場合は医療機関への受診が必要です。 アクロシアノーシス 比較項目 アッヘンバッハ症候群 アクロシアノーシス 主な症状 突然の違和感、腫れ、紫色のあざ(皮下出血) 持続的な指先の青紫色の変色、冷感 原因 微小血管の破裂による皮下出血 末梢血流の慢性的な低下 誘因 軽微な外力や血管の脆弱性 寒冷刺激、精神的ストレス 経過 数日で自然に軽快 症状は持続的で、とくに寒冷時に悪化 治療法 特別な治療は不要 生活習慣の改善(保温、ストレス管理、禁煙など) (文献1)(文献10) アクロシアノーシスは、手足の先が青紫色に変色し冷たく感じる状態で、寒さやストレスによる末梢血流の低下が原因とされています。症状は左右対称に持続するのが特徴です。 アッヘンバッハ症候群は突然の出血や腫れを伴い、数日で自然に治まるのに対し、アクロシアノーシスでは出血や腫れはなく、寒い季節に悪化する傾向があります。 重篤な病気ではありませんが、膠原病などが隠れていることもあるため、症状が続く場合は内科や皮膚科を受診しましょう。 アッヘンバッハ症候群の治療法 治療法 目的・効果 具体的な対応・内容 注意点 安静・患部の冷却 出血の拡大防止・違和感の軽減・自然治癒促進 安静保持、冷却(15〜20分を目安に繰り返し実施) 過度な冷却は避ける。氷はタオルに包んで使用 薬剤療法 症状の緩和・出血抑制・血管強化による再発予防 止血薬、血管強化薬を医師の判断で処方・服用 症状が軽い場合は薬は不要。自己判断での服用は避ける 食事療法 血管の健康維持・再発防止への寄与 ビタミンC・E、DHA/EPA、タンパク質を含む食品を摂取。減塩も重要 即効性はないため、あくまで補助的な予防策として継続が必要 アッヘンバッハ症候群は、多くの場合で数日〜1週間ほどで自然に軽快し、特別な治療を必要としない良性の病気です。紫斑や腫れは後遺症を残さずに治まりますが、症状が強い場合や繰り返す場合は、患部の安静や冷却が有効です。 まれに血管や全身の病気が隠れていることもあるため、症状が続く場合は医療機関での診察が必要です。血管の健康を保つためには、食生活や生活習慣の見直しが再発予防に有効です。数日たっても改善しない場合や、しびれ・脱力を伴う場合は、他の疾患の可能性もあるため、早めに受診しましょう。 安静・患部の冷却 アッヘンバッハ症候群の初期対応では、患部の安静と冷却が有効です。指先の内出血によって紫斑が生じた場合、動かしすぎると症状が悪化することがあります。 手はできるだけ使わず、心臓より高い位置で保つことで腫れの拡大を防げます。氷や保冷剤をタオルで包んで10〜15分程度冷やすと、血管が収縮し出血を抑える効果が期待できます。 ただし、冷やしすぎは血流を悪化させるため注意が必要です。症状が落ち着くまでは、家事や細かい作業など手に負担のかかる動作を控えるようにしましょう。 薬剤療法 目的 有効な理由 補足・ポイント 症状の緩和 止血薬で出血を抑え、血腫の拡大を防止。血管強化薬で腫れや違和感の軽減 医師が症状や体質に応じて適切に処方 再発予防 血管の耐久性を高め、再発リスクを低減 血管が脆い方は繰り返しやすいため予防が重要 不安の軽減 薬剤療法により不安の軽減や精神的安定につながる 突然の症状に備える手段として有効 アッヘンバッハ症候群は多くの場合自然に回復しますが、症状が強い場合や再発を繰り返す場合には薬剤が用いられることがあります。 出血の拡大を防ぐためにビタミンCなど血管強化作用のある成分を補ったり、腫れや違和感が強いときにはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が処方されることもあります。ただし、これらは対症療法であり根本治療ではありません。 再発や紫斑の拡大がある場合は、他疾患との鑑別を目的とした検査が必要です。自己判断使用は避け、医師の指導を受けましょう。 食事療法 栄養素 期待される効果 主な食品例 ビタミンC 血管の強化、脆弱性の改善 トマト、ピーマン、柑橘類 ビタミンE 抗酸化作用、血行促進、血管の健康維持 アーモンド、植物油、卵 DHA/EPA 血流の改善、血管の柔軟性向上 イワシ、サバ、サンマ タンパク質 血管の構成要素としての役割、健康維持 肉類、魚、卵、大豆製品 血管の健康維持には日頃の食生活が大切です。ビタミンCやE、DHA/EPAなど抗酸化作用のある栄養素を含む食品(柑橘類、ブロッコリー、ナッツ類、青魚など)を意識して摂取することが血管の老化予防に役立ちます。また、高血圧や糖尿病がある方は、塩分・糖分・脂質の摂りすぎに注意が必要です。 体重増加や喫煙は血管に負担をかけるため、生活習慣の改善が再発予防に有効です。症状が続く場合は、他の病気が隠れている可能性もあるため、早めに医療機関を受診しましょう。 アッヘンバッハ症候群と脳梗塞に不安を感じたら医療機関へ アッヘンバッハ症候群は多くが良性ですが、類似の症状に重大な疾患が隠れていることもあります。高血圧や糖尿病、脳梗塞の既往がある方は血管障害の可能性もあるため、症状が長引く、繰り返す、しびれなど神経症状を伴う場合は早めの受診が大切です。 不安を感じている方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。脳梗塞の前兆かどうかを含め、丁寧に診察いたします。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。 参考資料 (文献1) 一般社団法人 町田市医師会 「Achenbach(アッヘンバッハ)症候群」一般社団法人 町田市医師会, https://www.machida.tokyo.med.or.jp/?page_id=3300(最終アクセス:2025年06月10日) (文献2) Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA「脳卒中の概要」MSDマニュアル家庭版, 2023年6月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/09-%E8%84%B3-%E8%84%8A%E9%AB%84-%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%84%B3%E5%8D%92%E4%B8%AD/%E8%84%B3%E5%8D%92%E4%B8%AD%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81(最終アクセス:2025年06月10日) (文献3) Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA「レイノー症候群」MSDマニュアル家庭版, 2023年7月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/06-%E5%BF%83%E8%87%93%E3%81%A8%E8%A1%80%E7%AE%A1%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E5%8B%95%E8%84%88%E7%96%BE%E6%82%A3/%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%8E%E3%83%BC%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4(最終アクセス:2025年06月10日) (文献4) Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA「血管炎の概要」MSDマニュアル家庭版, 2022年5月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/08-%E9%AA%A8-%E9%96%A2%E7%AF%80-%E7%AD%8B%E8%82%89%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%A1%80%E7%AE%A1%E7%82%8E%E7%96%BE%E6%82%A3/%E8%A1%80%E7%AE%A1%E7%82%8E%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81(最終アクセス:2025年06月10日) (文献5) Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA「単純性紫斑病」MSDマニュアル家庭版, 2023年5月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/13-%E8%A1%80%E6%B6%B2%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%A1%80%E7%AE%A1%E3%81%AE%E7%95%B0%E5%B8%B8%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E5%87%BA%E8%A1%80/%E5%8D%98%E7%B4%94%E6%80%A7%E7%B4%AB%E6%96%91%E7%97%85(最終アクセス:2025年06月10日) (文献6) Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA「老人性紫斑病」MSDマニュアルプロフェッショナル版, 2023年5月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/11-%E8%A1%80%E6%B6%B2%E5%AD%A6%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E8%85%AB%E7%98%8D%E5%AD%A6/%E8%A1%80%E7%AE%A1%E7%95%B0%E5%B8%B8%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E5%87%BA%E8%A1%80/%E8%80%81%E4%BA%BA%E6%80%A7%E7%B4%AB%E6%96%91%E7%97%85(最終アクセス:2025年06月10日) (文献7) 田中一郎ほか.「後天性血友病A診療ガイドライン」, pp.1-30, https://www.jsth.org/wordpress/wp-content/uploads/2015/04/ssc01_guidelines.pdf(最終アクセス:2025年06月10日) (文献8) 公益財団法人難病医学研究財団「バージャー病(指定難病47)」難病情報センター https://www.nanbyou.or.jp/entry/170(最終アクセス:2025年06月10日) (文献9) 恩賜財団済生会「バージャー病」恩賜財団済生会 https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/buerger_disease/(最終アクセス:2025年06月10日) (文献10) iLiveポータル「アクロシアノーシス」HEALTHY LIFE https://ja.iliveok.com/health/akurosianosisu_110163i15949.html(最終アクセス:2025年06月10日)
2025.06.29 -
- 脳梗塞
- 脳卒中
- 頭部
「脳梗塞に使われるメコバラミンとはどんな薬なのか?」 「メコバラミンの副作用が心配」 脳梗塞の後遺症として残るしびれや麻痺に悩む中、処方されたメコバラミンの効果や副作用について、不安を感じていませんか。 メコバラミン(メチコバール)はビタミンB12の一種で、神経の修復を目的に脳梗塞の後遺症に処方されます。本記事では、その有効性や副作用を解説します。 記事の最後にはメコバラミンに関するよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 脳梗塞に使われるメコバラミン(メチコバール)とは 作用・特徴 内容 神経細胞の修復・再生促進 核酸やたんぱく質の合成を促進し、損傷した神経や軸索の修復・再生をサポート 髄鞘(ミエリン鞘)形成促進 神経伝達を助ける髄鞘の形成を促進し、レシチンの合成もサポート 神経伝導速度の改善 神経伝達を高めることで、しびれや感覚障害、麻痺の改善が期待できる ホモシステイン代謝の正常化 ホモシステインの代謝をサポートし、動脈硬化や脳梗塞の再発予防に役立つ可能性がある 位置づけ・有用性 急性期ではなく、回復期以降のしびれや感覚障害などの後遺症改善を補助する 注意点 重い麻痺を単独で改善する薬ではなく、リハビリと併用して神経修復を支える メコバラミンは、ビタミンB12の一種で、神経の修復や再生を助ける医療用医薬品です。脳梗塞後に生じるしびれや麻痺などの神経障害に対し、神経細胞の核酸やたんぱく質の合成を促進し、軸索や髄鞘の再生を支えることで、症状の改善を補助します。 通常は1日1,500μg(500μg錠を1日3回)を服用し、食前・食後どちらでも服用できます。副作用は少ないとされますが、まれに発疹や消化器症状が現れることがあり、体調に変化があれば医師や薬剤師に相談が必要です。 直射日光や湿気を避け、涼しい場所での保管が推奨されます。メコバラミンは神経修復を補助する薬であり、リハビリなど他の治療と併用することで、より高い効果が期待されます。服用は医師の指導のもとで行いましょう。 脳梗塞後の神経回復に対するメコバラミンの有用性 作用カテゴリー 作用の概要 末梢神経および中枢神経の修復 神経細胞や軸索・髄鞘の再生を促し、末梢・中枢神経の回復を支えて後遺症の改善をサポート 神経伝導速度の改善 髄鞘と軸索の修復により神経伝達が改善され、しびれや麻痺の軽減が期待できる 抗酸化作用・神経保護作用 活性酸素による酸化ストレスから神経を守り、神経細胞の損傷を抑制 リハビリ効果の補助 神経の再生や伝達を支え、リハビリによる運動や感覚の回復効果を後押しする 脳梗塞による後遺症では、神経が損傷を受けることでしびれや麻痺などの症状が現れます。メコバラミンは、損傷を受けた神経の修復を促す作用を持ち、神経障害の改善に役立つとされています。 効果には個人差があるため、症状や体質に応じて医師と相談しながら服用してください。メコバラミンは脳梗塞そのものを治療する薬ではなく、あくまで後遺症の改善や軽減を目的として用いられます。 神経回復を目指すには、メコバラミンの服用だけでなく、リハビリテーションの継続や生活習慣の見直しもあわせて行うことが大切です。 末梢神経および中枢神経の修復促進 作用カテゴリー 作用の概要 核酸・たんぱく質の合成促進 神経の構造維持や再生に必要な核酸・たんぱく質の生成促進 軸索の再生・伸長促進 損傷した神経線維の再生や機能回復の促進 神経細胞体の維持・回復 神経伝達物質を作る細胞体の機能維持と修復 髄鞘の形成・修復促進 電気信号の伝達効率を高める髄鞘の再形成促進 神経細胞内輸送の正常化 神経内のたんぱく質や物質の輸送機能の回復 酸化ストレスの軽減 活性酸素による酸化ダメージの抑制 神経細胞の保護と再生 神経細胞の細胞死の抑制と修復環境の整備 末梢神経・中枢神経への包括的な作用 中枢神経と末梢神経の両方に対する修復作用の発揮 メコバラミンは、神経の修復や再生を助けるビタミンB12の一種です。神経細胞の働きを整え、しびれや軽い神経痛の改善が期待されます。 メコバラミンは根本的な治療薬ではありませんが、脳梗塞後の神経回復においてリハビリとの併用により補助的な効果が期待できます。 神経伝導速度の改善 メコバラミンの働き 具体的な作用 髄鞘(ミエリン鞘)の形成促進・修復 神経線維を絶縁し、電気信号の伝達効率を高める髄鞘の再形成を助け、伝導速度を改善 軸索(神経線維)の修復・再生 損傷した軸索の再生を促し、電気信号が途切れずスムーズに伝わるようサポート 神経細胞の代謝改善・機能維持 エネルギー代謝や神経伝達物質合成を補助し、神経細胞全体の正常な働きを維持 感覚障害の改善 しびれや違和感の軽減、触覚や温痛覚など感覚の正常化を期待 運動機能の回復 神経と筋肉の信号伝達が円滑になり、筋力低下や麻痺の改善に寄与 QOL(生活の質)の向上 日常生活動作が円滑になり、生活の質向上につながる メコバラミンは神経を修復するビタミンB12製剤で、脳梗塞後のしびれや麻痺の改善に用いられる治療薬です。 髄鞘や軸索の再生を促し、神経伝導を整えることで感覚・運動機能の回復を支援します。神経代謝を助け、日常生活の動作向上にもつながります。リハビリとの併用で効果が高まります。 抗酸化作用・神経保護作用 項目 内容 酸化ストレスと神経障害 脳梗塞後、血流再開で発生する活性酸素が神経細胞の膜やDNAを傷つけ、細胞死の原因となる メコバラミンの抗酸化作用 活性酸素の生成を抑え、細胞膜の脂質過酸化を防ぐことで神経細胞の損傷を抑制 神経保護作用のメカニズム 神経細胞の死を抑え、神経成長因子の働きを高めることで、神経の再生や修復をサポートする 期待できる効果 神経細胞の修復を助けることで、脳梗塞後のしびれや感覚障害の改善が期待される 注意点 効果には個人差があるため、医師と相談しながら治療を進めることが大切 メコバラミンは、脳梗塞後の神経回復を支えるビタミンB12製剤です。脳梗塞の後に血流が再開すると、活性酸素と呼ばれる物質が大量に発生し、神経細胞の膜やDNAを傷つけて細胞死を引き起こすことがあります。 メコバラミンは、活性酸素の発生を抑えて神経細胞の損傷を防ぐ抗酸化作用を持ちます。 さらに、神経代謝を支え、神経成長因子の働きを高めることで、修復・再生を助ける神経保護作用により、脳梗塞後のしびれや感覚障害の改善が期待されます。効果には個人差があるため、治療は医師と相談の上で進めることが不可欠です。 リハビリ効果の補助 メコバラミンの働き リハビリ効果への影響 神経細胞の修復・再生促進 損傷した神経の修復や再生を助け、リハビリによる運動・感覚機能の回復をサポート 神経伝導速度の改善 神経伝導が改善されることで、リハビリ中の運動指令が伝わりやすくなり、回復効果が高まる 髄鞘(ミエリン鞘)形成の促進 髄鞘の形成を助けて神経伝達効率を上げ、リハビリによる神経機能の回復を支援 ホモシステイン代謝の正常化 血管の健康を維持し脳梗塞の再発予防に貢献、リハビリの継続性と長期的な回復を後押し 補助的な役割 神経の修復や保護、伝達機能の改善を通じて、リハビリの効果を高め、脳梗塞後の回復を支援 メコバラミンは神経修復を助け、脳梗塞後のリハビリ効果を高める補助薬です。 神経伝導の改善や髄鞘の再形成により運動や感覚の回復を支え、ホモシステイン代謝を整えることで再発予防にも寄与します。 リハビリと併用することで、日常生活の質の向上が期待されます。リハビリを行う際は、自己判断ではなく、医師の指導に従い実施しましょう。 脳梗塞に使われるメコバラミンの副作用 メコバラミンの副作用 内容 過敏症反応 発疹やかゆみ、じんましん、顔の紅潮などは薬に対するアレルギー反応で起こり、稀にアナフィラキシーを引き起こすこともあるため注意が必要 消化器症状 稀に食欲不振や吐き気などの消化器症状が現れることがあり、異常を感じた場合は医師に相談 頭痛・めまい 神経の影響で一時的に頭痛やめまいが起こることがあり、症状が続く場合は医師に相談 肝機能異常(稀に起こる症状) 倦怠感や黄疸、吐き気が出た場合は肝機能異常の可能性があるため、長期服用時には定期的な肝機能検査が必要 その他の症状(熱感・全身倦怠感・不眠など) 血流や神経の働きが高まることで、熱感や倦怠感、不眠が出ることがありますが、体質による差があるため、気になる症状が続く場合は医師に相談 メコバラミンは体質や体調によって、かゆみ・発疹・胃の不快感・下痢・頭痛・めまいなどの副作用が現れることがあります。 稀に肝機能の異常や倦怠感、不眠が出ることもあるため、異変を感じた場合は早めに医師に相談してください。 過敏症反応 要因 概要 注意点 体質的なアレルギー反応 ビタミンB12や代謝産物に対する免疫系の過剰反応 アレルギー体質や類似薬の過敏症歴がある場合の事前相談が必要 製剤中の添加物による反応 乳糖・着色料などの添加物によるアレルギー反応 薬剤過敏症の既往がある方への慎重な投与 継続使用による遅発型反応 初回使用で感作され、後の投与で発疹やかゆみなどが出現 継続使用中の症状発現時には早期受診 メコバラミンを使用する際は、過敏症反応に注意が必要です。体質によっては、ビタミンB12や添加物に対する免疫反応で、発疹・かゆみ・蕁麻疹などの皮膚症状が出ることがあります。 重症例では、呼吸困難や顔の腫れなどアナフィラキシー様反応が起こる可能性もあります。 初回だけでなく、継続使用中に突然発症するケースもあるため、服用前にアレルギー歴を医師に伝えることが重要です。服用中に異変を感じた場合は自己判断は避け、速やかに医療機関を受診しましょう。 消化器症状 症状 詳細 食欲不振 胃での吸収過程で胃の動きが変わり、一時的に食欲が落ちることがある 吐き気・嘔吐 胃酸の分泌が増えて胃粘膜が刺激されることで、吐き気や嘔吐が起こることがある 下痢 腸内環境への影響により、消化管の動きが乱れ、一部の方で下痢が生じることがある メコバラミンは末梢神経障害に有効ですが、まれに食欲不振・吐き気・下痢などの消化器症状が現れることがあります。 発症頻度は0.1〜0.5%未満と低く、多くは軽度で一時的とされます。空腹時の服用を避けるなどで軽減する場合もありますが、症状が続く場合は自己判断は避け医師に相談しましょう。 頭痛・めまい 原因 内容 神経機能の調整による影響 神経細胞修復や再生過程での神経伝達バランス変化による一時的な頭痛・めまいの発現 自律神経への影響 自律神経系の調整による血圧・心拍数変動が頭痛やめまいの原因となる場合あり 個人差による反応 体質や併用薬の影響で頭痛やめまいが生じることがあり、過敏体質の方や他の薬を使っている場合は注意が必要 軽度・一時的な場合の対処 経過観察と症状改善の確認 症状持続時の対処 医師の指導を受けて中止も検討 メコバラミンは神経障害の治療に用いられる薬ですが、まれに頭痛やめまいなどの副作用が生じることがあります。頭痛・めまいは神経修復過程での伝達バランスの変化や、自律神経の調整による血圧・心拍数の変動が原因と考えられます。 体質や体調、他の薬との併用によって症状が出やすくなることもあり、とくに高齢者や持病のある方は注意が必要です。 日常生活に支障がある場合や改善が見られない場合は、自己判断で服用を続けず、異変を感じた場合は、早めに医師の診察を受けるようにしましょう。記録を残すと診療時の判断に役立ちます。 肝機能異常(稀に起こる症状) 原因・注意点 内容 薬物性肝障害の可能性 薬剤の代謝産物が肝細胞に影響を与え、肝機能異常を引き起こすことがある 個人差による代謝の違い 遺伝的要因や体質によって代謝が異なり、肝臓に過度な負担がかかる場合がある 症状の早期発見 倦怠感、食欲不振、黄疸、発疹、吐き気・嘔吐、かゆみなどの症状出現時の速やかな医師相談 定期的な検査 長期服用時の定期的な肝機能検査の推奨 医師との相談 副作用が疑われる場合の自己判断での中止を避け、医師の指示に従う メコバラミンの服用により、まれに肝機能異常が起こることがあります。薬が肝臓で代謝される際、その代謝産物が肝細胞に影響を与える薬物性肝障害が原因となることがあります。 また、体質や遺伝的要因によって薬の代謝能力に差があり、肝臓に過剰な負担がかかる場合があります。初期は無症状のことが多いですが、倦怠感や黄疸、吐き気、かゆみなどの症状が出た場合は早めの受診が必要です。 とくに長期間服用する場合や他の薬と併用する場合には、定期的な血液検査で肝機能を確認することが大切です。副作用が疑われても自己判断で服用を中止せず、医師に相談した上で対処を受けましょう。 その他の症状(熱感・全身倦怠感・不眠など) 症状 主な原因 備考 全身倦怠感 代謝や神経伝達が活発になることで、一時的に疲労感やエネルギーの消耗がみられる 身体が慣れるまでに時間が必要な場合あり 熱感(ほてり) 血流改善によって末梢血管が拡張し、体質によっては感覚の違いを生じることがある 顔や手足にほてりを感じやすい 不眠 神経が興奮しやすくなり、就寝前の服用で眠れなくなることがある 個人差により感じ方が異なる メコバラミンは、まれに熱感(ほてり)、全身倦怠感、不眠などの副作用が現れることがあります。熱感は血流改善による末梢血管の拡張、倦怠感は代謝や神経活動の一時的な活性化、不眠は神経の興奮が原因と考えられます。 これらは体が薬に慣れる過程で一時的に現れることもありますが、症状が続く場合や生活に支障がある場合は、自己判断で服用を中止せず、医療機関への受診が必要です。 脳梗塞後に用いられるメコバラミン以外の治療法 治療法 内容 抗血小板薬・抗凝固薬 脳梗塞の再発を防ぐ薬剤で、タイプに応じて使い分ける。副作用に注意しながら慎重に管理 リハビリテーション 症状に応じて理学療法、作業療法、言語療法、認知訓練などを早期に組み合わせて行う 栄養療法 神経や筋肉の回復に必要なビタミンB群やたんぱく質などの栄養を補うことで、筋力の維持や免疫力の向上、感染症の予防につながる 再生医療 幹細胞治療などで損傷した脳組織の再生や神経機能の回復を目指す治療法。リハビリと組み合わせることで後遺症改善や日常生活復帰の可能性が広がる 脳梗塞後の回復には、メコバラミンに加え、抗血小板薬・抗凝固薬による再発予防、リハビリによる機能回復、栄養療法による体力や神経機能の維持などが重要です。治療は段階に応じて選択されるため、医師と相談しながら実施しましょう。 抗血小板薬・抗凝固薬 脳梗塞の再発を防ぐには、血液が固まりにくい状態を保つことが大切です。非心原性脳梗塞では、血小板の働きを抑える抗血小板薬(アスピリン・クロピドグレル・シロスタゾールなど)が使われます。 薬によっては胃の不調や頭痛、肝機能への影響などの副作用があるため注意が必要です。一方、心房細動などが原因の心原性脳塞栓症では、血液を固まりにくくする抗凝固薬(ワルファリンやDOAC)が用いられます。出血のリスクがあるため、定期的な検査と医師の指導のもとで服用を続けることが不可欠です。 リハビリテーション リハビリの種類 目的・内容 期待される効果 理学療法 筋力強化、関節の可動域改善、歩行訓練など 反復運動で脳の再学習を促し、歩行や立ち上がりなどの基本動作の回復を支援 作業療法 着替え、食事、入浴などの日常動作(ADL)の訓練、手先の機能訓練 日常生活に合わせた個別の訓練で、自立と機能回復を目指す 言語療法 発話・言語の回復、嚥下機能の訓練 言語や嚥下の機能を改善し、会話や食事のしやすさを高めていく 認知機能訓練 記憶力、注意力、判断力の訓練 認知機能を活性化し、高次脳機能の回復と生活の質の向上を支援 リハビリ全体の方針 できるだけ早期に開始し、継続が重要 合併症(筋萎縮・関節拘縮)の予防、日常生活への早期復帰、脳の機能再編成の促進 脳梗塞後のリハビリテーションは、失われた機能の回復や再発予防において重要な役割を果たします。損傷を受けた脳の代わりに、他の神経が代償機能を担う脳の可塑性を活かすためには、早期からのリハビリが効果的です。 リハビリでは、筋力や歩行の訓練、着替えや食事などの日常動作の練習、会話や飲み込みの機能回復を行います。症状に合わせたプログラムを続けることで、生活の質を向上させることが期待できます。リハビリは医師と連携し、長期的に取り組む姿勢が大切です。 以下の記事では脳梗塞後のリハビリについて詳しく解説しています。 栄養療法 有効である理由 解説 神経機能の回復を支援する栄養素の補給 ビタミンB群(B1・B6・B12)を含む豚肉や魚、卵、乳製品、緑黄色野菜などを摂ることで、神経の修復や再生を助ける 筋力維持とサルコペニア予防 十分なエネルギーとたんぱく質(肉、魚、大豆製品、卵など)の摂取による筋肉量維持とリハビリ効果の向上 免疫機能の強化と感染症予防 適切な栄養状態による免疫力維持と誤嚥性肺炎など感染症リスクの低減。ビタミンC、亜鉛、良質なたんぱく質の摂取 リハビリテーションの効果を最大化 良好な栄養状態による運動・訓練効果の向上と日常生活動作(ADL)改善。栄養不良時のリハビリ効果の低下防止 脳梗塞後の回復を支える上で、栄養療法は欠かせない要素のひとつです。神経や筋肉の再生にはたんぱく質やビタミン、ミネラルなどの栄養素が重要であり、ビタミンB群やオメガ3脂肪酸、抗酸化成分の摂取が注目されています。 脳梗塞の再発を防ぐためには、食生活を見直し、高血圧や糖尿病などの病気をコントロールすることが大切です。栄養療法は一時的なものではなく、生活習慣として継続し、医師の指導のもとで行いましょう。 以下の記事では、脳梗塞の予防・再発防止に食べてはいけないものを詳しく解説しています。 再生医療 有効である理由 内容 損傷した脳組織の再生促進 幹細胞投与による神経細胞や血管細胞への分化促進と脳組織の再生 神経機能の回復と後遺症の改善 幹細胞による炎症抑制と神経保護作用、麻痺や感覚障害・言語障害など後遺症の改善 リハビリテーションとの相乗効果 幹細胞治療とリハビリ併用による神経回路再構築と機能回復促進、日常生活復帰の早期化 再生医療は、傷ついた神経を修復し、脳梗塞後の後遺症を改善するための新しい治療法です。幹細胞を使って神経の働きを回復させ、歩きにくさや麻痺、しびれなどの症状を軽くすることが期待されます。 ただし、すべての方に受けられるわけではなく、年齢や身体の状態、発症からの期間などによって判断されます。治療を受けられる医療機関は限られているため、事前に確認し、医師から十分な説明を受けた上での検討が大切です。 以下の記事では、再生医療について詳しく解説しています。 メコバラミンで改善しない脳梗塞の後遺症にお悩みなら再生医療も選択肢のひとつ メコバラミンは脳梗塞の後遺症に有効な治療薬ですが、過敏症反応や頭痛・めまいなどといった副作用が起こる可能性があります。メコバラミンを服用してもしびれや麻痺といった神経症状が十分に改善しない場合、再生医療も選択肢のひとつです。 再生医療は、幹細胞などを活用して損傷した神経を再構築し、機能回復を目指す治療法です。当院「リペアセルクリニック」では、メコバラミンで改善しない脳梗塞の後遺症に対して再生医療(幹細胞治療)を提供しています。 脳梗塞の後遺症に関するお悩みは当院「リペアセルクリニック」にご相談いただけますと幸いです。ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。 脳梗塞に使われるメコバラミンのよくある質問 メコバラミン(メチコバール)における飲み合わせの禁忌はありますか? メコバラミンを服用する際は、一部の薬やサプリメントとの併用に注意が必要です。葉酸製剤や高用量のビタミンCは、ビタミンB12の吸収や代謝に影響を与える可能性があります。 また、抗がん剤や抗てんかん薬の一部でも相互作用が生じることがあります。現在服用中の薬や市販薬、サプリメントがある場合は、自己判断せず、医師や薬剤師に相談してください。 メコバラミン(メチコバール)の服用で血圧上昇しますか? メコバラミンによって血圧が直接上昇する報告は多くありませんが、体質や服用状況によっては一時的に自律神経が変動し、血圧に影響を与える可能性があります。 気になる症状がある場合は、血圧を定期的に測定し、変化が大きいようであれば医師に相談してください。 メコバラミンの服用で効果が出るまでの期間は? メコバラミンは即効性のある薬ではなく、効果が現れるまでに時間がかかります。一般的には、継続して服用することで、数週間から数か月かけて徐々に神経症状の改善が見られることが多いとされています。 とくに、しびれや麻痺などの神経障害は回復に時間がかかるため、途中で判断せず、根気強く治療を続けることが大切です。ただし、まったく改善が見られない場合や症状が悪化する場合には、早めに医師へ相談してください。
2025.06.29 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
健康診断で「尿酸値が高い」と指摘され、不安に感じていませんか? 「痛風になったらどうしよう」「日常生活で何に気を付ければ良いの?」といったお悩みを持つ方もいらっしゃることでしょう。 尿酸値が7.0mg/dLを超えると、痛風のリスクが高まるだけでなく、さまざまな生活習慣病にもつながる可能性があります。 ですが、ご自身の尿酸値の状態を正しく理解し、適切な対策を行うことで、健康な毎日を送ることは十分に可能です。 本記事では、尿酸値の基準値や高くなる原因、そして具体的な治療法について、わかりやすく解説します。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 尿酸値や痛風について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 尿酸値が高いと痛風発作のリスクが上昇! 尿酸値が高い状態、いわゆる「高尿酸血症」は、痛風発作を引き起こす要因です。 健康診断などで尿酸値の高さを指摘されたものの、自覚症状がないため放置してしまう方も少なくありません。 しかし、尿酸値が高い状態が続くと、ある日突然、足の指の付け根などに激しい痛みが走る痛風発作が起こる可能性があります。 ご自身の尿酸値がどのくらい危険な状態なのか、正しく理解しましょう。 8.0mg/dLは危険?尿酸値の診断結果を見てみよう 結論、尿酸値8.0mg/dLは注意が必要な状態です。 血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超えると、高尿酸血症と診断され、合併症がある場合は8.0mg/dLを越えると治療が検討されます。(文献1) この状態は、血液中に溶けきれなくなった尿酸が結晶化し、関節などに蓄積しやすくなることを意味します。 尿酸の結晶が関節に溜まると、痛風発作と呼ばれる激しい痛みを引き起こしてしまいますので、以下の表で、ご自身の尿酸値がどのレベルに該当するか確認してみましょう。 尿酸値(mg/dL) 評価 状態 7.0以下 正常値 とくに問題ありませんが、生活習慣には注意しましょう。 7.1~7.9 要注意 高尿酸血症の状態です。生活習慣の見直しが必要です。 8.0~8.9 危険 痛風発作のリスクが高い状態です。専門医への相談をおすすめします。 9.0以上 非常に危険 いつ痛風発作が起きてもおかしくない状態です。直ちに医療機関を受診してください。 (文献2)(文献3) 尿酸値が高い状態は、痛風だけでなく、腎臓の機能低下や尿路結石、さらには心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気のリスクも高めることが知られています。 尿酸値が高いことによる体への具体的な影響については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。 尿酸値の基準値|痛風になりやすいライン 尿酸値の基準値は、一般的に7.0mg/dL以下とされています。この数値を超えると「高尿酸血症」と診断され、痛風やその他の生活習慣病のリスクが高まります。 尿酸値が9.0mg/dLを超えると、痛風発作が起こる可能性が非常に高くなりますが、尿酸値が7.0mg/dLを超えたからといって、すぐに痛風になるわけではありません。 高尿酸血症の状態が長く続くことで、徐々に尿酸の結晶が関節に蓄積し、ある日突然痛風発作として症状が現れます。 そのため、自覚症状がなくても健康診断で尿酸値の高さを指摘された場合は、早期に生活習慣の改善に取り組むことが重要です。 男女別|尿酸値の基準値 尿酸値の基準値は、男女で若干異なります。 一般的に、男性の方が女性よりも尿酸値が高くなる傾向があります。 性別 基準値(mg/dL) 男性 3.7~7.8 女性 2.6~5.5 (文献4) 男性の尿酸値が女性より高い理由は、男性ホルモンに尿酸の排泄を抑える働きがあるためです。 一方、女性ホルモン(エストロゲン)には、腎臓からの尿酸の排泄を促す働きがあります。そのため、女性は男性に比べて尿酸値が低く痛風になりにくいとされています。(文献5) しかし、注意が必要なのは閉経後の女性です。閉経を迎えると女性ホルモンの分泌が減少し、尿酸値が上昇しやすくなります。 その結果、閉経後の女性は痛風のリスクが高まるため、女性も食生活や運動習慣に気を配ることが大切です。 年代別|尿酸値の基準値 尿酸値に、年代別の明確な基準値は設けられていません。しかし、年齢を重ねるにつれて尿酸値は上昇する傾向にあります。これは加齢に伴う腎機能の低下が影響していると考えられています。 腎臓は尿酸を体外へ排出する重要な役割を担っているため、その機能が低下すると、体内に尿酸が溜まりやすくなるのです。 実際に、日本の国民健康・栄養調査によると、高齢になるほど血清尿酸値の増加が報告されています。(文献5) とくに、40代以降の男性や閉経後の女性は、尿酸値が高くなりやすい傾向があるため、定期的な健康診断でご自身の数値を把握し、生活習慣を見直しましょう。 若い世代であっても、食生活の乱れや運動不足、ストレスなどにより尿酸値が高くなるケースも増えていますので、油断は禁物です。 尿酸値が高くなる原因 尿酸値が高くなる主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。 プリン体の過剰摂取 尿酸の排泄低下(腎機能低下) 飲酒 肥満・メタボリックシンドローム ストレスや過度な運動 遺伝的要因 尿酸は、私たちの体内で「プリン体」という物質が分解されて作られる老廃物です。通常であれば、尿酸は腎臓から尿と一緒に排泄され、体内の量は一定に保たれています。 尿酸が過剰に作られたり、うまく排泄されなくなり、血液中の尿酸値が上昇する原因について解説します。 プリン体の過剰摂取 尿酸の元となるプリン体は、細胞の核に含まれる成分で、私たちの体内でも生成されますが、食事から摂取されるものも少なくありません。 とくに、レバーや魚卵、干物など、プリン体を多く含む食品を過剰に摂取すると、体内で作られる尿酸の量が増え、尿酸値が上昇する原因となります。 一般的に、食品100gあたりに含まれるプリン体が200mg以上のものはプリン体の多い食品とされています。(文献1) 日常的にこれらの食品を好んで食べている方は、注意が必要です。 以下に、プリン体を多く含む食品の例をまとめましたので、ご自身の食生活を振り返ってみてください。 食品カテゴリ 食品カテゴリ プリン体含有量(mg/100g) 肉類 豚レバー 284.8 鶏レバー 312.2 牛レバー 219.8 魚介類 マイワシ干物 305.7 大正エビ 273.2 イサキ白子 305.5 アンコウ肝 399.2 魚卵 イクラ 15.7 スジコ 2.9 その他 干し椎茸 379.5 ビール酵母 2995.7 ただし、プリン体の摂取を極端に制限する必要はありません。大切なのは、バランスの取れた食事を心がけ、プリン体の多い食品は控えめにすることです。 プリン体と尿酸値の関係については、こちらの記事も参考にしてください。 尿酸の排泄低下(腎機能低下) 体内の尿酸は、約70%が腎臓から尿として排泄されます。(文献1) そのため、腎臓の機能が低下すると、尿酸を十分に排泄できなくなり、体内に蓄積して尿酸値が上昇します。 腎機能が低下する原因はさまざまですが、加齢のほか、糖尿病や高血圧といった生活習慣病が大きく関わっています。 これらの病気は、腎臓の血管にダメージを与え、徐々に腎機能を悪化させてしまうのです。 また、一部の降圧薬や利尿薬なども、尿酸の排泄を妨げることがあります。 現在、なんらかの薬を服用している方で尿酸値が高い場合は、一度かかりつけの医師に相談してみることをお勧めします。 腎機能の低下は自覚症状が現れにくいため、定期的な健康診断で腎臓の状態をチェックすることが非常に重要です。 飲酒 アルコールは、尿酸値を上げる大きな要因の一つです。 その理由は、主に3つあります。 理由 説明 アルコールが尿酸値を上げる アルコールが肝臓で分解される際に、尿酸の元となるプリン体が生成され、体内の尿酸量が増加します。 アルコールが尿酸の排泄を妨げる アルコールは腎臓からの尿酸排泄を抑制します。 とくに、ビールはプリン体を多く含むため、尿酸値を上げやすいお酒として知られています。 利尿作用による脱水 アルコールの利尿作用により体内の水分が失われ、血液が濃縮されることで一時的に尿酸値が上昇します。 お酒の種類に関わらず、アルコールの摂取量が多いほど尿酸値は上がりやすくなります。 休肝日を設けるなど、適度な飲酒を心がけることが大切です。 肥満・メタボリックシンドローム 肥満、とくに内臓脂肪が多いメタボリックシンドロームの状態は、尿酸値を上昇させることがわかっています。 内臓脂肪からは、インスリンの働きを悪くする物質が分泌され、インスリンの働きが悪くなると、体は血糖値を下げるためにより多くのインスリンを分泌しようとします。 この血液中のインスリンが過剰になった状態(高インスリン血症)が、腎臓での尿酸の排泄を妨げ、結果的に尿酸値を上げてしまうのです。 また、肥満の方は、過食や運動不足の傾向があり、それ自体が尿酸値を上げる原因にもなります。 肥満を解消し、適正体重を維持することは、尿酸値のコントロールにおいて非常に重要です。 BMI(肥満度を表す体格指数)が25以上の方は、まずは減量から始めてみましょう。 BMIの計算方法:体重(kg) ÷ {身長(m) × 身長(m)} ストレスや過度な運動 意外に思われるかもしれませんが、生活習慣全般の乱れによるストレスや激しい運動も尿酸値を上げる一因となることが示唆されています。 また、短距離走や筋力トレーニングといった、息が上がるほどの激しい運動(無酸素運動)を行うと、体内でエネルギーが大量に消費されます。 このとき、エネルギーの燃えカスとしてプリン体が多く作られ、結果として尿酸値が一時的に上昇します。 ですが、もちろん健康維持のために運動は欠かせません。 ウォーキングやジョギング、水泳といった、軽く汗ばむ程度の有酸素運動であれば、肥満の解消にもつながり、尿酸値の改善に効果的です。 ご自身の体力に合わせて、無理のない範囲で運動を続けましょう。 遺伝的要因 生活習慣に気をつけていても、尿酸値が高くなってしまう場合があります。 その背景には、遺伝的な要因が隠れていることもあります。 尿酸を体内で作る能力や、腎臓から排泄する能力には個人差があり、これらは遺伝によってある程度決まると考えられています。 実際に、家族に痛風の患者様がいる方は、そうでない方に比べて痛風になりやすいとされています。(文献1) ご自身の体質を理解し、人一倍、食生活や運動習慣に気をつけることが重要です。 食事と痛風の関係については、以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。 痛風と高尿酸値の治療法 尿酸値が高いと指摘された場合、どのような治療法があるのでしょうか。 高尿酸血症や痛風の治療の基本は、生活習慣の改善です。 具体的には、「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の3つが柱となります。 食事療法:プリン体を含む食品を控え、バランスの良い食事を心がける。 運動療法:有酸素運動を中心に肥満の改善を目指す。 薬物療法:生活習慣の改善で効果が不十分、または痛風発作の既往がある場合に尿酸降下薬を使用。 食事療法では、プリン体を多く含む食品を控え、バランスの取れた食事を心がけることが基本です。 また、水分を十分に摂取し、尿の量を増やすことで、尿酸の排泄を促せます。 運動療法では、ウォーキングなどの有酸素運動を中心に、肥満の解消を目指します。 これらの生活習慣の改善だけでは尿酸値が十分に下がらない場合や、すでに痛風発作を起こしたことがある場合には、尿酸値を下げる薬(尿酸降下薬)を用いた薬物療法が行われます。 治療法の詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。 【関連記事】 痛風治療と生活習慣の見直してみる?!今すぐ始める具体的ステップ 尿酸値を下げて腎臓の健康を守る!今すぐ始めたい痛風・腎臓病予防の生活習慣 まとめ|尿酸値が高いときは放置せず早めに医療機関へ! 尿酸値が7.0mg/dLを超える高尿酸血症は、痛風発作のリスクを高めるだけでなく、腎機能低下や尿路結石、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気の危険性も上昇させます。 とくに尿酸値8.0mg/dL以上の方や、痛風発作の既往がある方は、早急な対応が必要です。自覚症状がないからといって放置せず、健康診断で異常を指摘された場合は、専門の医療機関を受診しましょう。 食事療法や運動療法といった生活習慣の改善は、尿酸値をコントロールする基本です。高尿酸血症は腎機能の低下や動脈硬化のリスクを高め、放置すると全身の健康に影響を及ぼします。 痛風発作による関節の痛みだけでなく、高尿酸血症に伴う生活習慣病は、ひざや股関節など他の関節疾患のリスクも高めることが知られています。 当院「リペアセルクリニック」では、変形性ひざ関節症や股関節症など、加齢や生活習慣によって生じる関節疾患に対して再生医療を提供しています。 膝や股関節の痛みでお悩みの方は、当院の公式LINEで発信している再生医療の情報をご確認してください。 尿酸値と痛風に関するよくある質問 尿酸値が高いと必ず痛風になりますか? 尿酸値が高い「高尿酸血症」の状態であっても、必ずしも全員が痛風になるわけではありません。 痛風発作を起こすのは、高尿酸血症の方の一部です。 しかし、尿酸値が高い状態が長く続くほど、また、数値が高ければ高いほど、痛風発作のリスクは確実に上昇します。 自覚症状がないからといって安心せず、尿酸値が高いと指摘されたら、将来の痛風発作を予防するために、生活習慣の改善に取り組むことが大切です。 尿酸値は下がっても再び上がることはありますか? あります。食事療法や薬物療法によって一度尿酸値が下がっても、治療を中断したり、生活習慣が元に戻ってしまったりすると、再び尿酸値は上昇します。 薬物療法は、高血圧の薬と同様に、継続して服用することで尿酸値をコントロールするものです。 自己判断で薬をやめてしまうと、尿酸値が再上昇し、痛風発作を繰り返す原因となります。 医師の指示に従い、根気強く治療を続けることが重要です。 尿酸値が高いと痛風以外にも病気のリスクはありますか? 高尿酸血症の方は、痛風以外の病気リスクもあります。 血液中に溶けきれなくなった尿酸の結晶は、関節だけでなく、腎臓や尿路にも蓄積します。 腎臓に蓄積すると腎機能が低下する「痛風腎」に、尿路に蓄積すると激しい痛みを伴う「尿路結石」になることがあります。 さらに、高尿酸血症は、高血圧や脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病を合併しやすく、心筋梗塞や脳卒中など、命に関わる動脈硬化性疾患のリスクを高めることも明らかになっています。(文献1) 参考文献 (文献1) 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版|日本痛風・尿酸核酸学会 (文献2) 高尿酸血症・痛風の診断と治療|日本内科学会雑誌 (文献3) 共用基準範囲に関するガイドライン|公益社団法人 日本臨床検査標準協議会 (文献4) Analysis of a Japanese Health Insurance Database|Journal of Clinical Medicine (文献5) 国民健康・栄養調査結果|厚生労働省
2025.06.29 -
- その他、整形外科疾患
「若くてもサルコペニアになるって本当?」と疑問をお持ちではないでしょうか。 サルコペニアは高齢者に多い疾患であり、若年層で発症するイメージが湧かない方も多いかもしれません。 サルコペニアは加齢とともに進行するケースが多いものの、20〜30代の若年層でも発症リスクがあります。 進行を防ぐには早めに気がつき、定期的な運動や食事の見直しなど適切な対策を取ることが大切です。 本記事では、若年層のサルコペニアにおける原因やチェック方法、予防策までをわかりやすく解説します。 「サルコペニアかもしれない」と気になる方は、本記事を参考に症状をチェックしてみてください。 若年層のサルコペニアの原因は「生活習慣」にある 前提として筋肉が減少する病気がない場合、若年層でサルコペニアを発症する原因の多くは、日々の生活習慣にあるとされています。 なかでも、次の2つはとくに注意すべきポイントです。 運動不足による筋力低下 筋肉をつくる栄養の不足 ぜひ、現在の生活習慣と照らし合わせて確認してみてください。 原因1. 運動不足による筋力低下 日常的に体を動かす機会が少ないと、筋肉量は徐々に減り、サルコペニアのリスクが高まります。とくに、日頃から運動習慣がない人は注意が必要です。 次のような生活に心当たりがある方は、日常に運動を取り入れてみてください。 休日は家でゆっくり過ごすことが多い 階段よりもエレベーターやエスカレーターを使いがち デスクワーク中心の仕事をしている サルコペニアの進行による歩行困難や寝たきりを防ぐためにも、まずは「体を動かす意識」から始めることが大切です。階段を使う、少し早歩きするなど、日常の中に取り入れやすい行動から始めてみてください。 原因2. 筋肉をつくる栄養の不足 日々の偏食により栄養が不足すると、筋力の低下が進みサルコペニアのリスクが高まります。 なかでも、筋肉の材料となるたんぱく質や、筋肉の合成を助けるビタミン類が不足すると、筋力維持が難しくなります。 筋力を維持するのに必要な栄養素と、それを多く含む食品類の一例は以下の通りです。(文献1)(文献2)(文献3) 栄養素 豊富に含まれる食品類の例 たんぱく質 卵類 肉類 豆類 ビタミンD 魚類 キノコ類 ビタミンB6 肉類 くだもの類 偏食や欠食が続いているのであれば、まずはこれらの食品を1日に1食以上取り入れることから始めてみてください。 若年層でもサルコペニアになりやすい人の特徴 若年層であっても、以下のような特徴がある人はサルコペニアになりやすい傾向があります。 過度な食事制限をしている人 座りっぱなしの生活をしている人 筋肉の少ない痩せ型の人 思い当たる項目があれば、本章を参考に生活習慣を見直してみましょう。 過度な食事制限をしている人 過度な食事制限による無理なダイエットは、脂肪と同時に筋肉も減らしてしまうリスクがあります。また、栄養不足によりサルコペニアのリスクを高めるおそれがあるため、注意が必要です。 とくに次のようなダイエット法はリスクが高いため、避けるようにしましょう。 単品ダイエット 誤った糖質制限ダイエット 絶食ダイエット 野菜や果物のみの食生活 ダイエットは、栄養バランスを意識しながら無理のない方法で行うことが大切です。不安がある場合は、専門家と相談しながら自分に合った健康的なダイエットプランを立ててみてください。 座りっぱなしの生活をしている人 長時間座りっぱなしでいると、下半身の筋肉が使われず、気づかないうちに筋力が低下してしまうことがあります。 デスクワーク中心の方や、長時間車の運転をする仕事に従事している方などはとくに注意が必要です。体を動かさない時間が長くなると筋力が衰えやすくなり、歩行困難や寝たきりの原因にもなりかねません。 こうしたリスクを防ぐためにも、長時間座り続けないようこまめに体を動かすことが大切です。「1時間に1回は立ち上がる」「階段を使用する」「短時間の散歩をする」など、日常の中で無理なくできる工夫を取り入れてみてください。 筋肉の少ない痩せ型の人 細身でも筋肉が少なく脂肪が多い「やせ型体型」の人は、サルコペニア肥満のリスクがあるため注意が必要です。 「サルコペニア肥満」とは、BMIが標準または低体重でありながら体脂肪率が高い状態を指し、見た目では判断が困難です。(文献4) 見た目は細くても、筋肉量と脂肪量のバランスによっては健康リスクが隠れている場合があります。「痩せているから肥満ではない」と決めつけず、体組成計を用いて筋肉量や脂肪量をチェックし、自分の体の状態を正しく把握するようにしましょう。 サルコペニア肥満については、以下の記事で詳しく紹介しています。 若年層のサルコペニアに見られる初期症状 若年層にも見られるサルコペニアの初期症状として、次のような症状があります。 ペットボトルの蓋が開けにくい 転びやすい ふくらはぎが細くなったと感じる 階段を登るのがつらい 手を使わないと立ち上がれない こうした兆候を見過ごしてしまうと、気づいたときにはサルコペニアが進行していることもあります。 そのため、初期のサインを見逃さないことが大切です。少しでも心当たりがある場合は、早めに専門医に相談してみましょう。 若年層のサルコペニアのセルフチェック方法 すぐに実践できるサルコペニアのセルフチェック方法には、以下の3つがあります。 指輪っかテスト 片足立ち 歩行速度 「サルコペニアかもしれない」と感じたら、ぜひ試してみてください。 指輪っかテスト 指輪っかテストとは、ふくらはぎの太さから筋肉量を測る方法です。以下の手順で行ってみてください。(文献5) 両手親指と人差し指で輪をつくる つくった輪で、利き足と反対側のふくらはぎの一番太い部分を囲む 判定の目安は以下のとおりです。 指とふくらはぎの間に大きな隙間がある場合:サルコペニアのリスクが高い 指が届かない、またはぴったりと囲める場合:リスクは比較的低い ただし、指輪っかテストは主に高齢者向けの簡易的なセルフチェック方法のため、若年層のサルコペニアリスクを正確に評価できるかは不明確な部分があります。気になる場合は、日頃の食事や運動習慣を見直すとともに、必要に応じて専門医に相談しましょう。 片足立ち 片足立ちできる時間の測定は、下半身の筋力やバランス能力を確認する方法です。サルコペニア専用の評価項目ではありませんが、自宅での簡単なセルフチェックに役立ちます。やり方は以下のとおりです。 両手を腰に当てる 片足立ちをして立っていられる時間をタイマーで測る 片足立ちが15秒未満しか保てない場合は、サルコペニアの可能性があるため注意が必要です。(文献6) また、片足立ちによるセルフチェックを行う場合は、転倒しないように壁や家具の近くで行うようにしましょう。 歩行速度 筋力が低下すると、普段の歩くスピードにも影響が出ることもあります。サルコペニアの進行により歩行速度が遅くなることは、よくある兆候のひとつです。 日常生活の中で歩行速度を確認する方法として「横断歩道を青信号のうちに渡り切れるか」を目安にするのも一つの手段です。 ただし、実際に試す場合は安全に配慮してください。 若年層のサルコペニアを予防する方法 若年層のサルコペニア予防には、次の2つの方法が効果的です。 筋力トレーニングを定期的に行う たんぱく質を積極的に摂る いずれも手軽に始められる方法なので、自分のペースで今日から少しずつ取り組んでみてください。 筋力トレーニングを定期的に行う 運動不足を自覚している場合は、まずは軽い筋力トレーニングから始めて、定期的に続けてみましょう。 若年層が手軽に始められる筋トレの一例は、以下のとおりです。 スクワット プランク ウォーキング 階段の利用 これらは自宅や日常生活の中で取り入れやすく、続けると筋力維持やサルコペニア予防につながります。運動のハードルを上げすぎず、自分のペースで少しずつ習慣化することを心がけてみてください。 また、サルコペニア予防に効果的な筋力トレーニングは以下の記事にて詳しく解説しています。こちらも合わせてご覧ください。 たんぱく質を積極的に摂る サルコペニアの前兆があり、栄養不足を自覚している方は「たんぱく質」を十分に摂るよう意識しましょう。 いくら運動をしても、筋肉の材料となるたんぱく質が不足すると、筋肉はなかなかつきません。一方で、たんぱく質を十分に摂取できれば筋肉は効率よくつくられ、サルコペニアの予防にもつながります。 手軽に取り入れやすいたんぱく質が豊富な食材には、以下のようなものがあります。(文献7) 豚肉 卵 鮭 ほたて貝 また、食事から十分にたんぱく質を摂れない場合、プロテインやサプリメントを活用するのもひとつの方法です。日頃からたんぱく質を取り入れた栄養バランスの良い食事を心がけ、サルコペニアの予防に取り組んでみてください。 若年層のサルコペニアは早めの対策で進行を防ごう 本記事で解説したとおり、サルコペニアは若年層でも起こり得る病気です。とくに運動不足・栄養不足など生活習慣が引き金となりサルコペニアのリスクもあります。 早期発見と適切な対策により進行を防ぐことができます。本記事を参考にセルフチェックを行い、生活習慣を見直して若年からサルコペニアの予防に取り組んでみてください。 筋力の低下が進むと、膝や腰などの関節に負担がかかりやすくなり、痛みや動きにくさなど別の症状が生じることもあります。 こうした症状がある場合は、早めに専門医へ相談し、適切な処置を受けることが大切です。 当院「リペアセルクリニック」では、膝の痛みや関節の不調に対する再生医療を行っております。現在、メールまたはオンラインカウンセリングにて無料相談を受け付け中です。一人で悩まず、気になる方は当院までお気軽にご相談ください。 若年層のサルコペニアに関してよくある質問 病院ではどんな治療をしますか? サルコペニアの治療は、主に「運動療法」と「栄養療法」が有用であるとされており、病院でもこの2つが中心に行われます。(文献4)特効薬は存在しないため、根本的な生活習慣の改善が治療の基本です。 具体的には、専門家のもとで以下のような治療が行われる場合がほとんどです。 治療の種類 治療内容の例 運動療法 治療可能か確認したのち、長期間かけて筋力トレーニングを行う 栄養療法 管理栄養士が個別に栄養指導を行う より詳しい治療については、以下の記事にて解説しています。気になる方は、合わせて参考にしてください。 サルコペニアは何歳から進行しますか? サルコペニアは、30代頃から徐々に進行するリスクがあると言われています。実際に、骨格筋量は30代から毎年1〜2%ずつ減少するとの報告もあるため、若年層でも発症する可能性は否定できません。(文献8) 目立った症状がなくても、日頃から意識的に筋力を維持する食事や運動を心がけ、サルコペニアの予防に取り組んでいきましょう。 参考文献 文献1 厚生労働省 「たんぱく質」e-ヘルスネット https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/food/ye-044.html (最終アクセス:2025年6月17日) 文献2 厚生労働省 「ビタミンD」eJIM(イージム) https://www.ejim.mhlw.go.jp/public/overseas/c03/10.html (最終アクセス:2025年6月17日) 文献3 厚生労働省「ビタミンB6」eJIM(イージム) https://www.ejim.mhlw.go.jp/public/overseas/c03/08.html (最終アクセス:2025年6月17日) 文献4 日本サルコペニア・フレイル学会「サルコペニア診療ガイドライン2017年版」2020年 https://minds.jcqhc.or.jp/common/wp-content/plugins/pdfjs-viewer-shortcode/pdfjs/web/viewer.php?file=https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00426.pdf&dButton=false&pButton=false&oButton=false&sButton=true#zoom=auto&pagemode=none&_wpnonce=3b871a512b (最終アクセス:2025年6月17日) 文献5 厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合研究事業) 分担研究報告書「新規考案した3種類の簡易スクリーニング法(指輪っかテスト・ピンチカ・第1-2 指間厚) における筋肉減弱症(サルコペニア)を視野に入れた臨床的有用性の検討 ~継続性の高いコミュニティー健康活動を目指して~」 https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2012/123011/201217016A/201217016A0006.pdf (最終アクセス:2025年6月17日) 文献6 日本整形外科学会「運動器不安定症」 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/mads.html (最終アクセス:2025年6月20日) 文献7 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂) 増補2023年」2023年 https://www.mext.go.jp/content/20230428-mxt_kagsei-mext_00001_011.pdf (最終アクセス:2025年6月17日) 文献8 荒井 秀典.「サルコペニアの科学と臨床 1)サルコペニア診療ガイドライン」『日本内科学会雑誌』107(9), p1697-p.1701, 2018年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/107/9/107_1697/_pdf (最終アクセス:2025年6月17日)
2025.06.29 -
- その他、整形外科疾患
「最近つまずきやすくなった」「階段の上り下りがつらい」といった症状で悩んでいませんか。 それは、加齢による筋力の低下からくる「サルコペニア」の初期サインかもしれません。進行すると筋肉がさらに衰え、歩行や立ち上がりなど日常生活に支障をきたすこともあります。 サルコペニアを防ぐには、筋力トレーニングが効果的です。筋肉を定期的に動かすことで進行を抑えられ、結果として健康寿命を延ばすことにもつながります。 この記事では、サルコペニア予防におすすめの筋力トレーニングや注意点、日常生活でできる工夫について解説します。 今日から筋力トレーニングを始め、サルコペニア予防に取り組んでみてください。 サルコペニアの予防に効果的な筋力トレーニング4選 サルコペニアの予防に効果的な筋力トレーニングを4つご紹介します。 椅子スクワット つま先立ち運動 膝の曲げ伸ばし運動 背筋トレーニング 本章を参考に、無理のない範囲で今日からチャレンジしてみてください。 椅子スクワット 椅子スクワットは、下半身を鍛えたいものの、転倒に不安のある方におすすめのトレーニングです。以下の方法を参考に実践してみましょう。 足を肩幅に開いて立ち、椅子の背もたれを両手でつかむ ゆっくりと膝を落とし、しゃがむ 数秒キープしたら、元の立位の姿勢に戻る 数回繰り返す 下半身の筋力低下が気になる方は、ぜひ取り入れてみてください。 つま先立ち運動 つま先立ち運動(ヒールレイズ)は、ふくらはぎの筋肉を鍛えるのに効果的なトレーニングです。以下のステップで行ってみてください。 足を肩幅に開いて立つ 立った状態でかかとを上げる かかとをゆっくりと床に降ろす 1〜3.を10回程度繰り返す 慣れてきたら、片足で行うとさらに効果的です。転倒が心配な方は、壁や椅子の背もたれ、手すりなどに手を添えて行いましょう。 膝の曲げ伸ばし 椅子に座ったまま行える膝の曲げ伸ばし運動です。下半身の筋力を鍛え、膝関節の柔軟性を保つのに効果的です。以下のステップで行ってみましょう。 背筋を伸ばした状態で、椅子に浅く座る 片足の膝をゆっくりと伸ばし、足を前方に上げる 膝が伸びた状態で数秒キープする ゆっくりと膝を曲げらがら足を床に降ろす 反対側の足も同様に、左右交互に10回ずつ行う 長時間のデスクワークの合間や、自宅でテレビを見ているときなど、スキマ時間に始められます。こまめに続けることでより効果が期待できるため、ぜひ今日から取り入れてみてください。 背筋トレーニング サルコペニアを予防するには、背筋を鍛えることも大切です。 タオルを使って自宅で手軽に行える背筋トレーニングをご紹介します。以下の手順で、背筋トレーニングを行ってみましょう。 タオルの両端を持ち、ピンと張る 腕を肩より少し高く上げ、タオルを外側に引っ張るように力を入れる 肘を曲げながら、肩甲骨を寄せるように意識して、腕をゆっくり下ろす 肘を伸ばして再び腕を上げ、2.の姿勢に戻る 2.~4.を10回程度行う 背中の筋肉が衰えてしまうと、姿勢が崩れ、サルコペニアの悪化にもつながってしまいます。(文献1)正しい姿勢を維持するためにも、背筋のトレーニングを日常的に取り入れていきましょう。 サルコペニアに筋力トレーニングが効果的な理由 サルコペニアとは、加齢や生活習慣の影響で体を動かす筋肉量や力が減少する状態です。進行すると筋力の低下により、歩行困難や寝たきりになるリスクも高まります。 サルコペニアの予防には、骨格筋のトレーニングが効果的です。 筋力トレーニングは特別な器具がなくても自宅で行えるものが多く、誰でも今日から始められます。 継続すると、健康寿命を延ばすことにもつながるため、ぜひ日常生活に取り入れてみてください。 さらに筋トレは、サルコペニアだけではなく、将来的なフレイルやロコモティブシンドロームの予防にも有効です。これらの違いや特徴について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。 サルコペニア予防で筋トレをするときの注意点 筋トレをする際には、以下の3つの点に注意が必要です。 こまめに休憩をはさむ 呼吸を止めない 週2~3回ほど定期的に行う トレーニングを始める前に本章の注意点を意識し、無理のない範囲で運動を続けましょう。 こまめに休憩をはさむ 長時間連続で筋力トレーニングをせず、途中でこまめに休憩をはさむことが大切です。疲労や関節への負担を防ぐためにも、体調に合わせてペースを調整しながら取り組みましょう。 たとえば、「20分運動して5分休む」といったリズムがひとつの例です。 運動の強度やその日の体調に応じて、無理のない範囲で柔軟に休憩を取り入れてみてください。 呼吸を止めない 筋トレ中は力む際に息を止めがちですが、常に自然なリズムで呼吸するように意識しましょう。 呼吸を止めて力んでしまうと酸素が不足し、血圧の急上昇や頭痛・吐き気など体調不良を引き起こすおそれがあります。(文献2) 筋トレ中の正しい呼吸法は以下のとおりです。 タイミング 呼吸 力を入れるとき 息を吐く 力を抜くとき 息を吸う このリズムを意識すると、筋トレ中の体への負担を軽減できます。筋トレを行う際は、意識してみてください。 なお、「筋トレ頭痛」の対策方法については、以下の記事で詳しく解説しています。気になる方は、あわせてご覧ください。 週2~3回ほど定期的に行う サルコペニアを予防するには、週に2〜3回のペースで筋トレを継続することが効果的です。 筋肉は一度きりの運動では鍛えられません。こまめに運動を重ねることで筋肉に刺激を与えられます。 また、厚労省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」では、成人・高齢者のどちらにも週2〜3回の筋トレを推奨しています。(文献3) 定期的な筋トレは、サルコペニアに加え、座りっぱなしによる代謝低下や筋力低下、糖尿病や高血圧などの合併予防にも効果的です。 忙しい方も1日15〜20分のスキマ時間から始めて、生活の一部に筋トレを取り入れてみてください。 【日常的にできる】筋トレ以外のサルコペニア予防法 忙しくて筋トレの時間が取れない人の場合、日常生活の中に「ながら運動」を取り入れましょう。 サルコペニアを予防するには、時間がなくても、普段から少しずつ体を動かすことが大切です。 活動量が増えることで筋肉に刺激を与えられるため、筋力の低下を防ぐ効果が期待できます。 以下を参考に、毎日の生活に取り入れやすい工夫を実践してみましょう。 エスカレーターやエレベーターではなく、階段を使う 通勤や買い物の際に、敢えて遠回りして歩く いつもより少し早歩きをする これらを意識するだけでも、筋肉を鍛えられ、サルコペニアの予防につながります。 サルコペニア予防には筋力トレーニングを取り入れよう サルコペニアとは、加齢や生活習慣により筋力が低下する状態です。 放置すると、将来的に歩行困難や寝たきりのリスクがあります。 こまめに筋力トレーニングを行うことで筋肉が鍛えられ、サルコペニアの予防につながります。 本記事を参考に、今日からできる運動を実践してみてください。 なお、筋力の衰えが不安な方や、より専門的なケアを希望する方は、専門家に相談するのも一つの選択肢です。 当院「リペアセルクリニック」では、人体に備わる幹細胞を活用した再生医療を提供しています。今なら「メール」または「オンラインカウンセリング」にて無料相談を受け付け中です。 「加齢による体の変化が気になる」「将来に向けて病気予防を始めたい」と感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。 サルコペニアに関する質問 サルコペニアを防ぐ食事は? サルコペニア予防には日頃から栄養バランスの良い食事を意識することが大切です。中でも、筋肉の材料となる「たんぱく質」は意識的に摂取するようにしましょう。 たんぱく質を多く含む食品には、次のようなものがあります。(文献4) 豚肉 牛乳 卵 豆類 さけ・ます類 体重1kgあたり1g/日以上のたんぱく質の摂取が、サルコペニアの予防に効果的であるとされています。たとえば体重60kgの人の場合、1日あたり約60gのたんぱく質の摂取が必要です。(文献5) まずは、こうした食材を毎食の中に1品でも取り入れることから始めてみましょう。 サルコペニアの判断方法は? サルコペニアは「指輪っかテスト」でセルフチェックが可能です。両手の親指と人差し指で輪を作り、ふくらはぎの一番太い部分を囲んでみてください。(文献6) その際、指の輪とふくらはぎの間に隙間ができる場合は、サルコペニアのおそれがあります。 ただし「指輪っかテスト」はあくまで目安です。セルフチェックで不安がある場合は、医療機関にて詳しい検査を受けましょう。 参考文献一覧 文献1 厚生労働省 「サルコぺニア」 e‑ヘルスネット, 最終更新日:2024年1月30日 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/exercise/ys-087.html (最終アクセス:2025年6月15日) 文献2 久米 大祐ほか.「間欠的な息止めが運動時の生理応答に及ぼす影響」『体力科学』60(6), pp.641-647, 2011年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/60/6/60_6_641/_pdf (最終アクセス:2025年06月17日) 文献3 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」令和6年1月 https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf (最終アクセス:2025年06月15日) 文献4文部科学省「日本食品標準成分表(八訂) 増補2023年」2023年 https://www.mext.go.jp/content/20230428-mxt_kagsei-mext_00001_011.pdf (最終アクセス:2025年06月15日) 文献5 日本サルコペニア・フレイル学会「サルコペニア診療ガイドライン2017年版」2020年 https://minds.jcqhc.or.jp/common/wp-content/plugins/pdfjs-viewer-shortcode/pdfjs/web/viewer.php?file=https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00426.pdf&dButton=false&pButton=false&oButton=false&sButton=true#zoom=auto&pagemode=none&_wpnonce=3b871a512b (最終アクセス:2025年6月17日) 文献6 厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合研究事業) 分担研究報告書「新規考案した3種類の簡易スクリーニング法(指輪っかテスト・ピンチカ・第1-2 指間厚) における筋肉減弱症(サルコペニア)を視野に入れた臨床的有用性の検討 ~継続性の高いコミュニティー健康活動を目指して~」 https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2012/123011/201217016A/201217016A0006.pdf (最終アクセス:2025年6月15日)
2025.06.29 -
- その他、整形外科疾患
「サルコペニアの治療は何をすればいいの?」「普段から意識すべきことはある?」と疑問をお持ちではないでしょうか。 病院でサルコペニアと診断されたものの、実際どのような治療をするのかイメージが湧かない方も多いかもしれません。 サルコペニアの治療は「運動」と「栄養」を中心に行います。サルコペニアが進行すると転倒や寝たきりの原因になるため、早期に治療を開始することが大切です。 この記事では、現役医師の見解をもとに、サルコペニアの治療法や受診すべき病院、治療薬の現状までわかりやすく解説します。 できることから一歩ずつ行い、将来の健康を守っていきましょう。 サルコペニアの治療法 サルコペニアの治療は、運動と栄養の2本柱で進めていきます。 筋力トレーニングやウォーキングなどの運動 たんぱく質やビタミンなどの栄養素を摂取 今の生活に取り入れられることがないか、ぜひチェックしてみてください。 また、サルコペニア自体についてや要介護や寝たきりを防ぐ生活については、こちらの記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 【関連記事】 要介護や寝たきりを避ける!元気で自立した生活を送るため大切になこと フレイルサルコペニアとは|ロコモとの違いや症状・予防法を医師が解説 運動治療|筋肉の量や機能を維持 サルコペニアの改善において、運動は大切な要素のひとつです。 なかでもよく行われているのが、レジスタンス運動と有酸素運動の組み合わせです。 これらを正しく取り入れることで、筋肉量や身体機能の維持・向上が期待できます。 日常生活に取り入れやすい運動から始める レジスタンス運動は、筋肉に抵抗をかけて鍛えるトレーニング、いわゆる「筋トレ」です。 スクワットや足の上げ下げ、かかと上げなどが代表的で、週2〜3回の頻度で行うと、筋力を保ちやすくなります。(文献1) 一方、有酸素運動は、ウォーキングや軽いジョギングなど、呼吸を意識しながら一定時間続ける運動です。 血流や代謝を促し、筋力だけでなく持久力や全身の機能向上にもつながります。(文献2) どちらも特別な器具や施設がなくても日常生活の中に取り入れやすい点が特徴です。 まずはウォーキングや軽いジョギングなどからスタートし、慣れてきたら筋トレを加えていきましょう。 筋肉の衰えを防ぐ生活習慣・運動については、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。 【関連記事】 介護のリスク!筋肉の衰えが心配な高齢者へ、必要な生活習慣とは サルコペニアの予防に効果的な筋力トレーニング一覧|やり方や注意点を医師が解説 理学療法士の指導の下運動する 運動に不安をもつ方や持病がある方は、理学療法士や医師と相談しながら運動を取り入れましょう。 自己流での運動はケガや悪化の原因になることもあります。 理学療法士や医師の指導のもとで、体の状態に合わせたプログラムを組んでもらうと、より効果的に続けられます。(文献1) 運動を治療として継続していくには、無理なく続けられる環境やサポート体制も大切です。 「自分の状態で何から始めれば良いかわからない」という方こそ、医療機関で相談してみると良いでしょう。 栄養療法|筋力強化を目指す 筋肉を保つには、以下の点を意識しながら必要な栄養をしっかりとることが大切です。 バランスの良い食事とたんぱく質摂取を意識する サプリメントや栄養補助食品も選択肢のひとつ 日々の食事で足りているか、振り返ってみましょう。 バランスの良い食事とたんぱく質摂取を意識する 筋肉の材料となるたんぱく質は、年齢とともに必要量が増えると言われています。 目安は、体重1kgあたり1.0g/日以上です。(文献1) 肉・魚・卵・大豆製品などを1日3食にバランスよく取り入れるよう意識しましょう。 また、ビタミンB群はエネルギー代謝や神経の働きを助け、ビタミンCは膝まわりの筋力や身体機能と関わるという報告があります。(文献3) さらにビタミンDには、筋肉の減少を防ぐはたらきもあるとされています。(文献4) 特定の食品や栄養素にかたよるのではなく、いろいろな食材を組み合わせて、バランスよく食べることが大切です。 食欲がわかないときでも、白ごはんにお味噌汁を添えたり、ヨーグルトを1品足したりして、少しでも品数を増やす工夫をしてみましょう。 サプリメントや栄養補助食品も選択肢のひとつ 「食事だけでは必要な栄養がとれていないかも」と感じるときは、サプリメントや栄養補助食品を使う方法もあります。 実際に、高齢女性を対象とした研究では、アミノ酸のサプリと運動を組み合わせることで、筋力や歩行スピードが改善したとの報告もあります。(文献5) 食事だけで無理なく補えるのが理想ですが、不足を感じるときは、医師や専門家と相談しながら取り入れてみましょう。 サルコペニアの治療薬について 現在のところ、サルコペニアに対して正式に承認された治療薬はありません。 サルコペニアは、2016年にようやく疾患として認められた比較的新しい概念です。 薬の研究や開発は進められているものの、実際に広く使える薬はまだ存在していないのが現状です。(文献6)(文献7) よって、今できるサルコペニア対策として、運動や食事の見直しが大切です。 「薬がないなら何もできない」と思わず、今取り組めることをひとつずつ実践していきましょう。 サルコペニアの治療で受診すべき医療機関 サルコペニアは、以下のような適切な医療機関での相談が大切です。 整形外科・老年科 専門外来 かかりつけ医 自分に合った受診先を確認しておきましょう。 整形外科や老年科 筋肉や骨、関節の不調があるときは、まず整形外科を受診します。 高齢者特有の体調変化が気になる場合は、老年科(老年内科)でも相談できます。(文献8) 「運動機能に不安がある」「筋力の衰えを指摘された」と感じたら、整形外科や老年科で評価を受けてみると今の状態がよりはっきりとわかるでしょう。 サルコペニア外来や長寿サポート外来などの専門外来 病院によっては、サルコペニアやフレイルに特化した外来を設けているところもあります。 これらの専門外来では、医師だけでなく理学療法士や栄養士などがチームとなって治療をサポートしています。 「専門的に診てもらいたい」「生活全体を見直したい」という方は、こうした専門外来のある病院を選ぶのも一つの選択肢です。 かかりつけ医 サルコペニアの疑いがあっても何科を受診すべきか悩んでいる場合、まずは身近なかかりつけ医に相談するのも良いでしょう。 かかりつけ医は、普段の健康状態をよく知っている存在です。 必要に応じて、整形外科や老年科、リハビリテーション科など、専門的な評価や治療ができる医療機関を紹介してもらうことも可能です。 受診するか迷っている段階でも、一人で抱え込まず、かかりつけ医に相談してみましょう。 サルコペニアの治療は早期対応が大切 「年のせいかも」と思って見過ごしてしまう方が少なくありませんが、サルコペニアは放っておくと徐々に進行し、転倒や骨折、寝たきりのリスクを高めてしまいます。 少しの運動でも疲れやすい、ふくらはぎが細くなってきたなどの変化を感じたら、早めに医療機関で相談しましょう。 日常生活に支障が出てからでは、回復に時間がかかることもあります。「まだ大丈夫」と思えるうちにこそ、治療や予防を始めるタイミングです。 筋力の衰えが気になる方は、リペアセルクリニックの「メール相談」や「オンラインカウンセリング」もご活用いただけます。 まずはお気軽にお問い合わせください。 サルコペニアの治療に関するよくある質問 サルコペニアの初期症状はどのようなものですか? 初期症状として多いのは、「ふくらはぎが細くなった」「よくつまずくようになった」「階段の上り下りがつらい」など、日常の小さな変化です。(文献9) たとえば、以下のような症状もサルコペニアの初期症状の可能性があります。 重たい荷物が前より持ちにくい 椅子から立ち上がるのが大変になった 歩く速度が遅くなった気がする 日常の些細なことがサインになっていることも少なくありません。 思い当たることがあれば、我慢せずに一度かかりつけ医へ相談してみてください。 サルコペニアの治療は病院に行った方が良いですか? サルコペニアの治療をするなら、病院に行くことをおすすめします。 サルコペニアは専門的な評価と治療が必要な病気です。 自己流の運動や食事改善だけでは、思うような効果が出にくかったり、逆に体に負担がかかってしまうケースもあります。 専門の治療を行う医療機関では、筋肉量や身体機能を客観的に測定しながら、適切な運動メニューや栄養指導が受けられます。 「まだ軽い症状だから」と放置せず、できるだけ早く専門家に相談し、将来の介護リスクを減らしましょう。 参考文献 (文献1) 荒井 秀典「フレイル・サルコペニア」『日本内科学会雑誌』107(12),pp2444-2450,2018 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/107/12/107_2444/_pdf(最終アクセス:2025年6月16日) (文献2) 公益財団法人 長寿科学振興財団「トレーニング:有酸素運動とは」健康長寿ネット 2025年2月12日 https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shintai-training/yusanso-undou.html(最終アクセス:2025年6月16日) (文献3) 清水 昭雄,藤島 一郎「高齢者・サルコペニアの栄養療法」『神経治療』39,pp13-17,2022 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/39/1/39_13/_pdf(最終アクセス:2025年6月16日) (文献4) 亀井康富「ビタミンDは筋肉の萎縮を抑制し、高齢者のサルコペニアを予防・改善する」『あたらしいミルクの研究』2019年度 https://nutrition.life.kpu.ac.jp/wp-content/uploads/2020/05/%E4%BA%80%E4%BA%95%E5%85%88%E7%94%9F%E4%BA%AC%E9%83%BD%E5%BA%9C%E7%AB%8B%E5%A4%A7%E5%AD%A63_0323.pdf(最終アクセス:2025年6月16日) (文献5) Hun Kyung Kim「Effects of exercise and amino acid supplementation on body composition and physical function in community-dwelling elderly Japanese sarcopenic women: a randomized controlled trial」『J Am Geriatr Soc』60(1),pp16-23,2012 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22142410/(最終アクセス:2025年6月18日) (文献6) 早野元詞「サルコペニアに対する治療薬開発と老化創薬としての事業計画立案」慶応義塾大学 https://www.idp.ori.titech.ac.jp/wp-content/uploads/2021/09/%E6%85%B6%E5%BF%9C%E3%80%80%E6%97%A9%E9%87%8E.pdf(最終アクセス:2025年6月16日) (文献7) 一般社団法人 日本サルコペニア・フレイル学会「サルコペニア診療ガイドライン2017年版のCQとステートメント」日本サルコペニア・フレイル学会ホームページ https://www.jasf.jp/contents/guidelines.html(最終アクセス:2025年6月16日) (文献8) 東大病院「老年病科」東大病院ホームページ https://www.h.u-tokyo.ac.jp/patient/depts/rounen/(最終アクセス:2025年6月16日) (文献9) 公益財団法人 長寿科学振興財団「トレーニング:有酸素運動とは」健康長寿ネット 2023年7月14日 https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/sarcopenia-about.html(最終アクセス:2025年6月16日)
2025.06.29 -
- その他、整形外科疾患
「フレイル、サルコペニアって何?」「ロコモとの違いは?」「予防はできるの?」との疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。 フレイル・サルコペニア・ロコモは、いずれも年齢とともに起こりやすい体の変化を示す言葉です。最近よくつまずくようになったり会話が減ったりするのは、これらの症状のサインかもしれません。 本記事ではフレイル・サルコペニア・ロコモの症状や違い、予防法などを解説します。健康寿命を延ばし、いつまでも自分らしく過ごすヒントとしてお役立てください。 また、ロコモの原因となる変形性関節症や軟骨損傷についてお悩みの方は、治療法として再生医療もご検討ください。 当院「リペアセルクリニック」では、公式LINEで再生医療に関する情報提供と簡易オンライン診断を実施しています。ぜひお気軽にご登録ください。 フレイル・サルコペニア・ロコモの違いと関係性 フレイル・サルコペニア・ロコモそれぞれの特徴は以下のとおりです。 種類 状態 特徴 フレイル 心身全体の活力が落ちた状態 ・些細なストレスや環境の変化でも体調を崩しやすい ・精神的にも落ち込んだり閉じこもりやすくなったりする サルコペニア 筋肉量と筋力が低下した状態 ・高齢になると起こりやすい ・フレイルの原因にもなる ロコモ(ロコモティブシンドローム) 移動機能にかかわる体の衰え ・歩く、立つ、座るといった日常動作が難しくなる ・進行すると介護リスクが高まる それぞれの違いを知り、自分に必要な対策を検討しましょう。 フレイルとは「心身全体の活力が落ちた状態」 フレイルとは、体の衰えに加えて、気力や社会とのつながりも弱くなっている状態であり、健康な状態と要介護状態の中間段階に位置づけられています。 些細なストレスや環境の変化でも、体調を崩しやすくなるのが特徴です。体だけでなく、気持ちの落ち込みや閉じこもりがちになる傾向も見られます。 また、フレイルが進行すると転倒や骨折、認知症のリスクが高まり、要介護状態へと移行しやすくなる点も見逃せません。 主に、以下のような症状が現れます。 筋力や持久力が低下する 気分の落ち込みや無気力になる 人との交流が減り、孤立しがちになる 生活の些細な変化にも対応しづらくなる 上記のような症状は加齢とともに徐々に進行し、本人や周囲が気づきにくい面があります。 とはいえ、フレイルを放置すると転倒や骨折、認知症、さらには要介護状態に移行するリスクが高まるため注意が必要です。 とくに、「疲れやすい」「外出が減った」「体重が減少した」といった変化が見られる場合は、早めの対応が欠かせません。 サルコペニアとは「筋肉量と筋力が低下した状態」 サルコペニアは、筋肉の量が減り、握力や歩く力が低下するのが特徴です。 高齢になると誰にでも起こる可能性があり、筋肉の低下により転倒や骨折、寝たきりにつながるケースもあります。また、サルコペニアはフレイルの原因のひとつでもあります。 サルコペニアによる筋力低下を放置すると、日常生活に支障をきたす恐れがあるため、早めの対策が必要です。筋肉は年齢とともに徐々に衰えていきますが、とくに脚の筋肉から先に弱っていく傾向があります。 「立ち上がりにくい」「階段がつらい」といった小さな変化が初期のサインとなるケースもあるため、注意深く観察しましょう。 適切な運動や栄養管理により、サルコペニアの進行を防いだり、改善したりすることは可能です。予防には、日々の生活習慣の見直しが欠かせない点に留意しておきましょう。 なお、肥満と筋肉減少が同時に進行する「サルコペニア肥満」になると、病気のリスクが高まるため注意しなければなりません。 サルコペニア肥満については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてみてください。 ロコモとは「移動機能にかかわる体の衰え」 ロコモティブシンドローム(ロコモ)は、関節や骨、筋肉などの体を動かす部位の衰えです。 歩く、立つ、座るといった基本の動作が難しくなっていくのが特徴で、進行すると寝たきりや要介護状態につながる場合もあります。 医学的には「移動機能の低下した状態」と定義されており、主に運動器の障害によって起こるのが特徴です。 加齢に伴う変化だけでなく、変形性膝関節症や骨粗しょう症、脊柱管狭窄症などの病気が原因になる場合もあります。 また、転倒による骨折や運動不足がさらなる筋力低下を招き、悪循環に陥るケースも少なくありません。 早期に気づいて継続的にケアを行い、健康寿命の延伸につなげていきましょう。 ロコモについては、以下の記事でも取り上げています。 フレイル・サルコペニア・ロコモが発症する順番 加齢とともに現れる体の衰えは、一般的に「サルコペニア → ロコモ → フレイル」の順に進行すると考えられています。 まず、加齢や運動不足、栄養の偏りによって筋肉量や筋力が低下し、サルコペニアがはじまります。次に、筋力の低下が原因で、歩行や立ち上がりといった移動機能が衰えるロコモへと移行します。 移動機能の低下が続くと外出機会や交流が減り、身体的・精神的・社会的な機能全体が低下するフレイルへと進展する順番です。必ずしもこの順番通りに発症するとは限りませんが、サルコペニアがきっかけとなって、ロコモやフレイルに波及するパターンが多くあります。 健康寿命を延ばすには、早期の予防が大切です。 フレイル・サルコペニア・ロコモの症状・診断基準・評価項目 ここでは、フレイル・サルコペニア・ロコモの具体的な症状や診断基準について解説していきます。 フレイルの症状 フレイルの症状は、体の働きだけでなく、気持ちや生活のリズムにも現れます。 次のような変化が見られたら、フレイルのサインかもしれません。 つまずきやすくなった、歩くのが遅くなった 握力が弱くなった、立ち上がるのに時間がかかる 食事の量が減った、体重が落ちてきた 会話が減った、趣味や外出に消極的になった 疲れやすくなり、気力が続かない 些細なことで気分が沈む 上記の一つひとつは小さな変化でも、重なることで日常生活に影響が出る場合があります。 フレイルは、身体的・精神的・社会的な機能が低下する多面的な脆弱性が特徴です。(文献1) 少しでも心当たりがある場合は、早めのチェックや対策を心がけましょう。 フレイルの診断基準・評価項目 フレイルの診断では、次のような項目を総合的に見て判断します。 歩く速度や体のバランス 筋力(とくに下半身) 認知機能(物忘れなど) 栄養状態(食欲の低下など) 社会的なつながり(会話や外出の頻度など) 外来では、以下の「簡易フレイルインデックス」を使って診断し、3点以上でフレイルと判定されます。(文献2) 質問 回答および点数 6カ月間で2~3kgの体重減少がありましたか? はい⇒1点 以前に比べて歩く速度が遅くなってきたと思いますか? はい⇒1点 ウォーキング等の運動を週に1回以上していますか? いいえ⇒1点 5分前のことを思い出せますか? はい⇒1点 (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする。 はい⇒1点 体力だけでなく、心や生活全体を見るのが簡易フレイルインデックスの特徴です。 また、以下の「日本版CHS基準(J-CHS基準)」もフレイルの診断に利用されます。(文献3) 項目 評価基準 体重減少 6か月で2kg以上の意図しない体重減少 筋力低下 握力:男性<28kg、女性<18kg 疲労感 (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする 歩行速度 通常歩行速度<1.0m/秒 身体活動 ①軽い運動・体操をしているか? ②定期的な運動・スポーツをしているか? 握力・歩行速度・体重減少・疲労感・身体活動量の5項目で評価し、3項目以上に該当するとフレイルと診断されます。 サルコペニアの症状 サルコペニアでは、主に次のような変化が現れます。 ペットボトルのキャップが開けにくくなった 歩くスピードが落ちた 足が細くなってきた、筋肉が落ちた感じがする 椅子から立ち上がるのが大変になった また、疲れやすく外出が億劫になる、階段の上り下りがきつくなる、ちょっとした段差につまずきやすいといった日常動作の不自由さもサルコペニアのサインです。 とくに、下半身の筋肉は加齢とともに早く衰えるため、「歩幅が狭くなる」「立ち上がりに時間がかかる」といった変化が初期に目立ちやすい傾向があります。 症状が進むと転倒や骨折のリスクが増え、要介護状態に直結する可能性があるため、小さな変化を見逃さず早めに筋力維持の運動や栄養改善に取り組むことが大切です。 サルコペニアの診断基準・評価項目 サルコペニアは、主に以下の3つの項目で診断されます。 握力:男性28kg未満、女性18kg未満が目安 歩行速度:通常の歩き方で1秒に1.0m未満 筋肉量:体組成計やDXA法(骨塩定量検査)などで測定し、基準値以下かどうかを確認 加齢による自然な衰えと区別するために、客観的な数値評価が重視される点が特徴です。筋力または身体機能の低下が確認され、くわえて筋肉量の減少があればサルコペニアと診断されます。 また、簡単にできるセルフチェックとして、以下の「指輪っかテスト」も有効です。 両手の親指と人差し指で輪っかを作り、ふくらはぎを囲んでください。作った輪っかでふくらはぎを囲めるかどうかで、サルコペニアの危険度を推測できます。 結果 サルコペニアの危険度 囲めない 低 ちょうど囲める 中 隙間ができる 高 ふくらはぎは「第二の心臓」とも呼ばれる重要な筋肉であり、細くなるのは全身の筋力低下のサインです。 サルコペニアの危険度が高い場合は自己判断で放置せず、一度医療機関で専門医に相談しましょう。 ロコモの症状 ロコモは、骨・関節・筋肉などの運動器の機能が低下し、立つ・歩くといった基本的な移動動作が難しくなる状態を指します。 症状の初期には、「立ち上がるのに時間がかかる」「長い距離を歩くと疲れやすい」といった、小さな変化が現れるのが特徴です。 進行すると、次のような症状が見られるようになります。 膝や腰に痛みがあり、歩行や階段の上り下りがつらい ちょっとした段差でつまずいたり、転んだりする 正座やしゃがみ動作が困難になる 歩幅が狭くなり、歩行速度が遅くなる 体を支えるバランスが崩れやすくなる 上記の症状は、変形性関節症や骨粗しょう症、脊柱管狭窄症などの病気にともなって現れるケースも多く、進行すると転倒・骨折をきっかけに寝たきりや要介護状態に移行するリスクが高まります。 ロコモの診断基準・評価項目 ロコモは、運動器の機能がどの程度低下しているかを測ることで診断されます。 日本整形外科学会では、以下の「ロコモ度テスト」を推奨しており、3つの評価方法が用いられています。 評価方法 特徴 立ち上がりテスト 40cm、30cm、20cm、10cmの台から片脚または両脚で立ち上がれるかを調べ、下肢筋力を評価 2ステップテスト 2歩でどれだけ前に進めるかを身長で割って評価し、歩幅の広さから下肢筋力やバランス能力を確認 ロコモ25 「歩く」「階段を上る」「買い物に行く」といった日常生活動作に関する25項目の質問票に答え、点数化して総合的に判定 これらのテストを組み合わせることで、移動機能の低下度合いを客観的に把握できます。 ロコモは加齢に伴って徐々に進行しますが、定期的に評価を行い早期に気づくことで、運動や生活習慣の改善につなげることが可能です。 フレイル・サルコペニア・ロコモのセルフチェック方法 フレイル・サルコペニア・ロコモは、初期の段階で自覚しにくいため、定期的なセルフチェックが大切です。 それぞれ以下に当てはまるか、チェックしてみましょう。 <フレイルのセルフチェック例> 半年前に比べて体重が減った 疲れやすく、気力が続かない 外出や人との交流が減った <サルコペニアのセルフチェック例> 両手を腰に当てて片脚を5㎝ほど上げて60秒ほどキープ →キープできる時間が15秒未満の場合は要注意 6m以上のスペースを確保して0mから6mまで歩く →途中の1mから5mまでの4mの歩行に要した時間が0.8m/秒以下だと要注意 両手の親指と人差し指で輪を作りふくらはぎを囲う →作った輪で、ふくらはぎを囲んだとき隙間ができる場合は要注意 <ロコモのセルフチェック例> 片脚で40cmの椅子から立ち上がれない 2歩の歩幅を測る「2ステップテスト」で、身長に対して数値が小さい 「ロコモ25」の質問票で点数が高い いずれも、早期発見につながる重要なセルフチェック方法です。 小さな変化に気づいたら、生活習慣の見直しや医師への相談を検討しましょう。 フレイル サルコペニア・ロコモ予防のためには食事と運動が大切 フレイルやサルコペニア、ロコモの進行を防ぐには、日々の暮らしの中で以下を意識するのがポイントです。 軽めの運動で筋力低下を防ぐ たんぱく質中心に栄養バランスを整える 人や社会とのつながりを意識する 今日からできることを、無理のない範囲で始めてみましょう。 では、それぞれ詳しく解説します。 軽めの運動で筋力低下を防ぐ フレイル・サルコペニア・ロコモの予防には、軽めの運動が効果的です。 スクワットや足の上げ下げなどのレジスタンス運動(筋トレ)と、ウォーキングなどの有酸素運動を組み合わせるのがおすすめです。 <運動の例> 1日5,000歩以上歩く 負荷のかかる運動を8分以上(早歩き、社交ダンス、ウェイトトレーニング、水泳など) 片足立ちやストレッチでバランス・柔軟性を高める これらは特別な道具を使わなくても自宅で実践でき、継続しやすい点が特徴です。無理のない範囲で続けることで、筋肉の維持や転倒予防に役立ち、日常生活の自立を支えることにつながります。 筋肉の衰えを予防するために、さらに詳しい情報を知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。 たんぱく質中心に栄養バランスを整える フレイルやサルコペニア、ロコモを予防するには、筋肉のもととなる「たんぱく質」を毎日しっかり摂ることが大切です。 たんぱく質の摂取量は体重1kgあたり1.0g以上が目安とされているため、たとえば体重50kgの方なら1日あたり最低50g程度の摂取が推奨されます。 あわせて、筋力の維持に関係するビタミンDの摂取も意識しましょう。ビタミンDは、日光浴や、鮭・きのこなどの食品から摂取できます。 人や社会とのつながりを意識する 社会との関係が希薄になると、心身の機能低下が進み、フレイルのリスクが高まることがわかっています。 とくに高齢になると、退職や家族構成の変化によって人との関わりが減りやすく、孤立はうつ症状や認知機能低下にもつながるため注意が必要です。 たとえば、普段から会話や外出を心がけ、地域の行事や趣味のサークルに参加すれば、身体面だけでなく心の活性化にも役立ちます。 友人や家族との食事も、栄養バランスの改善につながる大切な機会です。 外出が難しい方は、近所の人にあいさつをしたり、電話やオンラインで交流したりするのも良いでしょう。 小さなきっかけでも積み重ねることで「誰かとつながっている」という安心感が生まれ、フレイル予防につながります。 まとめ|フレイル・サルコペニア・ロコモによる衰えを感じたら早めの対策を心がけよう フレイルやサルコペニア、ロコモは年齢とともに誰にでも起こりうる変化です。 「歩くのが遅くなった」「疲れやすい」など、ちょっとした変化があれば、生活習慣の見直しをはじめましょう。早めの気づきと対策が、寝たきりや介護のリスクを防ぎ、健康寿命をのばすことにつながります。 気になる症状がある方や、これからの健康に不安を感じている方は、医療機関で一度相談してみると良いでしょう。「まだ大丈夫」と思わず、「今からできることがある」と考えて、一歩踏み出してみてください。 また、ロコモの原因となる変形性関節症や軟骨損傷についてお悩みなら、「再生医療」での治療もご検討ください。 当院「リペアセルクリニック」では、公式LINEにて再生医療に関する情報提供と簡易オンライン診断を実施しています。 登録してぜひお気軽にご利用ください。 フレイル・サルコペニア・ロコモに関するよくある質問 フレイルやサルコペニア、ロコモを予防する運動はどのようなものですか? フレイルやサルコペニア、ロコモを予防する運動は、激しいものでなくて構いません。 無理のない範囲で身体を動かしたり、歩く量を増やしたりすることからはじめましょう。 とくに、太ももやお尻の筋肉を鍛えると、バランスが安定し転倒防止に役立ちます。 たとえば、椅子に座った状態で片脚ずつゆっくり持ち上げる運動(3秒かけて上げ、3秒かけて下ろす)を、左右10回ずつ行ってみましょう。 たんぱく質を摂るのが苦手ですが、どのように工夫すれば良いですか? 無理にたくさん食べようとせず、自分に合った方法で取り入れる点がポイントです。 たとえば、朝食にチーズを足したり、ヨーグルトにきなこをかけたりする方法があります。 また、プリンやどら焼きなど、卵や大豆が入ったおやつも、たんぱく質を手軽に摂る手段のひとつです。 フレイルとサルコペニアに関する学会は存在しますか? はい、存在します。 「一般社団法人 日本サルコペニア・フレイル学会」は、加齢に伴うフレイルやサルコペニアの研究と対策を推進する学術団体です。 高齢者の生活の質向上を目的に、医療・研究・教育の分野で活動しています。(文献4) 参考文献 (文献1) サルコペニアとフレイル|J-STAGE (文献2) 日本内科学会雑誌第107巻第12号|フレイル・サルコペニア (文献3) 2020年改定 日本版CHS基準(J-CHS基準|国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター (文献4) 一般社団法人 日本サルコペニア・フレイル学会
2025.06.29 -
- その他、整形外科疾患
「体重はあるのに筋力が落ちてきた気がする」 「最近疲れやすくなった」 このように感じている方は、サルコペニア肥満かもしれません。 肥満と筋肉減少が同時に進行する「サルコペニア肥満」になると、日常生活に不便を感じたり、病気のリスクが高まりやすくなったりします。 ただし、早期にリスクに気づいて対策をおこなえば、予防・改善が期待できる状態です。 本記事では、医師の視点からサルコペニア肥満の原因やリスク、予防・改善法を解説します。 「サルコペニア肥満かも」と不安を抱いている方は、セルフチェックで自身のリスクを知ることから始めてみましょう。 サルコペニア肥満とは サルコペニア肥満とは、体脂肪が多い「肥満」に、筋肉量が減少している状態の「サルコペニア」が合併している状態を指します。(文献1) 「肥満」と聞くと太っている人をイメージしがちですが、見た目は普通でも体内では筋肉が減少し、脂肪が多い「隠れ肥満」のようなケースもあります。 そのため、サルコペニア肥満の人がかならずしも太って見えるとは限りません。 筋肉が不足すると、体の基本的な動作にも支障が出やすくなり、次のような不調を感じることがあります。 疲れやすい 歩くときにふらつく 階段を上るのがつらい 重いものが持ちにくい このようにサルコペニア肥満は、見た目では気づきにくいにもかかわらず、日常生活の質を下げる原因となるのです。 サルコペニアについては、以下の記事でも詳しく紹介しています。 肥満とサルコペニアの関係性|筋肉に与える悪影響 肥満、つまり体の中に脂肪組織が多い状態は筋肉を減らす方向に作用し、サルコペニアの進行を加速させてしまいます。 具体的には、以下の3つのメカニズムが考えられています。 運動不足 筋肉破壊 インスリン抵抗性 ひとつずつ見ていきましょう。 運動不足で筋肉が減少しやすくなる 肥満になると、体を動かすのが億劫になったり、関節に負担がかかったりして、無意識のうちに活動量が減少してしまいます。 筋肉は使用頻度が減ると萎縮し、筋力が低下していきます。 運動不足が続くと筋肉量がみるみる減少し、さらに体を動かすのがつらいと感じるようになるといった悪循環に陥りやすくなります。 筋肉内に脂肪が蓄積して筋力が落ちる 肥満の状態が続くと、全身に脂肪が過剰に蓄積されるだけでなく、筋肉の細胞内や筋肉と筋肉の間にも脂肪が入り込むことがあります。 この筋肉内への脂肪の蓄積は「異所性脂肪(いしょせいしぼう)」と呼ばれており、筋肉の質の低下を招きます。(文献2) 本来はぎっしり詰まっているべき筋肉の繊維の間に脂肪が入り込むことで、筋肉そのものの機能が落ちてしまうイメージです。 これによりインスリンの働きが妨げられたり、体内で炎症が引き起こされたりした結果、筋肉量の減少や筋力の低下が進むと考えられています。 インスリン抵抗性が筋肉の合成を妨げる 肥満は、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」を引き起こすことがあります。(文献3) インスリンは、食べたものからエネルギーを身体に吸収させるだけでなく、筋肉の合成にもかかわるホルモンです。(文献4) そのため、肥満によってインスリン抵抗性が生じると筋肉が作られにくく、筋肉量の低下が進む恐れがあります。 サルコペニア肥満が引き起こすリスク サルコペニア肥満は、サルコペニアまたは肥満単体の場合と比べて代謝機能が低下しやすく、健康リスクが高まると言われています。(文献5) 具体的に見ていきましょう。 転倒や骨折のリスクが高まる 筋肉量の減少は、日々生活に欠かせない「動く力」そのものを奪います。 具体的には、以下のような状況です。 階段を上るのが以前よりつらくなった 重いものが持てなくなり買い物が大変になった 歩くスピードが遅くなり、信号を渡りきれないことがある サルコペニア肥満は、バランスを崩して転倒しやすくなる、骨折のリスクを高めるなど、日常生活への支障をきたすケースが多く見られます。 進行すると、一人で買い物に行けなくなる、着替えが困難になるなど、介護が必要な状態につながる危険性も秘めています。 生活習慣病につながりやすくなる 筋肉は、食事から摂った糖を取り込み、エネルギーとして利用する重要な組織です。 筋肉量が少ないと、摂取した糖を効率よく使えなくなり、血液中の糖分が増えて糖尿病のリスクが高まります。(文献6) また、筋肉はエネルギーを多く消費するため、筋肉量が少ないと体のエネルギー消費量である「基礎代謝」が落ち、脂肪が蓄積しやすくなるのも問題です。その結果、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病を悪化させる要因にもなります。(文献7) 肥満と相まって、これらの生活習慣病のリスクはさらに増大してしまうのです。 【セルフチェック】サルコペニア肥満のリスクレベル サルコペニア肥満の診断基準は、世界的に統一されたものがなく、自己判断が困難なのが現状です。 しかし、サルコペニア肥満を放置すると将来的なリスクが高まるため、早期の気づきと対策が大切です。 まずは以下のセルフチェック表で、自身のサルコペニア肥満のリスクレベルを知っておきましょう。(文献1)(文献8) サルコペニア肥満と診断するものではありませんので、あくまでも目安としてとらえてください。 チェック内容 方法 サルコペニア肥満を疑う結果 指輪っかテスト ・両手の親指と人差し指で輪っかを作る ・ふくらはぎの一番太い部分を囲む ・隙間ができる場合は筋肉量の減少が疑われる 握力 ・握力計で計測する ・日常生活でチェックする 以下の場合で筋力低下が疑われる <握力の場合> ・男性:28kg未満 ・女性:18kg未満 <日常生活> ・ペットボトルのフタが自力で開けられない ・片足立ちで靴下を履けない 歩行速度 ・日常生活でチェックする 以下の場合で歩行速度の低下が疑われる ・横断歩道が青信号のうちに渡り切れない ・転びやすい、つまずきやすい BMI ・「体重(kg)÷身長(m)2」で計算する ・25以上 体脂肪率 ・体組成計で計測する ・32%以上 腹囲 ・メジャーで簡単に測定できる ・他者に計測してもらうと正確に測れる ・男性:85㎝以上 ・女性:90㎝以上 これらのチェック項目で当てはまるものが複数ある場合、サルコペニア肥満のリスクがあるかもしれません。 医療機関で相談することも検討しましょう。 サルコペニア肥満の予防・解消法 サルコペニア肥満の予防・解消するポイントは、筋肉量を増やして筋力を改善しつつ、体脂肪量の低下を目指すことです。(文献1) 紹介する予防・解消法をいくつか同時におこなうことで、脂肪の減少や筋力の改善に効果が期待できます。(文献9) ぜひ組み合わせて実施してみてください。 筋トレを中心とした運動習慣 筋肉を維持・増加させるためには、筋肉に適度な負荷を与える以下のような筋力トレーニングが効果的です。(文献2) 方法 具体例 筋トレ ・スクワット ・膝伸ばし ・後ろ蹴りだし 有酸素運動 ・ウォーキング ・水泳、アクアビクス ・早歩き ・階段を使用 時間は短時間でも、続けることが大切です。 はじめは10分程度から始め、徐々に時間や回数を増やしていきましょう。 筋肉と代謝を支える食事 筋肉を作るための材料となるタンパク質は、サルコペニア肥満の解消に欠かせません。 ダイエット中でも、タンパク質は不足させないように意識しましょう。 たんぱく質を毎食しっかり摂取する(肉・魚・卵・大豆製品など) 玄米や全粒粉パンなど、血糖値の上がりにくい炭水化物を選ぶ アボカド・ナッツ・青魚など、良質な脂質を適度に取り入れる 野菜や果物からビタミン・ミネラルをしっかり補給する サルコペニア肥満の改善には、バランスの取れた食事に加え、専門家の指導を受けることも重要です。 「この方法で本当にサルコペニア肥満のリスクを下げられる?」と感じたら、当院リペアセルクリニックのメール相談またはオンラインカウンセリングまでお気軽にご相談ください。 サルコペニア肥満を理解してできることから始めよう サルコペニア肥満は、肥満と筋肉の減少が合わさった状態で、見た目では気づきにくいのが特徴です。 早期に気づき適切な対策を始めることで改善できる可能性があります。 まずは自身のリスクを把握し、食事を見直す、体を動かす時間を少し増やすなど、できることから挑戦してみましょう。 「サルコペニア肥満のリスクが高いかもしれない。どうしたら良いの」と一人で悩んでしまうなら、専門家への相談をおすすめします。 当院リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを通じて、あなたの悩みをサポートしています。 自身の健康状態やライフスタイルに合わせた具体的なアドバイスをご提案しますので、ぜひお気軽にご相談ください。 サルコペニア肥満に関するよくある質問 サルコペニア肥満の診断基準はありますか? サルコペニア肥満は、診断基準が確立されていません。(文献1) これは、肥満や腹囲の基準が国によって異なることで、共通の基準を設けるのが難しいことが背景にあります。(文献1) しかし、医療機関での身体組成測定や専門家への相談によって、サルコペニア肥満のリスクを知ることは可能です。 ぜひ一度チェックしてみてください。 サルコペニア肥満は高齢者だけでなく若者もなりますか? サルコペニアと診断されるのは、原則的に65歳以上です。(文献8) ただし、病気をはじめとする何らかの原因によっては、若い方がなる可能性もあります。 また、今は問題なくても、以下のような生活をしている方は将来的にサルコペニア肥満になるリスクが高い可能性があるため、注意が必要です。 デスクワーク中心の仕事であるため運動不足である 加工食品中心の偏った食生活を送っている 無理なダイエットをしている 生活習慣が乱れがちな若い層では、見た目は痩せていても体脂肪が多く筋肉が少ない「隠れ肥満」の状態から、サルコペニア肥満に移行するリスクも考えられます。 「若いから」と油断せず、将来的なリスクを回避するためにも、運動習慣を身につけたりバランスの取れた食事を意識したりと準備しておきましょう。 サルコペニア肥満には症状があらわれますか? サルコペニア肥満は、初期にはっきりとした自覚症状があらわれにくいのが特徴です。 しかし、進行すると「疲れやすい」「つまずきやすくなった」「歩くのが遅くなった」といった身体機能の低下を感じる場合があります。 これらのサインに気づいたら、まずは医療機関で相談し、ほかの病気との区別をつけることが大切です。 サルコペニア肥満が女性に多いのはなぜですか? 男性に比べて女性は筋肉量が少なく脂肪量が多いため、サルコペニア肥満になりやすいと言われています。 しかし、サルコペニアの男女差についてはわかっていないことが多く、一概に「女性が多い」とも言い切れません。 とはいえ、女性の閉経後のホルモンバランスの変化は筋肉量の減少に関連する可能性があると指摘されていることから、早期のサルコペニア肥満対策が重要です。(文献10) 参考文献 (文献1) 若林秀隆「サルコペニア肥満」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/58/6/58_58.627/_pdf(最終アクセス:2025年6月13日) (文献2) 名古屋大学「高齢者の筋肉内への脂肪蓄積は サルコペニアと運動機能低下に関係する」 https://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20170209_htc.pdf(最終アクセス:2025年6月13日) (文献3) 石川耕,横手幸太郎「脂肪組織機能異常とインスリン抵抗性」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/102/10/102_2691/_pdf(最終アクセス:2025年6月13日) (文献4) 下村吉治「運動後の筋タンパク質合成のためのタンパク質・アミノ酸栄養」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/62/1/62_16/_pdf(最終アクセス:2025年6月13日) (文献5) PubMed「Muscle loss and obesity: the health implications of sarcopenia and sarcopenic obesity」 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25913270/(最終アクセス:2025年6月13日) (文献6) 東京大学大学院医学系研究科「筋肉における新しい糖取り込み調節機構の解明―肥満に伴う 2 型糖尿病の病態解明と治療への応用―」 https://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/admin/release_20110302.pdf(最終アクセス:2025年6月13日) (文献7) 山川佳那子ら「若年成人女性における安静時代謝量及び食事誘発性体熱産生と体組成との関連」 http://repo.kyoto-wu.ac.jp/dspace/bitstream/11173/3181/1/0100_075_002.pdf(最終アクセス:2025年6月13日) (文献8) 日本サルコペニア・フレイル学会、国立長寿医療研究センター「サルコペニア診療ガイドライン2017年版」 https://minds.jcqhc.or.jp/common/wp-content/plugins/pdfjs-viewer-shortcode/pdfjs/web/viewer.php?file=https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00426.pdf&dButton=false&pButton=false&oButton=false&sButton=true#zoom=auto&pagemode=none&_wpnonce=3b871a512b(最終アクセス:2025年6月16日) (文献9) 日本肥満症学会「肥満症診療ガイドライン」 https://www.jasso.or.jp/data/magazine/pdf/medicareguide2022_09.pdf(最終アクセス:2025年6月13日) (文献10) 熊本大学「骨格筋の発育と再生メカニズムに性差ありーエストロゲン受容体βの機能的重要性を解明ー」 https://www.kumamoto-u.ac.jp/whatsnew/seimei-sentankenkyu/20200821(最終アクセス:2025年6月13日)
2025.06.29 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
「熱中症になりやすい人は、どのような体質か」と疑問に思う方もいるでしょう。熱中症になりやすいのは、子どもや高齢者、持病がある方など、体温調整がうまく働きにくい体質や状態にある方たちです。 本記事では、熱中症になりやすい人の特徴や体質に加えて、具体的な予防・対策について解説します。熱中症になりにくい人の共通点や、よくある質問にも回答しているので、ぜひ参考にしてください。 熱中症になりやすい人の特徴 熱中症になりやすい人は、子どもや高齢者、肥満体質の方などです。ここでは、それぞれの特徴を解説するので、参考にしてください。 子ども 子どもは大人より、熱中症になりやすい傾向があります。基礎代謝が高く、体温が上がりやすい体質に加えて、発汗量を調整する汗腺がまだ未発達のため、体内に熱がこもりやすくなっています。 たとえば、夏の公園や校庭などで夢中になって遊んでいると、暑さや体温の変化に気づかず、突然ぐったりしてしまうケースも少なくありません。 また、照り返しによって地面に近いほど気温が高くなるため、外出時はベビーカーに載っている乳幼児にも注意が必要です。 このように、子どもは大人よりも体温調節が苦手なため、夏場や暑い環境ではとくに、熱中症リスクが高まります。 高齢者 高齢者は、熱中症になりやすい人の代表的な例です。加齢に伴い、発汗などの体温調整機能や体内の水分量が低下するためです。水分不足だと、汗をかく量が低下し、余分な体の熱が放出されにくくなります。また、暑さや喉の渇きを感じにくくなることも熱中症のリスクを高める要因です。 室内にいてもクーラーを付けずに過ごしていたり、喉が渇いていないと感じて水分を摂らなかったりする場合があります。こうした状態が続くと、気付かないうちに熱中症になっているケースもあります。 一人暮らしで体調の変化を周囲に伝えにくい場合は、対処が遅れて重症化する恐れもあるため注意が必要です。 肥満の人 肥満体型の方も熱中症になりやすい傾向にあります。皮下脂肪を多いため体内の熱を外へ逃がしにくく、体重が重い分、体を動かす際に多くのエネルギーを消費して熱として溜まりやすくなります。 くわえて、体温を下げるために大量の汗をかくことで、水分不足を起こしやすくなる点も一因です。 たとえば、暑い日に外を歩いているだけでも、体内に熱がこもりやすく、汗の量が増えて脱水症状に陥る可能性もあります。 暑い日は、通気性の良い服装を選んだり、日傘、帽子を使ったりして、体に熱がこもらないように工夫しましょう。 持病がある人 高血圧や糖尿病、腎不全などの持病は、熱中症リスクを高める要因の一つとされています。これらの疾患は、体温調整機能の乱れを起こしやすいリスクがあるためです。さらに、服用している薬によっては、発汗の抑制や利尿作用によって水分が失いやすくなり、熱中症リスクを高めます。 血圧の薬や利尿剤を服用している人は、汗が出にくくなったり、水分が過度に排出されたりして脱水症状を起こすケースもあります。 複数の薬を服用している高齢者の方はとくに注意が必要です。 運動不足や体調不良の人 運動習慣がないと、熱中症になりやすい傾向があります。運動不足によって筋肉量が減ると、心臓に血液を送る働きが低下し、熱が体に溜まりやすくなるためです。 日ごろあまり体を動かしていない人が暑い日に少し外出しただけで、ふらつきや軽い熱中症の症状を起こすケースも少なくありません。 また、寝不足や疲労が蓄積しているときも、熱中症になる可能性が高まります。体調が万全でないと、体温調整機能がいつも通り働かなくなるためです。 たとえば、二日酔いや下痢などで体内の水分が減っている場合には、脱水症状を引き起こしやすくなります。 熱中症になるリスクを下げるためには、運動習慣をつくり体調管理を意識することが大切です。 熱中症の主な原因とリスクを高める要因 熱中症の主な原因とリスクを高める要因には、そのときの環境や作業状況などが関わってきます。以下で、それぞれ見ていきましょう。 環境の要因 熱中症の原因となるのは、環境が大きく関わります。高温多湿や輻射熱、無風といった条件下での作業は体に熱がこもりやすく、発症リスクが高まります。 窓を閉め切った室内でエアコンを使わずに掃除や片づけなどの家事をしていたところ、気付かないうちに体が熱をため込み、めまいや吐き気を感じるケースも少なくありません。 熱中症は気温や湿度だけでなく、風通しの悪さや室内の状況などによっても引き起こされます。暑さを感じにくい場所でも油断をせず、室温や湿度を確認しながら、温度調整や休憩を取り入れることが大切です。 作業時の要因 長時間の屋外での作業や体力的に負担の大きい業務も熱中症リスクを高める要因です。休憩を十分にとれなかったり、水分補給ができない状態が続いたりすると体内に熱が溜まりやすくなります。 さらに、通気性の悪い制服や防護服の着用も注意が必要です。送風機能のある作業着や通気性の良い素材の服を着用するようにしましょう。 個人の要因 個人の体調や体質も、熱中症リスクを高める要因の一つです。屋外作業に慣れておらず、暑熱順化(体が暑さに慣れること)ができていなかったり、二日酔いで水分が不足していたりと原因はさまざまです。 発熱や風邪などの症状があるときは、もともと体温が上がっているため、気温の変化を受けやすくなります。 少しでも体調に違和感を覚えたら、こまめに水分補給をし、無理せず休憩をとることが重要です。 熱中症になりやすい人が講じるべき対策と予防 熱中症になりやすい人は、普段から暑さに負けない体づくりや工夫が求められます。ここでは、講じるべき対策と予防について解説するので、熱中症になりやすい人は、参考にしてください。 暑さに負けない体づくりをする 熱中症を予防するには、暑さに負けない体づくりが欠かせません。適度な運動やバランスのとれた食事、十分な睡眠など、日ごろの体調管理を意識すると、熱中症になりにくい体づくりにつながります。 また、喉が渇いていなくてもこまめに水分補給をしましょう。冷房や扇風機を上手に使い、寝苦しい夜も睡眠環境を整えると、夜間の熱中症予防にもつながります。さらに、質の良い睡眠は体力の回復を促すため、予防にも効果的です。 暑くなる前から無理のない範囲でウォーキングやストレッチなどの軽い運動を取り入れると、体力の維持や暑さへの順応にも効果が期待できます。 暑さに対する工夫をする 暮らしのなかに取り入れられる小さな工夫でも、暑さ対策としては有効です。適度な空調で室温を保ったり、衣服の素材を工夫したりすると熱中症リスクを軽減できます。 麻や綿といった通気性の良い服を選んだり、吸水性や速乾性に優れたインナーを身に付けたりすると汗をかいても快適に過ごせるのでおすすめです。また、外を歩くときはなるべく日傘や帽子を活用し、日陰を歩くようにしましょう。冷却グッズを取り入れるのも、暑さ対策として効果的です。 日々の小さな心がけが、熱中症予防につながります。 こまめな休憩と水分補給をする こまめな休憩と水分補給は熱中症対策には不可欠です。炎天下での屋外作業や高温多湿な環境では、体温が上昇しやすく、大量の汗をかくと体内の水分や塩分が失われやすくなります。 また、暑さが厳しい日は、テレビや天気予報のWebサイトで公開されている「熱中症警戒アラート」や「暑さ指数(WBGT)」も参考にして、活動時間やタイミングを工夫すると効果的です。 こまめに休憩をとり、定期的に水分と塩分を補給しましょう。 熱中症になりにくい人の特徴 熱中症になりにくい人には、日ごろの生活習慣や体の状態に共通点があります。主な特徴は以下のとおりです。 朝食をしっかり摂っている 睡眠時間が安定している 適度な運動を続けていて筋肉量がある 朝ごはんを食べないと、一日のエネルギーが不足し、体温調整機能がうまく働きません。朝食をしっかり摂ると、体内時計が整い外部の環境に順応しやすくなります。 また、睡眠時間が安定している人は、自律神経が整いやすく外気温の変化に適切に反応できます。さらに、筋肉量が多い人は体内の水分保有量が多く、発汗による脱水のリスクが低いため、熱中症を防ぎやすいでしょう。 食事では、夏野菜や果物、豚肉などを取り入れて汗で失われやすい栄養素を補うことも大切です。 熱中症になりやすい人はリスクを把握して備えよう 熱中症になりやすい人は、あらかじめリスクを把握しておきましょう。炎天下での長時間作業や締め切った部屋での家事などは、とくに注意が必要です。また、高血圧や糖尿病などの持病がある方も、体温調整が難しくなるためリスクが高まります。 日ごろから体調管理や適度な運動を心掛け、こまめに水分補給をとり、熱中症になりにくい体づくりを心掛けましょう。 【関連記事】 熱中症で脳梗塞のリスクが高まる?症状の見分け方と予防のポイント5選 熱中症の主な後遺症一覧|原因や治療方法を現役医師が解説 熱中症と「なりやすい」に関するよくある質問 女性は熱中症になりやすいですか? 女性は男性と比べて、熱中症になりやすい傾向があります。理由としては、水分を貯める役割を担う筋肉量が男性よりも少ないためです。 また、月経時には出血とともに水分も失われやすくなります。さらに、更年期による女性ホルモンの変化も一因です。自律神経が乱れやすくなり、体温調整機能がうまく働かず、熱中症のリスクが高まります。 一度熱中症を経験するとなりやすいのはなぜですか? 熱中症は一度経験したからといって、繰り返しなりやすくなるものではありません。しかし、「熱中症になりやすい」と感じている場合は、筋肉量の低下や暑熱順化ができていない可能性があります。 熱中症を防ぐためには、あらかじめ暑さに慣れておくことが大切です。とくに、冷房の効いた室内でデスクワークをしている方は注意してください。無理のない範囲でウォーキングを取り入れたり、一駅分歩いてみたりと、日常のなかで暑さに慣れる工夫をしてみましょう。 熱中症になりやすい時期はいつですか? 熱中症になりやすいのは、7月~8月の気温が高くなる時期です。とくに、真夏日(最高気温が30度以上)に患者数が増え始め、猛暑日(最高気温が35度以上)には急増する傾向があります。 また、梅雨の晴れ間や梅雨明けの蒸し暑い日にも注意が必要です。体が暑さに慣れていない時期は、気温や湿度の変化に対応しづらく、熱中症リスクが高まります。
2025.06.29 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
「頭がズキズキするけれど、体調不良から起こる頭痛か熱中症のサインかわからない」 「少し休んでも痛みが改善されない」 熱中症が引き起こす頭痛は、疲れや寝不足などと混同されやすいため、受診のタイミングに迷う方もいるでしょう。単なる疲れと見逃されがちですが、放置すると重症化する危険があります。 本記事では、熱中症と頭痛の関係や見分け方を詳しく解説します。すぐに実践できる対処法や、日頃から心掛けたい予防策も紹介するので、ぜひ参考にしてください。 【重症度別】頭痛症状はどこに当てはまる?熱中症との関係性 熱中症による頭痛は、中等度の症状に該当し、ほかにも吐き気や嘔吐・倦怠感(けんたいかん)などが挙げられます。 熱中症とは日射病や熱射病の総称で、気温が高い環境で運動や仕事などを行った際に体温調節がうまくできなくなり起こる病気です。とくに、成長途中の子どもや、身体機能が低下しやすい高齢者は注意が必要です。 熱中症は、軽度から重度まで複数の症状がみられます。重症度別に症状を解説するので、参考にしてください。 また、熱中症の影響を受けやすいのは、どのような人か知りたい方はこちらの記事もチェックしてください。 軽度 軽度の熱中症は、発汗により体内の水分や塩分などの電解質が失われ始める段階で、主な症状は以下のとおりです。 めまい・立ちくらみ こむら返り 筋肉痛 大量の発汗 体内の水分が失われると血液量が減少し脳へ送られる血液の流れが不安定になるため、急に立ち上がった際にめまいや立ちくらみ(熱失神)を起こす場合があります。 熱中症では、汗とともに失われるのは水分だけでなく、筋肉の正常な収縮に不可欠なナトリウムなどの塩分も含まれます。塩分が欠乏すると、ふくらはぎや足の指、腹部などに痛みを伴うけいれんを指すこむら返り(熱けいれん)が起こるケースも珍しくありません。 軽度の熱中症で「頭痛」が主症状となるのは稀です。ただし、ズキズキと脈打つような激しい痛みではなく、脱水による血流の変化からくる「頭が重い感じ(頭重感)」を訴える場合もあります。 中等度 中等度の熱中症は「熱疲労」ともいわれ、頭痛に加えて以下の全身症状が現れます。 頭痛 気分の不快 吐き気・嘔吐 倦怠感 虚脱感 熱中症による頭痛は、体温の上昇に対処しようと脳の血管が過度に拡張するのが主な原因です。拡張した血管に心臓が血液を送り込むたびにズキズキと脈打つような拍動性の痛みを感じます また、体が熱を逃せるよう消化器系への血流を抑えるため胃腸の働きが低下し、強い吐き気や嘔吐を引き起こすケースも珍しくありません。体はエネルギーを使い果たし、立っていられないほどの倦怠感や虚脱感に襲われます。 集中力や判断力も著しく低下するため、自分自身で的確に対処するのが困難になり始めるのも中等度の特徴です。 中等度の熱中症は、意識がはっきりしていても臓器障害を起こしている場合があります。重症化すると命の危険につながるため、自己判断で様子を見ないよう注意してください。 重度 重度の熱中症は「熱射病」と呼ばれ、体温が上がりすぎたために以下の症状が現れます。 高体温 けいれん 意識障害 手足の運動障害 重度では体温調節を司る中枢機能が失われ、体温が40度を超えると発汗しなくなり体表に激しい熱感が残るのが特徴です。 重度の熱中症では高体温により、熱に弱い神経細胞が直接的なダメージを受けます。その結果、全身のけいれんや昏睡状態を引き起こす場合があります。 重度では頭痛を訴えていた中等度の段階とは異なり、痛みを感じたり、伝えたりする行動自体ができないほど、中枢神経系が深刻な影響を受けているといえます。 熱中症で起こる頭痛の特徴 熱中症が引き起こす頭痛には、日常的な片頭痛や風邪などの頭痛とは性質が異なり、以下の特徴があります。 拍動性の痛みを感じる 倦怠感・吐き気・嘔吐などを伴う なかでも特徴的なのは、心臓の拍動に合わせてズキズキと脈打つ拍動性の痛みです。頭全体が締め付けられるように感じたり、ガンガンと響くような重い痛みを伴ったりする場合も少なくありません。 頭痛だけが単独で現れるのは珍しく、倦怠感・吐き気・嘔吐など、全身状態の悪化を示す症状が伴う点も大きな特徴です。 上記の特徴が見られた際は、熱中症を疑い速やかな対応が求められます。 熱中症による頭痛の見分け方 熱中症による頭痛か否かを見分けるには、以下の状況と身体の変化を確認することが重要です。 状況 全身症状 ・高温多湿の場所に長時間いた ・激しい運動や屋外作業をしていた ・水分が十分に足りていなかった ・体温上昇や発汗の異常、脱水症状がみられる ・めまいや吐き気、倦怠感が伴う ・涼しい場所での安静や水分補給で症状が改善する 炎天下や蒸し暑い屋内で活動したあとに頭痛が出現した場合、まずは熱中症を疑います。 熱中症による頭痛は、ズキズキとした拍動性の痛みとして現れる場合が多く、体温が上昇して異常な発汗がみられる、全身に脱水の兆候が同時にみられます。また、めまいや吐き気・強い疲労感を伴うケースも多いため、全身症状の条件がそろえば熱中症が引き起こされる可能性が高まるでしょう。 涼しい場所で休み、水分とともに塩分などの電解質を補給して症状が和らぐようであれば、熱中症が原因であると考えられます。 ただし、重度では安静や補水でも改善しないケースがあるため、症状が徐々に悪化していく場合や症状が改善しない場合は、迷わず医療機関を受診してください。 熱中症の症状で頭痛が起きた際の対処法3選 熱中症による頭痛が発症した場合、迅速かつ的確な対応が症状の悪化を防ぐ鍵となります。ここでは、頭痛が起きた際の具体的な対処法を紹介します。 自己判断で放置してしまうと重症化する危険もあるため、理解を深めておきましょう。 涼しい場所へ移動する まずは、体温を上げる環境から離れるのが最優先です。屋外にいる場合は、直射日光を避けられる日陰や、可能であれば冷房が効いた室内や車内へ速やかに避難してください。 室内で発症した場合でも、窓を閉め切った暑い部屋から、風通しの良い涼しい部屋へ移動します。 自力で移動できる場合でも、めまいや立ちくらみ、一時的な失神によるふらつき・転倒を起こす可能性があるため、注意してゆっくり移動しましょう。自力で移動できない場合、周囲に人がいるなら協力を仰ぎ、迅速に安全な場所へ避難するのが大切です。 体を冷やす 涼しい場所へ移動したら、次は積極的に体を冷やす処置を行います。 ベルトやネクタイ、体に密着する衣服を緩めて、風通しを良くしてください。濡らしたタオルやハンカチを体に当てて、うちわや扇子などであおぎ、体温を下げます。 冷やす際は保冷剤や氷のう・冷えたペットボトルなどにハンカチを巻き、以下の部位に当てましょう。 首筋 わきの下 足の付け根 上記のような太い血管が皮膚の近くを通っている場所を冷やすと、効率的に全身の血液を冷やせて効果的です。 水分・塩分を補給する 脱水と電解質の不足が熱中症を引き起こすため、水分とともに塩分などの電解質の補給が欠かせません。 スポーツドリンクや経口補水液が望ましいですが、無ければ水でも良いのでゆっくり飲みます。一度に大量の水分を摂ると胃腸に負担がかかるため、こまめに少しずつ摂取すると良いでしょう。 ただし、吐き気や嘔吐を伴う場合は、無理に飲まないでください。また、意識がはっきりしない人に無理矢理飲ませると、誤って気道に水分が流れ込む可能性があるため、注意が必要です。 熱中症による頭痛症状が現れた際の受診目安 熱中症によって頭痛症状が引き起こされた際の受診目安は、以下のとおりです。 応急処置をしても改善がみられない 自力で水分を摂れない 嘔吐を繰り返している 意識障害がある 頭痛が軽度であり水分補給や休息によって速やかに軽快するなら、自宅で経過をみても問題ありません。 ただし、涼しい場所へ移動し十分に水分・塩分を補給しても改善がみられない場合や、症状が悪化する際は医療機関の受診が必要です。とくに、水分を自力で摂取できない、嘔吐を繰り返してしまう場合は、点滴での水分・電解質の補給が必要になる可能性があります。 呼びかけへの反応がおかしい、ろれつが回らない、けいれんを起こすなどの意識障害の兆候が見られる際は、救急車の要請を検討してください。 熱中症によって頭痛が生じた際、自己判断で様子を見るだけでは危険な場合もあるため、注意しましょう。 受診するかお悩みの際は、ぜひご相談ください。 熱中症による頭痛の予防法 熱中症による頭痛の予防法は、以下のとおりです。 高温多湿の環境では無理せずこまめに休憩する 服装に注意する こまめに水分・塩分を補給する 高温多湿の環境では無理な運動や長時間の外出を避け、適切に休憩を取り入れるのが基本です。睡眠不足や風邪など、体調が優れない場合は気温が高くなる日中の外出は控えましょう。 また、日差しを直接浴びないよう帽子や日傘を活用し、通気性の良い淡い色の服装を心がけると体温の上昇を抑えられます。 熱中症予防には、こまめな水分・塩分補給も欠かせません。喉の渇きを感じる前から水分や電解質を補うと、脱水を未然に防げます。とくに、大量の発汗が予想される場合には、スポーツドリンクや経口補水液の利用が効果的です。 ほかにも、十分な睡眠と食事を取って体調を整え、暑さに耐えられる体づくりも大切です。自分の体調や周囲の気温変化に注意を払い、早めの予防行動を意識できると、頭痛を含む熱中症の発症を大きく減らせます。 熱中症による長引く頭痛は当院へご相談ください 熱中症が引き起こす頭痛は中等度の症状であり、ズキズキとした拍動性の痛みや倦怠感・吐き気などを伴うのが特徴です。 熱中症による頭痛が疑われる場合は、涼しい場へ移動し体を冷やして適切な水分・塩分の補給が対処法の基本です。 ただし、対処法を行っても症状が改善しない場合は、重症化している可能性があります。また、症状が続く際は後遺症も考えられるため、自己判断で経過をみるのではなく、当院にご相談ください。 熱中症は稀に後遺症を残すケースがあります。後遺症については、こちらの記事で詳しく紹介しているので、参考にしてください。 熱中症と頭痛に関するよくある質問 熱中症で夜になってから頭痛を起こすことはある? 熱中症による頭痛は、日中の高温環境で受けたダメージが蓄積され、時間をおいて症状として現れるケースがあるのも事実です。 とくに、日中の屋外活動後、体温が高い状態で水分補給が不十分だった場合、夕方から夜にかけて頭痛や倦怠感が出るケースは珍しくありません。 軽度の熱中症でも、体が脱水状態に傾くと遅れて頭痛を起こす場合があるため、夜間でも症状が強ければ油断せず、水分・塩分の補給や体を冷やし、必要に応じて医療機関を受診しましょう。 熱中症で頭痛薬を飲んでしまった場合の対処法は? 既に頭痛薬を飲んでしまった場合は、体調変化に注意しつつ熱中症への基本的な対処を行ってください。 熱中症による頭痛に対して、自己判断で頭痛薬を飲むのは推奨されません。薬で頭痛を抑えても、原因である脱水や高体温は改善されず、かえって症状の悪化に気づきにくくなる危険があるためです。 また、一部の解熱鎮痛薬は、脱水状態の腎臓に負担をかける可能性もあります。熱中症に対する対処法を実施したあとも症状が改善しない場合は、医療機関を受診し、どの薬を飲んだか必ず医師へ伝えましょう。
2025.06.29 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
「熱中症に後遺症はあるのか」「熱中症の後遺症にはどのような症状があるのか」と気になっている方も多いでしょう。 熱中症は、高体温や脱水によって後遺症を起こす可能性があり、中には脳細胞や神経に重篤な症状を引き起こすケースも存在します。 本記事では、熱中症による後遺症の症状や原因、治し方について詳しく解説します。 熱中症後の体調不良に悩んでいる方や予防策を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。 また、熱中症の後遺症に関するお悩みを今すぐ解消したい方は、再生医療による治療も選択肢の一つです。 \熱中症の後遺症に有効な再生医療とは/ 再生医療は、患者さま自身の細胞や血液を用いて人間の持つ自然治癒力を向上させることで、熱中症によるさまざまな後遺症の改善が期待できます。 【こんな方は再生医療をご検討ください】 長引く熱中症の後遺症を早く治したい 熱中症後に脳細胞や神経障害を引き起こしている 現在受けている治療で期待した効果が得られていない 具体的な治療法については、当院(リペアセルクリニック)で無料カウンセリングを行っておりますので、ぜひご相談ください。 ▼まずは熱中症の後遺症治療について無料相談! >>(こちらをクリックして)今すぐ電話してみる 熱中症の後遺症とは?どんな症状が残るのか 熱中症は、重症化すると命に関わるだけでなく、適切な治療を受けて一時的に回復しても、体の機能や神経系に影響が残る場合があります。 後遺症は数日〜数週間続くこともあれば、まれに長期間続くこともあります。 以下は、熱中症の主な後遺症の例です。 頭痛 ズキズキ・締め付けられるような痛みが続く 食欲不振・倦怠感 体のだるさや食欲の低下 めまい・ふらつき 回転感や足元の不安定感 臓器の障害 心臓・肝臓・腎臓などの機能低下 中枢神経障害(高次脳機能障害)による認知機能の変化 記憶力や判断力の低下、情緒の変化 自律神経の乱れ・体温調節障害 体温がうまくコントロールできず、ほてりや冷えが続く 日常生活に影響を及ぼす症状はもちろん、重篤な症状を引き起こすリスクもあるため、注意が必要です。 熱中症の後遺症について詳しく見ていきましょう。 頭痛 熱中症から回復した後も、慢性的な頭痛に悩まされるケースがあります。 頭痛を起こす原因としては、熱中症によって脳の血管が一時的に収縮したり、脱水による影響が残ったりすることが考えられます。 とくに、頭痛が長く続いたり、頻繁に発生したりする場合は、単なる体調不良と片付けてしまうケースも少なくありません。 熱中症の後に日常生活に支障をきたすほどの頭痛が続く場合は、医療機関を受診し、医師の診断と適切な治療を受けましょう。 食欲不振・倦怠感 熱中症の後遺症として、食欲不振や強い倦怠感が続く場合があります。 これは、熱中症によって体内の水分や電解質のバランスが崩れ、自律神経に影響が出るためです。 食欲がない状態が続くと、必要な栄養が摂れず、さらに倦怠感が悪化する悪循環に陥るケースもあります。 熱中症後に食欲不振や倦怠感が生じる際は、無理せず消化の良いものを摂取し、十分な休息をとりましょう。 症状が長引く場合は、医療機関へ相談してください。 めまい・ふらつき 熱中症による脱水や脳への血流不足が原因で、回復後もめまいやふらつきが続くケースがあります。 これらの症状は、三半規管や脳の機能に一時的な障害が残っている可能性があるためです。 症状は立ちくらみのような一瞬のものから、フワフワとした浮遊感が続くものまでさまざまです。 めまいやふらつきが続くと、転倒によるけがのリスクも高まります。 症状が改善しない場合や悪化がみられる場合は、医療機関の受診を検討しましょう。 臓器の障害 重度の熱中症の場合、体温が異常に高くなることで肝臓や腎臓などの臓器に深刻なダメージが及ぶことがあります。 たとえば、腎臓機能が低下して急性腎不全を起こしたり、肝細胞が破壊されて肝機能が悪化したりするケースです。 こうした臓器障害は、熱中症からの回復後も長期的な影響を及ぼすことがあり、場合によっては定期的な検査や治療が欠かせません。 さらに、重症例では永久的な機能障害が残る可能性もあるため、重症熱中症の既往がある方は、医療機関での定期的な検査が必要です。 中枢神経障害(高次脳機能障害)による認知機能の変化 熱中症の後遺症の中でも重篤なものの1つが、中枢神経障害や高次脳機能障害です。 これは、熱中症により脳への血流が不足し、神経細胞が損傷を受けることが原因です。 症状としては、記憶力や判断力の低下、感情の起伏が激しくなる、神経が過敏になる、さらにはけいれん発作などがあげられます。 こうした障害は、発症から時間が経つほど回復が難しくなり、場合によっては永久的に機能が失われる可能性があります。 そのため、少しでも異変を感じた場合は早急に医療機関を受診し、必要な検査や治療を受けることが大切です。 自律神経の乱れ・体温調節障害 熱中症を経験した後、一部の方に自律神経の乱れが残る場合があります。 自律神経は、体温や心拍、血圧、発汗などを自動的にコントロールする神経で、暑さや寒さに対する体の反応を調整するものです。 重度の熱中症では、脳や脊髄の視床下部など、自律神経の中枢がダメージを受けることがあり、その結果、体温調節機能が低下します。 主な症状は以下のとおりです。 以前より暑さや寒さに弱くなる 急に汗が出なくなる、または過剰に汗をかく めまい・立ちくらみが起こりやすくなる 倦怠感や集中力の低下が続く このような体温調節障害は、日常生活にも影響を与える可能性があります。 症状が長引く場合は、神経内科や自律神経外来での検査・治療が推奨されます。 回復のためには、十分な休養と水分・塩分補給、生活リズムの安定が重要です。 また、徐々に体を暑さに慣らすことで、体温調節機能の改善が期待できます。 熱中症の後遺症が起こる原因 熱中症は、体温が異常に上昇した状態が続くことで、体や脳に深刻なダメージを与える病気です。 とくに脳は高温に弱く、わずか数分〜十数分の高体温でも神経細胞に障害が生じることがあります。 さらに高温状態が長く続くと、そのダメージは回復しにくく、後遺症として残ってしまう可能性があります。 ここでは、熱中症の後遺症を引き起こす主な原因を3つ解説していきます。 高体温による脳細胞・神経へのダメージ 高体温の状態が続くと、脳の細胞や神経は大きな負担を受けます。 とくに体温が41℃を超えるような状況では、脳のたんぱく質が変性しやすくなり、神経伝達が正常に行われなくなる可能性があります。 これにより、意識障害やけいれん、記憶障害などの症状が現れることがあるのです。 さらに、脳細胞は一度損傷すると再生が難しいため、後遺症として記憶力や集中力の低下などが残るケースもあります。 そのため、高体温が疑われる場合は早急な体温の低下と医療機関での対応が重要です。 脱水と動脈硬化による血栓・脳梗塞のリスク 脱水は血液の水分量を減らし、血液をドロドロの状態にさせます。 このような状態は血栓(血の塊)ができやすく、動脈硬化が進んでいる場合には血流がさらに悪化します。 結果として脳の血管が詰まり、脳梗塞を引き起こす危険性が高まるのです。 とくに高齢者や生活習慣病を抱えている方は、熱中症による脱水が重大な合併症のきっかけとなるため注意が必要です。 ホルモンバランスや臓器機能の乱れ 熱中症により体温が異常に上昇すると、体は生命維持のために防御反応を起こします。 防御反応を起こす際、「サイトカイン」と呼ばれる生理活性物質が過剰に生成されます。 サイトカインは、炎症反応を調整する重要な役割を持つタンパク質です。 通常サイトカインは健康を保つ上で重要な役割を持っていますが、過剰に生成されるとバランスが崩れ、炎症の悪化や脳・臓器への異常を引き起こす原因となります。 この状態が続くと臓器機能の低下やホルモンバランスの乱れが長引き、後遺症につながる可能性があるため注意が必要です。 早めの受診が命を救う|迷ったときは救急車を 熱中症や熱中症の後遺症は、初期対応が遅れるほど重症化しやすく、脳や臓器に長く影響を残す危険があります。 とくに意識がもうろうとしている、呼びかけに反応が鈍い、吐き気やけいれんがある場合は、一刻を争う状態です。 自己判断で様子を見るのではなく、迷ったらすぐに救急車を呼んでください。 医療機関での迅速な処置によって、回復の可能性は大きく高まります。 早期の受診は、命を守るだけでなく、後遺症を予防する最も確実な方法です。 熱中症の後遺症が残りやすい人の特徴とリスク要因 熱中症の後遺症は誰にでも起こり得ますが、とくに以下のような条件に当てはまる方はリスクが高くなります。 高齢者や乳幼児など、体温調節機能が未発達または低下している人 → 発汗や血流による放熱がうまくできず、体温が上がりやすい。 心疾患や糖尿病などの持病を持っている人 → 循環機能や代謝が制限され、体温管理が難しくなることがある。 暑さに慣れていない、または急激に気温が上がった環境にいる人 → 汗のかき方や血流の調整が間に合わず、体温が急上昇しやすい。 屋外での肉体労働やスポーツを長時間行う人 → 筋肉運動による発熱が多く、さらに直射日光や高温環境で熱がこもりやすい。 水分補給や塩分補給が不足している人 → 発汗で失った水分・塩分を補えず、脱水や電解質バランスの乱れを起こしやすい。 これらに当てはまる場合、軽症の熱中症でも油断は禁物です。 体調の変化を見逃さず、早めに涼しい場所で休息を取り、必要に応じて医療機関を受診しましょう。 高齢者や既往症がある人は注意が必要|軽症でも油断は禁物 高齢者や心疾患、糖尿病、腎臓病などの既往症がある人は、体温調節機能や循環機能が低下しているため、熱中症の影響を受けやすくなります。 軽症であっても回復に時間がかかり、後遺症が出るリスクが高まります。 症状が軽くても、自己判断せずに早めに医療機関を受診することが大切です。 一度熱中症になると再発リスクが上がる? 熱中症を一度経験すると、その後しばらくは体温調節機能が十分に回復せず、再び熱中症を起こしやすくなるといわれています。 とくに発症から数週間は、同じ環境下で再発する可能性が高いため、炎天下での作業や運動は避け、水分・塩分補給や休憩をこまめに行うことが重要です。 熱中症の後遺症は治る?治療と回復までの目安 熱中症の後遺症に対する治療は、症状の程度によってアプローチが異なります。 めまいや倦怠感など比較的軽度な症状の場合、十分な休息と水分・塩分補給が基本となります。 経口補水液などで体内の電解質バランスを整えることが大切です。 必要に応じて、頭痛や吐き気などの症状を和らげるため、投薬治療が行われるケースもあります。 一方、脳機能への影響や神経障害など重度の後遺症に関しては、現時点で根本的に治す方法は確立されていません。 ただし、症状の軽減や機能回復を目指すため、継続的なリハビリテーションが可能です。 理学療法や作業療法、認知機能訓練など、専門家による継続的なケアが、失われた機能の回復につながる可能性があります。 また、近年では再生療法による後遺症の治療も提供されています。 リペアセルクリニックでも再生療法を提供しているため、気になる方はぜひご相談ください。 いずれのケースでも、症状が長引く場合は自己判断せず、速やかに医療機関を受診し、専門医の診断のもと適切な治療を開始するのが重要です。 自然回復するケースと長引くケースの違い 熱中症の後遺症は、症状の程度によって回復までの期間が大きく異なります。 軽度の熱中症であれば、数日から1週間程度で自然回復することが多いです。 軽い頭痛や倦怠感、集中力の低下などは、十分な休養と水分・塩分補給を行うことで改善が期待できます。 一方、長引くケースは、重度の熱中症によって脳や神経、腎臓などにダメージが及んだ場合に見られます。 この場合、自律神経の乱れや慢性的な疲労、記憶力の低下、めまいなどの症状が数週間から数か月続くこともあります。 とくに高齢者や基礎疾患を持つ方は回復が遅れやすく、後遺症が長期化しやすいです。 症状が長引く場合は「そのうち治る」と自己判断せず、早めに医療機関を受診して必要な検査や治療を受けることが大切です。 病院は何科を受診すれば良い? 熱中症の後遺症が疑われる場合は、症状に合わせて受診する診療科を選ぶことが大切です。 頭痛・めまい・倦怠感などの全身症状がある場合 まずは内科(一般内科)を受診しましょう。 熱中症後の全身状態をチェックしてもらい、必要に応じて精密検査を行います。 しびれ・手足の動かしづらさ・言葉の出にくさなど神経症状がある場合 脳神経内科や神経内科の受診がおすすめです。 脳や神経系に異常がないかを確認できます。 物忘れ・集中力の低下・情緒不安定などの精神的な症状がある場合 精神科や心療内科の受診が適切です。 必要に応じて心理士や作業療法士によるサポートも受けられます。 当院では、熱中症の後遺症にお悩みの方の診察が可能です。 熱中症の後遺症が疑われる方や、治療法を探している方は、ぜひ一度リペアセルクリニックのメール相談やカウンセリングにてご相談ください。 後遺症の治し方と回復のための生活習慣 熱中症の後遺症を改善するには、医療機関での治療に加えて、日常生活でのセルフケアが重要です。 回復を促すための生活習慣のポイントは次の通りです。 十分な睡眠を取る 睡眠は自律神経や脳の回復に欠かせません。 できるだけ規則正しい時間に就寝・起床するようにしましょう。 栄養バランスの取れた食事 たんぱく質・ビタミン・ミネラルをバランス良く摂取することが、体力の回復や神経機能の改善につながります。 とくにビタミンB群やマグネシウムは神経の働きを助けます。 適度な運動 体調が安定してきたら、軽いストレッチやウォーキングなどから始めましょう。 血流が改善され、疲労回復が促進されます。 水分補給を意識する 後遺症がある間も、体は水分不足の影響を受けやすくなります。 こまめな水分補給を心がけてください。 ストレスをためない 精神的なストレスは自律神経の乱れを悪化させる可能性があります。 深呼吸や軽い瞑想など、リラックスできる時間を作ることが大切です。 こうした生活習慣を取り入れることで、熱中症の後遺症からの回復を早め、再発の予防にもつながります。 熱中症の後遺症を防ぐポイント 熱中症の後遺症は、長期にわたり生活に影響を及ぼす可能性があります。 後遺症を起こさないためには、熱中症を予防するのが大切です。 もし熱中症になったとしても、重症化を阻止すれば、重篤な後遺症のリスクを軽減できます。 ここでは、熱中症の後遺症を防ぐポイントを2つ紹介します。 熱中症を予防する 熱中症の後遺症を根本的に防ぐためには、熱中症そのものにならないことが大切です。 具体的には、以下の予防策が挙げられます。 こまめな水分・塩分補給をする 暑さを避ける 吸収性や速乾性に優れた衣服を着用する 気温が高い時期は、のどが渇いていなくても定期的に水分を摂りましょう。 とくに汗をたくさんかくときは、スポーツドリンクや経口補水液などで塩分やミネラルも補給するのが大切です。 吸湿性や速乾性に優れた素材の服を選んだり、日傘や帽子を着用したりするのも熱中症対策に効果的です。 暑さによる体調不良が疑われる場合は、無理をせず涼しい場所で涼みましょう。 体調変化の早期察知と正しい対処が重要 熱中症は、発症後の初期対応の速さが後遺症の有無を大きく左右します。 たとえ軽い症状であっても、「いつもと違う」体調の変化を感じたら放置しないことが大切です。 めまい、倦怠感、頭痛、吐き気、集中力の低下などが見られたら、まずは涼しい場所で休み、水分と塩分を補給しましょう。 「ただの体調不良かもしれない」「様子を見れば治るはず」と自己判断して対応が遅れると、重症化して後遺症が出るリスクが高まります。 些細な体調不良でも放置せず、念のため医療機関を受診するのが大切です。 まとめ|熱中症の後遺症は早期対処と予防が大切 熱中症の後遺症として、頭痛や食欲不振、めまいなどの比較的軽い症状から、臓器の障害や高次脳機能障害といった重篤な症状までさまざまです。 重症化すると生活に大きな影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。 後遺症は、熱中症によってホルモンが過剰に生成されたり、血栓ができたり、臓器や神経が損傷を受けることによって発生します。 予防の基本は、そもそも熱中症にならないことです。 気温の高い日や湿度が高い日は、こまめに水分や塩分補給を行い、通気性の良い衣服を身に着け、直射日光を避けるなどの対策を心がけましょう。 また、頭痛やめまい、倦怠感などの体調不良を感じた際は、無理はせず休憩を取り、必要に応じて医療機関を受診してください。 なお、熱中症の後遺症に対しては再生医療という治療の選択肢もあります。 再生医療をご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。
2025.06.29 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
仕事でミスが増えたり物忘れがちになったりと、頭がもやもやするような状態が続くとADHDを疑う方もいるでしょう。 しかし、頭の中がもやもやしている場合は、ブレインフォグを引き起こしている可能性があります。症状回復には、双方の関係性やブレインフォグの理解を深め、適切な治療を受けることが大切です。 この記事では、ブレインフォグとADHDの関係性について解説します。ADHD以外にブレインフォグを引き起こす可能性のある疾患や、治療法もまとめているので、ぜひ参考にしてください。 ブレインフォグとADHDの関連性 ブレインフォグとADHDには、共通する症状が起こる可能性があります。自身の疾患を把握するためには、双方の違いを理解するのが重要です。 ここでは、ブレインフォグとADHDの関連性を解説します。ブレインフォグとADHDにはどのような違いがあるのか知りたい方は、ぜひ参考にしてください。 ブレインフォグを引き起こす疾患の一つがADHD ADHDはブレインフォグを引き起こす疾患の一つです。ブレインフォグとは、頭の中に霧がかかったような状態です。ブレインフォグには正式な病名や定義がないため、ほかの疾患と診断されます。 ブレインフォグには、主に次の症状が見られます。 頭がぼんやりする 物事が思い出せなくなる 集中するのが困難になる 頭の中がごちゃごちゃする 無気力になる 言葉につまる ADHDでも、頭の中がごちゃごちゃしたり集中できなかったりする症状を引き起こします。つまり、ADHDは発達障害で、ブレインフォグは引き起こされる症状の一つです。 ブレインフォグの主な原因 ブレインフォグの原因は完全には解明されていませんが、主に以下の要因が関与していると考えられています。 脳疲労 ストレス 生活習慣の乱れ 更年期や生理 ウイルス感染 ブレインフォグは、新型コロナウイルスの後遺症として発症する可能性があります。新型コロナウイルスの後遺症として、ブレインフォグが引き起こされる原因は判明していないのが現状です。 しかし、ウイルス感染による炎症によって、集中力低下や文章が頭に入らないといった症状の可能性があると考えられています。(文献1) ブレインフォグはADHDなどの診断で重要な症状 ブレインフォグは病気ではないため、受診しても「ブレインフォグ」と診断されません。しかし、ブレインフォグはADHDをはじめとする疾患を正確に診断し、適切な治療を行う上で、重要な症状になります。 ブレインフォグの症状を引き起こす可能性があるのはADHDだけではないため、疾患の判断材料となる情報を医師に伝える必要があります。隠れた病気を見つけるためにも、ブレインフォグの症状が現れた場合は、自己判断せず速やかに医療機関を受診しましょう。 ADHD以外にブレインフォグを引き起こす可能性のある疾患 ブレインフォグは、ADHD以外の疾患でも引き起こす可能性があります。症状の改善には、正確な診断と適切な治療が重要です。 ここでは、ADHD以外にブレインフォグを引き起こす可能性のある疾患について解説します。どのような疾患を発症しているかわからずお悩みの方は、参考にしてください。 うつ病 うつ病は気分障害の一種で、精神症状と身体症状の症状が見られる疾患です。発症する原因は明確にされていませんが、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの減少や、精神的・身体的ストレスなどの関与と考えられています。うつ病は、日本人の約15人に1人が一生のうちに発症するといわれている病気です。(文献2) うつ病には、主に次のような症状が現れます。 気分の浮き沈みが激しい 落ち着きがない 疲れやすい 食欲不振 めまい 不眠、もしくは寝てもすっきりしない 集中できない 悲観的な気分になりやすい 人と関わりたくな うつ病になると、ブレインフォグを併発する可能性があります。いつもと違う変化を感じた場合は、うつ病の可能性が考えられるため、受診を検討しましょう。 適応障害 適応障害は、ストレスが原因で日常生活に支障をきたす症状を引き起こす精神障害です。原因は人によって異なり、主に引っ越しや転職など、環境によるストレスが影響しています。 うつ病と混同されがちですが、適応障害は特定のストレス要因により症状を引き起こします。一方、うつ病は脳の神経伝達物質の異常が関与しており、ストレス要因を取り除いても症状の軽減が困難な場合があります。 適応障害の主な症状は、以下のとおりです。 集中力が維持できなくなる 感情のコントロールが難しくなる 攻撃的な行動を引き起こす めまいや動悸、息苦しさなどの症状が現れる 人間関係が面倒に感じる 平日は憂うつなのに休みの日には気分が落ち着く 適応障害の症状を放置していると、会話をしていても上の空といったコミュニケーションに変化が見られるだけでなく、ブレインフォグを引き起こす可能性があります。 慢性疲労症候群 慢性疲労症候群はCFSとも呼ばれており、風邪や気管支喘息などがきっかけで原因不明の全身倦怠感が続き、普通の日常生活が送れなくなる疾患です。免疫力の低下により、ウイルスが再び活動を活性化し、脳の働きに影響を及ぼしているとも考えられています。 慢性疲労症候群の主な症状は、以下のとおりです。 喉の痛みや筋肉痛がある 疲労感がある 立ち眩みや頭痛がする 寝ても疲れがとれない状態が続く 言葉を記憶するのが難しくなる 集中力が低下している 慢性疲労症候群もブレインフォグを引き起こす可能性がある病気といわれているため、十分な休養をとっても症状が回復しないときは受診を検討しましょう。 双極性障害 双極性障害とは、気分の高揚した躁状態と意欲が低下するうつ状態を繰り返す疾患です。双極性障害はうつ病と混在されがちですが、異なる疾患のため、治療法も違います。主な原因は、遺伝やストレスにより脳内の神経伝達物質が異常に増えたり減ったりする場合や、遺伝因、環境などによるものです。 双極性障害には、次のような症状が現れます。 状態 主な症状 躁状態 ・おしゃべりになる ・頭が冴える ・開放的な気分になる ・何事にも意欲的になる ・気持ちが大きくなる うつ状態 ・疲れやすい ・何をするのにも億劫に感じる ・食欲がなくなる ・不眠もしくは寝ても眠いと感じる ・自分に対して否定的になる ブレインフォグの症状が見られた場合は、双極性障害のサインの可能性が考えられます。長期間、症状が続く場合は、受診を検討しましょう。 自閉症スペクトラム症(ASD) 自閉症スペクトラム症(ASD)とは、社会的なコミュニケーションが困難だったり、特定の行動に対する強いこだわりなどがある発達障害の一種です。症状の特徴は人によって異なり、代表的なものには以下のものがあります。 社会的なやりとりが困難 体を前後にゆするなどの特徴的な行動や動作 感覚の過敏さや鈍さ 自分の行動への強い固執 興味や関心に対する極端な偏り 自閉症スペクトラム症では、頭の中に霧がかかったような状態になり話せなかったり、同時作業を行えなかったりといったブレインフォグの症状が見られます。 睡眠障害 睡眠障害とは、何度も目が覚めたり、寝付けなかったりする不眠症状をいいます。主な原因には、ストレスや薬による副作用、カフェインなどがあります。 また、睡眠障害の代表的な症状は、以下のとおりです。 寝ても眠い 眠れない 寝ぼけて行動を起こしがち 朝に起きられない 睡眠中に足がむずむずしたりかゆみを感じたりしやすい 睡眠障害の場合もブレインフォグの症状が見られるため、併発した際は医療機関を受診しましょう。 不安障害 不安障害とは、精神的な不安が原因で心や体に不調をきたす精神障害です。不安障害には種類があり、ブレインフォグの症状が見られる可能性が考えられるのは全般性不安障害になります。 全般性不安障害とは、極度に不安や心配になる状態で、次の症状が現れます。 緊張しやすい 不安なあまり、予定を先延ばしにしがち 疲れやすい 心が常に落ち着かない 集中できていない 眠れない 肩や首がこりやすい 不安が蓄積されると脳疲労を引き起こしやすいため、ブレインフォグの症状が見られるケースも少なくありません。 月経前症候群(PMS)・月経前不快気分障害(PMDD) 月経前症候群(PMS)・月経前不快気分障害(PMDD)はいずれも、生理がはじまる前に心身が不安定な状態になる女性特有の疾患です。とくに不安定な状態が際立つ場合は、月経前不快気分障害と診断されます。 明確な原因はわかっていませんが、女性ホルモンが影響していると考えられています。主な症状は、以下のとおりです。 何をしても楽しいと感じられない 理由もなく涙が出るなど情緒が不安定になりやすい 食欲が湧かない、または食べ過ぎる 体がだるい 寝付けない 物事に集中できない 人と接するのが苦痛に感じやすい 月経前症候群や月経前不快気分障害では、頭にモヤがかかっているような感覚になったり、物忘れが多くなったりとブレインフォグの症状が見られるケースもあります。 自律神経失調症 自律神経失調症とは、自律神経のバランスが崩れた状態になり、さまざまな支障をきたす疾患をいいます。主な原因は精神的なストレスや過労、不規則な生活などです。 自律神経失調症では、主に次の症状が現れます。 倦怠感や疲労感 手足の痺れ 息切れや動機 めまいや頭痛 不眠 食欲不振 自律神経失調症はストレスの解消により、症状の緩和が期待できますが、ブレインフォグの症状が併発する可能性があります。症状があるときだけでなく、定期的に医療機関に受診するのがおすすめです。 物質関連障害 物質関連障害とは、アルコールやカフェイン、薬物などに依存する精神障害をいいます。症状は原因物質によって異なり、軽度なものから重度なものまであります。 物質関連障害の主な症状は、以下のとおりです。 眠れない ふらつきやすい 不安を感じやすい 物忘れが増えやすい 抑うつ気分になりやすい アルコールやカフェインなどの物質が脳へ悪影響を及ぼすと、ブレインフォグを引き起こす可能性があります。 ブレインフォグを引き起こすADHDなどの疾患を治す方法 ブレインフォグの治療法は、ADHDなどの原因によって異なります。一時的なブレインフォグの場合、時間の経過とともに症状が回復するため、治療は不要です。 しかし、慢性的に症状が続く場合は、疾患の可能性が考えられます。一般的には、ブレインフォグの治療法には薬物療法や生活習慣の改善、脳疲労の原因となるストレス解消などが取り入れられます。 また、ブレインフォグには、以下の対策も効果的です。 質の良い睡眠をとる 栄養バランスのとれた食事をする 定期的に身体を動かす ブレインフォグの原因を判断し、適切な治療を受けるためには、専門機関で診察を受けましょう。 再生医療は薬物療法でブレインフォグが改善できなかった際の治療法 薬物療法や生活習慣の見直しでブレインフォグの改善ができなかった場合、再生医療を検討するのも手段の一つです。再生医療とは、患者自身の脂肪組織から幹細胞を分離・培養し、静脈内投与により組織修復や機能回復を目指す治療法です。 幹細胞治療は、新型コロナウイルス感染症の後遺症の改善が期待できます。実際に、新型コロナウイルスに感染後、後遺症として疲れやすさや意欲の低下が現れた方は、幹細胞の点滴を行いました。 投与後、よく眠れるようになったり、頭痛がなくなったりなどの効果が現れました。幹細胞治療によって、コロナ後遺症の改善に向かった当院リペアセルクリニックの事例です。 当院では、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けておりますので、治療法について知りたい方はお気軽にお問い合わせください。 ▼幹細胞治療でコロナ後遺症の改善につながった症例について知りたい方は、以下をご覧ください。 ブレインフォグの症状がADHDか知るためには診断が重要 ADHDは、ブレインフォグを引き起こすとされる疾患の一つです。ブレインフォグの症状は、ADHDだけでなくさまざまな疾患の可能性があります。ブレインフォグはADHDをはじめとする疾患の診断において重要な症状です。 隠れた病気を見つけるためにも、ブレインフォグの症状が現れた場合は、自己判断せず速やかに医療機関を受診しましょう。ブレインフォグの治療法には薬物療法や生活習慣の改善、脳疲労の原因となるストレス解消などが取り入れられます。 万が一、症状の回復が見込めない場合は、改善策として再生医療を検討するのもおすすめです。ブレインフォグとADHDの関係性を理解し、早期対策を図りましょう。 参考文献 文献1 佐々木信幸「LongCOVIDに伴うbrainfogと反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)を用いた治療的介入」59,pp.277-284,2022年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/59/3/59_59.277/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年6月20日) 文献2 厚生労働省「こころもメンテしよう」 https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_01.html(最終アクセス:2025年6月20日)
2025.06.29 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
「集中力が続かない」「頭がもやもやして仕事に支障が出る」といった症状に悩まされている場合、ブレインフォグが原因かもしれません。ブレインフォグとは医学的な病名ではなく、脳に霧がかかったようになり、正常に働かない状態を意味します。 ブレインフォグは、近年新型コロナウイルス感染後の後遺症としても注目されており、治療法は原因疾患によってさまざまです。 今回は、医師監修のもとブレインフォグの原因や治療法、受診の目安について詳しく解説します。生活改善のポイントについてもまとめているので、ぜひ参考にしてください。 【前提知識】ブレインフォグとは ブレインフォグとは、脳に霧がかかったような状態を表す言葉です。医学的な病名ではなく、あくまで症状に対して使われる言葉です。ブレインフォグの代表的な症状は、以下の通りです。 頭がぼんやりして集中できない 物事が思い出せない 考えがまとまらずに正常な判断ができない 人の話が頭に入ってこない 何をするにも億劫に感じる 睡眠が浅くなり疲労感が抜けない ブレインフォグの症状が続く場合は、原因となる疾患が存在する可能性も考えられます。症状が多岐にわたるため疾患の特定が困難な場合もあり、症状の経過を慎重に観察することが重要です。 ブレインフォグの治療法は原因によって異なる ブレインフォグの治療法は原因によって異なります。 たとえば、脳疲労や睡眠不足などが原因であれば、十分な休息や生活リズムの改善で回復が期待できるでしょう。新型コロナウイルス感染後の後遺症としてブレインフォグが現れる場合もありますが、現時点で明確な治療法は確立されていません。 また、原因疾患によっては、薬物療法やTMS治療(経頭蓋磁気刺激療法)などが選択されるケースもあります。いずれの場合も、安易に自己判断せず、医療機関で原因を特定したうえで適切な治療を受けることが大切です。 ブレインフォグの主な原因 ブレインフォグの主な原因として、以下の3つが挙げられます。 脳疲労 更年期 新型コロナウイルス感染 それぞれ詳しく見ていきましょう。 脳疲労 脳疲労によってブレインフォグが引き起こされる場合があります。近年はパソコンやスマートフォンを使用する機会が増えており、脳が疲労を感じやすい環境だといえるでしょう。脳が過度に疲労すると、神経伝達の働きが低下し、思考や記憶力などのパフォーマンスが落ちます。 とくに、以下に当てはまる方は、脳が疲労を感じやすいといえます。 スマートフォンの使用時間が長い パソコンを使って仕事をしている パソコン作業やゲームに熱中して休息を取らない また、脳が常に情報処理を強いられるような環境では、疲労が蓄積して症状が慢性化しやすいため注意が必要です。脳の過労状態は、生活の質を低下させるだけでなく、精神的なストレスや自律神経の乱れも引き起こす可能性があります。 更年期 更年期は、女性に多くみられるブレインフォグの原因の一つです。更年期になると女性ホルモン(エストロゲン)の減少により自律神経が乱れ、ブレインフォグのような症状が現れる場合があります。 閉経前後で女性ホルモンが急激に減少すると、脳の働きに影響を及ぼすためです。その結果、記憶力の低下や集中力の散漫、頭のもやもや感といったブレインフォグのような症状が現れやすくなります。 更年期を原因とするブレインフォグの症状は、生活習慣の改善やホルモン補充療法などで緩和できるケースもあります。気になる症状がある場合は、専門医への相談がおすすめです。 新型コロナウイルス感染 新型コロナウイルス感染後の後遺症として、ブレインフォグが現れる場合もあります。実際に、新型コロナウイルス感染症から回復したにもかかわらず、「頭がぼんやりする」「集中できない」といった症状が数週間から数カ月続くケースもあります。 ウイルスによる神経系への影響や、免疫反応の異常が関係していると考えられており、現時点では明確な治療法が確立されていません。新型コロナウイルス感染後、ブレインフォグのような症状が続く場合は、医療機関に相談しましょう。 ブレインフォグの治療法 ここでは、ブレインフォグの代表的な治療法を紹介するので、症状の改善を目指している方は、ぜひ参考にしてください。 薬物療法 ブレインフォグの原因がうつ病や不安障害などの精神疾患である場合は、薬物療法が選択される傾向にあります。 精神疾患を原因とする場合の主な症状として、思考の鈍化や集中力の低下、気分の落ち込みなどが特徴です。この場合、抗うつ薬や抗不安薬などの処方によって、神経伝達物質のバランスを整えることで脳機能の回復を図ります。ただし、自己判断での服薬は避け、必ず専門医の診断を受ける必要があります。 薬物療法は即効性よりも継続的な改善を目的とするため、定期的な通院と服用が重要です。必要に応じて他の治療法との併用も考慮され、総合的なケアが求められます。 TMS治療 TMS(経頭蓋磁気刺激)もブレインフォグの治療法の一つです。TMS療法とは、脳の特定部位に磁気刺激を与えて神経活動を活性化させる非侵襲的な治療法です。薬を使わないため副作用のリスクが少なく、さまざまな理由から薬物療法を選択するのが難しい方にも適用できます。 リハビリテーションの一環として、集中力や遂行機能の改善を図る目的で選択されるケースもあります。(文献1) TMS治療は主に精神科や心療内科をはじめ、専用の治療機器を整備している医療機関での受診が必要です。また、一定の条件はあるものの、うつ病患者に対する保険適用も広がっておりより身近な選択肢になっています。 再生医療 新型コロナウイルス感染後の後遺症としてブレインフォグが生じている場合には、再生医療も選択肢の一つです。再生医療には、幹細胞を採取・培養して注射する幹細胞治療や、血液を利用するPRP療法などがあります。 リペアセルクリニックでは、幹細胞治療によって新型コロナウイルス後遺症の倦怠感が改善した症例があります。疲れやすさや気分の落ち込みなどの症状が現れた当初は更年期障害が疑われたものの、ホルモン検査では異常が見つからず、症状の改善がみられなかったようです。 根本的な治療として、下腹部の脂肪細胞から採取した幹細胞を3回点滴投与したところ、頭痛がなくなり、よく眠れるようになった効果がありました。 なお、リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。ブレインフォグの治療法でお困りの方は、ぜひ気軽にご相談ください。 ▼ 幹細胞治療によってコロナ後遺症が改善した症例について詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。 コロナ後遺症の倦怠感に 幹細胞治療 50代女性 コロナ後遺症の吐き気に 幹細胞治療 40代女性 ブレインフォグを引き起こす可能性がある疾患 ブレインフォグは、脳疲労や更年期のほかにも、以下のような疾患によって引き起こされる可能性があります。 慢性疲労症候群 睡眠障害(不眠症・過眠症) うつ病 双極性障害 適応障害 不安障害 注意欠陥多動性障害(ADHD) 自律神経失調症 アルコール・薬物依存 これらの疾患のなかには、放置すると症状が悪化するケースもあります。ブレインフォグが長引く場合は、精神科や心療内科、神経内科などの受診を検討してみてください。医師の診断を受けることで、根本治療が可能になります。 ブレインフォグ治療のための受診目安 ブレインフォグが以下のように悪化してきたら、医療機関を受診するようにしてください。 集中力が続かず日常生活に支障が出ている 以前と比べて物忘れがひどくなった 気分が落ち込みやすくなった 慢性的に倦怠感を感じる このような症状が2週間以上続いたり、日常生活に明らかな影響を及ぼしたりしている場合は、自己判断せず医師に相談しましょう。早期回復のためには、原因に合わせた治療法を検討する必要があります。 ブレインフォグを改善するための生活習慣 ブレインフォグを改善するためには、生活習慣の見直しも欠かせません。脳の疲労回復のためには、十分な睡眠とバランスの良い食事が効果的です。 就寝・起床時間を整えて十分な睡眠時間を確保すると、脳疲労の回復が促されます。また、ビタミンやミネラルなどの栄養補給によって、ブレインフォグ特有の精神的疲労を改善させる効果も期待できます。(文献1) ほかにも、脳疲労の回復のためには、適度な運動や心身ともにリラックスできる時間の確保も大切です。日常の積み重ねで生活習慣を整えていけると、ブレインフォグの改善につなげられます。 ブレインフォグは原因を特定して適切な治療法を選択しよう ブレインフォグは、生活習慣を整えることで改善する場合もありますが、原因疾患によっては適切な治療で回復を目指す必要があります。ブレインフォグは疲労をはじめとするよくある症状と似ている部分もあるため、大したことないと思い込んでいるうちに、病気が進行してしまうリスクも考えられます。 ブレインフォグによる症状が長引いたり、日常生活に支障が出始めたりしたら、迷わず医療機関を受診しましょう。医師の診断によって原因を特定できれば、適切な治療法の選択が可能です。早期回復につなげるため、心身の不調が続く場合は、早めに対応しましょう。 参考文献 (文献1) 女子栄養大学栄養科学研究所「新型コロナウイルスの脳後遺症 ブレインフォグの診断と治療」 https://llab.eiyo.ac.jp/ions/wp_dr/wp-content/uploads/2024/06/%E9%A6%99%E5%B7%9D%E9%9D%96%E9%9B%84%E6%89%80%E9%95%B7_%E7%AC%AC8%E5%9B%9E.pdf (最終アクセス:2025年6月20日)
2025.06.29 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
「健康診断で不整脈の疑いがあると指摘された」 「病院を受診した方がよいのだろうが、怖い気持ちもある」 「不整脈に良い食べ物があるなら、まずはそれを試してみたい」 不整脈を患っている方の中には、このように考えている人もいるでしょう。 不整脈の抑制に効果のある食べ物や飲み物は存在します。一方で、摂りすぎると不整脈を悪化させてしまう食品も複数あるため、食事の管理は非常に大切です。 本記事では、不整脈と食事の関係について紹介します。食事での注意に加えて、病院受診の目安についても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。 不整脈に良い食べ物・飲み物一覧 不整脈を良くするためには、心臓の筋肉に良い食事や、不整脈の原因のひとつでもあるストレスを軽減する食事を摂ることが大切です。 不整脈に効果のある栄養素や、その栄養が多く含まれる食品を紹介します。 カリウムが多く含まれているもの カリウムは、人体に必要なミネラルの1つです。 ナトリウムを排出する働きがあるため、摂りすぎた塩分を調節する役目を担っています。 細胞や神経、筋肉が正常に機能するためにも必要な物質で、心臓の筋肉(心筋)の収縮にも関与しています。 カリウムの濃度が低下するとこういった働きに影響がでるほか、不整脈を起こすリスクも上がります。不整脈のほかにも脱力感、食欲不振などを起こす可能性があるため、積極的にとるようにしましょう。 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」によると、カリウムの目標摂取量は男性3,000mg/日、女性は2,000mg/日です。(文献1) カリウムが多い食品として、 バナナ(1本につき454mg) ほうれん草1/4束(生で621mg茹でて311mg) 干し芋(2枚588mg) などがあります。 ただし、カリウム濃度が高くなりすぎても不整脈を招くことがあるため、食べ過ぎないようにしましょう。 マグネシウムが多く含まれているもの マグネシウムは筋肉の収縮や神経情報の伝達、体温・血圧の調整に役立ちます。 心臓の筋肉が収縮するにはカルシウムも必要な要素になります。マグネシウムはカルシウムと競合することで、心臓の収縮をちょうど良い強さに調整しているのです。 また、マグネシウムは心臓の拍動を穏やかにし、不整脈の発生を防ぐ働きもあります。 マグネシウムの1日の推奨平均摂取量は男性で約350mg、女性で約300mgとされています。(文献1) マグネシウムは以下の食べ物などに多く含まれています。 乾燥カットわかめ(1人分10gにつき460mg) 殻付きあさり(10個あたり100mg) 納豆(1個につき100mg) ノンカフェイン飲料 カフェインが含まれていない飲み物は、心拍への刺激が少ないため、不整脈が気になる方にとってはおすすめです。 寝る前にコーヒーやアルコールを飲む人は、ノンカフェイン飲料に切り替えると睡眠の質が高まり、不整脈のリスクの1つであるストレス軽減につながります。 ノンカフェインの飲み物としては、麦茶やルイボスティー、黒豆茶、小豆茶、白湯などがあげられます。 嗜好品としてコーヒーが好きな人は味が似ているデカフェをコーヒーの代用として飲むのもおすすめです。 スーパーやデパート、コンビニなどで購入できます。自分の好きな味を模索するのも良いでしょう。 不整脈のために避けたい食べ物・飲み物 不整脈を良くするためには、摂取量を減らすべき食べ物・飲み物を理解し食事の調整を行うことが重要です。 以下で紹介している避けたい食べ物・飲み物は、過度な摂取を控えれば食べても問題はありません。 塩分が多い食品 塩分を過剰に摂ってしまうと、心臓で「アルドステロン」と呼ばれるホルモンが作られやすくなります。 アルドステロンは、心臓の筋肉を硬くしたり、不整脈を誘発することが知られています。 また、塩分そのものが、心臓の正常な電気のリズムを乱す原因となり、不整脈が起こりやすい状態を作り出します。 塩分を摂りすぎると、体内の塩分濃度を下げるために血液中の水の量が増えます。その結果血液量が増加すると、心臓への負担が増えてしまい血管にも強い圧力がかかってしまうのです。 1日の適正な食塩摂取量は、男性7.5g未満、女性6.5g未満とされています。 塩分の多い食品は以下の通りです。 カップ麺などの超加工品 ハム、ソーセージなどの加工食品 パスタ料理(ミートソースやカルボナーラなどの味の濃いソース) 漬物 塩魚(塩鮭、塩さばなど) 重要なのは、1日当たりの適正量を守ることです。極端な塩分制限は心身のストレスになる可能性があるため控えましょう。 動物性脂肪が多い食品 脂質の摂り過ぎは肥満や生活習慣病の原因となります。とくに動物性脂肪が多い食品は飽和脂肪酸が多く含まれており、血中コレステロールの増加や、心筋梗塞などの循環器疾患のリスクを高めてしまいます。 肥満および心疾患は、不整脈を引き起こす大きな原因になります。動物性脂肪が多い食品は食べ過ぎないように心がけましょう。 動物性脂肪は 脂身の多い肉 乳製品、バターやラードを多用した料理(菓子パンや洋菓子など) などに多く含まれています。 カフェイン飲料 カフェインは心臓を直接刺激して心拍数を増やし、心臓の収縮力を高める作用があります。アドレナリンのような興奮物質(カテコールアミン)の放出を促すためであるといわれています。 適量であれば不整脈の原因にはなりませんが、一日の推奨摂取量を越えると心臓の細胞に直接働きかけ、電気活動を乱してしまうことがあります。 その結果、頻脈(心拍が速くなること)、心室細動(命に関わる危険な不整脈)を引き起こすリスクが高まってしまうのです。 日本においては、カフェインの1日摂取量の目安は示されていませんが、カナダ保健省では健康な成人の場合最大400mg/1日(コーヒーをマグカップ3杯)までと設定しています。(文献2) エナジードリンクやコーヒーの多量摂取は控えましょう。 アルコール アルコールの多量摂取は心筋細胞の損傷や、自律神経を不安定にするため注意が必要です。 大量のアルコールを摂取すると、心臓に急性の電気的変化を引き起こし、心房細動と呼ばれる不整脈の発症リスクを高めてしまいます。 適切な飲酒量は、1日あたりの平均純アルコール量で男性は40g未満、女性は20g未満とされています。 純アルコール20gとは、日本酒1合、ビール500ml、缶チューハイ350ml程度の量です。 不整脈に良い食べ物を無理なく生活に取り入れる工夫 不整脈に良い食べ物を新たに取り入れることが難しいと感じる人もいるでしょう。 不整脈に良い食事習慣を長く続けるためには、少しずつ取り入れることが大切です。 普段の朝食にカリウムが豊富なバナナやマグネシウムが含まれる納豆をプラスする。 漬物を食べる量を今までより減らす。 寝る前に飲むものをノンカフェインのお茶や白湯に切り替える。 習慣としてコーヒーを飲んでいる人はノンカフェインのコーヒーに変える。 調味料を減塩タイプのものに変える。 普段の生活の中で少しずつ取り入れ、無理なく食生活を変えていきましょう。 不整脈予防・改善にはバランスの良い食事と治療が大切 不整脈に良いものを食べることから始める食生活の改善は、生活習慣病予防の観点から見ても非常に大切なことです。 不整脈の症状を改善するためには「カリウム」「マグネシウム」を食事の中で取り入れましょう。 一方で、「カフェイン」「塩分」「動物性油脂」「アルコール」は過剰に摂取すると不整脈のリスクを高めます。 心室細動と呼ばれる不整脈を引き起こすこともあり、命の危険に及ぶ場合もあります。 食生活を変えてもあまり効果を感じない、症状が長期化するといった場合は、ほかの原因も考えられます。 必要に応じて医療機関を受診しましょう。 不整脈の現状を正しく知り、食生活の改善や必要な治療といった適切な対処を行うことが症状を良くする第一歩です。 不整脈に良い食べ物に関するよくある質問 不整脈に良い飲み物の中にトマトジュースは含まれますか? トマトはカリウム量が多く(1個当たり315mg)、トマトジュースには200mlあたり546mgのカリウムが含まれています。 トマトジュースは生のトマトよりカリウム量が多いので、1日1パック程度にとどめましょう。 慢性の腎臓病がある方は、カリウムを摂り過ぎると高カリウム血症を引き起こす可能性があるため、トマトジュースは控えてください。 カリウム濃度が高すぎても不整脈が起こりやすくなってしまうため、適量を見極めることが重要です。 また、普段塩分を摂りすぎている方は減塩タイプのトマトジュースを摂りましょう。 不整脈に効くサプリメントはありますか? 不整脈に直接作用するサプリメントはありません。 カリウムやマグネシウムなど、不整脈に良い栄養を補うサプリメントは市販されています。 しかし、サプリメントは足りない栄養素を補助するものであり、サプリメントを過剰摂取すると体に悪影響を及ぼす可能性があります。 マグネシウムのサプリメントの過剰摂取は下痢や吐き気、カリウムの過剰摂取は不整脈や心電図異常、四肢のしびれなどを引き起こす可能性があります。 サプリメントの摂取を希望される方は、医師や薬剤師に相談しましょう。 参考文献 (文献1) 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年)策定検討会報告書」 2024年 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316585.pdf(最終アクセス:2025年6月26日) (文献2) 厚生労働省「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170477.html(最終アクセス:2025年6月26日)
2025.06.29 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
「最近ストレスがたまっている」 「脈が飛ぶ感覚が頻繁に起こる。これはストレスによる不整脈ではないか」 「病院では異常なしといわれたが、やはり不安である」 不整脈の症状がある方の中には、このような不安を抱えている方もいるでしょう。 不整脈は心疾患が原因で起こることもありますが、「とくに異常なし」「ストレスが原因」と診断されることもよくあります。 明確な原因が見つからないと「具体的にはどのように治せばいいのか」「良くなっているのかどうかわからない」といった悩みが発生し、さらに不整脈を悪化させてしまう可能性もあります。 本記事では、ストレス性不整脈の治し方を解説します。 ストレスが心臓に与える影響や、早急に受診すべきタイミングも紹介しています。ぜひ最後までご覧ください。 ストレスと不整脈の関係性 不整脈が起こる原因として、ストレスは強く関係しています。 この項目ではストレスがどうして心臓に影響を与えるのか、そのメカニズムを説明します。また、心疾患が原因となる不整脈とのちがいについても解説します。 ストレスが心臓に与える影響 強いストレスは自律神経の乱れにつながり、不整脈を引き起こす原因となります。 自律神経は交感神経と副交感神経の2つの神経系によって構成されています。 ストレスを受けると、活発時や緊張時に優位になる交感神経が働き、心拍数や脈拍が多くなってしまいます。 通常の状態であれば副交感神経優位に切り替わり、心拍数は正常値に戻っていきますが、強いストレス状態が続き交感神経が働き続けると、心臓に負担がかかってしまいます。 その結果、不整脈、心臓の違和感、胸の痛みといった症状を引き起こしてしまうのです。 不整脈は頻脈(脈が速くなる)や期外収縮(胸が痛い、不快感を感じる)といった比較的軽度なものがほとんどです。 しかし、放置すると心不全や脳梗塞といった重篤な疾患を発症する場合もあるため注意が必要です。 ストレス性不整脈と心疾患による不整脈の違い ストレス性不整脈と心疾患による不整脈の違いを症状だけで見極めるのは非常に難しいです。 ストレスを解消しても不整脈が治らない場合、原因が違う場所にある可能性も考えられます。 いずれにせよ放置は危険なので、まずは専門の医師に相談を行いましょう。 ストレス性不整脈 ストレス性不整脈の場合、精神的・身体的なストレスが引き金となり、自律神経のバランスが崩れることで発症します。代表的なものは「期外収縮」で、正常な拍動の間に不規則な拍動が現れます。気づかない方も多い症状です。 ストレス性不整脈の場合、原因となっているストレスを解消したり、生活習慣を改善すれば症状が緩和されることがほとんどです。 心疾患による不整脈 心筋梗塞や狭心症、心臓弁膜症、心不全といった心疾患が原因で引き起こされる不整脈もあります。 心疾患による不整脈は長期間続く傾向にあり、動悸や息切れ、めまい、失神といった合併症状を伴うこともあります。 治療は重症度によっても変わりますが、薬物療法やカテーテルアブレーション、ペースメーカーの植込みなど、専門的な医療介入が必要となる場合もあります。 ストレス性不整脈の治し方 ストレスが原因で起きている不整脈の場合、原因であるストレスを解消しない限り完全に治ることはありません。不整脈が治らないことへの焦りや不安がさらに症状を悪化させることもあります。 ストレス性不整脈を治すポイントは、「ストレスをためこまない」「生活習慣を見直す」「睡眠の質を向上する」ことです。 それぞれ詳しく解説していきます。 ストレスをためこまない工夫をする 日々のストレスをためこまないため、日常生活での工夫が大切です。深呼吸や瞑想、ヨガなど、意識的にリラックスできる時間を作ると、副交感神経が働きやすくなります。 仕事や家事が忙しく常に慌ただしい生活を送っている方は、日々のやらなくてはいけないことから少し離れる時間を作ってみてください。 例えば、読書や旅行など自分の好きなことに没頭したり、ウォーキングや散歩など体を動かしたりすることでストレスの軽減につながります。 また、日記をつけたり、そのとき感じた感情をメモに書き留めておくと、心の中が整理され不安や焦燥感が軽減されることもあります。 それでもストレスが減らない、人間関係がストレスの原因になっている場合は、家族や友人、必要に応じて心理カウンセラーや医師などの専門家に相談してみましょう。 人と対話をすると、自分でも思いがけない感情を言葉にできることがあります。そういった対話の中で見つけた感情こそ、ストレス緩和の糸口になるかもしれません。 生活習慣を見直す ストレスと上手に付き合うためには、毎日の生活習慣をととのえることが大切です。 とくに重要視されるのは「食事」「運動」「睡眠」です。それぞれの気を付けるべきポイントをまとめました。 栄養バランスの良い食事 栄養バランスの良い食事は心臓疾患の予防になります。 無理な食事制限などは行う必要はありませんが、ジュースなど砂糖が多く含まれる食品、スナック菓子やカップ麺といった超加工食品は減らしましょう。 一方で野菜や魚、肉、大豆などの良質なたんぱく質を多く取り入れてください。 また、主食は精製されていないものを取り入れてみると効果が高まります。 普段食べている白米や白いパンは、「精製」という処理を経ています。精製を行うことで、原材料に本来含まれていた繊維質、ビタミンB、ミネラルといった心疾患の予防に有効な栄養素が失われてしまうのです。 主食を玄米や全粒粉を使ったパンなどに切り替えてみるのも良いかもしれません。 適度な運動 日常生活の中で無理のない範囲で体を動かすことが推奨されています。 運動習慣がない方や不整脈による症状がつらい方は、医師と相談のうえで軽いランニングやサイクリング、ウォーキングや散歩などから始めてみてください。 身体を動かすことに慣れ、医師の許可も出た場合は筋力トレーニングもおすすめです。いきなり高負荷の運動は避け、腕立て伏せやスクワットなど手軽に始められる自重トレーニングからはじめましょう。 ウォーミングアップとクールダウンの時間、水分補給は欠かさず行ってください。 筋力トレーニングは心理的ストレスの改善にも有効です。筋力トレーニングを行うことによって分泌される神経伝達物質が気分を安定させることがさまざまな研究で証明されています。 アルコールやカフェインの摂取を控える アルコールやカフェインの過度な摂取は、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。 適量を守り、規則正しい生活を送りましょう。 成人の1日当たりの適正飲酒量は純アルコールで約20g程度です。 ビールだと500ml、缶チューハイで350ml、ワインで200ml程度に換算されます。 また、喫煙はストレスに関係なく心臓や血管への負担を増やします。 喫煙をしている方は自分が一日あたり何本吸っているのかを理解し、できる限り禁煙を目指しましょう。 睡眠の質を高める 睡眠の質を高めることは、食事や運動と同様に心身の健康を保つ上で非常に重要です。 スマートフォンやパソコンは体内時計に影響を及ぼすブルーライトが発せられているため、就寝前の使用は控えることが望ましいです。 また、寝室環境の整備も睡眠の質を向上するために必要です。寝室や寝床の中は静かで暗い環境を保ちましょう。季節にもよりますが、室温は13~29度、湿度は40~60%程度が適切だといわれています。 また、就寝前の時間の使い方も重要です。就寝90分ほど前に、ぬるめのお風呂につかると身体が温まり眠りやすくなります。そのほか、好きな音楽を聴く、軽い読書をするといった自分がリラックスできることを取り入れることも望ましいです。 寝酒はかえって眠りを悪化させる可能性があります。適量以上の飲酒はできる限り避けましょう。 医療機関を受診すべき不整脈のサイン 不整脈の症状を感じた場合、早急に専門の医師を受診しましょう。 不整脈は突然死のリスクもあります。放置してしまうと血栓の発生や脳梗塞、心筋梗塞のリスクが高まります。 不整脈の症状が続いている、もしくは頻度が増えている 胸痛や息切れ、めまいなどの症状が伴う もともと心疾患がある これらに該当する場合は早急に医療機関にかかり、適切な治療を受ける必要があります。 上記に該当しないものの、健康診断で「精密検査が必要」と言われた方も、早急に受診しましょう。 【緊急性のない場合】ストレス性を含む不整脈の対処法 期外収縮など緊急性の低い不整脈の場合でも、はやく治療したい方もいるでしょう。ストレス性の不整脈だと診断された場合、病院では日常生活指導を受けられます。 もし、それだけでは不安な場合、医師と相談の上、抗不整脈薬の内服や、カテーテルアブレーション治療を受ける選択肢もあります。 カテーテルアブレーションとは、足の付け根の静脈から細いカテーテル(管)を心臓まで送り込み、不整脈の発生源となる部位にカテーテルの先端を当てて、高周波電流で焼灼する手術です。 カテーテルが不整脈発生部位に届くようであれば、この治療を受けることができます。 ストレス性不整脈はセルフケアと適切な医療でコントロールしよう 不整脈は心疾患が原因で起こる場合、ストレスが原因で起こる場合で大きく2つに分かれます。 ストレスが原因であったり、一過性の場合は、生活習慣を見直すことで症状が改善される可能性があります。食生活の見直しや日常的な運動、睡眠をしっかり取り、健康な体づくりを心がけましょう。 ストレスが多い生活をしている自覚がある方は、ストレスをためないよう生活を工夫したり、人に相談するなどして抱えているストレスを減らす必要があります。 それでも不安が残る場合には、医療機関を受診して適切な治療を受ける方法もあります。専門の医師に相談し、ストレス性不整脈の軽減に努めましょう。 ストレス性不整脈に関するよくある質問 不整脈の症状で脈が飛ぶ場合すぐに病院で治療すべきですか? 一拍だけ脈が飛ぶ、一瞬胸がドキッとするといった症状の主な原因は「期外収縮」であることが多いです。 心臓に電気を送る部分である洞結節と呼ばれる部位とは別の場所から、やや早いタイミングで心臓に電気が流れることにより起こります。 期外収縮は年齢や体質、ストレスの影響などで起こることが多い症状だといわれています。 持病で心疾患を患っている、脈が飛ぶ以外の症状がある場合は急ぎ病院にかかる必要がありますが、心当たりがない場合は急いで治療する必要はありません。 一方、症状が長期間で起こっている場合や不安が強い場合は、一度精密検査を受けるべきでしょう。 動悸を抑える薬はありますか? 市販薬では存在しません。 動悸を抑える「抗不整脈薬」はありますが、医師が処方する必要があります。 不整脈や息切れに効果があるとされる市販薬はありますが、あくまで一時的に症状を緩和するのみで、不整脈に直接作用するものではありません。 一時的に症状が治まったために病院受診が遅れると、知らず知らずのうちに悪化する可能性もあります。薬を内服したい場合は、医療機関を受診しましょう。
2025.06.29 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
「高齢の親を病院に連れて行ったら低カリウム血症と診断されました」 「低カリウム血症って何ですか?どんな治療が必要なのでしょうか?」 このような疑問をお持ちの方もいるでしょう。 低カリウム血症とは、血液中のカリウム濃度が正常値より低くなった状態です。 高齢者が低カリウム血症になる主な原因は、食事量の減少や薬の副作用などが挙げられます。 本記事では、高齢者が低カリウム血症になる主な原因や症状、治療法についてわかりやすく解説します。入院が必要になるケースや、入院にかかる費用も紹介しているので、参考にしてみてください。 高齢者が低カリウム血症になりやすい4つの原因 低カリウム血症は、以下のような高齢者の身体的変化や生活習慣の変化が原因で発症しやすくなります。 食事量の減少 薬の副作用 消化器疾患の影響 ホルモンの過剰分泌 順番に見ていきましょう。 食事量の減少 高齢者では、加齢による嚥下機能の低下や嗅覚・味覚の機能低下といった身体的変化により食欲がなくなる方も多いです。食欲がなくなれば、当然ながら食事量が減少します。 カリウムは食材に含まれる栄養素です。そのため、食事量が減少すると、カリウムの摂取量も減り、カリウム不足に陥りやすいです。 薬の副作用 低カリウム血症は、薬の副作用が原因で発症するケースもあります。 低カリウム血症の原因として注意すべきなのが、利尿作用のある薬です。カリウムは尿や汗とともに体外に排出される性質があります。そのため、利尿作用のある薬を摂取すると、体内でカリウム不足が起こりやすいです。 例えば、心不全の治療には利尿薬がよく処方されます。(文献1) 心不全では、心臓のポンプ機能が低下して血液をうまく送り出せなくなり、体内に水分が溜まりやすくなります。そのため、利尿薬を服用して余分な水分を排出し、うっ血の改善を図るのです。 また、高血圧の治療にも利尿薬が使用されます。(文献2)体内の不要な水分を尿として排出すれば、血圧を下げる効果があるからです。 高齢者は加齢とともに、心不全や高血圧といった病気にかかりやすく、薬が処方される機会も増えます。利尿作用の薬を服用している場合は、低カリウム血症のリスクも高まることを理解しておきましょう。 消化器疾患の影響 低カリウム血症の原因として、消化器感染症が影響する場合もあります。消化器感染症には、嘔吐や下痢といった症状を伴うケースが多いです。 嘔吐や下痢により体内のカリウムが失われるため、低カリウム血症を引き起こしやすくなります。 嘔吐や下痢を起こす代表的な疾患として、胃腸炎や食中毒が挙げられます。 高齢者になると免疫力が低下して、下痢や嘔吐の症状が長引くケースも少なくありません。その結果、体内のカリウム不足が深刻化する可能性があるのです。 ホルモンの過剰分泌 アルドステロンというホルモンの過剰分泌が原因で、低カリウム血症を発症することがあります。 アルドステロンとは、体内の水分を調整する働きのあるホルモンです。(文献3) 副腎からアルドステロンが過剰につくられる病気は「原発性アルドステロン症」と呼ばれ、水分の調整機能の乱れからカリウム不足につながります。 高血圧患者のおよそ5〜15%が原発性アルドステロン症という報告もあります。(文献4) 高齢者は血管の弾力性が低下して、高血圧になりやすいです。そのため、原発性アルドステロン症を発症する機会も増えて低カリウム血症のリスクが高まります。 高齢者が低カリウム血症になったときの主な症状 ここでは、高齢者が低カリウム血症になったときの主な症状について解説します。 主な症状は以下の3つです。 筋肉のだるさ・こわばり 不整脈 息苦しさ 低カリウム血症の症状は、加齢による身体変化と捉えて見過ごされやすいです。 早期治療につなげられるよう、症状の理解を深めましょう。 筋肉のだるさ・こわばり 筋肉のだるさ・こわばりは、低カリウム血症の症状の1つです。カリウムは、筋肉を収縮させる役割を担っています。そのため、体内のカリウムが不足していると、筋肉機能に異常が生じます。 だるさ以外にも、以下のような症状が現れます。 筋肉痛 つっぱり感 力がぬける感じ 参考:重篤副作用疾患別対応マニュアル低カリウム血症|厚生労働省 高齢者は、加齢による筋肉の衰えとして、筋肉異常の変化を見過ごしがちです。 筋肉のだるさやこわばりは、転倒による怪我につながりやすいので、早期治療で症状の改善を図りましょう。 不整脈 低カリウム血症になると、不整脈の症状も現れる場合があります。 カリウムは、心臓の収縮やリズムの維持に役割を果たしています。よって、カリウムが不足すると、正常な心臓の動きを保てなくなり不整脈を誘発してしまうのです。 不整脈は加齢とともに増加する病気です。(文献5) 加齢に伴う老人性不整脈か、低カリウム血症による不整脈かによって、治療方針が変わってきます。不整脈になったら、発症した原因を特定して適切な治療を進めていく姿勢が大切です。 息苦しさ 低カリウム血症では、息苦しさも症状として現れます。 カリウムは呼吸筋を動かす機能に関与しているため、体内のカリウムが不足すれば、呼吸がうまくできなくなるのです。 重篤な場合は、呼吸筋障害による呼吸不全を引き起こします。(文献6) 呼吸不全は生命に関わる危険性を高めます。ただの息切れだろうと軽く考えずに、低カリウム血症の可能性も念頭に置いて早期受診を心がけましょう。 高齢者が低カリウム血症になったときの治療法 高齢者が低カリウム血症になったときの治療法は、症状の程度や発症した原因によって決まります。 ここでは代表的な以下3つの治療法を解説します。 食事やサプリメントでカリウムを補う 点滴や薬でカリウムを摂取する 薬の服用を中断する ご自身の状況に合った治療法を探してみてください。 食事やサプリメントでカリウムを補う 軽度の低カリウム血症であれば、食事やサプリメントで不足したカリウムを補えます。 以下の表は、カリウムが多く含まれる食品の一部を紹介したものです。 食品名(100g当) カリウム量(単位:mg) アボカド 590 バナナ 360 ほうれん草 690 納豆 690 木綿豆腐 110 刻み昆布 8,200 参考:食品成分データベース|文部科学省 特にカリウム含有量が多いのは、刻み昆布です。刻み昆布は乾燥させて商品化されているものが多く「すき昆布」の料理で良く使われる食品です。 また、ほうれん草や納豆にもカリウムが多く含まれます。カリウムが不足しているときは、ほうれん草の和え物を作ったり、食後のデザートにバナナを食べたりすると良いでしょう。 ドラッグストアで販売されているサプリメントで、カリウムを補給する方法もあります。サプリメントを使用する際は、容量・用法・用途を守り、医師や薬剤師に相談してから服用しましょう。 なお、カリウムは脳梗塞の予防や再発防止につながる栄養素でもあります。以下の記事では、脳梗塞の方向けに理想の食事を紹介しているのであわせてご覧ください。 薬や注射でカリウムを摂取する 通院している方は、カリウムの内服薬による治療を受けます。他の疾患との兼ね合いで内服が困難な方や、症状が重い方は、カリウムを注射で投与します。 注射は、カリウム製剤を血中に直接投与するため、体内に速やかに吸収されます。また、量を調整できるため、医師の判断のもと、足りないカリウムを効果的に補えます。 薬の服用を中断する 薬の影響で低カリウム血症になった場合は、薬の服用を中断する場合があります。 利尿作用のある薬は、尿とともにカリウムが流れてしまうため、服用に配慮が必要な薬剤です。 以下は、利尿作用のある薬が処方される病気や症状とその効果です。 疾患 利尿作用による効果 高血圧症 排尿によって体液量を減らすことで血圧を下げる効果がある 心不全・腎疾患による浮腫 余分な水分を排出して浮腫を改善する効果がある(文献7) 参考:高血圧治療における利尿薬の用量について|厚生労働省 担当医との相談のもと、持病と低カリウム血症の両方を考慮した治療方針を決定しましょう。 高齢者が低カリウム血症になる原因を知って適切な治療を受けよう 食事量が減少する傾向にある高齢者は、日頃からカリウム不足にならない食生活への配慮が必要です。また、持病の治療で利尿作用のある薬を飲んでいる方は、カリウムが失われる機会が多いため、服薬の継続については医師と相談しましょう。 低カリウム血症には、筋肉のだるさや息苦しさといった、加齢と混同しやすい症状が現れます。症状を見逃すと、状態が悪化してしまうリスクがあるため、本記事を参考に、低カリウム血症の判断力向上に役立ててみてください。 また、高齢の方や生活習慣の乱れがある方は、低カリウム血症以外に糖尿病や肝臓疾患といった他の病気のリスクも高まります。 これらの疾患の治療の選択肢として、再生医療があります。 再生医療を提供する当院では、メール相談、オンラインカウンセリングを承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。 高齢者の低カリウム血症に関するよくある質問 低カリウム血症は治る病気ですか? 頻繁な排尿や大量の下痢といった、一時的なカリウム不足の状態であれば、早期治療で回復が見込めます。症状の長期化や重篤化している場合は、長期的な治療が必要になるケースもあります。 低カリウム血症で入院することはありますか? カリウム値が大幅に低下したり、症状が悪化したりした場合は、入院する可能性があります。 国立がん研究センターの日本臨床腫瘍研究グループが公表している、低カリウムの重症度(グレード)を示した定義表では、カリウム値が3.0-2.5mEq/Lの場合を「入院を要する」と定義しています。(文献8) 低カリウム血症で入院する場合の期間や費用を教えてください 入院期間は症状の程度によって異なりますが、症状が軽度の方は数日〜1週間程度で退院できたという報告があります。 低カリウム血症における入院費用を提示する病院の情報は確認できなかったため、各病院に問い合わせをお願いします。 なお、公益財団法人生命保険文化センターの調査結果によると、入院1日あたりの入院費用は平均約20,700円です。(文献9) 参考文献 (文献1) 絹川 真太郎「慢性心不全の薬物治療」日本内科学会雑誌109巻2号 P207〜214 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/109/2/109_207/_pdf (最終アクセス2025年6月22日) (文献2) 国立循環器病センター高血圧腎臓内科 河野雄平 「高血圧治療における利尿薬の用量について」 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/10/dl/s1022-11c.pdf (最終アクセス2025年6月22日) (文献3) 長瀬 美樹,藤田 敏郎ら「3)アルドステロンと生活習慣病」日本内科学会雑誌 第97巻 臨時増刊号・平成20年 2 月20日 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/97/Suppl/97_94b/_pdf (最終アクセス2025年6月22日) (文献4) 西川 哲男,大村 昌夫ら「2)高血圧症患者の 5~15% は原発性アルドステロン症?」日本内科学会雑誌 第97巻 臨時増刊号・平成20年 2 月20日 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/97/Suppl/97_94b/_pdf (最終アクセス2025年6月22日) (文献5) 森 拓也「老人性不整脈」日農医誌62巻2号 136〜143項 2016.7 P136〜143 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm/65/2/65_136/_pdf (最終アクセス2025年6月22日) (文献6) 吉田 雄一,柴田 洋孝ら「低カリウム血症と内分泌疾患」日本内科学会雑誌 109 巻 4 号 P718〜726 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/109/4/109_718/_pdf (最終アクセス2025年6月22日) (文献7) 木村玄次郎「9.利尿薬を使い分ける」日本内科学会雑誌 第102巻 第 9 号・平成25年 9 月10日 P2413〜2417 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/102/9/102_2413/_pdf (最終アクセス2025年6月22日) (文献8) 国立がん研究センター日本臨床腫瘍研究グループ「共用基準範囲対応CTCAE v5.0 Grade定義表」P1〜6 https://jcog.jp/assets/ChgJCOG_kyouyoukijunchi-CTCAE_50_20190905.pdf (最終アクセス2025年6月22日) (文献9) 公益財団法人生命保険文化センター「生活保障に関する調査/直近の入院時の1日あたりの自己負担費用」 https://www.jili.or.jp/research/chousa/8946.html (最終アクセス2025年6月22日)
2025.06.29 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
「低カリウム血症って本当に治るの?」 「入院が必要なほど重い病気なのか知りたい」 血液検査の結果をきっかけにカリウム不足と言われ、不安になる方も多くいます。 結論から言えば、低カリウム血症の多くは、原因を見極めて適切な治療を受ければ回復が見込める病気です。 とはいえ、放置すると重症化し、入院や深刻な合併症につながるリスクもあります。本記事では、低カリウム血症はどのような病気で、どのように治療すれば治るのかについて解説します。 初期症状や原因、入院の基準や入院期間の目安を紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。 【結論】低カリウム血症の完治は可能 低カリウム血症は早期発見と早期治療により治る疾患です。 また、カリウムは嘔吐・下痢によっても体外に流れ出てしまいます。そのため、体調不良で嘔吐・下痢が続き一時的なカリウム不足の状態であれば、早期治療で回復が見込めます。 なお、低カリウム血症と似ている症状でギランバレー症候群があります。ギランバレー症候群の詳しい症状や原因については以下の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。 低カリウム血症を早く治すためのポイント 低カリウム血症の早期回復には、以下2つの要素を取り入れることで効果的な治療が可能です。 初期症状の段階から治療を始める 原因を特定する 低カリウム血症を早く治すためのポイントを見ていきましょう。 初期症状の段階から治療を始める 初期症状での治療開始が、低カリウム血症の早期回復につながります。 初期症状にも含まれる低カリウム血症の主な症状は以下のとおりです。 筋肉痛 手足のだるさ 筋肉のこわばり 手足の力が抜ける感じ 心臓のリズムが乱れる(不整脈) 参考:重篤副作用疾患別対応マニュアル低カリウム血症|厚生労働省 初期症状を見逃してしまうと、呼吸不全や筋肉の麻痺などの重篤な合併症につながるリスクもありますので、早めに医療機関を受診しましょう。 原因を特定する 症状の原因を特定すると、早い段階で適切な処置をおこなえるため低カリウム血症を早く治せます。 原因を特定せずに自己判断で間違ったケアを進めてしまうと、症状をさらに悪化させてしまうケースもあります。 低カリウム血症を発症する主な原因は以下のとおりです。 下痢や嘔吐 薬の副作用 食事の偏りや絶食ダイエット 加齢 副腎疾患 自身の症状にあてはまる原因がないか特定していきましょう。 下痢や嘔吐 下痢や嘔吐で消化管から急激なカリウムが喪失します。 胃腸炎による下痢では、体内水分や電解質(カリウム)が失われるためです。 下痢や嘔吐による低カリウム血症は、水分とカリウムの同時補給で改善できます。また、経口補水液の使用により、入院せずに外来治療で回復も可能です。 とはいえ、症状が続く場合は早めに受診して、適切な補液治療を受けましょう。 薬の副作用 利尿薬やステロイド薬が腎臓からのカリウム排泄を増加させます。 利尿薬では服用開始から数週間で血清カリウム値が低下する場合もあります。しかし、薬剤による低カリウム血症は、薬の調整により速やかに改善可能です。 自己判断で薬を中止せず、医師と相談して薬の変更や減量をおこなうことで、副作用を回避できます。 食事の偏りや絶食ダイエット 極端な食事制限によりカリウム摂取量が不足し、体内貯蔵量が枯渇します。 1日のカリウム摂取量は成人男性では2,500mg、成人女性で2,000mgが必要とされています。(文献1) 栄養を意識した正しい食生活により、低カリウム血症は改善可能です。野菜や果物を意識的に摂取しバランスの良い食事を心がけて、健康的なダイエットをおこないましょう。 加齢 加齢により腎機能が低下し、カリウムの調節能力が弱くなります。65歳以上では腎機能が低下するとされています。(文献2) 定期的な血液検査により、早期発見と予防的治療が可能です。年齢に応じた健康管理を続けて、元気な毎日を過ごしていきましょう。 【関連記事】 血圧の正常値とは?内科医師が詳しく解説! 高齢者が低カリウム血症を発症する原因は?症状や治療法を医師が解説 副腎疾患 副腎からのホルモン分泌異常がカリウムバランスを崩します。 クッシング症候群などの疾患では、アルドステロンが増えることで腎臓に働きかけ、カリウムを体の外に出してしまいます。 このような場合でも、薬によって血圧やカリウムの値を整えることが可能です。 専門の医師と連携しながら治療を進めれば、改善が期待できるでしょう。 低カリウム血症の代表的な治療法 低カリウム血症の治療法は、発症原因や症状の程度に応じて異なります。 代表的な治療法は以下のとおりです。 カリウム量が多い食事を摂る サプリメントや内服薬を飲む 点滴を打つ 重症度や原因疾患の種類によっては入院治療する 自身の体の状態に適した治療法を医師と相談して決めていきましょう。 カリウム量が多い食事を摂る カリウム豊富な食事により、軽度の低カリウム血症は自然に改善されます。 以下は、カリウムが豊富に含まれる食材の一例です。 食品名(100g当) カリウム量(単位:mg) アボカド 590 バナナ 360 納豆 690 木綿豆腐 110 刻み昆布 8,200 参考:食品成分データベース|文部科学省 カリウムの多い食品としては野菜や果物、大豆や海藻類などがあります。意識してカリウム量が高い食事を摂取すれば、低カリウム血症の症状改善が期待できるでしょう。 サプリメントや内服薬を飲む 中等度の低カリウム血症に対しては、医師の指導のもとで薬物療法が効果的です。 たとえば、内服薬には塩化カリウムを含む飲み薬や、カリウムの排出を抑えるカリウム保持性利尿薬などが使われます。 また、ドラッグストアで購入できるサプリメントで補う方法もあります。服用を始める前に、必ず医師や薬剤師に相談し、使用量や飲み方を守りましょう。 注射を打つ 注射は、カリウム製剤を直接血管へ入れる方法です。注射は、体内への吸収が早い特長があり、不足している量に応じて細かく調整できるため、効率的にカリウムを補給できます。 特に、血中のカリウム濃度が2.5mEq/L未満の場合、命に関わる危険な状態です。この際、緊急処置として注射を打つ治療が進められます。 重症度や原因疾患の種類によっては入院治療する カリウム値が大幅に低下したり、症状が悪化したりした場合は、入院する可能性があります。 以下は、国立がん研究センターの日本臨床腫瘍研究グループが公表している、低カリウムの重症度(グレード)を示した定義表の一部です。 Grade 血清カリウム値 症状 治療 1 3.0mEq/L以上 なし なし 2 3.0mEq/L以上 ある 必要 3 3.0~2.5mEq/L ある 入院を要する 4 2.5mEq/L以下 ある 生命を脅かす 出典:JCOG共用基準範囲」に基づくGrade 定義|日本臨床腫瘍研究グループ カリウム値が3.0-2.5mEq/Lの場合を「入院を要する」と定義しています。入院により根本原因の精密検査と専門的治療も同時に実施できます。 低カリウム血症の初期症状を見逃さず早期受診を心がけよう 低カリウム血症は筋力の低下やだるさなど、一見よくある症状から始まるケースが多い病気です。しかし、初期サインを見逃さずに早めに対処すれば、外来治療のみでの改善も期待できます。 症状が続いたり、なんとなく体調がすぐれなかったりする場合は、自己判断せず医療機関に相談しましょう。 また、高齢の方や生活習慣の乱れがある方は、低カリウム血症以外に糖尿病や肝臓疾患といった他の病気のリスクも高まります。 これらの疾患の治療の選択肢として、再生医療があります。 再生医療を提供する当院では、メール相談、オンラインカウンセリングを承っておりますので、ぜひご活用ください。 低カリウム血症は治るのか?に関するよくある質問 低カリウム血症を治すためにおすすめの食事を教えてください カリウムは、野菜や果物、豆類に多く含まれます。 以下の表は、カリウムが多く含まれる食品の一部を紹介したものです。 食品名(100g当) カリウム量(単位:mg) 刻み昆布 8,200 ほうれん草 690 納豆 690 バナナ 360 木綿豆腐 110 参考:食品成分データベース|文部科学省 カリウムを豊富に含む食品の中でも、特に含有量が多いのが刻み昆布です。「すき昆布」の煮物を食べると、効率良くカリウムを摂取できます。 また、ほうれん草の副菜を食事に取り入れたり、デザートとしてバナナを選んだりするのもカリウム補給におすすめです。 低カリウム血症の治療で入院になった場合の期間と費用の目安を教えてください 入院の期間は症状の重さによって異なりますが、軽い場合は数日から1週間ほどで退院できた例もあります。 低カリウム血症に特化した入院費用の目安は公表されていないため、詳しく知りたい方は直接医療機関に問い合わせてみてください。 なお、公益財団法人生命保険文化センターの調査によれば、入院1日あたりの平均費用は約20,700円とされています。(文献3) 参考文献 (文献1)厚生労働省「日本人の食事摂取基準」,2020年 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf (最終アクセス2025年6月16日) (文献2) 日本老年医学会雑誌「高齢者の慢性腎臓病(CKD)」,2014年 https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/review_51_5_385.pdf (最終アクセス2025年6月16日) (文献3) 公益財団法人生命保険文化センター「生活保障に関する調査/直近の入院時の1日あたりの自己負担費用」 https://www.jili.or.jp/research/chousa/8946.html (最終アクセス2025年6月16日)
2025.06.29 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
「手足がだるい」「筋肉がこわばる」などの症状が続いている場合は、低カリウム血症を発症している可能性があります。 カリウムは筋肉や神経、心臓の働きに関わる重要なミネラルです。血中濃度が下がりカリウムの量が減ると体にさまざまな不調を引き起こします。 重症化すると不整脈による胸痛や呼吸困難、さらには命に関わる合併症に至ることもあるため、決して軽視できない状態です。 本記事では、低カリウム血症の主な症状や原因に加え、治療法や入院の基準・期間、再発予防のポイントまでを詳しく解説します。 現在、症状に心当たりがある方や、家族の体調に不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。 【重症度別】低カリウム血症の主な症状 低カリウム血症の症状は血清カリウム値によって異なります。 ここでは、重症度に応じた主な症状を以下の2つに分けて解説します。 軽度〜中等度の場合 重症化した場合 それぞれの段階で現れる症状の違いを把握して、早期発見につなげましょう。 軽度〜中等度の場合 軽度から中等度の低カリウム血症では、主に以下の症状が現れます。 筋肉痛 手足のだるさ 筋肉のこわばり 手足の力が抜ける感じ 心臓のリズムが乱れる(不整脈) 参考:重篤副作用疾患別対応マニュアル低カリウム血症|厚生労働省 具体的には、階段を上る際に息切れしやすくなったり、重いものを持ち上げにくくなったりします。 これらの症状のサインが出た場合はカリウム不足の可能性があるため、放置しないで適切な治療を行うことが大切です。 なお、低カリウム血症と似たような症状でギランバレー症候群という病気があります。ギランバレー症候群の症状や原因については以下の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。 重症化した場合 低カリウム血症が重症化した場合の代表的な症状は、以下のとおりです。(文献1) 胸痛 息苦しさ 意識障害 血清カリウム値が2.5mEq/L未満になると、四肢麻痺や呼吸筋麻痺といった重篤な症状を引き起す可能性があります。(文献2)命に関わる危険性が高い状態なので、症状が現れたらすぐに医療機関を受診してください。 低カリウム血症の原因 低カリウム血症の主な発症原因は以下の3つです。 薬の副作用 食事や生活習慣 慢性疾患や体の機能低下 これらの複数の原因が重なって低カリウム血症を発症する場合もあります。ご自身が該当する原因を特定し、治療方針を考える姿勢が大切です。 薬の副作用 特定の薬剤の使用が低カリウム血症を引き起こす原因の一つです。 体内のカリウムバランスを崩しやすい薬剤は以下のとおりです。 利尿薬 尿と一緒にカリウムを放出 ステロイド薬 インスリンの作用による細胞外から細胞内へのカリウムの取り込み インスリン アルドステロン作用によるカリウムの排泄促進 参考:電解質異常低カリウム血症|特定非営利活動法人日本集中治療教育研究会看護部会 服用中の薬剤について医師と相談し、定期的な血液検査でカリウム値をチェックしましょう。 以下の記事では利尿薬の効果や副作用に触れているので、あわせてご覧ください。 食事や生活習慣 偏った食事や不適切な生活習慣が低カリウム血症の発症リスクを高めます。 極端なダイエットや偏食により、カリウムを含む食品の摂取量が不足するためです。 たとえば以下の行動が、体内のカリウム喪失を促進します。 野菜や果物を避けた食事 加工食品中心の食生活 過度な飲酒 嘔吐を繰り返す摂食障害 バランスの取れた食事と規則正しい生活習慣を心がけることが予防の基本となります。 慢性疾患や体の機能低下 腎臓や消化器系の慢性疾患が低カリウム血症の背景にあります。 慢性腎不全や副腎機能亢進症などの疾患では、カリウムの調節機能が低下するためです。 原発性アルドステロン症では過剰なホルモン分泌によりカリウムが失われます。(文献3) 慢性的な下痢や嘔吐を伴う消化器疾患も同様の問題を引き起こします。 基礎疾患の適切な管理と並行して、カリウム値の定期的なモニタリングが重要です。 低カリウム血症の治療法 低カリウム血症の治療は重症度に応じて段階的に行われ、適切な方法選択が大切です。 主な治療法は以下のとおりです。 カリウムが豊富な食品を摂取する サプリメントや飲み薬で補給する 注射薬で補給する 症状や血液検査の結果に基づいた治療法を選択していきましょう。 カリウムが豊富な食品を摂取する 食生活の改善によりカリウムが豊富な食品を摂取することで、低カリウム血症の治療につながります。 以下は、カリウムが豊富に含まれる食材の一例です。 食品名(100g当) カリウム量(単位:mg) アボカド 590 バナナ 360 ほうれん草 690 納豆 690 木綿豆腐 110 刻み昆布 8,200 参考:食品成分データベース|文部科学省 毎日の食事にこれらの食品を意識的に取り入れて、自然な形でのカリウム補給を目指しましょう。 サプリメントや飲み薬で補給する 中等度の低カリウム血症では、医師の処方による薬物療法が効果的です。 経口カリウム製剤やカリウム保持性利尿薬により、効率的にカリウム値を改善できます。代表的な薬剤は、塩化カリウム徐放錠やK.C.L. エリキシル® (塩化カリウム)などです。 ドラッグストアで買えるサプリメントでカリウムを補う方法もあります。 ただし、カリウムのとり過ぎは体に負担をかけるおそれがあるため、使用前に医師や薬剤師に相談し、決められた量と使い方を守りましょう。 注射薬で補給する 注射によるカリウム補給は、カリウムを血管に直接入れる方法で、体内にすばやく吸収されるのが特徴です。必要な量を細かく調整できるため、医師の判断により効率よく不足分を補えます。 血液中のカリウム値が2.5mEq/L未満の場合や、心電図に異常が出ている場合は、緊急の対応が必要になり、注射薬の投与が検討されます。 低カリウム血症の入院基準と入院期間 低カリウム血症の入院判断は血清カリウム値と症状の重篤度により決定されます。 国立がん研究センターの日本臨床腫瘍研究グループが示している重症度の目安では、血液中のカリウム濃度が3.0〜2.5mEq/Lの場合、「入院が必要なレベル」と定義しています。(文献4) カリウム濃度の数値だけでなく、四肢の麻痺や呼吸困難などの重篤な症状がある場合も緊急入院の対象です。 入院期間は症状の程度によって異なりますが、症状が軽度の方は数日〜1週間程度で退院できたという報告があります。重度の場合は、長期的入院が必要となる可能性があります。 低カリウム血症の症状が出たら早めに受診を心がけよう 筋肉の異常や動悸、脱力感などが続く場合は、体内のカリウム不足が影響しているかもしれません。 低カリウム血症の症状は日頃の疲れや加齢による体調不良と似ているため、見逃されやすいケースが多いです。そのため、不調が続くときは低カリウム血症を疑う視点を持ち、早めに専門機関を受診することが大切です。 なお、高齢の方や生活習慣の乱れがある方は、低カリウム血症以外に糖尿病や肝臓疾患といった他の病気のリスクも高まります。 これらの疾患の治療の選択肢として、再生医療があります。 再生医療を提供する当院では、メール相談、オンラインカウンセリングを承っておりますので、ぜひご活用ください。 低カリウム血症や症状に関するよくある質問 低カリウム血症は治療すれば治りますか? 低カリウム血症は適切な治療により改善できる疾患です。 軽度から中等度の場合、食事療法や内服薬により数日から数週間で正常値に回復します。ただし、原因となる基礎疾患がある場合は、その治療も並行して行う必要があります。 治療後も定期的な検査により再発を防ぎ、長期的な健康管理を続けていく意識が大切です。 低カリウム血症の治療期間はどれくらいですか? 治療期間は重症度と原因により大きく異なります。 軽度の場合、食事療法や経口薬により短期間での改善が多く見られます。ただし、中等度~重症例や慢性疾患が原因の場合は、入院治療や長期的な管理が必要になる場合もあります。 個人差があるため、医師と相談しながら治療計画を立て、焦らずに治療を継続していきましょう。 低カリウム血症は高齢者が発症しやすいですか? 高齢者は若年者と比較して低カリウム血症を発症するリスクが高い傾向にあります。 加齢により腎機能が低下し、カリウムの調節能力が衰えたり、高血圧・心疾患の治療で利尿薬を服用する機会が多かったりするためです。 また、食事摂取量の減少や消化吸収能力の低下も影響を与えます。 高齢の方は定期的な血液検査と適切な食事管理により、予防と早期発見に努めることが重要です。 参考文献 (文献1) 千葉大学医学部附属病院薬剤部横山威一郎「総論・検査値評価のコツ」2025年3月13日 掲載 https://www.ho.chiba-u.ac.jp/pharmacy/No26_20250313.pdf (最終アクセス2025年6月18日) (文献2) Richard A Oram,Timothy J McDonaldほか「Investigating hypokalaemia」, BMJ 2013; 347: f5137 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24065427/ (最終アクセス2025年6月18日) (文献3) 難病情報センター13 内分泌疾患「原発性アルドステロン症」 https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/kenkyuhan_pdf2014/gaiyo031.pdf (最終アクセス2025年6月15日) (文献4) 国立がん研究センター日本臨床腫瘍研究グループ「共用基準範囲対応CTCAE v5.0 Grade定義表」P1〜6 https://jcog.jp/assets/ChgJCOG_kyouyoukijunchi-CTCAE_50_20190905.pdf (最終アクセス2025年6月15日)
2025.06.29 -
- 肩関節、その他疾患
- 肩関節
「片麻痺の影響で肩が外れかけていると言われたけど、普段どんな動きを避ければいいの?」 「介護のときに腕を引っ張ってしまっていないか心配…」 このように不安を抱える方は多いでしょう。 片麻痺のある方は、肩の筋肉の働きが弱まることで、肩関節の亜脱臼が起きやすくなります。そのため、腕を無理に引っ張る・ぶら下げる・肩より高く上げすぎるといった行為は避けるべきです。 これらの禁忌を知らずにいると、痛みが悪化したり、肩の可動域がさらに制限されたりする可能性があります。だからこそ、本人・介護者ともに正しい知識を身につけておきましょう。 本記事では、片麻痺による亜脱臼の原因や避けるべき禁忌行為を解説します。リハビリ方法も紹介しているので、片麻痺の亜脱臼に悩んでいる方はぜひ最後までご覧ください。 片麻痺と亜脱臼の関係性 肩関節の亜脱臼は、ラグビーやバスケなどの接触が多いスポーツでみられやすいケガです。 しかし、スポーツによるケガだけでなく、脳卒中後の後遺症である片麻痺に伴って生じることがあります。とくに、脳卒中を発症して間もない弛緩性麻痺の時期に起こりやすいとされています。 弛緩性麻痺とは、体を動かそうとしても筋肉がうまく働かず、常に脱力して腕がだらりと垂れ下がってしまう状態です。 肩周りの筋肉が緩むと腕の重さを支えきれなくなり、重力によって腕全体が下方向へ引っ張られます。この持続的な力が肩の関節を正常な位置からずらしてしまい、亜脱臼を引き起こすのです。 また、感覚障害や半側空間無視(脳損傷により片側の空間を認識できなくなる症状)があると、麻痺側の肩が体の下敷きになっていても気づかず、亜脱臼につながる場合もあります。ある研究では、片麻痺の患者様の約35%に肩関節亜脱臼が見られたとの報告もあります。(文献1) 亜脱臼があるからといって必ずしも痛みが出るわけではありません。実際に、亜脱臼のある方の約50%は痛みを訴えないとの報告もあります。(文献2) その他の脳卒中における後遺症についてはこちらの記事で解説していますので、ぜひご覧ください。 【禁忌】片麻痺の亜脱臼でやってはいけない3つの行為 片麻痺によって亜脱臼が起きている場合、やってはいけない行為は以下の3つです。 腕を高く上げすぎる 腕をぶら下げる 腕を無理に引っ張る これらの行為に共通しているのは、肩関節や肩周囲の筋肉に負荷がかかる動きである点です。症状を悪化させないために日常生活でこの3つの行為を避けるよう意識しましょう。 腕を高く上げすぎる 麻痺側の腕を肩より高い位置まで無理に上げすぎる行為は避けるべきです。麻痺の影響で肩周りの筋肉が緩み、関節が不安定な状態になっているためです。 この状態で腕を高く上げると、肩関節が前方に引っ張られ、亜脱臼や脱臼を引き起こす危険性が高まります。 しかし、弛緩性麻痺で肩の亜脱臼を起こしている方は、自力で高く腕を上げられません。そのため、腕を高く上げすぎる動作は、介助者が着替えや洗体などを介助する際に注意が必要です。 腕を動かすときは、痛みや違和感のない範囲にとどめましょう。 腕をぶら下げる 麻痺側の腕をだらりとぶら下げたままにしておくことも、亜脱臼を悪化させる原因です。 とくに弛緩性麻痺の場合、腕の重さを支える筋肉が十分に働かず、立ったり座ったりしている間、常に腕の重みで肩関節が下へ引っ張られます。この状態が長く続くと、肩周りの筋肉や靭帯が伸びてしまい、関節のずれが大きくなる可能性があります。 たとえば、以下のような場合は腕が落ちてしまったり、ぶら下がったりしないようにしましょう。 車いすに座っているとき ベッドで横になっているとき クッションやテーブルの上に腕を置くなど、常に腕を安定した位置に保つ工夫が必要です。 腕を無理に引っ張る 本人だけでなく、家族や介護者の方が麻痺側の腕を無理に引っ張る行為も避けるべきです。 ベッドからの起き上がりや移乗介助の際に、腕をつかんで引っ張ってしまうと、肩関節周囲の組織が伸び、亜脱臼を悪化させる恐れがあります。 介助の際は、肘と手首のあたりを優しく支え、腕全体を肩関節の方へそっと押し込むように意識しながら動かしてください。 また、感覚障害で腕の位置がわかりにくくなっている場合も少なくありません。お腹の上やテーブルの上など、本人の視界に入る場所に腕を置いてあげることで、安心感にもつながります。 片麻痺の亜脱臼に対する4種類のリハビリ 片麻痺に伴う肩関節の亜脱臼に対しては、以下の4種類のリハビリがおこなわれます。 ポジショニング 装具療法 電気治療 運動療法 これらの方法を患者様の状態に合わせて組み合わせ、専門家の指導のもとで進めていくのが一般的です。 ポジショニング|腕を正しい位置に置く ポジショニングは、麻痺側の腕を常に正しい位置に保ち、肩関節に負担をかける禁忌姿勢を避けて関節を保護する基本的なアプローチです。 姿勢ごとのポジショニングのポイントを以下の表にまとめました。 姿勢 ポイント 椅子や車椅子に座っているとき 机やクッションに腕をのせて、だらりと垂れ下がらないようにする 仰向けで寝ているとき 体の横に対して、腕が中央に来るように枕やクッションで高さを調整する 横向きで寝ているとき 抱き枕やタオルなどを使い、腕が体の下敷きになったり、前に落ちたりするのを防ぐ 適切なポジショニングは肩への持続的な負荷を減らすため、亜脱臼の悪化以外に痛みの緩和やむくみの軽減にもつながります。 装具療法|アームスリング固定による疼痛の軽減 装具療法は、三角巾やアームスリングといった装具を用いて、肩関節を安定した位置に固定する方法です。麻痺側の腕が垂れ下がることで生じる亜脱臼の悪化や、それに伴う痛みの増強を防ぐ目的でおこなわれます。 脳卒中治療ガイドライン2021では、スリングは有用な場合もあるものの、その効果は装着している間に限られるとされています。(文献3)長期間の固定は肩や肘を動かす機会を奪うため、関節が硬くなる「拘縮」を招く原因になりかねません。 安易に装具を使用するとリハビリの妨げになる可能性もあるため、自己判断での装着は避けましょう。 理学療法士や作業療法士など専門家の評価のもと、必要な時間や場面を見極めて適切に使用する必要があります。 電気治療|電気刺激による筋の強化 電気治療は、麻痺で動きにくい肩周りの筋肉に電気で刺激を送り、筋肉の収縮を促して再教育を図る治療法です。筋肉の収縮は、肩関節を本来の位置に引き上げる助けとなります。 電気治療では、主に神経筋電気刺激が用いられ、脳卒中治療ガイドライン2021でも、肩関節亜脱臼への神経筋電気刺激は妥当とされています。(文献3) 電気治療はリハビリの一環として、他の運動療法と組み合わせて実施されるのが一般的です。 ただし、片麻痺の亜脱臼に対する神経筋電気刺激は、脳卒中の発症から間もない急性期・亜急性期での有用性は示されたものの、発症後6カ月以降の慢性期では明確な差はなかったとの報告もあります。(文献4) 運動療法|肩関節周囲の筋力強化 運動療法は、肩関節を支える筋力を強化し、関節の安定性を取り戻すための治療法です。 自動運動(自分で動かす運動)や他動運動(他の人に動かしてもらう運動)を通じて、筋力低下を防ぎ、関節が硬くなる拘縮を予防します。 肩関節を支える筋肉の中でインナーマッスルの1つである回旋筋腱板は、上腕骨を肩甲骨に引き付けて安定させる役割を担います。回旋筋腱板をバランスよく鍛えることは、肩の安定性を高めるために欠かせません。 ただし、無理な運動はかえって肩を痛める原因になりかねません。必ずリハビリの専門家の指導のもと、痛みや違和感のない範囲でおこないましょう。 片麻痺の亜脱臼における禁忌事項を把握して悪化を防ごう 片麻痺の亜脱臼に対して、やってはいけない禁忌事項を理解せずにいると、意図せず亜脱臼を悪化させてしまう危険性があります。とくに感覚障害や半側空間無視がある場合は、本人が異変に気づきにくいため家族や介護者の方の正しい知識と協力が欠かせません。 肩関節を本来あるべき位置に保つためにも、専門家の指導のもとでリハビリに取り組み、日頃から腕の位置に気を配って正しい姿勢を心がけましょう。 運動麻痺のような脳卒中の後遺症に対する治療法として再生医療も選択肢の1つです。 再生医療を提供する当院では、メール相談、オンラインカウンセリングを承っておりますので、ぜひご活用ください。 片麻痺と亜脱臼に関するよくある質問 片麻痺の亜脱臼は改善しますか 適切なリハビリテーションの継続は、片麻痺の亜脱臼の改善が期待できる方法の1つです。 たとえば、神経筋電気刺激を受けた患者様は、受けなかった場合よりも亜脱臼の程度が小さくなったとの研究報告が存在します。(文献5)また、麻痺からの回復段階が進むにつれて、亜脱臼の改善が見られたとの報告もあります。(文献6) 専門家と相談しながら、自分の状態に合ったリハビリに取り組んでいきましょう。 亜脱臼を放置するとどうなりますか 片麻痺に伴う亜脱臼を放置すると、さまざまな問題につながる恐れがあります。 まず、時間の経過とともに関節が固まり、元の位置に戻すのが難しくなると考えられます。また、肩周囲の筋肉に負担がかかり続け、肩を支える重要な腱板の断裂を引き起こす可能性も低くありません。 ある研究では、50歳以上の反復性肩関節脱臼の症例の多くで腱板断裂が合併していたとの報告もあるため、亜脱臼は放置せずに適切な治療を受けましょう。(文献7) 【関連記事】 肩腱板断裂(損傷)とは?現役整形外科医師が徹底解説 肩腱板断裂の手術と入院期間について医師が詳しく解説 参考文献 (文献1) 猪飼哲夫,米本恭三ほか 「脳卒中片麻痺患者の肩関節亜脱臼の検討-経時的変化について-」 リハビリテーション医学 29 (7) , pp.569-575 , 1992年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm1964/29/7/29_7_569/_pdf (最終アクセス2025年6月10日) (文献2) Leonid Kalichman,Motti Ratmansky 「Underlying pathology and associated factors of hemiplegic shoulder pain」 American Journal of Physical Medicine & Rehabilitation 90 (9) , pp.768-780 , 2011 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21430513/ (最終アクセス2025年6月10日) (文献3) 日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会「脳卒中ガイドライン2021[改訂2025]」, 2025年 https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2025_kaiteikoumoku.pdf(最終アクセス2025年6月16日) (文献4) Jae-Hyoung Lee,Lucinda L Bakerほか 「Effectiveness of neuromuscular electrical stimulation for management of shoulder subluxation post-stroke: a systematic review with meta-analysis」 Clinical Rehabilitation 31 (11) , pp.1431-1444 , 2017 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28343442/ (最終アクセス2025年6月10日) (文献5) Sandra L. Linn,Malcolm H. Granatほか 「Prevention of Shoulder Subluxation After Stroke With Electrical Stimulation」 Stroke 30 (5) , pp.963-968 , 1999 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10229728/ (最終アクセス2025年6月10日) (文献6) 武富由雄 「脳卒中片麻痺における肩関節の亜脱臼と運動 機能回復段階に関する一考察」 肩関節 16 (2) , pp.218-220 , 1992年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/katakansetsu1977/16/2/16_218/_pdf (最終アクセス2025年6月10日) (文献7) 伊崎輝昌,柴田陽三ほか 「腱板断裂を伴う反復性肩関節脱臼に対する治療成績-鏡視下Bankart修復術と鏡視下腱板修復術の併用法-」整形外科と災害外科 58 (2) , pp.188-191 , 2009年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai/58/2/58_2_188/_pdf (最終アクセス2025年6月10日)
2025.06.29