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関節がこわばり動かしにくい 肘や頭皮に赤みが出ている その症状は、乾癬性関節炎の初期症状かもしれません。関節の違和感や皮膚に出る赤みを放置しておくと重症化する可能性があります。 乾癬性関節炎を早期発見するには、初期症状と対策をしっかり行うことが大切です。 乾癬性関節炎の初期症状 乾癬性関節炎の初期症状を見抜くチェックリスト 乾癬性関節炎を重症化させないための対策 乾癬性関節炎における初期症状を理解したのち、適切な治療で乾癬性関節炎の進行を防ぎましょう。 乾癬性関節炎の初期症状 症状 詳細 爪の症状 点状のへこみ、変形、剥がれ 関節の腫れ・違和感 手足の指、肘、膝、足首など、左右非対称に腫れや違和感 皮膚の赤み・かゆみ 肘、膝、頭皮、腰、臀部などに赤い発疹、かゆみ 腰・背中の違和感 腰痛、背中のこわばり、起床時に症状が強く、日中は軽減 全身の症状 倦怠感、疲労感、発熱 (文献1) 乾癬性関節炎の初期症状には、通常では現れない違和感や腫れなどが発症します。初期症状は人によって現れ方が異なります。 気になる症状があれば、自己判断はせず、医療機関を受診しましょう。 爪に点状のへこみや変形が現れる 症状 詳細 点状のへこみ(点状陥凹) 爪の表面に小さな凹みが多数現れる 爪の変形 爪が分厚くなる、剥がれる、ボロボロになる 爪の色調変化 爪の色が黄色や茶色に変色する 爪の剥離 爪の先端が剥がれて浮き上がる 爪の肥厚 爪が厚く盛り上がる 乾癬性関節炎は皮膚の病気である乾癬と関節炎が合併して起こります。爪に起こる症状の特徴としては、点状のへこみや変形が現れます。 爪に症状が現れる原因は、免疫系の異常です。免疫系が体内組織を攻撃することで、爪の炎症や違和感が現れます。爪に表内記載の症状が現れた際は、早めに医療機関を受診しましょう。 手足の指の関節に腫れが起こる 乾癬性関節炎の種類 詳細 付着部炎(ふちゃくぶえん) 靭帯や腱が骨に付着する部分に炎症が生じ、違和感や腫れを伴う 指趾炎(ししえん) 手足の指全体が腫れ、ソーセージのような見た目になる 末梢関節炎(まっしょうかんせつえん) 関節リウマチと似た症状があるが、左右非対称に現れることが特徴 体軸関節炎(たいじくかんせつえん) 骨盤の関節や脊椎に炎症が生じ、背中・首・腰にこわばりや違和感が出る 乾癬性関節炎の初期症状として、手足の指の関節に腫れや違和感が出る場合があります。関節リウマチと似た症状が現れます。しかし、乾癬性関節炎は左右非対称に症状が出るのが特徴です。 乾癬性関節炎の中にも発症の種類があるため、症状が気になる方は、医療機関を受診しましょう。 肘や頭皮などに赤みが出る 乾癬性関節炎の初期症状として、肘や頭皮などに赤みが出ることがあります。赤みの出方に個人差はあるものの、症状としては、かゆみや赤い発疹などです。 赤みは関節炎より先に出ることもあれば、後から出ることもあります。 乾癬性関節炎は皮膚症状だけでなく、関節の腫れや違和感、爪の変形などが見られるため、複合的に現れた際は、注意が必要です。 腰や背中に違和感を覚える 腰や背中の違和感も、乾癬性関節炎のサインです。脊椎関節炎とも呼ばれており、背骨や仙腸関節(せいちょうかんせつ)に炎症が起こります。 また、背中・腰・首に違和感やこわばりが現れるのが特徴です。皮膚に赤みが出るなどの症状と比較すると、乾癬性関節炎であることに気づきにくく、腰痛と勘違いされやすいです。 症状は見逃しやすいだけでなく、進行すると強直して固まるので上を向く、前かがみになるなどの動作が困難になります。 気づきにくい症状のため、普段腰痛持ちの人や、日頃から腰に負担のかかる作業や仕事に従事している方は注意しましょう。 全身の倦怠感や疲労感 特徴 説明 持続的な疲労感 ほぼ一日中、疲れを感じることがある 発熱や悪寒 発熱や悪寒などの全身症状を伴うことがある 関節の違和感や腫れ 関節の炎症が進むと、違和感や腫れが生じ、倦怠感を伴う 乾癬性関節炎の症状として、全身の倦怠感や疲労感を伴うことがあります。関節の違和感や炎症、皮膚がボロボロになるなどの症状とともに身体の気だるさを感じた場合、乾癬性関節炎の疑いがあります。 生活に支障が出る場合は、無理をせずに医療機関を受診し、生活習慣の見直しやストレスを感じにくい環境に身を置くのが大事です。 乾癬性関節炎を初期から見抜こう!症状チェックリスト チェック項目 概要 関節に違和感を感じる 関節の動きにくさや違和感がある 3カ月間の間に週2回以上関節痛の薬を服用した 頻繁に違和感を抑制するための薬を使用している 腰の違和感で睡眠中に目が醒める 腰の不快感で睡眠が妨げられる 朝起きてから30分以上手指にこわばりがある 朝の手指のこわばりが長時間続く 手首や手指に違和感を感じる 日常の動作で手首や手指に違和感がある 足先や足首に違和感を感じる 足の関節に違和感を覚える ひじやおしりに違和感を感じる ひじやおしりの関節に不快感がある 手首や手指が腫れている 手首や手指の腫れが目立つ 手指が3日以上腫れや違和感を感じる 3日以上手指に腫れや違和感が続いている アキレス腱が腫れている アキレス腱が腫れて違和感もある状態 1日中疲れを感じている 常に倦怠感や疲労感が抜けない 乾癬性関節炎には、初期症状があります。これから紹介するチェックリストの内容が3つ以上当てはまった方は、乾癬性関節炎の疑いがあるため、医療機関の受診が必要です。 1.関節に違和感を感じる 症状 概要 軽いこわばりや違和感 朝起きたときや長時間同じ姿勢の後に、関節のこわばりや違和感がある 関節の動かしにくい 以前はスムーズに動かせた関節が、少し動かしにくく感じる 関節の腫れぼったさ 見た目には腫れがなくても、関節が腫れぼったく感じる 関節の熱感 関節が熱っぽく感じることがある 乾癬性関節炎の初期段階では、関節に違和感が出ることがあります。日常生活で関節の動かしにくさや、見た目は腫れていないのに腫れぼったさを感じる場合は、乾癬性関節炎の疑いがあります。 日常生活で多少不便に感じているものの、大きな支障がない場合はとくに要注意です。症状が進行すると関節の破壊や変形につながる恐れがあります。(文献2) 2.3カ月間の間に週2回以上関節痛の薬を服用した 3カ月間に週2回以上、関節痛の薬を服用しているにもかかわらず症状が改善に向かわないのは、単なる関節痛ではなく、乾癬性関節炎の可能性が高いです。(文献2) 薬を飲んでいるのに改善が望めない場合は、一度医療機関の受診をおすすめします。 3.腰の違和感で睡眠中に目が醒める 乾癬性関節炎は、関節だけでなく、脊椎や仙腸関節に炎症を起こすケースもあります。腰の違和感は腰痛や別の症状と勘違いされることも多く、初期症状としては気づきにくいです。 とくに腰に日常的に違和感を感じている方は、乾癬性関節炎に気づかず、睡眠中に目が覚めたとしても、日常的なことで済ませてしまいがちです。 腰に違和感があり睡眠の妨げになると、健康上でのリスクも懸念されるため、早めに医療機関を受診する必要があります。 4.朝起きてから30分以上手指にこわばりがある 朝の手指のこわばりは、関節に炎症が起きているサインです。関節に違和感や炎症が起きると手指がこわばり、症状によっては30分以上持続するケースもあります。 また、朝の手指のこわばりがストレスになり、症状を悪化させる可能性が懸念されます。朝起きてから30分以上、手指にこわばりが起こる場合は、一度医療機関で医師に相談しましょう。 5.手首や手指に違和感を感じる 症状 詳細 関節の腫れと違和感 指の第一関節(DIP関節)や指全体が腫れる、左右非対称に起こりやすい こわばり 朝起きたときに手首や手指がこわばるが、日中に身体を動かすと症状が軽くなる ソーセージ指 指全体がソーセージのように腫れ上がる 爪の変化 爪の凹み、変色、剥がれなどが起こる 手首や手指に普段見ない爪の変化や、ソーセージ指の症状が現れた場合、乾癬性関節炎を疑う必要があります。 症状が大きく進行している可能性があるため、医療機関への受診が必要です。 6.足先や足首に違和感を感じる 症状 詳細 関節の腫れと違和感 足の指、足首の関節が腫れて、違和感がある 足底の違和感 かかとや足の裏に違和感がある(足底筋膜炎、アキレス腱付着部炎を併発しやすい) 指の腫れ(ソーセージ指) 足の指全体がソーセージのように腫れ、違和感や熱感を伴う 関節のこわばり とくに朝に強く、日中動くと軽減する 乾癬性関節炎は、手指だけでなく、足先や足首の関節にも炎症が起こります。とくに足の指、足首、かかとなどの小さな関節に症状が出やすく、こわばりやソーセージのような腫れが現れます。 手首や手指同様に、症状が大きく進行している可能性があるので、医療機関への受診が必要です。 7.ひじやおしりに違和感を感じる 部位 症状 詳細 ひじ 違和感、腫れ、こわばりなど 外部からの刺激を受けやすく、乾癬の皮膚症状が現れやすい部位であり、関節炎も発症しやすい おしり 違和感、こわばり、坐骨神経痛のような症状 ひじと同様に、乾癬の皮膚症状が現れやすい部位であり、おしりの付け根部分(仙腸関節)は、炎症が起こりやすい ひじやおしりは、乾癬の皮膚症状と関節炎の両方が現れやすい部位です。ひじやおしりも該当箇所による違和感や炎症だけでなく、坐骨神経痛のような症状が出る場合もあります。 とくにおしりはケアがしにくい箇所なので、症状が出た場合は、早めに医療機関を受診しましょう。 8.手首や手指が腫れている 症状 詳細 左右非対称性 関節リウマチとは異なり、左右対称ではなく、どちらか一方の手足に症状が現れることが多い 指趾炎(ソーセージ指) 指全体がソーセージのように腫れ上がり、違和感や熱感を伴う 末梢関節炎 手足の指先の小さな関節(末梢関節)に炎症が起こりやすく、腫れや違和感を起こす 爪の変化 爪の変形(凹み、変色、剥がれなど) 手首や手指が腫れる症状は、関節リウマチと似ています。しかし左右対称ではなく、どちらか一方の手足に症状が現れる部分が異なります。 また、爪の変形や指全体が腫れ上がるソーセージ指も、乾癬性関節炎のサインです。手首や手指に普段感じることのない、腫れや炎症が起きた場合は、自己判断はせずに医療機関を受診しましょう。 9.手指が3日以上腫れや違和感を感じる 手指の腫れや違和感が3日以上続く場合、乾癬性関節炎の可能性が高いです。3日以上腫れや炎症が引かない場合に放置しておくと、症状が悪化につながります。 放置や自己判断は、症状を進行させるだけでなく、後遺症になる可能性があるため、早めの治療が大切です。 10.アキレス腱が腫れている 乾癬性関節炎は、関節だけでなく腱や靭帯の付着部にも発症します。アキレス腱が腫れると、踵に違和感が生じ、重症だと歩行が困難になるケースもあります。 アキレス腱の腫れに加えて、関節のこわばりや指の腫れなど他の症状がある場合、乾癬性関節炎の疑いがあり、放置すると歩行が難しくなり、日常生活に支障をきたします。 症状が重くなる前に医師へ相談し、適切な治療を受けましょう。 11.1日中疲れを感じている 項目 詳細 原因 自己免疫疾患による慢性的な炎症や、精神的なストレス 症状 休息や睡眠で回復しない疲労感、日常生活困難なほどの倦怠感 日常生活への影響 仕事、家事、趣味への支障や睡眠の質低下、疲労感悪化 症状の特徴 単なる疲れとは異なる 乾癬性関節炎は、免疫系に異常が起こり、関節や皮膚だけでなく全身に悪影響を及ぼします。 乾癬性関節炎を発症すると、炎症性サイトカインと呼ばれる物質が過剰に産生され、疲労感や倦怠感を引き起こしやすくなります。 疲労感や倦怠感だけでは、乾癬性関節炎だと判断するのが難しいです。そのため、疲労感と合わせて関節や皮膚に症状が出ていないか確認しましょう。 乾癬性関節炎を重症化させないための対策 乾癬性関節炎は適切な対策を行うことで、活動性を抑えられます。 早めの受診を心がける 生活習慣の見直し ストレス管理を行う 感染予防に努める 乾癬性関節炎への対策を解説します。 早めの受診を心がける 乾癬性関節炎は、早期診断と適切な治療の開始により、関節破壊の進行を抑制できます。 2025年現在、乾癬性関節炎を完治する治療法はありません。しかし、症状の進行を遅らせつつ、重症化を避けることはできます。(文献2)(文献3) 皮膚の炎症や爪の変形などが症状として現れた際は、早めの受診が大切です。 以下の記事では、乾癬性関節炎は何科を受診するべきかを症状別で解説しています。 生活習慣の見直し 栄養素 効果 食材例 オメガ3脂肪酸 炎症抑制 青魚(サバ、イワシ、マグロなど)亜麻仁油、えごま油 抗酸化物質 関節ダメージ軽減 緑黄色野菜、果物、ナッツ類 ビタミンD 免疫機能調整、骨の健康維持 魚介類、卵、キノコ類 カルシウム 骨の健康維持 乳製品、小魚、緑黄色野菜 食物繊維 腸内環境調整、免疫機能調整 野菜、果物、海藻、きのこ (文献4)(文献5) 生活習慣の見直しは、乾癬性関節炎の症状の抑制に役立ちます。抗炎症作用のある食品(青魚、野菜、果物など)を中心とした食生活を始め、適度な運動や十分な睡眠と休息を行いましょう。 また、禁煙と過度な飲酒は、乾癬性関節炎のリスクを高める可能性があります。 生活習慣の改善はあくまでも、補助的なものなので、医師の指示に従い適切な治療を受けましょう。 以下では症状を予防する食事について詳しく紹介しています。 ストレス管理を行う ストレスや生活習慣などの環境要因で、乾癬性関節炎を悪化させる可能性があります。 ストレスは炎症性サイトカインと呼ばれる物質の分泌を促し、関節や皮膚の炎症を悪化させます。そのため、ストレスの少ない環境で治療を行うのが大切です。 精神的なもの以外にも暴飲暴食など、無意識に身体に与えるストレスにも注意が必要です。ストレスを抱え込まない、十分な睡眠やリラックスできる環境を行いましょう。 感染予防に努める 対策項目 詳細 手洗い・うがい 外出後、食事前、トイレ後などは徹底して行う マスクの着用 飛沫感染のリスクを軽減 予防接種 医師と相談の上、適切な予防接種を受ける 規則正しい生活 十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動など 早期受診 発熱、咳、喉の違和感などは、早めの受診を心がける 乾癬性関節炎は、免疫系の異常によって引き起こされる自己免疫疾患の1つです。免疫機能が過剰に活性化している影響で、感染症に対する抵抗力が低下している可能性があります。(文献2) 感染症を防止するには、手洗いやうがいを徹底し、規則正しい生活を送ることが大切です。 また、乾癬性関節炎の治療では免疫抑制薬が使用されることが多く、感染症にかかりやすくなるリスクがあるため、医師の指示に従った感染症対策が重要になります。 乾癬性関節炎に限らず、発熱、咳、喉の違和感が生じた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。 乾癬性関節炎は初期症状の段階で受診しよう 乾癬性関節炎は初期症状の段階で、医療機関を受診するのが大切です。乾癬性関節炎を完治する治療法は確立されていませんが、症状の活動性を抑制し、進行を抑えることはできます。 乾癬性関節炎の初期症状だと感じた方は当院「リペアセルクリニック」へお気軽にご相談ください。 再生医療を活用し、乾癬性関節炎の進行を抑え、回復を促します。乾癬性関節炎ではないかとお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にお問い合わせください。 参考文献 (文献1) 高山かおるほか.「手湿疹診療ガイドライン」『日本皮膚科学会ガイドライン』pp.1-20,2008年 https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/Hand_eczema_GL.pdf(最終アクセス:2025年3月14日) (文献2) 日本リウマチ学会「乾癬性関節炎(PsA)」 https://www.ryumachi-jp.com/general/casebook/kansenseikansetsuen/#:~:text=%E4%B9%BE%E7%99%AC%E6%80%A7%E9%96%A2%E7%AF%80%E7%82%8E%EF%BC%88PsA%EF%BC%89%E3%81%A8,%E6%AF%94%E3%81%AF%E3%81%BB%E3%81%BC%E5%90%8C%E3%81%98%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82(最終アクセス:2025年3月14日) (文献3) 厚生労働科学研究費補助金「乾癬性関節炎の不可逆的関節破壊進行阻止のための早期発 見と治療を目指した診療ガイドライン策定に関する研究 」2019年 https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/download_pdf/2018/201811014B.pdf(最終アクセス:2025年3月14日) (文献4) S Upala,&A Sanguankeo(2015).Effect of lifestyle weight loss intervention on disease severity in patients with psoriasis: a systematic review and meta-analysis.PudMed https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25920774/ (Accessed: 2025-03-14) (文献5) Céline Phan, MD,et al.(2018)Association Between Mediterranean Anti-inflammatory Dietary Profile and Severity of PsoriasisResults From the NutriNet-Santé Cohort,JAMA,Network 10.1001/jamadermatol.2018.2127(Accessed: 2025-03-14)
2025.03.31 -
- 手部、その他疾患
- 手部
乾癬性関節炎かもしれないけど、何科を受診するべきかわからない 乾癬性関節炎の症状別の受診先を知りたい 関節に腫れや違和感、皮膚の発疹に爪の変化が現れ、乾癬性関節炎の症状かもしれないと思っても、何科を受診するべきかわからないとお悩みではないでしょうか。 乾癬性関節炎とはどんな症状なのか 【症状別】乾癬性関節炎の受診先 乾癬性関節炎の診断基準 乾癬性関節炎になった場合の治療法 乾癬性関節炎は症状によって受診先が変わります。また、乾癬性関節炎についても詳しく紹介します。 乾癬性関節炎でお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。 乾癬性関節炎とは 原因 説明 免疫異常 自己免疫の働きが過剰になり、関節や皮膚に影響を与えることがある 遺伝的要因 家族に乾癬や関節炎のある場合、発症リスクが高まる可能性がある 環境要因 感染症や気候の変化などが影響し、症状が出ることがある 皮膚の乾癬 乾癬を発症している人は、関節の症状が現れることがある 乾癬性関節炎(PsA)は、乾癬(皮膚の疾患)と関節炎が合併した疾患です。日本人では乾癬を発症した方の10~15%に発症すると言われています。(文献1) 症状は多岐に渡り、以下に分類されます。 末梢関節:手足の指の第1関節(DIP関節)を中心に、左右非対称に多関節が侵される 腱付着部炎:アキレス腱や膝蓋腱など、腱・靭帯といった骨に付着する部位に違和感が生じる 指趾炎:手足の指がソーセージの様に腫れることがあり、特に足の第3・4趾によく見られる 脊椎関節炎:背骨や仙腸関節に炎症が起こり、腰痛を発症する(安静時に強くなり、動き出すと改善する) 爪病変:爪の一部の剥離、肥厚、凹みなどの変化が見られる (文献1)(文献2) 2025年現在時点では、乾癬性関節炎が引き起こされる明確な原因やエビデンスは存在せず、根本的な治療法も見つかっていません。 (文献3) 症状が進行し、関節の変形などが引き起こされ、日常生活に支障をきたす可能性があります。 症状の種類としては、関節・皮膚・その他の症状(爪や眼など)があります。症状が合併する可能性もあり、早期の診断と適切な治療が大切です。 【症状別】乾癬性関節炎の受診先 症状 推奨される受診科 説明 皮膚症状 皮膚科 皮膚の発疹や爪の変化が主な症状の場合は、皮膚科を受診 関節症状 リウマチ科(膠原病科) 関節の腫れやこわばりが主な場合は、リウマチ科(膠原病科)を受診 皮膚症状と関節症状の両方 科が連携している医療機関 皮膚症状と関節症状が両方ある場合、専門科が連携している医療機関を選ぶのが望ましい 乾癬性関節炎の受診先は、症状によって異なります。そこで本項目では、症状別で乾癬性関節炎の受診先を解説します。 また、乾癬性関節炎の初期症状について詳しく知りたい方は以下の関連記事をご確認ください。 皮膚症状の場合|皮膚科 乾癬性関節炎の症状が主に皮膚の場合、皮膚科の受診が推奨されます。 乾癬の発症から時間が経過していない場合、別の皮膚病である可能性も高いです。皮膚科を受診する際は、皮膚の症状だけでなく、関節の違和感についても伝えましょう。 関節症状の場合|リウマチ科(膠原病科) 乾癬性関節炎では、関節の腫れ、こわばり、動かしたときの違和感などが現れます。 関節の違和感は炎症によるもので、放置すると関節の変形や可動域の制限につながります。 リウマチ科であれば、関節の炎症や変形を適切に診断し、ダメージを抑えるための治療を受けられます。 関節の違和感に悩まれている方は、早めにリウマチ科を受診し、治療を受けることが大切です。 皮膚症状と関節症状の両方がある場合|科が連携してる医療機関 乾癬性関節炎の関節症状は、関節リウマチと似ている部分が多いです。そのため、皮膚科とリウマチ科が連携している医療機関への受診が推奨されます。(文献3) 乾癬性関節炎は、皮膚科とリウマチ科の両方の診療が必要な疾患です。乾癬の治療と関節の炎症の管理を並行しないと、治療のバランスが崩れることがあります。 また、科が連携している医療機関であれば、皮膚もしくは関節に異常をきたした場合に早期に察知し、適切な治療を受けやすくなります。 関節リウマチについては、以下の記事で詳しく解説しています。 乾癬性関節炎の診断基準 項目 詳細 点数 現在の乾癬 皮膚または爪に活動性の乾癬病変がある 2点 乾癬の既往歴 過去に医師によって乾癬と診断されたことがある 1点 乾癬の家族歴 家族(一親等、二親等)に乾癬の人がいる 1点 爪の病変 爪に特徴的な変化(陥凹、剥離、肥厚など)がある 1点 指炎 指全体がソーセージのように腫れている 1点 リウマトイド因子陰性 リウマトイド因子が陰性である 1点 レントゲン所見 手足のレントゲンで特徴的な骨の変化がある 1点 乾癬性関節炎の診断基準の1つとして、CASPAR分類基準(Classification Criteria for Psoriatic Arthritis)があります。(文献3) CASPAR分類基準は表の項目で計算し、当てはまるごとに点数が加算されて、合計で3点以上に乾癬性関節炎と評価されます。 CASPAR分類基準の中でも、現在の乾癬が当てはまる場合は2点加算され、それ以外の項目は1点加算です。 ただし、CASPAR分類基準は診断方法の1つであり、診断は臨床症状や他の検査結果も総合的に判断され、症状の有無を医師が判断します。 CASPAR分類基準で、3点以上の方は医療機関を受診しましょう。 乾癬性関節炎になった場合の治療法 治療法 有効な理由 薬物療法 炎症を抑える薬や免疫を調整する薬により、関節や皮膚の症状を管理しやすくなる 運動療法 関節の可動域を維持し、筋力を保つことで、関節の機能低下を防ぐ 食事療法 抗炎症作用のある食品を摂取し、体内の炎症を抑え、症状の悪化を防ぐ可能性がある (文献4) 2025年現在、乾癬性関節炎の明確な治療法は見つかっていません。しかし、適切な治療を行うことである程度症状をコントロールし、日常生活や仕事への支障がない状態を目指せます。 主な治療法としては、薬物療法、運動療法、食事療法の3つがあり、症状によって治療法が異なります。 治療法について、詳しく紹介します。 薬物療法 薬の種類 代表的な薬 役割 注意点 鎮痛薬 アセトアミノフェン NSAIDs(イブプロフェン ロキソプロフェン 違和感を和らげる NSAIDsは胃腸障害に注意が必要 疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs) メトトレキサート サラゾスルファピリジン レフルノミド 関節の進行を遅らせる 効果が出るのに時間がかかり、定期的な検査が必要 生物学的製剤 TNF阻害薬 (インフリキシマブ、アダリムマブなど) IL-17阻害薬 (セクキヌマブ、イキセキズマブなど) JAK阻害薬(トファシチニブなど) 炎症を抑える 感染症のリスクに注意が必要 (文献3) 薬物治療は医師の診断のもと薬が処方されます。薬の種類によって、役割や症状改善の効果に違いがあるものの、乾癬性関節炎の改善が望めます。 薬物治療を行う際は、自己判断で薬の量や飲むペースを決めずに医師の指示に従います。 また、副作用が出た場合は使用を中止し、医師へ相談しましょう。 運動療法 運動の種類 目的 具体例 解説 ポイント 関節可動域訓練 関節の動きを良くする 関節をゆっくり動かすなど 関節の柔軟性を保ち、動きをスムーズにします 負荷のかからない範囲で行い、違和感があれば、すぐに中止する 筋力強化訓練 関節を支える筋肉を強化する 軽いダンベル操作など 関節の動きを安定させる 無理のない回数から始め、徐々に増やしていく 有酸素運動 健康状態を改善させる ウォーキングや水泳など 心肺機能を高め、全身の血行をよくする 長時間続けられる、軽い運動を選ぶこと (文献1)(文献3) 運動療法は関節の動きの改善や筋肉強化に役立ち、乾癬性関節炎の症状を軽減できます。 運動療法を行う場合は、自己判断ではなく、医師の指示のもと行うようにしましょう。 また、どの運動を行う場合でも負担が少ないものを選び、無理のない範囲で徐々に慣らしていくのが大切です。 もし、運動療法中に違和感や腫れが発生した場合は運動を中止し、医師に相談しましょう。 食事療法 栄養素 役割 食品の具体例 推奨される食品 オメガ3脂肪酸 炎症を抑える 青魚(サバ、イワシ、マグロ)、亜麻仁油、えごま油 抗酸化物質 関節のダメージを軽減 緑黄色野菜、果物、ナッツ類 ビタミンD 免疫調整、骨の健康維持 魚介類、卵、きのこ類 カルシウム 骨の健康維持 乳製品、小魚、緑黄色野菜 食物繊維 腸内環境を整え、免疫調整 野菜、果物、海藻、きのこ類 栄養素 起こりうる症状 食品の具体例 避けるべき食品 飽和脂肪酸 炎症悪化の可能性 肉の脂身、バター、ラード トランス脂肪酸 炎症を引き起こす可能性 加工食品、揚げ物、マーガリン 精製された炭水化物 血糖値の急上昇、炎症悪化の可能性 白米、パン、麺類、菓子類 過剰な糖分 炎症悪化の可能性 炭酸飲料、菓子類、果物ジュース グルテン グルテン過敏症の場合、炎症悪化の可能性 小麦、ライ麦、大麦 乾癬性関節炎を治す食べ物はありません。しかし、食事で症状の改善は目指せます。 大事なのは、推奨されている食事を普段の食事で、継続的に取り入れることです。 乾癬性関節炎の改善に役立つ食事としておすすめなのが、塩分控えめの和食料理です。 逆に乾癬性関節炎を悪化させる特定の食品はありませんが、過剰な糖分や精製された炭水化物は太りやすく、乾癬悪化につながります。 特定の食品を摂取、避けるだけでは 乾癬性関節炎の改善にはつながらず、食事の取り方に気を付ける必要があります。 具体例としては、腹八分目の食事や暴飲暴食を避けるなどです。乾癬性関節炎だからといって厳密に食べるべき、食べてはいけない食品はなく、バランスの良い食事を日頃から意識すること大切です。(文献5) 乾癬性関節炎の疑いがある方は皮膚科・リウマチ科で早めの受診を 乾癬性関節炎の疑いがある方は、早めの皮膚科・リウマチ科の受診をおすすめします。 乾癬性関節炎の疑いがあるものの、どの科を受診して良いのかわからず診療を躊躇われている方は、当院「リペアセルクリニック」へお気軽にご相談ください。 再生医療を活用し、乾癬性関節炎の回復を促します。 辛い乾癬性関節炎の症状でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にお問い合わせください。 参考文献 (文献1) 一般社団法人 日本リウマチ学会「乾癬性関節炎(PsA)」 一般社団法人 日本リウマチ学会 ホームページ, 2022年5月22日 https://www.ryumachi-jp.com/general/casebook/kansenseikansetsuen/(最終アクセス:2025年3月12日) (文献2) 朝比奈 昭彦「癬性関節炎の不可逆的関節破壊進行阻止のための早期発見と治療を目指した診療ガイドライン策定に関する研究」『厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)』pp1-170, 2019年 https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/download_pdf/2018/201811014B.pdf(最終アクセス:2025年3月12日) (文献3) 日本リウマチ学会「乾癬性関節炎(PsA)」 https://www.ryumachi-jp.com/general/casebook/kansenseikansetsuen/(最終アクセス:2025年5月16日)最終アクセス:2025年3月12日) (文献4) 朝比奈昭彦ほか,「乾癬性関節炎診療ガイドライン 2019」『日本皮膚科学会ガイドライン』pp1-59, 2019年 https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/PsAgl2019.pdf(最終アクセス:2025年3月12日) (文献5) S Upala&A Sanguankeo(2025).Effect of lifestyle weight loss intervention on disease severity in patients with psoriasis: a systematic review and meta-analysis,PubMed https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25920774/(Accessed:2025-03-12)
2025.03.31 -
- その他、整形外科疾患
「歩けるけど痛い。これって肉離れなの?」と不安に思っていませんか? 肉離れは、筋肉が部分的に損傷するけがで、重症度によっては歩行が可能なケースもあります。しかし、「歩けるから大丈夫」と油断すると、悪化や再発のリスクが高まることもあるため要注意です。適切な処置を行うことで、早期回復につながります。 本記事では、肉離れで歩けるけど痛い場合の原因や対処法、早く治すためのポイントを詳しく解説します。正しい知識を身につけて、無理なく回復を目指しましょう。 【基礎知識】肉離れとは 肉離れは、筋肉が部分的または完全に損傷する怪我であり、急激な動きや過度の負荷によって発生します。スポーツ活動中に多く見られますが、日常生活の中でも突然の動作や無理な姿勢によって起こることがあります。 とくに太ももの裏側(ハムストリングス)やふくらはぎ(下腿三頭筋)に発生しやすく、急な痛みや腫れ、内出血などを伴います。症状の程度は軽度の筋繊維の損傷から完全断裂までさまざまです。 適切な初期対応としては、RICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)が基本です。重症度によっては医療機関での診察が必要で、完全な回復には適切なリハビリテーションと十分な休養期間が欠かせません。再発予防のためには、ウォームアップやストレッチを習慣づけることが重要です。(文献1) 歩けるけど痛い肉離れの状態 歩行時に痛みを感じるものの歩ける状態は、軽度の肉離れの可能性が高いといえます。しかし、この段階で無理をすると症状が悪化する恐れがあるため、細心の注意が必要です。 肉離れは以下のように分類されます。 重症度 状態 軽度(1度) 筋肉のわずかな損傷 中度(2度) 筋肉、筋膜の一部断裂状態。皮下出血や患部のへこみが見られる場合がある 重度(3度) 筋繊維や筋膜の断裂。患部のへこみが明確に確認できる (文献2) 軽度であっても適切な処置を怠ると、より重症化する可能性があります。痛みを感じた場合は早めに安静にし、冷却などの応急処置を行いましょう。 自己判断で放置せず、専門医による適切な診断と治療を受けることが、完全回復への近道となります。痛みが持続する場合は、迷わず医療機関の受診をおすすめします。 肉離れで歩けるけど痛いときの対処法 肉離れを起こした際は、RICE処置が効果的な応急処置としておすすめです。 Rest(安静):無理に歩かず、患部を休ませる Iceing(冷却):アイシングを行い、炎症を抑制する Compression(圧迫):テーピングやサポーターで患部を固定する Elevation(挙上):足を心臓より高い位置に保ち、腫れを防ぐ 少し痛いけど歩けるから大丈夫といった考えは危険です。症状が軽いうちに適切な対応をしないと、再発リスクが高まります。痛みがあるにもかかわらず無理に活動を続けると、治癒が遅れる可能性があります。 軽度の肉離れであっても、初期の適切な対応が肝心です。痛みを感じたら早めに処置を行い、必要に応じて医療機関の受診が重要です。完全に回復するまで段階的に活動を再開するよう心がけましょう。 肉離れを早く治すポイント 肉離れは損傷の程度によって治療が異なりますが、回復を促進する重要なポイントがいくつかあります。効果的な回復を目指すためには、以下の3つの側面からのケアが不可欠です。 ストレッチやリハビリ 食事 再生医療(PRP療法) 損傷の程度や回復段階に合わせて適切に組み合わせると、早期回復を目指せます。 ストレッチやリハビリ 軽度から中度の肉離れでは、適切なタイミングで軽いストレッチを行うことで回復を促す効果があります。筋肉の柔軟性を維持し、血行促進や筋繊維の再生を促し、治癒を早めるのです。 しかし、ストレッチやリハビリテーションの開始時期や運動強度を、自己判断しないことです。不適切なタイミングや強度でのストレッチは、損傷した筋組織にさらなる負担をかけ、治癒を遅らせたり症状を悪化させたりする恐れがあります。 医師や理学療法士などの専門家に相談し、個々の状態に合わせた適切なリハビリテーションのプランを立ててもらうことが必須です。肉離れの回復のためには、専門家の指示に従いましょう。 食事 肉離れの予防および治療過程では、適切な栄養摂取が筋組織の修復と強化に重要な役割を果たします。タンパク質の十分な摂取は、損傷した筋繊維の再生と強化に不可欠です。良質なタンパク質源として鶏肉、魚、卵、乳製品、豆類などを積極的に食事に取り入れましょう。 ビタミン類も肉離れの回復をサポートします。ビタミンはコラーゲン生成を促進し、筋機能の維持を助けます。カルシウム、マグネシウム、亜鉛などのミネラルは筋肉の修復に必要不可欠です。(文献3)(文献4) 栄養素をバランスよく摂取すれば、肉離れからの回復が促されるだけでなく、再発リスクも低減できます。ただし、サプリメントに頼る前に、まずはさまざまな食品から自然な形での栄養摂取が基本です。 再生医療(PRP療法) PRP(多血小板血漿)療法は、患者自身の血液から抽出した血小板を高濃度に濃縮し、損傷部位に直接注入する再生医療の一種です。血小板には組織修復を促す物質が豊富に含まれており、患部に直接注射するため治療に効果が期待できます。 肉離れに対するPRP療法は、筋線維や筋膜の修復を加速させるでしょう。従来の保存療法で回復が遅い症例や、中度から重度の損傷に対して有効性が報告されています。PRP注入により、損傷部位の炎症を抑制しながら組織再生を促進し、修復と機能回復を目指します。 リペアセルクリニックでは、あなたの症状に合わせた治療プランをご提案します。再生医療による治療も行っておりますので、メール相談やオンラインカウンセリングをご利用の上、お気軽にお問い合わせください。 肉離れと間違えやすいケガ一覧 肉離れの症状は、ほかの部位のケガと似ている場合があり、適切な治療のためには正確な診断が重要です。注意すべき紛らわしいケガには以下の3つがあります。 筋肉痛 靭帯損傷 アキレス腱断裂 それぞれ発症の状況や治療法が異なるため、症状が似ていても医師による正確な診断が必要です。 筋肉痛 筋肉痛と肉離れは、しばしば混同されやすいものの、発症時期や症状に明確な違いがあります。 筋肉痛は、一般的に運動後の12〜48時間経過してから徐々に痛みが現れる「遅発性筋痛」の特徴を持ちます。これは筋繊維の微小損傷による炎症反応が原因で、外観上の変化はほとんど見られません。通常は数日間で自然に回復します。 肉離れは受傷と同時に即座に痛みを感じるのが特徴です。これは筋線維や筋膜が急激に損傷するために起こります。さらに特徴的なのは、皮下出血による紫色や青色の変色、また筋繊維の断裂により筋肉にくぼみが現れる場合があることです。 発症時期と外観の違いは、自己判断の場合のチェックポイントになります。即時に強い痛みを感じ、外観に変化がある場合は肉離れの可能性が高く、早急な医療的対応が必要です。 靭帯損傷 靭帯損傷は、関節を安定させる重要な結合組織が過度に伸びたり、部分的あるいは完全に断裂したりするために生じる外傷です。主な症状として、受傷直後からの強い痛みと、速やかに現れる腫れが特徴的です。 痛みは非常に強烈であるため、患者は損傷部位周辺の関節や筋肉をほとんど動かせないことがあります。このような可動域の著しい制限は、靭帯損傷の重要な特徴の1つです。(文献5) 損傷の程度によっては、関節の不安定性やきしみ音を伴うこともあり、足首や膝などの荷重関節では、体重をかけることが困難になることも少なくありません。 靭帯損傷が疑われる場合は、自己判断での運動再開を避け、医療機関での診断と治療を受けることが重要です。 アキレス腱断裂 アキレス腱断裂は、下腿三頭筋と踵骨(かかとの骨)を連結する人体最大の腱であるアキレス腱が切れる深刻な外傷です。受傷時には、非常に特徴的な症状が現れます。 多くの人は断裂瞬間に「バチッ」「パチン」といった音を聞く場合もあり、後ろからかかとを強く蹴られたような感覚を経験します。続いて足首からふくらはぎにかけての激痛が走ります。 動作の特徴として、通常の歩行は可能であっても、つま先立ちができなくなることが挙げられます。アキレス腱はつま先を下に向ける動きに必要であるためです。(文献5) このような症状がある場合は、早急に整形外科を受診しましょう。適切な治療が遅れると、回復に要する時間が長くなる可能性があります。 肉離れで歩けるけど痛いときに病院にいくべき判断ポイント 肉離れにおいて、歩けるから大丈夫といった自己判断は非常に危険です。たとえ歩行可能な軽度の肉離れであっても、医療機関での受診をおすすめします。理由は、適切な治療が回復に大きく影響するためです。 軽度と思われる症状であっても、専門家の目で評価されない限り、その損傷の状態を正確に判断するのは難しいためです。自己判断で経過観察を選択すると、治療の適切なタイミングを逃がし、症状が悪化する可能性があります。 以下のような場合は受診を考えましょう。 痛みが24時間以上続く 患部に腫れや内出血がある 通常の動作で痛みが増す 過去に肉離れを経験している 初期段階での適切な診断と処置は、回復期間の短縮や再発リスクの低減、筋肉の機能維持につながります。最終的には、専門家の判断に従いましょう。(文献6) 歩けるけど痛い肉離れでも病院を受診しよう 肉離れの疑いがある場合は、症状の程度にかかわらず、迅速な医療機関の受診をおすすめします。歩けるから大丈夫といった判断は、肉離れの治療において誤った判断となります。痛みを感じながら歩行可能な状態であっても、決して自己判断で経過観察をしてはなりません。 医師による適切な診断は損傷の正確な状態を把握し、患者本人に合った治療計画を立てる上で不可欠です。早期の適切な処置は、回復期間の短縮だけでなく、再発防止や今後の筋肉状態の維持にも関わります。 肉離れと思われる症状を感じたら、様子を見ようと考えるのではなく、早めの受診を心がけましょう。一見軽度に思える症状でも、医師が診察すると予想以上の損傷が見つかる場合もあります。 自分の身体を大切にし正しい判断を仰ぐことが、スポーツ復帰への最短ルートです。 肉離れでお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」のメール相談やオンラインカウンセリングにてお気軽にお問い合わせください。 参考文献 文献1 医療法人社団 信愛会 瀬戸整形外科クリニック「肉離れの応急処置、および、治療&予防方法」瀬戸整形外科クリニックホームページ https://setoseikei.com/2024/10/21/first-aid-for-separation-of-the-flesh/(最終アクセス:2025年3月16日) 文献2 MSD「捻挫およびその他の軟部組織損傷の概要」MSDマニュアルプロフェッショナル版,2023年7月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/22-%E5%A4%96%E5%82%B7%E3%81%A8%E4%B8%AD%E6%AF%92/%E6%8D%BB%E6%8C%AB%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%BB%96%E3%81%AE%E8%BB%9F%E9%83%A8%E7%B5%84%E7%B9%94%E6%90%8D%E5%82%B7/%E6%8D%BB%E6%8C%AB%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%BB%96%E3%81%AE%E8%BB%9F%E9%83%A8%E7%B5%84%E7%B9%94%E6%90%8D%E5%82%B7%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81?query=%E7%AD%8B%E6%8C%AB%E5%82%B7(最終アクセス:2025年3月16日) 文献3 城西大学「アスリート・運動をする人が摂るべき栄養素やサプリメントについて解説」JOSAI★LAB,2024年12月27日 https://www.josai.ac.jp/josai_lab/692/(最終アクセス:2025年3月16日) 文献4 TENTIAL「肉離れからいち早く回復するための食事とは?必要な栄養素を解説」TENTIALホームページ,2021年2月23日 https://tential.jp/journals/others/flesh_away/010(最終アクセス:2025年3月16日) 文献5 あらおと整形クリニック「靭帯損傷・腱断裂・肉離れ」あらおと整形クリニックホームページ http://www.araoto.net/wound/ligament.html(最終アクセス:2025年3月16日) 文献6 森整形外科リハビリクリニック「肉離れ」森整形外科リハビリクリニックホームページ https://www.moriseikei.or.jp/weaned-off-meat/(最終アクセス:2025年3月16日)
2025.03.31 -
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太ももが少し痛いんだけど、肉離れかな 昨日サッカーした時に足が痛くなったけど、軽い肉離れになったかも 肉離れは、筋肉の一部または全体の組織の断裂をいいます。激しくスポーツする人や、久しぶりに体を動かした人などが受傷する場合が多いです。 本記事では、軽度の肉離れの症状や原因、治療法などを詳しく解説します。治療期間や早く治す方法も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。 軽度な肉離れとは 軽度の肉離れは筋肉の一部が損傷している状態です。症状は比較的軽く、多くの場合は適切な休息と処置で回復します。肉離れの瞬間、「プチっ」といった音が聞こえることがありますが、これは筋肉が断裂する音です。 肉離れは筋肉の断裂状態によって重症度が変わります。 重症度 特徴 軽症 筋肉の細かな損傷 中等症 筋肉の部分的な断裂 重症 筋肉の完全な断裂 (文献1) 以下の筋肉で肉離れが多くみられます。それぞれの部位ごとの重症度を説明します。 重症度 大腿四頭筋 ハムストリングス 腓腹筋 軽症 うつ伏せで膝を90度以上曲げられる 仰向けで膝をまっすぐ伸ばし脚を70度位まで上げられる アキレス腱を伸ばすと若干の痛みがある 中等度 うつ伏せで膝を45度~90度曲げられる 仰向けに寝て膝をまっすぐ伸ばし脚を30度~70度位まで上げられる アキレス腱を伸ばすと強い痛みがあり、膝を曲げた状態で行うと痛みが弱くなる。つま先立ちができる 重症 うつ伏せで膝を45度位まで曲げられる 仰向けに寝て膝をまっすぐ伸ばし脚を30度位まで上げられる 膝を曲げた状態でもアキレス腱を軽く伸ばしただけで強い痛みがある。つま先立ちができない (文献2) 軽度と思っていても重症だった場合もあるため、適切な診断と治療のためには専門医に診察してもらいましょう。 肉離れの原因 ここからは、以下のような肉離れの原因を紹介します。 急な動作 筋肉疲労 準備運動不足 水分不足 急な動作 肉離れは、急激な筋肉への負荷が原因で発生する筋肉の損傷です。急なダッシュやジャンプなどの瞬発的な動作時に、筋肉がその急激な負荷に対応できなくなった際に起こります。 急な動作で筋肉に過度のストレスがかかることにより、筋肉の一部が切れたり裂けたりします。筋肉が本来の伸縮性の限界を超えて強制的に引き伸ばされると、耐性を超えてしまい損傷が生じるのです。 肉離れはとくにスポーツ活動中に多く見られ、ウォーミングアップ不足は危険要因となります。急な動作をしようとせず、適切な準備運動やトレーニングをしましょう。 筋肉疲労 筋肉の疲労は肉離れのリスク因子です。疲労状態の筋肉は正常な収縮・弛緩パターンを維持できず、急激な負荷に対して適切に反応できなくなります。能力が低下した状態で瞬発的な動きを行うと、筋肉が損傷するリスクが高まるでしょう。 十分な休息なく運動を継続すると、肉離れの危険性が増します。運動後にはストレッチやクーリングを行い、筋肉の疲労回復を促します。 十分な休息と回復時間の確保が重要なため、トレーニングスケジュールに回復日を組み込み、筋肉の過労を避ける対策をしましょう。 準備運動不足 適切なウォーミングアップとストレッチは、肉離れの予防において大切な役割を果たします。準備運動を怠ると、筋肉は十分な血流を得られず硬い状態のまま活動しなければなりません。 硬いままの筋肉は柔軟性が低下し、急激な動きや強い負荷に対して適応しにくくなります。通常なら対応できるはずの力にも耐えられなくなり、筋肉の断裂リスクが高まるでしょう。 効果的な準備運動は体温の上昇と、筋肉の伸縮を促します。適切なストレッチをすると筋肉を柔らかい状態に保てるため、安全に運動できるようになるでしょう。軽い有酸素運動の後、それぞれの筋肉に対する動的ストレッチを行うと、肉離れのリスクを大幅に減少できます。 水分不足 体内の水分不足は肉離れの発生リスクを高める原因となりますが、水分摂取は肉離れ予防において見過ごされがちです。 筋組織は約75%が水分で構成されており、適切な水分レベルは筋肉の正常な機能と柔軟性の維持に必要不可欠です。脱水状態になると筋肉内の水分が減少し、筋力低下や疲労感、けいれんなどを引き起こします。(文献3) 強度の高い運動や暑い環境での活動時には、発汗により水分不足が急速に進むため注意が必要です。運動前、運動中、運動後の水分補給は、筋肉の機能を適切に保ち、肉離れのリスクを軽減するための基本的な対策です。 軽度な肉離れの症状 軽度な肉離れは、受傷の瞬間に特徴的な「プチッ」といった音が聞こえることがあり、これは筋肉が部分的に断裂する音です。 軽度な肉離れの症状は以下のとおりです。 損傷部位は痛むが動くことはできる 損傷部位を押すと痛む 関節を動かしたときに強く痛む 皮膚上からもわかるへこみ 内出血 軽度な肉離れからの回復は、適切な処置と休息により、通常1〜2週間程度で日常生活に支障をきたさないレベルまで回復します。筋組織の完全な修復と機能回復にはより期間が必要な場合もあり、スポーツ活動への完全復帰には慎重に経過観察しなければなりません。 早期の無理な活動再開は、再発リスクを高めるため注意しましょう。 軽度な肉離れを早く治す治療法 軽度な肉離れは、対処方法によって回復が早くなる場合があります。ここからは、以下のような軽度な肉離れを早く治す治療法を解説します。 RICE処置 リハビリ PRP療法 RICE処置 軽度の肉離れを早く治すにはRICE処置が効果的です。これはRest(安静)、Icing(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字を取った言葉です。それぞれの処置の方法は、以下のようになります。 治療法 具体的方法 安静 (Rest) 損傷部位の使用を最小限に抑える 冷却 (Icing) 20分間の氷湿布を繰り返す 圧迫 (Compression) 弾性包帯やテーピングで適度に圧迫 挙上 (Elevation) 損傷部位を心臓より高い位置に上げる (文献2) 初期対応を適切に行うと、肉離れからの回復期間が短縮でき機能回復につながります。ただし、症状が重い場合や改善が見られない場合は、医師の診察を受けましょう。 リハビリ 軽度の肉離れでは、RICE処置による急性期の対応後、リハビリが回復において極めて重要になります。受傷後3〜5日経過して痛みや腫れが落ち着いてきていれば、リハビリの開始に適した時期といえます。(文献4) リハビリでは、修復しつつある筋肉に対して適切な刺激を与え、組織の再生や機能を回復させることが目標です。リハビリは患者さん一人ひとりの症状に合わせて段階的に進められます。最初は軽度の痛みを感じない範囲での静的ストレッチから始め、徐々にダッシュやジャンプなど強度を増していきます。 専門家の指導の下でリハビリを行えば、無理なく効果的な回復が期待できるでしょう。 PRP療法 PRP(多血小板血漿)療法は、肉離れの先進的な治療です。PRP療法では、患者自身の血液から高濃度の血小板を含む血漿を分離し、損傷した筋組織に直接注入します。血小板には多くの成長因子が含まれており、筋組織の再生と修復を促進します。 PRP療法は、従来の保存療法に反応が乏しい慢性的な肉離れや、競技復帰を早める必要がある選手に考慮されるケースが多いです。 リペアセルクリニックでは、あなたの症状に合わせた治療プランをご提案します。再生医療による治療も行っておりますので、メール相談やオンラインカウンセリングをご利用の上、お気軽にお問い合わせください。 軽度な肉離れの治療期間 軽度の肉離れは筋肉の細かな損傷であり、完全な断裂ではありません。適切な処置と休息により、1〜2週間程度で回復します。 軽度な肉離れは、急激な動きや過度の負荷により筋肉が耐えられる限界を超えてしまい、筋肉の一部が断裂した状態です。部分的な損傷に留まるため、機能が完全に失われている状態ではありません。 症状としては損傷部位に限定した痛みや、圧迫時の痛みが特徴的です。軽度の内出血や腫れを伴うこともありますが、自力歩行や基本動作は可能な状態です。 症状の消失後も再発防止のため、段階的なリハビリテーションを通じて筋力と柔軟性を徐々に回復させる必要があります。十分に回復期間を確保して、将来にわたり安心してスポーツのできる筋肉を保っていきましょう。 軽度な肉離れを正しく理解し適切な対処と予防を心がけよう 軽度な肉離れは筋肉の細かな損傷で、急激な動きや過度の負荷により発生します。受傷時には「プチッ」といった音が聞こえる場合があり、局所的な痛みや圧痛、軽度の内出血やへこみが特徴です。基本的な動作や歩行は可能ですが、関節を動かすと痛みが増強します。 対処法としては、RICE処置が最も効果的です。急性期の症状が落ち着いた後は、適切なリハビリを通じて、段階的に筋力と柔軟性を回復させましょう。通常1〜2週間で日常生活に支障のないレベルまで回復しますが、完全な治癒にはより長い時間を要します。 予防には、十分なウォーミングアップや適切な水分補給、筋肉疲労時の休息が効果的です。過去に肉離れを経験した部位は再発しやすいため、筋力トレーニングと柔軟性を向上しましょう。 肉離れでお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」のメール相談やオンラインカウンセリングにてお気軽にお問い合わせください。 軽度な肉離れに関するよくある質問 肉離れが軽度の場合はお風呂に入っても問題ありませんか? 軽度の肉離れでも入浴時の注意が必要です。肉離れ直後は筋肉に炎症が生じており、血行を促進する入浴は避けるべきとされています。入浴によって炎症が悪化する可能性があるため、受傷後2~3日はシャワーのみがおすすめです。 この期間は患部を温めず、安静にして炎症の悪化防止が回復への第一歩です。医師の指示に従い、適切な処置と休息を取れば、肉離れからの回復を早められます。 軽度な肉離れでもテーピングした方が良いですか? 軽度の肉離れに対してもテーピングは効果的です。テーピングは予防や応急処置としてだけでなく、患部保護と再発リスク軽減にもなります。 軽度の肉離れでは、テーピングが筋肉の動きをサポートするため、炎症の広がりを防止できます。適切にテーピングして痛みを和らげながら回復を促進し、日常生活への早期復帰につなげましょう。 肉離れが軽度の場合自然に治癒しますか? 軽度の肉離れは筋肉の細かい損傷が特徴で、自然治癒が可能です。完治までは1〜2週間程度が必要です。受傷直後は安静にし、RICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)を適切に行い回復を促します。 しかし、自己判断で軽度と思っていても実際には中度な損傷の可能性もあるため、自然治癒を期待する場合でも医療機関の受診がおすすめです。医師による適切な診断とアドバイスが、回復への近道となるでしょう。 参考文献 文献1 伊藤超短波株式会社「肉離れとはどんな症状?原因や対処法も合わせて解説」伊藤超短波株式会社ホームページ https://www.wellness.itolator.co.jp/column/003.html(最終アクセス:2025年3月18日) 文献2 三笠製薬株式会社「3.スポーツ外傷の応急処置(RICE処置)」三笠製薬株式会社発行資料 https://jsoa.or.jp/content/images/2023/05/s03.pdf(最終アクセス:2025年3月18日) 文献3 あまん整体院・接骨院「水分と筋肉の関係について」あまん整体院・接骨院ホームページ https://www.amanseitaiin.com/post/%E6%B0%B4%E5%88%86%E3%81%A8%E7%AD%8B%E8%82%89%E3%81%AE%E9%96%A2%E4%BF%82%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6(最終アクセス:2025年3月18日) 文献4 社会医療法人 松田整形外科記念病院「理学療法科(リハビリテーション)」松田整形外科記念病院ホームページ https://matsuda-oh.com/rehabili/lowerlimbs_4124(最終アクセス:2025年3月18日)
2025.03.31 -
- その他、整形外科疾患
スポーツをしていたら急に足に激しい痛みが走ったけど肉離れなのかな 肉離れになったら、まずどんな応急処置をすれば良いの 上記のような疑問をお持ちの方もいるでしょう。 肉離れは突然起こることが多く、痛みや腫れ、内出血などを引き起こします。適切に対処しないまま放置すると、回復が遅れるだけでなく再発のリスクも高まってしまう可能性があるため要注意です。 本記事では、肉離れを疑ったときの応急処置方法から、治療の流れ、予防のポイントまでを解説します。肉離れになったときの応急処置がわからないと考えている方は、ぜひご覧ください。 肉離れの応急処置 肉離れの応急処置には、RICE処置が効果的です。これはRest(安静)、Icing(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字を取った言葉です。(文献1) ケガをした直後にRICE処置を適切にすれば、症状の悪化を防ぎ、回復を早められます。医療機関を受診する前に、まずはこの基本的な処置をしましょう。 ここからはRICEの4つの処置について、詳しく説明していきます。 安静 肉離れを起こした際、重要な処置の一つが安静です。安静とは、損傷した筋肉を無理に動かさずに十分に休ませることを意味します。 肉離れは筋繊維の部分的な断裂や損傷が起こっている状態です。さらに筋肉を使い続けると、断裂箇所が大きくなり、より深刻な損傷へと進行する恐れがあります。(文献1)つまり、軽度の肉離れが中度や重度へと悪化する可能性が高まるのです。 安静を保つことで、傷ついた筋繊維が自然治癒するための準備を整えられます。受傷直後の数日間は、痛みのある動作を避け、患部への負担を最小限に抑えることで回復へ近づきます。 医師の指示に従いながら、適切な安静期間を設けましょう。 冷却 肉離れが発生すると、筋繊維の断裂によって組織が炎症を起こし、腫れや内出血が生じます。このとき冷却をすると、症状を効果的に抑えられます。 冷却は、血管を収縮させる作用があり、出血量の軽減、腫れの抑制、痛みの緩和に効果的です。受傷後できるだけ早く冷却を始めましょう。 具体的な冷却方法としては、氷や保冷剤をビニール袋に入れ、薄いタオルで包んでから患部に当てます。直接皮膚に氷を当てると凍傷のリスクがあるため、必ず布などを間に挟みましょう。1回のアイシングは15~20分程度が目安で、その後は再び痛くなったら冷却を数回繰り返します。(文献2) 受傷後24〜48時間は冷却がとくに効果的ですが、その後も痛みや腫れが続く場合は継続してみましょう。(文献3) 圧迫 肉離れを起こした筋肉には、適切な圧迫処置が効果的です。テーピングや弾性包帯を使って患部に適度な圧力をかけると、内出血や腫れの進行を抑制できます。圧迫は毛細血管からの出血を最小限に抑え、過剰な浮腫(むくみ)を防ぐ働きがあります。 太ももの肉離れの場合、具体的な圧迫方法としては、まず弾性包帯とパットが必要です。包帯を巻く前に、患部が清潔で乾いていることを確認してください。パッドを患部に当て、弾性包帯でらせん状に巻いていきます。 圧迫は強すぎず弱すぎない適度な強さで行います。血行不良の兆候(しびれ、皮膚の色の変化、冷感など)が現れた場合は、すぐに緩めましょう。(文献3) 挙上 肉離れが発生した場合、患部を心臓より高い位置に保つ挙上をしましょう。挙上すると、心臓に向かって血液が流れるため、腫れや炎症を効果的に抑制できます。 具体的な挙上方法としては、太ももの肉離れの場合、仰向けに寝た状態で患部の下に枕やクッションを何個か重ねて配置し、脚全体が心臓より高くなるようにします。ソファや椅子に座る場合は、別の椅子やスツールを使って脚を高く上げるようにしましょう。(文献3) 挙上は腫れが続く限り、可能な限りの継続が望ましいです。就寝時も枕を使って患部を少し高くすると、夜間の腫れを軽減できます。 他のRICE処置(安静・冷却・圧迫)と組み合わせると、肉離れの回復には効果的です。ただし、痛みを伴う無理な姿勢での挙上は避けましょう。 肉離れにおける応急処置後の治療方法 肉離れの治療の基本となるのが安静です。痛みを感じる動作を控え、患部の負担を軽減します。湿布薬の使用も効果的で、消炎鎮痛作用のある成分が含まれた湿布を患部に貼ると、痛みや炎症を和らげられます。 消炎鎮痛作用のある塗り薬を患部に塗布したり、医師の処方による内服薬の服用も症状改善につながります。 肉離れは適切な治療とリハビリを行わないと再発しやすい特徴をもちます。完全に回復するまでには一般的に4週間程度かかり、その間は適切なケアが重要になります。(文献4) 近年、注目されている治療法の一つが再生医療のPRP療法です。PRP療法は患者自身の血液から血小板を高濃度に濃縮した血漿を抽出し、損傷部位に直接注入する方法です。血小板に含まれる成長因子が組織修復を促進し、自然治癒力を高める効果が期待できます。 リペアセルクリニックでは、あなたの症状に合わせた治療プランをご提案します。再生医療による治療も行っておりますので、メール相談やオンラインカウンセリングをご利用の上、お気軽にお問い合わせください。 肉離れの予防方法 肉離れはスポーツの場面で起こることが多いですが、予防が可能です。ここからは、肉離れの予防方法について解説します。 身体を温める 肉離れを予防するには、筋肉の冷えを防ぐことが重要です。体温が低下すると筋肉も冷えてしまい、柔軟性や弾力性が失われて伸縮性が低下します。このような状態で急に強い力をかけたり、無理な動きをしたりすると、筋繊維が断裂して肉離れを起こしやすくなります。 冬場や冷房の効いた室内、運動前の体が十分に温まっていない状態では注意が必要です。予防のためには、運動前の十分なウォームアップが欠かせません。具体的には、軽いジョギングやその日使う筋肉を意識した動的ストレッチが効果的です。また、日常的に適切な服装で体を冷やさないよう心がけ、入浴での全身の血行促進も効果的です。 運動時には保温性のある適切なウェアを着用し、屋外での活動時には天候や気温に合わせた服装を心がけましょう。体を温めると筋肉の柔軟性が保て、肉離れのリスクを軽減できます。 十分にストレッチをする 肉離れの主な原因の一つに、運動前の準備不足が挙げられます。日頃から運動習慣がない方は筋肉が硬くなっており、急に激しい動きをすると筋繊維が断裂しやすくなります。運動不足の状態から突然激しい運動をすると、肉離れのリスクを大幅に高めることになるでしょう。 肉離れのリスクを軽減するには、運動前に適切なストレッチをして、筋肉を十分にほぐすことが重要です。ストレッチにより筋肉の柔軟性が向上し、急な動きや負荷にも対応できるようになります。普段使わない筋肉を使う運動をする場合は、その部位を重点的にストレッチすると、肉離れの予防効果が期待できます。 肉離れの起きやすいふくらはぎやハムストリングス、太ももを中心にストレッチしましょう。 無理な動作をしない スポーツ活動中に肉離れを起こす主な原因の一つは、無理な動きや急激な負荷です。競技中の勝負へのこだわりや、自分の限界を超えた無理な動きは筋肉に過度の負担をかけ、肉離れのリスクを高めます。 自分の体力や筋力の限界を理解し、段階的に運動強度を上げていきましょう。また、疲労が蓄積している状態では、筋肉が適切に機能せず、負荷に耐えられなくなるため注意が必要です。 指導者がいる環境では、正しい技術や体の使い方を学ぶと肉離れ予防に効果的です。専門知識を持った指導者からフォームの指導を受けると、筋肉への不必要な負担を軽減できます。初心者や若年層のアスリートは、基本的な動作をていねいに学ぶと、将来的な肉離れのリスクを減らせます。 無理をせず、適切に体を動かし、安全にスポーツを楽しみましょう。 しっかりと休息を取る 十分な休息は肉離れ予防において非常に重要です。過度なトレーニングや連続した運動により休息時間が不足すると、筋肉が常に緊張状態となり硬くなってしまいます。緊張状態では筋肉の弾力性が低下し、わずかな負荷でも肉離れを起こすリスクが高まります。 また、精神的なストレスも筋肉の緊張を引き起こす要因です。ストレスを感じると身体は自然に緊張し、筋肉も硬くなりやすい状態になります。メンタル面のケアも肉離れ予防には欠かせません。 適切な休息日を設けると、筋肉は本来の柔軟性を取り戻しリラックスした状態になります。次の運動時に筋肉が適切に伸縮できるようになり、肉離れのリスクを軽減できます。 日常から身体を動かしておく 運動不足が続くと筋肉が徐々に硬くなり、柔軟性が失われていきます。このような状態では、特別な運動をしなくても、日常生活の何気ない動作で突然肉離れを起こすリスクが高まります。 肉離れを予防するためには、定期的な軽い運動が効果的です。ウォーキングや軽いジョギングは、筋肉に過度な負担をかけることなく血流を促進し、筋肉の柔軟性を維持するのに適しています。(文献5) 軽い有酸素運動を日常に取り入れれば、筋肉が硬くなるのを防ぎ、健康的な身体機能を維持できます。 肉離れは応急処置の有無が早期回復のカギ 肉離れを起こした直後の適切な応急処置は、回復期間を大きく左右します。発症直後のRICE処置が重要です。 初期対応を怠ると、症状が悪化して回復が遅れる可能性があります。逆に適切な応急処置をすれば、治癒過程がスムーズに進み、早期回復につながります。 肉離れでお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」のメール相談やオンラインカウンセリングにてお気軽にお問い合わせください。 肉離れの応急処置に関するよくある質問 ここからは、肉離れの応急処置に関するよくある質問を紹介します。 肉離れの応急処置にテーピングは効果的ですか? 肉離れの応急処置として、テーピングは効果的な方法です。適切にテーピングすると患部が圧迫されるため、内出血の広がりを防ぎ、炎症の拡大を抑制する働きもあります。組織のダメージを最小限に抑え、結果として回復期間の短縮につながります。 テーピングは簡単でありながら、肉離れの初期対応として非常に重要な役割と言えるでしょう。 肉離れの応急処置に湿布は効果的ですか? 肉離れの応急処置として冷湿布は効果的です。湿布は患部を適度に冷却し、炎症や痛みを和らげる働きがあります。 就寝時にも患部を冷やした方が良いですが、保冷剤の使用は危険性を伴う場合があります。睡眠中に皮膚と長時間接触したままになると、気づかないうちに凍傷を引き起こす可能性があるためです。 凍傷を避けるためにも、就寝時には安全性の高い湿布の使用がおすすめです。 肉離れの応急処置はどのくらい冷やしたら良いですか? 肉離れを起こした直後はアイシングが効果的ですが、冷やしすぎないようにしましょう。過剰なアイシングは筋肉を必要以上に硬くさせ、回復に必要な血行を阻害してしまうリスクがあります。一度のアイシングは15~20分程度を目安とし、それ以上長時間続けないようにしましょう。 適切な時間でのアイシングは、炎症を抑えつつも回復に必要な血流を維持できるため、回復へとつながります。 参考文献 文献1 社会福祉法人 恩賜財団 済生会「筋挫傷(きんざしょう)」済生会ホームページ,2016年9月28日 https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/muscle_strain/#:~:text=%E7%9B%AE%E6%8C%87%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86%E3%80%82-,RICE%E5%87%A6%E7%BD%AE%E3%81%A8%E3%81%AF,-%E5%AE%89%E9%9D%99%EF%BC%88Rest%EF%BC%89(最終アクセス:2025年3月14日) 文献2 一般社団法人 日本スポーツ整形外科学会「スポーツ外傷の応急処置(RICE処置)」日本スポーツ整形外科学会ホームページ https://jsoa.or.jp/content/images/2023/05/s03.pdf(最終アクセス:2025年3月15日) 文献3 ニチバン株式会社「RICE(ライス)処置」battlewinホームページ https://www.battlewin.com/beginners_taping/rice.html(最終アクセス:2025年3月15日) 文献4 大正大学「保健室だより」2016年 https://www.tais.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2016/10/4f11fee531b8256a8ed52f95158831e7.pdf(最終アクセス:2025年3月15日) 文献5 医療法人社団 信愛会 瀬戸整形外科クリニック「肉離れの応急処置、および、治療&予防方法」瀬戸整形外科クリニックホームページ https://setoseikei.com/2024/10/21/first-aid-for-separation-of-the-flesh/#:~:text=%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82-,%E2%96%A0%E8%82%89%E9%9B%A2%E3%82%8C%E3%81%AE%E4%BA%88%E9%98%B2%E6%96%B9%E6%B3%95,-%E2%97%8E%E7%AD%8B%E8%82%89%E3%82%92%E6%B8%A9(最終アクセス:2025年3月15日)
2025.03.31 -
- その他、整形外科疾患
肉離れになったらストレッチした方が良いのか 肉離れしない方法を知りたい 肉離れは、主にスポーツをした際に起きるケガの1つです。痛みや腫れなどが出現するため、ストレッチで和らげようとする場合もあるでしょう。しかし、肉離れした後にストレッチするのは注意が必要です。 本記事では、肉離れの原因や症状、整形外科の受診ポイントとあわせて、ストレッチの注意点や、予防法について詳しく解説していきます。 肉離れとは 肉離れとは、筋肉の繊維が部分的または完全に断裂する状態です。筋肉は細い繊維の束で形成されており、強い衝撃や急激な負荷により繊維が傷つくと、痛みや内出血、腫れなどの症状が現れます。 主に瞬発的な動き(ダッシュやジャンプなど)で大きな力が筋肉にかかった際に発生しやすく、部活動やスポーツ中に起こることが多いケガです。症状は痛みの程度や炎症の度合いによって異なります。(文献1)(文献2) 軽度では軽い痛みがある程度ですが、中程度以上になると歩行困難なほどの強い痛みを伴います。重症の場合は筋繊維の大きな断裂を引き起こし、完全回復までに長期間を要する場合が多いです。早期の適切な対処と整形外科での診断が重要になります。 【前提知識】肉離れ発症直後のストレッチはNG! 肉離れを起こした直後、少し伸ばした方が良いのではと考えてストレッチをしてしまう方がいますが、これは避けるべきです。 肉離れは筋繊維が断裂した状態であるため、発症直後のケアとしては、まずアイシングが最優先です。冷却によって炎症を抑え、内出血の拡大を防ぎます。弾性包帯などを用いた適切な圧迫も重要で、腫れの進行を抑制できます。 肉離れを起こした後の数日間は、ストレッチや筋肉トレーニングは行わないでください。断裂した筋繊維に再び負荷をかけることで、症状が悪化し、回復期間が長引いてしまう恐れがあります。(文献3) 正しいケアをして、医師の指示に従って適切なタイミングでリハビリを始めることが、スムーズな回復へつながっていきます。 肉離れ後のストレッチ方法(リハビリテーション) 肉離れからの回復過程では、段階に応じた適切なストレッチが重要です。どの段階でも、痛みが出ない範囲内で行うことが大前提となります。 3~5日後 肉離れの痛みが落ち着く3〜5日後にリハビリ開始を判断しましょう。ハムストリングス(太ももの裏側)の場合、仰向けになって太ももの裏を抱え、膝が伸ばせるようであればストレッチを始める目安になります。 ハムストリングスの肉離れには、段階的に以下のエクササイズが効果的です。 ヒップエクステンション レッグカール ハーフスクワット ブリッジエクササイズ を痛みの出ない範囲で行い、徐々に強度を上げていくと筋肉の回復を促進できます。ただし、痛みが再発する場合は無理せず、専門家の指導を受けることをお勧めします。(文献3) 回復期 ストレッチを行っても痛みや違和感がなくなったら、スポーツ復帰に向けた運動を段階的に開始できます。このときの負荷の上げ方が再発防止のポイントです。 最初はジョギングなど比較的負担の少ない有酸素運動から始めましょう。身体の状態を確認しながら、徐々にジャンプやダッシュといった瞬発力を必要とする動きへと移行します。(文献3) 注意すべき点として、焦りは禁物です。急激に強い負荷をかけてしまうと、回復した筋肉が再び損傷してしまう可能性があります。もう大丈夫だろうと考えずに、計画的に運動強度を増加していきましょう。 肉離れを予防するストレッチ方法 ここからは、以下のような肉離れのよく起きる筋肉別のおすすめのストレッチ方法を紹介します。 大腿四頭筋 ハムストリングス 下腿三頭筋 大腿四頭筋 このストレッチは大腿四頭筋(太ももの前側)の筋肉を効果的に伸ばすストレッチです。 まず横向きに寝た状態で、下側の脚の股関節と膝関節を軽く曲げて安定させます。この姿勢がストレッチの土台となります。 次に、上側の脚の膝を曲げて、同じ側の手で足首をしっかりとつかみます。そのまま股関節をゆっくりと後方に伸ばしていきます。(文献4) このとき、太ももの前側に心地良い伸張感を感じる強さで行うことがポイントです。無理に引っ張りすぎず、痛みが出ない範囲で筋肉が伸びていると感じる程度に調整しましょう。 ハムストリングス ハムストリングス(太ももの裏側)の筋肉を効果的に伸ばすストレッチです。 まず地面に座った状態から始めます。片方の膝を曲げて足裏を反対側の太ももの内側に添えるようにし、もう片方の脚はまっすぐ伸ばします。次に、伸ばしている脚の方向へ上半身をゆっくりと前傾させていきます。(文献4) 動作を行う際は、膝の裏からお尻にかけて心地良い伸張感を感じる程度の強さで行うことがポイントです。無理に前屈せず、自分の柔軟性に合わせて少しずつ深めていきましょう。 下腿三頭筋 このストレッチは、下腿三頭筋(ふくらはぎ)の筋肉を効果的に伸ばすシンプルなストレッチです。 まず床に座り、両脚をまっすぐ前に伸ばします。次に、タオルやストレッチ用のロープなどを足の裏に引っ掛けます。手でタオルやロープの両端をしっかりと握り、ゆっくりと手前に引きます。膝がしっかり伸びている状態になっているか確認してから行いましょう。(文献4) 動作を行う際のポイントは、ふくらはぎや膝の裏側の筋肉が伸びていると感じる強さで引くことです。痛みを感じるほど強く引くのはやめましょう。 肉離れからの回復期にはとくに慎重に行い、少しでも痛みを感じたらすぐに中止しましょう。 肉離れになったときの応急処置 肉離れが起きた直後は、RICE処置をしましょう。これはRest(安静)、Icing(アイシング)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字を取ったもので、ケガの急性期における基本的な応急処置です。この処置により、炎症を抑え痛みを緩和し、回復を早められます。 ここから詳しく解説していきます。 安静 肉離れの応急処置では、まず最優先すべきはRest(安静)です。傷ついた筋繊維をこれ以上損傷させないために、患部を動かさず休息を与えることが必要不可欠です。(文献1)(文献5) 少し動かした方が良くなるのではと考えてしまうのは危険です。無理に動かすことで断裂した筋繊維がさらに損傷し、回復期間が長引く可能性があります。適切な医療的判断があるまでは、患部への負荷を最小限に抑え、安静を保つことが回復へとつながります。 冷却 肉離れの応急処置における次のステップは、Icing(アイシング)です。患部を氷のうなどで冷やしましょう。 アイシングは血管を収縮させ内出血の拡大を防ぐとともに、炎症を抑制し痛みの緩和効果も期待できます。 受傷後直ちに20分程度のアイシングをして、その後も痛みが出現したら繰り返すことが理想的です。ただし、氷や氷のうを直接皮膚に当てないよう、タオルなどで包んで使用しましょう。(文献1)(文献5) 圧迫 肉離れの応急処置の3番目のステップは、Compression(圧迫)です。患部を弾性包帯やサポーターなどで適度に圧迫して、腫れの拡大を抑制しましょう。 圧迫によって断裂した筋繊維からの出血や浸出液の広がりを最小限に抑え、炎症の範囲を限定させる役割があります。患部を固定して不必要な動きを制限する効果もあります。 ただし、強すぎる圧迫は血流を過度に抑えてしまい、回復を遅らせる可能性があるため注意が必要です。指先や足先の色や感覚に異常が出る場合は、圧迫が強すぎるサインなので速やかに調整しましょう。(文献1)(文献5) 挙上 肉離れの応急処置の最後は、Elevation(挙上)です。患部を心臓よりも高い位置に保つことで、血流がコントロールできます。 この姿勢により患部への血液の流入が抑えられ、腫れや内出血の拡大を防ぎます。脚の肉離れの場合は横になった状態で足を台の上に置いたり、枕で高くすれば挙上が可能です。 安静時や就寝時など、できる限り長く挙上姿勢を保つことが理想的です。ただし、無理な体勢は別の部位に負担をかけることがあるため、考慮して行いましょう。(文献1)(文献5) 肉離れを疑う際はストレッチではなく医療機関を受診しよう 肉離れは軽症でも数日以上痛みが続く場合は早期受診が重要です。放置すると痛みの慢性化や不完全な修復の恐れがあります。 整形外科では症状確認と必要に応じたMRIやエコー検査を受け、理学療法士と連携した適切なリハビリ指導が受けられます。PRP療法などの再生医療も早期回復に効果的です。 専門医の診断により、肉離れの程度や回復目安が明確になり、無理のない復帰計画が立てられます。適切なタイミングでのストレッチ導入は回復促進と再発防止に有効です。 リペアセルクリニックでは、あなたの症状に合わせた治療プランをご提案します。再生医療による治療も行っておりますので、メール相談やオンラインカウンセリングをご利用の上、お気軽にお問い合わせください。 肉離れのストレッチに関するよくある質問 ここからは、肉離れのストレッチに関するよくある質問を紹介します。 肉離れをおこしたときにやってはいけないことは? 肉離れをおこした際は、避けなければならない行為があります。 無理なストレッチやマッサージは危険で、損傷を悪化させる恐れがあります。入浴や飲酒、温湿布の使用も炎症を促進し、出血を増加させる可能性があるため控えましょう。痛みを無視して無理に動くことは、治癒を遅らせるだけでなく、より深刻な損傷を引き起こす危険があります。 このような行為はすべて炎症を悪化させ、回復を遅らせる要因となります。 肉離れは自然に治りますか? 軽度の肉離れは、適切なRICE処置(安静、冷却、圧迫、挙上)を行うことで自然に近い形で回復する可能性があります。しかし、誤ったケアや不十分な休息により回復が遅れたり、再発を繰り返したりするケースも少なくありません。 とくに重症例では筋肉の大きな断裂を伴うため、放置すると治癒に長期間を要したり、痛みが慢性化したりする恐れがあります。症状の程度に関わらず、早めに整形外科を受診し、専門家のアドバイスを受けることが望ましいでしょう。(文献6) 肉離れは何科を受診するべきですか? 肉離れは基本的に整形外科を受診するのがおすすめです。整形外科では、肉離れの程度を適切に診断し、必要に応じてレントゲンやMRI、エコーなどの画像検査を受け、筋肉の損傷状態を詳細に評価できます。 ケガの重症度に合わせた治療方針の提案やリハビリテーションの指導も受けられます。肉離れの症状を感じたら早めに整形外科を受診し、適切な治療とケアを受ければ、スムーズな回復が期待できるでしょう。(文献6) 参考文献 文献1 大正大学「保健室だより」2016年 https://www.tais.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2016/10/4f11fee531b8256a8ed52f95158831e7.pdf(最終アクセス:2025年3月14日) 文献2 木村護郎ほか「大腿四頭筋ならびに内・外側ハムストリングの筋力比と大腿部肉離れの発生との関係」『医学療法科学』19(4),pp.323-329,2004年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/19/4/19_4_323/_pdf 文献3 社会医療法人 松田整形外科記念病院「理学療法科(リハビリテーション)」松田整形外科記念病院ホームページ https://matsuda-oh.com/rehabili/lowerlimbs_4124(最終アクセス:2025年3月14日) 文献4 佐久平整形外科クリニック「肉離れ予防のストレッチ」佐久平整形外科クリニックホームページ https://ar-ex.jp/sakudaira/831490160727/%E8%82%89%E9%9B%A2%E3%82%8C%E4%BA%88%E9%98%B2%E3%81%AE%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%81(最終アクセス:2025年3月14日) 文献5 茨城県水戸市「プロスポーツナビ」広報みと,2022年9月15日 https://www.city.mito.lg.jp/uploaded/attachment/24341.pdf(最終アクセス:2025年3月14日) 文献6 医療法人社団 信愛会 瀬戸整形外科クリニック「肉離れの応急処置、および、治療&予防方法」瀬戸整形外科クリニック トピックス https://setoseikei.com/2024/10/21/first-aid-for-separation-of-the-flesh/(最終アクセス:2025年3月14日)
2025.03.31 -
- 下肢(足の障害)
- スポーツ外傷
ふくらはぎに違和感を感じる ふくらはぎが赤く腫れ上がっている 運動中に突然、肉離れを起こしたかもと不安に感じているかもしれません。 ふくらはぎの違和感や、腫れ上がりを放置すると重症化する恐れがあります。 突然の肉離れにどうすれば良いのか焦りを感じている方もいれば、違和感はあるものの、歩けるから問題ないと思っている方もいることでしょう。 この記事では、ふくらはぎの肉離れについて解説します。 肉離れ(ふくらはぎ)の症状 ふくらはぎの肉離れの原因 肉離れ(ふくらはぎ)の前兆 ふくらはぎの肉離れは歩ける場合でも油断してはいけない理由 ふくらはぎの肉離れを起こしたときの対策 歩けるからといって油断は禁物です。正しい知識を身につけることで、ふくらはぎの肉離れに対し、適切な対応ができるようになります。 肉離れ(ふくらはぎ)の症状 分類 症状 Ⅰ度(軽度) アキレス腱ストレッチで若干の違和感がある Ⅱ度(中度) アキレス腱ストレッチで強い違和感があるものの、膝を曲げた状態で行うと違和感は弱まり、つま先立ちができる Ⅲ度(重度) アキレス腱ストレッチで、膝を曲げた状態でも軽く伸ばしただけで強い違和感があり、つま先立ちが困難 肉離れは筋肉が急激に引き伸ばされることで、筋繊維が切れて起こる症状です。症状としては熱感、炎症性の違和感、腫脹、皮下出血が起こります。 また、肉離れ(ふくらはぎ)を引き起こした瞬間に「プチッ」といった音が聞こえるのも特徴です。 肉離れ(ふくらはぎ)の症状は表のⅠ度(軽度)〜Ⅲ度(重度)で分類されます。 症状がもっとも軽いⅠ度(軽度)であれば、自力で歩行でき、若干の違和感がありつつもアキレス腱ストレッチも行えます。 しかし、Ⅲ度(重度)になると、アキレス腱ストレッチが難しい状態になり、自力での歩行が難しい状態です。 以下の記事では、肉離れについて現役医師が詳しく解説しています。 ふくらはぎの肉離れの原因 ふくらはぎの肉離れの原因としては、急激な筋肉の収縮や準備運動不足など、運動中に引き起こされることが多いです。 運動以外では、加齢や筋肉疲労などで引き起こされるケースも存在します。 ふくらはぎの肉離れの原因を詳しく解説します。 急激な筋肉の収縮と伸張 急激な筋肉の収縮と伸張でふくらはぎに負担がかかることで、肉離れが起こります。 原因としては、運動中に急なダッシュやジャンプ、方向転換など脚の筋肉に急激な負荷がかかるためです。 とくに運動前に十分なウォーミングアップを怠ると、筋肉が柔軟になっていない状態で筋肉の収縮と伸張が起こるため、肉離れを引き起こしやすくなります。 筋肉の疲労 筋肉疲労による影響 肉離れのリスク 筋肉の柔軟性低下 筋肉が硬くなり、急な動きに耐えられず損傷しやすい 筋力低下 筋肉が正常な動作を維持できず、損傷しやすい 運動制御の乱れ 筋肉の協調性低下、不自然な動作やバランスの乱れで損傷しやすい 筋肉疲労はさまざまな要因で引き起こされます。疲労を抱えたまま、筋肉に負担を与え続けるのは危険です。 ふくらはぎの筋肉に対して、オーバーユース(使いすぎ)や十分な休息を与えていないことが重なることで筋繊維が切れ、肉離れが起こります。 筋肉疲労を引き起こさないためには、運動後に軽いストレッチや、クールダウンを習慣化するのが大切です。 また、脚に少しでも違和感を感じた場合は運動を中断し、アイシングなどで対策しましょう。 準備運動不足 準備運動の役割 効果 筋肉の温度上昇 筋肉の柔軟性が高まり、収縮と伸張がスムーズになり、急激な動作への耐性が向上し、肉離れのリスクが低下 関節の可動域拡大 関節の可動域が広がり、動作範囲が広がることで筋肉への負担が分散され、肉離れのリスクを軽減 神経の活性化 神経系が活性化し、筋肉の協調性が高まることで動作がスムーズになり、筋肉への負担が軽減 準備運動を十分に行わず、急な走り込みや脚の使い込みも肉離れを引き起こす原因になります。 準備運動は筋肉や関節を温め、柔軟性を向上させてくれますが、準備運動が十分に行われていない場合、筋肉に過度な負担がかかりやすくなり、肉離れを起こすリスクが高くなります。 普段運動が習慣化されていない人は、筋肉が硬直しやすいので、入念な準備運動を心がけることが大切です。 加齢 加齢によって筋肉の力が弱まり、柔軟性が失われることで、肉離れ(ふくらはぎ)を引き起こす原因になります。 また、加齢によって血管が硬くなり、筋肉への血液を流す力も減少し、筋肉への酸素や栄養の供給が滞り、修復機能が低下します。 加齢による筋肉量の減少を予防するには、無理のないトレーニングや軽い運動の習慣化が大切です。 症状の再発 肉離れ(ふくらはぎ)は過去に経験歴があると、再発しやすい症状です。 再発の理由としては、損傷した筋繊維は瘢痕組織(はんこんそしき)と呼ばれる硬い組織に置き変わります。 硬い組織に置き換えることで、柔軟性や伸縮性が低くなり、再発しやすくなります。 再発を防ぐために正しいフォームなどを意識し、負担が偏らないようにしましょう。 肉離れ(ふくらはぎ)の前兆 肉離れ(ふくらはぎ)には前兆があります。 筋肉の違和感や張り感 筋肉の疲労感 筋肉の痙攣 肉離れの前兆を解説します。 筋肉の違和感や張り感 ふくらはぎの肉離れは運動中に負荷がかかり、発症するケースが多いです。しかし、前兆として普段とは違うふくらはぎに違和感や張りを感じることがあります。 筋肉に普段感じない違和感や張り感が現れた場合は運動を中止し、安静やアイシングを行います。 また、症状が改善せずに悪化するようであれば、医療機関を受診しましょう。 筋肉の疲労感 ふくらはぎの肉離れの前兆として、筋肉の疲労感が挙げられます。筋肉疲労は筋肉が悲鳴を挙げており、柔軟性や強度が低下してる状態です。 筋肉の疲労感を無視して運動を行うと、肉離れを起こすリスクがあります。 いつもより筋肉にだるさを感じる場合は、無理な運動はせずに安静や軽いストレッチを行いましょう。 また、筋肉を温められる入浴なども有効です。筋肉の疲労感が数日続くようであれば、医療機関の受診をおすすめします。 筋肉の痙攣 痙攣は筋肉が異常な収縮を起こしている状態です。筋肉の痙攣が起きている状態は、ミネラルバランスの乱れや筋肉疲労を起こしているサインです。 筋肉の痙攣が起きた場合は、すぐに運動を中止し、適切な休息や水分補給などを行い、筋肉の状態を正常に戻すことが最優先です。 痙攣の症状が頻繁に起こる場合は、医療機関を受診しましょう。 ふくらはぎの肉離れは歩ける場合でも油断は禁物です! ふくらはぎの肉離れの症状が軽度であれば、歩ける場合があります。しかし歩けるからといって油断は禁物です。 ふくらはぎの肉離れは、適切な治療を怠ると以下のリスクがあります。 放置すると重症化するリスク 症状が良くなるまでに時間がかかる 内出血や腫れが遅れて現れることがある 起こりうるリスクについて解説します。 放置すると重症化するリスク ふくらはぎの肉離れは、歩行可能な状態でも放置すると重症化するリスクがあります。 適切な処置や治療が遅れると後遺症として、筋肉の修復が不完全になり、慢性的な違和感や機能障害が残る可能性が高いです。 また不完全な修復は、筋肉の微弱性を高めるため、再発のリスクがあります。 軽度でも自己判断はせず、応急処置を行い、医療機関を受診しましょう。 症状が良くなるまでに時間がかかる ふくらはぎの肉離れは、軽度の症状でも初期段階で適切な対応を怠れば、症状がよくなるまでに時間がかかります。 損傷した筋繊維は、瘢痕組織(はんこんそしき)と呼ばれる硬い組織に置き変わるため、伸展性や収縮性が低下します。 そのため、負荷のかかる動きには耐えにくい組織に切り替わるので、再発しないよう注意が必要です。 自己判断はせず、医師の指示に従い適切な治療を受けることで、早期回復につながります。 内出血や腫れが遅れて現れることがある 肉離れの症状は個人差も大きく、内出血や腫れが出るタイミングも人それぞれであり、遅れて症状が現れた場合でも、自己判断は禁物です。 内出血や腫れが遅れて出る理由は、組織損傷後の炎症反応が時間をかけて進行するためです。 進行のスピードは人それぞれであり、肉離れを起こした時点で内出血や腫れが現れる人もいれば、遅れて症状が出る人もいます。 歩けるからといって無理すると、後から内出血や腫れの症状がでる可能性があるため、早い段階での適切な対応が大切です。 ふくらはぎの肉離れを起こしたときの対策 ふくらはぎの肉離れを起こしたときは、焦らずに対策しましょう。 安静にする 応急処置を行う 適切なリハビリを行う 症状の再発を防止する 再生医療(PRP療法) ふくらはぎの肉離れを起こしたときの対策を解説します。 安静にする ふくらはぎの肉離れを起こした場合は、安静にしましょう。肉離れを起こしたときはすぐに運動を中止し、必要に応じて冷却などを行います。 RICE処置(安静(Rest)・冷却(Ice)・圧迫(Compression)・患部を心臓より上に上げる(Elevation))の流れの1つであり、一時的な処置として効果的な手法です。 発症してから数日間は受傷部を保護する必要があるので、おおよそ3〜5日は安静にする必要があります。 安静期間は症状の程度によって異なるため、自己判断はせず医師の指示に従いましょう。 応急処置を行う 処置 詳細 目的 安静 (Rest) 患部を動かさない 症状の悪化を防ぐ 冷却 (Ice) 保冷剤をタオルで包み15~20分冷やす(1日数回) 腫れと炎症を抑える 圧迫(Compression) 包帯などで患部を圧迫 内出血と腫れを抑える 挙上(Elevation) 患部を心臓より高い位置に 腫れを軽減する ふくらはぎの肉離れが起きたときに有効なのが、RICE処置:安静(Rest)・冷却(Ice)・圧迫(Compression)・挙上(Elevation)です。 肉離れを起こした初期の段階ではRICE処置が有効であり、とくに安静(Rest)と冷却 (Ice)が大切です。 冷却 (Ice)を行う際は、冷やしすぎると凍傷になる可能性があります。保冷剤をタオルなどで包み、数秒に一回は肌から離すなど工夫しましょう。 また、圧迫 (Compression)も力任せではなく、加減を調整しながら行います。圧迫時にしびれや変色を起こした際はすぐに緩めることが大切です。 あくまでも応急処置のため、症状が改善しない場合は医療機関への受診が必要です。 適切なリハビリを行う 内容 目的 効果 瘢痕組織の改善 柔軟性向上 正常な筋肉に近づける 筋力と柔軟性の回復 機能回復 日常生活・運動への復帰 筋力バランスの調整 バランス改善 再発リスク軽減 再発防止 筋肉の状態回復 運動再開を目指す 安静にすると同時に適切なリハビリが大切です。リハビリでは、瘢痕組織の改善や筋力バランスの調整を行い、症状の改善を目指していきます。 リハビリは自己判断ではなく医師指導のもと、無理のない範囲で行うのが大切です。 症状の再発を防止する ふくらはぎの肉離れは再発の可能性が高いので、再発を防止する必要があります。 再発を防ぐには適切なリハビリや休息、食生活のバランスが大切です。 筋肉の修復を考え、無理な運動は控え、食事はタンパク質(鶏肉・魚・卵・豆類・ナッツ・乳製品など)や、ビタミンC、ビタミンE、オメガ3脂肪酸などを含む食事を中心に行いましょう。 肉離れはクセになりやすい症状なので、油断は禁物です。 再生医療(PRP療法) ふくらはぎの肉離れに対して、PRP療法(多血小板血漿療法)は有効な手段です。 PRP療法(多血小板血漿療法)は、患者様自身から採取した血液から、多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma:PRP)を抽出します。 抽出した多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma:PRP)を肉離れで起きた損傷部位に注射し、症状改善を目指します。 手術を必要としない上に副作用のリスクもほとんどありません。最短30分で施術が完了します。 短い時間で対応かつ通院だけで行えるため、スポーツ選手にも効果的な療法です。 以下の記事では再生医療(PRP療法)について、詳しく解説しています。 ふくらはぎに肉離れの疑いを感じたら医療機関を受診しよう ふくらはぎに肉離れの疑いを感じたら、自己判断はせず医療機関を受診しましょう。 症状が軽いと歩ける場合もありますが、放置してしまうと症状が悪化し、後遺症が出る可能性があります。 ふくらはぎの肉離れを重症化させないためにも応急処置は適切に行い、軽度だったとしても、医療機関で診察を受けることが大切です。 肉離れの症状が辛い方は当院「リペアセルクリニック」にご相談ください。再生医療で組織の修復をサポートします。 ふくらはぎの肉離れでお悩みの方は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にお問い合わせください。
2025.03.31 -
- その他、整形外科疾患
激しい運動をしたあと、突然の痛みで動けなくなった経験はありませんか。それはもしかすると「肉離れ」かもしれません。 筋肉が部分的に断裂し起こる肉離れは、適切な対処を怠ると症状が長引いたり、再発を繰り返す恐れがあります。 この記事では「肉離れとは何か」といった基本的な疑問から、原因・症状・治療・予防策までを幅広く解説していきます。スポーツだけでなく日常生活の急な動作でも起こりうるケガだからこそ、正しい知識を身につけておきましょう。 肉離れとは 肉離れとは、正式には「筋挫傷」と呼ばれる状態で、筋肉の繊維の部分的な断裂を指します。主に太もも(大腿部)やふくらはぎ(腓腹筋)などの大きな筋肉に発生しやすい傷害です。(文献1) 重症度は以下の3段階に分類されます。 1度:筋肉内の内出血はあるが筋膜や筋線維に大きな損傷がない軽度の状態 2度:筋腱移行部に損傷があるものの完全断裂や付着部裂離はない中程度の状態 3度:腱の完全断裂または付着部の裂離がある重度の状態 (文献2) 筋肉別の肉離れの判別方法は以下のとおりです。 大腿四頭筋 ハムストリングス 腓腹筋 1度 うつ伏せで膝を90度以上曲げられる 仰向けで膝をまっすぐ伸ばし脚を70度位まで上げられる アキレス腱を伸ばすと若干の痛みがある 2度 うつ伏せで膝を45度~90度曲げられる 仰向けに寝て膝をまっすぐ伸ばし脚を30度~70度位まで上げられる アキレス腱を伸ばすと強い痛みがあり、膝を曲げた状態で行うと痛みが弱くなる。つま先立ちができる 3度 うつ伏せで膝を45度位まで曲げられる 仰向けに寝て膝をまっすぐ伸ばし脚を30度位まで上げられる 膝を曲げた状態でもアキレス腱を軽く伸ばしただけで強い痛みがある。つま先立ちができない (文献3) 症状が疑われる場合は自己判断せず、整形外科医の診察を受けてください。スポーツ活動再開時には、段階的なリハビリテーションが必須です。 肉離れの原因 肉離れは主に以下の3つの原因によって発生します。 筋肉疲労 準備運動不足 水分不足 これらの要因を理解し、適切な予防策を講じることが重要です。ここから詳しく解説します。 筋肉疲労 激しい運動や筋力トレーニングを連続して行うと、筋繊維に微細な損傷が蓄積します。本来であれば、適切な休息により筋肉は修復・強化されますが、十分な回復時間がないまま負荷の多い活動を継続すると、筋繊維の耐久力が著しく低下します。これが肉離れ(筋挫傷)の発生原因です。 疲労した筋肉は伸縮性や反応性が低下し、通常の負荷でも断裂しやすい状態になります。したがって、効果的なトレーニングと怪我予防のためには、適切な休養期間の確保が不可欠です。回復過程における質の高いタンパク質摂取や十分な水分補給など、適切な栄養管理も重要な要素となります。 筋肉に適度な負荷と十分な回復時間のバランスを取ることが、パフォーマンス向上と肉離れ予防の鍵となるのです。(文献1) 準備運動不足 適切な準備運動は肉離れ予防において必須の要素です。運動前に筋肉や関節を十分に温めれば、組織の柔軟性が高まり、急激な負荷にも対応できる状態になります。しかし、準備運動が不十分なまま激しい運動をすると、筋繊維は冷えた硬い状態のまま急激な伸縮を強いられ、断裂リスクが上昇します。 効果的な準備運動として、徐々に負荷を上げていくスキップや軽いジョギングなどの動的ストレッチがおすすめです。これにより、筋温の上昇や血流が促進し、運動に適した身体状態を整えられます。とくに大きな筋肉を使う競技では、入念な準備運動が肉離れ予防のポイントです。 安全かつ効果的なトレーニングを実現するために、準備運動を習慣化しましょう。(文献1) 水分不足 適切な水分バランスの維持は筋肉機能の保持に不可欠です。体内の水分が不足すると、血液の粘度が上昇し体内の循環が低下します。筋肉への酸素や栄養素の供給が滞り、疲労物質の除去も遅れるため、筋肉疲労が蓄積しやすくなります。水分不足の状態は筋肉の柔軟性を低下させ、肉離れのリスクを高めてしまうでしょう。 発汗量が増加する激しい運動や気温の高い状況での活動は、水分が急速に失われるためとくに注意が必要です。 効果的な水分補給としては、運動前・中・後の各段階でのこまめな摂取がおすすめです。ナトリウムや糖質を含むスポーツドリンクは、長時間の運動時に失われる成分を補充する点で有効でしょう。 水分管理は肉離れ予防の基本であり、パフォーマンス維持につながります。(文献1) 肉離れの症状 肉離れには、特徴的な症状が出現します。急激な動作時に走る鋭い痛みを訴える方が多く、受傷時には「プチッ」といった断裂音が聞こえることもあります。 触診による痛みを感じることも多く、損傷部位に触れると強い痛みを訴えるのが特徴的です。損傷した筋肉を伸ばしたり収縮させたりする動作も、著しい疼痛を引き起こします。 重症度が高い場合、時間の経過とともに重力により損傷部位から血液が下方へ移動し、数日かけて皮膚表面に内出血が現れます。内出血の範囲や程度は、損傷の重症度を判断する際の指標になるでしょう。重症度によって、腫れやへこみが見られる場合もあります。 このような症状が認められる場合は整形外科を受診し、専門医による診断と治療を受けることが必要です。 肉離れの対処法 肉離れを発症した際は、RICE処置による応急対応が効果的です。 【RICE処置】 Rest(安静):損傷部位への負荷を最小限にとどめ、炎症の拡大を防ぐ Icing(冷却):損傷部分を水や氷で冷やし、組織の腫脹や内出血を効果的に軽減する Compression(圧迫):弾性包帯やテーピングで適度な圧を加え、過剰な体液貯留を抑制する Elevation(挙上):損傷部位を心臓より高い位置に保持し、腫脹の軽減を図る (文献1) 急性期を過ぎた受傷後3〜5日目からは、筋萎縮や関節拘縮を防ぐため、段階的なリハビリテーションへと移行します。専門家の指導のもと、筋肉の柔軟性の回復や筋力強化など、本人に合ったリハビリテーションの実施が機能回復へのポイントとなります。(文献2) 痛みの再発がないことを確認しながら、慎重に活動レベルを上げていくことが重要です。適切な初期対応とリハビリテーションが、後遺症のない回復と再発防止につながります。 肉離れの検査と診断 肉離れの適切な診断と評価には、複数の検査法が組み合わせて用いられます。筋肉の詳細な情報がわかるのはMRI検査で、損傷した筋線維や周囲の組織の状態が明確にみえるため、断裂の程度や範囲を正確に評価できます。 超音波検査(エコー)は、リアルタイムで筋繊維の断裂状況や血腫を確認できる検査です。数分で検査が可能であり、コストパフォーマンスに優れた検査として広く活用されています。(文献3) レントゲン検査は筋肉自体の検査には適していませんが、骨の異常を調べるために実施されることがあります。 画像診断に加え、熟練した医師による触診も重要です。痛みの部位や程度、腫脹範囲、筋肉の状態などの情報から、総合的な評価が行われます。 検査結果に基づき、適切な治療計画と予後の予測が立てられます。 肉離れの治療 肉離れの治療法は損傷の程度によって大きく異なります。部分断裂の場合は主に保存的治療が選択され、患部の安静、消炎鎮痛薬の服用、患部保護のためのテーピングやサポーターの使用が基本です。 完全断裂の場合は、運動機能の完全回復が求められるアスリートなどには手術が必要になるケースが多いです。手術では断裂した筋繊維や腱を再接合し、機能的回復を目指します。(文献4) 痛みが消失した後のリハビリテーションは、段階的に進められます。初期には軽度のストレッチから始め、徐々にジョギングへと移行し、走行距離や強度を増やしていくケースが多いです。(文献5) 近年注目されているPRP(多血小板血漿)療法は、患者自身の血液から抽出した成長因子を豊富に含む血小板を損傷部位に注入する治療法で、組織の修復・再生を促進する効果が期待されています。 いずれの治療においても、医療専門家の適切な指導のもとで実施すれば、完全回復と再発防止につながります。 リペアセルクリニックでは、あなたの症状に合わせた治療プランをご提案します。再生医療による治療も行っておりますので、メール相談やオンラインカウンセリングをご利用の上、お気軽にお問い合わせください。 肉離れが治る期間 肉離れの完全な回復に要する期間は、損傷の重症度や患者様自身によって異なりますが、一般的な目安として3〜5週間とされています。(文献6) 重症度別に見ると、軽度の部分的筋繊維損傷では、適切な初期対応を行った場合、1〜2週間程度で疼痛は軽減し、日常生活動作への復帰が可能となります。中等度では筋肉に明らかな損傷があり、3〜5週間の計画的な安静期間とリハビリテーションが必要です。重度の完全断裂では、2〜3カ月の長期回復期間を要し、場合によっては手術も検討されます。 同じ重症度でも年齢や基礎体力、代謝機能などの個人差や、初期対応の適切さ、リハビリテーションへの取り組み方によって回復までの期間は大きく左右されます。若年層と比較して高齢者では、組織修復能力の低下から回復に時間を要するケースが多いでしょう。 肉離れが治る期間には、専門医による定期的な評価が重要です。 肉離れの予防法 肉離れ予防には、以下の方法を組み合わせましょう。 運動前のウォームアップ 筋肉のバランスを整える 栄養摂取と休息 十分な水分補給 運動前の準備として、ウォームアップにより筋肉を温めて、柔軟性を高めることが重要です。運動後の適切なクールダウンは急激な筋肉の緊張が緩和されます。(文献7) 日常的なトレーニングは筋肉の柔軟性を向上させ、突発的な負荷に耐える力を強化します。筋肉のバランスを整え、負荷が集中しにくい体づくりが必要です。 筋肉の回復と強化には、適切な栄養摂取と休息が不可欠です。質の高いタンパク質やビタミンなどの栄養を補給し、筋組織の修復に努めましょう。(文献8) 水分補給も肉離れの予防になります。十分な水分補給が、筋組織のコンディションを整え、疲労物質の蓄積を防ぎます。 予防策を総合的に実践すれば、肉離れのリスクの大幅な低減が可能です。 肉離れを正しく理解し適切な対処と予防を心がけよう 肉離れは筋繊維の断裂を指し、主に大腿部やふくらはぎなどの大きな筋肉に発生します。発症時はRICE処置が重要で、重症度に応じた適切な治療とリハビリが回復のポイントです。 予防には十分なウォームアップとクールダウン、筋力トレーニング、適切な栄養と水分摂取が効果的です。筋肉の疲労サインを見逃さず適切な対応を心がけ、安全にスポーツを楽しみましょう。 肉離れが改善しない場合は、「リペアセルクリニック」にご相談ください。再生医療の活用で組織の回復を助け、肉離れの改善を目指した治療を行っています。 肉離れでお悩みの方は、メール相談やオンラインカウンセリングにてお気軽にお問い合わせください。 肉離れに関するよくある質問 ここでは、肉離れに関するよくある質問を3つ紹介します。 肉離れと筋肉痛の違いは何ですか? 肉離れは運動中や急激な動作時に痛みが発生しますが、筋肉痛は運動後数時間から翌日以降に痛みが現れます。肉離れでは、内出血や腫れが見られる場合がありますが、筋肉痛には通常目に見える変化はありません。 肉離れは何科を受診するべきですか? 肉離れは通常、整形外科の受診をおすすめします。症状が重い場合やスポーツ中の急な痛みを伴う場合は、とくに受診が必要です。スポーツ医学を専門とする整形外科医がいる病院を選ぶとより専門的な治療が受けられます。 寝てる時でも肉離れは発症しますか? 一般的に、肉離れは急激な動作や過度な負荷がかかることによって発生しますが、寝ている間に発症する場合もあります。身近なものでは、起床時に首からかけて痛みが出る寝違えです。 睡眠中、頭部が中央からずれることで、前後左右どちらかの筋肉の血流が止まり、強い凝りが発生します。起床時に急に動くことで、凝った筋肉に刺激が加わり、症状が発症する場合があります。 寝違えなどの症状が発生し強い痛みを感じた場合は、自己対処せずに専門家に相談しましょう。 参考文献 文献1 伊藤超短波株式会社「肉離れとはどんな症状?原因や対処法も合わせて解説」伊藤超短波株式会社ホームページ https://www.wellness.itolator.co.jp/column/003.html (最終アクセス:2025年3月17日) 文献2 医療法人 同信会 福岡整形外科病院「肉離れとは」福岡整形外科病院ホームページ https://www.fukuokaseikei.com/disease/foot/muscle-strain/ (最終アクセス:2025年3月17日) 文献3 医療法人社団 信愛会 瀬戸整形外科クリニック「肉離れ 症状・原因・検査方法 肉離れが起きやすい部位とは?」瀬戸整形外科クリニックホームページ https://setoseikei.com/2024/10/10/symptoms-causes-and-tests-for-separation-of-the-flesh/ (最終アクセス:2025年3月17日) 文献4 MSD「捻挫およびその他の軟部組織損傷の概要」MSDマニュアルプロフェッショナル版,2023年7月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/22-%E5%A4%96%E5%82%B7%E3%81%A8%E4%B8%AD%E6%AF%92/%E6%8D%BB%E6%8C%AB%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%BB%96%E3%81%AE%E8%BB%9F%E9%83%A8%E7%B5%84%E7%B9%94%E6%90%8D%E5%82%B7/%E6%8D%BB%E6%8C%AB%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%BB%96%E3%81%AE%E8%BB%9F%E9%83%A8%E7%B5%84%E7%B9%94%E6%90%8D%E5%82%B7%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81?query=%E7%AD%8B%E6%8C%AB%E5%82%B7(最終アクセス:2025年3月17日) 文献5 足立慶友整形外科「肉離れの症状・診断・重症度・治療について」足立慶友医療コラム,2020年1月 https://clinic.adachikeiyu.com/1131(最終アクセス:2025年3月17日) 文献6 からさわ整形外科クリニック「肉離れ」症状のご相談(肉離れの原因・治療) https://www.karasawa.gr.jp/case/nikubanare/(最終アクセス:2025年3月17日) 文献7 Nクリニック「肉離れ」Nクリニックホームページ https://www.n-cli.com/muscle_strain/(最終アクセス:2025年3月17日) 文献8 OKUNOCLINIC「繰り返す肉離れ(反復性肉離れ)」OKUNOCLINICホームページ https://okuno-y-clinic.com/itami_qa/nikubanare.html(最終アクセス:2025年3月17日)
2025.03.31 -
- 上肢(腕の障害)
- スポーツ外傷
上腕二頭筋にこれまでにない違和感がある 腕に力が入らず、困っている その症状、もしかしたら上腕二頭筋断裂かも知れません。 上腕二頭筋断裂は、上腕二頭筋腱長頭腱が損傷し、腕を動かすなどの動作に支障が出る症状です。 スポーツや日常生活で腕を酷使する方がなりやすい症状であり、放っておくと重症化する恐れがあります。 本記事では以下について解説します。 上腕二頭筋断裂について 上腕二頭筋断裂の診断方法 上腕二頭筋断裂の原因 上腕二頭筋断裂の治し方 断裂後の生活で気を付けるべきこと 上腕二頭筋断裂は正しい知識を身につけ、適切な処置と治療を受けることで改善できます。 腕に違和感がある方は、ぜひ最後まで読み進めてみてください。 上腕二頭筋断裂とは 上腕二頭筋断裂の症状は、肩や肘の近くの強い違和感です。 肩関節で肩甲骨につながる2本の腱と、肘で腕の骨の1本(橈骨)につながる1本の腱が重いものを持つ行為などで損傷し、上腕二頭筋断裂が引き起こされます。 上腕二頭筋断裂は部分的な断裂もあれば、完全に断裂してしまい、腱が骨から完全に離れることもあります。 また、肘から骨が離れることで、腕を特定の方向に動かすことが困難になります。 腱の断裂が部分的なものであれば、患部を動かすことはできるものの、無理な酷使で腱の断裂状態が悪化し、完全に断裂する可能性もあるので注意が必要です。(文献1) 上腕二頭筋断裂の診断方法 診断方法 内容 問診 受傷時の状況、違和感のある部位や程度、日常生活での支障などを確認します。 視診・触診 腕の腫れや変形(ポパイサイン)圧痛の有無などを確認します。 理学検査 腕の可動域や筋力、動作中の違和感の有無などを確認します。 画像検査 レントゲン、超音波検査、MRIなどで腱の状態を確認します。 血液検査 通常は不要ですが、感染症などが疑われる場合には行われることがあります。 上腕二頭筋断裂の診断方法は以下の5つです。 問診 視診・触診 理学検査 画像検査 血液検査 上腕二頭筋断裂の診断は、検査を総合的に判断して行われます。検査の内容について解説します。 問診 診断項目 医師が確認する項目 患者が伝えること 断裂時の状況 いつ、どのような状況で受傷したか(重い物を持ち上げた、スポーツ中に強い負荷がかかったなど) いつどこで何をしている時に違和感があったなど、詳細に伝える 症状 腕のどこに違和感があるか。腕を曲げる、持ち上げるのが辛くないか 腕のどこに違和感を感じるか。力を入れたり腕を曲げたりすると辛いかどうか 既往歴 過去に肩や腕に違和感があったか。過去に治療や服用している薬がないかなど 過去に肩や腕に怪我を負ったかの有無。現在の健康状態や服用している薬があれば、漏れなく伝える (文献1) 問診では断裂時の状況や症状、既往歴などを医師が確認します。断裂時の状況や症状をできるだけ細かく伝えることが大切です。 過去に腕や肩を怪我したことのある方は、その旨を伝えましょう。また、現在服用している薬も忘れずに伝えましょう。 問診の情報を元に医師は視診や触診を行い、必要に応じて画像検査などを実施します。 正確に状況や症状を伝えることで診断や治療精度の向上が期待できます。 また問診の段階で少しでも気になることがあれば、遠慮なく医師に相談しましょう。 視診・触診 診察項目 確認事項 ポイント 上腕の形状 力こぶの形が変わっていないか(ポパイ徴候) 通常、断裂すると上腕の筋肉が下方にずれる 圧痛の有無 腱の走行に沿って押したときに違和感があるか 圧痛があると部分断裂の可能性が高い 筋力テスト 腕に力を入れたときの筋力が低下していないか 筋力の低下が見られる場合、腱が完全に切れている可能性がある (文献1) 視診・触診では、医師が患部の外観を確認します。上腕の形状などが変形していないかの有無や、色の変化を視診します。 腱の走行に沿って押したときに違和感や、筋力テストでいつもより力が入らない場合は腱が切れている可能性が高いです。 視診・触診で上腕二頭筋長頭腱の有無を確認し、適切な治療方針を定めます。 理学検査 テスト名 目的 方法 結果の見方 ルーズテスト 上腕二頭筋腱の安定性を評価 腕を外旋しながら肘を曲げ伸ばし、安定性を確認 異常な動きや引っかかりがあれば腱の不安定性を示唆 フックテスト 上腕二頭筋腱の完全断裂を評価 肘を90度に曲げた状態で、指を使って腱を引っ掛けられるか確認(文献2) 違和感がある場合、炎症や部分断裂の可能性がある バイセプス・スクイズ・テスト 上腕二頭筋腱の完全断裂を評価 肘を90度に曲げた状態で上腕を両側から圧迫し、筋収縮を確認 筋収縮がなければ腱が完全に断裂している可能性がある スピードテスト 上腕二頭筋腱の炎症を評価 腕を前方に伸ばした状態で抵抗をかけながら挙上し、違和感を確認 違和感がある場合、炎症や部分断裂の可能性がある 上腕二頭筋腱の症状に対して、どのテストを行うかは医療機関によって異なるものの、大枠は症状の確認です。 結果を医師が確認し、異常や違和感があれば、上腕二頭筋腱と診断される可能性があります。 画像検査 検査名 目的 特徴 適したケース 超音波検査 腱の断裂や炎症を確認 リアルタイムで腱の損傷を確認しつつ、動かしながら評価 簡易的な診断や、動作による変化を評価したいとき MRI検査 腱や周囲組織の状態を詳細に評価 腱だけでなく、関節や周囲の軟部組織も詳細に確認可能 より詳細な評価が必要な場合や手術の判断をする場合 (文献1) 上腕二頭筋腱の画像検査では、主にMRI検査と超音波検査が行われます。MRI検査では腱の断裂だけでなく、周囲の組織の状態を確認できます。 一方、超音波検査では腱の損傷や程度を視覚化する方法です。腕を動かしながらでも断裂の位置や大きさを正確に把握できます。 血液検査 血液検査は、必要に応じて行われます。腱断裂の直接的な診断では行いません。 感染症の有無や炎症反応、健康状態などを確認するために用いられます。 上腕二頭筋断裂の原因 原因 どんなときに起こりやすい? 加齢による腱の変性・脆弱化 年齢とともに腱が弱くなり、ちょっとした力でも切れやすくなる スポーツなどの反復的な使用 野球やテニスなど、腕をよく使うスポーツで繰り返し負荷がかかったとき 転倒や直接的な衝撃での外傷 転んだり、ぶつけたりして、強い力が腕にかかったとき 腱板損傷などの肩の疾患 肩の他の部分が傷んでいると、上腕二頭筋に負担がかかりやすくなり、発症しやすくなる ステロイド薬の長期使用 薬の影響で腱が弱くなることがある(文献3) 上腕二頭筋断裂の原因は、加齢やスポーツなどで発生した外傷です。上腕二頭筋断裂の原因について解説します。 加齢による腱の変性・脆弱化 上腕二頭筋の腱は年齢とともに強度が弱まり摩耗しやすくなるため、発症リスクが上がります。 腱や筋肉の柔軟性を維持するために、日頃から軽いストレッチや適度な運動が大切です。 スポーツなどの反復的な使用 スポーツが原因で上腕二頭筋断裂は発症します。とくに腕を酷使するスポーツである野球やテニスなどは腕に負担がかかりやすく、発症リスクが高いです。 また、工場作業や土木作業で重いものを運ぶのが日常になっている人も、腕に負荷がかかりやすく、断裂の原因になります。 スポーツや重労働を行う前は適切な準備運動を行い、腱や筋肉を慣らしておくことが大切です。 転倒や直接的などの外傷 処置名 説明 ポイント Rest(安静) 患部を動かさずに安静にし、さらなる損傷を防ぐ 無理に動かさず、適切な休息を取る Ice(冷却) 氷や冷却パックを当て、炎症や腫れを抑える(1回20分目安) 冷やしすぎに注意し、直接皮膚に当てないようにする Compression(圧迫) 包帯などで適度に圧迫し、腫れを最小限に抑える 強く締めすぎず、血流が悪くならないようにする Elevation(挙上) 患部を心臓より高く持ち上げ、血流をコントロールして腫れを防ぐ 横になってクッションを使うと楽に挙上できる 転倒した際に腕を地面につけたり重いものを押さえたりすると、腱に負荷がかかります。とくに急な負荷だった場合、断裂する可能性があります。 もし転倒や重いものを持ち上げ、腕に負荷がかかってしまった場合は、RICE処置:Rest(安静)・Ice(冷却)・Compression(圧迫)・Elevation(挙上)を行いましょう。 ただし、RICE処置はあくまでも応急処置のため、違和感が続く場合は自己判断せず、速やかに医療機関を受診しましょう。(文献1) 腱板損傷などの肩の疾患 メカニズム 影響 肩関節の不安定性 腱板が損傷すると、肩関節の安定性が低下し、上腕二頭筋腱がずれやすくなる 腱の摩擦と炎症 腱が周囲の組織と摩擦しやすくなり、炎症が生じる 血流の低下 血流が低下すると、腱の修復能力が落ち、断裂しやすくなる 腱板損傷などの肩の疾患で、上腕二頭筋断裂が引き起こされます。 腱板の中でも棘上筋腱は上腕二頭筋腱のすぐ上に位置します。そのため、棘上筋腱の断裂は上腕二頭筋腱の断裂に直接的な影響を与える可能性もあります。(文献1) 慢性化すると腱の脆弱化が進行し、断裂の危険性が高まります。対策として、過度な負荷や無理なトレーニングは控えましょう。 ステロイド薬の長期使用 2024年1月更新の患者向薬品ガイド資料7Pによると、ステロイド薬であるプレドニン錠 5mgの副作用として、腱断裂が自覚症状とて現れることが記載されています。(文献3) 患者向薬品ガイド資料では、ステロイド薬の使用による腱組織の脆弱化などが指摘されています。 ステロイド薬については以下の記事で詳しく解説しています。 上腕二頭筋断裂の治し方 上腕二頭筋断裂の治療法の選択 対象者 推奨される治療法 メリット 適した人 腕を酷使しない人 保存療法 リハビリやサポーターで日常生活に支障が出にくい 腕を強く使う必要がない人 力仕事やスポーツをする人 手術療法 筋力が回復し、腕の動きが元通りに近づく 仕事やスポーツで腕をしっかり使う人 (文献1)(文献4)(文献5) 上腕二頭筋断裂の治し方は、主に保存療法と手術療法です。保存療法と手術療法について解説します。 保存療法 保存療法の方法 内容 安静 患部を安静に保ち、過度な負荷を避ける 冷却 患部を冷却し、腫れや炎症を抑える 薬物療法 鎮痛剤や抗炎症薬を使用して、違和感を緩和する リハビリテーション 腕に抱える違和感が改善次第、筋力の回復を目指す 保存療法が選択されるケースとしては主に腕を治療する時間があり、腕を酷使しない人の場合です。 保存療法のメリットは、日常生活に支障が出にくいことです。 しかし、ポパイサイン(断裂した後にできる力こぶのような変形)が肘を曲げた際に生じることが理由で、手術療法を選択するケースもあります。 手術療法(縫合・再建手術) 手術の種類 概要 手術を行うケース 特徴 腱の縫合(再接着手術) 切れた腱を元の位置に戻し、縫合して再接着する 完全断裂の場合 腱を強固に固定し、機能回復が期待できる 内視鏡を使った手術(関節鏡手術) 内視鏡を使い、小さな切開で腱を修復 腱の切れ目が深い場所にあるときや、体の負担を減らしたいとき 傷口が小さく、回復が早い 再建手術(腱移行術) 失われた腱を他の筋肉や腱で再建する 長期間放置された断裂や、大きく腱が失われた場合 なくなった腱を補える 腱の転移(筋腱移行術) 他の筋肉を移植し、上腕二頭筋の機能を補う 上腕二頭筋の腱がなく、再建も難しいとき 筋肉の力を利用して、腕の機能を回復させる (文献1)(文献6) 保存療法で改善せず、症状が重度の場合は手術療法が必要です。手術は肘関節や肩関節の機能を回復させるのが目的です。 手術の方法は腱の切れ方や、症状によって異なるため、医師の判断で行われます。手術後は医師の指導のもと、リハビリで症状改善を目指します。 手術を受ける際にわからないことや、不安なことは遠慮せず医師に質問しましょう。 断裂後の生活で気を付けるべきこと 断裂後の生活で気を付けるべきことを解説します。 上腕二頭筋断裂を起こした際は腕に負担のかかる動作は控え、無理のない範囲でリハビリを行いましょう。 腕に負担のかかる動作は控える 上腕二頭筋断裂を発症した後は、腕に負荷のかかる動作は控えることが大切です。腕に負荷がかかることで、症状悪化や回復が遅くなる可能性があります。 リハビリやトレーニングを行う際は、急な負荷は避けるようにしましょう。 無理のない範囲でリハビリを行う リハビリの段階 主な目的 リハビリ内容 注意点 手術直後(行なっている場合)〜数週間 腱の保護と炎症の軽減 ギプスやサポーターで固定し、過度な動きを避ける 無理な動きはせず、医師の指示に従う 数週間〜1カ月 関節の可動域を広げる 軽いストレッチや他動運動で可動域を広げる 腕に違和感を強く感じる場合は無理をせず、徐々に動かす 1〜3カ月 筋力の回復を促す ゴムバンドや軽いダンベルを使った筋力トレーニング 急に負荷を増やさず、段階的に強度を上げる 3カ月以降 通常の動作やスポーツ復帰 日常生活動作やスポーツ向けの実践的な運動を行う 症状改善を焦らず、継続的にトレーニングを行う 上腕二頭筋断裂の治療としてリハビリは有効です。リハビリを行う際は自己判断ではなく、医師の指導のもと、行うことが大切です。 リハビリは焦らず、炎症や違和感などを考慮して行います。いきなり腕を動かすのではなく、段階ごとに腕を慣らしていきます。 症状改善を焦ると、無意識のうちに腕に負担をかけてしまうことがあるため、焦らずリハビリに取り組みましょう。 スポーツや仕事への復帰は医師と相談する 上腕二頭筋を断裂した後、無理に復帰すると再断裂や回復が遅くなる恐れがあります。 上腕二頭筋断裂の症状や回復のスピードには個人差があり、医師は患者に合わせた復帰計画を立てて指導します。 自己判断で復帰や無理をしてしまうと、腱の再断裂だけでなく、肩関節周囲の他の組織を損傷する恐れがあるので、復帰時期は医師と相談しましょう。 またスポーツや仕事に復帰する際は、軽い運動から徐々に慣らしましょう。 食事に気をつける 栄養素 役割 推奨される食材 タンパク質 筋肉や腱の修復を促進する 肉、魚、卵、大豆製品 (豆腐、納豆) カルシウムとビタミンD 骨の健康を維持し、腱の強化をサポートする 乳製品(牛乳、チーズ)魚介類(鮭、いわし) ビタミンC コラーゲンの合成を助け、組織の修復を促進する 果物(オレンジ、キウイ)野菜(パプリカ、ブロッコリー) オメガ-3脂肪酸 炎症を抑え、回復をサポートする 魚油(サバ、マグロ)ナッツ類(アーモンド、クルミ) 上腕二頭筋断裂後は症状改善に向けて、食事にも気を付ける必要があります。 栄養素の摂取は大切ですが、極端に食事が偏らないよう注意しましょう。 上腕二頭筋断裂の疑いがある場合は早めの受診を 上腕二頭筋断裂の疑いがある場合は早めの受診が大切です。上腕二頭筋断裂は発見が遅れると回復が遅れ、重症化する恐れがあります。 また、上腕二頭筋断裂と診断された後も無理はせず、医師の診断のもとリハビリや復帰を行いましょう。 上腕二頭筋断裂が数カ月経過しても改善しない場合は、当院「リペアセルクリニック」にご相談ください。再生医療を活用し腱の構造的な修復だけでなく、機能的な回復も促します。 改善しない上腕二頭筋断裂でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にお問い合わせください。 参考文献 (文献1) Danielle Campagne, (2023)Biceps Tendon Tears,MSD MANUAL,Reviewed/Revised Jul 2023, https://www.msdmanuals.com/home/injuries-and-poisoning/sprains-and-other-soft-tissue-injuries/biceps-tendon-tears(最終アクセス:2025年3月11日) (文献2) Danielle Campagne, et al. (2023),Biceps Tendon Tears,MSD MANUALProfessionalVersion,Reviewed/Revised Jul 2023 https://www.msdmanuals.com/professional/injuries-poisoning/sprains-and-other-soft-tissue-injuries/biceps-tendon-tears(Accessed:2025-03-11) (文献3) 「プレドニン錠 5mg」『患者向医薬品ガイド』,pp.1-10, 2024年 https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/guide/ph/343018_2456001F1310_4_00G.pdf(最終アクセス:2025年3月11日) (文献4) Carl R Freeman, et al.(2023),Nonoperative treatment of distal biceps tendon ruptures compared with a historical control group,PubMed https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19797566/(Accessed:2025-03-11) (文献5) Simon P Lalehzarian, et al.(2022),Management of proximal biceps tendon pathology,PubMed https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8771414/(Accessed:2025-03-11) (文献6) 中川拓也ほか,「遠位上腕二頭筋腱断裂における術後早期理学療法後の長期経過─術後 3 年間の症例検討─」『JPTA』.pp1-1, https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2011/0/2011_Cb0503/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年3月11日)
2025.03.31 -
- 頭部
- 脊椎
- 内科疾患
「足が思うように動かない」「以前より歩きづらくなった」と感じることはありませんか? 歩行は日常生活の基本であり、その障害は日々の行動や心の状態にも大きな影響を与えます。 突然の変化に戸惑い、原因が分からず不安を抱えている方も多いでしょう。 この記事では、痙性歩行やパーキンソン歩行など9つの主な歩行障害の種類と、それぞれの原因となる疾患について詳しく解説します。 原因を知ることは、回復の第一歩ですので、ぜひ最後までご覧ください。 主な歩行障害の種類と原因疾患 主な歩行障害としては、以下の9種類があげられます。 痙性歩行(けいせいほこう) はさみ足歩行 ぶん回し歩行 鶏歩(けいほ) 失調歩行 パーキンソン歩行 間欠性跛行 墜落性跛行 心因性歩行障害 歩行障害の状況と原因疾患について、それぞれ解説します。 痙性歩行(けいせいほこう) 痙性歩行とは、脚が伸び切った状態でつま先立ちの姿勢になり、つま先を引きずって歩く状態です。 原因疾患としては、以下のようなものがあげられます。 脳血管疾患 多発性硬化症 脊髄損傷 頚椎症性脊髄症(頚髄症) つま先を引きずって歩く関係で、靴の前側部分がすり減りやすい特徴があります。(文献1) はさみ足歩行 はさみ足歩行とは、両足ともつま先立ちで床をこすりながら、両足をはさみのように交差させて歩く状態です。 原因疾患としては、以下のようなものがあげられます。 脳血管疾患 多発性硬化症 脊髄損傷 X脚のため、膝をすり合わせるような歩き方も、はさみ足歩行と呼ばれるケースがあります。 ぶん回し歩行 ぶん回し歩行とは、弧を描くように足を動かして歩く状態です。 ぶん回し歩行の主な原因を、以下に示しました。 脳血管疾患による片麻痺 下肢の筋力低下 膝関節や足関節の柔軟性低下 歩幅は正常ですが、つま先を上げる動作が難しいため、少しの段差にもつま先が引っかかり、転倒の可能性があります。 鶏歩(けいほ) 鶏歩とは、足首が下がったまま歩いている状態です。つま先を引きずりながらぱたぱたと歩きます。 原因疾患としては、以下のようなものがあげられます。 腓骨神経麻痺(腓骨:ふくらはぎにある細い骨) 筋萎縮性側索硬化症 ポリオ 鶏歩の特徴は、つまずき防止のため、歩くときに股関節を強く曲げて、膝を高く上げることです。 失調歩行 失調歩行とは、麻痺や筋力低下がないにもかかわらず、バランスが悪くスムーズに歩けない状態です。 原因疾患としては、以下のようなものがあげられます。 脊髄小脳変性症 脊髄腫瘍 脳腫瘍 失調歩行の具体例は、よろめきながらの歩行や開脚した状態での歩行などです。 パーキンソン歩行 パーキンソン歩行とは、名前のとおりパーキンソン病特有の歩行障害です。 パーキンソン病以外の原因疾患としては、以下のようなものがあげられます。 パーキンソン症候群 レビー小体型認知症 前かがみの姿勢、狭い歩幅、最初の一歩が出ないすくみ足、徐々に早足になる突進歩行などが特徴としてあげられます。方向転換時にバランスが取りにくいため、転倒の危険性が高い状況です。 間欠性跛行 間欠性跛行とは、しばらく歩いていると、手足のしびれや痛みといった症状が出現し、休憩すると症状が緩和する状態です。 原因疾患としては、以下のようなものがあげられます。 脊柱管狭窄症 閉塞性動脈硬化症 歩くと痛み、休むと治まる。再び歩くと痛む。この状況を繰り返す歩行障害です。 以下の記事で、脊柱管狭窄症について解説していますので、あわせてご覧ください。 墜落性跛行 墜落性跛行とは、左右の足の長さが異なるため、歩く際に片方の足が地面に墜落するように落下する動きになる歩行障害です。 原因疾患としては、以下のようなものがあげられます。 変形性股関節症 先天性股関節脱臼 足の長さが異なる場合、片足立ちのときに、反対側の骨盤が下降しています。 以下の記事で、股関節の病気を詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 心因性歩行障害 心因性歩行障害とは、身体機能や運動機能に異常がないにもかかわらず、歩けなくなる状態です。ただし、介助により歩行可能です。 強い不安や心理的ストレスが身体症状に現れる、転換性障害(機能性神経症状症)のひとつとされています。 発症年齢は10代から30代前半までがほとんどと言われており、男性より女性に多く見られる症状です。 歩行障害の治療・リハビリテーション この章では、歩行障害に対する治療およびリハビリテーションについて詳しく解説します。 原因疾患の治療 ほとんどの歩行障害には原因となる疾患があるため、その治療が必要です。 治療方法としては、薬物療法やブロック注射、手術療法、再生医療などがあります。 再生医療は、脳血管疾患やパーキンソン病、脊髄損傷などさまざまな疾患に対して効果を示しています。 筋力トレーニング 筋力トレーニングの種類としては、以下のようなものがあげられます。 椅子に座って膝の曲げ伸ばし かかとの上げ下ろし 踏み台昇降 スクワット リハビリ専門職の指導により、トレッドミルやレッグプレスといった専用のマシーンで行う筋力トレーニングもあります。 バランストレーニング 代表的なバランストレーニングは、以下のとおりです。 ゆっくりとした片足立ち 横歩き 後ろ歩き 歩いている途中の方向転換 つま先上げ 障害物を乗り越えながら歩くことも、バランストレーニングのひとつです。(文献2) ご自宅でバランストレーニングを行うときは、転倒しないように壁やいす、手すりなどにつかまりましょう。 歩行補助器具の選定・指導 歩行障害は治療によって軽減するものもありますが、原因疾患によっては回復に時間がかかり、障害が固定される場合もあります。 移動能力や生活の質向上のために、歩行補助器具を使うこともリハビリのひとつです。歩行補助器具には、杖(一点杖、多点杖)や歩行器、シルバーカーなどの種類があります。 まとめ|歩行障害の種類を知り、適切な治療を受けよう 歩行障害にはさまざまな種類があり、原因もそれぞれ異なります。歩行障害は転倒のリスクを高め、閉じこもりや、さらなる身体機能低下につながるものです。 自分の歩きにくさはどのようなものかを理解した上で、状況に合った医療機関を受診し、適切な治療やリハビリを受けましょう。 歩行障害の種類に関するよくある質問 ここでは、歩行障害の種類に関するよくある質問を3つ紹介します。 歩行困難になったら何科を受診すれば良いですか? 歩行困難の種類と原因疾患別に、受診する診療科を表にまとめましたので、ご覧ください。 歩行障害の種類 疾患 受診する診療科 痙性歩行 はさみ足歩行 ぶん回し歩行 失調歩行など 脳梗塞 脳出血 くも膜下出血 脳腫瘍など 脳神経外科 パーキンソン歩行 失調歩行 鶏歩(けいほ)など パーキンソン病 脊髄小脳変性症 筋萎縮性側索硬化症など 神経内科 間欠性跛行 痙性歩行 墜落性跛行など 椎間板ヘルニア 脊柱管狭窄症 変形性関節症 頚髄症など 整形外科 心因性歩行障害 強い不安や心理的ストレスによる不調 (転換性障害も含まれる) 精神神経科 間欠性跛行 閉塞性動脈硬化症 内科 どの診療科を受診すると良いのか不明な場合は、かかりつけ医への相談をおすすめします。 歩行障害は若い人にも起こりますか? 若い人にも歩行障害は起こりえます。 若年者の歩行障害の原因としては、多発性硬化症、脊髄損傷、脳性麻痺、先天性疾患、あるいは外傷後の後遺症などがあります。若年性パーキンソン病も原因のひとつです。 パーキンソン病を40歳以下で発症した場合に、若年性パーキンソン病と呼ばれます。若年性パーキンソン病の特徴は、病気の進行がゆるやかであることや、薬の効きが良いことなどです。 ペンギンみたいな歩き方は病気の症状ですか? 正常圧水頭症やパーキンソン病、シャルコー・マリー・トゥース病といった病気の症状であると考えられます。 足の筋力や足首の柔軟性が低下して、歩くときに足を上げられないため、すり足や小さい歩幅での歩行になります。 正常圧水頭症については、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 参考文献 (文献1) 和田直樹「歩行障害の種類と原因疾患」55(9), pp.730-734, 2018 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/55/9/55_55.730/_pdf (最終アクセス:2025年3月21日) (文献2) Dotdash Meredith「Boost Your Mobility With These Gait Training Exercises」Verywell Health, 2025年1月28日 https://www.verywellhealth.com/gait-training-in-physical-therapy-5069884 (最終アクセス:2025年3月21日)
2025.03.31 -
- 脊椎
- 腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症の手術を経て、退院後の生活が気になる方もいるのではないでしょうか。 腰部脊柱管狭窄症で退院した後は、安静に過ごしたり少しずつ体を動かしたりするなど、気を付けたいポイントがいくつかあります。 今後退院を控えているのであれば、退院後の生活を知っておくと、腰の回復を図る上で役立つでしょう。 本記事では、腰部脊柱管狭窄症の退院後の生活を、心掛けるべきポイントや避けるべき禁忌とともに徹底解説します。 腰部脊柱管狭窄症の退院後の生活のポイント 腰部脊柱管狭窄症とは、脊椎を通る脊柱管と呼ばれる管が老化や椎間板ヘルニアなどの原因によって狭まり、神経を圧迫する疾患です。 腰部脊柱管狭窄症になると、足の痛みやしびれなどの症状が発生します。 治療は保存療法や手術を行うのが一般的ですが、手術が終わって退院した後の生活も大切です。 腰部脊柱管狭窄症で退院した後の生活で、欠かせないポイントをご紹介します。 コルセットを装着する 腰部脊柱管狭窄症の手術後は、腰椎コルセットを装着して腰の部分を安定させながら過ごします。 とくに、手術で腰椎を固定させた場合は、骨がくっつくまでの間に腰椎に負担がかからないように、固めのコルセットを装着するのが一般的です。 なお、コルセットは下着の上から装着します。 入浴時は姿勢に注意 腰部脊柱管狭窄症の手術・退院後は、入浴時の姿勢にも注意が必要です。 手術や退院後の入浴はシャワーが基本で、医師が術後の傷口の状態を見ながら許可するかを決定します。 シャワーは手術した部位を保護した状態で、座った状態の姿勢で浴びます。 ただし、姿勢に不安を感じるときは、立った状態や椅子に腰かけた状態でのシャワーでも問題ありません。 なお、体を洗うときは、手術した背中の部位はこすらないようにするのもポイントです。 規則正しい生活を心掛ける 退院後は規則正しい生活を心掛けることも、重要なポイントといえます。 手術や退院してからはコルセットを着用しての生活が続くためです。 コルセットを外すまでの期間は腰が安定するため、背中やお腹周りの筋肉が衰えがちです。 退院後の筋力の低下を極力避けるには、定期的な医療機関でのリハビリと並行して、散歩などの軽いエクササイズも欠かせません。 ただし、骨がくっつくまで時間がかかるため、長時間の散歩のように痛みが出るエクササイズは禁物です。 またバランスの取れた栄養のある食事も、退院後の体力回復を促してくれます。 ただし、体重が増えると腰への負担も増加するため、食べすぎには注意が必要です。 仕事復帰は主治医と相談して決める 腰部脊柱管狭窄症の退院後に仕事に復帰したいのであれば、まずは主治医に相談しましょう。 主治医が術後や退院後の回復の度合いをチェックした上で判断します。 また、退院後に仕事を再開する時期は、復帰予定の仕事の内容によってさまざまです。 デスクワークでの再開を目指すのであれば、2~3週間程度で復帰できる可能性が十分あります。 一方、物の持ち運びのように腰を使う肉体労働であれば、2カ月以上かかるケースもあります。 ただし、患者様の体力や回復状況などによって復帰時期が前後することは理解しておきましょう。 腰部脊柱管狭窄症の退院後の生活【禁忌・注意点】 腰部脊柱管狭窄症の退院後の生活では、禁忌(してはいけないこと)や注意すべき点もいくつかあります。 退院後の生活で気を付けるべき点は、次のとおりです。 腰への負担を避ける コルセットの汚染・破損は医療機関に知らせる 手術や退院後に痛みを感じる場合は主治医に知らせる 退院後の生活のポイントとともに禁忌・注意点を理解しておくと、スムーズな回復を図れるでしょう。 それぞれ詳しく見ていきます。 腰への負担は避ける 腰部脊柱管狭窄症の退院後の生活では、腰に負担のかかる行為は避ける必要があります。 重い物の持ち運びはもちろんのこと、ゴルフや長時間の運動は控えることが大切です。 とくに腰椎を固定する手術を行った方は、腰を必要以上にねじったりひねったりすると、回復が遅れたり症状が悪化したりしかねません。 少なくとも、コルセットを装着している間は、安静にしながら腰にはあまり負担をかけないことがポイントです。 コルセットの汚染・破損は医療機関に知らせる コルセットが汚染・破損したら、極力早めに医療機関に知らせます。 コルセットは、日常生活の中でかく汗や、入浴(シャワー)時のお湯などで汚れてしまいます。 軽度の汚染であれば、水ぶきや手洗いできれいにした後、ドライヤーで乾かせば問題ありません。 ただし、コルセットが壊れるなどしてしまった場合は、すぐにでも医療機関に連絡しましょう。 手術や退院後に痛みを感じる場合は主治医に知らせる 腰部脊柱管狭窄症の手術を経て退院した後に痛みを感じたときも、すぐに主治医に知らせましょう。 手術後に痛みを感じる場合は、手術で改善できなかった、あるいは改善はしたが再発したというケースが考えられます。また、手術時に神経を傷つけてしまう可能性も否定できません。 腰部脊柱管狭窄症で手術を受けても痛みを感じる場合は、無理は禁物です。 腰部脊柱管狭窄症の手術・退院後の流れ 腰部脊柱管狭窄症で手術を受けたあとや退院後は、どのように生活が変化するのでしょうか。 本章では手術後から退院後までの流れについて解説します。 手術や退院後の生活の流れを大まかに理解するだけでも、落ち着いて手術や術後の回復に専念できます。それぞれ見ていきましょう。 手術翌日からリハビリ開始 手術が終わると、回復の状況に応じて早くて翌日からリハビリが始まります。 リハビリ当初は、病室のベッドで起きる・座る動作を確認した上で、歩行器を使って少しずつ歩ける距離を伸ばしていく流れです。 なお、リハビリには専門家である理学療法士が付き添い、回復に向けてさまざまな指導を行っていきます。 リハビリは退院後も続くため、入院していた病院には定期的に通院します。 退院後は外出や軽い運動などが可能 退院後は各自での外出や軽い運動ができます。 コルセットを装着した状態での生活が続くため、筋力の維持や増進のために少しずつ動く量を増やしたり、移動範囲を広げたりしていくことが大切です。 ただし、退院して日が浅いうちは、極度に運動量を増やさないようにします。 手術後1~2週間程度で車の運転が可能な場合も 手術から1、2週間程度経過すると、退院後最初の診察です。 診察時に主治医が回復の状況や痛みの有無を問診し、回復状況によっては仕事の復帰や車の運転の許可を出す場合があります。 もし車を運転して問題ないと判断された際は、乗り降りで無理に腰をひねらないようにします。 乗るときはまず、座席に腰かけてから、両足を車の中に移すのがポイントです。 手術後3カ月程度でコルセットを外せる 腰部脊柱管狭窄症の手術から3カ月程度が経過すると、ようやくコルセットを外す許可が出ます。 ただし、コルセットを外せる時期は個人によって差が出るため、3カ月はあくまでも目安とお考えください。 コルセットを外す許可が出ることは、安静期間の終わりを意味します。とくに問題がなければ、肉体労働関係の仕事でも復帰を申し出られるでしょう。 腰部脊柱管狭窄症の治療では再生医療も注目されている 腰部脊柱管狭窄症の治療には、再生医療という選択肢もあります。 再生医療では、患者様自身の幹細胞を採取・培養する「幹細胞治療」と、血液に含まれる血小板を用いる「PRP療法」があります。 どちらも患者様自身の幹細胞や血液を用いるため、副作用のリスクが少ないのが特徴です。 当院「リペアセルクリニック」では、脊椎損傷に対する治療として再生医療を行っています。 腰部脊柱管狭窄症の治療に再生医療をご検討の方は、当院へお気軽にご相談ください。 まとめ|腰部脊柱管狭窄症の退院後3カ月ほどはコルセットを着用して生活 腰部脊柱管狭窄症の退院後の生活は、基本的に腰椎コルセットを装着した状態で安静に過ごすことが求められます。 ただ、コルセットを装着した状態では筋力が衰えるため、無理のない運動や栄養の摂取も大切です。 手術から3カ月程度が経過すれば、コルセットを外せるケースが増えるため、それまでは安静と規則正しい生活を心掛けましょう。 腰部脊柱管狭窄症でお悩みの方には、再生医療という治療選択肢もあります。 再生医療について詳しく知りたい方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。 腰部脊柱管狭窄症の退院後の生活に関してよくある質問 腰部脊柱管狭窄症の手術後に歩けないときの対策は? 腰部脊柱管狭窄症で手術後に関節が痛くなる場合がありますが、安静にしていると次第に痛みが取れるケースが多いです。 ただし、痛みが長引く場合は、神経の損傷などの可能性もあるため、我慢せず主治医へ相談しましょう。 腰部脊柱管狭窄症のリハビリ期間は何日間ですか? 腰部脊柱管狭窄症のリハビリ期間は、入院中に1~2週間、退院後はコルセットを外せるまでの約3カ月が目安です。 全体で合計すると、3カ月半程度と考えて良いでしょう。 ただし、患者様の回復度や健康状態などによって、前後する場合もあります。 腰部脊柱管狭窄症の退院後にスポーツはOKですか? 腰部脊柱管狭窄症のスポーツは、退院後3カ月ほどしてコルセットが外せれば可能になります。 ゴルフや野球のような腰を使うスポーツは、退院直後の状態では大きな負担がかかります。 退院直後のスポーツであれば、リハビリも兼ねて簡単なウォーキングのような、腰に負担のかかりにくいものがおすすめです。 腰部脊柱管狭窄症の手術後に性行為はできますか? 腰部脊柱管狭窄症の手術後は腰に大きな負荷がかかる行為はタブーとされています。 このため、腰を激しく動かすことが多い性行為も、手術後しばらくは避けるのが無難です。 再開する際には必ず主治医に相談し、自分の回復状況に応じた指導を受けると良いでしょう。
2025.03.31 -
- 肝疾患
- 内科疾患
肝嚢胞は肝臓に形成された袋の中に水が溜まった状態です。自覚症状がないことも多いですが、大きくなると上腹部の痛みや背中の痛みをもたらす場合があります。 肝嚢胞で背中が痛むということは、肥大化がかなり進んでいると考えられます。 本記事では背中の痛みの原因になる肝嚢胞やその症状、治療方法を解説します。 肝嚢胞が背中の痛み(背部痛)を引き起こすことがある 肝嚢胞(かんのうほう)の診断を受けた後、背中に痛みを感じることがある方もいらっしゃるでしょう。 肝嚢胞は多くの場合、症状がなく偶然の検査で見つかることが一般的ですが、大きくなると徐々に不快感や痛みを引き起こすことがあります。 とくに肝嚢胞が大きく成長すると、肝臓の被膜を伸ばしたり、周囲の組織を圧迫したりすることで、右上腹部だけでなく背中や肩甲骨の下部にまで痛みが広がる場合があります。 このような背中の痛みは、肝嚢胞のサイズや位置によって現れることがあるため、医師による適切な診断と評価が重要です。ここでは、肝嚢胞がもたらす背中の痛みについて詳しく見ていきましょう。 肝嚢胞(かんのうほう)は多くの場合、症状がなく偶然の検査で見つかることが一般的ですが、大きくなると徐々に不快感や痛みを引き起こすことがあります。 実は肝嚢胞は発達の仕方によって、右上腹部だけでなく背中まで痛みが広がる場合があります。 肝臓にできた肝嚢胞の肥大が背中の痛みになる 肝嚢胞とは、肝臓にできた嚢胞(水ぶくれ)です。 袋の内部に水分などの液体が溜まっている状態で、基本的には害はありません。 ただ、肝嚢胞は肥大化するケースがあり、肥大化の仕方によっては周辺の臓器を圧迫します。 肥大化によって周辺の臓器が圧迫されると、お腹や腰、ひいては背中の痛みの一因になることもあります。 基本的に症状や害のない水ぶくれとはいえ、肥大化すると痛みを感じるケースがある点に注意が必要です。 肝嚢胞自体の原因は完全に解明されていない 肝嚢胞が発生する原因は、実は今でも完全に解明されていません。 ただ、肝嚢胞は生まれついた時点ですでにある先天的なものと、成長に伴ってできてくる後天的なものがあります。 なお、先天的なものと後天的なものとでは、先天的なものの症例が多い傾向です。 肝嚢胞は40代から60代の女性の患者が多いため、女性ホルモンの一種であるエストロゲンとの関連性を指摘する学説があります。 一方、後天的な肝嚢胞は切り傷のような外傷や、キタキツネやイヌの便に生息する寄生虫エキノコックスの感染が原因と考えられています。エキノコックスは国内では北海道で主に発生が確認されており、野生動物の糞便を介して人間に感染します。 エキノコックスの感染で発生したものは、肥大化した際には肝臓でさまざまな異常を引き起こし、死に至らせる事例がある点に注意が必要です。 ただ、エキノコックスなどの感染など後天的な原因によるものは、発生確率が極めて低いため、過度の心配は必要ありません。 肝嚢胞が引き起こす症状を解説 肝嚢胞はほとんどが良性です。 基本的にサイズが大きいケースほど、症状がもたらすリスクが大きくなります。 肝嚢胞によってもたらされる症状を、サイズ別にひとつずつ解説していきましょう。 小さい肝嚢胞は基本的に症状はない まず、サイズの小さな肝嚢胞は基本的に症状はありません。 自覚症状さえ見られないため、小さいものができていても、とくに支障なく日常生活を送れます。 以上のように、サイズが小さめの肝嚢胞は人体にさほど影響を及ぼしません。 超音波検査や血液検査などで発見されることはあるものの、無症状であれば医師からも当面様子を見る診断が下る可能性があります。 肥大化した肝嚢胞が引き起こす腰痛と消化器症状 肝嚢胞が肥大化すると、お腹の痛みや張りなどの悪影響が出てくる点に注意が必要です。 お腹の痛みをはじめとする症状は、肝嚢胞の肥大化で周りの臓器が圧迫されることによって起こります。 とくによく見られる症状が、右側のお腹の上側からみぞおちにかけての痛みです。 この症状は、肝嚢胞が大きくなるにつれて、肝臓の表面を引っ張るのが原因と考えられています。 さらに肝嚢胞の肥大化が進行すると、痛みを感じる部位も胃などの消化器だけでなく、腰や背中に広がることもあります。 腰や背中にまで痛みを感じるようになると、かなり肥大化していることが考えられるため、医療機関での精密検査が必要です。 また、肝嚢胞が肥大化した場合、食生活にも悪影響が及ぶケースがあります。 肝嚢胞が大きくなると胃が圧迫されることがあり、食欲がわかなかったり吐き気を催したりすることもあります。 吐き気については、実際に食べたものを戻してしまうことがある点も、注意が必要なポイントです。 ほかにも、肝嚢胞に細菌が入り込んでいる場合は発熱などの症状が引き起こされることがあります。 多発性肝嚢胞による重篤な合併症リスク 肝嚢胞でより注意しなければならない症状が、多発性肝嚢胞(たはつせいかんのうほう)と呼ばれる複数の肝嚢胞が発生する症状です。 多発性肝嚢胞になると、状況によって呼吸困難やヘルニアを引き起こす可能性があります。 加えて、腎臓に嚢胞ができる多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)を併発するケースがあるのも特徴です。 多発性嚢胞腎は高血圧や腎不全の原因になるリスクを持った病気です。 もし、多発性肝嚢胞と多発性嚢胞腎を併発しているのであれば、基本的に治療が必要になります。 肝嚢胞の診断方法 健康診断などで肝嚢胞らしきものが見つかった場合、より詳しい検査を受けるように指示されるのが一般的です。 具体的にどのような検査が行われるのか、肝嚢胞の診断方法について解説します。 一般的に腹部エコー検査がよく用いられる 肝嚢胞を詳しく診断する際は、腹部エコー検査(超音波検査)を活用するのが基本です。 腹部エコー検査とは、お腹の部分に超音波を送受信する器械を当て、跳ね返ってきた超音波をもとに画像診断します。 簡単に臓器の状態を確認できる上に、体にも大きな負担はかかりません。また、肝臓に溜まっている液体の有無のほか、肝嚢胞の個数・サイズや成長具合を判断できます。 CT検査やMRI検査による精密検査も行われる 腹部エコー検査で肝嚢胞による臓器の圧迫などの影響が出ていることが明らかな場合は、CT検査やMRI検査を使ってより精密な検査も行います。 CT検査はコンピュータを使いながら体内を断層撮影する方法です。X線をさまざまな方向から照射して、水分や脂肪、骨などの体内の成分に対する吸収の度合いで画像を作ります。 とくに見つかった肝嚢胞が腫瘍を疑われるときは、バリウムなどの造影剤も活用して検査を行う流れです。 一方MRI検査では、人体に多くの水素原子が含まれている特徴を活かして検査します。水素原子に磁力と電波を照射し、それに対する水素原子の反応に応じて画像を作る仕組みです。 補助的に血液検査も使われる 腹部エコー検査やCT検査・MRI検査以外にも、血液検査が使われることがあります。 血液検査はあくまでも補助的な手段であるため、他の手法と組み合わせての活用が欠かせません。 ただ、血液検査での検査項目のうち、アミノ酸の生成機能があるASTとALTは肝機能の状態を示す指標です。 血液検査でASTとALTになんらかの異常が見られる場合、他の検査の結果と併せて肝嚢胞による問題がないかで総合的な判断が下されます。 肝嚢胞の治療方法 もし、検査によって肝嚢胞が見つかったとき、手術のような方法で治療するのではないかと心配になるのではないでしょうか。 実は肝嚢胞の状態やサイズ、患者の健康状態などによっては、治療が不要なケースもあります。 肝嚢胞の状態などに応じた治療方法について、ひとつずつ見ていきましょう。 無症状の場合は経過を観察する まず、発見された肝嚢胞が無症状であれば、ひとまず経過を観察しつつ、半年から1年おきに腹部エコー検査を行います。 肝嚢胞は数が1個だけで症状が見られないものであれば、肥大化するケースは多くありません。 もし長期的に様子を見て、何の変化もなければ、治療は行われずに終わります。 ただし、肝嚢胞の中には年月とともに徐々に肥大化するケースもあるため、油断はできません。 肥大していれば嚢胞液の排出治療を行う 肝嚢胞が肥大し、痛みまで生じていたら、治療が必要です。 肝嚢胞の治療では、薬物療法や嚢胞液の排出を行います。 嚢胞液の排出は、まず嚢胞自体に針を刺して、内部の液体を抜きます。 続いて、再度嚢胞液が溜まるのを防ぐために、嚢胞の中にエタノールやミノサイクリン塩酸塩の薬液を注入する流れです。 根本的な解決手段として外科手術も用いられる 肝嚢胞の治療法には、根本的に解決するための手段として外科手術が行われることがあります。 外科手術が必要になるのは、肝嚢胞の肥大化で激しい痛みや胆汁の流れの妨げが見られるときなどです。 外科手術では主に以下の2つが行われます。 肝切除術:嚢胞を含む肝臓の一部を外科的に切除する手術 嚢胞壁切除術:嚢胞の壁の一部のみを切除して内容液を排出させる 肝切除術の場合は、嚢胞液を排出する方法と異なり、体への負担は大きいものの、嚢胞の除去が可能です。 なお、外科手術の際に寄生虫も見つかったときは、抗生物質も投与します。 肝臓の疾患に対する治療法「再生医療」について 肝嚢胞は肝臓疾患の一つですが、肝臓には様々な種類の疾患が存在します。 そんな肝嚢胞以外の肝臓の疾患に対しては、再生医療という治療の選択肢があります。 再生医療では、患者様自身の幹細胞や血液を用いて治療を行うため、副作用のリスクが少ないのが特徴です。 手術や入院を必要としたくないという方は、再生医療をご検討ください。 まとめ|肝嚢胞の背中の痛みは手術や薬物療法で治療できる 肝嚢胞は肥大化すると、胃などの消化器だけでなく腰や背中の痛みをも引き起こす場合があります。 しかし、肝嚢胞は多くの場合で症状が見られません。そのため、健康診断などで検査をした際に見つかることがあるために注意が必要です。 無症状の場合は経過観察することもありますが、肥大化して痛みがある場合は手術によって肝嚢胞の切除や液体の排出なども行います。 もし肝嚢胞によって上腹部や背中などに痛みを感じるときは、我慢せず医療機関を受診することが大切です。 肝嚢胞 背中の痛みに関してよくある質問 肝嚢胞はストレスやアルコールが原因ですか? 肝嚢胞の原因は現在も解明されていません。 後天的に発症する原因としては、寄生虫エキノコックスや、女性ホルモンのエストロゲンとの関連性からも研究されている段階です。 なお、ストレスやアルコールとの関連性については明らかにされていません。 ただし、過度のストレスやアルコールは、肝機能の低下や肝障害の原因になるため注意が必要です。 肝嚢胞が小さくなることや消えることはありますか? 肝嚢胞が小さくなることや消えることはたまにあるものの、事例はあまり多くはありません。(文献1) 大きさを維持するか、肥大化するケースが多く見られます。 肝嚢胞を発症すると寿命に関わるのですか? 肝嚢胞は発症しても、寿命に関わるケースはほとんどありません。 ただし、肥大化によって呼吸困難が引き起こされたり、肝がんの原因になったりするなど大きなリスクを引き起こすこともある点に注意が必要です。 肝嚢胞の手術費用はいくらくらいですか? 肝嚢胞の手術費用は、手術を受ける医療機関によって異なります。 ただ、手術でよく用いられる腹腔鏡手術自体は50〜65万円程度が相場です。 しかも、肝嚢胞の治療は保険が適用されるため、3割負担であれば15万円から20万円程度となります。 参考文献 (文献1) 笹岡 悠一ほか. 「腹部超音波検査で観察された肝嚢胞縮小化の1例と10例の文献的考察」 『医学検査』 70(1), pp.155-159, 2021年. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/70/1/70_20-50/_html/-char/ja (最終アクセス:2025年3月25日)
2025.03.31 -
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「最近なぜか、寝起きに手足がしびれている」 「病気が原因ではないかと不安」 このようなお悩みを抱えている方も多いことでしょう。 寝起きに手足がしびれる原因は、寝ているときの姿勢から脳血管疾患までさまざまです。 この記事では寝起きに手足がしびれる原因を中心に解説します。 日常生活の中で行える対処法も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。 寝起きに手足がしびれる原因 寝起きに手足がしびれる原因としてあげられるのは、主に以下の5つです。 寝ているときの姿勢 神経系疾患 糖尿病による神経障害 脳血管疾患 その他の疾患 寝ているときの姿勢 寝起きに手足がしびれる原因の1つが、寝ているときの姿勢です。 腕に頭をのせて寝た 腕を頭より上にして寝た 狭い場所で寝たために寝返りを打てなかった このような体勢が長時間続くと、手足の神経が圧迫されてしまい、しびれを引き起こします。 枕が合わないこともしびれの一因です。枕が高すぎると、あごを強く引いた体勢になります。その結果生じるのが、肩や肩甲骨周辺の筋緊張です。筋肉の緊張が血行不良を引き起こし、しびれにつながります。 神経系疾患 変形性頚椎症や脊柱管狭窄症、手根管症候群、椎間板ヘルニアなどの疾患により、神経が圧迫されて、手足のしびれが生じるケースもあります。 神経系疾患と手足のしびれの関係については、以下の記事でも解説していますのであわせてご覧ください。 糖尿病による神経障害 糖尿病の三大合併症の1つが神経障害です。手足のしびれは、感覚神経の障害に分類されます。 高血糖が続くと神経に栄養を与える血管に傷がつきます。その結果血流が悪くなり、神経の働きが障害されるのです。 糖尿病による神経障害では、手足のしびれのほか、感覚の低下や筋力の低下などの症状も現れます。(文献1) 糖尿病の合併症については以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 脳血管疾患 脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの脳血管疾患でも、手足のしびれが起こります。 手足のしびれ以外に、手足の麻痺や激しい頭痛、視野の異常などの症状が現れたら、速やかに脳神経外科を受診しましょう。 チェックポイントは「ACT-FAST」です。(文献2) Face:顔の片方がゆがむ Arm:片方の腕に力が入らない Speech:いつもどおり話せない Time:時間を空けずに ACT:救急車を呼ぼう 脳血管疾患は命に関わるものなので、迅速な行動が大切です。 その他の疾患 過換気症候群や更年期障害などでも、手足のしびれが起こる場合があります。 過換気症候群とは、強い不安や緊張などが原因で、何度も激しく息を吸ったり吐いたりする状態です。 息を吸ったり吐いたりを繰り返した結果、血液中の二酸化炭素濃度が低くなり、血液がアルカリ性に傾きます。血液がアルカリ性に傾くと、血管が収縮されてしまい、手足のしびれが生じるのです。 更年期障害の場合、女性ホルモンの低下が手足のしびれに関係しているとされています。 寝起きに手足がしびれるときの対処法(セルフケア) 寝起きに手足がしびれるときに自分でおこなえる主な対処法(セルフケア)は、以下の3つです。 寝る姿勢や枕を調整する 身体を温める 身体を適度に動かす 寝る姿勢や枕を調整する 寝る姿勢や枕の調整に関してのポイントを、表に示しました。 ポイント 調整方法 寝る姿勢 横向きで寝るときは、しびれやすい方を上にする あおむけで寝るときは、膝の下にクッションを入れるか腕の位置を少し高くする 枕選び 横幅50㎝以上、奥行き35㎝以上 中央が低く両サイドが高めの立体的な形 自然に立った姿勢をそのままキープできる高さが望ましい 1日の約3分の1は、睡眠時間です。筋肉の緊張や神経の圧迫がない自然な姿勢が、手足のしびれ予防のポイントといえるでしょう。 身体を温める しびれる部分を温めたり、揉んだりすると血流が改善されて、しびれがやわらぐこともあります。具体的な方法は、ゆっくりお風呂につかる、やさしくマッサージするなどです。 ただし、神経障害の方は皮膚の感覚が鈍くなることがあるため、やけどに注意する必要があります。寒いときも、長時間ストーブの前に座らないように心がけましょう。カイロで温めるときは肌に直接当てず、決められた時間を守ってご使用ください。 身体を適度に動かす ウォーキングやストレッチなどの適度な運動を行うことで、血流改善によるしびれの緩和が期待できます。 手を握ったり開いたりする、手首や足首をゆっくり曲げ伸ばしするなどもストレッチの一種です。 ただし、症状が強いときには無理に動かさず、安静にしましょう。 下記の記事では、手根管症候群による手のしびれを自分で治すためのストレッチが紹介されています。あわせてご覧ください。 まとめ|セルフケアを行っても寝起きに手足がしびれるときは医療機関を受診しよう 寝起きに手足がしびれる原因は、寝るときの姿勢から脳血管疾患までさまざまです。 自分でできるセルフケアもありますが、ケアを続けても手足のしびれが改善されない場合は、放置せず医療機関を受診しましょう。 とくに、手足が動かない、ろれつが回らないなどの症状を伴う場合は、脳血管疾患の可能性があります。命に関わることもあるので、ためらわず救急車を呼びましょう。 糖尿病を治療している中で、徐々に手足のしびれが出てきた方は、神経障害の可能性があります。早めに主治医へ相談しましょう。 手足がしびれ解消のためには、セルフケアや治療が大切です。 当院「リペアセルクリニック」では、しびれの原因となる脳卒中や糖尿病などの疾患に対して再生医療を提供しています。 手足のしびれでお悩みの方は、当院へお気軽にご相談ください。 寝起きに手足がしびれることに関するよくある質問 ここでは、寝起きに手足がしびれることに関するよくある質問を2つ紹介します。 手足がしびれるときは何科に行くと良いでしょうか? 手足がしびれるときの受診先としてあげられるのは、整形外科や神経内科、脳神経外科などです。整形外科の中でも脊椎(背骨)疾患の治療を行っているところが望ましいでしょう。 整形外科や神経内科などの受診歴がない場合は、主治医に相談しましょう。主治医に紹介状を書いてもらうことで、受診がスムーズに進みます。 しびれが急に出てきて、手足の麻痺があるときは早急に脳神経外科を受診しましょう。脳血管疾患の可能性が高く、一刻を争います。 更年期になると朝起きたら手がしびれるのはなぜですか? 原因として考えられるものが、女性ホルモンの1つ、エストロゲンの減少です。エストロゲンの減少は、自律神経の乱れにも関係しています。自律神経の乱れが、血流の悪化、ひいては手のしびれにつながっています。 エストロゲン減少の影響としてもう1つあげられるのが、皮膚の乾燥です。乾燥した皮膚は敏感であるため、しびれを感じやすくなるといわれてます。 参考文献 (文献1) 出口尚寿,西尾善彦.「糖尿病性末梢神経障害」『日本内科学会雑誌』108(8), pp.1538-1544, 2019 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/108/8/108_1538/_pdf (最終アクセス:2025年3月20日) (文献2) 厚生労働省「みんなで知ろう! からだのこと」厚生労働省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202410_006.html (最終アクセス:2025年3月20日)
2025.03.31 -
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「手や足のしびれが続いて困っている」 「何か病気があるのだろうか?」 このようにお悩みの方も多くいらっしゃることでしょう。 手足のしびれを引き起こす病気はさまざまです。なかには原因がわからないものもあります。 本記事では、手足のしびれを引き起こす病気を中心に解説します。 しびれが続くときの受診先や、病気の予防法なども解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。 手足のしびれの原因となる病気 手足のしびれを引き起こす病気は、以下の5つです。 脳神経系の病気 脊髄(脊椎)神経系の病気 末梢神経系の病気 内科系の病気 その他の病気 それぞれの病気について解説します。 脳神経系の病気 手足のしびれを引き起こす脳神経系の病気としては、主に以下のようなものがあげられます。 脳梗塞 脳出血 一過性脳虚血発作 脳腫瘍 ここで紹介する症状がある場合は、すぐに救急車を呼んで脳神経外科を受診しましょう。 脳梗塞 脳の血管が詰まって血液が流れなくなり、酸素および栄養不足のため、脳細胞が死んでしまう病気です。 手足のしびれのほかに、手足が麻痺して動かない、ろれつが回らないといった症状が見られます。意識障害を起こすこともあります。 脳梗塞は命に関わる病気でもあるため、これらの症状が現れたら早急に医療機関を受診しましょう。 脳梗塞の症状に関しては、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 脳出血 脳の血管が切れて出血した結果、脳細胞が障害を受ける病気です。 手足のしびれや麻痺、ろれつが回らないなど、脳梗塞と同じような症状のほか、激しい頭痛や吐き気といった症状も見られます。 脳出血も命に関わる病気であるため、早急な受診が必要です。 脳出血の症状に関しては、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 一過性脳虚血発作 一時的に脳の血流が悪くなり、酸素や栄養が不足する病気です。 手足のしびれや麻痺、感覚の低下といった症状が出ますが、通常は24時間以内に消失します。(文献1) 一過性脳虚血発作は、脳梗塞や脳出血の前触れともいわれています。症状が現れてすぐに消えた場合でも、放置せずに医療機関を受診しましょう。 脳腫瘍 その名のとおり脳に発生する腫瘍で、脳そのものにできる「原発性脳腫瘍」と、他の臓器から転移した「転移性脳腫瘍」にわかれます。 症状は、手足のしびれや麻痺、頭痛、吐き気などです。視野が狭くなったり、視力が低下したりといった眼科症状が見られる場合もあります。 脊髄(脊椎)神経系の病気 手足のしびれを引き起こす脊髄(脊椎)神経系の病気は、主に以下のとおりです。 変形性頚椎症 頚椎椎間板ヘルニア 脊柱管狭窄症 後縦靱帯骨化症 変形性頚椎症 頚椎(首部分の背骨)内の椎間板の高さが減ったり、椎骨(背骨の一部)に骨のとげができたりするといった変化が生じる病気です。 首や肩が痛むほか、手の神経が圧迫されることにより、手のしびれも出てきます。 頚椎椎間板ヘルニア 頚椎をつないでいる椎間板が変形して飛び出し、脊髄や神経根が圧迫される病気です。 手や腕、首、肩にしびれや痛みが生じたり、足のもつれや歩行障害などが出たりします。首を動かすと痛みが強くなります。 以下の記事で、頚椎椎間板ヘルニアの初期症状を解説していますので、あわせてご覧ください。 脊柱管狭窄症 腰椎(腰部分の背骨)の変形により神経の通り道である脊柱管が狭くなり、神経が圧迫される病気です。50代から80代の方に多いとされています。 手足のしびれ以外には、間欠性跛行や膀胱直腸障害などの症状が見られます。 間欠性跛行や膀胱直腸障害といった症状については、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 後縦靱帯骨化症 頚椎の後ろにある、背骨を安定させる靱帯(後縦靱帯)が骨のように硬く変化して脊髄を圧迫するもので、厚生労働省が定める指定難病の1つです。(文献2) 症状としては、肩こりや手のしびれ、こわばり、痛みなどがあります。病気が進行すると、箸が使いにくい、字が書きにくいといった症状も出てきます。 末梢神経系の病気 手足のしびれを引き起こす末梢神経系の病気としてあげられるのは、手根管症候群や足根幹症候群などです。 手根管症候群 手根管と呼ばれる手首のトンネル部分で神経が圧迫されて、手指のしびれや痛みが発生する病気です。 中高年の女性に多く、進行すると親指の筋肉が痩せてしまい、ものを掴みにくくなります。 足根管症候群 足根管と呼ばれる内くるぶしのトンネル部分で、神経が圧迫されたり傷ついたりするために、足裏や足首にしびれや痛みが生じる病気です。 足の痛みはピリピリとした感じのもので、立ったり歩いたりしたときや、特定の靴を履いたときに生じます。足の冷えや感覚異常を伴う場合もあります。 内科系の病気 内科系の病気によっても、手足のしびれが生じます。代表的なものが、糖尿病性神経障害や閉塞性動脈硬化症です。 糖尿病性神経障害 糖尿病の合併症の1つが、神経障害です。 神経障害は、高血糖が続いたことで血流が悪くなり、手先や足先まで酸素や栄養を含んだ血液が届きにくくなるために起こります。 神経が障害された結果、手足のしびれが生じます。 閉塞性動脈硬化症 動脈硬化により血管が狭くなる、もしくは詰まるために血流が悪くなる病気です。手足の血管が狭くなったり詰まったりすると、しびれや冷たい感覚が生じます。 足の血管に閉塞性動脈硬化症が起こり、進行すると、間欠性跛行と呼ばれる歩行状態になります。 間欠性跛行とは、歩いているうちに足に痛みやしびれが生じて、休憩すると治まるものです。 その他の原因 ビタミン欠乏や更年期障害、うつ病、精神的ストレスなどが原因で手足のしびれが生じる場合もあります。 手足がしびれる病気の前兆をチェックする方法 手足のしびれはさまざまな病気の前兆として現れることがあります。 しびれの特徴からどのような疾患の可能性があるのかをチェックしましょう。 疾患名 しびれの特徴 脳血管疾患 (脳梗塞や脳出血) 片方の手足だけがしびれる 手足が麻痺する、ろれつが回らない、意識障害がある 変形性頚椎症 全体的に手がしびれる 首の後ろを動かすと手のしびれが悪化する 頚椎椎間板ヘルニア 手足のしびれに痛みを伴うことがある 手根管症候群 手の親指や人差し指、中指がしびれる 手首を酷使したあとにしびれが生じる 手足のしびれと病気の前兆について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。 手足がしびれるときに受診する病院 手足のしびれが起きる原因はさまざまです。しびれのために病院を受診する際は、しびれ以外の症状や、現在かかっている病気などから受診する科を決めましょう。 ここでは、3つの科について解説します。 脳神経外科 手足のしびれ以外に、片側の手足が動かない、ろれつが回らない、言葉が出てこないなどの症状がある場合は、脳梗塞や脳出血の可能性があります。 この場合の受診先は脳神経外科です。脳梗塞や脳出血の場合は、一刻も早い治療が必要なため、救急車を呼んで早急に受診しましょう。 整形外科 手足のしびれ以外に、腰や手足の痛み、間欠性跛行などの症状がある場合は、整形外科を受診しましょう。 受診時には、医師が状況を把握しやすいように、症状がある部位や出現時期などを伝えると良いでしょう。 内科 糖尿病や高血圧、高脂血症といった内科疾患があり、しびれ以外に症状がない場合は、内科(かかりつけ医)を受診しましょう。 とくに糖尿病治療中で手足のしびれが生じている場合は、神経障害を起こしている可能性が高いため、早めの受診が必要です。 手足がしびれる病気の予防法 手足がしびれる病気の種類はさまざまです。ここでは、3種類の病気について予防法を解説します。 脳神経系の病気 末梢神経系の病気 内科系の病気 脳神経系の病気の予防法 脳梗塞や脳出血、いわゆる脳卒中の予防で大切なことは、高血圧の予防・改善です。高血圧の予防・改善には、日常的な減塩を心がけることが効果的です。 また、糖尿病や高脂血症といった生活習慣病のほか、喫煙、過度な飲酒なども脳血管を痛めます。生活習慣病予防のためにも、バランスの良い食事や適度な運動を心がけましょう。 脳卒中は再発予防も大切です。 当院「リペアセルクリニック」では、脳卒中の後遺症治療・再発予防として再生医療(幹細胞治療)を行っております。 再生医療について詳しくは、以下のページをご覧ください。 末梢神経系の病気の予防法 ここでは手根管症候群の予防について解説します。 手根管症候群の予防や悪化防止のために大切なのは、手を酷使しないことです。とくに、手首を曲げる動作は、神経の通り道である手根管を狭くしてしまいます。 パソコン作業が多い方や、工具(ドライバー)を仕事でひんぱんに使う方は、手首を休める時間を意識して取りましょう。 糖尿病や甲状腺機能低下症の方は、手根管症候群を発症しやすいといわれています。定期的に検査を受けて、病状を確認しましょう。その上で、手首のしびれが見られた場合は、放置せずに整形外科を受診してください。 内科系の病気の予防法 内科系の病気の中でも、糖尿病は生活習慣の改善で予防できます。 糖尿病予防の主なポイントは次の通りです。 栄養バランスの良い食事や腹八分目を心がける ウォーキングやサイクリングといった適度な運動を続ける 適正体重を保つ 毎年健康診断を受ける 喫煙者は禁煙を検討する アルコールは適量を守る 糖尿病患者の方は、病気を放置せずに治療を継続しましょう。 再生医療は、糖尿病治療における新たな選択肢です。 糖尿病治療としての再生医療については、以下のページで詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 まとめ|手足のしびれの病気が疑われる際は早めに病院へ 手足のしびれを引き起こす病気は数多くありますが、原因がわからないものも少なくありません。 脳血管疾患のように命に関わる病気が原因のこともあるため、手足のしびれが続くときは放置せず、早めに医療機関を受診しましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、しびれの原因となる脳卒中やヘルニア、糖尿病などに対して再生医療を行っています。手足のしびれでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 手足のしびれの病気に関するよくある質問 皮膚の表面がピリピリする原因は? 主な原因は、痛みを伝える神経が損傷されるために起こる神経障害性疼痛や、帯状疱疹などです。 神経障害性疼痛の場合は、痛み止めやブロック注射などの治療があります。帯状疱疹の治療は抗ウイルス薬の内服、もしくは点滴がメインの治療法です。 手足のしびれの治し方は? 原因になっている病気がある場合は、その病気を治療します。同時に、しびれをおさえる治療も行います。 しびれの主な治療法としては、消炎鎮痛剤やビタミン剤の内服があげられますが、病気によっては手術が必要です。 しびれが続くときは、医療機関で適切な治療を受けましょう。 参考文献 (文献1) 国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「一過性脳虚血発作は、早期に完成型脳梗塞を発症する可能性が高い」国立研究開発法人 国立循環器病研究センターホームページ, 2024年9月27日 https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/scd/cvmedicine/tia-torikumi/ (最終アクセス:2025年3月20日) (文献2)難病情報センター「後縦靱帯骨化症(OPLL)(指定難病69)」難病情報センターホームページ https://www.nanbyou.or.jp/entry/98 (最終アクセス:2025年3月20日)
2025.03.30 -
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「すねが痛くシンスプリントかもしれない」「シンスプリントの代表的な症状を知りたい」 上記のように、すねに痛みを抱えており、シンスプリントを疑っている方もいるでしょう。 シンスプリントとは、すねの内側に痛みが生じるスポーツ障害の一種です。ジャンプをしたり、走ったりなど脚に負荷がかかるスポーツをしている方に多く見られます。 本記事では、シンスプリントの症状チェックリストを紹介します。シンスプリントの原因や、診断方法も解説しているので、すねの痛みに悩んでいる方は、ぜひご覧ください。 シンスプリントの症状チェックリスト シンスプリントは、すねの内側で主に下部1/3くらいに痛みが生じます。シンスプリントの主な症状は、以下の通りです。 ジャンプやダッシュする際に痛みが生じる 運動後、安静にしていても痛い すねの下の方の内側を押すと痛い シンスプリントの初期段階では、痛みだけでなく不快感が生じるケースもあります。痛みや不快感は持続せず、運動中は気にならないのが特徴です。 次第に運動中や安静時も痛みが生じ、最終的には、歩行困難になるケースもあります。 上記で紹介したチェックリストに当てはまる方は、一過性の痛みだと判断せず、速やかに医療機関を受診するのがおすすめです。 シンスプリントの症状による4つの分類 シンスプリントは、以下を参考に自身の進行状態をチェックしましょう。ただし、個人差があるため医療機関での正確な診断が重要です。 ステージ1 シンスプリントのステージ1は、運動後のみ痛みが生じる初期段階です。 運動中や安静時に痛みはないため、日常生活への問題はありません。たとえ痛みが生じたとしても軽度であり、軽い運動によって治まります。 ステージ2 ステージ2は、運動前後に痛みが生じ始めます。 ウォーミングアップ時に痛みが生じたとしても、体が温まってくれば痛みは治まるのが特徴です。運動後も痛みが生じますが、運動中は問題ありません。 ステージ3 運動前後だけでなく、運動中に痛みが生じ始めるのがステージ3です。 運動中も痛みが生じるため、競技によってはプレーに支障を与える可能性もあります。 ステージ3になると、痛みが顕著になり悪化するため、早い段階で医療機関を受診しなくてはなりません。 ステージ4 ステージ4は、シンスプリントによる痛みが常に生じる状態です。 運動中だけでなく日常生活でも痛みが続くため、日常生活にも支障が出ます。ステージ4になると、疲労骨折の疑いも考えられます。 症状から間違えやすい|シンスプリントと疲労骨折の見分け方 シンスプリントと疲労骨折の症状は似ており、間違えてしまいがちな疾患です。 シンスプリントが悪化していると考えていたら、疲労骨折で長期間スポーツができなくなるケースもあるため、注意が必要です。 シンスプリントと疲労骨折の見分け方を以下にまとめました。 シンスプリント 疲労骨折 痛みが生じる部位 ・10cm程度で広い ・5cm以下で狭い 痛みの特徴 ・鈍痛 ・鋭い痛み 痛みが生じるタイミング ・初期段階で安静時に生じるケースは少ない ・安静時にも痛みが生じる 腫れ ・広範囲に軽微な腫れや熱感が生じる ・局所的に腫れる シンスプリントは、痛みが生じる部位が10cm程度と広いのが特徴です。 疲労骨折は、5cm以下とピンポイントで鋭い痛みが生じます。腫れが見られたり、安静時にも痛みが生じたりする場合は、疲労骨折の可能性も考えられます。 ただし、症状に当てはまるからといって、必ずしも疲労骨折だとは言い切れません。 シンスプリントや疲労骨折は、人によって症状が異なるためです。症状に当てはまる方は、一度医療機関を受診して診断してもらいましょう。 シンスプリントの原因 シンスプリントの原因は、脚の筋肉に過度な負荷がかかっていたり、シューズや練習環境に問題があったりなどさまざまです。 シンスプリントを改善・再発防止するには、原因を取り除かなくてはなりません。 ここからは、シンスプリントの原因を3つ紹介します。 筋肉に過度な負荷がかかっている ジャンプやランニングで脚の筋肉に過度な負荷がかかっていたり、無理なトレーニングを続けていたりすると、シンスプリントを起こしやすくなります。 すねに付着している「ヒラメ筋」や「後脛骨筋」などに過度な負荷がかかると、筋肉が炎症を起こすためです。筋肉疲労による炎症を防ぐには、過度な負荷がかからないよう、トレーニング量を調整しましょう。 トレーニングをしていない時期があったり、怪我から復帰したりする際は、過度な負荷を与えると筋肉が炎症を起こしやすい傾向にあります。 休息期間があった際は、低負荷からはじめ、徐々に通常トレーニングに戻すよう意識しましょう。 扁平足やO脚など脚の形に問題がある 扁平足やO脚など脚の形に問題があるケースも、シンスプリントの原因になります。 扁平足とは、足の裏のアーチ(土踏まず)がない足の形を指します。 土踏まずは、着地による衝撃を和らげるのが主な役割です。土踏まずがないと、地面からの衝撃がダイレクトに伝わり、シンスプリントになりやすくなります。 さらに、O脚やX脚など脚の形に問題がある方も注意が必要です。膝が内側や外側に湾曲していると、歩いたり走ったりする際に、すねの負担が大きくなるためです。 扁平足やO脚など脚の形に問題がある方は、医療機関や整骨院などで脚の形を矯正して、シンスプリントを予防しましょう。 シューズや練習環境が悪い シンスプリントの原因は、シューズや練習環境が悪いケースもあります。 靴底が薄かったり、かかとが削れていたりするシューズでスポーツをすると、脚に負担がかかりやすくなります。 靴底が薄いと、踏み込んだ際の体重によって、足裏のアーチが崩れやすくなるため、注意しましょう。足裏のアーチが崩れると、シンスプリントの原因になりやすい扁平足を引き起こしやすくなります。 また、シューズのかかとが削れていると、削れている方向にすねが倒れやすくなります。片方のすねが倒れると、筋肉が異常に緊張してしまい、シンスプリントを引き起こす原因になりかねません。 シンスプリントを防ぐためにも、シューズや練習環境も意識しましょう。 シンスプリントの症状を悪化させないための方法 シンスプリントの症状を悪化させないためには、安静に過ごすことが大切です。 「すぐに治るだろう」と考え、トレーニングを続けると「オーバーユース(使いすぎ)」につながり、悪化させる恐れがあります。 ここからは、シンスプリントの症状を悪化させないための方法を2つ紹介します。 安静にする シンスプリントによる痛みがある場合は、練習は控え安静に過ごしましょう。 痛みを我慢してトレーニングを続けていると、悪化するリスクがあります。安静期間は個人差があるものの、3〜5週間が目安です。 安静時にも痛みが生じる場合は、湿布や鎮痛消炎剤などを使うのもおすすめです。 ただし、湿布や鎮痛消炎剤は、一時的に痛みが治まるものの、根本的な改善にはつながらない可能性があります。「治った」と自己判断せず、一度医療機関を受診しましょう。 アイシングをする 運動後にシンスプリントの痛みが生じている場合は、アイシングが効果的です。 すね周辺の炎症を起こしている部位を冷やすと、痛みが緩和されます。一時的な効果ですが、練習後に痛みが治まらない場合はコールドスプレーや保冷剤を用いて、痛みがある部分を冷やしましょう。 シンスプリントの診断方法 シンスプリントの診断方法は、レントゲン検査や疼痛誘発検査などいくつかの方法があげられます。 場合によっては、複数の検査を組み合わせてシンスプリントを診断するケースもあります。 ここからは、シンスプリントの代表的な診断方法を4つ見ていきましょう。 レントゲン検査 シンスプリントの診断方法に、レントゲン検査があげられます。シンスプリントは、骨膜に炎症を起こす障害のため、レントゲンには写りません。 レントゲン検査をする場合は、シンスプリントが悪化し、骨に支障をきたしているケースに行われます。骨に影響をきたしていると、該当部分が白くレントゲン写真に写ります。 ただし、疲労骨折の初期段階ではレントゲン写真に写らないため、MRI検査が行われる可能性がある点に留意しておきましょう。 疼痛誘発検査 疼痛誘発検査とは、シンスプリントによる炎症が起きている部分を押して症状を確認する検査方法です。 シンスプリントの痛みは「脛骨(けいこつ)」と呼ばれるすねの骨の内側、特に下部1/3付近に生じるのが特徴です。 疲労骨折は、痛みの生じる部位が局所的なため、疼痛誘発検査で判断しやすい傾向にあります。 痛みが局所的な場合は、MRI検査やレントゲンを用いて、疲労骨折の可能性をチェックするのが一般的です。 超音波検査 超音波検査とは、痛みが生じる部分に超音波をあて、脛骨周囲の骨膜が腫れているかを確認する検査方法です。骨膜の腫れ具合や症状を確認し、シンスプリントかを判断します。 超音波検査は、動的な症状の確認が可能なため、検査時の組織状態や、治療後の変化を観察するのに有効です。 MRI検査 シンスプリントの診断では、MRI検査を用いるケースもあります。 MRI検査とは、強い磁石と電磁波を使って体の断面図を写し出す検査方法です。とくにシンスプリントでは、疲労骨折と見分ける際にMRI検査が行われます。 疲労骨折と区別する際には「T2脂肪抑制」と呼ばれる特殊な撮影方法が採用されます。 シンスプリントの治療法 シンスプリントを改善するには、適切な治療を受ける必要があります。 リハビリテーションや薬物療法による治療が一般的です。よほど慢性化していない限り、手術療法が選択されるケースは少ない傾向にあります。 ここからは、シンスプリントの治療法を4つ紹介します。 リハビリテーション シンスプリントの代表的な治療法が、リハビリテーションです。 シンスプリントの原因となるふくらはぎの硬さや筋力不足などを探り、筋力トレーニングやストレッチなど1人ひとりに合った方法でアプローチします。下腿(かたい)の後脛骨筋、長趾屈筋、ヒラメ筋などの筋肉のストレッチや、足関節の可動域訓練が行われることが多いです。 脚の形や筋力不足だけでなく、全身の筋力バランスや機能の偏りがシンスプリントの原因となるケースもあるため、リハビリテーションで全身のコンディションをチェックします。 必要に応じて、テーピングで患部の負担を軽減したり、電気療法や超音波治療などの物理療法を取り入れたりするケースも少なくありません。 薬物治療 シンスプリントの炎症によって、痛みが生じている場合は、薬物療法が行われます。 医療機関では、痛み緩和を期待できる「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」が処方されるケースが多い傾向にあります。 ただし、非ステロイド性抗炎症薬は、副作用が生じるリスクもあるため、医師指導のもと用法用量を守って使用するのが大切です。 痛み止めは、症状を一時的に緩和する効果は期待できますが、根本的な改善にはつながりません。 薬物療法によって治ったと勘違いし、激しい運動をしてしまうと、シンスプリントが悪化したり再発したりするリスクもあるため、注意が必要です。 装具療法 装具療法は、1人ひとりの足に合ったインソールを作成し、運動時の衝撃や痛みを軽減させる治療法です。足の形に合ったインソールをシューズに入れると、土踏まずの機能を補正できます。 痛みが強い場合は、足裏に加わる衝撃を軽減するため、クッション性の高いインソールを入れて衝撃を吸収します。 またシンスプリント専用のサポーターはありませんが、必要に応じて足関節にサポーターを巻いてサポートするケースもあり、装具療法もさまざまです。 再生医療 シンスプリントは、再生医療で痛みの改善を期待できる可能性もあります。再生医療は、幹細胞治療やPRP治療などが代表的です。 従来の薬物療法や装具療法で効果を期待できなかった方は、再生医療で改善を目指せるケースもあります。 リペアセルクリニックでは、再生医療を提供しています。従来の治療法で改善が見られなかった方は、再生医療を検討するのもおすすめです。 またリペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けています。 シンスプリントの治療後スポーツ復帰にはどのくらい時間がかかる? シンスプリントの治療後、スポーツ復帰は、初期であれば2週間程度休んでから復帰しましょう。重症だと2〜3カ月程度休んでから復帰するのがおすすめです。 ただし、一定期間安静にしたからといって、すぐに激しい運動をするのは控えましょう。運動していない状態から負荷がかかると、シンスプリントが再発するリスクが高まるためです。 スポーツ復帰後は、ウォーキングやジョギングなど軽い運動からはじめ、徐々にジャンプやランニングをはじめましょう。段階的に負荷をあげてから復帰すると、再発リスクを軽減できます。 また状態によっては目安の期間よりも復帰時期が、早くなったり遅くなったりする可能性があります。 医師指導のもと、復帰時期や運動量を調整しましょう。 まとめ|シンスプリントの症状に当てはまる方は医療機関を受診しよう シンスプリントの初期段階では、運動後に痛みや違和感が生じます。 悪化すると、運動中や日常生活でも痛みが生じるため、シンスプリントの症状に当てはまる方は、速やかに医療機関を受診しましょう。 また、シンスプリントの診断方法は、レントゲン検査や疼痛誘発検査などがあげられます。シンスプリントと間違えやすい疲労骨折の可能性を判断するため、MRI検査が用いられるケースもあります。 シンスプリントの悪化を防ぐためにも、早い段階で医療機関を受診し、治療を開始しましょう。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けています。お気軽にお問い合わせください。
2025.03.01 -
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「シンスプリントが治らない」「シンスプリントが治らない原因が知りたい」 上記のように、シンスプリントが治らないと悩んでいる方もいるでしょう。 シンスプリントは、ふくらはぎの筋力が弱かったり、脚に負荷がかかりすぎていたりすると思うように治らない可能性があります。 治らないまま放置していると、症状が慢性化するケースもあるため、治らない原因を突き止めて改善するのが大切です。 本記事では、シンスプリントが治らない原因を紹介します。治らない場合の対処法や治療法も解説しているので「シンスプリントが治らない」と悩んでいる方は、ぜひご覧ください。 シンスプリントが治らない原因とは? シンスプリントが治らない原因は、脚に負荷がかかりすぎていたり、脚の筋肉が弱かったりする点があげられます。十分な休息を取れていないと、症状が治らないケースも少なくありません。 ここからは、シンスプリントが治らない原因を5つ紹介します。 脚に負荷がかかりすぎている シンスプリントが治らない原因として、脚に負荷がかかりすぎている点があげられます。 シンスプリントは、すねにある脛骨(けいこつ)と呼ばれる骨膜(こつまく)が炎症を起こし、発症する障害です。 そのため、脚に過度な負荷がかかる動作を続けていると、骨膜の炎症が治りづらくなります。 とくに、ランニングやマラソンなど走る動作の多いスポーツをする方は、脚に大きな負担がかかるため、注意が必要です。 休息を取っていたり、運動しない時期が続いていたりすると、低負荷でも脚にとっては大きな負荷となる可能性もあります。運動していない時期が続いていた場合は、徐々に運動量を増やすよう意識しましょう。 ふくらはぎの筋肉が硬くなっている ふくらはぎの筋肉が硬くなっている方も、シンスプリントが治らない可能性があります。ふくらはぎが硬いと、骨に付着している骨膜が引っ張られやすく、炎症を起こしやすくなります。 さらに、ふくらはぎの筋肉が硬いと、足首関節の柔軟性が失われやすい点も治らない原因です。 足首の関節が硬いと、体の重心を前方に上手く移動できず、着地のときにしゃがむ動作がしにくくなります。その結果、脛骨や筋肉に大きな負荷がかかり、シンスプリントが治りにくくなります。 脚の筋肉が弱い 脚の筋肉不足もシンスプリントが治らない原因の1つです。脚の筋肉が弱いと、運動動作による衝撃によって、すねに負担がかかりやすくなります。 怪我によって筋力が落ちている状態から負荷の強い動作をすると、シンスプリントが治らない・再発しやすいため注意しましょう。 十分な休息を取れていない シンスプリントが治らない原因は、十分な休息を取れていない点もあげられます。 スポーツ後に、ストレッチやマッサージで筋肉を休めていないと、筋肉が硬くなりやすくなります。 ジャンプをしたり、ランニングをしたりなど脚に過度な負荷がかかった後は、ストレッチやマッサージで疲労を軽減させましょう。ストレッチやマッサージは、ふくらはぎの柔軟性を高める効果も期待できます。 治療方法が間違っている シンスプリントの治療を受けても治らない場合は、治療方法が間違っている可能性もあります。 シンスプリントの治療方法は、リハビリテーションや薬物療法などいくつかの方法があります。 症状や体質によって合った治療方法は異なるため、他の治療を試すと症状が改善するケースも少なくありません。 治らないままシンスプリントを放置しているとどうなる? シンスプリントが治らないまま放置していると、慢性化したり、骨折につながったりするリスクがあります。「痛みはあるけれど運動はできる」「時間が経てば治るのでは」と考えている方は、注意が必要です。 シンスプリントが治らないまま放置するリスクを2つ紹介します。 症状が慢性化してしまう シンスプリントが治らないまま放置していると、症状が慢性化する可能性があります。 シンスプリントが慢性化すると、すね周辺に普段は見られない血管が作られます。新たな血管と神経が一緒になると、シンスプリントによる痛みは治りにくくなるため、注意が必要です。 慢性化したシンスプリントは、痛みの原因となっている血管と神経にアプローチしないと、根本的な改善は期待できません。 骨折につながる シンスプリントを放置していると、疲労骨折につながる恐れもあります。 疲労骨折とは、骨に小さな負荷が加わり続ける影響で発生する骨折です。慢性的なスポーツ障害であり、ランニングやジャンプをするスポーツ選手に多く見られます。 疲労骨折は、痛みがあっても運動を続けられるケースが多い傾向にあります。その結果、気付いたらシンスプリントが疲労骨折になっている可能性もあるため、注意が必要です。 治らないシンスプリントは疲労骨折かもしれません! 「なかなかシンスプリントが治らない」と悩んでいる方は、疲労骨折の可能性も考えられます。疲労骨折は、痛みがあっても運動を続けられるケースが多いため、自分自身で判断するのは難しいのが特徴です。 ここからは、治らないシンスプリントと疲労骨折の違いを紹介します。 ダメージを受ける部位 シンスプリントは、すねの内側にある筋肉や骨膜がダメージを受け、炎症を起こす障害です。筋肉や骨膜がダメージを受けるものの、骨にダメージは加わりません。 一方で疲労骨折は、骨に小さなダメージが加わり続ける影響で、徐々にヒビが入る骨折です。名前の通り、骨にヒビが入る点がシンスプリントとの大きな違いです。 シンスプリントと疲労骨折は、すね周辺に痛みが生じる点は共通していますが、ダメージを受ける部分が異なる点を理解しておきましょう。 痛みや腫れ シンスプリントと疲労骨折は、痛みや腫れの度合い、生じる範囲などが異なります。それぞれの違いを見てみましょう。 痛み 腫れ 症状が出る範囲 シンスプリント ・鈍痛 ・徐々に痛みが強くなる ・腫れは軽度で広範囲に出ることがある ・10cmと範囲が広い 疲労骨折 ・鋭い痛み ・急に痛みが現れる ・骨折部位に腫れが出る ・5cm以下と範囲が狭い シンスプリントと疲労骨折を比較すると、症状は疲労骨折の方が強く出る傾向にあります。とくに、運動時にピンポイントで痛みが生じる場合は、疲労骨折が疑われます。 ただし、自分自身で症状を判断するのは難しく、症状に当てはまるからといって必ずしも疲労骨折だとは言い切れません。痛みや腫れなどの症状に当てはまる方は、悪化する前に医療機関を受診しましょう。 シンスプリントが治らない場合の対処法 シンスプリントが治らない場合は、シューズやインソールを変えたり、トレーニング計画を見直したりするのがおすすめです。 長引く症状を放置すると、疲労骨折のリスクもあるため、自分に合った対処法を見つけましょう。 ここからは、シンスプリントが治らない場合の対処法を4つ紹介します。 シューズやインソールを変える シンスプリントが治らない場合は、運動時に使用しているシューズやインソールを変えてみましょう。 靴底がすり減ったシューズや、クッション性の低いインソールを使用していると、足に衝撃が加わりやすくなります。 歪みや痛みの原因にもなるため、以下のようなシューズやインソールで脚への負担を軽減しましょう。 靴底が厚いシューズ 横幅が広いシューズ 靴底がカーブしているシューズ 土踏まずをサポートしてくれるインソール クッション性が高いシューズは、足の土踏まずにかかる負担を軽減してくれます。すねが内側に倒れるリスクも低減できるため、運動時の安定性が向上します。 メーカーによってサイズや履き心地の良さは異なるため、店舗で試し履きをして自分の足にあっているかを確認しましょう。 運動時のフォームを改善する 運動時のフォームを改善するのも、シンスプリントが治らない際の対処法としておすすめです。 不適切な運動フォームは、ふくらはぎをはじめ、体に負荷がかかりやすくなります。スポーツによって正しいフォームは異なるため、一度見直してみましょう。 多くのスポーツで共通する動作として、ランニングがあげられます。正しいランニングフォームのポイントは以下の通りです。 頭を真っ直ぐに保つ 体幹を意識して背筋を伸ばす 肩の力を抜く 腕は体の横で曲げて前後に振る 一度にすべてを完璧に行うのは難しいため、少しずつ正しいフォームを身に着けましょう。 適切な筋力トレーニングやストレッチを行う 適切な筋力トレーニングやストレッチを行うことも大切です。シンスプリントは、ふくらはぎの筋肉や足首関節が硬いと治りにくくなります。 とくに、ヒラメ筋や後脛骨筋などのふくらはぎのストレッチは、シンスプリントの痛みを軽減する効果が期待できます。 アキレス腱ストレッチのように、足を前後に開き、ふくらはぎの筋肉を伸ばしましょう。ゆっくりと30秒程度かけて伸ばすのがポイントです。 後ろに伸ばした脚の膝を伸ばしてしまうと、ストレッチ効果を期待できないため、必ず曲げた状態で行いましょう。 また反動をつけてストレッチすると、筋肉を痛める恐れがあるため、ゆっくりと行うのが大切です。 トレーニングの計画を見直す シンスプリントが治らない方は、トレーニングの計画も見直しましょう。急激に運動量を増やしたり、負荷の強いトレーニングを続けて行ったりすると、シンスプリントを悪化させる原因になります。 現在行っているスポーツに加え、スイミングやサイクリングなどのクロストレーニングを取り入れると、シンスプリントの原因となる筋肉への負荷を軽減できます。 クロストレーニングは普段使わない筋肉を刺激し、左右の筋力バランスを整える効果があります。 またトレーニングをしない休息日を設けることも大切です。筋肉や骨を休められるよう、トレーニング計画を見直しましょう。 治らないシンスプリントの治療方法 シンスプリントが治らない場合は、自己対処だけでなく専門的な治療を受けることが重要です。放置すると症状が慢性化や疲労骨折につながる恐れがあるため、医療機関を受診しましょう。 ここからは、治らないシンスプリントの治療法を4つ紹介します。 リハビリテーション シンスプリントの代表的な治療に、リハビリテーションがあげられます。脚全体の機能を高め、シンスプリントの痛み軽減や、再発防止するのが主な目的です。 単に痛みを改善するだけでなく、スポーツ復帰を目指せるよう、リハビリテーションを行います。 具体的には、足裏のアーチ構造や柔軟性、足指の機能不全などをチェックし、1人ひとりに合ったアプローチを行います。 脚だけでなく全身の筋肉バランスを確認しながらリハビリテーションを行うのが一般的です。 薬物療法 シンスプリントの炎症によって痛みが生じている場合は「非ステロイド性消炎鎮痛剤」と呼ばれるロキソニンなどの湿布を貼り、炎症を抑えます。症状によっては、飲み薬が処方されるケースもあります。 ただし、痛み止めや湿布などの薬物療法は、一時的に痛みが軽減されても、根本的な改善にはつながりません。 根本的な原因が改善されていないにもかかわらず「痛みが改善され治った」と考えていると、再発するリスクもあるため注意が必要です。 手術療法 慢性化している場合は、手術療法が必要になる可能性があります。炎症を起こしている骨や筋肉や、骨の異常な成長を取り除く手術が代表的です。 ただし、基本的にシンスプリントは、リハビリテーションや薬物療法で改善を期待できます。 シンスプリントが慢性化しないよう、治らないと放置せず、早い段階で医療機関を受診することが大切です。 再生医療 シンスプリントは再生医療で改善を期待できます。再生医療は、幹細胞治療やPRP療法などが代表的です。 従来の治療法でシンスプリントが治らない場合は、幹細胞治療やPRP治療などの再生医療も選択肢の一つです。リペアセルクリニックでは、これらの再生医療を提供していますので、お悩みの方はぜひご相談ください。 メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けています。 まとめ|シンスプリントが治らない場合はトレーニングや治療方法を見直そう シンスプリントが治らない原因は、脚に負荷がかかりすぎていたり、ふくらはぎの筋肉が硬かったりする可能性があげられます。 治らないシンスプリントを放置していると、疲労骨折を起こすリスクもあるため、放置するのは控えましょう。 シンスプリントが治らない場合は、シューズやインソールを変えたり、トレーニング計画を見直したりすることが大切です。 さらに、シンスプリントの根本的な原因を改善するためにも、症状に合った治療を受けましょう。 リペアセルクリニックでは、再生医療を提供しています。メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けていますのでお気軽にお問い合わせください。
2025.03.01 -
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 脊椎
- 脊柱管狭窄症
- 脊椎、その他疾患
下肢の痛みやしびれがあった際、坐骨神経痛と診断される場合があります。なかには、腰椎椎間板ヘルニアを患っているのに坐骨神経痛と診断されて違いがわからず戸惑う方もいるのではないでしょうか。 腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛は混在しやすいですが、定義に違いがあります。本記事では、腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の違いについて解説します。 坐骨神経痛を引き起こす主な疾患や治療法も紹介するので、ヘルニアとの違いを正しく理解したい方は参考にしてください。 腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の違い 腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアと坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)の違いは、以下の通りです。 名称 特徴 腰椎椎間板ヘルニア 腰の痛みやしびれを伴う病名 坐骨神経痛 腰の痛みやお尻から脚にかけてしびれを伴う症状 腰椎椎間板ヘルニアは病気の名称で、坐骨神経痛は症状を指します。つまり、腰椎椎間板ヘルニアが要因で神経が圧迫されて、腰の痛みやしびれを伴う坐骨神経痛が生じるのです。 腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛は混同されがちですが、定義が異なるため違いを理解しておきましょう。 坐骨神経痛を引き起こす主な疾患 坐骨神経痛を引き起こす原因は、腰椎椎間板ヘルニアだけではありません。主な疾患は、以下の3つです。 腰椎椎間板ヘルニア 脊柱管狭窄症 腰椎すべり症 発症する原因や主な症状や好発年齢についてまとめたので、参考にしてください。 腰椎椎間板ヘルニア 腰椎椎間板ヘルニアとは骨と骨の間にある腰椎椎間板に負担がかかり、椎間板の中心核となる髄核(ずいかく)が外に飛び出し神経を圧迫した状態のことです。主な症状は、以下の通りです。 お尻から足首にかけて痛みとしびれが生じる 脚に力が入りにくくなる 陰部や肛門にしびれが生じる 尿や便が出しにくくなる 腰椎椎間板ヘルニアが発症する原因には、重いものを持ち上げたり同じ姿勢を続けたりして背骨に負担をかける行為が挙げられます。また、体重増加も腰椎椎間板ヘルニアを引き起こす原因の一つです。 腰椎椎間板ヘルニアの好発年齢は、20代〜40代になります。 脊柱管狭窄症 脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)とは脊柱管が狭くなり、神経が圧迫される状態のことです。主な症状は、歩行や運動による痛みです。 脊柱管狭窄症は、運動により神経へ血流が不十分になると痛みを引き起こします。安静にしていると神経への血流が安定するため、症状はありません。 また、脊柱管狭窄症の原因は以下の通りです。 腰に負担がかかる作業や肥満などにより、腰椎に負担がかかり神経が圧迫される 骨粗鬆症が原因で骨が変形する 骨や椎間板により神経が圧迫される 好発年齢は50代〜80代くらいで、男性に多く見られます。 腰椎すべり症 腰椎すべり症とは、腰椎のずれにより脊柱管の中を通る神経が圧迫される状態のことです。主な症状は歩行や運動による痛みで、脊柱管狭窄症と症状が似ています。 痛みを引き起こしても、安静にしていると再び歩行や運動が可能です。 腰椎すべり症の原因には、加齢による椎間板の変化が考えられます。また、激しい運動により疲労骨折した部分が分離し、ずれが生じて引き起こされる場合もあります。 腰椎すべり症は脊柱管狭窄症と症状が似ていますが、発症の原因が異なる点を押さえておきましょう。 なお、腰椎すべり症の好発年齢は、40歳以上になります。 椎間板ヘルニアが原因となる坐骨神経痛の疼痛期間 椎間板ヘルニアが原因となる坐骨神経痛の疼痛期間は、1〜3カ月ほどが目安となります。種類や症状の進行によって異なりますが、ヘルニアは一般的に手術をしなくても自然に痛みが緩和されます。 しかし、長期間しびれや筋肉のけいれんなどの神経障害が現れる可能性も少なくありません。また、下肢に力が入らない、もしくは尿や便が出ない場合は早急に受診する必要があります。 症状の回復が見込めない際は手術治療が必要になる可能性があるため、放置せず担当医に相談しましょう。 腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の治し方 腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の治し方は症状によって異なります。主な治し方は、以下の5つです。 保存療法 薬物治療 ブロック治療 理学療法 手術治療 各治療法の特徴を以下で解説するので、ご自身に合った治療プランを検討する参考にしてください。 保存療法 腰椎椎間板ヘルニアが原因となる坐骨神経痛の初期症状では、保存療法が適用される傾向にあります。保存療法は原因を取り除くのではなく、症状の改善や緩和を目指す治療法です。 具体的な治療法としては患部を安静に保ち、痛みが引くのを待ちます。坐骨神経痛は運動により痛みが悪化する可能性があるため、症状が回復するまでスポーツは控えましょう。 また、安静にする際は症状を悪化させないよう、重いものを持つ行為や急な動作をしないように注意が必要です。腰椎椎間板ヘルニアが原因となる坐骨神経痛ではコルセットの装着も、保存療法の1つになります。 薬物治療 薬物治療とは、医薬品を使用して症状の回復を図る保存療法の一つです。痛みやしびれなどのつらい症状が続く場合は、安静にしていても不調を招く可能性があるため薬物治療をおこないます。 薬物治療では、痛みを抑制させる内服薬で症状の回復を促します。 症状が重い場合、神経痛の強い薬剤投与をおこなうケースもありますが、副作用がある点に注意が必要です。また、薬物治療では、経過観察で症状を見ながら処方量を調整します。 ブロック治療 ブロック治療とは坐骨神経の周辺に薬を直接投与し、痛みや炎症を抑える保存療法の一つです。神経を抑制させ、痛みを感じる部分をほぐして血行を促進させるのがブロック治療の特徴になります。 なお、ブロック治療では主に局所麻酔薬を使用します。局所麻酔薬は即効性があり、継続的な治療により効果の持続時間が長くなるため、痛みの予防に効果的です。 中長期的に症状を軽減させたい場合は、ブロック治療が適しています。 理学療法 理学療法とは、運動機能の維持や改善を目的に物理的な手段を使用しておこなう保存療法の一つです。物理的な手段には、以下の方法が用いられています。 運動療法 温熱療法 電気療法 光線療法 一般的に坐骨神経痛では、腰の痛みを軽減させたあとに腰椎周辺の筋トレやストレッチを取り入れます。理学療法では、医師や理学療法士の指導をもとに、症状に適した療法を進めていきます。また、運動療法で腰椎周辺の筋力を強くしていくのも、坐骨神経痛の症状回復に効果的です。 手術治療 保存療法で症状の回復が見られなかった場合は、手術治療がおこなわれます。坐骨神経痛の主な術式は、以下の通りです。 術式 手術内容 内視鏡下腰椎椎間板摘出術 開創して内視鏡でヘルニア部分を確認して切除 経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術 皮膚に小さな穴を開け内視鏡を通してヘルニア部分を確認して摘出する 内視鏡下腰椎椎弓切除術 内視鏡の管を通して椎弓(ついきゅう)の一部や肥厚した黄色靭帯を切除 内視鏡下腰椎椎体間固定術 内視鏡とX線透視装置を使用して椎体間を固定して脊椎を整形 術式は症状の進行状態によって異なるため、医師と相談しながらご自身に適した治療プランを検討しましょう。 痛みを感じた際にヘルニアと坐骨神経痛でやってはいけないことの違い 坐骨神経痛では、体を冷やしすぎないよう注意が必要です。腰や足を冷やしてしまうと、筋肉が固まりやすいだけでなく、神経を圧迫する可能性があります。 ただし、椎間板ヘルニアの痛みを伴う場合に身体を温めると炎症が悪化して、痛みを強くするケースがあるため注意しましょう。 また、坐骨神経痛ではやってはいけないことは以下の通りです。 重いものを持ち上げない 長時間座り続けない 過度なハムストリングスストレッチをおこなわない 前かがみにならない 背骨をねじりすぎない やわらかすぎるマットレスを使用しない 太りすぎない 坐骨神経痛で悪化を防ぐためには、やってはいけないことを避けて生活を送ることが大切です。 腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛が治らない場合に検討したい再生医療 再生医療は、腰椎椎間板ヘルニアが原因の坐骨神経痛が治らない場合の選択肢の一つです。分化誘導による関節の再生医療では、幹細胞を骨の組織に分化するように誘導します。 当院「リペアセルクリニック」では、幹細胞を冷凍せず投与に合わせて都度培養し、生存率を高めています。また、再生医療は入院が不要です。 当院では、メール相談やオンラインカウンセリングを受け付けておりますので、治療に関する悩みがある方は、お気軽にお問い合わせください。 腰椎椎間板ヘルニアにおける再生医療の症例 50代の女性は、腰椎椎間板ヘルニア手術の後遺症により、以下の症状に悩まされていました。 左足のしびれ 歩行障害 下肢のだるさ 尿漏れ 再度MRI検査を受けたところ、術前にあった腰椎椎間板ヘルニアは綺麗に取れていたものの、新たに中枢の方で脊柱管の狭窄が見つかったそうです。損傷した神経の回復を促す治療法の一つに、幹細胞治療があります。幹細胞は早期治療が重要なため、初診後すぐ治療をおこないました。 幹細胞治療では、脊髄内に直接幹細胞を2回点滴投与しました。1回目の投与後数日で、困難であった階段昇降ができるようになり、左足のしびれや尿漏れの改善がみられたそうです。 また、2回の投与終了後、投与前は両脚上げをするのも困難だった筋力が、2か月で抵抗を加えても楽に上げられるまでに改善しました。 そのため、歩行は安定し、足元を見なくても不安なく歩けるようになった事例となります。 まとめ・腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の違いを理解して最適な治療を検討しよう 腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛には、定義に違いがあります。病名となる腰椎椎間板ヘルニアが要因で神経が圧迫されて、腰の痛みやしびれを伴う坐骨神経痛の症状が生じるのです。 種類や症状の進行によりますが、ヘルニアは一般的に手術をしなくても自然に痛みが緩和されるため、1〜3カ月ほどで症状の回復が見込めます。 腰椎椎間板ヘルニアが原因の坐骨神経痛の初期症状では保存療法をおこない、回復が見込めない場合は手術が選択されます。手術を躊躇している方は、再生医療を選択するのも一つです。腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の違いを理解した上で、適した治療プランを検討しましょう。
2025.03.01 -
- 脊椎
- 脊柱管狭窄症
- 脊椎、その他疾患
坐骨神経痛は、腰から足にかけてつながっている「坐骨神経」に沿って生じる痛みやしびれのことです。坐骨神経がなんらかの原因によって圧迫されると、腰から臀部(でんぶ)、太ももの裏側まで痛みが広がります。 タリージェとは、坐骨神経痛の痛みをやわらげるために処方される医薬品の一つです。患者様のなかには、「タリージェは坐骨神経痛に効くのか」といった疑問をお持ちの方もいるでしょう。 本記事では、タリージェは坐骨神経痛に効くのか、効能や副作用、使用上の注意点などを解説します。そのほかの治療法もあわせて紹介するので、坐骨神経痛でお悩みの方はぜひ参考にしてください。 坐骨神経痛とは 坐骨神経痛とは、坐骨神経の支配領域である臀部のほか、腰から太ももにかけて痛みを生じる症状の総称です。痛みやしびれの原因は、80〜90%が腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの腰椎疾患によるものであり、主に以下のような症状が現れます。(文献1) 腰から足にかけて痛みやしびれが生じる 身体を動かすと痛みやしびれが強くなる 歩くときに足が痛くなる(脊椎由来の痛み) 座っているときに痛みが強くなる(梨状筋症候群) なお、重症化すると、安静にしていても強い痛みを感じたり、足に力が入りにくくなったり、痛みで眠れなくなったりすることがあります。 坐骨神経痛の原因や症状について詳しく知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。 タリージェとは坐骨神経痛に用いられる痛み止めの一つ タリージェとは、第一三共株式会社が販売している有効成分ミロガバリンベシル酸塩を含む痛み止めで、坐骨神経痛にも有用です。 ここでは、タリージェの効能や副作用、使用上の注意点を解説します。 タリージェの効能・効果 タリージェの効能・効果は、神経障害性疼痛です。神経障害性疼痛の中でも、末梢神経障害による痛みや、脊髄疾患による痛みに対して効果が期待できます。 神経障害性疼痛とは、神経や脊髄、脳の損傷や機能障害によって起こる痛みの総称です。神経障害性疼痛には、坐骨神経痛のほか、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害などが該当します。 医薬品の有効成分の作用によって、坐骨神経痛による痛みの改善が見込めます。 タリージェの副作用 タリージェを使用する際は、副作用がある点に注意してください。タリージェには、以下をはじめとする副作用が認められています。(文献2) 眠気やめまい 意識消失 肝機能障害 体重増加 視覚障害 ほかにも、タリージェの投与を突然中止すると、不眠症や下痢、食欲減退といった離脱症状が現れる場合があります。副作用には個人差があり、症状もさまざまです。 タリージェの服用後に異常を感じた場合は、すぐに医療機関を受診するようにしてください。 タリージェの使用上の注意点 タリージェを使用する際は、患者様の病気や症状、年齢などに応じた注意点があります。(文献3) 病気や症状に応じた禁忌・慎重投与の対象 過敏症 腎機能障害 腎機能障害 患者の属性に応じた禁忌・慎重投与の対象 妊婦・産婦 高齢者 授乳婦 新生児(低出生体重児を含む) 乳児 幼児・小児 タリージェは処方箋医薬品のため医師の診察を受け、処方箋に基づいて薬局で調剤してもらう必要があります。 タリージェを服用しても坐骨神経痛の症状が改善されない場合もある タリージェの服用は、原因療法ではなく症状の緩和を目的とした対症療法です。そのため、タリージェを服用したからといって、坐骨神経痛の症状が改善されるとは限りません。 坐骨神経痛には、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など、さまざまな原因が考えられます。タリージェはあくまで一時的に痛みを軽減するために用いられ、根本治療のためには、ほかの治療法もあわせて検討する必要があります。 なお、タリージェによって得られる効果は、体質や症状の程度によっても異なるため、医師に相談の上、無理に服用を続けることはやめましょう。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。坐骨神経痛の症状がなかなか改善せずにお困りの方は、ぜひ気軽にご相談ください。 坐骨神経痛でやってはいけないことについては、以下の記事で詳しく解説しています。 坐骨神経痛の治療法|タリージェが効かない場合の選択肢 タリージェが坐骨神経痛の痛みに効かない場合には、以下に解説する他の治療法を検討する必要があります。 タリージェ以外の投薬による薬物療法 タリージェが効かない場合は、神経障害性疼痛に使用される他の薬剤を検討します。神経障害性疼痛全般に対する薬物療法は、以下のとおりです。(文献4) 三環系抗うつ薬アミトリプチリン(トリプタノールなど) 疼痛治療薬プレガバリン(リリカ) ガバペンチン(ガバペン) デュロキセチン(サインバルタ) 坐骨神経痛に対する薬物療法では、個々の症状に応じた適切な選択薬の使用が大切です。タリージェが効かない場合は、医師の判断によって薬の変更や調整がおこなわれます。 神経ブロック注射 神経ブロック注射は、坐骨神経の周辺に局所麻酔薬やステロイド薬を注射して、痛みを緩和する治療法です。痛みの原因である神経に直接アプローチして、痛みの伝達を一時的に遮断します。 神経ブロック注射は、とくに坐骨神経痛が強い場合や薬物療法だけでは効果が薄い場合に有効です。なお、神経ブロック注射による効果は個人差があり、数時間程から数カ月続くとされています。(文献5) 神経ブロック注射の効果や費用について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。 理学療法・運動療法 理学療法や運動療法も、坐骨神経痛の治療法の一つです。腰や臀部、太ももの筋肉強化を図ったり、柔軟性を高めたりして、神経への圧迫を軽減します。 筋力トレーニングやストレッチのほか、温熱療法なども組み合わせると、こわばった筋肉がほぐれて血行が良くなり、痛みの軽減につながります。なお、理学療法や運動療法は、坐骨神経痛の再発予防にも効果的です。 坐骨神経痛に効くストレッチ方法を知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。 手術療法 坐骨神経痛による痛みが慢性化している場合や、ほかの治療法で効果がみられない場合には、手術療法が検討されます。 坐骨神経痛の手術療法は、椎間板摘出術や脊柱管拡大術などが一般的です。 椎間板摘出術では、圧迫されている神経を解放するために、飛び出した椎間板を取り除きます。また、脊柱管拡大術では、狭くなった脊柱管を広げて神経の圧迫を解消します。 ただし、手術には感染や出血といったリスクを伴うため、最後の手段として慎重な判断が必要です。手術後のリハビリテーションが必要となる場合もあるため、医師と相談し、総合的な治療計画を立てることが重要です。 再生医療 薬物療法や神経ブロック注射などで症状の改善がみられない場合は、再生医療による治療も選択肢の一つです。再生医療では、幹細胞を採取・培養して注射する幹細胞治療や、血液を利用するPRP療法などがあります。 リペアセルクリニックでは、坐骨神経痛の主な原因である椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症に対する再生医療をおこなっています。当院の幹細胞治療で採取するのは、米粒2〜3粒ほどのわずかな脂肪です。そのため、身体への負担が少なく済むことが特徴です。 再生医療による治療法や具体的な症例については、以下のページで詳しく解説しています。 なお、リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。坐骨神経痛の治療法でお悩みの方は、ぜひ気軽にご相談ください。 まとめ・タリージェが坐骨神経痛に効かないときは他の治療法を検討しよう タリージェは坐骨神経痛の痛みに効果がある医薬品ですが、すべての患者様に適しているわけではありません。タリージェの服用後に痛みが改善されない場合や、副作用が強い場合は、ほかの治療法を検討しましょう。 薬物療法をはじめ、神経ブロック注射や手術療法、再生医療など、坐骨神経痛にはさまざまな治療法があります。 また、場合によっては、単に痛みをやわらげるだけでなく、坐骨神経痛の根本原因へのアプローチが必要です。医師に相談しながら、坐骨神経痛に対する適切な治療法を選択し、痛みの改善を目指しましょう。 参考文献 (文献1) 日本ペインクリニック学会「治療指針6版第4章」一般社団法人日本ペインクリニック学会HP https://www.jspc.gr.jp/Contents/public/pdf/shishin/6-19.pdf (最終アクセス:2025年2月27日) (文献2) 第一三共株式会社「タリージェ適正使用ガイド」 https://www.pmda.go.jp/RMP/www/430574/e561f5e0-9533-4e8b-97a9-699b95f21881/430574_1190026F1028_10_006RMPm.pdf (最終アクセス:2025年2月27日) (文献3) 株式会社日経BP「処方薬事典 タリージェ錠5mgの基本情報」日本メディカル https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/11/1190026F2024.html (最終アクセス:2025年2月27日) (文献4) 株式会社日経BP「末梢性神経障害性疼痛を緩和する第3のα2δリガンド」日本メディカル https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/201903/560051.html (最終アクセス:2025年2月27日) (文献5) 日本ペインクリニック学会「治療指針4版第01章」一般社団法人日本ペインクリニック学会HP https://www.jspc.gr.jp/Contents/public/pdf/shi-guide01_07.pdf (最終アクセス:2025年2月27日)
2025.03.01 -
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- 脊柱管狭窄症
- 脊椎、その他疾患
坐骨神経痛になると、腰や臀部(でんぶ)から太ももの裏にかけて強い痛みを感じるようになり、日常生活にも支障をきたします。 坐骨神経痛で悩んでいる患者様のなかには、「温めるべきか・冷やすべきか」といった疑問をお持ちの方もいるでしょう。一般的に、坐骨神経痛の痛みを緩和するには温熱療法が効果的とされています。 今回は、坐骨神経痛の患部を温める方法について解説します。どこを温めたら良いのか、具体的な場所やそのほかのセルフケア方法もまとめているので、ぜひ参考にしてください。 坐骨神経痛は温めるほうが痛みの緩和が期待できる 結論、坐骨神経痛には患部を温める温熱療法が効果的です。 坐骨神経痛とは、坐骨神経が何らかの原因で圧迫や刺激を受けて、腰や臀部から足にかけて痛みやしびれが生じる症状です。 坐骨神経痛の患部を温めると、以下のような効果が期待できます。 血行を良くする 筋肉の凝りをほぐす 神経の圧迫を緩和させる 患部を温めるか冷やすかは、慢性症状か急性症状かによって判断します。慢性症状に対しては血行促進のために温め、急性炎症期には炎症を抑えるために冷やすことが一般的です。 坐骨神経痛は症状の進行によって慢性化しやすい疾患で、痛みが長引くケースも珍しくありません。そのため、坐骨神経痛のケアでは、患部を温めることが大切です。 坐骨神経痛の原因や治療法について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。 坐骨神経痛の温める場所は腰・臀部・太ももの裏側が基本 坐骨神経痛の痛みをやわらげるためには、腰・臀部・太ももの裏側を温めることが基本です。 腰部 腰を温めると、下半身全体の血行を促進できる とくに日中座っている時間が多い場合は、腰を温めると痛みを緩和しやすい 臀部(お尻) 硬直しやすい臀部の筋肉を温め、緊張を緩和させる 坐骨神経が通っている臀部を温めると、神経への圧迫が緩和される 太ももの裏側 太ももの裏側を温めると、脚全体の血行を促進できる 坐骨神経が通っている太ももの裏側を温めると、しびれや痛みの軽減につながる 坐骨神経痛の患部を温めることで、痛みの緩和が期待できます。 坐骨神経痛の患部を温める5つの方法 坐骨神経痛の患部を温めるためには、以下の方法がおすすめです。 湯船に浸かる 使い捨てカイロを貼る 食事を工夫して血行改善する レッグウォーマーや足首ウォーマーを使用する 睡眠環境を整える 以下で、それぞれ詳しく見ていきましょう。 1.湯船に浸かる 坐骨神経痛の患部を温めるためには、湯船に浸かることがおすすめです。温かいお風呂は、全身の血行を促進し、筋肉の緊張をほぐすのに効果的です。坐骨神経痛の痛みを軽減するためには、以下のポイントを押さえて湯船に浸かりましょう。 湯船の温度を38〜40度に設定する 10〜20分ほど入浴する リラクゼーション効果を高めるために入浴剤を使用する 坐骨神経痛に限らず、身体に痛みがある場合は、全身がこわばりがちです。湯船に浸かって、腰や臀部、太ももの裏側を温め、しっかりとほぐすようにしましょう。 なお、入浴後は身体が温まっているうちにストレッチすると、筋肉や関節の柔軟性を高めることにもつながります。 2.使い捨てカイロを貼る 坐骨神経痛の患部を温めるためには、使い捨てカイロも役立ちます。使い捨てカイロの使用は、外出時や寝る前など、手軽に患部を温める方法としておすすめです。 貼るタイプの使い捨てカイロなら、腰や臀部を持続的に温められるメリットもあります。 ただし、使い捨てカイロを使用する際は、やけどのリスクがある点に注意が必要です。患部に直接使い捨てカイロを当てるのではなく、下着の上から使用したり薄い布を挟んだりして使用しましょう。 3.食事を工夫して血行改善する 食事を工夫して血行の改善を図ると、身体を内側から温める効果が期待できます。食材は、生のままよりも加熱して食べるほうが、血行の改善に効果的です。 血行改善におすすめの主な食材は、以下の通りです。 たまねぎ・にんにく・しょうが・とうがらし 辛味成分アリシンを多く含む食材は、発汗や血行を促進し、体温を上げる働きがある 卵・ナッツ・植物油 ビタミンEを含む食材は、手足の細い血管を広げ、血流を良くして身体を温める働きがある 小松菜・ひじき・赤味の魚 鉄分を多く含む食材は、赤血球を増加させ、血行を良くして体温を維持する働きがある 味噌(大豆製品)・肉(豚肉)・青魚 ビタミンB1を多く含む食材は、糖質をエネルギー源にし、燃焼させて身体を温める働きがある 身体が冷えると筋肉が硬直して、血行が悪くなります。坐骨神経痛の症状を悪化させないよう、食事を工夫して身体を温めましょう。 4.レッグウォーマーや足首ウォーマーを使用する 坐骨神経痛の患部を温めるためには、レッグウォーマーや足首ウォーマーの使用もおすすめです。 レッグウォーマーや足首ウォーマーの使用は、足を温めるのに役立つグッズです。坐骨神経痛の症状は、冷えが原因で悪化するケースも珍しくありません。 とくに冬の寒い時期や夏にクーラーを使用する時期は、気づかないうちに足が冷えてしまいがちです。 足を冷やさないようにするためにも、レッグウォーマーや足首ウォーマーなどのグッズを使用して、血行の悪化を防ぎましょう。 5.睡眠環境を整える 睡眠環境を整えると、坐骨神経痛の症状改善につながります。 とくに冬の寒い時期は、寝る前に暖房をかけて室内を温めておきましょう。また、電気毛布や湯たんぽを利用して寝具を温めておくことも方法の一つです。 ただし、身体の温度が高くなりすぎると、汗をかいてかえって冷えてしまう可能性もある点に注意してください。 睡眠中に身体が冷えて筋肉を硬直させないよう、リラックスした睡眠環境を整えましょう。 なお、リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。坐骨神経痛の痛みでお困りの方は、ぜひ気軽にご相談ください。 坐骨神経痛の悪化を防ぐためにやってはいけないことについては、以下の記事で詳しく解説しています。 坐骨神経痛の患部を温めて痛みが強くなる場合は早めの受診がおすすめ 一般的に、坐骨神経痛には温熱療法が効果的です。しかし、場合によっては、患部を温めたことで痛みが悪化するケースもあります。 とくに炎症が強い場合は、温めすぎに注意が必要です。坐骨神経痛の患部を温める際は、心地良さを感じる程度の温度を維持するようにしてください。 患部を温めて痛みが強くなる場合は、早めに整形外科や神経内科などの専門医を受診しましょう。適切な診断と治療により、坐骨神経痛による日常生活への支障を早期に改善できる可能性があります。 坐骨神経痛のセルフケア方法 坐骨神経痛は患部を温めるほかにも、次のようなセルフケア方法があります。 正しい姿勢を保つ ストレッチやマッサージをする 以下で、それぞれ詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。 正しい姿勢を保つ 坐骨神経痛の症状を改善するためには、日頃から正しい姿勢を心がけましょう。姿勢が悪いまま長時間座りっぱなしや立ちっぱなしでいると、腰や臀部の筋肉に負担がかかり、坐骨神経痛の症状が悪化しやすくなります。 腰や臀部にかかる負担を軽減するためには、背筋を伸ばして骨盤を立てることがポイントです。椅子に座るときは深く腰をかける、こまめに立ち上がるなど、正しい姿勢を保てるようにしましょう。 ストレッチやマッサージをする 坐骨神経痛のセルフケアとして、腰や臀部、太ももの裏側の軽いマッサージやストレッチが効果的です。これにより筋肉の緊張がほぐれ、坐骨神経への圧迫が緩和されます。 なお、ストレッチは身体を温めて血行が良い状態でおこなうと、筋肉の緊張がほぐれやすく、可動域が広がってより効果が期待できます。 無理のない範囲でストレッチやマッサージを継続すると、症状や痛みの再発防止にもつながります。 坐骨神経痛に効くツボについて知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。 坐骨神経痛に対する再生医療による治療の可能性 坐骨神経痛の治療は、温熱療法のほかにも以下のような選択肢があります。(文献1) 薬物療法 理学療法・リハビリテーション 装具療法 神経ブロック療法 手術療法 再生医療 一般的に、まずは保存的治療を選択するものの、重度の場合には手術療法を検討するケースもあります。また、保存的治療で症状の改善がみられない場合は、再生医療による治療も選択肢の一つです。 再生医療では、幹細胞を採取・培養して注射する幹細胞治療や、血液を利用するPRP療法などがあります。再生医療は入院や手術を必要としない治療法です。 リペアセルクリニックでは、坐骨神経痛の原因となる椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症に対する再生医療をおこなっています。具体的な症例については、以下のページで詳しく解説しています。 なお、リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。坐骨神経痛の治療法でお悩みの方は、ぜひ気軽にご相談ください。 まとめ・坐骨神経痛は患部を温めて痛みの緩和を図ろう 坐骨神経痛の痛みを緩和するためには温熱療法が効果的です。 坐骨神経痛は悪化すると痛みが強くなり、生活の質を低下させる要因になりますが、適切な治療やセルフケアによって症状改善が期待できます。 腰や臀部、太ももの裏側など、患部を温めることで、痛みの原因となる筋肉の緊張や神経の圧迫を緩和できます。 ただし、坐骨神経痛のすべての症状において、温めれば良いとは限りません。患部を温めて痛みが強くなる場合は、早めに医療機関を受診して専門医に相談するようにしてください。 参考文献 (文献1) 日本ペインクリニック学会「治療指針6版第4章」一般社団法人日本ペインクリニック学会HP https://www.jspc.gr.jp/Contents/public/pdf/shishin/6-19.pdf (最終アクセス:2025年2月27日)
2025.03.01 -
- 脊椎
- 脊柱管狭窄症
- 脊椎、その他疾患
「坐骨神経痛に悩まされているけど、湿布を貼る場所がわからない」と迷っている方もいるのではないでしょうか。 坐骨神経痛は腰やおしりに痛みやしびれが生じます。症状がある部位に湿布を貼ることで痛みの緩和が期待できるでしょう。しかし、湿布を貼る場所を間違えると十分な効果が得られない場合もあります。 本記事では坐骨神経痛における適切な湿布を貼る場所について解説します。また、湿布の選び方や使用時の注意点も紹介するのでぜひ参考にしてください。 【基礎知識】坐骨神経痛とは 坐骨神経痛とは、腰から足先まで伸びている坐骨神経が、なんらかの原因により圧迫されて痛みやしびれが起きる症状です。坐骨神経が圧迫される原因は、主に以下の3つが挙げられます。 原因 発症しやすい年齢 坐骨神経痛を引き起こすメカニズム 腰椎椎間板ヘルニア 10代~40代 椎間板という背骨の間にあるクッションがつぶれて飛び出し、坐骨神経を圧迫して痛みが起きる 腰部脊柱管狭窄症 50代以上 加齢により脊柱管という背骨が狭くなり、腰やお尻につながる神経根が圧迫されて痛みを引き起こす 梨状筋症候群 20代後半~60代 梨状筋の中(お尻の筋肉のひとつ)を走る坐骨神経が、スポーツや事故などの怪我で圧迫されて痛みが生じる 坐骨神経痛の症状が出る部位は、お尻・腰・太ももなど、原因や圧迫される神経の部位によってさまざまです。 軽度な痛みの場合は湿布やストレッチなどで緩和できる可能性があります。強い痛みがある場合は、坐骨神経痛が重症化している可能性があるため、医療機関を受診しましょう。 腰椎椎間板ヘルニアと梨状筋症候群について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。 関連記事:椎間板ヘルニアとは?医師がわかりやすく解説 関連記事:梨状筋症候群について 医師が詳しく解説 坐骨神経痛に効果的な湿布を貼る場所 坐骨神経痛を軽減するためには、以下の場所に湿布を貼ると効果が期待できます。 腰 お尻 太もも ふくらはぎ 坐骨神経痛は、症状の感じ方や痛む部位に個人差があります。湿布を貼る場所は、痛みやしびれを感じる部位に合わせて適切な位置に貼りましょう。 腰に貼る 坐骨神経痛の湿布を貼る場所は、腰の下部が適切です。坐骨神経は腰椎神経根から形成され下方へ伸びる神経で、神経根部の圧迫により多くの方が腰痛を感じます。 長時間のデスクワークや立ち仕事、前かがみ作業によって、腰に違和感や電気が走るような痛みやしびれの症状が生じる場合があります。腰に痛みやしびれの症状が出たら、腰の下部に湿布を貼りましょう。 お尻に貼る お尻に痛みが生じる場合は、中央部や梨状筋(お尻の筋肉)に湿布を貼ると効果が期待できます。梨状筋が緊張し硬くなると、坐骨神経を圧迫し痛みやしびれを引き起こす場合があります。梨状筋に湿布を貼ることで筋肉の緊張がほぐれ、症状の緩和につながるでしょう。 太ももに貼る 坐骨神経痛の症状が太ももに現れる場合、痛みやしびれを感じる場所に湿布を貼ります。特に、太ももの裏側は坐骨神経が伸びているので、痛みを感じやすい部位です。湿布を貼る際は患部を清潔にし、皮膚がかぶれやすい方は注意しましょう。 ふくらはぎに貼る ふくらはぎもほかの場所と同様、痛みやしびれを感じる場所に湿布を貼りましょう。湿布を貼ることで筋肉の緊張がほぐれ、症状の緩和が期待できます。坐骨神経はふくらはぎにも通っているため、適切に湿布を活用すると痛みの軽減に役立ちます。また、湿布を貼る前に軽くマッサージをすると良いでしょう。 【冷感?温感?】坐骨神経痛にあった湿布の種類と選び方 坐骨神経痛に適した湿布を選ぶ際、冷感湿布か温感湿布かどちらが効果的か迷うかもしれません。湿布がもつ特徴や効果の理解が重要です。 湿布は一時的に痛みをやわらげる手段のひとつですが、痛みや炎症の状態に応じて湿布を使い分けると、症状の緩和が期待できるでしょう。 以下では、湿布の種類と症状に合った適切な選び方を解説します。 湿布の種類 湿布の種類と期待できる主な効果は以下の通りです。 湿布タイプ 期待できる効果 種類 適している症状 冷感湿布 痛みをやわらげる(血管を収縮させ炎症を抑える) l-メントール配合 急性腰痛(ぎっくり腰) 捻挫や打撲 筋肉痛 関節の炎症 温感湿布 筋肉の緊張をほぐし慢性痛や冷えをやわらげる(血管を拡張させ血行を促進する) カプサイシン配合 非ステロイド性抗炎症薬配合 鉱物配合 慢性腰痛 筋肉の凝り 冷えによる腰痛 関節痛や神経痛 消炎鎮痛湿布 消炎・鎮痛作用があり、強い痛みに即効性がある インドメタシン配合 ロキソプロフェン配合 フェルビナク配合 ジクロフェナク配合 急性腰痛 慢性腰痛 関節痛 筋肉痛や神経痛 湿布の種類によって期待できる効果が異なりますので、ポイントをおさえて正しく使い分けましょう。 湿布の選び方と効果 坐骨神経痛において湿布を選ぶ際には、自身の症状に合ったものを選びましょう。 急性の痛みや炎症がある場合、または坐骨神経痛の初期症状には冷感湿布が適しています。筋肉のこわばりや慢性的な痛みには、温感湿布を貼るのがおすすめです。 強い痛みや神経痛には消炎鎮痛湿布を使用すると、痛みの緩和が期待できます。 消炎鎮痛湿布は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を含み、炎症や強い痛みの緩和に適しています。急性・慢性どちらの腰痛にも使用でき、医療用の「ロキソニンテープ」や「モーラステープ」などが代表的です。 湿布の特性を理解し、坐骨神経痛の症状に合ったものを正しく活用しましょう。 坐骨神経痛における湿布を貼るときの注意点 湿布は痛みの緩和に役立ちますが、誤った使用は肌トラブルや副作用を引き起こす可能性があります。湿布を貼る際は、以下5つのポイントに注意しましょう。 皮膚のかぶれやかゆみに注意する 妊娠中は医師に相談する 傷口や湿疹がある箇所には貼らない 長期間の使用は避ける 他の薬との併用に注意する 湿布を長時間使用すると、皮膚にかぶれやかゆみが生じる可能性があります。さらに、インドメタシンやロキソプロフェンなど、一部の湿布に含まれる鎮痛剤は妊婦への使用が推奨されていないため、使用前に薬剤師や医師に相談してください。 また、湿布は一時的な痛みの緩和を目的としており、治療目的ではありません。症状が改善しない場合は医師の診察を受けましょう。 湿布と併用した坐骨神経痛をやわらげる方法3選 湿布と併用しながら坐骨神経痛をやわらげる方法を3つ紹介します。湿布は一時的に痛みを緩和するものなので、坐骨神経痛の根本は治りません。 痛みの根本的な改善には、湿布だけでなく日頃のストレッチや生活習慣の見直しが必要です。これらを組み合わせることで、症状の軽減や再発防止が期待できます。 運動やストレッチをする 坐骨神経痛をやわらげるには、適度な運動やストレッチが推奨されています。硬くなった筋肉をほぐして、坐骨神経への圧迫を軽減することで痛みの緩和が期待できるでしょう。 簡単にできる股関節を伸ばすストレッチを紹介するので、ぜひ試してみてください。 背もたれのある椅子に深く座り、足を肩幅より広めに開く 両手をひざに置く 胸を張りながら、ひざを軽く押して太ももの内側を伸ばす 運動不足は筋肉を弱らせ、腰を支える力が弱くなる原因になります。ウォーキングをしたり、お尻の筋肉をほぐすストレッチをしたりすると痛みの軽減に役立ちます。 痛みが強い場合は無理をせず、できる範囲内で運動やストレッチを取り入れましょう。 詳しくストレッチ方法が知りたい方は、下記の記事を参考にしてみてください。 正しい姿勢を心がける 坐骨神経痛を軽減するには、日頃から正しい姿勢を心がけることが大切です。腰やお尻に負担がかからないように、背骨がS字カーブを保っている状態が理想です。 背骨をそらしすぎたり、猫背になっていたりすると腰に負担がかかってしまい、坐骨神経痛の悪化につながる可能性があります。また、座っているときも背筋を伸ばし、骨盤をたてる意識をしましょう。 重たいものは持たないようにする 腰への負担を軽減するために、できるだけ重たいものは持たないようにしましょう。重いものを持ち上げると、腰に負担をかけ坐骨神経痛を悪化させる原因になります。 かばんや荷物は、リュックサックを活用し重さを分散させる、キャリーカートを利用するなど、なるべく腰に負担がかからないように意識してください。 重いものを持つ必要がある場合は、ひざを曲げて腰を落としてから持ち上げ、なるべく体に近づけて持つようにしましょう。 まとめ|正しく湿布を貼り坐骨神経痛をやわらげよう 坐骨神経痛をやわらげるためには、腰・お尻・太ももなど痛みを感じる部位に適切な湿布を選んで貼りましょう。 湿布は一時的な痛みを緩和させる手段のひとつですが、長期間の使用は避け、皮膚のかぶれやかゆみに注意しましょう。正しく湿布を活用すると痛みの軽減が期待できます。 湿布を貼っても痛みが改善しない場合は、我慢をせずに早めに病院を受診しましょう。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。坐骨神経痛でお悩みの方はお気軽にご相談ください。 坐骨神経痛と湿布に関するよくある質問 坐骨神経痛で湿布が効かないときの対処法は? 坐骨神経痛で湿布が効かないときは、ストレッチやウォーキングで筋肉をほぐしたり、患部を温めて血行を促進したりしてみましょう。 梨状筋症候群や筋肉の緊張、疲労が原因の場合には、湿布だけでは効果が限られることがあります。湿布を貼っても痛みの改善がみられない場合は、自己判断せずに早めに病院を受診しましょう。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。坐骨神経痛で湿布を貼っても効果がない場合はご相談ください。 湿布が効かない痛みがあるときは、下記の記事も参考にしてみてください。 坐骨神経痛の湿布は市販のものでも効果がありますか? ロキソプロフェン配合の「ロキソニンSテープ」や、フェルビナク配合の「フェイタス」などの消炎鎮痛湿布は、坐骨神経痛に一定の効果が期待できます。湿布の選び方に迷った際は、薬剤師に相談して症状に合ったものを選びましょう。 坐骨神経痛にロキソニンは効きますか? ロキソニンは坐骨神経痛に効果が期待できるでしょう。ロキソニンは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に分類されるため、痛みや炎症を軽減する目的として使用されます。炎症や痛みを抑えるので一時的な効果は期待ができます。ただし、長期間使用すると胃腸や腎機能に負担がかかる恐れがあるため、医師や薬剤師の指示に従ってください。
2025.03.01 -
- 足部、その他疾患
- 下肢(足の障害)
- 足部
- スポーツ外傷
シンスプリントと診断されたが、練習を休みたくない 大事な試合が近いから走りながらでも、なんとかしたい シンスプリントを抱えながらも、練習は継続したいと悩む方は多いです。練習をできる限り続けたい気持ち、よくわかります。 ですが、シンスプリントは走りながら治せるほど単純な症状ではありません。 無理して練習を続けると、症状の悪化を招く可能性があります。しかし、無理のないメニューや環境をしっかり整えば、練習を継続できます。 そこで本記事では、以下について解説します。 休息と対策方法 負担を軽減するマッサージ方法 負担を軽減するストレッチ方法 予防する足裏やふくらはぎのトレーニング方法 最後に、シンスプリントについてのよくある質問にお答えします。気になる疑問を解決できますので、ぜひ最後までご覧ください。 【結論】シンスプリントは走りながら治せない|休息と対策が必要 シンスプリントは走りながら治すことはできません。また、シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)は医師や専門機関により、走りながらの治療は推奨されていません。(文献1) 脚に違和感を抱えたまま走ることで、症状が悪化する可能性があります。また無理をすると、症状の回復が遅れる原因にもなります。 そのため、シンスプリントと診断された際は、走りながら治そうとしてはいけません。シンスプリントを治すには休息と対策が必要です。 テーピングを貼る 手順 内容 1.準備 足をタオルや水で洗い、乾燥させる 2.テープを適切な長さにカットする 5cm幅のキネシオロジーテープを適切な長さにカット 3.貼り始め 足の外側からスネの内側に向かって貼る 4.引っ張りながら貼る 土踏まずを持ち上げるように、膝下まで伸ばす 5.重ね貼り 1本目のテープに1/2~2/3重ねて2本目を貼る 6.クロス貼り 外くるぶしの上からスネの内側へ斜め上に貼る 7.固定 足首を1周するようにテープを巻き、しっかり固定する シンスプリントの改善にはテーピングがおすすめです。テーピングを適切に貼ることで、症状の緩和や再発防止につながります。 テーピングには5cm幅のキネシオテープと7.5cm幅のバンテージを使用します。自分で貼るのは難しいため、表を参考に周りの人や、詳しい人に貼ってもらうと良いでしょう。 以下の記事では、シンスプリントのテーピングの方法を詳しく解説しています。 運動後にアイシング 手順 内容 1.準備 ビニール袋に氷を入れ、空気を抜いて患部にフィットさせる 2.冷却時間 1回のアイシングは15~20分を目安にする 3.頻度 1時間ごとに間隔を空けて繰り返す 4.注意点 凍傷防止のためタオルを挟む、長時間のアイシングは避ける シンスプリントの緩和にはアイシングが有効です。(文献2)アイシングを行うことで炎症を抑え、症状を和らげるのに役立ちます。 1回のアイシングは15~20分を目安に行い、1時間ごとに間隔を空けてを繰り返します。アイシングを行う際は凍傷を防ぐために、長時間の冷却は避け、適度な時間で行うのが大切です。 アイシングは、運動後や違和感を感じたときに効果的な手法ですが、症状が改善しない場合は医師に相談するようにしましょう。 負荷のかからない練習量と環境にする シンスプリントの症状を悪化させないためには、練習量と環境を改善する必要があります。シンスプリントが悪化する要因としては以下が挙げられます。 不整地や硬い地面での運動・練習 足の疲労によって衝撃吸収が弱まった状態での練習 過度な走り込み 負担を減らすには、無理な運動や硬い地面での練習は避け、クッション性のある場所を選ぶことが大切です。またシンスプリントの症状が出た場合は、練習量を減らすなどし、負担軽減を優先しましょう。 シューズを変える ポイント 解説 クッション性だけに頼らない クッションは分厚ければ良いものではない。シューズの形状や高さが衝撃吸収能力に影響を与えることがある。 走り方に合わせたシューズを選ぶ 走り方に応じて、つま先と踵の高さが異なるシューズを選ぶと衝撃吸収能力が向上する。 足部の安定性を保つ 分厚いクッションが足部の不安定さを引き起こす可能性がある。安定性を保てるシューズを選ぶこと。 普段のトレーニングに合わせる 分厚いクッションは不要。普段のトレーニングに合わせて、クッション性や形状を選ぶこと。 自分に合ったシューズの選び方 足のアーチや走り方に合わせたシューズを選び、フィッティングを受けることが大切。 クッション性の低い靴の使用や、かかとのすり減った靴での練習は脛骨に負荷をかけます。しかし、クッション性と怪我の予防に関する明確なエビデンスはありません。そのため、クッション性だけに重点を置かないことが大切です。(文献3)(文献4) シューズを選ぶ際は、足のアーチや走り方、負担のかかりやすい部分を考慮し、選択するようにしましょう。 自分だけで選ぶのが難しい場合は、専門店でシューズフィッティング(足に合った靴の選定、履き心地の確認)を受けることで、自分に合うシューズを見つけやすくなります。 マッサージ・ストレッチ マッサージ・ストレッチは筋肉や筋膜の柔軟性を高めます。とくに入浴後は血行が良くなり、筋肉が柔らかくなるため、このタイミングで行うと効果的です。(文献5)(文献6) マッサージ・ストレッチは筋肉の柔軟性強化だけでなく、血行の改善や負荷のかかる部分(とくに下肢の筋肉)の緊張をほぐせます。 無理のない範囲で行う必要はあるものの、適度な運動は怪我の予防や回復の促進が研究でも明らかになっています。(文献5)(文献6) シンスプリントの負担を軽減するマッサージの仕方 シンスプリントの負担を軽減するために、マッサージが効果的です。筋肉をリラックスさせ、血流を促進し、症状を和らげます。ただし、無理なく優しく行うことが大切です。 以下でポイントを詳しく解説します。アイスマッサージ ステップ 詳細 注意点 準備するもの 小さな袋に氷を入れる、またはアイスパックを使用する。 直接氷を肌に当てないようにする。氷が肌に直接触れると凍傷の原因になります。 アイシング部位 スネの内側や足首周りを対象にアイスを当てる。 アイシングを行う部位を清潔に保つこと。傷や炎症がひどい場合は無理に行わないようにしましょう。 アイスを当てる方法 5〜10分間、円を描くようにアイスを当てながらマッサージする。 長時間行いすぎないように注意する。冷却しすぎると血行が逆に悪くなり、症状が悪化につながります。 休憩後の再実施 冷却後、少し休憩してから再度実施するとより効果的。 休憩時間を設けることで、肌や筋肉に過度な負担をかけずに効果的にアイスマッサージを行えます。 主な効果 炎症や腫れを軽減し、血流の促進に繋がります。 冷却後に違和感があれば、すぐに中止する。必要に応じて医師に相談しましょう。 氷を入れた小さな袋を患部に直接当てて、マッサージします。円を描くように10分〜15分程度行いましょう。アイスマッサージには炎症や腫れを軽減し、血流を促進する効果があります。 氷はスネの内側や足首周りに当てますが、直接肌に触れたり、同じ場所を長時間冷やしたりしないよう注意しましょう。冷却後に違和感があれば、中止して医師に相談しましょう。 足裏のマッサージ ステップ 詳細 注意点 準備するもの とくに準備は必要なく、手やマッサージオイルなどの使用もできます。 マッサージを行う際には爪を切り、硬い部分で引っかからないようにしましょう。 マッサージ部位 足の前部からかかとに向かって、親指や指の腹でマッサージする。 強すぎない圧力でマッサージを行いましょう。過度な圧力を加えるとマッサージを行なった箇所に負担がかかります。 マッサージの方法 円を描くように優しく押しながらマッサージし、30秒〜1分間行う。 アーチ部分をとくに重点的にマッサージしますが、無理に押さないようにする。少しでも違和感を感じた場合は中止します。 両足をマッサージ 反対側も同様にマッサージする。 両足を同じ方法でマッサージするのが大切です。片方だけを行うことは偏った負担をかける原因になります。 主な効果 足裏の筋肉をほぐし、アーチ部分の負担を軽減、シンスプリントの症状を改善します。 マッサージ後は無理のない範囲で、足を軽くストレッチすると、筋肉がさらにリラックスしやすくなります。 足裏を親指や指の腹で優しく押し、足の前部からかかとに向かって円を描く形でマッサージします。マッサージを行う際は、無理のない範囲で行い、強く押しすぎないことが大切です。 足裏をマッサージを行うことで、筋肉をほぐれ、アーチ部分の負担を軽減できます。 スネの内側のマッサージ ステップ 詳細 注意点 準備するもの 手だけで行えますが、マッサージオイルなどを使用しても良いです。 圧力を加える前に手やオイルでスネ部分を軽く温めておくと、よりリラックスできます。 マッサージ部位 スネの内側、脛骨の周辺を指の腹でマッサージします。 強い力を加えすぎないように注意する。違和感を感じたら、すぐに中止しましょう。 マッサージの方法 上から下に向けて円を描くように軽く押しながら、マッサージします。 1~2分間マッサージする。スネの筋肉がリラックスした感覚を覚えましょう。 反対側のマッサージ 反対側のスネも同様にマッサージします。 両側をバランスよくマッサージする。片方だけに偏らないようにしましょう。 主な効果 スネの内側の筋肉をほぐし、筋肉の緊張を和らげ、症状を軽減します。 強く押しすぎないように、リラックスした状態で行うと効果的です。 スネの内側のマッサージを反対側と合わせ、1〜2分間マッサージし、筋肉の緊張を和らげ、症状を軽減できます。(文献6) シンスプリントの負担を軽減するストレッチの仕方 シンスプリントの負担を軽減するには、ストレッチが有効です。ストレッチを行うことで、マッサージ同様、筋肉の緊張を和らげ、症状の改善につながります。 以下ではシンスプリントの負担を軽減するストレッチの方法を解説します。 後脛骨筋(こうけいこつきん)ストレッチ ステップ 手順 ポイント 1.準備 座った状態で、片足をもう一方の太ももに乗せる。 リラックスして姿勢を安定させる。 2.足首を曲げる 乗せた足のつま先を手で持ち、足首を内側にゆっくりと曲げる。 無理に力を入れず、心地良い伸びを感じる程度に調整する。 3.キープ 足首の内側を曲げた状態を15~30秒間保持する。 深呼吸しながら、筋肉の伸びを意識する。 4.反対側も実施 ゆっくり元の位置に戻し、反対側の足も同様に行う。 左右交互に2~3回繰り返す。 脛骨の内側から足首にかけて付着する後脛骨筋のストレッチを行い、柔らかくします。コツは反動をつけずにゆっくりと伸ばすことを意識します。 無理な力は後脛骨筋に負担をかけ、シンスプリントを悪化させる恐れがあるため注意しましょう。無理がない範囲で行うことが大切です。 腓腹筋(ひふくきん)ストレッチ ステップ 方法 ポイント 1. 姿勢をとる 壁の前に立ち、片足を一歩後ろに引く。 後ろ足のかかとを床につけたままにする。 2. 体を前に倒す 壁に手をつき、前足の膝を軽く曲げながら体を前方に倒す。 背筋を伸ばし、無理に体を曲げすぎないようにする。 3. ストレッチを保持 ふくらはぎが伸びるのを感じながら15~30秒キープ。 反動をつけず、ゆっくりと伸ばす。 4. 反対側も行う 片側が終わったら反対の足も同様にストレッチする。 毎日継続して行うことで効果が期待できる。 腓腹筋を伸ばし、ふくらはぎの柔軟性を高めることで、シンスプリントの改善に役立ちます。反動をつけず、かかとを床につけたまま無理のない範囲で行いましょう。 ヒラメ筋ストレッチ ステップ 方法 ポイント 1.姿勢をとる 壁の前に立ち、片足を一歩後ろに引く。 後ろ足のかかとを床につけたままにする。 2.ひざを曲げる 後ろ足のひざを軽く曲げ、ふくらはぎの下部(ヒラメ筋)を伸ばす。 背筋を伸ばし、ゆっくりと動作を行う。 3.ストレッチを保持 ふくらはぎの下部に伸びを感じながら15~30秒キープ。 反動をつけず、無理のない範囲で行う。 4.反対側も行う 片側が終わったら反対の足も同様にストレッチする。 呼吸を意識して、リラックスしながら行う。 ヒラメ筋ストレッチはシンスプリントの症状緩和に効果的です。ふくらはぎの柔軟性を高めることで、脛骨への負担が軽減されます。 無理はせず、ゆっくりとした動作でヒラメ筋ストレッチを行うことが大切です。適切に行うことで、症状の悪化を防ぎ、パフォーマンス向上に繋がります。 シンスプリントを予防|足裏やふくらはぎのトレーニング方法 シンスプリントの予防には、足裏やふくらはぎのトレーニングも大切です。正しいトレーニングを行い、筋力を鍛えることで、足部の衝撃吸収能力や安定性が向上し、発症を防止できます。 以下では、足裏やふくらはぎのトレーニング方法について解説します。 タオルギャザー 足裏の筋力を鍛えるトレーニングで、床にタオルを広げ、足でタオルを引き寄せる動作を繰り返します。このとき、かかとの位置は変えずに行うようにしましょう。 足底のアーチを意識しながら、タオルを引き寄せることで、足裏の筋力を強化できます。 両脚ヒールレイズ ふくらはぎの後面に位置する、ヒラメ筋と腓腹筋を鍛えるトレーニングです。直立した状態で、両足を使ってかかとを上げ下げします。 このとき、できるだけかかとを高く上げ、膝をしっかり伸ばした状態で行います。また身体がふらつかないように注意しましょう。 チューブを使った筋力トレーニング トレーニングチューブを使って、足やふくらはぎの筋肉を鍛えるトレーニングです。コツは低負荷から始め、徐々に負荷を上げていくようにします。 いきなり負荷をかけると筋肉が炎症を起こし、症状が悪化する恐れがあります。ゆっくりと無理のない範囲で行いましょう。 チューブを使った筋力トレーニングについては、以下の記事で詳しく解説しております。 走ると辛いシンスプリントは当院にご相談ください シンスプリントは走りながら治すのは難しいですが、適切な対策とトレーニングで改善できます。 改善が進まない場合は、当院「リペアセルクリニック」にご相談ください。再生医療で組織の修復をサポートします。 走ると辛いシンスプリントでお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にお問い合わせください。 走りながらシンスプリントを治したい方からよくあるQ &A シンスプリントの主な原因は シンスプリントの原因は、筋肉や被膜の異常によって引き起こされます。筋肉に負荷がかかると硬くなり、柔軟性が低下します。その結果、筋肉が脛骨を引っ張り、負荷が増加して炎症が起き、違和感が生じるのです。 以下の記事では、シンスプリントの原因と予防策を詳しく解説しています。 シンスプリントは走りながら治すのではなく病院行くべきですか? シンスプリントは走りながら治すのではなく、病院に行くべきです。シンスプリントは筋肉や神経が炎症を起こしている状態であり、負荷をかけると症状が悪化する可能性があります。 症状を悪化させないためにも、病院で診察を受けることをおすすめします。 シンスプリントに湿布は効果的ですか? シンスプリントに湿布は一時的な痛みを和らげる効果がありますが、根本的な治療にはならないことが多いです。湿布は主に炎症を抑え、血流を改善するために使用されます。 冷湿布は炎症や腫れを抑える効果があり、急性の炎症があるときに適しています。一方、温湿布は、患部を温めて血行を促進し、筋肉の緊張を和らげます。 慢性的な痛みに効果的ですが、炎症がひどい場合には逆効果になることもあるので、注意が必要です。 参考文献 (文献1) Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA「シンスプリント」MSDマニュアル プロフェッショナル版,2021年10月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/22-%E5%A4%96%E5%82%B7%E3%81%A8%E4%B8%AD%E6%AF%92/%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%84%E6%90%8D%E5%82%B7/%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%88?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年2月24日) (文献2) 一般臨床整形外科学会日本臨床整形外科学会「アイシング」一般臨床整形外科学会日本臨床整形外科学会ホームページ https://jcoa.gr.jp/%E5%81%A5%E5%BA%B7%E7%9B%B8%E8%AB%87/%E6%A5%BD%E3%81%97%E3%81%8F%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%84%E3%82%92%E7%B6%9A%E3%81%91%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB/%E5%BD%B9%E7%AB%8B%E3%81%A4%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%84%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E3%81%AE%E7%9F%A5%E8%AD%98/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0/?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年2月24日) (文献3) Laurent Malisoux, et al. (2020)Shoe Cushioning Influences the Running Injury Risk According to Body Mass: A Randomized Controlled Trial Involving 848 Recreational Runners - PubMed https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31877062/(Accessed: 2025-02-24) (文献4) Naoko Aminaka,et al.(2018),NO IMMEDIATE EFFECTS OF HIGHLY CUSHIONED SHOES ON BASIC RUNNING BIOMECHANICS,1-10 https://hrcak.srce.hr/file/283953(Accessed:2025-02-24) (文献5) Miloš Dakić, et al.(2023),The Effects of Massage Therapy on Sport and Exercise Performance: A Systematic Review - PMC https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10302181/(Accessed:2025-02-24) (文献6) Robert D Herbert, et al.(2011),Stretching to prevent or reduce muscle soreness after exercise - PubMed https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21735398/(Accessed:2025-02-24)
2025.02.28