-
- 手部、その他疾患
- 手部
関節が腫れてしこりができると、痛みや不便さを感じるだけでなく「ガン(悪性腫瘍)なのでは?」と心配になりますよね。 関節にしこりができたら、ガングリオンや粉瘤(ふんりゅう)、脂肪腫(しぼうしゅ)といった良性腫瘍のほかに、がんを含む悪性腫瘍の可能性が考えられます。。ガングリオンも悪性腫瘍も見た目はよく似ているので、見分けるポイントを知っておくと安心です。 今回の記事では、ガングリオンと悪性腫瘍の見分け方を詳しく解説します。それぞれの治療法も紹介しているので、関節にしこりができて不安な方は、ぜひ参考にしてみてください。 ガングリオン・悪性腫瘍とは ガングリオンと悪性腫瘍の見分け方をチェックする前に、それぞれの病気の特徴を理解しましょう。 ガングリオンとは ガングリオンとは、一般的に関節の周囲に発生する「こぶ状に膨らんだしこり」です。全身の関節にできますが、発生頻度として多いのは、手首の甲や手のひら側の指の付け根です。 2つの骨がつなぐ関節を保護する「関節包」のなかの滑液(関節を保護する潤滑油)が、ガングリオンの袋に流れ込んで濃縮することによりしこりができます。しかし、ガングリオンができる原因は、まだ明確にはわかっていません。 ガングリオンは無症状のケースもありますが、しこりが大きくなると血管や神経を圧迫し、痛みやしびれがあらわれる場合があります。関節にできるしこりは悪性腫瘍のケースもあるので、ガングリオンと疑われるしこりができたら一度専門医に診てもらうと良いでしょう。 以下の記事では、手首にガングリオンができた場合の治療法や再発防止の対策を解説しています。手首にガングリオンができている方は、参考にしてみてください。 なお、関節にしこりができて腫れている場合、脂肪腫(しぼうしゅ)や粉瘤(ふんりゅう)などガングリオン以外の病気の可能性もありますが、どちらも良性腫瘍です。 悪性腫瘍とは 悪性腫瘍は、異常な細胞が周りに広がったり、臓器や生命に悪影響を与えたりする腫瘍のことです。たとえば「がん」は悪性腫瘍の代表的な病気です。 がんの種類や発症部位によっては、ガングリオンと同様に身体の関節部分にしこりを作ることがあります。 放っておくと、進行して生命に危険をもたらす可能性もあります。気になるしこりができた場合は、専門医に診てもらいましょう。 人間の自然治癒力を活用した最新の医療技術である「再生医療」をご存じでしょうか。再生医療は筋肉や腱、靭帯損傷の治療に効果的です。 本来なら手術しなければいけない状態でも、再生医療で治療できる可能性があります。ガングリオン以外で身体に痛みや違和感がある方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にご相談ください。 ガングリオンと悪性腫瘍の見分け方のポイント ガングリオンと悪性の腫瘍には、以下のような特徴があります。具体的には、触った感じやしこりの特徴の違いが見分けるポイントです。 ガングリオン 悪性の腫瘍 触った感じ やわらかく弾力がある •触っても痛くない場合がある 硬くゴツゴツしている 触ると痛みがある しこりの特徴 大きくなったり小さくなったりを繰り返す しこりはゆっくり大きくなる 自然に消失する場合がある 急速に大きくなる 自然に小さくはならない しこりが周りと遊離して動く これらの特徴は、見分けるポイントにはなりますが、自己判断は危険です。自分では良性腫瘍のガングリオンだと思っていても、実は悪性腫瘍の可能性があるためです。 関節のしこりに気づいたら、早めに医療機関を受診して専門医に診てもらいましょう。 ガングリオンと悪性腫瘍の治療方法の違い ここでは、ガングリオンと悪性腫瘍の治療法の違いを解説します。 ガングリオンの場合 ガングリオンの治療は、主に「保存的療法」と「外科的療法」の2つです。 【保存的治療法のポイント】 注射器で内容物を吸引し排出する 外来でできる処置のため身体にできる傷が少ない ガングリオンの袋は残るため再発の可能性がある 【外科的治療法のポイント】 手術でガングリオンを袋ごと取り除く 術後は創部を保護し部位によっては固定が必要 術後リハビリが必要なケースもある 麻酔をして切開をするため保存的療法より負担が大きい ガングリオンの袋ごと摘出するため再発の可能性は低い どちらの方法でも再発の可能性はゼロではありません。一般的に、まずは保存的治療をおこない、再発を繰り返す場合には外科的治療が検討されます。 腱や筋肉の損傷に効果的な治療法の1つに「再生医療」があります。人間の自然治癒力を活用した治療なので、身体への負担を最小限にできます。 ガングリオン以外で手や腕に痛みやしびれなどの症状がある方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にご相談ください。 悪性腫瘍の場合 ガングリオンではなく「がん」だった場合には、以下のような方法で治療をおこないます。 手術療法 化学療法(抗がん剤治療) 放射線療法 がんの種類や進行具合にもよりますが、これらの治療方法を組み合わせて治療を進めていきます。 まとめ|ガングリオンと悪性腫瘍を画像や症状を参考に見分けよう ガングリオンと悪性腫瘍の見分け方のポイントは、触った感触やしこりの特徴です。気になるしこりができた場合は、以下の表を参考に、自分のしこりの特徴と照らし合わせてみてください。 ガングリオン 悪性の腫瘍 触った感じ やわらかく弾力がある 触っても痛くない場合がある 硬くゴツゴツしている 触ると痛みがある しこりの特徴 大きくなったり小さくなったりを繰り返す しこりはゆっくり大きくなる 自然に消失する場合がある 急速に大きくなる 自然に小さくはならない しこりが周りと遊離して動く ただし、専門家でなければ正確に見分けるのが難しいです。ガングリオンだと思って様子を見ていたものが、悪性腫瘍である可能性もゼロではありません。 早期発見・早期治療のためにも、しこりや痛みが気になった時点で病院を受診するのが良いでしょう。 手や足の筋肉や腱、靭帯を損傷したときは「再生医療」が効果的です。再生医療は身体にメスを入れない治療法なので、患者の負担が少ないです。「実はガングリオン以外の症状も気になる…」という方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にご相談ください。 ガングリオンや悪性腫瘍に関するよくある質問 最後にガングリオンや悪性腫瘍に関するよくある質問と回答をまとめます。 ガングリオンは再発しますか? ガングリオンは、治療をしても再発を繰り返すケースのある病気です。 手術でガングリオンの袋ごと取り除く治療をすれば、再発の可能性は低くなります。しかし、注射吸入でガングリオンの中の液体を抜くだけの治療の場合、再発率は60%前後といわれています。(文献1) 再発を繰り返す場合は、手術の検討が視野に入ってくるでしょう。 ガングリオンの再発を防ぐ対策はありますか? ガングリオンの再発を防ぐには、治療後の過ごし方が肝心です。 治療をおこなった後は、まずは患部を安静にして過ごしましょう。患部に負荷がかかれば、関節液が再び漏れだす可能性があり、再発のリスクが高まります。 痛みやしびれ、関節の動きにくさなどがなくなると、つい普段通りの生活をしてしまいます。しかし、再発のリスクを下げるために、医師から告げられた安静期間は、必ず守るようにしましょう。 ガングリオンが痛いときの対処法が知りたいです 気になるほどの痛みであれば、病院を受診しましょう。症状の程度によっては、注射器でガングリオンの内容物を吸引したり、ガングリオンの袋を取り除く手術をしたりする必要があります。 痛みが気にならなければ、安静にして様子を見る選択肢もあります。ガングリオンは自然に消えるものもあるためです。 ただし、しこりはガングリオンではなく悪性腫瘍である可能性もゼロではありません。早期発見・早期治療のためにも、痛みを感じた時点で専門医に診てもらうのが良いでしょう。 以下の記事では、ガングリオンが痛いときの対処法を解説します。痛みがあるときにやってはいけない行動も紹介しているので、すでにガングリオンの症状が出ている方は参考にしてみてください。 ガングリオンに似ている脂肪腫は悪性ですか? 脂肪腫は、良性の腫瘍です。脂肪腫は脂肪組織で構成されており、しこりが柔らかいのが特徴です。 以下の記事では、頭にできるコブについて解説しています。コブの種類や受診が必要なケースも紹介しているので、気になるコブが頭にある方は参考にしてみてください。 参考文献 文献1:https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed/67/4/67_371/_pdf/-char/ja
2024.09.12 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
「痛風と診断されたけど、どのような食事をすればいいの?」「家族の食事にも配慮しないと…」 このように悩んでいる方も多いのではないでしょうか。 痛風の予防やコントロールには、適切な食事を摂ることが重要です。しかし、具体的にどのような食材を選び、どうバランスを取れば良いのかわからない方も少なくありません。 今回は、痛風対策に効果的な食事法について詳しく解説します。尿酸値を下げる食材の選び方、避けるべき食品、一日の食事プランなどについても紹介しています。 痛風の悪化を防ぎつつ、ご家族の健康も考えた食生活を送る参考になれば幸いです。 痛風における食事改善のポイントは「プリン体の摂取量」 痛風は、体内で作られた尿酸という物質が、腎臓から十分に排出されないために血液中に蓄積し、発症します。 尿酸は、プリン体という物質が体内で分解されることで生成されます。食事から多く摂取すると尿酸の生成量がさらに増加してしまいます。 つまり、プリン体を多く含む食品を取りすぎると、尿酸の生成が増え、痛風発作のリスクが高くなるのです。 健康な成人男性の尿酸の1日生成量は約1,000mgといわれています。 プリン体の摂取量が多いと、この尿酸の生成量がさらに増加してしまいます。そして、血液中の尿酸値が1dLあたり7.0mg以上になると、痛風発作のリスクが上昇しやすいのです。 つまり、普段の食生活が痛風の発症と深く関係しているといえます。 痛風が影響を与える部位やその対策については以下の記事でも解説しています。ぜひ参考にしてください。 痛風の食事で避けたい食品一覧 痛風のリスクを高める代表的な食品は、以下の通りです。 肉類(とくにレバー、内臓肉など) 魚介類(とくにイワシ、サンマ、カツオなど) ビールなどのアルコール飲料 果糖の多い清涼飲料水 痛風の予防には、バランスの取れた食事を心がけ、プリン体の過剰摂取を避けることが大切です。 プリン体を多く含む食品を控えめにし、十分な水分を摂取して尿酸を排出しやすくすることが有効です。 また、適度な運動を行うと、体重管理や代謝の改善につながり、痛風のリスクを下げることができるでしょう。 肉類 とくに、レバーや内臓肉などの食品に多く含まれるプリン体が体内で分解されると、尿酸が生成されます。 たとえば、レバー100gあたりのプリン体含有量は約400mgで、他の食品と比較すると高い値です。 肉類は、大豆製品(豆腐、納豆など)に置き換えることでプリン体をおさえられます。 魚介類 イワシやサンマ、カツオ、マグロなどにもプリン体が多く含まれます。 プリン体の含有量は180-400mgほどです。 もし魚を選ぶ際には、白身魚(タラ、カレイなど)、背青魚(サバ、アジなど)を積極的に選ぶと良いでしょう。 また、イカやタコも200ー300mgほどのプリン体値なので注意する必要があります。 ビールなどのアルコール飲料 アルコールは尿酸の排泄を妨げる作用があるため、体内の尿酸を増加させ痛風のリスクを高めます。 とくにビールは、アルコールに加えてプリン体も含むため、尿酸値を上昇させる作用が強いです。 ビール1缶(350ml)を飲むと、血中尿酸値が約0.5mg/dL上昇すると言われています。 大瓶1本(633ml)には約100-200mgのプリン体が含まれており、これは高プリン体食品とされる量です。 痛風患者は可能な限りアルコールを控え、どうしても飲む場合は、ビールではなく、ワインや焼酎などのプリン体を含まない酒を選び、適量(1日平均純アルコール20g程度)を心がけましょう。 果糖の多い清涼飲料水 果糖は他の糖類と比べて尿酸値を上昇させる作用が強いとされています。 したがって、痛風の方は、清涼飲料水摂取は控えることが重要です。 水やお茶など果糖を含まない食品に切り替えましょう。 痛風の食事には「プリン体の少ない食品」を取り入れる 痛風の食事療法では、プリン体の摂取を控えることが大切ですが、すべての食品を制限する必要はありません。 痛風患者さんでも比較的食べても良いとされる食材があります。 具体的には以下のようなものが挙げられます。 野菜類 果物類 低脂肪乳製品 全粒穀物 これらの食材を中心とした食事は、尿酸値を下げ、痛風発作のリスクを減らすのに役立ちます。 以下の表は、痛風の方に推奨される食品とその理由です。 食品 理由 含有量の例 キウイフルーツ オレンジ さくらんぼ ビタミンCが豊富で、尿酸の排泄を促進 100g当たりのビタミンC含有量 キウイフルーツ約90mg オレンジ約50mg さくらんぼ約10mg 低脂肪乳製品 プリン体が少なく、カルシウムが豊富 カルシウムは尿酸の排泄を促進 100g当たりのカルシウム含有量 低脂肪牛乳約120mg ヨーグルト約110mg 全粒穀物 ビタミンB群が豊富で、プリン体代謝を助ける 食物繊維が豊富で、便通を改善 玄米100g当たりのビタミンB1含有量:約0.4mg 大豆製品 プリン体含有量が低く、尿酸値を上げにくい 良質なタンパク源で、動物性タンパク質の代替に適している イソフラボンが豊富で、抗酸化作用がある 木綿豆腐100g当たりのプリン体含有量:約6mg 納豆50g当たりのプリン体含有量:約18〜22.5mg 注意:納豆は栄養価が高いですが、プリン体含有量も無視できません。適量を守りましょう これらの食品を上手に取り入れることで、痛風患者さんでも栄養バランスの取れた食生活を送ることができます。ただし、どのような食品でも食べ過ぎは避けるべきです。個人差があるため、医師や管理栄養士との相談の上、自分に合った食事療法の実践が大切です。 実践!痛風対策のための一日の食事 ここでは、痛風患者におすすめの一日の食事プランを紹介します。家族の健康も考慮しながら、バランスの取れた食事を心がけましょう。 朝食:痛風に優しいメニューの提案 忙しい朝でも、簡単に作れて栄養バランスの取れたメニューを選ぶと続けやすいでしょう。 メニュー 材料 全粒粉トースト+野菜スープ 全粒粉パン、野菜(お好みで)、コンソメなど オートミール+低脂肪ヨーグルト+フルーツ オートミール、低脂肪ヨーグルト、お好みのフルーツ 豆乳スムージー+ビタミンCの多い果物 豆乳、バナナ、ビタミンCの多い果物(キウイ、オレンジ、イチゴなど) 朝の忙しい時間帯でも、これらのメニューなら短時間で準備できるでしょう。全粒粉トーストと野菜スープ、オートミールとヨーグルト、豆乳スムージーなど、痛風の方に適したメニューといえます。 昼食と夕食:家族も喜ぶ健康的な選択 家族みんなで楽しめるような、バランスの良い食事の例を紹介します。 メニュー 材料 茶わん蒸し+野菜サラダ+玄米ご飯 卵、だし汁(干ししいたけや玉ねぎなど)、野菜(レタス、きゅうり、トマト、にんじん、ブロッコリーなど)、玄米など 豆腐ハンバーグ+蒸し野菜+キノコスープ 豆腐、ひき肉、野菜、キノコ、だし汁など さわらの塩焼き+野菜炒め+もずく酢 さわら、野菜、もずく、酢など 低プリン体の食材を使った、栄養バランスの取れたメニューを揃えました。 茶わん蒸しや豆腐ハンバーグなど、家族みんなが喜ぶ献立でしょう。 痛風の方も、おいしく食事を楽しみながら、健康管理がしやすいです。 家族の好みに合わせつつ、プリン体の少ない食材を使ったメニューを心がけましょう。 表に挙げたメニューは、プリン体が比較的少なく、痛風患者に適していると考えられます。 しかし、個人差があるため、自分の尿酸値や体調に合わせて、医師や管理栄養士に相談しながら、食事プランを調整することが大切です。 痛風の食事療法は、バランスの取れた食生活が基本です。 毎日の食事で、プリン体の少ない食材を選び、野菜や果物、低脂肪乳製品などを積極的に取り入れることで、尿酸値をコントロールしつつ、家族みんなで健康的な食卓を囲むことができるでしょう。 痛風の改善・予防のために心がけるべき6つの習慣 痛風の予防と管理には、食事中のプリン体に気をつけるだけでなく、生活習慣全般の見直しを行う必要があります。生活の中で気をつけたい6つの習慣は以下の通りです。 適切な食習慣を身に付ける 体重管理で肥満を防ぐ 禁煙をする 適度な運動を心がける 水分を十分に摂る アルコールは控える 本章内にて詳しく解説します。 適切な食習慣を身に付ける 適切な食事療法を継続することで、以下のような長期的な健康効果が期待できます。 健康効果 詳細 尿酸値の低下 プリン体の摂取量を1日400mg以下に抑えると、尿酸値が低下する可能性があり、痛風発作のリスクを減少させる可能性がある 尿酸排泄の促進 十分な水分摂取により、尿酸の排泄を促すことができる。また、ビタミンCには尿酸排泄を促進する可能性がある 腎機能の保護 高尿酸血症が長期間続くと、腎臓に負担がかかり、腎機能が低下する可能性がある。適切な食事療法により尿酸値をコントロールすることで、腎機能の保護につながる可能性がある 尿路結石の予防 高尿酸血症は尿路結石の危険因子の一つである。十分な水分摂取と適切な食事療法により、尿路結石のリスクを下げやすい 腎臓病と尿路結石は、痛風患者にとって重要な合併症であり、食事療法はこれらの予防にも役立ちます。 ただし、腎臓病や尿路結石がある場合の具体的な食事指導は、病状に応じて個別に行う必要があります。 医師や管理栄養士と相談しながら、適切な食事療法を実践することが大切です。 体重管理で肥満を防ぐ 肥満は尿酸値を上昇させます。なぜなら、内臓脂肪が増えると尿酸の産生が促進されたり、尿酸の排泄能力が低下するためです。 BMIを25未満に維持することを目標に、食事と運動で適正体重の維持に努めましょう。 禁煙をする 喫煙は尿酸値を上昇させる要因の一つです。禁煙により尿酸値が0.5~1.0mg/dL程度の低下が期待できます。 たばこを吸っている方は、禁煙に努めましょう。近年では禁煙外来を活用する方も多くいます。 もし興味はあるけれど、自分だけでは禁煙が難しいと感じる場合には、禁煙外来も活用しましょう。 適度な運動を心がける 適度な運動は尿酸値を下げ、血行を促進させます。 1回30分以上の中等度の運動(早歩きなど)を週5回、または1回20分以上の高強度の運動を週3回行うことを目標としましょう。 過度な運動にならないよう、体の調子に合わせて行うのがベストです。 水分を十分に摂る 水分を多く摂ることで尿量が増加し、尿酸の排泄量も増加します。 尿酸の排泄量が増加すれば体内の尿酸値は少なくなるため、カロリーのない水やお茶を1日2リットルを目標に飲みましょう。 清涼飲料水や甘いジュースなどは糖分が多く、肥満にもつながるため控えるべきです。 アルコールは控える アルコールを可能な限り控えることでも尿酸値を低下させられます。 アルコール飲料を飲まないことが理想ですが、もし飲みたいときにはノンアルコールビールやプリン体の少ないワインやウイスキー、焼酎にすることをおすすめします。 まとめ|痛風の予防・改善にはプリン体の少ない食事を心がけましょう 痛風の予防や改善には、プリン体の少ない食事を心がけ、健康的な習慣を身につけることが大切です。 痛風の予防と管理に食事が果たす役割は非常に大きいといえます。プリン体の多い食品を控え、少ない食品を積極的に取り入れましょう。 また、痛風の患者様、ご家族様のお悩みを当院でも承っております。メール相談やオンラインカウンセリングからも気軽に相談できます。 痛風の予防や改善方法に悩んでいる方はぜひ当院「リペアセルクリニック」にお問い合わせいただければ幸いです。 \まずは当院にお問い合わせください/ また、痛風発作の症状緩和や再発の予防について、以下の記事でも解説しているのでご覧ください。 参考文献一覧 千葉県栄養士会,健康を考える皆さまへ,痛風の予防と食事 東京都立病院機構,高尿酸血症・痛風の食事,高尿酸血症・痛風とは 順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部,高尿酸血症・痛風の食事療法 e-ヘルスネット,アルコールと高尿酸血症・痛風 e-ヘルスネット,高尿酸血症 e-ヘルスネット,高尿酸血症の食事 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病,高尿酸血症/痛風 日本生活習慣病予防協会,生活習慣病の調査・統計,高尿酸血症/痛風 e-ヘルスネット,プリン体
2024.09.09 -
- 上肢(腕の障害)
- 下肢(足の障害)
- スポーツ外傷
「疲労骨折は自然治癒する?」「どのくらい休めば治るの?」 このような悩みを抱えるランナーは少なくありません。疲労骨折について、自然治癒するのか、病院に行くべきか悩む方もいるのではないでしょうか。 結論からいえば、疲労骨折は安静にすることで自然治癒するケガです。早く治してまたランニングを楽しむためには、疲労骨折について理解を深め、正しくケアする必要があります。 この記事では、疲労骨折の原因や症状、自然治癒のプロセス、そして復帰目安と予防策について詳しく解説します。正しい知識とケアを通して、疲労骨折を乗り越え、ランニングを楽しみ続けるための参考になれば幸いです。 疲労骨折は自然治癒できる!早く治すには「安静にすること」が大切 結論からいえば、疲労骨折は自然治癒するケガです。しかし、なにも対策せずに放置していても早く治るわけではありません。 疲労骨折を早く自然治癒させるには、疲労骨折がどうして発症するのか、どのような状態なのかを理解する必要があります。本章をしっかりと確認し、疲労骨折についての理解を深めてください。 疲労骨折の原因と典型的な症状 疲労骨折は、以下のような要因が重なると発生しやすくなります。 急激なトレーニング量の増加 不適切なランニングフォーム 硬いランニングサーフェス 足に合わない靴の使用 骨密度の低下 疲労骨折の症状は、以下のようなものがあります。 症状 説明 運動時の痛み 特定の部位の痛み 安静時の痛みの持続 休んでいても痛みが続く 腫れや圧痛 患部が腫れたり、押すと痛みを感じる 皮膚の発赤や熱感 患部の皮膚が赤くなったり、熱を持つ これらの症状が継続する場合は、疲労骨折の可能性が高いと考えられます。 疲労骨折は足をはじめ、膝や腰などにも発症しやすいケガです。以下の記事では、ランナーに多い「膝」と「足の甲」の疲労骨折について解説しています。気になる方はぜひ一度ご覧ください。 疲労骨折は通常の骨折と違い使いすぎによるもの 疲労骨折は運動などで体を使いすぎたことによって生じるケガです。病名には「骨折」とありますが、通常の骨折とは発症のメカニズムが異なります。 通常の骨折は転倒などの衝撃によって骨が折れるのに対し、疲労骨折は走った際の衝撃や筋肉が引っ張る力が繰り返し同じカ所に加わることで生じるケガです。 そのため、疲労骨折を治すためにはケガしたカ所への負担を減らし、安静にすることが大切といえます。もし疲労骨折と診断されたら、治るまでは運動を中止しましょう。 ちなみに以下の記事では脛(すね)の使いすぎによって生じるシンスプリントについて解説しています。疲労骨折でお悩みの方はぜひご覧ください。 【自然治癒】疲労骨折を早く治す3つの方法! 疲労骨折を早く治す方法として、以下3つが挙げられます。 6〜8週間は安静にし、休息時間を取る 自然治癒を促進する栄養を摂取する 整形外科を受診し、運動療法や物理療法などのリハビリを受ける 疲労骨折で早く自然治癒させるためには、一旦運動せずに体を休めて安静期間を作りましょう。安静が必要な期間は疲労骨折の重症度によって変わり、症状が重たい場合にはより長く安静にする必要があります。 ここからは、自然治癒を早めるために大切な方法を3つご紹介します。本章を参考に、正しい疲労骨折のセルフケアを実施しましょう。 6〜8週間は安静にし、休息時間を取る 疲労骨折には6〜8週間の安静と休息時間が必要といわれています。ただし、骨折の部位や重症度によって、治癒に必要な期間は異なるので、まずは整形外科で検査を受けることをおすすめします。医師に疲労骨折の程度を確認してもらい、適切な指示を受けましょう。 疲労骨折のタイプと治癒の目安期間は以下のとおりです。 骨折のタイプ 治療期間の目安 脛骨(シンスプリント) 4~8週間 中足骨 6~8週間 大腿骨頸部 8~12週間 腰椎 6~12週間 ただし、これらは一般的な目安であり、治癒期間には個人差があるので注意してください。 また、疲労骨折の自然治癒には、以下の条件が必要といわれています。 十分な安静と休息 患部への負荷の回避 適切な栄養摂取 これらの条件を守れば、疲労骨折の自然治癒を早められる可能性があります。疲労骨折で悩んでいる方は、ぜひ実践してみてください。 自然治癒を促進する栄養を摂取する 自然治癒を促進するためには、適切な栄養摂取が重要です。以下の栄養素は、疲労骨折の自然治癒を早めてくれる可能性がある、おすすめの食材です。 栄養素 食べ物 カルシウム 乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなど) 小魚(しらす、小あじなど) 大豆製品(豆腐、納豆など) 緑黄色野菜(小松菜、ブロッコリーなど) ビタミンD 魚(鮭、さんま、いわしなど) きのこ類(しいたけ、まいたけなど) 卵黄 タンパク質 肉類(鶏肉、豚肉、牛肉など) 魚介類(鮭、まぐろ、えびなど) 大豆製品(豆腐、納豆、油揚げなど) 卵 乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなど) 上記の食材を食事にバランス良く取り入れ、疲労骨折の回復効果を高めましょう。 整形外科を受診し、運動療法や物理療法などのリハビリを受ける 疲労骨折の回復を早めるためには、整形外科を受診し、運動療法や物理療法など適切なリハビリを受けることをおすすめします。リハビリは自己判断で行わず、必ず医師の許可を得てから開始し、理学療法士の指導のもとで段階的に進めましょう。 疲労骨折時のリハビリの種類は以下のとおりです。 種類 目的 具体的な方法(例) 注意点 段階的な運動負荷 徐々に運動量を増やしていく 低強度から開始し、耐久性をつける 痛みに注意しながら、負荷を徐々に上げる 骨折部位に過度な負荷をかけないよう、医師の指示に従う 全身的な筋力トレーニング 骨折部位周辺および全身の筋力維持・強化 体重負荷や抵抗運動を取り入れる 患部周辺の筋肉だけでなく、全身の主要な筋群をトレーニング コアスタビリティトレーニング(体の中心部の筋肉を鍛える運動)の導入 骨折部位の筋力トレーニングは、完全に治癒するまで控える 関節可動域訓練 関節の柔軟性維持 ストレッチや筋緊張の緩和を促す 患部の関節および全身の主要な関節を動かす運動 骨折部位の関節は、医師の許可があるまで動かさない バランス訓練 再発予防とパフォーマンス向上に有用 片脚立ちや不安定な面(例:バランスボール)での立位保持 動的なバランス運動 プロプリオセプション(体の位置感覚)トレーニング 骨折部位に体重をかけない方法から始める 代償動作の修正 不適切な動作パターンの改善 歩行分析と修正 日常生活動作の評価と指導 骨折部位を保護しながら行う このアプローチにより、骨折部位を適切に保護しつつ、全身のコンディショニングと再発予防に焦点を当てたリハビリが可能となります。常に無理のない範囲で、徐々に活動レベルを上げていくことが大切です。痛みがある場合は必ず中止し、医師に相談してください。 また、リハビリには上記のような運動療法だけでなく電気や超音波を利用した物理療法もおこないます。物理療法では骨への血流促進効果や炎症を抑える作用があり、疲労骨折の治療として有効です。物理療法には以下のようなものがあります。 種類 効果 アイシング 痛みと腫れの緩和に効果的 電気刺激療法 痛みの軽減と筋肉の緊張緩和 超音波療法 骨の治癒を促進する可能性あり 物理療法は疲労骨折による痛みの軽減や骨の自然治癒促進に働く可能性があります。効果には個人差がありますが、疲労骨折を早く自然治癒したい方は積極的に取り入れてみてください。 【再発に注意】疲労骨折後に運動復帰する2つの目安 疲労骨折から運動を再開するときに注意すべきなのは疲労骨折の再発です。 疲労骨折の治療中、安静にしていた体は想像以上に筋力・体力が衰えている可能性があります。そのため、運動復帰時の強度に注意が必要です。 これからご紹介する2つの目安を参考に運動を再開し無理をしないように心がけてください。それでも判断に迷う場合には、必ず医師の判断を仰いでから運動を再開しましょう。 なお、当院リペアセルクリニックでおこなっている再生医療は疲労骨折にも効果が期待できます。興味がある方はメール相談もしくはオンラインカウンセリングでお気軽にご相談ください。 骨折部位を押したり叩いたりして痛みがない 骨折部位を押したり叩いたりして痛みがない場合、運動を再開できる目安といえます。 疲労骨折時は、骨折部位を押したり叩いたりすると痛みを感じることが多くあります。 痛みがなければ疲労骨折が治癒している可能性があるため、少しずつ運動を再開しても良いでしょう。 逆に押したり叩いたりしたときに少しでも痛みを感じるようであれば、無理せず安静にすることをおすすめします。 運動動作をしてみて痛みがない ジョギングなどの軽い運動動作をしてみて痛みがない場合も、運動再開の目安です。 運動再開時は疲労骨折する前と同じ運動量ではなく、負荷をかけすぎないように注意してください。走るときもまずはジョギング程度から開始し、時間・距離を短くして軽く走ると良いでしょう。 安静期間が長いほど体は衰えている可能性が高いため、急に激しく動かすと疲労骨折の再発の原因になりかねません。 軽めのジョギング程度から開始し、徐々に時間・距離を伸ばして体を運動に慣らしましょう。 また、疲労骨折の再発を予防するためのポイントは次項で詳しく紹介しています。疲労骨折後に運動復帰する上で大切なことなので、ぜひチェックしてみてください。 疲労骨折を予防する2つのポイント 疲労骨折を予防するためにはトレーニング方法の見直しとライフスタイルの調整が重要です。ここから疲労骨折を予防するためのポイントを2つご紹介しますので、ぜひ実践してみてください。 トレーニングは自分に合った方法と負荷で行う 疲労骨折を予防するためには、自分に合った方法・負荷で行うことが大切です。トレーニングでは、以下4つのポイントを抑えておきましょう。 トレーニングのポイント 詳細 段階的にトレーニング量を増やす 増やす負荷は「週10%以下」が目安 たとえば10kg→11kg程度で、1週間の間でそれ以上は上げない 十分なウォームアップとクールダウンを行う ウォーミングアップは運動をするための準備が整い、怪我を予防できる クールダウンは疲労回復効果があり、疲労骨折を予防できる 適切な休養日を設ける 体を休めることで、使いすぎによる疲労骨折を予防できる 具体的に、週1回以上の休息がおすすめ クロストレーニングを取り入れる 全身を使う水泳などのクロストレーニングは一部位への負担を軽減し、疲労骨折の予防につながる 急激に大きな負荷をかけたり、休まず動かし続けたりすると、疲労骨折のリスクが高くなります。 トレーニングの負荷は段階的に増やすよう意識し、週1回以上は身体を休めるようにしましょう。 規則正しいライフスタイルで骨を休ませる 疲労骨折を予防するには、十分な休息で骨を休ませる規則正しいライフスタイルが重要です。以下のようなライフスタイルの調整が役立ちます。 ライフスタイルの調整 具体的な方法 バランスの取れた食事 カルシウム豊富な食品(乳製品、小魚、大豆製品、緑黄色野菜など)を摂取する ビタミンD含有食品(鮭、さんま、きのこ類、卵黄など)を取り入れる 適度な日光浴 1日15~30分程度、日中の太陽光を浴びる 禁煙 ニコチン代替療法(ニコチンパッチ、ガムなど)を活用する 禁煙外来や禁煙プログラムに参加する 禁煙に理解のある友人や家族に協力を求める 過度なアルコール摂取の制限 1日の飲酒量を、男性は20g、女性は10g未満に抑える アルコールを含まない飲み物を積極的に摂取する アルコールの代わりにストレス解消法を見つける 疲労骨折の予防には、適切な栄養摂取が欠かせません。 また、意識的に太陽の光を浴びたり、喫煙や過度な飲酒を避けたりすることも、疲労骨折の予防につながります。 定期的な骨密度検査を受け、骨の健康状態をチェックすることも大切です。疲労骨折の予防や早期発見のためにも、整形外科にて定期的な骨密度検査や診察を受けておくと安心です。 まとめ|疲労骨折を早く自然治癒させるためには安静が重要! 疲労骨折は身体の使い過ぎによって起こるケガであり、自然治癒するケースが多くあります。疲労骨折を早く自然治癒させるためには、しっかりと安静にすることが大切です。 また、自然治癒を早めてくれる栄養の摂取や、運動復帰後のトレーニングの進め方も大切です。この記事で紹介したことを実践し、疲労骨折の予防や再発防止に努めましょう。 ちなみに当院リペアセルクリニックでおこなっている再生医療は、疲労骨折をはじめとするスポーツ障害の治療にも有効です。気になる方はメール相談もしくはオンラインカウンセリングでお気軽にご相談ください。 この記事が少しでも役に立てば光栄です。 \まずは当院にお問い合わせください/ 疲労骨折についてよくある質問 疲労骨折は自然治癒しますか? 疲労骨折は自然治癒するケガです。安静にし、骨折部位に負担をかけなければ自然治癒していくでしょう。しっかりと栄養を摂り、運動療法や物理療法を併用すればより早く自然治癒する可能性もあります。 疲労骨折で多い部位はどこですか? 足の中足骨や膝・肋骨・腰椎・脛に多く発症します。 これらの部位はあらゆるスポーツでよく使われる骨です。とくに長い距離を走ったり、体を捻ったりするスポーツ選手は注意が必要なため、疲労がたまらないようケアを心がけてください。
2024.09.06 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
甲状腺を半分摘出手術の予定があり「手術したら後遺症は出るのだろうか」と不安に感じている人もいるかもしれません。 実際、甲状腺を半分摘出する手術のあと、声かれやホルモンバランスの乱れ、体調不良といった症状が現れるケースがあります。 この記事では、甲状腺半分摘出で起こりうる後遺症や合併症、具体的な対処法をわかりやすく解説していきます。 本記事で適切な知識と対処法を知ることで、甲状腺の手術の不安が少しでも和らげられれば幸いです。 また、当院「リペアセルクリニック」では、後遺症治療として、再生医療を行っております。 後遺症リスクが不安な方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 甲状腺の半分摘出したときに現れる主な後遺症 甲状腺を半分摘出する手術を受けた後、声や体調に変化を感じる方がいます。 これは手術が声帯やホルモン分泌、カルシウム吸収に影響を与えるためです。 術後の起こりうる主な後遺症は以下のとおりです。 声がかすれるなどの声帯への影響 ホルモンバランスの乱れ カルシウム不足が引き起こす体調不良 手術による傷跡の痛みや違和感 ここでは、手術後に起こりやすい後遺症について、わかりやすく説明します。 声がかすれるなどの声帯への影響 甲状腺の近くには、声帯を動かすための神経(反回神経)が通っています。 手術でこの神経が傷つくと、声がかすれたり、出にくくなったりする場合があります。 これは「反回神経麻痺」と呼ばれる後遺症です。(文献1) 程度には個人差があり、一時的なものから長引くものまでさまざまです。 また、声が低くなる、話し続けると疲れるなどの症状も後遺症として挙げられます。 ホルモンバランスの乱れ 甲状腺は、体の代謝を調整するホルモンを分泌する臓器です。 半分摘出すると、ホルモンの分泌量が減少しホルモンバランスが乱れるケースがあります。 女性の場合は、月経不順や更年期障害のような症状が現れることもあるでしょう。 また、甲状腺ホルモンが不足すると、全身の倦怠感やむくみ、体重増加などが起こる可能性もあります。 カルシウム不足が引き起こす体調不良 甲状腺の裏側には、カルシウムのバランスを調整する副甲状腺があります。 手術で副甲状腺が傷つくと、カルシウム不足に陥り、手足のしびれや筋肉のけいれんが起こる場合があります。 また、長期的には骨がもろくなるなどのリスクも考えられますので、日常的にカルシウムを含む食品を意識して摂取するのも大切です。 手術による傷跡の痛みや違和感 甲状腺の手術では、首元に切開を行うため傷跡が残ります。 傷跡は時間の経過とともに薄くなっていきますが、体質によっては、赤く盛り上がったり、痛みやかゆみを感じたりするケースもあるでしょう。 また、傷跡が気になって首元を隠す服装ばかりになってしまうなど、精神的なストレスを感じる可能性もあります。 甲状腺摘出で起こりやすい合併症・後遺症 甲状腺の摘出手術は、以下のような術後に特有の合併症や後遺症が発生する可能性があります。 反回神経麻痺 甲状腺機能低下症 副甲状腺機能低下症 乳糜漏(にゅうびろう) ここでは、4つの合併症や後遺症について、手術後に起こりやすい主な症状と特徴を詳しく説明します。 反回神経麻痺 反回神経は甲状腺の裏側を通り、声帯を動かす筋肉を支配する重要な神経です。 左右に1本ずつ存在し、片側が損傷すると声帯が動きにくくなり、声がかすれる反回神経麻痺が生じます。 手術中のわずかな刺激でも麻痺を引き起こす可能性があり、多くは半年以内に改善しますが、まれに永続的に残る場合もあります。 また、左右両方の反回神経が損傷した場合、声を出せないだけでなく呼吸困難に陥り、命に関わる危険性があるため、迅速な対応が必要です。 反回神経麻痺の治療法 反回神経麻痺によるかすれ声が改善しない場合は、声帯に対する手術で症状を和らげる方法があります。 また、両側の反回神経麻痺で呼吸が困難な場合には、喉仏の下に空気の通り道を作る気管切開が必要になる場合もあります。 甲状腺機能低下症 甲状腺がんの手術では、甲状腺を摘出する必要があります。 とくに半分以上を摘出すると、甲状腺ホルモンの分泌が低下する可能性があります。 また、ホルモンが不足すると代謝バランスが乱れ、体調を崩しやすくなるのが特徴です。 この状態を甲状腺機能低下症と呼びます。 甲状腺機能低下症の治療法 治療には甲状腺ホルモン剤の内服が必要です。 この薬で不足したホルモンを補充しますが、基本的に生涯にわたって服用を続ける必要があります。 副甲状腺機能低下症 副甲状腺は甲状腺の裏にくっついており、左右2個ずつ存在する臓器です。 非常に小さな臓器ですが、副甲状腺ホルモンという物質を分泌して血液中のカルシウムやリン濃度を調節する働きがあります。 甲状腺がんの手術で甲状腺を摘出する際に副甲状腺も一緒に摘出されたり、副甲状腺を栄養する血流の低下などにより、術後に副甲状腺機能低下症を起こす可能性があります。 副甲状腺機能低下によって副甲状腺ホルモンが不足すると、血液中のカルシウム濃度が低下し、手や口のしびれやけいれんを引き起こすテタニーと呼ばれる症状が生じる可能性があります。 副甲状腺機能低下症の治療法 治療には、カルシウム製剤の内服と、カルシウム吸収を助けるビタミンDの補充が行われます。 副甲状腺をすべて摘出した場合は、生涯にわたり服用が必要です。 一方、副甲状腺が一部でも残されている場合、機能が回復し補充が不要になるケースも少なくありません。 乳糜漏(にゅうびろう) 乳糜漏(にゅうびろう)は、リンパ液が漏れ出す稀な合併症です。 手術後に首元の腫れや液体が滲み出るような症状が見られる場合に疑われます。 発症すると治療が必要となるため、早期の診断が重要です。 乳糜漏の治療法 多くの場合は安静や圧迫によりリンパ液の漏出を止められますが、まれに再手術が必要となり、漏れている箇所を閉じる処置を行うケースもあります。 \まずは当院にお問い合わせください/ 甲状腺半分摘出後の後遺症を和らげるには? 甲状腺の半分を摘出した後、後遺症の発生や生活の変化に不安を感じる方は少なくありません。 しかし、適切なケアを行えば症状を和らげ、生活の質を保つことができます。 本章では、後遺症を軽減するための具体的な方法を4つ紹介します。 医師の指示に従い薬物療法やリハビリを行う 規則正しい生活を送りバランスの取れた食事を心がける ストレスを溜めないように適度な運動や休息を取る 術後後遺症に対する再生医療を検討 術後の不安解消のためにも、チェックしておきましょう。 医師の指示に従い薬物療法やリハビリを行う 手術後、甲状腺ホルモンの不足や声の変化が現れる場合があります。 これらの症状に対処するためには、医師が処方する薬を服用したり、音声リハビリなどが効果的です。 とくにホルモン補充療法は、甲状腺ホルモンのバランスを維持するために重要です。 医師の指導に従い治療を継続していけば症状が改善する可能性が高まります。 規則正しい生活を送りバランスの取れた食事を心がける ホルモンバランスを整えるためには、生活習慣の見直しが必要です。 栄養バランスの良い食事を意識し、カルシウムやビタミンDを多く含む食品を取り入れるのがおすすめです。 また、十分な睡眠を確保し、生活リズムを整えると体調の安定が期待できます。 健康的な生活習慣が後遺症の軽減に役立つでしょう。 ストレスを溜めないように適度な運動や休息を取る 術後のストレスは体調を悪化させる要因となるため、適度な運動やリラクゼーションが重要です。 たとえば、軽いウォーキングやヨガなど、無理のない範囲で体を動かしていると、ストレスの軽減が期待できます。 さらに、心の健康を保つためには、休息やリフレッシュの時間を積極的に取り入れていくのも効果的です。 術後後遺症に対する再生医療を検討 近年、術後の後遺症治療の選択肢として注目されているのが「再生医療」です。 たとえば、損傷した声帯や甲状腺組織の再生を促す治療法が研究されています。 再生医療はまだ一般的ではありませんが、興味のある方は医療機関や専門医に相談して治療法を検討してみるのも良いでしょう。 まとめ|甲状腺摘出後の後遺症と対策は理解しておこう! 甲状腺の半分を摘出すると、声の変化や体調の変化といった後遺症が起こる可能性があります。 ただし、適切な治療や生活習慣の見直しによって症状を和らげられます。 本記事で紹介した対策を活用し、不安を減らしながら術後の生活を前向きに過ごしていきましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では術後の後遺症に対して再生医療を行っております。 新しい治療法に興味がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 甲状腺を半分摘出した際の後遺症に関する質問 甲状腺摘出後に疲れやすいのはなぜですか? 甲状腺摘出後に疲れやすくなる理由は、甲状腺ホルモンの不足が関係しています。 分泌量が減るとエネルギーの生産が低下し、倦怠感や疲労感を感じやすくなるのです。 しかし、適切なホルモン補充療法を行えば、これらの症状を改善できる可能性がありますので、気になる方は早めに医師に相談してみましょう。 甲状腺手術のデメリットはありますか? 甲状腺手術には、後遺症や合併症が発生するリスクがあります。 具体的には、声がかすれる反回神経麻痺や、ホルモンバランスの乱れ、副甲状腺の機能低下などが挙げられます。 ただし、事前にリスクを把握し、術後のケアをしっかり行えば多くの症状を予防・軽減することが可能です。 また、当院「リペアセルクリニック」では術後の後遺症が気になる方へ、手術や入院の必要がない「再生医療」を提供しています。 まずはお気軽に「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 参考文献 (文献1) 小川真.甲状腺術後嗄声の頻度およびリスク因子と音声改善手術の問題点.日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌2016(33,4) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjsts/33/4/33_224/_html/-char/ja
2024.09.03 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
乳がんと言われたけど、手術の傷って痛いの?」 「乳がん治療後に痛みがあって困っている」 こんなお悩みはありませんか? 乳がんの治療には手術・薬物療法・放射線療法などがあります。主にその広がりや転移により治療法が選択されます。 治療の後遺症で痛みに悩む患者さんは少なくありません。たとえば、術後長期間にわたって慢性的に続く痛みは「乳房切除後疼痛症候群」と呼ばれます。薬物療法による副作用でも痛みが残ることがあります。適切な対応を行わないと日常生活に支障をきたしてしまいます。 「せっかくがんの治療をしたのに、痛くて毎日の生活を楽しめない。」 そんな事態を避けるために、乳がんの治療とその後遺症、特に痛みについて詳しく理解することが大切です。今まさに悩んでいる方、これから治療を受ける上で心配な方は、本記事をご参考にされてください。 後遺症の痛みの治療に行き詰まったら、再生医療も一つの選択肢です。以下で詳しく解説していきます。 この記事を読んで分かること 乳がんのステージ分類と治療方法 乳がん手術後の後遺症の種類 術後後遺症についてよくあるQ&A 後遺症に対する再生医療の可能性 乳がんのステージと治療法 まずはじめに、乳がんのステージ分類と、ステージに合わせた外科手術や化学療法などの治療法について解説していきます。 乳がんのステージ分類について 乳がんはその進行の度合いにより、0期からⅣ期までのステージに分類されます。 ステージを決定するのは、がんの大きさや広がり・リンパ節転移の有無・遠隔転移の有無といった要素です。なお、遠隔転移とは他の臓器への転移のことで、乳がんが転移しやすいのは骨・肝臓・肺・脳などです。 以下に各ステージについて解説します。 <乳がんのステージ分類> 遠隔転移(他の臓器への転移)がない場合 → 0〜Ⅲ期のいずれか 0期 非浸潤がん(乳がんが、発生した場所にとどまっており、広がったり転移を起こしていたりしない状態) Ⅰ期 がんの大きさが2cm以下+リンパ節転移をしていない ⅡA期 がんの大きさが2cm以下+腋窩リンパ節に転移がある(リンパ節は固定されておらず動く) がんの大きさが2cm以上5cm以下+リンパ節転移がない ⅡB がんの大きさが2cm以上5cm以下+腋窩リンパ節に転移がある(リンパ節は固定されておらず動く) がんの大きさが5cm以上+リンパ節転移がない ⅢA期 がんの大きさが5cm以下+腋窩リンパ節に転移がある(リンパ節は固定されているか、リンパ節同士が癒着している) がんの大きさが5cm以下+腋窩リンパ節に転移がない+内胸リンパ節に転移がある がんの大きさが5cm以上+腋窩リンパ節あるいは内胸リンパ節のどちらか一方に転移がある ⅢB期 がんが胸壁に固定されている がんが皮膚に食い込んでいたり、皮膚から出ていたりする 炎症性乳がん(乳房が腫れたり赤くなったりといった炎症を伴う乳がん) ⅢC期 腋窩リンパ節と内胸リンパ節のどちらにも転移がある 鎖骨の上あるいは下のリンパ節に転移している 遠隔転移(他の臓器への転移)がある場合 →Ⅳ期 乳がんの治療について 乳がんの治療は外科的手術・放射線治療・化学療法(薬物治療)の3つを組み合わせて行います。 これから紹介するのはあくまでも標準療法です。実際には患者さんの状態や希望にあわせて臨機応変に治療が行われます。治療を受ける際には、担当の医師としっかり話をした上で治療を選びましょう。 <0期からⅢA期の治療について> 0期からⅢA期の乳がんでは、治療の中心は手術です。 がんのサイズや広がり方で、乳房の切除範囲が異なります。 がんが小さければ乳房部分切除術が可能です。最近では、早期のがんはラジオ波で焼いたり、内視鏡の手術で切除したりという方法も徐々に広まってきています。 一方、大きい場合や広がりが大きい場合は、乳房全切除術を行わなければなりません。リンパ節への転移が疑われれば、その部位のリンパ節も切除します。また、状況に応じて放射線療法を行なったり、手術の前や後に薬物療法を行ったりすることもあります。患者さんのご希望に応じて、乳房再建術を検討します。 <ⅢB期からⅣ期の治療について> ⅢB期からⅣ期の場合の中心は薬物療法です。患者さんの体の状態や希望・がんの性質など様々な要因を加味して治療薬を選びます。 乳がんの薬物療法で使う薬には一般的な抗がん剤のほか、ホルモン療法薬や分子標的薬と呼ばれる薬もあります。分子標的薬とは、がん細胞に特有の遺伝子・タンパクなどをターゲットにした治療薬のことです。 治療の効果・症状の経過次第で手術や放射線療法が追加されることもあります。 <再発した場合の治療について> 再発した乳がんの場合には、その再発部位により治療法が異なります。 手術を受けた側の乳房やその周囲の皮膚、リンパ節に発生する局所領域の再発では、治癒を目指して手術でがんを切除します。必要に応じて放射線療法や薬物療法を併用します。 手術で切除するのが難しいような局所再発や、他の臓器への遠隔再発では、薬物療法を中心に行います。 <緩和ケアについて> がんの患者さんは緩和ケアを受けることができます。緩和ケアは、がんで苦しんでいる人たちが、できるだけ穏やかに生活できるように助けるためのケアです。 緩和ケア=終末期というイメージがあるかもしれません。しかし、実はがんと診断されてからいつでも緩和ケアを受けることができます。 がんに伴うつらい症状を和らげるだけでなく、気持ちの落ち込みや不安を軽くしたり、生活での困りごとに対処したり、人生の意味についての悩みにも対応します。 患者さんとその家族が抱えるいろいろな苦しみに対して、身体的、精神的、社会的な面から全体的に支援するのが緩和ケアなのです。 乳がん治療後の慢性的な痛み...これって後遺症? どんな治療にも合併症が起こり得ます。ときに、治療後長期間に渡って後遺症に煩わされることもあります。ここからは乳がん治療の合併症とその対処方法について詳しく見ていきましょう。 術後に痛む「乳房切除後疼痛症候群(PMPS)」 乳房切除後疼痛症候群(PMPS)は、乳がんの手術後に乳房、胸部、腋窩、上腕にかけて起こる慢性的な痛みです。 PMPS は、手術で肋間上腕神経などの神経が損傷されることで起こる神経障害性疼痛に分類されます。 PMPS の主な症状は、火傷をした後のようなひりつく痛みやびりびりした痛みです。 痛みとともに、何かが挟まっているような違和感を覚える方も多くいます。下着がすこし擦れただけでも強い痛みを感じるという方もいるのです。 これらの症状は仕事や日常生活に支障をきたしたり、うつ病・適応障害などの精神障害と関与したりする可能性があります。 治療の中心は薬物療法です。一般的な痛み止めはあまり効果がありません。神経の痛みを抑える薬・抗うつ薬・抗けいれん薬などが処方されます。また、痛みで関節や筋肉が動かせなくなり、日常生活に影響が出ている方はリハビリも必要です。心理的な因子や症状の精神面での影響を評価してサポートすることも考慮されます。 乳がんの転移による「骨の痛み」 乳がん治療後の痛みは、ほかにもあります。 乳がんの転移が多い場所の一つは骨です。転移が起こった骨は、骨折をしやすくなります。治療後も、骨折の痛みが残ってしまう可能性があります。 また、抗がん剤治療による副作用も少なくありません。一部の抗がん剤では末梢神経障害を起こします。手や足のびりびりした痛み・しびれが起こると、長期間持続することもあります。 術後の合併症「リンパ浮腫」 術後の合併症で多いリンパ浮腫は通常痛みを伴いません。しかし、急激に腫れたり感染を合併したりすると痛みが起こります。 このように、がんの治療後の痛みは様々です。痛みの原因を探り、対応していく必要があります。 乳がん治療の後遺症についてのQ &A Q:乳がん手術後、ずっと痛みが続きます。いつよくなるのでしょうか? A:乳房切除後疼痛症候群において、症状が改善するまでは長い時間がかかる可能性があります。例えば、国内の報告では、術後9年経過後も21%、およそ5人に1人が痛みを抱えていると言われています。自然に良くなると思わず、早めに受診をすることをご検討ください。 Q:乳がん手術後の痛みを何科に相談したら良いかわかりません。どこに行ったらいいのでしょうか? A:麻酔科やペインクリニックなどで相談すると良いでしょう。お近くにそういった医療機関がない、どこに行ったら良いかわからない場合は、主治医やかかりつけ医に相談することをお勧めします。必要に応じて専門の病院・クリニックなどを紹介してもらうことができます。 まとめ・乳がんの治療と手術後の痛みや後遺症について 乳がんはその進行の度合いにより、治療は手術や薬物療法など多岐にわたります。そのため、後遺症の痛みの原因も様々です。 これから治療を受ける方は、ご自身の治療内容についての説明をよく聞いてどのようなことに気をつけるべきかしっかり理解しましょう。後遺症に悩まされている方は、一人で抱え込まずに主治医に相談してみてください。 後遺症の症状は、適切な治療で痛みが和らぐこともあります。ただし、神経障害性の痛みなど、治りにくいものも少なくありません。 後遺症の痛みの治療に行き詰まったら、再生医療も一つの選択肢です。一般的に神経の障害は治らないとされています。しかし、幹細胞治療とよばれる再生医療では、神経の修復ができるかもしれません。 当院では、幹細胞治療を提供しています。実際に乳がん治療の後遺症の痛みにお困りの方の治療実績もあります。「治療を考えたい」「話を聞きたい」という方は、ぜひお問合せください。 参考文献 小島圭子. Practice of Pain Management 5(3): 164-168, 2014. 国立がん研究センター プレスリリース. 早期乳がんに対するラジオ波焼灼療法による切らない治療が薬事承認・保険適用を取得先進医療制度下で実施した医師主導特定臨床研究の成果を活用. 国立がん研究センター. がん情報サービス. 乳がん 治療. 日本乳癌学会. 乳癌診療ガイドライン 2022年版. 日本乳癌学会. 患者さんのための乳癌診療ガイドライン2023年版.
2024.08.28 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
我が国で3番目に多いがんに当たる「胃がん」ですが、術後はダンピング症候群や下痢、栄養障害、胆石症、骨粗鬆症など様々な後遺症がついてきます。 症状に応じて食事療法や栄養補助食品の使用、手術などで対応しますが、長く続く痛みや長期的ながん予防には再生医療が有効です。 この記事では、胃がんの症状や原因、診断や治療法の他、術後の後遺症の種類や後遺症に対する対処法、また、再生医療の可能性について詳しく解説していきます。 胃がんの症状、原因、診断、治療法 術後の後遺症の種類 術後の後遺症に対する対処法 長く続く術後の痛みに「再生医療」の可能性 胃がんの手術をこれから受ける予定で術後について不安がある方、また術後後遺症でお悩みの方はぜひご参考にされてください。 胃がんについて 胃の内壁に当たる粘膜の細胞ががん化することによって胃がんが発生します。 胃がんの症状 初期は無症状であることが多く、進行すると吐き気や嘔吐、貧血によるふらつき、吐血、腹痛などの症状が現れます。 初期 無症状 進行すると 吐き気や嘔吐 貧血によるふらつき 吐血 腹痛 など このような症状を自覚する場合は、すぐに病院にかかりましょう。 胃がんの原因 胃がんの発生原因として、以下のものが挙げられます。 ヘリコバクター・ピロリ菌感染 高塩分食 喫煙 ストレス アルコール 刺激物 【胃がんの原因に関するQ&A】 Q . 胃がんの罹患者数や死亡率は他のがんと比べてどれくらい多いの? A . 2019年の部位別がん罹患数をみてみると、男性における胃がんは前立腺がん、大腸がんに次いで3番目に多く、女性の胃がんは乳がん、大腸がん、肺がんに次いで4番目に多くなっています。 2022年の部位別がん死亡数をみると、胃がんは肺がん、大腸がんに次いで3番目に多く、男女別に見てみると男性では3番目、女性では5番目に多いという結果でした。 Q . 若年者に多くて進行も早い胃がんの種類があるって本当? A . 胃がんは内視鏡やX線の所見によって、以下のような肉眼的分類に分けられます。 表在型(0型) 腫瘤型(1型) 潰瘍限局型(2型) 潰瘍浸潤型(3型) びまん浸潤型(4型) このうち、びまん浸潤型(4型)にあたるスキルス性胃がんは、胃の壁が硬く、厚くなるタイプの進行胃がんであり、若年者や女性に多い上に腹膜への転移が多くみられます。 胃がんの診断 胃がんの診断には、胃内視鏡検査(胃カメラ)やその際に採取した組織の病理診断、血液検査、CT検査、胃X線検査などを用いて、総合的に判断します。 胃がんの治療法 胃がんの治療法には、内視鏡治療や外科的手術、化学療法、放射線療法があり、がんの進行度(ステージ)に応じて適切なものが選択されます。 これらの治療法のうち、外科的手術によって胃を一部、ないし全て切除することによって「胃切除後症候群」と呼ばれる後遺症が発生します。 後遺症については次の事項で詳しく解説していきます。 胃がんの術後後遺症の種類とその対処法 胃切除後症候群には様々なものがあるため、主なものをそれぞれ説明していきます。また、後遺症ごとに治療法や対処法を紹介していきます。 ①ダンピング症候群 胃を切除すると、当然食べ物を貯留できる容積が減り、それとともに胃酸の分泌が減ります。結果的に通常よりも濃度の濃い食べ物が急速に腸内へ流れ込み、これがダンピング症候群を発生させます。 食後すぐに現れる動悸や立ちくらみ、めまい、悪心、発汗を早期ダンピング症候群と呼び、食後2~3時間後に現れる疲労感や発汗、動悸、立ちくらみ、めまい、失神、手指の震えなどを後期ダンピング症候群と呼びます。 ダンビング症候群に有効な対処法は? 多くの食べ物が一気に腸管へ流れるのを阻止するために、食事の摂り方を以下のように工夫することが必要です。 1時間以上かけて少しずつゆっくり食事を取る 1回の食事量を少なくする代わりに食事回数を1日5~6回に増やす よく噛んでから飲み込む 食事中の水分摂取を減らす ②貧血 胃酸の分泌が減ることで胃からの鉄の吸収が阻害され、胃の切除から数ヶ月で鉄欠乏性貧血に陥ります。さらに数年経つと、ビタミンB12の吸収に必要な胃壁細胞からの内因子が減り、ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血が起こります。 貧血に有効な対処法は? 鉄剤の経口投与やビタミンB12の注射などによって不足している栄養分を補います。 ③消化・吸収不良(体重減少) 胃酸の減少やそれによる消化酵素活性の低下、そして手術の際の迷走神経切除による消化管運動の低下は、消化・吸収不良を引き起こし、体重減少にもつながります。 消化・吸収不良(体重減少)に有効な対処法は? 栄養分を補おうとたくさん食べようとするとダンピング症候群を悪化させてしまうため、栄養士や医師へ相談しながら時間をかけて徐々に食事量を安定させていきましょう。少ない量で栄養を多く摂り入れたい場合、栄養補助食品を利用するのもよいでしょう。 ④骨粗鬆症(骨粗しょう症) 胃の切除によって胃酸の減少や腸内細菌叢の変化が起こり、結果としてカルシウムの吸収が悪くなり、骨が脆弱化します。 骨粗鬆症に有効な対処法は? 骨密度を上げる薬剤やカルシウム剤、ビタミンD製剤の薬物療法が有効です。 ⑤胆石症・胆嚢炎 胃切除後は胆嚢の動きが悪くなるため、胆石を生じやすくなります。胃切除後の患者さんのうち、2~3割程度と結構な頻度でみられます。 胆石症・胆嚢炎に有効な対処法は? 胆石があっても無症状であれば経過観察でよいですが、胆嚢炎や胆石発作を起こした場合には治療が必要です。根本的治療は外科的な胆嚢摘出術となり、医療施設によっては胃切除術の際に予防的に胆嚢摘出術も一緒に行うこともあります。 長く続く術後の痛みに再生医療が効果的?! 胃がんのみならず、体に切開を入れる外科的手術において、術後時間が経っても傷跡が痛む、またその周囲のしびれを自覚することがあります。3ヶ月以上継続する場合、遷延性術後痛である可能性があり、注意が必要です。 原因は複雑で、手術による神経障害に精神的・心理的因子や遺伝的素因、環境・社会的因子も絡み合い、検査をしてもわからないので原因不明とされてしまうこともあります。従来の治療では末梢神経の回復は難しいとされていましたが、再生医療ならば回復の可能性があります。 再生医療は、失われた身体の組織を再生する能力、つまり自然治癒力を利用した最先端医療です。当院で行う再生医療は“自己脂肪由来幹細胞治療”というもので、患者さんから採取した幹細胞を培養して増殖し、その後身体に戻します。 ちなみに幹細胞とは、さまざまな姿に変化できる細胞で、失われた細胞を再度生み出して補充する機能を持つ細胞のことをいいます。自分自身の細胞から作り出したものを用いるため、アレルギーや免疫拒絶反応がなく、安全な治療法といえます。 長期の痛みは身体的にも精神的にも患者さんを蝕み、鬱(うつ)に近い状態になる方もいます。痛みやしびれが改善するとできることが増え、活発になることで精神的・社会的にも患者さんの満足度が上がります。 ▼実際に当院では、乳がん術後の化学療法で末梢神経が障害され、長い間足のしびれと原因不明の胃腸症状・倦怠感に悩まされていた患者さんが、幹細胞治療によって改善した症例を経験しています。 手術や化学療法による末梢神経障害に悩まれている方は、ぜひ当院の再生医療に関するホームページをご覧ください。 追記:がんを予防できる免疫細胞療法ってなに? 再生医療には様々な種類がありますが、その中のNK(ナチュラルキラー)細胞免疫療法はがんの予防に有効とされています。自己の血液中にある免疫細胞の一種、NK細胞と呼ばれるものを血液から採取し、培養後に点滴でまた体内に戻す治療です。手術や化学療法、放射線療法と併用することでがんの予防をより強固にできるでしょう。 気になる方は当院の免疫療法に関するホームページをご覧ください。 まとめ・胃がんの術後後遺症の種類と対処法を徹底解説 胃がんの初期は無症状のため、腹痛や嘔吐などの症状が出た時には手術が必要な状態になっていることも少なくありません。しかし、胃を切除すると、胃切除後症候群と呼ばれる後遺症を生じます。 ダンピング症候群や消化・吸収不良、貧血など様々な症状を呈し、不足する栄養素の投与や食事の摂り方を工夫することで改善を目指します。 これらの後遺症とは別に傷口が長く痛む遷延性術後痛を生じることもあり、手術による末梢神経障害や精神的因子などが複雑に絡み合う病態です。 再生医療は、末梢神経障害を根本的に治療できる手立てとして注目されており、今後ますます普及していくことが予想されます。 気になる方はぜひ一度当院へご相談ください。 参考文献一覧 公益財団法人 日本対がん協会 ホームページ 伊東久勝, ほか. 「遷延性術後痛の対策」日本ペインクリニック学会誌Vol.25, No.4, 2018.
2024.08.22 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
大腸がんは日本で頻度の多いがんの1つです。部位別のがんの罹患数では、男性で肺がんに次ぐ2位、女性で乳がんに次ぐ2位となっています。 また死亡者数も男性で3番目、女性で最も多いがんとなっています。 この記事では、大腸がんの概要や治療法について解説していきます。また、大腸がんの術後の合併症・後遺症についても特に詳しく解説しながら、その治療法や対処法にも触れています。後遺症に対する再生医療の可能性についても紹介しています。 大腸がんの概要や治療法 大腸がんの術後の合併症と後遺症 大腸がんの治療法や対処法 後遺症に対する再生医療の可能性 ぜひ最後までお読みいただければと思います。 大腸がんとは 大腸がんは、大腸(結腸および直腸)に発生する悪性腫瘍です。大腸がんは生活習慣との関わりが深く、特に食生活の欧米化が関与していると言われており、日本でもその発症率が増加しています。 大腸がんの発症は多くの場合、腺腫と呼ばれる良性のポリープから始まり、これが数年かけて悪性化することでがんが発生します。早期発見・早期治療が極めて重要であり、定期的な検査が推奨されます。 大腸がんの病期(ステージ) 大腸がんの病期(ステージ)は、がんの進行度を示すもので、治療方針を決定する上で非常に大切です。大腸がんの病期は、大きく分けて以下のように分類されます。 0期:がんが大腸の粘膜層に留まっている状態で、最も早期の段階 Ⅰ期:がんが大腸の固有筋層に留まっているもの Ⅱ期:がんが固有層を超えて浸潤しているもの Ⅲ期:がんのリンパ節転移を認めるもの Ⅳ期:がんの他 臓器への転移を認めるもの 実際にはがんの深達度をさらに細かく分類し、それによりⅡ期以降はⅡa、Ⅱb、Ⅱc、Ⅲa、Ⅲb、Ⅲc、Ⅳa、Ⅳb、Ⅳcに分けられています。 大腸がんの病期に応じた治療法の選択 大腸がんには様々な治療法がありますが、主には病期によってその選択が異なります。 0期からⅠ期 0期からⅠ期の浸潤が軽度のものであれば、内視鏡治療が選択されます。これは内視鏡を用いて、大腸がんを腸管の内側から切除する方法であり、早期の大腸がんにのみ適応可能な治療法です。 Ⅰ期〜Ⅲ期 Ⅰ期〜Ⅲ期、すなわちがんの深達度が深くて内視鏡では取り切れないようなもの、リンパ節転移のあるものについては、開腹手術もしくは腹腔鏡手術による切除が検討されます。また、Ⅲ期や再発リスクの高いⅡ期の場合には、術後に抗がん剤による補助化学療法を考慮します。 Ⅳ期 Ⅳ期の場合には、原発巣のがんが切除可能な場合には手術を検討します。一方切除ができない場合には、抗がん剤治療や放射線治療などを組み合わせた治療を検討することになります。 これらはあくまでも標準的な考え方であり、実際には患者さんごとの状態に合わせて具体的な治療法が検討、選択されていきます。 大腸がんの手術治療について ここでは大腸がんの実際の手術治療について、詳しく解説をしていきます。 内視鏡治療 大腸内視鏡を用いて大腸の内側からがんを切除する方法になります。基本的にがんの深達度が浅いものかつリンパ節転移が認めないものに対して選択される方法です。具体的な切除の方法には以下のようなものがあります。 内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー) 大腸がんの中でも、腸管から盛り上がっており、キノコのように茎があるような病変に対して行われる方法です。内視鏡の先端から細い輪っかを形成したワイヤー(スネア)を出し、病変に引っ掛けるようにして茎を切り取ります。 内視鏡的粘膜切除術(EMR) 病変があまり盛り上がっていないかつ、2cm未満の病変に対して行われる方法です。病変の下の粘膜下にまず生理食塩水を注入して、病変自体を盛り上がらせた状態にします。そこにスネアをかけて、周囲の正常な粘膜を含めた状態で切り取ります。 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) EMRで切除が難しい大きな病変に対して行われる方法です。病変の粘膜下に生理食塩水を注入し、浮き上がらせた病変の周りを高周波ナイフで切り取っていきます。 開腹手術 内視鏡での切除が困難な深達度の深いがんや、リンパ節転移を認める場合などに選択されます。大腸がんといっても、肛門に近い直腸のがんなのか、それより遠い結腸のがんなのかで手術方法が異なってきます。 結腸がんの場合 がんの周囲の腸管やリンパ節も含めて切除する必要があります。結腸の場所によってS状結腸切除、横行結腸切除、回盲部切除など様々な術式があります。がんを含む腸管を切除したあとは、きりとった断端の腸管同士をつなぎ合わせたり、つなぎ合わせるのが困難な場合には人工肛門(ストーマ)を作る手術を行う必要があります。 直腸がんの場合 直腸は肛門につながる部分であり、周囲には膀胱、男性の場合には前立腺、女性の場合には子宮・卵巣などの臓器が近くにあり、それらの調節を担う自律神経も存在します。したがってがんの切除に加え、自律神経機能の温存も考えながら手術を行います。 比較的早期の直腸がんであれば、がんとその周囲の組織を切り取る局所切除術を選択します。腸管として切除する必要がある場合には、腸管の切り口を直腸と縫い合わせて再建する必要があり、前方切除術という術式になります。肛門に近い直腸がんの場合には、肛門を一緒に切除する必要があるため、人工肛門(ストーマ)を作ることになります。肛門括約筋を温存できる場合には、括約筋間直腸切除術(ISR)という方法で、人工肛門を避けることができる場合がありますが、再発率が高くなったり、排便しにくくなるといったことも報告されています。 腹腔鏡手術・ロボット支援手術 腹腔鏡手術は、数カ所の小さな傷からお腹の中に腹腔鏡というカメラを挿入し、モニターを見ながら手術する方法です。開腹手術に比べて傷が少なく、患者さん自身への体への負担が少ないことがメリットです。また、同じような形で、ロボットアームを用いて手術するロボット支援手術という方法もあります。いずれの場合でも技術的に熟練を要するため行える施設は限られていますが、近年増えてきている手術法です。 大腸がんの手術の合併症とその対処法 大腸がんの手術には、いくつかの合併症が発生する可能性があります。以下に主な合併症とその対処法を紹介します。 感染症 手術部位の感染症は、どの手術でも起こり得るリスクです。大腸がんの手術の場合には腹部の傷からの感染や、腹腔内の感染などが考えられます。対処法として、感染を防ぐために必ず手術前後に抗生物質の投与を行います。しかしそれでも感染が起こってしまうことがあり、その場合には抗生物質の投与を継続したり、感染に対して外科的治療(洗浄、ドレナージなど)が考慮されることもあります。 排便障害 手術の影響で腸の動きが不規則になり、下痢や便秘になったりすることがあります。また、肛門括約筋が影響する部分に関わるような直腸がんの手術ですと、便意を感じにくくなったり、便を出しにくくなったりすることがあります。整腸剤や便を柔らかくする下剤などを組み合わせて、排便のコントロールを促していきます。 腸閉塞(イレウス) 術後の影響で腸管がくっついてねじれて しまったり、腸の動きがわるくなってしまうことで排泄物の通りが悪くなってしまった状態です。これを防ぐためには、術後早期に歩行を始めることや、腸の動きを促す薬の使用が有効です。手術から年単位で時間が経過してからも起こる可能性があります。ねじれによる腸閉塞が発生して腸管の血流が悪くなってしまった場合には絞扼性イレウスという重篤な病態となり、緊急手術が必要となることもあります。 縫合不全 腸を縫合した部分がうまくつながらず、腹腔内に腸液や排泄物が漏れてしまうことがあります。これが縫合不全という状態です。放置すると腹膜炎をきたして重篤になってしまう可能性もあるため、再手術が必要となります。 排尿障害 大腸がんの手術の中でも、特に直腸がんの手術では、排尿を調節する自律神経に影響を及ぼしてしまうことがあり、術後に尿意が感じにくくなったり、残尿感が残ったりなどの症状が残る場合があります。多くの場合、内服薬で改善が得られますが、場合によっては尿が自力では全く出せなくなってしまう状態(尿閉)になってしまい、尿道に細い管を通して排尿させる処置(導尿)が必要となる場合もあります。 性機能障害 特に直腸がんの手術では、直腸周囲の自律神経へ影響を及ぼす可能性があります。この自律神経は性機能に関係するものもあり、男性では術後に勃起不全(ED)や射精障害をきたしたり、女性では性交渉の際に痛みを感じたりなどの影響をきたすことがあります。服薬による治療の選択肢がありますが、自律神経自体にダメージある場合には効果が限定的ともいわれています。 大腸がんの治療後の後遺症について 術後の合併症の中でも、特に自律神経にかかわる合併症である排尿障害や性機能障害は、なかなか改善が得られず後遺症として残ってしまうこともあります。特に性機能障害は、デリケートな問題であるためなかなか相談ができず、お一人で悩まれたままにしてしまっているケースも多いと考えられます。非常に重要な問題ですので、現在そういった後遺症に悩まれている方は、まずは担当医や泌尿器科などにぜひ相談をしてみてください。 大腸がん治療後の後遺症に対する再生医療の可能性について 大腸がんの手術後の後遺症に対する治療法として、再生医療の可能性についてお話します。 再生医療とは、「幹細胞」と呼ばれる様々な細胞に分化することができる細胞を活用して行う治療です。幹細胞を培養して増やし、それを点滴や患部に直接注射することで損傷した組織の修復や再生を促すことを狙いとする治療法で、現在その効果が期待されています。中でも、術後の神経損傷に対する再生医療が注目されており、大腸がんの手術後の合併症・後遺症である自律神経障害による排尿障害、性機能障害への改善効果が期待されています。 当院は国内では数少ない再生医療を提供できる施設の1つです。患者さん自身の脂肪から幹細胞を採取、培養し、点滴する「自己脂肪由来幹細胞治療」を行っています。自分自身の細胞を用いるため、拒絶反応やアレルギーを生じにくく、安全性が高い方法です。 大腸がんについてよくある質問と回答 Q:人工肛門(ストーマ)を造設することになりました。管理していくのが不安です。臭わないかなども気になります。詳しく教えて下さい。 A:人工肛門(ストーマ)は腸管をお腹から出して、そこから排泄させるようにつくるものです。手術によって、一時的にストーマを作って後ほど閉鎖することもあれば、生涯ストーマとなることもあります。ストーマは肛門のように括約筋がないため、排泄物をためたりすることができず、ストーマの周囲をパウチで覆ってそこに便を溜め、溜まったら処理して新しいパウチに交換します。最初は大変と感じるかもしれませんが、徐々に管理に慣れていくと思います。臭いについてもパウチでしっかりと覆われていれば大丈夫です。ストーマにあったサイズのパウチを選択することが重要です。 出典:Colon cancer - Diagnosis and treatment - Mayo Clinic Q:大腸がんの手術後に気をつけることはありますか? A:まずは排便習慣の変化に注意が必要です。便秘や下痢などが起こりやすくなっている可能性がありますので、まずは自身の排便習慣をチェックして、主治医に相談してみるのが良いかと思います。 排便に関わることとして、食事は術後はなるべく消化の良いものを摂ることが重要です。食物繊維が多い食べ物などは腸の動きを滞らせる原因になりうるため、避けたほうがよいです。また、ガスが出やすい炭酸飲料や、刺激の強い辛い食べ物なども控えたほうが良いでしょう。手術1−2ヶ月程度で腸管の動きが戻ってきますので、経過をみて食事内容についても医師と相談されてみるとよいかと思います。 まとめ・大腸がんの治療法やその合併症、後遺症について 今回は大腸がんについて、その概要と治療の柱である手術について、またその合併症や後遺症についても詳しく解説していきました。 また、直腸がんの術後に起こり得る後遺症である排尿障害や性機能障害について、それらに対する再生医療の可能性も含めて紹介をさせていただいています。これから大腸がんの治療を受けられる方や、実際に治療を受けて後遺症に悩まれている方も多くいらっしゃるかと思います。そういった方々にとって、今回の記事が有益な情報源となれれば幸いです。 参考文献 大腸:[国立がん研究センター がん統計] 大腸がん(結腸がん・直腸がん):[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] Colon Cancer Treatment – NCI Colon cancer - Diagnosis and treatment - Mayo Clinic
2024.08.19 -
- 手部、その他疾患
- 手部
手首にできるしこりの一種である「ガングリオン」は良性の腫瘍です。ただ、場合によっては痛みや動かしにくさのほか、見た目が悪くなるといった問題が起こることもあります。 治療法を調べると手術に関する情報が見つかりますが、「手術をしても大丈夫なのか?」「後遺症が出ることはないのか」といった不安を感じる人も多いでしょう。 実際、ガングリオンの手術は局所麻酔で行うため日帰りで受けられます。切開も小さく済むため、身体への負担やリスクが少ない手術といえるでしょう。ただし、ガングリオンが再発する可能性はゼロではありません。 本記事ではガングリオンの詳しい手術法や再発予防などを解説します。ガングリオンの治療で手術を検討している人は、ぜひ最後までチェックしてください。 ガングリオンの手術内容【日帰り可】 ガングリオンとは、関節の周りにできる「こぶのように膨らんだ良性の腫瘍」です。 関節の中で関節を包む膜(関節包)や筋肉の腱を覆う組織(腱鞘)から関節液が漏れ出し、袋の中でゼリー状に固まることで発生すると考えられています。 治療で手術をおこなう場合、日帰り手術で済むのが一般的です。本章ではガングリオンの手術について詳しく解説していきます。 また、ガングリオンの詳細や悪性腫瘍との見分け方は以下の記事で解説しているため、ぜひご覧ください。 ガングリオンの手術は局所麻酔でおこなう ガングリオンの手術は、局所麻酔を行い、関節や腱を包む膜についているガングリオンを袋ごと取り除きます。 基本的には日帰りが可能ですが、関節の奥深くにガングリオンができている場合は身体への負担が大きくなるため、1~2日の入院が必要なケースもあります。 手術はガングリオンの周囲を切開しを直接取り除く「切開法」と、関節液が漏れ出ている茎を破壊する「鏡視下手術」の2つが主流です。鏡視下手術の場合、ガングリオン自体は関節内に残るものの、茎の破壊により関節液の流れが止まるため、ガングリオンも自然に消滅します。 切開法と鏡視下手術では、鏡視下手術の方が比較的傷が小さく済むことが多く、術後の痛みも早く軽減しやすいのが一般的です。 ただし個人差があるため、どちらの手術を受けるかは主治医と相談の上で判断することをおすすめします。 ガングリオンの手術後は2週間程度の固定が必要 手の甲や手の関節にできたガングリオンを切除した場合、切開法・鏡視下手術いずれも術後1~2週間の固定が必要です。 どちらの手術も傷は小さく関節への影響が比較的少ないですが、炎症が起きる可能性があるため、固定して関節への負担を減らす必要があります。 ガングリオンの手術で考えられる2つのリスク ガングリオンの手術には、以下2つのリスクが考えられます。 血管や神経などを傷つける可能性がある 感染の可能性がある リスクについても十分理解した上で、ガングリオンの手術を検討しましょう。 血管や神経などを傷つける可能性がある ガングリオンの手術は、一般的に後遺症などのリスクは比較的低く、複雑ではないものといわれています。しかし、ガングリオンが関節の深い部分にできている場合、除去時に血管や神経を傷つけてしまう可能性はゼロではありません。 万が一手術で血管や神経が傷つくと、痛みやしびれといった後遺症が出る可能性があります。 ちなみに、当院リペアセルクリニックでは損傷した神経や筋肉の治療として再生治療を取り入れています。もし手術の後遺症でお困りの人は、お気軽にメール相談もしくはオンラインカウンセリングからご相談ください。 感染の可能性がある ガングリオンの手術の傷口から、細菌やウイルスが感染し感染症を引き起こす可能性があります。感染症は、ガングリオンの手術に限らず、メスを入れる以上避けられないリスクです。 感染症を引き起こした場合には入院による治療が必要になる可能性があります。そのため、術後は医師の指示に従い、数日間抗生剤を内服したり、傷口を清潔に保つなどのケアが重要です。 ガングリオンの治療には「注射やサポーターなどの保存療法」もある ガングリオンの治療では手術以外にも、注射やサポーターなどの保存療法を行うこともあります。とくに痛みがなく日常生活に支障がない場合には、まずは保存療法が選択されるでしょう。 ガングリオンは良性腫瘍のため、日常生活や見た目の問題がなければ放置しても問題ありません。多くの場合、保存療法を試して効果が見られなかった場合に手術が検討されます。 なお、ガングリオンは手にできることが多い良性腫瘍ですが、足にできることもあります。足にできるガングリオンは目立ちにくいため、痛みがなければ保存療法のみで対処できることが多いでしょう。 足にできるガングリオンについての詳細は以下の記事で詳しく解説しています。気になる人はぜひチェックしてみてください。 ちなみに、当院リペアセルクリニックでおこなっている再生医療は、神経や血管・筋肉の損傷に対して効果的な治療方法です。気になる人はぜひメール相談もしくはオンラインカウンセリングからご相談ください。 ガングリオンが痛むときの対処法【自宅でできる】 ガングリオンが痛む場合、自宅でできる以下2つの対処方法を試してみましょう。 安静にして様子を見る 痛いときにはアイシング 痛みがあるときには無理をせず、安静にしアイシングをすると痛みが落ち着く可能性があります。 なぜこれらの方法が有効なのかは以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひチェックしてください。 ガングリオン再発の予防法2選 ガングリオンは手術後の再発率が高く、再発を確実に予防する方法はありません。しかし、再発のリスクを少なくする対策は可能です。 具体的には、以下2つの方法を試してみましょう。 関節への負担を避ける 関節周囲の筋力や柔軟性を高める ガングリオンの再発に不安がある人は、本章で紹介する予防法を心がけてみましょう。 関節への負担を避ける ガングリオンは関節への負担がかかることで発症する可能性が指摘されています。そのため、日ごろから以下のような行動を心がけ、関節への負担を減らしましょう。 体重をかけたり重い物を持ったりしない 関節に疲れをためないようにする 不適切な姿勢を避ける サポーターや装具を使う たとえば、後ろに手をついて手で体重を支えるような長座位や、涅槃像(ねはんぞう)のように片手で頭を支え横になる姿勢は、手首に負担がかかるため避けたほうが良いでしょう。 また、違和感・痛みを感じた場合は、早めに整形外科を受診し、定期的に関節の状態を確認することも大切です。 関節周囲の筋力や柔軟性を高める ガングリオンは関節への負担によって発症するため、再発予防として普段から関節周りの柔軟性を高めることも大切です。 筋トレやストレッチによって筋肉の質が高くなると、関節を保護する働きが向上し、ガングリオンの再発予防につながります。 とくに運動不足は筋力の低下や姿勢の崩れにつながり、関節への負担をかける原因になるでしょう。 普段から無理のない範囲で運動やストレッチ取り入れて筋力や柔軟性を保ち、ガングリオンの再発予防に努めましょう。 まとめ|ガングリオンの手術は日帰り・局所麻酔で行う!痛みが続く場合は早めに受診しよう ガングリオンは関節への過剰な負担によって発症する良性の腫瘍です。治療には保存療法のほか手術も選択可能で、手術の場合は局所麻酔でおこないます。 手術方法は切開法もしくは関節鏡による鏡視下手術で、どちらのケースでも日帰りが可能です。 ちなみに、当院リペアセルクリニックは神経や血管・筋肉の損傷への再生医療に力を入れているクリニックです。 気になる人は、ぜひメール相談もしくはオンラインカウンセリングからお気軽にご相談ください。 この記事がガングリオンの手術を検討している人のお役に立てれば光栄です。 \まずは当院にお問い合わせください/ ガングリオンについてよくある質問 Q.ガングリオンの手術はどんなことをしますか? ガングリオンを外科的に取り除く切開法とガングリオンの茎を壊す関節鏡があります。 直接取り除く切開法と関節鏡を比較すると、関節鏡の方が早く痛みが引くといわれています。しかしどちらも日帰り手術が可能なので、リスクも低い手術です。 Q.ガングリオンは手術後再発しますか? 再発の可能性が高いといわれています。 ガングリオンは手術方法に関わらず、再発の可能性が高い疾患です。再発の予防には関節周囲の筋力強化や柔軟性向上が重要なので、日頃から筋トレ・ストレッチをおこないましょう。
2024.08.05 -
- 再生治療
- 幹細胞治療
- PRP治療
- 免疫細胞療法
エクソソームとは、体の中にある多くの細胞から分泌される顆粒状の物質です。 近年、アンチエイジングなどの美容や健康ために点滴などの方法で治療にも用いられるようになってきましたが、その安全性についてはまだ研究段階でもあります。 今回の記事では、エクソソームによって期待できる効果や課題について再生医療の専門医師が解説します。 エクソソームとは何か エクソソームとは、細胞から分泌される大きさ30~200mmほどの顆粒状の小胞です。 幹細胞を培養し、培養液から幹細胞を取り出し処理を行ったあとの上澄みのことを、ヒト幹細胞培養上清液(じょうせいえき)といいます。エクソソームは、この上清液の中に含まれます。*1 エクソソームは1980年代に見つかったのですが、当初は細胞内の不要な物質を捨てるための「ゴミ袋」のようなものだと考えられてきました。 しかし、研究が進むにつれて、エクソソームは細胞同士の相互作用に関して情報伝達の役割を果たすことが分かってきました。*2 つまり、エクソソームは細胞間の情報伝達物質の「運び手」とも言えます。 また、エクソソームはその分泌された細胞由来の細胞膜の成分や核酸、タンパク質などを含んでおり、その細胞の特徴や生理的な機能を持っているとも考えられており、いろいろな疾患に対する新しい治療方法の候補としても注目されています。*3 エクソソームは点滴や局所注射、塗布などの投与方法があります。エクソソームによる治療は自由診療のため、費用は各医療機関で幅があります。一般的な相場は、5万円から20万円程度のようです。 エクソソームの可能性 さて、再生医療の分野でよく用いられるものに、間葉系幹細胞(かんようけいかんさいぼう:Mesenchymal stem cell:MSC)があります。 これは、結合組織の中に存在する、多分化能を持つ幹細胞です。MSCは組織が損傷を受けた際に修復を手助けすることが知られています。 最近の研究ではMSCそのもののみならず、MSC由来のエクソソーム、つまりMSCから分泌されるエクソソームにMSC自身と同じような治療効果を示すことも明らかになりつつあります。*4 これまでに報告されている、MSC由来のエクソソームが治療効果を示す疾患には以下のようなものがあります。*5 腎臓疾患 心筋障害 脳疾患(脳卒中やアルツハイマー病) 肺疾患 このような病気に対して、MSC由来のエクソソーム治療は効果があることが分かってきており、今後の研究が期待されるところです。 また、MSC由来のエクソソーム治療は、MSC細胞よりサイズが小さいために、塞栓などの可能性が理論上は低いことや、組織へうまく移行してくれること、また複数回の投与ができることなどのメリットがあります。 また、厚生労働省のワーキンググループでの報告によると、日本の自由診療を行っている121医療機関で、美肌、毛髪再生、勃起不全などが期待される効果や対象疾患に含まれていたとのことです。*6 エクソソームの課題 一方で、エクソソーム治療については課題もあります。 MSC由来のエクソソーム治療では、MSC細胞による治療よりも多くの細胞数が必要なことや、安全性や有効性を確保するためのリスクがまだ研究段階であること、さらに品質の管理や製造管理とともに法律の整備がまだ未成熟なことなどがあります。*7 その他の課題としては、まだエクソソームに関しての基本的な理解が十分ではない可能性があることです。例えば、免疫系の細胞が貪食(どんしょく)作用によってエクソソームを取り込むことが知られているのですが、免疫系の細胞以外の細胞による取り込みの様子は世界でもまだほんのわずかしか報告がない、という状況です。このように、基礎的なメカニズムについて見解がまだ定まっていないという現状があります。 また、エクソソームを回収する方法が統一されていないということも問題となっています。 エクソソームの回収方法は、さまざまな企業が抽出試薬などを販売しつつあるのですが、果たして異なる方法で回収したエクソソームが「同じ」ものとして治療に用いてよいのかどうかという疑問が残ります。*8 さらに、副作用の危険性もあります。 実際に、正常なMSCが分泌するエクソソームには抗がん作用があるのに対して、異常なMSCが分泌するMSCが分泌するエクソソームは、がんの悪性化を促してしまうという報告もあるようです。*9 MSCでもMSC由来のエクソソームであっても、正常な自分の細胞から培養されたものであれば、拒絶反応などのリスクは高くないかもしれませんが、さらなる研究によって安全性が確保されることが期待されるでしょう。 まとめ リペアセルクリニックでは、エクソソームを産生する細胞の元の一つである、自己脂肪由来幹細胞による再生医療を行なっています。 当院での細胞加工の強みとしては、幹細胞を冷凍保存しない都度培養のため細胞の生存率や質が高いこと、2億個の細胞を投与できるので治療成績が良好であること、採取する脂肪の量は米粒3つ分くらいと少量であり負担が少ないこと、さらに患者さん自身の血液を用いるため安全性が高いことが挙げられます。 脳や神経の病気をはじめ、さまざまな疾患に効果があると示されている再生医療にご興味のある方は、ぜひ一度当院までお気軽にご相談ください。 再生医療専門クリニック リペアセルクリニック ✉ メール相談はこちら 💻無料オンラインカウンセリングはこちら ✉ webでの来院予約はこちら ☎ 無料電話相談はこちら: 0120-706-313(09:00~18:00) 診療時間:10:00~19:00(完全予約制) 休診日:不定休 各院へのアクセス:札幌院/東京院/大阪院 ▼その他のコラムはこちらからもお読み頂けます。 参考文献 *1 再生医療等のリスク分類・法の適用除外範囲の見直し 厚生労働省研究開発振興課 p11 *2 新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来 エクソソームの応用可能性.Drug DeliverySystem.2014:29(2):140-151. p140 *3 再生医療等のリスク分類・法の適用除外範囲の見直し 厚生労働省研究開発振興課 p10 *4 新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来 エクソソームの応用可能性.Drug DeliverySystem.2014:29(2):140-151. p141 *5 新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来 エクソソームの応用可能性.Drug DeliverySystem.2014:29(2):140-151. p143-147 *6 再生医療等のリスク分類・法の適用除外範囲の見直し 厚生労働省研究開発振興課 p16 *7 エクソソーム等の調製・治療に対する考え⽅ 一般社団法人日本再生医療学会 p4,5 *8 新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来 エクソソームの応用可能性.Drug DeliverySystem.2014:29(2):140-151. p147,148 *9 新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来 エクソソームの応用可能性.Drug DeliverySystem.2014:29(2):140-151. p149 日本再生医療学会|エクソソーム等に対する日本再生医療学会からの提言
2024.08.02 -
- 幹細胞治療
- 再生治療
- PRP治療
- 免疫細胞療法
エクソソーム、幹細胞上清液での治療で知っておくべき安全性や副作用、医師が解説! 幹細胞をはじめとした種々の細胞から分泌されるエクソソーム。細胞同士の情報伝達に欠かせない存在であり、抗炎症効果などを示すこともわかっています。現在、がんの診断・多くの疾患の治療・化粧品や食品の研究開発など幅広い分野で注目を浴びています。再生医療においても、エクソソーム治療への期待が高まっています。 細胞を用いた治療の弱点である塞栓(細胞が血管に詰まること)や形質転換(望ましくない性質を持つこと)などを克服できるのではないかと期待されているためです。 再生医療や美容医療を検討されている方の中には、エクソソーム治療を受けたいと考えたことがある方も多いでしょう。 では、エクソソーム治療が安全性の面から全く問題がないのでしょうか。実は一概にそうとも言い切れません。 本記事では、エクソソーム治療の安全性・起こりうる副作用について解説をしていきます。 エクソソーム治療とは 再生医療の代表である幹細胞治療では、万能細胞である幹細胞を培養し全身あるいは傷ついた組織に投与します。投与された幹細胞が損傷組織の構成細胞に変化するだけでなく、幹細胞由来の生理活性物質が組織の修復を促すことがわかっています。 生理活性物質は小さな袋に入った状態で分泌されます。小さな袋がすなわち「エクソソーム」です。エクソソームだけを精製して投与することで、幹細胞治療と同じような効果が見込めるのではないかと期待をされています。デリケートな幹細胞と異なり、管理が容易です。 エクソソームの安全性は不確実 しかし、エクソソームの医学への応用はまだごく初期の段階です。医薬品として承認されるために必要な臨床試験などをほとんど経ていません。 流通している「エクソソーム」製剤は医薬品医療機器等法の承認を得ていない試薬などという扱いです。試薬であっても、自由診療の場では医師の責任において投与することが可能です。幹細胞治療と同等の効果を発揮するためには、非常に高濃度のエクソソームを投与する必要があると考えられています。 しかし、実際に高濃度のエクソソームを投与したときにどのようなことが起こるのかはまだはっきりわかっていません。これまでのところ目立って「悪いこと」が起こったケースがほとんどないため、「安全だろう」ということで使われているのです。 エクソソームの材料とはなにか エクソソームの安全性について論じる時に問題になるのはエクソソームそのものの安全性だけではありません。 多くの「エクソソーム」製品は細胞を培養してその培養液の上澄みを精製することで作られています。そのため、エクソソームをつくる「材料」の安全性もしっかりと考えていく必要があります。材料とは「エクソソームを分泌する細胞」と「細胞培養のための培地」のことです。 一般的に「エクソソーム治療」で使われるものは、様々な細胞に変化できる「間葉系幹細胞」と呼ばれる幹細胞を培養する際に分泌されるものです。では、この幹細胞はどこから来たものでしょうか。ご自身の細胞を手術などで採取していない限りは、誰か「他人」の間葉系幹細胞を使って作られたものです。幹細胞は骨髄・歯髄・脂肪・臍帯血などから得たものが中心になっています。 また、幹細胞を培養するためには最適な環境を整える必要があります。植物を育てる際には、植える時期を選んだり日当たりを気にしたりするでしょう。同様に、細胞を育てるにも細胞に合った「培地」が用いられます。そしてホルモンの供給や有害物質からの保護作用などの役割のため、培地には「血清」が添加されることがほとんどです。培地によく用いられる血清は牛の血清です。 エクソソームの材料による副作用 エクソソームを作る過程で「他人の細胞」「他の動物」由来の成分が含まれていると、心配しなければいけない副作用が2つあります。 ひとつはアレルギー反応、もうひとつは感染症です。 アレルギーは外界から何かを体に投与するときには切っても切り離せない問題です。特に、自分以外のもの由来の成分へのアレルギーは誰にでも起こり得ます。当然、「他人」「他の動物」由来の成分が含まれるエクソソーム療法も例外ではないのです。 そして、残念ながら誰にどんな反応が起こるかを予測する手立てはありません。 製剤として販売されるのですから、細胞も血清も基本的には危険な感染症のスクリーニングを受けたものが使用されているはずと思うかもしれません。しかし、感染が起こった直後のごく微量の微生物や、現時点でまだ知られていないウイルスなどがいる可能性はどうしても否定できないのです。 「エクソソーム」と謳われている製品でも、純粋なエクソソームだけを抽出したものではないのです。エクソソームの回収技術はまだ完全に確立されたものではありません。不純物が完全に除去されている保証はどこにもないのです。 そして一番怖いのは他人の遺伝子が含まれているということです。他人の遺伝子があるということで将来的にどのような疾患が出てくるのか予期できなくなるのです。 幹細胞による再生医療は、再生医療等安全確保法という法律があるのですが、上清液やエクソソームには法律がなく無法地帯なのが現状です。いつどこで、誰から作られたかもわからないでのす。 リペアセルクリニックの幹細胞治療は、「ご自身の細胞と血液を使用」して、国内では珍しい「冷凍せず培養」する方法にこだわっています。これにより、「高い生存率と高い活動率」を持った生き生きとした幹細胞を投与でき、良好な治療成績を実現しております。 エクソソームについて気になるQ & A Q:エクソソーム含有の健康食品やサプリメントに病気の治療や予防効果はある? サプリメントや健康食品は医薬品ではありません。基本的には病気を予防したり治療したりするものでないのです。したがって、エクソソーム含有されていることで、病気にならない・病気を良くするという効果については期待できません。 Q:エクソソーム治療は高額と聞きましたが保険はききませんか? 残念ながら、いかなるエクソソーム治療も現時点(2024/7)で公的な保険の適応外です。 なお、混合診療(自由診療と保険診療を同時に行うこと)は禁じられています。エクソソーム治療と同時に何らかの検査や処方をうけると、それらも自費扱いになることに注意が必要です。 まとめ・エクソソーム・幹細胞上清液での治療について、知っておくべき安全性や副作用、医師が解説!! エクソソーム治療は美容や関節の痛み、神経の損傷の後遺症など幅広い分野で期待されています。しかし、安全性の面からはまだまだ検証の余地が多く残っています。 安全性について心配であれば、幹細胞治療も選択肢になるでしょう。当院では患者様ご本人の細胞・血液を使い、独自の技術で培養することで生き生きとした幹細胞を投与できる体制を整えています。ぜひ一度お問合せください。 ■参考文献落合孝広. 生物資料分析 42(5): 217-221,2019. 花井洋人, 下村和範, 中村憲正. 臨床スポーツ医学. 37(5):599-603, 2020. 一般社団法人再生医療抗加齢学会幹細胞培養上清液に関する死亡事例の発生について 岩崎剣吾, 森田育男. 最新医学 73(9): 1243-1253, 2018. 厚生労働省|再生医療などのリスク分類・法の適用除外範囲の見直し 第二回ワーキンググループ(R3.1.18)における議論 株式会社ケー・エー・シー 細胞.jp|細胞基礎講座 細胞培養基礎講座 第7回「血清はなぜ必要?」 厚生労働省|再生医療等安全性確保法における再生医療等のリスク分類・法の適用除外範囲の見直しに資する研究報告書 日本再生医療学会|エクソソーム等に対する日本再生医療学会からの提言 ▼その他、「エクソソームや幹細胞上清液」で参考にしていただける記事
2024.07.31 -
- 脊椎
- 脊椎、その他疾患
むちうち症は交通事故の衝撃やスポーツ中の激しい体の動きなどにより起こる疾患です。適切な治療やセルフケアによって症状の軽減が見込めるため、患者さんは正しい知識をもつことが大切です。 そこで本記事では、むちうち症の概要や治療方法、セルフケアや精神的なケアについて解説しています。 むちうち症と診断された方はぜひご参考ください。 むちうち症は交通事故の衝撃により起こる疾患です。適切な治療やセルフケアによって症状の軽減が見込めるため、患者さんは正しい知識をもつことが大切です。 むちうち症の概要 はじめに、むちうち症の概要について解説します。 むちうち症とは何か? むちうち症とは、自動車事故やスポーツ中の激しい体の動きなどによって生じるけがの一種です。交通事故の場合、事故の衝撃により頚部が鞭(むち)を打ったようにしなった結果、首の筋肉、脊髄や神経根などの神経、じん帯、頚部の椎間板などが損傷され、事故後に首や背中に痛みが出てしまいます。医学的には「外傷性頚部症候群」「頚椎捻挫」「頚部挫傷」などと呼ばれます。 むちうち症の症状は受傷部位や加わった衝撃の程度によりさまざまですが、頚部や肩、頭などに表れやすいです。よくみられる症状は下記のとおりです。 首や背中、腰の痛み 頭痛 耳鳴り 吐き気 しびれ 肩こり 腕や手のしびれ 腕や手の動かしにくさ 目が見えづらい 倦怠感 不眠 うつ状態 基本的に、これらの症状は受傷後数時間~数日後に自覚されることが多いです。受傷から発症までにタイムラグがある原因として、事故時に多く分泌されるアドレナリンの作用により症状を自覚しにくい、あるいは受傷部位の炎症の増強にともなって痛みが徐々に悪化していくなどの理由が考えられます。 また、むちうち症にはいくつかのタイプがあり、それによっても症状の種類が異なります。 むちうち症の種類 特徴 出現しやすい症状の例 頚椎捻挫型 椎間板やじん帯が損傷している可能性がある 首や肩の痛み、肩の動かしにくさ、肩や腕の重さ 神経根損傷型 腕の感覚を司る神経が椎間板に圧迫される 腕の痛み、知覚異常、しびれ、筋力低下 脊髄損傷型 脊髄が傷つく 手足のしびれ、麻痺、歩行障害、排泄障害 自律神経障害型 (バレー・リュー型) 首の自律神経が障害される 頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気、後頭部の痛みなど 症状の発生原因 むちうち症が起こるのは、事故によって「首がしなった後、急激に戻る」のが原因です。後方からの追突事故の場合、ぶつかられた衝撃によって胴体が前方へ出た後、頚部が後ろに反るようにしてしなります。また、正面衝突の場合は胴体が後ろへ突き出し、頚部は前方へしなります。側面からの衝突事故においては、衝突された方向によって首が左右のどちらかにしなります。このように首に不自然な力が加わることで、頚椎を支えているじん帯や神経、結合組織などが損傷してしまうのがむちうち症発症のメカニズムです。 むちうち症の多くは交通事故によるものですが、スキーやローラースケート時の転倒などによっても首のしなりと急激な戻りが発生し、むちうち症を発症することもあります。 むちうち症の治療方法 むちうち症の治療は、正しい診断をもって始まります。事故に遭ったら必ず整形外科を受診し、画像検査、問診など必要な検査を受けましょう。むちうち症と診断されたら、投薬などの治療が始まります。むちうち症の治療では医学的アプローチはもちろんのこと、セルフケアも重要です。ここでは、医学的な治療とセルフケアについてそれぞれ解説します。 医学的アプローチ むちうち症の治療は、受傷部位や組織損傷の程度などによって異なります。痛みが強い場合は、消炎鎮痛剤を使用し安静にするのが基本です。冷湿布やアイシングによる患部の冷却も炎症を和らげるのに効果的です。 また、必要に応じて頚椎カラーの装着が必要となる方もいます。頚椎カラーの装着方法や装着期間は医師の指示に従いましょう。痛みが回復した後にも頚椎カラーによる固定を続けていると、首の筋肉の拘縮や萎縮の原因となりかえって症状が悪化する可能性があるため注意が必要です。 痛みが緩和されてきたら、徐々に首を動かすリハビリやストレッチを始めます。医師や理学療法士から指示されたストレッチがあれば、無理のない範囲で取り入れていきましょう。場合によっては、病院に通院してリハビリや牽引を行うケースもあります。 家庭でできる対処法 むちうち症は、セルフケアによって症状の悪化予防と改善が期待できる疾患です。 発症後3日~1週間程度の急性期は、首の安静を第一に心がけましょう。この時期に首に無理な力が加わると症状が余計に悪化するため、痛い部分を揉むことやマッサージすること、そして首を無理に動かすのは避けましょう。湿布を貼る場合は、急性期には冷湿布が適しています。 痛みが和らいできたら、入浴や温湿布、首のリハビリにより患部の血流を良くし筋肉をほぐすことがポイントです。リハビリは無理をせず、痛みのない範囲で毎日少しずつ行いましょう。ここでは自宅でできる簡単なリハビリ・ストレッチを3つ紹介します。 ①仰向けに寝てバスタオルを丸めて首の下に置き、リラックスする ②フェイスタオルを首に巻き、両手でタオルを前に引っ張りながら首をゆっくりと後ろに反らす ③正面を向き、首をゆっくりと上下左右に動かす ただし、動きによって痛みが増強した場合は決して無理をせず、安静にしましょう。 むちうち症の後遺症について むちうち症の患者さんのなかには、適切な治療をしても首や背中の痛み、上肢のしびれなどの後遺障害が生じることがあります。後遺障害の症状は人によって異なります。 長期的な影響 むちうち症は、発症時は軽症であっても歳を重ねて数十年後に急に症状が悪化するケースがあります。症状の悪化を迎える頃には、事故の影響以外に加齢による五十肩などの他のトラブルも重なることが予想されるため、むちうち症を発症した際にきちんと根本的な治療をしておきたいところです。万が一受傷からしばらく経過した後に痛みが出てきたら、その時点でもう一度医療機関を受診しましょう。 管理と予防策 むちうち症の後遺症による首の痛みは、首周りの筋肉の過緊張が原因です。こわばった緊張をほぐして動きを良くするために、日頃から首のストレッチや入浴を心がけましょう。 日常生活での調整 むちうち症の症状は、風邪のように数日間で完治することは少ないでしょう。治療期間が数週間から数ヵ月にわたる方もいるため、日常生活における痛みのコントロールや活動量の調整が必要です。 生活スタイルの変更 痛みがある場合は、鎮痛薬の内服や湿布などにより痛みのコントロールを図りましょう。鎮痛薬は、一般的に内服と次の内服の間に一定の時間を空ける必要があり、内服の適切なタイミングを考える必要があります。学校や仕事、家事など日中に活動する場合は、朝に内服しておくと日中の鎮痛効果が期待できます。また、痛みが睡眠に支障を来す場合には、就寝前にも内服しましょう。 湿布薬は種類が多数あるため、刺激感や皮膚の状態を踏まえ自分に合ったものを見つけましょう。湿布を同じ場所に貼り続けると皮膚がかぶれるリスクが高まるため、貼り替えの際は少しずつ場所をずらす、新しい湿布を貼るのは翌日にするなど、工夫が必要です。湿布薬のなかには肌の色に近い色のものもあるため、人目が気になる場合は使用してください。 また、むちうち症の症状のなかでも、頭痛やめまいなどの症状は社会生活に直接的な影響を及ぼすケースがあります。症状が強い時には無理をせず、家族や学校、会社などに事情を説明し、理解を得ることが大切です。在宅ワークであれば症状の程度によって仕事時間を調整できるため、無理なく働ける可能性があります。その際、会社や学校などに医師の診断書を求められることがあります。診断書は保険会社からも提示を求められるため、あらかじめ医師へ記載を依頼しておくとよいでしょう。 支援と専門家の助言 むちうち症は、適切な診断と治療を受け専門家の助言のもとでリハビリをすすめる必要があります。自己流の投薬やリハビリは、効果が得られないばかりかやり方を間違えると症状をさらに悪化させてしまうかもしれません。必ず受診し、医師や理学療法士など専門家に相談しアドバイスを受けながら治療をすすめていきましょう。症状が重いなどの理由で受診が難しい場合は、電話でも相談に応じてもらえる場合があります。 総合的なアドバイスとサポート 最後に、むちうち症の症状の緩和へのヒントと、精神的な健康の維持について解説します。 症状を和らげるためのヒント むちうち症の症状を和らげられる可能性があるものとして、鍼治療や電気治療なども選択肢の一つです。鍼治療には硬くなった筋肉をほぐす作用がありますが、人によっては「合わない」と感じる方や、鍼を刺す刺激が苦手な方もいるため注意が必要です。また、体質や体調などによって治療効果も異なります。 また電気治療も鍼治療と同様に筋肉の過緊張を一時的に緩められます。 いずれにせよこれらの施術には「合う」「合わない」があるため、医師や整骨院などの専門家に相談したうえで利用を検討するようにしましょう。 精神的な健康の維持 むちうち症は風邪のように数日で完治するのは難しく、苦痛な症状やいつ治るかわからない不安などから精神的にも落ち込んでしまう方も少なくありません。 気持ちがふさぎ込んでしまうと苦痛がより強くなってしまうため、痛みの許す範囲で趣味や仕事をしたり、外出したりと気分転換を図るとよいでしょう。痛みが少しでも紛れるような時間を作れるのが理想的です。 参考文献一覧 交通事故による いわゆる“むち打ち損傷”の治療期間は長いのか Whiplash associated disorders: a review of the literature to guide patient information and advice Australian Clinical Guidelines for Health Professionals Managing People with Whiplash-Associated Disorders Guidelines for the management of acute whiplash associated disorders The Treatment of Neck Pain-Associated Disorders and Whiplash-Associated Disorders: A Clinical Practice Guideline
2024.07.30 -
- 上肢(腕の障害)
- 下肢(足の障害)
- スポーツ外傷
「腰の疲労骨折と診断されたけれど、早く回復して仕事やスポーツに復帰したい…」 そんな悩みを抱えていませんか? 腰の疲労骨折は無理をすると状態が悪化しやすく、治りが遅くなります。しかし、安静を最優先し、適切な時期にストレッチやトレーニングを実施すれば早期回復を目指せます。 本記事では、腰の疲労骨折を早く治す方法を具体的に解説しています。治療中の注意点も紹介しているので、早期回復を目指したい方は参考にしてみてください。 【基礎知識】腰椎疲労骨折とは 腰椎疲労骨折は、腰椎の「椎体」と呼ばれる骨の部分に微小な亀裂が生じる状態を指します。 腰椎疲労骨折の主な原因は、以下のとおりです。 重労働や繰り返しの負荷 不適切な姿勢や体の使い方 加齢に伴う骨密度の低下 骨粗鬆症などの基礎疾患 このように腰椎疲労骨折は、一度の強い衝撃ではなく、長期的な負荷の蓄積によって引き起こされます。特にスポーツを積極的に行う10代の若年層に多く見られ、同じ動作を繰り返すことで発症しやすいです。 腰椎疲労骨折の症状は、単なる腰痛とは異なり、以下のような特有の特徴があります。 安静時にも持続する鈍い痛み 特定の姿勢や動作で増悪する痛み 腰の特定の場所を押すと痛みを感じる(圧痛) 腰の特定の場所をトントンとたたくと痛みを感じる(叩打痛) これらの症状は、時間の経過とともに徐々に悪化する場合が多いです。最初は軽度の痛みで済んでいても、放置すれば日常生活や仕事に大きな支障をきたすようになります。 そのため、疲労骨折が疑われる場合は、早期の診断と適切な治療が不可欠です。適切な治療を行えば、痛みの軽減と日常生活の質の向上が期待できます。 なお、腰の痛みを伴う原因はほかにもあり、以下は対象となる疾患です。クリックすると詳細記事をチェックできるので、症状や治療法が気になる方は参考にしてみてください。 腰椎椎間板ヘルニア 脊柱管狭窄症 ぎっくり腰 近年、腰の痛みを伴う腰椎椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症の治療法として「再生医療」が注目されています。再生医療とは人間の自然治癒力を活用した新しいの医療技術で、損傷した脊髄の再生を図ります。 「腰に関連のある疾患の治療法に興味がある」という方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお問い合わせください。 腰椎疲労骨折はどれくらいで治る?【完治までは約3カ月】 腰椎疲労骨折の回復には約3カ月かかると言われています。 亀裂または折れた骨が癒合するまでに時間が必要なため、焦らず適切な治療を続けましょう。 治癒までの期間は、年齢や症状の程度、個人の体質などによって左右されます。 症状が軽度の方や若い方ほど治癒が早い傾向があります。 腰椎疲労骨折を早く治す方法5選 腰椎疲労骨折からの早期回復を目指す上で、日常生活で意識したいポイントを5つ紹介します。 焦らず安静にする コルセットの着用ルールを守る 計画的にリハビリを進める 軽めのストレッチ・トレーニングを行う 栄養バランスのとれた食事を心がける 参考にしながら実践をして、早期回復を目指しましょう。 焦らず安静にする 腰椎疲労骨折の基本治療は、安静により骨の自然回復を待つ保存治療です。 骨に亀裂が入っている状態なので、体を無理に動かすと状態が悪化します。 安静期間は、症状や人によって異なり、4週間から12週間程度です。 この間は、腰に負担をかけないように、できるだけ安静にして過ごしましょう コルセットの着用ルールを守る 疲労骨折の状態によってはコルセットを装着して安静時期を過ごします。 コルセットの着用が必要になった場合、使用ルールを必ず守りましょう。コルセットを着用する際は以下のような点に注意が必要です。 装着方法:締め付け具合 装着時間:1日の中での装着時間 着脱のタイミング:入浴時や就寝時の取り扱い コルセットを正しく装着しなかったり、着用を怠ったりすると、症状が悪化してしまう場合があります。早期回復のためにも、医師の指示に従って使用しましょう。 軽めのストレッチ・トレーニングを行う 骨の回復が認められ医師の許可が出たら、軽めのストレッチやトレーニングを開始していきます。 回復期は、骨盤周囲の筋肉を伸ばすストレッチや、腰を支える筋肉を強化するトレーニングが効果的です。 具体的には、ハムストリングストレッチや腰回りのストレッチや、腰椎を支える筋肉を強化を目的とした体幹トレーニングです。 適切な強度でストレッチやトレーニングを継続すれば、腰の機能改善につながります。 日常生活で負担のかかる動きを制限する 腰椎疲労骨折の回復段階では、日常生活で腰に負担をかけない動きをとる意識をもちましょう。 腰に負担がかかる動作をとれば、回復が遅れる可能性があるほか、再発のリスクも高まるからです。 腰に負担がかからない主な動作は以下の3つです。 腰を反らさない 力を入れすぎない ねじらない たとえば、ベッドから起き上がるときは、腰を反らさないように気をつけ、横向きになってから腕の力を使って上体を起こします。体をひとまとまりにして動かせば、腰に余計な負担をかけずに済みます。 椅子から立ち上がる際は、両手で座面を押しながら、膝を伸ばして立ち上がりましょう。腰を前後に動かさず、脚の力を使うと負担が軽くなります。 重い物を持つときも注意が必要です。腰を曲げずに膝を曲げ、背筋をまっすぐにしたまま持ち上げると、腰への負担が減ります。また、物を持ったまま体をねじらず、向きを変えるときは足から動かしましょう。 このように日常生活の動作を見直し、腰にやさしい動きを意識してみてください。 栄養バランスのとれた食事を心がける 骨の修復には多くの栄養が必要です。栄養バランスのとれた食事を心がけると、より早い回復が期待できます。 以下は、骨の修復に大切な栄養素と食材です。 栄養素 働き 食材 カルシウム 骨の主成分となり、強化を助ける 牛乳、チーズ、小魚、ひじき、小松菜 ビタミンD カルシウムの吸収を助ける イワシ、秋刀魚、鮭、しいたけ、きくらげ ビタミンK カルシウムを骨に定着させる 納豆、小松菜、ほうれん草、わかめ たんぱく質 筋肉や血液の材料になり、骨の修復を助ける 赤身の肉、魚、豆腐、納豆、ヨーグルト マグネシウム 骨の健康を維持し、強化をサポートする アーモンド、ごま、わかめ、大豆製品 バランスの取れた食事で、骨の修復に必要な栄養を補給しましょう。 まとめ|腰の疲労骨折を早く治すには焦らず治療していくのがもっとも大切 焦らず治療に専念するのが、腰の疲労骨折を早く回復させる近道です。腰に負担のかかる動作や運動を控えて、完治までじっくり治療に取り組みましょう。 本記事で紹介した、回復後の運動や食事のアプローチも参考にして、早期回復を目指してみてください。 腰の疲労骨折に関するよくある質問 腰の疲労骨折について、不安や疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。 ここでは、治療や予防、日常生活での注意点など、よくある質問とその回答を紹介します。腰の健康を守るための参考にしてください。 保存治療で症状がなかなか改善しない場合は手術が必要ですか? 保存的治療で十分な改善が見られない場合や、重度の骨折、神経症状を伴う場合などは、外科的治療が検討されます。 手術の方法は、骨折部位の固定や骨移植などです。 手術は、痛みの軽減、脊柱の安定化、神経症状の改善などを目的として行われます。 腰の疲労骨折における予防策を教えてください 腰椎疲労骨折の予防には、以下のようなポイントがあります。 適切な姿勢の保持 重量物の正しい持ち上げ方の習得 定期的な運動による腰部や体幹の筋力維持 骨密度の維持(バランスの取れた食事、適度な日光浴など) 日常生活の中で、腰への負担を減らす工夫を心がけるのが大切です。 重労働の仕事で腰が疲労骨折にならないためのポイントを知りたい 重労働に従事する人は、以下の点に注意をする必要があります。 項目 ポイント 詳細 1. 適切な重量制限の順守 ・無理なく持てる重量か確認する ・重量物を分割して運ぶ ・周囲と協力して持ち上げる 安全を優先して無理をしない 2. 重量物を持ち上げる際の正しい体の使い方 ・重心を低くし、物を体に近づける ・膝を曲げ、脚の力で持ち上げる ・急な動作を避ける 正しい姿勢で持ち上げ、腰への負担を減らす。定期的に訓練を受ける。 3. 休憩の確保と作業の分散 ・長時間の連続作業を避ける ・同じ姿勢を続けない ・作業を分散し負担を減らす 適切に休憩を取り、疲労を防ぐ。作業スケジュールを管理する。 4. 必要に応じた補助具の使用 ・台車や手押し車を使う ・高所作業には脚立を使用する ・腰ベルトの着用を検討する 補助具を活用し、負担を軽減する。正しい使い方を守る。 仕事と腰の健康は、切り離せない関係にあります。自分の体を守るためにも、リスク管理と予防策の実践を心がけましょう。 参考文献 MSDマニュアル家庭版."骨折の概要" 日本スポーツ整形外科学会.“スポーツ損傷シリーズ-疲労骨折" 日本臨床整形外科学会.”疲労骨折・腰痛” 日本脊椎脊髄病学会.”脊椎脊髄疾患について・主な症状” 日本生活習慣病予防協会.”骨粗鬆症” 村山医療センター.”腰椎分離症” 教えて!先生!腰痛の専門医による安心アドバイス.”腰の疲労骨折・脊椎分離症(腰椎分離症) 日本脊髄外科学会.”腰椎分離症・分離すべり症” 徳島県医師会.” 腰椎分離症 -病期・病態に応じて治療-” 日本整形外科学会.”「腰椎分離症・分離すべり症」” 厚生労働省.”腰痛予防対策” 厚生労働省.”職場における腰痛予防対策指針及び解説” ドクターズファイル.”疲労骨折” 医療法人大場整形外科.”腰椎疲労骨折” 日本骨折治療学会.”骨折の解説-疲労骨折”
2024.07.29 -
- 脊髄損傷
- 脊椎
- 脊椎、その他疾患
脊髄そのものやその周りで出血を「脊髄出血」と呼び、麻痺やしびれなどを引き起こします。 急性期には外科的手術や血管内治療を行うことが多いですが、場合によっては保存的治療が選択されます。 今までは後遺症に対してリハビリテーションなどの対応療法のみでしたが、現在では再生医療も選択可能となり、根治的治療として注目を浴びています。 今回は脊髄出血を引き起こした際にみられる後遺症やその治療法、予後はどうなのか、また術後後遺症が残った場合の治療法「再生医療」についても解説していきます。 脊髄出血の原因や症状については以下の記事で解説しています。 脊髄出血でみられる後遺症 脳から腰に向かって背骨の中を走る太い神経を脊髄と呼びます。脊髄そのものやその周辺に出血をきたすのが、脊髄出血です。 脊髄の圧迫やダメージによって、多くの場合、背部の痛みや麻痺、しびれなどをきたします。 障害部位(頸髄や胸髄、腰髄、仙髄、馬尾)や出血部位(脊髄内やくも膜下、硬膜下、硬膜外)、脊髄へのダメージ具合(部分的か全体的なダメージか)によって症状が異なってきます。 脊髄へのダメージが少ないうちに治療を行うことができれば後遺症を回避、もしくは軽度で済むでしょう。 しかし、治療が遅れてしまった場合や神経へのダメージが大きくなった場合、後遺症を免れることは難しいです。 実際には脳梗塞や脳卒中と似たような症状を呈することもあり、それらに対する治療の後に脊髄出血が判明したという症例も見受けられます。 代表的な後遺症を以下に一覧として示します。 運動障害(麻痺) 感覚障害(温痛覚や振動感覚、位置感覚の障害など) 膀胱直腸障害(尿失禁、頻尿、便秘、頻便など) 呼吸障害 体温調節障害 起立性低血圧 など 脊髄出血の治療法について 脊髄出血の治療ですが、出血部位や症状出現からの時間経過、脊髄損傷の程度、出血原因などによって変わってきます。 積極的治療を行う場合、外科的手術や血管内治療が選択されます。 外科的手術では、椎弓切除や血腫除去による除圧術、出血点がわかる場合には止血術を行うこととなります。 以下では、脊髄出血の治療に関して気になる質問に回答しています。 Q1. 脊椎の構造はどうなっているの? A1. 下記のような構造になっています。 Q2. 椎弓切除術ってなに? A2. 椎弓の一部と黄色靭帯を切除し、脊髄への圧迫を除去する手術になります。ちなみに黄色靭帯は脊髄の背側に位置しています。 Q3. 血管内治療はどんな治療法ですか? A3. 血管内治療とは、いわゆるカテーテル治療のことです。 血管内治療では、血管からカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、出血している血管に塞栓物質を流し込んで止血、あるいは予防的に出血原因となりうる異常血管に塞栓物質を流し込むことで血流量を減少させます。 ただし、異常血管の血流を完全に遮断すると脊髄梗塞を生じる可能性があるため、病変を完全に消失させるのは難しいです。 Q4. 外科的手術のリスクはありますか? Q4. 脊髄内に病変がある場合、外科的なアプローチは脊髄そのものを傷つけるリスクがあります。また、硬膜外に位置する異常血管病変では、外科的切開が大量出血を引き起こす可能性があります。 このように外科的手術が困難と予想される症例では、血管内治療が良い適応となります。 現代の医療技術の発展によってMRI検査などの画像処理能力が上がり、積極的治療を行わずに保存療法のみで脊髄出血が改善した症例も見受けられています。薬物治療には効果はなく、放射線治療も治療成績が良くないので、残念ながらこれらは有用な治療法となりません。 初期治療を行なっても残存した症状に対しては、リハビリテーションを行いながら症状改善を目指します。 以前までは根本的治療がないと言われていましたが、近年は再生医療がより身近になり、注目を集めています。リハビリテーションと再生医療については、以下で詳しく説明していきます。 脊髄出血に対するリハビリテーション リハビリテーションとは、病気や怪我の後に社会復帰を目指して行う訓練の総称です。 病気や怪我以前の生活水準を目指し、日常生活を見据えた身体的訓練のほか、不安や無力感といった精神的な障害には心理的訓練、さらに必要に応じて職業訓練も行われます。 リハビリテーションに携わるスタッフは、医師や看護師に加えて、作業療法士や理学療法士、言語聴覚士などのスペシャリストとなります。 病院で行われることもあれば、リハビリ専門施設で行うこともあります。 脊椎出血の急性期リハビリ 怪我や病気を患った直後の急性期は、まず全身状態を落ち着かせ、損傷や障害を最低限に抑えるためのリハビリテーションが必要となります。 具体的には、 頸髄や上位胸髄の損傷による呼吸機能低下に対しては呼吸訓練 手術後にうまく寝返りができない場合には、床ずれ予防のために体位変換訓練 ベッド上で動けない間に関節が固まってしまわぬように関節可動域訓練 などを実施します。 全身状態が安定後のリハビリ 全身状態が落ち着いた後は、個々の症状に合わせて積極的にリハビリテーションを進めていくことが重要です。 脊髄出血によって脊髄が大きなダメージを受けてしまった場合は、神経障害などを完全に取り除くことは難しく、後遺症が残ることが多いでしょう。 そこで早期からのリハビリテーションを通じて、残存能力の強化を行い、それに必要な筋力や柔軟性を身につけていくこととなります。 具体的な例として、 両下肢の麻痺(対麻痺)の場合には上肢の筋力を高め、プッシュアップ動作を練習し、車椅子の訓練 排尿障害を患っている場合は、腹壁徒手圧迫法や反射誘発、自己導尿法などの指導 などが行われ、合併症を引き起こすことなく自分で尿路管理を行えるよう目指します。 脊髄出血の予後 脊髄出血は稀な疾患であるため情報が少なく、死亡率や予後についての言及は難しいのですが、一般的には症状の発現から除圧までの時間が短ければ短いほど神経回復は良好です。 しかし、どこから出血したかや出血の原因、年齢によっても予後は変わってくるとされています。 脊髄硬膜下血腫に対して手術を実施した59症例を検討したある報告では、術前の状態が重篤なものほど回復が不良で、くも膜下出血(軟膜とくも膜の間の出血)を伴うものは術前状態が悪くて除圧後の臨床成績も悪かったとされています。 脊髄硬膜外血腫を1000例以上の報告を検討した論文では、69症例に対する死亡率の検討がなされました。 その結果、40歳以上と40歳未満の患者群それぞれの死亡率は9%と4%とされ、治療法に関係なく40歳以上では死亡率が有意に高くなると報告されました。 同じ報告で患者さんの長期フォローアップの結果をまとめたところ、初めの症状が軽度であった患者群では8.5%が軽度の障害を示すのみであったのに対し、初めの症状が重篤だった患者群では症状の改善を認めたのは78.4%に止まり、また軽度の障害を示したのは28.3%でした。 脊髄出血の術後後遺症に対する再生医療とは 再生医療は、失われた身体の組織を再生する能力、つまり自然治癒力を利用した最先端医療です。脊髄損傷の手術後に残ってしまったしびれ、麻痺といった後遺症に対する治療として、「幹細胞治療」が適応になる可能性があります。 当院で行う再生医療は“自己脂肪由来幹細胞治療”は、患者さんから採取した幹細胞を培養して増殖し、その後身体に戻します。自分自身の細胞から作り出したものを用いるため、アレルギーや免疫拒絶反応がなく、安全な治療法といえます。 ちなみに「幹細胞」とは、さまざまな姿に変化できる細胞で、失われた細胞を再度生み出して補充する機能を持つ細胞のことをいいます。 日本での一般的な幹細胞治療は、点滴によって血液中に幹細胞を注入するものです。しかし、それでは目的の神経に辿り着く幹細胞数が減ってしまいます。 そこで当院では、損傷した神経部位に直接幹細胞を注入する“脊髄腔内ダイレクト注入療法”を採用しています。注射によって脊髄のすぐ外側にある脊髄くも膜下腔に幹細胞を投与するため、数多くの幹細胞を目的の神経部位まで直接届かせることが可能です。 この治療は数分のみで簡単な処置で、入院も不要です。点滴治療と組み合わせることによって、より大きな効果を期待できます。 実際に当院では術後や外傷、脊髄梗塞、頚椎症による神経損傷に由来する麻痺やしびれ、疼痛などの後遺症に対して再生療法を施し、症状が大きく改善した例を経験しています。 ▼詳しくは当院の“脊髄損傷の再生医療”に関する動画もご覧ください。 https://youtu.be/9S4zTtodY-k まとめ・脊髄出血の後遺症やその治療法、予後について 脊髄出血を生じた場合、急性期治療としてまず外科的手術や血管内治療を行い、止血や血腫による脊髄圧迫を除圧する必要があります。 どのレベルの脊髄が障害されているか、どの層での出血なのか、そして出血原因が何かによって治療方法が選択され、場合によっては保存療法が選択されることもあります。 後遺症には運動障害や感覚障害、排尿・排便障害などがあり、早期のリハビリテーションによる残存能力の強化や合併症予防のための訓練が大切となります。 多大なダメージを受けてしまった神経を元に戻す治療がなかった中で、近年になって再生医療が多くの人に提供可能となり、根本的治療として注目されています。 実際に当院でも脊髄損傷患者が再生治療を受け、症状が改善した症例が確認できています。 当院では入院不要で外来のみで再生医療を受けることができますので、気になる方はぜひ当院へ一度ご相談ください。 参考文献一覧 公益社団法人 日本リハビリテーション医学会 ホームページ 田島文博ほか. 脊髄損傷者に対するリハビリテーション. 脊髄外科.2016;30:58-67. M Domenicucci, et.al. Nontraumatic acute spinal subdural hematoma: report of five cases and review of the literature. J Neurosurgeon. 1999; 91: 65-73. M Domenicucci, et al. Spinal epidural hematomas: personal experience and literature review of more than 1000 cases. J Neurosurg Spine. 2017: 27;198–208.
2024.07.23 -
- 手部、その他疾患
- 手部
ガングリオンに痛みをともなったら、病院の受診を推奨します。自分では症状が軽度なのか、重度なのかを判断するのが難しいほか、コブの発症や痛みがほかの病気の可能性もあるためです。 本記事では、ガングリオンが痛いときの対処法を解説します。痛みがあるときにやってはいけないことも紹介しているので、記事を参考に適切な行動をとりましょう。 >>痛いときの対処法をすぐに知りたい方はこちら<< ガングリオンとは? ガングリオンは、関節内にある液体がガングリオンの袋に流れてコブになった良性腫瘍です。 2つの骨がつながる関節は、袋のような関節包で守られており、関節包の中は滑液(関節を保護する潤滑油)で満たされています。この滑液が、なんらかの理由でできたガングリオンの袋に流れるとコブ状の腫瘤(しゅりゅう)が形成されます。 なぜガングリオンの袋ができるのか原因は分かっていません。手首や足、足首などの関節周囲のほか、骨と筋肉をつなぐ部分の腱や、腱を支えるさやの役割である腱鞘(けんしょう)にもガングリオンができます。 以下の記事では、手首にできるガングリオンについて詳しく解説しています。手首にガングリオンらしいコブがある方はとくに参考にしてみてください。 人間の自然治癒力を活用した最新の医療技術である「再生医療」をご存じでしょうか。再生医療は筋肉や腱、靭帯損傷の治療に効果的です。 本来なら手術しなければいけない状態でも、再生医療で治療できる可能性があります。ガングリオン以外で身体に痛みや違和感がある方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にご相談ください。 ガングリオンはなぜ痛むのか ガングリオンは無症状の場合もありますが、以下のような症状を伴う方もいます。 コブのあるところが痛む 手足が痺れる・感覚が鈍くなる ガングリオンが神経にちかい場所にできると、神経を圧迫して痛みや手足の痺れ、感覚鈍麻といった症状がでます。 はじめは無症状でも、ガングリオンが大きくなると神経を圧迫しやすいため、大きくなるガングリオンは注意しましょう。 ガングリオンが痛いときの対処法2選 ガングリオンと疑われるコブが痛いと感じたときの対処法を解説します。 安静にして様子を見る 病院を受診する 症状に合わせて適切な対処法を選びましょう。 安静にして様子を見る ガングリオンは自然に治るものもあります。以下のように症状が軽度であれば、安静にして様子を見る選択もできます。 赤く腫れない 痛みや痺れが少ない コブが大きくならない ただし「この程度の症状であれば放置しても大丈夫だろう」と自己判断するのは危険です。症状が悪化して、痛みが強く出たり、関節の動きに支障が出たりする可能性があるためです。 ガングリオンの疑いがある場合は、なるべく医師に診てもらい、様子見で良いかを判断してもらいましょう。 病院を受診する ガングリオンの肥大化により関節が動かしにくくなったり、痛みやしびれが気になったりと生活に支障が出ている場合は、病院を受診して治療しましょう。 ガングリオンは小さくても、神経を圧迫していると痛みやしびれをともないます。大きさにかかわらず、気になる症状があれば専門医に診てもらうのがおすすめです。 ガングリオンの治療では、注射で内容物を吸引する方法が一般的です。ただし、この治療だとガングリオンの袋自体は体内に残ったままなので、再発する可能性があります。 再発を繰り返す場合は、手術でガングリオンの袋自体をとる手術も視野に入ってきます。 ガングリオンが痛いときにやってはいけない3つの対処法 ガングリオンが痛いときにやってはいけない対処法を3つ紹介します。 強い痛みや長期の痛みを放置する 自分でガングリオンを潰す ガングリオンがある場所に負荷をかける 1つずつ見ていきましょう。 強い痛みや長期の痛みを放置する ガングリオンが強い痛みや長期の痛みを伴う場合、放置しておくのは危険です。以下のように、ガングリオンと似ているほかの病気の可能性があるためです。 病名 主な症状 粉瘤(ふんりゅう) 炎症が起き腫れる・悪臭が発生する 脂肪腫 悪性の場合がある 滑液包炎 炎症が強くなる・痛みが増す ガングリオンによく似ている粉瘤の中身は垢や老廃物で、放っておくと赤く腫れたり、悪臭が発生します。 ほかにガングリオンによく似ている腫瘍の1つに脂肪腫があります。脂肪腫は脂肪がつまったコブですが、まれに悪性腫瘍である脂肪肉腫の場合があります。悪性腫瘍はコブの成長が早い・コブの形がいびつなどの特徴があるため、当てはまる条件があれば病院を受診しましょう。 滑液包炎もガングリオンによく似ており、ケガや関節の使いすぎで炎症を起こしコブができます。中身は血混じりの滑液で、放置すると炎症が強くなって痛みが増したり、関節が動かしにくかったりする症状がでます。 見た目だけでガングリオン・粉瘤・脂肪腫・滑液包炎を見分けるのは難しいため、症状がなく放置したい場合でも病院へいき、医師に診てもらうと安心です。 腱や筋肉の損傷に効果的な治療法の1つに「再生医療」があります。人間の自然治癒力を活用した治療なので、身体への負担を最小限にできます。 ガングリオン以外で手や腕に痛みやしびれなどの症状がある方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にご相談ください。 自分でガングリオンを潰す ガングリオンの痛みが気になって自分で押し潰そうとする方もいますが、自分で処置するのは危険です。神経を圧迫して、新たなしびれや痛みを引き起こす可能性があるためです。 痛みが気になる場合は自分で対処しようとせず、病院を受診して適切な治療を受けましょう。 ガングリオンがある場所に負荷をかける 痛みの有無にかかわらずですが、ガングリオンがある場所に負担をかけてはいけません。関節に負荷がかかると、関節包にある滑液がガングリオンの袋に流れやすくなり、コブが肥大化してしまう可能性があるためです。 たとえば、手首にガングリオンができた場合、手をついて立ち上がったり、手首を大きくひねったりする動作を極力控えるようにしましょう。 まとめ|ガングリオンが痛いときの対処法を知って適切にケアしよう 強く痛みを伴うガングリオンの場合は、病院を受診て専門医に診てもらいましょう。適切な治療を受けられれば、気になる症状を早期に改善できるはずです。 また、コブの出現や痛みの原因が、ガングリオンと似ているほかの病気の可能性もあります。それが悪性腫瘍のケースもあります。 自己判断で痛みを放置するのはリスクを伴うので、早めに専門医の診断を受けましょう。 手や足の筋肉や腱、靭帯を損傷したときは「再生医療」が効果的です。再生医療は身体にメスを入れない治療法なので、患者の負担が少ないです。「実はガングリオン以外の症状も気になる…」という方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にご相談ください。 ガングリオンでよくある質問ガングリオンに関するよくある質問 最後にガングリオンに関するよくある質問と回答をまとめます。 ガングリオンと悪性腫瘍の見分け方は? ガングリオンは良性の腫瘍です。しかし、ガングリオンだと思っていたコブが悪性の脂肪肉腫だったケースや、炎症を繰り返していた粉瘤が悪性化するケースが極めてまれに起こります。 悪性の場合は、コブに以下のような特徴があります。 色むらがある 急に大きくなった 形がボコボコしている コブとまわりの境界線がはっきりしない 悪性の腫瘍は、まわりの組織ににじむように大きくなるため、コブとまわりの組織の境界がはっきりしません。また、違和感のある色や形のコブが出現したり、急速にコブが大きくなったりするなどの特徴があります。 自己判断するのは難しいため、該当する特徴があれば病院を受診して検査してもらいましょう。 以下の記事では、ガングリオンと悪性腫瘍の見分け方を解説しています。見分け方の知識を深めたい方は、参考にしてみてください。 ガングリオンは何科で受診すればいい? ガングリオンは関節が関係しているため、基本的には整形外科で治療します。ガングリオンに似ている脂肪腫や粉瘤などは皮膚科や形成外科で診察するのが一般的です。 ガングリオンが自然に消えた原因を知りたい 自然に消えるのはガングリオンの袋がやぶけるためです。 ガングリオンの袋は大きくなると、局所的に薄い部分ができます。薄い部分は、関節を動かしたり、ぶつけたりする衝撃でやぶれやすくなります。 ガングリオンの袋がやぶけると中身の液体が流れ出し、ガングリオンが小さくなったり、消失したりします。 ガングリオンができやすい人の特徴は? 臨床報告の資料には、ガングリオンは中年の女性に多いと記載されています。20〜30代の男女比の割合は1:3であると同資料に示されています。(文献1) ガングリオンが発症するメカニズムは、まだ明確にわかっていません。つまり、ガングリオンができる部位を動かしすぎているからといって発症するとは言い切れないのです。 ガングリオンが足にできたときの対処法は? ガングリオンが足にできた場合でも、本記事で紹介した対処法が適用できます。 ガングリオンは自然に消えるケースがあるので、コブが小さかったり、痛みがなかったりする場合は、安静にして様子を見る選択もできます。 コブが大きくなってきたり、痛みが出たりする場合は、病院を受診して今後の治療方針を専門医と考えていくのが良いでしょう。 以下の記事では、ガングリオンが足にできたときの原因や症状を解説しています。治療法についても解説しているので、足にガングリオンができて悩んでいる方は参考にしてみてください。 参考文献 文献1:https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed/67/4/67_371/_pdf/-char/ja 日本整形外科学会「ガングリオン」 Treatment of ganglion cysts Ganglions of the hand and wrist
2024.07.22 -
- 関節リウマチ
- 内科疾患
「関節リウマチってどのような病気?」「関節の痛みや腫れが続いているけど、どうすればいいの?」 このように悩んでいる方も多いのではないでしょうか。 関節リウマチは、関節の炎症と痛みを主な特徴とする慢性的な自己免疫疾患です。適切な治療を受けなければ、関節の変形や機能障害が進行し、日常生活に支障をきたす恐れがあるでしょう。 今回は、関節リウマチの症状や診断基準、最新の治療法に加えて、日常生活での管理方法について詳しく解説します。この記事が、関節リウマチと診断され症状に悩んだり、適切な治療法を探したりするあなたの助けになれば幸いです。 関節リウマチとは? 関節リウマチは、免疫システムの異常により、自分自身の関節を攻撃してしまう自己免疫疾患です。 関節の炎症が慢性的に続き、痛みやこわばり、腫れなどの症状が現れます。病状が進行すると、関節の変形や機能低下を引き起こし、日常生活の質(QOL:quality of life)に大きく関わってきます。 QOLとは、個人が日常生活において感じる身体的、心理的、社会的な幸福感や満足感を表わす概念です。関節リウマチによる関節の痛みや変形は、日常的な動作に支障をきたし、社会活動への参加を制限するなど、QOLを低下させる可能性があります。 疾患の概要と一般的な症状 関節リウマチは、関節滑膜の炎症を主体とする全身性の自己免疫疾患です。この疾患の特徴は以下のとおりです。 炎症が慢性的に持続することで、軟骨や骨の破壊が進行する 関節の変形や機能障害を引き起こす 関節リウマチの一般的な症状は、関節の症状と全身症状に分けられます。関節の症状には以下のようなものがあります。 痛み 腫れ 熱感 こわばり これらの症状は、とくに手足の小さな関節から始まるケースがほとんどです。 また、全身症状として以下のような症状をともなう場合もあります。 倦怠感 微熱 体重減少 前述のように、関節リウマチは関節の症状だけでなく、全身に影響を及ぼす可能性もある疾患です。 リウマチが体に及ぼす影響 関節リウマチは、関節の炎症と破壊を引き起こすだけでなく、全身のさまざまな臓器に影響を及ぼす可能性があります。 影響 理由 慢性的な炎症反応 関節リウマチでは、免疫システムの異常により、関節だけでなく全身で炎症反応が起こっています。 この炎症反応が長期間続くことで、関節以外の臓器や組織にも影響が及ぶ場合があります。 炎症性物質の全身への拡散 関節の炎症によって生じた炎症性物質(サイトカインなど)が血液を介して全身に拡散します。 これらの炎症性物質が他の臓器や組織に作用し、炎症や損傷を引き起こす可能性があります。 免疫システムの異常による臓器障害 関節リウマチでは、自己免疫反応によって関節が攻撃されますが、この異常な免疫反応が他の臓器にも影響を及ぼすことがあります。 例えば、血管や肺、心臓などの組織に対する自己抗体が生じ、これらの臓器に炎症や損傷が起こる可能性があります。 全身性の炎症による動脈硬化の促進 慢性的な炎症状態は、動脈硬化の進行を促進します。 動脈硬化が進むと、心臓病や脳卒中などの心血管疾患のリスクが高まります。 症状の詳細 関節リウマチの症状は多様で、その現れ方や重症度には個人差があります。また、同じ人でも症状は時期によって変動することがあります。 典型的な症状とその変動性 関節リウマチの代表的な症状は、以下のようなものがあります。 症状 特徴 関節の痛み、腫れ、熱感、こわばり 特に、手や手首、足、膝などの関節に多く見られます。 症状は左右対称に現れることが多いです。 朝のこわばり 朝起きた時に関節のこわばりを感じ、動かしにくいことがあります。 このこわばりが1時間以上続くことが特徴です。 これらの症状は、日内変動を示すことがあります。つまり、一日の中で症状が変化したり、日によって症状の強さが異なったりする場合がほとんどです。 また、症状は悪化と改善を繰り返すことがあり、症状が一時的に良くなったからといって、油断せずに継続的な観察と治療が必要です。 症状の初期識別とその重要性 関節リウマチの早期発見と治療開始は、関節の損傷の進行を抑え、長期的な予後を改善するために非常に重要です。 初期症状は軽度で一時的なものから始まるケースがほとんどです。 しかし、以下のような症状が数週間以上続く場合は、慢性関節リウマチの可能性を考えて、早めに医師に相談しましょう。 手足の小さな関節の腫れや痛み 朝のこわばりが1時間以上続く これらの症状を見逃さず、早期に診断し治療を開始することで、症状の進行を抑え、日常生活動作の維持や生活の質の向上が期待できるでしょう。 診断基準の解説 関節リウマチの診断は、症状や身体所見、血液検査、画像検査などを総合的に評価して行われます。早期診断と適切な治療開始のために、分類基準が作成されています。 リウマチ診断のための基準とプロセス 米国リウマチ学会と欧州リウマチ学会が共同で策定した分類基準では、以下の項目を評価します。 影響を受けた関節の数(大きな関節と小さな関節の数) 血液検査の結果(リウマトイド因子や抗環状シトルリン化ペプチド抗体の有無) 炎症の指標(CRP値や赤血球沈降速度) 症状の持続期間(6週間以上) これらの項目に基づいてスコアを計算し、一定以上のスコアになると関節リウマチと診断されます。診断の過程では、問診、身体診察、血液検査、画像検査(X線やMRIなど)を組み合わせて総合的に評価します。 診断における挑戦と注意点 早期の関節リウマチでは、典型的な症状や血液検査の異常が見られないことがあり、診断が難しい場合もあります。 また、他の関節疾患との区別も重要です。専門医は、豊富な経験をもとに総合的に判断します。 診断後も、定期的に患者の状態をモニタリングし、治療方針を適宜見直すことが必要です。 また症状や検査結果の変化を見逃さず、適切な治療を続けることが重要です。 現代の治療法 関節リウマチの治療は、炎症を抑えて症状を和らげたり、病気の進行を防いだりするのを目的とします。早期に診断し、治療をはじめることが大切です。 治療には以下の方法があります。 薬物療法 非薬物療法 それぞれについて解説します。 薬物療法:DMARDs、生物学的製剤、ステロイド 関節リウマチの治療では、いくつかの種類の薬が使用されます。それぞれの薬には特徴があり、患者さんの状態に合わせて選択されます。 以下の表は、関節リウマチの治療で使われる主な薬の種類と、その特徴をまとめたものです。 薬剤の種類 具体的な薬 特徴と効果 抗リウマチ薬(DMARDs) メトトレキサート(MTX) レフルノミド、サラゾスルファピリジンなど 第一選択薬 炎症と関節損傷を抑える効果が期待される MTXが不十分な場合に追加される場合がある 生物学的製剤 TNF阻害薬、IL-6阻害薬など 炎症を引き起こす物質をブロックし、抗炎症効果を発揮 ステロイド薬 プレドニゾロンなど 急な炎症時に短期間使用される 炎症を速やかに抑える効果が期待される これらの薬剤を適切に組み合わせることで、関節リウマチの症状管理と関節の損傷抑制が期待できます。 非薬物療法:物理療法、運動療法、生活習慣の調整 関節リウマチの治療では、薬物療法と並行して、薬を使わない治療法も大切な役割を果たします。非薬物療法は、関節の健康を維持し、日常生活の質を向上させるために重要です。以下の表に各治療法の内容、目的、説明をまとめました。 非薬物療法の種類 内容(例) 目的 説明 運動療法 水中での運動 ストレッチ 軽い負荷を使った筋力トレーニング 関節の動きの維持 筋力の維持 過度な負担を避ける 水中運動は関節に負担をかけずに運動ができるため用いられます。ストレッチや軽い筋力トレーニングも、関節の柔軟性と筋力を維持するために重要です。 物理療法 温熱療法 寒冷療法 光線療法 水治療 その他 関節の痛みの軽減 関節の腫れの軽減 関節の痛みや腫れを軽減し、症状の緩和が期待できます。 作業療法 日常動作の練習 職場復帰のための訓練 日常生活の改善 社会復帰の促進 手指の過度な負担を避ける 日常生活の動作を練習することで、自立した生活を送るためのサポートを行います。状況によっては職場復帰のための訓練も含まれます。 装具療法 頸椎カラー 手関節装具 足関節サポーター 傷んだ関節の保護 変形の予防 痛みの軽減 頸椎カラーや手関節装具、足関節サポーターなどを使用することで、関節を保護し、変形や痛みを軽減しやすくします。 生活習慣の工夫 疲労のコントロール 関節に負担をかけない生活 適度な体重の維持 バランスの取れた食事 禁煙 症状の改善 全身状態の改善 疲労管理や適切な体重の維持、バランスの取れた食事、禁煙などの生活習慣の改善は、症状の改善と全身状態の向上に期待できます。 これらの非薬物療法を適切に組み合わせることで、関節リウマチの症状を上手にコントロールし、日常生活の質を高めることが期待できます。人によって状況は異なるため、専門家の指導を受けながら、自分に合った方法を見つけていくことが大切です。 日常生活での管理とサポート 関節リウマチは、日常生活にさまざまな影響を及ぼします。症状のコントロールと合併症の予防のために、日常生活での適切な管理とサポートが重要です。 日常生活での調整と自己管理のヒント 関節リウマチとうまく付き合っていくには、日常生活での工夫が重要です。関節への負担を減らすために、以下のようなことを心がけてみましょう。 関節に負担をかけない動作を心がける 自助具を活用する 疲れをためすぎないよう、休息と活動のバランスを取る 適度な運動を行い、関節の機能を維持する(ただし、やりすぎは禁物) バランスの取れた食事を心がける 禁煙する ストレス対処法を身につける 患者サポートと地域リソースの活用 疾患と向き合っていくには、周りの人のサポートがとても大切です。 家族や友人に病気のことを理解してもらい、協力を求める 同じ病気の人と交流し、情報交換や精神的な支え合いをする 患者会や支援団体に参加し、さまざまな情報やサポートを得る 医療ソーシャルワーカーや看護師から、利用できる社会資源の情報を得る 訪問看護やリハビリ、介護サービスなどを上手に活用する まとめと次のステップ 関節リウマチは、適切なケアと上手な病気との付き合い方で、充実した生活を送ることができます。早期発見と早期治療が大切であり、患者さん自身が積極的に病気の管理にかかわることも重要です。 持続可能な管理戦略と医療チームとの連携 関節リウマチの管理は長期戦です。医師、看護師、薬剤師、理学療法士など、さまざまな専門家からなる医療チームと連携しながら、自分に合った管理方法を見つけていきましょう。 ステップ 内容 1 定期的な通院と検査を続ける 2 治療方針を医療チームと相談しながら調整する 3 体調の変化や副作用、生活上の問題を医療者に伝える 4 セルフマネジメントのスキルを身につけ、主体的に病気と向き合う 情報更新と自己啓発の重要性 医学は日々進歩しており、関節リウマチの治療法も新しい選択肢が増えています。信頼できる情報源から最新の情報を得ることで、自分に合った治療法を見つけやすくなります。 主治医や看護師から、新しい治療法や臨床試験について情報を得る 患者会や講演会に参加し、他の患者さんの経験や専門家の意見を聞く 関節リウマチの専門団体が発行するパンフレットやWebサイトで、最新の治療ガイドラインをチェックする 関節リウマチと診断されたからといって、諦める必要はありません。適切な治療と生活管理によって、症状をコントロールしやすいでしょう。 定期的に通院し、病気の活動性をモニタリングする 処方された薬は指示通りに服用し、副作用があれば医師に報告する 疲労を管理し、関節に負担をかけない生活を心がける 適度な運動とバランスの取れた食事で、全身の健康を維持する また、日常生活での工夫も大切です。 困難な作業は家族や友人に助けを求める 関節に負担のかかる動作を避け、自助具を活用する 患者会に参加し、同じ病気を持つ人と情報交換やサポートし合う 症状和らげたり、病気の進行を遅らせたりするには、医療チームとの連携と自己管理が重要です。あなたに合った方法を見つけ、必要な調整を行いながら、できる限り自分らしい生活を送ることを目指しましょう。 参考文献一覧 一般社団法人日本リウマチ学会.“関節リウマチ(RA)”.日本リウマチ学会ホームページ 厚生労働省.“第6章関節リウマチ” 厚生労働省.“内科的治療法“ 公益財団法人日本リウマチ財団.“関節リウマチの治療 – リハビリテーション”.リウマチ情報センター.2022-09 公益財団法人日本リウマチ財団.“初めから起こる症状”.リウマチ情報センター.2022-10 公益財団法人日本リウマチ財団.“中期以降の症状”.リウマチ情報センター.2022-10 公益財団法人日本リウマチ財団.“関節リウマチの診断”.リウマチ情報センター.2022-10
2024.07.22 -
- 股関節、その他疾患
- 股関節
大転子滑液包炎(だいてんしかつえきほうえん)は、特にランニングやスポーツなどをおこなう方に多く、1,000人中の5〜6人が発症します。 また、男性よりも女性、40~60歳の方が発症しやすいと言われてます。 大転子滑液包炎について以下のようなお悩みがありませんか? 痛みの改善方法が分からない 症状を悪化させる原因を知りたい ストレッチや運動などの予防策を知りたい この記事では大転子滑液包炎を改善・予防するための正しい知識を身につけ、原因や生活習慣、予防策について解説しています。 将来、自分の足が大転子滑液包炎になるのを防ぐためにも、適切な対策を行えるようになりましょう。 大転子滑液包炎とは? 大転子滑液包炎とは、 股関節の外側に存在する大転子という骨の周囲の滑液包が炎症を起こす症状 です。滑液包とは、関節や筋肉がスムーズに動くために存在する滑液という潤滑液を含む袋のことで、滑液包が炎症を起こすと関節や筋肉の動きが制限され、多くの場合、痛みを伴います。 大転子滑液包炎の原因には「大腿筋膜張筋」と「腸脛靭帯」の2つが関係しています。この2つの組織は大転子の上部を通過しているため、ランニングやサイクリングなどの同じ動作が行われ大転子滑液包と摩擦が起きることで炎症すると言われています。 また、大転子滑液包炎のリスクとなる要因は下記4つです。 転倒やスポーツなどによる外傷 大転子に付着する組織(中殿筋・小殿筋など)の損傷に伴う二次的な滑液包炎 滑液包自体の摩擦・微細損傷による炎症 関節リウマチや痛風などの疾患 外傷や内部の炎症性疾患が大転子滑液包炎を引き起こす要因です。 現在、股関節の疾患に対する治療法のひとつとして「PRP療法(再生医療)」 が注目されています。人間の自然治癒力を活用した治療なので、身体への負担を最小限にできます。詳しい治療方法や効果が気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 大転子滑液包炎の症状 発症初期のころの痛みは股関節の外側と局所的ですが、症状が悪化すると大腿の外側まで痛みの範囲が拡大します。また、大転子を圧迫すると痛みが出現するため、横を向いて寝ることが大変になります。 また、痛みの程度により、日常生活やランニングなどの趣味活動に制限される場合もあるのです。 下記の記事では、股関節の疾患についてまとめています。ほかの病気もチェックしたい方は、あわせてご覧ください。 大転子滑液包炎が発症する原因3つ 大転子滑液包炎の原因は大きく分けて以下の3つがあります。 大転子を動かす激しい運動 長時間の立ち仕事 肥満体型 それぞれ以下で詳しく解説します。 大転子を動かす激しい運動 ランニングやサイクリングなどを頻繁に行う方は、大転子滑液包に対する摩擦が増え、炎症を引き起こす可能性があります。 階段の上り下りや、登山といった関節の動きが活発な動作も、大転子滑液包に負担をかけるため、大転子滑液包炎になる要因のひとつです。 長時間の立ち仕事 一般的に長い時間立っている方は、大転子滑液包にストレスがかかりやすいため、大転子滑液包炎を発症しやすくなります。 また、散歩やランニングの際に体が左右どちらかに傾いていたり猫背などの不良姿勢であることも、大転子滑液包にストレスがかかる原因となります。 このため、立ち仕事が増えたことや、ランニングを始めてから大転子周囲に痛みが出現した方は、大転子滑液包にストレスがかかっているかもしれません。 肥満体型 生活習慣では肥満も大転子滑液包炎の発症に影響を与えます。なぜなら、体重が増えると大転子滑液包にかかる負担も増加するためです。 肥満傾向の方は、体重を少し落とすだけでも痛みや症状の進行を抑えられるでしょう。 また、大転子滑液包炎は「PRP療法(再生医療) 」でも治療できます。PRP療法(再生医療)とは、血液に含まれる血小板の力を利用して傷ついた組織を修復する医療技術です。身体に負担の少ない治療法として、今注目されています。 「PRP療法(再生医療)で大転子滑液包炎はどうやって治療するの?」と気になる方は、再生医療専門の『 リペアセルクリニック 』にお気軽にお問い合わせください。実際の治療例をお見せしながら、再生医療の仕組みをわかりやすくお伝えいたします。 大転子滑液包炎の診断方法 大転子滑液包炎の診断は以下を用いて総合的に行われます。 問診 身体所見の確認 MRI 問診では、これまでの病歴や痛みが出現する前に行っていたこと、どのような時に痛いのかを確認します。身体所見の確認では、大転子を圧迫し痛みが出現するのかを確かめます。関節包に水が溜まっているかどうかや関節包の炎症の有無の判断は、MRIを使用しなければ分かりません。 大転子滑液包炎の効果的な治療方法 大転子滑液包炎の治療方法は大きく分けて以下の3つです。 保存的治療 手術療法 PRP療法(再生医療) それぞれ以下で詳しく解説します。 保存的治療 大転子滑液包炎の保存的治療の重要な目標は、痛みの軽減を図ることです。大転子滑液包炎に限らず、炎症があり痛みが強い場合にはアイシングが有効です。アイシングをすることで炎症を抑え痛みを抑制できます。 また、大転子滑液包の炎症を抑えるためには、ステロイドの注射や消炎鎮痛剤の内服も有効です。しかし、30%の方は痛みが改善しないと言われているため、保存的治療で痛みを改善できない場合には以下の方法の検討も必要となります。 手術療法 大転子滑液包炎が長期化し慢性化すると、大転子滑液包内に異常な血管が生じてしまいます。この場合、ステロイドや消炎鎮痛剤の使用により一時的に痛みは軽減しますが、再度痛みが出現します。 そのため、大転子滑液包炎が長期化している場合は、運動器カテーテル治療を行い、異常な微小血管を減らす治療が有効です。施術時間は20〜30分ほどで終了します。 運動器カテーテル治療後は、大転子滑液包炎による痛みが改善します。しかし、他にも原因がある場合は、痛みが残存する可能性があるため、医師への相談が必要です。 PRP療法(再生医療) 「PRP療法(再生医療)」とは、患者さまの血液に含まれる血小板の治癒力を利用して、傷ついた組織を修復する医療技術です。 注射を打つだけなので、日常生活や仕事への影響はありません。普段どおりの生活を送りながら、早期回復を期待できます。 弊社『リペアセルクリニック』は、再生医療専門のクリニックです。国内での症例数は10,000例以上に及び、多くの患者さんの治療に携わってきました。 大転子滑液包炎は再生医療の治療対象です。弊社では無料相談を受け付けていますので、詳しい治療法や効果を知りたい方はお気軽にお問い合わせください。 大転子滑液包炎の予防法 大転子滑液包炎の予防法を解説します。主な予防法は以下の3つです。 ストレッチ 適度な運動 規則正しい生活習慣 順番に見ていきましょう。 ストレッチ 大転子滑液包炎を予防するためには、股関節周囲の筋肉、 特に「大腿筋膜張筋」の柔軟性を高めること が重要です。大腿筋膜張筋のストレッチは座った状態と寝た状態どちらでも行えます。 まずは座った状態でのストレッチから解説します。椅子に浅く腰掛け、片方の足を反対側の太ももの上に乗せます。上体をゆっくりと前に倒し、太ももの外側に軽い張りを感じるところで20~30秒ほど保持します。反対側も同様に行います。 次に、寝た状態でのストレッチを説明します。両膝を立てて膝を左右どちらかに倒し、20~30秒ほど保持します。膝を右側に倒した時は左足の大腿筋膜張筋、左側に倒した時は右足の大腿筋膜張筋が伸ばされます。 どちらのストレッチも、1日に数回行うことで筋肉の柔軟性を維持できます。ストレッチを行う際は、痛みを感じない範囲で行い、呼吸を止めないように注意しましょう。膝を倒した時に痛みが強い場合は、痛みが出る直前まで倒すことで痛みなくストレッチできます。 無理なストレッチは症状を悪化させる可能性があるため、痛みのない範囲で行うことが大切です。 適度な運動 大転子滑液包炎を予防するためには、股関節周囲の筋力アップが必要です。 ここでは、自宅で簡単に行える以下2つの運動をお伝えします。 スクワット 足を横に開く運動 スクワットの方法は以下のとおりです。 足を肩幅にひらく 膝がつま先より前に出ないように膝を90度ほど曲げる 膝を伸ばし1の状態に戻る 上記を10回繰り返す この時に1つ注意点があり、膝を曲げている時は膝が内側に寄らないようにしましょう。スクワットを行うことで「大腿四頭筋」や「大臀筋」などの筋肉を強化できます。 また、足を横に開く運動は以下のとおりです。 立った状態で椅子や手すりなどに軽くつかまる 体が横に傾かない範囲で片方の足を横に開いて戻す 上記を10回繰り返す この時に1つ注意点があり、足を横に開く時はつま先が外側へ向かないように注意しましょう。足を横に開く運動では「中臀筋」や「小臀筋」の筋肉を強化できます。 規則正しい生活習慣 大転子滑液包炎を生活習慣から予防するためには以下の2つが大切です。 定期的な運動習慣 バランスの良い食事 定期的な運動習慣がなければ足腰の筋力が低下してしまい、大腿筋膜張筋にストレスがかかりやすくなります。また乱れた食生活では肥満につながり、体重が増えることでも大腿筋膜張筋へのストレスが増加します。 これらの日常生活での予防策は、大転子滑液包炎の予防だけでなく、他の整形外科疾患の予防にもつながります。 大転子に関するよくある質問 最後に大転子に関するよくある質問と回答をまとめます。 大転子が痛いと感じたら何科を受診すればいい? 整形外科を受診しましょう。痛みを放置すると症状が慢性化するリスクがあるので、股関節周りに痛みや違和感を感じたら、なるべく早く病院を受診するのがおすすめです。 股関節が突然痛くなり歩けなくなりました。考えられる原因はなんでしょうか? 歩けないほど股関節に痛みが出る原因として考えられるのは、下記の外傷や疾患です。 骨折 大転子滑液包炎 変形性股関節症 変形性股関節症とは、股関節の軟骨がすり減り、骨の変形によって痛みがともなう疾患です。変形性股関節症も「再生医療 」の治療対象です。 まとめ|大転子が痛いと感じたら大転子滑液包炎の可能性あり 大転子滑液包炎は、ランニングやサイクリング、階段の上り下りなど、趣味のスポーツや日常の動作を繰り返す過程で発症します。 症状が悪化すると、歩いたり、横を向いて寝たりする際に強い痛みを感じます。症状の悪化を防ぐためにも、大転子に痛みを感じたら、早めに整形外科を受診しましょう。 現在、大転子滑液包炎の治療法のひとつとして「PRP療法(再生医療)」が注目されています。切らない治療法なので、手術の傷跡や術後の後遺症の心配がありません。 リペアセルクリニック では、無料相談も受け付けていますので「PRP療法(再生医療)で大転子滑液包炎をどうやって治療するの?」と気になる方は、再生医療を専門とする『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 参考文献一覧 ・Effect of corticosteroid injection for trochanter pain syndrome: design of a randomised clinical trial in general practice. Brinks A, van Rijn RM, Bohnen AM, Slee GL, Verhaar JA, Koes BW, Bierma-Zeinstra SM BMC Musculoskelet Disord. 2007 Sep 19; 8():95. ・Lustenberger DP, Ng VY, Best TM, Ellis TJ: Efficacy of treatment of trochanteric bursitis: A systematic review. Clin J Sport Med 2011;21(5):447-453. ・Fox JL: The role of arthroscopic bursectomy in the treatment of trochanteric bursitis. Arthroscopy 2002;18(7):E34. ・渡邉 博史.静的ストレッチングの効果的な持続時間について.第47回日本理学療法学術大会.
2024.07.18 -
- 股関節、その他疾患
- 股関節
「人工関節置換術を受けたのに痛みが続いてしんどい」 「痛みの原因がわからず不安」 人工関節置換術を受けた方で、痛みが続いて本当に回復するのか不安に感じている方も多いでしょう。痛みが続くと日常生活に支障をきたしたり、回復しない焦りで不安になったりしますよね。 そうした術後の痛みに対しては、適切なリハビリテーションと痛みのコントロールが重要です。 そこで今回は、人工関節置換術後の痛みの原因から自宅でできるリハビリテーションの方法、人工関節を長期的に保つためのケア方法まで紹介していきます。 人工関節置換術後の痛みが生じる原因 まず人工関節置換術後に痛みが生じるのは「遺残疼痛(いざんとうつう)」と呼ばれる状態です。 人工関節置換術後、痛みは多くの場合数週間から3カ月程度で回復します。 しかし、痛みが気になる方や長引いている方は、主に以下の原因から生じている可能性があります。 手術による損傷 リハビリ不足 感染(合併症) 人工関節の耐久性の問題 それぞれ詳しく解説していきます。 原因1:手術による損傷 人工関節置換術後に生じる痛みの原因は、手術による損傷が代表的な理由です。 人工関節置換術は、患部の股関節の骨を削る工程があるため、体への負担がかかる治療法です。骨を削るだけでなく、人工関節の埋め込みに伴い、筋肉や血管などを傷つけてしまいます。 手術をしている最中に神経が引っ張られて損傷し、足の感覚が鈍くなる症例も認められています。 多くの場合、手術による損傷は一時的で回復する傾向にはありますが、長引いている方は早めに担当医師に相談しましょう。 以下の記事では、人工関節における年代別のリスクも取り上げているので、あわせてご覧ください。 原因2:リハビリ不足 人工関節置換術後に痛みが生じる原因には、リハビリ不足もあげられます。人工関節置換術後のリハビリは、関節の動きを改善するだけでなく、筋力強化が主な目的です。 リハビリが不足していると、筋肉や靭帯への負荷がかかります。無理に歩くと人工関節周辺にかかった負担が炎症につながってしまうのです。逆に早く痛みを改善しようと、無理なリハビリをおこなってしまうのも注意が必要です。 適切なリハビリ方法は、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。 原因3:感染(合併症) 人工関節置換術後の痛みは、合併症を引き起こした場合でも現れる可能性があります。 痛みを感じる合併症の代表的なものとして感染があり、痛みが長期的に続いたり、強くなったりする方は注意が必要です。 感染が起こると、痛みのほかに関節の腫れ、発赤、熱感、発熱、倦怠感を伴う場合もあります。 なお、以下の危険因子(特定の病気や状態を引き起こす可能性がある要因)がある方は感染症にかかるリスクが高いため、注意してください 肥満 糖尿病 関節リウマチ 心血管障害など 人工関節置換術後に痛みだけでなく、感染を疑わせる症状を伴う場合は、早めに整形外科を受診しましょう。 高齢者の方は、危険因子以外に注意しておきたい手術のリスクがあるため、以下の記事もあわせてご覧ください。 原因4:人工関節の耐久性の問題 人工関節の耐久性も術後に痛みを感じる原因の1つです。 人工関節をできるだけ長持ちさせるには、定期的な診察が重要です。しかし、日常生活において過度に負担をかけていると、耐久性に問題が生じてしまいます。 術後は3カ月、6カ月、1年後、その後は年1回のペースでレントゲン検査や医師の診察を受けましょう。 人工関節への負担を抑えるために、杖のような生活支援用具を使用した生活がおすすめです。 さらに、運動をする場合には、ウォーキングや水中エクササイズ、ルームバイクなどの実施をおすすめします。 ジョギングや器械体操、シングルテニスなどを含め、走ったりジャンプしたりと急な動きは避けましょう。 万が一、違和感や痛みを感じた場合は、我慢せずに医師にご相談ください。早期発見や対処が、人工関節の長期的な機能維持につながります。 人工関節置換術後の痛みに対処する方法 人工関節置換術後の痛みが気になる方には、以下の方法で対処しています。 薬物療法 リハビリ 再手術 それぞれ詳しく解説していきます。 薬物療法 人工関節置換術後の痛みに対処するため、まずおこなわれるのが薬物療法です。 主に、炎症を抑えるためにロキソニンのような痛み止めを処方します。ただし、薬物療法の場合は根本的な解決を目的にしているわけではないため注意してください。 また、薬によっては胃腸障害や眠気などの副作用が伴うケースがあります。長期間使用すると、効果が薄れてしまうため、あくまで一時的な対処と覚えておきましょう。 リハビリ 人工関節置換術後の痛みには、適切なリハビリも重要です。 効果的なリハビリは、関節の動きを改善する運動や筋力をつける運動、日常動作の練習など複数あります。 具体例をあげると、以下のようなリハビリを実施しています。 種類 内容例 関節可動域訓練 足首の曲げ伸ばし 膝の曲げ伸ばし ストレッチポールなどを使った下肢のストレッチ 筋力増強運動 踏み台昇降運動 椅子からの立ち上がり運動 歩行練習 平行棒内歩行 杖歩行 ひとり歩き バランス運動 足踏み運動 日常生活動作の訓練 階段の昇り降り 着替え 入浴 トイレ動作 複数の運動を組み合わせ、患者様の状態に合わせて難易度を上げていくと、関節の機能回復と日常生活への復帰がしやすいでしょう。 再手術 人工関節置換術後の痛みを感じる場合、以下の原因が考えられます。 インプラントの緩み 感染 関節の不安定性 周囲組織の炎症や損傷 診断により原因を特定し、必要に応じて再手術を検討します。 再手術では、緩んだインプラントの交換や、感染組織の除去、位置の修正などを行うことで、多くの場合症状の改善が期待できます。一方で、回復そのものに時間がかかってしまう点には注意が必要です。 人工関節置換術後の痛みには再生医療が1つの選択肢になる 人工関節置換術後の痛みについて、再手術以外の新たな選択肢として再生医療があります。 再生医療は、患者様自身の幹細胞を用いて関節の修復・再生を促す治療法です。手術と比べて体への負担が少なく、軟骨の再生や炎症の軽減により、痛みの改善が期待できます。 従来の人工関節置換術後の痛みに対する治療は、薬物療法やリハビリといった保存的治療、または再手術が一般的でした。しかし、再手術には入院期間や回復期間が必要で、手術に伴うリスクも考慮する必要があります。 再生医療は、そのような手術のリスクを避けながら、痛みの軽減と関節機能の改善を目指す新しい治療選択肢です。 再生医療について、より詳しい情報は以下のページでご紹介しています。痛みでお悩みの方は、ぜひご覧ください。 人工関節置換術後の痛みについて、再手術以外の新たな選択肢として再生医療があります。再生医療は、患者様自身の幹細胞を用いて関節の修復・再生を促す治療法です。 手術を必要としないため体への負担が少なく、治療により炎症の軽減や症状の改善が期待できます。 再生医療について詳しくは、以下のページで紹介しています。痛みでお悩みの方は、ぜひご覧ください。 まとめ・人工関節置換術後の痛みが気になったら早めの受診を! 今回は人工関節置換術後の痛みを感じる原因や対処法について解説しました。 人工関節置換術後の痛みの原因として、手術による損傷やリハビリ不足などがあげられます。 痛みを早く解決するために無理なリハビリをするのはおすすめできません。症状の改善には、専門医による適切な指導のもとでリハビリを進めることが大切です。 また、人工関節の不安定性や炎症が痛みの原因の場合は、再手術が検討されます。「手術を避けたい」とお考えの方には、手術に頼らない再生医療という選択肢もあります。 当院「リペアセルクリニック」では幹細胞を用いた再生医療を行っています。 当院では、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けているので、痛みにお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 人工関節置換術後の痛みの原因が知りたい方からのよくある質問 そもそも人工関節置換術後の痛みはいつまで続くの? 人工関節置換術後の痛みは、手術した日とその翌日をピークに、1週間程度続きます。痛みは次第に回復し、手術後に処方された痛み止めを徐々に減らしていきます。 術後のつっぱり感も多くの場合、半年程度で回復しますが、長期的な健康維持が大切です。 なお、仕事の完全復帰や旅行、スポーツなどを考えている方は6カ月〜1年程度と考えてください。 無理をしてしまうと、痛みが続く期間が伸びる可能性があるため、定期的な受診をおすすめします。 以下の記事では人工関節置換術について、知っておきたいポイントを網羅的に解説しています。 人工関節置換術後にやってはいけないことは? 人工関節置換術後、やってはいけない姿勢や動きがあります。 たとえば、横座りやあぐら、足組みなどがあげられます。和式トイレの使用や前傾姿勢も、脱臼の可能性があるので、控えてください。 また、人工関節置換術後は適度な運動が推奨されていますが、野球やテニスのような関節の動きが多いスポーツは避けましょう。 日常生活でも階段の利用は控え、立ちっぱなしの時間が長くならないよう、座ってできる作業をおすすめします。 転倒にも注意が必要なため、術後はとくに杖やストックを使って歩くのがおすすめです。 自宅でできる予防法はある? 自宅で簡単に行える予防法は、以下のようなエクササイズです。 エクササイズ 内容 目的 足関節ポンプ運動 仰向けに寝て足を台の上に乗せ、足首を上下に動かし、血流を促進する 浮腫の軽減 ストレートレッグレイズ 手術した脚を真っすぐに保ったまま持ち上げ、保持する 太もも前面の筋力強化 膝の屈曲・伸展運動 椅子に座り、手術した膝を曲げたり伸ばしたりする 関節可動域の維持 上記のエクササイズを毎日行うと、筋力と関節の動きが改善され、日常の動作がスムーズに行える場合もあります。 しかし、人工関節の種類によっては関節の動きに制限があるため、必ず医師や理学療法士の指示に従い、痛みに注意しながら行ってください。 なお、エクササイズだけでなく、日頃の感染予防も大切です。手術した部位を清潔に保てるよう、定期的な受診や抗菌薬の服用が主な予防法です。 発熱や腫れ、痛みが生じた場合は速やかに担当医に相談してください。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けているので、気軽にご連絡ください。 \まずは当院にお問い合わせください/
2024.07.17 -
- 脊椎
- 脊椎、その他疾患
脊髄出血という病態を聞き慣れない方もいらっしゃると思います。非常に稀な疾患であり、1826年から1997年まで、たった613例しか報告されていません。 脊髄出血は脊髄血管障害の一つであり、脊髄の血管奇形や血管腫による脊髄血管、加えて外傷によって引き起こされます。症状としては、痛みや麻痺、感覚障害を生じます。 この記事では、脊髄出血の原因や症状について、さらに詳しく解説しています。 脊髄梗塞については、こちらの記事をご参照ください。 脊髄血管障害【脊髄出血】について まず脊髄とは、脳から背骨の中を腰に向かって走る太い神経のことを言います。 脳からの指令を全身の筋肉に伝えて動かしたり、逆に筋肉や皮膚など末梢からの情報を脳に伝える伝導路としての役割を果たしています。 脳血管障害である脳梗塞や脳出血は聞いたことがあるかと思います。これと同じことが脊髄でも起きることがあり、それを【脊髄血管障害】と呼びます。 脊髄への血管が何らかの原因で閉塞してしまうと脊髄梗塞、脊髄内や脊髄周辺に出血を生じた場合には【脊髄出血】となります。 これらを専門的にみる診療科は、主に脳神経外科となります。 脊椎は上から頚椎、胸椎、腰椎、仙骨、そして尾椎から成り、それに合わせて脊髄も頸髄、胸髄、腰髄、仙髄、そしてそれより下の神経は馬尾と呼んでいます。 どのレベルの脊髄が障害されたかによって、出現する神経障害も変わってきます。 脊髄出血の分類 脊髄は3層の膜に覆われており、内側から順に軟膜、くも膜、硬膜となっています。 このうちどこから出血しているかによって、分類が変わります。 脊髄内の出血は髄内出血、軟膜とくも膜の間の出血は脊髄くも膜下出血、くも膜と硬膜の間の出血は脊髄硬膜下出血、そして硬膜よりも外側の出血は脊髄硬膜外出血と呼ばれます。 脊髄出血の頻度や患者背景、出血部位について 脊髄出血は非常に稀な疾患であり、1826年から1997年まで、たった613例しか報告されていません。 その後の医療発展や画像検査技術の向上により、脊髄出血の報告数も増えてきましたが、それでもなお稀な疾患であります。 脊髄出血1010症例を検討した報告では、患者さんの平均年齢は47.97歳(年齢幅:0〜91歳)であり、6割以上が男性でした。 障害部位として多かったのは下位頸髄や下位胸髄であり、病変範囲は2椎体間以上に渡ことが多く、最大で6椎体間分にも広がっていました。 脊髄出血の分類別に見ると、脊髄硬膜外出血の頻度が最も多くなっています。 脊髄出血の原因 下記が主な脊髄出血の原因一覧となります。 脊髄出血の原因の大半を占める 外傷性(交通事故や転落など) 外傷の次に多いのが血管奇形によるもの 脊髄髄内動静脈奇形 傍脊髄動静脈奇形 脊髄海綿状血管腫 傍脊髄動静脈瘻 脊髄硬膜動静脈瘻 その他 硬膜外動静脈瘻 医原性(腰椎穿刺や脊椎麻酔などの合併症) これらの血管奇形は、脈管の発生異常によって起きます。 海綿状血管腫も厳密にいうと腫瘍ではなく、血管奇形です。異常血管の塊が膨らんで海綿状になる病気で、大きくなると脊髄を圧迫したり、また出血することで症状を呈します。 動静脈瘻についてですが、通常は血液が動脈から毛細血管に入り、そこで脊髄やその外側の膜に栄養を届けた後に静脈に流れていきます。 しかし、血管奇形によって毛細血管を介さずに動脈からそのまま静脈に血液が流れてしまうことがあり、これを瘻、あるいはシャントと呼んでいます。 上記原因のほか、稀ですが下記のものも原因として知られています。 脊髄腫瘍 血液疾患 抗血栓薬(血液を固まりにくくする薬剤) 膠原病(全身性自己免疫疾患) 静脈性脊髄梗塞(脊髄静脈の静脈が閉塞する病態) 妊娠後期 抗血栓薬の使用は血栓塞栓症予防に必要な薬剤であり、リスクなしで休薬できるものではありません。 しかし、これに関しては、これ単独ではなく、他の誘因も合わせて脊髄出血を引き起こしていると考える人も少なくありません。 実際には全例で原因が特定されるわけではなく、原因不明のものも中にはあります。 脊髄出血の症状について 出血量が少ないうちは臨床的に症状を認めないこともありますが、神経を圧迫する出血量であれば症状が出現します。 出血は急に起きることが多いため、一般的には突発的に発症します。 しかし、中には症状が徐々に進行するものや、受傷時点から24時間以上、遅いものでは数日経ってから症状を呈した症例もあります。 多くの場合は急激な背部痛の後に、運動障害や感覚障害が現れます。 出血の起きた部位によって運動障害の出る部分が変わってきます。 ●胸椎部での出血の場合… 下肢麻痺、頚椎部ならば下肢に加えて上肢にも麻痺が及ぶことがあります。 出血量が多いほど血液の塊が大きくなるため、症状が重くなる傾向があります。 ●硬膜外や硬膜下での出血場合… ナイフで刺されたような激痛に加え、強い脊髄圧迫症状が出るとされます。 ●くも膜下での出血の場合… 発熱や頭痛、嘔吐などの髄膜炎症状を伴うことがあり、意識障害やけいれんも相まって、脊髄ではなく脳での出血を強く疑われることがあります。 多くの場合には対麻痺といって、両側下肢に対称性に筋力低下を認めます。 横断的に見て脊髄が全体的に圧迫されていると、両側下肢の完全麻痺を生じます。 脊髄が半側だけ、あるいは一部外側だけの障害となると、Brown-Séquard(ブラウン・セカール)症候群となり、特徴的な運動障害と感覚障害を認めます。 具体的には、障害された側の不全麻痺(一部の感覚や運動機能は残る麻痺)と触覚・位置覚・振動覚の消失、そして障害を受けていない側は温痛覚の消失を認めるというものです。 上記のような症状を認めた場合には、緊急手術になる可能性もあります。すぐに脳神経外科のある病院を受診し、検査してもらいましょう。 脊髄出血の検査所見 脊髄出血は早期発見・早期治療が予後を左右します。 検査としてはCT検査やMRI検査を行いますが、MRIの方が得られる脊髄に関する情報を多く得られるため、診断方法としてより有用とされています。MRIにおいて、時間経過とともに血腫の見え方は変わってきます。 さらに、外傷性の脊髄出血では複数の層にまたがって存在する場合があり、そのような状態では診断が難しいこともあります。 他には、血管内に細い管を入れ、そこから造影剤を流すカテーテル検査を行っている施設もあります。利点としては、MRIでは確認しにくい細かい血管もみることができます。 出血の箇所や範囲や治療戦略にも関わってくるため、専門医による的確な診断が必要となります。 脊髄出血の治療 基本的な治療は、手術によって神経への圧迫を除去することになります。 脳神経外科での外科的手術のほかに、放射線科にて血管からカテーテルという細い管を通し、それを用いて出血している血管を塞ぐ血管内治療があります。 後遺症として運動障害や感覚障害が残ってしまった場合、リハビリテーションでの機能回復を目指します。 さらに現代は、再生医療によってダメージを受けた神経を再生、あるいは神経を新生する根本的治療に注目が集まっています。 治療や予後に関する詳細は以下の記事で解説しています。 脊髄出血についてのQ&A Q:脊髄ショックと言われましたがよくなりますか? A:脊髄ショックは一過性と言われており、多くの場合は数時間で回復しますが、中には数週間かかることもあります。ショックから離脱すると、脊髄反射が回復しますが、まだ脳からの制御が完全に伝わるわけではありません。突っ張るような「痙性」が起こります。どこまで回復できるかは、その後の経過次第でしょう。 Q:MRIで脊髄血管奇形があると言われましたが、血管造影検査を勧められています。なぜいくつも検査をするのですか? A:血管の構造の評価や動脈と静脈が短絡した「シャント部」など細かい血管の評価はMRIでは難しいです。そのため、造影剤を用いた脊髄血管造影撮影(カテーテル検査)が行われます。この先の治療方針の決定に繋げるためにも必要な検査です。 まとめ脊髄出血とは?脊髄血管障害の原因や症状 脊髄血管障害の一つである脊髄出血は、脊髄内あるいはその周辺に出血を生じた状態のことを言います。多くは外傷性ですが、次に多いのは脊髄血管奇形によるものとされています。 一般的に症状は突然に見られ、背部痛の後に運動障害や感覚障害を認めますが、中には1日以上経ってから症状が出現する症例もあります。 出血の場所や程度によりますが、早急な治療を行えば回復も見込めます。 ただし、脊髄へのダメージが大きい場合や障害を受けてから時間が経ってしまった場合には、後遺症が残ります。 以前までは後遺症に対しての治療といえばリハビリーテーションのみでしたが、現代では再生医療による根本的治療が可能となり、実際に脊髄障害による長年の症状を改善できた症例も見受けられます。 当院では入院不要で外来のみで再生医療を受けることができます。気になる方はぜひ当院へ一度ご相談ください。 参考文献一覧 Kreppel D, Antoniadis G, et al. Spinal hematoma: a literature survey with meta-analysis of 613 patients. Neurosurg Rev. 2003; 26: 1–49. Domenicucci M, Mancarella C, et al. Spinal epidural hematomas: personal experience and literature review of more than 1000 cases. J Neurosurg Spine. 2017: 27;198–208. Moriarty H K, Cearbhaill R O, et al. Mr imaging of spinal haematoma: a pictorial review. Br J Radiol. 2019: 92; 20180532. Mashiko R, Noguchi S, et al. Lumbosacral Subdural Hematoma—Case Report—. Neurol Med Chir. 2006; 46: 258–261.
2024.07.16 -
- 股関節、その他疾患
- 股関節
シンスプリントは、主にランナーやアスリートの間でみられる症状で、すねに痛みを引き起こす状態です。オーバートレーニングや不適切な運動が原因となり、すねの骨に過度のストレスがかかる結果、炎症や筋肉の微細な損傷を引き起こします。初期症状の場合は運動中に痛みが出現しますが、重症化すると立っている時や安静時にも痛みを感じることもあります。 では、シンスプリントの治療法について以下のようなお悩みはありませんか? 正しい治療方法を知りたい どのようにリハビリを行うと良いか分からない 日常で気をつけることやスポーツ復帰の目処を知りたい この記事ではシンスプリントの治療法、具体的なリハビリテーション方法、そしてスポーツへの復帰について詳しく解説します。健康的な身体を維持し、最高のパフォーマンスを発揮するために、これらの知識を身につけることは非常に重要です。 シンスプリントの治療法 シンスプリントの原因はオーバートレーニングやランニングフォーム、足の形状や筋力低下などであるため、適切に治療することが重要です。 また、シンスプリントの痛みの程度に応じて以下3つの治療を行います。 安静とアイシング 薬物療法による疼痛緩和 リハビリテーション それぞれ詳しく解説します。 安静とアイシング シンスプリントにより痛みや腫れが出現している場合は、安静にする必要があり、疲労した筋肉や骨を休めましょう。痛みを我慢して運動を続けていると、症状が悪化したり、最悪の場合は疲労骨折する可能性があるので注意が必要です。安静期間やスポーツへの復帰については下記の項目で詳しく解説します。 また、安静に併せてアイシング、要するに痛い部分を氷などで冷やすことも重要です。アイシングを行うと、腫れを抑えられ、痛みの増悪も軽減できます。 ただし、アイシングを行う際は以下に注意しましょう。 袋に入れた氷をあてる際はタオルを挟める 1回に冷やす時間は15~20分程度 アイシングの際、短時間で急激に冷やそうとタオルを挟めず長時間あて続けると、凍傷になる可能性があるため上記の項目を守りましょう。1度アイシングを行い、その後1時間ほど間を空けてから再度冷やすことで、アイシングの効果をさらに高められます。 薬物療法による疼痛緩和 シンスプリントの治療法の1つとして薬物療法があり、主に疼痛緩和を目的に行われます。痛みが強く日常生活に支障をきたす場合には、整形外科を受診し、医師に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの使用を相談してみましょう。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に限らず、薬物療法には副作用のリスクもあるため、医師の指導のもと用法用量を守って使用することが重要です。 しかし、薬物療法は痛みを一時的に和らげるためのもので、根本的な腫れや炎症などの問題が解決するわけではありません。 なぜなら、シンスプリントの原因には、過度なトレーニングやランニングフォーム、足の形状や筋力低下などが関与しているからです。このため、薬物療法に併せて原因に対しての治療も重要です。 リハビリテーション 薬物療法と並行して、痛みの予防や再発防止に向けたリハビリテーションを行うことも大切です。 リハビリテーションの目的は以下の3つです。 筋肉や関節の柔軟性の向上 筋力強化 シンスプリントの痛みを軽減・再発 リハビリテーションは自宅で行えるメニューから、歩行姿勢やランニングフォームの改善で行います。歩行姿勢やランニングフォームの改善の際、専門家(理学療法士)の指導のもと、正しい運動方法を習得することが必要になる場合があります。 以下では、自宅で行える具体的なリハビリテーション方法について解説しているので、詳しく見ていきましょう。 ただし、正しい方法で行わなければ痛みが増悪する可能性があるので、注意しながら行いましょう。 シンスプリントの具体的なリハビリテーション シンスプリントに対しては以下3つのリハビリテーションが有効です。 ストレッチと筋肉強化 テーピングやサポーターの活用 日常生活での注意点とスポーツ活動再開のタイミング それぞれ詳しく解説します。 ストレッチと筋肉強化 シンスプリントに有効なストレッチと筋力強化について以下の3つを紹介します。 ふくらはぎ(ヒラメ筋や後脛骨筋など)のストレッチ ゴムチューブを用いた「ふくらはぎ」の低負荷の筋トレ 足指でタオルを引き寄せる運動 ふくらはぎ(ヒラメ筋や後脛骨筋など)のストレッチはシンスプリントの痛みを和らげるのに効果的です。ヒラメ筋のストレッチ方法はアキレス腱のストレッチに似ていて、足を前後に開いて後ろ足のヒラメ筋を伸ばしますが、この時後ろ足の膝は曲げて行うことが大切です。後ろ足の膝を伸ばして行うと、ヒラメ筋のストレッチにならなくなってしまいます。また、反動をつけると筋肉を痛めてしまう可能性があるため、ゆっくり30秒ほどかけてストレッチを行うと効果的です。 ゴムチューブを用いた「ふくらはぎ」の低負荷の筋トレでは、足指の付け根にゴムチューブを巻き、手前に引きます。かかとは床につけた状態で、ゴムチューブを伸ばすようにつま先を下に伸ばします。負荷の設定方法は、低負荷から始め、徐々に負荷量を上げていくのが一般的です。いきなり高負荷でトレーニングすると筋肉が再び炎症する可能性があるので注意しましょう。 『足指でタオルを引き寄せる運動』は、床に敷いたタオルの上に足を置き、足指でタオルをつまんで離してを繰り返し、タオルを手前に引き寄せる運動です。この運動では「長母趾屈筋」と「長趾屈筋」が強化され、筋肉の滑走性が滑らかになります。 テーピングやインソールの活用 上記のリハビリテーションの他に、テーピングやインソールを使用することでも痛みを軽減できます。 テーピングは、筋肉や靭帯に適度な圧力を加えて安定化させ、痛みの軽減や再発防止に効果があります。特に、ランニングや他のスポーツをする際の足への負担を軽減するのに役立つため、スポーツ選手には欠かせない存在です。 シンスプリントに対するテーピング(伸縮性)の巻き方は以下の通りです。 1本目:外くるぶしから足裏を通って引っ張り上げながら膝下まで張る 2本目:1本目同様に、数cmずらして貼る 3本目:痛い部分の上をテーピングで1周巻く(大体すね下1/3付近) 4本目:数cmずらして1同様に1周巻く また、自分の足に合ったインソール(中敷)に変更することでも、シンスプリントの痛みの予防につながります。なぜなら、足のアーチが崩れると、バランスをとる際に筋肉に負担がかかってしまうからです。足のアーチを支えるインソールは数千円と高額ですが、痛みの予防につながり、一生使う自分の足を守れると考えると決して高い買い物ではありません。 ただし、テーピングやインソールの活用だけでシンスプリントが完治するわけではないので注意しましょう。 日常生活での注意点とスポーツ活動再開のタイミング シンスプリントにおける日常生活での注意点とスポーツ活動再開のタイミングは、以下のWalshによる疼痛stage分類を参考に行います。 分類 内容 Stage 1 運動後にのみ疼痛あり Stage 2 運動中に疼痛あるが,スポーツ活動に支障なし Stage 3 運動中に疼痛あり,スポーツ活動支障あり Stage 4 安静時にも慢性的な持続する疼痛あり Stage1〜3の場合、痛みによる日常生活への影響は少ないことが多いです。しかし、Stage4の場合は痛みの増悪を防ぐためにも、安静にしなければいけません。 また、スポーツ活動のタイミングは以下の通りです。 症状が軽度の場合:約2週間 症状が重度の場合:2〜3ヵ月 ただし、いきなり激しい運動を行うと、再度シンスプリントを発症する可能性もあるため、初めはウォーキングなどから低負荷な運動から始めましょう。 シンスプリントをしっかり治療してスポーツに復帰しよう シンスプリントは適切に治療することで、再びスポーツに復帰できます。 治療の選択は、シンスプリントによる腫れや痛みが強い場合は、アイシングと安静が必要です。併せて薬物療法を行うことで痛みがさらに軽減できます。リハビリテーションは腫れや痛みが治ってきてから徐々に始めましょう。 シンスプリントは一度治っても、再発する症状であるため、日頃からシンスプリントにならないようにストレッチや筋トレを行い予防していきましょう。 参考文献 三笠製薬株式会社.15.シンスプリント. jason E. Bennet.Running and Osteoarthritis: Does Recreational or Competitive Running Increase the Risk?. 持田尚.床反力からみた中学陸上競技者のシンスプリント発症に関する前方視的研究.
2024.07.11 -
- 内科疾患、その他
- 内科疾患
血友病は、一生付き合っていかなければいけない疾患です。 しかし、出血のリスクがあっても、しっかりコントロールできていれば、血友病ではない方と同じような生活を送ることも可能です。適切な治療と予防策で、関節の機能を維持し、生活の質を向上させることができます。 ところが、血友病性関節症を発症してしまうと、痛みや腫れをともない、日常生活にも影響を及ぼします。 今回の記事では、血友病性関節症の基礎知識や症状、治療などについて詳しく解説します。生活の中でできる対策も紹介しますので、血友病性関節症に対し不安を抱いている方は、ぜひ、最後までお読みください。血友病性関節症の知識を深めて、不安や心配事が少ない生活を送りましょう。 血友病性関節症とは? 血友病性関節症とは、血友病患者が関節内で出血を繰り返し起こした場合に発症します。血友病の特徴的な合併症です。ここでは、血友病性関節症の症状や診断、疾患が関節に与える影響について解説します。 症状と診断 関節内出血を起こすと、以下のような症状があらわれます。 関節の痛み 腫れ 熱感 こわばり 違和感 動きの悪さ 重い感じ 関節内は狭いため、少しの出血でも症状があらわれる場合が多いです。血友病性関節症の診断は、関節の状態を検査し評価して診断します。血友病性関節症を疑う場合、以下のような4つの検査をおこないます。 触診 レントゲン検査 MRI検査 超音波(エコー)検査 触診では、関節の可動域や変形を確認します。レントゲン検査では、骨の状況は評価できますが、出血の状況までは把握できません。レントゲン検査で、明らかな所見があらわれる頃には、骨破壊が進んでいる状況と考えられます。MRI検査は、骨だけでなく軟骨やじん帯、滑膜の肥厚など、関節内部を詳しく評価できます。 ただし、MRI検査は撮影に30分ほど時間がかかります。その間、静止していなければならないため、小さな子どもには難しい検査といえるでしょう。エコー検査では、パワードップラー法を用いると、血液の観察をおこない滑膜炎の評価も可能です。これら4つの検査を組み合わせて、関節の状態を評価し診断します。 疾患が関節に与える影響 血友病は、出血を起こしやすい病気です。出血を起こしやすい部位として最も多い関節が、足関節だとされています。 次いで、肘関節、膝関節が出血頻度が高い傾向です。関節内に出血を起こすと、滑膜が働いて、関節内に溜まった血液を取り除こうとします。 しかし、出血が繰り返されると滑膜の働きが追いつかなくなり、滑膜の増殖と炎症を引き起こします。増殖した滑膜は、脆弱で細い血管が多いために出血しやすい状態です。出血を繰り返すと、滑膜の増殖や炎症も繰り返し生じます。 その結果、関節の軟骨を攻撃し、軟骨の破壊や骨の変形を引き起こすのです。 血友病性関節症の治療 血友病の長期的な治療目標として、血友病性関節症を発症しない、進行させないを目標として治療方針を決めていきます。 現在の治療オプション 現在、血友病性関節症の治療の選択肢は、以下の通りです。 定期補充療法 予備的補充療法 出血時補充療法(オンデマンド療法) 基本的にこの3つの治療方法を組み合わせ、状況によって使い分けます。 <定期補充療法> 定期的に血液凝固因子製剤を投与する方法です。出血予防のため、「週に2回」や「5日に1回」など、決められたタイミングで注射をおこないます。使用する製剤の種類や血友病の重症度で注射のタイミングは医師が判断します。 医師の指示通り、忘れず注射しましょう。 <予備的補充療法> 足に負担がかかる予定の前に事前に血液凝固因子製剤を投与しておく方法です。スポーツや出張、遠足、旅行などが予定されている場合、事前に注射をおこないます。血液凝固因子製剤は、効果が持続する時間が短くて12時間程度です。 そのため、予定があるその日の朝に注射しておくとよいでしょう。 <出血時補充療法(オンデマンド療法)> 出血したときに血液凝固因子製剤を投与する方法です。出血時には、できるだけ早く血液凝固因子製剤を投与します。 また、出血の応急処置時に必要な4つの処置(RICE)をおこないましょう。RICEとは、処置方法の頭文字を取ったものです。ここでは、関節内出血をした場合の処置のポイントについて紹介します。 頭文字 処置方法 処置のポイント R (Rest) 安静 • 横になり、出血した部位を動かさないようにし安静にする。 I(Ice) 冷却 • 氷のうで20~30分持続的に出血部位を冷やす。 • 消炎作用がある湿布や冷却シートでもよい。 • 冷やし過ぎに注意する。 C (Compressi on) 圧迫 • 関節内の出血の場合、包帯やサポーターを使用し固定する。 E(Elevation) 挙上 • 出血部位を心臓より高い位置まで上げる。 関節内出血の治療以外に、直接関節内にヒアルロン酸やステロイドを注入する方法もあります。 しかし、感染や出血のリスクをともなうため、メリットが上回る場合のみおこなわれる方法です。 新しい治療法と臨床試験 血友病性関節症の新しい治療法として、「自己骨髄間葉系幹細胞輸注術」と呼ばれる治療法の研究や臨床試験が進められています。この治療で使用される「間葉系幹細胞」とは、骨や血管、心臓の筋肉などに分化することができる幹細胞です。 移植までは以下のような流れでおこなわれます。 事前に採血をおこない血清を準備 骨盤から間葉系幹細胞が含まれる骨髄液を採取 間葉系幹細胞を培養 移植前日に、関節内の滑膜組織を切除し移植環境を整える 間葉系幹細胞が多く含まれている血清を関節内に注入 関節内へ移植をした間葉系幹細胞が、関節軟骨への再生が期待されています。現在は膝関節での臨床試験がおこなわれていますが、今後はその他の関節や適応できる年齢を広げて研究が進められています。 関節保護のための戦略 血友病性関節症は、関節内の出血を繰り返し、関節の骨や軟骨を破壊します。 そのため、破壊され続けると、血友病患者は将来的に人工関節を入れる可能性が高くなります。人工関節は10年~15年で入れ替えが必要です。 早い段階で人工関節を入れると、その後に何度か入れ替えの手術が必要になります。人工関節を入れるまでの期間を延ばせれば、手術回数も少なくなります。そのため、日常の中でできる関節の保護や関節の健康を保つ運動、予防策など、関節のケアが重要です。 日常活動での関節保護テクニック 日常活動の中で、出血を起こさないために関節保護はとても大切です。関節保護には以下のようなポイントがあります。 血液凝固因子製剤の投与 定期健診 出血後の対応 適度な運動 患者の状態や生活スタイルを考慮して、血液凝固因子製剤の投与量や間隔を決めていきます。 そのためには、定期的に検査をおこない、関節の評価も必要なため、定期検診は欠かさず行きましょう。また、関節の保護には出血後の対応や管理も重要です。出血があった場合や出血した可能性がある場合には、血液凝固因子製剤を投与し、RICE処置をおこないます。 しかし、出血が治まり痛みや腫れなどの症状が消失すれば、適度な運動をして筋力をつけていくことも大切です。 関節の健康を保つ運動と予防策 関節の健康を保つためには、適度な運動が必要です。血友病患者は、「出血したらどうしよう」と不安な気持ちを抱えています。 しかし、出血を起こさないようにと安静にばかりしていると、筋力が衰え、筋肉の委縮を引き起こします。また、そのように筋肉が健康な発達をしていない関節は出血しやすい傾向です。 出血や症状が治まっているときには、出血の予防策を十分にしてから適度な負荷をかけ、運動をおこないましょう。出血予防は、血液凝固因子製剤の予備的補充投与をしてから運動をします。 運動は内容によっては、出血リスクが高いものがあります。水泳やアクアビクス、サイクリング、筋トレなどは、比較的負荷が少なく出血リスクが少ない傾向です。 しかし、ラグビーやレスリング、ボクシングなどは負荷が高く、出血リスクも高くなります。サッカーや野球、バスケットボールなどのスポーツは、運動強度に幅があるため、自己判断は難しいでしょう。 また、負荷が少なく出血リスクが少ない運動でも、血友病の重症度や関節の可動域、出血コントロールの状況など、人によりさまざまです。そのため、運動を始める際には、必ず整形外科医や理学療法士と、どの程度の運動から取り組むか相談してからおこないましょう。 生活の質を向上させるための日常生活での調整 血友病性関節症では、出血の予防だけでなく、食事やストレスなどさまざまな面でも調整が必要です。どのようなことに注意や意識をして生活をするか、生活の質を向上させるポイントを紹介します。 食生活と栄養 食事は、規則正しく栄養バランスを考えた食事をするよう心がけましょう。肥満は、関節や骨に大きな負担をかけます。 適切な体重を維持するよう、食べ過ぎに注意し、適度な運動を取り入れましょう。急なダイエットも関節には負担がかかるため、体重のコントロールについて、主治医と相談すると安心です。また、血友病患者は骨粗しょう症になる傾向があります。カルシウムやビタミンDの摂取、日光浴をおこない、骨粗しょう症の予防をしましょう。 ストレス管理と精神的健康のサポート 血友病性関節症の患者は、日常生活の中でも気を付けることや制限があり、ストレスを感じる場面が多いでしょう。一般的に、ストレスが溜まっているサインは以下のような症状があらわれます。 イライラしやすく怒りっぽくなる 食欲がなくなる 気分が落ち込みやる気が起きない 寝つきが悪くなり夜間に目が覚める ストレスをうまく発散し、ため込まないことがポイントです。ストレスによる症状がある場合、まずは、主治医に相談してみましょう。必要であれば、心療内科やカウンセリングを受け、精神的に安定して過ごすことが大切です。血友病患者には、血友病患者にしかわからない悩みや不安もあります。ほかの血友病患者との繋がりをもってみると、悩みが共有でき不安が解消できるかもしれません。 患者と家族への支援 血友病患者には血友病患者にしかわからない、悩みや不安があるでしょう。家族もまた同じです。そのような方々の集まりに参加してみてはどうでしょうか。さまざまな年齢の血友病患者とのコミュニケーションは、悩みや不安が共有でき、有意義な情報交換の場となるでしょう。 コミュニティリソースとサポートグループ 血友病患者が利用できる、コミュニティリソースやサポートグループは、以下のようなものがあります。 血友病友の会(ヘモフィリア友の会) 世界血友病連盟(WFH) 血友病患者のためのオープンチャット さまざまなコミュニティリソースやサポートグループがあります。血友病友の会(ヘモフィリア友の会)は、加盟する患者会が全国にあります。また、世界血友病連盟は、世界の血友病患者のコミュニティです。 海外在住の方には、心強い情報源となるでしょう。血友病患者のためのオープンチャットもあります。匿名で参加できるため、身近な人にできない相談事も気軽にできるところが利点です。 ただし、オープンチャットは誰でも参加できるものなので、情報の信憑性には注意が必要です。 長期的な健康管理の重要性 血友病は、長く付き合っていく病気であり、血友病性関節症はその後の生活の質(QOL)を大きく左右します。そのため、長期的な健康管理が非常に重要です。 無理をしたり、出血の管理をおろそかにすれば、関節内の出血が繰り返され、人工関節をいれなければならなくなります。人工関節の入れ替えをする回数を減らすためにも、人工関節にするのはできるだけ遅い方がいいでしょう。 また、出血を恐れ、安静にばかりしていても、骨や筋肉が衰えていきます。肥満になれば、関節への負担も大きくなります。出血しないよう血液凝固因子製剤の投与を忘れずにおこない、負荷が高くなる予定があれば、予備投与しておくなど対策が大切です。 長期的に健康管理をおこなうことで、血友病性関節症の発症を遅らせたり、発症しても進行させないようにしたりできるでしょう。 結論 血友病性関節症は、血友病患者にとっては身近であり心配な合併症です。しかし、血液凝固因子製剤の投与や出血時の適切な対応をおこなえば、骨破壊を抑え、血友病性関節症の発症や進行を遅らせることができるでしょう。 血友病性関節症は、適切な治療と予防策をおこなえば関節の機能を維持して、生活の質を向上させることが可能です。普段との違いや関節の違和感などがある場合は、早めに受診しておくと安心です。なにかあれば、まずは主治医に相談しましょう。 参考文献一覧 血友病性関節症診療のポイント-病態から治療・ケアまで 血友病ハンドブック 血友病性関節症を防ぐ5つのポイント 血友病性関節症への挑戦 関節の検査と評価の最新情報 血友病性関節症に対する自己間葉系細胞移植治療の開発 血友病患者における運動とスポーツ 患者中心医療の可能性:患者会の現在と将来
2024.07.10 -
- 肝疾患
- 内科疾患
アルコール性肝炎は、過剰な飲酒によって引き起こされる肝臓の病気です。アルコール性肝障害(アルコール性肝疾患)の中でも、特に肝臓の炎症が強い病態で、時に命に関わることもあります。また、症状が落ち着いた後もお酒を飲み続けてしまうと、長期的に肝硬変につながりかねません。 この記事では、 アルコールと肝臓の病気について アルコール性肝炎とその治療 肝硬変への進行を防ぐ最新の治療法 を中心に詳しく説明していきます。 飲酒による肝臓へのダメージが心配な方、アルコール性肝障害と診断を受けた方はぜひお読みください。 アルコール性肝炎の原因や症状に関しては以下の記事で解説しておりますので、そちらをご参照ください。 飲酒と肝臓の関係 肝臓は多くの働きをしていますが、アルコールの代謝もそのうちの一つです。体内に取り込まれたアルコールの代謝の過程で、アセトアルデヒドという有害物質が生成されます。アセトアルデヒドは酵素の働きにより無害な物質になり、最終的には体外に排出されます。しかし、アルコールの過剰摂取を続けると、アセトアルデヒドが肝臓の細胞にダメージを与えます。 過剰なアルコール摂取は腸内の細菌バランスを崩すことでも肝臓に悪影響を与えます。腸内には多くの細菌が存在し、これらが食物の消化や免疫力の維持に重要な役割を果たしているのです。しかし、アルコールを大量に飲むと、このバランスが崩れ、腸の壁が弱くなります。その結果、本来吸収されないはずの有害な物質が腸から血液を介して肝臓に届き、炎症を引き起こすのです。 このように、アルコールは肝臓に多大な負担をかけ、さまざまな肝臓の病気を引き起こす原因となります。 アルコール性肝障害になりやすい人 一般的に、女性は男性よりも少ない量のアルコールで肝障害を起こしやすく、進行も早い傾向があります。 また、アセトアルデヒドを代謝するALDH2という酵素がうまく働かない人は、アルコールの分解が遅くなり、アセトアルデヒドが体内にたまりやすくなります。ALDH2がうまく働かない人は、お酒を飲むとすぐに顔が赤くなったり、気持ち悪くなったりするフラッシング反応が見られることが多いです。 アセトアルデヒドの代謝が遅れるため、肝臓に大きなダメージを与え、アルコールによる肝障害を引き起こすリスクが高まります。 アルコール性肝障害の分類における位置付けは? アルコール性肝炎は「アルコール性肝障害(アルコール性肝疾患)」と呼ばれる病態のなかの一つの状態です。慢性的な経過の中で起こる、急激な肝臓の炎症という位置付けです。 アルコール性肝障害とは、過剰なアルコールの摂取により肝臓が障害を受けた状態全般を指す言葉です。 一般的には5年以上にわたって純アルコールあたり60g以上を常習的に飲むと「過剰」と考えられます。ただし、女性やALDH2がうまく働かない人はこの3分の2程度の飲酒量でも過剰となります。 お酒をやめると肝機能の検査値は改善すること、ウイルスや自己免疫疾患など他の肝障害をきたす要素が否定的であることもポイントです。 アルコール性肝障害には次のような疾患が含まれています。 アルコール性肝障害の分類 アルコール性脂肪肝 アルコールにより肝臓の30%以上に脂肪が溜まってしまっている状態。 アルコール性肝線維症 アルコールにより肝臓に線維組織が出現し始めているが、炎症や肝細胞のダメージは軽度である状態。 アルコール性肝硬変 アルコールによるダメージが重なり、肝細胞が繰り返し再生を繰り返して線維化し硬くなっている状態。 アルコール性肝炎 アルコールの過剰摂取により肝細胞の変性・壊死が強く出ている状態 アルコール性肝がん アルコールによるダメージを肝臓が受けている状況下に肝がんができており、他の原因が除外できている状態。 慢性的に過剰飲酒を続けると、脂肪肝→肝線維症→肝硬変と順番に進行していく可能性があります。アルコール性肝炎ではこの慢性経過とは別に、酒量の増加などをきっかけにして肝臓に強い炎症が起こります。 背景の肝臓の組織が軽度の脂肪肝であっても進行した肝硬変であっても、肝細胞が変性や壊死を起こしていればアルコール性肝炎と考えます。 つまり、もともとアルコールによる肝臓の障害がある方が、さらに過剰飲酒することで肝臓に強い炎症とダメージが起こってしまっているのがアルコール性肝炎なのです。 アルコール性肝炎の検査と診断 確実に診断をつけるのであれば、肝生検を行う必要があります。 肝生検 肝細胞が著明にふくらみ変性していたり、壊死していたりする様子が認められます。また、マロリー小体という特徴的な構造物や多数の炎症細胞の浸潤が認められることも多いです。特徴的な病理組織が認められれば、確定診断に至ります。しかし、全身状態の悪い方の肝生検は時に高いリスクを伴うため、すべての患者さんにできる検査ではありません。 血液検査・画像検査 肝生検ができない場合は、病歴や血液検査・画像検査から診断を行います。飲酒の状況や、黄疸などの症状を確認し、血液検査でASTやALTなどの肝酵素値を測定します。また、超音波検査やCTなどの画像にて肝臓の腫れなどを確認することも重要です。これらの検査結果を総合してアルコール性肝炎として矛盾がなければ臨床的診断となります。 アルコール性肝炎の治療と予後 アルコール性肝炎と診断されたら、以下のような治療法が検討されます。 断酒する アルコール性肝炎と診断されたら、まず断酒をする必要があります。しかし、アルコール性肝炎になるほどの飲酒をされている患者さんでは、お酒を断つことが非常に難しい場合も多いです。アルコールの離脱症状として、手が震えたり強い不安が出たり幻覚が見えたりすることもあります。そのため、内科と精神科で協力して治療を行うことも多くあります。 点滴や栄養療法 また、アルコール性肝炎の患者さんは、水分や様々な栄養素が不足した状態にあるため、点滴や栄養療法が必要です。 中等症から重症の場合は、「ステロイド」と呼ばれる炎症を抑える薬を併用します。さらに重症のアルコール性肝炎の場合、炎症を起こす白血球を取り除く治療、毒素を吸着する血液浄化療法など高度の治療を行います。 急性期の予後 アルコール性肝炎の急性期の予後は、飲酒をやめた後の肝臓の状態により異なります。飲酒をやめても肝臓の腫れが引かない場合は生命予後不良であることが多いです。肝性脳症・肺炎・急性腎不全・消化管出血など内臓の合併症がある患者さんも、命に関わることが多いです。 予後不良と考えられる方、重症度の高い方は積極的な治療が必要です。 治療後の肝硬変への進展予防 アルコール性肝炎から回復したあとに重要なのは、断酒を継続することです。お酒を断つことで、再発を防ぐだけでなく、肝硬変への進展も予防することができます。 たとえアルコール性肝炎から回復しても、また飲酒を再開してしまうと肝臓へのダメージは蓄積されます。アルコールによるダメージにより、肝臓に線維組織がたまっていきます。肝硬変への進行を予防するためには、禁酒を続けることが重要です。 しかし、アルコールには依存性があります。これまで過度の飲酒をしてきた方が断酒をするのは難しいケースが多いのです。 どうしても断酒できない場合は、精神科の受診も選択肢です。 アルコール依存の専門外来では、カウンセリングのほか、飲酒により不快な症状を起こす薬や飲酒欲求を軽減する薬が処方されることもあります。また、家族など身近な人のサポートも重要です。アルコール依存症の自助グループの活動に参加する方法もあります。 今、お酒がやめられないことに悩んでいるのであれば、主治医・医療スタッフ・家族などと相談しながら、ご自身に合った方法をみつけるのが良いでしょう。 アルコール性肝疾患治療の最前線 これまでの治療では、一度アルコールでダメージを受けてしまった肝臓は元に戻らないと考えられていました。しかし、「再生医療」の進歩によって、この考えが変わる可能性があります。 肝硬変の再生医療には万能細胞の「幹細胞」を使用します。幹細胞を点滴で投与すると、損傷した肝組織に働きかけて再生と修復を促します。 これにより、改善方法がなかった肝臓の線維化が改善される可能性が出てきました。 とはいえ、再生医療はまだ発展途上です。使用する幹細胞の採取方法も、培養技術の質も医療機関ごとに異なっています。再生医療を希望する方は、より良い治療を受けられる医療機関を自ら選ぶ必要があります。 まとめ・アルコール性肝炎の治療と再生医療という選択 アルコール性肝炎は、アルコールの過剰摂取によって肝臓に重大なダメージを与える病気です。飲酒歴や診察・各種検査を総合的に判断して診断されます。治療の大原則は飲酒をやめることです。 一度アルコール性肝炎をきたした後は、断酒を継続することが重要です。肝硬変になるのを防ぎ、健康的な生活を送りましょう。 ダメージを受けた肝臓の治療を考えたいのであれば、再生医療が選択肢になるでしょう。 もし、再生医療による肝臓の治療に興味があるのであれば、当院での治療をご検討ください。 当院では、ご自身の脂肪細胞から幹細胞を採取します。培養も患者さん本人の血清を利用します。そのため、アレルギーや感染症などの有害事象の心配を極力減らすことが可能です。 さらに当院の細胞培養室は国内トップレベルです。一般的に行われている凍結による保存・輸送を行わないため、途中で死んでしまう幹細胞を減らすことができます。結果、より多くの幹細胞をフレッシュな状態で投与できます。 当院の再生医療について、もっと詳しく知りたいという方は、一度カウンセリングを受けてみてはいかがでしょうか。 参考文献 アルコール医学生物学研究会. アルコール性肝障害診断基準 厚生労働省. e-ヘルスネット. アルコールと肝臓病 厚生労働省.e-ヘルスネット.アルコール性肝炎と非アルコール性脂肪性肝炎 アルコール医学生物学研究会. アルコール性肝障害診断基準. 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 肝炎情報センター. アルコール性肝障害. 厚生労働省. e-ヘルスネット - アルコール依存症への対応. 吉原達也, 笹栗俊之. 福岡醫學雜誌. 103 (4): 82-90, 2012. 江口暁子, 岩佐元雄. 日本消化器病学会雑誌 119(1): 23-29, 2022. 池嶋健一. 肝臓 59(7): 342-350, 2018.
2024.07.09