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大腿骨頭壊死の治療法?従来の治療と再生医療の可能性 大腿骨頭壊死は、骨盤と股関節を形成している大腿骨頭という部分への血流が何らかの原因で低下、流れなくなった結果、骨が壊死してしまう病気です。 治療としては、股関節への負担を減らすような生活をする「保存療法」や、のちぽど説明する「手術療法」があります。 その他にも新しい流れとして、大腿骨頭壊死に対して「再生医療」という手術をせず、入院もしない治療方法が可能となり、新たな選択肢として注目されるようになってきました。 今回の記事では、大腿骨頭壊死の従来の治療法、また最新の再生医療を用いた治療について解説してまいります。 大腿骨頭壊死症と特発性大腿骨頭壊死? 大腿骨頭壊死(だいたいこっとうえし)とは、大腿骨の股関節側、太ももの太い骨の先端である骨頭(こっとう)が、血流の低下によって壊死してしまう状態のことです。 また、大腿骨頭壊死の中でも、脱臼や骨折といった原因がはっきりしている場合以外のものを、「特発性大腿骨頭壊死」と呼びます。 ・大腿骨頭壊死:脱臼や骨折など原因がはっきりしている ・特発性大腿骨頭壊死:上記以外、原因がはっきりしないもの 特発性大腿骨頭壊死は、骨頭が壊死しているだけでは症状がでませんが、壊死が進行して骨頭の破壊が進むと次第に症状が出現するようになります。症状としては、急に生じる股関節痛が特徴的とされています。 骨頭壊死症の病期(ステージ)分類は以下のようになっており「*骨頭の圧潰」が進むにつれてステージが上がっていきます。 *骨頭の圧潰(あっかい)とは 大腿骨の骨頭が通常の球形が押しつぶされた状態をいい、骨頭が圧潰すると痛みといった明確な症状がでます。 以下、特発性大腿骨頭壊死について説明してまいります。 引用) 71 特発性大腿骨頭壊死症 特発性大腿骨頭壊死症の治療 特発性大腿骨頭壊死の治療法としては、早い段階、初期のステージであれば保存的治療も適応となります。具体的には、杖などでの免荷、つまり股関節にかかる体重を減らすことで負担を軽減し、痛みに対しては鎮痛剤を使用して対応します。 すでに症状があり、骨頭の圧潰が進行すると予想される場合には、手術が選択されます。 手術としては、若い方の場合、股関節を残す「骨切り術」が第一選択となります。一方、骨頭の壊死や圧潰が進んでいる方や、高齢者の場合には「人工骨頭置換術」が必要となることもあります。 保存療法の場合も、手術の場合にも、股関節の痛みを出さないような動作方法などを学ぶためのリハビリテーションが行われます。 特発性大腿骨頭壊死の治療方法 初期 ・保存的治療(杖などで股関節への荷重を減らし負担を軽減 ・痛みには鎮痛剤を使用 ・リハビリ 骨頭の圧潰が進行 ・若い方(股関節を残す「骨切り術」が第一選択) ・壊死や圧潰が進んでいる場合(「人工骨頭置換術」を検討) ・高齢者の場合(「人工骨頭置換術」を検討) ・リハビリ 特発性大腿骨頭壊死は治る?再生医療の可能性 特発性大腿骨頭壊死は、ステロイドの使用やアルコール多飲などの要因が考えられています。しかし、根本的な原因は未だ不明で、骨頭壊死の進行を防ぐことそのものは難しいとされてきました。 つまり、保存的治療や手術療法といった従来の治療では、骨壊死が完全に治るということは難しかったのです。 一方、最近では、骨頭の壊死した部分の骨再生を促すような、最新の治療法「再生医療」での臨床研究も行われています。 手術なし、入院も不要といった再生医療による治療とは 医療の進歩による再生医療という選択肢が従来の治療法に加わりました。その内容を簡単に説明してまいります。 当院では、患者さんの身体から取り出した幹細胞を体外で培養し、増殖させてから身体に戻す、という「自己脂肪由来幹細胞治療」を行っています。 保存の際に、幹細胞を冷凍しないために、幹細胞の生存率が高く、また採取する細胞の数が少ない(米粒2〜3粒分ほど)のため、身体への負担が少ない、といった特徴があります。 股関節の病気に対しては、特殊な針とエコー、特殊なレントゲン装置を利用し、股関節内の損傷している部位をよく調べ、ダイレクトに幹細胞を注入する当院独自の「関節内ピンポイント注射」という方法を用いています。 これによって、手術をしないにもかかわらず、股関節の痛みが軽減され、改善される効果を期待できる方法です。詳しくは、お気軽にお問い合わせ下さい。 また、自己脂肪由来幹細胞治療の他にも、「PRP(多血小板血漿)療法」という、患者さん自身の血液から抽出した血小板の濃縮液を利用する治療法も行っています。 このPRP療法も、自己脂肪由来幹細胞治療と組み合わせることで、痛みの軽減、改善効果が期待できるのです。 特発性大腿骨頭壊死症についてよくある質問 Q1. 特発性大腿骨頭壊死になってしまったら、必ず手術が必要? A1. 従来は、特発性大腿骨頭壊死が判明した場合には、保存的な治療か手術かが選ばれてきました。 保存的な治療を選択した場合も、骨頭壊死が進行すると手術を行わなければならないこともありました。 一方、最近では再生医療を用いることで、手術なしでも股関節の再生や痛みの改善が期待できるようになってきました。 Q2. 特発性大腿骨頭壊死に対する再生医療にはどのようなものがありますか? A2.特発性大腿骨頭壊死に対する再生医療には、自己脂肪由来の幹細胞による再生医療の他に、自分の血液の中にある血小板からでる成長因子(傷を修復させる効果がある)を利用した、 PRP治療法があります。このPRP療法は、ヒアルロン酸のように、関節の炎症を抑えるという効果があります。 まとめ・大腿骨頭壊死の治療法?従来の治療と再生医療の可能性 今回は、「特発性大腿骨頭壊死についての治療法」と「特発性大腿骨頭壊死に対する再生医療の可能性」について解説しました。 大腿骨頭壊死のために、「股関節の痛みがあり、手術を勧められている」。でも手術はしたくない、人工関節にも抵抗があり、手術をしない治療法を検討したいという方は、当クリニックの無料相談をご利用ください。当方は医療機関ですので無理に治療をおススメすることはございませんので安心してお問い合わせ下さい。 今回は、大腿骨頭壊死の治療法にいつて、従来の治療法と、新たな流れ、再生医療を用いた治療法を解説しました。参考にしていただければ幸いです。 No.153 監修:医師 坂本貞範 参考文献 特発性大腿骨頭壊死症(指定難病71) 71 特発性大腿骨頭壊死症 p4特発性大腿骨頭壊死症(指定難病71)
最終更新日:2024.02.12 -
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大腿骨頭壊死の診断に必要な検査と入院期間を医師が解説 大腿骨頭壊死は股関節にある大腿骨頭の血流が原因不明で途絶えてしまい、骨が壊死してしまう難病です。大腿骨頭壊死の原因は明らかになっていませんが、飲酒や免疫を抑えるステロイドの使用が危険因子と言われています。 股関節に痛みがある場合、病院の受診を考えると思いますが、大腿骨頭壊死の診断にはどのような検査・治療があり、入院期間はどの程度なのでしょうか。 この記事では大腿骨頭壊死の診断に必要な検査や入院期間などについて医師が詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。 大腿骨頭壊死に必要な検査 大腿骨頭壊死の診断は血液検査では不可能ですので、画像検査が必要です。ここから診断のために必要な画像検査の内容と、検査の目的について解説します。 ―レントゲン検査 一番初めに行われる検査です。X線を照射しますが、被曝量は少なく、股関節の状態を評価することができます。大腿骨頭壊死の初期ではレントゲンで異常がない場合がほとんどで、診断が難しいことがあります。しかし、壊死を発症してから時間が経つと、壊死領域の周辺が修復されて、骨が硬化してきます。その結果、レントゲンでは通常よりも白く明るく見えます。さらに進行した場合には、大腿骨頭が潰れてきたり、軟骨がすり減る変形性股関節症の所見がみられることがあります。 ―CT検査(コンピュータ断層撮影) 放射線を使用する検査でレントゲン写真よりも被曝量は多いのですが、骨や周囲の詳細な構造をみることができます。大腿骨頭壊死の診断には必須の検査ではありませんが、治療内容や手術の計画を立てる際に行われることが一般的です。 ―MRI(磁気共鳴画像) 磁石と電磁波を利用する検査で、大腿骨頭壊死の診断のために最も重要な検査です。MRIによって壊死した領域を発症早期から確認することができます。レントゲンでは早期の診断は難しいので、レントゲンで異常がないと言われた場合でも痛みが続く時にはMRI検査を受けることが望ましいです。検査の特性として被爆はありませんが、時間がかかる検査ですので閉所恐怖症の方では検査が難しいという一面もあります。 大腿骨頭壊死の入院期間 診断はレントゲンとMRIで可能なので検査目的の入院は不要です。入院は主に手術を受ける時に必要になります。 手術は大腿骨の骨切り術、人工股関節置換術があり、いずれも健康保険が使えます。手術後は一時的に看護、介護が必要になりますが、大きな合併症がなければ痛みの改善が期待できます。それぞれの手術内容と入院期間の目安を解説します。 -骨切り手術の場合 大腿骨の壊死した領域に体重がかかると骨が潰れていき、変形性股関節症をきたします。壊死した部分に体重がかからないように大腿骨を切って移動させるのが骨切り術になります。切った骨同士はプレートとスクリューで固定しますが、金属に負担がかかりすぎないように一定期間は体重をかけないようにするリハビリが必要なので、入院期間は1〜2ヶ月程度です。 手術後の急性期を過ぎたあとはリハビリ目的にリハビリ病院へ転院する場合もあります。 -人工関節手術の場合 壊死した範囲が大きく、すでに骨頭が潰れている場合や、早期に復帰したい方などに主に選択されます。大腿骨側だけを金属に置き換える人工骨頭置換術と、骨盤にも金属のカップを入れる人工股関節全置換術があります。手術中に骨折などの大きな問題がなければ手術の翌日から足をつくリハビリが可能です。 そのため入院期間も2〜4週間程度比較的短いことが特徴です。 大腿骨頭壊死に対する再生医療について 大腿骨頭壊死は難病であり、発症した場合には治療は困難とされてきました。そのため、骨切り術や人工関節手術などが選択されてきましたが、最近では手術に至らないようにする治療として再生医療があります。 再生医療は最新の治療法であり、ご自身の細胞から培養した幹細胞などを直接股関節内に投与することで組織の修復を促します。治療について詳しく知りたい方はいつでもお気軽にご相談ください。 大腿骨頭壊死についてよくあるQ&A 1.単純レントゲンで異常がないと言われましたが、大腿骨頭壊死の可能性はありますか? 回答:大腿骨頭壊死の初期段階では、レントゲン検査では異常が見つからないことがあります。理由として大腿骨頭壊死の初期では骨の変化がわずかであり、レントゲンで変化がわからない場合があるからです。そのため、早期の診断にはMRI検査が有用です。 大腿骨頭壊死が心配な時には、医師と相談し、MRIなどの追加の画像検査を検討してもらうようにしましょう。 2.再生医療の幹細胞はどのように作成するのですか? 回答:当院ではご自分の脂肪組織から幹細胞を培養して投与しています。脂肪は下腹部周辺に局所麻酔をして採取して、細胞加工室で時間をかけて培養します。脂肪由来の幹細胞は骨髄や滑膜由来の幹細胞よりも体への負担が少ないことがわかっており、超音波などを用いて直接股関節に投与することで組織の修復を促すことができます。 まとめ・大腿骨頭壊死の診断に必要な検査と入院期間を医師が解説 大腿骨頭壊死は骨を栄養している血流が途絶えることによって発症する、現時点でも原因が不明の難病です。 必要な検査は単純レントゲン写真とMRIであり、手術治療を考える場合にはCT検査も必要です。手術の際には入院が必要であり、骨切り術は自分の関節を残すことができますが入院期間が1-2ヶ月と長く、人工関節は早期にリハビリができるので入院は2週間〜1ヶ月程度になります。 また、最近では手術にならないようにする再生医療も行われ始めています。手術にいたらないようにするためにも早期に病院で診断してもらい、治療について考えることが大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.152 監修:医師 坂本貞範 ▼こちらも参考にされませんか 大腿骨頭壊死の初期症状|痛みや股関節の動きに注意!
最終更新日:2024.02.14 -
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大腿骨頭壊死|どこが痛み、どう動かなくなる、診断方法と治療について 大腿骨頭壊死は股関節を構成している大腿骨頭の血流が何らかの理由で途絶えてしまい、骨が壊死してしまう原因不明の難病です。 この記事では大腿骨頭壊死の初期症状としてどこが痛いのか、その動きの特徴や診断や検査の方法、治療の内容や最新治療についても解説していきます。 大腿骨頭壊死とは 大腿骨頭の一部が、何らかの原因で血流が途絶えてしまい、骨組織が壊死してしまう病気です。 特発性という原因が不明の大腿骨頭壊死では、危険因子としてステロイドの内服、アルコール、喫煙が関連していることがわかってきています。厚生労働省から指定難病に指定されており、医療費補助の対象となっています。 初期に現れる股関節の痛みや、動きの特徴に注意! 大腿骨頭は股関節を構成しています。大腿骨の先端にあるボールの形をした大腿骨頭と、骨盤側で大腿骨頭の受け皿になる深いお椀の形をした臼蓋との組み合わせで股関節は構成されています。 ①どこが痛む:足の付け根の痛み 大腿骨頭壊死の初期症状は足の付け根の痛みです。しかし、注意点として血流が途絶えて壊死が起きるごく最初の段階では痛みは起こりません。壊死に陥った部分に負荷が加わることで骨が潰れてくることによって、徐々に痛みが出現します。 骨壊死が起こることと、痛みが出現するタイミングには時間的に差があることに注意が必要です。そのため、骨壊死はあっても、壊死の範囲が小さい場合などでは痛みを起こさないこともありえます。 ②どう動かなくなる:股関節の関節可動域が制限 病気が進行して、壊死した部分が潰れて大腿骨頭が変形すると、陥没した部分で関節の不適合、不安定性から軟骨のすり減りが進行してしまいます。 その結果、変形性関節症を生じ、放置したままだと軟骨がなくなってしまい、骨同士がぶつかることで変形性関節症が悪化してしまいます。 変形性関節症が進行すると、痛みだけでなく、股関節の関節可動域が悪くなってしまいます。 股関節は曲げ伸ばしだけでなく、内旋、外旋などの動きがあるので、病気が進行すると胡座(あぐら)や爪切り、和式トイレ、階段の上り下りが困難になってしまいます。さらに進行すると、筋力が低下してしまい、歩行することが困難になってしまいます。 大腿骨頭壊死で困難になること ・胡座(あぐら) ・爪切り ・和式トイレ ・階段の上り下り ・筋力低下による歩行困難 そのため、初期症状である痛みがある段階で早めに病院で診察を受けることが重要です。 大腿骨頭壊死の診断方法 大腿骨頭壊死における画像検査にはレントゲンとMRI検査が有効です。それぞれの特徴について解説していきます。 レントゲン撮影 レントゲンは一般的な診断手法であり、大腿骨頭壊死の評価にも使用されます。レントゲンは骨の形状や変化を評価でき、簡便なので最初の検査として行われることが一般的です。しかし、大腿骨頭壊死の初期の段階ではレントゲンだけでは診断が難しいこともあります。 MRI MRIは大腿骨頭壊死の診断に非常に役立ちます。壊死の範囲の評価だけではなく、骨折や関節炎などの別の病気の診断にも使用することができます。 大腿骨頭壊死の治療 治療は年齢などのご本人の状態、病気の範囲や部位など総合的に判断して決定されます。 保存治療 早期の症状や軽度の大腿骨頭壊死では、痛みを緩和するために安静や杖による免荷、身体活動の制限、重量物の運搬禁止などを行います。痛みに対しては消炎鎮痛薬の内服や湿布などを行います。しかし、これらの方法で病気の進行を防ぐことはできないので、進行が考えられる状態や、進行しつつある状態のときには変形が進む前に手術治療を受ける方が治る可能性は高くなります。 手術治療 手術は大きく骨を切って関節を温存する骨切り術と、壊死した骨を切除して金属に置き換える人工関節置換術に分けられます。 骨を切る手術では壊死した部分に体重がかからないように大体骨頭を弯曲させたり、回転させる手術が行われます。骨を切った後は専用の金属で固定をするため、一定期間の安静が必要ですが、自分の関節を温存できるメリットがあります。しかし、病気が進行する可能性はゼロではありません。 人工関節手術では大腿骨頭だけを置き換える人工骨頭置換術、骨盤側にも金属をいれる人工股関節全置換術があります。基本的には手術翌日から歩行訓練が可能で、リハビリが早いというメリットがありますが、人工関節のためスポーツは制限が必要であり、将来的な再手術の可能性もあります。 大腿骨頭壊死に対する再生医療 人工関節手術に至らないようにする治療として再生医療があります。 再生医療は近年開発された新しい治療法で、ご自身の細胞から培養した幹細胞などを投与します。幹細胞を股関節に注射することによって、すり減った軟骨が再生され、痛みが和らぐので手術をしなくても改善する可能性が高まります。 大腿骨頭壊死に対する再生医療についてのQ&A 1.股関節への幹細胞の注射はどのようにするのですか。 回答:股関節は体の奥深くにあるので、注射をすることが難しい部位です。当院ではエコーや特殊なレントゲン装置を使うことによって、股関節内にピンポイントで注射をすることが可能です。 2.幹細胞はどのように作成するのですか。 回答:当院ではご自分の脂肪から幹細胞を培養して作成しています。脂肪は下腹部周辺に局所麻酔をして採取し、細胞加工室で時間をかけて培養します。脂肪由来の幹細胞は骨髄や滑膜内臓の幹細胞よりも体への負担が少ないことがわかっています。 まとめ・大腿骨頭壊死|どこが痛み、どう動かなくなる、診断方法と治療について 大腿骨頭壊死症は骨を栄養している血流が途絶えることによって発症する、現時点でも原因が不明の難病です。 初期症状は足の付け根の痛みであり、病気が進行すると人工関節手術を受けなくなってしまうかもしれません。当院の再生治療は幹細胞を股関節内に投与することで軟骨の修復が可能な最新の治療です。痛みでお困りの際にはいつでもお気軽にご相談ください。 No.148 監修:医師 坂本貞範 ▼こちらも参考にしていただけます 大腿骨頭壊死のリハビリ|運動療法で仕事復帰を目指す
最終更新日:2024.02.14 -
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- 膝部、その他疾患
骨壊死・骨頭壊死|重症度を決める分類方法と治療法 骨壊死とは、骨に栄養を届けている血管が障害されて血液が供給されなくなってしまった結果、骨の一部分が壊死してしまう病気です。ただ、怪我などの外傷による血管の障害や、アルコール、ステロイド使用者などに原因不明で生じることがあります。 この記事では、「骨頭壊死」と「骨壊死」のそれぞれについて解説し、重症度を決める分類方法やステージの内容について詳しく解説していきます。 骨壊死と骨頭壊死症 骨壊死は全身のあらゆる骨に起こり得ます。代表的な部位としては、股関節の大腿骨頭に起きる「大腿骨頭壊死」、肩関節の上腕骨に起こる「上腕骨頭壊死」、「膝関節骨壊死」などがあります。 股関節、肩関節についてはそれぞれ、大腿骨頭、上腕骨頭という部位があるので骨頭壊死という病名がつきますが、膝関節は骨頭という部位がないので骨壊死という病名となります。 大腿骨頭壊死の原因と重症度分類 大腿骨頭壊死の原因 股関節を構成している大腿骨頭を栄養している血管が障害されることによって生じます。 原因不明の特発性と股関節の骨折や脱臼などの外傷、放射線治療、潜函病などによって発症する場合があります。 大腿骨頭壊死の重症度分類 原因不明である特発性骨頭壊死では壊死の範囲によって重症度分類がありType A~Cに分けられます。 重症になるほど、壊死範囲が大きく、大腿骨頭が潰れてしまうリスクが高くなりType Aが軽症でCになるとより重症となります。Type CはさらにC-1とより重症なC-2に分けられます。 それぞれの内容について解説します。 特発性骨頭壊死、重症度分類 ・Type A:壊死範囲が体重がかかる領域の1/3未満 ・Type B:壊死範囲が体重がかかる領域の1/3〜2/3 ・Type C:壊死範囲が体重がかかる領域の2/3以上 ・Type C-1:壊死の範囲が骨盤の縁の「内側」にあるもの ・Type C-2:壊死の範囲が骨盤の縁の「外側」にあるもの 大腿骨頭壊死から進行・変形性股関節症へのステージの分類 初期には壊死部分が潰れていき、進行すると軟骨がすり減ることによって「変形性関節症」になってしまいます。ステージは1〜4に分けられるので、それぞれについて簡単に解説します。 大腿骨頭壊死の進行度についての分類 ・ステージ1:レントゲンで異常がなく、MRI検査などで壊死がわかる場合 ・ステージ2:レントゲンで異常があるものの、骨頭が潰れていない時期 ・ステージ3:骨頭が潰れているものの、関節軟骨があり関節の隙間が残っている時期 ・ステージ4:軟骨がすり減り、変形性関節症となっている時期 これらの重症度、ステージ分類とご本人の年齢や社会生活の状況、希望などを考慮して治療方針が決定されます。 軽症なタイプであれば保存治療で治る方もいますが、重症なタイプや末期のステージでは手術を要する場合もあります。 上腕骨頭壊死について 上腕骨頭壊死の原因 肩関節を構成している上腕骨頭という部分を栄養している血管が障害されることによって骨が壊死してしまう病気です。 原因は、「外傷性」と「非外傷性」に分けられます。外傷性には上腕骨の骨折、脱臼などがあり、非外傷性にはステロイドの使用やアルコール、鎌状赤血球症、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの全身性疾患などがあります。 上腕骨頭壊死の進行・ステージ分類 病型の分類にはCruess分類が最も使われています。 ステージ1:レントゲンで異常がなく、CTやMRI検査で壊死がわかる場合 ステージ2:骨透亮像や骨硬化像、限局性の骨溶解像 ステージ3:軟骨下骨に骨折線を認める段階 ステージ4:上腕骨頭に加えて、肩甲骨の関節窩にも骨の変化を生じている場合 上腕骨頭壊死に対する治療法は、このステージ分類、壊死の範囲、患者の年齢、症状、全身の健康状態などの要因によって決まります。保存治療で治る方もいますが、進行してステージ末期になると人工関節が必要となる場合もあります。 膝関節骨壊死について 膝関節骨壊死の原因 膝関節の骨壊死も同じように、何らかの原因で骨が壊死してしまう病気で、膝関節では大腿骨側によく起こります。 高齢の方によく起こりますが、変形性膝関節症などの膝の痛みと比べて安静にしていても痛みが強いことが特徴です。 原因はまだはっきりとわかっていませんが、肥満やステロイド薬の使用の他、軽微な骨折が原因となる場合もあります。 膝関節骨壊死の進行・ステージ分類 いくつかのステージ分類が提唱されていますが、代表的なものを1つ紹介します。 ・ステージ1:レントゲンで異常がみられない時期 ・ステージ2:レントゲンで骨内に壊死領域がみられるもの ・ステージ3:レントゲンで軟骨の下に骨折線があり、関節面が凹んでいるもの ・ステージ4:関節の隙間が狭くなってしまっている時期 骨壊死に対する治療法・保存療法から人工関節置換術へ いずれの骨壊死でも、初期の段階では異常が見つからない場合があります。 しかし、症状が進行すると壊死した部分が潰れてしまい、結果として変形性関節症を起こしてしまいます。関節が変形してしまうと、保存治療の効果は限られているので、基本的には「人工関節置換術」が選択されます。 人工関節を避ける再生医療 しかし、最近では手術に至らないようにする治療として「再生医療」があります。再生医療は導入されたばかりの最新の治療法であり、ご自身の細胞から培養した幹細胞などを直接関節内に投与することで組織の修復を促します。 それによって骨や軟骨の再生が起こり、症状がよくなる可能性があります。 https://youtu.be/ic_6QaEU5NU?si=p8rKJMhU5cjRfNE6 ▶当院は再生医療の専門院です。治療について詳しく知りたい方は動画をご覧ください。 骨壊死についてQ&A Q . 骨壊死にならないか心配ですが、気を付けることはありますか。 A . 現代医学でも骨壊死の正確な原因はわかっていません。危険因子としてわかっているのは外傷、ステロイドの使用、アルコール多飲です。 ステロイドは、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど全身性疾患の治療に必要なので、飲まないことはおすすしませんが、外傷やアルコールはご自分で気を付けることができます。無理な運動は行わず、規則正しい生活習慣を送ることが予防に必要と言えるでしょう。 Q . レントゲンで問題ないと言われましたが、大丈夫でしょうか。 A . 骨壊死は初期の段階ではレントゲンで異常がわからないことがほとんどです。壊死した領域がレントゲンでわかるまでは時間がかかりますが、MRIでは早期に病気を見つけることができます。 痛みが強く心配な場合はMRIなどの精密検査について担当の医師と相談することをおすすめします。 まとめ・骨壊死、骨頭壊死|重症度を決める分類方法と治療法 骨壊死は骨を栄養している血流が途絶えることによって発症する、現時点でも原因が不明の難病です。 大腿骨頭や上腕骨頭、膝関節によく起こり、初期のレントゲンでは異常がみつからない場合がほとんどです。放置して症状が進行すると骨切り術や、人工関節などの手術が必要になりますが、最近では骨や軟骨の再生を促す再生治療も行われ始めています。 手術に至らないようにするためにも早期に病院で診断してもらい、治療について医師と相談していくことが大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S147 監修:医師 加藤 秀一 ▼以下もご参考にして下さい 参考文献 https://www.cancertherapyadvisor.com/home/decision-support-in-medicine/shoulder-and-elbow/osteonecrosis-of-the-humeral-head/ https://radiopaedia.org/articles/cruess-classification-of-humeral-head-osteonecrosis https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK562286/
最終更新日:2024.03.05 -
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もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)とは|その症状と治療法について はじめに もやもや病という病名を聞いたことがあるでしょうか?正式には、「ウィリス動脈輪閉塞症」といい、脳の血管が閉塞もしくは狭窄することによって引き起こされる脳に起こる疾患です。もやもや病には、脳の血液供給の大事な一部を担う、内頚動脈や中大脳動脈とよばれる血管が関与しています。 この記事では、もやもや病の病態や症状、治療などについて詳しく解説します。もやもや病について正しく理解を深めましょう。 もやもや病とは? もやもや病は、脳に血液を送るための重要な血管である「内頚動脈」が、狭くなったり詰まったりすることで起こる疾患です。このようになると足りない血液を補おうと、細い血管が脳内に異常に発達していきます。画像検査では、この細い血管がまるで「もやもやした煙」のように見えます。これが「もやもや病」という名前の由来です。 もやもや病は、10歳以下の小児で症状が現れる場合と、30〜40歳代の成人で現れる場合の2つのパターンが多く見られます。 ウィリス動脈輪の構成について まず、もやもや病の原因となる、ウィリス動脈輪について解説します。 ウィリス動脈輪は、脳内に形成されている血管経路であり、その名の通り、輪になっています。内頚動脈と椎骨・脳底動脈という重要な血管から流れた血液を脳内に供給するため、重要な役割を担っています。その一部が閉塞もしくは狭窄すると、脳の特定の部位への血流が不足してしまうため、非常に重要な血管経路です。 もやもや病では、このウィリス動脈輪のなかで、内頚動脈から中大脳動脈・前大脳動脈が分岐する部分に狭窄が起きます。どうしてその部分が狭窄してしまうのかは、はっきりとはわかっていません。 ウィリス動脈輪の狭窄が起こることで、中大脳動脈や前大脳動脈から供給を受けている脳細胞への血流が低下します。私たちの体は、この血流を補おうとして、小さな新しい血管(側副血行路)を形成します。この側副血行路が、MRIや血管造影で、もやもやとした陰影として見られるため、もやもや病と呼ばれるようになりました。 もやもや病の症状|もやもや病は何が危険? ここからはもやもや病の症状について詳しく解説していきます。 もやもや病で形成された側副血行路は、細い血管であるため不足した脳への血流を十分には補うことができません。 小児では、熱いものをフーフーと冷ましたり、楽器を吹いたりした際に症状を発症することが多いです。これは、過呼吸になることで、脳の血管が収縮し、血流を十分に送ることができなくなるからです。そうすると、一時的に脳への血流が不足し、脱力発作やけいれん、意識障害などを引き起こします。 小児の症状 ・脱力発作 ・けいれん ・意識障害 成人でも、小児と同じように一時的な脳虚血の症状で発症することもあります。具体的には、手足がしびれる、うまく手足を動かせない、言葉が出にくいなどがあげられます。 成人の症状 ・手足がしびれる ・うまく手足を動かせない ・言葉が出にくい しかし、もっと怖いのは一時的な症状ではなく、「脳梗塞」や「脳出血」を起こしてしまう可能性があるということです。 成人では、ウィリス動脈輪のうち閉塞していない椎骨・脳底動脈への血流が増え、その負荷によって椎骨・脳底動脈に動脈瘤が形成されるケースがあります。その動脈瘤が破裂してしまうと、脳出血やクモ膜下出血を突然発症する可能性があるのです。これらは成人のもやもや病の発症パターンの半分を占めます。 また、細く脆いもやもや血管が閉塞してしまうと、脳梗塞を引き起こします。小児のように一過性の虚血発作であればよいですが、そのまま血流が回復せず脳細胞が死んでしまうと、長期的に続く麻痺や機能障害を残していまいます。 もやもや病の危険性 ・脳梗塞 ・脳出血 ・くも膜下出血 もやもや病の治療と予後について もやもや病は、患者さんの年齢やどんな症状で発症したか、また症状の重さなどによって、治療法や予後が異なります。症状が軽度である場合は、小児では、慎重な経過観察を行いながら、内科的な薬物療法などを行う場合が多いです。 また、脳血流を改善させるための手術もあります。浅側頭動脈という頭蓋骨の外側にある血管と中大脳動脈を直接吻合する血行再建手術です。バイパス術ともよばれます。この手術を行うことで、脳梗塞や脳出血のリスクを減らすことができます。 ただし、脳梗塞や脳出血で発症してしまうと、重篤な後遺症を残す可能性もあります。後遺症が残った場合には、リハビリテーションを重点的に行い、併せてこれ以上脳出血や脳梗塞を繰り返さないように、薬物療法を行います。 もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)についてのQ&A Q . どのような検査をすればわかりますか?人間ドックで調べられますか? A . 血管造影という造影剤を用いた方法でもわかりますが、最近はMRAと呼ばれる造影剤を使わない検査で、もやもや血管を確認することができます。 MRAはMRIの一種で、電磁波を当てて脳の血管を立体画像として書き出すことができる検査です。通常の人間ドックでは行われない場合もありますので、心配な場合は脳ドックを受けることをおすすめします。 Q . もやもや病になりやすい人はいますか? A . もやもや病は日本を含む、東アジア諸国に多いといわれています。 また、15〜20%の方では血のつながった家族に、もやもや病の方がいて、遺伝する可能性があるといわれているため、家族にもやもや病の人がいる方は、脳ドックなど受けてみるのがいいでしょう。 まとめ・もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)とは|その症状と治療法について 今回は、もやもや病について解説しました。 脳梗塞や脳出血で発症した場合は、命に関わる可能性がある非常に怖い病気です。ですが、早期発見できれば、重篤な後遺症を残さず社会復帰できる可能性も高くなります。 どのような症状が危険信号なのかを知っておくことで予防できますので、是非みなさんも、もやもや病についてご理解頂ければ幸いです。 No.S141 監修:医師 加藤 秀一 ▼モヤモヤ病については、以下もご参考にしていただけます もやもや病による性格変化とは?高次機能障害について解説
最終更新日:2024.04.02 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
もやもや病の症状、大人と子どもでの違いや注意すべきポイント もやもや病とは、脳の重要な血管である内頸動脈が細くなり、代わりにもやもやとした異常な血管が増える病気です。大人と子どもでは、もやもや病の症状の出方やタイプ、そして注意点が異なります。 この記事では、もやもや病の大人と子どもの違いや注意すべきポイントについて述べていきます。 もやもや病とは? もやもや病は、脳の血管に生じる病気で、脳の中の内頸動脈という重要な血管の終末部が徐々に細くなっていきます。人口10万人あたり3〜10.5人程度いると考えられており、日本人に多く見られます。 脳血管は脳に酸素や栄養を供給していますが、血管が細くなるにつれて脳の血流が足りなくなり、その足りなくなった血流を補うために、周囲に異常な血管(もやもや血管)が網のように出現します。このため、もやもや病では、脳血流不足による脳の虚血(きょけつ)や、異常に発達した細い血管が切れることでの脳出血が起こります。 もやもや病の原因ははっきりしていませんが、ある特定の遺伝子を持つ方で発症しやすい傾向があるようです。 もやもや病の症状は大人と子どもでは異なる?注意すべきポイントは? もやもや病の症状は大きく分けると、脳虚血(脳血流が不足すること)、脳出血となります。その他にも、頭痛やけいれんといった症状がでることもあります。 さらに大人と子どもでは、もやもや病の症状の出方やタイプ、そして注意点が異なります。 子どもの症状 子どもの場合は、脳虚血症状がほとんどで、脳出血はまれとされています。 脳虚血症状としては、手足が動かしづらい、言葉がうまく出ない、手足や顔面が痺れる、などの症状が急に起こります。 特に、子どものもやもや病では、呼吸が激しくなること(過呼吸:かこきゅう)によって、この発作が起こりやすくなることが知られています。過呼吸となる場面としては、うどんなどの熱い食べ物を「フーフー」と吹く、リコーダーや鍵盤ハーモニカを吹く、または歌を歌ったり、大笑いしたりすること、激しく泣くことなどがあります。 こうした行動などによる一過性脳虚血発作は、自然に治りますが、脳梗塞の前触れなので、軽視してはなりません。特に、小さな子どもほど進行が早く、脳梗塞になる危険性が高いので、注意が必要です。 大人の症状 一方、大人の場合は、脳の血流不足を補うための側副血行路が破れて出血する、脳出血が起こることが多いです。 脳出血は、もやもや病による死亡や後遺症の最大の原因とされています。 もやもや病の検査や治療法は? ここでは、もやもや病の検査や治療法について解説します。 もやもや病の検査 もやもや病かどうかを検査する方法としては、MRI(磁気共鳴画像診断)・MRA(磁気共鳴血管造影)、脳血管造影検査(カテーテル検査)、脳血流検査、の3つが代表的です。 検査方法 ・MRI(磁気共鳴画像診断)、MRA(磁気共鳴血管造影) ・脳血管造影検査(カテーテル検査) ・脳血流検査 いずれの検査も、安静にして行う必要があるので、小さな子どもの場合には、眠たくなる薬を使う場合が多いです。 もやもや病の治療 もやもや病の治療の目的は、脳梗塞や脳出血を防ぐこととなります。 治療法としては、薬による治療と、脳血流量を増やすためのバイパス手術があります。 薬による治療 ・薬による治療は、抗血小板薬で血液が固まるのを防ぐ方法があるが効果に限界。 バイパス手術 ・バイパス治療については、虚血型もやもや病の場合に、脳梗塞を予防する効果が認められています。 ・バイパスの治療には、頭皮の血管を脳血管に直接つなぎ合わせる「直接バイパス」 ・頭皮に血管をつけたまま血流豊富な組織として脳の表面に接触させて、新たな血管が生えるのを待つ「間接バイパス」 ・これらを組み合わせる手術があります。 ・大人の手術では、「直接バイパス」のみ、または間接と直接を組み合わせた「複合血行再建術」が行われます。 ・子どもの手術は、「間接バイパス」のみ、 もしくは「複合血行再建術」が行われ予後の改善効果がそれぞれ報告されています。 もやもや病についてよくある質問 Q1 「もやもや病」の人はすべて手術をするのですか? A1 症状が多発していない患者さんの場合は、すぐに手術をする必要はありません。 しかし、脳虚血症状がすでにある人や、脳血流検査での血流低下が認められる方、あるいは過去に頭蓋内出血の既往がある方に対しては手術を勧めるのが一般的です。 また、子どもの場合は、将来の脳虚血や出血予防のために、手術適応は広く考えられています。 これらの観点を元に、もやもや病の経験豊富な医師が的確な検査や年齢、患者さんの状況を総合的に検討・判断して手術適応が決まります。 Q2 子どもの「もやもや病」の予後はどのようになっていますか? A2 子どものもやもや病の場合は、ほとんどが脳虚血発作なので、大きな脳梗塞が起こる前に、バイパス手術を受けることができれば、その後脳梗塞を発症することは少ないとされています。 社会生活については、8割以上の子どもたちが通常の生活を送ることができます。一方、2割弱は普通学級への就学困難、もしくはその後の就職が困難になってしまうようです。 診断が遅れ、手術治療を受ける時点ですでに脳梗塞が起こってしまっていると、その後の社会生活に支障が出てしまう可能性がありますので、早期診断と適切なタイミングでのバイパス手術がとても重要です。 まとめ・もやもや病の症状、大人と子どもでの違いや注意すべきポイント 今回は、子ども・大人のもやもや病の違いについて解説しました。 脳梗塞や脳出血をきたす前に、もやもや病の診断・治療を受けることが大切です。脳梗塞や脳出血後の後遺症に対しては、機能回復のためのリハビリテーションが行われますが、再生医療を組み合わせることで、身体機能の改善効果の向上が期待できます。 この記事がもやもや病の大人と子どもの違いについての理解を深めるのに役立てば幸いです。 No.S143 監修:医師 加藤 秀一 参考文献 もやもや病…ここまできた診断・治療 日本小児神経外科学会|小児もやもや病 ▼もやもや病の情報、以下も参考にされませんか もやもや病がまねく脳梗塞のリスク因子と予防策について解説
最終更新日:2024.04.04 -
- 大腿骨骨頭壊死
- 股関節
大腿骨頭壊死で注意すべき!やってはいけないこと 大腿骨頭壊死は、股関節の一部である「大腿骨頭」が血流障害によって、壊死してしまう病気です。 外傷や、過度のアルコール、過度のステロイド使用など様々な原因があります。なかには特に原因のない特発性もあり、指定難病にもなっています。 今回は、大腿骨頭壊死と診断されたら、どのようなことに気を付ければよいのか、またどのような生活を送るべきなのかについて詳しく解説します。症状の進行を防ぐために、是非参考にしてください。 大腿骨頭壊死の治療 大腿骨頭壊死は、年間2000~3000人が発症する病気です。「壊死」という病名は、なんだか恐ろしく、将来歩けなくなってしまうかも?と思われる方もいるでしょう。 ですが、適切な治療やリハビリを行うことで、進行を遅らせたり、日常生活に支障なく戻れたりする可能性が非常に高い病気でもあります。正しい知識を持って行動することが大切です。 1 . 原因を知る 大腿骨頭壊死の原因がなんであるかを知ることが大切です。前述の通り、全く原因がない場合もありますが、アルコールやステロイドなど原因と疑われるものがある場合は、減らしたりやめたりすることができないか、検討してみましょう。 ただし、ステロイドは、もともとの病気をコントロールするために必要不可欠な場合が多いので、処方している主治医ともよく相談してから判断してください。 2. 進行度を知る 大腿骨頭壊死がどのくらい進行していて、壊死がどんな場所にあるかも重要なポイントになります。 壊死が発症初期であれば、体重をかけずに経過を見ることで壊死部が修復する可能性もあります。こちらも主治医とよく話し合い、治療の方針をしっかりと理解することが大切です。 3. 治療を検討する どうしても痛みが強い場合や、壊死が進行してしまっている場合は、関節を人工関節に変える手術を行うことが多くなります。 ただし、若年で人工関節を入れると、人工関節の耐用年数の問題で将来、再手術という可能性が高くなるため、できれば進行させない生活をすることが望ましいといえます。 4.再生医療という新たな選択肢 また近年では、人工関節などの手術をすることなく、入院も不要で骨や軟骨の再生を促して治療する最新の医療で「再生医療」という選択肢が増えました。実施できる医療機関はまだまだ少ないのが実情ですが、手術を行う前に、自信に適合するのかカウンセリングを受けてみるのもひとつです。 大腿骨頭壊死でやってはいけないこと 大腿骨頭壊死を進行させる一番のリスクは、大腿骨頭にかかる負荷が増大することです。 大腿骨頭は股関節を形成している部分であるため、立ったり歩いたりすると直接体重を受けてしまいます。そのため、1本杖や松葉杖を使用して、過度な負担がかからないようにすることが必要です。 注意!これをやったら壊死が進行!危険な行動とは 大腿骨頭壊死を発症した場合、激しい運動や階段昇降、重量物の運搬、長時間の立ち仕事など、股関節に持続的に強い負荷がかかることは避けるべきでしょう。 また、体重が増えてしまうことにも注意です。体重が増えると、増えた体重分、股関節にかかる負担が大きくなります。 また、壊死は股関節の前方に発生することが多いため、しゃがみこむ動作や、前屈動作など股関節を曲げる姿勢をとると、壊死部に負担がかかりやすいです。そのような姿勢もなるべく避けましょう。 そして、アルコールとタバコは絶対にやめましょう。 アルコールはそれ自体が、大腿骨頭壊死の原因となることがわかっています。また、骨密度を低下させる可能性もあるため、壊死で弱った骨をさらに弱くしてしまいます。 タバコも大腿骨頭壊死のリスクといわれています。さらにタバコは血行を悪化させ、骨壊死を加速させるリスクも指摘されており、絶対にやめましょう。 大腿骨頭壊死の禁忌事項(やってはいけないこと) ・激しい運動や階段昇降 ・重量物の運搬 ・長時間の立ち仕事 ・股関節に持続的に強い負荷がかかること ・体重増加 ・しゃがみこむ動作 ・前屈動作など股関節を曲げる姿勢 ・飲酒 ・喫煙 何より、この病気で一番良いのは、股関節に全く体重をかけないことにつきます。ただ、そのような生活をおくるのは事実上不可能です。しかし、少なくとも股関節に「持続的に強い負荷がかかる」動作や、「飲酒」や「喫煙」は避けることができるはずです。 大腿骨頭壊死を悪化させない理想の生活とは 生活について具体的にはどのようにうれば良いのでしょうか。最低限、以下の3点に気をつけて生活することが大切です。 1 . ベッドや椅子を使用し、「洋式の生活」を心がける 股関節を深く曲げこむ動作が多い、こたつや布団、和式トイレなどの日本式の生活は、股関節に大きな負担を掛けます。なるべくベッドや椅子を使用し「洋式の生活」にすることを心がけましょう。 2 . お風呂に浸かるなどし身体を温めて血行を良くする 大腿骨頭壊死は血流障害によって起こります。体を温めることは血行を良くすることにつながるため、お風呂に入るなど体を冷やさないように心がけることも大切です。 3 . 鎮痛剤の使用しながら安静期間を設ける 痛みが生じている場合は、無理をせず、鎮痛薬を適宜使用しながら安静の期間を設けることも必要です。 ただし、我慢しすぎて手術の時期を逃してはいけません。整形外科医の定期的な診察を受けつつ、これらの生活スタイルを工夫していきましょう。 大腿骨頭壊死についてよくあるQ&A Q:遺伝的に大腿骨頭壊死になりやすい人はいますか? 現在の研究では、大腿骨頭壊死が遺伝的に引き起こされることは確認されていません。ただし、ステロイド性の骨頭壊死に関しては、骨頭壊死を引き起こす遺伝子がある可能性までは研究でわかっており、今後さらなる研究が望まれます。 Q:どのくらいのステロイドを使うと大腿骨頭壊死になりやすいですか? 明確な危険量は分かっていませんが、内服開始から骨壊死が発生するまでの期間で、一日平均約15㎎を超える場合は、骨頭壊死のリスクが高まるといわれています。 これはプレドニゾロンというステロイドに換算した値ですので、実際に自分がどのような薬をどのくらい使用しているか気になる方は、主治医に確認してみてください。 まとめ・大腿骨頭壊死で注意すべき!やってはいけないこと 今回は大腿骨頭壊死になってしまったら、どのようなことに注意をすべきかに焦点を当てて解説しました。大腿骨頭壊死は、患者さんの生活習慣や行動が、その後の進行や症状を大きく左右する病気のひとつです。 病気に対する理解と自己管理が、大腿骨頭壊死とうまく向き合うポイントとなります。ご自身の病状をしっかりと把握し、進行予防に努めましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.146 監修:医師 坂本貞範 ▼以下もご参考にして頂けます 骨壊死の分類|股関節・肩、膝の骨頭壊死症とは
最終更新日:2024.02.14 -
- 脳卒中
- 頭部
- 脳出血
橋出血の初期症状やその特徴とは?医師が詳しく解説! はじめに 橋出血という病気を聞いたことがあるでしょうか。橋は「きょう」と読み、脳の重要な部分である脳幹の一部です。橋が障害されると、命に関わる深刻な状態を引き起こします。橋出血は、脳卒中のひとつで、非常に予後が悪いといわれています。 今回は、橋出血の初期症状の特徴や治療法、予後など、是非知っておいてほしい点について詳しく解説します。 橋出血(pontine hemorrhage)は脳卒中のひとつ 橋出血について解説する前に、まずは脳卒中についてお話します。 脳卒中には大きく分けて、脳梗塞と脳出血の2つのタイプがあります。「橋出血」は、脳出血の一つの病態で、脳出血全体の5〜10%といわれています。 脳出血は高血圧などにより、脳の血管が破れて脳組織内に血液が流れだすことによって起こります。これは、どちらも脳の機能に重大な影響を与え、重篤な場合は命に関わることもあります。 一方、脳梗塞は血栓や動脈硬化などにより血管が詰まり、脳組織への血流が停止することにより起こります。 橋出血の初期症状 脳出血は突然脳の血管が破れて発症するため、前兆や予兆がないことも多いです。ですが、初期症状を知っておくことで、早期治療が可能となり、出血の拡大を防ぐことができます。 橋出血の場合は、以下のような症状が起こります。 ・何となく受け答えが悪い(意識障害) ・強い頭痛が続く ・手足がうまく動かせない ・体の片方だけ感覚が鈍い このような症状がある場合は、早急に医療機関を受診してください。 橋出血の診断 橋出血は、脳幹の一部である橋(pons)で出血が起こる病態です。脳幹は、生命の維持に重要な役割を果たしている部位で、意識・呼吸・循環をつかさどっています。脳幹の中で出血が起こる場合、橋動脈から出血することが最も多いといわれています。 橋出血は、CTで診断することができます。橋出血は出血部位と大きさにより、中心部橋出血と部分的橋出血に分類されます。中心部橋出血は出血の範囲が広いため予後が悪く、数時間から数日で命を落とす可能性が高いです。部分的橋出血の場合は、早期の治療を行えば、比較的予後が良好な場合もあります。 橋出血の症状 橋出血の症状は、出血の部位や大きさによっても異なりますが、瞳孔の変化と四肢麻痺が特徴的です。 瞳孔の変化 瞳孔とは、目の真ん中にある「黒目」のさらに中心にある黒い部分のことです。瞳孔は目の中に入る光の量を調整しているため、まぶしい時には縮小し、暗い時には拡大します。橋には、瞳孔の大きさを調整するための神経が通っています。このため、橋出血によりこの神経が影響を受けると、極端に瞳孔が収縮します。両側瞳孔の高度縮小はpinpoint pupilともよばれ、橋出血に特徴的な所見です。 四肢麻痺 また、橋には体の運動機能を担う神経も通っています。その部分を巻き込んで出血が起こると、手足の麻痺が出現します。広い範囲で出血が起こった場合は、両側の四肢麻痺が発生します。出血量が少なければ片側の麻痺に留まるか、運動は保たれて感覚のみ麻痺する場合もあります。 瞳孔の変化や麻痺は、橋出血で特徴的ですが、他にも意識障害や視覚障害、言語障害、呼吸障害など、様々な症状が出現する可能性があります。少しでもこれらの症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診する必要があります。 橋出血の治療と予後 脳出血の最も多い原因は、高血圧であり、脳出血を起こしてしまった場合は、血圧を下げて安定させることが重要です。これは、血圧を下げることによって、さらなる出血を防ぎ、脳組織へのダメージを最小限に抑えるためです。 脳出血では、血種除去といって、出血によって生じた血種を外科的に取り除く手術が行われることがありますが、橋は脳の深部にあり、正常な組織を傷つけずに到達するのが困難のため基本的には手術は行いません。そのため、血圧コントロールや脳の浮腫み予防の点滴などを使用した保存療法がおこなわれます。 出血範囲が広い橋出血(中心性橋出血)では、予後は非常に悪く、出血してから数時間で命を落とす場合もあります。出血の範囲によっては、軽度の麻痺が残る場合もありますが、予後は比較的良好で、日常生活に戻ることができる方もいます。しかし、運動麻痺や感覚麻痺など何らかの障害を残す可能性はあり、急性期の治療が終わった後は、リハビリテーションを長い時間かけて行う必要があります。 橋出血にならないためにできること 橋出血のみならず、脳出血の最も多い原因は高血圧です。高血圧は一般的な病気であり、多くの人が指摘されたことがあるのではないでしょうか。 高血圧は、他の生活習慣病と同じく、食事、運動が基本的な治療です。特に塩分の摂りすぎには注意した方が良いでしょう。 血圧が高い状態が続いている場合は、投薬治療が必要な場合もありますので、医師に相談してください。 まとめ・橋出血の初期症状やその特徴とは?医師が詳しく解説! 今回は橋出血について解説しました。 橋出血は一度起こしてしまうと、命に関わる非常に危険な病気です。起こしてから治療するのではなく、予防をすることがなによりも大切です。高血圧や生活習慣病にならないよう、日々の生活習慣に気を配り、自己の体調にしっかりと目を向けるようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.145 監修:医師 坂本貞範 ▼以下もご参考下さい 橋出血の後遺症と予後予測|回復の見通しについて医師が解説
最終更新日:2024.02.09 -
- ひざ関節
- 膝の慢性障害
膝蓋大腿関節症は膝の皿が痛い症状が特徴!原因、治療法について 膝周辺の痛みを起こす病気に「膝蓋大腿関節症」というものがあります。この病気はスポーツをしている方や膝のケガをした方、中高年の方で起こりえます。 この記事では膝蓋大腿関節症の症状、原因、治療法について解説していきます。膝の痛みでお困りの方はぜひ参考にしてみてください。 膝蓋大腿関節症とは 膝には大腿骨と脛骨でつくられる膝関節と、大腿骨と膝蓋骨(膝の皿の骨)でつくられる膝蓋大腿関節の2つの関節があります。膝蓋大腿関節は「しつがいだいたい関節」と読み、膝の皿の骨である膝蓋骨と大腿骨との間で障害が起こり、痛みを起こす病気です。膝蓋骨はpatella、大腿骨はfemurと英語で表記するためpf関節とも呼びます。 通常、膝蓋骨と大腿骨が接触している部分は骨の表面に軟骨があり摩擦がほとんどありません。そのため、膝蓋骨は膝を屈伸する時に滑らかに動きます。しかし、膝蓋大腿関節にずれや炎症が起きたり、軟骨がすり減ってしまうと痛みを起こしてしまい、そのような状態を膝蓋大腿関節症と呼びます。 膝蓋大腿関節症の症状 膝蓋大腿関節症の主な症状は膝のお皿の痛みで、膝を伸ばすとき痛みを感じることが多いです。ケガなどによって膝蓋骨の脱臼や不安定症などがある場合には、膝の皿の横の痛みや、膝のお皿の周りの痛みを感じることもあります。 また、膝のお皿の下が痛い場合もありますが、そのような場合にはジャンパー膝や膝蓋腱炎と呼ばれるバレーボールやバスケットボールなどのジャンプするスポーツをする方に多い膝蓋骨に付着する腱の炎症が原因のこともあります。 膝蓋大腿関節症の主な原因 原因は主に「膝蓋骨の不安定性」と「加齢」による変化です。 健康な方では、膝蓋骨は大腿骨の表面の溝にうまくはまりこみ、溝の中を滑るように動きます。膝蓋骨の不安定症とは、膝蓋骨がこの大腿骨の溝から外れやすくなってしまう症状です。生まれついての骨の形や、足がX脚になっている方では、蓋骨の脱臼・亜脱臼が起こりやすくなります。そのような状態を放置していると、膝蓋骨と大腿骨がぶつかることで、徐々に軟骨がすり減っていきます。 また、加齢も原因の1つです。中高年の女性に多く、加齢によって膝関節の軟骨が摩耗していくと、骨同士がぶつかり痛みを生じてしまいます。 膝蓋大腿関節症の診断方法 診断は身体診察と画像診断により行います。 身体診察 身体診察では視診、触診、痛みを誘発するテストなどを行います。 膝関節の診察では可動域と触診による痛みの部位の確認をまず行います。膝蓋大腿関節症では多くの場合、膝関節の前方や膝皿の痛み(膝蓋骨周辺)が主訴です。 また診察では「patella griding test(膝蓋骨圧迫テスト)」を行います。 patella griding test(膝蓋骨圧迫テスト) 膝蓋骨を上から圧迫して左右に動かすことによって、皿裏に痛み(膝蓋骨の裏側)が誘発されます。 膝蓋骨の不安定症の診察は膝関節を伸ばして、膝蓋骨を外側に押し付けるようにします。 この手技で膝蓋骨が外れるような感じがあれば、不安定症があると判断されます。 画像診断 画像診断では、レントゲン撮影により膝蓋骨の形や位置、大腿骨の溝の形、変形の程度を確認します。 関節の隙間の広さで変形の程度を判断しますが、関節の隙間が少なくなっており、骨棘(こつきょく)という余分な骨ができている場合には、膝蓋大腿関節症があると判断されます。症状が進行すると、関節の隙間がなくなり、骨同士が接触してしまいます。 また、骨の形状を3次元的に判断するためにはCT撮影が有効であり、軟骨・靭帯の状態の評価にはMRIが有用です。 膝蓋大腿関節症の治療法 治療は大きく保存療法と手術療法に分けられます。 保存療法 まず、保存治療について解説します。 加齢が原因の場合 加齢による膝蓋大腿関節症の保存治療では、患部を安静にして、正座や階段などの痛みがでる動作を控えるようにします。 また、膝の裏にタオルや枕をおいて膝関節を伸ばしたり、座っている状態から膝を伸ばす、寝ている状態で足を上げる、痛みの範囲でスクワットをするなどの大腿四頭筋の筋力訓練が有効です。さらに、鎮痛薬や湿布、外用剤などを使用することによって、痛みを軽減することができます。 また、ヒアルロン酸や痛み止めの関節内注射も行われることがあります。これらの治療で痛みが改善せず、日常生活に支障がでる場合には手術が選択されます。 膝蓋骨の不安定症が原因の場合 膝蓋骨の不安定症が原因の膝蓋大腿関節症の場合は、初回の脱臼で大きな骨折がなければ保存的に治療します。保存治療ではサポーターを使用して膝蓋骨が脱臼しないようにしながら、膝関節の可動域訓練、筋力訓練を行います。3ヶ月程度、保存治療をしても痛みや不安定感が残る場合には手術治療が行われる場合があります。 手術療法 次に手術治療について解説します。 加齢が原因の場合 加齢による軟骨損傷が原因の膝蓋大腿関節症では、主に人工関節手術が行われます。 摩耗した軟骨は自然に回復することはないので、傷んだ部分を切除して、金属に置き換え、軟骨の代わりのプラスチックを挿入することで痛みが軽減されます。 膝蓋大腿関節だけではなく、脛骨側の軟骨も傷んでいる場合が多いので、人工膝関節全置換術が行われることが一般的です。人工膝関節全置換術の場合は、治療期間はおおむね2〜4週間程度で、痛みが軽減して、膝の曲がりもよくなり、長期的にも成績が安定しています。 最近では傷んだ部分だけを手術する人工膝関節部分置換術が導入されている施設もあります。部分置換術は主に大腿脛骨関節の内側に行われることが多いのですが、膝蓋大腿関節だけが障害されている場合には膝蓋大腿関節置換術という方法もあります。しかし、手術の適応はまだしっかりと決まっておらず、長期的な成績も不明な部分が多いので、方針について担当医とよく相談することが必要です。 膝蓋骨の不安定症が原因の場合 膝蓋骨の不安定症が原因の膝蓋大腿関節症では、膝蓋腱が脛骨に付く位置を移動させたり、膝蓋骨の内側の靭帯を修復して脱臼を予防させる手術などが行われます。 このように、様々な治療法がありますが、ご自身の状態によって方針は変わってきます。信頼できる医師、病院を見つけて、主治医とよく相談し、納得できる治療を受けることが大切です。 また手術以外にも、リハビリテーションも重要です。リハビリ体制が整っているかどうかも病院選びの参考にしてみてください。 まとめ・膝蓋大腿関節症は膝の皿が痛い症状が特徴!原因、治療法について 膝蓋大腿関節症は加齢や膝蓋骨の不安定性によって、膝の皿の裏に痛みを生じる病気です。膝を曲げ伸ばしするときの痛みが多く、身体診察と画像検査によって診断されます。 治療方針は膝蓋骨の不安定性と軟骨の摩耗の程度、年齢などによって変わってきます。保存治療としてお薬、リハビリ、注射などがあり、改善しない時には手術治療の方法もあります。早めに治療をすることで、症状が早くよくなったり、悪化することを防ぐことができるので膝のお皿に痛みや違和感があり、なかなか良くならない方は早めに専門医に診察をしてもらうようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.151 監修:医師 坂本貞範
最終更新日:2023.10.04 -
- ひざ関節
- 靭帯損傷
後十字靭帯断裂の症状と治療法について医師が詳しく解説 後十字靭帯断裂という怪我をご存じですか? 後十字靭帯は大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)をつなぐ重要な靭帯で、膝の裏側にあります。靭帯断裂というと、スポーツで起きるイメージを持たれるかもしれませんが、後十字靭帯断裂はスポーツだけでなく転倒や交通事故でも起こります。 今回は、後十字靭帯断裂について、症状や診断方法、治療や手術費用などについても詳しく解説します。 後十字靭帯とは 後十字靭帯は、大腿骨の内側顆と呼ばれる膝の内側の部分を起始とし、後方外側に向かってのび、脛骨の顆間隆起の後外方に停止します。 「後」十字靭帯という名前がついていることからわかるように、私たちの膝には「前」十字靭帯も存在します。膝の中でこの2つが十字型に見えることから、こう呼ばれています。 この前十字靭帯と後十字靭帯がともに機能することで、私たちの膝は安定して動かすことができます。 後十字靭帯は、前十字靭帯よりも太さと強度があり、特に脛骨(すねの骨)が後ろに脱臼しないように保持する働きをしています。また、膝をひねる動作が安定して行えるよう支える役目も担っています。 後十字靭帯断裂の原因 後十字靭帯断裂は、主に膝を曲げた状態で強く地面に打ち付けることによって発生します。交通事故でダッシュボードに膝を強く打ち付ける、転倒して膝から転ぶなどが典型的な受傷機転です。 スポーツでは、ラグビーやアメフトなどのコンタクトスポーツでの受傷が多いです。 後十字靭帯断裂の症状 多くの場合、膝を打ちつけているため、膝のお皿の下に擦り傷などの外傷があることが多いです。 関節内に、少量の血が溜まる場合もあります。靭帯のみでなく、後ろの関節包(関節を包んでいる袋、関節の安定性に寄与している)も損傷している場合には、膝後方に皮下出血があり、注意が必要です。 膝窩部(膝裏)の痛みや、膝を曲げると痛いという症状を訴える方もいます。 後十字靭帯は、一部の損傷のみにとどまることもありますが、完全に断裂し、膝の不安定性が強い場合は、階段の上り下りや、しゃがみ込み時に膝がグラグラする感覚があります。 放置するとどうなる? 膝が不安定な状態のまま日常生活を送ると、大腿骨と脛骨の動きが通常よりも大きくなり、その分、膝全体にストレスがかかります。この状態が長期間続くことによって、膝の軟骨や半月板などが徐々に損傷を受けます。 そのままさらに放置すると、膝が変形してしまい、痛みを伴いながら、極端なO脚やX脚になってしまう可能性があります。(変形性膝関節症) 後十字靭帯断裂の診断 後十字靭帯断裂を疑う外傷があった場合、身体診察と画像検査によって診断します。 徒手検査 まずは身体診察を行い、膝関節の不安定性がないかどうかをチェックします。 特に有名なものに、「後方引き出しテスト」とよばれる検査があります。 後方引き出しテスト 1. 寝た状態で膝を曲げる 2. 医師がすねの骨(脛骨)を後ろに押していく その際に、後十字靭帯が機能していないと、脛骨が後ろに落ち込んでしまうような感覚があります。 画像検査 画像診断は、レントゲンとMRIで行うことが多いです。 靭帯自体はMRIでないと評価できませんが、合併する骨折を見逃さないためにも、レントゲンでの評価も必要です。MRIでは、靱帯が完全に断裂しているのか、部分的に損傷しているのかを評価することができます。 また、半月板や側副靱帯など他部位の損傷が合併しているかどうかについてもMRIで評価します。 後十字靭帯断裂の治療 後十字靭帯の機能は、保存的治療でも比較的に良好に回復すると言われており、保存療法が選択されることが多いです。 保存療法 保存療法の場合は、膝関節の安定性を補助するための装具を2カ月程度使用します。また、膝の安定性を高めるためにはリハビリも欠かせません。 受傷から1,2週の急性期は、腫脹や痛みがある時期なので、ある程度痛みが引いてくるまでは負担をかけないように松葉杖などを使用します。痛みのない範囲で、早期から関節可動域訓練やストレッチなどは開始します。 その後、3週間程度経過すると、徐々に膝が動かせるようになり、筋力トレーニングやランニングなど、装具を着用したまま行えるようになります。 スポーツ復帰までどのくらい? 筋力トレーニングによって、筋力が8割程度戻ってくればスポーツ復帰となりますが、少なくとも3ヶ月程度はかかります。 ただし、保存療法を行っても、膝の不安定性が強い場合や、不安定感でスポーツなどへの復帰が傷害される場合は、再建術などの手術が検討されます。 手術療法 手術は全身麻酔で行われる場合が多いです。 切れた靱帯同士を縫合するのは難しく、強度も不十分であるため、もも裏の筋肉(ハムストリング)の一部を採取し、靱帯のように形成して移植します。 入院期間とスポーツ復帰まで 手術後は装具を使用して膝を固定します。体重をかけていいのは、術後3週間程度してからになります。入院期間は病院によって様々ですが、体重をかけられるようになることまで入院している場合が多いです。 退院後も、通院でリハビリテーションを行い、術後6ヶ月でランニングを許可し、術後10〜12ヶ月でスポーツ復帰が目安となります。 手術はどのくらい費用がかかる? かかる費用は、入院期間や処置の内容によっても前後しますが、50万前後となることが多いです。装具や通院なども含めると、さらに金額は上がってきます。 基本的には高額療養費制度の適応となりますので、自己負担は軽減されます。高額療養費制度に関しては、ご加入の健康保険窓口で問い合わせてください。 まとめ・後十字靭帯断裂の症状と治療法について医師が詳しく解説 今回は、後十字靭帯断裂について詳しく解説しました。 後十字靭帯は私たちの膝を安定させるのに非常に重要な役割を果たしています。当初は軽い症状でも、放置すると日常生活に支障が出る場合も珍しくありません。少しでも違和感を感じた場合は、早期に専門医を受診してください。 No.S150 監修:医師 加藤 秀一
最終更新日:2024.02.12 -
- ひざ関節
- 関節リウマチ
- 膝部、その他疾患
リウマチによる膝の関節炎とは?症状と治療について医師が解説 関節リウマチは全身の関節に炎症が起こり、痛みや腫れを起こす病気です。進行すると関節の変形や機能の障害を残してしまいます。 関節リウマチでは膝の痛み、膝の腫れも非常に多い症状の1つです。膝が痛いときは、変形性膝関節症で年のせいと思うかもしれませんが、もし関節リウマチだった場合に放置していると、悪化してしまう可能性もあります。 この記事では関節リウマチによる膝関節炎の症状や治療法について解説していきます。膝の痛みでお困りの方はぜひ参考にしてみてください。 関節炎、関節リウマチとは 関節炎とは様々な原因で関節に炎症を起こしている状態の総称であり、関節リウマチは関節炎を起こす病気の1つです。 関節リウマチでは、自分の体を細菌やウイルスから守る免疫の異常によって関節の滑膜に炎症が起こり、痛みや腫れを起こしてしまいます。関節リウマチは無治療のままで放置してしまうと、関節が変形したり、痛みだすなど、機能的な障害をきたしてしまいます。 関節リウマチの主な原因 関節リウマチの多くは40-60歳代ごろの中高年の女性に発症します。正確な原因はまだ明らかになっていませんが、自己免疫疾患と考えられており、自分の組織に対して攻撃する抗体が作られてしまい、関節内の滑膜という組織にリンパ系の細胞が集まって炎症性の物質が作られることが原因と考えられています。 発症には遺伝的な要因や喫煙、歯周病などが関連しているとわかっています。発症すると関節炎によって痛みや腫れを起こし、進行すると関節の変形を生じてしまうため、早期の発見と治療が大切です。 リウマチによる膝関節炎の症状 関節リウマチで多い症状は手や足の指の腫れ、痛み、朝のこわばりなどです。また、膝関節で滑膜が増殖して、炎症を起こすと膝関節炎をきたしてしまいます。 膝関節炎の主な症状は、膝が腫れる、膝に水が溜まる、歩く時や階段での痛み、膝が曲がらないなどです。膝の痛みは膝裏に起こることが多く、曲げ伸ばしの時に音が生じることもあります。 また、炎症が強い場合には安静にしていても激痛を感じたり、歩けないくらいの痛みを生じる場合もあります。 膝関節炎、放っておくとどうなる? 膝関節炎を放置しておくと、関節の軟骨がなくなってしまい、徐々に関節の変形が進んでいきます。その結果、徐々に膝の曲げ伸ばしが難しくなり、骨同士がぶつかることによって痛みが悪化してしまいます。関節の変形を生じさせないためにも、早期の発見と治療が大切です。 リウマチによる膝関節炎の診断方法 診断は問診、身体診察と血液検査、画像検査などを組み合わせて総合的に行います。これは関節が腫れて、痛む病気は複数あり、検査だけで関節リウマチと診断できない場合があるからです。そのため、関節リウマチの診断基準を使用して診断を行います。 現在では2010年に米国、欧州リウマチ学会が合同で発表した分類基準を使用することが一般的です。 この基準では、 ①症状がある関節の数 ②症状が続いている期間 ③血液検査での炎症反応の数値 ④血液検査でのリウマトイド因子や抗CCP抗体の数値 これらの4項目についてそれぞれ点数をつけ、合計して6点以上であれば関節リウマチと診断します。 血液検査では、リウマトイド因子や抗CCP抗体が重要で、多くの関節リウマチで陽性になります。しかし、両方とも陰性でも関節リウマチである場合や、陽性でも関節リウマチではない場合もあります。また、炎症反応は活動性を反映する指標ですが、リウマチ以外でも上昇することがあります。 画像検査は診断基準には含まれませんが、単純レントゲン写真では骨びらんという、骨の透亮像がみられる場合があります。また関節エコーやMRI検査も滑膜炎の範囲、程度を評価するのに有用です。 リウマチによる膝関節の治療法 治療の基本は、薬物治療です。リウマチと診断した早期から、抗リウマチ薬を開始します。また、痛みの程度に応じて炎症を抑えるステロイドや、鎮痛薬を併用します。 お薬を開始しても膝関節炎の症状が続く場合にはサポーターを使用したり、膝関節に注射をする方法があります。しかし、膝関節炎が治まらず、関節の変形や破壊が進行した場合には、人工関節置換術などの手術治療が行われます。 抗リウマチ薬の種類 抗リウマチ薬には複数の種類があります、日本リウマチ学会による2020年のガイドラインから代表的なお薬を紹介します。 第一段階ではメトトレキサートが推奨されます。世界中で使用されている薬剤で有効性が高いことから関節リウマチ治療の第一選択となっています。 メトトレキサートに複数の抗リウマチ薬を併用しても炎症が治らない場合には第二段階の治療として、生物学的製剤やJAK阻害薬というお薬が使用されます。バイオテクノロジーを用いて製造されたお薬で、非常に効果が高いのですが、同時に自己免疫を抑える作用があるため、専門医に処方してもらうことが必要です。 ・メトトレキサート ・生物学的製剤 ・JAK阻害薬 関節リウマチはこれまで治療が難しく、関節の変形が進行してしまう患者さんも多かったのですが、現在では薬剤の種類も多くなっており、効果が高いお薬もあるため、適切に治療することで症状を抑えることが可能になってきています。 まとめ・リウマチによる膝の関節炎とは?症状と治療について医師が解説 関節リウマチは全身の関節に炎症が起こり、痛みや腫れを起こす病気です。進行すると関節の変形や機能の障害を残してしまいます。 関節リウマチによって膝関節炎が起きている場合は、放置してしまうと関節の変形、破壊が進行してしまい、人工関節手術が必要になることもあります。そのため、早期に発見、治療することが大事な病気です。 早めに治療をすることで、悪化を防ぐことができるので、膝に痛みがあり、なかなかよくならない方は早めに病院を受診するようにしましょう。 No.S151 監修:医師 加藤 秀一
最終更新日:2024.02.12 -
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後十字靭帯損傷の症状と原因、治療法について 後十字靭帯損傷(こうじゅうじじんたいそんしょう)とは、膝の関節内にある後十字靭帯の損傷をいいます。主に車の事故やバイク事故、ラグビーなどのコンタクトスポーツで他人と衝突することで生じます。 今回の記事では、後十字靭帯損傷の原因や症状、そして治療方法について解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。 後十字靭帯損傷とは? 後十字靭帯は、膝関節の中で前十字靭帯とともに関節を強固に連結している靱帯です。 大腿骨(太ももの骨)の内側と、脛骨(すねの骨)の中央を繋ぎ、前十字靭帯と十字のかたちに交差して膝関節を支えています。普段は膝関節のひねる動作を支えたり、脛骨が後ろにずれないように支えるように働いたりしています。 後十字靭帯損傷は、膝裏にあたる位置にある靭帯損傷のことであり、後十字靭帯が一部あるいは完全に断裂した状態を指します。 後十字靭帯損傷の原因 スポーツ外傷や交通事故などで、脛骨上端に、前から後ろへ向く大きな力が加わることで、後十字靭帯が損傷することが多いとされています。 具体的には、以下のような受傷機転が考えられます。 交通事故 ダッシュボード損傷とも言われ、車が急停車しダッシュボードに膝(脛骨の上端部)をぶつけることによって起こります。 転倒 膝を90°曲げた状態で転倒すると脛骨が後ろへ押し込まれるため受傷します。 コンタクトスポーツ(ラグビーなど) 膝下にタックルを受けることで、後十字靭帯を損傷することがあります。 後十字靭帯損傷の症状 後十字靭帯損傷の症状を解説します。 急性期(受傷後3週間くらい) 膝の痛みと可動域制限がみられますが、歩ける場合が多いです。しばらくすると腫れ(関節内血腫)が目立ってくる場合もあります。膝窩部の皮下出血を認めることもあります。 痛い部位は、膝の裏となります。また、脛骨に後方へのストレスをかけると、膝窩部に激痛がみられます。 急性期を過ぎると 痛み、腫れ、可動域制限はいずれも軽快してきます。しかしこの頃になると損傷部位によっては膝の不安定感が徐々に目立ってくることがあります。これは下り坂やひねり動作の際にはっきりすることが多いです。 慢性期の症例(受傷から時間がたった場合) 慢性期では、前十字靭帯損傷と比べると膝の機能障害は軽度ですが、脛骨の後方ストレスへの不安定感を歩行やスポーツ活動時に認めます。 また、慢性期では、関節軟骨変性のため膝蓋大腿関節や内側の関節裂隙に圧痛を認めることもあります。また、仰臥位で膝関節屈曲90°とすると、脛骨近位端が後方へ移動している落ち込み徴候(サギングサイン)を認めます。 不安定感があるままに放置しておくと新たに半月(板)損傷や軟骨損傷などを生じ、慢性的な痛みや腫れ(水腫)が出現するおそれもあります。 後十字靭帯損傷の診断方法 脛骨の後方ストレスへの不安定性の証明とMRI画像での後十字靭帯断裂を証明することで、後十字靭帯損傷を診断することができます。 また、レントゲン写真では骨折の有無についても確認することができます。 後十字靭帯損傷が見られるかというテストには、sagging(サギング)テストがあります。 sagging(サギング)テスト 仰向けの状態で膝を90度屈曲して踵を持ち上げたときに、左右を比較して、脛骨が落ち込んでいるかどうかを見るテストです。 この際に、脛骨が落ち、関節に窪みが生じていれば、後十字靱帯断裂を疑います。 後十字靭帯損傷の治療法 後十字靭帯の単独損傷では、大腿四頭筋訓練を中心とした保存療法が行われます。 膝動揺性抑制装具(サポーター)を装着して早期から痛みの無い範囲で可動域訓練を行い、筋力低下を最小限にとどめるようにします。受傷初期は疼痛緩和と安静を兼ねてギプス固定を行うこともあります。 後十字靭帯単独損傷の場合には多少の緩みが残ってもスポーツ活動に支障をきたさないことが多いことから、軽度な症状の場合には先ずは保存療法を試みるようにします。 こうした、後十字靭帯損傷のリハビリ目的の筋トレ中の禁忌として、症状を悪化させる危険性があるので、しゃがみや膝立ち、正座できないことは知っておく必要があります。 慢性期で後方ストレスへの不安定性が強く、日常動作に不自由を感じる例は靭帯再建術を行うべきとされています。 後十字靭帯損傷の完治期間 後十字靱帯損傷の完治までの期間・道のりとしては、ハムストリングスを用いた再建術後の理学療法、術直後には免荷で膝装具0° 固定し等尺性筋収縮運動を行います。 1〜2週間で部分荷重、スクワット運動開始とします。4週間で全荷重、4ヶ月でジョギング、水泳などのスポーツ復帰が可能となります。 ・1〜2週間で部分荷重、スクワット運動開始 ・4週間で全荷重 ・4ヶ月でジョギング、水泳などのスポーツ復帰 このように、全治までには数ヶ月を要します。 後十字靭帯損傷の予後は比較的良好とされています。しかしながら、後十字靭帯損傷が自然治癒するわけではない、ということには注意が必要です。 最近では、早く治すことで早期の競技復帰を望むアスリートの間などで、低侵襲な治療で靭帯組織の修復が期待できる「再生医療」が選択されるケースもあります。 https://youtu.be/ZYOV-Er0mnU?si=krijmhYRz9t7Ggd_ ▶こちらの動画では、膝の画像を使って分かりやすく靭帯のメカニズムと再生医療を解説しています。是非ご覧ください。 まとめ・後十字靭帯損傷の症状と原因、治療法について 「靭帯が伸びるとどうなるか」という疑問を持った方がいらっしゃるかもしれませんが、靱帯損傷では靭帯の一部あるいは全部が断裂つまり切れてしまうものです。 当院では、自己脂肪由来幹細胞治療やPRP療法を行っています。後十字靭帯損傷後に膝の不安定感があったり、スポーツに早期復帰したいという方のために、膝の靭帯損傷をより早く治すために再生医療を提供しています。ご興味のある方は、ぜひ一度当院の無料相談を受けてみてください。 No.150 監修:医師 坂本貞範 参考文献 膝の最前線. 理学療法科学 第23巻2号 「膝靭帯損傷」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる プライマリケアのための関節のみかた 下肢編(2)―膝(下)[臨床医学講座より] - 医科 - 学術・研究 | 兵庫県保険医協会
最終更新日:2024.03.14