-
- 関節リウマチ
- ひざ
- 股関節
- 肩
- 肘
- 腰
- 首
関節症に喫煙や電子タバコが良くないというのは本当か? 喫煙することと関節症の間には、一見何も関係がないようにみえます。 しかし最近いくつかの研究の結果から、タバコが関節症の経過によくない影響を与えていることが明らかになってきました。そこで今回の記事では、喫煙と関節症の関係についてご説明します。さらに電子タバコによる影響についても、解説いたします。 喫煙が関節症に与える影響 喫煙そのものは、肺がんや肺疾患、また動脈硬化や脳血管障害など、わたしたちの体のあらゆるところによくない影響を与えることは、よく知られていることかと思います。 ここでは特に、関節症の方に対して喫煙が与える影響についてご紹介します。 死亡リスクの増加 関節リウマチと診断されている方が喫煙を続けていると、非喫煙者に比べて死亡率が増加することがわかっています。 121,700人の女性が参加する追跡調査で、追跡中に関節リウマチと診断された923名を分析しました。このうち36%は関節リウマチと診断される前に一度も喫煙したことがなく、43%が過去に喫煙しており、21%が現在も喫煙者でした。 この調査によると、関節リウマチと診断された後も年間5パック以上の喫煙を続けていた女性は、診断前から喫煙をしていなかった人や関節リウマチと診断された後に禁煙した人たちと比べても、死亡リスクが2~4倍も高くなっていました。 診断後に禁煙することで、喫煙を継続するよりも死亡リスクは低くなっていましたので、早めに禁煙することは有効だと言えるでしょう。 (参考文献:https://acrabstracts.org/abstract/smoking-behavior-changes-after-rheumatoid-arthritis-diagnosis-and-risk-of-mortality-during-36-years-of-prospective-follow-up/) また5,677人の関節リウマチの方を平均して約5年間追跡調査した研究では、喫煙者の心血管障害や呼吸器疾患による入院率は、非喫煙者の2倍になっていました。 入院するリスクは、禁煙1年後に著しく低下していましたので、こちらも早めに禁煙することが予後を改善することにつながります。 (参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5623338/) 手術の合併症の増加 喫煙者と非喫煙者における、膝関節置換術の経過を比較した研究があります。 合計で8,776人の膝関節再置換術を受けた方を対象に実施した研究です。このうち、11.6%が現在も喫煙者でした。再置換人工膝関節置換術を受けた喫煙者は、非喫煙者と比較して、あらゆる創傷合併症、肺炎、および再手術の割合が高くなっていました。 (参考文献:https://www.arthroplastyjournal.org/article/S0883-5403(18)30282-1/fulltext) タバコを吸うと、一酸化炭素が赤血球内に取り込まれ、その結果、全身の組織に運ばれる酸素が少なくなります。手術部位が適切に治るためには、酸素を十分に含んだ血液が必要です。 タバコを吸うと、この治癒プロセスの重要な部分が滞り、治癒に時間がかかるようになると考えられています。 病状の悪化 159人の変形性膝関節症の男性を最長30ヶ月間追跡調査したところ、喫煙者は非喫煙者に比べて関節症による膝の痛みが強く、軟骨が著しく失われる可能性が2倍以上であることがわかりました。 (参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1798417/) X線写真の撮影が可能であった311人の初期リウマチ性関節炎の方をフォローした調査では、1年後にX線写真の進行がみられる独立した予測因子は、喫煙でした。つまりX線写真上で悪化する危険因子に喫煙があることがわかりました。 (参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4515990/) タバコに含まれる有害物質が軟骨の減少に寄与している可能性や、血中の一酸化炭素濃度が高いことが、軟骨の修復を妨げている可能性があると推測されています。 電子タバコの関節症に与える影響 電子タバコ(e-cigarettes)の使用率が急速に高まっていますが、電子タバコの使用が関節症状に対して与える影響について、まだ詳細はわかっていません。そこで行われたので、米国で924,882人の成人を対象に実施された、最大規模の全国電話調査です。 この調査では、電子タバコの使用歴と炎症性関節炎に関する情報を入手し、解析しています。 その結果、電子タバコ使用者と電子タバコ未使用者を比較したところ、電子タバコ使用者の方が炎症性関節炎により罹りやすいことが確認されました。この傾向は、電子タバコ使用者でも電子タバコと通常のタバコを併用する使用者でも同様であることがわかりました。(参考文献:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphar.2022.883550/full) まとめ・関節症に喫煙や電子タバコが良くないというのは本当か? 喫煙と関節症の関係、また電子タバコと関節症の関係についてご説明しました。 いずれにしても喫煙は関節症に対し、良い作用は何もないと言えるでしょう。ただ禁煙することで、予後や合併症の改善がみられることも事実です。まだ電子タバコを含め喫煙しておられる方がおられるようであれば、できる限り早く禁煙に取り組むことをお勧めいたします。 No.082 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療に関する詳細は以下をご覧下さい 自分自身の自ら再生しようとする力、自然治癒力を活かした最先端の医療です
2022.08.09 -
- 健康
側弯症とは?その症状と原因、治し方について 小中学校での検診で、多くの方が一度はチェックを受ける側弯症という症状をご存知でしょうか? 昔の検診内容なんて覚えていないかもしれません。しかも、一般的に身近に感じることがあまりない病気だからです。この病気は、幼少期には見つかりにくく、思春期に見つかることが多い病気です。また、成人してから進行しはじめる場合もあります。 今回の記事では、側弯症とは、その症状と原因、治療法についてご説明しましょう。 側弯症とは? 側弯症とは、文字通り、背骨が横側に弯曲する病気です。多くは思春期に診断され、脳性麻痺や筋ジストロフィーなど、筋肉や神経の疾患を持っている場合に起こりますが、それ以外、原因がよくわからないことも少なくありません。 側弯症の程度について、多くの場合は軽いことが一般的ですが、なかには成長するにつれて悪化していくものもあります。側弯症状が進行すると、胸部の空間が狭くなり、肺が適切に機能することが困難になることもあります。 また体の動きに支障が出ることもあるため、装具を着用したり、重い場合は手術が必要となることもあります。 側弯症の症状 側弯症の症状には、以下のようなものがあります。ただ、進行するまで本人は生活に支障を感じることはありません。 真っ直ぐに立っているのに、以下のような症状が見られます ・肩の位置が左右で異なる ・腰の位置が異なる ・片方の肩甲骨が飛び出して見える ・胸郭の片側が前に突き出ている、前屈みになった時、背中の片側が隆起する 側弯症の多くで、脊柱は左右に曲がるだけでなく、回転またはねじれを起こしている場合もあります。そのため、体の片側にある肋骨や筋肉が、反対側にある肋骨よりも大きく突き出てしまうことがあります。 日本では、小中学校で行う検診の項目に含まれていることもあり、検診で気づかれることがあります。 なお進行すると胸郭が肺に圧迫され、呼吸が困難になることがあります。また体の中心が片方へ傾いてしまうため、運動や生活に支障をきたすこともあります。 適切に治療されていないと、慢性的な背中の痛みを抱えやすくなります。 ・運動や生活に支障が出る ・慢性的な背中の痛みを抱えやすくなる 側弯症の原因 側弯症は、原因が特定できない。特発性側弯症が最も多く見られるタイプです。ただし、家族内で発症することがあるため、遺伝的要因が関係している可能性が考えられています。 そのほか、脳性麻痺や筋ジストロフィーなどの特定の神経筋疾患、脊椎の骨の発育に影響を及ぼす先天性異常、乳児期に胸壁の手術を受けたことなどが影響することもあります。 なお特発性側弯症を発症する危険因子には、以下のようなものがあります。 危険因子 ・年齢:一般的に思春期に始まる ・性別:女児に多くみられ、かつ女児の方は側弯が悪化し、治療を必要とするリスクがはるかに高くなる ・家族歴:側弯症は、家族に遺伝する可能性がありますが、全く家族歴がないこともあります 側弯症の診断 最初に詳細な病歴を聴取し、最近の成長やもともと抱えている病気について確認します。 身体診察では、子どもを立たせてから、両腕をゆるく垂らしてお辞儀をするように腰を前に曲げ、胸郭の片側がもう片側よりも突出しているかどうかを確認します。 また、筋力低下、しびれ、反射の異常の有無を確認します。 画像検査 X線検査は、側弯症の診断を確定し、脊柱の弯曲の程度を明らかにすることができます。弯曲が悪化しているかどうかを確認するために、何年にもわたって何度もX線撮影を行うため、繰り返しの放射線被ばくが懸念されます。 磁気共鳴画像(MRI)は、脊髄の異常などの基礎疾患が疑われる場合に検討されます。 側弯症の治療法 脊柱側弯症の治療法は、弯曲の重症度によって異なります。ごく軽度の弯曲を持つ子供は、通常、全く治療を必要としませんが、成長とともに弯曲が悪化していないかどうか、定期的なチェックが必要な場合があります。 脊椎の弯曲が中等度または重度の場合は、装具や手術が必要になることがあります。考慮すべき要因は、子どもの成熟度、弯曲の程度、性別などです。 子どもが十分に成熟し、骨の成長が止まっている場合、弯曲が進行するリスクは低くなります。つまり、骨がまだ成長している子どもには、装具が最も効果的です。なお骨の成熟度は、手のレントゲンで確認することができます。 また弯曲が大きいと、時間とともに悪化する可能性が高くなりますし、女の子は男の子よりも進行のリスクが高くなります。 1.装具 骨がまだ成長しており、中程度の側弯症である場合、装具の使用が検討されます。装具をつけることで側弯症が治ることはありませんが、通常は弯曲が悪化するのを防ぐことができます。 最も一般的な装具は、プラスチック製で、胴体部分にフィットするように作られています。この装具は、腕の下と胸郭、腰の周りにフィットするため、服の上からはほとんど見えません。 装具は1日に13時間から16時間装着します。装具の効果は、1日に装着する時間が長いほど高くなります。なお装具を装着していても、多くの活動に参加でき、ほとんど制限を受けません。 必要であれば、装具を外してスポーツやその他の運動に参加することもできます。 装具は、身長の変化が見られなくなったら終了します。平均して、女の子は14歳、男の子は16歳で成長が完了しますが、これには個人差があります。 2.外科手術 重度の側弯症は、通常時間とともに進行するため、弯曲を矯正し、悪化を防ぐために、手術を検討する場合があります。 なお手術には、椎骨と椎骨の間に骨片や骨に似た物質を挟み込み、脊椎の2つ以上の椎骨をつなぎ合わせ、それぞれが独立して動けないようにする脊椎固定術が一般的です。 若くして側弯症が急速に進行している場合、成長に合わせて長さを調節できる拡張可能なロッドを背骨に沿って1本か2本取り付けることもあります。ロッドは数か月ごとに、手術またはクリニックで長さを調節します。 脊椎手術の合併症として、出血、感染症、神経損傷などが考えられます。 まとめ・側弯症とは?その症状と原因、治し方について 側弯症について、その原因や治療法についてご説明しました。 早い段階で発見し、適切に継続して診療を受けていれば、長期にわたる問題を起こすことを避けることができる可能性が高くなります。気になる場合は、かかりつけの医療機関、整形外科医にご相談ください。 No.081 監修:医師 坂本貞範
2022.08.08 -
- 腰
坐骨神経痛やってはいけないこと! 坐骨神経痛の痛みは、慢性的な背骨への刺激によってできた骨の棘や、椎間板ヘルニアが腰の脊髄神経根を圧迫し、背中や足、臀部に耐え難い不快感をもたらします。 坐骨神経痛に悩んでいる方は、内服薬に始まり、理学療法、硬膜外注射など、痛みを止めるために、あらゆる方法を試されているかもしれません。しかし、日常的によくとりがちな行為が症状を悪化させてしまうことがあることをご存知でしょうか? そこでこの記事では、坐骨神経痛に悩む方が「やってはいけないこと」、「できれば避けるべきこと」など気を付けるべきことについてご紹介してまいります。。 1.重いものを持ち上げてはいけない! 坐骨神経痛の急性期に荷物などを持ち上げる場合、たとえ数kgであっても、かなりの負担になる可能性があり、坐骨神経痛を悪化させることがあります。それでも荷物などを持ち上げねばならないときは体から遠い場所にあるものをその位置関係のまま持ち上げようとしないでください。 できれば持ち上げない方が良いのですが、そうもいかない場合、効果的な対処法は、足を肩幅に開き、対象物の近くに立つ。膝を曲げて、対象物に向かって背中を伸ばしたままでしゃがむ。 左右の手で物を持ち、持ち上げる。頭、背中、お尻が一直線になっていることを意識します。臀部と腹部の筋肉を引き締める。しゃがんだ状態から物をできるだけ体の近くで持ち、背筋をできるだけ伸ばして、足の筋肉で立ち上がるようにして持ち上げます。 このような持ち上げ方をすることで、腰への負荷を最小限にすることができます。 腰への負担を減らす荷物等の持ち上げ方 ・身体から遠くのモノを持ち上げない ・足を肩幅に開き、持ち上げるモノの近くにポジションをとる ・頭、背中、お尻を直線にする意識で膝を曲げてしゃがむ ・臀部と腹部の筋肉を引き締め、頭、背中、お尻を直線にする意識を持ち足の筋力で持ち上げる 2.長時間、座りっぱなしではいけない 長時間座っていると、腰に負担がかかってしまうため避けたいものです。 そこで、例えばオフィスであれば2~30分くらい経ったら、立ち上がって少し歩いてから座り直します。長時間の乗り物に乗る場合は、坐骨神経痛の痛みを避けるために、こまめに休憩を取るようにしましょう。 ちなみに座るときは、前屈みにならないようにし、また柔らかいソファーに座ることは腰に負担がかかるのでやめましょう。ずっと座っていると腰や背中の筋肉が硬直してしまい、運動能力も低下してしまいます。 数時間おきには休憩を入れ、しっかりと歩き回り、背筋を伸ばすことです。そうすることで負担を軽減するばかりか、腰への負担を乗り越える力を蓄えることもできます。 座る場合は腰に負担を掛けない姿勢を維持する ・深く腰掛ける ・背筋を伸ばす ・頭や肩を後ろに引くイメージで猫背は厳禁 ・足を組まない ・同じ姿勢を続けない ・急な動きを行わない 3.ハムストリングスのストレッチをしてはいけない ふくらはぎの筋肉であるハムストリングをストレッチさせると、坐骨神経痛が悪化することがありるため、注意が必要です。 これは準備運動などの一環でよく行われる動作ですが、ハムストリングを伸ばす行為は、坐骨神経に刺激を加え、痛みを増強させることがあります。 したがって、坐骨神経痛の痛みがあるときは、全身の筋肉を温めるウォーキングや、水の浮力を利用して背中に体重をかけない水泳を試してみてください。 ハムストリングとは ・太ももの内側の半腱様筋、半膜様筋と、外側にある大腿二頭筋からなる3つの筋肉の総称です。 4.前かがみになってはいけない 例えば屈みで物を取ろうとすると、前屈みの姿勢に対して、背骨にかかる力が増大します。更に持ち上げようとしている物の重さが組み合わさると、靭帯、骨、椎間板に負荷がかかり、坐骨神経痛が悪化する可能性があります。 そこで、地面に落ちているものを拾うときや、普段の生活で食器洗機から食器、衣類乾燥機から洗濯物を出し入れするときは、まず背骨をまっすぐにし、そのままの姿勢で膝を曲げて腰を落とします。 食器洗い機からは一気に多くの食器を取り出すことは避け、重いものを保たないようにします。こうすることで、腰に負担をかけることなく目的を果たすことができます。 ・背中(背骨)をまっすぐする意識を持つ 5.間違ったサイズの椅子に座ってはいけない 座り心地の悪い椅子は、腰椎を支えきれず、坐骨神経痛の症状を悪化させる可能性があります。逆に沈み込み過ぎるような椅子も避けたいものです。 最善の椅子は、背骨を伸ばしたままでニュートラルな姿勢を保てるような、人間工学に基づいた椅子を使用することです。股関節と膝の角度が90度の状態で、足の裏を床にフラットにつけて座っていられることを意味します。 6.背骨をねじりすぎてはいけない 背骨をひねる動作と前屈や側屈などの他の動作を組み合わせると、腰の痛みを悪化させることがあります。やってはいけないことの例は、雪かきや間違った方法で物を持ち上げることです。 すでに何度か説明したように、ものを持ち上げるための正しい方法を学ぶことです。合わせて体幹のコアマッスルを強化するエクササイズを行い、柔軟性、可動域を向上させ、怪我を防ぐために運動や活動をする前にストレッチを行うことです。 7.ベッドで柔らかすぎるマットレスに寝てはいけない ベッドで仰向けになると、腰に負担がかかります。ベッドで休む時は横むきになると良いでしょう。また柔らかいマットレスも腰に負担がかかります。ある程度硬いマットレスのほうが健全です。 またベッドから立ち上がる時は、ゆっくりと起き上がるだけでなく、腰に負担がかからないようにすることを意識します。特にベッドから腰を上げる時は、膝の力を使うこと、両手を膝について力を膝に集めることも有効でしょう。 8.体を冷やしすぎてはいけない 腰や足を冷やしすぎると自律神経が興奮し、体が常に緊張状態になってしまいます。そのため、筋肉が固まってしまい、神経を更に圧迫してしまうと考えられています。 特に夏場に冷房の効いた部屋に長時間滞在すると症状が悪化しやすいので、ブランケットや薄手の上着などを持ち歩くなどして対策するようにしましょう。 9.太ってはいけない 脂肪をつけすぎないこと、太らないようにすることも、坐骨神経痛の症状を悪化させないために重要です。 食べすぎや運動不足によって上半身に脂肪が付きすぎると、腰に大きな負担がかかってしまいます。坐骨神経痛の症状がある人は、食事量や運動量を調節し、脂肪が付かないように、太りすぎないように気を付けましょう。 まとめ・坐骨神経痛やってはいけないこと! 坐骨神経痛で悩む方がやってはいけないこと、注意すべきことををいくつかご紹介しました。 特に適切な立ち方やものの持ち上げ方には、アドバイスや訓練をすることでより効果的にできるようになります。是非かかりつけの整形外科医やリハビリの担当者に相談してみてください。 No.S084 監修:医師 加藤 秀一
2022.08.03 -
- 半月板損傷
- ひざ
- スポーツ医療
半月板損傷を早く治す!効果的なリハビリテーション3つのステップ 半月板という組織は、繊維軟骨でできていてCの型、まさに半月状の形をした組織です。部位は、膝関節の大腿骨と脛骨の間にあり、膝の内側と外側の場所に存在しています。 この半月板は、膝の滑らかな動きを可能にするほか、膝を安定させて荷重を分散させたり、物理的な外力による衝撃を吸収する機能を果たしています。 このような役割を持つ半月板が事故や、スポーツなどの激しい動きなどによって損傷し、万一慢性化すると将来的に変形性膝関節症を引き起こす懸念があります。 そのため本疾患に対してリハビリテーションを視野に入れながら適切に治療を行うことが重要になります。今回は、半月板損傷とはどのような病気なのか、半月板損傷を慢性化させず、早く治すためのリハビリテーションについて詳しく解説していきます。 半月板損傷とは 膝の障害というと年配者のイメージがありますが若年者であっても過度な運動などによってスポーツ傷害を引き起こすリスクが危惧されており、その中でも特に頻繁に認められる疾患が半月板損傷と言っても過言ではありません。 半月板損傷は、スポーツの際に起きる怪我から発症するのみならず、加齢に伴う場合が多いのも事実です。傷つきやすくなっている半月板組織にわずかな外力が負担となって、加重されることにより、損傷し断裂を起こす症例も存在します。 半月板が損傷すると膝部に疼痛が生じて運動時や、膝を屈曲・伸展する場合に膝に引っかかり感を覚えることがあり、ひどいケースでは激痛のために歩行できなくなる、もしくは関節内部で強い炎症を引き起こして水が溜まり、膝部分が明らかに腫脹することもあります。 半月板損傷を発症した際の主な治療手段としては、「保存治療」と「手術療法」が挙げられ、特に前者では安静を保持して抗炎症薬などの薬物を内服する、あるいはリハビリテーションを実践することになります。 半月板損傷の手術後のリハビリテーションについて 半月板損傷も、治療や症状によってリハビリテーションの方法が異なります。手術による治療を行った後のリハビリテーションについても事前に確認しておきましょう。 半月板縫合術における術後のリハビリテーション 半月板縫合術による施術の場合、損傷の程度や部位によってリハビリテーションにおけるスケジュールが異なりますので注意してください。 縫合箇所が再び断裂してしまうことを防ぐため、2週間程度は松葉杖での生活になるでしょう。また、膝の曲げ伸ばしにも制限があるため、激しい運動はできません。 術後6週程度から、軽めのジョギング等の運動が可能になります。スポーツなどへの復帰は10週程度で段階を経て行っていくのが一般的です。 ただし、重症のケースや経過によってはスポーツへの復帰が半年前後かかる場合もあります。術後の経過や回復に応じて臨機応変に対応していくことがポイントになります。 半月板切除における術後のリハビリテーション 半月板切除による施術の場合、ほとんどは術後すぐに体重をかけることが可能です。2週間程度で軽めのジョギング、1ヶ月前後でスポーツへの復帰が可能になります。 手術前のリハビリテーション 術後、スムーズに回復・リハビリテーションを行っていくためにも手術を行う前からリハビリに取り組んでおくことが望ましいでしょう。 あらかじめ松葉杖の使い方や、術後に行う予定のリハビリテーションを理解しておくことで、スムーズな術後のリハビリテーションへと移行することができるでしょう。 また、術後すぐに動けない場合は、足首周りや股関節周りなど、他の箇所の関節機能を低下させないためにも手術前のリハビリは重要です。 半月板損傷を早く治すためのリハビリテーションのステップ ここからはより具体的に半月板損傷を早く治すためのリハビリテーションについてお話を進めて参ります。 運動器リハビリテーションの分野では、通常であれば患者さんの運動能力や生活機能を回復させて、そのレベルを維持するために、原因疾患の治療と並行して個々における生活の実態を把握しつつ、綿密な治療計画を立案して実践します。。 個々のケースによって半月板の損傷度や状態が異なるために、実際にリハビリテーションを実践するタイミングは様々です。ただ基本的なメニューは、ほとんど変わりませんので担当の理学療法士ともよく相談しながら進めていきましょう。 1)リハビリ最初の1ステップ 最初の段階では、関節可動域の訓練を行うことが多く、膝関節の曲げ伸ばしができる角度を改善するためにリハビリテーションを行います。 半月板損傷を発症すると、通常であれば膝の曲げ伸ばし動作が困難になって日常生活に多大な支障が生じますので、徐々に曲げ伸ばしできる範囲を回復させるために可動域を増やすことを目標にした理学的な訓練を実施します。 特に股関節や足関節が固まるなど拘縮すると、膝関節に代償されて膝に負荷が集中してしまい、半月板損傷を抱えた膝の部位に更に重い負担がかかってしまいます。 そのため、半月板損傷を早く治すためには「膝関節のみならず、股関節や足関節もリハビリテーション」を行うことをお勧めします。 2)リハビリ次の2ステップ 次の段階として、関節の可動域を増やしたり、維持する訓練や、股関節あるいは足関節のリハビリに慣れてきたら、並行して膝周辺の筋力そのものを増強して膝関節を支えやすいよう補助できるようなトレーニングを取り入れていきます。 半月板が損傷している状況では、膝周りにあるほかの構造物で半月板を代理して体を支えなければなりません。半月板損傷が再発しないように防止するための観点からも膝周辺の筋力を強化することで膝を安定化させて身体を支えられるようにすることは非常に大切です。 3)リハビリ最終の3ステップ そして、後半戦に入ると本来の膝領域におけるバランス感覚を取り戻すためのリハビリテーションとして「バランストレーニング」を行っていくことになります。 半月板は、膝関節を安定させる機能を有しており、半月板が損傷することで膝が不安定となり、身体を支えることができず怪我を引き起こす危険性もありますのでバランスを取り戻すための理学療法は重要なトレーニングのひとつでと考えられます。 リハビリテーション治療の最終段階になってくると、いよいよ実践的なスポーツ競技や運動動作に復帰することを見据えて行う「アスレチック・リハビリテーション」を実践する運びになります。 このリハビリテーション・プログラムでは、筋力がある程度、元のレベルに回復して、膝関節の可動域を一定以上に獲得でき、膝関節の痛みもほとんど自覚しない状態になった場合に本格的なスポーツ能力を得るために準備する理学療法となります。 ジョギングに取り組み、ひざ痛が悪化しないかを確認して特に問題を認めないようであれば、梯子を用いたラダートレーニング、両脚ジャンプなどの動作を取り入れて、最終段階では復帰したい競技に応じて特有の動きがスムーズに出来るようにリハビリを実践することになります。 まとめ・半月板損傷を早く治す!効果的なリハビリテーションのステップ 今回は、半月板損傷とはどのような病気なのか、半月板損傷を早く治すためのリハビリテーションなどについて詳しく解説してきました。 半月板という組織は、膝関節の内部にある軟骨様の構造物であって、その軟骨部に負荷がかかる外からの物理的な力を和らげるための重要な役割を有しており、もし半月板を損傷した場合には、その受傷度合いに応じて個々に治療期間やリハビリテーションの内容が異なるため、具体的な内容は個別に決めなければなりません。 半月板のような軟骨組織は、完全に治癒するまでかなり時間を要します。身体機能をカバー出来るよう、患部はもちろん身体の状況を判断しながら計画的に取り組む治療がリハビリテーションです。 重要なことは、決して無理をせずにトレーナーや理学療法士と相談して適切なプログラムを行うことです。 No.080 監修:医師 坂本貞範 ▼ 半月板損傷を再生医療で治療する 再生医療なら半月板損傷は、手術せずに改善できます
2022.07.26 -
- 首
- 頚椎椎間板ヘルニア
頸椎椎間板ヘルニアの症状と手術後の「しびれ」という後遺症について 頸椎椎間板ヘルニアとは 腰の椎間板ヘルニアは腰痛の原因として有名ですが、首の痛みには「頸椎椎間板ヘルニア」といわれるものがあります。 背骨(脊椎)のうち、首の部分を頸椎と言い、7つの骨からなります。この骨と骨とをつなぐクッションの役割をしている軟骨、座布団のような役割をしているものが「椎間板」といいます。 脊椎の中は脊髄が中心を走り、そこから手足への重要な神経の枝がたくさん出ています。 この椎間板が動くことで首を曲げたり、回すなどの動作ができる訳です。しかし、椎間板に何らかの衝撃が加わるなどすると中にある髄核と言われる組織が本来あるべき位置から外に飛び出してうことを椎間板ヘルニアと呼びます。 一般的に椎間板ヘルニアは、体の後ろ、背中側に向けて飛びだします。 困ったことに飛び出した先にあるのが脊髄という神経の束になり、本来の位置から飛び出してた髄核が脊髄を抑え込んで(圧迫して)しまうことになり、痛みや、しびれなどの症状となるわけです。 首に起こる痛みの原因は大きく二つ ・「筋肉や関節からくる肩こりや、寝違えの痛み」 ・「神経の痛みとして多いのが頸椎椎間板ヘルニア」 頚椎椎間板ヘルニアの原因 頚椎椎間板ヘルニアは、30~50歳代によく見られますので加齢だけが原因とはいえません。 「むち打ち症」などの交通事故がきっかけだったり、高所での作業中に落ちたり、鉄棒から落ちるなど、交通外傷、転落による外傷が原因となって脊髄を損傷し、ヘルニアになる事例があります。 また若い世代ではスポーツで首に負荷がかかる姿勢をとったり、普段あまり使っていない筋肉を鍛えようと運動を急にした時に、突然手足がしびれて力が入りにくくなった、という方もおられます。 頸椎椎間板ヘルニアの診断方法 患者さんの痛み・痺れがどこ領域に出ているか、それらがいつからあるかなどを診察します。 次にMRI検査を行い、ヘルニアがどこで起こっているか、神経の圧迫されている場所を確認します。 MRIは磁場で撮影しますので、CTと違って被曝の心配はありませんが、1時間程度かかる検査ですので、その間は安静を保つ必要があります。また、体内の金属が磁場に反応して発熱しますので、刺青があると火傷する可能性があるので、できません。 また、ステントや人工骨頭などの金属が入っている方は事前の確認が必要です。 頸椎椎間板ヘルニアの治療方法とは 頸椎椎間板ヘルニアにより神経の機能が障害されますので、頸椎椎間板ヘルニアの治療は、脊髄、神経を圧迫している椎間板部分を除去することが基本です。頸椎がぐらぐらして不安定な場合は、神経を圧迫しないよう椎骨を固定することも検討します。 ただ、障害されていた期間が長いほど、また年齢が上がるほど、神経機能が回復する可能性が下がります。そのため、治療の目的は神経を障害するものを除去し、本来の機能を回復する手助けをすること、と言えます。 神経の痛みは手術後に軽減しますが、しびれは改善しにくいことが多いです。また症状が残る人の方が多いようです。 頸椎椎間板ヘルニアの手術後の後遺症である「しびれ」について 体の中の組織のうち、神経組織は回復に最も時間がかかります。 たとえば、皮膚は縫合すれば1~2週間程度でくっつきますし、骨折はギブスをあてがったり、金属プレートで骨どうしを固定することにより、およそ3~4か月程度でくっつきます。 しかし、神経組織の回復は、それよりもさらに時間がかかります。月単位でゆっくりと回復を見せ、手術後1年くらいまでは、何らかの改善がみられます。 さらに、手術前に神経がどのくらいのダメージを受けていたか、という問題もあります。 「交通事故の後遺症で・・・」という話を聞くこともあります。椎間板ヘルニアにも除去して回復できるダメージと、回復できないダメージがあります。 これはヘルニアを除去する前では経験に基づいた話はできますが、正確な予測がしにくい部分であり、手術をしてみないとわかりません。 頸椎椎間板ヘルニアの手術後の「しびれ」は、手術自体が神経そのものを治療するものではなく、圧迫状態にあった神経を圧迫から解放することが目的となるため、長期期間、圧迫状態にあった神経が変化、変性している可能性があり、手術で圧迫を取り除いたとしても神経の障害が治らず残ってしまうために「しびれ」が残ることがあります。 手術は慎重に 首は体の中でも非常に大切な部位です。治療にあたっては専門医を受診しましょう。 そして、大切なのは、自分の状態がどのような重症度なのか、そして検討されている手術により、どれくらい回復が見込まれ、手術そのものの危険性はどれくらいあるのか、ということを主治医からしっかり聞いて、納得してから手術を受けようにしてください。 わからない点や疑問点については主治医に尋ねて、しっかり理解するようにしましょう。 どの診療科に行けばいいのか 首や肩まわりなどの筋肉・関節の痛みというと、整形外科を想像される方が多いかと思います。 ここ20~30年くらいで、日本でも繊細な手術を得意とする「脳神経外科医」が頸椎椎間板ヘルニア手術を行うようになってきました。 「脊髄外科学会」という脊椎や脊髄の手術を扱う医師の学会では、脳神経外科専門医でかつ脊髄外科を専門とする医師が多くおられます。 また最近では整形外科医も顕微鏡を使って血管吻合など繊細な手術を行うようになりました。そのため、脊椎や脊髄の手術は、脳神経外科と整形外科のどちらでも高度なレベルで行われるようになってきました。 脊椎や脊髄の手術に力を入れている専門医がいる病院であれば、脳神経外科と整形外科、どちらでも安心して受診してください。 その他、新しい治療方法として再生医療とういう医療分野での治療方法もあります。これはここで書いたような従来の診療科目とはまったく異なる新たな選択肢になります。 そのため、整形外科や脳神経外科(脊髄外来)では対応できません。通常の医師では再生医療に対する知見がまだまだ乏しいのが本当のところだからです。この分野は、確かな経験と実績を持った再生医療専門医がいるクリニックや医院を探してお尋ねください。 以上、頸椎椎間板ヘルニアの症状と手術後の後遺症「しびれ」についてについて記しました。参考になれば幸いです No.S025 監修:医師 加藤 秀一
2022.07.23 -
- 肘
肘頭滑液包炎とは、その症状と原因、治療法 肘頭の滑液包に炎症が起こった状態である肘頭滑液包炎をご存知でしょうか?肘を頻回に使って酷使したり、感染症が原因で起こる病気です。 肘の痛みや、腫れをきたすため、日常生活に支障をきたすこともあります。この記事では、肘頭滑液包炎の症状や原因について説明し、治療法についても説明いたします。 肘の解剖 肘頭滑液包炎を理解するため必要な、肘の解剖を簡単にご説明します。まず肘頭は、肘の先端にある尖った部分です。わたしたちが机に肘をつくとき、机に接しているところが肘頭になります。 この肘の先端である肘頭と皮膚の間には、滑液包と呼ばれる液体に満たされた薄い袋があります。滑液包は肩、腰、膝、踵などの関節の近くにもあり、骨、筋肉、腱のクッションになります。肘の滑液包は、皮膚が肘頭の骨の上をスムーズにスライドする動きを助けます。 肘頭滑液包炎は、肘頭の滑液包に炎症が起こった状態です。続けて、肘頭滑液包炎の症状や原因、そして治療法を説明します。 肘頭滑液包炎の症状 滑液包が炎症を起こすと、まず痛みを伴うようになります。炎症を起こした滑液包からの痛みは、突然起こることもありますし、時間をかけて徐々に悪化していくこともあります。また最初は肘を動かしたときに痛みを感じますが、進行するとじっとしていても痛みを感じるようになります。 また肘の関節の周りに腫れや発赤を生じます。感染症が原因となっている場合は、局所に熱感を伴うこと、また発熱することもあります。 痛みや腫れなどの症状に加えて、肘頭滑液包炎が悪化すると、肘を使うことが困難になります。慣れた日常生活の動作も、痛みのために辛くなるかもしれません。 肘頭滑液包炎の原因 肘頭滑液包炎の原因には、外傷、過度に肘を使うこと、また黄色ブドウ球菌による感染などがあります。 過度に肘を使うこととして、例えば野球ボールを投げる動作を繰り返すこと、肘に負担のかかる姿勢を長時間続けることなどがあります。肘や腕を使った動作を繰り返し行うことで、肘の滑液包にかかる圧力が高くなり、炎症を起こします。 そのほか大工仕事、ガーデニング、絵を描くことなどでも起こることがあります。また、音楽家は肘頭滑液包炎になるリスクが高いと言われています。 肘頭滑液包炎の治療法 肘頭滑液包炎の治療は、感染症が原因か、そうでないかでわかれます。 感染症による肘頭滑液包炎の治療法 感染症が原因である場合、抗菌薬による治療は必須です。通常は1週間程度、黄色ブドウ球菌に有効な抗菌薬を飲む必要があります。症状が良くなっても、体内に残っている病原菌を確実に除去ために、処方された期間は抗菌薬を服用する必要があります。 感染した滑液をできるだけ除去するために、針を刺して滑液包も吸引することがあります。吸引した滑液を詳しく調べることで、病原菌がわかることもありますので、診断を目的に吸引する場合もあります。 感染症が原因ではない肘頭滑液包炎の治療法 感染症が原因ではない場合は、自宅でもある程度治療ができます。 まず、運動や仕事で滑液包炎の原因となった腕の動きを避けることは、症状の緩和に役立ちます。痛みを我慢して仕事をしたり、スポーツをしたりしないようにしましょう。 またNSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)は、滑液包炎によって引き起こされる痛みや炎症を軽減するために役立ちます。装具を利用して肘が動かないように固定すると、症状は改善しやすくなります。三角巾などで手を吊るだけでも構いません。 これらの治療が3~6週間経っても効果がない場合は、滑液包の周りの過剰な液体を吸引すると同時に、炎症を抑えるためにステロイド薬の注射をすることがあります。 感染症が原因ではない肘頭滑液包炎は、3~6週間程度安静にすることで治ることが一般的です。肘頭滑液包炎は完治が期待できますので、肘に負担をかけずに仕事や学業ができるのであれば、治療中に仕事や学校を休む必要はありません。 なお肘頭滑液包炎は通常問診と診察だけで診断できますが、治療してもなかなかよくならない、あるいは再発を繰り返す場合は、X線やMRIなどを用いての画像検査を行うこともあります。 肘頭滑液包炎の手術 肘頭滑液包炎は、重症化しても手術を必要とすることはまれです。ただし、症状が非外科的治療に反応しない場合、または抗菌薬を服用しても良くならないほど重度の感染症がある場合、手術が必要な場合があります。 手術では、炎症を起こしている肘の滑液包を切除します。術後は、肘を固定するための装具が必要になります。回復には1カ月ほどかかります。 まとめ・肘頭滑液包炎とは、その症状と原因、治療法 以上、肘頭滑液包炎について、症状や原因、治療法について説明しました。 肘頭滑液包炎を予防する最善の方法は、できるだけ肘を酷使しないことです。肘を使う激しい運動や活動のあとは、体を休め、回復するための時間を設けましょう。 また仕事や趣味で肘を使うことが多い場合は、肘当てをつけるなどして、保護具を使うとよいでしょう。もし、それでも中々よくならない肘の痛みがある場合は、早めに整形外科をはじめ、医療機関にご相談されることをお勧めいたします。 No.078 監修:医師 坂本貞範 ▼ 今注目の「再生医療」は最新の医療分野です 自ら再生しようとする力、自然治癒力を活かした最先端の医療です
2022.07.18 -
- 肘
肘が痛い、肘の関節が痛むときに疑われる病気とは? 肘は、腕を伸ばしたり曲げたりして生活をする上で重要な役割を果たしている関節です。 肘関節構成する骨や靭帯、そして筋肉などは、複雑に連携しあってその機能を果たしていますが、さまざまな原因によって痛みを生じることがあります。 この記事では、肘関節について簡単に説明したのちに、肘が痛くなる原因についてご説明いたします。この記事を読むことで、肘が痛いときに考えられる原因や対処法について知っていただくことができるでしょう。 肘関節について 肘関節は、上腕と前腕の間にある関節で、上腕骨と前腕の橈骨と尺骨の3つの骨によって関節が形成されています。 3つの骨の間にはそれぞれ関節があるため、肘には3つの関節が含まれており、共通の関節包で覆われています。関節の関節面は、軟骨の層で隔てられており、関節のスムーズな動きは、潤滑油の役割をする粘性の高い滑液によってもたらされます。 肘関節を形成する骨同士をつなぐ複数の靭帯があり、関節の安定性に寄与しています。また肘関節は曲げる(屈曲)、伸ばす(伸展)、内側に捻る(回内)、外側に捻る(回外)といった動きができますが、同時に手首を曲げて捻るなど、他の関節の動きと連動して動くこともできます。そしてこれらの複雑な動きは、それぞれ関係する筋肉の収縮によるものです。 肘が痛いときに疑われる病気 肘が痛いとき、疑われる病気がいくつかあります。ここでは、それぞれの症状や原因、また対処法についてご紹介します。 上腕骨内側上顆炎 上腕骨内側上顆炎は、一般にリトルリーガー肘、ゴルフ肘とも呼ばれています。野球の投球動作やゴルフのダウンスイングを繰り返し行うことが原因です。そのほかにも、仕事で毎日ハンマーを振るなど、手の動きを繰り返した結果、発症することもあります。 上腕骨内側上顆炎は、肘の内側に沿って痛みが生じます。特に手首を掌側に曲げる動きや物を持って肘を曲げることが、痛みの引き金になることがあります。繰り返し手首を曲げたり、指を握ったりして動かすことで、上腕骨の内側に付着する筋肉の腱が炎症を起こすことが原因です。 痛みを感じる間は安静にし、患部をアイシングしたり、NSAIDsと呼ばれる非ステロイド性消炎鎮痛薬を使用したりすることで、多くの場合は改善します。発症時は運動するときだけの痛みですが、悪化すると安静にしていても痛みを感じるようになります。 上腕骨外側上顆炎 上腕骨外側上顆炎は、別名テニス肘とも呼ばれます。ラケットを使うスポーツをしたり、またハンマーを打ち付けたりするなど、ラケットを使ったスポーツと同じような動きをする特定の腕の動きを繰り返していると、この症状を生じることがあります。 アスリート以外に、シェフ、大工、自動車修理工、配管工、また音楽家なども上腕骨外側上顆炎を起こします。上腕骨外側上顆炎では、肘の外側にある腱が影響を受けています。 肘の外側に沿って痛みや熱感などの症状が現れます。また、握ることに問題が生じることもあります。これらの症状は通常、痛みの強いときは非ステロイド性消炎鎮痛薬を内服の上安静にする、患部をアイシングする、また局部を圧迫するバンドを利用する、理学療法をするなどの方法で、多くの場合は改善します。 肘頭滑液包炎 肘を曲げたときにできる肘の後方の出っ張りが肘頭ですが、この肘頭の皮下に存在するクッションの役割を果たしている滑液包に生じる炎症です。 肘への直接の打撃、長時間肘をついて肘に圧力をかけていた場合、感染症、リウマチなどの内科疾患などが原因となっています。 局所の腫れが最初の症状です。腫れが大きくなってくると、滑液包が大きくなり、周囲の神経を刺激するために痛みを感じるようになります。感染症の場合、発赤や熱感が生じることがあります。適切に治療が行われないと、徐々に肘を動かすことも難しくなってきます。 感染症が原因であれば、抗菌薬の内服が必要です。滑液包の内部の液体が多いときは、注射により液体を抜きます。また感染症が原因ではない場合は、アイシングや圧迫、非ステロイド性消炎鎮痛薬の内服で管理します。重症な場合は、手術が必要になることもあります。 変形性肘関節症 変形性関節症は、関節内に存在しクッションの役割を果たしている軟骨が侵される病気で、軟骨が摩耗する結果、クッションを失った関節が損傷を受けます。変形性肘関節症では、肘の怪我や関節炎などによって引き起こされる場合があります。 主に肘の内側では、骨棘と呼ばれる骨の過剰な突起物ができ、そのために肘の動きが制限されます。また骨棘が折れてしまうと関節内で遊離体となり、関節の動きを止めてしまうことも生じえます(ロッキング)。 肘の痛み、肘の曲げ伸ばしが困難になる、肘の曲げ伸ばしの動きが急に制限されてロックされるような感覚がする、肘を動かすときの異常な音、肘関節の腫れなどの症状を認めます。進行すると、肘部管症候群と呼ばれる肘の内側にある尺骨神経が圧迫される状態になり、薬指と小指の感覚の力が入りにくくなり、感覚も鈍くなります。 通常、固定具を用いた安静、消炎鎮痛薬の使用などの薬物療法、そして理学療法で治療を開始します。ただ重症の場合は、人工関節置換術を含む手術が行われます。 肘の脱臼または骨折 肘を伸ばした状態で転倒するなど、肘に強い衝撃が加わると脱臼や骨折を起こすことがあります。 症状としては、痛みのほかに肘の腫れや変色など、肘周囲の見た目の変形がみられます。また、激しい痛みのために、通常は肘関節を動かすことができなくなります。 脱臼を伴う場合は専門医により骨を元の位置に戻し、脱臼または骨折した肘をギブス等で固定し、鎮痛薬を投与します。ギプスを外した後は、可動域の回復を目的とした理学療法が役立ちます。 肘の靭帯損傷 肘の靭帯損傷は、肘関節にある靭帯のいずれかに発生するもので、外傷、または投球動作など肘への繰り返すストレスの影響を受けて生じます。部分的な断裂と完全断裂があり、肘関節の脱臼や骨折に伴うこともよくあります。 症状は、肘の痛み、肘関節の不安定さ、腫れ、可動域の制限などです。 受傷直後は肘を固定して安静にし、患部をアイシングして鎮痛薬による鎮痛を図ります。通常は数週間の固定を要し、固定が解除されてから理学療法に取り組みます。ときに手術が必要となります。 まとめ・肘が痛い、肘の関節が痛むときに疑われる病気とは? 以上、肘が痛いときに考えられる病気、その原因や対処法についてご説明しました。 ただ正確に診断するためには、やはり専門医の診療を受けることが大切です。医師は病歴を確認し、診察した上で必要な検査を行い、診断に基づいて適切な治療を行います。 もし、肘の痛みで悩んでいる方がおられたら、ぜひお近くの整形外科をはじめ医療機関にご相談ください。 No.077 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療に関する詳細は以下をご覧下さい 自分自身の自ら再生しようとする力、自然治癒力を活かした最先端の医療です
2022.07.14 -
- テニス肘
- スポーツ医療
- 肘
テニス肘とは、テニス経験がなくても発症します!肘の痛みでお悩みの方へ テニス肘をご存知でしょうか?テニスをされている方は、テニスエルボーと言った方が早いかもしれません。 テニスという名前がついていることからテニスをしない人には関係がないと思われがちなテニス肘。実は、テニスをしていても、していなくても、その経験に関係なく、頻回に繰り返し腕を使う仕事やスポーツをしている人にも発症する病気です。 ただ、最初は軽い痛みながら、放置したまま原因を絶たずにいると、悪化しかねません。 今回は、テニス肘について、治療法と症状、原因についてご説明いたします。この記事を読んでいただくことで、テニス肘に対する理解が深まり、適切に対処できるようになれば幸いです。 テニス肘とは? テニス肘とは正式には「外側上顆炎」といい、一般的には、ラケットを強く振るテニスプレーヤーが発症しやすいと言われています。しかし、肘の痛みを伴うこの症状は、スポーツ選手だけでなく、誰にでも発症する可能性があります。 特に前腕に負荷がかかる動きを繰り返すと、上腕の骨に筋肉が付着する腱が炎症を起こし、同じ動きを続けるうちに腱が変性し、最終的には切れてしまいます。 テニス肘は、腕を曲げたり、まっすぐにしたり、ものを握ったり、持ち上げたり、振ったりするときに、「肘の外側」に痛みを起こす可能性があります。早く治療したり、その症状を起こした原因を排除すれば症状を軽減させることができます。 どんな人がテニス肘になるのか? テニス肘は、30才から50才の人に多く、男女性別に関係なく幅広く発症する可能性があります。プロのスポーツ選手だけでなく、前腕、手首、手を激しく、かつ反復的に使う活動を定期的に行っている人は、誰でもテニス肘になる可能性があります。 テニス選手のほかにも、野球やソフトボールの選手、テニスやラケットボールの選手なども危険因子です。 例えば組立ラインの工場労働者や自動車整備士、肉屋、料理人、大工、清掃員、塗装工、配管工、歯科医、造園家、音楽家など、特定の職業に就いている人も、テニス肘になりやすいと言われています。 テニス肘の原因 手首や指を曲げたり伸ばしたりして、腕を繰り返し動かすと、前腕の筋肉が疲労してきます。テニス肘と関係のある腱は、「肘の外側」にある骨の隆起(上腕骨外側上顆)にこの前腕の筋肉を付着させています。 筋肉が疲労すると、腱により多くの負荷がかかるようになります。この過負荷が、腱鞘炎と呼ばれる炎症と痛みを引き起こしています。さらに時間が経つと、この過負荷は腱の変性を起こし、最終的には腱断裂につながります。 多くの場合は長期にわたる負荷が原因ですが、突然の腕や肘の怪我が原因で発症することもあります。まれに、原因不明で発症する人もいます。 テニス肘の症状 テニス肘の症状はゆっくりと現れる傾向があります。痛みは数週間から数ヶ月の間に悪化します。テニス肘の症状の多くは痛みにあり、には次のようなものがあります。 ・肘の外側の痛み、手首の痛み ・腕をひねったり曲げたりするときの痛み(ドアノブを回すときや瓶を開けるときなど) ・腕を伸ばしたときのこわばりや痛み ・肘関節の腫れ、触ると痛い ・ラケットやペン、または人の手などを持とうとしたときに痛みが出たり、握力が弱くなる テニス肘の診断 痛みを引き起こす可能性のある動作について質問します。また、肘関節の痛みや腫れなどをチェックするために身体診察を行います。診断のために、以下のような検査が行われることがあります。 ・骨折などを除外するための単純X線検査 ・超音波検査、磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンなどの画像検査を用いて、腱や筋肉の損傷の状態を評価 ・筋電図検査は、筋肉や神経の電気的活動を測定し、神経が圧迫されていないかどうかを調べる テニス肘の治療方法 テニス肘は、特別に治療をしなくても、自然に良くなることがあります。しかし、その反面、1年ほどかかることもあるので注意が必要です。 低侵襲な治療法 そこで、回復を早めることができる手術以外の方法をまずご紹介します。 ・安静:腱の治癒を待つために、数週間は痛みのある側の腕を使う活動を停止するか、作業量を減らすことを検討します ・痛み止め:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):NSAIDsは、痛みや炎症を和らげることが期待できます ・痛み止め:ステロイドの注射により、関節の痛みや炎症が一時的に緩和されます ・テニス肘用のサポーター:取り外し可能なテニス肘用のサポーターを痛みのある前腕部に装着します。この装具は、腱や筋肉の緊張を和らげるものです ・理学療法:理学療法による運動は、前腕のストレッチを含め、筋肉と握力を強化します 外科的治療法 低侵襲な療法を6~12カ月続けても症状が改善しない場合、関節鏡下または切開による手術を行います。手術では、通常、変性した腱を除去します。回復には4~6ヶ月かかることが一般的です。テ ニス肘になった後は、症状が再発しないように、サポーターなど装具の着用が必要となることもあります。 まとめ・テニス肘とは、テニス経験がなくても発症します!肘の痛みでお悩みの方へ 以上、今回はテニス肘についてご説明しました。 テニスをしていない人にとっては関係がないと思われがちかもしれませんが、ご説明した通り、必ずしもテニスと関係がない方でも起こりうる病態です。もしも「肘の痛み」で悩んでいる方がおられたら、早めにかかりつけの整形外科医にご相談ください。参考にしていただければ幸いです。 No.076 監修:医師 坂本貞範 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.07.12 -
- ひざ
- スポーツ医療
たな障害(膝滑膜ひだ障害)とは、その原因と症状、治療法 はじめに 運動を日常的に行う中で、突然、膝から崩れて座り込んでしまうことがあります。運動中の膝くずれの原因として、前十字靭帯の損傷や、膝蓋骨の脱臼、半月板の損傷などの膝の障害は有名であり、聞かれたことも多いのではないでしょうか。 一方で、『たな障害』と呼ばれる病気についてはご存知でしょうか。この『たな障害』も、膝の傷害で運動中に膝くずれを引き起こす病気です。たな障害は治療が手遅れになると重症になってしまい、痛みが強くなり、手術が必要な状態になってしまう病気なのです。 膝の病気、タナ障害とはどんな病気なのか、原因と症状、その治療法について紹介していきます。 たな障害の原因と症状 『たな障害』=『膝滑膜ひだ障害』とは、『滑膜ひだ』という膝にある関節の内側にある『ひだ』に炎症が起きてしまう病気です。 滑膜とは膝の動きを滑らかにする滑液という液体を作っている薄い膜です。滑膜に炎症が起きてしまうと、膝を滑らかに動かすことができなくなったり、膝を動かすと痛みを感じたりします。 『たな障害』は、野球や、バレーボール、バスケットボール、ハンドボールなど膝の曲げ伸ばしを頻繁に繰り返し行う運動選手によくみられますが、運動習慣のある人は誰しも起こり得る病気です。一般的な中高生の部活動で発症することも多くみられます。 膝の曲げ伸ばしを繰り返したり、捻ったりの動作を繰り返すと、『滑膜ひだ』が狭くなってしまい炎症を起こしてしまうのが原因で起こります。大きな外傷がなくても、曲げ伸ばしや、捻る動作を繰り返すと徐々に痛みが増えてくることもあります。 最初の症状としては、膝のお皿と言われている部分である膝蓋骨の内側や下側に痛みを自覚します。 徐々に『膝がぐらぐらする』といった、動かしにくさを自覚するようになります。やがて、痛みが出現し、動ける範囲内が制限されるようになります。徐々に痛みや動かしにくさは悪くなり、数分歩行するだけで痛みが出現するようになります。 さらに悪化すると、歩行中や運動中、突然、膝くずれを起こしてしまいます。 診察では、『たなテスト』と呼ばれる検査が行われます。この検査では、膝蓋骨の内側の下の方を医師が親指で押さえた状態で、膝を曲げます。このときに痛みを自覚するときや、医師が『ひっかかり』を感じるときに『たな障害』が疑われます。 さらに、レントゲン検査や、超音波検査、M R I検査といった画像検査を行い、滑膜の状態を評価して総合的に診断が行われます。なお、タナ障害には簡単な検査方法があります。 膝の曲げ伸ばしをすると、お皿の周りで引っ掛かかりがみられ「ポキッ、ポキッ」といったクリックしたような音が効かれたり、膝に手を当てると感じる場合は可能性が高いと思われます。 たな障害の治療 たな障害の治療で一番大事なことは、運動を休み、膝の安静を保つことです。しかし、実際には運動を続けられることが多いため、運動を続けて重症化させてしまう運動選手が多いため、注意が必要です。 症状が軽いときには、湿布を貼ったり、炎症を抑える薬を内服したりすること治ることがあります。また、膝の関節内にヒアルロン酸を注射して関節の動きを良くしたり、ステロイド剤を注射して炎症を抑えたりすることで痛みが引くこともあります。 多くの場合、タナ障害は、運動をやめる又は、減らして安静を保ちつつ、ストレッチや湿布等での冷却をはかり、大腿四頭筋の筋力維持訓練など、膝への負担を減らせば症状は落ち着きはじめます。 たな障害が重症化した場合は運動を休止し、湿布や内服、注射などの治療を開始しても痛みがひかないことが多いです。また、痛みが一時的にひいても、運動を再開したときにすぐに痛みが再発してしまうこともあります。 しかし、実際のところ運動選手は、多少の動かしにくさや、痛みがありながらも、運動を継続して行うことができるため、症状は一時的なもの、「大丈夫だろう」と思いがち、自分に都合の良い判断をした上で治療せずに我慢してしまうことが多くあります。 症状が重症化したあとでは希ではありますが、手術も選択肢となり治療期間も長引くことになるため、違和感等を感じた際は、早めに医療機関や整形外科等を受診して専門家の判断を仰ぐべきです。 手術による治療が必要になった場合は関節鏡手術という関節の内視鏡を用いて行い、『ひだ』の切除を行います。 手術自体は20分程度で終わることが多いですが、手術による傷の確認や、腫れや副作用の確認のために入院による治療が必要になります。入院期間は2日から1週間程度で行われることが多いですが、手術後の経過によって前後します。 手術の傷口が感染してまった場合などは、再び手術が必要になってしまうこともあります。尚、手術が成功すれば、すぐに運動に復帰できるかというと、そうではありません。リハビリが必要になるからです。運動に復帰するためには、およそ2週間から数ヶ月のリハビリを覚悟しなければなりません。 さらには、リハビリを行った後でも、元々のパフォーマンスがすぐに発揮できるまでは、更に時間を要することが多いです。 まとめ・たな障害(膝滑膜ひだ障害)とは、その原因と症状、治療法 『たな障害』は膝の病気で運動選手によく起こる病気の一つです。 この病気は、症状が軽いうちは手術による治療を要することは少ないです。しかし、痛みや動かしにくさを、我慢して運動を続けると症状が悪化し、手術が必要になることもある病気です。 手術した後は、リハビリが必要です。すぐに運動に復帰することはできません。軽症なうちに運動を休む期間よりも、長い期間、運動ができなくなってしまいます。いずれにしましても膝の周囲の筋力強化と柔軟性を他待つためのストレッチは欠かさず行うようにしましょう。 長い期間、休まないといけないのは、運動選手にとって致命的になってしまうことも少なくないでしょう。症状が気になる人は我慢して運動を続けようとせず、早期に病院を受診して治療を受けるようにしましょう。 以上、たな障害(膝滑膜ひだ障害)とは、その原因と症状、治療法について記載させていただきました。ご参考になれば幸いです。 No.075 監修:医師 坂本貞範 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています >
2022.07.08 -
- ひざ
特発性膝骨壊死の原因と治療について 「膝が痛くて困っている」 「整形外科にいったけど、年のせいだと言われるばかりで、いっこうによくならない」 膝の痛みはつらいですよね。 医療の発展もあり、長生きできる時代となっています。事実、WHOが報告した2021年度の世界保健統計によると、平均寿命は日本が最長でした。しかし、長生きすればするほど、骨は弱くなり、整形疾患により自立生活を脅かされることとなります。 お爺ちゃんお婆ちゃんが「急に膝が痛くなってきた」、「足が痛くて歩けない」などと訴えることはよくあります。整形外科の外来にて「変形性膝関節症」という診断を受けている方が多くいらっしゃるはずです。 しかし、変形性膝関節症と診断された方の中には、よく調べてみると特発性膝骨壊死(とくはつせいひざこつえし)という骨の病気であったというケースがあります。そこで、ここでは「特発性膝骨壊死の原因と治療について」、これまでわかっている医学的根拠を中心に簡単に解説いたします。 特発性膝骨壊死とは 特発性膝骨壊死の正式な病名は、「大腿骨内顆骨壊死(だいたいこつないかこつえし)」と言い、大腿骨内側顆関節面に対して骨壊死が生じる病気です。発症年齢は、一般的に60歳以上の中後年の女性に多く見られます。 症状としては、変形性膝関節症と同じように、歩いているときや、階段の上り降りするときなど、膝に負担がかかる動作をしたときに痛みが生じます。特発性膝骨壊死と、変形性膝関節症の違いとしては、その症状に特徴があり、夜間や安静時であっても突然、非常に強い痛みに襲われることがあることにあります。 骨壊死の原因 特発性膝骨壊死の原因として、高用量のステロイドの長期間服用や、腎移植、過度の飲酒、血液凝固障害、度重なる放射線治療などが関係すると考えられています。 ただ医学では原因がはっきりと特定できない、分かっていない病気のことを「特発性」と言うため、特発性膝骨壊死は原因が特定できていない、ということを指しているということで、原因を明示できません。血液検査や、関節液検査では、明らかな異常所見を認めない点も特徴です。 特発性膝骨壊死の検査 診断においては画像検査を用いて行います。ただ、初期の段階ではレントゲン検査では判別できないことが多く、MRI検査で行う方が望ましいと考えます。症状は、進行度合い応じ「ステージ1(発生期)」「ステージ2(吸収期)」「ステージ3(完成期)」「ステージ4(変性期)」といった4期に分類されます。 ステージ4(変性期)になると、軟骨が削れてしまい関節と関節の隙間が狭い、もしくは無くなるような状態になってきます。 特発性膝骨壊死の治療法 治療法としては変形性膝関節症で行われる治療法と同じになり、大きく分けて2種類。「保存療法」と「手術療法」があり、ステージが初期のころは保存療法がおこなわれ、消炎鎮痛剤(痛み止め)を服用して痛みといった部分をコントロールしながら、ヒアルロン酸の注射や、リハビリとして筋力トレーニングを行います。 また、外反装具や足底装具、合わせて膝への免荷(体重の負担軽減)を目的として杖や松葉づえを用いることがあります。 手術療法は、病気の進行や、痛みのコントロールが難しい場合に減圧術と人工関節置換術を検討することになります。減圧術では、患部の骨の一部を取り除き、小さな溝を作ることで、骨への圧力を軽減し、痛みを軽減します。その他、内反変形を矯正、関節内側面への負担を減らす「高位脛骨外反骨切り術」や、自家骨軟骨移植が行われることもあります。 人工関節置換術では、骨壊変した大腿骨先端部や脛骨を薄く削り、金属やセラミック、ポリエチレンでできた人工関節を取り付けるものです。しかし、人工関節の耐用年数は10年~20年であるため、年齢によっては再手術という可能性があることから実施には考慮も必要です。 つまり、若い患者様にとっては再手術を避ける狙いでも「再生医療」という先端医療分野を使える可能性があります。 まとめ・特発性膝骨壊死の原因と治療について 特発性膝関節骨壊死症は、あまり知られていない病気です。そのため、適切な診断を受けずに症状が悪化し、あとになって特発性膝関節骨壊死と診断されるケースが散見されます。 特発性膝関節骨壊死症は、進行すると耐え難い痛みがあるため、膝に負担を掛けないよう安静にすることが非常に大切です。そのためにも初期の痛みが少ないころ、膝の違和感等を我慢して仕事や、運動をしないよう気を付けなければなりません。 ステージ後半、痛みが顕著になればわかりやすいものの、早期発見は、なかなか難しい病気です。まずはMRI検査を踏めた正しい診断を受けることが大切です。膝に異常を感じたら、お近くの整形外科医等、医療機関を受診され、専門家にご相談をされることをお勧めします。 以上、特発性膝骨壊死の原因と治療について記してまいりました。参考になれば幸いです。 No.S083 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 再生医療の幹細胞治療が膝関節の治療を変える! 膝関節症の新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療で手術せずに症状を改善できる!
2022.07.07 -
- ひざ
膝の裏が痛む、腫れる!ベーカー嚢腫の原因と治療について はじめに ベーカー嚢腫という病気をご存知でしょうか?!この病気について、あまり聞いたことがない方も多いと思います。しかし、ベーカー嚢腫は膝の病気で誰でも起こる可能性があり、治療が遅れると重症になりうる病気です。 日常生活の中で『膝に違和感を感じる』という経験をされたことはありませんか?膝の違和感と言っても、運動後に違和感を感じたり、何もしていないのに徐々に痛みが悪化してきたり、膝の違和感と一口に言っても症状は様々です。 その中で「膝の裏が腫れたり」「曲げた際に違和感を感じたりする」場合や、膝を伸ばしたときに「膝の裏に痛みを感じる」ようなときにはベーカー嚢腫の可能性があることを知っておきましょう。 ベーカー嚢腫の疑い ・膝の裏が腫れる ・膝を曲げた際に違和感を感じる ・膝を伸ばすと膝の裏に痛みを感じる ベーカー嚢腫とは ベーカー嚢腫は、膝の関節の隙間の裏側に袋ができて、その中に滑液という、膝の動きを滑らかにしている液体が溜ることで起こります。激しい運動などで膝を使いすぎたり、関節リウマチや変形性関節症といった病気が誘引となって膝の関節の中にある関節液が大量に作られたことで袋の中に滑液が溜ることがあり、それが原因でベーカー嚢腫ができると言われています。 そのため、ベーカー嚢腫は、関節リウマチや変形性関節症の起こりやすい50代~70代によく生じます。しかしながら、ベーカー嚢腫は、原因が不明なこともあり、若いからと安心もできません。年齢関係なく、誰でも起こりうるものなのです。さらに、4歳~7歳くらいの子供にもできることもあります。 ベーカー嚢腫の症状と検査 ベーカー嚢腫の症状としての特徴は、最初の頃は「痛みがない」ことが多いというのが特徴の一つです。 最初は、膝の裏が腫れたり、曲げたときに、なんとなく違和感や不快感を感じる程度のことが多くあります。この初期段階で終われば腫れが自然に小さくなることがあり、違和感が自然となくなることも少なくないです。 ただ、注意すべきは初期の症状は、膝の違和感程度で、痛みがないため放置されることが多くあることです。しかし、治療せずに放置していると、しだいに腫れが大きくなります。 膝の裏の腫れがニワトリの卵くらい大きくなると、膝を曲げようとした際や、正座をしようとしたときに、引っかかるような感じがして、姿勢を保てなくなります。 さらに悪化すると、滑液を包んでいる袋が破裂することがあります。袋が破裂すると関節液が漏れでてきて、周りの組織が炎症を起こしてしまったりします。すると、膝の腫れがさらにひどくなったり、腫れが熱をもったり、痛くなったりします。 診察では、変形性関節症や関節リウマチなどの病気が合併していないか調べることが大切になりますです。また医師による触診や、超音波検査やM R I検査などの精密な画像検査を行い、大きさや位置の正確な評価が行われます。 ベーカー嚢腫の治療 ベーカー嚢腫の治療方法は、合併している疾患の有無や、ベーカー嚢腫の大きさや重症度によって大きく変わってきます。 関節リウマチや変形性関節症などが合併している疾患があるときは、基本的にその治療を行うことがベーカー嚢腫の治療にもつながります。合併している病気の治療が進まないとベーカー嚢腫の治療が進まないことも多く、治療しても再発を繰り返してしまいます。 合併している病気の症状が落ち着いているときや、合併している病気がないときは、ほとんどの場合では手術を行わなくても治療が可能なことが多くあります。 手術を行わない際の治療としては、湿布を貼ったり、炎症を抑えるような薬を内服したりします。また、袋の中に関節液がたくさんたまっているときは、注射器により関節液の吸引を行います。吸引を繰り返してもベーカー嚢腫が頻回にできてしまう際や、周囲の組織に炎症を伴うときはステロイド剤の注射を行うこともあります。 治療が遅れて炎症が激しくなってしまったときや、治療を行っても、なかなかよくならないときは手術による治療が行われます。 手術を行う場合は、膝の裏を2cm程度切り開いて行います。手術方法としては袋を取り出したり、関節から嚢腫へ関節液が漏れ出している穴を塞いだり、様々な方法がありますが、いずれの手術も全身麻酔で行われます。 手術を行う場合は手術後の感染や麻酔によるアレルギーなどの副作用の確認を行うために入院による治療になります。入院期間は1~2週間のことが多いのですが、合併症の有無など、術後の経過によって前後します。 ただ、残念なことに手術をした場合でも、再びベーカー嚢腫ができてしまうことも少なくありません。膝の裏には神経や血管がたくさんあって、すべての袋を取り除くのは難しいからです。 まとめ・膝の裏が痛む、腫れる!ベーカー嚢腫の原因と治療について ベーカー嚢腫は、初期には痛みなどがなく、自然に小さくなることもあるので、放置してしまうことも多い病気です。しかし、症状が悪化したりすると、重症になって手術が必要な状態になることもあります。 手術には入院が必要で、入院は、誰しも望まないものだと思います。最近では感染対策で入院中での面会が制限されている病院が多く、家族や友人に会えず、寂しく辛い経験をされる人も非常に多いと聞きます。 そのためにも治療が手遅れになる前に、膝の裏に違和感を感じたら、自分判断で判断したり、放置せずに、病院等、医療機関に受診し、専門家に診てもらうのことがよいでしょう。 以上、膝の裏が痛む!腫れるベーカー嚢腫の原因と治し方について記させていただきました。 No.074 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療の幹細胞治療に関する詳細は以下をご覧下さい 当院の再生医療は、自己脂肪由来の幹細胞治療を推進しています
2022.07.06 -
- 肩
肩の腱板断裂は放置しても治らない!早めに医療機関を受診して! 肩の腱板断裂(けんばん・だんれつ)って、どんな症状? どんな年齢層で多く起きるのか? 看板断裂を分かりやすく症状で表すと、「肩上がらない」、「肩が痛い」、「夜寝ていると、肩が痛くて眠れない」、「腕を上げようとしても力が入らない」、「腕を上げるときに肩の前の方で変な音がする」、などといったものになります。 年利的には、40歳以上の男性に、特に60歳代の方に多くみられる病気になります。 ところが肩が痛くて、40歳以上で・・・というと、「四十肩?、五十肩!?」と思われる方が多いのではないでしょうか?では、「五十肩」とはどう違うのでしょう? 「五十肩」は別名「凍結肩」とも呼ばれているように、関節の動きが固まってしまうものです。これに対して、「腱板断裂」では、痛みはあっても反対側の手を添えたりすると肩を動かすことができるので方が動くか、動かないかが大きな違いになります。 肩の腱板って何ですか? 肩の腱板とは、肩関節の中にあり、いわゆる「腱」が筋肉とつながっているために板のようにみえるグループ構造のことで、肩関節の動きを支えています。 肩関節とは、鎖骨(身体の正面、首のしたで中心から左右に伸びる骨)、肩甲骨(肩の後ろの翼のような形の骨)、上腕骨(いわゆる腕の骨)に囲まれた部分です。 肩関節の動きはとても複雑なことができます。例えば、肩をぐるぐる回したり、手(腕)を上に挙げたり、手を後ろに回したり、肘は体につけて「小さく前にならえ」のような動きをしたり、様々な動きができます。 以下のような動きに関係しているのが肩の腱板です。 ・手を横に広げて上げてくる時(鳥が翼を大きく広げるような動作)には「棘上筋」 ・小さく前にならえの姿勢から手を外側に広げる時の動きは「棘下筋」「小円筋」 ・手を体の後ろで組んで少し体から離すような動きの時は「肩甲下筋」 腱板断裂のタイプには、「完全断裂」と「不全断裂」があります。これは、治療方針を決める上で大事になります。 腱板断裂はどんな時に起きるのか? 腱板断裂は、大きく分けて3つあります。 また、スポーツ選手などの活動性の高い人たちの肩の使いすぎで腱板断裂が起きることもあります。野球選手のシーズンオフのニュースなどでも時々耳にすることがあるので、「腱板断裂」という言葉は結構身近に耳にする言葉かもしれません。 (1)転んでしまった時などの怪我を原因とするもの (2)スポーツが原因となるもの (3)主に年齢が上がるにつれて腱板が徐々にすり減っていくことを原因とするもも 明らかに転んでしまった、などの怪我が原因の場合は、多くの方が整形外科を早めに受診されるので、その際にレントゲン撮影、超音波検査、MRI検査などをして診断されることが多いので、適切な治療を早めに開始することができます。 一方で、徐々に腱板がすり減っていって腱板断裂を起こしてしまった場合は、整形外科受診のタイミングを逃してしまう方も多く、「なんとなく肩が痛かったけど、騙しだまし、やってきた・・・、日常生活に不足なかったから」などの理由で放置されることが多く、それも障害がある限りは限界がきます。 そういえば、いつだったか、ずいぶん前にちょっと転んだけど、しばらくしたら痛くなくなって、病院では診てもらわずに放っておいたというのは、よく聞く話です。 こういう方々は、実際に整形外科の受診時に 「ひどい痛みで肩が動かない、、、。日常生活に支障が出てきて困っている!なんとかしてほしい!!」となることがあります。 また、スポーツで断裂が起こる場合は大きく次の3つのタイプに分かれます。 1)慢性障害 野球や、バレーボール、水泳など、肩を大きく回す動作を日常的に繰り返すことで起こります。筋肉の疲労を伴うもので完全に断裂することはあまりなく、多くは部分断裂です。 2)急性障害 急激に大きな力が掛かり急性に完全断裂が起こることがあります。ジムでの筋力トレーニングや、体操、テニス等で見られます。 3)外傷型障害 衝突や転倒により生じる症状です。スキーやスノーボード、ラグビーやサッカーなどで多く見られます。 腱板断裂は放置しないで肩に違和感があれば医療機関を受診する 腱板断裂は放っておけば断裂してしまった部分が自然に修復されるなどということは期待できません。つまり、なんらかの対策、治療や、リハビリテーションが必要となります。 痛みが無くて、日常生活に不便がなう場合でも、放置した場合は、肩の機能は低下していきます。また別の病気に移行する危険性があります。 転倒や、スポーツなどの急な怪我で腱板断裂が起きてしまった場合、または方に違和感がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。三角巾などで1−2週間安静にしていただき、強い痛みが強ある場合は炎症を抑えるための鎮痛剤の内服あるいは、ステロイド注射などの「薬物療法」、湿布、テーピングなども使いつつ、残った部分の腱板や肩回りの筋肉の増強に向けたリハビリテーションを行います。 これで約70%の方が状態は良くなります。しかし、肩の痛みが続き、肩の動きも思うようにままならない場合は、手術(断裂部の修復手術など)も検討しなかればなりません。 まとめ・肩の腱板断裂は放置しても治らない!早めに医療機関を受診して! 腱板断裂の症状は、全ての人に痛みが強く出るものではありません。腱板断裂ではあるが痛みがなく、肩が動いて日常生活に不便がない無症候性腱板断裂という肩もおられます。また、無症状ではないものの日常の生活には支障がない方もおられます。 そのような方々が腱板断裂を放置する選択を選ばれ(痛くない、支障がない)ますが、肩の機能は低下していくため、最終的に困った状態になってから医療機関を受診されるということになります。 そうなった場合の問題は、症状が進行してしまい極点な場合は、手術による修復が難しく、太ももの筋膜の移植、人工関節手術を検討する羽目になりかねません。まだ、大丈夫と自分で判断するのは重症化のリスクをはらんでいることをご理解ください。 ここまで肩の腱板断裂と放置による危険性を記してまいりました。明らかな痛みや、症状がある場合に病院等、医療機関を受診された方は、スムーズに治療に入れるために放置にはなりません。 肩に軽い痛みや違和感があるだけでは、つい病院等に行きそびれてしまったり、あまり痛まない、肩が上がるから大丈夫などと自己判断で腱板断裂を放置すると症状が悪化することがあります。 日常生活に支障がいないからと放置するのではなく、肩に痛み、違和感を感じたら整形外科等、医療機関を受診し、治療は勿論、現状の把握と万一、放置した場合のリスクについて説明を受け、ぜひ前向きに治療を開始されることをお勧めいたします。 No.S082 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 肩の再生医療 肩の違和感、痛み、再生医療による治療が可能な場合があります
2022.07.05 -
- 膝の慢性障害
- 前十字靭帯
- 半月板損傷
- 変形性膝関節症
- ひざ
膝へのヒアルロン酸注射が効かない!?効果がないと感じたら読んで欲しいこと はじめに 膝のご病気、痛みをかかえている方で、定期的に膝にヒアルロン酸の注射を受けている方は非常に多くおられます。その中で、『最初の頃、注射をすれば膝の痛みがひいたのに、最近は効かなくなってきた』『注射しても効かないどころか、余計にひどくなった気がする』という経験をされている方も少なくないのではないでしょうか? 膝のヒアルロン酸注射が効かなくなる原因と、効果が乏しいときの対処法について紹介していきます。 膝の痛みにヒアルロン酸注射で痛みが軽減する 『ヒアルロン酸』とは、水分をたくさん含む物質で、我々の身体の色々な場所で様々は役割を担当している物質です。目や皮膚に対しては潤いを保つように働きかけています。関節の中では動きをよくする潤滑油のような役割を担っています。 ヒアルロン酸を治療のために使用する場面はたくさんあります。眼の乾燥にもヒアルロン酸の目薬を行いますし、最近では美容目的に皮膚にヒアルロン酸の注射を行うこともあります。 色々な用途に用いられるヒアルロン酸ですが、膝にヒアルロン酸の注射を行う必要がある病気も多くあります。その中で、代表的なのが「変形性膝関節症」です。膝にヒアルロン酸注射を行うことの一番の目的は、膝関節の動きを滑らかにするためです。 もともと、膝の関節の中はヒアルロン酸をたくさん含んでいる滑液という物質で満たされています。この滑液という液体が膝の滑らかな動きを保つのに重要な役割を担っています。 しかし、年齢を重ねることや、外傷や他の疾患などの影響で、滑液の中のヒアルロン酸の量が減ることがあります。ヒアルロン酸の量が減ってくると、膝を滑らかに動かすことが難しくなってしまいます。すると、膝にある骨や軟骨がこすれて、次第に膝に痛みが出現するようになります。 このような場合にヒアルロン酸注射を膝に行うことで、膝の動きが滑らかになり、その結果、痛みを軽減させることが可能になります。 ヒアルロン酸注射が効かなくなるのは病気が進行している可能性 変形性関節症も初期の頃にヒアルロン酸注射を行うと動きも滑らかになり、痛みも速やかに軽減したり、改善することが多くあります。しかし、病気が進行し、膝の変形が重度になってくると、ヒアルロン酸注射をしても効果が得られ難くなってきます。 これは、ヒアルロン酸注射自体の問題や治療の失敗などではなく、例えば膝自体に炎症がある場合、ヒアルロン酸注射は、効かないことが多くあります。さらに膝に感染があるときは、ヒアルロン酸注射をすること自体が余計に症状を悪化させてしまうこともあります。 変形性膝関節症は、年齢を重ねると進行する病気なので、誰でも変形が強くなっていく可能性はあるのですが、体重が重かったり、もともと運動習慣がなかったりすることも、変形が進行する原因になるとも言われています。 膝の変形性関節症の重症度や膝の組織を評価するために、病院では、レントゲン検査やM R I検査などの画像検査が行われます。M R I検査では、膝の軟骨や靭帯、半月板という組織が傷ついていないかも診ることもできるため治療方法の選択をするためにも非常に重要な検査です。 膝へのヒアルロン酸注射が効かなくなったら ヒアルロン酸注射は、はじめは効いても徐々に効かなくなるときがあります。そのためには、ヒアルロン酸注射以外の治療法を併用していくことも大事です。膝変形性関節症には、病院に受診しなくても自分自身で行える治療があります。体重が重い方については、体重を減量することも治療のために非常に重要です。 その他には運動療法を実施することも非常に大事であると言われており、規則正しい有酸素運動や筋力トレーニング、関節可動域運動を実施して継続していくことが大事です。膝をサポーターで保護することや、テーピングを実施することも推奨されていますので実施していくのがよいでしょう。 また、超音波を用いて行う超音波療法や、温める温泉療法なども推奨されています。 膝に炎症があるときは、ヒアルロン酸の注射ではなく、ステロイドという薬を膝に注射する必要があることもあります。また炎症を抑える薬を飲む必要があることもあります。 重症になってしまい、注射が効かない状態になると手術が必要になります。 手術では人工関節と言い関節の代用となる部品を、実際の関節の変わりに埋め込むという治療が行われます。そのため、皮膚を切って開く必要があるため、全身麻酔で手術が行われます。 全身麻酔とは寝た状態で手術を行う麻酔の方法なので、患者さんの目が覚めた時には手術は終わっています。手術は、傷口が感染しないか、麻酔によるアレルギーなどがないかを診るためにも入院で行われます。 入院自体は数日〜数週間の期間のことが多いですが、もともとの歩行状態に戻るためには膝のリハビリが必要で、数ヶ月程度のリハビリが必要になります。 また、最近では手術の代わりに「PRP療法」や、「幹細胞治療」という新しい先端治療を選択するできるようになってきました。PRP療法は、患者さんの血液から抽出した「血小板血漿(P R P)」を傷んでいるところに注射し、「幹細胞治療」は、ほんの少しの脂肪を採取し、その中から幹細胞を抽出、数千から億の単位まで培養し、増やした細胞を患部に注射で投与します。 どちらも患者さんの自然治癒力を高めて治療するもので手術や入院の必要はありません。弱った部分、痛んだ部分を修復くする「再生医療」です。 PRP療法、幹細胞療法、共に副作用はほとんどなく、患者さんのお身体の負担が非常に少ない治療法です。詳しくは、お問い合わせください。 まとめ・膝へのヒアルロン酸注射が効かない!?効果ないと感じたら読んで欲しいこと 膝へのヒアルロン酸注射は膝の動きを滑らかにするために非常に有用な治療法です。 最初、効果があっても、治療の過程で効果が乏しくなる可能性があります。それは治療の失敗やヒアルロン酸注射自体の問題ではなく、膝の状態が良くないということも考えられます。 そのため、効果が乏しいのにも関わらず、漫然と注射を重ねるのは良くないと思われます。その場合は、ヒアルロン酸の注射以外の治療を考えるべきかもしれません。 現在では再生医療(幹細胞治療、PRP療法)といった先端医療も考慮できます。 いずれにしましてもヒアルロン酸の注射の効果が以前に比して減ったように感じているなら、漫然と治療を継続するのではなく、医療機関をはじめ、かかりつけ医など、専門家に相談し、評価を受けて、適切な治療に切り替えを検討してはいかがでしょうか。 ただ再生医療は、先端医療であるため厚生労働省から認められている限られたクリニックでしか受けることができない治療方法です。手術も入院も避けることができる身体にやさしい治療方法です。興味があればお問い合わせください。 以上、膝へのヒアルロン酸注射が効かない!その原因と対策について記させて頂きました。参考になれば幸いです。 No.073 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療が膝の治療を変える!ヒアルロン酸が効かなくなったらお問い合わせください! 変形性膝関節症や半月板損傷、その他膝の不具合や痛みに新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療
2022.06.30 -
- ひざ
- 膝の慢性障害
- 前十字靭帯
- 半月板損傷
- 変形性膝関節症
- 関節リウマチ
膝に水がたまる病気と、水を抜いたあと注意すべきこと 多くの方を悩ませる「膝の痛み」。 膝痛の症状が長期にわたると日常生活に支障をきたすようにもなってきます。このような膝の痛みを抱える方によくある症状のひとつに「膝に水が溜まる」というものがあります。 この症状のある方は医療機関を受診した際に膝に溜った水を抜く処置を受ける場合が往々にしてあります。この記事では、主に膝に溜った水を抜いたあとの注意点について医師が解説したいと思います。 なお、本記事では一般的な注意点について解説しておりますので、個別の事象については各自で判断せず医療機関に相談するようにしましょう。 ・膝の水はなぜ溜まるのか? 膝の関節は、関節包というもので覆われ、更にその中には、滑膜と言われる膜があり、関節がスムーズに動くための潤滑油のような役割を果たす「関節液」が存在します。この関節液は、健常者においても常に作られながら吸収され、一定の量になるように調整されています。 これが半月板損傷や、変形性関節症など関節の炎症をはじめとして、骨折や何らかの感染や外傷、靭帯損傷、痛風、偽痛風、関節リウマチなどといった原因により関節液が作られるスピードが吸収されるスピードを超えてしまうことがあります。 これにより「膝に水が溜まる」という症状が起こります。 膝に水が溜る原因 ・半月板損傷 ・変形性関節症 ・何らかの関節の炎症 ・骨折 ・何らかの感染や外傷 ・靭帯損傷 ・痛風、偽痛風 ・関節リウマチ ・膝の水はどういう時に抜く? 膝の痛みで医療機関を受診した際に膝の水を抜くことがありますが、医療用語でこの診療行為を「関節穿刺」といいます。この関節穿刺には主に診断と治療の2つの目的があります。 ①関節液が溜まる原因を調べる(診断): 膝に水が溜まる原因はさまざまで、その原因によって適切な治療が変わる可能性があります。関節液を採取し検査することで膝に水が溜まっている原因を知る目的に関節穿刺を行う場合があります。 ②関節の痛みを和らげる(治療): 膝に水が溜まると、その溜まった水が膝の痛みをより悪くする可能性があります。そのため、関節液を排出したり、状況に応じて関節内注射を行い症状を和らげることがあります。この治療目的に関節穿刺を行う場合があります。 膝の水を抜いた後の合併症 関節穿刺を行った後に注意することは、関節穿刺によって起きる別の症状や病気、つまり合併症です。関節穿刺後の一般的な合併症について解説します。 ①感染 通常、関節内は無菌状態が維持されています。しかし、関節穿刺を行うことで体の表面にいた細菌が関節内に移行することがあります。細菌が関節内に移行し感染を起こすと、膝が赤く腫れたり、熱持ったり、痛みを伴うことがあります。 通常、関節穿刺を行った後数時間は穿刺を行ったことによる痛みが生じることがありますが、これが長引く場合はこの感染の可能性があります。一般的な目安としては48時間以上持続する症状、48時間以内でも悪化を伴う症状を認めた場合には感染などの可能性を考慮し、可能な限り処置を行った医療機関に相談することをお勧めします。 ②出血 関節穿刺の際に関節周囲の血管を傷つけてしまい出血を起こすことがあります。多くの場合は細い血管の損傷にとどまるため、自然に止まることがほとんどです。仮に穿刺後に貼付していたテープなどを剥がした際に出血が起きても、綺麗なガーゼなどでしばらく圧迫すれば止血されることが多いです。 しかし、他の持病などで血液をサラサラにする薬を飲まれている方やもともと血が固まりにくい病気の方、またより大きな血管を損傷してしまった場合などは自然に止血されないこともあります。圧迫しても止まらない出血の際には速やかに処置を行った医療機関に相談することをお勧めします。 ③その他 そのほかの合併症として、特に関節内に薬剤を注射した場合などに起こりやすいものもあります。例えば、アレルギー反応は通常原因となる薬剤などの物質を投与されてから数時間以内に、発疹・呼吸困難感・腹痛などの多彩な症状を生じる合併症です。 多くの場合は投与後すぐに発症しますので医療機関で発見される場合がほとんどですが、まれに帰宅後に発症することもあります。 血管以外の神経、靭帯、腱などの損傷も稀な合併症の例です。穿刺のみでこれらの組織に重大な損傷をきたすことは稀ですが、薬剤注入などを伴うと症状をきたす可能性があります。 膝の水を抜いた後に注意しておきたい観察項目 関節穿刺後に気になる症状が出現した場合、どこまで様子を見て良いのか判断に迷うことがあると思います。悩んだ場合はまず処置を行った医療機関に相談することをお勧めしますが、一般的な観察項目についても解説します。 ・症状の持続時間が長い: 通常、痛みなどの症状は処置をしたことにより生じたものであれば数時間から1日程度で消失します。しかし、なかなか症状が消失せず持続期間が長い場合は合併症を疑うサインとなります。 ・症状がどんどん悪くなる: 処置からあまり時間が立っていなくても、どんどん悪化する症状は合併症を疑うサインになります。通常徐々に改善する痛みが、ぶつけたなどのきっかけもなく悪くなる場合は速やかに相談しましょう。 まとめ・膝に水がたまる病気と、水を抜いたあと注意すべきこと 今回の記事では膝に水がたまる病気と、水を抜いたあと注意すべきことについて解説しました。 症状が出現した際に自己判断で放置せず気になる場合は速やかに処置を行った医療機関に相談しましょう。処置を行った医療機関が時間外などで対応できない場合は夜間救急などの受診を検討しましょう。 No.072 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療が膝の治療を変える! 変形性膝関節症をはじめ膝の障害に対する新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療
2022.06.29 -
- 脊髄損傷
脊髄損傷とは?その原因と症状、治療法について 脊髄損傷という言葉(あるいは「脊損(せきそん)」)を耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。大まかなイメージはあったとしても、どういった原因で脊髄損傷になるのか、脊髄損傷になると、どのような症状が出現するのか、また脊髄損傷の治療法についてよく分からない人がほとんどではないでしょうか。 この記事では、脊髄損傷とその症状および治療法について医師が解説します。なお、本記事では一般的な注意点について解説しておりますので、個別の事象については各自で判断せず医療機関に相談するようにしましょう。 脊髄損傷とは そもそも脊髄損傷の脊髄とは何でしょうか?脊髄は、脳と体をつなぐ神経の束を含む組織で、脊椎と呼ばれる背骨の中を通っています。脳と身体中の神経をつなぐ重要な役割を担っているため、この脊髄がなんらかの原因によりダメージ、損傷を受けるとさまざまな、そしてしばしば重篤な症状を引き起こすことになります。 これが脊髄損傷と呼ばれるものです。 脊髄損傷の原因 脊髄損傷の原因には様々なものがありますが、その原因が脊髄そのものにある場合と、脊髄の外にある場合といった大きく二つに分けることができます。 ① 原因が脊髄そのものにある場合: 脊髄は様々な神経の束を含みますが、この神経の束に栄養を与える血管が詰まったり破れたりする病態をそれぞれ脊髄梗塞、脊髄出血などと呼びます。またHIVや梅毒など脊髄に感染を起こすものもあります。 さらに脊髄の栄養となるビタミンB12の欠乏症、脊髄腫瘍なども脊髄損傷を引き起こします。しかし、脊髄損傷の原因が脊髄そのものにある場合は稀で、ほとんどの場合は原因が脊髄の外にあります。 ② 原因が脊髄の外にある場合: 脊髄は脊椎とよばれる骨組織のなかに存在し、周囲は脊髄液と呼ばれる液体で満たされています。この脊椎周囲組織の感染や出血により、脊髄が外から圧迫されて脊髄損傷を起こすことがあります。 また、感染や出血以外にも椎間板ヘルニアや放射線、交通事故などの外傷により脊髄の外から脊髄に障害を引き起こすことがあります。 脊髄損傷の症状 脊髄損傷はその原因が様々であるのと同様に、その原因やダメージを受ける部位によって症状が大きく異なります。筋肉を動かす運動神経、触れている・熱い・冷たいなどを知覚する感覚神経といった神経の種類によって脊髄の中での分布が違います。 先に述べた脊髄そのものの原因により脊髄損傷が起きた場合にはこの脊髄の中の特定の領域が影響を受け、感覚のみが傷害される、運動のみが傷害されるといった神経の種類による障害が起きることがあります。 一方で、脊髄の特定の部位が損傷すると、脊髄の中での分布にかかわらず特定の部位の全ての種類の神経が障害されることがあります。その場合は、損傷部位より下に出ていくまたは損傷部位より下から入ってくる全ての神経の伝達が不可能になるため、下半身の運動・感覚など全てが障害を受けるいわゆる下半身不随などが起きることがあります。 脊髄損傷の治療法 脊髄損傷の治療は、その原因および目的によって多岐にわたります。今回の記事ではその治療法を、下記の3つに分けて解説します。 (1) 原因に対する治療 (2) 救命のための治療 (3) 障害の影響を減らすための治療 (1) 原因に対する治療 先に述べたように、脊髄感染症やビタミン欠乏、腫瘍などの原因がある場合はそれぞれに応じた治療を検討することになります。椎間板ヘルニアや血腫(血溜まり)・膿瘍(膿溜まり)などが原因の場合、脊髄の圧迫を減らすために手術で原因を除去することもあります。 (2)救命のための治療 頸髄など頭に近い部位の脊髄は、呼吸や血液循環など生命を維持するために必要不可欠な臓器を制御する神経を含んでいます。そのため、こういった部位で脊髄損傷が起きた場合、生命の維持が危機に晒されることになります。 その場合には原因の検索や治療に先行して、人工心肺・人工呼吸器などを使って生命の維持を目的とした治療を行うこともあります。 (3) 障害の影響を減らすための治療 最大限の治療を尽くしても、残念ながら障害が残ってしまうことがありますが、そういった場合でも、とても重要な治療があります。それがリハビリテーションを中心とした、障害とともに暮らしていくための治療です。 リハビリテーションを行うことで、障害を受けた機能をほかの機能で代替することができたり、行政や医療サポートを受けながら脊髄損傷を発症する前により近い生活を送ることができたりする可能性があります。 まとめ・脊髄損傷とは?その原因と症状、治療法について 今回の記事では脊髄損傷とその症状および治療法について解説しました。 脊髄損傷と聞くと一般的には重篤な病態でしばしば身体障害を伴うなどのイメージがあると思いますが、実際にはその原因や治療法が多岐にわたることをご理解いただけたと思います。 そのため、個々の事例によって状況が大きく異なるため、より詳しく知りたい場合は既に受診している、または最寄りの医療機関に問い合わせることを推奨します。 No.071 監修:医師 坂本貞範 ▼ 脊髄損傷の再生医療|最新の幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脊髄損傷の新たな治療法として注目を浴びています
2022.06.24 -
- ひざ
- 変形性膝関節症
- 関節リウマチ
人工関節置換術、膝の手術を決断する前に知っておくべきこと 膝関節に変形や炎症が起きたりする病気があると、膝に人工関節を入れなくてはいけない状態になることもあります。それが膝への人工関節置換術という名称の手術になります。その手術を決断する前に、手術の流れや合併症、手術に備えて準備するべきことなどを知ることは非常に大事です。 膝関節とは まず、膝関節とは何かについて述べていきます。膝関節は3つの骨で支えられています。太ももの骨である大腿骨と、すねの骨である脛骨、いわゆる膝のお皿と呼ばれる膝蓋骨の3つです。 その3つの骨と、太ももの筋肉である大腿四頭筋と、膝の腱である膝蓋腱で膝関節をつくっています。これらの3つの骨と筋肉、腱が支え合うことで、私たちが、走ったり、飛んだり、座ったりするときに安定するようになっています。 膝関節の病気 膝関節の病気については様々なものがあります。変形性膝関節症、膝靭帯損傷、関節リウマチなど様々な病気があります。また、スポーツ外傷でも膝の慢性的な障害を起こしたりします。それらの病気の中で、変形性膝関節症や関節リウマチは、変形や炎症が強くなった時に、人工膝関節置換術という、人工関節のための手術を行う必要のある病気です。 変形性膝関節症 変形性膝関節症は、膝が痛くなり水が貯まる病気です。最初は歩き始めに痛い程度ですが、徐々に階段を登ることが難しくなり、最終的には、休んでいる時も痛みが取れなくなるような病気です。 変形性膝関節症では、膝が変形して、伸ばすことができなくなります。変形性膝関節症の治療法は、症状が軽いうちは、炎症を抑える薬を飲んだり、膝関節にヒアルロン酸の注射をしたり、リハビリを行なったりします。しかし、重症になると、人工関節の手術をするか否かの選択が必要になります。 関節リウマチ 関節リウマチは、関節内にある『滑膜』とよばれる組織が、異常に増えることが原因で、関節の中に炎症が起きる病気です。関節リウマチでは身体の中のいろいろな関節が破壊されるので、膝だけでなく、手や足など様々な関節に変形を起こします。 関節リウマチの治療は、抗リウマチ薬や、炎症を抑える薬、免疫抑制剤、ステロイド剤などの薬を飲むことが一番大事です。お薬の治療に併用して、ヒアルロン酸の関節内注射やリハビリなどが行われることもあります。 関節リウマチも治療が遅れたりして重傷になると、人工関節のための手術を行うか同課の選択が必要になります。 膝の人工関節とは 膝の人工関節は、金属や、ポリエチレンやセラミックなどで作られます。変形性膝関節症や関節リウマチなどの病気で、変形し傷ついた膝関節を取り出して、手術によって膝用の人工関節を変わりに入れます。悪くなってた関節を置換えるイメージです。 この人工関節は、膝の動きを再現するために3つの部品から作られています。人工関節の3つの部品は、実際の膝を構成している3つの骨(大腿骨部、脛骨部、膝蓋骨部)の部分をそれぞれ担当しています。 人工関節置換術/手術 膝の人工関節を入れるためには人工関節置換術という手術が必要です。手術が必要ということは、もちろん入院も必要です。昨今の新型コロナウイルスの関係で、入院生活は、家族や友人との面会が制限されているところが多いです。 入院前に入院生活のために必要な物品や、家族や友人との連絡手段を事前に決めておく必要があります。手術は全身麻酔をかけて眠った状態で行われます。そのため、麻酔から覚めて、目が覚めると手術が終わっている状態になります。 手術自体は、膝の皮膚を切り開いて、骨が見える状態になったら、器械を使って傷のある膝の部分を削り、人工関節の形に合わせて残りの骨の形を調整します。形の調整ができたら人工関節をはめ込みます。しっかりと固定できていることを医師が確認したら、縫い合わせます。 手術の傷口にたまった血液を出すための管を入れて傷口をふさぎ手術が終わります。手術の時間は、平均2−3時間程度のことが多いですが、もともとの病気や膝の状態に応じて手術の時間は変わってきます。 人工関節置換術の術後 手術が終わればすぐに退院できるという訳ではありません。手術した関節を安定させるために、リハビリを開始します。リハビリは手術後の状態に応じて開始時期が異なりますが、早ければ手術翌日から段階的に始めることが多いです。 リハビリは、寝たまま膝を伸ばしたりして筋力をつけることから始まり、だんだんと平行棒などを使用したり、歩行器などで歩く練習などへと移行していくのが一般的です。 外来通院でリハビリを実施できる患者さんは退院が早くなりますが、外来に通院するのが難しい患者さんは、手術した病院からリハビリ専門の病院に転院してリハビリを行うことになります。 そのため入院期間は患者さんによって異なりますが、多くは2週〜4週くらいのことが多いです。 人工関節置換術(手術の合併症) 人工関節置換術を行うことで一番気をつけなくてはいけないのが、手術した場所に悪い菌が感染することです。感染すると、腫れたり、発熱したりします。 手術した場所に感染が起きると抗生物質による治療が行われますが、多くの場合、再び手術のやり直しが必要になることがあります。そのほかには麻酔によるアレルギー反応や、手術によって身体が防御反応を示し、血液が固まりやすい状態になることから血栓症の心配もあります。 手術中はもちろん、手術後にじゃ身体を動かすことができないことから、血の流れが滞ることで静脈内に血栓という血液が固まったものができる事がああります。これが深部静脈血栓症です。この血の塊が血液の中に混じって肺へ移動することで、肺の血管を詰まらせることがあります。これを肺塞栓症といい、生命の危機にもかかわりかねないため注意が必要です。 その他、術後としては、人工関節のゆるみや、歩けるようになったことで逆に転倒し、脱臼や、その周りの骨を骨折するという心配もあります。もちろんこれらのリスクには予防法があります。手術に際しては主治医から説明を受け、十分に納得して挑んで頂ければと思います。 人工膝関節置換術/手術の一般的なリスク ・最近による感染症(抗生物質、再手術) ・麻酔によるアレルギー反応 ・肺塞栓症、深部静脈血栓症 ・人工関節は、緩むことがある ・転倒による脱臼や骨折の可能性 ・その他 まとめ・膝の人工関節、手術を決断する前に知っておくべきこと 人工関節のための手術のためには入院が必要です。入院期間は短くはなってきましたが1か月ほどは見ておきたいものです。また、手術を行うことによる合併症のリスクもあります。できれば膝に違和感を感じたり、痛みを感じるようになった時には早めにリハビリや投薬などの保存的治療を受けて手術を避けることが一番です。 ただ、既に症状が進んでしまった場合は、しっかりと説明を受けて納得して手術を受けましょう。近年は医学が発達、「再生医療」という新しい先端医療を選択できる道ができました。これ方法なら手術が不要で、入院も不要という興味深い方法です。 手術に不安をお待ちの方は、当院のような再生医療専門の医療機関に問い合わせてみても良いでしょう。いずれにしまして人工関節になると、元には戻せないだけによく理解してお取組みください。 また、昨今は新型コロナウイルスの関係で面会が制限されています。家族と会えない数週間は、患者さんにとって、とても寂しくつらい期間です。手術のために入院する患者さんは、家族や友人とビデオ通話ができるように準備などをしてのぞむのも一つ方法ではないかと思います。 以上、膝への人工関節置換術、その手術を決断する前に知っておくべきことについて記載させていただきました。参考にしていただけると幸いです。 No.070 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療が膝関節の治療を変える! 手術不要、入院も必要ない日帰りで治療する膝関節症の新たな選択肢、再生医療
2022.06.21 -
- ひざ
- スポーツ医療
ジャンパー膝といわれる大腿四頭筋腱付着部炎の原因と治療 はじめに スポーツ選手は日常的に、身体を動かし、気がついたら慢性的に身体にダメージを与えていることも少なくありません。スポーツ外傷と呼ばれるものです。 走ったり、ジャンプしたりなど多くのスポーツで行う動作を慢性的に繰り返すことで起こる病気の中で、ジャンパー膝』と呼ばれる、「大腿四頭筋腱付着部炎」と呼ばれる病気があります。 この記事では、通称『ジャンパー膝(大腿四頭筋腱付着部炎)』について、その症状および治療法について医師が監修し解説します。なお、本記事では一般的な注意点などについて解説しておりますので、個別の事象については各自で判断せず医療機関に相談するようにしましょう。 ジャンパー膝の原因 ジャンパー膝とは、スポーツを日常的に行い膝に負担がかかる人が起こりうる病気で、いろいろなスポーツが原因で起こります。 ジャンプしたり着地したりの動きを多く繰り返すスポーツ(バレーボールやバスケットボール、走り高飛びなどの陸上競技など)で多く起こります。また、突然走ったり止まったりを繰り返すスポーツ(サッカー、ラグビー、アメフトなど)でも起こりやすいです。 野球やソフトボール、テニス、バトミントンなどのスポーツでも生じることが多いと言われており、走ったり、ジャンプしたりをたくさんするスポーツならどのようなスポーツでも発症する可能性はあります。 競技のレベルや強度が上がってくる中学校以降の学生だけでなく、日常的にスポーツを行なっているプロスポーツ選手でも見られ、サッカー元日本代表の内田篤人選手もこの疾患に苦しんだと言われています。 膝蓋骨に付着する腱のオーバーユース(使いすぎ)による炎症であるジャンパー膝は、その炎症部位により以下の2つに分類されます。 ・大腿四頭筋腱の膝蓋骨付着部=膝蓋骨の上に付着する腱の炎症 ・膝蓋腱の膝蓋骨付着部または脛骨粗面付着部=膝蓋骨の下に付着する腱の炎症 いずれの場合も、腱のオーバーユースによる炎症という原因は変わりませんが、障害部位によって原因となる動作や症状、治療法は異なると言われています。日常的な腱のオーバーユースによる障害のため、通常は徐々に症状が進行していくためほとんどの患者は症状が出現してから数ヶ月後に受診するのが現状です。 ジャンプや走るなどの動作で慢性的に膝に加わると、膝の靭帯に負担がかかります。この膝への靭帯の慢性的な負担によって、靭帯や腱に炎症を起こしたり、筋繊維などを傷つけてしまうことが原因でジャンパー膝が起きると言われています。 ジャンパー膝の症状 症状は、最初は軽症のことが多いですが、徐々に悪化してきます。 最初の症状としては、世間で、『膝のお皿』と呼ばれている部位である『膝蓋骨』の下側を押すと痛みを感じたり、膝を動かした後に痛くなったりする程度のことが多いです。多くの場合では、スポーツの後に痛みが悪化することが多いです。 注意すべきは、痛みが強くても、走ったりジャンプしたりはできることが多いため、スポーツ選手は痛みを我慢して、運動を続け、どんどん症状が悪化してしまうということが非常に多いということにあります。 最初のうちは、スポーツは普通に行うことができ、スポーツの後に膝に違和感や、痛みを感じる程度のことから始まります。しかし、その痛みを我慢し、膝を使い続けて、徐々に悪化してしまうと、スポーツ中にも痛みを感じるようになります。そのような段階になると、膝蓋骨の下側を押すと、顔をしかめてしまうほどの激痛で、しばらくその場から動けなくなるようなことも多いようです。 それでも痛みを我慢して、スポーツを続けると、スポーツなど運動中だけに関わらず、日常の歩行をはじめ、常に痛みを感じるようになります。さらに悪化すると、痛みでスポーツを継続することが困難になります。さらにスポーツを続けると腱や靭帯が千切れてしまうこともあります。 ジャンパー膝は、症状が出るに至った動作・経緯である病歴とその症状から診断されることが多く、診断自体には画像検査などの特殊な検査を要しないことがほとんどです。膝関節の屈曲や進展によって誘発される、膝蓋骨の直上または直下の違和感や痛み・熱感が一般的な症状です。 しかし、膝をぶつけたなど明らかな外傷がある場合や病歴や症状が典型的でない場合は膝関節の超音波検査やMRIといった特殊な検査を要する場合もあります。 あくまでこの診断は専門家による評価を前提としているため、安易に自分や非専門家による判断を下さず、整形外科などの医療機関での評価を推奨します。 ジャンパー膝の治療 治療は重症度によって大きく変わってきます。 症状が比較的軽症の人は、膝を休めて、安静・休養をとることだけで治ります。しかし、実際には軽症のときは、スポーツ後のみの痛みで、スポーツのプレー自体に影響がないので、そのままスポーツを続けて悪化させてしまうことが多いのが現状です。 スポーツを続ける場合でも、スポーツでの膝への負担を減らし、スポーツを行う前にストレッチを行うことや、アイシングなどで冷やし炎症を抑えることも治療の一つであると言われています。 また、状況に応じては、ステロイドという薬を傷んでいる場所に注射して炎症を抑えることもありますが、腱自体を弱くしてしまい、腱を千切れさせてしまうこともあると言われています。またヒアルロン酸を注射するという治療方法もあります。 重症になってしまい、膝の靭帯や腱が千切れてしまうと、膝を伸ばすことができなくなります。このような段階になってしまうと、手術を行わなくてはなりません。 手術では膝を切り開いて行う必要があります。そのため、全身麻酔という、寝た状態で行う手術が行われることが多いです。手術した傷が感染してしまう可能性もありますし、全身麻酔でのアレルギーなどの副作用が生じる可能性もあり、1−2週間入院を行う必要があります。 ただし、手術を行い退院したからといって、すぐにスポーツに復帰できるわけではありません。手術直後は歩行するのにも練習が必要な状態です。歩けるようになった後も、リハビリを行う必要があり、スポーツへの復帰までに3−6ヶ月以上は覚悟せねばなりません。 ジャンパー膝の治療はリハビリテーションが中心となります。前に述べた通り、ジャンパー膝を含むオーバーユースによる腱の炎症の治療は一般的には以下のような過程があります。 1)原因となる動作の制限:膝関節の屈曲・伸展を中心とした炎症となる原因の動作を、理想的にはやめることが推奨されますが、やめることが困難な場合には頻度や負荷を減らすことで炎症の鎮静化を図ります。 この原因動作の制限は治療の基本となり、症状が出た後にも原因動作を続けることはしばしば症状の悪化や長期化を引き起こします。疑わしい症状が出た場合は速やかに原因動作を中止し安静を保ちながら専門家に相談しましょう。 2)鎮痛:痛みが強い場合にはそのほかの動作に支障をきたすこともあるため、症状に応じて鎮痛薬を内服したり、場合によっては膝関節周囲に注射したりすることもあります。しかし、多くの場合は原因となる動作の制限が鎮痛の効果も果たすため、原因動作の制限でも症状が改善しない場合や痛みが強い場合に鎮痛薬の使用を考慮することになります 3)原因となる動作への復帰:炎症の改善の経過を見ながら、徐々に膝関節の使用を再開します。ジャンパー膝の治療を行う医療機関では、症状に応じたリハビリテーションプログラムを使用することが多く、早期に競技へ復帰するためにこのリハビリテーションは必要不可欠となります。多くの場合は、軽い負荷から徐々に通常または重い負荷をかけて膝関節の運動を行っていきます。負荷の制御は専門のリハビリテーションプログラムに基づくステップアップを要するため、受診している医療機関での継続的な評価を受けるようにしましょう。 まとめ・ジャンパー膝といわれる大腿四頭筋腱付着部炎の原因と治療 ジャンパー膝はスポーツを行う人にとって誰でも起こりうる病気です。 ジャンパー膝は、「大腿四頭筋腱」または、「膝蓋腱」のオーバーユース(使いすぎ)による炎症で、ジャンプ・着地、走る・止まるなどの急激な動作を繰り返すスポーツ外傷では比較的よく知られた疾患です。 重症度によって治療の方法は異なり、早く治療を開始することが重症化を防ぐことできる病気です。『症状が軽いから大丈夫』『スポーツが継続してできるから大丈夫だ』と考えて、無理してスポーツを継続すると、重症化してしまい、スポーツへの復帰がかえって長引いてしまいます。 個々の事例によって状況が大きく異なるため、膝に違和感を感じたら早めに医療機関等、病院を受診して医師の診察を受けることを推奨します。 以上、今回の記事ではジャンパー膝(大腿四頭筋腱付着部炎)とその症状および治療法について解説しました。参考にしていただければ幸いです。 No.069 監修:医師 坂本貞範 ▼ ジャンパー膝をはじめとしたスポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.06.20 -
- ひざ
- 半月板損傷
半月板損傷の手術!そのメリットと、デメリット 半月板損傷は、激しく走ったりジャンプをしたりするアスリートの膝に、つきものであるとも言える外傷です。また加齢などによって組織がもろくなる高齢者にも起こります。治療のために手術が必要となることがありますが、手術にはメリットと、デメリットがあります。 この記事では、膝の半月板について簡単に説明をさせていただき、半月板損傷に対する手術が必要な状況や手術のメリット、デメリットについてご説明します。 半月板とは? わたしたちの両方の膝には、それぞれ膝の内側に大きい内側半月板、膝の外側に外側半月板という2つの半月板があります。C字型をしたゴムのようなクッションで、膝関節の衝撃吸収材として機能しています。 そのほかにも膝の半月板があることで、接触する面の形状が異なっている脛骨と大腿骨の接触面積が増加し、互いにフィットしやすくなります。そのために、膝関節がより安定するようになり、正しい荷重配分する役割を担っています。 また、半月板は大腿骨と脛骨の間にありますので、両方の骨と骨が直接こすれ合うのを防いでいます。半月板の損傷は、特にスポーツをする人にとって、よく起こりうるもので注意が必要です。急に体をひねったり、曲げたり、衝突したりすると、半月板が損傷してしまうことがあります。 また、高齢者もよく半月板を損傷することがあります。半月板は加齢とともに弱くなり、断裂しやすくなります。事実、半月板の断裂は、老化現象として普通に起こりうることです。 半月板が損傷すると、膝を屈曲や伸展させる動きが不安定になり、痛みや腫れが生じたり、膝が動かなくなったりすることがあります。 半月板損傷の手術 半月板を損傷しても、手術が必要な人もいれば、そうでない人もいます。 その判断は、非外科的治療への反応の程度に加え、どのような損傷を受けたのか、損傷の大きさや部位、また受傷した人の、年齢、活動レベルや、ライフスタイルなどをもとに行います。合併する靭帯損傷の有無や臨床症状も加味されます。 関節鏡下半月板手術の種類 半月板損傷に対する手術は、一般的に関節鏡を用いて行われます。その手術には、大きく分けて2種類があります。 まずは損傷された軟骨の断裂した部分を縫い合わせ、自然治癒するように修復する半月板修復術(ラスピング、縫合術)です。しかし、損傷のタイプや、損傷部位への血液供給の関係で、修復可能な事例は多くはありません。 もうひとつは、損傷した軟骨を切除し、損傷を受けていない半月板組織を残す、半月板切除術、あるいは半月板部分切除術です。 半月板損傷の手術の種類 1)半月板修復術(縫合術、ラスピング) 2)半月板切除術、部分切除術 半月板手術そのメリットとデメリット それでは、膝半月板手術のメリットとデメリットについて、ご説明します。 半月板手術のメリット 半月板損傷手術には、次のようなメリットがあります。まず、痛みを軽減または、ほぼ取り除くことができます。その結果、スポーツやその他の活動に早期に復帰できる可能性が高まります。 半月板を外科的に修正することで、手術法によっては関節損傷のリスクが軽減される、また損傷部位からの関節炎の発症を防ぐ、または遅らせることも期待できます。 2020年にAmerican Journal of Sports Medicineに掲載された論文では、外傷により半月板を損傷した45人のうち、非外科的治療を受けた15人、半月板切除術を受けた15人、半月板修復術を受けた15人をフォローしています。 この研究の結果分かったことは、半月板修復群では、変形性関節症の進行が有意に遅く、人工膝関節置換術を必要とする患者が有意に少なかったということです。 平均74ヶ月の追跡調査において、半月板切除群では40%、保存的治療群では27%が人工膝関節置換術を必要としましたが、半月板修復群では人工膝関節全置換術を必要とするほど進行した人はいませんでした。 また2019年にAmerican Journal of Sports Medicineに掲載された研究では、半月板修復術、半月板切除術、および保存的治療結果を比較した過去の論文を、科学的手法を用いて厳格に検証するメタアナリシスが実施されました。 この論文では、半月板修復術を受けた229人、半月板切除術を受けた74人、手術を行わずに保存的治療を行った41人が対象となっています。 10年後のフォローアップでは、半月板修復群では53.0%、半月板切除群では99.3%、非手術群では95.1%に変形性関節症の進行が認められました。また人工膝関節置換術の実施率は、半月板修復術群33.5%、半月板切除術群51.5%、非手術群45.5%でした。 このことから、半月板修復術が非手術群や半月板切除術より、関節損傷や関節炎のリスクを低減することは明らかです。できる限り半月板の完全性を維持することで、より長期的に大きなメリットを得られることが期待できます。 痛みを軽減できる。上手くいけば、ほぼ取り除くことができる スポーツやその他の活動に早期に復帰できる可能性が高くなる 半月板損傷から変形性関節症の進行が遅らせ、人工膝関節の手術への移行が低確率になる可能性が高い 半月板手術のデメリット 過去数十年の間に、半月板をできるだけ多く保存することの重要性が明らかになってきました。 先に説明したように、半月板は膝への衝撃を吸収するために非常に重要な役割を担っています。半月板が破壊されると、関節軟骨の接触圧が増加するため、変形性膝関節症の進行が早まる可能性があります。 加齢などによる変性に起因する内側半月板損傷に対し、関節鏡下半月板切除術と保存的治療の臨床的・放射線学的結果を比較した研究があります。 この研究では、146人の患者(半月板切除術群、90人、保存療法群、56人)を評価対象としています。治療後、すべての臨床結果は両群で有意に改善されましたが、変形性膝関節症は、半月板切除群で有意に進行していました。 先に紹介した外傷による半月板損傷に対する治療結果の論文も含め、変性に起因する半月板損傷半月板損傷であっても半月板切除術は、変形性膝関節症をきたすデメリットがあります。 半月板損傷における半月板の切除は、変形性膝関節症へ進行するデメリットが見られる まとめ・半月板損傷の手術!そのメリットと、デメリット 半月板損傷に対する手術のメリットと、デメリットをご説明しました。 ほんの数十年前までは、一般的に半月板損傷後は、半月板を完全に切除していましたが、最近は残された半月板を温存すること、できる限り半月板を修復することが一般的です。 半月板損傷の結果手術が必要だと判断された場合は、しっかりと担当医と相談し、メリット・デメリットを理解して手術に臨まれることをお勧めいたします。 手術を受けたがそれでも改善されないなら、再生医療という最新の医療を考慮することが可能です。特に幹細胞治療は、ご自身の脂肪から幹細胞を抽出し培養、患部に投与することで膝の状態を大きく改善できる可能性があります。 手術の経過が思わしくない、手術をしたくないという場合を含め興味があればいつでもご相談ください。 No.068 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療の幹細胞治療が膝の治療を変える! 膝の治療の新たな選択肢、再生医療で手術せずに症状を改善できます
2022.06.18 -
- ひざ
- 変形性膝関節症
- 関節リウマチ
朝起きると膝が痛む、歩きはじめ膝に違和感を感じたとき はじめに 膝の痛みはしばしば経験する症状であるだけでなく、座る・立つ・歩くといった日常動作に深く関わるためその症状の生活への影響はとても大きいです。膝の痛みを抱える方の中には、朝起きると膝が痛い、歩きはじめの膝に違和感を感じるといった症状を経験する方もいるのではないでしょうか。 この記事では、そのような特徴的な症状を含む膝の痛みを生じる疾患と、その原因および治療法について解説します。なお、本記事では一般的な注意点について解説しておりますので、個別の事象については各自で判断せず医療機関に相談するようにしましょう。 朝起きると膝が痛む、歩きはじめ膝に違和感を感じる 膝の痛みの中でも、このような症状は「関節リウマチ」と、「変形性膝関節症」などの疾患に特徴的と言われています。それでは、なぜこのような症状が起きるのでしょうか。 関節は骨と骨のつなぎ目ですが、そこにはクッションの役割を果たす「軟骨」と、潤滑油の役割を果たす「関節液」があります。関節リウマチや、変形性膝関節症といった疾患ではこの軟骨に障害が及んだり、関節液の量の調整がうまくいかなくなったりする結果、しばらく関節を動かさないと朝起きた時や、動き始めの時にこわばりや、痛みを感じることがあります。 関節を動かしてしばらく経つと、関節液の量が自然に調節されて症状が改善することがあります。ここからは、これらの主な原因となる関節リウマチと変形性膝関節症について解説していきます。 関節リウマチ 関節リウマチは膝を含む全身の関節に起こる炎症を特徴とする疾患で、その原因には不明なところが残っているものの、関節組織に対する自己免疫の関与が考えられています。 一般的には手足の指の関節から始まることが多く、左右対称制の症状、朝のこわばりなどの典型的な症状が知られています。自己免疫の関与が考えられている関節リウマチですが、関節外に目や血管に症状をきたすこともあります。 関節リウマチの診断 関節リウマチの診断は、関節症状などの病歴だけでなく、レントゲン上での関節腔の狭小化などの所見、全身の炎症を反映した血液検査でのリウマチ因子・特殊抗体などを総合的に判断してなされます。 関節炎などの症状が出た場合は整形外科などへの受診をまずは考えますが、関節リウマチは膠原病内科やアレルギー内科などが専門となることがあります。適切な診療科も含めて、気になる症状がある場合はかかりつけまたは最寄りの医療機関に相談してみましょう。 関節リウマチの治療 自己免疫の関与が考えられている関節リウマチの治療法は、消炎・鎮痛といった一般的な関節痛にも共通する治療だけでなく、過剰な自己免疫を制御する免疫調整薬の使用が必要になることがあります。 このような治療は専門家の詳細な評価を必要とする場合が多いため、かかりつけ医の意見をよく聞いて治療を進めるようにしましょう。 変形性膝関節症 変形性膝関節症は主に加齢により発症すると考えられており、膝関節の痛みやこわばり、関節可動域の制限などといった症状が認められます。変形性関節症は膝以外にも手足や脊椎に発症することもあります。 変形性膝関節症の診断 典型的な症状や病歴があれば必ずしも画像などによる検索は必要ではないとされていますが、非典型的な症状を伴う場合には同様の症状をきたす別の疾患を想定して画像検査や血液検査を必要とすることがあります。 レントゲンでは関節腔の狭小化や骨棘などといった所見を認めることがありますが、血液検査では変形性膝関節症に特徴的な所見はないとされています。 変形性膝関節症の治療 変形性膝関節症は基本的には加齢による変化であり、痛みの制御を目的とした治療が主眼となります。具体的には消炎・鎮痛薬の使用を症状に応じて行うことになります。しかし、加齢による変化そのものは不可逆性のため、消炎・鎮痛薬の使用で症状がコントロールできない場合などは人工関節置換術といった手術による治療を考慮することもあります。 > 変形性膝関節症を再生医療で治療する 関節リウマチと変形性膝関節症の違い 今回紹介した関節リウマチと変形性膝関節症は同じ膝関節の痛みを生じる疾患ですが、異なる特徴もあります。症状については、一般的には関節リウマチは関節を動かさないと症状が悪化するという特徴があるため、朝のこわばりが特徴になります。一方で変形性膝関節症は関節の疲労で症状が悪化するため、夜のこわばりが特徴と言われています。 また関節リウマチは全身の炎症を起こすため血液検査で異常が出ることがありますが、変形性膝関節症に特徴的な所見はないとされています。 まとめ・朝起きると膝が痛む、歩きはじめ膝に違和感を感じたとき 今回の記事では朝起きると膝が痛み、歩きはじめ膝に違和感を感じたときに想定される疾患である「関節リウマチ」と、「変形性膝関節症」について解説しました。 この二つの疾患は類似点もありますが診断や治療など、大きく異なるものもあります。より詳しく知りたい場合は既に受診している、整形外科または、最寄りの医療機関に問い合わせることを推奨します。 以上、参考になれば幸いです。 No.067 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療で膝の痛み、違和感を治療する 膝の痛み、違和感の新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療とは
2022.06.17 -
- スポーツ医療
- ゴルフ肘
- 肘
ゴルフ肘は、なぜゴルフ経験がなくても発症するのか?ゴルフ肘の治し方 はじめに 肘に違和感があるな・・・と思い、病院を受診した際に、「ゴルフ肘」との診断されることがあります。これは、ゴルフの経験がない場合にもおこります。なぜゴルフの経験がないの「ゴルフ肘」との診断を受けるのでしょうか?ひょっとして『診断が間違っているのでは?』などと考えてしまうかもしれません。 しかし実際、ゴルフ肘という症状はゴルフをする人に限った病気ではなく、誰でも起こりうる病気なのです。この記事を読んで『この症状はゴルフ肘かも?』と思ったら、早く治すためにも治療が手遅れになる前に、医療機関を受診し、医師に相談しましょう。 ゴルフ肘とは 通称、ゴルフ肘と呼ばれる病気は、正式名称は『上腕骨内側上顆炎』と言います。 『上腕骨』とは、肩から肘の間の骨のことで、『内側上顆』とは、肘の内側のことを言います。手のひらヘソの方向にむけた際に、同様にヘソの方向をむく肘の場所のことを言います。 その上腕骨の内側上顆にある筋肉や腱に炎症が起こった場合に発症するのが、「上腕骨内側上顆炎」つまり、「ゴルフ肘」です。ゴルフでクラブをスイングをした際、肘に痛みが出現することから、ゴルフ肘と呼ばれるようになったといいます。 ゴルフ肘で炎症が起こる内側上顆という場所に付いている筋肉は、手のひらを内側に向けて動かす動きや、物を握るような動きなど、腕のあらゆる動作に関わっています。そのような腕の動作を何度も繰り返し行ったり、使いすぎると、筋肉が引っ張られ、炎症を起こし、ゴルフ肘を発症すると言われています。 この病気ですが、ゴルフの他にもテニスに選手にも発症すると言われています。しかし、実際には、スポーツが原因の人は少ないと言われています。肘の関節を曲げたり、伸ばしたりする動作を繰り返したり、肘関節をたくさん使うような職業の方は誰でも起こりうる病気です。 さらに、仕事をしていない方でも、日常的に肘を酷使している場合、主婦などの一般人にも生じる病気なのです。 ・上腕骨:肩から肘の間の骨を指す ・内側上顆:肘の内側のこと ゴルフ肘の症状と診断 ゴルフ肘の症状は、肘の痛みですが、痛みは、日常生活の過ごし方によって、様々な形で出現します。ゴルフ以外のスポーツ、テニスであれば、ラケットのグリップを強く握った時や、強くラケットを振った場合に痛みを感じると言われています。 日常的に仕事で肘を使う人でしたら、例えば、重い物の積み下ろしを繰り返し行ったり、釘を打ったりする動作を繰り返す時に痛みを感じます。そのため、引っ越し業や大工さんにもよく発症すると言われています。 主婦の方は、料理で包丁を使う動作などの反復作業の中で症状が出現することもあります。ゴルフ肘は、いわゆる肘の使い過ぎによって起こる病気です。そのため、医師の診察でも、肘の曲げ伸ばしを日常的に繰り返ししているか聞かれ、診断の材料になります。 実際の診察現場では、手のひらを上に向けた状態で、テーブルの上に置き、医師が手首を押さえ、手首を上に向けてあげようよう指示をした際に、肘の内側が痛くなるような時に、ゴルフ肘が疑われます。 さらに、レントゲン検査で骨が変形していることや、超音波検査やM R I検査などの画像検査を行い、炎症を確認して総合的に診断が行われます。 ゴルフ肘の治し方 ゴルフ肘の治し方、治療法は、その重症の度合によって変わります。 ほとんどの場合で、肘の使い過ぎをやめ、安静を保てば痛みがひくことが多くあります。肘をなるべく使わないようにすることが必要になるため、場合によってはサポーター等の装具や、テーピングなどを行い、肘を安定させ、肘の安静を保つようにします。 肘を使わないことで自然と炎症が治り、症状が改善してまいりますが、安静を保つことに加えてストレッチや、筋力トレーニングなどのリハビリを併用して行うこともあります。 ただ、痛みが酷い場合などは、薬物による治療も行われます。ステロイドと呼ばれる薬剤を傷んでいる場所に注射したり、痛み止めの薬を服用します。また炎症を抑える薬を飲んだり、湿布を行ったりする治療を行います。 ゴルフ肘の治し方(治療) ・サポーター(装具)肘を安定させ、安静に保つ ・リハビリによる保存療法(ストレッチ、無理のない筋力トレーニング) ・痛み止め、湿布などの薬物の使用 ・悪化すると手術の可能性もあり しかし、治療が遅れたり、症状がよくならない、重症である場合は、手術という選択も行われることがあります。手術などしたくないものですが酷くなると、腱が傷ついていたり、千切れたようになることもあり、そうした場合は、手術が必要になります。 手術を行えば、ほとんどの場合、痛みは改善することが多いのですが、注しなければならないこととして、手術は皮膚を切って傷ついた腱を修復します。そのため、手術することで合併症など傷が感染するリスクもあります。また、少ないながら麻酔によるアレルギーや、副作用の出現もあり得ない話ではありません。 また手術を行った場合は、入院での加療となることで仕事への影響や、ご家族様の負担が増えてしまうのは遺憾ともしがたいものです。 いずれにしましても、このような心配をしなくても良いように、肘に違和感を感じたら早く治すために積極的に医療機関に足を運び治療を開始するようにしましょう。 それでも悪化して手術という場合に、手術を避ける方法があります。それは、再生医療という最新の治療法です。再生医療なら手術をせずに、入院も不要という新しい方法です。興味があれば以下のリンクから詳細を知ることができます。 ▼筋・腱・靭帯損傷に対する再生医療 再生医療は、手術を避けて入院も不要な最新治療方法です まとめ・ゴルフ肘は、なぜゴルフ経験がなくても発症するのか?ゴルフ肘の治し方 ゴルフ肘は、ゴルフを行わない人でも誰でも、起こりうる病気です。 早く治すためには、早く治療に入ることが大切です。手遅れになって重症化しないうちに治療を開始しましょう。治療が遅れると悪化し、結果として手術を選択しなければならないこともあるので、「この程度なら」との自己判断は禁物です。 手術自体、症状の改善以外の部分、感染症のリスクなどもあり、手術後には痛みもあります。さらには昨今の新型コロナウイルスの関係で入院中は面会もできない病院が多く、入院は、辛い体験だったと感じる患者さんも少なくないといいます。 『自分はゴルフをしないから大丈夫だ』と考えず、肘に違和感を感じたら、スポーツ以外、仕事であっても我慢したりせず、手遅れになる前に病院等にて医師の診察を受けられることをお勧めします。 以上、ゴルフ肘は、なぜゴルフ経験がなくても発症するのかについて記させていただきました。参考にして頂ければ幸いです。 No.066 監修:医師 坂本貞範
2022.06.16 -
- ひざ
膝に溜った水を抜いたあとの注意点とは 多くの方を悩ませる「膝の痛み」。 膝痛の症状が長期にわたると日常生活に支障をきたすようにもなってきます。このような膝の痛みを抱える方によくある症状のひとつに「膝に水が溜まる」というものです。 この症状のある方の中には医療機関を受診した際に膝に溜った水を抜く処置を受ける場合が多くあります。この記事では、主に膝の水を膝に溜った水を抜いたあとの注意点について医師が解説します。 なお、本記事では一般的な注意点について解説しておりますので、個別の事象については各自で判断せず医療機関に相談するようにしましょう。 ・膝の水はなぜ溜まるのか? 膝の関節の中には、関節がスムーズに動くための潤滑油のような役割を果たす「関節液」が存在します。この関節液は健常者においても常に作られながら吸収され、一定の量になるように調整されていますが、何かの原因により関節液が作られるスピードが吸収されるスピードを超えてしまうことがあります。 これにより「膝に水が溜まる」という症状が起きるのです。 ・膝の水はどういう時に抜く? 膝の痛みで医療機関を受診した際に膝の水を抜くことがありますが、医療用語でこの診療行為を「関節穿刺」といいます。この関節穿刺には主に診断と治療の2つの目的があります。 ①関節液が溜まる原因を調べる(診断):膝に水が溜まる原因はさまざまで、その原因によって適切な治療が変わる可能性があります。関節液を採取し検査することで膝に水が溜まっている原因を知る目的に関節穿刺を行う場合があります。 ②関節の痛みを和らげる(治療):膝に水が溜まると、その溜まった水が膝の痛みをより悪くする可能性があります。そのため、関節液を排出したり、状況に応じて関節内注射を行い症状を和らげることがあります。この治療目的に関節穿刺を行う場合があります。 膝の水を抜いた後の合併症 関節穿刺を行った後に注意することは、関節穿刺によって起きる別の症状や病気、つまり合併症です。関節穿刺後の一般的な合併症について解説します。 ①感染 通常、関節内は無菌状態が維持されています。しかし、関節穿刺を行うことで体の表面にいた細菌が関節内に移行することがあります。細菌が関節内に移行し感染を起こすと、膝が赤く腫れたり、熱持ったり、痛みを伴うことがあります。 通常、関節穿刺を行った後数時間は穿刺を行ったことによる痛みが生じることがありますが、これが長引く場合はこの感染の可能性があります。一般的な目安としては48時間以上持続する症状、48時間以内でも悪化を伴う症状を認めた場合には感染などの可能性を考慮し、可能な限り処置を行った医療機関に相談することをお勧めします。 ②出血 関節穿刺の際に関節周囲の血管を傷つけてしまい出血を起こすことがあります。多くの場合は細い血管の損傷にとどまるため、自然に止まることがほとんどです。仮に穿刺後に貼付していたテープなどを剥がした際に出血が起きても、綺麗なガーゼなどでしばらく圧迫すれば止血されることが多いです。 しかし、他の持病などで血液をサラサラにする薬を飲まれている方やもともと血が固まりにくい病気の方、またより大きな血管を損傷してしまった場合などは自然に止血されないこともあります。圧迫しても止まらない出血の際には速やかに処置を行った医療機関に相談することをお勧めします。 ③その他 そのほかの合併症として、特に関節内に薬剤を注射した場合などに起こりやすいものもあります。例えば、アレルギー反応は通常原因となる薬剤などの物質を投与されてから数時間以内に、発疹・呼吸困難感・腹痛などの多彩な症状を生じる合併症です。 多くの場合は投与後すぐに発症しますので医療機関で発見される場合がほとんどですが、まれに帰宅後に発症することもあります。 血管以外の神経、靭帯、腱などの損傷も稀な合併症の例です。穿刺のみでこれらの組織に重大な損傷をきたすことは稀ですが、薬剤注入などを伴うと症状をきたす可能性があります。 膝の水を抜いた後に注意する観察項目 関節穿刺後に気になる症状が出現した場合、どこまで様子を見て良いのか判断に迷うことがあると思います。悩んだ場合はまず処置を行った医療機関に相談することをお勧めしますが、一般的な観察項目についても解説します。 ・症状の持続時間が長い:通常、痛みなどの症状は処置をしたことにより生じたものであれば数時間から1日程度で消失します。しかし、なかなか症状が消失せず持続期間が長い場合は合併症を疑うサインとなります。 ・症状がどんどん悪くなる:処置からあまり時間が立っていなくても、どんどん悪化する症状は合併症を疑うサインになります。通常徐々に改善する痛みが、ぶつけたなどのきっかけもなく悪くなる場合は速やかに相談しましょう。 まとめ・膝に溜った水を抜いたあとの注意点とは 今回の記事では膝に溜った水を抜いたあとの注意点について解説しました。 症状が出現した際に自己判断で放置せず気になる場合は速やかに処置を行った医療機関に相談しましょう。処置を行った医療機関が時間外などで対応できない場合は夜間救急などの受診を検討しましょう。 No.065 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療の幹細胞治療が膝の治療を変える! 膝の痛みに対する新たな選択肢、再生医療は切らずに症状を改善させます
2022.06.10