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脳出血とストレスの関係性について!その種類と部位を分かりやすく解説! 脳出血とは脳卒中の一種で、脳内の血管が破裂することで出血する病態のことです。脳出血が起きると、出血によってあふれた血液が血腫(血の塊)を形成し、脳神経を圧迫することで多様な症状を生じます。 本記事では脳出血の原因、症状、そしてよく耳にする“脳出血とストレスの関係性”について詳しく解説していきます。 脳出血とストレスの関係性とは ストレスは万病の元とされており、脳出血の一因となります。 人間はストレスを受けると、副腎からコルチゾールという「ストレスホルモン」が多量に分泌されるようになります。 コルチゾールは適度であれば、生活リズムの調整や代謝促進などを行ってくれますが、過剰に分泌されることで、血管が収縮し血圧が高くなり、脳出血の発症リスクが高めてしまいます。高血圧や血圧の乱高下は、血管への圧力となってしまうためです。 ストレスによって生じる脳出血リスク また、ストレスによって脳出血が生じやすい、下記のような状況にも注意が必要です。 睡眠不足による動脈硬化リスク 過剰なストレスによって脳や体は緊張状態となり、睡眠障害となることがあります。不眠症によって動脈硬化が進むこともあり、脳出血の要因となります。 暴飲暴食による高血圧リスク ストレス解消をお酒や食事に求める方も多いと思われます。適度な酒量であれば、問題となることは少ないですが、過度の飲酒が続くと血圧が上昇し、脳出血のリスクを高めてしまいます。 食事も食べ過ぎると胃や腸に負担をかけ、生活習慣病の原因になり、脳出血を生じやすくなります。 喫煙による動脈硬化リスク ストレスにより喫煙の本数が多くなることもあるかと思いますが、喫煙も当然のように動脈硬化のリスクの一つです。 お酒に関しては適量であれば血流が改善する面もありますが、喫煙に関しては悪影響しかありません。 脳出血の種類 脳出血の原因としては、高血圧などの生活習慣が関与しているイメージがありますが、その他にも多様な原因疾患があります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。 高血圧性脳出血 脳出血の中で最も頻度が高いのが、「高血圧性脳出血」で、その名の通り高血圧が主な原因です。 高血圧は動脈に強い負担をかけるため、長期間高血圧に晒されることにより、血管が脆くなり出血してしまいます。ストレスによる影響が最も強いのはこのタイプとなります。 血管腫 血管腫とは、血管にできるコブのような塊のことです。血管が拡張したり増殖することによって生成され、多くは良性ですが血管腫ができると、脳出血を招いてしまうことがあります。 血管腫の中でも海綿状血管腫は出血するリスクが高く、稀に多発することがあります。出血自体も繰り返すことが多いのが特徴で、出血を繰り返すごとに血腫が成長し、脳神経などを圧迫することでてんかん発作を引き起こすことがあります。 動静脈奇形 動静脈奇形とは、胎生期に起こる先天性異常で、血管に奇形が生じる状態のことです。 脳内の動脈と静脈は毛細血管を経由してつながっていますが、動静脈奇形が起きると、動脈と静脈が直接つながるようになります。結合した動脈と静脈の間には、「ナイダス」という異常な血管の塊が生じ、これは通常の血管と比べて非常に脆くなっています。そこに動脈の血流が直接静脈に流れ込むため、血管に負担がかかり、破れることで出血が生じます。 硬膜動静脈瘻(:こうまくどうじょうみゃくろう) 硬膜動静脈瘻は、脳にある硬膜のなかで、動脈と静脈が直接つながってしまう状態のことです。上述した動静脈奇形が先天異常であるのに対し、硬膜動静脈癭は後天的に発生しますが、その原因についてまだ詳しいことはわかっていません。 動脈の血流が静脈に直接流れ込むことで、静脈の血管が耐えきれずに破れてしまい出血が生じます。 脳腫瘍(悪性) 脳腫瘍(悪性)は脳に発生する癌のことで、腫瘍自体が破裂することにより出血することがあります。 脳アミロイド血管症 脳アミロイド血管症は、高齢者に多い脳出血で、脳血管にアミロイドという異常な物質が溜まることで生じます。アミロイドが沈着することで血管が脆くなり、最終的に出血に至ります。 脳アミロイド血管症による脳出血は、再発を繰り返すことが特徴で、脳出血と同時に認知症を発症することも少なくありません。 脳出血は上記のように多様な原因がありますが、高血圧などの生活習慣病を患っていると動脈硬化が進行し、より出血のリスクが高まります。 この他にも、運動や睡眠不足、過剰なストレスを抱え込むことでも血圧が上昇しやすくなり、脳出血のリスクは高まるので、規則正しい生活を送ることが重要です。 脳出血の生じやすい部位と症状 脳出血の症状では強い頭痛や嘔気などが出ることは共通していますが、出血の起こる部位によって他にも様々な症状が出現します。 被殻出血 脳出血の中で最も多い出血部位(約40%)が被殻出血です。頭痛や体の半身が麻痺を起こす片麻痺や表情が歪んでしまう顔面神経麻痺などが生じます。 視床出血 被殻出血の次に多いのが視床出血で脳出血の約30%程度にみられます。視床は視覚や聴覚などで得た情報を集め、感覚中枢に送り届ける役割を担っており、この部分で出血が起こると、頭痛や片麻痺といった上記の症状に加えて、意識障害なども見られることがあります。 小脳出血 小脳は大脳の下に位置しており、運動機能を司っています。この部分で出血が起きると体を動かしづらくなり、ふらつきなどといった運動失調が生じます。徐々に意識障害が起こることもあります。 橋(脳幹)出血 脳幹は大脳と脊髄をつなぐ部位のことで、大脳が処理した情報を身体の運動機能につなげる役割を果たしています。そのため脳幹出血が起きると、四肢の麻痺や眼球運動障害があらわれやすくなり、意識障害なども生じることがあります。発症から数分で昏睡状態になり、数時間で死亡する場合もある重篤な疾患です。 皮質下出血 皮質下出血とは、大脳皮質という大脳を覆う膜の下で出血が起きることです。上記の4つの出血は高血圧が原因となることが多いですが、皮質下出血は動静脈奇形や硬膜動静脈瘻が原因であることが多いです。症状としてはけいれんや、軽めの意識障害などがみられることが多いです。他の部位の脳出血よりも比較的症状が軽い場合が多く、予後が良好なことが多いとされています。 まとめ・脳出血はストレスを和らげ規則正しい生活で予防しよう! 脳出血はストレスなどに起因した高血圧などや生活習慣の乱れなどによって発症することが多いですが、その他にも血管自体の異常によって発症することがあります。 脳出血の予防には、規則正しい生活やストレスを抱え込み過ぎないことが重要となります。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S121 監修:医師 加藤 秀一
最終更新日:2023.12.26 -
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野球肩|インピンジメント症候群の具体的なリハビリ方法について 野球やバトミントンなどオーバーヘッドスポーツで生じやすいインピンジメント症候群。投球動作で肩に痛みが生じる、いわゆる「野球肩」の一種として知られています。インピンジメントとは「衝突」という意味で、インピンジメント症候群は、肩の関節を構成する骨同士が衝突したり、骨の間に筋肉が挟まれたりして痛みが生じる状態です。 インピンジメントを引き起こす原因はさまざまで、原因に合わせたリハビリの実施が必要です。 今回は、インピンジメント症候群の具体的なリハビリ方法について解説します。 インピンジメント症候群に対するリハビリの目的 肩の関節は、背中にある肩甲骨と腕の骨である上腕骨、鎖骨によってできています。 上腕骨の先端にある球状の上腕骨頭(じょうわんこっとう)が肩甲骨のくぼみにはまるように作られる肩甲上腕関節(けんこうじょうわんかんせつ)が、一般的に肩関節と呼ばれる関節です。 インピンジメント症候群は、以下のような要因で、肩関節の正常な動きが妨げられるため生じます。 インピンジメント症候群の要因 ・関節周辺の組織が固くなり上腕骨頭の位置がずれる ・猫背になり肩甲骨の動きが悪くなる ・筋力が低下して上腕骨頭が正常とは異なる動きをする これらの要因を改善して、インピンジメントを生じさせない動きを取り戻すのがリハビリの目的です。また、リハビリでは、インピンジメント症候群により生じた炎症の回復を補助する目的も含まれます。 次からは具体的なリハビリの内容を紹介します。 インピンジメント症候群のリハビリ|炎症への対応 肩を動かさなくても痛みがでる場合や、夜間に痛みがでる場合は、インピンジメントにより肩周辺の組織に炎症が生じている可能性があります。そのような状態では、積極的な運動よりも、炎症や痛みを和らげる対応が優先されます。 そのため、肩のアイシングや安静時のポジショニング(肩の位置の調整)を行い、肩にかかるストレスを軽減させるのが大切です。ポジショニングは、肩や肘の下にタオルなどを入れて痛みがないポジションを作ります。 振り子運動 また、運動では振り子運動により、自重を使った関節の運動を実施して、肩への負担をかけないようにします。 インピンジメント症候群のリハビリ|猫背を改善するリハビリ 猫背になると、肩甲骨の動きが妨げられるため、正常な肩関節の動きが生じずに、インピンジメントを引き起こしやすくなります。 肩の痛みがあり肩関節を動かしにくいときでも、猫背を改善するリハビリは、肩関節を動かさずに実施できるため、積極的に取り組みましょう。 具体的な方法は以下の通りです。 ストレッチポールでのストレッチ ストレッチポールの上に仰向けで寝て、胸を開いて背中をストレッチします。 cat & dogストレッチ 四つ這いで背中を丸めたり、反らしたりする「cat & dog」の運動もおすすめです。 インピンジメント症候群のリハビリ|肩関節の動きを改善するリハビリ インピンジメントを起こす原因の1つが、肩の関節周辺にある組織の柔軟性低下です。特に肩の後ろの組織が固くなると、上腕骨頭が前方にずれてしまい、正常な肩関節の運動ができません。その結果、インピンジメントが生じやすくなります。 そこで、肩の後ろで関節を覆っており、動きの制限になりやすい後方関節包(こうほうかんせつほう)のストレッチを紹介します。 クロスボディストレッチ 1つ目の方法は座った状態または立った状態で行います。 具体的な方法は以下の通りです。 1, 痛みのある方の腕を肩の高さまで上げる 2, 反対の手で肘を掴んで体の内側に引きよせる 3, 肩の後ろが伸ばされるのを確認しながら30秒キープする 痛みがある場合は無理をしないようにしましょう。 スリーパーストレッチ 2つ目の方法は横向きに寝て行うストレッチです。 具体的な方法を解説します。 スリーパーストレッチ 1, ストレッチする方の肩が下になるように横向きに寝る 2, 腕を肩の高さに合わせるように脇を開く 3, 肘を直角に曲げて前腕を立たせる 4, 反対の手で立てた前腕をゆっくり内側に倒す 5, 限界まで倒した状態で30秒キープする 強く抑えるように倒すと痛みが出やすいので、ゆっくり力を入れずに倒しましょう。 インピンジメント症候群のリハビリ|腱板機能を改善するリハビリ 腱板(ローテーターカフ)は、肩甲骨と上腕骨をつなぐ以下の4つの筋肉をまとめた呼び方です。 腱板とは ・棘上筋(きょくじょうきん) ・棘下筋(きょくかきん) ・肩甲下筋(けんこうかきん) ・小円筋(しょうえんきん) 肩関節をおおうように位置しており、肩関節を安定させて、スムーズに動かせるようにする役割を持っています。そのため、腱板をうまく使えないと、肩関節が不安定になり、正常な関節の運動ができず、インピンジメントを引き起こします。 そこで、腱板の機能を改善するリハビリを紹介します。 棘上筋トレーニング 腱板の1つである棘上筋のトレーニングを紹介します。 1, 腕を体の横につけて、親指が上になるようにする 2, 肘を伸ばしたままで、体から腕が離れるように上げる 3, バレーボール1個分程度まで上げた後で元に戻す 負荷をかける場合は、500mlのペットボトルやチューブを使用しましょう。 腱板は関節を安定させるインナーマッスルですので、負荷は軽めにして20〜30回を目安に3〜4セット行いましょう。 棘下筋・肩甲下筋トレーニング 棘下筋と肩甲下筋は、お互い対照的な働きをする筋肉です。 そのため、棘下筋のトレーニングと反対の動きをすると肩甲下筋のトレーニングになります。 1, 腕を体の横につけて、肘を直角に曲げる 2, 脇を開かないように注意して、手を外側に動かしたり、戻したりする(棘下筋トレーニング) 3, 肩甲下筋をトレーニングする場合は、反対に手を内側に動かしたり、戻したりする 脇を開くと、ほかの筋肉が働いてしまうため、棘下筋、肩甲下筋のどちらのトレーニングでも、脇を開かないように注意しましょう。 棘上筋トレーニングと同様、チューブなどを使い、軽めの負荷で、頻度を多く行いましょう。 まとめ・野球肩!インピンジメント症候群の具体的なリハビリ方法について インピンジメント症候群は肩の柔軟性低下や腱板機能の低下、悪い姿勢によって、正常な関節の運動ができないことで生じます。そのため、リハビリにより、原因となっている部分を改善して、肩関節の正常な運動を可能にする必要があります。 本記事では、原因ごとに基本的なリハビリ方法を紹介しました。より効果を高めるためには、整形外科を受診して、医師や理学療法士などの専門家による指導を受けましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 https://youtu.be/B4Vx0of7CsE?si=ypxnq2LyGBRckfpx ▶治療方法の選択肢のひとつとして、こちらの動画も是非ご覧ください。 No.S120 監修:医師 加藤 秀一 ▼肩のスポーツ障害、ゴルフ肩について解説しています ゴルフ肩(スイングショルダー)とは?その原因と治療法
最終更新日:2024.04.03 -
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くも膜下出血の後遺症として起こる水頭症とは?その症状と予後予測について 水頭症とは、文字通り、頭に水がたまってしまう病気のことを言います。小児でも発症することがありますが、大人ではくも膜下出血の後遺症として起こることが多い病気です。代表的な症状に「歩行障害」「認知症」「尿失禁」などがあります。 しかし、頭に水がたまるというのが具体的にはどのような状態なのかよくわからない、という方も多いかと思います。 今回は、くも膜下出血の後遺症に多い「水頭症」とはどんなものなのか、どのような症状があるのか、後遺症や予後についてもわかりやすく解説します。 水頭症とは 人間の脳は、頭蓋骨の中で脳脊髄液という水に浮いています。脳の内部にも、脳室という空間があり、こちらにも脳脊髄液が流れています。この脳脊髄液には、脳を外部から守ったり、栄養やホルモンを運搬したり、脳の老廃物を除去したりと様々な役割を担っています。脳脊髄液は常に入れ替わっており、毎日500 ml分が新しく作られ、同じ分だけ吸収されています。 正常な状態では、脳脊髄液は、脳の周りや脳室を循環しており、その循環量は150 mlと言われています。何らかの原因でこの流れが悪くなり、脳脊髄液が多量にたまってしまうことによって、脳を圧迫する状態を「水頭症」といいます。 水頭症の種類について 水頭症のタイプとして「非交通性」と「交通性」があります。 非交通性水頭症は子供に起こりやすく、脳脊髄液の流れの中で、どこかが通行止めになっているイメージです。一部でせき止められてしまうことによって、たまった脳脊髄液が脳を圧迫します。数は少ないですが、成人でも脳腫瘍などで起こる場合もあります。 成人、特に高齢者に多いのは、交通性水頭症です。これは、流れ経路には問題がないのにもかかわらず、脳脊髄液が吸収されにくくなり、脳脊髄液の循環量が多くなってしまう状態です。 何らかの原因で、脳脊髄液の吸収機構がダメージを受けることによって起こる続発性が多いですが、突然発症する特発性もあります。 交通性水頭症の場合、徐々に進行するため、脳圧とよばれる頭蓋骨の中の圧は正常に保たれていることが多く、別名「正常圧水頭症」ともいいます。 続発性と特発性の違いは以下の通りです。 正常圧水頭症 原因 発症時期 続発性 くも膜下出血、頭部外傷、髄膜炎など 左記疾患の数週〜数カ月後 特発性 不明 60~70代の高齢者 特にくも膜下出血では、発症の1~2カ月後に、30%程度の割合で正常圧水頭症を発症するといわれています。看護する人たちは、急性期が落ち着いたあとも、患者さんの様子を注意してみていく必要があります。 水頭症(正常圧)の症状とは ここからは高齢者に多い、「正常圧水頭症」について詳しく見ていきます。 正常圧水頭症の代表的な3つの症状は、「歩行障害」「認知症」「尿失禁」の3つです。 これらは、数カ月から数年単位でゆっくりと進行します。そのため老化の症状と間違えられやすく、長期間放置されている場合もあります。 ご自身やご家族で、以下のような症状はありませんか? ・歩幅が小さくなる ・すり足歩行になる ・両足を開いて歩く ・歩行が不安定になる ・物忘れが多く自発性が低下している ・無気力・無関心な状態になっている 初期には歩行障害が出現し、「歩幅が小さくなる」「すり足歩行になる」「両足を開いて歩く」「歩行が不安定になる」などの特徴がみられます。その後、物忘れや自発性の低下が出現し、徐々に活動性が下がって無気力・無関心な状態になります。 症状が進むと寝たきりになってしまう場合もあるため、早期に変化に気付いて検査を行うことが大切です。 水頭症と診断されたら 水頭症は薬で治せるものではありません。基本的には手術療法が必要となります。 具体的には、頭にたまった余分な脳脊髄液をおなかへ流すチューブをいれる「シャント術」が行われます。 一般的には、頭と腹腔をつなぐチューブを体の中に挿入します(V-Pシャント)。また、脳脊髄液は、背骨の神経の周りにも流れており、そこから腹腔へチューブをつなぐ方法もあります(L-Pシャント)。これらの手術は、脳脊髄液の出口を作ることで、症状を改善させることを期待して行います。 水頭症の後遺症や予後は 正常圧水頭症は、手術を行ってもすぐに完治するものではありません。手術後も、シャントから排出される脳脊髄液の量が適切になるように、調整する必要があります。また、退院後に症状の改善が見られなくなり、元の状態に戻ってしまうこともあります。その場合は、シャントの閉塞がないかどうか、チェックする必要があります。 また、3大症状の中では、歩行障害の改善率が最も良好とされています。反対に認知症や尿失禁の改善率は、歩行障害に比べるとやや劣るとも言われています。そのため、治療開始が遅くなった場合は、認知機能の低下や尿失禁などの症状が後遺症として残ってしまう可能性もあります。 予後は、多くの要因に左右されます。たとえばくも膜下出血などでは、そもそも社会復帰できるのは、罹患した患者さんの3分の1とも言われていますので、もともとの病気や脳機能も大きく予後に影響します。 ただし、シャントがうまく機能していれば、脳機能が回復し、症状も改善する症例が多いのも事実です。そのため「治る認知症」とも言われることがあります。 早期に適切な処置を行うことによって、健康寿命を延ばすことができるため、早期発見がポイントになります。 水頭症についてよくある質問 Q:水頭症を疑った場合どんな検査をしますか。 A:まずは、CTなどの画像検査を行い、脳脊髄液が溜まったことによって脳室が拡大しているかどうかを確認します。そのうえで、水頭症が疑わしい場合にはタップテストを行います。 タップテストとは、実際に頭にたまった脳脊髄液を、一時的に抜くことで症状が改善するかを確認するテストです。このテストは、短期間の入院で行います。麻酔の注射をし、背中に針を刺して脳脊髄液を抜き取ります。 タップテストで症状が改善した場合は、シャント手術に進むことになります。 Q:手術は急いで受けた方が良いでしょうか。 A: 正常圧水頭症はゆっくりと進行するため、手術を受けるかどうか、しっかりと検討する時間はあります。また、診断後すぐに手術を受けた患者と3ヶ月後に手術を受けた患者では、1年後の症状改善に大きな差がなかったという研究もあります。 ただし、歩行障害による筋力低下が進むと、手術後の回復が思わしくない場合もありますので、その点は注意が必要です。 Q:シャント手術をした後は、CTやMRIなどを撮っても大丈夫でしょうか。 A:基本的には問題ありません。経過が問題なくても、手術後の脳脊髄液の状態を見るために、定期的に外来で画像を確認する必要もあります。 まとめ・くも膜下出血の後遺症として起こる水頭症とは?その症状と予後予測について 今回は水頭症の原因と症状、くも膜下出血の後遺症の関係について解説しました。 水頭症のなかでも、とくに正常圧水頭症は早期に発見・治療ができれば、症状の改善を期待できる病気です。少しでもおかしいと思った際には、早めに病院を受診しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.119 監修:医師 坂本貞範
最終更新日:2023.12.26 -
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肘の痛みを根本から治療する!再生医療の幹細胞治療とPRP療法を医師が解説 「肘の痛みで通院しているが、イマイチ良くならない」 「もっと積極的に肘が痛い症状の治療を受けたい」 このように、日頃からよく使う肘の痛みに悩む人は少なくありません。 一般的に肘の痛みに対する治療は、肘を安静にして薬や注射による保存療法が第一選択です。治癒が難しい場合には手術療法が行われることもあります。 最近、「再生医療」といって、保存療法と手術療法の中間のような新しいアプローチが注目されているのをご存知でしょうか。肘の痛みなど整形外科の症状にも再生医療は広がりを見せており、根本的な治療になり得るアプローチだと期待されています。 そこでこの記事では、肘部管症候群をはじめとした、さまざまな肘の痛みに対する再生医療の特徴や治療内容について紹介します。 肘の痛みと代表的な病気 一口に肘の痛みといっても、複数の病気の種類があります。原因や症状もさまざまで、肘部管症候群のようにあまり聞きなじみのない病気もあるでしょう。 以下は、肘の痛みでよくある症状です。 ・何もしていなくても肘に痛みがある ・タオルを絞ったり、ペットボトルのフタを開ける時に肘が痛い ・肘から小指や薬指にかけて痛みやしびれがある ・肘の内側を押すと痛い ・テニスのラケットや料理でフライパンを持つと肘の外側が痛い 今挙げた症状の多くは、次の3つの病気に当てはまります。 1, テニス肘(上腕骨外側上顆炎) 2, ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎) 3, 肘部管症候群 - ちゅうぶかんしょうこうぐん - とくに3番目の「肘部管症候群」は小指や薬指の小指側から肘にかけてしびれが強くなって日常生活に支障が出るほか、手術療法の適応になるケースが多い厄介な疾患です。 ひとつずつ見ていきましょう。 1, テニス肘(上腕骨外側上顆炎) テニスのバックハンドをすると痛みが出るため「テニス肘」という別名がよく知られています。 ただし、実際は雑巾やタオルを絞ったり、ペットボトルのフタを開けたり、キーボード入力をしたりなど、日常生活のさまざまな動作で肘の外側に鋭い痛みが走る病気です。 2, ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎) ゴルフのスイングをするときに痛みが出るため、「ゴルフ肘」として知られています。 物を持ち上げたりロープを引っ張ったりする動作をすると、肘の内側に鋭い痛みを感じます。 3, 肘部管症候群- ちゅうぶかんしょうこうぐん - 肘の内側から小指・薬指の小指側にしびれが出るのが初期症状です。やがて症状が進行すると、肘の内側を軽く押す程度でもしびれが走ります。 小指側の尺骨(しゃこつ)神経は、肘の内側の肘部管を通っており、肘の関節の変形などによって神経が圧迫されるため症状が現れます。最初はしびれや軽い痛み程度でも、症状が進行すると麻痺が出たり、腕や手の筋肉が衰えて変形することも珍しくありません。 尺骨神経の障害は回復しづらい神経のため、薬による保存療法で症状の緩和が期待できない場合は、手術療法がよく行われています。 肘の痛みにおすすめ!幹細胞治療とPRP療法とは 従来の保存療法や手術療法に加えて、最近脚光を浴びているのが「再生医療」です。 とりわけ、幹細胞治療とPRP療法は、肘の痛みの症状がある部位に幹細胞やPRPを注射する、再生医療を代表する治療法です。炎症を取り除く、ダメージを受けた細胞や組織を修復・再生する、といった効果が期待できます。 幹細胞もPRPも患者さん自身の血液や細胞をもとに生成されるため、副作用の心配がほとんどありません。また、入院や手術の必要がなく、注射や点滴だけで治療が受けられる点もメリットです。 なお、症状が軽い場合は、自然治癒力を高めて痛みの軽減を目指す“PRP療法”がおすすめです。血小板を多く含むPRPの注射によって、ダメージを受けた組織の修復や炎症の改善が期待できます。 一方で、症状が重い、後遺症が気になる、など神経障害による痛みが強い場合は“幹細胞治療”をおすすめします。 幹細胞は、自分とまったく同じ細胞(自己複製能)と、まったく異なる細胞(文化能)を生み出す、2つの能力を併せ持っているのが特徴です。患者さん自身の脂肪組織から採取した幹細胞を培養し肘に注入すると、炎症を起こしている部位や、組織が損傷している部位に届きます。すると、その場所で新しい細胞を作り直すため、ケガの早期回復を実現し、後遺症の心配を最大限抑制できるのです。 思うように肘の痛みがよくならない方は、再生医療による新たなアプローチを検討してみましょう。 まとめ・肘の痛みを根本から治療する!再生医療の幹細胞治療とPRP療法を医師が解説 このように、肘の痛みに対する再生医療は、痛みの原因となっている部位を積極的に修復しながら治癒を目指すという、画期的な治療法です。軽い肘の痛みなら、PRP治療法から試すと良いでしょう。より確実で高い効果を目指すなら、幹細胞治療の検討がおすすめです。 当クリニックは再生医療のエキスパートとして、肘の痛みに対する幹細胞治療やPRP治療法による治療を数多く手がけてきました。国内トップクラスの細胞加工室の高い技術で、安全かつ治療成績の良い再生医療を提供しています。 「肘の痛みをもっと和らげたい」 「これまでと違った新しい治療を受けてみたい」 肘の痛みでお悩みの方は、ぜひ一度再生医療専門の当クリニックまでお問い合わせください。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.120 監修:医師 坂本貞範
最終更新日:2023.07.05 -
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水頭症による高齢者の認知症症状は“手術で治る”って本当? 認知症の発症率は、高齢化が進むにつれて増えてきています。認知症には複数の原因となる疾患がありますが、その中でも治療可能とされているのが水頭症が原因による「特発性正常圧水頭症」です。 特発性正常圧水頭症による認知症は、認知症全体の5%~10%を占めるといわれており、他にはアルツハイマー型・レビー小体型認知症・血管性認知症などがあります。 【認知症の主な原因疾患】 ・特発性正常圧水頭症 ・アルツハイマー型 ・レビー小体型認知症 ・血管性認知症 本記事では、“水頭症による高齢者の認知症症状が手術で治る”とはどういうことなのか、さらに特発性正常圧水頭症の症状や検査、治療について詳しく解説していきます。 特発性正常圧水頭症とは 認知症の中でも「特発性正常圧水頭症」とは、頭蓋内に脳脊髄液が溜まり、脳が圧迫されて様々な症状が出る水頭症の一種です。 脳脊髄液は、脳室で毎日一定量がつくられ、脳と脊髄の周囲を循環し、静脈などに吸収されていきます。何らかの原因で、この循環に異常が生じると水頭症が発生します。 正常圧水頭症には3つのタイプがあり、最も多いのが特発性正常圧水頭症です。原因は不明ではありますが、主に高齢者に多く発症するとされています。 その他にも、くも膜下出血や髄膜炎などを発症した後に生じる二次性正常圧水頭症や、遺伝的要因により発症しやすいと考えられる家族性正常圧水頭症がありますが、極めて稀な疾患です。 ◇水頭症の症状 特発性正常圧水頭症では、脳の前頭葉の広範囲が障害されることにより、歩行障害、排尿障害、そして認知障害が現れます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。 歩行障害 特発性正常圧水頭症による歩行障害には、下記のような特徴があります。 ・開脚歩行(足が開き気味で歩く) ・小刻み歩行(小股でよちよち歩く) ・すり足歩行(膝を上げずに歩く) ・不安定な歩行(方向転換の時にふらつきやすい) ・歩き出しづらい ・突進現象(歩き出すとうまく止まることができない) 排尿障害 頻尿になったり、尿意を感じにくくなったりします。症状が進行すると、尿意を感じてから我慢できる時間が短くなり、失禁しやすくなります。 認知障害 物忘れや理解力の低下が生じ、ぼーっとするような時間が多くなります。 特発性正常圧水頭症は、歩行障害が初期症状として現れることが多いとされています。 上記の症状のセルフチェックを行い、歩行障害に加えて、排尿障害や認知障害が生じた場合は特発性正常圧水頭症を疑い、病院を受診するようにしましょう。 ◇水頭症の検査 特発性正常圧水頭症では、上記症状をチェックする身体診察が行われ、その程度が確認されます。そのあと、MRIやCTによる脳の画像検査が行われ、特発性正常圧水頭症の疑いが濃厚になった時点で、「タップテスト※」が行われます。 ※タップテストとは、腰椎から脊髄液を30ml程度排除することにより、症状改善がみられるかどうかを確認するテストです。 脊髄液の排出後、歩行などの動きが良くなった場合は「水頭症」と診断され、手術(シャント術)が勧められます。 ◇水頭症の治療 特発性正常圧水頭症の治療では、脳脊髄液の流れを良くする「髄液シャント術」と呼ばれる手術を行います。これは、カテーテル(管)を体内に埋め込むことで、過剰に溜まってしまった脳脊髄液を排出することで脳への圧迫を解放し、髄液循環や脳神経機能を改善させる治療法です。 髄液シャント術の方法には、「VPシャント(脳室-腹腔シャント)」、「VAシャント(脳室-心房シャント)」、「LPシャント(腰椎-腹腔シャント)」があります。 最近では、LPシャントが主流になりつつありますが、腰椎の変形などが強い場合には他のシャントを行います。いずれの手術も脳神経外科の手術としては比較的短時間で行われる手術です。手術時間の目安はおよそ1時間程度です。 ◇水頭症の手術費用 一般的な手術費用は、診療報酬点数が24,310点となっているので、1点=10円とすると約7万円(3割負担)となります。 高額療養費制度を利用すると、自己負担限度額を超えた部分が払い戻されるので、最終的には更に軽減される可能性があります。 ◇水頭症の術後 手術により植え込まれたカテーテルは、定期的に詰まったり壊れたりしていないかチェックし、髄液を抜く量が適切に設定できているか確かめる必要があります。 シャント圧調整方法としては、管の途中に脳脊髄液圧を調節するバルブがついているため、体外から設定圧を調節できるようになっています。シャント圧を下げ過ぎてしまうと、頭蓋内圧が低下し低髄圧症候群を起こしてしまうことがあるので注意が必要です。 カテーテルにより抜ける髄液量は、生活の仕方や体格の変化によって変動するため、定期的にCTやMRIを撮影して頭の中に異常がないかを確認し、適切な髄液量を決めていく必要がありますので定期的に通院するようにしましょう。 まとめ・水頭症は手術で治る可能性のある認知症! 現在のところ、薬物療法はなく手術が唯一の治療法になります。手術しなければ症状が進行し、寝たきりになってしまうなど、手遅れになるリスクもありますが、生命に関わる病気というわけではありません。手術は症状の改善を主な目的としているため、生活の質を上げたい方にはおすすめです。 現在では、歩行障害は8~9割、排尿障害や認知障害は5~7割に有効とされています。このようなことから、“水頭症による高齢者の認知症症状は手術で治る”と言われています。 しかし、特発性正常圧水頭症は治る可能性のある認知症ですが、正確に診断され治療に至るケースはまだまだ少ないのが現状です。早期発見、治療により生活の質が格段に改善する可能性があるので、疑わしい症状がある場合は早期受診をおすすめします。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S119 監修:医師 加藤 秀一
最終更新日:2023.12.26 -
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脳出血の原因と症状、後遺症の種類とリハビリによる改善の可能性 脳出血は、手足の麻痺や呂律が回らないなどの症状で発症することが多く、後遺症が残った場合は日常生活に支障をきたしてしまいます。そのため、治すことができるかは深刻な問題です。 一般的に脳出血の後遺症の程度は出血が起こった場所や発症した時の症状の重さと関係があります。そのため、症状が重い場合は完全に症状をなくすことは難しいのですが、早期からのリハビリテーション(リハビリ)によって、改善する可能性があります。 この記事では、脳出血の症状と原因、後遺症の種類、さらに後遺症を改善するためのリハビリについて解説していきます。 脳出血の症状と原因 脳出血は頭痛や吐き気、手足の麻痺など様々な症状を引き起こします。 脳に張り巡らされている血管の一部が破れて出血を起こす病気で、漏れ出た血液が脳の細胞を圧迫してしまい、脳細胞が障害を負ってしまうことが症状の原因です。 脳は部位によって機能が分かれているため、出血した部位に応じた症状が出てきます。脳幹という脳の重要な神経が密集している部分や錐体路(すいたいろ)という運動神経が走行している部分に障害が及ぶと、意識状態が悪くなってしまったり、重い麻痺が出てしまうことがあります。 また、場所の他に出血の量が多ければ、それだけ脳が圧迫される部分が多くなってしまうので症状が強くなります。部位による症状の例として、前頭葉という脳の前の部分の脳出血では、意欲の低下などが起こりやすくなります。さらに言語・記憶などを制御する側頭葉に障害が及ぶと、言語障害や記憶障害などが出てしまいます。 また、ご高齢であることや、初めの症状が重症であるほど、後遺症が残ってしまう可能性が高くなります。一度障害を負った脳細胞は完全に回復することができず、脳の他の部分がカバーして機能を改善させていきますが、それにも限度があります。そのため、急激に症状が悪化しないように発症してすぐは血圧を下げるなどの症状を悪化させない管理、治療が必要となります。 脳出血|後遺症の種類 脳出血は適切な治療をしても、後遺症が残ることが少なくありません。 脳出血による主な後遺症は以下のような種類があります。 運動麻痺 片側の手足が動かしづらくなる症状で、脳出血が生じた部位によって変わります。 感覚障害 触覚や痛覚が鈍くなったり、逆に過敏になり痺れを感じる場合もあります。 言語障害 構音障害という呂律が回りづらくなる症状や、失語症という言葉が出づらくなったり、理解できなくなる症状があります。 目の障害 視野が狭くなったり、物が二重にみえる症状がでる場合があります。 嚥下障害 食べ物を飲み込みにくくなります。 高次脳機能障害 記憶や注意の障害、感情障害(怒りっぽい、感情の起伏が激しくなる、感情が鈍くなる、悲観的になる、何事にもやる気が出なくなる)などが出現します。 後遺症によっては、治療後も日常生活に影響が出ることもあるので、後遺症の内容を知っておくことが大切です。 リハビリの可能性と改善の程度 このように、脳出血は一度発症すると、完全に回復することは難しいです。しかし、脳出血の後遺症は、リハビリ次第で軽くできる可能性があるので、なるべく自立した生活を取り戻すことができるように積極的にリハビリを行うことが勧められます。 脳出血では発症してから早期のリハビリが推奨され、特に廃用症候群(※)の予防をすることや、障害された部位を積極的に使うリハビリが必要となります。 ※廃用症候群とは、病気の治療のために安静にしすぎた結果、筋力が衰え身体機能が低下してしまう状態です。 そのため、全身状態を管理しながら、関節を動かす程度の負荷の少ないリハビリから行っていきます。特に麻痺側は関節拘縮(こうしゅく)が起こりやすい状態となっているため、可動域制限の予防のためにできるだけ早期に行うことが重要です。その後、状態が安定してきたら、徐々にベッドから離れて、様々なリハビリを開始します。 次に日常生活に復帰するためのリハビリを行います。回復期リハビリと言われ、およそ発症後2ヶ月から6ヶ月程度が目安です。ここでは機能や日常生活動作の障害の程度に基づいて多職種でリハビリを行い、在宅復帰や復職を目指していきます。また障害の程度に応じた介護のサービスも含めて、在宅支援のための調整を行っていきます。 脳出血の後遺症・リハビリに関してよくある質問 Q:後遺症はどの程度改善する可能性がありますか。 A:時間が経ってしまった麻痺症状は、改善の見込みが難しくなります。脳出血による麻痺では、一般的に発症後6ヵ月までは改善する見込みがあります。回復期と呼ばれるこの時期に、ダメージを受けた脳神経のネットワークの再構築が起こると考えられているため、機能回復を最大限にするための積極的なリハビリが必要です。 Q:脳出血のリハビリの期間は? A:急性期病院で脳出血の治療を受けた後は、回復期病院でリハビリを中心とした治療を行い、自宅復帰という流れが一般的です。 回復期病院での入院およびリハビリの可能な期間は、発症から最大で150日、高次脳機能障害を伴う場合は180日と決まっているので、長くても6ヶ月となります。 Q:リハビリはどこで受けられますか。 A:リハビリは医師の指示のもと、病院や診療所、医院もしくは在宅でも医療保険を利用して受けることができます。 また、介護保険を利用して、通所リハビリや訪問リハビリテーション等のサービスも利用することができます。 発症から最大で150日、高次脳機能障害を伴う場合は180日まで可能です。また期間を過ぎた後でも自費でリハビリを提供している施設などで、自費リハビリを行うことも可能です。施設によって多くのプランがあり、自分で選ぶことができます。 まとめ・脳出血の原因と症状、後遺症の種類とリハビリによる改善の可能性 いかがでしたでしょうか。脳出血で考えられる後遺症や、症状を改善させるためにリハビリが必要なことについて解説してきました。 脳出血は生活習慣病の1つであり、発症後の治療も重要ですが、予防が最も大切です。後遺症を残したり、寝たきりとなってしまわないように、日常生活を見直して発症予防に努めていくことが必要です。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S118 監修:医師 加藤 秀一 ▼脳出血のチェック方法について 脳出血の初期症状をセルフチェック!早期治療で後遺症を残さない
最終更新日:2024.03.29 -
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捻挫、歩けるけど痛い!そんなときの対処法 捻挫はよくある怪我ですが、多少痛みがあっても、歩ける場合が少なくありません。そこで、捻挫したあと、歩けるけど痛い場合の対処法についてご紹介してまいります。また、捻挫の原因や症状、治療法についても解説します。 以下のような疑問のある方はいませんか?本記事を参考にしながら対処の仕方を学びましょう! 「足をくじいたあと、歩いて痛みがある場合どうすればいい?」 「捻挫した後の対処法が知りたい」 「足をひねったあと、痛みがあって気になる」 捻挫で歩けるけど痛いときの対処法 捻挫で損傷がひどくないときは、痛みがあっても歩ける場合が多いです。しかし、何もせずに放っておくと、炎症が強まって痛みや腫れの症状が悪化したり、捻挫の再発につながったりします。 そのため、捻挫で歩ける場合でも、正しい対処法の実施が大切です。 怪我をしてすぐの対処法としては、「RICE処置」をしましょう。RICE処置により、捻挫の直後に生じる炎症を抑えて、痛みや腫れ、出血の軽減を図ります。 RICE処置は以下の4つの方法を言います。 ・Rest:安静 ・Icing:冷却 ・Compression:圧迫 ・Elevation:挙上 まずは足首に体重がかからないように座ったり、横になったりして安静にします。その後、アイスパックなどで冷やして、包帯やテーピングで圧迫します。 可能であれば台などで心臓より足が高い位置にくるようにして、足首の出血でたまった血液を心臓に戻すようにしましょう。 また、歩けても痛いときは、足の関節が動いて、損傷した靱帯に負担がかかっている可能性があります。 テーピングで足首を固定しておくと、足首が動かず損傷部位のストレスを軽減させるとともに、捻挫の再発予防につながります。テーピングの代わりに、捻挫用の足関節サポーターを使用しても良いでしょう。 ただし、靱帯の損傷の程度やその後の治療に関しては、専門家による診断を受ける必要があります。痛くても歩けるからといって放置せずに、お近くの整形外科を受診しましょう。 捻挫した時の対処法 ・足首に体重を掛けない ・座ったり、横になって安静にする ・台などで心臓より足が高くなるようにする ・アイスパックなどで冷やす ・包帯やテーピングで圧迫する ・症状を自己判断せず医療機関を受診する 捻挫の治療 捻挫の治療は、手術をしない保存療法が中心に行われます。重症で関節が著しく不安定になった場合や、スポーツ選手で活動性の高い場合は、靱帯を修復する手術が必要になる場合があります。 保存療法は「損傷の重症度や経過に応じた固定」と「再発防止の運動療法」です。 それぞれ、具体的な方法を解説します。 損傷の重症度や経過に応じた固定 RICE処置などの初期治療後には、重症度に応じて固定を行い、靱帯の修復を図るのが大切です。 固定には次のような方法があります。 初期治療 ・損傷が軽度の場合:装具やテーピングによる固定 ・損傷が重度または複数の靱帯が損傷している場合:ギプスによる固定 軽度の場合は、1週間程度ギプスや装具による固定をしたあと、3週間程度のテーピング固定をします。 重症の場合は、3〜6週間のギプス固定が必要です。 再発防止の運動療法 捻挫が回復したら、うちに捻るのを予防するために、足首を外にひねる作用のある腓骨筋(ひこつきん)という筋肉を鍛えましょう。 チューブを使ったトレーニングは負荷を簡単にかけられるため、オススメの方法です。 具体的な方法は以下の通りです。 再発防止トレーニング 1.両足をくっつけてチューブで縛る 2.かかとを離さず、小指側をあげるような意識で、つま先を外に開く また、固定の期間中に足首の動きが固くなっているため、ストレッチをするのも良いでしょう。 タオルを足のつま先に引っ掛けて、タオルの両端を両手にもって、引っ張るようにすれば、足首の柔軟性を高めるストレッチが可能です。 以上のような方法で、うち返しを防ぐための筋力や柔軟性を保つようにしましょう。 捻挫とは、足首をひねって靭帯等が損傷する怪我 捻挫とは、関節が無理な範囲に強制的に動いてしまうことで、靱帯(じんたい)や関節包(かんせつほう:関節を包む膜)が損傷してしまう怪我です。 足首の捻挫では、スポーツ動作や段差を踏み外すことで、足を内側に無理にひねってしまい、発生することが多いです。その場合、足の外側にある靱帯が損傷します。 足首の外側には以下の3つの靱帯があります。 足首の靭帯 ・前距腓靱帯(ぜんきょひじんたい) ・後距腓靱帯(こうきょひじんたい) ・踵腓靭帯(しょうひじんたい) この中で、最も多く損傷するのが「前距腓靱帯」で、後距腓靱帯の損傷はまれです。1つではなく、複数の靱帯が同時に損傷する場合もあります。捻挫の程度は、靱帯の損傷具合によって次の3つに分けられます。 捻挫の症状 主な症状は、損傷した部分の腫れや痛みです。痛みは損傷部位を指で押さえたときにみられる圧痛(あっつう)があります。 また、怪我したときと同じように、内側に足首をひねった動きを再現すると痛みがあります。損傷による内出血が生じていたり、熱をもっていたりするのも症状の1つです。 靱帯の損傷がひどい場合は、靱帯による関節の固定力が弱まり、関節が不安定になってしまいます。その結果、捻挫を再発しやすくなるため注意が必要です。各症状は、捻挫の程度によって、みられる症状が異なります。 捻挫の程度 ・1度捻挫:靱帯の損傷がなく、無理に伸ばされた状態 ・2度捻挫:靱帯が部分的に切れている状態 ・3度捻挫:靱帯が完全に切れた状態 まとめ・捻挫かもしれないときは正しい対処をして早めに受診しよう 捻挫かもしれないと思っても、多少の痛みを我慢して歩ける場合は、そのままにしてしまうかもしれません。 捻挫は日常生活やスポーツ中によく起こる怪我ですが、痛みがあっても歩ける場合が多い怪我です。捻挫は関節が無理な方向に動いて靭帯や関節包が損傷することを指し、足首の捻挫が特に一般的です。 捻挫の程度によって、靭帯が伸びただけの軽度のものから、完全に切れてしまう重度のものまで様々です。捻挫をしたら、まずはRICE処置を行いましょう。これにより、捻挫直後の炎症を抑え、痛みや腫れを軽減できます。 歩ける場合でも痛みがあるときは、テーピングやサポーターで足首を固定し、損傷した靭帯に負担をかけないようにしましょう。適切な固定は、捻挫の再発予防にもつながります。ただし、痛みが強い場合や腫れがひどい場合は、専門医の診断を受けましょう。 捻挫の治療は、保存療法が基本です。固定が必要な期間は損傷の程度によりますが、軽度なら装具やテーピングによる短期間の固定、重度ならギプスによる長期間の固定が必要です。 さらに、捻挫から回復した後は、再発防止のために足首の筋肉を鍛える運動療法をお勧めします。例えば、腓骨筋を鍛えるためのチューブトレーニングや、足首の柔軟性を高めるためのストレッチなどが有効です。 捻挫を軽視することなく適切な対処と治療を行うことで、早期の回復と再発防止を目指しましょう。正しい知識と対処法を身につけて、日常生活はもちろんスポーツを安心して楽しみましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.118 監修:医師 坂本貞範 ▼以下もご覧になりませんか 捻挫の痛みや腫れ|骨折や靭帯断裂の可能性!病院へ行くべきか判断できる5つのチェック項目とは!
最終更新日:2024.06.25 -
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頭が痛い時、重いときの対処法、その原因と治し方!医師が解説 「頭痛」は多くの人が悩んでいる症状の一つです。 日本の製薬会社の調査では、約4人に1人が週に1回以上の頭痛を感じ、約3人に1人は自分を頭痛持ちだと思っているそうです。 頭痛の症状は人により様々です。 症状 「頭がクラクラする」 「頭の後ろが痛い」 「頭に血が上る感じがする」 「頭の右側が痛い」 「ぼーっとする」など多彩な言葉で表現されます。 この頭痛、大きく「一次性頭痛」と「二次性頭痛」とに分けられることをご存知でしょうか。二次性頭痛は他の病気の存在により引き起こされる頭痛であり、それ以外を一次性頭痛に分類されます。 この記事ではそれぞれの頭痛について、その説明と対処法を解説します。 頭痛の種類と治療法 一次性頭痛は、頭痛を有する患者のうち、約80%に及ぶと言われています。多いものから「偏頭痛」「緊張型頭痛」「三叉神経・自律神経頭痛」といわれるものが代表的な頭痛となります。 頭痛の原因となる疾患がなくても時には仕事や学校、家事などの日常生活に支障が出て、*QOLが下がることもあります。 それでは以下に頭痛の種類別の解説と治療法を記してまいります。 *QOLとは「Quality of Life」の略です 日本語では「生活の質」や「生活の満足度」と訳し、具体的には、健康、経済的状況、心理的な幸福感、社会的関係など、日常生活を送る上で感じる「満足度」や「充実感」の程度を表すものです。 1)偏頭痛とは 日本では年間に8.4%の人が片頭痛になると言われています。 この頭痛は、頭痛を起こす前に特徴的な前兆(きらきらした歯車のようなものが見える、チクチク感を感じ、それが体や舌などに波及するなど)が出現することがあります。 偏頭痛の症状としては「ズキンズキンと脈を打つように痛み、頭痛により寝込んだり、吐き気がしたりする」ことがあります。 また、偏頭痛が起きている間は光や音に過敏な状態となるため、「頭が痛い間は布団を被ってじっとしている」という方もおられます。 症状 ・ズキンズキンとした脈を打つように痛み ・吐き気がする ・寝込むことがあある ・光や音に過敏になる 偏頭痛の治療法 偏頭痛で痛かったり、辛かったりするときの治療には、解熱鎮痛剤(ロキソプロフェンや、アセトアミノフェンなど)、トリプタンという頭痛治療薬が有効です。 トリプタンを服用する有効なタイミングは、痛みが始まってすぐや、軽度なときが良いため、服用が難しいかもしれません。 予防には抗てんかん薬や、抗うつ薬がよく使われてきました。最近発売となった「抗CGRP抗体」という注射薬は、より高い予防効果があります。 必ずしも関連があるとは言えませんが、高血圧症、心疾患、うつ病などと共存することが多く、治療薬の選択に影響があるため注意が必要です 2)緊張型頭痛とは 緊張型頭痛は、左右の両方が痛むことが多く、症状は「圧迫されるような」「締め付けられるような」と表現されます。日本の研究では、年間に20%の人が症状を感じると言われています。 頭や首の筋肉を押すと痛みがみられることが特徴的です。 症状 ・圧迫されるような ・締め付けられるような 緊張型頭痛の治療法 痛みが出ているときは解熱鎮痛剤が有効です。予防には抗うつ薬やリラクゼーション、鍼灸などが有効です。 3)三叉神経・自律神経頭痛とは 三叉神経・自律神経頭痛の中にも細かな分類がありますが、群発頭痛が最も一般的です。 かなり強い痛みが、目の周囲もしくはこめかみに発生し、15~180分持続することが特徴です。10万人あたり56~400人程度の方が罹患し、男性に多いと言われています。 症状 ・目の周囲に強い痛み ・こめかみに強い痛み 三叉神経・自律神経頭痛の治療法 治療には、酸素投与と、片頭痛でも使用される薬でトリプタンの効果が高いです。 その他の頭痛とは 頭痛の約20%が二次性頭痛、つまり他の病気により引き起こされている頭痛と推定されています。症状を抑えるために解熱鎮痛薬などを用いることはありますが、治療の基本は原因の病気の治療となります。 ここでは一部の疾患を説明します。 脳血管障害 脳出血やくも膜下出血では、頭痛が起こることがあります。血管が裂ける、詰まることで起こる病気なので、症状も突然生じます。意識の低下や手足の動かしにくさ、話しにくさ、嘔吐を伴います。 生命の危機や重い後遺症も起こりうる、緊急度の高い頭痛です。 感染症 菌やウイルスが脳や全身で炎症を引き起こすことで、生じる頭痛があります。感冒(風邪)はウイルス性の上気道炎であり、頭痛を感じたことがある人は多いでしょう。 重篤なものでは、髄膜炎や脳炎があります。発熱、吐き気、意識の低下を伴うことが多いです。 頭痛というと軽く見がちですが何か違和感を感じるようであれば医療機関でご相談させれることをお勧めします。 目、鼻などの病気 急性副鼻腔炎の症状は「頭が重い」と表現されることが多いですが、それを痛みとして感じる場合もあります。 緑内障発作は目のかすみ、目の充血を特徴とする痛みであり、放置しておくと失明の危険もあります。 う歯(虫歯)の痛みを頭痛として自覚される方もいます。 頭痛についてよくあるQ&A 頭痛について、よくいただく質問を以下に抜粋しました。 Q , どのような頭痛の時に受診したらよいですか? A , 突然に(何時何分何秒がはっきり言えるような)最大の痛みとなった頭痛、話にくさや手足の動かしにくさを伴う頭痛、これまでに経験したことのないような頭痛、意識が低下している頭痛は、二次性頭痛の可能性があります。必ず受診を検討しましょう。 Q , 頭痛が出たら鎮痛剤は飲んでもよいですか? A , 手持ちの鎮痛薬がある場合は内服して構いません。鎮痛剤内服で診断が遅れることはほとんどありません。 ただし、頻繁に内服をしていると薬物乱用頭痛という新たな頭痛の原因となります。鎮痛剤を飲みたくなる頭痛が続く場合は受診を検討しましょう。 まとめ・頭が痛い時、重いときの対処法、その原因と治し方!医師が解説 今回の記事では、頭が痛い時や、重いときについて、頭痛の種類と、症状、治療法などを解説しました。 頭痛は多くの人にとって日常生活で直面する問題です。 頭痛には、「一次性頭痛」と「二次性頭痛」があり、それぞれ適切な対処法を選択することが大切です。 まず、一次性頭痛には。「偏頭痛、緊張型頭痛、三叉神経・自律神経頭痛」があり、それぞれの症状と治療法を知ることで対処方法を理解することで日常生活の質(QOL)を向上させることができます。 偏頭痛には、解熱鎮痛剤が効果的ですが予防には、抗てんかん薬や抗うつ薬が用いられます。緊張型頭痛の場合、解熱鎮痛剤や抗うつ薬、リラクゼーション、鍼灸も有効です。 三叉神経・自律神経頭痛は、酸素投与やトリプタンと言われる薬が効果的です。二次性頭痛は他の病気により発生するものですので原因となる疾患の治療を最優先にしましょう。 尚、脳血管障害や感染症、目や鼻の疾患などが頭痛の原因となることもあります。頭痛というと、ありふれた症状ではありますが、時に生命に関わる病気が隠れていることがあるため注意が必要です。 また、そのような疾患がなくとも、一次性頭痛はQOLに大きく関わるので、困ったことがあれば医療機関に相談しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S117 監修:医師 加藤 秀一 ▼頭に関するご心配は、以下も参考されませんか 頭のこぶのようなものを押すと痛いとき、考えられる疾患とは?
最終更新日:2024.05.21 -
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側弯症|子供の側弯症と大人の側弯症、それぞれの治療について 背骨が左右に曲がる側弯症は、思春期の子供に多い病気です。ただ、大人の場合も中高年になって急に発症し、進行が始まるケースもあり、成人側弯症と呼ばれています。 見た目で明らかに姿勢が歪んでしまう側弯症ですが、子供の場合、大人の場合の症状と、治療法について解説します。 側弯症とは 側弯症は、体を正面から見たとき、背骨が左右に曲がっている状態です。本来、人の脊柱は首にある頸椎は前方に湾曲し、胸椎は後方に湾曲し、腰椎は前方に湾曲しています。体を横からみると、ちょうどゆるやかなS字を描いた状態です。 前から見て、背骨が左右に10度以上傾いてしまう状態を湾曲症といいます。 痛みを伴うケースはほとんどありませんが、症状が進行した場合、健康状態に悪影響を及ぼすことがあります。 https://youtu.be/fAOoNxIRTPU?si=l8X3iSKGXOZIGMOT こどもの側弯症とは こどもの側弯症は学校検診で見つかるケースが少なくありません。2016年度から始まった「運動器学校検診」では、家庭でこどもの背骨の評価をした後、学校医が視触診によって見た目や背中を触って側弯症の疑いがあるかどうかを判定します。 成長期であるこどもは大人になるまで側弯症を発症する恐れを持っているため、家庭でチェックをしたり、気になることがあれば整形外科を受診したりなど、こまめな配慮が必要です。 とくに小学校高学年から中学生にかけて、思春期の女子は側弯症の発症率が高まります。13歳から14歳の女子の発症率は2.5%で、男子に比べて約 7 倍といわれています。 こどもの側弯症 整形外科で側弯症と診断された場合、そのままにし ておくとどうなるのでしょうか。 医師から経過観察と言われたり、家庭で気をつけるようアドバイスを受けたこども全員が、重度の側弯症になる可能性はほとんどありません。側湾が進行しやすい幼児期以降は症状の進行は個人差が大きいこともポイントです。 このように、こどもの側弯症は、軽度の状態のまま大人になるケースが大半です。軽い側弯症であれば障害が残る心配もないので、そのまま様子を見るだけで問題ないでしょう。 成長期のこどもが発症しやすい側弯症には、以下のような注意したいポイントがあります。 子供の側弯症で注意したいポイント ・こどもの側弯症は思春期の女子に注意 ・軽度の場合は経過観察が基本 ・症状が進行すると装具療法や手術療法も 側弯症の治療法 重度の側弯症の状態は放置すると心肺機能が低下するリスクが高まります。側湾の影響で胸郭が大きく変形するためです。重い肺の病気や心臓病といった合併症を発症しやすくなります。 側弯症は進行の度合いに応じて、次のような治療法を受けることが大切です。 軽度の側弯症(背骨の曲がり角度:30度未満) ・学校や家庭での経過観察を続ける ・症状の進行をチェックし、整形外科を受診する 中等度の側弯症(背骨の曲がり角度:30〜50度) ・矯正装具を使う装具療法を行う (アンダーアームブレース、ミルウオーキーブレースといった 重度の側弯症(背骨の曲がり角度:50度以上) ・装具療法でも進行が悪化したら手術療法が一般的 側弯症の手術療法 手術療法には、「後方矯正固定術」と「前方矯正固定術」の2種類があり、症状によって判断されます。 後方矯正固定術 背中の背骨に沿って切開して手術する方法です。背骨の後方から器具を挿入して、ロッドを調整しながら背骨がまっすぐになるようにねじれを減らしていきます。 次に紹介する前方矯正固定術に比べると固定する背骨の範囲は長くなりますが、強力な矯正力や固定力が出せます。 前方矯正固定術 胸部など体の前側から器具を挿入して、ロッドによってねじれの調整をしていく方法です。後方矯正固定術より肯定範囲は短いものの、強い矯正力があります。 側弯症による大人の症状とは 成長期のこどもに多い側弯症ですが、大人になってから発症する場合もあります。 「成人側弯症」と呼ばれており、次の2つの原因があります。 成人側弯症 ・こどもの頃の側弯症が老化で進行 ・中高年になって加齢により側湾 成人側弯症によって、大人は次のような症状が出ます。 成人側弯症の症状 ・腰痛になる ・長時間立つ・歩くが困難になる ・下半身に神経痛が出る ・逆流性食道炎や便秘、嚥下障害(食べ物が飲みこみづらい)が起きる ・呼吸がしづらくなる 特に、1つ目と3つ目の「腰痛になる」「下半身に神経痛が出る」といった点は、側弯症で背骨や腰骨に負担がかかるためです。脊柱管狭窄症や腰部椎間板ヘルニアなどの合併症のリスクも高まるのでとくに注意する必要があります。 年齢と共に症状が進行すると日常生活にも支障をきたすようになるため、重度の場合、大人は「後方矯正固定術」が必要です。 入院日数は10日前後ですが、背骨の曲がり方や患者様の骨質、症状、体力などに応じて日数がかかったり、数回に分けて手術をすることもあります。 大人の成人側弯症には、以下のような注意すべきポイントがあります。 大人の側弯症で注意したいこと ・加齢による大人の側弯症には日常生活に影響する症状が現れやすい ・脊柱管狭窄症や、腰部椎間板ヘルニアなどの合併症に注意 まとめ・側弯症|子供の側弯症と大人の側弯症、それぞれの治療について 側弯症は背骨が左右に曲がる状態を指し、子供と成人では症状や治療法が異なります。 子供の側弯症は、思春期に発症しやすく、定期的な検診や早期の対応が重要となります。ただ、軽度の症例は成人しても進行せず、経過観察や適切な医療ケアを行うことで様子を見れば良い場合ことが多くあります。 治療法は症状の進行度に応じて異なります。軽度の場合は、先のように経過観察が主となりますが中等度から重度の場合は矯正装具や、重度になると手術が必要となる場合があります。 手術療法には「後方矯正固定術」と「前方矯正固定術」があり、それぞれ特長がみられます。その選択は、患者の症状によって適切な方法が提案されます。 側弯症は年齢や症状によって健康に悪影響を及ぼすケースが少なくありません。こどもで経過観察と言われたり、中高年で背骨の変形が気になり始めたりした場合は、早めに整形外科を受診しましょう。 早期発見と適切な治療が側弯症の進行を防ぎ、健康を守ります。定期的な医療チェックと適切なケアを大切にしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.117 監修:医師 坂本貞範 ▼以下もご覧になりませんか 側弯症の手術、術後の後遺症、術後のリハビリについて
最終更新日:2024.07.04 -
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ジョーンズ骨折で悩むアスリートへ!有効な治療方法と復帰、予防法について ジョーンズ骨折、なかなか聞き馴染みがない方も多いのではないでしょうか? しかし、意外にもジョーンズ骨折になってしまったアスリートは少なくありません。海外でも活躍する某有名サッカー選手もこのケガに悩まされていました。 本記事では、そんなジョーンズ骨折の原因と治療法、予防法やテーピングについてなど、詳しく解説していきます。ぜひご参考にされてください。 ジョーンズ骨折とは? ジョーンズ(Jones)骨折とは、第五中足骨の踵寄り(第五中足骨基部)に起こる骨折のことで、骨癒合しにくく、治るのに時間がかかる骨折の一つです。第五中足骨基部に起こる骨折は、以下の 3 つがあります。いずれも見分けるのが難しいため、ひとまとめにジョーンズ骨折と呼ぶことも多いです。 ・基部裂離骨折 ・ジョーンズ骨折 ・骨幹部疲労骨折 ジョーンズ骨折の原因と症状 ジョーンズ骨折が発症する原因と、その後に生じる症状を説明します。 発症初期では気づかれないケースもあるジョーンズ骨折ですが、痛みや違和感がある場合はチェックしてみましょう。 原因|スポーツ外傷で多発 ジョーンズ骨折は、あるスポーツ動作で頻発する骨折です。 その動作とは、「ストップ」や「ターン」などの速い動作の切り返しです。このストップ、ターン(切り返し)によって、急激に第五中足骨に負荷がかかり骨折してしまいます。 しかし、これらの動作だけが骨折の原因ではありません。他にも以下のようなあらゆる要素が重なって引き起こされるのです。 ・トレーニング過多による第五中足骨への疲労の蓄積 ・硬いサーフェースの問題(人工芝、アスファルトなど) ・下肢のアライメント異常(例;足の外側に体重が乗りやすい) ・スパイクのポイントの位置 ・第五中足骨基部への血流が乏しい ・第五中足骨基部に靭帯や腱が多数付着している ストップやターンは、最後の引き金に過ぎません。 症状|痛みの出方は? 症状は骨折の程度によって大きく変わってきます。 発症初期の不全骨折(ヒビ)であれば、運動中に少し痛みを感じる程度で、骨折部分を強く押すとズキっと痛みを感じる場合があります。 そのまま運動を継続すると、徐々に痛みが増していき、歩くのもままならない状態になってしまいます。その時には、骨折部の状態は悪化していることが多く、完全骨折となっている可能性もあるでしょう。 捻ったり、ストップやターンの切り返しで完全骨折となることも多いです。 診断|レントゲンやエコー検査が有効 診断にはレントゲン画像によって判断が可能です。レントゲン撮影は、一方向だけでなく、角度を変えて複数方向からの撮影が有効となります。 しかし、初期の不全骨折の場合はレントゲン画像での判断が難しいケースもあるため、MRIや超音波検査も有用です。 ジョーンズ骨折に有効な治療方法 ジョーンズ骨折は、他の骨折に比べ骨癒合が得にくい(遷延治癒:せんえんちゆ、偽関節など)、骨癒合が得られたとしても再骨折のリスクが高い骨折と言われています。 そのため、治療方法にはその人の置かれた状況を考慮し、慎重に選択する必要があります。 スポーツ選手なら手術療法を推奨 激しいスポーツ動作を繰り返すアスリートは、手術療法を推奨します。早期復帰や再骨折のリスクを減らす効果があるからです。 手術方法は割とシンプルで、第五中足骨に対しスクリューを埋め込む「髄内固定術」が一般的に行われています。 手術療法は、治療成績も良好で保存療法に比べ再発のリスクも低いですが、スクリューの位置を誤ったり、復帰が早過ぎたりした場合に、癒合不良や偽関節を引き起こす可能性もあります。 手術を受ける際の費用や、復帰までの期間の目安は以下です。 手術費用・入院費用:10〜15万円 入院期間:3日〜2週間 スポーツ復帰目安:2〜3ヶ月 ※手術・入院費用、入院期間はあくまで目安です。医療機関ごとに違いがあります。 手術後は、医師や看護師、リハビリスタッフの指導を守って過ごすことが大切です。 保存療法を選ぶならムリは禁物 手術療法に抵抗がある方や、何らかの理由で手術療法が難しい方は保存療法を選択します。 保存療法では、骨が癒合していない状態で絶対に無理をしないということが重要です。特に初期の段階では、骨癒合を第一に考え、体重をかけないようにします。その間に、骨癒合を促進させるような超音波治療器を用いる場合もあります。 骨癒合にかかる期間は個人差がありますが、少なくとも3〜4週間はかかります。レントゲン画像にて骨癒合が認められたら、少しずつ体重をかけていくようにしましょう。 歩く時に行う踏み返し動作は骨折部に負荷がかかりやすいため、慎重に進めることを推奨しています。歩行が問題なくできるようになったら、少しずつ強度を上げてスポーツの動きを入れていきます。 また、後で述べますがインソールやサポーターも再骨折予防のためには有効な手段です。 ジョーンズ骨折後のスポーツ復帰と予防 ジョーンズ骨折は再発しやすいため、状態を見極めて段階的に復帰することが大切です。 復帰までの流れや、復帰する際に準備したいテーピングやサポーター、インソールについて紹介します。 スポーツ復帰までは慎重に進めることが大切 骨癒合がみられ、歩行が許可されました。では、スポーツも徐々に・・・というわけにはいきません。 骨癒合まで我慢していたのに、復帰を焦ってしまって再骨折してしまう例は少なくないのです。そうならないためにも、スポーツの復帰には万全を期す必要があります。 【スポーツ復帰までの流れの例】 ①その場でできるスクワットやカーフレイズ(爪先立ち)の運動 ②ランジや片脚スクワット、片脚カーフレイズで片側に体重をかけて行う運動 ③軽いジョギング ④徐々にスピードを上げたランニング、ダッシュ ⑤ストップやターン動作の練習 ⑥ジャンプ動作の練習 ⑦各スポーツの練習を徐々に復帰 ⑧競技に完全復帰 段階的に上記のようなメニューを行い、痛みや違和感が出たら前のメニューに戻るようにします。 ジョーンズ骨折にテーピングは有効? ジョーンズ骨折がまだ完全に治っていない状態でのテーピングは、あまり効果を期待できません。しかし、骨折がしっかり治り、スポーツに復帰する段階でのテーピングは、一定の効果を発揮します。 ジョーンズ骨折のテーピングの巻き方のコツは、足のアーチをサポートすることと、足の外側の補強をすることです。 足首の捻挫のテーピングと似ているところもありますが、そこにプラスして足底部にアーチをサポートするテーピングを巻くとより効果的です。 ジョーンズ骨折のテーピングは、その人の足の使い方によって巻き方が変わります。まずは、専門家に足の使い方をみてもらい、あなたに合った巻き方を教えてもらうようにしましょう。 サポーターやインソールで再発予防 足首の捻りを防止するサポーターや、アーチを形成するためのインソールも、再発防止に十分な効果を発揮します。 特に、インソールは骨折部の負担を減らす効果が期待でき、よりオススメな予防方法です。 ジョーンズ骨折予防のサポーター ジョーンズ骨折に有効なサポーターとして考えられるのが、左右方向に強いサポーターです。足の力が横の動きに弱い場合、骨にかかる負担が増えてしまうため、横のぐらつきを押さえるようなサポーターを推奨しています。 一つ注意点として、第五中足骨基部のあたりが厚くなっているサポーターであれば、体重をかけた際に圧迫し過ぎて痛みを誘発することもあります。そのため、装着した時の圧迫具合や、患部への当たりを確認する必要があります。 ジョーンズ骨折予防のインソール インソールの調整は、ジョーンズ骨折再発防止のためには非常に有効な手段であり、必須と言ってもいいでしょう。 足には内側、外側の縦アーチと横アーチがあり、そのアーチをサポートしてくれるようなインソールを入れることで、足の機能が上がり負担がかかりにくくなります。 インソールは市販のものもありますが、専門の義肢装具士が作成しているオーダーメイドのインソールを推奨しています。自分の足の型に合わせて作成するため、より高い効果を発揮します。 まとめ・ジョーンズ骨折で悩むアスリートへ!有効な治療方法と復帰、予防法について ジョーンズ骨折は再発しやすいケガのため、初期の対応や治療開始から復帰までのプランニングが非常に難しいです。焦らず骨の癒合状態を確認しながら、段階的に治療に取り組むことが重要となります。 専門の医師やリハビリスタッフのアドバイスを聞きながら、安全に復帰までの道のりを歩んでいきましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S116 監修:医師 加藤 秀一
最終更新日:2023.10.06 -
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脳溢血による後遺症と麻痺症状の治療について 脳卒中は突然発症し、命にかかわることのある重篤な病気であり、日本での死亡の原因上位とされています。 脳卒中には、脳の血管が詰まる脳梗塞と、脳の血管から出血が起きる脳溢血(のういっけつ)に分けられます。本記事では脳溢血の後遺症と麻痺症状の治療について詳しく解説していきます。 脳卒中:脳の血管が詰まる 脳溢血:脳の血管から出血が起きる(脳出血とも言われます) 脳溢血(のういっけつ)とは 脳溢血とは、脳の血管が破れることで血液が流出し、脳内の神経細胞を圧迫してしまう状態のことで、現在は脳出血と呼ばれることが多いです。 脳溢血は発症後に治療しても後遺症が残ることが少なくありません。脳の細胞がダメージを受けることで、体の麻痺や感覚の障害、脳に障害が残る可能性もあります。 後遺症によっては、治療後も日常生活に影響が出ることがあるので、症状だけでなく後遺症まで知っておくことが大切です。 以下より一般的な後遺症について解説していきます。 脳溢血による後遺症 運動麻痺 ・運動麻痺は脳溢血の代表的な後遺症で片側の手足に力が入らなくなったり、動かしづらくなります ・左右どちらかの半身にのみ症状が起きます 感覚障害 ・感覚障害も脳溢血の代表的な後遺症であり、触覚や痛覚が鈍くなります。 ・反対に過敏になることで痺れなどといった麻痺症状を感じることがあります ・こちらの症状も左右のどちらか一方にのみ生じます 言語障害 ・言語障害には、言葉が出にくくなったり、理解ができなくなる失語症があります →失語症の場合は言葉の理解が出来にくくなるため、読み書きなども難しくなります ・そのほかに口や舌がうまく動かせないことで話しづらくなる構音障害があります →構音障害の場合は理解には問題ないため、読み書きは可能です 視野障害 ・視野障害:視野が狭くなったり、物が二重に見えたりする障害 ・視野障害:片目の視野が見にくくなる半盲という障害 ・これらの症状は発症後長期間経過しても症状が改善しないことがあります 嚥下障害 ・のどの筋肉などが動かしづらくなることで、食べ物や飲み物を飲み込みにくくなります ・食べ物などが食道ではなく気管に入ってしまうと、誤嚥性肺炎を発症する可能性があります ・誤嚥性肺炎は高齢者の死亡原因となることも多く注意が必要です 高次脳機能障害 ・高次脳機能障害とは、脳の細胞がダメージを受けることで脳機能が低下した状態です ・高次脳機能障害としては下記のように複数の症状が現れます ・記憶障害(数分前の出来事を忘れてしまいます) ・注意障害(一つの作業を集中して行うことが出来ない、注意散漫になる) ・遂行機能障害(自分で計画を立てて実行することが出来ない) ・半側空間無視(外界の半側に意識が向かないようになり、空間を認識できなくなる) 感情障害 ・脳溢血の後遺症は感情面にまで及びます。 ・常にイライラしたり、感情の起伏が激しくなってしまうことがあります。 ・意欲が起きなくなる ・うつ病のような症状が起きることもあり、精神面のケアも重要となります。 脳溢血による後遺症の治療 一度脳溢血を発症すると、完全に回復することは難しいことがあります。これは、神経細胞は一度障害されてしまうと、再生することができないためです。 しかし、リハビリ治療を行うことによって、その症状は軽減することができます。特に早期からリハビリを開始することによって、機能予後は格段に良くなることが期待されます。 脳溢血のリハビリは大きく分けて 3 段階あり、それぞれについて詳しくみていきましょう。 急性期 脳溢血の症状が現れ、身体の症状が安定するまでの期間を急性期と言います。発症直後の時期は全身状態が安定しないため、生命維持が優先されます。いきなり歩行などを始めたりすると、血圧が上昇し再出血などのリスクもあるためです。 急性期は一般的に2週間程度の期間であることが多く、ベッドサイドでのリハビリが行われます。これは、ベッド上で過ごす期間が長くなると、廃用症候群※を招くことがあるからです。以下のような状態を避けるためにも、急性期からのリハビリは必要となります。 ※廃用症候群とは 寝たきりの状態が長くなることで、筋肉量が減少したり、関節が固くなり、運動機能が低下する状態のことです。このような状態になると、床ずれができやすくなったり、感染症にかかりやすくなるなど様々な合併症を引き起こすことがあります。 ・生命維持が優先 ・その後、ベットサイドでリハビリ開始 ・廃用症候群を避けるためにもリハビリは積極的に行う 回復期 急性期を脱して、全身状態が安定し本格的にリハビリを進めることが出来るようになる時期を回復期といいます。 回復期は主に病院でリハビリが行われ、日常生活への復帰を目標として、ベットサイドでの運動や、杖や歩行器などを用いた歩行訓練、また日常動作として食事やトイレ、入浴に関するリハビリも開始されます。 この他にも言語や嚥下機能の回復を行うリハビリや、高次脳機能障害に対するリハビリも開始していきます。 維持期 維持期は回復期を経て日常動作を獲得し、退院後の時期に当たります。一度回復した機能も、何もしなければ再度機能低下してしまうので、外来に通ったり、日常生活の中で意識して体を動かす習慣作りをすることが重要です。 脳溢血による麻痺症状の治療 麻痺の治療については近年研究が進んでおり、通常のリハビリ以外にも様々な方法があります。 CI療法(Constraint-induced movement therapy) 麻痺側の手がある程度動ける方に対して、強制的に麻痺がない手を使えないようにし、麻痺側の手をたくさん使うように日常生活を送るようにすることで、麻痺の手を回復させることを目的とした訓練のことです。 1日に6時間以上の訓練を必要とするなど大変ですが、手の機能が改善したという報告もされています。 促通反復療法 促通反復療法は、繰り返し同じ運動をすることで、障害された神経回路を再建、強化することを目標とします。この治療を受けたことで、手足の麻痺の程度が改善したという報告もされています。 近年では、これから述べる機能的電気刺激や経頭蓋直流電気刺激、経頭蓋磁気刺激といった治療と併用して治療効果を高めるための研究がされています。 電気刺激療法、磁器刺激療法 麻痺のある手足の筋肉に電気を流したり、頭から磁気を流すことにより弱った機能を活性化させ、歩行能力などを高める方法です。促通反復療法などと併用することで、治療効果が高まることが期待されています。 再生医療 障害された神経細胞自体を再生しようとする、再生医療が近年注目を集めています。 再生医療とは、幹細胞※を使用した治療です。 現時点では保険適応ではなく、自費での治療となりますが、治療実績が着実に積み重ねられており、今後の発展が大きく期待されています。 ※幹細胞とは 肝細胞は、人の体にある様々な細胞に変化できる能力を持っています。幹細胞そのものや、幹細胞から目的の細胞を作成し、病変へ移植するといった手法で治療が行われています。 これにより、幹細胞が神経細胞に変化し、体内で機能するようになることで麻痺症状などの改善が期待されます。 当院は、厚生労働省に届出し、受理された再生医療専門のクリニックです。ご質問などございましたらお気軽にお問い合わせください。 まとめ・脳溢血による後遺症と麻痺症状の治療について 脳溢血による後遺症と、麻痺症状の治療について解説してまいりました。脳溢血には前兆がなく、ある日突然起こる怖い病気です。そのため、日ごろから健康に気を使うことが必要です。 脳溢血の入院期間は 3ヶ月~半年程度と長期間必要となることが多くあります。その期間のほとんどが後遺症を治療するリハビリ期間に相当します。脳溢血は日常生活を突然変貌させる非常に怖い病気です。 発症後は、本人だけでなく、ご家族をはじめとした周囲のサポートも非常に重要となります。この記事がご参考になれば幸いです。 No.S114 監修:医師 加藤 秀一
最終更新日:2024.05.27 -
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知っていれば安心!突き指と指の骨折、その違いと見分け方を解説 突き指と言えば、バレーボールやバスケットボール、野球などの球技をしている人なら誰しも一度は経験したことがあるのではないでしょうか? 比較的、軽くみられがちな怪我であるため、突き指をしてもそのまま放置というのは、よくある話。しかし、その「たかが突き指」が実は大事につながることもあるので注意が必要です。 今回は、そんな突き指に関して、知っていれば安心、知っておきたい突き指と骨折のことをお伝えします。 突き指と骨折の違いについて 結論から言いますと・・・「突き指」と「骨折」は同じでもあり、違う場合もあります!? 突き指は「現象」を表し、骨折は「状態」を表します。つまり、怪我した状況は「突き指」なのですが、その結果「骨折」が起きた!ということになるのです。 突き指とは、ボールなどの物が指先に突くように当たり、その結果怪我をした場合に用いられる、指の怪我の総称です。その場合の怪我は、骨折の場合もありますし、さらに靭帯損傷や腱の断裂など、実は細かく分かれます。 ただし、一般的に使われている「突き指」は、骨折を伴っていないケースが多いのも事実です。 そのため、突き指をしてしまったら、自己判断せずに一度は専門の医療機関でどのような状態になっているのか詳しく検査することを推奨しています。 突き指した結果、骨折となる ・突き指:現象 ・骨折:状態 ただし、突き指が全て骨折になるわけではない 出典:日本整形外科学会『マレット変形』より(https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/mallet_finger.html) 突き指と骨折の症状の違い ここでは、骨折を伴わない突き指と、骨折の症状の違いをお伝えします。 骨折を伴わない突き指の症状 骨折のあるなしに関わらず、まず「痛み」が出ます。そして、腫れ、赤み、動かしづらさなど、「炎症」の症状がみられることが多いです。 軽症なら 1 週間程度で炎症は落ち着きます。しかし、靭帯や腱の断裂など重症な場合、指の変形や動かしづらさが長引いてしまうので、適切な診断と治療が必要です。 腱の断裂で起こる腱性マレット指 ・腱の損傷や断裂を伴う突き指は、『腱性マレット指』と呼ばれます ・指先を伸ばすための腱が切れてしまい、指の第一関節を自力で伸ばせなくなります ・痛みが引いてもなお伸ばせない症状が続いたら、腱性マレット指の可能性があります。 ※早急に医師の判断を仰いだ方がいいでしょう。 出典:日本整形外科学会『マレット変形』より(https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/mallet_finger.html) 出典:日本整形外科学会『マレット変形』より(https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/mallet_finger.html) 靭帯の損傷・断裂 突き指により、指の靭帯が損傷または断裂を起こすことがあります。その場合、横に変形したり、指が曲がったように見えます。 膝や足首同様、指にも靭帯があります。靭帯の役割は、関節を安定させることです。靭帯が無ければ、関節は動き過ぎてしまい、力が発揮できません。 肉眼では骨折との見分けも付けにくいため、専門医で詳細な検査が必要となります。 骨折を伴う突き指の症状 骨折を伴う突き指に場合で上記の「腱性マレット指」と同じ、似通った症状を起こす突き指がああります。指を自力で最後まで伸ばせない症状ですが、骨折を伴うため、痛みや腫れが、より強く現れます。 レントゲンで容易に見つかります。場合によっては、手術が必要なケースもあるため、できるだけ早く医療機関を受診することを推奨します。 この他にも、指の中間部分(骨幹部)の骨折や、指の関節が脱臼した際に起こる脱臼骨折などもあります。痛みが強い、腫れが酷いなどの場合、自分で判断せずに専門医に相談しましょう。 骨折の症状で起こる骨性マレット指 ・突き指による骨折で多いのが、『骨性マレット指』です ・指先だけでなく、中間部分(骨幹部)や、関節の脱臼骨折などもあります ・指を伸ばすための腱が付いている部分が、剥がれるように骨折(剥離骨折)する ・痛みや腫れが大きい場合、骨折の可能性がああります。医療機関を受診してください 出典:日本整形外科学会『マレット変形』より(https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/mallet_finger.html) 突き指・骨折の原因は同じ 骨折を伴う突き指と、骨折を伴わない突き指とでは、原因は大きく変わりません。ボールが強く当たったからといって、骨折するわけではありません。ボールが軽く当たっただけで骨折する場合もあります。 どちらも共通するのは、指に対して長軸方向にボールが当たった場合に発症することです。 突き指・骨折を起こしやすいスポーツ 冒頭でも軽く述べましたが、突き指は球技を行っている際に起こりやすいです。中でも、バレーボール、バスケットボール、野球は特に多くみられます。 それぞれのスポーツが、どのような場面で突き指を起こすのか説明します。 バレーボールの突き指 バレーボールでは、ブロックの時とオーバーハンドでのレシーブの時に、突き指を起こすことが多いです。特にブロックでは、ジャンプのタイミングが遅れたり、指先に力が入っていなかったりすると、突き指につながります。 ボール自体は軽いのですが、アタックの時はボールのスピードが速いため、突き指を起こすことがあるのです。 バスケットボールの突き指 バスケットボールでは、パスを受ける時、ボールをカットする時などに受傷することが多いです。特に、相手と激しくぶつかり合いながら、ダッシュ・ストップ・ターン・ジャンプなど様々な動きが伴うバスケットボール。その中で、手が遅れて出てしまったり、不意にボールが向かってくることもあります。 また、バスケットボールで用いられるボールは重く、軽く当たるだけでも怪我につながるケースも多いのです。 野球の突き指 野球で突き指を発症するシーンは、圧倒的に守備の時が多いです。特に打者が打ったゴロを捕球する際、両手で捕ろうとして、投げる側の手にぶつけてしまうケースです。 ボール自体は小さいのですが、硬さがあり、ボールが不規則なバウンドをした時は特にケガにつながりやすいでしょう。 突き指の落とし穴 「なんだ!突き指くらいなら大丈夫だよ」といって、軽くみられがちなケガの代表格とも言える突き指。 しかし、そんな軽い気持ちとは裏腹に、後々に大きな影響を及ぼすこともあるので注意が必要です。 放っておいても治らない? 腱の断裂や剥離骨折(マレット指)は、痛みが引いたからといって普段通りに動かしていると、骨や腱がつながらず、指を完全に伸ばせなくなる恐れもあります。 装具やテーピングによる固定や、場合によっては手術するケースもあります。ケガの状態によって、治療方針も様々なので、まずはケガの見極めが重要です。 折れていなくても切れている可能性?! レントゲンでは骨の形態しか確認できないため、症状がなかなか落ち着かない、指が完全に伸ばせないなどの症状が残存している場合は、専門医を受診しましょう。検査をすると、腱が切れていた、というパターンも少なくありません。 ケガをしてからすぐ状態を見極めて固定をしておけば保存療法で済む場合も、動かしてしまっていたから、手術が必要になることもあります。結果的に完治まで時間がかかってしまい、スポーツ復帰の遅れにつながりかねません。 「たかが突き指」と決めつけず、できるだけ早く然るべき医療機関へ受診することを推奨します。 まとめ・突き指で痛みの症状が長引くときは専門医を受診しましょう/まとめ 今回は、突き指の種類と見極め方についてお伝えしました。突き指は、スポーツ、特に球技をする人々にとっては身近な怪我です。 突き指は、指先にボールが当たるなど、指の縦方向に衝撃が起こった際の怪我の総称で、その中には骨折が含まれることがあります。突き指がただの軽い怪我だと思って放置すると、実は大きな問題に発展することがあります。骨折が伴う場合、痛みや腫れが強く、腱の断裂や靭帯損傷といった重篤な症状が隠れていることも多いので注意が必要です。 特に注意が必要なのは、腱性マレット指や骨性マレット指などの状態です。これらは指を伸ばすための腱や骨が損傷した結果、指が正しく動かせなくなる疾患です。整形外科等、医療機関にて早期に適切な診断と治療を受けることで回復できる可能性があります。 しかし、痛みが引いたからといって自己判断で動かしてしまうと、症状が悪化し、長期的な影響を及ぼす可能性があります。突き指で痛みが強い、腫れがひどいなど、骨折が疑われる場合は、速やかに専門医の診断を受け、レントゲン検査などを通し、適切な治療を受けることで、スポーツをされている場合は早期復帰が可能になり、そうでなくとも後遺症を防ぐことができます。 突き指を軽く考えることなく、痛みや腫れが続く場合は専門医を訪ね、しっかりとした診断と治療を受けることが大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.116 監修:医師 坂本貞範
最終更新日:2024.05.17 -
- 脊椎
- 脊柱管狭窄症
脊柱管狭窄症の予防法とは?その原因と歩けないときの対処法 脊柱管狭窄症により「歩くのが大変になった」と悩んでいる方は多いようです。 一方で、その治療については十分に認知されているとは言えず、服薬のみの対症療法に頼る患者も少なくありません。 そこで今回は、脊柱管狭窄症にならないための予防や、重症化しないための対策をまとめています。症状が出ている人も、今はまだ大丈夫という人も、これからのためにぜひ本記事をチェックしてください。 脊柱管狭窄症とは? 脊柱管狭窄症は、中高年に多い腰部疾患の一つです。 脊柱管とは、運動の指令や、ものを触った感覚を伝える脊髄神経が通る、背骨の空洞部分になります。 この脊柱管が何らかの影響で狭くなることで、神経を圧迫し、間欠性跛行や、下肢の痺れ、痛みなどの症状がみられます。60〜70歳代以降の中高年に発症することが多く、姿勢の変化や背骨の変形を伴う変性疾患の一つです。 腰椎ヘルニアや腰椎圧迫骨折などの急性期の疾患と違い、徐々に症状が現れる慢性的な疾患として知られています。 脊柱管狭窄症の原因と症状 原因|若いときの無理が原因? 脊柱管狭窄症が起こる原因はいくつかありますが、代表的なものを3つ紹介します。 ⓵加齢による骨や背骨周囲の軟部組織の変性による神経の圧迫 ②日頃の姿勢や動作習慣による影響 ③先天的な疾患によるもの それぞれ詳しく解説していきます。 ⓵骨加齢による骨や背骨周囲の軟部組織の変性による神経の圧迫 人の体は、加齢とともに細胞内の水分量が少なくなります。その結果、あらゆる組織の柔軟性が乏しくなったり、厚みが出てきたりと変化していきます。 それが「変性」と呼ばれるものです。その変性により、骨の変形や、椎間板の変性、靭帯の肥厚が起こり、脊髄神経が通る脊柱管が狭くなってしまいます。 それにより、神経を圧迫し、脊柱管狭窄症を引き起こすのです。 ②日頃の姿勢や動作習慣による影響 普段の姿勢や、動作習慣によっても脊柱管狭窄症を引き起こす可能性があります歳を重ねていけばみんな発症するかというと、もちろんそういうわけではありません。 特に腰に症状が出やすい脊柱管狭窄症は、腰の骨に負担がかかる姿勢や動作習慣が問題となることがあります。 例えば、デスクワークを長年続けていて、普段からあまり運動をしない人は、どうしても体幹の筋肉が落ちてしまいます。そうすると、腹筋を使わないよう反り腰の姿勢になってしまい、脊柱管がより狭くなる危険性もあるのです。 これらはほんの一例ですが、誤った姿勢や体の使い方で、脊柱管狭窄症になりやすい体へと変化していくため、注意が必要です。 ③先天的な異常によるもの 割合は少ないのですが、先天的な発達異常により脊柱管狭窄症を引き起こすことがあります。 成長期の場合、年齢につれて脊柱管も広くなっていくのですが、先天異常により脊柱管が広がらず、狭くなっていくことがあるのです。この場合、若い年代で発症します。 非常に稀ですが、若い年代で脊柱管狭窄症の症状が出た場合は、できるだけ早めに専門医療機関へ相談しましょう。 症状|その痛みは片側だけ?両側に出ている? 脊柱管狭窄症の主な症状は、臀部から下肢にかけての痺れや痛み、力の入りにくさ、そして間欠性跛行です。 特に特徴的なものが間欠性跛行で、歩いていると脚の痛みが増強し、続けて歩くことが困難になる症状を呈します。少し休憩をしたり、体を前かがみにしたりすると症状が軽減し、歩けるようになります。 これらの症状に加え、排尿・排便障害や両側に症状が出てしまう場合は、より重症化が疑われます。 また、神経圧迫の程度が強いと、足首を上に反らせなかったり、数十メートル歩くだけで症状が強くなったりする場合があるため、医療機関に相談することを推奨します。 脊柱管狭窄症にならないための予防方法はある?! 脊柱管狭窄症にならないための予防には、どのような方法があるのでしょうか。 以下で解説していきます。 予防方法①身体にかかる負担を分散させる 物を持ち上げる時の身体の使い方によって、腰にかかる負担を軽減させることができます。逆に、持ち方ひとつで、腰に負担がかかってしまうこともあるため、間違った使い方をしている人は要注意です。 まず、誤った使い方は、下の荷物を抱えようとした時に、膝を突っ張って腰だけ曲げて抱える方法です。この方法だと、腰の屈伸の運動だけで動作を行うため、腰だけに負担が集中してしまいます。 そこで、ぜひ参考にしてほしい使い方は、膝と股関節を曲げ、腰の位置を低くして持ち上げる方法です。この方法なら、腰とともに、股関節、膝関節の力も入り、負担を分散させることができます。 今回は、物を抱える動作で例を出しましたが、どの動きにも通ずることです。腰だけに負担をかけないように、上手に股関節、膝関節の力を使っていきましょう。 予防方法②背骨を全体的に動かす 今度は、背骨を全体的に動かす意識をお伝えします。 上を向いたり、下を向いたり、振り返ったりなどは、普段から何気なく行っていると思います。そんなに意識せずに行っている人が多いのではないでしょうか? 例えば上を向いてみましょう。この時に、背中が全く動いていない人は注意が必要です。背中が動いていないということは、首(頚椎)だけの動きになっているということです。 そのため、動きが首(頚椎)部分に集中してしまい、この動かし方でなれてしまうと、首を痛めたり、背中周りの動きが硬くなったりします。 おすすめの方法は、上を向くのと同時に、胸を張るように動かすことです。そうすることで、背中から首(胸椎から頚椎)までを均等に使うことができ、部分的にかかる負担を減らすことができます。 振り向く動作も同じで、体を捻りながら首と一緒に振り向けると負担が首に集中せず、痛みや変形の予防になります。 予防方法③股関節や肩甲骨がカギ あらゆる動作で背骨は動きますが、同時に股関節や肩周りも意識的に動かすと予防に効果的です。というのも、背骨というのは思ったより大きく動かない組織なのです。 腰椎を例にみてみましょう。腰の屈曲(腰骨だけで前屈した時の動き)の標準的な可動域は 45°です。この角度では、下の物を取ることはできませんし、そもそも下に手が届きません。 この動きに骨盤の前屈や股関節の屈曲、さらには膝の屈曲など様々な他部位の動きが加わることで、下にある物に手が届き、そこから抱えるという動作を行うことができます。 つまり、背骨に負担をかけないのであれば、隣接する股関節や肩(肩甲帯)の動きが重要になるということです。普段から股関節や肩周りの柔軟性を高めたり、エクササイズなどで筋肉を働きやすくしておくことも腰への負担の軽減につながります。 脊柱管狭窄症で歩けないほど症状が強くなったら? 脊柱管狭窄症の予防策として、いくつか紹介しましたが、実際に脊柱管狭窄症の症状が出て、さらに悪化したらどのように対処すべきなのでしょうか? 無理して歩いてはダメ!! 「とにかく運動が大事だから!」と言って、無理をして歩くことは推奨しません。 脊柱管狭窄症の症状である間欠性跛行は、頑張って歩いたからといって治るものではありません。間欠性跛行などの特徴的な症状が出た場合は、無理な運動はせず、初めは安静にしておくことが重要です。 ストレッチやエクササイズ、歩行などの運動は、症状が落ち着いてから始めるようにしましょう。 症状が強く出る前に医療機関に相談を! 自分の症状が脊柱管狭窄症かもと思ったら、できるだけ早く専門の医療機関の受診を推奨しています。脊柱管の狭窄の程度によっては、手術療法が必要な場合もあります。 自分で判断せずに、専門の医師の診察を受け、どのように対応していくのか指示を仰ぐようにしましょう。 脊柱管狭窄症の予防法とは?歩けないときは無理は禁物!/まとめ 脊柱管狭窄症の予防方法を中心に紹介しました。 予防するためのポイントは以下です。 ・腰への負担を減らすために、肩周りや股関節周りの大きい筋肉を動かす ・腰を反らす姿勢を改善 ・腰に負担のかからない身体の使い方を反復する 症状が出ない若いうちから日頃の動作習慣や姿勢を見直すことで、脊柱管狭窄症の予防ができます。 また、股関節や肩周りなど、背骨に近い関節をしっかり動かすことも大切です。今一度、自分の動作を確認し、背骨に負担が集中しないような正しい姿勢、動きを身につけましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S113 監修:医師 加藤 秀一
最終更新日:2023.07.05 -
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脳出血にならないために!予防と再発を防ぐための血圧管理方法について 高血圧を管理、治療する目標の1つに脳出血の予防、再発予防があります。 脳出血の主な原因は高血圧であり、一度脳出血を起こしてしまうと 1 年以内の再発率は5%程度、5 年以内の再発率は 2 割近くに及ぶと報告されています。 脳出血を起こしてしまうと、仕事に支障が出たり、介護が必要になってしまうこともあるため、予防が非常に重要です。この記事では、脳出血を予防するための血圧管理について詳しく解説していきます。 脳出血と血圧の関係 脳出血は、脳の中の血管が破けて出血してしまい、頭痛や吐き気、手足の麻痺などが出てしまう重大な病気ですが、発症には高血圧が最大の危険因子であることがわかっています。 血圧が高い状態は日常的に血管に強い力が加わってしまい、血管が破けやすくなり、動脈が硬くなる動脈硬化のリスクも上がるため、脳や心臓の血管の病気が多くなってしまいます。 また、高血圧は非常に多くの方がかかる病気であり、日本には高血圧患者は約 4300 万人もいると推定されています。高血圧自体は無症状のため、放置してしまう方もいるかもしれませんが、高血圧の治療は単に数値を下げるのではなく、脳や心臓の血管の病気を予防するためにとても重要なのです。 さらに血圧の管理は脳出血の再発予防にも必要です。一度脳出血を起こしてしまった方や喫煙者、糖尿病やコレステロールなどの他の病気を持っている方は、脳出血を起こすリスクが上昇してしまいます。そのため、一度発症してしまった方では、より厳重に血圧の管理をすることが大事です。 高血圧の診断と治療目標は 血圧は、上の数値を収縮期血圧、下の数値を拡張期血圧といいます。 高血圧治療ガイドラインの2019年版では、収縮期血圧 140 mmHg以上、または拡張期血圧 90mmHg以上( 140 / 90 mmHg以上)の状態を高血圧といい、治療の目標は 130 / 80 mmHg未満が推奨されています。 また診断・治療のときには家庭血圧(ご自宅で測定した血圧の数値のこと)の測定と血圧手帳への記入が重要です。病院で測定した血圧は緊張のため高くなりやすく、白衣高血圧といわれる病院でだけ血圧が上がってしまう方も比較的多くいらっしゃいます。 また、家庭血圧をもとにした場合の高血圧の診断基準は、135 / 85 mmHg以上をいい、治療の目標は125 / 75 mmHg未満と若干数値が異なるのが特徴です。そのため、高血圧の診断、コントロールには血圧計を購入し、ご自宅で測定した血圧を記入して医師にみせることが大事なのです。 高血圧の治療の目標は、ご本人の状況により変わることにも注意が必要です。年齢や喫煙の状況、心臓、脳血管の病気など、持病の有無によって推奨される血圧の目標値が異なるため、ご自分の治療目標がどの程度となるかは担当の医師とよく相談することが必要です。 一般的に、脳出血を起こしたことがある方は、再発予防のために130 / 80mmHg未満(家庭血圧で125 / 75 mmHg未満)とすることが推奨されているので、1 つの目安にしてください。 血圧を下げる方法 治療の基本は、生活習慣の改善(減塩、減量・運動、食事の見直し、禁煙、節酒)とお薬の内服です。まずは生活習慣の改善を行い、血圧の数値によりますが1 〜 3ヶ月ごとの評価で必要に応じてお薬を開始します。 生活習慣の改善方法とお薬の治療について順番に解説していきます。 生活習慣の改善 減塩 塩分は1日6g未満を目標とします。味噌汁や漬物など塩辛いものは可能な限り控えるようにしましょう。 適度な運動 有酸素運動は効果が認められているので推奨されます。週に2 - 3回、20 ~ 30分間程度の運動を行うことが重要です。ウオーキングや息が上がらない程度のジョギング、サイクリング、水泳などがおすすめです。 健康的な食生活 脳出血のリスクを減らすために、DASH( Dietary Approaches to Stop Hypertension )食という高血圧を防ぐ食事方法が勧められます。具体的にはカリウム、カルシウム、マグネシウム、食物繊維、タンパク質を多く含む果物、野菜、豆類、魚、肉、卵などのバランスの良い食事を摂り、高脂肪、高炭水化物の食事は避けるようにしましょう。 禁煙 タバコは脳出血のリスクを高めます。禁煙することが最も効果的な方法です。 適度なアルコール摂取 過剰なアルコール摂取は脳出血のリスクを高めます。週に 1 ~ 2 日程度の飲酒とするか、毎日飲むのであればビールは中瓶 1 本、日本酒 1 合以下に制限するようにしましょう。 お薬での治療 生活習慣を変えても目標の血圧にすることができない場合には、お薬による治療が考えられます。お薬には複数の種類があり、目標とする血圧になるように薬を組み合わせて内服をします。 多くの研究で、お薬で血圧を下げることによって、脳出血の発症・再発を予防できることが示されているので、医師の指示通りにしっかりと治療を行うことが大事です。 血圧についてよくある質問 Q&A 血圧管理方法に関するよくある質問に、Q&A方式でお答えしています。 Q.自宅で血圧を測るときのポイントは? A:上腕に巻くタイプの血圧計で起床後 1 時間以内(内服前)と夜(就寝前)の1 日 2 回、座って 1 ~ 2 分安静にしてからの測定がおすすめです。 Q.上の血圧と下の血圧どちらを見た方がいいですか。 A:上の血圧は収縮期血圧と言い、心臓が血液を送りだすときの血圧をいいます。下の血圧は拡張期血圧と言い、血液が心臓に戻るときの血圧をいいます。どちらも重要であり、高血圧の定義は収縮期血圧 140 mmHg以上/または拡張期血圧 90 mmHg以上ですので、下の血圧の数値も重要になってきます。 Q.血圧が毎回違うのはどうしてですか。 A:血圧はさまざまな要素で変わってきます。緊張や運動、お薬やカフェイン摂取、痛み、ストレスなどによって変動します。そのため 1 日 2 回、安静にしてから血圧を測定し、平均の数値をみることが大事になってきます。 まとめ・脳出血にならないために!予防と再発を防ぐための血圧管理方法とは 脳出血の予防・再発予防に重要な血圧の管理、治療目標と、その方法について解説しました。 高血圧は無症状ですが、放置してしまうと、重大な病気につながることがあります。血圧が高いことを指摘されたら早めに病院を受診して、生活習慣の見直しと治療を受けるようにしていきましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S115 監修:医師 加藤 秀一 ▼以下も参考にしてください 脳出血とストレスの関係性!その種類と部位を分かりやすく解説!
最終更新日:2024.03.29 -
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突き指は正しい応急処置で早く治す|湿布やテーピング方法 「突き指の応急処置はどうしたらいいの?」「突き指を早く治す方法が知りたい」 多くの方が経験のある突き指ですが、どのような応急処置をすれば、少しでも早く治るのか知りたい方も多いのではないでしょうか。今回は突き指の正しい応急処置について紹介します。 湿布やテーピングの方法についても解説するので、正しい知識を知って、対応できるようにしましょう。 突き指の正しい応急処置 突き指になった場合にすぐできる対応として、「RICE処置」を覚えておきましょう。 RICE処置は4つの対応の頭文字をとった名前です。 RICE処置 R:Rest(安静) I:Icing(冷却) C:Compression(圧迫・固定) E:Elevation(挙上) それぞれの具体的な対応方法について紹介します。 Rest(安静) 怪我をした直後は無理に動かさずに、安静にしましょう。炎症や痛みがあるのに無理に動かしてしまうと、怪我の状態や症状を悪化させる恐れがあります。 Icing(冷却) 怪我により急激に生じる炎症症状を和らげるため、怪我をした部分を冷やしましょう。バケツや洗面器に氷水を入れて指を直接冷やします。 また、氷嚢やビニール袋に氷を入れて、指に当てる方法もよいでしょう。凍傷しないように気をつけながら、しっかり冷やすようにします。氷がない場合は、代わりに流水で冷やします。 Compression(圧迫・固定) 腫れや指を曲げると痛い場合は、圧迫して腫れを抑えたり、固定して動きにくくしたりします。木や金属の板を指に沿うように当てたり、テーピングや包帯を用いて固定しましょう。 Elevation(挙上) 腫れを防いだり、軽減させるために、怪我をした部分を心臓より高い位置まで挙上しましょう。高く上げることで、怪我によりたまった血液が流れやすくなります。 また、心臓より高くすることで、血液が心臓に戻りやすくなります。 突き指の誤った応急処置 「突き指をしたらすぐに引っ張ったほうがよい」「痛い部分をもんだら治る」このような応急処置は間違いです。 脱臼を元に戻すために、医師などの専門家が引っ張る場合はあります。しかし、怪我で損傷した部位を引っ張ると、かえって症状の悪化を引き起こす恐れがありますので行わないようにしましょう。 また、炎症が生じたばかりの部分を揉むことは、炎症を助長したり、損傷部位を悪化させたりする可能性があります。痛みを和らげるマッサージのつもりで揉むようなことは避けましょう。 突き指に対する湿布やテーピング 突き指に対する応急処置として湿布やテーピングの使用を思い浮かぶかもしれません。それぞれを正しく使えば、応急処置として使用できます。 そこで、具体的に使用方法や適応となる症状について解説します。 突き指に対する「湿布」 湿布は痛みや炎症を抑える成分が含まれるため、それらの症状を和らげる効果があります。そのため、突き指で痛みや腫れがある場合は、湿布を使用して症状の緩和を図るのはよいでしょう。 また、湿布には、温湿布や冷湿布といった種類がありますが、突き指の応急処置としては、炎症で熱を持った状態に貼るため、冷湿布を貼るのが一般的です。 突き指に対する「テーピング」 突き指でテーピングをするのは、指の動きを固定して、無理な動きによる痛みや炎症の悪化を防ぐためです。 テーピングには、怪我をした指だけテーピングをする方法と、怪我をした指に隣の指を一緒に固定するバディテーピングがあります。 応急処置としてはバディテーピングで強く固定しましょう。 指を曲げると痛い場合は、指を伸ばしたまま固定して、曲がらないようにしましょう。少し動かせるようになれば、保護するために怪我をした指のみに変更するとよいでしょう。 突き指とは そもそも突き指とは、どのようなモノなのでしょうか? ボールやものが指先に当たって生じる怪我をまとめて「突き指」と呼びます。 子どものころドッジボールなどの球技で突き指を経験した方も多いかもしれません。何もせずに自然と治ったという場合もある突き指ですが、正しい治療をしなければ症状が悪化する危険性もあります。 まずは、突き指とはどのような怪我なのか詳しく解説します。 特徴 突き指は指先にものが強くぶつかって、指にまっすぐな力が加わって起こります。放っておいても自然に治る場合もあれば、骨折や関節を安定させる靭帯(じんたい)の損傷、関節が外れてしまう脱臼といった治療が必要な怪我が潜んでいる場合もあります。 中には手術が必要になる場合もあるため、整形外科を受診して、適切な診断や早めの治療が必要です。 症状 突き指の症状には以下のようなものがあります。 突き指の症状 ・腫れ ・痛み ・内出血 ・関節の動きの制限(指の曲げ伸ばしがしにくい、関節が曲がったまま伸びない、関節が完全に曲がらない) このような症状は怪我の程度によって異なります。 また、突き指により指先が曲がったまま伸びなくなってしまう状態を、槌指(つちゆび)またはマレット変形と呼びます。 マレット変形には、指を伸ばすための腱が損傷することによって起こる腱性のマレット変形と、骨折によって起こる骨性のマレット変形があります。 原因 突き指の原因は次のようなものがあります。指先を強くぶつけるような出来事が原因となるため、いろいろな状況で生じる怪我です。 突き指の原因 ・球技でボールがぶつかる ・転倒して地面に指を打ちつける ・スポーツで人と衝突する ・事故で指先をぶつける 突き指で正しい応急処置をして症状の悪化を防ごう/まとめ 突き指の腫れや痛みを少しでも和らげるために、まずはRICE処置などの正しい応急処置をしましょう。 突き指は、誰もが一度は経験する一般的な怪我です。正しい応急処置を行うことで、回復を早めることができます。突き指が起こったら「RICE処置」を実践しましょう。これは、安静(Rest)、冷却(Icing)、圧迫・固定(Compression)、挙上(Elevation)の4つのステップがあり、これらを行うことで、炎症を抑え、痛みを軽減させることができます。 突き指をしたら、まずは無理にしないこと。動かさずに安静にします。次に、患部を冷やして炎症を抑えます。冷やす際で氷を使用する場合は、直接氷を肌に当てないで布などで包んで冷却すると肌にやさしく冷やせます。その後、圧迫や固定を行い、腫れを抑えつつ、指の動きを制限しましょう。 腫れがひどい場合は、患部を心臓より高い位置に挙げることで、腫れを軽減させることができます。 また、湿布やテーピングも有効な応急処置になります。突き指の場合、湿布は冷却するタイプが適しています。テーピングは指の動きを制限し、痛みや炎症の悪化を防ぐために行います。特に、隣の指と一緒に固定するバディテーピングが効果的ですので覚えておきましょう。 注意したいのは、誤った応急処置を行うことです。指を無理に引っ張ったり、揉んだりすることは避けましょう。突き指で症状が強い場合や、違和感がある場合には自己判断で処置を行わず、必要に応じて整形外科を受診し、医師の診断を仰ぐことが大切です。 正しい知識と適切な対応を心がけることで、突き指は早期回復が目指せます。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.114 監修:医師 坂本貞範
最終更新日:2024.05.17 -
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胸郭出口症候群とは?症状、原因と治療法、病気を解説します 胸郭出口症候群とは、腕を上げる動作や、上げたままの姿勢が続くと肩や腕、手にしびれや痛み、だるさなど、上肢に症状が現れる病気です。 とくに、なで肩の女性や筋トレ習慣のある男性をはじめ、野球やバレーボール、バドミントン、テニスなどのように、腕をよく回すアスリートや運動部の学生によく見られるスポーツ障害でもあります。 そこでこの記事では、胸郭出口症候群とは?と題して、その特徴や原因、リハビリや手術などの治療法について紹介しますのでご一読ください。 胸郭出口症候群の原因と症状 胸郭出口とは、手や腕を動かす神経や血管が走っている首と胸の間にある通路のことです。この通路は、首の付け根にあり、その隙間にある神経や血管が締め付けられたり、圧迫されたりすると、胸郭出口症候群の原因になります。 なお、胸郭出口にあるどの筋肉と関係するかによって、次の3つの症候群があり、胸郭出口症候群とは、下記の3つの症候群をまとめた病名なのです。 胸郭出口症候群とは以下の症候群をまとめた病名 ・ 斜角筋(しゃかくきん)症候群 ・ 肋鎖(ろくさ)症候群 ・ 小胸筋(しょうきょうきん)症候群(≒過外転症候群) 原因(動作) 胸郭出口症候群は、日常生活やスポーツで次のような動作をよく行った場合、原因となります。 胸郭出口症候群の原因(一例) ・ 野球でボールを投げる ・ テニスでラケットを振る ・ 剣道で竹刀を上下に動かす ・ 水泳のクロールで繰り返し腕を回す ・ つり革を持つ ・ 洗濯を物干し竿に干す ・ 腕や肩の筋トレを繰り返す ・ なで肩や片肩でバッグを持つなどの姿勢不良 上記のうち4つ目までは、そのスポーツでの独特な動きが発症原因となっています。 スポーツ障害と胸郭出口症候群 先程紹介したように、胸郭出口症候群は、なで肩や良くない姿勢、日常動作の動きのクセ(リュックサックや肉体労働など)によって起きるといわれています。 一方で、野球やバレーボール、バドミントンなど、プレーの中で腕を上げたり、よく腕を回転させたりするスポーツでも発症する病気です。そのため、オスグッド病、シンスプリント、野球肘など、繰り返し同じ動きによって痛みが続く「スポーツ障害」の一種でもあります。 日頃からスポーツや運動、トレーニングなどをしている方で上肢や肩、腕や手の違和感がある場合、胸郭出口症候群の可能性があることを知っていただき意識の上、注意しておきましょう。 胸郭出口症候群の「症状」 胸郭出口症候群になると腕を上げる動作を取ることで、肩や腕、手、肩甲骨周辺などに「しびれ」や「痛み」、「だるさ」が生じます。 症状が進行すると、前腕から手の指(とくに小指側)に強い痛みや、しびれ、ピリピリ感が走る、握力が低下する、指先を使う作業が不器用になる、といった症状も加わります。 このように胸郭出口症候群を発症すると上肢に痛みやしびれが生じ、運動麻痺の症状が重なるは、日常生活に支障をきたす病気です。 人によっては、手の甲の骨の間が凹んだり、手のひらの小指側の小指球筋と呼ばれる盛り上がりが痩せてくることもあります。さらに、血行不良によって腕が白っぽくなったり、青紫色になったりするケースも少なくありません。 胸郭出口症候群の「治療法」 胸郭出口症候群の治療には、次の 4つがあります。とくに 3 番目のリハビリは、整形外科に通院して効果が期待できる方法なのでぜひチェックしましょう。 胸郭出口症候群の治療法 1. 生活指導 2. 薬物療法 3. リハビリ 4. 手術 1. 生活指導 原因となっている日常生活での腕を挙げる動作やスポーツ・運動を控えることが大切です。また、正しい姿勢を維持したり、生活動作を腕に負担のないように見直す必要もあります。 ストレッチやエクササイズなどの運動療法で筋肉の緊張や血行不良を改善する方法も有効です。 2. 薬物療法 痛みを和らげる消炎鎮痛剤(ロキソニン・ボルタレンなど)や神経の痛みに対する薬(プレガバリン・ミロガバリンなど)といった内服薬の処方が一般的です。 痛みが強い場合は、ブロック注射を行うこともあります。 3. リハビリ(理学療法) 整形外科に通院して、理学療法士から正しい姿勢を学んだり、手技で胸郭出口周辺の筋肉の緊張を和らげたり、神経や血管への刺激を緩めたりして痛みの緩和を目指します。 生活指導と理学療法を合わせて受けられるケースが多いため、今後の予防にもつながる方法です。 4. 手術 症状が重くて日常生活やスポーツに大きな支障をきたしているときは、原因となっている筋肉や肋骨の一部を切除して隙間を広げ、神経や血管の圧迫を取る手術を選択することがあります。 近年、手術のほかカテーテルによる治療が行われるケースも増えています。 まとめ:胸郭出口症候群とは?原因と治療法についても詳しく解説! 今回紹介した胸郭出口症候群には、次のようなポイントがありました。 胸郭出口症候群の原因 ・ 腕を挙げると動作で肩や腕、手のしびれや痛みが生じる ・ 胸郭出口周辺の神経や血管の圧迫が原因 ・ 日常動作や姿勢、スポーツが原因で発症する ・ 治療法は内服薬やリハビリが中心 ・ 重度の場合は手術を選択することもある 胸郭出口症候群は、日常の腕を上げる動作や、スポーツなどで発症しやすい疾患です。原因は主に胸郭出口における神経や血管の圧迫であり、特になで肩の女性やスポーツ選手に多く見られます。 症状は上肢にしびれや痛みが生じ、日常生活に支障をきたします。治療法は生活指導や薬物療法、リハビリ、手術などですが、リハビリを用いた治療が大切です。また、手術は症状が著しい場合に選択される場合があります。適切な治療法を選択し、生活指導やリハビリを積極的に行うことが重要です。 普段から姿勢が気になっている方、スポーツを楽しんでいる方で腕や手のしびれや痛みがある場合、胸郭出口症候群かもしれません。 この記事を読まれて、身体の違和感に気が付かれたなら、症状が進行する前に、整形外科を受診しましょう。 以上、参考にしていただければ幸いです。 No.115 監修:医師 坂本貞範 ▼胸郭出口症候群について以下も参考にされませんか 【胸郭出口症候群】自分でできる!症状チェック法を紹介!
最終更新日:2024.05.20 -
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肋骨骨折の原因と安静期間中の注意事項、仕事復帰の目安について 肋骨(ろっこつ)骨折について、以下のような疑問やお悩みがある方はいませんか?尚、正確な復帰の判断は整形外科の専門的な知識が必要ですので医療機関の受診をおすすめします。 「肋骨骨折は、いつまで安静にすればいいの?」 「肋骨骨折は、どのくらいで仕事復帰ができるか知りたい」 今回は肋骨骨折と、その安静期間や仕事復帰までの目安をご紹介します。本記事を参考にしていただき整形外科の受診時、医師に確認するための参考にして頂ければと思います。 肋骨骨折とは?症状や原因について解説 肋骨骨折とは、胸を囲っている肋骨にひびが入ったり、折れたりする怪我です。一部が骨折する場合もあれば、いくつかの骨折が同時に起こることもあります。 骨折の原因はさまざまで、年齢問わず起こりうる骨折です。 まずは、肋骨とはどのような骨なのかを紹介し、肋骨骨折の原因や症状を解説します。 肋骨とは? 肋骨は胸を囲むようについている骨で、左右 12 対の合計 24 本あります。 胸の正面にある胸骨と、背中にある背骨をつなぐようについていて、心臓や肺などを覆っています。肋骨の役割は、これらの重要な臓器を守ることです。 また、呼吸のときには肺が膨らんだり、縮んだりするのに合わせて肋骨も動きます。そのため、肋骨の動きが制限されると、呼吸がしづらくなってしまいます。 肋骨骨折の原因 肋骨骨折はすべての骨折の 10〜20 %を占めるとされています。肋骨に直接衝撃が加わり起こる骨折は、転倒や交通事故、転落などが原因です。 また、肋骨に直接衝撃が加わらなくても、他の部位に大きな衝撃が加わり、肋骨がたわむことで骨折が生じることもあります。 交通事故や転落などで強い衝撃が加わると、肺の損傷を伴う場合があります。 スポーツ外傷としても肋骨骨折が生じ、外傷による骨折は、ラグビーや柔道といったコンタクトスポーツで胸を強打することが原因です。また、ゴルフや野球などで繰り返し同じ動作をすることで肋骨にかかる負担が蓄積して疲労骨折が生じる場合もあります。 高齢者で骨が脆くなっていると、くしゃみや体をひねる動作も肋骨骨折を引き起こす原因となります。 肋骨骨折原因 ・転倒、転落 ・交通事故 ・スポーツ傷害(ラクビー、柔道などのコンタクトスポーツ) ・スポーツ傷害:ゴルフ、野球の繰り返し動作での疲労骨折) ・高齢者(くしゃみ、身体の動作) 肋骨骨折の症状 骨折部の痛みが主な症状で、特に呼吸や体を動かしたときに痛みが増えるのが特徴です。肋骨が動く、寝返りや体を反らす、肩を動かすという動作で痛みが強まります。 骨折してからしばらく経つと痛みがピークを迎えて、3 〜 4 週間で症状は和らぎます。 また、胸を圧迫したときの痛みや内出血、腫れがみられます。骨折による肋骨の動きの制限や痛みにより、息苦しさや呼吸がしづらいといった点も症状の 1 つです。 もし、肺などに損傷がある場合は、酸素が不足して皮膚が青っぽく変色する「チアノーゼ」がみられたり、意識がもうろうとしたりします。放置すると危険ですので、すぐに救急車を呼んだり、近くの病院を受診しましょう。 肋骨骨折の安静期間 肋骨骨折は、骨折の状態により安静期間が異なります。そのため、必ず整形外科に受診をして、医師の判断を仰ぎましょう。 肋骨に「ひび」が入っている程度だったり、骨折箇所が 1カ所だとすると、痛みは 1カ月以内に和らいでくることが多いです。 ただ、骨折の状態によってはそれ以上、痛みが続く場合があります。基本的に痛みがある間は、痛みが出る動作は極力行わないようにして、安静にしておくのが良いでしょう。 骨が癒合(※)するのは3週間〜6週間とされており、骨折の程度によって差があります。 (※癒合(ゆごう)・・・骨がくっつくこと) その間は骨に負担がかかるような動作はしないようにしましょう。 ただし、骨折部に響かないように生活するのは問題ありません。むしろ、安静にしすぎて寝てばかりでは、体のほかの部分の機能が衰えてしまいかねません。 病院で骨折している肋骨が動かないように、バストバンドと呼ばれる装具(コルセット)を巻いて固定しますので、強い痛みが落ち着いてきたら、肋骨に負担のないように動くようにしましょう。 骨折後の注意 骨の癒合(ひっつく)機関の目安:3~6週間 安静期間:痛みが治まったら、負担の無い範囲で活動すること、安心にし過ぎは他の機能が衰えるため、注意が必要 肋骨骨折で仕事復帰をする目安 肋骨骨折の場合、骨折の状態や復帰する職種によって復帰の目安が変わってきます。 肋骨骨折の程度がひどくなければ、バストバンドで固定し、痛み止めの内服薬を服用しながら自宅での生活を送ることになります。 そのため、骨折部に負担をかけないデスクワークなどは骨折の数日後からの復帰も可能です。しかし、重い荷物を抱えたり、体の捻りを繰り返したりといった肋骨に直接負担がかかるような仕事は、骨が癒合するまでは控えた方が良いでしょう。 例え痛みが和らいだとしても、肋骨が完全に元の状態にまで治癒しているとは限りません。骨が癒合していないのに無理をすると、骨折や痛みなどの症状が悪化する危険性があります。 仕事復帰を検討する場合は、整形外科で医師に診察してもらい、許可を得てからにしましょう。 復帰の目安 ・デスクワークなど:骨折の数日後 ・身体に負担が掛かる仕事:医師の指示に従ってください ※重い荷物や身体を動かす仕事は注意が必要です 肋骨骨折の安静期間は骨折の程度で違い、正しい復帰時期は医師に確認しよう 肋骨骨折は骨折の程度により安静期間や仕事復帰の時期が異なります。 そのため、骨が不十分に癒合した状態で無理な動きをすると、症状が強まったり、骨がくっつきにくくなったりします。 必ず整形外科の医師に相談して、正しい復帰時期を教えてもらいましょう。 また、復帰時期は仕事の内容によっても差があります。 デスクワークなど動きの少ない仕事は早期に復帰しやすいですが、体を酷使するような仕事は骨折部に負担がかかるため、しっかり治癒してからになります。 痛みが和らいだからといって、無理に復帰を焦らないように注意しましょう。 No.113 監修:医師 坂本貞範 ▼以下も参考にされませんか 肋骨骨折で放置は禁止!症状とその治療法を解説!
最終更新日:2024.05.10 -
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【胸郭出口症候群】自分で分かる!症状をチェックできる方法をご紹介! 胸郭出口症候群とは、腕を上げる動作を行った時に腕の痺れや、肩周りの痛みが生じる疾患です。日本人の女性に多く見られ、症状が強いと日常生活に影響が出ることもあります。 この記事では、そんな胸郭出口症候群の原因や、症状を疑った際に確かめられるセルフテストのやり方とチェックリストをご紹介します。 胸郭出口症候群の原因 肩甲骨周りから腕にかけての、運動と感覚を支配する神経の集まりを、腕神経叢(わんしんけいそう)と言います。 この腕神経叢と、同部位に血流を送る鎖骨下動脈は、同じ筋肉や骨の間を通ります。その間で圧迫され、神経障害や血流障害が生じるため痺れや痛みの症状が起こるのです。 具体的には「前斜角筋と中斜角筋の間」「鎖骨と第一肋間の間」「小胸筋の肩甲骨烏口突起 停止部の後方」を走行し、圧迫される部位により名前は異なりますが、総称して"胸郭出口症候群"と呼びます。 なで肩の女性や、重いものを持ち上げることが多い人、野球やバスケット、バドミントンなど腕を上げる動作が多いスポーツをよくおこなう方になりやすい疾患です。そのため、スポーツ障害の一種ともされています。 胸郭出口症候群になりやすい方 ・なで肩の女性 ・重いものを持ち上げることが多い ・野球やバスケット、バドミントンをされる方 ・その他、腕を上げる動作が多いスポーツ また、「※頚肋(けいろく)」の方も胸郭出口症候群になりやすいとされています。生まれつき人の頚椎には、横突起という側方に出っ張るような構造があります。 ※頚肋とは、第 7 頚椎の横突起が発達して、まるで短い肋骨のように側面まで伸びてきてしまっているもののことを言います。 胸郭出口症候群の症状 胸郭出口症候群の主な症状は、神経や血管が圧迫されることによる神経症状や血行障害によるものです。 神経症状は、肩周りから腕にかけてのビリビリとした痺れや感覚障害があります。 血行障害は、動脈が腕に行き届かず白くみえたり、逆に静脈がきちんと帰っていかず、鬱血状態になってしまうことで青紫色のように見えてしまうなどです。 それ以外に、腕のだるさや肩凝りのような肩の重い感じ、腕の冷えを訴える方も多くおられ、症状は人によってさまざまです。 上記のような神経症状や血管症状が持続し進行すると、手の握力低下や細かい動作がしにくくなる、といった指の運動障害を認めることがあります。この運動障害がある場合、手の筋肉が萎縮してしまうため手の甲の骨の間がへこんでしまいます。 胸郭出口症候群の症状 ・神経症状:肩周りから腕にかけてビリビリとした痺れや感覚障害 ・血行障害:動脈が白くみえたり、静脈が青紫色に見える ・腕のだるさ、肩凝り、肩の重い感じ、腕の冷え ・運動障害:握力低下、細かい動作がしにくくなる 胸郭出口症候群の治療 胸郭出口症候群の治療は、原則保存療法です。痛み止めや血流を改善させる薬を用いつつ、リハビリを行い症状の軽減を目指します。頚肋が原因の場合や症状がとても強い場合などは手術で骨の遺残を取り除く手術を行うことがあります。 胸郭出口症候群のセルフテストのやり方とセルフチェックリスト 前述したように胸郭出口症候群は症状が人によってさまざまであるため、診断することが難しくきちんと治療を受けることができない場合があります。 そんな時に活用できる、ご自身で胸郭出口症候群かどうか疑うためのチェックリストと、より明確なセルフテスト方法を紹介します。 以下のチェックリストにある症状のうち、 1 つでもある場合は、胸郭出口症候群の可能性があります。 胸郭出口症候群セルフチェックリスト ▢重いものを持つと肩こりがひどくなる ▢腕の痛みや痺れが出現する ▢腕を上げると、腕から背中にかけての痛みや痺れが出現し辛い ▢腕が冷える、白っぽく見える ▢腕のむくみが最近ひどく、色調も悪い 胸郭出口症候群セルフテストと、そのやり方 胸郭出口症候群を疑うかどうかを判断するためのテスト方法があります。 ご自身で簡単に行うことができるため、紹介します。そこで、胸郭出口症候群のセルフテストの代表的なもので 4 種類のテスト方法があり、以下にご紹介します。 a.モーレイテスト モーレイテストは症状が出現する腕側の鎖骨上窩で腕神経叢を圧迫するテスト 胸郭出口症候群であった場合は、圧迫した際に腕や肩周りに痛みや痺れが生じる b.アドソンテスト ・アドソンテストは椅子に座って行う ・2 人で行う必要があるため家族などの力を借りて行う アドソンテストのやり方 1)椅子に座って手首で脈拍を確認してもらう 2)その状態ので、あご先をあげて、頭を症状が生じる側に傾ける 3)この時に脈が触れなくなったり、触れにくくなった場合は陽性と判断する c.ライトテスト ライトテストも 2 人で行うテスト 1)手首で脈拍を確認してもらう 2)その状態で腕を開いて肩まで挙上 3)手が上になるように肘を直角に曲げる 4)あげた状態で脈が触れなくなったり、弱くなったりした場合陽性と判断する d.ルーステスト ・ルーステストは 1 人で行うことができる 1)腕を開いて肩まで挙上する 2)手が上になるように肘を直角に曲げる 3)手を握って開くという動作を繰り返えす 4)この動作を腕を上げたまま 3 分継続できない場合は陽性と判断する これらのテストが陽性であった場合、胸郭出口症候群の可能性が高まります。 まとめ・【胸郭出口症候群】自分でできる症状チェック方法を紹介! 胸郭出口症候群やそのセルフチェックに関して紹介しました。この記事で述べたようにこの疾患は、腕を上げるなど日常的に行う動作で痛みや痺れが生じるため日々の生活に支障をきたします。 治療は基本的に保存療法となりますが、発見と治療介入が遅れると症状緩和のために手術を行わなければならなくなる場合もあります。早期にリハビリなどを始めることで少しでも症状を和らげましょう。 そんな時にこの記事で紹介した「チェックリスト」や「セルフテスト」が有効です。 違和感をはじめ、少しでも疑う症状があった場合は、ぜひ一度確認してみられてはいかがでしょうか。 症状があるのであれば、整形外科を受診しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S112 監修:医師 加藤 秀一 ▼以下にも胸郭出口症候群の情報を記しました 胸郭出口症候群のセルフケア!効果的なマッサージやストレッチ方法をご紹介
最終更新日:2024.05.03 -
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ばね指で、やってはいけないこと!について解説します 「ばね指ってなに?」「ばね指になったときにやってはいけないこと?」 ばね指は手をよく使う方に起こりやすく、発症すると痛みや指の動かしづらさを感じます。 この記事では、ばね指について、またばね指になってしまった場合にやってはいけないことを紹介します。 ばね指とは? バネ指とは、「指に起こる腱鞘炎」のことで、弾発指とも呼ばれます。 手の指は、骨・筋肉・神経などが共に働くことで曲げ伸ばしをしています。指を曲げる時に使う筋肉は、指の手のひら側についておりそれらの筋肉はそれぞれ骨と繋がっています。筋肉と骨がつながっている部分を「腱」と呼び、その腱の周りをトンネルのように覆っているものを「腱鞘」と呼びます。 この腱鞘は、指を曲げる筋肉(屈筋)が指の骨から浮き上がらないようにする働きを持ちます。この働きをもつ腱鞘を靱帯性腱鞘と呼び、浮き上がらないようにすることで曲げる力を逃すことなく、滑らかに指を曲げることが可能になります。 ばね指とは、この腱鞘に何らかの原因で炎症が起こることで指の動きが悪くなる病気です。 ばね指の症状 腱鞘に炎症が起こると腫れが生じます。腱鞘が腫れると、腱が腱鞘の間をスムーズに通りづらくなり、圧迫されたりします。そのため、腫れてしまうと関節のスムーズな動きが阻害され指を曲げた後に伸ばしづらくなり、動かす際に強い痛みを生じます。 曲がった状態の指を伸ばそうとする時ばね指の場合、最初は腱鞘に腱が引っかかるため伸ばすことができません。 しかし、ある一定のところで急に腱との引っかかりが外れると、ガクンとばねのように指が急に伸びます。この現象をばね現象と呼び、ばね指の特徴的な症状です。 ばね指の原因 ばね指は腱や腱鞘に負荷がかかることで発症します。そのため、日常から手や指を使う動作を繰り返す場合ばね指となる可能性が高くなります。 それ以外にホルモンバランスでも腱や腱鞘が弱くなるため、日常から家事をする女性(特に更年期や妊娠前後、妊娠中)に認めることが多いです。また糖尿病の方や人工透析をおこなっている方、関節リウマチなど膠原病をお持ちの方は、手や指の血行が悪くなりやすいため腱や腱鞘に十分な栄養が行き届かず弱くなりやすく、ばね指のリスクが高くなります。 ばね指でやってはいけないこと ばね指の症状や原因について紹介しました。ここからは、ばね指になってしまった場合にやってはいけないことについて、ばね指は治療が遅れるとさまざまな問題が生じます。放置し症状が進行すると痛みが今まで以上に強くなり、関節の動きも悪くなります。 指が全く伸ばせなくなるまで進行してしまうと、手術で腱鞘を切開しなければなりません。 また、手の指は1本1本が協調して動いているため、ばね指になったのが1本だけであったとしても他の指の動きも悪くなり、手を握ることが難しくなってしまうこともあります。 強い炎症が起こった影響で、最終的に関節が変形する場合もあるため、放置せずしっかり病院を受診しましょう。 無理に伸ばす 指が曲がって動きにくくなっている場合、無理に伸ばそうとしてしまう方がいらっしゃいます。確かに、ばね指の発症を予防するために軽いストレッチは有効かもしれません。しかし、すでに腱と腱鞘に炎症が起こっている場合は、無理に動かそうとするとそれ以上の負担を患部にかけることになります。 無理に伸ばすことでさらに強い痛みが起こったり、それ以降指がさらに伸ばしにくくなることもあるでしょう。ばね指の症状がある場合は動かさず、安静を保ってください。 患部をマッサージする ばね指は指を動かしたときに痛みが強く出ます。そのためマッサージをすれば症状が緩和されると思われている方も多いです。 しかし、炎症が起こっている部位をマッサージで強く押さえるなどすると、さらに炎症の範囲を広げてしまう可能性があり、むしろ痛みは悪化します。触らず安静を保ちましょう。 放置する 患者さんの中には症状が引っかかりのみであったり、痛みも軽度のため病院を受診せず放置してしまう方もいらっしゃいます。確かに腱や腱鞘の炎症が軽い場合は、指を一定期間安静にしていれば自然に治ることもあります。しかし安静を保たずに負荷がかかり続けると、当然のことながら自然に治らず状態は悪くなります。 まとめ・ばね指で、やってはいけないこと ばね指でやってはいけないことを紹介しました。 この記事で述べたようにばね指の原因のほとんどが腱鞘炎です。しかし、まれに腱鞘炎ではなく腫瘍などそれ以外の影響でばね指となっていることもあります。 また、ばね指は手の指をよく使う仕事をしている方がよくなる病気です。ばね指の治療はまず安静です。安静にすることで仕事に支障をきたしてしまうため、なかなか安静を保つことは難しいかもしれませんが、そうしなければ症状が悪化し、今後仕事を継続すること自体が難しくなってしまうかもしれません。 少しでも疑う場合は、まず病院を受診してください。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S110 監修:医師 加藤 秀一 ▼こちらも参考にされませんか ばね指とは?放置すると重症化のリスクが大!原因と治療法を医師が解説
最終更新日:2024.05.20 -
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脳卒中の前兆をリストでチェックして危険を予防しませんか?! 脳卒中は、時に命の危険や障害、寝たきりのリスクもある重い病気です。そのため、前兆となる初期症状を理解し、「脳卒中かもしれない」と思ったらいち早く治療を受ける必要があります。 そこでこの記事では、脳卒中を早期発見するために知っておきたい前兆や初期症状、脳卒中のリスクが高い方の特徴をチェックリストにして解説していきます。 脳卒中の前兆に対する理解を通して、早期発見や早期治療につなげましょう。 脳卒中は脳の血管に起こる病気のこと 脳卒中とは、脳の血管が破れたり、詰まったりする病気です。脳に酸素や栄養を送っている血流が悪くなるため、脳の細胞は重大なダメージを受けます。その結果、命の危険や障害が残るケースも多く見られます。 脳卒中には、血管のダメージの現れ方によって大きく次の種類があります。 脳卒中 脳出血・くも膜下出血 脳の血管が破れて出血する 脳梗塞 脳の血管が詰まる 脳卒中の原因は様々です。 主に生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)、生活習慣(食生活、飲酒・喫煙、運動不足)、ストレスなどの影響が積み重なって発病すると言われています。 脳卒中は脳血管障害とも呼ばれますが、種類によって好発部位は異なります。脳出血の場合は被殻・レンズ核や視床などが代表的ですが、一般的に脳のどの領域でも起こりうる病気です。 脳卒中の代表的な症状 脳卒中によって人間のからだや心をコントロールしている脳がダメージを受けると、生命を維持すること、からだや頭を使うことなど、生活全般に重大な支障をきたします。 ただ、ダメージがどの部分で起こったかによって、脳卒中の症状は異なることがポイントです。 脳卒中による代表的な症状は以下の通りです。 頭痛:激しく頭が痛む 麻痺:主に片方の半身がしびれる、動かなくなる 言語障害:言葉が出ない、ろれつが回らない 視野障害:主に片目が見えにくくなる めまい:天井が回るようなぐらぐらしためまいがある 失調:ものがうまくつかめない ひとつでも当てはまる症状があれば、脳卒中を疑いましょう。 脳卒中の前兆・初期症状 脳卒中の前兆を「TIA(一過性脳虚血性発作)」と呼びます。 初期症状であるTIAは数分〜数十分程度で消えることが多く、脳卒中の前兆と気づかないこともしばしばです。 TIAも、脳卒中と同じ症状が現れます。ただし、一時的な脳の血流の悪化が原因なので、短時間で収まることがポイントです。 TIAの主な症状 以下で、脳卒中の前兆であるTIA(一過性脳虚血性発作)の主な症状を見ておきましょう。 ・突然片方の手や足、顔半分がしびれる ・激しい頭痛が起きる ・言葉が出ない、ろれつが回らない ・相手の言葉を理解したり、自分の思いを上手く言葉で伝えられない ・箸やコップを持とうとしても力が入らず落としてしまう ・立ったり歩こうとしたりしてもふらついてバランスを崩してしまう TIAは、脳卒中、とくに脳梗塞の前兆として現れることが多い初期症状です。 国立循環器病研究センターによると、TIAは通常24時間以内に症状が消失する一方で、TIA発症後90日以内に15〜20%の割合で、そのうち半数は2日以内に脳梗塞になるリスクがあると注意喚起しています。 そのため、短時間で収まったからといってそのままにせず、早期受診で脳卒中を予防することが大切です。 参考:国立循環器病研究センター 脳卒中を防ぐために!脳卒中チェックリスト 年齢や生活習慣などによって脳卒中になりやすい方がいます。ここでは、脳卒中を予防する意識を高めるために確認しておきたいセルフチェックリストをご紹介します。 脳卒中セルフチェック 1.年齢・遺伝 ▢60歳以上である ▢家族の中に脳卒中や脳動脈瘤の持病がある 2.体質・既往歴 ▢肥満がある ▢睡眠時無呼吸症候群がある ▢高血圧・糖尿病・脂質異常症など生活習慣病である ▢腎臓病や不整脈・狭心症などがある 3.生活習慣 ▢喫煙・飲酒をよくする ▢運動不足である ▢「野菜が嫌い」など偏食気味である 4.前兆 ▢片側の手足のしびれや動きの鈍さを感じたことがある ▢片方の目が見えにくくなったことがある ▢言葉が出なくなった・舌がもつれたことがある ▢最近急に頭痛や肩こりがひどくなった ▢頭がボーッとして考え事や計算が苦手になった これらのセルフチェックで当てはまる項目が多い方は、日頃から日常生活の改善や持病の管理を続けることが大切です。 普段から「FAST(ファスト)」を合い言葉に 「脳卒中かもしれない」 「TIAの症状ではないだろうか」 日常生活で身体の不調を感じたとき、以下の4つのセルフチェックを思い出してみましょう。「FAST」というキーワードで、脳卒中の初期症状をわかりやすくの4文字にしたものです。 「FAST」によるセルフチェック 「F (ace)」フェイス:顔のゆがみの症状はないか? ・顔の片側(とくに口角)がだらんと下がっている ・食事中に食べ物が口の片側からこぼれ落ちる 「A (rm)」アーム:片腕の麻痺はないか? ・片腕だけしびれる、動きが鈍い ・箸や茶碗がもてない、手に力が入らず落としてしまう 「S (peech)」スピーチ:言語障害はないか? ・ろれつが回らない ・言いたいことがうまく言葉にして話せない 「T (ime)」タイム:症状が出てからどのくらいの時間が経ったか? ・脳卒中は、早期発見で早期治療を受けるほど、重症化や後遺症を防ぐチャンスが高まります。とくに脳梗塞は、発症から4.5時間以内であれば条件によって症状を改善できる薬を使える場合があるため、症状が現れてからの時間経過が重要です。 なお、最初の3文字「F」「A」「S」は、どれか1つでも症状があれば脳卒中である可能性が高いので注意してください。 まとめ:脳卒中の前兆をリストでチェック!項目に当てはまったら危険信号! 今回は、脳卒中の前兆や初期症状、セルフチェックリストをまとめてご案内しました。 脳卒中の前兆や初期症状で知っておきたいポイントは次の3つです。 ・脳卒中の前兆や初期症状(激しい頭痛、手足のしびれ、ろれつが回らない、など) ・脳卒中になりやすい人の特徴(生活習慣病や生活習慣の乱れが気になる方)) ・脳卒中の早期発見のため「FAST」によるセルフチェックを 脳卒中は発症してから治療を受けるまでの時間によって、病気の改善や後遺症の程度が大きく変わってくる病気です。そのため、日頃からチェックリストを確認して、脳卒中の前兆はないか、TIAの初期症状は出ていないかセルフチェックすることをおすすめします。 年齢や体質、生活習慣などで脳卒中になる可能性が高い方は、持病の治療や生活習慣の見直しを優先しましょう。そして、万一脳卒中の前兆や初期症状に当てはまったときは、できるだけ早く病院を受診してください。 No.112 監修:医師 坂本貞範 ▼以下も参考にされませんか ある日突然起こる脳卒中にご注意!その症状と原因、予防法
最終更新日:2024.03.27 -
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ジョーンズ骨折とは?立ち仕事で歩くと痛い時は要注意! 「立ち仕事で、足の外側が痛い」「スポーツをしたわけではないのに、足の小指側の側面に痛みが走る」 それ、ジョーンズ骨折という症状かもしれません。ジョーンズ骨折は、足の骨折の 1 つで、スポーツをしている人以外にも、立ち仕事をしている人やヒールを履くことの多い若い人にもよく見られます。 この記事では、そんなジョーンズ骨折に関して紹介します。 ジョーンズ骨折かも!?その特徴と原因 ジョーンズ骨折とは、第 5 中足骨近位部の疲労骨折のことを指します。 発症する原因はさまざまあると言われており、欧米人に比べて日本人に起こりやすいとされています。 ジョーンズ骨折の特徴 ジョーンズ骨折の特徴は、一般的によく見る骨折とは違って症状が出にくいことです。 一般的な骨折は、急に外力が骨にかかることで生じます。その場合、患部がすごく腫れて強い痛みを生じるため、その見た目と症状から診断することは比較的容易なことが多いです。 一方でジョーンズ骨折は、慢性的な負荷により骨が折れるため腫れはあっても軽度なことが多く、そのため見た目ではあまり変化がありません。また、痛みはあっても強くないか、痛みを訴えない方もいらっしゃいます。 そのため、完全に骨が折れてしまうまで骨折していることに気づかれない場合もあります。 ジョーンズ骨折の原因 ジョーンズ骨折の原因は、慢性的に骨に負荷がかかることです。 ランニングやジャンプ動作は足の骨に体重以上の負荷をかけます。たまに行う程度であれば問題にはなりませんが、そういった動作を日常的におこなっていると足の骨に負荷がかかり続けてしまいます。負荷がかかり続けた影響で、軽く踏ん張ったり、少し捻ってしまうだけで骨折してしまいます。 そのため、陸上競技やサッカー・バスケットボール・ラグビーなどのスポーツをおこなっている選手によく発症するのです。 しかし、このジョーンズ骨折は日常的にスポーツをしない方でも発症することがあります。スポーツをしているわけではないのに、なぜ発症してしまうのか疑問に思われる方もいるでしょう。 スポーツをしていない方でジョーンズ骨折を発症してしまう原因は、主に以下となります。 ・中足骨(足の甲)に負荷がかかりやすい姿勢をよくとる → ヒールをよく履く、しゃがみ込んだ姿勢での作業等 ・立ちっぱなしの仕事をしている ・足を酷使することが多い生活をしている これらの条件に当てはまっている場合は、足の骨に負荷がかかるため、スポーツをしていなくても骨折を起こしてしまいます。 立ち仕事をしていて、ある日を境に段々と歩行時の足の痛みが生じてきている場合は発症している可能性があります。 ジョーンズ骨折は自然に治る? ジョーンズ骨折の患部である第 5 中足骨は、血流があまり多くないため、一度骨が折れてしまうと治るまでに時間がかかります。 また、骨折が綺麗に治らず、骨癒合していないところがまるで関節のように動いてしまう"偽関節"という状態になる可能性もあります。そのため、ジョーンズ骨折で完全に骨が折れている場合は自然治癒は見込めず手術での治療が推奨されます。 しかし、完全には折れていない不全骨折の状態で、かつ症状が日常生活に支障がないくらいの軽症の場合は、患部への負荷軽減や筋力強化・ストレッチを行うことで自然治癒ができる可能性があります。 手術で治療を行う場合、術後数週は足に体重をかけずに生活する必要があり、その後もリハビリの期間を設けなければなりません。そのため、早期にジョーンズ骨折を予防し、発症したとしても早期に発見することが重要です。 ジョーンズ骨折の予防 先ほども述べたように、ジョーンズ骨折は予防と早期発見が重要です。ジョーンズ骨折を予防する方法は、 ・シューズの調整 ・インソールの活用 ・足のストレッチ・マッサージ ・体重のかけ方の訓練 などがあります。 シューズの調整 足に合わないシューズを履いていると、きちんと体重が分散出来ず、ある一定の部位への負荷が増大します。 また、ランニングやサッカーなど行うトレーニングや競技によって足の使い方が異なり、体重のかかり方もそれぞれで変化します。そのため、ランニングをするならランニングシューズに履き替えるなど競技に沿ったシューズを使用しましょう。 インソールの活用 人によってはもともとの足の形の影響で、どうしても足に負担がかかりやすくなっている場合があります。足のアーチが低い扁平足であったり、逆に通常よりアーチが大きい場合などはインソールが効果的です。 普段使用している靴にインソールを入れることで体重が分散されやすくなり、かかる負荷が減少します。自分のアーチにあったインソールがない場合は、テーピングが有効です。 足のストレッチ・マッサージ 定期的にストレッチを行うことで、筋肉・腱の柔軟性が増します。柔軟性が高まると関節や骨にかかる負担の軽減が期待でき、ジョーンズ骨折だけでなくその他の怪我の予防にも効果があります。 また、ストレッチやマッサージを行うことで血流が改善し疲労が軽減されるため仕事や競技のパフォーマンスも向上するでしょう。 体重のかけ方・足の使い方の訓練 立ち方や走り方の癖で、小指側に体重がかかりやすい人はジョーンズ骨折を発症しやすいです。予防するためには、癖を治すための訓練をする必要があります。日常生活から体重のかけ方や足の使い方を意識し、足にかかる負荷を軽減させましょう。 まとめ・ジョーンズ骨折とは?立ち仕事で歩くと痛い時は要注意! 以上、ジョーンズ骨折について紹介しました。 スポーツ選手などに多く見られる骨折ですが、そうでない人でも発症する可能性があります。一度完全骨折に至ってしまうと、手術や術後のリハビリが必要です。日頃の予防や、早期発見を心がけましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S111 監修:医師 加藤 秀一
最終更新日:2023.10.06