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アキレス腱炎の症状とセルフチェックの方法について解説! アキレス腱炎は、急激な運動量の増加や過度なストレスによって引き起こされることが多い、足の痛みが生じる病気の一種です。 今回はアキレス腱炎の症状と対処方法、セルフチェック方法や運動再開のポイントなどについて解説します。 アキレス腱炎とは アキレス腱炎は、踵の骨(踵骨)とふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)をつなぐ腱であるアキレス腱が、炎症を起こす状態です。運動や立ち仕事が原因となることが多く、急激な運動量の増加や、過度な負担が症状を悪化させることがあります。 スポーツでは、ジャンプを繰り返すスポーツや陸上、剣道などを行う選手に発症することが多いです。下腿三頭筋はつま先立ちや、地面を蹴って歩くなど、足関節の底屈運動とよ呼ばれる動きに関与します。地面を蹴る動きが多いこれらのスポーツでは、この動きが多くアキレス腱に負荷がかかり続けます。 ただし、スポーツなどをしていない場合でも、加齢によるアキレス腱の変性や靴の不適合、偏平足、肥満などが原因で、アキレス腱炎になる方もいます。 アキレス腱炎の症状 アキレス腱炎になると、以下のような症状がみられます。 特にアキレス腱の痛みやこわばりは、朝( 起床後 )、最初の数歩が痛いことが特徴的です。また、炎症が進行すると腱の周りが腫れたり、熱をもって赤くなったりすることもあります。 症状 ・アキレス腱周囲が痛い ・つま先立ちをすると痛い ・ふくらはぎのこわばり ・アキレス腱に腫れや熱感がある アキレス腱炎のセルフチェック なんとなくアキレス腱のあたりが痛むけど、まだ病院に行くほどではない、という場合は、以下の方法でセルフチェックをしてみましょう。 アキレス腱炎かなと思って放置していたら、「アキレス腱断裂」や「踵骨骨折」だったという場合もありますので、これらのセルフチェックで当てはまる項目がある方は、まず整形外科の診察を受けて、正しく診断してもらうことが大切です。 アキレス腱炎は、運動し始めた時は痛みが強くありますが、我慢して運動を続けていると軽減してくるという特徴があります。アキレス腱炎を我慢したまま運動を続けると、難治性になったり、アキレス腱の断裂につながったりするので、無理して続けないことが重要です。 セルフチェックの方法 ①立ち姿勢を取る ②かかとを浮かせる動作を繰り返す → □ 痛みがある場合:アキレス腱に軽度の炎症がある可能性がある → □ スポーツの中止や運動強度の調整を考えましょう ①両手でアキレス腱を触り、痛みや腫れを確認する ②左右で比べてみる → □ 腫れや熱感がある場合:炎症を起こしている可能性がある → □ スポーツの中止や運動強度の調整を考えましょう アキレス腱炎の治療 整形外科では、痛みの場所や性質、腫れなどを確認します。また、他の疾患と鑑別するために、エコー検査やMRI検査で、腱の状態や変性の程度などを見ることもあります。 アキレス腱炎と診断されたら 治療の基本は安静です。運動やアキレス腱に負担のかかる動きをしている場合は、一時的にそれを中止し、アイシングや消炎鎮痛剤などを使用します。テーピングなども併用して、アキレス腱にかかる負担を軽減させることも可能です。 また、踵の部分を高くした中敷きや偏平足用の中敷きを使用することで、アキレス腱の緊張を緩める方法もあります。 どうしても治りづらい場合は注射を行うこともありますが、ステロイドの注射は、アキレス腱を痛めて断裂しやすくするリスクもあるので、安易に使用するべきではありません。 あまりにも改善がみられない場合は、手術療法やカテーテルによる血管内療法などを行うこともありますので、専門機関へ相談することを検討してみてください。 再発予防と運動再開について 治療と同時に、再発予防を考えることも非常に重要です。 単なるオーバーユースだけでなく、練習環境やシューズ、体幹筋力の低下による姿勢不良なども影響してくるため、足りない部分を補う筋力トレーニングやストレッチ、練習環境の見直しも必要です。 運動再開は、痛みや腫れがなくなり通常通り歩けるようになってからです。いつから運動していいかについては、治療している医師や理学療法士と、しっかり相談しましょう。ただし、急激な運動量の増加は避け、徐々に時間や強度を上げていくようにしてください。 また、前述の通り再発予防のトレーニングやストレッチも積極的に取り入れましょう。 アキレス腱炎についてよくある質問 以下にアキレス腱炎でよくご質問頂く内容を抜粋しました。参考になれば幸いです。 Q:アキレス腱炎のような症状です。整形外科を受診する前に自分でできる応急処置はありますか? A:アキレス腱の痛みなどの症状が出た場合は、まず運動を中止しましょう。そしてなるべく動かさないように安静にして下さい。また、氷嚢などを使用し、アキレス腱部を冷やすことも有効です。 包帯がある場合は、アキレス腱をふくめて足首を固定することで、痛みを軽減できる可能性があります。 Q:市販薬を使用してもいいですか? A:市販の薬にも、鎮痛・抗炎症効果がある湿布や飲み薬があります。薬局の場合は、薬剤師の方に聞いてみるのもいいと思います。ただし、薬の使用は症状の一時的な緩和ですので、薬を使用して痛みが引いたからといって、すぐに運動を再開するのは避けて下さい。 また、病院を受診している場合は、適切な処方のために市販薬を使用していることを医師に伝えてください。 Q:再発予防のためのストレッチはどのようなものがありますか? A:ふくらはぎをのばすストレッチがよいといわれています。階段や段差などに片足のつま先だけかけて、ゆっくりと踵を下ろしながらアキレス腱を伸ばします。最初は無理のない範囲で行いましょう。 座った状態で、つま先にタオルをかけて引っ張るようにしながら、伸ばしていく方法も効果的です。 運動前や運動後にこれらのストレッチを行うことで、ふくらはぎの筋肉の柔軟性が高まり、アキレス腱の緊張を軽減することができます。 まとめ・アキレス腱に痛みを感じたら早めに医療機関の受診を! 今回はアキレス腱炎について解説しました。 アキレス腱炎は、急な運動や過度なストレスによって引き起こされることがあり、スポーツ選手だけでなく日常生活を送る一般の方にも発症する可能性があります。特にアキレス腱の周囲に痛みや、こわばり、腫れや熱感といった症状が見られる場合は、早期の対処が必要となります。 セルフチェックの方法は、立ち姿勢を取ってかかとを浮かせる動作を繰り返すことや、両手でアキレス腱を触って痛みや腫れを確認してみてください。これらのチェックで痛みや炎症が認められた場合は、けして無理に運動を続けず、まずは整形外科で診察を受けることをお勧めします。 アキレス腱炎の治療は安静が基本です。運動など、アキレス腱に負担をかける動作を中止し、アイシングや消炎鎮痛剤を使用し、テーピングや適切な中敷きの活用で症状の改善を図りましょう。痛みが強いなど場合によってはステロイド注射や、重度になると手術の可能性もあります。 再発を予防するには、適切な筋力トレーニングやストレッチが重要です。練習環境や、シューズの見直し、体幹筋力の強化など、包括的なアプローチが大切になります。運動の再開は、痛みや腫れが完全に引いてから、医師や理学療法士などの専門家と相談しながら慎重に進めてください。 アキレス腱炎は早期発治療が回復の鍵です。違和感を感じたら、ぜひ簡単なセルフチェックですので取り組んで頂き、少しでも異常を感じたら自分だけで対処しようといせず、早めに医療機関を受診しましょう。発症後は、無理をせず、計画的なリハビリと再発予防に取り組めば健康な足を取り戻すことが可能です。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.127 監修:医師 坂本貞範 ▼アキレス腱が断裂してしまわないよう予防を考えるなら以下もお目通しください アキレス腱炎の原因と治療方法、悪化を防ぐための対策とは?
最終更新日:2024.05.14 -
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アキレス腱炎の原因と治療方法、悪化を防ぐための対策とは? アキレス腱はふくらはぎの筋肉から踵の骨につながる腱であり、歩行やランニングにおいて重要な役割を果たしています。 アキレス腱周囲の痛みを起こす病気としてアキレス腱自体に痛みの原因がある「アキレス腱炎」と、腱が踵の骨に付着する部分に痛みの原因がある「アキレス腱付着部症」があります。どちらも慢性的な負荷や急激な運動量の増加によって引き起こされることが多く、ランニングやジャンプ競技を行うスポーツ愛好家に特に多く見られますが、どこにどんな痛みがでるのでしょうか。 この記事では、アキレス腱炎の原因や症状、治療方法と対策について詳しく解説していきますので、参考にしてみてください。 アキレス腱周囲の痛みを起こす病気 ・アキレス腱炎 ・アキレス腱付着部症 アキレス腱炎の症状と原因について アキレス腱部を押すと痛いというのが主な症状です。安静時の痛みはないことが多く、運動時の痛み、腫れがみられることが多い疾患です。 痛みの部位はアキレス腱が踵の骨に付着している部分から中枢側2~6cmがほとんどで、足関節を反らした際に腱が伸びることで痛みが増強します。 主な原因はスポーツ、自転車などでのオーバーユースや不適切なランニングフォームでのランニングなど、誤ったトレーニングによる負担の増加などです。しかし、原因不明の場合や別の病気の可能性もあるので診断のために早めに病院を受診することが大切です。 アキレス腱炎の診断について 診断のためには整形外科で診察を受けることが必要です。痛みの部位、症状から診断は可能ですが、補助的に画像検査を行うことがあります。 レントゲン・エコー・MRIによる診断 レントゲン写真ではアキレス腱の内部に石灰化を認めることがあり、エコーではアキレス腱の肥厚と、腱周囲の血流の増加を確認できることがあります。またMRIが診断に有用であり、アキレス腱の肥厚や、腱の炎症を反映して腱の内部や周囲の異常信号を呈する場合があります。 アキレス腱炎の治療と期間について 初期の治療は基本的に保存治療が行われます。悪化しないための対策をご紹介していきます。 保存療法の場合 軽症の場合は全治3ヶ月程度です。 回復までの治療期間は症状が続いた期間や病気の重症度によって変わってきます。治療は整形外科で行うことが多く、局所安静やアイシングで患部を冷やすこと、鎮痛薬の服用や局所への注射、理学療法士によるリハビリ・ストレッチングの指導・マッサージなどの方法があります。 局所の安静についてですが、痛みが強い場合には炎症が強いことが多いので松葉杖を使用するなどして痛い方の足を無理に使わないことが大切です。 局所への注射は、アキレス腱と周囲の組織の癒着を剥離する筋膜リリースや炎症を抑えるステロイドの投与などが行われます。 また整骨院の通院についても行なっていただいて構いません。整骨院では電気治療や超音波治療、低周波治療器での治療、温める温熱療法などを行う場合があり、医師の指導のもと治療を受けるようにしてください。 手術療法の場合 保存治療を行なっても6ヶ月以上痛みが続き効果がないなど、保存療法での完治が難しい場合には手術治療の方法もあります。 手術では皮膚を切開して、炎症を起こしている腱の周囲の組織を部分的に切除します。さらに腱自体に異常がある場合には腱の部分切除を行い、腱の切除部分が多くなった場合には他の部位から腱を移植して補強を行います。 治療内容が病気の重症度によって異なるため治療費も様々です。詳しい治療費の見込みについては担当医師に確認するようにしましょう。 アキレス腱炎についてよくある質問 以下に、アキレス腱炎に関して良きご質問頂く内容を抜粋しました。 Q:アキレス腱炎で痛くなる場所はどこですか。 A:アキレス腱が踵の骨に付着している部分から中枢側で腱自体に痛みがある病気を、「アキレス腱炎(別名:アキレス腱周囲炎)」と言います。アキレス腱と踵の骨の境界部分の痛みは「アキレス腱付着部症」といい、治療方法が多少変わってきます。 Q:アキレス腱炎に対する注射は効果がありますか。 A:炎症を抑える目的で腱内部や周囲にステロイドを注射する方法があります。しかし、腱の脆弱化や断裂を起こす可能性があるので、何度も注射することは勧められません。また、腱の周囲を剥離する目的でヒアルロン酸や生理食塩水などの注射を行う場合もありますが、病気の状態によってはご本人に適していない場合もあることや、行なっていない施設もあるので事前に確認することが望ましいです。 Q:アキレス腱炎に効果的なストレッチはどのような方法ですか。 A: 下腿三頭筋や、太ももの裏にあるハムストリングのストレッチは、治療、再発の予防に効果的です。下腿三頭筋のストレッチは階段や足台などの段差があるところに痛い方の足の先をかけ、踵をゆっくりと降ろしていきます。我慢できる程度の痛みの範囲で10〜15秒ほど伸ばすのを3回行い、これを朝・夕の1日2回行います。夜は入浴後など身体が温まっている状態で行うのが効果的です。 まとめ・アキレス腱炎の原因と治療方法、悪化を防ぐための対策とは? アキレス腱部の痛みはアキレス腱炎のほかに、アキレス腱付着部症という病気があります。どちらもオーバーユースや急な運動によって起こります。症状、治療方法が多少異なりますので、正確な診断のために整形外科を受診するようにしましょう。 アキレス腱炎は、スポーツ愛好家や日常生活でも過度な負荷がかかる場合に見られる疾患です。アキレス腱自体やその付着部に痛みが生じるこの病気は、オーバーユースや不適切なトレーニングフォームが主な原因と言えるものです。症状としては、運動時の痛みや腫れが一般的で、安静時には痛みが少なくなることが特徴です。 アキレス腱炎の診断には、整形外科での診察を受けましょう。レントゲンやエコー、MRIなどの画像検査でアキレス腱の状態を詳細に確認します。初期の治療は保存療法が基本で、安静やアイシング、鎮痛薬の服用などの指導が行われることが多いです。ただ、場合によってはステロイド注射が行われます。整骨院での電気治療や温熱療法も有効です。 しかし、これら保存療法で改善が見られない重症の場合には手術療法が検討されることがあります。手術では、炎症を起こしている組織の部分的な切除や、必要に応じて他の部位からの腱移植が行われます。 アキレス腱炎を防ぐためには、適切な靴の選択、正しいフォームの維持、無理のない運動計画、そして運動前後のストレッチが重要です。痛みや異常を感じた場合は、早期に整形外科を受診し、専門的な診断と治療を受けましょう。 日常的なケアと予防を心がけることで、アキレス腱炎のリスクを軽減し、健康的な生活を維持することができます。 自身の体に適切な注意を払い、アキレス腱を大切に守っていきましょう。アキレス腱炎に悩む方や、スポーツをされる方はぜひ参考にしていただき、健康な身体作りに役立ててください。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S126 監修:医師 加藤 秀一 ▼以下、セルフケアについて記しています。 アキレス腱炎のつらい痛みの治し方!自宅でできるセルフケアのポイントとは?
最終更新日:2024.05.14 -
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脳梗塞の種類!知っておきたい合併症と治療を解説します 脳梗塞は、ある日突然、脳の血管が詰まって血流が止まることで脳の神経細胞が死んでしまう病気です。脳の血流が止まると、脳にある細胞は数時間以内に死んでしまいます。 死んでしまった脳の神経細胞の再生は非常に難しく、時に生命に関わることもあり、大きな後遺症が残る危険性があります。脳梗塞は誰にでも起こる起こる可能性がある重篤な病気です。 そこで脳梗塞の原因や症状について正しい知識を持つことが重要となるのです。 この記事では脳梗塞の原因と、3つの種類について解説してまいります。また、治療を行う上で気をつけるべき合併症と、合併症の原因ほか、脳梗塞についても記載し、脳梗塞でよくある質問もご紹介してまいります。 脳梗塞の3つの種類とは? まず脳卒中は、脳の血管が詰まって起こる「脳梗塞」と、血管が破れて出血する「脳出血」に大きく分けられます。 脳梗塞では神経細胞に血液を運ぶ血管の一部が詰まってしまい、神経が障害されることにより麻痺や痺れ、意識障害などのさまざまな症状を起こします。 このように脳梗塞の原因は、血管が詰まることにありますが、以下のように3つに分類されます。 1.ラクナ梗塞 動脈硬化によって細くなった血管が詰まる「ラクナ梗塞」です。 細い血管が詰まることが多く、他の種類の脳梗塞と比べて症状が軽いことが多い点が特徴です。 2.アテローム血栓性脳梗塞 血管にコレステロールが溜まった結果、そこに血の固まりができて詰まる「アテローム血栓性脳梗塞」です。 最初は軽症でも、徐々に血管が詰まっていくことで症状が悪化するなど、段階的に増悪することが特徴です。 3.心原性脳塞栓症 心臓など他の部位で作られた血の固まりが血流によって脳の血管に運ばれて詰まる「心原性脳塞栓症」です。 大きな血の塊が太い血管に詰まることによって突然発症し、障害される脳の範囲が広いため重症な場合が多い点が特徴です。 ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞は、高血圧、糖尿症、脂質異常症や喫煙などの生活習慣が危険因子のため、これらを適切に治療することが予防のために必要です。 一方で、心原性脳塞栓症は心房細動という不整脈が原因であることが多く、その他にも心臓弁膜症でも起こりえます。心房細動では脈が乱れ打ちになってしまい、心臓の中で血液がよどんで血栓ができてしまう場合があります。 この血栓が脳の血管に運ばれて詰まってしまうと脳梗塞を発症します。 そのため、脳梗塞のリスクが高い方は抗凝固薬という血液をサラサラにするお薬を服用して予防をする場合があります。お薬には副作用もあるため、薬のリスクや服用のメリット、デメリットを考えて治療が検討されます。 脳梗塞の3分類 脳梗塞:分類別の原因 ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞 高血圧、糖尿症、脂質異常症や喫煙などの生活習慣 心原性脳塞栓症 心房細動(不整脈)、その他にも心臓弁膜症 脳梗塞の合併症とは 脳梗塞では、合併症として発熱、肺炎、脳・消化管出血、脳梗塞の再発など、さまざまなものがあります。 こういった合併症は、なぜ起こるのでしょうか。 脳梗塞の合併症の種類と原因、治療法 知っておくべき主な合併症の種類と原因、併せて治療に関して解説します。 種類:発熱 ・原因:体温は脳の中枢で管理されていて脳が障害を受けると体温調節中枢も障害され発熱することがあります ・治療:通常は解熱鎮痛薬で対症的に治療します。 種類:誤嚥性肺炎 ・原因:意識障害や、飲み込みの機能の低下で唾液や痰が肺に入り肺炎を起こしてしまうことがあります ・治療:誤嚥性肺炎と呼ばれており、抗菌薬の投与や酸素投与などを必要とする場合もあります 種類:脳出血・消化管出血 ・原因:動脈硬化は血管の色々な部位に起こり、一度脳梗塞を発症した方は再発する危険性が高くなっています ・治療:再発予防には、血液をサラサラにする薬を服用することが推奨されます※ ※血液をサラサラにする薬の副作用として、脳、胃や腸などの消化管で出血を起こしてしまう場合があります。脳出血では、麻痺の悪化、消化管の出血では貧血によって全身状態が悪化してしまうリスクがありますが、完全に予防することは困難で早期発見、対処が重要になってきます。 脳梗塞について、よくあるQ&A 普段、脳梗塞で患者様からお聞きする代表的な質問を記載しました。 Q : 脳梗塞になりやすい人の特徴は? A:脳梗塞の危険因子として生活習慣病があります。 高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満などが挙げられ、健診で異常を指摘されている方は早めに治療を開始することが勧められます。 Q : 脳梗塞の前兆の症状はありますか? A:脳梗塞は突然発症するものから、前兆を伴う場合もあります。脳梗塞の前兆とは急に手足や顔の麻痺やしびれが出現して、時間が経って改善することです。 この症状は一過性脳虚血発作と言われており、動脈硬化などによって一時的に脳の血流が悪くなることが原因とされています。 一過性脳虚血発作がみられた場合には脳梗塞になってしまう危険性があり、早期に病院で治療することが必要です。 Q : 合併症を予防する方法はありますか? A:現代の医学でも合併症を完全に予防することは困難です。危険性を下げるために、発症してからすぐの間は医師、看護師の治療や指導を守ることが必要です。 また消化管出血については、胃潰瘍の既往がある方などでは胃酸の分泌を抑えるお薬を服用してリスクを下げる方法が取られる場合があります。 まとめ ・脳梗塞とは、原因と種類!知っておきたい合併症と治療について 脳梗塞には、「ラクナ梗塞」「アテローム血栓性脳梗塞」「心原性脳塞栓症」の3つがあり、それぞれ発症の原因や重症度が異なるのが一般的です。 また、治療の過程では、合併症として発熱や肺炎を起こす場合があったり、再発予防のための血液をサラサラにする薬を使用することが原因となって出血を起こしてしまうことがあります。 そのため、脳梗塞を起こさないようにすることが最も重要ですので、脳梗塞に関する正しい知識を持ち、予防に努めた上で症状がある時には早期発見・治療することが大切です。 健康で充実した生活を送るためにも、ぜひ参考にしてみてください。 No.126 監修:医師 坂本貞範 ▼発症、前兆を見逃さないため以下も参考にされませんか 脳梗塞の前兆を逃さない!初期症状のチェックリストはこちらです!
最終更新日:2024.06.24 -
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頭に「こぶ」のようなものができて押すと痛い!考えられる疾患についてご説明します シャンプーのときや髪をかきあげた時など、ふとしたときに頭に「こぶ」のようなものに触れた経験はありませんか? 放置して何事もなかった場合にはよいですが、押したり触れたりすると痛みがある場合は不安ですよね。 今回は、頭にできる「こぶ」の原因と受診の目安について解説します。 コブの種類 ・皮下血腫(たんこぶ) ・感染(ニキビ) ・皮膚炎 ・腫瘍(良性、悪性) 頭にできる「こぶ」の種類 頭のこぶは大きく、皮下血腫、感染症、皮膚炎、腫瘍に分けられます。 皮下血腫(たんこぶ) 皮下血腫はいわゆる「たんこぶ」のことです。頭をぶつけた際に、皮膚の近くの血管が切れてしまい、血溜まりを作ってしまった状態です。 皮下血腫自体は特に治療をせずに治ることが多いですが、頭を打撲して嘔吐したり、意識が悪くなったり、打撲した前後のことを覚えていなかったりする場合にはすぐに受診をするようにしましょう。 感染(ニキビ) ニキビは皮脂が毛穴を閉塞することで、アクネ菌が増殖することで炎症を起こします。ニキビといえば顔のイメージがありますが、頭皮にも起こることはあります。 また、毛包炎・毛嚢炎は毛穴に黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などの皮膚常在菌が感染することで炎症を起こす疾患です。どちらも菌により炎症が起こるので、押すと痛い、赤く腫れることがあるのが特徴です。 皮膚炎 頭皮がシャンプーや整髪料、髪染めなどに反応してしまい、炎症を起こす接触性皮膚炎もこぶ・できものの原因になります。ただれ、水ぶくれが多く、大きなしこりはあまり起こりません。原因となるものを使用しないことが重要です。 腫瘍 腫瘍には良性のものと悪性のものがあります。医療機関でのご相談をお勧めします。 良性の腫瘍(粉瘤、脂肪腫) 良性の腫瘍には「粉瘤(ふんりゅう)」があります。粉瘤は、毛穴の一部に皮脂などが溜まって、袋状となった良性の腫瘍です。柔らかいしこりとして触れ、痛みはあまりありません。 内部で細菌が増殖して炎症を起こしてしまうと、痛くなったり膿が出たりすることがあります。脂肪腫も良性の腫瘍です。同じく、柔らかいしこりとして触れます。 悪性の腫瘍 頭皮にできる悪性腫瘍には、「有棘細胞癌」や「悪性黒色腫」があります。触るとごつごつしたり、硬いという特徴があります。また、潰瘍となって液体が出てきたり、血がでたりすることもあります。 一般に良性のものでは大きさは変わらずに経過することが多いです。しかし、小さな「イボ」として感じていたものがどんどん大きくなっている、血が出ているなどは悪性を疑う情報となります。 「こぶ」と脳卒中との関係は? 頭は外面から、皮膚、骨膜、頭蓋骨、硬膜、くも膜、軟膜、脳とたくさんの層構造になっています。 頭蓋骨という非常に硬いもので分け隔てられているので、皮膚のできものと脳卒中に直接的な関係はありません。イボやこぶとして触れる病気は、主に頭の皮膚に起こることが多いです。 逆に脳卒中になっても、頭皮にこぶができることもありません。くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤も、皮膚の上から触れるものはありません。脳卒中が考えられる症状は、突然起こることが特徴です。 脳の発症部位によりその症状は様々ですが、代表的な脳卒中の症状は、以下のようなものです。 脳卒中の症状 ・言葉が出づらい ・左右どちらかの手足が動かしにくい ・意識の状態が悪い 注意!頭の「こぶ」で受診したほうがよい場合 こぶや、しこりが赤く腫れて痛い場合、膿が出てくる場合は感染症の可能性があります。切開や抗菌薬を投与したほうが速やかに治る可能性があるため、数日待っても良くならない場合は受診をおすすめします。 こぶやしこりが、大きくなっていたり、数が増えたりする場合は悪性腫瘍を考えなければなりません。早めの受診をしましょう。 また、頭をぶつけた際にできたこぶが、どんどん大きくなっている、意識の状態が悪くなっている、話しづらさや手足の動きづらさが出てきたりするなどの場合は、早急に受診をするようにしましょう。 早急に受診してください!(皮膚科、形成外科、脳外科) ・こぶや、しこりが赤く腫れて痛い: 感染症の可能性 ・膿が出てくる場合: 感染症の可能性 ・こぶやしこりが、大きくなっている: 悪性腫瘍の可能性 ・こぶやしこりがの数が増えてきた場合: 悪性腫瘍の可能性 ・頭をぶつけて:「こぶ」が大きくなってきた場合 ・頭をぶつけて:意識の状態が悪くなってきた場合 ・頭をぶつけて:話しづらさ、手足の動きづらい場合 頭の「こぶ」についてよくある質問 頭にできるコブについて患者様から、よく頂く質問から抜粋して記載します。 Q: 小さな時からある頭の「こぶ」は、どうしたらよいですか? A:幼少期から長期間ある場合は、重篤な病気である可能性はそこまで高くはないでしょう。見た目として気になる場合、赤みや痛みなど新しい症状がでた場合、大きくなる場合は受診するようにしましょう。 Q:頭の「こぶ」が心配なとき、何科を受診したらよいですか? A:皮膚科や形成外科を受診するのが良いでしょう。 頭のこぶやしこりが気になるのなら、皮膚科もしくは形成外科を受診しましょう。頭をひどくぶつけて、皮下血腫(たんこぶ)ができた際には、脳外科を受診するのが良いでしょう。 受診する際は、いつ頃からできているか、できものに心当たりはあるか、痛みはどうか、他に症状がないかを言えるようにすると、正確な診断に繋がりやすいです。 Q:頭の「こぶ」に痒みがある場合、どうしたらよいですか? A:まずは頭を清潔にしましょう。シャンプーや整髪料を変えたなどがあれば、一時的に使わずに様子を見ましょう。かゆみがひどくて掻きむしってしまう場合は、皮膚科などを受診するとよいでしょう。 まとめ・頭のこぶに少しでも異常を感じたら早急に受診をしよう! 頭の「こぶ」は自分では見えない部分なのでより不安にも感じやすいと思います。 「こぶ」の原因は、皮下血腫、感染症、皮膚炎、腫瘍などさまざまな原因が考えられます。一般的には良性のものが多いのですが、痛みや腫れがひどい場合や、悪性腫瘍が疑われる場合は、早めの受診をお考え下さい。 尚、頭皮の「こぶ」と脳卒中との関係はありませんし、頭のこぶが脳卒中の前兆というわけでもありません。脳卒中の症状は突然起こることが特徴的であり、言葉が出づらい、手足の動きが鈍くなるなどの症状があります。 頭に「こぶ」ができた際は、症状や変化に注意し、必要に応じて早めに医師の診断を受けることが重要です。 特に痛みや膿がある場合、大きくなっている場合、数が増えている場合は、感染症や悪性腫瘍の可能性があるので、お近くの皮膚科や形成外科、脳外科など、早急に受診をしたほうが良いでしょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S125 監修:医師 加藤 秀一 ▼頭のことについて以下もご覧になりませんか 頭を打つと危ない場所!危険な打ち方と症状を医師が解説!
最終更新日:2024.05.17 -
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捻挫を早く治すための正しい応急処置方法をご紹介します 捻挫はスポーツや日常生活の中でよく生じる外傷の一つです。しかし、捻挫がどのようなものか、さらに応急処置の方法についてご存じでしょうか。 この記事では、捻挫を早く治すためと、その応急処置方法を詳しくご紹介します。さらに、捻挫についてのよくある質問にもお答えしています。ぜひご参考にしてください。 捻挫とは? 関節は、骨と骨の間に構成されるものです。基本的な構造には、関節軟骨(クッションの働き)、関節包(関節の周りを包み込む外側の膜)、靱帯(関節の安定性を補強する役割で、関節内のものも、関節外のものもある。)などがあります。 捻挫とは関節に何らかの外力がかかって起こる、骨折や脱臼以外の怪我のことを指します。つまり、軟骨や靱帯、腱(筋肉と骨をつなぐもの)の怪我です。 骨折や脱臼はX線写真で判断ができますが、捻挫はX線では判断出来ません。どのような衝撃が加わって怪我をしたのか、今の関節の状態はどうなのかが重要であり、必要があればMRIを利用しながら診断を行います 捻挫の中でも靱帯の重症度は、靱帯の損傷の程度によって決められます。 捻挫の重症度 ・1度:靱帯が伸びてはいるが切れてはない状態 ・2度:靱帯の一部が切れている状態 ・3度:靱帯が完全に切れている状態 捻挫の応急処置 捻挫を早く治すには、まずは応急処置と適切な診断が必要です。捻挫だと思っていたのに実は骨折だった、大したことないと思っていたら全然症状がよくならない・・・などがないように受診をしましょう。 捻挫が起きた際には「POLICE処置」がよいとされています。 「POLICE処置」とは ・Protection(保護) ・Optimal Loading(適切な負荷) ・Ice(冷却) ・Compression(圧迫) ・Elevation(挙上) 以前は「RICE(Rest:安静、Ice:冷却、Compression:圧迫、Elevation:挙上)処置」が進められていましたが、近年ではPOLICE処置に置き換わりつつあります。 POLICE処置の具体的な方法 それぞれの項目は以下の通りです。 Protection(保護) ・装具やシーネ、三角巾、サポーターなどで受傷部位を保護します ・更なる外力で損傷を悪化させるのを防ぐ目的です Optimal Loading(適切な負荷) ・以前は受傷部位の安静(Rest)がよいとされていましたが ・最近では適切な負荷が組織の修復によいのではと言われています ・適切な負荷については、医師などの専門家による指示を聞くのが良いでしょう Ice(冷却) ・氷嚢や氷を入れた袋などで冷やします ・感覚がない中、無理してまで行う必要はありません ・風邪の際に用いるような冷却シートは、表面をひんやりと冷やす程度で関節の内部まで冷やす効果はありません。 ・用いるのなら消炎鎮痛剤の入った湿布を用いましょう ・最近、神戸大学より、重症の筋挫傷に対するアイシングは筋の修復を遅らせるということが報告されました。 ・軽度の筋挫傷についてはまだ効果がわかっていないため、今は迷ったらアイシングをする方がよいでしょう Compression(圧迫) ・受傷部位の腫れや内出血の増悪を予防するために、テーピングや包帯などで圧迫をします Elevation(挙上) ・腫れを防ぐ、軽減するために、心臓よりも上に受傷部位を置きましょう ・足を怪我した際は、仰向けになって足を椅子などに置くとよいでしょう ・あくまでも応急処置としてなので、移動の必要などやむを得ない場合は足を下ろしても構いません 応急処置の後は、適切に受診を行いましょう。軽度であれば保存的に加療が行われ、関節の不安定性が高い重度の場合は手術療法も検討されます。サポーターなどを使い関節に過度な負荷がかからない程度の運動から始めましょう。 捻挫に関してよくある質問 Q:捻挫とはどのような状態ですか? A:関節に外力が加わって生じた怪我のうち、骨折と脱臼以外のものを指します。X線で骨折、脱臼がないことを確認し、必要があればMRIを撮像します。どうやって怪我をしたかも診断には重要です。 Q:捻挫を早く治すには? A:まずは適切な診断が必要です。応急処置としてはPOLICE処置がよいでしょう。炎症が起きている間は消炎鎮痛薬なども併用し、過度な負担がかからないように注意しましょう。 Q:受診するなら整形外科?整骨院? A:正しく診断をつけるという意味でも、X線やMRIでの検査を行える整形外科をおすすめします。近くに整形外科がない、診察時間外の場合には整骨院でも良いでしょう。自分で判断して自己流で治療をするのはよくありません。 まとめ・捻挫を早く治すためには正しい応急処置と整形外科の受診を! この記事では捻挫について解説しました。 スポーツだけでなく日常生活でも怪我をする可能性はあるので、もし捻挫による怪我をしてしまった際は、「POLICE」による応急処置と適切な受診を忘れないようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.125 監修:医師 坂本貞範 ▼以下もご参考にしていただけます 捻挫かもしれない…歩けるけど痛いとき、対処法はどうする?
最終更新日:2024.04.12 -
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肋骨骨折の症状と治療方法について解説します 肋骨骨折は、胸部の外傷で最も多くみられる疾患です。 ラグビーや柔道などの激しいスポーツ外傷や転倒、転落などのケガ、ゴルフのスイング、慢性的な咳などの繰り返しの負担で骨折する場合もあります。また、ケガをしてレントゲン写真を撮っても、骨折がわからない場合もあります。 「肋骨を骨折したかも・・・痛むけど放置してても大丈夫かな」など、痛みが続く場合、いつまで続くのか、自然に治るのか不安に感じてしまうことと思います。 この記事では、肋骨を痛めた時に病院を受診するべき目安の症状チェックと、肋骨骨折の治療法について解説していきます。 肋骨骨折の症状 肋骨は左右12対の骨で背中の胸椎から胸の前にある胸骨までかごのようになっており、その中にある心臓や肺などの臓器を保護しています。 肋骨骨折は胸部外傷の中で最も多くみられ、激しいスポーツ、転倒や打撲などの軽いケガ、交通事故などの大きいケガによって損傷してしまうことがあります。 症状としては、骨折した部位の痛み、皮下出血、腫れです。骨折部を軽く圧迫すると骨がきしむ音がすることがあります。また、体をそらしたり、肩を動かしたりした時や、咳、深呼吸で痛みが強くなることが特徴です。 肋骨骨折の症状 ・骨折部位の痛み ・皮下出血 ・腫れ ・骨折部位の圧迫で骨の”きしむ”音がする ・体をそらす、肩を動かす、咳、深呼吸等で強い痛み 肋骨骨折の診断 診断は、問診と胸部の触診、レントゲンが一般的ですが、病院によってはエコーで診断を行うことがあります。 肋骨は肺や肋骨同士の重なりがあるためレントゲンでの判断が難しく、特に小さい骨折はレントゲンでは見つからない場合も多いことがあります。レントゲン写真のメリットとして、肋骨骨折に合併する気胸(肺を損傷して空気が漏れてしまうこと)を診断できることがあります。 エコーでは、レントゲンで明らかにならない小さいひびを見つけることも可能ですが、実施していない医療機関もあるので注意が必要です。 病院受診の目安 病院を受診する目安を記しますが、痛みや、違和感が強い場合は、放置することなく医療機関を受診するようにしましょう。 受信する目安について、胸をぶつけた後に押して痛みがある、呼吸やくしゃみで痛みが悪化する、内出血がある場合には、骨折をしている可能性があるので受診をすることが勧められます。 また、息苦しさがある場合には気胸を起こしていることがあるので、できるだけ早めに受診するようにしましょう。 医療機関を受診の目安 ・押すと痛い ・呼吸、くしゃみで痛みが強い ・内出血がある ・息をするいのが苦しい(気胸の可能性) 肋骨骨折の治療法 明らかな骨折、不全骨折(いわゆる“ひび”)、X線で骨折がはっきりしない打撲の場合でも治療は、ほぼ同じです。 痛みが軽い場合には、消炎鎮痛薬の内服と湿布などで痛みを和らげます。 痛みが強い場合には、バストバンドやトラコバンドとよばれる固定帯(コルセット)で、骨折した部分を圧迫固定します。呼吸で胸が広がることによって、骨折した肋骨に負担がかかり痛みが出てしまいますが、息を吐いた状態でバンドを巻くことで、骨折部の動きが少なくなり痛みが緩和されます。 これらの治療で、多くは数週間で痛みが軽快します。骨折部のずれが大きいときや、複数の肋骨が折れている時には手術が行われることもありますが、かなり稀です。 また、大きいケガで血気胸(胸の中に血液や空気がたまること)がある場合には、呼吸の管理や胸にチューブを挿入する治療が行われる場合もあります。 肋骨骨折についてよくある質問 肋骨骨折でよくお伺いする質問をまとめました。 Q:肋骨が痛いのですが、どのような病気が考えられますか。 A:ケガなど明らかな原因がある場合には打撲、肋骨骨折が最も考えられます。また、ゴルフなどのスポーツ、慢性的な咳などがある時にも肋骨の疲労骨折の可能性があります。 これらの原因がない場合には、肋間神経痛という神経の痛みや、帯状疱疹、稀ですが骨の“がん”などを考える必要があります。帯状疱疹では皮膚のぶつぶつができますが、皮膚の症状より先に痛みがでることが多いので、肋骨周辺の痛みがあるときには、皮膚の上からの、見た目にも注意するようにしてください。 Q:肋骨骨折はどのくらいで治りますか? A:骨折の痛みが軽減するまでは数週間、骨癒合するまでは2-3ヶ月を要するのが一般的です。 肋骨骨折は自然に骨が癒合する確率が高いので、固定のバンドは痛みが和らぐまでの数週間の装着で問題ありません。骨折を起こした後、骨折した部分には3週間程度で仮骨(骨のもと)が作られ、これによって骨折部が安定化することで痛みが和らぎます。その後徐々に骨形成が進むことで骨癒合していき、症状がなくなります。 Q:肋骨骨折をした後にしてはいけないことはありますか? A:大きなケガで血気胸がなければ、痛みの範囲で日常生活に制限はありません。ただし、重いものを持つなどの重労働、激しいスポーツなどの衝撃は痛みが悪化することにつながるので、控えるようにしてください。 まとめ・肋骨骨折の症状と治療方法 胸部の外傷で最も多い肋骨骨折について解説しました。 肋骨骨折は、胸部の外傷で非常に多く見られる疾患であり、激しいスポーツや転倒、交通事故などさまざまな原因で発生します。症状としては、骨折部位の痛み、皮下出血、腫れ、骨のきしむ音、体を動かした際の痛みなどがあります。特に咳や深呼吸、くしゃみをすると痛みが増したり現れることが特徴です。 診断方法としては、問診と触診、レントゲン検査が一般的ですが、エコー検査も用いられることがあります。レントゲンでは小さな骨折が見つけにくいことがあるため、痛みや内出血などの症状が続く場合は注意が必要です。特に息苦しさがある場合は気胸の可能性がありますので早めに受診するようにしましょう。 治療法としては、痛みが軽い場合は消炎鎮痛薬や湿布を用いることが多いです。痛みが強い場合はバストバンドやトラコバンドと呼ばれる固定帯を使用し、骨折部分を圧迫固定することで痛みを緩和することが出来ます。多くの場合、これらの治療により数週間で症状が改善されます。 ただ、中には骨折部のずれが大きい場合や複数の肋骨が折れている場合は手術が必要となることもあります。また、重症の場合は呼吸管理や胸にチューブを挿入する治療が行われることもあります。 肋骨骨折の放置は禁物です。胸をぶつけた後に痛みや違和感を感じた場合、または呼吸困難や内出血が見られる場合は、放置すると危険な場合があります。このような症状が出た後は早めに病院で診断してもらい治療を受けることが大切です。早めに医療機関を受診しましょう。 肋骨骨折は通常なら数週間で痛みが減少し、特別な治療も必要としない骨折ですが、肺などの臓器の損傷や別の病気が隠れている可能性もあるため、注意が必要なことをご理解いただければと思います。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S124 監修:医師 加藤 秀一 ▼以下も参考にされませんか 肋骨骨折の原因と安静期間中の注意、仕事復帰の目安について
最終更新日:2024.06.17 -
- 脳卒中
- 頭部
- 頭部、その他疾患
頭痛で吐き気は危険!一次性頭痛と注意すべき二次性頭痛の見分け方 頭痛は、ありふれた疾患であり、日本人の約4割は、慢性的な頭痛持ちとも言われています。慢性的ではなくても、頭が痛いというような頭痛を感じたことがない人は、ほとんどいないのではないでしょうか。 一口に「頭痛」といっても様々なタイプがあります。国際頭痛分類ってご存知でしょうか?なんと数百種類の頭痛が示されていることに驚かれるはずです。 今回は、そんな頭痛の中でも危険な「吐き気を伴う頭痛」について、具体的にどのような病気が考えられるか、どのように対処したらよいのかなどを中心に解説します。 頭痛の種類 まず、頭痛の種類について詳しくみていきます。頭痛にはたくさんの種類がありますが、大きく分類すると「一次性頭痛」と「二次性頭痛」にわけられます。 一次性頭頭痛とは、頭痛の原因となる疾患が特定できないものをいい、二次性頭痛は原因の疾患が特定できる頭痛です。具体例としては以下の通りです。 一次性頭痛(原因を特定できない) ・片頭痛 ・緊張型頭痛 ・群発頭痛 注意が必要な二次性頭痛(原因を特定できる) ・脳卒中 ・脳腫瘍 ・髄膜炎 ・慢性硬膜下血種 ・緑内障 ・副鼻腔炎 一次性頭痛は直接、命にはかかわらない頭痛ですが「二次性頭痛」は、命に関わることもあり特に注意しなければなりません。 頭痛の種類と特徴|一次性頭痛と二次性頭痛の見分け方 ではどうやって、一次性頭痛と二次性頭痛を見分ければよいのでしょうか。頭痛診療ガイドラインでは、以下のような症状の場合は、注意が必要といわれています。 頭痛でこれらのような症状を伴う場合は、二次性頭痛の可能性があります。原因となる疾患が隠れている可能性があるため、我慢せずに病院を受診し、検査を受けることをおすすめします。 二次性頭痛が疑われる注意すべき症状(医療機関を受診する) ・発熱や意識の低下を伴う場合 ・がんや免疫不全疾患などを患っている ・急激に発症する ・今まで経験したことのない痛み ・50歳以上で初めて経験する症状 ・最近発症した新しい頭痛 ・ろれつが回らない ・目が見えにくくなる ・上記が合併している 吐き気を伴う危険な頭痛と対処法 頭痛が強いと、吐き気も伴うという方も多いかもしれません。ここからは、吐き気を伴う頭痛について、詳しく見ていきます。吐き気を伴う頭痛は、主に3つあります。脳卒中、髄膜炎、片頭痛です。 ・脳卒中 脳卒中は、脳の血管が破れたり詰まったりすることで起こる疾患の総称です。具体的には「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」の3つを指すことが多いです。脳卒中による頭痛は吐き気を伴うことが多く、注意が必要です。 くも膜下出血の場合は、「突然発症し、今までに経験したことがない強い頭痛」が特徴といわれています。 脳出血や脳梗塞の場合は、頭痛に意識障害やろれつが回らない、目が見えないなどの脳神経が障害されている症状を合併します。また、頭がふらふらする感じやめまいを伴うこともあります。 このような症状がある場合は、すぐに病院を受診しましょう。 注意すべき命に係わる頭痛 ・ くも膜下出血:突然、経験したことがない強い頭痛 ・脳出血や脳梗塞:頭痛に意識障害やろれつが回らない、目が見えない、めまい ・髄膜炎 髄膜炎は、脳や神経を包む「髄膜」という膜に炎症が起きたものです。細菌やウイルスが原因のこともありますが、がんや薬剤が原因で起こることもあります。 頭痛や嘔吐を伴うものが多く、髄膜刺激症状と呼ばれる首を前に曲げると痛みがあるといった特徴的な症状を起こすことが多いです。発熱や下痢を伴うことも多く、風邪と間違われることもあります。 子供でも起こることがあり、子供が頭痛を訴えて嘔吐している場合はすぐに病院を受診して検査を受けるようにして下さい。 ・片頭痛 吐き気を伴う一次性頭痛として割合が多いのが、片頭痛です。 片頭痛は20〜40代の女性に多く発症し、こめかみから側頭部にかけてズキンズキンと脈打つような頭痛が生じます。また、頭痛が起きる前には、閃輝暗点(せんきあんてん)といって、視野にギザギザした光がちらつく前兆がある場合もあります。 片頭痛を発症した際には、光や音、においなどに過敏になることもあるので、暗く静かな場所で安静にするのが良いといわれています。 また、血管が開いて血行がよくなると症状が増悪するため、リラックスするために長風呂をしたり、マッサージを受けたり、お酒を飲んだりすることは逆効果なので避けましょう。 あまりにもひどい片頭痛の場合は、薬で症状を軽くすることもできるため、悩んでいる方は病院を受診するようにしてください。 頭痛でよくある質問 Q:片頭痛持ちですが、食事で気を付けることはありますか? A:赤ワイン、チョコレート、チーズ、ピーナッツ、豚肉などは片頭痛を誘発する可能性があるアミン類を含んでおり、控えるべきといわれています。 また、緑茶やコーヒーなどに含まれているカフェインは、摂取しすぎると悪化の原因となるため控えましょう。 Q:デスクワークだと頭痛が起こりやすいですか? A:ストレスや長時間のデスクワークが原因となって発症する、「緊張型頭痛」と呼ばれるものがあります。頭や首の筋肉の緊張によって引き起こされるといわれており、頭を締め付けられるような痛みがおこります。同じ姿勢を長時間続けることで悪化するため、30分に1回程度は休憩をとるようにしましょう。 また、筋肉の緊張をほぐすために、肩や首などをこまめに動かすストレッチを行いましょう。 まとめ ・頭痛で吐き気は危険!一次性頭痛と注意すべき二次性頭痛の見分け方 今回は頭痛について解説しました。 頭痛は、誰もが経験したことがある一般的な症状であり、日本人の多くがその経験をしています。しかし、頭痛にはさまざまなタイプがあり、一次性と二次性の区別が重要です。 一次性頭痛は、直接命に関わることは少ないですが、二次性頭痛には命にかかわる可能性もあります。特に吐き気を伴う頭痛は、脳卒中や髄膜炎など深刻な疾患のサインであることがあります。 このような症状がある場合は、すぐに医師の診察を受けることが重要です。また、片頭痛のような一次性頭痛でも、適切な対処が必要な場合があります。 安静にし、リラックスすることで症状を軽減できる場合もありますが、症状がひどい場合は医師の指示に従うことが大切です。 頭痛はよくある症状ですが、たかが頭痛と甘く見ず、いつもと違う、何か違和感を感じられたら早めに病院を受診するようにしてください。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.124 監修:医師 坂本貞範 ▼頭痛に関し以下も参考にされませんか 頭が痛い、重いとき…頭痛の種類と、それらの原因と治し方!医師が解説
最終更新日:2024.05.23 -
- 手部、その他疾患
- 手部
ばね指を自分で治すためのストレッチとセルフケアについてご説明します ばね指(指の腱鞘炎)で以下のような悩みのある方はいませんか? 「ばね指の症状を和らげる方法が知りたい?」 「自力で、ばね指を治す方法はないものか?」 ばね指は、中指に多く発症しますが、どの指でも発症する可能性があります。 ばね指で起こる症状を和らげるためには、適切な時期に正しいストレッチをするのがオススメです。 この記事では、ばね指を自力で治すためのセルフケアとして、ストレッチや生活で工夫するポイントなどを解説します。指の付け根の痛みや、こわばりに悩む方は、ぜひ参考にしてください。 ばね指を改善するストレッチ方法3選 簡単に誰でもできる「ばね指」を改善させるストレッチの方法を3種類ご紹介します。 ばね指に対するストレッチは、痛みが和らいでから行うのが原則です。なぜなら、痛みが強い時期は炎症が生じているため、無理なストレッチは逆効果になりかねません。 痛みが強い時期の対処法は後ほど解説いたしますので、まずは正しいストレッチを学びましょう。 ストレッチの原則 ・痛みがある場合は逆効果 ・痛みが和らいでから行うこと 1. 腱鞘(けんしょう)ストレッチ ばね指は、指の腱が通るトンネルのような「腱鞘」と呼ばれる部分や、腱そのものが炎症により痛みや、動きにくくなる病気です。 そこで、腱鞘と腱の動きを滑らかにするストレッチを行う必要があり、「腱鞘ストレッチ」と言われるものになります。このストレッチを行うことにより、腱の緊張や腱鞘で生じる摩擦を和らげる効果が期待できます。 腱鞘ストレッチの方法 1. 手首を手の甲側に軽く曲げる 2. 親指の付け根と指の腹でブロック状のもの(リモコンや小箱など)を挟む 3. 指の付け根とその隣の関節は直角になるようにする 4. 指の付け根がしっかり縮むように2のブロック状のものを押し合う 2. 親指の腱鞘ストレッチ ばね指になりやすい親指の腱鞘ストレッチです。 腱鞘ストレッチは、関節を曲げたり伸ばしたりといった反復した動きを行わないのがポイントです。 親指の腱鞘ストレッチ(右手が痛む場合の例) 1. 右手首を手の甲側に軽く曲げる 2. 右親指の付け根をできる限り曲げる 3. 左親指で右親指を伸ばすように抵抗をかける 4. 右親指は抵抗に対して負けないように力を入れて押し合う 3. 指のストレッチ 指全体を伸ばすストレッチです。できるだけリラックスした状態で行いましょう。 指のストレッチ 1. 手首を手の甲側に軽く曲げる 2. 指をできるだけ伸ばす 3. 反対側の手でさらに指を伸ばす 指の腱は手首を通過していますので、手首のストレッチも柔軟性の改善につながります。 指を動かすと痛みが出る場合でも、手首なら痛みなく動かせるようであれば、手首を手の甲側に曲げたり、手のひら側に曲げたりといったストレッチも行うと良いでしょう。 ばね指でストレッチを行う場合の注意点 ばね指は、日常的に指をよく使う場合に生じやすいため、ストレッチにも注意が必要です。 むやみにストレッチをして、症状を悪化させないために、以下の点に注意しましょう。 ストレッチの注意点 1)痛みのない範囲で行う 2)長時間行わない 3)お風呂上がりに行う それぞれの注意点について詳しく解説します。 1)痛みのない範囲で行う ストレッチは必ず痛みのない範囲で行いましょう。痛みを我慢して無理にストレッチを続けると、腱や腱鞘に過剰な負担がかかり、炎症を悪化させる危険性があります。 また、勢いよくストレッチをすると無理なストレスが生じやすく、痛みの原因になります。ストレッチはゆっくり慎重に行いましょう。 2)長時間行わないこと ストレッチの時間は長くても10分程度にとどめておきましょう。 前述の通り、ばね指の原因は、指を使い過ぎて腱鞘や指の腱に繰り返しかかる負担です。そのため、ストレッチを過剰に繰り返したり、長時間行ったりすると、使い過ぎになってしまいます。 ストレッチは、あくまでも固くなった部分をほぐすのが目的です。長時間、何度も繰り返さないように注意しましょう。 お風呂上がりなど、温めて行うこと 入浴後など温めると血液の循環が改善します。その結果、組織の柔軟性が高まり、その状態でストレッチを行うと通常よりも高い効果を期待することが可能です。 そのため、入浴後または、入浴中にストレッチに取り組まれることをお勧めします。 ばね指で気をつけたい2つのこと ばね指では日常生活で気をつけたいポイントが2つあります。 指を冷やさないこと 1つ目は、炎症が改善したあとは、できるだけ冷やさないことです。血流の悪化は組織の固さにつながります。 腱鞘や腱の固さが強まると、腱鞘炎のリスクが高まるため、なるべく指を温めましょう。 指を使い過ぎないこと 2つ目は、パソコンやスマホ、手芸などで指を使い過ぎないことです。 パソコンは指の負担を減らすため、肘から先を机に乗せて、手首を安定させましょう。スマホは片方の手でばかり打つのではなく、両手をバランスよく使えば負担を分散できます。 あまり長時間作業をするのを控え、休憩とストレッチを挟んで作業をするのも良いでしょう。 ばね指で痛みが強い場合は、安静や固定する ばね指の痛みが強いときは、腱鞘に炎症が生じているため、ストレッチにより症状を悪化させる可能性があります。痛みがある場合は、無理せず安静にして、テーピングやサポーターで固定するのもオススメです。 また、炎症が起きてすぐの場合は、温めるよりも、冷やす方を優先してください。アイシングをして、炎症の悪化を防ぎましょう。 ばね指は手指の使い過ぎが刺激となって生じるため、固定をすれば使いすぎを防ぎ、負担を軽減させることができます。 炎症が生じている時期には、早めに整形外科を受診して、炎症を抑える内服薬や外用薬を処方してもらうのも良いでしょう。 ばね指の注意点 ・痛みがある場合:テーピングやサポーターで固定し、安静にする ・ばね指が起こった時点:炎症がある場合は温めないで、アイシングなどで冷やして炎症を抑える まとめ・ばね指を自分で治すためのストレッチとセルフケア ばね指はストレッチで症状を改善!痛みがあるときは無理せず安静にしよう ばね指にはストレッチを行い、腱の動きをスムーズにすることで症状の改善が期待できます。本記事で紹介した方法を参考にして、痛みのない範囲で、無理せず継続しましょう。 ただし、痛みが強い時期は炎症を悪化させる恐れがあるため、ストレッチを控えて、安静にするよう心がけましょう。日常生活で指に負担をかけないよう注意して、サポーターなどを活用したセルフケアも大切です。 ばね指の痛みや引っかかりに悩まされないためにも、ストレッチとセルフケアに取り組みましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S123 監修:医師 加藤 秀一 ▼ばね指は、以下も参考にされませんか ばね指でやってはいけないこと!
最終更新日:2024.05.03 -
- 脳卒中
- 頭部
- 脳出血
脳出血は発症時の意識レベルが予後を左右する!その回復過程について 脳出血とは、脳内の血管が破れて脳内で出血する病気です。これにより神経組織がダメージを受け、命を左右し、さまざまな後遺症を起こす危険性があります。 脳出血は、日本における三大死亡原因のひとつである重篤な病気です。社会復帰できる方もいますが、中には意識不明、重症のまま意識が戻らず亡くなってしまう場合もあります。 脳出血を起こしてしまった方や、ご家族にとって、余命はどのくらいなのか、生存率・死亡率はどの程度で、退院後の生活はできるのか、長生きできるのかなど、多くの心配事に悩まされることでしょう。 この記事では、脳出血を起こした後の予後予測、生存率や回復過程について解説していきます。 脳出血後の予後予測 脳卒中は、脳出血、脳梗塞、くも膜下出血の3つに分けられますが、2022年の脳卒中データバンクでは、「脳出血」の頻度は18.0%と報告されています。また、脳出血の死亡率は高く、発症した方の13.8%が入院中に亡くなっています。 脳出血の発症で死亡してしまう方が多いタイプとは 死亡してしまう方が多いタイプとして、血腫の量が多い、混合型の出血、脳幹の出血、急性閉塞性水頭症を合併している場合などがあります。血腫量が多い場合は血腫の除去、水頭症に対しては脳脊髄液を排出して圧力を下げるドレナージ手術の方法があり、同じく2022年のデータでは手術率は12.6%と報告されています。 このように、脳出血の大部分は保存的に治療されますが、約1割程度は手術を必要とする重症であると考えられます。 脳出血の予後は発症時の意識レベルが重要 脳出血の重症度、死亡率に影響するものとして、発症時の意識レベルがあります。一般的に発症時に意識状態が悪いほど、後遺症も重くなり、死亡率が高くなってしまいます。 また、時間経過とともに、症状が進行することも予後が悪い原因となります。実際に2022年のデータでは、脳出血において19.6%の方は発症時に昏睡状態(Japan Coma Scale 100以上)を呈しています。 脳出血後の5年生存率は報告によってばらつきがありますが、27〜57%程度と報告されており、発症した時の年齢が高齢で意識状態が悪い方ほど死亡率が高くなってしまいます。 参照:「脳卒中レジストリを用いた我が国の脳卒中診療実態の把握(日本脳卒中データバンク)報告書 2022年」 参照:「PubMed®初めての脳卒中後の5年生存率」 脳出血の回復過程の3段階 脳出血を起こした後の回復過程は、急性期、回復期、生活期の3段階に分かれていて、それぞれの段階に応じた治療、リハビリが必要です。 回復過程は3段階 急性期(発症~3か月) 急性期は発症直後から2週間程度の期間です。 出血が広がらないように血圧を下げる治療や呼吸・循環を補助する治療が行われ、場合によって手術治療が行われます。急性期のリハビリは筋肉が衰えたり、関節が固くならないように無理のない範囲で行います。 回復期(3~6か月) 回復期は、急性期の終了後の3か月から6ヶ月までの期間です。 麻痺や動作の障害に対しては理学療法や作業療法を行い、しゃべり辛さ、飲み込みの障害に対しては言語聴覚療法を行います。 生活期(6か月以降) その後の生活期のリハビリでは軽めの運動を取り入れながら、生活の範囲を広げ、動作に慣れるリハビリを行っていきます。 実際に、2022年の脳卒中データバンクでは脳出血後のリハビリは、理学療法を86.4%、作業療法を84.4%、言語聴覚療法を74.3%の方が受けており、55.4%の方がリハビリ目的に転院できています。 しかし、同じく2022年のデータでは、自宅に退院できた方は約26%で、リハビリ目的以外の病院への転院が12.4%、その他の施設(介護老人保険施設、老人ホーム等)への退院が5.4%となっており、急性期を過ぎた後に自宅へ退院できる方は少なく、約2割程度の方は生活機能が低下してしまっていて、療養型病院への転院や施設へ入所していることがわかります。 脳出血についてよくある質問 Q: 脳出血の予防方法はありますか。 A:脳出血の原因は、高血圧性脳出血が約8割と最多です。 高血圧は基本的には無症状ですが、動脈硬化による脳梗塞や脳出血の原因になってしまうため、異常値を指摘されている方は早めに医療機関を受診して治療することをお勧めします。 Q:意識障害はよくなりますか。 A:脳出血の症状と治療は、出血した場所、出血の量によって異なります。 意識障害を起こしている場合は、脳幹という神経が集まっている部位の出血や、出血の量が多く脳が浮腫を起こしている可能性があります。 高血圧に対する降圧、脳の浮腫を和らげる点滴、呼吸状態が悪い場合には、呼吸の補助をするための人工呼吸を行い、場合によっては血腫を取り除くために開頭手術などが必要となることもあります。これらの治療によって意識状態が回復する場合もありますが、損傷した神経自体を回復させる治療はまだないため、重度の意識障害では症状が残ってしまう可能性が高くなると言われています。 そのため、脳出血を発症しないように、血圧管理を含めて日常的な生活習慣に気をつけることが重要です。 Q:脳出血はどこまで回復しますか。 A:脳出血による後遺症、回復の程度は、発症時の症状とその後リハビリにより大きく異なります。 発症した時に意識障害がある場合や高度の麻痺がある場合には、一般的に後遺症が残ってしまいます。また、発症後6ヶ月までは回復する見込みがあり、その期間に集中してリハビリを行うことが勧められます。 ご自身の想定される回復の程度、リハビリが必要な期間について担当の医師とよく相談するようにしましょう。 まとめ・脳出血は発症時の意識レベルが予後を左右する!その回復過程とは 脳出血は、生命はもちらん、一命を取り留めてもその後の生活に関わる重症な病気であり、発症の予防、早期治療が最も大切です。 現代の医療でも損傷された神経を完全に回復させることはできませんが、適切に治療をすることによって残された機能を回復させることができます。少しでも発症前の生活に戻れるようにリハビリを頑張っていただくことが必要です。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.123 監修:医師 坂本貞範 ▼脳出血の情報はいかにもございます。 脳出血の後遺症、寝たきりにならないためのリハビリについて
最終更新日:2024.03.29 -
- 足部、その他疾患
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捻挫の痛みや腫れは骨折や靭帯断裂の可能性!病院へ行くべきか判断する5つのチェック項目とは! 足を捻ってから、腫れや、痛みがあるけど「軽度の捻挫かな…」などと思って無理や放置をしていませんか?その判断、実はリスクが潜んでいるかもしれません。 症状がひどい場合は、病院に行くべきか、何科を受診したらよいのかと迷われることも多いと思います。その点、軽症であれば湿布や安静にして経過観察しようと思いがちですが、しばらく経っても腫れが引かない、痛みが治らない場合は、ただの捻挫ではないかもしれないのです。 内出血や腫れがひどい場合は、靭帯断裂や骨折の可能性もあります。この記事では、捻挫で病院を受診するべきか、受診の必要がないかなど、それらを判断するために症状別、重症度のチェックをするための5項目を解説していきます。 捻挫とは 捻挫の多くは外傷が原因で、スポーツ中や歩行中などに段差を踏み外して、足関節を捻った場合などに生じます。 大部分は、距骨と足関節の外側にある腓骨(ひこつ)を結び付けている外側の靱帯(前距腓靭帯)の損傷で、この部分の損傷が捻挫の90%を占めるという報告もあります。小児では靱帯よりも骨のほうが弱いので、靱帯が付いている骨の部分が剥離する「裂離骨折」が多くなってきます。 捻挫の症状としては、足関節外側の腫れ、痛みがあり、体重をかけた場合に痛みが悪化することが多く、歩行が困難になる場合もあります。 捻挫の治療について、通常は軽度の靭帯損傷が最も多く、その場合にはギプスやシーネ、サポーターで保存的に治療することが可能です。しかし、骨折の場合や靭帯の完全断裂、足関節の不安定性がある場合には手術を要する場合すらあります。そのため、初期の重症度の診断をはじめとした、早期の治療が大切になるというわけです。 病院へ行くべき?捻挫の重症度を判定する5項目のチェックリスト 足首を捻挫した時などに使われる「重症度を判定するために使用するチェックリスト」に「Ottawa Ankle Rule(以下、オタワ アンクル ルール)」というものがあります。 このチェックリストは5項目からなり、「該当する項目が1つでもあれば骨折が否定できない」ため、医療機関を受診し、レントゲン写真を撮影した方がよいという、病院を受診すべきか、しないかの指標とするものです。逆にどれにも該当しなければ、骨折の可能性は低く、病院への受診やレントゲン写真は不要と考えてられます。 ただし、何か違和感があるなど、不安や痛み、腫れが引かない場合は、病院へ行きましょう。診療科は整形外科になります。 オタワ アンクル ルールの5項目 一つでも当てはまれば骨折の可能性がああります。病院を受診しましょう □1.腓骨遠位端(外くるぶし)より6cmまでの中心線に※圧痛がある □2.脛骨遠位端(内くるぶし)より6cmまでの中心線に圧痛がある □3. 第5中足骨基部(かかとの小指側の骨の出っ張り付近)の痛み(圧痛) □4.舟状骨(足背から内側にかけての部分)の痛み(圧痛) □5.怪我をした側で 4歩以上その足に体重をかけることができない/歩けない ※圧痛とは 皮膚に圧力(押すなど)を与えた際に痛みを感じること いかがでしょうか?上の項目に1つでも当てはまってはいませんか?上記に関わらず違和感や、痛み腫れで心配がある場合は迷わず病院での受診をお勧めします。 一方で、靭帯の完全断裂については明確なチェックリストはないのですが、一般的に重症な靭帯損傷では痛みが強いため、オタワアンクルルールに該当することとなり、骨折、靭帯損傷のいずれにしても病院への受診を考えた方がいいという結果となります。 捻挫についてよくある質問 Q: 捻挫をした場合、どうしたらいいですか? A:まずは痛みの部位を確認して、体重をかけることができるか確認しましょう。 痛みの部位は上記のチェックリストを参考にして、「くるぶしの内側」「くるぶしの外側」「かかとの外側」「足背から内側」にかけて押して確認します。押して痛みがある場合や、体重をかけることができない場合には、病院受診をお勧めします。 また、捻挫の初期対応として知っておきたいのが受傷の初期、急性期と言われる時点での対応をまとめた「POLICE」です。 POLICEとは ・Protection(保護) ・Optimal Loading(最適な負荷) ・Ice(冷却) ・Compression(圧迫) ・Elevation(挙上) ※拳上とは 捻挫した患部を心臓より高い位置に保つことで内出血による腫れを防ぐためです。 急性期の傷害対処法は、一般的に受傷後48~72時間以内にPOLICEによる処置を行うことが基本となります。しかし、急性期を過ぎても患部が腫れている、触ると熱を持っているなどの場合は、引き続き「POLICE」処置を継続し、病院のて受診されることをお勧めします。 急性期には負荷をかけられないので、怪我をした直後は包帯で圧迫してアイシングを行い、足を挙上しておくようにしましょう。冷感湿布による冷却も、炎症の鎮静に効果的です。 Q:捻挫は、どの程度の期間で治りますか? A:軽度の靭帯損傷で、手術が必要ない場合には足関節をシーネやギプスで最低3週間固定することが推奨されており、長い場合には6週間程度固定を行うこともあります。また、スポーツの復帰時期については症状経過によります。 一般的には痛みがなくなった後からサポーターをして、ウオーキング、ジョギングなどの軽いスポーツから復帰し、徐々に元の競技へ復帰とします。その間にチューブやタオルを使って足関節周囲筋を鍛えておき、必要であれば予防のためのリハビリも行う場合があります。 病院でのアドバイスにしたが追いましょう。 Q:捻挫後、時間が経過したが、痛みが残っている場合はどうしたらいいですか? A:捻挫による靭帯損傷は重症度により3段階に分類されます。このうち最も重症な「靭帯の完全断裂」では手術も検討されますし、治療が適切に行われなかった場合には足関節の不安定性を生じてしまいます。また、捻挫と思っていても、距骨という骨の軟骨が損傷してしまっていることもあります。 このように、痛みが残っている場合には、足関節の不安定性や軟骨損傷の有無など、原因を詳しく調べる必要があるため早めの病院受診が大切です。 Q:病院を受診する場合は何科を受診すれば良いですか? A:捻挫した場合は、整形外科を受診しましょう。 まとめ・捻挫の痛みや腫れ!骨折や靭帯断裂に注意!病院へ行くべきか5つのチェック項目について 捻挫はありふれた症状であり、軽く考えている方も多いかもしれませんが、症状が強い場合には、骨折や靭帯の完全断裂の可能性もあります。本記事内で解説した5つのチェックリストを目安にしてください。 また、多くの捻挫は怪我をしてから数ヶ月すると強い痛みは取れ、日常生活に支障はなくなります。しかし、症状が軽いからといって無理をすると関節内に二次的な損傷が進行することがあります。 このような関節内の損傷は、“変形性関節症”へと進行する原因にもなるため、早めに病院で診断・治療を受けることが大切です。 以上、捻挫の腫れ、症状が軽いからといって無理をすると重症化のリスクについて記しました。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.121 監修:医師 坂本貞範 ▼以下も参考にされませんか 捻挫を早く治すために!正しい応急処置方法を紹介
最終更新日:2024.05.23 -
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頭を打つと危ない場所!危険な打ち方と症状を医師が解説! 日常生活のなかで、頭を打つことは少なくありません。立ち上がろうとして頭を打った、転倒した、階段から落ちた、交通事故で頭をぶつけた、殴られた・・・など、さまざまなエピソードがあります。 頭を打つとより危ない場所・安全な場所というのはありませんが、ぶつけた部位と強さにより様々な危険な症状が出ることがあります。では、どのような場合が危険なのでしょうか。 今回の記事では、頭を打った場合に見られる危険な症状や、考えられる疾患について詳しく解説していきます。 危険な頭の打ち方 頭を打った際、「強い力がかかって頭をぶつけた場合」には注意が必要です。 例えば、以下のような場面などが考えられます。 危険な頭の打ち方 ・1m以上の高さから転落した ・階段で5段以上の高さから落ちた ・受け身をとらずに転倒した ・交通事故で頭を打った ・車の外に放り出された ただし、高齢な方や薬(特に血液を固まりにくくする薬剤)の影響もあるため、同じ打ち方だから大丈夫ということはなく、その人ごとに判断する必要があります。 また、どのような原因で頭をぶつけたかも重要です。 例えば、「気を失って転倒して頭をぶつけた場合」には、心疾患や不整脈などの別の失神の原因も探さなければなりません。「急に手足の力が抜けて転倒した場合」には、脳卒中などの可能性もあります。 受診をした際には「どのようにぶつけたか」を伝えられるとよく、さらに目撃者がいれば伝わりやすいでしょう。 頭を打った際に危険な症状 誰が見ても重症な場合(明らかに意識の状態が悪い、手足の一部が動かない、血が止まらないなど)は救急で受診をしましょう。 一見重症に見えなくとも、以下の症状がある場合にはできるだけ早く医師の診察を受けるようにしましょう。 医師に相談すべき状態 ・何回も嘔吐する ・頭をぶつけた理由や受傷前の記憶がない ・けいれんがある ・耳や鼻から液体(血も含む)が出てくる ・目の周りや耳の後ろが黒くなる また、自分で症状を言うことができる人もいますが、小さな子供や高齢者では症状を言えないことがあります。何かがおかしいと思った際には、周りに助けを求め、子供でも大人でも悩まず受診するほうがよいでしょう。 頭を打ったことで起こること 大きく急性期(頭をぶつけてすぐ)と慢性期(頭をぶつけてしばらくたってから目立つようになる)に分けられます。代表的なものを以下に記載します。 急性硬膜下血腫・急性硬膜外血腫 脳と骨の間には膜が3層(外側から硬膜、くも膜、軟膜)あります。 頭をぶつけた数時間以内に、硬膜と脳の間で出血するものを「急性硬膜下血腫」、骨と硬膜の間で出血するものを「急性硬膜外血腫」といいます。 急性硬膜下血腫は受傷すぐから意識が悪くなることが多いのに対し、急性硬膜外血腫は受傷しても数時間ほど症状が出ない「意識清明期」があるのが特徴です。 他の症状には、手足の麻痺、悪心・嘔吐、けいれん、瞳孔の左右差などがあります。いずれもCTで診断でき、重症な場合には緊急で手術を行います。 外傷性くも膜下出血 頭をぶつけたことにより、くも膜と脳の間で出血が広がった状態です。 くも膜下出血はほとんどが脳動脈瘤(血管の一部が「こぶ」のようにふくらみ、破れやすくなった状態)によるものであり、頭をぶつけた場合は区別して外傷性くも膜下出血と呼ばれます。 基本は入院での経過観察で、脳圧が高くなる場合は投薬や手術などを行います。 脳挫傷 頭部打撲により、脳そのものが損傷してしまうことです。 頭をぶつけた場合は、ぶつけた部分とその反対の部分を損傷する場合があります。損傷された部位により、片麻痺(左右どちらかの手足が動かしにくい)や失語症(言葉が理解できない、言葉を表に出しにくい)、高次脳機能障害(後述)などがあります。重症な場合は、意識が悪くなったり呼吸がうまくできなくなったりします。 呼吸・循環(血圧や脳血流量)・脳圧・体温をコントロールを第一に行い、それでも進行する場合は手術も検討されます。 高次脳機能障害 頭部外傷では後遺症として、高次脳機能障害を起こすことがあります。 高次脳機能障害には以下のようなものがあります。 記憶障害 ・新しくものを覚えられない、思い出せない 注意障害 ・作業や生活の中で集中できなくなる ・気が散りやすくなったりする 社会的行動障害 ・自分から何もしようとしない ・「無関心」や社会常識から外れた行為が目立つ ・怒りやすい、性的に逸脱する行為、ギャンブルに熱中しすぎる 遂行機能障害 考えて、判断して、課題を解決するという一連の流れができない 頭を打った際のよくある質問 Q.頭を強くぶつけたが、どのようなときに受診したらよいですか? A.意識が不明瞭、手足の麻痺、嘔吐、転倒の記憶がない、けいれんなどがある場合には受診しましょう。 また、高齢者や基礎疾患のある方(特に血液を固まりにくくする薬を飲んでいる場合)も受診したほうがよいです。 Q.何科を受診すればよいですか?その際に注意することは? A.受診するのは脳神経外科や脳神経内科を検討しましょう。 また、顔面のぶつけ方により、眼科や耳鼻咽喉科、歯科などの受診をするのが良いです。受診する際は、どのようにして頭をぶつけたかを伝え、目撃者がいる場合は様子を聞くのが良いです。 普段飲んでいる薬があれば、忘れずに伝えてください。 まとめ・頭を打った際の危険な症状を見逃さないように!迷わず受診しよう 今回の記事では強く頭をぶつけた場合に、どのような症状が出ると危険かを解説しました。 頭を打つことは日常生活でよくあることですが、危険な症状が発生する可能性もあることを知っておきたいものです。特に、強い力がかかって頭をぶつけた場合や、頭部を損傷するような事故に遭った場合には注意が必要です。 頭を打った際には、以下のような危険な症状に注意する必要があります。 ・ 嘔吐が続く ・ 頭をぶつけた理由や受傷前の記憶がない ・けいれんがある ・耳や鼻から液体(血も含む)が出てくる ・目の周りや耳の後ろが黒くなる また、急性期と慢性期の両方にわたって、頭を打ったことによって生じる様々な症状があります。急性期では、急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫、外傷性くも膜下出血、脳挫傷などが起こる可能性があります。 慢性期では、高次脳機能障害が後遺症として現れることがあります。 頭をぶつけないことが第一ですが、もしぶつけてしまった際には、症状や事故の状況をしっかりと把握し、「何かがおかしい」と感じた際には、病院の受診を躊躇わないようにしましょう。 また安全な選択をするために、周囲の人々のサポートも活用しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S122 監修:医師 加藤 秀一 ▼頭痛に関する記事も参考にされませんか 頭痛で吐き気を伴うと危険!考えられる病気やその対処法
最終更新日:2024.04.25 -
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ばね指とは?症状と原因、重症度の基準と治療法 ばね指とは、指の腱や腱鞘に炎症が起こることで手指に痛みや動作時の引っかかりが起こる病気です。 以下のような特徴があります。放置して症状が悪化すると指が伸びなくなってしまうこともあるので、早めの対策が必要です。 ばね指の特徴 ・朝に症状が強くなる ・指の曲げ伸ばしでカクカクとした感じがする ばね指の治療では、注射や手術などもあり、病気の不安に加えて費用面の不安もあると思います。 この記事では、ばね指の症状や原因、検査や治療方法について解説していきます。さらに、ばね指について「よくある質問」には、Q&Aでお答えしています。参考にしていただければ幸いです。 ばね指の症状と原因 指を動かすのに必要な筋肉は前腕にあり、その力を腱が指に伝えることで曲げ伸ばしをすることができます。その通り道で、指を曲げる腱が浮き上がらないように押さえているのが腱鞘(けんしょう)と呼ばれるものです。その構造はベルトとベルト通しの関係に似ています。この腱鞘や腱に炎症を起こし、痛みが生じてしまうのが「腱鞘炎」です。 軽い腱鞘炎の状態で指を使いすぎてしまうと、摩擦のために炎症が進み、腱鞘が厚くなったり、腱が太くなってしまうことで通過しづらくなり、ばね指へと悪化してしまいます。悪化してしまうと、簡単に指を伸ばせなくなり、曲がったままとなってしまいます。 症状 症状は、指の付け根の手のひら側の痛み、腫れや引っかかり感です。朝方に症状が強く、日中は使っていると症状が軽減することも多いです。 ばね指に進行してしまうと、指の可動域が悪くなってしまう場合もあります。 原因 家事や仕事、スポーツなどによる「手や指の使い過ぎ」が主な原因となっており、ホルモンバランスの乱れる更年期、妊娠出産期の女性にも多く生じます。 また、糖尿病、関節リウマチ、透析患者さんにもよくみられる症状で、母指・中指に多くみられます。 ばね指の重症度の基準 ばね指の症状の重症度は、以下の3段階の基準で判断します。 軽症はバネ現象(腱の引っかかりによるカクカクとなってしまう症状)がないもの、中等症はバネ現象があるものの、指の可動域がいいもの、重症は指が曲がった状態となっており、伸ばせない状態を指します。 引っかかりが起きている状態を“ばね指”と言い、腱鞘炎が進行すると、ばね指に悪化してしまいます。 1, 軽症 バネ現象(腱の引っかかりによるカクカクとなってしまう症状)がない 2, 中等症 バネ現象があるものの、指の可動域がいい 3, 重症 指が曲がったままの状態となっており、伸ばせない ばね指の検査 一般的に症状と診察から診断は可能であり、レントゲン検査は不要です。 しかし、関節リウマチや変形性関節症などの骨、関節に生じる病気を見つけるために行われる場合もあります。 ばね指の治療/保存療法 保存治療、腱鞘内ステロイド注射、手術治療について解説します。 保存治療は痛みのみで、引っかかり感のない軽症例や注射、手術希望がない方が対象です。 ①安静(手指の使用制限、シーネ・装具など) 軽症例の自然経過は良好ですので、数日間の安静で、自然に改善する可能性があります。 また、シーネ・装具で指を良肢位で固定することが効果的です。 ②薬物療法(外用薬、消炎鎮痛薬投与など) 内服薬、外用薬はいろいろな状況下で使用されますが、非ステロイド性消炎鎮痛薬の投与は、初期治療に他の保存的療法と組み合わせて使用されます。 また、腱鞘炎の治療にエストロゲン(女性ホルモン)と類似作用のあるエクオール(大豆イソフラボンの代謝物)が有効であるという報告が散見されています。 ③理学療法 消炎鎮痛と関節拘縮予防や可動域改善目的で行われる場合があります。 腱鞘内ステロイド注射 腱鞘内ステロイド注射は軽症、重症を問わず有効な治療方法です。 局所麻酔薬とステロイドを手の平側から腱鞘に注射する方法で、症状改善が期待できます。再発する場合は再度注射が可能ですが、腱が断裂する危険性もあり3カ月以上あけることが望ましいです。 手術治療 手術の適応は、以下のような場合に検討されます。 指の付け根の手のひら側を1―1.5 cmほど切開して、腱の周囲にある腱鞘を切離します。日帰りで可能な手術であり、術後のリハビリは特に必要ありません。 手術を検討する判断基準 ・保存治療が無効だった場合 ・保存治療が有効でも再発しやすく疼痛の強い場合 ・指を伸ばすのに制限があり改善しない場合 ・職業などの事情で早期に確実な回復を望む場合 ばね指についてよくある質問 ばね指についてよくある質問に、Q&A形式でお答えしています。 Q:ばね指は朝だけなぜ痛くなるのですか? A:正確な原因は明らかになっていませんが、夜間寝ている間は指を動かさないので、腱が炎症でむくむためだと推測されています。 指を動かしていると腱のむくみが減少するので、日中には症状が少なくなると考えられています。 Q:ばね指の手術費用はどの程度ですか? A:ばね指の手術は健康保険が適用されます。保険点数は2,050点のため、3割負担では6,000円前後で費用を提示している病院が多くなっています。 実際の手術では薬剤費なども含め、もう少し金額が高くなるため、事前に病院に確認するようにしましょう。 Q:注射の副作用はありませんか? A:ステロイド注射の合併症として、腱断裂、感染症があります。実際に、腱自体へのステロイド注入では腱の軟化を生じる場合がありますが、断裂自体の報告は少数です。医師もその危険性は知っており、連続で使用する場合は3ヶ月以上あけるか、手術治療をおすすめすることが多いです。 同様に感染症についても報告は少数であり、コントロール不良な糖尿病では注意を要しますが、過度な心配は不要と考えられています。 まとめ・ばね指とは?症状と原因、重症度の基準と治療法 ばね指は、中高年の方に追い病気です。指の腱や腱鞘に炎症が起こることで生じる病気で手指の痛みや動作時の引っかかりなどの症状が現れます。日常生活に支障をきたすことも少なくありません。 症状が軽いうちに無理をしてしまったり、指が伸びない状態で放置してしまうと、関節の拘縮など悪化してしまうこともある病気です。 主な原因は手や指の使い過ぎであり、更年期や妊娠出産期の女性にも多く見られます。 症状は朝に強く現れ、日中は軽減することもあります。ばね指は軽症から重症まで進行する可能性があり、重症になると指の可動域が悪化し、指を伸ばせなくなることもあります。 ばね指の治療方法には、「保存治療」「腱鞘内ステロイド注射」「手術」などがあります。 保存治療では安静や薬物療法が行われ、腱鞘内ステロイド注射は痛みの軽減が期待されます。手術は重症や保存治療が効果的でない場合に検討されます。 適切な治療を受けられるように、早めに病院で診断・治療を受けるようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.122 監修:医師 坂本貞範 ▼ばね指は、以下も参考にしていただけます ばね指を自分で治すためのストレッチとセルフケア
最終更新日:2024.06.25 -
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脳出血とストレスの関係性について!その種類と部位を分かりやすく解説! 脳出血とは脳卒中の一種で、脳内の血管が破裂することで出血する病態のことです。脳出血が起きると、出血によってあふれた血液が血腫(血の塊)を形成し、脳神経を圧迫することで多様な症状を生じます。 本記事では脳出血の原因、症状、そしてよく耳にする“脳出血とストレスの関係性”について詳しく解説していきます。 脳出血とストレスの関係性とは ストレスは万病の元とされており、脳出血の一因となります。 人間はストレスを受けると、副腎からコルチゾールという「ストレスホルモン」が多量に分泌されるようになります。 コルチゾールは適度であれば、生活リズムの調整や代謝促進などを行ってくれますが、過剰に分泌されることで、血管が収縮し血圧が高くなり、脳出血の発症リスクが高めてしまいます。高血圧や血圧の乱高下は、血管への圧力となってしまうためです。 ストレスによって生じる脳出血リスク また、ストレスによって脳出血が生じやすい、下記のような状況にも注意が必要です。 睡眠不足による動脈硬化リスク 過剰なストレスによって脳や体は緊張状態となり、睡眠障害となることがあります。不眠症によって動脈硬化が進むこともあり、脳出血の要因となります。 暴飲暴食による高血圧リスク ストレス解消をお酒や食事に求める方も多いと思われます。適度な酒量であれば、問題となることは少ないですが、過度の飲酒が続くと血圧が上昇し、脳出血のリスクを高めてしまいます。 食事も食べ過ぎると胃や腸に負担をかけ、生活習慣病の原因になり、脳出血を生じやすくなります。 喫煙による動脈硬化リスク ストレスにより喫煙の本数が多くなることもあるかと思いますが、喫煙も当然のように動脈硬化のリスクの一つです。 お酒に関しては適量であれば血流が改善する面もありますが、喫煙に関しては悪影響しかありません。 脳出血の種類 脳出血の原因としては、高血圧などの生活習慣が関与しているイメージがありますが、その他にも多様な原因疾患があります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。 高血圧性脳出血 脳出血の中で最も頻度が高いのが、「高血圧性脳出血」で、その名の通り高血圧が主な原因です。 高血圧は動脈に強い負担をかけるため、長期間高血圧に晒されることにより、血管が脆くなり出血してしまいます。ストレスによる影響が最も強いのはこのタイプとなります。 血管腫 血管腫とは、血管にできるコブのような塊のことです。血管が拡張したり増殖することによって生成され、多くは良性ですが血管腫ができると、脳出血を招いてしまうことがあります。 血管腫の中でも海綿状血管腫は出血するリスクが高く、稀に多発することがあります。出血自体も繰り返すことが多いのが特徴で、出血を繰り返すごとに血腫が成長し、脳神経などを圧迫することでてんかん発作を引き起こすことがあります。 動静脈奇形 動静脈奇形とは、胎生期に起こる先天性異常で、血管に奇形が生じる状態のことです。 脳内の動脈と静脈は毛細血管を経由してつながっていますが、動静脈奇形が起きると、動脈と静脈が直接つながるようになります。結合した動脈と静脈の間には、「ナイダス」という異常な血管の塊が生じ、これは通常の血管と比べて非常に脆くなっています。そこに動脈の血流が直接静脈に流れ込むため、血管に負担がかかり、破れることで出血が生じます。 硬膜動静脈瘻(:こうまくどうじょうみゃくろう) 硬膜動静脈瘻は、脳にある硬膜のなかで、動脈と静脈が直接つながってしまう状態のことです。上述した動静脈奇形が先天異常であるのに対し、硬膜動静脈癭は後天的に発生しますが、その原因についてまだ詳しいことはわかっていません。 動脈の血流が静脈に直接流れ込むことで、静脈の血管が耐えきれずに破れてしまい出血が生じます。 脳腫瘍(悪性) 脳腫瘍(悪性)は脳に発生する癌のことで、腫瘍自体が破裂することにより出血することがあります。 脳アミロイド血管症 脳アミロイド血管症は、高齢者に多い脳出血で、脳血管にアミロイドという異常な物質が溜まることで生じます。アミロイドが沈着することで血管が脆くなり、最終的に出血に至ります。 脳アミロイド血管症による脳出血は、再発を繰り返すことが特徴で、脳出血と同時に認知症を発症することも少なくありません。 脳出血は上記のように多様な原因がありますが、高血圧などの生活習慣病を患っていると動脈硬化が進行し、より出血のリスクが高まります。 この他にも、運動や睡眠不足、過剰なストレスを抱え込むことでも血圧が上昇しやすくなり、脳出血のリスクは高まるので、規則正しい生活を送ることが重要です。 脳出血の生じやすい部位と症状 脳出血の症状では強い頭痛や嘔気などが出ることは共通していますが、出血の起こる部位によって他にも様々な症状が出現します。 被殻出血 脳出血の中で最も多い出血部位(約40%)が被殻出血です。頭痛や体の半身が麻痺を起こす片麻痺や表情が歪んでしまう顔面神経麻痺などが生じます。 視床出血 被殻出血の次に多いのが視床出血で脳出血の約30%程度にみられます。視床は視覚や聴覚などで得た情報を集め、感覚中枢に送り届ける役割を担っており、この部分で出血が起こると、頭痛や片麻痺といった上記の症状に加えて、意識障害なども見られることがあります。 小脳出血 小脳は大脳の下に位置しており、運動機能を司っています。この部分で出血が起きると体を動かしづらくなり、ふらつきなどといった運動失調が生じます。徐々に意識障害が起こることもあります。 橋(脳幹)出血 脳幹は大脳と脊髄をつなぐ部位のことで、大脳が処理した情報を身体の運動機能につなげる役割を果たしています。そのため脳幹出血が起きると、四肢の麻痺や眼球運動障害があらわれやすくなり、意識障害なども生じることがあります。発症から数分で昏睡状態になり、数時間で死亡する場合もある重篤な疾患です。 皮質下出血 皮質下出血とは、大脳皮質という大脳を覆う膜の下で出血が起きることです。上記の4つの出血は高血圧が原因となることが多いですが、皮質下出血は動静脈奇形や硬膜動静脈瘻が原因であることが多いです。症状としてはけいれんや、軽めの意識障害などがみられることが多いです。他の部位の脳出血よりも比較的症状が軽い場合が多く、予後が良好なことが多いとされています。 まとめ・脳出血はストレスを和らげ規則正しい生活で予防しよう! 脳出血はストレスなどに起因した高血圧などや生活習慣の乱れなどによって発症することが多いですが、その他にも血管自体の異常によって発症することがあります。 脳出血の予防には、規則正しい生活やストレスを抱え込み過ぎないことが重要となります。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S121 監修:医師 加藤 秀一
最終更新日:2023.12.26 -
- 野球肘
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野球肩|インピンジメント症候群の具体的なリハビリ方法について 野球やバトミントンなどオーバーヘッドスポーツで生じやすいインピンジメント症候群。投球動作で肩に痛みが生じる、いわゆる「野球肩」の一種として知られています。インピンジメントとは「衝突」という意味で、インピンジメント症候群は、肩の関節を構成する骨同士が衝突したり、骨の間に筋肉が挟まれたりして痛みが生じる状態です。 インピンジメントを引き起こす原因はさまざまで、原因に合わせたリハビリの実施が必要です。 今回は、インピンジメント症候群の具体的なリハビリ方法について解説します。 インピンジメント症候群に対するリハビリの目的 肩の関節は、背中にある肩甲骨と腕の骨である上腕骨、鎖骨によってできています。 上腕骨の先端にある球状の上腕骨頭(じょうわんこっとう)が肩甲骨のくぼみにはまるように作られる肩甲上腕関節(けんこうじょうわんかんせつ)が、一般的に肩関節と呼ばれる関節です。 インピンジメント症候群は、以下のような要因で、肩関節の正常な動きが妨げられるため生じます。 インピンジメント症候群の要因 ・関節周辺の組織が固くなり上腕骨頭の位置がずれる ・猫背になり肩甲骨の動きが悪くなる ・筋力が低下して上腕骨頭が正常とは異なる動きをする これらの要因を改善して、インピンジメントを生じさせない動きを取り戻すのがリハビリの目的です。また、リハビリでは、インピンジメント症候群により生じた炎症の回復を補助する目的も含まれます。 次からは具体的なリハビリの内容を紹介します。 インピンジメント症候群のリハビリ|炎症への対応 肩を動かさなくても痛みがでる場合や、夜間に痛みがでる場合は、インピンジメントにより肩周辺の組織に炎症が生じている可能性があります。そのような状態では、積極的な運動よりも、炎症や痛みを和らげる対応が優先されます。 そのため、肩のアイシングや安静時のポジショニング(肩の位置の調整)を行い、肩にかかるストレスを軽減させるのが大切です。ポジショニングは、肩や肘の下にタオルなどを入れて痛みがないポジションを作ります。 振り子運動 また、運動では振り子運動により、自重を使った関節の運動を実施して、肩への負担をかけないようにします。 インピンジメント症候群のリハビリ|猫背を改善するリハビリ 猫背になると、肩甲骨の動きが妨げられるため、正常な肩関節の動きが生じずに、インピンジメントを引き起こしやすくなります。 肩の痛みがあり肩関節を動かしにくいときでも、猫背を改善するリハビリは、肩関節を動かさずに実施できるため、積極的に取り組みましょう。 具体的な方法は以下の通りです。 ストレッチポールでのストレッチ ストレッチポールの上に仰向けで寝て、胸を開いて背中をストレッチします。 cat & dogストレッチ 四つ這いで背中を丸めたり、反らしたりする「cat & dog」の運動もおすすめです。 インピンジメント症候群のリハビリ|肩関節の動きを改善するリハビリ インピンジメントを起こす原因の1つが、肩の関節周辺にある組織の柔軟性低下です。特に肩の後ろの組織が固くなると、上腕骨頭が前方にずれてしまい、正常な肩関節の運動ができません。その結果、インピンジメントが生じやすくなります。 そこで、肩の後ろで関節を覆っており、動きの制限になりやすい後方関節包(こうほうかんせつほう)のストレッチを紹介します。 クロスボディストレッチ 1つ目の方法は座った状態または立った状態で行います。 具体的な方法は以下の通りです。 1, 痛みのある方の腕を肩の高さまで上げる 2, 反対の手で肘を掴んで体の内側に引きよせる 3, 肩の後ろが伸ばされるのを確認しながら30秒キープする 痛みがある場合は無理をしないようにしましょう。 スリーパーストレッチ 2つ目の方法は横向きに寝て行うストレッチです。 具体的な方法を解説します。 スリーパーストレッチ 1, ストレッチする方の肩が下になるように横向きに寝る 2, 腕を肩の高さに合わせるように脇を開く 3, 肘を直角に曲げて前腕を立たせる 4, 反対の手で立てた前腕をゆっくり内側に倒す 5, 限界まで倒した状態で30秒キープする 強く抑えるように倒すと痛みが出やすいので、ゆっくり力を入れずに倒しましょう。 インピンジメント症候群のリハビリ|腱板機能を改善するリハビリ 腱板(ローテーターカフ)は、肩甲骨と上腕骨をつなぐ以下の4つの筋肉をまとめた呼び方です。 腱板とは ・棘上筋(きょくじょうきん) ・棘下筋(きょくかきん) ・肩甲下筋(けんこうかきん) ・小円筋(しょうえんきん) 肩関節をおおうように位置しており、肩関節を安定させて、スムーズに動かせるようにする役割を持っています。そのため、腱板をうまく使えないと、肩関節が不安定になり、正常な関節の運動ができず、インピンジメントを引き起こします。 そこで、腱板の機能を改善するリハビリを紹介します。 棘上筋トレーニング 腱板の1つである棘上筋のトレーニングを紹介します。 1, 腕を体の横につけて、親指が上になるようにする 2, 肘を伸ばしたままで、体から腕が離れるように上げる 3, バレーボール1個分程度まで上げた後で元に戻す 負荷をかける場合は、500mlのペットボトルやチューブを使用しましょう。 腱板は関節を安定させるインナーマッスルですので、負荷は軽めにして20〜30回を目安に3〜4セット行いましょう。 棘下筋・肩甲下筋トレーニング 棘下筋と肩甲下筋は、お互い対照的な働きをする筋肉です。 そのため、棘下筋のトレーニングと反対の動きをすると肩甲下筋のトレーニングになります。 1, 腕を体の横につけて、肘を直角に曲げる 2, 脇を開かないように注意して、手を外側に動かしたり、戻したりする(棘下筋トレーニング) 3, 肩甲下筋をトレーニングする場合は、反対に手を内側に動かしたり、戻したりする 脇を開くと、ほかの筋肉が働いてしまうため、棘下筋、肩甲下筋のどちらのトレーニングでも、脇を開かないように注意しましょう。 棘上筋トレーニングと同様、チューブなどを使い、軽めの負荷で、頻度を多く行いましょう。 まとめ・野球肩!インピンジメント症候群の具体的なリハビリ方法について インピンジメント症候群は肩の柔軟性低下や腱板機能の低下、悪い姿勢によって、正常な関節の運動ができないことで生じます。そのため、リハビリにより、原因となっている部分を改善して、肩関節の正常な運動を可能にする必要があります。 本記事では、原因ごとに基本的なリハビリ方法を紹介しました。より効果を高めるためには、整形外科を受診して、医師や理学療法士などの専門家による指導を受けましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 https://youtu.be/B4Vx0of7CsE?si=ypxnq2LyGBRckfpx ▶治療方法の選択肢のひとつとして、こちらの動画も是非ご覧ください。 No.S120 監修:医師 加藤 秀一 ▼肩のスポーツ障害、ゴルフ肩について解説しています ゴルフ肩(スイングショルダー)とは?その原因と治療法
最終更新日:2024.08.30 -
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くも膜下出血の後遺症として起こる水頭症とは?その症状と予後予測について 水頭症とは、文字通り、頭に水がたまってしまう病気のことを言います。小児でも発症することがありますが、大人ではくも膜下出血の後遺症として起こることが多い病気です。代表的な症状に「歩行障害」「認知症」「尿失禁」などがあります。 しかし、頭に水がたまるというのが具体的にはどのような状態なのかよくわからない、という方も多いかと思います。 今回は、くも膜下出血の後遺症に多い「水頭症」とはどんなものなのか、どのような症状があるのか、後遺症や予後についてもわかりやすく解説します。 水頭症とは 人間の脳は、頭蓋骨の中で脳脊髄液という水に浮いています。脳の内部にも、脳室という空間があり、こちらにも脳脊髄液が流れています。この脳脊髄液には、脳を外部から守ったり、栄養やホルモンを運搬したり、脳の老廃物を除去したりと様々な役割を担っています。脳脊髄液は常に入れ替わっており、毎日500 ml分が新しく作られ、同じ分だけ吸収されています。 正常な状態では、脳脊髄液は、脳の周りや脳室を循環しており、その循環量は150 mlと言われています。何らかの原因でこの流れが悪くなり、脳脊髄液が多量にたまってしまうことによって、脳を圧迫する状態を「水頭症」といいます。 水頭症の種類について 水頭症のタイプとして「非交通性」と「交通性」があります。 非交通性水頭症は子供に起こりやすく、脳脊髄液の流れの中で、どこかが通行止めになっているイメージです。一部でせき止められてしまうことによって、たまった脳脊髄液が脳を圧迫します。数は少ないですが、成人でも脳腫瘍などで起こる場合もあります。 成人、特に高齢者に多いのは、交通性水頭症です。これは、流れ経路には問題がないのにもかかわらず、脳脊髄液が吸収されにくくなり、脳脊髄液の循環量が多くなってしまう状態です。 何らかの原因で、脳脊髄液の吸収機構がダメージを受けることによって起こる続発性が多いですが、突然発症する特発性もあります。 交通性水頭症の場合、徐々に進行するため、脳圧とよばれる頭蓋骨の中の圧は正常に保たれていることが多く、別名「正常圧水頭症」ともいいます。 続発性と特発性の違いは以下の通りです。 正常圧水頭症 原因 発症時期 続発性 くも膜下出血、頭部外傷、髄膜炎など 左記疾患の数週〜数カ月後 特発性 不明 60~70代の高齢者 特にくも膜下出血では、発症の1~2カ月後に、30%程度の割合で正常圧水頭症を発症するといわれています。看護する人たちは、急性期が落ち着いたあとも、患者さんの様子を注意してみていく必要があります。 水頭症(正常圧)の症状とは ここからは高齢者に多い、「正常圧水頭症」について詳しく見ていきます。 正常圧水頭症の代表的な3つの症状は、「歩行障害」「認知症」「尿失禁」の3つです。 これらは、数カ月から数年単位でゆっくりと進行します。そのため老化の症状と間違えられやすく、長期間放置されている場合もあります。 ご自身やご家族で、以下のような症状はありませんか? ・歩幅が小さくなる ・すり足歩行になる ・両足を開いて歩く ・歩行が不安定になる ・物忘れが多く自発性が低下している ・無気力・無関心な状態になっている 初期には歩行障害が出現し、「歩幅が小さくなる」「すり足歩行になる」「両足を開いて歩く」「歩行が不安定になる」などの特徴がみられます。その後、物忘れや自発性の低下が出現し、徐々に活動性が下がって無気力・無関心な状態になります。 症状が進むと寝たきりになってしまう場合もあるため、早期に変化に気付いて検査を行うことが大切です。 水頭症と診断されたら 水頭症は薬で治せるものではありません。基本的には手術療法が必要となります。 具体的には、頭にたまった余分な脳脊髄液をおなかへ流すチューブをいれる「シャント術」が行われます。 一般的には、頭と腹腔をつなぐチューブを体の中に挿入します(V-Pシャント)。また、脳脊髄液は、背骨の神経の周りにも流れており、そこから腹腔へチューブをつなぐ方法もあります(L-Pシャント)。これらの手術は、脳脊髄液の出口を作ることで、症状を改善させることを期待して行います。 水頭症の後遺症や予後は 正常圧水頭症は、手術を行ってもすぐに完治するものではありません。手術後も、シャントから排出される脳脊髄液の量が適切になるように、調整する必要があります。また、退院後に症状の改善が見られなくなり、元の状態に戻ってしまうこともあります。その場合は、シャントの閉塞がないかどうか、チェックする必要があります。 また、3大症状の中では、歩行障害の改善率が最も良好とされています。反対に認知症や尿失禁の改善率は、歩行障害に比べるとやや劣るとも言われています。そのため、治療開始が遅くなった場合は、認知機能の低下や尿失禁などの症状が後遺症として残ってしまう可能性もあります。 予後は、多くの要因に左右されます。たとえばくも膜下出血などでは、そもそも社会復帰できるのは、罹患した患者さんの3分の1とも言われていますので、もともとの病気や脳機能も大きく予後に影響します。 ただし、シャントがうまく機能していれば、脳機能が回復し、症状も改善する症例が多いのも事実です。そのため「治る認知症」とも言われることがあります。 早期に適切な処置を行うことによって、健康寿命を延ばすことができるため、早期発見がポイントになります。 水頭症についてよくある質問 Q:水頭症を疑った場合どんな検査をしますか。 A:まずは、CTなどの画像検査を行い、脳脊髄液が溜まったことによって脳室が拡大しているかどうかを確認します。そのうえで、水頭症が疑わしい場合にはタップテストを行います。 タップテストとは、実際に頭にたまった脳脊髄液を、一時的に抜くことで症状が改善するかを確認するテストです。このテストは、短期間の入院で行います。麻酔の注射をし、背中に針を刺して脳脊髄液を抜き取ります。 タップテストで症状が改善した場合は、シャント手術に進むことになります。 Q:手術は急いで受けた方が良いでしょうか。 A: 正常圧水頭症はゆっくりと進行するため、手術を受けるかどうか、しっかりと検討する時間はあります。また、診断後すぐに手術を受けた患者と3ヶ月後に手術を受けた患者では、1年後の症状改善に大きな差がなかったという研究もあります。 ただし、歩行障害による筋力低下が進むと、手術後の回復が思わしくない場合もありますので、その点は注意が必要です。 Q:シャント手術をした後は、CTやMRIなどを撮っても大丈夫でしょうか。 A:基本的には問題ありません。経過が問題なくても、手術後の脳脊髄液の状態を見るために、定期的に外来で画像を確認する必要もあります。 まとめ・くも膜下出血の後遺症として起こる水頭症とは?その症状と予後予測について 今回は水頭症の原因と症状、くも膜下出血の後遺症の関係について解説しました。 水頭症のなかでも、とくに正常圧水頭症は早期に発見・治療ができれば、症状の改善を期待できる病気です。少しでもおかしいと思った際には、早めに病院を受診しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.119 監修:医師 坂本貞範
最終更新日:2023.12.26 -
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肘の痛みを根本から治療する!再生医療の幹細胞治療とPRP療法を医師が解説 「肘の痛みで通院しているが、イマイチ良くならない」 「もっと積極的に肘が痛い症状の治療を受けたい」 このように、日頃からよく使う肘の痛みに悩む人は少なくありません。 一般的に肘の痛みに対する治療は、肘を安静にして薬や注射による保存療法が第一選択です。治癒が難しい場合には手術療法が行われることもあります。 最近、「再生医療」といって、保存療法と手術療法の中間のような新しいアプローチが注目されているのをご存知でしょうか。肘の痛みなど整形外科の症状にも再生医療は広がりを見せており、根本的な治療になり得るアプローチだと期待されています。 そこでこの記事では、肘部管症候群をはじめとした、さまざまな肘の痛みに対する再生医療の特徴や治療内容について紹介します。 肘の痛みと代表的な病気 一口に肘の痛みといっても、複数の病気の種類があります。原因や症状もさまざまで、肘部管症候群のようにあまり聞きなじみのない病気もあるでしょう。 以下は、肘の痛みでよくある症状です。 ・何もしていなくても肘に痛みがある ・タオルを絞ったり、ペットボトルのフタを開ける時に肘が痛い ・肘から小指や薬指にかけて痛みやしびれがある ・肘の内側を押すと痛い ・テニスのラケットや料理でフライパンを持つと肘の外側が痛い 今挙げた症状の多くは、次の3つの病気に当てはまります。 1, テニス肘(上腕骨外側上顆炎) 2, ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎) 3, 肘部管症候群 - ちゅうぶかんしょうこうぐん - とくに3番目の「肘部管症候群」は小指や薬指の小指側から肘にかけてしびれが強くなって日常生活に支障が出るほか、手術療法の適応になるケースが多い厄介な疾患です。 ひとつずつ見ていきましょう。 1, テニス肘(上腕骨外側上顆炎) テニスのバックハンドをすると痛みが出るため「テニス肘」という別名がよく知られています。 ただし、実際は雑巾やタオルを絞ったり、ペットボトルのフタを開けたり、キーボード入力をしたりなど、日常生活のさまざまな動作で肘の外側に鋭い痛みが走る病気です。 2, ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎) ゴルフのスイングをするときに痛みが出るため、「ゴルフ肘」として知られています。 物を持ち上げたりロープを引っ張ったりする動作をすると、肘の内側に鋭い痛みを感じます。 3, 肘部管症候群- ちゅうぶかんしょうこうぐん - 肘の内側から小指・薬指の小指側にしびれが出るのが初期症状です。やがて症状が進行すると、肘の内側を軽く押す程度でもしびれが走ります。 小指側の尺骨(しゃこつ)神経は、肘の内側の肘部管を通っており、肘の関節の変形などによって神経が圧迫されるため症状が現れます。最初はしびれや軽い痛み程度でも、症状が進行すると麻痺が出たり、腕や手の筋肉が衰えて変形することも珍しくありません。 尺骨神経の障害は回復しづらい神経のため、薬による保存療法で症状の緩和が期待できない場合は、手術療法がよく行われています。 肘の痛みにおすすめ!幹細胞治療とPRP療法とは 従来の保存療法や手術療法に加えて、最近脚光を浴びているのが「再生医療」です。 とりわけ、幹細胞治療とPRP療法は、肘の痛みの症状がある部位に幹細胞やPRPを注射する、再生医療を代表する治療法です。炎症を取り除く、ダメージを受けた細胞や組織を修復・再生する、といった効果が期待できます。 幹細胞もPRPも患者さん自身の血液や細胞をもとに生成されるため、副作用の心配がほとんどありません。また、入院や手術の必要がなく、注射や点滴だけで治療が受けられる点もメリットです。 なお、症状が軽い場合は、自然治癒力を高めて痛みの軽減を目指す“PRP療法”がおすすめです。血小板を多く含むPRPの注射によって、ダメージを受けた組織の修復や炎症の改善が期待できます。 一方で、症状が重い、後遺症が気になる、など神経障害による痛みが強い場合は“幹細胞治療”をおすすめします。 幹細胞は、自分とまったく同じ細胞(自己複製能)と、まったく異なる細胞(文化能)を生み出す、2つの能力を併せ持っているのが特徴です。患者さん自身の脂肪組織から採取した幹細胞を培養し肘に注入すると、炎症を起こしている部位や、組織が損傷している部位に届きます。すると、その場所で新しい細胞を作り直すため、ケガの早期回復を実現し、後遺症の心配を最大限抑制できるのです。 思うように肘の痛みがよくならない方は、再生医療による新たなアプローチを検討してみましょう。 まとめ・肘の痛みを根本から治療する!再生医療の幹細胞治療とPRP療法を医師が解説 このように、肘の痛みに対する再生医療は、痛みの原因となっている部位を積極的に修復しながら治癒を目指すという、画期的な治療法です。軽い肘の痛みなら、PRP治療法から試すと良いでしょう。より確実で高い効果を目指すなら、幹細胞治療の検討がおすすめです。 当クリニックは再生医療のエキスパートとして、肘の痛みに対する幹細胞治療やPRP治療法による治療を数多く手がけてきました。国内トップクラスの細胞加工室の高い技術で、安全かつ治療成績の良い再生医療を提供しています。 「肘の痛みをもっと和らげたい」 「これまでと違った新しい治療を受けてみたい」 肘の痛みでお悩みの方は、ぜひ一度再生医療専門の当クリニックまでお問い合わせください。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.120 監修:医師 坂本貞範
最終更新日:2023.07.05 -
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水頭症による高齢者の認知症症状は“手術で治る”って本当? 認知症の発症率は、高齢化が進むにつれて増えてきています。認知症には複数の原因となる疾患がありますが、その中でも治療可能とされているのが水頭症が原因による「特発性正常圧水頭症」です。 特発性正常圧水頭症による認知症は、認知症全体の5%~10%を占めるといわれており、他にはアルツハイマー型・レビー小体型認知症・血管性認知症などがあります。 【認知症の主な原因疾患】 ・特発性正常圧水頭症 ・アルツハイマー型 ・レビー小体型認知症 ・血管性認知症 本記事では、“水頭症による高齢者の認知症症状が手術で治る”とはどういうことなのか、さらに特発性正常圧水頭症の症状や検査、治療について詳しく解説していきます。 特発性正常圧水頭症とは 認知症の中でも「特発性正常圧水頭症」とは、頭蓋内に脳脊髄液が溜まり、脳が圧迫されて様々な症状が出る水頭症の一種です。 脳脊髄液は、脳室で毎日一定量がつくられ、脳と脊髄の周囲を循環し、静脈などに吸収されていきます。何らかの原因で、この循環に異常が生じると水頭症が発生します。 正常圧水頭症には3つのタイプがあり、最も多いのが特発性正常圧水頭症です。原因は不明ではありますが、主に高齢者に多く発症するとされています。 その他にも、くも膜下出血や髄膜炎などを発症した後に生じる二次性正常圧水頭症や、遺伝的要因により発症しやすいと考えられる家族性正常圧水頭症がありますが、極めて稀な疾患です。 ◇水頭症の症状 特発性正常圧水頭症では、脳の前頭葉の広範囲が障害されることにより、歩行障害、排尿障害、そして認知障害が現れます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。 歩行障害 特発性正常圧水頭症による歩行障害には、下記のような特徴があります。 ・開脚歩行(足が開き気味で歩く) ・小刻み歩行(小股でよちよち歩く) ・すり足歩行(膝を上げずに歩く) ・不安定な歩行(方向転換の時にふらつきやすい) ・歩き出しづらい ・突進現象(歩き出すとうまく止まることができない) 排尿障害 頻尿になったり、尿意を感じにくくなったりします。症状が進行すると、尿意を感じてから我慢できる時間が短くなり、失禁しやすくなります。 認知障害 物忘れや理解力の低下が生じ、ぼーっとするような時間が多くなります。 特発性正常圧水頭症は、歩行障害が初期症状として現れることが多いとされています。 上記の症状のセルフチェックを行い、歩行障害に加えて、排尿障害や認知障害が生じた場合は特発性正常圧水頭症を疑い、病院を受診するようにしましょう。 ◇水頭症の検査 特発性正常圧水頭症では、上記症状をチェックする身体診察が行われ、その程度が確認されます。そのあと、MRIやCTによる脳の画像検査が行われ、特発性正常圧水頭症の疑いが濃厚になった時点で、「タップテスト※」が行われます。 ※タップテストとは、腰椎から脊髄液を30ml程度排除することにより、症状改善がみられるかどうかを確認するテストです。 脊髄液の排出後、歩行などの動きが良くなった場合は「水頭症」と診断され、手術(シャント術)が勧められます。 ◇水頭症の治療 特発性正常圧水頭症の治療では、脳脊髄液の流れを良くする「髄液シャント術」と呼ばれる手術を行います。これは、カテーテル(管)を体内に埋め込むことで、過剰に溜まってしまった脳脊髄液を排出することで脳への圧迫を解放し、髄液循環や脳神経機能を改善させる治療法です。 髄液シャント術の方法には、「VPシャント(脳室-腹腔シャント)」、「VAシャント(脳室-心房シャント)」、「LPシャント(腰椎-腹腔シャント)」があります。 最近では、LPシャントが主流になりつつありますが、腰椎の変形などが強い場合には他のシャントを行います。いずれの手術も脳神経外科の手術としては比較的短時間で行われる手術です。手術時間の目安はおよそ1時間程度です。 ◇水頭症の手術費用 一般的な手術費用は、診療報酬点数が24,310点となっているので、1点=10円とすると約7万円(3割負担)となります。 高額療養費制度を利用すると、自己負担限度額を超えた部分が払い戻されるので、最終的には更に軽減される可能性があります。 ◇水頭症の術後 手術により植え込まれたカテーテルは、定期的に詰まったり壊れたりしていないかチェックし、髄液を抜く量が適切に設定できているか確かめる必要があります。 シャント圧調整方法としては、管の途中に脳脊髄液圧を調節するバルブがついているため、体外から設定圧を調節できるようになっています。シャント圧を下げ過ぎてしまうと、頭蓋内圧が低下し低髄圧症候群を起こしてしまうことがあるので注意が必要です。 カテーテルにより抜ける髄液量は、生活の仕方や体格の変化によって変動するため、定期的にCTやMRIを撮影して頭の中に異常がないかを確認し、適切な髄液量を決めていく必要がありますので定期的に通院するようにしましょう。 まとめ・水頭症は手術で治る可能性のある認知症! 現在のところ、薬物療法はなく手術が唯一の治療法になります。手術しなければ症状が進行し、寝たきりになってしまうなど、手遅れになるリスクもありますが、生命に関わる病気というわけではありません。手術は症状の改善を主な目的としているため、生活の質を上げたい方にはおすすめです。 現在では、歩行障害は8~9割、排尿障害や認知障害は5~7割に有効とされています。このようなことから、“水頭症による高齢者の認知症症状は手術で治る”と言われています。 しかし、特発性正常圧水頭症は治る可能性のある認知症ですが、正確に診断され治療に至るケースはまだまだ少ないのが現状です。早期発見、治療により生活の質が格段に改善する可能性があるので、疑わしい症状がある場合は早期受診をおすすめします。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S119 監修:医師 加藤 秀一
最終更新日:2023.12.26 -
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脳出血の原因と症状、後遺症の種類とリハビリによる改善の可能性 脳出血は、手足の麻痺や呂律が回らないなどの症状で発症することが多く、後遺症が残った場合は日常生活に支障をきたしてしまいます。そのため、治すことができるかは深刻な問題です。 一般的に脳出血の後遺症の程度は出血が起こった場所や発症した時の症状の重さと関係があります。そのため、症状が重い場合は完全に症状をなくすことは難しいのですが、早期からのリハビリテーション(リハビリ)によって、改善する可能性があります。 この記事では、脳出血の症状と原因、後遺症の種類、さらに後遺症を改善するためのリハビリについて解説していきます。 脳出血の症状と原因 脳出血は頭痛や吐き気、手足の麻痺など様々な症状を引き起こします。 脳に張り巡らされている血管の一部が破れて出血を起こす病気で、漏れ出た血液が脳の細胞を圧迫してしまい、脳細胞が障害を負ってしまうことが症状の原因です。 脳は部位によって機能が分かれているため、出血した部位に応じた症状が出てきます。脳幹という脳の重要な神経が密集している部分や錐体路(すいたいろ)という運動神経が走行している部分に障害が及ぶと、意識状態が悪くなってしまったり、重い麻痺が出てしまうことがあります。 また、場所の他に出血の量が多ければ、それだけ脳が圧迫される部分が多くなってしまうので症状が強くなります。部位による症状の例として、前頭葉という脳の前の部分の脳出血では、意欲の低下などが起こりやすくなります。さらに言語・記憶などを制御する側頭葉に障害が及ぶと、言語障害や記憶障害などが出てしまいます。 また、ご高齢であることや、初めの症状が重症であるほど、後遺症が残ってしまう可能性が高くなります。一度障害を負った脳細胞は完全に回復することができず、脳の他の部分がカバーして機能を改善させていきますが、それにも限度があります。そのため、急激に症状が悪化しないように発症してすぐは血圧を下げるなどの症状を悪化させない管理、治療が必要となります。 脳出血|後遺症の種類 脳出血は適切な治療をしても、後遺症が残ることが少なくありません。 脳出血による主な後遺症は以下のような種類があります。 運動麻痺 片側の手足が動かしづらくなる症状で、脳出血が生じた部位によって変わります。 感覚障害 触覚や痛覚が鈍くなったり、逆に過敏になり痺れを感じる場合もあります。 言語障害 構音障害という呂律が回りづらくなる症状や、失語症という言葉が出づらくなったり、理解できなくなる症状があります。 目の障害 視野が狭くなったり、物が二重にみえる症状がでる場合があります。 嚥下障害 食べ物を飲み込みにくくなります。 高次脳機能障害 記憶や注意の障害、感情障害(怒りっぽい、感情の起伏が激しくなる、感情が鈍くなる、悲観的になる、何事にもやる気が出なくなる)などが出現します。 後遺症によっては、治療後も日常生活に影響が出ることもあるので、後遺症の内容を知っておくことが大切です。 リハビリの可能性と改善の程度 このように、脳出血は一度発症すると、完全に回復することは難しいです。しかし、脳出血の後遺症は、リハビリ次第で軽くできる可能性があるので、なるべく自立した生活を取り戻すことができるように積極的にリハビリを行うことが勧められます。 脳出血では発症してから早期のリハビリが推奨され、特に廃用症候群(※)の予防をすることや、障害された部位を積極的に使うリハビリが必要となります。 ※廃用症候群とは、病気の治療のために安静にしすぎた結果、筋力が衰え身体機能が低下してしまう状態です。 そのため、全身状態を管理しながら、関節を動かす程度の負荷の少ないリハビリから行っていきます。特に麻痺側は関節拘縮(こうしゅく)が起こりやすい状態となっているため、可動域制限の予防のためにできるだけ早期に行うことが重要です。その後、状態が安定してきたら、徐々にベッドから離れて、様々なリハビリを開始します。 次に日常生活に復帰するためのリハビリを行います。回復期リハビリと言われ、およそ発症後2ヶ月から6ヶ月程度が目安です。ここでは機能や日常生活動作の障害の程度に基づいて多職種でリハビリを行い、在宅復帰や復職を目指していきます。また障害の程度に応じた介護のサービスも含めて、在宅支援のための調整を行っていきます。 脳出血の後遺症・リハビリに関してよくある質問 Q:後遺症はどの程度改善する可能性がありますか。 A:時間が経ってしまった麻痺症状は、改善の見込みが難しくなります。脳出血による麻痺では、一般的に発症後6ヵ月までは改善する見込みがあります。回復期と呼ばれるこの時期に、ダメージを受けた脳神経のネットワークの再構築が起こると考えられているため、機能回復を最大限にするための積極的なリハビリが必要です。 Q:脳出血のリハビリの期間は? A:急性期病院で脳出血の治療を受けた後は、回復期病院でリハビリを中心とした治療を行い、自宅復帰という流れが一般的です。 回復期病院での入院およびリハビリの可能な期間は、発症から最大で150日、高次脳機能障害を伴う場合は180日と決まっているので、長くても6ヶ月となります。 Q:リハビリはどこで受けられますか。 A:リハビリは医師の指示のもと、病院や診療所、医院もしくは在宅でも医療保険を利用して受けることができます。 また、介護保険を利用して、通所リハビリや訪問リハビリテーション等のサービスも利用することができます。 発症から最大で150日、高次脳機能障害を伴う場合は180日まで可能です。また期間を過ぎた後でも自費でリハビリを提供している施設などで、自費リハビリを行うことも可能です。施設によって多くのプランがあり、自分で選ぶことができます。 まとめ・脳出血の原因と症状、後遺症の種類とリハビリによる改善の可能性 いかがでしたでしょうか。脳出血で考えられる後遺症や、症状を改善させるためにリハビリが必要なことについて解説してきました。 脳出血は生活習慣病の1つであり、発症後の治療も重要ですが、予防が最も大切です。後遺症を残したり、寝たきりとなってしまわないように、日常生活を見直して発症予防に努めていくことが必要です。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S118 監修:医師 加藤 秀一 ▼脳出血のチェック方法について 脳出血の初期症状をセルフチェック!早期治療で後遺症を残さない
最終更新日:2024.03.29 -
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捻挫、歩けるけど痛い!そんなときの対処法 捻挫はよくある怪我ですが、多少痛みがあっても、歩ける場合が少なくありません。そこで、捻挫したあと、歩けるけど痛い場合の対処法についてご紹介してまいります。また、捻挫の原因や症状、治療法についても解説します。 以下のような疑問のある方はいませんか?本記事を参考にしながら対処の仕方を学びましょう! 「足をくじいたあと、歩いて痛みがある場合どうすればいい?」 「捻挫した後の対処法が知りたい」 「足をひねったあと、痛みがあって気になる」 捻挫で歩けるけど痛いときの対処法 捻挫で損傷がひどくないときは、痛みがあっても歩ける場合が多いです。しかし、何もせずに放っておくと、炎症が強まって痛みや腫れの症状が悪化したり、捻挫の再発につながったりします。 そのため、捻挫で歩ける場合でも、正しい対処法の実施が大切です。 怪我をしてすぐの対処法としては、「RICE処置」をしましょう。RICE処置により、捻挫の直後に生じる炎症を抑えて、痛みや腫れ、出血の軽減を図ります。 RICE処置は以下の4つの方法を言います。 ・Rest:安静 ・Icing:冷却 ・Compression:圧迫 ・Elevation:挙上 まずは足首に体重がかからないように座ったり、横になったりして安静にします。その後、アイスパックなどで冷やして、包帯やテーピングで圧迫します。 可能であれば台などで心臓より足が高い位置にくるようにして、足首の出血でたまった血液を心臓に戻すようにしましょう。 また、歩けても痛いときは、足の関節が動いて、損傷した靱帯に負担がかかっている可能性があります。 テーピングで足首を固定しておくと、足首が動かず損傷部位のストレスを軽減させるとともに、捻挫の再発予防につながります。テーピングの代わりに、捻挫用の足関節サポーターを使用しても良いでしょう。 ただし、靱帯の損傷の程度やその後の治療に関しては、専門家による診断を受ける必要があります。痛くても歩けるからといって放置せずに、お近くの整形外科を受診しましょう。 捻挫した時の対処法 ・足首に体重を掛けない ・座ったり、横になって安静にする ・台などで心臓より足が高くなるようにする ・アイスパックなどで冷やす ・包帯やテーピングで圧迫する ・症状を自己判断せず医療機関を受診する 捻挫の治療 捻挫の治療は、手術をしない保存療法が中心に行われます。重症で関節が著しく不安定になった場合や、スポーツ選手で活動性の高い場合は、靱帯を修復する手術が必要になる場合があります。 保存療法は「損傷の重症度や経過に応じた固定」と「再発防止の運動療法」です。 それぞれ、具体的な方法を解説します。 損傷の重症度や経過に応じた固定 RICE処置などの初期治療後には、重症度に応じて固定を行い、靱帯の修復を図るのが大切です。 固定には次のような方法があります。 初期治療 ・損傷が軽度の場合:装具やテーピングによる固定 ・損傷が重度または複数の靱帯が損傷している場合:ギプスによる固定 軽度の場合は、1週間程度ギプスや装具による固定をしたあと、3週間程度のテーピング固定をします。 重症の場合は、3〜6週間のギプス固定が必要です。 再発防止の運動療法 捻挫が回復したら、うちに捻るのを予防するために、足首を外にひねる作用のある腓骨筋(ひこつきん)という筋肉を鍛えましょう。 チューブを使ったトレーニングは負荷を簡単にかけられるため、オススメの方法です。 具体的な方法は以下の通りです。 再発防止トレーニング 1.両足をくっつけてチューブで縛る 2.かかとを離さず、小指側をあげるような意識で、つま先を外に開く また、固定の期間中に足首の動きが固くなっているため、ストレッチをするのも良いでしょう。 タオルを足のつま先に引っ掛けて、タオルの両端を両手にもって、引っ張るようにすれば、足首の柔軟性を高めるストレッチが可能です。 以上のような方法で、うち返しを防ぐための筋力や柔軟性を保つようにしましょう。 捻挫とは、足首をひねって靭帯等が損傷する怪我 捻挫とは、関節が無理な範囲に強制的に動いてしまうことで、靱帯(じんたい)や関節包(かんせつほう:関節を包む膜)が損傷してしまう怪我です。 足首の捻挫では、スポーツ動作や段差を踏み外すことで、足を内側に無理にひねってしまい、発生することが多いです。その場合、足の外側にある靱帯が損傷します。 足首の外側には以下の3つの靱帯があります。 足首の靭帯 ・前距腓靱帯(ぜんきょひじんたい) ・後距腓靱帯(こうきょひじんたい) ・踵腓靭帯(しょうひじんたい) この中で、最も多く損傷するのが「前距腓靱帯」で、後距腓靱帯の損傷はまれです。1つではなく、複数の靱帯が同時に損傷する場合もあります。捻挫の程度は、靱帯の損傷具合によって次の3つに分けられます。 捻挫の症状 主な症状は、損傷した部分の腫れや痛みです。痛みは損傷部位を指で押さえたときにみられる圧痛(あっつう)があります。 また、怪我したときと同じように、内側に足首をひねった動きを再現すると痛みがあります。損傷による内出血が生じていたり、熱をもっていたりするのも症状の1つです。 靱帯の損傷がひどい場合は、靱帯による関節の固定力が弱まり、関節が不安定になってしまいます。その結果、捻挫を再発しやすくなるため注意が必要です。各症状は、捻挫の程度によって、みられる症状が異なります。 捻挫の程度 ・1度捻挫:靱帯の損傷がなく、無理に伸ばされた状態 ・2度捻挫:靱帯が部分的に切れている状態 ・3度捻挫:靱帯が完全に切れた状態 まとめ・捻挫かもしれないときは正しい対処をして早めに受診しよう 捻挫かもしれないと思っても、多少の痛みを我慢して歩ける場合は、そのままにしてしまうかもしれません。 捻挫は日常生活やスポーツ中によく起こる怪我ですが、痛みがあっても歩ける場合が多い怪我です。捻挫は関節が無理な方向に動いて靭帯や関節包が損傷することを指し、足首の捻挫が特に一般的です。 捻挫の程度によって、靭帯が伸びただけの軽度のものから、完全に切れてしまう重度のものまで様々です。捻挫をしたら、まずはRICE処置を行いましょう。これにより、捻挫直後の炎症を抑え、痛みや腫れを軽減できます。 歩ける場合でも痛みがあるときは、テーピングやサポーターで足首を固定し、損傷した靭帯に負担をかけないようにしましょう。適切な固定は、捻挫の再発予防にもつながります。ただし、痛みが強い場合や腫れがひどい場合は、専門医の診断を受けましょう。 捻挫の治療は、保存療法が基本です。固定が必要な期間は損傷の程度によりますが、軽度なら装具やテーピングによる短期間の固定、重度ならギプスによる長期間の固定が必要です。 さらに、捻挫から回復した後は、再発防止のために足首の筋肉を鍛える運動療法をお勧めします。例えば、腓骨筋を鍛えるためのチューブトレーニングや、足首の柔軟性を高めるためのストレッチなどが有効です。 捻挫を軽視することなく適切な対処と治療を行うことで、早期の回復と再発防止を目指しましょう。正しい知識と対処法を身につけて、日常生活はもちろんスポーツを安心して楽しみましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.118 監修:医師 坂本貞範 ▼以下もご覧になりませんか 捻挫の痛みや腫れ|骨折や靭帯断裂の可能性!病院へ行くべきか判断できる5つのチェック項目とは!
最終更新日:2024.06.25 -
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頭が痛い時、重いときの対処法、その原因と治し方!医師が解説 「頭痛」は多くの人が悩んでいる症状の一つです。 日本の製薬会社の調査では、約4人に1人が週に1回以上の頭痛を感じ、約3人に1人は自分を頭痛持ちだと思っているそうです。 頭痛の症状は人により様々です。 症状 「頭がクラクラする」 「頭の後ろが痛い」 「頭に血が上る感じがする」 「頭の右側が痛い」 「ぼーっとする」など多彩な言葉で表現されます。 この頭痛、大きく「一次性頭痛」と「二次性頭痛」とに分けられることをご存知でしょうか。二次性頭痛は他の病気の存在により引き起こされる頭痛であり、それ以外を一次性頭痛に分類されます。 この記事ではそれぞれの頭痛について、その説明と対処法を解説します。 頭痛の種類と治療法 一次性頭痛は、頭痛を有する患者のうち、約80%に及ぶと言われています。多いものから「偏頭痛」「緊張型頭痛」「三叉神経・自律神経頭痛」といわれるものが代表的な頭痛となります。 頭痛の原因となる疾患がなくても時には仕事や学校、家事などの日常生活に支障が出て、*QOLが下がることもあります。 それでは以下に頭痛の種類別の解説と治療法を記してまいります。 *QOLとは「Quality of Life」の略です 日本語では「生活の質」や「生活の満足度」と訳し、具体的には、健康、経済的状況、心理的な幸福感、社会的関係など、日常生活を送る上で感じる「満足度」や「充実感」の程度を表すものです。 1)偏頭痛とは 日本では年間に8.4%の人が片頭痛になると言われています。 この頭痛は、頭痛を起こす前に特徴的な前兆(きらきらした歯車のようなものが見える、チクチク感を感じ、それが体や舌などに波及するなど)が出現することがあります。 偏頭痛の症状としては「ズキンズキンと脈を打つように痛み、頭痛により寝込んだり、吐き気がしたりする」ことがあります。 また、偏頭痛が起きている間は光や音に過敏な状態となるため、「頭が痛い間は布団を被ってじっとしている」という方もおられます。 症状 ・ズキンズキンとした脈を打つように痛み ・吐き気がする ・寝込むことがあある ・光や音に過敏になる 偏頭痛の治療法 偏頭痛で痛かったり、辛かったりするときの治療には、解熱鎮痛剤(ロキソプロフェンや、アセトアミノフェンなど)、トリプタンという頭痛治療薬が有効です。 トリプタンを服用する有効なタイミングは、痛みが始まってすぐや、軽度なときが良いため、服用が難しいかもしれません。 予防には抗てんかん薬や、抗うつ薬がよく使われてきました。最近発売となった「抗CGRP抗体」という注射薬は、より高い予防効果があります。 必ずしも関連があるとは言えませんが、高血圧症、心疾患、うつ病などと共存することが多く、治療薬の選択に影響があるため注意が必要です 2)緊張型頭痛とは 緊張型頭痛は、左右の両方が痛むことが多く、症状は「圧迫されるような」「締め付けられるような」と表現されます。日本の研究では、年間に20%の人が症状を感じると言われています。 頭や首の筋肉を押すと痛みがみられることが特徴的です。 症状 ・圧迫されるような ・締め付けられるような 緊張型頭痛の治療法 痛みが出ているときは解熱鎮痛剤が有効です。予防には抗うつ薬やリラクゼーション、鍼灸などが有効です。 3)三叉神経・自律神経頭痛とは 三叉神経・自律神経頭痛の中にも細かな分類がありますが、群発頭痛が最も一般的です。 かなり強い痛みが、目の周囲もしくはこめかみに発生し、15~180分持続することが特徴です。10万人あたり56~400人程度の方が罹患し、男性に多いと言われています。 症状 ・目の周囲に強い痛み ・こめかみに強い痛み 三叉神経・自律神経頭痛の治療法 治療には、酸素投与と、片頭痛でも使用される薬でトリプタンの効果が高いです。 その他の頭痛とは 頭痛の約20%が二次性頭痛、つまり他の病気により引き起こされている頭痛と推定されています。症状を抑えるために解熱鎮痛薬などを用いることはありますが、治療の基本は原因の病気の治療となります。 ここでは一部の疾患を説明します。 脳血管障害 脳出血やくも膜下出血では、頭痛が起こることがあります。血管が裂ける、詰まることで起こる病気なので、症状も突然生じます。意識の低下や手足の動かしにくさ、話しにくさ、嘔吐を伴います。 生命の危機や重い後遺症も起こりうる、緊急度の高い頭痛です。 感染症 菌やウイルスが脳や全身で炎症を引き起こすことで、生じる頭痛があります。感冒(風邪)はウイルス性の上気道炎であり、頭痛を感じたことがある人は多いでしょう。 重篤なものでは、髄膜炎や脳炎があります。発熱、吐き気、意識の低下を伴うことが多いです。 頭痛というと軽く見がちですが何か違和感を感じるようであれば医療機関でご相談させれることをお勧めします。 目、鼻などの病気 急性副鼻腔炎の症状は「頭が重い」と表現されることが多いですが、それを痛みとして感じる場合もあります。 緑内障発作は目のかすみ、目の充血を特徴とする痛みであり、放置しておくと失明の危険もあります。 う歯(虫歯)の痛みを頭痛として自覚される方もいます。 頭痛についてよくあるQ&A 頭痛について、よくいただく質問を以下に抜粋しました。 Q , どのような頭痛の時に受診したらよいですか? A , 突然に(何時何分何秒がはっきり言えるような)最大の痛みとなった頭痛、話にくさや手足の動かしにくさを伴う頭痛、これまでに経験したことのないような頭痛、意識が低下している頭痛は、二次性頭痛の可能性があります。必ず受診を検討しましょう。 Q , 頭痛が出たら鎮痛剤は飲んでもよいですか? A , 手持ちの鎮痛薬がある場合は内服して構いません。鎮痛剤内服で診断が遅れることはほとんどありません。 ただし、頻繁に内服をしていると薬物乱用頭痛という新たな頭痛の原因となります。鎮痛剤を飲みたくなる頭痛が続く場合は受診を検討しましょう。 まとめ・頭が痛い時、重いときの対処法、その原因と治し方!医師が解説 今回の記事では、頭が痛い時や、重いときについて、頭痛の種類と、症状、治療法などを解説しました。 頭痛は多くの人にとって日常生活で直面する問題です。 頭痛には、「一次性頭痛」と「二次性頭痛」があり、それぞれ適切な対処法を選択することが大切です。 まず、一次性頭痛には。「偏頭痛、緊張型頭痛、三叉神経・自律神経頭痛」があり、それぞれの症状と治療法を知ることで対処方法を理解することで日常生活の質(QOL)を向上させることができます。 偏頭痛には、解熱鎮痛剤が効果的ですが予防には、抗てんかん薬や抗うつ薬が用いられます。緊張型頭痛の場合、解熱鎮痛剤や抗うつ薬、リラクゼーション、鍼灸も有効です。 三叉神経・自律神経頭痛は、酸素投与やトリプタンと言われる薬が効果的です。二次性頭痛は他の病気により発生するものですので原因となる疾患の治療を最優先にしましょう。 尚、脳血管障害や感染症、目や鼻の疾患などが頭痛の原因となることもあります。頭痛というと、ありふれた症状ではありますが、時に生命に関わる病気が隠れていることがあるため注意が必要です。 また、そのような疾患がなくとも、一次性頭痛はQOLに大きく関わるので、困ったことがあれば医療機関に相談しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S117 監修:医師 加藤 秀一 ▼頭に関するご心配は、以下も参考されませんか 頭のこぶのようなものを押すと痛いとき、考えられる疾患とは?
最終更新日:2024.05.21 -
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側弯症|子供の側弯症と大人の側弯症、それぞれの治療について 背骨が左右に曲がる側弯症は、思春期の子供に多い病気です。ただ、大人の場合も中高年になって急に発症し、進行が始まるケースもあり、成人側弯症と呼ばれています。 見た目で明らかに姿勢が歪んでしまう側弯症ですが、子供の場合、大人の場合の症状と、治療法について解説します。 側弯症とは 側弯症は、体を正面から見たとき、背骨が左右に曲がっている状態です。本来、人の脊柱は首にある頸椎は前方に湾曲し、胸椎は後方に湾曲し、腰椎は前方に湾曲しています。体を横からみると、ちょうどゆるやかなS字を描いた状態です。 前から見て、背骨が左右に10度以上傾いてしまう状態を湾曲症といいます。 痛みを伴うケースはほとんどありませんが、症状が進行した場合、健康状態に悪影響を及ぼすことがあります。 https://youtu.be/fAOoNxIRTPU?si=l8X3iSKGXOZIGMOT こどもの側弯症とは こどもの側弯症は学校検診で見つかるケースが少なくありません。2016年度から始まった「運動器学校検診」では、家庭でこどもの背骨の評価をした後、学校医が視触診によって見た目や背中を触って側弯症の疑いがあるかどうかを判定します。 成長期であるこどもは大人になるまで側弯症を発症する恐れを持っているため、家庭でチェックをしたり、気になることがあれば整形外科を受診したりなど、こまめな配慮が必要です。 とくに小学校高学年から中学生にかけて、思春期の女子は側弯症の発症率が高まります。13歳から14歳の女子の発症率は2.5%で、男子に比べて約 7 倍といわれています。 こどもの側弯症 整形外科で側弯症と診断された場合、そのままにし ておくとどうなるのでしょうか。 医師から経過観察と言われたり、家庭で気をつけるようアドバイスを受けたこども全員が、重度の側弯症になる可能性はほとんどありません。側湾が進行しやすい幼児期以降は症状の進行は個人差が大きいこともポイントです。 このように、こどもの側弯症は、軽度の状態のまま大人になるケースが大半です。軽い側弯症であれば障害が残る心配もないので、そのまま様子を見るだけで問題ないでしょう。 成長期のこどもが発症しやすい側弯症には、以下のような注意したいポイントがあります。 子供の側弯症で注意したいポイント ・こどもの側弯症は思春期の女子に注意 ・軽度の場合は経過観察が基本 ・症状が進行すると装具療法や手術療法も 側弯症の治療法 重度の側弯症の状態は放置すると心肺機能が低下するリスクが高まります。側湾の影響で胸郭が大きく変形するためです。重い肺の病気や心臓病といった合併症を発症しやすくなります。 側弯症は進行の度合いに応じて、次のような治療法を受けることが大切です。 軽度の側弯症(背骨の曲がり角度:30度未満) ・学校や家庭での経過観察を続ける ・症状の進行をチェックし、整形外科を受診する 中等度の側弯症(背骨の曲がり角度:30〜50度) ・矯正装具を使う装具療法を行う (アンダーアームブレース、ミルウオーキーブレースといった 重度の側弯症(背骨の曲がり角度:50度以上) ・装具療法でも進行が悪化したら手術療法が一般的 側弯症の手術療法 手術療法には、「後方矯正固定術」と「前方矯正固定術」の2種類があり、症状によって判断されます。 後方矯正固定術 背中の背骨に沿って切開して手術する方法です。背骨の後方から器具を挿入して、ロッドを調整しながら背骨がまっすぐになるようにねじれを減らしていきます。 次に紹介する前方矯正固定術に比べると固定する背骨の範囲は長くなりますが、強力な矯正力や固定力が出せます。 前方矯正固定術 胸部など体の前側から器具を挿入して、ロッドによってねじれの調整をしていく方法です。後方矯正固定術より肯定範囲は短いものの、強い矯正力があります。 側弯症による大人の症状とは 成長期のこどもに多い側弯症ですが、大人になってから発症する場合もあります。 「成人側弯症」と呼ばれており、次の2つの原因があります。 成人側弯症 ・こどもの頃の側弯症が老化で進行 ・中高年になって加齢により側湾 成人側弯症によって、大人は次のような症状が出ます。 成人側弯症の症状 ・腰痛になる ・長時間立つ・歩くが困難になる ・下半身に神経痛が出る ・逆流性食道炎や便秘、嚥下障害(食べ物が飲みこみづらい)が起きる ・呼吸がしづらくなる 特に、1つ目と3つ目の「腰痛になる」「下半身に神経痛が出る」といった点は、側弯症で背骨や腰骨に負担がかかるためです。脊柱管狭窄症や腰部椎間板ヘルニアなどの合併症のリスクも高まるのでとくに注意する必要があります。 年齢と共に症状が進行すると日常生活にも支障をきたすようになるため、重度の場合、大人は「後方矯正固定術」が必要です。 入院日数は10日前後ですが、背骨の曲がり方や患者様の骨質、症状、体力などに応じて日数がかかったり、数回に分けて手術をすることもあります。 大人の成人側弯症には、以下のような注意すべきポイントがあります。 大人の側弯症で注意したいこと ・加齢による大人の側弯症には日常生活に影響する症状が現れやすい ・脊柱管狭窄症や、腰部椎間板ヘルニアなどの合併症に注意 まとめ・側弯症|子供の側弯症と大人の側弯症、それぞれの治療について 側弯症は背骨が左右に曲がる状態を指し、子供と成人では症状や治療法が異なります。 子供の側弯症は、思春期に発症しやすく、定期的な検診や早期の対応が重要となります。ただ、軽度の症例は成人しても進行せず、経過観察や適切な医療ケアを行うことで様子を見れば良い場合ことが多くあります。 治療法は症状の進行度に応じて異なります。軽度の場合は、先のように経過観察が主となりますが中等度から重度の場合は矯正装具や、重度になると手術が必要となる場合があります。 手術療法には「後方矯正固定術」と「前方矯正固定術」があり、それぞれ特長がみられます。その選択は、患者の症状によって適切な方法が提案されます。 側弯症は年齢や症状によって健康に悪影響を及ぼすケースが少なくありません。こどもで経過観察と言われたり、中高年で背骨の変形が気になり始めたりした場合は、早めに整形外科を受診しましょう。 早期発見と適切な治療が側弯症の進行を防ぎ、健康を守ります。定期的な医療チェックと適切なケアを大切にしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.117 監修:医師 坂本貞範 ▼以下もご覧になりませんか 側弯症の手術、術後の後遺症、術後のリハビリについて
最終更新日:2024.08.30