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「健康診断で心電図に異常があると指摘された」 「ときどき動悸がする」 「親も不整脈で治療していたため、自分も不整脈になったのではないか」 このような不安をお持ちの方も多いことでしょう。 心臓は電気的興奮により動き、全身に血液を送るポンプの役割を果たします。不整脈とは、電気的興奮のリズムや心拍数が一定しない状態を指します。 不整脈の原因は複数あるため、「不整脈になりやすい人の特徴」と一言であらわすことは難しいものです。不整脈の種類も複数あり、問題なく普通の生活を送れるものから、命に関わるものまでさまざまです。 本記事では、不整脈になりやすい人の特徴について、体質や生活習慣などの観点から説明します。 主な予防方法も解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。 不整脈になりやすい人の特徴は主に5つ 不整脈になりやすい人の特徴は、主に以下の5つです。 加齢 肥満 生活習慣 疾患および薬の影響 遺伝 加齢 年齢を重ねると、不整脈が生じやすくなります。原因は、刺激伝導系および周辺組織の老化です。 心筋と呼ばれる心臓の筋肉は、適切なタイミングで一定に動くための電気信号システムが備わっています。これが刺激伝導系です。 しかし、年齢を重ねると、刺激伝導系および周辺組織が衰えたり硬くなったりします。そのため、心臓内で電気信号がうまく伝わらないことが増えてしまい、不整脈が生じやすくなるのです。(文献1) 一般的には、60歳以上になると不整脈が増えるといわれています。(文献2) しかし、不整脈のうち期外収縮と呼ばれるものは、30代を過ぎる頃からほとんどの方に認められます。(文献3) 期外収縮とは、不整脈の中でもよく見られるタイプで、一定のタイミングから若干外れた心臓の収縮により発生するものです。 肥満 肥満は高血圧や糖尿病といった生活習慣病を引き起こす原因の1つです。生活習慣病により不整脈が生じやすくなるだけではなく、肥満そのものが、不整脈の大きな要因であると示されています。 イギリスの文献においても、「体重を減らすことが不整脈の予防や改善につながる」と記されています。(文献4) 生活習慣 不整脈の原因としてあげられる主な生活習慣は以下のとおりです。 睡眠不足 疲労 ストレスの蓄積 カフェインの過剰摂取 喫煙 過度の飲酒 これらの生活習慣により活性化されるのが、自律神経の1つである交感神経です。 交感神経が活性化されると、日中に不整脈が起こりやすくなります。もう1つの自律神経である副交感神経が活性化されると、就寝中に不整脈が発生しやすくなります。(文献5) 睡眠不足や疲労、ストレスの蓄積などは、自律神経の乱れや不整脈そのものを引き起こしやすい生活習慣です。 不整脈とストレスの関係は以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 過度の飲酒習慣は、発作性の心房細動と関連があるとされています。 心房細動とは、心臓上部の心房が1分間に400~600回も不規則に動く不整脈です。発作性心房細動は、短時間だけ発生して元に戻るものを指します。(文献6) 心房細動は、心臓が不規則に動くために血流が悪くなり、血栓が生じやすい不整脈です。心房にできた血栓が全身を流れると、脳の血管を詰まらせる原因になります。その結果生じる疾患が脳梗塞であり、心疾患が由来であるため「心原性脳梗塞」と呼ばれます。 心原性脳梗塞に関しては、以下の記事をご参照ください。 疾患および薬の影響 不整脈の原因の中でも比較的多いものは、狭心症や心筋梗塞、心臓弁膜症、心不全、先天性心疾患といった心臓疾患です。 心臓疾患以外に加えて、甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症も、不整脈を引き起こす原因の1つです。 甲状腺機能低下症は徐脈性不整脈、甲状腺機能亢進症は頻脈性不整脈(心拍数の増加)と関連があるといわれています。 徐脈性不整脈は心拍数が減少するもので、以下のような種類があります。 洞不全症候群 房室ブロック 徐脈性心房細動 頻脈性不整脈とは心拍数が増加するもので、主なものは以下のとおりです。 発作性上室性頻拍 心房細動 心房粗動 心室頻拍 心室細動 風邪薬や抗うつ薬、心疾患の薬によって不整脈が生じる場合もあります。不整脈と診断された方で、該当する薬を内服されている方は、必ず担当医師に伝えましょう。 遺伝 心臓の電気的な活動をつかさどる遺伝子の変異により起こる不整脈の総称が、遺伝性不整脈です。 主な遺伝性不整脈としては、以下のようなものがあげられます。 先天性QT延長症候群 ブルガダ症候群 カテコラミン誘発多形性心室頻拍 QT短縮症候群 早期再分極症候群 遺伝性不整脈は、無症状のこともありますが、心室頻拍や心室細動といった命に関わる可能性もあります。 突然死の原因になるケースもあるため、適切な診断・治療が求められる不整脈です。 命に関わる不整脈 不整脈の中には、命に関わるものも存在します。 代表的なものは以下の3つです。 心室細動 心室頻拍 完全房室ブロック 心室細動 心室細動とは、心臓の下部である心室が非常に早く不規則に興奮して、小刻みに震えてしまう状態です。この状況では、心臓が拍動しなくなるため、全身に血液を送れなくなります。 全身に血液を送り出せなくなるため脳の血流も低下し、めまいや失神を起こし、意識を失います。迅速な救命処置や治療を行わないと命に関わる、最も危険な不整脈です。 心室頻拍 心室頻拍とは、心室が速く脈を打ち過ぎて血圧がほとんど出なくなる不整脈です。症状としては、強い動悸や胸痛、めまい、失神などがあげられます。 心室頻拍の大部分は重度の心疾患を抱えている方に発生し、心室細動を引き起こす場合もあります。 完全房室ブロック 房室ブロックと呼ばれる不整脈の中で最も重症なものです。 房室ブロックとは、心房からの電気信号を心室に伝える房室結節での連絡が途絶えてしまい、心室の脈がなくなるものです。房室ブロックはⅠ度からⅢ度に分類されており、完全房室ブロックと呼ばれるⅢ度は、房室結節での連絡が完全に途絶えています。(文献7) このまま放置すると心停止に至る可能性があるうえ、脈を速くする有効な内服薬がないためペースメーカー埋め込み手術が必要です。 不整脈にならないために気をつけること 不整脈にならないために気をつけると良い3つのポイントを以下に示しました。 食生活の見直し 適度な運動 持病の管理 食生活の見直し 食生活の見直しは、不整脈予防にとっても大切なものです。 バランスの良い食事を心がけましょう。具体的には、以下の3点がまんべんなくそろっている食事です。 主食(ご飯やパン、麺類など炭水化物の供給源) 主菜(肉や魚、卵などタンパク質の供給源) 副菜(野菜や果物、きのこ類などビタミンやミネラル、食物繊維の供給源) 不整脈に良い食べ物としては、バナナやほうれん草などのカリウムが多いもの、海藻類や豆類などマグネシウムが多いものがあげられます。 不整脈に悪い食べものとしては、塩分や動物性脂肪が多い食品などがあげられます。カフェイン飲料の過剰摂取も好ましくありません。 不整脈と食生活の関係は、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 適度な運動 ウォーキングや水泳など、中程度の運動30分を週2.5時間以上行うことで、心血管疾患の予防や不整脈抑制の効果があるとされています。ただし、運動習慣がない方が急に運動したり、既に心疾患がある方が運動したりすると、不整脈が引き起こされる可能性があります。 運動習慣がない方、既に心疾患がある方は、運動を始める前に医師に相談しましょう。 アメリカの論文では、体重を10%減少させた方や体重減を維持させた方は、減らなかった方より、不整脈が起きない確率が6倍も高くなったとのデータが示されています。論文上では、体重減少により重症の心房細動が軽症になったケースも示されていました。(文献8) 同じ論文では、飲酒の習慣がある心房細動患者が禁酒したことで、不整脈の再発が大幅に減ったとの研究結果が示されています。加えて、禁煙が心房細動の予防戦略として強く推奨されています。 持病の管理 心疾患をはじめ、高血圧や糖尿病などの生活習慣病がある方は、医師から指示を受けた薬の内服を続けて、治療を継続しましょう。 血圧の管理は、不整脈予防に効果的といわれています。 不整脈が繰り返し発生している方や、動悸・息切れといった症状がある方は、必ず医師に相談してください。 不整脈になりやすい人の特徴を理解して予防に努めよう 不整脈になりやすい人の特徴としては、「高齢である」「家族歴がある」「心疾患や高血圧、糖尿病などがある」といったことがあげられます。また、肥満や喫煙、飲酒といった生活習慣も関係するといわれています。 これらの特徴に少しでも当てはまる方は、生活習慣の改善や疾患の管理などできる範囲で不整脈の予防に努めましょう。 中には命にかかわる不整脈もあるため、強い胸痛や動悸、呼吸困難などの症状が出た場合は、早急に病院を受診してください。症状がない場合でも、心電図検査で異常を指摘された方は、ホルター心電図や運動負荷心電図、心臓エコーなどの詳しい検査を受けることが望ましいでしょう。 現在不整脈でお悩みの方は、当院へお気軽にご相談ください。メール相談やオンラインカウンセリングも実施しております。 参考文献 (文献1) 森拓也.「老人性不整脈」『日本農村医学会雑誌』65(2), pp.136-143, 2016 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm/65/2/65_136/_pdf(最終アクセス:2025年6月22日) (文献2) 独立行政法人国立病院機構岩国医療センター「不整脈とは?」独立行政法人国立病院機構岩国医療センターホームページ https://iwakuni.hosp.go.jp/junkanki-ab-huseimyaku.html(最終アクセス:2025年6月22日) (文献3) 国立研究開発法人国立循環器病研究センター「不整脈」国立研究開発法人国立循環器病研究センターホームページ, 2023年09月22日 https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/arrhythmia/(最終アクセス:2025年6月22日) (文献4) Kiran Haresh Kumar Patel, et al.(2022).Obesity as a risk factor for cardiac arrhythmias.BMJ Medicine, 1, pp.1-13. https://bmjmedicine.bmj.com/content/bmjmed/1/1/e000308.full.pdf(最終アクセス:2025年6月22日) (文献5) 渡部智紀.「自律神経と不整脈」『自律神経』56(4), pp.221-223, 2019 https://www.jstage.jst.go.jp/article/ans/56/4/56_221/_pdf(最終アクセス:2025年6月22日) (文献6) 日本不整脈外科研究会「不整脈とは 心房細動」日本不整脈外科研究会ホームページ https://plaza.umin.ac.jp/~arrhythm/arrhythmia/atrium/index.html(最終アクセス:2025年6月22日) (文献7) 独立行政法人国立病院機構大阪医療センター「房室ブロック」独立行政法人国立病院機構大阪医療センターホームページ https://osaka.hosp.go.jp/department/cvm/kakushikkan/fuseimyaku/ba/boushitsu/index.html(最終アクセス:2025年6月22日) (文献8) Mina K. Chung, et al. (2020).Lifestyle and Risk Factor Modification for Reduction of Atrial Fibrillation: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circulation, 141(16) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32148086/(最終アクセス:2025年6月22日)
2025.06.29 -
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健康診断で「貧血気味」と言われたけれど、自覚症状もないし放っておいて大丈夫……そう思っていませんか? 実は、貧血には数値だけではわからない危険が潜んでいます。とくに女性に多い「隠れ貧血」は、基準値内でも体調不良を引き起こすことがあるのです。 本記事では、貧血の数値の見方や基準、症状がなくても注意すべき理由、受診のタイミング、そしてよくある誤解までをわかりやすく解説します。 血液検査における貧血の基準値 貧血の診断は血液検査の結果を基に行われ、複数の検査項目を総合的に評価すると正確な判断が可能です。ヘモグロビン値をはじめとする各種検査項目には、年齢や性別による基準値が設定されており、数値を理解すると自分の健康状態を把握できます。 以下では、貧血の診断に重要な各検査項目の基準値と、意味について詳しく解説します。 ヘモグロビン(Hb) ヘモグロビンは赤血球に含まれる鉄を含有したタンパク質で、体内で酸素を運搬する重要な役割を担っています。ヘモグロビンの基準値の目安は以下のとおりです。 対象 基準値 男性 13.1~16.6g/dL 女性 12.1~14.6g/dL (文献1) ヘモグロビンは、個人差を考慮した判断が重要です。ヘモグロビン濃度には個人差があるため、普段の数値と比較し、急に2g/dL以上の減少が見られた場合は、基準値内であっても貧血状態が疑われることがあります。(文献2) 緊急性の高い貧血として、7~8g/dLを下回った場合は早急な検査や対応が必要です。(文献2) この数値まで低下すると、日常生活に重大な支障をきたし、心臓や他の臓器への負担も大きくなるため、迅速な処置が求められます。定期的な血液検査で自分の基準値を把握し、数値の変化に注意すれば、貧血の早期発見と適切な治療につながります。 ヘマトクリット(Ht) ヘマトクリットは血液全体に対する血球成分の体積の占める割合を示す検査値です。血球成分の約95%が赤血球によって構成されているため、実質的には血液中の赤血球の占める割合を表す重要な指標となります。(文献2)ヘマトクリットの基準値の目安は以下のとおりです。 対象 基準値 男性 38.5~48.9% 女性 35.5~43.9% (文献1) ヘマトクリット値は年齢や性別によって基準値が異なり、女性の方が男性よりもやや低い傾向です。これは月経による鉄分の損失や、男性ホルモンの影響による赤血球産生の違いが関係しています。定期的な血液検査でヘマトクリット値を確認し、ヘモグロビン値と合わせて総合的に貧血の状態の評価が重要です。 赤血球数(RBC) 赤血球数は血液1μl中に含まれる赤血球の数を示す検査値です。赤血球は酸素を全身に運搬する重要な役割を担っているため、その数の増減は体の酸素運搬能力に直接影響します。赤血球数の基準値の目安は以下のとおりです。 対象 基準値 男性 400~539×10⁶/μl 女性 360~489×10⁶/μl (文献1) 男性の方が女性よりも赤血球数が多い傾向にあります。これは男性ホルモンが赤血球産生を促進することや、女性では月経による鉄分の損失が関係しています。 MCV(平均赤血球容積) MCV(平均赤血球容積)は赤血球の大きさを表す重要な指標です。この数値により、貧血の原因を特定する手がかりを得られます。MCVの基準値の目安は以下のとおりです。 対象 基準値 男性 82.7~101.6 fl 女性 79.0~100.0 fl (文献1) MCVの数値は貧血の分類において極めて重要で、治療方針の決定にも大きく影響します。MCV値が低い小球性貧血の場合は鉄剤の補充、MCV値が高い大球性貧血の場合はビタミンB12や葉酸の補給が主な治療となります。正常範囲内であっても、ほかの検査値と組み合わせることで、より詳細な貧血の状態の把握が可能です。 MCH / MCHC(赤血球中のヘモグロビン量・濃度) MCH(平均赤血球ヘモグロビン量)とMCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)は、赤血球1個あたりに含まれるヘモグロビンの量と濃度を示す検査値です。 MCH基準値の目安は以下のとおりです。 対象 基準値 男性 28.0~34.6 pg 女性 26.3~34.3 pg (文献1) MCHC基準値の目安は以下のとおりです。 対象 基準値 男性 31.6~36.6% 女性 30.7~36.6% (文献1) 数値が低下している場合は、鉄欠乏性貧血や慢性疾患による貧血の可能性が考えられます。 フェリチン(貯蔵鉄) フェリチンは体内の鉄を貯蔵するタンパク質で、主に肝臓、脾臓、骨髄などに存在します。血中のフェリチン値は体内の鉄貯蔵量を直接反映するため、鉄欠乏や鉄過剰の診断において極めて重要な指標です。 ヘモグロビン値が正常でもフェリチン値が低い場合は、隠れ貧血や鉄欠乏状態の可能性があります。これは体内の鉄の貯蔵が枯渇し始めている状態で、早期の対策が必要です。逆にフェリチン値が異常に高い場合は、鉄過剰症や炎症性疾患の可能性も考えられます。フェリチンの基準値は以下のとおりです。 対象 基準値 男性 13~277 ng/ml 女性 5~152 ng/ml (文献1) フェリチン値は貧血の早期発見や治療効果の判定に有用で、鉄剤投与の必要性を判断する重要な検査項目です。 血清鉄(Fe) 血清鉄は血液中に存在する鉄分を測定した値で、体内の鉄の代謝や貯蔵状態を反映する重要な検査項目です。血液中の鉄は主にトランスフェリンというタンパク質と結合して運搬されており、この値により現在の鉄の利用状況を把握できます。血清鉄の基準値は以下のとおりです。 対象 基準値 男性 54~181 μg/dL 女性 43~172 μg/dL (文献3) 血清鉄値が低い場合は鉄欠乏性貧血の可能性が高く、高い場合は鉄過剰症や溶血性貧血などが考えられます。ただし、炎症性疾患や感染症では血清鉄が低下する場合があるため、ほかの炎症マーカーと併せて総合的な評価が必要です。 【貧血のタイプ別】数値の見方 貧血にはさまざまなタイプがあり、それぞれ検査数値に特徴的なパターンが現れます。以下では主要な貧血のタイプごとに、典型的な検査値の変化パターンを解説します。 鉄欠乏性貧血の特徴 鉄欠乏性貧血では以下のような検査値の変化が見られます。 Hb(ヘモグロビン:低下) MCV(平均赤血球容積:低下) MCH(平均赤血球ヘモグロビン量:低下) フェリチン(貯蔵鉄:低下) TIBC(総鉄結合能:上昇) これらの数値パターンは、鉄不足により赤血球が小さく色の薄い状態になることを示しています。フェリチンの低下は体内の鉄貯蔵量の枯渇を、TIBCの上昇は体が鉄を取り込もうとしている状態です。 悪性貧血(ビタミンB12欠乏)の特徴 ビタミンB12欠乏による悪性貧血では以下の特徴が見られます。 Hb(ヘモグロビン:低下) MCV(平均赤血球容積:上昇) 葉酸(葉酸:低下) ビタミンB12(ビタミンB12:低下) ビタミンB12や葉酸の不足により赤血球が正常よりも大きくなる特徴があります。これらの栄養素はDNA合成に必要なため、不足すると細胞分裂が正常に行われず、大きな赤血球が作られてしまいます。 慢性疾患に伴う貧血の特徴 慢性疾患に伴う貧血は、ほぼすべての感染症や炎症、悪性腫瘍で起こる可能性があります。自己免疫性疾患、心不全や腎疾患でも発生しやすい貧血です。 この貧血の特徴は、基礎疾患による慢性炎症が鉄の利用を阻害することにあります。フェリチンは正常または高値を示すことが多く、これは炎症により鉄が細胞内に取り込まれるものの、ヘモグロビン合成に利用されにくくなるためです。根本的な原因疾患の治療がもっとも重要で、単純な鉄剤補充では改善しにくいのが特徴です。 【要注意】隠れ貧血について 「隠れ貧血」は一般的な血液検査では見つかりにくい貧血の前段階で、ヘモグロビン値が正常範囲内でも体内の鉄貯蔵量が不足している状態です。自覚症状がないことも多く、見過ごされやすいため注意が必要です。早期発見には特定の検査項目に注目し、総合的な評価が重要になります。 フェリチンの重要性 フェリチンは体に蓄えられた鉄分の量を示す最も重要な指標です。ヘモグロビン値が正常範囲内であっても、フェリチン値が低い場合は体内鉄が枯渇し始めている可能性があります。これは、隠れ貧血や潜在性鉄欠乏と呼ばれる状態で、将来的に明らかな貧血に進行するリスクです。 フェリチン値が15ng/mL以下の場合は「隠れ貧血」のリスクが高いとされています。(文献4)一般的な基準値内であっても、この数値を下回ると体内の鉄貯蔵量が危険なレベルまで低下していることを示します。 女性では月経による鉄分の損失があるため、男性よりも注意深い観察が必要です。フェリチン値の定期的なチェックにより、症状が現れる前の早期段階で鉄欠乏を発見し、適切な対策を講じられます。 TIBC・UIBCもチェック 総鉄結合能(TIBC)は、トランスフェリン(鉄を運ぶためのタンパク質)に結合可能な鉄量の総量を示し、不飽和鉄結合能(UIBC)は鉄と結合していないトランスフェリンの量を表します。これらの検査値は鉄欠乏状態をより詳細に評価するために重要な指標です。 TIBCの基準値は300〜360μg/dLで、鉄欠乏においてTIBCは増加する傾向があります。(文献5)これは体が鉄不足を感知し、より多くの鉄を取り込もうとする代償反応です。トランスフェリン飽和率(血清鉄/TIBC×100)も鉄欠乏の評価に用いられ、16%以下で鉄欠乏と考えられます。(文献5) 数値を総合的に評価すれば、フェリチン値だけでは判断しきれない微細な鉄代謝の異常を発見できます。隠れ貧血の早期発見には、複数の検査項目を組み合わせた包括的な評価が不可欠です。 貧血と数値の関係性を理解して適切に対処しよう 体調の違和感は貧血のサインかもしれません。疲れやすさ、めまい、息切れなどの症状は日常的によくある不調として見過ごされがちですが、実は体が発しているサインの可能性があります。血液検査の数値も大切ですが、日々の不調を見逃さないことが何より重要です。 数値が正常範囲内であっても、普段と比べて明らかな体調の変化がある場合は、隠れ貧血や他の健康問題が潜んでいる可能性があります。自分の体の声に耳を傾け、小さな変化にも注意を払うことが早期発見につながります。 効果的な貧血対策には、医療機関での専門的な検査と食事・生活改善の両輪が不可欠です。正確な診断に基づいた適切な治療と、栄養バランスの取れた食事や規則正しい生活習慣の改善を組み合わせることで、根本的な解決が期待できます。 貧血の症状でお悩みの方や、検査数値に不安がある方は、ぜひリペアセルクリニックにご相談ください。当院では豊富な経験を持つ医師が、診断と治療をします。隠れ貧血の早期発見から個別の栄養指導、生活習慣の改善までサポートいたします。LINEにてお気軽にお問い合わせください。 参考文献 文献1 公立学校共済組合 近畿中央病院「血液検査基準一覧表」公立学校共済組合 近畿中央病院 臨床検査科 https://www.kich.itami.hyogo.jp/wp-content/uploads/2020/11/rk1.pdf (最終アクセス:2025年6月10日) 文献2 こころみクリニック上野御徒町 内科・血液内科・糖尿病内科「貧血はどのように見極める?貧血のタイプと検査」こころみクリニック上野御徒町 内科・血液内科・糖尿病内科ホームページ https://ueno-okachimachi-cocoromi-cl.jp/knowledge/anemia-test/ (最終アクセス:2025年6月10日) 文献3 国立循環器病研究センター「主な血液検査の基準値一覧」国立循環器病研究センター https://www.ncvc.go.jp/hospital/wp-content/uploads/sites/2/20210816_kizyuntiitiran_sougoukenshitu.pdf (最終アクセス:2025年6月10日) 文献4 医学書院「あなたも見逃している!? “隠れ貧血”」医学書院ホームページ https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2022/3488_04 (最終アクセス:2025年6月10日) 文献5 まえだクリニック「鉄欠乏性貧血の診断について」まえだクリニックホームページ、2023年11月22日 https://maeda.clinic/blog/20231122_diagnosis-of-iron-deficiency/ (最終アクセス:2025年6月10日)
2025.06.29 -
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「立ちくらみがして、そのまま倒れてしまった」「急に視界が暗くなって意識が遠のいた」 そんな経験に心当たりはありませんか?とくに女性に多い貧血は、放っておくと日常生活に支障をきたすばかりか、転倒やケガなどの事故にもつながりかねません。 本記事では、貧血で倒れてしまう原因や前兆となるサイン、倒れそうになったときの対処法、そして受診すべきタイミングについて、わかりやすく解説します。「また倒れたらどうしよう」といった不安を少しでも軽くできるよう、ぜひ参考にしてください。 貧血で倒れる原因 貧血による失神や倒れる症状には、さまざまな原因があります。もっとも多い鉄欠乏性貧血から、血圧の変化による起立性低血圧、さらには重篤な疾患に伴う貧血まで、背景はさまざまです。原因を理解すると、適切な対処と予防が可能になります。 鉄欠乏性貧血 日本で最も多くみられる貧血は鉄欠乏性貧血です。以下は検査項目における体内鉄分量の平均的な数値になります。 検査項目 数値 ヘモグロビン 2g(男性)、1.5g(女性) フェリチン 1g(男性)、0.6g(女性) ヘモジデリン 300mg ミオグロビン 200mg 組織酵素(ヘム鉄および非ヘム鉄) 150mg トランスフェリン 3mg (文献1) 鉄欠乏性貧血の主な原因は以下のとおりです。 単純な鉄の摂取不足 過多月経や慢性出血 腸の吸収不全 男性の場合:胃・十二指腸潰瘍、大腸がんなど消化器系の出血が中心 鉄欠乏性貧血はとくに女性に多く、症状は以下のとおりです。 動悸・息切れ めまい・立ちくらみ 耳鳴り 疲れやすさ 頭が重い感覚 顔色が青白い 集中力の低下 女性は月経による鉄分の損失が多いため、とくに注意が必要です。症状が続く場合は医療機関での検査をおすすめします。 起立性低血圧(脳貧血) 起立性低血圧は脳貧血や立ちくらみとも呼ばれ、血液の異常ではなく血圧の急激な低下が原因で起こります。症状は以下のようなタイミングで現れることが多いです。 朝の急な立ち上がり時 長時間の立位後 座位や臥位から急に立ち上がった際 起立性低血圧になりやすい人の特徴として、以下の要因が考えられます。 長時間立ちっぱなしの状況が多い 低血圧体質 睡眠不足が続いている 水分不足状態 特定の薬を服用中(降圧薬など) 対策としては、急な体位変換を避け、ゆっくりと立ち上がることが重要です。十分な水分摂取と適度な休息を心がけ、症状が頻繁に起こる場合は医師に相談しましょう。薬剤性の可能性もあるため、服用中の薬についても医師へ伝えることが大切です。 その他の疾患 慢性疾患やその他の疾患に伴う貧血は、基礎疾患の炎症や代謝異常により引き起こされる二次性の貧血です。原因となる主な疾患は以下のとおりです。 心不全 慢性腎臓病 全身性自己免疫疾患(関節リウマチ、SLEなど) 感染症(慢性感染症) がん(悪性腫瘍) 二次性の貧血は原疾患の治療が重要で、鉄剤の補充だけでは改善しにくいのが特徴です。基礎疾患による慢性炎症が鉄の利用を阻害するため、根本的な原因疾患の管理が必要となります。 中高年以降で原因不明の貧血が続く場合は、隠れた慢性疾患の可能性も考慮し、総合的な検査が重要です。 貧血で倒れる前のサイン 貧血では、倒れる際に前兆となるサインがあります。 感覚系の異常として、回転性のめまいやふらつき、体のバランス感覚の低下が現れます。「キーン」「ボーッ」といった耳鳴りにより外の音が遠く感じられたり、目の前が真っ暗になる、視野にちらつきが見えるなどの視覚異常も要注意です。 循環器系の症状では、心臓がバクバクする動悸や息切れ、呼吸が浅くなる症状が見られます。急に全身が冷えて冷や汗をかき、顔色が悪くなる顔面蒼白も典型的なサインです。 その他の症状として、おなかがムカムカする吐き気や腹部不快感、血の気が引くような手足の冷感や脱力感があります。集中できない、頭がフワフワするといった意識の朦朧や頭重感も現れます。 これらの症状が現れたら、すぐに座ったり横になったりすることが重要です。無理をせず、症状が続く場合は医療機関を受診しましょう。 貧血で倒れそうになったときの対処法 貧血の症状が現れて倒れそうになった際は、冷静に適切な対処が重要です。無理して動き続けると症状が悪化し、転倒や怪我のリスクが高まります。以下の手順に沿って、段階的に対応しましょう。 安全確保する まず最優先に行うべきは安全な場所の確保です。立っていると転倒の危険があるため、無理をせずその場でしゃがんだり、可能であれば横になったりして安全な体勢を取りましょう。 階段や道路、電車のホームなど危険な場所にいる場合は、周囲の人に助けを求めながら安全な場所への移動が大切です。頭を打つような転倒を避けるため、壁や手すりがある場所でゆっくりと体勢を低くしましょう。 一人でいる場合でも、慌てずに周囲の状況を確認し、転倒リスクの少ない場所で休息を取ることを心がけてください。安全確保は何よりも優先されるべきです。 服を緩める 安全な体勢が確保できたら、次に血流の改善を図りましょう。ベルトやネクタイ、襟元のボタンなど、体を締め付けている衣類をゆるめることで血行を促進し、症状の緩和につながります。 首周りや腹部を締め付けているものは、血液循環や呼吸を妨げる可能性があるため優先的に緩めましょう。靴のひもやブーツなども、きつく感じる場合は緩めてください。 可能であれば静かで人の少ない場所に移動し、安静に過ごすことが重要です。騒がしい環境は症状を悪化させる可能性があるため、落ち着いて休める環境を確保しましょう。リラックスした状態で休息を取ると、徐々に症状の改善が期待できます。 水分や糖分を補給する 意識がはっきりしている場合は、適切な水分や糖分補給をしましょう。脱水が貧血症状を悪化させる場合があるため、水やスポーツドリンクの摂取が効果的です。糖分不足も症状に関係する場合があるので、飴やジュースなども有効です。 ただし、意識がもうろうとしている場合は絶対に飲食させてはいけません。誤嚥の危険があり、窒息や肺炎のリスクが高まります。無理に口に含ませることは避けてください。 意識が戻らない、けいれんが起こる、呼吸困難などの重篤な症状が見られる場合は、迷わず119番通報をしましょう。これらは緊急事態のサインであり、専門的な医療処置が必要です。軽視せず、適切な判断を心がけてください。 貧血で倒れた場合の受診目安 貧血による失神や倒れるなどの症状が起きた場合、その後の対応が重要です。軽微な症状であっても、背景に重大な疾患が隠れている可能性があるため、受診の必要性を正しく見極める必要があります。以下の基準を参考に、適切な医療機関への相談を検討しましょう。 受診が必要なケースは 緊急性の高い場合は、以下のような症状がみられます。 繰り返し倒れる 失神の時間が長い けいれんがあった 頭を打った 呼吸が乱れている 意識がはっきりしない など このような状況では即座に医療機関を受診してください。 日常生活への影響が大きい場合も受診の目安となります。仕事や学校生活に支障をきたすような症状が継続する場合は、その時点で病院の受診が必要です。 貧血の原因は鉄欠乏症だけでなく、がんなどの重大な疾患が潜んでいる可能性もあります。とくに中高年で急に貧血症状が現れた場合や、通常の鉄分補給で改善しない場合は、詳しい検査が必要です。軽視せず早期の受診を心がけましょう。 何科に受診するのか 貧血症状で医療機関を受診する際は、まず内科がおすすめです。内科では血液検査や基本的な診察を通じて、貧血の原因を特定し、適切な治療方針を決定できます。 年齢や性別による選択肢として、子どもの場合は小児科、女性の場合は産婦人科でも対応可能です。女性の貧血は月経過多や婦人科疾患が原因となる場合が多いため、産婦人科での相談も良いでしょう。 受診科に迷った場合は、まずかかりつけの医療機関に相談をおすすめします。症状に応じて適切な診療科を案内してもらえます。 貧血でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へお気軽にお問い合わせください。 貧血で倒れないための予防策 貧血による失神や倒れる症状を予防するには、日常生活での対策が重要です。食事や水分摂取、生活習慣の改善を通じて、体の状態を整えることで貧血リスクを大幅に軽減できます。以下のポイントを意識して、継続的な予防に取り組みましょう。 食事の見直し 基本的な食習慣の改善として、バランスの良い食事を1日3回規則正しく摂取しましょう。よく噛んで食べることで消化吸収を促進し、栄養素の効率的な利用につながります。 鉄分を多く含む食品(レバー、赤身肉、ほうれん草、小松菜など)を積極的に摂取しましょう。同時にタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)やビタミン類(とくにビタミンC、B12、葉酸)も重要です。ビタミンCは鉄の吸収を促進するため、一緒に摂ることが効果的です。 18歳以上の鉄の食事摂取基準(1日あたり)は以下のとおりです。 成人男性:7.0mg 成人女性:6.0mg(月経あり:10.5mg)(文献2) 注意点として、コーヒーや紅茶の飲みすぎは鉄の吸収を阻害するため控えめにし、食事と時間をずらしての摂取がおすすめです。 水分と塩分の適切な摂取 起立性低血圧の予防には、とくに朝の水分補給が重要です。起床時は血液が濃縮されているため、コップ1杯の水を飲むと血液循環を改善できます。立ち上がる際は急に動かず、ゆっくりと段階的に体勢を変えましょう。 夏場や運動時は発汗により脱水が進みやすいため、こまめな水分補給が必要です。スポーツドリンクなどで適度な塩分も同時摂取が効果的です。 食事後は消化のために血液が胃腸に集中し、起立性低血圧になりやすくなります。食後は急な立ち上がりを避け、ゆっくりとした動作を心がけてください。日常的に十分な水分摂取を維持すると、血液循環の改善と貧血症状の予防につながります。 睡眠・ストレス・運動習慣を整える 自律神経の安定が脳貧血予防のポイントです。質の良い睡眠を確保し、規則正しい生活リズムを維持すると、自律神経のバランスが整い、血圧や心拍数の調整機能が正常に働きます。 適度な運動も効果的で、軽いウォーキングやストレッチなどの有酸素運動は血液循環を改善し、心肺機能を向上させます。激しい運動は避け、継続可能な範囲で行いましょう。 ストレス管理では、リラックスや趣味の時間を作ると、心身の緊張が和らぎます。慢性的なストレスは自律神経の乱れを引き起こし、貧血症状を悪化させる可能性があります。深呼吸や瞑想、軽いヨガなども自律神経の安定に役立つでしょう。 生活習慣を総合的に改善すると、貧血による失神リスクを大幅に軽減できます。 貧血で倒れる頻度が多い方は放置厳禁! 頻繁に倒れる症状が続く場合は、背景に重大な疾患が隠れている可能性があります。鉄欠乏性貧血以外にも、慢性疾患や悪性腫瘍による貧血、血液疾患などが原因となることがあるため、繰り返す症状は必ず医療機関で詳しい検査を受けてください。 貧血の原因や症状は一人ひとり異なるため、個々の状況に応じた適切な治療が必要です。自己判断による対処では根本的な解決にならず、症状の悪化や合併症のリスクもあります。専門的な診断と治療を受けることで、効果的な改善が期待できます。 貧血でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へお気軽にお問い合わせください。 参考文献 文献1 MSDマニュアル プロフェッショナル版「鉄欠乏性貧血」MSDマニュアル プロフェッショナル版 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/11-%E8%A1%80%E6%B6%B2%E5%AD%A6%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E8%85%AB%E7%98%8D%E5%AD%A6/%E8%B5%A4%E8%A1%80%E7%90%83%E7%94%A3%E7%94%9F%E4%BD%8E%E4%B8%8B%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E8%B2%A7%E8%A1%80/%E9%89%84%E6%AC%A0%E4%B9%8F%E6%80%A7%E8%B2%A7%E8%A1%80(最終アクセス:2025年6月9日) 文献2 厚生労働省「鉄の食事摂取基準(mg/日)」厚生労働省ホームぺージ https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4aq.pdf(最終アクセス:2025年6月9日)
2025.06.29 -
- 野球肘
- 上肢(腕の障害)
- 下肢(足の障害)
- 肘関節
- スポーツ外傷
「肩や肘が痛いけれど、まだ投げられるから大丈夫」「チームに迷惑をかけられないから、少しくらい我慢しよう」 このような想いを抱きながら、痛みと向き合っている選手や保護者の方は決して少なくありません。 しかし、驚くべきことに高校球児の20人に1人が肩関節もしくは肘関節の手術や引退を余儀なくされるような重篤な怪我を経験しているのが現実です。(文献1) さらに、1シーズンで100イニング以上投げた選手は、投球回数が少ない選手に比べて約3.5倍の確率で重篤な怪我のリスクが高まるという研究結果も報告されています。(文献1) 野球での怪我は運や偶然で起こるものではありません。そこには必ず原因があり、正しい知識と早期対応によって多くの怪我は予防できるのです。 本記事では、野球で発症しやすい代表的な怪我の種類と症状、そして最も大切な予防法について詳しく解説します。 怪我と正しく向き合うための知識を身につけることで、長く野球を続けられる体づくりを目指しましょう。 野球で多い怪我と症状をチェック 野球は全身を使ってプレーする複雑なスポーツです。投球、打撃、守備、走塁のすべての動作で、さまざまな部位に負担がかかります。(文献2) 以下で詳しく解説する野球で多い怪我の症状や特徴を理解し、自分の症状がどのタイプに当てはまるかを把握しましょう。 野球肩 原因 投球動作の繰り返し、肩甲骨周囲筋の筋力低下、不適切な投球フォーム、体幹・股関節の柔軟性低下 症状 投球時の肩の痛み、腕を上げる際の引っかかり感、夜間痛(炎症が強い場合)、肩の可動域制限 治療法 投球中止と安静(2〜4週間)、消炎鎮痛薬、ステロイド注射、リハビリテーション、重症例では手術 野球肩は投球動作で引き起こされる肩関節周辺の障害の総称で、発症のピークは15~16歳とされており、投手と捕手に多く見られます。(文献3) 投球動作は5つのフェーズに分けられ、各フェーズで異なる負荷がかかるため、痛みの出るタイミングによって損傷部位や重症度を推測できます。 ワインドアップ期:投球動作開始からステップ脚を最も高く上げるまで アーリーコッキング期:ステップ脚が地面に着くまで レイトコッキング期:肩関節が最大外旋位に達するまで アクセラレーション期:ボールリリースまでの加速期 フォロースルー期:ボールリリース後の減速期野球肩は段階的に進行する特徴があります。 初期段階では投球後の軽い違和感程度で、数日休むと症状が改善できるため、この段階での適切な対応が最も重要ですが、無理をしてしまうと日常生活に支障をきたすようになってしまいます。 初期段階で食い止められるように、違和感がある際は無理をせず休みましょう。 野球肘 原因 投球による肘への外反・回内ストレス、成長期の骨端線への負荷、オーバーユース、不良な投球フォーム 症状 投球時・投球後の肘痛、肘の伸展・屈曲制限、急に動かせなくなる(ロッキング)、握力低下(文献4) 治療法 投球禁止と安静、内側型は保存療法中心、外側型は長期投球禁止または手術、後方型は炎症抑制治療 野球肘は投球動作の繰り返しによって肘関節に生じる疼痛性障害の総称で、発症の時期により「発育型野球肘」と「成人型野球肘」に分けられます。 年代別の特徴として、11-12歳が発生のピーク年齢とされており、成長期では骨端(骨にある軟骨や成長線)への影響が大きく、成人期では靱帯や筋腱付着部の障害が中心となります。 野球肘の診断で重要なポイントとして、野球肘は前兆となる自覚症状が乏しく、痛みを訴える時には重症化していることが少なくない特徴があります。 腰椎分離症・腰痛(バッティング・投球の負担) 原因 打撃練習での体幹回旋動作、投球時の腰部負担、中腰姿勢の維持、不適切なランニングフォーム 症状 体幹後屈時の痛み、長時間立位困難、慢性的な腰痛、進行すると下肢のしびれ 治療法 早期発見時は保存療法(コルセット装着)、安静、完全分離時は手術を検討 腰椎分離症は、腰の背骨にある椎弓(ついきゅう)と呼ばれる腰椎が分離している状態のことを指します。疲労骨折が原因と言われており、発育期の代表的なスポーツ障害の一つです。 野球ではピッチングやバッティングで身体を反ったり、腰をひねる動作を繰り返し行うため、発症しやすい疾患として知られています。 日本の成人も約6%が腰椎分離症を患っていますが、未成年では小学校高学年~大学進学時の成長期のスポーツ部活生に起きることが多いとされています。 日本臨床スポーツ医学誌の研究では、大阪府で全国大会出場レベルの高校野球部に入学予定の中学3年生男子を258名研究した実験によれば、258名中55名(21.3%)が腰椎分離症を疑う初見を有しており、年齢に関係なく野球の練習に熱心な子どもは腰椎分離症を患いやすいことが判明しました。(文献5) 治療で重要なのは早期発見です。まだ骨折が早期の状態で発見できれば、手術をしない保存療法で治療を進められます。コルセットの着用など安静が正しく守れれば、骨は自然と癒合していきます。 足首捻挫・アキレス腱炎 原因 急激な方向転換、不整地でのプレー、ふくらはぎの筋肉の柔軟性低下、不適切なシューズ 症状 足首の痛み・腫れ、歩行困難、アキレス腱部の痛み・圧痛 治療法 RICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)、テーピング、リハビリテーション 野球では走塁時の急激な方向転換や、硬いグラウンドでのプレーにより足首の捻挫が頻繁に発生します。また、ダッシュやジャンプ動作の繰り返しによりアキレス腱炎も起こりやすい怪我の一つです。 アキレス腱炎は、ふくらはぎの筋肉とかかとの骨をつなぐアキレス腱に炎症が起こる状態です。野球では、ダッシュや方向転換の繰り返し、合わないシューズを着用することで発症しやすくなります。 野球で発症した怪我のリハビリについて 野球で発症した怪我のリハビリは、単に痛みを取り除くだけではなく、競技復帰に向けた段階的な機能回復と再発予防が重要な目的となります。 以下は野球肩と野球肘のリハビリにおいて、重要なポイントです。 野球肩のリハビリポイント 急性期:肩のアイシングと安静時のポジショニング 回復期:肩甲骨周囲筋の筋力強化、インナーマッスル強化 競技復帰期:投球動作の段階的練習、フォームチェック 野球肘のリハビリポイント 投球禁止と肘のアライメント改善 股関節・体幹の柔軟性向上 段階的な競技復帰プログラム リハビリの成功には、選手、指導者、医療スタッフの連携が不可欠です。焦らずに段階的なプログラムを遵守し、より強い状態での競技復帰を果たしましょう。 野球での怪我リスクを予防するためには 野球での怪我リスクを効果的に予防するためには、まず怪我につながる主要因への理解が重要です。 適切な投球数制限を守る まず、過度な投球数は怪我のリスクを引き上げてしまいます。 予防対策として、各年代の投球数制限のガイドラインに従って、以下の表を参考に球数制限をすると良いでしょう。 年代 投球数制限(1日) 投球数制限(1週間) 補足 小学生 4年生以下60球以内 5・6年生70球以内(文献6) - 2日間連続で投げる場合は合わせて100球以内 中学生 1日70球以内(文献7) 350球以内 週に1日全力投球しない日を設ける 連続する2日間で120球以内 高校生 - 500球以内(文献8) 投球フォームの改善 不適切な投球フォームは肩や肘に過度な負担をかける主要な原因です。 以下のようなフォームは、怪我のリスクを高め、選手生命を脅かしてしまうため改善を心がけましょう。 肘が下がったまま投げることで手投げになってしまい、肘に負担をかける 身体の開きが早く、肩関節に過度なストレスがかかってしまう 踏み出す足を投球方向に斜め、または横に踏み出すことで身体の回転を正しく使えずにフォームを崩す 癖になる前に指導者の指示に従い、修正しましょう。 股関節の柔軟性 また、股関節の柔軟性は野球での怪我予防の最重要ポイントです。股関節が固いと体を上手に使えず、その状態で野球特有のピッチングやバッティングを行うと怪我の危険性が高まります。 対策として、股関節の柔軟性向上のためのストレッチを日常的に行い、練習前には適切なウォーミングアップを実施することで、怪我のリスクを軽減しましょう。 そして、継続的な疲労の蓄積は怪我の大きな要因となるため、適切な休養により体の回復を図る必要があります。 十分な睡眠と栄養摂取により体調管理を徹底し、怪我をしにくい身体づくりを行ってください。 早期復帰が目指せる再生医療(PRP/幹細胞)について メジャーリーガーをはじめとする野球選手が取り入れている「再生医療」について紹介します。 再生医療の一つ「PRP療法」には、日帰り治療が可能で手術を回避できるというメリットがあります。 患者様自身の血液を活用する治療法のため、副作用のリスクが少ないのが特徴です。 もう一つの再生医療「幹細胞治療」では、患者様から採取・培養した幹細胞を患部に投与いたします。幹細胞には、他の細胞に変化する能力があり、患部にアプローチします。 PRP療法だけでなく幹細胞治療も入院を必要としないため、短期間での治療を目指せるのが特徴です。 再生医療は、野球選手の怪我治療における新たな選択肢として確立されつつある治療法です。 ただし、予防が最も重要であることに変わりはありません。怪我をする前の予防策の実施と、万が一怪我をした場合の適切な治療選択が、長い競技人生を支える両輪となります。 まとめ||再発ゼロを目指すなら専門医の伴走が近道 野球での怪我は予防が最も重要です。正しい投球フォームの習得や年代に応じた投球数制限を守り、柔軟性を保つことで多くの怪我を防げます。 万が一怪我をした場合でも、メジャーリーガーも取り入れているPRP療法や幹細胞治療などの再生医療により、野球への早期復帰が目指せます。 1週間以上続く痛み、投球時の違和感、可動域の制限といった初期症状に気づいたら、すぐに専門医に相談してください。 あなたの野球人生をより良いものにするためにも、違和感があれば一人で悩まず、専門医へ相談しましょう。長く充実した野球人生を送るため、私たちが全力でサポートいたします。 参考文献 (文献1) 古島弘三ほか「少年野球での"投げ過ぎ"が及ぼす影響 肩や肘の重篤な故障リスクは3.5倍」Full-Count, 2022年10月14日 https://full-count.jp/2022/10/14/post1294608/(最終アクセス:2025年5月24日) (文献2) 公益財団法人スポーツ安全協会「障害予防のためのセルフチェック|スポーツ外傷・障害予防-野球編」 https://www.sportsanzen.org/syogai_yobo/baseball/page2.html (最終アクセス:2025年5月25日) (文献3) 日本整形外科学会認定スポーツ医「野球肩」 https://jcoa.gr.jp/%E6%8A%95%E7%90%83%E8%82%A9/ (最終アクセス:2025年5月25日) (文献4) 日本整形外科学会認定スポーツ医「野球肘」 https://jcoa.gr.jp/%E6%8A%95%E7%90%83%E8%82%A9/ (最終アクセス:2025年5月25日) (文献5) 栗田剛寧ほか「発育期野球選手におけるポジション別の腰椎分離症と身体特性の関連」日本臨床スポーツ医学会誌 32(3), 446-453, 2024年 https://www.rinspo.jp/journal/2020/files/32-3/446-453.pdf (最終アクセス:2025年5月25日) (文献6) 日本少年野球連盟「投球数制限ガイドライン」2021年12月 https://www.boys-fukuoka.com/download/tokyusuu_seigen/20211212_tokyuguideline.pdf (最終アクセス:2025年5月27日) (文献7) 日本中学野球協議会「中学生投手の投球制限に関する統一ガイドライン」 https://littlesenior.jp/news/48.html (最終アクセス:2025年5月27日) (文献8) 日本高等学校野球連盟「高校野球特別規則(2024年版)」2024年 https://www.jhbf.or.jp/summary/rule/specialrule/specialrule_2024_1.pdf (最終アクセス:2025年5月27日)
2025.05.30 -
- インピンジメント症候群
- 肩関節
「肩を動かすたびに痛みが走る…」このような症状でお悩みではないでしょうか。 肩の痛みは、多くの方が真っ先に五十肩を思い浮かべがちですが、実はインピンジメント症候群という別の疾患の可能性もあります。 この2つは症状が似ているため、自己判断は困難です。 しかし、原因や治療法が異なるため、正しい診断を受けて治療を受けることが痛みの早期改善につながります。 本記事では、インピンジメント症候群と五十肩の違いについて、医師の視点から詳しく解説します。 さらに、ご自宅でできるセルフチェック方法や、それぞれの症状に適した対処法もご紹介しますので、「この痛みの正体を知りたい」「適切な治療を受けたい」とお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。 インピンジメント症候群と五十肩の違い インピンジメント症候群と五十肩は、どちらも肩の痛みを引き起こしますが、その原因や症状には明確な違いがあります。 最も大きな違いは、肩の動かしやすさにあります。インピンジメント症候群の場合、痛みはあるものの肩を動かすことは可能です。 一方、五十肩では肩の可動域が著しく制限され、動かしたくても動かせない状態になります。 以下の表で、両者の主な違いを比較してみましょう。 項目 インピンジメント症候群 五十肩(肩関節周囲炎) 主な症状 腕を上げる時の痛み 肩の可動域制限と痛み 可動域 痛みはあるが動く 著しく制限される 夜間痛 あり(とくに寝返り時) あり(じっとしていても痛む) 発症年齢 傾向なし(スポーツ選手に多い) 40〜60代 原因 肩峰下での組織の挟み込み 肩関節周囲の炎症・癒着 病期 明確な段階分けなし 炎症期→拘縮期→回復期 この違いを理解し、ご自身の症状がどちらに該当するか、ある程度の見当をつけられますが、正確な診断には医師による詳しい検査が必要です。 インピンジメント症候群とは インピンジメント症候群は、肩関節内で腱や滑液包(関節の動きを滑らかにする袋状の組織)が骨と衝突し、炎症を引き起こす疾患です。 「インピンジメント(impingement)」は挟み込みや衝突を意味する英語で、まさにその名の通り、肩の中で組織が挟み込まれることによって痛みが生じます。 この症状の最大の特徴は、腕を横から上に上げる動作(外転動作)で強い痛みが現れることです。 とくに、腕が水平よりやや上の位置(60〜120度の範囲)で痛みがピークに達する「ペインフルアーク」と呼ばれる特徴的な症状を示します。 夜間痛も非常に特徴的で、寝返りを打った際や、痛む側の肩を下にして寝ようとした時に激痛が走ります。 これは、横になることで肩峰(肩甲骨の突起部分)と上腕骨頭の間のスペースがさらに狭くなり、炎症を起こした組織が圧迫されるためです。 テニスや水泳など腕を頭上に上げるスポーツ選手に多く見られますが、最近では長時間のデスクワークや猫背などの悪い姿勢による発症も増加しています。 猫背が続くと胸の筋肉が硬くなり、肩甲骨の位置がずれて筋肉バランスが崩れ、組織が骨に挟まれやすくなります。 また、40代以降は肩峰の形状変化や腱の柔軟性低下により発症しやすくなります。放置すると日常生活に支障をきたすため、早期の専門医受診が重要です。(文献1) 五十肩(肩関節周囲炎)とは 五十肩は、「肩関節周囲炎」や「凍結肩」とも呼ばれる疾患で、肩関節の周囲にある関節包や滑液包に炎症が生じ、最終的に癒着を起こすことで肩の動きが著しく制限される疾患です。(文献2) 「五十肩」という名前は、50代の方に多く発症することから付けられましたが、実際には40〜60代の幅広い年齢層で見られます。 五十肩の最大の特徴は、肩の可動域が段階的に制限されることです。 初期には痛みが主な症状ですが、徐々に肩が硬くなり、最終的には腕を上げることも後ろに回すこともできなくなります。 五十肩は3つの病期に分かれて進行します。 炎症期(急性期):この時期はジンジンする痛みが特徴で、悪化すると夜間痛が強く現れます。じっとしていても痛み、睡眠が妨げられることも少なくありません。肩を動かそうとすると激痛が走るため、自然と動かさなくなります。 拘縮期(慢性期):炎症による激しい痛みは徐々に和らぎますが、関節の癒着が進行し、可動域制限が顕著になります。痛みよりも「動かしにくさ」が主な症状となります。 回復期:癒着した組織が少しずつ緩み、可動域が改善していきます。ただし、完全に元の状態に戻るまでには相当な時間を要することが多いです。 五十肩の原因は完全には解明されていませんが、加齢による関節周囲組織の変性や、血流の悪化などが関与していると考えられています。 インピンジメント症候群との最大の違いは、五十肩では他人が強制的に腕を動かそうとしても動かない(他動運動の制限)ことです。 一方、インピンジメント症候群では、痛みはあるものの関節自体の可動域は保たれています。 セルフチェック|その痛みはインピンジメント症候群?五十肩? ご自宅で簡単にできるセルフチェック方法をご紹介します。 ただし、これらのテストはあくまで目安であり、正確な診断には医師による詳しい検査が必要です。 【インピンジメント症候群のセルフチェック】 セルフチェック方法 説明 ペインフルアークテスト 腕を体の横から頭上にゆっくりと上げてみてください。上げ始めは痛みが少なく、60〜120度の範囲で強い痛みが現れ、それを超えると再び痛みが軽減する場合は、インピンジメント症候群の可能性があります。 ホーキンステスト 肘を90度に曲げた状態で腕を前に伸ばし、そこから手首を下向きに回旋させます。この動作で肩の前面に痛みが生じる場合は陽性です。 夜間痛チェック 痛む側の肩を下にして横になった時に激痛が走る、または寝返りで目が覚めることが頻繁にある場合は、インピンジメント症候群の特徴的な症状です。 【五十肩のセルフチェック】 セルフチェック方法 説明 可動域制限テスト 腕を真上に上げる(屈曲) 腕を横から上に上げる(外転) 手を背中に回す(内旋) これらの動作で著しい制限がある場合は五十肩の可能性があります。 段階的悪化チェック 最初は痛みが主で、徐々に動かしにくくなった 夜間痛が強かった時期がある 現在は痛みより動きの制限が気になる このような経過を辿っている場合は五十肩の典型的なパターンです。 以下の症状がある場合は、より重篤な疾患の可能性もあるため、速やかに医療機関を受診してください。 腕や手に力が入らない しびれや感覚の異常がある 発熱を伴う 外傷後から症状が始まった 安静にしていても耐えがたい痛みが続く これらのセルフチェックで該当する項目が多い場合でも、自己判断での治療は避けてください。 とくに、五十肩とインピンジメント症候群では治療法が大きく異なるため、専門医による正確な診断が回復への近道となります。 原因と悪化させる生活習慣 インピンジメント症候群と五十肩の発症には、現代のライフスタイルが大きく関わっています。 とくに、長時間のデスクワークや不良姿勢は、肩関節周囲の筋肉バランスを崩し、症状を悪化させる主要な要因となります。 ここからは、インピンジメント症候群や五十肩を引き起こしやすい生活習慣について詳しく解説します。 要因を理解し、日常生活で意識的に改善して症状の予防や悪化防止につなげましょう。 姿勢・デスクワークの影響 現代社会では長時間のデスクワークが一般的ですが、この環境こそが肩の痛みを引き起こす最大の要因です。 パソコン作業のように同じ姿勢を長時間続けていると、肩関節周辺の筋肉が緊張し、血行不良を起こしやすくなります。 デスクワーカーの方は、1時間に1回は席を立ち、肩甲骨を意識的に動かすストレッチを行いましょう。 また、モニターの高さや椅子の調整により、自然と良い姿勢を保てる環境を整えることも重要です。 加齢・ホルモン・代謝疾患の関与 加齢による身体の変化も、肩の疾患発症に大きく関わっています。 40代以降になると、関節周囲の組織が衰えます。その結果、腱や靭帯の柔軟性が低下し、関節軟骨の摩耗も修復機能も衰えてきます。 そのため、若い頃なら自然に治癒していた軽微な損傷も蓄積され、やがて痛みや機能障害として現れます。 また、更年期を迎えた女性では、エストロゲン(女性ホルモン)の減少が関節周囲組織に影響を与えます。 エストロゲンには抗炎症作用があるため、その分泌が減少すると炎症が起こりやすくなり、五十肩の発症リスクが高まります。 そして、糖尿病を患っている方は、五十肩の発症率が高いことが知られています。(文献3) 高血糖状態が続くと、肩の動きを補助する腱板の損傷部分も血行不良になり、五十肩を引き起こす要因となってしまいます。 加齢やホルモンの変化は避けられませんが、自己管理と医師のサポートにより肩の疾患のリスクを軽減していきましょう。 治療の選択肢と期待できる期間 肩の痛みの治療には、症状の程度や患者さんの生活スタイルに応じてさまざまな選択肢があります。 大きく分けて保存療法と手術療法、そして近年注目されている再生医療があります。 多くの場合、まずは保存療法から始めて、効果が不十分な場合に他の治療法を検討するのが一般的ですが、それぞれの治療法について解説します。 保存療法:薬・注射・リハビリ 多くの肩の疾患で最初に選択される治療法です。以下の表にまとめました。 治療法 解説 薬物療法 痛み止めや筋弛緩薬により症状を緩和します。 注射療法 ステロイド注射やヒアルロン酸注射で直接的に炎症を抑制します。 ただし、ステロイド注射は1カ月に2〜3回程度に制限されます。 理学療法・リハビリテーション 関節の動きの改善、筋力強化、姿勢矯正を行います。 即効性はありませんが、根本的な改善が期待できる重要な治療です。 全体として、保存療法による症状の改善には3~6カ月程度を要することが多く、患者様には継続的な治療への理解と協力が必要です。 再生医療(PRP・幹細胞)の可能性 五十肩など肩の痛みに対しては、再生医療という治療の選択肢もあります。 再生医療では、主にPRP(多血小板血漿)療法と幹細胞治療の二つがあります。 PRP(多血小板血漿)療法とは、自己血液から血小板を濃縮した成分を注入する治療法です。 一方、幹細胞治療とは、脂肪由来あるいは脊髄由来の幹細胞を用いる治療法です。他の細胞に変化する能力を持つ幹細胞を、注射や点滴によって患部に届けます。 重度の症例でも適応となる可能性があり、手術を避けたい方にとって選択肢の一つとなるでしょう。 再生医療について知りたい方は以下のページリンクをご覧ください。 予防とセルフケア|今日からできること 肩の痛みは日常生活のちょっとした工夫で予防できることが多く、症状が出現してからでも適切なセルフケアにより悪化を防げます。 ここでは、今日からすぐに実践できる方法を簡単にご紹介します。 まず、姿勢の改善を意識しましょう。モニターは目から40cm以上離し、画面を見る角度は水平視線より下の15〜20度に調整しましょう。 椅子は座面の高さを調整でき、背もたれを活用して耳・肩・骨盤が一直線になるよう意識します。 日本人の平均座位時間は世界最長の7時間とされており、長時間の座位は疾患リスクを高めるため、こまめに立ち上がることが重要です(文献4)。 ストレッチでは、振り子ストレッチ(Codman体操)をやってみましょう。 肩をリラックスさせて立つ 体を前に傾けて痛みのある方の腕を下げる 机などに反対の手をついて体を支える 痛む側の腕を小さな円を描くように振る 前後左右に10回転ずつ行う 症状が改善してきたら徐々にスイングの直径を大きくしていきます。 このストレッチは重力を利用して肩関節の可動域を改善するため、五十肩やインピンジメント症候群の両方に効果が期待できます。 ただし、必ず痛みのない範囲で、無理をしないでください。 まとめ|最短で肩の痛みから解放されるには 肩の痛みに悩まれている多くの方が「五十肩だろう」と自己判断されがちですが、実際にはインピンジメント症候群の可能性も十分に考えられます。 本記事でお伝えした通り、この2つの疾患は症状が似ているものの、原因や治療法が大きく異なります。 二つの違いを見分けるには、以下のポイントが重要です。 インピンジメント症候群は「痛みはあるが動く」 五十肩は「動かしたくても動かない」 セルフチェックである程度の判別は可能ですが、正確な診断には専門医による詳しい検査が不可欠です。 治療方法は保存療法の他に再生医療もあります。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療専門のクリニックとして、一人ひとりの症状に応じた幅広い治療選択肢を提供しております。 「この痛みがいつまで続くのか不安」「仕事に支障が出て困っている」といったお悩みをお持ちの方は、お気軽にご相談ください。 一日でも早く痛みから解放され、快適な日常生活を取り戻していただけるよう、全力でサポートいたします。 参考文献 (文献1) 順天堂大学医学部附属順天堂医院「インピンジメント症候群」順天堂医院ホームページ https://hosp.juntendo.ac.jp/clinic/department/seikei/disease/disease12.html(最終アクセス:2025年5月25日) (文献2) 日本整形外科学会「五十肩(肩関節周囲炎)」 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/frozen_shoulder.html(最終アクセス:2025年5月25日) (文献3) 村木孝行.「肩関節周囲炎 理学療法診療ガイドライン」『理学療法学』43(1), pp.67-72, 2016年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/43/1/43_43-1kikaku_Muraki_Takayuki/_pdf(最終アクセス:2025年5月25日) (文献4) 健康管理事業センター「デスクワーク中の正しい姿勢について」健康管理事業センターニュースレター,2024年2月 https://www.kenkomie.or.jp/file/newsletter/k_202402.pdf(最終アクセス:2025年5月25日)
2025.05.30 -
- 下肢(足の障害)
- スポーツ外傷
「サッカーの練習中に足のつけ根が痛くなってきた...」「ランニングで股関節まわりに違和感があるけど、病院に行くほどなのかな?」 このようなお悩みを持たれている方もいらっしゃることでしょう。足のつけ根の痛みをそのうち治るだろうと我慢すると、半年以上プレーできなくなるケースもあります。 グロインペイン症候群は、適切な対処で早期回復が期待できる症状です。 この記事では、グロインペイン症候群の治し方について、自分でできるチェック方法から症状レベル別ケアまで説明します。 本記事を読むと今日から取れる行動がわかることと、病院に行くか迷わないようになりますので、ぜひ最後までご覧ください。 グロインペイン症候群の治し方|セルフケアと治療法 グロインペイン症候群の治療は、症状の段階に応じて段階的にアプローチが重要です。 運動してもそこまで気にならない軽い痛みの場合は、1~2週間で症状が落ち着くことがあります。 中程度の痛みであれば、1〜2カ月ほど継続的な治療が必要です。この場合はまずは安静にして様子をみましょう。 そして、痛みが軽減されれば水中でのウォーキングや、軽いジョギングなど専門医と相談しながら段階的に運動を再開していく方法が効果的です。 一方で、症状が重く、慢性的に痛みが継続するような場合は、治療が数カ月以上続くことが考えられますので、病院での診察をおすすめします。 初期段階のセルフケア 痛みが軽いうちに始めたいのが、自宅でできるセルフケアです。 ストレッチがおすすめで、動きながら反動をつけてストレッチする動的ストレッチと、筋肉を伸ばした状態で反動をつけず一定時間保持する静的ストレッチがあります。 動的ストレッチは、動きながら反動をつけて行うストレッチで、運動前のウォーミングアップに適しています。股関節を大きく回したり、足を前後に振るような動きが代表的です。 静的ストレッチは、筋肉を伸ばした状態で反動をつけず、一定時間保持するストレッチです。運動後のクールダウンや就寝前に行うと効果的なストレッチです。 股関節まわりの筋力トレーニングも効果的です。お腹まわりの体幹筋を鍛えることで、股関節への負担を軽減できます。 プランクやサイドプランクなどの簡単な体幹トレーニングから始めて、徐々に負荷を上げていきましょう。 ただし、痛みが強いときは無理をせず、まずは安静にすることが大切です。 医療機関での治療法 グロインペイン症候群の治療法は主に保存療法です。 まず痛みのある部分を安静にして、湿布や飲み薬で炎症を抑えます。症状が落ち着いてきたら、股関節周りの筋肉を柔らかくするストレッチと、弱くなった筋肉を鍛える運動療法を行います。とくに太ももの内側やお腹の奥の筋肉を強化することが重要です。 理学療法士の指導のもと、正しいフォームでの運動や動作の改善も行います。 これらの保存療法で多くの場合改善しますが、効果が不十分な時は注射治療や手術を検討することもあります。完治には数ヶ月かかるため、焦らず継続することが大切です。 グロインペイン症候群の応急ケア 足のつけ根の強い痛みで練習を止めざるを得ないとき、まず頼りになるのがテーピングとサポーターです。 テープは内ももと股関節をやさしく固定して動きを制御し、痛みを一時的に減らします。 貼る位置は腸腰筋と内転筋に沿わせるのが基本で、テープを軽く引っぱりながら2本平行に貼ると動きやすさを保ちつつ負担を分散できます。 市販の腰・股関節サポーターでも痛みの緩和に効果的です。 しかし、どちらの方法も治療ではなく「あくまで痛みを抑える道具」である点を忘れずに。 2週間使っても痛みが引かない場合は、治療法を見直すサインです。 テーピングで痛みを和らげる手順 テーピングは、太ももの内側を走る筋肉に沿って貼るだけで効果が変わります。正しいテーピングの手順をみていきましょう。 正しいテーピングの手順 肌を清潔にして、毛があれば剃っておきます 鼠径部(足のつけ根)から3cm下の位置にテープの端を固定します テープを軽く伸ばしながら、太ももの内側に沿って貼ります 2枚目は1枚目に半分重なるように平行に重ねて貼ります 貼ったあとは手で軽くこすって密着させると剝がれにくくなります テーピングをするときは、強く引っ張りすぎないように注意しましょう。 皮膚が弱い方は、事前にアンダーラップ(肌を保護するテープ)を巻いてからテーピングを行うことをおすすめします。 サポーターの選び方と使い方 グロインペイン症候群は痛みの範囲が広いため、サポーターを選ぶときは、股関節をぐるりと覆う幅広タイプがおすすめです。 締め付けが強すぎると血行を妨げるので、立ったまま深呼吸して苦しくない程度のフィット感を基準にしましょう。 サポーター選びのチェックポイントとしては、以下の通りです。 素材:通気性の良いメッシュ素材 サイズ:腰まわりのサイズを正確に測定 固定力:適度な圧迫感があるもの 着脱:ベルクロタイプで調整しやすいもの 洗濯:家庭で洗えるタイプ 運動中はもちろん、通勤・通学時の長時間歩行にも有効で、痛みを感じた瞬間に着脱できるのがメリットです。 サポーターは股関節だけでなく、腰や骨盤も同時にサポートしてくれるため、体のバランスを整える効果も期待できますが、大切なのはサポーター自体が治療になるわけではなく、あくまで炎症が強い期間の補助である点です。 長期間の使用は筋力低下を招く可能性もあるため、症状が改善したら徐々に使用時間を減らしていきましょう。 痛みが続く場合は無理せず医療機関へ テーピングやサポーターだけで痛みが2週間以上続く場合、あるいは夜間にズキズキして眠れない場合は、保存療法だけでは追いつかない可能性があります。 整形外科や整骨院では電気治療や筋膜リリース、カテーテル治療などさまざまな治療法が行われていますが、必要に応じて再生医療を加えることで回復を早める方法も今後選択肢に入るでしょう。 治療期間は症状の程度で変わりますが、軽症なら1~2カ月、重症でも数カ月が目安とされています。 早期の専門的な治療により、慢性化を防げます。 グロインペイン症候群の再発予防策 グロインペイン症候群は一度治っても、根本的な原因を解決しなければ再発しやすい疾患です。 再発を防ぐためには、日常生活や運動習慣を見直すことが必要です。再発予防のポイントを以下の表にまとめました。 ポイント 説明 1.股関節の柔軟性を保つ 毎日のストレッチで股関節まわりの筋肉を柔らかく保ちます 2.体幹筋力の強化 お腹まわりの筋肉を鍛えることで、股関節への負担を軽減します 3.運動前後のウォーミングアップ・クールダウン 急激な負荷を避けるため、準備運動と整理運動を欠かさず行います 4.適切な運動量の調整 疲労が蓄積しないよう、練習量や強度を調整します 5.生活習慣の改善 十分な睡眠と栄養バランスの取れた食事で、体の回復力を高めます とくに重要なのは、股関節まわりの筋肉バランスを整えることです。内ももの筋肉(内転筋群)とお尻の筋肉(臀筋群)の筋力バランスが悪いと、股関節に過度な負担がかかります。専門的な筋力測定を受けて、自分の弱い部分を把握しましょう。 また、運動フォームの見直しも大切です。サッカーのキックやランニングの着地動作など、競技特有の動作を正しく行うことで、股関節への負担を最小限に抑えられます。 コーチや指導者に動作チェックをしてもらい、適切なフォームを身につけましょう。 グロインペイン症候群の基礎知識|原因と症状 グロインペイン症候群とは、サッカーやランニングで起こりやすい、足のつけ根や恥骨まわりの痛みの総称です。 初めはダッシュやキックでズキッとする程度ですが、症状が進むと歩くだけでも痛むようになってしまいます。 病院ではX線検査やMRI検査で骨や筋肉のケガを除外し、簡単な触診などで原因を特定します。 早めに原因をはっきりさせることが、治療を長引かせないコツです。 グロインペイン症候群の原因 内ももとお尻の筋肉のアンバランス、骨盤が片側にねじれるクセなどが要因ですが、スポーツ特有の動作の使いすぎにより引き起こされます。 たとえば、サッカー選手はキックの繰り返し、ランナーは片脚着地の負荷が痛みを招きます。以下の表を確認し、原因を把握しましょう。 原因となる要素 説明 1.筋力のアンバランス 内転筋群(内もも)と外転筋群(お尻)の筋力差が大きい 2.柔軟性の低下 股関節まわりの筋肉が硬くなり、可動域が制限される 3.体幹筋力の不足 腹筋や背筋が弱く、骨盤が不安定になる 4.オーバーユース 過度な練習により、筋肉や腱に疲労が蓄積する 5.フォームの問題 間違った動作により、特定の部位に負荷が集中する とくにサッカーでは、利き足の多用やキック時の股関節の動きによって、鼠径部に圧力がかかってしまうため、罹患者が多いことで知られています。 また、人工芝や硬いグラウンドでのプレーは、足への衝撃が強く、股関節への負担も増大するため、注意が必要です。 年齢的には、10代後半から30代前半で多く見られます。 グロインペイン症候群の症状 グロインペイン症候群の症状は、段階的に進行する特徴があります。 初期段階では運動時のみに痛みを感じますが、症状が進行すると日常生活にも支障をきたすようになります。 以下のようなイメージでご自身の症状を把握し、治療に役立てましょう。 段階 程度 症状 第1段階 軽度 ・激しい運動時のみ痛みを感じる ・運動後は痛みが治まる ・歩行や階段昇降は問題なし 第2段階 中等度 ・軽い運動でも痛みを感じる ・運動後も痛みが残る ・朝起きたときに違和感がある 第3段階 重度 ・安静時にも痛みがある ・歩行時に痛みを感じる ・夜間痛で眠れないことがある 痛みの場所は、鼠径部(足のつけ根)から始まり、内もも、恥骨部へと広がることがあります。(文献1) また、片側だけでなく、両側に症状が現れることもあるため、どこで、どのような症状になるかは範囲が広いのがグロインペイン症候群の特徴でもあります。 グロインペイン症候群でやってはいけないNG習慣 早く良くなりたい気持ちから、かえって悪化させてしまう行動も少なくありません。 たとえば、痛みを我慢して練習を続けたり、強すぎるストレッチを無理やり行ったりするのは逆効果です。 避けるべきNG行動の例 事例 理由 1.痛みを我慢して運動を続ける 炎症が悪化し、治療期間が長引く原因となります 2.強すぎるストレッチ 筋肉や腱を傷つけ、症状を悪化させる可能性があります 3.自己判断での湿布の長期使用 皮膚トラブルを起こしたり、根本的な治療を遅らせたりします 4.マッサージの強すぎる刺激 炎症部位を刺激し、痛みが増強します 5.完全な安静 症状にあわせた適度な動きは必要です。まったく動かないと筋力低下を招きます とくに危険なのは、痛み止めを飲んで練習を続けることです。 痛みは体からの警告信号であり、それを薬でごまかして運動を続けると、より深刻な損傷を引き起こす可能性があるため、避けてください。 ただし、軽度の症状では完全安静も逆効果です。痛みを悪化させない範囲での軽い活動は、血流促進や筋力維持に有効です。 症状に合わせた判断が必要なため、医療機関を受診して医師の指示に従いましょう。 まとめ|グロインペイン症候群は適切なケア・治療で回復を目指そう グロインペイン症候群の改善には、原因を知って、まずは安静にした上で段階的に運動を再開する流れが欠かせません。 とくに、2週間以上休んでも痛みが残る、または夜寝ているときも痛むといった場合は、専門の病院を受診すべきタイミングです。 早期の適切な治療により、慢性化を防ぐことで競技へ早期復帰できます。治し方を把握した上で、ご自身の症状の段階に応じた適切な治療を選択をしましょう。 当院では、再生医療を活用した治療で競技への本格復帰をサポートしています。 一人ひとりの症状や競技レベルに合わせた治療計画を立て、PRP療法や幹細胞治療などの再生医療により、競技への早期復帰が目指せます。まずはお気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) 日本スポーツ整形外科学会(JSOA)「スポーツ損傷シリーズ 11.鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)」2023年 https://jsoa.or.jp/content/images/2023/05/s11.pdf (最終アクセス:2025年5月25日)
2025.05.30 -
- 下肢(足の障害)
- スポーツ外傷
「最近、鼠径部の痛みが強くなってきているけれど、どんな動きが良くないのだろう?」 「このまま練習を続けても大丈夫なのかな?」 「YouTubeで見たストレッチをやってみたけれど、本当に効果があるのか不安だ...」 このような悩みを抱えている学生さんは多いのではないでしょうか。 グロインペイン症候群は、一度発症すると長期化しやすく、間違った対処をしてしまうと症状が悪化して競技復帰が遅れてしまう可能性があります。 しかし、適切な知識を持って正しく対処すれば、症状の悪化を防ぎながら段階的に競技復帰を目指すことも十分可能です。 本記事では、グロインペイン症候群でやってはいけない具体的な動作、症状の見極め方、そして本格復帰するためのステップについて、医師の視点から詳しく解説いたします。 ぜひ最後までご覧いただき、あなたの症状改善と競技復帰にお役立てください。 グロインペイン症候群でやってはいけないこと グロインペイン症候群を悪化させる行為は、痛みを我慢しながら無理に競技を続けることです。 とくに急性期と回復期では避けるべき動作が異なりますので、それぞれの段階に応じた注意点をしっかりと理解しておきましょう。 急性期(痛みが強いとき)にやってはいけないこと 急性期は炎症が強く出ている時期であり、この段階で無理をすると症状が慢性化しやすくなります。 以下の5つの動作は避けてください。 1. 痛みを無視して練習や試合を続行 痛みは体からの重要なサインです。無視して活動を続けると、炎症が悪化し、組織の修復が遅れてしまいます。 急性期はとくに、痛みを悪化させる動作を避け、適切な休息を取ることが大切です。 2. ランニングやダッシュなどの反復走行 鼠径部に繰り返し負荷がかかる走行動作は、炎症を増強させる危険な動作です。 全力ダッシュや方向転換を伴う走行は、股関節への負担が非常に大きくなりますので、避けてください。 3. キック動作 サッカーの基本動作であるキックは、鼠径部の筋肉や股関節に強いストレスをかける動作です。 軽いキックでも炎症部位を刺激してしまうため、急性期にボールを蹴る動作は避けましょう。 4. 急激な方向転換や体をひねる動き 切り返し動作やターン動作は、炎症を悪化させます。日常生活でも、急に振り返ったり、身体をひねったりする動作は慎重に行ってください。 5. 痛むカ所に負担をかける姿勢やストレッチ 痛くても伸ばした方が良いという考えは間違いです。急性期で正しい知識がないまま行うストレッチは炎症を悪化させ、回復を遅らせる原因となります。 これらの動作がなぜ禁止なのかというと、グロインペイン症候群の痛みの根本原因である恥骨結合や内転筋への過度なストレスを増強し、炎症の悪化と慢性化を招くためです。 回復期(痛みが軽い時)の注意点 痛みが軽減してきた回復期は、実は注意が必要な時期です。多くの選手がこの段階で誤った判断をして再発してしまいます。 痛みがなくなっても身体の内部では、回復途中の状態が続いてますので、段階的に負荷をあげていきましょう。 とくに、股関節周りの痛みや柔軟性だけでなく、体幹の安定度や可動域のチェックを入念に行なってください。 「試合が近いから」「レギュラーを取られたくないから」といった理由で、いきなり全力の練習に戻ってしまうケースも見られますが、段階的な復帰プログラムを無視すると、高い確率で再発してしまいます。 再発してしまうと痛みが慢性化し、2〜3カ月さらに復帰に時間がかかってしまうため、注意が必要です。 症状をチェック|グロインペイン症候群の見分け方 鼠径部の痛みがそのままグロインペイン症候群になるとは限りません。 適切な治療を受けるためには、まず自分の症状が本当にグロインペイン症候群に該当するかどうかを見極めることが大切です。 グロインペイン症候群は、鼠径部周辺にさまざまな原因で発生する痛みの総称であり、恥骨結合炎、大腿内転筋付着部炎、股関節炎、鼠径ヘルニアなど、複数の病態が含まれます。 そのため、正確な診断には専門医による詳しい検査が必要ですが、以下のセルフチェック方法で、グロインペイン症候群の可能性を確認できます。 アダクタースクイーズ(両脚を閉じるテスト) このテストは、内転筋の機能と痛みの有無を確認する最も基本的なチェック方法です。 テスト方法 仰向けに寝て、両膝を軽く曲げた状態で股関節をやや開きます。 膝の間にタオルやクッションを挟み、両脚で力を入れて挟みます。 この動作で鼠径部に痛みが生じたり、力が抜けてしまったりする場合は、グロインペイン症候群の可能性が高いです。 確認ポイント 痛みの場所(鼠径部の内側、恥骨周辺、内転筋など)を確認してください。 また、左右差がある場合も注意が必要です。 健康な状態であれば、この動作で痛みが生じることはありません。 両脚開脚テスト 股関節の可動域と内転筋の柔軟性をチェックするテストです。 テスト方法 仰向けに寝て、両膝を軽く曲げ、足裏を床につけます。 そのまま両膝を外側に開いていきます。 正常であれば、膝が床に近づくまで開脚できますが、グロインペイン症候群のがある場合は途中で痛みが生じたり、十分に開脚できなかったりします。 注意点 無理に開脚しようとすると症状が悪化する可能性があるため、痛みを感じたらすぐに中止してください。 このテストは股関節の可動域制限も同時にチェックできる有用な方法です。 股関節抱え込みテスト 腸腰筋の機能と股関節前方の痛みをチェックするテストです。 テスト方法 仰向けに寝て、片方の膝を胸に向かって抱え込みます。 この動作で鼠径部前方や股関節前面に痛みが生じる場合は、グロインペイン症候群の可能性があります。 とくに腸腰筋や股関節の問題が原因となっている場合に、この動作で痛みが誘発されやすくなります。 確認ポイント 必ず左右両方で行い、痛みの程度や場所を比較してください。 健康な状態であれば、膝を胸に近づけても痛みは生じません。 重要な注意点 これらのセルフチェックで痛みや異常を感じた場合は、グロインペイン症候群の可能性が高いと考えられます。 しかし、鼠径部の痛みには鼠径ヘルニア、股関節炎、恥骨の疲労骨折、さらには内臓疾患など、さまざまな原因が考えられます。 そのため、セルフチェックで異常を感じた場合は、必ず専門の医療機関を受診して正確な診断を受けることが重要です。 グロインペイン症候群でも競技を続けたい方へ 「休むとポジションを失ってしまうかもしれない」「大事な試合が近いから練習を休めない」 このような思いを抱えている選手の気持ちは、よく理解できます。しかし、グロインペイン症候群に対する適切な理解があれば、必ずしもすべての活動を止める必要はありません。 重要なのは「完全に休む」か「今まで通り続ける」の二択ではなく、症状に応じた調整を行うことです。 痛みが強い急性期は安静が必要ですが、痛みが軽減している時期であれば、痛みが出ない範囲での代替トレーニングで体力を維持しながら治療を並行も可能です。 練習を止めないとダメ?それとも工夫次第? この判断は症状の程度によって大きく異なります。 完全休止が必要なケース 日常生活でも痛みがある 軽い歩行でも痛みが増す 炎症症状(熱感、腫れ)が強い 発症から間もない急性期 これらの場合は、無理に活動を続けると慢性化のリスクが高まるため、安静にする必要があります。 工夫次第で継続可能なケース 安静時に痛みがない 特定の動作でのみ痛みが生じる 炎症症状が落ち着いている 適切な治療を並行して受けている このような場合は、以下のような代替トレーニングで体力を維持できます。 代替トレーニングの例 有酸素運動の代替 ランニング → エアロバイク(座位) ダッシュ → プール歩行(浮力を利用) 技術練習の代替 キック練習 → 戦術理解・映像分析 激しい動き → 基本技術の反復練習 筋力トレーニングの調整 痛みが出る動作を避けた部位別トレーニング 体幹強化(痛みが出ない範囲で) 最も重要なのは痛みが悪化しない範囲内で活動することです。 活動後に痛みが増したり、翌日に痛みが残ったりする場合は、その活動は現段階では適切ではありません。 このような判断は個人では難しいため、必ず医師に相談して適切な活動レベルを決めてもらいましょう。 診察を受けて身体の状態を確認し、医師の指導のもとで段階的に負荷を上げていくことが大切です。 また、必ずチームの指導者や医療スタッフとの相談も重要です。短期的な休養によるパフォーマンスの低下を恐れるより、長期的な視点で競技人生を考える必要があります。 適切な対応によって、症状を悪化させることなく可能な限り競技を続けながら回復を目指せるでしょう。 本格復帰するまでの段階別リハビリ グロインペイン症候群から競技に本格復帰するには、症状の程度に応じて段階的にリハビリを進めることが不可欠です。 本記事では、2つのステージに区切って説明していきます。 ステージ1|痛みを抑えながら筋肉を目覚めさせる このステージの目的は、炎症を悪化させずに筋肉の機能を回復させることです。 痛みがある状態でも低負荷のトレーニングから開始しましょう。 主なトレーニング内容 基本的な体幹安定化エクササイズ プランク(20-30秒から開始) サイドプランク(痛みが出ない範囲で) ブリッジ(お尻を上げる運動) 腹横筋の活性化 仰向けで膝を立て、へそを背中に近づけるように軽く力を入れる 呼吸と連動させて10回×3セット 内転筋のストレッチ 股割り 伸脚 ペアを組んで内転筋のストレッチ このステージでの注意点としては、痛くない範囲で必ず行うことです。運動後に痛みが増すようであれば、強度を下げるか一時中止しましょう。 継続性を重視し、毎日少しずつでも症状に応じて2週間〜4週間続けます。 痛みの改善とともに、これらの運動が楽に行えるようになったら次のステージに進んでください。 ステージ2|負荷を上げて競技動作に近づける ステージ1で基本的な筋機能が回復したら、より競技に近い動作への適応を図ります。(文献1) 主なトレーニング内容 内転筋の段階的強化 チューブを使った内転筋トレーニング 横向きでの脚上げ運動 動的な体幹安定化 プランクからの手脚上げ キック動作を確認する スポーツ動作の導入 軽いジョギングから徐々にダッシュへ ボールを使ってパスを短い距離から徐々に長くする 負荷は段階的に上げるのがポイントですが、どのように上げていけば良いのかなどわからないことがある場合は専門医に相談しましょう。 このステージは個人差が大きいため、症状の変化を注意深く観察しながら進めましょう。 グロインペイン症候群の治療選択肢「再生医療」について 再生医療は、スポーツ選手の腱や筋肉の損傷に対して適用されており、競技復帰を目指すアスリートにとっても選択肢となる治療法です。 ただし、再生医療を検討する場合でも、基本的なリハビリは継続する必要があります。 再生医療と並行してリハビリを実施して、スポーツへの早期復帰を目指しましょう。 再生医療について詳細は、以下をご覧ください。 まとめ|痛みを繰り返さないために出来る最後のひと押し グロインペイン症候群は決して治らない病気ではありません。適切な知識と対処法があれば、症状の悪化を防ぎ、競技復帰が可能です。 グロインペイン症候群かな?と思ったら、セルフチェックで現在の痛みの場所や程度を正確に把握しましょう。 そして、重要なのはやってはいけない動作を徹底的に避けることです。急性期の無理な運動継続、回復期の急激な競技復帰は、症状の慢性化と再発の要因になってしまいます。 痛みがなくなりリハビリのフェーズに入ったら、医師に相談の上で症状が悪化しない範囲内で改善を目指します。 自己判断で症状を悪化させる前に、スポーツ整形外科や再生医療に詳しい医療機関を受診し、あなたの競技人生を守るために、今できることから始めましょう。 リペアセルクリニックでは、グロインペイン症候群などのスポーツ外傷に対して再生医療を提供しております。症状でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 グロインペイン症候群に関するよくある質問 グロインペイン症候群はどのくらいで治りますか? 症状の程度と治療開始時期によって大きく異なります。 軽症の場合は適切な安静と保存療法で1-2カ月で改善することが多いですが、重症の場合や慢性化している場合は数カ月かかることもあります。 早期発見・早期治療が回復期間を大きく左右するため、症状を感じたら早めに専門医を受診しましょう。 また、単に痛みが取れるだけでなく、根本的な原因(筋力バランス、柔軟性、動作パターン)を改善することで、再発を防げます。 効果的なストレッチはありますか? 急性期に痛みが出るようなストレッチは症状を悪化させる可能性があるため避けてください。 回復期以降は、内転筋のストレッチが効果的とされていますが、痛みが出ない範囲で行うことが重要です。 具体的には、座位での股割りストレッチや、仰向けでの内転筋ストレッチなどがありますが、必ず専門家の指導のもとで正しいフォームで行ってください。 間違ったストレッチは症状を悪化させるリスクがあるため、自己流ではなく専門医やトレーナーに相談をおすすめします。 自転車でのトレーニングは続けても良いですか? 自転車トレーニングは、一般的にグロインペイン症候群に対して比較的負担の少ない運動とされています。 ただし、症状の程度と自転車の乗り方によって判断が変わります。痛みが出ない回復期であれば、エアロバイクでの軽度な有酸素運動は体力維持に有効です。 しかし、ペダルを強く踏み込む動作や、前傾姿勢での長時間のサイクリングは鼠径部に負担をかける可能性がありますので、まずは短時間・低強度から始めて、症状の変化を注意深く観察してください。 運動後に痛みが増すようであれば一時中止し、専門医に相談をおすすめします。 参考文献 (文献1)日本スポーツ整形外科学会(JSOA)「スポーツ損傷シリーズ 11.鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)」2023年 https://jsoa.or.jp/content/images/2023/05/s11.pdf (最終アクセス:2025年5月25日)
2025.05.30 -
- 足部、その他疾患
- 足部
「かかとが痛いって言ってるけど、大会まで2週間しかない...」 「このまま休ませるべき?それとも様子を見ながら続けさせても良いの?」 お子さんのかかとの痛みに悩まされている保護者の方は少なくありません。 実は、少年サッカーで急増している"かかと痛"の多くはシーバー病と呼ばれる成長期特有の疾患が原因です。 シーバー病は適切に対処すれば数週間で復帰できる一方で、放置してしまうと半年以上の長期離脱につながるリスクがあります。 本記事では、シーバー病について正しく理解し、お子さんのサッカーを休ませるかどうかの判断がつくようになる具体的な方法をお伝えします。 さらに、復帰を早めるための4つの方法や家庭でできるセルフケア、再発予防策まで詳しく解説します。 お子さんの将来のサッカー人生を守るために、ぜひ最後までご覧ください。 シーバー病でサッカーを休むべき?チェックリストで判断しよう シーバー病でサッカーを休むかどうかの判断は、痛みの程度と日常生活への影響度で決まります。 シーバー病とは成長期の子どもの踵骨(かかとの骨)に起こる炎症で、10歳から15歳のスポーツをする子どもに多く見られる疾患です。(文献1) 痛みの程度によって対応方法が変わるため、以下のチェックリストを使って、お子さんの現在の状態を確認してみましょう。 症状レベル 痛みの特徴 対応方法 復帰目安 軽度 練習後のみ痛む、歩行は正常 軽い練習のみ、アイシング継続 4-6週間(文献2) 中度 練習中も痛む、歩き方がおかしい サッカー休止、セルフケア重視 8-12週間 重度 日常生活でも痛む、足を引きずる 完全休養、医療機関受診 半年以上 とくに注目していただきたいのは歩き方の変化です。 お子さんが普段と違う歩き方をしていたり、足を引きずるような仕草を見せたりする場合は、中度以上の症状と判断してサッカーを休ませることをおすすめします。 また、朝起きたときの一歩目で強い痛みを訴える場合も、症状が進行している可能性が高いため注意が必要です。 判断に迷った場合は、痛みがあるときは休むことで、長期離脱を防げます。 休まずサッカーを続けると悪化するリスクあり かかとの痛みを我慢してプレーを続けることで起こるリスクについてみていきましょう。最も深刻なのは、症状の重症化による長期離脱です。 軽度のシーバー病であれば4週間程度で復帰できますが、無理を続けると重度まで進行し、完全に痛みが取れるまで半年以上かかるケースもあります。 さらに心配なのは、かばう動作により他の部位に負担がかかることです。 かかとの痛みをかばって歩いたり走ったりすると、慢性的に足への負担が増加し、二次的な怪我のリスクが高まります。 実際に、シーバー病を放置した結果、歩行困難になったり、かかとの骨が変形するお子さんも見られます。 また、痛みがある状態でのプレーは集中力を欠き、思わぬ接触事故や転倒につながるでしょう。 成長期の骨は大人に比べて柔らかく、継続的な負荷により骨の変形や成長障害を起こす危険性もあるので、お子さんの将来のサッカー人生を考えると、短期間の休養は決して無駄ではありません。 今しっかり休ませることで、お子さんがより長くサッカーを楽しめるようになります。長期的な視点でお子さんの様子を見守りましょう。 シーバー病からサッカーへの本格復帰を早める4つの方法 シーバー病からの復帰を早めるためには、段階的なアプローチが重要です。 ここでは4つの方法をご紹介します。 これらの方法を組み合わせることで、本格復帰が期待できます。具体的な実践方法と注意点をみていきましょう。 その1.アイシング アイシングは、シーバー病の痛みと炎症を抑える基本的で効果的な方法です。 炎症を起こしているかかとの骨の成長軟骨部分を冷やすことで、血管が収縮し、炎症反応を抑制できます。 氷嚢または冷却パックを使用し、かかと周辺を1回15分〜20分程度冷やしてください。 タオルなどで氷嚢を包み、直接肌に当てないよう注意しましょう。 実施タイミングは、練習後すぐに行なってください。 練習後のアイシングは、運動により高まった炎症反応を速やかに抑制するため非常に重要です。アイシング後は温度感覚が鈍くなるため、お子さんが痛くないと言っても無理な運動は控えましょう。 その2.ストレッチ ふくらはぎと足首周りの柔軟性向上は、シーバー病の改善と再発予防に欠かせません。 筋肉の緊張が踵骨への牽引力を増加させ、シーバー病の症状を悪化させます。 効果的なストレッチ方法をご紹介します。 まず、ふくらはぎのストレッチです。 壁に手をついて立ち 痛い方の足を後ろに下げ かかとを地面につけたまま体重を前にかける ふくらはぎの筋肉が伸びている感覚があれば正しくできています。 30秒間キープし、これを3セット行ってください。 次に、ボールを使った足裏のストレッチです。 テニスボールを用意する 椅子に座った状態で足裏にボールを挟んで痛くない程度に圧迫する 前後に動かす ストレッチは無理のない範囲で毎日継続することが重要です。痛みが強い時期でも、痛みが出ない範囲でストレッチは継続してください。 ストレッチにより筋肉の柔軟性が向上すると、踵骨への負担が軽減されます。 その3.筋力トレーニング 休養期間中の筋力低下を防ぎ、復帰後のパフォーマンス維持につなげるため、適切な筋力トレーニングが重要です。 ただし、かかとに強い負荷をかけるトレーニングは避けるために、体幹部のトレーニングを中心に行いましょう。 まず、地面に座った状態で両膝をかかえ、お腹と太ももの距離を一定にしたまま前後に揺れてください。腹直筋が鍛えられ、姿勢の改善にも役立てられます。 このトレーニングは体幹が鍛えられることと、足に負担が少ないトレーニングですので、シーバー病を患っていてもトレーニング可能です。 トレーニング中に痛みが出現した場合は、すぐに中止し、痛みが完全に治まってから再開しましょう。焦らず段階的に進めることが、本格復帰への近道です。 その4.痛みがなくなってから段階的に強度を上げる 完全に痛みが消失してからの復帰プロセスが、再発防止の鍵となります。いきなり元の練習強度に戻すのではなく、段階的に負荷を上げていきましょう。 まずは平地での軽いウォーキングとストレッチから始め、この段階で痛みが再発しないことを確認してください。 痛みがなければ、ジョギングを行なったり、ボールを使ってドリブルをしてみたりと、サッカーに近い動きを少しずつ取り入れていきましょう。 ここでも痛みや違和感がなければかかとに負担のかかるジャンプやシュートなど、サッカーで使う動きを取り入れてみてください。 すべての段階で痛みがなければ、通常の練習に復帰可能ですが、もし痛みや違和感があれば前の段階に戻ってください。 専門医との相談も重要ですので、復帰時期の判断に迷った場合は医師の意見を求めましょう。 家庭でできるシーバー病のセルフケアと再発予防 シーバー病の治療と再発予防において、家庭でのセルフケアは非常に重要な役割を果たします。 とくに重要なポイントはふくらはぎの柔軟性維持とかかとへの衝撃軽減の2つです。 毎日継続できる簡単で効果的な方法はテーピングとストレッチ、インソールを活用することです。これらを取り入れることで、症状の改善と再発防止の両方を実現できます。 テーピング・ストレッチ テーピングは、かかとへの負担を軽減し、痛みを和らげる効果的な方法です。 正しいテーピングにより、踵骨への牽引力を分散させ、炎症の悪化を防げます。 家庭でできるテーピング方法やストレッチについては、以下の記事にて詳しく紹介しています。興味ある方はあわせてご覧ください。 インソール選び:踵パッド vs. フルカスタム インソール選びは、シーバー病の症状軽減と再発防止において重要な要素です。 市販品とオーダーメイドのカスタム品、それぞれの特徴と効果について詳しく解説します。 まず、市販のインソールの特徴です。 踵パッドタイプは2,000円から3,000円程度で購入でき、すぐに使用できる利便性があります。 衝撃吸収材としてジェルやシリコンが使用されており、かかとへの負担を20-30%軽減できます。 一方、フルカスタムインソールは20,000円から30,000円と高額ですが、個人の足型に完全に合わせて作製されます。 効果と費用の比較表をご確認ください。 項目 市販品(踵パッド) カスタム品 価格 1,000-3,000円 20,000-30,000円 効果 負担軽減 スポーツの特性に合わせた足への負担軽減 子どもの足の形に合わせた足への負担軽減 フィット感 合う形があればフィット 完全個別対応 耐久性 6-12カ月 2年以上 入手期間 即日 60分〜1週間 市販品は軽度から中度のシーバー病に適しており、症状の初期段階では十分な効果が期待できます。 とくに、アーチサポート機能付きの市販品は、足全体のバランスを整え、かかとへの負担を効果的に軽減します。 カスタムインソールは、機能としては申し分ありませんが、コストがかかるため、重度の症状や再発を繰り返すケースで使うと良いでしょう。 足の形状、歩行パターン、体重分布まで考慮して作製されるため、症状改善効果が高く、長期的な再発防止に優れています。 選択の目安として、軽度の症状なら市販品から始め、効果が不十分な場合や重度の症状にはカスタム品を検討してください。 どちらを選ぶにしても、定期的な交換と適切なメンテナンスが効果を維持する鍵となります。 シーバー病の治療方法|保存療法と再生医療について 症状が重度に進行し、セルフケアだけでは改善が困難な場合は、医療機関での専門的な治療が必要です。 シーバー病の医学的治療は、主に保存療法が第一選択となります。 保存療法には、これまでご紹介したアイシング・ストレッチ・インソールに加えて、消炎鎮痛剤の内服や外用薬の使用があります。 痛みが強い場合には、ステロイド注射による局所的な炎症抑制も検討されます。 また、シーバー病に対する治療法には、再生医療のPRP療法もあります。 PRP治療は、患者様自身の血液から血小板を濃縮した成分を患部に注入し、自然治癒力を高める治療法です。 早期復帰を希望される場合には、当院のような再生医療専門医に相談をおすすめします。 治療方法の選択は、症状の程度、お子さんの年齢、競技レベル、家族の希望などを総合的に考慮して決定されますので、お気軽にご相談ください。 まとめ|痛みを放置しない勇気が未来のプレーを守る シーバー病は、正しい知識と適切な対応により、比較的短期間で改善できる疾患です。 本記事でお伝えした判断基準を活用し、お子さんの症状に応じた適切な対応を取ることが重要です。 軽度の症状であれば、アイシング・ストレッチ・インソールの組み合わせで数週間での改善が期待できますが、症状を放置したり、痛みを我慢してプレーを続けさせたりすると、半年以上の長期離脱につながるリスクがあります。 今だけ我慢するような考えは、結果として大切な試合や大会を棒に振ることになりかねませんので、家庭でのセルフケアを継続し、段階的な復帰プログラムを実践して、確実な復帰を果たしましょう。 治療法としては、保存療法の他にPRP療法という再生医療も治療の選択肢です。 お子さまの将来のサッカー人生を守るために、あとで後悔しないために正しい判断ができる手助けになると幸いです。 痛みや症状についてご不安な点がございましたら、当院「リペアセルクリニック」へお気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1)済生会「踵骨骨端症(アポフィサイティス)」https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/apophysitis_of_the_calcaneus/ (最終アクセス:2025年5月24日) (文献2)South Dublin Podiatry「How Long Does Sever's Disease Last? A Guide for Parents and Young Athletes」South Dublin Podiatry, 2024年9月23日 https://www.southdublinpodiatry.com/tips-and-advice/b/how-long-does-severs-disease-last-a-guide-for-parents-and-young-athletes (最終アクセス:2025年5月25日)
2025.05.30 -
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「練習中にかかとが痛いっていうけれど、本当に休ませた方が良いの?」「このまま放っておいて悪化したらどうしよう」 お子さんのかかとの痛みで、このような不安を抱えていらっしゃる保護者の方は少なくありません。 シーバー病は、成長期のお子さんに多く見られるかかとの痛みで、正式には「踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)」といいます。(文献1) とくにサッカーやバスケットボールなど、走ったり跳んだりするスポーツをしているお子さんに起こりやすい症状です。 多くの保護者の方が心配されるのは「いつまで痛みが続くのか」「どうすれば早く治るのか」「いつスポーツに復帰できるのか」という点でしょう。 本記事では、シーバー病を早期に改善するための具体的な方法と、復帰までの期間について専門医の視点から詳しく解説いたします。 適切な対処法を知ることで、お子さんの痛みを軽減し、万全の状態でスポーツへ復帰させましょう。 ぜひ最後までご覧いただき、お子さんの早期回復にお役立てください。 シーバー病を早く治す方法を3ステップで解説 シーバー病の治療は、痛みの程度と時期に応じて段階的に進めることが重要です。 ただ安静にするだけでは、筋力低下を招いてしまい、かえって復帰が遅れる可能性があります。 ここでは、効果的な回復のための3つのステップをご紹介します。各ステップを適切なタイミングで実施し、痛みの軽減と早期復帰を目指しましょう。 ステップ1:安静にして炎症を抑える シーバー病の初期段階では、まず炎症を抑えることが最優先です。シーバー病は基本的に手術を必要とせず、保存療法で改善が期待できます。 発症初期の対応が、その後の回復期間を大きく左右するため、適切な安静期間を設けましょう。 痛みが強い急性期には、以下の対処を行ってください。 対処法 説明 アイシングの実施 練習後や痛みを感じたときは、氷嚢や保冷剤をタオルで包み、かかとに15~20分程度当てて冷やします。 1日に数回実施すると、炎症を抑制し痛みの軽減が期待できます。 運動制限の徹底 痛みがある間は、走る・跳ぶ動作を控え、日常生活でも必要以上の歩行は避けましょう。 学校生活では階段の上り下りを最小限にし、体育の授業は見学をおすす勧めします。 適切な靴選び クッション性の高い靴を選び、硬い地面での活動を避けることで、かかとへの衝撃を軽減できます。 この時期に無理をしてスポーツを続けると、症状が悪化し回復期間が長引く可能性があります。 お子さんには「今しっかり休むことで、早くサッカーに戻れるよ」と説明し、理解を得ることが大切です。 ステップ2:ふくらはぎストレッチ&マッサージ 急性期の痛みが落ち着いてきたら、ふくらはぎの柔軟性を高めるストレッチとマッサージを開始します。 シーバー病の根本的な原因の一つは、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋・ヒラメ筋)が硬くなることで、アキレス腱を通じてかかとの骨に過度な牽引力が加わることです。 ストレッチ種類 手順 壁押しストレッチ 壁に手をつき、痛みのある足を後ろに引いて、ふくらはぎを伸ばします。 30秒間キープし、これを1日3回程度行います。 痛みのない範囲の実施が重要です。 タオルストレッチ 床に座り、足を伸ばした状態でタオルをつま先にかけ、手前に引っ張ります。 ふくらはぎとアキレス腱の伸びを感じながら、30秒間保持します。 ゴルフ(テニス)ボールマッサージ ゴルフボールやテニスボールを足の裏において、ゴロゴロと踏みながら転がしてください。 痛みを感じない範囲で実施しましょう。 これらのケアを継続して筋肉の柔軟性が向上すると、再発リスクの軽減にもつながります。 ただし、ストレッチ中に痛みが増強する場合は、すぐに中止して様子を見ましょう。 ステップ3:テーピングとインソールで負荷分散 痛みが軽減してきた段階で、テーピングやインソールを活用してかかとへの負荷を分散させます。 これらの方法は、日常生活での痛みを軽減し、スポーツ復帰を順調に進めるために有効です。 かかとテーピングの方法としては、50mmの市販の硬めのキネシオテープまたは、伸縮テーピングを用意しましょう。かかとの下から足首にかけてテープを貼り付けます。 かかとのテーピング手順 テープの端を小指の付け根に貼る 足の裏を通り、かかとの内側へ向かうように貼る かかとの内側へと軽く引き上げる 斜め上へと向かうように上げて、足首を巻きつけるように貼って完了 テーピングでかかとへの衝撃を和らげられますが、注意点としてテーピングは1日中貼ったままにせず、就寝時は外すようにしてください。 インソールの活用も重要なポイントです。シーバー病の原因は成長期特有の子どものかかとが軟骨でできていて、脆い状態であることに起因しているからです。 そこで、かかとの衝撃を吸収するインソールを使うことで復帰のサポートや再発予防にもなります。 選び方のコツとしては、足裏のアーチサポートがあることと、かかとにクッション性のあるインソールを選びましょう。 アーチサポートとは、土踏まずの働きを手助けし、かかとにかかる衝撃を分散してくれます。 また、クッション性があるインソールかどうかも確認してください。スポーツに復帰したときを想定し、長時間運動しても足への負担を少なくして万全の状態で競技に復帰しましょう。 インソールは靴のサイズに合ったものを選び、違和感がある場合は無理せず使用を中止してください。 これらの補助具は、完全に痛みがなくなるまで継続して使用をおすすめしますが、シーバー病はあくまで成長期特有の症状です。 症状の改善と身体の成長に合わせて段階的に使用を減らしていきましょう。 シーバー病はどのくらいで治る?回復期間と復帰チェックリスト シーバー病の回復期間は、症状の重症度や発見の早さによって大きく異なります。 適切な治療を行った場合の一般的な回復期間の目安は以下の通りです。 症状の程度 期間 説明 軽症の場合 4~6週間 痛みが軽度で、早期に適切な対処を行った場合は、比較的短期間での回復が期待できます。 中等度の場合 2~3カ月 痛みが顕著で、かかとの痛みが日常生活にも支障をきたしている場合は、やや長期間の治療が必要となります。 重症の場合 6カ月以上 痛みが強く、歩行困難な状態まで悪化した場合は、長期間の治療が必要になることがあります。(文献2) 問題なくスポーツへ復帰するためには、以下の条件をすべて満たすことが重要です。 □ 日常生活で痛みを感じない □ かかとに熱感や腫れがない □ つま先立ちができる □ 軽いジョギングで痛みが出ない □ 方向転換動作で痛みがない □ ジャンプ動作で痛みがない これらの項目がすべてクリアできた段階で、段階的にスポーツ活動を再開します。 まずは軽いランニングから始め、徐々に強度を上げていきましょう。 復帰を急ぎすぎると再発のリスクが高まるため、医師や理学療法士と相談しながら進めることをおすすめします。 身長が伸びる時期との関係 シーバー病が治っても、身長が伸びている間は再発するのか?そんな疑問をお持ちの保護者の方も多くいらっしゃいます。 結論としては、シーバー病は身長が伸びる時期に再発する可能性はありますが、「オーバーユース」の管理をすれば再発予防は可能です。 オーバーユースとは、使いすぎにより、かかとに負荷がかかりすぎることです。 そのため、運動量を調節して適切に負荷を管理するほか、テーピングやインソールなどを使ったセルフケアにより、身長が伸びている時期でも症状をコントロールできます。 「身長が伸びているからシーバー病が再発する」と考える方もいますが、これは誤解で身長が伸びている時期と一致しているだけです。 オーバーユースに注意して、お子さんの成長過程に合わせた長期的な視点でケアを続けましょう。 シーバー病で通院は必要?再生医療×保存療法の選択肢 シーバー病の基本的な治療は手術をしない保存療法ですが、症状の改善が思わしくない場合は専門医への相談をおすすめします。 とくに以下のような状況では、早めの医療機関受診を検討してください。 セルフケアを続けても改善しない 痛みが徐々に強くなっている 日常生活に大きな支障をきたしている 他の部位にも痛みが広がっている シーバー病においては、アキレス腱付着部の炎症や微細な損傷に対して、PRP療法が適用となる場合があります。 PRP療法は、患者様の血液から血小板を濃縮した血漿を抽出し、患部に注入する再生医療の治療法の一つです。 再生医療のメリットとしては、ご自身の血液を使用するため、アレルギー反応のリスクが低く、組織の自然な修復過程を促進できる点です。 ただし、再生医療はすべての患者様に適応となるわけではなく、症状や年齢などを総合的に判断して治療方針を決定します。まずは基本的な保存療法をしっかりと実践し、それでも改善が見られない場合に検討しましょう。 治療選択肢についてご不明な点がございましたら、当院へお気軽にご相談ください。 まとめ|シーバー病からの早期復帰を目指して今すぐ行動を シーバー病からの早期復帰には、早期発見と適切な保存療法の実践が最も重要です。 発症初期の対応が回復期間を大きく左右するため、お子さまがかかとが痛いと訴えた時点で、適切な対処を行なってください。 本記事でご紹介した3ステップ、安静、ストレッチ、負荷分散を段階的に実践し、焦らずに治療に専念しましょう。 また、痛みが軽減したからといって、すぐにスポーツに復帰させるのは危険です。 復帰チェックリストをしっかりと確認し、すべての項目をクリアしてから段階的に活動を再開してください。 それでも改善が見られない場合は、再生医療などの新しい治療選択肢も検討する価値があります。 お子さまの将来のスポーツ活動のために、今できることから始めてみてください。 適切な対処で、シーバー病の改善を目指しましょう。 シーバー病に関するよくある質問 テーピングやインソールは成長への悪影響はありませんか? 短期間使用であれば、成長への悪影響はほとんどありません。 ただし、長期間の継続使用は避け、痛みの根本的な改善を目指すことが重要です。 使用前には必ず整骨院や整形外科に相談し、お子さまの年齢や体重に適した処置を実施してください。 インソールやテーピングはいつまで続ける必要がありますか? インソールやテーピングは、完全に痛みがなくなり、スポーツ復帰が安定するまで継続をおすすめします。 一般的には症状改善後も1~2カ月程度は使用し、徐々に使用頻度を減らしていきましょう。 あくまでかかとへの負担を減らすことが目的ですので、段階的に減らしていくことが大切です。 「成長すれば自然に治る」は本当ですか? 成長が止まれば症状が軽減することは事実ですが、放置すると重症化や慢性化のリスクがあります。 痛くても我慢すれば大丈夫という考えは間違いで、適切な治療を行わないと長期間にわたって痛みが続く可能性があります。 早期の適切な対処が、お子さんの将来のスポーツ活動を守ることにつながります。 参考文献 (文献1)社会福祉法人恩賜財団済生会「踵骨骨端症(セーバー病、シーバー病)」済生会ホームページ, 2015年8月31日 https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/apophysitis_of_the_calcaneus/(最終アクセス:2025年5月24日) (文献2)South Dublin Podiatry「How Long Does Sever's Disease Last? A Guide for Parents and Young Athletes」South Dublin Podiatry, 2024年9月23日 https://www.southdublinpodiatry.com/tips-and-advice/b/how-long-does-severs-disease-last-a-guide-for-parents-and-young-athletes (最終アクセス:2025年5月25日)
2025.05.30 -
- 脊髄損傷
- 脊椎
「脊髄損傷でも歩ける可能性はある?」「脊髄損傷で治療を受けていれば歩ける?」 上記のように、脊髄損傷でも歩けるようになるのか気になっている方もいるでしょう。脊髄損傷とは「脊髄」と呼ばれる部分が損傷する状態を指します。 本記事では、脊髄損傷と歩行の関係性を紹介します。レベル別の症状や治療法なども解説しているので、興味がある方はぜひご覧ください。 【結論】脊髄損傷でも歩ける可能性はある 結論からお伝えすると、脊髄損傷になっても歩ける可能性はあります。人間が歩行するには、筋肉がリズミカルに動かなくてはなりません。脊髄が損傷すると、全身の筋肉が協調的に動かなくなってしまいます。 対して、歩行に関するリハビリテーションを続けると、麻痺した筋肉の機能が部分的に回復する可能性があります。軽度の麻痺であれば、適切なリハビリテーションにより歩行機能の回復が期待できるのです。 脊髄損傷と歩行の関係性 脊髄損傷で歩行を再開するには、脊髄損傷の程度により異なります。なかでも、脊髄損傷には、完全損傷と不完全損傷があります。 ここでは、脊髄損傷と歩行の可能性を詳しく見ていきましょう。 完全損傷|歩ける可能性は極めて低い 脊髄損傷のなかでも完全損傷は、脊髄の機能が完全に失われ、歩ける可能性は極めて低い状態を指します。脳からの命令が届かないだけでなく、脳へ命令を送ることもできなくなります。そのため、感覚知覚機能も失われるのが完全損傷の特徴です。 しかし、感覚知覚機能が失われるからといって、痛みを全く感じなくなるわけではありません。怪我をした部位より下の麻痺した部分には、痛みや異常な感覚を覚えます。 不完全損傷|歩ける可能性がある 不完全損傷とは、脊髄の一部の機能が損傷した状態であり、歩ける可能性があります。感覚知覚機能が残った重度の人もいれば、軽度の運動機能が残った状態の人もおり、症状は人によって異なります。 受傷してから6カ月以内に適切なリハビリや治療を受ければ、歩行の回復が見込まれるケースもあるため、できるだけ早めの対処が大切です。 脊髄損傷のレベル別の症状 脊髄損傷はレベル分けがされており、レベルによって症状が異なります。ここでは、脊髄損傷のレベル別の症状を紹介します。 頚髄損傷(C1-C8) 頚髄損傷は、脊髄損傷のなかで最も深刻な症状を引き起こします。C1からC8までレベルがあり、各レベルによって引き起こされる症状は異なります。 レベル 症状 C1〜C4 ・呼吸機能に障害が出る ・全身麻痺に加え、話したり首から下の動きだったりが制限される C5 ・肩と肘の動きは可能だが、手首以外の動きは制限される ・自力での食事は不可能 C6 ・手首の伸展は可能 ・精密な手首の伸展は不可能なものの、日常生活の多くで介助が必要 C7 ・肘の伸展が可能になり、多くの自立が可能 ・精密な動きはできないため、日常タスクの一部で介助が必要 C8 ・手足の一部の動きが可能 ・食事や筆記などが可能になるが、一部は支援が必要 多くのレベルで日常生活の制限を受けるため、介助や支援が必要になります。またリハビリテーションには、個々のニーズに合わせたアプローチが必要不可欠です 胸髄損傷(T1-T12) 胸髄損傷は、胸部にある脊髄が損傷する状態を指します。体幹や下肢の機能に影響を与え、レベルごとの症状は以下の通りです。 レベル 症状 T1-T6 ・上半身の筋力が低下する ・体幹の制御が困難になり、座位を保つのが難しくなる ・長時間座位を維持するには、サポートが必要 T7-T12 ・体幹機能が損なわれ、立位や歩行が困難になる ・車椅子を使用した生活が一般的 胸髄損傷は、リハビリテーションを行い、できるだけ患者が自立した生活を送れるようサポートをします。家族や専門家のサポートが必要不可欠です。 腰髄損傷(L1-S5) 腰髄損傷(仙髄損傷)は、主に下半身に影響をもたらします。レベルごとの症状を見ていきましょう。 レベル 症状 L1-L2 ・腰から下の機能が失われ、歩行困難になる ・下半身に痛みやしびれが生じる可能性もある L3-L5 ・足首の運動に制限がかかるものの、膝の制御が部分的に可能 ・リハビリテーションが必要だが、装具を用いた歩行が可能になるケースもある S1-S5 ・膀胱と直腸の機能に影響を与え、排泄管理が必要 ・足の裏や会陰部の感覚障害がみられる可能性もある リハビリテーションをして、機能回復や生活の質の向上を目指します。 歩けるようになるまでのステップ|脊髄損傷の治療法 脊髄損傷で歩けるようになるには、適切な治療を受けなくてはなりません。適切な治療は、急性期と慢性期によって異なります。 急性期では、脊髄を固定したり、生命維持を優先したりするのが一般的です。一方で、慢性期では症状の程度に応じて、長期的な視点を持ち治療を進めます。それぞれの主な治療法は、以下の通りです。 急性期 慢性期 ・ギプスや装具固定 ・ステロイド治療 ・リハビリテーション ・抗生物質の投与 ・ビタミン剤の投与 ・放射線治療 ・外科手術 脊髄損傷の治療法について詳しく知りたい方は、以下記事もご覧ください。 脊髄損傷で歩けるようになるには再生医療も選択肢のひとつ 脊髄損傷の治療法は、ステロイド治療や放射線治療だけでなく、再生医療も選択肢にあげられます。脊髄損傷の再生医療は、骨髄由来の幹細胞や脂肪由来の幹細胞を使用します。脊髄損傷の治療法をお探しの方は、再生医療も視野に入れてみてはいかがでしょうか。 リペアセルクリニックでは、脊髄損傷の再生医療を提供しています。詳しくは、以下からお問い合わせください。 脊髄損傷と歩行の関係性を知って治療に挑もう 脊髄損傷は、損傷の程度によっては歩けるようになる可能性があります。受傷後に歩けるようになるには、適切なリハビリテーションや治療を受けることが大切です。また慢性期の治療法は、放射線治療や外科手術があげられますが、近年では再生医療も選択肢の1つになっています。 脊髄損傷の治療法をお探しの方は、再生医療を検討してみてはいかがでしょうか。再生医療に興味がある方は、ぜひ一度リペアセルクリニックにご相談ください。
2025.05.30 -
- 脊髄損傷
- 脊椎
軽度の脊髄損傷と診断され、「後遺症は残るのか」と不安を抱えている方もいるでしょう。損傷レベルが軽度でも、早期の治療や継続的なケアが回復の程度や後遺症の有無に影響します。 本記事では、軽度の脊髄損傷に関する症状や原因、治療法をわかりやすく解説します。後遺症が出る可能性についても触れているので、ぜひ参考にしてください。 脊髄損傷とは 脊髄損傷とは、脳からの指令を体に伝える脊髄が外傷や病気などで損傷を受けた状態を指します。交通事故や転倒といった外傷が主な原因です。 脊髄は、背骨(脊椎)に保護されるかたちで脳幹の直下からみぞおちの下あたりまで伸びています。脊髄は部位ごとに区別されており、損傷した場所によって症状の現れ方が異なります。 脊髄の部位と損傷した際の主な症状例は以下の通りです。 部位 損傷部位の位置 主な症状の例 頚髄(C) 首のあたり(C1~C8) 両腕と両脚の麻痺(全身麻痺の可能性もある) 呼吸障害の可能性もある 胸髄(T) 首の下~胸のあたり(T1~T12) 下半身麻痺 体幹の感覚障害 腰髄(L) 腰まわり(L1~L5) 両脚の麻痺やしびれ 排泄機能の障害 仙髄(S) お尻の上~尾てい骨あたり(S1~S5) 排泄機能の障害 会陰部の感覚障害 表の通り、損傷部位によって運動機能や感覚、自律神経機能に障害が生じます。上部の脊髄を損傷するほど症状が重くなる傾向があり、損傷の程度によっても体への影響や回復の見込みには差があります。 軽度な脊髄損傷の症状 軽度な脊髄損傷では、しびれや麻痺、運動障害などの症状が現れます。以下でそれぞれの症状について詳しく見ていきましょう。 しびれや麻痺 脊髄損傷した部位により、軽度なしびれや麻痺の症状が出るケースは珍しくありません。脊髄は運動や感覚をつかさどる神経が集中しているため、軽度の損傷でも症状が現れる可能性があります。 基本的な動作はできるものの、細かい作業に支障をきたしたり動きによってはスピードが遅くなったりする場合があります。 しびれや麻痺の程度によっては、仕事や家事などの日常生活に影響を与えるため、適切な対応が重要です。 運動障害 軽度の脊髄損傷では、歩行や手の動きなどに支障をきたすケースもあります。脊髄の損傷により、神経の伝達がうまくいかず、筋肉が正確に動かせなくなるためです。 たとえば、足に力が入りづらく階段の昇り降りでふらついてしまう、体のバランスがとりにくいなどの症状が見られます。 運動機能の低下は見落とされやすいものの、放置すると悪化するリスクがあるため、早期の診断と必要に応じたケアが重要です。 感覚障害 軽度な脊髄損傷でも、触覚や温度、痛みなどの感覚に異常が出るケースも少なくありません。脊髄の損傷によって、感覚の伝達が鈍くなります。 手や足に触れても感覚が弱く感じる、冷たいものや熱いものに気づきにくいといった症状が一例です。 感覚の異常は日常生活のなかでも思わぬケガややけどの原因につながりかねないため、注意しましょう。 自律神経障害 自律神経の働きが乱れることも、軽度な脊髄損傷の症状の一つです。自律神経は、血圧・体温・排泄・発汗など体の機能を無意識に調整しているため、脊髄の損傷でバランスが崩れる可能性があります。 たとえば、異常に汗をかく、身体が冷えやすくなる、排尿の感覚があいまいになるといった症状が現れるケースも珍しくありません。一方で、汗をかきにくくなるケースもあり、体の中に熱がこもって熱中症のような症状が出る場合もあるため注意が必要です。 自律神経の乱れは症状があいまいなため、軽視されやすい傾向にあります。しかし、放置すると慢性的な体調不良につながる恐れがあるため、違和感を覚えたら早めに医療機関を受診しましょう。 脊髄損傷の症状については以下の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてください。 軽度な脊髄損傷の原因 軽度な脊髄損傷の原因は、外的要因がほとんどです。脊髄は背骨(脊柱)に守られているものの、転倒や交通事故などで、脊柱の骨折や脱臼により圧迫されたり損傷したりする可能性があります。 交通事故以外にも、高齢者が転倒して腰や背中を強く打った場合やスポーツ中の衝突などで、軽度の脊髄損傷を負うケースも少なくありません。とくに、加齢により骨が弱くなっている場合は、見た目は軽い転倒でも脊髄を損傷している恐れがあるため注意が必要です。 強い痛みがない場合でも、神経が傷ついている可能性があります。軽度なうちに適切な処置を受けるためにも初動が大切です。 脊髄損傷の原因について詳しく知りたい方は、以下の記事でも解説しているので、参考にしてください。 軽度な脊髄損傷の診断方法 軽度な脊髄損傷は、以下の診断方法が一般的です。脊髄損傷は部位や神経への影響によって、症状が異なるため正確な判断が求められます。 診断方法 内容・目的 画像診断 レントゲンやMRI、CTを使って脊髄や周辺の組織がどの程度傷ついているのか詳しく調べる 神経学的検査 電気の刺激で神経の反応や伝達機能を調べる 臨床評価 筋力や反射、皮膚の感覚などをチェックして、脊髄損傷の範囲や程度を確認する これらの検査結果をもとに、損傷部位や重症度レベルを把握し、適した治療や必要に応じてリハビリを実施します。とくに、軽度の脊髄損傷では見落とされやすいため、早期の診断と適切な対応が不可欠です。 脊髄損傷が軽度な場合の治療方法 脊髄損傷が軽度な場合の治療法は、急性期と慢性期によってそれぞれ異なります。とくに、発症直後の対応は、そのあとの回復や後遺症の有無に影響を与えるため、適切な治療が重要です。 以下で、詳しく解説するので参考にしてください。 急性期の治療法 脊髄損傷の急性期とは、発症してから2~3週間程度の期間を指すのが一般的です。急性期は、外的要因からの直接的な損傷(一次損傷)や炎症や腫れ、血流障害といった体内変化(二次損傷)が進行する時期でもあります。 急性期では、二次損傷の進行をできるだけ抑える治療が重要です。軽度の脊髄損傷では、以下の治療が行われます。 治療法 目的 安静 症状の悪化を防ぐ 薬物療法(ステロイド系抗炎症薬など) 炎症や二次損傷を防ぐ コルセットや固定装置の装着 脊髄を安定させ、損傷の拡大を防ぐ 理学療法 運動機能を維持し、合併症のリスクを減らす 急性期の治療は、その後の回復に大きく影響するため重要です。自覚症状が軽くても、早期の対応が後の回復に影響します。 慢性期の治療法 損傷からある程度時間が経過し、急性期を過ぎた後の慢性期では、症状の回復を目的とした治療やリハビリが中心となります。軽度の脊髄損傷でも、違和感やしびれが残る可能性があるため、継続的なケアが必要です。 慢性期に行われる治療法には以下のようなものがあります。 治療法 目的 理学療法 筋力・柔軟性の回復、運動機能の維持のため ビタミン剤の投与 神経の修復に役立つため リハビリは、残存機能を最大限に活かしながら日常生活を取り戻すためには欠かせません。また、神経の修復や再生をサポートする目的で、補助的にビタミン剤を投与するケースもあります。 適切なリハビリと経過観察を続けることが、身体機能の維持と回復には重要です。 脊髄を損傷した場合のリハビリやトレーニングについては、下記の記事を参考にしてください。 脊髄損傷が軽度な場合の後遺症の有無について 脊髄損傷が軽度な場合は、適切な治療とリハビリによって後遺症を残さずに回復するケースがあります。軽度の損傷であれば、神経へのダメージが比較的少ないためです。治療やリハビリを早期に開始できれば、運動や感覚などの機能が回復する可能性があります。 しかし、損傷部位や度合いによっては適切な治療やリハビリを行っても、必ずしも後遺症が出ないとは限りません。 脊髄損傷が軽度であっても、後遺症がまったくないとは言い切れないため、違和感を放置せず早期の対応と継続的な治療が大切です。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。脊髄損傷で悩みがあるときはお気軽にご相談ください。 軽度な脊髄損傷は適切な治療とリハビリで回復に期待できる 軽度な脊髄損傷はしびれや麻痺、運動障害が症状として現れる場合があります。違和感を覚えたら放置せずに適切な治療を受けることが大切です。 脊髄損傷が軽度であれば、適切な早期治療とリハビリで回復に期待ができるでしょう。一方で、症状が軽度に思えても、損傷のレベルや部位によって後遺症が出るケースもあります。 早めに医師の診断を受け、継続的なケアを続けることが重要です。リペアセルクリニックでは、脊髄損傷に対する新たな治療選択肢として、幹細胞を用いた再生医療を行っております。軽度な脊髄損傷でお悩みの方はご相談ください。
2025.05.30 -
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脊髄損傷には、急性期・亜急性期・慢性期の3つの時期があります。急性期は症状回復を左右する重要な期間のため、診断を受けた上で適切な治療が大切です。 とはいえ、急性期は症状が発生したばかりの期間となり、身体的にも精神的にも不安定になりやすいでしょう。不安やストレスを軽減するには、急性期について理解を深めることがポイントです。 この記事では、脊髄損傷急性期とはどのような期間か解説します。症状回復に重要な期間といわれる理由や治療法もまとめているので、ぜひ参考にしてください。 脊髄損傷急性期とは 脊髄損傷急性期(せきずいそんしょうきゅうせいき)とは、脊髄損傷が発生した時期をいいます。ここでは、急性期の期間や、亜急性期(あきゅうせいき)・慢性期(まんせいき)との違いについて解説します。 脊髄損傷で急性期と診断された方は、今後の治療プランを検討するためにもぜひ参考にしてください。 期間 脊髄損傷の急性期とは、脊髄損傷が発生してから2〜3週間ほどの期間をいいます。一般的に脊髄損傷の原因は、内的要因と外的要因の2つです。 内的要因の場合、脊髄自体に問題が生じて損傷が起こります。脊髄梗塞や脊髄出血、椎間板ヘルニアなどが内的要因の原因に該当します。 また、外部から強い衝撃が加わり脊髄を損傷した場合は外的要因です。外的要因には、交通事故や転倒などがあります。ラグビーや柔道などのスポーツも外部要因の一つで、脊髄損傷は幅広い世代が発症する疾患です。急性期は脊髄損傷の回復を左右する期間になるため、迅速かつ適切な治療が重要です。 亜急性期・慢性期との違い 脊髄損傷は急性期・亜急性期・慢性期の3つの時期に分類され、各期間に適した治療が必要です。各期間には、以下の違いがあります。(文献1) 期間 特徴 主な治療法 急性期 脊髄損傷を発生して間もない時期で、回復を左右する期間 保存療法 リハビリテーション 亜急性期 急性期の炎症が収まり、血管新生や組織修復反応が起こる期間 リハビリテーション 慢性期 神経細胞の活性が低下し、治療への効果が弱くなる期間 リハビリテーション 放射線治療 手術 各期間の特徴から、適切な治療を検討しましょう。 脊髄損傷急性期の症状 脊髄損傷急性期の症状は、多岐にわたります。急性期では脊髄が損傷した直後から身体の異変が起こり、症状が急速に進行するためです。 主な身体の反応には一時損傷と二次損傷があり、双方の違いは以下の通りです。 一時損傷 外力による組織の損傷 二次損傷 一時損傷に続き、損傷が周辺組織に広がり、炎症反応や血液の循環不全による神経細胞の損傷 実際に、急性期には下肢に電気が走るような強い痛みや手足のしびれなどの症状が見られています。(文献2)また、損傷が進行すると運動機能が完全に失われるだけでなく、排せつのコントロールができなくなったり生命にかかわったりするリスクが生じます。 脊髄損傷急性期に正確な診断を受けるべき理由 脊髄損傷の回復には、急性期に二次損傷を抑える治療が重要です。急性期は症状が急速に進行するため、適切な治療を受けなければ周辺細胞が損傷し、神経伝達が低下します。 神経伝達の低下は運動機能が失われる要因となり、まったく動かせない状態に陥るケースも少なくありません。そのため、急性期の診断では以下の点をチェックした上で適切な治療を行います。 損傷の進行状態 影響を受けている神経の特定 脊髄損傷の種類や程度、影響を受けた範囲の把握が機能回復において重要です。損傷を最小限に抑えるためには、急性期で正確な診断を受ける必要があります。 脊髄損傷急性期の主な治療法 脊髄損傷急性期の治療は、症状回復に影響を与えます。代表的な治療法は、以下の3つです。 保存療法 手術 再生医療 急性期の治療法について理解を深めたい方は、参考にしてください。 保存療法 保存療法は手術以外の方法で、症状を改善する治療法です。脊髄損傷急性期の場合、主に以下の保存療法がおこなわれます。 薬物療法(ステロイド治療) 固定装置の使用 リハビリテーション また、脊髄損傷急性期に不用意に身体を動かすと損傷の拡大や合併症のリスクが生じる可能性があるため、安静が重要です。脊髄を安定させるために、正しい位置や姿勢の維持が必要になります。 一般的にはギブスなどの固定装置を使用して、脊髄を安定させます。適切な安静は炎症が抑えられ、神経組織の修復が進むため症状回復に効果的です。 脊髄損傷の急性期は、生活動作が自分でできない辛さや回復への不安など、精神的なサポートも重要になります。安静は心身のリラックス効果もあるため、回復へ向けて気持ちを前向きにする役割も期待できます。 手術 急性期では一般的に保存療法を行います。しかし、脊髄損傷の原因となる圧迫因子の除去や二次損傷の予防など、症状が悪化する可能性がある場合に手術を行います。 急性期に行う主な術式は、以下の2つです。 術式 内容 除圧術 脊髄や神経根などへの圧力を除去し、神経損傷の抑制と症状緩和を図る 固定術 金属のプレートやネジを使用して脊椎を固定し、自然治癒を促進する 症状の進行状況によって異なりますが、診断から手術を検討するのも手段の一つです。 再生医療 脊髄は脳とつながる太い神経の束で、損傷すると麻痺や感覚障害、自律神経障害などさまざまな障害が生じます。急性期には固定装置の使用やリハビリテーションを実施しますが、再生医療も治療法の一つです。 再生医療の幹細胞治療は、患者自身の細胞を活用する医療技術になります。脊髄損傷の再生医療の場合、骨髄由来と脂肪由来の幹細胞の2つがあります。なかでも、脂肪由来の幹細胞は体への負担が少ない点がメリットです。また、再生医療は入院の必要がなく、日帰りで治療を受けられます。 当院リペアセルクリニックでは、再生医療を行っております。メール相談やオンラインカウンセリングも実施しているので、脊髄損傷の治療法として再生医療を検討している方はお問い合わせください。 脊髄損傷急性期におけるリハビリテーションの内容 脊髄損傷は、急性期からリハビリテーションの実施が重要です。ここでは、脊髄損傷急性期から行われる代表的なリハビリテーションを3つ解説します。 呼吸訓練 関節可動域訓練 床ずれ予防・離床訓練 回復へ向けたリハビリテーションの内容が知りたい方は、参考にしてください。 呼吸訓練 脊髄損傷は損傷の部位によって、呼吸器官に麻痺が起こります。また、首を損傷した場合、息を吐く力が弱くなり、痰づまりや肺炎を起こすケースも少なくありません。 そのため、急性期では呼吸理学療法がおこなわれます。呼吸理学療法は症状のレベルによって異なりますが、リハビリ内容は以下の通りです。 沈下性肺炎の予防 人工呼吸器管理による短時間自発呼吸の獲得 人工呼吸からの離脱訓練 呼吸訓練には、胸郭を広げるエクササイズや息を吐き切るトレーニングなどがあります。セルフトレーニングもあるため、呼吸力向上へ向けて急性期から行うことが大切です。 関節可動域訓練 関節可動域訓練とは、関節を動かせる範囲を広げるリハビリテーションです。脊髄損傷で麻痺した部分は、関節が硬くなります。関節が硬くなると次第に可動域が狭まり、床ずれや車いすへの移動、起き上がりなど日常生活においてさまざまな支障をきたします。 とくに脊髄損傷では、以下の関節ケアが重要です。 肩関節 股関節 足関節 該当の部位は、車いす操作や立位保持などにも影響を与えます。関節可動域訓練は、全身の機能維持において必要な訓練です。 床ずれ予防・離床訓練 急性期には、床ずれ予防や離床訓練を行います。脊髄損傷急性期では、全身の筋肉の緊張が低下し、床ずれを起こしやすくなるためです。 そのため、早期に体位の変換やクッション選びなどの対策をとる必要があります。また、全身が安定している場合は、ベッドに座った状態を維持する離床訓練の実施が大切です。座れるようになると、食事や排せつ、車いすの使用など日常生活へ戻る訓練を進められます。 症状の回復には、急性期にベッドから起きていられるよう体を慣らすリハビリテーションがポイントです。 脊髄損傷の急性期は回復に影響を与える重要な期間 脊髄損傷急性期は発生してから2〜3週間ほどの期間で、症状回復に影響を与えます。重要な期間となるため、早期に診断を受けて適切な治療を受けることが大切です。 脊髄損傷急性期の主な治療法には、安静やリハビリテーションなどがあります。症状回復を目指せるよう、診断から脊髄損傷の種類や程度、影響を受けた範囲を把握しましょう。 また、脊髄損傷急性期の治療法の選択肢として、体への負担が少ない再生医療も検討できます。当院リペアセルクリニックでは、脊髄損傷の再生医療を行っています。急性期における適切な治療法を検討中の方は、ぜひお問い合わせください。 脊髄損傷の急性期に関するよくある質問 脊髄損傷の急性期に起こる合併症は何ですか? 脊髄損傷では麻痺以外に、呼吸器合併症や循環器合併症など、さまざまな合併症が発生します。なかでも、急性期では消化器合併症が起こりやすいため注意が必要です。 急性期にはストレス性胃潰瘍や十二指腸潰瘍のほか、胃腸の働き低下により腸閉塞となるケースもあります。いずれも生命にかかわる重要なものばかりなので、早期治療が重要です。 脊髄損傷を発症した場合に回復見込みはありますか? 脊髄損傷は原因や症状、損傷位置によって回復が見込めるか異なります。症状が軽度の場合は、治療次第で回復が見込めます。 しかし、重度の場合は回復の見込みが低く、完治しないケースがほとんどです。脊髄損傷は時期によって治療法が異なるため、早めに診断を受けましょう。 脊髄損傷の急性期における看護のポイントは? 脊髄損傷の急性期では、家族のサポートが重要です。急性期では症状が発生し、身体への異変や生活動作が自分でできない辛さ、回復への期待などから精神面が不安定になりやすい時期といえます。 そのため、周囲からの励ましが生きる希望につながります。不安やストレスを軽減するほか、治療へ積極的な取り組みを促すためのサポートが看護のポイントです。 参考文献 (文献1) 厚生労働省「急性期脊髄損傷の治療を目的とした医薬品等の臨床評価に関するガイドラインについて」独立行政法人 医薬品医療機器総合機構2019年 https://www.pmda.go.jp/files/000230373.pdf(最終アクセス:2025年5月20日) (文献2) 松本浩子,泉キヨ子.「脊髄損傷患者の急性期における体験」『日本看護研究学会雑誌』30巻(2号), pp.77-85, 2007年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/30/2/30_20070125006/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年5月20日)
2025.05.30 -
- その他、整形外科疾患
「抗がん剤による末梢神経障害は治るのか」「しびれや痛みが続いている」など、不安に感じている方も多いでしょう。抗がん剤による末梢神経障害は、多くのがん患者に現れる副作用の一つです。完治を目指すのは難しいケースもありますが、適切な治療やケアによって日常生活への影響を抑えられます。 今回は、抗がん剤による末梢神経障害の原因や対処法、治療薬について現役医師がわかりやすく解説します。症状の改善を目指している方は、ぜひ参考にしてください。 抗がん剤による末梢神経障害を完全に治すのは難しい 抗がん剤による末梢神経障害は、有効な予防法が確立されておらず、症状を完全に抑えるのが難しい疾患です。(文献1)そのため、症状の進行を抑えたり、日常生活を維持したりするためのケアや対処に努めることが重要です。 なかには、抗がん剤の中止後に症状が改善するケースもあります。一方で、しびれや痛みが長年にわたって残ることも少なくありません。抗がん剤による末梢神経障害が疑われる場合は、医師との連携や早期対応が大切です。 抗がん剤による末梢神経障害の症状 抗がん剤の副作用によって運動神経や感覚神経、自律神経がダメージを受けると、末梢神経障害として以下のような症状が現れます。(文献2) 神経の種類 主な症状 運動神経 手足の筋力低下 細かい動作の困難 歩行困難 など 感覚神経 手足のしびれや痛み 灼熱感 冷感過敏 感覚麻痺 など 自律神経 起立性低血圧 発汗異常 便秘 排尿障害 など なお、症状の現れ方には個人差があり、日常生活や社会活動に支障をきたすケースも少なくありません。 抗がん剤による末梢神経障害が起こる原因 抗がん剤による末梢神経障害は、薬剤が末梢神経系にダメージを与えることによって生じるとされています。 抗がん剤による末梢神経障害の原因は、すべてが解明されているわけではありませんが、軸索あるいは神経細胞体への影響が考えられます。(文献1)それぞれのメカニズムについて詳しく見ていきましょう。 軸索障害 軸索障害とは、末梢神経の軸索(じくさく)が抗がん剤の攻撃を受けて生じる障害です。 軸索とは、神経細胞から伸びる長い神経線維のことです。次の細胞に情報を伝達するための役割を担っているほか、軸索には栄養素などを運ぶための微小管(びしょうかん)と呼ばれる細胞骨格があります。 抗がん剤のなかには、がん細胞の微小管を攻撃して増殖を抑える薬があります。このとき、軸索の微小菅が攻撃を受けて正常な働きができなくなると、神経の末端に必要な栄養や酵素が届かず、変性の進行につながりかねません。 長い軸索を持つ神経ほど、抗がん剤によるダメージを受けやすいのが特徴です。そのため、足先や手指などの遠位部を中心に、しびれやチクチク感、痛み、感覚鈍麻といった症状が現れやすくなります。 神経細胞体障害 神経細胞体が直接抗がん剤の攻撃を受けて、障害が生じるケースもあります。 神経細胞体とは、神経の中核部分で、タンパク質の合成や代謝、情報処理といった神経の生命維持に欠かせない機能を担っているのが特徴です。 抗がん剤の攻撃によって神経細胞体に障害が起こると、そのほかの部分も二次的にダメージを受け、神経全体の機能が失われやすくなります。 また、細胞体のダメージは神経再生能力の低下を招くとされています。一度損傷を受けると回復までに長期間を要したり、慢性的な神経障害としてしびれや異常感覚、感覚過敏といった症状が残存したりするケースも少なくありません。 そのため、神経細胞体への影響は、末梢神経障害の予後に大きく関与する重要な要素と考えられています。 末梢神経障害を起こしやすい抗がん剤の種類 末梢神経障害の症状は、抗がん剤の種類や投与量によって個人差があります。 ここでは、末梢神経障害を起こしやすい抗がん剤の種類をまとめました。 殺細胞性の抗がん剤 殺細胞性の抗がん剤は、化学物質を用いて細胞増殖が盛んながん細胞を死滅または抑制させる薬のことです。殺細胞性の抗がん剤は、主に以下のような種類があります。(文献1) 一般名 商品名 主な症状 パクリタキセル タキソール パクリタキセル 手足のしびれや痛み 感覚の鈍さ パクリタキセル (アルブミン懸濁型) アブラキサン 手足のしびれや痛み 感覚の鈍さ ドセタキセル タキソテール ワンタキソテール ドセタキセル 手足のしびれ 感覚の鈍さ カバジタキセル ジェブタナ 運動のまひ 感覚のまひ 手足のしびれや痛み ビノレルビン ナベルビン ロゼウス 知覚異常 腱反射減弱 対象になるがんの種類によって、ほかにもさまざまな種類の殺細胞性の抗がん剤があります。なお、殺細胞性抗がん剤は正常な細胞にも影響を及ぼすため、副作用の発生頻度が高い薬です。 分子標的型の抗がん剤 分子標的型の抗がん剤は、がん細胞に特異的に存在する分子を狙って、増殖や生存を抑制する薬です。代表的な分子標的型の抗がん剤として、以下のような薬が挙げられます。(文献1) 一般名 商品名 主な症状 ボルテゾミブ ベルケイド 手足のしびれや痛み 感覚の鈍さ 起立性低血圧 便秘 トラスツズマブエムタンシン カドサイラ 手足のしびれや痛み ブレンツキシマブベドチン アドセトリス 運動のまひ 感覚のまひ 手足のしびれや痛み サリドマイド サレドカプセル 手足のしびれや痛み 起立性低血圧 レナリドミド レブラミドカプセル 手足のしびれや痛み 感覚の鈍さ 起立性低血圧 分子標的型の抗がん剤は、正常な細胞には影響しないとされており、副作用の軽減が期待できます。(文献3) 抗がん剤による末梢神経障害は治る?ケアと対処法 抗がん剤による末梢神経障害では、手足のしびれや痛みなどの症状が現れます。日常生活において症状とうまく付き合っていくためには、適切なケアや対処が必要です。 抗がん剤による末梢神経障害の対処法について解説するので、ぜひ参考にしてください。 医師に相談して治療薬を投与する 抗がん剤による末梢神経障害が疑われる場合は、できるだけ早く医師に相談しましょう。 末梢神経障害に対しては、神経障害性疼痛に有効な薬剤による対症療法がおこなわれるのが一般的です。また、抗がん剤による治療中に末梢神経障害が悪化した場合は、原因となる薬剤の投与延期や減量、中止が検討されます。 なお、リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。抗がん剤治療後に続くしびれや痛みなどでお困りの方は、ぜひ気軽にご相談ください。 循環を良くする 抗がん剤による末梢神経障害のケアとして、血液の循環を良くするのもポイントです。とくに、末梢部の血流を良くすると、しびれや痛みが軽減する場合があります。 たとえば、入浴時にマッサージをしたり、手を握ったり開いたりする動きを取り入れることで、末梢の血行が促されます。また、無理のない範囲で軽い運動をするのもおすすめです。体調に応じて医師と相談の上、無理のない範囲でマッサージや軽い運動を継続しましょう。 寒冷刺激を避ける 抗がん剤による末梢神経障害は、寒冷刺激によって症状が悪化するケースがあります。とくに、急性の末梢神経障害は、寒冷刺激によって強いしびれや痛みが誘発されるといわれています。 日常生活において以下のような工夫をして、寒冷刺激を避けましょう。 冷たい飲み物を避ける 冬場や冷房の効いた部屋では手袋や靴下で保温する 炊事や洗濯の際はゴム手袋を着用する 皮膚が濡れたときはすぐに水分を拭き取る 冷たい床などに直接座らない 寒冷刺激を避けることは、抗がん剤による末梢神経障害の症状の悪化を防ぐポイントの一つです。 転倒やケガに注意する 抗がん剤による末梢神経障害は、手足のしびれや痛みのほか、筋力やバランス感覚の低下を引き起こす場合があります。そのため、転倒やケガには十分な注意が必要です。 とくに、高齢者の場合、転倒によって骨折すると入院や寝たきりの状態が長期化するリスクもあります。転倒やケガを防ぐためにも、以下のような点を中心に、住環境を見直しましょう。 床に物を置かない コード類をまとめる 滑りにくい靴やスリッパを履く 手すりを設置する 段差を解消する 夜間は足元灯を使用する 神経障害による感覚異常がある場合は、自覚しにくい小さなケガにも注意が必要です。 【症例紹介】末梢神経障害に対する再生医療の可能性 再生医療は、末梢神経障害の治療における選択肢の一つです。再生医療とは、幹細胞や血小板の投与によって自然治癒力を最大限に引き出し、症状改善を目指す治療法です。 ここでは、両足の長期的なしびれに悩まされた、80代男性の症例を紹介します。 80代の男性は、40年来の糖尿病患者で、内科主治医から糖尿病性末梢神経障害と診断されていました。薬物療法や食事・運動療法により、血糖値のコントロールはある程度良好でしたが、両足の症状はなかなか改善が見られず、再生医療による治療を決めました。 当院では、根本的なアプローチとして患者様の状態に合わせた幹細胞治療を提供しています。この患者様には1億個の細胞を3回に分けて点滴投与しました。治療前後の状態は、以下の通りです。 治療前の状態 10年以上続く両足のしびれ 知覚鈍麻(感覚の鈍さ) 既存の治療法による効果は限定的 治療後の変化 両足のしびれが大幅に軽減 日常生活の質の向上 健康増進への積極的な姿勢の芽生え 治療に対する前向きな発言 当院の幹細胞治療は、米粒2〜3粒ほどの脂肪を採取するだけで、十分な量の細胞を培養できるため、身体への負担が少ない点が特徴です。 こちらの症例について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。 なお、リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。末梢神経障害の治療法でお悩みの方は、ぜひ気軽にご相談ください。 抗がん剤による末梢神経障害を治すには早期発見・対処に努めよう 抗がん剤による末梢神経障害の症状は、薬の種類や治療期間によって個人差があり、完治が難しい場合もあります。しかし、早期に症状を発見し、適切な対処をおこなうことで、進行を抑えたり症状を軽減したりできます。 抗がん剤による末梢神経症状の主な対処法は、治療薬の投与や日常的なセルフケアなどです。医師の診断のもと、適切なケアや対処法を組み合わせることで、しびれや痛みといった症状を和らげ、生活の質を保つことにつながります。 抗がん剤治療後に手足にしびれや感覚の鈍さが現れた場合は、早めに信頼できる医師に相談しましょう。 参考文献 (文献1) 静岡県立静岡がんセンター「抗がん剤治療と末梢神経障害」 https://www.scchr.jp/cms/wp-content/uploads/2016/02/sonota_mshinkei.pdf (最終アクセス:2025年5月20日) (文献2) 公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院「末梢神経障害 -症状とセルフケアについて- 」 https://www.kchnet.or.jp/kchnet/wp-content/uploads/departments/pdf_chemopamphlet_6.pdf (最終アクセス:2025年5月20日) (文献3) 横浜市立大学附属病院 化学療法センター「抗がん剤」 https://www.yokohama-cu.ac.jp/fukuhp/section/central_section/chemotherapy/anti-cancer_agent.html (最終アクセス:2025年5月20日)
2025.05.30 -
- 足部、その他疾患
- 足部
「最近、かかとが痛いと子どもが言い出した」「練習後はつま先で歩いている気がする」 このようなお悩みを持たれている保護者の方もいらっしゃることでしょう。 お子さまのかかとの痛みは、多くの場合シーバー病と呼ばれる成長期特有の疾患が原因です。 適切な知識と対処法を身につけることで、お子さまの痛みを和らげ、スポーツを継続できるようになります。 本記事では、シーバー病の原因・症状・治療法から、再発防止やスポーツ復帰のポイント、そして当院で受けられる再生医療まで詳しく解説いたします。 保護者の皆さまが抱える不安を解消し、お子さまの健やかな成長をサポートするための情報をお届けしますので、ぜひ最後までご覧ください。 シーバー病とは?成長期の子どもに多いかかとの痛み シーバー病は、成長期の子どもに特有のかかとの痛みを引き起こす疾患です。 正式には「踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)」と呼ばれ、10歳前後の活発な男の子に多く見られます。(文献1) この病気の特徴は、踵骨(かかとの骨)の成長板と呼ばれる部分に繰り返し負荷がかかることで炎症が生じ、痛みや腫れを引き起こすことです。 成長期の骨は大人の骨と異なり、踵骨軟骨と呼ばれる軟骨のため、運動による繰り返しの負荷によって炎症を起こしやすくなっています。 シーバー病の痛みは、運動中や運動後に現れることが多く、安静にすると症状が軽減されますが、朝起きたときの一歩目や、長時間座った後に立ち上がるときにも痛みを感じることがあります。 多くの保護者はこのまま放置して大丈夫なのかを心配されていると思いますが、早期に医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。 適切な対処を行わずに放置してしまうと、痛みが慢性化し、日常生活に支障をきたす可能性がありますが、正しい知識を手に入れ、対処法を実践すれば多くの場合で症状の改善が期待できます。 シーバー病の原因と発症メカニズム シーバー病の発症には、いくつかの要因が複合的に関与しています。 最も大きな原因は、成長期のかかとの骨に対する過度な負荷です。 アキレス腱・足底腱膜の牽引ストレスとは? アキレス腱や足底腱膜は、かかとの骨に直接付着している重要な組織です。 これらの組織が硬くなったり緊張したりすると、運動時にかかとへの牽引ストレス(引っ張る力)が増加します。 アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉とかかとの骨をつなぐ太くて強い腱で、走ったり跳んだりする動作のたびに、この腱がかかとの骨を強く引っ張ります。 足底腱膜は、足の裏全体に広がる膜状の組織で、歩行時の衝撃を吸収する役割を担っており、成長期の子どもは、骨の成長に対して筋肉や腱の成長が追いつかないことがあります。 この成長のアンバランスにより、アキレス腱や足底腱膜の柔軟性が低下し、かかとへの牽引ストレスが強くなりやすい状態になってしまします。 このストレスが繰り返されることで、成長期の柔らかい踵骨の成長板に炎症が生じ、シーバー病を発症してしまいます。 また、偏平足や足の形状、不適切な靴の使用なども、かかとへの負担を増加させるリスク要因となります。 とくに、靴選びは重要です。クッション性の乏しい靴や、サイズが合わない靴を使用すると、さらに症状が悪化する可能性があります。 どんな症状が出る?家庭でできるセルフチェック シーバー病の症状を早期に発見するためには、保護者の方が日常的にお子さまの様子を観察することが大切です。 以下のような症状やサインが見られる場合は、シーバー病の可能性を疑いましょう。 チェック項目 症状の詳細 かかとを押したときの痛み 親指でかかとの後ろ側を軽く押して痛がる 朝起きたときの痛み ベッドから起き上がる最初の一歩で痛がる 運動後の痛み 練習や試合の後にかかとを痛がる 歩き方の変化 つま先立ちで歩いたり、歩き方がおかしい 長時間座った後の痛み 椅子から立ち上がるときに痛がる 運動後の痛み 運動後にかかとに痛みを感じるのは、シーバー病の最も典型的な初期症状の一つです。 とくに、サッカーやバスケットボール、陸上競技など、ジャンプや走る動作を繰り返すスポーツに取り組んでいるお子さまに多く見られるので、練習や試合が終わった後にかかとの痛みを訴えたり、つま先立ちで歩いている場合は要注意です。 初期段階では軽い違和感程度かもしれませんが、放置すれば痛みは徐々に悪化し、やがて日常生活にも影響を及ぼす可能性があります。 とくに疲労が蓄積しやすい連続した練習日や、練習量が急に増えた時期には注意が必要です。 ので、お子さまが運動後の違和感を口にした場合は、それを見逃さずに適切な対処を始めることが予防の第一歩となります。 朝一番の痛み 朝起きた直後に感じるかかとの痛みも、シーバー病の代表的な症状の一つです。 これは、睡眠中に筋肉や腱が硬くなり、起床して最初に動作を行うときに成長板への張力が急激にかかることで生じています。 ベッドから起き上がって最初の一歩目に痛みがある場合は、炎症がある程度進行しているサインでもあります。 多くの場合、歩いているうちに痛みは軽減しますが、症状が繰り返すようであれば、セルフケアだけでなく医療機関へ相談しましょう。 朝の痛みを放置すると、日中の活動にも支障をきたすようになり、お子さまの生活の質に大きな影響を与える可能性があります。 歩き方の変化 シーバー病の進行に伴い、お子さまの歩き方に変化が現れることがあります。特徴的な変化は、かかとの痛みを避けるためにつま先歩きをするようになる点です。 痛いかかとに体重をかけることを本能的に避けようとする自然な反応ですが、長期間このような歩き方を続けると症状の悪化を引き起こします。保護者や指導者の方は注意深く観察しましょう。 観察するポイントは以下の通りです。 つま先立ちで歩いている 片足をかばうような歩き方をしている 歩く速度が遅くなった 階段の昇り降りを嫌がるようになった これらの異常が見られた場合には、早期に専門医の診察を受けましょう。 シーバー病はどのくらいで治る?回復までの期間と注意点 シーバー病の回復期間は、症状の程度や対処法の適切さによって大きく異なりますが、一般的には数カ月から1年程度とされています。 ただし、これはあくまで目安であり、個人差が非常に大きい疾患です。 軽度の場合では、適切なケアを行うことで1〜2カ月程度で症状が改善する場合もありますが、症状が進行してから治療を開始した場合や、不適切な対処により症状が悪化した場合は、回復に1年から数年程度かかることもあります。 回復期間を左右する重要な要因として、以下の点が挙げられます。 要因 回復への影響 発見の早さ 早期発見ほど回復が早い 運動の調整 適切な休息で回復促進 成長段階 成長期真っ盛りは時間がかかりがち 個人の体質 治りやすさに個人差がある 早期発見と適切な対処が何より大切です。お子さまのSOSと真剣に向き合ってあげることで、回復期間を大幅に短縮できます。 また、痛みがなくなったからといって完全に治ったわけではありません。 運動を再開する際は、段階的に進めることが重要です。ウォーキングやストレッチからはじめて、徐々に負荷をあげ、最終的には元の運動量に戻しましょう。 そして、シーバー病は成長に伴う疾患であるため、お子さまの成長が完全に終了するまでは再発の可能性も考慮してください。 シーバー病を早く治すための保存療法とセルフケア シーバー病の早期改善には、保存療法とセルフケアの適切な組み合わせが効果的です。 手術が必要になることはほとんどありません。多くの場合で手術をしない保存治療により症状の改善が期待できます。 保存療法の基本は、患部の安静を保ち、必要に応じてアイシングを行い、テーピングやインソールを使用してかかとへの負担を軽減しましょう。 セルフケアとしては、ふくらはぎや足底筋膜のストレッチ、足裏のマッサージが効果的です。これらの方法を組み合わせることで、シーバー病の症状を早期に改善し、再発を防げます。 重要なのは、一つの方法に頼るのではなく、複数のアプローチを並行して行うことです。お子さまの症状や生活スタイルに合わせた組み合わせを見つけましょう。 テーピングとアイシングの使い方 テーピングとアイシングは、シーバー病の症状軽減に非常に有効な手段です。テーピングは、かかとへの負担を軽減し、痛みを和らげる効果があります。 適切な巻き方を習得すると、日常生活や軽い運動時の痛みを大幅に軽減できるため、以下の基本的なテーピングの手順を抑えておきましょう。 基本的なテーピング手順は以下の通りです。 足首の力を抜いて、つま先を内側に入れる。 小指の付け根からテーピングの端を貼り付け、かかとに巻き込んでピンと張る様に貼り付ける。 余った部分は足を巻き込むように斜め上に上げて貼り付ける。 テーピングは毎日交換し、皮膚のかぶれに注意しながら使用してください。 アイシングは炎症を抑え、痛みを軽減するために重要な処置です。運動後や痛みが強いときに、かかと中心に15〜20分程度のアイシングを行うことで、症状の悪化を防げます。 これらの方法を適切に組み合わせて、早期回復を促進しましょう。 ストレッチと靴・インソールの工夫 シーバー病の予防や症状改善には、ストレッチとインソールの工夫が大きな役割を果たします。 アキレス腱やふくらはぎのストレッチは、牽引ストレスの軽減につながり、かかとへの負担を大きく減らします。 足首ストレッチ 椅子に座り、片足をもう片方の太ももの上に乗せて、足首を手でつかみます。 もう片方の手で足の指と手の指を組んで、ゆっくりと大きく足首を回してください。痛みのない範囲で20回程度回したら、逆足も同様に行います。 階段ストレッチ かかとはふくらはぎの筋肉と密接につながっているため、ふくらはぎが硬いとシーバー病のリスクが高まります。 うつ伏せになって腕立て伏せの姿勢を取り、片足をもう片方の足首の上に乗せます。下の足のかかとを床につけることで、ふくらはぎとアキレス腱の心地良い伸びを感じられます。 20秒キープして、逆足も同様に行ってください。 靴に関しては、クッション性が高く踵をしっかりとサポートできる構造のものを選ぶことが重要です。 適切な靴選びのポイントは以下の通りです。 かかと部分にしっかりとしたクッションがある 足のサイズに正確に合っている アーチサポート機能がついている 古すぎずクッション性が保たれている インソールの活用も重要です。市販のクッション性インソールや、必要に応じて医療用インソールの使用を検討してください。 これらの対策を組み合わせることで、症状の改善と再発防止の両方を実現できます。 シーバー病の再発防止とスポーツ復帰時の注意点 シーバー病は適切な治療により症状が改善しても、フォームやトレーニング内容を改善しないままだと再発するリスクが高い疾患です。 再発防止のためには、根本的な原因への対処と、段階的なスポーツ復帰を考えておきましょう。 痛みが無くなったらまずは軽いウォーキングとストレッチからはじめ、問題なければジョギング、そして習っているスポーツの動作練習と移行していき、最終的には通常練習へと復帰するのが理想です。 定期的に痛みの確認を行い、各段階で痛みが出現した場合は前の段階に戻って様子を見ましょう。一般的には1〜2カ月でこれまで通りスポーツができるようになります。 保護者の方は、お子さまがもう大丈夫と言っても、組織の回復には時間がかかることを理解し、長期的な視点でサポートしてあげてください。 また、指導者との連携も大切です。お子さまの状態を正確に伝え、無理をさせないよう配慮を求めてください。 シーバー病の受診のタイミングと当院の再生医療の選択肢 シーバー病の症状が現れた場合、適切なタイミングで医療機関を受診しましょう。 以下のような受診すべき症状がないかチェックしてください。 2週間以上痛みが持続している 歩行にも支障が出ている 片足ではなく両足に痛みがある 安静にしていても痛みが続く 痛みが徐々に強くなっている これらの症状がある場合、セルフケアだけでは改善が困難な可能性があります。 一般的な保存療法で改善しない場合、リペアセルクリニックでは、PRP(多血小板血漿)を用いた再生医療もご案内可能です。 PRP療法の特徴として、以下の点があげられます。 患者さま自身の血液から血小板を濃縮した液体を精製する治療 細胞の代謝プロセスに関与する成長因子を豊富に含む 入院を必要とせず治療期間が短い 副作用のリスクが少ない 当院の再生医療は、お子さまの成長段階や症状の程度を十分に考慮した上で治療プランをご提案します。PRP療法について知りたい方は以下のリンクをご確認ください。 まとめ|シーバー病は早期発見と正しいケアが重要です シーバー病は、成長期の子どもによく見られる疾患ですが、放置してしまうと症状が長引き、お子さまのスポーツ活動や日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。 しかし、適切な知識と対処法を実践することによって、多くの場合で症状の改善が期待できる疾患でもあります。 早期発見のためには、運動後の痛み、朝起きたときの痛み、歩き方の変化など、お子さまの日常の変化に注意を払うことが大切です。 家庭でのセルフケアとしては、適切なストレッチ、アイシング、テーピング、そして靴・インソールの工夫をしましょう。 そして、再発を防ぐためには正しいフォームの習得、段階的なスポーツ復帰、そして継続的なリハビリを意識した運動習慣の見直しが必要です。 症状が長引く場合や、通常の治療で改善が見られない場合は、再生医療などの選択肢もあるので、シーバー病でお悩みの方は当院にお気軽にご相談ください。 適切な診断と治療により、お子さまが再び元気にスポーツを楽しめるよう、全力でサポートいたします。 参考文献 (文献1) 済生会「踵骨骨端症(アポフィサイティス)」 https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/apophysitis_of_the_calcaneus/ (最終アクセス:2025年5月24日)
2025.05.30 -
- 手部、その他疾患
- 手部
スマートフォンが生活必需品となった現代では、指や手首の痛みに悩む人が増えています。 その原因のひとつが「スマホ腱鞘炎」です。 腱鞘炎とは、筋肉と骨をつなぐ腱を包む腱鞘に炎症が起こる状態で、痛みや腫れ、動かしにくさを引き起こします。 とくにスマートフォンの操作では、親指を使ったスクロールやフリックなど同じ動作を繰り返すことが多く、腱と腱鞘の摩擦が増え炎症が生じやすいのです。 本記事では、スマホ腱鞘炎の原因や種類、セルフチェック法などを詳しく解説します。 腱鞘炎治療の選択肢の一つにもなっている「再生医療」について詳しく知りたい方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 スマホの使い過ぎは腱鞘炎の原因になる スマートフォンの長時間使用は手指や手首に不要な負担をかけ、「スマホ腱鞘炎(けんしょうえん)」と呼ばれる障害の発症リスクを高めます。 腱鞘炎とは、骨と筋肉をつなぐ「腱(けん)」を包む「腱鞘(けんしょう)」に炎症が起こる状態です。 痛みや腫れ、動かしにくさなどが生じます。 とくにスマートフォンの操作では、親指を使ったスクロールやフリックなど同じ動作を繰り返すため、腱と腱鞘の摩擦が増えて炎症が生じやすくなるのです。 親指を使った反復動作は一般的な腱鞘炎の原因とも重なり、アメリカでは「スマートフォンサム(スマホ親指)」として社会的に注目されました(文献1)。 腱と腱鞘のしくみ 腱と腱鞘は、手の動きをスムーズにする重要な組織です。 腱は、筋肉と骨をつなぐ丈夫な線維組織であり、筋肉が収縮したときにその力を骨に伝える役割を担っています。 一方、腱鞘は腱を包む鞘(さや)のような構造が特徴で、腱の動きをスムーズにし、摩擦を減らすのが役割です。 また、腱鞘の内側には滑液(かつえき)と呼ばれる潤滑液が分泌されており、腱がスムーズに動くのを助けています。 ただし、スマートフォンを操作するとき、親指を曲げたり伸ばしたりする動作を何度も繰り返すことで、親指の付け根に通っている2本の腱と腱鞘の間で摩擦が生じます。 その結果、腱鞘炎が引き起こされるのです。(文献2) 腱鞘炎については、以下の記事で医師が詳しく解説しています。 スマホ腱鞘炎の原因 スマートフォンやパソコンを日常的に使用する現代では、手や指の酷使が当たり前になりつつあります。 その結果、若い世代から高齢者まで、手首や指に痛みを感じる「スマホ腱鞘炎」に悩む人が増加しているのです。 また、単に使いすぎだけでなく、日常生活や体の変化とも深く関係しています。 ここでは、スマホ腱鞘炎を引き起こす代表的な3つの原因を見ていきましょう。 長時間のスマホやパソコンの操作 スマホ腱鞘炎で最も一般的な原因は、長時間にわたるスマートフォンやパソコンの操作です。 とくに、親指や人差し指を頻繁に使う入力動作やスクロール、画面タップなどは、腱に対して繰り返し負荷をかけます。 腱と腱鞘の間に摩擦が起こり、炎症の引き金となるのです。 慢性化すると痛みや腫れが現れ、指の動きがさらに制限されるケースもあります。 指や手首に負担をかけるスポーツ テニスやゴルフなど、手首をひねる動作が多いスポーツも腱鞘炎の原因になります。 手首に急激な力が加わったり、同じ筋肉を繰り返し使ったりすることで、腱に炎症が起こりやすくなるのです。 スマートフォンの使用と同様に、スポーツの過度な負荷と反復動作がリスクである点を理解しておきましょう。 ホルモンの大きな変化 女性特有のホルモンの変動も、スマホ腱鞘炎の誘因となります。 更年期や妊娠・出産など、ホルモンバランスが大きく変化する時期には、腱や腱鞘の柔軟性が低下し、炎症を起こしやすくなる場合があるのです。 出産後や更年期の女性に多く見られ、エストロゲンなどのホルモン低下により、腱鞘がむくみやすくなるとされています。 スマホ腱鞘炎は主に3種類 スマートフォンの長時間使用によって起こるスマホ腱鞘炎には、いくつかのタイプが存在します。 なかでも、多く見られるのが「ドケルバン病」「バネ指」「変形性関節症」の3種類です。 ここでは、それぞれの疾患について詳しく解説します。 ドケルバン病 ドケルバン病は、親指の使い過ぎによって発症する腱鞘炎の一種です。 手首の親指側にある腱鞘と、そこを通過する短母指伸筋腱(たんぼししんきんけん)および長母指外転筋腱(ちょうぼしがいてんきんけん)の間に摩擦が生じ、炎症が起こります。 スマートフォンの片手操作で親指を繰り返し動かすことが主な原因とされており、子育て中の女性や長時間スマートフォンを操作するデスクワーカーなどに多く見られるのが特徴です。 親指を広げる・反らす動作で痛みが増し、進行すると物を握るのが難しくなる場合もあります。 ドケルバン病については以下の記事でも詳しく取り上げているので、参考にしてみてください。 バネ指 バネ指は、指の付け根に発症する腱鞘炎です。 腱が腫れたり、腱鞘が狭くなったり、腱の滑りが悪くなったりなど、引っかかるような動作が見られます。 症状が進行すると、指を伸ばそうとした際に「カクン」とバネのように弾かれる感覚が現れるのが特徴です。 とくに朝方に症状が強い傾向があり、指を動かす際の痛みや違和感が顕著に現れます。 スマートフォンの操作で指を酷使する生活スタイルが背景にあると、バネ指のリスクは高まるとされているため注意が必要です。 変形性関節症 長期間にわたる指関節への負担や加齢によって関節軟骨がすり減り、炎症や変形を起こすのが変形性関節症です。 スマホ腱鞘炎のように手や指を繰り返し使う動作が長期間続くと、関節への慢性的なストレスが蓄積し、軟骨が摩耗しやすくなります。 関節の変形が進行すると、指の曲げ伸ばしが困難になり、日常生活にも大きな支障をきたすケースも少なくありません。 高齢者に多い疾患ですが、近年では若年層にも増加傾向が見られるため要注意です。 スマホ腱鞘炎はどこが痛いのか スマートフォンの長時間使用により、手や腕のさまざまな部位に痛みを感じる場合があります。 どの部位が、どのような原因で痛むのかを正しく把握することが、適切な対策や治療への第一歩です。 ここでは、代表的な痛みの部位を4つに分けて解説します。 親指の付け根が痛くなる スマホ腱鞘炎で最も多いのが、親指の付け根に痛みを感じるケースです。 片手でスマートフォンを持ちながら親指でスクロールや文字入力を繰り返すと、親指を動かす腱と腱鞘が摩擦によって炎症を起こします。 進行すると、ペットボトルのキャップを開ける、物をつかむといった簡単な動作も困難になる恐れがあるため注意しましょう。 小指の付け根が痛くなる スマートフォンを片手で支える際に、小指を画面の端に引っ掛けて持つ不自然なスタイルを続けると、小指の付け根に負荷が集中し、痛みや関節の違和感を引き起こす場合があります。 「スマホ指」とも呼ばれています。(文献3) 小指への過度な圧迫がおもな原因とされ、悪化する前に小指の付け根に負担がかからない持ち方に直しましょう。 手首が痛くなる スマートフォンやパソコンを長時間使用すると手首にかかる負担が蓄積し、腱鞘炎や関節炎を発症する場合があります。 とくに、手首を反らしたまま固定する姿勢は腱と腱鞘の摩擦を増加させ、炎症や腫れを誘発するため注意が必要です。 痛みが悪化すると手首の可動域が制限され、日常動作に影響を及ぼします。 腕が痛くなる スマートフォンを長時間使用し続けると、前腕から肘にかけての筋肉や腱にストレスが蓄積して痛みを引き起こすケースがあります。 「スマホ肘」とも呼ばれ、肘の外側または内側に痛みを感じるのが特徴です。(文献4) 一般的に、物を掴んだときにズキッとした痛みが出る場合が多く、放置すると慢性化するリスクがあります。 スマホ腱鞘炎かも?自分でできるセルフチェック法 スマホ腱鞘炎が気になる方は、自宅で簡単にできるセルフチェック法を試してみましょう。 ここでは、「フィンケルシュタインテスト」と「アイヒホッフテスト」をご紹介します。 テストで痛みを感じた場合はスマホ腱鞘炎の可能性が高いと考えられます。ただし、あくまでセルフチェックなので、強い痛みや症状が続く場合は必ず専門医を受診しましょう。 フィンケルシュタインテスト フィンケルシュタインテストは、スマホ腱鞘炎の診断でよく用いられる方法です。 <フィンケルシュタインテストの手順> 手首が小指側に曲がらないようにまっすぐ固定する 反対の手で親指をつかんで曲げる 親指の力を抜いた状態で、反対側の手を使って曲げる方向に引っ張りましょう。 手首の親指側や親指の付け根あたりに、鋭い痛みが生じた場合はスマホ腱鞘炎の可能性があります。 アイヒホッフテスト アイヒホッフテストは「フィルケルシュタインテスト変法」とも呼ばれ、スマホ腱鞘炎(ドケルバン病)を診断するための有効な方法です。 <アイヒホッフテストの手順> 親指を手のひらの中に入れるように握ります 握った手を、小指側に傾けます テストの際は無理に力を入れず、自然な動きで行いましょう。 痛みの強さは個人差がありますが、通常は痛みをほとんど感じないため、親指の付け根から手首にかけ痛みを少しでも感じる場合はスマホ腱鞘炎の可能性があります。 強い痛みがある場合は、すぐに専門医を受診しましょう。 なお、フィンケルシュタインテストと併せて行うことで、よりテストの精度を高められます。 スマホ腱鞘炎を悪化させる生活習慣 スマホ腱鞘炎は、日常の何気ない使い方で悪化する場合があります。 とくに注意すべき習慣は、スマートフォンの片手操作と、手首で捻って両手で横持ちする動作です。 間違った持ち方が習慣化すると知らないうちに親指や手首に負担がかかり、腱鞘炎のリスクが高まるため注意しましょう。 では、以下で詳しく解説します。 片手で持って片手で操作 片手でスマートフォンを持ちながら親指で操作すると、腱鞘炎のリスクが高まります。 画面全体に届くように親指を大きく外側に広げる必要があり、親指の付け根に過度な負担がかかるのです。 とくに大画面のスマートフォンを使用している場合、親指を無理に伸ばして操作すると、腱にさらなる負担がかかるので注意しましょう。 また、片手操作でスマートフォンの下に小指を添えると関節をねじってしまい、小指の負担が大きくなります。 両手でスマホを持って両方の親指で操作すると、スマートフォンを支える手や指の重さが分散されて負担を軽減できるので、試してみてください。 両手でスマートフォンを持つのが難しい方は、片手の手のひら全体を使って持ち、両手で操作すれば手指にかかる負担を軽減できます。 手首を捻って両手で横持ち スマートフォンを横向きに持って操作する「横持ち」も、腱鞘炎のリスクを高める持ち方です。 横持ちして手首を内側にひねる姿勢が続くと、手首の関節に過度な負担がかかります。 とくに、動画視聴やゲームプレイなどで見られる持ち方なので注意しましょう。 スマートフォンをどうしても横持ちで操作したい方は、「小指でスマホを支えない」「画面をできるだけ立てて持つ」を意識してください。 また、長時間の動画視聴やゲームプレイの際は姿勢に気を配るとともに、適度な休憩を取って手首や指への負担を減らしましょう。 スマホ腱鞘炎の症状を軽くするセルフケア スマホ腱鞘炎は早期に適切なセルフケアを行えば、症状の悪化を防ぎながら回復を目指せる障害です。 ここでは、自宅で取り入れやすい4つのセルフケア方法を紹介します。 マッサージする 手首や指の付け根周辺を優しくマッサージすることで、血行を促進し、炎症部位の回復を助けます。 親指の付け根から手首にかけての筋肉を軽く押し、円を描くようにほぐすと効果的です。 ただし、強く押しすぎると炎症を悪化させる恐れがあるため、痛みがない範囲で行いましょう。 また、入浴後や手を温めた後に行うと、より血流が良くなります。 テーピングする テーピングは、炎症部位にかかる負担を減らすサポート方法です。 親指や手首を安定させるようにテープを巻いて動きを制限すれば、腱や腱鞘へのストレスを軽減できます。 テーピングは市販の伸縮テープを使用し、関節を曲げ伸ばししやすい程度に貼るのがポイントです。 巻き方を誤ると逆効果になる場合もあるため、わからない場合は専門家の指導を受けましょう。 湿布をする 炎症や腫れがある場合は、冷感タイプの湿布で患部を冷やすと痛みが和らぎます。 また、慢性的なこわばりや疲労感が強いときは、温感タイプの湿布で血流を促進するのも有効です。 ただし、使用時は肌に異常が出ないか確認し、長時間貼り続けないように注意しましょう。 スマホ腱鞘炎が悪化したら?治療法と再生医療の選択肢 セルフチェックの結果、スマホ腱鞘炎の可能性が高いと感じた場合、どのような対処が必要でしょうか。 初期段階では、「保存的療法」と呼ばれる手術を行わない治療法が効果的です。 保存的療法では、まず患部に塗り薬や湿布を塗布し、スマートフォンの使用時間を意識的に減らして親指や手首への負担を軽減します。 スマートフォンを操作する際は、正しい姿勢を保ち腱への過度な負荷を避けましょう。 あわせて、手首や指の柔軟性を保つためのストレッチを定期的に行って腱の柔軟性を維持し、炎症の改善を図ってください。 ただし、保存的療法を行っても症状が続く、もしくは日常生活に支障をきたす場合は、手術が必要になるかもしれません。 一般的な腱鞘炎の手術は症状により異なりますが、腱鞘を切開する方法が取られることがあり、おおよそ30分前後が手術時間とされています。 また、手術をしたくない場合には、自己の幹細胞や血液を利用する治療法「再生医療」の選択肢もあります。 当院「リペアセルクリニック」では、腱鞘炎に対する再生医療を提供しております。再生医療について詳しくは、以下をご覧ください。 スマホ腱鞘炎に役立つ予防グッズ スマホ腱鞘炎を防ぐには、手指や手首への負担を軽減するアイテムの活用が効果的です。 スマートフォンの持ちやすさをサポートする「スマホリング」や、滑りを防ぐ「シリコンカバー」などが販売されています。 また、長時間の操作でも手首を固定せずに画面を見られる「スマホホルダー」も便利です。 姿勢の改善にも役立つので、日常的にスマホ腱鞘炎のリスクを下げるためにも試してみてください。 まとめ|スマホ腱鞘炎を予防・改善する習慣を今日から始めよう スマホ腱鞘炎は、現代社会において誰もが発症する可能性がある障害です。 しかしながら、長時間の連続使用を避ける、操作姿勢を改善する、セルフケアや予防グッズを活用するなど、日々の工夫で発症や悪化のリスクを軽減できる可能性があります。 痛みや違和感を感じたら早めに休養を取り、必要に応じて医療機関を受診しましょう。 万が一、手術が必要なほど悪化した場合には、再生医療という治療法もあります。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する情報提供や簡易オンライン診断を行っております。 再生医療についての疑問や気になる症状があれば、公式LINEに登録してぜひ一度ご利用ください。 スマホ腱鞘炎に関するよくある質問 受診すべきタイミングは?専門医への相談の目安を知りたい スマホ腱鞘炎は、初期段階では軽い違和感や動かしにくさから始まりますが、放置すると痛みが強くなり、指や手首の動きが制限される場合があります。 以下に当てはまれば、整形外科や手外科などの専門医を早めに受診しましょう。 1週間以上安静にしても痛みや腫れが改善しない 指や手首を動かすと強い痛みが出る 朝起きたときに指がこわばり、曲げ伸ばしが困難 日常生活や仕事に支障が出ている 早期診断と適切な治療により、症状の悪化を防ぎながら回復を早めることも可能です。 腱鞘炎の治し方や予防については、以下の記事でも詳しく解説しています。 腱鞘炎と再生医療の関係は? 腱鞘炎の治療において、近年注目を集めている選択肢の一つが「再生医療」です。 再生医療とは、自分自身の細胞や成分を利用して損傷した組織の修復を促す方法で、慢性化した腱鞘炎や従来の治療で改善が難しいケースの新たな選択肢となっています。 再生医療についてもっと知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。 参考文献 (文献1) スマホの使いすぎによる腱鞘炎(けんしょうえん)|大正製薬 (文献2) 「ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)について」2023年 |日本整形外科学会 (文献3) 『スマホ指』に要注意!長時間の利用で手指の痛み・変形が起こる?正しい持ち方を解説|メディエイド (文献4) 『スマホ肘』になる人が増加中?スマホ肘の原因と症状、予防方法を解説|メディエイド
2025.05.30 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
「高次脳機能障害と認知症はどう違うのか」 「高次脳機能障害と認知症は併発するのか」 高次脳機能障害と認知症は、どちらも記憶や判断力に影響を及ぼすため混同されやすいものの、実際には原因や進行、症状に明確な違いがあります。本記事では、両者の違いや併発の可能性、それぞれの症状や治療法についてわかりやすく解説します。 また、記事の最後には、高次脳機能障害と認知症に関する質問をまとめておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 高次脳機能障害と認知症の違い 項目 高次脳機能障害 認知症 原因 脳外傷、脳卒中、脳腫瘍など突然の脳損傷 アルツハイマー病など進行性の脳疾患、急性の脳損傷による脳血管性の脳疾患 発症の経過 急性(原因となる出来事の直後) 急性のものもあるが、徐々に発症し進行する傾向にある 症状 記憶障害、注意障害、感情コントロールの低下、遂行機能障害など 記憶障害、見当識障害、判断力低下、徘徊・妄想など 症状の進行 基本的には進行しない(リハビリで回復可能性あり) 徐々に進行する(根本的な治療は困難) 意識レベル 通常はっきりしている 初期ははっきりしているが、進行で低下する場合も 支援の方向性 機能の回復と代償を目指すリハビリ中心 進行を遅らせ、生活支援を重視 その他の特徴 症状は損傷部位により多様 記憶障害が中核症状となることが多い 高次脳機能障害と認知症は、記憶力や判断力に影響を及ぼす点では共通しているものの、発症の経緯や進行、支援の方法には大きな違いがあります。 高次脳機能障害は、脳卒中や事故など外的な要因によって突然起こるのに対し、認知症は加齢や神経変性によって徐々に進行するのが特徴です。症状の内容や治療法も異なるため、正しく区別して対応することが重要です。 高次脳機能障害の症状 症状カテゴリ 内容 記憶障害 新しいことが覚えられない、過去の出来事を思い出せない、体で覚えた動作の記憶の障害 注意障害 集中力の低下、注意の持続・切り替え・分配の困難 遂行機能障害 計画立案・実行・自己評価の困難、柔軟な対応の低下 社会的行動障害 感情コントロールの難しさ、意欲低下、対人トラブル、依存傾向 失語症 話す・聞く・読む・書く・名前をいうことの困難 失行症 動作の指示や模倣ができない、物の使い方の混乱、衣服の着脱の困難 失認症 見る・聞く・触る情報の認識障害、自分の病気への無自覚、片側への注意欠如 高次脳機能障害の症状は、損傷を受けた脳の部位や程度によって多岐にわたります。記憶障害、注意力の低下、遂行機能障害、失語、失認、行為障害、感情や行動の変化などが症状として現れます。 高次脳機能障害の症状の現れ方には大きな個人差があり、単一の症状だけでなく複数が同時に見られることもあります。 以下の記事では、高次脳機能障害の症状について詳しく解説しております。 認知症の症状 症状カテゴリ 内容 記憶障害 新しい情報の保持の困難、物の置き場所の忘却、同じ質問の繰り返し 見当識障害 日付や場所の混乱、家族や知人の認識困難 実行機能障害 手順や計画の立案の困難、複数作業の同時実行の困難 言語障害(失語) 適切な言葉が出てこない状態、会話や内容理解の困難 行動・心理症状(BPSD) 妄想や幻覚、徘徊・暴言・暴力、抑うつや不安の出現 認知症の主な症状は、記憶障害、見当識障害、理解力や判断力の低下、実行機能障害などが挙げられます。 発症初期には物忘れが目立つことが多く、進行するにつれて日常生活を送る上でのさまざまな能力が低下していきます。また、抑うつや不安、妄想などの精神症状や行動の変化が伴うのも特徴です。 以下の記事では、認知症について詳しく解説しております。 高次脳機能障害と認知症は併発する可能性がある 観点 内容 高次脳機能障害がある場合 脳の損傷により将来的に認知症の発症リスクが高まる可能性あり(再発・加齢・刺激不足が影響) 認知症が高次脳機能障害を起こすか 認知症が直接の原因となって高次脳機能障害を起こすことは基本的にない 症状の似ている点 記憶障害・判断力の低下・感情の不安定さなどが共通し、初期は区別が難しいこともある 両者の本質的な違い 高次脳機能障害は非進行性(改善が見込める)認知症は進行性(徐々に悪化) 正確な診断のために必要なこと 医師による問診、画像検査、神経心理検査などでの専門的な鑑別 (文献1) 高次脳機能障害と認知症は異なる病気です。しかし、症状が似ているため混同されやすく、併発するケースもあります。とくに高次脳機能障害のある方は、脳の脆弱性により将来的に認知症を発症しやすくなる可能性があります。 一方で、認知症が直接的に高次脳機能障害を引き起こすことは稀です。両者には明確な因果関係はありません。症状が重なる場合もあるため、診断後も経過観察が必要です。 併発が疑われる際は、それぞれに適した治療や支援を組み合わせ、医師による診断と対応が必要になります。 高次脳機能障害になったときの対処法 対処法 内容 リハビリテーション 作業療法・理学療法・言語療法・心理療法などを組み合わせ、機能の回復・改善を目指す訓練 薬物療法(症状のコントロール) 抑うつ、不眠、易怒性などの症状に対し、必要に応じて薬を用いてコントロールする治療法 再生医療(損傷神経の修復) 損傷した脳神経の修復や機能回復を目指す新たな治療法 高次脳機能障害と診断された場合は、早期の対応が大切です。治療の中心はリハビリテーションで、必要に応じて薬物療法も併用されます。 さらに近年では、損傷した神経の修復を目指す再生医療も注目されており、新たな治療の選択肢として期待されています。 リハビリテーション 訓練対象 内容 目的・背景 記憶障害 カードや絵の記憶、聴覚的記憶、日付や時間の確認、メモやアラームの活用 残された脳機能を活用し、記憶力の再学習と代償手段の習得を図る 注意障害 間違い探しや時間内課題、ラジオを聞きながら作業、集中できる環境調整 注意力を高める訓練と、日常生活での適応力の回復を促す 遂行機能障害 料理や買い物の段取り、問題解決、時間管理の練習 計画立案や柔軟な思考を再習得し、日常生活の自立を支援 言語障害 発語・理解・読み書きの練習、ジェスチャーや絵カードの活用 言語能力の再構築と、代替的なコミュニケーション手段の習得 視空間認知障害 図形模写、地図や迷路の把握、着替え・食事などの動作訓練 空間認識力の再学習と、日常動作の確保 心理的サポート カウンセリング、家族への支援と相談 抑うつや意欲低下など二次的問題の予防と精神面の安定 総合的な目標 各機能訓練を個別に組み合わせて実施 脳の可塑性を活かし、生活の質の向上と自立を目指す リハビリテーションは、高次脳機能障害からの回復において重要な役割を果たします。 作業療法士や言語聴覚士の指導のもと、記憶力や注意力、行動面の改善を目指した訓練を行い、日常生活に即した動作を段階的に練習しながら、低下した機能の補完や再習得を図ります。 少しずつリハビリを積み重ね、生活の自立や社会復帰を前向きに目指していくことが大切です。 以下の記事では、高次脳機能障害のリハビリについて詳しく解説しています。 【関連記事】 高次脳機能障害への対応の仕方は?介護疲れを軽減するコツを解説 高次脳機能障害のリハビリ効果とは?方法や内容をあわせて紹介 薬物療法(症状のコントロール) 項目 内容 目的 症状のコントロールと生活の質(QOL)の向上 脳機能の調整 神経伝達物質のバランス調整による注意力・記憶力・感情コントロールの改善 精神症状への対応 抑うつ・不安・興奮・攻撃性の緩和による情緒の安定と行動の安定化 主な使用薬剤 不安や抑うつに用いる抗うつ薬(SSRIなど) 治療上の注意点 副作用への配慮と、症状に応じた個別の薬剤調整 治療の進め方 リハビリテーションや心理的支援との併用による相乗的な治療効果 (文献2) 高次脳機能障害に対して、根本的な治療薬はありませんが、抑うつや不安、興奮といった精神的な症状には薬物療法が行われます。このような症状を和らげることで、情緒が安定し、生活しやすくなることがあります。 薬剤は症状や体調に応じて医師が判断し、リハビリや心理的支援と併用して生活の質の向上を目指すとともに、副作用への配慮や継続的な調整も大切です。 再生医療(損傷神経の修復) 高次脳機能障害に対する再生医療は、損傷した神経細胞の修復や再生を促す治療法で、記憶力・注意力・言語能力の改善が期待されています。 幹細胞には、炎症を抑制し神経ネットワークの再構築を促進する効果が期待されています。現在は一部の医療機関でのみ実施されており、適用には医師との事前相談が必要です。 以下の記事では、再生医療について詳しく解説しています。 認知症になったときの対処法 対処法 内容 薬物療法(進行抑制と症状緩和) 症状の進行を遅らせる、記憶障害や精神症状を一時的に改善する薬を使用 生活環境を整える 物の配置を工夫し、過ごしやすい環境をつくる 再生医療(脳の神経細胞を修復・保護) 神経細胞の修復や保護を目指す治療で、認知機能の維持・改善に期待 認知症と診断された場合も、進行を遅らせたり症状を和らげたりする方法があります。 薬物療法では記憶障害や精神症状の改善を目指し、再生医療も将来の治療法として注目されている治療法です。 薬物療法(進行抑制と症状緩和) 項目 内容 目的 認知機能の低下を遅らせ、行動・心理症状(BPSD)を緩和し、生活の質を保つ 主な薬の種類 アセチルコリンの働きを保つ薬や、神経の過剰な興奮を抑える薬が使われる 代表的な薬剤 ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチン 作用のしくみ 記憶や学習に関わる神経伝達を助けたり、神経細胞の損傷を防いだりする 副作用の例 吐き気、下痢、食欲不振、めまい、頭痛、便秘など 治療の工夫 複数の薬を組み合わせることで、より高い効果が期待できることもある (文献3) 薬物療法で認知症の進行を根本から止めることは困難ですが、一部の薬剤は記憶障害や行動症状を軽減する効果があります。代表的な薬としてアセチルコリンエステラーゼ阻害薬があり、認知症の進行を遅らせ、自立した生活の維持に役立つとされています。 薬物療法では、自己判断で量を変えたり中断したりせず、医師の指示に従って継続的な服用が大切です。 生活環境を整える 項目 内容 目的 不安や混乱の軽減、自立支援、介護負担の軽減 認識のサポート 時計・カレンダーの設置、季節感や思い出の品の活用 残された力の活用 物の定位置化、ラベル表示、自分でできる環境の工夫 行動・心理症状の緩和 混乱や不安の軽減により、徘徊や興奮を予防 地域・社会との関わり 外出支援、地域活動への参加、近隣住民との協力体制 円滑なコミュニケーション ゆっくり話す、笑顔、ジェスチャーや絵の活用、否定しない姿勢 認知症のある方にとって、環境の変化は混乱や不安の原因になりやすいため、過ごしやすい生活環境を整えることが大切です。 たとえば、物にラベルを貼る、大きな時計を設置するなど、ちょっとした工夫が日常生活を支える助けになります。 このような環境づくりは、本人の残された力を引き出すだけでなく、徘徊や興奮などの症状を和らげ、介護する家族の負担も軽減します。家族が協力して環境を整えることは、生活を支え、症状の緩和にもつながる大切な取り組みです。 再生医療(脳の神経細胞を修復・保護) 再生医療は、認知症で失われた神経細胞を補ったり、傷んだ細胞を修復したりすることを目指す治療法です。たとえば、幹細胞を脳に移植し、それが神経細胞に成長することで、脳の機能回復が期待されています。 再生医療は受けられる医療機関が限られており、適用できるかどうかは事前に医師へ相談しましょう。 高次脳機能障害と認知症の違いを理解し適切な治療を受けよう 高次脳機能障害と認知症は、原因や進行の経過は異なるものの、似たような症状が見られることがあります。正しく見分けて適切な診断と治療を受けることは、生活の質を向上させる上で大切です。 当院リペアセルクリニックでは、症状に応じた治療をご提案しており、再生医療も選択肢のひとつとしてご利用になれます。 高次脳機能障害もしくは、認知症の症状でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。 高次脳機能障害と認知症に関するよくある質問 高次脳機能障害と認知症どちらかわかりませんが病院を受診するときは何科に行けばいいですか? 高次脳機能障害や認知症が疑われる場合は、神経内科や脳神経外科の受診が基本です。 精神症状があれば精神科や心療内科、高齢者の場合は老年内科も適しています。診断後はリハビリ科の支援も有効です。迷ったときは、まずかかりつけ医に相談しましょう。 高次脳機能障害や認知症は遺伝しますか? 高次脳機能障害は脳の損傷によるもので、遺伝はしません。一方で、家族性アルツハイマー病など一部の認知症では遺伝的要因が強く関与するものもあります。心配な場合は医師に相談しましょう。 高次脳機能障害と認知症は支援制度や保険は適用できますか? 高次脳機能障害や認知症のある方は、症状や年齢、生活状況に応じてさまざまな支援制度や保険の適用を受けられます。高次脳機能障害では障害者手帳、自立支援医療、障害年金、福祉サービスなどが利用できます。 認知症では介護保険制度や高額療養費制度、精神障害者保健福祉手帳の取得などが対象です。制度の利用には、市区町村の福祉窓口での相談や申請が必要です。 参考資料 (文献1) 宮永和夫.「高次脳機能障害者と認知症-鑑別診断と社会支援-」, pp.1-26 https://www.minamiuonumahp.jp/wp/wp-content/uploads/2018/10/2018.9.22.pdf(最終アクセス:2025年5月19日) (文献2) 溝神文博.「切れ目のないポリファーマシー対策を提供するための薬物療法情報提供書作成ガイド」, pp.1-76, 2025年 https://www.ncgg.go.jp/hospital/kenshu/news/documents/20250331guide.pdf(最終アクセス:2025年5月19日) (文献3) 一宮洋介.「アルツハイマー型認知症の新たな治療戦略」『順天堂東京江東高齢者医療センターメンタルクリニック』, pp.1-52 https://medical-society-production-tkypa.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/uploads/theme/pdf/479/20130309_003.pdf(最終アクセス:2025年5月19日)
2025.05.30 -
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「突然、片側の手足に力が入らなくなった」 「最近呂律が回らず、うまく話せなくなった」 それらの症状は、心原性脳梗塞の可能性があります。心原性脳梗塞は、心臓内で生じた血栓が血流に乗って脳の血管を詰まらせることで発症します。本記事では、心原性脳梗塞について詳しく解説していきます。 心原性脳梗塞の症状 心原性脳梗塞の原因 心原性脳梗塞の治療法 異変を感じた段階で、早期に適切な治療を受けることが大切です。本記事の最後には、心原性脳梗塞に関するよくある質問もまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 心原性脳梗塞の症状 症状 主な症状 特徴・解説 顔面麻痺・手足の痺れ 顔の片側が動かしにくい、手足の力が入らない、感覚が鈍い 片側に出やすく、日常生活への影響が大きい 構音障害 話しにくさ、言葉が出ない、相手の話が理解できない 言語機能の障害によるコミュニケーションの困難 視覚障害 視野が狭くなる、物が二重に見える、片目の視力が低下する 突然の視覚異常による事故や転倒の危険 高次機能障害 記憶力や判断力の低下、注意力の散漫、感情の不安定さ 脳の機能低下による日常動作や思考の変化 心原性脳梗塞は突然発症するケースが多く、本人や周囲が初期症状に気づきにくいこともあります。顔の片側が動かなくなる、手足の痺れ、言葉が出にくい、視界の異常などの症状が現れます。 心原性脳梗塞は、発見が遅れると後遺症のリスクが高まるため、異変を感じた段階で早めに医療機関を受診するのが大切です。 以下の記事では、脳梗塞の症状の対策について詳しく解説しています。 【関連記事】 脳梗塞は症状が軽いうちの治療が大切!原因と対策を解説【医師監修】 脳卒中と脳梗塞の違いは?前兆の症状や後遺症をわかりやすく解説 顔面麻痺・手足の痺れ 項目 内容 原因 心臓の血栓が脳の太い血管を詰まらせ、感覚を司る領域への血流が遮断される 障害部位 大脳半球の感覚野(頭頂葉) 痺れの仕組み 神経細胞が酸素不足になり、感覚の信号が伝わらなくなる 出方の特徴 顔・手・足の片側に痺れが出る(障害された脳の反対側に症状が現れる) 麻痺との関係 感覚野と運動野が近く、痺れと麻痺が同時に出ることが多い 重症化しやすい理由 心原性の血栓は大きく、広い範囲で痺れが強く出やすい よく詰まる血管 中大脳動脈(MCA) 脳の一部に血流障害が起こると、身体の左右どちらかに麻痺や痺れが現れるケースがあります。とくに顔の片側がゆがんだり、腕や脚に力が入らないといった症状は、心原性脳梗塞を疑うべきサインです。 顔面麻痺や手足の痺れは前兆なく突然起こることも多く、日常動作に支障をきたすため、早期の診断と対応が必要です。 構音障害 項目 内容 原因 心臓の血栓が脳の太い血管を詰まらせ、言語や発声に関わる部位が障害される 障害される部位 ブローカ野、運動野(顔面領域)、延髄などの脳幹 症状の内容 発音が不明瞭になる、声が出しづらい、言葉が滑らかに出ない 失語症との違い 構音障害は発音の仕方に問題があるのに対し、失語症は言葉の意味を理解したり表現したりする能力に障害が出る状態 構音障害と失語症が併発する可能性 構音障害と失語症が同時に起こるケースもある よくある日常のサイン ろれつが回らない、電話で何を言っているか聞き返される、言葉がつっかえる 構音障害とは、言葉を発する際にうまく発音できない状態です。舌や唇、口の動きがうまくいかず、音を正確に発音できなくなります。 心原性脳梗塞では、このような話しづらさは発症直後に現れることが多く、本人や周囲も異変に気づきやすいのが特徴です。発音に違和感を覚えたり、ろれつが回っていないと指摘されたりした場合は、ためらわず早めに医療機関を受診しましょう。 視覚障害 項目 内容 原因 心臓から飛んだ血栓が、視覚をつかさどる脳の血管を詰まらせる 障害される部位 後頭葉や視神経を支配する動脈(例:後大脳動脈) 代表的な症状 両目の片側の視野が見えない(同名半盲) 一時的な視力障害 数秒~数分間、片目が真っ暗になる感覚(過性黒内障) 物が二重に見える症状 脳幹や小脳が障害されることで起こる複視 空間感覚の異常 距離感がつかみにくくなり、物との位置関係がわかりにくくなる 心原性脳梗塞で視覚をつかさどる脳の部位が障害されると、視野が欠ける、物が二重に見えるなどの異常が突然現れることがあります。 本人が気づかないケースもありますが、まばたきや目の動きに違和感が出ることがあります。視野が狭まるなどの異常が続く場合は、脳の異常も考え、早めに医療機関を受診しましょう。 脳の高次機能障害 主な症状 特徴 記憶障害 新しい情報が覚えられない、過去の記憶を思い出しにくい状態 注意障害 集中力の低下、注意の持続が難しい、気が散りやすい状態 遂行機能障害 計画や段取りの困難、手順通りに行動できない状態 言語障害(失語症) 言葉が出ない、話す・聞く・読む・書くことの困難 社会的行動障害 感情のコントロールの難しさ、衝動的・不適切な行動 心原性脳梗塞では、心臓から流れた血栓が脳の太い血管を塞ぎ、広い範囲の脳組織がダメージを受けることがあります。とくに中大脳動脈が詰まると、記憶や判断、注意、言語、感情などをつかさどる領域が障害され、高次脳機能障害が現れることがあります。 物忘れや段取りの悪さといった症状は、加齢と勘違いされやすいため、見逃されやすいのが特徴です。認知機能の低下に気づいた際には、脳梗塞の可能性も考え、早急に医療機関を受診しましょう。 心原性脳梗塞の原因 原因 内容 心房細動 心臓が不規則に動き、血栓ができやすくなる不整脈 心臓弁膜症 弁の異常により血液の流れが乱れ、血栓ができやすくなる状態 心筋梗塞 心筋の壊死によって心臓の機能が低下し、血栓が発生しやすくなる状態 拡張型心筋症 心臓の筋肉が弱まり、血液が滞って血栓ができやすくなる病気 卵円孔開存 心房の間に残った穴を通して、血栓が脳に流れ込む状態 感染性心内膜炎 心内膜や弁にできた感染性の塊(疣贅)が血流に乗って脳の血管を詰まらせる状態 心原性脳梗塞は、心臓で生じた血栓が血流に乗って脳へ到達し、血管を詰まらせることで発症します。発症の背景には、心房細動や心筋梗塞、心臓弁膜症など、心臓の機能に関わる病気が関係しているケースが多く見られます。 とくに心臓に不整脈や異常を指摘されたことがある方は、脳梗塞のリスクが高まるため注意が必要です。 以下の記事では、脳梗塞になりやすい人の特徴をわかりやすく解説しています。 心房細動・弁膜症 項目 心房細動が原因となる理由 弁膜症が原因となる理由 主な特徴 心房が細かく震える不整脈 心臓の弁が狭くなる・閉じにくくなる病気 血液の流れへの影響 心房の収縮が弱くなり、血液が滞りやすくなる 弁の異常で血液の流れが乱れ、特定部位で血液がよどみやすくなる 血栓ができやすい理由 滞留した血液が固まり、心房内に血栓ができやすくなる 血流の乱れと心房の拡大が血栓形成を促進 とくに血栓ができやすい部位 左心耳(左心房の袋状の部分) 拡大した心房内や人工弁の周辺 脳梗塞が起きる仕組み 心房内の血栓が全身へ流れ、脳の血管を詰まらせる 弁膜症により生じた血栓が血流に乗って脳へ運ばれ、血管を詰まらせる 弁膜症との関連 弁膜症が原因で心房細動を引き起こすこともある 心房細動を合併することで、さらに脳梗塞リスクが高まる 治療や注意点 抗凝固薬の服用が必要になることが多い 人工弁使用時は生涯にわたる抗凝固療法が必要 心房細動は心臓が不規則に動く不整脈で、心房内に血液がよどみ、血栓ができやすくなります。この血栓が脳に流れると心原性脳梗塞を引き起こします。 高齢者に多い心房細動や弁膜症は自覚しにくく、いずれも脳梗塞のリスクが高いため、心電図や心エコーなどによる定期検査と、循環器内科での継続的な管理が欠かせません。 心筋梗塞・拡張型心筋症 項目 心筋梗塞が原因となる理由 拡張型心筋症が原因となる理由 主な特徴 冠動脈の詰まりによる心筋の壊死 心室の拡大と収縮力の低下 ポンプ機能への影響 心室の動きが悪くなり、血液が滞りやすくなる 心臓の収縮力が弱まり、血液が心室内に滞留しやすくなる 血栓ができやすい部位 壊死した心筋や心室瘤の部分に血液が淀みやすく、血栓が形成されやすい 拡張した心室内で血液がよどみ、血栓ができやすくなる 合併の多い不整脈 心房細動を伴うことがあり、さらに血栓リスクが上昇 心不全や不整脈を伴うことが多く、血栓形成の危険性が高い 脳梗塞が起きる仕組み 心室内の血栓が全身に流れ、脳の血管を詰まらせる 心臓内でできた血栓が脳に流れ込み、血管を詰まらせる 心筋梗塞や拡張型心筋症は、心臓の収縮力が低下し、血液が滞ることで血栓ができやすくなります。この血栓が脳に流れると心原性脳梗塞を引き起こす原因になります。 これらの心疾患は見逃されやすいため、心電図や心エコーなどの検査で異常を早期に見つけ、速やかな対処が大切です。心臓病のある方は、心原性脳梗塞など脳の異常にも注意が必要です。 卵円孔開存 卵円孔開存(PFO)は、胎児期に心房をつないでいた通路が出生後も閉じずに残っている状態です。多くは無症状ですが、まれに静脈の血栓がこの穴を通って脳に流れ、脳梗塞を引き起こすことがあります。 「奇異性脳塞栓症」と呼ばれており、とくに若年者で原因不明の脳梗塞が起きた場合、卵円孔開存(PFO)が関係している可能性があるため、心臓の検査が重要です。再発リスクが高い場合は、経過観察やカテーテルによる閉鎖術が検討されます。 感染性心内膜炎 感染性心内膜炎は、心臓の内膜や弁に細菌が感染する病気です。細菌の塊(疣贅)が血流に乗って脳の血管を詰まらせ、心原性脳梗塞を引き起こすケースがあります。 人工弁や先天性心疾患がある方はリスクが高く、歯科治療や手術がきっかけになる場合もあるのが特徴です。発熱、倦怠感、心雑音が続く場合は早めに医療機関を受診する必要があります。 また、診断には血液検査や心エコー(とくに経食道エコー)が有効で、治療は抗菌薬が中心です。重症例では手術が必要になることもあります。 心原性脳梗塞の治療法 治療法の種類 内容 t-PA静注療法・血管内治療 発症早期に行う血栓溶解薬の投与やカテーテルによる血栓除去 抗凝固薬(ワルファリン、DOACなど) 血液を固まりにくくし、再発を防ぐための内服治療 原因疾患の治療(心房細動の管理など) 心房細動や弁膜症などの心疾患に対する薬物治療や手術 リハビリテーション 麻痺や言語障害の回復を目指す理学療法・作業療法・言語療法 再生医療 神経機能の回復を目指した新しい治療法の研究・臨床応用 心原性脳梗塞の治療は、発症直後の血栓除去と再発予防を目的に行われます。 急性期にはt-PAや血管内治療を行い、以降は抗凝固薬で血栓の再発を防ぎます。脳の障害に応じたリハビリも不可欠です。脳と心臓の両面から総合的に治療を進めていきます。 以下の記事では、脳梗塞は治るのかについて詳しく解説しています。 t-PA静注療法・血管内治療 項目 t-PA静注療法 血管内治療 治療内容 血栓を溶かす薬(t-PA)を静脈から投与して血管の再開通を図る カテーテルを使って血栓を直接回収または吸引し、血流を再開させる 主な作用機序 プラスミノーゲンを活性化し、プラスミンが血栓を分解 機械的に血栓を取り除く(ステントリトリーバー・吸引カテーテルなど) 対象となる血栓 比較的小さめの血栓に有効 太く大きな血栓やt-PAが効きにくい血栓に有効 適応されるタイミング 発症から4.5時間以内が目安 発症から6時間以内(条件次第で24時間程度まで適応されることも) 心原性脳梗塞との相性 心臓由来の血栓が溶解できるケースでは有効 心臓由来の大きな血栓を直接除去できるため、心原性脳梗塞に適応しやすい 使用される場面 比較的早期で症状が中等度までの患者に多く使用 血栓が大きい、症状が重い、t-PA単独で効果が不十分な場合に使用 他の治療との併用の可能性 血管内治療と併用するケースあり 必要に応じて局所的にt-PAを併用も可能 治療の目的 脳への血流を早期に再開し、後遺症を軽減 血栓を確実に取り除き、血流を回復し重症化を防ぐ t-PA静注療法は、血栓を溶かす薬剤(アルテプラーゼ)を点滴で投与し、閉塞した脳の血管を再開通させる治療です。発症から4.5時間以内の投与が目安であり、早期の対応が必要となります。(文献1) 血栓が大きい場合は、カテーテルで直接取り除く血管内治療が有効です。これらの治療は脳のダメージを抑えるために行われ、時間と症状の判断が回復を左右します。少しでも異変を感じた場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。 抗凝固薬(ワルファリン、DOACなど) 種類 薬剤 特徴 ワルファリン ワルファリン ビタミンKの働きを抑えて血液を固まりにくくする薬剤。効果の安定には定期的な血液検査(PT-INR)が必要。食事や他の薬との相互作用に注意が必要 直接経口抗凝固薬(DOAC) ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン 凝固因子を直接阻害する新しいタイプの薬剤。定期的な血液検査が原則不要。食事や薬の影響を受けにくく、服用の手軽さが特徴 心原性脳梗塞は、心臓内でできた血栓が血流に乗って脳の血管を塞ぐことで発症します。とくに心房細動などの不整脈があると、心房内に血液が滞り、血栓ができやすくなるのが特徴です。 抗凝固薬は血液の固まりにくさを保つことで、こうした血栓の形成を防ぎ、脳梗塞の発症リスクを約3分の1に減らす効果があると報告されています。(文献2) 抗凝固薬には、ワルファリンと、近年使用が増えているDOAC(直接経口抗凝固薬)があります。DOACは定期的な血液検査が不要で、食事や他の薬の影響を受けにくく、一定の用量で効果が安定しているのが特徴です。このため、服薬の負担が少なく、継続しやすい薬とされています。 ただし、抗凝固薬は中断すると効果がなくなり、再発リスクが高まります。症状が落ち着いても自己判断で中止せず、医師の指示に従って服用を続けることが不可欠です。出血のリスクもあるため、異変を感じたら早急に医師へ相談しましょう。 原因疾患の治療(心房細動の管理など) 項目 内容 血栓形成の予防 心房細動を適切に管理すると心房内の血流が改善され、血栓の形成を防ぐ効果がある 抗凝固療法の適用 リスク評価(例:CHADS₂スコア)に基づき、ワルファリンやDOACを使用して血栓を予防する 心房細動の根治 カテーテルアブレーションにより、異常な電気信号の発生源を焼灼し、心房細動そのものを治療する 抗不整脈薬の使用 心房細動の発作を抑える薬剤により、発作の頻度や持続を減らす 脳梗塞の再発予防 血栓の原因となる心房細動を抑えることで、心原性脳梗塞の再発リスクを大きく減らせる 心原性脳梗塞の予防や再発防止には、血栓をつくらせないための抗凝固療法だけでなく、根本原因となる心疾患の管理が不可欠です。 心房細動がある場合は、心拍を安定させる薬による治療が基本となり、症状が強い場合は、カテーテルアブレーションといった手術も検討されます。 心筋梗塞や弁膜症が原因であるときは、それぞれに合った専門的な治療が必要です。心臓と脳は深く関わっているため、心臓の病気をしっかり管理することが、脳梗塞の再発を防ぐポイントになります。 リハビリテーション リハビリの種類 対応する症状・目的 内容 理学療法(PT) 手足の麻痺や筋力低下などの運動機能障害 筋力や関節の動きを改善し、寝返り・立ち上がり・歩行など基本動作の回復を目指す訓練 作業療法(OT) 着替えや入浴などの日常生活動作や、記憶・注意力といった高次脳機能の障害 食事や更衣などの日常動作の訓練や、認知リハビリテーションを通じた生活機能の向上 言語療法(ST) 話す・理解する・飲み込むなどの言語障害・嚥下障害 発音・言語理解・読み書きなどの回復訓練により、コミュニケーション能力の改善を図る 心理・社会的支援 病気による不安・うつ・家族の精神的負担 心理士・ソーシャルワーカーによる心理サポートや、社会資源の活用支援 早期リハビリ介入 発症直後からのリハビリ開始による後遺症の軽減と回復促進 急性期からリハビリを始めることで、機能回復と社会復帰の可能性を高める包括的支援 心原性脳梗塞によって生じた後遺症を改善するには、発症後できるだけ早期にリハビリを開始するのが大切です。 手足の麻痺や言語障害、高次機能障害など、それぞれの症状に応じて、理学療法(PT)、作業療法(OT)、言語聴覚療法(ST)などを組み合わせて実施します。 リハビリは、脳の回復力が高い早期に始めることで効果が期待できます。再発を防ぎ、日常生活への復帰を目指すことが主な目的です。 再生医療 心原性脳梗塞による神経のダメージに対して、再生医療は有効な治療法のひとつとされています。 自分の身体から採取した幹細胞を使い、損傷を受けた脳の神経細胞の回復を促すことが目的です。治療を希望する場合は、再生医療を扱う医療機関で医師と十分に相談し、適切な判断のもとで進めていくことが大切です。 以下の記事ではリペアセルクリニックで取り扱っている再生医療についてわかりやすく解説しております。 リペアセルクリニックでは、心原性脳梗塞に対して手術を必要としない再生医療を提案しています。 心原性脳梗塞の症状が改善せずお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。 心原性脳梗塞の症状を理解し適切な治療で回復を目指そう 心原性脳梗塞は、突然の麻痺や言語障害など、日常生活に大きな支障をもたらす病気です。症状を正しく理解し、早期に治療を受けることで後遺症の軽減や再発予防が期待できます。 手足の突然の麻痺や、ろれつが回らないといった症状が出た場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。 リペアセルクリニックでは、心原性脳梗塞による症状や後遺症に対し、従来のリハビリや治療に加えて、幹細胞を用いた再生医療もひとつの選択肢としてご案内しています。患者様の状態やご希望に応じて、医師と相談の上で治療方法を検討していただけます。 心原性脳梗塞の症状にお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。 心原性脳梗塞の症状に関するよくある質問 心原性脳梗塞の予兆としてどのようなものがありますか? 心原性脳梗塞は突然起こることが多いですが、前ぶれとして一過性脳虚血発作(TIA)が現れることがあります。顔や手足の痺れ、言葉のもつれ、一時的な視力障害などが特徴です。 見逃さないためには、FASTチェックが有効です。 F=顔のゆがみ A=両腕が上がるか S=言葉の異常 T=時間が勝負 1つでも当てはまれば、すぐに救急車を呼びましょう。 心原性脳梗塞は再発しますか? 心原性脳梗塞は再発のリスクが高く、心房細動の持続や自己判断による抗凝固薬の中断、生活習慣病の悪化が影響します。 再発を防ぐには、正しい薬の継続服用、定期検査、食事や運動など生活習慣の見直しが大切です。 以下の記事では脳梗塞の予防や再発防止について詳しく解説しています。 心原性脳梗塞の症状に対して家族ができるサポートはありますか? 心原性脳梗塞では、家族のサポートが回復と再発予防において大切です。 異変への早期対応、治療や服薬の支援、リハビリや生活習慣の見直しを共に行うことが求められます。また、不安や抑うつへの心のケアも大切です。 参考資料 (文献1) Patel T. (2009). Should the Window for Intravenous Administration of Tissue Plasminogen Activator in the Treatment of Acute Ischemic Stroke be Extended to 4.5 Hours? The “PRO” Side. Can J Hosp Pharm, 62(3), pp.248–249. https://doi.org/10.4212/cjhp.v62i3.798(最終アクセス:2025年6月6日) (文献2) 平野照之.「日本血栓止血学会サイト お役立ちリンク集」『血戦止血誌』, pp.1-11, 2017年 https://www.jsth.org/publications/pdf/oyakudachi/6-3.pdf?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月18日)
2025.05.30 -
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「最近、物忘れが増えた気がする」 「身体のしびれ、力が入らないことが増えた」 このような悩みや違和感を覚えていませんか。これらは脳の異変、特にラクナ脳梗塞の可能性があります。自覚症状が出にくいため、異変に気づかないまま放置すると後遺症につながることがあります。 症状に気づかないまま重症化しないためにも、本記事ではラクナ脳梗塞について詳しく解説します。 ラクナ脳梗塞の症状 ラクナ脳梗塞の原因 ラクナ脳梗塞の治療法 ラクナ脳梗塞の再発予防策 記事の最後には、ラクナ脳梗塞に関するよくある質問をまとめておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 ラクナ脳梗塞とは 項目 ラクナ脳梗塞 他の脳梗塞(アテローム血栓性・心原性脳塞栓症など) 詰まる血管の太さ 細い血管(穿通枝) 太い血管(主幹動脈など) 詰まる場所 脳の深部(視床、内包、脳幹など) 大脳皮質や皮質下、広い範囲 梗塞の大きさ 小さい(直径15mm以下) 比較的大きい 症状の出方 軽度または限定的な症状、無症状もある 急激で広範囲な症状が出やすい 見つかり方 健康診断や画像検査で偶然見つかることもある 明らかな発症症状により医療機関を受診し発見されやすい (文献1) ラクナ脳梗塞は、脳の深い部分にある細い血管が詰まることで生じる、小さなタイプの脳梗塞です。とくに視床や内包、脳幹といった脳の中心部で起こりやすく、詰まる血管は穿通枝と呼ばれる細い血管で、その結果生じる梗塞巣は直径15mm以下の小さなものです。 高血圧や糖尿病などが長く続くと、脳の細い血管がもろくなり、血流が止まってラクナ脳梗塞が起こることがあります。これは脳の深い部分に小さな梗塞ができるタイプで、初期には症状が軽く、気づかれにくいことが多いのが特徴です。 一般的な脳梗塞(アテローム血栓性や心原性脳塞栓症など)は太い血管が詰まり、大脳の広い範囲に強い症状が現れますが、ラクナ脳梗塞では影響が小さく、言葉や動きなど特定の機能にだけ症状が出るケースもあります。 中にはまったく症状がなく、検査で偶然見つかることもあります。ただし、たとえ小さな梗塞でも、何度も繰り返すと認知機能の低下や歩きにくさなど、後遺症につながる可能性があるため、少しでも気になる症状があれば、早めに医師への相談が大切です。 以下の記事では、脳梗塞の前兆やサインについて詳しく解説しております。 【関連記事】 突然の肩こりは脳梗塞の前兆?受診すべき症状や予防法を医師が解説 こめかみの痛みは脳梗塞のサイン?頭痛の原因や受診すべき目安を医師が解説 ラクナ脳梗塞の症状 症状・状態 起こる場面や原因 考えられる影響 片側の運動麻痺 手足や顔の一部に力が入らなくなる 日常動作の不自由・麻痺の固定 片側の感覚障害 しびれ、触覚の鈍さ、ピリピリ感覚が起こる 感覚の鈍麻・身体の違和感 構音障害 舌や口の動きのぎこちなさによる言葉のもつれ 会話のしづらさ・伝達能力の低下 手足の不器用さ 動きの協調性の低下 細かい作業の困難・転倒リスクの増加 嚥下障害 のどや舌の動きの低下 誤嚥・食事中のむせ・栄養摂取の難しさ バランス障害 体の安定感の低下 歩行困難・転倒リスクの増大 無症候性脳梗塞 自覚症状なし。検査で偶然見つかる小さな梗塞 再発の前兆・脳機能への慢性ダメージ 再発の蓄積 高血圧・糖尿病など動脈硬化が進んだ状態 小さな梗塞の多発・症状の進行 認知機能障害 多発性ラクナ梗塞の影響 物忘れ・判断力の低下・血管性認知症の進行 意欲や感情の変化 前頭葉付近の血流障害 意欲の低下・感情の不安定化 脳卒中リスク増加 全身の動脈硬化が背景にある状態 広範囲の脳梗塞・脳出血など重篤な脳卒中の可能性 ラクナ脳梗塞の症状は、梗塞が起きた場所や範囲によって異なります。典型的には、手足の麻痺やしびれ、感覚の鈍さ、歩行のふらつき、ろれつが回らないといった症状が現れます。 症状は軽度で一時的な場合も多く、加齢による変化と誤解してしまうことも少なくありません。また、頭痛や吐き気、物忘れの増加、力が入りにくいといった症状として現れることもあります。これまでになかった身体の変化に気がついた場合は、脳梗塞の可能性を疑い、早めに医療機関を受診しましょう。 ラクナ脳梗塞の原因 原因の種類 身体への影響 ラクナ脳梗塞との関係 高血圧 血管に強い圧力がかかり、壁が傷つき硬くなる 細い血管の動脈硬化を引き起こす主要な原因 加齢 血管が自然に硬くなり、弾力を失う 詰まりやすくなり、血流障害を起こしやすくなる 糖尿病 高血糖により血管内壁が傷つきやすくなる 細い血管にも影響し、詰まりやすくなるリスク増加 喫煙 血管が収縮し、血流が悪くなる 動脈硬化を促進し、脳血管に悪影響を及ぼす 脂質異常症 血液中の脂質が増え、血管壁にプラークが沈着 血管が狭くなり、詰まりやすくなる原因となる (文献2)(文献3) ラクナ脳梗塞は、脳の細い血管が徐々に狭くなり、最終的に詰まってしまうことで発症するのが特徴です。 主に原因として、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病によって血管が傷み、発症します。また、喫煙や加齢による血管の変性もラクナ脳梗塞を引き起こすリスクがあります。 高血圧 仕組み・状態 身体への影響 推奨される対策 血管壁への強い圧力 細い血管の内側が傷つき、硬く狭くなる 血圧の安定管理・血管負担の軽減 血管の変性(リポヒアリノーシス、フィブリノイド壊死) 血管の弾力低下・閉塞の進行 食塩制限・適度な運動・医師の指導に基づく治療 自動調節機能の低下 血流の調整ができず、細い血管の詰まりが起こりやすくなる 血圧変動の抑制・日々の血圧チェック 無症候性ラクナ梗塞の蓄積 認知機能の低下・血管性認知症への進行 定期的な脳の検査・生活習慣病の早期対策 高血圧の放置 繰り返す脳梗塞・将来的な重い後遺症 医療機関の受診・薬の服用継続 (文献2)(文献3) 高血圧は、ラクナ脳梗塞の原因のひとつであり、血圧が常に高い状態が続くと、脳の細い血管に大きな負担がかかり、壁が傷つきやすくなります。この状態が長期化すると、血管が硬くもろくなり、やがて詰まりを起こす可能性があります。 自覚症状のないまま進行するサイレントキラーとも呼ばれる高血圧は、脳の深部の血流障害を引き起こす大きな要因です。日々の血圧管理は、ラクナ脳梗塞の予防に欠かせません。早朝や夜間の変動にも気を配り、医師の指導に従って治療を続けることが大切です。 加齢による血管の変化 原因の種類 説明 対策 血管の硬化・肥厚 加齢により動脈が硬く厚くなる自然な変化。血管の弾力低下や内腔の狭窄を引き起こす 食事の改善、適度な運動、定期的な血管年齢チェック 穿通枝の狭窄・もろさ 脳の深部にある細い血管が加齢で弱くなり、血流低下や閉塞を招く 血圧・血糖・脂質の管理、禁煙、ストレス軽減 高血圧・糖尿病の影響増大 加齢で弱った血管が生活習慣病の影響を受けやすくなる 早期の生活習慣病治療、定期検診 微小血管障害 加齢により修復力が低下し、微細な血管損傷が血栓や梗塞の原因になる 再発予防の薬物治療、日常的な血圧管理 心血管疾患リスクの増加 加齢とともに心筋梗塞や脳卒中のリスクが急増 高カカオチョコ・ナッツ・魚などを摂取(ポリフェノール・オメガ3) 食生活の偏り 高齢者で栄養が偏りやすく、血管の老化が進行 地中海食を導入する (文献1)(文献4) 加齢により血管は徐々に弾力を失い、硬く狭くなっていきます。とくに細い血管は影響を受けやすく、ラクナ脳梗塞は小さな血管が詰まることで発症します。 加齢は避けられませんが、運動・食事・禁煙など、生活習慣の見直しによって血管の劣化を遅らせることができます。年齢に応じた健康管理が、脳の血流を守るために大切です。 糖尿病 項目 内容 対策 高血糖による血管内皮の損傷 血糖値の上昇で血管の内皮細胞が傷つきやすくなり、動脈硬化が進行 血糖管理の徹底 糖化反応による血管の劣化 血中の余分な糖がタンパク質と結合し、血管が硬く厚くなる 糖質制限と食事改善 細小血管への特異的な障害(糖尿病性血管症) とくに脳の穿通枝のような細い血管で顕著な構造異常が起こる 禁煙・食事改善と薬物治療 血流の悪化・血栓形成 内皮の損傷により血小板が集まりやすくなり、血管内が狭くなる 抗血栓対策と禁煙 ラクナ梗塞の発症 血管が閉塞し、脳深部の小さな領域に血液が届かなくなる 生活習慣病の包括的管理 (文献5) 糖尿病は血糖値が高い状態が続く病気で、血管を徐々に傷つけます。とくに脳の細い血管はダメージを受けやすく、ラクナ脳梗塞のリスクを高める原因になります。 糖尿病とラクナ脳梗塞の合併症を引き起こさないためにも血糖だけでなく、血圧やコレステロールの管理も大切です。食事や運動、薬による血糖コントロールを続けることが、脳血管を守るためにも欠かせません。 以下の記事では、脳梗塞によって引き起こされる合併症について詳しく解説しています。 喫煙 喫煙による影響 血管への作用 ラクナ脳梗塞への関与 対策・予防策 血管内皮細胞の損傷 血管の炎症・硬化 動脈硬化を進行させ、穿通枝の狭窄を引き起こす 禁煙の実施、受動喫煙も回避 動脈硬化の促進 LDLコレステロールが血管に蓄積 脳の細い血管(穿通枝)の詰まりを助長 食生活改善(野菜・果物・魚を積極的に) 血栓形成の促進 血小板が活性化し血が固まりやすくなる 血管内で血栓が形成されやすくなる 禁煙+水分摂取・適度な運動 血管収縮作用 血圧上昇・血流悪化 一過性の血流低下がラクナ梗塞を誘発 ストレス管理・禁煙補助薬の活用 受動喫煙の影響 同様の血管損傷を引き起こす 非喫煙者にもリスクが波及 家庭・職場での禁煙環境整備 喫煙は、血管の健康に悪影響を与える生活習慣のひとつです。タバコに含まれる有害物質は、血管の内皮細胞を傷つけ、動脈硬化を進行させます。 喫煙は動脈硬化や一時的な血圧上昇を引き起こし、脳の細い血管が詰まりやすくなることでラクナ脳梗塞のリスクを高めます。発症予防や再発防止のためにも、禁煙の徹底が大切です。 脂質異常症(高脂血症) 項目 内容 解説 対策 血管内への脂質蓄積 LDLが内皮細胞に侵入 傷ついた血管ほど脂質がたまりやすい 動脈硬化の原因となるため、LDLを下げる生活習慣が大切 アテローム硬化の進行 血管内で脂質が粥状に蓄積し、血管が狭く硬くなる 内腔が狭まり、血流が悪化 HDLを増やす・抗炎症的な食生活 脳の細い血管(穿通枝)への影響 穿通枝の内腔狭小化、微小プラークの形成 動脈硬化が脳の深部血管でも起きやすくなり、血流がさらに悪化 血圧・血糖・脂質の総合的管理 血流の悪化と閉塞 プラーク破綻→血栓形成→血管閉塞 ラクナ脳梗塞の直接的原因 脂質異常の是正・抗血栓療法(医師指導のもと) 他リスク因子との相乗作用 高血圧・糖尿病・喫煙と重なるとリスクが跳ね上がる 血管へのダメージが加速 すべての生活習慣病リスクに目を向けた多角的対策 予防・対策 脂質管理の徹底が動脈硬化の進行を防ぐ ラクナ脳梗塞の予防・再発予防への取り組みが大切 食事(魚・ナッツ・野菜中心)、運動、医師の指導による薬物療法 脂質異常症とは、悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪が多すぎる、または善玉(HDL)コレステロールが少ない状態です。 この状態が続くと血管内にプラークが蓄積し、動脈が狭くなって血流が悪化します。ラクナ脳梗塞は脳の深部で細い血管が詰まることで起こるため、脂質異常症はその大きな原因のひとつとされています。 脂質値の管理は、食事の改善や適度な運動、必要に応じた薬物療法を継続しつつ、定期的な血液検査で異常を把握し、血管を守る意識が大切です。 ラクナ脳梗塞の治療法 治療法 内容・目的 補足・特徴 急性期治療 血栓溶解薬(t-PA)や脳浮腫抑制薬を使用 発症から数時間以内の対応が大切。早期治療で後遺症を軽減できる可能性あり 栄養療法 食事指導により高血圧・糖尿病・脂質異常症などを管理 管理栄養士の助言を受け、減塩・低脂質・低糖質の食事が基本 リハビリテーション 理学療法・作業療法・言語療法により機能回復と生活自立を支援 後遺症の程度に応じて段階的に実施。長期継続で改善が期待される 心理的サポート カウンセリング・精神的ケアで患者や家族の不安・抑うつを軽減 発症後の喪失感や意欲低下への対処。医療ソーシャルワーカーの支援も活用可 再生医療 幹細胞などを用いた脳組織の修復を目指す 保険適用外であり、対応できる医療機関が限られている ラクナ脳梗塞の治療は、発症直後の急性期と、その後の回復・再発予防に分けて行われます。 いずれの治療法においても大切なのは、自己判断を避け、医師の指導のもとで早期に適切な対応を行うことです。早期の対応が、後遺症の軽減や再発予防につながります。 急性期治療(発症直後) 治療法 目的 内容・特徴 血栓溶解療法(t-PA療法) 詰まった血管の再開通 発症から4.5時間以内にt-PAを点滴投与し、血栓を溶かす。出血リスクあり 抗血栓療法 血栓の拡大や新たな血栓の予防 抗血小板薬(例:アスピリン)を使用する。ラクナ脳梗塞では主にこの治療が中心 抗凝固療法 血液が固まるのを防ぎ、新たな血栓を抑制 ヘパリンやアルガトロバンを点滴で使用する。出血のリスクを考慮して選択 脳保護療法 脳神経細胞の損傷の進行を防ぐ エダラボンの点滴で酸化ストレスを抑制し、脳のダメージを軽減 脳浮腫軽減療法 脳の腫れ(浮腫)を軽減し、圧迫を防ぐ グリセオールやマニトールを点滴で投与し、余分な水分を排出して脳圧を下げる 発症直後の急性期には、脳へのダメージを最小限に抑えるため、できるだけ早く治療を始めることが大切です。 ラクナ脳梗塞は小さな血管の詰まりによって起こり、放置すると症状が進行する恐れがあります。治療で使用される主な薬剤は、血栓を溶かして血流を回復させる薬(t-PA療法)や、血栓の拡大や新たな血栓を防ぐ薬(抗血小板薬・抗凝固薬)などです。 また、脳の腫れや細胞の損傷を防ぐための点滴治療(脳保護療法・脳浮腫軽減療法)も行われるケースもあります。 早期発見と治療は後遺症を軽くする鍵です。異変を感じたら、すぐに医療機関を受診しましょう。 以下の記事では、脳梗塞の治療方法について詳しく解説しています。 栄養療法 項目 内容 目的・効果 高血圧対策 減塩(1日6g未満を目安) 血圧の安定化・血管への負担軽減 糖尿病対策 糖質の摂取量と時間を調整 血糖値の安定化・血管障害の抑制 脂質異常症対策 飽和脂肪酸を控え、魚やナッツでオメガ3を摂取 LDLコレステロールの低下・動脈硬化予防 動脈硬化予防 抗酸化食品(野菜・果物・魚)を積極的に摂取 血管の酸化防止・血流維持 体重管理 カロリー制限とバランス食の実践 肥満・高血圧・糖尿病のリスク低下 総合的な栄養管理 医師・栄養士の指導で継続的に実施 再発予防と生活の質(QOL)の向上 ラクナ脳梗塞の回復や再発予防には、毎日の食事の見直しが大切です。減塩は高血圧予防に効果的であり、糖質や脂質の管理も血糖やコレステロールの安定に役立ちます。 加工食品や外食を控え、栄養バランスの取れた食事を心がけることが、脳を守る基本的な対策となります。 リハビリテーション 項目 内容 効果 注意点 機能回復の促進 麻痺や言語障害などの改善を目指す訓練(運動・発声・作業など) 神経の可塑性を引き出し、機能の再獲得を促進 焦らず継続することが重要。効果が見えるまでに時間がかかる場合あり 日常生活動作(ADL)の向上 食事・着替え・歩行などを自立して行えるように支援 生活の自立度が上がり、介護負担の軽減にもつながる 過剰な無理は禁物。身体機能に合わせて段階的に進める必要がある 合併症の予防 廃用症候群、誤嚥性肺炎、血栓などの予防 体を動かすことで二次的な健康リスクを回避 早期開始が理想だが、体調の安定を見ながら進める必要がある 生活の質(QOL)の向上 社会参加・趣味活動の再開を目指す 心の回復と意欲向上に効果。再発予防にも寄与 患者本人の希望を尊重し、無理のない範囲での目標設定が大切 ラクナ脳梗塞によって運動機能や認知機能に障害が出た場合、医師の指導のもと行うリハビリが症状の回復において大切です。作業療法や理学療法を通じて、日常生活に必要な動作を取り戻すことを目指していきます。 とくに歩行や手の動作に影響がある場合は、早期からの訓練が不可欠です。また、リハビリは、患者の状態や生活習慣に合わせて個別に計画し、医師の指示のもと無理のないペースで進めることが大切です。 関連記事:ラクナ梗塞の後遺症とは?リハビリ方法や再発リスク・再生医療について 心理的サポート 目的 内容 有効な理由 病気への不安や衝撃の緩和 発症のショックや再発への恐怖を軽減 医師との対話で感情を整理し、冷静に治療に向き合えるようになる 後遺症や身体の変化への適応 目に見えにくい症状への戸惑いや落ち込みに対処 残された機能を活かす工夫や前向きな姿勢を引き出す支援ができる 精神症状への対応(うつ・不安) 血管性うつ病など、精神的合併症に対応 精神面の安定によりリハビリ意欲や生活の質が向上する 再発への不安の管理 高い再発率に対する過度な不安を軽減 予防行動への前向きな継続を支える心理的土台をつくる (文献6) ラクナ脳梗塞は身体だけでなく心にも影響を及ぼし、再発への不安や思うように動けないことから、うつや意欲低下が生じやすくなります。 そのため、治療と並行して心理的サポートが不可欠です。心理士のカウンセリングや家族との対話、同じ経験を持つ人との交流は、前向きなリハビリ継続に役立ちます。心のケアは回復を支える大切な要素です。 以下の記事では、脳梗塞の後遺症において患者様の家族が注意したいポイントを詳しく解説しています。 再生医療 項目 内容 期待される効果 神経細胞の修復 患者自身の幹細胞を使い、損傷した神経細胞の再生を促す 運動機能・感覚機能の改善 神経保護・抗炎症作用 幹細胞が神経栄養因子を分泌し、神経の保護や炎症の抑制に働く 脳内環境の安定、再発リスクの低下 血管新生と血流改善 損傷した脳内の微細血管の再生を促進 脳への酸素・栄養供給の改善 再生医療は、ラクナ脳梗塞に対する新たな治療選択肢のひとつです。自己由来の幹細胞を用いて、損傷した神経組織の再生を促し、他の治療法と併用することで後遺症の改善が期待されます。 ただし、再生医療を実施している医療機関は限られており、保険の適用外である点に注意が必要です。治療を検討する際は、事前に医療機関の情報を確認し、医師への相談が大切です。 以下の記事では、リペアセルクリニックで実施している再生医療についてわかりやすく解説しております。 ラクナ脳梗塞の再発予防策 予防策 内容 補足・ポイント 生活習慣病の管理 高血圧・糖尿病・脂質異常症の治療を継続 医師の指示に基づく食事・運動・薬物療法が基本 糖尿病・脂質異常症の管理 血糖・コレステロール・中性脂肪の数値をコントロール 血管保護に直結し、再発リスクを軽減 適度な運動習慣 ウォーキングなど、有酸素運動を継続 無理のない範囲で実施 抗血小板薬などの内服薬の継続 抗血小板薬や抗凝固薬の服用を継続 自己判断で中止せず、処方通りに継続 ストレス管理 リラックス法や趣味の時間を意識的に取り入れる ストレスによる血圧上昇を防ぎ、心身の安定を図る 禁煙の徹底 タバコは血管を傷つけ、動脈硬化を悪化させる 禁煙は最も効果的な再発予防策のひとつ ラクナ脳梗塞は、一度発症すると再発のリスクが高くなる傾向があります。再発を防ぐには、原因となる生活習慣病の管理や、毎日の過ごし方の見直しが不可欠です。 再発は日常生活に支障をきたすだけでなく、発見が遅れると重症化するリスクもあります。 生活習慣病の徹底的な管理 管理項目 具体的な対策内容 期待される効果 血圧管理 家庭で血圧を定期測定し、医師の指示に従って降圧薬を服用する 血管への負担を減らし、動脈硬化や血管破綻のリスクを軽減 血糖管理 血糖値を定期的に測定し、食事・運動療法や必要な薬で安定した血糖コントロールを行う 血管内皮の損傷を防ぎ、細い血管の血流維持に役立つ 脂質管理 定期的な血液検査と食事管理、必要に応じて薬を使用して脂質バランスを整える 動脈硬化の進行を抑え、血管閉塞や血栓形成のリスクを軽減 禁煙 受動喫煙も含めてタバコを完全にやめる 血管の炎症や収縮を防ぎ、血液の流れを保つことで再発を予防 適正体重の維持 バランスの取れた食事と継続的な運動で肥満を防ぎ、標準体重を維持する 高血圧・糖尿病・脂質異常のリスクを下げ、血管の健康を守る 高血圧・糖尿病・脂質異常症といった生活習慣病は、ラクナ脳梗塞の主な原因となるため、再発を防ぐにはこれらの改善が欠かせません。 とくに血圧は家庭で簡単に測定できるため、日々の変化を記録しながら管理するのが大切です。あわせて、定期的な通院と検査を続けることで、早期発見・早期対応につながります。 以下の記事では、脳梗塞の予防・再発防止のために食べてはいけないものについて詳しく解説しております。 糖尿病・脂質異常症の管理 管理法 糖尿病に対する対策 脂質異常症に対する対策 食事療法 炭水化物の摂取量を調整し、野菜や海藻、きのこなど食物繊維を積極的に摂取する 飽和脂肪酸やコレステロールの摂取を控え、不飽和脂肪酸や食物繊維を多く取り入れる 運動療法 有酸素運動を週3~5回・30分程度行い、血糖値のコントロールを図る 同様の運動で中性脂肪の減少やHDLコレステロールの増加を目指す 薬物療法 血糖降下薬(例:メトホルミンなど)を医師の指示に従って使用する スタチン系やフィブラート系薬剤でLDLコレステロールや中性脂肪を管理する 糖尿病・脂質異常症は血管にダメージを与える病気であり、放置すれば再発の恐れがあります。血糖やコレステロールの数値は、食事や運動、薬の服用によってある程度コントロールできます。 とくに糖尿病では、インスリン抵抗性の改善や血糖値の安定化が不可欠です。脂質異常症に対しては、動物性脂肪の摂取を控え、青魚や野菜を中心とした食事が効果的です。 糖尿病・脂質異常症の管理は自己流ではなく、医師の指導のもと行い、生活習慣を整えることで、再発防止につながります。 適度な運動習慣の継続 効果の分類 具体的な内容 生活習慣病の改善 血圧を安定させ高血圧を予防、血糖値を改善し糖尿病リスクを低下、脂質バランスを整え動脈硬化を抑制 肥満の予防・改善 消費エネルギーを増やし、適正体重を維持する 血管機能の維持・改善 血管の柔軟性を保ち、血液循環を良好に保つ 血栓の予防 血液を固まりにくくし、血管の詰まりを予防 (文献7)(文献8) ラクナ脳梗塞の再発予防には、継続的な運動が効果的です。軽いウォーキングや体操など、無理のない範囲で体を動かすことで、血圧や血糖値の改善、脳血流の促進、さらにはストレスの軽減にもつながります。 運動は気分の安定にも寄与し、心身の健康を支える習慣です。公益財団法人長寿科学振興財団の指針では、歩行と同等以上の身体活動を1日60分以上(週あたり23メッツ・時以上)行うことが推奨されています。(文献7) 対象 目安となる活動量 運動の強度・内容 全年齢共通 歩行と同等以上の身体活動を毎日60分以上(週に23メッツ・時以上) 日常的な歩行、家事、軽作業などを含む 65歳以上 内容を問わず身体活動を毎日40分以上(週に10メッツ・時以上) 散歩、体操、趣味の活動なども可 年齢問わず 息が弾み、汗ばむ程度の運動を週60分以上(4メッツ・時以上) 速歩、軽いジョギング、エクササイズなど ※メッツ(METs):身体活動の強さを表す単位(安静時を1とした相対値)(文献7) 65歳以上では、活動の種類にかかわらず1日40分以上(週あたり10メッツ・時以上)が目安です。また、息が弾み汗ばむ程度の運動(速歩、軽いジョギングなど)は週に60分以上(4メッツ・時以上)を目指しましょう。運動は無理のない範囲で始め、医師の指導のもと進めていくことが大切です。 抗血小板薬などの内服継続 項目 内容 補足情報・代表的な薬剤 再発予防効果の実証 抗血小板薬は、ラクナ脳梗塞の再発を有意に抑制することが研究で示されている アスピリン、クロピドグレル、シロスタゾールなど 併用療法の効果 アスピリン+クロピドグレルなどの併用療法(DAPT)は、単剤より高い再発予防効果が期待される 適応は医師が判断(出血リスクとのバランスを考慮) 生活習慣病管理との相乗効果 高血圧・糖尿病・脂質異常症といったリスク因子の管理と併用で、再発予防効果がさらに向上 抗血小板薬+生活習慣改善の組み合わせが推奨される (文献9)(文献10)(文献11)(文献12) ラクナ脳梗塞の再発防止策として、抗血小板薬の継続服用は有力です。アスピリンやクロピドグレル、シロスタゾールなどは血栓の再形成を防ぎ、再発リスクを下げる効果が証明されています。(文献11) 場合によっては、医師の判断で2剤併用(DAPT)が行われるケースもありますが、副作用や出血のリスクもあるため、自己判断で中断せず、医師の指示に従うことが大切です。 高血圧・糖尿病・脂質異常症の管理をあわせて行うことで、薬の効果はさらに高まります。飲み忘れ防止にはカレンダーやアプリの活用が効果的です。薬の継続は治療の一環であり、副作用が気になる場合は早めに医師や薬剤師に相談しましょう。服薬が、再発予防と健康維持につながります。 ストレス管理 ストレスを和らげる方法 内容 適度な運動 ウォーキングやストレッチなど、軽い運動で心身の緊張をほぐす効果 十分な睡眠 規則正しい生活リズムを維持し、質の高い睡眠を確保 リラクゼーション法 深呼吸・瞑想・マインドフルネスなどを活用し、リラックス状態を促す 趣味や交流 趣味に没頭する時間や、家族・友人との交流を楽しみ、気持ちを安定させる ストレスは血圧や血糖の変動を引き起こし、間接的に脳梗塞の再発リスクを高める要因です。自覚がないままストレスが蓄積していることもあります。そのため、日常生活のなかで心身をリラックスさせる時間を持つことが大切です。 深呼吸や軽いストレッチ、趣味の時間などを意識的に取り入れるとストレスが緩和されます。また、家族や医師と定期的なコミュニケーションで悩みを共有することも精神状態の安定に役立ちます。 禁煙の徹底 禁煙は、ラクナ脳梗塞の再発予防において非常に大切です。喫煙は血管を収縮させ、血圧を上げるだけでなく、血管内皮を傷つけて動脈硬化を促進させる要因です。 JPHC研究によると、喫煙者は非喫煙者よりラクナ梗塞の発症リスクが約1.5倍高く、1日40本以上の喫煙では2倍以上に上がることが判明しております。また、禁煙によって男性では約17%、女性では5%の脳卒中が予防できるとの推計もあります。これは年間で約16万人の患者を救える可能性を意味し、禁煙が予防においてどれほど重要かを示したものです。(文献13) JPHC研究データからもわかるとおり、禁煙は比較的早期に血管の状態に現れるとされ、再発予防にも直結します。 ラクナ脳梗塞でお悩みの方は当院へご相談ください ラクナ脳梗塞は、症状が軽くても将来的に認知機能や運動機能に影響を及ぼすおそれがあります。違和感があれば、早めに検査を受けることをおすすめします。 当院リペアセルクリニックでは、ラクナ脳梗塞による後遺症に対して、患者様の状態に合わせた治療を提案しています。 リハビリや薬物療法に加え、必要に応じて再生医療も選択肢のひとつとしてご利用になれます。ラクナ脳梗塞の後遺症が改善せず、お悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。 ラクナ脳梗塞に関するよくある質問 ラクナ脳梗塞を放置するとどうなりますか? ラクナ脳梗塞は症状が軽く見過ごされがちですが、放置すれば、再発や認知症、言語・嚥下障害といった後遺症を招くリスクがあります。早期受診と治療、生活習慣の見直しが再発予防も大切です。 以下の記事では、「症状が軽い脳梗塞」における治療の重要性を詳しく解説しております。 ラクナ脳梗塞が重症化するとどうなりますか? ラクナ脳梗塞が重症化すると、手足の麻痺やしびれ、言葉の出にくさ、物忘れなどの症状が進行し、日常生活に支障をきたすことがあります。生活の質が大きく低下する恐れがあるため、早期の対処が重要です。 ラクナ脳梗塞の後遺症がある場合に利用できる公的支援制度はありますか? ラクナ脳梗塞の後遺症がある方は、公的支援制度を利用することで医療費や介護の負担を軽くできる可能性があります。医療費には高額療養費制度や自立支援医療、介護には介護保険制度や障害者総合支援法があります。 身体障害者手帳や障害年金による支援も受けられます。詳しくは市区町村や医療機関で相談できます。 ラクナ脳梗塞の後遺症改善については、以下の記事で詳しく解説しています。公的支援制度を活用しながら、前向きに回復を目指しましょう。 参考記事 (文献1) 社会福祉法人 恩賜財団済生会「ラクナ梗塞」社会福祉法人 恩賜財団済生会, 2015年12月25日 https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/lacunar_infarction/(最終アクセス:2025年5月17日) (文献2) 甲斐 久史.「脳血管障害・心疾患を合併した 高血圧治療のポイント」『日本内科学会雑誌』104巻2(号), pp.1-8, https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/2/104_232/_pdf?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月17日) (文献3) 小笠原邦昭ほか.「脳卒中治療ガイドライン 2021〔改訂2023〕」, pp.1-180, 2023年 https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2023.pdf (最終アクセス:2025年5月17日) (文献4) 冨山 博史.「加齢と血管:血管の老化に向き合う」『東京医科大学病院』, pp.1-2, 2019年 https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/info/data/lecture_134.pdf(最終アクセス:2025年5月17日) (文献5) JIHS「糖尿病の慢性合併症について知っておきましょう」国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター, 2015年10月27日 https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/060/020/02.html?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月17日) (文献6) 「地域のかかりつけ医のための心不全診療ガイドブック」『沖縄県・沖縄県医師会』, pp.1-42 https://www.okinawa.med.or.jp/wp-content/uploads/2025/02/03-%E8%B3%87%E6%96%993%EF%BC%9A%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E3%81%AE%E3%81%8B%E3%81%8B%E3%82%8A%E3%81%A4%E3%81%91%E5%8C%BB%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E5%BF%83%E4%B8%8D%E5%85%A8%E8%A8%BA%E7%99%82%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF.pdf(最終アクセス:2025年5月17日) (文献7) 公益財団法人長寿科学振興財団「生活習慣病予防に効果的な運動習慣」健康長寿ネット,2016年7月25日 https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka-yobou/undou-shukan.html(最終アクセス:2025年5月17日) (文献8) 松元 秀次.「脳梗塞のリハビリテーション治療」, pp.1-9, 2019年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/manms/15/4/15_201/_pdf(最終アクセス:2025年5月17日) (文献9) 「Ⅱ.脳梗塞・TIA」, pp.1-83 https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/nou2009_02.pdf?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月17日) (文献10) 内山真一郎.「脳血管障害と抗血栓療法」『21シリーズ特集Dr.内山.indd 3』, pp.1-5, 2008年 https://www.jsth.org/publications/pdf/tokusyu/19_1.003.2008.pdf?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月17日) (文献11) 国立循環器病研究センター「脳梗塞再発予防抗血小板薬併用療法の適切な切替時期を提案:国内多施設共同 CSPS.com試験サブ解析」国立循環器病研究センター, 2022年01月27日 https://www.ncvc.go.jp/pr/release/pr_31291/(最終アクセス:2025年5月17日) (文献12) 岩戸 英仁.「脳梗塞再発予防のための治療」, pp.1-24 https://www.onomichi-hospital.jp/upload/open-c/1438751314.pdf?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月17日) (文献13) 予防研究グループ(予防研究部・疫学研究部・コホート研究部)「多目的コホート研究(JPHC Study) 男女別、喫煙と脳卒中病型別発症との関係について」国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/267.html?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月17日)
2025.05.30 -
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「小脳梗塞と診断されたが、どんな後遺症が出るのか気になる」 「小脳梗塞の後遺症の治療法を知りたい」 小脳梗塞の後遺症に不安を抱えていませんか。 小脳は体のバランスや動きを調整する役割を担っており、発症後はふらつきや手足の震えといった症状が現れるケースがあります。ただし、適切な治療によって後遺症が改善する可能性もあります。 記事の最後には、小脳梗塞の後遺症に関するよくある質問をまとめておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 \つらい後遺症に対して再生医療という新しい選択肢/ 近年、再生医療によって小脳の機能回復を目指す治療が注目されています。 幹細胞を用いて傷ついた神経や血管の修復を促し、ふらつきや麻痺、言語障害などの後遺症改善が期待される新しい選択肢です。 実際に再生医療を受け、後遺症に悩まれていた患者様の事例は、以下の動画でもご紹介しております。 https://youtu.be/VoFvJa_yBGI?feature=shared >>その他の症例についてはこちらから ふらつきや手足の震え、言葉がうまく出ないといった小脳梗塞の後遺症にお悩みの方も、諦める前に新しい選択肢を検討してみてください。 症例や治療法については、当院(リペアセルクリニック)で無料カウンセリングを行っておりますので、症状・後遺症が改善できるか、まずはお電話にてご相談ください。 ▼小脳梗塞の後遺症について、まずは無料相談 小脳梗塞で起こりうる後遺症一覧 後遺症の種類 主な症状 日常生活への影響 平衡障害 ふらつき、めまい、酔ったような歩行 階段昇降や人混みでの歩行困難、転倒リスク増加 構音障害 ろれつが回らない、発話の不明瞭さ 会話の不便さによるストレスや社会的孤立 運動失調・協調運動障害 手足や体幹の動作不良、ぎこちなさ 細かい作業や移動動作の困難、生活動作の支障 嚥下障害 飲み込みの難しさ、むせやすさ 誤嚥や栄養摂取の困難、食事内容の制限 目の動きの異常 眼振、複視(物が二重に見える) 視界の不安定による読書・作業の困難 頭痛や吐き気の持続 慢性的な頭痛、吐き気 集中力低下、日常生活の質の低下 ※タップで該当箇所へスクロールします 小脳梗塞では、体のバランスを取る、スムーズに動かすといった小脳の機能が障害されることで、さまざまな後遺症が現れることがあります。後遺症の現れ方は個人差が大きく、症状の程度や組み合わせもさまざまです。 以下の記事では、脳梗塞の後遺症について詳しく解説しています。 平衡障害 症状の部類 具体的な症状 生活への影響 ふらつき・不安定感 まっすぐ立つ・歩くのが困難。左右や前後に体が揺れる感覚 移動や姿勢保持の困難 めまい 回転性や浮動性のめまい。耳の病気とは異なる出方 視覚の不快感や動作時の不安定感 歩行困難 歩幅の不安定さや開脚歩行。転倒リスクの増加 外出や移動の制限、転倒の恐れ 体幹失調 座位や立位での体幹の揺れや傾き 座っているだけでも不安定さを感じる 眼振(がんしん) 眼球が意図せず揺れ動く症状 視線の定まりにくさによる集中困難 協調運動障害 手足の動きのぎこちなさや目的部位への動作困難 日常動作のぎこちなさによる生活の不便 小脳は姿勢やバランスを保つ役割があり、障害されると平衡感覚が乱れ、まっすぐ歩けない・立っていられないといった症状が特徴です。 ふらつきや転倒のリスクが高まり、移動や入浴などの日常動作に支障をきたすこともあります。また、階段の上り下りや、人混みの中を歩くことが困難になる場合も少なくありません。症状の改善には、リハビリによる反復練習の継続が大切です。 構音障害 項目 内容 発症の原因 発話に関わる筋肉の動きを調整する小脳の機能障害 機能の役割 発音のタイミング・強さ・協調を整える中枢としての調整機能 症状の分類 運動失調性構音障害 呂律の障害 明瞭な発音の困難、言葉の不鮮明さ 発音の不明瞭さ 音の歪みや曖昧さによる聞き取りづらさ 音節の分断 単語や音が途切れ途切れになり、滑らかな会話が困難になる現象(断綴性言語) 声の震え 声の不安定さや震えによる発声の違和感 話す速度の変化 話し方の異常な遅さや急な加速によるリズムの乱れ 呼吸との協調困難 発声と呼吸のタイミング不一致による会話のしづらさ 生活への影響 意図の伝達困難、対人コミュニケーションの不安やストレスの増加 (文献1) 構音障害とは、言葉の発音が不明瞭になる症状です。小脳が障害されると舌や口の動きがうまく調整できず、ろれつが回らない、息が続かないといった話しづらさが現れます。 聴力には問題がないため、周囲の理解が必要です。また、構音障害は言語聴覚療法で改善が期待できます。 運動失調・協調運動障害 症状の分類 主な症状・特徴 解説 酩酊様歩行 千鳥足のような不安定な歩行 直進困難・ふらつきによる転倒リスクの増加 失調性歩行 足の動きの不規則さや開脚歩行 歩幅の変動によるバランス喪失 体幹失調 座位や立位での不安定さ 体幹バランスの低下による転倒傾向 測定異常(ジスメトリア) 手足が目標に届かない、あるいは通り過ぎる 物を取る動作の正確性の低下 運動分解 一連の動きが滑らかでなく、分割されたぎこちない動きになる 筋肉の協調動作の不良による動作のぎこちなさ 変換運動障害 手のひらと甲を交互に返すなどの動きがスムーズにできない 動きの切り替えの困難さ 企図振戦 手を伸ばすなど目的動作時に出現する震え 静止時には見られず、動作開始時に明瞭になる振戦 構音障害 呂律の回りにくさ、言葉の不明瞭さ、単語が途切れる断綴性言語など 発話に必要な筋肉の協調運動の障害 眼球運動障害 眼振(リズミカルな不随意眼球運動) 視線の安定性の喪失による目の揺れ (文献2)(文献3) 運動失調・協調運動障害は、手足や体幹の動きがぎこちなくなる、思うように手足を動かせなくなるといった症状が現れます。筋力は保たれていても、思いどおりに手足が動かせず、日常生活に大きな支障をきたします。 これらの症状に対しては、理学療法による筋力やバランス感覚の訓練、作業療法による日常動作の練習などが効果的であり、継続的なリハビリによって徐々に改善が期待できます。 嚥下障害 症状の分類 内容 飲み込みにくさ 飲食物を塊にまとめる動作や、のどへの送り込みの困難 むせ・せき込み 飲食中のむせや強いせき込み。とくに水分での頻発 湿った声・ガラガラ声 咽頭残留による声の湿りや濁り 食事の遅延 飲み込みの困難による食事時間の長期化 のどのつかえ感 飲食物がのどに引っかかるような不快感 体重減少 十分な栄養・水分摂取の困難による体重の低下 誤嚥性肺炎 誤嚥によって引き起こされる肺炎の発症リスク増加 嚥下障害は、食べ物や飲み物をスムーズに飲み込めなくなる症状です。むせやすくなったり、食事中に咳き込んだりすることが増えます。食事が楽しめなくなるだけでなく、重症化すると誤嚥性肺炎を引き起こすリスクもあるため、注意が必要です。 嚥下障害を改善するためには、食事の形態を工夫するとともに、医師の指示に従いながらリハビリテーションに取り組むことが重要です。 目の動きの異常 症状の部類 内容 眼振(がんしん) 眼球がリズミカル(不随意)に揺れ動く現象。視線の方向によって強まる(方向性眼振)の場合あり 協調運動障害に伴う眼球異常 動く物を追う動作や、視線を目標から目標へ素早く移す動作の障害 視線固定困難 見たい対象に視線を安定して向け続けることの困難 複視(ふくし) 両目の動きの不一致によって物が二重に見える状態 めまい・ふらつきに伴う眼球異常 平衡感覚の障害に伴って起こる反射的な眼球運動の異常 日常生活への影響 視覚の安定性の低下による読書や歩行、運転などに支障が出る 小脳は眼球の動きの調整にも関与しているため、視線がスムーズに移動しない、焦点が合いにくいといった症状が出やすくなります。視界が揺れる、まっすぐ見続けることが難しくなり、不快感やめまいを伴う可能性があります。 視覚の異常は平衡感覚にも影響するため、ふらつきや吐き気と複合的に現れることもあり、日常生活に影響を及ぼすため、注意が必要です。視界の異常が続く場合は、歩行中の転倒や事故を防ぐためにも、早めに医師へ相談しましょう。 頭痛や吐き気などの持続 分類 内容 原因 脳圧上昇、脳幹刺激、平衡感覚障害、炎症や神経過敏による頭痛・吐き気の誘発 頭痛の症状 締め付け感、拍動痛、重だるさ。後頭部や首の違和感。体位変化や咳で悪化 吐き気の症状 食事と無関係な持続的吐き気。嘔吐や乗り物酔いに似た不快感を伴う 生活への影響 読書・外出・睡眠・食事への支障。他の神経症状との併発による日常生活の負担増加 小脳梗塞の直後には、頭痛や吐き気といった症状が続くことがあります。脳内の圧力変化や血流障害に関連する反応と考えられており、これらの症状は、通常時間の経過とともに軽快しますが、なかには慢性的な違和感として残るケースもあります。 症状が長引く場合は、自己判断での無理は禁物です。重症化する前に医療機関を受診しましょう。 小脳梗塞の後遺症の治る見込みと予後 後遺症の種類 回復の見込み 影響する要因 平衡障害(歩行時のふらつき) リハビリによる改善可能。ただし慢性化の恐れあり 損傷部位の広さ、年齢、早期リハビリ開始 協調運動障害(四肢の動作のぎこちなさ) 手足の機能回復は可能。細かい動作の障害が残ることあり リハビリ継続の有無、身体機能の基礎体力 構音障害(ろれつの不明瞭さ) 発話の明瞭さ向上。流暢さの完全回復は難しい場合あり 言語療法の有無、脳の損傷範囲、発症前の会話能力 嚥下障害(飲み込みにくさ) 食事調整と訓練で改善可能。誤嚥予防が重要 医師の指導有無、嚥下筋の損傷度、誤嚥性肺炎の有無 高次脳機能障害(記憶力・注意力) 回復に個人差あり。支援環境で生活の自立維持が可能 年齢、合併症の有無、家族や社会的支援の体制 小脳梗塞の後遺症は、適切なリハビリと時間の経過によって改善が期待できます。とくに発症から3カ月ほどは、神経や身体機能が大きく回復する重要な時期とされています。 実際にデンマークで行われた急性期の脳卒中患者、合計1,197人を対象とした、大規模な研究では、脳卒中患者の約95%が発症後12.5週間以内に機能回復のピークを迎えており、とくに最初の6週間で最も大きな改善が見られました。(文献4) 項目 回復期間 全体傾向(全患者の95%) 約12.5週間(約3カ月)以内 早期回復(全体の80%) 約6週間(約1カ月半)以内 軽症の患者 約8.5週間(約2カ月)以内 中等度の患者 約13週間(約3カ月)以内 重症の患者 約17週間(約4カ月)以内 非常に重症の患者 約20週間(約5カ月)以内 (文献4) 回復の速度は発症時の重症度に大きく左右され、軽度な場合は2カ月前後、重度では4〜5カ月で回復が頭打ちになる傾向があると報告されています。 この結果からも、早期からの集中的なリハビリが重要であり、予後の見通しを立てる上でも発症から3カ月以内の経過がひとつの指標です。 以下の記事では、脳梗塞の後遺症について詳しく解説しています。 【関連記事】 BAD(脳梗塞)とは?症状や予後・他のタイプとの違いも解説 脳梗塞の合併症には何がある?起こる原因や対処法を現役医師が解説 小脳梗塞における後遺症の治療法とリハビリについて解説 以下のように小脳梗塞に伴う後遺症の治療は、症状に合わせたリハビリを中心に、必要に応じて薬物療法を併用します。 治療法 目的 主な内容 理学療法 歩行能力・筋力・バランス感覚の回復 歩行訓練、バランス訓練、筋力トレーニング 作業療法 日常生活動作の自立支援 食事・着替え・入浴などの練習。装具や自助具の活用方法の指導 言語聴覚療法 構音障害・嚥下障害への対応 発音訓練、嚥下訓練、コミュニケーション・食事改善の支援 薬物療法 めまい・頭痛・吐き気の緩和、再発予防 症状緩和薬、抗血栓薬や降圧薬などの内服管理 精神的ケア・カウンセリング 不安・抑うつなど精神的負担の軽減 心理士や医師による相談支援。前向きな気持ちでのリハビリへの誘導 ※タップで該当箇所へスクロールします 治療を進める際は、必ず医師と方針を相談した上で、自己流ではなく医師の指導に基づいて継続的に取り組むことが大切です。 また以下の記事では、脳梗塞のリハビリ方法について詳しく解説していますので、併せてご覧ください。 理学療法 理学療法の目的 内容 バランス機能の再獲得 平衡感覚や姿勢制御の改善。立位保持や歩行訓練による体幹・下肢の安定性の向上 転倒リスクの軽減 段差歩行やバランスマット、重心移動訓練による転倒予防の強化 協調運動の再学習 運動失調に対する視覚・触覚フィードバックを用いた動作精度の改善 日常生活動作(ADL)の向上 立ち上がり・着替え・歩行などの自立度向上。生活の質(QOL)の改善 (文献5) 理学療法は、立つ・歩く・バランスを保つといった基本的な身体機能を改善させるために行われる訓練です。平衡感覚の改善やふらつきの軽減、姿勢や歩行の練習が中心になります。 発症直後から始めることで回復の可能性が高まり、筋力や柔軟性の維持にもつながります。理学療法を行う場合、自己判断で行うのではなく、医師の指導のもと実施するようにしましょう。 作業療法 アプローチ分類 訓練内容 目的・特徴 ADL訓練(基本動作) 食事・着替え・排泄・入浴などの日常動作の練習 自立支援と生活の質(QOL)の向上 上肢機能訓練 手指の巧緻動作、物の把持・離脱練習、両手での動作練習 動作の正確性と日常動作能力の改善 バランス・体幹訓練 座位・立位でのバランス練習、体幹安定のための体操やストレッチ 姿勢保持力と転倒予防の強化 高次脳機能訓練 注意力、遂行機能、記憶力の訓練 認知機能の改善と日常生活への応用力の向上 趣味・レクリエーション活動 手芸、園芸、音楽、ゲームなどの活動 心のリフレッシュと動作応用の練習 応用生活訓練 家事動作訓練(掃除・洗濯・料理)、外出訓練(買い物・交通機関利用など) 実生活への復帰と社会参加に必要なスキルの習得 作業療法は、小脳梗塞の後遺症によって難しくなった着替えや食事、掃除などの日常動作を取り戻し、円滑に行えるよう支援するリハビリです。 小脳障害による運動失調や手先の不器用さには、協調運動の練習や動作の工夫で対応し、注意力や段取りの難しさなどの認知面は、実践的な作業を通じて改善を目指します。作業療法は、生活背景に合わせた支援で自立を促すリハビリです。 言語聴覚療法 対象領域 主な訓練内容 目的・特徴 構音障害の訓練 発音練習、呼吸訓練、口舌機能訓練、話すスピードの調整 発話の明瞭さと滑らかさの向上 嚥下障害の訓練 嚥下体操、姿勢調整、食物形態の調整、摂食訓練、間接訓練 食事動作と誤嚥予防の徹底 言語機能の訓練 話す練習、聞く練習、読む・書く練習、代替コミュニケーション手段(文字盤・ノートなど)の活用練習 表現力と理解力の向上、伝達手段の確保 高次脳機能の訓練 注意・記憶障害への対応、メモや環境調整などの代償手段の指導 コミュニケーション機能と日常生活適応力の改善 家庭・家族支援 自主訓練の方法、介助方法、日常会話での工夫の指導 家庭内でのリハビリ促進と家族のサポート力の向上 小脳梗塞による構音障害や嚥下障害がある場合は、言語聴覚士によるリハビリが必要です。発音の明瞭化や話すスピードの調整、誤嚥を防ぐための嚥下訓練などを通じて、日常生活の質の向上を目指します。 また、会話がしづらくなることで生じる孤立感や不安に対しても、言語聴覚士や周りの適切な支援が不可欠です。言語聴覚療法では、発話や飲み込みだけでなく、文字盤などを活用した代替手段の訓練や、家族への指導も行われます。 薬物療法 治療の目的 内容 主な薬剤例 再発予防 血栓形成の抑制による脳梗塞の再発防止 抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレル)抗凝固薬(DOAC、ワルファリン) 動脈硬化・高血圧の進行抑制 高血圧・脂質異常・糖尿病の管理による血管障害の予防 降圧薬(ARB、Ca拮抗薬など)脂質異常治療薬(スタチンなど) 神経保護・浮腫軽減 脳浮腫や炎症の抑制による脳への圧迫軽減と回復促進 利尿薬・血管拡張薬(グリセオール、マンニトールなど) (文献6)(文献7) 小脳梗塞の後遺症には、再発予防や症状の緩和を目的とした薬物療法が行われます。抗血小板薬や抗凝固薬で血栓を防ぐほか、高血圧や高脂血症の管理も大切です。脳浮腫や炎症を抑える薬が使われることもあり、神経の保護や回復促進につながります。 頭痛や吐き気が強い場合には対症療法も行われます。薬の服用は医師の指示に従い、自己判断で中止や調整をしないことが大切です。 精神的ケアやカウンセリングを活用する 項目 内容 目的・効果 精神的ストレスの軽減 不安や抑うつの言語化、心理的受容のサポート 感情と整理と心の安定 リハビリ意欲の向上 前向きな気持ちの再構築、回復へのエンゲージメント支援 継続的なリハビリ参加の促進 家族の心理的サポート 介護疲れの予防、ストレス対処法の共有 家族の心身負担の軽減と対応力の強化 情緒変化への対応 涙もろさ、怒りっぽさ、感情爆発への理解と対処支援 高次脳機能障害への適応と生活の安定 小脳障害に伴う感情コントロールの不安定さ 本人・家族の戸惑いへの対応、変化への気づきと受容 社会的孤立や自己否定感の軽減、家庭内の理解の促進 (文献6)(文献8) 小脳梗塞の後遺症は、ふらつきや話しにくさ、体の動かしにくさだけでなく、心にも影響を及ぼすケースがあります。とくに若い方や元気に活動している方ほど、思うように動けなくなり、落ち込みや不安を感じやすくなります。 後遺症による不安や気持ちの整理が難しいと感じたときは、心理士や医師によるカウンセリングや認知行動療法などの心のケアが欠かせません。感情の変化があっても、適切な支援を受けることで、前向きに治療を続けることができます。 小脳梗塞の後遺症でお悩みなら再生医療もご検討ください 小脳梗塞の後遺症には長期的な治療が大切ですが、リハビリで十分な改善が見られない場合、再生医療も選択肢に入ります。 再生医療では、幹細胞を用いて神経機能の再生を促す治療が行われており、小脳の障害に対してもその研究が進められています。 【こんな方は再生医療をご検討ください】 うまく話せない 痺れや麻痺をなんとかしたい もうこれ以上の機能の回復が見込めないと診断を受けた方 リハビリの効果を高めたい 脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)の再発を予防したい 幹細胞治療の特徴については、以下の動画でも解説しています。 https://youtu.be/NeS1bk2i5Gs?feature=shared 早期の治療開始が、より良い結果につながる可能性を高めます。 再生医療による脳の回復を目指して治療を受けるかどうか迷われている方は、できるだけ早めに専門医にご相談ください。 >>あなたの症状・後遺症が改善できるか、まずはお電話で確認 小脳梗塞の後遺症に関するよくある質問 小脳梗塞の後遺症に関するよくある質問については、以下で回答しています。 小脳梗塞の後遺症で性格が変わることはありますか? 小脳梗塞の後遺症に対して慣れることはありますか? 小脳梗塞の後遺症で介護が必要になったとき利用できる支援制度と申請方法は? 小脳梗塞の後遺症で性格が変わることはありますか? 小脳は感情や性格を直接コントロールする部位ではありませんが、後遺症による不自由さや孤立から、気分の落ち込みや怒りっぽさが見られるケースがあります。 性格が変わったように見える場合も、環境や心理的影響が要因となることがあります。心のケアや家族の理解が大切です。 小脳梗塞の後遺症に対して慣れることはありますか? 小脳梗塞の後遺症が改善しない場合もありますが、少しずつ体と心が適応していくことがあります。 早く慣れようとすると、かえって精神的に負担になることがあります。焦らずに少しずつ適応していくことが大切です。 小脳梗塞の後遺症で介護が必要になったとき利用できる支援制度と申請方法は? 小脳梗塞の後遺症で介護が必要になった場合、公的支援制度として以下の制度が利用できる可能性があります。 介護保険制度 身体障害者手帳 障害年金 介護保険では訪問介護やデイサービス、施設入所などの支援を受けることができ、身体障害者手帳や障害年金は、麻痺や言語障害などの後遺症が一定基準を満たす場合に申請が可能です。 手続きは市区町村の窓口で行い、医師の診断書が必要となることが一般的です。 参考記事 (文献1) 生井友紀子.「小脳と構音障害」, pp.1-4, 2012年 https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/052110997.pdf(最終アクセス:2025年5月15日) (文献2) Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA「協調運動障害」MSD マニュアル 家庭版, 2024年2月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/09-%E8%84%B3-%E8%84%8A%E9%AB%84-%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E9%81%8B%E5%8B%95%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E5%8D%94%E8%AA%BF%E9%81%8B%E5%8B%95%E9%9A%9C%E5%AE%B3(最終アクセス:2025年5月15日) (文献3) 「事業場における治療と職業生活の両立支援のための ガイドライン 参考資料 脳卒中に関する留意事項」, pp.1-7 https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11303000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu-Roudoueiseika/0000153518.pdf(最終アクセス:2025年5月15日) (文献4) NLMNIH(アメリカ国立衛生研究所)保健福祉省USA.gov「Outcome and time course of recovery in stroke. Part II: Time course of recovery. The Copenhagen Stroke Study」PubMed https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7741609/(最終アクセス:2025年5月15日) (文献5) 「Ⅶ.リハビリテーション」, pp.1-70 https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/nou2009_07.pdf(最終アクセス:2025年5月15日) (文献6) 小笠原邦昭ほか.「脳卒中治療ガイドライン 2021〔改訂2023〕」, pp.1-180, 2023年 https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2023.pdf(最終アクセス:2025年5月15日) (文献7) Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA「脳卒中の概要」MSD マニュアル 家庭版, 2023年6月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/09-%E8%84%B3-%E8%84%8A%E9%AB%84-%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%84%B3%E5%8D%92%E4%B8%AD/%E8%84%B3%E5%8D%92%E4%B8%AD%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81(最終アクセス:2025年5月15日) (文献8) 佐伯覚「脳卒中の 治療と仕事の両立 お役立ちノート」, pp.1-76, 2020年11月19日 https://www.mhlw.go.jp/content/000750637.pdf(最終アクセス:2025年5月15日)
2025.05.30 -
「アテローム血栓性脳梗塞の後遺症が出るかもしれない」 「アテローム血栓性脳梗塞の後遺症の予後について知りたい」 アテローム血栓性脳梗塞と診断され、後遺症の可能性に不安を感じていませんか。後遺症には運動障害や感覚障害などがありますが、適切なリハビリによって改善が期待できることもあります。 アテローム血栓性脳梗塞の後遺症は治るのか アテローム血栓性脳梗塞で起こりうる後遺症 アテローム血栓性脳梗塞における後遺症のリハビリ方法 アテローム血栓性脳梗塞の予後 記事の最後には、アテローム血栓性脳梗塞の後遺症に関するよくある質問をまとめておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 アテローム血栓性脳梗塞の後遺症は治るのか アテローム血栓性脳梗塞の後遺症は、脳の損傷範囲や部位、治療までの時間、年齢や基礎疾患の有無によって回復の程度が異なります。 元通りになるとは限りませんが、早期治療やリハビリによって機能が回復するケースもあります。そのため、後遺症の改善にはリハビリが欠かせません。一方、治療が遅れた場合や損傷が重い場合は、後遺症が長引くことも予想されます。 後遺症が残っても、継続的なリハビリと支援によって生活の質を高めることを望めるでしょう。また、リハビリは医師の指導のもと、症状に応じて行われます。 以下の記事では、脳梗塞は治るのかについて詳しく解説しています。 アテローム血栓性脳梗塞で起こりうる後遺症一覧 後遺症 具体的な症状・影響 運動麻痺 手足や体の片側が動きにくくなる、または完全に動かせなくなる。歩行・食事・着替えなど日常動作に支障をきたす 感覚障害 しびれ、違和感、温度感覚の鈍さ、触覚の低下。危険察知が難しくなり、細かい作業が困難になる 言語障害 言葉が出にくい、理解できない、意味不明な発話、読み書きの困難。コミュニケーションに支障をきたす 記憶障害や注意力の低下 記憶力や集中力の低下により、予定管理や仕事・学習に支障が出る 精神的な変化やうつ状態 意欲の低下、不安、焦り、抑うつ状態。本人だけでなく家族のサポートも必要となる アテローム血栓性脳梗塞は、動脈硬化が原因で起こる脳梗塞の一種です。脳の太い血管が詰まり、広範囲に血流が届かなくなることで、脳幹や大脳皮質といった運動を司る部位が損傷を受けやすくなります。 片麻痺などの運動障害がよく見られ、重症では言語障害や認知機能の低下を伴うこともあるのが特徴です。 以下の記事では、脳梗塞の後遺症について詳しく解説しております。 運動麻痺 分類 症状 日常生活への影響 片麻痺(へんまひ) 左右どちらかの半身に麻痺。腕と脚で程度が異なることもある 歩行困難、手の動作不自由、寝返り・起き上がり困難、バランス低下 手指の巧緻運動障害 手や指の細かい動作ができなくなる ボタンかけや食事、文字を書くなどの細かい作業が困難 足の麻痺による影響 足の力が入りにくい、足首が曲がらない、つま先が上がらない 歩行障害、階段昇降困難、立位保持困難、運転支障 体幹の麻痺による影響 姿勢保持や体の向き変更が難しくなる 座位保持や寝返りが困難、姿勢の維持ができず転倒リスク増加 痙縮(けいしゅく) 筋肉の過度な緊張により手足が突っ張る、関節が硬くなる 関節の動き制限、違和感、介護動作(着替え・清拭)困難 (文献1)(文献2) アテローム血栓性脳梗塞の後遺症では、脳の運動をつかさどる領域が障害を受けることで、片麻痺や四肢の動かしにくさなどの運動麻痺が現れることがあります。 運動麻痺としてよく現れる症状としては、片側の手足が動きにくくなる片麻痺などがあり、脳の損傷部位と反対側に症状が出るのが特徴です。重症度によっては、歩行や日常生活に大きな支障をきたすケースもあります。 リハビリを行うことで、運動麻痺が改善する可能性もありますが、発症からの時間が経過するほど機能回復が難しくなる傾向があります。そのため、できるだけ早い段階からリハビリを開始するのが大切です。 感覚障害 分類 症状 日常生活への影響 触覚の異常(感覚鈍麻・過敏) 触った感覚が鈍くなる、または過剰に感じる 落とし物が増える、火傷に気づかない、衣類や接触に敏感・不快で着替えが困難、他人との接触を避けることがある 温度覚の異常(低下・過敏) 熱い・冷たいの感覚が鈍る、またはわずかな温度変化に敏感になる 入浴や調理時に火傷や低体温のリスク。冷暖房に対する過剰反応や不快感が強くなる 痛覚の異常(鈍麻・過敏) 痛覚が鈍感になる、または弱い刺激でも強く感じる(異痛症) 怪我や病気の発見が遅れる。軽い接触や動作でも激痛を感じ、日常動作に支障が出る 位置覚・深部感覚の異常 手足の位置感覚が鈍る。筋肉や関節の動きや力加減がわかりにくい 見ずにボタンをかけられない、動作がぎこちなくなる、歩行やバランス保持が困難になる 異常感覚(しびれ・ビリビリ・むずむず感) 手足のしびれ、電気が走るような違和感、焼けるような感覚、むずむずして落ち着かない感覚が出現するケースがある 常に不快感があるため集中力が低下し、日常生活全体に支障をきたす。安静にしていても休まらず、不眠や不安の原因になることもある (文献3)(文献4) 感覚障害では、触れた感覚が鈍くなったり、逆に何もないのにピリピリとした違和感を覚えたりする症状が現れます。脳の感覚を司る領域が障害を受けた場合に起こり、症状は軽度な違和感から、服を着るのもつらいほどの強い異常感覚までさまざまです。 感覚障害は外見からはわかりにくく、本人にしかわからない苦痛が続くため、生活の質を大きく下げることがあります。さらに、感覚の低下があると転倒やケガのリスクが高まるため注意が必要です。 言語障害 分類 症状 日常生活への影響 失語症 話す・聞く・読む・書くことが困難になる。言葉が出てこない、理解できない 会話が成立しにくく、意思疎通が困難。孤立やストレスの原因になる 構音障害 発音が不明瞭になる。ろれつが回らない、声が小さい、鼻にかかった話し方になる 聞き取りづらく、会話や電話が困難。外出や人との交流に消極的になるケースがある 高次脳機能障害に伴う言語障害 注意・記憶・段取りの低下により、話の流れが組み立てにくくなる 話がかみ合わず、会話が続かない。仕事や社会参加に支障をきたす アテローム血栓性脳梗塞では、言語を司る脳の領域が損傷を受けた場合に、言語障害が現れるケースがあります。言葉がうまく出てこない失語症や、発音が不明瞭になる構音障害が挙げられます。 また、会話が成立しにくくなったり、伝えたいことが言葉にできないことから、本人に強いもどかしさやストレスが生じることも少なくありません。言語障害の改善には、言語聴覚士によるリハビリが効果的とされており、早期から継続的に取り組むことが大切です。 記憶障害や注意力の低下 分類 症状 日常生活への影響 記憶障害 新しいことが覚えられない、昔の記憶が曖昧、物の名前が出てこない、物をよく失くす 約束を忘れる、会話がかみ合わない、持ち物を頻繁に探す、時間や場所の感覚が乱れる 注意力の低下 集中が続かない、周囲に気を取られやすい、作業ミスが増える、反応が遅れる 会話や読書の理解が困難、家事や仕事でのミス、運転時の危険察知が遅れる、作業が続かない (文献5) アテローム血栓性脳梗塞では、脳の前頭葉や側頭葉などが損傷を受けた場合に、記憶障害や注意力の低下が後遺症として現れることがあります。たとえば人の名前が思い出せなかったり、昨日食べたものが思い出せなかったりなどが挙げられます。 記憶障害や注意力の低下の中には、日常生活に大きな影響を及ぼすものもあり、家族や周囲のサポートや理解が不可欠です。 精神的な変化やうつ状態 分類 症状 日常生活への影響 感情の変化 気分の落ち込み、不安・イライラ、感情の不安定さ、無関心、喜びや意欲の喪失 リハビリへの意欲低下、人との関わりを避ける、楽しみを感じにくくなり生活の質が低下する 思考の変化 集中力・記憶力・判断力の低下、思考の遅れ、自責感、希死念慮 会話や日常判断が難しくなる、過去を悔やみやすくなる、深刻な場合は命に関わるリスクも 行動の変化 引きこもり、外出や活動量の減少、睡眠障害、食欲の変化、疲れやすさ 社会復帰が困難になり、家族への負担も増える。孤立感が強まり、生活全体が消極的になる (文献6) アテローム血栓性脳梗塞の後遺症として、身体的な障害だけでなく、感情面や性格の変化が生じることがあります。 とくにアテローム血栓性脳梗塞を発症した方の約30%が、うつ状態となることが報告されているため、少しでも辛いと感じたときは医師や周りに相談するのが大切です。アテローム血栓性脳梗塞の後遺症は身体の影響だけでなく、精神的な面でもケアが求められます。 アテローム血栓性脳梗塞における後遺症のリハビリ方法 リハビリの種類 目的・内容 運動療法 関節可動域の維持・改善、筋力・バランスの強化、歩行訓練。麻痺した手足の機能回復や基本動作の改善を目指す 作業療法 食事・着替え・入浴など日常動作の訓練。趣味・仕事への復帰支援や自助具の活用、住環境の調整も行う 言語聴覚療法 言語障害(発話・理解)や嚥下障害の訓練。コミュニケーション能力の向上 認知行動療法 記憶・注意力の改善、意欲低下や抑うつなど精神面のサポート。カウンセリングによって心の安定と行動変容を図る アテローム血栓性脳梗塞の後遺症に対しては、症状に合わせたリハビリを医師の指導のもと継続的に行うことが不可欠です。また、リハビリは本人や医師だけでなく、周りのサポートや理解も大事になります。 これから紹介するリハビリは、自己判断や自己流ではなく、医師の指示に従いながら行いましょう。 以下の記事では、脳梗塞の後遺症を改善するリハビリ方法をわかりやすく解説しております。 運動療法 目的 内容 筋力と動作機能の回復 麻痺した手足を動かす訓練で筋力を再びつけ、起き上がり・立ち上がり・歩行がしやすくなる 関節の柔軟性維持 可動域訓練(ROM)で関節のこわばりを防ぎ、日常動作をスムーズに バランス向上と転倒予防 体幹トレーニングやバランス訓練でふらつきを防ぎ、歩行できる体づくり 持久力・心肺機能の向上 全身を使った運動で疲れにくい体にしつつ、日常生活の動作が楽になる 協調性と感覚の改善 手足の連携や細かい動作の練習で動きのぎこちなさを改善。感覚の刺激にもなり感覚障害にも効果が期待される 脳の回復促進(神経可塑性) 動作を繰り返すことで、脳が新しい動き方を覚え、失われた機能を補う力が高まる 意欲・気分の改善 運動により気分が前向きになり、リハビリへのやる気も引き出されやすくなる (文献7)(文献8) 運動療法は、アテローム血栓性脳梗塞による運動麻痺や筋力低下の回復を目的としたリハビリの中心的な方法です。医師の指導のもと、関節の可動域を保つストレッチや、座る・立つ・歩くといった基本動作の再獲得を目指した訓練を行います。 内容としては、徐々に立ち上がりや歩行などの負荷を増やしていくのが一般的です。運動療法は、自宅でも無理のない範囲で続けることで、後遺症の改善が期待できます。 作業療法 目的・効果 内容・支援例 日常動作(ADL)の自立支援 食事・着替え・入浴などの練習。自助具や代償動作の習得で「できること」を増やす 手の細かい動き(巧緻動作)の改善 握る・つまむなどの訓練を通じて、書字・調理・趣味など生活の質を高める 高次脳機能障害への対応 記憶・注意・段取りの訓練。生活上の課題に合わせた個別アプローチで認知機能をサポート 感覚障害への配慮 感覚刺激や代償方法の指導により、動作や日常生活への適応を図る 精神面のサポート 意欲の低下や不安に寄り添い、自信の回復や社会参加を促す活動を取り入れる 患者中心のリハビリ目標の設定 患者の意向を反映した具体的な目標を設定し、主体的な取り組みを促進 (文献9)(文献10) 作業療法は、アテローム血栓性脳梗塞の後遺症によって難しくなってしまった日常動作を取り戻すためのリハビリ方法です。 手や指の細かな動きや食事、トイレ動作など、生活に必要な動作の練習を行うことで、少しずつ自分だけで生活できる力を取り戻していくのが目的です。作業療法は、日常生活の質を保つ上で、非常に重要な役割を果たします。 言語聴覚療法 目的・効果 内容・支援例 脳の可塑性を活かした機能回復 発声・嚥下・理解などの訓練で、脳の再学習を促し、言語や飲み込み機能を回復 個別に合わせた訓練計画の作成 症状や生活背景に応じてオーダーメイドの訓練を実施。無理なく効果的なリハビリが可能 多角的なコミュニケーション支援 話す・聞く・読む・書くに加え、ジェスチャーや絵カードなども活用し、意思疎通を支援 適切な食事のための嚥下訓練 むせや誤嚥を防ぐ訓練、食事姿勢・食形態の工夫で、誤嚥性肺炎のリスクを軽減 精神的サポート 言語や嚥下の障害による不安や孤立感に寄り添い、サポートする 生活環境への適応支援 家庭や職場での会話支援、家族への接し方のアドバイスなど、退院後の生活も見据えた支援を実施 (文献1) 言語聴覚療法は、アテローム血栓性脳梗塞によって生じた言語障害や嚥下障害(飲み込みの問題)に対して行われる治療法です。主なリハビリ内容は、反復練習や発声訓練です。嚥下障害がある場合は、誤嚥や肺炎を防ぐための飲み込みの訓練も行います。 言語聴覚療法は、話す力だけでなく、コミュニケーションや食事を支える大切なリハビリです。状態に合わせた継続的な支援で、生活の幅を広げられます。 認知行動療法 目的・効果 内容・支援例 思考・感情・行動の悪循環を断ち切る 否定的な考えが、気分の落ち込みや意欲低下につながる流れを見直す 問題解決力の向上 できないことに直面したとき、どう対処するかを具体的に学び、自信をつける 否定的な考え方の修正(認知の再構成) 迷惑ばかりかけているなどの思い込みを見直し、前向きな視点を育てる 行動の活性化 小さな行動目標を設定し、成功体験を積むことで自信と活動意欲を高める ストレスや不安への対処力の習得 怒り・悲しみ・不安などの感情を言葉にして整理させる 社会復帰や家族関係への不安の軽減 職場復帰や家族との関係性に関する悩みに寄り添い、コミュニケーション改善や役割の再構築を支援 将来不安・再発恐怖への対処 今できることに意識を向ける訓練で、不安にとらわれず前向きに生活を整える (文献6)(文献11) 認知行動療法は、アテローム血栓性脳梗塞の後遺症によるうつや不安、意欲の低下などに対して行う心理的なリハビリです。再発への不安や身体が思うように動かないことから自分を責めやすくなりますが、治療によりその思考を前向きに修正していきます。 具体的な行動目標を立てて少しずつ達成すると、自己肯定感が高まり、心の回復が促されます。リハビリは、心理士や医師のサポートを受けながら、無理なく取り組むことが大切です。身体のリハビリと並行して心のケアを行うことで、全体の回復につながります。 アテローム血栓性脳梗塞の予後 予後に関しての項目 説明 後遺症の回復と期間 早期のリハビリ開始が大切。数カ月〜半年で改善が見られることが多く、その後もゆっくり回復する可能性あり 長期的な生活の質 後遺症が出ても、リハビリや福祉サービスの利用で自立を目指す。本人・家族の努力と周囲の支援が大切 再発リスク 高血圧・糖尿病などの生活習慣病が関与。薬の継続と生活習慣の見直しの両方が重要。医師の指導に従うこと アテローム血栓性脳梗塞の予後は、発症時の重症度や治療の早さ、年齢、持病の有無などに大きく左右されます。 進行が比較的ゆるやかなため発見が遅れやすく、後遺症が出ることもありますが、早期の治療と継続的なリハビリにより回復が期待できる場合もあります。再発予防には生活習慣の改善や持病の管理が不可欠です。 以下の記事では脳梗塞の予防・再発防止について詳しく解説しています。 後遺症の回復度と期間 項目 内容 回復の進み方 回復は一気に進まず、段階的に少しずつ進む。最初は命を守る治療が中心ですが、徐々に日常の動作ができるようになる 回復のスピードと個人差 どのくらい良くなるか、どれくらいの期間がかかるかは、人によって異なる。焦らず、継続が大切 心の健康も大切 後遺症への不安や落ち込みは自然。心のケア(カウンセリングや認知行動療法)も回復にはとても重要な要素 意欲を保つ工夫 「できたこと」に目を向け、小さな成功体験を積み重ねると、リハビリのやる気にもつながる 予後を良くするポイント 医師の指導に従い、リハビリを継続する、前向きな気持ちを保つこと、生活習慣を見直すことが大切 アテローム血栓性脳梗塞の後遺症がどの程度回復するか、またどれくらいの期間がかかるかは、脳の損傷範囲や発症からの時間、年齢や基礎疾患の有無によって異なります。とくに発症後しばらくの間は、脳が回復しやすい時期とされており、この時期に集中的なリハビリを行うことで、機能の回復が期待できます。 麻痺や言語障害などは回復に時間がかかるため、リハビリは焦らず取り組むことが大切です。 長期的な生活の質 支援のポイント 内容 継続的なリハビリと再発予防 身体機能の維持・改善と生活習慣の見直しによる健康寿命の延伸 精神的サポートと認知行動療法 心のケアを通じた意欲の回復と生活への前向きな姿勢の支援 家族・地域とのつながりの維持 孤立の予防と精神的な安定を支える関係性の構築 福祉制度や訪問サービスの活用 在宅生活の継続を支える支援体制の確保と介護負担の軽減 アテローム血栓性脳梗塞の後遺症は、生活の質(QOL)に大きく影響することがあります。後遺症として、麻痺や言葉の障害、心の不調などが出ると、仕事や趣味、人との関わりが難しくなることがあります。 後遺症があっても、住まいの工夫や介助具の使用、デイケアや訪問リハビリなどの支援を活用することで、生活の負担を軽くできます。 さらに、再発予防や心のケアにも取り組むことで、前向きな日常を取り戻すことが可能です。生活の質を高めるには、本人の努力だけでなく、家族や周囲の支えも欠かせません。 再発リスク 取り組み項目 内容 薬物療法の継続 抗血栓薬やスタチン系薬剤の服用による血栓予防とコレステロールの管理 生活習慣の見直し 減塩・低脂質の食事、適度な運動、禁煙、節酒による動脈硬化の進行防止 定期的な通院と検査 血圧・血糖・脂質の継続的なモニタリングと早期対応 心の健康管理(心理支援) 不安やうつへの対応、認知行動療法やカウンセリングによる自己管理力の維持と向上 (文献12)(文献13) アテローム血栓性脳梗塞は、再発のリスクが高いとされる脳卒中のひとつです。 とくに発症から間もない時期ほど再発率が高く、久山町コホート研究では、発症1年後で12.8%、5年後で35.3%、10年後には51.3%であることがわかるデータがあります。(文献14) このデータは、脳梗塞を一度発症した方の約半数が10年以内に再び発症していることを示しており、長期的な予防対策が非常に重要であることを物語っています。再発を防ぐには、薬の継続に加え、減塩・低脂質の食事、適度な運動、禁煙などの生活改善が大切です。 さらに、血圧や血糖値を定期的にチェックし、体調をしっかり管理することが再発予防につながります。再発すると、より重い後遺症が出るケースもあるため、日常生活の中で予防への意識が不可欠です。 アテローム血栓性脳梗塞の後遺症は再生医療も選択肢のひとつ アテローム血栓性脳梗塞の後遺症には、運動麻痺や言語障害などがあり、生活に大きな支障をきたすことがあります。リハビリで改善することもありますが、回復が不十分な場合も少なくありません。 そうした際の新たな選択肢のひとつとして、幹細胞を使った再生医療が注目されています。当院リペアセルクリニックでは、後遺症にお悩みの方に再生医療をご提案し、改善に向けた丁寧なサポートを行っています。 アテローム血栓性脳梗塞の後遺症でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。 アテローム血栓性脳梗塞に関するよくある質問 リハビリの開始は早い方が効果的ですか? アテローム血栓性脳梗塞の後遺症に対しては、早期リハビリの開始が効果的とされています。発症直後は脳の回復力が高く、適切な刺激により神経機能の再建が促されます。(文献1) 介護保険や障害者手帳などの制度は利用できますか? アテローム血栓性脳梗塞の後遺症が一定の程度を超える場合、介護保険や障害者手帳などの公的制度の利用が可能です。申請には医師の診断書が必要となるため、早めに医師やソーシャルワーカーに相談しましょう。(文献15)(文献16) アテローム血栓性脳梗塞の後遺症に対して家族はどのようにサポートすれば良いですか? アテローム血栓性脳梗塞の後遺症と向き合うには、本人の「できる力」を尊重し、過干渉を避けることが大切です。ゆっくりした言葉での対話や、感情の変化に寄り添う姿勢も必要です。 訪問リハビリやケアマネジャーなどの支援を活用し、家族自身も無理のない介護を心がけましょう。 参考記事 (文献1) 小笠原邦昭ほか.「脳卒中治療ガイドライン 2021〔改訂2023〕」, pp.1-180 https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2023.pdf(最終アクセス:2025年5月14日) (文献2) 国立研究開発法人「脳卒中」国立研究開発法人国立循環器病研究センター https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/stroke-2/(最終アクセス:2025年5月14日) (文献3) 公益社団法人 日本リハビリテーション医学会「脳卒中のリハビリテーション治療」公益社団法人 日本リハビリテーション医学会,2014年4月 https://www.jarm.or.jp/civic/rehabilitation/rehabilitation_01.html(最終アクセス:2025年5月14日) (文献4) Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA「脳卒中の概要」MSD マニュアル プロフェッショナル版, 2023年7月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/07-%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%96%BE%E6%82%A3/%E8%84%B3%E5%8D%92%E4%B8%AD/%E8%84%B3%E5%8D%92%E4%B8%AD%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81(最終アクセス:2025年5月14日) (文献5) 「日本神経学会治療ガイドライン痴呆疾患治療ガイドライン2002」, pp.1-4 https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/thihou_08.pdf(最終アクセス:2025年5月14日) (文献6) Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA「うつ病」MSD マニュアル 家庭版, 2023年11月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/10-%E5%BF%83%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E6%B0%97%E5%88%86%E7%97%87/%E3%81%86%E3%81%A4%E7%97%85?autoredirectid=28119(最終アクセス:2025年5月14日) (文献7) 「Ⅶ.リハビリテーション」, pp.1-70 https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/nou2009_07.pdf(最終アクセス:2025年5月14日) (文献8) 「脳卒中治療ガイドライン2021における リハビリテーション領域の動向」37(1), pp.1-13, 2022年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/37/1/37_129/_pdf(最終アクセス:2025年5月14日) (文献9) 藤原太郎ほか.「作業療法ガイドライン脳卒中」『一般社団法人 日本作業療法士協会』, pp.1-52 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/37/1/37_129/_pdf(最終アクセス:2025年5月14日) (文献10) 清野 敏秀.「脳卒中急性期の作業療法 実践の流れ」『(社)日本作業療法士協会 学術部』, pp.1-2, 2011年 https://www.jaot.or.jp/files/page/wp-content/uploads/2010/08/celebro.pdf(最終アクセス:2025年5月14日) (文献11) 伊藤 弘人.「厚生労働科学研究費補助金 障害者対策総合研究事業 (精神障害分野) 身体疾患を合併する精神疾患患者の 診療の質の向上に資する研究」『平成26年度総括・分担研究報告書』巻(号), pp.開始ページ-終了ページ, 2015年 https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/download_pdf/2014/201419018A.pdf(最終アクセス:2025年5月14日) (文献12) 「脳卒中療養支援シリーズ②脳卒中の再発防止」『京都大学医学部附属病院 脳卒中療養支援センター作成』, pp.1-8 https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/department/division/pdf/strokesupport/strokesupport_20230405_04.pdf(最終アクセス:2025年5月14日) (文献13) 公益社団法人 日本脳卒中協会「脳卒中予防十か条」公益社団法人 日本脳卒中協会, 2018年3月9日 https://www.jsa-web.org/citizen/85.html(最終アクセス:2025年5月14日) (文献14) 冨本 秀和.「脳梗塞:これからの再発予防治療*」, pp.1-5, 2018年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/35/4/35_439/_pdf(最終アクセス:2025年5月14日) (文献15) 厚生労働省「介護保険制度の概要」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html(最終アクセス:2025年5月14日) (文献16) 厚生労働省「障害者手帳」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/techou.html(最終アクセス:2025年5月14日)
2025.05.30 -
「脳炎の後遺症はどのようなものなのか」 「後遺症の影響はいつまで続くのか」 脳炎の治療は症状の改善が期待される一方で、記憶障害や言語障害などの後遺症が残る可能性もあります。日常生活や会話に支障をきたし、不安を感じる方も少なくありません。 本記事では、脳炎によって起こりうる後遺症に加え、治療後のリハビリや回復の見込みについても解説します。 脳炎で起こりうる後遺症 後遺症の種類 症状・影響 記憶障害・認知機能の低下 記憶力の低下、新しいことが覚えにくい、集中力や判断力の低下、日常生活への支障 言語障害 言葉の理解や表現の困難、発語の遅れ、不明瞭な発音、スムーズな会話の困難 運動障害や麻痺・ふらつき 手足の麻痺や筋力低下、歩行時のふらつき、細かい作業の困難、動作に時間がかかる状態 てんかん 意識消失やけいれん発作の出現、発作による転倒や怪我のリスク、生活範囲の制限 てんかんの後発の可能性 全身けいれん、意識消失、反応の低下などの発作症状、脳波異常による再発リスク、抗てんかん薬による治療の必要性 脳炎は脳に炎症を起こす病気です。治療後もさまざまな後遺症が見られることがありますが、すべての人に残るわけではありません。後遺症が出た場合、早期治療やその後のケアが大切です。 記憶障害や認知機能の低下 原因 内容 特定部位の炎症と損傷 海馬や前頭前野の炎症による神経細胞の損傷、ネットワークの障害 脳全体の機能低下 広範囲の炎症による脳全体の連携機能の低下、注意・遂行機能への影響 神経伝達物質の異常 アセチルコリンなどの減少による情報伝達の不良、記憶や判断力への悪影響 脳浮腫・脳圧亢進 血流低下による酸素・栄養の供給不足、脳機能への間接的な障害 二次的な合併症(てんかんなど) 繰り返す発作による慢性的な脳機能の低下、認知力の持続的な悪化 (文献1)(文献2)(文献3) 脳の炎症が記憶を司る部位や、思考・判断といった認知機能を担う部位に及ぶと、記憶力の低下や新しいことを覚えるのが難しくなる症状が現れることがあります。これらの症状は日常生活に支障をきたし、ストレス要因になる恐れがあります。 症状の重さは人によって異なり、場合によっては医療機関での診察や生活支援が必要です。適切な対応と経過の観察が大切です。 言語障害 症状の種類 特徴・具体例 話す力の障害 言葉が出ない、話すのが遅い、短く途切れる話し方、文法ミスが多い 聞く力の障害 話の内容が理解できない、意味のない言葉や言い間違いが増える 読む力の障害 文字が読めない、読むのに時間がかかる、意味が理解できない 書く力の障害 文字が書けない、字形や綴りの間違い、文法ミスが多い文章になる 名前が出ない 物の名前が思い出せない、「あれ」「それ」「これ」などの言葉を多用する 言葉の反復が困難 相手の言葉を繰り返せない 音読が困難 文字を声に出して読むことができない 脳炎によって言語を司る領域が損傷されると、言葉の理解や発話が難しくなることがあります。自分の意思の伝達や聞き取りの困難などが現れるケースもあります。 言語障害は、医師の指導のもとで行う言語療法により改善が期待でき、早期に適切な訓練が欠かせません。 運動障害や麻痺・ふらつき 症状 症状の具体例 想定される原因 麻痺 片側の手足、両手、両足、または四肢すべてに力が入らない状態 運動をつかさどる脳の皮質の損傷、神経伝達の障害 筋力低下 動作が遅くなる、持ち上げる力が弱くなる 錐体路や筋肉への指令伝達の低下 運動失調 ふらつき、まっすぐ歩けない、体のバランスが取りづらい状態 小脳の損傷、運動の協調を担う神経回路の障害 手の震え(企図振戦) 手を伸ばすと震えが強くなる 小脳の障害、協調運動機能の異常 協調運動の障害 ボタンをかける、箸を使うといった細かい動きが難しくなる 小脳や運動関連領域の機能低下 構音障害 発音が不明瞭になる、舌や口がうまく動かない 小脳や脳幹の損傷、発語に関わる筋肉の動作不全 筋緊張の異常 筋肉が突っ張る(痙縮)、硬くなる(固縮) 錐体外路の障害、筋緊張の制御不全 反射の異常 膝を叩くと強く跳ねる、足の裏をこすると指が反り返る(バビンスキー反射) 脳幹や脊髄を通る神経の調節異常 筋萎縮・体力低下 長期間の臥床により筋肉が細くなる、疲れやすくなる 活動量の減少、筋力の低下 (文献4)(文献5) 脳炎により運動機能をつかさどる脳の領域が損傷されると、手足の麻痺、筋力低下、ふらつき、細かい動作の困難などが現れることがあります。 歩行や日常動作に支障をきたすケースもあり、症状によってはリハビリでの改善が期待できる一方、後遺症が長引く場合もあります。 てんかんの後発の可能性 分類 内容 部分発作(焦点性発作) 手足の痙攣、しびれ、動悸、発汗、既視感などが一部の脳から始まる発作 全般発作 意識消失や全身のけいれん、体のピクつき、一時的な意識の飛びなど全脳に広がる発作 発作の頻度と重症度 人によって異なる発作の回数と強さ。軽度から頻発までさまざまなケース てんかん重積のリスク 発作が止まらず繰り返す重篤な状態。意識が戻らず、緊急の治療が必要なケース 認知機能への影響 記憶力や集中力の低下、抗てんかん薬の影響による思考力の変化 精神的な影響 発作への不安や社会的な制限からくる抑うつや不安、心理的ストレスの増大 (文献6)(文献7) 脳炎によって脳の神経細胞が損傷を受けると、電気的な活動が不安定になり、てんかん発作を引き起こす可能性があります。突然のけいれんや意識の消失、ぼんやりした状態などの発作が現れることがあります。 てんかんは再発の可能性もあるため、継続的な観察と適切な薬物治療が必要です。治療により発作をコントロールできることも多く、医師の指示に従った継続的な管理が求められます。 以下の記事では、てんかん手術について詳しく解説しています。 情緒不安定になる 主な症状 状態 感情の起伏の激しさ 急な怒りや涙など感情の変化が大きく現れる状態 感情の持続困難 喜びや悲しみなどの気持ちが長続きせず、すぐに別の感情に変わる状態 イライラしやすさ 小さな出来事に過敏に反応し、怒りや不快感が高まりやすくなる状態 不安感の強さ 理由がはっきりしない不安や将来への悲観的な考えが浮かびやすい状態 抑うつ的な気分 気分の沈み、意欲の低下、何も楽しめない状態 衝動的な行動 感情に任せて思わぬ行動をとってしまう状態 感情コントロール困難 感情を抑えたり、表現を調整したりが難しくなる状態 過敏な反応 周囲の言動に対して敏感になり、必要以上に気にしたりネガティブに捉える状態 (文献8) 脳の感情をつかさどる部位が炎症の影響を受けると、感情の起伏が激しくなったり、憂うつな気分や意欲の低下が続くなど、情緒が不安定になりやすくなります。興味や楽しみを感じにくくなることもあり、日常生活に支障をきたす場合もあります。 情緒不安定な状態が続く場合、医師や周囲の支えが大切です。気分の落ち込みが続く場合は、精神科や心療内科の受診も検討しましょう。 脳炎における後遺症の回復・改善方法 概要 回復内容 注意点 リハビリテーション (言語・作業・理学療法) 話す・動く・歩くなどの身体機能を段階的に回復させる方法 専門家の指導のもとで継続的に取り組むことが重要 薬物療法 症状を薬でコントロールし、生活しやすくする方法 医師の指示に従い、副作用に注意しながら服用する 生活習慣の改善 食事・睡眠・運動を整えて回復を支える方法 無理なく続け、ストレスの管理に気をつける 精神的ケア・カウンセリングの活用 不安や落ち込みを和らげて心の安定を図る方法 一人で抱え込まず、早めに専門家や周囲への相談が大切 脳炎の後遺症からの回復や改善には、早期からの適切なアプローチが不可欠です。 脳炎の回復には、自己判断を避け、医師の指導のもとでの対応が必要です。また、焦らず段階的に回復を目指すことが大切です。 リハビリテーション(言語療法・作業療法・理学療法) 種類 目的 内容 期待される効果 言語療法 話す・聞く・読む・書く・飲み込む機能の回復 発声練習、構音訓練、聴覚理解、失語症訓練、嚥下訓練、補助的な伝え方の習得 コミュニケーション力と食事動作の改善 作業療法 日常生活動作・手の使い方・認知機能の回復 着替え・食事・排泄の練習、記憶・注意力トレーニング、手の訓練、生活環境の調整 自立した生活動作と社会復帰への支援 理学療法 立つ・歩く・座るなどの運動機能や筋力・バランスの改善 筋力トレーニング、関節運動、歩行練習、物理療法(温熱・電気など)、装具使用指導 動作の安定化、転倒予防、違和感の軽減、呼吸機能の維持 (文献9)(文献10) 脳炎の後遺症の回復期間は、炎症の程度や広がり、症状の種類、体の回復力によって大きく異なります。早期に改善する場合もあれば、回復に時間がかかることもあります。 重い後遺症では元の状態に戻るのが難しいこともありますが、焦らず根気強くリハビリを継続することが大切です。 薬物療法 項目 内容 治療の目的 症状を和げることで、生活の負担を軽減し、リハビリにも取り組みやすい状態を整えることが目的 有効性の理由 脳の損傷により乱れた神経伝達や過剰な神経活動を整えることで、精神的・身体的な症状の緩和につながる 主な作用 抑うつや不安の軽減、てんかん発作の予防、筋肉の緊張の緩和、神経痛や筋肉痛の軽減、不眠の改善が期待される 治療の特徴 薬物療法は後遺症の原因を直接治すものではなく、あくまで現れている症状に対応する対症療法として実施される 治療の進め方 症状の種類や程度、体質などを考慮し、医師が患者ごとに適した薬を選び、投与量を調整しながら進めていく リハビリとの関係 症状が落ち着くことでリハビリにも前向きに取り組めるようになり、全体的な回復の促進につながる 注意点 副作用の可能性があるため、医師の指示を守ることが大切であり、体調の変化があれば、すぐに医師に相談する (文献11)(文献12) てんかん発作や、精神的な症状に対しては、薬物療法が行われることがあります。薬物療法は、症状のコントロールやリハビリの効果を引き出す上でも有効です。 ただし副作用のリスクもあるため、医師の指示のもと服用する必要があります。また、自己判断で量を増やしたり服用を中断したりしないよう注意が必要です。 また、脳炎の後遺症は薬物療法だけではなく、リハビリなどと組み合わせて、行うことが大切です。 生活習慣の改善 項目 内容 栄養の確保 脳細胞の修復や神経回路の再構築に必要なエネルギーと栄養素の供給 血流と酸素供給の促進 運動による血行改善によって、脳への酸素と栄養が行き渡りやすくなる状態 脳の休息と修復 質の高い睡眠によって、記憶の整理や神経の再生が進みやすくなる状態 ストレスの軽減 精神的な緊張を和らげ、自律神経とホルモンバランスを安定させる環境の整備 生活リズムの安定 食事・睡眠・起床の時間を整え、体内時計や脳の機能がしっかり働く生活パターンの維持 (文献13) 脳炎後の回復には、生活習慣の見直しが大切です。栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動は脳の回復を促します。 ストレスや飲酒・喫煙は回復を妨げるため注意が必要です。無理のない範囲で規則正しい生活を続けることが、体力の維持や再発予防につながります。 以下の記事では、生活習慣の改善について詳しく解説しています。 精神的ケアやカウンセリングを活用する 項目 内容 心の負担の軽減 精神的な安定を取り戻すための支援 前向きな気持ちの育成 医師との対話を通じて、リハビリに前向きに取り組むための心の準備 困難への対処法の習得 記憶障害や感情のコントロールなど、後遺症への対応方法を専門家と共に見つける支援 自己理解と自己肯定感の向上 変化を受け入れ、新たな自分を肯定する力を育てるためのサポート 周囲とのコミュニケーション支援 家族や友人との関係を円滑にし、理解と協力体制を築く 孤立感の解消と社会参加の促進 社会資源や支援団体とのつながりを通じて、孤立からの脱却と社会復帰を支える環境づくり (文献14) 後遺症による生活の変化や将来への不安から、精神的な負担を感じることは少なくありません。 精神的な不安が続く場合、医療機関の精神科やカウンセリングを利用するのも有効な手段です。周囲に相談できる環境を整えることが、前向きな気持ちを取り戻す一歩となります。 脳炎における後遺症の回復期間について 脳炎の後遺症からの回復において大切なこと 詳細 回復には個人差がある 回復の早さは炎症の程度や後遺症の種類、体力などによって異なり、数週間~数年かかることもある 焦らず、諦めない姿勢 回復はゆっくり進むことが多いため、自分のペースで継続する姿勢が大切 専門家との連携 医師やリハビリスタッフと連携し、自分に合った回復プランを立てて進めることが効果的 小さな変化を前向きに捉える わずかな改善も前向きに受け止め、回復の手応えとして喜びに変える意識がモチベーションにつながる 継続的なリハビリが鍵 リハビリは継続で効果が出やすく、途中で中断せず、地道に続けることが重要 周囲への相談と共有 困ったときや不安なときは、医師・カウンセラー・家族に相談し、孤立しない工夫が必要 心と体のペースを尊重する 無理をせず、その日の体調に合わせて調整すると、継続しやすくなる 社会復帰への準備 徐々に日常生活や仕事・趣味に戻ることを視野に入れ、社会参加の機会を少しずつ増やしていくことが大切 脳炎の後遺症の回復には個人差があり、期間を一概に示すことはできません。記憶障害や麻痺などは、根気強いリハビリの継続が不可欠です。 回復のスピードは、脳の損傷部位や広がり、年齢、基礎疾患の有無などによっても左右されます。適切な医療支援とリハビリにより、生活機能が改善する例も多くあります。焦らず、段階的な目標を持って取り組むことが大切です。 脳炎の後遺症でお悩みなら再生医療も選択肢のひとつ 脳炎の後遺症は、運動麻痺や言語障害などを引き起こし、日常生活や人間関係に大きな影響を与えることがあります。 放置すると生活への支障だけでなく、気分の落ち込みなど精神的な負担につながることもあります。 リハビリで改善が難しい場合は、幹細胞を用いた再生医療も選択肢のひとつです。脳炎の後遺症でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。 脳炎の後遺症に関するよくある質問 以前のように元通りになることは可能ですか? 脳炎の後遺症が完全に回復するかは個人差があり、炎症の程度や治療の早さ、年齢などが影響します。後遺症が出るケースもありますが、リハビリや支援によって生活の質を高めることは十分期待できます。(文献4)(文献10) 後遺症があったとしても仕事に復帰できますか? 脳炎の後遺症がある場合でも、症状の程度や職種、職場の理解・支援体制によっては仕事の復帰は望めるでしょう。リハビリの継続と職場環境の調整により、無理のない復職を目指すことが大切です。 脳炎の後遺症が自然に改善されることはありますか? 脳炎の後遺症は自然に回復するケースもありますが、回復の程度や期間には個人差があります。とくに発症から早期に適切な治療が行われた場合、回復の可能性が高まります。脳炎の後遺症の回復経過は自己判断ではなく、医師と連携しながら確認していくことが大切です。(文献9) 参考資料 (文献1) JIHS国立健康危機管理研究機構「ヘルペス脳炎」国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ha/herpes-encephalitis/010/herpes-encephalitis.html(最終アクセス:2025年5月13日) (文献2) Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA「脳炎」MSD マニュアル プロフェッショナル版, 2022年3月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/07-%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%96%BE%E6%82%A3/%E8%84%B3%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87/%E8%84%B3%E7%82%8E(最終アクセス:2025年5月13日) (文献3) 「自己免疫介在性脳炎・脳症」, pp.1-20 https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/000828398.pdf(最終アクセス:2025年5月13日) (文献4) Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA「脳炎」MSD マニュアル 家庭版, 2024年7月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/09-%E8%84%B3-%E8%84%8A%E9%AB%84-%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%84%B3%E3%81%AE%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87/%E8%84%B3%E7%82%8E(最終アクセス:2025年5月13日) (文献5) 日本学術復興会「急性脳炎の発病・後遺症形成過程とグルタミン酸受容体自己免疫の研究」KAKKEN, 2005年4月1日 https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17591133/(最終アクセス:2025年5月13日) (文献6) 池田昭夫.「日本てんかん学会ガイドライン作成委員会報告 高齢者のてんかんに対する診断・治療ガイドライン」『高齢者のてんかん』, pp.1-17 https://jes-jp.org/pdf/aged_epilepsy.pdf(最終アクセス:2025年5月13日) (文献7) 三枝 隆博.「自己免疫機序が関与するてんかん」『自己免疫機序が関与するてんかん』, pp.1-5, 2018年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/36/4/36_447/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年5月13日) (文献8) 船山道隆.「脳炎後の神経心理症状および精神症状とリハビリテーション治療」『脳炎治療アップデートと脳炎後遺症リハビリテーション治療』, pp.1-7,2023年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/60/6/60_60.498/_pdf(最終アクセス:2025年5月13日) (文献9) 浦上裕子.「脳炎後の記憶障害と リハビリテーション治療」『脳炎治療アップデートと脳炎後遺症リハビリテーション治療』, pp.1-7,2023年, pp.1-7,2023年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/60/6/60_60.491/_pdf(最終アクセス:2025年5月13日) (文献10) 浦上裕子.「脳炎─記憶障害の回復と リハビリテーション─」『高次脳機能障害のリハビリテーション ―回復の可能性―』, pp.1-5, 2016年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/53/4/53_287/_pdf(最終アクセス:2025年5月13日) (文献11) 西田拓司 .「脳炎後てんかんの薬物療法」『脳炎治療アップデートと脳炎後遺症リハビリテーション治療』, pp.1-7,2023年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/60/6/60_60.484/_pdf(最終アクセス:2025年5月13日) (文献12) 「単純ヘルペス脳炎の治療」, pp.1-32 https://www.neurology-jp.org/guidelinem/hse/herpes_simplex_2017_08.pdf(最終アクセス:2025年5月13日) (文献13) 「「HHV-6脳炎発症後の日常生活のくふう」 どうしたらいいんだろう??」, pp.1-9 https://toranomon.kkr.or.jp/zoketsu-kyoten/files/images/pdf/LTFU_HHV-6.pdf(最終アクセス:2025年5月13日) (文献14) 山徳雅人 .「脳炎患者の両立支援」『脳炎治療アップデートと脳炎後遺症リハビリテーション治療』, pp.1-7,2023年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/60/6/60_60.511/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年5月13日)
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