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「腰椎椎間板ヘルニアの症状とはどのようなものか?」 「どの程度で手術が必要になるのか?」 このように疑問を抱く方は多いのではないでしょうか。 腰椎椎間板ヘルニアは、非常によく見かけるヘルニアの一種であり、症状やその重さは人によってさまざまです。場合によっては手術が必要となるケースもあります。 本記事では、腰椎椎間板ヘルニアの具体的な症状や程度、さらに治療法について詳しく解説します。 腰椎椎間板ヘルニアとは? 腰椎椎間板ヘルニアとは、背骨の各骨と骨の間に存在する椎間板と言われる部位が膨隆(膨らんで高くなった状態)や外へ飛び出して神経を圧迫することで、痛みや痺れといった症状が生じることもあります。 次章より、腰椎椎間板ヘルニアの症状レベルや治療、そして再生医療の可能性についても触れていきます。 腰椎椎間板ヘルニアの種類(分類) 腰椎とは、腰のあたりにある背骨のことで、5つの骨(椎体:ついたい)から成り立っています。 そもそも背骨は、椎体という骨が上下に積み重なっているような構造をしています。 この椎体と椎体の間には、椎間板(ついかんばん)というクッションのようなものがあり、衝撃を和らげるなどの働きをしています。 椎間板ヘルニアは、この椎間板の中身(髄核:ずいかく)やその中身を包む袋のようなもの(線維輪:せんいりん)が膨らんだり、また外に脱出、飛び出したりすることで、神経を圧迫した状態です。症状が出ていない場合でもヘルニアと診断されることもあります。 人口の約1%(100万人〜120万人)がこの腰椎椎間板ヘルニアに悩んでいるという報告もあり、決して珍しいヘルニアではありません。 男女比はやや男性の方が多く(約2〜3:1)、好発年齢は20〜40才代、好発部位はL4-L5、L5-S1(※)とされています。(※L=腰椎 S=仙椎) 椎間板ヘルニアは、椎間板がどの程度飛び出しているかによって、正中型ヘルニア・傍正中ヘルニア・外側ヘルニアの3種類に分類されます。 それぞれがどのようなヘルニアなのか詳しくみていきましょう。 正中型(せいちゅうがた)ヘルニア 正中型ヘルニアでは、椎間板の中央部で、脊柱の正中、つまり背骨に対してほぼ垂直に飛び出します。(脊柱管の内側に飛び出す) 正中型ヘルニアになると、脊髄や馬尾神経(ばびしんけい)が圧迫されます。 症状としては、まず腰痛があるでしょう。そのほか、両足の痺れや歩行障害、馬尾神経にまで影響があった場合には、排泄障害が伴う可能性があります。 傍正中(ぼうせいちゅう)ヘルニア 傍正中ヘルニアは、正中型よりもやや左右どちらかの外側にずれた方向へ、椎間板が突出する状態です。(脊柱管の内側に飛び出した状態) 症状として、腰の痛みが挙げられます。ただ、それ以外の症状が、正中型と異なる点に注意しましょう。 傍正中ヘルニアは、左右どちらかに寄っているだけあり、左右片方だけで症状が現れやすいです。 たとえば、片足だけが痺れる、痛むといった症状が現れます。 外側(がいそく)ヘルニア 外側ヘルニアは、椎間板が脊柱管の外側に飛び出すことを意味します。 上記ふたつは、背骨の方向、つまり脊柱管に収まる範囲で起こるヘルニアでした。 しかし外側ヘルニアは、脊柱管の外、つまり傍正中ヘルニアよりもさらに左右に偏った方向へ飛び出します。 症状として、左右どちらかの神経圧迫により、片足だけの痺れや痛みを感じやすいでしょう。また筋力低下や、坐骨神経痛なども伴いやすい傾向があります。 オンラインで相談する 腰椎椎間板ヘルニアの症状レベル 腰椎椎間板ヘルニアでは、椎間板の変性などの度合いによって症状を段階分けできます。 具体的には以下のようなレベル、段階があります。 軽度レベル 中程度レベル 重症レベル(手術するレベル) それぞれがどういうものか見ていきましょう。 軽症レベル 椎間板がわずかに飛び出しているものの、神経を圧迫するほどではない段階です。 この時の症状として、軽度の腰痛などが挙げられます。また、首にわずかな痛みを感じるケースもあるでしょう。 しかし軽症レベルでは、痺れや筋力低下などの症状はほとんど見られません。あったとしても、本人がほとんど知覚できない程度です。 軽症レベルでは、簡単な工夫による改善が期待できます。 たとえば簡単なストレッチや姿勢の改善によって、症状が楽になるかもしれません。 中等度レベル 中等度では、椎間板の突出が進み、神経が圧迫され始めます。さらに繊維輪を断裂するようになります。 この段階では以下の症状が表れるでしょう。 強い腰痛 両足または片足の痛み 首周辺の痛み 手足の痺れ 坐骨神経痛 筋力の低下 中等度レベルでは、症状がより強くなります。 場合によっては、普段の仕事や家事がこなせなくなることもあります。 また特に痛みが強いため、状況に応じて痛み止めなどの服用が必要になるでしょう。もちろん根本的な解決を図るための治療も進めていく必要があります。 重症レベル 重度レベルになると、椎間板が大きく飛び出し、より強く神経を圧迫します。この状況を「脱出」あるいは「遊離」といいます。 症状として以下が挙げられるでしょう。 激しい腰痛や首の痛み 足に限らない、幅広い部分での痺れ 感覚の鈍麻 筋力の低下と麻痺 歩行困難 排泄障害 馬尾症候群 重症レベルでは、かなり重い症状が現れます。この段階で、通常通りの生活を送るのはほぼ不可能でしょう。 いわゆる「手術するレベル」の症状です。 このような状態になる前に、治療や改善を図るのが重要となるでしょう。 オンラインで相談する 腰椎椎間板ヘルニアの治療(治し方) 腰椎椎間板ヘルニアを治すためには、まずは画像検査が必要で、それにはMRIが最も有用です。 変性してしまった椎間板は正常なものと異なっているように写し出されるため、脱出した椎間板の部位や分類診断についても役立ちます。 椎間板ヘルニアは、自然治癒する可能性もあります。 時間の経過により、飛び出した椎間板が体の中に吸収され、外へ排出される場合があります。 そのため、排尿や排便にも影響が出るような膀胱直腸障害など重い神経障害がある場合を除いて、まずは保存療法が選択されます。 保存療法による改善が期待できない場合、手術療法や再生医療が選択されます。それぞれ治療法の詳細を見ていきましょう。 保存療法 保存療法としては、非副腎皮質ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの鎮痛薬を使用するケースが多いです。 その他、神経ブロック注射も選択肢にあがるでしょう。 また、体を柔らかくするストレッチやリハビリもとても効果的です。 手術療法 膀胱直腸障害や運動麻痺などの重い神経症状がある場合や、保存療法でも強い痛みが続く場合には、手術療法が行われます。 その場合は、症状の原因となっている椎間板を摘出するような方法が取られます。 手術の仕方によっていろいろな種類があり、内視鏡を使った最小侵襲の手術が今は主流となっています。 関連記事:ヘルニア治療のPLDD手術|失敗しないためのポイントとは 関連記事:椎間板ヘルニアの内視鏡手術|PELD(PED)とMEDの違いとは 再生医療 再生医療では幹細胞を用いて、傷ついた椎間板の修復や再生を目指します。腰椎椎間板ヘルニアの治療法としては最新のもの。 ヘルニアになった場合、脊髄が損傷している、炎症を起こしているケースが多々あります。そのままだと、痛みや痺れなどの症状が現れます。 しかし保存および手術療法では、十分な治療効果が得られないかもしれません。 そこで再生医療によって脊髄を再生させ、根本的な治療を図ります。 私たちは再生医療として、効果を高めるため「脊髄腔内ダイレクト注射療法」などを実施しています。 オンラインで相談する https://fuelcells.org/treatment/spinal_cord/ 腰椎椎間板ヘルニア|よくある質問 腰椎椎間板ヘルニアについて、よくご質問頂くことについて記しました。その他ご質問、再生医療の可能性などはお問い合わせください。 Q1:椎間板ヘルニアの際は安静にした方が良いですか? A1:絶対安静が必要ということではありません。 腰の痛みや足の痛み、痺れ感がある場合には安静にしておく方が良いといわれることも多いかと思います。 しかし、自宅で安静にした方が早く治るという科学的な根拠はありません。 痛みが強すぎて動けない場合は自宅で安静にしている他ありませんが、動けるのであれば腰や足の筋力が弱くならないように、少しずつ動くようにすると良いでしょう。 Q2:保存療法としてコルセットは効果がありますか? A2:試してみる価値はあると考えられます。 腰椎椎間板ヘルニアの患者さんは、立っている方が座った姿勢よりも痛みが楽に感じるケースが多いようです。それは立っている状態の方が姿勢を保持しやすいのが理由です。 コルセットを着用して姿勢の保持をしやすくするのは痛みを和らげるために効果があると言えます。 ただし、コルセットに頼りすぎると筋力が低下してしまい、コルセットがなければ生活ができないということもあるので注意が必要です。 コルセットをするなら必ず筋力トレーニングは必要となります。 まとめ・腰椎椎間板ヘルニアの症状レベルを把握して最善の治療を 今回は腰椎椎間板ヘルニアの症状や治療法などを解説しました。 腰椎椎間板ヘルニアで症状が重い方には手術療法が選択されます。 しかし、手術をおこなっても圧迫され続けた脊髄や神経根の損傷が完全に修復されないこともあります。すると、痺れや痛みといった症状が残るかもしれません。 そのような場合、当院の再生医療、幹細胞で治療するという方法をご検討ください。 脊髄腔内ダイレクト注射で投与という当院独自の方法を用いて、傷ついた神経の再生を試みます。これまで多くの症例を経験し、症状の改善がみられています。詳しくは以下の動画をご覧ください。 https://www.youtube.com/watch?v=4AOGsB-m63Y&t=132s ▶腰椎椎間板ヘルニアの手術を受けてもなかなか症状が改善しない、というような方は、一度当院までご相談ください。 オンラインで相談する 参考文献) 腰痛を診る.日本医科大学医学会雑誌.2006(2):42-46. p44 腰痛を診る.日本医科大学医学会雑誌.2006(2):42-46. p43 腰椎椎間板ヘルニアの治療 Mindsガイドラインアプリ p37 腰椎椎間板ヘルニアの治療 Mindsガイドラインアプリ p40 ▼腰椎ヘルニアの治療は以下も参考にしていただけます 腰椎椎間板ヘルニアの治療について|ブロック注射は有効か?
2023.11.02 -
- 大腿骨骨頭壊死
- 股関節
大腿骨頭壊死|リハビリメニューの詳細と期間、手術をする場合の種類 大腿骨頭壊死は、股関節を形成する大腿骨頭の血流障害によって大腿骨頭に壊死が生じ、骨の圧壊や疼痛を引き起こす疾患です。 お仕事をしている患者さんにとって、治療はどうなるのか、仕事復帰は出来るのか不安に思う人もいると思います。 治療方針は、壊死の範囲や進行具合によって異なります。患者さんによっては手術をせず、保存療法で治療できる方もいます。手術後はもちろんリハビリを行いますが、保存療法でも、社会復帰を果たす上でリハビリはとても重要です。 今回は大腿骨頭壊死について、運動療法でのリハビリのメニューと期間、また手術を検討するケースについて解説します。 大腿骨頭壊死の治療 「壊死」というと、どんどん骨が腐ってしまう恐ろしい病気のようなイメージを持たれるかもしれませんが、大腿骨頭壊死は診断されたら即手術が必要という疾患ではありません。適切な治療を行うことで、壊死の進行を止めたり、壊死部を修復させたりすることができます。 大腿骨頭壊死は、診断されたとき病型(Type分類:大腿骨頭のどのあたりが壊死しているか)と病期(Stage分類:壊死と圧壊がどのくらい進んでいるか)によって治療方針が決まります。 病型・・・Type分類:大腿骨頭のどのあたりが壊死しているか 病期・・・Stage分類:壊死と圧壊がどのくらい進んでいるか 壊死範囲が広い場合や、すでに圧壊が進行してしまっている場合にはすぐに手術を行う場合もあります。一方、壊死範囲が小さい場合や、体重のかかりづらい部位にある時は、保存療法を基本に治療をすすめます。 保存療法でも治るのか? 保存療法の目標は、壊死部を圧壊させないことです。長期的には、軟骨がすり減り、変形性の関節症になってしまうことも防がなくてはなりません。 保存療法の基本的な方針は、股関節への直接の負担を減らすことです。これは松葉杖などを使用して体重の負荷を減らしたり、減量したり、股関節に負荷がかかる動作を避けたりすることで実現します。 一方、股関節への負担を減らすためには、股関節周囲の筋肉や下肢の筋力アップも欠かせない治療です。そのためにリハビリテーションを行います。 大腿骨頭壊死のリハビリプログラム 大腿骨頭壊死では、 股関節を痛みで動かせない 筋力や関節可動域(関節が動かせる範囲)、柔軟性の低下 股関節の負担が増加し、関節が硬くなる 痛みで日常生活に支障が出る といった悪循環を繰り返してしまいます。大腿骨頭壊死のリハビリでは、これらの悪循環を断ち切るため、股関節の動きをよくすること、そして股関節周りの筋肉を鍛えることを目標とします。 リハビリメニュー ここからは実際にどんなリハビリプログラムを行うのか、メニューの一例をご紹介します。 ストレッチ まず、股関節の柔軟性を良くするために、ストレッチはリハビリに欠かせません。 股関節の屈曲 仰向けの状態で膝を立て、股関節を曲げていきます。曲げている方の足の太ももをもって体の方にできるだけ引き寄せます。タオルやゴムバンドなどの補助を使いながら、徐々に動かせる範囲を広くしていきます。 股関節の外転 股関節を外側にひらく方向のストレッチです。仰向けの状態で行います。膝のお皿は上を向くように気を付けます。 股関節の外旋 胡坐をかくような形のストレッチです。仰向けになり片足づつ行ってもよいですし、実際に座って胡坐の姿勢で行ってもよいです。痛みのない範囲で曲げた膝を床の方向へ押していきます。 うつ伏せ しっかりとうつ伏せの体勢をとるだけでも、股関節を曲げる筋肉が伸ばされていきます。股関節がしっかり伸ばせないと、お尻が上がってしまうので気を付けます。 腰の曲げ伸ばし 腰椎や骨盤部の柔軟性も重要です。座った状態で腰を丸めたり、伸ばしたりしていきます。 ただし、痛みやつらさを感じる強さのストレッチは逆効果です。呼吸を止めずにゆっくりと行います。 筋力トレーニング 筋力トレーニングというと、スクワットやダンベルなどを使った筋トレを思い浮かべる方もいらっしゃると思いますが、大腿骨頭壊死では股関節への負担をなるべくかけないようにするため、過度なトレーニングは避けます。 ベッドに横になったままでも、十分筋力は鍛えられます。 腰上げ(ブリッジング) 仰向けで両ひざを立てます。そこからお尻を地面から離すように上げていき、体が一直線になるようにします。これはお尻の後ろの筋肉を鍛えることができます。 足上げ(座位) 仰臥位の状態で、膝をのばしたまま片足ずつ地面から20㎝ほど挙げます。もも前の大腿四頭筋という筋肉が鍛えられます。 足上げ(横向き) 横向きの状態で、上になった側の足を伸ばしたままゆっくりと真上に上げます。股関節を外にひらく中殿筋を鍛えます。 足上げ(うつ伏せ) うつぶせの状態で片足ずつ膝を伸ばしたまま、太ももが床から少し浮くくらい持ち上げます。これは太ももの後ろのハムストリングという筋肉を鍛えるのに有効です。 これらの運動に加えて、水中ウォーキングやエアロバイクなど患者さんの痛みや運動能力に応じて追加していきます。 このようなリハビリは、数回行っただけでは効果は表れません。定期的に通っていただくことはもちろん、自宅でもできるトレーニングですので、時間をみつけて患者さん自身でも行っていただく必要があります。 リハビリ期間 基本的には、一般的に医療保険でのリハビリが可能な150日を目安に行うことが多いです。 ただし、経過中は医師の診察やレントゲンのチェックを行い、進行がないか、どの程度改善しているのかをきちんと判断しながら、リハビリ期間を決定します。患者さんの状態によって、リハビリメニューや期間は変わりますが、続けていかないと効果が出ないという部分は共通しています。 大腿骨頭壊死の手術療法 運動療法による保存療法で改善が見込めない場合は、手術を検討することになります。 大腿骨頭壊死の手術には、骨切り術と人工関節(人工骨頭)があります。どちらもメリット・デメリットがあり、場合により適応とならないため、主治医とよく相談する必要があります。 骨切り術 骨切り術は、骨を切って大腿骨頭を回転させ、壊死した部分に体重がかからないようにする手術です。 自分の骨を温存することができ、将来的には人工関節の手術もできるという利点があります。ただし、手術が難しく限られた施設でしか行われないこと、手術をしたとしても、骨頭の圧壊が進んでしまう可能性があること、疼痛が残る場合があることなどがデメリットです。また、骨切りを行った場合は、平均して6週間程度の入院期間が必要となります。 人工関節 一方人工関節は、入院期間が10日ほどで退院できる場合が多いです。ただし耐用年数の問題で、あまり若年で行うことは避けるべきといわれています。また、人工関節は脱臼してしまうこともあります。 このような、メリット・デメリットがあるため、病型や病期、患者さん個々の状態を考慮して決定します。 大腿骨頭壊死についてよくあるQ&A Q:大腿骨頭壊死と診断されました。スポーツはもうできませんか? スポーツを許可できるかどうかは、大腿骨頭壊死の病期と病型によってきまります。 壊死範囲が小さく圧壊の危険性が少ない場合は、ほとんど制限されないこともあります。 壊死範囲が中程度になると、ゴルフなどの軽いスポーツは許可できますが、ジャンプ運動などは股関節への負担が強いため、基本的には望ましくありません。 Q:食べ物やサプリなど、大腿骨頭壊死の発症を防ぐものはありますか? 現状では、明らかな発症予防効果が認められているものはありません。ただし、研究段階ではありますが、ビタミンEが大腿骨頭壊死の発症を予防するという報告もあります。これからさらに研究が進んでいくことが期待されます。 まとめ・大腿骨頭壊死|リハビリメニューの詳細と期間、手術をする場合の種類 今回は、リハビリを中心に、大腿骨頭壊死の治療について解説しました。大腿骨頭壊死と診断されても、壊死の範囲や進行具合によっては保存的に治療することは可能です。 生活習慣を見直しながら、適切なリハビリテーションを継続し、無理なく仕事復帰を目指しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 ▼こちらも参考にしてください 大腿骨頭壊死で注意すべき!やってはいけないこと
2023.10.23 -
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大腿骨頭壊死の保存療法と骨切り術の予後について 大腿骨頭壊死とは股関節にある大腿骨頭が壊死してしまい潰れることで痛みを生じる原因不明の疾患です。 大腿骨頭を栄養している血管が障害されることが原因と考えられており、免疫を抑えるステロイドやアルコールなどが危険因子ですが、正確な原因は未だ明らかになっていない難病です。 一度壊死が起こってしまうと、その部分を再生させることは現代の医療でも不可能です。そのため、保存治療でも効果がない場合には骨を切って壊死した部分に体重がかからないようにする骨切り術や、人工関節での手術治療が行われてきました。また最近では、軟骨の再生を目的として自分の細胞を用いた再生医療も行われています。 この記事では、大腿骨頭壊死の保存療法と骨切り術の予後、また再生医療の可能性についても解説していきます。 大腿骨頭壊死の予後予測とは 予後というと“がん”のように生存できる期間のことを連想されると思いますが、大腿骨頭壊死自体で生命に危険が及ぶことはありません。 ここでいう予後とは壊死によって大腿骨が潰れてしまう割合や痛みのために、人工関節が必要になるまでの期間や割合のことを指します。 また大腿骨頭壊死は発症する年代や性別が様々であり、そういったもともとの患者さんの状態や壊死した領域の広さによっても予後が異なります。そのため、ここでご紹介する数値はあくまでも参考値であり、実際の予後については担当医と十分に相談することが必要です。 予後予測の重症度分類 原因不明である特発性大腿骨頭壊死では壊死の範囲によって重症度分類がありtype A~Cに分けられます。 重症になるほど壊死範囲が大きく、大腿骨頭が潰れてしまうリスクが高くなります。 保存治療の予後について 特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドライン2019年版では保存治療を行なった場合の大腿骨頭の圧壊率について記載されています。 ガイドラインでは圧壊率は軽症であるtype Aで0%、type Bで0〜29%、type C1で13〜26%、type C2で50〜86%と報告されています。 大腿骨頭の圧壊率 type A 0% type B 0〜29% type C1 13〜26% type C2 50〜86% そのため、壊死領域が小さいtype Aでは圧壊がみられないので保存治療の予後は良好です。 保存治療では、安静にしたり、松葉杖やロフストランド杖を使ってできるだけ体重をかけないようにします。保存治療であれば基本的には入院は不要ですが、痛みのため自宅で生活ができない場合には病院に入院して治療を行う場合もあります。 骨切り術の予後について 骨切り術の目的は壊死した領域に体重がかかることで圧壊が進行しないように大腿骨を骨切りして移動・回転させ壊死範囲に体重がかからないようにすることです。 そのため、壊死した範囲によって術式が選択されますが、適切に術式を選択した場合には良好な成績が報告されています。 ガイドラインに記載されている代表的な骨切り術に、大腿骨内反骨切り術と大腿骨頭回転骨切り術があります。壊死範囲が比較的狭い場合には内反骨切り術が選択される傾向があり、壊死範囲の部位によっては大腿骨頭を回転させる骨切り術を行います。 一般的に回転骨切り術の方が手術侵襲(身体への負担)は大きく、可能であれば内反骨切り術が選択されます。 予後については様々な報告がありますが、目標通りの骨切り術が行えた場合は平均10年間観察して、関節温存率(人工関節が不要だった人の割合)は約90%と良好な成績が報告されています。 骨切り術は人工関節置換術と比べるとリハビリの期間や入院期間が長いのですが、自分の関節を残すことができるので若い方、スポーツを楽しみたい方などによい適応があると考えられます。 大体骨頭壊死症と再生医療 大体骨頭壊死症は原因不明の難病であり、これまで様々な治療が行われてきました。骨を移植したり、壊死した部分に穴を開けて減圧するなどの手術治療もありますが、ガイドラインでも効果については議論が分かれています。 そのため現時点では、保存治療と、保存治療では圧壊が危惧される広い範囲に壊死がある場合には「骨切り術」や「人工関節置換術」が選択されることが多くなっています。 しかし、最近になって最新の治療法である再生医療が導入されました。それが幹細胞治療です。 幹細胞は自分の細胞を採取して培養することで作成します。幹細胞を投与されると、その部分で組織の修復、再生が促されるため、大腿骨頭壊死にも行われ始めています。最新の治療なので、まだ医療保険の適応はありませんが、大きな手術が不要で、治る可能性があります。 治療法についてお悩みの方はぜひ一度ご相談ください。 まとめ・大腿骨頭壊死の保存療法と骨切り術の予後について 大腿骨頭壊死は何らかの原因で血管が障害されて起こり、現時点でも原因が不明の難病です。 壊死範囲が狭い場合は松葉杖などで体重がかからないようにする保存治療で症状がよくなる方もいます。しかし、壊死範囲が広い場合には骨切り術などの手術が必要となる場合があります。骨切り術の成績は良好ですが、手術の負担と、リハビリ、入院期間が長期間になるというデメリットがあります。 一方で自分の細胞を用いた幹細胞治療は最新の治療法であり、組織が再生されることで症状がよくなる可能性があります。 病院を受診して治らないと言われたり、手術しかないと言われてしまっていても、その他の選択肢として検討いただきたい治療法です。ご相談したいことがありましたら、いつでも当院にご連絡ください。
2023.10.19 -
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特発性大腿骨頭壊死症の原因とは|股関節の骨頭壊死について 特発性大腿骨頭壊死症は、大腿骨という太ももの骨と骨盤で作られる股関節部分で、大腿骨の一部が壊死してしまう病気です。 今回の記事では、特発性大腿骨頭壊死症の原因や症状、そして治療法について解説し、最後に最新の治療法についても述べていきます。 特発性大腿骨頭壊死とは 大腿骨頭壊死とは、大腿骨頭の一部が血流の低下によって壊死してしまい、圧潰(あっかい)し股関節の機能が損なわれてしまう病気のことです。 大腿骨頭壊死症の中でも、脱臼や骨折など、血流低下の明らかな原因がない場合に「特発性」大腿骨頭壊死症と呼びます。 すなわち、「特発性」という言葉は、「はっきりとした原因はない、あるいはまだわかっていない」という意味で用いられています。 日本では、毎年2,000〜3,000人の方が新たに特発性大腿骨頭壊死症になっており、好発年齢は30〜50歳代です。 働き盛りの方に起こりやすいと言えるでしょう。 特発性大腿骨頭壊死の原因 原因がはっきりとわかっていない特発性大腿骨頭壊死症ですが、この病気になってしまう危険因子としては、免疫異常が起こる疾患や臓器移植などで治療に用いられるステロイドや、アルコール、喫煙があります。 中でも、ステロイドやアルコールについては、国際的に基準が定められています。 (1)ステロイド関連 3か月以内に累積2gを超えるプレドニゾロン投与、または、同等力価の糖質コルチコイド投与歴。 糖質コルチコイド投与から2年以内に特発性大腿骨頭壊死症と診断 (2)アルコール関連 あらゆる種類のアルコール飲料のアルコール量400 mL/週(もしくは320 g/週)を超えるアルコール摂取を6ヶ月以上継続している。 この用量のアルコール摂取から1年以内に特発性大腿骨頭壊死症と診断 このような基準を満たす場合には、ステロイドあるいはアルコールの関連が疑われます。 しかしながら、なぜ大腿骨の壊死が起こるのか、その機序についてはまだはっきりとはわかっていません。 特発性大腿骨頭壊死の症状 特発性大腿骨頭壊死では、ただ大腿骨に壊死が起こっただけでは症状はありません。 しかし、壊死が進行し、骨頭の圧潰つまり変形が進んだ時には症状が現れます。大腿骨頭壊死症が発生してから、症状が出るまでの間には、数ヶ月から数年の時間差があるということに注意が必要です。 自覚症状は、急に生じる股関節痛が特徴的とされていますが、腰痛や膝の痛み、お尻の痛みなどが最初に現れることもあります。 特発性大腿骨頭壊死の治療 大腿骨頭壊死の治療は、患者の背景(年齢、内科的合併症、職業、活動性、片側性か両側性か)、病型分類や病期分類を考慮して決めます。 保存的治療 病型分類で、まだ骨頭の圧潰がそれほどひどくない場合には、保存的治療、つまり手術を行わずに経過を見ていきます。足に負担がかからないように、杖などで免荷を行うなど、 生活習慣に気をつけます。 また、痛みに対しては鎮痛薬の内服などで対処していきます。 手術療法 痛みの症状が強く、今後も大腿骨頭の圧潰が予想される場合には、手術適応となることもあります。 若い方では、股関節温存手術が第一選択となります。 壊死範囲が大きく、骨頭の圧潰が進んでいる場合には、人工股関節置換術が必要になることもあります。 特発性大腿骨頭壊死についてよくある質問 Q1.大腿骨の骨折の後にも骨壊死は起こりますか?放っておくとどうなる? A1. 転倒などで大腿骨を骨折した後に骨壊死が起こることもあります。これは、外傷性大腿骨頭壊死と呼びます。 大腿骨頸部という、大腿骨頭よりも下の方にある細い部分が折れてしまい、大腿骨頭を栄養する血管がダメージを受けると、骨壊死になることがあります。 骨壊死は、範囲が小さい場合には、消失する場合も報告されていますが、壊死範囲が広くなると、自然に再生することはないとされています。 Q2.大腿骨頭壊死を引き起こす病気はどのようなものがありますか? A2. 先述のように、大腿骨の骨折などは、骨頭壊死を引き起こす原因となりえます。外傷、つまり怪我をすることで骨折してしまう他にも、がんの骨転移によっても骨折は起こります。 乳がんや肺がん、甲状腺がん、前立腺がん、膀胱がん、腎がんなどは、骨に転移しやすいといわれています。 まとめ・特発性大腿骨頭壊死症の原因とは|股関節の骨頭壊死について 特発性大腿骨頭壊死は、なぜ起こるのか、その原因はまだわかっていないものの、ステロイドの使用や大量の飲酒との関連性があると考えられています。 従来は、壊死の進行をとめることは難しく、根本的な治療としては手術療法しかありませんでした。 当院では、大腿骨頭壊死症に対し、培養した幹細胞や、PRP(多血小板血漿)を股関節に注射するという方法を用いた再生医療を行っています。 ぜひ、ご興味のある方は当院の無料相談を受けてみてください。 この記事がご参考になれば幸いです。 参考文献 特発性大腿骨頭壊死症(指定難病71) 骨頭壊死(こっとうえし)|原因となる病気 - 関節の痛み 骨転移診療ガイドライン p5
2023.10.16 -
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大腿骨頭壊死の治療法?従来の治療と再生医療の可能性 大腿骨頭壊死は、骨盤と股関節を形成している大腿骨頭という部分への血流が何らかの原因で低下、流れなくなった結果、骨が壊死してしまう病気です。 治療としては、股関節への負担を減らすような生活をする「保存療法」や、のちぽど説明する「手術療法」があります。 その他にも新しい流れとして、大腿骨頭壊死に対して「再生医療」という手術をせず、入院もしない治療方法が可能となり、新たな選択肢として注目されるようになってきました。 今回の記事では、大腿骨頭壊死の従来の治療法、また最新の再生医療を用いた治療について解説してまいります。 大腿骨頭壊死症と特発性大腿骨頭壊死? 大腿骨頭壊死(だいたいこっとうえし)とは、大腿骨の股関節側、太ももの太い骨の先端である骨頭(こっとう)が、血流の低下によって壊死してしまう状態のことです。 また、大腿骨頭壊死の中でも、脱臼や骨折といった原因がはっきりしている場合以外のものを、「特発性大腿骨頭壊死」と呼びます。 大腿骨頭壊死:脱臼や骨折など原因がはっきりしている 特発性大腿骨頭壊死:上記以外、原因がはっきりしないもの 特発性大腿骨頭壊死は、骨頭が壊死しているだけでは症状がでませんが、壊死が進行して骨頭の破壊が進むと次第に症状が出現するようになります。症状としては、急に生じる股関節痛が特徴的とされています。 骨頭壊死症の病期(ステージ)分類は以下のようになっており「*骨頭の圧潰」が進むにつれてステージが上がっていきます。 *骨頭の圧潰(あっかい)とは 大腿骨の骨頭が通常の球形が押しつぶされた状態をいい、骨頭が圧潰すると痛みといった明確な症状がでます。 以下、特発性大腿骨頭壊死について説明してまいります。 引用) 71 特発性大腿骨頭壊死症 特発性大腿骨頭壊死症の治療 特発性大腿骨頭壊死の治療法としては、早い段階、初期のステージであれば保存的治療も適応となります。具体的には、杖などでの免荷、つまり股関節にかかる体重を減らすことで負担を軽減し、痛みに対しては鎮痛剤を使用して対応します。 すでに症状があり、骨頭の圧潰が進行すると予想される場合には、手術が選択されます。 手術としては、若い方の場合、股関節を残す「骨切り術」が第一選択となります。一方、骨頭の壊死や圧潰が進んでいる方や、高齢者の場合には「人工骨頭置換術」が必要となることもあります。 保存療法の場合も、手術の場合にも、股関節の痛みを出さないような動作方法などを学ぶためのリハビリテーションが行われます。 特発性大腿骨頭壊死の治療方法 初期 保存的治療(杖などで股関節への荷重を減らし負担を軽減 痛みには鎮痛剤を使用 リハビリ 骨頭の圧潰が進行 若い方(股関節を残す「骨切り術」が第一選択) 壊死や圧潰が進んでいる場合(「人工骨頭置換術」を検討) 高齢者の場合(「人工骨頭置換術」を検討) リハビリ 特発性大腿骨頭壊死は治る?再生医療の可能性 特発性大腿骨頭壊死は、ステロイドの使用やアルコール多飲などの要因が考えられています。しかし、根本的な原因は未だ不明で、骨頭壊死の進行を防ぐことそのものは難しいとされてきました。 つまり、保存的治療や手術療法といった従来の治療では、骨壊死が完全に治るということは難しかったのです。 一方、最近では、骨頭の壊死した部分の骨再生を促すような、最新の治療法「再生医療」での臨床研究も行われています。 手術なし、入院も不要といった再生医療による治療とは 医療の進歩による再生医療という選択肢が従来の治療法に加わりました。その内容を簡単に説明してまいります。 当院では、患者さんの身体から取り出した幹細胞を体外で培養し、増殖させてから身体に戻す、という「自己脂肪由来幹細胞治療」を行っています。 保存の際に、幹細胞を冷凍しないために、幹細胞の生存率が高く、また採取する細胞の数が少ない(米粒2〜3粒分ほど)のため、身体への負担が少ない、といった特徴があります。 股関節の病気に対しては、特殊な針とエコー、特殊なレントゲン装置を利用し、股関節内の損傷している部位をよく調べ、ダイレクトに幹細胞を注入する当院独自の「関節内ピンポイント注射」という方法を用いています。 これによって、手術をしないにもかかわらず、股関節の痛みが軽減され、改善される効果を期待できる方法です。詳しくは、お気軽にお問い合わせ下さい。 また、自己脂肪由来幹細胞治療の他にも、「PRP(多血小板血漿)療法」という、患者さん自身の血液から抽出した血小板の濃縮液を利用する治療法も行っています。 このPRP療法も、自己脂肪由来幹細胞治療と組み合わせることで、痛みの軽減、改善効果が期待できるのです。 特発性大腿骨頭壊死症についてよくある質問 Q1. 特発性大腿骨頭壊死になってしまったら、必ず手術が必要? A1. 従来は、特発性大腿骨頭壊死が判明した場合には、保存的な治療か手術かが選ばれてきました。 保存的な治療を選択した場合も、骨頭壊死が進行すると手術を行わなければならないこともありました。 一方、最近では再生医療を用いることで、手術なしでも股関節の再生や痛みの改善が期待できるようになってきました。 Q2. 特発性大腿骨頭壊死に対する再生医療にはどのようなものがありますか? A2.特発性大腿骨頭壊死に対する再生医療には、自己脂肪由来の幹細胞による再生医療の他に、自分の血液の中にある血小板からでる成長因子(傷を修復させる効果がある)を利用した、PRP治療法があります。 このPRP療法は、ヒアルロン酸のように、関節の炎症を抑えるという効果があります。 まとめ・大腿骨頭壊死の治療法?従来の治療と再生医療の可能性 今回は、「特発性大腿骨頭壊死についての治療法」と「特発性大腿骨頭壊死に対する再生医療の可能性」について解説しました。 大腿骨頭壊死のために、「股関節の痛みがあり、手術を勧められている」。でも手術はしたくない、人工関節にも抵抗があり、手術をしない治療法を検討したいという方は、当クリニックの無料相談をご利用ください。当方は医療機関ですので無理に治療をおススメすることはございませんので安心してお問い合わせ下さい。 今回は、大腿骨頭壊死の治療法にいつて、従来の治療法と、新たな流れ、再生医療を用いた治療法を解説しました。参考にしていただければ幸いです。 参考文献 特発性大腿骨頭壊死症(指定難病71) 71 特発性大腿骨頭壊死症 p4特発性大腿骨頭壊死症(指定難病71)
2023.10.12 -
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大腿骨頭壊死の診断に必要な検査と入院期間を医師が解説 大腿骨頭壊死は股関節にある大腿骨頭の血流が原因不明で途絶えてしまい、骨が壊死してしまう難病です。大腿骨頭壊死の原因は明らかになっていませんが、飲酒や免疫を抑えるステロイドの使用が危険因子と言われています。 股関節に痛みがある場合、病院の受診を考えると思いますが、大腿骨頭壊死の診断にはどのような検査・治療があり、入院期間はどの程度なのでしょうか。 この記事では大腿骨頭壊死の診断に必要な検査や入院期間などについて医師が詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。 大腿骨頭壊死に必要な検査 大腿骨頭壊死の診断は血液検査では不可能ですので、画像検査が必要です。ここから診断のために必要な画像検査の内容と、検査の目的について解説します。 ―レントゲン検査 一番初めに行われる検査です。X線を照射しますが、被曝量は少なく、股関節の状態を評価することができます。大腿骨頭壊死の初期ではレントゲンで異常がない場合がほとんどで、診断が難しいことがあります。しかし、壊死を発症してから時間が経つと、壊死領域の周辺が修復されて、骨が硬化してきます。その結果、レントゲンでは通常よりも白く明るく見えます。さらに進行した場合には、大腿骨頭が潰れてきたり、軟骨がすり減る変形性股関節症の所見がみられることがあります。 ―CT検査(コンピュータ断層撮影) 放射線を使用する検査でレントゲン写真よりも被曝量は多いのですが、骨や周囲の詳細な構造をみることができます。大腿骨頭壊死の診断には必須の検査ではありませんが、治療内容や手術の計画を立てる際に行われることが一般的です。 ―MRI(磁気共鳴画像) 磁石と電磁波を利用する検査で、大腿骨頭壊死の診断のために最も重要な検査です。MRIによって壊死した領域を発症早期から確認することができます。レントゲンでは早期の診断は難しいので、レントゲンで異常がないと言われた場合でも痛みが続く時にはMRI検査を受けることが望ましいです。検査の特性として被爆はありませんが、時間がかかる検査ですので閉所恐怖症の方では検査が難しいという一面もあります。 大腿骨頭壊死の入院期間 診断はレントゲンとMRIで可能なので検査目的の入院は不要です。入院は主に手術を受ける時に必要になります。 手術は大腿骨の骨切り術、人工股関節置換術があり、いずれも健康保険が使えます。手術後は一時的に看護、介護が必要になりますが、大きな合併症がなければ痛みの改善が期待できます。それぞれの手術内容と入院期間の目安を解説します。 -骨切り手術の場合 大腿骨の壊死した領域に体重がかかると骨が潰れていき、変形性股関節症をきたします。壊死した部分に体重がかからないように大腿骨を切って移動させるのが骨切り術になります。切った骨同士はプレートとスクリューで固定しますが、金属に負担がかかりすぎないように一定期間は体重をかけないようにするリハビリが必要なので、入院期間は1〜2ヶ月程度です。 手術後の急性期を過ぎたあとはリハビリ目的にリハビリ病院へ転院する場合もあります。 -人工関節手術の場合 壊死した範囲が大きく、すでに骨頭が潰れている場合や、早期に復帰したい方などに主に選択されます。大腿骨側だけを金属に置き換える人工骨頭置換術と、骨盤にも金属のカップを入れる人工股関節全置換術があります。手術中に骨折などの大きな問題がなければ手術の翌日から足をつくリハビリが可能です。 そのため入院期間も2〜4週間程度比較的短いことが特徴です。 大腿骨頭壊死に対する再生医療について 大腿骨頭壊死は難病であり、発症した場合には治療は困難とされてきました。そのため、骨切り術や人工関節手術などが選択されてきましたが、最近では手術に至らないようにする治療として再生医療があります。 再生医療は最新の治療法であり、ご自身の細胞から培養した幹細胞などを直接股関節内に投与することで組織の修復を促します。治療について詳しく知りたい方はいつでもお気軽にご相談ください。 大腿骨頭壊死についてよくあるQ&A 1.単純レントゲンで異常がないと言われましたが、大腿骨頭壊死の可能性はありますか? 回答:大腿骨頭壊死の初期段階では、レントゲン検査では異常が見つからないことがあります。理由として大腿骨頭壊死の初期では骨の変化がわずかであり、レントゲンで変化がわからない場合があるからです。そのため、早期の診断にはMRI検査が有用です。 大腿骨頭壊死が心配な時には、医師と相談し、MRIなどの追加の画像検査を検討してもらうようにしましょう。 2.再生医療の幹細胞はどのように作成するのですか? 回答:当院ではご自分の脂肪組織から幹細胞を培養して投与しています。脂肪は下腹部周辺に局所麻酔をして採取して、細胞加工室で時間をかけて培養します。脂肪由来の幹細胞は骨髄や滑膜由来の幹細胞よりも体への負担が少ないことがわかっており、超音波などを用いて直接股関節に投与することで組織の修復を促すことができます。 まとめ・大腿骨頭壊死の診断に必要な検査と入院期間を医師が解説 大腿骨頭壊死は骨を栄養している血流が途絶えることによって発症する、現時点でも原因が不明の難病です。 必要な検査は単純レントゲン写真とMRIであり、手術治療を考える場合にはCT検査も必要です。手術の際には入院が必要であり、骨切り術は自分の関節を残すことができますが入院期間が1-2ヶ月と長く、人工関節は早期にリハビリができるので入院は2週間〜1ヶ月程度になります。 また、最近では手術にならないようにする再生医療も行われ始めています。手術にいたらないようにするためにも早期に病院で診断してもらい、治療について考えることが大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 ▼こちらも参考にされませんか 大腿骨頭壊死の初期症状|痛みや股関節の動きに注意!
2023.10.09 -
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「大腿骨頭壊死」と呼ばれる病気をご存じでしょうか。 大腿骨頭壊死は股関節を構成している大腿骨頭の血流がなんらかの理由で途絶えてしまい、骨が壊死してしまう原因不明の難病です。 この記事では大腿骨頭壊死の初期症状はどこが痛いのか、動きの特徴や診断方法、治療法を解説します。 初期症状を把握できれば早期の発見と治療へつながる可能性を高められるので、ぜひ最後までご覧ください。 大腿骨頭壊死とは 大腿骨頭壊死とは大腿骨頭の一部が、なんらかの原因で血流が途絶えてしまい、骨組織が壊死してしまう病気です。 大腿骨頭壊死の中でも、脱臼や骨折などで理由が明らかになっていれば「特発性大腿骨頭壊死症」と認められています。 特発性大腿骨頭壊死症に認められると、治療が長期化するだけでなく、働く能力も落ちてしまう症状も出るため、早期発見が推奨されています。 日本でも毎年2,000〜3,000人ほど特発性大腿骨頭壊死症に発症し、中でも30〜50歳の方が起こりやすい病気です。 大腿骨頭壊死の初期症状 大腿骨頭壊死の初期症状は、足の付け根が痛み、股関節の関節可動域が制限される症状が出ます。 それぞれの初期症状について、詳しく解説していきます。 足の付け根が痛む 大腿骨頭壊死の初期症状は、足の付け根が痛みはじめます。 注意点として血流が途絶えて壊死が起きるごく最初の段階では痛みは起こりません。 壊死に陥った部分に負荷が加わり、骨が潰れてくれて、徐々に痛みが出現します。 たとえば、関節に体重を乗せたり動かしたりすると、鋭い痛みを感じるケースがあります。 また、骨頭壊死が起こると痛みが出現するタイミングには時間的に差がある点に注意が必要です。 骨頭壊死はあっても、壊死の範囲が小さい場合などでは痛みを起こさない症例もありえます。 股関節の関節可動域が制限される 大腿骨頭壊死の症状が進行していくと、壊死した部分が潰れて大腿骨頭が変形します。 変形した結果、陥没した部分に関節の不適合や不安定性から軟骨のすり減りが進行してしまいます。 結果として「変形性関節症」を生じ、放置したままだと軟骨がなくなってしまうので注意が必要です。 骨同士がぶつかり、変形性関節症が悪化してしまいます。 変形性関節症が進行すると、痛みだけでなく、股関節の関節可動域が悪くなります。 股関節は曲げ伸ばしだけでなく、内旋、外旋などの動きがあるので、病気が進行すると日常生活で、以下のような困難さを感じるので注意しましょう。 大腿骨頭壊死で困難になる症状 胡座(あぐら) 爪切り 和式トイレ 階段の上り下り 筋力低下による歩行困難 大腿骨頭壊死は、初期症状である「足の付け根の痛み」がある段階で早めに病院で診察を受けましょう。 「どんな痛みがあるの?」「どこが痛むの?」など、より詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。 大腿骨頭壊死が発症する原因 大腿骨頭壊死が発症する原因は、股関節の脱臼や骨折に続いて発症するケースがあります。 他にも以下のような症例から発症するケースもあるので、該当する病名がある方は注意してください。 糖尿病 鎌状赤血球貧血 腎臓病 アルコール依存症 痛風 ステロイド投与による副作用や喫煙が関連する可能性もあるため、強い衝撃による損傷のような痛みから発症するわけではありません。 なお、ステロイド投与やアルコールに関しては、国際的な基準が設けられています。 詳しくは以下の記事でまとめているので、あわせてご覧ください。 大腿骨頭壊死になったらやってはいけないこと 大腿骨頭壊死が発症した場合、大腿骨頭を圧迫させないのが重要です。 股関節に体重がかからないよう、杖を使ったり長距離の歩行を控えたりするのが大切です。 大腿骨頭壊死になったらやってはいけないことを以下にまとめたので、症状を患っている方はチェックしてみてください。 【大腿骨頭壊死になったらやってはいけないこと】 激しい運動 階段の昇り降り 重量物の運搬 長時間の立ち仕事 体重の増加 しゃがみこみ 前屈動作 飲酒 喫煙 とくに飲酒と喫煙は、壊死した骨を弱らせてしまうため、大腿骨頭壊死の進行度を早める原因になってしまいます。 大腿骨頭壊死になったら、股関節への負荷と飲酒・喫煙を控えるのが大切です。 以下の記事では、より詳しく「大腿骨頭壊死になったらやってはいけないこと」をまとめているので、ぜひご一読ください。 大腿骨頭壊死の診断方法 大腿骨頭壊死における画像検査にはレントゲンとMRI検査が有効です。 それぞれの特徴について解説していきます。 レントゲン撮影 大腿骨頭壊死でレントゲン撮影をするのは一般的な診断手法です。 大腿骨頭壊死の評価にも使用される診断方法です。 レントゲンは骨の形状や変化を評価でき、簡便なので最初の検査として行われるケースが多い傾向にあります。 しかし、大腿骨頭壊死の初期の段階ではレントゲンだけでは診断が難しいケースもあるため、医師と相談の上決めていきましょう。 MRI検査 MRI検査は大腿骨頭壊死の診断に役立ちます。 壊死の範囲を評価するだけではなく、骨折や関節炎など別の病気も診断可能になるからです。 大腿骨頭壊死の診断は、早期発見が重要になるものの、レントゲン撮影では変化が見られないケースもあるため、MRI検査が無難でしょう。 手術が必要な場合では、CT検査も必要になります。 なお、レントゲン撮影でも大腿骨頭壊死と判断つくケースもあるため、症状の進行度とともに医師と相談して判断していきましょう。 当院ではメール相談やオンラインカウンセリングも実施しているので、気になる症状がある方は気軽にご連絡ください。 大腿骨頭壊死の治療法 大腿骨頭壊死の治療法は年齢や本人の状態、病気の範囲、部位など総合的に判断して決定されます。 ここからは大腿骨頭壊死の治療法や入院期間について解説していきます。 保存療法 軽度の大腿骨頭壊死では、痛みを緩和するために安静や杖による免荷、身体活動の制限、重量物の運搬禁止などを行います。 初期症状の範囲では、関節症変化へと進まず可動域の制限も比較的保たれるため、生活指導が主な治療法です。 痛みに対しては消炎鎮痛薬の内服や湿布などを行います。 しかし、保存療法で病気の進行は防げません。 進行が考えられる状態や、進行しつつある状態のときには変形が進む前に手術を受ける方が治る可能性は高くなります。 手術療法 手術は大きく骨を切って関節を温存する骨切り術と、壊死した骨を切除して金属に置き換える人工関節置換術に分けられます。 骨を切る手術では壊死した部分に体重がかからないように大体骨頭を弯曲させたり、回転させる手術が行われます。 骨を切った後は専用の金属で固定をするため、一定期間の安静が必要ですが、病気が進行する可能性はゼロではありません。 人工関節手術では大腿骨頭だけを置き換える人工骨頭置換術、骨盤側にも金属をいれる人工股関節全置換術があります。 基本的には手術翌日から歩行訓練が可能で、リハビリが早いメリットがありますが、人工関節のためスポーツは制限が必要であり、将来的な再手術の可能性もあります。 入院期間 大腿骨頭壊死で手術をした場合、以下の期間入院する必要があります。 手術法 入院期間 骨切り術 1〜2カ月 人工関節 2週間〜1カ月 大腿骨頭壊死は、骨への栄養補給する血流が途絶えて発症する病気ですが、詳しい原因は未だ不明です。 医療が進歩し、原因が判明すれば入院期間も変動する可能性もあるでしょう。 再生医療なら手術をせずに効果が期待できる! 大腿骨頭壊死は、人工関節手術を含め、手術による跡を残さない治療として「再生医療」も1つの選択肢です。 再生医療は近年開発された新しい治療法で、自身の細胞から培養した幹細胞などを投与します。 幹細胞を股関節に注射すれば、すり減った軟骨が再生され、痛みが和らぐので手術をしなくても改善する可能性が高まります。 当院ではエコーや特殊なレントゲン装置を使い、股関節内にピンポイントの注射が可能です。 脂肪由来の幹細胞を培養するため、骨髄や滑膜内臓の幹細胞よりも体への負担が少なくなることがわかっています。 股関節の痛みは⼿術しなくても治療できる時代です。 まとめ・大腿骨頭壊死は早期の発見と治療が大切! 大腿骨頭壊死症は骨を栄養している血流が途絶えて発症する、現時点でも原因が不明の難病です。 初期症状は足の付け根の痛みであり、病気が進行すると人工関節手術を受けられなくなってしまうかもしれません。 当院の再生治療は幹細胞を股関節内に投与し、軟骨の修復が可能な治療法です。 痛みでお困りの際にはいつでも気軽にご相談ください。
2023.10.05 -
- 大腿骨骨頭壊死
- 肩関節、その他疾患
- ひざ関節
- 股関節
- 膝部、その他疾患
骨壊死、骨頭壊死|重症度の基準とステージ分類、治療法を解説します 骨壊死とは、骨に栄養を届けている血管が障害されて血液が供給されなくなってしまった結果、骨の一部分が壊死してしまう病気です。ただ、怪我などの外傷による血管の障害や、アルコール、ステロイド使用者などに原因不明で生じることがあります。 この記事では、「骨頭壊死」と「骨壊死」のそれぞれについて解説し、重症度を決める分類方法やステージの内容について詳しく解説していきます。 骨壊死と骨頭壊死症 骨壊死は全身のあらゆる骨に起こり得ます。代表的な部位としては、股関節の大腿骨頭に起きる「大腿骨頭壊死」、肩関節の上腕骨に起こる「上腕骨頭壊死」、「膝関節骨壊死」などがあります。 股関節、肩関節についてはそれぞれ、大腿骨頭、上腕骨頭という部位があるので骨頭壊死という病名がつきますが、膝関節は骨頭という部位がないので骨壊死という病名となります。 大腿骨頭壊死の原因と重症度分類 大腿骨頭壊死の原因 股関節を構成している大腿骨頭を栄養している血管が障害されることによって生じます。 原因不明の特発性と股関節の骨折や脱臼などの外傷、放射線治療、潜函病などによって発症する場合があります。 大腿骨頭壊死の重症度分類 原因不明である特発性骨頭壊死では壊死の範囲によって重症度分類がありType A~Cに分けられます。 重症になるほど、壊死範囲が大きく、大腿骨頭が潰れてしまうリスクが高くなりType Aが軽症でCになるとより重症となります。Type CはさらにC-1とより重症なC-2に分けられます。 それぞれの内容(基準)について解説します。 特発性骨頭壊死、重症度分類(基準) Type A:壊死範囲が体重がかかる領域の1/3未満 Type B:壊死範囲が体重がかかる領域の1/3〜2/3 Type C:壊死範囲が体重がかかる領域の2/3以上 Type C-1:壊死の範囲が骨盤の縁の「内側」にあるもの Type C-2:壊死の範囲が骨盤の縁の「外側」にあるもの 大腿骨頭壊死から進行・変形性股関節症へのステージの分類 初期には壊死部分が潰れていき、進行すると軟骨がすり減ることによって「変形性関節症」になってしまいます。ステージは1〜4に分けられるので、それぞれについて簡単に解説します。 大腿骨頭壊死の進行度についての分類 ステージ1:レントゲンで異常がなく、MRI検査などで壊死がわかる場合 ステージ2:レントゲンで異常があるものの、骨頭が潰れていない時期 ステージ3:骨頭が潰れているものの、関節軟骨があり関節の隙間が残っている時期 ステージ4:軟骨がすり減り、変形性関節症となっている時期 これらの重症度、ステージ分類とご本人の年齢や社会生活の状況、希望などを考慮して治療方針が決定されます。 軽症なタイプであれば保存治療で治る方もいますが、重症なタイプや末期のステージでは手術を要する場合もあります。 上腕骨頭壊死について 次に上腕骨頭壊死について解説してまいります。 上腕骨頭壊死の原因 肩関節を構成している上腕骨頭という部分を栄養している血管が障害されることによって骨が壊死してしまう病気です。 原因は、「外傷性」と「非外傷性」に分けられます。外傷性には上腕骨の骨折、脱臼などがあり、非外傷性にはステロイドの使用やアルコール、鎌状赤血球症、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの全身性疾患などがあります。 上腕骨頭壊死の進行・ステージ分類 病型の分類にはCruess分類が最も使われています。 上腕骨頭壊死に対する治療法は、このステージ分類、壊死の範囲、患者の年齢、症状、全身の健康状態などの要因によって決まります。保存治療で治る方もいますが、進行してステージ末期になると人工関節が必要となる場合もあります。 上腕骨頭壊死のステージ分類 ステージ1:レントゲンで異常がなく、CTやMRI検査で壊死がわかる場合 ステージ2:骨透亮像や骨硬化像、限局性の骨溶解像 ステージ3:軟骨下骨に骨折線を認める段階 ステージ4:上腕骨頭に加えて、肩甲骨の関節窩にも骨の変化を生じている場合 膝関節骨壊死について ここからは、膝関節の骨壊死ついて記してまいります。 膝関節骨壊死の原因 膝関節の骨壊死も同じように、何らかの原因で骨が壊死してしまう病気で、膝関節では大腿骨側によく起こります。 高齢の方によく起こりますが、変形性膝関節症などの膝の痛みと比べて安静にしていても痛みが強いことが特徴です。 原因はまだはっきりとわかっていませんが、肥満やステロイド薬の使用の他、軽微な骨折が原因となる場合もあります。 膝関節骨壊死の進行|ステージ分類 いくつかのステージ分類が提唱されていますが、代表的なものを1つ紹介します。 膝関節骨壊死のステージ分類 ステージ1:レントゲンで異常がみられない時期 ステージ2:レントゲンで骨内に壊死領域がみられるもの ステージ3:レントゲンで軟骨の下に骨折線があり、関節面が凹んでいるもの ステージ4:関節の隙間が狭くなってしまっている時期 骨壊死に対する治療法・保存療法から人工関節置換術へ いずれの骨壊死でも、初期の段階では異常が見つからない場合があります。 しかし、症状が進行すると壊死した部分が潰れてしまい、結果として変形性関節症を起こしてしまいます。関節が変形してしまうと、保存治療の効果は限られているので、基本的には「人工関節置換術」が選択されます。 人工関節を避ける再生医療 しかし、最近では手術に至らないようにする治療として「再生医療」があります。再生医療は導入されたばかりの最新の治療法であり、ご自身の細胞から培養した幹細胞などを直接関節内に投与することで組織の修復を促します。 それによって骨や軟骨の再生が起こり、症状がよくなる可能性があります。 https://youtu.be/ic_6QaEU5NU?si=p8rKJMhU5cjRfNE6 ▶当院は再生医療の専門院です。治療について詳しく知りたい方は動画をご覧ください。 骨壊死についてQ&A 普段、 骨壊死について患者様からよくお聞きする質問から以下を抜粋しました。 Q . 骨壊死にならないか心配ですが、気を付けることはありますか。 A . 現代医学でも骨壊死の正確な原因はわかっていません。危険因子としてわかっているのは外傷、ステロイドの使用、アルコール多飲です。 ステロイドは、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど全身性疾患の治療に必要なので、飲まないことはおすすしませんが、外傷やアルコールはご自分で気を付けることができます。無理な運動は行わず、規則正しい生活習慣を送ることが予防に必要と言えるでしょう。 Q . レントゲンで問題ないと言われましたが、大丈夫でしょうか。 A . 骨壊死は初期の段階ではレントゲンで異常がわからないことがほとんどです。壊死した領域がレントゲンでわかるまでは時間がかかりますが、MRIでは早期に病気を見つけることができます。 痛みが強く心配な場合はMRIなどの精密検査について担当の医師と相談することをおすすめします。 まとめ・骨壊死、骨頭壊死|重症度の基準とステージ分類、治療法について 骨壊死は骨を栄養している血流が途絶えることによって発症する、現時点でも原因が不明の難病です。 大腿骨頭や上腕骨頭、膝関節によく起こり、初期のレントゲンでは異常がみつからない場合がほとんどです。放置して症状が進行すると骨切り術や、人工関節などの手術が必要になりますが、最近では骨や軟骨の再生を促す再生治療も行われ始めています。 手術に至らないようにするためにも早期に病院で診断してもらい、治療について医師と相談していくことが大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 ▼以下もご参考にして下さい 参考文献 https://www.cancertherapyadvisor.com/home/decision-support-in-medicine/shoulder-and-elbow/osteonecrosis-of-the-humeral-head/ https://radiopaedia.org/articles/cruess-classification-of-humeral-head-osteonecrosis https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK562286/
2023.10.02 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)とは|その症状と治療法について はじめに もやもや病という病名を聞いたことがあるでしょうか?正式には、「ウィリス動脈輪閉塞症」といい、脳の血管が閉塞もしくは狭窄することによって引き起こされる脳に起こる疾患です。もやもや病には、脳の血液供給の大事な一部を担う、内頚動脈や中大脳動脈とよばれる血管が関与しています。 この記事では、もやもや病の病態や症状、治療などについて詳しく解説します。もやもや病について正しく理解を深めましょう。 もやもや病とは? もやもや病は、脳に血液を送るための重要な血管である「内頚動脈」が、狭くなったり詰まったりすることで起こる疾患です。このようになると足りない血液を補おうと、細い血管が脳内に異常に発達していきます。画像検査では、この細い血管がまるで「もやもやした煙」のように見えます。これが「もやもや病」という名前の由来です。 もやもや病は、10歳以下の小児で症状が現れる場合と、30〜40歳代の成人で現れる場合の2つのパターンが多く見られます。 ウィリス動脈輪の構成について まず、もやもや病の原因となる、ウィリス動脈輪について解説します。 ウィリス動脈輪は、脳内に形成されている血管経路であり、その名の通り、輪になっています。内頚動脈と椎骨・脳底動脈という重要な血管から流れた血液を脳内に供給するため、重要な役割を担っています。その一部が閉塞もしくは狭窄すると、脳の特定の部位への血流が不足してしまうため、非常に重要な血管経路です。 もやもや病では、このウィリス動脈輪のなかで、内頚動脈から中大脳動脈・前大脳動脈が分岐する部分に狭窄が起きます。どうしてその部分が狭窄してしまうのかは、はっきりとはわかっていません。 ウィリス動脈輪の狭窄が起こることで、中大脳動脈や前大脳動脈から供給を受けている脳細胞への血流が低下します。私たちの体は、この血流を補おうとして、小さな新しい血管(側副血行路)を形成します。この側副血行路が、MRIや血管造影で、もやもやとした陰影として見られるため、もやもや病と呼ばれるようになりました。 もやもや病の症状|もやもや病は何が危険? ここからはもやもや病の症状について詳しく解説していきます。 もやもや病で形成された側副血行路は、細い血管であるため不足した脳への血流を十分には補うことができません。 小児では、熱いものをフーフーと冷ましたり、楽器を吹いたりした際に症状を発症することが多いです。これは、過呼吸になることで、脳の血管が収縮し、血流を十分に送ることができなくなるからです。そうすると、一時的に脳への血流が不足し、脱力発作やけいれん、意識障害などを引き起こします。 小児の症状 脱力発作 けいれん 意識障害 成人でも、小児と同じように一時的な脳虚血の症状で発症することもあります。具体的には、手足がしびれる、うまく手足を動かせない、言葉が出にくいなどがあげられます。 成人の症状 手足がしびれる うまく手足を動かせない 言葉が出にくい しかし、もっと怖いのは一時的な症状ではなく、「脳梗塞」や「脳出血」を起こしてしまう可能性があるということです。 成人では、ウィリス動脈輪のうち閉塞していない椎骨・脳底動脈への血流が増え、その負荷によって椎骨・脳底動脈に動脈瘤が形成されるケースがあります。その動脈瘤が破裂してしまうと、脳出血やクモ膜下出血を突然発症する可能性があるのです。これらは成人のもやもや病の発症パターンの半分を占めます。 また、細く脆いもやもや血管が閉塞してしまうと、脳梗塞を引き起こします。小児のように一過性の虚血発作であればよいですが、そのまま血流が回復せず脳細胞が死んでしまうと、長期的に続く麻痺や機能障害が残ってしまいます。 もやもや病の危険性 脳梗塞 脳出血 くも膜下出血 もやもや病の治療と予後について もやもや病は、患者さんの年齢やどんな症状で発症したか、また症状の重さなどによって、治療法や予後が異なります。症状が軽度である場合は、小児では、慎重な経過観察を行いながら、内科的な薬物療法などを行う場合が多いです。 また、脳血流を改善させるための手術もあります。浅側頭動脈という頭蓋骨の外側にある血管と中大脳動脈を直接吻合する血行再建手術です。バイパス術ともよばれます。この手術を行うことで、脳梗塞や脳出血のリスクを減らすことができます。 ただし、脳梗塞や脳出血で発症してしまうと、重篤な後遺症を残す可能性もあります。後遺症が残った場合には、リハビリテーションを重点的に行い、併せてこれ以上脳出血や脳梗塞を繰り返さないように、薬物療法を行います。 もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)についてのQ&A Q . どのような検査をすればわかりますか?人間ドックで調べられますか? A . 血管造影という造影剤を用いた方法でもわかりますが、最近はMRAと呼ばれる造影剤を使わない検査で、もやもや血管を確認することができます。 MRAはMRIの一種で、電磁波を当てて脳の血管を立体画像として書き出すことができる検査です。通常の人間ドックでは行われない場合もありますので、心配な場合は脳ドックを受けることをおすすめします。 Q . もやもや病になりやすい人はいますか? A . もやもや病は日本を含む、東アジア諸国に多いといわれています。 また、15〜20%の方では血のつながった家族に、もやもや病の方がいて、遺伝する可能性があるといわれているため、家族にもやもや病の人がいる方は、脳ドックなど受けてみると良いでしょう。 まとめ・もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)とは|その症状と治療法について 今回は、もやもや病について解説しました。 脳梗塞や脳出血で発症した場合は、命に関わる可能性がある非常に怖い病気です。ですが、早期発見できれば、重篤な後遺症を残さず社会復帰できる可能性も高くなります。 どのような症状が危険信号なのかを知っておくことで予防できますので、是非みなさんも、もやもや病についてご理解頂ければ幸いです。 ▼モヤモヤ病については、以下もご参考にしていただけます もやもや病による性格変化とは?高次機能障害について解説
2023.09.28 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
もやもや病の症状、大人と子どもでの違いや注意すべきポイント もやもや病とは、脳の重要な血管である内頸動脈が細くなり、代わりにもやもやとした異常な血管が増える病気です。大人と子どもでは、もやもや病の症状の出方やタイプ、そして注意点が異なります。 この記事では、もやもや病の大人と子どもの違いや注意すべきポイントについて述べていきます。 もやもや病とは? もやもや病は、脳の血管に生じる病気で、脳の中の内頸動脈という重要な血管の終末部が徐々に細くなっていきます。人口10万人あたり3〜10.5人程度いると考えられており、日本人に多く見られます。 脳血管は脳に酸素や栄養を供給していますが、血管が細くなるにつれて脳の血流が足りなくなり、その足りなくなった血流を補うために、周囲に異常な血管(もやもや血管)が網のように出現します。このため、もやもや病では、脳血流不足による脳の虚血(きょけつ)や、異常に発達した細い血管が切れることで脳出血が起こります。 もやもや病の原因ははっきりしていませんが、ある特定の遺伝子を持つ方で発症しやすい傾向があるようです。 もやもや病の症状は大人と子どもでは異なる?注意すべきポイントは? もやもや病の症状は大きく分けると、脳虚血(脳血流が不足すること)、脳出血となります。その他にも、頭痛やけいれんといった症状がでることもあります。 さらに大人と子どもでは、もやもや病の症状の出方やタイプ、そして注意点が異なります。 子どもの症状 子どもの場合は、脳虚血症状がほとんどで、脳出血はまれとされています。 脳虚血症状としては、手足が動かしづらい、言葉がうまく出ない、手足や顔面が痺れる、などの症状が急に起こります。 特に、子どものもやもや病では、呼吸が激しくなること(過呼吸:かこきゅう)によって、この発作が起こりやすくなることが知られています。過呼吸となる場面としては、うどんなどの熱い食べ物を「フーフー」と吹く、リコーダーや鍵盤ハーモニカを吹く、または歌を歌ったり、大笑いしたりすること、激しく泣くことなどがあります。 こうした行動などによる一過性脳虚血発作は、自然に治りますが、脳梗塞の前触れなので、軽視してはなりません。特に、小さな子どもほど進行が早く、脳梗塞になる危険性が高いので、注意が必要です。 大人の症状 一方、大人の場合は、脳の血流不足を補うための側副血行路が破れて出血する、脳出血が起こることが多いです。 脳出血は、もやもや病による死亡や後遺症の最大の原因とされています。 もやもや病の検査や治療法は? ここでは、もやもや病の検査や治療法について解説します。 もやもや病の検査 もやもや病かどうかを検査する方法としては、MRI(磁気共鳴画像診断)・MRA(磁気共鳴血管造影)、脳血管造影検査(カテーテル検査)、脳血流検査、の3つが代表的です。 検査方法 MRI(磁気共鳴画像診断)、MRA(磁気共鳴血管造影) 脳血管造影検査(カテーテル検査) 脳血流検査 いずれの検査も、安静にして行う必要があるので、小さな子どもの場合には、眠たくなる薬を使う場合が多いです。 もやもや病の治療 もやもや病の治療の目的は、脳梗塞や脳出血を防ぐこととなります。 治療法としては、薬による治療と、脳血流量を増やすためのバイパス手術があります。 薬による治療 薬による治療は、抗血小板薬で血液が固まるのを防ぐ方法があるが効果に限界がある。 バイパス手術 バイパス治療については、虚血型もやもや病の場合に、脳梗塞を予防する効果が認められています。 バイパスの治療には、頭皮の血管を脳血管に直接つなぎ合わせる「直接バイパス」 頭皮に血管をつけたまま血流豊富な組織として脳の表面に接触させて、新たな血管が生えるのを待つ「間接バイパス」 これらを組み合わせる手術があります。 大人の手術では、「直接バイパス」のみ、または間接と直接を組み合わせた「複合血行再建術」が行われます。 子どもの手術は、「間接バイパス」のみ、 もしくは「複合血行再建術」が行われ予後の改善効果がそれぞれ報告されています。 もやもや病についてよくある質問 Q:「もやもや病」の人はすべて手術をするのですか? A 症状が多発していない患者さんの場合は、すぐに手術をする必要はありません。 しかし、脳虚血症状がすでにある人や、脳血流検査での血流低下が認められる方、あるいは過去に頭蓋内出血の既往がある方に対しては手術を勧めるのが一般的です。 また、子どもの場合は、将来の脳虚血や出血予防のために、手術適応は広く考えられています。 これらの観点を元に、もやもや病の経験豊富な医師が的確な検査や年齢、患者さんの状況を総合的に検討・判断して手術適応が決まります。 Q:子どもの「もやもや病」の予後はどのようになっていますか? A 子どものもやもや病の場合は、ほとんどが脳虚血発作なので、大きな脳梗塞が起こる前に、バイパス手術を受けることができれば、その後脳梗塞を発症することは少ないとされています。 社会生活については、8割以上の子どもたちが通常の生活を送ることができます。一方、2割弱は普通学級への就学困難、もしくはその後の就職が困難になってしまうようです。 診断が遅れ、手術治療を受ける時点ですでに脳梗塞が起こってしまっていると、その後の社会生活に支障が出てしまう可能性がありますので、早期診断と適切なタイミングでのバイパス手術がとても重要です。 まとめ・もやもや病の症状、大人と子どもでの違いや注意すべきポイント 今回は、子ども・大人のもやもや病の違いについて解説しました。 脳梗塞や脳出血をきたす前に、もやもや病の診断・治療を受けることが大切です。脳梗塞や脳出血後の後遺症に対しては、機能回復のためのリハビリテーションが行われますが、再生医療を組み合わせることで、身体機能の改善効果の向上が期待できます。 この記事がもやもや病の大人と子どもの違いについての理解を深めるのに役立てば幸いです。 参考文献 もやもや病…ここまできた診断・治療 日本小児神経外科学会|小児もやもや病 ▼もやもや病の情報、以下も参考にされませんか もやもや病がまねく脳梗塞のリスク因子と予防策について解説
2023.09.25 -
- 大腿骨骨頭壊死
- 股関節
大腿骨頭壊死で注意すべき!やってはいけないこと 大腿骨頭壊死は、股関節の一部である「大腿骨頭」が血流障害によって、壊死してしまう病気です。 外傷や、過度のアルコール、過度のステロイド使用など様々な原因があります。なかには特に原因のない特発性もあり、指定難病にもなっています。 今回は、大腿骨頭壊死と診断されたら、どのようなことに気を付ければよいのか、またどのような生活を送るべきなのかについて詳しく解説します。症状の進行を防ぐために、是非参考にしてください。 大腿骨頭壊死の治療 大腿骨頭壊死は、年間2000~3000人が発症する病気です。「壊死」という病名は、なんだか恐ろしく、将来歩けなくなってしまうかも?と思われる方もいるでしょう。 ですが、適切な治療やリハビリを行うことで、進行を遅らせたり、日常生活に支障なく戻れたりする可能性が非常に高い病気でもあります。正しい知識を持って行動することが大切です。 1. 原因を知る 大腿骨頭壊死の原因がなんであるかを知ることが大切です。前述の通り、全く原因がない場合もありますが、アルコールやステロイドなど原因と疑われるものがある場合は、減らしたりやめたりすることができないか、検討してみましょう。 ただし、ステロイドは、もともとの病気をコントロールするために必要不可欠な場合が多いので、処方している主治医ともよく相談してから判断してください。 2. 進行度を知る 大腿骨頭壊死がどのくらい進行していて、壊死がどんな場所にあるかも重要なポイントになります。 壊死が発症初期であれば、体重をかけずに経過を見ることで壊死部が修復する可能性もあります。こちらも主治医とよく話し合い、治療の方針をしっかりと理解することが大切です。 3. 治療を検討する どうしても痛みが強い場合や、壊死が進行してしまっている場合は、関節を人工関節に変える手術を行うことが多くなります。 ただし、若年で人工関節を入れると、人工関節の耐用年数の問題で将来、再手術という可能性が高くなるため、できれば進行させない生活をすることが望ましいといえます。 4.再生医療という新たな選択肢 また近年では、人工関節などの手術をすることなく、入院も不要で骨や軟骨の再生を促して治療する最新の医療で「再生医療」という選択肢が増えました。実施できる医療機関はまだまだ少ないのが実情ですが、手術を行う前に、自身に適合するのかカウンセリングを受けてみるのもひとつです。 大腿骨頭壊死でやってはいけないこと 大腿骨頭壊死を進行させる一番のリスクは、大腿骨頭にかかる負荷が増大することです。 大腿骨頭は股関節を形成している部分であるため、立ったり歩いたりすると直接体重を受けてしまいます。そのため、1本杖や松葉杖を使用して、過度な負担がかからないようにすることが必要です。 注意!これをやったら壊死が進行!危険な行動とは 大腿骨頭壊死を発症した場合、激しい運動や階段昇降、重量物の運搬、長時間の立ち仕事など、股関節に持続的に強い負荷がかかることは避けるべきでしょう。 また、体重が増えてしまうことにも注意です。体重が増えると、増えた体重分、股関節にかかる負担が大きくなります。 また、壊死は股関節の前方に発生することが多いため、しゃがみこむ動作や、前屈動作など股関節を曲げる姿勢をとると、壊死部に負担がかかりやすいです。そのような姿勢もなるべく避けましょう。 そして、アルコールとタバコは絶対にやめましょう。 アルコールはそれ自体が、大腿骨頭壊死の原因となることがわかっています。また、骨密度を低下させる可能性もあるため、壊死で弱った骨をさらに弱くしてしまいます。 タバコも大腿骨頭壊死のリスクといわれています。さらにタバコは血行を悪化させ、骨壊死を加速させるリスクも指摘されており、絶対にやめましょう。 大腿骨頭壊死の禁忌事項(やってはいけないこと) 激しい運動や階段昇降 重量物の運搬 長時間の立ち仕事 股関節に持続的に強い負荷がかかること 体重増加 しゃがみこむ動作 前屈動作など股関節を曲げる姿勢 飲酒 喫煙 何より、この病気で一番良いのは、股関節に全く体重をかけないことにつきます。ただ、そのような生活をおくるのは事実上不可能です。しかし、少なくとも股関節に「持続的に強い負荷がかかる」動作や、「飲酒」や「喫煙」は避けることができるはずです。 大腿骨頭壊死を悪化させない理想の生活とは 生活について具体的にはどのようにすれば良いのでしょうか。最低限、以下の3点に気をつけて生活することが大切です。 ベッドや椅子を使用し、「洋式の生活」を心がける 股関節を深く曲げこむ動作が多い、こたつや布団、和式トイレなどの日本式の生活は、股関節に大きな負担を掛けます。なるべくベッドや椅子を使用し「洋式の生活」にすることを心がけましょう。 お風呂に浸かるなどし身体を温めて血行を良くする 大腿骨頭壊死は血流障害によって起こります。体を温めることは血行を良くすることにつながるため、お風呂に入るなど体を冷やさないように心がけることも大切です。 鎮痛剤を使用しながら安静期間を設ける 痛みが生じている場合は、無理をせず、鎮痛薬を適宜使用しながら安静の期間を設けることも必要です。 ただし、我慢しすぎて手術の時期を逃してはいけません。整形外科医の定期的な診察を受けつつ、これらの生活スタイルを工夫していきましょう。 大腿骨頭壊死についてよくあるQ&A 大腿骨頭壊死について、患者様からお伺いすることが多い質問を抜粋して以下表示いたしました。 Q:遺伝的に大腿骨頭壊死になりやすい人はいますか? 現在の研究では、大腿骨頭壊死が遺伝的に引き起こされることは確認されていません。ただし、ステロイド性の骨頭壊死に関しては、骨頭壊死を引き起こす遺伝子がある可能性までは研究でわかっており、今後さらなる研究が望まれます。 Q:どのくらいのステロイドを使うと大腿骨頭壊死になりやすいですか? 明確な危険量は分かっていませんが、内服開始から骨壊死が発生するまでの期間で、一日平均約15㎎を超える場合は、骨頭壊死のリスクが高まるといわれています。 これはプレドニゾロンというステロイドに換算した値ですので、実際に自分がどのような薬をどのくらい使用しているか気になる方は、主治医に確認してみてください。 まとめ:大腿骨頭壊死で注意すべき!やってはいけないこと 今回は大腿骨頭壊死になってしまったら、どのようなことに注意をすべきかに焦点を当てて解説しました。大腿骨頭壊死は、患者さんの生活習慣や行動が、その後の進行や症状を大きく左右する病気のひとつです。 病気に対する理解と自己管理が、大腿骨頭壊死とうまく向き合うポイントとなります。ご自身の病状をしっかりと把握し、進行予防に努めましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 ▼以下もご参考にして頂けます 骨壊死の分類|股関節・肩、膝の骨頭壊死症とは
2023.09.21 -
- 脳卒中
- 脳出血
- 頭部
橋出血はどんな初期症状が出るのだろう。 橋出血になったら、助かるのかな。 この記事を読んでいるあなたは、聞きなれない「橋出血」という病気について不安を抱いているのではないでしょうか。「これからどうなるのだろう」と、心配しているかもしれません。 橋出血とは、脳の中心部にある「橋(きょう)」という部分からの出血で、脳出血全体の5〜10%を占めます。初期症状として意識障害や頭痛が出るケースが多く、状態によっては助からないケースも珍しくありません。 本記事では、橋出血の初期症状や死亡率、予防法を詳しく解説します。記事を最後まで読めば、橋出血の全容がわかり、リハビリや再出血予防を含む今後の見通しをたてられるでしょう。 橋出血の初期症状は「意識障害や頭痛」 橋出血を含む脳出血は、突然脳の血管が破れて発症し、前兆や予兆がないケースも珍しくありません。しかし、初期症状がわかれば早期治療が可能となり、出血の拡大を予防できます。 橋出血の初期症状は、以下のとおりです。 なん何となく受け答えが悪い(意識障害) 強い頭痛が続く 手足がうまく動かせない 身体の片方だけ感覚が鈍い このような症状がある場合は、救急車の利用も考慮に入れ、できるだけ早く医療機関を受診してください。 また、当院リペアセルクリニックでは、脳梗塞や脳出血といった「脳卒中」の治療法の1つとして再生医療をおこなっています。「メール」や「オンラインカウンセリング」によるご相談も可能です。橋出血の治療法に興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 橋出血における2つの症状 出血の部位や大きさによって異なりますが、橋出血の症状は「瞳孔の変化」と「四肢の麻痺」が特徴的です。また、意識障害、視覚障害、言語障害、呼吸障害などのさまざまな症状が出るケースもあります。 本章では、橋出血の特徴的な症状である瞳孔の変化と四肢の麻痺について、解説します。 瞳孔の変化 瞳孔とは、目の真ん中にある「黒目」のさらに中心にある黒い部分です。瞳孔のはたらきは、目の中に入る光の量の調整です。まぶしいときは光の取り込み量を減らすために縮小し、暗いときは取り込み量を増やすために拡大します。 脳の奥にある「橋」には、瞳孔の大きさを調整するための神経が通っています。そのため、橋出血によりこの神経が影響を受けると、瞳孔が極端に収縮するのです。両側瞳孔の高度縮小はpinpoint pupilともよばれ、橋出血に特徴的な所見です。 四肢の麻痺 橋には、四肢の運動機能を担う神経も通っています。橋からの出血がその部分を巻き込んだ場合、運動機能の調節ができなくなり、手足の麻痺があらわれます。広い範囲で出血が起こった場合は、片側だけでなく、四肢の麻痺となるでしょう。 ただし、出血量が少なければ、「片側の麻痺に留まる」「運動は保たれて感覚のみ麻痺する」などの場合もあります。片側に麻痺が出る際は、機能が失われた脳の反対側の手足に症状が出るケースが一般的です。 脳内における「橋」の役割については、以下の記事で詳しく説明しています。橋出血について詳しく知りたい方はあわせてチェックしていただければ幸いです。 橋出血の治療は「保存療法がメイン」 橋出血の治療は、原因となる血圧を下げる「血圧コントロール」「脳のむくみ予防の点滴」などの「保存療法」が基本です。 脳のほかの部位で出血したときは、血腫(出血によって生じた血の塊)を取り除く手術をするケースがあります。しかし、脳の深部にあり、正常な組織を傷つける可能性が高いため、基本的に橋出血の手術はおこなわれません。 また、身体を動かしても問題のない状態になり次第、日常生活に戻るためのリハビリもおこないます。 橋出血の治療法は、以下の記事で詳しく説明しています。 橋出血の死亡率は約50% 橋出血の死亡率は、約50%です。(文献1) 入院時の意識レベルが低い、出血が多いなどの場合は死亡率が高く、予後も不良です。場合によっては出血してから数時間で命を落とすケースもあります。 出血の範囲が小さく、量も少ない場合の予後は比較的良好で、退院後は自宅での生活に戻れる方もいます。しかし、運動麻痺や感覚麻痺などの後遺症が出る方も多いのが現実です。自宅での生活が難しければ、回復期リハビリテーション病院や病棟に移動してリハビリを続けるケースもあります。 当院「リペアセルクリニック」が取り扱う再生医療は、リハビリと併用すると身体機能の回復効果を高められます。「メール」や「オンラインカウンセリング」によるご相談も可能です。興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。 橋出血の予後については、以下の記事も参考にしてください。 橋出血の予防には血圧コントロールが大切 橋出血のみならず、脳出血の最も多い原因は高血圧です。高血圧は一般的な病気であり、多くの人が指摘されたことがあるのではないでしょうか。 高血圧は、ほかの生活習慣病と同じく、食事、運動が基本的な治療です。とくに塩分の摂りすぎには注意した方が良いでしょう。 血圧が高い状態が続いている場合は、投薬治療が必要な場合もあるため、医師に相談してください。 脳出血が再発すると、今回無事だった部位もダメージを受け、さらに後遺症が重くなる可能性も考えられます。再発を防ぐために、できる限りの対策をおこないましょう。 まとめ|橋出血の初期症状があらわれたらすぐに受診を 本記事では、橋出血の初期症状やその後あらわれる症状、死亡率などを詳しく解説しました。 橋出血の初期症状は、意識障害や頭痛などです。脳出血はいきなり起こるため、予兆や前兆がないケースもありますが、初期症状を知っておくことで早めの受診が可能になるでしょう。 また、意識がない、出血量が多いなどの場合の死亡率は高く、助からないケースも珍しくありません。高血圧は橋出血のリスクを高めるため、減塩や運動などの生活習慣にも気をつけましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、脳卒中の再生医療(幹細胞治療)をおこなっています。壊れた脳細胞の再生ができれば、リハビリの効果を高める、再発防止などの効果が期待できるでしょう。 再生医療へのご質問・ご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けております。気になる点がありましたら、どうぞ気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 橋出血の初期症状に関するよくある質問 橋出血の症状が出た人におこなうリハビリは何? 橋出血後に姿勢の保持が難しい、歩行時のふらつきなどの「運動失調」という後遺症が出た場合、以下のようなリハビリをおこないます。 フレンケル体操 重り負荷での運動 弾性緊縛帯 固有受容性神経筋促通手技(proprioceptive neuromuscular facilitation:PNF) 橋出血後のリハビリについては、以下の記事で詳しく説明しています。 橋出血を予防する方法は何? 橋出血はほかの脳出血と同様に、「高血圧」によって起こるケースが多くみられます。完全な予防は困難ですが、適正な血圧の維持がリスクの低下につながるでしょう。 具体的な方法は、以下のとおりです。 生活習慣の見直し:減塩・適度な運動・健康的な食生活・禁煙 適切な薬物治療:処方された薬の正しい服用 橋出血の予防・再発予防のために、血圧が高い方は早めに治療を受けるようにしましょう。 脳出血を防ぐ方法は、以下の記事もぜひ参考にしてください。 参照文献 文献1 Behrouz R. Prognostic factors in pontine haemorrhage: A systematic review. Eur Stroke J. 2018 Jun;3(2):101-109. doi: 10.1177/2396987317752729. Epub 2018 Jan 8. PMID: 31008342; PMCID: PMC6460408.
2023.09.18 -
- ひざ関節
- 膝に赤みや腫れ
- 膝の慢性障害
急に膝の皿が痛むのはなぜ? 膝の皿が痛いとき、自宅でできる対処法はある? この記事を読んでいるあなたは、心当たりがないのに膝の皿が痛み、原因を調べているのではないでしょうか。 結論、膝の皿が痛むときは、変形性膝関節症などの疾患の可能性も考えられます。 ストレッチやトレーニング、テーピングをしても痛みが引かない場合は、整形外科での受診がおすすめです。 本記事では膝の皿が痛いときの原因や今すぐできる対処法を解説します。 記事を最後まで読めば、膝の皿の痛みの原因を正しく理解し、病院に行くべきか適切な判断ができるでしょう。 膝の皿が痛い3つの原因 膝の皿が痛いときは、主に以下3つの原因が考えられます。 膝蓋大腿関節症 変形性膝関節症 膝蓋腱炎(ジャンパー膝) 膝の皿の痛みに悩んでいる方は、本章で紹介する病気に当てはまるかどうかチェックしてみてください。 原因1. 膝蓋大腿関節症(しつがいだいたいかんせつしょう) 加齢などによって膝蓋大腿関節にズレや炎症が起きると、軟骨がすり減って痛みが生じやすくなります。この状態を「膝蓋大腿関節症」と呼びます。 膝の皿の骨である膝蓋骨と大腿骨との間で障害が起こる病気で、膝を伸ばすときに痛みを感じやすいのが特徴です。膝の皿だけでなく、膝の皿の横や皿の周りが痛むケースもあります。 整形外科での診察・検査後、「保存療法」もしくは「手術療法」による治療をおこなうのが一般的です。 膝蓋大腿関節症は、とくに中高年の女性に多く見られます。女性で膝の皿の痛みに悩んでいる方は、一度整形外科を受診してみましょう。 原因2. 変形性膝関節症 変形性膝関節症とは、関節の軟骨が老化し、変形してしまう病気です。 主な原因は以下が挙げられます。 加齢 肥満 遺伝 骨折などの外傷 など 変形性膝関節症では、膝の皿に痛みを感じる、水が溜まるなどの症状がみられます。 発症初期は動作の開始時に痛むことが多く、治療せず放置すると安静時にも痛むようになったり、膝を伸ばせなくなったりすることもあります。 変形性膝関節症の治療は、以下のような方法が一般的です。 湿布や痛み止めの処方 ヒアルロン酸注射 リハビリテーション 装具の装着 人工関節術 など また、変形性膝関節症の治療には再生医療(幹細胞治療・PRP療法)も効果的であることがわかっています。 詳しくは以下の記事をご覧ください。 原因3. 膝蓋腱炎(ジャンパー膝) 膝蓋腱炎(ジャンパー膝)とは、膝の皿の下部にある「膝蓋腱」に繰り返し負担がかかることで損傷し、痛みを起こす病気です。 発症時は動作の始めや運動時に膝の皿の違和感を感じることが多く、症状が悪化すると日常生活でも痛むようになります。 膝蓋腱は、ジャンプ・着地などの跳躍動作やランニング時など、膝関節を屈伸したときに引っ張られる部位です。そのため、膝蓋腱に負担のかかる動作が多いスポーツ(サッカーやバレーボールなど)をしている人が発症しやすい病気です。 膝蓋腱炎(ジャンパー膝)の治療では、痛み止めの内服やヒアルロン酸、PRPなどの注射、ストレッチを行います。 重症の場合は「難治性膝蓋腱炎」の可能性があり、手術を検討するケースもあります。 日常的に跳躍動作の多いスポーツをしていて、膝の皿の痛みに悩んでいる方は、整形外科などの受診がおすすめです。 膝蓋腱炎(ジャンパー膝)については、以下の記事も参考にしていただけますと幸いです。 【今すぐできる】膝の皿が痛いときの2つの対処法 膝の皿が痛いとき、病院に行く前に自分でできる対処法は以下の2つです。 ストレッチ・トレーニング テーピング ただし、むやみに自分で対処をすると悪化してしまうケースもあるため、あくまで応急処置に留め、早めに整形外科を受診しましょう。 ストレッチ・トレーニング 膝の皿が痛むときは、膝の上の筋肉である「大腿四頭筋」や、太もも裏の筋肉である「ハムストリングス」のストレッチがおすすめです。また「殿筋」と呼ばれるお尻の筋肉をほぐすのも効果的です。 また膝の皿の痛みは、大腿四頭筋の筋力低下によって起こっているケースもあります。そのため、ストレッチだけでなく適度なトレーニングをおこなうのも良いでしょう。 それぞれの部位ごとのストレッチ・トレーニング方法は以下のとおりです。 ストレッチ(トレーニング)する部位 やり方 大腿四頭筋 <ストレッチ> 壁やイスを使ってバランスを保ちながら立ち、片足ずつ膝を曲げ、前ももを伸ばす <トレーニング> 仰向けに寝て、両膝を立てた状態から片方の膝を伸ばす。 床から10センチほど離したままキープし、ゆっくりおろす動作を両足10回ずつおこなう ハムストリング <ストレッチ> 膝を伸ばして座り、上半身を前に倒して太もも裏を伸ばす 殿筋 <ストレッチ> 両手を床に置き、体操座りの状態で床に座る 片方の足を反対の太ももの上に乗せる 両手で床を押し上げ、上体を太ももに近づける 殿筋が伸びていることを確認し、15秒程度キープする(反対も実施) ストレッチは、反動をつけず痛気持ちいい程度で、無理なくおこないましょう。 膝の皿が痛む場合のストレッチやトレーニングについては、以下の記事も参考にしてください。 テーピング 膝の皿の痛みを和らげるには、テーピングも効果的です。膝関節や周辺の筋肉の動きを制限し、運動時の膝の痛みをを緩和しやすくなります。 テーピングをおこなうときは、腱や筋肉を過度に圧迫しないよう注意しながら、シワのないように巻きましょう。 膝をサポートするテーピング方法は以下の記事で紹介しています。気になる方はチェックしてみてください。 膝の皿が痛い!病院を受診する目安 膝の皿の痛みで病院に行くべきか迷った場合は、以下の項目を参考にセルフチェックしてみましょう。 動作の始まり(歩き始めや立ち上がり)に膝の皿が痛む 起床時に膝の皿がこわばる感じがする 階段の上り下りをすると膝の皿が痛む 膝蓋腱を指で押すと痛む うつ伏せの状態で膝を曲げると床から股関節まわりが浮く 上記の項目に1つでも当てはまる場合、変形性膝関節症などの初期症状である可能性があります。 膝の皿の痛みが続くときは放置せず、早めに整形外科で専門医による診察・検査を受けましょう。 まとめ|膝の皿が痛い原因を知り病院への受診を検討しよう 本記事では、膝の皿が痛いときの原因や今すぐできる対処法を解説しました。 膝の皿が痛む場合、膝蓋大腿関節症などの疾患の可能性も考えられます。ストレッチ・トレーニングやテーピングなどで一時的に対処し、痛みが続くなら早めに整形外科を受診しましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、自己の幹細胞を用いた再生医療による治療をおこなっています。 関節部分に幹細胞を投与し、すり減った軟骨を再生させることで、手術なしで症状を改善できる可能性が高くなります。 従来の保存療法や人工関節術を受けることに抵抗がある方は、ぜひ当院の再生医療もご検討ください。 この記事が膝の皿の痛みの原因や自分でできる対処法を知るのに役立ち、最適な治療を受けるきっかけになれば嬉しく思います。 >>膝の痛みについてメール相談してみる 膝の皿が痛いときによくある質問 急に膝の皿が痛くなるのはなぜですか。 急に膝の皿が急に痛む場合、筋力の低下や姿勢の悪さが原因の可能性があります。 大腿四頭筋腱炎など膝の疾患も考えられるため、痛みが続くなら早めに整形外科で診察・検査を受けましょう。 膝の皿が痛む原因については、以下の記事も参考にしていただければ嬉しく思います。 膝の皿が痛い!?考えられる病名とその原因、治療について徹底解説 曲げると膝の皿が痛いときはどうすれば良いですか。 膝を曲げると痛む場合は、できる限り安静にすることが第一です。膝が熱を持っていたり腫れていたりする場合は、炎症が引くまで冷やすのも良いでしょう。 40歳以上の中高年の方の場合は「変形性膝関節症」の可能性もあるため、不安な方は整形外科での受診がおすすめです。
2023.09.14 -
- ひざ関節
- 靭帯損傷
後十字靭帯損傷と呼ばれる怪我をご存じでしょうか。後十字靭帯は大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)をつなぐ重要な靭帯で、膝の裏側にあります。 靭帯損傷または断裂と聞くと、スポーツで起きるイメージを持つ方も多いでしょう。しかし、後十字靭帯損傷はスポーツだけではなく、転倒や交通事故によって起こるケースも少なくありません。 今回は、後十字靭帯損傷について、主な症状や診断方法、治療法について詳しく解説します。後遺症のリスクや完治までの期間などもまとめているので、ぜひ参考にしてください。 後十字靭帯損傷(断裂)とは 後十字靭帯損傷(断裂)とは、膝関節を構成する後十字靭帯が部分的または完全に断裂した状態のことです。 後十字靭帯が損傷または断裂すると、膝の安定性が失われ、運動時や日常生活において膝が崩れるような違和感が現れます。また、膝が腫れて痛みを感じるケースがほとんどです。 以下で、後十字靭帯の役割や損傷の原因などを解説するので、ぜひ参考にしてください。 後十字靭帯の主な役割 後十字靭帯は、膝関節の内側に位置し、大腿骨の内側顆から後方外側に向かって伸び、脛骨(すねの骨)の顆間隆起の後外方に停止します。後十字靭帯は、膝関節の安定性を保つために欠かせない靭帯です。 「後」十字靭帯と呼ばれる名前からわかるように、膝には「前」十字靭帯も存在します。膝の内部で2つの靭帯が十字型に見えることから、それぞれの名前で呼ばれています。人が膝を安定して動かせるのは、前十字靭帯と後十字靭帯が共に機能するためです。 後十字靭帯は、前十字靭帯よりも太さと強度があり、脛骨(すねの骨)が後ろに脱臼しないように保持する働きをしています。また、安定して膝を捻る動作ができるよう膝を支える役目も担っています。 後十字靭帯損傷(断裂)の原因 後十字靭帯損傷(断裂)は、主に膝を曲げた状態で強く地面に打ち付けることによって発生するケガです。たとえば、交通事故でダッシュボードに膝を強く打ち付けたり、転倒して膝から転んで強い衝撃を受けたりするケースなどが、典型的な受傷機転として挙げられます。 ほかにも、スポーツでは、ラグビーやアメリカンフットボールなど、コンタクトが激しいスポーツ中に受傷するケースがあります。実際に、後十字靭帯損傷は、交通事故やスポーツ動作によるものがほとんどです。 後十字靭帯損傷(断裂)の症状 後十字靭帯損傷(断裂)の多くは、膝を打ちつけたことによって、膝の皿の下に擦り傷や打撲などの外傷が見られます。場合によっては、関節内に少量の血が溜まることもあります。 また、靭帯だけではなく、後ろの関節包(関節を包んでいる袋)も損傷している場合には、膝後方に皮下出血が見られることもあるため注意が必要です。なかには、膝窩部(膝裏)の痛みや、膝を曲げると痛いといった症状を訴える方もいます。 後十字靭帯は、一部の損傷で済むケースも少なくありません。しかし、靭帯が完全に断裂し、膝の安定性が乏しい場合は、階段の上り下りやしゃがみ込むときに膝がグラグラする感覚があります。 ▼ 膝が痛むときに疑われる病気について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。 後十字靭帯損傷(断裂)の診断方法 後十字靭帯損傷(断裂)を疑う外傷があった場合、徒手検査と画像検査によって診断します。 以下で、後十字靭帯損傷の診断方法を解説するので、ぜひ参考にしてください。 徒手検査 後十字靭帯損傷(断裂)が疑われる場合は、まず診察を行い、膝関節の不安定性がないかどうかをチェックします。徒手検査とは、患部を動かしたり叩いたりして、患者の反応を観察し、治療すべき部位を特定するための検査です。 後十字靭帯損傷の検査として有名なものに、「後方引き出しテスト」と呼ばれる検査があります。後方引き出しテストの実施方法は、以下の2ステップです。 寝た状態で膝を曲げる 医師が脛骨(すねの骨)を後ろに押していく 後十字靭帯が機能していないと、後方引き出しテストをした際に、脛骨が後ろに落ち込んでしまうような感覚があります。 画像検査 後十字靭帯損傷(断裂)の画像診断は、レントゲンとMRIで実施します。靭帯自体はMRIだけでも評価できるものの、骨折を合併していないか確認するためにレントゲン撮影をするケースも少なくありません。 MRIでは、靱帯が完全に断裂しているのか、または部分的に損傷しているのかの評価が可能です。また、半月板や側副靱帯といったほかの部位の損傷についてもMRIで評価できます。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。後十字靭帯損傷が疑われる場合は、来院前でも良いのでぜひ気軽にご相談ください。 後十字靭帯損傷(断裂)の治療法 後十字靭帯の機能は、保存的治療でも比較的に良好に回復するとされています。そのため、一般的には保存療法が選択されるケースが多い傾向です。 以下で、後十字靭帯損傷(断裂)の治療法について解説するので、ぜひ参考にしてください。 保存療法 保存療法の場合は、基本的に膝関節の安定性を補助するための装具を2カ月程度使用します。保存療法は、後十字靭帯損傷が軽度で、膝の不安定感があまり強くない場合に選択する治療法です。 受傷から1〜2週間の急性期は、膝の腫脹や痛みがある時期のため、ある程度痛みが治るまでは負担をかけないように松葉杖やサポーターなどを使用します。また、痛みのない範囲で、早期から関節可動域訓練やストレッチなどを開始し、治療を進めていきます。 3週間程度で徐々に膝が動かせるようになり、装具を使用しながら筋力トレーニングやランニングなどを開始できるでしょう。その後、3カ月程度で8割を目安に筋力が回復したら、スポーツ復帰が可能です。 手術療法 後十字靭帯損傷(断裂)が重度で、保存療法では効果的な回復が見込めない場合には手術を選択します。手術は通常全身麻酔で行われます。 手術では、断裂した靱帯同士を縫合するのが難しいため、代わりにもも裏の筋肉(ハムストリング)の一部を採取し、靱帯のように形成して移植する方法が一般的です。 手術後は、膝を固定するために装具を使用し、術後3週間程度は体重をかけないようにします。入院期間は病院によって異なるものの、通常は膝に体重をかけられるようになると退院が可能です。 なお、後十字靭帯損傷の手術は、50万円前後の費用がかかるとされています。基本的には高額療養費制度の適応となるため、自己負担は軽減されます。高額療養費制度に関しては、加入している健康保険窓口で問い合わせてください。 再生医療 再生医療は、後十字靭帯損傷(断裂)を含めた膝関節の新しい治療法として注目されています。再生医療とは、損傷した靭帯や組織を修復するために体の自然治癒力を活用する治療法です。 再生医療には、主に以下の2種類があります。 幹細胞治療 患者自身から採取した幹細胞を膝関節内に注入する 炎症や痛みを抑えて、損傷部位の修復や改善を促進する効果が期待できる PRP療法 患者自身の血液から抽出した多血小板血漿(PRP)を膝関節内に注入する 成長因子の働きを利用し、損傷部位の修復を促進する効果が期待できる なお、リペアセルクリニックの再生医療では、採取する際の安全性が高く、体への負担が少ないとされている脂肪由来の幹細胞を使用しています。再生治療について詳しく知りたい方は、気軽にメール相談やオンラインカウンセリングをご利用ください。 運動療法(リハビリや筋トレ) 後十字靭帯損傷(断裂)後の回復において、リハビリテーションや筋力トレーニングなどの運動療法はとても重要です。適切な運動療法は、膝の可動域を回復させるだけではなく、筋力を強化して膝の安定性を高めることにつながります。 後十字靭帯損傷後の運動療法は、主に以下の要素を含みます。 膝関節の可動域訓練 筋力強化訓練 バランストレーニング 競技に特化した専門的なトレーニング とくに、スポーツ復帰を目指す場合はリハビリテーションが治療の中心的な役割を占めます。また、運動療法は、将来的な再発リスクを減らすためにも欠かせないプロセスの一つです。 ▼ 後十字靭帯損傷のリハビリにおける禁忌事項については、以下の記事で詳しく解説しています。 後十字靭帯損傷(断裂)の放置は後遺症のリスクを高める 後十字靭帯損傷(断裂)を放置すると、後遺症のリスクが高まるため注意が必要です。後十字靭帯損傷の主な後遺症として、以下のような症状が挙げられます。 膝の不安定性 膝の痛みの慢性化 膝のぐらつき 半月板損傷 変形性膝関節症 膝が不安定な状態のまま日常生活を送ると、大腿骨と脛骨の動きが通常よりも大きくなり、膝全体にストレスがかかります。この状態が長期間続くと、膝の軟骨や半月板などまで損傷が広がりかねません。 さらに悪化すると膝関節が変形してしまい、極端なO脚やX脚になってしまう可能性があるため注意してください。膝の痛みは放置せず、早めに医療機関を受診しましょう。 まとめ・後十字靭帯損傷(断裂)は早めに医療機関を受診しよう 後十字靭帯は膝を安定させるために重要な役割を果たしています。たとえ膝の痛みが軽い場合であっても、放置すると日常生活に支障が出るケースも少なくありません。 後十字靭帯を損傷(断裂)したら、損傷の程度やスポーツ復帰への希望有無など、状況に合わせて保存療法や手術療法などを選択します。そして、それぞれの治療方法に適したリハビリテーションを行い、膝の機能の回復に努めることが大切です。 少しでも膝に違和感を感じている場合は、自己判断で放置せず、早期に専門医を受診してください。 ▼ 変形性膝関節症について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。 後十字靭帯損傷(断裂)の治療に関するよくある質問 ここでは、高十字靭帯損傷(断裂)の治療に関するよくある質問をまとめました。 後十字靭帯損傷(断裂)の完治にはどれくらいの期間がかかる? 後十字靭帯損傷(断裂)の完治にかかる期間は、損傷の程度によって異なります。 保存療法の場合、一般的には2〜4カ月程度のリハビリテーション期間を経て、膝の安定性が回復する傾向です。また、手術療法の場合は、最終的なスポーツ復帰までには10〜12カ月かかると考えましょう。 後十字靭帯損傷(断裂)を早く治す方法はある? 後十字靭帯損傷(断裂)を早く治すためには、 早期の受診と適切な治療がとても重要です。 後十字靭帯損傷の治療にはさまざまな方法があるものの、いずれの場合もリハビリテーションが欠かせません。医師や理学療法士などの指導のもと、早期から継続的なリハビリテーションを行うことで、早い回復が期待できるでしょう。
2023.09.11 -
- 関節リウマチ
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
関節リウマチは全身の関節に炎症が起こり、痛みや腫れを起こす病気です。 進行すると関節の変形や機能の障害を残してしまいます。 関節リウマチでは膝の痛み、膝の腫れも多い症状です。 膝が痛いとき、変形性膝関節症と考え「年のせいでは?」と悩んでいる方もいるでしょう。 もし関節リウマチだった場合に放置していると、悪化してしまう可能性もあります。 この記事では関節リウマチによる膝関節炎の症状や治療法について解説していきます。 膝の痛みでお困りの方はぜひ参考にしてみてください。 膝の関節炎とリウマチの違い 関節炎とリウマチの違いは、大きく分けると以下の通りです。 関節炎 さまざまな原因で関節に起こる炎症の総称 リウマチ 関節炎を起こしている症状の1つ たとえば関節リウマチでは、自分の体を細菌やウイルスから守る免疫の異常によって関節の滑膜に炎症が起こります。 関節リウマチが起こると痛みや腫れを感じるでしょう。 関節リウマチは無治療のままで放置してしまうと、関節が変形など機能的な障害をきたすので注意しましょう。 以下の記事では関節炎の1つ「化膿性関節炎」について解説しています。 治療法や再発予防もまとめたので、具体的な症状なども把握しておきたい方は、ぜひご覧ください。 リウマチが発症する主な原因や症状 関節炎とリウマチの違いが理解できても「気づかないうちに痛みを感じるようになった」方もいるでしょう。 ここからは、リウマチになる主な原因と症状を順番に解説していきます。 関節リウマチの主な原因 関節リウマチの多くは40〜60歳代頃の中高年女性に発症します。 正確な原因はまだ明らかになっていませんが、自己免疫疾患とも言えるでしょう。 自分の組織に対して攻撃する抗体が作られてしまい、関節内の滑膜にリンパ系の細胞が集まって炎症性の物質が作られるのが原因とも考えられています。 【リウマチの発症が疑われるサイン】 起床時に関節部分がこわばっているように感じる 関節が腫れている 関節が熱っぽい 力が入りにくい 日常生活の作業が上手くいかない 家族にリウマチの患者がいる など 上記の症状が感じられる方はリウマチになっている可能性があるので、しっかり検査しておきましょう。 発症には遺伝的な要因や喫煙、歯周病などが関連しているとわかっています。 発症すると関節炎によって痛みや腫れを起こし、進行すると関節の変形を生じてしまうため、早期の発見と治療が大切です。 リウマチによる膝関節炎の症状 関節リウマチで多い症状は手や足の指の腫れ、痛み、朝のこわばりなどです。 膝関節で滑膜が増殖して炎症を起こすと膝関節炎をきたしてしまいます。 膝関節炎の主な症状は以下の通りです。 膝が腫れる 膝に水が溜まる 歩くときや階段での痛みを感じる 膝が曲がらない など 膝の痛みは膝裏に起こるケースが多く、曲げ伸ばしのときに音が生じた経験もあるでしょう。 炎症が強い場合には安静にしていても歩けないくらいの激痛が生じる場合もあるので注意してください。 なお、リウマチはあくまで関節炎の1つなので、以下の表で似ている症状をまとめました。 病名 主な症状 膠原病(こうげんびょう) 関節に痛みを感じたり血管症などの症状がある 線維筋痛症 手足の関節だけでなく筋肉に激痛を感じるケースがある 比較的女性が発症しやすい 関節炎とリウマチの違いについてだけでなく、細かい症状の違いや治療法などが気になる方は、以下の記事で詳しく解説していきます。 膝関節炎を放置するリスク 膝の関節炎を放置しておくと、関節の軟骨がなくなってしまうだけでなく、徐々に関節の変形が進んでいきます。 日常生活を送る上で「多少の痛みだから」と放置しすぎてしまうと、膝の曲げ伸ばしが難しくなるので注意してください。 骨同士のぶつかりだけで痛みを感じる可能性もあるので、症状が悪化してしまいます。 関節の変形を生じさせないためにも、早期の発見と治療が大切です。 リウマチによる膝関節炎の診断方法 リウマチの診断は問診、身体診察と血液検査、画像検査などを組み合わせて総合的に行います。関節が腫れて、痛む病気は複数あり、検査だけで関節リウマチと診断できない場合があるからです。 関節リウマチの診断基準を使用して診断を行うので、専門家である医師の診断が必須となります。 現在では2010年に米国、欧州リウマチ学会が合同で発表した分類基準を使用するケースが大半です。(文献1) 以下の4項目についてそれぞれ点数をつけ、合計して6点以上であれば関節リウマチと診断します。 診断基準 症状がある関節の数 症状が続いている期間 血液検査での炎症反応の数値 血液検査でのリウマトイド因子や抗CCP抗体の数値 血液検査では、リウマトイド因子や抗CCP抗体が重要で、多くの関節リウマチで陽性になります。 しかし、両方とも陰性でも関節リウマチと診断されたり、陽性でも関節リウマチではなかったりもします。 炎症反応は活動性を反映する指標ですが、リウマチ以外でも上昇する可能性もあるので診断結果は要チェックです。 画像検査は診断基準には含まれませんが、単純レントゲン写真では「骨びらん」と呼ばれる骨の透亮像がみられる場合があります。 関節エコーやMRI検査も滑膜炎の範囲、程度を評価するのに有用です。 リウマチによる膝関節の治療法 リウマチによる膝関節の治療法は、日常生活で応急処置をする方法はもちろん、専門医から薬を処方してもらう方法などがあります。 ここからは、自宅でできる応急処置から薬物治療などの治療法を解説していきます。 体や関節を保温する 膝の関節炎だけでなく、体の関節が動かしにくいと感じた場合、患部を保温すると効果が期待できます。 冬場はもちろん、夏場の冷房があたるのも避け、長袖や長ズボンを着用しておくのがおすすめです。 患部を保温しておくと関節部分の血液がよく流れ、こわばりなどを症状を軽減する効果が期待できるのです。 関節が腫れている場合は炎症が起きている可能性があるので、保温以外の治療法を選択する必要があります。 以下の記事では、関節リウマチの初期症状や治療を詳しくまとめているので、あわせてご覧ください。 食事や姿勢などの私生活を見直す 関節リウマチの患者様は、食生活だけでなく姿勢改善などを普段から実施してもらうのがおすすめです。 症状を悪化させないためにも、以下のポイントには要注意です。 砂糖や加工食品を摂取しすぎない 激しい運動を控える 首に負担をかけない 同じ姿勢を長時間とる 重いものを持つ 正座をする 喫煙をする ストレスを溜める など 詳しい改善項目は、以下の記事でまとめているので、ぜひ参考にしてください。 専門医から抗リウマチ薬を処方してもらう リウマチの治療法は基本的に薬物治療です。 リウマチと診断した早期から、抗リウマチ薬を開始し、痛みの程度に応じて炎症を抑えるステロイドや、鎮痛薬を併用します。 薬物治療を開始しても膝関節炎の症状が続く場合にはサポーターを使用したり、膝関節に注射をしたりする方法があります。 日本リウマチ学会による2020年のガイドラインから代表的なお薬を以下の一覧でまとめました。(文献2) 抗リウマチ薬 メトトレキサート(第一段階) 生物学的製剤やJAK阻害薬(第二段階) 関節リウマチはこれまで治療が難しく、関節の変形が進行してしまう患者様も多かったのですが、現在では薬剤の種類も多くなっています。 効果が高いお薬もあるため、適切に治療すれば症状を抑えられます。 しかし、膝の関節炎が治まらず、関節の変形や破壊が進行した場合、人工関節置換術などの手術治療が行われるので不安に感じている方もいるでしょう。 膝の痛みは現在、⼿術をしなくても治療できる時代になっているので、気になる方は気軽にお問い合わせください。 まとめ・関節炎とリウマチの違いを把握して適切な治療を行おう! 関節リウマチによる膝関節炎は、日常生活に大きな影響を与える深刻な疾患です。 膝の痛みや腫れを放置すると、関節の変形や機能障害が進行し、歩行困難や日常生活の質の低下を招く恐れがあります。 しかし、早期発見と適切な治療を行えば、症状の進行を抑え生活の質を維持できます。 関節リウマチの診断には、問診や身体診察、血液検査、画像検査が用いられるので、専門医による診断が必須です。 リウマトイド因子や抗CCP抗体の検査結果が重要な診断指標となり、診断基準に基づいて総合的に判断されます。 自己判断で治療を中断したり放置したりせず、定期的な診察と検査を受けるよう心がけましょう。 日常生活では関節に負担をかけないように注意し、適度な運動やストレッチを取り入れるのも大切です。 関節リウマチの早期発見と適切な治療を通じて、健康的で快適な生活を維持しましょう。
2023.09.10 -
- ひざ関節
- 靭帯損傷
後十字靭帯損傷(こうじゅうじじんたいそんしょう)とは、膝の関節内にある後十字靭帯の損傷を指します。 主に車の事故やバイク事故、ラグビーなどのコンタクトスポーツで他人と衝突して生じ、痛みや症状改善についてお悩みの方も多いことと存じます。 そこで本記事では、後十字靭帯損傷の治療方法やリハビリにおける禁忌事項について解説します。読者の方々の一助となるべく、分かりやすく内容をまとめているのでぜひご一読ください。 後十字靭帯損傷の治療法 後十字靭帯の単独損傷では、大腿四頭筋訓練を中心とした保存療法が行われます。 膝動揺性抑制装具(サポーター)を装着して早期から痛みの無い範囲で可動域訓練を行い、筋力低下を最小限にとどめるようにします。受傷初期は疼痛緩和と安静を兼ねてギプス固定を行うこともあります。 後十字靭帯単独損傷の場合には多少の緩みが残ってもスポーツ活動に支障をきたさないことが多いです。このことから、軽度な症状の場合には先ずは保存療法を試みるようにします。 後十字靭帯損傷のリハビリにおける禁忌 後十字靭帯損傷におけるリハビリの禁忌として以下の事項が挙げられます。 しゃがみ・膝立ち 正座 膝に直接負担をかける行為は症状を悪化させる危険性があり、完治を妨げる要因ともなります。 また、後方へのストレス(不安定性)が強く、日常動作に不自由を感じる際は靭帯再建術を考慮しなければなりません。速やかに最寄りの医療機関または当クリニックにご相談ください。 なお、当院も専門領域なので、不安がある方は下記のバナーをクリックのうえ、お気軽にお問い合わせください。 後十字靭帯損傷の完治期間 https://youtu.be/ZYOV-Er0mnU?si=krijmhYRz9t7Ggd_ 後十字靱帯損傷の完治までの期間・道のりとしては、ハムストリングスを用いた再建術後の理学療法、術直後には免荷で膝装具0° 固定し等尺性筋収縮運動を行います。 1〜2週間で部分荷重、スクワット運動開始とします。4週間で全荷重、4カ月でジョギング、水泳などのスポーツ復帰が可能となります。 期間 トレーニング内容 1〜2週間 部分荷重、スクワット運動開始 4週間 全荷重 4カ月 ジョギング、水泳などのスポーツ復帰 上記の期間を経て、全治までには数ヶ月を要します。 後十字靭帯損傷の予後は比較的良好とされていますが、自然治癒するわけではないことを覚えておきましょう。 最近では、早期の競技復帰を望むアスリートの間などで靭帯組織の修復に期待できる「再生医療」が注目されています。 ▼再生医療について詳しく見る 後十字靭帯損傷の診断方法 脛骨の後方ストレスへの不安定性とMRI画像で後十字靭帯断裂を確認し、後十字靭帯損傷を診断できます。 また、レントゲン写真では骨折の有無の判別が可能です。 くわえて、後十字靭帯損傷の診断方法のひとつにsagging(サギング)テストがあります。 脛骨が落ち、関節に窪みが生じていれば後十字靱帯断裂を疑います。 そもそも後十字靭帯損傷とは 後十字靭帯は、膝関節の中で前十字靭帯とともに関節を強固に連結している靱帯です。 大腿骨(太ももの骨)の内側と、脛骨(すねの骨)の中央をつなぎ、前十字靭帯と十字のかたちに交差して膝関節を支えています。普段は膝関節のひねる動作を支えたり、脛骨が後ろにずれないように支えるように働いたりしています。 後十字靭帯損傷は、膝裏にあたる位置にある靭帯損傷のことであり、後十字靭帯が一部あるいは完全に断裂した状態を指します。 また、混同しやすい傷病名として「後十字靭帯断裂」が挙げられます。詳細が気になる方は、以下の記事をご確認ください。 後十字靭帯損傷の原因 スポーツ外傷や交通事故などで、脛骨上端に、前から後ろへ向く大きな力が加わることで後十字靭帯が損傷するケースが多いとされています。 具体的には、以下のような受傷機転が考えられます。 交通事故 ダッシュボード損傷とも言われ、車が急停車しダッシュボードに膝(脛骨の上端部)をぶつけることによって起こります。 転倒 膝を90°曲げた状態で転倒すると脛骨が後ろへ押し込まれるため受傷します。 コンタクトスポーツ(ラグビーなど) 膝下にタックルを受けることで、後十字靭帯を損傷することがあります。 後十字靭帯損傷の症状 後十字靭帯損傷の症状を解説します。 急性期(受傷後3週間くらい) 膝の痛みと可動域制限がみられますが、歩ける場合が多いです。しばらくすると腫れ(関節内血腫)や、膝窩部の皮下出血が出現することもあります。 痛い部位は、膝の裏となります。また、脛骨に後方へのストレスをかけると、膝窩部に激痛がみられます。 急性期を過ぎると 痛み・腫れ・可動域制限はいずれも軽快してきます。しかしこの頃になると損傷部位によっては膝の不安定感が徐々に目立ってくることがあります。下り坂やひねり動作の際に症状が顕著となります。 慢性期の症例(受傷から時間がたった場合) 前十字靭帯損傷と比べると膝の機能障害は軽度ですが、歩行やスポーツ時に脛骨の後方ストレス(不安定感)を感じます。 また、関節軟骨変性による膝蓋大腿関節や内側の関節裂隙の圧痛や、仰向けで膝関節を90度屈曲すると、脛骨近位端が後方へ移動する落ち込み徴候(サギングサイン)が確認できます。 不安定感を放置してしまうと半月(板)損傷や軟骨損傷などを新たに引き起こし、慢性的な痛みや腫れ(水腫)が出現するおそれもあります。 まとめ|後十字靭帯損傷にお悩みの方は再生医療に注目 靱帯損傷は、靭帯の一部あるいは全部が断裂してしまうことです。 当院では、自己脂肪由来幹細胞治療やPRP療法を行っています。 後十字靭帯損傷後に膝の不安定感があったり、スポーツに早期復帰したいという方のために、膝の靭帯損傷をより早く治すために再生医療を提供しています。ご興味のある方は、ぜひ一度当院の無料相談を受けてみてください。 参考文献 膝の最前線. 理学療法科学 第23巻2号 「膝靭帯損傷」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる プライマリケアのための関節のみかた 下肢編(2)―膝(下)[臨床医学講座より] - 医科 - 学術・研究 | 兵庫県保険医協会
2023.09.07 -
- ひざ関節
- 靭帯損傷
「膝の外側に痛みがあり、動かすたびに不安定感を感じる..」 このような症状に悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。 外側側副靱帯損傷は、日常的に頻発する怪我ではないものの、適切な治療がなければ膝の機能に後遺症が残りやすく、場合によっては手術が必要になることもあります。とくにスポーツや事故による強い衝撃で起こることが多く、早期の診断と治療が重要です。 当院では、このような外側側副靱帯損傷に対して、再生医療も含めた治療法を提案し、患者様に合った治療選択ができるようサポートしています。本記事では、外側側副靱帯損傷の原因や症状、治療方法について詳しく解説し、適切な対策を知るための知識をお伝えします。是非お読みいただき、膝の健康を守るための一助となれば幸いです。 外側側副靭帯損傷とは 外側側副靱帯(がいそくそくふくじんたい)損傷は、膝の外側にある靭帯がスポーツや交通事故で外傷による損傷する怪我です。膝の関節は太ももの骨である大腿骨(だいたいこつ)とすねの骨である脛骨(けいこつ)、お皿の骨である膝蓋骨(しつがいこつ)からできています。比較的平らな面同士が合わさってできており、安定性に欠くため、大腿骨と脛骨の間を別の組織で補強しています。 外側側副靱帯損傷は、いくつかある靭帯損傷の中でも、比較的まれな怪我ですが、他の靭帯と一緒に損傷することが多く、場合によっては手術が必要になります。 「三段階」に分かれる症状 靭帯は膝関節を補強する組織の1つで、骨同士を固い組織でつなぎ、膝の安定性を高めています。外側側副靱帯は膝の外側にあり、膝の内側からの衝撃に抵抗する靭帯です。そのため、膝の内側から強い衝撃が加わると、外側側副靱帯にストレスが加わり、場合によって靭帯が傷ついたり、ちぎれたりして、外側側副靱帯損傷を引き起こします。 外側側副靱帯損傷の症状は損傷の程度に応じて三段階に分かれ、それぞれ異なる治療が必要になります。 症状の概要 具体的な症状 軽度の損傷 靭帯の微細な損傷で、腫れや軽度の痛みを伴いますが、膝の不安定さはありません。通常、数週間で自然に回復します。 中程度の損傷 靭帯が部分的に断裂し、腫れや痛みが強くなり、膝が少し不安定になることがあります。安静とリハビリが必要で、回復まで数カ月かかることもあります。 重度の損傷 靭帯が完全に断裂し、膝の強い不安定感を伴います。手術が必要となる場合が多く、回復には長期間のリハビリが必要です。 外側側副靱帯損傷の原因 外側側副靱帯は靭帯損傷の中でも比較的めずらしい怪我です。単独で生じることは少ないですが、外側側副靱帯が損傷している場合の特有の症状や原因があります。 外側側副靱帯損傷の原因は大きく分けて、スポーツ中の接触と交通事故に分けられます。スポーツでは、サッカーやラグビーのタックルや柔道の足払いなどで膝の内側に強い衝撃が加わり、外側側副靱帯が強制的に伸ばされて起こります。 交通事故の場合も、スポーツ同様に膝の外側が無理に伸ばされるような衝撃を受けることで、外側側副靱帯が損傷されるのです。どちらにせよ強い衝撃が原因となるため、外側側副靱帯が単独で損傷することは少なく、他の靱帯や半月板といった組織の損傷と合わさる場合が少なくありません。 外側側副靱帯損傷の症状 外側側副靱帯の損傷の症状は、膝の外側の痛みや腫れです。また、膝から下が内側に傾くような動きが生じると、傷ついた靱帯が伸ばされるため、痛みを生じます。たとえば、あぐらをかいた場合に膝の外側が痛い状態です。外側側副靱帯を損傷した状態で放置すると、膝がグラグラするように不安定感が生じます。 外側側副靱帯損傷の診断 外側側副靱帯が損傷しているかどうかは、以下の方法で診断されます。 診断方法 ・徒手検査(としゅけんさ) ・画像診断 それぞれの診断について具体的に解説します。 徒手検査(ストレステスト) 患者を仰向けに寝かせた状態で膝の内側と足首の外側を持ち、膝から下を内側に動かすように力を入れて、外側側副靱帯にストレスを加える内反(ないはん)ストレステストと呼ばれる検査をします。内反ストレステストで、痛みや関節が通常より大きく動く不安定性を認めた場合は、外側側副靱帯損傷が疑われます。 膝を軽く曲げた状態と完全に伸ばした状態といった両方の姿勢で検査を行い、膝屈曲位で症状が出た場合は外側側副靱帯の損傷、伸ばした状態で症状が出た場合は、他の靱帯の損傷も疑うことが必要です。 画像診断 外側側副靱帯の損傷はレントゲンでは異常を示しづらく、詳細な診断にはMRIを用います。MRIだと他の靭帯や半月板などの組織もはっきりと写るため、複合損傷や合併症の確認にも有効です。膝の痛みは⼿術しなくても治療できる時代です。 外側側副靱帯損傷の治療 外側側副靱帯損傷の治療外側側副靱帯の損傷の治療方法は手術を行わない保存療法と、手術を行う手術療法に分けられます。それぞれの治療方法について具体的に解説します。 保存療法 外側側副靱帯のみの損傷で、膝の不安定感が少なく、日常生活に大きな支障がなければ、手術による外科的な治療を行わない保存療法が選択されます。保存療法には装具療法やリハビリテーションがあります。 装具療法(テーピング・ギプスなど) 外側側副靱帯損傷により、膝が不安定になれば、さらなる損傷や膝周辺の痛みを伴うリスクが高まります。そのため、テーピングやギプスを着用して、膝の安定性を高めれば、外側側副靱帯へのストレスを減らせます。まず、怪我の直後(約1〜2週間)は、痛みや腫れが強い場合が多いため、膝の負担を軽減する目的でギプスや専用の装具で完全に固定します。この間は、膝にかかる負担を極力減らし、できるだけ安静にすることが重要です。 装具やサポーターの使用方法 以下は具体的な装具使用の目安です: 装着期間:リハビリ初期から約1〜3カ月間、必要に応じて日中はサポーターを着用する。 強度と頻度:日常生活では中等度のサポート力があるサポーターを使用し、膝の安定感を補います。運動や軽いトレーニング時には、強度が高いサポーターに切り替え、膝にかかる負担をさらに軽減します。 装着時間:運動や立ち仕事をする際には常に装着し、リラックスする時間帯や寝るときには外して膝を休ませるようにします。 リハビリテーション リハビリテーションでは、膝の安定性を高め、再発を防ぐために膝周辺の筋力を鍛える筋力トレーニングが行われます。初期の段階では、膝への負担が少ない静的な筋力トレーニングから始め、太ももやふくらはぎの筋肉を強化します。たとえば、週に3〜5回、各10〜15分程度の軽いトレーニングを推奨します。 トレーニングの例 静的トレーニング:たとえば「クアッドセッティング」(太ももの筋肉を収縮させる運動)や、「かかと押し運動」などを行い、膝に負荷をかけず筋力をつけます。 負荷の強化:リハビリが進むにつれ、少しずつ動的な運動やスクワットなどを加えて、膝周りの筋力を強化します。 関節の可動域を広げるストレッチと練習 装具で固定していたことによる関節の動きの制限を改善するため、1日に数回、各5〜10分程度のストレッチや可動域練習を行います。膝の柔軟性を取り戻すため、次のようなストレッチを行います。 ストレッチ例:「太ももの裏を伸ばすストレッチ」や「膝を曲げ伸ばしする運動」をゆっくりと行い、膝関節の動きをスムーズにします。 手術療法 複合靭帯損傷の場合や膝の不安定性が強い場合は、手術による治療が適応になります。手術は損傷した靱帯を他の部分の靱帯を使って再建する靱帯再建術が実施されます。手術後は状態に合わせて段階的なリハビリテーションが必要です。その後、スポーツ復帰して試合などの通常に戻れるまでは、3〜6カ月の治療期間がかかります。 再生医療 複合靭帯損傷や膝の不安定性が強い場合、一般的には靱帯再建術などの手術が適応され、損傷した靱帯を他の部位の靱帯を用いて再建します。手術後は状態に合わせた段階的なリハビリテーションが不可欠で、通常、スポーツや試合に完全復帰するまでに3〜6カ月の治療期間が必要です。 近年では、従来の手術やリハビリだけでなく、**再生医療(幹細胞治療やPRP療法)**も注目されています。再生医療は損傷した組織の再生を促し、後遺症を軽減しながら短期間での回復が期待できる治療法です。この治療は、スポーツ選手や早期の回復を望む人、後遺症や再発を防ぎたい人におすすめです。 再生医療の特徴と効果 特徴:幹細胞やPRP(自己血小板血漿)を用いることで、膝靱帯の損傷部位の組織再生を促進します。 効果:従来治療と比べ、短期間での回復が期待でき、後遺症の軽減や再発の防止に効果的とされています。 幹細胞治療 幹細胞治療は、人体にある「幹細胞」という、さまざまな組織に変化する能力を持つ細胞を利用した再生医療の一つです。幹細胞は通常は活動しませんが、体内の損傷や細胞減少を感知すると、分裂して傷ついたり不足している細胞に変わり、体の機能を修復します。 当クリニックでは、自己脂肪から採取した幹細胞を培養・増殖し、関節や組織に注入する「自己脂肪由来幹細胞治療」を行っています。この治療では、患者自身の細胞を使用するため、アレルギーや拒絶反応のリスクが低く、安全性の高い技術として注目されています。 幹細胞治療は、スポーツ障害や関節疾患の他、脳卒中や脊髄損傷、糖尿病、肝疾患などにも対応でき、さまざまな疾患への適応が期待されています。直接注射が難しい部位には、静脈注射によって幹細胞を体内に導入し、全身を巡らせることで臓器や組織の修復を促します。 PRP治療 PRP(Platelet Rich Plasma:多血小板血漿)治療は、再生医療の一種で、患者自身の血液から血小板を高濃度に抽出して患部に注入し、体の持つ「治癒力」を活性化させる治療法です。PRPには血小板が豊富に含まれており、血小板が分泌する成長因子が傷ついた組織の修復を促します。この治療により、痛みを軽減し、自己治癒力を高める効果が期待されます。 PRP治療の基本原理は、損傷した部位に新たな「ケガ」を作り出すことです。これにより、治癒が停滞していた組織が「損傷を受けている」と認識し、血小板成分による炎症反応と自己修復が再び活性化します。PRPには通常の血液の3〜5倍もの成長因子が含まれ、これが損傷した組織や細胞の修復を促進するため、早期の改善が期待できます。 外側側副靱帯損傷の治療選択は医師の診断で 外側側副靱帯損傷は、頻度が高い怪我ではありませんが、治療をせずに放置すると、膝の痛みや損傷部位の悪化を招く危険性があります。 診断には徒手検査やMRIなどの画像診断が用いられ、損傷の程度や他の合併症の有無が確認されます。治療法としては、保存療法(装具やリハビリによる膝の安定強化)が軽度の場合に適用され、重度の損傷や複合損傷には靱帯再建術などの手術が行われます。手術後は段階的なリハビリを必要とし、回復には数カ月を要します。 近年では、再生医療(幹細胞治療やPRP療法)も選択肢の一つとして注目されており、組織の再生を促し、回復期間を短縮させる効果が期待されています。とくに後遺症や再発を避けたい場合には再生医療も検討することをおすすめします。 膝の外側が痛んだり、膝がグラグラするような不安を感じたりした場合は、できるだけ早めに整形外科に受診しましょう。
2023.09.04 -
- ひざ関節
- 靭帯損傷
「ランナー膝の治し方を知りたい」「ランナー膝の原因って何?」 ランニングなどによって膝の痛みが出るランナー膝ですが、原因や改善策を知りたい方も多いのではないでしょうか。 ランナー膝は、適切な対策を取らないと慢性的な痛みへと発展する恐れがあります。 多くのランナーが悩む症状ですが、実は自宅でも改善できる方法もあります。 この記事では、症状を軽減する方法から、予防対策まで具体的に解説していきます。最後まで読めば、ランナー膝をぜひ最後までお読みください。 ランナー膝(腸脛靭帯炎)の治し方3選 ランナー膝(腸脛靭帯炎)は、膝の外側に痛みが生じるスポーツ障害です。とくに長距離ランナーに多く見られ、初期の対処が重要です。治療法は主に以下の3つがあります。 保存療法(安静・ストレッチ・リハビリなど) 運動環境・フォームの改善療法 外科的治療・再生医療 まずは自宅でできる保存療法、次はフォームや運動環境の改善、最後に外科の治療や再生医療といった選択肢です。ここからは、それぞれの方法について詳しく解説していきます。 保存療法(安静・ストレッチ・リハビリなど) 保存療法は、ランナー膝の最も一般的な治療法です。 痛みや炎症がある場合はランナー膝の原因となる運動を中止し、安静にするよう心がけましょう。膝をアイシングしたり、湿布を使ったりするのも効果的です。 炎症が改善したら、大腿筋膜張筋や股関節外側部を中心としたストレッチを行います。 リハビリで筋力を回復させることで、再発予防にもつながります。(文献1) 運動環境・フォームの改善療法 ランナー膝は、走る際のフォームや、履いているシューズを変えることで改善できる場合があります。 上半身が左右に揺れたり、膝が内側に入ったりする走り方は、ランナー膝を悪化させる原因になりかねません。そのため、体幹や股関節、足首などを強化し、膝に負担がかかりにくいフォームに矯正する必要があります。 また、着地時の衝撃を吸収してくれるインソールや、膝の動きを支えるサポーターなどを活用するのも良いでしょう。(文献2) 運動環境やフォームの改善は、ランナー膝の治療だけでなく予防にも効果的です。とくに日常的にランニングをする方は、普段から正しい走り方を意識し、膝の負担を軽減するシューズの使用がおすすめです。 外科的治療・再生医療 症状によっては外科的治療や再生医療も選択肢に含まれます。 ランナー膝の外科的治療は一般的でないものの、保存療法で効果が見られない場合や、難治性と診断された場合は手術を検討します(文献3)。 また、PRP療法をはじめとする再生医療を実施するケースもあります。PRP療法は、自分の血液から抽出した成分を注入し組織の再生を促進する方法であり、炎症の抑制や痛みの軽減が期待できます。 膝の痛みを再生医療を用いて治療する方法は、以下の記事もご覧ください。 ランナー膝(腸脛靭帯炎)における原因 ランナー膝(腸脛靭帯炎)は、膝の外側に痛みを引き起こすランニング障害です。 主な原因は以下の2つにわかれます。 ランナー膝の原因 詳細 選手側の問題 筋力のアンバランス 柔軟性の不足 O脚(内反膝) 練習内容や環境の問題 オーバートレーニング 不適切な靴 選手側が要因となるO脚では、腸脛靭帯が大腿骨に擦れやすく炎症のリスクを高めます。 また、オーバートレーニングのほか、下り坂・不整地でのランニングも摩擦が増して症状を悪化させる要因です。 ランナー膝(腸脛靭帯炎)の症状 ランナー膝(腸脛靭帯炎)は、膝の外側に痛みが生じる症状が特徴です。 軽症の場合、スポーツ後に痛みが出る程度ですが、放置すると中等症へ進行し、プレー中にも痛みを感じるようになります。 悪化すると、スポーツをしていないときでも痛みが現れ、日常生活にも影響する可能性があります。 重症化すると手術などの外科的治療が必要になり、入院やリハビリ期間が長引く可能性が高くなるため、膝の痛みを感じたら早めに整形外科に相談しましょう。 ランナー膝(腸脛靭帯炎)の診断 ランナー膝(腸脛靭帯炎)は、ランニングやジャンプの動作時や日常生活での痛み、膝の外側の圧痛の有無をヒアリングすることで診断されます。 また、レントゲンやMRIなどの画像診断や、「グラスピングテスト」と呼ばれる方法を用いて診断するケースもあります。 まとめ|ランナー膝は保存療法で効果が見られないなら他の治療法も検討しよう ランナー膝の治療は、保存療法だけでなく、予防対策を意識した運動環境・フォーム改善療法も並行しておこないます。再発を繰り返す場合や難治性と診断された場合は、手術療法や再生医療といった選択肢も検討しましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、自己の幹細胞を用いた再生医療を提供しています。膝の靭帯部分に幹細胞を投与することで、手術なしで症状を改善できるケースもあります。 従来の保存療法や運動療法による治療で効果がみられない場合は、ぜひ当院の再生医療もご検討いただければ幸いです。 メールでの無料相談やオンラインカウンセリングも実施しておりますので、お気軽にご相談ください。 この記事がランナー膝の治療方法の選択肢を知るのに役立ち、治療を受けるきっかけになれば嬉しく思います。 ランナー膝(腸脛靭帯炎)についてよくある質問 ランナー膝(腸脛靭帯炎)ではどこをほぐすべきですか? ランナー膝の改善には、腸脛靭帯自体を直接ほぐすのではなく、大腿筋膜張筋や股関節、大腿部前面を重点的にストレッチするのが有効です。 フォームローラーやストレッチを使い、これらの筋肉を柔らかくし、症状の緩和と再発防止につながります。 ランナー膝のストレッチについては以下の記事もご覧ください。 ランナー膝でやってはいけないことは何ですか? ランナー膝の痛みを感じた際は、無理に動かさずスポーツを中止して安静にしましょう。とくに下り坂や傾斜がきついコースでのランニングは、膝に負担をかけやすいため控えるべきです。 負荷を調整しつつ、適切なストレッチやリハビリを行うことを意識してみてください。 ランナー膝を早く改善するポイントについては以下の記事でも解説しておりますので、ぜひご覧ください。 No.149 監修:医師 坂本貞範 参考文献一覧 (文献1) 日本スポーツ整形外科学会(JSOA)「スポーツ損傷シリーズ 10.膝の慢性障害」 (文献2) 林優、林典雄ほか.腸脛靭帯炎における臨床的特徴と運動療法成績について.東海北陸理学療法学術大会誌.2006;22 (0), 38-38 (文献3) JCHO東京山手メディカルセンター|腸脛靭帯炎(ランナー膝)
2023.08.31 -
- お皿付近に違和感
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
押すと痛い頭にコブができて困っている 押すと痛い頭のできもの(こぶ)の原因を特定したい 押すと痛い頭のできもの(こぶ)を早く治したい 上記のようなお悩みを抱えている方の一助となるべく、本記事では「膝関節捻挫」について解説します。 捻挫は適切な治療を行えば、問題なく日常生活に復帰できる怪我です。裏に潜む重大な怪我を見逃さないように、記事の内容をご確認いただき適切な医療機関を受診しましょう。 膝関節捻挫とは?原因・症状・治療法を解説 膝の曲げ伸ばしを安定して行うために重要な働きをしているのが、関節を包む袋である「関節包」と関節を支える組織である「靭帯」です。 関節包と靭帯がしっかりと機能しているおかげで、私たちの膝は本来動かない方向へ曲がらないように制御されており、体重をかけても安定して歩けます。しかし、運動中や転倒などにより、関節が通常の範囲を越えて動いてしまうことがあります。 この「関節包」や「靭帯」を痛めてしまった状態を捻挫といいます。ただし、「捻挫」と診断されるのは軽症の場合に限ります。損傷が強く、関節が不安定になった場合は捻挫ではなく靭帯損傷という診断になります。 膝関節捻挫の原因 膝関節捻挫の発症原因の多くは走っているときに膝をひねったり、相手と接触して転倒してしまったりとスポーツ(運動)中に引き起こされます。また、普段の生活でも階段やちょっとした段差などで思いがけず膝をひねってしまい、受傷することがあります。 上記のように、相手との接触などで発症する「直接的な原因」と、つまずき・着地などにより発症する「間接的な原因」があることを覚えておきましょう。 膝関節捻挫の症状 受傷直後は痛みが強いですが、機能は比較的保たれている事が多く、その後も痛みを我慢して普通に生活できる方もいます。ですが、徐々に内出血とむくみが出てきて、膝全体が腫れてきます。 膝全体が腫れると、膝を動かす際に痛みが生じます。また、左右を比較すると動かせる範囲が狭くなる「可動域制限」がでてきます。ひどい場合は痛みで足が地面につかないケースも。 ただし、「捻挫」であれば一時的な症状なので、数日で改善するケースが多いです。いつまでたっても痛みが引かない、腫れがひどくなってきたという場合は「靭帯損傷」のレベルまで症状が悪化している可能性があります。注意しましょう。 「歩けるけど痛い」「膝がぐらぐらして不安定」は要注意! 「「ただひねっただけだと思って様子を見ていたら、実は靭帯損傷だった。」という事例は意外に多いです。 膝には主に4つの重要な靭帯があります。 前後方向の安定性を保つ前十字靭帯・後十字靭帯、左右方向の安定性を保つ内側側副靭帯・外側側副靭帯です。これらはバスケットボールやサッカーなどのスポーツはもちろん、転倒などでも痛めるケースがあります。 「歩けるけれども痛みが続く」や「膝がぐらぐらして不安定」と感じるときは、これらの靭帯を痛めている可能性があります。また、靭帯を痛めていると関節の中に血が溜まることが多いです。 「もしかしたら当てはまるかも」と思った場合は、自己判断せずに病院を受診しましょう。 歩けるけど痛い 膝がぐらぐらして不安定 「靭帯」や「半月板」を損傷している恐れがあります。自己判断はせず、病院を受診しましょう! また、膝のクッションや安定性を保つ役割をしている組織に半月板が存在します。半月板は左右に1つずつありますが、こちらも膝をひねって痛めた際に損傷してしまうことがあります。 年を取ると徐々にすり減って切れやすくなります。特に、高齢の方はバスの乗り降りなど少しの段差を下りただけでも半月板が切れてしまう恐れも。「ブチッ」という感覚を伴うのが特徴的です。半月板損傷は検査しないと判明せず、病院でMRIなどを撮影しなければなりません。 一口に「捻挫」と言っても、紹介したような損傷が隠れている可能性もあります。ちょっとでも違和感があるなら、病院に受診するようにしてみてください。 膝関節捻挫の治療 膝をひねってしまった受傷直後は、RICE処置を行いましょう。 Rest:安静 Ice:冷やす Compression:圧迫 Elevation:挙上 スポーツはすぐに中止し、歩行もできればしない方が望ましいです。氷や保冷材などを使って膝を冷やしながら、包帯などがあれば圧迫してください。 また、寝ているときは心臓より高い位置に足をあげておくと、膝が腫れてくるのを予防できます。その後は、なるべく早期に整形外科医の診察を受けてください。 膝関節捻挫の診断 問診と身体診察で、どのような怪我が疑わしいのか予想がつく場合もあります。 基本的には、まずレントゲンで骨折がないかどうか確認します。レントゲンだけではわからない場合は、骨をより詳しく見るためにCT検査を行うこともあります。その後、靭帯損傷や半月板損傷が疑われる場合にはMRI撮影を実施します。 レントゲン撮影 → CT検査 → MRI撮影 検査の結果、手術が必要な靭帯損傷などの疑いがなければ保存療法になります。 損傷した関節包や靱帯が修復する期間は、通常3週間前後です。この期間は激しい運動や重労働などはせず、安静にしていましょう。安静を保つ目的で、一定期間添木や松葉杖・サポーターなどの使用を指定するケースもあります。 痛みが強い場合は、飲み薬や湿布を処方する場合もあります。ただし、鎮痛薬は痛みを止めるだけで治ったわけではないので、一番大事なのは膝の安静です。 そのまま通常の生活に戻れる場合は、晴れて治療終了です。しかしながら、安静にしていた影響で筋力が低下したり、動きが悪くなることがあります。 その際はリハビリテーションを実施して膝関節の機能を戻すとともに、次の怪我の予防も同時に行うことが大切です。 膝関節捻挫についてのQ&A 膝関節を含む捻挫の予防法や対処法はありますか? 運動をされる場合は、適切なストレッチやウォーミングアップが大切です。筋肉の柔軟性を保ち、温めてしっかりと動かせる状態にしてから運動を始めることで、関節に負担がかかりにくくなります。 また、普段から下肢の筋力が衰えないように意識してトレーニングをしておくことも重要です。さらに、自分の足に合った靴を選ぶことも転倒の予防になります。 膝関節捻挫を引き起こしてからスポーツに復帰できる目安は? スポーツ復帰には、痛みがなくなっていることが大前提です。痛みがあるまま再開すると、膝をさらに痛めたり、かばって別の部位の怪我を引き起こしかねません。 一般的に、通常の捻挫であれば2〜3週間で痛みが落ち着くので、軽い運動から再開するように指導します。 膝に過度な負担をかけないよう、サポーターなどの補助具を使用することも勧められます。 膝関節捻挫は何科を受診すればよいですか? 膝関節捻挫は外傷により発症します。よって、整形外科を受診しましょう。 とはいえ、受傷した時間が深夜や早朝だと、最寄りの整形外科医が受診の時間外の場合もあるでしょう。このような場合は、整形外科のある最寄りの大きな病院に問い合わせるか、厚生労働省が推奨している「♯7119」に電話で相談してみてください。 あきらかに緊急性がない場合は当院へご相談ください。国内で10,000以上ある実績を元に、親身に対応いたします。 まとめ|膝関節捻挫の症状が長引く場合はご相談ください この記事では、膝関節捻挫について解説しました。 膝関節捻挫は直接的・間接的な原因から発症し、受傷直後に強い痛みを伴います。病院を受診せずに痛みを我慢しその後も様子をみてしまう方も多いのが現状です。しかし、裏側に潜む靭帯や半月板の損傷も考えられます。 自己判断で無理せず、最寄りの医療機関を受診するよう心がけましょう。
2023.08.28 -
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
離断性骨軟骨炎の症状、その原因と治療法について 膝に痛みを起こす原因の1つに、「離断性骨軟骨炎」があります。若いスポーツ選手に起こることが多く、膝の軟骨の損傷なので、初期のレントゲン写真ではわからない場合もあります。 この記事では膝の離断性骨軟骨炎の症状、その原因、治療法について解説していきます。膝の痛みで悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。 離断性骨軟骨炎とは 膝の離断性骨軟骨炎、読み方は“りだんせいこつなんこつえん”であり、膝関節の軟骨が関節内に剥がれ落ちて膝に様々な症状を起こしてしまう病気です。 好発部位は大腿骨の内側が最も多く85%で、外側に15%、膝蓋骨にも稀に起こります。また、外側では円板上半月板がみられることもあります。 離断性骨軟骨の症状 離断性骨軟骨の症状は、病気が発症して初めの段階では傷んだ軟骨は遊離せずに、運動後の不快感や鈍い痛み以外には特に症状はありません。 軟骨の表面に亀裂や変化が生じると痛みも強くなり、スポーツなどに支障を来してしまいます。病気が進行していき、軟骨が剥離してしまうと引っかかる感じや膝のズレ感を自覚します。また、大きな軟骨の欠片が関節内に剥がれ落ちると、膝の中でゴリッと音がする場合があります。 離断性骨軟骨の主な原因 離断性骨軟骨炎は、約2:1の割合で男性に多く、成長期に野球やサッカー、バスケットボールなど運動を行う10代によくみられます。 正確な原因についてはまだ明らかにはされていませんが、成長期のスポーツ選手に起こりやすいことから、繰り返されるストレスや外傷によって軟骨下の骨に負荷がかかる事が原因と考えられています。血流障害によって、骨軟骨片が分離して剥がれ落ちてしまいます。 離断性骨軟骨の診断方法 軟骨の損傷なので初期には通常のレントゲン写真で診断することが難しいことが特徴です。そのため、初期に診断するためにはMRI検査を行い、確定診断をします。病気が進行して、骨軟骨片が分離してくる時期ではレントゲン写真で診断することが可能になってきます。 また、肘の離断性骨軟骨炎はエコーでスクリーニング検査と診断をすることが可能であり、膝の離断性骨軟骨炎についてもエコーでの診断が可能と報告されてきています。 離断性骨軟骨の治療 治療には保存療法、手術療法があります。 保存療法 身長が伸びている発育期で軟骨片が離れていなければ、自然に修復されることを期待して、免荷や膝関節の安静、サポーター(装具)を使用などの保存治療が選択されます。 痛みに対しては鎮痛薬や関節内注射などを行い、レントゲンやMRIで修復されている傾向が見られれば徐々に負荷を上げていきます。一部の骨折では超音波治療による骨癒合までの期間が短縮することから保険適応がありますが、現状では離断性骨軟骨炎に対しては超音波治療の適応はありません。 手術療法 手術治療に関しては、軟骨の修復が長引いている場合や、病気の範囲が大きい場合、発育期以降ではよい適応とされます。 手術治療はマイクロフラクチャー法、整復内固定術、骨軟骨移植術などの方法があります。 マイクロフラクチャー法 骨髄刺激法ともいわれます。膝関節鏡を関節内に入れて、患部の数カ所に小さい穴を開けて出血させて治癒を促進させます。骨髄に含まれる幹細胞が損傷部に誘導されることで修復させることを目的とさせる治療です。比較的小さな範囲の軟骨が損傷されている場合がよい適応です。 整復内固定術 軟骨片が剥離して、遊離している例では整復固定術の適応があります。不安定な骨軟骨片を骨釘や生体吸収性ピンなどを使用して固定します。 骨軟骨移植術 損傷範囲が比較的大きく、遊離した軟骨片の状態が悪く骨癒合を期待できない時に選択されます。大腿骨の体重がかからない部分から円柱状の軟骨片を採取して、損傷した部分に移植する自家骨軟骨柱移植術と採取した正常軟骨を培養して軟骨組織を作成して移植する自家培養軟骨移植術が主な方法です。 このように様々な手術治療法がありますが、いずれの方法も適応、術式については患者さんの状態や希望、術者によって異なってきます。ご自身の状態をしっかりと把握して治療法について、主治医とよく相談し、納得できる治療を受けることが大切です。 また手術だけではなく、その後のしっかりとしたリハビリテーションも治療の上で重要ですので、リハビリ体制が整っているかも病院選びの参考にすることがおすすめです。 まとめ・離断性骨軟骨炎の症状、原因、治療法について 膝離断性骨軟骨炎は10歳代の若いスポーツ選手に起こりやすい病気で、膝関節の軟骨が関節内に剥がれ落ちて、痛みや引っかかりなどの様々な症状を起こしてしまいます。 初期にはレントゲン写真でわからない場合が多いので、MRIでの精密検査が必要です。 治療法は保存治療、手術治療があります。特に手術治療は骨髄刺激法や整復内固定術、骨軟骨柱移植術などの様々な方法がありますが、遊離した軟骨片の大きさや状態などを総合的に判断して決定されます。 膝に違和感や痛みがあるものの、なかなかよくならない方は早めに専門医に診察をしてもらうようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。
2023.08.24 -
- 膝の内側の痛み
- ひざ関節
- 靭帯損傷
内側側副(ないそくそくふく)靭帯損傷は、内側側副靭帯という膝の内側の安定性を保っている靭帯が何らかの原因で損傷を受けることです。 今回は、医師の目線から、内側側副靭帯損傷の症状や治療法について解説します。 内側側副靭帯損傷(MCL)とは? 内側側副(ないそくそくふく)靭帯損傷(MCL)とは、膝関節の裏側にある内側側副靭帯によくみられる外傷です。 靭帯が何らかの原因で損傷を受けた状態を指します。 内側側副靭帯損傷は、後述しますが珍しいものではありません。 自力での治療は難しいため、症状が疑われた場合は、早めに医師の診察を受けることが大切です。 また、放置してしまうと悪化する恐れがあるので、早めに受診しましょう。 内側側副靭帯の役割 内側側副靭帯は、膝の裏側にあって、関節が必要以上に開かないようにおさえる役割を果たします。 この靭帯は、膝関節に関わる大腿骨と脛骨をつないでいます。 しかし、2つの骨は、決して側面に受ける衝撃に強くありません。 しかし内側側副靭帯があることで、外部からの衝撃に耐性を発揮できます。 結果として、この靭帯により、強い衝撃があっても必要以上に関節が開かないようになります。 なお、膝関節には、前十字靭帯と後十字靭帯という靭帯があり、関節の側面には内側側副靭帯が、外側側副靭帯があります。 その中でも、内側側副靭帯は、特に膝の内側の安定性を保つ役割を持ちます。 内側側副靭帯損傷(MCL)の原因とは? スポーツ外傷や、交通事故などで、膝に外反強制(がいはんきょうせい:すねを無理に外側に向けられること)するような大きな力が加わった際に、内側側副靭帯損傷(MCL損傷)が起こりやすいとされています。 内側側副靭帯損傷は、膝の靭帯損傷の中で最も多いとされています。 メール相談:オンラインカウンセリングはこちら 内側側副靭帯損傷の4つの症状 次に、内側側副靭帯損傷に多い以下4つの症状に関して解説します。 痛みや腫れ 膝の不安定感 運動動作が困難になる 可動域の低下 内側側副靭帯損傷があると、上記する症状によって、スポーツへの参加や日常生活に支障が生じます。 それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。 内側側副靭帯損傷の症状①痛みや腫れ 急性期(怪我をしてから3週間頃)に、膝の痛みと可動域制限がみられます。 しばらくして腫れ(関節内血腫)が目立ってくることもあります。 急性期が過ぎると、重症度にもよりますが、一般的に痛みや腫れ、可動域制限は軽快してきます。 内側側副靭帯の損傷の症状②膝の不安定感 この頃になると損傷部位によっては膝の不安定感が徐々に目立ってくることがあります。 ひねり動作の際にはっきりすることが多いです。 内側側副靭帯損傷の場合は、膝の内側の不安定感が出ます。 この状態のまま放置しておくと、新たに半月(板)損傷や軟骨損傷などを生じ、慢性的な痛みや腫れ(水腫)になってしまうこともあります。 内側側副靭帯の損傷の症状③運動動作が困難になる さらに、以下のような形で運動動作を取るのが困難になります。 痛みや腫れによって、ランニング、ジャンプなどがしにくくなる 症状が重い場合は歩きにくくなる 膝の安定感が失われ、思うように方向転換できなくなる スポーツの参加はもちろん、日常生活でも感じる方が多いです。 また、トレーニングができなくなるため、筋力が低下するという問題もあります。 内側側副靭帯の損傷の症状④可動域の低下 内側側副靭帯の損傷によって、動かせる関節の範囲が限られます。 膝をまっすぐにしたり、自由に曲げたりするのが難しくなります。 膝が固くなったようにも感じられます。その結果、足を引きずったような歩き方になるかもしれません。 内側側副靭帯損傷の重症度 内側側副靭帯損傷は、American Medical Associationの分類によって、1〜3度に分かれます。 1度 軽症ですが、治療とリハビリを行うことが推奨されます。 2度 中等症で、膝の外反動揺性つまりぐらぐら感を中程度に認めます。 初期治療(ギ プス固定、装具療法など)が重要となります。 3度 重症で、膝の外反動揺性が顕著であり、手術を要する場合が多いです。 内側側副靭帯損傷の検査方法 それでは、次に内側側副靱帯の検査方法について解説します。 ストレステスト 診察では膝関節にストレスを加えて緩みの程度を健側と比較します。 ① 外反ストレステスト(valgus stress test) 患者が仰向けになり、膝を伸ばした姿勢と30°膝に曲げた姿勢の2パターンでチェックをします。 医師などの検査者が膝関節の外側に一方の手を置き、他方の手で足関節を持ち膝関節に外反強制力、つまりすねを内側に向ける力を加え、膝関節の外反不安定性をみます。 この際、30°屈曲位で外反不安定性があれば、MCL損傷を疑います。 MCL単独損傷では伸展位での不安定性は認めません。 ② 内反ストレステスト(varus stress test) 外反ストレステストとは逆に、医師などの検査者が膝関節の内側に一方の手を置き、他方の手で足関節を持ち膝関節に内反強制力、つまりすねを外側に向ける力を加え、膝関節の内反不安定性をみます。 この際、30°屈曲位で内反不安定性があれば、内側側副靱帯損傷を疑います。 画像検査 画像診断ではMRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像診断装置)が有用です。 X線(レントゲン)写真では靭帯は写りませんがMRIでは損傷した靭帯を描出できます。 また、半月(板)損傷合併の有無も同時に評価できます。 メール相談:オンラインカウンセリングはこちら 内側側副靭帯損傷の治療法 内側側副靭帯損傷の治療法は、損傷の程度や症状に基づいて決められます。 保存的治療 内側側副靭帯の単独靱帯損傷の場合には、手術ではなくリハビリテーション治療による保存的治療が選択されます。 受傷後急性期には、 RICE(安静または短期の固定、冷却、弾力包帯などによる圧迫、患肢の挙上)処置に引き続いて、できるだけ早期から筋力訓練を開始します。 サポーター装着 膝に不安定性がある場合は、損傷靱帯保護の目的で支柱付きのサポーター装用を考慮します。 手術療法 前十字靭帯や半月板との混合損傷や、重症度3度であり保存的治療では治らないことが予想される場合には手術療法が行われます。 膝の痛みは⼿術しなくても治療できる時代です。 関連記事:次世代の再生医療とは メール相談:オンラインカウンセリングはこちら 内側側副靱帯損傷についてよくある質問 Q1:内側側副靱帯損傷は自然に治りますか? A1 :内側側副靱帯損傷は、損傷の程度が軽い場合や部分的な断裂では、膝関節周囲の血流が豊富で栄養供給が行われやすいため、治癒しやすく保存療法が行いやすいといえます。 しかし完全な断裂など、重症の場合は自然治癒は期待しがたいので、靭帯の再腱術を行うことが必要になります。 Q2:内側側副靱帯損傷の固定期間はどれくらいですか? A2:個人差はありますが、約1〜2週間程度ギプスシーネやニーブレースなどで固定後、靭帯矯正サポーターを装着し、リハビリテーションとして可動域、歩行訓練を行っていきます。 膝装具は一般的には約6週間以上装着します。 膝の可動域と不安定性が、怪我をしていない方の膝と同じレベルまで改善したらスポーツ復帰が可能となります。 まとめ|内側側副靭帯損傷(MCL)とは?早く治す方法を現役医師が解説 今回の記事では、内側側副靭帯損傷の症状や治療法について解説しました。 内側側副靱帯損傷が起こると、その治療には数週間を要する場合が多いです。 しかしながら、再生医療によって、治療期間や回復までの時間を短くできる可能性があります。 こちらの動画も是非ご覧ください。 https://youtu.be/ZYOV-Er0mnU?si=ka6C0oujvcAaaLKY 膝の靭帯のメカニズムと再生医療について解説。 また当院では、自己脂肪由来幹細胞治療を行うことで、膝の靭帯損傷をより早く治し、筋力低下などを防ぐための再生医療を提供しています。 ご興味のある方は、ぜひ一度当院の無料相談を受けてみてください。 この記事がご参考になれば幸いです。 メール相談:オンラインカウンセリングはこちら No.S146 監修:医師 加藤 秀一 参考文献 膝の最前線|理学療法科学23(2):335−340,2008.p336 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/23/2/23_2_335/_pdf 「膝靭帯損傷」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/ligament_injury_of_th_knee.htm 膝のスポーツ外傷・障害と装具 東京女子体育大学小出清一|日本技師装具学会誌4(4):291〜295,1988.p292 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspo1985/4/4/4_4_291/_pdf/-char/en スポーツ理学療法で必要となる 整形外科徒手検査と徴候|理学療法科学23(2):337−362,2008.p361 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/23/3/23_3_357/_pdf スポーツにおける膝外傷・障害に対する リハビリテーション治療 p1029 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/56/12/56_56.1027/_pdf
2023.08.21