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シンスプリント(すねの内側に走る痛み)に悩まされている方は多いのではないでしょうか。 とくにランナーやジャンプ動作の多いスポーツ選手は、この痛みで思うように練習ができず、「いつになったら治るのか」と不安を抱えてしまいます。 シンスプリントは放置すると慢性化し、練習や試合への影響も長引く恐れがあるため、早期のケアと原因の把握が重要です。 本記事では、シンスプリントの原因やメカニズムを丁寧に解説しつつ、よく混同される疲労骨折との違いにも触れます。 痛みの出方や回復のスピードは人それぞれですが、症状と向き合い適切に休養を取ることで、回復を早めることが期待できます。 「どのくらい休む必要があるのか」「休んでいる間にできることは?」といった不安を解消し、スポーツに早く復帰するためのヒントを見つけていただければ幸いです。 シンスプリントの原因・メカニズム シンスプリントとは、別名で脛骨過労性骨膜炎とも呼ばれ、すねの内側(脛骨内側)に慢性的な痛みや違和感が生じる障害の総称です。 使いすぎ症候群(オーバーユース)のひとつで、走ったり飛んだりする激しい運動のスポーツに多く見られます。 バスケットボールやサッカー、ランニングを伴うスポーツを頻繁にしている選手に多く、日本では春先にクラブ活動が活発になる新学期の4月ごろから発症が増加します。 発生要因はさまざまですが、過剰なトレーニングや足に負担のかかるランニングフォームのような内的要因から、硬いグラウンドや路面でのトレーニング、クッションが薄いシューズの使用で足に負担がかかることで起きる外的要因などが考えられます。 すねには前脛骨筋や後脛骨筋をはじめとする複数の筋肉が付着しており、これらが強い衝撃や過度な運動量にさらされることで、脛骨(けいこつ)の周りにある骨膜が炎症を起こし、痛みが発生します。 とくに練習量を急激に増やしたり、柔軟不足のままハードなトレーニングを続けたりすると、負荷が一気にかかりシンスプリントが起こりやすくなります。 症状としては、初期段階では走り始めやジャンプ前後に鈍い痛みを感じ、休めばある程度治まります。 しかし、進行すると何もしていないときでも痛むようになり、さらに放置すると慢性化して長期離脱を余儀なくされるケースも珍しくありません。 早い段階で休養に入り、運動量の調整が大切です。 疲労骨折との違い シンスプリントと同じように「すねの痛み」を伴う症状として、疲労骨折がよく挙げられます。 どちらもランナーやスポーツ選手に多い障害ですが、症状は根本的には大きく異なる状態です。 シンスプリント:すねの骨膜が炎症を起こしている 疲労骨折:骨自体にひび(亀裂)が入った状態 シンスプリントはあくまで炎症や微細な負荷が蓄積した結果であり、骨折とは段階が違います。 痛みの出方や治り方も異なるため、痛みが強く「骨がじんじんする」「力をかけるとさらに痛い」と感じた場合は、単なるシンスプリントではなく疲労骨折を疑う必要があります。 ただ、混合して認識されてしまう点としては、痛みの発生カ所が似ている点です。 疲労骨折もシンスプリントもふくらはぎの内側に痛みを感じるため、区別が難しいとされています。 いずれにせよ、疲労骨折が進行してしまった場合、医療機関でレントゲンやMRIで骨折かどうか判断してもらえるので、自己判断で放置せず専門家に相談が重要です。 シンスプリントと疲労骨折を混同したまま練習を続けると、回復までに長期間かかるリスクが一気に高まりますので、早めの対処を心がけましょう。 シンスプリント完治まで休む期間 シンスプリントは症状の度合いによって休む期間や復帰に向けたアクションも変わります。 身体と相談しながら休む期間を設定しましょう。 軽症~中度の目安 シンスプリントが比較的軽度の段階であれば、目安として2週間程度の安静を保つことで痛みがかなり和らぐケースが多いとされています。 ただし、痛みが引いたからといってすぐに元の運動量に戻してしまうと、再び負荷がかかって再発するリスクが高まります。 軽度から中度の場合でも、無理をせず段階的に運動を再開しましょう。 運動を完全に休む期間は、人によっては「1週間程度で痛みがおさまる」こともありますが、痛みがなくなった直後が最も危険ともいえます。 焦って運動強度を以前の水準まで一気に戻すと、痛みがぶり返して長引く原因になるからです。 そのため、「痛みが消えたあともしばらくは負荷を抑え、様子をみながら徐々に復帰する」ことが大切になります。 重症例や慢性化したときの休む期間 痛みが強い場合や、何度も繰り返して慢性化してしまったケースでは、完治までに2〜3カ月以上の休養が必要になることがあります。 さらに、痛みがずっと続く難治性のシンスプリントでは、半年以上にわたって治療とリハビリを続ける必要が生じることも珍しくありません。 とくに慢性化すると炎症が長期間にわたって続き、骨膜や周囲組織へのダメージが深刻になりがちです。 こうした場合は、痛みの度合いや経過を慎重に観察しながら、医療機関での検査やリハビリ指導を受ける必要があります。 短期間で無理に運動を再開すると、さらに症状が悪化し復帰までの期間が長期化してしまう可能性があるため注意しましょう。 シンスプリントで休んでいる期間にするべきこと シンスプリントによる痛みが強いときは、患部への負荷への負担を減らし、炎症を抑えましょう。(文献1) 痛みがあるまま運動を続けると症状が悪化し、結果的に長期離脱につながるリスクがあります。以下のポイントを意識して早期復帰を目指しましょう。 発症直後の治療法 シンスプリントを発症して痛みが強い急性期には、まず患部の安静が欠かせません。 以下のような保存療法を組み合わせると、痛みの軽減と回復を早めることが期待できます。 安静 痛みが出る運動を控え、患部への負担を極力減らす アイシング 炎症や痛みが強いときは、1回15〜20分程度を目安に1日数回冷やす 痛み止めの内服・外用 必要に応じて使用し、炎症や痛みを抑える 物理療法 病院やクリニックで電気療法・超音波治療によって、血流促進や組織の回復を助ける 装具療法(インソール) その方の足に合ったオリジナルのインソールを作成します。足底のアーチを足の形と合わせて作成し、痛みを軽減する 急性期の炎症が落ち着くと痛みも和らぎますが、ここで安易に「もう大丈夫だろう」と判断すると再発リスクが高まります。 痛みがある程度引いた状態でも、医師やトレーナーの指導を受けながら慎重に運動量を調整しましょう。 シンスプリントの一般的な治療法 痛みが落ち着いた後や、慢性期においては、以下のようなアプローチで症状の改善や再発防止を目指します。 ストレッチ・マッサージ ふくらはぎや足首まわりの筋肉が硬くなると、すねへの負荷が増しやすくなります。適切なストレッチやマッサージで、筋肉を柔軟に保つことが大切です。 テーピングやサポーター 足首やすねの筋肉をサポートし、骨膜への負担を軽減できます。正しい貼り方や装着方法を学び、運動時に活用すると効果的です。 湿布の活用 痛みが強い場合や炎症を抑えたいときには、鎮痛成分や消炎成分を含む湿布を活用する方法もあります。運動後に患部へ貼ることで、熱感や腫れをある程度コントロールし、回復を促進するサポートになる可能性があります。ただし、肌がかぶれやすい方は注意が必要なため、医師や薬剤師に相談しながら使用しましょう。 シンスプリントにおける再生医療の効果 近年では、自己の細胞や血液成分を活用した再生医療も注目を集めています。 なかでも「PRP療法(多血小板血漿療法)」は、損傷組織の修復や炎症の緩和を促進するとされ、シンスプリントの改善にも一定の可能性が期待されています。 PRP療法では、自分の血液を採取し、血小板を濃縮して患部に注入し、回復をサポートする成長因子を集中して届けます。 通常の保存療法と併用すると、より早期の回復や慢性化の予防につなげられる可能性があり、当クリニックでは、再生医療のプロフェッショナルとして、数多くの患者さまのお悩みを解決して参りました。 PRP療法にご興味がある方は是非以下のリンクにPRP療法についての詳細を記載しておりますので、気になる方は是非ご覧ください。 また、当クリニックでは無料相談も行なっておりますので、不明点などございましたらお気軽にご連絡ください。 シンスプリント完治後の再発予防ポイント シンスプリントが完治した後は、再発を防ぐ工夫が必要になります。 痛みが完全に消えても以前と同じトレーニングをいきなり再開すると再発リスクが高まるため、以下の点を意識しましょう。 運動再開のタイミング シンスプリントの痛みが落ち着いたあと、いつ・どの程度から運動を再開すべきかは悩みどころです。 治ったからといって、いきなり元の練習量に戻してしまうと、再発するリスクが高くなります。 以下のポイントを意識しながら少しずつ負荷を上げていくことが望ましいでしょう。 トレーニング計画の見直し 急に過度な練習量や負荷をかけないようにします。シーズン初めや運動開始直後の時期には、走行距離やジャンプの回数を徐々に増やし、身体が慣れる時間を設けます 痛みが出始めたら早めに休養を取り、悪化する前の対処が重要です。 シューズと練習環境の改善 クッション性の高いシューズを使用し、靴底がすり減ってきたら早めに買い替えます。できるだけ柔らかい地面を選んで練習し、アスファルトなど硬い路面での長距離走は避けるようにしましょう。 柔軟性の向上 日頃から下腿のストレッチを習慣づけ、ヒラメ筋や後脛骨筋などふくらはぎ周囲の筋肉の柔軟性を高めておきます。運動前のウォーミングアップも入念に行い、筋肉や腱・骨膜への血流を良くしてからスポーツに臨みましょう。 筋力強化とフォーム改善 下肢の筋力、とくに着地の衝撃を支える太ももやふくらはぎの筋力を強化すると、ランニングやジャンプ時の負担を軽減できます。加えてランニングフォームを見直し、着地の際は膝とつま先の方向を揃える、ドスンドスンと音を立てずソフトに着地するといった動作を心がけます。必要に応じて専門家からフォーム指導を受けるのも良いでしょう。 足のアーチサポート 偏平足で土踏まずのクッション機能が低下している人は、衝撃がダイレクトに脛骨へ伝わりやすいため注意が必要です。アーチを支えるインソールを用いることでアーチを強化し、衝撃を和らげましょう。 体重管理 急激な体重増加は下肢への負担を増やします。筋力が追いつかない状態で体重だけ増えるとシンスプリントが再発しやすくなるため、増えた体重を支えられるよう下半身の筋力トレーニングも並行して行ってください また、再発防止のためにはポイントだけでなく以下のステップを意識しましょう。焦らず徐々に身体を慣らしていくことが一番近道です。 歩くことから始める 痛みや違和感がないか確認しながらウォーキングを取り入れてください。 軽いジョギング 短い距離や時間であれば問題ないかをチェックしましょう。 インターバルを十分に取りつつ運動量を増加する 痛みが再発しない範囲で徐々に負荷を高めていき、本格的に復帰を果たしましょう。 もしウォーキング段階で痛みがぶり返すようであれば、再度休養や治療を挟む必要があります。焦らずに段階を踏み、身体の声を聞きながら復帰の速度をコントロールしましょう。 以上の対策を講じ、症状に注意しながら段階的に運動を再開できると、シンスプリントの再発リスクを下げ、スポーツを続けられます。 無理のない計画的なトレーニングとコンディション管理が再発予防の鍵となります。 シンスプリントは十分な休息期間を設けて改善に努めよう シンスプリントは、無理してトレーニングを続ければ続けるほど、症状が長引きやすい障害です。 痛みが出始めた段階で対策を講じ、運動量を調整して、回復期間の短縮が期待できます。 休む期間をつくりたくない気持ちはアスリートであれば誰もが抱えるものですが、やむを得ず長期離脱するよりも、短期の休養や適切なケアを優先したほうが結果的にスポーツへの復帰が早まるケースも少なくありません。 自分だけでは回復の見通しが立たない場合や、慢性的な痛みで悩んでいる方は、医療機関の受診を検討してみてください。 痛みの原因を特定し、あなたの状態に合わせた治療プランを立ててもらうことで、再発リスクを抑えながら早期回復を目指せます。 休息をしっかりと取りつつ、シンスプリントの根本的な改善に取り組みましょう。 参考文献 (文献1) 日本スポーツ整形外科学会,「スポーツ損傷シリーズ 15.シンスプリント」 https://jsoa.or.jp/content/images/2023/05/s15.pdf (最終アクセス:2025年02月24日)
2025.02.28 -
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シンスプリントと診断されたけど、テーピングの方法がわからない 自分でもできる、テーピング方法を知りたい シンスプリントのテーピング方法でお困りではありませんか。 シンスプリントは、適切な処置をせずに放置しておくと症状が悪化する可能性があります。負担を減らすためには、正しい方法でテーピングを行う必要があります。 そこで、本記事では以下について解説します。 シンスプリントについて テーピングが効果的な理由 テーピングした方が良いのか テーピングの巻き方・貼り方 間違ったテーピングの巻き方・貼り方 治癒と予防策 テーピングについて、正しい知識と手順を身につけ、快適なコンディションを目指しましょう。 シンスプリントとは シンスプリントは、脛骨(けいこつ)の内側下部に炎症を起こすスポーツ障害で、過労性脛骨骨膜炎(かろうせいけいこつこつまくえん)とも呼ばれています。 症状の特徴は、運動時や運動後に脛骨(けいこつ)の内側の中央付近にズキズキとした違和感があることです。 主にランニングやジャンプをよく行うスポーツ選手に見られる症状で、バスケットボール、サッカー選手、陸上選手などが発症しやすいといわれています。 また、発症しやすい年齢としては12〜16歳がピークで、女性の方が男性の約1.5倍多いのも特徴です。 シンスプリントの原因は過度の運動や固いグラウンドなどの練習で発症します。症状のステージは1〜4あり、ステージ3になると運動に支障が出るため、練習の中止が必要です。 以下の記事ではシンスプリントの原因を詳しく解説しています。 テーピングがシンスプリントに効果的な理由 テーピングは、筋肉のサポートや関節の安定性を高める役割があります。効果として、負担の軽減・筋・骨膜のサポート・血流促進などが期待できるでしょう。(文献1) 以下では、テーピングがシンスプリントに効果的な理由を解説します。 筋肉・骨膜の負担を軽減できる テーピングは脛骨(けいこつ)周囲の筋肉を適度に圧迫し、過剰な振動や引っ張りを抑制するため、炎症の進行を防ぐ効果が期待できます。 筋肉の動きをサポートするだけでなく、過度な負担やストレスから守るのも、テーピングの役割です。 また、日本サッカー協会(JFA)が発行した、サッカー医学マニュアルでは、シンスプリントに関する記述があり、テーピングが筋肉や骨膜への負担を軽減し、症状の緩和に寄与する可能性が示唆されています。(文献2) 運動を継続しながらも回復をサポート テーピングは、運動中の患部をサポートし、症状を和らげる効果が期待できます。ただしテーピングはあくまで対症療法であり、根本的な原因の解決にはなりません。(文献2) テーピング中の無理な運動はNGです。違和感が長引くようであれば、自己判断はせずに医師に相談しましょう。 シンスプリントはテーピングした方が良いのか 効果 解説 筋肉・骨膜の負担軽減 筋肉の動きを補助し、脛骨(けいこつ)周囲の負担を軽くする。 運動時の衝撃吸収 筋肉の振動を抑え、地面からの衝撃を和らげる。 足首の安定性向上 首の過度な動きを防ぎ、脛骨(けいこつ)へのストレスを軽減する。 (文献3)(文献4)(文献5) テーピングはシンスプリントの症状に対して、負担を軽減する手段として有効です。テーピングの主な目的は、ふくらはぎの筋肉や骨膜への負担を減らし、衝撃を分散させることです。 適切にテーピングを行うことで、脛骨(けいこつ)周囲の筋肉をサポートし、過度な引っ張りを抑える効果が期待されます。 とくにスポーツ時の地面から衝撃が脚に伝わるのを和らげる効果や筋肉の振動を押さえられ、内側に過剰な負担がかかるオーバープロネーション(過回内)を防ぐ役割も果たします。 ただし、テーピングは補助的な手段のため、根本的な改善には適切な運動やストレッチ、休息が不可欠です。テーピングはあくまで、対症療法であることを念頭に置きましょう。 シンスプリントのテーピングの巻き方・貼り方 テーピングの用途 概要 注意点 日常生活のテーピング 伸縮性テープを使用し、足の甲からすねの内側を通り、膝下まで貼る。 適度な張力をかけ、皮膚にシワができないように注意する。 スポーツ競技時のテーピング 足首を90度に保ち、足の甲の中央からすねの内側を通り、膝下までテープを貼る。踵骨(かかとの骨)をサポートする方向に張力を調整。(文献2) かかとの骨を適切にサポートするように張力を調整。(文献2) シンスプリントのテーピングには、主に日常生活用とスポーツ競技用の2種類があります。日常生活でのテーピングは、患部のサポートと症状の軽減を目的とします。 一方でスポーツ競技時のテーピングは、運動中の負担を軽減するのが目的です。以下では、目的別のテーピング方法を解説します。 日常的生活のテーピング 順番 テーピング方法 注意点 1本目 足の外側から始め、脛骨(けいこつ)の内側に沿って膝下まで貼る。 テープの張力が強すぎないように注意する。皮膚にシワができないように貼る。 2本目 1本目に半分から2/3程度重ねて、同様に貼る。 重ねる際は、均等に張力をかけすぎないよう注意し、重ねすぎないようにする。 3本目 外くるぶしの上から脛骨(けいこつ)の内側へ、少し斜め上に向かって貼る。 斜めに貼る方向を間違えると、サポートが不十分になる。 4本目 1本目とクロスするように貼り、テンションをかけながら固定する。 クロスする位置を適切に調整し、違和感の中心部をサポートするようにする。 5本目以降 症状のある部位を中心に、テープをクロスさせながら貼る。 貼りすぎると圧迫が強すぎる可能性がある。 仕上げ 必要に応じて、バンデージテープを上から巻いて固定する。 バンデージテープがきつすぎると血行が悪くなるため、圧力に注意。 日常生活でのテーピングは、シンスプリントによる症状の軽減と患部のサポートを目的としています。症状を和らげ、患部をサポートするために、足の甲から脛骨(けいこつ)内側を通り、膝下までテーピングします。 テープは適度な張力で、皮膚にシワができないように貼りつつ、過度な圧力を避けることが大切です。血行を保つため、適切な圧力で貼りましょう。 スポーツ競技時のテーピング 順番 テーピング方法 注意点 1本目 足首を90度に保ち、足の甲の中央から、すねの内側を通り、膝下までテープを貼る。 テープの張力が強すぎないように、動きやすさを考慮して貼ること。 2本目 1本目に半分から2/3程度重ねて、同様に貼る。 重ねすぎないように注意し、過度な圧迫を避けること。 3本目 足首を90度に保ち、足の甲の中央からすねの内側を通り、膝下までテープを貼る。 斜めの貼り方で足のアーチを支えるため、適切な方向に貼ることが重要。 4本目 足首の外くるぶしの上から、少し斜め上に向かって脛の内側を通り、膝下まで貼る。 クロスする位置を考慮し、脛骨(けいこつ)への過度な負担を避けるように調整。 5本目以降 足首の安定性をサポートするため、テープをクロスさせながら必要な部位を覆う。 過剰に貼ると足首の動きが制限され、競技中のパフォーマンスに影響が出るため、適度な圧力で貼ること。 仕上げ 必要に応じて、バンデージテープを上から巻いてテープを固定する。 バンデージテープがきつすぎると血行を妨げることがあるため、圧力に注意。 スポーツ競技時のテーピングは、動きやすさを保ちつつ負担の軽減が目的です。日常生活のテーピングとは異なり、運動中の衝撃吸収や足首の安定性を意識して貼るようにしましょう。 シンスプリントにおける間違ったテーピングの巻き方・貼り方 テーピングは正しく行うことで、負担の軽減や患部のサポートができます。間違ったやり方は、効果を得られないだけでなく、逆効果になる可能性もあります。 以下では、間違ったテーピングの巻き方・貼り方と正しい貼り方について解説します。 きつすぎる 問題点 正しい貼り方 テーピングを強く巻きすぎると血流が悪くなり、しびれやむくみの原因となる。 貼る際は適度なテンションをかけ、圧迫しすぎないようにする。 筋肉や関節の動きを妨げ、パフォーマンス低下につながる。 貼った後に指一本が入る程度の余裕を持たせる。 長時間の使用で皮膚に負担がかかり、かゆみやかぶれを引き起こすことがある。 こまめに状態を確認し、違和感があればすぐに貼り直す。 脛骨(けいこつ)やふくらはぎの筋肉に適切なサポートを与えられず、テーピングの効果が半減する。 シンスプリントに適したライン(すねの内側の筋肉)に沿って貼る。 違和感の部位に直接貼るのではなく、筋肉の動きをサポートする位置に貼ることが重要。 テーピングを貼る前に、違和感がある場所を確認し、サポートすべき筋肉を意識する。 テーピングを強く巻きすぎると、血流が悪くなり、違和感やしびれを引き起こす可能性があります。テーピングを巻くときは、適度な圧力を意識するようにしましょう。 緩すぎる 問題点 正しい貼り方 テーピングが緩すぎると、適切なサポートが得られず、症状を軽減する効果が低減する。 適度なテンションをかけて密着させる。 テーピングが緩いと筋肉のブレを抑えられない。 テーピングする際に、筋肉が適切にサポートされるよう意識する。 運動中にズレやすくなり、適切な圧力が維持できない。 テーピング後、指一本が入る程度の圧迫感があるか確認する。 テープが動くことで摩擦が生じ、皮膚トラブルの原因になる。 運動前にテープがズレていないかチェックし、必要に応じて貼り直す。 テーピングが緩すぎると効果が得られず、運動中にズレやすくなります。また、テープが動くことで摩擦が生じ、皮膚トラブルを引き起こす可能性もあります。適度なテンションで密着させてテーピングしましょう。 貼る位置を間違えている 問題点 正しい貼り方 脛骨(けいこつ)やふくらはぎの筋肉に適切なサポートを与えられないため、テーピングの効果が半減する。 シンスプリントに適したライン(すねの内側の筋肉)に沿って貼る。 違和感のある部位に直接貼るだけでは、十分なサポートにならず、根本的な負担軽減につながらない。 テーピングをする前に、違和感のある場所を確認し、サポートすべき筋肉の位置を意識する。 筋肉の動きを考慮せずに貼ると、適切なサポートが得られず、運動時の負担が軽減されない。 貼る位置を確認し、適切な方向にサポートするよう調整する。 間違ったカ所に貼ることで、テープのズレや剥がれが起こりやすくなる。 皮膚に密着させ、動きに対応できるよう貼り方を工夫する。 テーピングは貼る位置が重要であり、間違えると効果が得られません。 シンスプリントに適したライン(すねの内側の筋肉)を確認し、肌に密着させて動きに合わせてフィットさせましょう。 伸縮テープの伸ばしすぎ 問題点 正しい貼り方 伸縮性のあるキネシオテープを強く引っ張りすぎると逆効果。筋肉への負担が増加。 伸縮テープは最大限に引っ張らない。 過度なテンションで貼ると、皮膚に過剰なストレスがかかり、かゆみや炎症の原因になることも 貼った後に皮膚が突っ張りすぎていないか確認する。 強く引っ張ることで血流が悪くなり、むくみや違和感を引き起こす可能性がある。 適度なテンションで貼り、血流を妨げないようにする。 身体の動きに合わせてテープが剥がれやすくなり、効果が持続しにくい。 テープの端は引っ張らずに貼り、密着させる。 伸縮テープを伸ばしすぎるとかえって筋肉への負担が増すリスクがあります。伸縮テープは最大限に引っ張らず、適度なテンションで貼りましょう。 汗や皮脂を拭かずにそのまま貼る 問題点 正しい貼り方 汗や皮脂がついたままテーピングを貼ると、すぐに剥がれてしまう。 テーピングをする前に肌を清潔にし、乾燥させる。 とくに運動中は発汗しやすいため、テープが剥がれやすくなる。 汗をかきやすい人は、スプレー式の粘着剤(プレタップスプレー)を使うと持続時間が長くなる。 剥がれたテープが摩擦を引き起こし、皮膚トラブルの原因になる。 貼る前にタオルやウェットティッシュで汗や皮脂を拭き取る。 テーピングがズレやすく、効果を十分に発揮できない。 テープを貼る際にしっかり押さえ、肌に密着させる。 汗や皮脂がついたままテーピングをすると、すぐに剥がれてしまいます。テーピングを行う前に必ず、肌を水で洗い、タオルで拭いた後に数分乾燥させましょう。 長時間つけっぱなしにする 問題点 正しい貼り方 何日も貼りっぱなしにすると、皮膚かぶれや、汗による蒸れでかゆみが発生する。 1日ごとに貼り替える(運動後は特に剥がす) テーピングの粘着力が弱まり、適切なサポートができなくなる。 使用する際は、しっかりと密着するように貼り、時間が経ったら新しいものに交換する。 皮膚に負担がかかり、炎症やかぶれが悪化する可能性がある。 肌に異常が出た場合はすぐに外し、保湿を行う。 何日もテープを貼りっぱなしにすると、皮膚かぶれや汗による蒸れでかゆみを引き起こす可能性があります。また、テーピングの粘着力も弱まり効果を得られません。 テーピングは1日ごとに張り替え、運動後には剥がして新しいものに取り替えるようにしましょう。 シンスプリントの治療と予防|テーピング以外の対策 シンスプリントの治療には、テーピングに加えて適切な治癒と予防が重要です。以下ではシンスプリントの治癒と予防策について解説します。 安静 シンスプリントを発症し、脚に違和感を感じた場合は、激しい運動を控え安静にしましょう。違和感を抱えたまま運動を続けると、炎症の悪化や、疲労骨折を引き起こす恐れがあります。 無理せず、アイシングや軽いストレッチを行い、改善しない場合は医師に相談しましょう。 アイシング 手順 詳細 1. アイシング用具を準備 氷を袋に入れ、タオルで包むか、冷却パッドを使用する。 2. アイシングの時間 15~20分間、冷却を行う。 3. 休憩時間 1時間以上の間隔をあけ、再度アイシングを行う。 4. 直接肌に氷を当てない 氷が直接肌に触れると凍傷のリスクがあるため、タオルで包む。 5. アイシングの回数 日に数回(最大で4回)繰り返す。運動後や症状を感じたときに行う。 (文献6) シンスプリントに対して、アイシングは炎症などを抑えられる有効な手段です。冷却によって血管が収縮し、炎症を引き起こす物質の流れを抑制します。 アイシングを行う際は、凍傷を避けるためにも氷を肌に直接当てたり、長時間同じカ所を触れさせたりしないようにしましょう。 ストレッチ 無理のないストレッチを行うことで、筋肉の緊張やストレスを軽減できます。シンスプリント時に効果的なストレッチ方法として、後脛骨筋のストレッチやヒラメ筋のストレッチがあります。 どれも一定のスペースがあれば、自宅で行えるストレッチ方法です。ストレッチを行う際は、無理に負荷をかけるのではなく、ゆっくり筋肉を慣らしていく感覚で行うことが大切です。 以下の記事では、シンスプリントに効果的なストレッチの方法を詳しく解説しています。 適切なシューズの選択 項目 ポイント サイズ かかとがフィットし、つま先に約1cmの余裕を確保する。 クッション性 着地時の衝撃を吸収し、関節や筋肉への負担を軽減する。しかし、クッション性と怪我の予防に関する明確なエビデンスはないため、過信は禁物。(文献7)(文献8) アーチサポート 足のアーチ(扁平足・ハイアーチ)に適した設計を選ぶ。 通気性 汗や湿気を逃がし、快適性を維持するメッシュ素材が望ましい。 アウトソールのグリップ スポーツの種類に適した滑りにくいソールを選ぶ。 耐久性 長期間使用できる素材と構造の靴を選ぶ。 シンスプリントを引き起こさないためには、適切なシューズを選ぶことも大切です。クッション性の低いシューズの使用や、かかとのすり減った靴は脛骨(けいこつ)に負荷がかかります。 シューズの寿命は、約400〜800キロメートルとされており、使い古したシューズは買い換えるようにしましょう。 シューズ選びに不安がある方は、専門店でフィッティング(足に合った靴の選定や履き心地の確認など)を受けると良いでしょう。 テーピングで改善しないシンスプリントは当院にご相談ください シンスプリントの症状に対してテーピングは適切に行えば、効果を得られます。しかし、間違えた巻き方・貼り方をすると効果が得られません。それどころか症状を悪化させる可能性があります。 テーピングは正しく行うようにし、貼ったカ所にかゆみやかぶれなどの違和感を感じた場合はすぐに剥がすようにしましょう。 また、テーピングで改善しない場合は、当院「リペアクリニック」にご相談ください。再生医療を活用して組織の回復を助け、シンスプリントの改善を目指した診察を行っています。 テーピングで改善せず、辛いシンスプリントでお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にお問い合わせください。 参考文献 (文献1) シンスプリントに対する治療コストの比較 ─テーピングと装具との比較から─JPTA 三浦雅史,川口徹 pp.1-1 https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2011/0/2011_Cb1152/_pdf?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年2月24日) (文献2) 財団法人日本サッカー協会「F-MARCサッカー医学マニュアル」2007年 https://www.jfa.jp/medical/pdf/F-MARC_Football_Medicine_Manual.pdf?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2007年3月30日) (文献3) Urvashi Sharma&AkhouryGourang Kumar Sinha(2010),Comparison of effectiveness of kinesio taping with nonelastic taping and no taping in players with acute shin splints,ResarchGate,11(1)1-10 https://journals.lww.com/iaph/fulltext/2017/11010/comparison_of_effectiveness_of_kinesio_taping_with.6.aspx(Accessed:2025-02-24) (文献4) Mehran Mostafavifar&Jess Wertz,James Borchers(2012),A systematic review of the effectiveness of kinesio taping for musculoskeletal injury - PubMed https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23306413/(Accessed:2025-02-24) (文献5) Jae-Hong Kim, et al. (2018),The effects of Kinesiotape on acute lateral ankle sprain: study protocol for a randomized controlled trial - PMC https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5819177/(Accessed:2025-02-24) (文献6) Chris M Bleakley,et al. (2012 ),Should athletes return to sport after applying ice? A systematic review of the effect of local cooling on functional performance - PubMed https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22121908/(Accessed:2025-02-24) (文献7) Laurent Malisoux, et al. (2020),Shoe Cushioning Influences the Running Injury Risk According to Body Mass: A Randomized Controlled Trial Involving 848 Recreational Runners - PubMed https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31877062/(Accessed:2025-02-24) (文献8) Naoko Aminaka,et al.(2018),NO IMMEDIATE EFFECTS OF HIGHLY CUSHIONED SHOES ON BASIC RUNNING BIOMECHANICS,1-10 https://hrcak.srce.hr/file/283953(Accessed:2025-02-24)
2025.02.28 -
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プロテオグリカンが膝関節痛に効果があるのかを知りたい プロテオグリカンのサプリメントを試したいけれど副作用が気になる 本記事では、以下について解説します。 膝関節におけるプロテオグリカンの重要性 プロテオグリカンと膝関節痛の関係 プロテオグリカンが膝関節に与える影響 プロテオグリカンの副作用とアレルギー反応 プロテオグリカンサプリメントが膝関節痛に与える効果 プロテオグリカンと膝関節痛に関するよくある質問も紹介していますので、膝関節痛やプロテオグリカンについて知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。 膝関節におけるプロテオグリカンの重要性 プロテオグリカンとは、コアたんぱく質に糖鎖がブラシ状に結合した糖タンパク質のことです。(文献1) コアタンパク質が木の幹とすると、糖鎖がブラシ状の枝というイメージになります。 プロテオグリカンの役割は、ヒアルロン酸やコラーゲンなどと協力して、肌や軟骨を支えることです。 プロテオグリカンが多く含まれている場所を以下に示しました。(文献2) 軟骨 皮膚 靭帯 体の内側を覆う膜 プロテオグリカンは、スポンジのように水分をたくさん抱える性質があり、関節の動きをスムーズにしたり、肌の水分を保ったりするはたらきがあります。 プロテオグリカンは関節軟骨成分の約10%を占めているもので、水分を抱え込みクッション性を高める成分です。(文献3) 軟骨のクッション性が高まると、衝撃吸収力も高まります。逆に、軟骨のクッション性が低下すると、衝撃を吸収しやすくなり、関節の痛みや動きにくさにつながります。 プロテオグリカンは軟骨、ひいては関節を守る重要な役割を果たしている成分です。 プロテオグリカンと膝関節痛の関係 この章では、膝関節痛の主な原因と、プロテオグリカンが膝関節に与える影響を解説します。 膝関節痛の主な原因 膝関節痛の主な原因になる疾患としてあげられるのは、以下の3つです。 変形性膝関節症 急性関節炎 関節リウマチ ここでは、それぞれの疾患について解説します。 変形性膝関節症 変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減ったり、変形したりすることが原因で、痛みや腫れ、動かしにくさといった症状が出るものです。初期症状としてあげられるものが、立ち上がりや歩き始めでの痛み、正座のしにくさなどです。進行すると、O脚が進行して、平地を歩くことも難しくなります。 膝を押したときの痛みや、曲げ伸ばしの制限といった症状も現れます。 急性関節炎 急性関節炎は、急に膝が腫れて熱を持ち、痛みが生じている状況です。 急性関節炎の原因として、主に以下の3つが考えられます。 偽痛風 痛風 化膿性膝関節炎 偽痛風は、ピロリン酸カルシウムという結晶が膝関節に付着して起こるもので、原因としては、加齢や脱水などがあります。(文献4) 痛風とよく似た関節炎の症状がありますが、痛風とは異なり、血液中の尿酸値は高くなっていません。(文献5) 偽痛風の半数以上は膝関節痛を起こすとされています。 痛風は、血液中の尿酸値が高くなり、尿酸が結晶化したことにより痛みを生じるものです。足の親指が痛むことで有名ですが、膝関節痛を生じることもあります。 化膿性関節炎は、歯周病や肺炎などの感染症を引き起こした細菌が、血流により関節に炎症を起こすものです。皮膚や脂肪、骨への感染が、関節に影響を及ぼす場合もあります。 関節リウマチ 関節リウマチは、免疫の異常のために関節に炎症が起こり、痛みや腫れ、機能低下を引き起こすものです。(文献6) 進行すると関節が変形する場合もあります。 手足の指や手首に症状が出ることも多いのですが、膝関節痛を引き起こすケースもあります。40代から60代での発症が多い関節リウマチですが、最近は高齢者の発症も増えてきている状況です。 プロテオグリカンが膝関節に与える影響 プロテオグリカンが膝関節に与える主な影響は、以下のとおりです。 膝の軟骨を守り痛みを和らげる 炎症を抑えて腫れを改善させる 軟骨細胞の再生をサポートする 膝関節の潤滑力を高める 膝の軟骨を守り痛みを和らげる イギリスの出版社サイトに掲載された論文では、以下のような結果が示されました。(文献7) 「サケの鼻軟骨由来プロテオグリカンを1日10mg摂取することは、膝に不快感がある人たちの軟骨の健康を改善する可能性がある」 「サケの鼻軟骨由来プロテオグリカンを1日10mg摂取により、軟骨に多く含まれているII型コラーゲンの分解を抑制し、合成を促進することで、軟骨を守る効果が期待できる」 引用:Evaluation of the effect of salmon nasal proteoglycan on biomarkers for cartilage metabolism in individuals with knee joint discomfort: A randomized double‑blind placebo‑controlled clinical study この結果からも、プロテオグリカンに軟骨保護作用や関節の健康維持・改善効果が期待されていることがわかります。 炎症を抑えて腫れを改善させる プロテオグリカンには抗炎症作用もあることが、複数の研究により明らかにされています。(文献8)(文献9) 消化されにくいプロテオグリカンの構造は、腸内細菌バランスの変化や腸内環境改善と関係しています。(文献8) 腸内環境が改善されると、特定の脂肪酸が作られやすくなり、それが抗炎症作用を発揮しているメカニズムです。 軟骨細胞の再生をサポートする プロテオグリカンは軟骨細胞の1つですが、それだけではありません。軟骨細胞そのものを活性化させるはたらきもあります。軟骨成分のもとになる軟骨前駆細胞を増やし、軟骨の減少を押さえるはたらきが確認されています。 このことからプロテオグリカンは、軟骨細胞の再生をサポートする成分といえるのです。 膝関節の潤滑力を高める プロテオグリカンがとくに活躍するのは、時速0.3mm以下のゆっくりとした速度で関節が動くときや、関節に強い力がかかるときです。プロテオグリカンは、ヒアルロン酸と協力して、関節の表面同士が接触しないように摩擦を最小限に抑えるはたらきがあります。 アメリカの医療従事者向けサイトでは、「人工的に作ったプロテオグリカン(rhPRG4)を関節に注入することで、関節の潤滑力改善や、軟骨の保護効果が期待されている」と記載されています。(文献10) プロテオグリカンの副作用とアレルギー反応 ここでは、プロテオグリカンの副作用とアレルギー反応について、詳しく解説していきます。 プロテオグリカンの副作用 プロテオグリカンは、サケの鼻軟骨から抽出される成分です。 2025年2月27日現在、消費者庁および、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所から、プロテオグリカンに関する副作用は報告されていません。 日本食品化学学会誌に掲載された研究論文においても、プロテオグリカン複合体80というサプリメントを摂取しても、副作用は見られなかったとの報告があります。(文献11) プロテオグリカンによるアレルギー反応 プロテオグリカンはサケの鼻骨由来の成分であるため、魚介アレルギーを引き起こす可能性もあります。魚介アレルギーのある方は、プロテオグリカンを使用する前に医師に相談しましょう。 魚介アレルギーの症状としては、口腔内の違和感、じんましん、急速なアレルギー症状である「アナフィラキシーショック」などがあります。(文献12) プロテオグリカンサプリメントが膝関節痛に与える効果 プロテオグリカンのサプリメントを摂取しても、膝痛に直接の効果があるとは考えにくいでしょう。 プロテオグリカンの主成分はタンパク質です。タンパク質は、食事やサプリメントで口から摂取したあと消化吸収されて、身体を作る要素の1つ、アミノ酸に分解されます。 分解されたアミノ酸が、再度プロテオグリカンとして生成されるかどうかは断言できません。もしプロテオグリカンが生成された場合でも、膝の軟骨部分は血管組織が少ないため、膝に直接届く可能性は低いものです。 プラシーボ効果により、「サプリメントで膝がよくなった」ケースも考えられますが、摂取した方全員に効くとは限りません。 プラシーボ効果とは、効果がない薬の内服、もしくはサプリメント摂取でも実際に効果が認められる現象で、自己暗示の影響が大きいとされるものです。(文献13) まとめ|プロテオグリカンで膝関節痛が改善しないときは医療機関を受診しよう プロテオグリカンは、関節や軟骨を守るはたらきがあり、一定の効果を示す有効な成分です。 プロテオグリカンはサケの鼻軟骨から抽出される天然成分であるため、副作用がないといわれています。魚介アレルギーの方は、念のため使用する前に医師へ相談しましょう。 膝関節痛に一定の効果があるとされるプロテオグリカンですが、サプリメント摂取による直接の効果があるとは考えられにくいものです。 プロテオグリカンを摂取しても膝関節痛が改善しない場合は、医療機関を受診しましょう。医療機関で行われる膝関節痛の治療としては、薬物療法や手術療法、再生医療などがあります。 当院「リペアセルクリニック」では、変形性膝関節症や急性関節炎、関節リウマチなどによる膝関節痛を和らげる再生医療を行っています。 メール相談やオンラインカウンセリングも実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。 プロテオグリカンと膝痛に関するよくある質問 ここでは、プロテオグリカンと膝痛に関するよくある質問を3つご紹介します。 プロテオグリカンと他の膝用サプリメントを併用しても問題ありませんか? プロテオグリカンと、グルコサミンやコンドロイチンといった関節成分の併用で相乗効果が期待できるとされています。 しかし、本文でも述べたように、サプリメントによる膝痛改善効果は薄いものです。 サプリメント併用により、特定成分の過剰摂取につながる可能性もあるため、心配な場合は使用前に医師に相談しましょう。 膝関節におけるプロテオグリカン以外のセルフケアはありますか? 膝関節痛における、プロテオグリカン以外のセルフケアは、主に以下の4つです。 食生活の見直し 姿勢の改善 適度な運動 体重管理 食生活を見直すときには、タンパク質やカルシウム、ビタミンD、ビタミンKを積極的にとりましょう。タンパク質やカルシウムは、筋肉や骨を作る材料でもあり、関節を守り支える役割を果たします。ビタミンDやビタミンKは骨づくりを助けます。 姿勢の改善も大切なセルフケアです。膝を伸ばして歩く、立っているときや座っているときは背筋を伸ばすなどを意識しましょう。 適度な運動は、筋肉量の維持につながり、膝関節痛の悪化防止になります。毎日少しずつでも筋トレやウォーキングなどの運動を続けましょう。 体重管理も大切なポイントです。 体重を2kg減らすと、歩くときの負担が4〜6kg減少し、階段の上り下りでは10~14kgもの負担が減少するとされています。(文献14) 日頃の運動や食事管理などで、適正体重を保つように心がけましょう。 プロテオグリカンを摂取すると癌になるというのは本当ですか? 「プロテオグリカン=癌になる」ではありません。 がん細胞は、プロテオグリカンを利用して成長したり、他の場所に移動したりします。(文献15) しかし、プロテオグリカンの種類や構造によって、がん細胞に与える影響は異なります。がんを促進するものもあれば、抑制するものもあるのです。 参考文献 (文献1) 日本応用糖質科学会「食べてキレイを守る“新習慣”サプリメント SUNVS (サンブイエス)」『日本応用糖質科学会誌』7(2), pp113, 2017 (最終アクセス:2024年2月17日) (文献2) 高橋達治.「サケ鼻軟骨由来プロテオグリカン摂取による関節保護効果」『Functional Food Research』14, pp.36-43, 2018 (最終アクセス:2024年2月17日) (文献3) 高橋謙治.「関節軟骨細胞の老化とストレス応答を利用した変形性関節症治療」『日本医科大学医学会雑誌』7(4), pp.150-155,2011 (最終アクセス:2024年2月17日) (文献4) 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター「膝関節の痛みと治療について」 国立研究開発法人国立長寿医療研究センターホームページ (最終アクセス:2024年2月17日) (文献5) 一般社団法人日本リウマチ学会「偽痛風」一般社団法人日本リウマチ学会, 2022年5月22日 (最終アクセス:2024年2月17日) (文献6) 一般社団法人日本リウマチ学会「関節リウマチ(RA)」一般社団法人日本リウマチ学会, 2022年5月22日 (最終アクセス:2024年2月17日) (文献7) SPANDIDOS PUBLICATIONS「Evaluation of the effect of salmon nasal proteoglycan on biomarkers for cartilage metabolism in individuals with knee joint discomfort: A randomized double‑blind placebo‑controlled clinical study」Experimental and Therapeutic Medicine, 2017年5月11日 (最終アクセス:2024年2月17日) (文献8) 後藤昌史ほか.「サケ鼻軟骨熱水抽出物の経口摂取による日焼け抑制効果―無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験―」『応用糖質科学』6(2), pp.138-146, 2016 (最終アクセス:2024年2月17日) (文献9) 工藤重光ほか.「プロテオグリカンを主成分とするサケ鼻軟骨粉末の安全性評価」『日本食品科学工学会誌』58(11), pp.542(26)-547(31), 2011 (最終アクセス:2024年2月17日) (文献10) HCP LIVE 「Lubricin: New Promise for Joint-Preserving Therapy」, 2013年7月31日 (最終アクセス:2024年2月17日) (文献11) Tatsuya Wada, et al.(2023).Safety evaluation of excessive intake of Proteoglycan Complex 80 from salmon nasal cartilage―a randomized, double-blind, placebo-controlled, parallel-group study―.日本食品化学学会誌,30(3)pp.165-177. (最終アクセス:2024年2月17日) (文献12) 長崎大学病院皮膚科・アレルギー科「魚介アレルギー」長崎大学病院皮膚科・アレルギー科 (最終アクセス:2024年2月17日) (文献13) 井澤美苗ほか.「脳が決める効果: プラセボ効果の要因解析からわかること」『日本香粧品学会誌』37(3), pp.197-200ページ, 発行年(2013) (最終アクセス:2024年2月20日) (文献14) 東京医科大学病院「東京医科大学病院市民公開講座 変形性膝関節症~予防と治療~」 東京医科大学病院, 2018年6月 (最終アクセス:2024年2月17日) (文献15) Glyco forum「がん生物学から見たコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの機能 コンドロイチン硫酸の糖鎖構造依存的な細胞内シグナルの制御とがん化」 Glyco forum, 2019年8月1日 (最終アクセス:2024年2月17日)
2025.02.28 -
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坐骨神経痛の症状にツボやお灸は効果があるのかを知りたい ツボやお灸が坐骨神経痛に効果的なら試してみたい 本記事では、以下について解説します。 坐骨神経痛にツボが有効な理由 ツボ押しで改善が期待できる坐骨神経痛の主な症状 坐骨神経痛に効果的なツボ 坐骨神経痛におけるツボ押しのポイントと注意点 坐骨神経痛を和らげるためにツボ押しを行いたいと考えている方に役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。 坐骨神経痛にツボが有効な理由 ツボ押しには、以下のような効果があります。 血行を促進させる 筋肉の緊張を和らげる 自然治癒力を向上させる 神経の反応を調整する 坐骨神経痛におけるツボ押しと関連するものが、鍼治療です。 鍼治療は、皮膚や関節、筋肉にある神経を刺激する効果や、血流を改善する効果により回復を助けます。(文献1) また、鍼による刺激で、痛みを和らげる効果があるエンドルフィンという神経伝達物質が出されます。 2002年に、WHO(世界保健機関)の「Consuitation onof Acupuncture」は225件の臨床試験レビューを発表しました。 その中で、鍼灸は28の疾患に有効、63の疾患に有益であると結論付けており、坐骨神経痛も28の有効疾患に含まれます。(文献2) ツボ押しで改善が期待できる坐骨神経痛の主な症状 前章で、坐骨神経痛にツボが効果的である理由を紹介しました。 坐骨神経痛の症状のうち、ツボ押しの改善が期待できるものは以下の2つです。 下肢の痛みやしびれ 間欠性跛行(かんけつせいはこう) それぞれの症状について、詳しく解説していきます。 下肢の痛みやしびれ 坐骨神経痛の主な症状としてあげられるのが、下肢(腰から下の部分)の痛みやしびれです。 腰から足にかけて伸びている坐骨神経が、さまざまな原因で圧迫や刺激を受けるために、痛みやしびれが生じます。(文献3) 原因になる疾患は主に以下のとおりです。 腰椎椎間板ヘルニア 腰部脊柱管狭窄症 腰椎すべり症 チクチクするような痛みやビンと走るような痛みのほか、ビリビリとしたしびれもあります。(文献4) 間欠性跛行 間欠性跛行とは、坐骨神経痛の原因の1つ、腰部脊柱管狭窄症による症状です。 腰部脊柱管狭窄症とは、腰椎(腰部の背骨)が加齢とともに変形して、神経の通り道である脊柱管が狭くなり、神経が圧迫される状態です。 安静時は痛みがなく、歩き始めると腰痛やしびれといった症状が出て、休むと症状が和らぎます。 間欠性跛行は、神経の圧迫状況により「馬尾型」と「神経根型」にわかれます。馬尾型は、両下肢や陰部のしびれ、感覚異常などが出てくるタイプです。これに対し神経根型は、片側の下肢に痛みやしびれが生じます。 坐骨神経痛に効果的なツボ 坐骨神経痛に効果的なツボがあるのは、主に以下の3か所です。 臀部(お尻) 手部 下肢(膝) 部位別に詳しく解説していきます。 臀部(お尻)のツボ 坐骨神経痛に関係する臀部(お尻)のツボは、主に以下の2つです。 環跳(かんちょう) 承扶(しょうふ) 環跳(かんちょう) 環跳(かんちょう)は、お尻のやや外側にあるツボになります。横向きに寝て、股関節を曲げると、えくぼが出来る部分です。 環跳のツボは、おしりの痛みやしびれ、腰痛に効果があり、身体の中心に向かって押すことで、坐骨神経痛による痛みやしびれの緩和が期待できます。 承扶(しょうふ) 承扶(しょうふ)は、「気を付け」の姿勢でまっすぐ立ったときにできる、おしりの下の横じわ中央部分です。承扶のツボは、坐骨神経痛が骨盤の内側から外側に出てくる通過点でもあります。 そのため、承扶のツボを刺激することにより、痛みを和らげたり、おしりや股関節の動きを助けたりする効果が期待できます。 手部のツボ 坐骨神経痛に関係する手のツボは、主に以下の2つです。 腰腿点(ようたいてん) 合谷(ごうこく) 腰腿点(ようたいてん) 腰腿点(ようたいてん)は、手の甲にある、人差し指と中指の間、および薬指と小指の間のツボです。坐骨神経痛による慢性的な腰痛に加えて、ぎっくり腰のような急性の腰痛にも効果があるとされています。 手の甲にあるため、人目を気にせず、いつでも気軽に押せるツボです。 合谷(ごうこく) 合谷(ごうこく)は手の甲に位置するツボで、親指と人差し指の付け根・親指にぶつかる部分です。万能のツボとも呼ばれ、坐骨神経痛の他にもさまざまな痛みに効果があるとされています。緊張した筋肉を和らげるはたらきもあるため、腰痛や肩こりにも効果的といわれています。 さまざまな症状に有効とされるため、ツボの初心者向きといえるでしょう。 下肢(膝)のツボ 坐骨神経痛に関係する下肢(膝)のツボは、主に以下の2つです。 委中(いちゅう) 陽陵泉(ようりょうせん) 委中(いちゅう) 委中(いちゅう)は、膝の裏・中央部にあるツボです。ふくらはぎのしびれや痛み、腰痛などに効果があるとされています。坐骨神経痛の方は、この部分に張りや硬さがあり、押すと強く痛むといわれています。 膝裏のツボであるため、立った姿勢よりも座った姿勢の方が押しやすいでしょう。 陽陵泉(ようりょうせん) 陽陵泉(ようりょうせん)は、膝の外側にある大きな骨の下にあるツボです。坐骨神経の一部である、総腓骨神経が通っている部分でもあります。ここを押すことで、しびれや痛みといった症状の緩和が期待できるでしょう。 足首の痛みや足のだるさ、むくみにも効果があるツボといわれています。 坐骨神経痛におけるツボ押しのポイント 坐骨神経痛におけるツボ押しのポイントは、主に以下の4つです。 リラックスした状態で行う 指の腹を使ってツボを押す 日用品を利用する 呼吸を意識する リラックスした状態で行う ツボ押しの前には深呼吸や軽いストレッチなどで、心身ともにリラックスさせておきましょう。押す位置の周辺をストレッチで軽くほぐしておくと、指が入りやすく、刺激も伝わりやすくなります。 指の腹を使ってツボを押す 指の腹を使って、「痛いけれど気持ちが良い」程度の強さでツボを押します。 ツボ押しの前には、以下のような準備をしておくと良いでしょう。 爪を切る 手をあたためておく クリームやオイルで皮膚の滑りを良くする 爪が伸びていると、皮膚を傷つける恐れがあるため、事前に切っておきましょう。手をあたためるとリラックスできるため、ツボ押しの効果が高まります。また、皮膚の滑りを良くすると、力を入れずにツボを押せます。 日用品を利用する 指の腹を使ってのツボ押しが疲れてきた場合は、日用品を活用する方法もおすすめです。 主な例は以下のとおりです。 テニスボールやゴルフボールをツボの周囲で転がして刺激する ツボ押し棒や束ねたつまようじなどでツボ押しをする ドライヤーやホットタオルでツボやその周辺を温める 市販されているお灸を使ってツボを温める方法もあります。お灸を使うときの注意点は、火を消し忘れないこと、熱さを我慢しないことなどです。 火事や、やけどが心配な方は、火を使わないお灸を試してみましょう。 呼吸を意識する 息を吐くときにツボを押して、息を吸うときにツボから指を離すというように、呼吸を意識しながら行いましょう。 ツボを押すときに息を吐くことで、副交感神経が優位になってリラックスできるため、適度な刺激が入りやすくなります。(文献6) 1回6秒程度で押すと良いでしょう。2秒間かけてツボを押し、2秒間維持する、その後2秒かけて指を離す流れです。 坐骨神経痛におけるツボ押しの注意点 坐骨神経痛におけるツボ押しの注意点は、主に以下の5つです。 食後1時間以内および飲酒後は避ける 痛みを感じるほどの強い刺激は避ける 出血している部位は避ける 妊娠中の方は医師に相談する 基礎疾患のある方は医師に相談する 食後1時間以内および飲酒後は避ける 食後1時間以内は消化吸収のために、血液が胃腸に集中している状態です。この時間帯にツボを刺激すると、胃腸の血流より、刺激された部分の血流が良くなってしまい、消化吸収に支障をきたす可能性があります。 飲酒後は、アルコールが分解されたことによる有害物質「アセトアルデヒド」が体の中をめぐっている状態です。(文献7) ツボ刺激やマッサージなどにより血流が良くなっている状況で、有害物質が体の中をめぐると、酔いが回りやすくなります。 これらの理由から、食後1時間以内および飲酒後は、ツボ押しを避けた方が良いでしょう。 痛みを感じるほどの強い刺激は避ける 痛みを感じるほど強く刺激すると、筋肉が緊張したり、筋繊維が破壊されたりします。いわゆる、もみ返しの状態です。また、刺激を受けた部分が炎症を起こして、症状が悪化する可能性もあります。 高齢者の場合は骨折する恐れも恐れもあるため、強い刺激は避けましょう。 出血している部位は避ける 鍼の基礎教育と安全性に関するガイドラインには、「鍼治療は出血性もしくは凝血性の疾患、または抗凝血治療中か抗凝血剤使用中の患者には用いるべきではない」と記載されています。(文献5) 出血している部分に、鍼治療を含めたツボ療法を実施すると、血流促進により止血が妨げられてしまいます。出血部位に触れることで細菌に触れる可能性が高く、感染リスクを高めるため、直接触れないようにしましょう。 妊娠中の方は医師に相談する 鍼の基礎教育と安全性に関するガイドラインでは、妊娠中の鍼治療について以下のように述べています。 「鍼刺激は陣痛を誘発する可能性があるので、妊婦には用いるべきではない。他の目的で治療がどうしても必要なときには十分な注意が必要である」(文献5) 引用:鍼の基礎教育と安全性に関するガイドライン とくに妊娠初期は鍼治療を含めたツボ療法により、流産の可能性もあります。妊娠初期に刺激してはいけないツボもあります。 ツボ押しや鍼治療を希望される妊婦の方は、担当の産婦人科医師へ事前に相談しましょう。 基礎疾患のある方は医師に相談する 坐骨神経痛の原因として主にあげられるのは、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症などです。しかし、帯状疱疹ウイルス感染や癌などの内科的な基礎疾患が原因の座骨神経痛もあります。 鍼の基礎教育と安全性に関するガイドラインにおいて「鍼治療は悪性腫瘍に用いられるべきではない」とされています。(文献5) 坐骨神経痛に加えて内科的な基礎疾患がある方は、ツボ押しや鍼治療の前に主治医に相談しましょう。 まとめ|坐骨神経痛のときはツボと病院での治療を並行しよう 坐骨神経痛の痛みやしびれ症状には、鍼治療やツボ押しが有効な場合もあります。WHO(世界保健機関)においても、鍼灸は坐骨神経痛に有効であると示されました。 本記事でも坐骨神経痛に効果的とされるツボを紹介しましたが、ツボ押しの際はさまざまな注意点もあります。食後1時間以内は避ける、強い刺激は避けるといった、ポイントを押さえながら実施しましょう。 妊娠中の方や基礎疾患がある方は、担当医へ事前に相談してください。 坐骨神経痛の根本的な改善のためには、医療機関での治療も必要です。 当院「リペアセルクリニック」においても、坐骨神経痛治療を行っています。 メール相談やオンラインカウンセリングにてお気軽にお問い合わせください。 坐骨神経痛とツボに関するよくある質問 ここでは、坐骨神経痛とツボに関するよくある質問を2つ紹介します。 ツボ押しはいつ行うのが効果的ですか? 入浴後や就寝前など、リラックスしている時間帯が効果的です。とくに入浴後は体も温まっているため血行も良く、筋肉も柔らかくなっているため、おすすめの時間帯といえます。 坐骨神経痛はツボで治りますか? 坐骨神経痛の痛みやしびれは、ツボで緩和されることもあります。 しかし、強く痛むときや排尿・排便の障害があるときなどは、整形外科を中心とした医療機関での検査や治療が必要です。ツボだけで治らないときには、必ず医療機関を受診しましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では、外科系の疾患に対して再生医療を提供しております。 メールやオンラインカウンセリングによる相談も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。 参考文献 (文献1) HARLEY STREET SPECIALIST HOSPITAL「Acupuncture For Sciatica: Does It Really Work?」 HARLEY STREET SPECIALIST HOSPITAL, 2024年2月13日 (最終アクセス:2025年2月17日) (文献2) 国立がん研究センター「鍼灸治療セミナー資料」 国立がん研究センター, 2024年7月21日 (最終アクセス:2025年2月17日) (文献3) 痛みの情報サイト 疼痛.jp「坐骨神経痛」痛みの疾患ナビ (最終アクセス:2025年2月17日) (文献4) 坐骨神経痛- 08.骨、関節、筋肉の病気 MSDマニュアル 家庭版 (最終アクセス:2025年2月17日) (文献5) 世界保健機関 (訳:川喜田健司ほか)鍼治療の基礎教育と安全性に関するガイドライン 『全日本鍼灸学会雑誌』50(3), pp.103(505)-123(525), 2020年 (最終アクセス:2025年2月17日) (文献6) 学校法人大麻学園四国医療専門学校「正しいツボの押し方」 癒しのツボ, 2011年8月 (最終アクセス:2025年2月17日) (文献7) 公益社団法人 アルコール健康医学協会「健康飲酒の基礎知識」 お酒と健康 (最終アクセス:2025年2月17日)
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坐骨神経痛の足のしびれを治したい 病院で治療する方が良いのか、自宅でのケアでも治せるのかを知りたい このようなお悩みを抱えていませんか? 坐骨神経痛とは、腰から臀部(お尻)を通り、膝の下まで伸びている神経が、圧迫されたり締め付けられたりすることにより生じるさまざまな症状です。(文献1) 足のしびれや腰痛も坐骨神経痛の症状に含まれます。また、坐骨神経痛による足のしびれの治し方は、大きく2つに分けられます。1つは病院での治療であり、もう1つは自宅でできるセルフケアです。 そこで本記事では、以下について解説します。 坐骨神経痛による足のしびれの治し方 坐骨神経痛の原因 坐骨神経痛で足がしびれるときにやってはいけないこと 坐骨神経痛が原因で足がしびれて辛いとお困りの方は、ぜひ最後までご覧ください。 坐骨神経痛による足のしびれの治し方 坐骨神経痛による足のしびれの治し方は、大きく2つに分かれます。 病院での治療 家庭でできるセルフケア それぞれ詳しく解説していきます。 病院で行われる6つの治療法 病院で行われる治療法は、主に以下の6つです。 内服治療 ブロック注射 理学療法 装具療法 手術療法 再生医療 以下で、各治療法のポイントを詳しく解説していきます。 1.内服治療 薬を飲んでしびれや痛みを抑える治療法です。 内服治療で使われる主な薬剤を以下に示しました。 薬剤の種類 特徴 副作用 非ステロイド性消炎鎮痛剤 (NSAID) 最も一般的な消炎鎮痛剤 炎症物質の産生をおさえて 痛みを和らげる 主なものはロキソニンやボルタレン (いずれも製品名) 胃潰瘍や喘息など アセトアミノフェン 古典的な鎮痛薬 主なものはカロナールやトラムセット (製品名) 胃潰瘍や喘息など 生物組織抽出物 主なものはノイドトロピン(製品名) 痛みを抑える神経の働きを高める 効果が現れるまで2~4週間続けて内服する 発疹、じんましん、吐き気など 神経障害性疼痛薬 神経の過敏性を抑える薬 主なものはプレガバリン(製品名リリカ) めまいや眠気など オピオイド 麻薬性鎮痛薬や、その関連合成鎮痛薬の総称 トラマース、レペタン、ソセゴン (いずれも製品名)など数多くの種類がある 便秘や眠気、吐き気など 抗うつ剤や抗てんかん薬を補助的に使う場合もあります。 2.ブロック注射 ブロック注射とは、症状がある部分の神経、およびその付近に行う注射です。 主なものとしては、以下の3種類があげられます。 神経ブロック 硬膜外ブロック 神経根ブロック 神経ブロックは、神経の周囲や神経内に局所麻酔やステロイド剤を注射する方法です。高周波の熱やアルコールを注入する方法もあります。 硬膜外ブロックは、背中から背骨に向かって針を指し、硬膜外腔(脊髄の外側)に局所麻酔を注射する方法です。 神経根ブロックは、レントゲンで神経が出てくる背骨の穴を確認しながら、神経に向けて局所麻酔薬や抗炎症薬(ステロイド)を注射するものです。 3.理学療法 理学療法とは、運動機能の維持や改善を目的として行う療法です。 主な理学療法としてあげられるものは、以下の3つです。 温熱療法 低出力レーザー法 運動療法 温熱療法は、赤外線やホットパック、超音波などでしびれのある部分を温めるもので、血流改善効果があります。 通常よりも弱い、低出力レーザー光を症状がある部位に当てることも、理学療法の一環です。血流を増加させたり、痛みを抑えたりする効果が期待できます。 運動療法は、ストレッチや筋力トレーニングなどで、症状が安定している慢性期に行います。運動療法の目的は、筋力低下防止や再発予防などです。 4.装具療法 装具療法とは、コルセットやウイリアム型装具、腰部固定帯などを用いて、足のしびれをやわらげる治療法です。 各種装具には、腰を安定させる、脊椎(腰の下部分の背骨)のカーブを正しい位置にする、動き過ぎを防ぐなどの役割があります。 ただし、長期間利用すると筋力が低下する可能性があります。1か月程度を利用目安にすると良いでしょう。 5.手術療法 足の痛みやしびれが強い場合や、下肢の筋力が低下している場合、膀胱および直腸に障害が認められる場合は、手術適応となります。 手術療法の主な種類を以下に示しました。 椎間板ヘルニアの部分を摘出する手術 背中側の骨の一部を切除して脊柱管を広げる手術 曲がった脊椎を矯正するために金属を入れて固定する手術 現在は、内視鏡による手術が発達してきています。 6.再生医療 再生医療とは、病気やけがで働きが悪くなった組織や臓器を再生させる治療法です。これまで、完治が難しかった病気の治療法として期待が寄せられています。 再生医療に用いられる細胞としては、以下のようなものがあげられます。 受精卵から作られたES細胞(胚性幹細胞) iPS細胞(身体の細胞に特定の遺伝子を入れた細胞) 体性幹細胞(生物がもともと持っている細胞) 当院「リペアセルクリニック」では、坐骨神経痛治療においても再生医療を取り入れています。 メール相談やオンラインカウンセリングもございますので、お気軽にお問い合わせください。 自宅でできる3つのセルフケア 坐骨神経痛による足のしびれへのセルフケアは、主に以下の3つです。 適度に運動する 正しい姿勢をとる 身体を温める 以下で、ポイントを詳しく解説していきます。 1.適度に運動する 再発予防のためにも、症状が軽いときには適度に運動しましょう。 運動の具体例を以下に示しました。 ストレッチ:あお向けの姿勢で膝を抱える、片足ずつ上げるなど 筋力トレーニング:スクワットや腹筋、背筋など 全身運動:ウォーキングや水中エクササイズなど 望ましい運動は、腰に負担をかけないものです。 ただし、腰痛やしびれがあるときは運動を控えてください。 2.正しい姿勢をとる いすに座るときは、背筋を伸ばし、左右のお尻に均等に体重がかかるようにしましょう。足を組まないように心がけてください。 床に座るときは、あぐらや正座が望ましい姿勢です。 長時間座ったままでいることは避けましょう。30分以上座ったままでいると、腰に負担がかかりやすくなります。 寝るときの正しい姿勢は、横向きとあお向けで異なります。 横向きのときは、しびれがある方を上にして、腰をかがめながら寝ましょう。 あお向けのときは、膝の下にまくらやクッションを入れてみましょう。坐骨神経にゆとりができて、しびれがやわらぎます。 3.身体を温める 使い捨てカイロで腰を温める、入浴時は湯船につかって身体を温めるといった方法があります。 温熱療法と同じく、血流改善の効果が期待できます。 ただし長風呂はおすすめできません。長時間入浴すると湯冷めしてしまい、かえって症状が増してしまうためです。入浴時間は15分から20分程度、お湯の温度は38〜40℃程度が望ましいでしょう。 坐骨神経痛の原因 坐骨神経痛を引き起こす原因は、主に以下の5つです。 腰椎椎間板ヘルニア 脊柱管狭窄症 腰椎すべり症 感染症や腫瘍 加齢や筋力の低下 それぞれ詳しく解説していきます。 腰椎椎間板ヘルニア 腰椎椎間板ヘルニアとは、腰椎(腰の部分の背骨)にある椎間板(骨と骨の間にあるクッションの役割)が加齢とともに変化して、断裂した状態です。 椎間板の変化は20歳頃から始まるため、腰椎椎間板ヘルニアも20代~40代で多く発症し、女性より男性に多く見られる疾患です。 断裂した部分から、髄核という成分が飛び出して、腰から下の神経を圧迫してしまいます。 神経が圧迫されるために、足のしびれや腰痛、膀胱直腸障害(排尿および排便の障害)といった症状が見られます。足に力が入りにくくなり、転びやすくなる場合もあります。 脊柱管狭窄症 脊柱管狭窄症とは、腰椎が加齢とともに変形して、神経の通り道である脊柱管が狭くなり、神経が圧迫される状態です。 50代から80代の方に多く、女性より男性に多いとされています。 主な症状は以下のとおりです。 足のしびれ 間欠性跛行 腰痛 足裏の違和感 膀胱直腸障害 間欠性跛行とは、安静時には無症状であるものの歩き続けると腰痛やしびれが生じ、休むと症状が改善する特徴的な症状です。 膀胱直腸障害とは、脊髄にある神経が障害を受けて、膀胱や直腸の機能が低下するものです。 症状としては、尿や便の失禁、便秘、残尿感などがあげられます。 腰椎すべり症 腰椎すべり症とは、加齢により腰椎が変形して前方もしくは後方にすべってしまう状態で、腰椎変性すべり症と腰椎分離すべり症の2種類があります。 中年以降の女性に多く、足のしびれや腰痛、間欠性跛行、膀胱直腸障害などが見られます。 感染症や腫瘍 帯状疱疹ウイルスが坐骨神経に感染したことで、坐骨神経痛が生じる場合もあります。 直腸癌や膀胱癌といった、骨盤内の腫瘍により神経が圧迫されて坐骨神経痛が発生するケースもまれにあります。 加齢や筋力の低下 加齢により、腰から下および、おしりの筋力が衰えると腰椎を支える力が弱まり、神経が圧迫されやすくなります。 神経が圧迫されたことにより、坐骨神経痛を発症し、足のしびれや腰痛など辛い症状に悩む方も少なくありません。 まとめ|坐骨神経痛(足がしびれ)は病院治療とセルフケアで治そう 坐骨神経痛による足のしびれは、加齢による筋力低下や、腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などさまざまな原因で引き起こされます。 まれに、感染症や骨盤内の腫瘍などの内科疾患が原因で生じるケースもあるため、足のしびれが辛いときは、放置せず医療機関を受診する方が良いでしょう。 辛い症状を軽減させるための基本は、病院での治療と自宅でのセルフケアです。 本記事を参考に、しびれの軽減や再発予防に努めましょう。 坐骨神経痛による足のしびれでお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」のメール相談やオンラインカウンセリングにてお気軽にお問い合わせください。 坐骨神経痛(足のしびれ)の治し方に関するよくある質問 ここでは、坐骨神経痛(足のしびれ)の治し方に関するよくある質問を3つ紹介します。 坐骨神経痛で足がしびれるときにやってはいけないことは何ですか? 足がしびれるときにやってはいけないこととして、以下の4つがあげられます。 重いものを持つ:椎間板に負担がかかるため 腰を反らせた姿勢を取る:神経が強く圧迫されるため 長時間座り続ける:腰に負担がかかるため 身体をひねる:椎間板に負担がかかるため 椅子や床に座るときは、30分をめどに立ち上がって休憩しましょう。 坐骨神経痛は自然に治りますか? 腰椎椎間板ヘルニアの場合は、ヘルニア部分が自然に吸収されて痛みが軽くなることも少なくありません。 ただし、下肢の筋力低下や膀胱直腸障害が出てきた場合は、手術が必要です。 坐骨神経痛は、脊柱管狭窄症や腰椎すべり症などでも発症します。 脊柱管狭窄症は自然に治るケースと徐々に進行するケース、両方が存在します。脊柱管狭窄症と診断されただけでは、自然に治るか進行するかが不明であるため、継続して経過を見ていくことが必要です。 また腰椎すべり症は、自然に治ることが少ない疾患であるため、継続した治療が必要です。 坐骨神経痛の中には、まれに子宮癌や膀胱癌などの内科疾患が原因で発症するケースもあります。 足のしびれや腰痛などの症状が出たら、一度医療機関を受診してみましょう。 足のしびれ・腰痛は何科を受診するべきですか? 足のしびれや腰痛など、坐骨神経痛と思われる症状がある場合は、最初に整形外科を受診しましょう。 MRI検査やCT検査などで、原因となる病気を特定します。 整形外科で異常がない場合の受診先は、内科や脳神経外科、神経内科、ペインクリニックなどです。 当院「リペアセルクリニック」は、整形外科や内科、脳神経外科などに対応しております。 再生医療による治療も行っておりますので、メール相談やオンラインカウンセリングをご利用の上、お気軽にお問い合わせください。 参考文献 (文献1)坐骨神経痛- 08.骨、関節、筋肉の病気 MSDマニュアル 家庭版 (最終アクセス:2025年2月20日)
2025.02.28 -
- 脊椎
- 脊柱管狭窄症
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坐骨神経痛があると、「歩いても大丈夫だろうか?」そんな不安を抱く方は多いでしょう。 痛みが悪化するかもしれない恐れから、なるべく動かないようにしてしまうケースも少なくありません。 しかし、正しくウォーキングを取り入れることで、痛みの改善を目指せる可能性があります。 この記事では、「本当に歩いて良いのか」「どのように歩けば良いのか」そんな疑問を持つ方に向けて、ウォーキングのメリットや注意点、さらにセルフケアまでわかりやすく解説します。 【前提知識】坐骨神経痛とは 坐骨神経痛とは、お尻から太もも、ふくらはぎまで伸びる坐骨神経がなんらかの要因で圧迫・刺激されることで、痛みやしびれなどの症状が現れる状態です。 原因としては、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、加齢に伴う椎間板や骨の変性などが挙げられます。 いずれの場合も、神経への圧迫や炎症が痛みやしびれを引き起こす仕組みです。 症状が進むと、歩行や座位を続けることが困難になるなど、日常生活に大きな支障が出るケースもあります。 坐骨神経痛の主な原因 下記は代表的な原因を整理したものです。いずれも神経への圧迫を招きやすい要素といえます。 原因 概要・特徴 腰椎椎間板ヘルニア 椎間板が飛び出し、神経を圧迫して強い痛みやしびれを起こす。若い世代でも発症しやすい。 脊柱管狭窄症 (せきちゅうかんきょうさくしょう) 加齢により脊柱管が狭くなり、坐骨神経を刺激して痛みやしびれが現れる。中高年に多い。 下半身の筋肉の衰え 筋肉が衰えると下半身に過度の負担がかかることで神経を圧迫し、坐骨神経痛を誘発する場合がある。 坐骨神経痛のよくある症状 主な症状としては、足やお尻にかけてのしびれや痛みが代表的です。下記はよく見られる症状を一覧にまとめたものです。 症状 特徴 下肢のしびれ・痛み お尻から太もも、ふくらはぎにかけてピリピリした痛みやジンジンするしびれが出る 長時間椅子に座れなくなる デスクワークや車の運転など、座位を続けると痛みが強くなる。 歩行が困難 歩き始めや長距離の歩行で痛みが強くなり、スムーズに歩けなくなる場合がある。 姿勢による痛みの変化 前かがみや後ろに反る動作によって、痛みが強まったり和らいだりする可能性がある。 結論|坐骨神経痛における歩行の有効性はケースによって異なる 結論として、坐骨神経痛は歩いた方がいいのか、悪いのかについてはケースによって異なります。(文献1)(文献2) 痛みが長引く、もしくは日常生活に支障をきたすようであれば、無理せず病院を受診し、適切な診断と治療方針のもとでリハビリやウォーキングを進めることが大切です。 一方で、症状が軽度な場合やリハビリ段階では、ウォーキングによって筋力維持や血行促進が期待できます。 歩行の可否は症状の度合いや原因によるため、まずは医療機関で状態を確認することが大切です。 歩いた方がいい場合 1.症状が比較的軽度または痛みが落ち着いているとき 急性期の激しい痛みが和らいできた段階であれば、適度なウォーキングによる血行促進や筋力維持が有効とされています。安静にしすぎると筋力低下を招き、かえって痛みが長引く可能性があるため、痛みが許容範囲であればむしろ動くことが大切です。 2.医師や理学療法士から運動療法を勧められているとき 近年の研究では、坐骨神経痛になっても運動療法を取り入れたグループと、経過観察のみを行なったグループを比較した際に、運動療法を取り入れたグループの方が早く症状が収まったという報告があります。(文献3) 医師や理学療法士からウォーキングを提案された場合は、痛みを軽減しながら回復を促しましょう。 3.体力や筋力の低下を防ぎたい場合 デスクワーク中心や加齢による筋力の衰えが原因で腰回りが不安定になっている場合、適度な歩行は下半身の筋肉を刺激し、血流を良くして回復を助けます。 過度な負荷をかけずに動くことで、腰椎や骨盤周りへの過剰な負担を避けながら、筋力低下を予防。 また、デスクワークの方は30分に1回は立ち上がったり、ストレッチをしたりして、体を動かす習慣をつけましょう。 歩かない方がいい場合 1.わずかな動作でも強い痛みを感じる場合 炎症が強く、痛みをこらえて無理に歩くと神経への刺激がさらに増すため、症状を長引かせるリスクがあります。痛みが強い状態が続く場合は、まずは医師に相談して安静を保ちつつ治療を優先し、痛みが落ち着いてから運動を再開しましょう。 2.膀胱直腸障害や重度のしびれ・麻痺を伴う場合 坐骨神経痛の原因がヘルニアや脊柱管狭窄症など重度の神経圧迫によるもので、下肢のしびれや麻痺が強い、あるいは膀胱直腸障害などの重度の神経障害があるケースでは、歩くことでさらなるダメージを与える可能性があります。 このような場合は早めの精密検査や手術を含む専門的な治療を検討しましょう。(文献4) 3.歩行で痛みが著明に増し日常生活がままならない状態 歩き始めに強い痛みが出てしまい、数メートル歩いただけで中断を余儀なくされる状況であれば、ウォーキング自体がストレスとなり、回復を妨げる要因になります。 こうした場合は理学療法士や医師と相談し、まずは痛みの緩和を図る治療や別の運動方法を検討しましょう。 坐骨神経痛でも歩いたほうがいい理由 「歩くことで痛みが増すのでは」と心配する方もいらっしゃると思いますが、正しい方法で無理のない範囲ならば、むしろ改善が見込める場合があります。 大きく分けると、次の二つが主なメリットです。 歩いた方が下半身や骨盤周りの血行を促進できる 歩行によって下半身を動かすと、血行が良くなり、筋肉や神経まわりの組織に十分な酸素と栄養が行き渡りやすくなります。 炎症物質の排出も促されるため、痛みの軽減につながる可能性があるのです。 歩いた方が筋力低下の防止になる 痛みを恐れて動かないままでいると、腰や脚の筋力が衰えてしまいます。 筋力が落ちると、かえって腰や椎間板に負担がかかり、慢性的に痛みが続くリスクが高まります。 適度なウォーキングは筋力低下を防ぎ、腰回りを安定させるのに役立つと考えられます。 坐骨神経痛におけるウォーキングの注意点 ウォーキングが有効とはいえ、無理すると症状を悪化させてしまうかもしれません。 以下の注意点を守って、痛みが出にくい方法で歩くようにしましょう。 また、下記リンクの記事でも坐骨神経痛でやってはいけないことについてまとめておりますので、こちらもご参照ください。 痛みが強いときは無理しない 座っていてもズキズキと痛む、歩き始めると激痛が走るといった場合は、安静を優先してください。 炎症が強い時期は、歩行の振動や姿勢の変化によって悪化する可能性があります。 ある程度痛みが落ち着いてから、医師や専門家の指導のもと始めるのが望ましいでしょう。 歩く前の注意点 歩行前に簡単なストレッチやウォームアップによって、筋肉がほぐれて痛みが出にくくなります。 また、靴選びも重要です。できればウォーキングシューズを履き、足の固定が確実にできるヒモ靴をえらびましょう。 足裏への負担を減らすため、インソールを使うのも良いでしょう。 クッション性の高い靴でウォーキングすると、腰や脚にかかる負担を軽減できます。 坐骨神経痛には歩行だけでなくストレッチも効果的 ウォーキングによる筋力維持と同時に、筋肉の柔軟性を高めるストレッチを取り入れると、相乗効果が期待できます。(文献5) 本記事では「座っているときにできるストレッチ」と「寝ているときにできるストレッチ」を紹介します。(文献6) 座っているときにできるストレッチ 椅子に座ったままでも、太ももやお尻まわりの筋肉を伸ばす方法があります。 片足をもう片方の太ももの上に乗せ、背筋を伸ばしてゆっくりと前に倒れるストレッチです。 お尻や腰まわりが伸びる感覚を得られ、デスクワーク中の合間にも取り組めます。 寝ているときにできるストレッチ 仰向けに寝て、膝を立てた状態でストレッチする方の太もも裏を手、またはタオルで抱え込み、膝を90度に曲げた状態から膝下をまっすぐ伸ばします。 そうすると、お尻や足の筋肉が伸びて効果的なストレッチになります。 痛みを感じない範囲で、10回×3セットで行いましょう。 坐骨神経痛の再発を防ぐための日常生活のコツ 坐骨神経痛は再発しやすい症状でもあります。一時的に痛みが軽減しても、日頃の姿勢や生活習慣を見直さなければ、再び悪化するリスクがあります。 1. 体重管理を意識する 体重が増えすぎると、腰や下半身への負担が大きくなり、痛みを再発させるリスクが高まります。 適正体重を保つようにバランスの良い食事や適度な運動を心がけましょう。 2. 適切な寝具の選択 柔らかすぎる寝具を使うと腰が沈み込み、背骨の自然なカーブを保ちにくくなります。身体に合った、ある程度の硬さがあるマットレスや枕を選ぶことが大切です。 3. 冷え対策 冷えは筋肉のこわばりを招きやすく、血流を悪化させる原因にもなります。腰や足を冷やさないために、レッグウォーマーや湯たんぽ、カイロなどを活用すると良いでしょう。 4. ストレスケア(自律神経のバランスを整える) ストレスは筋肉を緊張させ、痛みを長引かせる要因となります。趣味やリラクゼーションを取り入れる、十分な睡眠をとるなどして、日頃からストレス解消を意識しましょう。 5. 適度な筋力トレーニング お尻や太ももの筋力を鍛えると、体幹が安定し坐骨神経への負担が軽減されます。痛みが少ない時期に、無理のない範囲でトレーニングをしましょう。 6. 適度な水分補給 水分不足になると血流が悪くなり、筋肉や椎間板への栄養補給が十分に行われなくなる可能性があります。のどが渇く前にこまめに水分を補給する習慣をつけてみてください 7. ヒールの高すぎる靴を避ける ヒールが高い靴を履くと、足先に負荷が集中して骨盤や腰のバランスが乱れやすくなります。ヒールを選ぶ場合は、なるべく低めのものやクッション性に優れた靴を検討しましょう。 8. デスク・椅子の高さや配置を見直す 長時間のデスクワークでは、机や椅子の高さが合っていないと腰に大きな負担がかかります。ひじが机とほぼ水平になるよう調整し、パソコンの画面は目線より少し下になるように配置しましょう。 9. 専門家による定期的なケアやメンテナンス 痛みが軽くなったあとも、整体やフィジカルセラピーなど専門家のケアを受けると再発リスクが下がります。定期的に身体をメンテナンスして、日常の姿勢や動作を見直す機会を持つと良いでしょう。 10. 定期的なクリニック受診で状態をチェック 痛みが軽減してもしばらくして再発するケースは少なくありません。気になる症状があれば早めに医療機関を受診し、身体の状態を把握して適切に対処しましょう。 歩いた方がいい・悪いケースを見きわめて坐骨神経痛の改善に努めよう 坐骨神経痛は、痛みの原因や症状の度合いによって「積極的に歩いたほうがいいケース」と「安静を優先すべきケース」があります。 軽症であれば、ウォーキングやストレッチで筋力維持と血行促進を図るのがおすすめです。 一方、痛みが強い時期や急性期には、無理せず休養を取り、医療機関で適切な診断を受けてください。 リペアセルクリニックでは、再生医療をはじめ、患者さま一人ひとりの状態に合わせた治療プランを提案しています。 「症状がどの程度なのか」「歩いたほうがいいのかどうか判断がつかない」といった不安があれば、ぜひ早めに受診してみてください。 痛みを抱えたまま過ごすと、日常生活に支障をきたすだけでなく、精神的にも大きなストレスになります。 専門家のサポートを受けながら、自分の身体に合ったペースでウォーキングやストレッチを取り入れて、坐骨神経痛の改善と再発予防に努めていきましょう。 参考文献 (文献1) National Institute for Health and Care Excellence (NICE)「Low back pain and sciatica in over 16s: assessment and management (NG59)」2020.https://www.nice.org.uk/guidance/ng59#:~:text=This%20guideline%20covers%20assessing%20and,low%20back%20pain%20and%20sciatica(最終アクセス:2025年2月24日) (文献2) Schmid Mほか. (2023).Effectiveness of physical therapy for sciatica: A systematic review and meta-analysis. European Journal of Pain, 27(2), https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9925551/#:~:text=Conclusion.(Accessed: 2025-02-24) (文献3) Fritz JMほか. (2020). Early physical therapy vs. usual care in patients with recent-onset low back pain and sciatica. Annals of Internal Medicine, 172(5).https://healthcare.utah.edu/press-releases/2020/10/back-pain-sciatica-more-likely-improve-immediate-physical-therapy#:~:text=To%20find%20out%2C%20Fritz%20and,back%20pain%20for%2035%20days.(Accessed: 2025-02-24) (文献4) 社会福祉法人済生会「坐骨神経痛とは」社会福祉法人済生会ホームページ, 2018 https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/sciatic_neuralgia/(最終アクセス:2025年2月24日) (文献5) Pradhan Sほか. (2024). Combined neurodynamic and conventional exercises in sciatica patients. Cureus, 16(1), e12345.https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11151706/#:~:text=Conclusions. (Accessed: 2025-02-24) (文献6) IMSグループ「坐骨神経痛をやわらげるストレッチ」IMSグループ公式サイト, 2023 .https://ims.gr.jp/ims-library/lecture/reha/sciatica.html#:~:text=%E4%BB%8A%E5%9B%9E%E3%81%AF%E5%9D%90%E9%AA%A8%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%97%9B%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%AE%E7%B0%A1%E5%8D%98%E3%81%AA%E8%AA%AC%E6%98%8E%E3%81%A8%E3%80%81%E3%81%9D%E3%82%8C%E3%82%92%E7%B7%A9%E5%92%8C%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%81%E3%82%92%E7%B4%B9%E4%BB%8B%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82%20%E7%97%9B%E3%81%BF%E3%82%92%E7%A2%BA%E8%AA%8D%E3%81%97%E3%81%A4%E3%81%A4%E3%80%81%E7%84%A1%E7%90%86%E3%81%AE%E3%81%AA%E3%81%84%E7%AF%84%E5%9B%B2%E3%81%A7%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%81%E3%81%AE%E5%8F%82%E8%80%83%E3%81%AB%E3%81%97%E3%81%A6%E9%A0%82%E3%81%91%E3%82%8C%E3%81%B0%E5%B9%B8%E3%81%84%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82.(最終アクセス:2025年2月24日)
2025.02.28 -
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- 脊柱管狭窄症
- 脊椎、その他疾患
「ふくらはぎや太もも、足先まで広がるジンジンとした痛みやしびれがあり、歩くのもつらい…」 坐骨神経痛に悩む方は、日常動作すら負担に感じる場面が少なくありません。 こうした痛みの緩和が目的の治療法がブロック注射です。 本記事では、「坐骨神経痛とはどのような症状なのか」から「ブロック注射の仕組み・効果・リスク・費用」までをわかりやすくまとめました。 また、ペインクリニックで行える治療や、注射だけに頼らないセルフケア・予防法についても詳しく解説しています。 「一度はブロック注射を試してみたいけれど、痛みや副作用が心配…」「どのくらいの期間・費用がかかるの?」といった不安をお持ちの方はもちろん、すでにブロック注射を受けたけれど思うように改善しなかった方にも役立つ内容です。 坐骨神経痛とは 坐骨神経痛とは、腰からお尻、太もも、ふくらはぎ、足先にかけて伸びている坐骨神経が、なんらかの原因で圧迫・刺激を受けることで起こる症状の総称です。(文献1) 多くの場合、腰やお尻だけでなく、脚の後ろ側全体に痛みやしびれが広がり、日常生活に支障をきたすほど強い症状を感じる方もいます。 坐骨神経痛の症状・原因 坐骨神経痛の主な症状 痛みやしびれが足先まで伝わる 腰やお尻、太ももからふくらはぎ、足にかけてジンジンとした痛みやしびれが広がります。痛みの感じる範囲は個人差がありますが、特定の部位にのみ症状が出る場合や、腰から足にかけて全体的に症状が出る場合もあります。 腰から片脚だけに症状が出る 腰から片脚だけに症状が出るのも特徴の一つ。また、症状のイメージとしては軽い痛みから電気ショックのような激痛が走ることもあります。 動作や姿勢によって痛みが増す 長時間の座位、前かがみの姿勢、重い物を持ち上げる動作などで痛みが強くなるのも特徴。 坐骨神経痛の主な原因 椎間板ヘルニア 椎間板が飛び出し、神経が圧迫されて坐骨神経痛が生じる代表的な原因の一つ。比較的若い世代でも発症しやすい傾向があります。 脊柱管狭窄症 (せきちゅうかんきょうさくしょう) 加齢や骨の変形によって背骨の神経が通るスペース(脊柱管)が狭くなり、神経を圧迫されて発症します。50代以降に多い原因です。(文献2) 下半身の筋肉の衰え お尻を中心とした足腰の筋肉の衰えが坐骨神経に負担をかけ、坐骨神経痛の原因になってしまいます。 坐骨神経痛の症状が辛い方は以下の記事もご覧ください。 ブロック注射による坐骨神経痛治療 ブロック注射(神経ブロック注射)は、坐骨神経痛をはじめとする「神経由来の痛み」に対して大きな効果が期待できる治療法です。 神経やその周辺組織に局所麻酔薬やステロイド薬を注入して、痛みの伝達を遮断し炎症を抑える働きがあります。 注射と聞くと「痛そう」「怖い」などマイナスなイメージを持たれる方もいますが、坐骨神経痛で強い痛みを抱えている方から日常生活を取り戻すための一つの選択肢として注目を集めています。 坐骨神経痛に効く?ブロック注射とは ブロック注射は坐骨神経痛で悩まれている方のみを対象にした治療法ではなく、実はさまざまな種類があります。(文献3) ブロック注射の主な種類 硬膜外ブロック注射 背骨の中の硬膜外腔と呼ばれるスペースに薬液を注入。神経の近くへ薬を届けることで、痛みを和らげるだけでなく腫れや炎症の抑制が期待できます。坐骨神経痛以外にも、腰痛全般の治療に広く用いられる方法です。 神経ブロック注射 特定の神経根(背骨の間から出る神経の根元部分)に対して、直接アプローチする注射です。痛みの原因となっている神経が明確な場合に選択されることが多く、ピンポイントで症状改善が期待できる点が特徴。 星状神経節ブロック注射 「星状神経節(せいじょうしんけいせつ)」は頸部(首)のあたりにある交感神経の集まりです。主に上半身の血流改善や痛覚の緩和を目的として行われ、坐骨神経痛の痛みの軽減が期待できます。 トリガーポイント注射 トリガーポイントとは、筋肉が過度に緊張し硬くなった“しこり”のような部分を指します。このトリガーポイントを局所麻酔薬などで直接注射して緩め、筋肉のこわばりを解消して痛みを和らげます。 ブロック注射のメリットとして、まず即効性が挙げられます。 ブロック注射は痛みの原因となる神経付近へ直接薬液を届けられるため、個人差はあるものの、注射から数時間以内に痛みが軽減されることは大きなメリットでしょう。 また、血流改善や炎症を抑える効果もあり、ブロック注射のメリットはさまざまです。 ブロック注射の効果や持続時間については以下の記事にてまとめておりますので、気になる方はこちらもご覧ください。 また、ブロック注射の注意点は、効果には個人差があること、一度の注射で劇的に改善しない場合もある点です。 そもそも原因疾患を根本的に治す治療法ではないため、リハビリや再発防止の取り組みも行なっていきましょう。ブロック注射を検討している方は、医師との十分な相談のうえでどの種類の注射が適切か、どの程度の効果が見込めるかを確認すると良いでしょう。 ブロック注射の費用・リスク ブロック注射は多くの場合、健康保険の適用範囲内で受けられます。 ただし、注入する薬剤の種類や検査内容によって費用が変動する場合もあるため、医療機関での事前確認が重要です。 費用目安 (3割負担の場合) レントゲンやMRIを行うと、検査費用が追加されます。診察するクリニックによって料金は異なりますが、一般的には5,000円前後になることが多くなります。 副作用 ブロック注射の副作用として、めまい、内出血、感染症が起きる可能性があります。(文献4)(文献5) 基本的には大きな副作用が少なく、安全性が高い(文献6)とされていますが、注射の苦手な方や特定の持病がある方は遠慮なく医師に相談してください。 ペインクリニックでできるブロック注射治療 ペインクリニックとは、「痛みの専門外来」とも呼ばれる診療科で、神経ブロック注射や再生医療、リハビリテーションなど、さまざまな方法を組み合わせながら慢性痛や神経痛の症状を緩和・改善を目的としています。 整形外科や内科などとは異なり、痛みそのものを総合的に診断・治療する点が大きな特徴です。 坐骨神経痛の改善においても、ペインクリニックはブロック注射だけでなく痛みを引き起こしている背景要因(姿勢の不良や生活習慣など)を含めて判断し、多角的なアプローチでサポート。 とくに、痛みが強くリハビリが難しい状態の方や、別の医療機関で十分な効果を実感できなかった方からは、 「ペインクリニックで神経ブロックを受けて症状が落ち着いた」「再生医療と併用して長期的な改善が見込めた」といった声も少なくありません。 ブロック注射と再生医療併用のメリット ブロック注射は神経の痛みを和らげるのが主目的ですが、当クリニックが推進する再生医療(PRP治療、幹細胞治療など)は、損傷した組織の修復・再生を促し、痛みの原因そのものへアプローチする可能性を秘めており、両方を併用して「今ある痛みを抑える」と同時に「将来的な再発リスクを低減する」といった二重の効果が期待できると考えられています。(文献7) リハビリや運動療法への移行がスムーズ 痛みが続いている状態では、リハビリや適切な運動を行うのが難しく、症状がこじれてしまうケースもあります。 ブロック注射で一定の痛みが緩和された状態で再生医療を受けると、患部への負担が軽減され、リハビリを前向きに行いやすくなるメリットがあります。 坐骨神経痛の複合的な原因にも対応可能 坐骨神経痛は、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの明確な疾患だけでなく、骨盤や筋肉の歪み・炎症などさまざまな要因が絡み合うことも珍しくありません。 再生医療を取り入れることで、神経だけでなく周辺組織の修復をサポートし、より幅広い症状緩和が見込めます。 ブロック注射の流れと通院の目安 実際にブロック注射を受ける場合、ペインクリニックや整形外科など、医療機関によって多少の違いはあるものの、一般的には以下のような流れで進められます。 初診、カウンセリング まずは問診や必要な検査(レントゲン、MRIなど)で坐骨神経痛の原因を特定します。注射が適切かどうか、どの種類のブロック注射を施術するかを医師と相談しながら決定します。 ブロック注射の実施 透視装置(X線)や超音波ガイドなどを使いながら、目的とする神経の近くに針を進め、局所麻酔薬やステロイド薬を注入します。施術時間は部位や病状にもよりますが、短い場合は10〜15分程度で終わるでしょう。 施術後の安静と経過観察 注射後は、ベッドで数十分ほど安静にしてから症状を確認します。血圧の変動やめまいなどの副作用が起きないか、痛みがどの程度軽減したかを確かめるため、看護師や医師が状態を見守ります。 通院の目安 ブロック注射は1度で効果を実感する方もいますが、必要に応じて数回にわたり実施します。週1回ペースで2〜3回行うケースもあれば、症状や効果の持続性によって間隔を調整する場合もあり、個人差があります。施術後に痛みが大幅に改善した方は、再発予防のためにリハビリや生活習慣の見直しを続けることが重要です。 ブロック注射を受けた方の感想 ブロック注射に対する感想は個人差がありますが、以下のような声がよく聞かれます。なお、あくまで一例であり、すべての方に同様の結果が得られるわけではありません。 ブロック注射自体は比較的安全性の高い治療法とされていますが、施術後すぐに無理をすると痛みが再燃してしまいます。 医師やスタッフの指示を守り、回復ペースに合わせて日常生活をコントロールしていくことが、より良い経過を得るためのポイントです。 ブロック注射だけじゃない!坐骨神経痛セルフケアと予防法 坐骨神経痛の治療法の一つとして、ブロック注射をご紹介致しました。 しかし、坐骨神経痛の辛い痛みを味わうともう再発したくないと考える方もいらっしゃると思います。 そこで、坐骨神経痛の予防法と、ご自身でできるセルフケアについてご紹介します。 坐骨神経痛対策!家庭でできるセルフケア 坐骨神経痛の痛みを和らげるためには、お尻や太もも、腰まわりの筋肉を柔らかく保つことが大切です。 痛みが強くないときに無理のない範囲でストレッチを行いましょう。 坐骨神経痛のストレッチについては、こちらの記事で詳しく解説しておりますので、気になる方は是非チェックしてみてください。 生活習慣の見直しと坐骨神経痛の再発予防 1. 適度な運動習慣を取り入れる 痛みが落ち着いているときにハイキングや水中ウォーキングなどの有酸素運動を取り入れると、下半身の血行が良くなり筋力を維持しやすくなります。(文献8) 筋肉が硬くなるのを防ぎ、坐骨神経周辺の負担を減らすことが期待できますので、最初は短い時間から始め、無理のない範囲で運動量を増やしていくと続けやすいでしょう。 2. 入浴習慣の強化 シャワーで済ませず、湯船にゆっくり浸かる習慣を持つと、筋肉の疲労回復や血行促進に役立ちます。 38〜40℃のぬるめのお湯に10〜15分浸かるだけでも、腰やお尻の筋肉がリラックスし、睡眠の質向上にもつながります。 3. 栄養バランスと体重管理 体重の増加は、腰や下半身への負担を増やす要因になるため、バランスの取れた食事や適正体重の維持が重要です。 タンパク質やビタミン、ミネラルなどを意識的に摂取しましょう。食生活の改善は痛みの予防だけでなく、全身の健康維持にも有効です。 ブロック注射で改善しない坐骨神経痛は当院へご相談ください ブロック注射は、坐骨神経痛の強い痛みを一時的に和らげる手段として有効ですが、原因が複合的であったり、症状が重度化していたりする場合には、注射のみの治療では十分な改善が得られないこともあります。 そうした際には、再生医療をはじめとする多角的なアプローチを行う医療機関への相談を検討してみてはいかがでしょうか。 リペアセルクリニックでは、痛みの根本改善を目指すための幹細胞治療やPRP治療など、再生医療を活用した治療も行っています。 ブロック注射で痛みをコントロールしながら、損傷した組織の修復や炎症の鎮静をサポートして長期的な機能回復と再発予防につなげることが期待できます。 「何度もブロック注射を受けたけれど、良くなったり悪くなったりを繰り返している」「痛みが軽減しても、しばらくすると再発してしまう」 そんなお悩みを抱えている方は、ぜひ一度当院へご相談ください。 専門医が丁寧に診断し、お一人おひとりの症状やライフスタイルに合わせた治療プランをご提案します。 坐骨神経痛のつらい痛みから解放されるためにも、どうぞお気軽にご予約・お問い合わせください。 参考文献 (文献1) 日本ペインクリニック学会「治療指針6版第4章」一般社団法人日本ペインクリニック学会HP,https://www.jspc.gr.jp/Contents/public/pdf/shishin/6-19.pdf#:~:text=%E7%AD%8B%E3%83%BB%E7%AD%8B%E8%86%9C%E6%80%A7%E7%96%BC%E7%97%9B%EF%BC%8C%E9%96%89%E5%A1%9E%E6%80%A7%E5%8B%95%E8%84%88%E7%A1%AC%E5%8C%96%E7%97%87%E3%81%AA%E3%81%A9%E3%81%AE%E8%A1%80%E8%A1%8C%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%8C%E6%8C%99%E3%81%92%E3%82%89%E3%82%8C%E3%82%8B1%E2%80%923,%E3%81%AE%E5%9C%A7%E8%BF%AB%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%EF%BC%89%EF%BC%8C%E5%89%8D%E8%B6%B3%E6%A0%B9%E7%AE%A1%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4%EF%BC%88%E4%B8%8A%E4%B8%8B%E4%BC%B8%E7%AD%8B%E6%94%AF%E5%B8%AF%E9%83%A8%E3%81%A7%E3%81%AE%E6%B7%B1%E8%85%93%E9%AA%A8%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AE%E5%9C%A7%E8%BF%AB%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%EF%BC%89%EF%BC%8C%E3%83%A2%E3%83%BC%20%E3%83%88%E3%83%B3%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4%EF%BC%88%E7%AC%AC%203%EF%BD%9E4%20%E8%B6%BE%E9%96%93%E9%83%A8%E3%81%AE%E6%B7%B1%E6%A8%AA%E4%B8%AD%E8%B6%B3%E9%9D%B1%E5%B8%AF%E9%83%A8%E3%81%A7%E3%81%AE%E5%9B%BA%E6%9C%89%E5%BA%95%E5%81%B4%E6%8C%87%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AE%E5%9C%A7%E8%BF%AB%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%EF%BC%89%E3%81%AA%E3%81%A9%20%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%8C%EF%BC%8C%E3%81%93%E3%82%8C%E3%82%89%E3%82%92%E5%9D%90%E9%AA%A8%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%97%9B%E3%81%A8%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%8B%E5%90%A6%E3%81%8B%E3%81%AF%E8%AD%B0%E8%AB%96%E3%81%AE%E4%BD%99%E5%9C%B0%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8B%EF%BC%8E%E8%84%8A%E9%AB%84%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E3%81%9D%E3%81%AE,(最終アクセス2025年2月20日) (文献2) Fairag, M., Kurdi, R., Alkathiry, A., Alghamdi, N., Alshehri, R., Alturkistany, F. 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2025.02.28 -
- 頚椎椎間板ヘルニア
- 脊椎
突然の首の痛みや肩こりに悩まされていませんか?とくに頚椎ヘルニアの5番6番は、首に負担がかかりやすい場所です。しかし、頚椎ヘルニアの状態がわからない方もいらっしゃると思います。 頚椎ヘルニアとは、簡単にいうと「首のヘルニア」です。主な原因として加齢や遺伝、交通事故のような外傷などがあげられます。5番6番の頚椎ヘルニアでは、首の痛みやしびれ、脱力感などの症状がみられます。 しかし、頚椎ヘルニアと診断されても、早急に手術が必要なわけではありません。程度によっては運動や寝具の見直しや姿勢の改善により、症状の緩和が期待できます。 本記事では、5番6番の損傷で起こる頚椎ヘルニアの症状や効果的なセルフケア方法について詳しく解説します。頚椎ヘルニアの症状について知り、症状の緩和にお役立てください。 頚椎ヘルニアで5番6番が損傷したときの主な症状3つ 頚椎ヘルニアで5番6番が損傷したときの主な症状は、以下の3つです。 しびれ 首の痛み 脱力感 「頚椎ヘルニアかもしれない」とお悩みの方は、本章を参考に症状を確認してみましょう。 首の痛み 寝違えたような首の痛みが突然あらわれるのも、頚椎ヘルニアでよくみられる症状です。(文献1) 心当たりがなく、突然首の痛みを感じた場合は「単なる寝違え」と自己判断しないことが大切です。 また、頚椎5番6番が圧迫されると、首の痛みに加えて肩や腕・指先までしびれる場合があります。 不自然な痛みや他の症状も気になれば、専門医への受診を検討しましょう。 しびれ 首の神経は、肩を通り肘から指先までつながっています。そのため、頚椎ヘルニアにより5番6番の神経の根元が圧迫されると、肘から指先にかけてしびれや痛みを感じることがよくあります。(文献1) また、首の傾きや長時間のデスクワークなどはしびれが強くなる一因です。これらの動作で悪化する場合は、無理のない範囲で姿勢を変えてみましょう。 脱力感 頚椎の神経根が圧迫されると、腕や指先のしびれや痛みに加え、脱力感を感じることがあります。(文献2)筋肉をつかさどる神経の働きが鈍くなることで筋力が低下し、手や腕に力が入りにくくなります。 脱力感の具体例は、以下のとおりです。 手に持ったものを落としやすい 細かい作業がしにくい 腕を上げ続けられない 初期の段階では一時的な違和感であっても、悪化すると日常生活に支障をきたす恐れがあります。脱力感があれば早めの対策をとりましょう。 本章では、代表的な頚椎ヘルニアの症状を3つ解説しました。症状のレベルに関しては、以下の記事にて詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。 頚椎ヘルニアに5番6番が多い理由 頚椎の5番6番がヘルニアになりやすい理由は、首を動かす際により負担がかかりやすい部位であるためです。 頚椎は7つの骨で構成されており、骨の間には1~7番と番号がついているクッションの役割を果たす椎間板があります。 とくに5番6番は首をさまざまな方向へ動かす際に負担がかかりやすく、椎間板の変性が比較的多いとされています。(文献3) そのため、5番6番に頚椎ヘルニアが多く見られると推測できるでしょう。 5番6番の頚椎ヘルニアでやってはいけないこと 5番6番の頚椎ヘルニアで、やってはいけないことは以下の5つです。 運動後に首の違和感を放置する 姿勢が悪い状態を続ける 肥満を放置する 自転車やバイクに乗る 喫煙を続ける これらが原因で頚椎5番6番の変性を進行させ、痛みやしびれを悪化させることがあります。習慣化している方は、今すぐ見直しましょう。 また、頚椎椎間板ヘルニアのときにやってはいけないことについては、以下の記事にてより詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。 【5番6番】頚椎ヘルニアの症状におすすめの運動 頚椎ヘルニアの症状におすすめの運動は、以下の2つです。 首・胸のストレッチ 体幹を鍛える筋トレ 首の痛みや指先のしびれで悩んでいる方は、無理のない範囲で取り入れてみてください。 首・胸のストレッチ 頚椎ヘルニアの方におすすめしたい首や胸のストレッチは、以下のとおりです。 肩を強くすくめて5秒キープし、肩をすとんと落として5秒キープ 片手で逆側の頭を抑え、手の重みで首の筋肉を伸ばす 片手を壁につけ、逆側に体をひねって大胸筋を鍛える これらのストレッチは、猫背やストレートネックなどの悪い姿勢を改善し、頚椎にかかる負荷を減らす効果があります。どれもスキマ時間で行えるためぜひ試してみてください。 頚椎ヘルニアにおすすめのストレッチは、以下の記事にて詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。 体幹を鍛える筋トレ 頚椎ヘルニアにおすすめの体幹を鍛える筋トレは、3つあります。 トレーニング 具体的な方法 プランク 腕立て伏せの姿勢で床に肘をつき、体を一直線に30秒~1分間キープ ブリッジ 床にあおむけの状態になり膝を立て、腰とお尻を浮かせて数秒間キープ ドローイン 仰向けで膝を立て、腹式呼吸をしながらお腹をへこませて数秒間キープ 頚椎ヘルニアを改善するためには、体幹(体の胴体)を鍛えて腰の負担を減らすことも大切です。姿勢が整うことで背骨全体が安定し、結果的に頚椎への負担を減らせます。普段から姿勢が悪いと感じている方は、ぜひ紹介した筋トレを日々の習慣に取り入れてみてください。 頚椎ヘルニアの改善に役立つ日常生活のポイント 頚椎ヘルニアを改善する日常生活のポイントは以下2つです。 自分に合った枕やマットレスを使用する スマホの使用時間や姿勢に注意する 本章を参考に、日常生活を見直してみてください。 自分に合った枕やマットレスを使用する 睡眠時の姿勢は、頚椎ヘルニアの症状に大きく影響します。自分の体と合っていない寝具は、頚椎ヘルニアを悪化させる原因になるため注意が必要です。 たとえば枕の高さが合っていないと首に負担がかかり、柔らかすぎるマットレスは腰の姿勢を崩し、症状を悪化させます。 そのため、以下のように正しい寝具を選ぶことが大切です。 枕:首のカーブや高さが合っているもの マットレス:適度な硬さで、立っているときと同じ姿勢を保てるもの 自分に合った寝具を選び、睡眠時の姿勢を改善しましょう。 スマホの使用時間や姿勢に注意する スマホを長時間使用すると、無意識のうちにうつむき姿勢になり、本来は自然な首のカーブが「ストレートネック」になります。この姿勢が続くと、スマホを見ていない間もストレートネックが続き、頚椎ヘルニアを悪化させる原因につながります。 スマホを使用する際には、以下の点を意識しましょう。 1時間に1回は画面から目を離し、休憩をはさむ 背筋を伸ばし、画面を目の高さに合わせる 寝ながらスマホを使わない 普段の生活を振り返り、スマホを使う際の姿勢を見直しましょう。 まとめ|5番6番の頚椎ヘルニアは私生活の過ごし方が症状改善のカギ! 今回は、首に負担をかけやすい5番6番の頚椎ヘルニアについて解説しました。日常の姿勢や習慣が大きく影響し、症状悪化につながることもあります。猫背になりがちな方は、普段から正しい姿勢を心がけてみてください。また、今回紹介した運動やスマホの使用を見直して、頚椎ヘルニアをセルフケアで改善するように意識しましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、人体にもともとある「幹細胞」を用いた頚椎椎間板ヘルニアの進行抑制や後遺症改善の治療を行っております。 「メール」または「オンラインカウンセリング」にて無料相談を受付中です。気になる方はぜひ当院までご連絡ください。 5番6番の頚椎ヘルニアについてよくある質問 頚椎ヘルニアは手術しなければいけませんか? 5番6番の頚椎ヘルニアが発症しても、最初から手術を取り入れるケースはまれです。多くの場合では、最初に保存療法を行います。保存療法で改善が見られない場合や症状が悪化して日常生活に支障をきたす場合に手術療法が検討されます。(文献1) また、近年は手術をせずに頚椎ヘルニアの後遺症や悪化を防げる「再生医療」もあります。当院でも取り入れていますので、気になる方は以下のページをご覧ください。 頚椎ヘルニアは自然治癒しますか? 個人差はありますが、頚椎ヘルニアは数カ月ほどで自然治癒するといわれています。(文献1) 安静にすると改善されるケースが多く見られるものの、無理に動かしたり間違ったケアを行ったりすると、悪化するリスクがあります。 症状が強いと感じる場合は、医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。 参考文献 (文献1) MSDマニュアル「頸椎椎間板ヘルニア」MSDマニュアルプロフェッショナル版, 2022年10月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/06-%E7%AD%8B%E9%AA%A8%E6%A0%BC%E7%B3%BB%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%A8%E7%B5%90%E5%90%88%E7%B5%84%E7%B9%94%E7%96%BE%E6%82%A3/%E9%A0%B8%E9%83%A8%E7%97%9B%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E8%83%8C%E9%83%A8%E7%97%9B/%E9%A0%B8%E6%A4%8E%E6%A4%8E%E9%96%93%E6%9D%BF%E3%83%98%E3%83%AB%E3%83%8B%E3%82%A2#%E7%97%87%E7%8A%B6%E3%81%A8%E5%BE%B4%E5%80%99_v6570019_jahttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jspineres/11/6/11_2020-0504/_pdf(最終アクセス:2025年2月25日) (文献2) Department of Physical Medicine and Rehabilitation, Harvard Medical School, Boston, MA., & New England Baptist Hospital, Boston, MA. (2017年). Comparison of Symptoms From C6 and C7 Radiculopathy. CERVICAL SPINE, 42(20), pp.1545-1551.https://journals.lww.com/spinejournal/abstract/2017/10150/comparison_of_symptoms_from_c6_and_c7.9.aspx#:~:text=%E8%85%95%E3%81%AE%E7%97%9B%E3%81%BF%E3%81%A8%E6%84%9F%E8%A6%9A%E7%97%87%E7%8A%B6%E3%81%AF%E5%BA%83%E7%AF%84%E5%9B%B2%E3%81%AB%E5%8F%8A%E3%81%B3%E3%80%81C6%20%E3%81%BE%E3%81%9F%E3%81%AF%20C7%20%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%A0%B9%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%A7%E3%81%AF%E6%98%8E%E7%A2%BA%E3%81%AA%E9%81%95%E3%81%84%E3%81%AF%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82%E6%82%A3%E8%80%85%E3%81%AE%2041%20%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%83%88%E3%81%8C%E5%A4%9A%E5%B0%91%E3%81%AE%E7%AD%8B%E5%8A%9B%E4%BD%8E%E4%B8%8B%E3%82%92%E5%A0%B1%E5%91%8A%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F(最終アクセス:2025年2月25日) (文献3) 大瀧 遥, 大谷 晃司ほか.「MRI による頚椎椎間板変性の評価―腰椎と頚椎の分類法の比較―」『Journal of Spine Research』11巻(6号), p890-p896, 2020年,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspineres/11/6/11_2020-0504/_article/-char/ja/(最終アクセス:2025年2月25日)
2025.02.28 -
- 頚椎椎間板ヘルニア
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 脊椎
- 胸椎椎間板ヘルニア
「腰痛やしびれで受診したら、椎間板ヘルニアと言われて今後が不安」 「若い女性でも椎間板ヘルニアになることはあるの?」 このような悩みや疑問をお持ちではありませんか。 椎間板ヘルニアとは、背骨の骨と骨の間にある「椎間板」という組織が変形して飛び出し、神経や脊髄を圧迫する病気です。比較的男性に多いと言われていますが、若い女性がかかるケースもあります。 当記事では、若い女性が椎間板ヘルニアになる原因や、治療法、やってはいけないことなどを詳しく解説します。記事を最後まで読めば、今後に必要な注意点がわかり、ヘルニアの治療をよりスムーズに進められるようになるでしょう。 若い女性に多い椎間板ヘルニアの原因【10代20代】 椎間板ヘルニアは、背骨にある椎間板への負担によって起こるケースが多く見られます。 若い女性によく見られる椎間板ヘルニアの原因は、以下のとおりです。 激しいスポーツによる首や腰への負荷 姿勢の悪さ たばこを吸う習慣 腰に負荷がかかる仕事 本章の内容をもとに、自分に当てはまるものがないかチェックしておきましょう。 なお、椎間板ヘルニアについては、以下の記事で詳しく紹介しています。 【関連記事】 胸椎椎間板ヘルニアとは?原因や症状を専門医が解説 頚椎椎間板ヘルニア!原因と症状 腰椎椎間板ヘルニアの症状レベルと種類を医師が解説!手術するべき? 激しいスポーツによる首や腰への負荷 激しいスポーツにより首や腰への負荷が続くと、椎間板ヘルニアを引き起こすケースがあります。(文献1) 女性の場合、格闘技や柔道、ラグビーなどの激しく身体をぶつけ合うスポーツを楽しむ方は比較的少ないでしょう。しかし、以下のようなスポーツは、若い女性における椎間板ヘルニアの原因となる可能性が考えられます。 スキー ゴルフ 器械体操 スノーボード 陸上競技(投てき) しかし、スポーツと椎間板ヘルニアの関連性は、明らかになっていない部分もあります。(文献2) 何が原因なのかははっきりしないケースもあるため、スポーツにおいても無理をしすぎず、違和感があれば早めに受診するようにしましょう。 スポーツと椎間板ヘルニアの関係については、以下の記事でも紹介しています。 姿勢の悪さ 以下のような日々の姿勢の悪さが積み重なり、椎間板ヘルニアにつながるケースもあります。 猫背 反り腰 長時間の前傾姿勢(スマートフォンやパソコンの操作時) また、座りっぱなしや立ちっぱなしなど、ずっと同じ姿勢でいることも椎間板ヘルニアの原因となります。 仕事上やむを得ない場合は、こまめに姿勢を変えて負担をやわらげると良いでしょう。 たばこを吸う習慣 喫煙は、全身の血流を悪化させたり椎間板を変性させたりするため、椎間板ヘルニアの原因となりえます。(文献3) 腰椎椎間板ヘルニアとたばこのリスクについて、いくつかの研究報告を紹介します。(文献2) 喫煙量が多いほどリスクが高い 過去に喫煙していた人よりも、現在も喫煙を続けている人の方がリスクが高い また、たばこは椎間板ヘルニアに限らず、高血圧や糖尿病、がんなどのリスク因子でもあります。(文献4) 将来の健康リスクを減らすためにも、たばこは早めにやめることをおすすめします。 腰に負荷がかかる仕事 「仕事で重いものを持ちあげる」「毎日のカバンが非常に重い」などの原因が、椎間板ヘルニアの発症につながるケースもあります。 若い女性が椎間板ヘルニアになりやすい仕事の例は、以下のとおりです。(文献5) 仕事 理由 引越し・物流業 重いものを持つ機会が多いため 医療職・介護職 人を持ち上げる、無理な姿勢を取るなどの機会が多いため タクシーやトラックの運転手 座りっぱなしになる機会が多いため 身体の負担をやわらげる器具の研究は進められているものの、仕事による負担を完全になくすことは難しいのが現状です。しかし、以下の工夫を取り入れれば、腰への負担を軽減しやすくなります。(文献6) 疲れをためない 作業しやすい衣服や靴を選ぶ 同じ姿勢が続かないようにする 必要に応じて腰部保護ベルトを使用する 若い女性の椎間板ヘルニアの治療法 椎間板ヘルニアは、数カ月で自然に改善するケースもあります。そのため、手術せずに回復するケースも珍しくありません。 代表的な治療法を、以下の表にまとめました。 治療方針 治療法 保存的治療 痛みをやわらげながら、症状が軽減するのを待つ 薬物治療 注射 リハビリ 手術療法 手術でヘルニア自体や椎間板の飛び出た部分を切除する 手術 再生医療 傷ついた脊髄を再生させて、痛みやしびれを改善する 幹細胞治療 本章では、若い女性によくおこなわれる椎間板ヘルニアの治療法について順番に説明していきます。 薬物治療 薬物治療とは、痛みや炎症を抑え、ヘルニアが自然に小さくなるのを待つ方法です。良く使われる薬は、以下のとおりです。 消炎鎮痛薬(NSAIDs)や神経障害性疼痛治療薬 消炎鎮痛薬の湿布や塗り薬 薬は1種類でなく、組み合わせて使用するケースもあります。 ブロック注射 飲み薬で十分な効果が得られない場合、麻酔薬やステロイドで神経の痛みや炎症をやわらげる「神経ブロック治療」と呼ばれる注射をおこなうケースがあります。 ブロック注射も、飲み薬と同様にヘルニア自体を小さくするものではなく、痛みをやわらげて自然な回復を待つ治療法です。 ブロック注射については、以下の記事で詳しく解説しています。 リハビリ 椎間板ヘルニアでは、痛みや痺れをやわらげる「リハビリ」をおこなうケースもあります。 よくおこなわれるリハビリは、以下のとおりです。 運動療法:筋肉をやわらげるストレッチやトレーニング 物理療法:電気療法・温熱療法・冷却療法・牽引療法など 生活指導:負担のかからない生活を送るための指導 リハビリは、薬物療法と一緒におこなうケースもあります。 椎間板ヘルニアのリハビリについては、以下の記事で詳しく紹介しています。 【関連記事】 頚椎ヘルニアに効くストレッチ5選!予防ポイントも解説【医師監修】 頸椎椎間板ヘルニアのリハビリ方法|目的や期間・注意点を徹底解説 胸椎椎間板ヘルニアの保存療法!リハビリの種類や具体的な内容を解説 手術 飲み薬や注射、リハビリなどの保存療法で良くならない場合は、手術を検討します。また、足に力が入らない、排尿・排便障害があるなどの場合は早急な手術が必要になるケースもあります。 椎間板ヘルニアの代表的な手術は、以下のとおりです。 手術名 特徴 MED(内視鏡下ヘルニア摘出術) 一般的に広くおこなわれている手術 「内視鏡」というカメラ付きの器具を使用して、ヘルニアを取り除く PELD(経皮的内視鏡下 腰椎椎間板切除術) MEDよりも筒の細い内視鏡を使用する手術 ヘルニアが小さい、椎体の変形が少ない場合に適用可能 局所麻酔での手術も可能 日帰りで済むこともあり、身体への負担が少ない PLDD(経皮的レーザー椎間板減圧術) レーザーで椎間板の内部を焼き、圧力を下げて神経の圧迫を軽減する手術 メスを使わない手術方法 健康保険の適用外 それぞれの手術については、以下の記事で詳しく説明しています。 【関連記事】 椎間板ヘルニアの内視鏡手術|PELD(PED)とMEDの違いとは ヘルニア治療:PELD手術のリスクと副作用 胸椎椎間板ヘルニア|入院期間や費用について 再生治療 椎間板ヘルニアによって神経が圧迫・損傷された場合、再生医療(幹細胞治療)も選択肢のひとつです。 飛び出たヘルニアによって神経が傷付くと、強い炎症を起こしたり、痛みや痺れが起こったりします。再生医療(幹細胞治療)とは、損傷した組織の修復をうながす「幹細胞」を使い、神経の回復を試みる治療法です。 手術をしても痛みやしびれが治まらない方は、検討してみてはいかがでしょうか。 当院「リペアセルクリニック」では、椎間板ヘルニアによる脊髄損傷に対して、再生医療(幹細胞治療)を提供しています。治療にご興味のある方は、「メール相談」または「オンラインカウンセリング」まで、気軽にご相談ください。 椎間板ヘルニアの再生医療については、以下の記事で詳しく説明しています。 若い女性の椎間板ヘルニアでやってはいけないこと 若い女性の椎間板ヘルニアでやってはいけないことは、以下のとおりです。 重いものを持つなど、腰・背中に大きな負担を掛ける 腰・背中に負担のかかる姿勢で長時間過ごす 無理な運動や激しいスポーツをする たばこを吸う 若い女性は、日常生活のなかで気付かないうちに椎間板に負担を掛けているケースがあります。 医師の指導に従い、生活習慣を見直すことが回復につながるでしょう。 椎間板ヘルニアの治療中や治療後にやってはいけないことは、以下の記事でも紹介しています。 【関連記事】 腰椎椎間板ヘルニアの治療中にやってはいけないことは?避けたい習慣も医師が解説 頚椎椎間板ヘルニアでやってはいけないこと5つ【首の負担を減らす】 まとめ|若い女性の椎間板ヘルニアは早めに受診しよう 椎間板ヘルニアは比較的男性に多い病気ですが、若い女性がかかるケースもあります。「若いから大丈夫」「仕事が忙しい」などと違和感を放置すると、症状の悪化につながり、大きな後遺症が出るケースも考えられます。 違和感に気付いたら、早めに整形外科を受診して悪化を防ぎましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、椎間板ヘルニアによる神経損傷に対して再生医療(幹細胞治療)をおこなっています。傷ついた神経が修復できれば、痛みやしびれの軽減が期待できます。 手術をしても良くならない、後遺症が出て困っているなどの方は、「メール相談」または「オンラインカウンセリング」まで、気軽にご相談ください。 若い女性の椎間板ヘルニアによくある質問 若い女性で椎間板ヘルニアになるのは珍しいですか? 椎間板ヘルニアは、男性に多く見られる病気ですが、若い女性でも日常生活や仕事の関係で発症するケースもあります。 一度治っても、負担のかかる生活習慣を続けると再発する可能性もあります。一度椎間板ヘルニアになったら生活の見直しをおこない、負担の少ない生活を心がけましょう。 椎間板ヘルニアになると一生治らないのですか? 椎間板ヘルニアは、症状が軽ければ自然に軽減して治るケースもあります。 しかし、症状が重くなって神経を傷めると、しびれや痛み、排尿障害などが長く続く可能性も考えられます。 症状が続いている方や、歩けないほどの強い痛みやしびれなどがある方はすぐに受診しましょう。 椎間板ヘルニアを早く治す方法はありますか? 椎間板ヘルニアは、数カ月で自然に吸収されるケースもありますが、早く治すための方法は症状・原因によって異なります。 医師の指示した服薬やリハビリ、生活上の注意を守ることが、早い回復の近道といえるでしょう。 参考文献 (文献1) 日本ペインクリニック学会「ペインクリニック治療指針改訂第6版」 https://www.jspc.gr.jp/Contents/public/pdf/shishin/6-17.pdf(最終アクセス:2025年2月21日) (文献2) 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会,腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン策定委員会「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021改訂第3版」 https://minds.jcqhc.or.jp/common/wp-content/plugins/pdfjs-viewer-shortcode/pdfjs/web/viewer.php?file=https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00645.pdf&dButton=false&pButton=false&oButton=false&sButton=true#zoom=auto&pagemode=none&_wpnonce=3b871a512b(最終アクセス2025年2月21日) (文献3) くまもと禁煙推進フォーラム「腰と骨のために「禁煙を!」https://square.umin.ac.jp/nosmoke/material/TS_bone.pdf(最終アクセス:2025年2月21日) (文献4) 厚生労働省「喫煙と糖尿病」e-ヘルスネット,2024年03月18日 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-03-004.html(最終アクセス:2025年2月21日) (文献5) Chan,Feng-Kai.Physicians as well as nonphysician health care professionals in Taiwan have higher risk for lumbar herniated intervertebral disc than general population. Medicine vol. 97,1 (2018). https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29505537/(最終アクセス:2025年2月21日) (文献6) 中央労働災害防止協会,介護事業・運送事業における腰痛予防テキスト作成委員会「介護業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ」平成22年10月 https://jsite.mhlw.go.jp/kumamoto-roudoukyoku/content/contents/001179217.pdf(最終アクセス:2025年2月21日)
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病院で4番5番の椎間板ヘルニアといわれ、具体的な症状が知りたい方も多いのではないでしょうか。 4番5番(L4-L5)の椎間板ヘルニアは、お尻や太もも、ふくらはぎの痛みやしびれを感じることが多い疾患です。 進行すると歩行困難や排尿トラブルを引き起こし、日常生活に支障をきたす可能性があるため、早めの対策が重要です。 本記事では、椎間板ヘルニア4番5番の症状・原因・治療法について、医師の視点から詳しく解説します。適切な対策を取るために、ぜひ最後までご覧ください。 椎間板ヘルニア4番5番の主な症状4選 腰の痛みや足のしびれが続く場合、椎間板ヘルニアの可能性があります。 とくに4番5番(L4-L5)では、さまざまな要因によりヘルニアが発生しやすい傾向にあります。 4番5番のヘルニアで挙げられる、代表的な症状は以下のとおりです。 臀部の痛み・下肢の痛み・しびれなどの知覚障害 筋力低下に伴う歩行障害 排尿困難・排便困難 すねの外側に痛みが走る 本章では、これらの症状について詳しく解説し、悪化を防ぐためのポイントも紹介します。 臀部の痛み・下肢の痛み・しびれなどの知覚障害 4番5番の椎間板ヘルニアでは、お尻から太もも、ふくらはぎにかけて痛みやしびれが生じることが多いです。(文献1) これは、ヘルニアによる神経の圧迫が原因です。 痛みは座っているときや長時間歩いたときに強くなる傾向があり、立ち上がる際や階段を降りるときに違和感を覚えるケースもみられます。 また、しびれが続くと、足の感覚が鈍くなることもあります。 症状を軽減するには、医師の指導のもと適切なストレッチを行い、姿勢の改善や休憩を取り入れるなど、専門的な対策が重要です。 筋力低下に伴う歩行障害 4番5番の椎間板ヘルニアが進行すると、足の筋力が低下し、歩行が困難になる場合があります。(文献2) これは、神経の圧迫が続くことで筋肉に十分な指令が伝わらなくなるためです。 主な症状として、歩行時につまずきやすくなる、足が思うように上がらないといった変化が見られます。 進行すると、日常生活に支障をきたす可能性があるため注意が必要です。 早めにリハビリや適切な運動を取り入れることで、筋力低下の予防対策にもつながります。 そのため、症状が悪化する前に、専門医に相談し、適切な治療を受けましょう。 排尿困難・排便困難 4番5番の椎間板ヘルニアが重症化すると、膀胱や直腸をコントロールする神経に影響を及ぼし、排尿や排便がうまくできなくなるケースがあります。(文献1) 具体的には、尿意があっても排尿できない、逆に頻尿になるといった症状です。 また、便秘や便意があるのに排便できないといったトラブルも起こるケースがあります。 これらの症状が見られる場合、緊急性が高いため、速やかに医師の診察を受ける必要があります。 進行すると神経の損傷が回復しにくくなるため、早期の診断と適切な治療が重要です。 少しでも異変を感じたら、すぐに医療機関を受診しましょう。 すねの外側に痛みが走る 4番5番の椎間板ヘルニアでは、すねの外側や足の甲に鋭い痛みが走ることがあります。(文献2) これは、神経の圧迫が特定の領域に影響を与えるためです。 すねの痛みは、歩行時や長時間立っているときに強くなる傾向があります。 また、感覚が鈍くなったり、触れた際に違和感を感じる場合もあります。 症状が悪化しないよう、医師の指導を受けながら適切なケアを行いましょう。 椎間板ヘルニア4番5番の原因 椎間板ヘルニアは、とくに4番5番(L4-L5)で発生しやすい傾向があります。その理由は以下の3つです。 腰の動きが大きく負担が集中するから 加齢の影響により椎間板が劣化しやすいから 神経を圧迫しやすいから 本章を参考に、4番5番の椎間板ヘルニアが起こる原因について理解しておきましょう。 腰の動きが大きく負担が集中するから 4番5番は、腰の中でもとくに動きが大きい部分です。体を前に曲げたり、ひねったりするときに大きな負担がかかります。 さらに、この部位には上半身の重みが集中するため、椎間板にかかる圧力も強くなります。 長時間の座り姿勢や重いものを持ち上げる動作も、腰への負担をさらに増やす要因です。(文献2) 無理な動作を避け、日常生活の中でも腰を守る意識を持つようにしましょう。 加齢の影響により椎間板が劣化しやすいから 椎間板は、加齢とともに水分が減少し、弾力を失っていきます。(文献2)その結果、クッションの役割が低下し、ヘルニアが発生しやすくなります。 とくに4番5番は負担が大きく、他の部位よりも早く劣化しやすい傾向にあるのが特徴です。 加齢による影響を最小限に抑えるには、適度な運動やストレッチが重要です。 また、食事や生活習慣の見直しも劣化を遅らせるポイントになります。骨や軟骨の健康を維持するために、カルシウムやビタミンDを意識した食生活を心がけましょう。 神経を圧迫しやすいから 4番5番の椎間板ヘルニアは、神経を圧迫しやすいのが特徴です。 神経が圧迫されると、腰痛だけでなく、足のしびれや筋力低下などの症状が現れます。 とくに、圧迫が長期間続くと症状が慢性化し、回復に時間がかかる場合があります。少しでも異変を感じたら、早めに専門医の診察を受けることが大切です。 また、神経の負担を軽減するために、適切な姿勢を保ち、腰に過度な負担をかけないよう心がけましょう。 椎間板ヘルニア4番5番の症状を改善する治療法 椎間板ヘルニア4番5番(L4-L5)の症状は、適切な治療を行うことで改善が期待できます。 主な治療法には、薬やストレッチを用いる保存療法、内視鏡手術や固定術などの手術療法、近年注目されている再生医療があります。 治療法 概要 期待される効果 保存療法 薬物療法やストレッチを中心に痛みを軽減 痛みの緩和、炎症の抑制 手術療法 内視鏡手術や固定術により圧迫を除去 神経の圧迫を解消し、症状を根本改善 再生医療 幹細胞やPRP療法で椎間板の回復を促進 自然治癒力を高め、負担を軽減 症状の程度や生活習慣に合わせて、適切な治療法を選びましょう。 保存療法(薬物療法・ストレッチ) 軽度の椎間板ヘルニアは、保存療法によって症状が緩和されるケースが多くあります。(文献3) 痛みが強い場合は消炎鎮痛薬や神経ブロック注射が用いられます。 また、腰への負担を減らすストレッチやリハビリも効果的です。体幹を強化する運動や適度なストレッチは、継続することで再発予防にもつながります。 痛みが軽減しない場合や症状が悪化する場合は、医師と相談しながら適切な治療を検討しましょう。 手術療法(内視鏡手術・固定術) 保存療法で改善しない場合や、日常生活に支障をきたす場合は、手術も選択肢に入れます。(文献4) 代表的な手術は、内視鏡手術と固定術の2つです。 内視鏡手術は、皮膚を大きく切開せずにヘルニアを取り除く方法で、術後の回復が早く、体への負担が少ないのが特徴です。 一方、固定術は不安定になった椎骨を固定し、神経の圧迫を解消する方法です。重度のヘルニアや再発リスクが高い場合に行われる場合が多くあります。 専門医と十分に相談し、どのような手術を受けるべきか検討しましょう。 椎間板ヘルニアの内視鏡手術の1つである「PELD(PED)」について、以下の記事でも解説しています。手術を検討している方は参考にしてください。 【関連記事】 腰椎椎間板ヘルニアのPELD(PED)内視鏡下手術とは 椎間板ヘルニアのPELD(PED)手術のメリット・デメリット 再生医療 近年、椎間板ヘルニアの治療法として、自己の細胞を活用し、傷ついた椎間板の修復を促す「再生医療」が注目されています。 代表的な方法として、幹細胞治療やPRP療法(多血小板血漿療法)があります。手術と比較すると体への負担が少なく、椎間板の機能回復が期待できます。 ただし、再生医療は新しい技術のため、すべての医療機関で受けられるわけではありません。治療を希望する場合は、実績のある医療機関を選び、医師と十分に相談しましょう。 ヘルニアの再生医療については以下の記事もご覧ください。 まとめ|4番5番の椎間板ヘルニアの症状を理解して適切な対策をしよう 椎間板ヘルニア4番5番(L4-L5)の症状は、腰や足の痛み、しびれ、筋力低下など多岐にわたります。 悪化すると日常生活に影響を及ぼすため、早めの対策が重要です。 治療法には、保存療法・手術療法・再生医療などがあり、症状に応じた選択が求められます。また、日々の姿勢改善や適度な運動を取り入れると再発予防につながります。 4番5番の椎間板ヘルニアについて正しい知識を持ち、腰の健康を守りましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による治療も行っております。お気軽に「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 椎間板ヘルニア4番5番の症状に関するよくある質問 腰椎の4番5番でヘルニアが起こる原因は何ですか? 椎間板ヘルニアは、腰の動きが大きく負担が集中するため、4番5番で発生しやすい傾向があります。 また、加齢による椎間板の劣化や神経の圧迫も関係しています。 さらに、姿勢の悪化や長時間の座り姿勢もリスクを高める要因です。 椎間板ヘルニア4番5番の症状に効果的なストレッチはありますか? 適度なストレッチは、腰への負担を軽減し、症状の悪化を防ぐのに有効です。 とくに、太もも裏の筋肉を伸ばすハムストリングスストレッチや、体幹を鍛えるプランクがおすすめです。 ただし、痛みが強い場合は無理をせず、医師と相談しながら行いましょう。 椎間板ヘルニアのストレッチは以下の記事でも解説しているので、あわせてチェックしておきましょう。 リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。 椎間板ヘルニアの手術や、術後のお悩みがある方は、お気軽に「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 参考文献 (文献1) Mindsガイドラインライブラリ_腰のしくみと腰椎椎間板ヘルニアに 関する基本的な話 https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/p00029_chapter1.pdf (最終アクセス:2024年2月22日) (文献2) おおつか整形外科_腰椎椎間板ヘルニア https://otsuka-seikei.com/blog/wp-content/uploads/2024/09/3c57fe49b99a17519e8b8f8c4297e7e4.pdf(最終アクセス:2024年2月22日) (文献3) 一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会_腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン改訂第3版 https://minds.jcqhc.or.jp/common/wp-content/plugins/pdfjs-viewer-shortcode/pdfjs/web/viewer.php?file=https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00645.pdf&dButton=false&pButton=false&oButton=false&sButton=true#zoom=auto&pagemode=none&_wpnonce=3b871a512b(最終アクセス:2024年2月22日) (文献4) 稲沢市民病院_腰椎椎間板ヘルニア https://www.inazawa-hospital.jp/media/4-youtuiherunia.pdf(最終アクセス:2024年2月22日)
2025.02.28 -
- 頚椎椎間板ヘルニア
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 脊椎
- 胸椎椎間板ヘルニア
「椎間板ヘルニアは自然に治るの?」「どれくらいの期間かかる?」 このような疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。 多くの人が悩む椎間板ヘルニアですが、実は自然治癒するケースも少なくありません。しかし、放置していると症状を悪化させる危険性もあるため注意が必要です。 本記事では、自然治癒までの期間や、治癒を早める方法を解説します。 また、自然治癒が難しいケースも紹介しているので、症状が気になる方はぜひ最後までご覧ください。 椎間板ヘルニアが自然治癒するまでの期間は「約3カ月」 椎間板ヘルニアは、軽度であれば手術をせずに自然治癒するケースが多く、一般的に症状が落ち着くまでの期間は約3カ月とされています。(文献1) ただし、痛みの程度や生活習慣によって回復のスピードには個人差があります。 60%以上が自然に回復する 自然治癒後も再発の可能性がある ここでは、自然治癒の可能性や再発のリスクについて詳しく解説します。 60%以上が自然に回復する 椎間板ヘルニアは、必ずしも手術が必要な疾患ではありません。 研究によると、約60%以上の人が自然に回復するとされています。(文献2) これは、飛び出した椎間板が体内で吸収され、炎症が治まることで神経の圧迫が軽減されるためです。 時間の経過とともに痛みが和らぎ、日常生活に支障がなくなるケースも多く見られます。 ただし、すべてが自然治癒するわけではないため、症状が継続する場合は医療機関を受診しましょう。 胸椎椎間板ヘルニアの症状レベルをセルフチェックする方法は、以下の記事も参考にしてください。 自然治癒後も再発の可能性がある 椎間板ヘルニアが自然に治ったとしても、再発のリスクは残ります。 これは、一度ダメージを受けた椎間板が完全に元の状態に戻るわけではなく、再びヘルニアが発生しやすい状態になっているためです。 再発の主な原因としては、姿勢の悪さ・運動不足・腰への過度な負担が挙げられます。 とくに、デスクワークが多い人や重い荷物を持つ機会が多い人は注意が必要です。 椎間板ヘルニアの自然治癒が難しい2つのケース 椎間板ヘルニアは多くの場合、自然治癒に期待できます。 しかし、すべての椎間板ヘルニアが自然治癒するわけではありません。以下のようなケースでは自然治癒が難しく、適切な治療が求められることがあります。 長期的に症状が続き慢性化している場合 急激な進行で麻痺や排尿・直腸障害がある場合 本章では、自然治癒が難しい2つのケースについて詳しく解説します。 長期的に症状が続き慢性化している場合 椎間板ヘルニアの症状が長期間続く場合、自然治癒が難しい場合があります。 とくに、3カ月以上経っても痛みやしびれが改善しない場合は、慢性化しているかもしれません。 椎間板ヘルニアが慢性化すると、神経の圧迫が長期化し、回復が遅れるリスクが高まります。 長期間症状が続く場合は、整形外科で診察を受けることが重要です。 急激な進行で麻痺や排尿・直腸障害がある場合 椎間板ヘルニアの症状が急激に悪化し、麻痺や排尿・直腸障害が現れた場合は、自然治癒を待つのは危険です。 神経が強く圧迫されている状態であり、放置すると後遺症が出るリスクがあるためです。 また、排尿や排便が困難になる場合は「馬尾(ばび)症候群」(神経の束が障害を受けることで起こる症状)の可能性があり、緊急手術が必要になるケースもあります。(文献1) このような症状が現れたら、一刻も早く医療機関を受診しましょう。 椎間板ヘルニアで自然治癒を早めるセルフケア4選 椎間板ヘルニアの自然治癒には時間がかかりますが、正しいセルフケアを取り入れることで、回復を促せる可能性があります。 主なセルフケアは以下の4つです。 ストレッチ 負担の少ない運動 コルセットの着用 生活習慣の改善 ストレッチ ストレッチで筋肉をほぐし、血流を促進することで、神経の圧迫を和らげられます。 腰や太もも周りの筋肉を伸ばすストレッチは、自然治癒を促すだけでなく、痛みを軽減する効果も期待できるでしょう。 また、仰向けに寝て片膝を胸に引き寄せるストレッチや、ゆっくりと前屈するストレッチも椎間板ヘルニアに効果的です。 胸椎椎間板ヘルニアに効果的なストレッチのやり方は、以下の記事でも解説していますので参考にしてください。 負担の少ない運動 適度な運動は筋力を維持し、症状の悪化を防ぐのに役立ちます。 とくに、水中ウォーキングやヨガなどの負担が少ない運動が効果的です。 また、運動によって腹筋や背筋を鍛えられれば、腰の負担を軽減でき、ヘルニアの再発防止にもつながるでしょう。 急な動きや重い負荷をかける運動は逆効果になる可能性があるため、無理のない範囲で行うことが重要です。 コルセットの着用 コルセットの着用で腰が安定し、椎間板ヘルニアの自然治癒を促せる可能性があります。 また、ヘルニアの痛みが強いときにコルセットを使えば、姿勢をサポートしてくれるため、楽に過ごせるでしょう。 コルセットの圧迫により腰の動きが制限され、ヘルニア部分への負荷を抑えられるのもメリットです。 生活習慣の改善 椎間板ヘルニアの自然治癒を早めるには、生活習慣の見直しも欠かせません。 日常生活の姿勢に注意し、腰に大きな負担をかけないようにしましょう。長時間のデスクワークや猫背の姿勢は、椎間板ヘルニアの症状を悪化させるため注意が必要です。(文献3) また、喫煙は椎間板ヘルニアの症状を悪化させることがわかっています。(文献1) 椅子に座る際は、背筋を伸ばし、腰をサポートするクッションを活用すると負担を軽減できます。 まとめ|椎間板ヘルニアは自然治癒までの期間を理解して受診を検討しよう 椎間板ヘルニアは、多くの場合、約3カ月で自然治癒するとされています。 しかし、回復のスピードには個人差があり、適切なセルフケアによって症状の軽減が期待できます。 ストレッチや軽い運動、コルセットの着用、生活習慣の改善を取り入れることで、症状の悪化を防ぎながら回復を促せます。 ただし、症状が長引いたり、麻痺や排尿障害などの異常が現れたりした場合は、早めに医療機関を受診してください。 自然治癒を目指しながら、適切な対処法を実践し、健康的な生活を取り戻しましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による治療も行っております。 椎間板ヘルニアの手術後に、後遺症にお悩みの方は、お気軽に「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 椎間板ヘルニアの自然治癒に関するよくある質問 椎間板ヘルニアでやってはいけないことは何ですか? 椎間板ヘルニアの回復を妨げる行動として、無理な動作や長時間同じ姿勢を続けることが挙げられます。 とくに、腰に負担のかかる動作には注意が必要です。 たとえば、重い荷物を持ち上げる、急な動きをする、長時間座り続けるといった行動は、症状を悪化させる可能性があります。 また、激しい運動や無理なストレッチも、神経を圧迫し痛みを悪化させる原因となるため避けるべきです。 腰椎椎間板ヘルニアでやってはいけないことは以下の記事でも解説しています。気になる方は、あわせてチェックしておきましょう。 椎間板ヘルニアで休職期間は平均どのくらい必要ですか? 休職期間は、症状の程度や仕事の内容によって異なります。 保存療法で仕事にも影響がでない場合は、数日から数週間で復帰できる可能性もあるでしょう。 ただし、重度の場合や手術が必要になった際には入院期間やリハビリも含めると、平均で3〜6週間ほどと考えられます。 椎間板ヘルニアで手術したあとの休職期間については以下の記事で解説しているのでチェックしてみてください。 リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。 椎間板ヘルニアの手術や、術後のお悩みがある方は、お気軽に「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 参考文献 (文献1) 一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会_腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン改訂第3 版 https://minds.jcqhc.or.jp/common/wp-content/plugins/pdfjs-viewer-shortcode/pdfjs/web/viewer.php?file=https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00645.pdf&dButton=false&pButton=false&oButton=false&sButton=true#zoom=auto&pagemode=none&_wpnonce=3b871a512b(最終アクセス:2025年6月5日) (文献2) Shiga Y. The Essence of Clinical Practice Guidelines for Lumbar Disc Herniation, 2021: 1. Epidemiology and Natural Course. Spine Surg Relat Res. 2022;6(4):319–321. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9381076/(最終アクセス日:2025年6月5日) (文献3) 時津直子ほか.「腰椎椎間板ヘルニア患者における姿勢と疼痛について」『第43回日本理学療法学術大会 抄録集』2008年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2007/0/2007_0_C0989/_article/-char/ja/(最終アクセス:2024年2月23日)
2025.02.28 -
- 腰椎椎間板ヘルニア
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椎間板ヘルニアと診断され、座ると腰がズキズキする 椎間板ヘルニアで座れなくて辛い 椎間板が外に突出し、神経を圧迫すると腰や脚に不快感を引き起こすのが椎間板ヘルニアの特徴です。 不快感や違和感をずっと腰に抱え、座ることもままならない状態は不安でいっぱいかもしれません。しかし椎間板ヘルニアは座り方を工夫すれば、長時間は難しくとも、ある程度座ったときの違和感や不快感を軽減できます。 椎間板ヘルニアと診断され、お悩みの方に向けて本記事では、椎間板ヘルニアの座り方を解説します。 椎間板ヘルニアにおける座位が辛いと感じる理由 椎間板ヘルニアとは、椎間板の一部が変形して外に飛び出してしまい、飛び出した部分が坐骨神経に当たり、腰や手足の痺れ、違和感などの症状を引き起こします。 椎間板ヘルニアのときに座ると辛いと感じる理由としては、姿勢は腰椎にかかる圧力を増加させるためです。 座ることで椎間板が圧縮され、突出した部分が坐骨神経を刺激し、症状を悪化させます。腰痛の中でも椎間板ヘルニアは最も重症度が高いといわれており、放置や無理な負荷をかけてしまうと神経麻痺などの重篤な障害を引き起こす可能性があります。 椎間板ヘルニアの負担を和らげる床の座り方 座り方のポイント 内容 背筋をまっすぐに保つ 背中をまっすぐに保つことで、腰椎にかかる圧力を減らし、症状の悪化を防げます。 クッションを使う 腰部にクッションを使うことで、背骨の自然なカーブを支え、圧力を分散させて負担を軽減します。 長時間同じ姿勢で座らない 長時間座り続けると圧力が増加するため、定期的に姿勢を変えることで、腰の負担を軽減できます。 重心が偏らないようにあぐらをかく あぐらをかくことで、骨盤が安定し、腰椎への負担が分散されます。姿勢を均等に保ちやすくなります。 椎間板ヘルニアの負担を和らげるには床の座り方が重要です。ポイントを意識し、座ることで腰にかかる負荷を軽減できます。 自宅でも簡単にできる方法なので、ぜひ実践いただけますと幸いです。 1.背筋をまっすぐに保つ 椎間板ヘルニアの負担を和らげるには背筋をまっすぐに保つことが大切です。 猫背や前かがみの姿勢は腰椎に負担をかけます。負担をかけないためにもまっすぐな姿勢を保つことで、坐骨神経への刺激を軽減し、症状の悪化を防げます。 背筋をまっすぐに保つためには、まず骨盤を正しい位置に保つことが大切です。床に座ったときに、骨盤が後ろに倒れていないか、前に傾きすぎていないかを確認しましょう。 背筋をまっすぐに保つと、腰の筋肉が無理なく使われるため、筋肉の疲労も軽減されます。(文献1)正しい姿勢を保つことで、腰椎への負担が軽減され、ヘルニアの症状を和らげられます。 2.クッションを使う クッションを使うことで、座面の圧力を分散させ、腰椎にかかる負担を軽減できます。腰の部分にクッションを当てることで、背骨のS字カーブを自然に保てます。 応急処置程度であれば、家庭用のクッションで問題ありません。 後述で解説しますが、クッションを使用したからといって長時間座るのは禁物です。クッションを使用する場合でも、30分に1回程度は立ち上がり、負担のかからない程度に動くようにしましょう。 3.長時間同じ姿勢で座らない 長時間同じ姿勢で座り続けることで、腰にかかる圧力が高くなります。腰にかかる圧力が強くなると坐骨神経を刺激してしまい、症状が悪化する可能性があります。 症状を悪化させないためにも、同じ姿勢はできるだけ避け、30分に1回程度は立ち上がり、無理のない範囲でストレッチなどを行いましょう。 ストレッチや軽く動くことで、腰部の血行が促進され、筋肉の緊張を緩和できます。 4.重心が偏らないようにあぐらをかく 普段無意識に重心が片方に傾く人は要注意です。重心が一方に傾くことで、腰や脚などにかかる圧力が強くなり、坐骨神経への負担が高くなります。その対策として、あぐらをかく座り方は有効です。 あぐらをかく姿勢は重心が左右均等に分散され、腰椎への負担が軽減されます。あぐらをかく際は片足だけを上げるような座り方は禁物です。 片足だけをあげることで重心が傾くため、骨盤の歪みを引き起こす可能性があります。あぐらをかくことで、腰への圧力を減らし、長時間座っても疲れにくくなるメリットがあります。 椎間板ヘルニアの負担を和らげる椅子の座り方 座り方のポイント 内容 背骨のS字カーブが維持できる椅子を選ぶ 背もたれが腰部をしっかり支え、骨盤が自然に前傾する椅子を選ぶと、腰の圧力が軽減され、ヘルニアの症状が和らぎます。 足の裏全体を床につける 足の裏を床につけ、膝が直角になるように調整し、骨盤が安定。腰椎にかかる負担が分散されます。 背筋をピンと伸ばす 背筋を伸ばし、自然な姿勢を保つことで腰椎に過度な圧力がかかるのを防ぎ、ヘルニアの症状が悪化しにくくなります。 長時間椅子に座り続けない 1〜2時間ごとに立ち上がり、軽いストレッチや歩行で、腰の筋肉が緊張しすぎず、ヘルニアの症状が悪化しにくくなります。 椎間板ヘルニアの負担を和らげるには椅子の座り方も重要です。 椅子に座る際は足がふらつくものを選ぶのではなく、足の裏全体が床につくものや、背骨のS字カーブが維持できる椅子を選ぶのが大切です。 以下でポイントを詳しく解説します。 1.背骨のS字カーブが維持できる椅子を選ぶ 椎間板ヘルニアを和らげるためには、背骨の自然なS字カーブを保つ椅子を選びましょう。背骨が正しい位置でサポートされることは、腰にかかる負担を減らすために役立ちます。 背もたれが腰部をしっかり支え、骨盤が自然に前傾するような椅子を選ぶことで、腰部の圧力が軽減され、ヘルニアの症状を抑えられます。 椅子の背もたれの高さや角度を調整できるものを選ぶと、さらに効果的に腰をサポートでき、おすすめです。 2.足の裏全体を床につける 足が宙でふらつくと骨盤が不安定になり、腰椎に不均等な圧力がかかりやすくなります。 椅子に座る際は足の裏全体が床につくものを選びましょう。高さを調整できるものがおすすめです。理想の高さとしては、太ももとふくらはぎの角度が90度くらいになるようにするのがポイント。 足が床からういてしまう場合は足台を使い、足が底につくようにすると良いでしょう。 3.背筋をピンと伸ばす 背もたれにもたれかかりすぎず、背筋をまっすぐに伸ばすことで、腰の圧力が軽減され、ヘルニアの症状が和らげます。 床の座り方同様に姿勢が猫背であったり、前のめりだったりすると腰椎に過度な圧力がかかり、坐骨神経を圧迫する可能性があります。 椅子に座った際はまっすぐな姿勢を意識し、腰に負荷をかけないよう意識しましょう。 4.長時間椅子に座り続けない 床に座るとき同様に長時間椅子に座り続けることはせず、30分に1回は立ち上がり、軽くストレッチをしたり、負荷のかからない程度に動くようにしましょう。 長時間椅子に座り続けることで、坐骨神経を圧迫する可能性があります。デスクワークだと、時間を忘れ長時間椅子に座ってしまうこともあるでしょう。 時間を忘れそうなときはタイマーをつけたり、立ち上がる時間を決めたりすれば、長時間座りっぱなしの状態を防げます。 椎間板ヘルニアのNGな座り方 NGな座り方 起こりうる影響 猫背や前かがみの姿勢 背骨のS字カーブが崩れ、腰椎に負担が集中し、椎間板が後方へ突出しやすくなる。 足を組んで座る 骨盤が左右どちらかに傾き、腰椎のバランスが崩れて片側に負担が集中。筋肉の緊張が偏り、ヘルニアの悪化リスクが高くなる。 長時間同じ姿勢で座る 腰椎の圧力が持続的に増加し、血流が悪化。筋肉の緊張が強まり、腰への負担が増す。 椎間板ヘルニアの症状を悪化させないためには、正しい座り方が大切です。 癖になっている人は意識して座るようにするだけで、腰にかかる負担を軽減できます。 以下でNGな座り方を詳しく解説します。 1.猫背や前かがみの姿勢 猫背や前かがみの姿勢は、腰椎に余計な負担をかけます。長時間猫背や前かがみの姿勢を維持すれば、椎間板への圧力が増し、ヘルニアの症状が悪化につながります。 とくに前かがみの姿勢を続けると、椎間板の後方(背中側)へ圧力がかかり、内部の髄核(ゼリー状の部分)が外へ押し出されやすくなります。 また、猫背姿勢は肩こりや首こり、頭痛などを招く恐れがあるため、注意が必要です。普段猫背や前かがみで座るのが癖になっている人は、背筋をまっすぐに保つように意識しましょう。 2.足を組んで座る 足を組んで座ることで、骨盤が歪み、背骨のS字カーブが崩れ、腰に負担がかかります。 足を組むと骨盤が左右どちらかに傾き、腰椎のバランスが崩れて片側に負担が集中します。片側に負担がかかることで、筋肉の緊張が片方に集中し、椎間板ヘルニア悪化のリスクが高くなるでしょう。 椎間板ヘルニアを悪化させないためにも足を組まず、背もたれを活用しつつ、背骨のS字カーブを保つことや、こまめに姿勢を正すことが大切です。 また、足を普段組むことが癖になっている人は両足を地面につけることを意識し、習慣化するのがおすすめです。 3.長時間同じ姿勢で座る 同じ姿勢で長時間座り続けると、腰にかかる負担が増え、椎間板ヘルニアの症状が悪化する可能性があります。症状の悪化を防ぐためには、定期的に立ち上がったり、姿勢を変えたりするのが大切です。 軽く立ち上がることで腰周りの筋肉がほぐれ、血流がスムーズになります。その結果、腰への圧力が分散され、長時間座ることで生じるこわばりや疲労を防ぎやすくなります。 長時間座るのが常態化している人はタイマーをセットするなど、椅子から離れる時間を決めておくと良いでしょう。 椎間板ヘルニアの症状を改善する方法 方法 内容 保存療法 初期治療として一般的。薬物療法や理学療法で症状を和らげる。 手術療法 保存療法で改善しない場合や重症時に実施。摘出手術や内視鏡手術で神経の圧迫を解消する。術後のリハビリが重要。 姿勢の改善・適度な運動 正しい姿勢を維持し、腰椎を支える筋肉を鍛えることで症状の悪化を防ぐ。 座り方以外にも、椎間板ヘルニアの症状を改善する方法があります。 初期症状としては保存療法が一般的であり、改善しない場合に手術療法が用いられます。 以下で椎間板ヘルニアの症状を改善する方法を詳しく解説します。 1.保存療法 治療法 内容 薬物療法 症状に応じて鎮痛剤、抗炎症薬、神経の働きを助ける薬を処方。症状の軽減や神経修復を促進する。 理学療法 理学療法士の指導でストレッチ・運動・マッサージを実施。血行を促進し、症状を和らげる。 安静 症状が重い場合は安静が必要。炎症が治まるが、長期間の安静は筋力低下につながるため注意。 椎間板ヘルニアの初期治療として、保存療法から始めるのが一般的です。保存療法は手術を行わずに症状を和らげることが目的です。 保存療法には主に薬物療法・理学療法・安静の3つがあります。保存療法を6週間〜3カ月ほど続け、症状が改善すれば、手術は行いません。 しかし、期間内に改善が見込めない場合や、悪化した場合は手術療法を検討する必要があります。 椎間板ヘルニアの保存療法・手術療法については以下の記事でわかりやすく解説しております。 2.手術療法 手術法 特徴 メリット デメリット 従来の手術法 背中側から切開し、椎弓や椎間板を除去。 根本的な治療が見込める。 皮膚・筋肉・骨に負担が大きく、入院期間が長い(2〜3週間) PELD 7mmの細い筒を使い、内視鏡でヘルニアを摘出。 低侵襲、局所麻酔や日帰り手術、回復が早い。 適応できる症例が限られる(大きなヘルニア・脊柱管狭窄症には不向き) MED 内視鏡を使用し、やや大きめの器具で摘出。 複数の椎間に対応しやすく、実施病院が多い。 筋肉や骨への負担がPELDより大きい。 保存療法で改善が見られない場合や症状が重篤な場合、手術療法が検討されます。手術療法の内容は、摘出手術や内視鏡手術で神経の圧迫を解消するものです。 手術療法には従来の背中側から切開し、椎弓や椎間板を除去する手法の他にPELD(経皮的内視鏡下 腰椎椎間板切除術)とMED(内視鏡下ヘルニア摘出術)と呼ばれるものがあります。 それぞれメリットデメリットが存在するため、手術療法を実施する際は医師に相談するのがおすすめです。手術後は日常生活を不自由なく送るために、リハビリを行います。 以下の記事では椎間板ヘルニアの手術療法について詳しく解説しています。 3.姿勢の改善や適度な運動 椎間板ヘルニアの症状を予防するためには、姿勢の改善と適度な運動が不可欠です。とくに適度な運動は身体の柔軟性や筋力の強化、持久力の増強、有酸素運動能力の向上などが期待できます。(文献2) 実践しやすい運動例としては、以下の3つが挙げられます。 体幹トレーニング(プランクやドローインなど) ストレッチ(太ももや腰回りの筋肉をほぐす) ウォーキング(無理のない範囲で継続する) どれも無理のない範囲で行える運動で、ヘルニアの予防・症状の軽減につながります。(文献2)(文献3) 座ると辛い椎間板ヘルニアは当院にご相談ください 座ると辛い椎間板ヘルニアですが、座り方を意識するだけで腰にかかる負担を軽減できます。 椎間板ヘルニアは座り方を意識するのも大切ですが、症状改善に向けて保存療法や適度な運動を取り入れることも忘れてはいけません。 もし、椎間板ヘルニアで悩みを抱えているのであれば、当院「リペアセルクリニック」にお気軽にご相談ください。当院「リペアセルクリニック」では、手術を必要としない再生医療を提案できます。 椎間板ヘルニアで毎日が不安な方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) 公益財団法人中国労働衛生協会「NHKテキスト きょうの健康10月号.2021、WHO身体活動・座位行動ガイドライン」2023年 https://churou-wp.sub.jp/wordpress2/wp-content/uploads/2023/11/62df06838dfbcc1fceb62b758b9eb0e0.pdf?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年2月24日) (文献2) 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021改訂第3版」2021年 https://minds.jcqhc.or.jp/common/wp-content/plugins/pdfjs-viewer-shortcode/pdfjs/web/viewer.php?file=https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00645.pdf&dButton=false&pButton=false&oButton=false&sButton=true#zoom=auto&pagemode=none&_wpnonce=3b871a512b (最終アクセス:2025年2月24日) (文献3) 厚生労働省「腰痛予防のための運動指導」 https://www.mhlw.go.jp/content/000656471.pdf(最終アクセス:2025年2月24日)
2025.02.28 -
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 脊椎
腰に違和感を感じる 腰の違和感のせいで生活に支障をきたしている 腰の違和感はぎっくり腰の前兆であると同時に、椎間板ヘルニアの可能性もあります。ぎっくり腰と椎間板ヘルニアは放置しておくと症状が悪化する恐れがあり、対処方法が異なるのです。 また、ぎっくり腰と椎間板ヘルニアの症状は酷似している点も多く、見分け方が難しい側面もあわせもっています。 そこで本記事では、以下について解説します。 ぎっくり腰と椎間板ヘルニアの違い ぎっくり腰と椎間板ヘルニアが併発する可能性 ぎっくり腰になったときの対処法 ヘルニアになったときの対処法 ぎっくり腰と椎間板ヘルニアの違いを知ることで適切に対処できます。ぜひ最後までご覧いただき、ぎっくり腰と椎間板ヘルニアの違いを理解しましょう。 ぎっくり腰とヘルニアの違いとは? 項目 ぎっくり腰(急性腰痛症) 椎間板ヘルニア 発症の仕方 急な動作、重い物を持つ、前かがみの姿勢、朝起きたときなど 椎間板の変性、加齢、長期間の負担、急激な負荷や外傷 主な症状 急に訪れる腰痛(ある瞬間に発生) 徐々に悪化する場合と急激に悪化する場合がある 神経症状 基本的に神経症状はない あり(脚のしびれ・感覚異常・筋力低下など) 診断方法 問診・身体診察が基本 神経学的所見+MRI・CT・X線など画像検査(文献3) 治療方法 安静・鎮痛薬・物理療法・ストレッチなど 保存療法(薬・理学療法)、改善しない場合は手術を検討する必要あり ぎっくり腰とヘルニアの症状には上記のような違いがあります。どちらも発症の仕方や症状が似ている部分はありますが、一般的にヘルニアの方が重い症状です。 ぎっくり腰とヘルニアの症状について詳しく解説していきます。 ぎっくり腰の症状 前提としてぎっくり腰の原因は特定できませんが、以下3つの要因で症状が引き起こされます。 筋肉疲労の蓄積 急な動作や重い荷物を持つなど 骨格の歪み ぎっくり腰の症状としては、腰にズキッとした違和感を感じ、動くのが難しい状態のことを指します。(文献2) 病院での診断方法は主に問診・身体診察が基本です。治療方法としては安静・鎮痛薬・物理療法・ストレッチなどが挙げられます。 以下記事ではぎっくり腰の症状を詳しく解説しております。ぎっくり腰は自己判断や放置にリスクが伴いますので、早めの受診がおすすめです。 ヘルニアの症状 ヘルニアの症状には種類があります。その中でも代表的なのは椎間板ヘルニアです。 主な症状は手足のしびれや筋力の低下などの違和感や腰痛のようなズキッとした感覚に襲われます。 ぎっくり腰は問診・身体診察が基本なのに対し、代表的な椎間板ヘルニアは神経学的所見+MRI・CT・X線など画像検査が必要です。(文献1)保存療法(薬・理学療法)で改善しない場合は手術も視野に入れる必要があります。 以下記事ではヘルニアの症状について詳しく解説しております。ヘルニアに対しての自己判断はリスクが高いため、早期発見が大切です。 ぎっくり腰とヘルニアは併発する可能性がある 起因 併発の仕組み 症状の特徴 ヘルニア 椎間板ヘルニアによる神経圧迫や腰部の負担増加が原因でぎっくり腰を発症する可能性あり。 長時間座っていると違和感が増すことが多い。 ぎっくり腰 ぎっくり腰で急激な腰の負担がかかり、椎間板が損傷してヘルニアを引き起こすことがある。 ぎっくり腰の違和感が長引き、脚にしびれや違和感が出ることがある。 ぎっくり腰とヘルニアは互いに影響し、併発する可能性があります。併発するケースを解説するので、参考にしていただけますと幸いです。 ヘルニアが原因でぎっくり腰を発症する場合 ヘルニアが原因でぎっくり腰を発症するケースは主に椎間板ヘルニアによる神経圧迫や腰部の負担増加です。椎間板ヘルニアの症状があると、腰の筋肉が緊張しやすくなったり、腰のストレスがかかりやすくなります。 そのため、急な動作や前かがみになった際にぎっくり腰を発症しやすくなります。椎間板ヘルニアの方は急な動作や重い荷物を持つなど、腰にストレスのかかる動作には注意が必要です。 ぎっくり腰が原因で椎間板ヘルニアを発症する場合 ぎっくり腰で腰にかかる負荷が大きくなると、椎間板(背骨のクッション部分)にも強い圧力がかかり、椎間板の内部を傷つけることになります。 椎間板の内部に負荷がかかることで、髄核(ゼリー状の組織)が飛び出してしまい、椎間板ヘルニアの発症につながります。 ぎっくり腰が長引く・違和感を感じる際は椎間板ヘルニアを併発する前に早めの受診が大切です。 ぎっくり腰になったときの対処法 ぎっくり腰になったときの対処法は以下の5つです。 楽な姿勢で安静にする 市販の鎮痛剤や鎮静成分を含む湿布を使用する 負担のかからない程度に適度に動く 15分程度の患部の冷却 医療機関の受診 ぎっくり腰になったときは重いものを持ち上げたり、姿勢を急に変えたりする行動は控えましょう。 以下で対処法を詳しく紹介します。 また、ぎっくり腰の原因や治療については以下の記事で詳しく解説しています。ぎっくり腰にお悩みの方はぜひ参考にしていただけますと幸いです。 1.楽な姿勢で安静にする ぎっくり腰になったときは無理な姿勢は取らず、腰に負担のかからない楽な姿勢をとることが大切です。 ぎっくり腰になった人の大半は仰向けで脚を伸ばして寝るのが難しい状態といえます。 発症直後、腰に違和感を感じるときは腰に負担がかからない楽な姿勢をとるようにする、膝の下にクッションを入れ、腰と膝を軽く曲げて寝る、膝を軽く曲げて横向きに寝るなどが有効です。 大半の場合、症状は1週間ほどで和らぎますが、改善が見られない場合は当院の受診をおすすめします。 2.市販の鎮痛剤や鎮静成分を含む湿布を使用する 応急処置として、湿布やロキソニンなどの市販薬の使用が効果的です。 湿布を選ぶ際は鎮静成分が含まれている、ロキソプロフェン・ジクロフェナク・インドメタシンなどの成分が含まれているものを選びましょう。(文献3) 湿布の中には鎮静成分が含まれていないもの(例:保湿成分メインの湿布や局所刺激成分のみの湿布など)もあるので、不安な方は薬局に相談するのがおすすめです。 また、湿布で肌荒れやかゆみを感じる場合はすぐに使用を中断する様にしましょう。 3.負担のかからない程度に適度に動く ぎっくり腰になったときは負担のかからない程度に適度に動くことも大切です。腰痛を気にするあまり動かないでいると、筋力低下や慢性化のリスクがあります。 どうしても動けないときに無理する必要はないものの、簡単な家事や近くのものを取りに行く程度であれば、回復を促進してくれます。症状が軽減した段階で適度に動くことは、筋肉の硬直を防ぐために重要です。 無理のない範囲で少しずつ、身体を動かすようにしましょう。 4.15分程度の患部の冷却 方法 内容 目安時間 冷却(初期対応) 氷嚢や冷却パックをタオル越しに使用する 15〜20分おき、1時間おきに繰り返す 症状が引いたら 入浴や蒸しタオル、カイロで血行促進 症状の軽減後に行う ぎっくり腰で炎症を起こした患部の冷却は応急処置としても有効な手段です。楽な姿勢で身体への負担を減らし、症状始めの48時間ほどは患部を冷やすと炎症を抑えられます。 氷嚢や冷却パックをタオル越しに15〜20分冷やします。この流れを1時間おきに繰り返しましょう。症状が引いてきた段階で入浴や蒸しタオル、カイロを使って血行を促進し、筋肉の強張りを和らげられます。 ただし症状が引いてきた段階で血行がよくなるという理由で入浴や蒸しタオルで温めすぎるのは逆効果です。温めすぎると引いた炎症が再発する可能性があるので、注意が必要です。 5.医療機関の受診 治療法 内容 薬物療法 消炎鎮痛剤(NSAIDs)や筋弛緩剤を使用し、炎症を抑える 理学療法 ストレッチやリハビリを行い、筋力を強化して負担を軽減する(文献4) 神経ブロック療法 症状を感じる神経に局所麻酔薬やステロイドを注射し、一時的に症状を抑える 椎間板内酵素注入療法 椎間板に酵素(コンドリアーゼ)を注入し、飛び出た髄核を縮小させる 手術療法 突出した椎間板を取り除く手術を実施する(内視鏡手術や除圧術など) ぎっくり腰が改善しない場合は、医療機関の受診をおすすめします。自己判断での対処はリスクを伴います。 なかなか改善しない、治るのか不安と感じているなら、医師に相談すれば不安が解消できるかもしれません。 少しでも気になることがあれば、医師に相談し、ぎっくり腰の改善に前向きな気持ちになれます。前向きな気持ちは治療にとっても大切です。 早くから治療を始めた方が効果を得やすいため、気になる場合は気軽にご相談ください。ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けております。 ヘルニアになったときの対処法 治療法 内容 薬物療法 消炎鎮痛剤(NSAIDs)や筋弛緩剤を使用し、炎症を抑える 理学療法 ストレッチやリハビリを行い、筋力を強化して負担を軽減する 神経ブロック療法 症状を感じる神経に局所麻酔薬やステロイドを注射し、一時的に症状を抑える 椎間板内酵素注入療法 椎間板に酵素(コンドリアーゼ)を注入し、飛び出た髄核を縮小させる 手術療法 突出した椎間板を取り除く手術を実施する(内視鏡手術や除圧術など) ヘルニアになったときの対処法は以下の5つ。 薬物療法 理学療法 神経ブロック療法 椎間板内酵素注入療法 手術療法 これから紹介する対処法は、必ず医師の診断を受けた上で行いましょう。 1.薬物療法 薬物療法とは消炎鎮痛剤(NSAIDs)や筋弛緩剤を使用し、炎症を抑える療法です。 腰椎椎間板ヘルニアにより生じる腰下肢痛に対する薬物療法として、世界各国で鎮痛薬、筋弛緩薬、抗うつ薬などによる治療が一般的に行われています。(文献4) しかし、薬物の効果が現在の医学研究において信頼性の高い証拠(エビデンス)がまだ見つかっていません。 薬物療法は根本的な治療ではなく、あくまで対症療法として有効です。薬物療法は根本的な解決ではなく、症状を一時的に和らげるものであることは覚えておきましょう。 2.理学療法 理学療法とはストレッチやリハビリを行い、筋力を強化して負担を軽減する療法です。腰椎椎間板ヘルニアの治療では、運動療法(筋力トレーニング・ストレッチ・持久力強化)が効果的とされています。 ただし、この療法は発症を防ぐ1次予防としての効果は十分に証明されていません。 一方で、再発を防ぐ2次・3次予防として期待を寄せられており、運動を続けることでVAS値の軽減、休業期間の短縮、再発率の低下が期待されています。 コルセットについては、ヘルニア発症自体を防ぐ効果(1次予防)は証明されていません。しかし回復の手助けや、再発防止に役立つとされています。 また、認知行動療法(不安やストレスを軽減する心理療法)はヘルニアの再発防止に効果があると期待されています。 3.神経ブロック療法 神経ブロック療法の種類 特徴 硬膜外ブロック療法 脊髄を包む膜(硬膜)の外側にある空間に局所麻酔薬を注入する。炎症を抑える効果もある 神経根ブロック療法 X線画像を見ながら、圧迫されている神経に局所麻酔薬と抗炎症薬を直接注入する ブロック療法(椎間板造影) X線画像を用いて障害された椎間板を特定し、そこに局所麻酔薬と抗炎症薬を注入する 神経ブロック療法とは症状の原因になっている神経の部位やその周りに細い特殊な神経ブロック針で局所麻酔などを注入する療法です。 神経ブロック療法は一時的な療法や診断には有効ではあるものの、根本的な治療として有効であるエビデンスが存在しないため、リハビリや生活習慣の改善と併用が推奨されています。(文献4) 4.椎間板内酵素注入療法 コンドリアーゼと呼ばれる酵素を椎間板内に注入し、髄核を化学的に溶解して神経の圧迫を軽減する療法です。 椎間板内酵素注入療法の所要時間はおおむね30〜60分で、3時間の安静後にゆっくり歩行を開始します。手術の時間は30〜60分程度で、入院は1日程度で短期間なのもメリットです。 注意点としては、アナフィラキシー(かゆみ、蕁麻疹などの皮膚症状、腹痛、吐き気などの消化器症状、視野が狭くなるなどの視覚症状)を引き起こさないために、コンドリアーゼの投与は生涯に1度のみ投与が許可されています。 神経や血管、消化管に近い部位を針で刺すため、損傷のリスクがあります。国内第Ⅱ/Ⅲ相試験及び第Ⅲ相試験(薬剤発売前の臨床試験)では、一時的な腰痛や下肢痛の悪化が約30%報告されています。 しかし、2019年の時点では椎間板内酵素注入療法で死亡した事例は報告されていません。椎間板内酵素注入療法を受ける際は、必ず医師と相談し、過去にコンドリアーゼの投与歴がないことを確認した上で進めましょう。 5.手術療法 椎間板ヘルニアの治癒は原則、薬物療法、理学療法、神経ブロック療法などの保存療法が中心で行われます。しかし3か月間の保存療法で改善されない場合や3カ月も待機できない場合には手術が推奨されています。 手術ではLOVE法と呼ばれる一部骨を削った後に脊髄をよけてヘルニアを切除する手術を行い、手術後1〜2日で歩行練習やリハビリを開始します。 薬物療法、理学療法、神経ブロック療法でも症状が改善しない場合は、医師に相談し、手術を検討するのも1つの方法です。 腰に違和感を感じる方は早めの受診がおすすめ 腰に違和感を感じる方はぎっくり腰・間板ヘルニアに限らず早めの受診をおすすめします。ぎっくり腰と椎間板ヘルニアの症状には似た部分も多いものの、対処法が異なります。 ぎっくり腰が原因で間板ヘルニアを併発することもあれば、ヘルニアが原因で併発することもあるので、少しでも不安に感じた方は早めに当院に相談ください。 当院「リペアセルクリニック」では、ぎっくり腰・椎間板ヘルニアをはじめとする症状に対して再生医療(幹細胞治療)を提供しています。 再生医療(幹細胞治療)は損傷した椎間板や神経組織の再生を目指し、症状の軽減や機能の回復を期待できます。 腰に関するちょっとした悩みでも当院「リペアセルクリニック」にご相談いただけますと幸いです。ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 参考文献 (文献1) 日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン(改訂第 3 版)」2021年 https://minds.jcqhc.or.jp/common/wp-content/plugins/pdfjs-viewer-shortcode/pdfjs/web/viewer.php?file=https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00645.pdf&dButton=false&pButton=false&oButton=false&sButton=true#zoom=auto&pagemode=none&_wpnonce=3b871a512b(最終アクセス:2025年2月21日) (文献2) 公益社団法人日本整形外科学会「症状・病気をしらべる https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/acute_low_back.html(最終アクセス:2025年2月21日) (文献3) 厚生労働省 「鎮痛・鎮痒・収れん・消炎薬(パップ剤を含む)製品群No. 57」 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/01/s0117-9d36.html¥(最終アクセス:2025年2月21日) (文献4) 伊藤俊一 「エビデンスに基づく理学療法 ―理学療法診療ガイドラインを読み解く―」 連載第9 回 腰椎椎間板ヘルニア 理学療法診療ガイドライン」『理学療法学 第 42 巻第 6 号』pp.1-6,2015年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/42/6/42_42-6kikaku_ito_toshikazu/_pdf?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年2月21日)
2025.02.28 -
- 頭部
- 手根管症候群
- 脊椎
- 手部
「最近、手がしびれる…」そう感じたことはありませんか? 手のしびれでよく思いつくのは、首のヘルニア、脳梗塞や脳出血などでしょう。 しかし、他にも、『これ知っておけばよかった』という病気もあります。 今回は、手のしびれを引き起こす5つの主な原因と、そのメカニズムを分かりやすく解説します。 最近は、スマホやパソコンを長時間使う環境が増えてきましたよね。あと重たいものをよく持つ方も、注意が必要です。 さらに、ご自身でもある程度、セルフチェックできるような項目も紹介します。 手のしびれの原因5選とメカニズム 「最近、手がしびれるなぁ…」と感じて、不安を抱えていませんか?手のしびれは、人生で一度は経験することがあるぐらい、よく見られる症状です。 軽いしびれだからと言って、放っておくと後々治療しにくくなることもあります。 神経の障害というものは一度傷ついてしまうと、一生後遺症として残ることもよく見られます。 今回は、手のしびれの原因で、私が診察でよく経験してきた、5つの病気について、詳しく説明したいと思います。ぜひ最後まで読んでみてください。 頚椎症・椎間板ヘルニア まず、首の骨(頚椎)に原因がある場合があります。 頚椎症:頚椎症は例えるなら、長年使い続けた家の柱や梁が歪んだり、ひびが入ったりするようなものです。 加齢とともに、首の骨も変形したり、骨棘(こつきょく)と呼ばれる骨のとげができたりします。 その結果、首の骨の近くを通る神経が圧迫され、手のしびれを引き起こします。特に、長時間のパソコン作業などで猫背姿勢になっている方は要注意です。 椎間板ヘルニア:椎間板ヘルニアは、背骨の間にあるクッション材(椎間板)が、まるでパンパンに膨らんだ風船のように飛び出し、神経を圧迫する病気です。 若い方でも、急に重いものを持ち上げた時などに発症することがあります。 ぎっくり腰のように、激しい痛みやしびれに突然襲われることもあります。 頸椎のヘルニアだと、手と足がしびれる可能性があり、腰椎ヘルニアだと、手のしびれは出ませんが足はしびれることはあります。 胸郭出口症候群 次に、胸郭出口症候群について説明します。 胸郭出口症候群は、首から腕、指先へと伸びる神経や血管の通り道である「胸郭出口」が狭くなり、神経や血管が圧迫されて手のしびれや痛み、だるさなどを引き起こします。 胸郭出口は、鎖骨と肋骨の間の狭い通路のような場所です。なで肩の方や、重い荷物を持つことが多い方は、この通路がさらに狭くなりやすい傾向があります。 神経や血管の通り道が、圧迫されて狭くなることで、しびれや冷感などの症状がでてきます。 整形外科の外来では、この胸郭出口症候群の症例は少ないので、医師からしても、なかなか診断に至るまで、時間がかかることがよくあります。 そして、診断されたら、私はまずリハビリと筋トレをしっかりやっていただいてます。経験上、リハビリと筋トレすることで、多くの方は治っています。 手根管症候群 手首にも、手のしびれを引き起こす原因が潜んでいます。 手根管症候群は、手首の手根管と呼ばれるトンネルの中で、正中神経という神経が圧迫されることで起こります。 この神経は、親指、人差し指、中指、そして薬指の半分に感覚を伝える役割を担っています。 手根管症候群になると、これらの指にしびれや痛み、時には腫れぼったい感じも現れます。特に、妊娠中や更年期を迎えた女性に多く見られます。 これは、ホルモンバランスの変化によって手根管が腫れやすくなるためと考えられています。また、手をよく使う仕事や趣味を持つ方にも発症しやすいです。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 末梢神経障害 末梢神経は、脳や脊髄から体の各部につながる神経のネットワークです。 末梢神経障害は、このネットワークが障害されることで、手足のしびれや痛み、感覚の異常などが現れます。 糖尿病やビタミン不足などが原因となることが多く、両手両足にしびれが現れることが多いです。 私の経験では、糖尿病を持っている方は、頚椎や腰椎のヘルニアによるしびれがでやすい方が多かったです。 やはり、糖尿病では神経が障害を受ける分、しびれやすくなるのでしょう。 脳卒中 最後に、最も注意が必要な原因として脳卒中があります。脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳の機能が障害される病気です。 手のしびれだけでなく、片側の手足の麻痺、ろれつが回らない、意識障害など、重篤な症状が現れます。 手のしびれが片側だけに現れる場合や、他の神経症状を伴う場合は、脳卒中の可能性を疑い、すぐに医療機関を受診する必要があります。 脳出血を起こしても、小さかったり、初期の時は、ほとんど症状が現れない場合が多く、少し進行して、歩くときに膝折れがする、しびれが出てきたなどを感じて、病院に行く方もよくおられました。 その時点で、CTやMRIをとらなければ、見過ごされることも考えられますので、疑いがあれば、CTやMRIを、医師に相談して撮影してもらいましょう。 手のしびれは、様々な原因で起こります。原因によって治療法も異なりますので、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。 手のしびれの前兆とセルフチェック 「最近、手がしびれる…」と感じたら、放っておかずに、まずはセルフチェックしてみましょう。 手のしびれは、誰しも一度は経験する身近な症状ですが、実は重大な病気のサインである可能性も潜んでいます。 早期発見・早期治療のためにも、ご自身のしびれをよく観察し、セルフチェック項目を確認することで、適切な医療機関の受診につなげることができます。 しびれの場所・範囲・時間帯 しびれの場所 手のしびれを感じた時、まず確認すべきことは「どこがしびれているか」です。 親指、人差し指、中指にしびれがある場合は、手根管症候群の可能性が考えられます。これは、手首にある神経の通り道が狭くなることで、神経が圧迫されて起こる病気です。 Point! 薬指の内側と外側を、指でなぞってみてください。もし中指側だけが痺れているなら、高い確率で手根管症候群と思われます。 そして、両手の母指球筋を比べてみて、平らになって、筋肉が痩せていると注意です。これがみられたら、進行した手根管症候群となります。 経験上、痺れが弱くても、母指球筋が小さくなっていたら、手術をして、これ以上悪くならないようにした方がいいでしょう。 進行すると、服のボタンが付けにくくなったり、お箸が持ちにくくなります。そうなると、手術しても、後遺症として戻らなくなる確率が高くなるのです。 一方、小指や薬指にしびれがある場合は、肘部管症候群の可能性も考えられます。これは、肘の神経の通り道が狭くなることで起こるしびれです。 よく、椅子などに肘の内側をぶつけると、指まで痺れることがありますよね。それは、肘部管症候群の原因である尺骨神経によるものです。 また、手の甲側がしびれる場合は、橈骨神経麻痺の可能性も考えられます。橈骨神経麻痺は、腕の外側から手の甲にかけて走る神経が圧迫されることで起こります。 例えば、腕枕をして寝てしまった後に、手がしびれている経験はありませんか? これは、橈骨神経が圧迫されたことによる一時的な麻痺によるものと考えられます。ひどい場合は、手のひらがだらんと垂れて、動かなくなることもよくみられます。 『朝起きたら、いきなり手が動かない』と心配されますが、2〜3ヶ月ほどリハビリなどをして様子を見れば、ほとんどの方は治ります。 急に手が動かなくなると、脳の病気かな?とかなり驚きますよね。。。 しびれの範囲 しびれの範囲も重要なポイントです。 もし、しびれが手全体に広がっている場合は、頸椎症や胸郭出口症候群などの、首や肩の神経が圧迫される病気が原因かもしれません。 手根管症候群では、手首より先の方しかしびれは出ません。 さらに、片方の手だけがしびれる場合は、脳卒中の可能性も考えられます。 脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりする病気で、手足の麻痺や言語障害など、命に関わる危険な症状を引き起こす可能性があります。 もちろん、頚椎症でも、片方だけのしびれもよくみられます。 しびれの時間帯 しびれが続く時間にも注目しましょう。 一日中しびれが続いているのか、特定の時間帯だけなのか、あるいは一時的なものなのか。こうした時間的な変化も、診断の重要な手がかりとなります。 例えば、夜間や早朝にしびれが強くなる場合は、手根管症候群の可能性が高くなります。 動作との関連性(特定の姿勢、動作で悪化など) 次に、手のしびれと、特定の姿勢や動作との関連性をチェックしてみましょう。 例えば、パソコン作業やスマートフォン操作など、手首を酷使する作業の後でしびれが悪化する場合は、手根管症候群の可能性があります。 また、首を後ろに反らすと手のしびれが悪化する場合は、頸椎症の可能性が高まります。 逆に、腕を頭の上に上げることでしびれが軽減する場合は、胸郭出口症候群の可能性も考えられます。 日常生活の中で、どのような姿勢や動作がしびれを悪化させるのか、または軽減させるのかを把握することは、原因を特定する上で非常に重要です。 随伴症状(痛み、感覚異常、脱力など) 手のしびれとともに、他の症状が現れることもあります。これらの随伴症状も、原因特定の重要な手がかりとなります。 例えば、しびれとともに、鋭い痛みを感じる場合は、神経腫瘍の可能性も考えられます。 神経腫瘍とは、神経に発生する腫瘍のことで、良性のものから悪性のものまで様々な種類があります。 稀なケースでは、指の神経に叢状(そうじょう)シュワン腫という良性腫瘍が発生し、鋭い痛みやしびれを伴うことがあります。 また、しびれとともに脱力感や、感覚が鈍くなるなどの症状が現れる場合は、神経の損傷がより深刻な状態である可能性があります。 その他、手のむくみや冷感なども、しびれの原因疾患によっては伴うことがあります。 過去の病歴 過去の病歴も、手のしびれの原因を特定する上で重要な情報です。 糖尿病や高血圧などの生活習慣病は、末梢神経障害という合併症を引き起こし、手のしびれにつながる可能性があります。 また、過去に神経系の疾患を患ったことがある場合も、再発や新たな病気が隠れている可能性も考慮に入れる必要があります。 健康診断の結果や過去の治療歴なども含め、できるだけ詳細な情報を医師に伝えましょう。 ▼高血圧の症状はありませんか?併せてお読みください。 危険信号(麻痺の進行、意識障害など) 手のしびれとともに、麻痺の進行や意識障害、ろれつが回らない、激しい頭痛などの症状が現れた場合は、一刻を争う事態です。 これらは脳卒中のサインである可能性が非常に高く、緊急の医療処置が必要となります。 また、片側の手足だけがしびれる、顔の半分がしびれる、言葉が出てこない、呂が回らないといった場合も、脳卒中の前兆である可能性があります。 これらの症状が現れた場合は、直ちに救急車を呼ぶか、近くの医療機関に連絡してください。 手のしびれの治療法と予防ケア 「手のしびれ」と聞くと、つい軽く考えてしまいがちですが、実は様々な原因が潜んでおり、中には放置すると深刻な事態を招く病気も存在します。 早期発見・早期治療が何よりも重要です。適切な治療とケアによって、しびれを軽減し、快適な日常生活を取り戻せる可能性は十分にあります。 ここでは、手のしびれの主な治療法と、日常生活での予防ケアについてご説明します。 薬物療法 手のしびれの原因や症状に合わせて、様々な薬が用いられます。 例えば、神経の炎症や痛みを抑える薬、血行を改善する薬、神経の働きを助けるビタミン剤などがあります。 神経の炎症が強い場合は、ステロイド薬を使う場合もあります。これは、強力な消炎効果を持つ薬ですが、副作用にも注意が必要です。 また、糖尿病性の神経障害には、血糖コントロールを改善する薬も重要です。 しびれに効く薬は、最近色々と出てきてはいますが、しびれは薬でなかなか治りにくい部類となります。 どの薬を使うかは、医師があなたの症状や体質を考慮して慎重に判断しますので、自己判断で薬を飲んだり、やめたりすることは絶対に避けてください。 理学療法・作業療法 薬物療法だけでなく、理学療法や作業療法も重要な役割を担います。 理学療法:理学療法では、ストレッチやマッサージ、温熱療法などによって、硬くなった筋肉や関節を柔らかくし、血行を促進することで、しびれを和らげます。 胸郭出口症候群では、両腕の重みを支える筋肉をしっかり鍛えることが大切です。 作業療法:作業療法では、日常生活動作の練習や、自助具(日常生活を補助する道具)の使用指導などを通して、しびれがあっても支障なく生活できるようサポートします。 例えば、手根管症候群の患者さんには、手首のストレッチや、手首を安静に保つための装具の使用指導が行われます。 装具療法 手首や指を固定するサポーターや、頸椎を支えるコルセットなどの装具は、患部を安静に保ち、神経への負担を軽くしてくれます。 特に、手根管症候群や腱鞘炎など、手首の使い過ぎが原因で起こるしびれには効果的です。 装具の種類や使用方法も様々ですので、医師や理学療法士の指導のもと、自分に合った装具を選び、正しく使用することが大切です。 例えば、就寝時に手首を固定する装具を装着することで、夜間のしびれを軽減できる場合があります。 手術療法 多くの場合、薬物療法、理学療法、装具療法などの保存療法で症状が改善します。 しかし、神経の圧迫が非常に強い場合や、保存療法で効果が見られない場合には、手術が必要となることもあります。 例えば、手根管症候群では、母指球筋が痩せてきたり、服のボタンが付けにくくなる巧緻障害などが出た場合は、速やかに、神経を圧迫している靭帯を切開して神経を解放する手術が必要です。 頚椎症や頚椎椎間板ヘルニアが原因の場合は、首の骨の手術が必要になることもあります。 我々の手術の基準として、筋力低下、尿が出にくいなどの膀胱直腸障害となります。しびれに関しては、我慢ができないぐらいなら、手術を選択することもあります。 手術療法は最終手段であり、患者さんの状態に合わせて慎重に判断されます。 日常生活での注意点と予防法 日常生活での心がけも、手のしびれの予防や改善に大きく貢献します。 長時間同じ姿勢を続けることや、手首や指に負担がかかる作業を繰り返すことは避けましょう。 パソコン作業やスマートフォンの操作をする際は、こまめに休憩を取り、ストレッチをすることを心がけてください。 また、デスクワークをする際は、正しい姿勢を保ち、椅子や机の高さを調整することも重要です。 正しい姿勢を保つことで、首や肩への負担を軽減し、胸郭出口症候群などの予防にもつながります。 栄養バランスの良い食事や適度な運動、十分な睡眠も、健康な神経を維持するために不可欠です。 そして、もし手のしびれを感じたら、自己判断せずに、早めに医療機関を受診しましょう。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 MacGillis KJ, Mejia A, Siemionow MZ. "Hand compression neuropathy: An assessment guide." The Journal of family practice 65, no. 7 (2016): 462-71. Saeki Y, Hattori Y, Mane SA, Doi K. "Plexiform Schwannoma of Digital Nerve." The journal of hand surgery Asian-Pacific volume 28, no. 5 (2023): 609-613. Thapa L, Amatya R, Maharjan S, Gaurishankar N, Shrestha AM, Bhattarai S, Singh SN, Gongal DN, Devkota UP. "Cheiro-Oral Syndrome." Kathmandu University medical journal (KUMJ) 16, no. 62 (2018): 196-198. Slouma M, Zarrouk Z, Maatoug F, Dhahri R, Amorri W, Gharsallah I, Metoui L, Louzir B. "Fibrolipoma of the Median Nerve: An Overview." Current rheumatology reviews 18, no. 4 (2022): 298-304.
2025.02.15 -
- 脊椎
- 脊柱管狭窄症
- 脊椎、その他疾患
腰からお尻、足にかけて電気が走るような痛みやしびれ… それ、坐骨神経痛かもしれません。人体で最も太く長い坐骨神経が圧迫されると、痛みやしびれといった不快な症状が現れます。 実は、この坐骨神経痛、坐骨神経痛を放置してしまうと、徐々に歩行に支障をきたすことがあります。 主な原因は椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、梨状筋症候群などですが、長時間のデスクワークや運動不足も関係していると言われています。 この記事では、医師が効果的なストレッチ方法を解説します。 >>坐骨神経痛をやわらげるストレッチをすぐに見たい方はここをタップ<< 【予備知識】坐骨神経痛の症状と原因 坐骨神経痛は、腰部から臀部、下肢へと続く坐骨神経に圧力がかかったり、刺激されたりすることで、痛みやしびれなどの症状が現れる状態です。 この神経は、人体で最も太く長い神経であり、まるで電線のように腰から足の先まで電気信号を送っています。 しかし、何らかの原因でこの「電線」が圧迫されると、電気がうまく流れなくなり、痛みやしびれなどの不快な症状を引き起こすのです。 症状の特徴:痛みやしびれ、放置するとどうなる? 坐骨神経痛の症状は、人によって様々です。 電気が走るような鋭い痛み、ジンジンするようなしびれ、足の感覚が鈍くなる、といった症状が現れることがあります。 痛みやしびれは、お尻から太もも、ふくらはぎ、すね、そして足の甲や足の裏まで、坐骨神経が通っている場所ならどこにでも現れる可能性があります。 これらの症状は、長時間同じ姿勢を続けていたり、くしゃみや咳などお腹に力が入る動作をした際に悪化することがあります。 症状が重い場合は、歩いたり立ったりすることさえ難しくなることもあります。 坐骨神経痛を放置すると、痛みが慢性化し、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。 また、しびれがずっと残ったり、足に力が入らなくなって歩行が困難になるケースもあります。 特に、腰部脊柱管狭窄症の場合、放置すると排尿障害などの深刻な合併症を引き起こす可能性も懸念されます。 筋力が落ちたり、尿が出にくくなったり、便秘がちになると命に関わるため、我々医師は手術を勧めることになります。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「腰の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 原因:椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、梨状筋症候群など 坐骨神経痛の原因は様々ですが、代表的なものとして椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、梨状筋症候群などが挙げられます。 椎間板ヘルニアは、背骨のクッションの役割をしている椎間板の一部が飛び出し、坐骨神経を圧迫することで起こります。 20代に最も多く発症し、次に30~40代に多く見られます。 脊柱管狭窄症は、背骨に存在する神経の通り道である脊柱管が狭くなり、神経を圧迫することで起こります。50歳以上の中高年に多く発症します。 ▼脊柱管狭窄症について、併せてお読みください。 梨状筋症候群は、お尻にある梨状筋という筋肉が坐骨神経を圧迫することで起こります。 その他にも、腰椎すべり症や腫瘍、感染症などが原因となる場合もあります。 ▼梨状筋症候群について、併せてお読みください。 ストレッチが必要!坐骨神経痛になりやすい人の特徴 坐骨神経痛になりやすい人の特徴としては、長時間のデスクワーク、猫背姿勢、運動不足などが挙げられます。 一定の姿勢で長時間座り続けるオフィスワークは、腰に大きな負担をかけ、坐骨神経痛を引き起こしやすくなります。 猫背姿勢も腰への負担を増大させるため、坐骨神経痛のリスクを高めます。運動不足は筋肉を弱らせ、腰を支える力を低下させるため、坐骨神経痛になりやすくなります。 また、冷えや肥満も坐骨神経痛を悪化させる要因となります。 体が冷えると血液の流れが悪化し、筋肉が固くなることで、坐骨神経痛の具合が悪化しやすく、坐骨神経痛の症状を悪化させやすく、注意が必要です。 坐骨神経痛をやわらげるストレッチ3選|効果的な方法と注意点も つらい痛みを何とかしたい、でも手術や薬には頼りたくない、そんな風に考えている方もいるかもしれません。 ご安心ください。ストレッチは、坐骨神経痛からくる症状を改善する効果的な対処法の一つといえます。 適切なストレッチを行うことで、硬くなった筋肉をほぐし、神経への圧迫を軽減することができます。 ここでご紹介するストレッチは、自宅で簡単に行えるものばかりです。ぜひ、試してみてください。 ハムストリングスのストレッチ ハムストリングスは、太ももの裏側にある筋肉です。 この筋肉が硬くなると、骨盤が後ろに傾き、坐骨神経を引っ張ってしまうことがあります。結果として、痛みやしびれといった坐骨神経痛の症状を引き起こすのです。 ハムストリングスの柔軟性を高めることは、体幹の安定性にも繋がります。体幹が安定すると、腰への負担が軽減され、坐骨神経痛の予防にも効果的です。 ハムストリングスのストレッチ①|椅子に座って行う方法 椅子に浅く腰掛け、片方の足を前に伸ばします。 つま先を天井に向け、かかとを床につけたまま、上半身を前に倒していきます。 太ももの裏側に伸びを感じるところで、30秒間キープします。息を止めないように、ゆっくりと呼吸を続けましょう。 反対側の足も同様に行います。 ハムストリングスのストレッチ②|床に仰向けになって行う方法 仰向けになり、片方の足を天井に向けて伸ばします。 伸ばした足の膝を軽く曲げ、タオルやベルトなどを足の裏にかけます。 タオルやベルトを両手で持ち、息を吐きながら、足をゆっくりと自分の方に引き寄せます。 太ももの裏側に伸びを感じるところで、30秒間キープします。この時も、深い呼吸を心がけましょう。 反対側の足も同様に行います。 梨状筋のストレッチ 梨状筋はお尻の奥にある筋肉です。この筋肉が硬くなると、坐骨神経を圧迫し、痛みやしびれを引き起こすことがあります。 梨状筋症候群は、この梨状筋が原因で起こる坐骨神経痛です。 梨状筋のストレッチ①|床に座って行う方法 床に座り、両足を伸ばします。 ストレッチしたい側の足を反対側の太ももの上にのせます。 上半身を前に倒し、お尻の奥に伸びを感じるところで30秒間キープします。 反対側の足も同様に行います。 梨状筋のストレッチ②|椅子に座って行う方法 椅子に座り、ストレッチしたい側の足を反対側の太ももの上にのせます。 上半身をゆっくりと前に倒し、30秒間キープします。 反対側の足も同様に行います。 お尻のストレッチ お尻の筋肉は、人体で最も大きな筋肉の一つである大殿筋をはじめ、中殿筋、小殿筋など複数の筋肉で構成されています。 これらの筋肉は、歩いたり、走ったり、階段を上ったりする際に重要な役割を果たしています。 お尻の筋肉が硬くなると、骨盤の歪みや姿勢が悪くなり、坐骨神経痛を引き起こすことがあります。 お尻のストレッチ|寝て行う方法① 仰向けになり、両膝を立てます。 片方の足を反対側の太ももの上にのせます。 反対側の手で太ももを持ち、胸に引き寄せます。 お尻に伸びを感じるところで、30秒間キープします。 反対側の足も同様に行います。 お尻のストレッチ|寝て行う方法② 仰向けになり、両膝を立てます。 片方の足首を反対側の膝の上に乗せます。 両手で反対側の太ももを抱え、胸の方に引き寄せます。 お尻に伸びを感じるところで、30秒間キープします。 反対側の足も同様に行います。 ストレッチは、痛みを感じない範囲で行うことが大切です。もし、ストレッチ中に痛みやしびれが増強する場合は、すぐに中止してください。 また、ストレッチの効果を高めるためには、毎日継続して行うことが重要です。1回5~10分程度、1日数回行うのが効果的です。 お風呂上がりなど、体が温まっている時に行うと、より効果的です。 ストレッチは坐骨神経痛の症状緩和に役立ちますが、根本的な解決にならない場合もあります。 症状が改善しない場合や悪化する場合は、医療機関を受診し、医師の診察を受けるようにしてください。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「腰の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Kim B, Yim J. "Core Stability and Hip Exercises Improve Physical Function and Activity in Patients with Non-Specific Low Back Pain: A Randomized Controlled Trial." The Tohoku journal of experimental medicine 251, no. 3 (2020): 193-206. Deyo RA, Mirza SK. "CLINICAL PRACTICE. Herniated Lumbar Intervertebral Disk." The New England journal of medicine 374, no. 18 (2016): 1763-72. Owen PJ, Miller CT, Mundell NL, Verswijveren SJJM, Tagliaferri SD, Brisby H, Bowe SJ, Belavy DL. "Which specific modes of exercise training are most effective for treating low back pain? Network meta-analysis." British journal of sports medicine 54, no. 21 (2020): 1279-1287.
2025.02.15 -
- ひざ関節
膝がポキポキ鳴る… 誰しも一度は経験のあるこの音、実はただの老化現象や運動不足と安易に考えて放置すると、将来的な膝のトラブルにつながる可能性があることをご存知ですか? 階段の上り下り、立ち上がり、何気ない動作で鳴るこの音。 その原因は関節液の気泡、関節構造の問題、靭帯や腱の動きの3つに大きく分けられます。 世界中で推定6億5400万人が罹患している変形性膝関節症も、初期症状としてこのポキポキ音が挙げられるケースがあり、45歳以上の方で活動時に膝の痛みや朝のこわばりがある方は特に注意が必要です。 この記事では、膝がポキポキ鳴る原因を詳しく解説し、適切な対処法や自宅でできるストレッチ、日常生活での注意点まで、健康な膝を維持するための情報を網羅的にご紹介します。 膝がポキポキ鳴る原因3選 膝がポキポキ鳴る、という症状、多くの方が経験したことがあるのではないでしょうか。 椅子から腰を上げる時や、ふとした拍子に膝を屈伸させるときなど、日常生活の様々な場面で経験する、ありふれた症状です。 実は、このポキポキ音、ただの老化現象や運動不足と考えずに、きちんと原因を探ることが大切です。 なぜなら、放置すると将来的に大きな問題につながる可能性があるからです。 この記事では、膝がポキポキ鳴る原因を3つのカテゴリーに分けて解説します。 原因を正しく理解することで、適切な対処法を見つけ、健康な膝を維持することにつながります。 ①膝がポキポキ鳴るメカニズム 膝がポキポキ鳴る原因のメカニズムは、大きく分けて以下の3つに分類できます。 関節液の中の気泡 膝の関節の中には、関節液という滑液があります。これは関節の動きをスムーズにする潤滑油のような役割を果たしています。 関節を動かすと、この関節液の圧力が変化し、小さな気泡が発生することがあります。この気泡が弾ける時に、「ポキッ」という音が鳴るのです。 炭酸飲料の蓋を開けた時にプシュッと音が鳴るのと似ています。これはキャビテーションと呼ばれ、特に問題のないケースが多いです。 関節の構造的な問題 膝の関節は、骨、軟骨、靭帯、腱など、様々な組織で構成されています。 これらの組織に何らかの異常があると、関節を動かす際にポキポキと音が鳴ることがあります。 例えば、軟骨部分が磨耗していたり、半月板に傷みが生じていたりすると、関節の表面がデコボコになり、音が鳴りやすくなります。 これは、ギシギシいうドアを無理やり開けるようなイメージです。スポーツによるケガや加齢などが原因で起こり得ます。 靭帯や腱の動き 靭帯や腱は、骨と骨をつないで関節を安定させる役割を担っています。 これらの組織が骨の上を滑る時に、ポキポキと音が鳴ることがあります。 これは、運動不足や筋肉のバランスが崩れている人に多く見られます。 椅子に座りっぱなしのデスクワークや、同じ姿勢を長時間続ける作業などで、特定の筋肉が硬くなってしまうと、靭帯や腱の動きが制限され、音が鳴りやすくなります。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「膝の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 ②運動不足と膝がポキポキ鳴る関係 運動不足と膝のポキポキ音には、密接な関係があります。 運動不足になると、膝関節周辺の筋肉が衰え、関節を支える力が弱まります。 すると、関節のバランスが崩れ、関節液の中に気泡ができやすくなってポキポキ音が鳴りやすくなるのです。 また、筋肉の力が衰えると関節が硬くなり、靭帯や腱の滑らかな動きが阻害されるため、これもポキポキ音の原因となります。 例えば、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)が弱くなると、膝のお皿(膝蓋骨)の位置がずれ、関節面との摩擦が増えて音が鳴りやすくなります。 さらに、運動不足は変形性膝関節症のリスクも高めます。 変形性膝関節症は、軟骨がすり減って骨同士がぶつかり、痛みや炎症を引き起こす病気です。 ③加齢による軟骨の摩耗 加齢もまた、膝がポキポキ鳴る原因の一つです。 年齢を重ねると、どうしても軟骨がすり減ってきます。 クッションの役割を担う軟骨が徐々に薄くなることで、骨同士が擦れ合う状態となり、関節を動かすたびにパキパキやコリコリという音が聞こえるようになります。 このような症状は、膝の変形性関節症が始まっているサインかもしれません。 運動不足で起こる膝のトラブル5選 膝がポキポキ鳴る、なんとなく違和感がある… それ、もしかしたら運動不足が原因かもしれません。 放っておくと、将来大きなトラブルにつながる可能性も。 今回は、運動不足が原因で起こる膝のトラブルを5つご紹介し、それぞれの症状や対処法をわかりやすく解説します。 ①膝の痛み 運動不足になると、膝周りの筋肉、特に太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)や後ろの筋肉(ハムストリングス)が弱くなってしまいます。 椅子に座りっぱなしの生活を想像してみてください。これらの筋肉はあまり使われていませんよね。するとどうなるでしょうか? 筋肉は、膝関節を支える重要な役割を担っています。 筋肉の力が衰えると、支える機能が低下し、膝関節への重みがかかりやすくなります。これが痛みの原因となるのです。 最初は、立ち上がったり、階段を上り下りする時に軽い痛みを感じる程度かもしれません。 しかし、そのまま運動不足の状態が続くと、歩くだけでも痛むようになり、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。 痛みを感じ始めたら、まずは運動を控え、膝を安静にすることが重要です。 痛みが強い場合は、整形外科を受診して適切な治療を受けましょう。 ▼おすすめの膝サポーターについて、併せてお読みください。 ②関節の違和感、こわばり 運動不足は、膝関節の周りの筋肉や靭帯を硬くしてしまいます。 筋肉や靭帯は、関節をスムーズに動かすために必要不可欠な組織です。 これらの組織が硬くなると、どうなるでしょうか? 関節の動きが悪くなり、「膝が重だるい」「何となく動きが悪い」といった漠然とした違和感を感じ始めます。 さらに、朝起きた時に「膝が硬くて曲げづらい」といった明らかなこわばりを感じることもあります。 これは、関節液の循環が悪くなっていることも原因の一つです。 関節液は関節の動きを滑らかにする潤滑油のような役割を果たしていますが、運動不足になるとこの循環が悪くなり、こわばりを引き起こすのです。 このような症状は、特に運動不足の人に多く見られます。日頃から意識的に体を動かす習慣をつけることが大切です。 ③関節の可動域制限 関節の違和感やこわばりが進むと、関節の可動域、つまり膝を曲げ伸ばしできる範囲が狭くなります。 最初は正座がしづらくなるなど、特定の動作で制限を感じる程度かもしれません。 しかし、悪化すると歩く、しゃがむといった日常の動作にも支障が出てきます。 これは、関節の軟骨がすり減り、骨の表面がデコボコになることが原因の一つです。 なめらかに動いていた関節が、古い扉のように固くぎこちなくなってしまいます。 さらに、関節周囲の筋肉や靭帯が硬くなることで、関節の動きが制限されることも原因として挙げられます。 関節の可動域制限も、運動不足が大きな原因の一つです。 適切な運動を継続することで、関節の柔軟性を維持し、可動域制限を予防することができます。 ④筋力低下、バランス能力の低下 運動不足は、膝関節を支える筋肉、特に大腿四頭筋やハムストリングスの筋力低下を招きます。 これらは、膝の安定性を確保する上で、極めて大切な役割を持っています。 筋肉が弱くなると、膝関節が不安定になり、バランス能力も低下します。 その結果、つまずきやすくなったり、転倒のリスクが高まったりします。 高齢者の場合、転倒は骨折などの大きな怪我につながる可能性があるため、特に注意が必要です。 ⑤変形性膝関節症のリスク増加 運動習慣の不足により膝の周りの筋力が低下すると、軟骨にかかる圧力が増し、磨耗が加速します。 また、運動不足による体重増加も加わることで、膝関節への負荷がさらに大きくなっていき、変形性膝関節症のリスクを高めます。 ある研究では、膝のポキポキ音がいつも鳴る人は、全く音がしない人に比べて変形性膝関節症の発症リスクが3倍高いというデータもあります。 運動不足が続くと、膝の違和感や痛み、こわばり、可動域制限といった様々なトラブルを引き起こす可能性があります。 これらのトラブルは、日常生活の質を低下させるだけでなく、将来的に変形性膝関節症などの深刻な病気を引き起こすリスクも高めます。 日頃から適度な運動を心がけ、健康な膝を維持しましょう。 膝がポキポキ鳴る時の対処法3選 膝がポキポキ鳴ると、不安になりますよね。 もしかしたら病気のサイン?放っておいて大丈夫?と心配になる方もいるでしょう。 この記事では、膝がポキポキ鳴る時の対処法を4つご紹介します。 安心できる情報をお届けしますので、ぜひ最後まで読んでみてください。 具体的な治療方法(運動療法、薬物療法、手術) 膝のポキポキ鳴る原因や症状によって、適切な治療方法は異なります。 主な治療法は以下の3つです。 運動療法 膝周りの筋肉を鍛えることで、関節を安定させ、痛みを軽減します。 ストレッチで関節の柔軟性を高めることも効果的です。 例えば、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛えることで、膝のお皿(膝蓋骨)の動きを安定させ、ポキポキ音を軽減することができます。 薬物療法 痛みや炎症を抑える薬を服用します。痛み止めやヒアルロン酸注射などがあります。 ヒアルロン酸は、関節液の主成分であり、関節の動きを滑らかにする役割を果たしています。 手術 人工関節置換術など、重症の場合にのみ行われます。 変形性膝関節症が進行し、日常生活に支障が出るほど痛みが強い場合に検討されます。 人工関節置換術は、損傷した関節を人工関節に入れ替える手術です。手術により痛みを軽減し、関節の機能を回復させることができます。 保存的治療(運動療法や薬物療法)で効果がない場合や、半月板の異常などの明確な疾患が背景にある状況では、手術が必要となることもあります。 半月板は、膝関節にあるC型の軟骨で、クッションの役割を果たしています。 半月板が損傷すると、膝の痛みや引っかかり、ポキポキ音などの症状が現れます。 ▼半月板断裂と損傷の違い、痛みの特徴や原因・治療法ついて、併せてお読みください。 家庭でできるストレッチ、運動 家庭でできるストレッチや運動をご紹介します。 膝下ストレッチ:椅子に座り、両足を床につけた状態で行います。 膝から下の骨を内側にねじるように動かします。左右10回ずつ繰り返します。 ふくらはぎの筋肉を伸ばし、膝関節の柔軟性を高める効果があります。 膝曲げ伸ばし運動:椅子に座り、片方の足をまっすぐ伸ばします。 伸ばした足をゆっくりと曲げ、また伸ばします。左右10回ずつ繰り返します。 大腿四頭筋を強化し、膝関節の安定性を高める効果があります。 フロッグ:仰向けに寝て、両膝を曲げ、足の裏を合わせます。 かかとをお尻に近づけ、両膝を床に近づけるようにします。 10秒間キープし、5回繰り返します。 内ももの筋肉を伸ばし、股関節の柔軟性を高める効果があります。 ランジ:足を前後に開き、両膝を90度に曲げます。 前の膝がつま先より前に出ないように注意します。 10秒間キープし、左右5回ずつ繰り返します。 太ももの筋肉を鍛え、バランス能力を高める効果があります。 これらの運動は、膝周りの筋肉を強化し、関節の柔軟性を高める効果があります。 毎日続けることで、膝のポキポキ音を軽減し、膝の健康を維持することができます。 日常生活での注意点 日常生活で気を付けるべきことをご紹介します。 体重管理:適正体重を維持することで膝への負担を軽減します。 肥満は膝関節への負担を増大させ、変形性膝関節症のリスクを高めるため、注意が必要です。 適切な運動:ウォーキングや水泳など、膝への負担が少ない運動を選びましょう。 激しい運動は、膝関節に大きな負担をかけるため、避けるべきです。 ストレッチ:毎日、入浴後などにストレッチを行いましょう。 ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、関節の動きをスムーズにする効果があります。 靴の選び方:低いヒールで、クッション性のある靴を選びましょう。 高いヒールやクッション性のない靴は、膝関節への負担を増大させるため、避けるべきです。 長時間同じ姿勢を避ける:デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続ける場合は、こまめに休憩を取り、軽い運動をしましょう。 同じ姿勢を長時間続けると、筋肉が硬くなり、関節の動きが悪くなるため、注意が必要です。 膝のポキポキ音は、必ずしも病気のサインではありませんが、放置すると将来的に大きな問題につながる可能性もあります。 日頃から膝のケアを心がけ、健康な膝を維持しましょう。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「膝の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Lavie CJ, Ozemek C, Carbone S, Katzmarzyk PT, Blair SN. "Sedentary Behavior, Exercise, and Cardiovascular Health." Circulation research 124, no. 5 (2019): 799-815. Duong V, Oo WM, Ding C, Culvenor AG, Hunter DJ. "Evaluation and Treatment of Knee Pain: A Review." JAMA 330, no. 16 (2023): 1568-1580.
2025.02.15 -
- 腱板損傷・断裂
肩の痛み、腕が上がらない… もしかしたら、それは肩腱板断裂のサインかもしれません。 150万人を超える患者がいると言われるこの症状、手術が必要となるケースも少なくありません。 一体どんな手術があるのか、入院期間は?費用は? 不安でいっぱいのあなたのために、肩腱板断裂の手術方法4つの選択肢、リバース型人工関節、内視鏡手術、腱板移植、それぞれのメリット・デメリット、そして気になる入院期間、リハビリ、費用まで、医師が解説します。 肩腱板断裂の手術方法4つの選択肢 肩の痛みや腕が上がらないといった症状に悩まされ、肩腱板断裂と診断された時、手術が必要と言われたら不安になるのも当然です。 手術にはどんな種類があるのか、それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのか、気になることでしょう。 この章では、肩腱板断裂の手術方法について、具体的な例を交えながらわかりやすく解説します。 手術方法を選択する上で重要なポイントとなる、腱板の状態(断裂の大きさや筋肉の質)、年齢、生活スタイル、そして患者さん自身の価値観についてもお伝えします。 ▼肩腱板損傷、断裂について、併せてお読みください。 鏡視下腱板修復術 肩腱板を修復する手術では、内視鏡技術を活用した最小限の切開で実施されます。 肩周辺に1cm弱の複数の小さな穴を開けます。 これらの穴から細径の内視鏡カメラを挿入し、手術の全工程をモニター画面で確認しながら進めていきます。 腱板の修復では、骨に専用の固定具(アンカー)を設置し、それに取り付けられた縫合糸を用いて断裂部位を引き寄せ、結合させます。 ただし、損傷の程度が深刻な場合、通常の修復が難しいケースもあります。 そのような状況では、患者さんの大腿部から採取した組織を補強材として使用したり、可能な範囲での部分的な修復を行ったりするなど、状況に応じた対応が必要となります。 術後は、以下のような装具を約6週間必要とします。約3ヶ月ごろから、徐々に筋力トレーニングを開始して、術後半年ぐらいまでリハビリを行います。 腱板移植 腱板移植は、自分の体の一部から腱を採取し、断裂した腱板に移植する手術です。 主に、腱板の断裂が大きく、縫い合わせることが難しい場合に選択されます。 腱を採取する部位としては、太ももの裏側や背中などが用いられます。 移植した腱が周囲の組織とくっつき、新たな腱板として機能するまでには、時間と適切なリハビリが必要です。 メリット 自分の組織を使うため、拒絶反応のリスクがない。 比較的若い方やスポーツなど肩を活発に動かす必要のある方で、腱板の損傷が大きい場合に適応されることが多い。 デメリット 腱の採取部位に痛みや違和感が残る可能性がある。 移植した腱がうまくくっつかず、再断裂するリスクもゼロではない。 手術の難易度が高く、手術時間や入院期間が長くなる場合がある。 リバース型人工関節置換術 リバース型人工関節置換術は、特殊な人工関節を用いた手術方法です。 通常の肩関節とはボールとソケットの位置が逆になっているため、「リバース型」と呼ばれています。 私たちの肩関節は、上腕骨側にボール、肩甲骨側にソケットがあり、腱板がこのボールをソケットに引き寄せ、肩の安定性を保っています。 しかし、腱板が断裂すると、ボールがソケットから外れてしまい、腕をスムーズに動かせなくなります。 リバース型人工関節置換術では、このボールとソケットの位置を逆転させ、肩甲骨側にボール、上腕骨側にソケットを取り付けます。 これにより、断裂した腱板がなくても、三角筋という筋肉の力を使って腕を上げることができるようになります。 メリット 腱板が大きく断裂していても、腕を上げられるようになる可能性が高い。 比較的早期にリハビリを開始でき、日常生活への復帰も早い傾向にある。特に、高齢者や腱板の状態が悪い方に向いている。 デメリット 肩甲骨にボールがあるため、腕を内側に回す動き(内旋)が制限される場合がある。 例えば、背中に手を回す動作が難しくなることがある。 手術後、肩を動かす際に金属音がすることがある。 これは人工関節の特性によるもので、ほとんどの場合、日常生活に支障はない。 以前は65歳以上の方に適応されることが多かったが、近年では、より若い方にも適応が広がっている。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「肩の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 通常の人工関節置換術とその違い 通常の人工関節置換術は、肩関節本来の構造を模倣し、上腕骨側にボール、肩甲骨側にソケットを取り付けます。 この手術は、腱板の機能がある程度残っている場合に適応されます。 リバース型人工関節置換術は、ボールとソケットの位置を逆にすることで、腱板がなくても三角筋の力を使って腕を上げられるようにします。 これは、腱板が大きく断裂している場合や、筋肉の質が悪く修復が難しい場合に有効な選択肢です。 それぞれの術式にはメリット・デメリットがあり、最適な手術方法は患者さんの状態によって異なります。 肩腱板断裂の手術をしても、再断裂や、術後に関節が固まる拘縮などの後遺症で、思うように痛みが取れないことが多く見られます。 そういった理由で、我々整形外科医の間では、よほどの痛みがあったり、生活が困難でないと手術は行わないようにしています。 そんな中で、幹細胞による再生医療が今、注目されています。 再生医療 肩腱板断裂の症状が、なかなか改善しない時の選択肢として、今、注目の再生医療があります。 リペアセルクリニックでは、再生医療分野で豊富な経験を持つ専門医たちが、10,000症例の実績に基づく確かな技術と独自の培養方法で、患者様一人一人に最適な治療プランをご提案いたします。 国内で唯一の最新の『分化誘導技術』を用い、当院は『新時代の再生医療』による治療を提供します。 そんな再生医療に興味のある方は、こちらから当院独自の再生医療の特徴を紹介しています。 https://youtu.be/bKupVfsXpHM?si=VZP1_3i_qEwcVrsQ 肩腱板断裂の手術後の入院期間・リハビリ・費用 肩腱板断裂の手術後、気になるのは入院期間やリハビリ、そして費用ですよね。不安な気持ち、痛いほどよく分かります。 私も医師として、患者さんのそういった不安に寄り添い、少しでも安心して治療に臨めるようにサポートしたいと思っています。 この章では、肩腱板断裂の手術後の入院期間、リハビリテーション、費用、そして日常生活での注意点について、具体的な例を交えながら分かりやすく説明します。 一緒に一つずつ確認していきましょう。 手術後の入院期間 入院期間は、手術の方法や患者さんの状態によって大きく異なります。 内視鏡手術:例えば、傷口が小さい内視鏡手術の場合、最短3泊4日で退院できるケースもあります。 これは、お腹を数cm切開する虫垂炎(いわゆる盲腸)の手術で、5~7日程度の入院が必要になるケースと比較すると、かなり短い期間と言えるでしょう。 リバース型人工関節置換術:一方で、リバース型人工関節置換術などのように、より身体への負担が大きい手術の場合は、1~2週間程度の入院が必要になることが多いです。 これは、人工関節を入れることで身体への負担が大きくなるため、術後の経過観察をしっかり行う必要があるためです。 手術方法 入院期間の目安 関節鏡手術 3泊4日~1週間 リバース型人工関節置換術 1~2週間 また、高齢の方や一人暮らしの方の場合は、手術後の状態が安定するまで、少し長めの入院が必要となることもあります。 これは、自宅での生活に不安がある場合や、退院後のサポート体制が整っていない場合などに、入院中にリハビリテーションを進め、日常生活動作の練習を行うためです。 装具を装着する期間は約3週間程度ですが、その期間中ずっと入院する必要はありません。 医師や看護師、理学療法士と相談しながら、ご自身の状況に合った入院期間を決めていきましょう。 手術後のリハビリテーション 肩腱板断裂の手術後は、リハビリテーションがとても大切です。 手術で損傷した組織の修復を促し、肩の機能を回復させるためには、適切なリハビリテーションを行う必要があります。 リハビリテーションは、多くの場合手術の翌日から開始します。 入院中は、理学療法士の指導のもと、肩関節の可動域訓練や筋力強化訓練を行います。 退院後も、週に1回から3回程度、通院してリハビリテーションを継続することが推奨されます。 リハビリテーションの内容は、腱の治癒段階に基づいて調整されます。 初期のリハビリテーションでは、痛みを軽減し、肩関節の動きをスムーズにすることに重点を置きます。 その後のリハビリテーションでは、徐々に負荷を上げていき、筋力や持久力を強化していきます。 最近の研究では、ウェアラブルデバイス(手首や腕、頭など身に着けて使用するコンピューターデバイス)を使用して運動や姿勢のモニタリングを行うことで、より精密なリハビリテーションが可能になることが示唆されています。 肩腱板断裂の手術後のリハビリテーションに関する研究では、保存的なリハビリテーションと早期可動域訓練を比較した結果、可動域や機能状態に大きな差は見られませんでした。 しかし、早期可動域訓練は機能的な転帰にわずかな利点がある可能性がありますが、一方で再断裂のリスクもわずかに高まる可能性があることが示唆されています。 どちらのリハビリテーションプロトコルも、安全で再現性のある短期・長期的な転帰が示されています。 自宅でも、理学療法士に教えてもらったストレッチやエクササイズを毎日行うことが重要です。 手術から約3ヶ月後には、軽い作業ができるようになり、約6ヶ月後には、重労働やスポーツにも復帰できるようになります。 しかし、これはあくまで目安であり、実際には個人差があります。 手術費用 手術費用は、手術の方法、入院期間、使用する医療材料などによって異なります。 また、健康保険の種類や、高額療養費制度の利用によっても自己負担額が変わります。 費用の詳細は、事前に医療機関に確認することをおすすめします。 一般的には、関節鏡手術の方がリバース型人工関節置換術よりも費用が安くなる傾向があります。 これは、関節鏡手術の方が入院期間が短く、使用する医療材料も少ないためです。 費用の目安としては、関節鏡手術で20万円~40万円程度、リバース型人工関節置換術で50万円~80万円程度かかることが多いです。 しかし、これはあくまでも目安であり、実際には医療機関によって大きく異なる場合があります。 手術後の生活の注意点 手術後、日常生活で特に注意すべきことは、再断裂を防ぐことです。 再断裂は、手術後の無理な動きや過度な負担によって起こります。 特に、手術後3ヶ月間は、重いものを持つ、硬いものを切る、雑巾がけなど、肩に負担のかかる動作は控えましょう。 また、手術後しばらくは、肩の痛みや動かしにくさが残る場合もあります。 痛みがあるときは、無理せず安静にすることが大切です。 日常生活動作で痛みが出る場合は、装具や補助具を使用するなど、工夫してみましょう。 そして、医師の指示に従ってリハビリテーションを継続することも重要です。 リハビリテーションによって、肩の機能を回復させ、再断裂のリスクを減らすことができます。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「肩の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Bandara U, An VVG, Imani S, Nandapalan H, Sivakumar BS. "Rehabilitation protocols following rotator cuff repair: a meta-analysis of current evidence." ANZ journal of surgery 91, no. 12 (2021): 2773-2779. Longo UG, Risi Ambrogioni L, Candela V, Berton A, Carnevale A, Schena E, Denaro V. "Conservative versus surgical management for patients with rotator cuff tears: a systematic review and META-analysis." BMC musculoskeletal disorders 22, no. 1 (2021): 50. Di Benedetto P, Mancuso F, Tosolini L, Buttironi MM, Beltrame A, Causero A. "Treatment options for massive rotator cuff tears: a narrative review." Acta bio-medica : Atenei Parmensis 92, no. S3 (2021): e2021026. Longo UG, Risi Ambrogioni L, Berton A, Candela V, Carnevale A, Schena E, Gugliemelli E, Denaro V. "Physical therapy and precision rehabilitation in shoulder rotator cuff disease." International orthopaedics 44, no. 5 (2020): 893-903.
2025.02.15 -
- 腱板損傷・断裂
- 再生治療
- PRP治療
肩に痛みや動かしにくさを感じ、日常生活に支障が出ていませんか? 夜、痛みで目が覚めてしまう、腕を上げる動作で鋭い痛みが走る、といった症状はありませんか? このような症状がある場合、肩腱板断裂が疑われます。治療が遅れると、症状が重症化し、日常生活に支障をきたす可能性があります。 この記事では、肩腱板断裂の症状や原因、検査方法、治療法、リハビリテーション、再発予防などについて解説します。 具体的な症状例や治療法を知ることで、不安を解消し、適切な治療への第一歩を踏み出しましょう。 肩腱板断裂の症状4選 肩に痛みや動かしにくさを感じると、日常生活にも支障が出てきますよね。肩を使うたびに「ズキン」と痛みが走ったり、夜中の激しい痛みで眠れない日が続いたら、とても不安になりますよね。肩腱板断裂は、まさにそのような肩の痛みや動かしにくさといった症状を引き起こす代表的な疾患の一つです。 実は、肩の痛みを我慢して生活を続けていると、症状が悪化したり、他の病気を併発する可能性も出てきます。例えば、痛みが慢性化して常に肩に重だるさを感じたり、放置すると腕の動きが制限され、家事や仕事など日々の生活動作に大きな影響が出てしまうことがあります。 肩の痛み(運動時痛、夜間痛など) 肩腱板断裂による肩の痛みは、安静時だけでなく、腕を特定の角度に動かしたときにも強く感じることがあります。例えば、洗濯物を干そうとして腕を上げ下げする動作や、後ろに手を回してエプロンの紐を結ぶ動作などで、電気が走るような鋭い痛みが強くなることがあります。 また、夜間、特に患側を下にして寝ていると、肩の痛みが増強して目が覚めてしまい、睡眠の質が低下することもあります。これは、就寝時に肩への負担がかかりやすいためです。まるで肩の中に針が刺さっているかのような痛みで、安眠を妨げられることもあります。 このような痛みは、炎症が起きている証拠です。炎症は、体を守るための反応ですが、放置すると痛みが慢性化したり、肩の動きが悪くなったりする可能性があります。 痛みの種類 説明 具体的な例 運動時痛 腕を動かしたときに痛みを感じることです。特に、特に腕を肩の位置より高く持ち上げようとすると、鋭い痛みが生じることがあります。 例えば、電車のつり革につかまる時や、高いところにある物を取ろうとする時などに痛みを感じます。 夜間痛 寝ている最中に肩の痛みが強くなります。肩に負担がかかる寝姿勢をとると、痛みが増強することがあります。 特に、患側を下にして横向きに寝ていると、肩が圧迫されて痛みが増すことがあります。 安静時痛 じっとしていても痛みを感じることです。炎症が強い場合や、断裂の程度が大きい場合に起こりやすいです。 何もしていなくても、肩に鈍い痛みやズキズキとした痛みを感じることがあります。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「肩の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 肩の動かしにくさ(可動域制限) 健康な肩は、前後左右、あらゆる方向にスムーズに動かすことができます。しかし、肩腱板が断裂してしまうと、これまで当たり前にできていた肩の動きが制限され、日常生活に支障をきたすことがあります。腕を上げにくくなったり、後ろに回せなくなったり、シャツを着る、シャンプーをするなど、日常的な動作で痛みを感じることがあります。これは、腱板が断裂することで肩関節の安定性が低下し、スムーズな動きが阻害されるためです。 動作 説明 具体的な例 腕を上げる 肩より上に腕を上げることが難しくなります。痛みを伴う場合もあります。 例えば、電車のつり革につかまるのが困難になったり、高い棚のものが取れなくなったりします。 腕を回す 腕を内側や外側に回す動作が制限されます。特に、外旋(外側に回す)動作が困難になることが多いです。 例えば、洋服のファスナーを上げる際の背中への動作や、後ろポケットに財布を入れる動作が難しくなります。 後ろに手を回す 背中側に手を回す動作が難しくなります。着替えや洗髪などの動作に支障が出ることがあります。 シャツのボタンを後ろで留める、ブラジャーのホックを後ろで留めるといった動作が困難になります。 肩の動かしにくさは、断裂の程度によって大きく異なります。軽度の断裂であれば、特定の動作で少し動かしにくいと感じる程度ですが、重度の断裂になると、腕を全く動かせなくなることもあります。 筋力低下、脱力感 肩腱板断裂は、肩の筋肉の力にも影響を及ぼします。腱板が断裂することで、肩の筋肉が弱くなり、腕に力が入らない、または脱力感を感じるといった症状が現れることがあります。これは、腱板が断裂することで肩関節の安定性が損なわれ、周囲の筋肉が正常に機能しにくくなるためです。 例えば、以前は楽に持ていた重たい買い物袋が持てなくなったり、腕を長時間上げていることができなくなったりします。このような筋力低下は、日常生活の様々な場面で支障をきたす可能性があります。 症状 説明 具体的な例 筋力低下 肩の筋肉が弱くなり、力が入りにくくなります。 ペットボトルの蓋を開けるのが難しくなったり、重い鍋を持てなくなったりします。 脱力感 腕に力が入らず、だるく感じる、または力が入らない感覚があります。 腕が重く感じ、長時間持ち上げているのが辛くなります。まるで腕に鉛の塊が付いているような感覚です。 日常生活への影響 物を持ち上げることが難しくなったり、腕を高く上げた状態を保つことができず、徐々に腕が下がってしまいます。 洗髪や更衣といった日常生活動作にも支障が出てきます。 音(クリック音、ゴリゴリ音など) 肩を動かしたときに、クリック音やゴリゴリといった音が鳴ることがあります。これは、断裂した腱板が骨と擦れ合うことで発生する音です。まるで関節の中で何かが引っかかったり、擦れたりするような感覚です。これらの音は必ずしも肩腱板断裂を示すものではありませんが、他の症状と合わせて診断の参考になります。 肩腱板断裂の原因 肩腱板断裂の原因として、加齢による腱の老化や、スポーツや仕事での肩の使いすぎなどが挙げられます。 スポーツ選手のような激しい運動だけでなく、日常生活での繰り返しの動作や、転倒・衝突などの一度の強い外力によっても発症する可能性があります。回旋腱板関連肩痛には様々な疾患が含まれており、確定診断が難しく、症状の原因や最適な治療法も未だ研究段階であるとされています。そのため、自己判断せずに医療機関を受診し、専門家の診断を受けることが大切です。 肩腱板断裂の検査と治療法 肩の痛みや動かしにくさ、もしかしたら腱板断裂かも…と心配になりますよね。でも、自己判断は禁物です。まずは医療機関を受診して、適切な検査と診断を受けることが大切です。 この章では、肩腱板断裂の検査方法と様々な治療法について、現役医師がわかりやすく解説します。具体的な検査方法や治療の選択肢を知ることで、不安を軽減し、治療への第一歩を踏み出せるはずです。 診断方法(MRI検査、レントゲン検査、超音波検査など) 肩腱板断裂の診断は、問診、視診・触診、そして画像検査を組み合わせて行います。問診では、いつから痛み始めたのか、どんな時に痛みが増すのか、日常生活でどのような動作が困難になっているのかなど、詳しくお話を伺います。 視診・触診では、肩の腫れや変形、圧痛の有無などを確認します。また、腕を様々な方向に動かしてもらい、肩関節の可動域や筋力、痛みやしびれの有無などをチェックします。 これらの情報に加えて、画像検査を行うことで、より正確な診断が可能になります。代表的な画像検査は以下の3つです。 レントゲン検査: 骨の状態を調べます。肩腱板は筋肉と骨をつなぐ腱なので、レントゲン写真には写りません。しかし、骨棘(こつきょく:骨の突起)といった腱板断裂に合併する症状や、他の骨の異常がないかを確認するために有用です。 超音波検査(エコー): 超音波を使って腱板の状態をリアルタイムで観察します。手軽に検査でき、腱板の断裂の有無や大きさ、炎症の程度などを評価できます。 MRI検査: 磁気と電波を使って、肩関節の断面画像を撮影します。腱板の状態を最も詳細に確認できる検査で、断裂の大きさや場所、周りの組織の状態などを正確に把握できます。レントゲンや超音波検査ではわからない小さな断裂や、断裂の周りの筋肉の状態まで詳しく知ることができます。 これらの検査結果は、診断の参考となります。場合によっては、他の病気との鑑別が必要になることもあります。 保存療法(投薬、リハビリテーション、注射など) 肩腱板断裂の治療は、断裂の大きさや症状、患者さんの年齢や生活スタイル、仕事内容などを考慮して決定します。保存療法は、手術をせずに痛みや炎症を抑え、肩関節の機能を回復させることを目的とした治療法です。 保存療法には、主に以下のような方法があります。 投薬: 痛みや炎症を抑える薬を内服します。よく使われるのは、痛み止めや炎症を抑える薬(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs)です。胃腸障害などの副作用に注意しながら使用します。 リハビリテーション: 固まってしまった肩関節の動きを改善し、弱くなった筋力を強化するための運動療法を行います。 関節内注射: 肩関節内にヒアルロン酸やステロイドなどを注射することで、痛みや炎症を軽減します。ヒアルロン酸は関節の動きを滑らかにする潤滑油のような役割を果たし、炎症を強力に抑制する薬剤として、ステロイドは高い効果を発揮します。 保存療法は、比較的軽症の肩腱板断裂や、手術のリスクが高い場合、手術を希望されない場合などに選択されます。変性性腱板断裂の場合、保存療法(適切なリハビリテーションを含む)が重要な役割を果たします。 手術療法(関節鏡手術) 保存療法で効果が得られない場合や、断裂の程度が大きい場合、スポーツ選手や肉体労働者など肩を良く使う職業の方の場合には、手術療法が検討されます。手術療法は、傷ついた腱板組織を修復し、肩の機能を回復させることを目指す治療法です。 関節鏡手術: 内視鏡を用いて行う手術です。皮膚に小さな穴を数カ所開け、そこからカメラや手術器具を挿入します。モニターを見ながら手術を行うため、傷が小さく、体への負担が少ないというメリットがあります。ただし、外科的治療には、術後感染や神経障害など、様々な合併症が起こる可能性があります。 ▼肩腱板断裂の手術と入院期間について、併せてお読みください。 ただし、腱板が元の正常な組織に戻るわけではありません。手術では、あくまで腱の切れた部分を縫い合わせるだけとなります。 根本的に腱板を治すには、幹細胞による再生医療しかありません。 再生医療 近年、再生医療が注目されています。再生医療とは、損傷した組織を再生させることを目的とした治療法です。 肩腱板断裂の再生医療としては、主に幹細胞治療とPRP治療があります。 幹細胞治療: 患者さん自身の脂肪組織から採取した幹細胞を培養し、肩関節内に注射する治療法です。幹細胞は、損傷した組織の再生を促す可能性があります。 PRP治療: 患者さん自身の血液から血小板を多く含む血漿(PRP)を抽出し、肩関節内に注射する治療法です。PRPには、組織の修復を促進する成長因子が含まれており、炎症を抑えます。PRPはステロイド注射と同じく、腱板を再生させることはできず、炎症を抑えるのみとなります。 肩腱板断裂の症状がなかなか改善しない時の選択肢として、今、注目の再生医療があります。 https://youtu.be/bKupVfsXpHM?si=8fl4fHXhfIRbAIIf リペアセルクリニックでは、再生医療分野で豊富な経験を持つ専門医たちが、10,000症例の実績に基づく確かな技術と独自の培養方法で、患者様一人一人に最適な治療プランをご提案いたします。 国内で唯一の最新の『分化誘導技術』を用い、当院は『新時代の再生医療』による治療を提供します。 そんな再生医療に興味のある方は、こちらから当院独自の再生医療の特徴を紹介しています。 https://youtu.be/cweMZTxZFg8?si=Mfmrhepxa0Djl4dZ https://youtu.be/CFNAS_lUZKM?si=BuT0vHaajqoO-8NN 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「肩の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Schmidt CC, Jarrett CD, Brown BT. "Management of rotator cuff tears." The Journal of hand surgery 40, no. 2 (2015): 399-408. Narvani AA, Imam MA, Godenèche A, Calvo E, Corbett S, Wallace AL, Itoi E. "Degenerative rotator cuff tear, repair or not repair? A review of current evidence." Annals of the Royal College of Surgeons of England 102, no. 4 (2020): 248-255. Ryösä A, Laimi K, Äärimaa V, Lehtimäki K, Kukkonen J, Saltychev M. "Surgery or conservative treatment for rotator cuff tear: a meta-analysis." Disability and rehabilitation 39, no. 14 (2017): 1357-1363. 回旋腱板関連肩痛:評価、管理、そして不確定要素
2025.02.15 -
- 肩関節
肩の前面に痛みを感じたり、腕を上げにくかったりしませんか?実は、その痛み、上腕二頭筋長頭腱炎かもしれません。 野球のピッチャーやテニスプレイヤーといったスポーツ選手だけでなく、日常生活での動作や加齢も原因となり、誰もが発症する可能性があります。放っておくと日常生活にも支障をきたすこの病気。原因、症状、検査、そして具体的な治療法まで、解説します。肩の痛みを我慢せず、快適な生活を取り戻すための第一歩を踏み出しましょう。 上腕二頭筋長頭腱炎の原因と症状 肩の前面に痛みを感じたり、腕を上げにくかったり、腕をひねりにくかったりしませんか?もしそうなら、上腕二頭筋長頭腱炎の可能性があります。日常生活で何気なく行っている動作やスポーツなどで肩に負担がかかり続けると、知らないうちに発症していることがあります。 この病気は、放っておくと日常生活にも支障をきたすことがありますので、早期の発見と適切な治療が重要です。ここでは、手の付け根付近で起こる上腕二頭筋長頭腱の炎症について、どのような原因で起こり、どんな症状が出るのかを詳しく解説していきます。 上腕二頭筋長頭腱炎とはどんな病気なの 上腕二頭筋は、力こぶを作る筋肉です。この筋肉には長頭と短頭という二つの起始部(筋肉の始まり部分)があり、長頭は肩甲骨関節窩の上方にある結節、短頭は肩甲骨の烏口突起から起始します。そして、長頭は肩関節の中を通って上腕骨に付着しています。この長頭の部分の腱が炎症を起こした状態が、上腕二頭筋長頭腱炎です。 腱とは、筋肉と骨をつなぐ、とても丈夫な組織です。この腱が炎症を起こすと、まるで擦り傷を負った時と同じように、痛みや腫れが生じます。炎症が一時的なものから、腱そのものが変性してしまうものまで、様々な段階があります。 原因:使い過ぎ、加齢、外傷 肩の使いずぎ:上腕二頭筋長頭腱炎の主な原因は、肩の使い過ぎです。野球のピッチャーやテニスプレイヤーのように、腕を頭上に上げる動作を何度も繰り返すスポーツ選手に多く見られます。 また、日常生活でも、重い物を持ち上げたり、パソコン作業などで長時間同じ姿勢を続けることでも発症することがあります。例えば、スーパーのレジ係や工場のライン作業など、毎日同じ動作を繰り返す職業の方も注意が必要です。 加齢:加齢も大きな原因の一つです。年齢を重ねると、腱の柔軟性が徐々に失われ、損傷しやすくなります。若い頃は元気に動かせていた肩も、年齢とともに負担がかかりやすくなるため、中高年の方に多く発症する傾向があります。 転倒などの外傷:さらに、転倒などによる肩への直接的な外傷も原因となる場合があります。交通事故やスポーツ中の衝突などで肩を強打すると、上腕二頭筋長頭腱に炎症が生じることがあります。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「肩の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 上腕二頭筋長頭腱炎の具体的な症状 肩の前側~二の腕にかけての痛み: これは最も典型的な症状です。炎症を起こした腱が、肩の前側や二の腕を通っているため、これらの場所に痛みを感じます。まるで肩の内側から針で刺されるような痛みや、鈍い痛みを感じることもあります。 安静時痛: 炎症が強い場合、じっとしていてもジンジン、ズキズキとした痛みを感じることがあります。これは安静時痛と呼ばれ、炎症のサインの一つです。 動作時痛: 肩を動かしたときに痛みが強くなります。特に、腕を上げる、後ろに回す、ひねるといった動作で痛みが強くなります。 具体例 スーパーでペットボトルをもったとき 頭のシャンプーで腕を上げたとき 車の運転で、ハンドルを切ったとき 洗濯を干すため腕を上げたとき 孫を抱っこしたとき エプロンの腰紐を後ろで結ぶとき 髪の毛を後ろに束ねるとき 夜間痛: 夜寝ているときに痛みが増すことがあります。これは、寝ている姿勢によって肩が圧迫され、炎症を起こしている腱への負担が増えるためです。 圧痛: 患部を押すと痛みが増します。肩の前側にある腱を押すと、強い痛みを感じます。 上腕二頭筋長頭腱炎の主な症状は、肩の前側の痛みです。安静にしている時でも鈍い痛みを感じることがありますし、腕を上げたりひねったりする時に鋭い痛みを感じることもあります。 特に、腕を耳につけるように上げる動作や、後ろ手に背中を掻くような動作で痛みが強くなる場合は、上腕二頭筋長頭腱炎の可能性が高いです。 また、肩の前面が腫れて、熱を持っていることもあります。炎症がひどくなると、肩関節の動きが悪くなり、腕を自由に動かせなくなります。例えば、洋服を着替えたり、髪を梳かすといった動作が困難になることもあります。 これらの症状は、上腕二頭筋の損傷だけでなく、腱板の断裂や四十肩など、他の肩の疾患でも同様の症状が現れることがあります。自己判断は危険ですので、少しでも気になる症状があれば、医療機関を受診して適切な検査と診断を受けることをお勧めします。 ▼肩腱板断裂について、併せてお読みください。 ▼四十肩と五十肩の違いについて、併せてお読みください。 上腕二頭筋長頭腱炎の検査と診断 この章では、上腕二頭筋長頭腱炎の検査と診断について解説していきます。 身体診察:視診、触診、運動検査 テスト 視診では、肩の見た目や形、腫れの有無、皮膚の色などを観察します。健康な肩と比較して、左右の肩の形に違いがないか、皮膚に赤みがないかなどを確認することで、炎症の有無を推測します。 次に触診を行います。医師は指で肩の腱の走行に沿って優しく押さえ、痛みや腫れ、熱感などを確認します。特に、上腕二頭筋長頭腱が通る「結節間溝」と呼ばれる部分に圧痛があるかどうかは、判断材料の一つとなります 患者さんには「ここを押すと痛みませんか?」などと質問しながら、丁寧に触診を進めていきます。 運動検査では、患者さんに腕を様々な方向に動かしてもらい、痛みの程度や肩関節の動く範囲(可動域)を確認します。 腕を耳につけるように上げる、体の前で腕を交差させる、後ろ手に背中を掻くといった動作で、腕をどこまで動かせるのか、また、どんな動きをしたときに痛みを感じるのかを詳しく診ていきます。 ヤーガソンテストとは、肘を90度に曲げ、手のひらを下に向けた状態で、医師が患者さんの前腕に外側へひねる力を加え、患者さんにはそれに抵抗してもらいます。この時、上腕二頭筋長頭腱に炎症があると、結節間溝に痛みが出ます。 アッパーカットテストとは、ボクシングのアッパーカットのように腕を斜め上に突き上げる動作で、上腕二頭筋長頭腱に炎症があると、肩の前方に痛みが出ます。これらのテストを組み合わせて、上腕二頭筋長頭腱炎の特徴的な症状を探し、診断の精度を高めます。 画像検査:レントゲン、超音波検査、MRI検査 身体診察である程度の診断はできますが、腱や骨の状態をより詳しく調べるためには画像検査が欠かせません。 骨の状態を知るために、最初にレントゲン検査を実施します。上腕二頭筋長頭腱炎では、骨自体に異常がない場合が多いのですが、骨折や他の骨の異常を除外するために重要な検査です。 石灰沈着性腱板炎なら、レントゲンで白く写るのですぐにわかります。 超音波検査では、腱の厚みや炎症の程度をリアルタイムで確認できます。レントゲンでは見えない腱の状態を詳しく観察できるため、診断の確定に役立ちます。また、腱の周囲にある滑液包という袋に炎症が起きていないかどうかも調べられます。 MRI検査では、腱やその周囲の組織の状態をさらに詳細に確認できます。特に、腱の断裂や損傷の程度を正確に把握するのに役立ちます。 どの画像検査を行うかは、患者さんの症状や身体診察の結果によって医師が判断します。 鑑別診断:他の疾患との見分け方 肩の痛みは上腕二頭筋長頭腱炎だけでなく、腱板断裂、肩関節周囲炎、石灰沈着性腱板炎など、様々な原因で起こります。 これらの疾患は上腕二頭筋長頭腱炎と症状が似ている場合があり、鑑別が難しいケースもあるため、医師は、身体診察、画像検査の結果を総合的に判断し、他の疾患の可能性も考慮しながら慎重に診断を行います。 腱板断裂では、腕を特定の角度に挙げたときに痛みや、動かす際に引っかかるような感じがすることがあります。腕を支えないと上がらない場合は、完全に断裂してる場合が多いです。 肩関節周囲炎では、肩関節の動きが全体的に制限され、腕をあらゆる方向に動かすことが困難になります。つまり関節拘縮が起こり、それが原因で痛みが助長します。 石灰沈着性腱板炎では、何も思い当たることがないのに、急に激痛が出て、痛いところを指でおすと、飛び上がるほど痛みが出ます。 上腕二頭筋長頭腱炎の治療法 この章では、上腕二頭筋長頭腱炎の治療法について、保存療法と手術療法の2つの観点から、具体的な例を交じえながら詳しく解説します。 保存療法 保存療法とは、手術をせずに、薬やリハビリテーションなどによって症状の改善を目指す治療法です。上腕二頭筋長頭腱炎の多くは、この保存療法で改善が見込めます。 安静:まず初めに、炎症が起きている腱を安静にすることが重要です。安静にする期間や程度は、症状の重さによって異なりますが、痛みが強い場合は、腕を吊るなどの処置が必要になることもあります。 薬物療法:炎症や痛みを抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの飲み薬や湿布薬を使用します。これらの薬は、炎症の原因となる物質の生成を抑えることで、痛みや腫れを軽減する効果があります。 注射:痛みが激しい時には、ステロイド注射による治療を検討することもあります。ステロイドは強力な抗炎症作用を持つ薬で、短期間で効果を発揮します。しかし、腱を弱くする可能性もあるため、使用回数や投与量には注意が必要です。 理学療法(リハビリテーション):炎症が落ち着いてきたら、理学療法(リハビリテーション)を開始します。理学療法では、肩関節の柔軟性や安定性を高めるための運動療法や、肩甲骨周囲の筋肉のバランスを整えるトレーニング、ストレッチングなどを行います。 例えば、初期のリハビリテーションでは、振り子運動を行います。これは、腕をリラックスさせ、前後に、左右に、円を描くようにゆっくりと振る運動です。肩関節への負担が少ないため、炎症が強い時期でも安全に行うことができます。 また、ゴムバンドなどを用いた外旋運動や内旋運動も効果的です。これらの運動は、肩関節の安定性を高めるのに役立ちます。 これらの保存療法を組み合わせることで、多くの場合、上腕二頭筋長頭腱炎は改善します。 保存療法の効果が見られない場合、または症状が重い場合には、手術療法が検討されます。最新の研究では、上腕二頭筋長頭腱炎の保存的管理に関するエビデンスは不足していることが示唆されており、今後の研究の進展が期待されます。 手術療法 薬物療法などの保存的な治療で十分な効果が見らない場合や、腱が断裂している場合などには、手術療法が必要になることがあります。 手術には、大きく分けて「上腕二頭筋腱切開術」と「上腕二頭筋腱固定術」の2つの方法があります。 上腕二頭筋腱切開術は、腱を上腕骨頭から切離する手術です。肩の不快感を和らげる効果が優れている一方、上腕二頭筋の力が弱くなる可能性があります。スポーツなどで高いパフォーマンスを必要としない方、高齢の方などに適しています。この手術は、関節鏡という細いカメラを用いて行うことが多く、傷が小さく、回復も比較的早いというメリットがあります。 上腕二頭筋腱固定術は、切離した腱を、上腕骨の別の場所に固定する手術です。上腕二頭筋の力を維持できるというメリットがありますが、手術の難易度が高く、回復に時間がかかる場合があります。スポーツ選手など、上腕二頭筋の力が必要な方、比較的若い方などに適しています。 上腕二頭筋長頭腱炎の『再生医療』 上腕二頭筋長頭炎に対する保存療法を行なっても、なかなか改善しない時の選択肢として、今注目の再生医療があります。 リペアセルクリニックでは、再生医療分野で豊富な経験を持つ専門医たちが、10,000症例以上の実績に基づく確かな技術と独自の培養方法で、患者様一人一人に最適な治療プランをご提案いたします。 国内唯一で最新の『分化誘導技術』を用い、当院は『新時代の再生医療』による治療を提供します。 そんな再生医療に興味のある方は、こちらから当院独自の再生医療の特徴を紹介しています。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「肩の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 McDevitt AW, Young JL, Cleland JA, Hiefield P, Snodgrass SJ. Physical therapy interventions used to treat individuals with biceps tendinopathy: a scoping review. Brazilian journal of physical therapy 28, no. 1 (2024): 100586. Nho SJ, Strauss EJ, Lenart BA, Provencher MT, Mazzocca AD, Verma NN, Romeo AA. Long head of the biceps tendinopathy: diagnosis and management. The Journal of the American Academy of Orthopaedic Surgeons 18, no. 11 (2010): 645-56.
2025.02.15 -
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俳優の下條アトムさんの訃報で注目された「急性硬膜下血腫」。 脳を覆う膜の下に出血し、血腫ができるこの病気は、実は誰にでも起こりうる身近な危険をはらんでいます。日常生活での転倒や交通事故など、一見軽微な外傷でも発症する可能性があり、特に高齢者は注意が必要です。頭痛や吐き気といった初期症状は他の病気と見分けにくいため、早期発見が困難なケースも少なくありません。 この記事では、急性硬膜下血腫の原因、症状、診断方法、そして治療法や予後まで、詳しく解説していきます。ご自身やご家族の健康を守るためにも、ぜひ一度、急性硬膜下血腫について理解を深めてみませんか? 急性硬膜下血腫とは?原因・症状・診断 突然ですが、皆さんは「急性硬膜下血腫」という病気を聞いたことがありますか? これは、脳を覆う膜の一つである硬膜の下に出血が起こり、血腫(血の塊)ができてしまう病気です。実は、俳優の下條アトムさんもこの病気で亡くなられました。 「脳の病気」と聞くと、どこか遠い世界の話のように感じてしまうかもしれません。しかし、日常生活での転倒や交通事故など、誰にでも起こりうる原因で発症する可能性がある病気なのです。 今回は、急性硬膜下血腫について、原因や症状、診断方法などを分かりやすく解説していきます。 急性硬膜下血腫のメカニズム 私たちの脳は、まるで3層構造のヘルメットのように、「硬膜」「くも膜」「軟膜」という3つの膜で守られています。急性硬膜下血腫は、このうち硬膜とくも膜の間に血が溜まってしまう状態です。 頭の外傷によって、脳の表面にある血管、特に「架橋静脈」と呼ばれる脆い血管が損傷し、出血が起こります。この出血が硬膜とくも膜の間に広がり、三日月のような形をした血腫を形成するのです。 この血腫が脳を圧迫することで、様々な神経症状が現れます。さらに、血腫が大きくなると、脳への圧迫が強まり、生命に関わる危険な状態に陥ることもあります。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「脳卒中」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 主な原因:頭部外傷(転倒、交通事故など) 急性硬膜下血腫の主な原因は、頭部外傷です。交通事故やスポーツ中の衝突など、強い衝撃が加わることで発症することが多いです。 高齢者の場合、骨が脆くなっていたり、バランス感覚が低下していたりするため、軽い転倒でも急性硬膜下血腫を発症するリスクがあります。若い世代に比べて、高齢者の硬膜下腔は広く、架橋静脈も伸びやすくなっているため、比較的軽い外傷でも架橋静脈が損傷しやすく、急性硬膜下血腫を発症しやすいのです。 また、一度の強い衝撃だけでなく、繰り返し頭部に軽い外傷を受けることでも発症する可能性があります。例えば、ラグビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツで、何度も頭部に衝撃を受けていると、気づかないうちに急性硬膜下血腫を発症しているケースもあるのです。 気づきにくい症状:頭痛、吐き気、意識障害など 急性硬膜下血腫の初期症状は、頭痛、吐き気、嘔吐など、風邪や他の病気と間違えやすい症状であることが多く、見逃してしまう可能性があります。 また、症状の現れ方には個人差があり、軽微な場合や、数時間から数日経ってから現れる場合もあります。特に高齢者の場合、症状をうまく伝えられないケースもあるため、周囲の人が注意深く観察することが重要です。 意識障害は、初期には軽度で、時間経過とともに悪化していくこともあります。「いつもよりぼんやりしている」「反応が鈍い」などの変化に気づいたら、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。急性硬膜下血腫は、初期の段階では症状が軽微であるため、発見が遅れてしまうことが少なくありません。しかし、適切な治療を行わないと、意識障害が進行し、最悪の場合、死に至る可能性もあります。 下條アトムさんの事例 俳優の下條アトムさんは、自宅で転倒し、頭を強打したことが原因で急性硬膜下血腫を発症し、亡くなりました。下條さんの事例は、高齢者にとって転倒がいかに危険であるかを改めて私たちに教えてくれました。 高齢者の場合、若い人に比べて骨が脆くなっていたり、バランスを崩しやすくなっていたりするため、転倒のリスクが高くなります。自宅での転倒予防対策を徹底的に行うことが重要です。具体的には、家の中の段差をなくしたり、手すりを設置したり、滑りにくい床材を使用したりするなど、転倒のリスクを減らす工夫をしましょう。 診断方法:CT検査、MRI検査 急性硬膜下血腫の診断には、CT検査とMRI検査が用いられます。CT検査では、硬膜とくも膜の間に三日月型の血腫が確認できます。MRI検査は、CT検査よりも詳細な画像を得ることができ、脳の状態をより詳しく把握するのに役立ちます。 急性硬膜下血腫は一刻を争う病気です。迅速な診断と適切な治療開始のために、これらの検査は非常に重要です。 慢性硬膜下血腫、くも膜下出血、脳内出血との違い 急性硬膜下血腫と似たような病気に、慢性硬膜下血腫、くも膜下出血、脳内出血などがあります。これらの病気は、出血の場所や症状、治療法が異なります。 慢性硬膜下血腫:急性と異なり出血がゆっくり進むため、症状が現れるまでに数週間から数ヶ月かかる場合があります。 くも膜下出血:くも膜と軟膜の間に出血が起こる病気です。バットで殴られたような激しい頭痛が特徴です。 脳内出血:脳の実質内に出血が起こる病気です。高血圧が主な原因となります。 それぞれの病気の特徴を理解しておくことが大切です。 急性硬膜下血腫の治療法と予後 下條アトムさんの訃報は、急性硬膜下血腫という病気を多くの方に知らしめるきっかけとなりました。この病気は、頭部外傷により脳を覆う硬膜の下に出血が起こり、血腫(血の塊)ができてしまう深刻な疾患です。 「血腫」と聞くと、すぐに手術が必要なのでは?と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。そこで、今回は急性硬膜下血腫の治療法と予後について、患者さんの不安を少しでも和らげられるよう、詳しく解説します。 外科的治療:開頭血腫除去術、穿頭血腫ドレナージ術 急性硬膜下血腫の治療は、大きく分けて外科的治療と保存的治療の2種類があります。外科的治療は、文字通り手術によって血腫を取り除く方法です。 主な手術方法には、「開頭血腫除去術」と「穿頭血腫ドレナージ術」があります。 開頭血腫除去術は、頭蓋骨の一部を切開し、直接血腫を取り除く方法です。血腫が大きく、脳への圧迫が強い場合に有効です。より確実な血腫除去が可能ですが、身体への負担は大きくなります。 一方、穿頭血腫ドレナージ術は、ドリルで頭蓋骨に小さな穴を開け、そこから細い管を入れて血腫を吸引する方法です。開頭血腫除去術に比べて身体への負担が少ないため、高齢者や全身状態が良くない方にも行われます。しかし、血腫が硬かったり、複雑な形状をしている場合は、完全に取り除くことが難しい場合もあります。 どちらの手術方法が適切かは、患者さんの年齢、全身状態、血腫の大きさや位置などを総合的に判断して決定されます。例えば、意識レベルが著しく低下している重症患者さんでは、開頭血腫除去術が選択されることが多いです。これは、開頭することで損傷した脳組織の状態も直接確認できるため、より迅速で適切な処置が可能になるからです。GCSスコアが9未満の昏睡状態の患者さんでは、開頭術が選択されることが多いという研究結果もあります。 保存的治療:経過観察、薬物療法 血腫が小さく、症状が軽い場合は、保存的治療が選択されることもあります。保存的治療は、手術を行わずに、安静、薬物療法、経過観察などによって病状の改善を図る方法です。定期的なCT検査で血腫の大きさや症状の変化を注意深く観察しながら、脳圧を下げる薬や合併症を予防する薬などを用います。 保存的治療は身体への負担が少ないというメリットがありますが、血腫が自然に吸収されるのを待つため、外科的治療に比べて治療期間が長くなる傾向があります。また、症状が急変する可能性もあるため、慎重な経過観察が必要です。 手術のリスクと合併症 どんな手術にもリスクはつきものです。急性硬膜下血腫の手術も例外ではありません。考えられるリスクや合併症には、感染症、出血、脳腫脹、麻酔による合併症などがあります。 高齢者や持病のある方は、これらのリスクが高まる可能性があります。手術を受けるかどうかは、担当医と十分に話し合い、メリットとデメリットを理解した上で、最終的に患者さん自身が決めることが重要です。 治療期間と入院期間 治療期間と入院期間は、患者さんの状態や治療方法によって大きく異なります。軽症の場合は数週間で退院できる場合もありますが、重症の場合は数ヶ月かかることもあります。また、後遺症が残った場合は、リハビリテーションが必要となり、さらに長期間の入院が必要になる場合もあります。 後遺症(麻痺、言語障害、認知機能障害など) 急性硬膜下血腫では、麻痺、言語障害、認知機能障害などの後遺症が残る可能性があります。後遺症の重症度は、血腫の大きさや脳へのダメージの程度、治療のタイミングなどによって大きく左右されます。 日常生活に支障が出るほどの後遺症が残ってしまう場合もあります。そのため、後遺症を最小限に抑えるためには、早期発見・早期治療が何よりも重要です。 ▼脳梗塞の後遺症について、併せてお読みください。 予後(社会復帰、生活への影響) 急性硬膜下血腫の予後は、意識障害の程度と深く関係しています。意識障害が重症の場合、残念ながら死亡率が高く、社会復帰が困難になることもあります。軽症の場合でも、後遺症が残る可能性があり、日常生活や社会生活への影響は避けられません。 ある研究では、急性硬膜下血腫の死亡率は65%にも達すると報告されています。また、社会復帰できる割合は18%程度と低いという結果も出ています。高齢者や手術前に抗凝固薬や抗血小板薬を服用していた患者さんでは、特に予後が悪化する傾向があります。 急性硬膜下血腫の死亡率 急性硬膜下血腫は、迅速な診断と適切な治療が求められる深刻な病気です。死亡率は高く、早期に適切な治療を行わなければ、命に関わる危険性があります。 特に高齢者では、頭部外傷による急性硬膜下血腫のリスクが高いため、転倒などの事故には十分に注意する必要があります。 少しでも異変を感じたら、すぐに医療機関を受診することが大切です。早期発見・早期治療が、予後を改善し、社会復帰の可能性を高めることに繋がります。 まとめ 急性硬膜下血腫は、頭部外傷による脳への出血で、深刻な症状を引き起こす可能性があります。特に高齢者は転倒などで発症しやすく、下條アトムさんの事例からもわかるように、命に関わる危険な病気です。 頭痛や吐き気など、初期症状は分かりにくいため、少しでも異変を感じたらすぐに医療機関を受診することが大切です。CTやMRI検査で診断し、血腫の大きさや症状に応じて手術や保存的治療を行います。後遺症が残る可能性もあり、早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。日常生活での転倒予防など、意識して対策を行いましょう。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「脳卒中」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Vega RA, Valadka AB. "Natural History of Acute Subdural Hematoma." Neurosurgery clinics of North America 28, no. 2 (2017): 247-255. Karibe H, Hayashi T, Hirano T, Kameyama M, Nakagawa A, Tominaga T. "Surgical management of traumatic acute subdural hematoma in adults: a review." Neurologia medico-chirurgica 54, no. 11 (2014): 887-94. Bullock MR, Chesnut R, Ghajar J, Gordon D, Hartl R, Newell DW, Servadei F, Walters BC, Wilberger JE and Surgical Management of Traumatic Brain Injury Author Group. "Surgical management of acute subdural hematomas." Neurosurgery 58, no. 3 Suppl (2006): S16-24; discussion Si-iv.
2025.02.13 -
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子供の頃の水ぼうそう、覚えていますか?実は、あの時のウイルスが潜伏し、再び牙を剥くことがあるのです。それが「帯状疱疹」。50歳以上の方、免疫力が低下している方は特に注意が必要です。 放置すると、帯状疱疹後神経痛といった後遺症に悩まされることも。 この記事では、帯状疱疹の初期症状から合併症、治療法、ワクチン接種まで、徹底的に解説します。あなたの健康を守るための知識を、今ここで手に入れてください。 帯状疱疹の症状と合併症 帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化によって引き起こされる病気です。子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルスが神経節に潜伏し、加齢やストレス、免疫力の低下などをきっかけに再び活動を始めることで発症します。体の片側に現れるピリピリとした痛みと、特徴的な赤い発疹を伴う病気で、体のどこにでも発症する可能性があります。 帯状疱疹の症状を理解することは、早期発見・早期治療につながり、後遺症のリスクを減らすことにもつながります。 帯状疱疹の初期症状:ピリピリとした痛みやかゆみ 帯状疱疹の初期症状で一番多いのは、皮膚のピリピリとした痛みやかゆみです。まるで虫が這っているような、針で刺されたような、ヒリヒリするような感覚など、様々です。時には何も触れていないのに、服が擦れるだけでも痛いと感じることもあります。この痛みやかゆみは、再活性化した帯状疱疹ウイルスが神経に沿って広がることで起こります。ほとんどの場合、片方だけに現れ、左右対称になることはありません。 初期症状は風邪とよく似ていて、発熱や頭痛、倦怠感などを伴うこともあります。そのため、風邪と間違えてしまい、適切な治療が遅れてしまうケースも見られます。 帯状疱疹の特徴的な赤い発疹と水ぶくれ 初期症状の後、数日たつと、赤い発疹が現れます。この発疹は、帯状疱疹の最も特徴的な症状の一つです。赤い発疹は次第に水ぶくれへと変化し、最終的にはかさぶたになって治っていきます。水ぶくれの中にはウイルスが含まれており、破れるとウイルスが拡散し、他の人に水ぼうそうをうつしてしまう可能性があります。ただし、帯状疱疹自体は他の人にうつることはありません。 水痘・帯状疱疹ウイルスは神経に沿って広がるため、発疹も神経に沿って帯状に分布することが多く、これが「帯状疱疹」の名前の由来となっています。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 帯状疱疹の痛み:部位や程度、持続期間 帯状疱疹の痛みは、人によって部位や程度、持続期間が大きく異なります。チクチクする軽い痛みから、焼けるような激痛まで、本当に様々です。痛みの程度は、神経へのダメージの大きさや、個人の痛みの感じ方の違いによって変わってきます。 痛みが続く期間も数週間から数ヶ月、場合によっては数年続くこともあります。 帯状疱疹後神経痛:帯状疱疹のつらい後遺症 帯状疱疹の症状が治まった後も、痛みが続くことがあります。これが「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれる後遺症です。これは、帯状疱疹ウイルスによって神経がダメージを受けたことが原因で起こります。帯状疱疹後神経痛の痛みは、非常に強く、日常生活に大きな影響を与えてしまうこともあります。服を着ることさえも苦痛に感じたり、夜も眠れないほどの痛みを感じる人もいます。 特に高齢者や免疫力が低下している人は、帯状疱疹後神経痛を発症するリスクが高いと言われています。高齢、ストレス、他の感染症、免疫抑制が主なリスク要因となります。最近の研究では、COVID-19ワクチン接種後にも帯状疱疹の再活性化が観察されているという報告もあります。 その他の合併症:髄膜炎、脳神経麻痺など 帯状疱疹は、皮膚の症状だけでなく、様々な合併症を引き起こす可能性があります。まれに、髄膜炎(脳と脊髄を覆う膜の炎症)や脳神経麻痺(脳神経の機能障害)、 Ramsay Hunt症候群(顔面神経麻痺)や眼の合併症、血管炎、腎臓や消化器系の合併症などの重篤な合併症が起こることがあります。 顔面に帯状疱疹が出た場合は、視力や聴力に影響が出る可能性もあるため、注意が必要です。 帯状疱疹の治療と予防 帯状疱疹は、放置すると重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、早期の診断と適切な治療が非常に重要です。体の片側に現れるピリピリとした痛み、赤い発疹、水ぶくれなどの症状が現れたら、すぐに医療機関を受診しましょう。 抗ウイルス薬による治療:アシクロビル、バラシクロビルなど 帯状疱疹の治療では、抗ウイルス薬が第一選択となります。ウイルスを直接攻撃し、その増殖を抑えることで、症状の悪化を防ぎ、治癒を促進します。抗ウイルス薬は、発疹出現後72時間以内に服用を開始するのが最も効果的です。具体的には、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルなどがよく用いられます。 これらの薬剤は、ウイルスのDNAポリメラーゼという酵素の働きを阻害することで、ウイルスの複製を抑制します。これにより、ウイルスの増殖を抑え、症状の進行を食い止めます。処方された抗ウイルス薬は、指示された用法・用量を厳守し、最後まで飲み切ることが重要です。自己判断で中断すると、症状が再発したり、ウイルスが耐性を持つ可能性があります。 医師の指示に従わずに服薬を中断すると、治療効果が十分に得られないばかりか、薬剤耐性ウイルスの出現を招き、再発時の治療が困難になる可能性があります。 痛み止め:鎮痛薬や神経ブロック注射 帯状疱疹に伴う痛みは、患者さんにとって大きな負担となります。場合によっては非常に強い痛みを感じることもあります。 日常生活に支障が出るほどの痛みには、鎮痛薬の使用を検討します。アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの市販薬で対応できることもありますが、痛みが強い場合は、医療機関を受診し、より強力な鎮痛薬を処方してもらう必要があるかもしれません。 ▼痛み止めについて、併せてお読みください。 [blogcardurl="https://fuelcells.org/topics/41471/"] 神経ブロック注射は、痛みの原因となっている神経に直接局所麻酔薬やステロイド薬を注射する治療法です。神経の興奮を抑え、痛みを緩和する効果が期待できます。痛みが特定の部位に限局している場合や、他の治療法で効果が不十分な場合に有効です。 神経ブロック注射は即効性がありますが、効果の持続期間は個人差があります。場合によっては、複数回の注射が必要となることもあります。 家庭でのケア:患部の清潔を保つ、刺激を避ける 薬物療法に加えて、家庭でのケアも重要です。適切なケアを行うことで、症状の悪化を防ぎ、治癒を促進することができます。患部は清潔に保ち、刺激を避けるように心がけましょう。 患部の清潔:シャワーや入浴時に、患部を清潔な石鹸と水で優しく洗いましょう。ゴシゴシこすったり、タオルで強く拭いたりすると、皮膚が傷つき、症状が悪化する可能性があります。 刺激の回避:患部に衣服が擦れたり、刺激の強い石鹸や化粧品を使用したりするのは避けましょう。また、患部にテープを貼る際は、皮膚への負担が少ないものを選び、剥がす際にはゆっくりと丁寧に行うようにしてください。 患部を冷やすと、痛みやかゆみが和らぐことがあります。清潔なタオルで包んだ保冷剤や氷嚢を患部に当てて、1回15分程度、1日に数回冷やすのが効果的です。 帯状疱疹ワクチン:種類、効果、費用、副反応 帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)によって引き起こされます。子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルスが、体内の神経に潜伏し、加齢やストレス、免疫力の低下などをきっかけに再活性化することで発症します。帯状疱疹ワクチンは、このウイルスの再活性化を抑えることで、帯状疱疹の発症リスクを低減します。 現在、日本では不活化ワクチンである組換え帯状疱疹ワクチンが使用されています。2回の接種が必要で、2回目は1回目の接種から2~6ヶ月後に接種します。 帯状疱疹ワクチンは、帯状疱疹の発症を完全に予防できるわけではありませんが、発症リスクを有意に減少させる効果が確認されています。また、発症した場合でも、症状を軽くしたり、帯状疱疹後神経痛の発症リスクを低減したりする効果も期待できます。 副反応として、注射部位の痛み、発赤、腫れなどがみられることがありますが、通常は数日で軽快します。 ワクチン接種の推奨年齢とタイミング 帯状疱疹ワクチンは、50歳以上の方、または免疫機能が低下している19歳以上の方への接種が推奨されています。特に高齢者や免疫力が低下している方は、帯状疱疹を発症するリスクが高いため、ワクチン接種を検討することが重要です。 スペインでは、生ワクチンと組換えワクチンの2種類のワクチンが使用されています。組換えワクチンは免疫不全の方にも接種可能です。ただし、ワクチンの適応や公的支援については地域差があるため、詳細はお住まいの自治体にお問い合わせください。 帯状疱疹に関するよくある質問 帯状疱疹は、誰しもが経験する可能性のあるありふれた病気です。適切な治療を受ければ多くの場合、治すことができますが、放置すると後遺症として神経痛が残る場合があります。そのため、少しでも気になる症状があれば、早めに医療機関を受診することをお勧めします。 帯状疱疹は人にうつる?感染経路と注意点 帯状疱疹自体は、他の人にうつる病気ではありません。しかし、帯状疱疹の原因となるウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)は、水ぼうそうを引き起こすウイルスと同じです。そのため、帯状疱疹の赤い水ぶくれの中には、水ぼうそうのウイルスが含まれています。 帯状疱疹を発症している人と接触し、この水ぶくれが破れてウイルスが皮膚に直接触れることで、水ぼうそうにかかったことのない人が水ぼうそうに感染する可能性があります。 特に、妊娠中の女性や免疫力が低下している人は、水ぼうそうに感染すると重症化のリスクがあるため、十分な注意が必要です。帯状疱疹を発症している場合は、水ぶくれを触らない、清潔を保つ、水ぼうそうにかかったことのない人や抵抗力が弱い方との接触を控えるなど、周囲への配慮を心がけましょう。 帯状疱疹になったら仕事や学校はどうする? 帯状疱疹になったら、症状の程度に合わせて、仕事や学校を休むかどうかを判断する必要があります。発熱や痛みが強い場合は、安静にして休養することが重要です。皮膚症状が強い場合も、周囲に水ぼうそうをうつしてしまうリスクを減らすため、症状が落ち着くまで仕事や学校を休むことが望ましいでしょう。 仕事や学校を休む期間は、症状の程度や回復状況によって異なります。医師と相談し、適切な期間を決めるようにしましょう。 帯状疱疹の再発は予防できる? 帯状疱疹は、一度かかると再発する可能性がある病気です。特に、加齢や免疫力の低下、過労やストレスなどが再発の要因となることがあります。VZVは、非常に効果的なワクチンが利用可能な唯一の人間ヘルペスウイルスであると報告されていますが、水痘ワクチンを接種していたとしても、帯状疱疹を発症する可能性はあります。 帯状疱疹の再発を予防するためには、健康的な生活習慣を心がけ、免疫力を高めることが大切です。バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけ、ストレスをため込まないようにしましょう。規則正しい生活とストレス軽減は、免疫機能の維持に役立ちます。 帯状疱疹の治療にかかる費用は?保険適用について 帯状疱疹の治療は健康保険が適用されます。費用は医療機関や治療内容、受診回数によって異なりますが、初診料、再診料、検査費用、薬剤費用などが含まれます。自己負担額は、加入している保険の種類や年齢によって異なります。3割負担の場合は、医療費の3割を自己負担することになります。 高額療養費制度を利用できる場合もあります。医療費の負担が心配な場合は、医療機関の窓口に相談してみましょう。 帯状疱疹の専門医はどこで探せる? 帯状疱疹の専門医は、皮膚科、ペインクリニックなどで探すことができます。日本皮膚科学会のウェブサイトなどで、専門医を検索することも可能です。「帯状疱疹 専門医」などのキーワードでインターネット検索することでも、情報を得ることができます。 かかりつけ医がいる場合は、かかりつけ医に相談して、専門医を紹介してもらうのも良いでしょう。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Molero García JM, Moreno Guillén S, Rodríguez-Artalejo FJ, Ruiz-Galiana J, Cantón R, De Lucas Ramos P, García-Botella A, García-Lledó A, Hernández-Sampelayo T, Gómez-Pavón J, González Del Castillo J, Martín-Delgado MC, Martín Sánchez FJ, Martínez-Sellés M and Bouza E. "Status of Herpes Zoster and Herpes Zoster Vaccines in 2023: A position paper." Revista espanola de quimioterapia : publicacion oficial de la Sociedad Espanola de Quimioterapia 36, no. 3 (2023): 223-235. Gershon AA, Breuer J, Cohen JI, Cohrs RJ, Gershon MD, Gilden D, Grose C, Hambleton S, Kennedy PG, Oxman MN, Seward JF and Yamanishi K. "Varicella zoster virus infection." Nature reviews. Disease primers 1, no. (2015): 15016. Patil A, Goldust M and Wollina U. "Herpes zoster: A Review of Clinical Manifestations and Management." Viruses 14, no. 2 (2022): .
2025.02.12