-
- 手根管症候群
- 手部
手根管症候群でやってはいけないこと 手のしびれ、とくに人差し指や中指にしびれがある人は、『手根管症候群』の可能性があります。 手根管症候群は放置すると進行する病気で、ある程度病状が進んでしまうと、手の動きが制限されて元に戻らないこともあるので注意が必要です。 今回は、手根管症候群が疑われるときにやってはいけないこと、検査方法や治療法についてご紹介していきます。 手根管症候群とはどんな病気? 手根管症候群とは、手首にある手根管で、その部分を通過する正中神経を圧迫してしまう病気です。正中神経を長く圧迫してしまうと、神経の修復ができなくなったり、正中神経が支配している筋肉にも影響を及ぼして治療が難しくなってしまいます。 手根管症候群を発症する原因にはほかの病気が隠れていることもありますが、手首のケガや手の使い過ぎ、女性ホルモンの乱れなどでも起きることがあります。 正中神経が傷つくとどんなことが起きるのか? 正中神経は手首を通って手に分布します。主に手のひら側の親指、人差し指、中指、そして薬指の親指側半分を担う感覚神経と、親指を動かす母指球筋の動きを担当する運動神経があります。 その為、正中神経が障害されると、感覚神経の範囲でしびれや痛み、進行すれば触っている感覚が鈍くなる知覚麻痺が現れます。また、運動神経の障害で母指球筋が痩せて、親指の付け根の盛り上がりがなくなり、親指を動かすのに障害が出ます。 特に、小さなものをつまむような動き(親指と人差し指で物を拾い上げる、服のボタンをかける、など)が、やりにくくなります。 正中神経は手首よりも上(肩寄り)では、前腕の回内や手首を曲げるといった役割も担っていますが、手根管症候群では手首の部分で傷つくため、手首より上の動作の障害は現れません(手首より上の症状がある場合は別の病気が考えられます)。 手根管症候群が疑われるとき、病院ではどんな検査をするのか? 手根管症候群の可能性がある場合、受診するのは整形外科です。 基本的には正中神経を圧迫するような状態を再現して症状が現れるか確認したり、親指の付け根の筋肉が痩せていないか確認することで、ほとんど診断は可能です。 ただし、手首にコブができている可能性がある場合はエコーやMRI検査を追加したり、診断に迷う時には正中神経に電気を流して障害の具合を調べる筋電図検査などを追加する場合があります。また、手根管症候群の原因としてほかの病気が隠れている可能性がある場合は、血液検査などを追加することもあります。 もし手根管症候群だったら、どんな治療をするの? 軽度の手根管症候群の場合には以下のような治療で経過をみます。 ・内服薬:ビタミンB12や消炎鎮痛剤 ・外用薬:痛み止めの成分の入ったシップや塗り薬 ・装具:手首を固定するサポーターやスプリント 手根管の炎症が強い場合には手首に炎症を抑えるステロイドなどの注射を行うこともあります。 これらの治療で改善しない場合や手根管周辺に腫瘤がある場合、また母指球筋がやせている場合には手術療法が必要になることもあります。カメラを用いた鏡視下手根管開放術や直視下手根管開放術など、できるだけ傷が小さく、早く日常生活に戻れるように手術も進歩しています。 手根管症候群が疑われるときにやってはいけないこと 手根管症候群が疑われるときにやってはいけないことは以下です。 手に負担のかかる姿勢や動作 ・手を酷使すること 手根管症候群の治療の1つには「安静」があります。手根管症候群の原因はいくつかありますが、手の使いすぎの可能性もあります。できる限り症状のある手は休めましょう。 仕事などで、どうしても手を使わなければならない人や、朝起きたときに症状が強い人は寝ている間に手根管症候群を悪化させる格好になっている可能性があるので、その場合は装具(サポーターやスプリントとも呼びます)を装着するのもよいでしょう。 装具の一部は自分で購入することもできますが、合わないものを使ったり、使い方が違うとかえって病状を悪化させる可能性があるので、整形外科を受診して手に入れることをお勧めします。 💡 場合によっては、装具の費用の一部が療養費としてあとから返還される制度を利用することもできます。 ・手を握りしめる ⇒握りこぶしを作るのはもちろん、柄の細い道具は手首の負担になるので、包丁やフライパンなどは柄の太いものにし、フライパンを持ち上げるときなどはできれば両手で行ないましょう。 ・パソコンのキーボードを打つ ⇒手首をまっすぐにするために、専用のパームレストを使ったり、手首の下にたたんだタオルを敷いて手首の位置を整えます。 ・手をねじる ⇒雑巾を絞る動作などは手首に負担がかかるので、どうしても絞る動作が必要な時は、タオルを半分の長さにして、輪になった部分を丈夫な水道などにひっかけて、両手もしくは痛くない方の手で絞るようにしましょう。 症状が続くのに放置しない 手根管症候群は続くと正中神経や母指球筋がもとに戻らなくなる可能性があります。自分でできる限りのことを行っても症状が続く場合は、長く様子を見ずに、整形外科できちんと見てもらいましょう。 まとめ・手根管症候群でやってはいけないこと 指のしびれや痛み、物をよく落とすようになったら、手根管症候群の可能性があります。早い段階では手術なしで治療できるので、手根管症候群の可能性があれば、すぐに整形外科で診てもらいましょう。 仕事などで手を酷使する人は、とくに我慢して使い続けると親指の力がなくなり手術が必要になったり、親指の力が戻らない場合もあります。手首に負担のかかる動作はできるだけ避け、どうしてもそのような動作が避けられない場合は病院で装具などについて相談しましょう。 以上、「手根管症候群が疑われるときにやってはいけないこと」についてご紹介しました。ご参考になれば幸いです。 No.087 監修:医師 坂本貞範
2022.10.14 -
- ひざ関節
腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)を早く治すポイント 「ランニングすると膝の外側が痛い…」 その症状、もしかすると痛みの原因は腸脛靱帯炎(ちょうけいじんたいえん)かもしれません。 今回はランニングで起こりやすい腸脛靱帯炎について、できるだけ早く治すポイントを解説します。 腸脛靱帯炎とは?特徴や症状を紹介 腸脛靱帯は、太ももの外側を通る靱帯です。ランニングなどで膝の屈伸を繰り返すと膝の外側の骨と靱帯がこすれます。 この摩擦が刺激となり靱帯に炎症が生じてしまい、腸脛靱帯炎を発症してしまいます。 症状は膝の外側の痛みで、走り始めでは痛みが出ないものの、ランニングやサイクリングの距離が増えると痛みが現れます。また、膝の外側を押さえたときに痛みがみられ、軽く腫れる場合もあります。 腸脛靱帯炎の原因 腸脛靱帯炎の原因は大きく分けて「体の要因」「環境の要因」「トレーニングの要因」の3つに分けられます。 体の要因 腸脛靱帯が硬くなると、膝の外側の骨と靱帯の摩擦が強くなってしまうため、靱帯の炎症が起こりやすくなります。また、O脚(膝が外側にカーブした状態)やおしりの外側の筋力が低下することで、骨盤が傾きやすくなります。 そうすると、体の左右への安定性が低下してしまい、膝の外側にかかる負担が増えてしまいます。結果的に腸脛靱帯にかかる負担が増加して炎症を生じやすくなります。 環境の要因 ランニングをする環境も靱帯の炎症を引き起こす大きな原因です。 例えば、アスファルトなどの固い地面や舗装されていない路面を走ることで腸脛靱帯に負担がかかってしまいます。傾斜があったり、下り坂だったりといった環境も靱帯に悪影響を及ぼします。 また、ランニングで使用するシューズも腸脛靱帯炎の発生と関係があります。シューズのサイズがあっていなかったり、クッション性の低いシューズを使ったりすることで人体にかかる負担が増えて炎症の原因になります。 トレーニングの要因 ランニングの時間が増加したり、距離が長くなったりすると、膝の屈伸をたくさん繰り返すことになるため、脛靱帯炎を引き起こすリスクが高くなります。 また、トラックなど同じ場所を周回するようなケースでは、同じ方向を繰り返し走ることで、常に一定の負荷が腸脛靱帯にかかり炎症を起こす原因になります。 腸脛靱帯炎を早く改善させる「4つのポイント!」 腸脛靱帯炎を改善させるには、「安静」「ストレッチ」「筋力トレーニング」「適切な環境の調整」です。 1.痛みの出始めは安静に 痛みが出はじめた時期は炎症が起こっているので、ランニングやスポーツを中断して安静にしましょう。痛みが強い場合は、整形外科を受診して、炎症や痛みを抑える薬などの使用も必要です。 また、無理をして痛みが出た場合は、温めるのではなく、太ももの横をアイシングするようにしましょう。 2.おしりや太ももの外側やふくらはぎのストレッチ 腸脛靱帯にかかる負担を減少させるため、おしりや太ももの外側の硬さを改善するストレッチをしましょう。 まずはおしりや太ももの外側を伸ばすストレッチの方法を紹介します。 おしりや太ももの外側のストレッチ 1.立った状態で両足を交差させます(足同士はこぶし1つ分ほど離します)。 2.両手を組んで頭の上にあげて後ろになっている足に向かって体を横に倒します。 3.出来るだけ体を倒した状態で15秒〜30秒キープします。 腸脛靱帯炎が改善した後でも、ストレッチを継続して柔軟性を保つことで再発の予防につながります。 3.おしりの横の筋力トレーニング おしりの横の筋肉を鍛えることで、腸脛靱帯にかかる負担を減らします。 オススメのトレーニングを紹介します。 おしりの横の筋肉を鍛える方法 1.横向きになり両膝を曲げます。 2.上になっている足の膝をまっすぐ伸ばした状態で持ち上げます。 3.足の付け根が曲がらないように意識しながら10秒キープします。 4.適切な環境の調整 痛みが徐々に緩和してランニングができるようになった場合も、長い距離や時間のランニングは再発や悪化を招きかねません。痛みが出ないように加減しながらランニングを再開しましょう。 また、原因のところで解説したように、固い地面や不整地は出来るだけ避け、下り坂が多い場所や傾斜のきつい場所でのランニングも行わないようにしましょう。 新調したばかりの馴染まない靴や靴底が薄くクッション性の少ない靴などは避け、ランニングやウォーキング用のシューズで、しっかり足のサイズを合わせたものを使いましょう。 まとめ・腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)早く治すポイント 今回は、腸脛靭帯の原因や症状、早く治すためのポイントをお伝えしました。 腸脛靱帯炎は無理な負荷を減らして、炎症を早く治すとともに、運動や環境調整で負担がかからないようにすることが重要です。また、痛みが出た場合に早めに整形外科を受診することで、他の病気との判別をして適切な治療を受けることが大切です。 ランニングは誰でも気軽に体を動かせるオススメの運動です。ぜひ、腸脛靱帯炎に対する正しい知識を持ち、安静・運動・環境調整で腸脛靱帯炎を早く治して、いつまでも楽しくランニングを続けましょう! No.S089 監修:医師 加藤 秀一
2022.10.12 -
- 変形性膝関節症
- 膝部、その他疾患
- ひざ関節
O脚とは?O脚の原因とおすすめの治し方を知りたい方へ必見です! 「よくO脚って聞くけど、どういう状態なの?」 O脚という言葉は聞いたことがあっても、詳しい状態や原因、治し方まで知らない方も多いのではないでしょうか。 子供の頃にみられる「X脚」や「O脚」の中でも、成人以降でみられる「変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)」などの病気もあります。 今回はO脚とはどのようなものかを紹介し、原因や治し方を解説します。 O脚とは脚が外側にカーブした状態 O脚とは別名「内反膝(ないはんひざ)」と呼ばれ、脚が外側にカーブしてしまい、膝から下が内側に曲がった姿勢になります。両脚を合わせたときに太ももから膝、そしてすねで作られる形が英語の「O」になることから「O脚」と呼ばれています。 左右のくるぶしをくっつけるように立ったときに、膝の内側に目立った隙間ができてしまうのも特徴です。 O脚の原因 O脚は子どもの頃にみられる場合と、大人でみられる場合があります。それぞれ原因について紹介します。 子どもの頃にみられるO脚の原因 乳幼児から2歳までの子どもはO脚になるのが普通で、この時期のO脚を「生理的O脚」と呼びます。 2歳以降はO脚の反対で膝から下が外側に曲がって、両足を揃えた時に「X」になる「X脚」という状態になります。 そして、成長するにつれてX脚の程度が弱まっていき、成人になるとわずかに膝から下が外側に曲がった状態で止まります。 しかし、生まれながら骨に異常があったり、成長の過程で骨に関する病気になったりすると異常なO脚になる場合があります。 また、怪我や関節を支える靱帯の異常によりO脚がみられることもあります。 成人以降でみられるO脚の原因 成人以降では加齢や肥満などにより関節の変形が進む「変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)」や関節の炎症が続く「関節リウマチ」などの病気がO脚の原因になります。 また、姿勢が影響してO脚になることもあります。具体的には、背中が丸くなるような、いわゆる「猫背」になると、体の各関節が連動して変化して結果的にO脚につながります。 猫背が強まり骨盤は後ろに倒れてしまうと重心が後ろに偏ってしまいます。そのままでは後ろにバランスを崩してしまうので、重心を前に保つために膝が曲がってガニ股のような姿勢になってしまい、O脚の傾向が強まりやすくなります。 実際に姿勢が連動してO脚になっていく感覚はすぐに試せます。大げさに猫背&骨盤を後ろに倒す姿勢になってみて体感してみましょう。 おすすめのO脚の治し方3つ 子どもの頃の病気で起こるO脚は、原因に応じて医師による専門的な治療が必要になります。 ここでは、成人以降でみられるO脚に対する治し方として、「筋力トレーニング」「ストレッチ」「姿勢の改善」について解説します。 詳しくはここでは解説しませんが、体重の増加もO脚の原因ですので、気になる方は食事の工夫や有酸素運動で体重のコントロールをするのもオススメです。 1.筋力トレーニング 膝にかかる負担を減らすために、筋肉を鍛えて膝の関節を守るトレーニングが必要です。特に膝を伸ばす筋肉や内もも、お尻の横の筋肉を鍛えることで、膝が左右にブレにくくなるため、O脚の改善につながります。 オススメの運動はボールやクッションといった厚みのある柔らかいものを両膝で挟みながらのスクワットです。内ももの筋肉を働かせながら、膝を伸ばす筋肉も同時に鍛えられます。 ただし、スクワットは以下の注意点を守らなければ、膝に負担がかかるので注意しましょう。 スクワットをする場合の注意点 ・膝を深く曲げすぎない ・曲げた膝がつま先より前に出ないようにする ・膝を内ひねらないようにする(内股にならないようにする) ・勢いをつけずゆっくり曲げ伸ばしする また、横を向いて寝た状態で、上になっている脚を斜め後ろ方向に持ち上げる運動によりお尻の横の筋肉が鍛えられます。 2.ストレッチ 太ももの裏にある筋肉をハムストリングスと言いますが、この筋肉は膝を曲げるときに働くため硬くなると膝が伸びにくくなってしまい、O脚につながります。 今回は床や椅子に座って簡単にできるハムストリングスのストレッチを紹介します。 【床でできるハムストリングスのストレッチ】 1.ストレッチする方の脚をまっすぐ伸ばして、つま先を上に向けます。 2.ゆっくり体を倒しながら、片手でつま先を触りにいきます。 3.伸びているのを感じた状態で15秒ほどキープします。 4.体を倒す場合に背中が丸くならないように気をつけましょう。 【椅子でできるハムストリングスのストレッチ】 1.椅子に浅く腰掛けてストレッチする方の脚をまっすぐ伸ばします。 2.踵を床につけてつま先を上に向けます。 3.ゆっくり体を前に倒して太ももの裏が伸びているのを感じながら15秒ほどキープします。 4.背中を丸くするのではなく足の付け根から曲げるように体を倒すのがポイントです。 3.姿勢の改善 O脚の原因になるような猫背の姿勢を改善することが重要です。座った状態で猫背にして骨盤が後ろに倒れた状態から、軽く下腹を凹ますように力を入れると、背筋が伸びて骨盤が立ってくる感覚が得られると思います。 日頃から下腹に力を入れる習慣をつけることで、最初は意識しないと改善できなかった姿勢が、徐々に無意識でも維持できるようになります。まずは、テレビを見ている間や食事の間というように決まった時間から行って習慣化させてO脚を防ぎましょう。 まとめ・O脚とは?O脚の原因と治し方を知りたい方へ必見です! 膝が外側にカーブするO脚は、誰にでも起こる可能性がある変形です。膝関節の変形や悪い姿勢などにより起こることを知り、正しい対策をする必要があります。 そして、何よりも大事なのは、O脚の原因を知り、対策である正しい運動や姿勢の改善を継続することです。一度に全ての対策をするのは難しくても、解説した方法のうち、1つからでも始めて、その後は、継続して続けるようにしましょう。 今回は、O脚とはどのようなものかを紹介し、原因や治し方を解説しました。気になる方は病院の整形外科などを受診されてはいかがでしょうか。以上、参考になれば幸いです。 No.088 監修:医師 坂本貞範 再生医療を求めて日本全国からご来院多数 ・リペアセルクリニック大阪院(福島区)へは、 ・新大阪からタクシーで15~20分(交通状況で変動)。JR線、阪神線の福島駅から徒歩圏内(3~8分) ・リペアセルクリニック東京院(港区)へは、 ・浜松町駅からタクシーで5分(交通状況で変動)、徒歩10分。ゆりかもめ線、竹芝駅から徒歩3分
2022.10.10 -
- 腱板損傷
- 肩関節
肩の腱板損傷の症状と機能改善を目指す保存療法について 肩の痛みに悩まされる人が多いですが、その症状、『腱板損傷』かも知れません。 あなたが五十肩だと思っているその痛みも、放っておくとどんどん上がらなくなる・・・かも?! 今回は、腱板損傷の保存的治療方法を中心に解説していきます。 腱板損傷の症状 腱板損傷の症状で多くみられるのが、夜間痛です。 その名の通り、夜寝ている時に痛みがひどくなり眠れない、という声がよく聞かれます。 他にも以下のような症状がみられます。 【腱板損傷の症状】 ・夜眠れないほどの痛みが出る ・手を上げる時、ある一定の範囲だけ痛みや引っかかり感が出る ・手を水平の位置に保てない ・手を上げる時に肩全体が上がってしまう(腕の上げ方が左右で違う) ・肩の筋肉(特に棘下筋)の萎縮が進み、見た目でわかる 腱板損傷とは 腱板って、どこのこと? 腱板とは、肩甲骨と上腕骨をつなぐ肩の奥の筋肉です。正式名称は、回旋筋腱板(ローテーターカフ)であり、以下の4つの筋肉からなります。 【腱板】 ・棘上筋 ・棘下筋 ・小円筋 ・肩甲下筋 肩の上腕骨の骨頭と呼ばれる部分を包み込むように付着し、一枚の板のように並んでいるため腱板と言われています。 腱板の役割 この4つの筋肉は、肩を動かす上で非常に重要な役割を担います。肩にはアウターマッスルとインナーマッスルとがあり、腱板はインナーマッスルに属します。 肩の筋肉 役割 筋肉の位置 アウターマッスル 棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋 関節を安定させてアウターマッスルを働きやすくする より関節に近いところに位置する インナーマッスル 三角筋、上腕二頭筋など 速くて強い力を生み出す 体の表層 腱板損傷とはどのような状態なのか 腱板の基本的な役割について説明しました。小さい筋肉ですが、非常に重要な働きをしてくれます。そんな腱板が損傷した状態とはどのようなものなのでしょうか。 腱板は筋肉や腱のことであり、他の筋肉、腱と同じで線維状になっています。その線維が部分的に傷んでいる、切れている状態が腱板損傷です。損傷がひどく、一部または大部分に断裂がみられるものは腱板断裂と呼ばれています。 腱板損傷、腱板断裂は、筋肉や腱の変性が起きやすい50代以降の男性に多くみられます。発症のピークは60歳代です。 若い世代でも、肩を酷使するスポーツ選手などにもみられることもあるため、医療機関できちんと検査をすることをおすすめします。 腱板損傷の原因 前述したように、中年以降に多くみられることから、筋肉や腱などの加齢による変性が大きく関わってきます。また、肩に負担のかかる動作を繰り返すと発症しやすくなります。 例えば、重いものを抱える配送の仕事や、肩に強い負荷がかかる野球のピッチャーなどです。他にも様々な原因で腱板損傷が起こります。 【腱板損傷の原因の例】 ・筋肉や腱などの軟部組織の変性が起こりやすい中年男性 ・重い荷物を持ち運ぶ ・野球など投げる動作を繰り返すスポーツ ・後ろのものを取ろうとして不自然な肩の動きをしてしまう ・転んだ拍子に手をつく、もしくは肩を打つ 腱板損傷の診断 腱板損傷はレントゲンでは分かりにくく、よく五十肩と勘違いされます。そのため、正確な診断にはMRIやエコー検査などが用いられます。 他にも、前述した腱板損傷の所見を、視診や触診で確認することも重要です。他の肩関節疾患との鑑別を正確にすることで、今後の治療方針を早期に決めることができるため、気になる症状がありましたら早期に医療機関へ受診することをオススメします。 腱板損傷の保存的治療方法 腱板損傷の治療法には外科的な処置を施す手術療法と、注射やリハビリなどで機能の改善を図る保存療法とに分けられます。 ここでは、保存療法を中心に紹介します。腱板が傷んでしまうと、その性質から腱板自体が自然に修復するのは難しいのです。 そのため、腱板損傷を発症してしまったら以下のことに留意し、リハビリ等の治療にあたります。 ・痛みを減らし、悪循環を断つ ・腱板への負荷をできる限り減らす ・肩周囲の動きを良くする ・仕事、生活の動作習慣を見直す 痛みによる負のスパイラルから抜け出そう まず一番に対処すべき症状は痛みです。痛みが残っていると脳がその痛みを覚えてしまい、長引くことがあります。 さらに、痛みが続くと無意識に患部を動かさなくなってしまいます。そうなると関節の動きが悪くなり、結果的に肩関節に機能低下が生じてしまうのです。 痛み → 動かさない → 肩関節の機能低下 → 痛み ではどのように対処していけばいいのでしょうか。 医療機関を受診すると、痛み止めの注射やお薬を処方されることがあります。原因を根本的に治す治療ではないのですが、痛みを一時的にでも抑えることは大切なことです。それに加えて、生活の中でできることを紹介します。 前述したように、腱板損傷の方は夜間痛を訴えるケースが多くみられます。そんな人の寝方をみてみると、痛みのせいで悪い姿勢になっている人もしばしば見受けられます。 そこで試して欲しいのが、寝る姿勢の調節です。具体的には以下の通りです。 ・上半身を少し高くして寝る ・寝る時に痛い方の腕の下にバスタオルを敷き、リラックスした姿勢を保つ ・抱き枕で横向きに寝る 〔寝方の一例〕肘の下にバスタオル、腹部に小さめのクッションを置くことで、肩が正常な位置に保たれる。 しっかり睡眠をとることは、脳や体に良い休息を与え、自律神経の改善につながります。そうすると余分な筋肉の緊張も抜け、痛みが軽くなることがあります。 傷んだ腱板への負担をできる限り減らそう 先ほども言いましたが、一度傷んでしまった腱板は自然修復が難しく、より重度の損傷が起きてしまうと手術が必要なケースもあります。そのため、余計なストレスをかけず重症化を防ぐことが大切です。 ・重いものを持たない →どうしても持たなければならない場合は、以下のことに注意しましょう。 ・小分けにする ・腰をしっかり落として体の近くで持つ ・急に持ち上げない ・無理な体勢で物を取ろうとしない ・痛みが出ている肩を下向きにして寝ない 以上のことに気をつけて過ごしましょう。 肩は“肩”だけじゃない?! 肩と聞くと、腕の付け根のことをイメージするかと思います。実は、皆さんが思っている肩と医学的に言われている肩は少し違います。 医学的に言われている肩は、胸の中心にある胸骨、鎖骨、肩甲骨、肋骨など周辺にある様々な骨や関節を総合して『肩』と言います。 つまり、肩を効率的に動かすためには、これらの部位もしっかり動かせることが重要です。特に鎖骨周りや肩甲骨などは動きが悪くなることが多いので、意識的に動かしましょう。 写真①(鎖骨周りのセルフマッサージ) 写真②(肩甲骨を意識した肩回し) スポーツを行う人はトレーニングの他にテーピングも有効 スポーツ中のケガで腱板損傷を発症する方もいらっしゃいます。もちろんリハビリやトレーニング等で機能を戻すことが大前提ですが、場合によってはテーピングで腱板の機能の補助をすることも可能です。 今回は例として、棘上筋、棘下筋、小円筋をサポートするテーピングを巻いています。テーピングをすることで動きに違和感を覚えるかもしれませんが、安定性が増し、より安全にスポーツを行うことができます。 しかし、テーピングにも限界があります。痛みが強く出てしまう時は、無理せず患部の鎮痛および機能回復を待ちましょう。 まとめ・肩の腱板損傷の症状と機能改善を目指す保存療法について 今回は、腱板損傷の病態と保存的治療法について紹介しました。 腱板損傷は、他の肩の疾患と見分けがつきにくく、医療機関に受診しても見落とされることがあります。しかし、ほとんどの場合は詳しい検査で分かります。 自分で五十肩と決めつけず、痛みがあったり長引いたりする時は迷わず医療機関にご相談を。そして適切な治療を受け、快適な日常を少しでも早く取り戻しましょう。 以上、肩の腱板損傷の症状と機能改善を目指す保存療法について記してまいりました。参考になれば幸いです。 No.S088 監修:医師 加藤 秀一
2022.10.08 -
- 脊椎
- 脊柱管狭窄症
脊柱管狭窄症でやってはいけないこと あなたは脊柱管狭窄症が『薬で治る』と思っていませんか? 多くの日本人を悩ます、腰痛。腰痛の原因は様々ありますが、よく耳にする病名の一つに「脊柱管狭窄症」というのがあります。 本記事では、聞いたことあるけどイマイチよく分からない脊柱管狭窄症の原因や症状、治療法、そして脊柱管狭窄症との向き合い方を分かりやすく説明します。 脊柱管狭窄症とは? 脊柱管狭窄症は、50代以降の中高年に多く発症する腰部の疾患です。 脊柱とは24個の背骨(椎骨)で構成されており、それらが連なることで縦に長いトンネルができます。そのトンネルが脊柱管と呼ばれ、脳から伸びる脊髄神経が通る場所になります。 脊髄神経は、脳からの指令を手脚に伝えたり、手で触れたものなどの情報を脳に伝える役割をしており、その脊髄神経を保護する役割を担うのが脊柱管です。 脊柱管狭窄症は、その名の通り脊柱管がなんらかの原因により狭くなってしまい、脊柱管を通る神経や血管を圧迫している状態のことを指します。 出典「日本整形外科学会」https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spondiyolysis.html 脊柱管狭窄症の症状・原因 脊柱管狭窄症の症状は多岐にわたります。症状の中で当てはまるものがないかチェックしましょう。 脊柱管狭窄症の症状 脊柱管狭窄症の症状で特徴的なものに間欠性跛行があります。しばらく歩いていると下肢の痛みや痺れがひどくなり、歩くのが困難になります。 しかし、しばらく座ったり前屈みになったりして休んでおくと症状が落ち着き歩けるようになるのです。間欠性跛行以外にもさまざまな症状がありますので下記をご参照ください。 【脊柱管狭窄症の症状の例】 ・おしりから脚にかけての痛みや痺れがある ・脚に力が入らない ・長く歩いたり、立ったままになるのが辛い ・歩いているときに症状が出ても、少し休憩すれば症状が和らぐ ・体を反らす動きがしづらい ・体を前屈させると症状が楽になる ・尿漏れなどの排尿・排便障害がある 出典「日本整形外科学会」https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spondiyolysis.html 脊柱管狭窄症になる原因 脊柱管狭窄症がどのように生じるのか簡単に説明しました。ではなぜ狭窄が起こってしまうのでしょうか? 原因はさまざまありますが、ここでは3つ紹介します。 ①加齢による骨や軟部組織の変性が起こる 人間の体は20歳代半ばをピークに成長し、30歳を超えたあたりから機能が落ちてくると言われています。特に中高年では、加齢に伴う体の変化が顕著です。 そのため、背骨を構成する椎骨の変形や、椎間板の変性、靭帯の肥厚などが生じ、脊柱管が狭くなると言われています。 ②先天的な疾患によるもの 稀にですが、先天的に生じる脊柱管狭窄症があります。発育段階で脊柱管が狭くなっているせいで、比較的若い年代で症状が発症します。 割合としてはかなり少ないですが、比較的若い年代で上記の症状を有している人がいましたら詳しい検査を受けましょう。 ③普段の姿勢や体の使い方によるもの 加齢による骨や靭帯組織の変性と合わせて主な原因となるのが日々の姿勢や動作習慣です。特に反り腰の人に多くみられます。 背骨は首から骨盤まで繋がっているため、反り腰の原因は腰だけではありません。胸椎や骨盤、股関節の可動性の低下が影響します。 猫背や偏った姿勢をとることが多い人は特に注意が必要でしょう。 脊柱管狭窄症の診断 脊柱管狭窄症の診断には主にレントゲンやMRIなどの画像診断が用いられます。特に分かりやすいのがMRIで、骨以外の靭帯や椎間板の変性も確認しやすく、診断の手助けとなる検査法の一つです。 また、神経圧迫の程度や他の腰部疾患との鑑別のために、腱反射や感覚検査、筋力測定も行います。 脊柱管狭窄症の治療 脊柱管狭窄症の治療法は様々あります。大まかにいうと、内服やリハビリ、装具などを用いた保存療法と、外科的な処置を行う手術療法に分けられます。 保存療法 保存療法の例は以下です。 薬物療法 神経障害性疼痛という神経由来の痛みに効果的なお薬が処方されることがあります。また、局所の炎症を抑え、血液循環を良くする目的に神経ブロック注射を行うこともあります。 いずれも痛みの悪循環を断つ目的で行う治療法です。 装具療法 腰椎の不安定性がある状態や、圧迫により症状が緩和する場合はコルセットを処方されることがあります。コルセットは、腹圧を高めるサポートをし、背骨を安定させ、余分な筋肉の緊張を緩和する効果があります。 ただし、長期間装着することで腹筋の筋力が低下する可能性もあるため注意が必要です。 リハビリテーション リハビリテーションは、疼痛の緩和を目的とした物理療法と、関節の動きの改善、筋力の向上、体の使い方を改善させる運動療法からなります。物理療法の中には、電気刺激を与えて痛みを緩和させる電気刺激療法、温めることで痛みを緩和させる温熱療法を用いることがあります。 いずれも運動療法と併用して行うことでより効果が得られます。 運動療法は、理学療法士が中心となって、関節の動きや筋力の改善をサポートします。脊柱管狭窄症では、腰だけでなく、上部体幹(首や胸椎、胸郭など)や骨盤、下肢関節の動きも悪くなっていることが多々あります。 ストレッチや筋力トレーニング、姿勢の指導などその人に合わせたリハビリテーションを提供するのが特徴です。 手術療法 保存療法で症状の改善が見込めない場合や、神経の高度の圧迫により症状が強く出ている場合などには、手術療法を選択することがあります。 手術療法の一つに、狭くなった脊柱管を広げる方法があります。それは、椎弓と呼ばれる脊椎の一部と、肥厚した靭帯を部分的に切除する方法です。この手術により狭窄が解消でき、症状の改善につながります。 また、別の手術療法に、固定術というのがあります。腰椎分離症やすべり症といった背骨の不安定性を伴う脊柱管狭窄症の場合、神経を圧迫している場所の上下の背骨を固定する方法です。 いずれも重度な脊柱管狭窄症に用いられる手術療法ですが、その後のリハビリや生活習慣の見直しが重要となります。 脊柱管狭窄症で気をつけるポイント 脊柱管狭窄症の治療は簡単なものではありません。脊柱管狭窄症は、薬で完全に治る病気でもなく、手術したからといって完全に元のように痛みがとれるわけではないからです。 老化や長年の姿勢、負担のかかる動作の繰り返しなどがいくつも重なって生じるものなので、症状の改善も一筋縄ではいきません。 では、どういうところに気をつけて過ごしていくべきなのでしょうか。 歩き過ぎは禁物 リハビリに来られる患者さんの中には、 「歩くのが大事なんでしょ?」 と言って、痛いのを我慢してより長い距離を歩こうとする方も多くいらっしゃいます。 しかし、前述したように脊柱管狭窄症は間欠性跛行が特徴としてみられ、それだけ負担がかかっている状態なのでかえって痛みが増強することがあります。その結果、さらに悪い姿勢をとってしまう危険性もあるのです。 姿勢や動作の改善が大事 無理な歩き過ぎはかえってよくないとお話しましたが、ではどのように対処していけばいいのでしょうか。 対処法の一つに、ストレッチや筋力トレーニングがあります。それらを駆使して偏った体の状態を戻すことが重要です。 背骨は、首から腰までつながっており、S字にカーブしています。そのカーブによって背骨にかかる負担が分散され、安全に効率よく体を動かすことができます。しかし、脊柱管狭窄症の患者さんはよく反り腰になっているのです。 反り腰になることで、背骨の一つ一つがずれてしまい、その結果、脊柱管が狭くなってしまいます。反り腰は腰だけが悪いのではなく、首や胸椎など腰以外に原因があることが多いのです。 例えば、背中が丸まってしまうと、バランスをとろうとして自然と腰が反ってしまいます。スマホ首や、肩こりが多い人も要注意です。 そんな人は、首から肩周りにかけてストレッチをすることをオススメします。特に胸を張る動作がしづらくなっている方も多いので、胸を開くようなストレッチを頑張っていきましょう。 まとめ・脊柱管狭窄症でやってはいけないこと 本記事では中高齢者が悩む「脊柱管狭窄症のやってはいけないこと」について紹介しました。 脊柱管狭窄症は完治が難しく、内服や注射、手術にリハビリと多くの治療法が用いられています。症状を緩和することは大事なことですが、普段の姿勢の改善や無理な動作をしないなど、体を根本から変えることも必要です。 腰の痛みや痺れ、歩きづらさで悩んでいる方は、医療機関でしっかりみてもらうと同時に、普段の生活の中で負担になっている動きがないか、偏った姿勢をとっていないか見直してみましょう。 No.S086 監修:医師 加藤 秀一
2022.10.06 -
- 脊椎
- 腰部
- 腰椎分離症
腰椎分離症とは?成長期のスポーツ選手に多くその症状と原因、治療法を分かりやすく解説! 腰椎分離症をご存じですか? 今回は、成長期の疾患で意外と見落とされがちな腰椎分離症についてご紹介します。分離症はどのようになってしまうのか、なってしまった後の治療法や予防法などを分かりやすく解説します。 腰椎分離症はどういうもの? 腰椎分離症とは、10代前半から中盤(小学生高学年、中学生、高校生)の成長期のスポーツ選手に多い腰のケガです。 背骨を構成する腰椎の「椎弓(ついきゅう)」と呼ばれる部分に疲労骨折が起こり、その名の通り腰椎が2つに分離してしまう状態のことを言います。 出典「日本整形外科学会」https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spondiyolysis.html 発症は成長期ですが、腰椎分離症に気づかず、大人になってから指摘されるケースも珍しくありません。場合によっては、疲労骨折した部分がより離れてずれてしまう「腰椎すべり症」へと進行することもありますので、早期の発見・治療が必要です。 腰椎分離症の原因 腰椎分離症の原因は大きく2つあります。 まず一つめは、未熟な骨の脆弱性です。10代の子どもたちの骨はまだ未熟で、軟骨部分も多いため強いストレスが繰り返し加わると悲鳴をあげてしまいます。 二つめに、激しいスポーツ動作により繰り返される腰椎へのストレスが挙げられます。 以下に発症しやすい動作を伴うスポーツとその動作を挙げていますのでご参照ください。 [スポーツの種類の例] ・サッカー ・ラグビー ・バスケットボール ・バレーボール ・野球 [スポーツ動作の例] ・ダッシュ ・ストップ ・ジャンプ ・体の反り ・強く捻りを伴う動作 このような「反らす」「捻る」動作が特に負担がかかりやすく、繰り返し加わることで疲労骨折が生じます。さらに、カラダの柔軟性が低下していたり、下半身や体幹の力が弱くなっていたり、不良な動作を身につけてしまうことで、腰椎分離症を発症しやすくなるのです。 腰椎分離症の症状と診断 症状 例えば、こんな症状はありませんか? ・体を反らす、捻る動きによる腰の痛み ・スポーツ中やスポーツ後の痛み ・下半身のしびれ(神経症状) ・骨折した部分の圧痛(指で押した時の痛み) もしかすると、腰椎分離症の症状かも知れません。医療機関では以下のようにして診断が行われることがあります。 診断 痛みやしびれの程度は個人差がありますので、年齢やスポーツ歴、痛みの問診、理学所見、レントゲンやCT、MRIなどの画像検査で総合的に判断します。 ①問診 これまでの研究では、スポーツ選手の約3割程度が腰椎分離症を持っていると言われています。 スポーツ歴やどの動作で痛みやしびれが出るのか、これらを聴取することが重要な判断材料となります。 ②理学所見 理学所見は、身体の診察のことで視診、触診を中心に行います。 痛みの場所を触診したり、痛みが出る動きを再現させて原因を特定したりします。 ③画像診断 レントゲン: レントゲンで分離部(骨折部)がハッキリ写る(※1スコッチテリアの首輪)と進行期や終末期である可能性が高く、骨の癒合が極めて困難である場合が多い ※1スコッチテリアの首‥‥分離部が犬の首輪のように見えるためこのように表現されている。 CT: 骨癒合の状態をみることができるため、分離部の進行状況や固定期間の予測に有用。 MRI: 完全に分離していない初期段階の疲労骨折の発見に有用。ヘルニアの有無など他の腰部疾患との鑑別にも有用。 腰痛やしびれを症状とする腰部疾患は多く存在するので、腰椎ヘルニアや筋膜性腰痛などの他の疾患との見極めが必要です。 腰椎分離症の治療法3つのポイント では実際に腰椎分離症になってしまったらどのような治療をしていくのでしょうか。治療を進めていく中で重要なことは、「早期発見、早期治療」です。 他のどの病気にも言えることですが、ほったらかしにしておくと、高校生になった時や、大人になった時に痛みが再発し、思うように動けなくなってしまうことも多々あります。そのような状況を未然に防ぐことが重要です。 ポイント①疲労骨折部の安静 腰椎分離症の治療は「患部の癒合」が一番に優先されます。そのため、初期の段階であれば、患者のカラダに合わせた硬いコルセットを用い、患部に負担がかからないように固定し安静を保ちます。 コルセットを装着することにより、脊柱の捻るストレスを軽減することができるため、骨折部の癒合を促せるのです。骨が未熟な小・中学生では癒合の可能性も高いため、スポーツを一定期間中止し、癒合に専念することをオススメします。 ポイント②患部以外の柔軟性、筋力の強化 原因のところでも述べましたが、腰椎に負担がかかる要因は以下のことが挙げられます。 ・下肢(特に股関節など)や上半身(胸椎など)のかたさ ・下肢、体幹の筋力および筋持久力の低下 ・不良なスポーツ動作 これらの改善には、ストレッチや筋力トレーニングといったカラダのコンディショニングが重要となります。患部に負担のかからないところから徐々にストレッチや筋力強化をし、身体機能を上げていきましょう。 ポイント③腰椎へ過度なストレスにならない動作の獲得 柔軟性や筋力不足だけでなく、カラダの使い方も大きな原因となります。 例えば「カラダを反らせてください」と指示した時に、本来なら弓なりに背骨全体で反らせてほしいところ、胸が張れずに腰のところだけで反らせている人を多くみかけます。この動きだと腰だけに負担がかかりやすく、腰椎分離症を発症するリスクが高くなるのです。 また、カラダを捻る動きになると、頑張って背骨を捻ろうとしてしまいます。背骨の動きはそんなに大きな動きはできません。 カラダを捻る時に大事な役割をしてくれるのが、骨盤や股関節です。骨盤、股関節の動きが不十分だと背骨にかかる負担も増えてくるので、スポーツ復帰する前に改善しておきましょう。 予防の観点からもストレッチや筋力トレーニング、動作訓練は大切 前述した治療方法は、そのまま予防にもつながります。腰が痛くない人でも、普段から運動前後のストレッチやウォーミングアップ、クールダウンを徹底して行うとケガのリスクを下げることができます。 動作においても、日頃から自分の動きをチェックしておきましょう。無理な使い方をしていないか、指導者や保護者の方と一緒に確認することでケガの予防だけでなくパフォーマンスの向上にもつながります。基本的な動作の反復練習は、地味ですが大きな意味を持ちます。 腰椎分離症のQ&A 腰椎分離症になったらどうしたらいいの?腰椎分離症について、Q&Aでお答えしていきます。 Q.固定期間や安静期間はどれくらい必要? A.初期の腰椎分離症では、癒合の目安がおよそ2〜3ヶ月、進行期になると3〜6ヶ月と言われています。ただ、骨癒合には安静度や年齢、栄養状態などさまざまな要素が絡んでくるので一概には言えません。 定期的なCT画像検査により、癒合状況を確認することをオススメします。 Q.コルセットはずっとつけておかないといけないのか? A.医療機関にもよりますが、基本的にはお風呂以外の時間はつけておきましょう。 Q.安静にしておけば必ず骨癒合するのか? A.腰椎分離症にも初期から終末期があり、なりたての初期段階であればかなりの確率で癒合できます。しかし、終末期になると癒合は難しいので、体幹の強化や動作の改善の訓練を行い、患部に負担をかけない工夫が必要になります。 Q.固定以外にも治療方法はあるのか? A.終末期で症状がとれない、分離部がぐらぐらする、などといった症状が残っており、今後のスポーツ活動に支障を及ぼす可能性が高い場合に、手術療法を行うこともあります。 まとめ・腰椎分離症とは?成長期のスポーツ選手に多くその症状と原因、治療法を分かりやすく解説! 本記事では、腰椎分離症について原因や症状、治療法について紹介しました。 腰椎分離症は、早期に発見し、適切な治療を行えば後遺症も残さず治る傷害です。ただし、骨癒合まではある程度の期間、固定と安静が必要となります。 スポーツを休まなければいけないのは根気と我慢が必要となりますが、無理して治療を先延ばしにしておくと、痛みが長引くだけでなく、後になってより強い腰痛を引き起こす原因となることもあります。成長期の年代で腰痛に悩んでいる方は、ぜひ一度整形外科に相談してみましょう。 No.086 監修:医師 坂本貞範 ▼ 脊髄損傷の再生医療|最新の幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脊髄損傷の新たな治療法として注目を浴びています
2022.09.28 -
- 胸椎椎間板ヘルニア
胸椎椎間板ヘルニアとは?その症状と原因、治療について 胸椎椎間板ヘルニアをご存知でしょうか? 椎間板とは、背骨の間のクッションとなる組織です。それが、つぶれたり、変形したりして飛び出てしまうことを、椎間板ヘルニアと呼びます。ヘルニアとは、“飛び出る”という意味です。 人の背骨は全部で24個あります。これらのうち、首(頸椎)の背骨が7個、胸の背骨が12個、腰の背骨が5個あります。この胸の背骨の間にある椎間板がこわれて飛び出てしまうことを、❝胸椎椎間板ヘルニア❞と呼びます。 今回は、そんな胸椎椎間板ヘルニアについて解説していきます。 胸椎椎間板ヘルニアの原因と症状は? 椎間板の加齢による老化や、過度なスポーツが原因で引き起こる、胸椎椎間板ヘルニア。 胸椎椎間板ヘルニアの症状は、脚に出てきます。太ももやふくらはぎのしびれ、痛みが出ることがあります。脚の力が入らなくなったり、歩き方がおぼつかなくなったりします。最悪、歩けなくなることもあるので注意が必要です。 また、背中の痛みを感じることもあります。さらに、脇に放散する痛みがあることもあります。これを、肋間神経痛(ろっかんしんけいつう)と呼びます。中には、背中や肋間神経痛は出ず、脚の症状だけが出ることがある人もいます。 胸椎椎間板ヘルニアの特徴は? 胸椎椎間板は、胸の背骨(胸椎)にできます。実は、胸椎のヘルニアは珍しい疾患で、首や腰のヘルニアよりも起こりにくい疾患です。 これは、胸椎が、肋骨とつながっていて安定している為です。その為、胸椎は首や腰にくらべて椎間板のストレスが少なく済み、椎間板ヘルニアが起こりにくいのです。 胸椎椎間板ヘルニアは、胸椎の下の方に多いと言われています。これは、背骨が前後に曲がって、バネのようになっているからです。 背骨は曲がっていることで、上下方向にバネのように動かすことができます。ちょうど、胸椎の下はバネが曲がるところなので、ストレスが多くかかります。その為、胸椎椎間板ヘルニアの好発部位となります。 肋間神経痛(ろっかんしんけいつう)について? 胸椎の椎間板の脇から、肋骨に沿って神経が出ています。この神経を肋間神経とよびます。この肋間神経が圧迫されると、肋骨に沿ったしびれや痛みが出ます。 よって、胸椎椎間板ヘルニアが肋間神経を圧排すると、肋間神経に沿ってしびれや痛みを生じます。その為、脇の下にしびれが走ることが多くなったら、胸椎椎間板ヘルニアを疑いましょう。 実はこわい、胸椎椎間板ヘルニア!? 実は、胸椎椎間板ヘルニアはとてもこわい病気でもあります。放っておくと、急に脚が動かなくなる可能性すらあります。 胸椎椎間板の後ろには、脊髄があります。脊髄は手足を動かす神経の大もとです。これが、椎間板ヘルニアで押されると、急に脚が動かなくなることがあります。しかも、胸椎はもともと神経の通り道がせまいのです。その為、軽い椎間板ヘルニアであっても、症状が出やすく悪化しやすいと言われています。 急に尿や便が出ないことも!? また、胸椎椎間板ヘルニアの特徴として、尿を出したり、便を出したりする力がだめになることがあります。これは、胸椎の後ろを通る脊髄に、尿を出したり、便を出したりする自律神経を扱う部位がある為です。その神経を障害されると「急に尿や便がでない!」といった症状が出ます。 胸椎椎間板ヘルニアの診断方法は? 適切な治療を受ける為には、適切な診断が必要です。実は、胸椎椎間板ヘルニアは診断が難しく、見逃されてしまうケースも多い病気です。診断には整形外科を受診しましょう。レントゲン撮影やMRI画像検査で診断をおこないます。特に、MRIは椎間板がよく見えるので、確定診断につながります。 胸椎椎間板ヘルニアって、予防できる?薬で治るの? 残念ながら、有効とされる予防方法はありません。また、ヘルニアを治すのみ薬も現在ありません。 また、脚の動きが悪い場合は手術となるケースも多く、脚の運動障害は、薬や運動、鍼灸などでは改善することはできません。ですので、早めの病院への受診をしましょう。。 まとめ・胸椎椎間板ヘルニアとは?その症状と原因、治療について 椎間板の加齢による老化や、過度なスポーツが原因で引き起こる、珍しい疾患の胸椎椎間板ヘルニア。 太ももやふくらはぎのしびれ、痛みが脚に出てきたり、脚の力が入らない、歩き方がおぼつかないなどの症状を感じたら、胸椎椎間板ヘルニアを疑ってみましょう。軽い椎間板ヘルニアであっても、症状が出やすく悪化しやすいと言われています。 放っておくと、急に脚が動かなくなる可能性すらある怖い胸椎椎間板ヘルニア。症状を感じたら、早めの整形外科の受診をお勧めします。 No.S086 監修:医師 加藤 秀一
2022.09.27 -
- 手根管症候群
- 手部
手根管症候群とはどんな病気?症状と治療法をわかりやすく解説! 手根管症候群をご存知でしょうか? 手根管症候群は、手のしびれを訴えて病院を受診する人の中で最も多い病気です。 手根管症候群の可能性があるのは以下のような症状がある人です。 ・しびれや痛みが親指、人差し指、中指、そして薬指の半分(親指側)の範囲に現れる ・朝起きたときに症状が強く現れ、手をぶらぶらと振ると症状が軽くなる ・手のひらを上にして机の上に腕を置き、手首を上向きに90度程度曲げると、指の痛みやしびれが現れる 手根管症候群は放置すると親指の付け根の筋肉が痩せてしまい、小さいものをつまんだりする動作ができなくなります。 手根管とは 手根管は手のひら側の手首の部分にあります。具体的には手の骨(手根骨)の手のひら側に横手根靱帯という靱帯が横向きにあり、この手根骨と横手根靭帯の間のすき間を正中神経という神経と、指を動かすための9本の腱が通り抜けています。 手根管とはこの正中神経と9本の腱が通り抜けるトンネルのような部分です。 手根管症候群では横手根靭帯が浮腫んだり厚みが増すことで、トンネル部分が狭くなり、正中神経を圧迫することによって症状が現れます。またまれですが手根管にコブができて正中神経を圧迫することもあります。 正中神経とは 正中神経は腕にある主要な3本の神経(正中神経・橈骨神経・尺骨神経)のうちの1つです。 正中神経には痛みや物に触れた感じを伝える感覚神経と、筋肉を動かす運動神経が混ざっています。 感覚神経 親指、人差し指、中指、そして薬指の親指側半分の領域を担っています。 運動神経 手の範囲では、主に親指を動かす母指球筋を担当しています。 (正中神経は手根管よりも肩側ではその他に前腕の回内や手首を曲げるといった役割も担っています) 手根管症候群になる可能性のある病気 手根管症候群になる可能性のある病気としては、以下のようなものが挙げられます ・手首の骨折 ・手根管内の腫瘍 ・リウマチによる滑膜炎 ・アミロイドーシス ・甲状腺機能低下症 ・痛風 ・透析患者 しかし、手根管症候群になったら、上記のようないずれかの病気が必ずあるわけではなく、むしろ手根管症候群で最も多いのは、原因不明の「特発性」です。 手根管症候群は、妊娠や出産時期、更年期の女性にも多くみられます。これは女性ホルモンの乱れによって手根管部が浮腫み、正中神経を圧迫するためと考えられています。 その他にも、 ・パソコンをよく使う人 ・工具のドライバーをよく使用する人 ・振動する機械をよく使う人 など、仕事で手を酷使する人に多いという説もあり、上記のような仕事をする人は発症する可能性があるため注意が必要です。 手根管症候群の症状 手根管症候群の初期には人差し指、中指がしびれたり痛くなります。進行すると親指から薬指の半分(親指側)までしびれます。同じ範囲の感覚が鈍くなることもあります。これは正中神経の範囲です。 しびれや痛みは明け方に強く感じることが多く、手を振ったり、指の曲げ伸ばしをすると症状が軽くなります。人によっては手がこわばる、と表現する人もいます。 手根管症候群の初期症状があらわれているにもかかわらず、この症状を放置すると親指の付け根にある筋肉(母指球筋)がしぼんで、親指の動きに制限がでてきます。 例えば、小さなものを親指と人差し指でつまみにくくなる、親指と人差し指で〇をつくることができない、などです。 こんな症状はありませんか? ・ボタンがつまみにくい ・小銭を拾いにくい ・物をよく落とす ・親指と人差し指でOKサインがつくれない ・親指の付け根部分の筋肉のふくらみが減ってきた このような症状を自覚したら、医療機関にて相談してみることをお勧めします。その際に行われる検査について以下で見て行きましょう。 手根管症候群の検査 整形外科を受診すると、手首や手を動かして正中神経障害の症状が現れるかどうかを調べます。 ティネルサイン 手首を打腱器などで叩いて、正中神経の範囲の指にしびれや痛みを感じるかどうか調べる。 ファレンテスト 左右の手の甲を合わせて、手首を90°曲げたままにし、1分以内に正中神経の領域にしびれや痛みが現れるかをみる。これらの検査で確定診断できない場合は筋電図検査を行うこともあります。 筋電図検査 正中神経に電気を流して電気の伝わる速度を調べる。また、手根管にコブができている可能性がある場合は画像検査を追加します。 超音波検査/MRI 手根管部の腫瘤の有無を確認します。 手根管症候群の治療 手根管症候群と診断されたら、消炎鎮痛剤やビタミンB12、シップや塗り薬などの薬物療法、その他に手首を固定する装具の着用や運動制限などを行います。 炎症が強い場合には手根管内に炎症を抑えるステロイドなどの注射を行うこともあります。 これらの治療で改善しない場合や腫瘤がある場合、母指球筋が痩せている場合には手術療法が必要なこともあります。最近はできるだけ傷が小さくて済むような、カメラを用いた鏡視下手根管開放術や直視下手根管開放術などが主流です。 母指球筋の萎縮が強い場合は別の場所から腱を移動する母指対立再建術を行なうこともあります。 まとめ・手根管症候群とはどんな病気?症状と治療法をわかりやすく解説! 今回は、手根管症候群についてご紹介しました。 手のしびれを感じた場合に多くみられる症状が手根管症候群です。特に指先が上手く使えないことが多くあり、色々な病気が疑われるところですが、実際は突発性、原因が不明なことが多くなります。いずれにしても手にしびれや、指先が思うように動かせないなど、こちらで記した症状以外でも何か疑われることが1つでも感じた場合は、医療機関、整形外科等にて早めの診断が重要です。 比較的初期であれば飲み薬や、手首の安静などで症状が改善することが多くありますが、症状が進むと手術が必要になることもあり、重々注意しなければなりません。 以上、手根管症候群について記しました、参考になれば幸いです。 No.087 監修:医師 坂本貞範
2022.09.26 -
- 脊椎
- 腰部
- 腰椎分離症
腰椎分離症でやってはいけないこと3つ!正しい治療で悪化を防ぐ スポーツ活動をしている成長期の子どもによく見られる腰椎分離症。 選手として取り残される不安から、早く競技復帰したい気持ちになるかもしれません。しかし、正しい治療を守らなければ症状が悪化する恐れがあります。 今回は腰椎分離症でやってはいけないことを、治療の流れを確認しながら紹介したいと思います。 腰椎分離症とは 腰椎分離症は疲労骨折により背骨の骨が分離してしまった状態です。 背骨は椎骨(ついこつ)というブロックのような骨が積み重なってできています。 椎骨の背中側には椎弓(ついきゅう)と呼ばれる出っ張りがありますが、この椎弓が分離してしまうことで、腰から殿部、太ももにかけての痛みがみられます。また、骨折でずれた骨が神経を圧迫するとしびれが見られる場合もあります。 椎弓が分離する主な原因は成長期の過剰なスポーツ活動による疲労骨折で、成長期のスポーツ選手による腰痛の30〜40%を占めるとされています。 一度の衝撃で起こる骨折ではなく、骨が発達しきっていない時期に、腰を繰り返し捻ったり、ジャンプを繰り返したりして、椎弓部分にかかる負担が蓄積して起こります。骨折は発生の初期であるほど癒合(※)しやすく、完全に分離してしまったら骨が癒合することはありません。 (※癒合(ゆごう)・・・傷が治り、離れていた皮膚や筋肉、骨がくっつくこと) 腰椎分離症でやってはいけないこと3つ 腰椎分離症は骨折の早期であるほど骨が癒合しやすい為、正しい時期に無理をしないことが重要です。 そこで、腰椎分離症になった場合に、やってはいけないことを3つ紹介します。 ①無理な運動やスポーツをする 安静が必要な期間に無理な運動をすると、骨折している部分に負担がかかり、分離が悪化したり、骨が治癒するのを妨いだりしてしまいます。 特にスポーツ活動をしている場合、競技に早く復帰したい焦りから、少しでも体を動かしたい気持ちになるかもしれません。しかし、骨折部に負担がかからないように固定している期間は、腰を無理に曲げ伸ばししたり、捻ったりする動作は禁物です。 そのため、医師に指示されている間は、運動やスポーツは中止しましょう。 ②コルセットの装着を守らない 腰椎分離症の最初の治療として、疲労骨折により分離した部分を守るため、硬いコルセットの装着をして動きを制限します。腰痛があるうちはコルセットの装着を守るものの、痛みが軽くなればコルセットが動きを妨げるため、邪魔な感じがするかもしれません。 しかし、腰椎分離症は骨がしっかり癒合するより先に腰痛がなくなるため、痛みがなくなったからといって治ったわけではありません。そのため、痛みの程度により自己判断でコルセットを外さないようにすることが大切です。 ③痛い部分にマッサージやストレッチをする 腰痛があるからといって、痛い部分を圧迫するようなマッサージや腰をひねるようなストレッチをすると骨折を悪化させる恐れがあります。そのため、自己判断で痛い部分のマッサージやストレッチをしないようにしましょう。 ただし、腰椎分離症が起こりやすい発育期は、筋肉の柔軟性が低下して、腰椎分離症を含め、さまざまな成長期特有の怪我の要因となります。そのため、適切な指導のもとで行う脚のストレッチなど、骨折部分以外のストレッチを行うことは重要です。 腰椎分離症の治療の流れ 腰椎分離症ではやってはいけないことに関して理解を深めるために、治療の流れを知っておきましょう。 骨折の初期〜進行期(急性期) 疲労骨折が起こり、進行するまでの間を急性期(きゅうせいき)と呼びます。 急性期に治療を開始すれば、骨の結合する可能性が高いため、正しい治療を継続する必要があります。治療は硬いコルセットや体専用のギプスを着用して、腰の動きを制限するとともに、スポーツなどの運動を中止します。 あくまでも骨を癒合させるための治療ですので、痛みがなくなったからといって勝手に治療を中止しないことが大切です。しっかりと骨が癒合するのを待ち、医師の指示が出たら運動やスポーツを再開します。 骨折の終末期 骨の分離が進んでしまった時期を終末期(しゅうまつき)または慢性期(まんせいき)と呼びます。 慢性期で完全に骨が分離しまうと、再び癒合することは期待できません。そのため、骨を癒合させる目的での安静は行わずに、痛みをコントロールしながら運動やスポーツを再開していきます。 痛みのコントロールは、柔らかいコルセットを着用したり、痛み止めを服用したりします。分離したからといって強い痛みがなく、日常生活で支障が出ない場合も多く、腹筋や背筋などを鍛えていくことで腰痛の予防につながります。 成人に見られる腰椎分離症も骨が癒合することはないので、痛みが軽い場合は必ずしも仕事や運動を中止する必要はありません。 まとめ/腰椎分離症でやってはいけないことを守り悪化を防ごう 腰椎分離症は骨折部に負担をかけないようにして、骨が癒合するのを待つことが重要です。そのため、腰椎分離症でやってはいけないことをしっかり守る必要があります。 早期での治療が行われれば高い確率で骨が癒合する骨折ですので、腰痛が見られた場合は無理をせず早めに整形外科への受診をして、正しい治療を行いましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S085 監修:医師 加藤 秀一
2022.09.23 -
- 脊椎
- 腰部
- 腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症の後遺症!手術後に痛みや痺れが残る可能性について 部脊柱管狭窄症とは、背中に通る神経の束である脊髄を保護している脊椎のうち、腰骨に当たる部分が変形して脊髄を圧迫している状態をいいます。 これは加齢にしたがって生じることが多く、文字通り、脊柱管が狭くなることで神経を物理的に圧迫するため、足のしびれなどの症状や、腰痛などが起こります。 腰腰部脊柱管狭窄症の発症率は、高齢化社会を迎えている我が国では増加の一途を辿り、中年以降に発症する確率が高くなっているので注意が必要です。 この疾患に対する治療は、対症療法を含めて保存的加療が中心となりますが、症状を根本的に改善させるためには手術が有効とされています。 手術は、患者個々のケースで症状や、部位を診断したうえで、出来る限り正常な組織を温存して神経への圧力を減らす除圧術が望まれます。ただ、その一方で手術を行っても場合によっては症状が再発する可能性もあることを知っておきましょう。 今回は、腰部脊柱管狭窄症の症状と手術後のしびれ、うずき、痛みなどの症状が残った場合に新たな光明となる「再生医療」という先端医療の可能性について解説していきます。 腰部脊柱管狭窄症の症状 腰部脊柱管狭窄症という病気は、主に椎間板の変化や、その周りの靱帯が腫れて厚くなったことが原因となり、脊柱管を圧迫した結果、管内のスペースを狭めてしまい神経を圧迫し、発症します。 その結果としてお尻周辺の殿部から、足を中心に「下肢全体に“しびれ”などの症状」を生じさせます。時には「膀胱障害」なども現われることがあります。 現在において日本では概ね500万人以上の患者数が存在していると考えられており、超高齢化社会が進行するにしたがって今後、さらに本疾患で悩まれる方が増加していくことが予想されます この病気で感じる痛みは、腰椎椎間板ヘルニアほど強くはないのですが、それとは別に「下肢痛やしびれを代表とする感覚異常が主な症状」となり、患者さんを苦しめます。 腰部脊柱管狭窄症の症状については、安静時にはそれほどではないものの、歩行していると、ふくらはぎの筋肉がうずくように痛みだして、とても歩き続けることができない状態となります。 これはしばらく休憩すると落ち着くのですが、再び歩きはじめると同じように痛みだすという厄介なものです。 腰部脊柱管狭窄症は、60歳以降あるいは70歳前後の高齢者に多くみられるとされており、先に記した歩行時のような症状が進行すると、連続して動くことが出来なくなります。 それだけではなく、進行すると次第に安静時にも、しびれや、うずき、痛み等を強く感じるようになり日常生活に支障をきたすようになります。 腰部脊柱管狭窄症の治療と、術後のしびれや痛み 腰部脊柱管狭窄症における一般的な治療は、「薬物療法やブロック注射などの保存的治療」が行われますが、効果が見込めないケースでは「手術的治療」を考えねばなりません。 症状が軽い場合は、神経レベルの血流改善を図るべく、内服薬が処方されますが、数ヶ月以上服薬しても症状の改善がみられない場合や、逆に症状が悪化する際には、根治的な手術治療が考慮されます。 手術による治療成績は、おおむね良好です。術式としては、脊柱管間隙スペースを拡大することによって神経そのものへの物理的な圧迫を除去することになり、神経に関するものだけに慎重な手術が行われます。 ここで注意すべき点は、「手術前に長期間にわたって神経症状を自覚されている場合」です。 こうなると圧迫された神経そのものが元通りに改善できなくなる可能性があり、残念なことに例え手術が成功しても、しびれや、痛みなどの症状の回復が思い通りにいかない例もあるということです。 そして、実際にそのようなケースになった場合で日常生活に支障をきたすことがあります。こうなった場合は、一般的な保存的治療や痛み止めのブロック注射などをするしかなく、辛い症状が続くことになります。 そこで注目したいのが「再生医療」という文字通り再生を期待する医療です。 この再生治療の利点は、脊椎手術を受けたあとで下肢のしびれ症状が残存してしまっている方にとどまらず、腰部脊柱管狭窄症の術前状態で厳しい症状に日々悩まされている人にも推奨できる治療法であることです。 治療 ・保存療法(薬物療法、ブロック注射など) ・手術療法(保存療法で効果が見込めない場合) 手術 ・術前の症状が長期にわたっていた場合、術後にもしびれ、痛みが残る可能性 まとめ・腰部脊柱管狭窄症の後遺症!手術後に痛みや痺れが残る可能性について 腰部脊柱管狭窄症は、年齢を重ねると罹患しやすく特に高齢者に起こりやすい病気です。いわゆる椎間板ヘルニアや変性すべり症、あるいは椎体の変形や椎間関節および靭帯が厚く変化することによって脊柱管という神経を覆う管を狭くすることが発症します。 脊柱管内に存在している神経が圧迫を受けてしまうと「腰痛や下肢痛のみならず足全体のしびれや、うずき、痛みなどの症状を自覚」することになります。 治療法は、保存療法として消炎鎮痛剤、神経障害性疼痛に対する鎮痛薬、血流障害を改善するための血管拡張剤などをはじめとする内服薬を使用し、外用薬を貼付してブロック注射などを併用する場合があります。 これら数週間から数か月程度の保存的治療を行っても良い効果を示さない場合や、しびれ症状が強く下肢の筋力低下や膀胱、直腸障害がある場合には根治的な手術となる可能性が高くなります。 また昨今では、そういった手術治療と従来の保存治療の中間的な存在として「画期的な再生医療という選択肢」ができるようになってきています 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 ▼ 再生医療の可能性 自分自身の自ら再生しようとする力、自然治癒力を活かした最先端の医療です No.S016 監修:医師 加藤 秀一
2022.08.21 -
- 関節リウマチ
関節リウマチでやってはいけないこと 関節リウマチは、自己免疫疾患とみなされる炎症性疾患です。特定の食品や飲料を除去すること、また特定の運動や生活様式を避けることは、関節リウマチの人々の症状を緩和し、全体的に生活の質を向上させる可能性があります。 この記事では、関節リウマチを患っている場合に避けるべき飲食品、また生活様式を紹介します。 関節リウマチでやってはいけない!避けるべき食料品とは まず、関節リウマチには症状を悪化させる可能性のある飲食品があります。それについてご紹介しましょう。 砂糖に注意 砂糖の摂取は、元気な人であってもある程度の制限はすべきですが、関節リウマチを患っている場合は特に注意が必要です。 217人の関節リウマチを有する患者を対象とした、自己申告による研究では、20種類の食品のうち、砂糖入りの炭酸飲料とデザートを摂取することが、関節リウマチの症状を悪化させることと関係があると、報告しています。 (出典: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5563270/ ) さらに、約19万人の女性を対象とした大規模な疫学調査では、毎日1缶程度以上の砂糖入り炭酸飲料を摂取している人は、全く飲まない、あるいは毎月1缶未満程度しか摂取しない人に比べ、リウマチ因子陽性の関節リウマチを発症するリスクが63%上昇していました。 (出典:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5563270/) (出典:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4135503/)。 つまり砂糖は、「関節リウマチの悪化因子」であるだけなく、「発症リスクを高める因子」でもある可能性があるということです。なお、砂糖は、キャンディー、炭酸飲料、アイスクリームだけでなく、バーベキューソースやドレッシングなどのようにあまり目立たない食料品にも含まれているので注意が必要です。 加工肉と赤身肉に注意 赤身肉や加工肉も、関節リウマチを悪化させる可能性のある食品として知られています。 前述の217人の関節リウマチ患者を対象とした研究でも、赤身の肉は共通して関節リウマチの症状を悪化させることが分かっています。 (出典:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5563270/) さらに、約2万5千人を対象に詳しく調査した研究でも、赤肉の大量摂取は関節リウマチの危険因子である可能性があると判定されています。 (出典:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/art.20731)。 高度に加工された食品に注意 ファーストフードや朝食用シリアルなどの加工食品は、精製された穀物や砂糖、保存料、その他炎症を引き起こす可能性のある成分を多く含んでおり、すべて関節リウマチの症状を悪化させる可能性があります。 また加工食品を多用した欧米型の食生活は、炎症や肥満などの危険因子を助長し、関節リウマチの患者における心筋梗塞や脳卒中など、心血管系の疾患を発症する可能性が高くなることもわかっています。(出典:https://link.springer.com/article/10.1007/s10067-019-04916-4) 特定の植物油に注意 植物油に多く含まれる「オメガ6系脂肪」が多く、魚油やエゴマなどに含まれる「オメガ3系脂肪」が少ない食事は、関節リウマチの症状を悪化させることがあります これらの脂肪は健康維持に必要なものです。しかし、西洋系の食事に含まれる油はオメガ6系が多く、オメガ3系が少なすぎるため、双方の比率がアンバランスとなり、炎症が増加する可能性があります。 (出典:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5817233/)。 植物油などのオメガ6系脂肪を多く含む食品の摂取を減らし、脂肪分の多い魚などのオメガ3系脂肪を多く含む食品の摂取を増やすと、関節炎の症状が改善される可能性があります。 関節リウマチでやってはいけない!避けるべき運動や生活様式とは 次に、関節リウマチの方の症状を悪化させる可能性のある運動や生活様式をご紹介します。 過度な運動は避けましょう 関節リウマチの方々に、適度な運動は推奨されています。しかし、痛みを堪えなければできないほどの過度な運動は避けるべきです。 よく関節リウマチの方が痛みを訴えると、安静にすることを指導されます。しかしここでいう「安静」とは「まったく動かさない」」ということではありません。 むしろまったく運動しないことによって、各関節を支える筋肉の力が低下したり、筋肉が萎縮したりして、結果として関節が固まってしまって動かせなくなってしまう、拘縮を生じることがあります。 そこで手足の筋力や関節の可動域(動かせる範囲)を維持するために、適度な運動を行うことはとても重要なことです。 ただ関節が腫れたり、熱感があったりするときは、内服だけでなく冷湿布をし、安静にし、重い荷物を長時間持ったり、長時間歩いたりなど、関節に負担がかかることは避けるようにしましょう。 関節リウマチは、関節だけでなく全身が消耗する病気です。そのため、全身と関節の安静が必要です。夜、十分な睡眠をとるとともに、日中も疲れたら休憩や昼寝など適時休息をとることが大切です。心身の疲れを溜め込みすぎないように心がけましょう。 体や関節を冷やしすぎてはいけません 関節を冷やしすぎると関節痛が強くなったり、関節が動かしづらくなったりすることがあります。 寒い時期だけでなく、夏の時期も冷房の風が直接あたるのを避け、長袖や長ズボン、ブランケットなどで関節部位の保温を心がけましょう。ただし、関節が腫れて熱感があるときは、関節の炎症が起きている可能性もがありますので、その際は温めないようにしましょう。 首に負担のかかる行動を避ける 関節リウマチは、進行すると頚椎の炎症を起こし、頸部痛や頸部の運動制限を来します。そのような状況で、過度に首に負担がかかる行動をすると、頚椎の亜脱臼を起こして脊髄神経を圧迫し、四肢の痺れや麻痺、また呼吸障害をきたす可能性があります。 したがって、朝はできる限りベッドから急に立ち上がらず、一度腰を掛け間を置いて立つ習慣をつける。そして朝は不用意に首を回さないようにすることです。 また運動する時も首の運動は原則として禁止しましょう。首の骨に異常のないことが医師の診察のもと確認できていれば、指導を受けながら首の運動をすることは構いません。 まとめ・関節リウマチでやってはいけないこと 関節リウマチを患っている場合、健康的な食事とライフスタイルが症状の改善に役立つ可能性があります。加工度の高い食品、赤身の肉、揚げ物、砂糖を多く含む食品など、特定の食品や飲料を避けるべきであることがお分かりいただけたのではないかと思います。 是非、少しでも健康的な生活を送ることができるよう、この記事を参考にしていただけましたら幸いです。以上、関節リウマチでやってはいけないことについて記させていただきました。 No.085 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療の幹細胞治療に関する詳細は以下をご覧下さい 当院の再生医療は、自己脂肪由来の幹細胞治療を推進しています
2022.08.19 -
- 足底腱膜炎
足底筋膜炎になったら!その治療法とやってはいけないこと! アスリートをはじめとして日常的にスポーツを行う方の中には、かかと周囲の痛みに悩まされている方もいるのではないでしょうか。 この記事ではスポーツにおけるかかと周囲の痛みの原因となる「足底筋膜炎」について、その原因、症状、治療法などの一般的な内容から「足底筋膜炎を発症したら、やってはいけないこと!してはいけない、避けたいこと」などについて医師が解説します。 なお、本記事では一般的な注意点などについて解説しておりますので、個別の事象については各自で判断せず医療機関に相談するようにしましょう。 足底筋膜炎とは 足底筋膜炎は走ったり、ジャンプしたり、長時間立っている人によく起こるかかとの痛みを引き起こす病気です。 足底筋膜は足の裏にある、かかとの骨と足の指をつなぐ帯状の組織で、この部位に炎症が生じると足底筋膜炎になります。最も一般的な症状はかかと周囲と足の裏の痛みです。 痛みの症状は安静後に歩き出した時に強くなる傾向があり、朝起きた時の歩き出しやしばらく座ったままでいた後の歩き始めにひどくなることがよくあります。 足底筋膜炎の診断 足底筋膜炎の診断は、症状が出現するに至った経緯や症状の発生部位などから下されることが多く、足底筋膜炎を診断するためのレントゲンなどの画像検査や血液検査などは必要でないことが一般的です。 しかし、症状が典型的でない場合やほかの疾患が疑われる際に、その症状が他の原因によって引き起こされていないかどうかを確認する目的でレントゲンなどの画像検査や血液検査などを行うことがあります。 足底筋膜炎になりやすい人 足底筋膜炎は、かかとに繰り返し衝撃を受けるスポーツや、生活習慣や職業の人に起こりやすいと言われています。例えばランニングやダンスなどの運動を日常的に行うとそれがきっかけとなり、症状を発生し悪化させることがあります。 このような日常的な運動の他に足底筋膜炎のリスクを高める要因として、肥満、長時間の立ち仕事、足首の柔軟性の低さなどが考えられています。 日常的に運動を行う場合、過度なトレーニング(特に走る距離を急に増やすこと) 、不適切なランニングシューズ、路面が固い場所でのランニング、硬い路面での長時間の立ち仕事または歩行、偏平足などは特に症状を発生し悪化させる要因と考えられています。 足底筋膜炎の治療法と、その治療法別やってはいけないこと 足底筋膜炎によるかかとの痛みは、特別な治療を受けなくても1年以内に改善される方がほとんどと言われており、多くの人は症状が自然に良くなるために治療を必要としません。 しかし、次に述べる方法は症状の改善や、悪化の予防に効果があると考えられています。 安静にすること 運動を制限し、十分な休息をとることで症状が緩和されたり、症状の悪化を防げたりする場合があります。 → やってはいけないこと 安静が必要な間、ジャンプ、ダンス、長距離走など、過度かつ反復的なかかとへの衝撃は極力避けるようにしましょう。 しかし、完全に運動しないことは、関節が硬くなったり、痛みが再発したりする可能性があるため、適度な運動は必要と考えられています。簡単なウオーキングなどでも様子を見ながら行うべきでしょう。 冷却する 足底筋膜炎はかかと周囲の炎症ですので、症状のある部位に氷を当てるなどして冷やすことで、痛みを和らげることができます。運動前にアイシングやマッサージを行うこともあります。 → やってはいけないこと 症状が強くない場合などは温めたほうが症状の改善が得られるという専門家もおり、一定の見解は得られていません。 症状がひどい場合は、自己判断せずに医療機関等にて相談されることをお勧めします。 ストレッチ ストレッチによりかかと周囲の柔軟性を保つことで症状の改善に役立つ場合があります。効果的なストレッチには、ふくらはぎやかかとのストレッチ、足・足首を回すストレッチ、足の指でタオルを手繰り寄せる「タオルギャザー」などがあります。 参)タオルギャザーのやり方 1)床(フローリングが最適:〇、カーペットは避け✕、畳は注意:△)に大きめのタオルを敷く 2)タオルの端に足裏を載せますが、注意点は"かかと"は外側においたたままにしてください 3)そのまま、足の「指全体」を使ってタオルを引き寄せるようにして指を曲げる(タオルを指で掴むように) 4)引き寄せたタオルを離し、最初に戻って、改めてタオルを引き寄せる動作を繰り返します 5)タオル全体を引き寄せ終わることを目標にしましょう ※タオルは分厚い過ぎても、薄すぎてもやりにくいので色々試して下さい → やってはいけないこと 新しいエクササイズを始めるときは、無理をしないようにしましょう。 早く治したいと焦るあまり、過度なストレッチや、やり過ぎて痛みを感じるようだと症状を悪化させる可能性もあります 行う場合は、一度に多くではなく継続することが大切、慎重に痛みがでないよう、ゆっくりと行いましょう 本来であれば医療機関等の専門家の指導を受けて行うことをお勧めします 鎮痛薬 痛みがひどい場合は、鎮痛薬の使用を考慮します。市販の経口鎮痛薬を使用しても良いですが、これらの薬には多くの副作用の可能性があります → やってはいけないこと 薬剤による治療を行う場合には潜在的なリスクと利点を比較検討することが重要です 他の病気を持っていたり、すでに他の薬を飲んでいたりする場合などは、自己判断してはいけません 可能な限り専門診療科に相談するようにしましょう。 丈夫な靴を履く クッション性が高く、アーチとかかとをしっかりサポートするスニーカーは、足への負荷を軽減する可能性があります パッドやジェル状のインソールを靴に入れることも効果的です → やってはいけないこと スリッパ、ビーチサンダル、スリッポン、足に合わない靴や古い靴、裸足での歩行は足底筋膜に負荷をかける可能性があるため、避けることをお勧めします テーピング 特に朝一番に痛みが出やすい人は、患部の足にテーピングをすると効果的です 通常のスポーツテープにアレルギーや過敏症をお持ちの方は、低刺激性のテープを使用するとよいでしょう → やってはいけないこと 実際にどのようなテープをどう使用すれば良いかは専門家に相談して指導してもらうのをお勧めします 自己流で行うと悪い影響を与える可能性もあり、指導を受けて行いましょう その他の治療 痛みが改善されない場合、ステロイド注射や手術といった、より身体に負担の多い治療法が考慮される場合もあります。 痛みがひどい場合は、抗炎症作用のある薬(ステロイド)で、これを足に注射すると、一時的に痛みをすばやく和らげることができます → やってはいけないこと 通常、足底筋膜炎の患者さんに手術が必要になることはほとんどなく、その効果もまだ証明されていません 手術は他の治療法がすべて有効ではなく、少なくとも6~12ヶ月間、症状が持続して生活に支障がある場合にのみ考慮されます まとめ・足底筋膜炎を発症後、その治療法とやってはいけないこと 今回の記事では、かかと周囲の痛みの原因となる「足底筋膜炎の治療とやってはいけないこと」について解説しました。 足底筋膜炎は多くの場合、特別な治療を要せず症状の改善が得られますが、改善が乏しい場合や症状が強い場合などはできる限り最寄りの専門診療科に相談するようにしましょう。 参考になれば幸いです。 No.084 監修:医師 坂本貞範 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.08.16 -
- 肩関節
- 肩関節、その他疾患
ゴルフ肩(スイングショルダー)とは?その原因と治療法 はじめに 競技や趣味にかかわらずゴルフを行っていればゴルフ肩(スイングショルダー)という言葉を聞かれたことがあるかもしれません。また実際にゴルフ肩で悩んでいる方もおられるのではないでしょうか。 この記事ではゴルフ肩(スイングショルダー)について、その症状や原因と治療法について、医師が解説させて頂きます。なお本記事では一般的な注意点などについて解説しておりますので、個別の症状などについては各自で判断することなく医療機関にてご相談されることをお勧めします。。 ゴルフ肩(スイングショルダー)とは ゴルフ肩(スイングショルダー)は特定の病名ではなく、日常的にゴルフを行うことにより引き起こされる「肩関節周囲組織の損傷」による症状をいいます。症状は傷害される部位によって異なりますが、肩関節から肩甲骨周囲の痛みや腕にかけての痺れなどが一般的です。 多くの場合スイングの際に前方に位置する肩に傷害が起きやすく、特に右利きのゴルファーの左肩が怪我をしやすいと言われています。ゴルフ肩(スイングショルダー)に含まれる具体的な疾患名(または症候名)としては「腱板損傷」、「腱板断裂」、「上腕二頭筋腱損傷」、「肩峰下インピンジメント」、「変形性関節症」、「肩関節の不安定性」などがあります。 ゴルフ肩(スイングショルダー)に含まれる病名 ・腱板損傷 ・腱板断裂 ・上腕二頭筋腱損傷 ・肩峰下インピンジメント ・変形性関節症 ・肩関節の不安定性 ゴルフ肩(スイングショルダー)の原因 ゴルフは、クラブをスイングする際の非常に特殊な肩の動きを必要とするスポーツです。左右の肩が全く逆の動作をしなければならず、前方の肩はバックスイングの頂点で極端な内転姿勢になり、後方の肩は外転姿勢になるように伸ばされます。 この特殊な動作に加え、非常に重量のあるクラブを振り回し、地面の抵抗なども加わり、肩の障害を引き起こしかねません。 さらにゴルフでは、スイングを行う際にしばしば90°以上の水平および垂直の肩関節の運動を必要とします。 特にラウンドだけでなく練習中なども含めて、複雑な動きの組みあわされたスイング動作を繰り返し行うことによって、このような複数の動きの組み合わさることで肩の傷害の原因となることが指摘されています。頻繁にゴルフを行うことや長時間ゴルフをプレーすることも肩関節の障害のリスクと考えられています。 前後いずれの肩においても、「肩峰下インピンジメント」と呼ばれる病態が多くのゴルフ肩の原因となります。 ゴルフ肩(スイングショルダー)の検査 ゴルフ肩(スイングショルダー)は病名ではなく、一連の状況が起こす症状の総称であるため、その診断は主に症状が発生するに至った経緯と症状の部位によりなされることが一般的です。 しかし、肩関節には骨や筋肉だけでなく、神経や靭帯などさまざまな組織が存在するため、これらの傷害を詳細に検討するために関節のMRIを施行することがあります。 より高齢のゴルファーの場合には、インピンジメントなどの徴候や関節内組織の傷害だけでなく、肩甲骨と鎖骨のつなぎ目である肩鎖関節の位置関係や形態の変化を調べるためにレントゲンによる画像検査を施行することもあります。 また、関節超音波(エコー)検査はさまざまな体勢で施行することができるだけでなく、関節注射などの処置のガイドにもなるため施行されることがあります。 ゴルフ肩(スイングショルダー)の治療法 ゴルフ肩(スイングショルダー)は病名ではなく、一連の状況が起こす症状の総称であるため、傷害部位に応じた治療が必要になります。一般的には専門家によるリハビリテーションが主な治療となることが多く、提供されるリハビリプログラムは専門家によって違います。 リハビリは、肩関節に負担をかけない肩甲骨の運動矯正、肩関節の内外転・内外旋のバランス調整、およびスイングの矯正などゴルフに特化したリハビリテーションが含まれます。 特にゴルフでは、体幹を安定させることとスイング動作における全身運動の改善が不可欠です。一方で、関節唇損傷など、手術による治療などの特殊な治療を要する場合もありますので、まずは専門家に相談しましょう。 ゴルフ肩(スイングショルダー)のリハビリから競技への復帰 ゴルフ肩(スイングショルダー)の治療から競技への復帰は一般的に以下のようなプロセスを必要とします。 |症状の改善: 運動負荷を減らす、状況に応じて消炎・鎮痛を行うなどして症状の改善に努めます。症状が強いと協調運動に制限が出たり、リハビリテーションがうまく進まなかったりする可能性があります。 → そのため、まずは運動負荷を減らして症状の改善に努めることが多いです。 |筋力と柔軟性の強化: とくに肩関節周囲の筋力と柔軟性を強化することで、症状の改善だけでなく再発の予防や競技能力の向上が見込める場合があります。 → 競技前にウォームアップの習慣をつけることも効果的と考えられています。 |軽負荷による競技再開: ゴルフ肩(スイングショルダー)の治療と並行してゴルフの動作に特化したゴルフ復帰のためのリハビリを行うことが一般的です。手術などの体の負担の大きな治療を要した場合でも、3~4週間以内には患部の腕を使った片手のパッティングを始めることができ、ゴルフに特化したリハビリを進めることができます。 ・症状やリハビリの進行状況に応じてスイングを模した簡単な体のひねり運動を行い、体幹と全身の強調運動の強化を徐々に再開します。 ・専門家の指導のもと段階的に競技負荷を強くしていき、2ヶ月目か3ヶ月目には徐々に競技に復帰することができることが多いです。 最後に・ゴルフ肩(スイングショルダー)とは?その原因と治療法 今回の記事では、ゴルフ肩(スイングショルダー)の原因や治療について解説しました。ゴルフのスイングによる肩関節周囲組織の傷害はこのスポーツ競技特有のものです。 リハビリテーションを含む治療には医師や理学療法士などのさまざまな職種の連携が不可欠となりますので、治療にあたっては、なるべく早期に整形外科等、専門診療科に相談するようにしましょう。 手術を避ける再生医療という先端治療もあり、選択の幅も広がってまいりました。以上、参考になれば幸いです。 No.083 監修:医師 坂本貞範 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています ▼ 再生医療で腱板損傷を治療する 腱板損傷は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます
2022.08.15 -
- 脊椎
- 肩関節
- 肘関節
- 手部
- 股関節
- ひざ関節
- 足部
喫煙が関節症に与える影響/電子タバコは安全か? 喫煙することと関節症の間には、一見何も関係がないようにみえます。 しかし最近いくつかの研究の結果から、関節症の経過にタバコがよくない影響を与えていることが明らかになってきました。 そこで今回の記事では、喫煙と関節症の関係についてご説明します。さらに電子タバコによる影響についても、解説いたします。 喫煙が関節症に与える影響 喫煙そのものは、肺がんや肺疾患、また動脈硬化や脳血管障害など、わたしたちの体のあらゆるところによくない影響を与えることは、よく知られていることかと思います。 ここでは特に、関節症の方に対して喫煙が与える影響についてご紹介します。 死亡リスクの増加 関節リウマチと診断されている方が喫煙を続けていると、非喫煙者に比べて死亡率が増加することがわかっています。 121,700人の女性が参加する追跡調査で、追跡中に関節リウマチと診断された923名を分析しました。このうち36%は関節リウマチと診断される前に一度も喫煙したことがなく、43%が過去に喫煙しており、21%が現在も喫煙者でした。 この調査によると、関節リウマチと診断された後も年間5パック以上の喫煙を続けていた女性は、診断前から喫煙をしていなかった人や関節リウマチと診断された後に禁煙した人たちと比べても、死亡リスクが2~4倍も高くなっていました。 診断後に禁煙することで、喫煙を継続するよりも死亡リスクは低くなっていましたので、早めに禁煙することは有効だと言えるでしょう。 (参考文献:https://acrabstracts.org/abstract/smoking-behavior-changes-after-rheumatoid-arthritis-diagnosis-and-risk-of-mortality-during-36-years-of-prospective-follow-up/) また5,677人の関節リウマチの方を平均して約5年間追跡調査した研究では、喫煙者の心血管障害や呼吸器疾患による入院率は、非喫煙者の2倍になっていました。 入院するリスクは、禁煙1年後に著しく低下していましたので、こちらも早めに禁煙することが予後を改善することにつながります。 (参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5623338/) 手術の合併症の増加 喫煙者と非喫煙者における、膝関節置換術の経過を比較した研究があります。 合計で8,776人の膝関節再置換術を受けた方を対象に実施した研究です。このうち、11.6%が現在も喫煙者でした。再置換人工膝関節置換術を受けた喫煙者は、非喫煙者と比較して、あらゆる創傷合併症、肺炎、および再手術の割合が高くなっていました。 (参考文献:https://www.arthroplastyjournal.org/article/S0883-5403(18)30282-1/fulltext) タバコを吸うと、一酸化炭素が赤血球内に取り込まれ、その結果、全身の組織に運ばれる酸素が少なくなります。手術部位が適切に治るためには、酸素を十分に含んだ血液が必要です。 タバコを吸うと、この治癒プロセスの重要な部分が滞り、治癒に時間がかかるようになると考えられています。 病状の悪化 159人の変形性膝関節症の男性を最長30ヶ月間追跡調査したところ、喫煙者は非喫煙者に比べて関節症による膝の痛みが強く、軟骨が著しく失われる可能性が2倍以上であることがわかりました。 (参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1798417/) X線写真の撮影が可能であった311人の初期リウマチ性関節炎の方をフォローした調査では、1年後にX線写真の進行がみられる独立した予測因子は、喫煙でした。つまりX線写真上で悪化する危険因子に喫煙があることがわかりました。 (参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4515990/) タバコに含まれる有害物質が軟骨の減少に寄与している可能性や、血中の一酸化炭素濃度が高いことが、軟骨の修復を妨げている可能性があると推測されています。 電子タバコの関節症に与える影響 電子タバコ(e-cigarettes)の使用率が急速に高まっていますが、電子タバコの使用が関節症状に対して与える影響について、まだ詳細はわかっていません。そこで行われたので、米国で924,882人の成人を対象に実施された、最大規模の全国電話調査です。 この調査では、電子タバコの使用歴と炎症性関節炎に関する情報を入手し、解析しています。 その結果、電子タバコ使用者と電子タバコ未使用者を比較したところ、電子タバコ使用者の方が炎症性関節炎により罹りやすいことが確認されました。この傾向は、電子タバコ使用者でも電子タバコと通常のタバコを併用する使用者でも同様であることがわかりました。(参考文献:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphar.2022.883550/full) まとめ・喫煙が関節症に与える影響/電子タバコは安全か? 喫煙と関節症の関係、また電子タバコと関節症の関係についてご説明しました。 いずれにしても喫煙は関節症に対し、良い作用は何もないと言えるでしょう。ただ禁煙することで、予後や合併症の改善がみられることも事実です。まだ電子タバコを含め喫煙しておられる方がおられるようであれば、できる限り早く禁煙に取り組むことをお勧めいたします。 No.082 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療に関する詳細は以下をご覧下さい 自分自身の自ら再生しようとする力、自然治癒力を活かした最先端の医療です
2022.08.09 -
- 脊椎
- 脊椎、その他疾患
- 健康・美容
側弯症とは?その症状と原因、治し方について 小中学校での検診で、多くの方が一度はチェックを受ける側弯症という症状をご存知でしょうか? 昔の検診内容なんて覚えていないかもしれません。しかも、一般的に身近に感じることがあまりない病気だからです。この病気は、幼少期には見つかりにくく、思春期に見つかることが多い病気です。また、成人してから進行しはじめる場合もあります。 今回の記事では、側弯症とは、その症状と原因、治療法についてご説明しましょう。 側弯症とは? 側弯症とは、文字通り、背骨が横側に弯曲する病気です。多くは思春期に診断され、脳性麻痺や筋ジストロフィーなど、筋肉や神経の疾患を持っている場合に起こりますが、それ以外、原因がよくわからないことも少なくありません。 側弯症の程度について、多くの場合は軽いことが一般的ですが、なかには成長するにつれて悪化していくものもあります。側弯症状が進行すると、胸部の空間が狭くなり、肺が適切に機能することが困難になることもあります。 また体の動きに支障が出ることもあるため、装具を着用したり、重い場合は手術が必要となることもあります。 側弯症の症状 側弯症の症状には、以下のようなものがあります。ただ、進行するまで本人は生活に支障を感じることはありません。 真っ直ぐに立っているのに、以下のような症状が見られます ・肩の位置が左右で異なる ・腰の位置が異なる ・片方の肩甲骨が飛び出して見える ・胸郭の片側が前に突き出ている、前屈みになった時、背中の片側が隆起する 側弯症の多くで、脊柱は左右に曲がるだけでなく、回転またはねじれを起こしている場合もあります。そのため、体の片側にある肋骨や筋肉が、反対側にある肋骨よりも大きく突き出てしまうことがあります。 日本では、小中学校で行う検診の項目に含まれていることもあり、検診で気づかれることがあります。 なお進行すると胸郭が肺に圧迫され、呼吸が困難になることがあります。また体の中心が片方へ傾いてしまうため、運動や生活に支障をきたすこともあります。 適切に治療されていないと、慢性的な背中の痛みを抱えやすくなります。 ・運動や生活に支障が出る ・慢性的な背中の痛みを抱えやすくなる 側弯症の原因 側弯症は、原因が特定できない。特発性側弯症が最も多く見られるタイプです。ただし、家族内で発症することがあるため、遺伝的要因が関係している可能性が考えられています。 そのほか、脳性麻痺や筋ジストロフィーなどの特定の神経筋疾患、脊椎の骨の発育に影響を及ぼす先天性異常、乳児期に胸壁の手術を受けたことなどが影響することもあります。 なお特発性側弯症を発症する危険因子には、以下のようなものがあります。 危険因子 ・年齢:一般的に思春期に始まる ・性別:女児に多くみられ、かつ女児の方は側弯が悪化し、治療を必要とするリスクがはるかに高くなる ・家族歴:側弯症は、家族に遺伝する可能性がありますが、全く家族歴がないこともあります 側弯症の診断 最初に詳細な病歴を聴取し、最近の成長やもともと抱えている病気について確認します。 身体診察では、子どもを立たせてから、両腕をゆるく垂らしてお辞儀をするように腰を前に曲げ、胸郭の片側がもう片側よりも突出しているかどうかを確認します。 また、筋力低下、しびれ、反射の異常の有無を確認します。 画像検査 X線検査は、側弯症の診断を確定し、脊柱の弯曲の程度を明らかにすることができます。弯曲が悪化しているかどうかを確認するために、何年にもわたって何度もX線撮影を行うため、繰り返しの放射線被ばくが懸念されます。 磁気共鳴画像(MRI)は、脊髄の異常などの基礎疾患が疑われる場合に検討されます。 側弯症の治療法 脊柱側弯症の治療法は、弯曲の重症度によって異なります。ごく軽度の弯曲を持つ子供は、通常、全く治療を必要としませんが、成長とともに弯曲が悪化していないかどうか、定期的なチェックが必要な場合があります。 脊椎の弯曲が中等度または重度の場合は、装具や手術が必要になることがあります。考慮すべき要因は、子どもの成熟度、弯曲の程度、性別などです。 子どもが十分に成熟し、骨の成長が止まっている場合、弯曲が進行するリスクは低くなります。つまり、骨がまだ成長している子どもには、装具が最も効果的です。なお骨の成熟度は、手のレントゲンで確認することができます。 また弯曲が大きいと、時間とともに悪化する可能性が高くなりますし、女の子は男の子よりも進行のリスクが高くなります。 1.装具 骨がまだ成長しており、中程度の側弯症である場合、装具の使用が検討されます。装具をつけることで側弯症が治ることはありませんが、通常は弯曲が悪化するのを防ぐことができます。 最も一般的な装具は、プラスチック製で、胴体部分にフィットするように作られています。この装具は、腕の下と胸郭、腰の周りにフィットするため、服の上からはほとんど見えません。 装具は1日に13時間から16時間装着します。装具の効果は、1日に装着する時間が長いほど高くなります。なお装具を装着していても、多くの活動に参加でき、ほとんど制限を受けません。 必要であれば、装具を外してスポーツやその他の運動に参加することもできます。 装具は、身長の変化が見られなくなったら終了します。平均して、女の子は14歳、男の子は16歳で成長が完了しますが、これには個人差があります。 2.外科手術 重度の側弯症は、通常時間とともに進行するため、弯曲を矯正し、悪化を防ぐために、手術を検討する場合があります。 なお手術には、椎骨と椎骨の間に骨片や骨に似た物質を挟み込み、脊椎の2つ以上の椎骨をつなぎ合わせ、それぞれが独立して動けないようにする脊椎固定術が一般的です。 若くして側弯症が急速に進行している場合、成長に合わせて長さを調節できる拡張可能なロッドを背骨に沿って1本か2本取り付けることもあります。ロッドは数か月ごとに、手術またはクリニックで長さを調節します。 脊椎手術の合併症として、出血、感染症、神経損傷などが考えられます。 まとめ・側弯症とは?その症状と原因、治し方について 側弯症について、その原因や治療法についてご説明しました。 早い段階で発見し、適切に継続して診療を受けていれば、長期にわたる問題を起こすことを避けることができる可能性が高くなります。気になる場合は、かかりつけの医療機関、整形外科医にご相談ください。 No.081 監修:医師 坂本貞範
2022.08.08 -
- 脊椎
- 腰部
- 脊椎、その他疾患
坐骨神経痛やってはいけないこと! 坐骨神経痛の痛みは、慢性的な背骨への刺激によってできた骨の棘や、椎間板ヘルニアが腰の脊髄神経根を圧迫し、背中や足、臀部に耐え難い不快感をもたらします。 坐骨神経痛に悩んでいる方は、内服薬に始まり、理学療法、硬膜外注射など、痛みを止めるために、あらゆる方法を試されているかもしれません。しかし、日常的によくとりがちな行為が症状を悪化させてしまうことがあることをご存知でしょうか? そこでこの記事では、坐骨神経痛に悩む方が「やってはいけないこと」「避けるべきこと」についてご紹介してまいります。。 1.重いものを持ち上げてはいけない! 坐骨神経痛の急性期に荷物などを持ち上げる場合、たとえ数kgであっても、かなりの負担になる可能性があり、坐骨神経痛を悪化させることがあります。それでも荷物などを持ち上げねばならないときは体から遠い場所にあるものをその位置関係のまま持ち上げようとしないでください。 できれば持ち上げない方が良いのですが、そうもいかない場合、効果的な対処法は、足を肩幅に開き、対象物の近くに立つ。膝を曲げて、対象物に向かって背中を伸ばしたままでしゃがむ。 左右の手で物を持ち、持ち上げる。頭、背中、お尻が一直線になっていることを意識します。臀部と腹部の筋肉を引き締める。しゃがんだ状態から物をできるだけ体の近くで持ち、背筋をできるだけ伸ばして、足の筋肉で立ち上がるようにして持ち上げます。 このような持ち上げ方をすることで、腰への負荷を最小限にすることができます。 腰への負担を減らす荷物等の持ち上げ方 ・身体から遠くのモノを持ち上げない ・足を肩幅に開き、持ち上げるモノの近くにポジションをとる ・頭、背中、お尻を直線にする意識で膝を曲げてしゃがむ ・臀部と腹部の筋肉を引き締め、頭、背中、お尻を直線にする意識を持ち足の筋力で持ち上げる 2.長時間、座りっぱなしではいけない 長時間座っていると、腰に負担がかかってしまうため避けたいものです。 そこで、例えばオフィスであれば2~30分くらい経ったら、立ち上がって少し歩いてから座り直します。長時間の乗り物に乗る場合は、坐骨神経痛の痛みを避けるために、こまめに休憩を取るようにしましょう。 ちなみに座るときは、前屈みにならないようにし、また柔らかいソファーに座ることは腰に負担がかかるのでやめましょう。ずっと座っていると腰や背中の筋肉が硬直してしまい、運動能力も低下してしまいます。 数時間おきには休憩を入れ、しっかりと歩き回り、背筋を伸ばすことです。そうすることで負担を軽減するばかりか、腰への負担を乗り越える力を蓄えることもできます。 座る場合は腰に負担を掛けない姿勢を維持する ・深く腰掛ける ・背筋を伸ばす ・頭や肩を後ろに引くイメージで猫背は厳禁 ・足を組まない ・同じ姿勢を続けない ・急な動きを行わない 3.ハムストリングスのストレッチをしてはいけない ふくらはぎの筋肉であるハムストリングをストレッチさせると、坐骨神経痛が悪化することがありるため、注意が必要です。 これは準備運動などの一環でよく行われる動作ですが、ハムストリングを伸ばす行為は、坐骨神経に刺激を加え、痛みを増強させることがあります。 したがって、坐骨神経痛の痛みがあるときは、全身の筋肉を温めるウォーキングや、水の浮力を利用して背中に体重をかけない水泳を試してみてください。 ハムストリングとは ・太ももの内側の半腱様筋、半膜様筋と、外側にある大腿二頭筋からなる3つの筋肉の総称です。 4.前かがみになってはいけない 例えば屈みで物を取ろうとすると、前屈みの姿勢に対して、背骨にかかる力が増大します。更に持ち上げようとしている物の重さが組み合わさると、靭帯、骨、椎間板に負荷がかかり、坐骨神経痛が悪化する可能性があります。 そこで、地面に落ちているものを拾うときや、普段の生活で食器洗機から食器、衣類乾燥機から洗濯物を出し入れするときは、まず背骨をまっすぐにし、そのままの姿勢で膝を曲げて腰を落とします。 食器洗い機からは一気に多くの食器を取り出すことは避け、重いものを保たないようにします。こうすることで、腰に負担をかけることなく目的を果たすことができます。 ・背中(背骨)をまっすぐする意識を持つ 5.間違ったサイズの椅子に座ってはいけない 座り心地の悪い椅子は、腰椎を支えきれず、坐骨神経痛の症状を悪化させる可能性があります。逆に沈み込み過ぎるような椅子も避けたいものです。 最善の椅子は、背骨を伸ばしたままでニュートラルな姿勢を保てるような、人間工学に基づいた椅子を使用することです。股関節と膝の角度が90度の状態で、足の裏を床にフラットにつけて座っていられることを意味します。 6.背骨をねじりすぎてはいけない 背骨をひねる動作と前屈や側屈などの他の動作を組み合わせると、腰の痛みを悪化させることがあります。やってはいけないことの例は、雪かきや間違った方法で物を持ち上げることです。 すでに何度か説明したように、ものを持ち上げるための正しい方法を学ぶことです。合わせて体幹のコアマッスルを強化するエクササイズを行い、柔軟性、可動域を向上させ、怪我を防ぐために運動や活動をする前にストレッチを行うことです。 7.ベッドで柔らかすぎるマットレスに寝てはいけない ベッドで仰向けになると、腰に負担がかかります。ベッドで休む時は横むきになると良いでしょう。また柔らかいマットレスも腰に負担がかかります。ある程度硬いマットレスのほうが健全です。 またベッドから立ち上がる時は、ゆっくりと起き上がるだけでなく、腰に負担がかからないようにすることを意識します。特にベッドから腰を上げる時は、膝の力を使うこと、両手を膝について力を膝に集めることも有効でしょう。 8.体を冷やしすぎてはいけない 腰や足を冷やしすぎると自律神経が興奮し、体が常に緊張状態になってしまいます。そのため、筋肉が固まってしまい、神経を更に圧迫してしまうと考えられています。 特に夏場に冷房の効いた部屋に長時間滞在すると症状が悪化しやすいので、ブランケットや薄手の上着などを持ち歩くなどして対策するようにしましょう。 9.太ってはいけない 脂肪をつけすぎないこと、太らないようにすることも、坐骨神経痛の症状を悪化させないために重要です。 食べすぎや運動不足によって上半身に脂肪が付きすぎると、腰に大きな負担がかかってしまいます。坐骨神経痛の症状がある人は、食事量や運動量を調節し、脂肪が付かないように、太りすぎないように気を付けましょう。 まとめ・坐骨神経痛やってはいけないこと! 坐骨神経痛で悩む方がやってはいけないこと、注意すべきことををいくつかご紹介しました。 坐骨神経痛は、腰の神経が圧迫されることで引き起こされる症状で、背中や足、臀部に激しい痛みやしびれを感じます。この症状を改善するためには、日常生活で以下の8つの「やってはいけない」ことに気を付ける必要があります。 やってはいけない!8つのこと 1. 重いものを持ち上げない 2. 長時間座りっぱなしにならない 3. ハムストリングスのストレッチをしない 4. 前かがみにならない 5. 間違ったサイズの椅子に座らない 6.背骨をねじりすぎてはいけない 7.ベッドで柔らかすぎるマットレスに寝てはいけない 8.体を冷やしすぎてはいけない 腰や足を冷やしすぎると自律神経が興奮し、体が常に緊張状態になってしまいます。 以上の8つのことに気を付けることで、坐骨神経痛の症状を軽減することができます。しかし、これらのことだけでは根本的な解決にはなりません。 坐骨神経痛の原因は人それぞれ異なりますので、医師や理学療法士などの専門家に相談し、適切な治療を受けることが重要です。 特に適切な立ち方やものの持ち上げ方には、アドバイスや訓練をすることでより効果的にできるようになります。是非かかりつけの整形外科医やリハビリの担当者に相談してみましょう。 No.S084 監修:医師 加藤 秀一
2022.08.03 -
- 半月板損傷
- ひざ関節
半月板損傷を早く治す!効果的なリハビリテーション3つのステップ 半月板という組織は、繊維軟骨でできていてCの型、まさに半月状の形をした組織です。部位は、膝関節の大腿骨と脛骨の間にあり、膝の内側と外側の場所に存在しています。 この半月板は、膝の滑らかな動きを可能にするほか、膝を安定させて荷重を分散させたり、物理的な外力による衝撃を吸収する機能を果たしています。 このような役割を持つ半月板が事故や、スポーツなどの激しい動きなどによって損傷し、万一慢性化すると将来的に変形性膝関節症を引き起こす懸念があります。 そのため本疾患に対してリハビリテーションを視野に入れながら適切に治療を行うことが重要になります。今回は、半月板損傷とはどのような病気なのか、半月板損傷を慢性化させず、早く治すためのリハビリテーションについて詳しく解説していきます。 半月板損傷とは 膝の障害というと年配者のイメージがありますが若年者であっても過度な運動などによってスポーツ傷害を引き起こすリスクが危惧されており、その中でも特に頻繁に認められる疾患が半月板損傷と言っても過言ではありません。 半月板損傷は、スポーツの際に起きる怪我から発症するのみならず、加齢に伴う場合が多いのも事実です。傷つきやすくなっている半月板組織にわずかな外力が負担となって、加重されることにより、損傷し断裂を起こす症例も存在します。 半月板が損傷すると膝部に疼痛が生じて運動時や、膝を屈曲・伸展する場合に膝に引っかかり感を覚えることがあり、ひどいケースでは激痛のために歩行できなくなる、もしくは関節内部で強い炎症を引き起こして水が溜まり、膝部分が明らかに腫脹することもあります。 半月板損傷を発症した際の主な治療手段としては、「保存治療」と「手術療法」が挙げられ、特に前者では安静を保持して抗炎症薬などの薬物を内服する、あるいはリハビリテーションを実践することになります。 半月板損傷の手術後のリハビリテーションについて 半月板損傷も、治療や症状によってリハビリテーションの方法が異なります。手術による治療を行った後のリハビリテーションについても事前に確認しておきましょう。 半月板縫合術における術後のリハビリテーション 半月板縫合術による施術の場合、損傷の程度や部位によってリハビリテーションにおけるスケジュールが異なりますので注意してください。 縫合箇所が再び断裂してしまうことを防ぐため、2週間程度は松葉杖での生活になるでしょう。また、膝の曲げ伸ばしにも制限があるため、激しい運動はできません。 術後6週程度から、軽めのジョギング等の運動が可能になります。スポーツなどへの復帰は10週程度で段階を経て行っていくのが一般的です。 ただし、重症のケースや経過によってはスポーツへの復帰が半年前後かかる場合もあります。術後の経過や回復に応じて臨機応変に対応していくことがポイントになります。 半月板切除における術後のリハビリテーション 半月板切除による施術の場合、ほとんどは術後すぐに体重をかけることが可能です。2週間程度で軽めのジョギング、1ヶ月前後でスポーツへの復帰が可能になります。 手術前のリハビリテーション 術後、スムーズに回復・リハビリテーションを行っていくためにも手術を行う前からリハビリに取り組んでおくことが望ましいでしょう。 あらかじめ松葉杖の使い方や、術後に行う予定のリハビリテーションを理解しておくことで、スムーズな術後のリハビリテーションへと移行することができるでしょう。 また、術後すぐに動けない場合は、足首周りや股関節周りなど、他の箇所の関節機能を低下させないためにも手術前のリハビリは重要です。 半月板損傷を早く治すためのリハビリテーションのステップ ここからはより具体的に半月板損傷を早く治すためのリハビリテーションについてお話を進めて参ります。 運動器リハビリテーションの分野では、通常であれば患者さんの運動能力や生活機能を回復させて、そのレベルを維持するために、原因疾患の治療と並行して個々における生活の実態を把握しつつ、綿密な治療計画を立案して実践します。。 個々のケースによって半月板の損傷度や状態が異なるために、実際にリハビリテーションを実践するタイミングは様々です。ただ基本的なメニューは、ほとんど変わりませんので担当の理学療法士ともよく相談しながら進めていきましょう。 1)リハビリ最初の1ステップ 最初の段階では、関節可動域の訓練を行うことが多く、膝関節の曲げ伸ばしができる角度を改善するためにリハビリテーションを行います。 半月板損傷を発症すると、通常であれば膝の曲げ伸ばし動作が困難になって日常生活に多大な支障が生じますので、徐々に曲げ伸ばしできる範囲を回復させるために可動域を増やすことを目標にした理学的な訓練を実施します。 特に股関節や足関節が固まるなど拘縮すると、膝関節に代償されて膝に負荷が集中してしまい、半月板損傷を抱えた膝の部位に更に重い負担がかかってしまいます。 そのため、半月板損傷を早く治すためには「膝関節のみならず、股関節や足関節もリハビリテーション」を行うことをお勧めします。 2)リハビリ次の2ステップ 次の段階として、関節の可動域を増やしたり、維持する訓練や、股関節あるいは足関節のリハビリに慣れてきたら、並行して膝周辺の筋力そのものを増強して膝関節を支えやすいよう補助できるようなトレーニングを取り入れていきます。 半月板が損傷している状況では、膝周りにあるほかの構造物で半月板を代理して体を支えなければなりません。半月板損傷が再発しないように防止するための観点からも膝周辺の筋力を強化することで膝を安定化させて身体を支えられるようにすることは非常に大切です。 3)リハビリ最終の3ステップ そして、後半戦に入ると本来の膝領域におけるバランス感覚を取り戻すためのリハビリテーションとして「バランストレーニング」を行っていくことになります。 半月板は、膝関節を安定させる機能を有しており、半月板が損傷することで膝が不安定となり、身体を支えることができず怪我を引き起こす危険性もありますのでバランスを取り戻すための理学療法は重要なトレーニングのひとつでと考えられます。 リハビリテーション治療の最終段階になってくると、いよいよ実践的なスポーツ競技や運動動作に復帰することを見据えて行う「アスレチック・リハビリテーション」を実践する運びになります。 このリハビリテーション・プログラムでは、筋力がある程度、元のレベルに回復して、膝関節の可動域を一定以上に獲得でき、膝関節の痛みもほとんど自覚しない状態になった場合に本格的なスポーツ能力を得るために準備する理学療法となります。 ジョギングに取り組み、ひざ痛が悪化しないかを確認して特に問題を認めないようであれば、梯子を用いたラダートレーニング、両脚ジャンプなどの動作を取り入れて、最終段階では復帰したい競技に応じて特有の動きがスムーズに出来るようにリハビリを実践することになります。 まとめ・半月板損傷を早く治す!効果的なリハビリテーションのステップ 今回は、半月板損傷とはどのような病気なのか、半月板損傷を早く治すためのリハビリテーションなどについて詳しく解説してきました。 半月板という組織は、膝関節の内部にある軟骨様の構造物であって、その軟骨部に負荷がかかる外からの物理的な力を和らげるための重要な役割を有しており、もし半月板を損傷した場合には、その受傷度合いに応じて個々に治療期間やリハビリテーションの内容が異なるため、具体的な内容は個別に決めなければなりません。 半月板のような軟骨組織は、完全に治癒するまでかなり時間を要します。身体機能をカバー出来るよう、患部はもちろん身体の状況を判断しながら計画的に取り組む治療がリハビリテーションです。 重要なことは、決して無理をせずにトレーナーや理学療法士と相談して適切なプログラムを行うことです。 No.080 監修:医師 坂本貞範 ▼ 半月板損傷を再生医療で治療する 再生医療なら半月板損傷は、手術せずに改善できます
2022.07.26 -
- 頚椎椎間板ヘルニア
- 脊椎
頸椎椎間板ヘルニアの症状と手術後の「しびれ」という後遺症について 頸椎椎間板ヘルニアとは 腰の椎間板ヘルニアは腰痛の原因として有名ですが、首の痛みには「頸椎椎間板ヘルニア」といわれるものがあります。 背骨(脊椎)のうち、首の部分を頸椎と言い、7つの骨からなります。この骨と骨とをつなぐクッションの役割をしている軟骨、座布団のような役割をしているものが「椎間板」といいます。 脊椎の中は脊髄が中心を走り、そこから手足への重要な神経の枝がたくさん出ています。 この椎間板が動くことで首を曲げたり、回すなどの動作ができる訳です。しかし、椎間板に何らかの衝撃が加わるなどすると中にある髄核と言われる組織が本来あるべき位置から外に飛び出してうことを椎間板ヘルニアと呼びます。 一般的に椎間板ヘルニアは、体の後ろ、背中側に向けて飛びだします。 困ったことに飛び出した先にあるのが脊髄という神経の束になり、本来の位置から飛び出してた髄核が脊髄を抑え込んで(圧迫して)しまうことになり、痛みや、しびれなどの症状となるわけです。 首に起こる痛みの原因は大きく二つ ・「筋肉や関節からくる肩こりや、寝違えの痛み」 ・「神経の痛みとして多いのが頸椎椎間板ヘルニア」 頚椎椎間板ヘルニアの原因 頚椎椎間板ヘルニアは、30~50歳代によく見られますので加齢だけが原因とはいえません。 「むち打ち症」などの交通事故がきっかけだったり、高所での作業中に落ちたり、鉄棒から落ちるなど、交通外傷、転落による外傷が原因となって脊髄を損傷し、ヘルニアになる事例があります。 また若い世代ではスポーツで首に負荷がかかる姿勢をとったり、普段あまり使っていない筋肉を鍛えようと運動を急にした時に、突然手足がしびれて力が入りにくくなった、という方もおられます。 頸椎椎間板ヘルニアの診断方法 患者さんの痛み・痺れがどこ領域に出ているか、それらがいつからあるかなどを診察します。 次にMRI検査を行い、ヘルニアがどこで起こっているか、神経の圧迫されている場所を確認します。 MRIは磁場で撮影しますので、CTと違って被曝の心配はありませんが、1時間程度かかる検査ですので、その間は安静を保つ必要があります。また、体内の金属が磁場に反応して発熱しますので、刺青があると火傷する可能性があるので、できません。 また、ステントや人工骨頭などの金属が入っている方は事前の確認が必要です。 頸椎椎間板ヘルニアの治療方法とは 頸椎椎間板ヘルニアにより神経の機能が障害されますので、頸椎椎間板ヘルニアの治療は、脊髄、神経を圧迫している椎間板部分を除去することが基本です。頸椎がぐらぐらして不安定な場合は、神経を圧迫しないよう椎骨を固定することも検討します。 ただ、障害されていた期間が長いほど、また年齢が上がるほど、神経機能が回復する可能性が下がります。そのため、治療の目的は神経を障害するものを除去し、本来の機能を回復する手助けをすること、と言えます。 神経の痛みは手術後に軽減しますが、しびれは改善しにくいことが多いです。また症状が残る人の方が多いようです。 頸椎椎間板ヘルニアの手術後の後遺症である「しびれ」について 体の中の組織のうち、神経組織は回復に最も時間がかかります。 たとえば、皮膚は縫合すれば1~2週間程度でくっつきますし、骨折はギブスをあてがったり、金属プレートで骨どうしを固定することにより、およそ3~4か月程度でくっつきます。 しかし、神経組織の回復は、それよりもさらに時間がかかります。月単位でゆっくりと回復を見せ、手術後1年くらいまでは、何らかの改善がみられます。 さらに、手術前に神経がどのくらいのダメージを受けていたか、という問題もあります。 「交通事故の後遺症で・・・」という話を聞くこともあります。椎間板ヘルニアにも除去して回復できるダメージと、回復できないダメージがあります。 これはヘルニアを除去する前では経験に基づいた話はできますが、正確な予測がしにくい部分であり、手術をしてみないとわかりません。 頸椎椎間板ヘルニアの手術後の「しびれ」は、手術自体が神経そのものを治療するものではなく、圧迫状態にあった神経を圧迫から解放することが目的となるため、長期期間、圧迫状態にあった神経が変化、変性している可能性があり、手術で圧迫を取り除いたとしても神経の障害が治らず残ってしまうために「しびれ」が残ることがあります。 手術は慎重に 首は体の中でも非常に大切な部位です。治療にあたっては専門医を受診しましょう。 そして、大切なのは、自分の状態がどのような重症度なのか、そして検討されている手術により、どれくらい回復が見込まれ、手術そのものの危険性はどれくらいあるのか、ということを主治医からしっかり聞いて、納得してから手術を受けようにしてください。 わからない点や疑問点については主治医に尋ねて、しっかり理解するようにしましょう。 どの診療科に行けばいいのか 首や肩まわりなどの筋肉・関節の痛みというと、整形外科を想像される方が多いかと思います。 ここ20~30年くらいで、日本でも繊細な手術を得意とする「脳神経外科医」が頸椎椎間板ヘルニア手術を行うようになってきました。 「脊髄外科学会」という脊椎や脊髄の手術を扱う医師の学会では、脳神経外科専門医でかつ脊髄外科を専門とする医師が多くおられます。 また最近では整形外科医も顕微鏡を使って血管吻合など繊細な手術を行うようになりました。そのため、脊椎や脊髄の手術は、脳神経外科と整形外科のどちらでも高度なレベルで行われるようになってきました。 脊椎や脊髄の手術に力を入れている専門医がいる病院であれば、脳神経外科と整形外科、どちらでも安心して受診してください。 その他、新しい治療方法として再生医療とういう医療分野での治療方法もあります。これはここで書いたような従来の診療科目とはまったく異なる新たな選択肢になります。 そのため、整形外科や脳神経外科(脊髄外来)では対応できません。通常の医師では再生医療に対する知見がまだまだ乏しいのが本当のところだからです。この分野は、確かな経験と実績を持った再生医療専門医がいるクリニックや医院を探してお尋ねください。 以上、頸椎椎間板ヘルニアの症状と手術後の後遺症「しびれ」についてについて記しました。参考になれば幸いです No.S025 監修:医師 加藤 秀一
2022.07.23 -
- 肘関節
肘頭滑液包炎とは、その症状と原因、治療法 肘頭の滑液包に炎症が起こった状態である肘頭滑液包炎をご存知でしょうか?肘を頻回に使って酷使したり、感染症が原因で起こる病気です。 肘の痛みや、腫れをきたすため、日常生活に支障をきたすこともあります。この記事では、肘頭滑液包炎の症状や原因について説明し、治療法についても説明いたします。 肘の解剖 肘頭滑液包炎を理解するため必要な、肘の解剖を簡単にご説明します。まず肘頭は、肘の先端にある尖った部分です。わたしたちが机に肘をつくとき、机に接しているところが肘頭になります。 この肘の先端である肘頭と皮膚の間には、滑液包と呼ばれる液体に満たされた薄い袋があります。滑液包は肩、腰、膝、踵などの関節の近くにもあり、骨、筋肉、腱のクッションになります。肘の滑液包は、皮膚が肘頭の骨の上をスムーズにスライドする動きを助けます。 肘頭滑液包炎は、肘頭の滑液包に炎症が起こった状態です。続けて、肘頭滑液包炎の症状や原因、そして治療法を説明します。 肘頭滑液包炎の症状 滑液包が炎症を起こすと、まず痛みを伴うようになります。炎症を起こした滑液包からの痛みは、突然起こることもありますし、時間をかけて徐々に悪化していくこともあります。また最初は肘を動かしたときに痛みを感じますが、進行するとじっとしていても痛みを感じるようになります。 また肘の関節の周りに腫れや発赤を生じます。感染症が原因となっている場合は、局所に熱感を伴うこと、また発熱することもあります。 痛みや腫れなどの症状に加えて、肘頭滑液包炎が悪化すると、肘を使うことが困難になります。慣れた日常生活の動作も、痛みのために辛くなるかもしれません。 肘頭滑液包炎の原因 肘頭滑液包炎の原因には、外傷、過度に肘を使うこと、また黄色ブドウ球菌による感染などがあります。 過度に肘を使うこととして、例えば野球ボールを投げる動作を繰り返すこと、肘に負担のかかる姿勢を長時間続けることなどがあります。肘や腕を使った動作を繰り返し行うことで、肘の滑液包にかかる圧力が高くなり、炎症を起こします。 そのほか大工仕事、ガーデニング、絵を描くことなどでも起こることがあります。また、音楽家は肘頭滑液包炎になるリスクが高いと言われています。 肘頭滑液包炎の治療法 肘頭滑液包炎の治療は、感染症が原因か、そうでないかでわかれます。 感染症による肘頭滑液包炎の治療法 感染症が原因である場合、抗菌薬による治療は必須です。通常は1週間程度、黄色ブドウ球菌に有効な抗菌薬を飲む必要があります。症状が良くなっても、体内に残っている病原菌を確実に除去ために、処方された期間は抗菌薬を服用する必要があります。 感染した滑液をできるだけ除去するために、針を刺して滑液包も吸引することがあります。吸引した滑液を詳しく調べることで、病原菌がわかることもありますので、診断を目的に吸引する場合もあります。 感染症が原因ではない肘頭滑液包炎の治療法 感染症が原因ではない場合は、自宅でもある程度治療ができます。 まず、運動や仕事で滑液包炎の原因となった腕の動きを避けることは、症状の緩和に役立ちます。痛みを我慢して仕事をしたり、スポーツをしたりしないようにしましょう。 またNSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)は、滑液包炎によって引き起こされる痛みや炎症を軽減するために役立ちます。装具を利用して肘が動かないように固定すると、症状は改善しやすくなります。三角巾などで手を吊るだけでも構いません。 これらの治療が3~6週間経っても効果がない場合は、滑液包の周りの過剰な液体を吸引すると同時に、炎症を抑えるためにステロイド薬の注射をすることがあります。 感染症が原因ではない肘頭滑液包炎は、3~6週間程度安静にすることで治ることが一般的です。肘頭滑液包炎は完治が期待できますので、肘に負担をかけずに仕事や学業ができるのであれば、治療中に仕事や学校を休む必要はありません。 なお肘頭滑液包炎は通常問診と診察だけで診断できますが、治療してもなかなかよくならない、あるいは再発を繰り返す場合は、X線やMRIなどを用いての画像検査を行うこともあります。 肘頭滑液包炎の手術 肘頭滑液包炎は、重症化しても手術を必要とすることはまれです。ただし、症状が非外科的治療に反応しない場合、または抗菌薬を服用しても良くならないほど重度の感染症がある場合、手術が必要な場合があります。 手術では、炎症を起こしている肘の滑液包を切除します。術後は、肘を固定するための装具が必要になります。回復には1カ月ほどかかります。 まとめ・肘頭滑液包炎とは、その症状と原因、治療法 以上、肘頭滑液包炎について、症状や原因、治療法について説明しました。 肘頭滑液包炎を予防する最善の方法は、できるだけ肘を酷使しないことです。肘を使う激しい運動や活動のあとは、体を休め、回復するための時間を設けましょう。 また仕事や趣味で肘を使うことが多い場合は、肘当てをつけるなどして、保護具を使うとよいでしょう。もし、それでも中々よくならない肘の痛みがある場合は、早めに整形外科をはじめ、医療機関にご相談されることをお勧めいたします。 No.078 監修:医師 坂本貞範 ▼ 今注目の「再生医療」は最新の医療分野です 自ら再生しようとする力、自然治癒力を活かした最先端の医療です
2022.07.18 -
- 肘関節
肘が痛い、肘の関節が痛むときに疑われる病気とは? 肘は、腕を伸ばしたり曲げたりして生活をする上で重要な役割を果たしている関節です。 肘関節構成する骨や靭帯、そして筋肉などは、複雑に連携しあってその機能を果たしていますが、さまざまな原因によって痛みを生じることがあります。 この記事では、肘関節について簡単に説明したのちに、肘が痛くなる原因についてご説明いたします。この記事を読むことで、肘が痛いときに考えられる原因や対処法について知っていただくことができるでしょう。 肘関節について 肘関節は、上腕と前腕の間にある関節で、上腕骨と前腕の橈骨と尺骨の3つの骨によって関節が形成されています。 3つの骨の間にはそれぞれ関節があるため、肘には3つの関節が含まれており、共通の関節包で覆われています。関節の関節面は、軟骨の層で隔てられており、関節のスムーズな動きは、潤滑油の役割をする粘性の高い滑液によってもたらされます。 肘関節を形成する骨同士をつなぐ複数の靭帯があり、関節の安定性に寄与しています。また肘関節は曲げる(屈曲)、伸ばす(伸展)、内側に捻る(回内)、外側に捻る(回外)といった動きができますが、同時に手首を曲げて捻るなど、他の関節の動きと連動して動くこともできます。そしてこれらの複雑な動きは、それぞれ関係する筋肉の収縮によるものです。 肘が痛いときに疑われる病気 肘が痛いとき、疑われる病気がいくつかあります。ここでは、それぞれの症状や原因、また対処法についてご紹介します。 上腕骨内側上顆炎 上腕骨内側上顆炎は、一般にリトルリーガー肘、ゴルフ肘とも呼ばれています。野球の投球動作やゴルフのダウンスイングを繰り返し行うことが原因です。そのほかにも、仕事で毎日ハンマーを振るなど、手の動きを繰り返した結果、発症することもあります。 上腕骨内側上顆炎は、肘の内側に沿って痛みが生じます。特に手首を掌側に曲げる動きや物を持って肘を曲げることが、痛みの引き金になることがあります。繰り返し手首を曲げたり、指を握ったりして動かすことで、上腕骨の内側に付着する筋肉の腱が炎症を起こすことが原因です。 痛みを感じる間は安静にし、患部をアイシングしたり、NSAIDsと呼ばれる非ステロイド性消炎鎮痛薬を使用したりすることで、多くの場合は改善します。発症時は運動するときだけの痛みですが、悪化すると安静にしていても痛みを感じるようになります。 上腕骨外側上顆炎 上腕骨外側上顆炎は、別名テニス肘とも呼ばれます。ラケットを使うスポーツをしたり、またハンマーを打ち付けたりするなど、ラケットを使ったスポーツと同じような動きをする特定の腕の動きを繰り返していると、この症状を生じることがあります。 アスリート以外に、シェフ、大工、自動車修理工、配管工、また音楽家なども上腕骨外側上顆炎を起こします。上腕骨外側上顆炎では、肘の外側にある腱が影響を受けています。 肘の外側に沿って痛みや熱感などの症状が現れます。また、握ることに問題が生じることもあります。これらの症状は通常、痛みの強いときは非ステロイド性消炎鎮痛薬を内服の上安静にする、患部をアイシングする、また局部を圧迫するバンドを利用する、理学療法をするなどの方法で、多くの場合は改善します。 肘頭滑液包炎 肘を曲げたときにできる肘の後方の出っ張りが肘頭ですが、この肘頭の皮下に存在するクッションの役割を果たしている滑液包に生じる炎症です。 肘への直接の打撃、長時間肘をついて肘に圧力をかけていた場合、感染症、リウマチなどの内科疾患などが原因となっています。 局所の腫れが最初の症状です。腫れが大きくなってくると、滑液包が大きくなり、周囲の神経を刺激するために痛みを感じるようになります。感染症の場合、発赤や熱感が生じることがあります。適切に治療が行われないと、徐々に肘を動かすことも難しくなってきます。 感染症が原因であれば、抗菌薬の内服が必要です。滑液包の内部の液体が多いときは、注射により液体を抜きます。また感染症が原因ではない場合は、アイシングや圧迫、非ステロイド性消炎鎮痛薬の内服で管理します。重症な場合は、手術が必要になることもあります。 変形性肘関節症 変形性関節症は、関節内に存在しクッションの役割を果たしている軟骨が侵される病気で、軟骨が摩耗する結果、クッションを失った関節が損傷を受けます。変形性肘関節症では、肘の怪我や関節炎などによって引き起こされる場合があります。 主に肘の内側では、骨棘と呼ばれる骨の過剰な突起物ができ、そのために肘の動きが制限されます。また骨棘が折れてしまうと関節内で遊離体となり、関節の動きを止めてしまうことも生じえます(ロッキング)。 肘の痛み、肘の曲げ伸ばしが困難になる、肘の曲げ伸ばしの動きが急に制限されてロックされるような感覚がする、肘を動かすときの異常な音、肘関節の腫れなどの症状を認めます。進行すると、肘部管症候群と呼ばれる肘の内側にある尺骨神経が圧迫される状態になり、薬指と小指の感覚の力が入りにくくなり、感覚も鈍くなります。 通常、固定具を用いた安静、消炎鎮痛薬の使用などの薬物療法、そして理学療法で治療を開始します。ただ重症の場合は、人工関節置換術を含む手術が行われます。 肘の脱臼または骨折 肘を伸ばした状態で転倒するなど、肘に強い衝撃が加わると脱臼や骨折を起こすことがあります。 症状としては、痛みのほかに肘の腫れや変色など、肘周囲の見た目の変形がみられます。また、激しい痛みのために、通常は肘関節を動かすことができなくなります。 脱臼を伴う場合は専門医により骨を元の位置に戻し、脱臼または骨折した肘をギブス等で固定し、鎮痛薬を投与します。ギプスを外した後は、可動域の回復を目的とした理学療法が役立ちます。 肘の靭帯損傷 肘の靭帯損傷は、肘関節にある靭帯のいずれかに発生するもので、外傷、または投球動作など肘への繰り返すストレスの影響を受けて生じます。部分的な断裂と完全断裂があり、肘関節の脱臼や骨折に伴うこともよくあります。 症状は、肘の痛み、肘関節の不安定さ、腫れ、可動域の制限などです。 受傷直後は肘を固定して安静にし、患部をアイシングして鎮痛薬による鎮痛を図ります。通常は数週間の固定を要し、固定が解除されてから理学療法に取り組みます。ときに手術が必要となります。 まとめ・肘が痛い、肘の関節が痛むときに疑われる病気とは? 以上、肘が痛いときに考えられる病気、その原因や対処法についてご説明しました。 ただ正確に診断するためには、やはり専門医の診療を受けることが大切です。医師は病歴を確認し、診察した上で必要な検査を行い、診断に基づいて適切な治療を行います。 もし、肘の痛みで悩んでいる方がおられたら、ぜひお近くの整形外科をはじめ医療機関にご相談ください。 No.077 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療に関する詳細は以下をご覧下さい 自分自身の自ら再生しようとする力、自然治癒力を活かした最先端の医療です
2022.07.14 -
- テニス肘
- 肘関節
テニス肘とは、テニス経験がなくても発症します!肘の痛みでお悩みの方へ テニス肘をご存知でしょうか?テニスをされている方は、テニスエルボーと言った方が早いかもしれません。 テニスという名前がついていることからテニスをしない人には関係がないと思われがちなテニス肘。実は、テニスをしていても、していなくても、その経験に関係なく、頻回に繰り返し腕を使う仕事やスポーツをしている人にも発症する病気です。 ただ、最初は軽い痛みながら、放置したまま原因を絶たずにいると、悪化しかねません。 今回は、テニス肘について、治療法と症状、原因についてご説明いたします。この記事を読んでいただくことで、テニス肘に対する理解が深まり、適切に対処できるようになれば幸いです。 テニス肘とは? テニス肘とは正式には「外側上顆炎」といい、一般的には、ラケットを強く振るテニスプレーヤーが発症しやすいと言われています。しかし、肘の痛みを伴うこの症状は、スポーツ選手だけでなく、誰にでも発症する可能性があります。 特に前腕に負荷がかかる動きを繰り返すと、上腕の骨に筋肉が付着する腱が炎症を起こし、同じ動きを続けるうちに腱が変性し、最終的には切れてしまいます。 テニス肘は、腕を曲げたり、まっすぐにしたり、ものを握ったり、持ち上げたり、振ったりするときに、「肘の外側」に痛みを起こす可能性があります。早く治療したり、その症状を起こした原因を排除すれば症状を軽減させることができます。 どんな人がテニス肘になるのか? テニス肘は、30才から50才の人に多く、男女性別に関係なく幅広く発症する可能性があります。プロのスポーツ選手だけでなく、前腕、手首、手を激しく、かつ反復的に使う活動を定期的に行っている人は、誰でもテニス肘になる可能性があります。 テニス選手のほかにも、野球やソフトボールの選手、テニスやラケットボールの選手なども危険因子です。 例えば組立ラインの工場労働者や自動車整備士、肉屋、料理人、大工、清掃員、塗装工、配管工、歯科医、造園家、音楽家など、特定の職業に就いている人も、テニス肘になりやすいと言われています。 テニス肘の原因 手首や指を曲げたり伸ばしたりして、腕を繰り返し動かすと、前腕の筋肉が疲労してきます。テニス肘と関係のある腱は、「肘の外側」にある骨の隆起(上腕骨外側上顆)にこの前腕の筋肉を付着させています。 筋肉が疲労すると、腱により多くの負荷がかかるようになります。この過負荷が、腱鞘炎と呼ばれる炎症と痛みを引き起こしています。さらに時間が経つと、この過負荷は腱の変性を起こし、最終的には腱断裂につながります。 多くの場合は長期にわたる負荷が原因ですが、突然の腕や肘の怪我が原因で発症することもあります。まれに、原因不明で発症する人もいます。 テニス肘の症状 テニス肘の症状はゆっくりと現れる傾向があります。痛みは数週間から数ヶ月の間に悪化します。テニス肘の症状の多くは痛みにあり、には次のようなものがあります。 ・肘の外側の痛み、手首の痛み ・腕をひねったり曲げたりするときの痛み(ドアノブを回すときや瓶を開けるときなど) ・腕を伸ばしたときのこわばりや痛み ・肘関節の腫れ、触ると痛い ・ラケットやペン、または人の手などを持とうとしたときに痛みが出たり、握力が弱くなる テニス肘の診断 痛みを引き起こす可能性のある動作について質問します。また、肘関節の痛みや腫れなどをチェックするために身体診察を行います。診断のために、以下のような検査が行われることがあります。 ・骨折などを除外するための単純X線検査 ・超音波検査、磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンなどの画像検査を用いて、腱や筋肉の損傷の状態を評価 ・筋電図検査は、筋肉や神経の電気的活動を測定し、神経が圧迫されていないかどうかを調べる テニス肘の治療方法 テニス肘は、特別に治療をしなくても、自然に良くなることがあります。しかし、その反面、1年ほどかかることもあるので注意が必要です。 低侵襲な治療法 そこで、回復を早めることができる手術以外の方法をまずご紹介します。 ・安静:腱の治癒を待つために、数週間は痛みのある側の腕を使う活動を停止するか、作業量を減らすことを検討します ・痛み止め:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):NSAIDsは、痛みや炎症を和らげることが期待できます ・痛み止め:ステロイドの注射により、関節の痛みや炎症が一時的に緩和されます ・テニス肘用のサポーター:取り外し可能なテニス肘用のサポーターを痛みのある前腕部に装着します。この装具は、腱や筋肉の緊張を和らげるものです ・理学療法:理学療法による運動は、前腕のストレッチを含め、筋肉と握力を強化します 外科的治療法 低侵襲な療法を6~12カ月続けても症状が改善しない場合、関節鏡下または切開による手術を行います。手術では、通常、変性した腱を除去します。回復には4~6ヶ月かかることが一般的です。テ ニス肘になった後は、症状が再発しないように、サポーターなど装具の着用が必要となることもあります。 まとめ・テニス肘とは、テニス経験がなくても発症します!肘の痛みでお悩みの方へ 以上、今回はテニス肘についてご説明しました。 テニスをしていない人にとっては関係がないと思われがちかもしれませんが、ご説明した通り、必ずしもテニスと関係がない方でも起こりうる病態です。もしも「肘の痛み」で悩んでいる方がおられたら、早めにかかりつけの整形外科医にご相談ください。参考にしていただければ幸いです。 No.076 監修:医師 坂本貞範 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.07.12