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人工関節手術。それは、痛みや動きの制限からの解放、そして活動的な人生への回帰を約束する希望の光です。日本では年間約20万件もの人工関節手術が行われており、多くの人々がこの手術によって人生の質を向上させています。しかし、手術後のリハビリや仕事復帰、日常生活における注意点など、気になる点も多いのではないでしょうか? この記事では、人工関節手術後のリハビリテーションから仕事復帰、そして日常生活の注意点まで、整形外科医師が詳しく解説します。具体的なリハビリの段階や内容、痛みの管理、合併症の予防、そして職場復帰支援制度の活用方法まで、網羅的にご紹介します。 手術を控えている方、手術後の方、そしてそのご家族の方々にとって、きっと有益な情報となるでしょう。さあ、人工関節手術後の明るい未来への扉を開きましょう。 人工関節手術後のリハビリと仕事復帰までの流れ 人工関節手術は、激しい関節痛や動きの制限を改善し、より快適な生活を送るための重要な一歩です。手術を受ける決断は大きなものですが、その先には、リハビリテーションを通じて少しずつ身体の機能を取り戻し、再び活動的な日々を送る未来が待っています。 この手術は、まるで身体に新しい部品を組み込むような大がかりなものです。術後の経過は人それぞれとなります。焦らず、一歩ずつ、着実に進んでいきましょう。リハビリテーションと仕事復帰までの道のりについて、一緒に確認していきましょう。 リハビリテーションの段階と内容 リハビリテーションは、手術直後から始まります。初期のリハビリは、ベッドの上でできる簡単な運動からスタートし、徐々に難易度を上げていきます。術後のリハビリテーションは、術後の回復を促進し、合併症を予防するために非常に重要です。 術後早期(術後1日目~): この時期は、手術の侵襲による身体への負担が大きいため、安静が最優先されます。しかし、安静にしすぎることで血栓症や肺炎などの合併症のリスクが高まるため、ベッド上でもできる運動が推奨されます。具体的には、足首の運動、深呼吸、寝返りなどです。これらの運動は、血液循環を促進し、呼吸機能を維持するのに役立ちます。 術後1~2週間: 痛みが徐々に軽減し始め、より積極的なリハビリテーションが開始されます。ベッド上での運動に加えて、座位、立位、歩行練習などが行われます。この段階では、関節可動域の拡大と筋力強化を図ることが目標です。理学療法士の指導のもと、杖や歩行器などの補助具を使用しながら、徐々に歩行距離を伸ばしていきます。 術後2~4週間: 歩行が安定してくると、日常生活動作の練習が中心となります。歩行器や杖を使った歩行練習、階段昇降、トイレへの移動、着替えなど、日常生活に必要な動作を繰り返し練習することで、自宅での生活にスムーズに戻れるよう準備していきます。 術後1~3ヶ月: この時期になると、さらに積極的なリハビリテーションプログラムが組まれます。自転車エルゴメーターや水中歩行など、関節への負担が少ない運動を取り入れながら、関節可動域の維持・拡大、筋力強化を図ります。また、退院後の生活を見据え、趣味や軽い運動なども徐々に再開していきます。 リハビリテーションの内容は、一人ひとりの状態に合わせて調整されます。年齢、手術前の活動レベル、合併症の有無など、様々な要因が考慮されます。理学療法士などの専門家と相談しながら、無理なく進めていきましょう。最新の研究では、Enhanced Recovery After Surgery(ERAS)というプログラムが注目されており、術前から術後の包括的な管理を行うことで、より早期の回復と社会復帰を目指しています。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「股関節の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 痛みの管理と合併症の予防 人工関節手術後は、痛みや腫れが出ることがあります。これは手術による組織の損傷や炎症反応によるもので、自然な経過です。しかし、痛みを我慢しすぎると、リハビリテーションへの意欲が低下し、回復が遅れてしまう可能性があります。 痛みの管理には、薬物療法と非薬物療法を組み合わせて行います。薬物療法としては、痛み止め(鎮痛剤)や消炎鎮痛剤が処方されます。医師や看護師の指示に従って、正しく服用しましょう。非薬物療法としては、冷却や温罨法、マッサージなどがあります。 人工関節手術後の合併症として、感染症、血栓症、脱臼、人工関節の緩みなどが挙げられます。感染症は、手術部位に細菌が侵入することで起こります。血栓症は、手術後に血栓(血液の塊)ができて血管を詰まらせてしまうことです。脱臼は、人工関節が本来の位置からずれてしまうことです。人工関節の緩みは、人工関節が骨にしっかりと固定されなくなってしまうことです。 これらの合併症を予防するために、清潔を保ち、医師の指示に従った予防策を講じることが重要です。定期的な創部の観察と消毒、弾性ストッキングやフットポンプの使用、早期離床と適度な運動などが有効です。 仕事復帰までの期間と流れ 仕事復帰までの期間は、仕事内容や回復状況によって大きく異なります。事務職であれば術後数週間で復帰できる場合もありますが、肉体労働など身体に負担のかかる仕事の場合は、数ヶ月かかることもあります。 仕事復帰までの流れとしては、まず主治医との相談が重要です。現在の身体の状態やリハビリテーションの進捗状況を踏まえ、仕事復帰の時期や方法について話し合います。職場の上司や同僚との連携も大切です。仕事復帰に向けて、職場環境の調整(勤務時間、業務内容など)が必要となる場合もあります。必要な場合は、産業医への相談も検討します。 焦らずに、自分のペースで復帰を目指しましょう。復帰後も、定期的に主治医の診察を受け、経過観察を行うことが重要です。 職場復帰支援制度の活用 仕事復帰に向けて、さまざまな支援制度を活用することができます。傷病手当金は、病気やケガで仕事を休んだ場合に、生活費の一部を補填する制度です。高齢者の医療の確保に関する法律は、75歳以上の方の医療費自己負担割合を軽減する制度です。障害年金は、病気やケガによって障害が残った場合に、生活を保障するための制度です。 これらの制度は、経済的な不安を軽減し、安心してリハビリテーションに専念するために役立ちます。必要に応じて、主治医やソーシャルワーカーに相談してみましょう。 人工関節手術後の生活と注意点 人工関節手術は、痛みや動きの制限から解放され、活動的な生活を取り戻すための大きな一歩です。 しかし、手術を受けた後も、新しい関節と長く付き合っていくためには、日常生活での注意点と工夫が欠かせません。 まるで身体に新しい相棒を迎えたように、その特徴を理解し、適切に扱うことで、より快適で安心な生活を送ることができるでしょう。 日常生活の注意点と工夫 人工関節は、自分の骨と完全に一体化しているわけではありません。そのため、過度な負担や不適切な動きは、人工関節の寿命を縮めたり、脱臼などの合併症を引き起こす可能性があります。日常生活では、以下の点に注意しながら、人工関節を大切に扱いましょう。 1. 人工関節への負担を減らす工夫 重いものを持つ: 買い物かごやリュックサックなどを活用し、片側だけに負担がかからないようにしましょう。どうしても重いものを持ち上げる必要がある場合は、膝を曲げて腰を落とした姿勢で、両手で持ち上げるようにしてください。 無理な姿勢: 中腰での作業や、足を組む、あぐらをかくといった姿勢は、人工関節に負担をかけるだけでなく、脱臼のリスクも高めます。なるべく避け、どうしても必要な場合は時間を短くし、休憩を挟むようにしましょう。 同じ姿勢を長時間続ける: デスクワークや車の運転など、同じ姿勢を長時間続ける場合は、1時間ごとに立ち上がって軽いストレッチをする、足を動かすなど、血行を促進し、関節の柔軟性を保つように心がけましょう。 和式トイレ: 和式トイレは、股関節を深く曲げる必要があるため、人工関節に大きな負担がかかり、脱臼のリスクも高まります。可能であれば、洋式トイレを使用するか、和式トイレに補助具を設置するなど、工夫しましょう。 入浴: 入浴は、血行を促進し、筋肉の緊張を緩和する効果があるため、積極的に行いましょう。ただし、滑りやすい場所なので、手すりや滑り止めマットなどを設置し、転倒防止に十分注意してください。また、湯船の出入りは、ゆっくりと行い、急な動作は避けましょう。 2. 転倒防止 転倒は、人工関節に大きな衝撃を与え、破損や脱臼の原因となる可能性があります。家の中だけでなく、外出先でも転倒のリスクを意識し、予防策を講じることが重要です。具体的には、床に物を置かない、段差に注意する、滑りにくい靴を履く、階段では手すりを持つ、など、基本的なことを徹底しましょう。夜間は足元を明るくし、必要に応じて杖や歩行器を使用することも有効です。 3. 感染症の予防 人工関節は、感染症に弱いため、傷口のケアや衛生管理には特に気を配る必要があります。傷口は清潔に保ち、医師の指示に従って適切な処置を行いましょう。また、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかると、人工関節に感染が波及するリスクがあるため、手洗いやうがい、マスクの着用など、感染予防を徹底することが大切です。歯科治療を受ける際も、人工関節手術を受けたことを必ず伝え、抗菌薬の予防投与が必要かどうか相談しましょう。 スポーツや趣味の再開時期 人工関節手術後、日常生活動作が問題なく行えるようになったら、スポーツや趣味の再開を検討することができます。人工膝関節全置換術(TKA)と人工股関節全置換術(THA)を受けた患者さんには、フォーマルな監督下での活動プログラムだけでなく、非監督下での活動も推奨されています。これは、ご自身のペースで、日常生活の中で身体を動かすことが重要であるということです。 しかし、すべてのスポーツがすぐに再開できるわけではありません。激しい運動や、関節に大きな負担がかかる運動は、人工関節の寿命を縮めたり、合併症を引き起こす可能性があります。再開する際は、必ず主治医に相談し、許可を得てから行うようにしましょう。 許可される運動(例): ウォーキング、水泳、サイクリング、ゴルフ、卓球など。これらの運動は、関節への負担が比較的少なく、筋力や柔軟性を維持・向上させる効果があります。 禁止される運動(例): ジョギング、サッカー、バスケットボール、スキー、スノーボードなど。これらの運動は、関節への衝撃が大きく、人工関節に負担がかかりすぎるため、避けるべきです。 スポーツや趣味を再開する際には、以下の点に注意しましょう。 痛みが生じる場合は、無理せず中止する 徐々に運動強度や時間を増やしていく 適切なウォーミングアップとクールダウンを行う 定期的に主治医の診察を受け、経過観察を行う 手術前の活動レベルに回復するには個人差がありますが、焦らず、医師の指示に従いながら、徐々に活動レベルを上げていくことが重要です。 まとめ 人工関節手術後、仕事に復帰するには、リハビリテーションと日常生活の注意点、そして職場復帰支援制度の活用が重要です。 手術後は、段階的なリハビリを通して身体機能の回復を目指します。 日常生活では、人工関節への負担を減らす工夫や転倒防止、感染症予防を心がけ、スポーツや趣味の再開は医師と相談の上、徐々に進めていきましょう。 仕事復帰までの期間は仕事内容や回復状況によって異なり、職場との連携も大切です。 焦らず、自分のペースで復帰を目指し、様々な支援制度を活用しながら、快適な生活を取り戻しましょう。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「股関節の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Soffin EM, Wainwright TW. "Hip and Knee Arthroplasty." Anesthesiology clinics 40, no. 1 (2022): 73-90. Šťastný E, Trč T, Philippou T. "[Rehabilitation after total knee and hip arthroplasty]." Casopis lekaru ceskych 155, no. 8 (2016): 427-432. Fortier LM, Rockov ZA, Chen AF, Rajaee SS. "Activity Recommendations After Total Hip and Total Knee Arthroplasty." The Journal of bone and joint surgery. American volume 103, no. 5 (2021): 446-455. Wainwright TW, Gill M, McDonald DA, Middleton RG, Reed M, Sahota O, Yates P, Ljungqvist O. "Consensus statement for perioperative care in total hip replacement and total knee replacement surgery: Enhanced Recovery After Surgery (ERAS(®)) Society recommendations." Acta orthopaedica 91, no. 1 (2020): 3-19. Canovas F, Dagneaux L. "Quality of life after total knee arthroplasty." Orthopaedics & traumatology, surgery & research : OTSR 104, no. 1S (2018): S41-S46.
2025.02.11 -
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膝の痛み...それを解消する強力なアイテムとなるのが「膝サポーター」です。 日本では、特に高齢化社会に伴い、膝のトラブルを抱える方が増加しており、その対策としてサポーターへの注目が集まっています。 しかし、ドラッグストアやネット通販で手軽に買えるようになった反面、種類が多すぎてどれを選べばいいのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか? ここでは、最新の研究データに基づいたエビデンスも交えながら、サポーターの効果と限界についても明らかにしていきます。 自分にぴったりのサポーターを見つけることで、痛みを軽減し、快適な日常生活を取り戻す第一歩を踏み出しましょう。 膝サポーターの種類と特徴 膝の痛みや違和感を感じた時、多くの方がまず手にするのが膝サポーターではないでしょうか。 ドラッグストアやスポーツ用品店、オンラインショップなど、様々な場所で手軽に購入できるため、利用されている方も多いと思います。 しかし、一口に膝サポーターと言っても、その種類は実に様々です。ご自身の膝の状態に合わないものをつけると、かえって逆効果となります。 この章では、様々な種類のサポーターの特徴を一つずつわかりやすく解説していきますので、サポーター選びの際の参考にしていただければ幸いです。 スポーツ用サポーター(バスケットボール、サッカー、バレーボールなど) スポーツ用サポーターは、膝への負担を和らげたり、ケガを未然に防いだりするために使われます。スポーツの種類によって、求められる機能も大きく異なります。 例えば、バスケットボールのようにジャンプや着地動作が多いスポーツでは、いかに膝への衝撃を少なくするかが大事となります。 厚みのあるパッドが付いたサポーターや、特殊な素材で衝撃を分散させる機能を持つサポーターを選ぶと良いでしょう。 サッカーでは、急な方向転換やストップ動作が頻繁に行われます。 このような動作は、膝関節にねじれの力を加え、靭帯を痛めてしまいます。膝関節をしっかりと固定し、不意のねじれから保護するタイプのサポーターがおすすめです。 バレーボールでは、ジャンプの着地時だけでなく、レシーブの際に床に滑り込むなど、膝を捻るリスクが非常に高い競技です。 2023年に発表されたシステマティックレビュー(※複数の臨床研究をまとめて分析したもの)でも、膝蓋骨脱臼に対する手術療法と非手術療法の有効性について、依然として明確な結論が出ていないことが示されています。 つまり、サポーターによる予防が非常に重要であると言えるでしょう。バレーボールでは、膝のお皿(膝蓋骨)の周囲をサポートし、脱臼を防ぐサポーターが有効です。 スポーツ用サポーターを選ぶ際には、行うスポーツの特徴を考慮し、適切な機能を持つサポーターを選びましょう。 また、通気性の良い素材を選ぶことで、汗による不快感を軽減し、快適にスポーツを楽しむことができます。 日常生活用サポーター 日常生活用サポーターは、家事や仕事、買い物など、日常生活での膝の痛みや不安定感を少なくする効果があります。 高齢になると、膝の軟骨がすり減り、変形性膝関節症を発症する方が多くいらっしゃいます。 初期は動き始めが痛いだけですが、放置すると歩行時や夜間にも痛みが出てしまい、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。 ▼変形性膝関節症の治療について、併せてお読みください。 具体的には、階段の上り下りや、椅子からの立ち上がり動作が楽になるようにサポートしてくれるサポーターや、膝のぐらつきを抑えて安定感を高めるサポーターなどがあります。 装着が簡単なものや、薄手で服の下に着けても目立ちにくいものなど、多種多様の製品があり、ご自身の生活スタイルや好みに合わせて選ぶと良いでしょう。 また、最近では関節の動きをサポートするだけでなく、保温効果を高めたものや、通気性に優れた素材を使用したものなど、機能性も重視されています。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「膝の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 医療用サポーター 医療用サポーターは、変形性関節症や靭帯損傷などの特定の疾患に対応するために使用されます。一般的には、医師の指導のもとで使用します。 変形性膝関節症では、膝関節の軟骨がすり減り、骨同士が直接擦れ合うことで炎症や痛みが発生します。 医療用サポーターは、膝関節を安定させることで痛みを軽減し、変形の進行を遅らせる効果が期待できます。 靭帯損傷は、スポーツなどでの急激な動作や外力によって、膝の安定に必要な靭帯がケガすることです。 前十字靭帯や内側側副靭帯の損傷は特に多く、初期治療が大切です。サポーターは、損傷した靭帯を保護し、関節の安定性を高めることで、怪我を治す期間を縮めてくれます。 ▼前十字靭帯、その症状は軽度?重度?こちらも併せてお読みください。 機能別サポーター(保温、固定など) 膝サポーターは、その機能によっても分類することができます。代表的な機能として、保温機能と固定機能が挙げられます。 保温機能を重視したサポーターは、膝周りの保温性を高めることで、血行を促進し、痛みを和らげる効果があります。冬季のスポーツ時や冷えから膝を守りたい方におすすめです。 固定機能を重視したサポーターは、膝関節をしっかりと固定することで、関節の安定性を向上させます。 スポーツ時の怪我予防や、膝の不安定感が強い方、靭帯損傷後のリハビリテーション時などに使用されます。 最近では、保温と固定の両方の機能を兼ね備えたサポーターも販売されています。 素材別サポーター(ネオプレン、ナイロンなど) 膝サポーターは、素材によっても特徴が異なります。 ネオプレン素材のサポーターは、保温性と伸縮性に優れているため、フィット感が良く、膝関節をしっかりと包み込むような装着感が特徴です。保温効果が高いことから、冷え性の方や、冬季のスポーツに適しています。また、水に強く、汚れにくいというメリットもあります。 ナイロン素材のサポーターは、軽量で通気性が良く、速乾性にも優れているため、暑い季節でも快適に使用できます。耐久性も高く、洗濯を繰り返しても型崩れしにくいというメリットがあります。 膝サポーターの効果とデメリット、選び方のポイント 膝の痛みは、日常生活の質を大きく低下させる悩ましい症状です。歩くのも、階段の上り下りも、椅子から立ち上がるのも、痛みが伴うと億劫になってしまいますよね。 自分に合ったサポーターを装着することで、ケガを予防してくれたり、症状の悪化を防いでくれます。しかし、その種類は多岐にわたり、自分に合わないものをつけてしまうと、痛みが増強することもよくあるので注意しましょう。 この章では、膝サポーターの効果とデメリット、そして選び方のポイントを、医師の視点から分かりやすく解説します。ご自身にぴったりのサポーター選びの参考になれば幸いです。 膝サポーターの効果:痛み軽減、関節の安定化、怪我予防 膝サポーターの効果は大きく分けて「痛み軽減」「関節の安定化」「怪我予防」の3つです。 まず「痛み軽減」についてですが、サポーターを装着することで膝関節を適度に圧迫し、保温効果によって血行が促進されます。温かいタオルで患部を温めると痛みが和らぐのと同じですね。また、圧迫によって、関節内の炎症によって生じた腫れを抑える効果も期待できます。 次に「関節の安定化」ですが、膝関節が不安定な状態だと、少しの動きでも痛みを感じたり、転倒のリスクが高まったりします。サポーターは、関節を外部から支えることで安定性を高め、ぐらつきを抑えてくれます。不安定な積み木にそっと手を添えるように、サポーターが膝関節をサポートしてくれるイメージです。 最後に「怪我予防」についてです。スポーツや重労働などで膝に大きな負担がかかる際、サポーターは関節や靭帯を保護し、怪我のリスクを軽減するのに役立ちます。膝への負担が大きい動作を行うスポーツでは、サポーターによる保護が重要です。 膝サポーターのデメリット:締め付けによる不快感、皮膚トラブル、筋力低下 膝サポーターは多くのメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。 まず、サポーターによる締め付けが強すぎると、不快感や痛み、血行障害などを引き起こす可能性があります。また、サポーターの素材によっては、皮膚にかぶれやかゆみなどのアレルギー反応が生じることもあります。特に、汗をかきやすい夏場や、長時間サポーターを装着している場合は注意が必要です。 さらに、サポーターに頼りすぎることで、膝周りの筋肉をあまり使わなくなり、筋力が低下する可能性も懸念されます。これは、怪我をした際にギプスで固定し続けると、その部分の筋肉が衰えてしまうのと同じ原理です。サポーターはあくまで補助的な役割であり、過度な依存は避けるべきです。適切な運動やリハビリテーションと併用することで、筋力低下を防ぎ、膝関節の機能を維持することが重要です。 『膝のサポーターをするととても楽です』と言われる患者様には、必ず、『サポーターをつけると、筋肉が落ちるので、必ず筋トレも忘れずにしましょうね』と言います。筋トレをせずにいて、筋力低下を起こすと、ますますサポーターがなくては生活ができなくなるという悪循環に陥るので注意が必要です。 サイズの選び方:適切なサイズで効果を最大化 膝サポーターは、サイズが合ってないと、関節を痛めることとなり、さらに締め付けによる不快感や血行障害を引き起こす可能性があります。 サポーターのサイズを選ぶ際は、必ず膝周りのサイズを正確に測り、商品ごとのサイズ表と照らし合わせて選びましょう。一般的には、膝のお皿の上約10cmの太ももの周囲の長さを基準とします。メジャーを使用して、立った状態で計測するのがおすすめです。 膝サポーターに関するエビデンスと研究データ 膝サポーターは、スポーツ選手から高齢者まで幅広く利用されています。その効果について、様々な意見を耳にすることがあるかもしれません。「効果がある」という人もいれば、「効果がない」という人もいます。一体どちらが正しいのでしょうか? 実は、膝サポーターの効果については、多くの研究が行われており、その結果も様々です。この章では、科学的根拠(エビデンス)に基づいて、膝サポーターの効果と限界について、わかりやすく解説します。 具体的な研究データに基づいた解説 膝サポーターの効果を検証した研究は、世界中で数多く行われています。例えば、サッカー選手を対象とした研究では、膝サポーターが前十字靭帯(ACL)損傷の予防に役立つ可能性が示唆されています。ACLは膝関節の中にある靭帯の一つで、これが損傷すると、歩行やスポーツに大きな支障をきたします。特に、急な方向転換やジャンプの着地時など、膝に大きな負担がかかる動作で、サポーターの効果が期待できるという研究結果が出ています。 また、ランナーを対象とした研究では、サポーターがランニング中の膝の安定性を向上させる可能性が示唆されています。これは、サポーターが膝関節を外部から支えることで、関節のぐらつきを抑え、安定性を高めるためだと考えられます。 さらに、変形性膝関節症の患者さんを対象とした研究では、サポーター装着によって痛みや歩行機能が改善したという報告もあります。 スクワット時の膝への影響 スクワットのように、膝を深く曲げる運動をするとき、膝サポーターはどのような影響を与えるのでしょうか? 研究によると、スクワット時の膝への負担は、膝の曲げ角度によって変化し、特に60~90度の屈曲で大きくなる傾向があります。サポーターはこの負担を軽減する効果があるとされています。 しかし、一方でサポーターの過度な使用は、膝周りの筋肉のトレーニング効果を弱める可能性も指摘されています。これは、サポーターが膝関節を支える役割を果たすため、筋肉が本来担うべき役割を奪ってしまうためと考えられます。サポーターはあくまで補助的な役割として使用し、過度な依存は避けるべきです。適切な運動やリハビリテーションと併用することで、筋力低下を防ぎ、膝関節の機能を維持することが重要です。 動的膝外反への効果 動的膝外反とは、運動中に膝が内側に入ってしまう状態のことです。ジャンプの着地時やランニング中などに、膝が内側に倒れこむように曲がってしまうと、膝関節や靭帯に大きな負担がかかり、痛みや怪我につながる可能性があります。 研究によると、適切なエクササイズと併用することで、サポーターは動的膝外反の改善に役立つ可能性があると考えられています。特に、シングルレッグスクワットやシングルレッグランディングといった片足での運動時に効果的です。これらの運動は、バランス能力や体幹の安定性を向上させる効果があり、動的膝外反の予防・改善に繋がります。サポーターは、これらの運動を行う際に、膝の怪我の予防に活躍してくれます。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「膝の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Pereira PM, Baptista JS, Conceição F, Duarte J, Ferraz J, Costa JT. "Patellofemoral Pain Syndrome Risk Associated with Squats: A Systematic Review." International journal of environmental research and public health 19, no. 15 (2022). Smith TO, Gaukroger A, Metcalfe A, Hing CB. "Surgical versus non-surgical interventions for treating patellar dislocation." The Cochrane database of systematic reviews 1, no. 1 (2023): CD008106. Alentorn-Geli E, Myer GD, Silvers HJ, Samitier G, Romero D, Lázaro-Haro C, Cugat R. "Prevention of non-contact anterior cruciate ligament injuries in soccer players. Part 1: Mechanisms of injury and underlying risk factors." Knee surgery, sports traumatology, arthroscopy : official journal of the ESSKA 17, no. 7 (2009): 705-29. Wilczyński B, Zorena K, Ślęzak D. "Dynamic Knee Valgus in Single-Leg Movement Tasks. Potentially Modifiable Factors and Exercise Training Options. A Literature Review." International journal of environmental research and public health 17, no. 21 (2020).
2025.02.11 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
激しい頭痛と吐き気…あなたは大丈夫ですか? この症状、実は様々な原因が潜んでいることをご存知ですか? 単なる風邪やストレスから、脳腫瘍など命に関わる病気を示すサインである可能性も。 年間150万人以上もの方が悩むと言われるうつ病のように、現代社会では様々な病気が増加傾向にあります。 今回の記事では、頭痛と吐き気の原因を4つに分類し、それぞれの症状の特徴や、病院へ行く目安を分かりやすく解説します。 さらに、ご自宅でできる7つの対処法もご紹介します。 「いつもの頭痛と何か違う…」と感じた時、あなたを守るための知識を手に入れましょう。 この記事を読み終える頃には、頭痛と吐き気の対処法と、受診すべきサインを理解し、安心できるはずです。 頭痛と吐き気の原因4選 頭痛と吐き気。どちらもよくある症状ですが、一緒に起こると不安になりますよね。実は、その原因は様々で、緊急性の低いものから命に関わるものまであります。今回は、頭痛と吐き気が同時に起こる原因を4つご紹介し、それぞれの症状の特徴や、病院へ行く目安などについて詳しく解説します。 緊張型頭痛 緊張型頭痛は、肩や首の筋肉の緊張が原因で起こる頭痛です。まるで頭全体を締め付けられるような痛み、あるいは後頭部が重苦しい感じが特徴です。吐き気は、痛みがひどくなった場合に現れることがあります。精神的なストレスや、長時間のパソコン作業、猫背などの悪い姿勢が原因となることが多いです。 思春期に発症することが多く、20代でピークを迎えます。30代以降は徐々に頻度が減少していく傾向にありますが、日常生活でのストレスや長時間労働などで、30代以降も緊張型頭痛に悩まされる方は少なくありません。私自身も、医療現場の激務で首や肩が凝り固まり、緊張型頭痛に悩まされた経験があります。 緊張型頭痛は一次性頭痛の中で最も多く、多くの人が経験するありふれた頭痛です。一次性頭痛とは、他の病気から引き起こされる二次性頭痛とは異なり、頭痛自体が病気であるものを指します。 緊張型頭痛の対処法として、ストレス軽減、姿勢改善、マッサージ、鎮痛薬の服用などが挙げられます。 日常生活の中で、リラックスできる時間を作る、趣味を楽しむ、軽い運動をするなど、ストレスを軽減する工夫をしてみましょう。また、正しい姿勢を意識し、長時間同じ姿勢を続けないようにすることも重要です。デスクワークの方は、1時間に1回は立ち上がって軽いストレッチをすることをお勧めします。 片頭痛 ズキンズキンと脈打つような激しい痛みが特徴の片頭痛。多くの場合、頭の片側が痛みますが、両側が痛むケースもあります。吐き気や嘔吐を伴うことが多く、光、音、匂いに敏感になることもあります。女性に多く、遺伝的な要因も関係していると考えられています。 片頭痛も緊張型頭痛と同様に一次性頭痛に分類され、身体活動によって悪化するのが特徴です。また、遺伝的要因や、光や音に過敏になる光恐怖症、音恐怖症なども片頭痛の特徴として挙げられます。 片頭痛の症状は人それぞれですが、代表的な症状としては、脈打つような痛み、吐き気や嘔吐、光・音・匂いへの過敏さ、めまいなどがあります。これらの症状は、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。 片頭痛の対処法としては、以下の3つが挙げられます。暗くて静かな場所で横になる、こめかみなどに冷却シートを貼って冷やす、市販の鎮痛薬や医師から処方された薬を服用するなどです。 群発頭痛 群発頭痛は、目の奥やこめかみあたりに強烈な痛みが起こり、同時に激しい吐き気が伴います。片側の目が充血したり、涙や鼻水が出たりすることもあります。男性に多く、1~2ヶ月間、毎日同じ時間帯に起こるのが特徴です。 群発頭痛は、その名の通り、一定期間に集中して起こる頭痛です。群発期と呼ばれるこの期間は、数週間から数ヶ月続くことがあり、患者さんにとっては非常に辛い時期となります。群発期が終わると、しばらくは頭痛のない期間が続きますが、再び群発期が訪れることもあります。 群発頭痛の対処法としては、医師の指示に従って酸素を吸入する、医師から処方されたトリプタン系薬剤を服用する、などが挙げられます。 脳腫瘍などの命に関わる病気 頭痛と吐き気は、脳腫瘍などの命に関わる病気のサインである場合もあります。今までに経験したことのないような激しい頭痛や、意識障害、手足の麻痺などを伴う場合は特に注意が必要です。このような症状が現れた場合は、ためらわずに救急車を呼ぶか、すぐに病院を受診してください。 命に関わる病気のサインを見逃さないためには、以下の症状に注意することが大切です。 突然の激しい頭痛 意識障害 手足のしびれや麻痺 ろれつが回らない ものが二重に見える けいれん 高熱 などです。 これらの症状は、脳腫瘍以外にも、くも膜下出血や髄膜炎など、緊急性の高い病気が隠れている可能性があります。少しでも気になる症状がある場合は、すぐに医療機関を受診することが重要です。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「脳卒中」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 頭痛と吐き気を和らげる7つの対処法 頭痛と吐き気。日常生活で経験する方も多いのではないでしょうか。これらの症状は、単独で起こることもあれば、同時に起こることもあり、その辛さは経験した人にしかわからないものです。 吐き気や嘔吐を伴う頭痛は、日常生活に支障をきたすだけでなく、時に命に関わる重篤な疾患のサインである可能性も否定できません。 今回は、ご自宅でできる頭痛と吐き気を和らげる7つの方法をご紹介します。これらの方法を試しても症状が改善しない、あるいは悪化する場合は、自己判断せずに医療機関を受診してください。 市販薬(鎮痛薬)を服用する 市販の鎮痛薬は、ドラッグストアなどで手軽に入手でき、多くの場合、頭痛と吐き気を和らげるのに役立ちます。代表的な鎮痛薬としては、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどがあります。 アセトアミノフェンは、必ず医師や薬剤師に相談してから服用するようにしてください。イブプロフェンは、解熱鎮痛効果に加えて、抗炎症作用も持ち合わせています。 鎮痛薬を服用する際には、用法・用量を厳守することが重要です。決められた量以上を服用したり、長期間にわたって服用し続けたりすると、胃腸障害や肝機能障害などの副作用が現れる可能性があります。 また、持病がある方や他の薬を服用している方は、医師や薬剤師に相談の上、市販薬との飲み合わせを確認することが大切です。鎮痛薬の中には、吐き気を悪化させる成分が含まれているものもありますので、注意が必要です。 ▼市販の痛み止めについて、併せてお読みください。 冷却シートで頭を冷やす ズキンズキンと脈打つような痛みを伴う片頭痛の場合、冷却シートで頭を冷やすのが効果的です。冷却シートを額やこめかみに貼ることで、血管が収縮し、痛みを和らげることができます。 冷却シートがない場合は、氷嚢や冷たいタオルでも代用可能です。ただし、長時間冷やしすぎると、凍傷を起こす可能性がありますので、15~20分程度を目安に使用してください。 温かいタオルで首や肩を温める 肩や首の筋肉の緊張が原因で起こる緊張型頭痛の場合、温かいタオルで首や肩を温めるのが効果的です。温めることで、筋肉の緊張がほぐれ、血行が促進され、頭痛が和らぎます。吐き気も、首や肩の筋肉の緊張が原因で起こることがありますので、温めることで症状が改善される可能性があります。 お風呂に浸かったり、蒸しタオルを使用したりするのも効果的です。40~42度くらいのぬるめのお湯に15~20分程度浸かるのがおすすめです。 静かな場所で休息する 頭痛や吐き気があるときは、心身ともに疲れている状態です。静かな場所で休息することで、副交感神経が優位になり、身体をリラックスさせ、症状を和らげることができます。 照明を暗くしたり、リラックスできる音楽を聴いたりするのも効果的です。また、吐き気があるときは、横になることで症状が楽になることがあります。 カフェインを控える カフェインは、血管を収縮させる作用があり、一時的には頭痛を和らげる効果がありますが、カフェインの摂取を急にやめると、反動で頭痛が悪化することがあります。「カフェイン離脱性頭痛」と呼ばれるこの頭痛は、カフェインの常用をやめた後12~24時間以内に発症し、2~9日間続くことがあります。 また、カフェインには利尿作用があり、体内の水分が失われ、脱水症状を引き起こす可能性があります。脱水症状は、頭痛や吐き気を悪化させる原因となりますので、カフェインの過剰摂取は控え、徐々に摂取量を減らしていくことが大切です。 水分を十分に摂る 脱水症状は、頭痛や吐き気を引き起こす原因となります。水分を十分に摂ることで、体内の水分バランスを維持し、症状の悪化を防ぐことができます。 常温の水やスポーツドリンクなどがおすすめです。冷たい飲み物は、胃腸を刺激し、吐き気を悪化させる可能性がありますので、避けるようにしましょう。 刺激物を避ける 強い光や音、においなどの刺激は、頭痛や吐き気を悪化させる可能性があります。これらの刺激を避けることで、症状を和らげることができます。 例えば、明るい場所にいる場合は、暗い場所に移動したり、目を閉じたりする、大きな音がする場所にいる場合は、耳栓をしたり、静かな場所に移動したりするなどの工夫をしましょう。 また、食べ物や飲み物にも注意が必要です。香辛料の効いた食べ物やアルコールなどは、胃腸を刺激し、吐き気を悪化させる可能性がありますので、避けるようにしましょう。周期性嘔吐症候群(CVS)は、片頭痛と共通の特徴を持つものの頭痛を伴わない症候群であり、数時間から数日続く吐き気、嘔吐、腹痛の発作を繰り返します。小児期に発症することが多く、大人になって初めて発症することもあります。 病院は何科?受診の目安と3つの注意点 頭痛と吐き気。多くの方が経験する症状ですが、その裏には深刻な病気が隠れている可能性もあるため、安易に考えてはいけません。 緊急性の高い症状を見極め、適切なタイミングで医療機関を受診することは、健康を守る上で非常に重要です。 緊急度の高い症状 「いつもの頭痛と何か違う」「吐き気がひどい」と感じたら、すぐに医療機関を受診すべきサインかもしれません。 特に以下の症状が現れた場合は、ためらわず救急車を呼ぶか、すぐに病院へ向かってください。一刻を争う事態の可能性があります。 意識障害:呼びかけに反応が鈍い、意識がもうろうとする ろれつが回らない、言葉が出てこない 手足のしびれや麻痺 激しい嘔吐 高熱 けいれん 首の痛みやこわばり 突発的な激しい頭痛(今まで経験したことのないような痛み) これらの症状は、くも膜下出血や脳卒中といった命に関わる病気を示唆している可能性があります。 また、慢性的な大量大麻使用によって過剰嘔吐を引き起こす、カンナビノイド過剰嘔吐症候群の可能性も考慮しなければなりません。 受診の目安 緊急性の高い症状がない場合でも、以下の項目に当てはまる場合は、医療機関への受診をおすすめします。 頭痛が慢性的に続いている(4週間以上) 吐き気が慢性的に続いている(4週間以上) 市販薬を服用しても症状が改善しない 日常生活に支障が出ている 不安が強い 慢性的な吐き気と嘔吐は、消化器系の問題(胃不全、周期性嘔吐症候群など)だけでなく、薬の副作用や内耳の異常といった消化器系以外の原因でも起こり得ます。 原因を特定し、適切な治療を受けることが重要です。周期性嘔吐症候群は、片頭痛と類似の特徴を持つものの頭痛を伴わず、数時間から数日間続く吐き気、嘔吐、腹痛の発作を繰り返します。小児期に発症することが多いですが、成人後に初めて発症するケースもあります。 受診する診療科 頭痛と吐き気が起こった際は、まず内科を受診してください。内科では、問診、身体診察、血液検査などを通して症状の原因を探ります。 必要に応じて、神経内科、脳神経外科、消化器内科など、専門の診療科に紹介状を書いてもらうことができます。 例えば、慢性的な頭痛と吐き気は、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛などが疑われるため、内科や神経内科の受診が適切です。 胃の不快感を伴う吐き気であれば、胃腸炎や胃潰瘍の可能性があるため、内科または消化器内科を受診します。 めまいを伴う吐き気の場合は、メニエール病や良性発作性頭位めまい症が考えられるため、内科または耳鼻咽喉科の受診が適切です。 診察時に伝えること 医師に症状を正しく伝えることは、正確な診断と適切な治療を受けるために不可欠です。 以下の情報を整理して伝えられるようにしておきましょう。 症状が始まった時期 痛みの種類(ズキズキする、締め付けられるなど) 痛みの強さ(軽い、中等度、激しい) 痛む場所 吐き気の程度 その他の症状の有無(発熱、めまい、視覚異常など) 現在服用している薬 過去の病気 生活習慣(食事、睡眠、運動、喫煙、飲酒など) 受診前に準備しておくこと スムーズな診察のために、以下のものを事前に準備しておきましょう。 健康保険証 医療証(お持ちの方) 服用中の薬 過去の検査結果やお薬手帳(お持ちの方) メモした症状 医師の説明はしっかりと聞き、不明な点は積極的に質問することが大切です。 原因が特定できない場合や、治療が難しい場合(循環性嘔吐症候群など)もあります。医師とよく相談し、ご自身に合った治療法を見つけることが重要です。 まとめ 頭痛と吐き気は、原因も対処法も様々です。この記事では、緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛、そして命に関わる病気の可能性についても解説しました。 ご自宅でできる対処法として、市販薬の服用、冷却・温熱療法、休息、カフェインの制限、水分補給、刺激物の回避などを紹介しました。しかし、これらの方法で症状が改善しない場合、または、意識障害や激しい嘔吐などの緊急性の高い症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。 受診する際は、内科を受診し、必要に応じて神経内科や脳神経外科などに紹介されることもあります。診察時には、症状の開始時期や種類、痛みの強さ、吐き気の程度、その他の症状などを詳しく医師に伝えましょう。 頭痛と吐き気は、放置すると危険な場合もあります。少しでも不安を感じたら、早めに医療機関を受診し、安心を得てください。早期発見・早期治療が、症状の改善に繋がります。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「脳卒中」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Kemper LT, Vedder IR, Ter Avest E. "Woman With Headache and Nausea." Annals of emergency medicine 79, no. 6 (2022): e109-e110. Goldman L. "Griseofulvin." The Medical clinics of North America 54, no. 5 (1970): 1339-45. Lacy BE, Parkman HP, Camilleri M. "Chronic nausea and vomiting: evaluation and treatment." The American journal of gastroenterology 113, no. 5 (2018): 647-659. Johns T, Lawrence E. "Evaluation and Treatment of Nausea and Vomiting in Adults." American family physician 109, no. 5 (2024): 417-425. Frazier R, Li BUK, Venkatesan T. "Diagnosis and Management of Cyclic Vomiting Syndrome: A Critical Review." The American journal of gastroenterology 118, no. 7 (2023): 1157-1167. Patniyot I, Qubty W. "Headache in Adolescents." Neurologic clinics 41, no. 1 (2023): 177-192. Cheema S, Matharu M. "Abdominal migraine and cyclical vomiting syndrome." Handbook of clinical neurology 198, no. (2023): 209-219. Onan D, Younis S, Wellsgatnik WD, Farham F, Andruškevičius S, Abashidze A, Jusupova A, Romanenko Y, Grosu O, Moldokulova MZ, Mursalova U, Saidkhodjaeva S, Martelletti P, Ashina S. "Debate: differences and similarities between tension-type headache and migraine." The journal of headache and pain 24, no. 1 (2023): 92.
2025.02.10 -
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突然ですが、手足のしびれや筋力低下を感じたことはありませんか?もしかしたら、それはギラン・バレー症候群の初期症状かもしれません。 聞き慣れない病名かもしれませんが、年間10万人あたり1~2人が発症する身近な病気で、2021年のLancet誌では世界で最も一般的な急性弛緩性麻痺の原因と報告されています。 免疫システムが誤って自分の神経を攻撃してしまうこの病気、実は風邪や下痢といった感染症がきっかけで発症することも。 重症化すると呼吸困難に至るケースもありますが、早期発見・早期治療で後遺症を最小限に抑えることが可能です。 この記事では、ギラン・バレー症候群の症状、原因、治療法、予後まで、詳しく解説します。正しく理解し、もしもの時に備えましょう。 ギラン・バレー症候群を理解する3つのポイント ギラン・バレー症候群は、あまり聞き慣れない病名かもしれません。しかし、誰にでも起こりうる可能性のある病気であり、決して他人事ではありません。 正しい知識を持つことで、早期発見・早期治療につながり、後遺症を最小限に抑えることができるのです。 この章では、ギラン・バレー症候群を理解するための3つのポイントを、わかりやすく丁寧に解説します。 ギラン・バレー症候群とは? ギラン・バレー症候群は、自分の免疫システムが誤って自分の末梢神経を攻撃してしまう自己免疫疾患です。通常、免疫システムは細菌やウイルスなどの外敵から体を守る大切な役割を担っています。 しかし、ギラン・バレー症候群では、この免疫システムが正常に機能せず、味方であるはずの神経を攻撃してしまうのです。 この攻撃によって末梢神経が炎症を起こし、神経を覆うミエリン鞘という部分が損傷を受けたり、神経線維そのものが障害されたりします。 その結果、脳からの指令が筋肉にうまく伝わらなくなり、手足のしびれや筋力低下といった症状が現れます。 ギラン・バレー症候群は、世界中で年間10万人あたり1~2人が発症すると言われており、年齢や性別を問わず、誰にでも起こりうる病気です。 小児から高齢者まで、どの年齢層でも発症の可能性があり、男性にやや多い傾向が見られます。 2021年のLancet誌の報告によれば、ギラン・バレー症候群は世界で最も一般的な急性弛緩性麻痺の原因であり、多くの患者さんが進行性の運動弱化の前に、上気道感染症などの先行感染症を経験するとされています。 ギラン・バレー症候群は、一般的には急速に症状が進行しますが、自然に回復していくことが多いのも特徴です。 多くの患者さんは数ヶ月で回復に向かいますが、約20%の方は1年後も何らかの後遺症が残る可能性があります。また、再発する可能性も2~5%程度存在します。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 ギラン・バレー症候群の原因とメカニズム ギラン・バレー症候群の明確な原因は、まだ完全には解明されていません。しかし、多くの場合、風邪や下痢などの感染症がきっかけとなって発症すると考えられています。 例えば、カンピロバクター・ジェジュニという細菌による食中毒が、ギラン・バレー症候群の引き金になることが知られています。 2022年のInternational Journal of Molecular Sciencesに掲載された研究では、ギラン・バレー症候群の約3分の1はカンピロバクター・ジェジュニ感染が原因であると報告されています。 これらの感染症に対して、私たちの体は免疫システムを活性化させ、体内に侵入してきたウイルスや細菌を攻撃します。 しかし、この免疫反応が過剰に起こったり、制御が効かなくなったりすると、本来攻撃すべきでない自分の神経を攻撃してしまうことがあるのです。 これがギラン・バレー症候群の発症メカニズムの一つと考えられています。 具体的には、病原体の表面構造と神経の構成成分が類似している場合、免疫システムがこれらを誤認識し、神経を攻撃してしまう「分子模倣」という現象が関与していると考えられています。 カンピロバクター・ジェジュニ関連のギラン・バレー症候群では、この分子模倣によって引き起こされる自己抗体媒介性免疫プロセスが関与している強力な証拠があるとされています。 ギラン・バレー症候群を引き起こす可能性のある感染症には、カンピロバクター・ジェジュニ以外にも、サイトメガロウイルスなどのヘルペスウイルス、マイコプラズマ属の細菌、腸管系のウイルスなどが挙げられます。 また、ジカウイルス感染症やCOVID-19の後に発症するケースも報告されています。 さらに、免疫チェックポイント阻害薬という、一部のがん治療薬の副作用として発症するケースもあるため、注意が必要です。 患者さんの約60%で、抗ガングリオシド抗体という物質が血液中に見つかることが知られています。 これは、免疫システムが神経の特定の部分を攻撃している証拠と考えられています。 ギラン・バレー症候群の種類と分類 ギラン・バレー症候群は、大きく分けて「脱髄」が優勢なタイプと、「軸索」が侵されるタイプの2つに分類されます。 脱髄が優勢なタイプ:神経線維を覆っているミエリン鞘という部分が壊れてしまうことで、神経の情報伝達が阻害されます。 代表的なものとして、急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(AIDP)が挙げられます。これはギラン・バレー症候群の中で最も一般的なタイプです。 軸索が侵されるタイプ:神経線維そのものが傷ついてしまうことで、神経の情報伝達が阻害されます。 代表的なものとして、急性運動軸索神経障害(AMAN)が挙げられます。 また、フィッシャー症候群(またはミラー・フィッシャー症候群)と呼ばれるタイプも存在します。 これは、眼球運動障害、体のバランスがとりにくくなる運動失調、腱反射の消失といった症状が見られますが、手足の筋力低下はあまり見られないという特徴があります。 2013年のNeurologic clinics誌に掲載された論文では、このフィッシャー症候群を含め、純粋感覚型変異、自律神経症状の限定的な発現、咽頭・頸部・腕神経叢型パターンなど、他のまれな表現型の変異についても報告されています。 これらの種類によって、症状や経過、予後が異なる場合があるため、正確な診断が重要です。 ギラン・バレー症候群の症状と診断 ギラン・バレー症候群は、初期症状が他の病気と似ていることが多く、診断が難しい場合があります。 風邪のような軽い症状だと安易に考えて放置してしまうと、後遺症が残ってしまう可能性もあるため、早期発見・早期治療が非常に重要です。 この章では、ギラン・バレー症候群の代表的な症状と、どのように診断されるのかについて詳しく解説します。 初期症状:しびれや筋力低下 ギラン・バレー症候群の初期症状は、両手足の指先にしびれやチクチクするような感覚が現れることが多いです。 まるで手袋や靴下を履いているような感覚で、左右対称に症状が現れる点が特徴です。 患者さんの中には、「最初は足が少しジンジンするだけだったのに、数日のうちに両足全体がしびれて、歩くのもつらくなった」と訴える方もいます。 このように、症状の進行は非常に速く、数時間から数日のうちに急速に悪化していく場合もあるため注意が必要です。 また、しびれと同時に、筋力低下も現れ始めます。具体的には、次のような症状が現れることがあります。 ボタンを留める、箸を使うといった細かい動作が難しくなる。 ペットボトルの蓋を開けられない。 文字を書くのが困難になる。 歩行がふらつく。 階段の上り下りが難しくなる。 これらの初期症状は、風邪や疲れなど、他の原因によるものと勘違いしやすいので注意が必要です。 特に、症状が急速に悪化する場合は、ギラン・バレー症候群の可能性を疑い、すぐに医療機関を受診することが大切です。 症状の進行:歩行困難や呼吸麻痺 ギラン・バレー症候群の初期症状が現れてから数日~数週間で、筋力低下はさらに進行し、手足の麻痺へと繋がっていきます。 「最初は足がしびれる程度だったのが、今では杖がないと歩けない」というケースも珍しくありません。 症状が進行すると、歩行が困難になるだけでなく、日常生活における様々な動作に支障をきたすようになります。 例えば、衣服の着脱、食事、洗面、トイレといった動作が一人では行えなくなることもあります。 さらに重症化すると、呼吸に必要な筋肉や、食べ物を飲み込むための筋肉も麻痺し、呼吸困難や嚥下障害を引き起こす可能性があります。 最悪の場合、人工呼吸器の装着や経管栄養が必要となるケースもあり、まさに生命の危険に晒される状態となります。 2015年のPrimary care誌の報告によれば、認識されず、または治療されなかった場合、ギラン・バレー症候群は著しい罹患率と死亡率につながる可能性があります。 診断方法:神経伝導検査や髄液検査 ギラン・バレー症候群の診断は、患者さんの症状や経過、神経学的診察、神経伝導検査、髄液検査などの結果を総合的に判断して行います。 2014年のNature reviews. Neurology誌に掲載された論文では、腰椎穿刺と電気生理学的検査は、診断を裏付け、脱髄型と軸索型のGBSを鑑別するのに役立つと報告されています。 神経伝導検査:神経伝導検査では、神経に電気刺激を与えて、その伝わる速度や反応を測定します。ギラン・バレー症候群では、神経の伝導速度が遅くなったり、反応が弱くなったりするといった異常が見られます。 これは、神経線維を覆っているミエリン鞘という部分が損傷を受けたり、神経線維そのものが障害されていることを示しています。 髄液検査:髄液検査では、腰椎穿刺という方法で採取した髄液を調べます。 ギラン・バレー症候群の特徴的な所見として、髄液中のタンパク質が増加している一方で、細胞数は正常であるという「蛋白細胞解離」が見られます。これは、神経に炎症が起こっていることを示唆する重要な指標です。 ギラン・バレー症候群と類似する疾患との鑑別 ギラン・バレー症候群は、他の神経疾患と症状が似ている場合があり、鑑別が難しいケースもあります。 特に、重症筋無力症、ボツリヌス症、ポリオ、ダニ麻痺症、ウエストナイルウイルス感染症などは、ギラン・バレー症候群と似たような症状を示すことがあります。 これらの疾患とギラン・バレー症候群を鑑別するためには、症状の持続時間や対称性、感覚異常の有無、自律神経症状の有無など、様々な要素を考慮する必要があります。 医師は、これらの要素を詳細に確認することで、正しい診断を下し、適切な治療方針を決定します。 例えば、重症筋無力症は、ギラン・バレー症候群とは異なり、筋力低下が日内変動を示すことが多く、また、眼瞼下垂や複視などの眼症状を伴うことが多いです。 ボツリヌス症は、眼球運動障害や嚥下障害、構音障害などの症状が特徴的で、ギラン・バレー症候群のように四肢の筋力低下が対称性に起こることは少ないです。 このように、それぞれの疾患に特徴的な症状や経過を把握することで、鑑別が可能となります。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 ギラン・バレー症候群の治療法と予後 ギラン・バレー症候群は、適切な治療を行うことで多くの場合回復に向かう病気です。 しかし、重症化すると呼吸困難など生命に関わる危険性もあるため、早期の診断と治療開始が非常に重要です。 ここでは、ギラン・バレー症候群の治療法と予後について、より詳しく解説していきます。 治療方法:免疫グロブリン療法や血漿交換 ギラン・バレー症候群の治療の中心は、免疫グロブリン療法と血漿交換です。 これらの治療は、免疫システムの働きを調整することで、誤って自分の神経を攻撃している状態を鎮め、症状の改善を促します。 2021年のLancet誌の報告によれば、免疫グロブリン療法と血漿交換は同等の効果があり、どちらの治療法も発症早期に開始することが重要であるとされています。 免疫グロブリン療法:免疫グロブリン療法は、健康な人の血液から精製された免疫グロブリンを、点滴で投与する方法です。 免疫グロブリンは、過剰に反応している免疫システムのバランスを整え、神経への攻撃を抑える働きがあります。 点滴による投与のため、入院が必要となるケースが多いです。 副作用として、まれに頭痛、発熱、吐き気、血管痛などがみられることがあります。 これらの副作用は一過性であることがほとんどですが、気になる症状が現れた場合は、速やかに医師に相談することが大切です。 血漿交換:血漿交換は、血液中の液体成分である血漿を専用の機器で取り出し、神経を攻撃している抗体などを含む血漿成分を除去し、代わりに新しい血漿やアルブミン製剤を補充する方法です。 この治療法も入院が必要となります。 副作用としては、血圧の低下、アレルギー反応、出血、血栓塞栓症、低カルシウム血症などがみられることがあります。 免疫グロブリン療法と血漿交換は、どちらも有効な治療法ですが、患者さんの状態やアレルギーの有無、合併症の有無などによって、どちらが適しているかは異なります。 医師とよく相談し、最適な治療法を選択することが重要です。 2014年のNature reviews. Neurology誌に掲載された論文では、静脈内免疫グロブリンと血漿交換は効果的な治療法であることが証明されていると報告されています。 リハビリテーション:機能回復のための運動療法 ギラン・バレー症候群では、筋力低下や麻痺といった症状がみられるため、リハビリテーションも治療の重要な一部です。 リハビリテーションの目的は、低下した身体機能の回復を促し、日常生活への復帰をスムーズにすることです。 リハビリテーションの内容は、患者さんの病状の進行度や年齢、体力、合併症の有無などを考慮して、個別に設定されます。 初期段階で症状が重い時期には、関節の拘縮を防ぐため、関節可動域訓練や寝たきり状態を防ぐための体位変換などが中心となります。 症状が軽快してくると、筋力トレーニングや歩行訓練、日常生活動作訓練など、より積極的な運動療法が開始されます。 理学療法士や作業療法士などの専門家と連携しながら、無理のない範囲でリハビリテーションに取り組むことが大切です。 焦らず、少しずつ身体機能の回復を目指していくことが重要です。 予後:後遺症や再発の可能性 ギラン・バレー症候群の予後は、多くの場合良好で、数ヶ月から1年程度で回復に向かいます。 2015年のPrimary care誌の報告では、多くの症例は後遺症を残さずに回復しますが、そうでない場合は、著しい持続的な衰弱が残る可能性があるとされています。 しかし、患者さんによっては後遺症が残る場合もあり、軽度の筋力低下やしびれ、倦怠感などが挙げられます。また、稀に再発することもあります。 予後は、発症時の症状の重さ、治療への反応、年齢、基礎疾患の有無など、様々な要因によって影響を受けます。 重症例や高齢者の場合、後遺症が残る可能性が高くなる傾向があります。 再発は2~5%程度とされています。再発した場合も、初回と同様の治療が行われます。 最新の治療法と研究 ギラン・バレー症候群の治療法は、現在も研究開発が続けられています。新しい治療薬の開発や、既存の治療法の改良など、様々な研究が行われています。 例えば、補体阻害剤などの新しい治療薬の臨床試験が進行中です。これらの治療薬は、神経へのダメージをさらに軽減する効果が期待されています。 また、国際的な共同研究も盛んに行われており、ギラン・バレー症候群の病態解明や新たな治療法の開発に役立てられています。 2021年のLancet誌の報告では、全てのギラン・バレー症候群患者への治療アクセス改善と、神経損傷の程度を制限できる効果的な疾患修飾療法の開発が必要であるとされています。 ギラン・バレー症候群の日常生活の注意点 ギラン・バレー症候群を発症すると、日常生活に様々な支障が出てきます。症状が落ち着くまでは、無理をせず安静にすることが大切です。 また、日常生活を送る上での工夫も必要になります。 日常生活の注意点: 転倒のリスクを減らすために、手すりや杖などを活用する。 入浴時には、滑り止めマットを敷いたり、浴槽の縁に手すりを取り付けたり、シャワーチェアを使用するなど転倒防止に努める。 トイレには、補助便座や手すりなどを設置する。 衣服は、着脱しやすいものを選ぶ。ボタンやファスナーの代わりに、マジックテープやゴム紐を使用するのも良いでしょう。 食事の際は、介助が必要な場合は家族などに手伝ってもらう。食事内容も、食べやすいように工夫する。 また、精神的なサポートも重要です。不安や恐怖、焦りを感じやすい時期なので、家族や医療従事者と積極的にコミュニケーションをとるようにしましょう。 周囲の理解とサポートが、回復への大きな力となります。 まとめ ギラン・バレー症候群は、末梢神経が自分の免疫システムに攻撃される自己免疫疾患です。 手足のしびれや筋力低下といった症状が現れ、進行すると歩行困難や呼吸麻痺に至ることもあります。 原因は明確には解明されていませんが、感染症がきっかけとなることが多いと考えられています。 治療は免疫グロブリン療法や血漿交換、リハビリテーションなどがあり、多くの場合、数ヶ月から1年で回復に向かいます。 しかし、後遺症が残る場合や再発の可能性もあるので、早期発見・早期治療が大切です。少しでも異変を感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。 症状が改善した後も、日常生活で無理をせず、周りのサポートを受けながら、焦らずに回復を目指してくださいね。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Shahrizaila N, Lehmann HC, Kuwabara S. "Guillain-Barré syndrome." Lancet (London, England) 397, no. 10280 (2021): 1214-1228. Finsterer J. "Triggers of Guillain-Barré Syndrome: Campylobacter jejuni Predominates." International journal of molecular sciences 23, no. 22 (2022): . Dimachkie MM, Barohn RJ. "Guillain-Barré syndrome and variants." Neurologic clinics 31, no. 2 (2013): 491-510. van den Berg B, Walgaard C, Drenthen J, Fokke C, Jacobs BC, van Doorn PA. "Guillain-Barré syndrome: pathogenesis, diagnosis, treatment and prognosis." Nature reviews. Neurology 10, no. 8 (2014): 469-82. Ansar V, Valadi N. "Guillain-Barré syndrome." Primary care 42, no. 2 (2015): 189-93. ギラン・バレー症候群ガイドライン2023
2025.02.10 -
- 内科疾患、その他
健康診断での血圧測定、気にしていますか? 実は、高血圧は自覚症状がないまま進行し、脳卒中や心筋梗塞など、命に関わる病気を引き起こす可能性がある“サイレントキラー”なのです。 日本高血圧学会によると、家庭血圧の正常値は115/75mmHg以下。あなたは大丈夫ですか? 年齢や生活習慣によって正常値は変化し、20歳から80歳までの平均家庭血圧は、上の数値(収縮期血圧)で115.9mmHg~133.9mmHg、下の数値(拡張期血圧)で68.1mmHg~74.5mmHgと幅があります。 この記事では、高血圧・低血圧それぞれの症状や合併症、家庭での血圧管理、最新のデバイス情報まで網羅的に解説! 知っておくだけで日々の健康管理に役立つ知識が満載です。 さあ、一緒に健康寿命を延ばすための第一歩を踏み出しましょう。 血圧の正常値とは? 健康診断で必ず測る血圧。普段は意識しないかもしれませんが、実は全身状態を反映する重要な指標です。高血圧は自覚症状がないまま進行し、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気を引き起こす危険因子となります。 「自分はまだ若いから大丈夫」と考えている方もいるかもしれません。しかし、新生児でさえ、出生体重や在胎週数によって血圧は異なるように、年齢や身体の状態によって「正常」の範囲は変化します。若くても血圧管理を意識することは、将来の健康を守る上で非常に重要です。 血圧の正常値の範囲(日本高血圧学会の基準値) 血圧の正常値は、家庭で測る「家庭血圧」と病院で測る「診察室血圧」で基準が異なります。日本高血圧学会では、家庭血圧で115/75mmHg以下、診察室血圧で120/80mmHg以下を正常血圧としています。 血圧の種類 正常値 家庭血圧 115/75mmHg以下 診察室血圧 120/80mmHg以下 「正常高値血圧」や「高値血圧」にも注意が必要です。家庭血圧で115/75mmHg~135/85mmHg、診察室血圧で120/80mmHg~140/90mmHgの場合は、将来的に高血圧へと進行するリスクが高いため、早めの生活習慣の見直しが重要です。 スペインの診療ガイドラインでは、診察室血圧140/90mmHg以上を高血圧と定義し、家庭血圧測定の重要性を強調しています。家庭でリラックスした状態で血圧を測ることで、より正確な状態を把握できるからです。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 年齢による血圧変化と正常値の目安 血圧は年齢とともに変化します。血管の老化などにより、年齢を重ねるごとに上昇する傾向があります。 20歳から80歳までの平均的な家庭血圧は、収縮期血圧(上の数値)が115.9mmHg~133.9mmHg、拡張期血圧(下の数値)が68.1mmHg~74.5mmHgです。 しかし、これはあくまでも平均値です。一人ひとりの体質や生活習慣によって、血圧値は大きく変わります。年齢を重ねるごとに血管は変化していくため、定期的な血圧測定と適切な管理が重要となります。 家庭血圧と診察室血圧の違い 家庭血圧は、自宅でリラックスした状態で測る血圧です。一方、診察室血圧は病院という非日常的な環境で、医師を前にした緊張から高めに出やすい傾向があります。これは「白衣高血圧」と呼ばれ、家庭血圧との差が大きい場合は、家庭血圧を基準に治療方針を決定することが多いです。 家庭血圧は、日々の血圧の状態をより正確に反映していると考えられています。多くの研究で、家庭血圧の方が診察室血圧よりも心血管疾患のリスク予測に優れていることが示されています。だからこそ、家庭での血圧測定が重要視されているのです。 測定時間帯による血圧の変化 血圧は一日の中でも常に変動しています。朝起きた直後や、運動後、食後などは一時的に上昇します。また、精神的なストレスによっても変化します。 日本高血圧学会は、起床後1時間以内と就寝前の毎日同じ時間帯に、朝食や服薬の前に血圧を測ることを推奨しています。毎日同じ時間に測定することで、血圧の変化をより正確に捉えることができるからです。 血圧の測り方:家庭での正しい測定方法 家庭で血圧を測る際は、正しい測定方法を守ることが重要です。 測定前に5分程度、椅子に座ってリラックスしましょう。トイレも済ませておきましょう。 カフ(腕に巻く帯状のもの)は心臓と同じ高さに巻き、肘の内側に指が1~2本入る程度のゆとりを持たせます。 測定中は、腕を机の上に置いて支え、話したり体を動かしたりしないようにしましょう。 1~2分間隔で2~3回測定し、平均値を記録しましょう。 正しい測定方法で得られた数値を記録することで、ご自身の血圧の状態を正しく把握し、適切な対応につなげることができます。 血圧が高い/低いとどうなる? 血圧は、健康のバロメーターとも言える重要な数値です。健康診断でチェックされる項目の一つですが、皆さんは自分の血圧をきちんと把握していますか? 「まだ若いから大丈夫」「自覚症状がないから心配ない」と考えている方もいるかもしれません。しかし、血圧の異常は自覚症状がないまま進行し、ある日突然、命に関わる病気を引き起こす可能性があるのです。 高血圧も低血圧も、放置すると様々なリスクを伴います。 ここでは、高血圧と低血圧それぞれの場合に起こりうる症状や合併症、そして緊急時の対応について詳しく解説します。ご自身の血圧の状態を理解し、健康管理に役立てていただければ幸いです。 高血圧の症状と合併症(脳卒中、心臓病、腎臓病など) 高血圧は、まさに「サイレントキラー」です。初期段階ではほとんど自覚症状がないため、気づかないうちに血管に負担がかかり続け、動脈硬化を進行させます。そして、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞といった生命に関わる病気を引き起こす危険因子となるのです。 2017年に発表された小児・青年期高血圧症のスクリーニングと管理に関する臨床診療ガイドラインでは、高血圧は深刻な合併症のリスクを高めることが示されています。 高血圧の合併症を具体的に見ていきましょう。 高血圧が引き起こす可能性のある合併症は多岐に渡ります。例えば、脳の血管が詰まったり破れたりする脳卒中、心臓の血管が狭くなったり詰まったりする心臓病(狭心症、心筋梗塞)、腎臓の機能が低下する腎臓病、さらには大動脈が裂ける大動脈解離など、命に関わる深刻な病気が含まれます。 脳卒中は、脳の血管が破れたり詰まったりすることで、半身まひや言語障害などの後遺症を残す可能性があります。 心筋梗塞は、心臓の血管が詰まることで心臓の筋肉が壊死し、突然死のリスクも高い危険な病気です。 腎臓病は、腎臓の機能が低下することで、最終的には人工透析が必要になることもあります。 大動脈解離は、大動脈の壁が裂ける病気で、突然の激しい胸や背中の痛みが特徴です。迅速な治療が必要で、放置すると命に関わる危険性があります。 若いうちから血圧管理を意識することは、将来の健康を守る上で非常に重要です。 ▼脳卒中の後遺症について、併せてお読みください。 低血圧の症状と原因 低血圧は、高血圧とは異なり、比較的自覚症状が現れやすい傾向があります。代表的な症状としては、立ちくらみ、めまい、ふらつき、倦怠感、頭痛、吐き気などがあります。これらの症状は、脳への血流が一時的に不足することで起こります。 低血圧の原因は多岐に渡ります。体内の水分量が不足する脱水症状、血液中の赤血球が減少する貧血、自律神経のバランスが乱れる自律神経失調症、心臓の機能が低下する心臓疾患など、様々な原因が考えられます。また、特定の薬の副作用として低血圧が起こることもあります。 緊急性の高い血圧の数値と対応 家庭で血圧を測定した際に、上の数値(収縮期血圧)が180mmHg以上、または下の数値(拡張期血圧)が110mmHg以上の場合、緊急性が高い状態と判断されます。このような数値が出た場合は、速やかに医療機関を受診してください。 特に、激しい頭痛やめまい、吐き気、胸の痛み、呼吸困難、ろれつが回らない、意識がもうろうとするなどの症状がある場合は、一刻を争う事態です。迷わず救急車を呼ぶようにしましょう。 血圧の変動に影響する要因(ストレス、睡眠、飲酒、喫煙など) 血圧は、様々な要因によって変動します。日常生活におけるストレス、睡眠不足、過剰な飲酒、喫煙などは、血圧を上昇させる要因となります。また、食生活においては、塩分の過剰摂取や肥満も血圧上昇に繋がります。 ストレスは交感神経を刺激し、血管を収縮させることで血圧を上昇させます。睡眠不足も自律神経のバランスを崩し、血圧上昇を招きます。アルコールは、少量であれば血管を拡張させて一時的に血圧を下げますが、大量に摂取すると逆に血圧を上昇させる可能性があります。タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、血圧を上昇させるだけでなく、動脈硬化を促進することで、将来的に高血圧のリスクを高めます。 血圧と他の病気との関係 高血圧は、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病などの生活習慣病との関連が深く、これらの病気を合併している人は高血圧になりやすい傾向があります。反対に、高血圧はこれらの病気を悪化させる要因にもなります。2019年に発表された難治性高血圧のガイドラインでも、適切な血圧管理の重要性が強調されており、薬物療法をきちんと行うこと(服薬アドヒアランス)、家庭血圧のモニタリングによる血圧コントロールの重要性についても言及されています. 高血圧は単独で発症するだけでなく、他の生活習慣病と密接に関連していることを理解しておく必要があります。生活習慣病は、互いに影響し合い、悪化させる可能性があるため、総合的な健康管理が重要です。 血圧を正常に保つための生活習慣 血圧のコントロールは、健康な毎日を送る上で欠かせません。血圧計の数値が気になって病院を受診した方、健康診断で血圧が高いと指摘された方、または、ご家族に血圧が高めの方がいて心配な方など、様々な方がいらっしゃると思います。 若いうちは血圧を気にしない方も多いでしょう。しかし、高血圧は自覚症状がないまま進行し、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気を引き起こすことがあります。まさに「サイレントキラー」です。 血圧管理は、年齢に関係なく重要です。新生児でさえ、出生体重や在胎週数によって血圧が異なるように、年齢や身体の状態によって「正常」の範囲は変化します。若いうちから血圧管理を意識することは、将来の健康を守る上で非常に重要です。 この章では、血圧を正常な範囲に保つため、今日からすぐに始められる生活習慣の改善について、具体的に説明します。小さな積み重ねが、大きな成果につながります。一緒に、健康な未来を目指しましょう。 食事療法:高血圧/低血圧に良い/悪い食べ物 食事は、血圧コントロールに直結する重要な要素です。特に、塩分の摂りすぎは高血圧の大きな原因となります。厚生労働省は1日あたりの塩分摂取量の目標値を男性7.5g未満、女性7.0g未満に設定しています。 高血圧の方は、カリウムを多く含む食品を積極的に摂りましょう。カリウムには、体内の余分な塩分を排出する働きがあります。例えば、ほうれん草、小松菜、かぼちゃなどの緑黄色野菜、バナナ、キウイ、みかんなどの果物がおすすめです。 反対に、塩分の多い加工食品(ハム、ソーセージ、ベーコン、インスタントラーメンなど)、漬物などは控えましょう。 食品群 よい食べ物 控えるべき食べ物 野菜 ほうれん草、小松菜、かぼちゃ、ブロッコリー、アスパラガスなど 漬物、塩蔵野菜、梅干しなど 果物 バナナ、キウイ、みかん、りんご、ぶどうなど – 肉・魚 鶏ささみ、鮭、たら、まぐろ(赤身)、いわしなど ベーコン、ハム、ソーセージなどの加工肉 乳製品 牛乳、ヨーグルト、チーズなど – 主食 玄米、全粒粉パン、そばなど 塩分の多いインスタント食品など 低血圧の方は、バランスの取れた食事を心がけ、適度に塩分を摂ることも必要です。貧血気味の場合は、鉄分やビタミンB12を多く含むレバー、赤身の肉、魚介類なども意識して摂りましょう。 運動療法:効果的な運動の種類と強度 適度な運動は、血圧を下げる効果があり、心血管疾患のリスクを低減します。ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動は、1回30分程度、週に3~5回行うのが理想的です。 運動強度は、「少し息が弾む程度」を目安にしましょう。無理なく続けられることが大切です。激しい運動は逆効果になることもあるため、自分の体力に合った運動を選び、継続することが重要です。 ストレスマネジメント:具体的な方法 ストレスは、交感神経を刺激し血管を収縮させることで、血圧を上昇させる要因の一つです。日常生活でストレスをため込まない工夫をしましょう。 趣味の時間を作る: 好きなことに没頭することで、ストレスを発散できます。絵を描く、音楽を聴く、スポーツをするなど、自分が楽しめる活動を見つけましょう。 休息時間を確保する: 十分な睡眠時間を取り、心身を休ませましょう。睡眠不足はストレスを悪化させる要因となります。 リラックスできる時間を持つ: アロマを焚いたり、好きな音楽を聴いたり、読書をしたり、ゆったりとした時間を取り入れるのも効果的です。 呼吸法を取り入れる: 深い呼吸は、副交感神経を優位にしてリラックス効果を高めます。腹式呼吸を意識的に行う練習も有効です。 瞑想やヨガ: これらは心身の緊張を解き放ち、ストレス軽減に効果的です。初心者向けのクラスやオンライン動画なども活用できます。 睡眠の質の改善:睡眠時間と睡眠環境 睡眠不足は、自律神経のバランスを崩し、血圧上昇のリスクを高めます。質の良い睡眠を確保するために、以下の点に気をつけましょう。 規則正しい睡眠習慣: 毎日同じ時間に寝起きすることで、体内時計を整えましょう。 適切な睡眠時間: 7~8時間の睡眠時間を確保するようにしましょう。個人差はありますが、睡眠時間が短すぎると、血圧にも悪影響を及ぼします。 快適な睡眠環境: 寝室の温度や湿度、照明などを調整し、リラックスできる空間を作りましょう。室温は18~20度程度、湿度は50~60%が快適です。 家庭でできる血圧管理の方法:血圧手帳/アプリの使い方 家庭で血圧を測定し、記録することは、血圧管理に非常に役立ちます。血圧手帳やアプリを使って、毎日の血圧の変化を把握しましょう。血圧は常に変動するため、家庭での継続的な測定が重要です。診察室血圧は一時的な値でしかないため、家庭血圧を記録することで、より正確な状態を把握できます。 記録することで、生活習慣の改善効果を確認したり、医師に適切な治療方針を立ててもらったりする際に役立ちます。スマートウォッチなど最新の血圧管理デバイスと連携させれば、データ管理も容易になります。 最新の血圧管理デバイスの情報 最近では、家庭用の血圧計だけでなく、スマートウォッチやスマートフォンと連携して血圧を測定・管理できるデバイスも登場しています。これらのデバイスは、自動的にデータを記録し、グラフ化してくれるなど、血圧管理をより簡単にしてくれる便利なツールです。自分に合ったデバイスを選び、活用することで、日々の血圧管理をスムーズに行うことができます。 まとめ この記事では、血圧の正常値について、家庭血圧と診察室血圧の違い、年齢による変化、測り方、そして高血圧・低血圧それぞれの症状と合併症、緊急時の対応、血圧に影響する要因、他の病気との関係、血圧を正常に保つための生活習慣、最新の血圧管理デバイスの情報まで幅広く解説しました。 血圧は全身状態を反映する重要な指標です。自覚症状がないまま進行し、脳卒中や心筋梗塞といった重大な病気を引き起こす可能性があるため、日頃から血圧を意識し、家庭での血圧測定を習慣化することが大切です。 高血圧の方は、塩分を控えたバランスの良い食事、適度な運動、ストレス管理、十分な睡眠を心がけ、低血圧の方は、バランスの取れた食事と適度な塩分摂取、そして貧血対策を意識しましょう。 血圧管理は、年齢に関係なく、健康な毎日を送る上で欠かせません。この記事を参考に、ご自身の血圧の状態を理解し、健康管理に役立てていただければ幸いです。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Lüscher TF. "What is the optimal blood pressure? Differences between current guidelines and novel insights into kidney injury." European heart journal 40, no. 42 (2019): 3443-3446. Chernova I, Krishnan N. "Resistant Hypertension Updated Guidelines." Current cardiology reports 21, no. 10 (2019): 117. Gorostidi M, Gijón-Conde T, de la Sierra A, et al. "[2022 Practice guidelines for the management of arterial hypertension of the Spanish Society of Hypertension]." Hipertension y riesgo vascular 39, no. 4 (2022): 174-194. Flynn JT, Kaelber DC, Baker-Smith CM, et al. "Clinical Practice Guideline for Screening and Management of High Blood Pressure in Children and Adolescents." Pediatrics 140, no. 3 (2017): . "Neonatal Blood Pressure Standards: What Is 'Normal'?" Clinics in perinatology 47, no. 3 (2020): 469-485.
2025.02.10 -
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脳卒中の中でも、血管が詰まることで発症する脳梗塞。 一命を取り留めても、麻痺やしびれ、言語障害といった後遺症が残る可能性があり、人生を大きく変えてしまうほどの影響を及ぼすケースも少なくありません。 脳梗塞の後遺症は、発症場所や範囲、治療開始までの時間によって症状の重篤度が大きく異なり、早期の治療開始が後遺症を最小限に抑える鍵となります。 この記事では、脳梗塞の後遺症の種類や症状、そして後遺症と共に生きるための治療法やリハビリテーション、日常生活の工夫、社会支援まで、幅広く解説します。 ご自身やご家族が脳梗塞に直面した際に、少しでもお役に立てれば幸いです。 脳梗塞後遺症の種類と症状 脳梗塞は、脳の血管が詰まることで脳細胞に酸素や栄養が届かなくなり、脳の機能が損なわれる病気です。 一命を取り留めたとしても、後遺症が残ってしまう可能性があります。後遺症の症状や程度は、脳梗塞が起こった場所や範囲、そして治療開始までの時間などによって大きく異なります。 一刻も早い治療開始が、後遺症を最小限に抑える鍵となります。 後遺症の種類や症状を正しく理解することは、患者さん本人だけでなく、ご家族にとっても、その後のリハビリテーションや日常生活の工夫、社会資源の活用を考える上で非常に重要です。 運動麻痺(片麻痺、対麻痺) 運動麻痺は、脳梗塞で最も多く見られる後遺症の一つです。 脳梗塞によって運動機能を司る脳の領域が損傷すると、筋肉を動かす指令がうまく伝わらなくなり、手足の麻痺が生じます。 麻痺には、体の片側だけに症状が現れる「片麻痺」と、両側に現れる「対麻痺」があります。 多くの場合、右脳に梗塞が起こると左半身に、左脳に梗塞が起こると右半身に麻痺が現れます。これは、脳の神経線維が交差しているためです。 麻痺の程度は、軽度であれば少し動きにくい、力が入りにくいといった症状ですが、重度になると全く動かせなくなってしまいます。 また、麻痺が続くと、関節が硬くなって動かなくなる「関節拘縮」も起こりえます。 例えば、箸がうまく使えない、ボタンが留められない、歩行が困難になるといった日常生活の動作に支障をきたすだけでなく、寝返りが難しくなることで床ずれのリスクが高まったり、手足のむくみが生じやすくなるなど、二次的な合併症を引き起こす可能性も懸念されます。 ▼脳梗塞の合併症について、併せてお読みください。 脳梗塞後の痙縮に関する研究では、麻痺の重症度が高いほど、後遺症として痙縮(けいしゅく:筋肉が異常に緊張した状態)が生じやすいことが報告されています。 痙縮は、関節の痛みや運動制限を引き起こし、日常生活の質を低下させる一因となります。 麻痺の種類 症状 片麻痺 体の片側の麻痺(右半身もしくは左半身) 対麻痺 体の両側の麻痺 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「脳卒中の再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 感覚障害(しびれ、痛み) 感覚障害も脳梗塞の代表的な後遺症です。皮膚の感覚を司る脳の領域が損傷を受けると、触覚、温度覚、痛覚などを感じにくくなったり、逆に過敏になったりします。 「しびれ」は、感覚が鈍くなる症状で、手足の先端などによく起こります。まるで手袋や靴下を履いているように感じたり、何も触っていないのに何かが触れているような感覚が生じることがあります。 また、損傷を受けた神経が過剰に反応することで、「痛み」を生じることもあります。痛みの程度や種類は人それぞれで、ピリピリとした痛み、ズキズキとした痛み、焼けるような痛みなど様々です。 これらの感覚障害は、日常生活においても様々な困難をもたらします。 例えば、温度感覚が鈍くなると、やけどに気づきにくくなります。 また、触覚が鈍いと、物を持つときに適切な力加減ができず、物を落としてしまったり、逆に握りすぎて物を壊してしまうこともあります。 言語障害(失語症) 脳梗塞によって言語中枢が損傷すると、言葉の理解や発話が難しくなる失語症が起こることがあります。 失語症は、単に言葉が出ないだけでなく、言葉の理解にも影響を及ぼすことがあります。 失語症には、大きく分けて3つの種類があります。 表出性失語: 言葉を発することが難しくなる症状です。 話したい言葉がなかなか出てこなかったり、間違った言葉を使ってしまったり、言葉がつっかえたりします。 受容性失語: 相手の言葉が理解できない症状です。相手が何を言っているのか理解できず、会話が成立しなくなります。 混合性失語: 表出性失語と受容性失語の両方の症状が現れるものです。 失語症はコミュニケーションを大きく阻害するため、社会生活や日常生活に大きな影響を与えます。 高次脳機能障害(記憶障害、注意障害) 高次脳機能障害は、記憶、注意、思考、判断など、高度な精神活動を司る脳の機能に障害が起こることを指します。 記憶障害: 新しいことを覚えられなくなったり、過去の出来事を思い出せなくなったりします。 注意障害: 集中力が続かなかったり、気が散りやすくなったり、複数のことに同時に注意を払えなくなったりします。 その他にも、計画を立てたり、物事を順序立てて行うことが難しくなる「実行機能障害」、体の片側を認識できなくなる「半側空間無視」、意図した動作ができなくなる「失行」、対象が認識できなくなる「失認」など、様々な症状があります。 嚥下障害 嚥下障害は、食べ物や飲み物をスムーズに飲み込めなくなる症状です。 脳梗塞によって、飲み込むための筋肉や神経がうまく働かなくなると、食べ物が気管に入ってむせてしまったり、うまく飲み込めずに口の中に残ってしまったりします。 嚥下障害があると、誤嚥(食べ物が気管に入ること)を起こしやすく、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。 誤嚥性肺炎は、命に関わる危険性もあるため、食事の際には細心の注意が必要です。 排尿障害・排便障害 脳梗塞によって、排尿や排便をコントロールする神経が損傷すると、排尿障害や排便障害が起こります。 尿意や便意を感じにくくなったり、逆に頻繁に感じたり、我慢できずに失禁してしまうこともあります。また、尿や便が出にくくなることもあります。 これらの症状は、生活の質を大きく低下させる可能性があります。 後遺症は、単独で現れることもあれば、複数組み合わさって現れることもあります。 脳梗塞は、後遺症の種類も多岐にわたり、その症状の程度も人それぞれです。 ▼脳梗塞の症状や原因、早めの発見方法について併せてお読みください。 脳梗塞後遺症の治療とリハビリテーション 脳梗塞の後遺症は、患者さん一人ひとりの生活に大きな影を落とす可能性があります。 後遺症の種類や重症度は、脳梗塞が発生した場所や範囲、そして迅速な治療開始の可否によって大きく異なります。 後遺症による様々な困難を少しでも軽減し、より良い生活を送るためには、適切な治療と地道なリハビリテーションが欠かせません。 薬物療法 薬物療法は、脳梗塞の再発予防と後遺症の症状改善を目的として行います。脳梗塞は再発率の高い病気であるため、再発予防は特に重要です。 用いられる薬剤の種類や服用方法は、患者さんの状態や病歴、他の病気の有無などを考慮して決定します。主 な薬剤として、血栓を溶かす薬(血栓溶解剤)、血小板がくっつくのを防ぐ薬(抗血小板剤)、血液が固まるのを防ぐ薬(抗凝固剤)などがあります。 血栓溶解剤は、発症早期に投与することで閉塞した血管を再開通させる効果が期待できます。 しかし、投与可能な時間は限られており、全ての患者さんに適用できるわけではありません。 抗血小板剤と抗凝固剤は、血栓の形成を防ぎ、脳梗塞の再発リスクを低下させる薬です。これらの薬剤は、医師の指示に従って継続的に服用することが重要です。 自己判断で服薬を中断すると、再発のリスクが高まる可能性があります。服用中に気になる症状が現れた場合は、自己判断せずに医師に相談しましょう。 リハビリテーション(理学療法、作業療法、言語療法) リハビリテーションは、脳梗塞後遺症による運動麻痺、感覚障害、言語障害、高次脳機能障害などの改善を目的として行います。 患者さん一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイドのプログラムを作成し、日常生活の自立を目指します。 理学療法:理学療法では、体の動きや機能の回復を目指します。 筋力トレーニングや関節可動域訓練、歩行訓練などを通して、日常生活に必要な動作の改善を図ります。 作業療法:作業療法は、日常生活動作(食事、着替え、トイレ、入浴など)の改善を目的としています。 患者さんの生活環境や生活スタイルを考慮し、自宅での生活をスムーズに行えるように訓練を行います。 言語療法:言語療法は、脳梗塞によって損なわれた言語機能の回復を目指します。 発声練習や言葉の理解・表現の訓練などを通して、コミュニケーション能力の向上を図ります。 リハビリテーションの効果を高めるには、早期開始と継続が重要です。根気強く取り組むことで、症状の改善や日常生活の自立に繋がる可能性が高まります。 再発予防(生活習慣改善、服薬管理) 脳梗塞の再発を防ぐためには、生活習慣の改善と服薬管理が重要です。 高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病は脳梗塞の危険因子となるため、適切な管理が必要です。 バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、節酒など、健康的な生活習慣を心がけましょう。 食生活においては、塩分や糖分、脂肪分の過剰摂取を避け、野菜や果物を積極的に摂ることが大切です。 適度な運動は、血圧や血糖値の調整に役立ちます。また、禁煙は血管の健康維持に不可欠です。 医師から処方された薬は、指示通りに正しく服用しましょう。自己判断で服薬を中断することは危険です。 最新の治療法 近年、脳梗塞後遺症に対する新たな治療法として、再生医療が注目されています。 本来、人には、損傷したところを修復させる力があります。それを担っているのが、幹細胞です。この幹細胞を利用して、脳梗塞の後遺症の改善が期待できるのです。 リペアセルクリニックでは、脳梗塞の後遺症に特化した再生医療を行なっています。 詳しくはこちらをご覧ください↓ 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「脳卒中の再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Gurková E, Štureková L, Mandysová P and Šaňák D. "Factors affecting the quality of life after ischemic stroke in young adults: a scoping review." Health and quality of life outcomes 21, no. 1 (2023): 4. Wissel J, Verrier M, Simpson DM, Charles D, Guinto P, Papapetropoulos S and Sunnerhagen KS. "Post-stroke spasticity: predictors of early development and considerations for therapeutic intervention." PM & R : the journal of injury, function, and rehabilitation 7, no. 1 (2015): 60-7. Andalib S, Divani AA, Ayata C, Baig S, Arsava EM, Topcuoglu MA, Cáceres EL, Parikh V, Desai MJ, Majid A, Girolami S and Di Napoli M. "Vagus Nerve Stimulation in Ischemic Stroke." Current neurology and neuroscience reports 23, no. 12 (2023): 947-962. Wang L, Ma L, Ren C, Zhao W, Ji X, Liu Z and Li S. "Stroke-heart syndrome: current progress and future outlook." Journal of neurology 271, no. 8 (2024): 4813-4825. Zhao Y, Zhang X, Chen X and Wei Y. "Neuronal injuries in cerebral infarction and ischemic stroke: From mechanisms to treatment (Review)." International journal of molecular medicine 49, no. 2 (2022): .
2025.02.10 -
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お尻や足に、電気が走るような痛みやしびれを感じたことはありませんか?もしかしたら、それは「梨状筋症候群」のサインかもしれません。 現代社会のデスクワーク中心の生活は、知らず知らずのうちに梨状筋への負担を増大させて、痛みやしびれを引き起こす疾患です。 放置すると慢性化し、日常生活に深刻な影響を及ぼす可能性もあります。 この記事では、セルフチェックの方法、そして具体的な治療法まで、医師が分かりやすく解説します。 つらい痛みやしびれから解放されるための第一歩を、この記事で踏み出してみませんか? 梨状筋症候群の症状と原因5選 お尻や足に痛みやしびれがある場合、梨状筋症候群の可能性があります。 梨状筋症候群は、お尻の奥深くにある梨状筋という筋肉が、坐骨神経を圧迫することで起こる症状です。 痛みやしびれの症状 梨状筋症候群の痛みやしびれは、お尻から太もも、ふくらはぎ、そして時には足先まで広がり、まるで電気が走るようなピリピリとした感覚や、ジーンと響くような感覚、焼けるような痛みなど、症状は人それぞれです。 これらの症状は、長時間座っていたり、股関節を動かしたりすることで悪化し、同じ姿勢を続けていると、さらに症状が強まる場合があります。 このような症状が現れた場合、日常生活にも支障をきたす可能性があります。 症状の種類 感じ方 範囲 具体的な日常生活への影響例 ピリピリする 電気が走るような感覚 お尻から足先まで 靴下の素材がチクチクと感じたり、足先が常に痺れて違和感がある ジーンとする 重いものが乗っているような感覚 お尻からふくらはぎまで ふくらはぎが重だるく、長時間の歩行が困難になる 焼けるような痛み 熱いものが当たっているような感覚 お尻から太ももまで 座っているとお尻から太ももにかけて熱く感じ、落ち着いて座っていられない このような症状は、当初は軽い違和感程度から始まり、徐々に増悪するケースが多いです。 初期の段階では、「少し疲れているだけだろう」と安易に考えてしまいがちですが、放置すると慢性化し、日常生活に大きな支障をきたす可能性がありますので、早めの対応が重要です。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「腰の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 臀部から太もも、ふくらはぎにかけての痛み 梨状筋症候群では、お尻の奥にある梨状筋が坐骨神経を圧迫することで、臀部から太もも、そしてふくらはぎにかけて痛みを感じることがあります。 梨状筋は、股関節を外側に回す働きをする筋肉です。この筋肉が硬くなったり、腫れたりすることで、近くを通る坐骨神経を圧迫し、症状が出ます。坐骨神経は、人体で最も太い神経であり、腰から足先まで繋がっています。 梨状筋症候群は、比較的まれな疾患であるものの、坐骨神経痛の原因の一つとして無視できない存在です。診断が難しい場合が多く、他の疾患との鑑別が重要になります。 例えば、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症なども坐骨神経痛を引き起こす可能性があるため、これらの疾患との鑑別が必要となります。 かかりつけ医から、『坐骨神経痛の原因は、腰のヘルニアが原因と言われた』とよく外来に来られる患者様がいました。 よく調べてみると、この梨状筋症候群だったということは多々ありました。整形外科医でも、中々判断するのは難しい疾患となります。 ▼椎間板ヘルニアについて、こちらでも分かりやすく解説しています。 長時間座っていると悪化する痛み 梨状筋症候群の痛みは、長時間座っていることで悪化することがあります。 デスクワークや車の運転などで長時間同じ姿勢を続けていると、梨状筋が圧迫され、坐骨神経への刺激が強まります。 特に、足を組んだり、片方に体重をかけたりする姿勢は、梨状筋への負担が大きくなるため、注意が必要です。 こまめに立ち上がったり、ストレッチをしたりすることで、筋の緊張を和らげ、症状をやわらげることができます。 現代社会では、デスクワークやスマートフォンの使用など、長時間座っている機会が増えています。そのため、梨状筋症候群のリスクも高まっていると考えられます。 長時間座っている際には、1時間に1回程度は立ち上がって歩いたり、身体を動かしたりしましょう。 股関節の動きに伴う痛み 梨状筋症候群では、股関節を動かすと痛みが増強することがあります。この梨状筋は、股関節を内側や外側に回したり、曲げ伸ばししたりする際に活躍する筋肉です。 この時に、梨状筋が伸縮し、坐骨神経を刺激します。特に、股関節を外側に回す動きは、梨状筋を強く収縮させるため、痛みを感じやすいです。 階段の上り下りや、足を組む動作など、日常生活での動作でも痛みが出現する可能性があります。 梨状筋症候群のセルフチェックと診断 お尻や足に痛みやしびれがあると、日常生活にも支障が出てつらいですよね。もしかしたら、それは「梨状筋症候群」かもしれません。 梨状筋症候群は、お尻の奥深くにある筋肉「梨状筋」が、近くを通る坐骨神経を圧迫することで起こる病気です。 今回は、梨状筋症候群のセルフチェック方法や医療機関における診断方法について詳しく解説します。 梨状筋症候群のセルフチェック方法 ご自身で梨状筋症候群の可能性をチェックする方法をいくつかご紹介します。これらのセルフチェックは、あくまで梨状筋症候群の疑いがあるかを調べるためのものです。 セルフチェックで陽性反応が出ても、必ずしも梨状筋症候群であるとは限りません。確定診断のためには、医療機関を受診し医師の診察を受けることが重要です。 FAIRテスト(股関節屈曲、外転、内旋テスト)とPace徴候は、梨状筋症候群のセルフチェックとして広く知られています。 FAIRテスト:FAIRテストでは、仰向けに寝て片方の足をもう片方の足の上に組み、上の足の膝を外側に倒していきます。 この時、お尻や太もも、ふくらはぎにかけて痛みやしびれが出たら、梨状筋症候群の可能性があります。 このテストは、梨状筋が緊張・短縮することで坐骨神経が刺激され、神経のインパルスが妨げられることで症状が出現するというメカニズムに基づいています。 Pace徴候:Pace徴候では、痛みのある側の足を組んで座り、そのまま上半身を前に倒します。 お尻や太ももに痛みやしびれが増強する場合、梨状筋症候群の可能性があります。 これらのセルフチェックは、梨状筋の緊張や炎症によって坐骨神経が圧迫されることで生じる痛みやしびれを誘発することで、梨状筋症候群の可能性を探るものです。 しかし、これらの症状は他の疾患でも起こり得るため、鑑別診断が重要です。 例えば、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症も同様の症状を引き起こす可能性があります。 鑑別診断:坐骨神経痛との違い 梨状筋症候群は、坐骨神経痛の一つの原因です。 坐骨神経痛とは、腰からお尻、太ももの裏、ふくらはぎ、足にかけて伸びている坐骨神経が何らかの原因で刺激され、痛みやしびれなどの症状が現れる状態を指します。 梨状筋症候群以外にも、腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腫瘍など、様々な病気が坐骨神経痛を引き起こす可能性があります。 ▼坐骨神経痛を和らげるストレッチについて、併せてお読みください。 梨状筋症候群の治療法と治る期間 ここでは、梨状筋症候群の具体的な治療法と、どれくらいの期間で治るのかについて、詳しく解説します。 どの治療法が自分に合っているのか、不安に思っている方も、ぜひ参考にしてみてください。 梨状筋症候群の治療期間 梨状筋症候群の治療期間は、症状の重さや治療法、そして個人差によって大きく異なります。 多くの場合、保存療法と呼ばれる手術をしない治療で、2ヶ月ぐらい経てば、かなり軽快するという報告があります。 具体的には、初期段階で症状が軽い場合は数週間から数ヶ月で、ほとんどが軽快します。 しかし、症状が重い場合や慢性化している場合は、数ヶ月から半年以上かかる場合もあります。 さらに、日常生活での姿勢や体の使い方が悪ければ、さらに治癒期間は長くなります。 梨状筋症候群は、他の疾患、例えば腰椎椎間板ヘルニアなどと症状が似ている場合があり、誤診される可能性も否定できません。 そのため、医療機関を受診し、医師の診察を受けることが重要です。 保存療法:ストレッチや薬物療法 梨状筋症候群の治療は、多くの場合、保存療法から始めます。 梨状筋症候群は、梨状筋の緊張や炎症が原因で起こることが多いため、保存療法では、主に梨状筋の緊張を和らげ、炎症を抑えることを目的とします。 具体的には、ストレッチ、薬物療法、温熱療法、注射などがあります。 ストレッチ:ストレッチは、梨状筋を伸ばすことで、神経への圧迫を軽減し、症状の改善を図ります。 理学療法士による坐骨神経モビライゼーションや梨状筋リリースといった専門的な手技も有効です。 股関節の屈曲角度が90度以上と90度未満のストレッチ方法があり、症状や身体の状態に合わせて適切な方法を選択することが重要です。 薬物療法:薬物療法では、痛みや炎症を抑える薬を服用します。痛み止めや消炎鎮痛剤など、症状に合わせて医師が適切な薬を処方します。 温熱療法:温熱療法は、温めることで血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる効果が期待できます。ホットパックや温湿布などを使用します。 注射療法:注射療法では、梨状筋や坐骨神経周囲に局所麻酔薬やステロイド薬を注射します。 痛みを軽減し、炎症を抑える効果が期待できます。近年では、ボツリヌス毒素注射も効果的であると報告されています。 ボツリヌス毒素は、筋肉の過剰な収縮を抑制する効果があり、梨状筋の緊張を和らげ、坐骨神経への圧迫を軽減します。 手術療法の適応 梨状筋症候群の手術療法は、保存療法を数ヶ月間継続しても症状が改善しない場合や、他の疾患が疑われる場合に検討されます。 しかし、梨状筋症候群で手術が必要となるケースは非常に稀です。 家庭でできるストレッチと注意点 梨状筋症候群の代表的なストレッチとして、仰向けに寝て、片方の足首を反対側の膝の上に乗せ、両手で太ももを抱えてゆっくりと胸に引き寄せる方法があります。この姿勢を30秒ほど維持し、反対側も同様に行います。 ストレッチは無理のない範囲で行いましょう。ストレッチは、朝起きた時やお風呂上がりなどが効果的です。 また、ストレッチだけでなく、日常生活での姿勢や体の使い方にも気を配ることが重要です。 長時間の同じ姿勢を避け、適度な運動を心がけることで、梨状筋症候群の予防や再発防止にも繋がります。 椅子に座っている時に足を組む癖がある方は、梨状筋への負担が大きくなるため、意識的に足を組まないようにしましょう。 また、立ち仕事が多い方は、適度に休憩を取り、股関節周りのストレッチを行うことをおすすめします。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「腰の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Kirschner JS, Foye PM, Cole JL. "Piriformis syndrome, diagnosis and treatment." Muscle & nerve 40, no. 1 (2009): 10-8. Probst D, Stout A, Hunt D. "Piriformis Syndrome: A Narrative Review of the Anatomy, Diagnosis, and Treatment." PM & R : the journal of injury, function, and rehabilitation 11 Suppl 1, no. (2019): S54-S63. Kim B, Yim J. "Core Stability and Hip Exercises Improve Physical Function and Activity in Patients with Non-Specific Low Back Pain: A Randomized Controlled Trial." The Tohoku journal of experimental medicine 251, no. 3 (2020): 193-206. Ahmad Siraj S, Dadgal R. "Physiotherapy for Piriformis Syndrome Using Sciatic Nerve Mobilization and Piriformis Release." Cureus 14, no. 12 (2022): e32952.
2025.02.09 -
- 脊椎、その他疾患
肩こり、経験したことがないという方は少ないのではないでしょうか? 実はその原因は、デスクワークや姿勢、運動不足、冷え性、そしてストレスなど、実に多様で、原因によって適切な対処法も異なります。 肩こりは放置すると、頭痛や吐き気などの思わぬ症状を引き起こす可能性も。 本記事では、肩こりの原因とメカニズムを5つに分類し、具体的な症状や、日常生活で簡単に取り入れられる効果的な治療法・予防法まで、医師が詳しく解説します。 肩こりに悩まされている方はもちろん、これから肩こりを予防したいという方も、ぜひご一読ください。 肩こりの原因とメカニズム5選 肩こりは、誰でも身近に経験する可能性が高い症状です。しかし、「肩こり」と一言で言っても、その原因は人それぞれであり、原因によって適切な対処法も異なってきます。 今回は、肩こりの原因とメカニズムを5つご紹介し、具体的な解説を加えながら、読者の皆様がご自身の肩こりの原因を理解し、適切な対策を講じるためのお手伝いをさせていただきます。 デスクワークなど長時間同じ姿勢での作業 現代社会において、デスクワークは多くの人にとって避けられない仕事スタイルとなっています。しかし、長時間同じ姿勢での作業は、肩こりの大きな原因となります。 特にパソコン作業やスマートフォンの操作は、首を前に傾けた姿勢になりがちで、肩や首の筋肉に大きな負担がかかります。 長時間同じ姿勢を続けると、特定の筋肉が緊張し続け、血行不良に陥ります。 肩甲骨は、腕の動きに合わせて上下左右に自由に動く骨です。デスクワークでは、肩甲骨周辺の筋肉や首の後ろの筋肉がどうしても凝ってきます。 例えば、パソコン作業中に画面に集中しすぎると、知らず知らずのうちに肩をすくめた状態になり、僧帽筋と呼ばれる肩の筋肉が過剰に緊張します。 また、キーボード操作に集中すると、腕や手首の筋肉も緊張し、その緊張が肩まで伝わって肩こりを悪化させることもあります。 慢性的な頸部痛の患者を対象とした研究では、肩甲骨を中心とした抵抗運動が、マッサージよりも痛みの軽減、頸部の可動域の改善、僧帽筋の緊張緩和に効果的だったという結果が報告されています。 この研究結果は、同じ姿勢での作業で凝り固まった筋肉を積極的に動かすことの重要性を示唆しています。 つまり、肩甲骨を意識的に動かす体操やストレッチを日常生活に取り入れることで、肩こりの予防や改善に繋がることが期待できます。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 猫背などの姿勢不良 猫背などの姿勢不良も、原因です。正しい姿勢では、頭の重さは背骨全体で支えられています。 しかし、猫背になると頭が体の前方に出てしまい、首や肩の筋肉で頭を支えなければならなくなります。 5kg程度の重さのある頭を、首や肩の筋肉だけで支え続けると想像してみてください。筋肉への負担は相当なものになります。 ストレートネックも姿勢不良の一種です。本来、頸椎(首の骨)は緩やかなカーブを描いていますが、ストレートネックではこのカーブが失われ、まっすぐな状態になっています。 ストレートネックになると、頭が前方に傾きやすく、首や肩の筋肉への負担がさらに増大します。 運動不足 運動不足は、筋肉量の減少や筋力の低下を引き起こします。すると、正しい姿勢を維持することが難しくなり、猫背やストレートネックになりやすくなります。 また、運動不足は血行不良になり、筋肉への酸素供給が不足し、老廃物が蓄積しやすくなります。やはり、肩こりの悪影響となります。 冷え性 冷え性は、末梢血管の収縮を引き起こし、血行不良を招きます。血行不良は、筋肉への酸素供給を阻害し、老廃物の排出を妨げ、肩こりが発生しやすくなります。 特に、女性は男性に比べて筋肉量が少なく、冷えやすい傾向があるため、肩こりに悩まされることが多いです。 ストレス ストレスは、自律神経のバランスを崩し、交感神経を優位にさせます。交感神経が優位になると、筋肉が緊張しやすくなり、肩こりを引き起こします。 また、ストレスは呼吸を浅くし、体内の酸素供給を低下させるため、これも原因となります。 ストレスと肩こりの関係は複雑ですが、精神的な緊張が身体をこわばらせるのは明らかです。 ストレスを軽減するためのリラクセーション法やストレスマネジメント法を身につけることは、肩こりの改善にも繋がります。 例えば、ヨガや瞑想は、心身をリラックスさせ、自律神経のバランスを整える効果が期待できます。また、ウォーキングなどの軽い運動も、ストレス軽減に効果的です。 日常生活の中で、ご自身に合ったストレス解消法を見つけて実践していくことが大切です。 肩こりの症状と治療法・予防法 肩こりは、あまりにもありふれた症状であるがゆえに、放置されがちです。 しかし、肩こりは放置すると日常生活に大きな支障をきたすだけでなく、頭痛や吐き気などの他の症状を引き起こす原因にもなり得ます。 初期症状では、肩上部の僧帽筋という筋肉が緊張することで、肩まわりが凝ってきます。 まるで肩に重いリュックサックを背負っているかのような感覚、あるいは首の後ろに鉄板が張り付いているかのような感覚を覚える方もいるかもしれません。 症状が進行すると、首や肩だけでなく、背中全体に硬さや痛み、不快感が広がり、日常生活にも支障をきたすようになります。 例えば、朝起きた時に首が回らない、洗濯物を干すのが辛い、長時間座っているのが苦痛といった具体的な問題が生じます。 さらに、肩こりは肩や首の局所的な症状だけでなく、頭痛、吐き気、めまい、眼精疲労、歯痛などの他の症状を併発したり、誘発したりすることもあります。 腕や指先に痛みやしびれが出る場合もあります。これらの症状は、肩や首の筋肉の緊張が神経や血管を圧迫することで引き起こされると考えられています。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 肩こりの症状(肩の痛み、こり感、重さ、だるさ、頭痛、吐き気など) 肩こりの症状は実に多様で、肩や首の痛み、こり感、重さ、だるさなど、人によって感じ方が異なります。 症状 説明 痛み 肩や首、背中、腕、指先に感じる痛み。鋭い痛み、鈍い痛み、ズキズキする痛みなど、痛みの種類も様々です。 こり感 筋肉が硬く張っている感じ。肩や首を動かそうとすると、まるでゴムが引っ張られるような感覚があるかもしれません。 重さ 肩や首が重く感じる。まるで何キロもの重りが乗っているかのような感覚に襲われる方もいます。 だるさ 肩や首、腕のだるさ。まるで鉛のように重く、動かす気力さえ失せてしまうような感覚です。 頭痛 肩こりに伴う頭痛。緊張型頭痛が多いです。後頭部から首筋にかけて締め付けられるような痛み、あるいは頭全体が重く感じるような痛みなど、様々なタイプの頭痛があります。 吐き気 肩こりのひどい場合に起こる吐き気。ひどい肩こりは自律神経のバランスを崩し、吐き気を引き起こすことがあります。 めまい 肩こりによって引き起こされるめまい。回転性のめまいや、ふわふわとした浮遊感など、様々なタイプのめまいがあります。 眼精疲労 肩こりによって悪化する眼精疲労。目の奥が痛む、目がかすむ、目が乾くなどの症状が現れます。 しびれ 腕や指先に感じるしびれ。まるで針で刺されたようなチクチクとした感覚や、ジンジンとした痺れるような感覚があります。 緊張型頭痛において、頸部の筋骨格系の機能障害が重要な役割を果たしていることが近年の研究で明らかになっています。 つまり、肩こりは単なる肩の症状ではなく、頭痛などの他の症状とも密接に関連しているということです。 ▼めまいの対処法について、併せてお読みください。 ▼頭痛と吐き気が起きたとき、どうしたらいい?併せてお読みください。 肩こりの治療法(薬物療法、物理療法、運動療法、鍼灸治療、マッサージなど) 肩こりの治療法は、大きく分けて薬物療法、物理療法、運動療法、鍼灸治療、マッサージなどがあります。 薬物療法: 筋肉の緊張を和らげる薬や、痛みを軽減する薬、血行を良くするビタミン剤などが処方されます。 薬物療法は、即効性があり、つらい症状を 軽減できるというメリットがあります。 物理療法: 温熱療法、電気療法、牽引療法などがあります。 物理療法は、薬を使わずに身体に直接働きかける治療法で、副作用が少ないというメリットがあります。 運動療法: ストレッチや筋力トレーニングなど、肩甲骨や肩関節の動きを改善する運動を行います。 運動療法は、肩こりの根本的な原因である筋肉の柔軟性や筋力の低下を改善する効果があります。 鍼灸治療: 鍼やお灸でツボを刺激することで筋肉が柔らかくなり、血流も良くなります。 鍼灸治療は、東洋医学に基づいた治療法で、身体の自然治癒力を高める効果があるとされています。 マッサージ: 筋肉を直接もみほぐし、血行を良くします。 マッサージは、筋肉の緊張を和らげ、リラックス効果も期待できます。 肩こりの予防法(ストレッチ、姿勢改善、適度な運動、保温、ストレス管理など) 肩こりの予防には、日常生活における習慣の見直しが重要です。 ストレッチ: 肩や首の筋肉を 、ストレッチすることで、筋肉の柔軟性を保ち、肩をほぐします。 朝起きた時、仕事中、寝る前など、こまめに行うのが効果的です。 姿勢改善: デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続ける場合は、こまめに休憩を取り、姿勢を変えるようにしましょう。正しい姿勢を保つことも重要です。 猫背にならないように意識し、顎を引いて背筋を伸ばすようにしましょう。 適度な運動: 適度な運動は、血行を促進し、肩こりを和らげる効果があります。 ウォーキングや水泳など、無理のない範囲で体を動かすようにしましょう。 保温: 体を冷やすと、肩こりが強くなります。特に冬場は、肩や首を冷やさないように注意しましょう。 温かいお風呂に浸かるのも効果的です。 ストレス管理: ストレスは肩こりの大きな原因の一つです。ストレスを溜め込まないように、リラックスする時間を作る、趣味を楽しむなど、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Corum M, Aydin T, Medin Ceylan C, Kesiktas FN. "The comparative effects of spinal manipulation, myofascial release and exercise in tension-type headache patients with neck pain: A randomized controlled trial." Complementary therapies in clinical practice 43, no. (2021): 101319. Fernández-de-Las-Peñas C, Cook C, Cleland JA, Florencio LL. "The cervical spine in tension type headache." Musculoskeletal science & practice 66, no. (2023): 102780. Park SH, Lee MM. "Effects of Lower Trapezius Strengthening Exercises on Pain, Dysfunction, Posture Alignment, Muscle Thickness and Contraction Rate in Patients with Neck Pain; Randomized Controlled Trial." Medical science monitor : international medical journal of experimental and clinical research 26, no. (2020): e920208. Al-Khazali HM, Krøll LS, Ashina H, Melo-Carrillo A, Burstein R, Amin FM, Ashina S. "Neck pain and headache: Pathophysiology, treatments and future directions." Musculoskeletal science & practice 66, no. (2023): 102804. Kang T, Kim B. "Cervical and scapula-focused resistance exercise program versus trapezius massage in patients with chronic neck pain: A randomized controlled trial." Medicine 101, no. 39 (2022): e30887.
2025.02.09 -
- 幹細胞治療
- 再生治療
- 頚椎椎間板ヘルニア
- 腰椎椎間板ヘルニア
腰や首の痛み、痺れ、悩んでいませんか? それは、背骨のクッションである椎間板が潰れ、神経を圧迫する椎間板ヘルニアかもしれません。 ぎっくり腰のような激しい痛みから、長時間デスクワークによる慢性的な痛みまで、その症状は様々です。 実は、トップアスリートでも椎間板ヘルニアの有病率が高いという報告もあるほど、身近な疾患なのです。 この記事では、椎間板ヘルニアの代表的な症状5選と原因や保存療法・手術療法といった治療法まで、詳しく解説します。 もしかしたら、あなたの痛みや痺れの原因がわかるかもしれません。 https://youtu.be/4AOGsB-m63Y?si=OXYtRw-021UiEI73 椎間板ヘルニアの症状と原因5選 椎間板ヘルニアは、背骨同士のクッションとなる椎間板が、まるで潰れて神経を圧迫するような状態です。腰や首に発症し、多くの人が悩まされています。 この椎間板ヘルニアによって引き起こされる代表的な症状5つと、その原因について、詳しく説明していきます。 ①腰痛:急性期の特徴と慢性期の特徴 腰痛は、椎間板ヘルニアの最も代表的な症状です。 「ぎっくり腰」のように、突然激しい痛みが生じる場合(急性期)と、徐々に痛みが強くなっていく場合(慢性期)があります。 急性期:急性期は、重量物を持った時や、急に体をひねったときなどに起こりやすく、その場で動けなくなるほどの激痛を伴うこともあります。 私の患者さんでも、くしゃみをした瞬間、激痛で動けなくなり救急車で運ばれてきた方がいました。 慢性期:慢性期は、加齢に伴って椎間板がすり減ったり、長時間のデスクワークや悪い姿勢などによって、じわじわと症状が現れることが多いです。 まるで、長年使い続けたクッションが、少しずつへたっていくように、椎間板も徐々に変性していきます。 初期は軽い違和感程度ですが、放っておくと重症化し、日常生活に支障をきたすようになることもあります。 特徴 急性期 慢性期 痛みの始まり方 突然 徐々に 痛みの程度 激しい 軽い~中等度 期間 数日~数週間 数ヶ月~数年 原因 急な動作、重量物を持つ 加齢、長時間のデスクワーク、悪い姿勢など ②下肢の痛みやしびれ:坐骨神経痛との関係性 椎間板ヘルニアは、腰だけでなく、臀部や太ももの後ろから、ふくらはぎ、足先など、下肢にも痛みやしびれを引き起こすことがあります。 これは、飛び出した椎間板が、腰から足にかけて伸びている「坐骨神経」という神経を圧迫するためです。 坐骨神経痛の症状は、おしりから太ももにかけての痛み、ふくらはぎの外側や足の裏のしびれ、足首や足指の動きが悪くなるなどがあります。 これらの症状は、片側の足に現れることが多く、咳やくしゃみをすると痛みが強くなることがあります。 特に、トップアスリートでは、一般人口よりも椎間板ヘルニアの有病率が高いという報告もあります。 これは、脊柱への継続的な圧力と、微小外傷の蓄積が原因と考えられています。アスリートに限らず、普段から、腰の負担を軽減するため、姿勢や運動を心がけることが大切です。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 ③排尿・排便障害:重症例での症状 椎間板ヘルニアが重症化すると、まれに排尿や排便のコントロールが難しくなることがあります。 これは、「馬尾神経」と呼ばれる、膀胱や直腸の働きをコントロールする神経が圧迫されることで起こります。 尿が出にくい、残尿感がある、便が出にくい、便秘になるなどの症状が現れたら、すぐに医療機関を受診してください。 馬尾症候群は、緊急手術が必要な重篤な状態です。 早期発見、早期治療が予後を大きく左右するため、少しでも異変を感じたら、ためらわずに専門医に相談することが重要です。 ④遺伝的要因:家族歴との関連 椎間板ヘルニアは、遺伝的要因が直接的に関係しているという明確なエビデンスは、現在のところありません。 しかし、家族に椎間板ヘルニアになった人がいる場合、椎間板の構造や強度などが似ている可能性があり、将来的に発症するリスクが少し高くなる可能性も考えられます。 ⑤加齢や生活習慣:肥満や喫煙の影響 加齢:加齢は、椎間板ヘルニアの大きなリスク要因の一つです。年齢を重ねると、椎間板の水分が減少すると、もろくなってしまい、ヘルニアになりやすくなります。 これは、乾燥したスポンジがもろくなりやすいのと同じようなイメージです。 肥満:肥満もリスクを高める要因です。過剰な体重は、椎間板に大きな負担をかけるためです。 喫煙:喫煙は、椎間板への血流を悪くし、椎間板の変性を促進するため、間接的にヘルニアのリスクを高める可能性が指摘されています。 日頃から、バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙などを心がけることで、椎間板ヘルニアのリスクを軽減することができます。 特に、肥満の方は、適切な減量指導を受けることで、椎間板への負担を軽減し、症状の改善を期待できます。 椎間板ヘルニアの検査と治療法4選 椎間板ヘルニアの検査方法と治療法について、不安を少しでも和らげ、治療に前向きに取り組めるよう、わかりやすく解説します。 検査で何がわかるのか、どんな治療の選択肢があるのか、一緒に見ていきましょう。 画像診断:MRI、CT、レントゲンの役割と使い分け 椎間板ヘルニアの検査には、主にMRI、CT、レントゲンといった画像診断を用います。 それぞれの検査の特徴を、身近なもので例えて説明します。 MRI検査: MRI検査は、強力な磁石と電波を使って体の内部を、まるでゼリーの中身を見るように鮮明に画像化します。 飛び出した椎間板の状態や、神経がどれくらい圧迫されているかを正確に把握できます。特に、神経根症状を伴う腰椎椎間板ヘルニアの診断においては、MRIが不可欠です。 CT検査: CT検査は、X線を使って体の断面を撮影し、輪切りにした野菜のように内部構造を写し出します。 MRI検査ほど鮮明ではありませんが、骨の輪郭をとらえるのが特徴で、椎間板ヘルニアに伴う骨の異常や、ヘルニアの石灰化の有無などを確認するのに役立ちます。 レントゲン検査: レントゲン検査は、X線を使って骨を撮影する、健康診断などでもよく用いられる検査です。 椎間板ヘルニア自体はレントゲンに写りませんが、骨の変形や異常がないかを確認し、他の骨の病気を除外するために用います。 これらの検査を組み合わせて行うことで、より正確な診断が可能になります。 保存療法:薬物療法、理学療法、安静の重要性 椎間板ヘルニアの治療は、まず保存療法から始めます。保存療法は、手術をせずに痛みやしびれなどの症状を和らげることを目的とした治療法です。 薬物療法: 痛みや炎症を抑える薬、神経の働きを助ける薬、筋肉の緊張を緩和する薬などを、患者さんの症状に合わせて処方します。 鎮痛剤は、痛みを感じにくくする効果があり、炎症を抑える薬は、腫れや熱感を抑えることで痛みを軽減します。 神経の働きを助ける薬は、神経の修復を促進し、しびれなどの症状を改善する効果が期待できます。 理学療法: 専門の理学療法士による指導のもと、ストレッチや運動、マッサージなどを行います。 硬くなった筋肉を柔らかくすることで血行を促進し、痛みを軽減する効果があります。 安静: 痛みが強い時期には、安静にすることが重要です。安静にすることで、炎症が治まり、痛みが軽減されます。 しかし、長期間の安静は、筋力低下や体力低下につながるため、医師の指示に従って適切な安静期間と活動量を調整することが大切です。 北米脊椎協会(NASS)のガイドラインでも、適切な安静の重要性が強調されています。 これらの保存療法を6週間から3ヶ月ほど続け、それでも症状が改善しない場合や、症状が悪化する場合には、手術療法を検討します。 手術療法:適応と種類、術後のリハビリテーション 保存療法で効果が得られない場合や、重度の神経麻痺がある場合などには、手術療法を検討します。 手術の主な目的は、飛び出した椎間板を取り除き、神経の圧迫を解消することです。 手術の適応: 排尿・排便に障害が出たり、日常生活に支障が出るほどの神経麻痺がある場合は、緊急手術が必要になることもあります。 特に、馬尾症候群の場合は、24~48時間以内の緊急手術が必須です。それ以外の場合でも、保存療法を数ヶ月試しても症状が改善しない場合は、手術の適応となることがあります。 具体的な適応は、医師が患者さんの症状や検査結果などを総合的に判断します。 手術の種類: 椎間板ヘルニアの手術には、顕微鏡手術、内視鏡手術など、いくつかの種類があります。 顕微鏡手術は、顕微鏡を使って患部を拡大して行うため、より精密な手術が可能です。 内視鏡手術は、小さな傷で行えるため、体への負担が比較的少ないというメリットがあります。 どの手術法が適しているかは、ヘルニアの状態や患者さんの状態によって異なります。 胸椎椎間板ヘルニアのように、稀なケースでは、ヘルニアの位置や石灰化の有無によって、胸腔内切開術や後外側切開術などのアプローチを選択する必要もあります。 術後のリハビリテーション: 手術後は、早期からリハビリテーションを開始することが重要です。 リハビリテーションでは、筋力トレーニングやストレッチ、歩行訓練などを行い、日常生活への復帰を目指します。 手術は体に負担がかかるため、手術のメリットとデメリットをよく理解し、医師と十分に相談した上で、手術を受けるかどうかを判断することが大切です。 しかし、手術をしても、しびれや痛みが残ったり、『手術前よりも後遺症がひどくなった』という方も一定数おられます。 術後の後遺症の場合は、神経は一度損傷すると、戻らないことがあると、医師はよく言います。 そんな方に、リペアセルクリニックでの国内ではほとんど行われていない、脊髄腔内にダイレクトに幹細胞を投与する再生医療を行なっています。詳しくはこちらで説明しています。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 <実際に行った、患者様の声> https://youtu.be/zRaQYBJNrS8?si=dz3vaREdJJnD65HL https://youtu.be/3yN5q8_ATpc?si=YNTbuXIalfV4Z0Me 他の疾患との鑑別:坐骨神経痛、脊柱管狭窄症との違い 椎間板ヘルニアは、坐骨神経痛や脊柱管狭窄症といった他の疾患と症状が似ていることがあります。 坐骨神経痛: 坐骨神経痛は、腰からおしり、太ももの裏側、ふくらはぎにかけて伸びる坐骨神経が圧迫されることで起こる症状です。 椎間板ヘルニアが坐骨神経痛の原因となることもありますが、梨状筋症候群など、他の原因で坐骨神経痛が起こることもあります。 脊柱管狭窄症: 脊柱管狭窄症は、背骨の中を通る脊髄神経の通り道である脊柱管が狭くなることで、神経が圧迫されて起こる病気です。 加齢に伴う骨や靭帯の変化によって脊柱管が狭くなることが主な原因です。 椎間板ヘルニアと同様に、腰痛や足のしびれ、痛みなどの症状が現れますが、間歇性跛行(しばらく歩くと足が痛くなり、休むと痛みが治まる)といった特徴的な症状がみられることもあります。 これらの疾患は症状が似ているため、必ず、専門医による適切な診断を受けることが大切です。 ▼脊柱管狭窄症について、併せてお読みください。 参考文献 Yamaguchi JT and Hsu WK. "Intervertebral disc herniation in elite athletes." International orthopaedics 43, no. 4 (2019): 833-840. Danazumi MS, Nuhu JM, Ibrahim SU, et al. "Effects of spinal manipulation or mobilization as an adjunct to neurodynamic mobilization for lumbar disc herniation with radiculopathy: a randomized clinical trial." The Journal of manual & manipulative therapy 31, no. 6 (2023): 408-420. Kögl N, Petr O, Löscher W, et al. "Lumbar Disc Herniation—the Significance of Symptom Duration for the Indication for Surgery." Deutsches Arzteblatt international 121, no. 13 (2024): 440-448. Court C, Mansour E and Bouthors C. "Thoracic disc herniation: Surgical treatment." Orthopaedics & traumatology, surgery & research : OTSR 104, no. 1S (2018): S31-S40. "[Guideline for diagnosis, treatment and rehabilitation of lumbar disc herniation]." Zhonghua wai ke za zhi [Chinese journal of surgery] 60, no. 5 (2022): 401-408. van der Windt DA, Simons E, Riphagen II, et al. "Physical examination for lumbar radiculopathy due to disc herniation in patients with low-back pain." The Cochrane database of systematic reviews , no. 2 (2010): CD007431. Kreiner DS, Hwang SW, Easa JE, et al. "An evidence-based clinical guideline for the diagnosis and treatment of lumbar disc herniation with radiculopathy." The spine journal : official journal of the North American Spine Society 14, no. 1 (2014): 180-91. Zhang AS, Xu A, Ansari K, et al. "Lumbar Disc Herniation: Diagnosis and Management." The American journal of medicine 136, no. 7 (2023): 645-651.
2025.02.09 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節、その他疾患
- 肩関節
あなたは今、肩の痛みや動かしにくさに悩んでいませんか? 40代、50代で多く発症する四十肩・五十肩は、実は30代や60代でも発症する可能性があり、夜間の痛みが特徴的な、決して他人事ではない身近な症状です。 「まさか自分が…」と驚く人も多いこの肩の痛みは、シャツを着替えたり、髪を洗ったりする動作が辛くなります。 2023年の国民生活基礎調査によると、肩こりや肩の痛みを訴える人は増加傾向にあり、その背景には長時間のデスクワークや運動不足などが考えられます。 この記事では、四十肩・五十肩の特徴的な症状や、その原因となるメカニズムを、医師の解説を通して詳しく解説します。 夜間の激痛に悩まされ、熟睡できない日々を送っているあなたも、この記事で紹介する治療法によって、快適な睡眠を取り戻し、再び日常生活を楽しめるようになるかもしれません。 今すぐ、あなたの肩の悩みを解消する第一歩を踏み出しましょう。 四十肩・五十肩の特徴と症状 四十肩・五十肩は、肩の痛みと動かしにくさを特徴とします。 この症例は、私たち整形外科医には非常によくある相談です。 医学的には「肩関節周囲炎」と呼ばれ、中年以降に多く発症することから、40代で発症すると四十肩、50代で発症すると五十肩という風に、おおよその年齢で呼び分けられています。 ただ、この年齢はあくまで目安です。30代前半でも、60代後半でも発症する可能性は十分にあります。 私自身も、30代で四十肩のような症状を経験したことがあります。 主な症状と痛みの部位 四十肩・五十肩の主な症状は、肩の痛みと可動域制限、そして炎症です。 痛み: 痛み方にはいくつかのパターンがあります。 初期には、肩を動かしたときにズキンとするような鋭い痛みを感じることが多く、安静時でも鈍い痛みが続く場合もあります。 痛みの部位は肩関節の周囲だけにとどまらず、腕や首、時には背中まで広がることがあります。特に特徴的なのは、夜間に痛みが増強する「夜間痛」です。 安静にしているはずの睡眠中に痛みが激しくなり、起きてしまうこともあります。 可動域制限: 肩関節の動きが悪くなることを「可動域制限」と言います。 具体的には、腕を真上に上げること(挙上)、後ろに回すこと(外旋・内旋)、体の前で腕を交差させること(水平内転)などが難しくなります。 腕の動きが制限されることで、日常生活での動作が苦痛になります。 炎症: 肩関節周囲の組織で炎症が起きているため、炎症に伴う腫れや熱感を伴う場合もあります。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「肩の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 可動域制限のメカニズム 四十肩・五十肩で可動域制限が起こるメカニズムは、肩関節周囲の組織の炎症と癒着が主な原因です。 私たちの肩関節は、肩甲骨の関節窩という受け皿のような部分に、上腕骨頭というボールのような部分がはまり込む構造をしています。 この関節は関節包という袋状の組織で包まれており、滑液という潤滑油の役割を果たす液体で満たされています。 四十肩・五十肩では、この関節包に炎症が起き、厚く縮んでしまいます。風船がしぼんで硬くなるイメージです。 関節包が硬く縮むことで、肩関節の動きが制限されてしまうのです。 炎症がさらに進むと、関節包や周囲の組織が癒着してしまいます。 例えるなら、くっつきにくいはずの食品ラップ同士がくっついてしまうような状態です。こうなると、さらに可動域制限が強くなります。 肩関節の動きが悪くなると、日常生活での様々な動作に支障をきたすだけでなく、動かすこと自体が怖くなり、さらに動かさなくなってしまう、という悪循環に陥る可能性があります。 結果として、肩関節の拘縮がさらに進行してしまうのです。 糖尿病との関連性 糖尿病は、四十肩・五十肩のリスクを高めると言われています。高血糖の状態が続くと、血管が傷つきやすく、血流が悪くなります。 肩関節周囲の組織も血流が悪くなることで、炎症が起こりやすくなり、四十肩・五十肩を発症しやすくなると考えられています。 また、糖尿病の方は痛みを感じにくい場合があり、四十肩・五十肩の症状に気づきにくく、重症化しやすいという側面も持っています。 糖尿病の方は、日頃から肩のストレッチなど、肩のケアを心がけ、異変を感じたら早めに医療機関を受診することが大切です。 四十肩・五十肩は自然治癒することもありますが、適切な治療を行うことで、痛みの軽減や可動域の改善、そして日常生活の質の向上に繋がります。 四十肩・五十肩の原因と診断 四十肩・五十肩は、医学的には「肩関節周囲炎」と呼ばれ、肩関節の周囲に炎症が起こり、痛みや動きの制限が生じる状態です。 肩関節周囲炎は、肩関節を包む関節包という組織が炎症を起こし、厚く縮んでしまうことが原因で起こります。 まるで風船がしぼんで硬くなるように、関節包が硬く縮むことで肩関節の動きが制限されてしまうのです。 炎症がさらに進むと、関節包や周囲の組織が癒着を起こし、食品ラップ同士がくっついてしまうような状態になります。 原因となるリスクファクター 四十肩・五十肩の原因ははっきりと解明されていませんが、加齢、肩関節の使いすぎ、糖尿病などの病気が関係していると考えられています。 加齢:加齢に伴い、肩関節周囲の組織は老化し、炎症や癒着が起こりやすくなります。 肩関節の負担:野球やバレーボールなどのスポーツ、重い荷物を持つ作業など、肩関節に負担をかけることも要因となります。 糖尿病:糖尿病の方は、そうでない方に比べて四十肩・五十肩を発症するリスクが高いことが知られており、高血糖の状態が続くと血管が傷つきやすく、血流が悪くなることが原因の一つと考えられています。 肩関節周囲の組織も血流が悪くなることで、炎症が起こりやすくなると考えられています。 甲状腺機能障害:さらに、甲状腺機能障害も四十肩・五十肩のリスクを高める要因として知られています。 甲状腺ホルモンは、体の代謝を調節する重要なホルモンですが、このホルモンのバランスが崩れると、様々な体の機能に影響を及ぼします。 肩関節周囲の組織も例外ではなく、甲状腺機能障害によって炎症が起こりやすくなり、四十肩・五十肩を発症しやすくなると考えられています。 診断に用いる検査方法 四十肩・五十肩の診断は、主に問診と診察によって行われます。医師は、肩の痛みの程度や、腕をどのくらい動かせるかなどを確認します。 具体的には、腕を前や横に上げたり、後ろに回したりする動作で、どの程度まで動かせるかを調べます。 レントゲン検査:レントゲン検査を行う場合もありますが、これは他の病気を除外するために行うもので、四十肩・五十肩自体をレントゲンで診断することはできません。 四十肩・五十肩は、肩関節の炎症や癒着が原因で起こりますが、これらの変化はレントゲンには写らないからです。 MRI検査:MRI検査では、肩関節周囲の組織の状態を詳しく調べることができ、炎症や癒着の程度を評価することができます。 超音波検査:同様の変化は超音波検査でも観察でき、超音波検査は画像ガイド下注射療法に特に有用です。 しかし、MRI検査や超音波検査は必ずしも必要ではなく、多くの場合は問診と診察だけで診断が可能です。 他の肩の疾患との違い(腱板断裂、頚椎症など) 四十肩・五十肩は、腱板断裂や頚椎症などの他の肩の疾患と症状が似ていることがあり、鑑別が重要です。 腱板断裂:腱板断裂は、肩の上腕骨を支えている筋肉が、切れてしまう病気です。腱板断裂では、腕を特定の方向に動かしたときに強い痛みを感じることがあります。 また、夜間に痛みが強くなることもあります。 四十肩・五十肩のように肩の動きが制限されることもありますが、腱板断裂の場合は、力を入れても腕を上げられない、腕がだらんと下がってしまうといった筋力低下の症状が見られることもあります。 頚椎症:頚椎症は、首の骨や椎間板が変形することで、肩や腕に痛みやしびれが出る病気です。 頚椎症の場合、首を動かすと神経が圧迫されることで、手のしびれや動かしにくさなどの症状が現れたり、強くなることもあります。これらの症状の違いを把握することで、どの病気が疑われるかを判断することができます。 ▼肩がズキズキと痛いときに考えられる原因について、併せてお読みください。 四十肩・五十肩の治療選択肢 四十肩・五十肩の治療は、大きく分けて保存療法と手術療法の2種類があります。 それぞれの治療法の特徴を理解できるよう、わかりやすく説明しましょう。 保存療法の種類と効果 保存療法とは、手術をせずに痛みや炎症を抑え、腕を動かせるようにする治療法です。 具体的には、薬物療法、注射療法、理学療法、装具療法などがあります。これらの治療を複合的に行うことが多いです。 薬物療法: 痛みや炎症を抑えるための薬を内服したり、外用薬として患部に塗ったりします。 消炎鎮痛剤は、痛みや炎症の原因物質であるプロスタグランジンの生成を抑えることで、痛みや炎症を和らげます。 注射療法: 肩関節に直接、薬剤を注射する方法です。ステロイド注射は、強力な抗炎症作用で炎症を抑え、痛みを素早く軽減します。 ただし、ステロイド注射は、何度も繰り返すと腱を弱める可能性があるため、使用回数には注意が必要です。 ヒアルロン酸注射は、関節の動きを滑らかにする潤滑油のような役割を果たし、関節の動きを改善します。 理学療法: 理学療法士の指導のもと、ストレッチや筋トレ、温熱療法などを行い、肩の可動域を広げ、日常生活動作の改善を目指します。 理学療法は、四十肩・五十肩の治療において最も重要な要素の一つです。特に、肩甲骨の動きを改善する運動は効果的です。 私の経験では、肩関節は複雑なので、やはりリハビリ治療を行うことで、治療期間はずいぶん短縮できる例が多かったです。 装具療法: 安静時や夜間就寝時に、肩関節を固定する装具を装着することで、痛みを和らげ、関節を保護します。 保存療法の効果は、症状の程度や個人差があります。保存療法を3~6ヶ月行った後も症状の改善が見られず、日常生活に支障が出る場合は、手術療法が検討されます。 医学文献では、保存的治療で多くの患者が改善すると報告されています。 手術療法の適応とリスク 保存療法で十分な効果が得られない場合や、関節が著しく硬くなってしまった場合、手術も考えないといけません。 手術療法には、麻酔下での関節モビライゼーションや関節鏡下関節包遊離術などがあります。 麻酔下での関節モビライゼーション: 全身麻酔下で肩関節を動かし、硬くなった関節包を強制的に剥がす方法です。 別名、マニプレーションとも言います。 関節鏡下関節包遊離術: 小さな切開部からカメラと特殊な器具を挿入し、癒着した関節包を切開する方法です。 傷が小さく、術後の回復も早いというメリットがあります。 手術療法は、保存療法よりも短期間で効果が高いとされていますが、合併症のリスクも存在します。合併症には、骨折、神経麻痺、感染症などがあります。 手術をしない新しい治療(再生医療) ご自身の身体にある幹細胞を使って、日帰り、簡単な注射だけで、手術以上の効果の見込める再生医療という治療があります。 肩の手術後は肩関節が固まる現象がよくみられます。そういうこともあって、私たち整形外科医は、よほど辛かったり、動きが悪いという以外は、肩の手術はあまり積極的に患者様には勧めていません。 しかし、リペアセルクリニックでは、肩に特化した再生医療を行うことで、多くの患者様を笑顔にしてきました。再生医療についてこちらで詳しく説明していますので、ぜひご覧ください。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「肩の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 https://youtu.be/WQGHzkzEFnY?si=5xtDnXSQg1poljkp https://youtu.be/yj1LZ3318_E?si=G0Kpui969PdFwggA 痛みの軽減とリハビリテーションの重要性 四十肩・五十肩の治療において、痛みの軽減とリハビリテーションは非常に重要です。 痛みは、日常生活の動作や睡眠を妨げ、生活の質を低下させます。 痛みが強い場合は、我慢せずに医師に相談し、適切な薬物療法や注射療法を受けるようにしましょう。 リハビリテーションは、肩関節の可動域を回復し、筋力を強化するために不可欠です。 理学療法士の指導のもと、ストレッチや筋トレなどの運動療法を行い、肩の機能回復を目指します。無理のない範囲で、日常生活でも積極的に肩を動かすように心がけましょう。 早期に適切な治療を開始することで、痛みの軽減や機能回復を促進し、日常生活への復帰を早めることができます。 焦らず、医師や理学療法士と相談しながら、治療を進めていきましょう。 参考文献 Fields BKK, Skalski MR, Patel DB, White EA, Tomasian A, Gross JS and Matcuk GR Jr. "Adhesive capsulitis: review of imaging findings, pathophysiology, clinical presentation, and treatment options." Skeletal radiology 48, no. 8 (2019): 1171-1184. Dang A and Davies M. "Rotator Cuff Disease: Treatment Options and Considerations." Sports medicine and arthroscopy review 26, no. 3 (2018): 129-133. Redler LH and Dennis ER. "Treatment of Adhesive Capsulitis of the Shoulder." The Journal of the American Academy of Orthopaedic Surgeons 27, no. 12 (2019): e544-e554. Fernández Martínez AM, Alonso DR, Baldi S, Arregui OB and Marcos MTC. "Frozen Shoulder." Techniques in vascular and interventional radiology 26, no. 1 (2023): 100882. Cho CH, Bae KC and Kim DH. "Treatment Strategy for Frozen Shoulder." Clinics in orthopedic surgery 11, no. 3 (2019): 249-257. "凍結肩(癒着性関節包炎):臨床医のためのレビュー"
2025.02.09 -
- 足底腱膜炎
- 足部
「起床後の1歩目でかかとが痛む」「長時間同じ体勢でいると足裏が痛い」 上記のような症状は、足底腱膜炎や足底筋膜炎の可能性が考えられます。似たような名前の病気ですが、炎症を起こす部位や原因に違いがあるのです。 本記事では、足底腱膜炎と足底筋膜炎の違いを詳しく解説しています。足底腱膜炎や足底筋膜炎の予防・治療方法も紹介しています。 足裏の痛みに悩んでいる方や、足底腱膜炎と足底筋膜炎の違いを知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。 足底腱膜炎と足底筋膜炎の違いは炎症や痛みが起こる部位 足底腱膜炎と足底筋膜炎の違いは、炎症や痛みが起こる部位にあります。 足の裏に痛みが生じるため、似たような印象を持っている方も多いですが、原因に違いがある点に注意が必要です。 ここからは、足底腱膜炎と足底筋膜炎の違いを詳しく解説していきます。 炎症が起こる部位 足底腱膜炎は、足裏の指のつけ根からかかとまで伸びる「足底腱膜」が炎症を起こす疾患です。足底腱膜は、歩いたり走ったりする際の衝撃を受け止める役割を持っています。 一方で足底筋膜炎は、足の裏にある筋肉の「膜」が炎症を起こしている状態です。腱膜ではなく筋肉の膜が炎症を起こしている点が足底腱膜炎との違いです。 しかし、両疾患とも足底腱膜に関連した部位に炎症が起こるケースが多いため、同じ疾患として扱う医療機関が多い傾向にあります。 痛む部位 足底腱膜炎と足底筋膜炎は、痛む部位も異なります。両疾患の痛みが生じる部位は以下のとおりです。 足底腱膜炎 足底筋膜炎 痛みが生じる部位 かかと・土踏まず かかと・土踏まず 痛みが生じるタイミング 長時間同じ体勢でいたり、歩いていたりなど慢性的に生じる 起床時や歩き始めなど突発的に生じる 両方とも、かかとや土踏まずなど痛みが生じる部位は共通しています。 しかし、足底腱膜炎は、長時間同じ体勢でいたり、歩いていたりすると、慢性的に痛みが強くなるのが特徴です。 足底筋膜炎は、起床時や歩き始めなど突発的に痛みが生じる点が、足底腱膜炎との違いです。 発生原因 足底腱膜炎は、足底筋膜の微細な断裂や損傷が繰り返されるのが主な発症原因です。 足底腱膜炎は厳密にいうと、腱が炎症を起こしているのではなく「変性」を起こしている状態です。変性とは、組織の構造や機能が変化を起こしている状態を指します。 足底腱膜が炎症を起こす原因は、肥満、過度の回内足、過度なランニングなどがあげられます。 一方で足底筋膜炎は、走ったり歩いたりなどで足底筋膜に負荷がかかると「炎症」を起こし、発症するのが特徴です。 とくにマラソン選手や陸上をしている方は、足底筋膜に負担がかかりやすく、足底筋膜炎を発症しやすい傾向にあります。 足底腱膜炎(足底筋膜炎)の診断 足底腱膜炎を診断するには、まず問診と触診で痛みが生じる部位を確認します。 触診後、以下のような検査を行います。 レントゲン検査 超音波検査 MRI検査 レントゲン検査では、足底筋膜炎で生じる可能性がある、踵の骨棘(こっきょく)の有無を確認します。 骨棘とは、軟骨が肥大化し、次第に硬くなって骨化して棘のようになる状態を指します。 また、必要に応じて血液検査が行われるケースもあり、触診や医療機関の方針などによって診断方法はさまざまです。 足底腱膜炎(足底筋膜炎)の予防方法 足底腱膜炎を予防するには、ストレッチで足裏の柔軟性を高めたり、足に合った靴を履いたりすると予防効果が期待できます。 足底腱膜炎を疑っている方は、日頃からケアを行い、症状を予防しましょう。 ここからは、足底腱膜炎の予防方法を3つ紹介します。 運動は控える 足底腱膜炎の発症を予防するには、痛みが生じた時点で運動は控えるのがおすすめです。 足底腱膜炎は、ランニングや運動などで足裏に負荷がかかることで発症します。 痛みや違和感がある状態で、ランニングや運動を続けていると、炎症が悪化する恐れがあるため、安静に過ごしましょう。 また、痛みが収まり運動を開始する際は、ウォーキングや軽い運動から始めるのがおすすめです。 いきなり激しい運動をしてしまうと、足裏に負荷がかかり、再発する可能性があるためです。徐々に強度をあげていくよう意識しましょう。 ストレッチで柔軟性を高める ストレッチで足裏や足首の柔軟性を高めるのも、足底腱膜炎の予防効果を期待できます。 足裏に痛みがある際は、ランニングやジャンプなどの激しい運動は控えるべきですが、ストレッチや柔軟は続けるのがおすすめです。 体を動かさなくなると、足底筋膜をはじめ、足回りの筋肉や関節が凝り固まってしまいます。 足回りが固くなると、血流が悪くなり、痛みや炎症が悪化したり、治りにくくなったりする恐れがあります。 柔軟性が失われるのを避けるため、ふくらはぎを伸ばすストレッチをしたり、足の指を引っ張ったりして、足裏の柔軟性を維持しましょう。 足に合った靴を履く 足底腱膜炎を予防するには、自分の足に合った靴を履くのも大切です。 自分の足の形に合っていなかったり、底が薄かったりする靴は、足に負担がかかりやすいためおすすめできません。 運動時以外に、かかとが高いヒールや厚底のブーツを履くのも負担が増大するため、できるだけ控えましょう。 足底腱膜炎を予防するには、かかとをサポートしてくれる、クッション性の高い靴を選ぶのがおすすめです。試し履きをしたり、プロに相談したりして、自分に合った靴を選びましょう。 また、靴以外にも、サポーターやテーピングも足底筋膜炎予防が期待できます。 サポーターを日常生活で使用すると、足底腱膜炎予防はもちろん、痛み軽減を期待できるため、積極的に使用してみましょう。 足底腱膜炎(足底筋膜炎)の治療法 足底腱膜炎の治療方法は、保存療法や薬物療法などが代表的です。手術療法を行うケースもありますが、大半が保存療法や薬物療法などで対処できます。 かかとや土踏まずに痛みが生じているにもかかわらず、放置したり、市販の湿布や塗り薬などで自己治療したりするのは控えましょう。 かえって悪化する恐れがあるため、必ず医療機関を受診してください。 ここからは、足底腱膜炎の治療方法を4つ紹介します。 保存療法 足底腱膜炎の治療は、リハビリテーションや装具療法などの保存療法が行われます。 リハビリテーションは、ストレッチや筋力トレーニングを行うのが一般的です。 ふくらはぎや太ももの裏側(ハムストリング)などの柔軟性を高めたり、足の指の使い方を改善したりすると、痛み緩和を期待できます。 一方で装具療法とは、インソールやサポーターなどの装具を用いて、足底腱膜炎を改善する治療方法です。とくに、足の裏のアーチにアプローチできるのが特徴です。 リハビリテーションや装具療法などを、1人ひとりの症状に合わせて行うことで、足底腱膜炎の改善を期待できます。 薬物療法 足底腱膜炎の薬物療法では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が用いられます。 非ステロイド性抗炎症薬とは、痛みや熱などの炎症を抑える薬であり、ロキソニンやバファリンなど市販薬にも含まれています。 注意点として、薬物療法は一時的な痛みは軽減できるものの、根本的な改善にはつながりません。足底腱膜炎を悪化させないためにも、薬物療法だけでなく保存療法を併用し、完治を目指しましょう。 体外衝撃波治療 体外衝撃波治療とは、患部に音波の一種である衝撃波を照射し、痛み緩和や組織修復を促す治療方法です。 衝撃波で痛みが生じている腱の細胞を刺激し、痛みを緩和させます。一般的に3〜5回を1クールとし、数回繰り返し、治療を行います。 また、体外衝撃波は、6カ月以上保存療法を行っても効果が見られない「難治性足底腱膜炎」の治療のみ、健康保険が適用されているのが特徴です。 足底腱膜炎を発症後、体外衝撃波を受けられるわけではない点に留意しておきましょう。 手術療法 足底腱膜炎の治療は、手術療法が行われる可能性があります。手術療法では、足底腱膜や骨棘(こっきょく)を切除します。 しかし、足底腱膜炎で手術療法を行うケースは非常に稀であり、保存療法や薬物療法で改善を期待できる症例が大半です。 再生医療 足底腱膜炎や足底筋膜炎の治療の選択肢として、幹細胞治療やPRP治療などの再生医療もあげられます。 再生医療における「幹細胞治療」は、自身の幹細胞を使い、損傷した組織や細胞の修復を手助けする方法です。 「PRP療法」も再生医療の1つで、血液に含まれる血小板を用いて治療を行います。 どちらも患者様自身の幹細胞や血液を用いるため、副作用のリスクが少ないのが特徴です。また、再生医療では手術や入院を必要としません。 「足底腱膜炎が治らない」とお悩みの方は、再生医療も視野に入れてみてはいかがでしょうか。 リペアセルクリニックでは、足底腱膜炎や足底筋膜炎に関する再生医療を行っています。再生医療に興味がある方は、ぜひ一度当院へ症状をご相談ください。 まとめ|足底腱膜炎と足底筋膜炎の違いは炎症や原因にある 足底腱膜炎と足底筋膜炎は、炎症や痛みが発生する部位や、原因に違いがあります。 足底腱膜炎は、慢性的な痛みが生じますが、足底筋膜炎は動き始めなど突発的に痛みが生じるのも大きな違いといえます。 しかし、両疾患とも足底腱膜の周辺に痛みが生じるため、同じ疾患として扱う医療機関も少なくありません。 かかとや土踏まずに痛みを感じる方は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。 放置したり、自己流で治療をしたりすると、症状が悪化したり、慢性化したりする恐れがあるため、医療機関を受診するのが大切です。 また、リペアセルクリニックでは、幹細胞治療やPRP治療などの再生医療を行っています。「足底腱膜炎がなかなか治らない」と悩んでいる方は、ぜひ一度ご相談ください。
2025.02.08 -
- 頭部、その他疾患
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高次脳機能障害の症状の一つに、怒りやすくなることが挙げられます。「最近怒りやすくなった」「感情の起伏が激しくて対応に困っている」など、高次脳機能障害患者を側で支える家族のなかには、不安な気持ちを抱えている方もいるでしょう。 高次脳機能障害の影響で怒りやすい人に怒りで反応してしまうと、かえって逆効果になるため注意が必要です。 お互いにストレスを抱え込まないためには、どのような場面で怒りやすいのかを理解した上での対応が求められます。 今回は、高次脳機能障害で怒りやすい人への対応について詳しく解説します。高次脳機能障害に対する基本対応から、怒りやすい人の症状別に対応例をまとめているので、ぜひ参考にしてください。 高次脳機能障害の影響で怒りやすい性格になる人は多い 高次脳機能障害の影響で怒りやすい性格になる人は少なくありません。高次脳機能障害にはさまざまな症状がありますが、そのうちの一つが社会的行動障害です。 社会的行動障害とは、状況に応じた感情や言動のコントロールが難しくなる障害です。 厚生労働省の調査によると、社会的行動障害の具体的な症状として最も多いのが「感情コントロールの障害・易怒性」で、対象者の85%に現れているという結果でした。(文献1) なお、本人が社会的行動障害に対する家族の不安や負担を理解していないケースも多く、対応の難しさを感じる方も少なくありません。 まずは怒りやすさが高次脳機能障害による影響であると理解し、対応を工夫しましょう。 ▼ 高次脳機能障害の症状について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。 【症状別】高次脳機能障害で怒りやすい人への対応例 怒りやすいと一言でいっても、怒りの原因や具体的な症状はさまざまです。 以下で、高次脳機能障害の影響で怒りやすい人への対応例を症状別に解説します。 怒りが爆発する場合 高次脳機能障害の影響によって、患者が怒りを爆発させることがあります。高次脳機能障害患者の怒りが爆発した場面では、以下のポイントを押さえて対応しましょう。 イライラしてきたと感じたら一時的に本人を一人にさせる その場で本人の行動に介入しない 本人の怒りにさらされる疲労やストレスを抱え込まない どのような場面で怒りが爆発したかを記録する 爆発した怒りにさらされることで、周囲は疲労や負担を感じます。怒りやすい人の対応においては、特定の人にこうしたストレスを集中させないための工夫も必要です。 感情のコントロールが難しい場合 高次脳機能障害患者が怒りやすいのは、感情のコントロールが難しいためです。感情のコントロールが難しい人に対しては、以下のような対応を心がけましょう。 本人をイライラの原因から離す 気分を切り替えるためのきっかけを決めておく 感情を表に出しすぎるデメリットを冷静に伝える どのような態度が望ましいか、落ち着いているときに一緒に考える 感情のコントロールが難しくて怒りやすい場合は、本人の気持ちが落ち着いているタイミングで一緒に対応の仕方を考えておくことがポイントです。 周囲の刺激にすぐ反応してしまう場合 高次脳機能障害の影響で怒りやすい人のなかには、周囲の刺激にすぐ反応してしまうケースがあります。周囲からの刺激を減らすためには、具体的に以下のような対応が効果的です。 行動する前に一呼吸を置くよう伝える イライラしたら深呼吸をするよう伝える 聴覚過敏の場合は耳栓やノイズキャンセラーを使用する トラブルの原因になる場所や人との接点を減らす また、本人が集中しているときは、できるだけ刺激しないよう無理のない範囲で配慮しましょう。 欲求を抑えられない場合 高次脳機能障害の影響で怒りやすい人のなかには、欲求を抑えられなくてイライラするケースもあります。この場合、単に禁止するだけではなく、ルール作りやサポートを重視した対応が効果的です。 本人と相談してルールを決める 特定の行為がなぜ問題となるのかを丁寧に説明する 行動を制限するだけではなく対策もあわせて伝える 視覚的にわかりやすいようメモや写真に残す 本人が制限されていると感じるのではなく、自己管理のための協力だと納得できるよう支援することが大切です。 高次脳機能障害患者が怒りやすい場合の4つの基本対応 高次脳機能障害患者が怒りやすい場合は、本人への接し方だけではなく、生活環境を整えたり、支援者間で情報を共有したりすることも大切です。 以下で、高次脳機能障害患者が怒りやすい場合の基本対応について解説します。 ▼ 高次脳機能障害への対応の仕方について詳しく知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。 1.生活環境を整える 高次脳機能障害患者にとって、生活環境の乱れや不規則な生活リズムは、怒りを引き起こす要因になりかねません。 まずは、どのような状況で怒りやすいのかを観察し、以下のポイントを押さえて少しずつ生活環境を整えましょう。 毎日の生活に規則性を持たせる 静かな環境を確保する リラックスできる場所をつくる など 生活環境を整えて落ち着ける空間をつくることで、本人の心理的な安定を図ります。 2.第三者に相談する 高次脳機能障害患者が怒りやすいと感じるようになったら、早めに第三者に相談しましょう。症状の改善のためには、医師や作業療法士などと連携して、適切な治療とリハビリテーションを受けることが大切です。 とくに怒りのコントロールが難しい場合には、心理的なサポートも不可欠です。心理士やカウンセラーなどは、本人が感じている怒りや不安の根本的な原因を探る手助けをしてくれます。 また、周囲がどのように接したら良いか、適切な対処法についてアドバイスしてもらうことも可能です。 3.障害福祉・介護保険サービスを利用する 高次脳機能障害と診断されたら、症状に応じて、障害福祉サービスや介護保険サービスの利用を検討しましょう。公的制度の利用は、家族の負担を軽減できるだけではなく、本人がより安定した生活を送るための基盤になります。 サービス 対象者 主なサービス内容 障害福祉 サービス 自治体の障害福祉窓口で「障害福祉サービス受給者証」の交付を受けた方 居宅介護(ホームヘルプ) 同行援護 行動援護 短期入所(ショートステイ) 施設入所支援相談支援 自立訓練 就労継続支援 自立生活援助 など 介護保険 サービス 要介護・要支援認定を受けた65歳以上の方 ただし、厚生労働省が指定する16種の特定疾病(高次脳機能障害を含む)に該当する場合は、40歳以上65歳未満の方 訪問介護 訪問看護 訪問リハビリ 定期巡回・随時対応型訪問看護 通所介護(デイサービス) 通所リハビリ(デイケア) 短期入所(ショートステイ) 福祉用具貸与 など 公的制度や各種サービスを利用する際は、自治体の障害福祉窓口や地域包括支援センターに相談してください。 4.支援者間で情報を共有する 高次脳機能障害患者への対応においては、支援者間で情報を共有しておくことが大切です。家族のほか、医師や看護師、理学療法士などが協力して一貫した対応が可能になると、本人の混乱や怒りのきっかけを防ぐことにつながります。 人間関係における心理的な安全は、怒りやすい症状を和らげるために不可欠です。そのため、本人に直接「周囲が協力している」と伝えることも重要です。 支援者間のスムーズな連携が、患者の「自分は周りに支えられている」という気持ちを育むことにつながります。 なお、リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。高次脳機能障害の症状がなかなか改善せずにお悩みの方は、ぜひ気軽にご相談ください。 高次脳機能障害の治療法 ここでは、高次脳機能障害の主な治療法について解説します。 薬物療法 リハビリテーション 再生医療 以下で、それぞれの治療法について解説するので、医師と相談しながら、症状に合わせて適切なアプローチを図ってください。 ▼ 以下の記事では、高次脳機能障害の回復事例を紹介しています。 高次脳機能障害は回復する?事例やリハビリの重要性を現役医師が解説 薬物療法 薬物療法の主な目的は、症状の軽減と生活の質の向上です。 脳の神経伝達物質のバランスを整える作用がある薬のほか、抗精神病薬や認知機能を改善するための薬が用いられます。 たとえば、抗精神病薬は、イライラや興奮を落ち着ける効果が期待されます。薬物療法は、感情の起伏を穏やかにし、高次脳機能障害の影響で怒りやすい人の精神状態を安定させるために効果的です。 ただし、薬物療法はあくまで症状のコントロールを目的としているため、根本的な治療法ではない点を理解しておく必要があります。高次脳機能障害の症状を改善するためには、薬物療法だけではなく、心理的なサポートを含めて多角的にアプローチしましょう。 リハビリテーション リハビリテーションは、高次脳機能障害の回復において重要な役割を果たします。高次脳機能障害のリハビリテーションには、主に以下のような内容が含まれます。 理学療法 作業療法 言語療法 認知行動療法 なかでも、高次脳機能障害の影響で怒りやすい人に対しては、認知行動療法が効果的です。認知行動療法とは、物事の受け取り方や考え方など、認知に働きかけて気持ちを楽にする心理療法の一種です。 認知行動療法を取り入れることで、怒りやストレスなどの感情をコントロールしやすくなる効果が期待できます。 ▼ 高次脳機能障害のリハビリテーションについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。 再生医療 再生医療は、高次脳機能障害の治療効果が見込める点で最近注目を集めている治療法です。自然治癒力を最大限に引き出すために用いられる医療技術で、幹細胞や血小板の投与により症状改善の一助となる場合があります。 高次脳機能障害は進行性の障害ではないものの、薬物療法やリハビリテーションで思うような改善が見られないケースも珍しくありません。 近年は再生医療の研究が進み、幹細胞治療によって高次脳機能障害の原因である脳卒中の後遺症が回復した事例も数多く報告されています。 実際に当院「リペアセルクリニック」で治療を受けた方の声を以下の動画で紹介しています。 リペアセルクリニックでは、脳卒中の再生医療・幹細胞治療を行っています。 無料のメール相談やオンラインカウンセリングを実施しているので、再生医療による治療について詳しく知りたい方は、ぜひ気軽にご連絡ください。 まとめ・高次脳機能障害患者が怒りやすい場合は第三者に相談して対応しよう 高次脳機能障害患者が怒りやすいのは、社会的行動障害の一種です。脳の損傷によって感情のコントロールが難しくなり、怒りやすくなるケースも珍しくありません。 高次脳機能患者が以前と比べて怒りやすくなったと感じたら、早めに第三者に相談しましょう。 怒りにさらされることは、本人だけではなく、周囲にとって心理的負担が大きいものです。第三者への相談や公的制度の活用を通して、周囲の負担を減らせるほか、本人が生活しやすい環境づくりも可能です。 高次脳機能障害は、適切なアプローチによって症状の改善を目指すことが可能です。怒りやすい症状への対応に悩んでいる場合は、早めに専門家に相談してサポートを受けましょう。 参考文献 (文献1) 厚生労働省「社会的行動障害への対応と支援」 https://www.rehab.go.jp/application/files/9915/7559/7229/201912_.pdf
2025.02.07 -
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高次脳機能障害で悩んでいるうちに、「本当に症状が改善するのか」「回復事例はあるのか」などと疑問を持つ方もいるでしょう。 結論からいうと、高次脳機能障害による症状は、適切な治療やリハビリテーションによって回復が見込めます。 今回は、高次脳機能障害の回復事例を紹介します。 回復過程におけるリハビリテーションの重要性や最近注目を集めている再生医療についても解説するので、高次脳機能障害の症状でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。 高次脳機能障害の症状は治療次第で回復する 高次脳機能障害は、適切な治療とリハビリテーションによって、症状の改善が見込まれる場合があります。 ただし、どれほどの回復が見込まれるかは、損傷の程度や治療のタイミングなどによって個人差があります。 また、高次脳機能障害の治療は、早ければ早いほど効果が期待できます。脳の機能を少しでも回復させられるよう、医師の診断と治療計画に基づき、できるだけ早くリハビリテーションに取り組みましょう。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。高次脳機能障害の症状がなかなか回復せずにお悩みの方は、ぜひ気軽にご相談ください。 【関連記事】 高次脳機能障害は治るのか|対応方法や治療法を解説します! 高次脳機能障害(脳卒中による後遺症)の回復事例 高次脳機能障害の原因の多くは、脳卒中による後遺症です。 高次脳機能障害の基本治療である薬物療法とリハビリテーションに加えて、近年は再生医療による治療効果が注目を集めています。 リペアセルクリニックでは、高次脳機能障害の原因である脳卒中の再生医療・幹細胞治療を行っています。 以下で、当院における高次脳機能障害の回復事例を3つ紹介するので、ぜひ参考にしてください。 事例1.幹細胞治療によってふらつきやめまいが改善 70代の男性は、脳梗塞発症後2カ月のときに当院を受診しました。脳梗塞の後遺症として、主に以下のような症状に悩んでいました。 左口周り・左手にしびれがある 左側の視野がみえにくい 歩行時にふらつく 夜間頻尿がひどい 再生医療を選択したきっかけは、「できるだけ後遺症を残したくない」と考えたことです。再生医療とは、下腹部から採取した脂肪細胞の幹細胞を分離・培養し、ホーミング効果を期待して静脈から点滴する治療法です。 70代の男性は、計3回の点滴で1億個の細胞を投与しました。初回の投与後1週間で、左口周りと左手のしびれが軽くなり、夜間頻尿もなくなりました。 さらに、4カ月後には歩行時のふらつきやめまいがなくなり、小走りができるまで回復した事例です。 ▼ 急性期脳梗塞に対する幹細胞治療の症例について詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。 事例2.幹細胞治療によってスムーズに発語できるまで回復 60代の男性は、脳梗塞発症後2週間のときに当院を受診しました。 心臓や頸動脈にできた血栓が脳の血管に詰まって脳梗塞を発症し、抗凝固薬の内服も開始しています。脳梗塞発症直後は、主に以下の症状に悩んでいました。 不整脈がある 呂律が回らない 発語がスムーズにできない 左手がしびれて力が入らない 60代の男性は、過去に右変性股関節症に対する幹細胞治療を受け、良好な効果を得られたことをきっかけに再生医療を選択しました。 1億個の細胞を3回に分けて投与する計画を立て、まずは幹細胞を採取・培養します。1回目の投与から数週間後には、左手のしびれが完全になくなり、不整脈も収まりました。 また、1回目の投与から1カ月後の診察では、呂律の回りにくさはやや残っているものの、考えていることをスムーズに発語ができるようになっていました。 ▼ 急性期脳梗塞の後遺症が改善した症例について詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。 事例3.幹細胞治療によって身体機能の回復を実感 70代の男性は、3年前の脳梗塞によって以下のような後遺症に悩まされていました。 呂律が回らない 食事がつっかえる 歩行時にふらつく めまいがする 脳梗塞の発症から3年後も週4回のリハビリテーションに取り組んでいるものの、日に日に悪化する症状に不安を抱えていました。 近年は研究が進み、幹細胞を使った再生医療によって脳卒中の後遺症が回復した例が数多く報告されています。 70代の男性は、3回に分けて計3億個の細胞を点滴投与しました。1回目の投与後3カ月で呂律が回るようになり、食事がつっかえる感覚も軽減しました。 また、体幹が安定して歩行時のふらつきが改善され、周囲からも歩くのが早くなったと言われているそうです。 ▼ 小脳出血後のふらつきや呂律が改善した症例について詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。 高次脳機能障害の主な原因 高次脳機能障害は、さまざまな原因によって引き起こされます。 とくに脳外傷や脳卒中が主な原因として挙げられますが、その他にも脳炎、脳腫瘍、低酸素脳症などが原因となることもあります。 以下では、主な原因について詳しく解説します。 脳外傷(頭部外傷) 脳外傷は、高次脳機能障害を引き起こす原因の一つです。 交通事故やスポーツ事故などで頭部に強い衝撃を受けると、脳の内部が損傷して出血を起こし、結果として高次脳機能障害の症状が現れる場合があります。 脳には、認知機能をつかさどる前頭葉や記憶をつかさどる海馬などがあるため、脳の損傷によって判断力や注意力の低下、記憶障害などの症状を引き起こします。 脳卒中(脳血管障害) 脳卒中は、脳の血流障害によって脳細胞が損傷を受ける病気です。脳卒中には、脳梗塞(血管の詰まりによるもの)と脳出血(血管の破れによるもの)の2つがあります。 いずれも十分な血流が脳細胞に行き渡らなくなることで、脳細胞の働きが低下し、高次脳機能障害の症状を引き起こします。 高次脳機能障害の回復におけるリハビリテーションの重要性 高次脳機能障害の回復過程では、リハビリテーションが非常に重要です。 以下で、リハビリテーションの目的や進め方、具体的な方法を解説します。 なお、高次脳機能障害の治療におけるリハビリテーションは、必ず医療機関と相談の上、進めるようにしてください。 リハビリテーションの目的 高次脳機能障害の治療におけるリハビリテーションの目的は、患者が可能な限り自立した生活を送れるよう支援することです。 具体的には、自立した生活を送るために必要な認知機能の向上と精神の健康を目指します。 認知機能の向上 リハビリテーションによって、記憶力、注意力、問題解決能力などの認知機能を向上を目指す 精神の健康 リハビリテーションによって自信を回復し、抑うつや不安を軽減する また、リハビリテーションを通じて人とのコミュニケーションを増やすことも、社会参加につながる側面が期待できます。 リハビリテーションの進め方と期間 高次脳機能障害のリハビリテーションは、以下の流れで、医師や理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが協力して進めることが一般的です。 1.初期評価 2.目標設定 3.治療計画の立案 4.治療計画の実施 5.再評価とデータの収集・解析 リハビリテーションの期間は個人差があるものの、数カ月から1年ほどかかるケースが多いとされています。 なお、高度脳機能障害の治療においては、リハビリテーションの早期開始と継続的な取り組みが回復の可能性を高めます。 リハビリテーションの方法 高次脳機能障害の治療においては、以下の内容を含めたリハビリテーションが中心です。 内容 目的 理学療法(運動療法) 運動機能の向上を目的に、筋力トレーニングや体幹を鍛えるための訓練を行う 作業療法 日常生活で必要となる作業や動作ができるよう、着替えや掃除などの実践的な訓練を行う 言語療法 発語やコミュニケーション能力の改善を目的に、言葉の発音や理解力を高める訓練を行う なお、リハビリテーションの内容は、個別の治療計画に基づいて決まります。 高次脳機能障害のリハビリテーションについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。 自宅でリハビリテーションを取り入れるポイント 高次脳機能障害の回復を促進するためには、自宅で工夫してリハビリテーションを取り入れることも大切です。自宅でリハビリテーションを取り入れるポイントは、以下の通りです。 生活リズムを整える: 朝起きる時間や食事のタイミングを決め、規則正しい生活を心がける 座って頭を使う時間をつくる:クロスワードパズルや簡単な計算問題、読書などを行う 軽く体を動かす時間をつくる: 無理のない範囲で軽いストレッチやラジオ体操などを行う 無理のない範囲で家事をする:郵便物の整理や洗濯物をたたむなど、無理のない範囲で家事をする 規則正しい生活と日中活動は、社会活動につながるための重要なポイントです。 また、洗濯や掃除などのそれぞれの家事は、注意力や記憶力、遂行機能など、多様な高次脳機能を必要とします。 自宅で過ごすときは、昼寝をしすぎて昼夜逆転しないように注意しながら、日中の過ごし方を工夫しましょう。 高次脳機能障害の回復過程における再生医療の可能性 再生医療や幹細胞治療は、高次脳機能障害の治療法として近年注目を集めています。 再生医療とは、幹細胞や血小板の投与によって自然治癒力を最大限に引き出すための医療技術です。 薬物療法やリハビリテーションに加えて再生医療を取り入れることで、高次脳機能障害の症状改善の一助となる場合があります。 当院「リペアセルクリニック」では、高次脳機能障害の原因である脳卒中の再生医療・幹細胞治療を行っています。 当院はトップクラスの細胞培養技術を誇る施設と提携しているため、米粒2〜3粒程度の脂肪を採取するだけで1億個以上の細胞を培養できることが特徴です。 採取する細胞が少なくて済むため、身体への負担を抑えられるメリットがあります。 以下の動画では当院で再生医療を受けた方の声を紹介しています。 再生医療について詳しく知りたい方は、無料のメール相談やオンラインカウンセリングでお気軽にご相談ください。 まとめ・高次脳機能障害は回復事例を参考に早めに治療に取り組もう 高次脳機能障害は、適切な治療とリハビリテーションによって、症状の回復が期待できます。 ただし、回復には個人差があり、治療をしたからといって必ずしも症状が改善するわけではありません。 また、高次脳機能障害による症状の回復には、早期の治療が不可欠です。脳の機能を少しでも回復させるためには、医療機関と連携し、適切な治療を受ける必要があります。 加えて、薬物療法やリハビリテーションで効果が得られない場合には、再生医療もご検討ください。
2025.02.07 -
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高次脳機能障害患者への対応において、ストレスを抱える家族は少なくありません。高次脳機能障害では、感情のコントロールや日常生活の維持が難しくなる場合があります。そのため、高次脳機能障害患者を側で支える家族の負担は大きくなりがちです。 今回は、高次脳機能障害患者の家族が抱えるストレスについて解説します。ストレスの対処法や利用できる支援制度もまとめているので、ぜひ参考にしてください。 高次脳機能障害患者の家族が抱える主なストレス 高次脳機能障害患者の家族は、日常生活や求められる役割の変化などを理由に、ストレスを感じやすくなります。 以下で、高次脳機能障害患者の家族が抱える主なストレスについて詳しく解説します。 ▼ 高次脳機能障害の症状について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。 日常生活に対するストレス 高次脳機能障害患者がいる家庭では、日常生活においてさまざまな変化が生じます。たとえば、患者が自立して身の回りのことをできなくなると、家族は常にサポートにまわる必要があります。また、患者が社会生活を維持できなくなるにつれて、家族も外出する機会が限られるでしょう。 高次脳機能障害による日常生活の変化が大きいと、家族は社会からの孤立感を感じるようになり、次第にストレスが増加します。 求められる役割に対するストレス 高次脳機能障害患者の家族は、本人に代わってさまざまな手続きを担います。通院スケジュールの管理や医療費の支払いのほか、各種制度に関する手続きなど、慣れないうちはストレスを感じる場面も多いでしょう。 また、高次脳機能障害患者が高齢の場合や症状が重い場合には、介護も必要です。とくに、介護者にあたる家族が仕事や子育てで忙しいケースでは、求められる役割の多さにストレスを感じやすくなります。 当事者に対するストレス 高次脳機能障害患者の家族が抱えるストレスのなかには、当事者に対する感情もあります。高次脳機能障害の症状の一つに、感情や行動のコントロールが難しくなることが挙げられます。 そのため、患者が感情的になって過剰に反応したり、急に暴力的な行動を取ったりするケースも珍しくありません。 患者の不安定な言動は、家族が精神的な負担を感じるきっかけになります。日常生活において、患者の言動に振り回されていると、気づかないうちにストレスが蓄積されてしまうため注意が必要です。 今後の不安に対するストレス 高次脳機能障害患者の家族に多いのが、今後の不安に対するストレスです。 高次脳機能障害は、治療やリハビリテーションによって症状の改善が期待できます。しかし、必ずしもすべての方に治療の効果があるとは限りません。 そのため、多くの家族が、将来自分が介護できなくなったときのことを考えて不安を感じてしまいます。 高次脳機能障害は進行性の障害ではないものの、根本的な治療が見込めないことに不安を覚える方も少なくありません。障害に対する不安は、患者だけではなく、家族にとって大きなストレスになります。 高次脳機能障害患者の家族が抱えるストレスの対処法 高次脳機能障害患者の家族は、日常生活においてさまざまなストレスを抱えています。ただし、家族の精神的・身体的な負担は、いずれ介護疲れにつながるため注意が必要です。 以下で、高次脳機能障害患者の家族が抱えるストレスの対処法について解説するので、ぜひ参考にしてください。 症状にあわせて対応の仕方を工夫する 高次脳機能患者の家族が抱えるストレスを減らすためには、症状にあわせて対応の仕方を工夫する必要があります。高次脳機能障害は症状が多岐にわたるほか、どのような症状がどの程度現れるかも個人差が大きい障害です。 症状別の対応のポイントは、以下の通りです。 症状 対応のポイント 注意障害 こまめに休息を取るよう促す 周囲の刺激を減らして静かな環境を整える 記憶障害 メモ帳やカレンダーを活用する 習慣化しやすい環境をつくる 遂行機能障害 時間に余裕を持って計画する 作業を小さなステップに細分化する 社会的行動障害 本人と一緒に行動ルールを決める 行動する前に一呼吸を置くよう促す 失語症 ゆっくりと簡潔に話す 時間の余裕を持って話を聞く はい・いいえで答えられる質問をする 症状にあわせて対応の仕方を工夫すると、患者だけではなく、家族のストレス軽減にもつながります。 ▼ 高次脳機能障害への対応の仕方について詳しく知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。 第三者の協力を得る 高次脳機能障害患者の家族が抱えるストレスを軽減するためには、専門家や支援機関からの協力が重要です。 患者の家族だけですべてを背負い込むと、精神的にも身体的にも負担が大きくなり、介護を継続することが困難になる場合があります。 高次脳機能障害の治療では、長期にわたって治療やリハビリテーションに取り組む必要があります。そのため、医療機関と連携しながら、適切なサポートを受けることが大切です。定期的に症状の進行や回復をモニタリングしてもらうと、家族の不安を軽減できます。 なお、介護の負担が大きいときは、各自治体に設置されている地域包括支援センターや福祉窓口への相談がおすすめです。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。高次脳機能障害の症状や治療法でお悩みの方は、ぜひ気軽にご相談ください。 家族会に参加する 家族会への参加も、高次脳機能障害患者の家族が抱えるストレスの軽減につながります。 家族会とは、高次脳機能障害患者の家族が集まって悩みを共有したり、情報交換したりできる場です。 家族会は、自治体や国立障害者リハビリテーションセンターなどの支援を受けて各地域で活動しており、高次脳機能障害患者の家族であれば参加できます。 高次脳機能障害患者の家族同士で、日常生活におけるストレスや悩みなどを共有できると、孤独感の軽減につながります。また、交流を通して、対応の仕方を工夫するためのヒントも得られるでしょう。 なかには、専門家による相談会や勉強会を開催している家族会も少なくありません。勉強会は、介護の方法や支援制度の活用法などについて理解を深められる貴重な機会になるため、参加を検討しましょう。 高次脳機能障害患者と家族が利用できる支援制度 高次脳機能障害患者と家族が利用できるサービスとして、以下のような支援制度があります。 障害福祉サービス 介護保険サービス 就労支援サービス 以下で、それぞれの支援制度について詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。 障害福祉サービス 高次脳機能障害患者が障害者手帳を取得すると、さまざまな障害福祉支援を受けられます。障害者手帳の申請には、医師の診断書が必要です。 代表的な障害福祉サービスは、以下の通りです。 居宅介護(ホームヘルプ) 居宅訪問による介護を行う 自立生活援助 定期的な訪問や随時の対応による日常生活支援を行う 共同生活援助(グループホーム) 施設で共同生活を送る障がい者を対象に日常生活支援を行う なお、障害福祉サービスの内容は自治体によって異なります。障害福祉サービスの手続きと利用に関しては、自治体の障害福祉担当課に相談してみてください。(文献1) 介護保険サービス 介護保険制度に基づく要介護認定を受けると、高次脳機能障害患者も介護保険サービスを利用できます。 介護保険制度は、65歳以上の方と40歳以上で脳血管疾患による高次脳機能障害と診断された方が、要支援・介護状態になった場合に利用できる制度です。 代表的な介護保険サービスは、以下の通りです。(文献2) 施設サービス 老人ホームや介護施設に入所する人を対象に介護を行う 訪問型サービス 居宅訪問による介護を行う 通所型サービス 老人ホームや介護施設に通所する人を対象に介護や運動機能訓練、日常生活支援を行う なお、各サービスにはそれぞれ利用条件があります。介護保険サービスを利用する際は、地域包括支援センターやケアマネージャーに相談しましょう。 就労支援サービス 高次脳機能障害患者の方は、就労支援の各種制度を利用できます。就労支援サービスを利用するためには、全国に設置されている公共職業安定所(ハローワーク)や自治体の障害福祉担当課へ問い合わせしてみてください。 高次脳機能障害患者が利用できる主な就労支援は、以下の通りです。(文献3) 公共職業安定所(ハローワーク) 障がい者専用の職業窓口を設置し、職業紹介を行う 障害者職業能力開発校 障がい者向けに職業訓練を行う 障害者職業センター 就業や復職に向けた職場順応のための支援を行う 症状に合わせて適切な支援を受けられるよう、まずは相談するところから始めましょう。 高次脳機能障害に対する再生医療の可能性 高次脳機能障害の治療法として、最近では再生医療や幹細胞治療が注目を集めています。再生医療とは、自然治癒力を最大限に引き出すための医療技術で、幹細胞や血小板の投与によって症状改善を目指す治療法の一つです。 再生医療は、従来の薬物療法やリハビリテーションといった治療法で、十分な改善が得られない場合に選択肢となる治療法です。 再生医療を取り入れることで、高次脳機能障害の症状改善の一助となる場合があります。 リペアセルクリニックでは、高次脳機能障害の原因の一つである脳卒中の再生医療・幹細胞治療を行っています。 以下の動画では、当院で再生医療を受けた方の声を紹介しているので、参考までにご覧ください。 当院では、メール相談やオンラインカウンセリングも承っております。 再生医療について詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください。 まとめ・高次脳機能障害患者の家族は公的制度を利用してストレスを軽減しよう 高次脳機能障害患者の家族は、日常生活においてさまざまなストレスを抱えています。高次脳機能障害は長期にわたって付き合っていかなければならない障害です。 そのため、ストレスを溜め込みすぎると、当事者と家族が共倒れしてしまう可能性があります。 そのため、家族だけで悩みを抱え込まず、障害福祉サービスや介護保険などの公的制度を活用しましょう。また、医療機関と連携しながら、適切なサポートを受けることも重要です。 支援を上手に利用することで、家族の負担を軽減し、高次脳機能障害と向き合う日々を前向きに過ごせる環境を整えましょう。 参考文献 (文献1) 厚生労働省「障害福祉サービスについて」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html (文献2) 厚生労働省「介護保険制度の概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/000801559.pdf (文献3) 厚生労働省「ハローワーク インターネットサービス 障害のある皆様へ」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/member/sy_guide.html
2025.02.07 -
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高次脳機能障害になった場合の治療法には、リハビリがあります。しかし、なかには「リハビリにより症状が回復するのか」「どのような内容なのか」と疑問を持つ方もいるでしょう。 高次脳機能障害は適切なリハビリにより、症状の回復が期待できます。 今回は、高次脳機能障害のリハビリ効果を解説します。リハビリの流れや内容、世界で注目されている再生医療についても紹介するので、高次脳機能障害の症状でお悩みの方は参考にしてください。 高次脳機能障害のリハビリによる効果 高次脳機能障害はリハビリにより、症状の改善や進行の遅延が見込めます。 「高次脳機能障害のリハビリテーション」によると、リハビリの実施により家事手伝い・何もしていない人の割合が34.2%から20.7%に減少した結果が明らかになりました。 さらに、社会復帰した人は30.6%から43.7%に増加した結果も報告されています。(文献1) これらの結果から、リハビリによって高次脳機能障害の症状が改善し、社会復帰につながる可能性があることがわかります。 そのため、医師や理学療法士の方と相談しながら、個々の状態に合わせた継続的なリハビリに取り組むことが推奨されます。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。高次脳機能障害の症状やリハビリ方法に関するお悩みをお持ちの方は、お気軽にご相談ください。 ▼高次脳機能障害の症状について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。 高次脳機能障害のリハビリ方法 高次脳機能障害の症状回復には、それぞれの症状や状態に合ったリハビリが重要です。ここでは、リハビリをする上で押さえておきたいポイントを紹介します。 リハビリの流れ リハビリ期間 以下で詳しく解説するので、高次脳機能障害のリハビリ方法が知りたい方は参考にしてください。 リハビリの流れ 高次脳機能障害のリハビリでは治療だけでなく、定めた目標到達へ向けて訓練を進めていきます。医学的リハビリの流れは、以下の通りです。 1.リハビリ計画を立てる 高度機能障害に関する診断や評価結果に基づいたリハビリ計画を立てる 2.具体的な目標を設定する 当事者がイメージしやすく、かつ短期間で実現可能な目標を決める 3.リハビリを実施する リハビリ計画と目標設定をもとにリハビリを開始。訓練は段階的に進める 4.結果を判定し、目標の修正 リハビリの評価を定期的に繰り返し、プログラムの妥当性や体勢を見直す 高次脳機能障害のリハビリは漠然と進めていくのではなく、定期的に評価を繰り返して最終的な目標に到達するよう計画を立てていく流れとなります。 ▼高次脳機能障害への対応について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。 リハビリ期間 高次脳機能障害のリハビリ期間は、6カ月~1年ほどです。はじめの6カ月間は、症状回復を目的に医学的リハビリを受けます。 6カ月目以降は、必要に応じて生活訓練や機能訓練を実施するのが一般的な流れです。「高次脳機能障害者支援の手引き」によると、リハビリを受けた74%が6カ月、97%が1年でリハビリの成果が得られています。 高次脳機能障害の場合、リハビリ期限となる180日を超えて訓練を受けられるため、訓練期間は6カ月〜1年が目安です。(文献2) 高次脳機能障害のリハビリ内容 高次脳機能障害のリハビリ内容は幅広く、個々の症状によっても異なります。主なリハビリ内容は、以下の7つです。 環境調整 要素的訓練 代償訓練 行動変容療法 認知行動療法 社会技能訓練 調理行動 各リハビリ内容を解説するので、参考にしてください。 環境調整 高次脳機能障害のリハビリの際は、治療環境を整える必要があります。環境調整では、環境が要因となる不成功を減らせるため、当事者に余分なエネルギーをかけず済みます。 環境調整における症状別の対策は、以下の通りです。 症状例 対策 注意障害 気が散りやすい環境とならないよう配慮する 左半側空間無視 ベッドの左側から降りられないよう壁につける 失算 時計をアナログ時計にする 視空間失認 階段に手すりをつける また、症状によって人的環境を整えるのもポイントです。例えば、注意障害の場合は集中力が続かないため、複数の相手と話すのを苦手とします。リハビリでは、複数人ではなく1対1で会話するよう心がけましょう。(文献3)(文献4) 要素的訓練 要素的訓練は注意障害や記憶障害など、症状の改善を目的とする訓練です。高次脳機能障害における症状の回復では、症状別に作業を実践する方法が再構築に寄与すると考えられています。 例えば、相手の話を理解できない失語症の場合は、実際に何かを見せて答えてもらいます。集中力が続かない注意障害であれば、問題集を解いてもらうのが要素的訓練として効果的です。 なお、要素的訓練を実践する際は当事者の意識や周囲の環境、治療方法の適切さが目標達成のポイントとなります。(文献3) 代償訓練 代償訓練とは、症状に対する対処法を身につけるリハビリです。対処法を身につけると、障害を自身でカバーしながら仕事や生活ができるようになります。 例えば、注意障害には以下の対処法があります。 集中が維持できないときに適宜休憩を挟んでもらう 作業時間を長く確保する 工程表を提示する 代償訓練は高次脳機能障害で発症した症状を上手く対処し、社会生活や日常生活で支障をきたさないようにするためのリハビリです。 行動変容療法 行動変容療法は、オペラント条件付け理論に基づいたリハビリです。オペラント条件付け理論とは、行動が報酬を得られる道具と認識させる学習法を指します。 例えば、突然怒り出す行動が減少するよう、当事者が自分の感情を抑えた場合に褒めたり、やりがいを感じさせたりします。当事者が褒められた喜びから、自分の感情を抑えようとする過程をつくるのが行動変容療法です。 突然怒り出した場合は、無視をして自発的に行動するよう促します。すなわち、行動変容療法は褒められる機会を増やし、徐々に怒り出す頻度を減らしていくリハビリ内容です。 認知行動療法 認知行動療法とは物事の見方や考え方、行動を変えて、心の状態の改善を図るリハビリです。高次脳機能障害における怒りやすい・うつなどの症状は、自分でコントロールできない感情に悩まされている場合に起こります。 認知行動療法では、障害や環境、周囲の対応などに対する否定的かつ誤った解釈を修正していきます。診察するときは、当事者の感情を否定せず受け入れながら現状に適応できるよう行動を促すのです。 認知行動療法では感情的に怒る前に一呼吸置いて冷静になれるよう訓練していくため、トラブル回避につながります。 社会技能訓練 社会技能訓練は、高次脳機能障害の方が社会に復帰できるようにするリハビリです。主なリハビリ内容は、以下の通りです。 主な支援 リハビリ内容 就労支援 職業訓練の場となるハローワークや障がい者職業総合センターなどの就労支援機関と連携して、復職の可能性を検討する 万が一、復職が不可と判断された場合は、リハビリで職業能力を高めていく 自動車運転支援 自動車運転に際し、視野欠損や半側空間無視、運動操作能力の有無など運動能力評価や診断、指導を実施する また、グループの中で自分の考えや気持ち、相手に対する要求など社会で人と関わりながら生きていくためのスキルを身につける訓練も、社会技能訓練では実施します。(文献3)(文献5) 調理行動 高次脳機能障害では、調理を題材にしたリハビリを実施しています。調理行動では、調理を行う危険性を認識させる目的があります。 調理は危険をともなう行動となるため、高次脳機能障害の当事者に自身の能力を認識してもらうのが重要です。 「高次脳機能障害者の自立に向けた調理行動振り返り支援システムに基づく認知リハビリテーション」によると、リハビリとして当事者に自身の調理体験映像を見せ、客観的に自分の行動を見る機会を設けた支援を行いました。 客観視により、リハビリに対する意欲向上が見込まれた事例となり、調理行動は高次脳機能障害の訓練に効果的だとわかります。 高次脳機能障害におけるリハビリ以外の治療方法 高次脳機能障害におけるリハビリ以外の治療法には、再生医療があります。再生医療とは、けがや病気などにより、機能障害に陥った組織や細胞などを元通りにするための治療法です。 体の自然治癒力を高め、組織や機能などの修復を行うのが再生医療です。再生医療による治療は早いほど、脳機能の回復が期待できます。 また、再生医療ではヒトの体に存在する幹細胞の修復力を治療に使用しています。細胞の損傷や不足している細胞を代替し、体の機能を修復する役割を幹細胞が担っているのです。 体へ戻す幹細胞は患者の細胞のため、拒絶反応やアレルギー反応などが起こりづらい点も再生医療の特徴です。 以下の動画では、当院で再生医療を受けた方の声を紹介しています。 リペアセルクリニックでは、高次脳機能障害の原因の一つとなる脳卒中の再生医療・幹細胞治療を実施しています。 メール相談やオンラインカウンセリングも提供していますので、再生医療について詳しく知りたい方はお気軽にご相談ください。 まとめ・適切なリハビリを受けて高次脳機能障害の回復を目指そう 高次脳機能障害は適切なリハビリにより、症状の回復効果が期待できます。リハビリでは治療だけでなく、定めた目標到達へ向けて訓練を進めていくため、期間は6カ月~1年ほどが目安です。 高次脳機能障害のリハビリ内容はさまざまで、症状別に訓練が異なります。漠然とリハビリをするのではなく、定期的に評価を繰り返して最終的な目標に到達するのが症状の回復へつながります。 なお、症状の回復へつなげるには、リハビリをできるかぎり早く始めるのが大切です。 医師や理学療法士の指導のもと、個々の症状に合わせたリハビリを行い、高次脳機能障害の症状回復を目指しましょう。 加えて、リハビリで効果が得られない場合には、再生医療もご検討ください。 参考文献 (文献1) J-STAGE「高次脳機能障害のリハビリテーション」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/ninchishinkeikagaku/13/1/13_22/_pdf (文献2) 国立障害者リハビリステーションセンター「第1章 高次脳機能障害 診断基準ガイドライン 」 https://www.rehab.go.jp/ri/event/brain_fukyu/pdf/10.pdf (文献3) J-STAGE「高次脳機能障害に対するリハビリテーション治療―患者・家族会との連携―」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/58/4/58_58.418/_pdf/-char/ja (文献4) 香川大学医学部附属病院 リハビリテーション部「高次脳機能障害と暮らす」 https://www.med.kagawa-u.ac.jp/hosp/media/010/202211/04%E6%B4%A5%E5%B7%9D%E4%BA%AE%E4%BB%8B.pdf (文献5) 京都府 健康福祉部 障害者支援課「京都府高次脳機能障害者支援プラン 」 https://www.pref.kyoto.jp/shogaishien/documents/1327459933391.pdf
2025.02.07 -
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高次脳機能障害になった際、余命がどれくらいか不安を感じる方もいるのではないでしょうか。高次脳機能障害は、脳の損傷や異常により知的能力や行動に影響を及ぼしている状態です。そのため、健常な方に比べると、寿命に差が生じる可能性は十分考えられます。 今回は、高次脳機能障害の平均余命について解説します。高次脳機能障害に関する基礎知識や再生医療の可能性もまとめているので、ぜひ参考にしてください。 高次脳機能障害の平均余命 高次脳機能障害の平均余命は、健常者の平均余命に比べて短い傾向です。ここでは、高次脳機能障害の平均余命を男女別に紹介します。 なお、高次脳機能障害の平均余命に関しては「脳出血」「脳梗塞」「くも膜下出血」の症状を平均としています。 男性の平均余命 東京福祉局と厚生労働省のデータをもとに比較したところ、高次脳機能障害の男性は健常な男性より平均余命が短くなっています。 高次脳機能障害の男性と健常な男性の平均余命は、以下の通りです。 年齢 ※高次脳機能障害の場合、発症年齢 高次脳機能障害の男性 健常な男性 平均余命の差 20歳 42.61年 61.45年 18.84年 30歳 35.59年 51.72年 16.13年 40歳 28.88年 42.06年 13.18年 50歳 20.16年 32.60年 12.44年 60歳 11.56年 23.68年 12.12年 70歳 5.62年 15.65年 10.03年 80歳 2.47年 8.98年 6.51年 高次脳機能障害の男性と健常な男性における平均余命は、約10年以上の差が生じています。 また、80歳で高次脳機能障害を発症した場合でも、約6年ほど異なります。 データを比べた結果、若いうちに高次脳機能障害を発症するほど平均余命は健常時と比較して短くなってしまう可能性が考えられます。 女性の平均余命 東京福祉局と厚生労働省のデータをもとに比較したところ、男性同様、高次脳機能障害の女性は健常な女性より平均余命が短くなっています。 高次脳機能障害の女性と健常な女性の平均余命は、以下の通りです。 年齢 ※高次脳機能障害の場合、発症年齢 高次脳機能障害の女性 健常な女性 平均余命の差 20歳 50.21年 67.48年 17.27歳 30歳 42.58年 57.65年 15.07歳 40歳 35.18年 47.85年 12.67歳 50歳 26.30年 38.23年 11.93歳 60歳 15.84年 28.91年 13.07歳 70歳 7.22年 19.96年 12.74歳 80歳 3.35年 11.81年 8.46歳 高次脳機能障害の女性と健常な女性における平均余命は、約10年以上の差が生じています。また、80歳で高次脳機能障害を発症した場合でも、約8年ほど異なります。(文献1) 高次脳機能障害になった女性の平均余命は男性に比べて長いものの、健常な女性と比較すると短い傾向です。(文献2) 高次脳機能障害の主な症状 高次脳機能障害は、脳の損傷によって「考える」「記憶する」「行動する」といった人間の重要な機能に影響を及ぼします。 高次脳機能障害を発症すると、主に以下の症状が見られます。 新しいことを覚えられない・事実と異なる話をするなどの記憶障害 ミスが多い・集中できないなどの注意障害 寝てばかり・暴力的などの社会的行動障害 自分で計画ができない・優先順位が決められないなどの遂行機能障害 うまく話せないなどの症状 高次脳機能障害はさまざまな症状を引き起こすため、自立した生活が困難になります。また、外見だけでは症状がわかりにくいため、仕事や人付き合いなどの社会活動が困難と感じるケースも少なくありません。 一般的には高次脳機能障害の症状が理解されにくい点から、本人や家族が周囲との関係でストレスを感じる場合もあります。 高次脳機能障害の症状について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。 数年後に治った人はいる?高次脳機能障害の回復過程 高次脳機能障害が完治した事例は、2025年1月において確認されていません。高次脳機能障害は、脳の損傷による障害のため、完治するのは難しいとされています。 しかし、リハビリ専門医療機関や地域活動支援センターなどで適切な支援を受けると、症状が回復する可能性があります。また、症状が残っても、支援により日常生活や社会生活を送れるようになるケースが期待できます。 そのため、家族や職場など周囲の方が高次脳機能障害への理解を深め、適切な支援をすることが回復過程においては重要です。 高次脳機能障害は治るのか知りたい方は、あわせて以下の記事をご覧ください。 高次脳機能障害の治療法 高次脳機能障害の治療法は、薬物療法とリハビリの2つに分類されます。各治療法の特徴は、以下の通りです。 治療法 特徴 薬物療法 主に症状の軽減や日常生活における質の向上が目的 症状のコントロールがメインのため、根本的な治療法ではない点に注意 リハビリ 症状の回復をサポートするのが目的 作業療法や理学療法、言語療法を実施 また、高次脳機能障害のリハビリ方法は、症状や患者の状態に応じて異なります。例えば、注意障害がある場合は、集中しやすい環境を整えるリハビリを実施します。 体を動かしたり脳トレを実施したりと、自宅でできるリハビリもあるため、医師に相談の上、無理のない範囲で取り入れてみましょう。 高次脳機能障害の余命に悩む方への選択肢「再生医療」 近年、高次脳機能障害の新たな治療法として再生医療が注目されています。再生医療は人間が持っている再生力を用いた治療法で、失われた組織や機能の修復を行います。 再生医療で期待できる治療効果は、以下の通りです。 壊れた脳細胞を再生医療で修復し、身体の機能回復を目指す 後遺症に対するリハビリ効果を向上させる 傷ついた血管を修復し再発を予防する 高次脳機能障害の症状でお悩みの方は、治療の選択肢の一つとして再生医療をご検討ください。 以下の動画では、高次脳機能障害に対して再生医療を受けた方の声を紹介しています。 脳の損傷・疾患に対する治療・リハビリは、早期に行うほど予後が良いとされています。 高次脳機能障害にお悩みの方は、ぜひ当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。 リペアセルクリニックでは、無料のメール相談やオンラインカウンセリングを行っています。 まとめ・高次脳機能障害の平均余命を踏まえたうえで適切な治療を受けよう 高次脳機能障害の平均余命は、健常な方と比べて短い傾向です。特に、発症した年齢が若いほど健常な方と比較して、余命は短いと考えられます。 高次脳機能障害を発症すると、記憶障害や注意障害などさまざまな症状が見られます。完治した事例は確認されていませんが、適切な治療法により症状が改善する可能性はあります。 高次脳機能障害の治療法として、薬物療法やリハビリの他に再生医療という選択肢もあります。 再生医療は、人間の体が持つ能力を活かした最新の治療法となるため、高次脳機能障害の症状回復へ向けた一助となる場合があります。 高次脳機能障害に向き合い適切な治療を受け、症状の回復へ向けて行動しましょう。 参考文献 (文献1) 東京都福祉保健局「高次脳機能障害者実態調査結果 第3章 高次脳機能障害者数の推計」https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/houkoku4 (文献2) 厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life23/dl/life23-15.pdf
2025.02.07 -
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筋トレの最中に頭痛がして、脳の血管が切れていたらどうしようと不安になっていませんか。 筋トレで負荷のかかる動きをしたり、重い器具を無理に持ち上げたりすると、脳血管に負担がかかり切れてしまうケースがあります。脳卒中などの疾患を予防するには、筋トレ中も力まないように意識する工夫が大切です。 本記事では、筋トレで脳血管が切れる原因と予防策・対処法を詳しく解説します。 さらに、筋トレ中の頭痛が辛いときの対策法も解説しているため、症状がつらくて悩んでいる方に読んでいただきたい記事です。 ぜひ本記事を参考に、脳血管が切れるリスクに注意しながら筋トレを続ける工夫をしてみてください。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による脳卒中の後遺症や再発予防の治療を行っております。 メール相談またはオンラインカウンセリングにて無料相談を受け付け中です。気になる方はぜひ当院までお気軽にご相談ください。 筋トレで脳血管が切れる可能性がある 筋トレ中に重いダンベルを持ったり強い負荷をかける種目を行ったりすると、過度に力んでしまい脳血管に負担をかけるリスクがあります。 筋トレ中に脳血管が切れる大きな要因は「血圧の上昇」です。 筋トレで「力む」ことで血管が強く収縮し、一時的に血圧が急激に上がります。この状態が続くと、血管に過度な負荷がかかり、脳出血を引き起こすリスクがあります。 とくに力みやすい種目は、以下のとおりです。 ベンチプレス ダンベルスクワット 懸垂 上記のような筋トレを行う場合は力まないよう、呼吸や負荷に十分注意しましょう。 筋トレ中に力みすぎてしまい脳血管が切れると「くも膜下出血」になるリスクがあるため注意が必要です。くも膜下出血について詳しく知りたい方は、以下のコラムを参考にしてください。 筋トレで頭痛が起こる3つの原因 筋トレ中に頭痛が起こる原因として、主に以下の3つがあります。 血管の一時的な強い収縮 激しいトレーニングメニュー 慢性頭痛の悪化 トレーニング中に頭痛が頻繁に起こる方は、本章の内容をチェックしてみてください。 血管の一時的な強い収縮 筋トレ中に頭痛が起こる主な原因のひとつは「血管の一時的な強い収縮」を伴う 「可逆性脳血管攣縮(れんしゅく)症候群」 です。 一時的に力んだ際に 1分未満で痛みのピークに達する「雷鳴頭痛」 が発生するのが特徴です。(文献1) 個人差はありますが、突然の激しい頭痛が発症した後、数週間にわたって繰り返されることがあります。 また、雷鳴頭痛は 脳出血へと進行するリスク もあるため、注意が必要です。 激しいトレーニングメニュー 激しいトレーニングの繰り返しは、脳血管への負担につながります。 過度な運動を繰り返すと、体が酸素不足に陥ることがあります。全身に十分な酸素が供給されないと、より多くの酸素を体に取り込む過程で血管が拡張され、頭痛が引き起こされるのです。 また、感染予防のためにジムでマスクをつけている場合も、酸欠状態になるリスクがあるため注意が必要です。 筋トレの途中で息苦しさを感じたら、マスクを外してこまめに休憩しましょう。 慢性頭痛の悪化 慢性的な偏頭痛を持っている場合、筋トレにより症状を悪化させるリスクがあります。 片頭痛は、何らかの原因で頭の血管が縮んだ後、急に広がることで脈打つような頭痛が起こるのが特徴です。(文献2) 運動をすると血管が開き、血流が良くなるため片頭痛が一時的に悪化する場合があります。 慢性的な頭痛を持っている人は、急激に運動量を増やさずに無理のない範囲で筋トレすることを心がけましょう。 頭痛の分類については、以下のコラムで詳しく解説しています。気になる方はこちらも合わせて参考にしてください。 必ずやってほしい筋トレ頭痛の予防策3選 筋トレによる頭痛の予防に効果的な対策として、以下の3つがあります。 筋トレ前後に水分補給をする 筋トレ前にストレッチをする 筋トレ中は息を止めない 筋トレ中の頭痛に悩んでいる人は、本章を参考に予防を心がけてみてください。 筋トレの前後に水分補給をする 運動により体内の水分が不足すると、血の巡りが悪くなります。脳へ栄養や酸素が行き届かなくなった結果、頭痛につながる可能性があります。 脱水症状に陥らないよう、筋トレ前後には十分な水分補給をしましょう。 また、頭痛以外の脱水症状として以下の症状があげられます。 吐き気 喉の渇き めまい など このような症状があらわれた場合は、すぐに筋トレを中止して水分補給をして休息をとってください。 筋トレ前にストレッチをする 筋トレ前にウォーミングアップとしてストレッチを行うことも、頭痛を防ぐのに効果的な対策です。 急に激しい運動をすると血流の速さが一気に変わり、血管や筋肉に負担をかけるリスクがあります。 ストレッチでウォーミングアップすると全身の血流が緩やかに早くなるため、頭痛を予防する効果が期待できます。頭痛を防ぎ、安全に筋トレを行うためにも、ウォーミングアップとしてストレッチを行ってから運動を始めましょう。 筋トレ中は息を止めない 筋トレ中に息を止めると、力みが生じて血圧の急上昇を招き、脳血管に負担を与えるリスクがあります。筋トレ中は息を止めず、力まないように注意しましょう。 とくに重いダンベルを持ち上げたり、きついポーズをとったりするときに 無意識に息を止めてしまう人が多いため、注意が必要です。 筋トレ中に息を止める癖がある方は、トレーニング中の呼吸を以下のように意識してみてください。 ポーズをとる際に、呼吸を止めない 力むときに息を吐き、力を抜くときに息を吸う(例:ダンベルを持ち上げる際に息を吐き、下げるときに息を吸う) どうしても息を止める場合は、筋トレで最もつらい一瞬だけに留める この呼吸法を意識すると、筋トレ中の血圧上昇を抑えられて頭痛の予防にもつながるでしょう。 筋トレ頭痛がつらい場合の3つの対策法 運動の最中に頭痛がつらくなった場合に有効な対処法は、以下の3つです。 運動を中止する トレーニング器具の負荷を軽くする 痛み止めを飲む 筋トレの最中に頭痛がつらくなった際は、本章を参考に無理をせず、症状を和らげることを優先しましょう。 運動を中止する 筋トレ中に頭痛を感じた場合は、直ちに運動を中止し症状が治まるまでゆっくり休みましょう。 頭痛がつらいまま我慢して筋トレを続けると、症状が悪化するリスクがあります。また、脳血管に負担をかけ深刻な症状を招くリスクもあるため注意が必要です。 頭痛を感じたら無理をせず暗く涼しい場所で横になって休むようにしましょう。 トレーニング器具の負荷を軽くする 筋トレ頭痛の頻度が多い人は、トレーニング器具の負荷を軽くして力みを減らしましょう。 筋トレによる頭痛の一因として負荷をかけすぎてしまい、力んでしまっている可能性があります。どうしても強い負荷で筋力をつけたい場合は「徐々に」重さを上げるようにしましょう。急激に負荷を上げると頭痛や脳出血のリスクを上げるため、注意が必要です。 痛み止めを飲む 休息をとったり筋トレ時の負荷を軽くしたりしても頭痛が続く場合は、我慢せずに痛み止めを服用することが大切です。 筋トレ頭痛に効果のある痛み止めは、以下のような成分の薬です。 イブプロフェン アセトアミノフェン インドメタシン これらの成分を含む薬は、病院の処方のみならず、薬局やドラッグストアなどでも購入できます。 ただし、痛み止めで改善がなければ別の要因も考えられるため、一度頭痛外来に受診してみましょう。 まとめ|脳の血管に負担をかけず安全に筋トレをしよう 筋トレによる脳血管への負担を減らすためには、未然の防止策と症状が出た際に適切な対処を行うことが大切です。 頭痛を感じたら無理をせずに休み、症状が落ち着いてから再開しましょう。 当院リペアセルクリニックでは、人体にある幹細胞を用いて脳出血後の再発予防や後遺症の治療を行っております。 「メール相談」または「オンラインカウンセリング」にて無料相談を受け付けておりますので、気になる方はぜひ当院までご連絡ください。 筋トレで脳血管が切れる症状についてよくある質問 筋トレは血管を老化させますか? 筋トレ自体が血管に悪影響を与えるわけではありませんが、アスリートのような運動を長期的に行うと動脈硬化を促進させるリスクがあります。 ただし、適切な頻度と負荷の筋トレは血流を改善し、健康体を維持する効果が期待できます。年齢に合わせて トレーニングの頻度や負荷を下げて有酸素運動を取り入れると、筋トレのメリットを活かしながら無理なく運動ができるでしょう。 脳血管が切れるとどうなりますか? 脳血管が切れると脳出血が起こり、以下のような症状があらわれる場合があります。 手足や顔がしびれる ろれつが回らない 視界がぼやける 脳出血後の後遺症は、早期の対応によってその後回復できるかどうかが大きく変わります。これらの症状があらわれたらすぐに受診しましょう。 脳出血の予防については、以下のコラムで詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。 参考文献 (文献1) 橋本洋一郎「可逆性脳血管攣縮症候群(reversible cerebral vasoconstriction syndrome)| 神経治療(35) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/35/4/35_416/_pdf (文献2) 古和 久典「片頭痛の病態と治療|神経治療(39)」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/39/3/39_200/_pdf/-char/ja
2025.02.07 -
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「最近イライラしたり、落ち込んだりしやすい」 「セロトニンは幸せホルモンと聞いたが、自分は不足しているのではないか」 このようなお悩みはありませんか? 日常の中で、些細なことでも強い怒りを感じる、また気持ちが沈んでしまう場合は、セロトニンが不足している可能性があります。セロトニンは別名「幸せホルモン」と呼ばれ、心を穏やかに保つためにとても大切なホルモンです。 この記事では、セロトニンが不足している際に起こる「セロトニン欠乏脳」の自己チェック方法と、対策についてご紹介します。セロトニン不足のお悩みの参考になれば幸いです。 自分の状態がセロトニン欠乏脳ではないか不安、またセロトニン欠乏脳による気分の不調を解消したいと感じたら、当院のメール相談 やオンラインカウンセリングもご活用ください。 セロトニン欠乏脳チェック【当てはまったら要注意】 いつもよりキレやすい、気持ちが落ち込みやすいといった場合には「セロトニン欠乏脳」の状態かもしれません。 セロトニンは脳内で作られる神経伝達物質の1つで、喜びの感情を司るドーパミンや怒り・恐怖といった感情を司るノルアドレナリンといった神経伝達物質をコントロールする働きがあります。(文献1) そのため、セロトニンが欠乏すると、気分が安定しにくくなります。 「もしかしたら自分もセロトニン欠乏脳ではないか」と思う方もいるでしょう。下に「セロトニン欠乏脳」になると現れる変化をチェックリストとしてまとめています。複数当てはまる方はセロトニン欠乏からの不調かもしれないので、注意が必要です。(文献2) 1.疲れやだるさが続く 2.動悸やめまいがする 3.慢性的な頭痛がある 4.よく眠れない、すっきりと起きられない 5.食欲が湧かない 6.身支度が整わない 7.時間通りの行動が難しい 8.遅刻や早退が多い 9.いつもよりミスが多い 10.自分は無価値だと思う 11.気分が落ち込みやすい 12.理由もなく不安になる、緊張する 13.すぐにイライラしてしまう 14.他の人には聞こえない声が聞こえる セロトニン欠乏脳の症状6選 セロトニン欠乏脳は、脳の中でセロトニンの分泌が少なくなることで起こります。有田秀穂氏の論文によれば「セロトニン欠乏脳」の代表的な症状として以下の6つが挙げられています。(文献3) 朝すっきりと起きられない 自律神経失調症の症状がある 背筋や顔の筋緊張が弱い 痛みに弱い キレやすい状態 生活習慣が乱れている それぞれの項目について詳しく解説します。 1.朝すっきりと起きられない セロトニン欠乏脳になると朝すっきりと起きられなくなります。 なぜなら、朝の調子を整えるための自律神経の働きに、セロトニンが関わっているからです。 自律神経には、体を活発に動かすための交感神経と、体を休ませるための副交感神経があります。眠っている時には体をリラックスさせる副交感神経が働いていますが、目覚めてから体を動かすためには交感神経を働かせるというのが通常の働きです。セロトニンは、この切り替えを円滑にするために用いられます。 そのため、セロトニン欠乏脳の状態では、うまく自律神経が切り替わらず「朝目覚めても、なんだかすっきりしない」と感じやすくなります。 2.自律神経失調症の症状がある セロトニンが欠乏すると、自律神経失調症の症状が出ます。 自律神経失調症とは、病気ではないのに体になんらかの不調がある状態です。自律神経失調症では、全身のだるさやめまい、頭痛、動悸などが現れます。(文献4) こちらも、自律神経の切り替えにセロトニンが関わっているためです。自律神経は臓器とつながっているため、セロトニンの欠乏により交感神経と副交感神経の働きが乱れると、各臓器、そして全身に悪影響を及ぼします。 そのため、自律神経失調症のような症状があるときには、セロトニン欠乏脳が疑われます。 3.背筋や顔の筋緊張が弱い 背筋や顔の筋肉の収縮が弱くなることも、セロトニン欠乏脳の特徴です。 セロトニンは筋肉の収縮を司る「運動ニューロン」という神経細胞にも影響を及ぼします。とくに、姿勢を維持するための体幹や筋肉、そして顔のまぶたや頬の筋肉の収縮を司っています。そのため、セロトニンがしっかり分泌されていると、背筋がピンとして顔に締まりが出るのです。 いつもより姿勢が悪い、顔がゆるんでいるといったときには、セロトニンが上手く分泌していないかもしれません。 4.痛みに弱い セロトニンは、脊髄から脳に痛みを伝える伝達路にも作用し、痛みを和らげる鎮痛作用も持っています。そのため、セロトニンが少なくなると、痛みが脳に伝わりやすくなり、少しの傷やけがでも痛みの感じ方が強くなってしまいます。 これはキレやすい子どもにとくに見られやすいと言われています。 5.キレやすい状態である セロトニン欠乏脳の状態になると、ささいなことでもキレやすくなります。 原因としては「青斑核ノルアドレナリン神経」という、ストレスを他の神経に伝える道筋を抑えられなくなるからです。ストレスが他の神経にすぐ伝わってしまうと、ストレスをうまく制御できず、感情的になる、普通では考えられないような行動を取るといったことが起こります。 いつもよりキレやすい、すぐ感情が爆発してしまって手が付けられなくなってしまう、といった状態が続く場合は、セロトニンが足りていないかもしれません。 6.生活習慣が乱れている セロトニンが少なくなると、眠りが浅く朝起きられなくなったり、食欲がコントロールできなくなったりして生活習慣が乱れてしまいます。 まず、睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠という2つの種類があります。レム睡眠は浅い眠りで体がよく休まっている状態、ノンレム睡眠は深い眠りで脳がよく休まっている状態のことです。セロトニンが足りなくなるとレム睡眠の時間が短くなり、体が十分に休まらなくなってしまいます。そのため、朝すっきり起きられず生活習慣の乱れにつながってしまうのです。 そして、セロトニンは食欲の調節にも重要です。ドパミンという神経伝達物質が食欲を司っていますが、この調節機能にもセロトニンが作用します。食欲をコントロールできなくなると、精神面にも体の健康にも悪影響が出てしまいます。 よく眠れているか、そして暴飲暴食はないかといった生活習慣についても確かめてみましょう。 セロトニン欠乏脳とは気持ちが揺らぎやすい状態 セロトニン欠乏脳になると、突然怒りが爆発したり、気分が落ち込んでしまったりと揺らぎやすい状態になります。この章では、そもそもセロトニンとはどのようなものか、そしてそこからどのようにセロトニン欠乏が起こるのかという部分について解説します。 セロトニンは「幸せホルモン」と呼ばれる セロトニンは脳の「脳幹」と呼ばれる部分から分泌される神経伝達物質です。セロトニンが分泌されることで、喜びを感じる伝達物質と怒りや恐怖を感じる伝達物質の調節をし、心の安静を保ちます。分泌によって気持ちを穏やかに保ったり、幸福感を感じたりすることから「幸せホルモン」と呼ばれているのです。 また、セロトニンは腸でも作られています。ある文献によれば、腸内に細菌がいるマウスよりも、いないマウスの方がセロトニンの量が少なかったという研究があります。(文献5) セロトニン欠乏脳は怒りやすさや気分の不安定を招く セロトニンが欠乏すると、感情を司る神経伝達物質のバランスが崩れて、気持ちのコントロールが難しくなります。感情が不安定になると、仕事や人間関係がうまくいかなくなってしまうでしょう。有田氏の論文によれば、セロトニンの欠乏は生活習慣の乱れにより引き起こされるという結果があります。(文献3) しかし、逆に言えば、生活習慣を整えればセロトニンの分泌を促せるということです。 次の項目でセロトニン欠乏脳を改善するときのポイントを6つ載せていますので、ぜひ今日から取り入れてみてください。 セロトニン欠乏脳を改善するときのポイント セロトニンは、食事や運動、そして日常生活の中での少しの工夫で分泌を促せます。(文献6) すぐに実践できる内容ですので、ぜひお試しください。 1.バナナや乳製品などを積極的に摂る 2.リズム性の運動を行う 3.日光を浴びる習慣を持つ 各項目について、詳しく解説します。 1.バナナや乳製品などを積極的に摂る セロトニンは、必須アミノ酸の1つであるトリプトファンから合成されます。必須アミノ酸とは、体の中では合成できないため、食品から摂る必要のある栄養素です。そのため、トリプトファンを多く含む食品を摂ることで、セロトニンを増やせます。 トリプトファンを含む食品としては、以下のようなものが挙げられます。 果物:バナナ、キウイなど 乳製品:牛乳、チーズなど 豆製品:大豆、納豆など 卵 種実類:ゴマ、アーモンドなど 日頃の生活に、プラス一品トリプトファンを含む食品を取り入れてみましょう。 2.リズム性の運動を行う 一定のリズムで行う運動もセロトニン欠乏の予防・改善に効果があるといわれています。論文によれば、運動として、歩行、咀嚼(そしゃく)、呼吸が挙げられています。 日々の生活の中で、以下のような行動を取り入れましょう。 歩行 少し息が上がるくらいのリズミカルな運動を取り入れましょう。 通勤や通学などの日々の生活のなかで、少し早足で歩いてみることも良いでしょう。また、時間のある方はウォーキングで歩く習慣を作るのもおすすめです。 咀嚼 噛む、という動きも等間隔でのリズム運動です。 そのため、よく噛むことでリズム運動の機会を増やせます。家事や仕事に追われて、ついつい早食いになっていることも多いでしょう。食事をよく噛んで食べるだけでもセロトニンが増えます。 呼吸 ストレッチやヨガ、座禅でゆっくりと大きな呼吸をしましょう。ストレスを感じると、呼吸は浅くなりがちです。一日のなかで、少しでも自分のために呼吸を整える習慣を作ってみましょう。 運動や呼吸自体のリラックス効果や食事で満足感を得られることに加え、セロトニンの分泌が促進されることで、より充実感が得られるでしょう。 3.日光を浴びる習慣を持つ 太陽光を浴びることでセロトニンの分泌が活性化します。(文献6) 電球の光だけでは分泌を促すほどの照度がないため、カーテンを開けたり、外に出たりしてしっかり日光を浴びましょう。日光を浴びると、1日の体内時計のリズムも整い、調子よく過ごせます。 まとめ|セロトニン欠乏脳だと感じたら生活習慣を見直そう いつもよりも怒りっぽい、調子が悪いと感じたら、セロトニンが欠乏している状態かもしれません。先述のチェックリストで自分がセロトニン欠乏脳ではないかと感じたら、生活習慣の見直しからはじめましょう。それでも体調や気分が変わらない場合は、ほかの心身の病気の可能性もあります。 自分だけでは判断が難しい、もっと詳しく話を聞きたいという場合には、当院のメール相談 、オンラインカウンセリング にてお気軽にご相談ください。 セロトニン欠乏脳についてよくある質問 セロトニン欠乏脳について、よくある質問をまとめました。ぜひご参考ください。 日本人はセロトニンが少ないですか? 過去の論文においては、日本人の遺伝子型としてセロトニンが少ないことも示されているようです。しかし、日本人といっても一人一人の遺伝子型は異なります。もともと落ち込みやすい性格である、不満を感じやすいといった特徴があれば、セロトニン欠乏を疑うべきでしょう。 セロトニンを増やすマッサージやストレッチはありますか? 目、顔、背中のリズミカルなマッサージがセロトニン神経を活発にする、という研究結果があります。規則的に、気持ちよいくらいの強さでトントンと指や手全体で刺激をしてみましょう。加えて、ストレッチで体を動かすことも呼吸を早く、大きくするため、セロトニンを増やす効果があります。 参考文献 (文献1) 厚生労働省「セロトニン|e-ヘルスネット」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-074.html (文献2) 厚生労働省「セルフメンタルヘルス」 https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000881325.pdf (文献3) 有田秀穂「セロトニン欠乏脳 −キレる脳・鬱の脳を鍛え直す−」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbs/3/2/3_123/_pdf/-char/ja (文献4) 厚生労働省「自律神経失調症:用語解説|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」 https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1591/ (文献5) 尾畑佑樹氏,腸内細菌による消化管神経回路の修飾 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim/36/1/36_21/_pdf (文献6) 小西正良ほか「セロトニン分泌に影響を及ぼす生活習慣と環境|大阪河﨑リハビリテーション大学紀要」 https://cir.nii.ac.jp/crid/1050285299827544832
2025.02.07 -
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突然の肩こりや、中々治らない肩こりに悩まされていませんか。 原因が思い当たらない肩こりが数日間続いたり、急に症状があらわれたりすると「ただの肩こりじゃなかったらどうしよう」「脳梗塞の前兆かもしれない」と不安になる方もいるでしょう。 突然の激しい肩こりが、実は脳梗塞の前兆である場合があります。「ただの肩こりだから」と軽視して放置すると病状が悪化する恐れもあるため、早期に医療機関を受診し、原因を的確に見極めることが大切です。 本記事では、肩こりが脳梗塞の前兆になる理由や、その他気を付けるべき症状について詳しく解説します。 最後まで読むことで肩こりから脳梗塞を早期に見つけられる方法がわかり、悪化を防げる可能性が高まるでしょう。 ぜひ本記事を参考に、今の肩こりが脳梗塞の前兆であるかどうかをチェックしてみてください。 当院「リペアセルクリニック」では、幹細胞を用いて脳梗塞の後遺症改善や再発予防を目指した治療を行っています。メール相談またはオンラインカウンセリングにて無料相談を受け付けておりますので、気になる症状がある方はぜひ当院までご相談ください。 「突然の」肩こりは放置厳禁!脳梗塞のリスクもあり 多くの人が肩こりを放置しがちですが「突然の」肩こりは、脳梗塞の前兆の疑いがあるため、注意が必要です。 脳梗塞から起こる肩こりは、首周辺の血流の滞りや神経の麻痺によって引き起こされます。その影響で筋肉が凝り固まり、肩周りの神経の動きが低下するため、肩こりがあらわれる可能性があります。 とくに以下の症状を伴う突然の肩こりの場合は、脳梗塞の前兆であるため注意が必要です。 片側だけ鋭い痛みを感じる 短時間で急速に痛みや肩こりが悪化する 目がかすんだり、見える範囲が狭くなったりする ほとんどの肩こりの場合は単なる筋肉のコリや重労働が原因であり、脳梗塞である可能性は非常に稀です。 しかし、デスクワークのしすぎや重たい荷物を持つといった原因が思い当たらないのに、突然原因不明の肩こりがする場合は注意が必要です。 軽視せずに他の症状が出ていないかを確認し、異変を感じたら自己判断で放置せず早めに医療機関を受診しましょう。 「首の後ろの痛み」も脳梗塞の前兆の可能性あり 肩こりと同様に、突然あらわれる「首の後ろの痛み」も脳梗塞の前兆である疑いがあります。 その理由の一つが、首の後ろを通る血管が損傷する「椎骨(ついこつ)動脈解離」です。 椎骨動脈解離が起こると、頭の後ろから首の付け根にかけて激しい痛みが生じ、めまいや吐き気を伴うことがあります。この状態が進行すると脳梗塞やくも膜下出血へ発展する可能性があります。(文献1) 脳梗塞や椎骨動脈解離はMRIやCTなどの検査でわかる場合が多いため、首の後ろの痛みがあれば早めに受診しましょう。 また、首の後ろの痛みは「くも膜下出血」の疑いもあります。くも膜下出血からくる首の後ろの痛みについて詳しく知りたい方は以下のコラムも参考にしてください。 【要チェック】肩こり以外脳梗塞の前兆4つ 肩こり以外の脳梗塞の代表的な前兆には、以下の症状があります。 痙攣・麻痺 言語障害 視覚障害 歩行困難 違和感のある肩こりがある方は、本章で解説している症状も一緒に出ていないかどうか確認してみてください。 1.痙攣・麻痺 脳梗塞の代表的な前兆として痙攣や麻痺があげられます。 脳梗塞が起こることで血管が詰まり、血流が遮断され、神経の働きが阻害されます。その結果、痙攣や麻痺といった症状が現れるのです。 痙攣や麻痺が脳梗塞によるものかどうかは「突然発症したものか」「片側だけに生じているか」がポイントです。 早期に治療を行うと後遺症が軽くなる可能性が高まります。片側のみや突然の痙攣・麻痺がみられる場合は、迅速に医療機関を受診しましょう。 2.言語障害 脳梗塞の初期症状で知られているのが「ろれつが回らない」「言葉を発するときに言葉が出てこない」といった言語障害です。 言語障害は、会話や言葉を理解する能力に関わる「前頭葉」や「側頭葉」などの脳部分が脳梗塞により損傷を受けることで生じます。(文献2) また「簡単な文章を書けない」「滑舌が突然悪くなった」といった症状も多く見られます。 このような言語障害が「突然」あらわれた場合は脳梗塞の可能性があるため、注意が必要です。 3.視覚障害 「視覚障害」も脳梗塞の初期症状としてあらわれる可能性があります。 脳梗塞で脳の血液の流れが滞り、視覚に関わる脳の部位が損傷すると視覚障害が起こるため、注意が必要です。 脳梗塞による視覚障害として、以下のような症状があげられます。 視野欠損(片側だけ欠けて見える) 複視(物が二重に見える) 突然の視力低下 見え方に突然違和感をもった場合は、早めに脳神経外科へ受診しましょう。 4.歩行困難 筋肉の麻痺による歩行困難があらわれるのも脳梗塞の前兆のひとつです。 脳梗塞により筋肉が無意識に収縮して硬直し、スムーズに体を動かせなくなります。このため、いつも通り歩くのが難しくなり、独特な歩き方となります。(文献3) 脳梗塞による歩行困難として、以下のような兆候が知られています。 歩行困難の種類 特徴 内反尖足(ないはんせんそく) つま先が下を向いたり、足首・足裏が内側に向いたりする 膝関節伸展 膝関節をまっすぐに伸ばして歩く 股関節屈曲 股関節が曲げられなくなる 脳梗塞の前兆のチェック項目については以下の記事で詳しく解説しております。気になる方は、合わせて参考にしてください。 肩こり含む脳梗塞の前兆が治っても油断は禁物!早急の受診が大切 前兆が治まった場合でも、再発リスクは否定できません。「脳梗塞の前兆かもしれない」と感じた症状が軽くなっても、その後すぐに受診しましょう。 症状が消失した場合「一過性脳虚血性発作(TIA)」の可能性があります。TIAは一時的に脳への血流が滞り、短時間のみ脳梗塞の症状があらわれるものの、24時間以内に回復する状態です。 TIAは脳梗塞の前触れ症状ともいわれています。TIAが消失したとしても、その後脳梗塞に発展するリスクが高いため、早急の処置が必要です。 脳梗塞の前兆が治っても放置せず、速やかに受診して専門医の治療を受けましょう。 また、脳梗塞を含む脳卒中のセルフチェックについては以下の記事で詳しく解説しています。気になる方は合わせてご確認ください。 【今すぐできる】脳梗塞の予防方法3選 突然の肩こりを引き起こす脳梗塞は、日常生活でできる対策をすると未然に発症リスクを下げられます。 本章で紹介する方法を実践し、脳梗塞のリスクを減らしましょう。 1.減塩食を心がける 脳梗塞の予防には「減塩食」が欠かせません。 脳梗塞の大きな要因のひとつは「高血圧」です。塩分を摂りすぎると体内の水分のバランスや血管の負担が増えてしまい、血圧が上がり脳梗塞に発展するリスクがあります。そのため、日頃から塩分を控える食事を心がけることが大切です。 今すぐできる減塩食の対策には、以下の方法があります。 いつもの調味料を減塩タイプに切り替える 加工食品(ハムやソーセージなど)を避ける 揚げ物から蒸し料理・焼き料理へ調理方法を変更する また、厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」において、高血圧の重症化予防のために成人の塩分摂取量を、男女ともに1日6g未満に抑えることを推奨しています。(文献4) 減塩を心がけ、脳梗塞の予防に努めましょう。 2.積極的に魚を取り入れる 脳梗塞を予防するもう一つの食事のコツは、積極的に「魚」を取り入れることです。 魚に含まれるEPAやDHAは、悪玉コレステロールや中性脂肪を減らして血液をサラサラにする効果があります。そのため血栓がつくられるのを抑えるため、脳梗塞の予防につながるでしょう。 とくに以下のような「青魚」は魚類の中でもEPAやDHAを多く含むためおすすめです。 サバ サンマ イワシ 食生活に乱れがあった人は、魚を日々の食事に取り入れてみてください。 また、脳梗塞予防に避けるべき食品については、以下のコラムで詳しく解説しています。詳しく知りたい方は、あわせて参考にしてください。 3.筋トレと有酸素運動を定期的に行う 運動面で脳梗塞予防に効果的なのが、定期的に筋トレと有酸素運動を両方行うことです。 運動を定期的に取り入れることで、高血圧が改善したり血行が良くなったりします。そのため、脳梗塞予防にも効果的です。 また、筋トレと有酸素運動は以下のように得られる効果が異なります。両方取り入れるとより健康により効果をもたらすでしょう。 運動の種類 効果 運動例 筋トレ 基礎代謝量を増やして体脂肪を減らす スクワット 腕立て伏せ 懸垂 有酸素運動 心肺機能を向上させ血の巡りを改善する ジョギング 水泳 ウォーキング 脳梗塞のリスクを下げるためにも生活習慣に合った運動を無理のない範囲で取り入れてみてください。 まとめ|突然の肩こりは脳梗塞の前兆の可能性あり!放置せず早めに受診しよう 何気ない「突然の肩こり」は、脳梗塞の前兆である可能性が否定できません。軽視せずにいつもの肩こりと違いがないか観察して適切な対策をとることが大切です。 とくに麻痺や言語障害など脳梗塞の代表的な症状と一緒にあわらわれた場合は、早急に医療機関を受診しましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による脳梗塞の後遺症改善・再発予防治療を行っています。 メール相談またはオンラインカウンセリングにて無料相談を受け付けておりますので、気になる症状が出ている方や脳梗塞の後遺症にお悩みの方はぜひ当院までご相談ください。 脳梗塞の前兆についてよくある質問 肩こりはくも膜下出血の前兆ですか? 突然の肩こりは、くも膜下出血の前兆の可能性もあります。 突然の肩こりや首の後ろの痛みを伴う場合は、血管が破裂しかけている可能性も否定できないため注意が必要です。違和感を感じた場合は、迅速に受診しましょう。 くも膜下出血の原因と症状についてより詳しく知りたい方は、以下のコラムを参考にしてください。 軽い脳梗塞の前兆はどのような症状ですか? 軽い脳梗塞の前兆の一例は、以下のとおりです。 片側の手足に力が入らない 言葉がスラスラと出てこない 視界の一部が見えにくい 脳梗塞の前兆が軽度だったり一時的なものであると見過ごされるケースもありますが、のちに脳梗塞を発症するリスクが高まります。 予後が大きく変わるため放置せず、早めに受診して適切な治療を受けましょう。 参考文献 (文献1) 弘中 康雄,西村 文彦 ほか「椎骨動脈解離に対する外科治療 ─再出血予防と穿通枝温存を目指した microneurosurgery─」脳卒中の外科(44)」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/scs/44/1/44_31/_pdf (文献2) MSDマニュアル「脳の機能障害の概要」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/09-%E8%84%B3-%E8%84%8A%E9%AB%84-%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%84%B3%E3%81%AE%E6%A9%9F%E8%83%BD%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E8%84%B3%E3%81%AE%E6%A9%9F%E8%83%BD%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81 (文献3) 川手信行,中島卓也「脳卒中歩行障害の総論|日本義肢装具学会誌 2022(38,3)」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspo/38/3/38_190/_pdf/-char/ja (文献4) 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
2025.02.07 -
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健康のために振動(ブルブル)マシンを使用してみたいものの、脳に良くないとの情報を耳にして不安になる方も多いでしょう。過去に脳梗塞になったことがあり、後遺症がなく過ごせている方も心配かもしれません。 体のために運動をしたいと思いつつも、振動(ブルブル)マシンで脳梗塞を再発させてしまったら本末転倒ですよね。 振動(ブルブル)マシンは脳に直接悪影響を与えるわけではないため、脳梗塞後の方も使用可能です。ただし、血行改善により血の塊が脳血管に詰まる恐れがあるため、一度医師に相談してから使用を開始しましょう。 本記事では、脳梗塞になったことのある方へ向けて、振動(ブルブル)マシンを使用する場合の注意点を中心に解説します。記事の内容を参考に、振動マシンを安全に活用し、健康的な体を目指してください。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による脳梗塞の再発予防の治療を行っております。 「メール相談」または「オンラインカウンセリング」にて無料カウンセリングを受付中です。気になる方はぜひ当院までご連絡ください。 振動(ブルブル)マシンが脳梗塞に与える直接的なリスクは少ない 振動(ブルブル)マシンは、脳に直接的な悪影響は及ぼしません。運動したときと同様に血流を改善する作用が期待できるため、健康に良い効果をもたらすでしょう。 ただしすでに血栓ができている状態で振動(ブルブル)マシンを使用すると、血栓が脳まで流れ、脳梗塞を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。 また、以下のような初期症状が出た場合はすぐに使用を中止し、医師に相談してください。 片側の手足の麻痺 ろれつが回らない 歩けない 強いめまい また、振動(ブルブル)マシンを使ってみたいものの、脳梗塞の再発に不安がある場合は医師に相談したうえで適切に使いましょう。 振動(ブルブル)マシンの使用を注意すべき人 脳梗塞後の方に使用はできるものの、以下に該当する人は振動(ブルブル)マシンを使用する際に注意が必要です。 骨の病気の人 高血圧の人 乗り物酔いをしやすい人 本章を参考に、ご自身が当てはまっていないか確認してからマシンを使用しましょう。 1.骨の病気の人 骨の病気を治療している人は、専門医に相談のうえで使用しましょう。 とくに骨粗鬆症の方は、健常人より骨が脆くなっている状態です。振動マシンが骨密度に良い効果をもたらしたとの報告があるものの、振動の強度が大きすぎると骨折リスクが高まるため、注意が必要です。(文献1) 最初から高振動で使用せず、低振動かつ短時間でマシンを使って様子を見ましょう。 また、骨粗しょう症の治療や予防については下記のコラムにて詳しく解説しています。気になる方はあわせて参考にしてください。 2.血圧が高い人 血圧が高いと指摘された方、あるいは高血圧の治療中の方も注意が必要です。 振動(ブルブル)マシンを使用すると、振動による筋肉への刺激で血流が促進されます。これにより、通常よりも血流が速くなる可能性があります。 健康に良い効果をもたらす一方で、突然血圧が上がることもあるため注意が必要です。 ただし、適切な振動(ブルブル)マシンの使用や運動が高血圧を急激に悪化させるわけではありません。適度な使用であれば血圧への影響が小さいため、正しい頻度と時間を守ることが大切です。 高血圧の予防や改善に効果的な食事・運動については以下のコラムにて詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。 3.乗り物酔いをしやすい人 普段から乗り物酔いをしやすい人も、振動(ブルブル)マシンの連用に注意が必要です。 人は耳にある三半規管により振動をキャッチし、平衡感覚を保つ役割があります。しかし、過剰に揺れを感じると脳へ渡す情報量が過多になり、乗り物酔いの症状があらわれます。 以下のような乗り物酔いの症状があらわれたら、振動(ブルブル)マシンの使用を控えゆっくり休みましょう。(文献2) めまい 嘔吐(吐き気) 蒼白 自動車や船などと同じように、振動(ブルブル)マシンでも乗り物酔いの症状があらわれる可能性があります。自覚のある方は慎重に使用を検討しましょう。 振動(ブルブル)マシンを安全に使用するための注意点 振動(ブルブル)マシンを使用する際の注意点は、以下の3つです。 振動が弱いモードから使用する 長時間の使用は避ける 説明書を確認してから使用する 本章を参考に、適切に振動(ブルブル)マシンを使用して思わぬ事故を防ぎましょう。 1.振動が弱いモードから使用する 初めて振動(ブルブル)マシンを使用する際は、低振動のモードから始め、徐々に負荷を上げていきましょう。 使い始めは弱い振動でも、強く感じる場合があります。突然強い振動で機械を使用すると思わぬけがや体調悪化につながるため、注意が必要です。 転倒が不安な場合は手すりを掴むか、誰かのサポートを受けると安心でしょう。 2.長くても1日1時間までの使用にする 振動(ブルブル)マシンの長時間にわたる使用は、体調不良や血栓リスクを高めます。1日の合計使用時間は1時間以内に控え、短時間ずつ分けて利用しましょう。 過度な長時間の使用で消費カロリーは多くても、乗り物酔いや転倒のリスクが考えられます。 機械の使用で症状が出ないか不安な方は、最初は1日10〜20分程度にとどめておくと安心です。 3.説明書を確認してから使用する 機種によって使用方法や振動の強度、推奨される使用時間が異なる場合があります。説明書をよく確認してから振動(ブルブル)マシンを使用しましょう。 妊婦や高齢者一人きりでの使用など使用が推奨されない機種もあります。誤って使用すると思わぬ体調不良を招く危険性があるため注意が必要です。 説明書はインターネットでも閲覧できる可能性があります。自分が使用できるか不安な方は、購入の前に調べてから検討すると良いでしょう。 まとめ|脳梗塞と振動(ブルブル)マシンの関係性 今回は、振動(ブルブル)マシンと脳梗塞のリスクについて解説しました。振動により脳に直接的なダメージはないものの、血流の変化により血栓が脳血管まで運ばれるリスクがあります。 また、誤った使用は体調悪化や事故の危険性を高めるため、適正使用を心がけましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、人体にある幹細胞を利用し、脳梗塞の再発予防や後遺症の治療を行っております。 無料で「メール相談」または「オンラインカウンセリング」も受付中です。気になる方はぜひ当院までご相談ください。 脳梗塞の振動(ブルブル)マシンについてよくある質問 振動マシーンは血栓予防に効果的ですか? 振動マシーンで血流を改善するため、血栓予防に効果的です。しかし、既に形成された血の塊がある場合、脳血管に届き血流が滞るリスクもあります。 過去に脳梗塞のような血栓が関連する病気にかかったことのある方は、使用する前に医師に相談してください。 脳梗塞になりやすい人の特徴と予防について詳しく知りたい方は、以下のコラムを参考にしてください。 振動(ブルブル)マシンは危険ですか? 適切に使用すると、マシンが体に悪影響を及ぼす可能性は少ないです。危険性が高くないとはいえ、個人の体質によっては体調不良を招くため注意が必要です。 乗り物酔いの症状が出る場合や、血行促進により血圧が一時的に上がるリスクが考えられます。 使用前に自身の持病や体調をチェックし、問題ないことを確認してから使用しましょう。 参考文献 (文献1) Abeer M ElDeeb,Amr A Abdel-Aziem「Effect of Whole-Body Vibration Exercise on Power Profile and Bone Mineral Density in Postmenopausal Women With Osteoporosis|A Randomized Controlled Trial,43(4)」 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32868028/ (文献2) MSDマニュアル プロフェッショナル版.「動揺病」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/22-%E5%A4%96%E5%82%B7%E3%81%A8%E4%B8%AD%E6%AF%92/%E5%8B%95%E6%8F%BA%E7%97%85/%E5%8B%95%E6%8F%BA%E7%97%85
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BAD(脳梗塞)ってなんだろう? 一般的な脳梗塞と何が違うのかな? この記事を読んでいるあなたは、BAD(脳梗塞)という耳慣れない病気を聞き、とまどっているのではないでしょうか。 「今後どうなるのか知りたい」と思っているかもしれません。 BAD(脳梗塞)はラクナ梗塞の特徴を持ちながら、アテローム性病変が原因で起こる、近年注目されているタイプの脳梗塞です。 本記事では、BAD(脳梗塞)の症状やラクナ梗塞との違い、予後について詳しく説明します。記事を最後まで読めば、病気について一通りの知識が得られ、今度の見通しを立てやすくなるでしょう。 BADとは「脳の細い血管の分岐部が詰まり進行しやすい脳梗塞」 BADとは、「Branch atheromatous disease」の頭文字を取ったもので、脳梗塞の一種です。コレステロールや脂などが溜まってできた「アテロームプラーク」と呼ばれるこぶが、脳の血管が詰まるために起こります。(文献1) BAD(脳梗塞)がよく起こる場所は、脳の主幹動脈からの穿通枝分岐部(太い血管から小さな枝状の血管がわかれる部分)です。英語をそのまま日本語に直すと「分岐アテローム性疾患」となりますが、日本語での病名が付けられていないため「ビーエーディー」と呼ばれています。 また、BAD(脳梗塞)は、脳梗塞を含む「急性虚血性脳卒中」全体の約10〜15%を占めるという報告があります。(文献2) 当院「リペアセルクリニック」では、BAD(脳梗塞)後の治療として再生医療(幹細胞治療)をおこなっています。壊れた脳細胞を幹細胞治療で修復し、後遺症の回復やリハビリ効果の向上が期待できます。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」から気軽にお問い合わせください。 BAD(脳梗塞)の症状 BADであらわれる症状の多くは、脳の細い血管が詰まって起こる「ラクナ梗塞」と同じです。代表的な症状を、以下に紹介します。(文献3) 構音障害:ことばの障害 感覚障害:感覚の鈍さやしびれ 運動片麻痺:片方の手足に力が入らなくなる しかし、BAD(脳梗塞)の最大の特徴は、運動片麻痺が進行性に悪化しやすいことです。数日間は、脳梗塞が拡大したり麻痺が進行したりしやすく、後遺症が出やすい傾向もあります。 また、初期症状としてTIA(一過性脳虚血発作)が起こるケースもあります。 BAD(脳梗塞)の原因 BAD(脳梗塞)の原因は、動脈硬化の過程で血管内にできた「アテロームプラーク」です。 アテロームプラークとは、血管の膜に血液中の悪玉コレステロールが入り込んでできたものです。血管を細くして脳への酸素供給を妨げたり、破裂して血小板による血栓生成を引き起こし、脳の血管を詰まらせたりします。 アテロームプラークの危険因子は、以下のとおりです。(文献1) 年齢 性別 喫煙 高血圧 糖尿病 脂質異常症 これらの危険因子を減らすためには、生活習慣の改善が重要です。 具体的には、塩分を控える、運動や食事に気を付けて肥満を防ぐなどが有効です。アテロームプラークを作りにくい生活を心がけ、BAD(脳梗塞)の予防につとめましょう。 脳梗塞の原因については、以下の記事で詳しく説明しています。 BAD(脳梗塞)とラクナ梗塞との違い BAD(脳梗塞)とラクナ梗塞は症状が似ているものの、梗塞する場所や原因が異なります。おもな違いは、以下のとおりです。(文献3)(文献4) BAD(脳梗塞) ラクナ梗塞 梗塞する場所 穿通枝の根元 1本の穿通枝 梗塞の範囲 やや広い 狭い おもな梗塞の原因 アテロームプラーク(動脈硬化も原因) 高血圧による動脈硬化 梗塞の大きさ 15mm以上 15mm未満 特徴 進行しやすいが、比較的再発は少ない 比較的再発しやすい 血管が詰まり脳細胞の機能が失われることは共通しますが、細かな内容が違うといえるでしょう。 BAD(脳梗塞)の診断基準 BAD(脳梗塞)かどうかは、MRIの画像で診断します。(文献5) 細かな基準は梗塞した部分によって異なり、以下とされています。 中大脳動脈(MCA)穿通枝:拡散強調画像で3または4以上の横断面を含む直径15 mm以上の梗塞があること 椎骨脳底動脈穿通枝:脳橋腹面に達し、分枝動脈の主幹動脈の狭窄や閉塞がないこと しかし、「病因不明」と分類されたり、状況によってはラクナ梗塞と診断されたりするケースもあります。 BAD(脳梗塞)の治療 BAD(脳梗塞)は、一般的な脳梗塞の治療法であるt-PA療法の効果が得にくいケースが多く、抗血小板薬がよく使用されます。また、複数の治療薬を併用するケースもあります。 治療効果があらわれにくいケースもあり、BAD(脳梗塞)へ有効性の高い治療法は、今後の研究が待たれる内容です。 一般的な脳梗塞の治療法については、以下の記事で詳しく紹介しています。 BAD(脳梗塞)の予後やリハビリ BAD(脳梗塞)は命を失うケースが少ない反面、運動機能に麻痺が残りやすい特徴があります。 また、病変部位別に神経症状が悪化する確率は以下であったという報告もされています。(文献6) 橋傍正中動脈領域:43.6% レンズ核線条体動脈領域: 30.1% 「運動機能に関する予後は、脳卒中患者における機能障害につかわれる評価(FMA)で予測できる」「高血圧の合併があると神経症状が悪化しやすい」などの報告もあります。 BAD(脳梗塞)は麻痺が残りやすいため、多くの場合で継続的なリハビリが必要となります。 後遺症の改善のために、リハビリを継続的におこないましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、BAD(脳梗塞)の予後改善やリハビリの効果アップに効果が期待できる再生医療(幹細胞治療)をおこなっています。 理学療法士、柔道整復師、鍼灸師、トレーナーによるチーム体制を取っており、再生医療と並行したリハビリも可能です。ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」から気軽にお問い合わせください。 まとめ|BAD(脳梗塞)を疑われる場合は受診しよう 本記事では、BAD(脳梗塞)の症状や予後・ラクナ梗塞との違いについて詳しく説明しました。 BAD(脳梗塞)は、ラクナ梗塞に似た症状を示す脳梗塞の一種です。梗塞の部位や大きさはラクナ梗塞と異なり、進行性に症状が悪化しやすい傾向があります。 後遺症が出た場合は、退院後も症状に応じたリハビリをおこないましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、BAD(脳梗塞)をはじめとする脳梗塞に対して再生医療(幹細胞治療)を提供しています。 再生医療(幹細胞治療)は、失われた脳細胞を修復し、後遺症の改善やリハビリ効果の向上が期待できる治療法です。 早くから治療を始めた方が効果を得やすいため、気になる場合は気軽にご相談ください。ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けております。 BAD(脳梗塞)に関するよくある質問 BAD(脳梗塞)の読み方は? BADは「ビーエーディー」と読むのが一般的です。悪いという英語の「Bad」ではないため、「バッド」という読みではありません。 BAD(脳梗塞)にならないためにできることは何? BAD(脳梗塞)を防ぐには、動脈硬化の原因となる以下の病気の予防・治療につとめることが大切です。 高血圧 糖尿病 脂質異常症 喫煙や肥満、塩分の摂りすぎや運動不足も動脈硬化のリスク因子です。毎日の生活のなかで、できることから少しずつ気を付けてみましょう。 脳梗塞を防ぐ方法については、以下の記事もぜひ参考にしてください。 参考文献 (文献1) 北川一夫,Branch Atheromatous Disease の病態と治療,脳卒中 31:550–553,2009https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/31/6/31_6_550/_pdf (文献2) Duan H, Yun HJ, Geng X, Ding Y. Branch atheromatous disease and treatment. Brain Circ. 2022 Dec 6;8(4):169-171. doi: 10.4103/bc.bc_56_22. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10167853/ (文献3) 山本康正,Branch atheromatous disease の概念・病態・治療,臨床神経 2014;54:289-297https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/054040289.pdf (文献4) 星野晴彦ら,Branch atheromatous disease における進行性脳梗塞の頻度と急性期転帰,脳卒中 33:37–44,2011https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/33/1/33_1_37/_pdf (文献5) Deguchi I, Takahashi S. Pathophysiology and Optimal Treatment of Intracranial Branch Atheromatous Disease. J Atheroscler Thromb. 2023 Jul 1;30(7):701-709. doi: 10.5551/jat.RV22003. Epub 2023 May 13.https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10322737/ (文献6) 徳田和宏ら,Branch Atheromatous Disease の急性期運動機能予後に関連する要因の検討,理学療法学 第 47 巻第 2 号https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/47/2/47_11643/_pdf
2025.02.07