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大腿骨頭壊死(難病)の種類と特発性大腿骨頭壊死3つの原因 大腿骨頭壊死という病名を聞いたことがあるでしょうか。「だいたいこっとうえし」と読み、股関節に起こる血流の障害が原因となる病気です。その中でも特発性と呼ばれるものは、難病に指定されています。 今回は、大腿骨頭壊死について、その種類や治療についても詳しく解説します。 特発性大腿骨頭壊死(ION)とは 特発性大腿骨頭壊死は英語でIdiopathic femoral head necrosisといい、IONと略されることが多いです。 大腿骨頭とは、大腿骨の一番頭側にある股関節を形成する大腿骨の一部分です。この一部の血流が低下して大腿骨頭に血が通わなくなり、骨組織が死んでしまったものを「大腿骨頭壊死」といいます。 外傷や放射線照射など、明らかな壊死の原因があるものを「症候性大腿骨頭壊死」といい、明らかな原因のないものを「特発性大腿骨頭壊死」といいます。 明らかに壊死の原因がある「症候性大腿骨頭壊死」 明らかな原因が不明なものを「特発性大腿骨頭壊死」 明らかな原因がある、症候性の大腿骨頭壊死は、大腿骨頸部骨折後に起こるものが最も多いです。骨折により血管が損傷され、大腿骨頭に血が通わなくなることが原因と考えられています。 そのほかは、股関節周囲に放射線照射した後や潜水夫などにおこる減圧症候群のひとつとして見られます。 症候性も特発性も、大腿骨頭に血流がなくなったことによって、骨が壊死します。その結果、体重を受ける骨である大腿骨頭が、徐々につぶれて変形することによって痛みを生じます。 特発性大腿骨頭壊死の3つの原因 特発性大腿骨頭壊死は、さらに3つに分類され、ステロイド治療歴があるものをステロイド性、アルコール多飲歴があるものをアルコール性、まったく原因のないものを狭義の特発性と呼びます。 ステロイド性 特発性大腿骨頭壊死(ステロイド治療歴) アルコール性 特発性大腿骨頭壊死(アルコール多飲歴) 狭義の特発性大腿骨頭壊死(原因不明) ステロイド投与歴やアルコール多飲歴が壊死発生に深く関与していることは間違いないですが、その機序は現在でも判明していません。 青年・壮年期に発症し、男性では40歳代、女性では30歳代にピークがあります。男性にやや多いと言われています。我が国では、年間2000人から3000人発症していると言われています。 大腿骨頭壊死の症状 では大腿骨頭壊死になると、どのような症状が起こるのでしょうか。 股関節の痛みには注意! 実は、壊死が起こっていても必ずしも症状が起こるわけではありません。発症当初は、自覚症状がないことが多いです。その後、体重がかかることによって壊死に至った部分がつぶれ、痛みをきたします。 発症する際は、股関節痛を自覚することが多く、階段を踏み外した時やバスのステップを下りた際など小さなストレスが股関節にかかった時に、突然痛みが生じる場合が多くみられます。このような痛みは、数週間で軽快し、いったんは痛みが落ち着くことが多いです。 ただし、痛みがなくなったからといって壊死が改善したわけではないため、再び股関節にストレスがかかった場合に疼痛が再燃する可能性があります。 大腿骨頭壊死の治療と予後 大腿骨頭壊死を発症してしまったら、気になるのは治療と予後についてです。 発症してしまったら 壊死部は荷重がかからなければ、数年で修復します。ただし、日常生活で股関節に体重をかけない生活をするのは難しく、徐々に壊死した部分が圧壊してしまいます。 壊死範囲が狭い場合や、体重がかからない部分の壊死ではすぐに手術はせず、日常生活での活動を制限しながら、経過観察を行います。痛みが強い場合や変形が進行している方では、壊死部に体重がかからないようにするための骨切り術や人工股関節置換術を行います。 放置するとどうなる? 痛みを我慢していると、どんどん股関節の変形が生じ、ひどい時には、下肢の長さの左右差がでてくる場合もあります。そうなっても人工関節の手術は可能ですが、手術の難易度が高くなったり、術後のリハビリが大変になったりと、放置してもいいことはありません。できるだけ早期に医師の診察を受け、治療介入を行いましょう。 大腿骨頭壊死についてよくあるQ&A Q:大腿骨頭壊死の診断には、どのような検査が必要ですか? すでに症状が出現している場合は、単純レントゲンでも、骨頭壊死の診断は可能ですが、壊死発症の超早期の場合は、変化がないこともあります。その際はMRIや骨シンチグラムなど詳しい検査を行うことで、特異的な所見を認めることがあります。 Q:難病申請と障害年金の申請は可能ですか? 特発性大腿骨頭壊死は、指定難病になっており、難病申請行うことができます。特発性大腿骨頭壊死と診断され、症状が一定の基準を満たす場合は、医療費の助成を受けることができます。患者様が、各都道府県や指定都市に申請します。 また、症状の程度や治療内容によっては、障害年金を受け取ることができます。どのくらい歩行などの日常生活に支障があるかによって、障害等級がきまります。 障害等級は1~3級があり、そのいずれかに当てはまる場合は障害年金の支給適応になります。人工関節などの手術を行った場合は、日常生活に戻れたとしても3級に認定される場合がありますので、特発性大腿骨頭壊死と診断された方は、申請を検討するのがよいでしょう。ただし、厚生年金保険料を納めていない場合は、3級相当の障害年金は支給されませんので、ご注意ください。 まとめ・大腿骨頭壊死(難病)の種類と特発性大腿骨頭壊死3つの原因 今回は大腿骨頭壊死について解説しました。一度発症してしまうと、治癒まで非常に時間がかかり、手術も必要となる可能性が高い疾患です。 ほかの病気でステロイドを使っている場合や、アルコールの多飲歴がある場合は、リスクが高くなりますので、少しでも気になる症状がある場合は、早めに整形外科を受診するようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 ▼以下もご覧になりませんか 大腿骨頭壊死に必要な検査や入院期間とは?医師が解説
2023.08.17 -
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橋出血(きょうしゅっけつ:英語名「pontine hemorrhage」)は、脳卒中の中でも、とくに生命予後の悪い疾患の1つです。 脳梗塞・脳出血・くも膜下出血など、脳の血管が詰まったり破れたりする病気を総称して「脳卒中」と呼びます。 「脳卒中の症状ではないから大丈夫」と安心し、症状の発見が遅れると、重症を患う恐れがあります。 脳卒中の1つ「橋出血」の重症例では、意識・呼吸障害、四肢麻痺などをきたし、急激な経過で死に至るケースもあるのです。 本記事では、橋出血の症状・原因や治療について詳しく解説をしていきます。 橋出血とは 橋出血とは脳出血の1つで、5〜10%が橋出血に該当するといわれています。 突然脳の血管が破裂する症状なので、橋出血が発症すると以下の症状が起こります。 意識障害が起きる 頭痛が続く 手足の動きや感覚が鈍い など 血栓や動脈硬化で起こる脳梗塞を含め、脳の病態は複数あるので、早急に医療機関で受診しましょう。 なお、橋出血の疑いがすでにある方はとくに、以下の記事で初期症状や診断方法などを詳しくまとめました。 予後についても解説しているので、ぜひあわせてご覧ください。 橋出血の「橋」は脳幹における構造物 橋出血が起こる「橋」とは、脳の一部分である「脳幹」の1つです。 上にある中脳、下にある延髄と共に「脳幹」の構成をしています。 脳幹には、以下4つの構造物があります。 神経伝達路 神経の中継(分岐地点) 自律神経反射中枢 脳幹網様体 それぞれ構造の役割とともに、橋出血による症状について見ていきましょう。 ①神経伝達路としての役割と橋出血の症状 脳幹には神経線維の束が通っており、以下の役割を果たしています。 ・大脳から運動神経の伝達 ・大脳へ感覚神経の伝達 ・脳幹の真後ろにある小脳との連絡経路 橋出血は神経の伝導路が障害されるため、運動麻痺や感覚障害が起こるのです。 運動麻痺は出血の部位にもよりますが、重症例では両方の手・足ともに動かなくなる四肢麻痺をきたすケースもあります。 四肢麻痺と顔の麻痺まで加わる特殊な形に「閉じ込め症候群」があります。 意識や感覚は保たれますが、まばたきと一部の目の動き以外の運動がすべてできません。 看護・介護を行う人とのコミュニケーションは、眼の動きのみで行うのです。 他にも橋出血が発症すると幾つかの運動失調が起こります。 以下の記事では橋出血による運動失調の種類を詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。 ②神経の分岐・中継地点の役割と橋出血の症状 脳幹には、脳から直接伸びる末梢神経である脳神経核をはじめ、神経回路の分岐点や中継地点になる複数の神経核(神経細胞体の塊)があります。 橋出血が発症する「橋」にも、以下4つの脳神経核があります。 三叉神経;主に顔面の感覚を伝える 外転神経;眼球の運動の一部を支配する 顔面神経;表情筋など顔面の運動に関わる 内耳神経;聴覚や平衡感覚を司る 橋出血で障害を受けた際の症状は以下の通りです。 ・顔の感覚や運動の障害 ・眼球運動の障害 ・聴力障害 とくに三叉神経や顔面神経は舌の動きや感覚などにも関わる神経です。 橋出血が起こると飲み込み障害とも呼ばれる「嚥下(えんげ)障害」も起こる可能性があるので注意しましょう。 ③自律神経中枢の役割と橋出血の症状 自律神経は生命維持の上で必要な動作を調整する神経です。 意識せずとも呼吸をし、心拍数をコントロールしています。 明るさに応じて瞳孔の大きさを調節しているように、自律神経は、脳幹に中枢があるのです。 橋には呼吸の中枢があるため、橋出血の患者様は呼吸障害が多くみられます。 橋出血では瞳孔の異常も多く、瞳孔の縮小や瞳孔を開く交感神経の障害もあるためです。 ④脳幹網様体の役割と橋出血の症状 脳幹の中心から背中側には「網様体」と呼ばれる神経線維の束と神経細胞体が合わさった構造物があります。 網様体の役割は主に以下3つです。 脳幹内の自律神経中枢と連絡し、生命維持機能を果たす 筋肉の緊張をコントロールする 大脳へ刺激を与えて意識を保つ 重症の橋出血だけでなく、網様体の障害でも呼吸・循環障害をきたします。 網様体の損傷により、「意識障害」の症例もあり、重症例では急激な経過で昏睡状態に陥っているケースもあるため、注意が必要です。 橋の網様体には眼球の運動の中枢もあるので、出血部位や程度により、さまざまな眼の動きの異常が認められます。 代表的な症例は、眼の動きがまったくできず、真ん中で固定される眼球の正中固定位が挙げられます。 眼球が真下に急に動き、ゆっくり真ん中に戻ってくる「眼球浮き運動」が認められるケースもあるので注意しましょう。 なお、橋出血を含め脳卒中は、手術しなくても治療できる時代です。 詳しくは以下のページをご覧ください。 橋出血が起こる2つの原因とそれぞれの治療法 橋出血の原因として、高血圧と血管奇形の2つが挙げられます。 原因により治療法が異なるので、それぞれ解説していきます。 高血圧で起こる橋出血と治療 橋出血の最大の原因は高血圧です。 橋への栄養動脈が、高い圧により破綻してしまいます。 橋は小さい中に重要な構造物が詰まっているところなので、出血が一気に広がり損傷が起こると、短時間で致命的になるので要注意です。 損傷を受けた脳幹の回復は難しく、手術は基本的には行いません。 可能な限り血圧を下げ、呼吸や循環などの生命維持のサポートをするのが治療の中心です。 血管奇形で起こる橋出血と治療 高血圧性の橋出血よりも若い方に多いのが、脳の血管奇形(赤あざ)によるものです。 代表的なものに「海綿状血管腫」と呼ばれる血管の塊があります。 生まれつき静脈の成分が拡張した場合によくみられ、発症場所や大きさなどは人によって異なります。 海綿状血管腫を持っている一部の患者様は、局所的な出血を起こすケースが大半です。 出血は少量で、重篤になりにくい反面、何度も繰り返すリスクがあります。 出血が落ち着いているときに手術が考慮されるケースもあるので注意してください。 橋出血についてよくあるQ&A Q , 橋出血の検査はどのようなものがありますか? A , 橋出血に限らず疑わしい症状があれば、CT撮影をします。 脳は灰色に映りますが、出血がある部分は白くなります。 なお、血管奇形の診断にはMRI も有用です。 近年では脳ドックなどにより症状がないまま発見されるものも多くあります。 Q , 海綿状血管腫は必ず手術が必要ですか? A , 症状のない海綿状血管腫が出血を起こすのは、年間で1,000人中4〜6人程度です。 手術の合併症リスクの方が高く、全員におすすめできません。 ただし、一度出血を起こすと、2年以内の再出血リスクが高くなります。手術のメリットとリスクを比較しつつ、手術ができない場合は、放射線治療が考慮されるケースもあります。 橋出血の後遺症や予後について、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。 まとめ・橋出血の症状を理解して適切に治療しよう! 橋出血は、重症例では命にかかわりかねない恐ろしい病気の1つです。 「橋」と呼ばれる部位でもあるため、神経伝達や自律神経においての重要な役割を果たしています。 高血圧は重症の橋出血のリスクになるため、しっかりと治療を受けるのがおすすめです。 症状を見つけるタイミングも当然早い方が良いので、少しでも不安に感じた方は医療機関でのカウンセリングを検討しましょう。 ▼以下もご参考下さい <参考文献> 東登志夫. 日本臨牀. 72 (増刊号7): 364-368, 2014. 古谷一英. 日本臨牀. 72 (増刊号7): 369-372, 2014. 茂木陽介, 川俣貴一. 日本臨牀. 80(増刊号2): 320-324, 2022. 医学書院 標準解剖学 第1版 メディックメディア 病気がみえるvol7. 脳・神経 第1版 中外医学社 イラスト解剖学 第7版 脳卒中診療ガイドライン2021
2023.08.14 -
- 頭部、その他疾患
- 頭部
もやもや病の後遺症による性格変化とは?高次機能障害について解説 もやもや病は、脳の重要な動脈が狭くなり、そのかわりにバイパスとなる細い血管が発達することにより起こる病気です。 細い血管は検査で見ると「もやもやと煙が立ち上るよう」に見え、この所見が診断基準にも必須の項目となっています。この「もやもや血管」が収縮してしまうと、脳に十分な血液が行き届かなくなります。その結果、意識障害や脱力、てんかん、頭痛などの症状を発作的に繰り返すのです。 また、細い血管は詰まったり破れたりしやすいため、脳卒中(脳梗塞や脳出血、くも膜下出血)を起こしてしまうこともあります。脳卒中の後遺症というと、麻痺や感覚障害が思い浮かぶかもしれません。しかし、一部の患者さんでは、麻痺などがなくても、生活や仕事に差し障る後遺症を残すことがあります。それが「高次脳機能障害」です。 本記事では、「もやもや病の後遺症」としての高次脳機能障害について、どのようなことが起こるのか具体例を交えて解説していきます。 高次脳機能障害とは? 「高次脳機能」とは、さまざまな情報をもとに、高度で複雑な処理をする脳の機能のことです。 大脳をその機能別に見てみると、運動や感覚などを司るはっきりとした機能がある「一次野」と、それ以外の「連合野」に区分されます。連合野は特に人間で大きく発達した部分で、高次脳機能に関わるところです。情報をもとに考えたり、感じたり、何かの行動に移したりということを可能にしています。 この連合野がなんらかの原因で傷つくとどうなるでしょう。複雑な処理の過程で支障が起こります。例えば、記憶や行動、物事を実行する能力の障害など、損傷部位に応じて多彩な症状をきたします。その結果、日常生活や社会生活を送る上で制約を受けている状態が「高次脳機能障害」です。 もやもや病と高次脳機能障害 もやもや病は、もやもや血管が詰まったり破れたりすることで、脳卒中をきたします。それだけでなく、明らかな脳卒中のエピソードがなくても、血液の巡りが悪いため、脳にダメージが蓄積されていくリスクもあるのです。このようにして、脳の連合野にダメージを受けると、高次脳機能障害を認めます。 どのような症状が出るかは、障害部位によって変わってきますが、もやもや病では「前頭葉の障害」が起こることが多いです。 前頭葉の働きと高次脳機能障害 もやもや病で障害を受けやすい前頭葉は、大脳の前の部分に位置します。前頭葉にある、「前頭連合野」は、ヒトで特に発達している部分です。本能や激しい感情の動きをコントロールして、思考力・創造性・社会性を発揮するための機能を果たす役割があります。単に欲求に従うのではなく、状況を見極めて判断し、意味のある行動を起こすという「人間らしさ」に関わる場所なのです。 具体的に前頭連合野の障害による高次脳機能障害の症状を見ていきましょう。 〈前頭連合野の障害による高次脳機能障害の例〉 記憶障害 作業記憶(ワーキングメモリー)が障害されます。 作業記憶の障害は、何かを行うときに一時的においておく「記憶の引き出し」が使えません。 聞いたことをすぐ忘れて何度も聞き返す。 買い物を頼まれても何を買えばいいか忘れてしまう。 注意障害 注意障害があると、気が散りやすくなり、一つの物事に集中できません。 ちょっとした周りの変化が起こるとそちらに気をとられ、動作が止まってしまいます。 社会的行動障害 自分の感情をうまくコントロールできなくなります 突然かっとなり怒りだすなど感情の振れ幅が大きくなります。 ギャンブルにのめり込みやすくなるなど、欲求がうまく抑えられません。 逆に、人や物事に興味がなく、自発性がなくなることもあり社会生活上で問題になります。 遂行機能障害 物事を順序立てて行うことができなくなります。 段取りが悪くなり、優先順位をつけることができなくなります。 臨機応変に行動することができず、ちょっとしたトラブルにも対応することができません。 このように、前頭葉の障害による高次脳機能障害が起こると、無責任で怒りっぽくなったり、意欲や興味がなくなったりと、まるで性格変化をしたようになってしまいます。 もやもや病による高次機能障害についてよくあるQ & A Q1.高次脳機能障害は完治しますか? 脳に傷がある状態なので、完全に治すことは難しいです。しかし、得意なこと、苦手なことを考えた上で工夫をしていくことにより、より生活をしやすいようにしていくことはできます。根気強いリハビリが大切です。 Q2.脳卒中による高次脳機能障害があるとき、入院期間はどのくらいになりますか? 脳卒中では一般的に、発症直後の急性期を過ぎたあと、回復期リハビリテーション病棟というところに移ってリハビリを続ける方が多いです。回復期リハ病棟では、脳血管障害の入院期間は一般的に150日となっています。ただし、高次脳機能障害の合併があると、180日まで入院が可能です。 この期間全部を使っての入院が必要というわけではありません。しかし、高次脳機能障害は麻痺などと違って一見して分かりづらく、周りの理解が得られにくいことが多いです。社会復帰のためのリハビリや環境整備のためにしっかり時間をかけていくことが必要です。 まとめ・もやもや病の後遺症、性格変化とは?高次機能障害について もやもや病による後遺症のうち、高次脳機能障害は外見では分かりにくいものです。 しかし、社会生活を送る上で大きな支障をきたしてしまいます。苦手なことをカバーするための訓練を行うとともに、周囲が理解し、支援を続けていくことが必要です。当事者や家族のみで悩まず、。 もやもや病の方で上記のような症状があり、日常生活に困っているときは、まずは地域の高次脳機能障害支援のための拠点機関に相談してみる必要があります。 リハビリ科や精神科の病院、地域の保健福祉センターなどが該当します。地域の自治体のホームページなどでも情報提供されていることが多いため、一度専門機関で相談をされることをおすすめします。この記事がご参考になれば幸いです。 ▼もやもや病の後遺症については以下でも解説しています もやもや病による後遺症|社会復帰や運転への影響について 〈参考文献〉 中川原. BRAIN NURSING. 31(11), 32-34, 2015. 冨永ら.脳卒中の外科. 46 (1), 1-24, 2018. 中村. 日本臨牀 80(増刊号1), 386-390, 2022. 平岡. 日本臨牀 80(増刊号1), 592-596, 2022 難病情報センター.病気の解説(一般利用者向け) もやもや病(指定難病22).https://www.nanbyou.or.jp/entry/47.最終閲覧2023年7月3日. 難病情報センター.診断・治療指針(医療従事者向け) もやもや病(指定難病22).https://www.nanbyou.or.jp/entry/209.最終閲覧2023年7月3日 坂井. 標準解剖学第1版, 医学書院. 2017.
2023.08.10 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
もやもや病は遺伝するのか?家族性もやもや病、遺伝との関係 もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)は脳卒中を引き起こす脳血管の病気です。この病気は長きにわたって、原因不明の難病とされていました。しかし、一部では家族内で複数人のもやもや病患者さんがいることがわかっており、遺伝が関与する可能性が考えられています。 本記事では、家族性に発症するもやもや病について解説していきます。 もやもや病とは もやもや病患者さんでは、内頸動脈終末部という脳の主要な血管が徐々に狭窄を起こします。足りない血液を補うため、代わりに細い血管が多く発達します。MRA(磁気共鳴血管撮影法)や脳血管造影などの画像の検査では、このような細い血管がもやもやとした煙のように描出され、これがもやもや病という名前の由来です。 細い「もやもや血管」のせいで脳は血流不足を起こしやすくなります。脳に血が回らなくなる「脳虚血」の状態になると、再発性の脱力や手足の痺れ、てんかんなどを認めます。また、もやもや血管は高い血圧によるストレスで破れやすいです。そのため、一部の患者さんでは脳出血を起こします。 もやもや病はどんな人に発症する? もやもや病の患者さんは、人口10万人につき3〜10.5人ほどいるとされています。女性患者さんが男性の約2倍ほどです。 小児での発症 発症する年齢は最多が小児期で、5〜10歳頃が多いとされています。 子供の場合は、脳虚血発作を認めることが多いです。発作は、息を大きく早く吸ったり吐いたりする「過呼吸」により誘発されやすくなります。これは、二酸化炭素が減り、脳の血管が収縮しやすくなるためです。例えばハーモニカなどの楽器の演奏や、熱いラーメンをふーふーと冷ますことがリスクになります。また、痛み止めの効かない頭痛や、てんかんを起こすこともあります。 成人での発症 小児期以外で発症が多いのは、30〜40歳の成人です。 大人の場合は、半数は脳虚血の症状をきたしますが、残りの半分程度は脳出血で発症すると言われています。また、MRIの普及により、症状がなくても、脳ドックなどの機会に血管の異常が判明する患者さんも増えてきています。 家族性もやもや病 実は、もやもや病の10〜20%の方で、家族内の発症が認められているのです。そして、家族性もやもや病の一部では、「表現促進現象」を認めることがあります。表現促進現象とは、次の世代にうつるにつれて、発症年齢が早くなり、また、より重症化しやすくなることです。 もやもや病と関連した遺伝子とは? もやもや病は、発症に人種差があることもわかっています。この病気が発見されたのは日本でした。その後の報告でも、東アジアでは他の地域よりも多いことが判明しています。 家族内での発症や人種での違いがあることから、もやもや病の発症には、遺伝的な因子があるのではないかと考えられていました。 そして、近年、「RF213」という遺伝子に「遺伝子多型」があると、もやもや病が発症しやすくなるということが判明しています。 遺伝子多型 私たちの体を構成する細胞は23組46本の遺伝子を持っています。遺伝情報を構成するDNAは、塩基・リン酸・糖という3つの部品からなる「ヌクレオチド」が繋がってできたものです。このうち、塩基にはアデニン(A)・チミン(T)・グアニン(G)・シトシン(C)の4種類があります。4種類の塩基の並びで遺伝情報が決まっています。 遺伝情報は、ヒト同士であればほとんどの部分は同一です。しかし、わずかに塩基配列のバリエーションが違う部分があります。この塩基配列の違いを遺伝子多型と呼びます。遺伝子多型があっても、個人間の差がないことも多いです。しかし、一部の遺伝子多型は、個人の特徴を決定づける肌や髪の色の違い、さまざまな体質の違いなどとなって現れます。 RF213遺伝子多型p.R4810K RF213遺伝子は、23ペアのうち17番目の染色体にある遺伝子です。もやもや病の日本人患者さんのRF213遺伝子を調べると、8〜9割もの患者さんにおいて「p .R4810K」という遺伝子多型があることがわかりました。このことから、RNF213遺伝子多型が、もやもや病の発症と大きく関わっていることが推察されます。 しかし、このp .R4810Kという遺伝子多型は、健常な日本人の1〜2%も持っていることがわかっています。つまり、RF213遺伝子多型を持っている人のごく一部がもやもや病を発症しているに過ぎないのです。 現在では、もやもや病の発症には、このような遺伝的な背景に加えて、何かしらのきっかけがあって起こるのではないかと考えられています。 もやもや病の遺伝についてよくあるQ&A Q , もやもや病の患者がいる家系なので子供の発症が心配です。画像検査は何歳からできますか? A ,結論から言うと、何歳から可能かは、お子さんの状況や、病院によって異なってきます。 外来で検査が可能なのはMRAという検査です。磁気を使って脳や血管の状態を調べるため、体への負担は大きくありません。ただし、じっとしていないと撮影は難しいです。狭い機械に入らなければいけないため怖がってしまう子もいます。場合によっては鎮静剤を使って眠った状態で検査をしないといけません。 その一方で、お子さんの場合は、早めに適切な対処をすると予後も良いことがわかっています。検査するかどうか、いつするのかについては病院に相談されることをお勧めします。 Q , もやもや病が心配なので、遺伝子検査はできますか? A , 残念ながら現時点で、RNF213遺伝子の多型を通常の診療で検査することはできません。そもそも、この遺伝子多型を持っているから発症するのではなく、あくまで「もやもや病を起こしやすい」遺伝子多型です。診断は遺伝子の検査ではなく、血管の画像の検査を中心に行います。 まとめ・もやもや病は遺伝するのか?家族性もやもや病、遺伝との関係 もやもや病は一部で家族性に発症を認めます。発症と関連した遺伝子も見つかっています。しかし、絶対に遺伝するわけではなく、発症についてはまだわかっていないことも多い病気です。過剰に遺伝を心配し過ぎる必要はありませんが、気になることは専門医としっかり相談をしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 〈参考文献〉 中川原. Brain Nursing. 31(11): 1064-1066, 2015. Koganebuchi K, et al. Ann Hum Genet. 85(5):166-177, 2021. 公益財団法人循環器病研究振興財団 知っておきたい循環器病あれこれ117 もやもや病…ここまできた診断・治療 難病情報センター.病気の解説(一般利用者向け) もやもや病(指定難病22).https://www.nanbyou.or.jp/entry/47.最終閲覧2023年7月3日. 難病情報センター.診断・治療指針(医療従事者向け) もやもや病(指定難病22).https://www.nanbyou.or.jp/entry/209.最終閲覧2023年7月3日 小児慢性特定疾病情報センター 対象疾病 39.もやもや病. https://www.shouman.jp/disease/details/11_15_039/. 最終閲覧2023年7月5日 ▼モヤモヤ病の原因など、以下のページも参考にされませんか もやもや病と言われたら|原因・治療法について医師が解説
2023.08.07 -
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橋出血の後遺症と予後予測|回復の見通しについて医師が解説 橋出血は非常に致死率の高い病気です。 かつて脳卒中は、日本人の死因の1位でした。しかし、医療技術が進歩するにつれて、脳卒中による死者数は徐々に減少しています。2022年においては死因の第4位でした。 橋出血は、その中でもいまだに生存率が低いとされており、発症すると半分近くの方が亡くなるという報告もあります。 本記事では、致命的になることの多い橋出血の予後の予測、また後遺症の回復について、解説をしていきます。 橋出血が重症化しやすいのはなぜか? 橋出血の最大の原因は高血圧です。高い血圧がかかり続けると、血管が急に破れてしまうことがあります。 血管をホース、血圧を水の勢いと考えてみてください。高血圧による脳出血は、勢いよく水を出しているホースが途中で破れてしまった状態と同じです。破れたところから、水はさらに激しく飛び散るでしょう。 脳は柔らかい組織で、一度出血すると簡単に止血できず、機能が急激に失われていきます。橋は意識や生命維持のための機能のコントロールを行う場所です。そのため、橋出血は死に直結することも少なくありません。 橋出血の生命予後に関わる症状とは? 重症の橋出血で起こる症状には次のようなものがあります。これらの症状は、橋出血において生命予後不良であることを示すものです。 発症早期の高度の意識障害 橋を含む脳幹は大脳へ刺激を与え、意識を保ちます。橋出血によりその刺激ができなくなると、昏睡状態など、高度の意識障害を認めます。 四肢麻痺 橋は大脳からの運動の伝達経路です。大脳の損傷でも麻痺は起こりますが、基本的には片麻痺(左右どちらかのみの麻痺)です。橋の広い範囲の出血では、運動神経が一気に障害されるので、四肢麻痺を呈します。 除脳硬直 意識障害下に、痛み刺激を加えると、手足が強く緊張して伸びたような姿勢になります。橋を含む脳幹のダメージにより、筋肉の緊張をコントロールすることができなくなるからです。 眼球正中位固定 橋には眼球の動きを司る部分があります。この障害により、目が真ん中から動かなくなります。 対光反射の消失 対光反射とは、瞳孔に光を当てた時、瞳孔の大きさが小さくなることです。この反射の中枢の「動眼神経」は橋の上の中脳にあります。橋出血の範囲が広いと中脳まで影響がおよび、対光反射は消失します。 失調性呼吸 脳幹の呼吸中枢が障害されるために起こる不規則な呼吸です。リズムも、一回ごとの呼吸の量も、バラバラで、呼吸が止まる直前の状態と考えられます。 中枢性過高熱 体温の調節中枢は脳幹のすぐ上にある間脳の視床下部というところです。広範な橋出血により、間脳までダメージが広がると、高い熱が出ます。 後遺症の治療について 重症にならず命が助かっても、出血で脳が傷つくと、後遺症が残ってしまうケースもあります。 例えば、神経の伝達経路の損傷による片麻痺、感覚障害などです。 橋は小脳という動作のコントロールに重要な部分と密接に関連しているため、運動失調によりふらついたり、動作がスムーズにいかなくなったりする方もいます。 また、物を飲み込む力が弱くなる嚥下障害も、頻度の高い後遺症です。飲み込みに関わる神経の多くは、橋をはじめとする脳幹から、顔・頸などに直接のびているからです。 後遺症のために、すぐに自宅に帰ることができなくなる方も多くいらっしゃいます。そのような場合に行うのが、リハビリテーションです。 急性期(発症直後の体の状態が安定しない時期)からリハビリが始まりますが、それだけでは不充分なことも多いです。そのため、患者さんの多くは、急性期がすぎると回復期病院(病棟)に移動し、集中的にリハビリを受けることになります。 リハビリの種類 理学療法・作業療法・言語聴覚療法の3種類があります。 理学療法 作業療法 言語聴覚療法 理学療法は、基本的な動作能力の回復を目指すリハビリです。 作業療法は日常生活に必要な作業の訓練を行います。同じリハビリでも、理学療法は立つ・歩くなどの基本的な動作、作業療法は着替え・入浴など応用的な動作が主体です。それぞれ、理学療法士・作業療法士という専門のスタッフがいます。 言語聴覚療法の担当は、言語聴覚士というスタッフです。構音障害などコミュニケーションの障害に対してリハビリを行います。また、橋出血に多い嚥下障害へのアプローチも行います。 リハビリの目標と後遺症の回復の見通しについて リハビリの最終的な目標は、個人個人の後遺症の具合、また退院後の生活環境を踏まえて決定していきます。そして、機能予後、つまり後遺症の回復見通しを勘案しながら、リハビリテーション計画を考えます。 では、回復の見通しはどのように立てるのでしょうか。 脳卒中全般で、発症時の重症度、画像の所見、入院時の日常生活動作(ADL)など、初期の評価からの機能予測についての研究が複数行われています。 また、急性期の回復の具合から、最終的な回復の見通しを立てる方法も模索されています。その中で、最初の1ヶ月での回復具合が大きいほど、最終的に自立した生活につながりやすいことが示されているのです。状態が許せば、早いうちから積極的なリハビリを行なうことは、回復につなげるために非常に重要です。 麻痺が回復するのは発症後どのくらいまでか 一般的に麻痺の回復は、3〜6ヶ月程度までと言われています。そのため、発症して早いうちから、集中的にリハビリに取り組むことが重要です。 この期間を過ぎてしまっても、リハビリを続ける意味がないわけではありません。麻痺の無い側でうまく補ったり、補助具を使ったりする訓練ができます。 まとめ・橋出血の後遺症と予後予測|回復の見通しについて医師が解説 橋出血は現在の医療の進歩をもってしても、いまだに生命予後の悪い病気です。 また、後遺症も残りやすく、回復には時間がかかります。早いうちにリハビリに集中的に取り組むことで、麻痺などの後遺症が軽くなる可能性がありますので、諦めないことが大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 ▼以下もご参考ください 橋出血による運動失調の種類とリハビリプログラム 〈参考文献〉 奥田佳延 他. Neurosurg Emerg 13:63-71,2008. 木村紳一郎 他. 脳卒中の外科. 39: 262-266, 2011. 東登志夫. 日本臨牀. 72 (増刊号7): 364-368, 2014. 古谷一英. 日本臨牀. 72 (増刊号7): 369-372, 2014. 佐藤栄志. 日本臨牀. 72 (増刊号7): 373-375, 2014. 厚生労働省.令和4年(2022)人口動態統計月報年計の概況. 結果の概要. (閲覧2023年6月28日). 脳卒中診療ガイドライン2021
2023.08.03 -
- 大腿骨骨頭壊死
- 股関節
歩いていると、股関節に痛みを感じるようになってきた…… そんな人がインターネットで検索すると、「骨頭壊死」という単語を見かけることもあるでしょう。 「骨頭壊死」の文字をみて「骨が壊死したらどうなるの?」「どんな痛み?」と、怖くなっている人もいるかもしれません。 結論、骨頭壊死とは骨の一部が壊死する疾患で、針で刺されたような痛みを感じるのが特徴です。大腿骨や股関節に体重を乗せたときや動かしたときに痛むケースが多くあります。 本記事では骨頭壊死でどのような痛みが出るか、またどんなときに痛みを感じやすいかをまとめました。記事を最後まで読めば、骨頭壊死がどのような痛みなのかがわかり、自分の症状と照らし合わせて病院に行くべきか判断できるでしょう。 【結論】骨頭壊死になると「針で刺された」のような痛みを感じる 結論からいえば、骨頭壊死が起きると鋭い痛みを感じるようになります。これは骨頭にある骨軟骨が壊死し、痛みを感じる神経(痛みの受容体)が刺激されるためです。 この神経は「自由神経終末」と呼ばれる組織で、チクチクと鋭い痛みを発生させることが特徴と言われています。 そもそも骨頭壊死とは、関節を構成する骨頭への血流が途絶えることで、骨の一部が壊死する疾患です。 さまざまな病気や怪我が原因で血流が途絶えるといわれていますが、はっきりと原因がわからないことも多々あります。 原因が不明な骨頭壊死は「特発性骨壊死」と呼ばれていて、大腿骨(太ももの骨)に多い疾患です。 骨頭壊死は体重を乗せたときや関節運動で痛みを感じやすい 骨頭壊死が起きると、体重を乗せたときや関節を動かしたときに痛みを感じるようになります。 たとえば、大腿骨頭壊死の場合、立って体重を乗せたときに、壊死した骨頭に負荷がかかり、股関節に痛みを感じるでしょう。 また、股関節を動かしたとき(とくに内側に捻ったとき)にも大腿骨頭の壊死部に刺激が入るため、痛みを感じる可能性が高いです。 過去におこなわれた大腿骨頭壊死患者へのアンケートでも、「歩行時に痛みでずり足で歩いた」「痛みで足が上がらない」との回答が多く寄せられています。 (参考:羽原美奈子,前沢政次 ほか.特発性大腿骨頭壊死症患者が体験する生活上の困難.社会医学研究.2008,26(1),p.31-40) 骨頭壊死は大腿骨や股関節に起こりやすい 骨頭壊死は上腕骨(腕の骨)や脛骨(すねの骨)にも発症しますが、大腿骨骨頭に多く発生しやすいといわれています。大腿骨頭は体重がかかりやすい上、股関節の中に入り込んで血流が乏しいためです。 骨頭が壊死しただけでは痛みはありませんが、体重がかかることで壊死部がつぶれ、痛みを感じるようになります。 大腿骨頭壊死は骨折や脱臼に伴って起きることが多いため、予防のために転倒しないことが大切です。 また、アルコールもリスクとなるため、予防を考えたい人は生活習慣も見直しましょう。 治療では保存療法で杖の使用やリハビリを検討します。痛みや大腿骨頭の変形が強い場合は、手術も適応です。 なお、大腿骨頭壊死については以下の記事でも詳しく解説しています。気になる人はぜひこちらもチェックしてみてください。 骨頭壊死の初期症状 骨頭壊死の初期症状は壊死部分とその周囲の鋭い痛みです。とくに関節へ体重を乗せたときや関節を動かしたときに痛みを感じます。 たとえば大腿骨頭壊死では、体重をかけたときや足を上げたときの股関節痛が初期症状として多く、腰痛や殿部(お尻付近)・大腿部に痛みが出ることも珍しくありません。症状が進行すると骨の変形に伴う可動域制限や、変形性関節症へと移行していきます。 また、「単純性関節炎」は骨頭壊死と似た症状が出る疾患として有名です。急激に増悪する痛みが特徴ですが、関節の変形は伴いません。そのため、レントゲン画像の撮影で骨頭壊死との鑑別が可能です。 骨頭壊死は早期発見・早期治療が必要な疾患です。少しでも初期症状に当てはまる人は、ぜひ当院「リペアセルクリニック」のメール相談、もしくはオンラインカウンセリングにてお気軽にご相談ください。 大腿骨頭壊死について詳しく知りたい人はこちらの記事も参考にしてください。 骨頭壊死の原因 骨頭壊死は、関節の骨折や関節の脱臼に引き続いて起こることがあります。 特発性骨頭壊死の場合は、危険因子として、免疫異常の疾患(膠原病)や臓器移植などによるステロイド投与による副作用、アルコール、喫煙が関連していることがわかってきています。 とくに、ステロイドやアルコールについては国際的に基準が設けられており、ステロイドやアルコールをある程度の量を摂取した方に起こった骨頭壊死では、ステロイドやアルコールとの関連が考えられます。 また、関節の構造的に血流が乏しいと、骨頭壊死に至る可能性が高くなるため要注意です。 骨頭壊死で多い大腿骨頭壊死の場合、大腿骨の骨頭は、股関節内に深くおさまって血管が少ない特徴があります。そのため、何らかの原因で血流障害が起こると、骨に栄養や酸素などが運ばれなくなり、壊死が起こってしまうのです。 まとめ|骨頭壊死では鋭い痛みを感じる!症状が悪化する前に早めの受診がおすすめ 今回は骨頭壊死の痛み方についてまとめました。 骨頭壊死が起きると、体重をかけたときや関節運動時に鋭い痛みが生じます。とくに股関節の大腿骨頭に発症することが多く、初期症状の段階で早期発見・早期治療を進めていくことが重要です。 当院「リペアセルクリニック」では、大腿骨や股関節などの痛みに関する治療として、再生医療を行っています。骨頭壊死の初期症状に当てはまる痛みを感じたら、当院のメール相談、オンラインカウンセリングからご相談いただければ嬉しく思います。 この記事がすこしでも骨頭壊死で悩んでいる人の助けになれば幸いです。 骨頭壊死についてよくある質問 Q. 大腿骨頭壊死では必ず股関節が痛くなるの? A. 必ずしも、股関節が痛くなるわけではありません。 自覚症状としては、比較的急に生じる股関節部痛が特徴的ですが、腰痛、膝痛、殿部痛などで初発する場合もあります。 Q.大腿骨頭壊死では、必ず手術が必要なの? A. 骨頭壊死の病期によっては、手術が必要となる場合もあります。 一方、再生医療で骨頭壊死を治療する試みも始まっています。 当院では、エコーや特殊なレントゲン装置、そして特殊な注射針を使用して股関節内の軟骨損傷している部位を精査して、ダイレクトに幹細胞を注入する再生医療を用いた治療を行っています。また、PRP(多血小板血漿)の併用で、さらなる効果の増強を目指しています。
2023.08.01 -
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「視床出血の症状や後遺症は何があるの?」 「視床出血のリハビリ方法は?」 視床出血は、脳の中でも脳内ネットワークの中心となる視床で起こる出血です。 脳の中心である視床に出血が起きると、片麻痺や感覚障害、また運動失調の原因にもなります。 この記事では、視床出血で運動失調が起こる理由を始め、特徴や治療方法、リハビリなどを解説します。 再生医療の可能性も解説するので、視床出血後の症状に悩まれている方はぜひ参考にしてみてください。 視床出血とは【脳の視床で起こる出血】 視床出血は、脳卒中と総称される脳出血・脳梗塞・クモ膜下出血の中でも、脳の中の視床で起こる出血です。 主な原因は高血圧で、脳出血の中では、被殻(ひかく)出血の次に視床出血の頻度が高いとされています。(文献1)(文献2) 視床と被殻は隣にあり、視床出血は脳室とも隣接しています。視床出血と被殻出血は、脳室にまで出血が広がるかどうかが違いのひとつです。 また、視床出血は、重症度によってI〜IIIに分類されます。 その中でも、脳室穿破(せんぱ:脳室と呼ばれる脳脊髄液がある部分まで出血が及んでいるか)の有無で「無=a」「有=b」とさらに細かく分類できるのがポイントです。 視床に限局しているものをⅠ、内包に進展したものをⅡ、視床下部または中脳に進展したものをⅢとしています。 簡単に述べると、出血が大きくなるほど、数字も大きくなるようなイメージで良いでしょう。 視床出血による症状 視床は、脳内ネットワークの中心になる場所で、感覚神経をはじめ、さまざまな神経線維がここを経由しています。 視床出血によって、以下のようにさまざまな症状が起こるのが特徴です(文献3) 片麻痺 瞳孔径の縮小 顔面神経麻痺(病変と反対側に起こる) 知覚障害 病変側への共同偏視 外転神経麻痺 半盲 嘔吐 運動失調 など 他にも、視床出血では失語症や半側空間無視、注意障害などの高次脳機能障害が起こる場合もあります。(文献4) また、他の脳卒中と同じように症状が出たばかりの急性期には、視床出血が原因となり、嚥下障害(食べ物の飲み込み運動に支障が出る)が起こる可能性もあるでしょう。(文献5) 嚥下運動は、大脳から脳幹に至るまでの複雑なネットワークによって成り立っているからです。 視床出血による運動失調が起こる理由 運動失調とは、動作や姿勢保持などの協調運動に起こる障害です。 運動麻痺がないときもあれば、軽症の運動麻痺があるケースも含まれます。 視床出血で失調症状がでるのは、小脳の運動機能調節に重要な経路に小脳や視床、大脳皮質、橋があるためです。 上記のいずれかが障害されても、小脳性運動失調を生じるのです。 また、視床出血によって、深部感覚が障害されるのも原因のひとつと考えられています。 【失調と麻痺の違いとは?】 失調と麻痺の違いは、筋力の低下があるかどうかです。 視床出血による運動失調だと、意識障害や片麻痺を伴う場合が多い傾向にあります。協調運動障害や不随意運動、感覚障害が認められる場合は少ないとされています。 つまり、運動失調の症状があっても、四肢の麻痺によるものなのか判別がつきにくいと考えられるのです。(文献6) 視床出血の種類と特徴 運動失調の種類には、以下のようなものがあります。 視床出血の失調症状では、四肢の失調症状や歩行の異常が認められます。 視床出血の治療方法 視床出血が起こったときの治療は、血圧を下げるのが中心となります。視床は脳の深部にあるため、手術適応にはなりにくいのです。 また、視床出血によって、水頭症と呼ばれる脳室に脳脊髄液がたまる症状になってしまう場合があります。 水頭症を放置しておくと、脳ヘルニア(脳の一部が頭蓋骨の外側に飛び出してしまう状態)になる危険性があるのです。 呼吸障害などが起こり生命に関わるため、シャント術の手術を行い、余分な髄液を脳室から腹腔にまで流します。 視床出血後のリハビリについて【後遺症が出る場合】 視床出血では、発症後から感覚障害があった場合、感覚障害の症状が残ったり、逆に半身の痛み(視床痛)が出現したりします。 運動失調が残る場合を始め、出血が大きいときは、片麻痺の後遺症が出る可能性もあるでしょう。 視床出血後、ある程度落ち着いた段階で、作業療法や理学療法などのリハビリを行います。 作業療法 理学療法 作業療法 作業療法では、麻痺している上肢(肩口から先の手)を積極的に使い、日常生活への復帰を目標とします。 たとえば、麻痺側の手を中心に動かして、食事に必要なお箸の使い方などを訓練する流れです。 リハビリは毎日続けて行うと、身体機能をサポートする働きかけにつながります。 理学療法 理学療法では、以下のように、日常生活を送る上で必要な動作の練習をします。 重り負荷 弾性包帯による圧迫 フレンケル体操 立ち上がりや立位時の荷重負荷練習 視覚誘導 視床出血後には片麻痺が出て、運動障害と運動失調症状が同時に起こる場合もあるでしょう。 そのため、視床出血後のリハビリの一つとして、免荷式(めんかしき)トレッドミルの機械を使い、歩行のリハビリを行います。 上記の方法は、体を上から吊るしてハーネスで体を支えると、足にかかる体重を調整できて、バランス感覚を鍛える働きかけにつながります。(文献8) 視床出血に関するリハビリについては、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてみてください。 まとめ|視床出血による運動失調はリハビリと再生医療の治療法もある 視床は脳内ネットワークの中心で、視床出血が起こると運動失調などの症状が出る場合もあります。 視床出血は後遺症が残ってしまう可能性が高い疾患です。 ただ、当院ではリハビリに再生医療を組み合わせて、脳神経細胞の修復や身体機能の改善への取り組みを行っています。 また、関連する内容として、当院の患者様で視床出血後に左半身の麻痺があり、膝の強直における幹細胞治療の実績もあります。 脳卒中後の後遺症に対しての再生医療にご興味がある方は、ぜひ一度当院へご相談ください。 参考文献 文献1 加齢の面からみた脳出血の部位 文献2 脳血管障害による脳室内出血症例の臨床的検討一脳室内出血の重症度評価と転帰についてー 文献3 脳出血部位と症状 (CM Fisher)|秋田大学 大学院医学系研究科 文献4 原著視床出血の高次脳機能障害 文献5 急性期脳出血における摂食・嚥下障害の検討 文献6 運動失調を主徴とした左視床出血の1例 文献7 神経メカニズムから捉える失調症状 文献8 運動失調に対するアプローチ
2023.07.27 -
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橋梗塞(橋出血)ではどんな症状が出るのだろう。 橋梗塞(橋出血)になったらどんなリハビリが必要なのかな。 この記事を読んでいるあなたは、橋梗塞の症状やリハビリについて不安を抱いているのではないでしょうか。「橋梗塞」という病気自体に馴染みがなく、今後の治療・リハビリの流れを知りたいと思っているかもしれません。 結論、橋梗塞になると麻痺やしびれなどが多く見られます。しかし、梗塞の程度や治療開始までにかかった時間などにより、その後の経過や必要なリハビリに個人差があるのも事実です。 本記事では、橋梗塞(橋出血)の症状やリハビリについて、詳しく解説します。記事を最後まで読めば、症状や経過がわかり、今後の見通しを立てやすくなるでしょう。 橋梗塞(橋出血)における4つの症状 橋梗塞(きょうこうそく)とは、脳の奥にある「脳幹」の一部、「橋(きょう)」という部分の血管が詰まり、脳細胞の機能が失われる病気です。橋梗塞は脳梗塞全体の約7%を占めるといわれています。(文献1) 橋は大部分の脳神経の出入口であり、運動や感覚をつかさどる神経が通る部分です。り、睡眠や覚醒、呼吸運動や循環機能などの「自律運動」をつかさどり、人間の生存や活動に重要な役割を果たします。っている重要な部分です。 そのため、橋梗塞(橋出血)が起こると、以下のような症状が出ることがあります。 運動失調 感覚障害 嚥下障害 四肢の麻痺(閉じ込め症候群) ほかにも、意識障害や高熱、瞳孔縮小、高血圧、呼吸異常、眼球運動障害などが出るケースもあります。 なお、橋梗塞(橋出血)による麻痺は、梗塞によって機能が失われた脳の反対側に見られるのが一般的です。 本章の内容をもとに、橋梗塞(橋出血)のおもな症状を理解しておきましょう。 橋出血の症状については、以下の記事で詳しく説明しています。 運動失調 運動失調とは、運動麻痺はないまたは軽度であるにもかかわらず、動作や姿勢保持などの協調運動ができなくなる状態です。 運動失調の代表的な症状は、以下のとおりです。(文献2) 言葉がうまく出ない 呂律がまわらなくなる 起立・歩行時にふらつく 字を書くのが下手になる ボタンかけがうまくできない 手が震えて、コップに入れた水をこぼす 箸がうまく使えず、スムーズな食事ができない 運動失調は、障害された部位によって以下の表にある3つの種類に大きく分けられます。(文献3) 運動失調の種類 特徴 小脳性運動失調 眼球のけいれん・揺れ(眼振) 言語障害(発音しにくい) 四肢の失調 運動時の手足の震え 両足を開いた不安定な歩き方(酩酊様歩行) 感覚性運動失調 四肢の失調 深部感覚障害 眼を閉じるとまっすぐ立てなくなる 膝を高く上げて前に放り出すような歩き方(踵打歩行) 前庭性運動失調 眼球のけいれん・揺れ(眼振) 歩行時の片側へのふらつき 橋と小脳は神経でつながっているため、橋梗塞(橋出血)が起こると小脳への伝達がさまたげられます。そのため、橋梗塞(橋出血)により小脳性運動失調をきたすケースがあるのです。 感覚障害 感覚障害とは、神経伝達がうまくできなくなり、手や身体などからの感覚に麻痺や違和感が出る症状です。 感覚障害の代表的な症状は、以下のとおりです。(文献4) しびれ感がある 少しの刺激でも強い痛みや刺激を感じる なにかを触っても感覚がしない(温かさ・硬さ・重さなど) 健康な人では、身体からの感覚は脳へスムーズに伝達されます。 しかし、橋梗塞(橋出血)により神経の伝達がさまたげられると、身体の感じた刺激がうまく脳へ伝わらなくなります。 その結果、「しびれる」「感覚がおかしい」など、生活の質に大きな影響が生じる感覚障害が出るのです。 運動失調や感覚障害については、以下の記事も参考にしてください。 嚥下障害 橋を含む「脳幹」で梗塞が起こると、飲み込みに関する神経が傷ついたり神経伝達が阻害されたりして、「嚥下障害」になるケースがよく見られます。(文献5) 嚥下障害のおもな症状は、以下のとおりです。 食べ物・飲み物でむせやすくなる 食べるのに疲れ、食事を嫌がるようになる 食べたものが気管に入る「誤嚥」のリスクが上がる 口から食べ物がこぼれるため、食事を楽しめなくなる 嚥下障害は、食べ物が気管に入って炎症が起こる「誤嚥性肺炎」のリスクが上がるのも大きな問題です。 ただし、一度食べられなくなっても、リハビリをすれば少しずつ機能が回復するケースもあります。 四肢の麻痺(閉じ込め症候群) 橋の機能が大きく失われ四肢がまったく動かせなくなると、眼球やまぶたしか自分の意思で動かせなくなる「閉じ込め症候群」になるケースがあります。 閉じ込め症候群は、本人の意識は保たれているにもかかわらず身体を動かせないのが大きな特徴です。 また、閉じ込め症候群の人は、嚥下機能も大きく低下する傾向があります。 その結果、誤嚥性肺炎をはじめとする感染症により命を落とすケースは珍しくありません。(文献6) 当院「リペアセルクリニック」では、橋梗塞(橋出血)の症状や後遺症に対して、再生医療(幹細胞治療)をおこなっています。治療により傷ついた脳細胞が再生されれば、橋梗塞によるつらい症状の改善が期待できます。 ご質問やご相談は「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」から、気軽にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 橋梗塞(橋出血)による運動失調のリハビリプログラム4選 橋梗塞(橋出血)によって起きた運動失調に対するリハビリプログラムは、以下の4つです。 フレンケル体操 重り負荷での運動 弾性緊縛帯での運動 固有受容性神経筋促通手技(proprioceptive neuromuscular facilitation:PNF) 本章の内容をもとに、リハビリについて理解しておきましょう。 橋梗塞を含む脳梗塞のリハビリについては、以下の記事でも詳しく解説しています。リハビリ内容について詳しく知りたい方はあわせてチェックしてみてください。 フレンケル体操 フレンケル体操は、運動失調のリハビリとして古くから行われている治療法です。 自分の動きを目で見ながら身体の動きをコントロールし、同じ動作を繰り返します。 何度も繰り返し練習することで、協調運動を再びできるようにするのが狙いです。 重り負荷での運動 重り負荷での運動では、足や手の関節や腰に重りをつけ、負荷をかけた状態で運動をおこないます。 身体に重りが付くと、運動量が増えて身体が受ける感覚が強まります。その結果、過剰な運動を抑える力が働き、運動失調が軽減するのです。 弾性緊縛帯での運動 弾性緊縛帯での運動も、重り負荷での運動と同じ発想に基づくリハビリ方法です。 弾性緊縛帯とは、弾性包帯やサポーターなどの身体を圧迫して圧力をかけるものです。上肢・下肢近位部の関節を圧迫して身体への感覚を強化します。(文献7) 感覚入力が強化されると上下肢の過剰な運動が抑えられ、運動失調の軽減が期待できるでしょう。 固有受容性神経筋促通手技(proprioceptive neuromuscular facilitation:PNF) 固有受容性神経筋促通手技(proprioceptive neuromuscular facilitation:PNF)とは、筋肉や皮膚、関節などにある感覚の受容体を刺激しながら身体を動かすリハビリ方法です。 この手法は、治療者(セラピストなど)と患者本人のペアでおこないます。 1.治療者は患者の関節を交互に動かす 2.患者は関節を動かす治療者の動きに負けないように、関節を特定の位置に保つ 効果の持続は短時間にとどまりますが、毎日反復しておこなえば機能の回復が期待できるという報告もあります。 当院「リペアセルクリニック」では、橋梗塞(橋出血)後の治療として再生医療(幹細胞治療)をおこなっています。治療と並行して理学療法士、柔道整復師、鍼灸師などを含むチーム体制によるリハビリテーションも可能です。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」から気軽にお問い合わせください。 橋梗塞で行われる3つの治療 橋梗塞でおこなわれる治療は、以下の3つです。 血栓溶解療法(t-PA治療) 血管内治療(血栓回収療法) 抗血栓療法(内服治療) なかでも血栓溶解療法は、梗塞が生じてから4.5時間以内に始める必要があるため、早く気付いて治療を始めることが非常に大切です。 機能が失われた脳の部位によっては、急激に体調が悪化するリスクもあります。橋梗塞では呼吸や心機能などの全身管理を慎重におこないながら、スピーディな治療がおこなわれます。 橋梗塞を含む脳梗塞の治療については、以下の記事も参考にしてください。 まとめ|運動失調は橋梗塞(橋出血)の症状!リハビリで後遺症を改善しよう 本記事では、橋梗塞(橋出血)の症状や運動失調のリハビリについて詳しく解説しました。 橋梗塞は脳の奥にある「脳幹」の一部「橋」の血管が詰まり、脳細胞がダメージを受ける病気です。運動失調や感覚障害、嚥下障害などが起こり、必要に応じて治療やリハビリがおこなわれます。 適切なリハビリをおこなえば、後遺症の改善が少しずつ見込めるでしょう。 当院「リペアセルクリニック」では、橋梗塞をはじめとする脳梗塞に対して再生医療(幹細胞治療)を提供しています。 再生医療(幹細胞治療)は、ダメージを受けた脳細胞の再生による後遺症の回復や、リハビリ効果の向上などが期待できる治療です。 再生医療へのご質問・ご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けております。気になる点がありましたら、どうぞ気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 橋梗塞の症状やリハビリが気になる人によくある質問 橋梗塞と脳梗塞の違いは? 橋梗塞は脳梗塞の一部で、両者の違いは「梗塞の起きた部分の範囲」です。 橋梗塞:脳のなかにある「脳幹」のさらに一部「橋」で起こった梗塞のみを指す 脳梗塞:脳内で起きた梗塞すべてを指す つまり、橋梗塞の方が脳梗塞よりも起きた場所が限定された梗塞といえるでしょう。 脳梗塞については、以下の記事で詳しく解説しています。 運動失調と麻痺の違いは? なにかの運動をしようとする際に障害がある状態を、運動障害といいます。 運動障害には「運動麻痺」と「運動失調」があり、症状や原因に以下の違いがあります。 症状 原因 運動麻痺 筋肉を自分の意思で動かせない 筋肉そのものや、筋肉に命令を送る大脳皮質や脊髄・末梢神経がダメージを受けた 運動失調 スムーズな運動が難しい 運動に関わる筋肉の動きを調整する機能が失われた リハビリの効果を高めるための方法はあるの? リハビリの効果を高める方法には、「自己脂肪由来幹細胞の投与」があります。 自己脂肪由来幹細胞の投与には、リハビリの効果を高めることに加え、脳神経細胞の修復再生による運動失調からの回復効果も期待できます。 リハビリには失われた機能を改善する効果が期待できますが、橋梗塞(橋出血)により失われた脳細胞の再生は困難です。 また、発症から時間が経つにつれて、リハビリの効果はあらわれにくくなることもあります。 リハビリの効果が上がらない、早く効果を上げたいなどの方は再生医療の利用も検討してみてはいかがでしょうか。ご質問・ご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けております。どうぞ気軽にご相談ください。 リハビリ効果を上げる方法は、以下の記事でも詳しく解説しています。 参考文献 文献1 阿部宗一郎ほか,構音障害と両下肢感覚障害で発症した橋両腹外側梗塞の1例,”臨床神経”2017,57,764-768 文献2 脳神経内科の主な病気|日本神経学会 文献3 望月仁志,宇川義一,神経メカニズムから捉える失語症状,Jpn J Rehabil Med 2019;56:88-93 文献4 稲富惇一ら,感覚障害へのリハビリテーション,高知県作業療法1:37-42,2021 文献5 井熊大輔ら,橋梗塞における摂食嚥下障害の検討,脳卒中33 巻1号(2011:1) 文献6 佐藤岳史ら,経皮的電気神経刺激は閉じ込め症候群における四肢運動機能回復を促進する,脳卒中 31 : 211―216,2009 文献7 立野勝彦,失語症のリハビリテーション,リハビリテーション医学VOL. 28 NO. 10 1991年10月
2023.07.24 -
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脳卒中や脳出血の後遺症でふらふらする状態が続いている方は「体幹失調」かもしれません。 体幹失調とは、脳の障害により胴体(体幹)のバランスがうまく取れない状態です。ふらつきが続くと、転倒のリスクもあるため不安ですよね。 体幹失調は適切なリハビリ・治療を行うことで体幹の筋力やバランス感覚が改善され、ふらつきの緩和が期待できます。 本記事では、体幹失調の原因や効果的なリハビリについて解説します。体幹失調でお悩みの方は、本記事を参考に、体幹失調を改善する方法を実践してみてください。 また、当院「リペアセルクリニック」では再生医療による脳卒中の後遺症治療も行っております。メールやオンラインでの無料カウンセリングも実施しておりますので、気になる方はお気軽にご連絡ください。 体幹失調とは胴体のバランスが取れない状態 体幹失調は、運動失調の一種です。運動失調は「脳と筋肉の連携がうまくできていないため、体のバランスが取れずスムーズな動作が難しい状態」です。(文献1) その中でも体幹失調は「胴体」の運動失調として知られており、胴体のバランスがうまく取れない状態です。歩き方が不自然になり、転びやすくなる可能性もあるでしょう。 体幹失調では、以下のような歩き方の特徴が見られます。 足を広く開いて歩く 手足の動きがバラバラである 酔っぱらっているような歩き方をする 体幹失調の症状が強いと、座っているときも胴体がぐらぐら揺れるケースもあります。 脳幹梗塞で体幹失調が起こるメカニズム 脳の病気の一つである「脳幹梗塞(のうかんこうそく)」は、体幹失調を引き起こす原因となることがあります。 脳幹梗塞とは、脳と脊髄をつなぐ「脳幹」の血流がふさがれる脳梗塞の一種です。 脳幹は以下3点の重要な役割を担っています。(文献2) 脳と体の信号をつなげる 心臓や呼吸など、生命維持に必要な活動をコントロールする 動作のための指令を体に送る 脳幹梗塞が起こると、体のバランス感覚をつかさどる小脳や前庭迷路との連絡通路も障害されます。その結果、体幹失調の症状があらわれてふらつきやすくなるのです。 脳幹梗塞と似たような病気で「脳幹出血」があります。脳幹出血について詳しく知りたい方は下記のコラムを参考にしてください。 体幹失調のリスクがあるそのほかの脳障害 脳幹梗塞以外には、以下の脳の部位の障害により体幹失調があらわれる可能性が考えられます。 小脳 前庭迷路 脊髄 大脳 本章が体幹失調の原因への理解が深まり、脳の病気の早期発見や適切な対応に役立てられれば幸いです。 バランスの維持に関わる「小脳」の障害 動作を行う際に必要な関節・筋肉などを調整して活動する「協調運動」を担う小脳が障害されると、体幹失調があらわれる可能性があります。 小脳は、運動のコントロールやバランスの維持をする脳の部位です。さまざまな筋肉を連携させてスムーズな動作をするためには小脳の活動が欠かせません。 そのため小脳に障害が起こると、体幹失調のようにバランスが取れなくなったり、手足の細かい動きが不自然になったりする可能性が考えられるでしょう。 バランス感覚をつかさどる「前庭迷路」の障害 前庭迷路は内耳に位置しており、バランス感覚をつかさどっています。 前庭迷路が正常に働き、平衡バランスや空間認識(物体の位置や距離・形・大きさなどを立体的に認識する能力)を保っているのです。 しかし、前庭迷路が障害されると前庭迷路やそこから情報を伝える神経にダメージを受けます。そのため、体幹失調や物体の距離感がうまくつかめなくなる症状が目立つようになります。 反射的動作に関わる「脊髄」の障害 脊髄は以下の役割を果たしています。 体を動かすための動作をするよう脳から筋肉に指令する 熱いものに触ると手を引っ込めるような「反射的動作」の指令を体に送る 脊髄に障害が起こると、筋肉の伸び縮みの具合や関節の状態についての感覚(深部感覚)が障害されます。その結果、自分の筋肉や関節の状態がうまく把握できず、体幹失調のようなふらつきが起こるのです。 運動の計画に関わる「大脳」の障害 大脳の一部である「前頭葉」は、運動の計画や運動の指令を出す働きをします。目的に向かって歩く、ご飯を食べるなど日常的に行っている動作も無意識で順番通りに行っている方が多いでしょう。これらは前頭葉で情報を正確に処理して行われています。 前頭葉が障害されると、運動の計画や実行がうまくいかないため、体幹失調のような歩行困難や手足の動きが不自然になる症状があらわれるのです。 大脳は小脳とともに協調運動に関わっているため、小脳の障害と症状が類似しています。 体幹失調の改善におすすめの運動4選【リハビリが重要】 病院による体幹失調の治療は、リハビリが重要です。実際には以下のようなリハビリ方法が行われます。 フレンケル運動 運動学習 重り荷運動 弾性緊縛帯 本章を参考に、積極的にリハビリに取り組んでみてください。 当院「リペアセルクリニック」では、人体に元々ある幹細胞を活用した脳卒中・脳梗塞の後遺症の治療が可能です。詳しく知りたい方は、下記のリンクをご覧ください。 フレンケル運動 フレンケル運動とは、運動失調の方が体の動きや位置を把握する感覚や、協調運動が再びできるようになるリハビリ方法です。(文献3)たとえば、以下のようなフレンケル運動があります。 姿勢 方法 座った状態 1.床に何かしらの印(ゴミ箱のような身近にあるもの)を置く 2.座った状態になり、足で印をタッチする 横になった状態 1.仰向けになり、かかとを床につける 2.かかとを滑らせて片方ずつひざの曲げ伸ばしを行う 3.片足全体を床につけ、ひざを伸ばしたまま股関節を左右に動かす フレンケル体操では、無理のない範囲での段階的な難易度調整が重要です。初めは簡単な動作から始め、徐々に複雑な運動へと移行します。 運動学習 運動学習とは、運動の動作をいくつかの工程に分けて繰り返すリハビリ方法です。運動学習は、主に以下の3段階に分けて実践されます。 1.認知段階:一連の運動を行うためにはどのような動作をどの手順で行う必要があるのかを考える 2.連合段階:認知段階で学んだ運動を試行錯誤しながら行い、自然な動作を目指す 3.自動化段階:意識しなくても一連の運動が自然とできるようになる 何度も同じ動作を繰り返し、動きが上手になる訓練をする目的があります。 重り荷運動 重り荷運動は、手足に重りをつけて負荷をかけるリハビリ方法です。手足に負荷をかけると体幹の筋肉が鍛えられて安定し、体幹失調の症状を緩和する目的があります。 最初は軽い重りから始め、個人の症状に応じて徐々に重さを上げていくと、無理をせず体幹の筋肉トレーニングができるでしょう。 また、病院によっては靴の中に重りが含まれている装具を活用している場合もあります。(文献4) 弾性緊縛帯 弾弾性緊縛帯(だんせいきんばくたい)とは、ゴムのように伸縮性がある包帯です。 体幹や手足の付け根部分に適度な圧迫感を感じる程度に弾性緊縛帯を巻いて使用します。個人差はありますが、弾性緊縛帯を用いてリハビリすると、過度な動きを抑えながら体幹の安定性の向上が期待できるでしょう。 弾性緊縛帯を用いたリハビリにより小脳性運動失調症が改善した報告もあります。(文献5) 体幹失調に効果的なトレーニング3選【自宅でできる】 体幹失調のトレーニングは、自宅で取り組めるものもあります。おすすめのトレーニング方法は、以下の3つです。 寝ながら行う「ブリッジ運動」 立ちながら行う「ひざの屈伸運動」 座りながら行う「ゆらゆら運動」 いずれも手軽にできるトレーニング方法です。無理のない範囲で取り組んでみてください。 寝ながら行う「ブリッジ運動」 ブリッジ運動は、名前の通り橋の形になって体幹を鍛えるトレーニング方法です。実際には、下記の手順で行います。 1.床で仰向けになる 2.ひざを曲げる 3.太ももと股関節が一直線になる程度に腰を上げる 4.そのまま数秒程度キープする 5.ゆっくり腰を床に降ろす 実際に体幹の安定性やバランス感覚が改善された報告もあります。(文献6)強引にブリッジ運動を行うと腰を痛める原因になるため、無理のない範囲で行いましょう。 立ちながら行う「ひざの屈伸運動」 ひざの屈伸運動も、体幹の安定性の向上に効果的であるとの報告があります。(文献6)実際には、以下の手順で行いましょう。 1.立った状態のまま、手すりや壁や重たい家具などに手をかける 2.上半身は背筋を伸ばした状態で保ったまま、ひざを45度くらいに曲げる 3.2.の状態を5秒前後キープする 転倒する可能性があるため、手すりのような手をつかめる場所で行うようにしましょう。また、立った状態でもふらつきを感じる場合は、ひざの屈伸運動を控えることをおすすめします。 座って行う「ゆらゆら運動」 足に障害があり、まっすぐ立つ姿勢が難しい方は座ってできる「ゆらゆら運動」がおすすめです。 「ゆらゆら運動」は以下の手順で行います。事前にタオルを用意しましょう。 1.巻いたタオルをお尻の下に敷いて座る 2.背筋は伸ばしたままお尻の重心を左右に交互に移動させ、ゆらゆらさせる 自宅にいるときの隙間時間を活用し、ゆらゆら運動を実践してみてください。 脳梗塞の後遺症を改善するリハビリ方法について詳しく知りたい方は、下記のコラムを参考にしてください。 まとめ|体幹失調を改善するために定期的なリハビリを行いましょう 体幹失調とは、脳梗塞や脳出血などの障害により、胴体(体幹)のバランスがうまく取れない状態を指します。 体幹失調は日々のリハビリやトレーニングで症状の改善が期待できます。脳の病気の後遺症でふらつきや歩き方が気になる方は、積極的に実践してみてください。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による治療を行っております。メールやオンラインでの無料カウンセリングも実施しておりますので、気になる方はお気軽にご連絡ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 体幹失調についてよくある質問 体幹失調と麻痺の違いはなんですか? 麻痺とは、脳や神経のダメージにより体が自分の意志通りに動かせない状態です。筋肉がまったく動かせない、または動かすときに力が入らない症状が麻痺に該当します。 一方の体幹失調は、脳と筋肉の連携がうまくいっていない状態です。麻痺とは違い、筋肉自体は動かせます。ただし、筋肉をスムーズに動かせないため、歩くとふらつきが出たり、日常の動作がぎこちなくなったりします。 体幹が不安定だとどうなりますか? 体幹は体の中心にあり、頭や手足を除いた胴体の部分です。正しい姿勢を保ち、手足の動きを支える役割を果たしています。 体幹が不安定だと姿勢や手足の動きを支えきれず、バランスが取れなくなり歩行困難や転倒のリスクがあります。 そのため、体幹失調の場合は、体幹を鍛えるリハビリやトレーニングが重要となるのです。 参考文献一覧 文献1 後藤 淳. 運動失調に対するアプローチ. 関西理学.14:1-9,2014, p1-9. 文献2 NL, Demarest, RJ, Laemle, LB. Noback's Human Nervous System, Seventh Edition. 第 7 版, Humana Press, Totowa, NJ, 2012年, p217-238], 文献3 立野 勝彦. 失調症のリハビリテーション. リハビリテーション医学. 1991年10月, Vol.28 No.10, p774-778 文献4 安東範明.小脳性運動失調のリハビリテーション 医療―体幹・下肢について―. Jpn J Rehabil Med 2019;56:101-104, 文献5 吉村 ゆかり, 福田 宏幸, 小谷 尚也, 手島 礼子.小脳性運動失調症に対する弾性緊縛帯の効果. 理学療法学Supplement (第48回日本理学療法学術大会 抄録集). 2013年. Vol.40,No.2 文献6 阪本 誠,松木 明好, 谷 恵介, 木村 大輔.Core stability trainingにより運動失調および バランス障害が改善した重度小脳性および 感覚性運動失調の1症例. 理学療法科学 32(3):459–464,2017,
2023.07.20 -
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脳幹出血のリハビリプログラムを詳しく解説|早期アプローチの大切さ! 脳幹出血を起こすと、重度の場合は意識障害、呼吸障害、四肢麻痺などをきたします。軽度の出血でも、片麻痺や感覚障害、運動失調、嚥下障害や高次脳機能障害などの後遺症を残します。看護が必要なくなっても、元の生活に戻るまでには長い時間が必要です。少しでも後遺症を軽減し、寝たきり状態を防ぐために、リハビリテーションが重要となります。 リハビリテーションの内容は、発症からの時期により変わってきます。リハビリでは、「急性期」「回復期」「生活期(維持期)」という3つの時期に分けてプログラムを組みます。脳幹出血の具体的なリハビリテーションを、3つのステージ別に見ていきましょう。 急性期;早期からの介入が大切! 急性期とは、脳幹出血が起こって、まだ完全に状況が落ち着いていない時期を指します。発症から概ね2週間〜1ヶ月程度です。治療と併行しながらリハビリを進めていきます。 まず目指すのは、早い段階でベッドから離れる「早期離床」です。脳幹出血をはじめとした脳卒中では、体の状態に問題がなければ、24〜48時間以内にリハビリ介入をする方が、回復が早いとされています。 最初に行うことは、寝返りや、体を起こして座ることです。可能であれば、立ち上がり、補助具で歩くリハビリに進みます。着替えなどの日常生活に直結する動作を行うセルフケア訓練も開始します。 また、脳幹出血の患者さんでは、ものを飲み込む力が落ちる嚥下障害を伴っている方が多いです。肺炎予防のためにも、早くから嚥下の評価と口腔ケアを開始します。 一方で、重度の脳幹出血例では、呼吸や血液循環の障害を認めます。脳の周りにまで出血して、髄液の流れに影響する水頭症になることもあります。状況が落ち着かないと早期離床はできません。この場合はベッド上でできるリハビリを行います。 例えば、関節が固まらないように動かしていく関節可動域訓練などが該当します。 回復期;リハビリが中心の生活! 急性期から脱して体の状態は安定していますが、後遺症が固まりきっていない時期です。失われた機能を回復し、残っている機能を高める訓練をします。 多くの脳卒中患者さんは「回復期リハビリテーション病棟」というところに移ります。リハビリを専門にしている病院や病棟です。 理学療法士や作業療法士・言語聴覚士といったリハビリスタッフが多くいます。1日最大で3時間のリハビリが可能です。施設によっては、休日も含めてほぼ毎日リハビリを行っているところもあります。 一口に脳幹出血といっても、人により後遺症の内容や程度はさまざまです。症状別のリハビリは急性期から少しずつ始まります。回復期病棟ではそれをさらに掘り下げ、一人一人に合った詳細なリハビリプログラムを組んでいきます。ここでは一例を紹介します。 〈症状別のリハビリの例〉 運動麻痺 筋肉や関節の動きを自分の意思通りに動かせるよう、繰り返し訓練します。麻痺は3〜6ヶ月程で回復が止まってしまいます。症状が固定した後でも、麻痺のない部分でカバーしたり、装具や杖などを利用したりして動く訓練も行なっていきます。 運動失調 筋肉同士の協調性が失われ、運動をスムーズに行えない状態を運動失調といいます。 運動失調のリハビリでは、例えば、目で確認しながら何度も動作の練習をします。重りを使い、固有感覚(身体の位置や力の入れ具合を感じる感覚)を刺激して、運動のコントロールを行う訓練も行います。一つの動作をいくつかに区切って行うことも効果的です。 嚥下障害 急性期に引き続き、嚥下障害へのリハビリも続けます。どのくらいの固さのものが食べられるのか、一口量はどのくらいが適切かなど、詳細な評価を行います。飲み込む力を強化する訓練をしながら、少しずつ食事の形態を調整していきます。 構音障害 呂律が回らない、声の大きさのコントロールがつかないなど、喋りづらさ(構音障害)を抱える方が多いです。正しい発音の練習や、話すスピードを調整する訓練によって、コミュニケーションが取りやすいようにしていきます。 綿密なリハビリテーションを続けながら、自宅への退院、社会復帰に向けた支援も行なっていきます。 生活期(維持期);家に帰った後も重要! 実際の生活に戻った上で、訓練を続けていく時期です。活動度を維持・向上させ、可能な範囲で自立した生活ができるように考えていきます。 リハビリができる施設に通ったり、訪問リハを受けたりすることで、体力や機能の維持・向上を図ります。 また、脳幹出血の最大の要因は高血圧です。運動習慣をつけることは、血圧を下げ、再発防止にも役に立ちます。 脳幹出血のリハビリについてよくあるQ&A Q, どうして急性期と回復期で病院(病棟)が変わるのですか? A, できれば同じところでリハビリを続けたいですよね。でも、場所が変わることにはきちんと理由があります。 発症直後に入院する「急性期病院(病棟)」の目的は、体の状態を落ち着かせることです。リハビリのための時間や人手には制約があります。治療がひと段落すれば、よりリハビリに特化した場所に移る方が良いのです。 次に急性期病棟に入院が必要な方にベッドをあけるためにも、状況が落ち着いてくれば行き先の調整を考え始めます。 Q, どのくらいの期間、入院が必要ですか? 麻痺などの回復が一定の段階に達し、日常生活に必要な動作ができるようになれば退院を考えます。どこまでできるようになるかという目標は患者さん毎に異なります。 ただし、回復期リハ病棟の入院は脳卒中の場合は最大で150日(高次脳機能障害がある場合は180日)までと決まっているため、これを超えることはありません。 まとめ・脳幹出血のリハビリプログラムを詳しく解説|早期アプローチの大切さ 脳幹出血後は、早期からアプローチをすることにより、後遺症を軽減し、もとの生活に近い状態に戻ることを目指していきます。とても時間がかかりますが、しっかりとリハビリテーションを続けていきましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 ▼以下も参考にされませんか 脳幹出血後の後遺症(麻痺や障害)に「最新の治療法」という選択肢! 参考文献 標準リハビリテーション医学第4版【電子版】 医学書院. 2023年.東京 日本脳卒中学会. 脳卒中治療ガイドライン 2021. 後藤淳. 関西理学.14:1-9.2014. 福岡達之、道免和久. Jpn J Rehabil Med. 56:105-109. 2019. 藤島一紘. ブレインナーシング 39(2): 320-323. 2023.
2023.07.17 -
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脳幹出血は、命に関わる深刻な病気です。脳幹には生命維持に関わる機能が集中しているため、ここで出血が起こると最悪の場合、突然死を招く場合もあります。 本記事では、脳幹出血で突然死する可能性について解説しています。早期発見につながる前兆サインも紹介しているので、健康管理に力を入れたい方はぜひ参考にしてみてください。 脳幹出血は突然死を起こす可能性がある【余命が短いケースも】 脳幹出血とは脳の脳幹部分に出血を引き起こす脳出血の一種です。 脳幹は人間の生命活動をつかさどる中枢で、呼吸・心拍のコントロールや視覚・聴覚の処理、ホルモン分泌などを担当しています。 この部位で出血が起きると、四肢麻痺や意識障害など深刻な後遺症を残す可能性があり、最悪の場合は突然死を招き余命が短くなるケースもあります。 一方で、出血量が少ない場合は、症状が軽く予後が良好なケースもあります。重症化を防ぐためにも、以降で紹介する脳幹出血の前兆サインを覚えて、早期発見に努めましょう。 以下の記事では、脳幹出血の後遺症について解説しています。後遺症の種類や症状を詳しく知りたい方はぜひあわせてご覧ください。 なお、後遺症の治療には人間の自然治癒力を活用した「再生医療」が効果的です。再生医療により身体の機能(後遺症)が回復した症例は数多く報告されています。具体的な症例が知りたい方は再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 脳幹出血で突然死のリスク警戒となる3つの前兆サイン 脳幹出血は、突然死のリスクを伴う怖い病気です。早期発見のためには、以下3つの特徴的な前兆サインを知っておくのが大切です。 めまい いびき 視覚の異常 順番に見ていきましょう。 めまい めまいは、脳幹出血の症状の1つです。そのため、普段と異なる激しいめまいを感じた際は、脳幹出血の疑いがあります。 めまいが起こる原因は、脳幹内の体全体のバランスを調整する機能が出血により破綻するためです。(文献1) 脳幹出血によるめまいは、同時に目や手足の麻痺、顔のしびれなどを含む複数の症状が現れるケースが多いです。複数の症状が同時に現れた場合は、脳幹出血である可能性がより疑われるため、医療機関を受診して検査してもらうと良いでしょう。 早期の対応で命を守れる可能性が高まります。 いびき 脳幹出血における前兆のサインとして、いびきが大きくなることがあります。脳幹は呼吸や血圧を調整する機能があり、その機能に問題が生じると、大きないびきが発生するのです。 以下のように、いびきに変化が見られたら体からの警告サインかもしれません。 ・いつもより大きないびきをかく ・段いびきをかかないのに急に大きないびきをかく 「こんないびきはおかしい…」と感じたら、脳幹出血の疑いを視野に入れて医療機関の受診を検討してみましょう。 視覚の異常 脳幹は視覚情報を処理する役割も担っているため、出血が起きると視覚に関わる症状が現れることがあります。 たとえば以下のような症状です。 視野が狭くなる 視力の低下する ものが二重に見える 光がいつもよりまぶしく見える 視覚の異常は、目の問題だと思ってしまうケースも多いため、脳の異常に気づくのが遅れる場合もあります。早期に対応できるよう、視覚異常も脳幹出血の症状の1つであると覚えておきましょう。 脳幹出血に有効は2つの治療法 ここでは、脳幹出血に有効な治療法を2つ紹介します。 保存療法 再生医療 治療内容をそれぞれ詳しく見ていきましょう。 保存療法 脳幹出血では、保存療法が中心となります。 まず優先されるのは、血圧を下げて安定させることです。さらなる出血を防いで、脳へのダメージをできるだけ少なくするためです。入院中は安静にしながら、点滴を使って血圧を下げる薬を投与します。 ほかの部分の脳出血では、たまった血液(血腫)を取り除く手術をおこなう場合があります。しかし、脳幹出血の場合、手術は基本的に選択されません。 脳幹は、生命維持に関わる機能が集中しており、手術には大きなリスクがあるためです。また、脳幹はとても狭い空間にあるため、手術自体が困難です。 そのため脳幹出血では、血圧の管理や脳のむくみを抑える保存療法が一般的な治療法となります。 再生医療 再生医療とは、修復力のある幹細胞の働きを利用して、弱ったり、傷ついたりした神経細胞を修復する新しい治療法です。 再生医療では、麻痺や意識障害といった脳幹出血の後遺症の回復を早めたり、脳卒中の再発を予防したりする効果が期待されています。 再生医療で脳幹出血の治療を進めたい方は、弊社『リペアセルクリニック』にご相談ください。再生医療の症例数10,000例以上の経験を活かし、患者さま一人ひとりに合った治療プランをご提案いたします。 \まずは当院にお問い合わせください/ まとめ|脳幹出血における突然死のリスクを把握して前兆サインを見逃さないようにしよう 脳幹出血は命にも影響を及ぼす怖い病気ですが、早期発見・早期治療で重症化のリスクを軽減できる可能性があります。 早期発見の鍵は、前兆サインの理解です。本記事で紹介した3つのサインを心に留めておき、普段と違う症状を感じたら、早めに病院への受診をご検討ください。 脳幹出血の有効な治療法の1つに「再生医療」があります。 これまで一度死んだ脳細胞は戻らないとされてきました。しかし、再生医療は脳細胞を復活させ、脳幹出血を含む脳卒中の後遺症を改善できることがわかってきたのです。 詳しい治療法や効果が知りたい方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 脳幹出血に関するよくある質問 最後に脳幹出血に関するよくある質問と回答をまとめます。 脳幹出血を起こしやすい人はいますか? 脳幹出血は、高血圧が主な原因となる病気です。また、血管の病気や脳血管奇形をもつ人にも起こる可能性があります。 また、以下のような生活習慣も脳出血のリスクを高める要因です。。 喫煙 過度なアルコール 運動不足ストレス 肥満 高脂血症 生活習慣の見直しと改善をおこなえば、脳幹出血の予防につながります。 脳幹出血のリハビリテーションにはどんなものがありますか? 脳幹出血のリハビリは、どのような症状が出ているかによって患者さんごとにプランが立てられます。大きくは、以下3つにわけられます。 プラン 内容 理学療法 筋力の強化やバランス能力の改善を目指す 歩行練習・軽めの筋力トレーニングをおこなう 作業療法 食事や着替え、入浴といった日常生活動作の獲得を目指す 指先や手を動かす訓練をおこなう 言語療法 言語障害や嚥下障害の改善を目指す 発声発語訓練・舌の体操をおこなう 精神的なサポートや心理療法も大事なリハビリです。個々の患者さんの病態にあわせて、いろいろな角度からリハビリをおこなっていきます。 以下の記事では、脳幹出血のリハビリプログラムを解説しています。リハビリの進め方を 詳しく知りたい方はぜひあわせてご覧ください。 脳幹出血を発症したら余命はどれくらいですか? 脳幹出血の発症後における、公的データは見つかりませんでした。 ただし、脳幹出血の予後を調べたとある研究結果によると、70歳以上の死亡率が79%、70歳未満の死亡率が57%となっています。(文献2) 脳幹は生命の維持を司る部位のため、発症すれば生命に関わる危険性があると覚えておきましょう。 以下の記事では、脳幹出血の余命について詳しく解説しています。脳幹出血の予後への理解を深めたい方はぜひ参考にしてみてください。 【参考文献】 文献1:https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/051111092.pdf 文献2:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/30/1/30_1_38/_pdf
2023.07.13 -
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脳幹出血になったら回復の見込みはあるの? 回復にはどのような治療やリハビリが必要? この記事を読んでいるあなたは、脳幹出血を起こした人が無事に回復できるのか、不安を抱いているのではないでしょうか。 どのような治療やリハビリが必要になるか疑問に思っているかもしれません。 結論、脳幹出血から回復する見込みがあるかは、出血の度合いをはじめとする重症度によって異なります。重度の脳幹出血は回復の見込みがなく、重い障害が残る、あるいは死に至るといったケースも珍しくありません。 本記事では、脳幹出血の回復の見込みや治療について、詳しく説明します。記事を最後まで読めば、脳幹出血の生存率や治療がわかり、今後の見通しを立てられるでしょう。 脳幹出血の回復の見込みは重症度によって異なる 「脳幹」は、脳の中心部にあり、以下のような役割を果たす組織です。 循環 呼吸 眼球運動 体温調節 消化液分泌 自律神経の中枢 どの役割も、人間の生命維持に欠かせないものです。そのため、出血によって脳幹の機能が失われると、手足の麻痺や意識障害、呼吸停止などの重篤な症状を起こす可能性があるのです。 脳幹出血の回復の見込みは、出血量や意識の有無などの「重症度」によって大きく異なります。 重度の場合は回復が難しい可能性が高いものの、軽度〜中程度の場合は回復が期待できるケースもあります。 脳幹出血は助からない人が半分以上 脳幹出血は半分以上の人が助からないという、以下のような調査結果があります。(文献1) 良好な回復だった方:13人(6.1%) 中程度の障害:27人(12.7%) 重度の障害:27人(12.7%) 植物状態:23人(10.8%) 死亡:122人(57.5%) 発症時に呼びかけや痛みなどの刺激を与えても反応しない意識レベルの場合、回復の見込みは難しいかもしれません。 一般的には、意識レベルの評価指標である「GCS:グラスゴー・コーマ・スケール」が7点以下の場合は、予後不良とされています。 また、意識レベルの低さに加えて、以下のような症状がある場合も予後は悪いといわれています。 高熱 呼吸障害 瞳孔・眼球の異常 手足の麻痺や過緊張 ただし、脳幹出血後の死亡率は、調査によってばらつきがあります。 別の調査では、死亡率を31%や40〜50%としているものもあるため、具体的な回復の見込みは担当の医師へ確認しましょう。(文献2)(文献3) 脳幹出血の死亡率・生存率は発症時の意識状態が重要 脳幹出血の回復の見込みは、「意識レベル」「全身状態」「重症度」など、複数の要因が関係します。 一般的には、以下の要因があると回復の見込みは低いといわれています。 麻痺が重い 出血の範囲が広い 意識不明など、発症時の意識状態が悪い また、脳幹出血の死亡率は、発症時の意識状態や出血量とも関係があります。海外の調査では以下のような死亡率が示されています。(文献4) 意識障害が低く、出血量が少ない場合:2.7% 意識障害が高く、出血量が多い場合:状態によっては100% 重篤な意識障害がみられ、出血量も多い場合は、助からない可能性が高いといえるでしょう。 後遺症の重さは受診スピードやリハビリの進行度によって変わる 脳幹は生命の維持に関わる重要な部位のため、機能が失われると重篤な後遺症が出る可能性があります。 元々の症状の重さに加え、発症後に受診までの時間がかかった場合や、リハビリテーションが進まない場合も後遺症が重くなりやすいでしょう。 しかし、重い後遺症が残ったとしても、諦めないことが大切です。失われた脳細胞や神経の再生は困難ですが、神経細胞群には新たなネットワークを築いて機能が改善する「可塑性」が期待できるからです。(文献5) 医師や理学療法士らの指導のもと、できる限りのリハビリテーションを行いましょう。 なお、半年後に歩けるようになるかは、発症後1カ月の状況で見通しがつくという報告もあります。(文献6) 脳幹出血の治療 出血直後である急性期のおもな治療法は、以下の2つです。 降圧療法:出血部位を拡大させないための治療 全身管理:呼吸や脈拍などをモニタリングして管理する 脳幹出血は他の脳出血と異なり、血腫を除去する手術はあまり適応されません。脳幹は脳の深い位置にあるため、手術の負担が大きく、メリットが少ないためです。 ただし、出血部位が広く、脳内の「脳室」という部位が拡大する「水頭症」になっている場合は、脳内の圧力を下げる「ドレナージ手術」を行うケースがあります。 また、意識状態が悪くて呼吸がうまくできない場合は、人工呼吸器による呼吸管理が必要です。症状が落ち着いて自力で呼吸ができるようになれば人工呼吸器を外しますが、自力で呼吸ができない場合には人工呼吸器を外せないケースもあります。 なお、症状によっては「気管切開」を行い、人工呼吸器の代わりに肺に空気を送るチューブを気管支につなぐこともあります。 【ステージ別】脳幹出血のリハビリの内容 脳幹出血の治療では、薬物治療に加えて、脳や身体の機能を回復させる「リハビリテーション(以下リハビリ)」も非常に重要です。 脳幹出血のリハビリ内容は、以下3つの時期で大きく異なります。 急性期(~3カ月) 回復期(3~6カ月) 生活期(6カ月以降) 本章の内容をもとに、リハビリの流れや概要を理解しておきましょう。 急性期のリハビリ 急性期のリハビリは「二次的合併症の予防」と「早期の機能回復」に重点をおきます。 最初は関節が固まらないためのリハビリを行い、麻痺が回復してきたら自力で動くための訓練へ移行します。具体的なリハビリの例は、以下の通りです。 座位訓練 嚥下訓練 移乗訓練(車いすに移る訓練) 立位歩行訓練 言語機能の回復訓練 近年、早くからリハビリを始めて寝たきりの時間を減らした方が、予後や後遺症の経過が良いといわれています。 脳幹出血は他の脳血管疾患よりも安静度が高いため、初期に行えるリハビリは限られますが、できる範囲で積極的に行います。(文献7) 回復期のリハビリ 急性期のリハビリで回復しなかった場合、「回復期リハビリテーション病棟」で集中的なリハビリを行います。(文献8) また、回復期には「痙縮 (けいしゅく)」という手足の筋肉が緊張して突っ張る症状があらわれます。そのため、ストレッチや筋弛緩薬による適切な対応も重要です。 リハビリを行っても機能回復が困難な場合は、装具の使用やできる方法での動作練習、環境の調節などを行い、自立した生活ができるよう目指します。 生活期のリハビリ 発症6カ月以降の「生活期」は、症状が安定したあとの維持が目的です。 筋肉の痙縮をやわらげる治療や装具の訓練・調整をしながら、日常生活を送れるように環境を整えます。 また、デイケアや訪問リハビリテーションなどの、介護保険を使用したサービスもよく使われます。 まとめ|脳幹出血は程度によって回復の見込みあり!リハビリをしっかりと行おう 本記事では、脳幹出血の回復の見込みや治療、リハビリなどを詳しく解説しました。 脳幹出血の回復の見込みは、出血量や意識状態などの重症度によって異なります。軽症の場合は回復するケースもありますが、意識不明や呼吸障害などがある重症の場合は助からないケースが半分以上です。 脳幹出血のおもな治療は「降圧治療」と「全身管理」です。命が助かった場合は、日常生活に戻るためのリハビリテーションをできるだけ早期から開始します。 当院「リペアセルクリニック」では、再生治療(幹細胞)による脳卒中の再生医療を実施しています。再生治療は、脳幹出血の再発防止やしびれ、麻痺の改善が期待できる治療です。 もしあなたが脳幹出血の再発予防や治療の選択肢を広げたいと考えているなら、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」にて当院へご相談ください。 この記事が脳幹出血の回復の見込みを知るのに役立ち、今後の見通しを立てる助けになれば幸いです。 脳幹出血の回復の見込みについてよくある質問 脳幹出血の後遺症にはどのようなものがありますか。 脳幹出血の代表的な後遺症は、以下の通りです。 麻痺 痙縮 感覚障害 言語障害 嚥下障害 排尿障害 高次機能障害 どのような後遺症が出るかは、脳幹出血によってダメージを受けた部位や程度によって異なります。 脳幹出血にならないようにするにはどうしたら良いですか。 脳幹出血は、高血圧が引き起こす「動脈硬化」が大きなリスクとされています。そのため、脳幹出血を防ぐには、高血圧を招く以下の内容を避けることが大切です。 塩分の摂りすぎ 暴飲暴食 運動不足による肥満 脳幹出血の予防については、以下の記事も参考にしてください。 参考文献一覧 文献1 原発性脳幹出血患者の予後因子,Clinical Neurology and Neurosurgery,Volume 115, Issue 6, June 2013, Pages 732-735 文献2 急性期脳血管障害の臨床的研究,急性期脳血管障害の臨床的研究, 脳卒中, 1980, 2 巻, 4 号, p. 326-332, 文献3 特発性脳幹出血の外科的治療,Medicine (Baltimore). 2019 Dec; 98(51): e18430. 文献4 原発性脳幹出血:予後因子と外科的治療のレビュー,Front Neurol. 2021; 12: 727962.Published online 2021 Sep 10. doi: 10.3389/fneur.2021.727962 文献5 脳の機能回復と神経可塑性,石田和人,玉越敬悟,高松泰行,理学療法学, 40 (8 ) p535-537,2013 文献6 脳幹出血患者の予後予測,木村紳一郎,光眞邦哲ら,脳卒中の外科 39:262-266,2011 文献7 脳卒中急性期リハビリテーション診療の指針,日本脳卒中学会「脳卒中急性期リハビリテーションの均てん化および標準化を目指すプロジェクトチーム」 文献8 脳卒中理学療法ガイドライン,日本神経理学療法学会
2023.07.10 -
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脳幹出血は、四肢麻痺や意識障害など重篤な後遺症が出る可能性のある病気です。 早めにケアをおこなえば回復が見込めるケースもあるので、後遺症が出たら早期リハビリを検討しましょう。 本記事では脳幹出血の後遺症の種類や治療方法を解説します。脳卒中の後遺症に対する有効な治療法「再生医療」も紹介しているので、治療方法に悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。 脳幹出血の後遺症にはどのようなものがあるのか? そもそも脳幹出血は、脳幹という脳の中でも呼吸活動を司ったり、血圧を保ったりといった、生命活動にとって根幹となる機能をもつ部位に生じる出血のことです。 脳幹出血が起こると、命が助かったときでも後遺症が出る場合があります。 たとえば、両手足が動かなくなる四肢麻痺や、認識力や判断力が低下する意識障害、食事や水の呑み込みが難しくなる嚥下障害などがあげられます。(参考1) また、脳幹の一部である橋(きょう)の場所で出血が起こると、意識障害や全身の麻痺が起こり、出血が広がると呼吸困難となり、重篤な状態になる可能性もあります。ときに、出血量が多い場合には命が助からないケースもあり得るのです。 以下の記事では脳幹出血の後遺症の1つである「運動失調」について詳しく解説しています。具体的な症状や治療法も紹介しているので、運動失調の理解を深めたい方はぜひ参考にしてみてください。 脳幹出血の有効な治療法の1つに「再生医療」があります。 これまで一度死んだ脳細胞は戻らないとされてきました。しかし、再生医療は脳細胞を復活させ、脳幹出血を含む脳卒中の後遺症を改善できることがわかってきたのです。 詳しい治療法や効果が知りたい方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 脳幹出血の後遺症に効果的なリハビリや治療法 ここでは脳幹出血における後遺症の治療に有効なリハビリと再生医療について解説します。それぞれの目的や効果について紹介していくので、後遺症の治療方針を決める際の参考にしてみてください。 リハビリ 脳幹出血による後遺症のリハビリは、発症から以下3つの時期にわけてプログラムを組んでいきます。 急性期:発症から約2週間 回復期:急性期後、体の状態が安定した時期 維持時:回復期後、自宅に戻って生活をはじめる時期 急性期は、早期リハビリが推奨されています。安静状態でベッドに長期間とどまっていると「廃用症候群」(寝たきりによって筋肉の衰えや関節の硬化が起こる症状)を引き起こす可能性があるためです。そのため、急性期は廃用症候群の予防として、ベットの上で手足のストレッチや体位の交換といった軽い運動をおこなうケースが多い傾向にあります。 回復期は、後遺症により失われた機能を回復させるために本格的なリハビリを開始します。症状や重症度は個々によって異なるため、一人ひとりに合わせたプログラムの作成が必要です。リハビリ専門のスタッフ(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)の指導のもと、退院後の自宅での生活や会社復帰に向けた訓練をおこないます。 維持期は退院後、回復した機能の維持や向上を目指すリハビリを継続します。外来リハビリへの通院や自宅でのトレーニングを通して、機能の維持・改善を図っていく流れが一般的です。 以下の記事では脳幹出血のリハビリプログラム について詳しく解説しています。症状別のリハビリ 例も紹介しているので、気になる方は是非参考にしてみてください。 再生医療 脳幹出血の後遺症への治療法として「再生医療」が注目されています。 再生医療とは、修復力のある幹細胞の働きを利用して、弱ったり、傷ついたりした神経細胞を修復する新しい治療法です。 脳幹出血の後遺症に対する再生医療では、主に以下3つの効果が確認されてます。 脳神経細胞の再生による身体機能の回復 脳神経細胞の再生によるリハビリ効果の向上 脳血管の修復による再発予防 順番に解説していくので、詳しく見ていきましょう。 効果1. 脳神経細胞の再生により身体機能が回復する 傷ついた脳細胞を再生医療で修復すれば、麻痺や呂律困難などの後遺症の回復が期待できます。 再生医療に使われる幹細胞は、神経、血管、骨、軟骨などに変化する能力があり、炎症をおさえ症状の痛みや後遺症の痺れを緩和させる効果もあります。 自己の細胞を使用するため、身体への負担が少なく安全な治療が可能です。 効果2.脳神経細胞の再生によるリハビリ効果の向上 再生医療とリハビリと組み合わせれば、より高い回復効果が期待できます。発症から数年が経過した患者さんでも、幹細胞治療とリハビリの併用で症状改善の可能性が広がります。 再生医療をはじめたからといって劇的に後遺症がなくなるわけではありません。しかし「車椅子の方が杖で歩けるようになった」「呂律困難があったがスムーズな会話が可能となった」といった段階的な改善効果の希望がもてる治療法といえます。 効果3.脳血管の修復による再発予防 脳卒中の怖いところは再発率が高いことです。はじめは軽い症状でも、再発を繰り返せば後遺症が重症化していくリスクが高まります。 再生医療は傷ついた脳細胞を再生させるだけでなく、今後、脳出血や脳梗塞になるかもしれない傷ついた血管を予防的に修復させて、再発をおさえてくれます。 再生医療で脳幹出血の治療を進めたい方は、弊社『リペアセルクリニック』にご相談ください。再生医療の症例数10,000例以上の経験を活かし、患者さま一人ひとりに合った治療プランをご提案いたします。 まとめ|脳幹出血の後遺症に対する理解を深めて適切な訓練や治療を受けよう 脳幹出血による後遺症の代表的な治療は、リハビリです。回復過程と個人の状態に合わせた適切なプログラムを実施すれば、段階的な症状の改善が期待できます。 近年では、脳幹出血における後遺症の治療法として「再生医療」が注目されています。 再生医療は人間の自然治癒力を活用した最先端の医療技術です。幹細胞の修復力を利用して、脳細胞の機能回復を促進します。 「再生医療に興味があるけど具体的なイメージがつかめなくて不安…」という方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 脳幹出血の後遺症に関するよくある質問 最後に脳幹出血の後遺症に関するよくある質問と回答をまとめます。 脳幹出血で後遺症なしの確率はどれくらい? 厚生労働省の調査では、18歳から65歳の脳卒中患者1,584名のうち、後遺症がまったくないと回答した人は344名でした。 つまり、約2割の脳卒中患者は後遺症が出ず、約8割の患者には脳卒中によるなんらかの影響が出ている結果となっています。 以下の記事では、脳出血で後遺症が残らない確率について詳しく解説しています。脳卒中に関する調査結果を複数紹介しているので、理解を深めたい方はぜひあわせてご覧ください。 脳幹出血を発症したら回復の見込みはあるの? 回復の見込みは、患者さん一人ひとりの状態によって変わってきます。回復見込みを把握したい方は、担当医に聞いてみると良いでしょう。 以下の記事では脳幹出血の回復見込みに関する情報をまとめています。軽度または重度における障害の程度も解説しているので、理解を深めたい方はぜひ参考にしてみてください。 再生医療のメリット・デメリットが知りたい 再生医療のメリットは、患者さん自身の体から採取した組織を使用するため、拒絶反応のリスクが極めて低く、安全性の高い治療であることです。 また、従来の治療法(薬物療法や手術)が症状の安定化を主な目的としているのに対し、再生医療では損傷した血管の修復や新しい血管の形成を促すのが目的です。そのため、後遺症の根本的な症状改善が期待できます。 一方で再生医療のデメリットは、再生医療は2024年11月現在、保険適用外の自費診療となっているため、治療費が高額になる可能性があります。また、治療効果には個人差があるため、医師との十分な相談のもと慎重な判断が必要です。 【参考文献】 文献1:https://www.jstage.jst.go.jp/article/audiology1968/49/5/49_5_755/_pdf
2023.07.06 -
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脳幹出血になったら余命はどのくらい? どんな症状だったら余命に影響するの? この記事を読んでいるあなたは、脳幹出血になった人の余命がどのくらいなのか気になっているのではないでしょうか。 「今の症状だと、余命はどのくらいなのだろう」と、不安になっているかもしれません。 結論、脳幹出血の余命は症状の重さによって変わります。 脳幹出血のみの余命を調べたデータはないものの、重症の場合は発症後数時間から数日で亡くなるケースも少なくありません。ただ、発症した年齢が若い場合や出血量が少ない場合は、比較的余命に影響が出にくいこともあります。 本記事では、脳幹出血の余命や予後について、詳しく解説します。記事を最後まで読めば、脳幹出血の余命が症状ごとにわかり、現在の状況や今後の見通しの理解を深められるでしょう。 脳幹出血の余命に関する正確なデータはないが予後は悪い 脳幹出血だけの余命を調べた正確なデータはありませんが、予後は全体的に悪いといわれています。 重篤な脳幹出血が起こると急激に容体が悪化し、発症後数時間〜数日で亡くなる方も珍しくありません。 脳幹出血は「脳出血」の一種で、脳内にある「脳幹」という部位から出血する病気です。おもな原因は高血圧によって脳の血管が破れることで、脳出血の約1割ほどが脳幹出血といわれています。 脳出血後の余命は、調査対象の年齢や病状が異なるため、研究ごとにややばらつきがあります。生存率に関するデータは、以下の通りです。(文献1)(文献2) 脳出血を起こした人の平均余命は12年 脳出血を起こした人の10年生存率は24.1% 初めて脳出血を起こした人の1年生存率は38%、5年生存率は24% 初めて脳卒中を起こした年齢が50歳以下の人は、70歳以上の人よりも5年生存率が高い つまり、脳出血を起こした人の4人に3人は、余命が10年未満といえます。脳幹出血は上記に示した脳出血のなかでも予後が悪い病気のため、余命は比較的短いと考えられるでしょう。 脳幹出血の後遺症について解説した記事はこちら 脳幹出血の回復の見込みとその期間について解説した記事はこちら 脳幹出血の余命が短くて助からない人が多い理由 脳幹出血の余命が短い理由は、脳幹の機能が失われると生命の維持が難しいからです。 脳幹は「中脳」「橋」「延髄」の3つの部位から成り立つ器官で、以下のように生命維持に重要なさまざまな役割を果たしています。 意識を保つ 呼吸や血液の流れを調節する 身体が受けた刺激を脳へ伝える 手足を動かす信号を脳から出す 脳幹が行っている「呼吸や意識の保持など」が不可能になると、生命の維持は難しくなります。そのため、出血が起こり脳幹の機能が失われると、余命が短いケースが多いのです。 なお、脳幹のなかでも「橋」という部位で起こるケースが多いため、脳幹出血は「橋出血」とほぼ同じ意味となります。 【重症度別】脳幹出血の症状と余命への影響 脳幹出血の重症度は、余命に大きな影響を与えます。具体的には「出血量」は重症度に大きくかかわり、出血量が少なければ軽症、多ければ重症です。 本章で、脳幹出血の症状と余命への影響を理解しておきましょう。 軽症の場合 以下のような症状のみの場合は、軽症で余命への影響は小さい可能性があります。 嚥下の障害 顔の感覚や運動の障害 手足の運動や感覚の障害 複視(ものが二重に見える) 運動失調(バランスが取れずにふらつく) これらの症状は、脳幹出血の前兆で気付いたときや脳出血・脳梗塞など他の脳血管疾患でもみられます。 また、血管の奇形による脳幹出血の場合は軽症で済みやすく、一度の出血で命にかかわることはほとんどありません。 しかし、奇形のなかでも「海綿状血管腫」は出血をくり返して大きくなりやすいため、いずれ重い後遺症が出る可能性があります。 早めの受診で悪化を防ぎ、予後を改善できる可能性を高められます。もし紹介したような症状を感じたら、迷わずに当院へメール相談、もしくはオンラインカウンセリングにてご相談ください。 重症の場合 以下のような症状が出ている場合は、出血の多い脳幹出血の重症例と考えられます。生存率は低く、余命は短いケースが多いでしょう。 両手両足の麻痺 異常な呼吸パターン 重篤な意識障害:昏睡など 中枢性高熱:体温調節の中枢の障害による高熱 除脳硬直:筋肉が過剰に緊張し、手足が伸びきった状態 瞳孔異常:瞳孔不同(左右の黒眼の大きさが異なる)、縮瞳(黒眼が小さい)など 救急車を呼んだときは意識あり・自発呼吸ありだったにもかかわらず、急激に悪化して短時間で命を落とすケースもあります。 脳幹出血の治療 高血圧による脳幹出血は手術の適応があまりなく、基本的には血圧を下げて体の状態を保つ「保存的治療」が最優先されます。出血でダメージを受けた脳幹に対しては、手術が状況をより悪化させる危険性が高いためです。 ただし、血管奇形が原因の脳幹出血の場合は、時期をみて手術を検討するケースもあります。 脳幹は手術による合併症リスクの高い部位です。手術するべきか、どのタイミングで手術をするべきかなどは、状況をみて慎重に判断します。 なお、命が助かった場合は、日常生活に戻るためのリハビリも重要です。近年、リハビリはできるだけ早い時期から始めると予後が良いとされるため、ベッド上でできるものから少しずつリハビリを行います。 脳幹出血後のリハビリについては、以下の記事で詳しく紹介しています。 まとめ|脳幹出血の余命は短い人が多い 本記事では、脳幹出血の余命や、余命が短いといわれる理由などを詳しく説明しました。 脳幹は生命維持に欠かせない器官のため、脳幹出血によって機能が失われると余命が短いケースが多くみられます。ただし、軽症や前兆段階で気付いた場合、血管の奇形による脳幹出血の場合は、余命への影響が小さい可能性もあります。 手術のリスクが大きいため、積極的な治療ではなく保存的治療が原則となるでしょう。 当院「リペアセルクリニック」では、厚生労働省に届出を行い、再生医療(幹細胞)治療による脳幹出血後の治療を提供しています。 再生医療は脳神経細胞の修復・再生や脳の血管を新しく再生する作用により、後遺症の回復や脳幹出血の再発予防が期待できる治療です。 メールでの無料相談やオンラインカウンセリングも実施しておりますので、お気軽にご相談ください。 この記事が脳幹出血の余命を知るのに役立ち、今後の生活を再建するきっかけになれば嬉しく思います。 脳幹出血についてよくあるQ & A Q.脳幹出血を起こすと、どのくらい入院が必要になりますか。 A.入院日数に関する脳幹出血単独のデータはありません。 ただし、厚生労働省の統計では、脳の血管が詰まったり破れたりする「脳卒中」全般の平均入院期間は77.4日となっています。入院期間が比較的長いのは、脳卒中により神経にダメージが起こるからです。(文献3) 神経の回復は他の組織よりも遅く、麻痺や感覚障害などは完治しにくいものです。一番危ない時期を過ぎても、その後の体力の回復・リハビリテーションに時間がかかることも大きいでしょう。 Q.脳幹出血を起こさないために、どのようなことに気をつけたら良いでしょうか。 A.一番重要なのは血圧の管理です。そして適切な運動を心がけ、減塩に努めましょう。 すでに治療を受けている方は、しっかりと通院を続けてください。血圧が下がったからといって自己判断でお薬をやめないようにしましょう。 脳ドックなどで血管奇形が見つかった場合でも、出血症状がなければすぐに手術適応になることはありませんが、慎重な経過観察が必要になります。この場合も、血圧の管理は必要です。 Q.脳幹出血になったら助からないのでしょうか。 A.脳幹は生命維持に不可欠な器官のため、脳幹出血により機能が失われると助からないケースは珍しくありません。 ただし、脳幹出血で助かるか助からないかは重症度によって異なります。出血量が少なく障害の程度が低い軽症であれば、回復例もみられます。 助かるかどうかは、脳幹出血を初めて起こしたのか、再発なのかによっても異なるため、回復の見込みは医師に確認するのが確実です。 参考文献一覧 文献1 人口ベースのレジストリにおける脳内出血の発生率と10年生存率 Simona Sacco, MD, Carmine Marini, MD, Danilo Toni, MD, Luigi Olivieri, MD, and Antonio Carolei, MD, FAHAAuthor Info & Affiliations Stroke Volume 40, Number 2 文献2 初めての脳卒中から5年生存,Dzevdet Smajlović 1, Biljana Kojić, Osman Sinanović,Bosn J Basic Med Sci. 2006 Aug;6(3):17-22. doi: 10.17305/bjbms.2006.3138. 文献3 厚生労働省. 令和2年(2020)患者調査の概況. 3退院患者の平均在院日数等
2023.07.03 -
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脳幹出血の原因は何? 脳幹出血にならないための予防策はある? この記事を読んでいるあなたは、脳幹出血という病気に対して不安を抱いてるのではないでしょうか。 「今からできる予防法を知りたい」と思っている人もいるかもしれません。 結論、脳幹出血は動脈硬化が原因で起こるケースが多く、再発もしやすい病気です。しかし原因を知れば、適切な予防法を取れます。 本記事では、脳幹出血の原因や予防法について、詳しく解説します。記事を最後まで読めば、脳幹出血にならない方法がわかり、病気のリスクを軽減できるでしょう。 脳幹出血とは「脳幹(小脳・橋・延髄)で起こる出血」のこと 「脳幹」は、小脳・橋(きょう)・延髄という脳の部分を合わせた部位です。「呼吸」「体温調節」「ホルモン分泌」など、人間が生きるために重要な働きをしています。 脳幹出血によってそれらの機能が損なわれると命に関わることもあるため、あらかじめ原因や予防法に関する知識をつけておくことが大切です。 本章では、脳幹の働きや脳幹出血について説明します。脳幹出血の治療や生存率については、以下の記事も参考にしてください。 脳幹は生命の維持に不可欠な働きをしている 「脳幹出血」とは、脳出血の一種です。具体的には、脳のうち「脳幹」という部位の血管が破れて出血することを指します。 脳幹は、「小脳」「橋(きょう)」「延髄」からできており、心臓や呼吸などの生命維持に大きく関わります。各部位の働きは以下のとおりです。 部位 働き 小脳 ・筋肉の緊張や姿勢をコントロールする ・注意・言語・感情などの精神機能をコントロールする 橋(きょう) ・中脳や大脳、延髄などをつないでいる ・呼吸調節に関係する 延髄 ・呼吸や心臓の動きをコントロールする ・咳、くしゃみ、発生、発汗などにも関係する 脳内で出血すると血管からの酸素や栄養が供給されなくなり、脳はダメージを受けます。 また、脳内に血液があふれることで周りの脳細胞が圧迫される、出血により脳内の圧力が高まるなども、脳がダメージを受ける原因です。 出血により脳幹がダメージを受けると、意識不明の重体や寝たきり、ひどい場合は死に至るケースも珍しくありません。 脳幹出血は再発しやすい 脳幹出血を含む「脳出血」は、再発しやすい病気です。 具体的には、脳出血を10年以内に繰り返す確率(10年再発率)は55.6%というデータがあります。つまり、2人に1人の割合で、10年以内に脳出血の再発が起きています。(文献1) 出血によってダメージを受けた脳は、通常の医療技術による回復・修復は困難です。 また、脳出血を再発すると、初回はダメージを受けなかった部分もダメージを受けます。よって再出血時はさらに広い範囲の脳がダメージを受け、重い後遺症が出るケースもあります。 脳幹出血の主な原因は「高血圧による動脈硬化」 脳幹出血の主な原因は、「高血圧による動脈硬化」です。ただし、血圧に問題の無い人の場合、血管の奇形が原因のケースもあります。 本章の内容をもとに、脳幹出血の正しい基礎知識を身につけておきましょう。 脳幹出血後の回復については、以下の記事を参考にしてください。 動脈硬化は高血圧が原因で起こることが多い 脳幹出血を起こす「動脈硬化」は、主に高血圧によって起こると考えられています。 高血圧が動脈硬化を起こして脳幹出血に至る流れは以下のとおりです。 高血圧によって脳の血管に圧力がかかり続ける 動脈硬化が進み、血管がもろくなる 脳の血管が破れて出血が起こる 高血圧は「塩分の取りすぎ」「食生活の乱れ」「ストレス」「喫煙習慣」など、複数の要因が重なって起きるといわれています。(文献2) 「血圧が高くても体調は問題ない」と放置すると、脳出血につながる恐れもあるため、高血圧と診断された場合は医師の指導のもと早めに治療しましょう。 血管奇形が原因のケースもある 脳出血は、「脳動静脈奇形」という脳の血管奇形によって起こるケースもあります。脳動静脈奇形とは、脳の動脈と静脈をつなげる部分が「ナイダス」と呼ばれるとぐろを巻いたような固まり(奇形)になっている病気です。 奇形の部分は正常な血管よりも壁が薄いため破れやすく、20〜40代の若い人が脳出血になる原因の一つといわれています。 なお、奇形自体が痛みなどの症状を起こすことは、ほとんどありません。「脳出血」「頭痛」「てんかん発作」などの病気が出て見つかる、偶然受けた脳の検査で見つかるなどのケースが一般的です。 【今すぐできる】脳幹出血を予防する4つの方法 今すぐできる脳幹出血の予防方法は、以下の4つです。 減塩する 大量飲酒・喫煙を控える 肥満を解消する ストレスを溜めない 本章の内容をもとに脳幹出血の原因となる「高血圧」「動脈硬化」などのリスクを減らし、脳幹出血を予防しましょう。 減塩する 脳幹出血の大きな原因である「高血圧」の予防には「減塩」が有効です。 食塩摂取量の目標は、「健康日本21(第三次)」の目標値では7.0g未満、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の目標量では、成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満とされています。(文献3)(文献4) 日本人は、食生活のなかで食塩の量が多くなりがちです。 以下に、厚生労働省が発信している減塩のコツを紹介します。ぜひ参考にして、毎日の食生活を見直してみてください。 1.漬物は控える 自家製浅漬けにして少量に 2.麺類の汁は残す 全部残せば2~3gの減塩になる 3.新鮮な食材を用いる 食材の持ち味で薄味の調理 4.具だくさんの味噌汁にする 同じ味付けで薄味の調理 5.むやみに調味料を使わない 味付けを確かめて使う 6.低ナトリウムの調味料を使う 酢、ケチャップ、マヨネーズ、ドレッシングを上手に使う 7.香辛料、香味野菜や果物の酸味を利用する こしょう、七味、ショウガ、柑橘類の酸味を組み合わせる 8.外食や加工食品を控える 目に見えない食塩が多く含まれている。塩干物にも注意する 引用: e-ヘルスネット(厚生労働省) 大量飲酒・喫煙を控える 大量の飲酒は、脳出血はもちろんのこと、脳梗塞やくも膜下出血のリスクも上昇させます。お酒の飲みすぎは避けましょう。 1日あたりの飲酒量の目安を、以下に紹介します。 ビール:中瓶1本500ml 清酒:1合180ml ウイスキー・ブランデー:ダブル60ml また、たばこの煙に含まれる有害物質は動脈硬化を起こし、脳出血をはじめとする脳の病気のリスクを高めます。(文献5) たとえば、たばこを吸う人は吸わない人に比べ、男性で1.3倍、女性で2.0倍脳卒中(脳出血・クモ膜下出血・脳梗塞)になりやすいというデータもあります。 お酒の飲みすぎとたばこは、どちらも控えるようにしましょう。 肥満を解消する 肥満の解消も、高血圧に伴なう動脈硬化や脳出血のリスク軽減に役立ちます。 具体的には以下の内容を試してみてください。 週に2~3回、20~30分程度の運動を行う(ウォーキング・息が上がらない程度のジョギング・サイクリング・水泳など) バランスの良い食生活を心がけ、高脂肪、高炭水化物の食事は避ける ストレスを溜めない 過剰なストレスは血管の収縮を引き起こし、血圧を上昇させるため、脳出血の原因となります。 また、ストレスを溜めると、高血圧の原因になる暴飲暴食や過剰な飲酒、喫煙などにつながり、脳出血の間接的な原因になりかねません。(文献6) ストレスを溜めないよう「生活習慣を整える」「困ったことがあれば誰かに相談する」などを、心がけてみてください。 脳出血とストレスの関係については、以下の記事も参考にしてください。 まとめ|生活習慣を見直して脳幹出血を未然に防ごう 本記事では、脳幹出血の概要や主な原因、予防策などを詳しく解説しました。 「脳幹出血」は脳出血の一種で、呼吸や言語機能に関連する「脳幹」から出血する病気です。最大のリスクは高血圧による動脈硬化ですが、血管の奇形によって起こる人もいます。 脳幹出血を防ぐには、高血圧にならないことが重要です。日頃から食生活や運動などに気を配ると良いでしょう。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療(幹細胞治療)による脳卒中の再生医療を実施しています。通常の保険診療では難しい壊れた脳細胞の再生も、再生医療なら可能です。 当院ではメール相談やオンラインカウンセリングも実施していますので、お気軽にお問い合わせください。 この記事が脳幹出血の基本的な知識を知るのに役立ち、効果的に予防できるきっかけになれば嬉しく思います。 脳幹出血についてよくある質問 脳幹出血を起こしても助かりますか。 少しでも早く治療を受けることが大切です。脳幹出血は、その部位の役割や特徴から、生命に直結する危険性もある病気です。ただ、早く治療を開始できれば、命が助かる可能性ももちろんあります。 日頃から、高血圧予防などの生活習慣改善に努め、健康診断などを受けて体調管理をしておくことがおすすめです。 脳幹出血は再発するとどうなりますか。 脳幹出血が再発すると、さらに重い後遺症が出ると考えられます。今までダメージが最小限に抑えられていた部分もダメージを受けると、より言語や呼吸の機能が低下するからです。場合によっては、命に関わるケースもあります。 再発を防ぐために、脳幹出血になったことのある人は、医師の指示にしたがってしっかりと血圧のコントロールを行いましょう。 参考文献一覧 文献1 Ten year recurrence after first ever stroke in a Japanese community: the Hisayama study J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2005 Mar;76(3):368-72. doi: 10.1136/jnnp.2004.038166. 文献2 e-ヘルスネット(厚生労働省) 文献3 健康日本 21(第三次)推進のための説明資料 厚生労働省 文献4 日本人の食事摂取基準(2020 年版)厚生労働省 文献5 男女別、喫煙と脳卒中病型別発症との関係について 国立がん研究センター 文献6 舛形尚 ほか.高血圧外来患者の精神的ストレスと血圧コントロールの関係.日本病院総合診療医学会雑誌 2017:12(2)p13-17
2023.06.29 -
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もやもや病がまねく脳梗塞のリスク要因と予防策について解説します もやもや病は脳血管の異常により起こる、原因不明の難病です。 もやもや病は脳梗塞をまねく可能性があり、その先の社会生活に大きな影響を及ぼすことがあります。しかし、上手にリスクに対応できれば、脳梗塞を起こす可能性を少なくすることができます。 この記事では、もやもや病がまねく脳梗塞のリスク因子と、予防策を中心に解説をしていきます。 もやもや病ってどんな病気? もやもや病は、一時的に脳内に充分な血液がめぐらなくなる「脳虚血発作」をきたします。 発作時には、麻痺や手足のしびれを起こしたり、うまく言葉がしゃべられなくなったりします。病気が進行すると、てんかんを起こしたり、脳梗塞や脳出血・くも膜下出血を発症したりすることもあるのです。 脳虚血発作は、脳梗塞の前触れともいえる状態です。 この発作は、生活上の注意で避けられることも多くあります。ひとたび脳梗塞が起こると、梗塞部の脳細胞は死んでしまいます。結果、麻痺・言葉の障害や、記憶・注意・感情などに関連する高次脳機能障害といった後遺症をもたらします。 子供と大人での発症の違い もやもや病の発症年齢には、10歳くらいまでと、30〜40歳代の2つの山があります。 子供の場合は、脳虚血の症状で発症することが多いです。 一方、大人では脳虚血の他に、細い血管が破れる出血で発症することもあります。 最近では、自覚症状がないまま、人間ドックなどで、もやもや病が見つかる人も増えています。長年の頭痛の原因が、もやもや病であった、ということもあるようです。 なお、この病気は法律の定める指定難病の一つです。画像検査で診断が確定したうえで、一定以上の重症度と考えられる方には、申請により医療費の補助がおります。 もやもや病による脳梗塞を防ぐには? もやもや病による脳梗塞を防ぐためにはどうすればよいのでしょうか。大切なのは、前ぶれである脳虚血発作を繰り返さないようにすることです。 〜子供の場合〜 子供の場合、脳虚血発作の多くは過呼吸、つまり激しく息を吸ったり吐いたりすることで起こります。過呼吸により二酸化炭素が体から出ていくと、脳内の血管が縮みます。そうなると、脳の血のめぐりが悪くなり、発作を起こすのです。 脳虚血発作を繰り返している方は、日常生活では、この過呼吸状態を避ける必要があります。 具体的には、次のようなことが挙げられます。 過呼吸につながる行動 激しく泣く 大声で笑う 息が切れるような運動をする 笛やハーモニカ、鍵盤ハーモニカなどを演奏する 大きな声で応援をする 熱いものを「ふーふー」と冷ます こういったことを制限すると、保育園・幼稚園や学校での生活に大きく影響してしまうことになります。保護者や学校の先生など、周囲の大人の理解と協力が必要になります。 また、脱水も脳の血のめぐりが悪くなってしまう原因になります。嘔吐や下痢・高い熱の時は、こまめに水分をとることを心がけてください。暑くなる季節には、熱中症を予防することも重要です。 〜大人の場合〜 大人の患者さんでも、発作を引き起こす行動があれば回避する必要があります。 加えて、脳梗塞の一般的なリスク管理が必要です。高血圧・糖尿病・脂質異常症といった生活習慣病をお持ちの方は、しっかり治療を受けてください。肥満であれば体重を減らす必要があります。タバコを吸っている方は禁煙をしてください。アルコールの飲み過ぎは、脱水につながるので気をつけましょう。 脳梗塞のリスク管理 生活習慣の見直し 体重の管理 禁煙する アルコールを飲みすぎない 患者さんの状況によっては、血液をさらさらにするお薬を処方されることがあります。発作を繰り返す場合には、脳の血液の流れを改善するための手術を考えます。ひとりひとり、必要な治療は異なります。どのような治療をどのようなタイミングで行うのか、担当の医師ともよく話し合いましょう。 もやもや病と脳梗塞の関係についてよくあるQ & A Q, 発作が起こったときはどすればよいですか? A, まずは、状況を把握することが重要です。麻痺やしびれなどの症状を確かめましょう。そして、ゆっくり息ができるように休みましょう。 落ち着いたら、どのような状況でどのような発作が起こったのか確認しておくことも大切です。いつもより麻痺・しびれなどが長く続く、意識の状態が悪いなど、「なにかおかしい」と感じた場合は、医療機関を受診しましょう。 Q, この病気の治療や経過の見通しは? A, 脳梗塞・脳出血などを起こしてしまうと、たとえ命にかかわらなかったとしても、運動や言葉の障害や、記憶障害などの高次脳機能障害を残してしまうことがあります。そうなると、社会生活に大きな影響を及ぼしてしまう可能性があります。 一方で、適切な管理・治療を受けた方の多くは、最終的には日常生活の制限なく安定して過ごすことができます。そのためにも、定期的に通院し、必要な治療のタイミングを逃さないことが大切です。 まとめ・もやもや病がまねく脳梗塞は、リスクの要因(因子)と予防方法を知って治療のタイミングを逃さないことが大切! 「脳の病気」「難病」といわれると、とても心配になると思います。しかし、適切なタイミングで適切な治療を受けることで、最終的には病気のない人とほぼ変わらない生活を送ることができるようになった患者さんが多くいらっしゃいます。生活上の注意点を守りながらきちんと通院し、担当医と治療方針を相談しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 〈参考文献〉 冨永ら.もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)診断・治療ガイドライン(改訂版).脳卒中の外科 46 (1), 1-24, 2018 難病情報センター.病気の解説(一般利用者向け) もやもや病(指定難病22) https://www.nanbyou.or.jp/entry/47 難病情報センター.診断・治療指針(医療従事者向け) もやもや病(指定難病22) https://www.nanbyou.or.jp/entry/209 ▼モヤモヤ病の情報:以下もご覧になりませんか もやもや病の初期症状かもしれません|特徴やサインを知って早期発見を!
2023.06.26 -
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もやもや病を大きくわけると「虚血型」と「出血型」の2種類があります。発症した種類によって初期症状は異なります。 本記事では「虚血型」と「出血型」の違いを明確にした上で、それぞれの初期症状を詳しく解説します。 もやもや病は脳梗塞や脳出血、くも膜下出血を発症する可能性がある怖い病気です。この記事を参考にして初期症状のサインを知り、もやもや病の早期治療につなげていきましょう。 もやもや病の初期症状サイン【チェックリストあり】 もやもや病の初期症状を見る前に、もやもや病の特徴を理解しましょう。 もやもや病とは、脳に血液を送るための血管である「内頚動脈」が、徐々に細くなったり、詰まったりして、脳の血液不足を引き起こす原因不明の病気です。 不足した血液を補うために、細い血管が脳内に異常に発達していきます。血管を造影すると、細い血管が「もやもやした煙」に見えることから「もやもや病」と名付けられました。 もやもや病には、血管が狭くなるのが原因で血液不足を起こす「虚血型」と、増殖した血管が破裂して出血する「出血型」の2種類があります。 それぞれの初期症状のサインを見ていきましょう。 虚血型の場合 虚血型は、脳内の血管が細くなったり、詰まったりして血液不足を起こしている状態です。虚血型の場合、以下のような初期症状が現れます。 頭痛 けいれん 意識障害 言語障害 手足の麻痺 手足のしびれ 虚血型は、血管の狭窄が進行すると脳の組織への血流が完全に途絶え、脳梗塞を発症するリスクがあります。重症化を防ぐためには、早期発見が重要です。疑われる初期症状が見られたら、早めに病院を受診しましょう。 また、血流不足は脳の前頭葉にダメージを与え、高次脳機能障害を引き起こす可能性もあります。前頭葉には感情をコントロールする働きがあるため、高次脳機能障害を発症すれば、性格変化の症状が現れるケースもあります。 もやもや病から発症する高機能障害については以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はあわせてご覧ください。 出血型の場合 出血型は、細かい血管の増加が影響して出血を起こす状態です。出血すると、脳出血、くも膜下出血などを引き起こします。初期症状は、出血の種類によって異なります。 たとえば、くも膜下出血の場合の初期症状は以下のとおりです。 頭痛 めまい 吐き気 視力低下 意識障害 脳出血やくも膜下出血は、運動や感覚の麻痺といった後遺症を残す可能性がある病気です。症状が深刻化する前に初期症状が見られたら、速やかに医療機関を受診しましょう。 くも膜下出血や脳出血を含む脳卒中の治療法の1つに「再生医療」があります。身体のしびれや麻痺、言語障害といった後遺症も治療対象です。 期待できる治療効果が知りたい方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にご相談ください。 もやもや病の初期症状が現れたら早期に病院を受診する 血管が詰まって脳梗塞を起こした場合や、増加した血管から出血を起こした場合は、手足の麻痺や、言語の障害、脳機能障害などの後遺症が出ることもあります。そのため、早期に診断して専門の病院で治療を受けることが大切です。 以下の記事では、もやもや病が引き起こす脳梗塞のリスクについて解説しています。予防策も紹介しているので、詳細が気になる方は参考にしてみてください。 適切な治療や管理を受けている場合には、約7割程度の方は症状的に安定して生活を送っていると推計されています。 脳の血管の狭窄は、最初の診断時と同じ状態が何年も変わらない方もいれば、徐々に進行していく方もいるといわれています。従って、定期的にMRIなどによる画像検査が必要です。 もやもや病の治療方法 もやもや病の治療には「内科的治療」と「外科的治療」があります。 「内科的治療」では、詰まりかけている血管の血液の流れを改善する際に、抗血小板剤(血液をサラサラにする薬)、出血の予防を図るときは、血圧・脳圧をコントロールする薬を投与します。ただし、病院によって使用する薬が異なる可能性があるので、内科的治療を進める際は、事前に担当医に確認しましょう。 内科的治療を実施しても効果が不十分な場合や、根本的治療を目指す場合は、外科的治療を検討します。 もやもや病における「外科的治療」は、血行再建術(バイパス手術)です。バイパス手術は主に、頭皮の血管と脳表面の血管を直接つなぐ「直接再建術」と、血流が多い側頭筋や骨膜を脳の表面に置いて接着する「間接血行再建術」の2種類があります。 以下の記事では、もやもや病の手術についてさらに詳しく解説しています。入院期間や手術の成功率なども紹介しているので、気になる方はあわせてご覧ください。 まとめ|もやもや病の初期症状を感じたら早急に専門家の受診しよう もやもや病の初期症状は、明らかに違和感を感じるような症状もあれば、風邪の症状と混同してしまうような症状もあります。 もやもや病は、脳梗塞やくも膜下出血、脳出血といった脳卒中を引き起こす可能性のある病気です。なるべく初期症状の段階で病院を受診し、早期治療するのが望ましいといえます。 「なんかいつもの体調不良と違う…」「こんな症状初めて!」などの違和感を覚えたら、もやもや病の可能性も視野に入れて病院の受診を検討しましょう。 もやもや病から発症する脳卒中の治療には「再生医療」が効果的です。 再生医療は人間の自然治癒力を活用した最先端の医療技術です。幹細胞の修復力を利用して、損傷した脳細胞の機能回復を促進します。 脳卒中の後遺症も治療対象なので、具体的な治療法や効果が知りたい方は再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 もやもや病に関するよくある質問 最後にもやもや病に関するよくある質問と回答をまとめます。 もやもや病で手術を受けた方がいい場合は? 内科的治療を試しても効果が見られない場合や、現時点で脳梗塞や脳出血の発症リスクが高いと診断された場合は手術を受けたほうが良いといえます。手術は脳梗塞や脳出血の予防にもつながります。 子どもが発症した場合、年齢が低いほど、脳梗塞や脳出血などの重篤な症状を出しやすいとされているため、診断がついた時点で手術を検討するのが良いでしょう。 もやもや病が遺伝する可能性はありますか? 現在でも詳細な原因は不明であり、必ずしも遺伝する病気というわけではありません。 最近の研究では、もやもや病に関係した遺伝子(RNF213遺伝子)が発見されていますが、病気になる感受性が高くなる「感受性遺伝子」であって、病気の「原因遺伝子」ではないとされています。この遺伝子は、もやもや病がない一般の方にもみられる遺伝子ですので明らかな原因とは言えません。 家族内でもやもや病がみられる家族性のもやもや病は10〜20%であり、遺伝子以外に他のなんらかの要因が加わることで発症するのではないかと推測されています。(文献1) 以下の記事では、もやもや病と遺伝の関係性について詳しく解説しています。具体的な情報が知りたい方は、参考にしてみてください。 もやもや病の初期症状は子どもと大人で違いますか? 子どもと大人は同じ初期症状もありますが、発症しやすいもやもや病の種類が異なるため、症状に違いが見られる場合があります。 たとえば、子どもは虚血型のもやもや病を発症しやすいと言われており、虚血型の初期症状は手足のしびれや麻痺、言語障害などです。 大人は、出血型のもやもや病を発症しやすく、初期症状では頭痛やめまい、意識障害などを生じます。 ただし、子ども・大人どちらとも「虚血型」と「出血型」を発症する可能性はあるので、年齢に関わらず初期症状の知識を広く理解しておきましょう。 以下の記事では、もやもや病における大人と子どもの違いをまとめています。違いを見分ける上での注意点も解説しているので、詳細が気になる方はあわせてご覧ください。 【参考文献】 文献1:https://www.nanbyou.or.jp/entry/209
2023.06.22 -
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「もやもや病」の後遺症と社会復帰や運転への影響について もやもや病という病気をご存知でしょうか?正式名称は「Willis動脈輪閉塞症」といい、脳の血管が狭窄・閉塞して起こる病気です。指定難病であり、MRIやCTなどの画像検査で診断をすることが可能です。この病気は、脳卒中の原因にもなり、高次機能障害や記憶障害など様々な症状を引き起こす可能性があります。 この記事では、もやもや病について、社会復帰や運転は可能なのか、さらに後遺症の種類について詳しく解説しています。 もやもや病とは もやもや病とは、脳の血管に生じる病気です。Willis動脈輪という脳の血管の経路のなかで、両側の内頚動脈が狭窄もしくは閉塞してしまった際に起こります。内頚動脈は脳への血流の経路として非常に大切な血管であり、閉塞してしまうと、脳への血流が低下してしまいます。 人間の体は、血流が不足するとそれをなんとか補おうとします。そのため、側副血行路とよばれる新しい血管がたくさん作られます。そうして新しくできた血管が、もやもやとたばこの煙のように見えることから「もやもや病」と呼ばれるようになりました。 この側副血行路は細く、弱い血管です。そのため破れて出血することもあれば、血流が流れていても不十分な場合もあります。そして、この血管が破れると脳出血になり、血流が行き届かないと脳梗塞や脳虚血になります。 もやもや病、大人と子供で症状が違う? もやもや病は主に、10歳以下の小児で発症する場合と、30代から50代の成人で発症する場合の2つがあります。小児で発症する場合は、大部分が虚血症状、つまり脳への血流が不十分になった時に症状を起こします。 例えば、熱いものを吹き冷ますときや、大泣きした時、リコーダーを吹いた時などです。過呼吸状態になると、脳への血流が低下し、脱力発作やけいれんなどの症状を起こします。また、起床時に頭痛が見られることがあり、学校を休むほどの子もいます。 成人で発症する場合、虚血症状の場合も半分程度ありますが、残りの半分はもやもや血管が破れて脳出血となることで発症します。突然の頭痛や意識障害、片麻痺などを初発症状として認めます。 もやもや病の原因と診断基準について もやもや病の原因ははっきりとはわかっていません。最近の研究では、特定の遺伝子を持つ方に発症しやすい傾向があることまでは分かっています。もやもや病を疑う症状があった場合は、MRIや脳血管造影検査などを行い、内頚動脈の閉塞ともやもや血管の存在を確認します。この2つが確認できた場合、もやもや病と診断できます。 CTで脳出血や脳梗塞を確認することができる場合もあります。また、脳の血流を判定するSPECTやPETといった検査が試行されることもあります。 もやもや病の治療に薬は有効か? 閉塞部を改善する根本的な治療はなく、症状を改善させる対症療法が基本になります。外科的な手術としては、脳の血管どうしをつなぎ合わせて、血流が足りない部位へ血液を供給するバイパス術が行われることもあります。 脳卒中で発症した場合は、まずは脳卒中に対する一般的な治療が行われます。その後症状が安定した段階で、バイパス術など外科的な治療を考慮します。脳の血流が不足している場合には、血液をサラサラにする機能がある抗血小板薬を内服し、血流が滞らないようにします。また、けいれんで発症した場合には、抗けいれん薬を用います。 後遺症や社会復帰について もやもや病は、重篤な症状を発症する前に、バイパス手術などの治療を行うことができれば、後遺症なく社会復帰できる可能性が高い疾患です。 しかし、早期発見ができず、脳出血や脳梗塞で発症した場合、障害されている部位やその大きさによって以下のような症状が後遺症としてみられることがあります。これらの後遺症は、人によって程度が違うため、一概には言えませんが、適切なリハビリテーションとサポートがあれば、多くの方が日常生活に戻ることができます。 もやもや病でみられる後遺症 ◇運動麻痺 片側の手足が動かなくなることが多いです。 動かなくなる程度は出血の大きさによって異なる。 リハビリによって改善は認めますが、何らかの障害が残る可能性があります。 ◇感覚障害 触られている感覚や、痛みの感覚に異常が生じます。 この感覚は鈍くなる場合と、反対に過敏になりすぎる場合があります。 ◇高次機能障害 記憶力や注意力に問題がおこる可能性があります。 感情をコントロールできなくなったり、言葉が出にくくなったりすることもあります。 ◇嚥下障害 食べ物を飲み込みにくくなる症状も起こる可能性があります。 出血の部位によっては、回復が難しい場合もあり、口から食事を摂れなくなることもあります。 ◇構音障害 呂律が回りにくくなることがあります。 言葉が不明瞭になり鼻にかかったようなしゃべり方になる場合が多いです。 社会復帰や運転はできる? 仕事復帰や運転となると、元通りとはいかない場合もあります。 特に運転には集中力、瞬発力、視覚能力などが求められます。これらに後遺症が残った場合は、危険性を考慮して運転が許可されない方もいます。 脳出血や脳梗塞に至らなかったとしても、一次的な脳虚血によってけいれん発作や視野障害などが起こる場合も、車の運転が制限されることもあります。運転をしたい場合は、主治医の先生とよく相談しましょう。また、定期的な通院も欠かさず行う必要があります。 もやもや病についてよくあるQ&A Q:もやもや病は遺伝する可能性がありますか? A:10〜20%の患者では血のつながった家族に同様の病気があるといわれています。若くして脳卒中を発症した家族がいる場合には、もやもや病が原因の場合もあります。そのような方は、家族性発症のリスクがあるため一度MRIなど詳しく調べることをお勧めします。 Q:子供がもやもや病になった場合、成長や学習能力に影響はありますか? A:小児の場合、発見が遅くなると、脳の神経細胞への血流が阻害され、知的機能や運動機能に偏りが起こる場合があります。治療が早ければ後遺症も少なく、成人しても自立した社会生活を送ることもできます。少しでも異変を感じた際は、早急に専門医を受診するようにしてください。 まとめ・「もやもや病」の後遺症と社会復帰や運転への影響について もやもや病は、症状や後遺症が個々に異なる希少な疾患です。手術などの治療により、後遺症なく社会復帰できる場合もあれば、なんらかの介護が必要となる場合もあります。 検査技術などの進歩によって、早期に正確な診断ができるようになっています。危険性に気が付くためには、病気について知ることが第一歩です。少しでも不安なことがある場合は、放置せず、脳ドックを受けたり、専門医を受診したりしてみましょう。 い湯、もやもや病で考えられる後遺症と、社会復帰への影響について記しました。 この記事がご参考になれば幸いです。 ▼以下の「もやもや病」の記事もご覧ください もやもや病の手術について|成功率や予後予測とは
2023.06.19 -
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「もやもや病の手術は難易度が高いって本当?」「成功率はどのくらい?」と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。 もやもや病は頭の中で血管が詰まる病気で、手術が必要な場合もあります。 しかし脳の手術は難易度やリスクが高いと感じ、不安になるかもしれません。 結論からいえば、もやもや病の手術の難易度は高いといえます。血管をつなぐ繊細な作業が求められ、4~6時間に及ぶ手術になることもあるためです。 この記事では、もやもや病の手術方法の種類や難易度、成功率などを解説しています。もやもや病の手術について理解を深め、治療に前向きに臨むための参考資料になれば幸いです。 また、当院「リペアセルクリニック」では脳梗塞や脳出血の治療も行っております。 もやもや病に関して気になる症状がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 もやもや病の手術の難易度は高め もやもや病の手術は、脳の血流を改善するために行われるもので、難易度は高めといえます。 繊細な血管を扱う技術が求められ、一般的な手術と比べて以下のとおり難易度が高いのが特徴です。 本章では、手術の難易度が高いとされる理由や背景を詳しく解説いたします。 血管外科医の高度な技術が必要 もやもや病の手術には、血管外科医の高度な技術が欠かせません。 脳の血管は非常に細く、複雑に入り組んでいます。 もやもや病の手術では、顕微鏡を使用しながらミリ単位の血管を縫い合わせる繊細な作業が必要です。そのため、高度な技術と豊富な経験を持つ医師の執刀が求められます。 したがって、もやもや病の手術は難易度が高いといえるでしょう。 手術時間は数時間に及ぶ もやもや病の手術は、脳の血管を慎重につなぐ作業が続くため、通常4〜6時間ほどかかり、高い集中力が求められます。 とくに、血流を確保する繊細な工程では、一瞬の判断ミスが大きな影響を与えかねません。 そのため、熟練した技術と高い集中力が不可欠です。 難易度の高い手術ですが、具体的な時間など事前に理解を深めておくと不安を軽減できるでしょう。(文献1) もやもや病の手術方法は主に2種類ある もやもや病の手術には「直接バイパス手術」と「間接バイパス手術」の2種類があります。 どちらも脳の血流を改善する目的ですが、アプローチや効果に違いがあります。それぞれの特徴は以下のとおりです。 手術方法 特徴 主なメリット 直接バイパス手術 血管を直接接続する方法 即効性が高い 間接バイパス手術 血管の自然成長を促す方法 身体への負担が少ない それぞれの手術について詳しく解説します。 直接バイパス手術 直接バイパス手術は、頭皮や首の血管を脳の血管に接続する方法です。 この手術は即効性が高く、術後すぐに血流改善が期待できます。 一方で、手術には高度な技術が求められ、執刀医の経験が成功率に大きく影響します。 また、術後の合併症リスクを軽減するため、精密検査や丁寧な経過観察が欠かせません。 間接バイパス手術 間接バイパス手術は、頭皮や筋肉を脳表面に移植して血流改善を促す方法です。 新しい血管の成長を利用するため、身体への負担が少ないのが特徴です。 ただし、直接バイパス手術ほど即効性はなく、効果が現れるまでに時間を要する場合があります。 とくに子どもや血管が細い患者に適しており、長期的な観察と適切なリハビリが重要です。(文献2) また、もやもや病の詳しい症状や治療法については以下の記事でも詳細に解説しているので、参考にしていただけると幸いです。 もやもや病手術の成功率とリスク もやもや病の手術は成功率が高い一方で、いくつかのリスクも伴います。 適切な手術を受けることで8割以上の成功が見込めますが、合併症や少数の脳出血のリスクも考慮する必要があります。 ここでは、成功率と注意すべきリスクについて詳しく解説します。 適切な手術によって成功率は8割程度 もやもや病の手術は、適切に行われれば成功率は8割程度とされています。手術を行うことで、血流が改善し、症状の進行を抑えられる点が大きなメリットです。 しかし、成功率は手術を担当する医師の技術や施設の設備によって異なります。 経験豊富な医師の執刀によって、さらに高い成果が期待できるでしょう。 手術前には十分な説明を受け、不安を解消した上で治療に臨むことが重要です。 合併症のリスクがある もやもや病の手術には、術後の感染症や血管の閉塞など、合併症のリスクが伴います。 これらのリスクを減らすためには、術前の精密検査や術後の経過観察が欠かせません。また、体調を整えて手術に臨むことも大切です。 医師と密に連携し、不安や疑問をしっかり解消しておきましょう。 脳出血を起こす少数事例もあり もやもや病の手術では、少数ですが脳出血の事例も報告されています。血流の変化により脳の負担が一時的に増える可能性があるためです。 ただし、こうしたリスクは経験豊富な医師による適切な対応で抑えられます。また、術後は医師の指導に従い、慎重にリハビリを進めていきましょう。 もやもや病が招くリスクについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。 もやもや病の入院期間や予後・寿命について もやもや病の手術後の入院期間は2〜3週間で、リハビリを含めて社会復帰までには1〜2カ月ほどかかるのが一般的です。 ただし、入院期間や回復までの時間には個人差があります。 本章では、入院期間から社会復帰、寿命への影響について詳しく解説します。 入院期間は2〜3週間が一般的 もやもや病の手術後、入院期間は2〜3週間程度が目安です。 術後は脳の血流状態を慎重に観察し、退院後も合併症の兆候がないか定期的な検査を行うことで、寿命へのリスクを最小限に抑えられます。 術前に入院期間を確認し、術後の生活を計画しておきましょう。 社会復帰には1〜2カ月が目安 術後の経過や重症度によって差はありますが、もやもや病の手術後、社会復帰するまでには、通常1〜2カ月程度かかるとされています。 手術後はリハビリを経て、日常生活に戻ることを目指します。 デスクワークや軽作業は比較的早く再開できますが、体力が必要な作業はできるだけ避けたほうが良いでしょう。 医師やリハビリスタッフのアドバイスを受けながら、無理のない範囲で復帰を進めることが大切です。 術後の回復状況に応じて、焦らず段階的に日常生活を取り戻していきましょう。 完全回復には半年以上かかる場合も もやもや病からの完全回復には半年以上かかる場合があるため、その間のケアが重要です。(文献3) 手術で血流が改善されることで、もやもや病による寿命へのリスクは大幅に軽減されます。 ただし、重症の場合や術後の合併症がある場合は、引き続き注意が必要です。 健康寿命を延ばすためには、適切なリハビリと生活習慣の改善が欠かせません。 まとめ|もやもや病の手術は難易度とリスクも理解しておこう この記事では、もやもや病の手術に関する難易度や成功率、入院期間について解説しました。 もやもや病の手術は、脳の血管を扱う繊細な治療であり、難易度は高めといえます。手術を受けるかどうかは、担当医と十分に相談し、納得できる選択を心がけましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では脳卒中の再生医療も行っております。症状に不安がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ もやもや病の手術難易度に関するよくある質問 もやもや病は寿命に影響する? 適切な治療を受ければ、寿命への影響を最小限に抑えられます。ただし、放置すると脳卒中や血流障害が進行し、命の危険が高まる可能性があります。 手術によって血流が改善されれば、日常生活への支障が減り、健康寿命が延びるケースも多いでしょう。 また、術後も医師の指導に従い、定期的な検診を受ける必要があります。 以下の記事では、もやもや病の初期症状やリスクチェックについて紹介しているので、ぜひ参考にしてください。 もやもや病の手術は何回くらい必要ですか? もやもや病の手術は、基本的に1回で終えるケースが多いです。ただし、血流改善が不十分な場合や再発リスクが高い場合は、追加の手術が検討されることもあります。 1回目の手術で血流が安定すれば、再手術の必要性は低いといえるでしょう。 もやもや病の手術後に運動はできますか? 術後のリハビリを経て、軽い運動が可能になります。ウォーキングやストレッチなどの負担が少ない運動が推奨されます。 ただし、激しい運動は脳への負担が大きいため、術後しばらくは控えるべきといえる医師やリハビリスタッフの指導に従い、段階的に運動量を増やしていきましょう。 手術に失敗して後遺症が出るリスクはありますか? 手術が成功しても、少数ですが後遺症が出るリスクはあります。代表的な例として、軽度のしびれや血管の再閉塞などが挙げられます。 これらのリスクを最小限に抑えるため、経験豊富な医師の執刀と術後の経過観察が重要です。 不安な点は手術前に医師と相談し、納得した上で治療に臨むことが大切です。 もやもや病の後遺症については以下の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてください。 また、当院「リペアセルクリニック」では、脳疾患の後遺症治療として、再生医療を行っております。後遺症リスクが不安な方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 参考文献一覧 文献1 J-Stage_もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)診断・治療ガイドライン(改訂版) 文献2 J-Stage_もやもや病に対する間接血行再建術後における皮質および脳溝内の FLAIR 高信号と術後一過性神経脱落症状との関連 文献3 難病情報センター_もやもや病(指定難病22)
2023.06.15 -
- 足部、その他疾患
- 足部
スポーツなどで起こりやすいとされるアキレス腱断裂は、足首を動かすことが困難になり、日常生活が大きく制限されてしまいます。 アキレス腱断裂では、保存療法と手術どちらでもリハビリが必要ですが、実際にどんなリハビリをするか気になる人もいるのではないでしょうか。 実はリハビリをすすめていく上で、必ず守らないといけない注意事項や効果的な方法があるため、実際にリハビリを進めていく際には注意が必要です。 そこで本記事では、アキレス腱断裂をした後のリハビリメニューや治療法などを詳しく解説します。アキレス腱断裂をしてその後のリハビリメニューや治療法が気になる方はぜひ最後までチェックしてください。 アキレス腱断裂でのリハビリメニューは「アキレス腱以外の部位も行う」 アキレス腱断裂をした後のリハビリで重要なポイントは以下の3つです。 治療は手術と保存療法がある どちらの場合でもアキレス腱以外の部位を怪我した直後から動かす 患部は装具を使ってゆっくりと動かしていく アキレス腱断裂の治療は、外科的にくっつける手術と自然治癒を待つ保存療法の2択ですがどちらもリハビリが欠かせません。 とくにアキレス腱以外の膝・股関節・足趾(足の指)といった部位は、怪我した直後から積極的に動かすようにしましょう。 手術・保存療法どちらの場合でも、アキレス腱に負担をかけないために、踵を挙げた状態で固定する装具を装着してリハビリを行います。 なお、当院リペアセルクリニックでは手術・保存療法のほか再生医療の提供も可能です。もし気になる方はお気軽にメール相談もしくはオンラインカウンセリングでご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ また、アキレス腱治療における再生医療については、以下の記事でも解説していますので、ぜひチェックしましょう。 アキレス腱以外のリハビリは「足首以外を弱らせないため」に大切 アキレス腱断裂後のリハビリでは、足首以外の筋力を維持するために、アキレス腱以外の膝・股関節・足趾(足の指)などを積極的に動かします。とくに問題がなければ、怪我した直後から動かしていくメニューが一般的です。 とくにアキレス腱断裂の場合、足首以外の関節を装具で固定するケースも多くあります。関節を保護しすぎて動かす量が減ると、下肢筋力が大きく低下してしまう可能性も考えられます。 社会復帰を早めるためにも、足首以外の筋力強化は積極的におこないましょう。 足首が固まらないことを優先する アキレス腱断裂では、アキレス腱の再生を促す目的で、足首を固定する期間を設けるケースがほとんどです。足首が固まってしまい可動域が制限されることが多いため、リハビリでは足首の可動域を維持することが大切です。 具体的には、装具を使ってアキレス腱に負担がかからないようにしながら体重をかける練習や、足首周囲のマッサージを積極的におこないます。 アキレス腱に負担がかからない範囲で足首のリハビリをおこなうことで、足首の可動域制限を最小限にとどめることが大切です。 アキレス腱断裂後におこなうリハビリメニュー4選【アキレス腱】 アキレス腱断裂後におこなうアキレス腱のリハビリメニューには、以下の4つがあります。 足首を反らして可動域を広げる運動 アキレス腱にかかわる下腿三頭筋(ふくらはぎ)の筋力強化運動 体重を乗せる練習 スポーツや社会復帰に向けた動作練習 これらのリハビリは、アキレス腱への負担を考慮しながら進める必要があります。痛みが出たら即中止し、無理をしないようにこころがけてください。 関節可動域運動足首を反らして可動域を広げる運動 足首の関節が固まらないように、関節可動域運動(かんせつかどういきうんどう:ROM運動)を行います。 つま先を上に持ち上げるような動き(背屈運動:はいくつうんどう)はアキレス腱が伸ばされるため、慎重に始めて再断裂を予防するのが大切です。 アキレス腱の強度が高まれば、立ってアキレス腱を伸ばすようにストレッチをして関節の動きを改善します。 Step1 自分でゆっくり動かす アキレス腱の組織が癒着しているのをはがす Step2 最初はつっぱり感があり、痛みも出やすい 優しく行うのが重要です Step3 徐々に理学療法士によるマッサージやストレッチを加えながら関節を動かす アキレス腱の柔軟性を改善します。 筋力トレーニングアキレス腱にかかわる下腿三頭筋(ふくらはぎ)の筋力強化運動 アキレス腱が十分修復されてくれば、日常の動作やスポーツに必要な筋力を戻すためのトレーニングを実施します。 まずはゴムバンドなどを使用して体重をかけない状態で負荷をかけましょうていきます。筋力や痛みの有無に合わせて、体重をかけた状態でのトレーニングに移行します。最初は無理をせず、徐々に負荷を高めていくことが重要です。 トレーニング 1. 座って踵上げ(座位カーフレイズ)から始める ⇩ 2. 両脚で立っての踵上げ(両脚カーフレイズ) ⇩ 3. 片足で立っての踵上げ(片脚カーフレイズ) 荷重練習体重を乗せる練習 アキレス腱の修復状況に合わせて、体重をかける時期や量を調整します。体重を乗せる練習は装具を使って、アキレス腱が無理に伸ばされないようにこころがけてください。 なお、保存療法に比べ、手術療法の方が早くから体重をかけることができます。 荷重は装具を使用しながら調整します。装具については、後ほど詳しく解説します。 動作練習スポーツや社会復帰に向けた動作練習 アキレス腱の強度や筋力が十分になれば、装具を外してのウォーキングやジョギング、ランニング、ジャンプといった動作を実施していきます。 スポーツ動作は複雑な動きや強い瞬発力を必要とするため、短くても6カ月ヶ月程度の期間が必要です。 アキレス腱断裂後におこなうリハビリメニュー4選【アキレス腱以外】 アキレス腱断裂後におこなうリハビリメニューとして、以下の4つをご紹介します。 足趾の強化(タオルギャザー) 太ももの筋力強化 膝を伸ばす運動 お尻の外側の筋力強化 これらの運動は、体重がかかったときにアキレス腱の働きを補助する筋肉を鍛えるメニューです。これらのリハビリを行うことで、アキレス腱の負担軽減につながります。 いずれもアキレス腱への負担がかかりにくい運動であり、アキレス腱断裂後、早期から実施可能です。 しかし、慣れないうちは足首に力を入れてしまうこともあるかもしれません。もしリハビリの実施中に痛みを感じた場合は、無理せず中止してください。 足趾の強化(タオルギャザー) 用意するもの:フェイスタオル等やや厚手のタオル 1.裸足で立位または椅子に座り、指先でタオルをたぐり寄せる。 2.たぐり寄せたタオルを指先で元の位置に広げる。 3.左右を入れ替えて繰り返し行う。 1セット10回を1日3セット程度から開始して、余裕があれば増やします。実践する際にはタオルを引き寄せるときに指を大きく動かすことが重要です。また、足首を反らしながら指を曲げてしまう人が多いため、つま先を床につけたままおこなう意識を持ってください。 太ももの筋力強化運動 用意するもの:バスタオル(またはクッション) 1.仰向けになり、まっすぐに伸ばした膝裏に丸めたタオルを挟む。 2.膝裏でタオルを力強く押すと同時に、つま先は上に持ち上げる。(5 秒ほど) 3.左右を入れ替えて繰り返し行う。 体重がかかったときに踏ん張って体を支えてくれる太もも(大腿四頭筋)の筋力強化運動です。1セット10回で1日3セット程度を目安に進めていきましょう。 ポイントはしっかりと膝を伸ばしながら足を持ち上げることで、膝を伸ばす意識を持てば太ももの筋肉に大きく刺激が入ります。また、足首に力を入れてしまう人が多いため、足首の力は抜くようにしてください。 膝を伸ばす運動 用意するもの:背もたれのある椅子か机などつかまれるもの 1.立位で椅子の背もたれなどに摑まり、片足を後ろに引き、膝を伸ばす。 2.左右を入れ替えて繰り返し行う。 後ろに引いた足の膝を伸ばして太ももの筋肉(大腿四頭筋)に刺激を入れる運動です。1セット10回で1日3セットを目安におこないます。体重をかけることで太ももの筋肉により強い刺激が入るでしょう。 この練習をするときはアキレス腱保護のため装具を必ず装着してください。体重をかけることで痛みを感じるようであれば、無理をしないように気をつけましょう。 お尻の外側の筋力強化 1.横向きになり、上側の足をゆっくりと持ち上げ、ゆっくりと下ろす。 2.左右を入れ替えて繰り返し行う。 立ったときに骨盤を横から支えてくれるお尻の筋肉(中臀筋)を鍛える運動です。1セット10回を2〜3セットを目安におこないましょう。 ポイントとして足を上げ下ろしする角度が大切です。骨盤より前で足を上げ下ろしすると太ももの筋肉に力が入りやすいので、足を骨盤と同じ角度か少し後ろに引く気持ちで上げ下ろしするとお尻への刺激が入りやすいでしょう。 日常生活やスポーツへの復帰を早めたいなら「手術」も検討する もし早期の社会復帰・スポーツ復帰をしたいと考えているならば、手術を受けることも検討しましょう。 手術ではアキレス腱を縫合するため、再生を早められるほか、保存療法による自然治癒よりも強固に修復できるためです。 アキレス腱断裂後に早く日常生活やスポーツに復帰したい人は、主治医と相談の上、手術も視野に入れても良いかもしれません。 本章ではアキレス腱断裂後のリハビリにかかる経過を、保存療法をおこなったケースと手術をしたケースでそれぞれご紹介します。 保存療法でのリハビリスケジュール 受傷日からの日数 リハビリメニューの例 受傷〜2週間 ・体重はまったくかけてはいけない ・患部以外のトレーニングの実施 2週間〜6週間 ・足首を下に向けた状態で固定 ・床に触れる程度から体重をかけ始める ・4周目以降に全体重をかけ始める ・足首をゆっくり自分で動かす 6週間〜8週間 ・足首をストレッチする 8週間〜12週間 ・徐々に筋力トレーニングを開始 ・ゴムバンドなどを使ったトレーニングを開始 ・筋力が向上すれば座位カーフレイズ開始 ・両脚カーフレイズ、片脚カーフレイズを段階的に実施 3カ月〜4カ月 ・装具を外してウォーキングやジョギングを開始 4カ月〜6カ月 ・ランニングやジャンプ開始 6カ月〜 ・スポーツ復帰 アキレス腱断裂後、保存療法を行う場合は、受傷からアキレス腱の修復状況に合わせて、段階的にリハビリメニューを変更していきます。 アキレス腱の修復状況や痛みの程度、合併症の有無などによって、上記のメニューのようにいかない場合もあるため、都度強度の調整が重要です。 受傷直後はギプス固定をして、足首が完全に動かないようにしばらく固定をする場合もあります。あくまでもアキレス腱の修復や再断裂の予防が最優先ですので、医師や理学療法士としっかり連携をとり、リハビリを進めていくのが大切です。 手術療法でのリハビリスケジュール 受傷日からの日数 リハビリメニューの例 受傷〜4週間 ・体重はまったくかけない。 ・患部以外のトレーニングの実施 ・痛みに合わせて徐々に足首の運動を実施 ・徐々に体重をかける量を増やしながら荷重する 4週間〜6週間 ・つま先を下に向ける ・徐々に戻していき、全体重をかけていく 6週間〜8週間 ・立った状態 ・ストレッチや足首の筋力トレーニングを始める ・筋力がつけば両足カーフレイズを実施(両手支持から始める) 8週間〜3カ月 ・装具を外してのウォーキング開始 ・片脚カーフレイズで筋力を向上させる 3カ月〜5カ月 ・ジョギングやランニング ・ジャンプなどを段階的に実施 5カ月〜 ・スポーツ復帰を目指す アキレス腱断裂後、手術を行う場合は、保存療法よりも早期に体重を乗せるリハビリをはじめます。 手術療法は比較的アキレス腱の修復が早く、体重を早くかけられるようになります。そのため、保存療法よりも早く社会復帰・スポーツ復帰が可能です。 メリットは手術でアキレス腱を強固に修復でき、スポーツ復帰が早いことです。しかし、費用や手術での感染・神経損傷リスクはデメリットといえるでしょう。 なお、当院リペアセルクリニックではアキレス腱断裂に対しても再生治療に取り組んでいます。興味がある人はお気軽にメール相談もしくはオンラインカウンセリングでご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ また、アキレス腱断裂後の手術については以下の記事でも解説しています。手術を検討している人はぜひチェックしてください。 まとめ|アキレス腱断裂後のリハビリメニューは下肢全体を鍛えよう!治療法で悩んだら受診がおすすめ アキレス腱断裂後のリハビリメニューは、断裂したアキレス腱以外の部位も含めて下肢全体を鍛えるように行う必要があります。 また、アキレス腱断裂後のリハビリ内容や経過は、保存療法か手術療法によって異なります。治療方法は医師としっかり相談して、個人個人のライフスタイルに合わせて選択してください。 いずれの治療方法でも、アキレス腱の修復を待ちながら、段階的にリハビリを進めて、日常生活やスポーツに復帰することが大切です。 ちなみに、当院リペアセルクリニックではアキレス腱断裂に対しても再生医療をおこなっています。保存療法の選択肢として検討してみたい人は、お気軽にメール相談もしくはオンラインカウンセリングでご相談ください。 本記事を参考にアキレス腱断裂後のリハビリについての理解を深めて、医師や理学療法士と連携しながら回復を目指しましょう。 \まずは当院にお問い合わせください/ アキレス腱断裂についてよくある質問 アキレス腱断裂は手術が必要ですか? A:必ず手術というわけではありません。 アキレス腱断裂では必ずしも手術が必要ではなく、保存療法という選択肢もあります。しかし手術をした方がスポーツ・社会復帰が早くできるため、ライフスタイルに合わせて治療方法を選択してください。 アキレス腱断裂後はどんなリハビリをしますか? A:足首だけでなく、下肢全体で運動を進めていきます。 アキレス腱断裂後はアキレス腱に負担がかからないように、股関節や膝などを動かしていきます。アキレス腱の修復度をみながら、足首も徐々に負荷をかけていき、無理せず動かすことが重要です。なお、リハビリも手術をした方が経過が早く進みます。
2023.06.13 -
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アキレス腱断裂でも手術しない再生医療(PRP)!最新治療の効果と治療法を解説 アキレス腱断裂は中高年の方によく起こる代表的なスポーツ外傷です。 仕事やスポーツへの早期復帰を希望する場合には従来は手術治療がよく選択されてきました。一方で、手術治療を選択してもケガをする前の状態まで戻るには長期間のリハビリが必要であったり、傷や感染症など手術自体の合併症などの問題がありました。 その中で、最近では最新医療である「再生医療」が注目されてきており、アキレス腱断裂でも治癒を促進する治療として「自己多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma; PRP)療法」が行われてきています。 再生医療を行うことで、手術をしない場合でも早期に仕事復帰、スポーツ復帰が可能になると期待できますし、手術の合併症のリスクも回避することができます。 この記事では、最新医療として期待されている、アキレス腱断裂に対するPRP療法での再生医療について解説していきます。 アキレス腱断裂に対するPRP治療について PRP療法は、患者さんから採血した血液から抽出した「多血小板血漿(PRP)」を患者さんの傷んでいる場所に注射する再生医療です。 PRPは、採血した血液を特殊な血液分離機器を用いて精製することで、通常の血液に比べて血小板や様々なサイトカインや成長促進因子を含んでいることがわかっています。 再生医療と聞くと、「自分の細胞を培養して投与する複雑な治療?」と想像されるかもしれませんが、PRP療法は精製したPRPを局所に注射するだけですので、身体への負担が少なく、短時間で終わるため、外来で受けることが可能です。 PRP治療のメリット 身体への負担が少ない 治療が短時間で終わる 外来で受けることが可能 簡単かつ、自分の組織のため安全なので、普及しつつある治療法なのです。 PRP療法のメリット、デメリット PRP療法は、入院、手術が不要なばかりか、外来で治療ができるため、とても有効です。 メリット 1.副作用が少ない 自分から採取した組織で治すため、アレルギー症状などの拒絶反応などを引き起こしにくい 副作用もほとんどありません 2.身体を傷つける心配がない 身体への負担は、採血と精製した組織の注射だけ 手術などで身体にメスを入れる必要がありません 3.外来で治療が可能 PRP療法は、通院による治療が可能です。 実施後すぐ日常生活に戻れる 負担が非常に少ない治療法です デメリット 1.効果の個人差 PRP療法の効果には個人差があります ヒトの血液の中には様々な因子が含まれており、その量には個人差があります 精製過程で割合も変化するので、効果に個人差があることは知っておく必要があります。 2.処置部位の痛み 注射をするという医療行為の特性として、注射をした後の数日間は、痛みや腫れ、赤みなどの症状が出ることがある 心配な場合には一度治療された病院を受診されるすることをおすすめします。 アキレス腱断裂に対するPRP療法の有効性 PRP療法は最新の治療のため、現在様々な研究が行われ効果が検証され始めています。 一般的にアキレス腱などの腱は腱自体への血流が乏しいので治りにくく、復帰に時間を要するのですが、PRPを投与することで腱の修復を早くすることができます。複数の研究をまとめたシステマティックレビューというエビデンスレベルの高い論文では、PRP療法を行った場合、足関節の可動域が他の治療と比べて良好であるという報告がなされています。(参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34731144/) PRP療法を行うことで最短で治りつつ、機能的にも良好な成績が得られると考えられています。 再生医療に対するよくある質問 再生医療は、まだまだ馴染みのない治療方法です。そこでよく質問される内容から抜粋して以下に記しましたのでご参考美してください。 Q1.PRP療法は他にどのような疾患に適応がありますか。 A:PRP療法は様々な疾患で受けることができます。アキレス腱断裂のほかに、半月板や膝の靭帯損傷、ジャンパー膝などの腱の炎症、変形性膝関節症や変形性股関節症などの軟骨が摩耗する疾患、五十肩など痛みを伴う整形外科の疾患の多くに適応があります。 飲み薬や注射でも治らず、手術しかないと言われている方で手術をせずに治したい方、はやく痛みを和らげたい方は、適応があるか是非医療機関にご相談してみてください。 Q2.PRP療法はどこで受けることができますか。 回答:2023年5月時点ではPRP療法は自由診療ですので、行っている施設は限られています。当院では最新の再生医療としてPRP療法に加えて、独自の細胞培養技術を用いた自己脂肪由来幹細胞治療も行っています。 治療についてのご相談は、経験豊富な医師、アドバイザーが無料で行っており、内容についてご納得していただいた上で治療を受けることができます。 ご予約は電話、メール、WEBで可能ですので、治療について悩んでいる方は是非お気軽にご相談ください。 ▶リペアセルクリニック「メール・WEBで相談する」 まとめ・アキレス腱断裂でも手術しない再生医療(PRP)!最新治療の効果と治療法を解説 アキレス腱断裂は特に中高年に多く見られるスポーツ外傷で、従来は手術が一般的な治療法とされてきました。しかし、手術には長期間のリハビリが必要であったり、傷や感染症のリスクが伴うために最新医療の一つであるPRP(自己多血小板血漿)療法という再生医療が注目されています。 PRP療法は、患者自身の血液から抽出した「多血小板血漿」を用いる再生医療です。この方法は、血小板や成長因子を多く含むPRPを患部に注射することで、自然治癒力を高め、腱の修復を促進します。手術を避けられるため、体への負担が少なく、入院することなく、短時間で外来で受けられる利便性があります。 PRP療法のメリットには、アレルギーや拒絶反応のリスクが少なく、副作用がほとんどないことが挙げられます。また、注射のみで済むため、入院はもちろん手術の必要がなく、治療後すぐに日常生活に戻れる点も大きな利点です。しかし、効果には個人差があり、注射部位の痛みや腫れが数日続く可能性もあります。 PRP療法はアキレス腱の修復を早め、他の治療法に比べて足関節の可動域の改善が期待できるとされています 。腱の血流が乏しいために治癒が遅れがちなアキレス腱断裂に対して、PRP療法は有効な治療法となり得ます。 再生医療はまだ新しい分野であり、疑問や不安を持つ方も多いかと思ことでしょう。中でもPRP療法はアキレス腱断裂以外にも、膝や肩の靭帯損傷、変形性関節症など、多くの整形外科疾患に適用されています。治療できる医療機関は厚生労働省の認可が必要で限られていますが、再生医療専門クリニックである当院にご相談いただければ詳しくご説明させて頂きます。 アキレス腱断裂の治療法として、手術以外の選択肢を探している方や、早期の回復を望む方は、PRP療法をご検討されてはいかがでしょうか。 手術や入院をせずに早くケガを治したいなど、興味のある方はぜひお気軽に当院にご相談ください。 ▼アキレス腱が切れてしまう前に知るための方法は以下をご覧ください 【アキレス腱断裂】アキレス腱が切れる予兆の症状とその原因
2023.06.08