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【医師監修】高齢者の変形性膝関節症におけるリハビリ方法|期間や禁忌を解説

「膝の痛みが一向に改善しない」
「変形性膝関節症のリハビリ方法を知りたい」
変形性膝関節症により、歩行や階段の昇降が困難になり、日常生活に支障をきたす方は多くいます。運動療法が勧められても、「どの程度続ければ良いのか」「症状が悪化しないか」といった不安を抱く方もいるでしょう。
しかし、症状や体力に応じた運動を無理なく続けることで、膝の痛みや動きの改善が期待できます。まずはできる範囲から始めることが大切です。
本記事では、現役医師が高齢者の変形性膝関節症におけるリハビリ方法を詳しく解説します。リハビリ期間や禁忌事項についても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
高齢者の変形性膝関節症にリハビリが不可欠である理由

| 不可欠である理由 | 詳細 |
|---|---|
| 筋力維持で膝の負担を減らす | 太もも周囲の筋力強化による関節の安定化・日常動作時の衝撃軽減 |
| 転倒予防で自立した生活を守る | バランス能力向上によるつまずき防止・歩行の安定性確保 |
| 手術を避ける可能性もある | 関節可動域改善と痛み軽減による症状進行抑制・保存療法の効果最大化 |
高齢者の変形性膝関節症では、運動療法を中心としたリハビリが治療の基本です。継続的なリハビリにより、軟骨のすり減りによる痛みや動きにくさの改善、症状進行の抑制が期待できます。
加齢に伴う筋力や柔軟性の低下を補い、転倒予防や生活の質の維持にもつながります。
痛みを理由に安静にしすぎると症状が悪化する可能性があるため、医師の指導のもと、無理のない範囲で継続することが大切です。
以下の記事では、変形性膝関節症を放っておくリスクについて詳しく解説しています。
筋力維持で膝の負担を減らす
高齢になると大腿四頭筋が脆弱になりやすく、膝を支える力が低下して痛みや機能障害が生じやすくなります。
筋力の維持・向上は、膝への負担を軽減し、立ち上がりや歩行、階段昇降をスムーズに行うために欠かせません。
大腿四頭筋を鍛える運動プログラムで膝の痛みや機能が改善することが報告されています。(文献1)
筋力トレーニングは、無理なく「ゆっくり・少しずつ」行うことが大切です。
膝伸ばしやミニスクワットなど負担の少ない動作が適しています。高齢者では8〜12週間の筋力強化プログラムで、筋力の向上と症状の改善が確認されています。(文献2)
転倒予防で自立した生活を守る
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 転倒リスクが高まる理由 | 膝周囲筋力低下や関節可動域制限による歩行バランス不良・支持力低下 |
| 転倒を防ぐ運動・訓練 | 片足立ち・ゆっくり歩行などのバランス訓練、脚筋力強化による安定性向上 |
| 日常動作の工夫と環境整備 | 手すり利用・照明確保・靴選び・立ち上がりや歩行量調整によるリスク管理 |
| 家族・介護者のサポート | 歩行時の見守り・声かけ・手すりや杖の準備による安堵感と転倒予防 |
筋力やバランス能力が低下すると、転倒による骨折や外傷のリスクが高まります。
リハビリでは下肢筋力の回復に加え、体幹の安定性向上や姿勢の調整を行います。
重心を保つ力が養われることで段差や不整地でのふらつきが減り、日常生活の安定性が高まって自立した生活の維持が可能です。
手術を避ける可能性もある
リハビリ(運動療法・生活習慣改善)と教育を受けた関節症患者を対象とした研究では、運動プログラム終了後に「手術を希望しない」と回答した方は、5年間で実際に手術を受ける確率が約20%低いと報告されています。(文献3)
手術は年齢・体力・合併症リスクの影響を受けるため、高齢者では保存的治療を優先すべきとの見解も示されています。(文献4)
ただし、保存療法で手術を確実に回避できるわけではありません。軟骨損傷が進行した症例では手術が適切となる場合もあり、保存治療のみの患者でも5年後に一定数が手術を受けた報告があります。(文献5)
高齢者が適切に取り組むためには、医療者と相談して自分に合う運動内容を決め、無理なく頻度・量を調整することが重要です。
体重管理や補助具の活用も効果を高め、継続により手術回避や先送りの可能性が高まるとされています。(文献6)
以下の記事では、変形性膝関節症を進行させないための工夫について詳しく解説しています。
高齢者の変形性膝関節症におけるリハビリ方法
| リハビリ方法 | 詳細 |
|---|---|
| 筋力トレーニングとストレッチ | 大腿四頭筋・ハムストリングスの強化と関節周囲の柔軟性向上による膝負担軽減 |
| バランス・姿勢・歩行の改善訓練 | 片足立ちや姿勢調整による転倒予防・歩行安定性向上 |
| 水中運動・自転車など膝に負担の少ない運動 | 浮力や軽負荷を活用した関節への衝撃軽減と持久力向上 |
変形性膝関節症のリハビリは、筋力強化・柔軟性向上・バランス改善を中心とした運動療法です。症状に合わせて無理のない範囲で継続することが大切です。
具体的には、太ももやふくらはぎを鍛える筋力トレーニング、関節の動きを滑らかにするストレッチ、転倒予防のバランス訓練、正しい歩き方を身につける歩行練習などがあります。
水中運動や自転車といった膝への負担が少ない有酸素運動を加えると、全身の体力向上にもつながります。
変形性膝関節症の最新ガイドラインについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
筋力トレーニングとストレッチ
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 筋力トレーニングの役割 | 大腿四頭筋強化による膝関節の安定化・膝負担軽減 |
| ストレッチの効果 | 可動域拡大と柔軟性向上による動作の円滑化 |
| 継続する重要性 | 毎日の少量継続による膝負担軽減と症状進行抑制 |
| 医師の指導を受ける理由 | 個々の膝状態に適した効果的な運動の選択 |
膝を支える筋肉の強化と柔軟性の維持は、変形性膝関節症のリハビリの基本です。大腿四頭筋を鍛える脚上げ運動や、ふくらはぎのストレッチは関節の安定性向上と可動域拡大に有効です。
痛みが出るほどの負荷は避け、無理なくゆっくり継続することが重要で、これにより歩行や立ち座りが楽になります。
高齢者が適切に続けるためには、体調に合わせて量と強度を調整し、転倒の危険がない環境で行うことが大切です。
継続が肝心であり、多くの研究では8〜12週間以上の継続で効果が確認されています。(文献6)
バランス・姿勢・歩行の改善訓練
膝の変形や筋力低下により身体のバランスが崩れやすくなり、転倒リスクが高まります。バランス訓練は立位や歩行時の安定性を高め、転倒予防に効果的です。
また、体幹を鍛えることで姿勢が整い、膝への負担軽減や歩行効率の向上につながります。
歩行訓練では正しい歩き方の習得と補助具の活用により安定性を高め、日常生活の動作改善が期待できます。
水中運動・自転車など膝に負担の少ない運動
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 水中運動は膝への負担が軽い | 浮力による体重負担軽減と痛みが強い場合でも行いやすい運動継続 |
| 筋力アップと関節の動き改善 | 水の抵抗を利用した筋力強化と関節可動性向上・筋緊張緩和によるリラックス効果 |
| 自転車運動も膝に優しい選択 | 膝を深く曲げずに行える反復運動による低負荷での持久力・筋力維持向上 |
| 適切に続けるためのポイント | 体調や膝の状態に応じた強度設定と医師・理学療法士の指導下で継続実施 |
水中歩行やエアロバイクは、膝への負荷を抑えながら筋力を鍛えられる運動です。浮力やペダル抵抗が適度な刺激となり、痛みが出にくく継続しやすいのが特徴です。
膝を深く曲げずに動かせるため、炎症や腫れが悪化しにくく、リハビリに適しています。
水中運動は、数分の水中歩行から始め、週2〜3回続けることが効果的です。さらに12週間の介入でバランスや痛みの改善が報告されています。(文献7)
自転車運動では、サドルをやや高めに設定し、軽い負荷で高回転を維持することで膝への負担を抑えられ、「低負荷・高回転数」が効果的とされています。(文献8)
以下の記事では、変形性膝関節症のリハビリにおける水中運動について詳しく解説しています。
変形性膝関節症は水泳で平泳ぎできる?膝に負担をかけない泳法を解説【医師監修】
高齢者の変形性膝関節症におけるリハビリの期間
| リハビリの期間 | 詳細 |
|---|---|
| リハビリ開始から1〜3カ月|基礎機能の回復期 | 痛み軽減と可動域改善・基礎筋力向上による日常動作の安定化 |
| リハビリ開始から3〜6カ月|機能改善の促進期 | 筋力強化とバランス能力向上による歩行・立ち座り動作の改善 |
| リハビリ開始から6カ月以降|習慣化と維持期 | 運動習慣の定着による症状再発予防・機能維持の長期的安定化 |
変形性膝関節症のリハビリは段階的に進み、1〜3カ月で痛みや可動域の改善、3〜6カ月で筋力やバランス向上による動作安定が期待されます。
6カ月以降は運動習慣を定着させ、症状の再発を防ぎながら機能維持を図る段階です。ただし、これらはあくまで一般的な目安であり、症状の程度・生活状況・合併症の有無によって進行のペースは大きく異なります。
リハビリ開始から1〜3カ月|基礎機能の回復期
変形性膝関節症では、大腿四頭筋の弱化や関節可動域の低下により歩行や立ち上がりが困難になります。
運動療法を行った研究では、約3カ月の介入で可動域や歩行速度が有意に改善したと報告されており、1〜3カ月はリハビリ効果が身体機能に現れ始める時期です。(文献9)
この期間は、無理な負荷を避け、適切な範囲で筋力や動作を整える準備段階です。中〜低強度の運動でも高齢者の機能改善に効果があるとされています。(文献10)
また、症状が進む前の早期介入ほど効果が得られやすく、早期に運動療法を導入した患者では比較的早期に改善がみられたと報告されています。(文献11)
リハビリ開始から3〜6カ月|機能改善の促進期
リハビリ開始後1〜3カ月で筋力や可動域の基礎が整い始めた後、3〜6カ月はその基盤をさらに伸ばす時期です。習慣化された運動に適度な負荷や変化を加えることで、膝機能や歩行能力がより向上することが報告されています。(文献12)
この期間は、通院での理学療法と自宅での自主訓練が連携し、継続するほど機能改善が高まることも示されています。(文献13)
また、3〜6カ月で改善が進むと6カ月以降の維持期へ移行しやすく、途中で中断すれば後退する可能性があるため、この期間は長期的な機能維持の土台となる重要な時期です。(文献14)
リハビリ開始から6カ月以降|習慣化と維持期
変形性膝関節症では、リハビリ開始から6カ月以降は機能改善から維持へ移行する重要な時期です。3〜6カ月で基礎的な筋力や可動域が整った後は、得られた機能を日常生活レベルで安定させることが目的となります。
実際、運動療法を6カ月以上継続した高齢者では、身体活動量の維持に効果があったと報告されています。(文献15)
また、フィジカルアクティビティ(運動や日常的な身体活動)介入後にフォローアップや継続支援が加わると、長期的な活動維持が改善したとの報告もあります。(文献16)
ガイドラインでも「運動介入開始から長期維持が鍵」と示されており、6カ月以降は習慣化とメンテナンスが膝機能を守る上で非常に重要です。(文献17)
高齢者の変形性膝関節症におけるリハビリの禁忌事項
| 禁忌事項 | 詳細 |
|---|---|
| 急な動作や強い負荷の回避 | 膝関節への急激なストレス増大による痛み悪化や炎症助長 |
| 深い膝曲げ・正座の制限 | 膝軟骨への過度な圧迫と関節負担増加による症状悪化 |
| 無理な運動やストレッチ | 過伸展や過負荷による筋・靭帯損傷や関節炎増悪 |
| 喫煙・飲酒などの生活習慣 | 血流悪化や炎症増加による治癒遅延と症状進行 |
リハビリは適切に取り組めば効果的ですが、誤った方法は症状を悪化させます。高齢者では関節や筋肉が弱いため、急な動作や強い負荷は軟骨や靱帯を傷める危険があります。
深い膝曲げや正座も負担が大きいため避けましょう。「早く良くしたい」という焦りから無理をすることは逆効果です。また、喫煙や過度の飲酒は炎症を長引かせるため、リハビリ効果を高めるには生活習慣の見直しも重要です。
以下の記事では、変形性膝関節症において、やってはいけないことを詳しく解説しています。
急な動作や強い負荷の回避
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 変形性膝関節症と膝への負担 | 軟骨摩耗による関節脆弱化と強い力・無理な動作による負荷の増大 |
| 避けるべき動作 | ジャンプ・急な方向転換・深い膝曲げ・重い物の持ち上げ・長時間立位歩行 |
| 急な動作がいけない理由 | 関節への過負荷と軟骨・周囲組織の損傷リスク増大および転倒危険性 |
| 安定してリハビリを続けるために | 体調と膝状態に合わせた無理のない動作と医師の指導のもと継続 |
膝への急な衝撃や過度な屈伸は、軟骨や靭帯を傷つける原因です。変形性膝関節症では軟骨がすり減っているため、急な動作や深い膝曲げは痛みや炎症を悪化させる可能性があります。
そのため、ジャンプや急な方向転換、重い物を持つ動作は避けましょう。また、膝の状態に応じて無理なく動き、痛みが強い場合は休むことが大切です。医師の指導のもと継続することで、症状の改善が期待できます。
深い膝曲げ・正座の制限
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 深く膝を曲げる動作が膝に与える影響 | 関節内圧上昇による軟骨への過負荷と炎症・痛み増悪 |
| 正座やしゃがみ込みのリスク | 関節隙間の狭小化と軟骨摩擦増大による痛みの悪化 |
| 生活の中での注意点 | 椅子・洋式トイレの活用や床生活の回避による負担軽減 |
| 膝を守る生活習慣づくり | 深い膝曲げを避ける日常動作工夫による症状進行予防 |
変形性膝関節症では、膝を深く曲げる動作によって関節内の圧力が大きく上昇し、すり減った軟骨に強い負担がかかります。正座や深いしゃがみ込みは関節の隙間をさらに狭め、痛みを悪化させる原因となります。
床生活や和式トイレを避けて椅子や洋式トイレを利用するなど、膝を深く曲げない生活習慣を身につけることが症状進行の予防に欠かせません。
無理な運動やストレッチ
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 避けたほうが良い動きの具体例 | ジャンプ・急な方向転換・深い膝曲げ・痛み時の過度な筋トレやストレッチによる炎症誘発 |
| ストレッチの注意点 | 痛みのない範囲でのゆっくりした伸張による柔軟性維持 |
| 安定して続けるためのポイント | 膝状態の把握と無理のない運動選択・痛み増強時の中止と医師相談 |
変形性膝関節症では、膝の軟骨や関節が弱っているため、無理な運動は負担となり炎症や痛みを悪化させる可能性があります。とくに急な方向転換や強い衝撃を受ける動作は、関節の安定性を損ない、損傷リスクを高めます。
リハビリは痛みの程度に合わせて負荷を調整し、無理のない範囲で行うことが大切です。違和感や痛みが強まる場合は中止し、医療機関を受診しましょう。
喫煙・飲酒などの生活習慣
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 膝関節に影響が出やすい理由 | 喫煙による軟骨・骨代謝低下と血流悪化、飲酒による軟骨変性のリスク増大 |
| 高齢者で影響が出やすい理由 | 加齢による修復力低下と長年の生活習慣の影響 |
| 具体的な注意点 | 禁煙・飲酒量の見直し・膝症状悪化時の飲酒喫煙回避 |
| リハビリとの関係 | 回復力低下によるリハビリ効果減弱と症状進行リスク増加 |
喫煙は軟骨や骨の代謝および血流を悪化させ、変形性膝関節症の発症・進行リスクを高めることが遺伝的・疫学的研究で示されています。
とくに、喫煙により変形性膝関節症のリスクが約20%上昇するとの報告もあります。(文献18)
一方、飲酒についても週あたりの量が多いほど軟骨変性マーカー(MRI T2値・WORMSスコア)が高い傾向です。(文献19)
さらに、週1〜7杯以上の飲酒で軟骨変性が増える報告もあり、修復力の低い高齢者では影響が出やすいため、リハビリ効果を高めるには禁煙と飲酒量の見直しが重要です。(文献19)
高齢者の変形性膝関節症のリハビリと併用できる治療法
| 治療法 | 詳細 |
|---|---|
| 栄養療法 | 体重管理と抗炎症作用を意識した栄養摂取による関節負担の軽減 |
| 装具療法 | 膝サポーター・足底板などによる関節安定化と負荷分散 |
| 薬物療法 | 痛みや炎症を抑える内服薬・外用薬の併用による症状緩和 |
| 物理療法 | 温熱・電気・超音波などによる血流改善と痛み軽減 |
| 再生医療 | 幹細胞による組織修復促進と炎症抑制 |
変形性膝関節症では、リハビリと併用してさまざまな治療を適切に組み合わせることで、症状の緩和や機能の改善が期待できます。
ただし、いずれの治療も医師の指導のもとで適切に行うことが重要です。とくに再生医療は適応が限られており、実施可能な医療機関も限定されているため、医師との相談が必要です。
以下の記事では、変形性膝関節症の治療法について詳しく解説しています。
栄養療法
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 関節の健康・炎症制御に栄養が関わる理由 | オメガ3脂肪酸・抗酸化栄養素による炎症抑制と軟骨保護 |
| 軟骨の健康に必要な栄養素 | コラーゲン・ヒアルロン酸生成に必要なビタミンC・タンパク質・ミネラル |
| 炎症を抑える食事の重要性 | 青魚・緑黄色野菜・ナッツ類による抗炎症作用と痛み軽減 |
| 体重管理との連携効果 | 栄養管理による体重負荷軽減と悪化予防 |
| 継続的な栄養指導の推奨 | 個別の栄養指導と医師による健康維持 |
変形性膝関節症では、筋力低下、軟骨摩耗、炎症が同時に進行します。
オメガ3脂肪酸、食物繊維、ポリフェノールを多く含む食事が、症状改善や進行抑制に有効であることが報告されています。(文献20)
適切な栄養管理は軟骨の材料補給や体重管理に役立ち、リハビリ効果を高めるため、医師の栄養指導を受けることが大切です。
以下の記事では、変形性膝関節症の正しいダイエットについて詳しく解説しています。
装具療法
装具療法は、サポーターや足底板を用いて膝の安定性を高め、日常動作を助ける治療法です。ソフトサポーターは膝のぐらつきを抑えて動作時の安定性を向上させ、インソールや機能的膝装具は膝にかかる力の向きを調整し痛みの悪化を防止します。
リハビリでは、装具を併用することで安定性が向上し、運動効果を引き出しやすくなります。
ガイドラインでも「装具はすべての患者に必須ではないが、有用な補助戦略となり得る」と示されており、症状に合わせた選択が重要です。(文献21)
薬物療法
薬物療法は、痛みや炎症を和らげ、日常生活動作やリハビリを支援します。外用薬は局所の鎮痛・消炎に有用です。内服薬のNSAIDsはより強い痛みに効果的ですが、長期使用には注意が必要です。
ヒアルロン酸やステロイドの関節内注射は、関節に直接作用して症状を改善します。ただし、薬物療法には限界があることを理解しておく必要があります。
薬物療法は症状を一時的に和らげるにとどまるため、運動療法や装具療法との併用が大切です。
薬の使用にあたっては、医師の指導に従い、自己判断で調整しないよう注意しましょう。
物理療法
物理療法は温熱・電気・超音波などを用いて、身体への負担を抑えながら痛みや炎症を和らげる治療法です。血行を促進し筋緊張を改善することで、関節可動域の拡大や歩行能力の向上が期待されます。
高齢者は膝のこわばりや痛みにより運動を避ける傾向があります。しかし、物理療法で症状を軽減することで運動に取り組みやすくなり、運動療法を継続することが重要です。
超音波療法などの物理的モダリティにより、関節可動域・痛み・機能が改善したとの報告もあります。(文献22)
再生医療
再生医療は、膝の軟骨や関節が本来もつ治癒力を高め、損傷組織の修復・再生を促す治療法です。代表的な方法に幹細胞治療やPRP(血小板濃縮療法)があり、痛みの軽減に加えて関節可動域や機能の改善が期待できます。
とくに中程度までの軟骨損傷をもつ患者で効果が期待され、長期的な症状緩和につながります。
低侵襲で切開や入院を必要としないため、手術を避けたい高齢者や身体への負担を懸念する方にも実施しやすいのが利点です。
以下の記事では、再生医療を用いた事例を紹介しています。
リハビリで改善しない高齢者の変形性膝関節症は医療機関を受診しよう
適切なリハビリを数カ月続けても症状が改善しない、あるいは悪化している場合は、別の原因や合併症が隠れている可能性があります。自己流での運動や家族だけのケアには限界があり、医師の診断と治療が必要です。
軟骨の損傷が進行していたり、靱帯や半月板に問題があったりする場合、リハビリだけでは対応できません。その場合は薬物療法や装具療法の追加、あるいは手術の検討が必要になります。
また、関節リウマチや骨粗鬆症など膝以外の病気が症状の原因となっている場合もあるため、早めに受診して原因を特定し、適切な治療を受けることで悪化を防止できる可能性があります。
変形性膝関節症についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。変形性膝関節症に対して、当院では再生医療を用いた治療も行っています。
再生医療では、幹細胞が炎症の調整や組織修復を助けることで、自然には修復しにくい膝軟骨の状態改善が期待できます。また、手術を避けながら、比較的低リスクで機能回復を目指せる点も利点です。
ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。
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高齢者の変形性膝関節症におけるリハビリに関するよくある質問
高齢者の変形性膝関節症は手術が必要ですか?
変形性膝関節症の治療において多くの場合、初期段階で手術が必要になることはありません。まずは運動療法、薬物療法、装具療法といった保存療法が基本となります。
これらを継続しても強い痛みで歩行が困難になる、あるいは日常生活に大きな支障が出る場合に、人工膝関節置換術などの手術が検討されます。
以下の記事では、変形性膝関節症の手術について詳しく解説しています。
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高齢者の変形性膝関節症は整体で治りますか?
整体で変形性膝関節症を根本的に治すことはできません。変形性膝関節症は膝関節の軟骨がすり減ることで生じる構造的変化が原因であり、整体でこの変化を元に戻すことは不可能です。
整体により一時的に筋肉のこわばりが和らぎ、動かしやすく感じることはありますが、根本的な改善や進行抑制につながる医学的根拠はありません。
症状の悪化を防ぐためには、整形外科で診断を受け、医師の指導のもとで適切なリハビリや運動療法を行うことが大切です。
以下の記事では、接骨院における変形性膝関節症の治療について詳しく解説しています。
参考文献
Surgical Versus Non-Surgical Treatments for the Knee: Which Is More Effective?|PMC PubMed Central®
Loading of the knee joint during ergometer cycling: telemetric in vivo data|PubMed®
Osteoarthritis year in review 2022: rehabilitation|ScienceDirect
Diet in Knee Osteoarthritis—Myths and Facts|PMC PubMed Central®
Braces and orthoses for treating osteoarthritis of the knee|PMC PubMed Central®


















