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変形性膝関節症の主な治療法

変形性膝関節症で行われる治療とは?

変形性膝関節症は関節軟骨の変性や摩耗を伴う退行性疾患であり、中高齢者の膝関節痛のいちばんの原因疾患で、その頻度は高くみられます。そして初期や中期の変形性膝関節症に対してはさまざまな保存療法が有効であり、ある程度進行した変形性膝関節症に対しては、手術療法が適応となります。

症状としては、初期では起床時や休憩後などの動かし始めた際の痛みが特徴的です。痛みは寒い日や雨の降る日など、天気の悪い日に増悪することが多く、天気のよい日などは痛みを感じにくい場合もあります。

変形性膝関節症の進行に伴い、歩行時痛が増悪し長距離歩行や階段昇降が困難になり、安静時痛や夜間痛が出現することもあります。また、正座ができなくなるなどの膝関節の屈曲制限や、反対に膝が完全に伸ばせなくなるなどの関節可動域制限が生じてくると日常生活上いろいろな支障がみられます。

変形性膝関節症に対して行われる治療法にはおもに薬物療法・理学療法・装具療法・内視鏡手術・人工関節置換術、そして最近注目されている「再生医療」があります。

薬物療法

変形性膝関節症の薬物療法では、さまざまな薬が処方されます。薬の種類には大きく分けて「内服薬(飲み薬)」「湿布薬」「塗り薬」「坐薬」の4種類があります。通常、内服薬は頓用、塗り薬や湿布薬は痛みが慢性化した場合の長期使用、坐薬は耐え難い痛みがあるときの緊急用として使用されます。

内服薬として最もよく処方されるのは鎮痛薬で、「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)」「アセトアミノフェン」が多く使用されます。NSAIDsはロキソニン、ボルタレンなどの製品名がよく知られています。体内の炎症を鎮める薬で、主に痛みが関節の中にある場合によく効きます。ただし、副作用として胃腸障害が現れることがあり、胃痛や吐き気、ときには胃潰瘍になるというケースもあります。そのため、多くの場合胃薬も一緒に処方されます。

湿布薬や塗り薬は「外用薬」と呼ばれ、その中にはNSAIDsの成分が含まれており、患部に貼ったり塗ったりすることで経皮吸収(皮膚から吸収すること)され、炎症を鎮める効果が期待できます。内服薬のような胃腸障害や内臓疾患の心配が少なく、長期使用も可能です。一方でかゆみやかぶれ、アレルギー反応を起こすこともあり、皮膚が過敏な人は注意が必要です。

鎮痛薬や湿布薬などで痛みがひかない場合には、膝の関節内にヒアルロン酸注射を打つことがあります。ヒアルロン酸は、膝の動きを滑らかにし、クッションの役割を担うことに一役買っています。変形性膝関節症では、関節液中のヒアルロン酸の量が少なかったり、弾性や粘性が低下していたりするため、不足するヒアルロン酸を注射器で関節内に注入します。

膝関節にヒアルロン酸を注入すると、痛みが和らぐほか、膝の動きが滑らかになり、また関節軟骨の栄養になるといった効果が期待できます。

ヒアルロン酸

理学療法・装具療法

装具療法では、装具を用いることで膝関節にかかる負担を軽減し、関節を安定させることで痛みを和らげます。装具は、関節の変形を治す効果はありませんが、普段の生活で膝関節にかかる負担を軽減するのに役立ちます。希望する人は医師に相談して、自分の関節の状態に合ったものをすすめてもらうといいでしょう。

変形性膝関節症の治療に用いる装具には、次のようなものがあります。

① サポーター

サポーターの着用は、膝を温めることが目的です。膝を温めると患部の細胞の新陳代謝が促され、炎症を鎮める効果が期待できます。また、膝が守られているという安心感も得られます。サポーターはさまざまなタイプのものが市販されています。薄型で伸縮性や保温性の高い医療用タイプを選ぶといいでしょう。

膝サポーター

② 足底板

O脚タイプやX脚タイプの変形性膝関節症の初期には、靴の中や足裏に忍ばせる足底板を活用すると、痛みが緩和される効果が得られます。足底板は、物理的な作用で変形した膝関節の角度を一定角度補整できる治療法です。

O脚の人の場合、足底板を使って足の外側を高くし、内側を低くすることで、膝の内側に偏っていた負荷が軽くなって痛みが和らぐのです。

足底板には、靴の中へ忍ばせる中敷きタイプと、足裏に直接つける室内用タイプがあります。初期や中期の患者さんには有効ですが、変形が進行した末期の患者さんの場合は、あまり改善効果は期待できません。

足底板

内視鏡手術

内視鏡(関節鏡)手術は、腰椎麻酔をしてから膝蓋骨の周辺に1cmほどの小さな切開口を2〜3カ所あけて、カメラのついた内視鏡を挿入し、炎症の原因となるこすれ落ちた軟骨や断裂した半月板、炎症を起こした滑膜などを取り除き、膝痛を改善する手術法です。

滑膜の炎症が強くて水がたまりやすい人、半月板損傷や関節遊離体(いわゆる関節ネズミ)のある人など、膝痛の原因がはっきりわかっている人に特に有効です。

内視鏡手術の最大の利点は、切開部が小さいため体力的負担が少ないことです。手術時間は1時間前後と短く、手術当日は翌朝まで安静にしますが、翌日からは歩くことができます。入院も1日程度と短期間で済み、多くの場合2〜3日で通常の生活に戻れます。

人工関節置換術

人工膝関節変形性膝関節症が進行し、痛みがとても強くて歩行が困難になった場合、「人工膝関節置換術」が検討されます。変形した膝関節の骨をインプラント(人工の関節)に置き換えるというもので、膝関節の一部のみを入れ換える「片側置換術(UKA)」と、関節の接合部全体を入れ換える「全置換術(TKA)」に分けられます。

人工膝関節置換術の手術を受けると、痛みはほぼ完全に消え、可動域が広がって滑らかに膝を動かすことができるようになります。O脚やX脚がある場合には、まっすぐな足に矯正され、歩行時に膝のぐらつきがある人はそれも解消されます。

再生医療

再生医療とは、人の細胞が持つ「自然治癒力」を引き出して機能の回復を図る治療法です。変形性膝関節症の場合、重症化すると手術に頼らざるを得ないのが実情ですが、こうした手術適応例において、組織修復力を持つ再生医療の治療効果が期待されています。

現在、最も多く行われている再生医療が「PRP療法(自己多血小板血漿注入療法)」です。

血小板とは、血液に含まれる細胞のことで、血液を固める働きのほかに、組織の修復を促す成長因子を出す働きがあります。PRP療法では、患者さん自身の血液から、血小板が多く含まれる血小板血漿(PRP)を抽出し、患部に注入します。すると、その部分の組織の修復が促されていきます。

PRPは自分の血液から抽出するため、薬物療法のような副作用がほとんどないという利点があります。その反面、PRPは軟骨や半月板にはならないので、完全に軟骨がなくなってしまった重症の膝痛に対する効果は低下します。変形性膝関節症では、関節の炎症を抑えて痛みを和らげ、軟骨や骨の変形の進行を防ぐ目的でPRP療法が用いられます。

PRP

このほかの再生医療には「幹細胞治療」があります。これは、衰えた膝の関節軟骨を再生させて痛みを抑える再生医療です。

幹細胞とは、皮膚や血液など、絶えず細胞が入れ替わる組織を保持するために、新しい細胞を再び産生して補充する能力をもつ細胞のことです。幹細胞には、分化能(皮膚、血液、神経、血管、骨、筋肉など細胞を作り出す能力)と、自己複製能(自らと同じ能力を持つ細胞に分裂することができる能力)の2つの能力があります。

変形性膝関節症の治療で実用化されているのは「間葉系幹細胞」による軟骨再生療法です。間葉系幹細胞は骨髄に由来する非造血系の細胞ですが、骨髄ばかりか脂肪や骨膜などから比較的容易に取り出すことが可能です。

しかも、骨芽細胞や脂肪細胞だけでなく、軟骨細胞や筋細胞、神経細胞にも分化する能力を持っています。患者さん自身の細胞を使うため拒絶反応や副作用もなく、増殖に伴う老化の影響や分化能の低下が少ないのも大きな特徴です。

培養幹細胞治療では、お腹の脂肪から採取した間葉系幹細胞を培養して膝関節内に注入する治療や、膝の滑膜から採取した間葉系幹細胞を関節内に定期的に注入したり、半月板損傷に対する内視鏡手術の際に幹細胞を移植したりする治療が行われています。

さらに、軟骨細胞そのものを取り出して培養し、欠けた軟骨の再生を促す「自家培養軟骨移植」の研究も進み、実用化されています。これは患者さん自身の軟骨から取り出した細胞を培養し、膝の軟骨が欠けた箇所へ移植することにより、痛みなどの症状を緩和します。

これらの再生医療は、一部を除き自由診療となり、全額が自己負担となります。費用は医療施設によって大きく異なりますが、1回につき、PRP療法は数万〜数十万円、培養幹細胞治療は数十万〜数百万円程度とされています。

医療機関が再生医療を行う、あるいは特定細胞加工物を製造する場合には、厚生労働省への届出が必要と法律で定められています。再生医療を受けようと考えている人は、その施設が「再生医療等提供機関」として登録されているか、必ず確認のうえ受診するようにしましょう。

以上のように、変形性膝関節症に対しての治療法はさまざまあります。年齢や症状、日常生活に応じて医師と相談して適応となる治療法を選択する必要があります。

 

No.0020

監修:院長 坂本貞範

関節の痛みは手術しないで
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