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変形性膝関節症に有効な運動療法とは

膝の痛み

近年、膝痛の患者さんが急増しています。2005年に東京大学医学部の研究グループが行った疫学調査によると、日本における中高年の膝痛の患者数は約2400万人と推測されるそうです。

その後も患者さんの数は増加し続けており、現在では、膝痛の患者さんとその予備軍は、約3000万人にものぼると推測されています。そして、膝痛を訴える患者さんの実に9割以上が「変形性膝関節症」が原因と考えられています。

変形性膝関節症とはどのような疾患?

変形性膝関節症は、長年の膝への負担により、膝の軟骨がすり減って炎症が起き、そして関節が変形してしまう病気です。日々の生活や労働、運動により、膝には大きな負担がかかっています。歩くときには、体重の5倍以上もの負荷がかかることがわかっていますが、この負荷を受けつづけることで、膝関節の軟骨はすり減り、炎症を起こしてしまうのです。

膝関節は、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の末端が接合する部分で、その間には、クッションのような役割をしている関節軟骨や半月板という軟骨組織があります。この関節軟骨や半月板が、年齢を重ねることで徐々にすり減り、それによって削れた摩耗粉が関節包の内側の滑膜を刺激します。

すると、この摩耗粉は異物とみなされ、免疫反応が起こります。その結果、滑膜の細胞から「炎症性サイトカイン」という、生理活性物質(体の働きを調整する役割のある物質)の一種が分泌されます。

炎症性サイトカインは本来、細菌やウイルスが体に侵入した際、それら異物を撃退して体を守る重要な働きをする物質なのですが、摩耗粉を異物と認識してしまうことで炎症が起こり、痛みが現れることになります。

変形性膝関節症に有効な運動療法とは

膝痛の患者さんが増えた理由とは

理由その①

第一の理由は、本格的な高齢社会が到来したことです。2019年におけるわが国の総人口は前年よりも26万人少なくなっているにもかかわらず、65歳以上の高齢者は32万人も増加し、3588万人と過去最高となっています。日本人の平均寿命も、男性81.25歳、女性87.32歳(2019年)と年々長生きになっており、高齢者の人口は、これからもますます増加していくものと思われます。

変形性膝関節症は高齢者ほど発症しやすく、日本では、60歳以上の人の約6割が変形性膝関節症というデータもあります。高齢者が増加する傾向はまだ当分続くと考えられるため、変形性膝関節症の患者さんは、今後もますます増えるものと思われます。

理由その②

第二の理由は運動不足です。現代社会では自動車や電車など便利な交通機関が発達し、さらにはエレベーターやエスカレーターといった移動が楽になる設備が普及しています。その結果、歩いたり階段を上り下りしたりする機会が減り、現代人はあまり体を動かさなくなってしまいました。また、高齢になると家に引きこもりがちになり、さらに運動不足になってしまいます。

膝関節を支える骨や軟骨、筋肉や靭帯(骨と骨をつなぐ丈夫な線維組織)は、日頃から体を動かすことで適度な刺激を与えていないと、少しずつ衰えていきます。現代人にとって、意識して運動をし、適度な刺激を筋肉や軟骨などに与えて膝関節の健康を維持することは、とても重要です。

理由その③

第三の理由は肥満です。運動不足は肥満を招いてしまいます。体重が増えると、立ったり歩いたりするだけで膝関節に大きな負荷がかかってしまい、軟骨や半月板を傷めやすくなります。膝痛を予防するためには、普段から適度な運動をして、適正体重を維持することが重要です。

以前は、膝痛の患者さんには「安静」がすすめられていました。鎮痛薬で痛みを和らげ、膝に負担をかけないように安静にして、自然の回復力にまかせ、治癒するのを待っていたのです。

しかし、安静にばかりしていると膝周辺の筋肉や靭帯などがどんどん衰えていきます(廃用性症候群という)。膝を支えている筋肉や靭帯が衰えると、軟骨への負荷が余分にかかるようになり、摩耗がますます進んでしまいます。

さらに、安静に加えて鎮痛薬を使えば膝痛は治まりますが、そこで膝を以前と同じように使ってしまえば、膝を支える筋肉や靭帯が衰えているので、しばらくするとまた発症してしまいます。従来の治療法では、こうした炎症サイクルの悪循環に陥りやすいのです。

それに対し、運動療法を活用すれば、2〜3週間ほどで痛みが軽減して楽に歩けるようになることがあります。
それによって日常生活の活動性が増すと、膝周囲の筋肉や靭帯が自然に鍛えられ、関節軟骨の摩耗が抑えられるようになります。その結果、膝関節の炎症が起こりにくくなり、痛みもどんどん軽減するのです。

痛みが軽減すれば、さらに患者さんの行動は活発になり、膝関節の安定性は一段と高まり、膝痛は遠ざかります。この好循環が続くことで、膝痛から卒業できるわけです。

変形性膝関節症に効果的な運動

運動療法について、「変形性膝関節症患者には、定期的な有酸素運動、筋力強化訓練および関節可動域拡大訓練を実施し、かつこれらの継続と奨励する」としており、「筋力強化訓練」「有酸素運動」「可動域拡大」の3つを特に推奨しています。

(参照:日本整形外科学会による変形性膝関節症診療ガイドラインより)

筋力強化訓練では、太ももの前面の筋肉「大腿四頭筋」の家庭での強化、有酸素運動については、激しい運動ではなく穏やかな無理のない運動が推奨されています。

可動域拡大については、膝関節を動かさないでいると可動域が狭くなり柔軟性が失われてしまうため、無理をしない範囲で訓練するようにします。

膝を無理のない程度に動かすことで、炎症を起こしている滑膜や軟骨の細胞に一定のソフトな力が作用し、これにより次の3つの効果を得ることができます。

① 炎症の原因となる、炎症性サイトカイン(細胞から分泌される生理活性物質)の産生を抑える作用
② 炎症を鎮める効果を持つ、抗炎症性サイトカインが分泌される作用
③ 膝関節の軟骨成分であり、膝関節の組織の修復に必要なコラーゲンやプロテオグリカンの産生が増加する作用

このように膝関節を動かすことが膝痛を改善に導くとはいえ、膝にあまり強い力をかけてしまうと、むしろ症状が悪化し痛みも強まることになってしまいます。

運動療法で膝を動かす場合には、激しい運動は禁物です。適度な運動であれば①〜③の効果が得られ、関節内の炎症を抑えられ、さらには組織の新陳代謝が促され、膝痛の改善が期待できることになります。

 

No.0019

監修:院長 坂本貞範

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