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後十字靭帯損傷の症状と原因、治療法について

後十字靭帯損傷の症状と原因、治療法について

後十字靭帯損傷(こうじゅうじじんたいそんしょう)とは、膝の関節内にある後十字靭帯の損傷をいいます。主に車の事故やバイク事故、ラグビーなどのコンタクトスポーツで他人と衝突することで生じます。

今回の記事では、後十字靭帯損傷の原因や症状、そして治療方法について解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。

後十字靭帯損傷

後十字靭帯損傷とは?

後十字靭帯は、膝関節の中で前十字靭帯とともに関節を強固に連結している靱帯です。

大腿骨(太ももの骨)の内側と、脛骨(すねの骨)の中央を繋ぎ、前十字靭帯と十字のかたちに交差して膝関節を支えています。普段は膝関節のひねる動作を支えたり、脛骨が後ろにずれないように支えるように働いたりしています。

後十字靭帯損傷は、膝裏にあたる位置にある靭帯損傷のことであり、後十字靭帯が一部あるいは完全に断裂した状態を指します。

後十字靭帯損傷の原因

スポーツ外傷や交通事故などで、脛骨上端に、前から後ろへ向く大きな力が加わることで、後十字靭帯が損傷することが多いとされています。

具体的には、以下のような受傷機転が考えられます。

交通事故

ダッシュボード損傷とも言われ、車が急停車しダッシュボードに膝(脛骨の上端部)をぶつけることによって起こります。

転倒

膝を90°曲げた状態で転倒すると脛骨が後ろへ押し込まれるため受傷します。

コンタクトスポーツ(ラグビーなど)

膝下にタックルを受けることで、後十字靭帯を損傷することがあります。

後十字靭帯損傷の症状

後十字靭帯損傷の症状を解説します。

急性期(受傷後3週間くらい)

膝の痛みと可動域制限がみられますが、歩ける場合が多いです。しばらくすると腫れ(関節内血腫)が目立ってくる場合もあります。膝窩部の皮下出血を認めることもあります。

痛い部位は、膝の裏となります。また、脛骨に後方へのストレスをかけると、膝窩部に激痛がみられます。

急性期を過ぎると

痛み、腫れ、可動域制限はいずれも軽快してきます。しかしこの頃になると損傷部位によっては膝の不安定感が徐々に目立ってくることがあります。これは下り坂やひねり動作の際にはっきりすることが多いです。

慢性期の症例(受傷から時間がたった場合)

慢性期では、前十字靭帯損傷と比べると膝の機能障害は軽度ですが、脛骨の後方ストレスへの不安定感を歩行やスポーツ活動時に認めます。

また、慢性期では、関節軟骨変性のため膝蓋大腿関節や内側の関節裂隙に圧痛を認めることもあります。また、仰臥位で膝関節屈曲90°とすると、脛骨近位端が後方へ移動している落ち込み徴候(サギングサイン)を認めます。

不安定感があるままに放置しておくと新たに半月(板)損傷や軟骨損傷などを生じ、慢性的な痛みや腫れ(水腫)が出現するおそれもあります。

膝の痛みは⼿術しなくても治療できる時代です。

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後十字靭帯損傷の診断方法

脛骨の後方ストレスへの不安定性の証明とMRI画像での後十字靭帯断裂を証明することで、後十字靭帯損傷を診断することができます。

また、レントゲン写真では骨折の有無についても確認することができます。

後十字靭帯損傷が見られるかというテストには、sagging(サギング)テストがあります。

sagging(サギング)テスト

仰向けの状態で膝を90度屈曲して踵を持ち上げたときに、左右を比較して、脛骨が落ち込んでいるかどうかを見るテストです。

この際に、脛骨が落ち、関節に窪みが生じていれば、後十字靱帯断裂を疑います。

後十字靭帯損傷の治療法

後十字靭帯の単独損傷では、大腿四頭筋訓練を中心とした保存療法が行われます。

膝動揺性抑制装具(サポーター)を装着して早期から痛みの無い範囲で可動域訓練を行い、筋力低下を最小限にとどめるようにします。受傷初期は疼痛緩和と安静を兼ねてギプス固定を行うこともあります。

後十字靭帯単独損傷の場合には多少の緩みが残ってもスポーツ活動に支障をきたさないことが多いことから、軽度な症状の場合には先ずは保存療法を試みるようにします。

こうした、後十字靭帯損傷のリハビリ目的の筋トレ中の禁忌として、症状を悪化させる危険性があるので、しゃがみや膝立ち、正座できないことは知っておく必要があります。

慢性期で後方ストレスへの不安定性が強く、日常動作に不自由を感じる例は靭帯再建術を行うべきとされています。

後十字靭帯損傷の完治期間

後十字靱帯損傷の完治までの期間・道のりとしては、ハムストリングスを用いた再建術後の理学療法、術直後には免荷で膝装具0° 固定し等尺性筋収縮運動を行います。

1〜2週間で部分荷重、スクワット運動開始とします。4週間で全荷重、4ヶ月でジョギング、水泳などのスポーツ復帰が可能となります。

  • ・1〜2週間で部分荷重、スクワット運動開始
  • ・4週間で全荷重
  • ・4ヶ月でジョギング、水泳などのスポーツ復帰

このように、全治までには数ヶ月を要します。

後十字靭帯損傷の予後は比較的良好とされています。しかしながら、後十字靭帯損傷が自然治癒するわけではない、ということには注意が必要です。

最近では、早く治すことで早期の競技復帰を望むアスリートの間などで、低侵襲な治療で靭帯組織の修復が期待できる「再生医療」が選択されるケースもあります。

▶こちらの動画では、膝の画像を使って分かりやすく靭帯のメカニズムと再生医療を解説しています。是非ご覧ください。

まとめ・後十字靭帯損傷の症状と原因、治療法について

「靭帯が伸びるとどうなるか」という疑問を持った方がいらっしゃるかもしれませんが、靱帯損傷では靭帯の一部あるいは全部が断裂つまり切れてしまうものです。

当院では、自己脂肪由来幹細胞治療やPRP療法を行っています。後十字靭帯損傷後に膝の不安定感があったり、スポーツに早期復帰したいという方のために、膝の靭帯損傷をより早く治すために再生医療を提供しています。ご興味のある方は、ぜひ一度当院の無料相談を受けてみてください。

 

No.150

監修:医師 坂本貞範

膝の痛みの治療

参考文献

膝の最前線. 理学療法科学 第23巻2号 

「膝靭帯損傷」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる

プライマリケアのための関節のみかた 下肢編(2)―膝(下)[臨床医学講座より] – 医科 – 学術・研究 | 兵庫県保険医協会 

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