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大腿骨頭壊死は治る?股関節に現れる症状と治療法を紹介

骨頭壊死 治る
公開日: 2021.12.10 更新日: 2025.05.18

大腿骨頭壊死は血流の悪化により、太ももの骨の根本にある大腿骨頭が骨壊死を起こす病気です。大きく「特発性大腿骨頭壊死症」と「症候性大腿骨頭壊死症」の2種類に分けられます。とくに特発性大腿骨頭壊死症は医療費助成の対象となる指定難病の一つです。(文献1

好発年齢は男性が40代・女性が60代で、男女比は3:2です。新たに特発性大腿骨頭壊死症を発症する方は1年に2000〜3000人とされており、それほど珍しい病気ではありません。

骨が壊死してもすぐには痛みが出ず、壊死部分が圧迫されて潰れる(圧壊する)段階になって初めて痛みが生じます。現代の医療技術では、適切な治療により痛みを効果的に管理し、質の高い日常生活を送ることが可能です。

今回は大腿骨頭壊死のうち、特発性大腿骨頭壊死症の症状や治療法、入院期間について解説します。特発性大腿骨頭壊死症を発症した方で、治るか不安な方はぜひ参考にしてください。

大腿骨頭壊死が治るかは壊死の範囲・部位によって大きく異なる

大腿骨頭壊死が治るかは、壊死の範囲および部位により大きく異なります。そもそも骨壊死を起こしたから痛みが出るわけではありません。骨壊死を起こした部分に負荷がかかり、骨がつぶれる(圧壊を起こす)と痛みが生じます

骨壊死を起こしている範囲が狭い・負荷がかかりにくい場所の場合、生涯に渡り圧壊を起こさず痛みが出ない例も少なくありません。骨壊死した部分が圧壊して痛みが強い場合であっても、適切な治療で取り除くことは可能です。

しかし、骨壊死により圧壊した部分を元通りに修復する方法はありません。骨壊死を起こした場合は経過を観察し、必要に応じて適切な治療を受けることが重要です。

大腿骨頭壊死の症状|初期症状とどんな痛みがあるかも紹介

大腿骨頭壊死を発症しても骨が壊死した段階では自覚症状がほとんどありませんが、骨が圧壊すると以下の初期症状が出始めます。

  • 足の付け根の痛み
  • 股関節の可動制限(文献2

大腿骨頭壊死の初期症状の一つが、足の付け根の痛みです。椅子から立ち上がる際や歩行時など、股関節に体重がかかると鋭い痛みが生じます。股関節を内側にひねった際に傷みが生じやすい点も大腿骨頭壊死の特徴の一つです。

大腿骨頭壊死の初期症状としては、股関節の可動制限も挙げられます。股関節の外転(足を外側に開く動作)・内旋(足を付け根からひねる動作)が制限されるのが特徴です。

足の付け根の痛みが見られる方や、股関節の可動制限が気になる方は、大腿骨頭壊死の疑いもあるため、自己判断で放置せず専門医の診察を受けるようにしましょう。

大腿骨頭壊死の原因

特発性大腿骨頭壊死症の「特発性」は明確な原因がわからないことを意味しますが、主に以下の要因で発症リスクが増加すると考えられています。

  • ステロイド製剤の服用
  • アルコールの過剰摂取

ステロイド製剤は全身性エリテマトーデス(SLE)や膠原病、関節リウマチ、アレルギー疾患などの治療に用いられる身近な医薬品の一つです。ステロイド製剤を服用した方すべてが大腿骨頭壊死を発症するわけではありませんが、発症者の約半数にステロイド製剤の使用歴があるとわかっています。(文献3

アルコールの過剰摂取も、特発性大腿骨頭壊死症のリスクを高めるとされています。さまざまな研究により特発性大腿骨頭壊死症の発症者にアルコールの過剰摂取が認められていますが、発症機序は不明です。

大腿骨頭壊死が疑われる際にやってはいけないこと

大腿骨頭壊死が疑われる際にやってはいけないことは以下の通りです。

  • 股関節に持続的な負荷をかける動作
  • 体重増加
  • 股関節の屈曲
  • 飲酒・喫煙

大腿骨頭壊死の症状は、壊死した場所が圧壊して増悪します。激しい運動や重量物の運搬、階段の昇降など、股関節に持続的な負荷がかかる動作はなるべく避けてください

体重増加も股関節への負担増加につながるため、標準体重を超過しないよう食事メニューを見直す必要があります。股関節の屈曲も壊死した部分に負荷をかけるため、頻繁にしゃがんだり立ったりする動作は可能な限り避けましょう。

また、「大腿骨頭壊死の原因」でも解説した通り、アルコールは大腿骨頭壊死を発症する要因の一つです。タバコに含まれるニコチンは毛細血管を収縮させ、骨壊死を加速させる可能性が指摘されています。大腿骨頭壊死を発症したら禁酒・禁煙に取り組みましょう。

大腿骨頭壊死の診断方法

大腿骨頭壊死は血液検査では診断できないため、主に以下2つの方法で発症の有無を確認します。

  • レントゲン
  • MRI

大腿骨頭壊死が疑われる際は、まずレントゲンによる検査が行われます。大腿骨頭壊死の初期では壊死部の圧壊が起きておらず、診断が難しいケースも少なくありません。症状が進行すると変形性股関節症の所見から、大腿骨頭壊死が見つかる例もあります。

レントゲンでは大腿骨頭壊死を発症しているかわからない場合、MRI(磁気共鳴画像診断)による検査が行われます。MRIでは圧壊が起こっていない初期の大腿骨頭壊死を発見できる点がメリットの一つです。

整形外科ではCT(コンピュータ断層撮影)を用いた検査を行うケースもありますが、大腿骨頭壊死に関しては治療内容を決めたり、手術の計画を立てたりする際に用いられるのが一般的です。

股関節の大腿骨頭壊死の治療法

大腿骨頭壊死の主な治療法は以下の3つです。

  • 保存療法(手術しない方法)
  • 手術療法
  • 再生医療

大腿骨頭壊死は自然治癒が見込めないため、症状の程度や進行度合いに応じて適切な治療法が選択されます。

それぞれの治療法をさらに詳しく解説します。

保存療法(手術しない方法)

大腿骨頭の壊死範囲がごく小さく圧壊が見られない際は、保存療法で経過を観察するケースがあります。大腿骨頭壊死の保存療法としては、主に以下3つの方法が挙げられます。

  • 免荷・装具療法
  • 物理療法・高圧酸素療法
  • 薬物療法

免荷・装具療法は松葉づえやロフストランドなどを用いて患部にかかる負担を軽減し、痛みの緩和や歩行機能の改善を図る治療法です。

日本整形外科学会などが監修する特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドライン2019では、免荷療法で短期的には痛みが緩和するものの、長期的な圧壊予防効果および手術療法への移行を抑制する効果は期待できないとされています。(文献4

物理療法・高圧酸素療法に関しては多くが海外で行われており、痛みを軽減したり圧壊の進行を予防したりする点に関して、エビデンスを伴う論文は認められていません。

薬物療法ではアレンドロネートやゾレドロネートなどのビスホスホネート系製剤が用いられます。薬物療法に関しては圧壊を抑制したり症状の増悪を予防したりする効果が報告されているものの、近年の調査では有意な効果が認められないとの報告もあります。

骨頭壊死に伴う圧壊がそれほど進行していなければ保存療法も有効ですが、日常生活に支障を来すほどの症状が見られる際は、その他の治療法を検討する必要があるでしょう。

手術療法

大腿骨頭の壊死範囲が広い場合や、日常生活に支障を来すほどの痛み・可動制限が認められる場合は、手術療法が検討されます。

大腿骨頭壊死の手術法としては以下2つがよく知られています。

  • 骨切り術
  • 人工関節置換術

それぞれについて詳しく解説します。

骨切り術

大腿骨頭壊死に対する手術療法の一つが骨切り術です。骨切り術では壊死を免れた健常な関節面を、体重がかかる部分へ移動する点が特徴です。自分の骨を利用した手術療法のため、関節を温存できる点が大きなメリットです。また、体重がかかる部分から移動した壊死部は、健常な骨へと生まれ変わる可能性も指摘されています。

大腿骨頭壊死症に対する大腿骨頭前方回転骨切り術を行ったある病院では、術後経過観察期間平均5年5カ月で、関節温存率が77.8%(18例のうち14例)と報告されています。(文献5

人工関節置換術

大腿骨頭壊死に対する手術療法の一つが人工関節置換術です。人工関節置換術はさらに「人工骨頭置換術」と「人工股関節全置換術」の2つに分けられます。人工骨頭置換術では、臼蓋側(骨盤側)には手を加えず、壊死した骨頭だけ置換します。簡便な方法ですが、術後も痛みを残すケースが少なくありません。

人工股関節全置換術では壊死した骨頭を置換するだけでなく、臼蓋側(骨盤側)も人工物に置き換える点が特徴です。大腿骨頭の壊死した部分を切除して丸いボールを被せ、臼蓋側(骨盤側)に半球状のカップを設置し、特殊な加工を施したポリエチレンをはめ込みます。(文献6

人工関節置換術のメリットは痛みの緩和や関節可動域の改善効果が高い点です。また、手術の翌週には歩行訓練が始められる上、リハビリ期間が骨切り術に比べて短いため、高齢者に関しては極めて有効な治療法とされています。

一方で、人工関節がすり減るため15〜20年程度を目途に再度手術を受けなければならない点や、感染症を起こしやすいのが懸念点です。また、特定の動作に伴い人工関節が脱臼しやすい点もデメリットとして挙げられています。

再生医療

大腿骨頭壊死の治療法として、近年では再生医療も挙げられるようになりました。大腿骨頭壊死を発症した方の血液から採取した幹細胞を培養し、増殖させてから患部に注入するのが再生医療の特徴です。

ただし、再生医療には健康保険が適用されないケースが多いため、治療費が高額になりがちです。再生医療は新しい治療法のため、地域によっては受けられる病院やクリニックがないケースもあります。

当院「リペアセルクリニック」では細胞加工室と連携し、通常は難しいとされる股関節への幹細胞注入を実現しています。大腿骨頭壊死の再生医療に興味がある方や、できれば手術を避けたい方は、当院までお気軽にお問い合わせください。

手術しなくても治療できる時代です。

股関節の痛みは⼿術しなくても治療できる時代です。

大腿骨頭壊死の治療にかかる入院期間は?

大腿骨頭壊死の治療で入院する期間は治療法や施設により異なりますが、一般的には以下の期間が目安となります。

  • 骨切り術:1~2ヶ月程度
  • 人工関節置換術:2週間~4週間程度
  • 再生医療:数日程度

骨切り術は自分の関節を温存できる点がメリットですが、入院期間およびリハビリ日数が長い点が特徴です。人工関節置換術は2週間〜4週間程度が入院期間の目安で、安定して階段昇降や中距離歩行が可能になった段階で退院するケースが多いです。

まとめ|大腿骨頭壊死は早期発見・治療によって治るかが決まる

大腿骨頭壊死は早期発見・早期治療ができるかにより、どの程度回復するか決まります。発症初期には自覚症状を伴わないケースも多いですが、動作に伴う痛みや関節の動きの悪さが気になる方は、可能な限り早めに医療機関を受診して適切な治療を受けることが重要です。

症状が軽度の場合は保存療法で様子を見るケースもありますが、長期的な圧壊予防効果および手術療法への移行を抑制する効果は期待できません。人工関節置換術は痛みの緩和および関節可動域の改善効果が高い治療法ですが、感染症や脱臼のリスクを伴います。

近年では大腿骨頭壊死に対しても再生医療が用いられるケースがあり、手術を避けたい方にとっては検討したい治療法の一つとなっています。

リペアセルクリニックでは独自の技術で、通常は難しいとされる股関節への幹細胞注入を可能にしました。なるべく手術を避けたい方や再生医療に興味がある方は、リペアセルクリニックまでお気軽にお問い合わせください

\まずは当院にお問い合わせください/

参考文献

文献1)
難病情報センター「特発性大腿骨頭壊死症(指定難病71)」
https://www.nanbyou.or.jp/entry/160(最終アクセス:2025年4月18日)

文献2)
公益財団法人日本股関節研究振興財団「指定難病の特発性大腿骨頭壊死症をご存知ですか?」
https://www.kokansetu.or.jp/personal/hpjclumn.php?no=23(最終アクセス:2025年4月18日)

文献3)
公益財団法人日本股関節研究振興財団「ステロイド治療に伴う大腿骨頭壊死の発生予防を目指して」
https://www.kokansetu.or.jp/personal/hpjclumn.php?no=36(最終アクセス:2025年4月18日)

文献4)
日本整形外科学会・厚生労働省指定難病特発性大腿骨頭壊死症研究班「特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドライン2019」
https://minds.jcqhc.or.jp/common/wp-content/plugins/pdfjs-viewer-shortcode/pdfjs/web/viewer.php?file=https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00541.pdf&dButton=false&pButton=false&oButton=false&sButton=true(最終アクセス:2025年4月18日)

文献5)
整形外科と災害外科66「当科における大腿骨頭壊死症に対する大腿骨頭前方回転骨切り術の検討」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai/66/4/66_800/_pdf(最終アクセス:2025年4月18日)

文献6)
東京医科大学病院「人工股関節全置換術を受ける患者さんへ」
https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/kansetsu/pdf/pamph_tha.pdf(最終アクセス:2025年4月18日)

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