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石灰沈着性腱板炎の原因とは?症状や痛みが続く際の治療法を紹介
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「肩が痛くて夜眠れない……」
「肉体労働をしているから早く症状を改善したい」などと悩んでいませんか。
その症状、石灰沈着性腱板炎の可能性があります。
本記事では、石灰沈着性腱板炎の症状や発症原因、治療法などを解説します。
「できる限り早く改善したい」と考えている方は、治療までの期間も解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
石灰沈着性腱板炎とは
石灰沈着性腱炎(せっかいちんちゃくせいけんばんえん)とは、筋肉や腱にカルシウムが沈着して起こる病気です。
石灰沈着性腱板炎に発症するのは、40〜50代の女性が多く、女性ホルモンが関係していると言われています。
部位的には体のどこにでも起こる可能性がありますが、通常は「肩の腱板」で起こる症例が多く「石灰沈着性腱板炎」と呼ばれます。
腱板は、上腕を肩につなぐ筋肉と腱の集まりです。
腱板にカルシウムが蓄積すると、腕の可動域が制限されるだけでなく、激しい痛みも生じるようになります。
石灰沈着性腱板炎の症状
石灰沈着性腱板炎の症状は主に、ひどい肩の痛みに伴って腕を動かせなかったり、眠れなかったりする方がいます。
石灰沈着性腱板炎の痛みは夜間に突発的に生じるケースが多いため、痛みで起きてしまうこともあります。
なお、石灰沈着性腱板炎の症状には、出現時期によって特徴や痛みの感じ方が異なるため、以下の表で詳しくまとめました。
時期 |
出現時期(発症後) |
痛みの特徴 |
---|---|---|
急性期 |
1〜4週間 |
・針で刺されたような痛みがある ・安静にしていても痛む ・日常生活がままならない方もいる |
慢性期 |
6カ月〜 |
・特定の動きをする際に筋肉痛のような痛みがある ・後ろに手を回せない |
上記のように、悪化すると痛みで腕を動かせない、髪をとかす、洗濯物を干すなどの腕を上げる動作で痛みを伴うケースもあります。
石灰沈着性腱板炎の原因
石灰沈着性腱板炎が発症する主な原因は、肩の使い過ぎとリン酸カルシウムの結晶化です。
それぞれ石灰沈着性腱板炎が発症する原因を、詳しく解説していきます。
原因1:肩の使い過ぎ
石灰沈着性腱板炎は、肩に負担のかかる動作を頻繁にしていると起こりやすい病気です。
重い荷物を持ち上げたり、野球やテニスのようなスポーツをしていたりする方は石灰沈着性腱板炎が生じやすい傾向にあります。
学生時代に野球やテニスをしており、社会人になっても続けている方は、腱板への負担が大きくなるため注意が必要です。
日常生活での洗濯やパソコン作業でも、肩にストレスがかかります。また、加齢に伴う腱の柔軟性の低下も発症しやすくなる要因です。
肩の使い過ぎではなく、加齢による痛みを疑っている方は、以下の五十肩・四十肩に関する記事もあわせてご覧ください。
原因2:リン酸カルシウムの結晶化
石灰沈着性腱板炎が発症する原因の1つに、腱板へのリン酸カルシウムの沈着があります。
ただし、なぜリン酸カルシウムの沈着が起こるかはまだ解明されていません。
リン酸カルシウムの結晶は、最初はミルク状ですが、徐々に歯磨き粉のような状態を経て、最終的に硬く大きくなります。
なお、リン酸カルシウムの沈着は、遺伝的素因や糖尿病などの代謝性疾患に伴うと知られています。
石灰沈着性腱板炎の診断方法
石灰沈着性腱板炎の診断方法はまず、腕を上げたり、腕を回したりして、可動域の制限を確認します。可動域制限の診察終了後、カルシウムの沈着やその他の異常がないか調べるために、画像検査を行います。
超音波検査を利用するケースもあり、X線検査では見逃された小さな沈着物を見つけ出せるのが特徴です。
石灰化した沈着物の大きさや場所を正確に評価するためにCT検査を、腱板断裂が合併していないか確認するためにMRI検査をする診断方法もあります。
リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けています。
事前に相談しておきたい方や治療の流れなどが気になる方は、気軽にご連絡ください。
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石灰沈着性腱板炎の治療法と予後
石灰沈着性腱板炎は多くの場合、手術をせずに治療できます。
ここからは石灰沈着性腱板炎の治療法と、予後について解説していきます。
薬物療法
石灰沈着性腱板炎の薬物療法では、炎症や痛みの緩和を目的に、以下の薬を処方しています。
薬ごとの種類や特徴は以下の通りです。
薬の種類 |
詳細 |
---|---|
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) |
・薬物療法の第一選択肢 ・炎症を抑え痛みを和らげる効果が期待できる ・ロキソニンやボルタレン、湿布などが該当する ・痛みが軽度なら内服薬、重い場合は外用薬が適用されるケースが多い |
鎮痛剤 |
・非ステロイド性抗炎症薬では痛みがある場合に処方される |
ステロイド薬 |
・痛みに対する強めの薬 ・肩への局所麻酔するケースもある ・長期使用は腱を弱める可能性があるため要注意 |
理学療法(リハビリ)
薬物療法で痛みに十分対処したのち、中等度または重度の症例では、可動域を回復させるために理学療法(リハビリ)をおこないます。
リハビリの種類 |
詳細 |
---|---|
ストレッチ |
・肩の可動をスムーズにするため実施 ・実施しないと肩の動きが制限や痛みが発生しやすい |
筋肉トレーニング |
・肩周辺の関節や筋肉強化が目的 ・関節の安定につながり再発予防が期待できる |
運動療法 |
・ボールやタオル、ゴムバンドなどを使った運動 ・日常生活の動作をスムーズにさせるために実施 |
手術をしない場合は、肩の動きを回復するために穏やかなリハビリを行います。振り子のように腕をわずかに振るリハビリがよく行われているリハビリです。
時間をかけて、アイソメトリック運動や軽い負荷をかけた運動などを行う場合もあります。
リハビリについては、以下の記事で具体的な方法を紹介しているので、あわせてご覧ください。
注射療法
石灰沈着性腱板炎の注射療法は、薬物療法や理学療法で改善されなかった場合に検討される治療法です。直接的に肩へ注射する治療法のため、高い効果が期待できる反面、長期的な使用には注意が必要です。
注射の種類 |
詳細 |
---|---|
ステロイド注射 |
・痛みに対する強めの薬 ・即効性はあるがステロイド薬同様、長期使用する上で注意が必要 |
ヒアルロン酸注射 |
・肩の関節の可動域をスムーズにしたいケースでおこなう |
局所への注射だけでなく、急性期にミルク状のリン酸カルシウムを吸引するケースもあります。肩に局所麻酔を施した後に腱板まで針を刺し、固まる前のリン酸カルシウムを手動で吸引し、除去できます。
針を正しい位置に誘導するために、超音波で確認しながらおこなうケースもある治療法です。
手術療法
薬物療法や理学療法などで石灰沈着性腱板炎の改善が見られない場合は、リン酸カルシウムの沈着物を除去するための手術が治療法として挙げられます。とくに慢性期で日常生活に支障をきたすほどの痛みが続いている方は、手術が必要となります。
手術では、関節鏡手術を実施しており、術後1週間以内には日常生活に復帰できるケースが大半です。
しかし、痛みが続いて日常生活が制限される場合もあります。術後の完全回復に向けてリハビリを実施しますが、患者様によっては3カ月以上かかる可能性もあるのです。
石灰沈着性腱板炎の予後
石灰沈着性腱板炎は痛みを伴うことがありますが、早期に治癒しやすい病気です。
最終的に自然に消失する傾向はあるものの、治療せずに放置すると合併症を引き起こす可能性もあります。
石灰沈着性腱板炎の合併症には、腱板断裂や四十肩などを含みます。
早期の治癒に向け、適切な治療を施していきましょう。
石灰沈着性腱板炎には再生医療が1つの選択肢になる
石灰沈着性腱板炎の治療は、再生医療で改善が期待できます。
従来の治療法では、10%の方が手術をしなければならず、痛みを抑えるためにおこなっても、傷跡が気になる方がいるでしょう。
最近では手術をしない治療法である再生医療を選ぶ方もいます。再生医療は、体への負担が少ない治療法のため、石灰沈着性腱板炎を含めた病気で実施されています。
石灰沈着性腱板炎の治療において、従来の保存療法や手術療法に加えて、再生医療も治療の選択肢の一つとして挙げられます。
再生医療では、患者様自身の幹細胞を用いて、組織の修復を促す治療を行います。この治療法は手術のように大きな切開を必要としないため、体への負担が比較的少ないことが特徴です。
再生医療について興味がある方は、ぜひ当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。
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石灰沈着性腱板炎かも!?|肩の痛みが続く場合は適切な診断を
本記事では、石灰沈着性腱板炎の症状や原因、治療法などを解説しました。
石灰沈着性腱板炎は腱板断裂や四十肩とも症状が似ているため、十分に認識されていない方もいます。
仮に、肩の痛みがなかなか治らない、肩の痛みの原因を知りたいなど、肩の痛みにお悩みの方は、無理をせず医療機関を受診しましょう。
治療の選択肢としては、薬物療法や手術の他に再生医療という選択肢もあります。
再生医療の診療を行う当院「リペアセルクリニック」では、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けています。
事前に相談しておきたい方や治療の流れなどが気になる方は、気軽にご連絡ください。
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石灰沈着性腱板炎に関するよくある質問
石灰沈着性腱板炎がコーヒーと関係するのは本当?
石灰沈着性腱板炎とコーヒーは、直接的な因果関係については現状、証明されていません。
「普段コーヒーをよく飲むから不安…」と感じる必要はありません。
しかし、コーヒーをミルクと混ぜて飲む方はリンを多く含んでいるため、以下の食品も含めて注意しましょう。
- カップラーメン
- 冷凍食品
- 食品添加物を含む食品
食事の内容が直接関係していなくても、なるべくビタミンやCやEが豊富な野菜・果物の摂取が推奨されています。
石灰沈着性腱板炎になった場合は仕事を休む必要があるの?
石灰沈着性腱板炎になった場合、痛みが激痛であれば仕事を休むのがおすすめです。とくに肩を使う動きの多い肉体労働をしている方は、症状を悪化させてしまう可能性があるため注意してください。
治療法や個人の回復力にもよりますが、2〜3カ月の休業が伴うケースがあります。しかし、長期の休業は経済的な負担がかかるものです。
長期休業になるため、医師の診断書をもとに休業補償を受けられるか、会社に確認しておきましょう。
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石灰沈着性腱板炎はどのくらいで治る?
石灰沈着性腱板炎は多くの場合、薬物療法で改善しています。
薬物療法や注射療法を実施して、約3カ月で改善される方もいれば、4年経過しても痛みが残ったケースもあります。(文献1)
なかには、痛み止めの内服で2週間程度で改善される方もいるため、治療期間は人によって異なると把握しておきましょう。
参考文献
Wolk T, Wittenberg RH. Calcifying subacromial syndrome: clinical and ultrasound outcome of non-surgical therapy. Z Orthop Ihre Grenzgeb. 1997;135(5):451-457.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9446439/
▼肩が痛む症状についてこちらのご覧ください
監修者
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坂本 貞範 (医療法人美喜有会 理事長)
Sadanori Sakamoto
再生医療抗加齢学会 理事
再生医療の可能性に確信をもって治療をおこなう。
「できなくなったことを、再びできるように」を信条に
患者の笑顔を守り続ける。