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【どうなる?】特発性膝骨壊死とは|治療法や悪化させないポイントまで医師が解説!
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この記事にたどり着いたあなたは「特発性膝骨壊死は治るの?」「骨が壊死するなんて怖い」と不安になっているのではないでしょうか。
特発性膝骨壊死(とくはつせいひざこつえし)は、原因不明の膝の疾患です。動かしているときだけでなく、じっとしているときや夜間の急激な膝の痛みが特徴です。
軽度であれば完治する可能性もありますが、重症化すると手術が必要になるケースもあります。早期発見・早期治療が重要です。
本記事では特発性膝骨壊死の特徴や治療法について詳しく解説します。特発性膝骨壊死と診断された方や今後の経過が気になる人はぜひ最後までチェックしてください。
目次
特発性膝骨壊死とは|起こるとどうなる?
特発性膝骨壊死とは「大腿骨内顆骨壊死(だいたいこつないかこつえし)」と呼ばれ、太ももの骨に起こる骨壊死です。60歳以降の中高年女性に多く、歩行時痛や階段の昇り降りなどでの痛みを生じます。
特発性膝骨壊死の特徴は、動かしていないときや夜間にも激痛を感じることです。座っているだけで激痛に襲われたり、夜間の痛みで寝れなくなったりなど日常生活に支障をきたす可能性があります。
また、骨壊死部分は骨が脆くなっているため、体重をかけるなどの負担によって骨が変形していく可能性があります。放置すると変形性膝関節症を合併する危険があり、注意が必要です。
特発性膝関節壊死は、軽度であれば完治する可能性があります。変形が進むと手術の必要性が高まるため、変形が進む前の治療が大切です。
軽度なら自然治癒する可能性がある
特発性膝骨壊死は、軽度であれば自然治癒する可能性があります。特発性膝骨壊死には「ステージ1(発生期)」「ステージ2(吸収期)」「ステージ3(完成期)」「ステージ4(変性期)」と4つの分類があります。過去の研究結果では、ステージ1の患者に対しては保存療法によって骨壊死が消失する結果が得られました。(文献1)
このように軽度であれば壊死部が治癒することがありますが、ステージ4になると軟骨が削れて関節の隙間も狭く変形します。重度の変形では自然治癒しないため、変形性膝関節症と同様に手術の検討が必要です。(文献2)
なお、骨壊死については以下の記事でも詳しく解説しています。特発性膝骨壊死への理解も深まる内容なので、気になる人はぜひこちらもチェックしてみてください。
特発性膝骨壊死と変形性膝関節症は症状が似ている
特発性膝骨壊死と変形性膝関節症はどちらも膝の痛みを感じ、進行すると膝の変形が進むという点で似ている病気です。
変形性膝関節症が「動かしたときの痛みや動き出しなどで鈍い痛み」を感じるのに対して、特発性膝骨壊死は「動いていないときや夜間の鋭い痛み」を感じるのが特徴です。
どちらもレントゲン画像で診断できますが、初期ではほとんど判別がつきにくい傾向があります。そのため、特発性膝骨壊死が疑われる場合にはMRI検査を行うことも多いです。
とくに特発性膝骨壊死を放置して骨壊死しているところに負担がかかり続けると、急速に変形性膝関節症に移行するといわれています。(文献2)
じっとしているときや夜間の激痛がある場合には、できるだけ整形外科を受診するようにして対処しましょう。
突発性膝骨壊死の原因は明らかになっていない
特発性膝骨壊死を発症する明確な原因はわかっていませんが、以下のような説が考えられています。
しかし、はっきりとした原因はわかっていないのが実情です。
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特発性膝骨壊死の治療法
特発性膝骨壊死の治療は、変形性膝関節症と同様「保存療法」「手術療法」といった治療を行うのが一般的です。
保存療法
ステージが初期のころは消炎鎮痛剤(痛み止め)やヒアルロン酸注射などの保存療法が主流です。
これらの治療で痛みをコントロールしつつ、運動療法を中心としたリハビリで筋肉を鍛えて骨壊死部への負担軽減を目指します。
また、膝への負担を軽減する方法として装具の利用も重要です。
外反装具(膝を外に曲げる装具)や足底装具(インソール)、T字杖や松葉づえを用いることで、膝の負担軽減を図る場合もあります。
手術療法
保存療法で痛みの軽減が得られない場合、手術療法を検討します。
主な術式は、壊死部を関節鏡で除去したうえでプレート固定する「高位脛骨骨切り術」と、膝関節を人工物に取り替える「人工関節置換術」です。
軟骨や靭帯の損傷が限局的で、膝関節の他の部分が比較的健全に保たれている場合は、関節機能を温存できる「高位脛骨骨切り術」を検討します。
75歳以上の高齢者に「高位脛骨骨切り術」を実施した結果、術後の痛みは軽減され変形も進みにくいなど良い結果が多く得られたという研究もあります。(文献5)
一方、特発性膝骨壊死が進行し、関節の変形が大きい場合には「人工関節置換術」を行うのが一般的です。
人工関節については以下の記事でも解説しています。気になる方は合わせてご覧ください。
再生医療という選択肢もある
保存療法を試しているが改善しない、手術には抵抗があるといった方は、再生医療という選択肢も検討してみましょう。
再生医療は人工関節に変わる治療方法として選択肢となる治療法の一つです。
膝関節に幹細胞を注入することで、膝の痛みの軽減が期待されています。当院リペアセルクリニックでも、再生医療を実施しています。
もし特発性膝骨壊死の治療で再生医療に興味があれば、メール相談もしくはオンラインカウンセリングからお気軽にご相談ください。
なお、当院で実施している再生医療については以下の記事で詳しく解説しています。再生医療についての知識が深まる内容なので、ぜひこちらもご覧ください。
\まずは当院にお問い合わせください/
特発性膝骨壊死を悪化させないためのポイント
特発性膝骨壊死の進行を抑えるために重要なポイントは以下の3つです。
- 適切な日常生活を心がける
- 膝に負担をかけすぎない
- 早めに受診して診断を受ける
特発性膝骨壊死と診断された人は、日常生活で本章の内容を意識してみましょう。
適切な日常生活を心がける
特発性膝骨壊死の進行を抑えるには、過度な飲酒や喫煙を避け、規則正しい生活を心がけることが大切です。
喫煙者や肥満者は、特発性膝骨壊死に悪影響を及ぼすと報告されています。(文献4)
膝の痛みに悩んでいる方は可能であれば禁煙し、栄養バランスの整った食生活や適度な運動を心がけましょう。
膝に負担をかけすぎない
肥満や激しい運動は膝へ大きな負担がかかり、特発性膝骨壊死を悪化させる原因になる可能性があります。
また、太ももの前にある大腿四頭筋(だいたいしとうきん)は体重を乗せたときなどに衝撃を受け止めるクッションの役割をしています。
膝の負担を軽減させるためには、痛みのない範囲での筋トレを行い、大腿四頭筋を鍛えるのもおすすめです。
早めに受診して診断を受ける
特発性膝骨壊死は進行性の病気です。膝の痛みが長引く場合は、可能な限り早く受診することが大切です。
痛みや症状が変形性膝関節症と似ており、自己判断は難しいでしょう。整形外科での診察や検査を受けることで、早期に適切な治療を開始できます。
安静時や夜間の急激な鋭い痛みを感じるなど特発性膝骨壊死が疑われる特徴的な症状がある場合、早めに整形外科に相談しましょう。
まとめ|特発性膝骨壊死は激しい痛みが特徴!悪化させないためにも早めの受診がおすすめ
特発性膝骨壊死は安静時や夜間の激しい痛みが特徴の病気です。放置しておくと症状が進行し、変形性膝関節症に移行してしまう可能性があります。
悪化を防ぐためにも、早めに受診の上、適切な治療を受けましょう。
なお、当院リペアセルクリニックでおこなっている再生医療は、特発性膝骨壊死に対する治療選択肢の一つとして再生医療を提供しています。
膝の痛みにお悩みの方や、手術以外の治療法を検討している方は、お気軽にメール相談もしくはオンラインカウンセリングからご相談ください。
\まずは当院にお問い合わせください/
特発性膝骨壊死についてよくある質問
特発性膝骨壊死は自然治癒しますか?
軽度なら自然治癒する可能性があります。
特発性膝骨壊死が軽度の状態であれば骨の壊死範囲も小さいため、改善する可能性があります。しかし軽度の状態ではレントゲンでは映らないため、MRI検査を受けないとわかりません。特発性膝骨壊死が疑われたらできるだけ早くMRIがある整形外科を受診してください。
特発性膝骨壊死を悪化させないためにはどうすれば良いですか?
規則正しい生活習慣を心がけましょう。
特発性膝骨壊死は喫煙や肥満によって悪化する可能性があるため、生活習慣を整えることが大切です。また、適度な運動によって太ももの筋肉を鍛えれば、膝にかかる負担を軽減でき症状の悪化予防につながるでしょう。
参考文献
(文献1)
安原良典「保存療法による早期膝関節特発性骨壊死の検討|日関病誌(33巻,1号)」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsjd/33/1/33_13/_pdf/-char/ja
(文献2)
牛島貴宏「特発性膝骨壊死に対する高位脛骨骨切り術後のX線学的評価と関節軟骨変化|整形外科と災害外科(59巻,4号)」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai/59/4/59_4_675/_pdf/-char/ja
(文献3)
Yamamoto Takuaki ほか「Spontaneous Osteonecrosis of the Knee: The Result of Subchondral Insufficiency Fracture|The Journal of Bone & Joint Surgery 82 (6)」
https://journals.lww.com/jbjsjournal/Abstract/2000/06000/Spontaneous_Osteonecrosis_of_the_Knee__The_Result.13.aspx
(文献4)
Santiago Pache ほか「Meniscal Root Tears: Current Concepts Review|Arch Bone Jt Surg」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30175171/
(文献5)
小無田航 ほか「75歳以上の特発性膝骨壊死に対する高位脛骨骨切り術後の関節鏡評価と臨床成績|整形外科と災害外科(72巻,3号)」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai/72/3/72_368/_pdf/-char/ja
監修者
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坂本 貞範 (医療法人美喜有会 理事長)
Sadanori Sakamoto
再生医療抗加齢学会 理事
再生医療の可能性に確信をもって治療をおこなう。
「できなくなったことを、再びできるように」を信条に
患者の笑顔を守り続ける。