- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 関節リウマチ
膝の人工関節置換術とは?手術の流れや合併症リスク・術後生活までを詳しく解説
膝の人工関節置換術は、変形性膝関節症などで進行した関節疾患に対する代表的な外科的治療の一つです。
注射などの薬物療法やリハビリなどの保存療法では十分な改善が見られない場合に選択される手術で、痛みの軽減や運動機能の改善を目指します。
本記事では、膝の人工関節置換術の手術内容や対象となる症状、合併症リスク、術後のリハビリまでをわかりやすく解説します。
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目次
膝の人工関節置換術とは?
膝の人工関節置換術は、傷んだ関節の表面を人工の関節に置き換える手術です。
関節の機能を回復させ、再び自分の足で快適に歩けるようにすることを主な目的としています。
ここでは、膝の人工関節置換術の対象となる方、手術で得られる効果、そして保存療法との違いについて解説します。
どんな人が対象になるのか
膝の人工関節置換術は、膝の痛みや関節の変形が進み、日常生活に支障を感じている方が主な対象です。
とくに次のような症状がある場合は、膝の軟骨や骨が大きく傷んでいる場合が多く、自然に元に戻ることは難しいとされています。
- 膝の痛みが強く歩行や立ち上がりが困難になっている
- 階段の上り下りや正座ができないなど動作の制限がある
- 膝の変形が進行しO脚が目立つようになってきた
- 夜間の痛みで眠れない・安静時にも痛む
- 膝の可動域が狭く動かすと強い痛みを感じる
上記の症状が続く場合、まずは整形外科を受診して膝の状態を詳しく調べてもらいましょう。
手術以外の選択肢が見つかる場合もあるため、医療機関へ早めに相談することが大切です。
膝の人工関節置換術で得られる主な効果
膝の人工関節置換術を受けることで、長年悩まされていた膝の痛みが軽くなり、動作がスムーズになる方が多く見られます。
具体的には、次のような効果が期待できます。
- 膝の痛みが大幅に軽減し歩行や立ち上がりが楽になる
- 階段の上り下りや外出がしやすくなり行動範囲が広がる
- 旅行や買い物など、以前は避けていた活動を再び楽しめるようになる
- 日常生活の質(QOL)が向上し毎日の動作にゆとりが生まれる
- 痛みや不安が減ることで気持ちが前向きになりストレスが軽減する
ただし、効果の感じ方には個人差があります。
手術後のリハビリや筋力回復への取り組み方が、満足度を左右する大切なポイントです。
人工関節置換術と保存療法の違い
膝の痛みに対しては、まず痛みを和らげて関節の動きを保つことを目的とした「保存療法」が行われます。
保存療法では、主に次のような治療法が用いられます。
- 薬物治療:消炎鎮痛薬や外用薬で炎症や痛みを抑える
- ヒアルロン酸注射:関節の潤滑を保ち、動きをなめらかにする
- 温熱療法:温めて血流を促し、こわばりを軽減する
- 筋力トレーニング:太ももの筋肉を鍛えて膝への負担を減らす
保存療法は、初期〜中期の膝関節症には効果的ですが、軟骨の摩耗や変形が進むと効果が十分に得られない場合があります。
一方、膝の人工関節置換術は、傷んだ関節部分を人工の関節に置き換え、痛みの根本的な原因を取り除く治療です。
つまり、保存療法が「痛みを抑える治療」だとすれば、人工関節置換術は「痛みを生み出す原因を改善する治療」といえます。
膝の人工関節置換術の種類と手術の流れ
膝の人工関節置換術には、関節の状態に応じていくつかの方法があります。
ここでは、膝の人工関節置換術の方法と、実際の手術までの流れについて解説します。
人工関節の種類
膝の人工関節置換術には、「全置換術」と「部分置換術」の2種類があります。
どちらも痛みを取り除き、関節の動きを取り戻すことを目的としていますが、対象となる症状や手術の範囲が異なります。
全置換術
全置換術は、膝関節の傷んだ部分をすべて人工関節に置き換える手術です。
軟骨のすり減りや変形が広範囲に及び、関節全体が傷んでいる場合に行われます。
金属や樹脂でできた人工関節を大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)に固定し、滑らかな動きを再現します。
痛みの改善効果が高く、長期的な安定性も得られることが特徴です。
部分置換術
部分置換術は、膝の中でも損傷が進んでいる一部分だけを人工関節に置き換える方法です。
関節の損傷範囲が限られている場合に選ばれる手術方法で、健康な軟骨や骨をできるだけ残せるのが大きな特徴です。
手術の負担が小さく、回復が早い傾向がありますが、残っている関節部分が将来的に悪化する可能性もあるため、定期的な経過観察が必要です。
人工関節置換術(膝)前の検査・準備
膝の人工関節置換術を安全に行うためには、事前の検査や準備が欠かせません。
手術前は全身の状態を確認するため、主に次の検査や準備を行います。
- 血液検査
- 心電図
- レントゲン
- 感染症の有無
- 感染予防(手術部位の皮膚を清潔に保つなど)
また、糖尿病や高血圧などの持病がある場合は、事前に数値を安定させておくことも大切です。
人工関節置換術(膝)にかかる時間と入院期間の目安
膝の人工関節置換術の手術時間は、一般的に2〜4時間程度が目安です。
ただし、症状の程度や手術方法によって多少前後する場合があります。
手術後は安静期間を経てリハビリを始めるため、入院期間はおおよそ2〜3週間程度が一般的です。
回復のスピードには個人差がありますが、医師や理学療法士の指導のもとでリハビリを続けると、無理なく日常生活に戻ることができます。
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人工関節置換術(膝)の対象となる代表的な4つの疾患
膝の人工関節置換術は、さまざまな原因で関節が傷み、痛みや変形が進行した場合に行われます。
手術の対象となる代表的な疾患には、次の4つが挙げられます。
- 変形性膝関節症
- 関節リウマチ
- 大腿骨顆部壊死症
- 外傷後の膝関節障害
それぞれの疾患について、詳しくみていきましょう。
変形性膝関節症
変形性膝関節症は、膝の関節にある軟骨がすり減り、炎症や痛みを引き起こす慢性的な疾患です。
膝の人工関節置換術を受ける方の多くが、この変形性膝関節症と診断されています。
主な原因は加齢や長年の膝への負担、肥満や筋力の低下、O脚なども影響するといわれています。
症状が進むと、歩行や階段の上り下りが難しくなり、関節が変形してしまう場合もあります。
関節リウマチ
関節リウマチは、免疫の異常によって自分の関節を攻撃してしまう自己免疫疾患です。
関節に慢性的な炎症が起こり、軟骨や骨が少しずつ破壊されていきます。
手や足など複数の関節に症状が現れるのが特徴で、膝関節が変形すると歩行が困難になる可能性もあります。
薬で炎症を抑えても痛みや変形が進む場合、人工関節置換術によって関節の機能を回復させることが検討されます。
大腿骨顆部壊死症
大腿骨顆部壊死症は、太ももの骨(大腿骨)の関節部分への血流が悪くなり、骨の一部が壊死してしまう病気です。
壊死した部分の骨が沈み込むことで関節面が変形し、強い痛みが生じるようになります。
発症の原因は明確でないこともありますが、ステロイド薬の長期使用や過度な飲酒などが関係するといわれています。
関節の破壊が進んだ場合は、人工関節置換術で壊死した部分を人工の関節に置き換えることで、痛みの改善が期待できます。
外傷後の膝関節障害
交通事故やスポーツ外傷などで膝の骨折や靭帯損傷を経験した場合、時間の経過とともに関節の変形が進む場合があります。
外傷後の膝関節障害は、ケガの後遺症として関節の軟骨がすり減り、痛みや動かしにくさが残るのが特徴です。
保存療法で痛みの改善が見られない場合や、関節の変形が強く進行している場合には、人工関節置換術が検討されます。
膝の人工関節置換術で起こり得る合併症リスク
膝の人工関節置換術は一般的に安全な手術とされていますが、まれに合併症が起こる場合もあります。
主な合併症には、次の3つがあります。
- 傷口や人工関節周囲で起こる感染症
- 関節脱臼
- 人工関節のゆるみ
ここで、それぞれの合併症について詳しく解説します。
傷口や人工関節周囲で起こる感染症
膝の人工関節置換術後でとくに注意したいのが、傷口や人工関節の周囲に細菌が入り込むことで起こる感染症です。
軽い場合は抗生物質の投与で治まりますが、炎症が強いと膝が腫れたり、熱を持ったりする場合があります。
まれに人工関節の内部まで感染が広がると、人工関節を入れ替える再手術が必要になる可能性もあります。
感染を防ぐためには、手術前後の体調管理や清潔な環境を保つことが重要です。
医療スタッフと連携して感染予防に努めましょう。
関節脱臼
人工関節を入れたあと、関節が正しい位置から外れてしまう「脱臼」が起こる場合があります。
これは、急に膝をひねったり、深く曲げすぎたりすることで発生しやすく、術後すぐの時期はとくに注意が必要です。
脱臼が起きると膝の痛みや不安定感が強くなるため、すぐに医師の診察を受けることが大切です。
リハビリの段階で医師や理学療法士の指導を守り、正しい姿勢や動作を心がけると脱臼のリスクを減らせます。
人工関節のゆるみ
人工関節は年月の経過による摩耗や、膝に強い負担がかかる生活動作が原因で、少しずつ骨との結合部分が緩んでくる場合があります。
人工関節がゆるむと、痛みや違和感、膝のぐらつきが生じることがあり、放置すると歩行に支障をきたす場合もあります。
症状が出た際は早めに受診し、必要に応じて人工関節を入れ替える「再置換術」を検討します。
定期的な診察を受け、膝の状態を確認しておくことが長く快適に過ごすためのポイントです。
膝の人工関節置換術後の生活とリハビリ
膝の人工関節置換術後、安静期間を経て、少しずつ体を動かすリハビリが始まります。
膝の動きを取り戻すためには、焦らず段階を踏んで回復を目指すことが大切です。
ここでは、術後のリハビリの流れや、日常生活で気をつけたいポイントについて解説します。
術後すぐの安静とリハビリ開始時期
人工関節置換術のあと、手術当日は安静に過ごし、翌日からリハビリを始めるのが一般的です。
初めはベッドの上で足首を動かしたり、膝を少しずつ曲げ伸ばししたりなどの軽い運動からスタートします。
数日後にはベッドから立ち上がる練習を行い、歩行器や杖を使って短い距離を歩く練習へと進みます。
この早期リハビリは、膝が硬くなる「関節拘縮(かんせつこうしゅく)」を防ぎ、回復をスムーズに進めるうえでとても大切です。
医師や理学療法士と相談しながら、無理のない範囲で体を動かすことが回復につながります。
日常生活への復帰までの流れ
膝の人工関節置換術後しばらくは、歩行補助具を使っての移動から始まり、数週間かけて自力歩行を目指します。
リハビリでは、膝の曲げ伸ばしだけでなく、太ももやお尻の筋肉を鍛える運動も行い、膝にかかる負担を減らしていきます。
退院後は、家の中での生活動作に慣れることが次のステップです。
階段を使うときは手すりを活用し、床に座る動作を避けて椅子中心の生活を心がけます。
一般的に、手術から1〜3カ月ほどで日常生活を送れるようになる方が多く、6カ月ほどで旅行や軽い運動を楽しめるようになるケースもあります。
焦らずに自分のペースでリハビリを続けることが、膝の機能を長く保つポイントです。
注意すべき動作や生活習慣
人工関節を長く快適に使うためには、膝に大きな負担をかけない生活を意識することが大切です。
とくに、正座やあぐらのように膝を深く曲げる姿勢は避けるようにしましょう。
また、床に直接座るよりも椅子に腰かける習慣をつけると、関節への負担を軽減できます。
階段を使う際は、必ず手すりを利用し、急いで動作しないことも重要です。
さらに、体重が増えると膝への負担が大きくなるため、食事内容を見直したり、ウォーキングや水中運動など無理のない運動を取り入れたりするのがおすすめです。
再手術の可能性について
人工関節には寿命があり、一般的には15〜20年ほど使用できるといわれています。
ただし、長期間の使用や膝への過度な負担によって、人工関節が摩耗したり、骨との結合がゆるんだりする場合があります。
その際は、再び人工関節を入れ替える「再置換手術」が必要になることもあります。
再置換手術は初回よりも難易度が高いため、人工関節をできるだけ長く保つことが重要です。
人工関節を長く使用するためにも、定期的に検診を受けて膝の状態を確認し、違和感や痛みを感じたときは早めに医師へ相談しましょう。
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手術を伴わない治療法「再生医療」について
膝の人工関節置換術は、関節の変形や軟骨の損傷が進行した場合に有効な治療法ですが、「できれば手術を避けたい」「入院や大きな負担をかけずに治療したい」という方も少なくありません。
そうした方にとって、手術を伴わない再生医療は、膝の状態や生活の質を保つための新しい選択肢の一つといえます。
再生医療は、自分自身の体から採取した細胞や血液の成分を利用し、もともと体に備わっている修復力に着目した治療法です。
膝関節の機能を整えることを目的とし、入院や全身麻酔を必要としないため、日常生活への影響が少ないのが特徴です。
ただし、人工関節置換術後に再生医療を行うことはできません。
再生医療を検討する場合は、人工関節手術を受ける前の段階で医師に相談することが大切です。
膝の痛みは⼿術しなくても治療できる時代です。
まとめ|膝の人工関節置換術を正しく理解して納得のいく治療法を選択しましょう
膝の人工関節置換術は、進行した関節の損傷によって歩行や立ち上がりが難しくなった方に行われる治療法です。
手術やリハビリを通して少しずつ動きが戻ることで、外出や趣味を再び楽しめるようになる方も多くいます。
また、手術を検討する前の段階では、リハビリや注射といった保存療法のほかに、再生医療という新しい治療の選択肢もあります。
自分の体の状態や生活スタイルに合わせて、どの方法が適しているかを見極めることが大切です。
不安や疑問を一人で抱えず、信頼できる医療機関で納得のいく説明を受けながら、自分に合った治療法を見つけていきましょう。












