若年性脳梗塞(20~30代)「まだ若い」からと油断するのは禁物ですか?
公開日: 2022.10.26更新日: 2024.10.07
目次
若年性脳梗塞の実際|要注意「まだ若いから」との油断は禁物です
脳梗塞という病気を聞いたり、知ってはいても高齢者の病気だと思っている方も多いのではないでしょうか?確かに年を取るにつれて脳梗塞の発症率は上昇します。
しかし、若年層、若い人であっても脳梗塞を発症する場合があることをご存知でしょうか。この記事では、20~30代といった若い世代でも起こりうる「脳梗塞」について解説いたします。
脳梗塞とは?
そもそも脳梗塞とは、どのような病気なのでしょうか。脳梗塞とは「脳卒中」と言われる病気のひとつで、脳の血管が障害を受けることによって起こる病気の一つです。
脳卒中には脳梗塞以外にも、脳出血、くも膜下出血があります。その中でも脳梗塞は、脳に酸素や栄養を届ける動脈が詰まってしまうことで脳への血流が途絶し、脳の機能に傷害が起こる病気です。
脳梗塞の症状とは?
脳は、場所によって、さまざまな機能を分担していています。脳梗塞になって血流が途絶してしまうと、その部分の機能に障害が起こるということになります。
脳梗塞は、脳の障害を起こす部位によって症状が様々に異なります。
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他にも、脳は感覚や感情、さらには生命維持のために不可欠な様々な機能を担っています。脳梗塞は様々な症状が起こる上に、場合によっては命に関わってくることもあります。
脳梗塞が起こる原因とは?
脳梗塞は、主に3種類に分類されています。
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1.アテローム血栓型脳梗塞
- 1つ目のアテローム血栓型脳梗塞は、脳に酸素や栄養を届ける動脈が動脈硬化などによってだんだんと狭くなり、ついに血流が途絶したときに起こります。
- そもそも動脈硬化が起こると血管は硬くなるだけではなく、血管の壁の中に粥腫(じゅくしゅ)と呼ばれるコレステロールの塊が蓄積してきます。
- 血管と粥腫の間は内膜と呼ばれる薄い膜で隔たれていますが、何らかの原因で内膜が破綻すると粥腫が血液に触れます。すると血管を修復しようとして血液が凝固します。
- もともと狭い血管内で血液が固まりますので血液の流れが完全に途絶してしまい脳梗塞になってしまうのです。大きな血管が詰まると、非常に広い範囲の脳が脳梗塞となってしまい命に関わるような重篤な症状となる事もあります。
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2.ラクナ梗塞
- 2つ目のラクナ梗塞は、脳に酸素や栄養を届ける動脈の血管の中でも末端の非常に細い動脈に起こる血流の途絶によって起こります。
- 小さい範囲の脳梗塞のため、症状がない場合もありますが、非常に重要な部分に酸素や栄養を届ける動脈が詰まってしまうと、重篤な状態となってしまうこともあります。
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3.心原性脳塞栓症
- 3つ目の脳梗塞の原因である心原性脳塞栓症は、脳以外の血管に原因がある脳梗塞です。種々の病気によって、足や心臓の中で血栓という血の塊ができてしまうことがあります。
- この血栓が、ある時その場所から剥がれ落ちて血流に乗って脳に届き、血管に詰まってしまいます。血栓のサイズによって症状は様々となります。多くの場合、心房細動という不整脈に伴って心臓内に血栓ができます。
- また、普通心臓内では静脈で全身から帰ってきた血液(静脈血)と、肺から帰ってきて全身に送る血液(動脈血)は混ざらないように分かれています。
- しかし、先天性の病気で心臓に穴が空くなどして、静脈血が動脈血に混じってしまう人がいます。このような人の場合、足の静脈でできた血の塊が動脈に入り込み、脳へ飛んでしまう事があります。これを奇異性塞栓と言います。
脳梗塞の治療方法とは?
脳梗塞の治療は、発症後なるべく早い時間に血流を再開させることが重要となります。
血液が届かなくなった脳の細胞は時間が経つにつれ、どんどんと壊死してしまいます。血流が途絶した時間が長くなれば、壊死している範囲が広がってしまいます。
血流を早期に回復させることができたら、最小限の壊死でとどめることができますので、後遺症を減らす事ができます。
特に有効とされているのが、血栓を溶かす治療です。しかし出血などの合併症があるため、発症4時間30分以内にしか使用できず、なるべく早く病院を受診する必要があります。
他には、血管内治療と言って、カテーテルという細い管を血管の中に通し、脳の中にまで届かせて血栓を吸い取って血流を再開させる治療も行います。
若年性脳梗塞とは?
脳梗塞の中でも、若年に起こる脳梗塞を特別に若年性脳梗塞と言います。
どのような特徴があるのでしょうか。
若年性脳梗塞とはどのようなものなの?
若年性脳梗塞は、特に国際的に決まった定義はありませんが、日本では国立循環器病センターが50歳以下における脳梗塞と区分しており、その辺りの年齢より若い人に起こるものを若年性脳梗塞と言います。
若年性脳梗塞はどのような原因で起こるの?
若年とはいえ、原因は高齢者に起こる脳梗塞と同様に、動脈硬化によるものが多いです。動脈硬化の原因としては、以下のようなものが挙げられます。
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また、前述の奇異性脳塞栓はどの年代でも起こりえますが、動脈硬化の割合が高齢者より少ない分、若年性脳梗塞においては奇異性脳梗塞の割合が高くなる傾向があります。
つまり、危険因子を持ち合わせると、20代であっても脳梗塞が起こる可能性は十分にあり得るのです。
若年性脳梗塞を予防するためにできること
では、若年性脳梗塞を予防するためにはどのような事に気をつければ良いのでしょうか。
生活習慣の見直し
若年性脳梗塞を予防するためには動脈硬化を予防する事が最も重要です。
その為には生活習慣を整えることが必要とされています。
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塩分の高い食事や栄養が偏った食事、不規則な生活リズム、運動不足は動脈硬化を悪化させます。
さらに、喫煙や飲酒も問題となりますので、禁煙や飲酒量の調整も必要です。
また、ストレスも動脈硬化の原因となります。ストレスを感じていることが多い場合には、ストレス解消を意識することも重要となります。
検診の受診
高血圧や糖尿病、高コレステロール血症は自覚症状がほとんどないため、検診を受けて診断を受け、適切に治療を受ける必要があります。
また、奇異性脳塞栓の原因となる心臓の異常は、検診の心電図で発見されることもあります。
早期に脳梗塞の原因となる芽を見つけ、脳梗塞を発症する前に治療を開始することで脳梗塞を起こさないように対策をしましょう。
まとめ・若年性脳梗塞の実際|要注意「まだ若いから」との油断は禁物です
この記事では、若年層、20代でも起こりうる若年性脳梗塞について解説しました。
若年性脳梗塞は、高齢者の脳梗塞に比べて「奇異性脳塞栓」といった特殊な脳梗塞が多いという特徴がありますが、やはり生活習慣病の結果として起こる場合が多くを占めます。
脳梗塞を起こすと、様々な症状が起こります。そして、後遺症を残してしまうことも少なくありません。
普段の生活習慣を改めた上で、医療機関での検診を活用し、若い頃から脳梗塞にならないように気をつけていきましょう。
ご参考になれば幸いです。
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