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脳梗塞の合併症には何がある?起こる原因や対処法を現役医師が解説
脳梗塞にはどんな合併症があるのだろう?
合併症が起きたらどうなるのかな。
この記事を読んでいるあなたは、脳梗塞にはどのような合併症が起こるのか、不安に思っているのではないでしょうか。「どのように治療されるか知りたい」と思っているかもしれません。
結論、脳梗塞には代表的な5つの合併症があります。各合併症は原因や症状が異なり、完全に防ぐのは困難です。
本記事では、脳梗塞の合併症について、種類や治療法、予防法を解説します。記事を最後まで読めば、脳梗塞の合併症についての基本的な内容がわかり、看護・介護にも役立つでしょう。
目次
脳梗塞の代表的な5つの合併症
脳梗塞には、以下5つの合併症があります。
- 【発熱して熱が続く】体温調節障害
- 誤嚥性肺炎
- 脳や消化管からの出血
- 血管性認知症
- サルコペニア
本章の内容をもとに、合併症の症状・概要を理解しておきましょう。
【発熱して熱が続く】体温調節障害
脳梗塞の合併症として、発熱が続く体温調節障害が起こることがあります。
体温は脳の中枢で管理されており、脳が障害を受けると体温調節中枢も障害され、発熱することがあるのです。
なお、重度の脳卒中の場合、発症から数時間後に大幅に体温が上昇するケースもあります。(文献1)
誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎とは、自分のつばや痰、食べ物などが、食べ物の通り道「食道」に入らずに、呼吸をつかさどる「気管」に入るために起こります。食べ物が気管に入ったときに細菌をいっしょに吸い込むことで、肺炎となるのです。(文献2)
誤嚥性肺炎は、脳梗塞の影響で飲み込み機能が落ちている方や、意識障害が起きている方によくみられます。
代表的な症状は、以下のとおりです。
- 発熱
- 咳
- 膿のような痰
しかし、「なんとなく元気がない」「食欲がない」など、呼吸に関係のないあいまいな症状のみが出るケースも珍しくありません。
脳や消化管からの出血
脳梗塞を起こした人は、再発を防ぐために「血液をサラサラにして詰まりにくくする薬」を服用するケースが多くあります。
しかし、血液をサラサラにする薬には、血管が詰まりにくくなる効果がある一方、脳や消化管(胃や腸)の出血が起こりやすくなる副作用もあります。
脳や消化管からの出血による健康上の不安点は、以下のとおりです。(文献3)
- 脳出血:麻痺の悪化や死亡のリスクがある
- 消化管出血:貧血によって全身状態が悪化するリスクがある
副作用はあるものの、血液をサラサラにする薬は脳梗塞の再発予防に欠かせない薬です。
医師・看護師・薬剤師による薬の説明をよく聞き、注意点を守ることが大切です。
血管性認知症
脳梗塞によって、「血管性認知症」という記憶の乱れや運動麻痺などの認知症があらわれるケースがあります。血管性認知症は、認知症の中でアルツハイマー型認知症に次いで2番目に多い病気で、おもな症状は以下のとおりです。(文献4)
- 認知症:実行機能障害や注意障害
- 非均一な高次機能障害:俗にいう「まだら認知症」
- 局所脳機能障害:運動麻痺、構音・嚥下障害、脳血管性パーキソニズム
どのような症状が出るかは、脳梗塞によって機能が低下した脳の部位や、機能障害の程度によって異なります。
サルコペニア
サルコペニアとは、全身の筋肉量が減り、筋力が低下する状態です。筋肉が落ちると寝たきりになりやすく、死亡リスクも高くなることがわかっています。(文献5)
脳卒中を発症して2週間たった状態では、45.5%の人がサルコペニアになっていたという報告もあるのです。
当院「リペアセルクリニック」では、脳梗塞を含む脳卒中に対する再生医療(幹細胞治療)をおこなっています。また、治療と並行して理学療法士、柔道整復師、鍼灸師などを含むチーム体制によるリハビリテーションも可能です。
ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けています。どうぞ気軽にお問い合わせください。
脳梗塞の合併症が起こる原因は症状によって異なる
脳梗塞の合併症が起こる原因は、以下のとおりです。(文献6)
合併症の種類 | 原因 |
---|---|
体温調節障害 |
|
誤嚥性肺炎 | 細菌感染(肺炎球菌・口の中の常在菌) |
脳や消化管からの出血 | 血液をサラサラにする薬の効きすぎ |
血管性認知症 | 脳梗塞による脳細胞のダメージ |
サルコペニア | 寝たきりによる筋肉量の低下 |
それぞれの合併症は起こる原因が異なり、完全な予防は難しいのが現実です。
脳梗塞の合併症が起こったときの対処法
脳梗塞の合併症が起こったときのおもな対処法は、以下のとおりです。(文献2)(文献4)(文献7)
合併症の種類 | 対処法 |
---|---|
体温調節障害 | 通常は解熱鎮痛薬で対処的に治療 |
誤嚥性肺炎 |
|
脳や消化管からの出血 |
|
血管性認知症 |
|
サルコペニア |
|
脳梗塞の発症後は、合併症ができるだけ起こらないよう、薬の量や体調変化を慎重に観察しながら治療をおこないます。どの合併症も早めの対応が重要なため、気になる症状がある場合はすみやかに受診しましょう。
脳梗塞後のリハビリについては、以下の記事も参考にしてください。
まとめ|脳梗塞の合併症がみられたらすぐに受診しよう
脳梗塞は、「体温調節障害」「誤嚥性肺炎」「脳や消化管からの出血」「血管性認知症」「サルコペニア」などの合併症リスクがあります。
合併症を完全に防ぐのは困難なため、気になる症状がみられたらすぐに受診するようにしましょう。
当院「リペアセルクリニック」は、脳梗塞をはじめとする脳卒中に対して再生医療(幹細胞)をおこなっています。再生医療は、脳梗塞後の後遺症が改善する、リハビリ効果を高める、再発予防になるなどの効果が期待される治療法です。
再生医療へのご質問・ご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けております。気になる点がありましたら、どうぞ気軽にご相談ください。
脳梗塞の合併症についてよくある質問
脳梗塞になりやすい人の特徴は何?
脳梗塞の危険因子として「生活習慣病」が挙げられます。
高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満などがリスクとなるため、健診で異常を指摘されている方は早めに治療を受けるようにしましょう。
脳梗塞になりやすい人については、以下の記事で詳しく説明しています。
脳梗塞の前兆にあたる症状は?
脳梗塞の前兆とは「急に手足や顔の麻痺やしびれが出る」「言葉が出てこない」などです。
これらの症状は時間が経つと改善するケースもありますが、「一過性脳虚血発作」といわれる脳梗塞の前兆の可能性があります。原因は、動脈硬化や心臓の病気などにより一時的に脳の血流が悪くなることです。
脳梗塞になる危険性があるため、一過性脳虚血発作がみられたらすぐに受診しましょう。
脳梗塞の前兆については、以下の記事も参考にしてください。
脳梗塞の合併症を予防する方法は?
現代の医学でも、合併症の完全な予防は困難です。合併症のリスクを下げるために、医師、看護師の指示を守り、適切な治療を受けましょう。
また、胃潰瘍の既往がある方は、胃酸の分泌を抑えるお薬を服用して消化管出血のリスクを下げる場合もあります。
参考文献一覧 文献2 文献4 文献5 |