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脊髄出血とは?脊髄血管障害の原因や症状

脊髄出血という病態を聞き慣れない方もいらっしゃると思います。非常に稀な疾患であり、1826年から1997年まで、たった613例しか報告されていません。

脊髄出血は脊髄血管障害の一つであり、脊髄の血管奇形や血管腫による脊髄血管、加えて外傷によって引き起こされます。症状としては、痛みや麻痺、感覚障害を生じます。

この記事では、脊髄出血の原因や症状について、さらに詳しく解説しています。

脊髄梗塞については、こちらの記事をご参照ください。

脊髄出血とは?脊髄血管障害の原因や症状

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脊髄血管障害【脊髄出血】について

まず脊髄とは、脳から背骨の中を腰に向かって走る太い神経のことを言います。

脳からの指令を全身の筋肉に伝えて動かしたり、逆に筋肉や皮膚など末梢からの情報を脳に伝える伝導路としての役割を果たしています。

脳血管障害である脳梗塞や脳出血は聞いたことがあるかと思います。これと同じことが脊髄でも起きることがあり、それを【脊髄血管障害】と呼びます。

脊髄への血管が何らかの原因で閉塞してしまうと脊髄梗塞、脊髄内や脊髄周辺に出血を生じた場合には【脊髄出血】となります。

これらを専門的にみる診療科は、主に脳神経外科となります。

脊椎は上から頚椎、胸椎、腰椎、仙骨、そして尾椎から成り、それに合わせて脊髄も頸髄、胸髄、腰髄、仙髄、そしてそれより下の神経は馬尾と呼んでいます。

どのレベルの脊髄が障害されたかによって、出現する神経障害も変わってきます。

脊髄出血の分類

脊髄は3層の膜に覆われており、内側から順に軟膜、くも膜、硬膜となっています。

このうちどこから出血しているかによって、分類が変わります。

脊髄内の出血は髄内出血、軟膜とくも膜の間の出血は脊髄くも膜下出血、くも膜と硬膜の間の出血は脊髄硬膜下出血、そして硬膜よりも外側の出血は脊髄硬膜外出血と呼ばれます。

脊髄の解剖図

脊髄出血の頻度や患者背景、出血部位について

脊髄出血は非常に稀な疾患であり、1826年から1997年まで、たった613例しか報告されていません。

その後の医療発展や画像検査技術の向上により、脊髄出血の報告数も増えてきましたが、それでもなお稀な疾患であります。

脊髄出血1010症例を検討した報告では、患者さんの平均年齢は47.97歳(年齢幅:0〜91歳)であり、6割以上が男性でした。

障害部位として多かったのは下位頸髄や下位胸髄であり、病変範囲は2椎体間以上に渡ことが多く、最大で6椎体間分にも広がっていました。

脊髄出血の分類別に見ると、脊髄硬膜外出血の頻度が最も多くなっています。

脊髄出血の原因

下記が主な脊髄出血の原因一覧となります。

  • 脊髄出血の原因の大半を占める

  • ・外傷性(交通事故や転落など)
  • 外傷の次に多いのが血管奇形によるもの

  • ・脊髄髄内動静脈奇形
  • ・傍脊髄動静脈奇形
  • ・脊髄海綿状血管腫
  • ・傍脊髄動静脈瘻
  • ・脊髄硬膜動静脈瘻
  • その他

  • ・硬膜外動静脈瘻
  • ・医原性(腰椎穿刺や脊椎麻酔などの合併症)

これらの血管奇形は、脈管の発生異常によって起きます。

海綿状血管腫も厳密にいうと腫瘍ではなく、血管奇形です。異常血管の塊が膨らんで海綿状になる病気で、大きくなると脊髄を圧迫したり、また出血することで症状を呈します。

動静脈瘻についてですが、通常は血液が動脈から毛細血管に入り、そこで脊髄やその外側の膜に栄養を届けた後に静脈に流れていきます。

しかし、血管奇形によって毛細血管を介さずに動脈からそのまま静脈に血液が流れてしまうことがあり、これを瘻、あるいはシャントと呼んでいます。

上記原因のほか、稀ですが下記のものも原因として知られています。

  • ・脊髄腫瘍
  • ・血液疾患
  • ・抗血栓薬(血液を固まりにくくする薬剤)
  • ・膠原病(全身性自己免疫疾患)
  • ・静脈性脊髄梗塞(脊髄静脈の静脈が閉塞する病態)
  • ・妊娠後期

抗血栓薬の使用は血栓塞栓症予防に必要な薬剤であり、リスクなしで休薬できるものではありません。

しかし、これに関しては、これ単独ではなく、他の誘因も合わせて脊髄出血を引き起こしていると考える人も少なくありません。

実際には全例で原因が特定されるわけではなく、原因不明のものも中にはあります。

脊髄出血の症状について

出血量が少ないうちは臨床的に症状を認めないこともありますが、神経を圧迫する出血量であれば症状が出現します。

出血は急に起きることが多いため、一般的には突発的に発症します。

しかし、中には症状が徐々に進行するものや、受傷時点から24時間以上、遅いものでは数日経ってから症状を呈した症例もあります。

多くの場合は急激な背部痛の後に、運動障害や感覚障害が現れます。

出血の起きた部位によって運動障害の出る部分が変わってきます。

  • ●胸椎部での出血の場合…

  • 下肢麻痺、頚椎部ならば下肢に加えて上肢にも麻痺が及ぶことがあります。

  • 出血量が多いほど血液の塊が大きくなるため、症状が重くなる傾向があります。

  • ●硬膜外や硬膜下での出血場合…

  • ナイフで刺されたような激痛に加え、強い脊髄圧迫症状が出るとされます。

  • ●くも膜下での出血の場合…

  • 発熱や頭痛、嘔吐などの髄膜炎症状を伴うことがあり、意識障害やけいれんも相まって、脊髄ではなく脳での出血を強く疑われることがあります。

多くの場合には対麻痺といって、両側下肢に対称性に筋力低下を認めます。

横断的に見て脊髄が全体的に圧迫されていると、両側下肢の完全麻痺を生じます。

脊髄が半側だけ、あるいは一部外側だけの障害となると、Brown-Séquard(ブラウン・セカール)症候群となり、特徴的な運動障害と感覚障害を認めます。

具体的には、障害された側の不全麻痺(一部の感覚や運動機能は残る麻痺)と触覚・位置覚・振動覚の消失、そして障害を受けていない側は温痛覚の消失を認めるというものです。

上記のような症状を認めた場合には、緊急手術になる可能性もあります。すぐに脳神経外科のある病院を受診し、検査してもらいましょう。

脊髄出血の検査所見

脊髄出血は早期発見・早期治療が予後を左右します。

検査としてはCT検査やMRI検査を行いますが、MRIの方が得られる脊髄に関する情報を多く得られるため、診断方法としてより有用とされています。MRIにおいて、時間経過とともに血腫の見え方は変わってきます。

さらに、外傷性の脊髄出血では複数の層にまたがって存在する場合があり、そのような状態では診断が難しいこともあります。

他には、血管内に細い管を入れ、そこから造影剤を流すカテーテル検査を行っている施設もあります。利点としては、MRIでは確認しにくい細かい血管もみることができます。

出血の箇所や範囲や治療戦略にも関わってくるため、専門医による的確な診断が必要となります。

脊髄出血の治療

基本的な治療は、手術によって神経への圧迫を除去することになります。

脳神経外科での外科的手術のほかに、放射線科にて血管からカテーテルという細い管を通し、それを用いて出血している血管を塞ぐ血管内治療があります。

後遺症として運動障害や感覚障害が残ってしまった場合、リハビリテーションでの機能回復を目指します。

さらに現代は、再生医療によってダメージを受けた神経を再生、あるいは神経を新生する根本的治療に注目が集まっています。

治療や予後に関する詳細は以下の記事で解説しています。

脊髄出血についてのQ&A 

Q:脊髄ショックと言われましたがよくなりますか? 

A:脊髄ショックは一過性と言われており、多くの場合は数時間で回復しますが、中には数週間かかることもあります。ショックから離脱すると、脊髄反射が回復しますが、まだ脳からの制御が完全に伝わるわけではありません。突っ張るような「痙性」が起こります。どこまで回復できるかは、その後の経過次第でしょう。 

Q:MRIで脊髄血管奇形があると言われましたが、血管造影検査を勧められています。なぜいくつも検査をするのですか? 

A:血管の構造の評価や動脈と静脈が短絡した「シャント部」など細かい血管の評価はMRIでは難しいです。そのため、造影剤を用いた脊髄血管造影撮影(カテーテル検査)が行われます。この先の治療方針の決定に繋げるためにも必要な検査です。

まとめ脊髄出血とは?脊髄血管障害の原因や症状

脊髄血管障害の一つである脊髄出血は、脊髄内あるいはその周辺に出血を生じた状態のことを言います。多くは外傷性ですが、次に多いのは脊髄血管奇形によるものとされています。

一般的に症状は突然に見られ、背部痛の後に運動障害や感覚障害を認めますが、中には1日以上経ってから症状が出現する症例もあります。

出血の場所や程度によりますが、早急な治療を行えば回復も見込めます。

ただし、脊髄へのダメージが大きい場合や障害を受けてから時間が経ってしまった場合には、後遺症が残ります。

以前までは後遺症に対しての治療といえばリハビリーテーションのみでしたが、現代では再生医療による根本的治療が可能となり、実際に脊髄障害による長年の症状を改善できた症例も見受けられます。

当院では入院不要で外来のみで再生医療を受けることができます。気になる方はぜひ当院へ一度ご相談ください。

脊髄の損傷は手術しなくても治療できる時代です。

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