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高次脳機能障害のリハビリ効果とは?方法や内容をあわせて紹介
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高次脳機能障害になった場合の治療法には、リハビリがあります。しかし、なかには「リハビリにより症状が回復するのか」「どのような内容なのか」と疑問を持つ方もいるでしょう。
高次脳機能障害は適切なリハビリにより、症状の回復が期待できます。
今回は、高次脳機能障害のリハビリ効果を解説します。リハビリの流れや内容、世界で注目されている再生医療についても紹介するので、高次脳機能障害の症状でお悩みの方は参考にしてください。
目次
高次脳機能障害のリハビリによる効果
高次脳機能障害はリハビリにより、症状の改善や進行の遅延が見込めます。
「高次脳機能障害のリハビリテーション」によると、リハビリの実施により家事手伝い・何もしていない人の割合が34.2%から20.7%に減少した結果が明らかになりました。
さらに、社会復帰した人は30.6%から43.7%に増加した結果も報告されています。(文献1)
これらの結果から、リハビリによって高次脳機能障害の症状が改善し、社会復帰につながる可能性があることがわかります。
そのため、医師や理学療法士の方と相談しながら、個々の状態に合わせた継続的なリハビリに取り組むことが推奨されます。
リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。高次脳機能障害の症状やリハビリ方法に関するお悩みをお持ちの方は、お気軽にご相談ください。
▼高次脳機能障害の症状について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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高次脳機能障害のリハビリ方法
高次脳機能障害の症状回復には、それぞれの症状や状態に合ったリハビリが重要です。ここでは、リハビリをする上で押さえておきたいポイントを紹介します。
- リハビリの流れ
- リハビリ期間
以下で詳しく解説するので、高次脳機能障害のリハビリ方法が知りたい方は参考にしてください。
リハビリの流れ
高次脳機能障害のリハビリでは治療だけでなく、定めた目標到達へ向けて訓練を進めていきます。医学的リハビリの流れは、以下の通りです。
1.リハビリ計画を立てる |
高度機能障害に関する診断や評価結果に基づいたリハビリ計画を立てる |
2.具体的な目標を設定する |
当事者がイメージしやすく、かつ短期間で実現可能な目標を決める |
3.リハビリを実施する |
リハビリ計画と目標設定をもとにリハビリを開始。訓練は段階的に進める |
4.結果を判定し、目標の修正 |
リハビリの評価を定期的に繰り返し、プログラムの妥当性や体勢を見直す |
高次脳機能障害のリハビリは漠然と進めていくのではなく、定期的に評価を繰り返して最終的な目標に到達するよう計画を立てていく流れとなります。
▼高次脳機能障害への対応について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
リハビリ期間
高次脳機能障害のリハビリ期間は、6カ月~1年ほどです。はじめの6カ月間は、症状回復を目的に医学的リハビリを受けます。
6カ月目以降は、必要に応じて生活訓練や機能訓練を実施するのが一般的な流れです。「高次脳機能障害者支援の手引き」によると、リハビリを受けた74%が6カ月、97%が1年でリハビリの成果が得られています。
高次脳機能障害の場合、リハビリ期限となる180日を超えて訓練を受けられるため、訓練期間は6カ月〜1年が目安です。(文献2)
高次脳機能障害のリハビリ内容
高次脳機能障害のリハビリ内容は幅広く、個々の症状によっても異なります。主なリハビリ内容は、以下の7つです。
- 環境調整
- 要素的訓練
- 代償訓練
- 行動変容療法
- 認知行動療法
- 社会技能訓練
- 調理行動
各リハビリ内容を解説するので、参考にしてください。
環境調整
高次脳機能障害のリハビリの際は、治療環境を整える必要があります。環境調整では、環境が要因となる不成功を減らせるため、当事者に余分なエネルギーをかけず済みます。
環境調整における症状別の対策は、以下の通りです。
症状例 |
対策 |
---|---|
注意障害 |
気が散りやすい環境とならないよう配慮する |
左半側空間無視 |
ベッドの左側から降りられないよう壁につける |
失算 |
時計をアナログ時計にする |
視空間失認 |
階段に手すりをつける |
また、症状によって人的環境を整えるのもポイントです。例えば、注意障害の場合は集中力が続かないため、複数の相手と話すのを苦手とします。リハビリでは、複数人ではなく1対1で会話するよう心がけましょう。(文献3)(文献4)
要素的訓練
要素的訓練は注意障害や記憶障害など、症状の改善を目的とする訓練です。高次脳機能障害における症状の回復では、症状別に作業を実践する方法が再構築に寄与すると考えられています。
例えば、相手の話を理解できない失語症の場合は、実際に何かを見せて答えてもらいます。集中力が続かない注意障害であれば、問題集を解いてもらうのが要素的訓練として効果的です。
なお、要素的訓練を実践する際は当事者の意識や周囲の環境、治療方法の適切さが目標達成のポイントとなります。(文献3)
代償訓練
代償訓練とは、症状に対する対処法を身につけるリハビリです。対処法を身につけると、障害を自身でカバーしながら仕事や生活ができるようになります。
例えば、注意障害には以下の対処法があります。
- 集中が維持できないときに適宜休憩を挟んでもらう
- 作業時間を長く確保する
- 工程表を提示する
代償訓練は高次脳機能障害で発症した症状を上手く対処し、社会生活や日常生活で支障をきたさないようにするためのリハビリです。
行動変容療法
行動変容療法は、オペラント条件付け理論に基づいたリハビリです。オペラント条件付け理論とは、行動が報酬を得られる道具と認識させる学習法を指します。
例えば、突然怒り出す行動が減少するよう、当事者が自分の感情を抑えた場合に褒めたり、やりがいを感じさせたりします。当事者が褒められた喜びから、自分の感情を抑えようとする過程をつくるのが行動変容療法です。
突然怒り出した場合は、無視をして自発的に行動するよう促します。すなわち、行動変容療法は褒められる機会を増やし、徐々に怒り出す頻度を減らしていくリハビリ内容です。
認知行動療法
認知行動療法とは物事の見方や考え方、行動を変えて、心の状態の改善を図るリハビリです。高次脳機能障害における怒りやすい・うつなどの症状は、自分でコントロールできない感情に悩まされている場合に起こります。
認知行動療法では、障害や環境、周囲の対応などに対する否定的かつ誤った解釈を修正していきます。診察するときは、当事者の感情を否定せず受け入れながら現状に適応できるよう行動を促すのです。
認知行動療法では感情的に怒る前に一呼吸置いて冷静になれるよう訓練していくため、トラブル回避につながります。
社会技能訓練
社会技能訓練は、高次脳機能障害の方が社会に復帰できるようにするリハビリです。主なリハビリ内容は、以下の通りです。
主な支援 |
リハビリ内容 |
---|---|
就労支援 |
|
自動車運転支援 |
自動車運転に際し、視野欠損や半側空間無視、運動操作能力の有無など運動能力評価や診断、指導を実施する |
また、グループの中で自分の考えや気持ち、相手に対する要求など社会で人と関わりながら生きていくためのスキルを身につける訓練も、社会技能訓練では実施します。(文献3)(文献5)
調理行動
高次脳機能障害では、調理を題材にしたリハビリを実施しています。調理行動では、調理を行う危険性を認識させる目的があります。
調理は危険をともなう行動となるため、高次脳機能障害の当事者に自身の能力を認識してもらうのが重要です。
「高次脳機能障害者の自立に向けた調理行動振り返り支援システムに基づく認知リハビリテーション」によると、リハビリとして当事者に自身の調理体験映像を見せ、客観的に自分の行動を見る機会を設けた支援を行いました。
客観視により、リハビリに対する意欲向上が見込まれた事例となり、調理行動は高次脳機能障害の訓練に効果的だとわかります。
高次脳機能障害におけるリハビリ以外の治療方法
高次脳機能障害におけるリハビリ以外の治療法には、再生医療があります。再生医療とは、けがや病気などにより、機能障害に陥った組織や細胞などを元通りにするための治療法です。
体の自然治癒力を高め、組織や機能などの修復を行うのが再生医療です。再生医療による治療は早いほど、脳機能の回復が期待できます。
また、再生医療ではヒトの体に存在する幹細胞の修復力を治療に使用しています。細胞の損傷や不足している細胞を代替し、体の機能を修復する役割を幹細胞が担っているのです。
体へ戻す幹細胞は患者の細胞のため、拒絶反応やアレルギー反応などが起こりづらい点も再生医療の特徴です。
リペアセルクリニックでは、高次脳機能障害の原因の一つとなる脳卒中の再生医療・幹細胞治療を実施しています。メール相談やオンラインカウンセリングも提供していますので、再生医療について詳しく知りたい方はお気軽にご相談ください。
\まずは当院にお問い合わせください/
まとめ・適切なリハビリを受けて高次脳機能障害の回復を目指そう
高次脳機能障害は適切なリハビリにより、症状の回復効果が期待できます。リハビリでは治療だけでなく、定めた目標到達へ向けて訓練を進めていくため、期間は6カ月~1年ほどが目安です。
高次脳機能障害のリハビリ内容はさまざまで、症状別に訓練が異なります。漠然とリハビリをするのではなく、定期的に評価を繰り返して最終的な目標に到達するのが症状の回復へつながります。
なお、症状の回復へつなげるには、リハビリをできるかぎり早く始めるのが大切です。
医師や理学療法士の指導のもと、個々の症状に合わせたリハビリを行い、高次脳機能障害の症状回復を目指しましょう。
加えて、リハビリで効果が得られない場合には、再生医療もご検討ください。
参考文献
(文献1)
J-STAGE「高次脳機能障害のリハビリテーション」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ninchishinkeikagaku/13/1/13_22/_pdf
国立障害者リハビリステーションセンター「第1章 高次脳機能障害 診断基準ガイドライン 」
https://www.rehab.go.jp/ri/event/brain_fukyu/pdf/10.pdf
J-STAGE「高次脳機能障害に対するリハビリテーション治療―患者・家族会との連携―」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/58/4/58_58.418/_pdf/-char/ja
香川大学医学部附属病院 リハビリテーション部「高次脳機能障害と暮らす」
https://www.med.kagawa-u.ac.jp/~neuron/summary/performance/pdf/lecture2022_04.pdf
京都府 健康福祉部 障害者支援課「京都府高次脳機能障害者支援プラン 」
https://www.pref.kyoto.jp/shogaishien/documents/1327459933391.pdf
監修者
![圓尾 知之(医療法人美喜有会 脳神経外科 部長)](https://fuelcells.org/img/topics/sv03.jpg)
圓尾 知之 医師 (医療法人美喜有会 脳神経外科 部長)
Tomoyuki Maruo
日本脳神経外科学会 所属
脳神経外科の最先端治療と研究成果を活かし、脳卒中から1日でも早い回復と後遺症の軽減を目指し、患者様の日常生活の質を高められるよう全力を尽くしてまいります。