脳溢血による後遺症と麻痺症状の治療について
目次
脳溢血による後遺症と麻痺症状の治療について
脳卒中は突然発症し、命にかかわることのある重篤な病気であり、日本での死亡の原因上位とされています。
脳卒中には、脳の血管が詰まる脳梗塞と、脳の血管から出血が起きる脳溢血(のういっけつ)に分けられます。
本記事では脳溢血の後遺症と麻痺症状の治療について詳しく解説していきます。
脳溢血(のういっけつ)とは
脳溢血とは、脳の血管が破れることで血液が流出し、脳内の神経細胞を圧迫してしまう状態のことで、現在は脳出血と呼ばれることが多いです。
脳溢血は発症後に治療しても後遺症が残ることが少なくありません。脳の細胞がダメージを受けることで、体の麻痺や感覚の障害、脳に障害が残る可能性もあります。
後遺症によっては、治療後も日常生活に影響が出ることがあるので、症状だけでなく後遺症まで知っておくことが大切です。
以下より一般的な後遺症について解説していきます。
脳溢血による後遺症
感情障害脳溢血の後遺症は感情面にまで及びます。常にイライラしたり、感情の起伏が激しくなってしまうことがあります。意欲が起きなくなるうつ病のような症状が起きることもあり、精神面のケアも重要となります。 |
脳溢血による後遺症の治療
一度脳溢血を発症すると、完全に回復することは難しいことがあります。これは、神経細胞は一度障害されてしまうと、再生することができないためです。
しかし、リハビリ治療を行うことによって、その症状は軽減することができます。特に早期からリハビリを開始することによって、機能予後は格段に良くなることが期待されます。
脳溢血のリハビリは大きく分けて 3 段階あり、それぞれについて詳しくみていきましょう。
急性期脳溢血の症状が現れ、身体の症状が安定するまでの期間を急性期と言います。発症直後の時期は全身状態が安定しないため、生命維持が優先されます。いきなり歩行などを始めたりすると、血圧が上昇し再出血などのリスクもあるためです。急性期は一般的に2週間程度の期間であることが多く、ベッドサイドでのリハビリが行われます。これは、ベッド上で過ごす期間が長くなると、廃用症候群を招くことがあるからです。 廃用症候群とは、寝たきりの状態が長くなることで、筋肉量が減少したり、関節が固くなり、運動機能が低下する状態のことです。このような状態になると、床ずれができやすくなったり、感染症にかかりやすくなるなど様々な合併症を引き起こすことがあります。このような状態を避けるためにも、急性期からのリハビリは必要となります。 回復期急性期を脱して、全身状態が安定し本格的にリハビリを進めることが出来るようになる時期を回復期といいます。回復期は主に病院でリハビリが行われ、日常生活への復帰を目標として、ベットサイドでの運動や、杖や歩行器などを用いた歩行訓練、また日常動作として食事やトイレ、入浴に関するリハビリも開始されます。この他にも言語や嚥下機能の回復を行うリハビリや、高次脳機能障害に対するリハビリも開始していきます。 維持期維持期は回復期を経て日常動作を獲得し、退院後の時期に当たります。一度回復した機能も、何もしなければ再度機能低下してしまうので、外来に通ったり、日常生活の中で意識して体を動かす習慣作りをすることが重要です。 |
脳溢血による麻痺症状の治療
さらに、麻痺の治療については近年研究が進んでおり、通常のリハビリ以外にも様々な方法があります。
麻痺側の手がある程度動ける方に対して、強制的に麻痺がない手を使えないようにし、麻痺側の手をたくさん使うように日常生活を送るようにすることで、麻痺の手を回復させることを目的とした訓練のことです。 1日に6時間以上の訓練を必要とするなど大変ですが、手の機能が改善したという報告もされています。
促通反復療法は、繰り返し同じ運動をすることで、障害された神経回路を再建、強化することを目標とします。この治療を受けたことで、手足の麻痺の程度が改善したという報告もされています。 近年では、これから述べる機能的電気刺激や経頭蓋直流電気刺激、経頭蓋磁気刺激といった治療と併用して治療効果を高めるための研究がされています。
麻痺のある手足の筋肉に電気を流したり、頭から磁気を流すことにより弱った機能を活性化させ、歩行能力などを高める方法です。促通反復療法などと併用することで、治療効果が高まることが期待されています。
障害された神経細胞自体を再生しようとする、再生医療が近年注目を集めています。 再生医療とは、幹細胞を使用した治療です。幹細胞とは、人の体にある様々な細胞になることができる能力を持っています。幹細胞そのものや、幹細胞から目的の細胞を作成し、病変へ移植するといった手法で治療が行われています。これにより、幹細胞が神経細胞に変化し、体内で機能するようになることで麻痺症状などの改善が期待されます。 現時点では保険適応ではなく、自費での治療となりますが、治療実績が着実に積み重ねられており、今後の発展が大きく期待されています。 |
まとめ・脳溢血による後遺症と麻痺症状の治療について
脳溢血による後遺症と、麻痺症状の治療について解説してきました。
脳溢血の入院期間は 3ヶ月~半年程度要することが多く、そのほとんどが後遺症を治療するリハビリ期間に相当します。脳溢血は日常生活を突然変貌させる非常に怖い病気ですので、本人だけでなく周囲のサポートも非常に重要です。
この記事がご参考になれば幸いです。
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