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脳溢血による後遺症と麻痺症状の治療について

脳溢血による後遺症と麻痺症状の治療について

脳卒中は突然発症し、命にかかわることのある重篤な病気であり、日本での死亡の原因上位とされています。

脳卒中には、脳の血管が詰まる脳梗塞と、脳の血管から出血が起きる脳溢血(のういっけつ)に分けられます。

本記事では脳溢血の後遺症と麻痺症状の治療について詳しく解説していきます。

脳溢血 麻痺症状

脳溢血(のういっけつ)とは

脳溢血とは、脳の血管が破れることで血液が流出し、脳内の神経細胞を圧迫してしまう状態のことで、現在は脳出血と呼ばれることが多いです。

脳溢血は発症後に治療しても後遺症が残ることが少なくありません。脳の細胞がダメージを受けることで、体の麻痺や感覚の障害、脳に障害が残る可能性もあります。

後遺症によっては、治療後も日常生活に影響が出ることがあるので、症状だけでなく後遺症まで知っておくことが大切です。

以下より一般的な後遺症について解説していきます。

脳卒中の治療

脳溢血による後遺症

  • 運動麻痺
  • ・運動麻痺は脳溢血の代表的な後遺症で片側の手足に力が入らなくなったり、動かしづらくなります
  • ・左右どちらかの半身にのみ症状が起きます
  • 感覚障害
  • ・感覚障害も脳溢血の代表的な後遺症であり、触覚や痛覚が鈍くなったり、反対に過敏になることで痺れなどといった麻痺症状を感じることがあります
  • ・こちらの症状も左右のどちらか一方にのみ生じます
  • 言語障害
  • ・言語障害には、言葉が出にくくなったり、理解ができなくなる失語症、口や舌がうまく動かせないことで話しづらくなる構音障害があります
  • ・失語症の場合は言葉の理解が出来にくくなるため、読み書きなども難しくなりますが、構音障害の場合は理解には問題ないため、読み書きは可能です
  • 視野障害
  • ・視野が狭くなったり、物が二重に見えたりする複視という障害と、片目の視野が見にくくなる半盲という障害に分けられます
  • ・これらの症状は発症後長期間経過しても症状が改善しないことがあります
  • 嚥下障害
  • ・脳溢血によりのどの筋肉などが動かしづらくなることで、食べ物や飲み物を飲み込みにくくなります
  • ・食べ物などが食道ではなく気管に入ってしまうと、誤嚥性肺炎を発症してしまうことに繋がります
  • ・誤嚥性肺炎は高齢者の死亡原因となることも多く注意が必要です
  • 高次脳機能障害
  • ・高次脳機能障害とは、脳の細胞がダメージを受けることで脳機能が低下した状態です
  • ・高次脳機能障害としては下記のように複数の症状が現れます
  • ・記憶障害(数分前の出来事を忘れてしまいます)
  • ・注意障害(一つの作業を集中して行うことが出来ない、注意散漫になる)
  • ・遂行機能障害(自分で計画を立てて実行することが出来ない)
  • ・半側空間無視(外界の半側に意識が向かないようになり、空間を認識できなくなる)

感情障害

脳溢血の後遺症は感情面にまで及びます。常にイライラしたり、感情の起伏が激しくなってしまうことがあります。意欲が起きなくなるうつ病のような症状が起きることもあり、精神面のケアも重要となります。

脳卒中の治療

脳溢血による後遺症の治療

一度脳溢血を発症すると、完全に回復することは難しいことがあります。これは、神経細胞は一度障害されてしまうと、再生することができないためです。

しかし、リハビリ治療を行うことによって、その症状は軽減することができます。特に早期からリハビリを開始することによって、機能予後は格段に良くなることが期待されます。

脳溢血のリハビリは大きく分けて 3 段階あり、それぞれについて詳しくみていきましょう。

急性期

脳溢血の症状が現れ、身体の症状が安定するまでの期間を急性期と言います。発症直後の時期は全身状態が安定しないため、生命維持が優先されます。いきなり歩行などを始めたりすると、血圧が上昇し再出血などのリスクもあるためです。急性期は一般的に2週間程度の期間であることが多く、ベッドサイドでのリハビリが行われます。これは、ベッド上で過ごす期間が長くなると、廃用症候群を招くことがあるからです。

廃用症候群とは、寝たきりの状態が長くなることで、筋肉量が減少したり、関節が固くなり、運動機能が低下する状態のことです。このような状態になると、床ずれができやすくなったり、感染症にかかりやすくなるなど様々な合併症を引き起こすことがあります。このような状態を避けるためにも、急性期からのリハビリは必要となります。

回復期

急性期を脱して、全身状態が安定し本格的にリハビリを進めることが出来るようになる時期を回復期といいます。回復期は主に病院でリハビリが行われ、日常生活への復帰を目標として、ベットサイドでの運動や、杖や歩行器などを用いた歩行訓練、また日常動作として食事やトイレ、入浴に関するリハビリも開始されます。この他にも言語や嚥下機能の回復を行うリハビリや、高次脳機能障害に対するリハビリも開始していきます。

維持期

維持期は回復期を経て日常動作を獲得し、退院後の時期に当たります。一度回復した機能も、何もしなければ再度機能低下してしまうので、外来に通ったり、日常生活の中で意識して体を動かす習慣作りをすることが重要です。

脳溢血による麻痺症状の治療

さらに、麻痺の治療については近年研究が進んでおり、通常のリハビリ以外にも様々な方法があります。

  • CI療法(Constraint-induced movement therapy)

麻痺側の手がある程度動ける方に対して、強制的に麻痺がない手を使えないようにし、麻痺側の手をたくさん使うように日常生活を送るようにすることで、麻痺の手を回復させることを目的とした訓練のことです。

1日に6時間以上の訓練を必要とするなど大変ですが、手の機能が改善したという報告もされています。

  • 促通反復療法

促通反復療法は、繰り返し同じ運動をすることで、障害された神経回路を再建、強化することを目標とします。この治療を受けたことで、手足の麻痺の程度が改善したという報告もされています。

近年では、これから述べる機能的電気刺激や経頭蓋直流電気刺激、経頭蓋磁気刺激といった治療と併用して治療効果を高めるための研究がされています。

  • 電気刺激療法、磁器刺激療法

麻痺のある手足の筋肉に電気を流したり、頭から磁気を流すことにより弱った機能を活性化させ、歩行能力などを高める方法です。促通反復療法などと併用することで、治療効果が高まることが期待されています。

  • 再生医療

障害された神経細胞自体を再生しようとする、再生医療が近年注目を集めています。

再生医療とは、幹細胞を使用した治療です。幹細胞とは、人の体にある様々な細胞になることができる能力を持っています。幹細胞そのものや、幹細胞から目的の細胞を作成し、病変へ移植するといった手法で治療が行われています。これにより、幹細胞が神経細胞に変化し、体内で機能するようになることで麻痺症状などの改善が期待されます。

現時点では保険適応ではなく、自費での治療となりますが、治療実績が着実に積み重ねられており、今後の発展が大きく期待されています。

まとめ・脳溢血による後遺症と麻痺症状の治療について

脳溢血による後遺症と、麻痺症状の治療について解説してきました。

脳溢血の入院期間は 3ヶ月~半年程度要することが多く、そのほとんどが後遺症を治療するリハビリ期間に相当します。脳溢血は日常生活を突然変貌させる非常に怖い病気ですので、本人だけでなく周囲のサポートも非常に重要です。

この記事がご参考になれば幸いです。

 

No.S114

監修:医師 加藤 秀一脳卒中の治療

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