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視床出血の症状や予後を現役医師が解説!原因・治療法・リハビリまで網羅

視床出血
公開日: 2023.01.18 更新日: 2026.07.31

「家族が突然、視床出血と診断された」「これからどのような経過をたどるのかわからず不安」と感じている方も多いのではないでしょうか。

視床出血(ししょうしゅっけつ)は、脳の深部にある「視床」で出血が起こる病気で、体の片側の感覚障害や麻痺などが現れる場合があります。ただし、どのような症状がどの程度残るかは、出血の位置や量、広がり方によって一人ひとり異なり、経過も同じではありません。

本記事では、視床出血の症状や左右差、原因、検査方法や治療法、そして再生医療という選択肢まで、医師の視点でわかりやすく解説します。病気の全体像や治療の見通しを整理するための参考にしてください。

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視床出血とは脳出血の中で2番目に多い出血

視床は脳の深部にある小さな部位で、嗅覚を除く、体のさまざまな感覚の情報を大脳へと伝える「中継地点」の役割を担っています。ここで出血が起こると、感覚をはじめとする脳の情報のやり取りに支障が生じるのです。

視床出血は脳出血のなかでも頻度が高く、脳出血全体のおよそ2〜3割を占め、一般には被殻出血(ひかくしゅっけつ)に次いで多いとされています。

また、視床は脳の内部にある「脳室」という空間に近いため、出血が脳室内へ及ぶ「脳室穿破(のうしつせんぱ:出血が脳室内へ広がること)」や、それに伴って髄液の流れが滞る水頭症(すいとうしょう)が起こる場合があります。これらを伴うと、意識障害が強くなったり、脳圧が上昇したりして、症状が重くなる可能性があります。

被殻出血と視床出血のおおまかな違いを、以下の表に整理しました。

比較項目 被殻出血 視床出血
出血部位 大脳の外側寄りにある「被殻」 脳のより深部にある「視床」
現れやすい主な症状 片側の運動麻痺が目立ちやすい 片側の感覚障害が目立ちやすい(麻痺を伴うこともある)
脳室への広がり方の傾向 出血が大きいと脳室へ及ぶことがある 脳室に近く、脳室穿破を起こしやすいとされる

なお、これらはあくまで一般的な傾向であり、実際の症状や広がり方は症例ごとに異なります。

視床出血の主な症状

視床は、感覚だけでなく運動や認知など、複数の神経のネットワークに関わっています。そのため、視床出血の症状は一つにとどまらず、多岐にわたるのが特徴です

ここでは、現れやすい症状を以下の3つに整理して解説します。

それぞれ順に見ていきましょう。

しびれや麻痺などの感覚・運動症状

視床出血でよくみられるのが、体の片側に起こる感覚の異常です。しびれやピリピリとした感覚のほか、触れた感じ(触覚)、熱い・冷たいの感覚(温度覚)、手足の位置のわかりにくさ(位置覚)などが低下する場合があります。

また、視床出血が、内包(ないほう:脳から手足へ運動の指令を伝える神経線維が通る部分)まで広がると、病変と反対側の手足に片麻痺が起こり、感覚障害と運動障害が重なって現れることがあります。

さらに、動きを滑らかに調整しにくくなる運動失調や、発症からしばらくして強い痛みや灼熱感などが現れる「視床痛(ししょうつう)」がみられるのも特徴です。

なお、視床出血の運動失調について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

意識や眼球運動に現れる症状

出血の量や広がり方によっては、意識にも影響が及びます。呼びかけへの反応が鈍くなる程度から、深い昏睡まで、幅のある意識障害が起こり得ます。出血が大きいほど、意識への影響も強く出やすい点にも注意が必要です。

また、視床は目の動きを調整する中脳や脳幹に近いため、眼球の向きや動きの異常、瞳孔の変化などがみられる場合があります。一例として、両目が内側かつ下方を向くことがあります。

ただし、症状の組み合わせや重さには個人差があります。目の症状だけで出血した場所や重症度を自己判断できないため、気になる症状があるときは専門医に確認しましょう。

失語などの高次脳機能障害

視床出血では、言葉や記憶、注意などに関わる「高次脳機能障害」が現れる場合もあります。具体的には、以下の障害が現れる場合があります。

  • 失語
  • 注意障害
  • 記憶障害
  • 半側空間無視(空間の片側に気づきにくくなる)

なかでも失語は、単に発音がしにくいというものではありません。話す・聞いて理解する・読む・書くといった、言葉を扱う機能そのものに影響が及ぶことがあります。

また、高次脳機能障害は、本人が症状に気づきにくいケースも少なくありません。日常生活でみられる変化は、気づいた時点で医師やリハビリ専門職に共有しましょう。

右視床出血・左視床出血で異なる症状

視床出血では、出血した側と反対側の体に、感覚障害や運動麻痺が現れやすい傾向があります

また、記憶や注意、言語などに関わる高次脳機能障害には、左右で違いがみられます。左視床出血では失語などの言語障害、右視床出血では左側の空間に気づきにくくなる半側空間無視や、空間を認識する力の低下が現れやすいとされています。

視床出血100例を調べた研究でも同様の傾向がみられ、血腫が大きいほど症状が増える傾向が報告されました。(文献1

ただし、失語や半側空間無視の有無・程度は、出血した側だけで決まるわけではありません。急性期の視床出血115例を対象にした研究では、血腫量が多いほど、失語や半側空間無視が重くなる傾向が示されました。(文献2)実際の症状は、出血の位置や大きさ、広がり方、個人差などによって異なります。

そのため、「右ならこの症状」「左ならこの症状」と決めつけず、症状や画像所見を担当医に確認することが大切です。

視床出血の主な原因は高血圧

視床出血の背景には、血管に負担をかける要因の積み重ねがあります。なかでも主な危険因子は「高血圧」で、高い圧力が続くことで細い血管が傷み、やがて破れて出血につながります

また、高血圧のほかに、加齢や糖尿病、喫煙、過度の飲酒、過去の脳卒中歴なども、発症のリスクを高める要因です。ただし、これらの要因があっても必ず発症するわけではなく、逆に高血圧の自覚がないまま発症することも少なくありません。

なお、前ぶれや初期症状について知っておきたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

高血圧で視床出血が起こるメカニズム

高血圧の状態が長く続くと、脳の奥にある細い血管に絶えず強い圧力がかかります。その負担によって血管の壁が少しずつ傷み、もろくなった部分が高い血圧に耐えきれずに破れ、出血が起こるのです。

なお、出血の多くは、「穿通枝(せんつうし)」と呼ばれる非常に細い血管で生じます。破れた血管から漏れ出た血液は「血腫(出血による血のかたまり)」となり、周囲の脳組織を圧迫します。この圧迫が、出血の位置や広がりに応じたさまざまな症状を引き起こすのです。

視床出血の診断は「頭部CT検査」にておこなう

視床出血が疑われるときは、まず頭部CT検査をおこないます。CTは短時間で撮影でき、出血の有無や位置、大きさ、脳室穿破や水頭症の有無などを速やかに確認しやすいためです。急を要する脳出血の診断に適した検査です。

なお、必要に応じて、MRIや血管の状態を調べる検査が追加される場合もあります。これらによって、出血の原因や病変の状態をより詳しく調べることも可能です。

どの検査をどこまでおこなうかは、症状の状態を踏まえて医師が判断します。

視床出血の治療法は2つ

視床出血では、血腫(出血によってできた血の塊)を直接取り除く手術は基本的におこなわれません。視床は脳の深部にあり、周囲に重要な神経が集まっているため、手術によって脳をさらに傷つけるリスクがあるからです。

ただし、以下のような状況では、手術が検討されることがあります。

手術を検討する状況 手術の目的
出血の範囲が非常に大きく、状態の悪化が懸念される 脳への圧迫や重い合併症を抑える
水頭症によって脳への圧力が高まっている 脳室にたまった髄液を排出し、脳への圧力を下げる

実際に手術をおこなうかどうかは、血腫の大きさや広がり、脳室穿破や水頭症の有無、意識状態などを確認した上で、脳神経外科医が総合的に判断します。

ここでは、以下の治療法について解説します。

なお、脳出血の入院期間や費用の全体像を知りたい方は、以下の記事で解説しています。

薬物療法|血圧コントロール

薬剤による血圧コントロールは、視床出血の重要な治療法です。

視床出血は高血圧が原因となるケースが多く、とくに発症時(急性期)には収縮期血圧が200mmHg以上となる人も珍しくありません。発症から6時間以内は再出血が起こりやすいため、急性期の治療では出血範囲の拡大や再出血の予防を目的に、血圧を安定させる降圧剤の点滴や内服などが使われます。

血圧は収縮期血圧140mmHgを目安に下げるのが一般的ですが、急激に血圧を下げると急性腎障害が増加したという報告もあります。そのため、状況を見ながらの適切な血圧コントロールが大切です。(文献3

また、慢性期にも生じる可能性がある視床痛は、一般的な鎮痛薬が効きにくいことがあります。アミトリプチリンなどの抗うつ薬、カルバマゼピンなどの抗けいれん薬を処方して様子を見ますが、効果には個人差があります。(文献4

手術療法|シャント術

シャント術とは、脳内に溜まる髄液(硬膜と脳・脊髄の間を満たす液体)を体内のほかの場所へ流す通り道を作る手術で、水頭症の治療法です。

髄液は誰にでも存在し、通常は脳内の狭い道を通って血管に吸収されています。しかし、視床出血が起こると通常のように吸収されず、溜まった髄液は脳内を圧迫し始めます。そのため、髄液を流す手術が必要になるのです。

シャント手術の主な経路は、以下のとおりです。

  • 脳室から腹部(脳室―腹腔シャント)
  • 脳室から心臓(脳室―心房シャント)
  • 腰から腹部(腰椎―腹腔シャント)

現在は、脳室―腹腔シャントが最も多くおこなわれています。

視床出血の予後は出血量や広がりなどに左右される

一般的に、出血が多くて広範囲なほど視床出血の予後は不良です。

また、出血範囲が生命を維持するために重要な「中脳」にまで広がると、生命の危機につながる可能性が高いともいわれています

なお、視床出血の死亡率は重症度などによって異なるため、一律には示せません。過去の研究では、出血が視床内にとどまった症例の死亡率は13%だった一方、脳室内まで広がった症例では52%でした。死亡リスクには、血腫の大きさや脳室穿破の有無、発症時の意識状態などが関係します。(文献5

水頭症の発症や再出血、さらなる出血範囲の拡大などがあると、予後がさらに悪化するケースも珍しくありません。そのため、厳格な血圧コントロールや、少しでも後遺症を軽減する早期からのリハビリが重要です。

視床出血の後遺症に効果的なリハビリ

視床出血の発症後には、感覚障害や片麻痺、視床痛、運動失調、そして失語や注意・記憶の障害、半側空間無視などの高次脳機能障害が後遺症として現れる場合があります。後遺症が現れた場合、機能の保持・回復のためにリハビリが欠かせません。

リハビリは、全身状態が安定し、医師が可能と判断した範囲で、できるだけ早い時期から始めます。

主なリハビリの役割は、以下のとおりです。

リハビリの種類 主な訓練内容
理学療法 歩行や立ち上がり、バランスなど、体を支えたり動かしたりする訓練
作業療法 食事や更衣などの日常生活動作、手や指を使う動作の訓練
言語聴覚療法 失語、発音、飲み込み、認知機能やコミュニケーションに関する訓練

どの訓練をどのように進めるかは、症状や時期に応じてリハビリ専門職が個別に組み立てます。時期別・後遺症別の具体的なリハビリや看護のポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。

視床出血の改善しない症状や後遺症に再生医療という選択肢

標準的な治療とリハビリを続けても後遺症が続いている場合に、医師へ相談できる補完的な選択肢の一つが、幹細胞を用いる再生医療です。幹細胞には、損傷した神経や血管が修復されやすい環境を促す働きがあるとされており、この性質を活用した治療法です。

ただし、再生医療は急性期の救命治療や標準治療の代わりになるものでもなく、あくまでリハビリと併用しながら、残っている機能を活かして回復を目指す考え方が基本です。治療の適応や期待できる変化、限界、リスクなどについては、必ず医師に確認しましょう。

以下の記事では、8年前に発症した視床出血により、右半身の麻痺やしびれ、構音障害などが残った50代男性の経過を紹介しています。ぜひご覧ください。

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視床出血の症状が現れたらすぐに医療機関を受診しましょう

視床出血は、脳の深部にある「視床」で出血が起こる病気です。

視床は感覚情報の伝達を担う重要な部位であるため、発症すると手足の麻痺やしびれ、感覚障害、運動障害などの後遺症が出る場合があります。

顔や手足のしびれ、身体の動かしにくさ、感覚の異常などの症状がみられた場合は、できるだけ早い医療機関への受診が大切です。

また、急性期治療やリハビリによって回復が期待できる一方で、一定期間が経過すると症状の改善が停滞し、後遺症が残ってしまうケースも少なくありません。

そのような場合には、既存の治療やリハビリに加え、再生医療という選択肢があります。

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視床出血の症状に関するよくある質問

視床出血後の入院期間はどのくらいですか?

入院期間は、重症度や合併症、治療の内容、リハビリの進み方、退院先の調整などによって大きく異なり、一律にはお答えできません。目安として、研究で示された数値を参考に紹介します。

視床出血が発症した患者50例を対象とした研究では、発症から回復期リハビリテーション病棟へ入院するまでが平均28.6日、回復期病棟での入院期間が平均94.9日でした。(文献6

ただし、この研究は70歳未満の初回脳卒中で、血腫の広がりが限られ、水頭症などを伴う重症例を除いた患者が対象です。そのため、研究で示された日数は一つの参考であり、実際の入院期間は症状によって変わります。

視床出血は再発しますか?

視床出血は再発する可能性があり、その予防には高血圧の管理が重要です。一度出血を起こした血管の周囲は、再び出血のリスクを抱えていると考えられます。

再発を防ぐには、医師の指示に沿った服薬を続けることに加え、家庭での血圧の記録、定期的な受診、減塩、禁煙、過度の飲酒を避けるといった生活習慣の見直しが役立ちます。

再発率の詳しい数値や予防法については、以下の記事で解説しています。

参考文献

(文献1)
Thalamic hemorrhage(視床出血100例の臨床的検討)|PubMed

(文献2)
Aphasia and unilateral spatial neglect due to acute thalamic hemorrhage: clinical correlations and outcomes|PubMed

(文献3)
脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2025]|日本脳卒中学会

(文献4)
Dejerine-Roussy Syndrome|PubMed

(文献5)
Thalamic stroke. Presentation and prognosis of infarcts and hemorrhages|PubMed

(文献6)
視床出血による記憶障害の検討|日本リハビリテーション医学会